チョコレートキャラバン〜幌馬車荒野行〜
#アポカリプスヘル
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いつになくグリモアベースには甘い香りが漂っていた。
香りの元をたどれば、そこにはうず高く積まれた箱の山。
「チョコレートってね、非常食にも向いてるんだ。これをアポカリプスヘルに送ろうと思う。協力をお願いしてもいいかな?」
箱の山の前に立っていたシトラ・フォルスター(機械仕掛けの守護者・f02466)は、猟兵たちの気配に気づいて振り向いた。
そう、箱の中身はチョコレート。
少量でも高エネルギーであることから登山家や軍隊の携行食としても使われている。ポリフェノールたっぷり。含まれるテオブロミンには精神的ストレスをやわらげる効果もあるという。荒廃と慢性的な栄養不足に苦しむアポカリプスヘルの住民たちにとっては、滅多に口にできない貴重な甘味だ。
救援物資として送るのにちょうど良い要素を兼ね備えている。
ただここに、ひとつの問題が発生する。
普段、任務に持っていく程度の荷物ならいい。
グリモア猟兵が大量の物資を転移させた場合、アポカリプスヘルでは『オブリビオン・ストーム』を引き起こしてしまうのだ。発生した暗黒の竜巻は世界を切り裂く。破壊されたものはオブリビオンへと変化して人々を襲う。
救う対象を危険に晒してしまっては本末転倒だ。
「そこで今回の作戦だよ」
今回支援する町の周りには荒野が広がっている。まずはそのド真ん中にある洞窟に猟兵ごとチョコレートを転移させる。
当然の結果としてオブリビオンストームは発生するが、そこに人はいない。洞窟の中で竜巻が止むのを待ち、チョコレートを運びながらオブリビオンを殲滅していけば物資だけを町に運ぶことができる。
「幌馬車を用意したから必要な人は言ってね。自分の乗り物や動物を使ってもいいよ。情報によると町の人口は1000人以上。少し前のデータだから今はもっと増えているかもね。より多くのチョコレートを運んでほしい」
作戦を一通り説明し終えてから、シトラは思い出したように付け加えた。
「そういえば、そろそろバレンタインデーやホワイトデーだよね。この地域にそういった文化は元々無かったみたいなんだ。この機会に何か新しい伝統とそれにまつわるイベントを作ったらどうかな。チョコレートを食べたことのない人も多いそうだから、何かきっかけがあったほうがいいと思うんだ」
猟兵の考えるアポカリプスヘルのための新しい伝統。
いったいどんなイベントになるのだろうか。
「そのためにもまずは輸送、頑張ろう!」
シトラはチョコレートの山と猟兵を送り込むべく、オレンジのグリモアを輝かせた。
氷水 晶
食糧不足に苦しむ町へチョコレートを運びましょう。
輸送と殲滅、両方こなしてもどちらかに専念してもOKです。
●幌馬車レンタル
希望される方は2頭立ての幌馬車を利用できます。
操縦や動物に関連する技能があれば自在に操れますが、なくても目的地に向けて走らせることは可能です。貨車だけ借りてお手持ちの動物や車両などで引くこともできます。
借りなくても装備品などで事足りる方、殲滅や護衛、他の役割の予定ならば無理にレンタルしなくても構いません。
省略文を用意したので文字数の削減にお使い下さい。
『借:幌馬』=『幌馬車と馬を借ります』
『借:幌』=『幌馬車のみ借ります』
『借:馬』=『馬のみ借ります』
●第1章『荒野越え準備』
洞窟で竜巻が収まるのを待ちながら移動の準備をしましょう。
道中は酷暑の上に悪路です。チョコレートを積む場合、それらの条件を考えるといいでしょう。またユーベルコードの中に搬入する場合は、第2章でも同じユーベルコードを使う必要があります。技能中心で操縦&敵の排除を行える方や協力者が得られる方向きの行動となります。
輸送以外を考えている方は荷運びや梱包のお手伝いをお願いします。
●第2章『幌馬車荒野行』
オブリビオンを殲滅しながら荒野を越えましょう。
焼けつくような酷暑の中、砂塵が舞い大小の岩が転がっている地形となります。
朝の薄暗い内に出発して日の沈む頃に到着する見通しです。
基本的に集団での行動となります。それ以外を希望する場合はプレイングにご記載ください。
●第3章『新しい伝統を作ろう』
元々、バレンタインデーやホワイトデーが根付いていなかった地域のようです。この世界の希望となるように新たな伝統を創出しましょう。
POW/SPD/WIZの選択肢はあまり気にせず、やりたいことを重視して下さい。
町の人口は1000人以上。空腹で心に余裕のない人、チョコレートを食べたことのない世代や、甘いものが苦手な大人もいます。多くの人が楽しめるようなイベントにしてみて下さい。一定数以上のチョコレートを確保できていれば、猟兵の皆さんも一緒に楽しんで下さって構いません。
なお、グリモア猟兵のシトラ・フォルスターもその辺をうろついています。お手伝いや試食が必要になりましたら、お呼び下さった場合のみ駆け付けます。
第1章 冒険
『長距離行軍、よーい!』
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POW : 険しい地形を装備や身体能力で踏破し進もう。
SPD : 周囲の警戒を密にしつつ迅速に進もう。
WIZ : 急がば回れ、適宜休息を挟みつつ進もう。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●荒野越え準備
巨大な獣がうなっているかのような音だった。
数メートル先すら見通せない、暗黒の竜巻がアポカリプスヘルの荒野を吹き荒れている。
それでも風は洞窟の中までは吹き込んでこなかった。静かに揺らめく松明の明かりに、幌馬車をまるごと数十台は収められる空洞が照らし出されている。
グリモアベースから転移してきた猟兵たちは、早速準備に取り掛かる。
夜が明けて風が静まるまでに荷造りを終えねばならない。
時間にはまだ余裕がありそうだが、これから越えるのは荒れ果てた地。砂塵が舞い、灼熱に晒され、大小の岩が転がる未開の地。そこをオブリビオンを殲滅しながら進むことになる。
希望者には2頭立ての幌馬車を貸し出してくれるそうだ。
準備は入念にしておいたほうが良いだろう。
猟兵の後を追うように、救援物資のチョコレートの箱が次々と転移されてくる。
さて、これをどうやって運ぼうか。
アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎
『借:馬』
多くを運ぼうとすると、管理できずに痛めてしまう可能性があります。
私一人でも大丈夫なように、今回は馬に荷物を載せて目的地へと向かいましょう。
太陽照り付ける酷暑の中を、対策もなしにただ歩を進ませるだけでは直ぐにチョコがダメになってしまう事は目に見えています。
無理をしないよう適宜休憩する事を決めて、あとは威力調整をしたホワイトファングをチョコへ放ち、冷蔵配送を心がけます。
もしチョコの管理や荒野の移動に手間取っている方がおりましたら、手伝いを申し出ましょう。
私一人では険しい道中であっても、仲間がいればこれほど心強いものはありませんからね。
●キャラバン
やってきたのは暗色の毛並みに流星鼻梁白――鼻先に向かって白い筋が流れる模様の馬だった。
馬車を牽くためにがっしりとした太い脚をしている。サラブレットより体高は低いが、いかにも丈夫で乗り回し易そうだ。褐と黒が混じったつややかな毛並みは光の加減で青みがかる。
顔の横で編んで垂らした、自分の紺桔梗色の髪ともどこか似通って見えた。
「今日はよろしくお願いします。無理をしないよう、適宜休憩しながら行きましょう」
アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)はそう挨拶して馬の首に触れる。隆々とした筋肉と暖かい体温が薄手の手袋越しに伝わってきた。
アリウムは馬のみを借りる事にした。
馬の背に鞍と鞄をつけてから、隣でチョコレートの箱の封を解く。
「(ひとりで多くを運ぼうとすると管理しきれず痛めてしまう可能性がありますからね。高温でチョコレートが溶けてしまえば、すぐにダメになってしまう事は目に見えています)」
冷めやすく温まりやすい。そんな特性を持った砂と岩盤の大地は太陽に照り付けられれば、あっという間に酷暑に見舞われるだろう。
チョコレートをひと箱取り出して、威力を慎重に調整したユーベルコード『ホワイトファング』を放つ。アリウムの指先から白い霧のような空気が生み出され、箱表面を伝って包み込む。
およそ2℃~6℃。
冷凍室までいかない、冷蔵庫の温度に冷やした箱を馬の鞄に詰め込んでいく。
「冷たくはありませんか?」
鞄の中の温度を調整しながら、ふと視線に気づいてアリウムは声をかけた。長い睫毛に囲まれた馬の大きな瞳がゆっくりとしばたく。動物の言葉こそ分からないがどうやら落ち着いているようだ。
今こそ多少違和感を感じるかもしれないが、道中では馬の熱中症対策にもなるだろう。
「もし道中、チョコレートの管理や移動に手間取る方がいれば手伝いを申し出ましょう」
フットワークを重視して周りのフォローができる余力を残しておく。過酷な道中ではきっと役に立つ考え方だろう。
ひとりで過酷な大地は越えられない。だから古の商人たちは『キャラバン』を組織して、お互いと商品を自然や盗賊の脅威から守りあったそうだ。
「(私一人では険しくとも、仲間がいればこれほど心強いものはありませんからね)」
周りの仲間の様子にも気を配りながら、アリウムは準備を進めていった。
大成功
🔵🔵🔵
薄荷・千夜子
借:幌馬
涼鈴さん(f08865)とひかるさん(f07833)と
チョコのお届け行かぬ選択肢はありません!
はわー……うちの子たちに事前に辺りを調べてもらおうかと思いましたが予想以上に嵐が酷いですね
ひかるさんにお願いした方がよさそ……あー!気持ちは分かりますが涼鈴さん味見はだめですよ!
うまく運べれば着いたあとに食べれますよ!
自身の馬車と涼鈴さんの馬車にチョコを詰め込みつつ『藤巡華簪』を使い【ロープワーク】でしっかり固定
これで多少無茶しても大丈夫でしょう
移動はよろしくね、とお馬さんを撫でつつ【動物と話す】【動物使い】
(恐竜ロボを見ながら)……そうですね、ひかるちゃんは私と一緒に行きましょうか
劉・涼鈴
借:幌
ひかる(f07833)と千夜子(f17474)と一緒!
チョコを運ぶ季節外れのチョコサンタだ!
すんごい砂嵐ー!
