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サクリファイス~屍喰鬼と蟲毒と猟兵と~

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●アポカリプスヘル・浄水施設拠点「イナムラ」
 ここはアポカリプスヘル。オブリビオン・ストームによって大半の人類は死滅し、さらにオブリビオンが生み出され、それらが残る人類を蹂躙せんと闊歩する地獄の世界。だがそれでも人類は抵抗する力を生み出し、しぶとく抗っている。いつか事態が好転することを信じているのだ。

 そしてここは浄水施設「イナムラ」を中心に拠点(ベース)化された場所であった。今や汚染されていない水を確保するのも大変な労力を要する。故に自家発電可能な「イナムラ」から生成される水は生活はもちろん、今時は珍しい栽培にも活用されるほどだ。
 故にこのベースを放棄するのは、誰しも望むところではない。膨れ上がったベース人口はつまり供給がなくなれば餓死者が出るスピードが速まるということだ。そのために腕利きのサバイバルガンナー、ソーシャルディーヴァなども常駐し、拠点の守りも固めてあるのだ。

「今回は多いな!」
「ああ、異常な数のゾンビだ。明らかに意図的に操っている奴がいる」
 歴戦のサバイバルガンナー達が重火器を放って迎撃しているのは、「イナムラ」に迫るゾンビの群れだ。その数は数えるのすら馬鹿らしいほど、拠点を包囲・覆いつくすほどのゾンビだ。死臭が漂い、弾丸で弾き飛ばすたびに腐った肉片が飛び散り腐臭が漂う。そんな地獄の戦場ではあるが、防御が硬い故にゾンビ達は突破することはできない。
「今回も大丈夫そうね。よかった」
「ああ、この水の恵みを失わずに済みそうじゃ」
 防衛し激戦を繰り広げている男達の背中を見て、女と年寄り達は安堵する。そんな中で一人の女性が立ち上がる。
「あ、そろそろお水を差し入れましょう」
「そうだね、それじゃお願いね」
 最近入植してきた女性は戦っている兵達に補給する水を取りにいく。だがその足取りは水汲み場に向かっていない。向かう先は「イナムラ」の心臓部でもある浄水施設だ。
「……守りが思った以上に硬いですね。でもこの人数なら上質の魂が頂けて、より良いゾンビが作れますね。それでは、猛毒の水を差し入れてあげましょう。フフフッ」
 そう、すでに破滅は迫っていたのだ。最悪の魔女を招き寄せてしまった「イナムラ」の崩壊へのカウントダウンは始まっていたのだ。

●グリモアベース・ブリーフィングルーム
「というわけで、アポカリプスヘルの再建の手伝いをちょこっとして欲しいわけじゃのー」
 そう言って黒い嵐が吹き荒れる荒野の世界「アポカリプスヘル」を映し出した電脳ウィンドウの前でグリモア猟兵のメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は説明する。
 今回の戦場はとある浄水施設の拠点となる。ここで繰り広げられている防衛戦に手を貸してほしいとのことだ。もちろん、包囲しているゾンビ達も脅威ではあるが、問題は内部にもある。実はゾンビ達を操る術者ともいえる存在が、人間に化けて潜入しているのだ。そしてその硬い守りを内部から崩さんと暗躍しようとしている。
 その方法はそのベースの生命線であり、守るべき理由でもある「水」だ。これを猛毒に汚染させて台無しにしようとしようとしているのだ。

「潜入しておる奴に浄水施設が汚染されたら、士気が保てず戦線は崩壊するじゃろーのー」
 そうなればゾンビ達に蹂躙され、新たなゾンビが生まれる。そして「イナムラ」の水は失われ、周辺のベースにも大変な影響が出るのは間違いない。故にこの暴挙は止めなくてはならない。
「そうそう、潜入しておる奴は丁寧な口ぶりじゃけど、賞金も掛かっておった外道じゃけー、容赦はいらんからのー」
 そう言ってメイスンは「イナムラ」の浄水施設までの転移を開始する。猟兵達にこの地獄を救って貰うために。


ライラ.hack
 ゾンビハザードとモヒカン世紀末ワールド、あなたはどちらが好みですか?
 どうもこんにちわ。ライラ.hackです。

 今回は純粋な戦闘となります。最初は潜入している猛毒の死神少女を、そして包囲しているゾンビ達が相手となります。ちなみにボスの姿は見当たりませんが……。

 この世界の事件をこつこつ解決していけば、人類の再建に繋がるかもしれません。
 皆様の奮戦を期待しつつ、素晴らしいプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『エントツュッケントゼーラフ』

POW   :    《傀儡ノ躯》亡者の群れよ。私に力を貸してください
自身の【寿命】または他者の【魂 】を代償に、【死んだ生命体】を「サルベージ」して【死者】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【死んだ生命体】が生前持っていた【戦闘技術】で戦う。
SPD   :    《癒シノ大鎌》亡者に再び祝福を。ネクロヒーリング
【大鎌】を上に掲げ、紫色の【回復のオーラ 】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。
WIZ   :    《毒霧ノ侵略》さぁ、あなたも命を捧げて下さい。
【準備動作】で呪術を詠唱。その後、【両掌 】から【広範囲放射】。視界を妨げ直感が鈍る【毒霧】を放ち、【一時撤退】する。生身の者は【猛毒】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:月島烈

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はイヴ・クロノサージュです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ミスト・ペルメオス
【SPD】

異世界とはいえ、他人事とは思えませんね。
ともかく…ミスト・ペルメオス。これより任務を開始します。

施設内での作戦ということで、まずは機械鎧(人型機動兵器)を使わず生身で参戦。
猟兵の能力を以てオブリビオンを判別、水の汚染を阻止するべく戦闘に突入。

念動力によるサイキック・フィールドを展開。防壁として用いるのみならず、投射することで攻撃にも利用。
また、機を見て【サモン・オプションアームズ】。歩兵装備…特殊な対物リボルバー・パイルバンカーを転送・装備。
スラスターを駆使して距離を詰め、パイルで刺突・貫徹。その後、敵が回復しようと構わず連続攻撃を叩き込んでいく。

※他の方との共闘等、歓迎です


佐藤・和鏡子
死者を救急車で撥ね飛ばしながら、そのままの勢いでエントツュッケントゼーラフへ突っ込みます。
これなら、一度で両方まとめて面倒見れますから。
救急車で一轢きして怯ませた所で確実にフック付き牽引ロープをかけてから救急車で引きずり回します。
(ユーベルコードの牽引を使います)
引きずるついでにハンドル操作で振り回してエントツュッケントゼーラフを死者の残りや壁などの固いものにぶつけてやるなどしてよりダメージを入れられる様にします。



