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死が二人を分かつなら

#UDCアース

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#UDCアース


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 どうしてこうなったのだろうか。
 文彦さんは、風邪をこじらせて入院しただけだったのに。

 病院の地下深くに設えられた祭壇の上で眠る恋人の姿に、聡子はぼんやり考えた。
 不気味な文様が刻まれた壁も、魔方陣が淡い光を放つ床も、甘い匂いを撒き散らす香炉も。
 周囲で祈りを捧げる人間たちの意味不明な呪文さえ、今の聡子にはどうでも良かった。
 聡子にとってはっきりしているのは、ただ二つ。
 風邪をこじらせて入院した恋人が脳死判定を受けて二度と目覚めないということと、恋人と一緒にいたいのならば、儀式を行うしなないのだということ。
 祭壇の上で眠る文彦の胸が規則正しく上下する。あの胸に、渡されたナイフを刺した後自分の胸を突けば、ずっと一緒にいられる。
 二度と離れ離れになったりしない。
 聡子は熱にうかされたように祭壇へ上がり、文彦にまたがる。
「文彦さんーー今、目覚めさせるからね」
 手にしたナイフは、邪神復活のための祭具。
 ねじ曲がった切っ先を、文彦の心臓へ突き入れる。溢れ出した血が祭壇を濡らし、滴り落ちる血が魔方陣を一層輝かせる。
 ナイフを引き抜いた聡子は、自分の胸に躊躇なく突き刺した。
 激痛を覚悟したが、不思議と痛みは感じない。代わりにあるのは、多幸感だった。
 世界が白く染まり、優しい風が吹き抜ける。目の前には、元気な姿で聡子に手を差し伸べる文彦の姿。その笑顔に、聡子は涙を流した。
「文彦さん! 約束通り、あの海辺まで一緒にドライブしようね!」
 呟くと同時に、夢の沼に沈んだ聡子は文彦の上に倒れ伏す。
 聡子の背中から突き出た切っ先が、ふいに妖しく輝いた。
 光と共に溢れ出す瘴気が、ひれ伏す信者たちを包み込む。瘴気を吸った信者達は、皆一様に目をトロンとさせた。
「会いたかった! そこにいたんだね」
「あの時、変なこと言ってごめん」
 夢の沼に沈んだ信者たちは、それぞれにとって都合の良い妄想の中で幸せな顔をする。
 その首を、瘴気と共に現れたオブリビオンの群れが刈り取っていく。
 やがて、邪神が降臨する。
 この世界に顕現した邪神は、部屋を、病院を、街中を瘴気で満たし、『人々を幸せに導いて』いった。


 青い顔をしたアカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)は、自分が予知した光景を猟兵たちへ伝え終えると静かに口を開いた。
「……皆様には、この事件の阻止をお願いしたいのです。幸い、今から急行すれば聡子さんが儀式を行う直前に現場へ着くことができます」
 最短で行って、聡子が文彦に馬乗りになってナイフを構えているところから乱入できる。
 この儀式で、既に十二組二十四人が命を落としている。次の聡子と文彦で十三組目。
 なので、邪神の復活を完全に阻止することはできない。
 今できる最良の策は、儀式を中断させて復活する邪神の力を削ぐことと、復活した邪神を倒すこと。
「皆様にはまず、聡子さんの説得をお願いしたいのです」
 今の聡子は、恋人と一緒にいるためには儀式を行うしかないと思いこんでいる。決意は固く、優しい言葉だけでは心を動かすことができない。
 何か確実な提案をしなければ、強引に儀式を行ってしまう。
 猟兵達が侵入すると、周囲にいる信者たちが猟兵達を排除して聡子に儀式を行わせようと、こちらも説得を開始する。
 彼らをどうするかは、猟兵たちへ委ねられた。
「……邪神の復活。これだけは阻止しなければなりません。皆様のお力、アカネにお貸しくださいませ」
 アカネは微笑むと、ぺこりと頭を下げた。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
 マスターの三ノ木咲紀です。
 ネタが上がったので、二本目もシリアスです。
 次は和やかコンコン依頼か何かしたいですね。
 概要はオープニングの通りです。一般人の生死は問いません。
 第一章の結果次第で、ボスの強さが決まります。

 どなたかと一緒に参加したい場合は、一行目に同行者が分かるようにお書きください。
 プレイングによっては、記述がなくても連携が発生することがあります。
 連携NGの場合、プレイングの最初に「連携X」とお書きください。
 期日までに書くようにしますが、3日を過ぎて返却された場合は、ほとんどスケジュールの都合によるものです。
 再度投げてくれたらとても嬉しいです。

 それでは、よろしくおねがいします。
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第1章 冒険 『死がふたりを分かつとも』

POW   :    唆された者へ脅しをかける

SPD   :    類似の事件が無いか調査する

WIZ   :    囮となり信奉者達に接触を図る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

八坂・操
【SPD】

愛しき人は目覚めない。藁にも縋る思いで奔放し、遂に二人は今際に出会う!
……で、そのオチがただのトリップってのは、ちょーっと手抜きが過ぎるんじゃない? ホラー映画のオチとしちゃあ陳腐が過ぎるよ。

そんな訳で、操ちゃんは警察署の方で『情報収集』してくるよ! 24人も亡くなってるんだし、調査した情報量はきっと多いだろうしね♪
婦警に『変装』して『忍び足』で『目立たない』よう行動しよう! 対策課が設立されてたら儲けものなんだけど……まぁ、全部関連性がないと判断されてたら、そんなの出来ないだろうしなぁ……。
遺体の発見現場や、相方にあった不幸の記録とかが探れれば万々歳だ!



● 情報収集

 現場へ向かう猟兵たちを見送った八坂・操(怪異・f04936)は、踵を返すと病院近くの警察へ向かった。
 愛しき人は目覚めない。藁にも縋る思いで奔放し、遂に二人は今際に出会う!
「……で、そのオチがただのトリップってのは、ちょーっと手抜きが過ぎるんじゃない? ホラー映画のオチとしちゃあ陳腐が過ぎるよ」
 呟いた操は、足早に警察署内を探った。
 府警に変装し、忍び足で目立たないよう行動する。病院で二十四人も亡くなっているのだ。何かしらの捜査がされている可能性も高いし、ひょっとしたら対策本部も立てられているかも知れない。
 そう思い内部を探ったが、対策本部が立てられていることもなく、あまり情報は出てこない。
 関連する部署を探っていた操は、若い刑事がベテラン刑事に食って掛かっている場面に遭遇した。
「……ヤマさん、おかしいですよあの病院! この一年間に二十四人が心不全で亡くなっているんですよ!」
「大きな病院だ。一ヶ月に二人は、無い話じゃないだろう。それになトシ、病院側の診断書は完璧だ。そういうこともある、としか言えないだろう」
「それが親子や恋人、夫婦といった親しい間柄でもですか!」
「偶然だろう」
「医局長によるデータ改ざんの形跡だってあるんですよ! これは事件です!」
「分かった分かった。もう少し調べてみるから落ち着け」
 刑事二人の押し問答に、操はその場をそっと離れた。
 裏付け捜査までしたいが、状況は今も動いている。
 取り急ぎ仲間へ情報を伝えた操は、追加の情報を仕入れるべく警察のパソコンを叩いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

田中・ストロベリー
お別れってとっても悲しいよね。好きな人ならなおさら、現実を認めたくない気持ちもよく分かるよ。
だからこそ、そんな人の気持ちを利用したオブリビオンを……ストロベリーは絶対に許せない。

現場になる病院で脳死判定を受けた人が他にもいなかったか、それが文彦さん含めここ最近で13人いないか……
ストロベリーはスマホで【情報収集】するね。必要であれば【ハッキング】も。
病院に不信感を抱かせられれば、聡子さんに儀式自体の信憑性について疑問を呈することができるんじゃないかな。
儀式についてどんな説明を受けたか分からないけど……ナイフで心臓を刺したら、間違いなく人は死ぬ。そんなことはストロベリーでも分かるよ。



 操から連絡を受けた田中・ストロベリー(女子高生探索者・f00373)は、通話を切るとスマホ画面に指を滑らせた。
 現場になる病院では、ここ一年間に二十四人の「心不全で死亡した患者」が出ている。脳死判定のことは言っていなかったが、そこに何かあるに違いなかった。
 病院のサイトにアクセスして、強引な手段も使いながら情報を検索する。
 スマホ画面を見つめながら、ストロベリーは怒りに唇を噛んだ。
(「お別れってとっても悲しいよね。好きな人ならなおさら、現実を認めたくない気持ちもよく分かるよ」)
 だからこそ、そんな人の気持ちを利用したオブリビオンを……ストロベリーは絶対に許せない。
 移動中に検索をかけることしばし。厳重に保管されたデータファイルから出てきた情報は、目を疑うものだった。
 検査結果の改ざん、強引な入院、見舞いの推奨、薬物投与……。
 少なくない人数の病院関係者が、この事件の裏で被害者を選定し、必要のない入院をさせて薬物による脳死、又は仮死状態を作り出していたのだ。
 だが、まだ疑問は残る。
「いくら病院関係者が関わってたって、こんなのまかり通るのかな……?」
 首を傾げるが、ここから読み取れる答えはない。
 ただ分かったのは、この事実は聡子の病院に対する信頼と、儀式自体に対する信憑性に対して疑問を呈することはできるということだ。
 続けて送られてくる情報も合わせて、仲間と共有する。息を飲む空気に頷いたストロベリーは、スマホを握り締めた。
「儀式についてどんな説明を受けたか分からないけど……。ナイフで心臓を刺したら、間違いなく人は死ぬ。そんなことはストロベリーでも分かるよ」
 この儀式は、一刻も早く止めなければならない。決意を新たにした猟兵達は、儀式場へと急いだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

當良邑・祈
【SPD】
調査は猟兵としての使命感だけではなかった。

ただただ被害者のことが知りたくなった、
私は愛を知らぬ、恋を知らぬ、性を知らぬ、

彼ら彼女らは邪教の信徒に道具として利用されただけ、であれば話は簡単だ。人をモノの様に扱う連中ならば容赦はしない。

しかし、邪法に頼ってでも叶えたい望みがあったのなら、本人たちが正しく決意し儀式を行ったのなら、それを悪と断じることができるのか?

