聖なる夜。それは人々が心躍らせ賑やかに街を行き交い、恋人達がロマンティックな星空と雪景色の中で愛を語り合う日。
「――という冗談は置いといて!!!!!」
バリィィィッ!! とクリスマスカラーのスケッチブックを思い切り引き裂いて、ネルウェザ・イェルドットが手を叩く。決して彼女に妬みや嫉みといった感情があるわけではない――筈だ。
「さて、来たるクリスマス。キマイラフューチャーではこの時期、メカサンタというものが出現するそうだよ」
新しいスケッチブックを取り出し、ネルウェザは紅白衣装のシルエットを描き出す。
「メカサンタというのは、言葉通り機械仕掛けのサンタ。同じく機械のトナカイが牽くソリで街を飛び、自分を捕まえた者に何でも一つプレゼントを配るんだとか」
いい話だろう、と笑ってネルウェザはスケッチブックを掲げる。彼女のイラストは人と言うにはかなり角ばっており、最早ロボットに近い何かだ。更に何やら躍動感のある線が加えられ、ネルウェザはその速さをアピールする。
「さて、これはメカサンタの中でもかなーり速いタイプ。キマイラフューチャーの住人達はそれぞれこのメカサンタを捕まえてプレゼントを貰ったようだけど、一体だけまだ捕まってないんだ」
ネルウェザは更に、メカサンタを追いかける人影を描き足して続けた。
「今回皆を呼んだのは、このメカサンタに関する話でねぇ……怪人の残党がこれを捕まえて、新たなるオブリビオン・フォーミュラをプレゼントしてもらおうと企んでいるらしい。それを阻止するために、怪人達からメカサンタを守って欲しいんだ」
勿論、メカサンタを皆が捕まえればプレゼントが貰えるよ、とネルウェザは補足する。しかし彼女は何か思い出したように首を振り、苦笑して手を広げた。
「プレゼントの事なんだけど、実はこの速いサンタがくれる物は受け取って一日もすればぱっと消えちゃうんだ。そして今、このメカサンタが出没しているエリアではとある遊びが大流行してる」
それは――服も壁も汚れ放題のペンキ遊び。時間が経てば綺麗さっぱり消えるプレゼントは、その遊びにかなり都合が良いのだ。
「任務が終わったら是非参戦を……いや、巻き込まれるかな。何せ一日限りのお祭り騒ぎだ。汚そうが汚されようが次の日には何にも残らないから、気にせず遊んで来てねぇ」
ネルウェザはけらけら笑ってグリモアを浮かべる。猟兵の準備が整うと、彼女は早速キマイラフューチャーへの転送を始めた。
●
「メェリィイィィ――――――ッ、クリスマァ――ス!!!!!」
ピガガガッ! と機械音を鳴らして、紅白衣装のロボット・メカサンタが空を駆け抜ける。メカサンタの乗るソリにはぎゅうぎゅうに物が詰まった袋が積まれていた。
そんな大荷物にもかかわらず、メカトナカイは全く速度を落とすことなくソリを牽いていく。
右へ左へ時には上へ、自由自在に飛び回るそのソリに――一つのみかんが投げ放たれた。
ソリを掠めたみかんは放物線を描いてべちょりと落ち、黄緑色の液体に沈んで潰れてしまう。見れば街中はペンキに塗れてカラフルに彩られ、そこかしこで住人たちが水鉄砲を放ち合っていた。
そして攻撃の主は月明かりに照らされ、その姿を現す。
「「「待てぇっ!!」」」
それはみかん、かまくら、鍋――何やら冬っぽい感じの怪人達。彼等はメカサンタを追いかけて、様々な物を投げつけながら街を駆けていくのであった。
みかろっと
メリークリスマス!!
ちょっとまだ早いですが、クリスマスシナリオです。
今回はキマイラフューチャーにて、メカサンタを狙う怪人を倒し、彼等の『新たなオブリビオン・フォーミュラをプレゼントしてもらう』という企みを阻止して頂きます。
一章集団戦、敵はメカサンタに様々な冬っぽいものを投げつけて止めようとしています。それを妨害してメカサンタの逃走を助けつつ、敵を倒してください。
※滅茶苦茶に速いメカサンタを追いかける敵をさらに猟兵が追いかける形になります。
二章はボス戦です。突破できれば三章、キマイラフューチャーではしゃぐ日常パートです。三章開始時には是非一つ、お好きなプレゼントをメカサンタから受け取ってください。ペンキ遊びで使える玩具でも、欲しかったゲームやアクセサリでも、なんでもアリです。
※オ-プニングでも描写しましたが、プレゼントは次の日には消えるのでお持ち帰りできません。ご了承ください。
第1章 集団戦
『冬の思い出トリオ』
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POW : かまくら怪人・ウェポン
【かまくら兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : みかん怪人・ジェノサイド
【みかん攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 鍋怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【鍋】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:まめのきなこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シャルロッテ・ヴェイロン
(冒頭のグリモア猟兵の様子を思い出し)
彼女にはどんなクリスマスにおける悲しい思い出があったのでしょうか・・・。
――それはさておき。
とりあえず、シューティングゲームの戦闘機を召喚して、それに乗り込んで追いかけていきましょう。
で、メカサンタを狙ってるやつを攻撃したり、搭載兵器を【乱れ撃ち】&【一斉発射】して、弾幕を張って近づかせないようにしておきましょう。
状況によっては戦車や攻撃ヘリも呼び出して、それぞれランダムに攻撃させたり、まとまったところを包囲して総攻撃とかやらせちゃいましょうか。
※アドリブ・連携大歓迎です。
「彼女にはどんなクリスマスにおける悲しい思い出があったのでしょうか……」
ふと、出発前に見た光景を思い出しシャルロッテ・ヴェイロンが呟く。確か恋愛がどうと語り出した辺りで感情を露わにしていたが――齢十つのシャルロッテがあのグリモア猟兵の奇行を理解するのは、もう少し先であって欲しいものだ。
――それはさておき。
何より今この瞬間、目の前でサンタが空を飛んでいる。こんな幻想的なシーンを前にして、クリスマスを悲しむ理由を考えるのは勿体ないだろう。
「さて……」
シャルロッテは顔を上げてメカサンタを追う怪人達、中でもぶんぶんと腕を振り回してみかんを投げつける怪人へと視線を向ける。
突風を起こしながら空を駆けるメカサンタは、いつの間にか大量のみかんの嵐に巻き込まれかけていた。
「俺のみかんを喰らえっ!」
みかん頭の怪人が振りかぶった瞬間、メカサンタとは別の轟音が響く。
「――メカサンタには近づけさせませんよ」
そんな声にはて、とみかん頭が後ろを向けば、凄まじいスピードで何かが飛んで来るのが見えた。
「ぎゃぁぁあっ!?」
グン、と身を屈めるみかん怪人。飛んできた何かはその皮を掠め、ぷしっと爽やかな香りを散らしていく。
みかんの弾幕の間を縫い、低くエンジンを鳴らしていたそれは――シャルロッテがユーベルコードで呼び出した、シューティングゲームの戦闘機。
彼女は慣れた手つきで戦闘機のパネルを操作すると、機体に備えられた銃口で怪人に狙いを定める。背後で飛び去って行くメカサンタを見やりながら、にっ、とシャルロッテが笑った。
「――ゲームスタートだ!」
ガガガガッ! と一斉に放たれる弾丸。戦闘機はみかんの弾幕を潰しながら激しく火を噴き、怪人の頭を掠めては進んで行く。空間を埋め尽くしていたみかんは戦闘機の弾丸に変わり、新たな弾幕を作ってメカサンタへの道を塞いでいた。
慌てて後退する怪人を正確に追い、シャルロッテは更に周囲へ視線を動かす。
「な、なんだ……?」
みかん怪人がぶるりと身を震わせる。
唸るようにエンジン音が響く。戦闘機の音だけではない。遠くでメカサンタが駆ける音、クリスマスで騒ぐ住人たちの足音。そして、明らかに近くに迫った複数の音。
怪人がみかん頭を動かせば、ペンキでカラフルに彩られた壁や床――そこに紛れるビビットカラーの機体が目に入った。
「せ、戦車!?」
怪人が目を丸く――みかんにしか見えないが――して跳び退がる。重い発砲音が次々に響き、怪人は袋小路へと追い詰められていく。
迷彩と言うには鮮やかな色をしたゲームの中の兵器。シャルロッテがユーベルコードの力で更に呼び出したそれらは、怪人を囲んでカチャリと銃口を揃えた。
「チェックメイトだ」
身動きの取れない怪人の元へ、シャルロッテの乗る戦闘機がふわりと降下する。怪人がぼたりと小さなみかんを落とすと同時、シャルロッテの右手がふっと動いた。
戦闘機、戦車、そして上空から更にヘリコプター。全ての機体の銃口が一点に狙いを定め――一斉に火を噴いた。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
万一新たなオブリビオン・フォーミュラをもらえても、一日で消えるのであれば意味はないのでは……?
