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スクラップド・ファクトリー

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●奪還者
「ここが『廃棄された工場』か……」
 アサルトライフルを持った人間の少年が巨大な建物を見上げて呟いた。
 荒野に半ば埋もれるように佇む巨大な建造物。コンクリート製の外壁は長年風雨に晒された跡が目立つ。――が、何よりも目を引くのは、頑丈そうな建物の各所を崩れさせた破壊の爪痕だ。オブリビオン・ストーム。この世界の文明を崩壊に導き、今なお人々を襲う暗黒の竜巻の仕業に間違いなかった。
「リーダー、どこから侵入する? オレが正面ゲートをぶち抜こうか?」
「当機の分析では、戦車搬出口か建物の崩落部からの侵入を推奨します」
 身体中傷だらけの青年が拳を構えて獰猛そうな笑みを浮かべ、小柄な少女が無表情に冷静な声で提案する。
「そうだな……。まずは周囲を探索してみようか」
 リーダーと呼ばれた少年が仲間に応え、『奪還者(ブリンガー)』の三人は建物に向かっていった。

「ちっ、まだ扉は開かねえのか!?」
「今、ゲートの制御システムにアクセス中です。気が散るので話しかけないでください」
 青年が人型警備ロボットを殴り壊しながら背後に声をかける。そこでは少女が扉の制御装置を操作していた。銃を構えた少年は、警備ロボットたちにアサルトライフルを斉射。その動きを牽制する。
「かつて軍事工場だったというだけあって警備が厳重だね。まさか、まだ警備システムが生きているなんて……」
「その分、この先にお宝が残ってる可能性が高いんだろ!」
 警備ロボットの相手をしながら、リーダーの少年と格闘家の青年が言葉を交わす。
「ゲート、開きました!」
 少女の言葉とともに、三人は開いた扉に飛び込んだ。
 警備ロボットたちが追ってくる前に、少女が内部から扉をロックする。
「おお、お宝の山じゃねえか!」
 そこは広大な空間になっていた。工場で生産された品を保管しておくための格納庫なのだろう。車でも自由に動けるようなスペースに、いくつものコンテナが並んでいる。
「工場の設備から考えますと、武器や弾薬、燃料などが残されている可能性が高いですね」
「うん、それがあれば拠点の防備も固められるね」
 喜びの声を上げる『奪還者』たち。

 ――だが、彼らを取り囲むように現れたオブリビオンの機械の獣によって、『奪還者』たちは全滅するのだった。

●グリモアベース
「皆さん、新世界アポカリプスヘルのことは聞きましたか!?」
 グリモアベースでグリモア猟兵アイ・リスパー(f07909)が猟兵たちに声をかける。戦車などの近代兵器を使うメカマニアのアイにとって、新世界は魅力的なもののようだ。目がキラキラしていた。
「早速なのですが、この世界で廃墟を探索して物資を持ち帰る『奪還者(ブリンガー)』の方々がオブリビオンによって全滅することが予知されました。皆さんには、『奪還者』の方々よりも先に廃墟の探索をおこない、オブリビオンを撃破。物資を回収してきていただきたいのです」
 荒廃したアポカリプスヘルにおいては、『奪還者』たちは貴重な戦力だ。彼らが被害に遭わないようにすることは、ひいては人類の復興のためにもなるだろう。

「皆さんに探索していただきたいのは『廃棄された工場』と呼ばれる建物です。人類文明の崩壊前には軍事工場として武器や弾薬などを製造していたのですが、オブリビオン・ストームのためオブリビオンが跋扈する廃墟と化してしまったようなのです」
 文明崩壊後の人類にとって武器や弾薬といった物資は生き残るために必要な生命線だ。これを回収してくることは重要なミッションとなる。

「まず最初に『廃棄された工場』に突入し、最深部にある格納庫に向かってください。工場内は、いまだ警備システムが稼働していて、人型警備ロボットやトラップ、鍵のかかった扉などの障害が行く手を阻んでいます」
 工場に入るには、正面ゲート、裏口、建物の崩落部など色々なルートが存在する。また、戦車や車両でも入れる物資搬出口もあるので、乗り物に乗っていても内部に入ることが可能だ。
 どのルートから入るにしても、内部で障害が待ち受けているので、それをどう突破するかがポイントになるだろう。

「最深部の格納庫に辿り着いたら、機械の獣の姿をしたオブリビオンが現れます。数が多いので気をつけて撃破してください」
 待ち受けるオブリビオンは、機械の獣『マシンビースト』の集団だ。
 理性をなくして無差別攻撃してきたり、こちらの行動パターンを学習してきたり、光学迷彩で姿を消したりしてくる厄介な敵である。

「オブリビオンを倒してコンテナの中身の武器や弾薬、燃料などを回収できたら、それを『拠点(ベース)』に運んであげてください。その時『拠点』の人々に拠点防衛の技術や生き延びる知恵を教えてあげると喜んでもらえるはずです」
 武器や弾薬といった物資の補給だけでなく、人々に知識を伝えることは、文明を復興するために重要になる。是非とも彼らの文明復興に協力してほしい。

「それでは皆さん、新しい世界で未知なことも多いですが、気をつけて行ってきてください」
 アイはグリモアを輝かせると、荒廃した新世界への扉を開いたのだった。


高天原御雷
 オープニングをご覧いただき、どうもありがとうございます。高天原御雷です。
 新世界での冒険です! アポカリプスヘルの文明復興のために『奪還者(ブリンガー)』として物資を回収し『拠点(ベース)』まで届けてください。
 こうした事件の解決が、今後の人類の文明再建につながるかもしれません。
 なお、オープニングに登場した『奪還者』たちはシナリオには登場しません。(猟兵たちが任務を達成すれば、彼らは被害に遭いません)

 以下、シナリオ詳細です。

●目的
 『廃棄された工場』に潜むオブリビオンを撃破し、物資を持ち帰ること。

●一章:冒険
 『廃棄された工場』の警備システムを突破し、最深部を目指してください。
 なお、工場内の警備システムは生きており、人型警備ロボットやトラップ、電子ロックのかかった扉などの障害が待ち構えています。どのように突破するかをお考えください。

●二章:集団戦
 オブリビオン『マシン・ビースト』との集団戦です。
 戦場となる格納庫は広いので、乗り物に乗っていても戦闘可能です。

●三章:日常
 『拠点』の人々に物資を届けつつ、文明復興の手助けとなるような知識を伝授してあげてください。
 伝授する内容は、拠点防衛のためのもの、修理などの技術的なこと、生き延びるための知恵、趣味に関することなど、なんでも大丈夫です。

 それでは、皆様のプレイングを楽しみにしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『罠に満ちた廃墟』

POW   :    正面から罠に掛かった上で、その罠を鍛え上げた肉体でもって耐え抜く

SPD   :    ピッキングなどの技術により、罠を解除して無効化する

WIZ   :    罠を仕掛けた相手の心理を読んで、罠のある場所を回避しながら進む

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ツキカ・アシュヴィン
お宝の山!ええねえ、そら絶対手に入れたいヤツやわ!
よっしゃ、気張るでー☆

侵入するんは建物の崩れとるトコから。
何があるか分からへんし、ヘタにシステム弄るの怖いしな!
入ったら不意を打たれへんよう先をよく確認しつつ進むで。

警備ロボはこっちに気付いとらん内に『凶星、死を告げる』で頭か動力部か撃ち抜いて仕留める。気付かれてもうた場合もその辺狙いで。
罠は【戦闘知識】で仕掛けてありそなトコに当たりつけて、銃なりナイフなりで壊したり、適当に瓦礫投げ込んだり近くの警備ロボ誘い込んだりして誤作動させるなりして回避や。

扉のロックは…自力解除でけへんなら物理破壊、すぐその辺隠れて警備ロボに備える。

(アドリブ連携歓迎)


シャルロット・シフファート
「アイから聞いたけど、中々絶望的で...アリスとしては覆しようがある世界ね」

電脳魔術師である私にとっては電子機器で出来た警備システムは楽なものよ。
ハッキングで無効化しつつ、音や光の属性を召喚してステルス状態を作り出すわ。
更に五感操作型のデジタル機器と感覚強化及びソナー機器を使ってマッピング等で配置を把握。
どこに何がどうあるかを事前に調べて慎重に進んでいくわ。


鍋島・小百合子
SPD重視

この目に映るもの光景の全てがこの世の終わりかのようじゃの…
栄えすぎるとこうなってしまうのかえ?

「この手の仕掛けには手こずらされるのう。力押ししかできぬ故な」
UC「精錬降魔刀」発動にて雷の属性を内包した魔刀(短刀型)を創造
魔刀に絶対的な信を置き、仕掛け扉の解除や罠の破壊に用いる
場内では服装・行動共に隠密重視(目立たない、忍び足、闇に紛れる)で臨み、敵との交戦をなるべく避ける
倒せる敵がいれば密殺、後続の者のために障害を排除しておく(咄嗟の一撃)
機械仕掛けの扉は操作盤に魔刀による雷属性攻撃を当ててこじ開けてみる
罠の類は動作の確認をしてから解除よりも力技による破壊を試みる

他の猟兵との絡み可


フィーナ・ステラガーデン
ダークセイヴァーに負けず劣らず絶望まっしぐらな世界ね!
そして今回は廃墟ね!
んー!じゃあ私は杖に乗って屋上から侵入するわ!
ドアとか鍵かかってるなら熱線で蝶番を焼き切って蹴破るわ!
罠とかメカとかよくわかんないわね!警備ロボがいるなら【属性攻撃】で爆破よ爆破!
こそこそするのは性に合わないのよね!
引き付ける意味も込めて燃料とか燃え移らない程度に派手に動くとするわ!
数が増えてきたらそのまま床を崩落させてまとめて落とすのもいいわね!
だいたい加減とか苦手だから私も一緒に落ちるわ!現実は残酷ね!
ところで最深部ってどこかしら?
適当に進めばいつか着くわねきっと!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)


マーリス・シェルスカナ
(アドリブ連携絡み歓迎)
廃棄されたFactory、そこにいるのもMechanicalなRobotデスね。
技術面は先端的…かは判りまセンが、興味ありますネ。
お持ち帰り出来るナラ、アイさんへのお土産に一つ…えっ、駄目?

…まぁトニカク、なるべく物理的に破壊せずに解決したいネ。
機能的に人型でも罠でも大差なく、こういうのはAIと言うべき
核が有る筈デス(『世界知識』)
Meの電脳でアクセス(情報収集+ハッキング)して
仕組みを理解(学習力)してしまえバ、後は好きに
【操縦】出来ちゃうネ。
Bringerらしく、使える者はトラップでもRobotでも使っちゃうヨ。


エドゥアルト・ルーデル
久々にスカベンジが捗るでござるな!

裏口から侵入し道中の罠を解除しながら工場の中枢へ向けて前進ですぞ!
人形警備ロボットを発見したら大事な大事なアタックチャンス!物陰から【忍び足】により近づき【ハッキング】にて一旦無力化ですぞ
そしてすかさず全身を【ドット絵】に変換でござるよ
ドットと化した今の拙者は電子データの塊と言えよう、更にハッキングを組み合わせれば警備ロボットの頭脳中枢に潜り込む事も可能!

こうなっちまえば後は楽勝でござるよ
ロボットのプログラムを書き換えてお手伝いロボに変えてもよし!そのまま運搬してもらってもよし!警備システムの端末をハッキングしてトラップと電子ロックの解除をしてもよしでござる!


秋山・軍犬
今回の依頼は軍事工場
からの武器弾薬類の物資回収

何? 飯関係ないじゃん?
…甘いな、例えば此処に山の様な飯があるとして
どうやって運ぶ?

そう! 物流の死んでるこの世界を
飯の光で満たす為には輸送力の強化が必須!

つまり…クルマだ!

…いや、自分用だけじゃなく
この世界の人達が使う為のクルマね
自分の輸送力だけじゃなく
全体の輸送力を強化しないと意味ないし

という訳で、クルマを現地調達する為の
ノウハウ蓄積の為にこの依頼を受けた訳っす!

では、警備システムは【指定UC】で突破
させてもらうっす

あ、壊れた警備ロボットのパーツとかも
貴重な物資かも知れんすから良さそうなのは
荷物にならん程度に懐に回収しておくっす。(メカニック)


天城・千歳
【SPD】で判定
アドリブ、他の猟兵との絡み歓迎

放棄された戦車工場を探索して物資を回収するのが目的ですか。施設の警備システム及びオブリビオンの排除も必要との事ですから、注意しましょう。

リモート義体に施設コンピューターへの【ハッキング】を行わせ警備システム、ドアロックの解除及び【情報収集】による敵戦力の把握を行い、無線又は無線LANで他の猟兵との情報共有を行います。
【斥候部隊展開】で呼び出した偵察隊を先行させて、施設内のトラップ解除及び索敵を行い、発見した敵に対し【誘導弾】の【一斉発射】による【範囲攻撃】で【先制攻撃】を行います。
味方が敵に囲まれている様なら【援護射撃】で支援します。


葛葉・アリス
個人的には、この廃工場自体がかなり興味深い所ですが…
興味本位でじっくり調べる暇はなさそうです
ひとまずは目的だけ果たしましょう

警備が生きているのなら、警備システムに接続もできますよね?
正面ゲートから堂々といきましょう
正規の入り口なら、近辺に工場の端末コンソール等あるはず
見つけ次第電脳魔術でハッキングをかけます
内部構造のスキャン
電子ロックや電子的なトラップは解除をして安全なルートの確保
ついでに警備ロボのシステムも調べておきましょうか
…可能ならこちらでコントロールできるといいのですけど
さて、どの程度までシステムを乗っ取れるかの勝負ですね

出来るだけやったら、あとは安全なルートを歩いて奥まで行きましょう


ニーナ・ライト
生き延びれる人を、一人でも多くしたいから
ここは私達が頑張らないと…

サイコキネシスを使い、瓦礫を積み上げ
歩いては辿り着けない崩落部から侵入

進む際は警備ロボの巡回を常に警戒
特に曲がり角は慎重に!

怪しそうな所はサバイバーズライトで確認しながら、罠を回避

捜索中、鍵のかかった扉の鍵

解除に必要な、パスワード等のデータも探し
そういった扉に対応出来るようにするけど
見付からなかった時は、扉に罠が無いことを確認してから
思い切って、サイライト・ブレードで施錠箇所を破壊するよ

万が一、罠が起動しちゃったら
サイコキネシスやブレードで迎撃!

落とし穴だったら、サイコキネシスで物を掴んで自分を引っ張りあげる!