あんな中を歩いたらジャリジャリになっちゃう!
チョコがじゃんじゃん転送されてくるー!
いい匂ーい! ……味見とか……だめ? だめかー……
ひかるー、チョコの精霊とかいないのー?
いないかぁ……
気を取り直して馬車に積み上げるぞー!
【怪力】も使って一気に持ち上げる! うおー!
……指についたチョコぺろぺろ
馬は借りなくてだいじょーぶ!
【デモリッション・ギガレックス】に牽いてもらうよ!
全長10mちょいのリアル恐竜サイズだからいっぱい載せてもへーき!
ぶー、どんな荒地も踏み砕いて爆走する最強なんだぞー!
荒谷・ひかる
涼鈴(f08865)と千夜子さん(f17474)と一緒に
本当にすごい砂嵐ですよね、涼鈴。
外の様子は大地の精霊さんが周辺の地形情報と一緒に教えてくれてますから、止むまでにしっかり準備を整えましょう!
チョコの精霊さんは……わたしの所には居ないかなぁ……
わたしは基本、輸送の補助に専念。
【闇の精霊さん】を発動し、時空の狭間に皆が持ちきれない分のチョコを格納。
涼鈴や千夜子さんの助けも借りてぽいぽい放り込みます。
あとは、わたしが現場にたどり着いて解放すればOKです。
馬車は千夜子さんのに同乗
だって、涼鈴の運転って間違いなく荒いですから……(遠い目)
●甘くほろ苦く
「はわー……」
入口の岩壁につかまるようにして、薄荷・千夜子(羽花灯翠・f17474)は洞窟の外を覗いた。
茶色の髪が強風になぶられる。小さな動物たちはおろか人間さえ、もしかしたら馬や馬車さえも空へと巻き上げられてしまうかもしれない。そんなひどい風が吹き荒れていた。
「すんごい砂嵐ー!!」
ごうごうと吹く風の音に負けずに歓声が上がる。この荒天を楽しんですらいるような声音の持ち主は劉・涼鈴(豪拳猛蹴・f08865)。千夜子の下から同じように岩壁をつかんで顔を出せば、高く結った銀色の髪が風に舞いあがった。
「こんな中を歩いたら、あっという間にジャリジャリになっちゃう!」
「本当にすごい砂嵐ですよね、涼鈴」
千夜子と涼鈴の間にひょこっと顔を出したのは荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)だ。三つ編みにした銀色の髪と巫女風の服の袖を押さえながら無邪気な涼鈴の言葉に答える。
3人連なって見あげた夜空は暗黒の竜巻と砂塵に覆われて、ぞっとするような叫び声をあげていた。舞い込んだ砂粒が休む間もなく頬を叩く。
赤いチャイナドレス姿の涼鈴がふるりと震えたのも無理はない。時刻は夜明け前。黒い風と共に冷気も一緒に吹き込んでくる。
「うちの子たちに辺りを調べてもらおうかと思いましたが……一度中に戻りましょうか」
冷えきった涼鈴の両肩を手の平で包んで千夜子が提案する。
ひかるは風の向かう先へと精霊杖を差し伸べて頷いた。
「そうですね。外の様子は大地の精霊さんに教えてもらいましょう」
精霊を風の向こうに送り、3人は洞窟の中へ引き返した。
戻ってくると、洞窟内には2台の幌馬車が用意されていた。
木製の太い車輪の上には荷台と御者台。その上を厚手の丈夫な防水布がアーチを描いて覆っている。前方に伸びた梶棒(かじぼう)に馬を繋げば動かせそうだ。
次々に転送されてくる箱を、涼鈴が持ち前の怪力で荷台に運ぶ。それを千夜子がロープワークを使って動かないように固定する。
3段重ねの箱を一気に運びながら、涼鈴は天井を仰ぐように空気を吸い込んだ。甘くほろ苦い香りが胸いっぱいに満たされる。
「いい匂ーい! ……味見とか……だめ?」
降ろした箱の蓋をほんの少しだけ開けてみる。板チョコに製菓用のチョコレート。箱詰めされた高級チョコが詰められているのが見える。
不穏な動きの涼鈴に気付いて、ロープを結び終えた千夜子が顔を上げた。
「あー! 涼鈴さん、気持ちは分かりますがだめですよ! たくさん運べたら着いた後に食べれますから」
「だめかー……ひかるー、チョコの精霊とかいないの?」
「わたしの所には居ないかなぁ……。涼鈴、町へつくまでの我慢ですから」
同い年ながら大人びた笑顔でたしなめられてしまった。
一瞬しゅんとした涼鈴だったが、すぐに「うおー!!」と気を取り直して猛然と次の箱を取りにダッシュする。
その後ろ姿を微笑ましく見守って、千夜子とひかるは箱でいっぱいになった幌馬車を見あげた。
「積めるだけ詰め込めましたね。あとは――」
千夜子は結った髪から藤の花が揺れる花簪を引き抜いた。魔力を込めれば藤のつるが、時折紫の花を咲かせながら箱の山の上を枝分かれして覆っていく。2台の幌馬車の荷物が、ロープとつるの2重構造でしっかりと固定された。
額の汗をぬぐった千夜子に、ひかるが小さく拍手する。
「残りはこの子に収納すればいいですね。今日は機嫌が良いといいのですが」
宙に現れた小さな黒点は、ひかるの『闇の精霊さん』。
運べる量は精霊の気分次第なのが難点だが、ひかると千夜子がチョコレートの箱を放り込めば片っ端から飲み込んでいく。
「……ソコに投げこめばいいアル?」
両肩に箱を担いで涼鈴が戻ってきた。
見るからに、聞くからに様子がおかしい。
「……何か変なもの食べました? 涼鈴さん」
「ち、違うアルヨ! 誤解アル! 両手がいっぱいで――箱からこぼれたのをキャッチしようとシテネ!?」
漂う甘い香りに口の端についた決定的すぎる証拠。
慌てる涼鈴を前に、ひかると千夜子は思わず笑いだした。
手綱を引くまでもなく、千夜子の言葉に2頭の馬はついてくると大人しく頚木(くびき)に繋がれた。馬車を牽き慣れているのだろう。馬の中でも大柄でがっしりとした脚をしている。
「移動はよろしくね、お馬さん」
栗毛に葦毛の毛並みを撫でてやると、ふるる、と小さくいなないて答えた。コミュニケーションの取り易そうな穏やかな気質の子たちだ。
そんな馬たちがにわかに落ち着きをなくす。
「よーし、ギガレックス、いつでも発進できるね!」
隣の幌馬車を牽くのは巨大な二足歩行の影。真っ黒な装甲にかがり火を映し、低い天井に腰を屈めて竜巻に対抗するように吠える。涼鈴のユーベルコード『デモリッション・ギガレックス』によって作り出されたティラノサウルス型マシンだ。
「大丈夫、大丈夫だからね。食べられたりしないよ」
千夜子は馬たちの首を撫でて落ち着かせる。
闇の精霊を連れてやってきたひかるは並んだ幌馬車と幌竜車を見比べる。それから静かに千夜子の馬車に乗り込んだ。
「ぶー、なんでだー!!」
「だって、涼鈴の運転って、間違いなく荒いですから」
「……そうですね。ひかるちゃんは私と一緒に行きましょうか」
「どんな荒地も踏み砕いて爆走する、最強なんだぞー!!」
御者とギガレックスが猛々しく吠える中、『だんだん風が弱まってきた』と大地の精霊が知らせにやって来た。
大成功
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ニコリネ・ユーリカ
今日は花屋はお休み
私は荒野のトランスポーターよ
赤いキャップを被って気合十分
今日も一日ご安全に!(敬礼)
シトラさんのお話では酷暑の中、悪路を往くって
移動販売車『Floral Fallal』に【防具改造】を施しましょう
いつも生花を積んでいる庫内をチョコレート用に温度調整
ブロックタイヤに履き替え、マッドフラップを装着
ジュラルミンのアンダーガードを装けて砂塵対策もバッチリ!
つなぎ姿で台車に寝転がり、ボディ下を潜って施工
整備士は安全の為に汚れは厭わない
折角のチョコレートだもの、良い状態で届けるのは勿論
私達がこの時期に感謝や愛情を込めて贈るように大切に運びたい
指差呼称に祈りを込めて点検しまーす! ヨーシ!
