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忘らるる村

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 かつて、質素ではあったが、それでも皆で何とか寄り添いながら助け合って生きてきた村人たちは今絶望の真っただ中だった。
「お父さん、お母さん……!」
 年端もいかぬ幼い少年が、ぼろぼろと零れる涙を拭う事もせず、南の方角にある領主の館を見つめ、切ない声を上げる。
 その身体を慰める様に抱く人物は、少年よりも年嵩はいっているものの、やはりこちらもまだ少年と呼んで良い年齢をしていた。
 二人の容姿は似ていない。
 彼らは、隣り合った家に住む幼馴染だった。

 かつては互いの両親と、二人の子供合わせて仲睦まじくやっていたのだが、最近交代した領主の命令で、働き手はすべて城へと連れ浚われてしまい、それから二人で生きる事になった。
 幼い少年はまだ10歳であり、年上の少年も15歳になったばかりだ。
 今、村に残されているのは、痩せてしまい実りのなくなった畑と、老人、そして子供だけだ。
 泣く幼い少年を抱きしめながら、年上の少年は天を仰いだ。
 遅かれ速かれ、このままではきっとこの村は滅びてしまうだろう事を、彼は気づいていた。
 労働力になりえる大人になる子供はまだ良い。
 領主の館での待遇が良いとも思えないが、働ける内は生かしておいてもらえるかもしれない。
 だが、老人たちにはそれすらもない。
 働き手になる可能性のある少年たちが育ち、領主の館へと連れ浚われるその時、彼らの命の灯は潰えるだろう。
 今、苦しくてもなんとかなっているのは、年齢の割に身体の出来ている年上の少年がいるからだ。
 そして。

 ――俺の迎えは、もうすぐそこまで来ている。

 おそらく、そう遠くない未来に、年上の少年である、リックは領主の館へと連れていかれる。
 生まれ育った村には愛着はあったが、何よりも幼い少年、ジョンを置いていく事が何よりも嫌だった。
 誰よりも大切な彼と離れるくらいならば、彼を殺して自分も死んでしまおうかと、暗い考えが頭を過り、今まではそれを振り払ってきたリックだったが、今回ばかりは、その考えが頭から消えることは無い。

 本当にもう限界だった。


 ミスティ・ティヌーヴィエル(白銀の人形遣い・f00778)は、難しい顔でグリモアベースに佇んでいた。
 君たちが来たのを確認すると、ため息を吐きながらも視線を合わせる。
「ようこそ、俺のグリモアベースへ。……呼び出したのは、お前らに頼みたい件があったからだ。今から行くのは、ダークセイヴァー世界だ。詳しい世界背景は知ってるだろうから、いちいち説明はしねぇが、今回もヴァンパイア共が住民を苦しめてる。お前らには、こいつらをどうにかしてもらいてぇ。此処の領主は前もヴァンパイアだったんだが、糞の中では比較的まともなほうで、領民の補助は当然しないが、基本放置だった。だから、住民は貧しいながらも何とか助け合って生きてたんだがな、領主が変わって話が変わったんだ」
 話によると、最近交代した領主は、自身の欲望に忠実であり、村の働き手たちを軒並み領主の館に拉致し、監禁しているらしい。
 贅沢な暮らしをするために、朝な夕な働かせ、ろくな食事も与えない生活を強いられている彼らは、一人また一人と命を落としているのだと言う。
「今、村に残ってるのは、じーさん、ばぁさん、ガキだけだ。ガキもある程度育てば、李館行きだ。ただ、じーさんたちは違ぇ。今、村はガキ共が助けてなんとか生き繋いでるだけだ。村のガキどもが全員館行きになれば、この村はもう終わりだ。食い尽くされた村は捨てられ、じーさんたちは野垂れ死によ。……で、今リーダー格やってる少年がいるんだがよ、そいつがそろそろ館行きみたいなんだわ。正直ガキどもが何とかしてるっていうのも、こいつ、リックが踏ん張ってるのが大きいから、ぶっちゃけこいつが居ないってのは積んでる。お前らには、村を守って、このリックを連れて行かない様にしてほしいわけだ。勿論、阻んだだけじゃ駄目だからな、阻んだ後は領主の館に殴りこんでほしい」
 君たちが、それならば領主の館にそのまま行けばいいのではないか? と不思議そうに聞くと、ミスティは苦い顔で視線を逸らした。
「ん、まぁ、そうなんだけどよ。……実はな。俺が見た未来だと、リックは連れ浚われねぇんだよ」
 その言葉に、君たちはますます不思議そうに首を傾げた。
「……このリックって奴はしっかりしてるやつなんだが、年下の幼馴染を可愛がっててな。どうしても離れたくないって思っちまってから、危ない思考になっちまってるみてぇでよ。もし、お前らが村に行かなかったら、リックはその子と無理心中する気なのさ。相手は10歳の小柄なガキだ。リックは15歳だが、背も体格も俺より良いから、抵抗はできねぇだろう。さすがにガキどもを心中させるのを見過ごせるほど俺も腐ってねぇ。リックは根はやさしい奴なんだ、ただこの村の過酷な環境があいつを追い詰めちまってる。だから、あいつらの村を助けて、未来を創ってやってくれ」
 ミスティはそう言って、領主の館について調べた調書を差し出した。
 そこには村の見取り図や、領主について、領主の配下などが分る限りで記されている。
 おそらくミスティが見た未来なのだろう。
「ただ、実は、明らかにヴァンパイアやそいつの眷属じゃない奴が一体、見えた。そいつについては、詳しい事は分からなかったが、すげぇ気になるからな。気を付けろよ」

 調査書には、謎の一体について、判明している事が短くこう書かれていた。

 その姿は、まるで死の匂いを纏った、女の天使、と。


夜来香
よろしくお願いします。

今回は、最終目標はBOSSオブリビオンを討伐する事です。

第一章では、不幸な境遇で苦しんでいる少年の心を助け、村にやってくる敵を倒すための事前準備をしていただきます。
村に残っている子供は、全部で15人ほどです。
一番下の子が、OPに出ているジョンで、一番上がリックです。
リックは、男らしいですがやや真面目過ぎる性格で、ジョンは元気ですが泣き虫です。
リックたちを信頼させ、希望を持たせてあげてください。

お察しの通り、リックがヤンデレの上にちょっと妖しい感じですが、全年齢展開なのでご安心ください。

第二章以降は戦闘になります。

「注意」
一章では、戦闘開始にならないため、敵に対する戦闘ロールは採用できません。
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第1章 冒険 『残されるもの』

POW   :    畑や村の周囲に防衛のための柵などを設置する。

SPD   :    畑や村の周辺に迎撃のための罠などを仕掛ける。

WIZ   :    畑や村を防衛するための作戦を考える。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ソラスティベル・グラスラン
この村に住む誰も彼も、子供すら心が弱り切っています…
話は聞きましたが、この村もあまりに酷い
ダークセイヴァー、闇に覆われた、先の見えない世界…

―――ならば、無理やりにでも希望の楔を打ち込みのみです
村の隅々まで【鼓舞】するように!
すぅ、と息を吸い。第一印象は、元気よく!!
「皆さん!!もう安心です、この村を救いに来ましたー!!!」
「こんにちは、勇者ですッ!!!!」
遅くなりまして、ごめんなさいっ!!

不安を祓うにこにこ笑顔で【怪力】お手伝い
大斧で軽く木を斬って村に柵を作ります!
時間が余れば全力で畑仕事っ、ふふふ、勇者のお姉さんに任せてください!
勇者の第一歩、復興のための無料奉仕!
あ、干し肉食べますか?


