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誰もやらない事を率先してやりましょう

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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「昔、誰もやらない事を率先して出来る人になりましょうって教わったことがあります。けど、さっそく試しにその人の足元に牛乳を撒いたら怒られたんですよね。あれ、なんででしょうか・・・・・・」
 神妙な面持ちで猟兵達に話し掛ける少年、グリモア猟兵のラック・カルス。
 お前はそうだからそんななんだと言いたくなる様な、軽い雰囲気の彼であるが、あなた達に仕事の話があるらしい。
「アルダワ魔法学園の地下には幾つか迷宮があります。どれも危険で、一方で見返りもありそうな、そんな迷宮がいくもあって、生徒だったりみなさんみたいな猟兵が挑んでいるというのは既にご存知ですよね?」
 今回も、そういう仕事だとラックは話す。ただし、あまり良くない迷宮の一つだとも。
「今回、僕が探索を頼む迷宮は、すごく暗いそうです。光源なんてどこにもなくて、五里霧中を歩くような・・・・・・あ、走っても大丈夫ですよ。誰も咎めませんし。壁とかえげつない怪物にぶつかる可能性は高いかもしれませんけど」
 危険な場所であるのは確からしい。さらに言えば、危険はそれだけではない。
「そこを越えれば目的の場所ってわけでもなさそうな場所でして。多分、もっと奥があるのではないかと。入ってすぐだけが大変な迷宮っていうのも無いでしょう?」
 つまり、とても面倒くさい迷宮を探索してくれとの話らしかった。
「そんな迷宮ですから、だーれも挑みたがらない。結果、目的地にまだ誰もたどり着いていない。こりゃあ大変だって話で、みなさんに話を持ってきたわけですね」
 自分達は便利屋か何かかとツッコミを入れる猟兵だっているだろうが、ラックはそのツッコミよりも、また別の質問に答えることにしたらしい。
「え? そもそも迷宮の奥の目的地には何があるか・・・・・・ですか? えっと・・・・・・これまで、奥まで探索しようとした人が帰ってきてないので分かりません。はい。そういう迷宮なわけですね」
 誰もやらないのではなく、やりたがらない事ではないか。
 もしかしたら猟兵達は、そんな言葉を次々にラックへと浴びせかけている事だろうが、彼は気にした風では無さそうにあなた達に向き合う。
「誰もやりたがらない事を率先してやろうって人も、結構いますよね。もし今回、みなさんが挑まなければ、そういう類の人がこれからも犠牲になると、そういう予感がします。さてみなさん、どうしましょうか?」
 そんな無謀な人間は放っておくに限る。そう背中を向ける猟兵だっているだろう。
 一方、誰もやりたがらない事をしたがる猟兵だっているはずだ。
「あ、そうだ。迷宮へ挑もうとする人に対して、とっておきの言葉がありますよ。挑まれる方には、どうか幸運を! どうです?」
 選ぶより先に幸運を祈られた猟兵達。その言葉をどう受け取るかは猟兵次第である。


ゴルゴノプス
 みなさんこんにちは! ゴルゴノプスであるべきものです!
 今回は迷宮を探索してもらうシナリオでございます。猟兵の方々にはいろんな活躍をしていただき、迷宮を堪能していただければなと考えている次第!
 それではどうか、よろしくお願いします!
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第1章 冒険 『視界0の進行』

POW   :    勘を頼りに突き進む

SPD   :    空気の流れやダウジング等で正しい道を割り出す

WIZ   :    魔力で灯りを付けたり等で視界を無くす原因を打ち消す

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リリィ・オディビエント
誰もやらなぬというのならば、私がやろう。それもまた騎士たる者の勤めだ。
【POW】
暗闇に対して灯りで対抗――という安直な発想で抜けられるならとうに攻略されているだろうからね。
幸いにも私はキマイラとして狼の特徴を持つ、多少の暗視や鼻の良さであえて灯りをつけず行くとしよう。【野生の勘】をより発揮できるように、気持ちも獣になりきらねば……アオーン!

もし凶悪な罠などがあれば、ユーベルコードの使用も辞さない。動けないデメリットもあるから慎重に使わねばならないがな。

※アドリブ、組み合わせ、シリアスorコメディ自由



 すんすんと鼻を鳴らす音が闇の中に響いている。
 視覚が封じられ、だからこそ聴覚が鋭くなっているのか。普段は大した音とは思わない、そんな音が暗闇の中に大きく響いた気がした。
「こう暗いと、心の方まで暗く……いや、動かなくなって行くと言えば良いのか?」
 鼻音だけが響くと言うのは騎士として、いや女性として少し恥ずかしいと思ったのか、リリィ・オディビエントは独り言を呟いた。
 自分の動き以外は無音の空間。そんな中で心は不思議と落ち着いて行く。いやさ、抑え付けられている様な感覚に近いかとリリィは思い直す。
(暗闇は自分の心の動きだって隠してしまう。それに染まって、何も考えられなくなった時、私もまた、この闇の遭難者になるのかもしれないな)
 ふと、そんな事を思い浮かべてしまう。こんな暗闇の中で勘だけを頼りに進んでいればそうもなるかとリリィは一度立ち止まった。
「はて、どれほど進んだことやら。大分置くまで進んだ気がするが、まったく進んでいない気もする」
 言いつつ、そっと、ずっと手を滑らせていた壁から手を離す。
「闇の中で、手を探るものを無くしてはいけない」
「うわっきゃ!?」
 闇の中で、自分以外の声が聞こえるというのはひたすらに驚く事態である。これが暗闇の中でなければ、リリィは驚き尖る狼の耳と尻尾を見られていた事だろう。
「闇の中で……驚く声は驚く程に響くものだ」
「え、えっと……もしかして、私と同じ迷宮の探索者か何かか?」
 敵意は感じなかった。ただ気配も匂いも感じなかったので、その声がすぐ近くに聞こえた事に驚いたリリィ。未だ視界は暗闇の中であり、相手の姿は見えないが、声と吐息の様なものはしっかり聞こえていた。
「我が名はコプス。然り。そちらがこの迷宮で歩みを止めぬ探求者だと言うのなら、同じ人種と返せるだろう」
「な、なるほど。ちょっと変わった、アルダワ魔法学園の生徒さんか何かか。いや、実を言えば、この様な迷宮で足を進ませ続けるというのには、もううんざりしていた頃合いでな。名前しか知らない相手でも、共に探索できるというのなら有難い」
「もしや臆病か? その狼が如き手も耳も見せつけか? だとすればそちらの本質はその兎の足にあると言うのか」
「……あまり人の外見をあげつらうのは感心しないな」
 その言葉に反して、リリィは怒りでは無く、畏怖感から自らの唾を飲み込んだ。この暗闇の中で、リリィがあえて隠しているこの足の姿形を、この声の主はどうやって知った?
 夜目が利くにしても、この迷宮には星明りすら差し込まない。今、再びリリィが前に歩き出しているのも、リリィの、動物染みた勘があればこそだ。
 このコプスの声は、そんな風に足を進めるリリィのすぐ近くを、まるで雑談でも続ける様に付かず離れずの状態を維持していた。
「脱兎の如くと言う割には、冷静さを維持しようとしているな」
「この先に何があるか知っているか? 碌なものではない」
「この闇は闇そのものの恐怖で、本当に恐いものを隠そうとしている。そうは思わないか?」
 コプスの声がずっと聞こえ続けていた。半ば泣きそうになりながらも、その声を聞きながら進むしかない。いい加減、怒鳴り、黙らせてやろうかとすら思えて来たその時。
「おい」
「ワンッ!?」
 コプスの声色が急に変わったので、半ば犬染みた悲鳴を上げてしまうリリィ。やはりコプスの姿は見えないままだが、恐る恐る声の方を向いた。
「そっちじゃあない。奥に進みたいならこっちだ」
 コプスはそれだけ告げると、少しずつ、その声を遠くへ向かわせる。つまり、声の聞こえる方へ来いとの事らしかった。
(何か……罠にでも誘おうとしてるみたいだ……な)
 ここで立ち止まるべきか? リリィは自らに問うてから、罠だろうと前に進む事を決める。
「ああ、お前の言う通り、臆病だが……誰もやらない事を率先してやろうとするくらいには、物好きなんだ」
「虚勢としたら見事な意地だ。付いて来い。まだ先は長い」
 声だけしかその姿を想像させないコプス。それを追う事に決めたリリィは、迷宮の深くへと足を進ませる事になった。
 それは彼女の意地か、それとも好奇心から来るものか。何にせよ、彼女もまた、誰もやりたがらない事をやってしまう性質の猟兵であるらしかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

詩蒲・リクロウ
任せてください!とは意気込んだ物の、思ったより暗くて怖くて、ちょっと足が竦みそうです…。

ですが、ええ、暗いだけならどうってことありません。

自分は、勘を頼りにして道を進もうとおもいます。
はい、勘です。明かりを用意しようにも手持ちにはなかったので、勘です。
でも、案外馬鹿に出来ませんよ?


……
………

うぉおおおおお!秘技、迷宮壊し(メイズクラッシャー)ッ!!

(勘で歩き回ります。適当に歩いて回っていきます。迷ってしまって、もう無理ってなったら、グラウンドクラッシャーで、壁とかモンスターとか破壊して無理やり突破します。 まあ、でも、そんなことしなくてもいけますよ、ええ。)
※アドリブ、絡み可


リチャード・チェイス
人という者は闇を恐れる存在である。
何故ならば、闇はその闇が故に虚無を存在させる。
人は闇から目を背け、虚無の内に存在する真実すら無かったものとするのである。
しかし、私は鹿である。闇の中とて、そこに道がある事を知っている。
であるならば前へと進むことができるのである。
よいかね? これは垂直落下ではない。
よいかね? これは同じ場所を回っているのではない。
全ては明日への前進なのである。

そして、真実を導き出すのは実に合理的であり必然的なものである。
(交差路の真ん中に名状しがたいバールのようなものを立てて手を放す。
そして倒れた方向に歩き出す。自信満々に)