●道は好むところによって易し
チョコレートがいっぱいに詰め込まれた箱を軽々と持ち上げて運んでくる。あっという間に20個近い箱を階段状に積み上げると赤いキャップのつばを上げた。
様になるツナギ姿で、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は愛車を見あげる。
「寄せ植えの植木鉢なんて、もっと重いことがあるもの!」
普段、この移動販売車で花を売っている時には想像しにくいだろう。緑のワンピースを着たたおやかな花売り娘は、なかなかどうして腕力があった。
袋入りの園芸用土に大きなシャベル。水でいっぱいのジョウロに花壇用のブロック――植物と付き合うに力仕事は避けては通れない。
そんな花屋は本日休業。今日のニコリネは荒野のトランスポーターだ。
波打つ淡い金の髪を手早く後ろでひっつめる。ツナギの襟を正し、きりっと敬礼。
「今日も一日ご安全に!」
さっそくニコリネは、移動販売車『Floral Fallal』のボディ下へともぐりこむ準備を始めた。
手際よくジャッキで車体を持ち上げると台車の上に寝転んだ。平坦な洞窟の床を滑らせて、車体の下まで移動する。仰向けに腕を持ち上げて、軍手をはめた細い指が重い工具を操る。
あらかじめ緩めたナットを外し、悪路を走れるようブロックタイヤに履き替える。砂塵対策にはマッドフラップを取り付けて、ジュラルミン製のアンダーガードで車体を守る。
「……よし」
ついでに幾つか点検を済ませると、車体の下から抜け出して黒い油に汚れた軍手を脱いだ。
整備士は安全の為なら汚れなど厭わない。なによりニコリネ自身、車が好きなのだろう。
好きでやっていることほど、いざという時の強みになる。それはチョコレートの管理方面にも生かされた。
「折角のチョコレートだもの。良い状態で届けたいわよね」
車の中へ戻ったニコリネは、普段は生花を積んでいる庫内をチョコレート用の温度へと調整する。花を長持ちさせるフラワーキーパーは冷蔵庫代わりとしても使える。
詰め込めるだけのチョコレートで庫内を満たせば、普段と違う種類の甘い香りがほのかに漂った。
「(私達がこの時期に感謝や愛情を込めて贈るように、大切に運びたい)」
ニコリネは祈りを込めて扉を閉ざす。
花とチョコレート。誰かに気持ちを込めて贈るもの。
「それじゃ、最終点検いきましょうか。愛情を込めて、指さし確認! ヨーシ!」
大成功
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ユディト・イェシュア
チョコレートを食べると幸せな気持ちになりますね
俺の故郷にもなかったのですが、初めて食べたときはこんなに美味しいものがあったのかとびっくりしました
是非ともこの世界の人々に届けてあげたいです
あの竜巻がこの世界に壊滅的な被害をもたらしたのですね…
まだ謎は多いですが、今は自分にできることをやるのみです
積み込みのお手伝いをします
チョコは暑さに弱いと聞きますし、とりあえず直射日光に当たらないように気をつけます
保冷材もいくつか持ってきましたので、少しでも役に立てば
道も悪いようですし、荷物が動かないようにしっかりとした箱に詰めるなど工夫が必要ですね
他の人のアイデアが良ければそれに協力します
アドリブ連携歓迎
●初めて食べた味
故郷にチョコレートはなかった。
初めて食べたとき。口の中に広がった味にびっくりした。
世の中にはこんなに美味しい物があったのかと、幸せな気持ちになったのを今でも覚えている。
鼓膜を引き裂くような風と音だった。砂粒が絶えず頬を叩き、遠くからは地響きが靴底にまで伝わってくる。
「あの竜巻が、この世界に壊滅的な被害をもたらしたのですね……」
ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は黒く渦巻く夜空を見あげて、穏やかな表情をわずかに険しくした。
荒廃の元凶。オブリビオンを生み出し、人類を絶滅寸前にまで追い込んだ暴風。猟兵ですら命の危険を覚えるほどに荒れ狂う大気。今、この風に立ち向かうのは無謀と言っていいだろう。
しかし、この嵐に破壊しつくされた地球で禁忌に手を染めてでも生き残っている人々がいるという。
「……まだ謎は多いですが、今は自分にできることをやるのみです」
あの竜巻の原理を解明すれば、いつかは抑えこむ術が見つかるかもしれない。
一歩ずつ着実に、まずは手の届く範囲から始める。
ふと、初めて食べたチョコレートの味を思い出した。
心安らぐ甘さに芳醇な香り。幸せの記憶をたどれる味。
「是非ともあの感動を、この世界の人達にも味わってほしいですから」
自分の仕事をするべく、ユディトは洞窟へと踵を返した。
仲間の猟兵の馬車と車両が作る広い円の中心に、チョコレートの箱が続々と転送されてくる。
「チョコは暑さに弱いと言いますよね」
洞窟の中は涼しく、入口で感じた外の空気は凍えるほどに冷たかった。しかし、ひとたび陽が昇れば緑地に乏しい岩だらけの荒野はあっという間に灼熱の大地と化すだろう。
砂漠の特性とよく似ている。
ユディトはチョコレートの箱のひとつをあけると、余ったスペースに保冷剤を詰めた。全ての箱に入れるほどの数はないので、冷却手段を持たない輸送手段の猟兵の箱に優先して入れていく。
もっとしっかり固定できそうな箱を探していたユディトは足を止めた。
丈夫そうな作りの箱の中から白色のものを選ぶ。
真っ白な漆喰に守られた砂漠の家。太陽光を跳ね返し表面と内部の温度を下げる色。
「直射日光は出来る限り避けたいですからね」
詰め替えたチョコレートの箱を、ユディトは仲間の馬車へと運ぶ。
大成功
🔵🔵🔵
ジャスパー・ジャンブルジョルト
借:幌馬
馬が嵐のせいで興奮したり怯えてたりするかもしれないから、奇術刀(獣奏器)をひゅんひゅん鳴らして落ち着かせよう(【動物使い】【動物と話す】)。体力はしっかり温存しとけよ、おまえら。明日は長丁場になるからな。
その後はジンクスと一緒に馬車をチェック。とくに足回りは重点的に。道中で車輪が壊れたりしたら、シャレになんねーし。
チョコは複数の木箱に入れとくぜ。木箱の中には緩衝材兼断熱材のおがくずをたっぷり詰めてるから、悪路の衝撃や灼熱の日差しへの対策もばっちりだ!
よし、準備完了!
夜が明けるのが待ちきれないぜぇーっ!(食べ物がらみなのでいつになく張り切っている)
煮るな焼くなとご自由に扱ってください。
●風の歌
地上はとんでもない風なのだろう。遠く地鳴りのような音が洞窟の天井を震わせていた。
ねずみ色の体に白斑を散らした2頭の駁毛(ぶちげ)馬は身を寄せ合って佇んでいた。伏し目がちに、落ち着いているように見えて長い耳は立てたまま。左右別々に180度動かして、しきりに周囲を探っている。草食動物の彼らは非常に音に敏感だ。差し迫った危険は感じていなくとも、緊張状態にあるのは確かだろう。
そんな2頭が一斉に、耳を前へとそばだてた。
ひゅんひゅんひゅん……。
独特の風切り音。
ロープ状の物を振り回せば似たような音がするだろう。誰しも聞いた事のある音も、そこにリズムが伴えば音楽に変わる。
ケットシーの猟兵、ジャスパー・ジャンブルジョルト(JJ・f08532)ことJJはしなやかに手首を返しては、サーベルの先端で風を斬りつつやってきた。
手にした『名剣〈奇術刀〉』はゴム製の刀身の獣奏器だ。指揮棒のごとく動かせば、振動して音を奏でる。速度と角度を変えてやれば音程が生まれる。だんだんと、竜巻の音が伴奏のように聞こえだした。
馬たちはJJの演奏に聞き入った。段々と心地よくなってきたのか次第に耳が垂れてくる。
「そうか、おまえらは兄弟か。明日は長丁場になるからな、体力はしっかり温存しとけよ」
すっかりリラックスした馬たちにJJは動物の言葉で話しかける。
立ったままうとうとしはじめた馬の兄弟を横目に、JJは幌馬車へと乗り込んだ。
「出番だぜ、ネズ公」
呟きに応じてジュストコールから顔を出したのは老ネズミ。『ジンクス』という名の相棒は、茶色の毛並みに隠した瞳で荷台の中を吟味する。
「俺は足回りをチェックする。お前さんは荷台を隅々まで頼んだぜ!」
いつもはJJと仲良く喧嘩を始めるジンクスも、馬車が横転でもすればひとたまりもない。小さく鳴くと灰色の毛並みを伝って床に降り、荷台を隅から探りだす。
いかにも丈夫そうな馬車だった。木製の車輪と車軸にも歪みはなさそうだ。
JJは点検を済ませたその足でチョコレートを取りに行く。用意した木箱におがくずを詰めてから、チョコレートの箱を埋めていけば緩衝材を兼ねた断熱材になる。
甘くほろ苦い魅惑の香りが鼻をくすぐる。食べ物絡みの任務だけに、いつになくJJは張り切っていた。
「夜が明けるのが待ちきれないぜぇーっ!!」
木箱を豪快に荷台に降ろす――と同時に、『キィ―ッ!!!』と鋭い抗議の声。
荷台の手すりにぴったりと体をつけて、すんでの所で木箱を避けたジンクスがJJをキッと睨んだ。
「あっ、そこにいたのか。悪い悪い……って謝っただろ!?」
沸き起こった騒ぎに、よく眠っていた馬たちが大あくびしながら目を覚ます。
まもなく夜が明ける。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ゾンビの群れ』
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POW : ゾンビの行進
【掴みかかる無数の手】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 突然のゾンビ襲来
【敵の背後から新たなゾンビ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 這い寄るゾンビ
【小柄な地を這うゾンビ】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
イラスト:カス
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●幌馬車荒野行
仄暗い荒野に漂う朝霧は、明るくなるにつれて晴れていった。
竜巻はすっかり収まったが、代わりに本来の地表を吹く風が赤い砂塵を巻き上げる。気をつけなければ、大小転がった岩に車輪が乗り上げてしまうだろう。
太陽が昇ればひんやりとした空気は、途端にじりじりと熱せられる。
陽炎の昇る道なき道を、猟兵たちのキャラバンは進み始めた。
馬の常足(なみあし)に合わせれば、陽が沈むころには目的地まで着くだろう。
ところが、そうは問屋が卸さない。
「ぐ……おおお…………」
オブリビオンストームが切り裂いた赤い砂の大地から、灰色の手が伸びる。
呻きながら現れたのは、大量のゾンビたち。かつてここに住宅街があった頃、竜巻の犠牲となった人々の骸。
本気で馬を走らせれば、馬車の速度には追い付けない。しかし、彼らを生きている人々の元へ連れていくわけにはいかない。だからといって足を止めれば、たちまち数を頼みに囲まれてしまうだろう。更にゾンビたちは地面の何処から這い上がってくるか分からないのだ。
ゾンビの群れを殲滅しながら、足元にも気をつけて、チョコレートを守り目的地にたどり着く。
猟兵たちはこの無理難題に、どう立ち向かうのだろうか。
ニコリネ・ユーリカ
竜巻の犠牲となった人達、だとしても
これは今を生きる人達に届けなきゃいけないの
ごめんね、踏み越えます
ラリー仕様にした車輛の出番よ
囲まれないよう常に俊敏でトリッキーな走行を心掛け
無数の手をラリークイックで振り払い
敵躯をスピンターンで吹き飛ばす
UCでは慣性と重量を乗算したドリフトをブチかますわ
ドラテク(運転・操縦)には自信があるの
カップホルダーに入れたコップの水は……零れない!(ギンッ)
庫内のチョコを守りつつ、その荷重を武器に変えてみせる
鐵の塊に護られた私は地形に注意を
砂塵の中、ワイパーで視界を確保しつつ
最適な進路を選んで岩石を回避
救えなかった命を胸に刻んで進みましょ
次は振り払わず、手を差し伸べたい
●夜明けの始まり
生きている者とは違うと知っていてなお、ニコリネの心は痛んだ。
朝霧が流れて薄まりつつある中、おぼろに揺らめいているのは人の影。フロントガラス越しに聞こえてくるのはうめき声。破れた服に灰色の肌。崩れそうな体を引きずりながら、ゾンビたちが次々と赤い大地に姿を現す。
ニコリネはチョコレートを収めた庫内を一瞬だけ振り返った。
「(かつて竜巻の犠牲となった人達……だとしても、これは今を生きる人達に届けなきゃいけないの)」
おぼつかない足取りでは、到底ニコリネの駆るラリー仕様の移動販売車には追いつけない。だが、相手は数を頼みにやってくる。前後左右の地面から湧いてきては、体を張って行く手を塞ぐ。気づけば進行方向に、車体に向かって手を伸ばすゾンビたちがいた。
「ごめんね、踏み越えます……!!」
覚悟を決めてアクセルを踏み込んだ。
鐵の塊に護られたニコリネ自身は、窓でも破られない限り安全だろう。車のフロントを一旦外へと振ってから、逆方向へとハンドルを切る。
「ドラテクには自信があるの!!」
ラリークイックからのドリフト。
質量と速さの二乗。荷物をいっぱいに積み込み加速した車は、運動エネルギーそのものが武器となる。体を外へと引き延ばすGと食い込むシートベルトに耐えながら、ニコリネはハンドルを握りしめる。
伸ばされた手を体ごと振り払うように、リヤを大きく振った車体がゾンビたちの体を吹き飛ばした。ブロックタイヤが赤い砂塵を巻き上げる。あまりの衝撃に吹き飛びながら体の限界を迎えたゾンビたちが、灰と化して雪のように降った。
赤い砂と灰をワイパーでふり払い、一瞬で車の向きを変えたニコリネは再び加速する。ハンドルをさばいてスピンターンを決めながら、再びドリフトに入る。
加速されて線のように流れる荒野を背景に、ニコリネの目がフロントガラスの手前で焦点を結んだ。さざなみを立てるドリンクホルダーのコップの水面。重力に従って傾いたコップの水は……。
「……零れないっ……!!」
ブレーキとアクセルを細かく踏み替えハンドルを戻す。やや遅れて水平を取り戻した車体に、コップの中身は『とぷんっ』と波紋をひとつ、静まった。
フロントガラス越しに、雪のような灰が降りしきる。
救えなかった命。猟兵が来るよりずっと昔、失われてしまった命。
「次はきっと振り払わずに、救えるから」
砂塵の大地の向こうにあるという居住地はまだ見えない。
それでもあきらめず、走り続けていればいつか。
大成功
🔵🔵🔵
劉・涼鈴
ひかる(f07833)と千夜子(f17474)と一緒!