 猛毒の死神『エントツュッケントゼーラフ』。死体を操り、毒をまき散らし、魂すら弄ぶ。その華憐な容貌からは想像ができないが、オブリビオンになる前は高額の賞金首であったことからその凶悪性が窺い知れる。
 そしてその悪意は今まさに、浄水施設拠点「イナムラ」の希望を蹂躙しようとしていた。コツコツッとヒールの音が響き渡る。本来ならば浄水施設に警備兵がいるはずだが、拠点を包囲するゾンビの大群に防衛戦力として動員されてそれどころではなくなっている。それもエントツュッケントゼーラフにはお見通しなのであるが。
 もはや自分の足を止める者は何もない。そう思っていたからこそ、彼女は背後から感じる二つの気配に驚きを覚えていた。だが表情は優雅に笑みを浮かべて、その二人に視線を向ける。
「あら、鼻の利く奪還者(ブリンガー)の方がいらっしゃいましたか」
 エントツュッケントゼーラフはすでに一般人の擬態をやめていた。なぜならば、その二人にははっきりとした敵意を感じ取ることができたからだ。まるで自分の正体はお見通しを言わんばかりに。
「異世界とはいえ、他人事とは思えませんね。ともかく…ミスト・ペルメオス。これより任務を開始します」
「あなたは毒ですね。ですので、予防処置を取らせて頂きます」
 そう言ってスペースノイドのミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377)は念動力によるサイキック・フィールドを展開し、ミレナリィドールの佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)は救急箱を構える。どちらも戦闘態勢は万全である。その二人の猟兵の戦気に当てられ、エントツュッケントゼーラフは優しく微笑む。
「それはそれは、素敵なお誘いですね。ですけど、私は別用がありますの、亡者の群れよ」
 その言葉と共にエントツュッケントゼーラフの手には身の丈もある大鎌が、背後には青い死神が現れる。そしてその死神は懐からいくつかの光体らしき物を取り出し、握りつぶす。すると地面から、ヘドロのような液体が溢れ出す。
「傀儡ノ躯、さあ私に力を貸してください」
 ドロドロとした液体の中出現したのは、かつて彼女が今まで返り討ちにし、蒐集にするに値すると判断した精鋭奪還者(ブリンガー)達だった。その手には重火器が握られており、その銃口は二人の猟兵に対して向けられている。そして弾丸の雨が降り注ぐ。
「ここまで魂を弄びますか……!」
「許せませんね」
 ミストと和鏡子は冷静なようであったが、内心は怒りに沸騰していた。それでも和鏡子は的確に弾丸軌道から身を隠し、ミストは念動力で弾丸を止めながら疾駆。一気にエントツュッケントゼーラフの距離を詰め、プラズマスラスターを発射する。それを難なく大鎌で防御するエントツュッケントゼーラフは薄く笑う。
「戦力の活用と言ってほしいですね。有用であれば使う、下手なことに気を回すと死にますわよ?」
 そして大鎌を振るい、ミストの首を落とそうとするエントツュッケントゼーラフ。それをミストはサイキック・フィールドを投射して弾き飛ばす。実際ミストの本領は機械鎧(人型機動兵器)があってこそ。だが室内での戦闘を想定し、浄水施設への被害を考えて今回は生身で参戦しているのだ。そういった意味で、被害を考えず戦闘のできるエントツュッケントゼーラフの差は大きい。
 ミストがこちらに専念しているのを見てエントツュッケントゼーラフは傀儡ノ躯の奪還者達に死角から射撃をさせようとする。どちらに対応してもいいように、二段構えの死地だ。
 だがここにいるのはミストだけではない。突如、けたましいサイレンの音が鳴り響く。それは誰しも聞きなれた音――救急車だった。
「なっ!」
「これなら、一度で両方まとめて面倒見れますから」
 どこから出したのか、どうやって施設内に持ち込んだのか。そういったエントツュッケントゼーラフの驚愕とツッコミは、ピーポーという音と救急車のタイヤの音にかき消される。和鏡子の的確なドライビングは施設内を大きく破壊することなく、傀儡ノ躯の奪還者達達を撥ね飛ばしながら、エントツュッケントゼーラフへと突進する。
 そして隙を見てフック付き牽引ロープを放つ和鏡子。嫌な予感を感じたエントツュッケントゼーラフは咄嗟に傀儡ノ躯の奪還者達を盾にしてそれを防ぐ。
「残念。ですがこれから、救急車で引っ張りますね」
 そういってニッコリと笑い和鏡子の「牽引(トーイング)」が炸裂する。救急車による高速引きずり回しでフックに引っ掛けられた傀儡ノ躯の奪還者は肉を削り取られていき、さらにその引きずり回しの間に他の敵を轢き倒していく。まさしく救急の地獄が顕現していた。
「無茶苦茶ですわ、あのナース……!」
「同感ですが、隙ありです」
 エントツュッケントゼーラフの懐にはミスト。この急接近を可能にしたのはスラスターを駆使したからである。一気に距離を詰め、勝機と判断するミスト。
(――来いッ)
 ミストが念じると共に能力「サモン・オプションアームズ」が発動。特殊な対物リボルバー・パイルバンカーなどが瞬時に転送され、ゼロタイムで握り込んだミストはそのままパイルバンカーを突き刺し貫通させる。身体に大きな衝撃と穴を開けられたエントツュッケントゼーラフはその優雅な表情が苦悶に歪む。
「ガハッ! ……癒シノ大鎌!亡者に再び祝福を、ネクロヒーリング!」
「まだまだ!」
 大鎌を掲げて、紫のオーラがエントツュッケントゼーラフの身体を再生させる。だがミストも対物リボルバーを連射、呼び出した重火器を惜しむことなくエントツュッケントゼーラフに叩き込む。そして回復が発動するのを見計らってパイルバンカーをさらに叩き込む。
「……ゴホッ!」
 細い身体がパイルバンカーの衝撃で舞い、骨と筋繊維が引きちぎられる。血が壮大に口に広がるのを舌で感じ、エントツュッケントゼーラフは形勢の不利を悟る。
「傀儡ノ躯ッ! 足止めを!」
 そういって手持ちの精鋭奪還者の傀儡ノ躯を呼び出し、ミストと和鏡子に当てるエントツュッケントゼーラフ。彼女の勝利は目の前の相手の排除ではない。浄水施設の毒汚染である。それを瞬時に判断し、戦力を使い潰すことも惜しむことなく投入し、その場の逃走を果たす。
 エントツュッケントゼーラフの戦力を削ることに成功した二人ではあったが、浄水施設の中枢へ近づけてしまった。「イナムラ」の命運はどうなってしまうかは、この先に待ち構える猟兵に委ねられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

幻武・極
キミが浄水施設を汚染させようとしている死神か。
悪いけど邪魔させてもらうよ。

さて、この浄水施設でいったい誰をサルベージするつもりなのかな。
戦場ではないこの場所でサルベージするのは失敗じゃないかな。戦闘技術のない一般人じゃボクの相手にならないよ。

ボクはトリニティ・エンハンスで攻撃力を強化して、サルベージされた死者を薙ぎ払っていくよ。


バジル・サラザール
生活用水に毒を入れるなんて……流石においたが過ぎるわ

毒を以て毒を制す。人々や設備を巻き込まないようにしっかり狙って、極力敵の攻撃の範囲外から『属性攻撃』や『毒使い』を生かした『ポイズン・スピア』で攻撃するわ
詠唱や反撃の暇も与えないくらい素早く次々攻撃しましょう
敵の攻撃は『野生の勘』も用いつつ、回避や相殺をしていくわ
毒霧を出されてしまったら、『毒耐性』、『毒使い』や『医術』の知識で耐えつつ、『野生の勘』も利用して位置を把握、絶対に逃がさないわ

