イェーガー・ザ・ムービー! エリア51潜入作戦!
「イェーガームービー社からオファーがありました。リムは猟兵に出演を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々と――その手に映画の資料らしきものを抱えて語りはじめた。
「アースクライシス2019の勝利以来、猟兵の人気が爆発的に高まっているヒーローズアースですが。このたび戦いの記憶を後世に伝えるという名目で、著名な出版社、映画配給会社、玩具会社の共同による新会社が設立されました」
今回の依頼はその『イェーガームービー社』からのもので、ぶっちゃけると「イェーガーを主役にした映画を作るので、本物の皆さんに出演してほしい」というものだ。
あの歴史的戦いを後世に伝えるために是非! とのことで、制作は大手スタジオが担当し、猟兵以外のキャストにも有名俳優を起用するなど、かなり気合の入った企画らしい。
「本作はアースクライシス2019序盤に行われたエリア51潜入作戦が題材になります」
侵略宇宙人『プルトン人』に占領された米国のグルーム・レイク空軍基地――通称エリア51に運び込まれた1人用UFOを奪取し、ラグランジュポイントに向かう足がかりを得るというこの作戦で、多くの猟兵によって大量のUFOが奪取されたことは記憶に新しい。
「映画でもおおむね史実の流れに沿っているようですが……『UFOを盗んで脱出するだけでは画的に映えない』という理由で、展開にアレンジが加えられているようです」
イェーガームービー社から渡された資料を片手にリミティアが内容を説明する。
映画のあらすじを概ね3章に分けて解説すると、こんなところだ。
第一章――エイリアンに占領されたエリア51に、大量のUFOが運び込まれていることを知る猟兵達。地球侵略の野望を阻止するため、基地に潜入しUFO格納庫を目指す。
「ここはほぼ実際の作戦と同様です。ただしパーフェクトに潜入されると盛り上がりに欠けるということで、派手な活劇シーンも何箇所か用意されています」
舞台となるのは米軍全面協力のもとで実際のエリア51を再現したスタジオだが、さすがに100%オリジナルの基地そのものというわけではないらしい。基地を占領するプルトン人も着ぐるみを被った人間の役者なので、本気で戦ってケガさせないようにとのこと。
敵に見つからないように潜入し、たまに見つかって派手なバトルを繰り広げたりしながら基地の奥を目指す、そういうシーンのようだ。
第二章――ついにUFO格納庫に辿り着いた猟兵達。しかしそこで待ち受けていたのは敵の大軍。かつての英雄を模した心なき機械の兵士が彼らに襲い掛かる。
「ピンチからの逆転劇を演出するためのシーンです。華麗に敵をやっつけてください」
敵オブリビオン役には機械兵士『ジャスティストルーパー』が起用されているが、もちろんこれも役者が演じているもので、敵が使うユーベルコードもただの演出かCGでの再現になる。適当に加減しながら見栄えよく戦うことができればベストだろう。
第三章――そして姿を現した真の敵。世界の命運を賭けた決戦が始まる!
「いきなりここでクライング・ジェネシスが登場、というわけではありません。今回の映画のために捩じ込まれ……もとい、作劇の都合上用意されたボスがこちらになります」
そう言ってリミティアが見せたのは、ピンクの衣装を纏った天使のような女性の写真。
こんなオブリビオン、戦争中にいただろうか。心当たりのない猟兵が首をかしげる。
「この正体不明のオブリビオンは猟兵達の前に突如として現れると、『終焉の代行者』を名乗り、カタストロフを起こそうとする……という"設定"のようです」
あくまでこの映画のうえでの設定である。映像作品としてのクライマックスのために用意された彼女は、猟兵達が過去に戦った強敵のオブリビオンを召喚して苦しめる。
適度にピンチを演出しながら、過去の強敵との因縁を語ったり、カッコいいセリフを吐いたりしながら、最終的には逆転勝利――そこで映画はエンディングとなる。
「実際の戦いと随分異なる印象を持った方もいるかもしれませんが、イェーガームービー社は『マルチバース構想』を掲げているそうです」
これは大雑把に言うとヒーローズアースには無数の『平行世界』があるものとする、という考え方のことで、史実と違うことが起こっても「まあ、平行世界のお話だから」で済ませるつもりらしい。
「事実より記憶、猟兵達の気高き魂(スピリット)を後世に伝える事が大事なのだと担当の方は言っていました。面白い試みだとはリムも思います」
なんにせよこの企画は猟兵の魅力を人々に伝えるチャンスではあるし、うまく映画がヒットすれば一躍スターになれるかもしれない。協力して損のある試みではないだろう。
「映画に興味のある方がいればよろしくお願いします。ちなみに映画内での猟兵のユーベルコードの使用は自前になりますが、安全面にはくれぐれもご注意下さい」
そう言って説明を締めくくったリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、イェーガームービー社のスタッフが待機するスタジオまでの道を開く。
「転送準備完了です。リムは名作を期待します」
戌
こんにちは、戌です。
平和になったヒーローズアースでは今、猟兵が大ブーム。ということで今回のシナリオはアースクライシス2019の戦いを題材とした映画の出演依頼です。
今回の映画は「⑤エリア51のUFOを奪え!」の戦いを概ね再現するものとなりますが、同シナリオに参加経験があってもなくても特に問題ありません。出演者大募集。
第一章はエリア51に潜入し、敵のUFO格納庫に向かうシーンです。
途中で敵に見つかりそうになってピンチ! とか、見つかったけど素早く撃破! とか、スパイ映画的な演出を加えながら潜入を行えば作品も盛り上がるでしょう。
第二章では立ちはだかる『ジャスティストルーパー』との集団戦です。
もちろん敵は全てオブリビオンに扮した俳優やスタントマンの一般人なので、本気で戦うと大惨事です。適度に加減しながらシーンを盛り上げてください。
第三章では突如現れた『正体不明』のオブリビオンとの決戦です。
終盤でこの急展開とか明らかに続編制作を匂わせてきますが、それはそれとしてクライマックスらしく全力でシーンを盛り上げてエンディングに導いてください。
正体不明の敵(外見はトップのイラストをご確認ください)は過去に猟兵が戦った強敵たち(もちろんニセモノや実在しない本作オリジナルの敵です)を召喚するので、それに上手くリアクションを合わせられるとプレイングボーナスがつきます。
世界を救った猟兵達は、銀幕でどんな活躍を見せるのか。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『猟兵たちよ!!潜入せよ!!』
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POW : ヴィランを無力化したりしながら潜入
SPD : カメラに映らないように迅速に潜入
WIZ : 経路を確認しながら慎重に潜入
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
レイ・アイオライト
潜入はあたしの十八番だけど、映画なのね……。イェーガームービーってまたそのまま……まあ、戦争を後世に伝えるっていうのは大切なことだし、協力しましょうか。(目立つの苦手)
【変幻ナル闇ノ曙光】でエリア51に落ちる影や闇に同化して『目立たない』ように潜入、あの時とあんまり変わらないわ。
『闇に紛れ』ながら敵の背後に近づいて『暗殺』、他の敵に見つかったら刃を潰してあるダガーを投擲してすぐに処理。
複数人に見つかる場面があるならダガーを複数投擲して『範囲攻撃・暗殺』で一掃するわ。
……手加減しながらやるのってなんか違和感あるわね……。こんな感じでどう?