【デモリッション・ギガレックス】の背中に乗ってる!
操縦桿で操作するんじゃなくて、言葉で言うこと聞いてもらう操作方法だよ!
いっくぞー! 岩なんて踏み砕いちゃえ!
ぞんびだっ!
連れてっちゃダメなんだよね、蹴散らそう!
いっけぇぇぇ! ギガレックス! ジェノサイド荷電粒子砲だぁ!
口ん中に装備したビーム砲で【蹂躙】する!
引っ掴んでも噛みついても無敵の装甲には効かないぞ!
【踏みつけ】て蹴っ飛ばしてやる!
逸れちゃったヤツは千夜子たちに任せちゃう!
ひかるの草で足止めされて動けなくなったヤツらを荷電粒子砲で【なぎ払う】!
ふふーん、やっぱりさいきょーだね!
薄荷・千夜子
涼鈴さん(f08865)とひかるさん(f07833)と
馬を【動物使い】で操りながら涼鈴さんのギガレックスの後を追います
涼鈴さん、後ろは気にせずガンガンやってしまってくださいね!
涼鈴さんが蹴散らしてくれるので道から外れているゾンビを祓っていきましょう
ひかるさん、こちら馬の扱いを優先しますのでゾンビを確認したら場所を教えてください!
ひかるさんの精霊銃で確認できたゾンビたちめがけてUC発動
【属性攻撃】【破魔】を乗せて白の花弁に浄化の炎を宿しゾンビたちを燃やし尽くしてしまいましょう
彗も援護をお願いしますねと相棒の鷹に声をかけて『飛星流克』による【援護射撃】を
荒谷・ひかる
涼鈴(f08865)と千夜子さん(f17474)と一緒に
千代子さんの馬車に同乗
ユーベルコードはチョコの輸送で使えないので、精霊魔法と精霊銃で応戦
火力は出ないので、支援に専念します
索敵は大地の精霊さんの声を聞きます
地面は全て大地の精霊さんの目耳であり、肌でもある
たとえどれほど見えにくくても見逃しません
そして教えてもらった地点へ向け、草木の精霊さんの力を宿した弾を撃ち込みます
これは着弾地点の養分を元に急速成長する植物
障害物にしたり、ゾンビそのものに根付いたりして足止めさせます
あとのトドメは二人にお任せです
にしても涼鈴、わかっていたけど豪快ですね……
やっぱりこっちに乗ってて正解でした……
●陽炎荒野
強靭な2脚が乾いた大地をとらえる。灼熱の赤い荒野の一角に砂煙が巻き起こる。
太陽光を黒光りするボディで反射して、頭と長い尾でバランスを取りながら、ティラノサウルス型マシン『デモリッション・ギガレックス』は爆走する。
「いっくぞー!!」
牽いている幌馬車――いや、幌竜車の御者台は空っぽ。御者の涼鈴は、恐竜の背に直接騎乗して声をかけていた。
「あの岩、踏み砕いちゃえ!!」
返事の咆哮をひとつ。高々と掲げた脚をギガレックスは赤い岩へと振り下ろす。乾いて亀裂の入った大岩は、ギガレックスの重量に抗えずに粉々に砕けた。かなりワイルドな整地方法だ。
大ぶりな破片に片方の車輪が乗りあげて馬車が右に左にと跳ねまわる。行く前にがっちりと固定したチョコレートの箱は、それでも崩れず幌の中に収まっていた。
「……やっぱり、こっちに乗ってて正解でした」
後ろを行く幌馬車の荷台から顔を出し、呟いたのはひかるだった。
あの荷台に乗っていたら、きっと何かに掴まっているだけで精一杯。ひどい車酔いと、こぶの3つ4つは覚悟しなくてはならなかっただろう。
「涼鈴さーん、後ろは気にせず、ガンガンやってしまってくださいねーーー!」
後ろの馬車の御者、千夜子は2頭の馬を器用に操りながら声を張り上げた。岩を潰す破砕音に混じって『りょうかーーい!』と微かな涼鈴の返答が聞こえてくる。
ほとんどの障害物は踏み砕いたり動きで教えてくれるとはいえ、小ぶりなものは馬車を操って避けねばならない。更には車輪が巻き上げる砂をかぶらないよう、位置調整も必要だった。
「それにしても暑いですね……ひかるさんは大丈夫ですか?」
御者台に座り、常に風に当たっている千夜子ですら汗が止まらなくなってきた。
時刻はもうすぐ正午を回るころだろうか。
気温は45℃を越え50℃に迫る勢いだ。そろそろギガレックスの装甲の上で、目玉焼きが焼けてしまうかもしれない。乾燥しているおかげで空気はさらりとしていたが、常に炎の熱気にあぶられているような酷暑が一行を襲っていた。
「私は大丈夫です。それよりもチョコレート、溶けていないでしょうか」
仲間の猟兵がいくつか保冷剤を入れておいてくれたようだが、それもこの暑さではいつまでもつかは分からない。
千夜子は手綱を握り直す。こうなれば、一刻も早く目的地に着くほかはない。
「ひかるさん。私は馬の扱いに集中します。ゾンビを確認したら場所を教えてくださいね」
「ええ、任せて下さい。はじめに遭遇してからもう随分経ちます。嫌な予感が当たらないといいんですが……」
荷台に戻ったひかるは、荷物の間に正座して目を閉じた。
……赤い大地は肌。大地の精霊の目であり耳。
精霊の声を聞くひかるは、陽炎と砂塵に隠された大地を見通すことができる。
荷台の床越しに大地の鼓動を感じながら、集中を高めていく。
「ほんと、あっついなー。チョコ、大丈夫かな」
涼鈴もまた、積荷を振り返る。積んだ時と同じように見える箱の中身はわからない。今開けて確認するわけにもいかずに視線を前に戻した。
陽炎に赤い大地が揺れている。空と大地の境界線が蜃気楼によって浮島が浮いているように見える。
そんな中、向かう先で風もないのに大量の砂がうごめいた。
「……!? ……ぞんびだっ!!!」
高所から大地を見通していた涼鈴と、精霊の声を聞いたひかるが気付いたのはほぼ同時。
2台の幌馬車の行く先で、大量の灰色の腕が砂の中から突き出した。みるみる間に体を引き上げて、100人単位の集団がそこかしこから現れる。
死体の集団はまるで壁のように、2台の行く手を遮った。
「連れてっちゃダメなんだよね、蹴散らそう!」
涼鈴の声にギガレックスは速度を緩めて大口をあけた。喉の奥から出てきたのは真っ黒な砲口。
「いっけぇぇぇ! ギガレックス! ジェノサイド荷電粒子砲だぁ!!」
正面の死者たちを指さして涼鈴が叫べば、数瞬置いてビームが照射され、ゾンビの壁に大穴があいた。その穴も、何事もなかったかのように近くのゾンビによって埋められていく。
僅かな道を切り開くように、ギガレックスは強靭な脚でゾンビの群れを踏みつけては蹴散らした。 それでもなお仲間の体を踏み越えて、装甲に歯を突き立て爪で引っ掻くゾンビたちに、ギガレックスは長い尻尾を振り回す。
進行速度がみるみる落ちる。荷電粒子砲の再充填を急ぎながら、涼鈴とギガレックスは活路を切り開こうともがいていた。
「正面はこのまま涼鈴に任せましょう。私たちはそれ以外の方向の敵を。まずは左右、ほぼ同時に来ますよ」
千夜子にそう警告して、自分は精霊銃を引き抜いた。
ひかる自身はチョコレートを輸送するためにユーベルコードを展開し続けているので無理はできない。索敵とサポートに徹すると決めて、狭い馬車の中を移動する。
まずは左、続けて右。幌の隙間から引き金を引く。銃弾はゾンビには当たらずに赤い砂へと突き刺さる。
外したかと思いきや、ひかるは満足気に頷いた。
「ぐお……おおお……」
決して肥沃な大地ではなかったが、草木の精霊の呼びかけで一斉に伸びた草花がゾンビの足を絡め取る。
『咲き乱れて、破魔の鈴……!』
既に準備万端の千夜子がユーベルコードを唱えた。
御者台から溢れ出したのは、鈴蘭の花の花弁。左右二手に分かれると、足を巻き取られたゾンビへ向かう。ただの花弁ではない。千夜子の破魔の炎を宿したそれは、腐った皮膚に触れるなり浄化の炎で体を焼く。さらに後続のゾンビへと火は移り、赤い荒野を炎が舐める。
熱せられた空気が液体のように陽炎を描いて立ち昇った。
「千夜子さん、後ろが……!」
幌馬車後方から、ひかるの声と精霊銃の音が聞こえる。
援護しようと振り向いた千夜子が見たのはチョコレートの箱の山。
「だめ……荷物で見えません。彗! 援護をお願いします!!」
千夜子は上空を飛ぶ鷹に伝える。