邪神といっても今の大多数の価値観、社会環境に合致しないから排斥されているだけで、時が違えば大通りに社を構える存在だったかも知れない。

選択に正解はないのかも知れない、それでも事態は進む、
後悔の無いよう今できるのは情報を集めることだけ



 儀式場に入った時から、當良邑・祈(サイボーグの化身忍者・f09602)は考え続けていた。
 調査は猟兵としての使命感だけではなかった。
 ただただ被害者のことが知りたくなった。
 祈は愛を知らぬ、恋を知らぬ、性を知らぬ。
 彼ら彼女らは邪教の信徒に道具として利用されただけ、であれば話は簡単だ。
 人をモノの様に扱う連中ならば容赦はしない。
 鼻孔をくすぐる甘い匂いが、祈の心をじわりとかき乱す。
「……しかし、邪法に頼ってでも叶えたい望みがあったのなら、本人たちが正しく決意し儀式を行ったのなら、それを悪と断じることができるのか?」
 呟く声は小さく、他の猟兵に聞きとがめられることはない。だが、口に出した気持ちは正義となって祈の心を蝕んでいく。
 邪神といっても今の大多数の価値観、社会環境に合致しないから排斥されているだけで、時が違えば大通りに社を構える存在だったかも知れない。
 邪神は本当に、邪な神なのか。
 社会や常識、正義といったものに抑圧された「本当に望むもの」を与えてくれる神なのではないか。
 自らの思考に、サイボーグ化した両足が揺れる。転倒しそうになるのを、壁に手をつきこらえる。
 神経伝達がうまくいっていないのか。意識を取り戻した祈は、足元に置かれた香炉に目を見開いた。
 甘い匂いを立ち込めさせる、いくつもの香炉。病院に入った時からずっと甘い匂いはしていたが、この部屋はむせ返るようだ。
 これ以上吸わないようにしながら、香炉の火を消してひっくり返す。少しだけきれいになる空気に、祈の意識が少し明確になる。
 儀式場の天井部付近には、換気口が付いている。あそこから香炉の匂いが病院中に広まっていたのだろう。
「この香炉が、意識を奪っていたんだ……」
 無関係な病院スタッフも、この匂いを毎日嗅ぎ続け思考や判断を都合よく捻じ曲げられていたのだ。
 祈はそっと駆け出すと、置かれた香炉の火を落として回った。

成功 🔵​🔵​🔴​

榎木・葵桜
【サモニング・ガイスト】使用
文彦さんにナイフが刺さらないよう
聡子さんを霊に羽交い締めにしてもらう

私は聡子さんの目の前に回り込んで
目を見て話をするよ


私、嫌いなんだよね
人の想いをこんな形で利用する教団も
目の前の現実から目を背ける人も

本当に救いようのない現実だね

正直、儀式を行った方が
聡子さん、貴女にとっては幸せなのかもね
でも、文彦さんが幸せかなんて解らない

そもそも、文彦さんの生き死にを貴女が決めていいものなの?

文彦さんは、目覚めなくとも生きてる
こんな姿でも、生きようとしてる

一緒にって言うけど
貴女のやろうとしてるのは只の人殺しなんだよ

救いようのない現実でもあっても
ずっと一緒にって思うなら、今を生きなよ


結布院・時護
死は等しく皆に訪れるもの、だが理不尽な訪れが多いのを俺は知っている
理不尽な死の影を目にした時、正気を保つのが困難なことも
だからこそ、彼女救いたい

聡子さんのナイフを持つ腕を掴む
反対の手で彼女の頬を叩き、祈りながら

「俺の言葉が聞こえるかい?
ならまだ君には別の希望が見えるはず
君は今、彼の全てを殺そうとしている
君と彼の軌跡は
君も死んでしまえば無かったことになってしまう
一緒に死んでも、一緒にはなれない
だから、君しか知らない彼の姿を
この世に残しながら生きていく方法を考えよう」

ナイフを自分に刺させて、生まれながらの光で治療
その光が希望の光に見えるように

「君には何よりも明るい希望の光が見えるはずだよ」

連携歓迎


ウインド・ノーワルド
愛や恋っていう物は本当に厄介ですよ。誰かの為に自分の全てを捧げたくなる
まぁ、私もこんな指輪をしてるからわからなくはねーですが……さて、止めましょうか

優しい言葉も、単純な説得も聞こえねーのはわかってます。だからこそ必要なのは確実な手段
そういうわけで文彦を診せてください。こちとら自称であっても医者である身。儀式だとかいう不確定なもので目覚めさせるなんざ許さねーですよ

乗り込んだら文彦さんを医療ケースの簡易道具と【医術】の知識を持って様子を見ましょう
風邪だけでなければ毒か、クスリか。いったい彼を治療した人の身元もまた、気になりますよね
……ともかく、私は私の手段で明確な目覚め方を診て、提案しましょうか



