4
メリー忘年会

#サムライエンパイア #お祭り2019 #クリスマス

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#お祭り2019
🔒
#クリスマス


0




「メリークリスマス、ッてのか?」
 浮かれた気配を感じさせない鋭い目つきで、グリモア猟兵、我妻・惇が極めてフランクな、人口に膾炙する定型的な祝辞を口走る。場所はサムライエンパイア、正しくクリスマスを祝う習慣が広まっているわけではなく、民人の中でもよく分かっていない者が多い。というよりこの男が理解しているかどうかも怪しい。
「だァいじょォぶだッて、ちゃンと用意してあるからよォ」
 訝しげな目に心外そうに手を振ると、ごそごそと陰から何やらを取り出し、卓上へと並べて行く。
「シャンパンだろ」
 一升瓶。大吟醸。
「シャンパン風飲料だろ」
 甘酒。アルコールは含まない。
「ケーキだろ」
 団子。三宝に山積みの団子。
「トリだろ」
 鶏の唐揚げ。こちらも大皿に山積みで、レモンも添えられている。
「な?」
 万事万端調ったとばかりにニヤリと口の端を上げて笑う男。鼻の良い猟兵はそこから漏れる酒気に気付いたろうし、勘の良い猟兵はそれでなくとも分かったろう。即ち『こいつ酔ってんな』と。

「まァともかく、だ」
 惇が顎でそっぽを示せば、同様の呑兵衛たちが手招きしながら笑っている。こちらもすでに宴たけなわの様子で、赤い鼻以外にはクリスマスの気配などありはしない。
「どォせみンな分かンねェンだ。格式ばッて四角四面に紋切型でやるこたァねェやな。要は愉快に騒げりゃ良いンだろ?雪見て一杯と行きましょォや」
 呵々と笑うとさらに一本もう一本と、次々酒瓶を取り出して行く。
「とりあえずまァ、駆けつけ一杯、どォだい」


相良飛蔓
 お世話になっております、相良飛蔓です。今回もお読みいただきありがとうございます。

 サムライエンパイアでのクリスマスということで、久しぶりの帰郷です。駆け込み申請で他のシナリオより開始が遅いとは思いますが、ご興味ありましたらよろしくお願いします。

 クダを巻くも良し、酔い潰れるも良し、前後不覚になるも良し。ダメ酒呑み様のご参加をお待ちします。
 もちろん酒飲みじゃなくても未成年でも飲めるものはありますし持ち込みも可です。クリスマスらしさを教示するも良し、タチの悪い一般酔っ払いに絡まれるも良し。思い思いに楽しんでいただければ幸いです。

 そんなわけで、ご検討よろしくお願いします。
40




第1章 日常 『サムライエンパイアでクリスマス』

POW   :    クリスマス大吟醸で乾杯したり、クリスマス団子を頬張って、楽しく飲み食いする

SPD   :    和風なクリスマスを見物したり、用意されたイベントに参加する

WIZ   :    正しいクリスマスの知識を披露したり、恋人や友人とパーティーを満喫する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルムル・ベリアクス
クリスマスって、美味しいもの食べてお酒を飲む行事…ですよね?惇さん!お酒大好きなわたしとしては参加しない手はありませんね!大吟醸に合わせたくて刺身の盛り合わせを奮発しました。皆で食べましょう!
普段は真面目と言われがちなわたしですが今日は別。さっそくいただきます!
皆さんにお酒を注いだり注がれたりしながら食事を楽しみます。
皆さんにつられて結構飲むペースが早くなってしまったような。ぐらぐらしてきました。酔いが回った方に絡まれるかもしれませんが、わたしは人の話を聞くのが大好きなのでどんな絡み方されても問題ありません!むしろ楽しんじゃいます。
うう、動けなくなるほど飲んじゃった、もうだめ…けどいい気分…。


ヴィリヤ・カヤラ
クリスマスってちゃんと楽しむの今回が初めてなんだけど、
エンパイアのクリスマスってこんな感じなんだね。
惇さん少し一緒しても良いかな?
今年は色々ありがとう!来年もよろしくね。
っと、お酌するよ。
私もちょっと飲んじゃおうかな、
少しずつ飲めば大丈夫だと思うしストレートでいってみよう。