彗は高く笛のように鳴いて答えると、複雑な軌道を描いて飛び回り矢を生成する。またたく間に数体の頭に矢を突き立てたが、それだけではゾンビの勢いは止まらない。
幌馬車を追ってきた数体の小さなゾンビたちがついに荷台の縁を掴む。次々に他のゾンビたちも追いつくと、腐った体を荷台へと引き上げる。
応戦するひかると彗の殲滅速度では間に合わない。
そこへ、新たな救援が駆けつけた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ユディト・イェシュア
どなたかに同乗させてもらいます
あ、空いてる場所…荷物と一緒で大丈夫ですよ
あのゾンビたちもかつては暗黒の竜巻に巻き込まれた人々なんですよね
けれど、彼らを放置すればまた同じ人々を生み出してしまいます
ここで止めなければ
ゾンビが現れる場所に充分に注意し、一度に多くを相手にしないように気を付けます
UCで確実に攻撃を当て、動けるゾンビの数を減らします
馬車に近づけないつもりですが、近づいてきた敵はメイスを使って侵入を阻止します
馬車に乗っての戦いならば、揺れにも注意し、逆に揺れを利用し、ゾンビを振り落とします
数は多いですが、猟兵同士協力して対処すれば何とかなるはずです
必ずこの荷物を無事に届けてみせます
●援護
荷台に群がるゾンビの群れを、光が一直線に切り裂いた。
できた道の中央を、白と薄紫の衣を纏った人物が走ってくる。
「無事ですか!?」
行く手を阻まれ速度を落とした幌馬車に、みるみるうちに追いついて荷台へと飛び乗ったのはユディトだった。
最初は他の馬車に乗っていたが、危機を察して駆けつけたのだ。
ユディトは手に馴染んたメイスを振るう。荷台を掴むゾンビの手をかすめるように薙ぎ払えば、込められた破魔の力に、死者の手はぼろりと指先から砕け散った。
赤い大地に投げ出されたゾンビたちを指さして、ユディトはユーベルコードを唱える。
晴れ渡った空にさえぎる物は何もない。天から降り注いだ光の束が、死者を灰へと変えていく。
灰は車輪が巻き起こした砂塵と溶けて、荒野の風に消えていった。
荷物の隅で十分ですからと、ユディトは荷台の端に腰を下ろした。
当面の危機はしのいだが、次がいつ来るかはわからない。キャラバンの中で襲われた馬車を乗り継ぎながら、合間に少しでも体を休めておく。
覚悟はしてきたというものの、オブリビオンストームによって生み出された動く死者は、予想をはるかに上回る数だった。それだけの人口がかつてこの荒野に住んでいて、絶滅寸前にまで追い詰められたのだ。
幌に切り取られた赤い景色に、遠く視線を投げてぽつりと呟く。
「あのゾンビたちも、かつて暗黒の竜巻に巻き込まれた人々なんですよね……」
ぱっと見た印象ではUDCアースの服装に近かったろうか。
たぶんきっと一般人。
腐りかけの体にまとっていたのは、仕事着に普段着。シャツに制服にワンピース、ジャケットに白衣にスーツに軍服。ボロボロに痛んでいても、唯一生前の面影を残すもの。
もしかしたら竜巻に襲われる直前まで、普通の生活を送っていたのかもしれない。
「けれど、彼らを放置すればまた同じ人々を生み出してしまいます。ここで止めなければ」
新たなゾンビが現れたとの一報に、短い休息は終わりを告げる。
揺れる馬車から振り落とされぬよう、ユディトは荷台の縁を掴んだ。ここは特別道が悪い。激しく上下に跳ねる馬車に一計を案じる。
馬車の傾きに合わせるようにゾンビの体をメイスで払う。勢いよく振り落とされたゾンビは、仲間のゾンビを巻き込みながら砂埃の道を転がった。
すかさず天から光で貫く。
「数は多いですが、猟兵同士協力して対処すれば何とかなるはずです。必ず荷物を無事に届けましょう」
仲間のため、自分を鼓舞するために、ユディトは希望を言葉にした。
成功
🔵🔵🔴
アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎
命なき今でも荒野を彷徨う哀れな存在。
現在を生きる人々のため、押し通らせていただきます。
まだ距離が離れているうちに『範囲攻撃』ホワイトブレスを放ち、この場を一時でも冬の景色へと変えて見せましょう。
囲まれ捕まれば私の身もそうですが、馬やチョコにまで危険が及びます。一体でも多く葬り、少しでもこちらに有利な状況を作り上げたいですね。
適度に距離を取れば怖くはありませんが、問題は地下に眠る死者達です。
ホワイトブレスを地面にも放ちつつ氷の床を作っておきます。これで少しは『時間稼ぎ』となり、奇襲は受けにくいと思いたいですね。
過去ではなく、未来を紡ぐため。残念ですが骸の海へと還っていただきましょう。
●凍土に眠れ
場所によっては速度を落とし、馬を休ませつつ来たのが功を奏した。
既に猟兵たちはかなりの数の死者を灰に変えていたが、まだすべてが片付いたわけではない。
時刻は昼過ぎ。
代わりばえしない灼熱の地平線に馬にも御者にも疲れの色が見えてきたころ、アリウムの馬は目に見えて元気そうだった。チョコレートのために冷やした鞄が、馬を熱中症から守っている。凍結の術を幾つも持つアリウムは、鞄の中の温度を涼しいまま保つことができていた。
大きな岩影を見つけては、ゾンビに注意しつつ周囲にも休息を呼びかける。
おかげで新たなゾンビ出現の報を受けても、暗色の毛並みをもつ流星鼻梁白の馬は『まだまだいける』とばかりに、勇ましく赤い大地を蹄で掻いた。
キャラバンを背にかばうように、アリウムは一騎でゾンビの群れの前に馬を進める。
仲間に他方向からの索敵を任せて、騎乗したまま剣を抜く。
「命なき今でも荒野をさまよう哀れな存在。現在を生きる人々のため、押し通らせていただきます」
距離さえ取れているのなら、基本的に移動が遅く近接攻撃しか持たないゾンビの対処は、さほど難しいことではない。
問題はその数と不意をついた接近だ。
彼らは地面から湧いてくる。地面の中を視認できない猟兵にとって、その行動自体が奇襲となる。敵も馬に蹴られ馬車に轢き潰されるリスクはあるが、あいにくここまでの道中で命を大事にする素振りは見られなかった。
アリウムは眼前に剣を構えてユーベルコードを発動する。
術者を中心に真っ白な冷気が赤い荒野を走った。あおりを食って凍結した空気中の水蒸気が、強い陽光に輝いた。
灼熱の大地のど真ん中。アリウムの周りに冬が訪れた。
地面は素手では到底掘り起こせないほど固く凍りつき、体を半分だけ砂から出したゾンビはもがいて腐った腕ごと落としてしまう。
振り向けば、アリウムの後方から奇襲しようとした数体が、足に体に胴に首を固定されて、哀れなうめき声を上げていた。
「……私にこれを使わせないで欲しかったな」
相手は紛うことなき死者。それでもかつて人間だったもの。
生ける者も骸の海に一度浸かった者も、冬は平等に死をもたらす。
自分と馬と、仲間と大切な支援物資であるチョコレート。それを守るために、よみがえった命を再び骸の海へと送り還す。
「過去ではなく、未来を紡ぐため。残念ですが骸の海へと還って頂きましょう」
静かに何かを悟ったように、アリウムは動けなくなったゾンビへと手向けの言葉と冷気を送った。
大成功
🔵🔵🔵
ジャスパー・ジャンブルジョルト
ゾンビだとぉ!?
こいつはヤバいぜ!
チョコの甘い香りが腐臭でだいなしになっちまうかもしれねえーっ!(心配するポイントがズレてる)
走れ、プッシュミ!
止まるな、プルユ!
……と、兄弟馬(勝手に名前をつけてる)を励ましつつ、ツィターを演奏してドラゴンの霊を召喚するぜ。
ドラゴンの位置は馬車の上。馬車と並行して飛びながら、哨戒機の役割を担ってもらう。地面から這いあがってくるゾンビを、空からの視点で逸早くキャッチ! 即座にブレスで掃射!
俺も御者台から左右と前方に注意を払っておくぜ。ゾンビを見つけたら、ドラゴンや他の猟兵に知らせよう。二時の方向に三体! 十一時の方向に五体!