まぁ、ひとまず止めておきましょう。
フィンブルヴェトを手に怪人たちを追いかけます。
みかん攻撃……みかん攻撃? で妨害されたら弾道を『見切り』氷の弾丸でいくらかを撃ち落とし、撃ち落としきれなかった分は基本は回避しますが、最低一つはフィンブルヴェトで『武器受け』します。
フィンブルヴェトで受け止めることができたら【叛逆の狼煙】を。
使うユーベルコードが同じであればあとは使い手の腕次第。
『スナイパー』の技術で『乱れ撃ち』『制圧射撃』、こちらに飛んでくるみかんを撃ち落としつつ怪人も撃ち抜きます……みかんで。
冬っぽい怪人集団はメカサンタを追い続ける。
その目的とは『新しいオブリビオン・フォーミュラをプレゼントしてもらうこと』であるが、セルマ・エンフィールドは訝しげな目で彼等を見つめていた。
「万一新たなオブリビオン・フォーミュラをもらえても、一日で消えるのであれば意味はないのでは……?」
そんな呟きが聞こえたか、メカサンタを追っていた怪人達がふと顔――あれは顔と呼べるのだろうか――を見合わせる。
まさか世界の破滅を望んでおきながらそんなうっかりをやらかした訳ではない……筈だ。
「まぁ、ひとまず止めておきましょう」
セルマはフィンブルヴェトを手にして怪人達へと向かっていく。その足音に怪人達ははっとして振り向くと、大きめのみかんを何処からともなく取り出した。
「くっ、喰らえ!! みかん攻撃!!!」
ばばばばっ! と広がるみかんの弾幕。セルマは素早くフィンブルヴェトを構え、大量のみかんに銃口を向けた。
冷える冬の空気の中で、一際凍てつく様な冷気が一点に集中する。ふっ、とセルマの口から白い息が漏れると同時、宙を舞っていたみかんが一斉に橙の果汁を散らした。
潰れたみかんは瞬時に凍り、アイスキャンディーのようになって真っ逆さまに落下する。しかし怪人達は諦めず、次々にみかんを投げつけていた。
「はっはっは!! まだまだみかんはあるんだよ!!」
そんな声と共に飛来するみかん。狙撃が間に合わない程に降り注ぐ果実も、セルマはひらりひらりと身軽に躱していく。
びゅん、と一つのみかんがセルマの眼前に迫る。しかしセルマは身を屈めることなく、咄嗟にフィンブルヴェトを盾にして受け止めた。
「こちらの番です……お返しします」
セルマのユーベルコード、『叛逆の狼煙』。その発動と共に、みかんを受け止めたフィンブルヴェトからふわりと爽やかな甘い香りが漂う。
宙を飛び交うみかんに狙いを定め、セルマが引き金を引けば――その銃口から、怪人が手にしているのと同じものが飛び出した。
「み、みかん!?」
みかんを撃ち落とすみかん。最早、そういう祭りにも見える光景だ。
セルマが放つみかんは正確に怪人のみかんを捉え撃ち落としていく。同じ力でも手で闇雲に投げる攻撃とスナイパーの狙撃とでは、命中率は天と地の差であった。
セルマはフィンブルヴェトを真っ直ぐに構え、一番大きなみかん――怪人の頭へと集中する。セルマの瞳が確実にその中心を捉えた瞬間、フィンブルヴェトから凄まじい速度で弾丸、否――みかんが飛び出した。
ズガン! とみかん頭に穴が開く。甘酸っぱい果汁の香りが空を舞い、怪人の身体はペンキの海へと沈んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシェ・ユヴェール
うーん……季節感はまあ合っていますが
クリスマス感は全く無い気が致しますね
『博愛』のセレスタイトを選びUCを使用
先ずは速度を上げ、怪人達に追い付き、追い越す
そして
追い越し際に少し速度を緩め、
メカサンタさんと怪人達の間に滑り込み
特に迫っていた怪人の顔面?目掛けてサンタ帽子を被せましょう
こう、ずぼっと
高速移動の最中に急に前が見えなくなれば……まあ結果は明らかですね
その辺で脱落していて下さい
懲りずに続けるのでしたら
今度はミニツリーを顔面?に植えます
丁度、本来はかまくらの入口であろう穴が開いてますし
ところで
みかん投げや鍋反射はまだ分からなくもないのですが
かまくらで兵器とは、一体なんだったのでしょうか……
わらわらとメカサンタを追って群がる怪人達。彼等の姿はみかんに鍋にかまくらと、かなり冬らしいと言えば冬らしい。が、しかし。
「……クリスマス感は全く無い気が致しますね」
いつもの笑顔の中で微かに眉を下げて、ファルシェ・ユヴェールが呟く。クリスマスを彩るのならば、それこそあのメカサンタのような赤白衣装やトナカイの方が相応しいだろう。
高速で駆け抜けていく怪人達に追いつくべく、ファルシェが懐から取り出すのは『博愛』のセレスタイト――快晴の青天井を思わせる輝きを放つ石。ユーベルコードの力を伝わせれば彼の身体を澄んだ青が包み、そして翼を生やしたかの如くふわりと宙へ浮かせた。
一方怪人のひとり、ひんやりとしたかまくら頭が中々捕まらないメカサンタに向かってがちゃりと白い大砲を構える。
「喰らえ、かまくらウェポン!!!」
そう言って照準を合わせ、頭部と同じ質感をした引き金に指を添える怪人。
それはかまくらウェポンというよりただの雪製の大砲だが、まさか雪の塊に穴が開いていれば広義におけるかまくらだとでも言うのだろうか。
そんな兵器の発射音が鳴り響く寸前、突如怪人の視界が暗転した。
「うわぷっ!!?」
ずぼっ、と。背後から追いついていたファルシェが怪人のかまくら頭に被せたのは、可愛らしい赤白のサンタ帽子。ファルシェはこれでクリスマスらしくなりましたね、と言わんばかりの笑顔だったが、全速力で駆けていた最中に視界を塞がれたかまくら怪人はそれどころではなかった。