お団子はモッチモチで美味しいし、
唐揚げも美味しいよね。
惇さんも食べる?
唐揚げだったらレモンはかけるか
聞いた方が大変な事にならないんだよね。
私はレモンはかける派、さっぱりするしね。
他にもお酌できそうな人がいたらお酌してまわってみようかな。
自分も飲み過ぎて寝ないようには気をつけるね。

アレンジ・絡み歓迎。



「クリスマスって、美味しいもの食べてお酒を飲む行事…ですよね?」
 ルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)の認識は、ちょっとだけ足りない。由来とか信仰だとか、そういう部分を絡めていくと飲み食いがメインではないということになってくるのだが――
「エンパイアのクリスマスってこんな感じなんだね」
 周囲を見回すヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は感心しているが、そもそもここにはクリスマスを祝う習慣が深く根付いてはいない。該当する由来も根本の信仰もなければ当然、それを汲む行事も存在しないわけで。なので他の人たちも大体理解していないし、それで構いやしないのだ。楽しければ良いし、呑めれば良い。どうせこの酔っ払いども、今更由来や縁起を説明したところで明日の朝にはけろりと忘れることだろう。
「お酒大好きなわたしとしては参加しない手はありませんね!」
 そして、ルムルの理解と順応は早かった。

「惇さん!大吟醸に合わせたくて刺身の盛り合わせを奮発しました!皆で食べましょう!」
 豪勢な皿を両手に抱え、仮面の青年がにこやかに。普段の怜悧な雰囲気は鳴りを潜めて、今は快活な声でグリモア猟兵に呼びかける。既に飲み始めているようにすら見えるが、まだ賑わいに乗じて気分が高揚しているだけで、まったくの素面である。
 呼びかけられた惇は慌てた様子でその声を制そうとしたが、まったく遅かった。ここは無礼講の宴会場…ある種の無法地帯である。
「お、旨そうじゃねぇか、ひと口もらうぜ」
「俺も俺も」
 声を聞いた酔っ払いたちがぞろぞろ集まり、口々に言いながらひょいと摘まんでは口に放り込んでいく。一斉に集まり一斉にいなくなってから器を見れば、全部まとめて一さく程度。改めて覗き込んだ赤髪も『あちゃー』という表情をしている。
「まァ…食いモンは刺身以外にも色々あるし、こンくらいありゃ充分楽しめらァな」
 器を差し出し瓶を傾け、注ぎながらもルムルの表情を眺めやれば、別段消沈した様子でもなく、やはりにこにこと。どうやら本当に『皆で』食べる算段だったらしく、むしろ喜んでもらえて満足げである。
「さっそくいただきます!」
 言って杯を差し上げて、惇のものと縁を合わせ。陽気な酒飲みはそれから程なく、さしつさされつ際限のない、呑兵衛の輪に取り込まれていく。

「惇さん、少し一緒しても良いかな?」
 ヴィリヤもグリモア猟兵のつく卓へ。男はそれに短く返事をすると、瓶を抱えてその口を差し向ける彼女に軽く頭を下げて杯を掲げて見せる。
「私もちょっと飲んじゃおうかな」
 腰を掛けて言う彼女に、今度は惇が瓶を受け取り、空の器を差し渡す。
「これで良いか?」
 注ぐ直前に確認すると、やや思案してから
「少しずつ飲めば大丈夫だと思うし」
 そうかと頷き、少しずつ控えめに注ぎ、それに自身の器を軽く当ててやった。
「今年は色々ありがとう!来年もよろしくね」
 掛けられた言葉に目を丸くして、しばらく目を泳がせてから。
「おォ、こちらこそ、色々世話ンなッたなァ。来年も懲りてなきゃ、また顔見せてくれや」
 歯を剥き、くしゃっと笑った。

