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ブロークン・ボーダー

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●始まりはいつも突然
「ハロー、イエーガー。地獄へようこそ」
 ジュリア・レネゲード(叛逆者・f24378)は満面の笑みを浮かべて、スクリーンに映った作戦内容を説明する。ようやく出会えた頼もしい仲間達に、喜びを隠せないのだ。
「早速なんだけどカチコミの依頼よ。まあこんなのばかりだけど……」
 スクリーンに映し出されたのは切り立った崖と砂漠。この崖をくりぬいた旧要塞に、レイダーが奴隷や物資を囲っているらしい。
「まずは敵の拠点に侵入して、物資を奪い返してきて頂戴」
 物資は主に武器弾薬、それにガソリンもある。対人兵器から対物兵器まで、まるで武器の見本市みたいなものだという。
「そこには奴隷として捕まった人達もいるから、一緒に助けて欲しいの」
 奴隷は男女関係無く労働力として使われている。男は力仕事に、女は武装の修繕に。
「その内こっちの動きに気付いて、敵が追撃戦を仕掛けて来るわ。次はそれを潰す」

 物資を運び出し奴隷を逃がせば、敵の追っ手を要塞内に封じ込めて制圧して欲しいとの事。何故外に出て戦わないのだ、と誰かが問う。
「逃がした奴隷が捕まれば大変だし、要塞から支援攻撃される事を考えれば、要塞内で掃討戦を始めた方が有利なのよ」
 どちらにせよ敵に地の利はある。ならば敵の手数は少ないに越した事はない。
「最後にボスが出てくるでしょう――恐らく戦車」
 スクリーンに映されたのは、正に悪役オーラ全開の六連装砲塔を拵えた機械の怪物。
「敵は掃除大隊を名乗る軍人崩れなのよ。奴らの装備もその類」
 配下のレイダーも特殊装甲服に連装砲を備え付けた、動くトーチカめいた集団だった。
「あ、そうそう。奴隷達は奪い返した物資の使い方をよく知ってるから、ちゃんと助けて物資を沢山奪っていれば、それらを使って助けてくれるはずよ。安全な所から、だけど」
 ふと、ジュリアが慌てて付け加える。助けた奴隷は連中の兵站そのものだ。故に武装の扱いは熟知している――最後の戦いは恐らく外。生き延びる為なら、彼等も身体を張ってくれることだろう。

「この戦いで沢山助ける事が出来れば、きっと復興も早まるわ」
 奴隷とは言えレイダーの兵站を一手に担っていた。その力は必ず役に立つに違いない。
「それじゃヨロシクね。絶対生きて帰って来て」
 ぐらりとスクリーンが歪んで、乾いた大地の匂いが運ばれる。
 そして、世界への反撃が始まった。


ブラツ
 ブラツです。
 新世界おめでとうございます。
 大体分かりました。

●作戦目的
 第1章は物資の奪還と奴隷の解放が目的です。奪還か救出のどちらかをプレイングで指定して下さい。なるべく傷つけず外へ運び出したり誘導する事でプレイングボーナスとなります。敵に見つからない様注意して下さい。

 第2章は要塞内での集団戦です。倉庫の様な開けた地形か通路など入り組んだ地形か、交戦ポイントを指定して下さい。敵は射撃戦向けの装備をしていますので、それらを封じるプレイングで有利に立ち回れるでしょう。

 第3章は要塞外でのボス戦です。この際、第1章で取得した🔵に応じて救出した奴隷の援護内容が変わります。沢山の🔵を得ていれば、それだけ強力な援護が期待出来ます。

 以上になります。
 第1章は幕間なしで進行しますので、いつでもプレイングを頂きます。
 第2章以降は恐れ入りますが、幕間提出後にプレイングをお願いします。
 アドリブや連携がOKな方は文頭に●とご記載下さい。
 単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
 同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。

 それでは、よろしくお願い致します。
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第1章 冒険 『敵の補給線を叩け!』

POW   :    物資を力尽くで奪って逃げろ!

SPD   :    見つからない様に奪って逃げろ!

WIZ   :    敵の動きを把握し奪って逃げろ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャルロット・クリスティア
●救出

この世界も大概ですね……まったく。
ノウハウが活かせるのは良い事なのか悪い事なのか……。

こんな場所です、マトモな見取り図なんて物はないと考えた方がいいでしょう。
救出に先だって、隠れ身の外套で身を隠しながら一通り施設内を歩き回り、間取りや見張りがいる場合の巡回ルートを頭に叩き込む。
武器の心得はあろうとも、疲弊している筈です。極力敵との接触を避けたルートを割り出さなければ。
あぁ、ルートの他に身を潜ませられるようなポイントも見繕っておかねばいけませんね。
時間のかかる作業です。他の皆さんより先だって行動を起こしていきたいところですが……。


茜谷・ひびき

こう、ド派手なカチコミって完全にフィクションの話だと思ってたぜ
まさか自分がやる事になるとはなぁ
いや、猟兵やってる事だって現実味はないが
……とりあえず頑張るか

事前にUCを使って力をつけておく
今回は体力勝負だ
気合い入れて行くぜ

俺は物資を運ぶ方をやろうかな
スクールバッグにも物を詰めつつ、【怪力】で【運搬】して行こう
銃の運び方とか知らないけど、適当に抱えても大丈夫なのか?
とりあえず持てる限り持ってみよう
スクールバッグには弾丸の箱みたいな小さい物を入れて行くか

それと冬用のコートも着ていこうかな
これのポケットにも色々入るはずだ
銃も弾丸も詳しくないけど、使い方は助けた人達に任せれば大丈夫……のはずだ、うん



●闇を照らす者達
 切り立った崖の中を刳り貫いて築かれた要塞は、元は人類の防衛線だったものらしい。しかし今はレイダーの群れが内部を占拠して、地獄めいた世界を一層際立たせる橋頭保として機能していた。
「この世界も大概ですね……まったく」
 しかしその内部も往時の機能の三割も生かせず、そこかしこの電力網が途切れたまま、薄暗い廊下が四方八方に広がっていた。
(ノウハウが活かせるのは良い事なのか悪い事なのか……)
 こんな場所だ。マトモな見取り図なんて物は無いだろう。シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は超常の隠れ身の外套を羽織り、埃っぽい暗がりを壁伝いに移動していた。先ずは一通り施設内の巡回を――それでもかなりの広さだ。施設の掌握にばかり時間を掛けてはいられない。要所を押さえて友軍と手分けして救出作業に移るべきと、通過地点の間取りとレイダーの巡回ルートを頭に叩き込む。
(武器の心得はあろうとも、疲弊している筈です。極力敵との接触を避けたルートを割り出さなければ――おや)
 ふと、レイダーとも奴隷とも違う見慣れない影が前を過ぎる。あれは……。

「こう、ド派手なカチコミって完全にフィクションの話だと思ってたぜ」
 茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)はエンジンを神と称える狂った映画を思い起こす。アレもこんな感じの拠点だったか……こんな世界があって、まさかこんな事を自分がやる羽目になるとはなぁ。
(いや、猟兵やってる事だって現実味はないが)
 違いがあるとすれば、普段自分がいる世界での異常が、この世界での普通であるという事か。輸血パックを啜りながら、静かに起こした超常が研ぎ澄ました感覚で周囲を測る――幸い敵はいないようだ。
「……とりあえず頑張るか」
 今回は体力勝負だ。気合を入れて暗がりを進むひびき。冬物のコートにスクールバッグというまるでフラスコチャイルドめいた出で立ちで、物資が蓄えられた倉庫へ向かう。
「あの……ちょっと」
 闇の中、急に少女の声が聞こえた。辺りには誰もいない、声だけが――つまり。
「……猟兵か」
 ざっと見渡し身を隠せそうな柱の影の中へ入ると、目の前にいきなり可憐な金髪の少女が姿を現した。

「あなたも猟兵、ですね」
「ああ。とりあえず物資を取り返そうかと……あんたは?」
 この辺りに敵がいない事は分かっている。腰を落として静かに、迅速に互いの情報を交換する二人。他にも仲間はいるだろうが、一人一人当たっている時間は無い。この偶然に感謝しつつ、二人は話を続けた。
「――そうか、倉庫はそっちだな。幸いまだ敵はいないけど」
「はい。巡回ルートから恐らく、このままでは五分もすれば接敵するかと」
 そいつは面倒だ、と頭を掻いてキョロキョロと辺りを見渡すひびき。先に倉庫へ入り込んで、隙を伺い脱出するのが確実か。
「そうですね。陽動も始まりますし、チャンスも幾らかあるでしょう。それと」
 ひびきの格好を一瞥し、念の為と声を掛ける。
「銃を運ぶときはセーフティもですが、チャンバーに弾が装填されていないか確認を」
 仕事で無ければ『見本市』と言われたくらいだ。自らゆっくり銃火器を吟味したい所であるが、今はルートの選定が最優先。己が希望を仲間に託して。
「分かった。俺も暴発で死にたくはないしな」
 こんな環境だ、最悪まともに保管されていない可能性もある。シャルの言葉に頷き、響はすっと立ち上がる。
「ではお気をつけて……脱出地点は伝えた通りに」
 再びシャルの姿が空間に溶け込む――二人は分かれ、それぞれの使命を果たす為に進み始めた。

「っと……これ全部、は厳しいな」
 事前の情報通りここまでは安全に来る事が出来た。倉庫に入り込んだひびきは雑多に積み上げられた弾薬箱や、ぎっちりと銃器を納めた木箱を見やり独り言ちる。
「弾薬はパックされてるやつを、マガジンはポケットに突っ込んで」
 積載量が自慢のコートだ。弾薬が装填されている事を確かめたマガジンを片っ端からポケットに詰め込んで、5.56×45mmと書かれた弾薬箱をスクールバッグに押し込んでいく。これがスタンダードらしいが、矢張り弾種によって使えたり使えなかったりというのは些か面倒だ。
「銃は……箱詰めされてるこれにしとくか」
 問題は銃火器、MADE IN USAと刻まれ段積みされた木箱を自慢の怪力で担ぎ上げて、いったん出口を覗けば――これも情報通り、巡回が周りをうろつき始めたようだ。一旦姿を隠せそうな場所を見繕い、ひびきは腰を落とした。これだけ持ち帰れれば一分隊くらいは装備を整えられるはずだ。後は仲間の行動を待つとしよう。

「脱出ポイントはこの位でいいでしょう。問題は――」
 ようやく施設のマッピングを粗方終わらせたシャル。目印も付け身を潜ませられるようなポイントも幾つか見繕った。これなら素人集団でも出口まで進む事が出来る筈だ。
「……始まりました、かね」
 不意に轟音と振動が施設を襲う。確実に奪還と救出を進める為、猟兵達の策は十重二十重に張り巡らされている。その為にも、と――本当に時間のかかる作業だった。
「時間はかかりましたが、先立って行動した甲斐はありました」
 道筋はつけられた。後は先導がいればこの仕事は終わったも同然、と。銃を手に取って来た道へ戻るシャル。せめて道を塞ぐ石くれぐらいは退かさないと。
「……戦いは、まだ終わらない」
 故郷に思いを馳せて、少女は再び戦場へ。この世界の闇を照らす為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン
私はフィーナよ!
今回もダンボールの中にいるわ!
しかも前回と違って縦長のビッグサイズよ!
こそこそするのは性に合わないけど傷つけず助けろって条件は難しいから仕方ないわね!
ささっと侵入&擬態を繰り返して奴隷は私のダンボールの中にイン!
こー、真横から見ると少し床から上がったダンボールの下に私と奴隷達の足首が並んで見える感じでいっちにーいっちにーと進むわ!
逃げつつもしも見つかりそうなら敵も一緒に食らうようにダンボールにインして
皆で蹴り散らかして進んでいくわ!
名付けて人食いダンボール百足の陣よ!!完璧な作戦だわ!(ドヤァ)
あ、奴隷は適当な所で下ろすわね!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)


キア・レイス

物資も大事だが、奴隷がいるならば救出を優先する。
私と用途は違うが、本意でないのに奴隷として扱われている者達がいるのならなるべく救い出したい。


要塞では静かに目立たないよう潜入を試みる。
侵入経路は通風口でも見当たればフックショットをひっかけたりで潜り込めるか。

潜入が成功したなら俊鋭感知を定期的に発動し、周囲の地形や人の配置を探りつつ奴隷たちを探す。
見つけさえすれば奴隷の証言などから芋づる式に物資や奴隷の場所もどんどん引き出せるだろう。

万一見つかった場合は先に奴隷を逃がし、私がかばうように敵をおびき寄せ時間を稼ぐ。
出来ればやりたくないが…敵の視線を私一人に釘付けにする手段も自信も、あるにはある。


シーザー・ゴールドマン
●【POW】
なかなか面白い世界が見つかったものだね。
見て回る前に一仕事しておこうか。

『ハーデースの兜』により全身を大気の一部と化し、敵拠点を隅々まで見て回る。捕らえられている人間のいる場所、警備の配置を把握した上で奴隷の前で実体化。警備にかち合わないルートを通って外に導きます。

やあ、初めまして。私はシーザー・ゴールドマン。
君達を救いに来た者だよ。



●スニーキング
「待たせたわね!」
 奴隷たちの目の前に突如現れたのは、動く段ボールだった。
「こそこそするのは性に合わないけど、傷つけず助けろって条件は難しいから仕方ないわね! 仕方ないのよ!」
 バサァと中より現れたのは小柄な金髪の少女……お姉さん、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)だった。仲間から得た潜入ルートは完璧、己が故郷とよく似たこの世界においても、彼女は変わらず貞淑にミッションを遂行するのだ。
『え、あの……』
「いいから!」
 入って! と入れられるだけ奴隷をやたら長い段ボールに押し込むフィーナ。大丈夫よ任せなさいとドヤ顔で粛々と救出作戦を敢行する。
「名付けて人食いダンボール百足の陣よ!! 完璧な作戦だわ!」
『あの、足の長さが……』
 見れば段ボールの底よりにょっきり生えた足の長さもまばらで、このままでは脱線しそうな電車ごっこ。だが細けぇ事はいいのだ。動けば問題無い。
「脱出ルートは完璧だわ! さあ、自由へ向けてレッツゴーよ!」
 一部屋分の奴隷五人を喰らった段ボール百足は、そのまま密やかに部屋を出ていくのだった。目指すは脱出ポイントである一階倉庫――陽動までもう、時間が無い。

「物資も大事だが、奴隷がいるならば救出を優先する」
 私と用途は違うが、本意でないのに奴隷として扱われている者達がいるのならなるべく救い出したい――要塞へ潜入したキア・レイス(所有者から逃げだしたお人形・f02604)は、音を殺して通路を進む。仲間が既に施設のマッピングを完了していたのだ。その情報を受けて――これならば時間を掛けずとも目的を達成出来るだろう。
「似たような感じだが、まあ……」
 やるべき事は変わらない。銀髪を撫でてだだっ広い倉庫を抜けるキア。時折レイダーの姿が視界に入るが、こちらに気付いた様子は無い。
(人より物資の方が大事……という訳でも無さそうだな)
 完璧な要塞に守られて油断しきっているのだろう。静かにフックショットを梁に掛けて、速やかに上昇――通風孔に細身の身体を潜り込ませれば、奴隷が閉じ込められた区画までの移動も容易い。
「しかし、随分な兵器ばかりだな」
 見れば眼下には新旧様々な戦車が立ち並び、そのどれもが一応動くらしい。中にはアイドリング状態で待機しているものもある。近々略奪でもあるのだろうか。
「まあ、ここだけではあるまい」
 見つけさえすれば奴隷の証言などから芋づる式に物資や奴隷の場所もどんどん引き出せるだろう。超常で鋭敏に研ぎ澄ませた感覚から進路の安全を確認して、匍匐前進で進んでいく。漏れ出た光が声と共に――この下か。ツールナイフで蓋を外して部屋へ躍り込めば、突然の侵入者に目を見張る奴隷達が声を上げそうになる。
「――静かに。脱出するぞ」
 口元に指をあてるキア。救出作戦は密やかに進行する。

「なかなか、面白い世界が見つかったものだね」
 闇の中、真紅の美丈夫が静かに歩む。シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は堂々と正面から要塞に入り――されど誰一人として彼に気付く事は無い。それがシーザーの超常、全身を大気の一部と化し、目に見えず、触れられもしない魔力と化した彼にレイダーが気付く事は無い。
「フム、見て回る前に一仕事しておこうか」
 ダークセイヴァーとよく似た境遇のこの世界、違いがあるとすれば人々が戦う事を選び、それはつい数年前から始まったものだという所か。
「……成程、同郷の者がいるみたいだな」
 姿を消して隅々まで回ったシーザーの目に入ったものは、見知った手口の痕跡だ。それはきっとこの世界のものには分からない――ダークセイヴァーの文字で書かれた、模様めいた跡だった。
「まあ、この中の事は大体分かった」
 では仕事をしよう、と迷い無く進んだ先は奴隷の収容区画。作業に応じてそこかしこに分散されているのは、協調して脱走される事を防ぐ為か。管理は面倒だが、確かに予め分断しておけば、広い施設を乗っ取ろうなんて事は考えが及ばないだろう。
 姿なき侵入者は気付かれる事も無く、得た情報と己が確かめた状況で既に脱出ルートも目星がついた。そして目的の場所に辿り着く。
「――やあ、初めまして。私はシーザー・ゴールドマン。君達を救いに来た者だよ」
 突如姿を現したシーザーに面食らった奴隷達は、声を殺して救いの手に安堵の表情を浮かべた。扉も開けずにどうやって――等と考える間は無い。
「では早速行こうか。君達は何も、心配する事は無い」
 赤黒い光を帯びたシーザーが扉に触れれば、跡形も無くそれが消える。道が無ければ作ればいい、ただそれだけの事なのだ。

「さあみんな! 息が切れてそうだけど容赦しないわよ!」
 廊下をフラフラと進む段ボールは何故か誰にも見破られない。にょっきりと立ち上がって進んでは止まり、周囲を見渡し再び進む。時折道を塞ぐレイダーがいれば背後より襲って装備を剥ぎ取って捨てる。正に段ボールモンスター、蠢く混沌と化したフィーナ一行は慎重に階段を下りて、合流地点の倉庫区画へと向かった。
『あの、この先は行き止まりじゃ……』
「大丈夫だ、問題無い」
 不意に声が――同じく奴隷を引き連れたキアが、フィーナとほぼ同時に倉庫へ辿り着いたのだ。
「流石に文字までは一緒じゃないからな、私達だけでも分かれば十分――」
 先行の残した情報でここに集められたのだ。道すがら奴隷に聞き出して銃や弾薬も奪っておいた。最悪襲われた所で、多少は己が身を護る事も出来るだろう。
「そうだね。多少は時間もあるし――」
 ふわりとシーザーが姿を現した。視線の先には古めかしい戦車が一台。
『あ、あれは、エンジンが止められなくて……』
 物凄い轟音を響かせるそれは動力を止める事が出来ず、常に掛けっぱなしで駐機しているらしい。勿体ないが動かなくなるよりはマシ、という事なのだろうか。
「ならばあれも頂こうか――その前に」
 気づかれたか。レイダーの一団がこちらへ近づく。キアが研ぎ澄ませた感覚が捉えたのは、総勢三名の歩哨めいた集団。
「出来ればやりたくないが……敵の視線を私一人に釘付けにする手段も自信も、あるにはある」
「出来ればやりたくないけど、敵を一撃の下にダウンさせる技しかない」
「出来ればそっとしておくべきだが、フム――大分人も集まっているしね」
 各々が得物を抱えて近寄るレイダーに立ち向かう。
 奴隷達の目に映ったその姿は、正に闇に降り立った救世主だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
【奴隷解放】

物資は貴重だが、人員も同じく貴重だ
【爆破工作】発動
小型ロボ達を先行、各所に配置し通路や
奴隷達の居る場所の地形等を情報収集し把握

奴隷を監視している者に気付かれないように忍び足
一人をガントレットで首を締め上げ気絶攻撃、目立たないように処理
さらにスタンロッドを使用しマヒ攻撃と同時にロボ達で、
監視者達をかく乱、早業で仕留める

助けにきた。私以外にも仲間がいる。此処を逃げるぞ

監視者を一か所に集めておき、奴隷達を連れ、
小型ロボ達で把握している敵のいない通路を通って脱出

破壊工作。敵が襲撃に気付いた様子なら、
奴隷達がいた所に配置していたロボ達を一斉に起爆

これで多少なりとも状況を混乱させれれば良いが。


モア・ヘリックス
・物資奪還
連携、アドリブご自由に

要するに力付くで奪えってことだろ?悪くない、俺好みの依頼だ。
オーケイオーケイ、わかってるさ。ちゃんと見つからないようにする。

さて、潜入となれば……コイツだ。グラップルシューズを起動、吸着機構を使って要塞の上部から侵入を試みる。
最悪窓がなくても通気孔くらいはあるだろ?