「人は闇を恐れる。何故か分かるかね?」
「えっと……さぁ? ちょっと分からないですね……」
 二人のシャーマンズゴーストが、暗闇の迷宮をひたひた歩いている。
「闇とは虚無だ。人は闇に目を背けているのではなく、その虚無こそを恐れている。普通は、闇を見ると目を凝らすものだ。違うかね」
 闇を語るシャーマンズゴーストの名前はリチャード・チェイス。シャーマンズゴーストの中では、比較的垢ぬけた雰囲気と、それ以上に怪しげな空気を纏うその男であるが、そもそも暗闇の中であるため、そんな雰囲気は目に映らない。
「はぁ……そうですよね。その通りだと思います」
 闇を聞き流している方のシャーマンズゴーストの名前は詩蒲・リクロウ。シャーマンズゴーストらしい、どこかあか抜けない雰囲気を持つ彼であるが、やはり暗闇の中であるため、お互いの外見の相違を確認し合えていなかった。
(けど、声を聞くだけでも違う人種だなぁと思ってしまいますよね。シャーマンズゴースト同士ではありますけど)
 詩蒲から見たリチャードはそんな同族であった。他の人間は、シャーマンズゴーストをだいたい似た外見だと思うかもしれないが、彼らからしてみれば、それぞれの外見も中身も大きく違っている。
 そもそも、こんな迷宮を彷徨いながら、闇についてを語り始める感性を詩蒲はもっていなかった。
「虚無を恐れる人間は、果たして闇を恐れ、闇に包まれたそれからも目を背けてしまった」
「なるほど。けど背けなくたって、普通の人間には何にも見えないですよここ」
「私は鹿だ」
「鹿でしたか。いやー、何か違うなこの同族とか思っていましたが、鹿であるとは気付きませんでした」
「さもありなん。こうやって迷い歩く人間は、大事な事にも気付けないものだ」
 まあ、鹿では無いのだから仕方なあるまいと詩蒲は返そうとして、口を塞いだ。なんで闇の次は鹿の話をしなきゃならないのか。ただでさえ、本当に迷いそうなこんな迷宮の中で。
「一応は、自分の勘で進んでいるって事に気を付けてください。自分が混乱して道を見失えば、本当に迷宮を彷徨う事になりますよ。鹿らしく動物の勘にでも頼ってみますか?」
 じと目でリチャードの方を見ようとするも、どうせ見えないのだから意味が無い。
「闇から目を背けてはならない」
「だから背ける事もできないくらいの暗闇で―――
「自分が既に迷っているという現実からもである」
「……ま、まあ。勘だけで進むのは、鹿だろうが人間だろうが、危険な事でもあります」
 そう言って、詩蒲は立ち止まる。このまま進み続けていると、振り返って道を戻る事すら不可能に思えたからだ。
「鹿の助けを借りたいかな? 若きシャーマンズゴーストよ」
「多分、年齢的にはあなたもそう変わりませんよね?」
「私は鹿だ。鹿の時の流れと、シャーマンズゴーストのそれは違うものだよ」
「さいですか」
「鹿だ」
 鹿の手助けは期待できそうにない。どうしたものかと詩蒲は思案していると、暗闇の中に何か、からんからんと金属が転がる音が響いた。
「道はこちらだ。若きシャーマンズゴースト」
「試しに質問しても良いですか?」
「若人は何時だって質問をするものだ」
「何をさっき転がしました?」
「バールのようなものだ」
「へぇ。で、進もうとする先はどうして決めました?」
「バールのようなものが選んだ道を進むのだよ」
 質問する時間は無駄であったか。くらくらと頭が痛くなりそうな予感がするも、隣で足音が聞こえた。
「ちょっと、本気でバールが転がった方へ進むつもりですか!?」
「行く先も無く、立ち止まるよりもマシであろう?」
 リチャードの足音がまた聞こえ始める。これ以上距離を置けば、その足音だって見失うかもと焦り、詩蒲もまたリチャードの足音を追った。
 そうして、壁にぶつかった。
「うわっち!?」
「ふむ。こっちは壁であったか。バールさんもアテにならぬものだ」
「本当にあなたはぁ!」
 いい加減、見えない相手であろうとも掴み掛ろうかと思えた詩蒲。だんだんと自暴自棄になっている自分を感じる。
「ここに壁があるっていうのなら、いっそ叩き壊してやろうか……」
「おいおいおい。それは待て。そんな事したら天井が崩れて来るぞ?」
「っ……何者ですか!?」
 リチャード以外の声が突如として聞こえた。闇の中、相手の顔も姿も見えぬものの、確かに自分達以外の誰かが近くにいるのだ。
「こんな場所で何だが、怪しい人間じゃあない。俺の名はズィウォーキ。この迷宮の探索者さ。あんた達よりらしい姿のな」
 その姿が見えないので怪しい人間であることは変わりあるまいと詩蒲は考えるも、先に返答を口にしたのはリチャードの方だった。
「この迷宮は、あまり人が入りたがらない場所だと聞いていたがね?」
「ふん? そりゃあ、こんな危険な場所に近づく輩は禄でもないだろうさ。だが、人のやりたがらない事したがる性質なのが俺でね。あんた達は違うのか?」
 ズィウォーキの言葉に、詩蒲とリチャードは黙り込む。物好きな仕事を選んだ自覚は双方ともにあったからだ。
「ついてきな。ある程度までなら奥へ案内できる。そこであんたらが何をするのかは知った事じゃあないが……」
 言うや、ズィウォーキはその声と足音をある方向に進ませて行く。その先に、この迷宮のゴールがあるのだろうか。
「闇を恐れてはならない」
「けど、気を付けるに越した事はないですよ」
 とりあえず互いに自らの意思を確認した後、詩蒲とリチャードは歩き始めた。
 丁度、ズィウォーキの足音が進む方へと。
(それ以外、選択肢が無いからだけど……それにしたって―――
「我々は猟兵だ。闇を恐れるよりも、その先にあるモノについて心を動かされる性質である」
 悔しい話だが、リチャードの言葉は的を射ていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒川・闇慈
「ふむ、迷宮ですか……こういう場所は化物を封じておくか財宝を隠しておくか、ですが。はてさて……」

【行動】
wizで行動です。炎獄砲軍を使用して炎を作り、灯りとして使いましょうか。
炎の一個は常に自分の側をついてこさせて、周囲を照らしてもらいましょう。
曲がり角や分岐路にきたら、目印代わりに炎を浮かせて置いておきます。
これで多少は探索が捗るでしょう。他の猟兵の方の手助けにもなるかと。

「魔導書なり、マジックアイテムの一つでもあればよいのですがねえ……」


イベリア・オディビエント
妹のリリィがここにいるからって、勢いで追いかけて来たのはいいんだけど…何も見えないや……
会えるまで1人かぁ……



【SPD】
召喚した狼に騎乗して進もう。この子燃えてるし、多少は灯りになるかもしれない。
なんだっけ…空気が流れてる方が出口って聞いた事ある気がする。
召喚した狼の炎の燃えてる向きでそれが分かればいいな。
【野生の勘】も使っていこう。


暗い所には何があるか分からないから警戒して進まなきゃね。何があってもいいように気を付けよう。



「へえ、名前はガダバ……」
 暗闇の迷宮を進む猟兵達の中には、既に同行者を得ている人間もいる。
 彼女、イベリア・オディビエントにもまた二人ほど、この迷宮を探索する同行者が存在する。
「ええ、私はガダバ。あなた達みたいに戦う力は無いけれど……この迷宮でなら、幾らか役に立てると思うわ」
 姿は見えぬが女の声。歩く度に聞こえる衣擦れの音などから想像するに、確かに戦う力が無さそうな、華奢な人間の印象を受ける。
「身体付きに関して言うのならば、私も他人の事を言えませんが、万が一何かとの戦いとなれば、ある程度の戦力にはなるとだけ、私は言っておきますよ」
 ガダバの言葉に、もう一人の同行者、黒川・闇慈が答えた。イベリアの記憶が確かならば、彼の姿は迷宮に入る前に見た記憶があった。グリモアベース辺りだったか。確か黒い服を着た、言う通りに細長い男であったはずだ。
 そんな男に対して、イベリアは一応の同意を示す。
「……そうね。襲われれば反撃もする」
 戦うための力ならある。イベリアはそう自負していた。
「聞く限り、この様な迷宮に、わざわざ入ってくる人間にしては、行動が消極的に思えるわ? いったい、どういうつもりで探索をしているのかしら?」
 少しだけ、イベリア達の言動に引っ掛かりを覚えたらしいガダバ。彼女の方は迷宮に入ってから出会ったため、声とその動作の音からしか姿を伺う事は知れなかった。
「わたしは、ただ妹を追ってここに来た。それだけ」
 騎士を自称するが、その実、どこか抜けたところのある妹だ。心配であったし、何よりイベリアの方も、一人にされるのは不安だった。
 言うなればやや人見知り。こうやって二人の同行者がいたとしても、安心するどころか警戒してしまう。そんな感情が、つい言葉に出てしまうから、ガダバはそこに引っ掛かりを覚えたのかもしれない。
「私の方は、意欲が無いと言うわけではないのですがね。戦闘そのものを目的としてここに来ているわけでは無いというだけで」
 半端な心持ちでここにいると思われるのは心外だとばかりに黒川が答える。彼なりに、この迷宮には思うところがあるらしい。
「ふむ。じゃあどうしてこの迷宮に? あまり、人が入りたがらない場所じゃない?」
「何時だって、私が動くのは魔法がそこにあるからです。この迷宮とて、蒸気機関と魔法に寄り作られた場所でしょう? そこにどの様な神秘が潜んでいるか。そも、この暗闇とて、光が一切入らない事そのものが、何がしかの技術に寄るものか。それとも、魔法としての力が込められているのか。気になりますし、そこの究明にこそ熱意を込めたいと考えています。ええ、まったく。不可思議だ。不可思議で面白い」
「……急に饒舌になった」
 黒川の言葉に対して、イベリアが呟く。こういうのを何と言うのだったろうか。自分に興味のある事だけは、空気を無視して言葉を多くする人種……。
「他人との接し方に難があるわけではありませんから、あしからず。単に、他人より興味のある事に対する欲求が過大なだけです」
「それはそれで……うん」
 何と言うべきか迷うイベリアであるが、いちいち取り合うのも面倒になりそうだなと、とりあえず言葉を止めて置く事にした。この黒川と言う男、話すと多弁になるか軽率になるかのどちらかだろうと勝手に思い込み、その面倒を避ける事にしたのだ。
「私は……分かるわ。そう。人は興味のある事に熱を持ってしまう。それは人だけでは無いかもしれないし、私もそうだから、ここにいて、あなた達の隣にもいる。そう思うの」
「良く……分からない」
 そこまで没頭するものを自分は持っているだろうかとイベリアは首を傾げた。
「あなたにとっての、こんな場所まで探しに来るくらいのご家族に対しての熱意。それが私にとっての趣味みたいなもの……ですかね。ああ、こういう例えは難しい」
 そんな黒川の言葉を聞いて、さらにイベリアは戸惑ってしまう。
「それも……良く分からない」
 妹に向ける様な思いを、その他の何かに向ける。そんな事ってあるだろうか。イベリアには想像も出来ない話であった。
「どちらにせよ、この暗闇の中での先導は、私がした方が良いみたいね。二人とも、探索そのものに集中できる状態じゃ無さそうよ」
 ガダバには見えないだろうが、そこには同意して頷くイベリア。こんな瞬間にも、ついつい妹はどこだと探ってしまう自分がいる。この状況では、そんなよそ見にしたって迷う切っ掛けになってしまうだろう。そう、こんな、何も見えない暗闇の中では。
「あっ……」
「ふむ。どうかされましたか?」
 黒川に聞かれて、答えるべきかどうか思案する。別に秘密にしたわけではないが、イベリアにとっては恥かもしれないからである。
「明かり……用意できるかも」
 つまり、いちいちこんな暗闇の中を歩く必要は無かったと言うわけだ。それなら最初からそうしておけと言われそうで、やはり言いにくい事であるものの、気付いた以上は言わないわけには行くまい。
「……ああ、そういえば私もそうでした」
 ただ、黒川の方も光源を持っているとの事らしい。イベリアと同様に忘れていたのだろう。もっとも、彼の場合は、この暗闇そのものに魔法の何がしかを感じて、そちらの興味が上回っていたかもしれないが。
「明かりを……つけられるの?」
 ガダバがそう尋ねて来て、イベリアはやはり相手に見えない頷きで返した。
「うん。こんな風に……地獄の大いなる侯爵。お願い、私に力を貸して。自信を与え、勝利へ導いて」
 イベリアが唱えると、彼女のユーベルコードが発動し、炎を纏った巨大な狼が迷宮に姿を現した。狼の身体の分だけ、炎は大きく、ひたすらに暗かった迷宮を赤く照らして行く。
「なるほど、であれば、この場において、あなたと私は似たもの同士かもしれませんね。さて……場を満たすは灼炎の王威なり。一切全て灰に帰せ、インフェルノ・アーティラリ」
 イベリアと同じく、黒川もまた炎を光源と出来る力を持っていた。黒川が発生させたその炎は、黒川の意思によって動く炎であり、やはり暫くは迷宮を照らしてくれるだろう。
 そんな二人の猟兵が作り出した炎に寄り、暗闇の迷宮はその姿を変える。闇は去り、そこには単なる道が現れる。それだけの事だ。それでも、二人は首を傾げる事になった。
「ガダバ……?」
 先ほどまで、すぐ近くで話していたはずの女探索者の姿がいない。
「はて……燃やしてしまい……ましたか?」
 黒川の言葉は冗談であろうが、冗談にもならぬ響きを持っていた。
 いや、本当に燃えたわけでは無いだろう。先ほどまで、ガダバがいたと思っていたそこには煤一つすら残っていなかったのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