 儀式場へ突入した榎木・葵桜(桜舞・f06218)は、今まさにナイフを振り下ろそうとする聡子へ【サモニング・ガイスト】を放った。
「田中さん!」
 呼びかけに応じて現れた霊が、聡子を羽交い締めにする。中断させられた儀式に、聡子は猛然と抵抗した。
「嫌! 邪魔しないで!」
「何事かね!」
 中断した儀式に顔を上げた初老の男が、田中さんを追い払おうと駆け寄る。
 乱入する猟兵達の姿に、中年の女性が甲高い声を上げた。
「あなた達、なんですか! ここは神聖な儀式場、関係者以外の立ち入りはやめてもらいます!」
 太い身体で猟兵達を追い出そうとする女性を押しのけたウインド・ノーワルド(自称ドクター・f09121)は、操とストロベリーからの情報にあった女性の顔に薄ら笑いを浮かべた。
「文彦さんを診せてください。こちとら自称であっても医者である身。儀式だとかいう不確定なもので目覚めさせる、なんざ許さねーですよ。そうですよね、婦長?」
 婦長と呼ばれた女性は、一瞬声を詰まらせる。婦長を無視して祭壇へ歩み寄ったウインドは、半狂乱の聡子とそれを助けようとする二人の男性に声を掛けた。
「ちょっとどいてくれないか?」
「なんだね、君は! 自称ということは、君は医師ではないのだろう?」
「これは神聖な、魂を救済する医療行為。邪魔するな!」
「魂を救済する、ね。その結果身体が死んでもいいわけだ。とんだ院長と脳神経外科医もいたものだ」
 ウインドの言葉に黙った二人をよそに、ウインドは聡子を覗き込んだ。
 聡子は大粒の涙を流しながら、何とか田中さん(霊)を振りほどこうと暴れている。儀式のナイフは決して手放さない聡子に、ウインドはため息をついた。
「愛や恋っていう物は本当に厄介ですよ。誰かの為に自分の全てを捧げたくなる。まぁ、私もこんな指輪をしてるからわからなくはねーですが……」
「嫌! 邪魔しないで! このバケモノを取って!」
「今のあなたには優しい言葉も、単純な説得も聞こえねーのはわかってます。だからこそ必要なのは確実な手段」
 ウインドは聡子には構わず、医療ケースを開いた。中から取り出した簡易道具と医術の知識を持って、文彦を診察する。
 周りの信者たちが猛然とウインドを止めにかかるが、猟兵達がそれを押し止める。
 文彦を診察してしばし。ウインドは大きなため息をついた。
「……聡子さん。文彦さんは脳死じゃない」
「……え?」
「脳死判定にはいくつものプロセスがありましてね。今分かりやすいのは、文彦さんは自発呼吸をしている。自分で呼吸ができている。脳幹が死ぬとね、それすらできねーんですよ」
 ウインドの言葉に目を見開いた聡子は、静かに上下する文彦の胸を見下ろした。
「脳死じゃ……ない……」
「だが、彼がもう二度と目覚めないことに変わりはない! 二度と会えない話もできないことに、何の変わりもない!」
「黙りなよ」
 田中さん(霊)に再度羽交い締めにし続けるよう指示を出した葵桜は、心底腹を立てた様子で聡子の前に回り込んだ。
 涙に濡れ、理性を失い叫ぶ聡子に、むしろ清々しいくらいの笑みを向ける。
「私、嫌いなんだよね。人の想いをこんな形で利用する教団も、目の前の現実から目を背ける人も」
 葵桜は清々しい笑みを貼り付けたまま、眠り続ける文彦を見下ろした。
 周囲でこれほど騒いでも、目を醒ます気配さえない。脳死ではないにしても、何かしらのクスリか処置は施されているのだろう。
 本当に救いようのない現実だ。
「正直、儀式を行った方が聡子さん、貴女にとっては幸せなのかもね。でも、文彦さんが幸せかなんて解らない」
 大きく息を吐き出した葵桜は、笑みを落とすと聡子の二の腕を掴んだ。聡子の目を覗き込み、泣きそうな顔で訴える。
「そもそも、文彦さんの生き死にを貴女が決めていいものなの? 文彦さんは、目覚めなくとも生きてる。こんな姿でも、生きようとしてる! 一緒にって言うけど、貴女のやろうとしてるのは只の人殺しなんだよ!」
「只の……人殺し……」
 葵桜の魂の訴えに、聡子は目を見開く。言われた言葉を反芻する聡子の腕をちぎれるほど握り締め、洗脳の奥にある聡子の魂を揺さぶる。
「救いようのない現実であっても、ずっと一緒にって思うなら、今を生きなよ!」
「そこをおどきなさい、お嬢さん」
 葵桜の腕を掴んだ初老の女性は、人好きのする笑顔を浮かべると半ば強引に葵桜を祭壇から下ろした。
 代わりに座った心理カウンセラーの初老の女性は、とまどいを見せる聡子の頬を撫でた。
「何度もお話した通り、文彦さんはもう二度と目覚めません。脳死であろうとなかろうと、あなたが彼と共に生きるのは、叶わないのです。それでも一緒にいたいのならば、分かりますね?」
「儀式を……遂行して、魂が永遠に結ばれるしかない……。でも……」
 熱にうかされたように呟く聡子を、カウンセラーはそっと抱きしめた。
「そう。いい子ね。さあ、そのナイフをこちらへ……」
「待ってもらおうか」
 ナイフをカウンセラーに渡そうとする聡子に、結布院・時護(時と絆を結び護る者・f11116)は鋭く声を掛けた。
 カウンセラーが声に振り返った瞬間、お返しとばかりに葵桜がカウンセラーを祭壇から引き剥がす。
 代わりに聡子に向き合った時護は、絶望と悲しみに濡れた目にかつての自分を見た。
 大切な故郷を滅ぼされ、一人生き残った時護の気持ちは、聡子のそれと変わらないのだろう。
 死は等しく皆に訪れるもの。だが理不尽な訪れが多いのを時護は知っていた。
 理不尽な死の影を目にした時、正気を保つのが困難なことも。
 時護は聡子のナイフを持つ腕を掴むと、反対の手で彼女の頬を叩いた。
 直接の痛みに目を見開く聡子に、時護は祈りを込めて声を掛けた。
「俺の言葉が聞こえるかい? ならまだ君には別の希望が見えるはず」
「希望……。でも……」
 信頼していた医師の不正が暴かれ、脳死判定が覆り、心を狂わせる香炉がなくなり、魂を揺さぶられた聡子は、少しずつ正気を取り戻しているようにも見える。
 今の聡子に必要なのは、物理的な希望だ。
「……君は今、彼の全てを殺そうとしている。君と彼の軌跡は、君も死んでしまえば無かったことになってしまう」
「でも……でも!」
 頑なな聡子に、時護は首を横に振った。
「一緒に死んでも、一緒にはなれない。だから、君しか知らない彼の姿をこの世に残しながら、生きていく方法を考えよう」
 葵桜に目配せをして田中さん(霊)の拘束を少し緩めてもらった時護は、ナイフを掴んだ手を握ると自分の胸へと突き刺した。
 溢れる血が、時護の服を濡らす。目の前の血と刺した時の感触が、聡子に「人を刺す」という行為を現実感を持って理解させる。
 目を見開く聡子の目に、光が溢れた。
 生まれながらの光で傷を治療した時護は、この光が希望の光に見えるよう祈りながらナイフを掴む手を離した。
「君には、何よりも明るい希望の光が見えるはずだよ」
「……文彦、さん……」
 涙を流す聡子の手から、祭具のナイフが落ちる。
 祭具が祭壇に突き刺さった時、禍々しい瘴気が溢れ出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『嘲笑う翼怪』

POW   :    組みつく怪腕
【羽毛に覆われた手足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪神の加護
【邪神の呪い】【喰らった子供の怨念】【夜の闇】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    断末魔模倣
【不気味に笑う口】から【最後に喰らった子供の悲鳴】を放ち、【恐怖と狂気】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 祭壇に刺さったナイフから、禍々しい瘴気が溢れ出した。
 同時に輝く光。儀式によって吐き出される瘴気は、その場にいた信者たちを包み込んだ。
 儀式を遂行させようと暴れていた信者たちが、ふいに静かになる。瘴気を吸い込んだ院長は、フラフラと歩み出した。
「おお……。今こそ我らに救済を。心も身体も救えぬ非力な我らに、蝕まれゆく哀れな患者たちに、魂の救済を……!」
 両手を広げた院長の首が、ふいに落ちた。
 羽毛に覆われた手で院長の首を刈り取った嘲笑う翼怪は、甲高い声を上げると信者たちに院長の断末魔模倣を放った。
「魂の救済を! タマシイのキュウサイを! 我らに、患者にキュウサイヲ!」
 不気味に笑う口から放たれる断末魔模倣に、信者たちは恐怖と狂気に打ち震えた。
「そんな! だって、それしか方法がないじゃないか!」
「私は悪くない! 悪くないわ!」
 パニック状態に陥る信者たちに、次々と現れた嘲笑う翼怪達が襲いかかる。
「タマシイノキュウサイヲ!」
 一際大きく叫ぶ嘲笑う翼怪の金切り声を合図に、組みつく怪腕が迫った。
八坂・操
【SPD】

ありゃりゃ、院長はトリップしたけど、信者達はバッド入っちゃったっぽいね。医者の不養生とはこの事か。お薬と宗教は用法用量を守って正しくお使いください☆ なーんてね♪

正気に戻った信者さんもいるし、多分乱戦になるよねー。【メリーさんの電話】で、ちょっと場をかき乱して貰おうかな?
「もしもし、メリーちゃん? ヒーローごっこしなーい?」
メリーちゃんに遊撃して貰って、操ちゃんは『忍び足』で『目立たない』よう動きつつ、背後から『だまし討ち』して回るよ!
正気に戻った信者さんは……ま、そのまま放置ってのも目覚めが悪いよね。『敵を盾にする』で翼怪をぶん投げて助けてあげよっか。
「生きたい人は逃ーげーて♪」


榎木・葵桜
何度も目にした鳥さんだけど
今ほどこんなに憎らしく見えたことってなかったかも

死は魂の救済なんかじゃない
ひとは確かに弱いけど自分で自分を救うことだってできるんだ

その趣味の悪い鳴き声ごと、あなた達を焼き鳥にしてあげる!



【サモニング・ガイスト】使用
田中さん(霊)には【炎】で羽毛部分を燃やしてもらう
隙が生じたら【槍】で羽根の付け根を攻撃してもらい、落下させる
仲間と連携し追撃も意識して確実に個体を減らしていくね