「その辺で脱落していて下さい」
ファルシェはそのまま怪人を追い越して、未だ追われているメカサンタの方へと駆けていく。怪人はずるりと足を滑らせ見事な宙返りを決めると、その勢いに任せて大砲を真上に向かって発射した。
ずどん! と花火の打ち上がるような音と共に、真っ白な雪が宙で分離して丸く広がる。かまくら怪人はどうにかぐいぐいとサンタ帽子を脱ぎ、すぐさまファルシェの後を追って走り出した。
「待ちやがれぇぇ!!」
雪製の大砲を構え、怪人はどたどたと街を駆ける。するとファルシェがやれやれと言った様子で懐を漁り、くるりと踵を返してかまくら怪人の方を向いた。
「……懲りませんね」
ギュン、と一瞬にしてかまくら怪人の視界からファルシェの姿が消える。否、既に彼は怪人の背後に立っていた。
そして怪人の頭には――。
「ぐぇぇ!? な、何だこれ!?」
「丁度穴が開いていましたので。オブリビオン・フォーミュラより、こちらの方がクリスマスプレゼントにぴったりかと」
そう、彼は贈り物のアドバイスをするように微笑んで。
かまくら怪人の顔面――顔なのだろうか――の中心にすっぽりと植えられていたのは、小さくも立派なクリスマスツリー。何故こんなにもクリスマスグッズの品揃えが良いのか今は問うまい。
かまくらの入口であろう穴が人間のどの部位に当たるのかは見当もつかないが、どうやら怪人はひどく苦しんでいるようであった。
「ち、ちくしょう!! 前が見えねえし取れねえ!!」
もごもごともがくかまくら怪人はその周囲に広がるペンキをぐんぐん吸い上げて、真っ白な体をカラフルに染めながら崩れていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
サンタさん休みの無い私にも休日と娯楽の数々を!!下さい!!
主にオブリビオンの出ない平和な世界での恒久的バカンスをですねーーーー!!!!
(※叫びながら追走)
UCで飛んでいきます
いい加減にしろや今度はキマFか私の故郷で暴れやがって
【オーラ防御】常時展開、これで風の抵抗を弱めて加速
【破壊工作】の知識を活かした【高速詠唱】の爆風でさらに加速
敵攻撃は【第六感】で【見切り】一瞬でも前に出れたら後方に【高速詠唱】で【目潰し】用の光を思いっきりピカーしてやる(【罠使い】)
やーいーやーいひっかかったー
って言ってる場合じゃないんだって、メカサンタさんバカンスちょうだい!ギブミーバカンス!!!(必死)
「サンタさん休みの無い私にも休日と娯楽の数々を!! 下さい!!」
そんな声に一瞬メカサンタが反応したか、高速で駆けるソリがピガガッと音を鳴らして方向を変える。同時に怪人達もぐるりと旋回し、雪玉を投げつけながら後を追っていった。
更にそれを追う声の主、鈴木・志乃はよく冷えた冬の風を大きく吸い込むと、感情の籠った叫び声を上げる。
「主にオブリビオンの出ない平和な世界での恒久的バカンスをですねーーーー!!!!」
街中を駆け回るキマイラフューチャーの住人も一瞬動きを止め、何だ何だと志乃の方を見る。数多の視線が集まる中で、志乃はユーベルコードの光で全身を包み――空へと飛び出した。
志乃は纏うオーラで風を裂き、魔法で後方に爆風を起こし、可能な限りの加速を利用してメカサンタと怪人達の後を追う。その飛行速度は凄まじく、両者の距離が縮まるまでにそう時間は掛からなかった。
ふっ、と怪人達が不規則な風に気づいた瞬間。
――いい加減にしろや。
志乃が何か黒い感情を滲ませながら怪人の横を抜ける。怪人達は一瞬びくりと肩を揺らすが、目の前に現れた猟兵を見るや否や大量の雪玉を両手に構えて放り投げた。
「かまくらの力、思い知れぇ!」
ばばばばっ、と降り注ぐ雪の軌道を読み、志乃は素早く怪人の攻撃を躱していく。そして彼女は怪人達に視線を向けると、瞬時に光の魔法を唱え――激しい光を放った。
「うわぁぁぁ!!」
怪人達は思わず目を――目玉と呼べそうなものが見当たらないが――塞ぎ、同時にバランスを崩してつるりと足を滑らせる。ぐしゃりべちゃりと地に伏す怪人の姿を、志乃は愉快そうに笑って指さした。
「やーいーやーいひっかかったー」
そうからかう志乃の背後。メカサンタは怪人達が転がっている隙にガチャリとソリを一度止めると、ロケットのように火を噴いて速度を上げて一気にどこかへ飛んでいく。
「……って言ってる場合じゃなかった!」
激しいエンジン音に志乃は慌てて振り向くと、必死の形相でメカサンタの背に手を伸ばす。
「メカサンタさんバカンスちょうだい! ギブミーバカンス!!!」
しかしメカサンタも今は逃げることで精一杯なのだろうか、志乃のそんな叫びにもギィギィと手を振るのみ。機械仕掛けのトナカイと共に、メカサンタはキマイラフューチャーの夜空へと消えていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『敏腕ハッカー・都南・佳』
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POW : セクシー格闘家系トナカイ娘召喚
【ハッキングで認知を変えたバーチャル女子】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD : となのーずビーム
【赤い鼻から発射されるビーム】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 超絶ウルトラ必殺ハッキングッ!!
