真白な雪が降り積もる不思議の国の広場。
此処はアリスラビリンス。赤と黒のトランプスートに彩られた街。
愉快な仲間たちが住む穏やかな冬の街だ。
煉瓦の道から続く街の中央広場には大きな噴水があった。けれども寒い時期の今、噴水はかちこちに凍ってしまう。
噴水は街のシンボルだけれど、冬の間は少し寂しい。
それなので愉快な仲間たちは広場にたくさんの火を灯し、森から樅の樹を切ってきて噴水の中央に飾ることにした。
林檎やキャンディケーン、ぴかぴか光るボール。
ハートにダイヤ、クラブにスペードなどの街の特色でもあるスートの飾りがあしらわれた様々なランプ。色鮮やかに飾り付けられた樹の広場にはいつしか賑わい、至る所に灯や燈火が点されていく。
そしていつからか広場には愉快なお店が出るようになった。小人の靴屋、猫のふわふわ襟巻き屋、妖精のお菓子屋に黒兎の小物屋など店は様々。
やがて、誰が始めたのか――。
飾り付けられた樹と燈火の傍には、誰かへの贈り物が置かれるようになった。
「それでさ、そこのクリスマスって面白いんだ。プレゼントを一個持っていったら、樹の傍に置いてあるプレゼントを一個だけ持って帰っていいんだって!」
メグメル・チェスナット(渡り兎鳥・f21572)はその不思議の国にはそういったルールと楽しみ方があるのだと語った。
つまりはプレゼント交換。
けれども自分の贈り物が誰に貰われるのか、自分が貰えるのが誰からの贈り物であるかは行ってみなければわからない。それが面白いのだと話すメグメルはわくわくした様子で、自分が用意したプレゼントボックスを皆に見せる。
「俺も贈り物をひとつ用意してみたんだ。中身はまだヒミツ!」
代わりに誰から何が貰えるのか。
それが楽しみでならないと語ったメグメルは仲間達を誘う。
「プレゼント交換だけじゃなくて、雪の噴水広場では愉快な仲間たちのお店もやってるんだ。それから、広場に行くとお菓子やあったかい飲み物が貰えるぜ。ジンジャークッキーとかシュトーレンとか、紅茶にホットチョコもあったかな」
小人や妖精、二足歩行の猫や兎などの愉快な仲間たちは猟兵を歓迎してくれる。
好意に甘えて飲み物やお菓子を貰うもよし。
どのプレゼントを貰うか悩むことを楽しんでもよし。
不思議の国に灯されたあたたかな燈の中で、君が贈り、贈られるものは――?
犬塚ひなこ
今回の世界は『アリスラビリンス』
時刻は宵~夜。火が点ったランプや燃える薪の炉、彩られた樅の樹がある広場での一幕を描くシナリオとなります。
比較的さくさくとリプレイを執筆していく予定です。普段よりも早めの締切となる可能性がございます。
●ご注意
こちらは『おひとり様での参加推奨』です。
持ち寄ったプレゼントを参加者様同士でランダムに交換するシナリオとなります。
描写は基本的におひとりずつ、個別となります。
シナリオの特性上、皆様のリプレイ欄に他の参加者様のお名前などが入ることがあります。ご了承の上でご参加ください。
●できること
プレゼント交換が出来ます。
他にも愉快な仲間たちと遊ぶ、配られたお菓子を楽しむ、様々なお店を見て回る、樹を飾り付けする、街に点った火をぼんやりと見て過ごすなど何でも出来ます。普通に店舗で売っていそうなものなら大体揃っています。
●プレイングについて
必ず『自分が持ってきたプレゼント』についての記述をお願いします。
プレゼント交換は猟兵同士でのランダム交換となります。偶然の縁をお楽しみください。持ってきて頂いたプレゼントが他の参加者様の元へ行くことになりますので、詳しければ詳しいほど他の方のところでその描写が光ります。
【例1】ギンガムチェックのマフラー。赤い実のピンブローチが飾られている。
【例2】赤いリボンが掛けられた緑の箱に入った手作りお菓子。白のシュガーと赤の実が飾られた兎型のカップケーキ、真っ赤な林檎のステンドグラスクッキー、トランプ型のチョコレート菓子の詰め合わせ。
※もっと長くても大丈夫です。
●その他
シナリオ内で登場したアイテム発行は行なえません。
フレーバーとして受け取ったとするだけでもよし、リプレイ完成後に個人的に作成するのもよし。ご自由にどうぞ!
第1章 日常
『アリスラビリンスでクリスマス』
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POW : 愉快な仲間達と一緒にどんちゃん騒ぎでパーティーを楽しむ
SPD : 彷徨っているアリスを探して、パーティー会場に誘ってみる
WIZ : 恋人や友人たちと一緒に、愉快な仲間達のパーティーを楽しむ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
テイラー・フィードラ
旅の合間での休息がてらだが、随分と面白そうな祭りだな。ひとまずこの往来では面倒事が起きぬよう、フォルティより降り、轡につなげた手綱を引きつつ歩いて見物するか。
ふむ……贈物を一つ、交換する形となるのか。しかし、このような男が選んだ物でも大丈夫なのか?