潜入したら隠れながら物資捜索。ルート上の敵兵は背後から『銃』で片付ければいい。
あ?撃つわけねえだろ。打つんだよ。

金目の物……もとい物資ゲットのためにも、スマートに行こうぜ。


カタリナ・エスペランサ

今度の新世界は中々に過酷だね
上等だ、その絶望を終わらせる第一歩としよう!

《目立たない+ものを隠す+迷彩+忍び足》で気配を殺し、《念動力+情報収集》の力場をセンサー代わりに展開して進んでいくよ
使うUCは【衛生兵特級資格】、奴隷にされている人たちの《救助活動》を最優先に。
弱っている人には《医術・全力魔法》の手当てを施したり《コミュ力+礼儀作法+鼓舞・慰め》で励まし、《ブームの仕掛け人》として皆に希望を持ってもらおう
UC【やがて生まれ出づる理想郷】の要領でペンダントの中の異空間に《ものを隠す+運搬》、一時的に招き入れる事も出来るかな?
もし拠点の物資も同様に回収出来ればそっちの収穫も期待できそうだね



●素晴らしき世界に祝福を
 工程は半分を過ぎた。続々と奪還される物資と奴隷――後は敵の目を欺き、確実に退路を確保すれば作戦は完了だ。レイダーの要塞倉庫内で猟兵達はその身を隠し、作戦の概要を再確認していた。
「物資は貴重だが、人員も同じく貴重だ――」
 電子音混りの発声がざっくりと作戦を説明する。テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)は既に工作用の小型端末を各所に配し、確保した情報と進行ルートを仲間達と共有していた。テリブルの言う通り、幾ら物があっても使う人がいなければ意味がない。だからこそ人命救助を優先して動こうというのだ。
「だがまあ、どれも要するに力付くで奪えってことだろ?」
 浅黒い男が端末に移された情報を一瞥すると、ニヤリと歯をむき出して得心が行った風に笑う。モア・ヘリックス(ブチハイエナ・f24371)にしてみれば――奪還者にしてみれば、いつもと変わらぬ依頼に違いない。猟兵として日が浅くとも、この世界の事ならば誰よりも知っている。何といっても俺好みの依頼だ、悪くない――と。
「しかし中々に過酷な状況だね」
 カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は嘆息して状況を改めた。要するに陽動に合わせて敵が手薄になる一階に物資や奴隷を集めつつ、その殿を守れという事なのだろう。強襲撤退戦とは中々にえげつない設定だ。
「だが、上等だ。その絶望を終わらせる第一歩としよう!」
 これまでも、これからも、何度もそういう事を成すのが自分達猟兵だ。薄暗いコンテナの天板を開け、三人は闇に紛れて作戦を再開する。
「――いいな、本命は十五分後だ、それまでに」
「オーケイオーケイ、わかってるさ。ちゃんと見つからないようにする」
 テリブルの確認に頷くモア。カタリナは気配を殺して姿を隠し、既に先へと進んでいた。
「それじゃあ行こうか、お嬢さん」
「――テリブルだ」
 アクチュエータの消音装置を起動したテリブル。そのまま音も無く闇に紛れた巨体を見て、頭を振りながらモアも道具に火を入れる。
「さて、潜入となれば……コイツだ」
 カチリ、とスイッチが入ればぴったりと地面に靴底が吸い付く――グラップルシューズの吸着装置は正常、後はじっくりとルートを進むだけ。続いて壁に張り付き上へと登るモア。倉庫上方の通気孔……こんな所から入り込もうなんて奴はそうそういないだろう。ヤモリの様に闇に紛れて秘中の侵入口に向かう。金目の物……もとい貴重な物資を手に入れる為に。

「どうにも……ここは余り状況が良くないらしいね」
 カタリナが入った場所はまるで病室の様だった。怪我をした者、病に伏せる者、要するにここは“戦力外通告”された連中の溜まり場という訳だ。突如現れた金髪の美女に面食らった奴隷達は、天使めいたその容姿に終末を覚悟した。
「いや、神様のお使いとかそういうのじゃないから……」
 ニコリと笑みを浮かべたカタリナが淡い光を纏って――超常が知識と五感をアップデートする。こんな様子を見せられて、黙っていられる訳が無いじゃないか。
「ただ、キミ達を助けに来たんだ。それだけは信じて欲しい」
 しかし余り時間は掛けられない。先ずは外傷の酷い者から――カタリナの神業めいた手技が閃く。失敗は許されない、全ては先の逃避行を確実にする為に。
「大体……終わったかな?」
 応急処置を施し、投薬を終えて辺りを見渡すカタリナ。それでも何人かは足を引き摺って、駆け出す事もままならない様子だった。
「……仕方ないね。余り沢山は難しいだろうけれど」
 首に掛けたペンダントに手を当てて薄く目を閉じる。途端、足を悪くしている奴隷が光を放つペンダントに吸い込まれて――その様子に一同が驚愕の表情を浮かべる。矢張り何か恐ろしい事の前触れだったのではと。
「大丈夫だよ、これから逃げ出す為の準備だから」
 だから、走るよ。準備はいい? と真剣な表情で一同を見渡した。
 時間はもう、残されてはいないのだから。

「やっぱり連中、随分とたるんでやがるな」
 上階から通気孔の中を辿りつつ進んだモアの目に映るのは、だらだらと通路を闊歩するレイダー達。外の世界とは違う絶対の安全が確約された要塞内だ。こんな所まで敵対勢力は追って来ないだろうという気の緩みが、一方で猟兵達の侵入を容易にさせていたのも事実だ。
「まあお陰様で目当ての物もこうやって……っと」
 上階の倉庫――こういう所には『お宝』がよくあるものだ――の通気孔から顔を逆さまに出す。目の前には気だるそうなレイダーが一人、欠伸をしながら巡回しているだけだ。そして対物ライフルに対戦車ロケット砲――成程、こちらの倉庫にはお高い重火器ばかり揃っていた。
(思ったよりいいモノ揃えてやがるな……)
 ゆっくりと身体を屈ませながら着地――グラップルシューズの機能を使えば、足音一つ立てずに降りる事も容易い。未だレイダーはモアの侵入には気付かず、慌てずにモアはその背後を取る。
「……ご機嫌いかが?」
 突然の挨拶に咄嗟に構える事も適わず、崩れた体勢のまま鈍器の様な銃床で思い切り頭を叩かれ昏倒するレイダー。
「ゆっくり寝てな。もうすぐプレゼントを持ってサンタが来るぜ」
 そのまま全身を拘束し空き箱に放り込まれるレイダー。自身は『お宝』を担いで、来たるべき時を待つ。物事はスマートに……口元を歪ませて、モアは手近な物陰に身を隠した。

(随分と熱心な奴もいるものだ……)
 先行して放った端末から、この辺りの連中がそこまで『やる気がない』事は把握していたが、テリブルの目の前で奴隷を見張るレイダーだけは何故かやる気十分――扉の前から一歩も動かず、右に左に目を走らせて、油断なく監視を続けていた。
(まあ、それでも)
 人間である以上視野には限界がある。勿論、認識も。レイダーの足元には既にテリブルの放った刺客――小型爆弾を内蔵した端末がその牙を剥く時を待ち構えていた。
(まだ、早い)
 端末に指示を出すテリブル。僅かに注意を逸らすだけでいい――足元を何度も小突かれ何事かとレイダーが頭を振った刹那、音も無く近寄った巨体がその意識を奪い去る。そしてそのまま滑り込む様に一室へ入り――熱心な監視の理由を知った。
「成程……『商品』という訳か」
 テリブルの見た者はいわゆる女子供。若い者達が小綺麗に着飾られて、鉄球付きの足枷を嵌められたまま一室に押し込められていたのだ。
「助けに来た。私以外にも仲間がいる。此処を逃げるぞ」
 電子音混りの優し気な声色で淡々と伝えるテリブル。バチンと鎖を超重のガントレットで次々と潰し、天井の監視カメラを破壊して奴隷達を開放していく。
(とは言え時間まであと僅か……止むを得ないな)
 端末の情報より監視の詰所はここに近い。まだ騒ぎは起きていないが、恐らくバレるのは時間の問題だろう。
「……悪いが全員、走れるか?」
 退路まで全速力でおよそ一分、一度も止まらなければ十分間に合う筈だ。テリブルの質問に奴隷達は戸惑いながらも、やや間を置いて頷いた。



 売り物の奴隷の監視映像が途切れたのはつい先程。ボロい備品だが修理を口実にアイツらを揶揄うのは最早定番の娯楽となっていた。のっそりと監視詰所から奴隷の部屋へ向かった一人のレイダーは、鍵が開け放たれた部屋の扉を見て慌てて駆けこむ。
(まさか、奴ら脱走したのか……!?)
 血相を変えて部屋の中に入り込んだレイダーが見たものは、打ち棄てられた足枷の鉄球と、椅子の前でわらわらと動き回る小人の様なメカ。そのメカに括り付けられた看板には真っ赤な文字で何かの殴り書きが。

 ――Merry Christmas!

 そして閃光がレイダーを包み、奪還作戦は最終段階へと移行した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メルティア・サーゲイト
見た限り、この世界は陸戦兵器が主体のようだなァ。ま、航空機は色々コストが高くて維持できないんだろ。つまり、
「爆撃機用の対空砲塔なんてある訳ねーわなァ!」
 高高度から狙撃だ! 爆撃で吹っ飛ばす訳にも行かねーから爆装は無しだが、別々な場所を狙えるレールガンを4丁翼下にマウントしてでレイダーを吹っ飛ばすぜ。
 っていうのは陽動でな。ドールユニットをこっそり進ませて捕虜を救出していくぜ。別に敵に見つかっても問題は無い。上に居る狙撃手にブチ抜いてもらえばいいだけだからな。んで、捕虜も物資も無くなった場所は、
「一気に吹き飛ばせる!」
 機体下部の30mmガトリングで粉砕だ。お前も物資になるんだよ!


アララギ・イチイ
SPD行動

ふむ、あの場所から物資を奪還すればいいのねぇ
安全に奪還するならこの方法で対応しましょうかぁ


【選択UC】発動ぉ
坑道掘削用のロードヘッダを召喚して、少し離れた場所からトンネルを掘削して要塞内部からの脱出経路を確保するわぁ
掘削時の騒音や振動には注意、要塞近辺では掘削速度を下げて敵にバレない様に注意して掘削するわぁ(【聞き耳】や【情報収集】で要塞内部の構造や状況を確認、下手な場所にトンネル出口(出口は隠蔽処置)が貫通しない様に注意

トンネルが通ったら、それを利用して資材を奪還するわぁ
資材を運ぶ際も、周囲の状況を確認、資材の減少が敵にバレない様に積み方などを変更して【時間稼ぎ】するわぁ


ユエイン・リュンコイス
●奪還 連携アドリブ歓迎

さて、新世界もまたぞろ世知辛い…と言うよりも世紀末な雰囲気だね。ともあれ、早速こちらも動くとしよう。

相手は要塞内部に引きこもり、か。ボクは奪還に狙いを絞ろうか。潜入には…デスワーム、頼んだよ。【トンネル堀り】で地面に穴を穿ち侵入路を形成、内部へと突入。物資保管庫を探し出そう。
もし敵と出会った場合には、デスワームで【恐怖を与える】。この手の化け物は見慣れているだろうけど、それだけに脅威と感じるはず。隙を作り、【制圧射撃】で無力化するよ。

そうして物資を見つけたら、UCを起動。取り込めるだけ取り込むと同時に、壁も分解して脱出路を確保。後は囮代わりに暴れながら離脱しようか。



●虹の果てには
 要塞は蜂の巣を突いた様な大騒ぎとなっていた。火の手が上がった一階収容施設を皮切りに、続けて各所で爆発が起こる。
『敵襲なのか? 事故じゃないのか!?』
『詰所との連絡が取れない! 侵入者だ!』
 わらわらと銃を手に廊下を右往左往するレイダー達。掃除大隊などと名乗っていても所詮は烏合の衆、思わぬ奇襲に迂闊にも窓から顔を出したその時、一人のレイダーが壁ごと吹き飛ばされた。
『一体……何が……?』
 ゆっくりと顔を上げて外を見たレイダーの目には、信じられない光景が――恐るべき怪鳥が悠然と飛翔する姿が見えたのだ。

「見た限り、この世界は陸戦兵器が主体のようだなァ」
 かつん、かつんと靴音を響かせて、暗がりをゆっくりと影が歩む。
(ま、航空機は色々コストが高くて維持できないんだろ。つまり――)
「だからよォ、爆撃機用の対空砲塔なんてある訳ねーわなァ!」
 見た目は可憐な少女、メルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)が声を上げると共に、要塞が大きく振動した。かつてはオブリビオン・ストームに対抗する為の最前線、生と死の境界線だったであろう堅牢な要塞も、異世界の超兵器――少女の本体たる超重高速爆撃機の超常的な攻撃に晒されれば、正に蟷螂の斧。立ち向かう術も無く一方的に蹂躙されるのみ。
「ほらよッ! 地獄のサンタさんから鉛玉のプレゼントだッ!」
 今の攻撃はあくまで牽制、迂闊に動けば消し飛ばすぞという強烈な意思表示に過ぎない。現に廊下を渡って上下階層に移動する事は最早封じた。自在に稼働する四門の超電磁砲が迂闊なレイダーを狙って、常にその牙を研ぎ澄ませているのだ。
(ま、今の内に全員逃げだしゃ、このフェイズはこっちの勝利だ)
 メルティアの前に敵は無く、その後に道は続く。メルティアの背後の先は一階倉庫――猟兵達の合流地点なのだから。

「さて、新世界もまたぞろ世知辛い……と言うよりも世紀末な雰囲気だね」
 このイカれた世界は果たしてどんな意思が働いているのだろうか。陶器の様な肌の少女、ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)はしずしずと漆黒の一本道を歩む。その先には異世界の恐るべき怪物、世に憚る恐怖と狂気を凝集させた様なモンゴリアンデスワームが。その化物は只管、黙々と土や鉄屑を食みながらユエインが渡るべき道をこさえ続ける。
「ともあれ、早速こちらも動くとしよう」
 そして光がユエインを照らす。デスワームが貫通したトンネルは合流地点とは別の倉庫に通じていた。そこには既に籠城している一階のレイダーがずらりと並んで、突如現れたデスワームを呆然と眺めていた。
「……やあ」
『ヒィ!』
 デスワームの後ろから現れたユエインに次々と銃口が向けられる。ガタガタと手を震わせて、定まらない照準がレーザーサイトの光跡をふらつく蛍の様に揺らめかせた。
「……そんな目で見ないでよ」
 刹那、銃声が狭い倉庫に轟く。見た所燃料らしきものは無いし大丈夫だろう――ユエインの手にはいつの間にか蒸気を立ち昇らせる二丁の拳銃が。牽制と恫喝の制圧射撃がレイダー達の足元で躍り、この場の支配者が誰であるかを改めて誇示する。
「もっとそう、この子に食べられたくなかったら――」
 ちなみにこのデスワームは有機物は食べない。らしい。
「――銃を置いて跪け」
 それを知らぬレイダーが逆らえる道理など、最早無かった。

 時折外部からの砲撃に晒されて、その度に大きく要塞は揺れた。止まぬ砲撃、迂闊に出れば木っ端微塵に吹き飛ばされる。故に振動が要塞を襲う度、レイダー達は恐怖に怯え竦むばかりであった。だからこそ、猟兵達の最後の一手は何の妨害も無く通じたのだ。
「はぁいお待たせ……って、随分とあっさりねぇ」
 爆音を立てて集合地点の倉庫の地面に大穴を穿ち、地底より現れた大深度掘削装備多脚戦車の中からアララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)は姿を見せる。ハッチから身を乗り出して安全第一(ヘルメット)を頭に被り、ツルハシを担いで集った奴隷達を指差し確認すれば、一寸息を吐き次の作業に取り掛かった。
(こんな世界なのに、余りにも呆気ないわぁ)
 無いわぁ。もう少し根性無いのかしらねぇ。ソナーで周辺は探索済み、敵は近くには居ない筈。猟兵達が運び出し、連れ出した物資や奴隷達を次々と掘り進んだトンネルを通じて外へと逃がし、その過程でアララギは偶然楽しいものを見つけた。
「なぁに、まだ面白いものが残っているじゃない」
 それは音を立てたまま鎮座する、かつて鬼とまで呼ばれた旧式の戦車だった。