【愛用ハッキングマシン】から【認知を書き換えるプログラム】を放ち、【認知障害】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:Miyu
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「シリカ・シリウス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「私は怒っています。怒っていますよ」
ぷんすこぷんすこ。何とも可愛らしいトナカイが怪人達の前に現れる。トナカイはまるで部下の失敗を叱るように怪人達を見つめており、メカサンタを捕らえろと指示していたのが彼だという事が伺えた。
「全く……」
すう、と息を吸って。
トナカイは突如血相を変えて、声のボリュームをぐんと上げた。
「折角サンタが残っているというから萌え系トナカイ美少女のオブリビオン・フォーミュラを手に入れようと思っていたのに! どうするんですか私の夢は! 希望は! 私の萌え萌えキュントナカイ美少女ハーレム計画をどうしてくれるんですかああああ!!!!」
その間僅か五秒。かなりの熱意を込めた説教の後、トナカイは猟兵の方を見てくっくっくと悪い笑みを浮かべる。
「それもこれも全部あなた方のせいですね? この私、敏腕ハッカー・都南・佳の力を……とくと味わって頂きましょう!!!」
トナカイ、もとい都南は熱意と怒りを込め、びしっと猟兵を指差すのだった。
シャルロッテ・ヴェイロン
ったく、どいつもこいつも、くだらないお願いばかり考えやがりますね。
(ここで、ふと垣間見たアポカリプスヘルの光景を思い出し)
そのために世界を滅ぼそうってんですか、まったく!
――それはさておき。
あっちも凄腕ハッカーならば、私も【ハッキング】で挑むとしましょう。
さあ、どちらが先に相手のニューロンを焼き切るか、勝負です!(こっそり【Hacker's Sense】でブーストしたり)
……まぁその間にこっそり召喚&包囲させた兵器群による【一斉発射】で片付けちゃいますけどねw
※アドリブ・連携大歓迎です。
都南はどこからともなくコンパクトなマシンを取り出す。それは決して、単なるコンピューターやゲーム機などでは無かった。
「これが……私が見たかった世界です!!」
どういう仕組みか、素早いタイピングでマシンに打ち込まれたそれは都南の周囲へ電子的な幻影を映し出した。
夜空を彩るように現れたのは、クリスマスらしいと言えばらしい、トナカイを模した衣装の美少女達。
「ったく、どいつもこいつも、くだらないお願いばかり考えやがりますね」
シャルロッテ・ヴェイロンは呆れたように都南と美少女達に目を細め、ため息をつく。そして彼女はふと、ここではない世界――崩壊した地で懸命に生きる人々の姿を思い出した。
誰だって好きな物に囲まれるのは幸せだ。それを夢に見ること自体は悪ではない。
――だが。
「そのために世界を滅ぼそうってんですか、まったく!」
一人の夢の為に、多数の人々が犠牲になっていいわけがない。シャルロッテは憤慨した様子で都南に向き直った。
さて、と気持ちを切り替えるように、シャルロッテもまたマシンを取り出す。あのトナカイが敏腕ハッカーと名乗るのならば、彼女もハッキングの腕で対抗しようというのだ。
「さあ、どちらが先に相手のニューロンを焼き切るか、勝負です!」
素早くシャルロッテの指がキーボードを滑る。
都南は瞬時に防御網を張ろうと新しい文字の羅列を生み出そうとするが、それが完成する前にシャルロッテの口角が微かに上がった。
「なっ、もう侵入された!?」
ぎょっとする都南の周囲で、トナカイ美少女の姿がジジジと霞み出す。シャルロッテは敢えて幻影を消さないまま、弄ぶように顔を崩したり脚や腕の大きさを変えて都南の精神を揺さぶった。
「ああああ!! 私の萌え系トナカイ美少女が!!!」
都南は赤鼻を更に真っ赤に染めて、マシンへと蹄を叩き込んでいく。
「これでどうです、超絶ウルトラ必殺ハッキングッ!!」
その瞬間ヴン、とトナカイ美少女達が消える。代わりに都南のマシンから、シャルロッテの方へと見えない力を込めたプログラムが放たれた。
――しかし、それはシャルロッテの身に何一つ異常を与えることなく霧散する。
「……こんなものですか?」
易々と都南の攻撃を防ぎ切り、煽るように笑うシャルロッテ。都南は怒りを露わにすると、足掻くように必死でマシンを叩き始める。
シャルロッテの防御を破ろうと躍起になる都南は、周囲に近づく小さな影に気づかなかった。
「よし、これで……って、うわぁぁぁ!?」
がちゃり、と駆動音を響かせるのは、シャルロッテがユーベルコードで呼び出した機械兵器達。都南がその音に手を止めると同時、彼を中心に綺麗な円を描いていた兵器達が一斉に飛び出した。
二百をゆうに超えるそれは光と音を激しく炸裂させ、街に爆風を起こしながら都南を襲う。
ニューロンどころか全身を焼いて、都南は黒焦げの体で膝をつくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシェ・ユヴェール
視界に入った先に挑んだ方の戦いに思わず嘆息
……そうでしたか…… 残念です
都南氏がその姿なのでほんの少し期待があったのですが
普通にトナカイ風衣装なだけの女性の姿でしたか……
正直、二頭身でふかふかしたゆるきゃらを期待していたのですが
さて気を取り直して
フォーミュラが現れた場合、それは貴方のハーレムではなく
むしろ貴方のほうが部下になるのでは
まあ隷属が趣味だとおっしゃるならそれはそれですけれど
相手のビームに合わせて次々と水晶のプリズムを生やしていく
最終的には反射光が都南氏に向くよう角度をつけて乱反射
自身はビーム攻撃を誘うように合間を動いていく
何と言いましたか……そう、ベツレヘムの星のようで美しいですね
ごほっ、と都南は煙を吐いて眉間に皺を寄せる。そして都南がもう一度カタタとマシンに何かを入力すると、再び彼を鼓舞するようにトナカイ衣装を纏う美少女達が映し出された。
「私の夢は邪魔させませんよ……!」
先の猟兵との戦闘、そして今映し出されるキャラクター達を見て、ファルシェ・ユヴェールが思わず残念そうなため息を漏らす。
「……そうでしたか……二頭身でふかふかしたゆるきゃらを期待していたのですが……」
そうファルシェが視線を向けるのは、可愛らしい着ぐるみのような姿をした都南の方。あれが少しおめかししたような、マスコットキャラクター的なものがぽこぽこ出てきたら……と彼はほんの少しだけ期待していた。
しかし今彼の目の前でキャッキャと笑顔を振り向くのは、トナカイの角やもこもこの衣装に身を包む人型の女性達。
その光景に何とも言えない表情を浮かべつつ、ファルシェは都南の方に向き直った。
「さて……フォーミュラが現れた場合、それは貴方のハーレムではなく、むしろ貴方のほうが部下になるのでは?」
しかし、そんなファルシェの問いに都南はマシンを見つめたまま笑う。
「ふふふ、これはその為のマシンですよ? 呼び出したオブリビオン・フォーミュラの認知と概念を書き換え、私は最高に強くて可愛いトナカイ美少女を従えて世界を征服するのです! まあ、私が従うのも全然良いですが!!」
そう恍惚と語る都南。ファルシェの貼り付けたような笑みと視線に反し、美少女達の映像がきゃーと都南に歓声を浴びせていた。
都南は満足そうにマシンを勢いよく閉じて、赤い鼻を掲げるように胸を張る。
「さぁ、そこを退かないのでしたら容赦しませんよ! 喰らいなさい、となのーずビィーーム!!」
キィン、と都南の鼻が熱を帯び、咄嗟にファルシェが素早く右へ動く。直後細く凝縮された光が空気を裂き、風を起こして抜けていった。
「まだまだっ!」
続けて都南は次々に鼻から同じビームを放つ。