ナイ・デス
死の匂いを纏った女の天使……
異端の神々系、オブリビオン?
……いえ、今は村に希望を与え、信頼してもらうのが最優先、ですね

まずは「領主を、倒しにきました」と挨拶ついでに
村人全員に【生まれながらの光】
治療の必要なくても、温かな聖なる光で、包み込みます
これで信頼、して貰えると、いいのですが……

信頼して貰えても、貰えなくても、村人全員から【情報収集】
前回村にやってきた敵戦力や、その振る舞いなどを聞いて参考に
防衛作戦、考えてみます。【戦闘知識】【地形の利用】【第六感】も参考に
他の人が設置、仕掛ける柵や罠、ここにもあると、どうでしょう?こんなのあると、どうでしょう?と

ちゃんと身体も動かして、お手伝い、します




 荒廃しきった寂れた村に、イェーガーたちは訪れていた。
 背の高い少年、リックが傍らのジョンを後ろに庇いながら、警戒した様子でイェーガーたちを見つめている。
 意志の強い瞳は、リックの性格を良く表していた。
「あんたたちは……?」
 ジョンが、リックの袖を掴むのを視界の端に捉えながら、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)が安心させるように丁寧な口調で挨拶をする。
「私たちは、敵ではありません。領主を倒しに来ました」
 少しだけたどたどしい幼さの残る口調ではあったが、外見も幼く、どちらかと言えば可愛らしい姿に、周囲を囲むようにしていた少年たちは、少しだけ警戒を解いた。
 同時、その言葉と共に温かい光が周囲を包むと、その警戒は完全に掻き消えていた。
(これで信頼、して貰えると、いいのですが……)
 心配そうに眺めるナイだったが、一番警戒していたリックの瞳の力強さが和らいだのを見て、肩の力を抜いた。
 それでも、ぎこちなさの抜けない雰囲気を打破するべく、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が元気な声を上げる。
「皆さん!!もう安心です、この村を救いに来ましたー!!!」
 元気な声に、ジョンが驚き、リックの腰に抱き着いた。
 びっくりした、と大きな目をぱちぱちと瞬いてはいるが、恐怖の色はそこにはないのを見て、ソラスティベルはにっこりと笑みを浮かべて、ジョンの視線にかがんで見せる。
「こんにちは、勇者ですッ! 遅くなりまして、ごめんなさいっ!」
 暗い空気を吹き飛ばすようなその明るさに、少年たちはぎこちないながらも笑みを浮かべた。
 その様子を見ながら、ナイは一歩前に出て、今回の作戦をリックへと伝える。
 その話を聞いて、リックは少し考えた後、静かに頷いた。
「分かった。あんたたちは悪い奴じゃなさそうだ」
 かつてどんな敵が現れたのか、この村にある罠について尋ねると、しっかりとした内容が返ってくる。
 他の少年たちも協力してくれる様子だ。


 早速、対策が始まった。
 ソラスティベルの怪力で、周囲へと柵が作られて行く様は壮観だった。
 見た目は決してごつくない、スタイルの良い少女だったが、やはりドラゴニアンと言うのは頑強だった。
「ふふふ、勇者のお姉さんに任せてください! 勇者の第一歩、復興のための無料奉仕!」
 歌うような声と共に、どんどん柵は完成していく。
「お前、小さいのにすごい動くな」
 一方、罠設置に関わるナイの働きものな動きを見て、一人の赤髪の少年が感心していた。
 罠の設置を手伝ってくれている少年たちは、ナイの幼ないながらにも大人びた言動に少し憧れた様子だった。
「罠の事とかも、しっかり分かってるし!」
 少年たちの心はばっちり掴んでいるようだ。
 おどおどしていたジョンは、ソラスティベルに嬉しそうについてまわっている。
 ジョンは、母親と離れてもうずいぶんと経つのだ。
 勿論、ソラスティベルは母親にするにはかなり若い、と言うかまだ少女である。
 ただ、その日向のような明るさは、ジョンにとっては同じくらい暖かな存在に見えているのだろう。
「あ、干し肉食べますか?」
 その言葉に、嬉しそうにジョンは干し肉を受け取り、はむはむと食べる。
 リックはそんなジョンを見て、僅かに嫉妬しながらも、久しぶりに見たジョンの快活な笑顔に、胸を躍らせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノワール・コルネイユ
これほどの状況をガキだけで何とかしていたんだ
良く耐えた、と言えるだろう

なら、その頑張りに報いる為にも馬鹿をやらなくて済む様にしなければな

【WIZ】
見取り図を見つつ、可能ならまとめ役のリックにも確認を取りながら作戦を練ろう

この村が戦場になるのなら
その最中に村人が避難する場所も予め定めておくべきか
地下室でもあれば一番だが
残っている者が一か所で収まる様な場所がないか確認しておく

戦場の中心になるか、しても良い場所も目星を付けておこう
出来る限り畑や避難場所を巻き込まない場所を探すぞ
畑は出来るだけ実りの良いところを優先的に守りたいが…

私達はただの節介焼きだが
お前の苦悩は決して無駄ではなかった
それだけさ


浅川・恭介
ここを無事に乗り切ってもジョン君の将来がほんのり不安、色んな意味で。
でもそれは僕が気にすることではないですね。

僕は村と畑の周辺に罠を仕掛けましょう。
でも村人が忘れて罠に引っかかる可能性もあるので、殺傷能力の高い罠は不使用。
使えそうな僕の技能は拠点防御と地形の利用くらいかな?

ようは襲撃の察知と足止めが出来れば、後は僕や他の猟兵さんが出向いて敵を倒せばいいのです。
まずは村と畑の周囲を紐で囲って鳴子(音の出る罠)を設置。
敵が罠に気付いて避けることも念頭に避けた先に見えない様隠した鳴子も設置。
後は村の主な道の至る所に廃材でも何でも使ってバリケードを設置。
手が足らないなら村の人に手伝ってもらいましょう。


セシリア・サヴェージ
ヴァンパイア…自分の欲望のために罪なき人々を苦しめるとは、度し難い。
まずは心中など起こさないよう子供たちを勇気づけましょう。

とは言ったものの、私の暗黒の鎧を見たら逆に怖がらせてしまうかもしれませんね…う、うーん。
大丈夫ですよーお姉さんは悪いひとじゃありませんよー
…やはり私も【怪力】を活かして働きで信頼を勝ち取ることにしましょう。
防衛のための設備の設置設営を【戦闘知識】【地形の利用】を駆使しながら進めていきます。
領主やその配下たちの情報があるのなら、他の猟兵の方と戦術の相談をするのもいいかもしれませんね。




 ノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)は、リックや彼に近い少年と話しながら、対策を考えていた。
「この村が戦場になるのなら、村人が避難する場所が必要だろう。地下室でもあれば一番だが……」
 ノワールの言葉に、リックが少し考える様に視線を東の方角へとやる。
「地下室は、ない。正確にはあるにはあるんだが、中がかなり老朽化しているし、いつ崩れても遅くはない。あとは、村のはずれに人の手で作った洞窟みたいなところはあるんだけどよ」
 村人が一か所に集まれる場所。
 それが一番ベストだった。
 リックの案内で、その洞窟へと訪れたノワールは難しい顔で中を覗きこんだ。
(隠れる事は可能だが、見つかった場合が問題、か。誰かが常に護衛に回れれば良いが……)
 しかしながら、村の中心からは距離が離れている。
 戦場の中心になりそうな場所を探しながら、村を探索した結果、下手に離れた場所へと誘導するよりは、民家の丈夫そうな所へと避難させるのが無難だと判断したノワールは、他のイェーガーたちにもその情報を伝えた。
「畑は出来るだけ実入りの良い所を守りたいと思うが、どうだ」
 ノワールの言葉に異論を唱える者は居なかった。
 