ひとまず何かとやかく言われる前に先に贈物を置いておくことにするか。そうだな……かつてあった国で販売された護符でよいか。
さて、あとはそうだな。紅茶でも頂かせてもらおうか。体も幾分か冷え込んだのだ。他にも何か温かいもので見つけられれば幸いであるが……。
【贈物】旅路や道中の安全を守るとされた護符。消費することで、魔を寄せ付けぬ簡易的な結界を張ることが可能。
●あたたかな心地を
雪が降る街に灯された火。
煌々と燃える炎の色は白い雪を綺羅びやかに飾っているように見えた。空気は冷たいが寒々しさはなく、とても穏やかな雰囲気が満ちている。
此処に立ち寄ったのは旅の合間。
テイラーは街を暫しゆっくりと見て回ってみた後、白馬から降りた。
「フォルティ、ご苦労だったな」
鬣に手を添えたテイラーが白馬を労えば軽い嘶きが返ってくる。そうしてテイラーは轡につなげた手綱を引き、フォルティと共に広場へと踏み出した。
其処には様々な愉快な仲間たちがいた。
金槌を持った小人。
縞柄の尻尾を揺らして歩く二足歩行の猫。
雪のような翅を羽ばたかせて飛んでいく妖精。
「ふむ、愛らしいものが多いのだな」
彼らの様相は物珍しく、その姿を興味深く見遣ったテイラーは往来を眺めた。彼の後を大人しく付いてくるフォルティもまた周囲を見ているようだ。
そして、見えてきたのは凍った噴水。
その中央には森から切り出されてきた樹が飾られている。
更に樹の周りには様々な贈り物が置かれていた。妖精や小人が時折、忙しなく動いているのはプレゼントボックスを其処へ綺麗に並べているからだ。
暫し様子を見ていると、訪れた者が妖精に贈り物を渡していた。
すると妖精は代わりに樹の下の箱を手に取り、その人へ別の贈り物を返す。
「……贈物を一つ、交換する形となるのか」
この広場のプレゼント交換の仕組みを理解したテイラーは暫し考え込む。綺麗に飾られた箱は子供や女性が好みそうな装飾で彩られている。
このような男――即ち、自分が選んだ物でも大丈夫なのだろうか。
生真面目に考えてしまうのもテイラーの性質。されど何もしないのも此処に訪れた甲斐がないというもの。
「ひとまずは、そうだな……」
先に贈物を置いておけば良いのだろう。テイラーが取り出したのはかつてあった国で販売されていた護符。
箱にでも入れたほうが良いのかと彼が辺りを見渡した時、妖精がふわふわと近寄ってきた。これをどうぞ、と渡されたのは包装用の綺麗な赤い紙。
「ああ、これに包めば良いのか?」
テイラーが妖精に問うと、彼女は小さな翅をはためかせて「てつだってあげる!」というように胸を張った。
そうして暫く後。テイラーの贈り物は無事にラッピングされて樹の側に置かれた。
代わりに妖精が持ってきたのは温かな紅茶。
それから、先程の贈り物の代わりとなる品物だ。
「これは――」
渡されたプレゼントボックスを開いた彼は中に入っていたものをみて双眸を細める。其処にあったのは淡い青色のふかふかマフラー。同じ色のふわふわミトン。しかも白いボンボンつきの可愛らしいものだ。
「フォルティにでも巻いて被せてやるべきか? それとも私が使うか……」
冬らしい贈り物だが自分には似合うだろうか。どう思う、と戯れに白馬に問いかけたテイラーは妖精から貰った紅茶のカップを傾ける。
冷えた身体に染み込むような熱。
この贈り物の防寒具も誰かに温かさを宿したいという思いから選ばれたのかもしれない。そう思うと何故だか不思議な気持ちがテイラーの裡に巡っていった。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
〇用意するプレゼント
クリスマスカラーのラッピングが施された、「今年大ヒットとなったゲームソフトの詰め合わせ」(ご丁寧に1本1本に「本人による評価が記されたメモ」が添えられている)
――さて、空いた時間を利用して、マーケットを見て回りましょうかね(ホットチョコレートとお菓子を手に)。
――あぁ、そうだ、偶然迷い込んだ「アリス」を見かけたなら、遠慮なく引きずり込んでやりましょうか(もしその国に「扉」があるのであれば護衛とか引き受けましょう)。何なら、UCで出てきたアイテムもプレゼントしましょうか。
※アドリブ歓迎
●護符と林檎とホットチョコレート
白兎が跳ね、二足歩行の猫が駆けていく。
クリスマスの雰囲気で賑わう不思議の国の広場。揺らめく火は白い雪を照らし、反射した橙の彩があたたかな色となっている。
シャルロッテは噴水広場の中央に据えられた樹を見上げた。
「これはなかなか綺麗ですね」
綺羅びやかに飾り付けられたオーナメントを眺め、シャルロッテは緑の双眸を緩める。既に彼女の贈り物はしっかりと用意できていた。
シャルロッテは、ここに置けば良いのですね、と近くに飛んでいた妖精に尋ねる。すると妖精はこくこくと頷き、プレゼントを置く代わりに別の贈り物を持っていけばよいのだと説明してくれた。
わかりました、と答えたシャルロッテはクリスマスカラーのラッピングが施された箱を樹の側に置いた。
その中身はゲームソフトの詰め合わせ。
冷静沈着かつ無慈悲なバトルゲーマーとして、そして一人のプレイヤーとしての嘘偽りない正当な評価つきという豪華なプレゼントだ。
これが誰に貰われることになるのか楽しみだ。けれども自分が貰う物を選ぶのは後にしようと考え、シャルロッテは広場で開かれているマーケットへ向かっていった。
「色々売ってますが、素朴な感じのものが多いですね」
手作りの木靴に手編みの帽子。
魔石で彩られた装飾品や、妖精のお菓子まで様々。ゆっくりと見て回っていると、この国に住む白兎からホットチョコレートとミントクッキーを手渡された。シャルロッテはそれらを遠慮なくいただくことに決め、何処か座れる所はないかと探す。
そうして片隅のベンチに座ってクッキーを食べていると、ふと隣に誰かが座った。
「ねえ、あなたもお買い物にきたのかしら」
「はい。ええと……『アリス』?」
声を掛けてきた子がエプロンドレスを着た少女だったことから、シャルロッテは問いかけてみる。ええ、と頷いた少女は自分がアリスと呼ばれているのだと頷いた。
「丁度良かったです。良ければ贈り物を選んで貰えませんか」
「あのプレゼント交換会の? まだ選んでいないのなら喜んでお手伝いするわ!」