身を躱しながら揺れる帽子を押さえ、ファルシェはユーベルコード『Die Hand des Zauberers』を発動した。
ビームの軌道上を狙うようにファルシェの視線が動き、ペンキ塗れの壁や地面から透き通るような水晶が飛び出す。直線を進むビームは水晶の中で方向を変え、ファルシェを囲むように複雑な立体を描いた。
自ら囲まれ逃げ道を失うとは。都南はそう心の中で嘲笑う。彼が更に鼻に力を込めた瞬間、突如ファルシェの周囲のビームがカクンと曲がり――都南の方へと集中した。
「へ!?」
ファルシェが水晶を作りだした位置や角度、それら全てが計算されたものだと気付いた時には――既に。
都南は自らが発したビームに囲まれており、ずんぐりした体でどちらへ動こうが躱しきれないのは明らかだった。
世界を破滅に導く邪な都南の夢、それすらもかき消すようなオクタグラムの輝き。ファルシェは一瞬、光に貫かれるトナカイの姿にそれを垣間見ていた。
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
アッハイ
平和をぶち壊す奴=バカンス潰し=私の敵
でゅーゆーあんだーすたん???(ストレスマッハ)
バーチャル女子が民間人じゃないといいんだけどね……さて、認知を変えるならこちらは認識能力を変えさせて貰いましょう
【オーラ防御】展開
【第六感】で格闘攻撃を【見切り】スレスレでかわしながらUC発動(【全力魔法】の【精神攻撃ハッキング】【罠使い】)
そのまま【催眠術】を混ぜつつ『私を味方、トナカイを敵だと認識させる』
【念動力】で周囲の器物を巻き上げトナカイを撹乱しつつバー女子に攻撃させ接近。光の鎖で捕縛して締め上げられるかな
クリスマスぐらい平穏に生きたいと言う私の願い、叶えておくれよサンタさん
呻きながら立ち上がる都南の元へ、とん、と舞い降りる鈴木・志乃。彼女の表情はクリスマスを楽しむどころか、かなりのストレスを溜め込んだような苛立ちに満ちていた。
都南はガチャガチャと様々な機器を取り出すと、手を震わせながら素早く何かを入力していく。そして低く電子的な起動音が響いた瞬間、都南の隣にはまたトナカイ衣装の――先程まで映し出されていたキャラクターよりも心なしか体格のいい少女が現れた。
「ふっふっふ……私の部下は可愛いだけじゃないんですよ!」
行きなさい、と都南が指示すると、現れた女性が勢いよく駆け出し志乃の方へと向かっていく。
すると志乃ははぁ、とため息をついて目を細めて口を開いた。
「……クリスマスぐらい平穏に生きたいのに」
しかしそんな志乃の願いも虚しく、トナカイ少女が構わず拳を振りかぶる。細くも筋肉質な腕から鋭い打撃が放たれると、それは志乃の数センチ横を抜けて空気を鳴らした。
間髪入れず次々放たれるパンチを躱し、志乃は少女の後方で指示を送る都南に目を向ける。そして一瞬の隙を狙って少女と距離を取ると、志乃はユーベルコードを発動した。
「――私を媒介に今一時繋がれ、世界の意志よ」
紡がれた声は志乃の意志を光に変え、トナカイ少女へと叩き込む。少女は咄嗟に身を丸めながらも、衝撃や痛みのないそれに首を傾げた。防ぎ切ったのなら反撃するまで――そう大きく踏み込んだ少女の意識が、一瞬暗転する。
朦朧とする少女の頭には、志乃の声が響いていた。
――私は味方。倒すべき敵はあのトナカイ。
はっ、と少女は目を見開く。意識を取り戻した彼女は突如くるりと踵を返すと、主である都南の元へと駆けだした。
「ななな何ですか!?」
拳を構えて敵意を剥き出しにしたトナカイ少女に、都南は戸惑いながらも慌ててマシンに手を伸ばそうとする。強制終了をとキーボードを打ち始めた都南の周囲、ペンキで汚れた看板や置物へ志乃が念動力を放った。
竜巻のような風と飛び交う器物。流石にこの中で脆い電子機器を扱うわけにはいかず、都南は仕方なく手を止める。そして彼は恐ろしい形相のトナカイ少女に後退るが、一歩動けば志乃の操る看板がゴン! と大きな音を立てて牽制した。
何とか逃げ道を、と都南が周囲を見渡した、その時。
「おわっ!?」
志乃の元から伸びた光の鎖が都南の足を捕らえ、瞬時に胴や腕にも巻き付いて締め上げる。身動きの取れない身体は容赦なくトナカイ少女に殴られ、勢いよく地面へ転がっていった。
成功
🔵🔵🔴
セルマ・エンフィールド
……まぁ何を望むかは人それぞれですし、(どうでも)いいんじゃないでしょうか。
それはそれとしてオブリビオンを逃がすつもりはないので撃ちますが。
生物にも影響を及ぼすハッキング……世界は違えどスペースシップワールドの電脳魔術師のようなものでしょうか。
その道に長けた人であれば同じ土俵でも勝負できたのでしょうが、私はより直接的にやらせてもらいましょう。
あちらが愛用ハッキングマシンを取り出す動作を『見切り』、『クイックドロウ』で引き抜いたデリンジャーで【イージスの弾丸】を。氷の弾丸でハッキングマシンを凍結させ破壊し、そのままデリンジャーで敵も撃ち抜きます。
この距離ではまず外しません。お覚悟を。
ふらふらの都南は愛用のマシンを大事そうに抱えたまま、周囲に映し出されているトナカイ少女に笑みを零して立ち上がる。
「私の夢……可愛い可愛い萌え萌えトナカイ美少女達の為に……ッ!!」
そう呟き、肩を上下させてぜえぜえと呼吸する都南。その隣でがんばれぇ、と猫なで声で彼を鼓舞する少女達へ、セルマ・エンフィールドが決して暖かくはない視線を向けた。
「……まぁ何を望むかは人それぞれですし」
いいんじゃないでしょうか、と続ける彼女の言葉は呆れたような声色だ。他人の趣味嗜好に口を挟むつもりはない――が、目の前の存在がオブリビオンであり、手段はどうあれ世界を滅ぼそうとしているという事実は変わらない。
――そもそもオブリビオンを逃がすつもりなど彼女にはない。
セルマは装備している小銃に手を触れながら、都南が抱えているハッキングマシンを凝視する。似た能力を持つ電脳魔術師や電子機器の扱いに長ける者であれば、先の猟兵のように同じ土俵で勝負ができたかもしれない――が、それはセルマの得意分野ではなかった。
ならば、直接。起動される前に破壊すればいい。
セルマの視線に気づいたか、都南はぎゅっと手に力を込めつつも誇らしげに口を開く。
「これが気になりますか? 私もそろそろ限界ですしね……見せてあげましょう、私の超絶ウルトラ必殺ハッキングを!!」
すっ、とマシンが開かれようとした瞬間。
セルマの腕が瞬時にスカートの下、短銃デリンジャーを引き抜く。同時に発動されたユーベルコード『イージスの弾丸』が彼女の動きにアシストを掛け、目にも留まらぬ速さで都南の手元に狙いを定めた。
「――今です」
パキィッ、と都南のハッキングマシンの画面が凍る。途端に都南は鼻の先まで顔を青くして叫び声を上げた。
「わわわ、私の愛用マシンがぁぁ!!!」
その隙に一歩距離を詰め、セルマはデリンジャーの引き金に指を掛ける。銃口が冷気を込めると同時、氷の弾丸は二発、三発とハッキングマシンの接合部を的確に撃ち抜いていった。
「あああああ!!」
凍り、破壊されていくマシンに悲鳴を上げて都南はぶんぶんと首を振る。マシンの破壊に合わせて周囲でバツン、バツンとトナカイ美少女の映像が消滅していく度に、都南の金切り声が響いた。
錯乱する都南へもう一歩、セルマが大きく踏み込んで接近する。デリンジャーに凍てつく弾丸を込め、確実に急所を撃ち込める距離で――セルマの声が、泣き叫ぶ都南の声に紛れて。
「お覚悟を」
鋭い銃声が鳴り響く。都南は夜空を駆けるメカサンタに手を伸ばしながら、トナカイ美少女達と共に消滅し、骸の海へと還っていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『スプラフューチャー!』
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POW : バケツをぶち撒けろ!