●集いし猟兵たち
 ひび割れた大地が続く荒野にポツンと存在する巨大建造物。大地に半ば埋もれながらも原型を留める建物は、かつては最先端の軍事物資を生産していた軍事工場だ。
 その工場は文明崩壊の原因となったオブリビオン・ストームによる破壊の爪痕を無残にも晒していた。働いていた人々に見捨てられ、メンテナンスも受けずに長年の風雨を浴びた建物は、もはやかつての最先端工場の面影を残していない。
 ――『廃棄された工場(スクラップド・ファクトリー)』と呼ばれ、周囲の住民たちも近づかないそこには、いまだ稼働し続ける工場の警備システムと、オブリビオン・ストームで発生したオブリビオンたちが待ち受けているのだった。

「お宝の山! ええねえ、そら絶対手に入れたいヤツやわ! よっしゃ、気張るでー☆」
 工場を前にしてツキカ・アシュヴィン(星追いの渡り鳥・f24375)が陽気な声を上げた。この世界の生まれで最近猟兵として覚醒したツキカにとっては、こうした廃墟から利用可能な物資を回収する『奪還者(ブリンガー)』の仕事も手慣れたものだ。特に、内部の警備システムが生きている工場跡となれば、まだ手つかずの物資が大量に残されている可能性が高い。ツキカはオレンジ色の瞳を好奇心に輝かせ、装備品のチェックを行っていく。

「生き延びられる人を、一人でも多くしたいから、ここは私たちが頑張らないと……」
 明るい表情のツキカに対し、気負った表情をしている少女はニーナ・ライト(Automatic-Buddy「Ψ-7174」・f24474)である。青い髪に青い瞳をしたニーナはフラスコチャイルドとして生みだされ、地下施設から逃げ延びた超能力使いである。
 過酷な環境の中で生き延びてきたニーナは、用心深げに周囲を見回していた。

「Oh、ユーたちはこの世界の出身ですカ? 廃棄されたFactory、興味深いですネ!」
「なになに、あなたたちこの世界の人? 凄いわね、この世界の絶望っぷり! 私の故郷のダークセイヴァーといい勝負じゃない!」
 アサルトライフルの残弾を確認するツキカと、周囲を見回していたニーナ。この世界出身の二人に声をかけたのは、三角帽子をかぶった二人の魔女だ。
 個性的な口調で胸が大きい方の魔女、マーリス・シェルスカナ(宇宙(そら)飛ぶマーリンレディ・f15757)は、知性的な雰囲気を纏った電脳魔術士だ。神秘や魔法を解明し電脳世界に記録するのが研究テーマだが、アポカリプスヘルの禁忌のオーバーテクノロジーにも興味を隠せない様子である。
 もうひとりの勢いで喋っている胸が絶望的な方の魔女は、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)だ。ダークセイヴァー出身のダンピールであるフィーナは、炎系魔法を得意とする天才的な魔法使いである。牙――に見えなくもない八重歯を覗かせつつ、天真爛漫にツキカに話しかける。

「ああ、アンタらが猟兵っちゅう『外』から来た人たちやね。――あ、ウチも今は猟兵やったっけ」
 銃を弄る手を止めたツキカが、二人を興味深そうに見つめ、自己紹介する。
「ウチはツキカっちゅう、まあ、なんでも屋みたいなもんやな。『外』の世界の人は、みんな、そういうけったいな格好しとるんか?」
 ツキカは二人の魔女ルックを見て首をかしげる。
 いきなり声をかけられてびっくりしていたニーナも、彼女たちが今回の任務の仲間であると思い出し、勇気を出して返事をする。
「私は、ニーナ・ライト。サイという――えと、超能力を使うよ」
 ニーナも二人の魔女の服装に驚きを隠せない。二人の服装は、この世界では見たことのないようなデザインだった。
「Meはマーリスといいマス。この格好はMeの世界――スペースシップワールドでも、ちょっとStrangeネ。だけど電脳魔術士としてのStatusヨ」
「私はフィーナよ! この格好、何かヘンかしら? 重要なのは保温性よ、保温性! あと、敵は攻撃される前に魔法で爆砕するから、防御力なんて飾りよ飾り!」
 マーリスは魔女のローブを翻して答え、雪国出身のフィーナは暖かそうな服とお手製の外套のアピールポイントを力説する。

「魔術だったら私も自信があるわよ。電脳精霊術――現実世界をハッキングしつつ、そこに精霊術を重ねる能力よ」
 会話に混ざってきたのはシャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス CV釘宮理恵・f23708)。アリス適合者となったことで電脳精霊術に目覚めたシャルロットは、上流階級の令嬢が着るような豪勢な服を纏い、金髪縦ロールを揺らしながら自身の能力を解説する。
「電脳魔術と精霊術ね……。なるほど、私の電脳と悪魔召喚の権能に近いものを持っているのね」
 シャルロットの能力を聞き、葛葉・アリス(境界を操る幼き女神・f23419)が反応する。アリスは電脳や魔の者に干渉し操る権能を持った神――その転生体だ。人間の肉体で顕現しているため、その力の大半を失って幼女の姿になっているが、それでも権能の本質は健在である。
「へぇ、電脳魔術と悪魔召喚術の融合ね、さしずめ、私の電脳精霊術に対して、電脳悪魔召喚術――デジタルデビルサマナーといったところかしら? 面白い能力じゃない」
「デジタルデビルサマナー……言い得て妙かもしれないわね」
 アリスは今回別行動している相棒のことを思い、そのクールな無表情に微かな笑みを浮かべた。

「電脳魔術と精霊術や悪魔召喚術の融合ですか。とてもおもしろいコンセプトですね。私も電脳魔術を使いますので興味深いです」
 天城・千歳(ウォーマシンの電脳魔術士・f06941)――のリモート義体が、シャルロットの能力に興味を示して話しかける。なお、千歳のウォーマシンとしての本体は車両モードに変形して近くに停車しているので、味方とのコミュニケーションや潜入ミッションはリモート義体の仕事となる。
「魔法とか電脳魔術――ソーシャルディーヴァみたいなものなのかな?」
「そうですね、私は主に後方で味方の情報共有を担当することが多いので、ソーシャルディーヴァの方と似た立ち回りかもしれませんね」
 魔法という超常の力に馴染みのないニーナの問いに、千歳のリモート義体が答える。
 実際、千歳はすでにウォーマシンの情報処理能力によって無線基地を構築。味方同士で無線通信による情報共有を可能にしていた。仲間へ通信端末も配布済みだ。それはソーシャルディーヴァによるソーシャルネットワーク形成に近い行為であった。
「ソーシャルディーヴァがおらんでも通信できるんは助かるなぁ」
 無線通信機の応答を確かめつつ、ツキカが感嘆の声を上げ――。
「んー、これ、どう使うのかしら? って、なんか爆発して煙出したわよっ!?」
 早速、通信機を壊したフィーナが大声で騒いでいた。

「わらわも機械の類は得意ではないのう。楼閣の世界や英雄の世界で触れることはあったのじゃが」
「それならMeにお任せネ! 使い方は……」
 鍋島・小百合子(朱威の風舞・f04799)が千歳から渡された通信機を手にして戸惑っているのを見て、マーリスが使い方の説明や周波数の設定をしていく。
「おお、マーリス殿、感謝申し上げるぞ。――ときに世界というのは栄えすぎるとこうなってしまうのかえ?」
 目の前に広がる一面の荒野と、そこに残された廃工場――まるでこの世の終わりのような光景を瞳に映し、小百合子は思わず呟いた。
 小百合子はサムライエンパイアの武家の娘だ。UDCアースやヒーローズアースなどの発展した世界を訪れて見識を広げてきたが、その文明の発展の先がアポカリプスヘルのような世界だとしたら――。
 オブリビオンフォーミュラ織田信長を倒したこれから先、故郷の文明が発展していくことが果たして良いことなのか、小百合子は漠然とした不安に襲われる。
「Hmm……、Meの世界も住める惑星がないデスからネ。必ずしも文明が発達することがBestではないのかもしれませんネ」
 マーリスも銀河帝国との戦いの結果、居住可能惑星がなくなった故郷スペースシップワールドをアポカリプスヘルに重ねる。
 だが、そんな二人に聞こえてきたのはツキカの明るい声だった。
「んー、『外』の世界がどうなってるのか知らへんけど、この世界も捨てたもんやないで? なんせ、こういう廃墟にはぎょうさんお宝が眠ってるんやしな! ――あとな、ウチはこの世界の星空が大好きなんや」
 ツキカの言葉に、小百合子とマーリスは故郷の星空を思い浮かべる。
「――そうじゃな、わらわも故郷の星空は好きじゃな。温泉に入りながら見上げる夜空は最高じゃしのう」
「Meも宇宙船から見る星は大好きネ」
 ――どんな世界であれ、そこに住む住人にとってはかけがえのないもの。そんな想いを共有する三人だった。

「デュフフ、拙者は空も好きでござるが、お宝の方に興味津々でござるなぁ。一体、どういうものでござろうなぁ?」
 お宝という言葉に反応したのは、髭面の胡散臭いおっさん、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)だ。迷彩服に身を包み、オートマチックライフルを構えた歴戦の傭兵(自称)だが、口調と風貌はメチャクチャ怪しかった。
「あ、私もお宝ってのには興味あるわね! お宝ってことは、きっと美味しい肉とかよね! これだけおっきな工場だから、マンモスの肉でも加工して保管してるんじゃないかしら!」
 万年腹ペコダンピールのフィーナもお宝という単語に反応する。その脳内は先日読んだ絵本に出てきたマンモスの骨付き肉のイメージで一杯になっていた。
「ふっふっふ、甘いっすね! 例えばここに山のような骨付き肉があるとして、それをどうやって運ぶっすか!?」
 ビシリ、とフィーナを指差して指摘するのは、ミリタリールックに身を包んだキマイラの秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)である。――フィーナを指差したのと反対の手にはハンバーガーを持ってパクパク食べているのでイマイチ説得力がないが、軍犬の意見は至極もっともだ。
「え? もちろんその場で食べきればいいじゃない?」
「仮にも回収任務やから、もしお宝が食料だったとしても、その場で食べ尽くすのはやめといてほしいんやけど……」
 フィーナの答えに、ツキカがツッコミを入れた。
「ふぅむ、確かに他にもこういう廃墟を探索していくとしたら、手に入れたお宝を運ぶのも一苦労でござるなあ」
 頷いたエドゥアルトを見て、軍犬が我が意を得たりと自信を持って言い放つ。
「そう! 物流の死んでるこの世界を飯の光で満たすためには、輸送力の強化が必須! ……つまりクルマっす!」
「なるほど、兵糧を運搬するための兵站が重要ということじゃな。世界の隅々まで糧食が出回るようになれば、この世界の名産品を食べる機会が来るやもしれぬのう」
 食事の話と聞いて、食べざかりで食欲旺盛な小百合子も会話に混ざってくる。
「な、なんですって!? つまりマンモス肉を各地に運んで地面に植えると、マンモス肉の木が生えてくるのね!」
「そう、そのためにも、この工場跡でクルマを現地調達するためのノウハウを蓄積するっす!」
 猟兵たちの食いしん坊トリオが心を一つにした瞬間だった。

「『外の世界』の猟兵――なんや、ウチらの世界の人間と何も変わらんやん。ほな、今度、ウチも『外の世界』に行ってみるのもいいかもなぁ」
「そうね、この世界の外なんて想像もしたことなかったけど、どうなってるのかな?」
 世界を渡ってきた来訪者たちを見つめ、思わず頬が緩むのを感じるツキカとニーナだった。

●作戦会議
「それでは、打ち合わせた探索計画を再確認させていただきますね」
 千歳のリモート義体が、周囲の猟兵たちを見回す。
 それを受けてシャルロットが電脳精霊術を行使。現実世界をハッキングし、精霊術による幻覚で立体ホログラムを生成した。そこには廃工場の俯瞰図が3D映像で表示されている。
「これが外部から調査した範囲で映像化した3次元マップよ。入り口は、正面ゲート、崩落部、裏口、屋上、それに物資搬入口があるわ」
「これだけの人数ですと、全員で正面ゲートから突入するのも効率が悪いです。皆さんには手分けして内部の探索をしていただき、私がその情報を統合して共有させていただきますね」
 シャルロットと千歳の説明を聞き、猟兵たちは作戦を確認する。
「この工場は、まだ内部の警備システムが生きてるよ。危険があることが予想されるから気をつけてね」
「まあ、その分、お宝がぎょうさんある可能性も高いっちゅうことや」
 探索に慣れたニーナとツキカの注意を聞き猟兵たちは、廃工場『スクラップド・ファクトリー』の探索へと向かうのだった。
 
●崩落部
「では、ウチらは建物の崩れとるトコから侵入しよか」
「はい。私も超能力を生かして頑張るね」
 奇しくもアポカリプスヘル出身のツキカとニーナは、建物の崩落部からの侵入を希望した。
 もしかすると、この世界の住人にとっては、廃墟探索に正面から挑むのは無謀ということなのかもしれない。
「エエ、よろしくおねがいしますネ、ツキカさん、ニーナさん。MechanicalなRobot、興味深いデスね。お土産にお持ち帰りしたいところデス」
 ツキカ、ニーナ、マーリスの三人は、廃工場の崩落部から建物内に入っていこうと試みる。
 だが、三人は早速難関に遭遇した。建物の崩落部から内部に入るには、大きな瓦礫を乗り越える必要があったのだ。
「あちゃー、これは迂回路を探さんと中へ入れんかもなぁ」
 眼前の巨大な瓦礫を見上げ、ツキカがぼやいた。周囲には同じ様に巨大な瓦礫が散乱し行く手を阻んでいる。それだけ、建物を破壊したオブリビオン・ストームの威力が凄まじかったのだろう。
「あ、待って。私のサイなら、ここを超えられるかも」
 ニーナが【サイコキネシス】を使うと、ツキカの身体がふわりと宙に浮いた。
「Oh、それならこの瓦礫を越えられそうですネ」
「よっしゃ、そんじゃ任せたでニーナ!」
 ニーナのサイコキネシスによって、最短経路で瓦礫を乗り越えて内部に侵入できた三人だった。

 サバイバルガンナーにしてシーフであるツキカは探索の専門家。超能力を使えるサバイバルガンナーのニーナは中衛向き。そして電脳魔術士のマーリスは電子的な罠や仕掛けに強い。
 この三人は、物理的なトラップにも電子的な仕掛けにも戦闘にも対応できる理想的なチームといえた。
「何があるか分からへんし、不意を打たれへんよう注意して進むで」
「Yes、接近戦はお任せするネ。ケド、コンクリートのBuildingがこんなになるナンテ……」
 マーリスは、まるでミサイルか大砲の直撃でも受けたかのように崩れた建物を見て言葉を失う。
 だが、数々の廃墟を見てきたツキカとニーナは平然としたものだ。
「この程度、オブリビオン・ストームが起きた所だと珍しくないよ。むしろここは建物が残ってる分ましかな。建物の地上部分がまるごと消えてることもおおいし」
 荒廃した世界で生きてきたニーナが懐中電灯で先を照らしながら平然と答える。ツキカも同じく当たり前のような顔をしているところをみると、これがこの世界では当然なのだろう。
「っと、おしゃべりはここまで。ストップや」
 ツキカが鋭い視線を向ける先に、暗闇の中に佇む警備ロボットの一群が居た。

「Hmm、動きはアリませんネ。どうやらSleepモードのようデス」
「なら気付かれる前に仕留めたる!」
 ツキカはアサルトライフルを構えると、警備ロボットに向かってセミオート射撃をおこなう。【凶星、死を告げる(アルゴル・アサシネイト)】によって、気付かれていない相手にはほぼ絶対の命中率を誇るツキカの射撃。放たれた5.56mmの弾丸はロボットの頭部や胴体の機関部を撃ち抜き、ただの鉄屑へと変えていく。
 だが、ツキカがロボットたちを倒し切るよりも早く、残りの機体が戦闘モードで起動した。素早く戦闘態勢を整えた人型ロボットたちは急所を守りながら、両腕に内蔵されたマシンガンを乱射してくる。
「あぶないっ」
 あわやツキカがマシンガンの的になろうかという瞬間。ニーナの超能力がツキカを物陰に引きずり込んだ。
「おおきに、助かったで!」
 マシンガン掃射を逃れたツキカだが、戦闘ロボットたちは徐々にツキカが隠れる物陰へと迫ってきていた。

「こうなったら、私もっ!」
 ニーナは、迫りくる警備ロボットの軍団に向かってサイコキネシスを放った。サイキックエナジーで警備ロボットを吹き飛ばし、接近してきた警備ロボットをサイライト・ブレードで切り払う。
 襲い来る銃弾には、超能力のフィールドを張って防御していく。
 だが、これでは長くはもたない――。

「ツキカさん、ニーナさん、時間を稼いでくれて助かったネ。UbelCode……解析完了。RobotたちのAIのAnalyze、完了デス」
 マーリスの電脳魔術、【Analyze And Reproduction】が発動した。それは対象を分析し、電脳世界の再現プログラムを生成する能力だ。
「Meの電脳でアクセスして仕組みを理解してしまえバ、後は好きに操縦できちゃうネ」
 AIに侵入されてハッキングを受けた戦闘ロボットたちは、マーリスの命令で互いに銃を向けて引き金を引き合う。
 建物内にマシンガンの銃声が木霊し――警備ロボットたちはお互いのマシンガンで蜂の巣にされてスクラップになったのだった。
「慣れないAIだったのデ、解析に手間取ってSorryネ」
「いやいや、助かったで、ホンマ。ニーナもありがとな」
 ツキカは二人の仲間に明るい笑顔を向ける。
「それが電脳魔術なのね。私のサイとも違う興味深い能力ね」
「YouのPsyこそ、Meが研究してる神秘や魔法に近いネ。今度、じっくり実験させてほしいところデス」
 ニーナの能力を見て、マーリスは目を輝かせるのだった。
「それにしても、警備ロボットがぎょうさんおったなぁ。マーリスの魔術があって助かったわ」
「イエイエ、ツキカさんとニーナさんが敵を引きつけて時間を稼いでくれたからネ。Bringerらしく、使えるものはRobotでも使っちゃうヨ……って、Oh、つい勢いで全部倒しちゃったネ! 研究のために一体くらい持ち帰りたかったヨ」
 がっくりと肩を落とすマーリスだった。