この世界の人々のために絶対に拠点を、みんなを守り抜くわ

アドリブ、連携歓迎



 ミストのパイルバンカーに貫かれた腹を治癒しながら、エントツュッケントゼーラフは浄水施設の中枢へと足を踏み入れる。ここはこの拠点(ベース)のあらゆる水の浄水を行っている場所。つまりここが毒に感染されれば、施設全部の水が毒と化す。毒で士気と体力は衰え、包囲するゾンビ達を押しとどめる所ではなくなるだろう。地獄は顕現する。その光景をエントツュッケントゼーラフ思い浮かべては笑う。
 だがあと一歩のところで、またしても邪魔者は立ち塞がる。羅刹の幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)とキマイラのバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)だ。
「キミが浄水施設を汚染させようとしている死神か。悪いけど邪魔させてもらうよ」
「生活用水に毒を入れるなんて……流石においたが過ぎるわ」
 極はすでに好戦的な笑みを浮かべて拳を鳴らしている。自らの武を持ってその悪行を押しとどめる気だ。そして蛇の下半身をうねるように動かし、バジルは薬剤師の観点から猛毒をまき散らすエントツュッケントゼーラフに侮蔑の視線を投げかけている。
 猛る二人に対し、エントツュッケントゼーラフはただただ不愉快な気分に顔を歪ませる。
「……楽しみを邪魔されるというのは気分を害しますね。亡者の群れよ」
 そして再び傀儡ノ躯で死体を呼び起こす。だがストックの精鋭奪還者(ブリンガー)達は先のミストと和鏡子の足止めに使い切ってしまったので、この土地由来の魂をサルベージし、再現する。
「傀儡ノ躯、邪魔者を排除してください」
 とはいえ、このアポカリプスヘルでは戦い死ぬことは日常茶飯事。それなりの数と戦力を集めることはできた。エントツュッケントゼーラフは笑みを浮かべて指示を飛ばす。
「さて、この浄水施設でいったい誰を、どんな戦士をサルベージするつもりなのかな?」
 だが傀儡ノ躯で呼び出した一人が天高く吹き飛ばされる。それは的確に顎を打ち切った極の拳によるものだった。そのアッパーカットは顎を砕き、死者だろうが問答無用に意識を刈り取る。
「戦場ではないこの場所でサルベージするのは失敗じゃないかな。戦闘技術のない一般人じゃボクの相手にならないよ」
 そう、あまりにも浄水施設の中枢に近づきすぎた為に、サルベージをするべき戦力が劣っていたのは否めない。これがもしバリケード近くであれば、もっと上質の死体を呼び出すことができたであろう。だがストックを使い果たしたエントツュッケントゼーラフには、数で押し切る方策を取った。だが極の暴力はそんなもので抑えられるものではない。
「さあ、ボクの武術を見せてあげるよ!」
 トリニティ・エンハンスを発動させて、身体能力の強化を行う極。風の魔力は加速力を強化し、水の魔力で血液循環系を強化して反射能力を強め、そして火の魔力を持って拳に炎を纏い、直接的な攻撃力を上昇させる。そこから繰り出される武術は敵を屠りなぎ倒す、まさに炎の竜巻の如し。まさしく自然災害よろしく、極に殴り蹴り殺されていく傀儡ノ躯達。
「なんなのですか、あなた達は……!」
「あなたという毒の特効薬ですよ、エントツュッケントゼーラフ。たっぷりと味わいなさい」
 極の暴れっぷりに絶句気味のエントツュッケントゼーラフに、バジルは能力「ポイズン・スピア」を発動させ、敵の攻撃範囲外から猛毒の魔法槍を数百発叩き込む。
「この私に、毒で勝負ですか?」
「毒を以て毒を制す、かしら?」
 死神と大鎌を振りかぶって、毒槍を叩き落そうとするが、さすがに数が多すぎる。毒槍に貫かれ、毒が身体に浸食を開始する。いかに猛毒を操るとはいえ、耐性値を超えればエントツュッケントゼーラフにも毒は命に届く。
「毒霧ノ侵略……」
「詠唱や反撃の暇も与えないわ!」
 毒霧を発生させる呪術の詠唱をしようとするが、バジルはポイズン・スピアを発動し続け、絶え間なく猛毒の槍を降り注がせる。防ぎきれない分が徐々に体に蓄積され、肉体に毒が巡っていく。このままでは耐性を超えて、身体は動かなくなってしまう。そうなれば単なる的になる。
「ですが……!」
 そういってエントツュッケントゼーラフは猛毒の槍雨に被弾することを覚悟して、ある場所に移動する。毒の進行がさらに早まり、槍が貫くが、彼女は目的の場所までたどり着く。
「浄水施設のタンクに……!」
「いくら私を倒すためとはいえ、設備を巻き添えにはできないでしょう?」
 そう、設備に被害が及ばないようにしっかりと魔法の槍のコントロールをしてきたバジル。故にエントツュッケントゼーラフの場所は避けられた場合、自らの毒で水を汚染してしまう危険がある。その考えが過り、槍の放射が止まる。
「毒霧ノ侵略、さぁ、あなたも命を捧げて下さい」
 そして躊躇するバジルにエントツュッケントゼーラフは毒霧を両掌から広範囲放射する。ある程度の毒耐性を持つバジルではあるが、まともに食らっていい毒ではないと判断し、蛇の足の機動を駆使して毒霧を回避する。
「フフッ、あと少しでしたね。私の勝ちです」
「いや、ボク達の勝ちだ、死神!」
 バジルが回避している間に浄水施設のタンクを毒汚染しようと手を伸ばしたエントツュッケントゼーラフ。だが懐には、傀儡ノ躯をすべて蹴散らし一瞬で飛び込んできた極。その燃え盛る拳は一直線に敵の腹を穿つ。肉体を貫くほど拳撃は、エントツュッケントゼーラフといえど致命傷と言えた。
「ゴホッ……、ですがただでは死にません!」
 もはや極に腕を食い込まされ、動くことはできない。だが掌から毒を放射することはできる。猛毒がタンクに向けて放たれる……が、その射線に割り込んできたのはバジル。
「この世界の人々のために絶対に拠点を、みんなを守り抜くわ」
 そうしてあえてその身に毒を浴び、拡散を防ぐ。毒が広範囲に放射する前にその前に立ったのが幸いし、タンクまで毒が及ぶことはなかった。だがさすがに耐性を超えた毒はバジルの身体の自由を奪っていく。
「大丈夫!?」
「……ええ」
 エントツュッケントゼーラフから拳を引き抜き、倒れ込むバジルを支える極。そしてエントツュッケントゼーラフは力を使い果たしたのか、背後の死神から崩壊を始めている。
「……ここ、までですか。残念です。サクリファイスの結末を、見れないとは」
 死にゆくはずのエントツュッケントゼーラフは笑っている。それは敗者のそれではない。そして死にゆく者として、これから起こることを話し始める。
「ここは、実験場だったのですよ。私の蟲毒、最悪のゾンビを作るための、ね。肉体を、魂を喰らうことで、災害級ゾンビを創造するための……。そして私の魂が取り込まれれば、フフッ……フフフフフフフフッ!」
 もはや身体の半分が崩れ落ちながらも、エントツュッケントゼーラフは心の底から楽しそうだった。
「……では、私のサクリファイス、楽しんでください」
 そうして身体がすべて崩壊した瞬間、青い魂が飛翔し、浄水施設の外に飛んでいく。そしてすぐに、施設を轟かす咆哮が響き渡ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ゾンビの群れ』