「潜入はあたしの十八番だけど、映画なのね……。イェーガームービーってまたそのまま……」
微妙な顔をしながら撮影現場にやってきたレイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)を待っていたのは、いくつもの撮影機材と忙しなく動きまわるスタッフ達。檄を飛ばす監督に、特殊メイクを施された俳優――本当に、数え切れない人々がいる。
目立つのが苦手な彼女としては、普段の潜入任務では決しているはずのない相手がいて、それに自分の活動を撮られるというのはどうにも落ち着かなかった。
「……まあ、戦争を後世に伝えるっていうのは大切なことだし、協力しましょうか」
それでも彼女がこの依頼を引き受けたのは、それに意義があると感じたからこそ。
あの戦いの記憶を少しでも人々に伝えるために――そんな名目を掲げた『エリア51潜入作戦!』の撮影が、いよいよ幕を開ける。
「やる事はあの時とあんまり変わらないわね」
設営されたセット上のエリア51に、レイは闇や影に紛れながら忍び込んだ。
【変幻ナル闇ノ曙光】を発動した彼女の姿は闇と同化し、誰にも気付かれることなくUFO格納庫に迫る。途中、銃を担いだ警備のプルトン人が道を塞いでいれば、音もなく背後に近付きながらダガーを抜き放ち――。
「アンタたちに構ってる暇はないわ」
と、急所を一突きして暗殺。その近くにいた他の警備も、ダガーの投擲で瞬殺。
もちろん演技であり刃も潰してあるが、本物の暗殺者たるレイの研ぎ澄まされた殺気は、一般人の心胆を寒からしめる迫真のものであった。
――が、そこで監督より一度「カット!」の文句が入る。
「え? 今のシーン駄目だった?」
「いやぁ、素晴らしかったですよ! けどなあ……」
たった今撮影されたばかりの映画のワンシーンを見れば、その理由は一目瞭然。
基地に潜入するレイの姿を撮ったシーンだが、彼女の姿がどこにも映っていない。いや本当は映っているはずだが、潜伏が完璧すぎて常人には見つけられないのだ。
辛うじて警備を倒したシーンだけは姿が確認できるが、CGも使っていないのに突然その場に現れたように見える。
「あなたの業前には惚れ惚れしますが、今回はもうすこしお手柔らかに頼みます!」
「わ、わかったわ……」
潜入なのに姿を見せろというのは、ある意味誰にも見つかるなと言われるより難しい。映画撮影の難易度の高さを思わぬ形で知ることとなったレイであった。
というわけでテイク2。演ることは前と同じだが、今度のレイはあえて自分の姿がカメラに映ることを意識して【変幻ナル闇ノ曙光】を調整する。
「侵入者ダ!」
「捕ラエロ!」
敵に見つかって包囲されるシーン。今度は先に相手に姿を見られてから、取り出した複数本のダガーを一斉投擲。影のオーラを纏った刃の雨を浴びたプルトン人達は、「グワーーーッ!!!」と、大げさなほどの悲鳴を上げて倒れ伏す。
「あたしは影。あたしは闇。アンタを喰らう、暗黒の黄昏―――!」
一掃された敵の前で見栄を切りながら、闇に溶けるように再び姿を消すレイ。
潜影の暗殺者の歩みを止められる者は、誰もいない――。
「……手加減しながらやるのってなんか違和感あるわね……。こんな感じでどう?」
「OKです! これが本物のNINJAの業前……いいシーンになりました!」
「忍者じゃなくて暗殺者なんだけど……」
ともあれ監督がOKと言っているのなら上手く撮れたのだろう。
良かったと息を吐きながら、レイは次のシーンの出番を待つのだった。
大成功
🔵🔵🔵
郁芽・瑞莉
実際の作戦であの時はスパイ映画みたいと言いましたが……。
まさか題材にした映画に出演するとは思っても見ませんでした。
ですが頼まれたからには全力でやらせて貰います!
作戦時と同様に八咫烏を召喚。
今回は存在感を消さずに飛行して貰い、
カメラも咥えて貰って映像の一躍を担って貰いますよ!
視覚情報を頼りに進むも、
途中で待ち構えていた敵によって八咫烏には撃ち落されて貰って。
パッとサーチライトに照らされた私に向かって集中砲火が浴びせられるも。
その姿は残像。
私自身は包囲網を形成する敵に刀(もちろん寸止めで)や、
苦無(ゴム製)を誘導弾の如く操ったり、
符で炎や水、雷撃(直撃は避けて)と派手に敵を倒し先へと進みますよ!