煮るな焼くなとご自由に扱ってください。
●夕暮れの兄弟
太陽は傾いて、赤い荒野にオレンジの長い影を投げかける。
酸化鉄の混じった赤い砂塵を巻き上げて、混成部隊のキャラバンは荒野を駆けた。
赤茶けた地平線には遂に建物の影が見えてくる。荒野の中に朽ちかけて傾きつつも、寄り添うように建つビル群。
距離にしてあと40km。
目的地が見えてくれば、自ずと疲れ切った体にも力が沸いてくるというものだ。
町に駆け込む前のひと仕事を片付けるべく、猟兵たちはハンドルと手綱を握る。
「走れ、プッシュミ!」
「止まるな、プルユ!」
右の兄がプッシュミ、左の弟がプルユ。
双頭の山羊ならぬ、息のぴったり合った駁毛の馬の兄弟はJJの声に駈歩(かけあし)で応える。
馬は名前を呼びかけられると安心するという。荷運び用の馬として決まった名前も持たなかった2頭だ。JJが勝手につけた名前に最初こそ戸惑っていたものの、今日1日呼ばれてみれば『意外と悪くない』という気持ちへと変わってきたようだ。
酷暑の荒野を1日ひた走ってすっかり疲れてはいたものの、出発前に眠ったおかげか体力はまだ尽きていない。
追ってくるゾンビの群れを引き付けつつ、JJとプッシュミ・プルユはしんがりを務めていた。
「へっ、こいつはヤバいぜ! 最後の最後で、チョコの甘い香りがゾンビの腐臭でだいなしになっちまうかもしれねえからなーっ!!」
緊迫感があるのかないのか分からないJJの調子にも、兄弟はすっかり慣れたようだ。
『ブルルル(心配するのはそこですか)』
『ビヒィ(だよな、あんちゃん。まずは命だよな)』
こんなやり取りも幾度目か。
JJは手綱を脚の下に敷き馬たちに行く先を任せ、荷台を振り向くとツィターを手元に引き寄せる。御者台に胡坐をかき、ケットシーの爪でまずはひと掻き。荒野にどこか懐かしさを覚える弦の音色が響いた。
奏でるのは『JINGLED JUGGERNAUT(ジングルド・ジャガーノート)』。
幌馬車の上、オレンジの空に太陽の色そっくりの黄金の竜が姿を現す。
呼ばれるなり即座に自分の役目を理解して、馬車の周りを黄金の翼で飛び回ると、炎のブレスでゾンビたちを焼き払う。高所から周囲を見おろして、馬車に取り縋ろうと迫るゾンビは見つけ次第、急降下して赤い爪で切り裂いた。
「二時の方向に三体! 十一時の方向に五体!!」
JJ自身は左右と前方に注意を払い、ゾンビを見つけるなりドラゴンと周りの仲間に知らせる。
道中、ゾンビに囲まれ取り縋られ、何度も危ない場面があった。それでもなんとか板チョコ1枚奪われずに、ここまでこられたのはキャラバンだったからこそだろう。
「十二時の方向……真正面に1体! 他にはもういねえな!?」
地面を詳しく探った猟兵仲間が、別の馬車から肯定の合図を送る。
最後のゾンビを打ち倒し、キャラバン隊は明かりがぽつぽつ灯されはじめた居住地へと駆けこんだ。
成功
🔵🔵🔴
第3章 日常
『伝統文化を守れ』
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POW : 伝承者の生活を支える為の支援を行う
SPD : 伝承者の技術を体得して文化の継承を行う
WIZ : 伝承者の技術を文献などに残す事で文化の継承を行う
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●集計
かつての摩天楼の名残には、今はおよそ2000人が暮らしているらしい。
それも集計できただけというのだから、実際にはもっといるはずだ。
まずそれだけの人数に行き渡るだろうかと心配になった猟兵たちだったが、荷物の梱包を解いて調べてみる。
完璧な状態で輸送できたものが約5トン。
やや表面が白くなっているのが約3トン。
とろけているのが約1トン。
奪われずに多くを運びきることができた。
溶けかけているものも、使い方次第かもしれない。
行事やイベントを一緒に楽しんだ上に、町の食料庫に収めるにも十分な量がある。
●チョコレートの文化を
町の代表者たちは喜んで、支援を受けると猟兵たちを歓迎した。
場所はビルに囲まれた公園跡と近くのキッチンを貸してくれるそうだ。現代地球よりはやや古めのオーブンとガスコンロ、たまに故障する電子レンジがあるようだ。太陽光発電の電源があり、水も井戸から確保できる。鍋や皿、調理器具の類は周囲からかき集めた物があるようだ。
グリモア猟兵によると持ち歩ける量くらいならば、別の材料を用意できるそうだ。
ただ、問題はチョコレートを口にしたことのある者が町では少数派だということだろう。
味も食べ方も知らなければ、黒々とした中身を覗いただけで眉をひそめる者もいる。チョコレートはおろか、甘い物を口にするのすら何年ぶりだろうか。
空腹で心に余裕のない人たち。
栄養失調に苦しむ人。
チョコレートを食べた事のない世代。
これは食べ物かと警戒する人。
甘い物が苦手な大人や高齢者。
ここにバレンタインデーやホワイトデーを知る者はいない。
街の人々が楽しめるようなチョコレートのイベントを、考えてみて欲しい。
ジャスパー・ジャンブルジョルト
チョコを知らない人が多いのかー。じゃあ、皆が食べ慣れているかもしれない乾パンと混ぜてみっかな。
乾パンを砕き、とろけちゃったチョコを混ぜ、冷やして固めれば……クランチっぽいチョコバーのできあがり! 甘いのが苦手な人用にビター・バージョンもあるぞ。
ほら、皆も作ってみ。で、誰かに贈るといいよ。
他の世界にはバレンタインデーってのがあるんだが、それとはちょっと違う。この過酷な世界でともに生きる、明日には死に別れているかもしれない仲間に感謝を込めてチョコを贈る――そういう日があってもいいんでない?
一段落したら、兄弟馬に感謝のグルミーングだ。ごくろーさん!(ごしごし)
煮るな焼くなとご自由に扱ってください。
●未知
あえて熱気に当てられたチョコレートを選り分けて持ってきた。
調理台の横の椅子に颯爽と飛び乗ると、ケットシーの奪還者JJは鍋の上で袋をあける。ぎりぎり元の形を留めていたチョコレートも、鍋底に落ちて木べらの先で突かれればあえなく輪郭をとろかせた。
右は明るい茶色のミルクチョコレート。左は黒っぽいビターチョコレート。
2つの鍋がいっぱいになる頃には、いくつもあるキッチンの扉の前にはちょっとした人だかりができていた。
集まった住民にとって、それは未知の香りだった。最初の一瞬だけ甘さを感じたかと思えば、苦く香ばしく広がって、後腐れなく消えていく。黒々とした塊はとても食べ物には見えなかったが、ただ焦げているだけの匂いとも全然違う。
彼らにとって未知なる食材ならば、馴染みのあるものへと寄せればいい。
そう考えたJJはざわめくギャラリーを振り向いた。その肉球には乾パンの袋が握られている。
「これなら見たことあるだろ? 折角だから一緒に手伝ってくれ」
顔を見合わせた住民たちは、JJの呼びかけにようやくキッチンへと入ってきた。
調理台の上に並んだのは、エプロンを着てコック帽をかぶり堂々と腕組みした小さなネズミたち。
『JOLLY JAMBOREE(ジョリー・ジャンボリー)』。JJの呼びかけに応じた頼もしきお料理支援隊だ。
『1』のエプロンを着たネズミが呼びかければ人々は、干からびかけの雑穀パンにクッキーを手に戻ってくる。『2』『3』のエプロンネズミがそれらを砕くように身振り手振りで指し示し、『4』『5』がカケラを細かくしすぎないよう指導する。
『6』が右、『7』が左とJJのかき混ぜる2つの鍋にパンを投げ入れる仕草をしながらジャンプして、その横では『8』が並べたバットに『9』が紙を敷いていく。しっかり混ざった鍋の中身を『10』の指示で敷き詰める。
手分けしてバットを冷蔵庫代わりの地下室に運んで、待つこと20分。
「よし、固まったな。こいつをナイフで切り分ければ――クランチっぽいチョコバーのできあがりだ! さあ、食べてみ」
差し出されたチョコレートバーを、人々は反射的に受け取っていた。
さっきまで黒い液体だったものは乾パンやクッキーを巻き込んで艶やかに光っている。
小麦粉生地の多い部分を選びつつ、痩せた若者がこわごわとひとかじり。
水分をすっかり失っていたはずのクッキーは、チョコレートの油分をしっとりと纏ってざくっと砕けた。同時に喉を潤すような芳醇なカカオの味が口いっぱいに広がる。
「…………おいしい」
そうと聞けば固唾をのんで見守っていた住民たちも、謎の黒い食べ物を、おそるおそる齧りだす。
『美味しい』『こんなのはじめて』『甘い、いや苦い?』
JJはさざ波のように広がる評価を胸を張って受け止めて、『うまいけど甘すぎる』という大人にはそっとビターなチョコレートバーを差し出した。
「他の場所にはバレンタインデーってのがあるんだが、それとはちょっと違う。この過酷な世界でともに生きる、明日には死に別れているかもしれない仲間に感謝を込めてチョコを贈る――そういう日があってもいいんでない?」
JJの言葉に数人が、できたばかりのチョコバーを通りすがりに配りはじめる。
新たにキッチンを訪れた人々には、お料理隊が張り切って作り方を教え込んだ。
『次は干しブドウを混ぜこんでみようか』などと新たなレシピ開発が始まったころ、JJはそっとキッチンを後にする。
「俺も世話になった兄弟に感謝のグルーミングをな。1日走り通しで、そろそろ目を覚ますころだろうから」
大成功
🔵🔵🔵
ユディト・イェシュア
シトラさんをお誘いします
確かにこの黒い塊が美味しいだなんてわからないですよね
カレーの固形ルーをチョコだと言われたら俺は信じて食べてしまいそうです
シトラさんもチョコの思い出ありますか?