 この後、ツキカの知識で罠を回避し、ニーナの超能力で落とし穴を越え、マーリスの電脳魔術で電子ロックされた扉を開くといった具合に探索を進める三人だった。

●裏口
「ヒャッハー、拙者は裏口からこっそりと侵入ですぞ!」
「いや、そんな大声出すと気付かれる気がするっすよ!?」
 廃工場の裏口に回って探索をおこなうのは、エドゥアルトと軍犬のミリタリーコンビだ。
 近接戦型フードファイターの軍犬と、電脳魔術も操るエドゥアルトは、ベストなコンビと言えた。
「しかし、拙者、どうせなら可愛い女の子とのストーキング……もとい、スニーキングミッションがよかったでござるが……」
「それは自分のセリフっすよ!?」
 ……ベストなコンビと言えた。たぶん。

「さて、電子的なトラップであれば拙者が解除するでござるよ」
「なら、そっちは任せて、自分は物理的な仕掛けを担当するっす」
 赤外線探知式の警報はエドゥアルトが無力化し、落ちてくる吊り天井は軍犬が支えて切り抜ける。転がってくる鉄球からは全力ダッシュで逃げ、底に槍衾が待ち構える落とし穴をひとっ飛び。底の見えない断崖にかかった吊橋を崩れる前に駆け抜ける。

「な、なんか、拙者らのコースだけハードじゃござらんかっ!?」
「奇遇っすね! 自分もそう思ってたっす! なんかそういう要員だと思われてないっすかね!?」
 HAHAHA、気のせいですYO? きっと裏口だから罠がハードなのでしょう。ええ。

 数々のトラップをくぐり抜け、肩で息をするエドゥアルトと軍犬。
 その二人の前に、数十体の人型戦闘ロボットが現れた。ロボットたちが両腕のマシンガンをエドゥアルトと軍犬に向け――。
「今こそ待ちに待った逆転の時! 拙者はフリーSOZAIですぞ!」
 エドゥアルトが【ドット職人の朝は早い】で自身の肉体をドット絵に変化させた。ドット絵――それは電子データである。隙間に入り込む能力と合わせ、エドゥアルトは自身の肉体を警備ロボットのAIのプログラム内に潜り込ませる。
『ヒャッハー! 殺人ロボットは殲滅でござるううう!』
 エドゥアルトはロボットをコントロールし、周囲の敵に向けてマシンガンを乱射させる。
 突如、味方機から攻撃を受けた警備ロボットたちは、敵味方識別信号を混乱させ、同士討ちを始めた。

「世界を飯の光で満たすために、自分も戦うっすよ! フルコースモード限界突破ッ! ……フルコースッ!! ……ゴオォォルデンッ!!!」
 軍犬の身体が輝き、全身の毛が黄金色に染まって逆立った。シュインシュインという音とともに黄金色のオーラが吹き出す。これこそ、【フードスペシャリテ・フルコースゴールデン】によってフードファイターとして大幅に戦闘力が増強された軍犬の姿である。
 黄金色のオーラを纏った軍犬に、戦闘ロボットが両腕のマシンガンを向けた。マシンガンから連続的に発せられる炸薬の爆発音とマズルフラッシュ。嵐のように吐き出された弾丸が軍犬の身体を打ち――。
「どうしたっす、その程度っすか?」
 マシンガンによって吹き上げられた粉塵が収まった中、立っていたのは無傷の軍犬だった。
「そちらの攻撃が終わりなら、こっちから行くっすよ!」
 言葉が終わるや否や、軍犬の姿がかき消えた。いや。警備ロボットのカメラのフレームレートで捉えられないほどの速度で軍犬が移動したのだ。
 ロボットの自己診断機能がメイン動力の停止を告げ――見下ろしたカメラアイには、背中から胴体中央を突き抜ける軍犬の右腕が映っていた。それを最後に、ロボットのAIの記録は途切れたのだった。

『さて、これであらかた片付いたでござるな』
「あ、このロボットのパーツとか、貴重な資源かもしれないっすから回収しておくっす」
 エドゥアルトは残ったロボットのAIを乗っ取ったまま先へ進み、軍犬はロボットの残骸から使えそうなパーツを懐にしまっていくのだった。

●屋上
「んー! じゃあ私は杖に乗って屋上から侵入ね!」
 先端に大きなルビーを装着した杖に腰掛けたフィーナは、いま、廃工場『スクラップド・ファクトリー』を上空から見下ろしていた。シャルロットの立体映像で見た通り、工場の建物は真四角の形をしており、4つの頂点の一つが崩れて欠け落ちていた。
「空は明るいけれど、風に乗ってくる、このなんか嫌な感じ、うちの故郷に似てるかもしれないわね」
 フィーナは、すんすんと鼻を鳴らして風の匂いを嗅ぐ。ダンピールである彼女の鋭い嗅覚は、空気に混ざった瘴気を感じ取ったようだ。オブリビオン・ストームによって生み出されたゾンビが徘徊するアポカリプスヘルは、同じくゾンビがうろつくダークセイヴァーに近い存在なのかもしれない。
 ――もしかしたら、どちらの世界も食糧難ということで近い感覚を覚えたのかも知れないが。
「よし、お宝――すなわちマンモス肉を求めて、いざ、探索よ!」
 フィーナの杖は魔力を込めることによって飛翔することができる。彼女は杖に込める魔力を弱めて屋上に着地する――などという常識的な行為に出るはずもなく、むしろ杖に込める魔力を高め、屋上に向かって一直線に加速した。
「焔よ。その変幻自在な姿を一閃の光に変え有象むじょむべ・・・噛んで無いわよぉぉおお!!!」
 明らかに噛んだ呪文の詠唱だが、桁外れに膨大な魔力を持つフィーナにとって、魔法を使うのに呪文など不要。気合と根性と野生の勘でなんとなく魔力を練り上げ、杖の先端に収束させていく。
「いっくわよおおおおっ!」
 フィーナは工場の屋上に突っ込みながら、【刺シ薙ギ払ウ熱線】で杖の先端から超高温の熱線を放射。天井のコンクリートを溶解させると、そのまま工場内に突入していった。

 突如、熱線によって溶解した天井を見上げる警備ロボットたち。
 天井が溶け落ちる事態などプログラミングされていない彼らが狼狽えている眼前に、真紅の瞳の魔女が降り立つ。
 ドンガラガッシャン――!
 訂正。真紅の瞳の魔女は、灼き尽くした天井を抜け、そのままの勢いでガラクタの山に突っ込んでいた。魔法の杖は急には止まれないのだ。
 ガラクタの山に突っ伏してピクリとも動かないフィーナに、恐る恐る近づくロボットたち。プログラムにないため、こういう時、どういう行動をすればいいか分からないといった表情(?)を浮かべ、とりあえず、右腕のガトリングガンの先端でツンツンと突いてみた。
 ガバッ――!
「いったーっ! くっ、この私に全速力で突入させて床に激突させるだなんて、なんて巧妙な罠なのかしら! 考えたヤツ天才よ天才!」
 勢いよく起き上がったフィーナがおでこを赤くしながらまくし立て、ロボットたちがビクッとアクチュエーターを跳ねさせた。
 だが、ガラクタの山に埋まった魔女に対する行動はプログラムされていなかったが、ガラクタの山の上でふんぞり返る侵入者に対する行動ならプログラムされている。すなわち、KILL YOU!
 警備ロボットたちは一斉にフィーナにむけてガトリングガンを構えた。
「ふーん、アンタたちが警備ロボットね! 面倒だから一気にやるわよ!」
 フィーナの掲げる手に灯るは膨大な魔力の光。それは形を変えて灼熱の炎の玉となる。近くにいる警備ロボットの金属製の装甲板から、ジュウという焼けた音が聞こえるほどに高温高熱のエネルギーの塊だ。
 『え、それをどうするの?』という表情(?)を浮かべる警備ロボットたちの前で、フィーナが八重歯を見せて不敵に笑う。
「さあ、まとめて地の底に落ちるのね!」
 フィーナは魔力塊をこのフロアの中心に叩きつけた。
 着弾とともに轟音を発しながら魔力塊が爆発し、フロアの床にクモの巣状にひび割れを走らせ――床を崩落させた。
 崩れ落ちる床と共に、階下へと落ちていく警備ロボットたち。どれだけの高さがあるか分からないが、落下によってスクラップになるのは間違いないだろう。
「どうかしら、私の魔法! まあ欠点は杖に魔力を込める暇がないから、私も一緒に落ちることね! 現実は残酷ねーねーねー!」
 ドップラー効果を残しつつ、崩落に巻き込まれて階下に姿を消すフィーナだった。

●正面ゲート
 工場の正面から堂々と挑む猟兵たちは、前衛の小百合子と、後衛の千歳、シャルロット、アリスだ。
 四人の目の前には、オブリビオン・ストームにも耐えきった特殊合金製の頑丈そうな扉が立ちはだかっていた。
「この手の仕掛けには手こずらされるのう。わらわの薙刀や刀では破れそうにない故な。――降魔刀を使えば、あるいは、じゃが」
 隙間もなくピッタリと閉じた扉。あらゆる侵入者を拒まんとする絶対の防壁を前にして、小百合子は自身の切り札による力押しが通じるかどうか思案する。
 だがそこで、何があっても眉一つ動かさなさそうな無表情でアリスが考えを述べる。
「正面ゲートだけに、物理攻撃に対する備えは完璧なようね。でも、正規の入り口なら端末コンソールからハッキングが可能なはずよ」
「なるほど、警備システムのハッキングなら私も手伝うわ。私の電脳精霊術ならゲートを開くことなんか朝飯前ね!」
 アリスとシャルロットが正面ゲートの両脇に陣取り、電脳魔術を展開し始めた。二人の周囲に展開された複雑な幾何学模様がゲート脇の操作盤を取り囲み、高速で電脳プログラムを流し込み始める。
「ここは専門の方にお任せするのが得策かのう」
「――そう簡単にはいかなそうですよ」
 ゲートが開くのを待とうとした小百合子に、千歳が警戒の声を投げかけた。
 正面ゲートの周囲の地面から円筒形のポッドがせり出してきて、中から警備ロボットが姿を現したのだ。さらに空には警備用ドローンが群れをなして飛行していた。
「ちょっと、こっちは今、手が放せないわ!」
「ええ、ハッキング対策の攻性防壁――ウィルスによる攻撃ね。この程度なら押し切れるけれど、ウィルスの相手をしながらだと動くのは難しいわね」
 慌てたシャルロットの声と、淡々としたアリスの声。対照的な声音だが、言っている事実は同じだった。すなわち、二人は身動きが取れない、と。

「どうやら私と小百合子さんで敵の相手をしないといけないようですね。本当は私は情報支援に徹したかったのですが」
 千歳のリモート義体が嘆息すると、小百合子も頷き返す。
「できれば隠密行動なるべく交戦は避けたかったところじゃが、こうなっては仕方あるまい。仲間のために障害は排除するとしよう」
「私が空中の敵ドローンを担当しますので、小百合子さんは地上の警備ロボットをお願いします!」
 千歳と小百合子が各々の相手に向かって駆け出したのと同時に、ドローンと警備ロボットも戦闘行動を開始した。

 千歳を狙うのは、空中に浮かぶ無数の戦闘ドローンたち。ドローンの装備した30mmガトリング砲が轟音とともに火を吹き、地面のコンクリートを穿っていく。ガトリング砲から排出された空薬莢が地面に落ち、乾いた音を立てた。
「どこを狙っているのですか? 私はこちらですよ?」
 千歳の声が、ガトリング砲が蜂の巣にしたのとは全然違う方向から聞こえた。音声情報の混乱に空中のドローンたちが統率を乱すのが見て取れた。
 そこに響くのは、今も正面ゲート前で電脳魔術を行使するアリスの声だ。
「ウィルスの相手をしながらでも、ドローンのセンサーをハッキングするくらいなら問題ないわね。無線通信でドローンを群体として働かせるのはいいけれど、きちんとハッキング対策くらいしておくことね」
 アリスの電脳魔術によってカメラやセンサー類をハッキングされたドローンたちは、アリスのハッキングによって位置情報を誤認させられ、無人の大地を穿っていたのだった。
 この隙を逃す千歳ではない。宇宙戦艦のコアユニットとしての戦術データを元に状況を解析。最適な戦法を検索する。
「反撃させていただきましょう。斥候部隊、展開!」
 千歳は空中に浮かぶ敵ドローン群を視界に収めると、【斥候部隊展開】により偵察用義体たちを呼び出した。ミサイルランチャーで武装した偵察用義体たちは、空中に浮かぶ戦闘ドローンたちをロックオン。一斉発射したミサイルが空中に赤い花火を咲かせ、ドローンを撃ち落としていった。

 一方、小百合子は地を蹴って地上の人型警備ロボットに肉薄する。戦場にて女武者として勇名を轟かせてきたのは伊達ではない。警備ロボットの両腕に装着されたマシンガンから7.62mm弾のフルオート射撃による弾幕が張られるが、勇気溢れる小百合子が怯むことはなかった。
「我は生む、世の摂理を体現せし降魔の刀……この手に!」
 小百合子は【精錬降魔刀】――理を宿す精霊の力借りし刀を無数に創造した。短刀の形状で実体化した魔刀は刀身に紫電の光をまとわりつかせ、小百合子の周囲に浮遊する。
「私の力も貸すわよ! まとめて薙ぎ払ってしまって!」
 ゲートの攻性防壁に電脳精霊をけしかけて相殺しているシャルロットが、操作盤に向けているのとは逆の手を小百合子にかざした。そこから生まれたのは雷属性の電脳精霊。
 雷の電脳精霊は小百合子が生み出した魔刀に纏わりつくと、その紫電をさらに強める。
 ――それは、あたかも雷神の宿りし短刀だ。
「魔刀よ、機械兵どもを刺し貫け!」
 小百合子が手を一振りすると、魔刀が一直線に警備兵たちに飛翔。その装甲に突き刺さり雷撃が電子部品を焼き切っていく。
 警備ロボットたちは精錬降魔刀によって貫かれ、煙を吹き上げながら地に伏したのだった。
「ふむ。やはり知能のない機械兵ゆえ、天神の力の象徴たる雷には弱かったようじゃな。くわばらくわばら」
「んー、普通に部品がショートしたんじゃないかしら?」

 こうして警備ロボットとドローンたちを撃破した後、アリスとシャルロットが正面ゲートをハッキングしてロックを解除。廃工場内部に突入することに成功した。
「電脳ゴーグルの反応では、この先の構造は単純みたい」
「ええ、私が端末コンソールから読み取った内部構造もシャルロットさんの観測データと同じね」
 電脳ゴーグルでの観測と、アリスのハッキングによる情報を総合し、シャルロットがマッピングしている3次元ホログラムのデータが更新される。
「他のチームの情報を加えますと――」
 千歳が他の猟兵たちと通信をして得られた情報(なお、屋上からは何故か通信が来なかった)を統合することにより、ほぼ廃工場の全体像が浮き彫りになっていく。
「では、わらわが先導するゆえ、敵や罠は任せよ」
 隠密行動に長けた小百合子が先頭に立ち、一行は内部へと歩を進めるのだった。

●最深部
 通信機で情報を交換しあい合流した猟兵たち(フィーナも無事に合流できた)は、今、最深部へと続く扉の前に集まっていた。
 その先こそ、工場の物資が残されている格納庫にして、オブリビオンの巣窟となっている場所だ。
 だが、ここで手をこまねいているわけにはいかない。
 猟兵たちは格納庫への扉を開け、突入していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『マシンビースト』

POW   :    ワイルドビースト
【野生化モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    同型機との経験共有
【頭部に内蔵した高熱の刃】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【行動パターン】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    光学迷彩
自身と自身の装備、【自身と同型の】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。