「もう捕虜も居ねぇみたいだし、やっちまってイイよなぁ?」
「物資の運搬がまだ……まあ、でもいいか」
 一階通路、逃げ惑うレイダーを追い掛け回して、正面からメルティアが、背後からユエインがそれぞれの武装と超常で追い立てる。倉庫の方には物資や壁を糧に顕現したユエインの巨大な黒鉄機人が。反対側には散弾銃と火炎放射器を抱えたメルティアと――ユエインに穿たれた壁の穴から、遥か彼方の超常の怪鳥が裁きの鉄槌を、神が与えた聖なる30㎜を猛然と撃ち放つ。
「テメェも物資になるんだよ! 大人しく寝てろ!」
「いや、流石にナマモノだしこれは……」
 タフな少女達は重火器を振り回して一階を完全に制圧せしめた。これ以上の破壊は要塞ごと崩してしまう――そうなれば自棄になったレイダーが何をするか分からない。だからこそ、敢えてこれ以上の攻撃は控えていた。
「ちょっとだけ冷静に、迂闊さをスパイスにってねぇ」
 鈴の音の様な声と共に、遠くの暗がり――倉庫の方から、瀟洒な二体の戦闘人形と八体の小型人形が陣を組んで、戦場の女王が姿を現した。
「――そろそろ出て来てもいい頃かしらぁ?」
 風切り音を纏って浮遊するセンサ付きシールド群が新たな敵を察知し、その状況にアララギは狂喜した。
「君がここにいるという事は、つまり」
「ええもう、バッチリ」
 アララギが貫通したトンネルを通って、物資も奴隷も全て脱出した。追手はメルティアとユエインが尽くを葬った。残る敵は二階より上に残ったレイダー達、そして。
「何だ……異常な数の熱源が……」
 メルティアのセンサが捉えたのはこれまでに無い敵の存在。一階をうろついていた敵は時間稼ぎ――本命は、二階より上にいたレイダー達が自慢の極限環境特殊作戦服を身に纏い、ぞろぞろと階段を下りてきたのだ。
「それじゃあ第二ラウンドの開始と行こうかしらぁ」
 アララギの弾幕がゴングとなって、再び戦端は開かれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ロスト・レイダース』

POW   :    バリアブルランチャー・バーストモード
自身の【虚ろな瞳】が輝く間、【背負った四連バリアブルランチャー】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    バリアブルランチャー・イージスモード
【四連バリアブルランチャーの自動迎撃モード】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    レイダース・カムヒア
自身の【略奪物】を代償に、【レベル分の人数のロスト・レイダース】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【四連バリアブルランチャー】で戦う。

イラスト:鋼鉄ヤロウ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●堕ちた希望
 その装備は元来宇宙開発用に設計された物だった。しかしオブリビオン・ストームの襲来によって本来の使用からかけ離れた極限環境特殊作戦服として仕立て直され、作業用アームの代わりに備えられたのは、敵対者を迎撃する為の実体/光学可変の両用砲だ。
『……獲物……』
 そして圧倒的な戦闘力を代償に、装着者は全ての機能を十全に使う為に正気すら失って、機械との一体化を果たす。何もかもを奪う為に。

 要塞の一階は開きっぱなしの地形と化した。しかし絶妙に統制された彼等は迂闊には出てこない。待ち伏せをしても徒に時間が過ぎて行くだけだろう。二階や三階の廊下――それだけでは無い。一階同様の巨大な倉庫は二階と三階にもある。どこで戦うかは、どうやって追い詰めるかは猟兵達の自由だ。物資も奴隷も最早ここには無い。あるのは闘争の火種だけ――放置しては第二、第三の犠牲者が生まれてしまう。

 ここから先は、猟兵の時間だ。
 殲滅目標は『ロスト・レイダース』――堕ちた旧時代の希望。
 虚ろな眼を見開いたレイダー達に、引導を渡せ。

※交戦地帯は要塞内部に封じ込めての殲滅を推奨します
※要塞外の戦闘は敵が地の利を生かして逃げ、ボスと合流する恐れがあります
※外部からの要塞破壊はレイダーを逃がす恐れがある為、推奨しません
※プレイングは12/25(水)8:31より募集致します
メルティア・サーゲイト
 ドールが銃器を投げ捨てて両手を上げる。
「おっと。勘弁してくれよ私はか弱いんだからさァ……」
 その間に爆撃機形態で要塞内部へ突入! 前面装甲と飛行ユニットをパージしてそのままぶつけるぜ。
「なァーんてな!」
 残った人型形態の両手にガトリングショットガン! ドールユニットも油断なく対物狙撃銃に持ち替えてアシストだ。
「大した連射力だが一発が軽いぜ? 私に撃ち合いで勝つつもりではなァ!」
 こっちは撃ち合いに特化した装甲、効きやしねえ。装甲任せに突っ込んで蹴散らすだけだ。
「私を倒したければ戦車の一つも持って来るんだなァ!」



●サチュレイター
「おっと。勘弁してくれよ私はか弱いんだからさァ……」
 小柄な少女が装甲服のレイダーに取り囲まれて両手を上げる。手にした銃器を投げ捨てて、あからさまな降伏のサイン――それを見てじわじわと、レイダー達が距離を詰めた。
 要塞入口周辺、唯一外へ大きく開かれた一階のだだっ広い空間で、哀れな生贄に無数の砲門が照準を定める。最早逃げ場は無い……そう、レイダー達は相手を見誤ったのだ。

 突如、耳をつんざく爆音が空間に響き渡る。それは外から――巨大な攻撃機がまるで獲物に襲い掛かる猛禽の様に、開かれた空間に烈風を伴って飛来したのだ。
「……なァーんてな!」
 想定外の奇襲――外からレイダーを封じ込める様に布陣していた攻撃機が、まさかここに突撃してくるとは誰も想像すらしていない。慌てて照準を飛来した装甲へ向けた刹那、反撃の弾幕が捉えたのはレイダー達に向けて放たれた攻撃機の装甲と飛行ユニットだった。
『馬鹿な、特攻だと!?』
 実弾が跳ぶ炸裂音と空間を裂く照射音が狂的な協奏曲を奏でる。爆ぜる装甲、炎に包まれた飛行ユニットの奥――揺らめく炎が映した影は、悪魔めいた機械の巨人。それこそが『サチュレイター』――メルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)の真の姿。
「バカはテメェらだよ!」
 不意に一人のレイダーの頭が吹き飛ばされる。いつの間にか体躯以上の対物ライフルを手にした少女が――恐らく先程吹き飛ばされた装甲に紛れて――その引き金を引いていたのだ。一瞬の静寂、何が起こったのか分からないというレイダーの面々、ふわりと硝煙が空間に溶け切った直後、巨人の両手から殺意を伴う鉛玉の嵐が吹き荒れる。殲滅者の鉄槌が捉えたレイダー達を鉄屑に変えるのに、時間はそう掛からなかった。

「大した連射力だが一発が軽いぜ? 私に撃ち合いで勝つつもりではなァ!」
 こっちは撃ち合いに特化した装甲――メルティアは例え地に蔓延る悪鬼が相手だろうと、絶対無敵の宇宙の戦士だろうと、やる事は変わらない。圧倒して蹂躙して殲滅して――最後に立っているのは彼女だけ。
「私を倒したければ戦車の一つも持って来るんだなァ!」
 金属を打ち付ける乾いた音が響き渡る。まるで工場の旋盤の様に限りなく続くその音は、レイダーを別の何かへ加工する工作マシンの様だ。正確に、獰猛に、合いの手を入れる様に所々で撃たれる対物ライフルの音が銅鑼の様に響いて、要塞入口に屍の山が築かれる。レイダーの攻撃など効きやしない。装甲に任せて突っ込んで、散弾の暴風と大口径銃のアンサンブルがレイダーの弾幕を徐々に薄くしていく。そして。
「――これで終いかよ、情けねえなァ!」
 機械巨人の真紅のアイセンサが妖しく光る。最早立ち塞がるモノは何一つ無い。赤熱化した銃口からもうもうと立ち込める硝煙に包まれて、制圧を宣言する少女の声がそこから発せられたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

アララギ・イチイ
ふむ、敵は(SPD:UC的に)自動攻撃するみたいねぇ
私も対抗して自動防御する代物で対抗しましょうかぁ

1階から堂々と侵入して要塞内部での戦闘を行うわぁ

で、【選択UC】発動ぉ
敵の攻撃を選択UCの自動防御用シールド群で【早業】の【盾受け】防御で対抗しつつ、【カウンター】として敵の攻撃を【見切り】、大型バトルアックス×2を両手に構えて【ダッシュ】で接近、【2回攻撃】の【なぎ払い】する様な一撃を敵に叩き込むわぁ

同時に【念動力】操作で(通称:砲身)を操作して、至近距離から対装甲散弾砲を浴びせて【範囲攻撃】、要塞から逃走しそうな連中はガンランチャーから【誘導弾】を発射して仕留めてみるわぁ



●戦場の女王
『見ろよ、ただの女子供だ』
 下卑た声で赤毛の少女を取り囲んだレイダーの一人が口走る。
「あらぁ……見つかっちゃったわねぇ」
 背後の大穴は既に内側から塞がれた。地下を経由して逃げた奴隷達はもう大丈夫だろう。発動した超常を一度閉じて――少女は、アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)はニヤリと口元を歪めた。
『さっきはよくもやってくれたな……ええ?』
『分かってんだろうな、どうなるか――』
 じりじりと近寄るレイダー達。それぞれの砲門が、アララギが少しでも怪しい動きを取れば即座に迎撃すると、赤いラインをびっしりと張り巡らせて動きを封じ込めた――気になっていた。
「よぅく分かってるわぁ。肉塊になるのはあなた達って事ぉ」
 何だと――返す間も無く、どこからか撃たれた銃砲の一撃で一人のレイダーが吹き飛ぶ。それを合図に残りのレイダーの武装が一斉に解き放たれた。砲火は全てアララギを狙って――轟音と共にもうもうと立ち込める硝煙と水蒸気と土埃が視界を埋め尽くした。その先にはひらひらと舞う黒い影を映して。
「ふふふ、この防御システムを簡単に抜けるとは思わない事ねぇ」
 いつの間にか呼び出された、超常の数百個の自動防御用シールド群が繭の様にアララギを包んでいた。更にその奥、戦場の女王は断罪の白刃を一対手にして、手近なレイダーに躍り掛かる。
「こう近付かれちゃ撃ちまくる事は出来ないでしょお?」
 ずん、と空を裂く音と共にレイダーの首が飛ぶ。一つ、二つ、戦場を跳ねる様に舞うアララギの動きは熟練のダンサーの様。その動きへ合いの手を入れる様に、どこからか放たれた散弾が大地を穿ちながらレイダーを続々と無力化していく。それもアララギの力、念動で自在に操った大口径ガンランチャーが、離れた敵へ無慈悲な一撃を喰らわせる。
『な、何なんだあの女は!?』
「ちょっと逃げないでよぉ」
 こんないい女がいるのに。その場から逃げ出さんとスラスターを全力で吹いたレイダーに、ガンランチャーが弾種変更――散弾に替わってミサイルがその牙をレイダーへと向ける。こんな世界では恐るべき武装――絶対命中の誘導弾だ。
「砲身の掃除が面倒なのよねぇ」
 まあ、いいか。煙を吐いて加速する弾体がレイダーを捉えた時、必死の迎撃の火線は届かず炸裂の返礼をもってレイダーは爆ぜた。アララギは最早そんな奴らを見てはいない。その先、彼方より現れるであろう敵の首魁を倒さんと――今度はもっと楽しませてくれるのだろうと、再び口元を歪ませるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

キア・レイス

正面切っての戦闘を行う猟兵の支援に回ろう。
暗殺の方が得意ではあるが、要塞の広さや敵の量を考えると一人は効率も出ないだろうしな。

アサルトライフルとライトマシンガンのどちらかをメインに、自身の【天性の射手】としての感覚を研ぎ澄ます。
味方が優勢なら主にライフルをメインに、味方の隙を埋めたり取り逃がしに確実な止めを指す、味方に被害がでない状況なら擲弾発射器で敵をまとめて吹き飛ばしてやろう。
倉庫と言う地形を利用してコンテナを落として敵を潰したり分断したり、火薬や燃料など爆発物を狙うのもよさそうだ。

万一押されているならライトマシンガンで敵が迂闊に近付けないよう制圧射撃、形勢を立て直す時間を稼ごう。


茜谷・ひびき
相手は射撃攻撃がメインか
それなら広い場所の方が戦いやすいかな
俺は一階の開けた地形で戦おう

まずは相手を誘き寄せないと仕方がないか
相手の動きに注意しつつ、まずは姿を晒してみよう
気配は【野生の勘】や【情報収集】で探っていく
あの装備だと全くの無音で行動出来るって事はないと思うが……

相手が撃ち込んできたら鉄塊剣を盾にしつつ、【ダッシュ】で敵へと接近
多少のダメージは【オーラ防御・激痛耐性】で抑え込む
下手に回避するより、相手を捕まえるのを優先するぜ

上手く相手を捉えられたら更に接近して、相手の身体をどこでもいいから掴んでUCだ
【怪力】任せに思い切り相手の身体や装備を振り回し、地面や壁、他の敵にぶつけていくぜ



●バトルフィールド
 響き渡る爆音と共に、もう一方の戦場も戦いが始まっていた。宙を舞うレイダー。空間作業用の装備だったとはいえ、1Gの重力下で自在に飛ぶ事は叶わない。だからこそ単純にして強烈な一撃は、掴まれば最後――後に待ち受けるのは奈落そのものだ。
「あの装備だと全くの無音で行動出来るって事はないと思うが……」
 瓦礫を撒き散らして飛ばされたレイダーの先には一人の男が――茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)が無手で悠然と構えていた。
「……まあ、捉えられたのはこちらも同じ、か」
 相手の動きに注意しつつ、まずは姿を晒してみよう――と、視界を遮る障害物の影からうろつくレイダーの首を掴んで強引に投げ飛ばした。超常の一撃だ、どう考えても無事では済むまい。最大53tまでの超重量を掴んで持ち上げられる必殺の一撃を喰らって、想定通り壁に叩きつけられた一人のレイダーは無力化された。しかし。
「思った以上に数が多い……な!」
 閃光が視界を覆う。花開いた弾幕が無数の殺意となってひびきにその牙を付けたてんと迫る。がらんと担いだ鉄塊剣が、地獄の炎でも燃え尽きない超常がその撃ち込みを防いで、気を張り巡らせ迷路の様な倉庫を駆けるひびき。多少の痛みはどうにか耐えられるだろう。しかし四方から迫る攻撃を全て躱しきる事は果たして出来るか……次第に銃撃の感覚が狭まって、射撃がより正確となる。それでも歴戦を駆け抜けてきた猟兵に直撃を喰らわす事は叶わない――敵の意識が完全にひびきの方へ向いた時、戦場に風が吹いた。

 不意に聞きなれない銃声が戦場に響く。レイダーの装甲服が捉えたアラートは即座にその位置を割り出すが――誰もいない。視線の先には倒れた仲間が。正確な一撃だ、恐らくは小口径の実体弾だろう。大気中のイオン濃度は変わらず、僅かに火薬の残り香が動く情報を目にして――その位置が自身に近付いている事を悟った時、レイダーは意識を失った。
「……本来は暗殺の方が得意であるが」
 こうだだっ広い空間だ。敵が隠れるのも容易いだろう――そしてそれは、こちらも同じ。銀髪を揺らし、キア・レイス(所有者から逃げだしたお人形・f02604)は一仕事を終えた銃を担いで障害物の中を駆け抜ける。幸い仲間のお陰で敵の位置は粗方把握した。どうやら接近戦主体の構成らしいし、ならば私は支援に回ろう。
「しかし、本当に」
 だだっ広い空間のそこかしこにコンテナが無造作に積まれている。ひどく殺風景な、懐かしくも忌々しい静謐さを醸し出しているこの場所は、一刻も早く無きモノにしてやりたい。何故ならここは、モノの集積場――物言わず立ち向かえず、ただ並ばされていたあの頃の記憶が脳裏を過る。
『見つけたか?』
『いいや……うわっ!?』
 ぼそぼそと遠隔で会話を交わすレイダー達。その内の一人が突如声を失う。同時にがらがらと轟音が響いて――仲間がやったのだろう。私に気を取られている隙に、先程の様な強烈な一撃を喰らわせたか。ならば連中も動き出すか。突撃銃から軽機関銃に得物を変えて、超常で研ぎ澄まされた感覚が辺りを走査する。さあ来い、消し飛ばしてやろう。この忌まわしい、あるいは二度と戻らない――華やかな記憶と共に。

「って、本当に……しつこい!」
 弾幕が再びひびきを狙う。十重二十重に張り巡らされた殺意の網は、立体的な火線でその逃げ場を封じていった。
(それでも、仲間だっているみたいだし……)
 敵の居場所は大体分かった。位置は移動しているが、どうやら足を止めて索敵と牽制を繰り返しているみたいだった。ならば後は如何にそれらを引付けるかだ。
「……いい加減に、しろよッ!」
 瞬間、高々と跳躍したひびき。50t以上の物体を持ち上げられる強靭な筋力は不可能を可能にせしめた。わざとらしく倉庫の天井からぶら下がるクレーンの方へ――あえて照準をつけやすくさせて、敵の狙いをこちらに引きつければ、もう一人が手を下す隙を作れる筈。そして敵の攻撃さえ躱し切れば、こちらの勝ちだ!
「っとは言え……緩くは無いよな!」
 クレーンの方へと跳んだひびきを頂点に、無数の火線が一斉に殺意を剥き出しにする。鉄塊剣と張り巡らせた気でその弾丸を防ぎ、逸らし、それでも掠った幾つもの射線がひびきに傷痕を刻み込む。
(もうこれ以上……!)
 ぐらぐらと揺れるクレーンに片腕を引っ掛けて、僅かながらに弾道を躱し続けるひびき。ここまで一秒、あと一秒も持つだろうか――ひびきが諦めかけたその時、新たな火線が天を穿つ。
『な、何――!』
『荷が崩れて……潰れ!』
 あえて重めの弾種を選び、速度を落として跳ねさせる――超常の跳弾が必中の牙と化して、殺意を持ってレイダー達へと降り注いだのだ。
「こんな地形で身を隠していれば安全だ――とでも思ったか?」
 キアの超常は何も敵を穿つだけではない。地形を利用し、目的を達成する為の最短経路を導く必中の業。ある弾はそのままレイダーを、ある弾は荷崩れを誘発してそれに巻き込み――と、千変万化の連弾が瞬く間にこの地を制圧したのだ。
「あれだけ身を張られて、何も出来ぬなどと射手の名折れよ」
 再び静寂が空間を支配する。ゆっくりと立ち昇る硝煙が戦闘の終結を厳かに示した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
下から上に、潰していく。

聞き耳、忍び足で2階廊下を警戒しながら移動し倉庫へ向かう。
道中出会う敵には曲り角等を利用しての暗殺、
スナイパーライフルで鎧無視攻撃。早業で頭部への狙撃を行い、
手早く処理。
わざわざ中身と一体化するなら、中身が死ねば兵器も止まる、か?