「お団子はモッチモチで美味しいし、唐揚げも美味しいよね」
 惇にも勧めつつ、自身も美味しそうに食べる。唐揚げにはレモンをかけるかどうかという問題が若干浮上し、ヴィリヤをかける派筆頭とし、対する酔っ払いたちの中のかけない派との争いが発生しそうになる一幕もあったりはしたが、結局は『酒飲んでりゃどっちでもうまい』あるいは『酒がうまけりゃどっちでも良い』派閥に大部分が取り込まれてしまった。なお、取り込まれなかった者はつぶされた。
 ルムルも色んな卓に呼ばれたり飛び入ったり、刺身の礼と次々食べ物を勧められたりしながら入れ替わり立ち替わりに絡まれている。人を好む彼はしかしそれを苦ともせず、その話をやはりにこやかに聞き続けている。ヴィリヤがその杯に大吟醸を注ぐ頃には
「ぐらぐらしてきました…」
 言いつつも差し出している。大丈夫?と問うてみても楽しそうに頷いているし、注いだり注がれたりとまた楽しげで。そうしてまたしばらく、騒ぎに興じて静かに楽しみ、かと思えば一緒に歌ってみたり肩を組んで騒いだり、戸惑いながらも賑やかに――

「うう、動けなくなるほど飲んじゃった、もうだめ…」
 卓上に顎を乗せて、ぐでーとしながら飲み過ぎを悔いるような発言をするルムルの姿。近くではうつらうつらと舟を漕ぐヴィリヤ。飲み過ぎて寝ないようにと気を付けてはいたのだが、呑ませることに慣れた酒飲みも多く、なかなかに許容量を見誤ってしまったのかもしれない。戦線離脱ということで、少し静かな所に避けて、しばらくの休憩という所か。
「…けど、いい気分…」
 眼も半分閉じかけて夢見心地の青年は、やはり始めと同じように笑いながら、ぼんやりと呟いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シリン・カービン
【かんさつにっき】

お酒の席も久しぶりですね。
つまみを幾つか仕上げたら私も輪に入りましょう。

惇に注いでもらった吟醸酒を掲げ、乾杯。

「礼には及びません。ほんのお返しですよ」
ガーネットには以前護り札を頂いていますから。
この魚は…塩加減が良いですね。お酒が進みます。(くい)
それよりそのワイン…UDCアースのものですか。(くい)

今日ばかりは祭莉の悪ノリにも目をつぶりましょう。
ふふ、大人が廃ってはいけませんものね。(くい)

寝入った杏に毛布をかけつつ小太刀の悪戯は見ないフリ。
今日は無礼講ですからね。(くいくいー…)

酔いが限界を超えると感情の精霊が暴走します。
何が出るかはお任せで。
(惇に絡みます。役得も可♪)


木元・祭莉
【かんさつにっき】だよ!

やほー、メリークリスマスー♪
これに、いっぱい飾りを付けてね♪
(米俵製ブッシュドノエルをどんと置き)

くるりと回って、舞妓変身ー♪
ときどき芸子遊びを披露しながら、食べ物や飲み物配って、舞い踊るー。

えーと、こういうときは、クダを巻くモノなんだっけ?

よーよーにいちゃんねえちゃん、のみねえくいねえー。
おっといけねえよ、ことわるなんざあ、おとながすたるってもんだぜえー。
(棒読みする舞妓さん)

コダちゃんには、栄養偏らないように、そっとピーマン。
アンちゃんは……たまこといるから大丈夫だね(目を逸らす)。
惇兄ちゃんと姉ちゃんたちには、もみくちゃにされながらお酌ー。

あ、返盃は甘酒でねっ♪


木元・杏
【かんさつにっき】5人

頭には垂れうさ耳の白の帽子、手にはうさみみメイドさんのうさみん☆と、たまこ(飼い鶏)を抱いて
折角のサムライエンパイアの宴会、たまこも来たいって
(たまこは上機嫌)

乾杯は甘酒
ん、今年は色んな事、あった
この侍の世界は戦争が起こったり
でも、皆がいれば乗り越えられる
ふふ、頼もしいね(こくり、とひと口

うさみん☆はガーネットのお酌して、そのまままつりん舞妓さんと食べ物配りに回ってね?

たまこにはお米粒…たまこ?
きょろきょろ探せば、まつりんの後をちょこちょこついていってる
ん、仲良しさん

お肉とお団子串持って
ん、ケーキと…おせんべい
うとうとして、食べ物に囲まれる夢を見る

来年も皆といれたらいいな


鈍・小太刀
【かんさつにっき】
※アドリブ大歓迎!