玄崎・供露
やりたくないこと。ねェ。……ま、いーさ。やってやるよ。小間使いみてェでちと癪だがな

【WIS】
「暗視」「視力」技能を使って……暗視装置を兼ねた電脳ゴーグルを装備して探索する。それなりに性能良いし、俺自身それなりに目の良さには自信がある。ただ暗いだけならこれで見える筈だ、よな。……取り敢えず試してみるか。

これが通用しないならそれはそれで後続の連中に情報が残る。無駄じゃねェと信じたいが、さて。


※アドリブや絡みなどご自由に、大歓迎です


己条・理鎖
誰もやりたがらないというのは関係ないですね。後に出る犠牲者をなくせるなら行く意味はあります

【SPD】
【暗視】を使用してなんとか見えないか試してみます
無理だったとしても【聞き耳】や【第六感】を使用して常に視覚以外でも【情報収集】しながら進んでいきます
逆に何かいた場合にこちらの情報を渡さないように常に【目立たない】よう【忍び足】を使用します

ユーベルコードは怪物や罠に対してどうしても使用しなければならないという時だけ使用します


神威・くるる
何があるかわからへん真っ暗な迷宮
ええねぇ、刺激的やわぁ
もしかすると(血が)美味しい男前とかが奥にいはるかもしれへんし、ちょいと物見遊山してこよかー

言うても、うち、ホンマもんの猫ちゃんやあれへんし
夜目はそこまで利かへんねよねぇ
ここは本職に頼もかな
というわけで子猫ちゃんたちを呼び出して風の流れや匂いを辿って奥へ誘導お願いしますー

……まぁ、言うて猫やさかい
寄り道してもーたり
途中で飽きて遊び出したり
居眠りしたり
光る目で後から来た冒険者はんらを驚かせたり
してまうかもしれへんなぁ……なぁんて、ふふ



「っ……まただ」
 この暗闇の中で、もっとも的確に動ける人間がいるとすれば、夜目がきく人間だろう。
 そんな人間の一人である玄崎・供露は、自分にとっては単なる迷宮であるこの場所で舌打ちをした。
「また、とは?」
 同じく、暗視する力があるらしい己条・理鎖が、玄崎の舌打ちに反応する。
 闇であろうとも見えるその迷宮内の光景であるが、静かこの上ないのは変わり無いので、ちょっとした音でも良く響くのだ。
「蜘蛛だ、蜘蛛。さっきから、どうも蜘蛛がうろちょろしてる」
 玄崎はその蜘蛛に触れたわけでは無いのだが、どうにも気味が悪く、手で何かを振り払う仕草をする。
「そういえば……私も何度か見ていますね。この迷宮。どうにも巣を作っているらしい」
 それくらいの頻度で蜘蛛を見ていた。
 そこで玄崎と己条は互いに暗闇を見据え、嫌な想像を浮かべてしまった。
「この暗闇の中じゃあ、この蜘蛛に気付かないまま進んでた可能性もあるんだよな?」
「勘だけで、周囲が暗闇のまま進むなどをすれば、そうもなるでしょうが……」
 知らず知らずに内に、蜘蛛だらけの空間を進んでいる。それを想像すると、かなり気味が悪いと思ってしまう。
 自分達みたいに暗視に頼るのでは無く、明かりを灯して進むのが本道なのだろう。そういう事をする猟兵なら、そもそも辺りの蜘蛛には悩まされないかもしれない。火を恐れて近寄って来ないかもしれないし……。
「うへぇ、思ったよりも気味の悪い場所だよ、ここは。あー、何でこんな場所で探索しなきゃならないんだか」
 玄崎のその言葉を聞いて、己条にはふと思う事があった。
「そうですね。私達、どうしてこの迷宮を探っているのでしょうか」
「いやいやいや。それは仕事だからだろ。こんな迷宮に入るもの好きが、迷宮から二度と出て来なくなる被害者にならない様、俺達が何とかするって、そういう話だったろう?」
 何を当たり前の事に、今さら疑問を持っているのか。玄崎が己条を訝しむ様に見つめていると、彼女は首を横に振った。
「だって私達、犠牲者になっていませんよ、まだ。この迷宮に入り、暗闇で困る猟兵はいるかもしれませんが、それでも多分、私達みたいに、何か危害が加えられたりとかはしていないかも」
「……そりゃあ、そうだけどよ」
 夜目をきかせて、周囲を見つめる玄崎。また、壁を這う蜘蛛らしきものが視界を横切り、不快な気分になったが、それだけだ。強烈な罠も、圧倒的な怪物も、この暗闇の迷宮にはいないのだ。
 だからこそ、こんな世間話をしながら歩みを進めていられる。たかが蜘蛛に気分を悪くしていられるのだ。
 この迷宮に、暗闇以外の危険は無い。それは己条の言う通りなのである。
「何かあるとしたら、ここじゃなく、もっと奥かもしれないな?」
「かもしれません。一般的な技能を持つ探索者であれば、きっと、この程度の暗闇は抜けられますし、この程度で迷う程度なら、そもそも挑もうとも思わないでしょう」
 だから、被害が出るとしたらこの場所では無いのだ。そう考える。
「歩みを早めてみるか」
「ええ……その、気味が悪いのは変わりありませんし」
 その気味の悪さはきっと、迷宮の中に何匹もいる蜘蛛のせいかもしれない。
 どこまで足を進めても、そこかしこに蜘蛛がいるのだ。埋め尽くす様にとまでは行かないが、ずっと蜘蛛に見張られている様な、そんな気分になってくる。
 だが、そんな薄気味悪い暗闇も、もう少しで抜ける。何故なら、その暗闇が薄れて来たからである。目が慣れて来たなどと言う話ではない。迷宮の向こう側に、確かに何かの明かりがあるのだ。
「おっし、これでこんな暗闇ともおさらばで―――

 にゃあご

 前を向いて進んでいたからか、背中に気をやるのを忘れていた。玄崎と己条は背後から聞こえて来た猫の様な鳴き声に、びくりと肩を震わせた。
 恐る恐る。背後を振り返る二人。そこには、やはり暗闇の迷宮があった。それと、暗闇の中で光る目が幾つも。
「っ! ユーベルコードを―――
「ああん。待って待って。待ってぇな。そんなんされたら、猫ちゃん達が困ってしまうやろ?」
 暗闇に映るのは目だけではない。その目の正体の、黒い子猫達と、さらにもう一人、猟兵の神威・くるるの姿がそこにあった。
「あ、あんた……猟兵か?」
「ええ、せやねせやねぇ。同業者さんやねぇ。それでもってこの子はうちの子猫ちゃん達。これまで迷宮を案内してくれたんよ?」
 どうやら、玄崎と己条は知らず知らずに、何かを焦っていたらしい。まさか自分達と同じ猟兵に、一瞬でも怯えてしまうとは。
 だが、現れた神威の方も、何か困惑して、少しだけ驚いた顔を浮かべていた。
「あら? あらあらあら? どこ行きはったんやろ?」
 漸く明かりが見え始めたこの迷宮で、それでも何かを探す様に視界と顔を動かす神威。彼女が連れた猫も、彼女と一緒に顔を動かしていた。
「何か探し物ですか?」
 己条が神威に尋ねると、彼女は首を傾げて答える。
「物言いはりますか……人? さっきまで一緒に迷宮を進んどりはりましたんやけどなぁ。いのうなってしまいましたんどす」
「おいおいおい。そりゃあ穏やかじゃない話だな。どういう奴なんだ? その、見失った人ってのは」
 玄崎が尋ねたところ、そのどういう奴という言葉に神威は困った様な表情を浮かべた。
「シティはん仰る方なんやけども、こんなくっらい迷路の中で出会うてしもたさかい、顔も背格好も知りませんのやぁ。いやあ、一緒に迷宮の奥へ進もうなんて前向きな事言うてくれる、素敵に美味しそうな方やったんやけどねぇ。声だけやけど」
「美味しそうって、どんな印象だよ……」
「ああ、肉まで食べてまお言う話やないんやで? ただ、ちょっと血を吸う言い張りますか」
「ええ……」
 神威の言葉に、若干引いた様子の玄崎。それだけではさっぱり姿が判断できないという現実的な問題もあった。
「まあ、ええどす。なんや知らへんけど、猫ちゃん達はむしろずっと警戒しとりましたから、きっと猫に好かれへんタイプの方やったんでしょう」
 神威が召喚した猫たちの方は、どうにも神威を守る様に、その周囲から離れようとしていない。別に、玄崎や己条を警戒してのものでは無い様子だが……。
「それで探すのを止めるって、どういう理屈の諦めですか。どういう理屈の……」
「だってぇ。おらんくなってしもたもんはしゃーないやないのぉ」
 出ないと思っていた被害者が出た。それは大事だと思う己条であるが、肝心の神威がその気では無くなっている様だった。
「そんな事より、あっち。あっちどないなっとるんやろうね? うち、この迷宮がもー、暗い以外はさっぱり退屈やったから、刺激的なんがあるとええ思うとるんやけど?」
 と、言いながら、猫達と一緒に、明かりのある方へと進む神威。その足取りはどこか軽く、その声は、彼女なりにどうにも状況を楽しんでいる様にすら見えた。
 どうしたものかと彼女を見つめる玄崎と己条であったが、次の瞬間には、神威の声が聞こえて来た。
「まあまあまあ。これはまた、奥はこんな風になっとったんやねぇ?」
「なんだ? 何か見つけたかって……うわっ、マジかよ」
「暗くは無くなりましたが、これはこれで……今後の探索が大変そうと言いますか……」
 三人の猟兵が、暗闇の迷宮の向こう側にある、その光景を見つめる。
 そこは、迷宮の中だと言うのになみなみと水を湛えた空間が広がっていたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『水没した通路』

POW   :    体力や肺活量に物を言わせて、泳ぎ切る

SPD   :    乗り物や効率的な泳法を用いて、すばやく泳ぎ切る

WIZ   :    水流を正確に読み、流れに乗って速やかに泳ぎ切る

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その空間は、さらに奥へと繋がる一本道。
 先ほどまでの暗闇の迷宮とは違い、どこからか明かりが漏れて来ており、迷う事は無いだろうと思われるそこであるが、問題が一つ、いや二つ。
 一つはそこに水らしきものが溜まっているという事だ。恐らく、この道を進むには、水の中を泳ぐ必要がありそうだ。
 そうしてもう一つは、その水から異臭がする事。明らかに普通の水では無く見える。
 この水をどの様にして泳ぎ切り、道の向こう側に向かうのかは、猟兵達の判断次第だ。
 水や、そもそもこの空間を調べてみるのも良いだろう。もしかしたら、思いも寄らぬ発見があるかもしれない。
イベリア・オディビエント
水だ…見渡す限り水がある……
しかもなんか臭いし、入って大丈夫な水なの?
水が、水が死んでいる…
泳げないし濡れるの怖いしでどうしたらいいの…


あ、リリィ。
こんなところにいたんだね。
お姉ちゃんは心が折れそうだよ。

【SPD】
リリィが重り兼ビート板みたいになってくれるみたいだから掴まって泳ぐか…
無敵にはなるみたいだけど動けなくなりそうだし、私が頑張らないと進まない。
私のユーベルコードはいらなそうだね。
せめて【早業】で早く泳げればいいけど。
……これ、帰りも同じルートなのかなぁ。
そもそも進まないと帰りも何もないんだけど。
文字通り、死ぬ気で頑張ろ……


リリィ・オディビエント
イベリア・オディビエントと同行

水場……非常に苦手だ。泳げない…こともないが、犬かきだし潜るのも…そっちは重さでなんとかなるかな?
ん、姉さん。来てくれたんだ!よし、姉妹パワーでなんとか乗り切ろう。でも鼻がもげそうだね…強く生きて姉さん!