倉庫が見えたら機械刀に持ち変え、突撃。
自身をブースターで吹き飛ばし敵へ接近。機械刀で串刺し、敵を盾にする。
同時に突入後目立たないよう後入りさせたドローンの【支援狙撃】発動。
盾で身を守りつつクイックドロウ、自動拳銃で遠距離狙撃、
部位破壊(頭部)による制圧射撃。

戦闘を続行する。



●恐るべき淑女
 階段を登る。その果てに平穏があると信じて。
『敵大型一体接近――照準!』
「失礼な奴だな」
 厳かな電子音声が発されると共に、踊り場ににゅっと身を出した砲門が爆ぜる。一瞬の交錯、それだけで十分。宇宙の戦士にとって刹那の判断は日常茶飯事。これまで生き長らえてきた歴戦の記憶が、考えるよりも早く引き金を引いただけだ。
「一体などと失礼な。どういう教育を受けてきたんだ」
 がらり、と巨体が姿を見せて。正面で立ちすくむレイダーの顔面を大口径銃の一撃で粉砕した。
「わざわざ中身と一体化するなら、中身が死ねば兵器も止まる、か?」
 テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)は硝煙を排気で吹き飛ばして、再び歩みを進めた。二階廊下前――恐らくは待ち伏せされているだろう。それでも進まなければならない。いつか得る平穏の為に。

「外部からの砲撃は無いが――確かに、アレは恐ろしい」
 既に内部へ突入した重攻撃機は外には居ない。それでも“いるかもしれない”という恐怖心が、レイダーを躊躇させているのは事実。先程も一人だけ――そんなぶつ切りで階下へ援軍を送ろうなどと、そんなものであの戦争を潜り抜けてきた私達を、止められる訳が無かろう。
「――スキャン完了、兵装選択」
 がちゃり、と背負った大口径狙撃銃を下ろして構える。斉射三秒で障害を全て取り除く、ありふれた制圧戦だ。廊下の先や中程でふらつくレイダーの位置は既に把握した。後は位置を取り引き金を引くだけ。
「攻撃、開始」
 音を殺して通路へ躍り出たテリブル。構えた狙撃銃の銃口が手近なレイダーを一人屠り、順に一人ずつ、奥へ奥へとその残骸を量産していった。得意の暗殺、瞬殺無音のヘッドショットが思考する間も与えさせず、次々に敵を無力化していく。
「機械に身を乗っ取られても、思考速度は人並か」
 それでは本物の戦争の機械にはかなわんよ。厳かな足取りで更に先へ――目指すは連中が屯している倉庫、その拠点を落とす。

「……成程、数だけは揃っているか」
 滑り込んだ倉庫の中。薄暗い密室で超常が、音も無く放たれた不可視の偵察端末が戦場を詳らかにする。
「……では、処理を始める」
 スラリと機械刀を抜いてブースターを点火、突撃した超重は背を向けたままのレイダーを一閃――骸に還した。そのままレイダーの死骸を盾にして前進、強襲に気付いて一斉に銃口をテリブルに向けた直後、狙撃モードに移行した端末が無慈悲な一撃を喰らわせる。
『な……敵は、もう一体!?』
「一人だよ」
 無拍子で抜かれた拳銃の一撃が迂闊にも発声したレイダーを障害物ごと撃ち貫く。大口径の軍用拳銃だ、多少の装甲では身を守る事もままならない。続いて放たれた端末の狙撃がもう一人を穿ち、動揺するもう一人を機械刀が刃金の錆にする。
「……戦闘を続行する」
 まだ僅かに敵は残っているだろう。それでも物の数では無い。
 姿なき暗殺者と恐るべき機械兵に蹂躙された戦場は、徐々に静寂を取り戻しつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

モア・ヘリックス
どうやら下では始まったようだが……俺は上で待ち伏せる
勝つならより一方的に、リスクはないに越したことはないだろ?

作戦は待ち伏せだが、1階からレイダー共を追い立てる必要はない。入口固められて、他の猟兵が攻めてくるとなりゃ引く場所は上しかないからな
準備としてさっきの倉庫から爆薬を中心にいくつか拝借して
奴らの動きを妨害するようにワイヤートラップを張り巡らせるぜ
倒壊しないよう火力は控えめだ
怯めばそれでいい

ついでに1階入口方向の要塞の壁を爆薬で吹っ飛ばしておく
レイダー共が来るまで暇だし
倉庫にあった対物ライフル、あれ使って外の警戒だ
万一抜けられたら、上からズドンってな
早々起きないだろうが……保険って奴さ



●アイアムアヒーロー
「どうやら下では始まったようだが……」
 振動と轟音がモア・ヘリックス(ブチハイエナ・f24371)の身を襲う。それでもここは三階――激戦区から一番離れた場所の筈だ。
「よし、俺は上で待ち伏せる」
 勝つならより一方的に、リスクはないに越したことはないだろ? これは逃げでは無い。あくまで最良の選択だ。そう自身に言い聞かせつつ先程の倉庫でくすねた爆薬やら重火器やらをガチャガチャと担いで、モアはゆっくりと廊下へ身を出した。そろそろか、そろそろだろう。
『一体何がどうなっている……!』
『下は殆ど制圧された。援軍を送るにも降りれない!』
 そうかいそうかい。だがこっちにもいるんだぜ――奪還者が!

 それは突然だった。天井から――これより上の階は無いというのに、正体不明の発砲音が。目の前のレイダーが、仲間が急に顔を失った。一体何処から誰が、何を……。
(成程、ユーベルコードって奴ぁ恐ろしいねぇ)
 感覚が研ぎ澄まされる。クソ狭い排気口の中に無理やり身を捻じ込んで、担いだお宝が碌な姿勢を取らしちゃくれない。それでもだ、僅かに廊下へ銃口を晒したこの一撃は、特に相手を見る事無く――念じただけで綺麗に頭を吹き飛ばしてくれた。
(まあ、そのまま黙っていてくれや。その方がお互い、楽でいいぜ)
 再び銃声が廊下に響く。そして誰もいなくなり――グラップルブーツで強引に体を固定していたモアが再び、全身を廊下へと晒した。後は関節が痛いのさえどうにかなれば、これほど便利な技も無かろうに。

 モアは続けてくすねたお宝――対物ライフルで外の警戒を続けていた。爆薬で壁に穴を空けて、逃げ出そうとする奴がいたら上からズドン! 早々起きないだろうが……保険って奴さ。スコープ越しに一階方向をつぶさに見やるモアの耳に、更に爆音が轟いた。
(おー……早速間抜けが掛かったか)
 もう一つのお宝――仕掛けたワイヤートラップの爆薬が早速仕事をしてくれた。これで三階だって制圧したも同然、少なくとも俺の元に無傷で来れるレイダーは一人も居やしないだろう。
(って……ありゃあ何だ?)
 不意に外を――脱走者を監視していたスコープが噴煙を捉えた。この要塞へ向かってくる何か……まるで城か何かがそのまま動いている様な、そんな異形。いや城じゃない。
「あれが……そうか」
 巨大な砲を両側方に備えて爆走する機械の怪物。つまりこの要塞の本当の主が帰還しつつあったのだ。
(ここからズドン……は足りねえな)
 幾ら対物ライフルでもあの正面装甲は抜けそうも無い。だがまあ、奴を料理するのは後でいい。端末を手に取り仲間達へ伝えるモア。
 であれば早々、残るレイダーを始末しなければ……。面倒そうに立ち上がり背筋を伸ばすモア。
「さらば我が城よ、短い付き合いだったな」
 がちゃりとお宝を担ぎ直して、奪還者は階下へと向かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・クリスティア
なるほど。奪還阻止は早々に諦め、被害軽減の籠城戦を選びましたか。
正しい判断と言えるでしょう。……内側への潜入を許していなければ、の話ですが。

奪還時の混乱に乗じて、先に仕入れた地形情報を活かし、闇に紛れ上階……できる限り奥深くまで潜入。
出てこないなら追い立てるまで。後方からの奇襲でほかの味方側まで追い立てます。
もっとも、私一人の排除を優先するようならそれはそれで構いません。
今度はこっちが地形の遮蔽を活かして逃げに徹し、こっちへの注意を惹けば、他の猟兵が攻め込みやすくなる。
そのあたりは相手の出方次第ですね。臨機応変に行くとしましょう。



●ダークネス・ワンダラー
「なるほど。奪還阻止は早々に諦め、被害軽減の籠城戦を選びましたか」
 シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は薄暗い廊下を駆けていた。その手に機関銃と散弾銃を持ち、闇に紛れて奥深くへと。
(正しい判断と言えるでしょう。……内側への潜入を許していなければ、の話ですが)
 シャルロットが初動で得た情報は非常に大きかった。後続の突入も現状の追撃も、既に地形を掌握していたからこそ、一方的に進められた側面がある。だからこそ、先陣として入り込んでいた故にシャルロットが進めた場所がある。
(更に奥深くの……恐らくは、ここが)
 現在地は一階、幾つかある倉庫の最奥部。崖のどん詰まり、どう足掻いてもこれ以上進む事も、外へ逃げ出す事も適わない場所だ。正面入り口付近は仲間達が陣取って敵の脱出を防ぎつつ、戦力を徐々に削いでいっている。だからこそ、最後に逃げ延びるとしたらここ以外ありえない。現に誰かが入り込んで、扉を閉じた形跡がある。
(出てこないなら――追い立てるまで)
 がちゃり、と散弾銃に大型の弾丸を装填した。扉を開く為の特注品だ――たとえ宇宙戦艦の強靭な装甲でも、一撃で大穴を空けてくれるだろう。
(それでは――)
 装填、発射。轟音と爆風がチリチリと辺りを焼き尽くし、目の前の頑強な扉は否応なく開かれた。中には目を見開いてシャルロットを見やる数名のレイダーが。
「こんにちは。そしてさようなら」
 そしてもう一つの――機関銃がスコールの様な大音を響かせて、居並ぶレイダーへ無慈悲な弾幕を浴びせる。最早逃げ場は無い。逃げるとしたらここの外……!
『こんな、小娘が!』
 迎撃の火方がシャルロットの目の前を覆う。それでも既に出方を把握したシャルロットにしてみれば、そんな攻撃を受け続ける道理は無い。確かに圧倒的な火線だが狙いは単調――正確過ぎる。
「だったら、これで」
 淡々と任務を遂行するマシンの様に――散弾銃に電撃を付加した弾丸を込めて、迫る弾幕を機関銃の弾幕で牽制しながら進み出るシャルロット。小柄な体躯を活かして懐に入れば――必殺の電撃散弾が機械の装甲ごとレイダーの動きを封じる。そして。
「この距離なら流石に届くでしょう」
 風防越しにぼそりと呟いて、機関銃の雨がレイダーを襲った。シャルロットの超常は敵と対峙すればするほど、その威力を上げるのだ。故に。
「――では次は、どうします?」
 ガタンと倒れるレイダー。その姿を見て驚愕した残る面々が一斉に弾幕を張って――足りない、そんなものでは。口元を僅かに歪ませ、シャルロット再び彼らの懐へ。
 彷徨える狙撃者には視えていた。ここはもう終わりなのだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ

さぁ、新時代の希望のお通りだ!
先達の皆々様にはゆっくりお休み願おうか!

UC【天災輪舞】を使って加速、敵を逃がさないよう飛び回り《空中戦》を展開。
相手の動きは《第六感+戦闘知識+見切り》で先読み、《目立たない+念動力+だまし討ち》による不意打ちで攪乱して迎撃プログラムに隙を作る
機械相手は計算外の要素を仕込んでやれば簡単に挙動を乱せて楽だね
本命は放つ雷羽の《属性攻撃+誘導弾+鎧無視攻撃+制圧射撃》。
命中すれば《ハッキング+マヒ攻撃+焼却》、魔力と雷撃の侵蝕でプログラムを狂わせ物理的にも燃え尽きるまで焼き続けるよ

今すぐに何もかもを救うなんて神様みたいな事は出来ないけど……ま、これくらいはお手の物さ



●カタストロフ
 広々とした倉庫には幾つも荷物が積み上がり、傍目には迷路じみた廃墟の迷宮の様だった。ただそれは地を這うものの視点に過ぎない。空間そのものは広く、天井高く拵えられた空間は即ち、空を飛ぶものにしてみれば格好の狩場であった。レイダー達の纏う旧時代の装備がけたたましく警告音を鳴らす。その音が目覚めさせるのだ、あの日の事を――悍ましい記憶が、ゆっくりと鎌首をもたげるのだ。
「さぁ、新時代の希望のお通りだ! 先達の皆々様にはゆっくりお休み願おうか!」
 開けた倉庫を飛び回るカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)はレイダーの弾幕を避けながら、広げた翼で自在に倉庫の中を舞う。風を纏って飛翔する姿は天使の如く。迎撃の弾幕を張るも、たった一人を地に墜とす事も叶わない。カタリナの放つ不可視の念動がレイダーを揺さぶって――古臭い機械にこの計算外の力場は修正出来まい――プログラムが異常を来たせば、即ち正しく統制された射撃など出来はしない。現にまばらな火線は飛び回るカタリナに一撃も掠らせる事が出来ないままでいた。そして天使の反撃が始まる。
「ふ、ふふ、あはははははっ! そうさ、そんな道具に頼ってばかりじゃ、アタシには敵わない!」
 バチバチと音を立てて、カタリナの周囲を舞う紫電が膨れ上がる。それは最早電撃などという生ぬるいモノでは無い。必滅の祈りを込めた、天災の超常。
「さぁ、最っ高のパフォーマンスで魅せてあげるよ!」

 超常の蒼雷を纏い飛翔するカタリナは、レイダーへ追いすがる度に雷の羽根を躊躇なくぶつけた。それも一つや二つではない――舞い散る無数の羽根が意志持つ牙の様に、レイダーから溢れる弾雨を防ぎながら、嵐の様に敵対者達を巻き込んでいく。
『危険だ! 磁気異常が――それだけじゃ!』
 叫ぶレイダー。その雷はただの超常では無い――文字通り意志持つ一撃だ。機械の制御系までも侵食し、内側からレイダーそのものを焼き尽くす地獄めいた恐るべき業と化していたのだ。
「今すぐに何もかもを救うなんて神様みたいな事は出来ないけど……ね」
 バチリ、と背後のレイダーが紫電を纏ってそのまま倒れる。途端に火達磨と化して骸に帰す――そんな同胞を見た残るレイダー達の心に浮かんだものはただ一つ、恐怖の一言。そして。
『こ、こんなもの……どうすれば……!』
「ま、これくらいのお仕置きはお手の物さ。さあ続けようか!」
 朗々と声高らかに戦闘再開を宣言するカタリナ。実弾も光学兵器も等しく弾かれて、降り掛かる天使の羽根は容赦無くマシンを停止させる。正に天災――恐怖の先にレイダー達が見たものは皆同じ、世界を変容させた暴風そのものだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユエイン・リュンコイス
●連携アドリブ歓迎

外部からの要塞破壊は非推奨、外で戦っても戦車と合流される可能性高し、か。随伴歩兵と合流した機甲兵器なんて、確かに相手をしたくないしね。
じゃあ、うん。内部からぶち壊そうか。

戦場は廊下を選択。三階が良いかな?
デスワームが有効だと分かったし、壁や床を潜航させて奇襲、物陰から追い立てよう。姿を見せた所を『穿月』や『月墜』で狙い撃つ。但し、相手も反撃するだろうし、危うくなったらワームは引っ込めよう。

途中、機を見てUC起動。左右どころか天地の領域内の無機物を取り込み、足場と遮蔽物を消失させる。ただ逃がさぬよう、外側の壁は残すよ?
後は簡単だ。数が居ても気にしない。質量と規模で蹂躙しようか。



●マシン・ドール・モンスター
「外部からの要塞破壊は非推奨、外で戦っても戦車と合流される可能性高し、か」
 三階廊下を銀髪の少女が歩く。既にここ自体殆ど制圧されたとはいえ、その奥には退避したレイダーが多数籠っているからだ。
「随伴歩兵と合流した機甲兵器なんて、確かに相手をしたくないしね」
 高空からの支援砲撃を恐れ、高所に居た故に我先にと引っ込んだレイダー達はしかし、そこから出る事は最早叶わない――更に。
「じゃあ、うん。内部からぶち壊そうか」
 いつの間にか廊下に仕掛けられたトラップで追い込まれた。だからこそもう、彼らが外に出る事は不可能だろう。挙句の果て、ここにはもう猟兵がいるのだ。
「おいで、デスワーム」
 ギチギチと牙を鳴らして異形がにゅるりと姿を現した。子細に状況を把握していたユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)は徹底的に敵群を殲滅する為に、あえて三階を戦場に選んだのだ。無機物を喰らう異形は再び建物に紛れて、ゴリゴリと音を響かせて屋内へと侵入する。
「さて……後は勝手に出てくるのを待とう」
 顔色一つ変えず、ユエインはデスワームが崩した壁に姿を隠して、追い立てられるレイダーを待ち伏せた。

 三階に籠城したレイダー達は不意に聞き慣れぬ音を耳にした。ぎちぎち、がたがたと壁伝いに――その音は徐々に大きくなり、まるで何者かがその中を進んでいるかの様だ。
『何だ……疲れているの、か……?』
 追い立てられて精神的にも大きく疲弊したレイダーは遂に幻聴が、などと胡乱な思考を巡らせた。だが異常を検知しているのは自分では無い、纏った装甲も先程より警告音をがなり立てているのだから。
『おかしい、不明な音源が徐々に近づい……』
 それが最後の一言、レイダーの一人は壁を崩して出でた異形の大口に呑まれ、その姿を消す。正体不明の怪物の奇襲――惨劇を目の当たりにして判断を誤ったレイダーが、一斉にその場を飛び出した。足元にあるトラップを気にも留めずに。
『しま――ここは!』
 続々と爆ぜるワイヤートラップが再びレイダーを元居た場所へと戻して。そして。
「焦らなくていいよ……時間はあるんだ」
 蒸気銃が火を噴いて、倒れたレイダーに止めの一撃を見舞わせる。正面にはユエイン、背後にはデスワーム、そして無数の目に見えないトラップが、レイダーに戦いを決断させた。否、戦わなければ生き残れない――ここはそういう世界なのだから。
『こ、小娘に化物、め……!』
「多少目が覚めたのか。でもこれで終わりじゃないよ――!」
 数多の火線がユエインとデスワームを狙う。だがもう遅い――地を這う様に攻撃を躱したデスワームは、そのまま床を食い破り姿を消した。これで逃げ込んでいた倉庫へ戻る事は叶わない。更にユエインの全身が光に包まれて、禁断の超常が発現する。
『何だ、弾丸が喰われて――』
 弾丸だけじゃない。周囲を構成する無機物を材料に、黒鉄の機械神を顕現するこの業は、レイダーの道を奪って荒ぶる姿を現したのだ。弾を喰らい、ビームを跳ね返し、機械神の成長はまだ止まらない。
「このまま全部喰らってもいいんだけど」
 下手に逃げられては叶わない。機械神と一体となったユエインはマシンの片手を翳して武装を起こす。放たれた超常の弾丸が続々とレイダーを貫いて――逃げられては困る――ただそれだけで、反撃の刃は脆くも崩れ去った。
「まあ、こんな所だろう」
 解除された超常が再び要塞を形作る。殆ど制圧された状況で無ければ、こんな大技は使えなかった――この中に残る敵は、あと僅か。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィーナ・ステラガーデン

じゃあそうねえ。出来るだけ他猟兵と挟み撃ちにする形で動きたいわね!
基本は部屋を確認して召還されたロスト・レイダースごと【範囲攻撃】で炎を撒き散らして汚物は消毒よ!
ただ視界が炎で見えなくなったりするかもだから
【聞き耳】とかで敵の動きを予想するわ!
逃げ出しそうなら【高速詠唱】UCでゾンビのお手手に足をがしっと
掴ませて逃げれないようにするわ!
拘束が出来ればそのまま一緒に【属性攻撃】で焼却処分していくとするわ!