「実際の作戦であの時はスパイ映画みたいと言いましたが……。まさか題材にした映画に出演するとは思っても見ませんでした」
あのときの感想が現実になったような驚きを口にしながら、郁芽・瑞莉(陽炎の戦巫女・f00305)は自分の出番が来るのを待っていた。過去の記憶がなく、戦い以外の知識に乏しい彼女にとっては、映画製作に関わるのも当然初めての体験だ。
「ですが頼まれたからには全力でやらせて貰います!」
意気込みは十分。準備も万端。根が真面目でがんばり屋な彼女はどんな依頼であろうとも手は抜かず、自分にできる最高の映像を届けようと気合いを入れる。
そしてカチンコの音と共に始まる瑞莉の潜入シーン。
セット上のエリア51に忍び込んだ彼女の姿を俯瞰視点から撮影するのは、実際の潜入作戦でも召喚された【式神 八咫烏】。今回は基地内部の先行偵察だけでなく、カメラも咥えて映像作りのための一躍も担ってもらう。
「オブビリオンの侵攻を止める為にも、UFOは奪わせて貰いますよ!」
台本のセリフを口にしながら慎重に先へと進んでいく瑞莉の姿を、ドローンのように前方上空から撮り続ける八咫烏。本来ならそれは極めて発見されづらい特性を持つが、今回はそのほうが映像的に映えるという理由で敢えて存在感を示している。
そしてシーンは進み、順調かと思われた彼女の潜入に突如として響く発砲音。
はっと瑞莉が顔を上げると、先行していた八咫烏がフラフラと空から墜ちていく。
同時にパッとサーチライトの光が、彼女の姿を影の中から照らし出す。
「ゲゲゲ、見ツケタゾ、侵入者メ!」
いったい何処に潜んでいたのか、正面にずらりと立ちはだかるプルトン人の大群。
どうやら潜入計画がどこかで漏れ、待ち伏せされていたらしい――実際にはそんなことは無かったかもしれないが、これはそういうシーンなのだ。
「我ラおぶりびおんノ地球侵略計画ヲ邪魔スル者ハ許サン。撃テーッ!」
隊長らしきプルトン人の号令一下、一斉に放たれる発砲音。
無慈悲な集中砲火が瑞莉に浴びせられるが、ライトに照らされたその姿は残像。
実体の彼女はすでに敵の包囲網に肉迫し、霊刀「秘幻」を抜き放っている。
「やあっ!」
「ギャァァァァーーーッ!?」
気迫の籠もった一閃と共に、悲鳴を上げてバタバタと倒れ伏すプルトン人。
もちろん寸止めなのでケガはさせていないが、やられ役の方も迫真の演技である。
「あなた達の野望はここまでです!」
華麗な殺陣を見せ付けつけながら、瑞莉はさらにゴム製の苦無と霊符を投擲。
誘導弾のごとく有り得ない軌道を描いてヒットする苦無や、直撃を避けつつ派手な火柱や水しぶき、雷撃を起こす符が、バトルシーンをド派手に演出する。特殊なセットやCG合成を用いずにこうした演出ができるのは、猟兵の特権だろう。
「ウギャーーーッ!!!」
立ちはだかる敵を爽快な勢いでばったばったとなぎ倒しながら、先へと進んでいく瑞莉。その姿がセットの奥に消えたところで、カットを告げるカチンコが鳴った。
大成功
🔵🔵🔵
六代目・松座衛門
。〇(先の戦争を映画化とは、猟兵が認知されている世界ならではだなぁ…)
他の世界とは異なるヒーローズアースならではの猟兵の立場に関心しつつ、映画製作に協力しよう!
潜入シーンの撮影時は、人形を担いで闇に紛れながら巡回する敵へUCによる【だまし討ち】を行うことで、無力化しつつ施設の奥へ侵入する演技に挑戦する。
モットーは「映画を盛り上げる名バイプレイヤー!」
上記以外にも、監督のリクエストには積極的に協力するぞ!
アドリブ、連携歓迎
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
なかなかに面白そうな依頼だな
敵も基地も全て作り物とはだいぶ手も込んでいるし
映画と言うなら思いっきり画面映えするような動きをさせてもらうか
ダッシュやジャンプを駆使して基地内の赤外線レーザーや監視カメラをアクロバティックな動きで避ける
さらに腕に付けたマッキナ・シトロンから浮かぶホログラフから画面を出してハッキングもしよう
黒画面に緑文字を無数に浮かべればそれっぽく見えるな
来い、全員沈めてやろう
着ぐるみのプルトン星人が現れたらUCを発動
全弾丸を空包にしたドローン達による派手な一斉射撃を行う
さらに怯んだ隙に演者達を傷つけないように注意しつつ徒手格闘戦でなぎ倒す
終わりだ、そのまま眠っていろ
(先の戦争を映画化とは、猟兵が認知されている世界ならではだなぁ……)
他の世界とは異なるヒーローズアースならではの猟兵の立場に、六代目・松座衛門(とある人形操術の亡霊・f02931)は関心を抱いていた。
戦争によって大きく知名度と人気が向上したこともあるが、これほどの社会現象になるまでに深く猟兵の存在が知らしめられた世界というのは、確かに稀有であろう。
「なかなかに面白そうな依頼だな。敵も基地も全て作り物とはだいぶ手も込んでいるし」
キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)もまた、興味深そうに設営された基地のセットや共演者たち、そして裏方として駆け回るスタッフらの様子を見る。
この撮影のために相当のコストが費やされているのは間違いなく、裏を返せばそれだけ今、ヒーローズアースで猟兵というコンテンツが『アツい』のだと分かる。
「映画と言うなら思いっきり画面映えするような動きをさせてもらうか」
「だったら自分のモットーは、映画を盛り上げる名バイプレイヤー!」
製作協力を快諾したキリカと松座衛門の意気込みは十分。
順調に進む撮影の中、いよいよふたりの出番がやってくる。
カメラが回り始めると、ふたりの猟兵は闇に紛れながら基地の深部へと向かう。
行く手を阻むのはこれ見よがしに配置された赤外線レーザーや監視カメラ。
プロの目線からすれば配置が雑だが、これは映画的な演出のための都合である。
(実際の潜入模様まで忠実に再現すると、地味な画になりがちだからな)
演出の意図を察したキリカは、持ち前の身体能力を活かしたアクロバティックな動きで、監視カメラの範囲外を駆け抜け、張り巡らされたセンサーを飛び越える。プロのスタントマンも顔負けのアクションに、スタッフからも感嘆の声が漏れた。
(これは自分も負けていられないな)
キリカの動的な潜入シーンに対して、松座衛門の演技はいぶし銀の静的なもの。
相棒であるからくり人形「暁闇」を担ぎ、影から影へ、闇から闇へと警備の死角を渡り歩き、誰にも気付かれることなく先に進む。
――場面は変わり、潜入先で猟兵達が発見したのは一台のコンピューター。
ここでハッキングを行い、基地内の機密情報を暴き出すというシーンだ。