シャルロッテがそう願うと、アリスの少女は明るく笑む。
そうしてプレゼントボックスの山へと向かった二人は、赤い包み紙の贈り物を選ぶことにした。何でしょうかね、と期待を抱いたシャルロッテは紙をひらく。
すると、其処には――。
「護符ですか。なるほど、RPGのアイテムみたいですね」
それは旅路や道中の安全を守るとされる護符。使い捨てではあるが、掲げて消費することで魔を寄せ付けぬ簡易結界を張ることが可能な代物らしい。
「素敵! 良いものを貰えて羨ましいわ」
ふふ、と微笑んだアリスはシャルロッテへの贈り物を微笑ましげに見つめた。その様子を見たシャルロッテはふと思い立ち、自らのユーベルコードを発動させる。
「――さて、何が出てくるでしょうか」
「わあ、林檎?」
出てきた箱から丸い林檎が飛び出してきたことでアリスはきょとんとした。
「パワーアップアイテム的なあれですね。はい、どうぞ」
「良いのかしら。ありがとう!」
シャルロッテがそれを手渡すと彼女は嬉しそうに林檎を受け取る。そうして重なった少女達の微笑みはとても穏やかで――暫し、和やかなひとときが流れていった。
大成功
🔵🔵🔵
エレクメトール・ナザーリフ
プレゼント交換ということで
かなり悩みました
アサルトライフルとか銃器だと
小さな女の子に渡ってしまう事も考えたので
私は大喜びしますが…思い切って銃器もアリだった?ぐぬぬ
お菓子を食べながらどんちゃん騒ぎしつつ
誰かとケーキの食べ比べをしたり
跳躍は得意なので樹の飾り付けを手伝ったり
火をぼんやり眺めながら一年を振り返ってみます
今年は記憶の手掛かりを得ました
そう言えば手紙繋がりで便箋を買ってみても良いかもしれませんね
お店でも見て回りましょうか
●プレゼント
舐める度に味が変わる虹色をした糖分多めのキャンディーの瓶詰セット
蓋には黒猫のぬいぐるみが飾られている
メッセージカードに「銃の方が良かったですか」と書いておく
●贈り物と手紙
彩りに溢れたツリーの下。
たくさんのプレゼントボックスが灯火の光を受けて静かに煌めいている。
揺れる炎が白い雪を照らす中で、エレクメトールは樹の下に透明な瓶を置く。その中には虹色のキャンディが詰まっており、光の加減で様々な色に輝いていた。
「これでよし、ですね」
エレクメトールはこれを用意するまでに大いに悩んでいた。
行き先が分からないプレゼント交換となると誰に自分の贈り物が当たるかも未知数。自分が貰ったら嬉しいものや欲しいものを選ぶのが手軽で簡単だったのだが、そうなるとアサルトライフルや銃器になってしまう。
無論それでも良いが、もし武器がちいさな女の子に渡ってしまったら。
流石にエレクメトールもそれは拙いと感じたので、あの選択になった。しかし、ちらりと振り返った樹の下にはロッドや剣などの贈り物も置かれている。
「……思い切って銃器もアリだった?」
ぐぬぬ、と唸るエレクメトールは後ろ髪を引かれる思いを感じた。それでもきっとあの贈り物は誰か相応しい人の元に届くはず。そう信じることにした。
そして、彼女が代わりに得た贈り物は少し不思議なもの。
「ゲームソフト……?」
クリスマスの色合いで彩られた箱の中には様々な『今年大ヒットとなったゲームソフトの詰め合わせ』が入っていた。しかも一本一本に送り主である人物による評価が記されたメモが添えられている。
骨太アクションゲーム。システムと操作性が◎。
ザッピング形式のシミュレーション。各キャラクターのストーリーが良い。
などなど、とても丁寧だ。
きっとこれも心の籠ったものなのだろうと感じながら、エレクメトールは広場の賑わいに踏み出してゆく。
すると白い雪色の翅を持った妖精が困った様子で右往左往している姿が見えた。
「どうかしたんですか?」
不思議に思ったエレクメトールが問いかけてみると、妖精はオーナメントが重くて天辺まで飛べないのだと示す。
見れば、妖精が持っている林檎型の飾りはそのちいさな体に対して大きすぎる。
「なるほど、あの上の方に飾ればいいんですね」
任せてください、と告げたエレクメトールは林檎飾りを妖精から受け取った。だいじょうぶ? と首を傾げる妖精の横で彼女は地面を踏み締める。
そして――。
さく、という雪を蹴る音と共に跳躍した。其処から腕を伸ばし、木の枝へと林檎のオーナメントを引っ掛ける。其処から軽く宙で回転してみせてからの着地。
ぱちぱちとちいさな拍手が妖精から送られ、エレクメトールは軽く胸を張った。
それから妖精と別れた彼女は別の住人と出会う。
「お菓子をどうぞ!」
「ケーキですか? ありがとうございます」
シルクハットを被った白兎から渡されたのはジンジャークッキーと綺麗に切り分けられたシュトーレン。ケーキに振りかけられた粉砂糖は雪のようで、飾られたチェリーは燈火の色。まるでこの街を模しているかのようだ。
エレクメトールは通り掛かった小人が持っていたブッシュ・ド・ノエルにも興味を示し、それも交換しませんか、と呼び掛けてみる。
小人は快く応じ、エレクメトールはチョコクリームの仄かな甘さに舌鼓を売った。
其処に妖精が紅茶を運んでくる。
「なかなかのお味ですね。身体も温まってきた気がします」
広場のベンチに腰掛けたエレクメトールは湯気の立つ紅茶を頂きながら、ぼんやりと街の景色を眺めていく。
火に照らされた樹には先程のオーナメントも見えた。妖精達がふわふわと飛ぶ緑の樹の周りはとても賑やかで、見ているだけでも快い。
揺れる燈火。ふわりと降る雪。
それらを瞳に映したエレクメトールはこれまでのことを振り返ってみる。
今年は少しだけ、記憶の手掛かりを得た。
イオという名と差出人不明の誰か。
記憶の中にだけ残る手紙を思い返したエレクメトールは白兎がやっている広場の店へと、何気なしに目を向けた。
其処には雪模様やトランプ模様の封筒や便箋があった。
「手紙繋がりでああいうものを買ってみても良いかもしれませんね」
まだ宛先は決まっていないが――それでも、こういうのは気分が大事だ。立ち上がったエレクメトールはゆっくりと歩いていく。
雪の上に刻まれていく足跡。
それはきっと、あらたな未来に続く確かな一歩だ。
大成功
🔵🔵🔵
渦雷・ユキテル
広場のお店を軽く眺めてから樹のもとへ
わ、面白そうですね、プレゼント交換!