POW   :    ゾンビの行進
【掴みかかる無数の手】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    突然のゾンビ襲来
【敵の背後から新たなゾンビ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    這い寄るゾンビ
【小柄な地を這うゾンビ】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。

イラスト:カス

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●蟲毒術式「サクリファイス」
 浄水施設「イナムラ」を防衛している奪還者(ブリンガー)達は優秀であった。迫りくるゾンビ達に怯むことなく、バリケートに阻まれたところを的確に射撃し殲滅していく。その冷静沈着さがその練度を示している。
 だが戦局に異変が生じた。それは青い何かがゾンビの一群に飛んで行ったのだ。その直後、それを取り込んだゾンビに変わり始める。肉体は白く染まり、その肉体は膨張を始める。その体形はもはや人型の原型をとどめていない。まさしく怪物のような、怪獣ようでもあった。
「な、なんだあれは!」
「あれも、ゾンビなのか……?」
 戸惑う奪還者達。だがその巨大な特異ゾンビは変形した口から、地獄の唸り声をあげる。生者を呪わん声を、本番はこれからだと言わんばかりに叫ぶ。
「GOGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOO!」
 強大な金切り声が響き渡る。エントツュッケントゼーラフの魂を喰らったことで身体は肥大化し、廃棄してあった兵器も取り込み、なおもその質量は膨大を続けている。その細胞の急成長の苦しさか、それとも高揚感か。地響きのような声を上げ続ける。そして取り込んだ戦車砲をバリケートに向けて発射する。
「いかん!逃げろ、退避だああああ!」
 バリケードを盾に守備していた奪還者達が一斉に退避する。そして戦車砲の砲弾がバリケードに突き刺さり、大爆発と共にその防壁を吹き飛ばす。防衛の要であったバリケード壁は跡形もなくなった。これはつまり今までの防衛方法ではゾンビを防ぎきれないことを意味した。
「くそっ!あのデカブツが入り込んでくるぞ!」
「いや、待て。あの化け物……、ゾンビを襲っているぞ?」
 そう、浄水施設に向かってくるゾンビ達とは対照的に、特異ゾンビは周辺のゾンビを食い散らかしている。その口で咀嚼したり、叩き潰した後に放り込むなど方法は違うが、確かに食っている。そしてそのたびに特異ゾンビはさらに膨張・巨大化しているのだ。まさしくそれは成長であった。
「いかん!これ以上でかくなっては手に負えなくなるぞ!」
「だがゾンビの処理にも手一杯なのにどうやって……、君達は?」
 そんな奪還者達に対し、エントツュッケントゼーラフを倒した猟兵達が駆けつける。その戦闘態勢はゾンビをなぎ倒すという意志に溢れている。その気迫に歴戦の猛者を感じた奪還者達のリーダーは救援を要請する。
「……手伝ってくれるならありがたい。まずはゾンビを倒してくれ! こちらも最大限援護する!」
 これ以上「サクリファイス」巨大化の阻止のため、施設の包囲するゾンビの殲滅戦が始まろうとしていた。
佐藤・和鏡子
自分の死まで前提にして向かってくる執念がどこから来ているかは知りませんが、実験はここで中止ですね。
救急車でゾンビの群れに突っ込んで轢きまくります。
救急車に掴まろうとする者や大きな群れには轢殺のユーベルコードを使って撥ね飛ばします。
スピードが威力に直結する上、スピードが遅くなれば救急車が掴まられる危険性も高まるので、常時アクセル全開でスピードを落とさないようにします。
こういう大群の切り崩しは救急車の得意分野ですから。
特に大きな群れを優先して狙う様にして、少しでも数を減らして他の方たちが戦いやすい様にします。


バジル・サラザール
まったく……厄介な置き土産を残してくれちゃって……

奪還者達の横で狙撃、引き続き『毒使い』『属性魔法』を生かした『ポイズン・スピア』で攻撃、変形したゾンビで弱ってそうなものから狙うわ
敵の攻撃は『野生の勘』も利用しつつ、回避や防御。でも奪還者達に当たりそうなら庇ったり、相殺したりして守りましょう
小さなゾンビは気にしすぎず、本体優先。見つけたら攻撃するくらいにしておきましょう
奪還者の人達の力も必要ね。「効いてるわ!」「絶対に勝つわよ!」等と励ましたりしましょう
でも無理しすぎは禁物。負傷の大きい人は一旦下がってもらいましょう

もう2度と襲おうだなんて思わないくらいに叩きのめしてあげるわ

アドリブ、連携歓迎


幻武・極
まずはこのゾンビ達だね、数が多い相手には範囲攻撃の幻武百裂拳だね。
ふうん、小柄なゾンビが紛れているようだね。
他のゾンビが邪魔で小さいゾンビにまで攻撃が届いていないようだね。
なら、衝撃波を組み合わせて攻撃を浸透させていくしかなさそうだね。


ミスト・ペルメオス
【POW】

やはり簡単にはいかないか。だが…。
…来いッ、ブラックバードッ!

浄水施設の外へと飛び出すと同時、愛機たる機械鎧を飛来させて飛び乗る。
念動力を活用し、デバイス等を介して機体をフルコントロール。
まずは押し寄せるゾンビの群れを迎撃し、施設(と現地の人々)防衛を行うとする。

【オープンファイア】、機械鎧の射撃兵装による攻撃を弾幕を張るように連続投射する。
基本的には施設の前方に位置取り、近づく群れに対して片っ端から可変速ビームキャノンの砲撃にて範囲攻撃。
撃ち漏らしにはビームアサルトライフルやマシンキャノンで制圧射撃。
適宜位置取りを変更しつつ、攻撃を絶やさないようにする。