無敵城塞の状態で匂いとかいろいろなものから無敵の重し状態になります。
それを姉のビート板代わりにしてもらいます。(沈むのでビート板とは少し違うかもしれない)


ティアー・ロード
はいかつりょう?
すまない、私に酸素ゲージはないんだ
水中も念動力で進むよ

さて、これで水は構わないけど
少々水質が怪しいね
水に詳しい者に協力を頼もうか
えーっと、マッシブながらに愛らしい農家くんに……鹿?

「やや、訳知り顔だね!何か分かりそうかい?」
「……ん、男か。全く、シャーマンズゴーストは解り難いね」

「では共に水入りといこうか!」
「演者は舞台に出るまで準備に専念するものさ」

使用ユーベルコード【刻印「裏面工作」】

仮面の裏に無抵抗の協力者を飲み込んで「楽屋裏」に招待するよ
私が水中を進み
協力者を輸送する形だ
「んぐ、ぷっはぁ……さ、早く」

楽屋にはコスチュームとかあるけれど
「あまり荒らさないでくれたまえよ?」


リチャード・チェイス
【ティアー・ロード(f00536)、詩蒲・リクロウ(f02986)】

姿無き者に導かれたのだ。
仮面しか無き者に導かれるのも、また道理である。
うむ、ほどほどに荒らすことを約束しよう。
ところで、若きシャーマンズゴーストよ。
人生は長い、だが有限である。
(躊躇なくティアーに飲み込まれ、首だけ出してリクロウを急かす)

若きシャーマンズゴーストよ。探索疲れかね?
パティ鹿のサミュエル・リトル君の菓子は絶品であるぞ?
無論、水も厳選したものなので安心するのでる。
(向こう岸で水の調査&乾かすために休憩。純白のテーブルとイス、紅茶と洋菓子で優雅に)

つまり、サミュエル・リトル君は水のテイスティングが可能である。


詩蒲・リクロウ
【ティアー・ロード(f00536)、リチャード・チェイス(四月鹿・f03687)】
ここ、泳がなきゃなんですか、うぇー。
ところでこの鹿?と仮面は一体なにを___
……は?ちょ、まってください?うわ、ちょ、こっち来ないで!?うぎゃーーーー!!
(仮面から逃げて死ぬ気で泳ぎ切る)

ぜぇはぁ……ぜぇはぁ……
な、なんなんですかこの人たち……(嗚咽)
えぇ…なんです、水質調査……?やりませんよ……。
ちょっと??その水で紅茶入れる気ですか??



「参った。ここに来て水場とは……どうしたものか……」
 水の溜まった空間を見て考え込むは、暗闇の迷宮を越えてやってきたリリィ・オディビエントだった。
「あの何やら怪しげなコプスと言う輩も、ここに来て急にいなくなるし、なんだか水は臭そうだし、そもそも私は犬かきしか出来ないし。本当にこれからどうするか……」
「……あれ? リリィ? リリィじゃないっ。やっと見つけた」
 リリィは背後から聞こえてきた、その驚きと安堵の感情が混じった様な声に振り向くや、そこには見知った顔があった。
「えっ、姉さん? どうして姉さんがこんなところにいるの!?」
 猟兵として、どこか騎士染みた様子から、リリィは態度を崩す。目の前に、自分の姉、イベリア・オディビエントが現れたのだからそうもなる。
 こんな迷宮の奥で再会するというのは、どういう偶然だろうか。
「あ、あのね、リリィ。お姉ちゃん、リリィが心配で……」
「それで追って来たのね、姉さん……もー、そんなに心配しなくても良いのに」
「けど、ここ、不安になる様な場所って言うか、その、迷宮の中で会った人が急に消えたりするし……お姉ちゃんの方が心が折れそうだよ……」
 本気で不安になっている様子の姉を見て、リリィの方が困ってしまった。ここに姉が現れてくれた事は、少しだけ心がほっとしたのであるが、この不安げな様子は、リリィも伝染しそうになる。
「お困りの様子だな。お嬢様方」
 そんな女性二人の様子を見て、二人……いや、二匹かもしれない姿。それも違う、二匹と一つと表現するしかないおかしな集団が近づいて来た。
「……誰?」
 妹を守る様に、リリィの前に出て、その集団を警戒するイベリア。睨む様に見据えるは、人というには異形と言える輪郭を持つ何者か二体と、その二体のすぐ近くをふよふよと浮く妙な物体。
「見て分からないかな、お嬢様方。鹿だよ」
「いや、そんな名乗り方をしたらさらに怪しまれますよ?」
「……鹿?」
 イベリアの警戒が疑問に変わる中、異形の二体のうち一体。シャーマンズゴーストの詩蒲・リクロウが、嘴の様な口を開いた。
「シャーマンズゴーストです。シャーマンズゴースト。自分が詩蒲・リクロウと言いまして、こちらが心底認めたくありませんが、同族のリチャード・チェイスさん」
「鹿だと名乗っているだろうに。なあ、お嬢様方。暗くも無くなったこの迷宮で、その姿を間違えるはずもあるまい?」
 詩蒲に紹介されたリチャードであるが、彼が見つめるのはリリィとイベリアの姉妹であった。詩蒲がリチャードの扱いを、主に話を流す方向で慣れてしまったせいか、寂しいのかもしれない。
「姿と言われても……いや、服装や体格以外は良く似ているのだが……」
 家族以外には弱気は見せるまいと、騎士然とした態度と口調をなんとか取り戻すリリィだが、頭に疑問符が浮かんだままだ。何なのだろう、この人たちはと言った疑問符が。
「まー、人間から見ればそうなりますよね。自分だって、そちらの姿、そっくりで服装が違わないと見分けが付きませんもん」
 違う種族同士、仕方ないと思う他無いし、それでも敵対さえしなければ良いだろうと詩蒲は結論を出した。もっとも、鹿と同一視されるのは御免被るが。
「とりあえず……敵じゃあない? そこの……仮面? も?」
 二人のシャーマンズゴーストの横に浮かぶそれを見つめるイベリア。
 何だかごく自然に浮いているが、そもそもこれは何なのだろう。
「む? 私のことか? ふっ、まあ、この艶やかな、白磁の様な肌に目を奪われ、人らしく無いなどと思われるのも仕方の無い事だろうな」
「白磁の様な肌……というか、そのままそういう質感というか……人では絶対に違いそうだから、やっぱりこう……」
「ヒーローマスクのティアー・ロードだ。よろしく頼む」
「あ、はい……」
 とりあえず、ティアーのその言葉で、無理矢理に納得しておく事にしたらしいイベリア。何かに引っ掛かっていれば、悉くにツッコミを入れなければならない気がしたのかもしれない。
「ふっ、自己紹介と鹿の紹介が終わったところで、お嬢様方が困っていたのは、この何とも言えぬ香りを放つこの水に対して……かな?」
「何か良い香りがするみたいな表現、とりあえず止めません?」
 話を戻すは鹿ことリチャードであったが、詩蒲は逐一、リチャードの言葉に訂正を入れようと試みる。そうしなければ、話がまとまる気がしないからだ。
「ううむ。私は多少泳げるか程度で、姉はそもそも泳げないのでな、どうしたものかとは思っていたが……」
 眉を曲げて、本気で悩み始めるリリィ。そうなると、ノリ出すのがリチャードと言う男、いや、雄らしい。
「私に良い考えがある」
「じゃあ、それ以外で、何か方法はありませんかね。そもそもこの臭い、泳げたとしてもそもそもの水が大丈夫なのかどうか疑問です」
 リチャードの案を聞かずに流し、詩蒲は漂ってくる臭いについて注意を向ける。
 どう考えても警戒するべき水なのだ。出来れば、何も対策をせずに水に浸かるという状況は避けたい。
「私は見ての通りの姿で、息継ぎも必要無く、人間にとって毒である水の中でも、念動力で無事のまま進めるとは思うが……君達だと問題が多そうだな」
「その点、言う通りヒーローマスクは便利そうだな。手も足も無さそうだが」
 リリィはティアーの口振りと、浮いているその姿を見て、そんな感想を零す。
「む、君はヒーローマスクに興味があるのか? 試しに付けてみるかな?」
「え、えっと、遠慮する……」
 さすがに見ず知らずの仮面を被る度胸はリリィには無いらしく、ティアーの営業活動は受け入れられないらしい。
 つまり、未だに良い案が浮かばない状態だ。
「私に、良い案が……ある!」
「困りましたね。ちょっとみなさん、良い方法が無いみたいですし」
「私に、良い案がぁ!」
「あーはいはいはい。何ですかリチャードさん。ほんとなんなんですか」
 ひたすらに自己主張を続けるリチャードに対して、とうとう、その存在を認めてしまう詩蒲。恐らく、それは失態だ。
「くくく。怪しい香りのする水だが、文明にはそれを超越する力が存在するのだよ。誰ぞ、紅茶セットは持っていないかな?」
 我が意を得たりと言った様子のリチャードは饒舌になり始める。普段からしてそうかもしれないが。
「普通、そんなものを迷宮に持って来ないと思う……けど?」
 イベリアはそう言いながら、他の猟兵を見るも、イベリアと同様に、何を言っているのだこいつはと言う目でリチャードを見るだけだ。ティアー以外はであるが。
「む、ちょっと待っていろ? これで良いか?」
 ティア―の裏側から、何故かティーセットが転がり出て来る。
「え? え?」
 戸惑うイベリアであったが、彼女を無視しつつ、リチャードはそのティーセットを受け取り、カップで水を掬うや、そこにインスタントな紅茶粉末を混ぜてスプーンでかき回す。
「ふっ、これで怪しげな水は紅茶になった。無毒化に成功だ」
「……なるほど!」
「なるほどじゃありませんって」
 納得しかけたリリィに対して、うんざりした様子で詩蒲はツッコミを入れた。いや、本当にツッコミたいのはリチャードに対してであるが。
「紅茶の粉末を入れたところで、水が無毒化するものなのかな?」
 とりあえず、質問をする役目はティア―がやってくれるらしい。粉末を入れただけの、紅茶と言うのもおこがましいその液体を見て、眉を……いや、仮面を顰めていた。
「疑うかな? 人類の、シャーマンズゴーストの、そうして鹿の文明の輝きを。ならば、カモン! サミュエル・リトル! でてきてちょー!」
 リチャードが言うや、その場に鹿が召喚される。正真正銘の鹿だ。鹿らしい鹿を召喚する。それが彼のユーベルコードであった。
「ま、また鹿……」
 それだけイベリアは呟くも、またと表現するのは、目の前のリチャードもまた鹿であると認めてしまう言葉であるからして、自分の失言に頭痛を覚えていた。
「毒味と言うほど、大変な事では無いが、皆がこの無毒な紅茶を疑いの目で見るのだよ、サミュエル・リトル君。テイスティングタイムだ。文明の味を、是非堪能して欲しい!」
 リチャードがそう言うと、現れたサミュエルと言う名の鹿が紅茶を舐め、その場で倒れ、痙攣し始める。
「……」
 痙攣して倒れた鹿を、猟兵達が見つめている。
「むぅ……これがカルチャーショック」
「駄目じゃないですか!!! いや、一欠けらたりとも信じてませんでしたが!?」
 詩蒲に怒鳴り付けるものの、リチャードはその場でティーカップを捨てて、口笛を吹いて何かを誤魔化し始めていた。まったく誤魔化せていないが。
「困ったな。これでは結局、何にも進展が無かったと言う事だ。どうしたものか……む? どうかしたか、お嬢さん方の妹さんの方」
 リチャードと彼を怒鳴り付ける詩蒲。そんな光景を見つめながらティアーが浮かんでいると、リリィがじっと仮面を見つめて来た。
「いや、さっき、ティーセットをどうやって出したのかなと」
 リチャードが行った事は馬鹿らしい行動であったが、それよりもティアーのやった事が気になるリリィ。何も無い場所から何かを取り出した風に見えたのだが。
「ああ、それは私の刻印【裏面工作】の力によるものだ。この……私の裏側に触れた相手が抵抗しない場合、それを楽屋裏へと連れて行くという力でな」
「楽屋裏……」
「まあ、部屋みたいなものだと思って良い」
「なら、そこに私達が入って、運んで貰えば良いのでは?」
 確かティアー自身は、この飲めば鹿が倒れる様な水の中でも、活動が出来ると言っていた記憶があるリリィ。
「ああ、なるほど。その手が……あ、いやしかし……」
「どうかしたのかな?」
「中には現在、入れるとしたら二人が限界の状態だ。残り二人をどうするか……」
 楽屋裏がどれほどの広さがあるのかは知らないが、ティーセットを出していた事から、もしかしたらいろいろと別の物が既に入っているのかもしれない。何にせよ、その力を持っている本人が言うのだからそうなのだろう。
「いや待て? もう一人だけなら、何とかなるかもしれない」
「おお、それはどういう?」
「うむ。君が、私を被るんだ。そうする事で、ヒーローマスクとしての私の力が君を守る。この水の中でも、活動可能な状態にする事が出来ると言うわけだ! どうだ!」
「え、普通に嫌だが」
「……」
 やはりリリィ。見ず知らずのヒーローマスクに身体を動かされるというのに嫌悪感があるらしい。
「……分かった。じゃあ、そっちはお姉ちゃんがする。リリィは心配しなくても良い」
「ね、姉さん!? そんな、駄目だって! だって、こんなデザインのマスクを被る事になるんだよ!?」
 口調をまた崩すくらいに驚いているリリィ。
「そこが引っ掛かっていたかぁ……」
 若干、ショックを受けるティアーであるが、イベリアの方はそこも受け入れるつもりらしい。
「大丈夫。ちょっとの間だけ。リリィはほら、あの力を使えば、水の中でも無事でいられる……でしょ?」
「あの力って……ああ、無敵城塞の」
 自身は動けなくなるものの、何者の攻撃をも受け付けなくなる超防御モードになれる力。それをリリィは扱う事が出来るのだ。
「つまり、これで全員が、とりあえずあの水に対しての防御手段を得る事になるわけだ。どうする? 決まりとなれば、行くか?」
 ティアーがそうリリィとイベリアの姉妹に尋ねると、少しだけ時間を置き、二人は頷いた。相談はこれにて終了と言ったところだろう。後は行動に移すだけ。
「となると、我々は仮面殿が用意する部屋で、悠々自適に時間を過ごしていれば良いと言うことか。ふむ、楽で良い!」
「ええぇ……自分はちょっと嫌ですけど。何か妙なところに連れて行かれそうですし、部屋の中が水没したりとかしたらどうしようって……」
 納得したリチャードに対して、今度は詩蒲がゴネ始める。またしても相談の時間かと猟兵達は思い始めるものの……。
「ふむ。若きシャーマンズゴーストよ。これを見てみたまえ」
「えっと、あなたに紅茶の粉末入りの毒水を与えられて痙攣している鹿をですか?」
「うむ。そうだ。そのまま、そのまま……じっくりと……そう、その状態で……えいっ」
「あっ」
 痙攣した鹿を見つめている間に、リチャードはティアーの裏面を詩蒲へと叩きつける。
 結果、彼はティアーの用意した楽屋裏へと収納される。
「よし、抵抗も無く、若きシャーマンズゴーストを収納する事が出来た」
「後で暴れないと良いがなぁ……」
 呟くティアーであるが、その間にリチャードもまた楽屋裏へと入って行く。中で詩蒲を説得でもするつもりなのだろう。
「さあて、残りは姉妹の二人だな」
「任せてくれ。それじゃあ私は……ふんっ」
 リリィは力を込めて、ユーベルコード【無敵城塞】を発動し、身動きが取れない状態になった。
 後はこれを運ぶ役目である、ティアーを被ったイベリアを用意するだけ。
 対面する、ティアーとイベリア。
「あ……その、今さら、ちょっと不安になってきた……」
「ヘッヘッヘ、心配することはない」
 怪しげな笑いと共に、イベリアへと近づいていくティアー。
 その後の展開はと言えば、一つの人影が、もう一つの人影を持ち上げながら、水の中へと入って行くというものであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