あたしにとっての幸せは甘くて可愛いもの
あなたの幸せはどんな形?
どのプレゼントを貰いましょ
目を輝かせて手に取って
☆プレゼント☆
お気に入りのお店で見つけた缶入りクッキー
手のひらサイズのブリキ缶、
エンボス加工のお花で彩られた蓋を開ければ
ルビーを乗せたようなジャムクッキー
ころんと可愛いココナッツスノーボール
チェック柄のアイスボックスは定番を楽しみたい方に
そしてアラザンがきらきら光る、星のアイシングクッキー
良いクリスマスを!
※反応:きっと何でも大喜び。チョイスを知ること自体楽しみです
特に好き:花、星、お菓子、書物、可愛い物、奇麗な物
●甘い幸せのかたち
広場に点された火の彩はあたたかい。
トランプスート型のランプは赤と黒。その中に宿る灯は橙色。
そして、地面に薄っすらと積もるのは白い雪。薄い青を宿す凍った噴水の中央には緑の樹と、飾り付けられた鮮やかなオーナメントの数々が見える。
様々な色が交わる不思議の国。
ユキテルは周囲の色彩を眺め、賑やかな広場の店々を見てまわった。
この国の住人である白兎が一枚ずつ描いたという雪柄の便箋や封筒を売る店。小人がいちから作ったという木彫りの靴屋。
妖精が魔法を込めて作ったクッキーやケーキが並ぶ露店。
魔石をふんだんに使った装飾品が燦めくアクセサリー店など。どれも見ているだけで楽しく、愉快な仲間たちの賑やかな声も快い。
ユキテルは背の後ろで両手を軽く組み、軽やかな足取りで広場を巡る。
そうして辿り着いたのは中央の噴水。
妖精や小人達によって綺麗に飾り付けられた樹の下には贈り物の箱や袋、リボンで飾られた品々が集まっていた。
「面白そうですね、プレゼント交換!」
綺羅びやかなラッピングが施されたもの。香水の甘い香りがする箱もあれば、シンプルにリボンだけで飾られた武器の類などもある。
贈り物を置く前に先ずは吟味。
ユキテルは浮き立つような気持ちを抱き、樹の下に視線を廻らせてゆく。
自分にとっての幸せは甘くて可愛いもの。
きっとこの場所にプレゼントを置いていった人々も幸せのかたちを込めたはず。知らない誰かへ、と考えて贈る品はきっと尊いものだ。
軽く頭を押さえたユキテルはゆっくりと息を吐いてから顔をあげる。
「どのプレゼントが良いか迷っちゃいますね。……わ、可愛い!」
迷いながらも目に留まったのは或る小瓶。
目を輝かせたユキテルが手に取ったのは、蓋の部分に黒猫のぬいぐるみが飾られたキャンディボトル。
その黒猫がつぶらな瞳でユキテルを見つめているように思えたのと、瓶の中めいっぱいに詰め込まれた虹色のキャンディが色鮮やかだったからだ。
「メッセージカードもついてますね。ええと、なになにー?」
――『銃の方が良かったですか』
何とも不思議なメッセージだったが、きっとこの送り主は銃とキャンディのどちらを贈り物にするか悩んだのだろう。それも或る意味で悪くなかったかも、とユキテルはちいさく笑んだ。
黒猫のぬいぐるみを抱え、瓶の蓋を開けてみる。
虹色の飴をひとつ口に放り込んでみると様々な味が広がっていった。まるでこの国に溢れる色彩の味を感じているようだと思い、ユキテルは双眸を緩やかに細める。
次はユキテルが贈り物を置く番。
「あの場所にこっそり置いたら、縁の繋がった誰かが見つけてくれるでしょう」
控えめに、あまり目立たない場所に置こうと決めたのは手のひらサイズのブリキ缶。それはユキテルお気に入りの店で見つけたクッキーの詰め合わせだ。
先程のキャンディボトルにカードが付いていたように自分も何か書いてみよう。
そう思い至ったユキテルは、広場にあった手紙屋でちいさなメッセージカードを購入した。店先の羽根ペンを借りてユキテルが記した文字は――。
『良いクリスマスを!』
たったそれだけの言葉でも気持ちを込めて。
そうして、ユキテルはカードを添えた缶をプレゼントの山の片隅に置いた。花の柄で彩られた箱はひっそりと、けれども確かに誰かへの贈り物のひとつとなる。
どうか、喜んでくれる人の元に贈られますように。
ユキテルはそっと願い、再び広場の散策に出る。
来たときと違うのは片手に虹色キャンディの瓶があり、腕に黒猫のぬいぐるみが抱えられていること。
「思いがけずお散歩仲間が増えましたねー」
せっかくだからこの子に名前をつけてみようか、否か。
それを考えるのもまた楽しいことだと感じながら、ユキテルは雪と灯に彩られた不思議の国を逍遥していく。
行く先にはまだ覗いていない店々が見えた。
見れば、黒兎がぱたぱたと手を振って「ホットチョコはいかが?」と呼んでいる。
今日という少しだけ特別な日。
此処でどんな出会いが巡り、どのような言葉を交わすことが出来るのか。ユキテルは期待を抱きながら黒兎に手を振り返し、楽しげに歩を進めていった。
大成功
🔵🔵🔵
荻原・志桜
のんびりあちこち見ながら目的地へ
すれ違う人たちの楽し気な様子を目にすれば
自分も楽しくなって鼻歌交じりに
到着したら桜色のリボンで結んだプレゼントを樹の傍に置く
わたしが誰かに贈るのは『スノードーム』
丸い球体の中には小さな家と飾り付けられたツリー
だけど舞うのは白雪だけじゃなくて桜色も一緒に空から降るの
ふふ、実はサクラミラージュをイメージしてるんだ
キラキラと輝く雪と花弁が、とても幻想的な風景だったから
貰ってくれる誰かにも見てほしかったの
もし見たことがあるなら、ぜひもう一度思い出してほしい
さて、わたしも1つ貰っちゃお
んー…決めた!