「ここはこいつの出番だな」
キリカは腕に装着したマシンブレスベルト「マッキナ・シトロン」からホログラフのスクリーンを浮かび上がらせ、慣れた手さばきでハッキングを開始する。
無論、ここでやっているのはあくまで「フリ」なので操作は厳密ではない。知識のない観客にもそれっぽく見えるよう、黒い画面に緑文字を無数に浮かべて演出する。
「ムッ? オ前、ソコデ何ヲシテイル!」
しかし折り悪く、そこに通りがかったのは巡回中のプルトン人警備兵。
彼はハッキング中のキリカに銃口を向けると、すぐに無線で仲間を呼ぼうとする。
「侵入者ダ――」
「おっと、そうはさせない」
その瞬間、すうっと物陰から現れた松座衛門の「暁闇」が不意打ちを仕掛ける。
鬼猟流 一ノ型「角砕き」。高速の体当たりで相手のバランスを崩し、追撃の右ストレートで仕留める、人形操術の最も基本となる型を磨きぬいたユーベルコード。
「グゴォッ?!」
くぐもった悲鳴を上げてばったりとその場に倒れたプルトン人から無線を取り上げ、人形の繰り手である松座衛門はキリカに笑いかけながらサムズアップする。
「さあ、今のうちだ」
「感謝する」
メインの役割を食うほどに派手ではなく、しかし欠かせない役割を果たすのがバイプレイヤーの心意気。人形という独自の技法も、彼のキャラクター性を高めるのに一役買っていた。
――そしてハッキングを成功させた猟兵達は、さらなる基地の深部に挑む。
そこでは大勢のプルトン人の兵士たちが、防衛網を張って待ち構えていた。
「コレ以上ハ通サン!」
着ぐるみのボディに気迫をみなぎらせ、一斉に銃口を向けるプルトン人。
しかし猟兵達はまったく臆する様子もなく、静かな笑みを浮かべて対峙する。
「来い、全員沈めてやろう」
宣言と同時にキリカが発動したのは【シアン・ド・シャッス】。
召喚された51機の戦闘用カスタムドローン群が、敵集団に一斉射撃を開始する。
全て空砲ではあるが、その迫力はプルトン人の俳優も本気で怯むほどだ。
「こいつを食らえ!」
すかさず松座衛門が放ったのは、人形に搭載した口径漸減式大型銃「玲瓏」。
バイプレイヤーにも一つくらい派手な大技があると演技のメリハリが利くのでは、という監督からのリクエストがあったために急遽用意した、特殊対物ライフルだ。
「グギャァァァァァ!!?」
ズドンッ!! と響き渡るライフルの空砲音に合わせて吹っ飛ぶプルトン人。
敵の隊列が乱れた隙を突き、徒手のキリカが風のようにその懐に潜り込む。
「終わりだ、そのまま眠っていろ」
「グェッ!」
着ぐるみの中の演者を傷つけないよう、加減された拳打や蹴撃がプルトン人をなぎ倒す。演者のほうも分かったもので、うまくキリカの動きに合わせて倒れてくれる。
あっという間にその場に立っている者は、キリカと松座衛門と人形だけになる。
ピクリとも動かないプルトン人にはもう一瞥もくれず、ふたりはUFO格納庫を目指して先を急ぐのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒城・魅夜
初回だけとはいえ、私も49の端くれに数えられた身です。撮影にはご協力しましょう。
あの作戦の時は2種類の行動をとりましたが、映画向きなのは……こちらですね。
潜入した私は、しかし敵に見つかり、捕らえられてしまいます。
そのまま連行され、処刑されてしまうのかと思われた時……
実はその敵兵が私によって操られていたと判明するのです。
そう、私の牙は既にその巡回兵の血を吸い、傀儡としていたという種明かし。
ふふ、ドラマチックな演出ではありませんか?
……ただ一つ、気がかりな点が。
私はダンピール、つまり鏡に映りにくいのですが、果たしてカメラには映るのでしょうか……。
まあ、CGとやらで補正していただきましょうか。
「初回だけとはいえ、私も49の端くれに数えられた身です。撮影にはご協力しましょう」
「ありがとうございます! 本物のフォーティナイナーズに会えるとは光栄です!」
スタジオにやって来た黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)を待っていたのは、監督をはじめとする映画スタッフ達からの大歓迎だった。
先の戦争でも大きな活躍を見せたヒーローズ・フォーティナイナーズはスタッフの中にもファンは多く、撮影現場の周りには一般人のファンまでもが押しかけている。
それだけ世界を救ったヒーローたる猟兵への人々の関心が高いということだろう。
――それはそうと、いざ撮影に臨んだ魅夜のシーンはいきなりの窮地から始まる。
エリア51に潜入した彼女は、しかし敵に見つかり、捕らえられてしまうのだ。
異形のプルトン人に引きずられるように連行される少女の身体には、幾つもの痣や血の痕が。もちろん特殊メイクによるものだが、その姿は痛々しい。
「隊長、侵入者ヲ捕ラエマシタ」
「ホウ。ナラバ処刑ノ準備ダ」
連れて来られたボロボロの魅夜を見て、上官らしきプルトン人が不敵に言う。
侵入者の死を大々的に知らしめれば見せしめになるだけでなく、潜入中の他の猟兵が救出のために現れるかもしれない。敵の炙り出しを兼ねた狡猾なやり口だ。
魅夜の身体は柱に括り付けられ、彼女をここまで連行してきた兵士が、死刑執行人として銃を構える。まさに絶体絶命のシチュエーションだ。
「最期ニ言イ残ス事ハアルカ?」
「……いいえ、なにも」
嘲笑うような隊長からの問いかけに、しかし魅夜はふっと微笑みながら答える。
歪められた口元から、ちらりと鋭い吸血鬼の牙を覗かせて。
「だって"最期"ではありませんから」
直後、基地に響き渡る発砲音――しかしそれは、魅夜を狙ったものではなかった。
「ナ……何故……」
鮮血を撒き散らしながら倒れ伏したのは、プルトン人の隊長のほう。その背後には硝煙のたなびく銃を下ろしたプルトン人が、虚ろな目をして立ち尽くしている。
そう――魅夜の牙は既にその兵士の血を吸い、自らの傀儡にしていたのだ。
捕らえられたフリをして連行されて来たのも、すべて奥地に潜入するための演技。
戒めを解かれたダンピールは、蠱惑的な笑みを口元に浮かべながら、傀儡とした兵士を連れて闇の奥へ消えていくのだった――。
「カット! OKです!」
そこで監督からのサインが出て、静まり返っていたスタジオは再び動きだす。
撃ち殺されたプルトン人もむくりと起き上がると、着ぐるみを脱ぎながら魅夜に握手を求めた。
「迫真の演技でしたよ。思わず見惚れてしまいました」
「いえ、そんな。ありがとうございます」
謙遜しながらも微笑みを返す魅夜。今のシーンは彼女自身が提案したもので、そのドラマチックかつ観客の意表をつける演出から、制作陣からの評価も上々だった。