黒川・闇慈
「うーん、水……水ですか。別段泳げないわけではないのですが……」

【行動】
いかにも怪しい水ですからねえ。そのままずぶずぶ入っていくのはいささか不安です。そもそもあまり濡れたくありませんし……
まずはここの調査といきましょう。壁や床を調べてみましょうか。隠し通路や、水を抜くような仕掛けが見つかるかもしれません。
更に影の追跡者を召喚して、天井近くや狭い隙間、水の向こう側など生身では調査できない部分を調べてみましょう。

「何が出るのか、出ないのか。クックック……こういう楽しみがあってもいいでしょう」


西園寺・メア
絶対に泳ぎたくないですわ!(堂々と宣言する)
私、カナヅチじゃなくてよ?そもそも、こんな汚れた水に浸かる事自体が苦痛でございませんこと?

仕方ないので、そもそもなんで水たまりがあるのか調べたり、踏破せよ、果ての果てまで!で水流を見極めて仲間をサポートしたりする
あわよくばスケルトン騎兵で骨の橋を組んで泳がずに行きたい。絶対に泳ぎたくない
絶対に泳ぎたくないので団長のシェイプにちょっと水の上を走れない?とか言いだしてシェイプを困らせ始めるだろう

■備考
絶対に泳ぎたくないでござる


己条・理鎖
この水、明らかに怪しいですが泳いでも平気なんでしょうか?

泳ぐ前に水や周囲の調査をします
【我身小誕】を使用し小型の複製体を召喚しそれによる調査を行います
まずはこの空間の調査を行います
泳ぐ以外の方法が使えないか(【ロープワーク】等)や罠の類がないか調べます
その後水を調査します
複製体を水に突っ込ませます
それによる反応で水に浸かっても問題ないか確認します

全部終わったら泳ぐ以外の方法があるならそちらで、なければ水が泳いでも平気な場合は泳ぎます



「えいっ……ええーい! どうしましたのみなさん! その程度でわたくしの従者が務まると思っていますの!?」
 水の中へと進む猟兵がいる中で、絶対に泳ぐものかと言う心意気でもって、水場で自らの従者に橋を掛けさせようとする従者もまた存在していた。
 彼女の名前は西園寺・メア。生粋のお嬢様であり、彼女の力は自らの従者を召喚するというもの。ちなみに、その従者の姿は全員、全身が骨で出来ているスケルトン兵だ。
「はっはっは、これはこれは……骨が橋を作ろうとしている光景はホラーかもしれませんが、どう考えても向こうに届かない橋ともなれば、一種のコント染みていますね」
 そんな西園寺の努力を笑う様な様子で近づいてくる声があった。
「む、どなたですの? 人がせっかくこの様な、水に濡れぬ努力を続けていますのに!」
 高飛車に振り向く西園寺。彼女が指示を止めたため、崩れて行く骨の橋を背後にして、西園寺はその視線の先にある人物、黒川・闇慈を見つめていた。
「おおっと、これは失礼しました。どこかの世界で人形を追っていた時に出会った気がする人物の、無茶をしている姿を見て、つい愉快になってしまいまして」
「あら、そういうあなたは……」
 西園寺が黒川の顔を思い出す傍らで、彼はさらに西園寺に近づき、彼女に並ぶ場所までやってくると、次には橋が崩壊した結果、跳ねた水に手袋越しの指先で触れた。
「ふむ……これは……」
「何か分かりましたか?」
 水を見て、匂いを嗅ぐ黒川に対して、また一人、猟兵が近づいて来た。その猟兵の名を己条・理鎖と言う。
「おや、これはまた」
「あらあら、奇遇……ですの?」
 三人が三人とも、とある人形を追う仕事で見た事のある顔であった。
 場所どころか世界も違うこの迷宮での再会というのは奇遇と言えば良いのか、悪いものに惹き付けられる性質があるのか。
「なんにせよ、こうもなれば、三人協力するのが得策ではなくって? 丁度、骨の従者達だけではなかなか水を越えられない事に気が付いたところですし」
「それは……気付くのが遅いのでは?」
 己条が若干、呆れた様に見つめるものの、西園寺は新たな従者はあなた方二人だと言わんばかりの態度で口を開く。
「気付いてから、何をするのかが大切ですわ? それで、何か思い付きましたの?」
 自分には特に、良い方法は無いぞと言った様子の西園寺。
 だが、黒川はそんな西園寺に笑って返した。
「思い付いてはいるのですが、希望に添えるかは疑問、と言ったところでしょうか」
「その心は?」
「あなた方、一旦進むのを止めて、この水そのものを調べて見る気はありませんか?」
 この水の匂いに対して、何か気が付いたらしい黒川。二人の猟兵を見つめて問い掛ける。
「何か、あると思うのですか? この水に?」
「というより、この迷宮そのものに……ですかね」
 誰かが突如として消える迷宮。これと言った危険が無い迷宮。おかしな臭いのする迷宮。蜘蛛が出る迷宮。
 この迷宮には、何か、調べるべきものがあると黒川は考え、その好奇心をくすぐられていた。
「趣味を優先してお仕事を蔑ろにすると、そういう言葉にも聞こえますけれど?」
「泳ぐのが嫌で、橋を作らせようとする方に言われると耳が痛い」
 少々、険悪なムードになってきたかもしれない黒川と西園寺を見て、己条は慌てた。
「ああもう、はい。私も気にはなっていましたから、調べるとなれば、手伝いますよ。どうすれば良いんです? 泳ぎでもすれば良いんですか?」
「いや、泳ぐのは止めて置いた方が良い。というより、口に入れると毒ですよ、この水」
 黒川は少し水を調べただけで、その正体を掴めていた。普通の状態で、泳げる様なものでは無いのだ、これは。
「あら、じゃあやっぱり、濡れなくて正解ですのね。それで? どんな毒ですの? 青酸? ヒ素?」
「毒と言えば良いのか……防腐剤ですよ。この液体」
「防……腐……?」
 己条はふと、またその匂いを嗅ぐ。確かに、化学的な匂いにも思えるが。
「ええ。多量に摂取すれば、そりゃあ身体に毒でしょうが、そもそも用途は何かを毒するためのものじゃありませんね、これ」
 少なくとも数gの摂取で、すぐさま死に至るとか、そういう用途のものではないと黒川は断言した。魔法の研究をする傍ら、そういうものに触れる機会があったのかもしれない。
「それで? それが事実であるとして、それじゃあいったい、何を腐らせない様に、ここに大量の防腐剤が存在しているとおっしゃいますの?」
 心なしか、水場から距離を置き始めている西園寺。想像してたよりも怖いものでは無かったが、逆に不気味さは増したらしい。
「それを調べるために協力して欲しいと言ったわけですが……例えばこの防腐剤の水たまりの底に何があるか、調べて貰う事は……可能だったりします?」
「こんなところを泳ぐのなんてノーセンキューですわっ」
 そもそも、泳がない様にするために努力していたのに、やる事が変わっただけで、それが可能になるわけが無いと西園寺は叫ぶ。
 だから、黒川の案を受け入れたのは己条の方であった。
「私が行きましょう。多分、出来そうなのはここでは私だけですし」
 手を上げての立候補。積極的であるとだけ言えれば楽なのであるが、問題もある。
「先ほどの話、聞いていらっしゃいましたの? 幾ら用途が毒では無くとも、身体に害があるものですのよ? そんな、簡単に引き受けて大丈夫かしら?」
「ええ、任せてください。何せ、直接調べるのは私では無く……」
 己条が意識を集中させ、詠唱をするや、その場に、30cm程の小さな己条が現れる。
「私の複製ですので」
「あらやだ、可愛らしい」
 そう感想を述べる西園寺に対して、黒川は興味深そうに己条の複製も眺めていた。
「調べるのは底だけで結構です。多分、そこに何かがあるはずですからね」
「まるで、何があるか予想は付いていると言った風ですが、まあ良いです。こういうの、論より証拠と言うのでしたっけ?」
「百聞は一見にしかず」
「案ずるより産むが易しですわね」
 声援にもならない言葉を向けられた後、己条は複製を防腐剤の水へと潜らせる。
 複製体であるため、己条自身にダメージは無いが、それにしたって防腐剤によるダメージは複製体を蝕み、長時間の維持はできないだろう。
 本当に、調べるならば水の底に限定するしかないと言った、そんな時間。
 複製体がその底へと辿り着くや、己条は自分の複製体が消滅するのを感じた。
「っ……!」
 ダメージのせい……ではない。むしろ、複製体からの情報にショックを受けた結果だ。
「ちょ、ちょっと、本当に大丈夫ですの? 具合が悪いのでしたらわたくしが代わりに……は無理ですけど」
「い、いえ。大丈夫は大丈夫なのですが……底にあったものが、少々予想外だったと言うか……」
「死体、でしたね? 恐らくはこの迷宮に入った、物好き達の」
 驚いた表情で、己条は黒川を見つめた。いったいこの男、何に気が付いたと言うのか。
「いえね、噂に聞いた事があるのですよ。そういう事をする存在の話を」
「迷宮に迷い込んだ人間を防腐剤に漬ける様な存在を……ですの?」
 西園寺が尋ねるも、黒川は曖昧な顔を浮かべるだけだ。
「それだけの存在では無い……のですがねぇ」
 今、ここにそれがいないとなれば、この水の向こうにそれはいるはずだ。向かった猟兵達は戦いを始めている頃合いだろうか。
 そう思いながら、黒川は目を細めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『兵器蜘蛛』