可能なら、私は信者の皆さんの避難にまわりたい
鳥さんからの攻撃は【衝撃波】と【なぎ払い】で払いながら
できる限り声掛けして儀式場の外へ連れ出すよ

一緒に避難活動してくれる仲間が居るなら連携して対応するよ



 儀式場は混乱に陥っていた。
「タマシイノキュウサイヲ!」
 甲高い叫び声を上げる嘲笑う翼怪は信者たちに迫り、首を狩ろうと羽毛に覆われた手足を振り上げる。
 涙を流しながら叫ぶカウンセラーに爪が届く寸前、嘲笑う翼怪は炎に包まれた。
「その趣味の悪い鳴き声ごと、あなた達を焼き鳥にしてあげる!」
 榎木・葵桜(桜舞・f06218)の召喚に応じ現れた田中さん(霊)が放つ炎が、嘲笑う翼怪の翼を燃やす。
 態勢を崩したところに、槍が穿たれる。叫び声を上げながら落ちる嘲笑う翼怪を踏み越えて駆け寄った葵桜は、恐怖と狂気から抜け出せずに叫ぶカウンセラーの二の腕を掴んだ。
「しっかりして! あなたカウンセラーでしょ!」
「救済を救済を。一時の安寧よりも永遠の救済を……」
「甘えないでよ!」
 つぶやき続けるカウンセラーの横面を叩いた葵桜は、呆然とするカウンセラーに叫んだ。
「死は魂の救済なんかじゃない! ひとは確かに弱いけど、自分で自分を救うことだってできるんだ!」
 葵桜の叫びに目を見開いたカウンセラーは、憑き物が落ちたように落ち着いた。
「……そうね。あなたの言う通りだわ」
「信者の皆さんを避難させよう。手伝って……」
 葵桜が声を掛けた時、隣りにいた脳神経外科医が奇声を上げると突然走り出した。
「俺に、魂の救済を!」
 狂気の目で嘲笑う翼怪へ駆け寄る脳神経外科医に、翼怪は望みのものを与える。
 落とされた首を鷲掴みにした嘲笑う翼怪は、さも楽しげに叫び声を上げた。
「オレニ、タマシイノキュウサイヲ!」
 首を握りつぶしながら叫ぶ翼怪は、信者たちを更なる恐怖と恐慌へ陥れようと【断末魔模倣】を放つ。
 嘲笑う翼怪の攻撃を衝撃波となぎ払いで迎え撃ちながら、葵桜は唇を噛んだ。
「……何度も目にした鳥さんだけど、今ほどこんなに憎らしく見えたことって、なかったかも」
「ありゃりゃ、院長はトリップしたけど、信者達はバッド入っちゃったっぽいね。脳神経外科医に至ってはラリってイっちゃったか。医者の不養生とはこの事だね」
 【断末魔模倣】を放つ嘲笑う翼怪に忍び足で目立たないよう背後から騙し討ちを仕掛けた八坂・操(怪異・f04936)は、消える翼怪を見下すと楽しげに笑った。
「お薬と宗教は、用法用量を守って正しくお使いください☆ なーんてね♪」
 言いながら怪糸を繰った操は、嘲笑う翼怪の首にワイヤーを巻きつけた。
 気色悪い声を上げた翼怪が、放物線を描きながら勢いよく宙を舞う。
「そーれ鳥の一本釣り! なんてね!」
 巧みに糸を操った操は、敵を盾にする要領でカウンセラーに迫る嘲笑う翼怪に叩きつける。
 怪糸を手放した操は、携帯電話を取り出すとどこへともなく電話をかけた。
「もしもし、メリーちゃん? ヒーローごっこしなーい?」
 【メリーさんの電話】で呼びかけることしばし。現れたのは黒い少女だった。
 シルエットの少女はまんまるな目を輝かせると、手にした刃物で嘲笑う翼怪に向けて刃物を振り下ろす。
 場をかき乱すように敵を攻撃し続けるメリーちゃんの攻撃を隠れ蓑に、敵へ奇襲を掛け、また怪糸で投げ飛ばす。
「そのまま放置ってのも目覚めが悪いし。生きたい人は逃ーげーて♪」
 糸とだまし討ちを巧みに使い分けながら、操は信者たちが逃げるための時間を稼ぐ。
 葵桜とカウンセラーの声掛けと援護で徐々に目を覚ました信者たちは、部屋の外へと避難していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

當良邑・祈
人を騙して命を使いつぶし、身勝手な妄執から邪神に頼る者どもには死の方が幾分かマシな選択なのかもしれない。

信者を一瞥し、翼持つ怪異に相対する。
繰り返し断末魔を再生し続けるのは、壊れたレコードか、老いたオウムの様にも思われた。

お前も勝手に呼び出されただけなのにな。

感傷は吐いた言の葉とともに捨て去り、機械脚を展開する。
彼我の戦闘能力を分析にかける。
相手の飛行、機動力を十分に発揮されると厄介だ。
幸いにしてここは何もない平原というわけでもない。

ロープを駆使した立体起動で敵についていく。
移動に使用したロープのすべてを回収はせずそれらで
鳥を飛べなくする籠を
獲物を捕らえる網を作り上げる

(改変・連携・苦戦OK)



 避難を開始する信者たちを一瞥した當良邑・祈(サイボーグの化身忍者・f09602)は、目の前に迫った嘲笑う怪鳥が放つ断末魔模倣に眉を顰めた。
「タマシイノキュウサイヲ!」
 繰り返し断末魔を再生し続けるのは、壊れたレコードか、老いたオウムの様にも思われる。
 断末魔模倣を回避した礼は、むしろオブリビオンに同情的な視線を送ると【ヴァリアブル・ウェポン】を放った。
 命中率を重視した羽手裏剣は翼怪の口に突き刺さり、とどめにウインチ式ワイヤーフックを叩き込む。
 ワイヤーフックを回収しながら、避難する信者たちの背中に人知れずため息をつく。
 人を騙して命を使いつぶし、身勝手な妄執から邪神に頼る者どもには死の方が幾分かマシな選択なのかも知れないが、それでも救おうとする仲間を邪魔するほど感情移入もしていない。
 消えゆく嘲笑う翼怪を見下ろしながら、礼はぽつり呟いた。
「お前も勝手に呼び出されただけなのにな」
 湧き上がる感傷は吐いた言の葉とともに捨て去り、機械脚を展開した礼は冷静に戦闘へ没頭した。
 彼我の戦闘能力を分析にかける。
 嘲笑う翼怪はその名の通り、空を飛べる個体もある。現に、この場でも数体の個体は空を飛び攻撃の機会を伺っている。
 相手の飛行、機動力を十分に発揮されると厄介だ。だが幸いにしてここは何もない平原というわけでもない。
 地下室の低い天井は嘲笑う翼怪達の行動を阻害している。
 ウインチ式ワイヤーフックを展開した礼は、換気口にフックを掛けた。
 即座に回収し、宙を舞う。すれ違いざまに羽手裏剣を嘲笑う翼怪へ叩き込む。
 ロープのすべてを回収せずに、飛ぶ翼怪を飛べなくする籠を、獲物を捕らえる網を作り上げようとする。
 そこへ、嘲笑う翼怪が迫った。
 邪神の加護を得た翼怪は羽毛に覆われた爪を振り上げると、空中で態勢を整えきれない礼へと迫る。
「タスケテー! ママァ!」
 空中戦をすることもできない礼の背中に、鋭い爪が突き刺さる。
「っ……!」
 激痛に顔を顰めた礼は、ウインチ式ワイヤーフックを手放すと地上へ降りた。
 続く攻撃をいなしながら、礼は反撃の機会を伺った。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ウインド・ノーワルド
ようやく表れましたか。自称だのなんだのに文句を言ってくれましたが、そこは私の在り方なんでなんとでも
ですが救うべき命は等しくあるものなんで…さっさと下がりやがりくださいよ

まずは聡子さんや生き残った教団員の人達の避難を優先
ある程度はかばう事も仕方ねーですね、十全な準備はありませんので

一通り落ち着いたら戦線に加わりましょう
基本的には『虚黒の風』を纏わせた格闘戦。鳥相手に人相手の知識が通じるかわかりませんが、まぁ関節部分はあるでしょう
ある程度打撃で怯ませたら【鎧砕き】要領でへし折って行きましょう

純粋な火力が必要な場合は【黒滅の風】でぶん殴ります
割と機嫌悪いんですよね…まだ素を出すほどじゃねーですがね



 聡子と文彦を殺そうと迫る嘲笑う怪異へ、ウインド・ノーワルド(自称ドクター・f09121)は拳を振り上げた。
「黒き風は過去を滅する烈風となる。なーんて、ぶん殴るだけですがね」
 関節部分を狙った一撃が、嘲笑う翼怪を床へと沈める。続けて襲い来る翼怪に虚黒の風を纏わせた拳で鎧砕きの要領でへし折っていく。
 何とか隙を作ったウインドは、祭壇の上で文彦を抱いて怯える聡子へ駆け寄った。
「さっさと逃げやがりますよ」
「で、でも腰が抜けちゃって……」
「アンタは、自力で、逃げる。私は文彦さんを背負って行くんで」
 文彦から手を離させたウインドは、意識のない文彦の肩に腕を入れた。
 完全に意識のない人間は重い。しかも青年の体重を小柄な女性が一人で支えるのは大変なことだ。
 思わずよろけるウインドに、聡子は文彦の反対側の肩に腕を入れた。
「私も手伝います。……あの、文彦さんを診ていただいて、ありがとうございます」
「これでも自称、医者なんすから当然のことをしたまででして」
「自称、ですか……」
「そこは私の在り方なんでなんとでも」
 目を見開く聡子に、ウインドは笑みで返す。その笑みに、聡子は少しだけ頬を歪ませた。
「それでも、脳死じゃないって知って、騙されたって分かって、目が覚めました。本当に……」
「タスケテー! ママァ!」
 言いかける聡子に、毒を受けながらも超強化した嘲笑う翼怪が迫った。
 迫る爪に、聡子は目を見開くことしかできない。思わず身を竦ませた聡子は、引っ張られる力に態勢を崩した。
 目を開けた聡子は、聡子を庇うウインドの姿に目を見開いた。
 聡子との間に割って入ったウインドは、交差させた腕で鋭い爪を受けとめている。爪が深く突き刺さった腕からは血が滴り落ちる。
「先生!」
「早く、逃げやがれ、です」
 嘲笑う翼怪を押し返したウインドは、痛む腕と聡子達を庇いながら後ずさる。
「今、割と機嫌悪いんですよね……まだ素を出すほどじゃねーですがね」
「タスケテー! ママァ!」
 再び襲い来る嘲笑う翼怪を迎撃するために、ウインドは拳を握り締めた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