――しかし彼女にはただ一つ、気がかりな点が残っていた。
「私はダンピール、つまり鏡に映りにくいのですが、果たしてカメラには映るのでしょうか……」
「うーん、確かにちょっとぼやけているような箇所が……」
たった今撮ったばかりの映像をスタッフらが確認すると、機器に問題はないはずなのに不自然に魅夜の姿だけピントがずれていたり半透明だったりする映像が幾つか。
演技そのものは文句なかっただけに、これをボツにしてしまうのは何とも惜しい。
「このくらいならCGで補正できますよ!」
「まあ、それなら良いのですが」
腕の見せどころだとばかりに腕まくりをするCG班を見て、魅夜はこくりと頷き。
次のシーンの出番に備えるために、血糊のメイクを落としに行くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
石守・舞花
せっかく49に入ったので、記念に映画に出てみるです
まずは潜入シーンですね
エリア51には戦争中何度も潜入しましたので、実体験を活かして演じます
衣装は黒ずくめの隠密服
ですがガチなやつだと絵的に地味なので、ミニスカニーソでヒロインっぽさを演出
物陰から物陰へ素早く駆け、見つからないように潜入です
スパイものにありがちな感じで、きょろきょろする演技とか入れてみます
プルトン人に見つかってしまうシーンでは、包丁(もちろん撮影小道具のニセモノ)で暗殺者っぽく戦います
喉笛に噛みついて血を啜る演出なんかも、自分らしさが出そうです
「血糊、不味いです……」
派手に飛び散る粘度の低い血糊で適度なダークヒーロー感を出します
「せっかく49に入ったので、記念に映画に出てみるです。よろしくお願いします」
「オファーを受けていただき光栄です。きっと良い映画になりますよ!」
物珍しそうにスタジオを見回しながら、映画の撮影スタッフに挨拶する石守・舞花(神石の巫女・f17791)。彼女を歓迎する一同の態度は暖かい。
猟兵の、中でもとりわけ有名なヒーローズ・フォーティナイナーズの活躍は、ヒーローズアースの人々に広く知れ渡りつつあるようだ。
「まずは潜入シーンですね」
さっそく更衣室で衣装に着替えてきた舞花は、無表情ながらも自信ありげな様子。
この映画のモデルであるエリア51には、戦争中に何度も潜入したことがある。
その実体験を活かして演じれば、きっと良い演技ができるだろう。
シーンの始まりは夜、闇に紛れて舞花がエリア51に忍び込むところから始まる。
身に纏うのは黒ずくめの隠密服。ただしガチなやつだと絵的に地味なので、ミニスカートやニーソックスでヒロインらしさも演出したデザインとなっている。
物音を立てずに物陰から物陰へ飛び移るように素早く移動するその姿は、さながら闇夜を駆けるダークヒーローと言ったところか。
「侵略なんかに使われる前に、ここのUFOは貰っていきます」
きょろきょろと周りを見るなどスパイ映画らしい演技を入れつつ、順調に先へ進んでいく舞花。しかしそこで運悪く、窓から差し込んだ月光が彼女の影を落とす。
たまたま付近を巡回中だった一人のプルトン人が、それに気が付いてしまう。
「ムムッ! ソコニ誰カ居ルノカ!」
銃を構えてじりじりと慎重に近付いてくる敵兵。やり過ごすのは困難だと判断した舞花は愛用の魔切り包丁――を模した撮影用の刃引きされた小道具を抜き放ち、さっと物陰から飛び出した。
(ここは暗殺者っぽい立ち回りでいきます)
小柄な体躯を活かした俊敏な身のこなしで、瞬く間に敵の懐に飛び込んだ舞花。
銃のトリガーを引く間も与えず、包丁がプルトン人の喉笛をかき切った。
「ギャ……ッ!!」
噴水のように血飛沫(もちろんただの血糊だが)を上げて倒れ伏す敵兵。
だが、その際に起こった物音が、近くにいた別の兵士の注意を引いてしまう。
「ン? 何ダ、ドウカシタノカ……?」
不審に思ったそのプルトン人がさらなる仲間を呼ぶよりも速く。
舞花は敵兵に駆け寄ると――小さな口をいっぱいに開いて、喉笛に噛み付いた。
「~~~ッ!! ~~~ッッ!?」
もがき苦しむプルトン人の首からほとばしる血潮を、舞花は啜る。
どんなに暴れようとも、彼女は一度喰らいついた獲物を決して放さない。
悲鳴を上げることも封じられた兵士は、やがて力尽きると血溜まりの中に倒れた。
「血糊、不味いです……」
舞花は真っ赤になった口元を拭いながら、マイクに拾われないよう小声で呟く。
粘度の低い液体が使用されたため、辺りには血糊が派手に飛び散り、若干スプラッタな光景が広がっている。ダークヒーローの演出としては程よいスパイスだろう。
自分らしい演技を存分に披露した彼女は、敵の骸と血溜まりを残して闇に消えていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ビードット・ワイワイ
空の彼方に飛びし翼
その一つが我を呼んでおる
全てのUFOを手にするは我である
それ並べてくれるは感謝しかあらず
人間形態にて行動
ではでは体をばらし天井裏を転がしダクトを行こう
これでカメラには映らぬであろう
されど見せ場は必要なりて
ダクトを転がっておれば
多少の音はするであろう
さあさ気づくかプルトン人よ
気づいたならば命取り
確認した瞬間ダクト破りて
吊り上げよう
締め落としによる気絶を狙う
もし複数おったなら首だけ落とし驚きを誘う
その瞬間にフラッシュバンによる目潰し攻撃
その間に体を再構築し制圧せり
動かず今を諦めよ
ここに選定は為された
ゆえに貰わせてもらおう汝らの技術を叡智をUFOを
それは我の物であるゆえに
「空の彼方に飛びし翼、その一つが我を呼んでおる」
エリア51の施設を一望できる場所から、詠うようなセリフを朗々と紡ぐ、人間形態のビードット・ワイワイ(UFO TAKER・f02622)。彼のシーンは他の猟兵キャストとも異なる、独特の雰囲気で幕を開けた。
「全てのUFOを手にするは我である。それ並べてくれるは感謝しかあらず」
ヒーローと言うよりはむしろ魔王、それも圧倒的な迫力と強者感を出して。
先の戦争で数え切れないほどのUFOを奪取した彼の手腕が、銀幕で再び冴え渡る。
「ではでは行こう」
向上を述べ終えたビードットは、ウォーマシンである自らの身体をバラバラに分割し、天井裏からエリア51に潜入する。ここから基地内に張り巡らされたダクトを進んでいけば、監視の目や装置に捉えられることもあるまい。
(これでカメラには映らぬであろう。されど見せ場は必要なりて)
何の問題もなくトラブルもない完璧な潜入を果たしてしまっては映画にならない。
そこでビードットは意図的に物音を立てるようにダクト内を転がり、不自然にならない程度に己の存在をアピールする。