POW   :    蹂躙
【長大な八脚から繰り出される足踏み】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    蜘蛛の糸
【腹部の後端から放つ鋭い鋼線】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に鋼線 による蜘蛛の巣を形成し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    子蜘蛛
レベル×5体の、小型の戦闘用【子蜘蛛ロボット】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は世良柄野・奈琴です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 防腐剤の水たまりの向こう側。迷宮と言うよりは、浸食で出来た洞穴の様な場所。
 蜘蛛がいる。
 金属の身体と無機質の四肢で構成された大蜘蛛がそこにいる。
 それは、今は動く時では無いとばかりにその場に陣取り、その周囲には、同じく金属で出来上がった小さな蜘蛛たちが蠢いていた。
 その蜘蛛には目的がある。この迷宮へとやってきたものを襲い、あの防腐剤の水たまりへと沈めるというだけの目的が。
 それは死体をそこに溜めると言う行為でもあった。
 そうして、大蜘蛛は次の瞬間、その四肢を動かし始めた。
 また、ここへと近づいてくる存在がいる。それは大蜘蛛にとっての目当て。新たに迷宮へとやってきた人間と、またそれ以外の興味深い何か。
 それらがいるから、大蜘蛛を仕事を始める。それは機械だ。機械はただ、作られた目的を果たすだけ。
リチャード・チェイス
【リクロウ、ジョン、ティアー】

危機が迫っているのである!
(リクロウの後頭部を、めっちゃ綺麗なフォームなステッキのフルスイングで気絶させる)

目を覚ますのである、若きシャーマンズゴースト……いや、戦士よ。
この世界に危機が迫っている。
(しれっとリクロウをシカノイアで戦線復帰させる)

……想定通りである。
(ついでに水中の死体も想定外に鹿化され、這い出してくる)

勝利は見えた!
ファイナルフュージョン、承認である!
(自分・死体(鹿)・ジョン・ティアーを巻き込みリクロウと合体。制御はティアーに押し付け。
合体はロマンでカッコいい、そうでしょう? MSさんに言いくるめ技能を使います)

(作った鹿は全て引き連れて帰る)


ティアー・ロード
【ジョンと詩蒲、チェイスを吐き出す】
なんか楽屋にジョンも入ってたので吐き出します
「っぺ!」


「ふむ、今日の私は乙女に装備してもらって気分がいい……助力しようか」
ジョンと協力して
暴走する詩蒲を正確に戦わせるために
腰に巻きついて制御しようと思ってたよ

「チェイス?まだなにかするつも……鹿?」
内部に取り込まれてコアユニットになります。


「ぬぅぅぅ、ジョンや詩蒲くんだけならまだしもこんなのは制御したくはないぞ!!」

ええい、美形も混ざってるだろう!ならば!
「コード、セレクト!ザ・ラビット!」
合体した全てを混ぜてバニーガールに!


「「「「超合体戦鹿!ジョン・ロゥ!」」」」


詩蒲・リクロウ
鹿ァあああぁ!!!? ヴッ
(意識を失ったリクロウは、UCを発動しつつ、獰猛なシャーマンズゴースト鹿となり蘇る。)
私は鹿である。ひひん。
(肥大化した肉体、屈強な四肢、唸りを上げる鹿角。まさに、暴力の化身の如し。だが理性がない。ただの獣となっている。故に操縦者が必要だ。)
(真のパイロットを得た時、この獰猛な獣は完全なる戦士、超合体戦鹿、ジョン・ロゥとなるのだ。)

(仮面と鹿に好き勝手されます。それはもう好き勝手されます。鹿になろうがバニーされようが大人しく受け入れます(理性がないので))

あ、終わったら死体(鹿)はちゃんと埋葬しますよ。

そういえば、あの闇の中であった人は一体誰だったのだろう…


ジョン・ブラウン
【ティアー、リクロウ、リチャードと合流】
あ、もう着いたの?

今までずっとティアーの楽屋裏の隅っこで寝てたよ
いやだって暗いとことか水の中とか進むの嫌だし……

さてゴール……うわぁなにあの蜘蛛

ちょっーっとアレと取っ組み合いは勘弁してほし……
リクロウに何やってんのさ君ら

オーライ、それじゃあ僕は背中に乗って操縦と
気絶から起きない程度に上手いこと回復を……

ん、あれ。なんか水の中からゴポゴポ音しない?
………うわぁぁああ!!なんか大量に這い上がってきたぁ!?

ちょ、おいリチャードあれお前の、……お前ふざけんなよ!?
ちょっとまって僕降りる、おり、うわぁぁあああ……

※取り込まれて自動修復を司る銀色の生体ユニットになる



「ほう、漸く到着と言ったところか。あれが……迷宮に迷い込んだ人間を、わざわざ悉く帰らずにするモノの正体」
 ふわふわと浮かびながら、その仮面は口も無いと言うのに、目の前で動き出した機械の大蜘蛛を見て呟く。
 仮面の名前をティアー・ロードと言う。
 先ほど、とある女性猟兵に被られていたヒーローマスクであるが、今は仮面のみで先んじてこの大蜘蛛と相対していた。
「いったい何が目的で……と言いたいところだが、問答無用か!」
 大蜘蛛は周囲の小蜘蛛と共に、ティアーへと迫って来る。その動きは遅い。だが着実に、ティアーの周りを囲み始めていた。
「数の利はあちらにある……とでも言いたげな状況だが、こちらだって数は用意できるんだ。こい! チェイス、詩蒲くん!」
 ティア―が合図するや、仮面の裏側から、ティアーのユーベルコードにより収納されいていた二人のシャーマンズゴーストが飛び出して来た。
「う、うおおお!! 水没もせずに無事に到着! 良かった自分、まだ生きてる!」
 叫びながら飛び出すシャーマンズゴーストの詩蒲・リクロウ。そうしてもう一人のシャーマンズゴーストであり、鹿を名乗るリチャード・チェイスが、手にステッキを持ち、そんなリクロウの後頭部を全力で叩きつけた。
「危機が迫っているのである!」
「グッ……し、鹿ぁああああ!!! あっ……」
 飛び出した瞬間に、全力で殴りかかられ、気を失う詩蒲。倒れた詩蒲を眺めるリチャードは一言。
「だらしがないな、若きシャーマンズゴースト」
「かなりな無茶を言う」
 ティアーは呟きながらとりあえず、現状を確認する。増えたはずの援護は自動的にマイナス1となり、戦闘員は残りわずか2名だ。そうして、無意味に味方を殴り付ける様な存在が1名いるのだとしたら、それも戦力から省かなくてはならない。
「あのデカブツとこの小蜘蛛。しっかりきっちり倒すには、若きシャーマンズゴーストにはこうやって倒れて貰うしかない故な」
「考えがあるのか?」
「あるとも。鹿は何時も生きる残るための知恵を働かせている。木々の隙間に引っ掛け罠がないかと探りを入れ続ける人生なのだ」
 リチャードという男は、行動の前なり後なりに何か良く分からない言葉を混ぜたがるシャーマンズゴーストであったが、自身の命の危険には敏感に動いてくれる……と思いたいところである。
「で、詩蒲君を気絶させた後、どうするつもりだ? あまり、猶予は無さそうだが……」
 ティアーが周囲を見渡すと、今は完全に蜘蛛達に囲まれており、少しずつ、少しずつ、その輪が狭まりつつあった。
「うむ。私のユーベルコードと若きシャーマンズゴーストの力の合わせ技となる、こう、超必殺……いや、違うな、何と言えば、超合体? なんかそんな感じのあれを……」
「なるほど。分からないという事だけが分かる。しかし、今はそれにも頼って……頼……たっ……む、なんだ。ぺっ」
 喉なんて無いのであるが、そこに引っ掛かりを感じる様な状態になったため、ティアーそれを吐き出した。
 果たして、ティアーが楽屋裏に収納して、つい忘れていた存在が吐き出された。
「あ、あいたたた……うん? 漸く迷宮の奥かい? いやぁ、暗いのとか迷いそうなのとか苦手でさ、運んでもらってサンキューって言うか……あれ? 何か、リクロウ君が倒れて……うわぁ! 蜘蛛!? 蜘蛛だ。蜘蛛が何で!?」
 吐き出された男、ジョン・ブラウン。依頼には参加していたが、道中が面倒だったのか苦手だったのか、ずっとティアーに運んで貰っていた男。
 そうしてそんな彼は、事情も良く分からないまま、決戦の場に放り出された形になった。
「蜘蛛だ。蜘蛛だとも。今は蜘蛛退治の真っ最中だギークボーイ。そして我々は若きシャーマンズゴーストの真の力を引き出すために動いている!」
 ジョンへの状況説明なんてその程度で良いだろうと言った様子のリチャードは、倒れている詩蒲に対して、自らのユーベルコード【向き直り向き直れ、お前達の全ての鹿から(シカノイア)】を発動した。
 これは戦場で死亡した、あるいは気絶した対象をシャーマンズゴースト鹿に変えて操るという、微笑ましい狂気が混じる力であったが、欠点が一つある。
「おいおいおい。リクロウ君が何かこう、ゾンビっぽく立ち上がろうとしてるぞ!? 何かしたのか!?」
 混乱する要素が刻一刻増えて行くジョン。だが、リチャードはさらにそれを増やそうとしていた。
「我が使役するシャーマンズゴースト鹿は、操る対象が弱体化してしまうという問題がある。しかし、この若きシャーマンズゴーストの場合は少々事態が変わってくるのだよ!」
「だから何して何するのかまず説明しろって!!」
 叫ぶジョン。歪に立ち上がる詩蒲。それを見つめるリチャードとティアー。その後に、詩蒲は吼えた。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!」
「えっ、何!? リクロウ君反抗期!?」
「そうだ」
「いや、そうじゃあないだろ」
 三人が喋る中、詩蒲は近づく小蜘蛛達へと向かい、その肥大化した四肢で蜘蛛を弾き飛ばして行く。頭には申し訳程度の鹿角。こちらはリチャードのユーベルコードの影響かもしれない。
「あれは……ふむ。UDCに近い……か?」
 雰囲気だけの話であるが、ティアーは今の詩蒲にそんな印象を受けた。何か自らの内にある凶悪な力を頼りに戦う。それが詩蒲の力なのかもしれない。
 しかし、今のままでは問題だ。
「な、なあ、リクロウ君、あの状態で大丈夫なのかな?」
 ジョンが指差す先には、ひたすらに力を振るい叫ぶ詩蒲の姿。理性は無く、ただ目に付く蜘蛛を振り払い続けているその姿。ついには大蜘蛛へも狙いを定めて殴りかかるも、大蜘蛛の大きな足が詩蒲を弾き飛ばした。
「むっ……いや、立ち上がった。で、また戦い……凄い力と耐久力だが、あれでは、何時倒れてもおかしくないのではないか?」
 ティアーは詩蒲の戦い方をそう見て取った。ひたすらに暴走を続ける列車の様なものだ。運転手が制御できなければ、周囲を破壊しながら自身も破壊される。そんな存在に見えたのだ。
「そのとおーり! あの若きシャーマンズゴーストは今、すっごく戦っているが、危機にも落ちいっているのである。故に! 我々が力を合わせる必要があるのだ。情熱合体である!」
 リチャードの情熱合体とやらは良く分からないティアーとジョンであったが、何とかするべき状況である事は分かった。そもそも、機械蜘蛛の群れに対して、詩蒲だけを戦わせるというのは猟兵としての沽券に関わる。
「合体となると、私はヒーローマスクの要領で、暴走を続ける詩蒲くんに取り付いて、動きを制御すれば良いのかな?」
 ティアーの言葉に、リチャードは頷きで返す。
「うむ。出来るかどうかは知らぬが、私だけでは彼に味方を襲わせぬ様に操作するだけで必死なので、二人も手伝って、あの若きシャーマンズゴーストが壊れず戦える様にしてくれまいか。ギークボーイなんかは彼の背中に乗って、馬みたいに動きを操ってくれれば幸いだ。カウボーイに変名するかね?」
「オーケーオーケー、まだ良く分かってないが、上手い具合にリクロウ君を戦わせれば良いんだね。ところでだ、その点で疑問なんだが、どうやってこれから僕があの暴れ回る大鹿に乗れって?」
「男ならば!」
「あ、お前、ちょっ―――
 リチャードは手に持ったステッキをジョンに引っ掛けると、振り回す様に、詩蒲の方へと投げた。
「やってやれだ!」
「お前っ、あとで憶えてろよぉおおおおっとぉ!?」
 リチャードの投げ方が上手かったのか、なんとか暴れる詩蒲の背中に跨るジョン。
「後がある様に戦うしないだろうなぁ」
 ジョンが跨る間に、ティアーもまた大鹿みたいになった詩蒲の顔に被さる。思いの外、暴れ馬染みた詩蒲の動きが、ティアーのおかげで幾らかマシになったのではないかとジョンは感じた。あくまで比較的にの話であるが。
「オオオオオォォォ!」
 それでも、詩蒲の雄叫びは聞こえ続ける。ジョンはそんな詩蒲に対して、機械の接続端子の様なものを結び付けて、手綱の様に握り込む。
「はーはー! これじゃあ本当にカウボーイだ! 乗ってるのは鹿……じゃなくてシャーマンズゴーストだけどさっ」
 接続端子はそれをぶつけた相手の体力を回復すると言うもの。無茶を続ける詩蒲の身体を、多少なりとも回復させるためのジョンの力であった。
「むむむ、本人の承諾も無い状態だから、仮面で動きを抑え続けるのも長時間は無理そうだ。早めに決めるぞ、ジョン」
「はいよー、リクロウってねっ」
 ティアーとジョンの共同により、詩蒲はなんとか力を叩きつけるだけではなく、幾らか効率的に小蜘蛛を毛散らす動きが出来る様になっていた。
「ふふふ。それだけでは青春情熱合体終わらぬ。小憎らしい蜘蛛め、私があの水の底にあった死体を見逃していたと思うかね?」
 誰に聞こえるわけでも無いが、リチャードはそう呟く。あの水底に存在する幾つもの死体。それにもまた、リチャードが詩蒲に対して使ったユーベルコードと同じ力が掛っているはずなのだ。
 今頃、鹿化した死体達が水底から出て来て、さらなる援軍となって戦ってくれるはず……はずだが……。
「はて? なかなかに来ないであるな?」
「おーい! 手が空いているのならこっちを手伝えって、チェイスー!」
 ジョンの声が聞こえて来た。相手を小蜘蛛から大蜘蛛へと変えて、詩蒲を跳ね回らせている彼らであるが、未だに戦力が足りない様に見えた。予定していた死体が、それを補充してくれると思っていたのだが。
「むむむ……どういう事か。あの死体、タダの死体であれば、私の力で味方鹿になってくれるはずだが……ぬぅ!?」
 考え込む間に、どうやらリチャードは子蜘蛛に接近されていたらしい。
 それに気が付いた瞬間、小蜘蛛はリチャードへと飛び掛り―――