當良邑・祈
自身の策が阻まれ、手傷を負ったが同時に一つ分かったこともあった。

生身の部分それを背後から攻撃されたが未だに戦闘が継続可能なこと、
そこから相手は単発での殺傷能力は高くないのではないか、
集り、弄り、引き裂き、喰らう
であれば、長期戦こそこちらの不利となる。

「それに傷を負った手前、出し惜しみもしていられないか」
-ワレイノリヲササゲル-
降魔化身法で全身を甲殻に覆い無理やり傷をふさぐ、

「たましいの!きゅうさいを!」
叫びながら、駆け抜ける。
あの声に意味があるならば、仲間の位置の認識、反響による探知、威嚇、幻惑…
少しでも乱すことが出来はしないかと声の限り繰り返す。



(連投につき却下OK・改変・連携等も歓迎)



 迫る爪の攻撃を避けながら、祈は冷静に現状を分析した。
 自身の策が阻まれ、手傷を負ったが同時に一つ分かったこともあった。
 生身の部分それを背後から攻撃されたが未だに戦闘が継続可能なこと。
 敵の攻撃はユーベルコードで強化されていたにも関わらず、祈はまだこうして立っている。
 そこから相手は単発での殺傷能力は高くないのではないか、ということだ。
 集り、弄り、引き裂き、喰らう。
 それがここに現れた嘲笑う翼怪の性質なのであれば、長期戦こそこちらの不利となる。
「それに傷を負った手前、出し惜しみもしていられないか」
 祈が反撃に出ようとした時、嘲笑う翼怪はふいに顔を上げた。
 避難を開始した聡子の姿を視認した嘲笑う翼怪は、口元をにい、と上げると飛び立った。
「タスケテー! ママァ!」
 無抵抗な聡子へ向けて急降下を仕掛ける嘲笑う翼怪の姿が遠ざかる。その危機に、祈は詠唱を開始した。
 -ワレイノリヲササゲル-
 降魔化身法で全身を甲殻に覆った祈は、無理やり傷をふさぐように背中の傷を覆い隠す。
 背中の傷を強引に無視し、代償として受けた毒の痛みに耐えながら駆け出した祈は、今度こそ聡子へ向けて爪を振り下ろそうとする嘲笑う翼怪の背中へ【ヴァリアブルウエポン】を放った。
「たましいの! きゅうさいを!」
 嘲笑う翼怪の気を引くように叫びながら駆け抜ける祈に、嘲笑う翼怪はゆらりと振り返った。
 仲間の位置の認識、反響による探知、威嚇、幻惑……。少しでも乱すことが出来はしないかと声の限り繰り返す祈に、嘲笑う翼怪はけたたましい声を上げた。
「タスケテー! ママァ!」
 嘲笑う翼怪の攻撃をいなしながら、祈は戦闘を続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

美星・アイナ
強い愛情で繋がっている二人の縁
今まで悪意の糧として引き裂かれた人達の分も含めて傷付けた罪・・・許さないよ

煮え滾る怒りと共にペンダントに触れる
シフトする人格は断罪の刃携えた執行者

レガリアスシューズで【2回攻撃】の【踏みつけ】
【地形の利用】を駆使して天井や壁、瓦礫を足場にしながら鞭のようにしならせた鋼糸を翼怪の首や翼に巻き付け

巻き付けと並行してユーベルコード詠唱開始
放った青玉の矢に合わせて大鎌形態に変形させた黒剣を構えて横なぎに【なぎ払い】

でも、これで終わりじゃないでしょ
さっさと出てきな・・・
恋人達の絆を踏み躙ったゲス野郎!

その眼差しは闇に光り放つ
一振りの刀剣の如く鋭い

※アドリブ、台詞改変可能



 避難を再開した聡子と文彦の姿に、美星・アイナ(インフィニティアンロック・f01943)は安堵の息を吐いた。
 嘲笑う翼怪の爪が迫る刹那、聡子は文彦を庇っていた。
 完全に意識がなく、今後も元に戻るか分からない恋人のために。
「強い愛情で繋がっている二人の縁。今まで悪意の糧として引き裂かれた人達の分も含めて傷付けた罪……許さないよ」
 アイナは煮え滾る怒りと共に、ペンダントに触れた。その刹那、意識が遠ざかり、代わりに現れた人格は断罪の刃携えた執行者だった。
 KillingWireを握り締め、レガリアスシューズを起動。嘲笑う翼怪の頭上に跳ね上がったアイナは、鋭くステップを踏むように二階攻撃を食らわせた。
 嘲笑う翼怪を足場に、再び跳躍。奇声を上げながら二人に襲いかかろうとする嘲笑う翼怪へ向けて鋼糸を放った。
 鞭のようにしなる鋼糸が、聡子に迫る翼を捕らえる。鋼糸から逃れようともがく嘲笑う翼怪へ向けてDeathBladeを向けた。
「悲しみの雫達よ、蒼穹に集え! 汝らの振り積むその想い、我が冷たく蒼い雨に変えて闇に放とう……さあ、蒼の雨の中で貴様の罪を数えな!」
 詠唱の直後、無数の青玉の矢が現れた。
 大粒の雨のように降り注ぐ青玉の矢の攻撃に合わせて、大鎌形態に変形させた黒剣を薙ぎ払う。
 消え去る嘲笑う翼怪の姿を確認したアイナは、敵の全滅を確認すると祭壇へ向き合った。
「でも、これで終わりじゃないでしょ。さっさと出てきな……恋人達の絆を踏み躙ったゲス野郎!」
 闇に光り放つ一振りの刀剣の如く鋭い眼光と共に言い放つ声に応えるように、祭具のナイフが怪しい光を発した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『大神霊』

POW   :    大神霊分裂増殖撃
自身の身体部位ひとつを【シャーマンズゴースト】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    大神霊巨鳥進化撃
【大神霊としての尊厳】に覚醒して【頭部と鬣はそのままに、燃え盛る巨鳥】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    大神霊超常災害撃
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は火奈本・火花です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 祭壇に突き刺さったナイフから溢れる光が、瘴気を伴い一つの形を作った。
 ゆらりと陽炎のように現れる巨大なシャーマンズゴーストの大神霊は、祭壇の上でくぐもった声を上げた。

「……我に捧げよ」

 両手を大きく広げた大神霊は、戦闘態勢を整える猟兵たちへ向けて厳かに言い放った。

「絆を捧げよ。愛を捧げよ。希望を捧げよ。人の絆は、死に直面した時に最も深く結ばれる。人の愛は、死に直面した時に最も美しく輝く。人の希望は、死に直面した時に最も強く希(こいねが)う」

 手にした黄金の髑髏が、怪しげな光を放つ。金の光を受けた大神霊は、逆光の中信者に説法する教祖のように続けた。

「千差万別の思い、千差万別の夢想で応えた時、我らの理想世界が樹立されるのだ。お前たちの絆を、愛を、希望を、我に捧げよ」

 低く大きな声を上げた大神霊は、祭壇から降り立つと杖を構えた。
當良邑・祈
人の精神を糧とし、見上げても余るほどの巨体、太陽を思わせる金色の光、
超大で、偉大で、尊大で
確かにこれはある種の神と崇め奉られるのも理解できた。
人の思いに、死にざまに、意味を持たせてくれる存在といえば聞こえは良かった。