手にしたプレゼントを大事に抱えて
選んだものには誰の想いが詰まってるんだろう
●Snow Blossom
ランプに灯った火が白い雪の世界を仄かに照らしている。
冬の風が吹き抜け、ふと空を振り仰ぐ。天上からひらひらと舞い落ちてくる淡雪はまるで桜の花が散っているようで、思わず口許が緩んだ。
「ふふ、雪が火の色になって綺麗」
志桜は落ちてきた雪の欠片に手を伸ばす。
手袋越しに幽かな冷たさを感じたが、このくらいなら心地好い感触だ。
すぐにとけて消えてしまう雪のひとひら。儚い姿も桜に似ているかも、と感じながら志桜は不思議の国の広場へと踏み出す。
トランプスートで飾られた街並みは雪に彩られて美しい。
揺れるランプの燈火は行く先を照らしてくれている。その灯を辿ってのんびりと歩くと、様々なものが見えてきた。
急げ急げ、と懐中時計を持って駆けていく白い兎を目で追えば、自分よりも大きなオーナメントを抱えてふわふわと飛ぶ愛らしい妖精が擦れ違っていく。
菓子屋前にいた二足歩行の猫がマグに入った紅茶をご馳走してくれたり、シュトーレンの試食をさせてくれたりと、歩くだけで色んな楽しいことが起こっていった。
「んー……あったかい」
ミルクと砂糖をたっぷりとかした紅茶を一口。
少し冷えていた身体が温まり、志桜はほっと息をつく。白く染まった吐息が空に昇っていく様も此処では何だか幻想的だ。
ありがとう、おいしかったよ、と菓子屋の兎に礼を告げた志桜はマグを返し、鼻歌交じりに広場をゆるりと巡っていった。
スート型のアクセサリーに魔法石をあしらったオルゴール。
この国の愉快な仲間たちが作った品々が露店に並べられているのも賑やかで良い。
そうして露店を楽しんだ後、志桜は贈り物が積まれた樹へと向かった。
凍った噴水の周りには誰かから誰かへと贈られるプレゼントがたくさんある。どれも思いの籠もったものだと思うと、全部が素敵なものに見えた。
志桜は桜色のリボンで結んだ贈り物の箱をそのひとつに加えて貰おうと考えていた。淡い色で彩られた箱の中に入っているのは、スノードーム。
白雪と一緒に桜が舞う櫻幻想仕様だ。
あのキラキラと輝く雪と花弁がとても素敵な風景だったから、貰ってくれる誰かにも見てほしかった。もしその人があの景色を見たことがあるなら、ぜひもう一度思い出してほしい。そんな思いが宿っている。
「この辺がいいかな。あんまり目立つところじゃなくても……あれ?」
そしてそっと箱を置いた先。
其処にひっそりと飾られていた缶が目に留まった。手のひら程のちいさな缶にはエンボス加工の花が可愛らしく刻まれている。
ひとつだけ持って帰って良いんだよね、と確かめた志桜は缶を手に取った。
「決めた! これにしてみよう」
ちいさなものにこそ幸せがいっぱい詰まっている。
そんな風に考えた志桜は箱を大切に抱えた。何処か落ち着ける場所は、と探して見つけたのは広場の片隅のベンチ。
ふわりと舞い落ちてくる雪の中、志桜はわくわくしながら缶をひらいてみる。
「わぁ……クッキーだ!」
中身は焼き菓子の詰め合わせだった。
ルビーを乗せたようなジャムクッキー。ころんと可愛いココナッツスノーボールに、チェック柄のアイスボックスクッキー。アラザンがきらきら光る、星のアイシングクッキーまで様々。
それから缶には『良いクリスマスを!』というメッセージカードが付いていた。
雪のように真っ白なカード。淡い結晶柄の上に躍る文字には気持ちが籠もっている。にひひ、と嬉しげに笑った志桜は暫しクッキーを眺めていた。
「紅茶と一緒に頂くのも良さそう。でも、ちょっと勿体ないかなぁ」
だってこんなに可愛いから。
だからとっておきのお菓子にしようと決め、志桜はこれを贈り物に選んだ人のことを考える。自分と同じで可愛くて奇麗なものが好きな人なのだろうか。
知らない誰かへ、と考えて贈られたのは甘い幸せ。
自分が贈ったものもこうして誰かの元に届くと思うと不思議な気持ちが巡る。
ほんの少しでも良い。
あの贈り物で、誰かが幸せな気持ちになれますように。
ひらひらと雪が舞う中、綻ぶ桜花のような微笑みがふわりと咲いた。
大成功
🔵🔵🔵
夏目・晴夜
良いですね
夜なのに微塵も暗闇がない
このハレルヤが用意したプレゼント箱の中身は、掌サイズのランタン
ツリーや雪だるまのオーナメントで再現された冬の景色を中に閉じ込めていて、
スイッチを入れるとツリーの一番上に飾られている星が煌々と灯りを燈します
きっと喜んで頂ける事でしょうね
私が貰って嬉しいものは万人が嬉しいでしょうから
私もプレゼントを一個取ったら、軽く買い物をしてから帰ります
何か、お世話になった御方にお渡しする為の物が欲しいのです
私が貰ったプレゼントが食べ物ならば、それに合う飲み物も一緒に購入したく
愉快な仲間たちのオススメ品があったら素直にそれを買いますよ
クリスマスみたいな日には素直が一番ですからね
●雪とツリーと足跡と
晴夜が知っていた冬の夜はただ昏くて冷たいだけのものだった。
今でこそ様々な景色を見て知っているが、季節を初めて感じた時の印象は根深い。冬といえば凍えそうな寒空。けれど此処は違う。
「良いですね」
夜なのに微塵も暗闇がない、と口にした晴夜は空を振り仰いだ。
不思議の国と呼ぶに相応しい賑やかで明るい街の様相。それに加えて街の各所にはランプや篝火などの灯が燈されている。