 浅川・恭介(蕚開く・f01610)は、ノワールからの情報を受け取りながら、なるほど、と納得した。
 実入りの良い畑の周囲には近づけさせないように、罠を設置していく。
 村人が巻き込まれないよう、殺傷性のない物を中心に組み立てる。
 目的は襲撃の迅速な察知と、イェーガーたちが駆け付けるまでの足止めである。
 少年の一人が、もっと強い罠は作らないのか? と尋ねてきたため、説明をしつつ、彼らにも手伝ってもらう。
「これ、なあに?」
 あどけなさの残るそばかすのある少年が、恭介の設置した鳴子に興味津々と言った様子でつんつんとつついた。
「これは、鳴子と言って、敵の侵入をしらせてくれるんですよ」
 鳴子は、分かりやすい場所と、あえて死角になる場所に二段構えでつける事で、その効果を発揮する。
 敵を屠ることはできないが、音と言うのは戦いにおいて重要である。
 隠密性を重視していれば、なおさら気にしなければいけないものだからだ。
 そして、予想していない音は、敵にとっては動揺するのには十分だろう。
「バリケードの設置もしようと思いますので、手伝ってくださる方は一緒に来ていただけますか?」
 恭介の言葉を嫌がる者は誰一人としていない。
 恭介のどこか不思議な雰囲気は、この村では好意的に受け入れられたらしい。
 とてもオラトリオに覚醒する時に、周囲に火をつけて回った人物だとは誰も思わないだろう。


 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、その怪力を持って重い罠を運搬していた。
(ヴァンパイア……自分の欲望のために罪なき人々を苦しめるとは、度し難い)
 彼女は、自身の鎧が村人に怖がられるではないかと懸念しており、その予想通り、老人たちからは遠巻きに見られていた。
 行動から悪い人ではないのだろう、とは思ってはいるのだろうが、その目にはやはり僅かな怯えがあった。
 だが、子供たちは違った。
「大丈夫ですよーお姉さんは悪いひとじゃありませんよー」
 そうセシリアが言うと一人の少女が、うん、と少しはにかんだ様子で、セシリアを見上げた。
「私ね、騎士様に憧れてるのよ。今は私も小さいけれど、大きくなったら騎士様になるの。私もお姉さんみたいな素敵な騎士になれる?」
 女性にしては長身なセシリアに対して、憧れの眼差しを送った彼女に手には、この世界の絵本があった。
 その絵本に描かれているのは、黒の鎧を纏った端正な顔立ちの騎士だった。
 暗黒の鎧は、その名前の通りに呪いがかかったものではあったが、少女にとっては、その呪いは怖い物には映らなかった。
 村を助けようとしてくれているイェーガーたちを、純粋な心を持つ少女は信頼していた。
「私よりもきっと、素敵な騎士になれますよ」
 そう優しく頭を撫でると、少女は嬉しそうにくるりとその場で回った。
 子供たちが懐き始めると、よそよそしかった村人たちも、徐々に歩み寄り始めた。
 近くに居た少年たちは、しきりにダークナイトがかっこいい、とテンションが高かった。
 男の子たちは、少し影がある存在に弱いらしい。
 老人たちは、微力ながらも罠の設置を手伝い始め、身体が辛く大きく動けない者は、イェーガーたちの食事や水を用意して協力をしていた。


 罠の設置が終わり、周囲の探索も完了した後、イェーガーたちは最終的な戦略を立てていた。
「村人たちは、リックの家に集めるが異論はないな」
 ノワールの言葉にリックが頷き、他のイェーガーもそれで良いと足並みを揃えた。
「リックには、もしもの時の為のまとめ役をお願いしたい。負けるつもりはないし、負けないが、それでも村人に一切危害が加わらないとは断言できないからな。お前も戦わなければいけないかもしれない」
「分かっている」
 真剣なノワールの言葉を、隣のジョンを抱き寄せながら、リックが聞いていた。
 リックの瞳は、イェーガーたちに感化されたのか、当初の暗い色は薄くなっていた。
 完全に消えたわけではないが、ジョンを道連れにして命を絶つようには、もう見えない。
 リックに村人のサポートを託し、イェーガーたちは己の配置へと向かう。
 その道すがら、ノワールが口を開いた。
「これほどの状況をガキだけで何とかしていたんだ。良く耐えた、と言えるだろう。なら、私たちもその頑張りに報いる為にも馬鹿をやらなくて済む様にしなければな」
「そうですね。ただ、ここを無事に乗り切ってもジョン君の将来がほんのり不安、色んな意味で。……でもそれは僕が気にすることではないですね」
 恭介は、リックの言動を見て、やはり不安な気持ちが拭いきれなかった。
 かなり前向きになった様に見えはしたが、やはりジョンに対しての言動は終始少々やばかったからだ。
 それが、可愛い弟分への感情なのか、何か欲のある感情なのかは分からなかったが、残念ながらイェーガーたちは恋愛マイスターではないのである。
 犯罪さえ犯さないのであれば、外野が変な事を言う必要無いし、万が一言った場合、悪化したら目も当てられない。
「当人たちが良いのであればいいでしょう。私たちが勝てば、とりあえず心中は防げるでしょうし」
 セシリアは、僅かに漂った気まずい雰囲気を払拭するように、明るく言った。
 その言葉に、面々は互いに顔を見合わせて、静かに頷いた。

 とりあえずは、まずは侵入者たちをどうにかしてからだ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『暗闇の獣』

POW   :    魔獣の一撃
単純で重い【血塗られた爪】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    暗闇の咆哮
【血に餓えた叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    見えざる狩猟者
自身と自身の装備、【自身と接触している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 夜の闇が覆う時刻、それらはやって来た。
 巨躯を深い毛に覆われた、血の匂いのする魔獣。
 それらは、徒党をなし、村へと襲い掛かる。
 彼らには獣以上の知性はなく、ただ己の本能と、主の命令に従うだけの存在ではあったが、イェーガーたちが居なければ、おそらくは村人たちは何の抵抗も出来なかっただろう。
 バリケードの一部を壊しながら、奴らは侵入を開始し、村に鳴子の音が響き渡った。

――グガアアアアアッ!

 凶悪なる咆哮と共に、村を蹂躙するために、奴らはやって来た。

 設置された罠が、魔獣たちの動きを阻害した事で、その動きは大分緩慢だった。
 殺傷能力は低かったものの、簡単にはそれらを破ることはできなかった様子だ。
 知性が高くないのも幸運だった。
 魔獣たちは、個々で単独行動を取りながらも、一定の距離からは離れなかったからだ。
 手近な畑を荒らしながらも、魔獣たちは村人を探しているようだ。
セシリア・サヴェージ
私みたいな素敵な騎士、か。でも…ごめんなさい。
私は絵本に出てくるような騎士ではないのです。
私は、血に濡れた暗黒騎士。穢れた力と知りながらそれを操る魔女。
だが、どんな力を使っても必ず護ってみせる。それが私の騎士道だ。

魔獣どもが一纏まりになっていてくれるのなら防衛もしやすくて好都合だな。
まず【ブラッドウェポン】で暗黒剣を強化する。
魔剣と化した我が愛剣と共に前へ出る。魔獣どもめ、斬り捨ててくれる。
奴らの攻撃は全て受けきってみせる【怪力】【武器受け】【かばう】
なに、多少の傷は覚悟の上だ【覚悟】【激痛耐性】【気合い】
一体でも多く葬ってやる。それが私の使命だ。




 迫りくる魔獣の猛攻を剣で受け止めながら、セシリアは先ほどの少女を思い出していた。
(私みたいな素敵な騎士、か。でも……ごめんなさい。私は絵本に出てくるような騎士ではないのです)
 魔獣の腕を切り裂き、黒い返り血が鎧へかかる。
 幼い少女からしてみれば、村を助けてくれる騎士と言うのは、まさしく弱きを助ける清廉なる騎士と言う認識だったのだろう。
 騎士道、その教えはセシリアの中に深く刻まれている。
 彼女を含む、村の子供たち、村そのもの、それらを守る気持ちに嘘はない。
 ただ、セシリアの操るその力は、清廉とは言い難い。
 むしろ逆と言ってもよいだろう。
「キシャアアア!」
 魔獣たちが纏まってくれたのは幸運だった。
 これならば防衛はやりやすくなる。
 セシリアは他のメンバーにアイコンタクトを送りながら、魔獣を誘導しつつ切りつける。
 魔の力を宿した禍々しい彼女の愛剣が、魔獣の血を啜る。
 魔獣の爪が、セシリアの肌を切り裂くと、彼女の血も愛剣へと落ちた。
 それと同時、セシリアが己を開放するべく、その言霊を唱えた。
「我が血の代償により解き放つ!」
 力ある言葉と共に、セシリアの愛剣は、その禍々しい様を更に変化させた。
 封印の解けたそれは、暗黒騎士の名前に見合った力を生み出した。
 殺傷力の高まったその一撃は、切り結んでいた魔獣の身体を真っ二つに切り裂いた。
 断末魔の叫びをあげる余裕もなく、魔獣は地へと倒れこんだ。
「私は、血に濡れた暗黒騎士。穢れた力と知りながらそれを操る魔女。
だが、どんな力を使っても必ず護ってみせる。それが私の騎士道だ」
 戦いが終わった後に、もしも先ほどの少女が憧れではなく、怯えの表情を見せたとしても、セシリアにそれを受け入れるつもりだ。