「でも、私には要らない」
私が信じるのは人の築きあげた探求の道、積み重ねた知恵、極めた技術、

目の前の存在にゆだねれば、確かに楽に生きられるだろう。
それでも人の生きた意味はだれかに捧げず人の間でつないで行きたい。

目の前に存在に敬意を払い、しばし手を結ぶ、

「あのナイフが現世へのつながりなら、壊せば…」

神の如き存在に挑むため、まずは小細工から入る。
決死での突撃はそのあとだ

【連携苦戦等歓迎】



 現れた大神霊の姿に、當良邑・祈(サイボーグの化身忍者・f09602)は息を呑んだ。
 人の精神を糧とし、見上げても余るほどの巨体、太陽を思わせる金色の光。
 超大で、偉大で、尊大で。
 確かにこれはある種の神と崇め奉られるのも理解できた。
 人の思いに、死にざまに、意味を持たせてくれる存在といえば聞こえは良かった。
「でも、私には要らない」
 祈が信じるのは人の築きあげた探求の道、積み重ねた知恵、極めた技術。
 人は弱いものだ。己の心に他者の心に自信を持てず、不安と猜疑に囚われるのは苦しく、辛い。
 目の前の存在にゆだねれば、確かに楽に生きられるだろう。
 それでも人の生きた意味は、だれかに捧げず人の間でつないで行きたい。
 目の前に存在に敬意を払い、しばし手を結んだ祈は、目を開けると【降魔化身法】を詠唱した。
 神々しい大神霊の姿の対局を成すような、【妖怪】【悪鬼】【幽鬼】の姿を宿した禍々しい姿に変化する。
 代償として流血を受けながらも、祈は素早く考えを巡らせた。
「あのナイフが現世へのつながりなら、壊せば……」
 神の如き存在に挑むため、まずは小細工から入る。
 超強化された脚力で素早く回り込んだ祈は、羽手裏剣を祭壇のナイフへ叩き込んだ。
 無数の羽手裏剣は、普通のナイフならば一枚で簡単に折ってしまえるほどの威力がある。
 だが、ナイフは折れない。大神霊と一体となったナイフと祭壇は、オブリビオンを倒さなければ折れることはないのだ。
 ナイフを狙う祈に振り返った大神霊は、巨大な杖をシャーマンズゴーストの頭部の姿に変形させると祈へ向けて振りかぶった。
 超強化した反射神経で避けた祈は、改めて大神霊と向かい合った。

成功 🔵​🔵​🔴​

美星・アイナ
葵桜さん(f06218)と共闘

出てきたか、ゲス野郎
生憎アンタに捧げる絆も愛も希望も此方は持ち合わせて無いんでね
力ずくでも此処でお帰り願おうか

『・・・その口、永遠に閉ざしてあげる』

人格は第二章と同じ断罪の刃携えた執行者

レガリアスシューズを起動させ【地形の利用】で加速
【スライディング】からの踵で【踏み付け】
剣形態の黒剣で【2回攻撃】の【なぎ払い】

黒剣を振るいつつユーベルコード詠唱
錬成した赤水晶の欠片の炎を【一斉発射】し弾幕形成
その間に後方へ回り込んで大鎌形態に変形させた黒剣で【だまし討ち】
欠片を融合させ錬成した大型剣で【傷口をえぐる】

痛い?
でも聡子さん達の心の傷はもっと痛かった
因果応報、ね(冷笑)


榎木・葵桜
アイナさん(f01943)と一緒に!

絆も愛も希望も、互いに繋がりたい、離れたくないって思う気持ちで強くなる
それは確かにそう

でも、あなたに、人の想いの何がわかるっていうの
その想いをいいように使って踏みにじるなんて冗談じゃない
あなたは絶対に許さないんだから…!

真の姿を開放し、【巫覡載霊の舞】で神霊体に変身
見た目こそ変わらないれど、今までよりも力に満ちてる
この力であなたを打ち祓ってみせるよ

私はアイナさんへ攻撃が行かないようにできるだけ前に出て、敵の攻撃ひきつけるよ
どんなに強い攻撃を喰らっても【激痛耐性】があるから負けない
可能なら、アイナさんのユーベルコードと連携し【衝撃波を放つなぎなた】で攻撃するね



 大きく杖を振った大神霊は、攻撃の意思を見せる猟兵たちの姿に大きく吠えた。
「絆を捧げよ。愛を捧げよ。希望を捧げよ。その崇高な使命を理解せぬ愚か者共よ、ここで死ぬがいい!」
 【大神霊超常災害撃】を発動した大神霊は、杖を振ると氷の大津波を発動させた。
 地下室を埋め尽くすような勢いの津波が、猟兵たちを襲う。
 それだけで趨勢が決まってしまいそうな攻撃はしかし、本来の力を発揮できてはいなかった。
 最後の儀式では、血がほとんど流されていない。命中率を落とした攻撃を避けた美星・アイナ(インフィニティアンロック・f01943)は、断罪の刃携えた執行者の人格のまま吐き捨てた。
「出てきたか、ゲス野郎」
 レガリアスシューズを起動させたアイナには、生憎大神霊に捧げる絆も、愛も、希望も持ち合わせては無い。力ずくでも此処でお帰り願うことだけが、大神霊に期待することだった。
 氷の上を疾走するアイナに、大神霊は杖をシャーマンズゴーストの頭部の形へ変形させると鋭く突き出した。
 レガリアスシューズの推進力と氷の摩擦で勢いのついたアイナは、下手に避けると転倒の危険がある。
 ダメージを覚悟したアイナは、ふいに目の前に飛び出した榎木・葵桜(桜舞・f06218)の姿に目を見開いた。
 真の姿を開放し、【巫覡載霊の舞】で神霊体に変身した葵桜は、大神霊の攻撃を真正面から受け止めると背中を丸めた。
「アイナさん! 行って!」
 葵桜の意思を察したアイナは、葵桜の背中に手を突くと宙を舞った。
 視界から消えるアイナの姿を探し、羽手裏剣のダメージを回復させた大神霊は視線を宙にさ迷わせる。
 杖による食らいつきを激痛耐性でいなした葵桜は、胡蝶楽刀を大きく振るった。
「あなたの相手は私だよ」
 声とともに振るった衝撃波を放つなぎなたが、大神霊を薙ぎ払う。そのダメージに視線を落とす大神霊に、葵桜は怒りの目を向けた。
「絆も愛も希望も、互いに繋がりたい、離れたくないって思う気持ちで強くなる。それは確かにそう」
 唇を噛んだ葵桜は、震える拳を握り締めた。
 今までだって何度もあった。無力を噛み締め泣いたことも、力及ばずこぼれ落ちた命も。
 今までに経たたくさんの経験が、思い出が、その気持ちを確かに裏付けている。だからこそ。
「でも、あなたに、人の想いの何がわかるっていうの。その想いをいいように使って踏みにじるなんて冗談じゃない。あなたは絶対に許さないんだから……!」
「その思いを永久に留め、我が糧となることこそ人の子の至福。それを理解せぬ愚民ども……」
「……その口、永遠に閉ざしてあげる」
 ふいに響くアイナの声と同時に、大神霊の仮面が歪んだ。
 葵桜の背中を起点に空中を軽やかに跳んだアイナは、体をしなやかにしならせながら一回転。勢いを増したレガリアスシューズを大神霊の仮面に叩き込んだのだ。
 氷上に着地したアイナは、同時に氷を蹴ると剣形態に変化させた黒剣を抜き放った。
 DeathBladeの2回攻撃を杖の柄でいなし、勢いよく回転したシャーマンズゴーストの頭がアイナに迫る。
 その攻撃を、葵桜が受け止める。神霊体化によるダメージ軽減と激痛耐性で何とか耐えた葵桜の後ろで、赤水晶が生まれた。
「地に落ちた血涙達、姿を変えて此処に集え……行き場のない哀しみと怒り、水晶の炎に変えてここに放たん! さあ、骸も遺さず焼き尽くせ!」
 生まれた19個の赤水晶の欠片型の炎が、弾幕を張るように大神霊の視界を塞ぐ。
 生まれた一瞬の隙を突いたアイナは、大神霊の後方へ回り込むと大鎌形態に変形させた黒剣でだまし討ち、更に欠片を融合させ錬成した大型剣で傷口をえぐる。
 鬼気迫る連続攻撃に思わずゆらめいた大神霊に、アイナは口角を上げ、氷の微笑を浮かべた。
「痛い? でも聡子さん達の心の傷はもっと痛かった。因果応報、ね」
「この力で、あなたを打ち祓ってみせるよ」
 姿こそ変わらないものの、今までよりも力に満ちた葵桜の姿に、大神霊は氷の津波を消し去ると岩石の嵐を全方位に向けて放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウインド・ノーワルド
真の姿を開放して戦わせてもらいましょうか。眼鏡も外して、黒い風そのものに
攻撃するときは元の姿に戻りますがね。何故私がウインドと名乗っているかと言えば、こういう事ですよ…!
さっさとご退場願いましょうか、大神霊

吹き荒れる風になって状況に合わせた【属性攻撃】をばら撒きながら着実に相手の力を削いでいきましょう
相手のユーベルコードに対しては【黒圧の風】を使えるように供えておきますが
こちらの本命は【黒滅の風】。隙を見計らい、普段よりも強烈な風を纏い
【鎧砕き】と【属性攻撃】を伴った強烈な一撃をねじ込ませてもらいますよ