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

リリィ・オディビエント
イベリアと共闘します

蜘蛛は嫌いじゃないが、あれはただの機械だ。容赦なく潰させてもらう。
【かばう】を使ったタンクとしての戦法が基本だが、姉妹で強敵と戦うなら奥の手がある

真の姿を解放
真の姿は二足で狼の獣人。ただし脚だけは爪先立ちの兎。
ふた周りほど大きくなり、全身鎧がそれに合わせて仰々しい見た目になる

バランスの悪いように見える脚は、重装甲に関わらず跳ねることで瞬発的に移動を可能とします。
Ucによってチャリオットを召喚、馬がいなくそれに乗るだけでは効果は薄いが、姉の協力によって猟兵二人の力を使った暴力で突撃し、リリィは剣を振るう。
アレンジほかの方との共闘歓迎


イベリア・オディビエント
水の中進んでしんどい思いしたと思ったら次はボスかぁ…
でも暗闇とか臭い水よりは怖くないもんね!リリィと一緒に倒してやる!


リリィとの共闘になります。

真の姿を解放。

全身が白銀色の巨大な狼。もっふもふ。
背中には黒い翼。後頭部には山羊のような大きな角。
後ろ足のみ兎型。
口には装備していた斧を咥えている。
リリィが召喚したチャリオットを引っ張り、兎の瞬発力と【早業】活かして戦場を駆け回る。

動き回るだけではなく、咥えた斧で攻撃したりもする。

他の参加者との共闘があれば協力させて頂きます。



「先に向かった割には、随分と苦戦しているなっ!」
 リチャードへと迫る小蜘蛛を弾き飛ばすは、オディビエント姉妹の妹、リリィ・オディビエントであった。
「む、むぅ!?」
 驚くリチャードを余所に、もう一人の猟兵がそこへとやってくる。そのもう一人の猟兵、リリィに追いつた姉のイベリア・オディビエントは、さっそく彼と他の猟兵に指示を出し始めた。
「大蜘蛛を倒す火力なら用意できる……あなた達は小蜘蛛の牽制をお願い……」
 イベリアのその言葉に対して、リチャードは少し考えた様子であったが、状況が変わったとばかりに、他の猟兵達と共に小蜘蛛を蹴散らす作業を開始した。
 おかげで、リリィとイベリアは大蜘蛛へと集中できる状況になる。すぐ近くから雄叫びだったり怒鳴る様なツッコミだかが聞こえてくるものの、まあ、集中できる状況だ。
「実を言えば蜘蛛は嫌いじゃないが、機械の蜘蛛となれば、ただ潰せば良いのだから気楽だ」
「蜘蛛か……まあ、暗いところや臭い水の中よりかは良い……のかな?」
 姉妹それぞれ、相対する大蜘蛛への感想を述べる。その間も、大蜘蛛は二人に近づき、その八つある足の幾つかをイベリアへと向けるや、そのまま振り払おうとしてくる。
(やっぱり大きい。ただの足の振り払いだって相当なダメージがある。なら避ける……?)
 足が届く間の瞬時。実際にそこまでをじっくり考えたわけでは無いだろうが、直感に近いその判断の中で、イベリアは答えを出した。
 自分の真の姿を解放する。その意図は、相談などしなくても、妹のリリィなら分かってくれるだろう。
「リリィ……!」
 自分の変化を見せつけるために、妹の名前だけを呼ぶ。
 その間も、イベリアの肉体を変化していく。
 全身から白い毛が生え、体が膨れ、頭部からは山羊が如き角。背中からは黒い翼。足のみが元の兎足であったが、相応の大きさに変化している。
 ある種の悪魔。もしくはイベリアの種族通りのキメラと言った姿へと変化した彼女であるが、全体としては総じて白銀の体毛を生やした狼と言った風貌だろうか。
 イベリアが変化したそれは、最初から武器として持っていた斧を口に咥え、迫る大蜘蛛の足を、獣の如きその体と咥えた斧で受け止める
「姉さん……うん!」
 姉の意図を察したリリィもまた変化を始める。姉妹は揃ってキマイラだ。リリィの方にも当たり前の真の姿が存在していた。
 ただ、姉妹のその姿が似通っているわけではない。お互い、それぞれの姿があった。
 リリィの場合、人型である事は捨てていない。だが、人に狼の要素が大きく足される。
 人狼とも表現できる二足で立つ狼。その足だけが彼女がその姿を現す前からある兎の足であるというのは、やや皮肉的かもしれない。
 姉妹は揃って、狼染みた姿の、真の姿へと変化し、それぞれが大蜘蛛の足を強靭な身体で受け止めていた。
 強靭になった体で、攻撃を受け止める。それがこの姉妹の狙いか。いや、まだ先がある。
(いくよ、姉さん……!)
 人狼の姿のまま、リリィは自らのユーベルコード【双子で全てを轢き潰す(オディビエント・ライドオン)】を発動した。これは正真正銘、リリィとイベリアの共同技と言えた。
 大きなチャリオットを戦場に召喚するそのユーベルコードは、人狼のリリィが御者となり、白狼のイベリアがそれを引くという姉妹揃っての共同作業により戦う力となり得るもの。
 その武装はまさに大蜘蛛の大きさに匹敵する兵装となって完成し、正面から機械の大蜘蛛へとぶつかれた。いや、むしろ押し返す勢いである。
(よし……このまま!)
 リリィとイベリアが勢いそのままに、大蜘蛛を壁へと叩きつけようとしたその時―――
「闇を今でも恐れているか?」
(この……声は!)
 リリィの耳に届く声。それは暗闇の迷宮で出会ったはずの探索者、コプスの声であった。
(何? もしかして、どこかにまだいるのか!?)
 リリィは焦る。チャリオットのその威力、その大きさは大蜘蛛を巻き込んで押すという行為によって、その質量を増している。そんな質量に人が巻き込まれれば一溜りもあるまい。
「あなたは探していた妹を見つけた。それで目的は果たしたのではないの?」
(……嘘っ)
 今度はイベリアの耳にも声が聞こえてくる。それは迷宮の途中で聞けてしまったはずの女の声。確かガダバとかいう声を知り、姿は知らぬ探索者の声。
 彼女もまた、何時の間にかここへとやってきていたのか。いったいどういう理屈で?
 そんな考えを姉妹が揃って巡らせた結果、彼女らの動きはほんの少しだけ鈍くなる。鈍くなり、出来たその隙。それを見逃さなかったのが大蜘蛛だった。
(しまっ―――
 姉妹は大蜘蛛から吐き出される糸を目視する。蜘蛛の糸とは獲物を捕らえるもの。その動きを鈍らせるもの。そうしてこの場においては、チャリオットの車輪に巻き付き、勢いを大きく減じさせるものであった。
 十分な速度を維持出来なくなったチャリオットは、蜘蛛が壁へと叩きつけられる前に停止してしまい、今度は蜘蛛が反撃をするタイミングになってしまう。
 再び、姉妹は大蜘蛛と向かい合う形となり、その次の瞬間、再び大蜘蛛は姉妹に対して足を振り上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒川・闇慈
「機械の蜘蛛ですか……いい造形をしてますねえ。クックック……」