ちらちらと降っている雪もその火に照らされて煌めきを宿していた。
広場を目指して歩くと、さくりとした感触が足元から伝わる。薄く積もった雪は妙に心地よく、足跡を刻んで行きたくなる。
折角だから、と晴夜は絡繰白柴のえだまめを横に並んで歩かせていた。
肉球と靴跡。
ふたつ並んだ雪上の足跡。ふと歩んできた道を振り返ると、その軌跡が何だか楽しげに続いているように見えた。自分でも気付かぬ内に浮足立っていたのだろうか。
無理もない、もうすぐ賑わう広場が近付いているのだ。
其処で行われているプレゼント交換は楽しいものに決まっている。行き交う不思議の国の住人たちが笑顔でいるのだからそうに違いない。
歩を進める晴夜の横を妙に慌てた時計ウサギが走っていった。
たいへんたいへん、贈り物を忘れちゃった! と駆けていく彼の姿に思わず双眸を細め、晴夜は広場の中央へと向かっていく。
「何と言いますか、これは圧巻ですねえ」
凍った噴水の中央に据えられたツリーは綺羅びやかに飾られていた。
樹を見上げた晴夜はふわふわと飛んでいく妖精がまたひとつ、光るオーナメントを枝に掛ける姿を眺めていく。
其処から視線を下に向けると様々な贈り物の箱が見えた。
あの場所に持参したプレゼントを置けばいいのだと賢く理解した晴夜は積み重なった箱の間にそっと自分の贈り物箱を乗せる。
「このハレルヤが用意したものです。きっと良い人に貰われていくでしょう」
小箱はちょうど箱の山の天辺に収まった。
凛然と佇むようなプレゼント箱の中身は、掌サイズのランタン。
内部にはツリーや雪だるまのオーナメントが飾られており、ちょっとした仕掛けが施されているものだ。
中身を思い返した晴夜は何度か頷く。
「誰であっても喜んで頂ける事でしょうね」
私が貰って嬉しいものは万人が嬉しいでしょうから、と自信満々らしい晴夜。その姿をえだまめがつぶらな瞳で見上げていた。
それから晴夜は贈り物を見渡し、ふと見つけた箱を手に取る。
桜色のリボンが飾られた箱は少しだけ重い。
目に留まったのも縁だと感じた晴夜はこれを選んでみることにした。噴水の縁に腰掛けた晴夜は箱を丁寧にひらき、中を覗き込む。
「これはスノードームでしょうか」
硝子で作られた丸い球体。その中には小さな家と飾り付けられたツリー。
逆さにすれば水中の白い粒が硝子の中で舞う仕組みのものだ。
けれども晴夜の目を引いたのは、白い雪だけではなく桜色の欠片も一緒に硝子内の空から降っていくこと。
まるでサクラミラージュの景色のようだと思えた。
輝く雪と淡い花弁。
幻想的な風景を思い起こさせるスノーブロッサムのガラスドーム。自分が置いてきたランタンと何処か似ている贈り物だが、雪と桜が同時に見られる作りになっていることが違う。
「このハレルヤと同じ感性をお持ちとは素晴らしいですね」
スノードームを暫し眺めてから箱に仕舞い込んだ晴夜はご満悦の様子。
そして、彼は贈り物を手に露店へ繰り出す。
小人が作ったという木彫りの靴屋に、ふわふわ襟巻きや装飾品を置いている猫の店、兎の手紙小物屋、妖精のお菓子屋――と見ていくうちに晴夜はいつしか愉快な仲間たちに囲まれていた。
「お客さん、このお菓子がオススメ!」
「ねえねえ、新作の紅茶を試飲していってよ」
「そこのワンちゃんもなにか食べる? 食べられない?」
あれよあれよとシュトーレンやジンジャークッキーが手渡され、あたたかい紅茶までご馳走になっていった。
気付けば晴夜の手にはトランプ型のアイスボックスクッキーが詰まった箱が握らされていた。愉快な仲間たちが猛烈に勧めてくれたのだ。
「まさかお代は要らないとまで言われるなんて。これもクリスマスだからでしょうか」
本当は購入したかったのだが断ることはしなかった。
何故ならクリスマスみたいな日には素直になるのが一番だから。贈り贈られてお互いが喜ぶ。それが良いことだ。
きっとクッキーの詰め合わせも世話になった方へと渡せば喜んで貰えるだろう。
どうやって渡そうか。
そういえば手紙関係の小物を売っている店もあった。ならば其処でこの贈り物に添えるカードを見てみるのも良いかもしれない。
「行きましょうか」
そして、晴夜はえだまめと共に再び歩き出す。
雪に刻んだのは足跡だけではない。きっと、ちいさな思い出も一緒だ。
大成功
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ユヴェン・ポシェット
アリスラビリンス…初めて来てみたが、何だか賑やかな所だな。
お菓子屋を回りつつ、プレゼントの交換も楽しめたら良いな。
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●持ち寄るプレゼント
緑のタータンチェックの包みに金色のリボン。
開けると中には「うさ耳のついたフライトキャップ」。
内側のボアがふわふわもこもこで、大人でも子どもでもフィットする様につくられている。
防寒に優れており、冬でも温かい。
ウサギの耳がキュートだが、あくまで飾りであり、取り外しも可能。
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機能的且つ見た目も楽しめると思い持って来たが、喜んで貰えるだろうか…
ジンジャークッキー、見た目も可愛いな。お土産に少し買って帰るか。
どうした、ミヌレも何か気になるものがあったか?