鳴宮・匡



少し出遅れたが、ま、その分の仕事はしよう
……“殺すため”に磨いてきた技術で、重ねてきた経験だ

要塞内部、手薄な箇所のサポートに回るよ
周囲に味方がいるなら、手分けして死角のないように立ち回ろう

こちらの仕事は相手の攻撃力を削ぐことだ
足や腹を狙った狙撃で体勢を崩させて
【死神の咢】で背負った武装を破壊して無力化
次いで頭か心臓を狙う

ただ、一撃で殺せる隙を晒した相手に関しては
最初から頭か心臓を破壊して処理するよ
出来るだけ手間は少ないほうがいいからな
一撃で殺せるか否かの見極めくらいは簡単だ
正しい戦局判断ができなきゃ、戦場でなんて生き残れない

片付いたら次の場所へ援護に回ろう
迅速に済ませるにこしたことはないしな



●凪と炎
 要塞内部のレイダーはその殆どが討伐された。それでも僅かに残った少数のレイダー達は、主戦場となった倉庫や施設最奥部を避けて、それぞれが道々の小部屋や機械室など、あまり人が立ち入らない区画で猟兵達をやり過ごそうとしていたのだ。全ては彼らの首魁が仕事を終えて戻ってくるまで――そうすればこの一方的な状況は覆せると信じて。
『レーダーに反応は無い……ここはまだ大丈夫か』
 一人のレイダーは雑具置き場にその身を潜めていた。一人くらいしか入れないだろうこの部屋は、普段(というか滅多に)使われない掃除用具類がまとめて保管されている。
『はぁ……大丈夫だ、やり過ごせる。俺は大丈夫……』
 心音が肥大化して、装甲服の制御音が掻き消される。張り詰めた認識が存在しない敵を浮かび上がらせているだけだ。そうだ――俺は大丈夫。
「……ここはゴミ箱じゃないぞ」
 最後に、聞こえたのは……ああ、ここは掃除用具入れ、だったかなぁ。

 少し出遅れたが、ま、その分の仕事はしよう。殺す為に磨いて、重ねてきた経験だ。鳴宮・匡(凪の海・f01612)は闇に紛れてクリアリングを一つ完了する。大立ち回りは大体終わっている頃合いだったが、だからこそ細かいゴミを見逃す訳にもいかないし、こういう手合いは大体しぶとい。
「――手薄な個所は、後はこの階層だけか」
 二階通路、粗方片付けられているとはいえ上下階から逃げ延びた連中がちらほらと残っている。ここで残しておく訳にはいかない――恐らくは敵の主力は外に。それらと合流されては厄介極まりないのは明白だ。
「残るは二部屋……ちょっと距離があるが」
 やけに静かだ。だが片付いたら次の場所へ援護に回る。迅速に済ませるにこしたことはない――残弾は十分、匡は静かにその部屋を後にして、そして飛び出す敵とばったり遭遇した。
「…………」
 反射的に手が動く。照準はしっかりと頭部を捉えて、炸裂音と共に目の前のレイダーが肉塊と化す。出来るだけ手間は少ないほうがいいからな――一撃で殺せるか否かの見極めくらいは簡単だ。
(正しい戦局判断ができなきゃ、戦場でなんて生き残れない)
 では何故あのレイダーは今まで生き延びる事が出来て、そして突然飛び出してきたというのだ。
「こう目の前でこんなものを見ちゃうと、何かねえ」
 不意に倒れたレイダーの後ろから、小柄な金髪の少女が姿を現した。
「でも私ほどじゃあないわ、うん」
 揺らめく炎が景色を歪めて――フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)はゆっくりと言葉を紡いだ。

『大丈夫、俺は大丈――』
「イヤッホゥ! 汚物は消毒よぉぉぉぉ!!!!」
 ヒュンと風をつんざく轟音が部屋に響いたかと思えば――情け無用、容赦無用の火炎放射が逃げ込んだレイダーを瞬時に焼き尽くす。こちとら異世界で磨き上げた究極にして至高な感じの魔法の炎だ、そこらの安っぽいチャッカマンと一緒にしてもらっては困る。
「これでこの部屋も綺麗になったわね。さて」
 瞬間的に室内の酸素を奪い尽くした魔法の炎はシュンと消えて、黒焦げになった遺体を見やりフィーナは次の獲物を探す。それにしても無駄に広い――大体頭の悪そうな領主が好むシチュエーションね、ええ。
「次は……さっきの潜入で、居そうな場所は大体分かるわ」
 何故ならばあっちでも大体そうだから。分散した戦力が再び揃う前に各個撃破、二階は無駄に小部屋が多いし――であれば片っ端だ。足音を立てぬ様ふわりと身を浮かして、続く小部屋をこっそりと覗き込む。
「……誰か残っているかしらッ!?」
 言いながら魔法の杖を部屋に向けて、じわりとその領域に入っていく。
「……誰もいないわね、いないのね。ちゃんと聞いたからね」
 ブンと文様が浮かび上がり、仄かに明かりが灯る――薄暗い部屋の中、埃が浮かび上がって、それは僅かに幻想的な光景にも見えた。ここまでは。
「それじゃあ消毒してもいいわね? 行くわよ!」
 ファイア。灼熱が密室を焼き焦がす。バタンと大きな音を立てて黒い影が飛び出し、息絶えた。この間僅かに三秒――生存確認から部屋の制圧と消毒。追い込んだ時点でフィーナの勝利は揺るがない。だが。
『い、嫌だァァァァ!!!!!!』
 黒焦げの遺体の更に奥、奇跡的に生き延びたレイダーが――この部屋のはもう一人居たのだ――スラスターを全力噴射して飛び出してきた。
「ちょ、行儀が悪いわ……よッ!」
 しかし慌てる様な時間じゃあ無い。フィーナの双眸が輝いて――逃げるレイダーの足元に朽ちた亡者の両腕が。ガシッとその足を掴んだ亡者の腕は超常の一撃、最早逃げる事は叶わず、そのまま地面に倒れ込んで――考える間も無く、レイダーは装甲越しに頭を砕かれた。
(何……私じゃあ無いわよ?)
 遠くを見れば黒い影が――猟兵だろうか、銃を構えてこちらを見ている。私に気を取られている隙を、ほんの僅かの間で急所狙いなんて。
「――こう目の前でこんなものを見ちゃうと、何かねえ」
 何人かこういう事が得意そうな知人はいるが、しょっちゅう目にするモノでもないし、見たい訳でもない。だから。
「でも私ほどじゃあないわ、うん」
 だから私は、焼き焦がすのよ。

「――猟兵か。ここいらの制圧は」
「クリアよ、跡形も無く。ここで終わり」
 二人は言葉を交わして状況を更新する。左右から挟み込むような形で、この区画は制圧出来ていたらしい。
「後は――あれか」
 外をみれば砂埃を巻き上げて爆音が徐々に近づいてくる。六連装主砲に極端な正面傾斜装甲、知る者ならば旧時代の対戦車自走無反動砲の類に見えるだろう。
「それにしても、趣味悪いわねぇ」
 正に異形の機械――暴力性のみを突き詰めたであろうその歪な形状に、フィーナは嘆息する。決戦の時は近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
【POW】
要塞内の構造は把握している。
『ゴモラの禍殃』で自身、他の猟兵に悪影響が出ない様に計算して要塞を入口から奥へ奥へ追い込むように燃やしていく。
奥に逃げればそのまま最期
一矢なりとも報いたければ出てくるしかないよ。

姿を見せれば、轟雷(属性攻撃:雷×投擲×串刺し×範囲攻撃×全力魔法)で焼き払う。
敵POWUCに対しては発動タイミングを見切って、質量のある残像(存在感×残像)で惑わして関係のない場所に攻撃を誘導する。



●陥落
 最早逃げられる場所など存在しない。外に通じる換気口にこの装備のまま入る事は出来ないし、何より無手のまま無事でいられる程容易い相手では無い。
『だ、駄目だ……二階も、三階も全滅だ!』
『あと少しだ、ボスが戻ってくるまで……!』
 レイダー達も気付いていた。迫り来る爆音が、我等のボスがもう間もなくここに辿り着くであろう事を。ボスさえ到着すれば、もう何も恐れる事は無い。それまで生き延びる事が出来れば……。
『本当に、大丈夫なんだろうな?』
『大丈夫だ。ここに居た敵は皆どこか行っちまったよ』
 薄暗い一階の倉庫内、立ち込める硝煙の渦中で、既に息絶えた仲間に紛れて最後のレイダー二人が接触回線で状況を確認し合う。死んだふりをしてまで何とか生き永らえた。ここまでは良かった。だがこの先どうすれば良いか、その答えが定まらない。
『先ずどうやってここを出れば……』
 問題は脱出口だ。出入口は恐るべき機械の巨兵が陣取って、上層階も全て制圧されている。表に通じる道はもう、残されてはいない。要塞だからと言って秘密の出口を作らないでいた事が、内側から食い破られた際にこうも甚大な被害を及ぼすとは――それでも行かなければ。ここに居てはどちらにせよ、死に絶える。
『……行こう』
「どこへ行こうというのかね?」
 そして、その時は唐突にやって来た。

「死体に隠れて体温や呼吸を偽装した――そこまではよくやったと思うよ」
『一体……どうやって、俺達の居場所が……?』
 真紅の美丈夫、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は笑みを湛えながら生き残ったレイダーの二人に近付いていく。直立不動で浮いたまま――機械文明のレイダーには、最早何が起こっているのか理解すら出来なかった。
「ただ生命までは偽装出来なかった。オブリビオンに生命という言葉は些か不釣り合いかもしれないが――まあ、分かり易く言えばそういう事だ」
 シーザーは既に要塞内の構造は把握していた。そして彼等を追い立てる様に、仲間の猟兵の影で誰一人逃がさぬ為に要塞の奥へ、奥へと、超常の炎で逃げ道を塞いでいたのだ。意のままに炎の出し入れをする事でレイダー達を猟兵の戦場に向かわせて、残るはここに居る二人だけ――それすらも、自身に奔るオド(気)を張り巡らせ、生命探知を行って居場所を突き止めた。もう彼等に逃げ道は残されていない。
『だからって、諦められるか!』
「では奪うか? 私の生命を」
 刹那、赤黒い雷がレイダーの目の前に落ちる。間一髪でそれを躱し、最後の力を振り絞り照準をシーザーへ向けて発砲。炸裂音が辺りに響いて、硝煙が立ち込める。
「どこを狙っている」
 眩い閃光が視界を覆う。その先にはシーザーが……姿を消していた。存在を示し続けたのは残像による回避の布石。互いに背中を合わせて周囲を伺うレイダー、それこそがシーザーの狙いだった。
「ここまでだ、ご苦労」
 再び雷が空を裂く。極太の轟雷がレイダーの頭上に洗礼を浴びせて、過電流でショートした背部武装が爆発四散――最後のレイダー達は今度こそ物言わぬ骸と化した。
「さて……次は首魁の帰還か」
 対象の無力化を悟ったシーザーはふらりと姿を現して、近付きつつある轟音の方を向き――そして、鳴り止んだ音に状況を理解した。
 掃除大隊を名乗る軍人崩れと聞いてはいたが、成程――本物はあの中にしかいないのだろうか。ここの連中は統制も取れず一方的に殲滅されたのだから。
「では精々、楽しませてもらおうか」
 真紅の美丈夫がふわりと浮かびながら倉庫を出る。
 倒すべきは帰還した鋼鉄。口元を歪ませて、シーザーは陥落した要塞を後にした。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『暴走戦車』

POW   :    オーバーキャノン
自身の【戦車砲のうち1本】を代償に、【ビルを消し飛ばす程の爆発力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって戦車砲のうち1本を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    全門発射
【何本もの戦車砲から砲弾の連射】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    セメント弾
【主砲】から【速乾性セメントを詰めた特殊砲弾】を放ち、【空中で炸裂した砲弾から降り注ぐセメント】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:8mix

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●破壊神の帰還
『一体……何が起こってるんだ』
 無線には誰も出ない。要塞は何故か火の手が上がっている。挙句の果てに砲撃された跡まで――俺達が出張っている間、どこのどいつから攻撃を受けたってんだ。
『ボス、駄目です。恐らくこいつは……』
『決めつけてんじゃねえ。エンジン始動、音を掻き鳴らせ』
 イエス、サーと威勢のいい掛け声が狭苦しい運転室に響く。略奪品の受け取りの出迎えも無ければ、全滅しただと――ありえない。奴等は素人紛いだが、装備だけは本物だ。それを本当に全滅させたなら……巷で話題の“奪還者”以外の連中か。
『面白え……やってやんよ』
 V型8気筒が雄叫びを上げる。スピーカーから流れるのは荒々しいスラッシュメタル。側面のマフラーが激しく火を噴いて、世紀末の暴走戦車は獰猛な牙を剥き出しにして荒んだ大地を駆け抜けた。全てを奪い返す為に。

※プレイングは1/1(水)8:31より募集致します。
●反撃の牙
『何とか、ここまで来たけれど……』
 要塞を命からがら逃げだした奴隷達は、遠目に接近する巨大な暴走戦車を見て、その暴威に固唾を飲んだ。主砲は対都市攻略用の特注品、弾薬は通常弾以外にも広域殲滅用の炸裂焼夷弾、そして工作用のセメント弾を改修した即席のトラップ砲――迂闊に懐へ入ろうものならば迎撃の機関砲で遮られ、主砲の餌食となるだろう。
『でも、何もしない訳には……いかない』
 ここで逃げ出せばまた同じ、これまでと何も変わらない。それは、嫌だ。
『だからこいつがあるんだろうよ。やるぞ』
 一人の奴隷が高々と対戦車ロケットを掲げる。豆鉄砲では装甲を抜く事も適わないだろうが、これは別だ。そして。
『何の為にこいつをかっぱらってきたんだ……援護くらいは、きっと出来る!』
 視線の先にはアイドリング状態で駐機する戦車が一つ――大陸でその名を歴史に刻んだ赤軍のオーパーツ、世紀を跨いでその威を現世に示し続ける鬼戦車が85㎜砲の牙を鈍く光らせる。
『一矢報いるとか考えなくていい……俺達でも、隙ぐらいは作れるはずだ』
 鋼の老兵を背に、奴隷達は運命を変えるべく決意する。
 再び自由をこの手にする為に。

※🔵取得数が既定の三倍を超えた為、以下の支援が期待出来ます。
・旧型戦車による支援砲撃並びに攪乱戦術
・対戦車ロケットによる支援砲撃
・歩兵による攪乱戦術

 プレイング中でご指定頂く事で各支援を能動的に受けられますが、特に指定が無くても猟兵が有利に動ける様、独自に立ち回ります。お手数ですがご確認ください。

※プレイングは1/1(水)8:31より募集致します。
●荒野の決戦
 要塞正面に帰還した暴走戦車は猟兵の様子を伺って周囲を油断無く走り回っている。旧世紀の遺物だが、恐るべき火砲を全身に備えたその威力は些かの衰えを見せない。その主砲が本気を出せば、如何に堅固な要塞だろうと一撃で沈むだろう。
 戦場は要塞正面の荒野となる。辺りには大小の岩が転がって多少の弾避けにはなろうが、恐らくは長く持たない。だが救出した奴隷が一部、援軍としてその側で虎視眈々と機会を伺っている。籠城していれば主砲の餌食となるだろうし、叩くならば今――敵には随伴の友軍も無く、孤立した状態であれば、一気に攻め落とす事も可能だろう。いつも通りだ、この地が誰のものであるか、その身を以て分からせてやればいい。

※プレイングは1/1(水)8:31より募集致します。
カタリナ・エスペランサ

彼らも立ち向かう事を選んだんだね
うん、良い事だ
ステージも盛大に盛り上げていくとしようか!

援護に合わせ《存在感》を制御して《目立たない+ものを隠す+迷彩+忍び足》の隠密と《恐怖を与える+ブームの仕掛け人+おびき寄せ》で危機感を煽っての陽動を切り替え敵を攪乱するよ
味方を攻撃に晒させない立ち回りを最優先、敵の動きは《第六感+戦闘知識+見切り》で先読みして対処。

とはいえ無差別攻撃はよろしくないね
使うUCは【神狩りし簒奪者】
基本は白雷槍の《属性攻撃》連射で攻め立てつつ、要所で影鎖による拘束を《早業》で仕掛け行動阻害。
最後は敵UCの発動に《カウンター+先制攻撃》の黒炎を浴びせ三撃命中を達成、無効化するよ


キア・レイス

全力で支援に回ってもあの火力と装甲は捌ききれないだろう。
ならば自身も使える火力を押し出して早々に敵戦車にダメージを与える、がたつかせるのが早くなればそっちの方がよっぽど支援になり得るだろう。

ビーコン弾を仕込んだアサルトライフルを携え、元奴隷たちに混じって攻撃する、狙うべきはやはり足回りか。
狙う箇所を軽く指示しつつ自身も擲弾発射器でキャタピラーを主に狙って攻撃。
ビーコン弾を当てるのは容易だろう、小さな隙を狙ってこっそり仕込む。
ただ、本命の一撃は着弾までタイムラグがあり動き回られると直撃するか怪しい、火力は恐らく十分なので当たるようにきっちり足周りを壊しておくかせめて大きな隙を作り出したい。


シーザー・ゴールドマン
【POW】
随分と歪な戦車だね。まあ、嫌いではないよ。

『ウルクの黎明』を発動。オド(オーラ防御)を活性化して空へ。

大空から増大された魔力で創り出した超重力の一撃を。
(属性攻撃:重力×範囲攻撃×全力魔法)

奴隷たちの支援は特に指示しませんが、彼等に犠牲が出ない様に、牽制の攻撃等はします。
(属性攻撃:鉄×串刺し×投擲×2回攻撃)など

抗う意志は尊い。

オーバキャノン対策
砲身がある以上、射線を見切るのは容易い。
威力はデカいが当たらなければどうということはないね。
この身は空中に居るので避けた先を気にする必要もないからね。



●ダークセイヴァー
「随分と歪な戦車だね。まあ、嫌いではないよ」
 異形を見やりシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は不敵な笑みを浮かべる。目の前には喧しい音楽を掻き鳴らしながら、砂埃を巻き上げて爆走する暴走戦車が一台、目視すればその巨大さがよく分かる――ちょっとした小型艦艇くらいのサイズはあるのではないだろうか。
「それでも、彼らも立ち向かう事を選んだんだね――うん、良い事だ」
 傍らにはカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)が、背後に武器を片手に攻撃の機会を伺う奴隷達を引き連れて、同じく自信に満ちた笑みを浮かべた。
「しかし、全力で支援に回ってもあの火力と装甲は捌ききれないだろう」
 キア・レイス(所有者から逃げだしたお人形・f02604)が呟く。確かに凶悪な火力と装甲を備えた化物が相手だ。生半な攻撃では却って蹂躙される隙を与えるだけ。
「ならば、自身も使える火力を押し出して――早々に敵戦車にダメージを与える。がたつかせるのが早くなれば支援の手も届くだろう」
「了解よ。じゃあステージも盛大に盛り上げていくとしようか!」
 美女が二人顔を見合わせ手順を確認し、即座に散開する。全力を投じて奴の稼働を阻止すべき――そう判断した戦の手練れはそれ以上言葉を交わさず、吹き荒ぶ砂塵の中へと姿を消した。
「ふむ、竜退治も神殺しも飽いた頃合いだ――丁度いい」
 では行こうか。続けて真紅の美丈夫も赤黒いオドを纏って飛翔した。闇黒の世界より出でし超常の使い手達は、それぞれの思いを胸に鋼鉄の怪物と対峙する。いつもと同じ、世界を救う為に。