メリクリー!ってもう飲んでるし
惇兄、ホントお酒好きだよね
飲んだくれて楽しそう
大人組はいいなー
でもこっちにだってサケはあるもんねーだ!
甘酒片手に塩鮭もぐもぐ
甘みと塩気、意外と合うかも?

ふふふ、ガーネットも欲しい?
だったらおつまみと交換ね♪

杏、ほっぺに生クリーム
ホント色々あったよね
杏達の村も無事で良かった
たまこもお疲れ様(人参お供え

(苦手なピーマン地雷に引っ掛かり、苦みにバタバタ)
まーつーりーんー?
こらー、待ちなさい!

シリンも楽しそう
ほらほら惇兄、鼻の下伸ばし過ぎー

もし酔い潰れて寝ちゃう人が居たら
仕方ないなと毛布を掛けて
ついでに墨で落書きを
『新年もヨロシクね!』


ガーネット・グレイローズ
【かんさつにっき】

お疲れ様ー。サムライエンパイアも今年色々あったし、今日はパーッと騒ぎたいね。

吞兵衛たちの輪に入って飲み会に。一度、エンパイアの酒を飲んでみたかったんだ。
私はワインを持ってきたよ。UDCアースのデパートで買ったんだ。
シリン、この間はありがとう。いい誕生日プレゼントだったよ。この魚のおつまみ、食べてみる?
小太刀の甘酒と塩鮭の組合わせ、試してみたいな。
始めは静かに飲んでいたが、酔いが回ったら一人称が変わる(私→あたし)。
走るまつりんを捕まえてわしゃわしゃしたり、うさみみメイドさんにお酌してもらったりして、すっかり上機嫌に。
「惇、こっちに来て付き合いなさい。美女二人を放っておく気?」



「やほー、メリークリスマスー♪」
「メリクリー!ってもう飲んでるし。惇兄、ホントお酒好きだよね」
 連れ立って訪れた面々の中から、木元・祭莉(オオカネコミミレッドメイド・f16554)と鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)が元気に挨拶を。聞いた男はそちらに目を向け、少し杯を掲げて見せると、少女は呆れて苦笑い。
 その間に祭莉が担いだ米俵をどんと下ろす。該当する世界の基準ということでいくらか小さくはあるが、それでも軽くはない俵を置き、言う。
「これに、いっぱい飾りを付けてね♪」
 オーナメントや折り紙の類、色とりどりの装飾品も用意され、来ている現地の子どもらの興味を引く。大人連中は酔っ払い、子ども同士で遊ぶぐらいしか楽しみが無かった所にこういう物が現れて、彼らは目を輝かせ始めた。
 平均的にクリスマスといえば、もみの木への飾りつけ、いわゆるクリスマスツリーがメジャーであろうが、さすがに切って持ってくるわけにも行かないし、お手軽に――米一俵の運搬はそうお手軽でもないが――用意できるものとして持ち込まれたのがこれ、丸太をモチーフとしたクリスマスのケーキ代表・ブッシュドノエル…に似せたものである。遊びにもなるし雰囲気も出せるし、現地で用意もしやすいものだ。習慣として根付かせるには程よい落としどころだろう。
 楽しむ皆に頷いて、祭莉は次の準備に移る。くるりと回って早着替え、絢爛洒脱な舞妓の衣装。人々の間を踊りまわって、宴席中を盛り上げる。
「よーよーにいちゃんねえちゃん、のみねえくいねえー。おっといけねえよ、ことわるなんざあ、おとながすたるってもんだぜえー」
 にこにこしながら瓶をその手に、酔っ払いどもへ酒を注ぐ。わっと賑わうその席上で、断る者はいなさそうだ。幾人かはいたが、断っても周囲から飲まされていた。結果誰も断らなかった。そこを辞すれば次の席へ、呼ばれても呼ばれなくても祭莉は忙しげに飛び回っては配膳給仕を楽しんでいた。
「うさみん☆はまつりん舞妓さんと食べ物配りに回ってね?」
 木元・杏(たれあん・f16565)に頼まれた彼女の相棒のうさみみメイドは、ひとつ頷くと少女の手元より飛び降りて、賑わいの中へ駆けて行った。跳ねるように進むその人形も、いくらか浮かれているように見えて、少女は微笑ましげに目を細める。その彼女自身も垂れた兎耳の飾りのついた白い帽子を被り、可愛らしく暖かそうな冬の装いである。
「たまこにはお米粒…たまこ?」
 相棒と一緒に抱いていたたまこ――彼女の飼う鶏も一緒に連れて来ていたのだが、その姿が今はない。きょろきょろと探してみれば、先行したうさみみメイドの後を追うようにちょこちょこと駆けている。最終的には祭莉のもとで合流することになるだろう。そして少年は、どうもこの鶏と、相性が良くないらしいが…
「ん、仲良しさん」
 きっとたまこは、彼に会いたいのだろう。好きなもの同士が仲良いことは、杏にとっては嬉しいことである。