(さあさ気づくかプルトン人よ、気づいたならば命取り)
「ン、今、上カラ音ガ……」
ガタゴトという鈍い金属音。ダクトの下を巡回していた兵士がそれに気付く。
その瞬間、ダクトを突き破って機械仕掛けの手が飛び出し、標的の首を掴まえる。
「グゲ……ッ!?」
締められた鶏のような声を上げて、じたばたともがくプルトン人。しかしビードットの指は万力のようにビクともせず、標的の身体を宙吊りにして締め落とす。
ピクリとも動かなくなった兵士の身体をぽいと放り捨て、再びダクトの中に引っ込んでいく機械の腕。その一連の様子はある種のホラーであった。
「オイ、誰カ倒レテルゾ!」
「侵入者ニヤラレタノカ……?」
騒ぎを聞きつけた周辺の兵士が、倒れているプルトン人に気付いて集まってくる。
彼らは警戒を強めるも、まさか天井裏に敵が潜んでいるとは思ってもみない。
好都合だとばかりにビードットは、ダクトの穴からゴトリと自分の頭部を落とす。
「「!!!?」」
突然天井から生首が降ってくれば誰でも驚く。それは地球人でも宇宙人でも同じ。
敵が仰天した瞬間、さらに投げ落とされたフラッシュバンが閃光と爆音を放つ。
「「――――ッ!!!!?」」
あくまで映画の演出用なので光と音は控えめだが、それを喰らったプルトン人達は迫真の演技でのけぞる。その隙を突いてボディを再構成したビードットは、鋼鉄の腕を振るい敵を制圧する。
「動かず今を諦めよ」
「グギャァッ!!」
一瞬のうちに蹴散らされたプルトン人達は、二度と起き上がってくることはない。
ビードットはそれにはもはや目もくれず、UFO格納庫を目指し進撃を続ける。
「ここに選定は為された。ゆえに貰わせてもらおう汝らの技術を叡智をUFOを。それは我の物であるゆえに」
ずしり、ずしり、と重い足音を響かせ、エリア51を進むビードット。
なにゆえ彼はUFOを求めるのか――その理由はいつか明らかになるかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
…演技とかやった事ないし、わたし、裏方とかで良いんだけどな…
「ご主人!」
「銀幕!」
「デビュー!」
え…なんでラン達がそんなに気合入ってるの…?
「ご主人をトップスターに!」
しなくて良いよ…!?というか、演技なんて自信無いし…。
あ、そうだ…そういえば、専門家が知り合いにいたね…演技教えて貰えるかな…。
「夢に焦がれる少女達」にて桜と【共に歩む奇跡】で無害化して転生した蝶子さんを召喚…。
事情を説明して演技のコツとか指導して貰ったり…。
舞台と映画だと勝手が違うかもしれないけど、お芝居って点では一緒かな…?
そういえば、わたしの戦い方って主に剣術と呪術だけど、映画に呪術(【呪詛】)とか出して良いのかな…
「……演技とかやった事ないし、わたし、裏方とかで良いんだけどな……」
そう呟きながら首をかしげるのは雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)。
彼女は今、なぜかキャストとして台本を渡され、自分の出番を待っていた。
どうして彼女が映画に出演することになったのか。それには彼女に仕える従者たちの熱烈な後押しがあった。
「ご主人!」
「銀幕!」
「デビュー!」
「え……なんでラン達がそんなに気合入ってるの……?」
当人が困惑するほどノリノリで璃奈を応援する、メイド人形のラン、リン、レン。
お手製の璃奈うちわを振って、休憩用のスポーツドリンクやタオルも用意して、主人の銀幕デビューを全力でサポートする構えである。
「ご主人をトップスターに!」
「しなくて良いよ……!? というか、演技なんて自信無いし……」
いつになく焦った様子で首と手を振る璃奈。こうした芸能の舞台に上がる経験があまりない彼女としては、せめて本番前にもう少しアドバイスが欲しいところだった。
「あ、そうだ……そういえば、専門家が知り合いにいたね……演技教えて貰えるかな……」
そこでふと思い出した相手は、サクラミラージュで相対した演劇志望の影朧。
すぐさま取り出した【共に歩む奇跡】の呪符から喚び出されたのは、とある事件で転生を果たしたその娘、蝶子だった。
「……事情は分かったわ。そういう事なら協力しましょう」
「ありがとう……すごく助かる……」
璃奈から話を聞いた蝶子は、さっそく演技のコツについて指導を始める。
技術的なことを仕込むには時間が足りないため、内容は主に心構えについてだ。
「舞台と映画だと勝手が違うかもしれないけど、お芝居って点では一緒かな……?」
「そうね、基礎となるところは同じだと思う。一番大事なのは慌てないこと。早口になったり動きがせかせかしないように、普段の貴女のペースを意識することね」
幸い、今回の映画における璃奈の配役は、先の戦争における自分自身。
それなら余計な演技をするよりも自然体で挑めばいい、と蝶子は太鼓判を押した。
「そういえば、わたしの戦い方って主に剣術と呪術だけど、映画に呪術とか出して良いのかな……」
蝶子の演技指導を受けるなか、ふと璃奈は思い浮かんだ疑問を口にする。
基本的には問題ありませんよ、とそれに応えたのは映画のスタッフだった。
「危険性が高かったり手加減が難しいものだけは、術を使う『フリ』でお願いします。あとはこちらでCG合成などを使ってうまく演出しますので」
「ん、そういうことなら……」
直接攻撃の呪術はなるべく避けて、捕縛や探知メインで使っていこうと頷く璃奈。
そうしている内にいよいよ、彼女の登場するシーンの撮影が回ってくる。
「私もここで応援してるわ」
「ご主人ファイト!」
静かに微笑む蝶子に、ぶんぶん腕を振って全力で応援するメイド達。
その声援に後押しされるように、璃奈はゆっくりとカメラの前に立つ。
アドバイスされたように、慌てず普段の自分のペースを意識して――。
「アクション!」
――提供された地図を手に探知呪術を展開した璃奈は、エリア51に潜入する。
警備の手薄な場所を探り当て、抜き放った妖刀の力を借りて稲妻のごとき素早さで駆け抜ける。立ちはだかるプルトン人の兵士を、巧みな剣技で斬り払いながら。
「道を開けてもらうよ……」
「ギャーーーッ!!!」
璃奈が刀を振るえば、着ぐるみのプルトン人はみな迫真の演技で倒れていく。
その疾走を止めることは誰にもできず、少女はまっすぐにUFO格納庫に向かう――そんなシーンを、璃奈は最後まで無事に演じきったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
映画っていうのも面白そうね♪
話に聞くとアクション映画みたいな感じかしらね?