見た目で敬遠している方にも香りで興味をもってもらいましょう
ホットチョコレートを作ります
いろいろと作り方があるようですがここはシンプルに水とチョコのみで
鍋に水を入れ沸騰させてチョコを投入して混ぜます
しっかり泡立てるのが美味しさの秘密だそうです
食事がのどを通らない方もこれなら口にできそうですね
チョコレートがこの地の人にとって幸せの記憶と結びついてほしいんです
困難なことがあってもきっと乗り越えられる 俺はそう思うんです
●今日のお料理は……
ユディトは汲みたての冷たい井戸水を鍋に入れて火にかけた。
続いて身支度を終えたグリモア猟兵のシトラもキッチンへとやってくる。
「おまたせ、ユディトさん! 今日は何を作るの?」
カフェエプロンをつけたシトラは、抑えきれない期待感をにじませて鍋の中を覗き込む。
「ホットチョコレートを作ります。確かに見ただけでは、この黒い塊が美味しいだなんて分からないですよね。見た目で敬遠している方にも、香りで興味をもってもらいましょう」
昨日のメイスを、今日は泡だて器に持ち替えて。
ユディトはいつの間にやら集まって来ていた住民のオーディエンスたちに、柔らかく笑いかけた。
溶けかけのチョコに砕けたチョコ。
シトラは湯気の立つ鍋にチョコレートを投入する。
「いろいろと作り方はありますが、今回はシンプルに水とチョコのみで作りましょう」
「この町でも手に入りやすい食材だね!」
背の高い物腰柔らかな青年シェフに、小柄で元気の良さが取り柄の助手。
いつぞやのお料理番組を思い出したのは年配の住民だ。
ええ、と頷いてユディトは木べらを手に取った。ゆるやかな手つきで鍋の中身をかき混ぜる。
「塊が残らないよう、こうして混ぜながら溶かしていきましょう」
「いい香りがしてきたねー!」
うっとりとするような香りを助手が胸いっぱいに吸い込めば、見守る観客たちも同じように身を乗り出した。
甘い香りだと思ったらほろ苦く。捕まえたと思えばさっと風に溶けていく。
初めての香りに囁き合う住民を横目にとらえて、ユディトは更にもう一押し。
「シトラさんも、チョコの思い出ありますか?」
「僕? 僕も最初アニキに差し入れてもらった時は何だコレ、って思ったんだけどね」
「おいしさにびっくりしますよね。初めて食べた時は」
「そうそう! 甘くてほろ苦くて……これは食べてみなくちゃ分からないよ!!」
やや露骨すぎるアピールにくすくすと苦笑して、ユディトは最後の一手を打つ。
「これで完成……でもいいんですが、もうひと手間くわえましょう」
泡だて器を取り上げて、鍋の中をしっかりと泡立てる。
段々とツヤが出てチョコレートの水面が輝きだせば、香りはぐんぐん広がって更なる観客を呼び込んだ。
「すごい、これだけで見違えるね」
「味も馴染んでまろやかになるんです。食事が喉を通らない方にもお勧めの一品ですね」
シトラがトレーに並べたカップに、ユディトがホットチョコレートを注いでいく。
白い陶器にあたたかな茶色が浮かんだ。
「できあがり! さあ、みんな飲んでみてよ!」
「まだ熱いですから、ヤケドには注意してくださいね」
2人はトレーを手に、集まった住民の間を勧めて回った。
3回目の生放送を終え、ユディトとシトラはようやく一息ついていた。
「お疲れ様です。今、カレーの固形ルーをチョコだと言われたら、俺は信じて食べてしまいそうです」
「もしかしてユディトさんの実話……? 僕はかろうじて未遂だからね!」
笑いながらシトラが、鍋の底にほんの少し余ったチョコレートを2つのカップに分けて注ぐ。2人でカップを傾ければ、ほっとするような甘さが喉に染みわたった。
「チョコレートの味が、この地の人の幸せの記憶と結びついてほしいんです。困難なことがあっても、この味を思い出せばきっと乗り越えられる。俺はそう思うんです」
キッチンの窓の向こう。ユディトの見つめる先には同じようにカップを傾ける人たちの姿がある。
「そんな日が、いつかどこの世界にも当たり前のようにくるといいよね」
シトラもまた目を細めて、ゆっくりとカップを傾けた。
大成功
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アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎
見知らぬ食べ物に不信感を表すのは仕方がない事なのでしょう
信用を得るためにも先ずは私がお手本を見せるべきですね。
溶けたチョコをヘラ等を利用して丸や星形に形を整え……威力調節したホワイトブレスで冷やして固めれば少しは楽しくて美味しそうに見えないかな?
子供の目線まで腰を下ろし、慣れない笑顔で味見のお願いをしてみます。私も少しつまみ食いしつつ、安全ですよ、と。
子供が笑顔になれば、周りの大人達の疑念も払拭してくれると願いたいですね。
信用していただけたのならば、子供達と一緒にチョコを固めた簡単な物を作って、周りの大人達に配りに行きましょう。
甘味が荒れた心を、一時でも優しくしてくれる事を祈って。
●夜空
見知らぬ食べ物に不信感を表すのは仕方のないことだと思う。
ましてや日常的に飢餓に苦しめられているこの世界だ。空腹のあまり、食べられるかどうかわからない動植物を口にして命を落とした話など幾らでも転がっている。
ここで生きていくために、警戒心は必要だ。
そんな場所だからこそ。
「(信用を得る為にも、先ずは私がお手本を見せるべきですね)」
溶けかけのチョコレートをボウルに満たし、アリウムはキッチンへと引き返す。
後ろについて回るのは見慣れぬ大人に興味津々な子供たち。町の外から物資を持ち帰る奪還者は、彼らにとっても憧れの存在だ。
子供たちを引き連れてアリウムはキッチンの調理台の一角へとやってきた。柔らかくなったチョコレートを湯煎して完全に溶かしてから、磨きあげられた調理台の上に静かに流す。石造りの天板の上に夜空のように広がったチョコレートは、天井と子供たちの驚いた顔、そしてアリウムの表情を真っ黒な鏡のように映しだした。
いつも通りに冷静な、無表情に近い自分の表情と向き合った。整った容貌は、ともすれば冷たい印象になりがちだ。それを何とか和らげようと、アリウムは目を閉じる。
切れ長の目は伏せ気味に、蒼氷色の瞳に暖かな影を落とす。普段の憂いを秘めた表情から口の端を僅かにゆるませて。微笑のようなものを作ってからようやく、不思議そうに見あげる子供たちと目線を合わせた。
アリウムはそのまま見ているように視線を送り、チョコレートの湖の上に手をかざす。
真っ黒な水面には星空を。
『ホワイトブレス』。慎重に威力を調整した冷気のユーベルコードで黒い水面をなぞる。
調理台から流れ落ちる冷たい風に先頭の子供たちが身震いする頃、ようやく冷気を止めたアリウムはヘラで真っ黒な水面に軽く触れた。
型を使うでもなく切り出されたのは『★』に『●』。細かく温度を調整して作った満天の星をヘラですくっては、ひとつずつ子供たちに手渡した。
「わあ!」「お星さま!」
「つめたい!」
「すげー! ピカピカだ。どうやったの!?」
小さな黒い鏡を覗き込んでは驚いて、手渡されれば喜びを顔いっぱいに輝かせる。
「それは秘密です。実はこれ、食べられるんですよ」
アリウムは小さな星をひとつ、自分の手の平に乗せる。子供たちがよく見えるようにつまんで口に運んだ。甘さと苦さが溶けあって、余韻を残し舌の上に消えていく。
――食べても大丈夫。安全ですよ。
屈んで目線を合わせたまま、そんな思いを込めてアリウムは微笑んだ。
「皆さんも味見してくれませんか?」
ややあって、ぱきっ、と音がする。
星の端をかじった子供はしばらくチョコレートを口の中で転がすと、目を丸くして周りの子供に頷いた。
それを皮切りにして、子供たちは我さきへと未知の甘味を口に運ぶ。
指先と口の周りを甘く染めた顔を前にしてアリウムはひとつ提案した。
「どうぞ!」
小さな手で差し出された謎の塊を、疲れきって座りこんでいた大人は受け取った。
星をかたどった物体を部屋の大人たちに配って、にこにこと少女は期待するような眼差しを向ける。
「それ、わたしがお兄ちゃんと作ったの。すっっっごく甘くて美味しいの!」
無下にもできずに口に運べば、思いがけない甘さと風味に目を見開く。
「みんなでいっぱい作ってるから、あっちの公園に食べに来てね!」
大人たちの反応を嬉しそうに見守ってから、摩天楼の中心方向を指さした少女は小走りに子供たちの輪に戻っていく。その中心には、紺桔梗色の髪の青年。
確か彼は夜に到着した奪還者の中のひとりだ。青年の表情は昨日見かけた時よりも、自然に和らいでいるように大人たちの目には映った。
大成功
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ニコリネ・ユーリカ
状態の良いものは食料庫へ
欠損・融解したものはホットチョコレートに
UCで召喚したキッチンカーでお届けにあがります
甘いのが苦手な方にはビターチョコを使って
子供達にはお砂糖を多めに
パンをディップして食べても美味しいのよ
コーンスターチでとろみをつけて、温もりがお腹まで伝わりますように
作る処を見て貰えたら警戒心薄めてくれるかしら
チョコを食べた事のある方に協力を頼み
現地の人&経験者を介して受け入れられるよう試みる
過酷な環境に在る人の心に触れるには私も勇気と覚悟が試される
しがない花屋は少し断られたって平気
笑顔とコミュ力で心の壁を融かしちゃう!
先ずはお身体の為に
そして
少しでも倖せを届けられたら運び屋の本望です
●倖せ
箱を持って階段を降りる。町の食糧庫は埋もれた摩天楼の地下にあった。焼けつくような荒野に囲まれていて、ここだけは冷蔵庫の中のようにひんやりと涼しい。
はるばる持ってきたチョコレートの最後のひと箱を、一番上に乗せて両手を払う。カンテラの灯かりに浮かぶ箱の山に、腕と人差し指を真っ直ぐ伸ばした。
「納品完了、ヨシ!」
ニコリネはくるりと振り向くと、地上へと階段を昇った。
摩天楼に囲まれた公園跡には、朝の優しい光が差し込んでいた。
入口の木の下には、丸みを帯びたココアブラウンの車体に黄色い庇(ひさし)がワンポイントのキッチンカー。ニコリネがユーベルコードで呼びだした『はたらくのりもの』だ。
調理台にシンク、ガスコンロと食品庫がコンパクトに纏められたウォークスルーバンの中には、既に材料が綺麗に揃って並んでいる。
車両の隣。公園に備えられた机でニコリネと町の住民数人は額を集めて思案していた。
「オレもチョコレートは10年前に旅先で食べたきりなんだ。本当に美味しかったよ。説得はしてみるが……住民の中には頑固なのもいるからな。ここまで出てくるかどうか……」
「そこを何とか、この公園まで連れてきてほしいの」
町の代表者に探してきて貰った『チョコを食べた事のある住民たち』。平和な頃は世界中を旅をしていた男性も、命からがらオブリビオンストームから逃れてこの町にたどり着いたそうだ。
見ず知らずの奪還者よりも同じ住民の言葉の方が説得力がある。そう考えてニコリネは彼らに協力を求めていた。
うら若き猟兵の熱意に押されて、男性は両手を上げる。
「分かった。どうにかやってみる。……だが、何か作戦はあるのかい?」
その言葉に、ニコリネはにっこりと微笑んだ。
公園に集まった住民の輪の中で、ニコリネは歌うように声を張り上げる。
「足を運んでくれてありがとう。今からこれで美味しいホットチョコレートを作るわ」
鍋の中からチョコレートをひとつ、見えるように取り上げた。
興味津々の住民の影に不安げな表情の住民がいるのをニコリネは感じ取る。顰められる眉に不審なものを見る目。
前向きな雰囲気の中にある凍り付いた破片。
「(過酷な環境に在る人の心に触れるには、私も勇気と覚悟が試される……)」
善意は必ず届くとは限らない。差し伸べた手を払いのける人だっているかもしれない。
ニコリネはキッチンカーから引いてきたガスコンロに点火する。
用意したのは2つの味。砂糖で甘く仕上げたミルクチョコレートに、ほろ苦いビターチョコレート。両方の鍋にはコーンスターチをあらかじめ混ぜ込んでとろみをつけておく。
いい香りが公園の入口から漂った。ビルの上階から誘われた人々が次々に顔を覗かせる。
十分と温まってとろみがついた所で、ニコリネは出来立てのホットチョコレートを器に盛り付けた。求める人に配った後、輪の外から動かない人々に歩み寄る。
「良かったらこのパンにディップして食べてみて。体が暖まりますよ」
青白く痩せた手にふっくら焼き色のついたパンを渡す。
「でもどんなものなのか……」
躊躇うように視線を彷徨わせかけて住民ははっとした。
ニコリネは暖かな光を湛えた紫の瞳を閉じた。やわらかく口の端を持ち上げる。つぼみが優しくほころぶような微笑み。
作る所を見せて安心して貰い、経験者にも語って貰って安全だと広めて貰う。
そして最後はニコリネ自身がもつ力。拒絶されても壁を乗り越える笑顔。
凍り付いた心を溶かすのは、荒野の灼熱ではなく雪解けの気配。
「(まずはお身体の為に。そして、少しでも倖せを届けられたなら、運び屋は本望ね)」
おそるおそる器に伸ばされる手を慈愛の気持ちを込めて見守る。
千切ったパンの気泡に、とろみのついた暖かなチョコレートが染みわたった。
大成功
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荒谷・ひかる
涼鈴(f08865)と千夜子さん(f17474)と一緒に
(闇の精霊さんにお願いしてチョコを出してもらいつつ)
皆さんも荷物のチョコも、概ね無事みたいで良かったです。
一部のものは融けてしまっているようですが……これはこれで、使い道がありますね。
チョコフォンデュ。ええ、良いと思います!