●クッキーとランタン
賑わう広場に響くのは活気のある声。
笑い声に話し声、贈り物へと期待を馳せる思い。あたたかな火に照らされた街の風景は快く感じられ、ユヴェンは周辺を見てまわってゆく。
「……初めて来てみたが、何だか賑やかな所だな」
辺りの様子や愉快な仲間たちのへんてこで愛らしい姿は、まさに不思議の国の中にいると表すに相応しい。
忙しそうに駆けていく白兎、仲良く並んでひらひらと舞う妖精。
二本の脚で歩く猫や金槌を持った小人まで愉快な面々がたくさんだ。ユヴェンの隣を歩くミヌレも楽しげに彼らを見つめていた。
よくよく見ていると、愉快な仲間たちはせっせと贈り物を運んでいる。
あれがプレゼント交換なのだろう。
露店を見て回るのは後にしようと決めたユヴェンは集められた贈り物を眺めた。つい先日、迷宮で見た贈り物とはまた少し違う。あれは精霊が集めたものだったが、この場所のプレゼントは愉快な仲間たちや、この場に集った猟兵がそれぞれに用意した唯一のものばかりだ。
「俺もあそこにひとつ加えていくか」
ユヴェンは持ち寄った包みを何処に乗せるかを考える。
山のように積まれた箱や袋。
その片隅へ歩み寄ったユヴェンは包みをそっと置いた。緑のタータンチェックに金色のリボンを合わせた贈り物。その中身はフライトキャップだ。
ふわふわでもこもこ。
この季節に良いと感じて選んだプレゼントは誰の元に向かうのか。それを想像していくのもまた楽しいことのひとつ。
「機能的且つ見た目も楽しめると思い持って来たが、喜んで貰えるだろうか……」
取り外し可能なうさぎ耳がついているキャップを思い返す。出来れば贈られた者が装着しているところを見られれば、と考えてしまうのもあの耳が可愛らしいからだ。
そして、ユヴェンは辺りを見渡す。
贈り物を置いたならば次は自分がこの中から選ぶ番。色とりどりの箱はどれも綺麗にラッピングされており、魅惑的だ。
「何にしようか。ミヌレはどれが良いと思う?」
傍らの槍竜に問いかけるとその尻尾がぱたんと揺れた。どうやらミヌレも何を選ぼうか迷っているらしい。
そのときふとミヌレが四角い箱に興味を示す。
きゅ、と小さな声で鳴いた槍竜はこれにしようと言っているようだ。ミヌレに笑みを返したユヴェンは掌より少し大きめの箱を手に取った。
「わかった、開けてみるとするか」
そうしてユヴェンは噴水の縁に腰を下ろして箱を開く。
其処には掌サイズのランタンが入っていた。
それも普通のランタンではない。内部はツリーと雪だるまのオーナメントで再現された冬の景色で彩られている。
硝子越しに見える小さな世界に季節を閉じ込めているようで綺麗だ。
更にスイッチを入れると内部のツリーの一番上に飾られている星に灯りが燈る。煌々と光るランタンの明かりは何だか温かい。
まさに冬に似合いの贈り物だと思い、ユヴェンはランタンを掲げてみた。
すると不意に鼻腔を擽る香りが漂ってくる。
「甘い香りがするな。お菓子屋か」
顔を上げれば白兎と妖精が何やら焼きたてのお菓子を持ってきた様子。行こう、とミヌレを誘ったユヴェンは広場の露店に向かっていく。
すると時計ウサギが彼らにクッキーを振る舞ってくれた。これもどうぞ、と渡された紅茶のマグを受け取り、ユヴェンはミヌレと一緒にその味を楽しんだ。
さくさくとしたジンジャークッキーにはアイシングで顔が書かれている。
にっこりと笑っているもの、少ししょんぼりしているもの、やる気いっぱいで気合を入れている表情をしたもの。
そのひとつひとつが違う顔をしているのが面白い。
「このクッキーは見た目も可愛いな。お土産に少し買って帰るか」
詰め合わせをひとつ、とユヴェンが菓子屋に願うと、白兎はおまけでもう一箱を追加してくれた。ありがとう、と彼が薄く笑うと愉快な仲間たちも笑顔を返してくれる。
冬であってもあたたかい。
この国には穏やかな幸せが満ちているのだと思えた。
そんな中でミヌレが興味津々に別の露店に向かっていく。どうやら別の店の焼き菓子が出されたばかりらしく、先ほどとは違う香りが辺りにふわりと漂った。
「どうした、ミヌレも何か気になるものがあったか?」
あちらでも色々見てみようか。
不思議と浮足立つ心。相棒竜と共に広場を巡る時間はとても和やかだ。
そしてユヴェン達は歩いてゆく。
贈り贈られ、巡る思いとプレゼント。聖なる夜の灯は雪色の街と人々の心を綺羅びやかに、やさしく彩っていた。
大成功
🔵🔵🔵
樹神・桜雪
【WIZ】
持ってきたプレゼントは【淡い青色のふかふかマフラーと同じ色のふわふわミトン、白いボンボンつき】
プレゼント交換だって、何が貰えるんだろう。
ボクが持ってきたプレゼント、喜んで貰えると良いな。
こういうの初めてだから、ドキドキする。
街に灯った灯りをぼんやりと見ながら、貰ったお菓子を頂く
皆すごく楽しそうで、見ていると心がポカポカするんだ。少し不思議。