 ――血に塗れた鎧も剣も、すべて己が選んだ道なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

三蔵・迅
子供たちに未来を見せてあげるのが私たちの仕事です
だからあなたたちも、あまりこの村を荒らさないであげてくださいね

姿は見えなくても鳴子の音に耳を澄ませ、獣たちの大まかな場所を把握
集団で固まっているのであれば、サイキックブラストの高圧電流でまとめて痺れさせてやりましょう

これだけの光と音です、獲物を探している彼等の目線を引き付けるには十分でしょう?

囲まれている仲間がいた時はバリケードの上から呼びかけ獣たちの注目を集める囮になる
さあ、あなたたちの相手はここにいますよ!

同じ戦場に立つ仲間がいれば連携しあって戦います

攻撃の際は装備した武器を念動力で振り回してます
重いだけの鈍らも、当たれば痛いものですよ


浅川・恭介
わざわざ夜中に来るとはご苦労な事で。
こう暗いと火でも付けたくなりますね。
しませんけど。

・優先防衛順位
村人>村(の建物)>畑
畑も出来る限り敵を引き離して防衛しますが、他が危険なら
そちらを優先します。

・戦闘
自分も目立たない格好で闇夜に紛れます。
相手は獣、匂いで気付くかもしれないので出来るだけ風下に。

敵が透明になったら装備した観測用電脳ゴーグルや特殊補正用
レンズを駆使して大まかな位置を割り出す。
予測した敵の位置付近に鈴蘭の嵐の無数の花弁で攻撃し、花弁
が不自然な動きをすればそこに透明化した敵がいるので畳掛け
ます。
闇夜を利用して凶絲の糸で足を引っ掛けて転倒させる罠を仕込
んで動きを制限するのもいいですね。


ソラスティベル・グラスラン
わたしを嬉しそうに慕ってくれたジョンくん
ジョンくんを大切に想う兄のリックくん
そして村の皆さん

彼らを想う度に【勇気】が漲ります…!
彼らは生きるため立ち向かうことを選んだ、ならばもはや彼らはわたしたちと同列
わたしたちと同じ勇気ある者、『勇者』です!
行きましょう皆さん、ナイくん!(f05727)
この村を覆う闇を祓う為にッ!!(【鼓舞】)

【オーラ防御・盾受け・見切り・かばう】
味方や村人さんたちを守りつつ一撃のもとに倒します!

ここに誓うは不退転の意思!勇者とは誰より前に立つ者!
勇気の剣と気合の鎧を纏う!世に伝うるは、わたしの【勇者理論】!!(攻撃重視)
ふふふ、ジョンくんたちは見てくれているでしょうかっ!


ナイ・デス
与えた希望……夢、幻ではないと、示すとき、ですね
魔獣を倒して、領主を倒して、人を村に戻して……
やる事は、たくさんあります。まずは、村の防衛!
ソラ(f05892)と、みんなと一緒に、闇を祓う、です!

【地形の利用】高いところに陣取って
【生まれながらの光】で光源となり
聖なる光の中では、味方は常時回復、敵は【光属性攻撃の生命力吸収】で衰弱してくという戦場つくり、支援します
回復効果発動時の疲労は敵からの生命力吸収で補う

敵の攻撃は【第六感、見切り】で回避。受けても【激痛耐性】でひるまず
欠損してもヤドリガミなので再生、それも光の力で高速再生して
【カウンターで鎧無視攻撃】の刃あて、生命力吸収で命を奪います


ノワール・コルネイユ
連中はバラけたか…
なら、確実に一匹ずつ仕留めて行くとしよう

鳴子の音や咆哮を頼りに敵の位置を割り出し
相対した者を始末するとしよう
避難場所の近くをうろついている個体がいれば最優先だ

敵を捉え戦闘に入ったら攻防を重ねながら【見切り】で動きを見極め
目が慣れて来たら相手の動作に合わせてカウンターを差し込んでやろう
ユーベルコードは攻撃回数重視で発動し
更に【2回攻撃】で手数を増やし一気に畳み掛ける

一匹仕留めたらまた次へ仕掛け
近くに敵が見当たらなければ【追跡】で痕跡を追って狩りに行くとしよう

最早、この村の総てが私達の狩場だ
まさか自分達が獲物になるとは思いもしなかっただろう?
だが、その程度こそが貴様ら獣の限界だよ




「連中はバラけたか…。なら、確実に一匹ずつ仕留めて行くとしよう」
 鳴子の音と、魔獣の咆哮に良く耳を澄ませ、ノワールは破邪の力を持つ剣で、魔獣の足を切り裂いた。
「避難場所にうろついている者から最優先だ!」
「分かりました!」
「行きましょう皆さん、ナイくん!」
 ノワールの言葉に、ナイとソラスティベルが声を上げる。
 魔獣たちの間を、掻い潜りながら、足元からソラスティベルが強力な一撃を放ち、魔獣巨体を地面へと押し倒した。
 勇者理論と呼ばれるその一撃は、コミカルな名称に反して中々に強力な一撃だった様子だ。
「ここに誓うは不退転の意思! 勇者とは誰より前に立つ者! 勇気の剣と気合の鎧を纏う!世に伝うるは、わたしの【勇者理論】!!」
 戦場に、ソラスティベルの快活な口上が響き渡る。
(わたしを嬉しそうに慕ってくれたジョンくん。ジョンくんを大切に想う兄のリックくん。そして村の皆さん……彼らを想う度に【勇気】が漲ります……!)
「彼らは生きるため立ち向かうことを選んだ、ならばもはや彼らはわたしたちと同列
わたしたちと同じ勇気ある者、『勇者』です!」
 その言葉に、行動を共にしているナイが、静かに頷いた。
 ナイの放つ聖なる光は、魔獣にとってはダメージとなる。
 それを逆手に取り、イェーガーたちの補助を一心に行っていた。
 ソラスティベルの直進的な動きは、やはり彼女に手傷をいくつも負わせていたが、それをナイの癒しの光がカバーしている様は、ナイスコンビネーションと言えるだろう。
「与えた希望……夢、幻ではないと、示すとき、ですね。魔獣を倒して、領主を倒して、人を村に戻して……やる事は、たくさんあります。まずは、村の防衛! みんなと一緒に、闇を祓う、です!」
 ナイの癒しを妨げるために、振るわれた魔獣の爪がナイの腕を切り裂くが、ナイは反対の手に持った刃でそれを押し返し、カウンターの一撃を食らわせた。
 通常の人であれば怯んでしまう激痛も、ナイの耐性の力は堪える事が出来た。
 欠損したとしても、ヤドリガミであるナイにとっては、修復は可能ではあったが、さすがに腕が捥げれば回復には時間がかかるため、ナイはほっと息を吐く。
「大丈夫ですかっ!」
 魔獣を叩き伏せながら、ソラスティベルが声を張り上げる。
 ナイは、静かに腕を上げると、周囲を癒しの光で包むことで、己の無事を明確に伝える。
 その光に安心したソラスティベルは、再び他の魔獣へと相対し、一瞬だけ視線を避難場所へとやった。
(ふふふ、ジョンくんたちは見てくれているでしょうかっ!)
 自分たちの戦いが、彼らの心を鼓舞できているだろうかと、そう思いながら彼女たちは駆け抜ける。