※他の方との共闘等、歓迎です



「GOGYAAAAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOO!」
 災害級ゾンビとなった「サクリファイス」と呼ばれた超巨大ゾンビ。今も地獄の怨念のような叫び声を上げながら周辺のゾンビを喰い漁っている。いや、その膂力で単純に潰しているのもいるのだが、それでも蟲毒術式の影響かオブリビオンの魂を搾取して順調に巨大に成長している。だがゾンビの群れを潰せば、その矛先はもちろん生者が集う「イナムラ」に向かう。ゾンビをすべて食らいつくす前にこちらもゾンビを壊滅させなければならない。
「グルオオオオオオ!」
「ニクウウウウウウウウ!」
「クイクワクワセオオオオオオ!」
 だがそんな「サクリファイス」には一切気に留めず、ゾンビの大群は破壊されたバリケードに殺到し、「イナムラ」に侵入し生者を喰らおうとする。それがまるで本能と言わんばかりの捕食に対する渇望。恐怖もなく、ただ目的に従い猛進する姿は、まさしく命亡き者故の行動だろう。
「はい、救急車が通過しますよ。ゾンビの方は避けてくださいね」
 そんなバリケード入口のゾンビを救急車で跳ね飛ばし、轢き殺す救急車を操るは佐藤・和鏡子。ナースとは思えないドライビングテクニックを駆使して破壊されたバリケードを通過し、ゾンビの一団を能力「轢殺(ロードキル)」を持って突撃したのだ。その威力は凄まじく先頭にいたゾンビ達はその原型を留めないくらいに破壊されている。そして操縦席の窓から巨大化をし続ける「サクリファイス」を見る和鏡子。
「自分の死まで前提にして向かってくる執念がどこから来ているかは知りませんが、実験はここで中止ですね」
 そして再びアクセルを踏み、ゾンビを蹂躙していく暴走救急車。あるゾンビは身体を破壊され、腕が吹き飛ぶ。足が彼方に折れ曲がり動けなるゾンビもいたし、頭が半分吹き飛ぶゾンビもいた。まさに阿鼻叫喚の地獄、救急患者を量産する死の箱を操る和鏡子はその利点を生かそうと、さらに大量のゾンビの大群がいる場所を狙ってハンドルを切る。
 だがゾンビ達も必死の抵抗をする。救急車に捕まろうと決死の覚悟で飛び乗り、取り付く。
「救急車の相乗りは禁止ですよ」
「ボクに任せておきなよ」
 和鏡子は振り落とそうとするが、救急車の上に乗っていた幻武・極が動く。まるで曲芸のように救急車に手を張り付かせ、蹴りでゾンビの頭を破壊し、取りついたゾンビを振り落としていく。その後は軽々と救急車の上に戻っていく。
「助かりました、極さん」
「なーに、乗車料金代わりさ。まずはこのゾンビ達を片付けないとね。数も多いし、効率よくいこう」
 極の役目は救急車のスピードが落ちないように、乗り込んでくるゾンビの排除だ。後は打ち漏らしがないように拳の衝撃波でゾンビに着実にトドメを刺したりもしていた。和鏡子もスピードが威力に直結する上、スピードが遅くなれば救急車が掴まられる危険性も高まるので、常時アクセル全開でスピードを落とさないようにしていた。これは大群になっているゾンビ集団ほど有効的で、轢殺の能力もあって衝突の度にかなりの数のゾンビの破壊に成功していた。
 こうして阿鼻叫喚の轢殺劇が繰り広げられ、相当の数のゾンビが屠られていく。だが救急車の上から取り付くゾンビを排除していた極の眼は異常を見逃さなかった。
「ふうん、小柄なゾンビが紛れているようだね。一旦降りるよ、和鏡子」
 そう救急車の下を通過したのか、それとも大柄なゾンビが盾になったのか、小柄な地を這うゾンビが救急車の轢殺を逃れていたのだ。それを見た極は救急車から飛び、そのゾンビ達に向かう。
「逃すわけないだろ、これがボクの百裂拳だ!」
 立ち塞がるゾンビと小柄なゾンビに対し、幻武流『幻武百裂拳』を放つ。幻影も混ざる、本来はフェイントも兼ねた拳の弾幕と言える攻撃であるが、こういった集団に対しては効果的もである。ゾンビの腐りはてた身体を極の拳が撃ち砕き、小柄のゾンビもその衝撃波で潰れるように地面の染みと成り果てる。
 だが撃破を確認したところで、新たなゾンビの群れが極に殺到し押し潰そうとする。拳を握り構える極だったが、それはアクセルUターンをした和鏡子の救急車によって跳ね飛ばされていく。高速移動をする救急車の上に難なく飛び乗り事なきを得る極。
「いいタイミングだね」
「こういう大群の切り崩しは救急車の得意分野ですから」
 ニッコリ微笑む和鏡子。そしてアンデッドを死に追いやる救急車は頼もしい護衛と共に、大群のところからその数をどんどん減らしていくのであった。

「まったく……厄介な置き土産を残してくれちゃって……」
 バリケードの奪還者(ブリンガー)達と防備に当たっているのはエントツュッケントゼーラフの猛毒から回復したバジル・サラザールだ。救急車で先陣を切っている和鏡子と極の様子を見ながら、捕食して巨大化する「サクリファイス」の様子を遠巻きに眺める。
「やはり簡単にはいかないか。だが…」
 ミスト・ペルメオスもサルベージされた奪還者達をすべて倒し、バジルの隣に立っている。本来ならばもう少し楽な状況で防衛といきたかったが、敵の悪辣が上回っていたということだろう。それでもミストは最善を尽くすだけ、と決意を新たに迫りくるゾンビ達に立ち向かう。
「ここは任せても?」
「ええ、奪還者達との連携は任せて。ミストちゃんは思いっきり暴れて頂戴」
 ウィンクして微笑み返すバジル。ちゃん付けに苦笑するミストはそのまま防壁を駆け抜け、浄水施設の外へと飛び出す。
「…来いッ、ブラックバードッ!」
 ミストが吠えると同時に、愛機たる機械鎧「ブラックバード」が飛来する。それに飛び乗ると、自身の念動力を活用し、デバイス等を介して機体をフルコントロールする。そして空中から救急車を潜り抜けて迫るゾンビの一軍を目に捉える。
「お前達の隙にはさせないぞ! 攻撃開始!」
 能力「オープンファイア」を発動し、ゾンビの大群に対しブラックバードの射撃兵装による攻撃を弾幕を張るように連続投射する。空中からの弾雨にゾンビ達はあまりに無防備であった。防御も回避もとる間もなく、身体ごと吹き飛ばされてその活動を終えるゾンビ達。だが数こそ彼らの利点である。次々と新たなゾンビが殺到し、「イナムラ」に侵入せんとする。
「本当に多いな。だけど通さない!」
 ミストはブラックバードに指示を出し、施設の前方に位置取りを行う。そして迫るゾンビ達に対し、片っ端から可変速ビームキャノンの砲撃で迎え撃つ。速度と貫通力を高めた射撃はゾンビの腐肉を貫き、確実に屠っていく。
「ゴアアアアアア、ゴギャッ!」
 派手なビームキャノンの脇をすり抜けていこうとするゾンビに対しては、ビームアサルトライフルやマシンキャノンで対応し、撃ち漏らしがないように神経を使うミスト。そういった能力をフル活用して前方のゾンビを蹴散らしていく姿はまさしく黒い死神。ゾンビ達は攻撃に移る間もなく、死に追いつかれて絶えていく。
「さすが派手な戦い方ねー。でも……来るわよ」
 バジルは奪還者達に声をかける。ミストの獅子奮迅もあって大群は来れないが、さすがにすべてをバリケードに通さないというには数が多すぎた。それは水の放流を手で押しとどめるような物。大部分は防ぐことはできるが、指から水は通り抜けてしまうものだ。そういった幸運に恵まれたゾンビ達がバジル達が守護する「イナムラ」最終防衛線に到達する。
「もう2度と襲おうだなんて思わないくらいに叩きのめしてあげるわ!」
「おう、一斉射撃だ!」
 バジルの号令と共に、奪還者達の弾幕がゾンビ達を襲う。組織立っての突撃でない、散発の襲撃の形になったゾンビ達はそれによって大いに大打撃を被る。そして動けなくなったゾンビに対し、バジルは能力「ポイズン・スピア」で着実にトドメを刺していく。猛毒の槍はゾンビに対しても効果的で、腐食した肉に浸透し、まるで液体のようにその身体をドロドロに溶かしていく。
「……あの猛毒を食らって、毒性がアップしたのかしら?」
 エントツュッケントゼーラフの毒に対し耐性を得たことで、毒の威力が上がったかもしれないと感じ始めるバジル。射撃と毒槍の放射による攻撃でゾンビ達を圧倒しつつ、接近を許し奪還者に噛み付こうとするゾンビの頭部に毒槍を叩き込んで溶解していく。
「危なかった……助かったよ」
「大物は任せて。その代わり、足元を這いずる小物は任せていいかしら?」
 成人ゾンビを頭部狙撃による毒で倒しつつ、小柄なゾンビは奪還者の射撃で掃討する。そうすることで安定した防衛を行うことができた。だが絶え間ないゾンビの襲来に奪還者達の体力は限界を迎えようとしていた。
「効いてるわ! 絶対に勝つわよ!」
 バジルは激励しつつも、疲労と負傷がひどくなった奪還者は後方へと下がらせる。それは医療関係者としての薬剤師としての判断かはわからない。その分、バジルが奮戦し、その毒槍が猛威を振るうが、隙をついたゾンビが背後からバジルへと迫ろうとしていた。
「ガギャァッ!」
 だがそれを防いだのはミストのビームアサルトライフルだった。ついに前方のゾンビ大群を処理し終えたミストのブラックバードがこちらに戻って来たのだ。これにバジルは息をついて安堵する。
「とりあえず、ゾンビの大群は終わったのね」
「ええ、救急車組もできる限り倒しきったようですね」
 「イナムラ」を包囲していたゾンビの大群は、救急車で突撃していた和鏡子・極、ブラックバードと共に掃討したミスト、奪還者と共に防衛したバジルによって、その7割を駆逐することに成功した。だがその3割は災害級ゾンビ「サクリファイス」によって捕食され、その白い巨体は今や100mを超えるにまで成長・膨張し、「イナムラ」の浄水施設はおろか、そこに住む人命を蹂躙せんと迫ろうとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ゾンビジャイアント』