って、涼鈴……もう、仕方ありませんね。
この世界で手に入りそうな食料だと……乾パンやカロリーバー、茹でたお芋とも合うと思いますよ。
他にも、温めたミルクに入れてチョコレートミルクにしても美味しいです。
寒い日に飲むと、身体が温まりますよ。
あっ、そうそう。固形のを融かす時は湯煎しないと焦げちゃいますからね。
劉・涼鈴
ひかる(f07833)と千夜子(f17474)と一緒!
ふひー、やっと着いたねー!
やっほー!
チョコ持ってきたよー! みんなで食べよー!
……んーみゅ、なんかチョコ知らない感じ?
よーし! それじゃあ私が食べ方とか教えてあげよう!
実践式でね! ……別に私が食べたいんじゃないアルヨー?
千夜子の言ってるチョコふょ……ひょ……ふぉんじゅ!
こうやるんだよっ!
自分用のおやつに持ってきてたバナナを、溶けたチョコに突っ込んで……じゃーん! ちょこばななー!
一口で半分くらい頬張ってもっしゃもっしゃおいしー!
ふふー、ひかるにも半分あげるー!
ほらほら! みんなも食べてみなよー!
薄荷・千夜子
涼鈴さん(f08865)とひかるさん(f07833)と
わぁ、思っていた以上にチョコも運べたようですね
ですが、皆さんチョコに慣れていない様子ですし…最初からそのままのものでなく溶けたチョコをチョコフォンデュのようにして試して頂くのはどうでしょう?
フルーツやパンに着けて食べるという方が食べやすいかなと思ったり
まずは甘いものが好きそうな小さい子に甘いものは好きですか?と声をかけて【コミュ力】
これはチョコという甘いお菓子なのですよとフルーツにチョコをつけて食べてみせましょう
美味しい〜!!瞳を輝かせて美味しそうにしてみせるのが一番伝わるような気がしますね
●チョコレートパーティー
小さな黒い渦から吐き出されたチョコレートたちは、どれも吸い込んだ時そのままの姿。寡黙な闇の精霊は『当然だ』とでも言うように箱の山を見おろして、地下室の暗がりに溶けていった。
ひかるはほっと胸をなでおろす。
「皆さんも荷物のチョコも概ね無事みたいで良かったです。一部のものは融けてしまっているようですが……これはこれで使い道がありますね」
曲芸でもするように運んできた5段重ねの箱を食糧庫の床におろし、涼鈴が元気よく片手をあげる。
「あっ、わかったっ! アレだよ、ええと……ひょ……ふょ……」
「チョコフォンデュですね」
「そう、千夜子の言うふぉんじゅ!!」
種類ごとに分けた箱を積み上げながら、千夜子も天井を見あげて思案する。
キャラバン隊が運んだチョコレートを集計してみると、1日イベントを開いたとしても余りあるほどの量があった。馬車を始めとする輸送手段の数が十分だったこと。キャラバン全体で殲滅と防御のバランスが取れていたこと。遊撃や足止めが効いたこと……成功要因を挙げれば枚挙にいとまがない。
その上チョコレートは滅多に腐らず、冷蔵状態なら長期間美味しく食べられるという。町の食糧事情はしばらくの間安泰といっていいだろう。
――問題は、住民のほとんどがチョコレートを口にした事がなく、不信感や警戒心を抱いていることだ。
「皆さんチョコに慣れていない様子でしたからね。最初からそのままではなくて、溶けたチョコをフォンデュにして頂くのはどうでしょう? フルーツやパンに着けるほうが、食べやすいかなと思います」
千夜子の案に、溶けかけのチョコレートを別の箱に分けていたひかるも頷いた。
「この世界で手に入りそうな食料だと……乾パンにカロリーバーでしょうか。茹でたお芋とも合いそうですね」
最後の箱を軽々と箱の山のてっぺんに乗せて、涼鈴はぽんと手を打った。
「そうと決まったら急ぐよー!!」
いち早く、二段抜かしで階段を駆け上がった涼鈴は、はやくはやくと踊り場で2人を呼んだ。
公園跡に縦横無尽に育った森が、照り付ける直射日光をやわらげていた。
梢が作る影の下、設置されたテーブルの真ん中に芳ばしい香りを漂わせた鍋が運ばれてくる。なみなみと満たされているのは、ひかるが湯煎したチョコレートを牛乳で伸ばしたフォンデュ用のチョコレートだ。
「やっほー! チョコ持って来たよー! みんなで食べよー!」
一口サイズに切り分けたパンにフルーツ、茹でた芋が乗った皿を置いて涼鈴は、不思議そうに首を傾げた。最初のテーブルの住民が、そのまま何もつけずにパンと芋を口にしたからだ。
「……んーみゅ、やっぱりチョコを知らない感じ?」
きょとんとした人々の元に跳ね戻ると、きりっと腰に手を当てて胸を張る。
「よーし! それじゃあ私が食べ方を教えてあげよう! 実践式でね!」
チャイナドレスの懐から、自分のおやつ用に持ってきたバナナを取り出す。
皮をむいて淡い黄色の果実を取り出すと、そのまま豪快に溶けたチョコに突っ込んだ。
「じゃーん! ちょこばななー!!」
コーティングされ外気に晒されて固まって、つやつやと光るバナナを人々に得意気に見せる。
人々の注目を十分に集めてから、それを美味しそうに頬張った。
「んーーー!! おいしー!!」
「って、涼鈴。もう食べてるんですか」
「べ、別に私が食べたいんじゃないアルヨー?? ひかるにも半分あげるー!!」
乾パンとカロリーバーを乗せた皿を運んできたひかるの手に、残りのバナナを手渡した。
「……もう、仕方ありませんね」
住民の視線が今度は自分へと向けられているのを感じて、ひかるはフォークで刺したバナナをチョコレートの中に浸した。
おいしい、とチョコバナナを口に運べば、ようやく真似して数人が食べ始める。
目を見開いた住民は、おもむろに次の食材へフォークを伸ばす。言葉はなくともそれで十分。躊躇していた人々も、無くなってしまう前にと、フォークに手を伸ばす。
「おーい、乾パン余ってないか?」
「お鍋の中身が随分減っちゃって……」
「このフルーツ、チョコに合うかな?」
『美味しい』はどうやら連鎖するらしい。
涼鈴とひかるは今まさに、食べ方について住民の質問攻めにあっている。いい兆候だ。
隣のテーブルにフルーツを運んできた千夜子は、まだ一口もチョコレートに口をつけていない小さな子供たちの前にしゃがみこんだ。
「甘い物は好きですか?」
年長の奪還者に、先頭の少女ははにかんだように笑い返す。
隣から少年が何も言わない少女に代わって答えた。
「……あんまり食べたことないんだ。こういうのは、大事に大事にたべなさい……って」
「そうだったんですね。……これはチョコ。甘いお菓子なのですよ」
もってきたフルーツをフォークに刺し、チョコレートをつけて子供たちに手渡す。
千夜子自身もひとつ貰って、子供たちによく見せてから口に運んだ。瑞々しいフルーツの甘さに、濃厚なチョコレートの甘さ。溶けあう2つの味は文句なしの美味しさで、 千夜子は感情のおもむくままに緑の瞳を輝かせた。
「美味しい~!!」
つられたように子供たちは、次々にチョコレートを口に運んだ。
鍋を子供たちが取りやすい場所に移動させて千夜子は微笑む。
飾りなく偽りのない、素直な気持ちが人を動かすことがある。
「ねえねえ」
袖を引く先ほどの少女に、千夜子は再びしゃがみこんで目線を合わせる。
「これ……食べてみて」
「見慣れないフルーツですね。……甘くて美味しい! この辺りで取れるんですか?」
「うん、ヤシの木に登ってね――」
●今日のこの日は
今日はチョコレートの日。
子供たちが手づくりしたチョコレートを大人たちに配るのが開催の合図だ。
同時開催されるチョコレート料理のレシピ選手権では、優勝者のクランチが振舞われ、お料理教室が開かれる。
公園跡では机にチョコレートフォンデュの鍋が用意される。
甘いミルクチョコレートの鍋に、ほろ苦いビターチョコレートの鍋。
ホットチョコレートを手に、好きなテーブルを回るのは子供から大人までもが心待ちにしているイベントだそうだ。
甘く香ばしく。ある日突然、 香りとともに広がった記念日。
この町のチョコレートの記念日は、『猟兵』と呼ばれる奪還者によって伝えられたそうだ。
大成功
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