 魔獣の動きを鋭い洞察力と、俊敏な動きで見切りながら、ノワールは周囲の状況を冷静に分析していた。
 ノワールは、一匹を確実に仕留めていく作戦で、既に3体の獣を屠っている。
(集団で固まって行動されるよりは御しやすいか)
 いかにヴァンパイアの配下とは言え、所詮は獣である。
 命じられた事柄をこなそうとはするものの、それまでの作戦は無いと言っても過言ではないのだろう。
 4体目の魔獣を、カウンターで切り捨てながら、視線は既に次の魔獣を探している。
「最早、この村の総てが私達の狩場だ。まさか自分達が獲物になるとは思いもしなかっただろう? だが、その程度こそが貴様ら獣の限界だよ」
 崩れ落ちた魔獣を見下ろしながら、頬にかかった魔獣の返り血を拭い、ノワールは冷淡な声で言った。
 己の中に潜む吸血衝動が、僅かに疼き、ノワールは忌々し気に剣を握る。
「ぐがああああああっ!」
 遠目で吠えた一匹の魔獣を視認したノワールは、一気に駆ける。
「捉えた獲物を逃しはしない……!」
 その言葉は決して違えられることはない。


 戦場にこそ出ては来れない、ジョンだったが格子の隙間から、しっかりとイェーガーたちの雄姿を見届けていた。
「すごい! 皆すごいね、リック!」
 ここの所、暗い話ばかりだった事もあり、ジョンのテンションは高い。
 その隣には、騎士に憧れた少女が絵本を胸に、同じく真剣な目で戦いを見守っていた。
「ジョン、あまり大きな声は出すな」
 小柄なジョンの身体を後ろから抱き寄せながら、リックが諫める様に言う。
 集められた村人は、言葉を発する余力はないのか、怯えた様子で隅に集まっていた。
「でも、もうちょっと!」
 なおも身を乗り出そうとする、ジョンを宥める様にリックが頭を撫でながらも、羽交い絞めにする。
「だめだ!」
 できる限り、音を立てない様に気を付けるものの、ジョンの行動はいささか目立っていた。
 魔獣は知能は高くはないが、それでも若干の個体差はある。

 ――気づいた魔獣が一体だけ居た。


「わざわざ夜中に来るとはご苦労な事で。こう暗いと火でも付けたくなりますね。しませんけど」
 闇夜に紛れ、魔獣の動向を見つめていた恭介が、黒い冗談を呟いた。
 実際、冗談ではないのかもしれないが、恭介にもそれくらいの常識はあるし、実行する気は必要がなければ無い。
 開戦前に打ち合わせていた内容通り、畑を守る事はするが、あくまで村人が最優先である為、そういった行為が必要になれば話は別だったが。
 獣の一種である、魔獣たちを警戒し、あえて風下に立ちながら、恭介は魔獣の一体が他の魔獣と違う動きをしている事に気づき、そちらへと走った。
 なぜならば、その魔獣が向かったのは、村人たちが避難している建物だったからだ。
(そういえば、先ほど子供の声が一瞬聞こえたような……)
 魔獣の五感については分からなかったが、恭介が気づけるのであれば、魔獣が気づいてもおかしくはない。
 その魔獣の動きに、三蔵・迅(遠き夕の灯・f04775)も気づいていた。
 念動力でコントロールした武器で、出来る限り、その魔獣に連動する敵を減らそうと誘導を始めながら、バリケードの上を俊敏に走る。
「さあ、あなたたちの相手はここにいますよ!」
 その言葉に単純な魔獣たちは群がり、迅を落とそうと躍起になった。
「子供たちに未来を見せてあげるのが私たちの仕事です。だからあなたたちも、あまりこの村を荒らさないであげてくださいね」
 丁寧な口調で、まるだ諭すように魔獣へと語り掛ける様は、争いなど好まそうな人物に見えたが、それでもここは戦場である。
 見下ろした先に魔獣が数体固まっているのを見れば、その笑みを深くし、自身の両手へと雷の力を集め、瞬間、バチバチと激しい音を立てながら、収束した雷が魔獣の集団へと降り注いだ。
 魔法ではなく、超能力によって生み出されたそれは、瞬く間に魔獣たちの動きを止める。
 殺傷能力こそ高くはないが、複数体の敵の動きを一度に停止させることの出来る汎用性の高い力である。
 勿論、それだけが狙いではない。
「これだけの光と音です、獲物を探している彼等の目線を引き付けるには十分でしょう?」
 動きの停止した魔獣たちを、他のイェーガーたちが屠って行く。
 それでも数体、村人たちへと群がった魔獣たちが居た。
 しかし、恭介が生み出した花びらが、くるくると魔獣の周りを舞ったと同時、その巨躯を切り裂いていた。
 美しい鈴蘭の花弁は、幻想的な風景をその場所へと生み出していた。
 ここが戦場でないのであれば、何かの出し物だとでも思えたかもしれない。
 しかし、ここは戦場の中だった。
 そして、その花弁は美しく舞い、そして恐ろしくも敵の命を奪っていく。
 時間にして、数十秒だっただろう。
 その間に、魔獣の身体は千々に千切れ、残ったのは魔獣の死体だけだった。
 魔獣の屍の上に、鈴蘭の、血に塗れていない花弁が舞い、その体を静かに覆った。

 すべての魔獣が村から駆逐されたのは、戦いが始まってから45分後の事だった。


「ごめんなさい!」
 戦いが終わり、ジョンがリックにこってりと絞られていた。
 他の村人たちは、自分たちが危機を迎えていた事に気づかなかったが、リックだけはしっかりと気づいていた。
 何せ、自身たちに被害がいかないよう、イェーガーたちがあえて自身たちの場所を秘匿できるように動いていたのだから、駆け付けた二人の姿を格子から見て、リックは理解したのだった。
 リックにとってはジョンが第一優先である。
 最悪の場合ジョンを喪っていたかもしれないと思うと、身がすくむ思いがし、感極まっていた。
「お前に万が一の事があったらどうするんだ。俺を殺す気か? ん?」
「俺……、ごめ、んなさい」
 うるうると涙目でリックに抱き着き、ジョンを抱きしめるリックの姿を見ながら、イェーガーたちは生暖かい目をしていた。
 これが妙齢の男女の会話ならば、恋人同士のすれ違いやロマンスなどありがちな話ではあるが、残念ながら二人とも少年である。
 兄弟と言うには、雰囲気が何かおかしいし、ん? とか言っている声のトーンが明らかに甘いため、なんとも言えない空気が周囲へと漂っていた。
 しかしながら、ここで時間を費やしても、イェーガーたちには何の利点も無いため、恭介が話を切り出した。
「……その話は激しくどうでも良いので、すべてが終わった後、じっくりしてもらうとして。当初の目的通り、僕たちは領主の所に向かいたいのですが」
 冷静な恭介の言葉に、迅も頷いた。
「話は概ね分かっていますが、敵は領主の吸血鬼という事で良いのでしょうか?」
 ミスティが見た天使の話はあえてしない。
 リックはその言葉に、おそらく、と言葉を濁した。
 それを見て、ノワールが訝しむ。
「おそらく?」
 天使の話は、村人も認識しているのか? と思い、そう尋ね返したのだが、リックは首を左右と振った。
「いや、実は、俺たちは最近、領主の姿を見たことが無いんだ。代替わりした時に、脅しで一度だけ村に来た以降は、ずっと魔獣たちが来ていたし、村の大人たちは帰ってこないから、正直な所、何も知らないんだよ」
 ヴァンパイアが出る必要がない程度の話と判断されたから来ていないのか、それとも例の天使らしき存在が関係しているのか、判断に悩み所ではある。
 ただ、ここで守りの一手に甘んじていても、第二段の魔獣がやってくる可能性たが高い。
 やはり、ここは攻めるべきだろう。
「お姉ちゃん……」
 リックの影から、ジョンが弱々しく呟くと、ソラスティベルは快活に笑った。
「全部終わらせて帰ってきますよ!」
「みんなと一緒に、闇を祓う、です!」
 大丈夫、とソラスティベルとナイが言うと、ジョンははにかんだ笑みを浮かべて、頷いた。
 既に、村人からの信頼は揺ぎ無いものとなっていた。