イラスト:柿坂八鹿

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちが足を踏み入れたのは広大な広さをもつ格納庫だ。貨物コンテナが並ぶ格納庫は、天井が高くスペースも広いため、全力で戦っても問題ないだろう。
 その猟兵たちに襲いかかろうとするのは機械の犬――いや、オブリビオン『マシンビースト』である。
 コンテナの影から続々と出てくるマシンビーストたち。物資を持ち帰るためにも、このオブリビオンたちを殲滅することが今回の任務である。
 この世界の人々に害をなすオブリビオンを倒して欲しい。
 
鍋島・小百合子
WIZ重視

いずれ暴れるであろうからくり仕掛けの獣なぞ野放しにはできぬな
この世界で生きる者達のために討ちとるぞ

「各隊、猟兵達を守り戦え。残りはわらわに付け」
UC「聖尼守護陣」発動
召喚した神官騎士64名を戦闘知識込みで指揮、他の猟兵との連携を重視(絡みOK)
わらわに随伴する兵を24名、残り40名の兵は他の猟兵の援護に回す
兵達には(わらわも含めた)猟兵の盾役と聖魔術による回復・防御障壁での支援、弓による援護攻撃を命ず
わらわは暗視・視力活用にて視界を確保しつつ、随伴兵と連携して薙刀による接近戦を仕掛ける(なぎ払い、範囲攻撃、鎧砕き、咄嗟の一撃併用)
敵からの攻撃には残像を用いた回避か薙刀での武器受け防御


マーリス・シェルスカナ
(アドリブ連携絡み歓迎)
今度はMachineのBeastですカ…、Meの世界にもある気がシマシタが
アレよりはもっとCuteネ。(〇IBOのイメージが浮かんだら9割正解)
ット…まずはコノ状況の打破からネ。

犬が透明でStealthする気ナラ、此処は【レギオン】を出すヨ
透明になってもMachineが駆動する以上、熱や電気は出るカラ
レギオンのセンサーでBeastの熱源を感知させテ、攻撃させるネ!
何なら透明なBeastにレギオンが引っ付いて貰ってもOKネ。
そしたら皆に位置が伝えられるヨ。
「HEY、Meのレギオンが集まる場所目掛けて攻撃するネ!」
と言えば良いのデス。



●数VS数
「いずれ暴れるであろうからくり仕掛けの獣なぞ野放しにはできぬな。この世界で生きるもののために討ち取るぞ」
 真紅の具足『朱糸威腹巻』に身を包んだ鍋島・小百合子(朱威の風舞・f04799)が、油断なく薙刀『竜王御前』を構えながら周囲を睥睨する。視界に映るのは、コンテナの影から姿を現した機械の身体を持った獣、マシンビーストたちだ。
「Yes、MachineのBeastはMeの世界にもある気がシマシタが、もっとCuteネ。コンナ凶暴なBeastは退治するネ」
 魔女の衣装を着た電脳魔術士マーリス・シェルスカナ(宇宙(そら)飛ぶマーリンレディ・f15757)も、電脳魔術の起動デバイスである杖『ミスティックチャージャー』を構えて小百合子の言葉に頷き反した。

 マシンビーストたちは、二人の前方、コンテナの周囲に陣取っている。
 だが小百合子の鍛え抜かれた視力は、ゆらり、と揺らめく空間を見逃さなかった。機械の獣は目に見えているものが全てではないようだ。むしろ、大多数が姿を隠しているように見受けられた。
「マーリス殿、からくりの獣は隠形の術で隠れておるものもいるようじゃ」
「ナルホド……犬が透明でStealthする気ナラ、此処はレギオンを出すヨ」
 小百合子からの警告を受け、マーリスが『ミスティックチャージャー』を操作して【エレクトロレギオン】を起動。電脳空間から機械の戦闘兵器たちを実体化させる。
「透明になってもMachineが駆動する以上、熱や電気は出るはずネ」
 マーリスの指示を受け、実体化した200体以上の機械兵器たちが、全方位に熱センサーを向けた。
 熱を放つ物体は、人間の肉眼には映らない波長域の赤外線を発する。マシンビーストは光学迷彩によって可視光に対して透明になれても、赤外線までは遮断することができなかった。機械兵器たちの赤外線センサーには、熱を発するマシンビーストたちの姿がくっきりと写っていたのである。

「そこネ! レギオンたち、突撃ヨ!」
 赤外線センサーで位置を特定したマシンビーストたちに向かって、マーリスは機械兵器を突撃させた。だが、機械兵器は数は多いが攻撃力はさほどではなく、透明なマシンビーストの牙や爪の一撃で消滅させられてしまう。
「マーリス殿!? これでは相手に一方的にやられるだけじゃ!」
 空間が揺らぐたび、マシンビーストの牙が閃き、爪が振るわれ、機械兵器たちが一体、また一体と斬り裂かれて消滅していく。それを見て小百合子が無謀な突撃をやめさせようとする。
 ――しかし、マーリスは笑みを浮かべると、小百合子に信頼の込もった視線を向けた。
「大丈夫ネ。これで敵の居場所は伝えられるヨ。HEY、Meのレギオンが集まる場所目掛けて攻撃するネ!」
 マーリスの意図に気付き、小百合子は驚愕する。マーリスは機械兵器たちを目印にしようとしているのだ。そこに透明なマシンビーストが隠れていることを伝えるために。
「なんと――! そのためにからくり兵たちに突撃を!?」
「レギオンたちは修理すれば直せるネ。けど、仲間たちがやられたら、そうはいかないからネ」
 優しげに微笑む宇宙の魔女の笑顔に、小百合子の闘志が燃え上がる。
 例えからくりの兵とはいえ、身を挺して敵の位置を教えてくれているのだ。この働きに報いずして、何が武士であろうか。
「相わかった。あとはわらわに任せるのじゃ。マーリス殿は、からくり兵たちの被害が最小限となるよう指揮されよ!」
 小百合子は目を閉じて一呼吸する。倒れていくからくり兵たちの勇気に敬意を評し、敵を倒すことを強く心に誓い――カッと目を見開くと、裂帛の気合いとともに叫ぶ。
「我は招く、聖と天に殉じ心ある者を守護し敵を滅す戦士達……出でよ!」
 小百合子は【聖尼守護陣】によって、64人の神官騎士たち――ダークセイヴァーにて聖騎士団に所属していた女性たちの英霊を召喚した。
 ベールで金髪を覆った神官戦士の霊たちは、プレートメイルに身を包み、メイスや弓を構える。
「各隊、マーリス殿とからくり兵を守り戦え! 残りはわらわに付け!」
 神官戦士40人をマーリスの援護に回した小百合子は、残る24人の神官戦士を随伴させ、マシンビーストの群れへと突っ込んでいった。狙うは姿を隠しているマシンビーストたちである。

 小百合子とそれに付き従う神官戦士たちの活躍は目覚ましいものだった。
「これ以上、からくり兵には被害は出させぬ!」
 マーリスの機械兵器が接近することで位置を教えてくれているマシンビーストに接近するや、小百合子は薙刀を振るい、マシンビーストの機械の首を胴体から切り離す。小百合子に従う神官戦士たちも同様にメイスや弓を使い、姿の見えない敵を撃破していく。
 さらに、マシンビーストの位置を教えるために接近している機械兵器に神官騎士が援護に入る。マシンビーストの攻撃をメイスや盾、鎧で受け止め、機械兵器を守りつつ時間を稼ぐ。
 そこに小百合子率いる本隊が旋風のごとく突撃してきて、マシンビーストを物言わぬスクラップへと変える。

 こうして、マシンビーストの第一陣を押し返した猟兵たちだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィーナ・ステラガーデン
(頭に大きなばってん絆創膏を貼りつつ)
でたわねわんこ!って何なのその鉄の身体!何食べたらそうなるのよ!
まあいいわ!さっさと焼却よ焼却!
何も考えず勢いで【属性攻撃】で火球を飛ばして焼いていくわ!
なんか透明なやつが来たらぎりぎりの所で【オーラ防御】とか
死なない程度にぶっ飛ばされるとかされて存在に初めて気付くわね!
【属性攻撃】で狙い打つけど透明のなんて当てれないわよ!!
何なのよもーー!腹立つわね!!
しっかり姿を見せなさいよ!もうちょっと自分をアピールしなさい!
イライラが溜まって爆発したらUCで一気に殲滅するわ!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)


ニーナ・ライト
ヒトを襲う為の機械…
もしも外で活動を始めたら…
物資を持ち帰る為だけじゃなくて、ヒトが襲われないようにする為にも
ここで倒さないと…!

姿が見え始めたら、AASストレガを構え狙撃体制へ!
そのままΨ-Assist Snipeを使い、確実に当てて倒していくね

仲間を襲おうとしている個体を見かけたら優先的に狙って
被害を未然に防げるようにしていかないと!

距離を詰められ、周りに複数の敵がいる状況になったら
アサルトライフルやサイライト・ブレードでの攻撃に切り替えて対処
また、動きを読まれないように2種を不規則に使い分けるよ

光学迷彩を使われたら
落ち着いて耳を澄まして
機械の駆動音や足音のする方に狙いを定めて…!


ツキカ・アシュヴィン
やっぱりおるかー、オブリビオン。
しゃーない、一丁やったるか!

基本はアサルトライフルの射撃で攻撃。【スナイパー】でうまいこと頭とか動力部とか撃ち抜ければ。
周りもよう確認して、仲間の死角に回ろうとしとるヤツから優先的に攻撃するで。

ウチが狙われとるようなら、逃げられる気せぇへんしダガーを抜いて接近戦。
敵の動きをよう見て、防御重視で立ち回り。敵が頭の高熱刃で攻撃してきたら『貌星、愚昧を嗤う』発動してダガーで防御。すぐコピーを発動して反撃するで。この時も出来るだけ致命的な部位狙いで。
後は、この時覚えた敵の行動パターンも判断に加えて立ち回り。ロボやし別個体でも同型機なら行動パターン一緒や思うけど、どやろ?



●魔女と野獣
 猟兵たちが召喚した機械兵器と神官戦士の軍勢により、機械の獣たちの奇襲攻撃は失敗に終わった。
 敵が姿を隠して襲ってくることが分かれば、もはや猟兵たちに恐れるものは何もない。透明な相手に注意して戦うだけである。

「でたわねわんこ! って何なのその鉄の身体! 何食べたらそうなるのよ! そうか、肉ね! マンモス肉ね!」
 後頭部に大きな絆創膏をばってんに貼り付けた魔女、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が、陣形が崩れたマシンビーストたちにビシッと魔法の杖を突きつけた。
 建物の崩落に巻き込まれてもその程度のダメージで済んだのはさすがは吸血鬼の血を引いているフィーナである。
「いえ、あの、マシンビーストはオブリビオン・ストームに巻き込まれて機械の身体に変性した存在で……」
「やめとき、今は説明聞いてくれる状態じゃないようや」
 ニーナ・ライト(Automatic-Buddy「Ψ-7174」・f24474)は律儀にフィーナに説明しようとするが、ツキカ・アシュヴィン(星追いの渡り鳥・f24375)はニーナの肩にポン、と手を置き首を左右に振る。ああなったフィーナに何を言っても無駄だと。
 フィーナは魔法の杖を掲げ、その周囲に無数の火球を生み出していく。灼熱の光球が放つ光が眩いばかりにあたりを照らしていき――。
「それっ、こんがり焼けてマンモス肉をドロップしなさいっ!」
 フィーナの周囲から放たれた火球が、姿の見えているマシンビーストたちに直撃、爆散させた。

 だが――。
「ダメよ、フィーナさん!」
「それやと透明なヤツらは倒せへんで!」
 魔法を放って隙ができたフィーナの背後から、透明化を解除したマシンビーストが牙を剥いて飛びかかった。姿を見せている個体を囮にし、それを倒して油断した相手を狩る――。それがマシンビーストたちの戦法だ。
 絆創膏が貼られたフィーナの後頭部にマシンビーストが噛みつこうとした瞬間。
 ――甲高い銃声が聞こえたかと思うと、マシンビーストの身体が大きく吹き飛んだ。
「間一髪、だね」
 銃口から硝煙を立ち上らせた大型スナイパーライフル『AASストレガ』を構えたニーナが、ほっと息をつく。
「おっと、まだ油断できへんで!」
 いまだ状況が理解できていないフィーナに向けて、マシンビーストたちが次々と透明化を解除し飛びかかっていく。だが、ツキカがアサルトライフル『CR-WA96AR3/CST』のフルオート射撃で、透明化を解除したマシンビーストの頭部や動力部を貫き沈黙させていった。
「相手をよく見て……心を落ち着かせて……狙い撃つ……!」
 ニーナも【Ψ-Assist Snipe】――サイパワーによって弾道補正をすることで命中力を高めた狙撃で、次々とマシンビーストたちの動力部を貫通、破壊していく。

「え、なになにっ!? 透明な敵!?」
 目に見えている個体しか認識していなかったフィーナは、ここにきてようやく透明な敵の存在に気がついた。先の機械兵器と神官戦士たちが透明な敵と戦っていた間、フィーナは頭部の怪我の治療(絆創膏を貼る)をしていたので分からなかったのも仕方がないだろう。――見てても気付かなかったんじゃないかな、という気がしなくもないが。
 フィーナは再び火球を生み出し、周囲に爆炎を炸裂させる。だが無闇に撃った魔法では透明化している敵に命中させることはできない。
「何なのよもーー! 透明な相手になんて当てれないわよ! 腹立つわね!!」
 フィーナに向かって透明化を解除したマシンビーストが飛びかかる。
 とっさに火球を放とうとするが、それよりもマシンビーストの爪が届く方が速い――そう思った瞬間、ニーナのスナイパーライフルから放たれた大口径の銃弾がマシンビーストを撃ち抜いた。
「フィーナさん、いったん後方に下がって!」
 ニーナの声が聞こえるが、姿を見せない敵に対して苛立ちを募らせるフィーナの耳には届いていなかった。攻撃は当たらない。見えないところから襲ってくる。そんな敵に対し、フィーナの全身からイライラのオーラが立ち上っている――かのようにみえた。
「あかん、あれは完全に理性を失っとる! このまま敵の中心にいたらマズイで!」
 フィーナを救出しようと、ツキカが腰のベルトからダガーを引き抜く。ニーナもサイライト・ブレードを構えて、いつでも突撃できるように準備を整えた。

 だが、その時、フィーナの全身から膨大な魔力が吹き上がった。
 ――否、それは魔力ではない! 魔力という形を取る前の純粋な力――イライラ力だ!
「あんたらー! それでも血の通った野生の獣なの!? しっかり姿を見せて、もうちょっと自分をアピールしなさい! 後悔させてやるわ!」
 フィーナの身体から発せられたエネルギーが実体化し、炎の身体でできた狼の姿となる。【噛ミ焦ガス眷属】によって現れた狼は65体。炎の狼たちは、フィーナのイライラの原因たる透明なマシンビーストを狙って駆け出した。炎の狼は匂いを頼りに機械の獣たちの喉笛に噛みつき、機械の身体に炎の爪を突き立て、果ては特攻自爆して機械の獣を爆炎に包み込んでいく。
 炎の狼が姿を消した後、周囲はフィーナのイライラエネルギーのためにこんがりと焼け焦げていた。
「ふっふっふ。ざっとこんなもんよ!」
 周囲の敵を一掃したフィーナは、胸を張ってふんぞり返ると……そのままバタンと倒れた。

●アポカリプスヘルの二人
 ある程度マシンビーストを倒したとはいえ、それは氷山の一角。まだまだマシンビーストの群れは残っている。そんな中で倒れたフィーナはマシンビーストの格好の獲物だ。機械の獣は、破壊の化身のような炎の狼が消えたことを確かめ、瞳の光学センサーに光を灯してフィーナに飛びかかった。
「させへんで!」
 ツキカがマシンビーストの正面に飛び込み、その爪をダガーで受け止める。
「フィーナさん、大丈夫!?」
 サイライト・ブレードでマシンビーストを斬り裂いたニーナがアサルトライフルを乱射し、機械の獣の群れを牽制。その隙にツキカがフィーナを助け起こして脈をみる。
「こ、これは!?」
「ツキカさん、まさか……!?」
 驚愕の声を上げたツキカを見て、ニーナが最悪の事態を想定し顔色を変えた。あれだけの魔力を一気に放出したのだ。目の前で展開されたのは、異世界の異能の力だ。なんかこう、生命力っぽいものを使い果たしてしまったとか、そういうこともあるのかもしれない。
 ニーナはアサルトライフルのトリガーを引いたまま、倒れているフィーナの顔を恐る恐る覗き込んだ。