POW   :    ライトアーム・チェーンソー
【右腕から生えたチェーンソー】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ジャイアントファング
【無数の牙が生えた口による捕食攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    レフトアーム・キャノン
【左腕の砲口】を向けた対象に、【生体レーザー】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:タヌギモ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●災害級ゾンビ「サクリファイス」
 あれだけいたゾンビ達はもはや存在しない。猟兵達の奮闘により、その腐肉は蹴散らされ、動く死体は一つとしていない。だがエントツュッケントゼーラフの蟲毒術式で生み出された災害級巨大ゾンビ「サクリファイス」は、術者の魂を取り込み、ゾンビ達を食い散らかし、今やその体躯は100mを優に超える巨獣ともいえるほどになっていた。
「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
 頭部から裂けるように空いた口からは地を震わす轟音が放たれる。その巨体が進む度に地面が震える。周辺に廃棄されていた戦車やチェーンソーなどの武器が歪に取り込まれ、武器としてその身体を移動している。
「まるで怪獣だ。あんな化け物、俺等の手には負えない……」
 そう言って奪還者達は半ば諦めの境地で武器を下す。もはや「イナムラ」の放棄すら考えなければならないほどの巨大な脅威。アレが近づけば簡単に拠点など蹂躙されてしまうだろう。
 だが猟兵達はあきらめてはいない。巨大なる敵は何度も倒してきた。ならば今回もやるだけである。
「……君達は怖くないのか、あれが」
 その問いには答えない。言葉より行動を示すと言わんばかりに、猟兵達は迫りくる「サクリファイス」に立ち向かう。浄水施設「イナムラ」防衛戦、最後の幕が開ける。
上泉・信久(サポート)
「ふむ……面白い」
日本刀「無窮村正」のヤドリガミ
剣士の性か、強敵を見ると腕試ししたくなる性格
相手が剣士なら尚の事

戦闘>>
居合術や一刀流で闘う
遠距離なら錬成カミヤドリで対応し
近距離なら無窮ノ型 阿修羅斬で一閃していく
早業で再納刀する
共闘者がいれば、相手の動きを見て柔軟に対応する
「どれ、少し踏み込みを強くしようか」

交流>>
見た目とは裏腹に年配感を出してお茶目に
子供がいるなら子供と遊ぶなり
人の意向に感謝を
「よいのではないか?」

調査>>
怪しまれない程度に聞き込みを行う
怪しい人物がいたら地形効果を利用して追跡

他の猟兵と共演、アドリブはお任せ
エロは相性が悪いのでNG
その他、描きやすいよう任意


マリン・ルベライト(サポート)
明るい性格で社交的。
目上の人に対しては敬語で接する。
基本目上の人は名前+さん、それ以外の場合は名前+ちゃん(くん)で呼ぶ。
剣も弓も扱うが単騎での強さはそこまででないのでサポートに回りがち。
魔法も扱えるが召喚や強化がほとんど。
戦闘以外の調査などは猫を召喚して一緒にだったり透明化を利用したりなど状況に応じて様々。
年齢的にもまだ未熟なところもありたまにドジを踏むがいざという時の集中力はかなりのもの。
可愛いものや綺麗なものが好き。

正義感がまあまあ強めですがそれで暴走したりはありません。
ちょっとお茶目な感じです。
歳が近ければ○○だね、○○なのかな?といった感じの口調です。
あとはお任せします。


東・理恵
「目標が大きいのに、攻撃を外すとみなさんの迷惑になりそうですね。」
戦闘中は、戦車に【騎乗】して戦います。
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、【制圧射撃】で【鎧無視攻撃】の【破魔】を付けた【属性攻撃】の【精密射撃】を【範囲攻撃】にして、『ゾンビジャイアント』が何処に移動しても巻き込めるようにして【2回攻撃】をします。相手の攻撃に関しては【見切り】【オーラ防御】【地形の利用】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)戦車でも回避行動はできるのです。」「さあ、オブリビオンは『骸の海』へ帰りなさい。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