『ボス、レーダーに感! 空から一つ……二つ? 何かが来る!』
『ECM起動、弾幕を張れ! 主砲一番と四番をチャージ、対空弾装填!』
 流れる様な怒声と共に狭苦しい操縦室で悪漢共が蠢く。空対地攻撃か――舐めるなよ。こちとらシマを荒らされて気分が悪いんだ……腕を組み座したまま、ボスがぎりぎりと歯を鳴らした。
『起動完了――攻撃、来ます!』
 喧しいメタルの大音響と機関砲の斉射が歪なハーモニーを奏でながら、悪漢が声を荒げる。これでも大破壊を何とか凌いだ逸品だった――生半な花火でやられる程ヤワじゃない。暴走戦車の上空にバラバラと機銃弾が鉛の花弁を散らして、しかしそれらは飛び回る飛翔体に何一つ有効打を与えられない。
『ミサイル……じゃない、反応が増えて、減った? 何だ!』
『飲み過ぎか馬鹿野郎! どうなって――』
 瞬間、勇ましい音をがなり立てるスピーカーの破壊と共に、暴走戦車を強烈な振動が襲った。寸での旋回で辛くも直撃は回避したものの、いつの間にか狩る者は狩られるモノになっていたのだ。
「好きにはさせんよ。それとも目眩か……」
 上空より片手を振るって超重の一撃を喰らわせるシーザー。先ずは柔いスピーカーがその威力に潰されて、勇壮なメタルが悲鳴のようなノイズに変わる。
「どちらにせよ、こんなものじゃあ無いだろう?」
「全くだ。興覚めにも程があるね」
 姿を現しては唐突に消して、攪乱しながら空を舞うカタリナが溜息をつく。十重二十重に張り巡らされる弾幕も彼女のステージにしてみればまだまだ足りない。飛びながら反撃の雷槍を放ち暴走戦車を牽制しつつ、既に次の手をしたためている。
「ヴァンパイアならもう少し賢かったかな」
「けど、こんな日差しじゃ干からびるだろう」
 交錯した二つの影は軽口を叩きながら攻撃を繰り返す。シーザーが放った鉄槍が進路を塞ぎ、立ち止まった隙をカタリナの縛鎖が縛り上げる。
「流石にこれでダウンじゃあ無いだろうね……」
「その様だ。来るぞ!」
 動きを止めた暴走戦車は立ち往生した訳ではない。いつの間にか高々と掲げられた主砲から、轟音と共に強烈な一撃が空へ向けて放たれた。怪物の反撃が始まる。

「いいか、足を止めた時が狙い目だ。合図は出す――散れ!」
 一方、上空の攻撃が暴走戦車を足止めしている隙に、奴隷を引き連れたキアが号令を出す。空の相手に手を取られている今ならば包囲も容易――確実に奴の息の根を止めるべく、突撃銃を片手に機会を伺った。所々岩場に姿を隠しながらハンドサインで合図を送る奴隷達の姿を捉えて、再び照星を睨むキア。狙うべきは足回りか……鉄と雷の巨槍に翻弄される暴走戦車が動きを止めた時、自然とその指が引き金を絞った。
『……ボス、新たに攻撃! 九時の方角!』
『豆鉄砲にビビってる場合かよ! あの蠅共を何とかしろ!』
 怒号が響く操縦室内、その報告は揉み消された。それが決定打になるとは露知らず、主砲への装填作業を急かすボスは苛立ちを隠さずにたたらを踏んだ。
『何なんだよ、こいつらは!』
『噂通り……って奴ですかねぇ』
 焦る悪漢共を尻目に歯軋りを繰り返すボス。主砲さえ使える様になれば幾らでも返り討ちに出来る――甘い思考が脳裏を過った刹那、再び衝撃が暴走戦車の巨体を揺らした。
『痛ってぇ……今度は何だ!』
『だから! さっきの攻撃が!』
 その先の言葉を紡ぐ前に、怒涛の銃撃が左側方より一斉に放たれた。狙いは恐らく履帯――対戦車戦ならば分かり易い攻撃だ。だが流石の暴走戦車、重厚な鉄板は普通の銃砲撃で凹む程柔な装甲ではない。
(――手を休めるな。動き出したら退避しろ)
 ハンドサインで周囲に指示を出すキアが一人、砂塵に紛れて前進する。狙いは動輪、履帯を剥がせないならば動力そのものを無力化してやればいい。
「こんな前菜で恐縮だが――存分に喰らえ!」
 奴隷達の銃火器支援が功を奏し、左翼側に気を取られた暴走戦車は未だキアの接近に気付いていない。右側方後輪部――旋回する砲塔がギリギリと音を立てて左側へ回り込む裏を取って、装填したグレネードが勢いよく火を噴いた。

『ぼ、ボス! 新たに五時の方向に攻撃! 右側動輪不調!』
『回せねえのか! クラッチを切れ!』
 キアの攻撃が暴走戦車に届いた時、砲塔の旋回は辛くも完了していた。しかし足止めを喰らいまるで擱座した様に蹲る巨体は、その攻撃を遮る手段を持たなかった。
『見えた……女が一人!』
『女ぁ!?』
 直後、怒涛の攻撃が暴走戦車の頭上を覆いつくした。
「無差別攻撃はよろしくないね。先手を打たせてもらうよ!」
 カタリナの黒炎が車体を包み込み、その上から無数の熱線が上部装甲を穿ち続ける。キアの秘策はビーコンを基点とした陽動に、足止めの突撃。それすら必殺の超常を導く布石に過ぎない――衛星軌道上より放たれた極大の殺意の塊は、瞬く間に暴走戦車を灼熱の渦中へ巻き込んだ。
『ボス! 駄目だ、四番が止まった!』
『一番いけます! 信管零コンマ三!』
『放てぇッ!』
 瞬間、天を仰いだ巨砲が一門、悪魔の咆哮を響かせる。突風が飛翔するカタリナとシーザーにぶち当たり、乾いた大地がみしみしと音を立てて崩れていく。主砲のバックブラストが地面を抉ったのだ。その勢いに呑まれぬ様、急ぎキアは距離を取って――そして、天より降り注ぐ灼熱の悪意に戦慄した。
「馬鹿な、この距離であんなモノを……!」
 元は対空焼夷散弾、空を焼き焦がす超常の一撃が重力に従って広範囲を焼き尽くす地獄の炎と化したのだ。
「こんなもの――奴隷は!?」
 恐るべき威力を目の当たりにし、直ちに顔を返すキア。舐めるように燃え盛る大地の先、幸い奴隷達は不可視の力場に覆われて事無きを得ていた。
「抗う意志は尊い。だからこそ、見逃したりはしないよ」
 渦巻くオドが傘の様に広がって炎を避ける。今の内にと合図を出して戦線を離れる奴隷達を見やり、シーザーは改めて眼下の暴走戦車を睨みつけた。
「成程、一門は兎も角として残り五門……」
「それでも一つは潰したよ。順を追ってやればいいさ」
 ふわりと銀光を撒いてカタリナが側へ。アレを野放しにしてはこれまでの努力が水の泡だ。現に車体を封じ込めた拘束も、唸り声を上げる暴走戦車の超信地旋回でバタバタと薙ぎ倒されていた。
 拘束を強引に解いた暴走戦車は一旦その身を引く。それでも一門の主砲と一つの動輪を破壊せしめた。この地にて最強を恣にしていた幻想は崩れ落ちたのだ。そして狩りは始まったばかり――暴走戦車はまだその事を知らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユエイン・リュンコイス
●連携アドリブ歓迎

さて、戦車戦か。数は一輌?砲塔が複数ある分、火力は二個小隊相当?
…へえ、そう。

先ずは相手を狩り立てよう。機人に『月墜』を構えさせ、ボクはスポッターを。【視力、スナイパー】で狙いをつけて砲弾を叩き込み、奴隷に意識を向けさせないよう立ち回ろうか。
駆逐艦から引き抜いた127mmだ。どうか楽しんで欲しい。

セメント弾使用ないし奴隷へ被害が出そうになったらUC起動。セメントを原料に機械神を形成。注意を引きつつ、硬度と質量に任せた【グラップル、範囲攻撃、衝撃波】て蹂躙。奴隷たちにもその隙に有るだけの火力を叩き込んで貰おう。

随伴歩兵や制空権のない戦車をなんで言うか知っているかい?
鉄の棺桶だ。


宝海院・棗
すごいかっこいい戦車だね!でも負けないよ!

基本的には【空中戦】【空中浮遊】【残像】の技能やスライムスリップを活用して回避性能を上げる

時々【スライディング】で懐に潜り込んでの【鎧砕き】【鎧無視攻撃】【2回攻撃】【武器落とし】【串刺し】【傷口をえぐる】を乗せた攻撃を繰り出し、敵の自由を奪っていく流れ(砲塔の根元やキャタピラの軸、装甲の隙間など弱そうな部分を狙ってみる)

各種支援、連携希望


アララギ・イチイ
巨大暴走戦車かぁ
これ(UC)なら正面装甲もぶち抜けるかしらぁ?

砲撃戦に有利な一定距離を保った状態で【選択UC】発動ぉ
UC効果で構築した列車砲を【念動力】で操作、敵の動きを【早業】で【見切り】照準を定めて、爆風による【範囲攻撃】の【吹き飛ばし】でダメージを与える榴弾を連続発射するわぁ
自動装填装置で再装填は行うけど、その間に反撃が来る様なら列車砲を盾の様に扱い【武器受け】、2段構えでシールドシステムでの【盾受け】も実施しておきましょうかぁ(列車砲の誘爆に注意

上記の水平射撃でも抜けないなら、接射ねぇ
砲弾を込めて列車砲を念動力で加速させて、敵の戦車にぶつけて、そのまま砲弾を叩き込んでみるわぁ



●キャノンボール・ガンナー
「数は一輌? 主砲が複数ある分、火力は二個小隊相当?」
 煙を拭いて駐機する暴走戦車を遠目に見て、岩場に足を下ろしたままユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)がぼそりと呟く。
「それどころじゃないみたいよぉ……巨大暴走戦車かぁ」
 傍らのアララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)は先程の戦いを思い、アンニュイな表情でユエインに返した。
「まあ、これなら正面装甲もぶち抜けるかしらぁ?」
 アララギの背後に佇む鋼鉄の異形達は、まるで竜の首の様な長大な砲を正面に向けたまま静かに闘志を放つ。
「へぇ、そう……だったら私は」
 その巨大構造物は主の号令を待つ様に煙を上げて、鈍く光る砲口は必殺の意志を剥き出しにする。旧時代の超長距離侵攻兵器、ユエインは隣で静かに佇む黒鉄機人を見やり、すっと立ち上がった。
「機人の携行砲でやってみるよ。127mmだ――これで抜けなければ」
 機人が肩に担いだものも超重の大口径砲だ。取り回しは劣悪だが、人型兵器で扱う分にはその点は大分相殺される。車輪を回している間に二本の足で地を駆ければ、存分に隙は伺えるからだ。そして。
「私の800mmの出番ねぇ。その前に上手く引きつけないと」
 アララギの超常が配したものは列車砲――第三帝国の悍ましき遺産、総勢六十五台の荒ぶる鉄塊は、扇状に布陣してその牙をまざまざと見せつけた。だがアララギの言う通り、馬鹿みたいに連射が出来る代物ではない分確実に当てる為の布石を――その時、二人の目の前に輝く何かが空間を越えた現れた。
「それなら私に任せてよ!」

『応急ですが、動輪は何とか……長くは持たんでしょう』
『いいんだよ、ここに居る連中を潰すにゃ十分だ』
 故障した動輪を直さなければ何れ擱座し袋叩きに遭う。何とか通常通りの速力を取り戻した暴走戦車は、追撃を避けながらも反撃の機会を伺って周囲を警戒する。一人ずつ――そう、一人ずつ仕留めればいいだけの事。威力はこちらにあるんだ――気を取り直した矢先、悪漢が素っ頓狂な声を上げてボスへ異常を報告した。
『ボス、正面にまた何か――人?』
「すごいかっこいい戦車だね! でも負けないよ!」
 目の前できらきらと光を放つそれは宝海院・棗(もち・ぷに・とろり。・f02014)、陽光を浴びて輝く結晶質の身体は、可愛らしい声と共に全身を未知の構造――液体の様な何かに変質させた。
『違う、何だありゃ!?』
 それは棗の超常、全身を粘度が自在に変えられる液体に変えて、滑り込む様に暴走戦車に取り付かんと迫り来る。
『懐に入れさせるな! 同軸銃全斉射!』
 主砲に備えた四門の機銃が火を噴いて、派手に飛び回る棗を狙い鉛玉の洗礼を浴びせ続ける。主砲と比べれば些か頼りないが、それでも人間サイズを相手にするには十分の筈だった。
「危ないなぁ、もう」
 ぴょんと飛蝗の様に跳ねては、猛禽の様に地を滑空して銃弾の雨を避ける棗。
「でもこうすれば、ね?」
 そして暴走戦車の視界から輝きは姿を消した――違う。棗は遂に取り付いた、暴走戦車の底面に。更に衝撃が暴走戦車を襲う。棗のレーザーハンマーが何度も底部を叩いては、頑強な対地雷装甲を粉チーズの様に破砕していったのだ。
『底がやられた! どうする!?』
『外しちまえそんな洗濯板! 機関最大!』
 固定ボルトが炸裂して、最早使い物にならない底部装甲を強引に剥がす。それにしがみ付いた棗を後にして、全速力で暴走戦車はその場を離脱した。
「距離300――行くよ」
 しかし隙だらけだ。膝を付いて水平射撃――『月墜』が、127mmの洗礼が続けて暴走戦車を襲った。爆音が戦場に響いて、衝撃が離れて観測を続けるユエインの前にすら砂塵を届ける。
『砲撃! 三時の方向から一つ!』
『さっきの例もある、全力で叩き潰せ!』
「来たね……駆逐艦から引き抜いた自慢の127mmだ。どうか楽しんで欲しい」
 側面ならば傾斜作用も無い――全力の斉射は止まる事無く暴走戦車の装甲を穿つ。その猛威を防がんと、慌てて旋回した暴走戦車。しかしそれこそが猟兵の狙い。
『正面を向けろ! 傾斜で弾ける!』
「正面から来たわねぇ、お利口さん」
 絶対の自信で正面から攻撃を受け止める――その自信を根元からへし折ってやろう。すっ、と前に手を翳したアララギの背後から、恐るべき鋼鉄の竜がその咢を開いた。轟く砲声、地形ごと全てを破壊する絶対の800mmが幾重にも放たれて、強靭且つ無敵と謳われた最強の正面装甲を、砂糖菓子の様にボロボロと崩していった。
『ば……何が……』
『前部装甲第一層から五層まで損壊……あれは……』
 けたたましい警告音を放つ暴走戦車の正面に聳え立つは列車砲の黒い影、それらが六十五門の恐るべき砲口を全て暴走戦車へと向けて、静かに佇んでいるのだ。
『狂ってやがる』
 それはまるで終末の暴風の様に、再び火を放つ時を待っていた。

『駄目だ、セメントを食わせろ! 時間が無え!』
 かろうじで操縦室を護った前部装甲を補填するには、最早予備装甲をのんびりと展開している暇など無い。左右に車体を揺らして狙いを絞らせず、特殊セメントを用意していた暴走戦車の前に一つの巨大な影が飛来した。
「抜けないならこうするしか無いわよねぇ」
 それはアララギの列車砲だった。砲弾を装填したまま待機していた一台を強引に念動力で飛ばして、暴走戦車へ零距離の直接砲撃を敢行すべく。
『迎撃どうした! あんなものを喰らえるか!』
 飛来する巨鉄塊を撃ち落とさんと機銃が吼える。しかし続けて放たれた列車砲の支援砲撃に揺らされて、照準がまともに定まらない。徐々に距離を詰め飛来する列車砲――しかし間一髪、暴走戦車の準備が整う。
『一番から三番に装填――発射!』
「それを待っていたんだ」
 中空に放たれた速乾性のセメントが暴走戦車を覆いながら、群がる敵へと飛散する。破壊力は無い――が、触れれば最後、動きを止められ良い的にさせられる。そんな攻撃を喰らう訳にはいかない。何よりそれは、ユエインが最初から狙っていた秘策への導火線でもあった。
『せ、セメントが……喰われてる、だと』
「随伴歩兵や制空権のない戦車をなんで言うか知っているかい?」
 飛び散ったセメント弾が渦を巻いて一カ所に集結する。そんな筈では――削れた装甲を埋めるついでに奴らの足止めを。そのつもりが、放たれた土塊は全て目の前で巨大な人型兵器に姿を変える。それがユエインの超常、無機物を意のままに操って、鋼鉄の機械神へと造り替える叛逆の業。
「――鉄の棺桶だ」
 最早その通りに棺桶と化した暴走戦車を掴んで、強引に主砲を引き剥がす機械神。その隙にアララギが列車砲を側面に押し付けて、引き剥がされた棗も身体を飛ばしハンマーを手に躍り掛かる。
『ば、止め……』
 号砲一閃、毟り取られた主砲が投げ捨てられるのと同時に、棗のハンマーと列車砲の零距離砲撃がその巨体を吹き飛ばした。垂直にぶつけられた暴力はそのまま暴走戦車を要塞の方へと押し戻して、付近に静寂が戻る。
「砲塔ごと持って行ったと思ったけれど、ねぇ」
 手ごたえはあった。機械神が掴んだまま地に足を付ける事無く全ての衝撃を一身に受けて、ハンマーの追撃も合わさってただでは済まない状態になっている筈だ。
「叩き甲斐のある相手だったね!」
「この辺りを仕切っていただけはあるね、流石に」
 流石にもう、無事で済むような状態では無い。棗の言葉にユエインは淡々と返して、遠くを見やる。あちらにもまだ仲間がいる。
 主砲を一つ潰して装甲をボコボコにしてやった。頑強無敵の鋼鉄は棺桶の一歩手前――骸の世界へ還るのも時間の問題だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
さて……流石に脱出しないとマズいですかね。
周囲の猟兵に注意を払ってるでしょうが、要塞内に流れ弾が飛んでこないとは限りませんから。

前情報で戦車がいるのはわかってましたし、要塞内にはいないと踏んで、あらかじめ外に地雷を設置しておきました。

装甲も火力も高い相手ですが……どうしても構造上脆いところと言うのは出てくるものです。
狙うのは、キャタピラの部位破壊。地雷ひとつで吹き飛ばすのは無理でも、足を殺すくらいはやりようはある。

実際のところセットしてあるのは一個だけ。こちらからの銃撃も利用して誘い込んで、確実に踏ませる。
踏ませてしまえば、後は味方の動きを制限させることも無い。いくらでも料理の仕方はあります。


モア・ヘリックス
はあ、戦車相手に防衛戦かよ。
ま、いいぜ。付き合ってやるよ。

しかし、人型のブリキ野郎程度ならショットガンでぶち殺せるんだが、戦車相手となるとな……派手にやってる奴らと違って俺には決定打がねえ。
おい、貼り付けるタイプの爆弾余ってねえか?なけりゃグレネードでいいけどよ。