「くかー。むにゃむにゃ。お腹すいたわ―、肉持ってきて―!」

 そこにいたのは、魔力を使い果たしてお腹を空かせ、寝息を立てているフィーナだった。
 フィーナの様子を見ていたツキカも、苦笑いをするしかない。
「どうやら、腹ぁ空かせて倒れて、そのまま寝てしもうたみたいやなあ」
「ま、まあ、無事で何より……だね。このまま、敵を撃破しよう」
 ニーナはアサルトライフルで機械の獣を牽制しつつ、光学迷彩を解いて飛びかかってきた敵の爪を紙一重で回避。すれ違いざまにサイライト・ブレードを一閃し、その胴体を薙ぎ払う。
「今っ! いっけえっ!」
 ニーナはさらに視界内のマシンビーストたちに向けてアサルトライフルをフルオートで乱射する。
 機械の獣たちは、ひらりと跳躍して銃弾を回避しようとして――【Ψ-Assist Snipe】によって軌道を変えた銃弾に胴体を貫かれ、駆動を止めていった。

「ウチも負けてへんでぇ」
 機械の獣の頭部に内蔵された刃が高温によって赤熱し、敵を焼き切る刃となってツキカを襲う。
「それ、いただきやー☆」
 ツキカは赤熱した刃をダガーで受け止めると同時に【貌星、愚昧を嗤う】を発動した。これは防御した敵の攻撃をコピーし、29秒間使用できるというものだ。
 残り29秒、赤熱したツキカのダガーが、襲ってきたマシンビーストの身体をバターのように溶かす。
 残り25秒。ツキカが次のマシンビーストに接近。その頭部を斬り裂きつつ、敵の行動パターンを学習。
 残り20秒。3体同時に飛びかかってきた機械の獣の行動パターンを見切り、その高熱の刃を時間差で回避。それぞれの首、胴体、頭部に刃を突き刺し、活動を停止させる。
 残り10秒。学習結果を元に透明化したマシンビーストの位置を推測。5体を切り捨てる。
 残り3秒。ニーナの背後に透明化して迫っていたマシンビーストに向かってダガーを投擲。その頭部に突き刺し、頭脳部を破壊する。

「っと、これでウチはタネ切れや!」
「こちらも弾薬とブレードのエネルギーがそろそろ……」
 倒れた……もとい、寝ているフィーナを左右から抱えたツキカとニーナは――。
「ほな、ここらで撤収やー」
「ええ、退却ねっ」
 フィーナを引きずりながら、後方へと後退したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

秋山・軍犬
超攻撃力と超耐久力?
此方がそれを超える戦闘力を発現すれば
集団における最大のメリット、連携を捨てた
烏合の衆でしかないっす

という訳で
【指定UC】による
スピード&パワーで圧殺させてもらうっす!

コンテナとかを
破壊しない様に注意は払うっす!
(怪力+スナイパー+オーラ防御+空中戦)

上手い事、敵を撃破出来たら
コンテナの中を確認、何があるかな?
車はあるかな~?

あと、軍事工場っすから
設計図や整備マニュアル、他の施設なんかの
位置情報もあれば確保しておきたいんすけど…

自分、ハッキング技能は無いしメカニックも
そこまで高くないんすよね…

今後の復興活動の事を考えれば
その手の事が得意な現地の協力者、仲間が
欲しいとこっすね…


シャルロット・シフファート
「では、お見せしようかしら?純粋属性魔術を体現した魔導の一つ、電脳精霊術の真価を--」
ユーベルコード使用。

五行属性の木、火、土、金、水の属性で出来た武装を生成し射出使役。
攻撃に対しては武装射出でカウンターを上げて対処するわ。
更に火の属性を使ってサーモグラフィーのように解析して透明化したオブリビオンを割り出す。
知覚したオブリビオン達に遠隔操作した武装を叩きつけて破壊するわ。

「さぁ、原初の荘厳により砕かれなさい!!」
そう言ってそれぞれの属性に応じた五振りの大剣を応じた属性の武装を融合させて生成。
群れの中央に射出して膨大な属性を増幅させて凪ぎ払う。


天城・千歳
【WIZ】で判定
アドリブ、他の猟兵との絡み歓迎

さて、倉庫区画に到着しましたか。速やかにマシンビーストを駆逐して物資を確保しましょう。

「ここが目的地ですね。『私』が戦闘機動しても問題ない十分な広さが有りますね」
「ちょっと本体、目的を忘れないでね」
人型形態に変形して戦闘モードに入った本体にリモート義体が後ろから釘をさす。
【ハッキング】で格納庫のカメラ、IRセンサー、集音マイクを掌握し、自身の複合センサーとの情報を合わせて【情報収集】し、【戦闘知識】に基いて処理した情報をネットワークに上げて味方を支援します。
敵に対してはUCで展開した戦闘機械と【誘導弾】の【一斉発射】による【範囲攻撃】で【先制攻撃】



●見えない敵
「さて、速やかにマシンビーストを駆逐して物資を確保しましょう。ここなら『私』が戦闘機動しても問題ない十分な広さがありますね」
 そう言うのは天城・千歳(ウォーマシンの電脳魔術士・f06941)。――リモート義体ではない、ウォーマシンの本体であった。普段は全高240cmを超える巨体を持つ千歳。その巨躯ゆえに千歳の本体が存分に戦える戦場は限られていた。
 だが今回は違う。マシンビーストたちが待ち構えている格納庫は、コンテナが並び、戦車でも自由に動き回れるほどの広大な空間。千歳の巨体でも存分に戦うことができる。
 千歳はビークルモードになっていた巨体を人型形態に変形させる。ビークルの形に折りたたまれていたボディが展開し上半身と下半身を形成する。下半身は二本の脚を形作り、上半身からは両腕が分離する。さらに頭部がせり出してきて、人型の巨体が完成した。
 千歳は両手の感触を確かめるように二度、三度と掌を閉じて開く。駆動系――オールグリーン。
 光学モニタの他、全身に装着された各種センサーの動作を確認――オールグリーン。
 複合兵装の稼働状態を確認――オールグリーン。
「ちょっと本体、目的を忘れないでね」
 リモート義体のコントロール――主従関係プログラムのチェックの必要あり。
 千歳はタスクリストを更新すると、格納庫に足音を響かせながら、その巨体をマシンビーストの待つ戦場へと進めていった。

 千歳が後方で戦闘準備をしている間、マシンビーストたちと対峙していたのは一人の少女だった。
 シャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス CV釘宮理恵・f23708)――電脳魔術と精霊魔術を融合させた電脳精霊術を操る少女である。
 シャルロットの眼前には数十体のマシンビーストたち。――光学迷彩で身を隠した獣も含めれば、もっと多数のマシンビーストが展開しているのだろう。
 だが、先の戦闘で消耗した味方が後方に下がっている現状、ここを突破させるわけにはいかなかった。
「では、お見せしようかしら? 純粋属性魔術を体現した魔導の一つ、電脳精霊術の真価を――五行たる聖装よ。汝、剣にして刀、槍にして弓、極東の彼方より大和の聖火と煌輝を掲げて凱旋する者の聖なる武装なり」
 シャルロットの周囲に浮かび上がるのは、240本にも及ぶ五行属性の武装だ。それは神や理すらも打ち砕く威力を秘めていた。これらすべてをシャルロットの意のままに操れる――それこそが電脳精霊術【東方の果てにて千夜を超え語られる五行たる聖装(ファイブレガリア・イースト・コールブランド)】だ。
 木、火、土、金、水の各属性武器たちがシャルロットの命令を今か今かと待ち受けるがごとく滞空する。だが、シャルロットはまだ武器を放たない。まずは敵の位置を把握するのが先だ。
 シャルロットは火属性武器に空間の熱量探知を命じる。
 召喚された五行武器のうちの火属性武器たちが、シャルロットの周囲に存在する熱源をすべて報告し、彼女の視界にその分布をオーバーレイ表示していく。いま、シャルロットの瞳には、目に見えているマシンビーストの他に、透明化したマシンビーストたちまでもが赤い色でくっきりと映し出されていた。
「準備は整ったわ。さあ、パーティの始まりよ」

「シャルロットさんも準備万端のようですね」
 千歳がシャルロットに並びつつ声をかけた。千歳もすでに格納庫内の監視カメラや赤外線センサー、集音マイクなどをハッキングにより掌握。全方位からの観測網を整えると同時に、千歳自身の複合センサーと合わせて情報を分析。光学迷彩によって姿を隠している敵の位置を把握済みだった。
「それでは、私も攻撃準備と行きましょう」
 千歳は【エレクトロレギオン】により、200体以上の機械兵器を召喚。砲台のようにずらりと配置する。さらに自身の『19式複合兵装ユニット改1型』に搭載されたレールガン二門、8連ミサイル2門、連装レーザー砲二門を敵に向けてロックオンした。
「それでは、全力で先制攻撃させていただきましょう」

 マシンビーストは光学迷彩で姿を隠し、油断して近づいてきた獲物を狩る習性を持つ。強者たるオブリビオンゆえに、その戦術には絶対の自身を持っていた。そのため、彼らは光学迷彩を看破されていることなど想定もしていなかった。

「ファイブレガリア、リリース!」
 シャルロットの命に応じ、五行たる聖装が透明化したマシンビーストたちに向けて放たれた。剣、刀、槍、矢といった数々のレガリア級武器が機械の獣に襲いかかる。そしてシャルロットは、さらに攻撃を確実なものへと変化させた。
「五行循環、聖装固定、火行!」
 マシンビーストに降り注ぐ聖装の属性が火行に転換され、その機械の身体を貫いた。――いや、聖装が命中した場所は一瞬のうちに融解し、その金属の身体に大きな穴を空けていたのだ。機械の獣の光学迷彩が解け、大地に崩れ落ちていく。
「一撃であれだけの破壊力を――? 観測したエネルギーによる破壊力より遥かに大きなダメージを与えていますね――」
 シャルロットの攻撃を見た千歳が驚愕の声を上げつつ観測データを再チェックする。だが、何度データを見ても、マシンビーストの金属装甲をあそこまで簡単に貫通できるほどの莫大な熱量ではないはずだった。
「ふふ、これが五行属性の真髄よ。火克金――火行は金行に強いという性質を利用したのよ。金属製の敵なら、火の熱で溶けるという理ね」

「なるほど、流石ですね。ですが私も本体の火力を使えるのでしたら負けませんよ」
 シャルロットの一斉攻撃でマシンビーストたちが怯んでいるところに、千歳も攻撃を開始した。
 呼び出した機械兵器たちが一斉に射撃をおこない、千歳の巨体からレールガンと連装レーザー砲が斉射される。
 センサ情報を統合して敵の詳細な位置まで把握できている千歳は、自分と機械兵器の攻撃を寸分違わずにマシンビーストの弱点である頭部や胴体の駆動炉に直撃させていく。光学迷彩が途切れて空間が揺らめき、頭部や胴体を射抜かれたマシンビーストが地に伏していった。

「さぁ、原初の荘厳により砕かれなさい!!」
「こちらも一気に決めましょう!」
 シャルロットは聖装を呼び戻すと、木火土金水の各属性に戻し、属性ごとに融合。5振りの大剣を生成する。
 千歳は自身に装着されたミサイルランチャーの全ハッチを解放。敵陣中央をターゲットする。
「五行剣、射出!」
「全ミサイル、セーフティ解除。1番から16番まで全ミサイル発射!」
 シャルロットと千歳の攻撃は、離れた場所に潜んでいたマシンビーストの一群に向かって飛翔し着弾。五行すべての属性が相生によって強化しあった純粋エネルギーが解放され、そこにミサイルの雨が降り注ぎ――。
 轟音と閃光を伴う大爆発とともに、潜んでいたマシンビーストの一群は消滅したのだった。

●野生の獣
「こっちはこれで五行たる聖装は撃ち尽くしたわ」
「こちらも弾切れですね」
 シャルロットと千歳は一度後方に戻ろうとし――。
「索敵センサーに反応!? 上ですかっ!?」
 千歳が上を向いた瞬間。天井から十数体のマシンビーストが降りてきて着地した。その瞳は赤く染まり、理性を失った野生化モードであることを示している。
「カメラの範囲外に隠れていた集団ですか……」
「熱探知にも引っかからなかったみたいね」
 野生化モードになったマシンビーストは、通常モードを遥かに超える攻撃力と耐久力を誇る。攻撃手段を使い切り疲弊した二人が相手にするのは厳しいと言わざるを得なかった。
 そして、マシンビーストがシャルロットと千歳に飛びかかり――。

「フルコースモード限界突破ッ! ……フルコースッ!! ……ゴオォォルデンッ!!!」
 【フードスペシャリテ・フルコースゴールデン】による黄金のオーラに身を包んだ秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)が、高速で飛翔しながらマシンビーストの一体に拳を打ち込んだ。振り向きざま、もう一体に蹴りを入れる。
 軍犬によって吹き飛ばされたマシンビーストは壁にめりこんで動きを止めた。
「二人とも、大丈夫っすか? ここは自分に任せるっす!」
 黄金のオーラを纏った軍犬が、マシンビーストたちを睨みつける。
「超攻撃力と超耐久力? 此方がそれを超える戦闘力を発現すれば、そんなものは意味がないっすね。そうなったら集団における最大のメリット、連携を捨てた烏合の衆でしかないっす」
 それは軍犬の指摘通りだった。集団で狩りをすることに特化したマシンビーストは、集団で連携してこそ真価を発揮する。このように個々の戦闘能力を上げたところで、それを上回る力の前では成す術がなくなるのだ。
「このフードスペシャリテ・フルコースゴールデンによるスピードとパワーで圧殺させてもらうっす!」
 そこからは一方的な戦いだった。フードファイターとしての矜持に比例してパワーアップした軍犬の前に、野生化モードになったマシンビーストたちは一体、また一体と叩き潰されていき――。
「これで最後っすよ!」
 軍犬の頭突きを受けたマシンビーストの瞳のカメラから光が消え、野生化モードになったマシンビーストたちは撃破されたのだった。

「さて、まだ敵が残っている以上、コンテナの中身を確認することはできないっすが――せめて車があるかどうかだけでも知りたいっすね」
 軍犬の言葉に千歳が反応する。
「車、ですか? 今、ここのデータベースを調べますので、ちょっと待ってくださいね――あ、ありました。貨物運搬用のトレーラーがあるみたいですね。いまでも使えるかは、実際に見てみないと分かりませんが――」
 ここはもともと軍事物資を生産するための工場だ。工場であれば、製造した品をコンテナに詰め、配送先に送る必要がある。こうして物資のコンテナ詰めまで行われているのだから、トレーラーが残されていてもおかしくないだろう。
「車があるのは吉報っす! で、他にはなにか無いっすか!? ここは軍事工場っすから、設計図や整備マニュアル、他の施設の位置情報もあれば確保しておきたいんすけど……」
「そうですね。ここで生産されていた銃火器や弾薬の設計図ならダウンロードしました。整備マニュアル――は、工場設備のマニュアルになりますね。すでに動いていない廃工場の設備マニュアルですが、念の為ダウンロードしておきましょう。他の施設の位置情報――ダメですね。データベースには他の施設の位置は記録されていません。――いえ、逆ですね。この工場の位置を秘匿するために、周辺地図すらデータベースに入れていないということでしょうか」
 軍事兵器を生産する秘密工場。その場所自体を秘匿するために、周辺地図データは存在しなかった。
「仕方ないっす。それだけの情報が得られれば、あとはなんとかするっすよ! 飯のために頑張るっす!」
 軍犬はアポカリプスヘルの復興とその名物料理を食べるために、物流を復興させる決意を新たにするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
んまーKawaiiワンちゃんがいっぱい!SOZAIの山ジャンッ!