 イェーガーたちはリックに村を任せ、村にある罠を簡単に調整した後、領主の館へと向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『救済の代行者・プレアグレイス』

POW   :    黒死天使
【漆黒の翼】に覚醒して【黒死天使】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    鏡像の魔剣・反射
対象のユーベルコードを防御すると、それを【魔剣の刃に映しとり】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    鏡像の魔剣・投影
【魔剣の刃に姿が映った対象の偽物】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリーヴァルディ・カーライルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 領主の館は静まり返っていた。
 そこには予想していた酒池肉林は無く、ただ静寂のみがあった。
 そこかしこに頽れているのは、おそらくながら村人だった存在だろう。
 明らかに命を失い死臭を漂わせるものが多く、それでもかろうじて生きているものも居たが、彼らの顔に生気は無い。

 そして、本来ならば領主が据わる、玉座に似たその場所には、年若い女が嫋やかに座っていた。
 可憐な風情は、神聖にも見える美しい女だったが、彼女が纏うその闇が、彼女が居方ではない事を物語っていた。
 資料にあった領主の姿は見えない。
「ようこそ、領主の館へ。ろくな歓迎も出来ず申し訳ありません」
 優し気な口調ではあったが、決して歓迎はしていない、そんな響きで女は話す。
「既に領主は存在しておりません。今は私がこの館の主。何の御用でしょう?」
 暗に、領主は自身が始末している、と女は言った。
 感情の見えない冷たい目がイェーガーたちを一瞥する。
 そして、イェーガーたちが、事の経緯を、村人を開放してほしいと伝えると、女は冷たく言葉を紡ぐ。
「申し訳ありませんが、あなた方を生かして帰すわけには参りません。……分かり切った事を。……茶番ですね」

 イェーガーたちも分かっていた。
 そこで、はい、そうですか、なんて女が言う訳がない事を。
 だからもう、この女を倒すしかないのである。
 
ノワール・コルネイユ
成程…此奴が絡んでいたか。
吸血鬼連中の様に気長に搾取をするのとは違う。
緩慢に、だが確実に滅びへ導くのが貴様らの手口だったな。
これならリックの語った近況にも合点が行く。

村人たちは最早抜け殻だが
帰りを待っているガキも居るかもしれん
出来る限りは助けてやるさ

ユーベルコードを発動
先ずは敵の動きを抑えに行く
【2回攻撃】を駆使
魔剣に狙いを定め積極的に能力を封じにかかる

魔剣の反射や投影には【第六感】で対処
偽物を創り出すのが得意技だったか
背後や側面から襲撃を警戒し
回避行動に直ぐ移れる様にしよう

まぁ、少々妖しいところもある心配な奴らだが…
助けると決めたのでな
何より、貴様に弄ばれて良い者など最初から居る筈がないんだ




 「成程…此奴が絡んでいたか」
 ノワールは、天使のような姿をした女を見て、低い声で言った。
「吸血鬼連中の様に気長に搾取をするのとは違う。緩慢に、だが確実に滅びへ導くのが貴様らの手口だったな。これなら、リックの語った近況にも合点が行く」
 その言葉に、女――救済の代行者・プレアグレイスが端正な顔をノワールへとやった。
 感情の起伏の乏しい冷めた表情は、ノワールの言葉にどのような感情を抱いたのか、はたから見れば分かりにくいが、一瞬だけ笑った口元が、ノワールの言葉を肯定していた。
「リック、そろそろ収穫時だった少年ですね」
 まるで作物を収穫するかのように、プレアグレイスは言った。
 彼女にとっては村人は、ただの道具にすぎないのだと、そう断言した。
 いや、まだ使う未知のある道具ならば救われただろう。
 この場所にあるのは、放置されると言う緩やかな地獄だけなのだから。
「ふん」
 ノワールはそう不快そうに鼻を鳴らした。
(村人たちは最早抜け殻だが、帰りを待っているガキも居るかもしれん。出来る限りは助けてやるさ)
 治療すれば、もしかしたら。
 ちらりと村人たちへと視線をやりながら、獲物である鎖を展開する。
 ノワールの殺気に気づいたプレアグレイスは、3つの鎖を己のユーベルコードでガードした。
 3本あるうちの2本は完全に勢いが殺されたが、血塗れの鎖はプレアグレイスの剣へと絡みついた。
 3本すべてが当たれば、ユーベルコードは封じられる。
 まだ、はじまったばかりの戦いの中では、どうやら完全に封じる事は出来なかったようだ。
 しかし、その動きはしっかりと捉えている。
「中々、素敵な技ですね」
「誉め言葉として受け取っておこう」
 ノワールの姿をじっくりと見つめたプレアグレイスは、嫌な笑みをくすりと浮かべた。
「さすがは半分はヴァンパイアと言ったところでしょうか。……しかしながら、村人などに味方するなど、残念ながら嗜好は良くないのですね」
 それは嫌味だったのだろう。
 だが、ノワールは動じることなく、言い放った。
「まぁ、少々妖しいところもある心配な奴らだが……助けると決めたのでな。何より、貴様に弄ばれて良い者など最初から居る筈がないんだ」
 真紅の瞳が、プレアグレイスを睨むと、プレグレイスは端正な顔をニヤリと歪めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ソラスティベル・グラスラン
分かり切った事…?いいえまったく分かりませんが!!
なぜ貴方が領主を排除してまで村人さんたちを攫うのか
村人さんを攫い、死ぬまで何をさせているのか
貴方の目的が、何一つ分からないのです!!

ですが一つだけ分かります……貴方がこれからもこの行為を続けると言うならば
わたしたちは、貴方をここで討ちますッ!!

ナイくん(f05727)、ここはわたしに任せてください
その隙にまだ息のある人々の避難を!
【勇気・盾受け・オーラ防御・見切り・かばう】で村人さんとナイくんを守ります!

漆黒の翼、黒き天使…!
そんな…わたしが、勇気が斃れてしまえば…ジョンくんたちが……
【魔王降臨】
…?その暗黒の鎧、闇の大斧…貴方は……(気絶)


浅川・恭介
領主を倒すなんてすごいですね。
その剣の力ですか?それとも貴女の力?
言いたくなければそれでも構いません。
ただ無意味な死を迎えるだけです。

・戦闘
状態は良くないですがまだ生存者が。
出来れば戦場から離して応急処置だけでも……敵が許してくれればですがね。
無理ならいいです。先にアレを倒すだけ。

どれだけ現われるかわからない偽物を一々相手にしてられません。
偽物は迎え撃つシスルの迎撃システムに任せて装備武器でプレアグレイスと戦います。
ああ、偽物を捕まえて盾にするのもいいかも。

・戦闘後
まだ救えそうな生存者がいれば治療し村へ送ります。
さて、おにショタ村(風評被害)の様子を見てから帰りますか。


ナイ・デス
まだ生きている人……よかった、いますね
……もう、死なせない。全員、救います!
ソラ(f05892)……任せました!