SPD : 遠くから狙い撃つぜ!
WIZ : 芸術はスプラッシュだ!
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オブリビオンのいなくなった街中、キマイラフューチャーの住人たちがペンキの詰まった水鉄砲を抱えて走り回る。
「いっけぇ!!!」
「そっちいったよ!!」
だだだだだッ! と放たれるのは極彩色の弾丸で、それらは壁や地面に当たる度にその色を塗り替えていった。
――そして。
「メリィィィ、クリスマァ――――ッス!!」
ピィー、ガガガ! と壊れかけの機械のような音を鳴らし、猟兵達の前にメカサンタが舞い降りる。メカサンタはがさごそと大きな白い袋を取り出し――猟兵が手を伸ばせばいつでも捕まえられる位置で停止した。
一歩踏み出しメカサンタにタッチすれば、彼はプレゼントをくれるようだ。
「メリークリスマス! メリークリスマス! サア、キミタチガホシイモノハナンダイ!?」
ピガガッ、と目らしき電球を点滅させ、メカサンタは猟兵の返答を待つのだった。
●
猟兵達が少し開けたエリアへ足を踏み入れると、そこは眩しい黄色一色に染まる石畳が広がっていた。その中心にはきらきらと電飾の施されたクリスマスツリーが、樹木とは思えない黄色でそびえ立っているのが見える。
そしてその根元、クリスマスツリーの前でけらけら笑う獣人たちの姿があった。
「よぅ、お前らも遊びに来たのかい?」
「ここを黄色以外に染めるつもりなら、俺達も容赦しねぇぜ!」
そう言って獣人たちは手元の水鉄砲から周囲と同じ黄色のペンキを噴き出させる。どうやら彼等はこの広場を占領しているらしい。
彼等に立ち向かうもよし、あえて路地裏や細い道を染め抜くもよし、勿論この聖夜を存分に楽しむもよし。どうせ明日には綺麗さっぱり消えるのだ。
ビビッドカラーのクリスマスが、始まる。
鈴木・志乃
いやっふーーーーー!!!!
【猟兵配信~ペンキで花火打ち上げてみた~】
どーも、配信者のブラックです
みんなメカサンタ捕まえられたかな?
私は怪人と戦ってたよ!
このお祭りでペンキ遊びしてる人がいるから混ぜてもらうことにしました
皆も良かったら来てね、場所は~
UC発動
さーてさてさて相手は黄色を使って来るみたいなのでー私はワインレッドで行きますかあ
(映えるように適当に色は調整済み)
たーまやー!
(ダンスの要領で敵の攻撃を避けながら、高速詠唱で爆発するペンキの花火を大量に打ち上げるパフォーマンス
ネズミ花火やら打ち上げ花火やらロケット花火やら色々やるぼむすぷらっしゅ)
年内の配信はこれがラスト
皆さん良いお年を~!
獣人たちがぴくりと視線を動かす。真っ黄色の広場に飛び込んできた鈴木・志乃は、やっと手に入れた一夜限りの平和な時間に明るい表情を見せていた。
「いやっふーーーーー!!!!」
志乃は二つの意味で思い切り羽を伸ばしながら、ビビッドカラーのクリスマスツリーを背にしてカメラを構える。
『猟兵配信~ペンキで花火打ち上げてみた~』そう題された彼女のチャンネルには、早速続々と視聴者が集まっていた。
画面の向こう――クリスマスを楽しむキマイラフューチャーの人々に向けて、志乃が軽く一礼する。
「どーも、配信者のブラックです! みんなメカサンタ捕まえられたかな? 私は怪人と戦ってたよ!」
その怪人に向けていた表情とはうって変わって、笑顔でそう語る志乃。そしてカメラはくるりとペンキ塗れの広場を映し、志乃が言葉を続けた。
「このお祭りでペンキ遊びしてる人がいるから混ぜてもらうことにしました。皆も良かったら来てね、場所は……」
つらつらと今立っているエリアの位置を伝え、志乃はカメラから目を離す。
おい、と低い声に志乃が振り向けば、広場を占領していた獣人たちが水鉄砲を構えていた。
「姉ちゃん、やるのかやらねえのか……どっちだ?」
にっと口角を上げる獣人。志乃は構わずカメラに手を振ると、獣人達を挑発するように小さく笑い返し――ユーベルコードを発動した。
その瞬間、ステージが幕を開けるが如く志乃の気配が一変する。彼女が一歩踏み出すと同時、獣人達が揃って水鉄砲を発射した。
「行くぜッ!!」
リーダーらしき獣人の掛け声に合わせ、ずばばばばッ! と黄色の弾丸が宙を舞う。ペンキがばしゃばしゃと地面に叩き付けられる中、志乃は軽いステップでその間を縫い、踊るように弾丸を躱していった。
「ちょこまかと……ッ!」
発射音が更に激しさを増す中、志乃の唇が素早く動く。
志乃は一際目立つワインレッドの球体を手に、大きく息を吸って上空へと打ち上げた。
「たーまやー!」
ヒゥッ! と高く高く放られたそれは空中で炸裂し、広場に赤を落としていく。獣人達が目を丸くして手を止めた隙に、志乃の口が更に呪文を紡いだ。
彼女の魔法は花火――火の代わりに赤いペンキを散らす花火を呼び出し、広場を鮮やかに染め上げていく。負けじと獣人達も黄色のペンキを周囲に撒いて抵抗するが、その間に志乃の手は一際大きな球体を抱えていた。
「年内の配信はこれがラスト。皆さん良いお年を~!」
カメラの方に向かってそう手を振り、志乃は思い切り上空へと球体を放る。それが夜空に消えたかと思えば――ドン!! と胸の奥を揺らすような音が轟き、深紅の花が広場を彩っていった。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
(周囲の状況を見渡して)
ほほう、要は「フィールドを自分の色で塗りつぶせ」というわけですか。
あいにく私は、これと似たようなゲームも極めてましてね。こちらも手加減はしませんよ!