光学迷彩で敵が隠れたらこちらも【段ボール】を被りステルス合戦ですぞ!
お互い隠れたママで埒が明かない?でぇじょぶだ拙者にいい考えがある!
取り出したるはこれ!オウガなんたらな【流体金属君】!こいつを床に這わせておけば敵が踏んづけた瞬間変形して拘束してくれるって寸法よ!
拘束した所を【忍び足】で接近、かーらーの【ハッキング】!
2,3体ぐらい暴走させて同士討ち狙いでござる

暴れ始めたらボーナスタイムだ!気を取られているうちに残りの敵もバッテリーやら部品やら【盗み攻撃】してぶっこ抜いて廻って素材回収ですぞ
さぁ悪いワンちゃんはしまっちゃおうねぇ


葛葉・アリス
折角の可愛らしい機械も、壊れてしまえば台無しだわ
もう役に立たないモノなら、潰してあげるのも神の慈悲よね

『ジャバウォック』を召喚してまずは私の足にする
残念ながらまだ武装の悪魔を喚べるほど力は回復していないけれど、ただ光学迷彩で隠れるだけの獣なら、ジャバウォックが見つけ出して蹴り飛ばす
お供温度もあるなら、見えない道理はないわ
足りないようならエレクトロレギオン
小型の鼠型電脳悪魔を大量召喚して襲わせるわ
窮鼠猫を噛む……あ、猫じゃなくて犬かしら?
ま、たいして違いはないわね
一撃で踏みつぶされようが数は力よ
いくらでも召喚してあげる
どこまで耐えらえる?
鼠にばかり気を取られているとジャバウォックが蹴るわよ



●不思議の国の段ボール
 猟兵たちの攻撃で数を減らしたマシンビーストたち。だが、まだ全滅はしていない。残された個体が群れを作り、光学迷彩で反撃の機会を伺う。
 そんなマシンビーストの群れの中を一個の段ボールがスススと音もなく進んでいた。段ボールの中に潜むは自称歴戦の傭兵、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)だ。
(んまーKawaiiワンちゃんがいっぱい! SOZAIの山ジャンッ! 相手が光学迷彩を使うなら、こちらも最強の迷彩アイテム、段ボールで対抗ですぞ!)
 段ボールはエドゥアルトの【潜入のお供】によって、中に隠れている対象ごと透明になるスグレモノ。マシンビーストの光学センサーを誤魔化し、段ボールは機械犬の群れの中心までスニークすることに成功する。

 その様子を後方から見つめる冷静な瞳があった。
 二足歩行の魔導戦車『ジャバウォック』の外付け式操縦席の上に立つ、緑色のローブと帽子を被った無表情な少女、葛葉・アリス(境界を操る幼き女神・f23419)だ。
「なるほど、光学迷彩には光学迷彩で対抗というわけね。けど、お互い隠れたままでは膠着状態よ。どういう手で行くのか――お手並み拝見ね」
 少女の口から静かな囁きが漏れた。

 アリスの思考を読み取ったわけではないだろうが、段ボールの中でエドゥアルトがニヤリとその髭面を怪しく歪めて笑みを浮かべた。
(お互い隠れたママで埒が明かない? でぇじょぶだ拙者にいい考えがある!)
 段ボールの中でエドゥアルトが懐から取り出したのは、『流体金属君』と名付けられた流体金属生命体。段ボールの下からスルリと抜け出した流体金属生命体は自在に形を変えると、天井のライトの光を反射しながら、床に薄く伸びて段ボールの周囲へと広がっていく。

「なるほど、敵の中心で流体金属生命体を解放するとは、考えたわね」
 『ジャバウォック』の上から戦場を眺めるアリスの眼前で、透明な段ボールの中から広がった流体金属生命体がマシンビーストたちの足元に到達したのが見えた。マシンビーストの足元に達した流体金属生命体は突如として盛り上がり、機械の犬を拘束していく。いきなり四肢を絡め取られたマシンビーストたちは混乱に陥っていた。その身体を隠していた光学迷彩が解除され、メタルボディをさらけ出していく。
「残念ながら、まだ武装の悪魔を喚べるほど力は回復してないけれど、姿も隠せない機械の獣程度ならジャバウォックで十分よ」
 アリスの指示を受けた鋼鉄の人造悪魔が、姿を現して動きを拘束されているマシンビーストたちに迫る。その巨体は工場の床を激しく揺らしながら大きく足を振り上げ、動けない獣の上に振り下ろした。
 プレス機によって金属が潰されるような甲高い音を立ててマシンビーストが踏み潰され、その残骸が床に散らばる。
 ジャバウォックが足を振り、腕を薙ぎ払うたび、流体金属生命体によって拘束されたマシンビーストたちがおもちゃの犬のように宙を舞う。

「って、拙者も巻き込む気でござるかっ!?」
 まるで台風のごとく暴れまわるジャバウォックの腕を間一髪で避けて――髭が数本、宙に舞ったが――エドゥアルトは、アリスに対して文句を言う。
「あ、その段ボールで見えなかったから、すっかり存在を忘れてたわ」
「拙者の段ボール、仕事しすぎぃっ!」
 エドゥアルトは滂沱の涙を流しながらも、拘束されたマシンビーストの電子頭脳に介入。同士討ちを行うようにプログラムを書き換えていく。
 エドゥアルトによってプログラムを書き換えられた個体は、突如、近くの機体に噛み付くと、その喉笛を噛みちぎった。そのまま、透明化した別のマシンビースト――データリンクにより位置は把握している――に飛びかかり、その身体も斬り裂く。

「さあ、鼠たち、行きなさい」
 アリスが呼び出すのは【エレクトロレギオン】による小型の鼠型電脳悪魔だ。手乗りサイズの小型の機械兵器だが、アリスの電脳と悪魔を操る権能によって生成された機械の鼠たちは160体以上に及ぶ。小型の鼠たちは、アリスの指示に従って、残ったマシンビーストたちに襲いかかっていった。
 流体金属生命体による混乱に、暴走した個体による同士討ち、ジャバウォックによる蹂躙によって混乱した所に、鼠型機械の突撃だ。マシンビーストたちは相互のデータリンクを維持できず、光学迷彩が完全に解除された。
「窮鼠猫を噛む――あ、猫じゃなくて犬かしら?」
 ま、大して違いはないわね、とアリスは表情も変えずに呟いた。

「今がボーナスタイムでござるな!」
 エドゥアルトが高速でマシンビーストの群れの中を駆け抜ける。
 ――まるで時間が止まったかのように、ピタリと静止するエドゥアルトとマシンビーストたち。
「――素材はいただいたでござるよ」
 ポーズを決めたエドゥアルトがニヤリと微笑み――その両手に抱えるバッテリーやモーター、センサーといったマシンビーストのパーツを懐にしまい込んだ。
 重要な駆動パーツを奪われて動くことの叶わない機械の獣たちは、ジャバウォックによる蹂躙によって粉砕される定めだった。


 こうして猟兵たちによって、格納庫に巣食っていたオブリビオン、マシンビーストたちは全て撃破されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『荒野を生き抜くサバイバル講座』

POW   :    バリケードの設営方法など、力を使う技術を伝授する

SPD   :    集落周辺の警戒の仕方や、破損した物品の修理のコツを伝授する

WIZ   :    この世界を生き延びる為の知識を頭に叩き込んだり、意識改革を行う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 軍事工場跡に巣食うオブリビオンを撃破した猟兵たち。
 工場内を探索した結果、無事なトレーラーの確保に成功し、武器、弾薬、燃料の他、非常用に備蓄されていた水や食料なども回収した。
 こうして猟兵たちは資材を満載したトレーラーに乗り、最寄りの『拠点(ベース)』へと辿り着いた。

 そこは、元々は地熱発電プラントだった施設だ。頑丈な地下シェルターを持つプラントに人々が集まり、プラントの建物を中心として木やトタンで作った粗末な家屋が立ち並ぶ殺風景な街を形成していた。
 だが、地熱発電によって最低限の――本当に最低限の電気はまかなえているものの、食料や清潔な水、ガソリンなどの燃料、武器弾薬は圧倒的に不足しているのが現状だった。

 街の周囲は荒れた土地ばかり。さらに農業の技術や知識は失われて久しい。
 環境汚染を免れた水源は街からは遠く、飲料水を汲むのも一苦労。
 慢性的な燃料不足によりガソリンを用いる車は満足に動かせず、電気自動車もプラントの貴重な電力では運用が困難だった。
 さらには、街を守るのは朽ちかけた木の柵のみ。自警団も組織されておらず、人々が身を守るための武器――猟兵たちが確保してきた――を扱う術も分からない。このような状況で『略奪者(レイダー)』たちに街を襲われたら、一環の終わりであろう。

 この街に住む人々に、厳しい世界で生き抜くための叡智を授けることができるのは、猟兵たちだけである。彼らに、生き抜く力を授けてあげて欲しい。そうした小さな行動の積み重ねがきっと、このアポカリプスヘルの文明を復興させるための鍵となるだろう。
シャルロット・シフファート
では、トレーラーから降りたら人々に電脳精霊術による電子機器の操作と作り方、更に精霊術で土壌を浄化して肥えた土に変換するわ。
更に地熱発電プラントなら土属性と火属性の精霊も少しは他のところよりいるでしょう。そこにオブリビオンストームが発生しない域で電子機器を持ち込み、電霊炉心装甲車グレムリンを呼び出して接続。
精霊AIを作り出し失われた知識を補助する統括データベース兼生活する為のさまざまな拡張装置となる自律プラントとして据え置くわ。
この世界の任務に来る度に拡張していくつもりだから安心なさい。

出来るならグレムリンの自律走行で各地の土壌回復や電子機器作成・操作技術伝授を広めたいわね。


秋山・軍犬
…物流以前に生活環境整えんとアカンこれ

【UC:異界農民伝】と睨めっこしつつ
住人と一緒に畑を作ったり
食える植物の栽培法、加工法を調べたり

水の運搬の為に余ってる資材で
荷車や容器を作成してみたり

出来る限り農業が出来る環境を整えていく
その過程の実戦経験で住人にも
農業技能を覚えてもらうっす
(料理+メカニック+情報収集+世界知識)

…で、ジョン、ナンシーそっちは?

ジョン「昔、整備工やってたからな
拠点の車の整備は何とか…燃費の改善は無理」

ナンシー「地熱発電は…
アルダワのガジェッティア呼んできてって感じ?」

ですよねー
やっぱこの世界での活動考えたら
メカニック系の仲間が欲しいっすねー

…どっかに転がってないっすかね?



●農業復興
 荒廃した『拠点(ベース)』の様子を見て、秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)がキマイラ耳をへちょんと垂れさせながら呟く。
「……物流以前に生活環境整えんとアカンっすね、これは」
 軍犬は、各地の拠点を繋ぐ物流網を作れば人々の生活が改善されると思っていた。だが拠点の人々の生活を見て考えを変えざるを得なかった。拠点には、そもそも流通させるべき食料や物資自体がないのだ。それは他の拠点でも同じこと。それでは物流網を構築しても人々の生活が良くなるはずがなかった。アポカリプスヘルとは、そこまで過酷な世界なのである。
「こうなったら、とにかく飯を作るところからっすね!」
 軍犬は【異界農民伝】と書かれた本を取り出した。その本には、農業や食品加工などについての知識が書かれているのだ。本を一読して農業についての知識をマスターした軍犬。彼は猟兵から農兵にパワーアップしたのだ!
 ――なんか弱くなってそうに聞こえるのは我慢して欲しい。
「皆、これから作物の作り方を教えるっすよ!」
 軍犬は拠点の人々を集め、街外れの農業に適していると思われる場所に向かった。
 広がるのは広大な土地。そこに畑を作り作物を育てれば、食料の自給自足は何とかなることだろう。
 だが――。
「なんっすか、この一面の荒野は!? こんな荒れ果てた土壌じゃ、作物なんて実るはずがないっすよ!」
 がっくりと地面に手をついた軍犬。その掌に感じるのは、乾燥しきって養分を一切含まない――まさに死んだ土の感触だった。試しに少量の――貴重な――水を撒いてみたが、一瞬のうちに乾いた土壌に吸い込まれ、土を潤すこともできなかった。
「――どこかから、農業に適した土を探して運んでくるしかないということっすか?」
 だが、広がる大地は目に映る限り、すべて赤茶けた荒野である。一体、どこに農業に適した土があるのか――。軍犬が絶望に沈もうとしたその時。

「ふうん、ずいぶんと土の精霊力が弱まってるのね。これじゃあ何を植えても育たないわけね」
 シャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス CV釘宮理恵・f23708)が土を手に取り、納得した声で呟いた。それは、彼女の精霊術士としての率直な感想だ。
 それを聞いた軍犬が驚きの声を上げる。
「せ、精霊力っすか!?」
「そう。土が農業に適しているかは色々な要素が絡むのだけれど……精霊術という観点から見れば、ここみたいに精霊力のバランスが崩れた状態では、作物は育たないわね」
 パンパンと手に着いた土を払いながら、シャルロットの紫色の瞳が周囲を睥睨する。
 電脳魔術士にして精霊術士であるシャルロットの目には、この辺り一帯の土地は、火属性が強すぎ、土属性が弱まってしまっている状態に見えた。
「まあ、畑を作る分くらいなら、私に任せておきなさい」
 ウィンクひとつ。シャルロットは精霊術【エレメンタル・ファンタジア】を発動する。
「猛る火の精霊よ、静まり給え。土の精霊よ、力を取り戻し給え。水よ、生じよ!」
 シャルロットの術により、ごく狭い範囲に雨雲が生成された。
 自然現象の属性を操り生じた雨雲は局所的な雨を降らせ、大地に恵みの水を与えていく。たっぷりと水を吸った大地は、もはやひび割れた荒野ではなく、作物を育てるのに適した肥沃な土壌になっていた。
「私の術でコントロールできるのは、畑数個分程度が限度ね。けど、火の精霊の力を抑えて土の精霊の力を強めておいたわ。あ、放っておくとまた精霊力のバランスが崩れるから、ちゃんと水を撒くようにね」
「水の運搬なら任せるっす!」
 軍犬は【異界農民伝】の知識により、水の運搬に使える荷車や容器の作り方を住民たちにレクチャーしていく。素材は壊れた車や家具などの廃材を用いた簡易なものだが、その分、生活に影響の出ない範囲で道具を作ることができる。これにより、住民たちは水源から畑まで水を汲んでくることができるようになった。
「さあ、あとは実際に農業体験っすよ!」
 軍犬は住人たちに、畑の耕し方、種の蒔き方、水のやり方、収穫の仕方などを手取り足取り教えていった。
「種籾を蒔いて育てることにより、そのまま食べるよりも多くの食料を継続的に得ることができる。これが農業っすよ」
 こうして、拠点に農業技術復興の希望が芽生えたのだった。

●地熱発電プラント
「で、ジョン、ナンシー、そっちはどうっすか?」
 軍犬が語りかけるのは【深夜の夫婦漫才】で呼び出した、好青年のジョンと美少女ののナンシーだ。
「昔、整備工やってたからな。拠点の車の整備はなんとか……けど、燃費の改善は無理だね」
「地熱発電はお手上げね。機械に詳しい人でも呼んできてって感じ?」
 機械系の改善を調査していたジョンとナンシーからの報告を聞いて、軍犬はがっくりと肩を落とす。
「やっぱ、メカニック系の人がいないと無理っすよねー」
 どこかにメカニックな人はいないかと溜息をつく軍犬であった。

 一方、シャルロットは、装甲車『電霊炉心装甲車グレムリン』を地熱発電プラントに接続してその構造を分析していた。
「なるほど、これが地熱発電プラントね。土属性と火属性の精霊から力を得て電気を生み出しているみたいね」
 シャルロットは電脳精霊術の観点から地熱発電プラントの本質を見極める。
「となると、土属性と火属性を活性化すれば、発電効率が上がるかしら」
 グレムリンに搭載された電霊炉心の出力を元に、シャルロットは地熱発電プラント周辺の火と土の精霊の力を活性化させた。それによりグレムリンで観測していた発電量が数倍に跳ね上がる。
「まあ、一時的な処置だから、しばらくしたら出力は元に戻ってしまうでしょうけど。本当はこのプラントを自律プラントに改造したかったのだけれど、電脳精霊術とは違う技術体系だから直接的な改造は無理みたいね」
 地熱発電プラントは科学技術によって建造されたものだ。電脳魔術や精霊魔術といった魔術を用いた技術で拡張しようとした場合、技術体系の不一致により、最悪、プラントが壊れたり暴走する危険があった。
「それに、電脳精霊術で文明を復興させても、それはこの世界の文明を復興させたとは言わないかもしれないわね……」
 文明は、あくまでこの世界の住人が復興させなければ意味がない――。畑を一生懸命耕す人々を見ながら、そう思うシャルロットだった。