助けにきました。村のみんな、待ってます
と【生まれながらの光】【医術】で生存者診断、応急手当して
【念動力】で避難させます。仲間が思い切り、戦えるように
死者も……余裕があれば、運びます
攻撃等危険が迫った場合【第六感】で察知【オーラ防御】
生存者に届かないよう【かばう】
負荷が強く全身痛んでも【激痛耐性】でこらえ、守り切ります

避難完了後は仲間の回復に【ダッシュ】で戻り
気絶したソラと、謎の、筋骨隆々の鎧男(魔王)に驚き
どこかソラと似てる(髪色とか)鎧男さんにその場任せ
ソラ連れて回復に、離脱します




 一方、ソラスティベルはプレアグレイスの言葉に、怒りの表情を隠さない。
「分かり切った事……?いいえまったく分かりませんが!! なぜ貴方が領主を排除してまで村人さんたちを攫うのか村人さんを攫い、死ぬまで何をさせているのか貴方の目的が、何一つ分からないのです!!」
 鎖に絡めとられたプレアグレイスの反対側の腕に一撃を食らわせ、ソラスティベルは構える。
「家畜に何をしようと自由でしょう?」
 プレアグレイスから見れば、村人は弱者であり、強者である自身が引く理由はないとそう言い切った。
 ソラスティベルは、きつい眼差しでプレアグレイスを睨みつける。
「……貴方がこれからもこの行為を続けると言うならばわたしたちは、貴方をここで討ちますッ!! ナイくん、ここはわたしに任せてください。その隙にまだ息のある人々の避難を!」
 その言葉を受けて、ソラが力強く頷いた。
「ソラ。……任せました!」
 ソラスティベルもまた力強く頷き返すと、自身が守る盾となるため、プレアグレイスへと果敢に向かっていった。
 周囲に半ば倒れ伏している村人たちの近くにナイが走り寄る。
 やはり何人かは既にこと切れていたが、他の村人は息をしているようだ。
「まだ生きている人……よかった、いますね」
 僅かばかり、ほっとした様子でナイが息をついた。
 最悪な展開も予想はしていたが、助かる命がある可能性があるだけでも、希望だ。
「……もう、死なせない。全員、救います!」
 力ある言葉と共に、己の体力を削り、癒しの光が村人の心と傷を癒していく。
 軽傷な部分は、医療技術でカバーし、重度な状態から癒していく。
 力が無限ではない以上、この判断は正しいだろう。
(死者も余裕があれば……)
 念動力を使用すれば、亡骸を動かすことはさほど難しくはない。
 ただ、それが戦闘中であれば、至難である。
 ソラスティベルから禍々しい光が発されたのは、その時だった。
 黒き剣に映った、ソラスティベルの姿をしたソレが、闇より現れ、ソラスティベルを弾き飛ばした。
「くっ……!」
 吹っ飛ばされたソラスティベルが、ナイの近くに転がり、ナイが慌てて癒そうと手を伸ばすが、ソラスティベルはそれを視線で断った。
 恭介が、プレアグレイスの隙をつき、サポート君3号で攻撃をしかけたのは、その時だった。
「領主を倒すなんてすごいですね」
 同時、鋭利な糸がプレアグレイスの肩を狙い一閃される。
「その剣の力ですか? それとも貴女の力? ……言いたくなければそれでも構いません。ただ無意味な死を迎えるだけです」
 ソラスティベルの体制を整える時間を稼ぎつつ、恭介が挑発するように言った。
「あのヴァンパイアが私より弱かった、それだけです」
 プレグレイスにとっては、己が結局死ぬのであれば、意味などどうでも良い事だった。
 ここにきても、まだ余裕がるのは、強がりなのか、それとも……。
 ソラスティベルの偽物を、恭介のサポートロボットが、高火力な火器で攻撃しているその間にソラスティベルが、己の身体を奮い立たせようとするが、先ほどの一撃は思いのほか重い一撃だったらしい。
 足が震えると同時、地面にゆっくりとその体が沈む。
(そんな……わたしが、勇気が斃れてしまえば……ジョンくんたちが……)
 懸命に意識を保とうとするが、視界はゆっくりと暗く閉じていく。
 ナイは、村人を捨てる事はできない。
 こうしている間にも、プレアグレイスの攻撃は激しくなっているからだ。
 前衛で戦うイェーガーたちの打ち合う音が響く。
 だが、意識が消えるその最中、ソラスティベルの身体から黒い煙が噴き出し、一人の姿を形どっていった。
 黒い鎧に、大きな斧の姿のそれは、闇の化身ともいうべき禍々しき存在だ。
 ナイがその姿に驚いた様子で目を目を瞬いた。
 その姿に、プレアグレイスは初めて、嫌悪の表情を見せた。
「私と似たような、存在……不愉快です」
 ぶつかり合う、二人の衝撃がびりびりと辺りへと響く。
 恭介は、鋭い糸で攻撃をしかけつつ、サポートロボットで援護射撃を行いながら、治療にあたるナイを横目で見た。
「出来れば戦場から離したいですが……敵が許してくれればですが、ね」
 ナイの体力が持つうちに決着をつけたいと、恭介はプレアグレイスを見つめ思った。
(だが、無理なら……。先にアレを倒すだけ)
 現状に合わせて行動する、それこそが最善である、と。
 恭介は、一歩踏み込み、プレアグレイスの体制を崩した。
「ちっ……!」
「おにショタ村の様子は見届けていきたいのでね」
 さり気に風評被害な名称を出しつつ、恭介はサポートロボットをプレアグレイスの懐に潜り込ませ、火器を連射させる。
「がああっ……!」
 魔王と組みあっていた身体が後方へと吹き飛ばされた。
 ナイは、意識を失いかけているソラスティベルを何とか念動力で引寄せながら、その様子を見届ける。

 確実に戦況は、イェーガーたちへと傾いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
惨いことを…生きている者だけでも必ず連れて帰りましょう。
そして、彼女には報いを受けてもらいます。

我が剣技と【アビスフレイム】を以ってその罪諸共燃やし尽くす。
炎で牽制しながら近づき、接近戦に持ち込む。
奴の攻撃は【武器受け】で凌ぐ。
剣撃を見舞ったらトドメに炎で焼き尽くしてくれる。
彼女が何をしてこようとも私は恐れない。村人たちを…彼らを護ると決めたのだ。一歩たりとも退くものか。【勇気】【覚悟】




「惨いことを……生きている者だけでも必ず連れて帰りましょう」
 横たわる村人たちを庇う、ナイたちの露払いをしていたセシリアが、端整な顔立ちを僅かに顰めた。
「彼女には報いを受けてもらいます」
 その言葉は、虚しくも目から生きる光を失った村人たちへの手向けの言葉だったのか、それとも己に言い聞かせるためだったのか、愛剣をきつく握りしめ、プレアグレイスへ走り寄る。
「我が剣技と【アビスフレイム】を以ってその罪諸共燃やし尽くす」
 セシリアの身体から発された暗黒の炎が、剣の先から顕現すると、そのまま剣をプレアグレイスへと振り上げた。
 ガキン! と硬い鉄が当たる音が響き、二人は肉薄した。
「……貴方も私側の人間では?」
 嘲笑の意味を込めて、プレアグレイスは薄く笑う。
 しかし、セシリアはそれを意に介さなかった。
「村人たちを……彼らを護ると決めたのだ。一歩たりとも退くものか」
 安い挑発に乗る程、セシリアは浅慮ではなかった。
 自身が清廉であるとは思ってはいないが、セシリアにとって村人たちを助けると決めた事以外、今は考える気は無かった。
 幾度か、互いの剣で切り結んだ後、セシリアの暗黒の炎が猛威を振るった。
「暗き炎に呑まれ灰燼と帰せ!」
 力ある言葉と共に放たれたその一撃は、プレアグレイスの身体を焼く。
 苦し気なプレアグレイスが吠え、黒剣を振り払った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソラスティベル・グラスラン
…ナイくんの力を、感じます
わたしの【勇気】は、まだ折れていない!

魔王、今は貴方の助力に感謝します
ですがあの天使を討つのは我々、猟兵でなければならないのです!
(それでこそ、と魔王は笑い消える)
すみませんナイくん(f05727)、迷惑をかけました!もう大丈夫です!

【盾受け・オーラ防御・見切り】の全てを使い力尽くで接近
全力の【勇気】を籠めたこの一撃に、全てを賭けます!
村を、人を、全て返してもらいますッ!!

