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黒魔術洋館キネマ殺人事件(作者 桐谷羊治
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#サクラミラージュ 


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#サクラミラージュ


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「探偵には殺人事件がつきものだ」
 男はそんなことを思った。殺人事件、それも連続殺人事件が好い。特に意味があるような連続殺人。見立ての華やかさ。それを探偵が解決する姿、いかにも好い。派手だし、目立つ。男の性分にぴったりであった。
 さてここに、一本のキネマが在る。二階建ての豪奢な屋敷に、氷の張った広い池。雪に埋もれた枯れ木の生えた庭。先祖が集めた悪魔や黒魔術に関する蔵書に傾倒する長男、爬虫類のために借金をしてまで温室を作った次男。いくつもの人形に囲まれて暮らす長女と、流行り物が好きで、兄らを疎んでいる三男。気が強く、連れ子の三男を溺愛する母親、それを非難する高圧的な父親。離れに住む、出戻りの卑屈な伯母。その私生児たる息子……。
 彼らが次々に殺害されていくという筋書きのこのキネマ。
「実際の『連続殺人事件』になったら――探偵が必要になりそうじゃあないか?」
 多少の展開の前後や、登場人物の変更なんてかまいやしない。
 連続殺人事件を解決する名探偵さえ、自分なら。
 最後にスポットライトを浴びるのが自分であれば、それでよいのだ。
 だから男はその台本を実現することにした。
 自分が目立てる、自分が探偵役になれる、そんな殺人事件を。

 ●

「連続殺人事件を扱った映画の、台本通りに役者が死ぬ――という連続殺人事件が起こるわけなのであるが」

 葛籠雄九雀は常と同じくのんびりとした調子で、集った猟兵に予知を説明した。

「探偵として目立ちたいので、自ら連続殺人事件を起こしたと。動機は実に単純であるな。困ったものである」

 事件が起きるのは、キネマ撮影のために貸し切りになった洋館だ。二階建てで部屋数も多く、ダンスホールなどもある立派なものである。元はとある華族が建てた別荘であったとのことだが、金銭に困った先代当主が、キネマ関係者相手にロケ地として貸し出しをするようになったらしい。

「役者や監督などのスタッフは、予知した時点でこちらから連絡し、来ないように言ってもらったのであるが……それでは勿論、影朧が出て来ないわけである。だが撮影が始まれば、影朧は必ず現れる。名探偵として登場するためにな。つまりその場所ではもう撮影ができんのであるよ」

 要するに、何が言いたいのかと問われると。

「彼らに代わって、連続殺人事件の被害者になって欲しいのである」

 九雀は猫背を伸ばしながら、さらりと言った。

「ああ勿論、スタッフとなってくれても構わん。一応台本はあるが、その通りにする必要はない……と思うのであるぞ。連続殺人事件さえ起きれば良いのであるからな。因みに、急なことであったので、機材が一部そのままになっておるらしいが……触ってもいいが壊すのだけは勘弁してくれ、とのことである」

 戦いになったら結局壊れると思うのであるがなあ。九雀はそんなことをこぼしつつ、間の抜けた口調で首を傾げる。

「まあ、最後に影朧はついてくるものの、概ねやることは撮影所見学のようなものである。是非楽しんできて欲しいのであるぞ」

 それではよろしくお願いするのである。
 そして彼は、いつもの通り頭を下げた。

 





第3章 ボス戦 『『名探偵』斜録・家々』

POW ●僕の完璧な推理を聴きたまえ!
【誰にでも思い付くような穴だらけの推理】を披露した指定の全対象に【この推理は一切の隙がなく完璧であるという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD ●助手君、始末してくれたまえ。
自身が【自らより目立つモノへの強烈な嫉妬】を感じると、レベル×1体の【家々の助手たち】が召喚される。家々の助手たちは自らより目立つモノへの強烈な嫉妬を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ ●助手君、何とかしたまえ!
【家々よりも有能だが戦闘能力のない助手】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は比良野・靖行です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 


「諸君!」

 窓から差す橙の光に照らされて、男の声は朗々としている。屋敷の屋根裏から庭の隅まで届くほどはっきりと、舞台に立つ役者のように、男は両手を広げる。だが、男の言う『諸君』とは誰のことだろうか。
 彼の眼前に広がる雪の庭には、猟兵が一人立つばかりだ。

「安心するがいい、僕が来たからにはこの殺人事件はすぐに解決してみせよう」

 何故なら僕は名探偵なのだからね。男は言う。男は誰を見ている?
 最早彼の目が何を映しているかなど、誰にもわからないのかもしれない。

「死んだ者たちは哀れだ、だが、仇は僕が必ず討つ」

 今すぐにでも真実を明らかにして、裁きを下してみせようじゃないか。男が両手を、指揮でもするように掲げる。寂しい雪の屋敷で、それが作られた喜劇であるとも知らずに。

「そして、主役の僕に喝采を送りたまえ」

 ――そこで、探偵のすぐ傍に、屋敷の中から一人の男が走って来る。黒いシャツに、黒いサスペンダー。目立たぬ――認識できないほど没個性的な容貌の男は、探偵の傍に来ると、何事かを耳打ちした。

「何だね、助手君――」

 訝しげに、不機嫌そうに男の言葉を聞いていた、探偵の表情が変わった。

「『死体が生き返った』、だと――?」

 それは驚愕か。否。否――

「――なんだそれは」

 ――それは、憤怒だ。

「なんだそれは――そんなの、『僕より目立つじゃあないか』!」

 主役になれない男の、探偵の、スポットライトの外で演じ続ける他ない端役の――憤怒が男の整った顔を歪めた。

「そんな馬鹿なことが――あって、あってたまるものか! あの男より目立つために――僕は――助手君! 確かに君たちは彼らを――」

 そこまで口にして、探偵は、ハッとした顔で唇を結んだ。そうだ。それを認めたら、彼は『目立つことができない』。『名探偵になれない』。『超えたい存在を超えられない』。だから男は俯いて沈黙した。

「……だが……それでは……あんまり惨めじゃあないか……」

 男が呟いて、それから、耳が痛くなるような静寂が数瞬あった。

「……嗚呼、そうだ」

 顔を上げた男の顔からは、憤怒が消えていた。狂気の陶酔が、男を満たしている。それは誰の目にも明らかであった。

「『蘇った死体』の謎も――一緒に解けばいいのか」

 それでこそ名探偵というものだ、ははは、ははははは。
 過去に囚われて変質した男は、マントを翻して屋敷を見上げ、離れを見遣り、最後に庭の猟兵へと視線を戻した。

「庭へ集いたまえよ、『死体』の諸君! 『生き延びた』者も、皆! 君たちの『真相』を、僕が暴いてみせよう!」

 そうしたら。
 そうしたら――

「僕があの男より『目立つ』ことが証明できるだろう!」

 そうだろう?
 影朧となった男は、正気を失くした鳶色の瞳を、猟兵たちに向ける。

「そして、君たちも、僕が踏みにじろう。何、『死体』だったのだから――本当の『死体』に戻してしまったって、誰も困らない」

 さあ。

「諸君も、僕の影となれ」