●お料理教室
「はっ、それはメカっすね!」
 地熱発電プラントに接続された、シャルロットの装甲車を見て、軍犬が目を輝かせた。
 感慨に耽っていたシャルロットがその声で現実に引き戻される。
「え、ええ、電霊炉心装甲車・グレムリンよ?」
「それがあれば、街の人達に大事なことを教えられるっすよ! ぜひ協力して欲しいっす!」
 身を乗り出して協力を頼み込んでくる軍犬にシャルロットが気圧される。
「い、一体、何を手伝えばいいの?」
「それはズバリ、料理の復興っすよ!」
 胸を張って言い切る軍犬だった。

「さあさあ、お立ち会い! 今後、畑で採れるようになる予定の小麦を使った料理の作り方を教えるっすよ!」
 拠点の大通りに停車させたグレムリンの近くから軍犬の声が響く。グレムリンの横に出した鉄板は、炎の精霊の力で熱々に熱せられており陽炎が立ち上っていた。
「私のグレムリンはガスコンロではないのだけど……」
「これも街の人のためっす」
 街の人のためと言われては、無碍にできないシャルロットであった。
 【異界農民伝】で食品加工知識も得ている軍犬は、もはや超一流の料理人に等しい料理知識をもっている。軍犬はグレムリンによって熱々に熱せられた鉄板に、小麦粉と水を混ぜたものを伸ばして焼いていく。
「ふーん、ずいぶん簡単なのね?」
「発酵が必要なナンやパンは、最初に作るには難易度が高いっすからね。まずはこの簡単料理から覚えてもらうっすよ」
 軍犬は、この料理の他にも、将来、畑で栽培できるようになるであろう食材を使った料理のレシピを、街の女性たちに教えていくつもりであった。
「美味しい料理があるだけで、人は笑顔になれるっすからね。というわけで、次の料理のためにグレムリンはスチームオーブンに変形っす!」
「ちょっと、そんな変形機能はついてないわよっ!?」
 こうして、街角を賑わす料理教室が開かれ、人々は料理の魅力を知ることとなるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鍋島・小百合子
SPD重視

よもや人の住処まで荒れ果てておるとはのう
わらわからなにか手助けしてやることといえば…

「五体が満足に動く者は集まれい。これより自警の手ほどきを教授する!」
拠点で戦いに適した者達を集めて拠点での自衛訓練を始める
見張りの立て方と交代制の導入、戦闘が行われた際の避難誘導の行い方、木で作った槍や廃材を利用した武器等の装備調達方法、戦闘知識を活用しての集団戦闘のコツ等を伝授
攻め込まれた際の籠城戦の立ち回りはUC「群制御動陣」で召喚した女鉄砲兵達で実演、戦える者達に覚えさせる
この世界の鉄砲の扱いはわからぬが、同じ飛び道具を使うのであればわらわが教える戦い方を活かせるであろう
後に繋げていくためにもな


フィーナ・ステラガーデン
んー!よく寝たわ!(血液パックちゅーちゅー)
んん?教えればいいのね?骨身に刻んでやるわ!

はい注目よ!(地面に鞭ぺちーん)
私の世界もだけど、この世界は絶望の真っ只中と言ってもいいわ!
そんな理不尽に打ち勝つにはどうすればいいか!?
簡単よ!真っ向から戦えるようになればいいのよ!
今から特訓を開始するわ!私のことは教官と呼びなさい!
戦えないあんたらは蛆虫と同じよ!イエッサー!以外の返答は認めないわ!
まずは走りこむわよ!明日に向かって!!
だらだらすんなああ!(空にUC)


次は敵の殺り方よ!良かったわね蛆虫共!
一つだけ言って良い言葉が増えたわよ?
「殺せ!殺せ!殺せ!」そう叫びながらタイヤに攻撃用意よ!


ニーナ・ライト
生き延びるために必要なことは、ホントにたくさんあるけど…

まずは、身を守る方法から、だよね

高い所…ここならプラントの屋上から見張る、とか
見る以上に、聞く事もしっかり、といった基本的な事から
各種銃器の扱い方に、身を隠す方法やも教えていくね
(身を隠す方法は経験から、銃器の扱いは「造られた」故に入れられた知識から)

あと、自分が身につけてる範囲で
そのままじゃ使えない物を組み合わせて道具に変えるアイディアも
教えていきたいな
(木の組み合わせや石を使った火の起こし方や、土や炭と布を組み合わせたろ過装置とか)

後は
サイコキネシスを使って柵設営のお手伝いや

先の戦闘の経験から
連携の仕方や、その大切さも教えられたらっ


ツキカ・アシュヴィン
はー…よくあるこっちゃけど、ここもホンマに最低限の生きる手段しか備わっとらん感じやねぇ。
うーん、ちょい放っとけんやも。

とりあえず折角やし、武器の使い方とか教えとこかな。
銃の扱いなら任せといてやー☆
まず戦う意志のある人に集まって貰て、それぞれに集めてきた銃を配布。小さい銃はあんま体力ない人優先な。
【戦闘知識】で銃の種別や使う弾の種類、撃つまでの手順を判断、それぞれを各自に教えてく。手入れの仕方は、まあ分解整備とかは無理やろし簡単な掃除ぐらい?
簡単に射撃練習もさせたいトコやけど、弾も貴重やでなぁ。上手く当てるコツとかも伝えとこか。

あ、でも最後に。
殺すコトより生きるコト重視してな!


葛葉・アリス
さて、どうしようかしら
本来の神の力があればもっといろいろできるんだけど…
今の私できそうなことといえば…何があるかしらね?

とりあえず、困ってることの聞き取り調査でもしてみましょ
んー、聞いた限りだと、
私で役に立てそうなのって、機械の修理とかメンテナンスのやり方とかを教えるか、あるいは銃火器の扱いを教えるかくらいかしら

とりあえずせっかく持ってきたんだし、まずは武器の扱いからね
全員一流の兵士に仕上げてあげましょ
では、コホン
「私が訓練教官のアリス先任軍曹よ。話しかけられたとき以外は口を開くな!口でクソたれる前と後に"Sir"と言え!分かったか、ウジ虫ども!」
スパルタ軍隊式で鍛えてあげるわね?



●武器を取る人々
「よもや人の住処まで荒れ果てておるとはのう」
 拠点に物資を運んできた鍋島・小百合子(朱威の風舞・f04799)は、人々が暮らす街を見て絶句した。木と簡素な素材で作っただけの今にも崩れそうな家屋。ボロボロの衣服をまとった住人たち。電化製品や自動車などがあり、文明が発達している――いや、発達していた――ことは伺えるものの、人々の生活は苛烈なものだった。
「はー……よくあるこっちゃけど、ここもホンマに最低限の生きる手段しか備わっとらん感じやねぇ」
 ツキカ・アシュヴィン(星追いの渡り鳥・f24375)は、小百合子と並んで憂いを秘めた瞳で拠点を眺め、溜息をこぼす。
「これが、よくある風景――? まるで、戦乱や飢饉のあとのようじゃ……」
 小百合子が息を飲む。小百合子の故郷であるサムライエンパイアでは、大きな戦乱、エンパイアウォーが行われ各地に戦いの爪痕を残した。それでも幕府による再興が進み、戦時の混乱は収まりつつある。だが、アポカリプスヘルではこの惨状が日常風景だというのか。
 そんな小百合子の考えを読んだように、ツキカは真剣な声を出した。
「せや。ウチらは常に生きるか死ぬかの瀬戸際を歩いとる。せやから、危険な廃墟に赴き、食料や医薬品、武器なんかを手に入れてこんと生きていけんのや」
「そんな人々にわらわから何か手助けしてやれることは……」
 小百合子は、エンパイアウォーで猟兵たちと共に戦った徳川軍の侍たちの勇姿を脳裏に思い出していた。自分にできること。それは徳川軍までとは言わないものの、人々が自分の身を守れるように自衛できるようにすることであると。
「五体が満足に動く者は集まれい。これより自警の手ほどきを教授する!」
 拠点の人々への物資の引き渡しを終えた後、小百合子は大声で住民たちに呼びかけていた。

「生き延びるために必要なことは、ホントにたくさんあるけど……まずは、身を守る方法から、だよね」
 ニーナ・ライト(Automatic-Buddy「Ψ-7174」・f24474)もまた、小百合子と同じ考えに至っていた。
 自身が造られた地下施設から逃げ延び、これまで荒廃した世界で用心深く生きてきたニーナだ。その経験は、拠点に住む人々に有用なものに違いない。
「皆さんっ、私もできる限りのことを教えるねっ!」

 小百合子とニーナの呼びかけによって集められた人々。
 廃墟から物資を持ってきてくれた『奪還者(ブリンガー)』たちが拠点防衛の技術を教えてくれるとのことで、住人たちはやる気に満ちていた。人々は自らの身を守る気がないのではない。身を守るための技術――文明が途絶えてしまっていて、どのように身を守ればいいのか分からないのだ。
 それもすべて、オブリビオンストームによる文明崩壊のせいである。文明崩壊後、人々は、ただひたすら生き抜くことしか考える余裕がなかったのだ。

「いい、敵が攻めてきたかを知るためには、高い所……ここならプラントの屋上から見張るとか、見る以上に聞くこともしっかりするのが大事だよ」
「うむ。見張りの立て方は戦の基本じゃ。交代制を取り入れ、四六時中、周囲の警戒をおこなうのがよいじゃろう」
 ニーナと小百合子は、まず、人々に見張りの大切さと具体的な方法を教えていく。
 この世界では、いつ『略奪者(レイダー)』による襲撃があるかわからない。襲撃があった場合、それをいち早く察知し、避難や迎撃の体制を整えることが最も重要なのである。
 二人は実際にプラントの最上部に簡易的な観測小屋を作らせ、そこで三交代制の見張りを体験させた。ただ話をしたり、猟兵が手を貸すだけではなく、住人たちに実践させることこそが文明復興に必要なのだ。

「あと、そのままじゃ使えないものを組み合わせて道具に変えるアイディアも必要だよ」
「廃材を利用した武器の調達方法も教えるとしようかの」
 ニーナからは、木の組み合わせや石を使った火の起こし方、土や炭と布を組み合わせたろ過装置などを作る方法が教えられる。
 また、小百合子も木で作った槍や廃材を組み合わせた武器の作り方を教えていく。
 このように、一見使えなさそうなものでも生活に必要な道具にできるのである。

「ほな、武器の使い方も教えとこか。ニーナちゃん、武器を配るの手伝どうてや」
「うん。はい、これが銃ね」
 ツキカとニーナは、物資として回収してきた銃を住人に手渡していった。スナイパーライフルやアサルトライフルといった重い銃は若者に。拳銃のように取り回しやすい銃は老人や女性などの体力のない人に手渡していく。
「こっちの長くてデカいんが、スナイパーライフル。遠距離からの狙撃に適した銃や。使う銃弾は、この7.62mm弾。有効射程は長くて威力も高いが、連射には向かんのには注意が必要や」
 ツキカが銃の種類や使う銃弾の種類を説明し、弾丸の装填から撃つまでの手順を説明していく。説明についていけなくなった人がいれば、ニーナが丁寧に操作手順を教えていった。
「さて、これで一通りの解説は終わりや。ホントは分解整備まで教えときたいとこやけど、全員が習得するのは無理やろな。整備については、あとでウチとニーナちゃんとで、誰かに詳しく教えとくさかい、銃のメンテナンスはその人に任せるとしよか」
「あと、本当は実際に撃って練習してもらえるといいんだけど……」
 ニーナが顔を曇らせる。練習するにも銃弾が貴重である現状、無駄弾を使うわけにはいかないのである。
「しゃーない、上手く当てるコツを教えるくらいか?」
「ふむ、弾が貴重ゆえ訓練ができぬというなら、わらわの出番じゃな。我は呼ぶ武を誇らんと勇む戦女達!」
 小百合子が【群制御動陣】によって召喚したのは、女鉄砲兵たちだ。その数64人。
「この世界の鉄砲と構造は違うが、弾を撃つ訓練であれば、わらわの兵たちの鉄砲でも訓練ができるじゃろう」
 小百合子が呼び出した鉄砲兵から鉄砲を渡された住民たちは、用意された的に向かっての発砲練習をおこなっていく。
「わー、これなら銃弾の消費を気にせず練習できるね」
「こんな便利な力があるとはなぁ、さすがは外の世界の人やねぇ」
 小百合子の訓練方法を見て、ニーナとツキカが感心した声を上げた。
「これもすべて、後に繋げていくためじゃからな……」
「そうだね、こうやって身を守る術を身につければ、みんな生き抜いていけるよね」
「ああ、殺すことより生きるコト重視して欲しいわ」
 必死に訓練をおこなう住人たちを見守りながら呟く三人の瞳には願いにも似た何かが映っていた。

●目覚める悪魔
「んー! よく寝たわ! っていうか、なんかドンパチうるさいわねえ」
 小百合子、ツキカ、ニーナがなんかいい雰囲気で話を一区切りさせようとしたところに現れたのは、血液パックをちゅーちゅー吸って魔力――いや、空腹を満たしているフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)だ。はっきり言って嫌な予感しかしなかった。
「んん? もしかして訓練中? それなら私にいい考えがあるわ!」
 住民たちが交互に銃を撃つ練習をしている光景を見て、魔女はいい笑顔を浮かべて――。

 そこに、さらに葛葉・アリス(境界を操る幼き女神・f23419)が通りかかる。
「さて、どうしようかしら。本来の神の力があればいろいろできるんだけど……今の私にできそうなことといえば……何があるかしら?」
 アリスは無表情な顔で首をかしげて悩む。電脳の力や魔の者を操る権能を持つ神であるアリスだが、人の肉体で顕現しているため、その力は大幅に制限されていた。
「私で役に立てそうなのって、機械の修理とかメンテナンスのやり方を教えるか、あるいは銃火器の扱いを教えるくらいかしら――」
 そう呟いたアリスの目に映ったのは、銃の訓練をおこなう住民たちの姿だった。 
「ああ、ちょうどいいわね」
 銃を持った住人たちの姿を見て、幼き神は冷静な顔に微笑みを浮かべ――。

「「せっかくだから、敵味方に分かれてサバイバル訓練をするわよ!」」
「「「えええーー!?」」」
 フィーナとアリスがハモって提案した内容に、小百合子、ツキカ、ニーナが驚きの声を響かせる。
 こうして、住民による模擬戦の開催が強引に決定されたのだった。

●小百合子、ツキカ、ニーナ陣営
「どうして、こないなったんかなあ……」
 遠い目をするツキカの目の前には、小百合子が召喚した鉄砲――弾は訓練用のペイント弾に入れ替えてある――を持った32人の住人たちが整列していた。
 小百合子、ツキカ、ニーナが指揮する32人の住人が守備側、フィーナとアリスの指揮する32人の住人が攻撃側というサバイバルゲームが、今、始まろうとしていた。
「では、わらわは見張りを連れて櫓へ向かうゆえ、前線の指揮はツキカ殿、ニーナ殿に任せたぞ」
「うん! なんとしても敵に突破はさせないよっ!」
 二人の見張り役を連れて後方へと下がっていく小百合子。
 ツキカが指揮する右翼15人、ニーナが指揮する左翼15人が、攻撃側フィーナ陣営を迎え撃つべく、陣形を整えていった。