よし、それじゃあこいつをあの動く宅配ボックスにデリバリーだ。
戦車乗りと違ってこちとら小回りが利くのが強みでね。
連射速度が早かろうが、砲弾ってのは真っすぐ飛ぶんだ。
砲塔の動きを見て動けば近づくのは思ったほど難しくはねえ。

狙い目は履帯、それから内部に直接放り込むかだな。
どっちもキツイとなればしょうがねえ、砲身へ直接ぶち込む。


鳴宮・匡



眼、耳、意識のすべてを相手とその周囲へ振り向ける
周囲の状況、反応した砲門の数、射角
砲弾の装填される音、火薬の臭い
あらゆる情報から攻撃手段を読み取り
可能なら砲弾が発射される直前、相手の砲口へ先んじて攻撃し
発射前に誘爆させるように狙っていく
無理でも、着弾する前に撃ち落とすように心がける
全て撃ち落とし切れないなら、遮蔽を取ってやり過ごす

撃ち終わった直後はさすがに隙ができるはずだ
次弾装填までの間に攻勢に出る
オブリビオンだろうと、戦車は戦車だろ
動力部の位置は凡そ同じはずだ
狙うのはその一点、一射で確実に撃ち抜くよ
長引かせるだけ、元奴隷たちへの負担も増えるからな

壊れた兵器は眠るべきだ
大人しく骸の海に還りな



●ボーダーブレイク
 風がきりきりと大きな音を立てる。僅かな時の後、空より飛来したのは巨大な鉄塊。全身の装甲はへしゃげて、悲鳴の様なエンジン音を鳴らしながら、目を覚ました猛獣の様に鋼鉄の化け物は付近を爆走し始めた。
「来たな。ダメージは相当の様だが、まだ無事か」
 恐らく操縦室は健在なのだろう。むしろそこを生かす為だけに、わざわざ分厚い装甲と強靭な機関、そして威嚇する様に多数の砲門を拵えた風にすら見える。鳴宮・匡(凪の海・f01612)は要塞を背に、荒ぶる猛獣の検分を終えて仲間と合流した。
「出ておいて正解でしたね。要塞内に流れ弾が飛んでこないとは限りませんし」
 匡の報告を受けてシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)が溜息をつく。先の戦いであの主砲の威力は存分に見た。流れ弾どころか直撃を貰えば、間違いなく無事では済まないだろう。
「ついでに中にはもう何も残っちゃいねえからな。物資も何もかも――ああ畜生」
 そう言いながらも手元にくすねた高性能爆薬を引っ提げて、モア・ヘリックス(ブチハイエナ・f24371)が頭を振る。
「もう未練も何も無い。後は存分に暴れるだけかい!」
「……お喋りはそこまでだ。近付いてくる」
 匡の視線の先には、砂埃を巻き上げて突き進む暴走戦車の姿が。
「まあ、仕込みは済ませてますし――いいですか、後は?」
「ああ。俺のショットガンだけじゃ流石にあの装甲はぶち抜けねえ」
 共に爆走する鉄塊を見やり頷く三人。それぞれの銃火器だけでは恐らく立ち向かえない相手だ。だからこそ幾多の戦場を乗り越えた知恵と技が冴える時。爆薬を手元でクルクルと回しながら、モアがニヤリと口元を歪ませる。
「それじゃ、サプライズパーティーと洒落込もうぜ」

『機関は無事ですが装甲はもう……』
 暴走戦車の操縦室もただでは済まなかった。飛び散る火花をかき分けて応急修理を続ける悪漢共が、泣きそうな声色で続々と報告を読み上げる。
『主砲も一番と四番は完全に駄目になりました。後は』
『いいからさっさとどうにかしろ! 予備装甲は!』
『展開しましたが、そんなに持つものじゃあ……』
 先の戦いで最早装甲は使い物にならない。積んでいた展開式予備装甲を張り巡らせたとて、所詮は焼け石に水――同等の攻撃を受ければ、今度こそ無事では済まない。怒号が飛び交う密室の中、カーンと乾いた音が耳に届いた。
『正面より攻撃! 敵は視えず!』
 それは突然だった。装甲を打ち鳴らす乾いた音が操縦室に響く。一体何処から……少なくとも方位は要塞の方だ。続けて二つ、三つと銃弾が撃ち込まれて、耳障りなその音にボスが声を荒げた。
『この方角なら要塞か。人ん家に土足で入り込みやがって……』
 左下の悪漢を蹴り仕草で砲撃準備の合図を。そのまま指示を――それよりも早く、不意の爆発音が再び密室を揺らした。
『二番を開けろ……って! どうした!?』
『やられました。その二番が』
 要塞の方を向いていた二番の主砲に直撃弾が侵入し、砲架ごと吹き飛ばしてしまったのだ。正に神業の狙撃――このままでは淡々と、命が削れていくのを待つだけだ。
『この距離で当てるだと。面白ぇ』
 口元を歪ませてボスが立ち上がり、手を振りかざして命令を発した。
『――駄目にしたって構わん。五番に装填、要塞ごとぶち壊せ!』

「――動き出したか」
 狙撃手の正体は匡。要塞手前の岩場に隠れて、正面から暴走戦車を愛用の狙撃銃で狙い撃つ。敵の動き、戦場に吹く風向き、撒き散らされる火薬とエンジンの咽る様な臭いが、全て射撃諸元となって無音の殺意を解き放った。
「だが、これで砲はもう――!」
 砲撃の気配を見せた中段の砲に超常の一撃を――既に体勢の崩れていた暴走戦車は直撃を受けて、自慢のそれを止むを得ず落とした所だった。しかし残る二門の主砲は健在、再び殺意をしたためて、風を突き破りその暴威を放ったのだ。
「こっち――まさか」
 その一撃は自分達の拠点、断崖という境界に拵えた不落の要塞を吹き飛ばしたのだ。空間に轟いた爆音が匡の耳に届く頃には、背後の断崖もろともボロボロと岩壁が崩れ落ちる姿が見えた。
「……流れ弾どころじゃありませんね」
 同じく、匡より離れてそれを見ていたシャルロットが呟く。
「出て来て正解だったぜ。ったく」
 あの中でお宝探しを続けていたら巻き込まれて死んでいた所だった。モアが険しい表情で暴走戦車を睨み一歩前へ出ようとした刹那、それを止めたシャルロットの口からは意外な言葉が飛び出た。
「待ってください。この為にあらかじめ外に地雷を設置しておきましたから」
 前情報で戦車がいるのはわかっていた。しかし屋内で戦うとは思えない――小回りの利く歩兵に取り囲まれれば相手になる訳が無い。だからこそ決戦の場は要塞外、故にあらかじめ罠を仕掛けて伏せておいたのだという。
「どこでそんな手口を覚えたってんだ、嬢ちゃん」
「――こことそう、変わらない世界」
 淡々と語るシャルロット。敵の形は違えど、罠の形が違えど、道理は同じだ。戦の勝敗の全てはその準備に掛かっているのだから。
「そりゃあ大層な所だな。んじゃ行っていいかい?」
 ニヤリと歯を見せて今度こそ飛び出すモア。目指すは暴走戦車――シャルロットの罠が炸裂した時だ。
「あの動く宅配ボックスにデリバリーだ」

 履帯を軋ませ爆走を続ける暴走戦車。要塞は崩れ狙撃は止み、最早恐れるものは無い――そう判断し、意気揚々と進撃を続けていたその時、車体を突き上げる様な特大の衝撃が操縦室を大きく揺らした。
『な、何が起こって……ぬああ』
 そして爆風が床下を貫いて、とうとう操縦室にまで火の手が上がり始めた。
『底部で爆発! 駄目です、下の装甲も剥がれたから!』
『左側履帯損傷! 片側だけではまともに動けません!』
 慌てて消火作業を始める悪漢達。情けない声を上げて椅子に寄りかかるボスは、白煙塗れになった操縦室を見渡して、懲りずに檄を飛ばす。
『この野郎! 三番と六番! 撃ち方!』
 そう叫んだ瞬間、三度の爆音が衝撃と共に襲い掛かる。今度は何だ……止む無くキューポラから顔を覗かせた悪漢の報告を受けて、今度こそボスは絶句した。
『嘘だろ……』
 左側履帯が地雷により損壊。修復不可能。
 右側履帯も同じく爆発により損壊。修復不可能。
「砲塔の動きを見て動けば近づくのは思ったほど難しくはねえ――」
 最早暴走戦車は動く事が出来ない。単なる重しと化した両側の履帯は、二度と動かせる様な状況ではない。
「ちょっくら身体が痛えがまあ、大丈夫……」
 その様子を見て満足げな表情を浮かべるモア。超常の地雷と、己が身を賭して放った爆薬の一撃が暴れる鋼鉄の怪物を遂に止めたのだから。その代償――超常のドーピングがモアの身を蝕んで、気を抜けば即座に昏倒してしまいそうになった時、不意に現れた腕が倒れ行くその身を静かに抱き留めた。
「お前が眠るのはまだ早いぞ」
 匡だった。バラした狙撃銃を肩に担いでゆっくりとモアの身を起こし、煙を噴く鋼鉄を見やり呟く。ここまでやれば、後はゆっくり仕上げればいいのだから。
「眠るべきは――壊れた兵器だ。大人しく骸の海に還りな」

『…………履帯を外せ、クラブ・モード起動』
『し、しかし燃料が……』
 席に着いたボスが静かに号令を発する。クラブ・モード――緊急時に発動するその形態は、機動力と引き換えに莫大な燃料を消費する諸刃の技だ。
『止まってたら死ぬぞ! さっさとしろ!』
 悩んでいる時間など無い。頭を切り替え炸裂ボルトのスイッチを押す悪漢――瞬間、ボロボロに崩れた履帯が弾け飛び、転輪からにょっきりと鋼鉄の脚がバタバタと姿を現す。
「ハハ……デカい蟹が見えるぜ」
「その分ならまだ持つか……ん?」
 敵は機動性を回復した。この場に居ては危険――そう判断した匡の前に、ワイヤー付きの銛が跳んで来た。
「それに掴まって下さい。巻き上げます」
 シャルロットの声が端末から響く。止むを得ずモアをゆっくりと下ろし、手近にある散らばった装甲板を手に取ってその銛に括り付けた。
「多少熱いが我慢しろ」
「しなきゃ死ぬんだろ……!」
 装甲板は戦闘熱で焼けるように熱い状態だ。だが生身で巻き上げられれば身体ごとボロボロになってしまう恐れがある。装甲板をそりの様にして離脱する二人の前でゆっくりと身体をもたげる暴走戦車。その姿は正しく、鋼鉄の怪物そのものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

東・理恵
「戦車の相手は、やっぱり戦車でないと。」「少しでもダメージを与えて、相手の動きを鈍らせないといけませんね。」
戦闘中は、戦車に【騎乗】して戦います。
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、他の方に合わせる形の【援護射撃】の【制圧射撃】で【鎧無視攻撃】の【精密射撃】で、『暴走戦車』を【2回攻撃】をします。相手の攻撃に関しては【見切り】【オーラ防御】【地形の利用】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)戦車でも回避行動はできるのです。」「さあ、オブリビオンは『骸の海』へ帰りなさい。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


メルティア・サーゲイト
【私・お前・名前呼び捨て】
 ははッ、そう来なきゃ面白くねェよなァ?
「いいぜ、戦車を教えてやる。付いて来い」
 戦車形態で味方戦車を引き連れて荒野を駆け抜ける。
「初弾、APFSDS弾! 次弾も同じ!」
 まずは車体を止め、APFSDSで遠距離から狙撃。相手がデカいから倒せはしない。注意を引ければ十分だ。撃ったら全速前進。
「主砲がこっち向いてる時は絶対に止まるな。動いていれば戦車の装甲は大体弾ける」
 まあ、その分こっちも有効打が撃てないが。
「撃つ時は止まれ。数秒でいい、一発あれば十分だ」
 私は焼夷榴弾で炙りながら敵の気を引いておくから、事前に味方戦車に持たせたUC製対戦車榴弾をブチ込んでやれ。


アビー・ホワイトウッド
アドリブ連携歓迎

完全に出遅れた。敵は重戦車1、装備は大口径の多連装砲…厄介。

二足歩行戦車で出撃する。遠距離から電磁加速砲で攻撃、UC発動でエンジンや砲塔、履帯の破壊を試みる。
電力消費の兼ね合いで砲撃は一発だけ。あとは対戦車ミサイルで攻撃しよう。
他の猟兵、解放された奴隷と協調して重戦車にダメージを与える。
重戦車からの攻撃でダメージを受けたなら機関砲を乱射しながら歩行戦車で重戦車へ突撃、側面から体当たりしたらぐんぐん押して重戦車の移動を妨害する。

この方角なら主砲は使えない。

歩行戦車で重戦車の移動を妨害して他の猟兵や奴隷が重戦車を攻撃する時間を稼ごう。



●パンツァー・フォー
「いいぜ、戦車を教えてやる。付いて来い」
 そう来なきゃ面白くねェ。メルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)は自身の超常――神の車たる超重戦車の操縦席で、高脚を踏み鳴らす暴走戦車を睨みつける。傍らには奴隷の中戦車が佇み、その姿はまるで戦車の親子みたいだ。
「ええ。戦車の相手は、やっぱり戦車でないと」
 重戦車に乗り駆けつけた東・理恵(神の戦車乗り・f24407)がその後に続く。発掘兵器を改装した逸品物、艦砲並みの長大な主砲を備え付けたその姿はこちらも、鋼鉄の化け物と呼ぶに相応しい。
「遅れてすまない。二足歩行戦車一輌、貴隊に合流させてもらう」
 そしてアビー・ホワイトウッド(奪還屋・f24498)の二足歩行戦車が辿り着き、四両の鋼鉄の獣はパンツァーカイルで陣取った。右翼にメルティアと奴隷戦車、左翼にアビーと理恵、重装甲の二両が前衛に立ち、小柄な二両を後衛に配して。
「了解した。それじゃ行くぜ……!」
 機関が轟き排気煙が反撃の狼煙の様に立ち上がる。目指すは異形の暴走戦車、その本分を無くした哀れな怪物に、終止符を打つ為に。

『おい……敵は何処だ』
『来ました。八時の方向、大きさから恐らくは四両の戦車かと』
 レーダーに映った機影は明らかに人間のサイズを逸脱している。しかし先程の列車砲の様な怪物は見当たらない。だとすれば全高はそこまで高くない――考えられるのは戦車だと結論付けた悪漢がボスへと報告する。
『ここに来て戦車か……上等だ』
 これまで散々埒外の戦力に当てられて、主砲も大半が使用不能となった。更には履帯を失って異形の歩行戦車へと変貌した暴走戦車は、見えざる同族を探してその牙を剥き出しにした。
『三番と六番からガンポッドを出せ。あんな奴等まとめて薙ぎ払え!』
 そもそも巨大な無反動砲だ。ライフリングも無い長大な金属筒に過ぎない砲身から、大型のガトリングガンポッドを突き出して即座に機関砲に変えるという乱暴な理屈である。バックブラスト代わりの排莢装置を剥き出しにして、それらの準備を整えている最中、猟兵達は既に砲撃準備を整えて、小高い丘より暴走戦車に狙いを定めていた。
「初弾、APFSDS弾! 次弾も同じ!」
「少しでもダメージを与えて、相手の動きを鈍らせないといけませんね」
 メルティアが叫ぶと共に理恵がそれに続いて砲塔を回す。奴隷戦車も同じタイミングで砲塔を動かして、更にアビーの歩行戦車が右肩に備えた電磁加速砲に紫電を纏わせる。
「エネルギー充填、ガイドレール展開――行けるわ」
 メルティアとアビーのレーダーセンサが敵を捕らえて測距を完了し、諸元を全隊に共有。がっちりと固定された四両はその牙を怪物へと突き立てる。
「全車発砲! 奴の砲塔が向くまで撃ち続けろ!」
 そして思いを籠めた必殺の砲弾が、暴走戦車の息の根を止めんと一斉に放たれた。
「主砲がこっち向いてる時は絶対に止まるな。動いていれば戦車の装甲は大体弾ける」
 硝煙が巻き上がり視界を薄暗く染めて、重砲の鳴り止まないパーカッションが幾度となく重なって。されど、唐突に訪れた反撃の弾幕によってその響きは止まる事になる。
「来たわね……でもこの程度の速射砲じゃ、神の虎の装甲は抜けないわ」
「気を付けて、問題は奴の本来の主砲よ」
 ばらばらと双腕の様な機関砲の雨が四両の戦車を襲う。そもそもが異形の大口径の無反動砲、変わって撃たれた機関砲も相応の巨大さだ。油断すれば重たい一撃を貰いかねない――そう思わせるだけの迫力を、猟兵達は感じ取った。
「よし、戦車後退! 兎に角動け! 正面は奴に向けたままだ!」
 にゅっと丘から後ろに下がり、直撃を避けるべく全車が立ち回る。特に戦車慣れしていない奴隷が誤らない様、メルティアは機敏に指示を飛ばしつつ暴走戦車の動きを伺った。
「角度を合わせれば、戦車でも回避行動はできるのよ」
 甲高い音が理恵の車両に響き渡る。されど魂を込めた改造した神の虎は、その程度の攻撃ではびくともしない。
「しかしトップアタックを続けられると前に出れないわ」
 小高い丘とはいえ馬鹿みたいに高い足を広げる暴走戦車にしてみれば、多少位置が上がった程度。現に機関砲の弾幕は戦車隊より高い位置から放たれていた。アビーの言う通り、油断すれば天辺から貫かれかねない。しかし。
「だけど、M102の足なら十分に近付ける」
「やれんのか?」
 元は米軍の戦術二足歩行戦車。他の車両よりも全高は高く、こういった鉄火場をこなす為に生まれた機動兵器だ。速度も強度も十分――その自信がアビーにはある。
「大丈夫よ。今まで十分、やってきたから」
 何よりこの子の事を私は知っているのだから。ぎらつくモニタに目を走らせて、アビーは口元をニヤリと歪ませた。