 浄水施設「イナムラ」に対峙する、超巨大サイズと化した災害級ゾンビ「サクリファイス」。100m超となった今の体躯であれば踏みつぶしだけでバリケードを粉砕し、施設を蹂躙することも可能だろう。多数の砲門を取り込んだことにより、一斉射撃で更地にすることもできるかもしれない。体内で複合改造したチェーンソーはコンクリート建造物すら一刀両断するかもしれない。そんな怪物が今、エントツュッケントゼーラフの蟲毒術式を完成させる為に足を動かし始める。
「どうやら間に合ったようですね」
 そういって荒野を疾駆する改造軍用戦車「神の虎」の操縦室でつぶやくのは、東・理恵(神の戦車乗り・f24407)。人間ではなく神ではあるが、目の前の馬鹿げたサイズの怪物に比べれば彼女の方が人間に見えるだろう。
「ふむ……面白い。斬り甲斐はありそうだ」
「乗せて頂いてありがとうございました、理恵さん! 助かりました!」
「いえいえ、でも本番はこれからです」
 そして理恵の戦車の上に乗っているのは日本刀「無窮村正」のヤドリガミである上泉・信久(一振一生・f14443)と、紅電気石の体を持つクリスタリアンのマリン・ルベライト(禁忌に生み出されし姉妹・f08954)だ。最悪の悪路となっているアポカリプスヘルの世界。それを踏破できる理恵の戦車に同乗する形でここに乗り込んできた援軍達である。
「GOGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
 その無粋な乱入者達を視界に捉えたサクリファイス。そして戦車を見た瞬間、それをも取り込もうとしたのか、大きな咆哮を上げて口を広げて突進してくる。まさしく巨大なる捕食獣、食欲は旺盛のようだ。
「神の虎を食べるつもりですか。ですが戦車でも回避行動はできるのです」
 迫り来る無数の牙が生えた口に対し、理恵は冷静にその軌道を見切り旋回して回避する。だが大口は捕食するまでどこまでも追尾してくる。それを理恵の戦車はうまく遮蔽物まで誘導して、直角カーブでその後ろに回り込む。当然、サクリファイスはその動きについていくことができずに、遮蔽物に口が突っ込む形になる。だがすぐにかみ砕いて目標に向かって視線を投げかける。
「ですが、隙ありです。制圧射撃開始!」
 ついに攻撃のチャンスを作った理恵がそれを逃がすはずもない。戦車「神の虎」の砲門から放たれるのは、目を覆うくらいの連続砲撃。なまじサクリファイスの身体が大きい故に狙うまでもなく当て放題である。
「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
 腐肉を飛ばす砲撃にたまらず叫び声を上げるサクリファイス。そしてその苦悶を見るまでもなく、信久がその身体に飛び移り疾駆しながら無窮村正を構える。その顔には涼し気な笑みが浮かぶ。
「どれ、巨大ゾンビの強度というものを試してみようか。無窮の居合剣術。明鏡止水の理を超え、刹那の閃を成す」
 そして放たれるは奥義「無窮ノ型 阿修羅斬」。神速の居合切りがサクリファイスの身体を引き裂く。だが斬り口に納得していないのか、早業で再納刀し、もう一度構える信久。
「どれ、少し踏み込みを強くしようか!」
 さらに阿修羅斬をサクリファイスの身体に叩き込む。その切断は鮮やかそのもの、見事に身体がパックリと割れる。そこから腐肉の腐った液が溢れ出し、巨獣が苦悶の声を上げる。
「GUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
 そして今まで食らった傷口のお返しと言わんばかりに信久よりも大きく成長改造したチェーンソーを振りぬく。うなりを上げるその回転刃を喰らえば、信久であろうともただではすまない。
「危ないです! 詠唱は省略! いくよ!」
 そういって信久に追いついたマリンが、能力「空間転移魔法・略式」を発動させる。光り輝く魔法陣が信久とマリンの下に展開され、チェーンソーが届く前に二人の姿が消える。そして次の瞬間、二人は再び理恵の戦車のところまで移動していた。
「ありがとう、助かりました」
「へへっ、戦闘は得意な方ではないけど、サポートは任せてください!」
 まさしく瞬間移動、その能力を持ってマリンは窮地から仲間を救ったのだ。そしてその二人の行動はまさに、サクリファイスの注意を理恵からそらすことにもつながった。
「いい陽動でした。ターゲットロックオン」
 それは理恵の戦車の「精密射撃」の準備が整ったことを意味した。さきほどの砲撃が命中した際、サクリファイスの動きをを覚え分析。そして次の砲撃は、まさしく一撃必殺の威力の砲撃となる。
「さあ、オブリビオンは『骸の海』へ帰りなさい」
 そして放たれる敵の急所になる砲撃。そこはまさしく信久が切断した箇所でもある。切り口に集中的で精密な戦車砲撃により、サクリファイスの身体がさらに崩壊する。そして後ろに倒れ込み、地響きが起こる。
「GUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
 だがまだ地鳴りのような声は収まらず、サクリファイスの命脈は尽きてはいない。だが強烈な先制攻撃により、次の一手の攻撃をしやすくなったことも確かである。戦車砲のすべてを叩き込んだ理恵はそう分析して、一旦戦車を後退させる。
 その引き際のタイミングも完璧であり、これから追撃をかける猟兵達にとっても最高の支援となったのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

幻武・極
うわ、あんなにもデカくなっちゃって、放置したのが失敗じゃないかな。
いや、これ以上デカくはならないだろうし、ゾンビを取り込んで回復することはなさそうだね。

さて、これだけデカいとある程度パワーをチャージしないとダメージを与えられそうにないね。
とりあえず、チェーンソーが届きにくい左側から接近して、ジャンプして飛び乗るかな。
そしたら、武器を振り回しながらかけ登り、渾身の一撃をお見舞いするよ。


バジル・サラザール
これはまた随分なものを生み出してくれたわね……
悪いけど、きっちり倒させてもらうわ

引き続き『毒使い』『属性攻撃』を生かした『ポイズン・スピア』で攻撃するわ
その大きな口の中に撃ち込んであげましょう
攻撃の様子が見えたら左腕や砲口に中心に攻撃してレーザーを撃たせないようにするわ
敵の体全体が見える位置から状況を把握、他の人にもしっかり伝えましょう
それでも攻撃してきたら『野生の勘』も利用しつつ、回避や防御しましょう
でも施設や奪還者の人達を狙ってきたら庇ったり相殺したりするわ

脅威はこれだけじゃないかもしれないけど、みんなならきっと乗り越えて、人類を再建できるわ

アドリブ、連携歓迎


佐藤・和鏡子
救急箱用レーザーモジュールで膝の関節部を狙って攻撃し、動きを封じます。(最大出力のレーザーで焼き切ります)
いくら巨大になっても構造は人間と一緒。
膝の関節部を破壊すれば動きが止まりますし、転ばせることができればさらに攻撃しやすくなりますから。
生体レーザーはミレナリオ・リフレクション(レーザーモジュールのレーザーで迎撃)で防ぎます。
チェーンソーや捕食は救急箱の運転テクニックで回避します。
今回は仲間も多いので、積極的に協力・援護します。


ミスト・ペルメオス
【SPD】
あれだけ大きければ、むしろやりやすい…ッ!

愛機たる機械鎧を駆ったままゾンビジャイアントとの戦闘に移行。
可能ならばなるべくイナムラから距離を取り、施設や人々に被害が及ばないよう留意。

念動力を活用した機体のフルコントロールを継続。
スラスターを駆使して常に三次元的な戦闘機動を行いつつ【ヒット&ラン】、一撃離脱戦法を実施。
フェイントを織り交ぜた回避機動と、機械鎧の武装を駆使した連続攻撃を繰り返す。
敵のあれだけの巨体、捉えられ被弾を許せば無事では済まないだろうと判断しつつも。
敵の隙を突ければ痛撃を狙え、こちらに敵の意識が集中すれば他の猟兵が攻撃しやすくなるはず、と。