●フィーナ、アリス陣営
「はい注目よ!」
 どこからともなく取り出した鞭を地面に叩きつけながら、フィーナは銃を持った32人の住人たちに向かって吠えた。
「いい、私の世界もだけど、この世界は絶望の真っ只中といってもいいわ! そんな理不尽に打ち勝つにはどうすればいいか!? 簡単よ! 真っ向から戦えるようになればいいのよ!」
 そんな無茶な、という顔で住民たちが顔を見合わせる。さっきまで、まともに銃も持ったことがなかった若者たちなのだ。そんな急に捕食される側から捕食する側に回ることができるだろうか。
 だが、フィーナとアリスにそんな論理は通用しなかった。
「私が訓練教官のアリス先任軍曹よ。スパルタ軍隊式で全員一流の兵士に仕上げてあげるわ」
「そして私のことはフィーナ教官と呼びなさい!」
 突然のことに、ざわざわとざわめく住民たち。
 だが、それを見たアリスが無表情を崩さないまま怒鳴り声を上げた。
「話しかけられたとき以外は口を開くな! 口でクソたれる前と後に"Sir"と言え! 分かったか、ウジ虫ども!」
 さらにフィーナもアリスに続く。
「ひよっこのあんたらは蛆虫と同じよ! 『イエッサー!』以外の返答は認めないわ!」
 アリスとフィーナの勢いに気圧されて住民たちが返事もできずにいると、鬼教官フィーナの怒りが炸裂する。
「ほら、返事は!?」
 ピシャンという鋭い音とともに、フィーナの振るう鞭が住民――否、兵士たちの足元を鋭く叩く。
 一斉に兵士たちから返る『サー、イエッサー!』の返答。その兵士たちの顔は、これまでの捕食される者の顔ではない。それは、滅びの運命に対して懸命に足掻き、生き抜こうとする兵士の顔だった。
 その兵士たちの顔を一瞥し、アリスが満足そうに頷く。
「では、今から実践訓練を開始する! けれど、訓練だからと気を抜くようなウジ虫は我が軍には不要! 死ぬ気でかかりなさい!」
「ふふん、あんたら、いい顔できるんじゃない。なら、敵陣に突撃よ!」
 『サー、イエッサー!』という返事に合わせ、フィーナの右手に集まった炎の魔力が解き放たれる。空に向かって放たれ大爆発を起こした【圧縮セシ焔ノ解放】の轟音が、サバイバルゲームの開始の合図だった。

●小百合子、ツキカ、フィーナ陣営
「あの爆発。始まったようじゃの。伝令役は手旗信号にて前線に開戦の通達。見張り役は敵の行軍を見落とすでないぞ」
 小百合子の指示で、プラントの最上部に設けられた物見櫓の見張り役が慌ただしく動く。
「ふむ、フィーナ殿とアリス殿は中央突破で来たか。じゃが、数が同じならば防御側の方が有利。果たしてそれで勝てるつもりかの?」
 小百合子は物見櫓の上から冷静に戦場を見渡すのだった。

「ふうん、正面突破ときよるか。随分と強引な手やなぁ。フィーナさんはともかく、アリスちゃんまで無策で突撃とは予想外やな」
「ツキカさん、迎撃準備完了したよ」
 防衛側のツキカとニーナの部隊は、防護柵に守られた塹壕の中に陣取り、銃を構えていた。
「ニーナちゃんのサイコキネシスには、また助けられたなぁ。こんな短時間で防護柵を設置しよるとは。さらにありあわせの木材でスコップを組み立てて塹壕まで作るなんて感心したわ」
 防御部隊が身を隠している柵と塹壕は、ニーナのアイディアで即興で作ったものだった。その技術は、住民たち――いや、いまや街の防衛を担うという気概をもった自警団たちの今後に役立つものだろう。
「ツキカさん、敵、来たよっ! 左翼、牽制射撃開始っ!」
 ニーナが自警団たちに指示し銃撃を開始する。だが、まだ相手との距離は数百メートル離れている。銃の弾が命中する距離ではない。あくまで敵の牽制が目的だ。
「よーし、敵の注意がそれてくれれば十分や。……いまや、撃てーっ!」
 ツキカは自身の狙撃技術【凶星、死を告げる】の応用で部下たちに狙撃のコツを伝授していた。じっくりと狙いを付けさせ、敵を引きつけた上で一斉に狙撃を開始する。敵の最前線の兵士が数人、血を流して(というように見えるペイント弾が当たって)倒れていく。
「よっしゃ、訓練されてへん住民なんか、数人も倒れれば一気に敗走するやろ」
 狙撃の成功によってツキカは勝利を確信する。だが、敵は予想に反して一向に止まる気配がない。
「ツキカさん……逆に敵の勢いが増してるよっ!?」
 ニーナの驚愕の声が、塹壕に響くのだった。

●フィーナ、アリス陣営
「あの短時間で防護柵の設置と塹壕の準備まで済ますとは、敵もやるわね」
「ふん、こそこそ隠れて狙撃なんて、せこい真似ね! けど、あんたらは死なんか恐れない兵士! この程度では止まらないわよね!」
 アリスが感心したように呟き、フィーナが兵士たちに檄を飛ばした。
 『サー、イエッサ―!』という返事をフィーナ教官とアリス軍曹に返しつつ、兵士たちは進軍を止めるどころかさらに速度を上げる。
 それを満足気に見たアリスが敵の布陣を見て分析をおこなう。
「敵は一つミスを犯したわ。塹壕に籠もっての戦い――それは敵に侵入を許した時点で一気に部隊の統率が取れなくなることよ」
「さあ、敵は皆殺しよ! 良かったわね蛆虫共! 一つだけ言って良い言葉が増えたわよ? 『殺せ! 殺せ! 殺せ!』そう叫びながら敵軍に攻撃よ!」
 『サー、イエッサ―!』『殺せ! 殺せ! 殺せ!』。フィーナの言葉に答え、兵士たちは叫びながら塹壕に向けて突撃していく。
 塹壕から銃弾が降り注ぎ兵士たちが倒れていくが、それでも行軍は止まらない。仲間の死体(リタイアして倒れているだけ)を乗り越え、時には倒れた味方を盾にして、兵士たちは道なき道を切り拓く。
「死を恐れるな! 最後の一兵になろうとも塹壕に辿り着き、敵を皆殺しにするのよ!」
 アリスの号令が響き。
「最初に敵陣に辿り着いた蛆虫は、チキンにランクアップさせてあげるわよ!」
 フィーナの言葉が兵士たちを後押しする。
 兵士たちは『サー、イエッサ―!』『殺せ! 殺せ! 殺せ!』とただひたすらに答える。狂ったように目を光らせて、兵士たちが突撃していき――。

 ――勝負の行方がどうなったのかはともかく、街の住人には、街を守る知恵と技術、そして不屈の闘志が宿ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
ヒャア がまんできねぇ
クラフトだ!
いやマインの方じゃなくて灰が降る方!この世は世紀末だからな…当然世紀末ヒャッハー仕様にしますぞ!

準備するのはハックした警備ロボやらパチった部品やら新鮮な素材!これらを【武器改造】にて調理していきますぞ!
ロボを素体に装甲や武装を強化すれば…お手軽殺人ロボットの完成だ!迂闊なレイダーが襲って来ても容赦なくスレイしてくれますぞ!
住人には整備の方法も教えておこうネ

さーて早速訓練を…誰!【知らない人】だこれ!UC使ってないぞ誰なの!?怖いよぉ!
こいつも使うか…住民は今から世紀末隠れんぼの練習な!鬼は拙者、ロボ、知らない人ね!
見つかったら容赦なくゴム弾ぶち込んじゃうぞ❤


天城・千歳
【SPD】
地熱発電所併設のシェルターを使った街ですか。周辺は荒れ地で防御設備も無しと、さてどういった方向でテコ入れしましょうか。

UCで斥候部隊を呼び出し、【情報収集】で周囲の地形情報を収集、収集した情報を元に街の周辺に【地形の利用】をした塹壕と土塁を斥候部隊随伴のA-1戦車を使って構築。
戦闘用義体は【戦闘知識】を使って、街の住民に回収した武器の取り扱いと整備方法、襲撃時の対応を指導。
リモート義体は【ハッキング】【情報収集】で地熱発電プラントの整備マニュアルの拾得とプラントの設備状態の把握を行い、【メカニック】の知識で住民にプラントの管理、整備方法を教育。
本体のA-1は街の防衛戦力として譲渡。



●復興支援
「地熱発電所併設のシェルターを使った街ですか。周辺は荒れ地で防御設備もなしと、さてどういった方向でテコ入れしましょうか」
 辿り着いた拠点の様子を見て天城・千歳(ウォーマシンの電脳魔術士・f06941)が頭部メインカメラを明滅させながら呟いた。千歳は物資搬入のため、蒼い装甲をした人型モードだ。ライフルやシールド、武装コンテナは除装しているが、2.4メートルにも達する鋼鉄の巨体は威風堂々としたものだ。
 千歳は、周囲に展開させていたリモート義体および斥候部隊たちに指示を下すと、自分は指揮および情報分析を開始するのだった。

●防衛準備
 450体にも及ぶ斥候部隊は、拠点の周囲に散開し、地形情報を収集していた。
「やはり猟兵が地形操作した場所を除き、周囲は一面の荒野ですか」
 斥候部隊が調査できる範囲は見渡す限り不毛の大地。地熱発電プラントは、そんな不毛の土地の真ん中に半ば地下に埋もれるように存在していた。
「成程。これまで拠点が略奪者に襲われなかったのは、まさかこんな不毛の地に人が住んでいるとは誰も思わなかったからですね」
 だが、今後も無事で済むとは限らない。農業がおこなわれるようになり、安定した生活を送れるようになれば、そこに目をつける略奪者たちも出てくるだろう。
「その時に、拠点の人々が自衛できるようにするのが、我々の仕事ですね」
 千歳は歩行戦車『試製歩行戦車A-1型』を工事機械代わりにして、街のまわりに塹壕と土塁を構築していく。塹壕や防柵の設置方法は他の猟兵が伝授してあるので、これらのメンテナンスや拡張は拠点の人々にもできることだろう。

●プラント管理
「さて、次は地熱発電プラントの管理と整備ですね」
 千歳がリモート義体を向かわせたのは、地熱発電プラントだ。
 リモート義体はプラントの制御コンピュータにアクセスし、プラントの設備状態の把握をおこなう。さらにリモート義体はデータベースから整備マニュアルをダウンロードした。
「さて、この整備マニュアルを印刷したいところですが……当然、プリンターなんてないですよね」
 仕方なく斥候部隊の一部をプラントに向かわせ、データリンクを確立。紙とペンで資料を正確に筆写させていく。さらに廃工場で手に入れたデータも念の為に書き記していくことにした。
 斥候部隊が手分けして電子データと寸分違わぬ精密な文字や図を書いていくのを見て、驚きの表情を浮かべている住民たち。その中から機械に詳しそうな人に目星をつけ、リモート義体はプラントの管理、整備方法を教えていった。
 これで、プラントに万一のことがあっても、ある程度は住民たちの手で管理することができるだろう。プラントの理解が進めば、住民たちの手でプラントを改造することも可能なように、リモート義体は上級管理マニュアルの作成に着手するのだった。

●戦闘訓練
「あと心配なのは、武器の取り扱い方などですね」
 千歳は住民に武器の使い方を教えようと、戦闘用義体を向かわせた。そこで見たものは――。

 『殺せ! 殺せ! 殺せ!』『サー、イエッサー!』と叫びながら一糸乱れぬ動きで物陰に身を隠す住民たちと、ゴム弾を乱射しながらそれを追うエドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)、他二名(?)の姿だった。

 ――時間は少し遡る。
「クラフトだ!」
 謎の奇声とともにエドゥアルトが取り出したのは、廃工場で回収してきた警備ロボットの部品群だ。エドゥアルトは傭兵にして電脳魔術を操る力量をもって、それらを組み合わせ、変幻自在に形を作り出していく。
「この世は世紀末だからな……当然、世紀末ヒャッハー仕様にしますぞ!」
 元は警備ロボットだったはずのパーツは、ありあわせの材料で装甲が強化され、魔改造された武装が追加されていく。それは、まさに殺人マシーンともいうべき代物だった。――当然ながら頭部にはモヒカンが生えているが。
「デュフフ、これで完成ですな! これなら迂闊なレイダーが襲ってきても容赦なくスレイしてくれますぞ!」
 エドゥアルトの言葉に答えるかのように、殺人ロボットがジャキンと銃を鳴らす。赤く光るセンサーアイ。どう見ても敵側のロボットだが――暴走しないことを祈っておこう。
「そうですな。整備の仕方とか、暴走したときの非常停止ボタンとかを住民に教えておこうネ」
 エドゥアルトは、近くにいた住民――街の警備のために組織された自警団員たちに声をかけ、殺人ロボット、もとい警備ロボットの整備方法などを教えていく。
 その説明を聞いている間、自警団員たちからは『サー、イエッサー!』という返事しか返ってこなくて、ちょっとビビるエドゥアルトであった。

「さーて、警備ロボットの試運転がてら、自警団の諸君に訓練をつけるでござるよ!」
 『サー、イエッサー!』という返事を聞きながら、ゴム弾を装填した『マークスマンライフル』を構えるエドゥアルト。
「今から世紀末かくれんぼをするでござる! 鬼は拙者と警備ロボット……」
 チャキっとゴム弾を装填した銃を構える警備ロボットと、もうひとり、誰だか知らない人。
「って、誰!? 知らない人だこれ!? 誰なの!?」
 呼び出した覚えもない明らかに怪しい人物に驚愕するエドゥアルト。彼の周囲には、まれによく知らない人が現れて、エドゥアルトに協力して去っていくのだ。
「ま、まあ、なんか手伝ってくれるみたいだから、この知らない人も鬼ね! ゴム弾に当たったらアウトですぞー! では、世紀末かくれんぼ、開始でござる! 10数える間だけ待ってやらァ」
 エドゥアルトがカウントダウンを開始すると、『サー、イエッサー!』と答えた自警団たちが一糸乱れぬ動きで散っていき、物陰へと身を隠していく。
 10……9……8……7……。
「ヒャア がまんできねぇ 0だ!」
 エドゥアルト、さつじ――警備ロボ、知らない人の3者がゴム弾を乱射しながら自警団員たちを追いかける。
 だが、死線をくぐり抜ける訓練を経た自警団たちは、もはや素人ではなかった。
 エドゥアルト、警備ロボット、知らない人の連携を崩すように、家屋を盾とし、アイコンタクトやハンドサインで連携をおこない、さらには仕掛けた落とし穴などのトラップへと鬼を誘導していく。
「ヒャッハー! やるでござるな! これなら本気の出し甲斐があるってもんよ!」
 エドゥアルトの両目がキュピーンと赤く光って本気モードになる。

「なるほど、無力な住民たちかと思っていましたが、なかなか見どころがあるようですね」
 エドゥアルトの横に立ち声をかけたのは、同じく非殺傷装備に身を包んだ千歳の戦闘用リモート義体だ。
「おお、鬼として手伝ってくれるでござるか?」
「ええ、私の目的の一つは襲撃時の対応を住民に教えることです。これはちょうどいい訓練になるかと」
 戦闘用義体はエドゥアルトに向けて笑顔で頷くと、銃のレバーをセーフティからフルオートに切り替えた。
「私は催涙弾で小屋に潜んだ敵をあぶり出します!」
「では、拙者とロボと知らない人で、逃げ出してきたヤツラをスレイでござるな!」
 だが、その様子を見て、自警団のメンバーが先制して小屋から打って出て来る。『殺せ! 殺せ! 殺せ!』と叫びながら、木の棒の先端を尖らせた即席の武器を持った自警団員がエドゥアルトたちを牽制し、その間に他のメンバーが散り散りに去っていく。
「本体に緊急通信! 逃げた住民たちを高精度センサーで捕捉。予想逃走ルートの演算を!」
「拙者たちもいくでござるよっ!」

 ――こうして、エドゥアルトと千歳による鬼訓練で、自警団の練度がさらに向上したという。

●エピローグ
 こうして猟兵たちの活躍により、拠点に住む人々の生活は改善され、また敵から身を守る術も身につけることができた。
 これならば、近いうちに農業は復興し、地熱発電プラントの電力供給と合わせ、人々は安定した生活を取り戻せることだろう。
 また、その生活を脅かすことになるであろう略奪者対する供えも万全だ。弱小レイダー程度では、もはやこの拠点の自警団の守りを打ち崩すことはできない。

 こうした猟兵たちの小さな活躍の積み重ねが、このアポカリプスヘルの文明復興の足がかりとなっていくのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月06日


挿絵イラスト