【行動】
wizで対抗しましょう。
子蜘蛛を撒き散らすようですから、こちらも広範囲を制圧できるユーベルコードを使用しましょう。
「属性攻撃」「全力魔法」「高速詠唱」の技能を活用して炎獄砲軍を使用します。子蜘蛛を薙ぎ払ってから、本体を狙いましょうか。

「やっと本来の使い方ができますねえ……重畳重畳」
『戦場を満たすは灼炎の王威なり。一切全て灰に帰せ、インフェルノ・アーティラリ』

【アドリブ・組み合わせ・連携歓迎です】


己条・理鎖
なんやかんやで水路を突破してみれば……ああ、蜘蛛が多かったのはそういうことだったんですね。なんにせよ、やることがはっきりしました。

敵の攻撃力を削ぐことを目標とします
【目立たない】よう【暗殺】気配を消しながらこちらの攻撃の射程距離まで接近し【先制攻撃】を仕掛けます
狙いは鋼線を出す腹部です
【咎力封じ】で敵の腹部を絞り上げ鋼線を封じることを狙います
封じられなくても鋼線をうまく出せなくするようなダメージは残せるはずです


西園寺・メア
このロボットが水底の死体の山の原因かしら?誰が置いたのか謎が残りますが、倒せば問題解決かしら

トライアンフ・アーチ
がしゃ髑髏を召喚
自身は巻き込まれないように離れてトレース操作
呪詛を込めた鎧砕きで叩く

見た目通りの固さのようですが、装甲を砕く立ち回りで挑みますわ


お嬢様思考、アドリブ歓迎



「そこ……までです!」
 姉妹に蜘蛛の足が届く前、その足に拘束ロープが巻き付けられ、動きを封じる。
 結果、姉妹に届くことの無かった蜘蛛の足。その足を縛り封じ続けるは、猟兵、己条・理鎖であった。
「ぐっ……ですが、やはり……こうやって動きを多少鈍らせるのが精一杯、ですかね……!」
 歯を食いしばり、自らのユーベルコードにより大蜘蛛の動きを封じた己条であったが、それでも力は蜘蛛の方が上らしい。少しずつ、しかし確実に、拘束は解かれようとしていた。
「早く! それほど時間はありませんよ!」
 叫ぶ己条であるが、その言葉は、自分が守った猟兵にでは無く、この穴倉の様な蜘蛛の巣の、その入口に立つ二人の猟兵に向けてのものであった。
「ええ、もう、準備なら整っていますわ!」
 己条の言葉を聞いて、入口に立つ猟兵の一人、西園寺・メアが答える。
 彼女の答えは彼女のユーベルコードの発動をも意味していた。【門を開け、凱旋の時間だ(トライアンフ・アーチ)】
 大きながしゃ髑髏を召喚し、それに自分の動きをトレースさせて戦うというものであったが、今、彼女はそのがしゃ髑髏に武器を持たせてはおらず、さらには戦わせるつもりも無かった。
 ただ、一つの動作を行わせる。
「あっかんべー……ですわ!」
 西園寺のその言葉と動き通り、がしゃ髑髏もまた、目元に指を当て、舌が無いため、ただ口を大きく開ける。ただ、それだけの行動だ。
 挑発しているのか? 他の猟兵がそう呟く中、己条の方は、自分の拘束に抵抗する蜘蛛の力が、弱まるのを感じていた。
(これは……とりあえず、彼の予想が当たったみたいですね)
 それを確認し、己条はその拘束を緩めた。勿論、大蜘蛛は再び活動を始めた。だが、狙うのは拘束していた己条でも、近くに存在するチャリオットではなく、あっかんべーをした状態のがしゃ髑髏。
 大蜘蛛はその足を動かし、縦横無尽に駆け回るや、西園寺が召喚したがしゃ髑髏へと近づき、その足を…………別に振り上げはせず、顔を、自らの複眼を近づけ始めた。
「あの蜘蛛が……何をしているのか。それを聞かれるのでしたら、あれは観察をしています」
 他の猟兵に説明する様に、己条が答える。戦うのでは無く、現れた髑髏を観察しているのだと。
「何? これは何?」
 そうして己条の耳に声が聞こえた。他の猟兵の声では無い。己条はその声の主を確認する。
 ここは暗闇の迷宮ではない。周囲の様子は良く見える。だからすぐに、その声が何から発しているのかが良く分かった。
「私は、迷宮の方では誰とも出会いませんでしたから……誰の声かは分かりませんけど……ね」
 己条の視線の先には、人の声らしきものを発する、機械の小蜘蛛がそこにあった。



「やれやれ、一気に接近された時はどう思うかと思いましたけれど、これで何とか、動きを完全に封じたと考えてよろしいんですの?」
 自らが召喚したがしゃ髑髏。それに迫る大蜘蛛の姿。
 それらに西園寺は怯えなかったわけでも無い。さすがにこの勢いは襲われ、戦う事になるのではと警戒していた。だが、彼の予想通り、大蜘蛛はひたすらにがしゃ髑髏を観察し続けているのみである。
「ええ、恐らく、今、この蜘蛛の頭の中は、猟兵の方々がかき回し続けた状況を何とか観察し、整理するのに全能力を注いでいる事でしょう。ここからさらに戦闘行為を続けるのは、暫くは難しいはずです」
 笑いながら、西園寺の隣に立つ彼、黒川・闇慈が答える。
「しかし、機械の蜘蛛という造形は、なかなか良い趣味をしていますねぇ。クックック」
 がしゃ髑髏を観察している大蜘蛛を、さらに観察する黒川。それだけの景色であり、先ほどまでの戦闘が嘘の様に静まり返ったこの場であるが、むしろ不気味さは増している様に感じる。
 戦いを続けていた猟兵の内の誰かが、黒川に尋ねる。この状況は何なのだと。
「無論、あなた達や我々の行動の結果ですよ、これは」
「あなたはまだ、何もしていないじゃありませんの」
「あ、確かにそれは……そうですね」
 西園寺の言葉に、ちょっと口淀む黒川であるが、今は説明をする方が先かと話を始めた。
「蜘蛛型情報収集用ユニット。それがこの機械の正体です。良いですか? 情報を収集するのを目的とした機械なんですよ、これは。作った存在が何を考えていたのかは知りませんが、人間の情報を集めるために作られたものなのです」
 機械は何か、目的をもって作られる。機械である以上、そういう存在だ。この蜘蛛の場合は、人の情報を集めるためにその機能を発揮する。
 その説明を補足する様に、 蜘蛛の拘束を解いた己条が、黒川と西園寺の近くまで歩いて来て、他の猟兵達に告げる。
「皆さんが渡って来たであろうあの防腐剤の水たまりの底。そこには多くの人間の死体が存在していました。私が実際に確認したので間違いありません」
 そうしてその種と仕掛けについても続けて話を始めた。
「防腐剤に漬けられた死体と言う事は、腐らない様にしていると言う事です。それ以上、損壊しない様にしているという事。もっと身も蓋も無い表現をするのなら、何かに利用し続けていると言う事……らしいです」
 そういう話だったろうと己条は黒川に視線を向けると、彼は頷きで返した。
「ええ。まったく、誰が考え出したのか。それともこの機械が、効率を考える上で、そういう答えを導き出したのか。まさか、死体を、その思考能力を利用しようなどと」
 機械の蜘蛛は、人間を調べる。調べる以上は、それを無理矢理に捕え、時には死体へと変えてしまう事もあるだろう。だが、機械はひたすらに情報を求める存在。殺して、それで終わりでは勿体ないと考えたのだ。もっと、もっと利用できるぞと。
「人の脳は、思考は、それそのままでも、ある事に使えます。例えばそう、誰か、別の人間と会話させて見るとか」
 そのために、貴重な死体は保存されていた。その思考能力を司る脳を損壊させない様に。そうして何時でも利用できる様に。さらには、暗闇の迷宮の中で、小蜘蛛を通して、迷宮に立ち寄った新たな人間と会話させる様に。
「悪趣味な事ですわね。さっきも説明を受けましたけれど、あまり良い顔をして聞ける話ではありませんわ」
「趣味ではありませんからね。この機械にとってはそれが仕事です」
 西園寺の言葉を、良い顔をしながら受け止める黒川。
 そう、ここまでがこの蜘蛛の正体だった。機械として、そんな仕事を、誰もしたがらない様なおぞましい仕事を、ずっと、率先して続けて来た存在の正体である。
 そうしてその正体は今もなお、ひたすらにその仕事を果たそうとしている。
「情報を収集する存在に対して、やるべき事は一つ。その処理速度を超える様な事態をぶつけてやれば良い。丁度、みなさんが先ほどまでしていた事がそれです」
 仮面が現れ、その仮面から出て来た猟兵達が合体して戦う。キマイラの姉妹が姿を変じさせてぶつかる。そうして、突如召喚されたがしゃ髑髏があっかんべーをする。
 ひたすらに良く分からず、大きく移り変わって行くその状況に、大蜘蛛は戦いを止めたのだ。
 大蜘蛛の形をした機械は、もっと優先するべき事があるから。
 機械に与えられた使命は、変化する状況をひたすらに整理し、情報として落とし込むという作業なのだから。
 だからその行動を優先する。
 今もきっと、大蜘蛛はがしゃ髑髏を観察しているのだ。これは何だろう。何故、ここに来て、突然、間抜けな姿を晒しているのだろうと。
「それで、これからどうしますの? このまま放置?」
「いえ、放置と言うのはちょっと……私はどうかと思いますよ?」
 西園寺の言葉に己条が答えた。今は情報の整理に追われている大蜘蛛であるが、整理し終われば、またその仕事を再開し始めるだろう。
 機械には感情も情緒も無いのだ。あの水たまりの底の死体だって利用され続ける。
 実際、そうやって既に利用され続けているから、例えば他の猟兵が死体を利用する様なユーベルコードを使ったとしても、先有権の関係からか、効果が無かったのだろうし。
「勿論、本体はここで消滅させていただきます。あの防腐剤の底の死体をどうするのかについては、他の猟兵の方々に任せますけども……機械の蜘蛛については、これにてご退場を」
 黒川の言葉を合図に、西園寺が召喚したがしゃ髑髏が内側から光を放ち始めた。蜘蛛はその新たな変化に対して観察を続ける。
 それは黒川が発動させた魔法。爆発性の炎を発するユーベルコード。それを蜘蛛は観察し続ける。
 炎は髑髏を巻き込み、さらに範囲を増して燃え上がる。それを蜘蛛は観察し続ける。
 燃え上がるそれは熱量を増し、範囲を増し、近くの蜘蛛すら巻き込み始めた。それを蜘蛛は観察し続ける。
 装甲すら溶かす程の熱量が燃え移る中、それを蜘蛛は観察し続ける。
 装甲を超え、蜘蛛を動かし続けていた装置にまで火が届く間も、それを蜘蛛は観察―――



 燃えて、溶けて、崩れるその大蜘蛛の姿を見て、猟兵の誰かは、迷宮で出会った誰かの声が聞こえた気がする。
「闇が……燃えて」
「迷宮を壊しては……」
「私はいつも……誰かの隣にいて……」
「ああ……」
それらの声が聞こえる中で、また別の猟兵は気が付いたかもしれない。
 迷宮で出会った誰かの名前。【コプス】【ズィウォーキ】【ガダバ】【シティ】その他にも何人か居たかもしれないそんな彼らの名前。
 確かそれらはすべて、死体という意味であったなと。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月14日


挿絵イラスト