プレゼント交換が終わったらこっそりUC使って相棒に来てもらおう
一緒に何を貰ったか見よう?そしたら、ボク達もあの輪に加わりに行こうか
せっかくのお祭りだもの。楽しまなくちゃ、だよね
貰ったプレゼントすごく嬉しいな。大切にするね。ありがとう
●確かな歓びを
雪が降りゆく不思議の国は幻想的な色に彩られていた。
手を伸ばして雪に触れてみる。花弁のような白のひとひらは小さな冷たさを宿していく。雪はほんの少しだけ掌に留まり、ふわりと溶けて消えた。
桜雪は手に残った感覚に僅かに眸を細め、先程まで自分がいた場所に目を向ける。
きらきらと光るオーナメントで飾られたツリー。
その下にはマフラーとミトンを入れた贈り物の箱を置いていた。雪に気を取られている間に誰かが持っていったのか、プレゼントはもうなくなっている。
「喜んで貰えますように」
贈ったものが少しでも冬の寒さを凌げて、心もあたたまる存在になれるように。桜雪はそう願いながら辺りを見渡す。
たくさんの贈り物はどれも綺麗にラッピングされていた。
ひとつ贈れば、ひとつ返ってくる。
最初にこの仕組みを思いついたのは誰なのだろう。次々に幸せが連鎖していく面白い試みを思うと、桜雪の心も浮き立っていくかのようだ。
「こういうの初めてだから、ドキドキするね」
ね、相棒。
そう呼び掛けた彼の肩には当たり前のようにシマエナガが座っている。
果たして何が貰えるのか、どんなものが巡ってくるのか。胸元を押さえ、贈り物の箱や袋を眺める桜雪。傍らの相棒もつぶらな瞳できょろきょろと周囲を眺めている。そして不意にぴょこんと飛び立った。
「相棒?」
どうしたのかと後を追えば、緑のタータンチェックが鮮やかな包みが視界に入る。シマエナガは其処に結わえられた金色のリボンをちゅちゅんと啄んでいた。
「それが気に入ったんだね。じゃあその包みにしようか」
相棒が選んでくれたのならそれもまた縁であり、素敵な物が入っているに違いない。そんな予感を覚えた桜雪は緑と金で彩られた包みを手に取った。
けれどもあけるのはもう少し後で。
何故なら今、少し離れた露店からお菓子屋の妖精がひらひらと手を振っているからだ。どうやら焼き菓子が出来上がったばかりらしく、おいでおいでと誘われている。
何やらいい香りがする。この誘いに乗らないわけにはいかないと感じ、桜雪は呼ばれた方へと歩いていった。
「わ、マフィンだ」
焼き立てらしいイチゴのマフィン。その上にパウダーシュガーが振りかけられているので、まるで其処にも雪が積もっているように思えた。
まず相棒にひとかけらを分けてやってから桜雪もマフィンを頬張ってみる。口いっぱいに広がる甘い味とふかふかした食感。
「おいしい。これも妖精さんが作ったのかな」
ちゅぴぴ、と鳴いた相棒もどうやら気に入っているようだ。妖精はこくこくと頷き、これもどうぞ、とホットチョコレートが入ったマグを運んできた。
湯気の立つあたたかな飲み物。
そして、甘い焼き菓子。
それらを楽しみながらベンチに腰掛けた桜雪は街に点った灯りをぼんやりと眺めていく。行き交う人々、アリスの少年や少女に愉快な仲間たち。
「皆すごく楽しそう……見ていると心がポカポカするのは少し不思議だね」
きっと飲み物の熱だけではない。
胸にぬくもりが宿っているのは、この場に満ちる平和と幸せのおかげだ。
そうして一息ついた後、桜雪は緑の包みに手を伸ばした。一緒に何を貰ったか見ようと相棒に呼びかければ、ちいさな嘴がリボンを引っ張る。
包みを開けると中にはうさ耳のついたフライトキャップが入っていた。
内側のボアがふわふわでもこもこ。フリーサイズであるらしく大きさも中のベルトで調節できる仕様のようだ。
うさぎの耳がキュートな印象を与えるが、飾りなので取り外しも可能だ。
「すごい、可愛いね。被ってみようか」
桜雪が早速キャップを装着するとふわりとした暖かさが耳元をくすぐった。ふわふわの毛並みに埋もれる形で相棒も帽子の上に乗り、ぽかぽかと温まりはじめる。
ふたりで楽しめる良い贈り物を貰えた。
そう感じた桜雪は良かった、と頷く。
暫しその場でゆったりと過ごしていると、広場の中央からわあっと楽しげな声があがった。どうやら更に多くの火を燈す準備をはじめているらしい。
「何だか賑やかになってきたから、ボク達もあの輪に加わりに行こうか。せっかくのお祭りだもの。楽しまなくちゃ、だよね」
立ち上がった桜雪は相棒を伴い、賑わう広場へと歩を進めていった。
不思議の国の聖夜は廻り、巡る。
知らない誰かを思って贈られた物。きっとそれはとても優しいものだ。
そうして、この祝福の夜が終わるまで――ユールログの燈火は此処に集う者を等しく導き、ささやかな幸せを照らしてゆく。
大成功
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