「お疲れ様ー。サムライエンパイアも今年色々あったし、今日はパーッと騒ぎたいね」
 ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は早々に腰を下ろし、既にだいぶ出来上がっている周囲に追いつかんと臨戦態勢である。
「一度、エンパイアの酒を飲んでみたかったんだ」
 言って自身は卓上にワインのボトルを差し上げて、呑兵衛たちへの土産とし。あまり見慣れない連中は興味深そうにぐるりを囲んで眺め回し、しばらく思案をしていたが
「酒なんだろ?じゃあ飲もうぜ」
 というとても短絡的な結論に至って次々と飲み始めた。代わりにガーネットにも自分らの飲む上等な酒を次々に注ぎ、勢いよく酔いを回してやる。しかし彼女はけろっとしており、周囲に数人飲ませて飲みすぎひっくり返らせ。
「なんだ、だらしない」

 という間に、他の仲間たちもそれぞれの諸々の準備が片付いたらしく、ちょうど空席となったガーネットのそばへと集まり出してきた。
「お酒の席も久しぶりですね」
 つまみの準備をしていたシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)が、料理とともに座へと加わる頃には、居座る猟兵は既に『トラ』と化していた。陽気に笑って迎え入れ、ついでに他所へも呼びかける。
「惇、こっちに来て付き合いなさい。美女二人を放っておく気?」
 手を振り大声で呼びつけられると、当のグリモア猟兵が立ち上がり、向かってきた。仏頂面でやってきて、言う。
「放ッておけねェから向こォにいたンじゃねェか」
 何事か意味の通じない言葉に、ガーネットもシリンも答えあぐねた所に、男は補足する。
「美女ひとり、美女ふたり、だろ」
 来た方向でうとうとする猟兵と、すぐそばの猟兵・シリンを示し…自身を指さして見せるガーネットへは
「へッ」
 と笑い、グーで殴られた。

 そうこうする間に未成年組も合流し、いつもの仲間で寄り集まる席となる。祭莉の顔色が少し曇っているのは気のせいだろう。それとそばの鶏の身じろぎのたびに肩を跳ねさせているのもきっと気のせいだろう。3人は甘酒、先に陣取った成人組は酒を手に、全体では幾度目かの、彼らが揃っては最初の乾杯を済ませ。
「ん、今年は色んな事、あった」
 甘酒をすすりながら、杏が呟くように言う。目の前には甘いお菓子やケーキを並べて、ここは正しくクリスマスのように。そんな彼女の頬についたクリームを指で拭ってやりながら、小太刀も微笑み同意する。
「ホント色々あったよね。杏達の村も無事で良かった」
 この世界においては、大規模な戦争もあった。故郷の危機もあった。全てが無事であることは、一種奇跡的とも言えるだろう。杏はその事実を噛み締め、しみじみと頷く。
「皆がいれば乗り越えられる」
 奇跡的だけど、奇跡ではない。皆で力を合わせて頑張ったからこそ得られた現実だ。それは尊くも、再現性はある。皆がいれば、なんだって、何度だって。