てなわけで、あのゲームのマイキャラを大量召喚しておきましょう。
で、手にしてるウェポンで【乱れ撃ち】させたり、【2回攻撃】や【一斉発射】で制圧とかやらせましょうか。
――あぁ、私自身もメカサンタからその手のウェポンをもらって攻撃に加わりましょうかね(ただしそれには何らかの魔改造が施されており、威力をMAXにすると壁や柱を切断してしまうという(ぉぃ))。
※アドリブ・連携大歓迎です。
くるりと周囲を見渡して、シャルロッテ・ヴェイロンはふとペンキ塗れの街にゲームの中の光景を重ねる。
「ほほう、要は『フィールドを自分の色で塗りつぶせ』というわけですか……あいにく私は、これと似たようなゲームも極めてましてね。こちらも手加減はしませんよ!」
にっ、と口角を上げ、シャルロッテはユーベルコードを発動させる。『バトルキャラクターズ』によって召喚されるのは、この街に似たゲームでシャルロッテが使用するキャラクター達だった。
キャラクター達は緑色のペンキを詰めた武器を手に、クリスマスツリーの聳える広場へ向かう。彼等のペンキ弾が広場を染め始めると、獣人達はすぐさま迎撃に水鉄砲を構えた。
バシャバシャと大量のペンキが地面に叩き付けられ、広場は黄色に赤に緑と派手な三色に彩られていく。
激しい攻防の中、獣人達が放つ黄色の弾が少しばかり数を減らした。
「くそッ!」
――獣人の水鉄砲がひとつタンクを空にする。広場をこれだけ染めたのだから無理もないだろう。
容赦なくシャルロッテが更に合図を送れば、彼女のキャラクター達はペンキを撃ち出しながら突き進んで行った。
シャルロッテは広場を彼等に任せ、メカサンタの方へと戻る。ピガピガと音を鳴らすメカサンタに、彼女はぐっと顔を近づけ声をかけた。
「私にも、あのペンキが出る水鉄砲を頂けますか?」
するとメカサンタはピガーッと嬉しそうに目の電球を光らせ、抱えていた白い袋に手を突っ込む。がさがさと漁ってメカサンタが取り出したのは、シャルロッテが抱えるのに丁度良さそうな小さめの水鉄砲だった。
「メリークリスマス!」
手渡され、シャルロッテはその重みに思わず一瞬よろける。それはコンパクトな見た目に反してかなりのペンキが詰まっているようだった。
水鉄砲を携えたシャルロッテは小走りで広場へと駆けていく。キャラクター達が獣人のグループと撃ち合っているのが見えた瞬間、シャルロッテはまず一発、手前の獣人を狙って水鉄砲の引き金を引いた。
――ズドン!!!
「うわぁぁぁっ!?」
放たれたのは間違いなくペンキであった――筈なのだが、シャルロッテの手元から放たれたそれは獣人が持っていた水鉄砲を撃ち抜き破壊する。
どうやら彼女の水鉄砲は何らかの魔改造が施された代物であったらしく、明らかに威力がオモチャのそれではなかった。
「あ、あんなのアリかよ……」
武器を失った獣人は黄色のペンキを頭から被り、渋々ツリーの後ろへと退避していく。続けてシャルロッテがペンキ弾を放つと、獣人達は自らの武器を守るように抱えて防御に徹し始めた。
「ひぃぃぃ!」
広場はシャルロッテと彼女のキャラクター達によって、緑一色に染め上げられていく。彼女等が射撃を止めた頃には、おかしな色をしていたクリスマスツリーもツリーらしい色を取り戻していた。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
今年ももう終わりですし、一年の最後くらい戦いを忘れるとしましょうか。
とはいえ、撃ち合いで負けるつもりはありません……!
普段の感覚から離れないよう、メカサンタから長距離用の大き目の水鉄砲を一丁と小型の銃を四丁もらい携行します。
基本は『スナイパー』の技巧で長距離からキマイラ達を撃ち抜きつつエリアを青に塗り、
裏路地や障害物を上手く使って接近してくる相手を素早く狙う時や近くを塗るために連射力を重視したい時は『クイックドロウ』した小型の銃を使い撃っていきます。
相手の撃つ水鉄砲に対してはこちらを狙うものは避ける、可能な場合は水鉄砲で【イージスの弾丸】を使用し、相手のペンキとこちらのペンキを相殺させます。
黄色のペンキを持った獣人達は渋々と広場から離れて街を駆け回る。彼等の騒ぐ声と水音が響く中で、セルマ・エンフィールドがぽつりと呟いた。
「今年ももう終わりですし、一年の最後くらい戦いを忘れるとしましょうか」
そう言いながらも、セルマは鳴り止まない射撃音に静かな対抗心を燃やす。セルマは彼等を目で追いながら、ピガピガ音を立てるメカサンタへと近づいた。
「メリークリスマス! サア、ホシイモノヲ!」
ばっと手を広げるメカサンタ。セルマは普段扱う武器に似た、長距離用の水鉄砲一丁と近距離用の水鉄砲四丁を要求する。
メカサンタは白い袋をしばらく漁った後、セルマの希望通りの水鉄砲を取り出して彼女に手渡した。
「デハ、メリークリスマス!」
そう目の電球を点滅させるメカサンタ。セルマは彼に小さく一礼すると、近くの壁に数発ペンキを撃ち込んで感覚を慣らす。
セルマは獣人達が駆けて行った方に向き直ると、水鉄砲を普段の武器と同じように携えて踏み出した。
周囲の足音に耳を澄ませて進めば、曲がり角の先につい先程見た獣人三人を発見する。息を潜めて狙いを定め、セルマは獣人の脳天へとペンキ弾を放った。
「ふがッ!?」
顔面にペンキを喰らった獣人は思わずその場に倒れ込む。近くにいた二人は慌てて水鉄砲を構えるが、未だセルマの姿を見つけられずにきょろきょろと辺りを見渡すのみだった。
「――」
二発の的確な狙撃。直後セルマは獣人の顔面へとペンキを撃ち込み、素早く近距離用の小型水鉄砲を両手に構える。
目を開けない獣人の前に躍り出て、セルマは一気にその道を真っ青に染め上げた。
バシャバシャバシャ!! と大量のペンキが立てる音を聞きつけてか、複数の足音が近づいてくる。
「こっちか!?」
獣人達が駆けつけた頃には既にセルマの姿はなく、ただ青い道とそこに転がり悶える仲間達が見えるのみ。どこに行った、と首を動かした――瞬間。
ビシャッ! と獣人の頭が真っ青に染まる。彼ががくりと膝を付けば、近くの看板に潜んでいたセルマがゆっくりと立ち上がった。
獣人は目をぎゅっと瞑ったまま口を開く。
「く、くそ……おい、全員集まれッ!!」
吠えるような声が響くと同時、ダダダッとセルマの頭上に黄色のペンキが降り注ぐ。セルマはそれを躱しながらペンキの放たれた方向、更に奥の路地へと駆け出した。
やったか!? と五人の獣人がひょっこりと顔を出す。彼等はセルマを見るや否や慌てて身を隠そうと引っ込むが、セルマはしっかりとそれを視界に捉えていた。
完全に見つかってしまったことを察し、獣人達は吹っ切れた様子で水鉄砲を構え、セルマへと銃口を向けた。
「う……撃てッ! 早く撃て!!」
一斉に放たれる黄色のペンキ弾。セルマはユーベルコード『イージスの弾丸』を発動し、タンクを空にした水鉄砲を素早く持ち替える。
「――今です」
たっぷりのペンキを惜しまず放ちながら、セルマは獣人達を撃ち抜き――そして可能な限り、周囲を青く青く染め上げていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシェ・ユヴェール
ああ、メカサンタさんにメカトナカイさんもご無事で何よりです
プレゼントは、そうですね
折角、遊んでおいでとお勧めもありましたし
彼らのペンキ遊びと同じものを頂ければと
ところで
既にオブリビオンは還しましたし
ネルウェザさんも遊びに来ませんか
共闘するのもなかなか楽しそうなのですが
来てくださるなら
メカサンタさんに頂いた水鉄砲はそのままネルウェザさんへ
だってほら、私が其れを扱えると思います?