派手なアクションとか戦闘中に服が少し破けるみたいな多少サービスシーンとかあると良いのかしら♪(【誘惑、威厳、存在感、礼儀作法、早業】等)
まぁ、その辺は監督さんや演出家に従いましょうかね。
でも、撮るからには綺麗にしっかり撮って貰わないとね。妥協は許さないわ
あ、この子(雪花)も出して貰えるのかしら♪
「わたしははずかしいのー」
後は、【虜の軍勢】で「眷属にした「万能派遣ヴィラン隊」を魔城から召喚。
【あらゆるニーズにお答えします】による【料理、掃除、運搬、演技】等で、わたし達出演者やスタッフのサポートやエキストラ等を指示するわ
「映画っていうのも面白そうね♪」
魔城スカーレットより喚んだ【虜の軍勢】の眷属を伴って、堂々と現場入りしたのはフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)。
自分たちの活躍が映像として世に出る、そんな機会はそうそうあることでは無いだろう。そんな面白そうなことを彼女が見逃すはずは無かった。
「話に聞くとアクション映画みたいな感じかしらね? 派手なアクションとか戦闘中に服が少し破けるみたいな多少サービスシーンとかあると良いのかしら♪」
「アクションは大歓迎ですが、レーティング的にサービスシーンは控えめで……でも少しはあったほうが興行的には良かったりします」
フレミアはぱらぱらと渡された台本を読み、監督や演出家とシーンの相談をする。
今回の映画はどちらかと言えば猟兵の活躍を描くことをメインにした活劇系で、大人も子供も楽しめる作品にすることが目標らしい。演劇が本職という訳ではないフレミアは、その辺りの方針についてはプロに従うことにする。
「でも、撮るからには綺麗にしっかり撮って貰わないとね。妥協は許さないわ」
「勿論です。皆さんの活躍を後世まで伝える、最高の作品にしてみせます」
ここに集められたスタッフは猟兵のファンであり、自分の仕事に誇りを持つ者だ。
こと本作の撮影において、彼らが妥協や手抜きをすることは絶対に有り得ない。
その燃えるような情熱と信念は、フレミアにとっても心地よいものだった。
「あ、この子も出して貰えるのかしら♪」
「わたしははずかしいのー」
ぐいっと笑顔でフレミアが前に押し出したのは、眷属のひとりである雪女見習いの雪花。当の本人はほんのり顔を赤らめて、ぷるぷると首を振っているが。
「なら子役として出演してもらっても? 敵に捕まっている民間人の役ですが」
「猟兵に救出されるヒロイン役ね。いいんじゃないかしら♪」
本人の拒否権を半ばスルーする形で、トントン拍子に決まる新キャスト。
その一方で次の撮影準備をするスタジオでは、メイド服に身を包んだ「万能派遣ヴィラン隊」が、他の出演者やスタッフのサポートを行っている。
「次の撮影に使う小道具は、こちらに運んでおきました」
「紅茶とコーヒーを淹れておきましたので、よろしければ休憩中にどうぞ」
「あ、ありがとう……」
今はフレミアの眷属とはいえ、かつてヴィランだった者が甲斐甲斐しく働いている様子を見るのは、ヒーローズアースの人々にとってはかなり驚きだったようだ。
「では本番いきます! スタンバイよろしくお願いします!」
こうして始まったフレミア達の撮影は、こんなシーンから始まった。
「グゲゲ、地球人共ノさんぷるヲ入手シタゾ」
「コイツヲ解剖スレバ、ワレワレノ地球侵略計画ハサラニ進展スル」
「た、たすけてなのー」
邪悪なるプルトン人に捕まった民間人の雪花が、若干棒読みな悲鳴を上げる。
そこに颯爽と現れるのは、真紅の魔槍ドラグ・グングニルを携えたフレミア。
何者ダ、と誰何の声を上げる間もなく、敵兵は次々と薙ぎ払われていく。
「グギャーーーッ!!!」
巧みな槍捌きで寸止めするフレミアの大胆なアクションに合わせて、着ぐるみを被ったプルトン人役の俳優も派手なやられっぷりで応じる。瞬く間に付近の敵を制圧した吸血姫は、連れてきた従者役のヴィラン隊に指示を出す。
「貴女達はこの子を安全なところに。わたしは作戦通りUFOの奪取に向かうわ」
「かしこまりましたお嬢様。どうかご武運を」
「おねぇさま、たすかったのー」
笑顔で感謝を告げる少女とメイドに見送られ、フレミアはエリア51の深部へと向かう。どんな困難が待ち受けていようとも、彼女の歩みが止まることはない――。
史実の戦いから大きく活劇にアレンジされた脚本だが、これはこれで悪くない。
猟兵達の気高き魂(スピリット)を伝える、それがこの映画の最大の目標なのだから。
大成功
🔵🔵🔵
ヨナルデ・パズトーリ
潜入任務か
其れなりに参加したが中々厄介じゃったのう
ま、娯楽は人の心の活力になる物
ならば協力してやらんとのう
基本的には潜入時のやり方を其の侭
敵に気付かれない様に仕留められる敵を仕留め複数の敵はやり過ごす暗殺者的なムーブ
実際、そういう感じに依頼ではしてたし映画的にも戦闘時の派手さとの
ギャップが生じて映えそうだから、きちんと徹底
事前に基地の地図の『情報収集』
『迷彩』で『目立ちにくい』様にし建物内という『地形を利用』して遮蔽物で
敵を誤魔化し『闇に紛れ』移動
敵の接近を『野生の勘』と『第六感』を駆使し警戒
近付いた敵が一人なら『暗殺』の要領で『先制攻撃』で『鎧無視攻撃』を
ぶちこみ無力化
複数ならやり過ごす
「潜入任務か。其れなりに参加したが中々厄介じゃったのう」
当時のことを振り返り、しみじみと物思いに耽るヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)。あの時は自分たちの活躍が映画化されるとは、あまり意識していなかった彼女だが――。
「ま、娯楽は人の心の活力になる物。ならば協力してやらんとのう」