『ボス、駝鳥が近付いてくる』
 外の様子を覗いていた悪漢が報告を上げる。駝鳥――アビーの歩行戦車が丘を下って、砂煙を巻き上げて暴走戦車へ近付いて来ていたのだ。
『煽ってやれ、懐に入られる前に食い散らかすぞってな』
 たかが一両相手にもならん、そう含ませた一言をノイズ交じりのスピーカーから大音響で発する。嘲りながら機関砲を撃つ手は止めない。弾幕の中を掻い潜り、アビーはその物言いに舌を打った。
「――冗談。駝鳥ですって?」
 逆関節は踏破性を上げる為、跳躍すれば多少の岩場をものともしない三次元機動も可能――旧米軍が来たるべき大戦に備えて拵えたらしき、ましてやアビーが精魂込めて修復した相棒をその様に言われては、黙ってなど居られる訳も無かった。
「この鋼鉄の巨竜に、よくもそんな口を!」
 スモーク展開、同時に多連装ミサイルポッド解放――照準。滑らかな動作でコンソールを一通り叩き終えた直後、爆音と共に暴走戦車を火の海が包み込んだ。
「全車停止、アビーがやってくれた」
 キューポラからその雄姿を目に納めたメルティアが告げる。奴は足元で暴れる巨竜の相手で精一杯だ。今度こそここで仕留めるぞと檄を飛ばして――しかし足を止めて撃つ事に不安を覚える奴隷達から、本当に大丈夫かと疑心の声が漏れる。
「撃つ時は止まれ。数秒でいい、一発あれば十分だ」
 行進間射撃が出来る程手練れでは無いだろう。だったら確実に当てて確実に逃げる。その為には一つ一つの動作を正確に行う他無いのだと。
「私が敵の気を引いておく。その隙に――後は分かるな?」
 既に必殺の砲弾を拵えて奴隷戦車に渡してある。ここぞという時に使う特注だ――その機会はメルティア自ら作り出すと豪語して、再び華奢なドールは操縦席に潜り込んだ。
「あのタカアシガニに喰らわせてやれ、鬼戦車の威力って奴を」
 そう言い残し一両だけ戦列を離れる。アビーと同じく暴走戦車目掛けての突進――傍から見れば劣勢の友軍を支援すべく馳せ参じたという所だろうか。
「その車両と並ぶのは不思議な気分だけど――」
 理恵が愛車を奴隷戦車の横に並べて呟く。元はと言えば敵味方に分かれて死線を潜り抜けた車両同士だ。もし彼らが喋れるのならば、何か一言あってもおかしく無い。
「今の敵はあの化け物よ。見せてやりましょう」
 我等地獄の戦場を生き延びた同志として。二両の砲塔がきりりと音を立て、暴走戦車へその牙を向けた。

『あの鬱陶しい駝鳥をどうにかしろ!』
『やってますって!』
 足元を踊り回るアビーの歩行戦車に、されど暴走戦車は決定的な有効打を与えられない。機関砲と対戦車ミサイルが暴走戦車の足をピンポイントで攻撃し続け、その度にぐらりと揺れては狙いを定める事も難しい。それもその筈、アビーは既に己が機体の真価を発揮すべく、超常を以ってその力を出し切っているのだから。
『ボス! 装甲が燃えてる!』
 不意に天井の高熱に気が付いた悪漢が悲鳴を上げる。いつの間にか車内が恐ろしく熱い。先程の攻撃で火の手が上がったばかり――これ以上は耐えられないと再びキューポラを開ければ、化物じみた主砲を向けたメルティアの機体が、こちら目掛けて焼夷榴弾を撃ち続けているのが目に入った。
『あのデカブツか――いいぜ、奴に主砲をぶつけろ!』
 ボスの檄と共に生きている五番主砲が唸りを上げて照準を動かす。しかしそれこそがメルティアの狙い――強大な砲を打つ為に、奴は必ず足を止めるだろうと。
「今だ、動きを止めたぞ!」
 通信が全車に入る。神戦車と鬼戦車がそれぞれの必殺の一撃を向けて、理恵が祈りを込めた一言を静かに発した。
「ターゲット――ロックオン」
 発射、着弾――爆音と共に暴走戦車の上半分が見事に吹き飛んで、辺りに鋼鉄の破片が散乱する。最早主砲は下段の三番と六番のみ。それらもガンポッドが埋め込まれて直ちに反撃の砲を打つことが敵わない。
「ついでにこれを……って!」
 アビーが駄目押しの対戦車ミサイルを放った時、不意に計器がバリバリと乱れた。
『ECM、土壇場で直ったか』
『撤収します! 各員衝撃に備え!』
 放たれたミサイルはあらぬ方向へ落ち、爆発が辺りを土埃で包み込んだ。最早届かない――復活した電波妨害装置が最大出力で稼働して、周辺機のありとあらゆる電子機器を無用の長物と化して行く。その混乱の渦中、暴走戦車は残る主砲を引っ提げてその場を全速力で離脱したのだ。
「畜生、まさかあんなモノまであるとはな……」
「この速さじゃ追えないわ。でも――」
 それでも、戦車隊の攻撃は暴走戦車へこれまでに無いダメージを与えたのだ。あれだけあった主砲もほぼ使い物にならない。駆動系も一部を破壊した。あのままではまともに照準を取る事も、この次戦った時に逃げ出す事もままならないだろう。
 全てを解放する為の、決戦の時が迫る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン

ん!あの鉄くずを壊せば良いのね!
支援は特に指定しないわ!好きに動いてくれれば良いと思うわ!
出来れば大物だし仲間猟兵と強力したいわね!
私は基本サポート役をしたいわ!

まずは【属性攻撃】で直接狙い打つんじゃなくて
相手の足元を軽く爆破させていくわ!
狙いは煙幕代わりよ!砂漠にいるなら砂埃を!
堅い岩ならそれはそれで爆風で巻き上がらせるわ!

仲間猟兵が攻撃なりして砲台が向くようなら
そこにUCで砲台目掛けてぶんなげるわ!砲台をへし折っても良いし
穴に直接インさせて誘爆させれるならラッキーね!


テリブル・カトラリー
●奴隷の子供達を思い出しつつ、
【蒼い戦機】発動。空中浮遊状態、空中戦に移行
能力による高速移動はまだ行わない

スナイパーライフルで装甲を貫通する鎧無視攻撃
的が大きい分、大まかな狙い(乱れ撃ち)でも十分当たるだろう

敵の攻撃を戦闘知識から弾道を見切り
撃った直後はブースター(吹き飛ばし)の加速移動で回避し
旋回・撹乱を行いつつ敵に注意
何をしていようと糾弾するつもりはないし、私にその資格はない。

敵が焦れて主砲を向け、UCを発動した瞬間にカウンター。
蒼い戦機の超機動力を発揮し、接近
機械刀の属性攻撃力を強化(超高熱・状態異常力重視)
敵主砲ごと範囲攻撃で溶断・破壊する

だが、最後まで奪わせてもらうぞ。オブリビオン。


茜谷・ひびき

事実は小説より奇なりって言うけど……なんだあのぶっ飛んだ戦車は
スピーカーまでついてるのか……すげーな……
でもビビってばかりじゃいられない
助けた人達のためにも、絶対にぶっ壊す

まずは接近出来るかどうかだな
支援してもらえるなら、相手に接近しきるまでの間撹乱してくれると助かる
でも無理はしないで欲しいぜ

俺はUCを発動しつつ【ダッシュ】で戦車へ接近
いつもなら多少のダメージは覚悟出来るが、あんなのの攻撃を喰らったら一瞬でお陀仏だ
だから接近中は回避に専念
【野生の勘】も駆使しつつ、砲撃を躱していこう

接近しきったら殺戮捕食態に変えた腕で攻撃だ
【怪力・鎧砕き・2回攻撃】も乗せた拳でぶち抜こう
スクラップになっちまえ



●メタルスレイヤー
「事実は小説より奇なりって言うけど……なんだあのぶっ飛んだ戦車は」
 茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)は目の前で疾駆する鋼鉄の怪物に絶句した。奇妙な長い足を生やして――幾つかはやたら動作が遅いが――土煙を巻き上げて進むその威容は、さながら世紀末のモンスターだ。
「しかもスピーカーまでついてるのか……すげーな……」
 聞こえてくるのはノイズ交じりの痴話喧嘩だが、それが殊更異常な事態を醸し出しているには違いない。
「兎に角! あの鉄くずを壊せば良いのね!」
 でもそんなの関係ねえと啖呵を切るフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は、背後に控える奴隷達を奮い立たせる様に強く言い放った。
「簡単な事よ。そのロケット弾をぶち込んで倒れた所でフクロにしてやればいいわ!」
 簡単じゃないよ……等と呆れ混ざりの溜息が場を支配する。その奥で蒼い装甲に身を包んだテリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)が静かに佇んでいた。メモリを過るのは共に逃げ出した子供達――もう二度と、あんな目に合わせてはならない。その為にもアレを破壊する。
「……楽ではない、が」
 ゆっくりと長身の機械兵士が立ち上がり、辺りを見渡しながらノイズ混ざりの声色で語る。
「あの程度、私がいた宇宙には腐るほどいる」
 いつも通り屠るだけ。絶対の自信に満ちた物言いに、一同はようやく自信を取り戻した。そうだ――今の自分達には、奴を倒す為の手段がある。
「そうと決まればレッツゴーよ! 裁くのは私達! さあ汚物は!」
 消毒! 消毒! 消毒! 事前に(適当に)決めたコールが辺りに響き渡る。そうだ、忌まわしき過去など、全て焼き尽くしてしまえばいい。

『……おい、さっきの奴は?』
『振り切りました……けど』
 煙を上げて突き進む暴走戦車は鋒鋩の体で要塞の手前に戻らざるを得なかった。それでも生きてるだけマシ――いやそもそも、俺達は生きてるのか?
『あの連中、大嵐みたいでしたね……って!』
 ECMが火を噴いて壊れた直後、復旧したレーダーが捕らえたのは無数の敵集団。そしてその中心には一際大きな反応がある。
『何だ……奴隷共……だけじゃねえな』
『やっちまいますか、ボス?』
 ああ、と薄く返事をして深く椅子に腰掛けるボス。どうにかここを突破すれば。以前もそんな事があった気が――。
『駄目だボス! あれもあの連中だ!』
 悪漢が悲鳴を上げる。直後にゆっくりと姿勢を崩した暴走戦車――超長距離からの狙撃が、細足を一本撃ち砕いたのだ。そんな事が今この場で出来るとしたら、あの連中の仲間に他ならないだろう。
『――三番六番に主砲装填。全部、吹き飛ばせ』
 静かに号令を発するボス。その声に応えて暴走戦車は再び巨砲を大きく掲げる。最後の戦いが始まった。

「――初弾命中。フィーナ」
「りょーかい。それじゃ……貫けええぇぇぇえええ!!」
 狙撃手はテリブル。大型狙撃銃による精確な一撃が暴走戦車の足を一本もぎ取って、その衝撃が大きく巨体を揺らしたのだった。それに続いてフィーナが特大の超常――炎の槍を暴走戦車へと投げ放つ。狙いは主砲。そして。
「みんな、消毒タイムよ! ロケットの準備はいい!?」
 応! と威勢の良い声が響く。奴隷達が手にしたのは要塞から奪った対戦車ロケット。素人の彼らが扱うには多少荷が重いかもしれない……だが、大人数で一斉に放てば、その欠点も通じない。数は力だ。
「無理はしないでくれよ。足を止められたら俺が何とかする。だから」
 頼んだぜ。飲み干した輸血パックを投げ捨てて、ひびきは暴走戦車の下へと駆け出した。全速力で、その懐に一撃を喰らわす為に。
「フィーナ、着弾するぞ」
「オッケー、それじゃみんないっせーの」
『『『『『ファイヤァァァァァァ!!!!!!』』』』』
 凄まじい量の噴煙と共に、思いを乗せたロケット弾が一斉に点火する。目指すは暴走戦車、その悍ましい高脚を破壊する為に。

『主砲固定完了。目標、前方の敵集団――!』
 悪漢が報告すると共に不意にぐらりと――最早驚くまでも無い。散々味わった嫌な衝撃が暴走戦車の操縦室を揺らす。
『――今度は何処だ?』
『さ、三番が……』
『…………』
 ついてねぇ。こういう時はとことんだ。かつては掃除大隊の名を冠する大部隊だったというのに、たった一度の環境変動で何もかも失くした。そうだ、何もかも失くしたんだ。
『ボス! 六番はまだいけます! まだ!』
 瞬間、爆炎がオペレータ席の悪漢を飲み込んだ。そして立て続けに起こる爆発が深刻な事態を想像させる――ああ、俺達が狩られる側だったんだ。
『同軸機銃は生きてるな。対空機銃も。足が壊されたんだろう、だがな』
 すっとボスが立ち上がる。慌てて火の手を消さんと駆ける悪漢達もその姿を見て手を止める。これ以上何を指示する気なのかと、固唾を飲んでその挙動を見守る。
『――俺達はまだ戦える。だろう?』
 再び火の手が。対戦車ロケットの斉射だろうか――また一人、仲間が炎に包まれた。それでも、と。この男は言うのだ。戦え、戦え……その意志は最早ボスそのものではないかもしれない。自身に湧き上がる衝動すらも同じく。それが――オブリビオン。
『動輪反転! スペアタイヤを出せ!』
 イエス、サーと重苦しい返答が響く。その声と共に全ての脚部をパージすべく、最後の炸裂ボルトが起動――同時に、まだ生きている動輪がガクンと下がり、瞬間的に予備タイヤが内圧で膨れ上がった。今際の際の悪足掻き……装輪戦車と化した暴走戦車は最後の力を振り絞り、恐るべき猟兵達と対峙したのだ。火の手が上がる操縦室でボスが呟く。
『さあ来い猟兵……奪い尽くすのは、俺達だ』

「まだ動くか……厄介な」
 奴隷達の一斉砲火で巨大な脚は全てこそぎ落とされた。にも拘らず、暴走戦車は三度息を吹き返す。その尋常では無いしぶとさに溜息をつくテリブル。だからと言って見逃す訳にはいかない――車高が下がった分、同軸機銃の攻撃は奴隷達の命をまとめて奪うには十分。そしてそれを許す訳にもいかなかった。
「全員下がれ。後は我々がやる」
 蒼い巨体を前に出してテリブルが告げる。これ以上は危険だと――しかし。
『まだ弾だって残ってます。やれますよ!』
『一緒に戦わせてください、あと少しなんでしょう!?』
 血気に逸る奴隷達にはテリブルの言葉が届かない。このままでは――がなり立てる奴隷達は、目の前で噴き上がった炎を前に言葉を失う。
「こんなのが、ね。こんな火が上がるのよ。ここから先、ずっと……」
 フィーナだった。第一波の成功でこれ以上は必要ないというテリブルの意見に心底賛成しているフィーナは、そのまま奴隷達に威嚇を続ける。
「だから、これ以上アンタ達は無理だから。下がりなさい」
 これ以上ここに居れば死ぬぞという意志表示。そうなればここまで逃げてきた事が、全て水の泡になる。そんな事は絶対に許さない。
「ここの火は私達が何とかするわ。だからこの先の火を消しなさいよ」
 地獄の様な世界だからこそ、強い意志をもって生きる事を選べ。刹那的な衝動なんか何の役にも立たないの――だから。
「死んじゃダメだから、お姉さんとの約束よ」
 そして踵を返したフィーナの先には、暴れ狂う暴走戦車。
「行くわよ」
「ああ。支援は任せる」
 蒼が己の封を解き放ち、稲妻と成る。その後を魔女が紅蓮の炎を巻き上げて、無数の火炎弾が暴走戦車を包み込んだ。

『走り回れ! 止まれば撃たれる。主砲の用意は!?』
『装填完了、照準は!?』
 同軸機銃と対空機銃の弾幕を張りながら、迫る火炎弾を避け続ける暴走戦車。戦闘用の分厚いゴムタイヤと言えど、油断すれば瞬く間にやられるだろう。
『照準はあの――』
 装甲の隙間から見えたのは、こちらへ迫る蒼い影。アイツがこの元凶か――ならば、借りを返してやらねばな。
『あの蒼い奴を狙え。六番で行けるな』
『イエス、サー!』
 間髪入れずに最後の主砲がテリブルを捉えた。もう惑う事は無い――しかし照準が蒼い巨体を納めて必滅の一撃を放とうとした刹那、紫電を残して巨体が姿を消してしまう。
『対象消失! レーダーは――』
『おい、何だ今の……』
 レーダー上の巨大な光点は、いつの間にか暴走戦車の目の前に移動していた。それがテリブルの超常――超機動力と攻防一体の粒子シールドを纏って、迫る弾幕をものともせずに肉薄する。その腕が上部の対空機銃をへし折り、同軸機銃を根元からもぎ取った。そして。
「俺も忘れて貰っちゃあ……困るんだよ!」
 両腕を悍ましき異形に変異させたひびきが、弾幕を潜り抜けて暴走戦車に取り付いていた。その側面、けたたましく動き回るタイヤを一殴りで粉砕し、もう一つの手が正面の装甲をぐちゃぐちゃにへし曲げる。
「どうしたよさっきまでの威勢は――ええ?」
 ひびきはあくまで普通の人間だ。それがUDCの力で一時的に超常を行使しているに過ぎない――だからこそ人並の恐怖も感じれば、この中で一番人並の怒りを感じてもいた。
「人を物みたいに扱って、挙句の果てにはこんな兵器を持ち出して――」
 胸の中央で刻印が赤い光を妖しく放つ。真紅に染まった双眸が己が身に秘めた力を引き出して、もう一つ、もう一つと暴走戦車へ剛腕を振るい続ける。
「怪物だよ、あんた達」
 その一撃が遂に、正面の装甲を引き剥がす。その暴威の主に悪漢共は、信じられぬと悲鳴の様な声を上げた。
『な、子供――』
「その子供達に何をしたか、忘れたとは言わさんぞ」
 ひびきの背後からテリブルが。未だ歪に動き回る車上で二人の猟兵は、諸悪の根源たる掃除大隊と遂に対面を果たした。

『て、手前ら一体何が目的で……』
「奪われたモノを返して貰いに来た。それだけだ」
 怯える悪漢を横目に、テリブルがその巨体を一歩前に、操縦室へと足を踏み入れる。全ての前面装甲板を剥がされて、最早戦車の体を成していないそれに対してもテリブルは容赦しない。その横でひびきが脅しの銃を構えて、敵を逃さんとその眼を光らせる。
『だったらもういいだろう。もう何も残っちゃいねえ』
「いや、まだだ……オブリビオン」
 お前達が奪った最後のものがある……静かに重たい声色で語るテリブルの凄みにボスは更に追い込まれ、席に深く沈みこんだ。そして。
「だから、悪いが最後まで奪わせてもらうぞ」
 その言葉と共に、テリブルはひびきを捕まえて跳び上がった。直後に爆発四散する暴走戦車――見れば最後に残った主砲から大きな火の手が上がっている。
「って、危ねえ……間一髪だったぜ」
 これは恐らくあの一撃だろう。火だし。ゆっくりと地に降りたテリブルから離れると、ひびきの視界にはブンブンと手を振る金髪の魔女の姿が映っていた。
「フィーナの一撃が来るのは分かっていた。絶対に撃つだろうと思っていた」
「それってどういう意味よ! ちゃんと考えて撃ったわよ!」
 プンスカと腰に手を当ててテリブルに悪態をつくフィーナ。最初から――彼女は戦車の無力化を狙っていた。動きを止めた今、やるならば残された主砲をどうにかするだろうというのは、容易に想像が出来た事だ。
「ともあれ、これで本当に終わりだな……はあ」
 バチバチと炎を上げて燃え盛る暴走戦車を見やり嘆息するひびき。血の気が一気に失せていく激しい戦いだったが、ちゃんとやるべき事はやれただろうか。
「ああ、ちゃんと奪い返したさ」
 テリブルの視線の先には大勢の奴隷が――いや、解放されたのだからその名は相応しくない。解放された人々が笑顔で猟兵達を迎えに来ていた。
 ――こうやって、ちゃんと奪い返す事が出来たのだ。尊厳という宝物を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月05日


挿絵イラスト