私は「傘」を造り出しフォローに回りましょう
少々雑な造りになりますが、遊ぶ分には申し分ないかと
一頻り遊んで満足したらエリア外で休憩にしましょう
ああ、そうでした
トランクから包装したジンジャーブレッドマンを渡して
メリークリスマス
「ああ、メカサンタさんにメカトナカイさんもご無事で何よりです」
ファルシェ・ユヴェールがほっとしつつそう声を掛けると、メカサンタは隣で伏せるトナカイを撫でてピゴピゴ音を立てる。
「ソレモコレモ、キミタチノオカゲダ! オレイニ、ゼヒプレゼントヲ!」
さあ何が欲しい、と手を広げるメカサンタ。ファルシェは視線を動かし、周囲でペンキを撒き散らす住人達を見て頷いた。
「そうですね……折角、遊んでおいでとお勧めもありましたし。彼らと同じものを頂ければと」
するとメカサンタはよし来たと白い袋をがさがさ漁り、取り出した大きめの水鉄砲をファルシェに渡す。ずしっとした重みにファルシェがタンクを見れば、たっぷりの紫色のペンキが詰まっていた。
水鉄砲を受け取ったファルシェはツリーの見える方へと歩きながら、あっちだ、そこだと声を交わして駆け回る住人達を見る。そして彼は空を見上げ、呼びかけるように呟いた。
「……既にオブリビオンは還しましたし、ネルウェザさんも遊びに来ませんか」
その直後――すたっ、と。
ファルシェの目の前に現れたのは、今回の任務を依頼したグリモア猟兵、ネルウェザ・イェルドットの姿だった。
「先ずはお疲れ様。そしてメカサンタを守ってくれて有難うねぇ」
けらっと笑って一礼するネルウェザ。彼女が顔を上げると、ファルシェは突然抱えていた水鉄砲を彼女に手渡す。
「……え? これ、ファルシェ君が貰ったんじゃ……」
「共闘するのもなかなか楽しそうですし。それに……だってほら、私が其れを扱えると思います?」
ああそういえば、とネルウェザは苦笑する。目の前の宝石商が飛び道具の類を手にすればどうなるかは――彼を何度も任務に送り出しているネルウェザにとって、想像に難くないことであった。
「じゃあこれは私が使わせてもらうよ。それで、ファルシェ君はどうするんだい? まさか丸腰で突撃する気じゃないだろう?」
ネルウェザがそう問うと、ご心配なく、とファルシェはユーベルコード『Die Hand des Zauberers』を発動させてふわりと手元に長傘を作り出す。
「私はこれでフォローに回りましょう。少々雑な造りになりますが、遊ぶ分には申し分ないかと」
へぇ、とネルウェザはにやり笑って水鉄砲を構えた。ファルシェはその銃口と視線が自分――ではなくその背後に向かっていることに気づくと、瞬時にそちらを向いて傘を広げる。
「っ!!」
ばっと広がる傘。それはファルシェの言う通り歪な形をしていたが、飛んできた黄色の弾丸を防ぐには十分な大きさと強度であった。
「――上々!」
ネルウェザがファルシェの横を抜けて飛び出す。襲い掛かってきた獣人を紫一色に染め上げると、彼女はふうと小さく息をついた。
だが休む間もなく、続けてだだだッと複数のペンキ弾が降り注ぐ。
一度撤退を、と二人は後ろを向くが、いつの間にか周囲は黄色のペンキ銃を構えた獣人達に囲まれていた。
「撃てッ!」
掛け声と共に一斉に飛び出す黄色の弾丸。するとファルシェは一度傘を閉じて弾を受け止め、そのまま近くにいた獣人へと叩き付ける。
「お返ししますよ」
バシャッ! と全身にペンキを喰らい、獣人がその場に転げると同時。ネルウェザが水鉄砲の引き金を思い切り引いたまま、ぐるりと周囲へ弾を放つ。
輪を描いて広がる紫のペンキ弾に獣人達が怯んだ瞬間、二人は暗い路地へと駆け出した。
「逃がすかぁ!!」
黄色の銃口が一斉に猟兵を追う。だが、ファルシェが彼等の視界を遮るように傘を広げた直後――そこに人の影は無くなっていた。
●
「……この辺りで休憩にしましょう」
そう言ってファルシェはネルウェザの手を引き、街灯の下のベンチへと歩き出す。周囲にペンキの汚れはなく、近くの看板に飾られたリースやクリスマスツリーは穏やかな緑色をしていた。
「ああ、そうでした」
「……ん?」
ふと何かを思い出したように、ファルシェは携えていたトランクに鍵を差し――綺麗に包装された焼き菓子、可愛らしいジンジャーブレッドマンを取り出す。
そして、ファルシェは笑顔でそれをネルウェザに手渡した。
「メリークリスマス」
ネルウェザは一瞬動きを止め、そして勢いよくファルシェから顔を背ける。
――いやいやロマンティックにも程があるだろう!?
「あ、ありがとう……」
心の中でのシャウトに反し、蚊の鳴くような声で礼を告げるネルウェザ。彼女は慌てて白衣のポケットに手を突っ込むと、カラフルな金平糖を包んだ袋をファルシェに握らせる。
「さて、帰ろうか!」
ネルウェザは赤い頬と耳を誤魔化すように、真っ白な息を吐いて立ち上がる。帰路を急ぐ彼女の後を追い、ファルシェは金平糖を月光に透かせて微笑むのだった。
大成功
🔵🔵🔵