終われば村に戻って報告しましょう
まだ生存者もいました、吉報です!
ジョンくん、皆さん…わたしはまた、勇者として人を救いに行きます…また会いましょうっ!!
わっ、な、ナイくん?…うふふ、お疲れさまでした♪


ナイ・デス
……倒すまで、離脱は難しい、ですね
ソラ(f05892)……必ず、私が救う、です!

【勇気と覚悟】で【正体不明の生命力】発動
その力で全身から強い【生まれながらの光】を放ち、代償がどれだろうと治療
光に触れた敵以外の全員を回復、光で包み【オーラ防御】施して
右腕サイコキャノンに光を集束、増幅

過去が今に生る異常、治し、ます!

解放、照射【範囲攻撃】で【鎧無視攻撃】します!

敵撃破後は、村に報告、ですね
私は生きてるけれどまだ動けない人と……遺体を村に、運びます



ソラが懐かれてる様子とかみて
……ジョンくん相手に、なんだか私、もやもや、です
リックさんも、ソラにもやもや?
ふーむ……ソラー
にゃーん。抱き付き、甘えます




 プレアグレイスとの戦いは、熾烈を極めながらも、徐々にではあるがイェーガーたちへ優勢に傾いていった。
「おのれぇえええ!」
 可憐な容姿に似つかわしくない怨嗟の声を上げながら、プレアグレイスはイェーガーへと切りかかる。
 ソラスティベルによって生み出された魔王が、プレアグレイスへと強烈な一撃を放てば、彼女の身体が大きく後ろへと吹っ飛んだ。
(ナイくんの力を感じます……)
 傷ついたソラスティベルの身体を支えながら、ナイが懸命に治癒の光を使っていた。
「ソラ、しっかりしてください」
(倒すまで、離脱は難しい、ですね)
 戦況は有利ではあるが、可能であれば村人たちを含めて怪我人は下がらせたいのが本音ではあった。
 ただ、いくら劣勢だとはいえ、プレアグレイスが、易々と村人たちを逃がしてくれると言うのは考えにくい。
 イェーガーたちは、頑丈ゆえにそれほど問題はないだろうが、村人たちは話が別である。
 怪我もあるし、精神的な話もある。
 どう考えても、この環境が彼らに与えるのは害だけなのだから。
 そうなってくると、一刻も早い決着が必要だった。
 ナイは、己の力をすべて使用し、その時間を早める事を選択した。
「私が、救う、です!」
 強い言葉と共に、ナイの身体からより眩い光が溢れ出す。
 対象は敵以外のすべての存在だ。
「過去が今に生る異常、治し、ます!」
 右腕のサイコキャノンによって増幅され、収束した光が周囲を包み込むと、イェーガーたちの怪我が消えていく。
 疲労は薄れ、傷が塞がると同時、各々が全力でプレアグレイスへと猛攻をかける。
 そして、ナイの言葉は、ソラスティベルにしっかりと届いていた。
 傷ついていた身体は癒され、ソラスティベルの意識が完全に浮上すると、ソラスティベルは自身を取り戻すために、ゆるりと首を左右へと振った。
「すみません、ナイくん、迷惑をかけました! もう大丈夫です!」
 まだ若干の違和感があるのだろう、僅かに眉間に皺は寄っていたが、顔色は悪くない。
 明るい声でそう言うと、ナイの頭を優しくなでる。
 さすがに全員の全快は不可能だったが、イェーガーたち、そして村人たちの様子も、先ほどと比べれば段違いに良いものへと変化していた。
 死へと向かうだけだった一部の村人は、その命を繋げることができた。
 大地をしっかりと踏みしめたソラスティベルは、己の獲物をしっかりと握り、地を駆ける。
「わたしの【勇気】は、まだ折れていない!」
 そう叫び、蒼雷を纏う大斧を手に、果敢に切り込んだ。
 心の中で、呼び出した魔王へと感謝の言葉を捧げると、魔王だったそれはすっとその姿を消した。
「全力の【勇気】を籠めたこの一撃に、全てを賭けます! 村を、人を、全て返してもらいますッ!!」
 イェーガーたちの手管によって、プレアグレイスはその力を消費し、最後のあがきとばかりに黒き天使の姿へと変貌を遂げた。
 もはや、プレアグレイスに勝機は無いが、このまま負けるつもりがない、と全力を振り絞り、猛攻をしかけてくる。
 しかし、それは燃え尽きる前の最後の輝きでしかない事は明白だった。
 翼が千切れ、黒剣が砕かれ、それでもまだ何とか立っていたプレアグレイスだったが、懐に潜り込んだソラスティベルは決して彼女を逃がさなかった。
「これぞ我が勇気の証明、来たる戦渦の最前線! 故に応えなさい、勇者の大斧よ!!」
 己が全力の一撃は、プレアグレイスの身体を砕き、その身体は鈍い音を立てて、地面へと倒れ伏した。

 ――そして、プレアグレイスは二度と立ち上がることは無かった。



 イェーガーたちの手によって、救出された村人たちは、村に送り届けられて家族と再会を果たしていた。
 その中には残念ながら亡骸となってしまった村人もいたが、彼らは家族と再会できたことを、イェーガーたちへと深く感謝していた。
 村人たちの手伝いをし、亡骸を埋葬しながら、皆で祈りを捧げる。
「ありがとう、お姉ちゃん」
 ジョンは、ソラスティベルに大分懐いていた。
 いざ別れるとなった時、行かないで、と泣きついたほどに。
「ジョンくん、皆さん……わたしはまた、勇者として人を救いに行きます……また会いましょうっ!!」
 そう優しく諭すソラスティベルに、ジョンが嫌がった挙句、お嫁さんになってほしい、と言った時は、周囲の空気が凍り付いた。
 子供の可愛い憧れ話ではあるのだが、リックがジョンに向ける執着が、気のせいではない事は確実であり、病んだ部分が自身たち、いや村人たちにこそ向くことは避けたかった。
 これは、イェーガーたちの総意だった。
(うん、ヤンデレになって心中されるのは困ります)
 今も、ソラスティベルを見つめるリックの目は、全く笑っていないのが本当に怖い。
 そして、ナイもその様子を見て、内心、もやもやしていた。
「……ジョンくん相手に、なんだか私、もやもや、です」
 ふくれっ面でそういうナイは、ちらりとリックを見つめる。
「リックさんも、ソラにもやもや?」
 その言葉に、イェーガーたちを含めて、村人の中に激震が走った様に空気が凍る。
 だが……。
「リック、寂しいの? 大丈夫だよ。俺、一番はリックだから」
 リックのあふれ出る様な殺気は、ジョンの言葉ですぐに四散した。
 リックの胸に飛び込むように抱き着いたジョンは、満面の笑みでリックを見上げている。
「本当、か?」
「うん!」
 嬉しそうな声を隠さず、二人がいちゃつきだし、イェーガーたちはそれを苦い思いで見やった。
 ジョンは無意識だろうし、そこに深い意味は無い筈だが、おそらくながらもう彼は逃げる事は出来ないだろう、そう思ったからだ。
 イェーガーたちは、このまま村を離れるのだ。
 そんな彼らが、リックたちの関係を変える事は不可能だし、それこそそんな余計な事をしようものなら、本当に無理心中しかねない。
 そう考えると、この展開はある意味では正解なのだろう。
 幸運にも、二人の家族は無事だったので、彼らがきっとストッパーになってくれる、とそう信じたかった。
「ふーむ……ソラー。にゃーん」
 ナイは、そんな空気は気にせず、ソラスティベルと抱き着き甘える。
「わっ、な、ナイくん? ……うふふ、お疲れさまでした♪ 」
 ソラスティベルは最初こそ戸惑い、リックたちを見つめたものの、なるようになる、と気持ちを切り替える。
 可愛いナイの頭を撫でると、ナイが嬉しそうに笑う。

 村人たちに見送られながら、イェーガーたちは各々の場所へと帰って行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月18日
宿敵 『救済の代行者・プレアグレイス』 を撃破!


挿絵イラスト