 これからも続くべき仲間たちとの交流に思いを馳せる少女たちの感慨を、騒ぐ大人が邪魔をする。すっかり出来上がっているガーネットや、呼ばれて捕まったグリモア酔漢の笑い声である。
「大人組はいいなー」
 小太刀は浮かれる大人たちを横目に息を吐く。
「でもこっちにだってサケはあるもんねーだ!」
 そう言いつつ、手元の『サケ』――塩鮭に箸を伸ばす。洒落のつもりの食事ではあるが、なかなかどうして甘酒と合うらしく、小太刀は目を見開いて舌鼓。そんな様子にガーネットも興味を示し、試してみようと乗り出すと。
「ふふふ、ガーネットも欲しい? だったらおつまみと交換ね♪」
 すぐさま渡されたつまみの皿に、それならよしと塩鮭を差し出し、お互い同士で口に運ぶと、なるほど美味しく頷きあって。
「この魚は…塩加減が良いですね。お酒が進みます」
 つまみの作り手・シリンも食べて、満足そうにお酒を含み。寄った所で思い出したように、ガーネットから話を振る。
「シリン、この間はありがとう。いい誕生日プレゼントだったよ」
「礼には及びません。ほんのお返しですよ。それより…」
 涼しく笑ったそのついで、凝視する目のその先は、ガーネットの飲む杯の中。
「そのワイン…UDCアースのものですか」
 飲み手の名前に似合わしい、真赤な美酒に興味を示せば、それを瓶から分け与え、呷る様子を眺めやる。旨そうに飲むその顔は――完全に目が据わっていた。

 惇が席を立とうとすると、腕を引かれて座らせられる。見ればシリンのとろんとした笑顔。普段のクールな雰囲気とはまた違い、上気した肌色は艶っぽくも見えるが、そういうニュアンスは一切ない。腕を抱き込まれ密着しつつも、そういうアレでは、なさそうだ。
「惇、飲み足りないようですね」
 ほら来た。完全に逃げ遅れたらしい。逡巡する間にもう一人
「あたしの酒が飲めないなんて言わないわよね」
 身長の差もありぶら下がるように、肩を組まれて捕まった。そうしてガーネットからも物理的に絡まれながら、諦めて腰を据え、息を吐きながら男は注がれる酒を眺めていた。
「ほらほら惇兄、鼻の下伸ばし過ぎー」
 いつの間にか席を外していた小太刀が再び席につきながら、にやにや笑ってからかってやると、仏頂面で反論する。
「違ェわ、むしろ厄介だわ」
 体重を預かる上半身を頬杖で支えながら、やけっぱち気味に酒を飲む。そういえばと先の用事の行き先を尋ねると、さらに意地悪く笑った小太刀が、離れた卓を指さした。そこは他の猟兵が寝るテーブルで、突っ伏して横を向いた仮面の男が毛布を掛けられ安らかに寝息を立てている。訝しがってよーく見ると…
『新年もヨロシクね!』
 と、その頬に書いてあるのが見えた。筆を掲げてにっと笑って、小太刀がアピールして見せる。まあ、無礼講と言うことだし、このくらいなら構うまい。やり切った感で満足げに、食べかけの塩鮭を口に運んだ所で。
「!?」
 予想外に感知された、当該料理に似合わないその苦みは、ピーマンのものである。小太刀の苦手とするそれは、小太刀に深刻なダメージを与え、少女をもんどりうって苦しませる。しばらくしてから涙目で立ち上がると、肩を震わせ低い声で、唸るようにその名前を呼んだ。
「まーつーりーんー?」
 先ほどの小太刀のにやにや笑顔をそのままに、やや遠巻きに様子をうかがっていた祭莉の仕業である。露見したかと思ったら、すぐさま踵を返し、少年は走り出した。
「栄養偏らないようにだよー♪」
「こらー、待ちなさい!」
 伝えられた理由が本当か嘘かは関係ない。仕置きをせねば気がすまないと、小太刀は彼を追いかけ回す。楽しい鬼ごっこに外の子どもらも加わって、より賑やかに。

 大人も子どもも大賑わいの大騒ぎの中、いつしか杏はすやすやと眠っていた。いつの間にやら夜も更け、眠くなるのも無理はない。
「来年も皆といれたらいいな…」
 どんな楽しい夢を見ているのか、その寝顔はとても安らかに、穏やかな微笑を浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月31日


挿絵イラスト