絆も愛も希望も、それぞれ全部皆のもの
てめぇなんかに何一つ譲りはしねぇよ

※連携やアドリブ歓迎



 氷の津波の拘束から逃れたウインド・ノーワルド(自称ドクター・f09121)は、続いて迫る岩石の嵐に真の姿を解放した。
 眼鏡も外して、黒い風そのものに変化したウインドは、迫る岩石の嵐へ向けて【黒圧の風】を放った。
「氷の津波で、人を足止めしてくれやがりましたお礼ですよ」
 飄々とした声とともに、大神霊が放つ岩石の嵐と同じだけの量の岩の礫を生み出す。
 迫る岩石の嵐と、黒い風を纏った岩石と。同じ質量、同じ勢いの岩石を正確に当てて相殺したウインドは、広範囲に広がった風を己へ戻すと一気に間合いを詰めた。
 大神霊の眼前で突然元の姿に戻ったウインドは、大神霊に向かって微笑んだ。
「何故私がウインドと名乗っているかと言えば、こういう事ですよ……!」
 属性攻撃を乗せた鎧砕きの拳が、大神霊の仮面に突き刺さる。
 シャーマンズゴーストの杖で振り払った時には既に黒い風の姿になったウインドは、後ろに回り込むと再び属性攻撃を叩き込む。
「さっさとご退場願いましょうか、大神霊」
「ええい、小うるさい……!」
 ヒットアンドアウェイに苛立った大神霊が、大きく杖を振りかぶる。
 その隙を突いたウインドは、最初に撃った仮面の前で姿を表わすと拳に特大の大きな風を纏わせた。
「黒き風は過去を滅する烈風となる。なーんて、ぶん殴るだけですが、ね」
 鎧砕きと属性攻撃を乗せ、普段よりも強烈な風を纏った拳が、がら空きになった大神霊の仮面に大きくねじ込まれる。
 ヒビの入った仮面に手を当てて大きくわななく大神霊に、着地し姿を表したウインドは指を突きつけた。
「絆も愛も希望も、それぞれ全部皆のもの。てめぇなんかに何一つ譲りはしねぇよ」
「許さぬ……! 貴様ら、許さぬ!」
 大きく吠えた大神霊は、全身に炎を纏わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 連続する猟兵達の攻撃に、大神霊はその巨体を大きく震わせた。
「貴様らの絆も、愛も、希望も! 我が炎に焼き尽くされ、塵となり消え去るがいい!」
 大神霊が大きく振った杖が、炎に包まれる。
 杖だけではない。胴も、羽も、頭部と鬣はそのままに、燃え盛る巨鳥に変身した大神霊は、その圧倒的な熱量で猟兵達に迫る。
 【大神霊巨鳥進化撃】を前に、猟兵達の戦いは終盤を迎えようとしていた。
コーディリア・アレキサンダ
【かもめ亭の仲間と同行】


人の絆も、愛も、その人の物だ
キミが自分の都合でもらっていい物じゃない
そんなに欲しいのなら、せめて自分が愛されるべきだったね

やあ、まだ続いているかい?
そろそろボクも混ぜてもらうよ

――そんなに希望が欲しいなら見せてあげよう
ボクらこそが希望だ、オブリビオン


『全智の書』を起動
ボクの中に住む悪魔よ、アレを打倒しうる手段を講じろ
却下、それも却下――――燃える双眸、キミの献策を実行する

燃え盛る巨鳥に対し、巨大な炎の塊をぶつけて撃ち落とすよ
完全に鎮火とまではいかないにせよ、衝突による爆破で纏った炎も散るだろうからね
勿論、練り上げた〈全力魔法〉だ。この一撃で幕引きにしよう


十葉辻・祓
【かもめ亭の仲間と同行】
ああ、ああ、もしかして。今はとても良いところだね?
舞台は大盛り上がりで、まさにクライマックスだ。
そこへちょいとお邪魔して、美味しいところを頂いてしまおうかね。

絆に愛に、希望が欲しいと。もらえぬならば焼き尽くそうと。
いやあ、何とも愉快な鳥さんだ。
まるでこじらせた中学生のようだ
もしかして、友達とかいないのだろうか……
いや、すまない失言だったね。忘れてくれるかい?

ま、そんな感じで挑発してこっちに向かってきたら
【流転輪廻】で残像を身代わりにカウンターを食らわせるとしようかね。

ザクザクと刀で切ったり飛んだり跳ねたり攻撃したりもできそうならやっちゃおう。

アドリブ絡み歓迎だよ


鳴宮・匡
【かもめ亭の仲間と同行】


人が抱えて生きてきた証は、そいつだけのものだ
お前が勝手に消費していいものじゃないぜ

前に出たメンバーと敵の交戦の様子を見て
敵の動きの癖や行動パターンを観察
適時、味方が致命打を受けないように注意喚起しつつ
相手の動きを制限する形で【援護射撃】を

明日嘉が敵のユーベルコードと交錯
動きが止まった瞬間を見計らって【抑止の楔】
相手の勢いを削ぎにかかるぜ
獲物に食らい付く瞬間は、どうやったって動きを止めざるを得ない
神と名のつくものであっても、例外じゃないだろ
ああ、いい的だぜ、お前

そんじゃ、仕上げは任すとするよ
店長(コーディリア)、頼んだぜ
でかいのぶちかましてくれよ
灰も遺さないように、さ


太刀川・明日嘉
【かもめ亭の仲間と同行】
死に直面した時の希望なんて、ろくなことにならないのに、嫌ね
絆も、愛も、願いも、死の前では無為だったのよ
あなたの全てを否定するために、私はいまここに居る!

前に出て大神霊の攻撃を引きつけるわ
他の猟兵に攻撃をするなら割って入って庇うわね
敵の攻撃は黒剣・百花繚乱で受ける
攻撃を受けても、激痛耐性があるもの
立ち続けてみせるわ

大神霊のユーベルコードに対しては黒剣解放・梅をつかって防ぐわ
残念だけれど、今の私はあなたには食べられないの
ここに居るけど、ここには居ないから
これなら吸収されないんじゃないかしら

私が仲間を守れば、仲間が敵を倒してくれる
そうでしょ?


美星・アイナ
見苦しいし、果てしなく耳障りだわ
塵となって消え去るのはあんたの方よ

ペンダントに触れて執行者からシフトする人格は
罪人に死を告げる天の御使い
『お前が堕ちるのはこの世界の最果て、その最も深き冥府だ』

レガリアスシューズを起動
【地形の利用】を駆使し壁や祭壇、瓦礫を足場にしながら
鋼糸で【鎧無視攻撃】
羽や嘴、二の足、首元に糸を絡ませながらユーベルコード詠唱

青玉の矢の雨と合わせて剣形態の黒剣で
【2回攻撃】の【なぎ払い】で【傷口をえぐる】

この雨は聡子さんと文彦さん
そしてお前に引き裂かれた恋人達の流した涙だ
神を騙りし重き罪・・・此処で磔刑に処す!

状況終了後犠牲となった恋人達の冥福を祈る

※アドリブ、他猟兵との絡み可


八坂・操
【WIZ】

ヒヒヒヒヒヒッ! 我に捧げよ、捧げよだって! 教えに狂った宗教家は言う事も不遜だね☆
……ああ、不快だ。都市伝説の原因なんて、陳腐なものだと相場が決まっている。だけアンタは聊か陳腐が過ぎるよ。

数多の意思を蒐集? 結構結構。自分に力がない事を自覚し、他人に頼る……奪う分だけ、鳥頭じゃあないな。
故に問う。
「他人様の意思で育て上げた理想世界は、本当にアンタの理想なのか?」
他を恐れよ、多を畏れよ、汰を懼れよ。
十人十色、千差万別、千姿万態。
何もかもが異なる意思は、集えば必ず牙を向き、己の意思など容易く淘汰する。

教えが歪む事に『恐怖を与える』。精々【怪異】の中で埋もれぬ事を祈るんだな。



 炎の嵐が吹き荒れた。
 怒りの炎と化したような大神霊が放つ炎の圧を前に、鳴宮・匡(凪の海・f01612)は怯まず立ち向かった。
 【巡るかもめ亭】の仲間とともに熾烈な攻防を繰り広げていた匡は、冷静に大神霊の動きの癖や行動パターンを観察しては仲間に注意喚起を行っていた。
 散開した仲間たちが致命傷を免れたのを確認した匡は、FMG-738の狙いを定めた。
「人が抱えて生きてきた証は、そいつだけのものだ。お前が勝手に消費していいものじゃないぜ」
 大神霊の気を引くように叫びながら放つ援護射撃が、大神霊の杖へ吸い込まれる。
 振りかぶりを邪魔された大神霊は、匡の方へゆっくり振り返ると改めて杖を構えた。
「まずはお前から、打ち砕いてやろう!」
大きく吠える声と共に、炎に包まれた巨大な杖が匡に迫る。鋭い嘴が匡を捕らえる瞬間、太刀川・明日嘉(色を失うまで・f01680)が割って入った。
「匡くん!」
 匡の前へ出た明日嘉は、黒剣・百花繚乱を腕に沿わせるように構えると【黒剣解放・梅】で攻撃を受け止めた。
 全身を多次元霊体へ変化させた明日嘉に、超強化された大神霊のユーベルコードはが迫る。
 丸呑みしそうな勢いの攻撃はしかし、無敵化した明日嘉を飲み込むことはなく、その代わり加わる万力のような圧に明日嘉は歯を食いしばって耐えた。
 大神霊と、視線が一瞬交錯する。
「残念だけれど、今の私はあなたには食べられないの。ここに居るけど、ここには居ないから」
「ぬかせ。食えねばその心ごと折るまでよ!」
 締め付ける圧が強まり、口の端から苦痛の呻きが漏れる。その声に気を良くした大神霊は、高らかに笑った。
「死ね! ここで我が贄とがいい!」
「……死に直面した時の希望なんて、ろくなことにならないのに、嫌ね」
 絆も、愛も、願いも、死の前では無為。無為なものを蒐集するこの大神霊は、所詮は虚ろ。
「あなたの全てを否定するために、私はいまここに居る!」
「ああ、いい的だぜ、お前」
 明日嘉の陰から躍り出た匡は、FMG-738を構えた。
 獲物に食らい付く瞬間は、どうやったって動きを止めざるを得ない。神と名のつくものであっても、例外ではない。
 拳銃から放たれる弾丸が、【抑止の楔】となり大神霊の攻撃力を削ぐ。
 全身を包み、接近を許さなかった大神霊の炎の圧が弱まる。その隙に歩み寄った十葉辻・祓(修祓・f00582)は、まるで演者を褒め称える観客のように大きな拍手を大神霊に送った。