※他の方との共闘等、歓迎です



 先制攻撃をした猟兵達の活躍により、地に倒れ込んだ巨大災害級ゾンビ「サクリファイス」。その好機をしっかりと生かすのがまた猟兵である。浄水施設「イナムラ」を防衛していた幻武・極とバジル・サラザールはさっそくサクリファイス討伐の為、動き出していた。
「うわ、あんなにもデカくなっちゃって、放置したのが失敗じゃないかな」
「でもその分、動作も遅い。今はチャンスよ」
 そういってバジルは自らの身体から猛毒を精製し、能力「ポイズン・スピア」による無数の毒槍による放出をその大きな口に対して行う。倒れ込んでいるサクリファイスにそれを避けれるはずもなく、その巨体故にすべての毒槍が突き刺され体内に猛毒が侵入していく。
「GUGAAAAAAAAAAAAAAAAOOOOOOOO!」
 ゾンビとなった今でも毒に対しては苦しいのか、それともバジルの猛毒の威力が凄まじいのか、サクリファイスは叫声を上げる。そしてその左腕の無数の砲門をバジルの方へと向ける。放たれるは体内にて作り出された生体レーザーだ。身体を焼き尽くさんばかりの凶悪レーザーを回避しながら、バジルはため息をつく。
「これはまた随分なものを生み出してくれたわね……。悪いけど、きっちり倒させてもらうわ」
 だが生体レーザーの射撃を何度もまともに回避できるはずもない。だからこそバジルは先手を打ち続ける。その砲門を取り込んでいる細胞を狙い撃ちして、猛毒の槍を突き刺し細胞を腐らせるように弱らせる。そうすることによって射出角度が曲がり、生体レーザーは勝手にバジルから外れていく。
「ナイス援護だ。これ以上デカくはならないだろうし、ゾンビを取り込んで回復することはなさそうだね」
 バジルの毒槍に隠れ、極も動いていた。砲門の根本が毒に侵され狙いが甘くなった生体レーザーをかいくぐり、サクリファイスの身体に飛び移り疾駆する。そしてその間にもルーンソードを振り回している。そしてその刀身に宿りしルーンは炎を発生させ、さらにその炎は極が腕を回転させるたびに強力になっていく。これは能力「羅刹旋風」の効果であり、ある程度パワーをチャージしないとあの巨体にはダメージが通らないという判断からだ。
「だけど、これだけデカいと当てやすい。それがキミの敗因だ!」
 そして最大限に増幅されたルーンソードの炎をその刀身ごと振りぬく極。すべてを焼き尽くす炎がサクリファイスの身体に傷をつけた瞬間、一気に燃え上がり腹から肩にかけて一気に燃焼する。その腐った肉はよく燃えるのか、さらに延焼を続けついにチェーンソーを持っていた右腕がもげ落ちる。
「GUGOGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
「うわっと!」
 だが右腕が焼け落ちてもサクリファイスの勢いは止まらない。取り付いた極を振るい落とすと、その空中に投げされた身体を生体レーザーで狙わんと砲門を向ける。
「させません」
 だがその生体レーザーは極に当たることはなかった。そのレーザーを相殺するように別方向からレーザーが飛んできたからだ。それは佐藤・和鏡子の救急箱用レーザーモジュールから放たれたものだった。極が回転するように地面に着地するのを確認し、和鏡子が狙いを定める。
「いくら巨大になっても構造は人間と一緒。もう一度地に伏せてください」
 和鏡子が狙うのはサクリファイスの膝の関節部。救急箱から放たれる最大出力のレーザーは、サクリファイスの左膝を撃ち抜き、一気に焼き切る。巨大化したからこそ、その大地に立つ足への負担はより増大する。そんな人体を知り尽くすナースの和鏡子の機転からか、的確に膝を撃ち抜かれたサクリファイスの右足は歪に折れ、支えを失った身体は再び大地へと投げ出される。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
「あれだけ大きければ、むしろやりやすい…ッ!」
 そして黒き機械鎧「ブラックバード」で空を疾駆するミスト・ペルメオスは、倒れ込み苦悶の声を上げるサクリファイスを捉える。すでに「イナムラ」から十分距離に置いた場所で戦闘を行えていることから、その念動力を余すことなく開放し、機体のフルコントロールに移行する。
(――仕掛ける)
 そして繰り出されたのは黒い流星のごときヒット&ラン。スラスターを駆使して常に三次元的な戦闘機動を行いつつ、一撃離脱戦法を繰り出すミスト。機械鎧の武装を使い、容赦なくサクリファイスの身体を削り取っていく。
「GOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
 もちろんサクリファイスも生体レーザーを乱射し、ミストを捉えようとする。砲門は数多あり、射線は空をハリネズミの如く穿つ。だがそれはミストを捉えることなく、虚しく空に舞う。フェイントを織り交ぜた回避機動、さらにスラスターで連続ブーストを行うことによりより加速するという硬軟織り交ぜた機動術は用意に捉えられるものではない。
 ミストに油断はない。敵のあれだけの巨体、捉えられ被弾を許せば無事では済まないだろうと判断しつつも、冷徹にサクリファイスの身体を抉り、着実にダメージを与える。そしてその冷静な俯瞰は、サクリファイスが庇うような所作をする、胎動する箇所を見つける。
「そこだッ!」
 そしてその高速機動のまま、一気にその箇所を貫き通るミスト。そこはサクリファイスが生体レーザーを精製している心臓部であり、高エネルギーが溜まる場所でもある。つまりそこを破壊されれば―――
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
 すさまじい爆発がその貫通箇所で起こり、サクリファイスの身体を一気に吹き飛ばす。その誘爆は砲門が集中する左腕はおろか、身体の中心部まで至り、サクリファイスの致命傷となった。
「GUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
 だが最後の足掻きか、身体を投げ撃つように右足一本で飛翔したサクリファイス。その大きく開かれた口が空中にいるミストに迫る。道連れに食い散らかさんとする意志を感じた。
「往生際が悪いわね!」
「これにて救護完了です」
 だがバジルの毒槍が容赦なく降り注ぎ、毒がその細胞に浸透し弱らせ、そこに和鏡子の救急箱レーザーが射出されその口の牙ごと破壊していく。その波状攻撃にサクリファイスの勢いが弱まる。
「これで、トドメだ!」
 そして極のルーンソードの投擲がサクリファイスの口に突き刺さる。羅刹旋風により最大限にまで高められた炎、それを宿す刀身は突き刺さった瞬間に腐った肉を滅却する炎を発生させ一気に炎上する。そしてその断末魔すらも燃やしてしまったのか、即座に消し炭となったサクリファイスの身体はミストに届く前に灰となって散っていった。

「勝った、ようですね」
 灰となって消えていったサクリファイスの口。そしてもがれた両腕や左足が消滅していくのを上空から確認したミストは、ようやく安堵の表情を浮かべる。そしてその視線は歓喜に沸く「イナムラ」の住人を捉える。
「やったぞ! あのクソッタレな巨大ゾンビを倒した!」
「すげえ! あいつらは英雄だ!」
「ありがとう……! 本当に、ありがとう……!」
 武器を放り投げて喜ぶ奪還者、猟兵を賛美する者、涙して安堵する女達。それぞれ感情は違うが、そこには希望が満ちていた。それはこの過酷なアポカリプスヘルにとっては一時のことかもしれない。
「脅威はこれだけじゃないかもしれないけど、みんなならきっと乗り越えて、人類を再建できるわ」
 希望に湧く「イナムラ」を見て、バジルはそう呟いた。これからも人は生きる。いつか人類が完全に立ち直れることを信じて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月02日
宿敵 『エントツュッケントゼーラフ』 を撃破!


挿絵イラスト