「ああ、ああ、もしかして。今はとても良いところだね?」
 長く続いた舞台は大盛り上がりで、まさにクライマックス間近、といったところだ。
 そこへちょいとお邪魔して、美味しいところを頂いてしまおうかね。クスリと笑った祓は、大仰な動作で肩を竦めた。
「絆に愛に、希望が欲しいと。もらえぬならば焼き尽くそうと。いやあ、何とも愉快な鳥さんだ。まるでこじらせた中学生のようだ」
 小馬鹿にする祓の声に、周囲からクスクスと賛同する笑い声が響く。場に満ちる嘲笑に、大神霊はピクリと身動ぎした。
 その姿に、祓はふと真剣な表情になると口元に手を当てた。
「もしかして、友達とかいないのだろうか……いや、すまない失言だったね。忘れてくれるかい?」
「我を愚弄するか小娘ぇっ!」
 場の空気を響かせながら怒鳴った大神霊は、明日嘉の体から杖の食らいつきを解除した。
 炎のシャーマンズゴーストの頭を持つ杖が祓に迫る。唸りを上げながら迫る杖は、祓の体を捕らえて壁へ叩きつける。
 だが、そうはならなかった。
「では、お返しだ」
 壁に叩きつけられたはずの祓の体が、ゆらりと消える。
 【流転輪廻】により残像を身代わりとした祓は、構えたサムライブレイドを大きく振り切った。
 超高速かつ大威力の一撃が、大神霊の杖を粉々に打ち砕く。
 己の象徴であり、最も信頼する得物を砕かれた大神霊が口を開く瞬間、耳障りな嗤い声に動きを止めた。
「ヒヒヒヒヒヒッ! 我に捧げよ、捧げよだって! 教えに狂った宗教家は言う事も不遜だね☆」
 心から楽しそうに笑った八坂・操(怪異・f04936)は、ふいに眉を顰めると自分の腕をさすった。
「……ああ、不快だ。都市伝説の原因なんて、陳腐なものだと相場が決まっている。だけどアンタは聊か陳腐が過ぎるよ」
 数多の意思を蒐集? 結構結構。自分に力がない事を自覚し、他人に頼る……奪う分だけ、鳥頭じゃあないな。
 そう判断した操は、すっと目を開くと自身の周囲に呪具を展開した。
 自分で判断を下せる知的生命体(?)ならば、恐怖の感情も知るだろう。
 知らねば、教えてやれば良い。
 操の周囲に浮かぶ、十二の呪具から放たれる156の『恐怖』が一斉に大神霊を取り巻いた。
「他人様の意思で育て上げた理想世界は、本当にアンタの理想なのか?」
 他を恐れよ、多を畏れよ、汰を懼れよ。
 十人十色、千差万別、千姿万態。
「何もかもが異なる意思は、集えば必ず牙を向き、己の意思など容易く淘汰する。その時、アンタは耐えられるかな?」
 呪具から溢れ出す恐怖が、次々に大神霊の炎の中へと潜り込む。
 本来、大神霊クラスのオブリビオンは滅多に恐怖を感じたりしない。挑発に反応することはあっても、恐怖という己を形作る感情の一角に対しては耐性があると考えて良い。
 だが。
 これまで何度も放ってきた必殺の一撃は防がれいなされ、大神霊を否定する猟兵達の声を後押しする結果となっている。
 多数の口から叫ばれる、多数の己を否定する声。それに確かに押されている自分。教えこそ歪むことはないが、156の意思は確かに大神霊を恐怖させた。
「耳障りな呪具どもめ、塵となり消えろ!」
 恐怖を振り払うように大きく羽根を広げようとした大神霊はしかし、細い糸でその動きを阻害された。


「見苦しいし、果てしなく耳障りだわ。塵となって消え去るのはあんたの方よ」
 猟兵達のやりとりを聞いていた美星・アイナ(インフィニティアンロック・f01943)は、動きが止まった隙きを突きレガリアスシューズを再起動させた。
 同時に、ペンダントへ触れる。執行者からシフトする人格は、罪人に死を告げる天の御使い。
『お前が堕ちるのはこの世界の最果て、その最も深き冥府だ』
「ぬかせ!」
 鋼糸を引きちぎってアイナへ炎の烈風を放つ大神霊の攻撃を避け、壁や祭壇、瓦礫を足場にしながら再び鋼糸を放つ。
 羽や嘴、二の足、首元に糸を絡ませるアイナの動きに合わせて、人影が動いた。
「そろそろボクも、混ぜてもらうよ」
 コーディリア・アレキサンダ(亡国の魔女・f00037)の放つ大鷲の翼の一撃が、鋼糸を焼き切ろうとする大神霊の翼の根本を狙い撃つ。
 杭のように突き刺さり、壁に縫い付ける杖に、罪を穿つ青玉の雨が降り注いだ。
 猛烈な雨が炎の羽根を穿ち、壁際に追いやられた大神霊を打ちのめす。
「この雨は聡子さんと文彦さん、そしてお前に引き裂かれた恋人達の流した涙だ」
 詠唱を終えたアイナは、DeathBladeを剣形態に変化させると身動きの取れない大神霊へ連続攻撃を仕掛けた。
 二階攻撃からのなぎ払いが傷口をえぐり、羽根に、仮面に、無数の傷を穿ってゆく。
 徐々に小さくなる巨体に、アイナは黒剣を握りしめると床を蹴った。
「神を騙りし重き罪……此処で磔刑に処す!」
 止めの一撃に、大神霊の仮面に大きなヒビが入る。
 大きく深い叫び声が、戦場に響いた。
 消えゆく大神霊の姿に、アイナは距離を取った。
 このまま消えるかと思われた大神霊はしかし、手にした金色の髑髏を握りつぶした。
「貴様ら……道連れにしてくれるわ!」
 金色の髑髏から溢れ出した力を捕らえた大神霊は、己の存在全てで吸収するとその身全てを巨大な炎の隕石へと変化させた。
 大神霊の姿が、全てを焼き尽くす巨岩に変化する。
 存在全てと己の魂を撚り合わせた攻撃は、今までのどの一撃よりも重く、絶対に外すことはない。
 あのユーベルコードを受ければ、ここまでの戦闘で消耗した猟兵達はひとたまりもない。
 正に捨て身の一撃。
 回避行動を取る猟兵たちの前に出たコーディリアは 『全智の書』を起動させた。
「ボクの中に住む悪魔よ、アレを打倒しうる手段を講じろ。却下、それも却下――――燃える双眸、キミの献策を実行する」
 全てを焼き尽くす巨大な炎の隕石が猟兵へ向けて放たれる寸前、巨大な炎の塊がコーディリアの前に現れた。
「――そんなに希望が欲しいなら見せてあげよう。ボクらこそが希望だ、オブリビオン」
 コーディリアの声と同時に、炎の塊が炎の隕石へとぶつけられる。

 衝突。爆破。

 視界を奪う炎の激突に、世界が白く塗りつぶされる。
 衝撃波が去った時、真っ二つに折れたナイフだけがその場に残されていた。


 大神霊の完全な消滅を見届けたコーディリアは、残されたナイフをそっと見下ろした。
 今はもう何の呪力も感じられない鉄の塊。多くの命を奪った呪具をじっと見つめたコーディリアは、消えた大神霊に向けて呟いた。
「人の絆も、愛も、その人の物だ。キミが自分の都合でもらっていい物じゃない。そんなに欲しいのなら、せめて自分が愛されるべきだったね」
 コーディリアの隣に立ったアイナは、犠牲となった二十四人にそっと目を閉じた。
「せめて、安らかに……」
 アイナの祈に応えるように、ナイフから小さな光が溢れ出した。
 二十四個の小さな光は、くるくると回りながら猟兵達の周囲を飛び回る。
 一人ひとりに礼を言うように跳び回った小さな光は、やがて静かに消えていく。
 その光を見送った猟兵達は、立ち上がると何もなくなった地下室を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月03日


挿絵イラスト