悠久の時を生きる古き神は、人間たちの娯楽についても寛容であった。
フォーティナイナーズの一人である彼女の出演は、スタッフももちろん大歓迎である。
「侵略者は徹底的に叩き潰さねば、の。神の怒りという奴じゃて」
撮影が始まれば、ヨナルデは実際の潜入時のやり方のまま、ジャガーを模した黒曜石の鎧に身を包むと、スタジオに再現されたエリア51に忍び込む。
細部は異なっているが内部の様子は本物の基地を再現したもの。つまり米軍から提供された地図の内容と、かつての潜入経験がそのまま活かせるというわけだ。
(まずは徹底して隠密裏に動くとしようかのう)
鎧の上から迷彩を施し、目立たないように遮蔽物から遮蔽物へと獣のような身のこなしで飛び移る。闇に紛れるジャガーの暗躍に気付ける者など誰がいよう。
野生の勘と第六感を研ぎ澄ませ、敵の接近に最新の注意を払いながら、ヨナルデは目指すべきUFO格納庫までの最短経路を進んでいく。
「侵入者ハ何処ダ!」
「ココニハ居ナイゾ、向コウヲ探セ!」
敵も猟兵の侵入には気付いているようだが、その所在を捉えることはできてない。
右往左往する敵が目の前を通り過ぎるのを、ヨナルデは息を殺してやり過ごす。
相手が複数であれば勝利しても騒ぎになる。隠密を求められる作戦でそれは悪手。
逆に近付いてくる敵が一人なら――気付かれずに仕留められる状況なら、ジャガーにして煙吐く鏡は容赦しない。
「裁きを受けるがよい」
「―――ッ!?」
血と骨で構成された翼を広げ、風のように獲物に飛びかかるヨナルデ。
一瞬にしてその背後に回り込んだ彼女は、手にした黒曜石の戦斧を振り下ろす。
もちろん当たらないように寸止めだが、その迫力は対面する者にとっては特に凄まじい。プルトン人は悲鳴を上げる間もなく、血糊を撒き散らして倒れ伏すのだった。
(あの時もこんな具合じゃったな)
ヨナルデはそれからも敵に気付かれないことを最優先にして、仕留められる敵だけを仕留めていく暗殺者的なムーブで潜入作戦を進めていく。
映画として見る分には絵的に地味だが、こうしたシーンがあってこそ、後に控えている派手な戦闘シーンとの間にギャップが生まれて映えるのだ。
長く生きていれば娯楽への造詣も深まるのか。"溜め"の重要性を心得る神は静かに密やかに闇に溶け込み、次のシーンへの引きを作るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・シフファート
フッ、ダークポイントやドクター・アトランティスと戦っただけでなくクラジェネに一度トドメを刺した私の出番のようね?
そして、私の電脳魔術なら裏方を兼任してCG技術などを向上させられるわね。
スタジオも許可をとれば電脳空間を展開して更に空想的なシーンを取れるようにするわ。
撮影としてはありのままの私で演じて、電脳魔術でエリア51をハッキングして撹乱。
殺陣では新しいUCで重力属性を召喚。
傷つけることなく無重力で浮遊させて重力で拘束させる。無論痛みは無いわ。
他にも電脳精霊術で精霊を召喚して使役したり現実ハッキングで空間改竄等で派手な立ち回りをするわ。
「フッ、ダークポイントやドクター・アトランティスと戦っただけでなくクラジェネに一度トドメを刺した私の出番のようね?」
そう得意げに語りながら撮影現場に現れたのはシャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス CV釘宮理恵・f23708)。貴族令嬢として洗練された振る舞いと、自信に満ちあふれた態度は、確かに役者としてうってつけの人材と言えるだろう。
「そして、私の電脳魔術なら裏方を兼任してCG技術などを向上させられるわね」
電脳魔術と精霊術を融合させた独自の「電脳精霊術」の使い手であるシャルロットは、まずはスタッフの許可を取り付けてスタジオの性能向上に着手する。
スタジオ全体に覆いかぶさるように展開された彼女の電脳空間は、ある種のAR(拡張現実)のように合成でしか有り得なかった空想的なシーンをも撮影可能にした。
普通ならいちいちコンピュータで後付けしていたエフェクトやグラフィックが、リアルタイムで現実空間に直接重ねられるようになったのだ。
「こんな技術があるなんて……」
「私にかかればこれくらい軽いものよ」
自分たちに知らない異次元のテクノロジーに感嘆するスタッフに、電脳と精霊を司る「アリス」は得意げに胸を張りながら電脳ゴーグルを操作するのであった。
そして、スタッフとしてだけでなく、キャストとしても彼女は手を抜かない。
自分の出番が回ってくると、シャルロットはありのままの「シャルロット・シフファート」としてカメラの前に立ち、堂々とした演技を見せた。
「この程度のセキュリティ、私なら簡単に突破できるわ」
エリア51に潜入したシャルロットは得意の電脳魔術で基地のコンピュータにハッキング。カメラやセンサー等の警備システムを掌握し、敵の警備体制を撹乱する。
まるで臣下が女王に道を開けるように、厳重にロックされた扉や隔壁が彼女の前ではひとりでに開いていく。それはまさに魔法――あるいはその域に達したテクノロジーの御業であった。
「コレ以上ヤラセルナ!」
「殺セーーーッ!!」
ハッキングを阻止しようとシャルロットの前に立ちはだかるプルトン人の大群。
バトルシーンの撮影に入ると、彼女は電脳精霊術士としての新しいユーベルコードを披露する。
「無垢なる基礎よ、汝は原初の荘厳。その無色は万華の如き色彩となり、万の元素を流出する」
【無垢であると謳う世界全ての無機】――周囲の無機物を純粋なエーテルに変換し、そこから重力属性を召喚。無重力の檻にて敵を捕らえ、重力の鎖で拘束する。
観客からはワイヤーもないのに突然キャストが宙に浮かび上がり、ピクリとも動かなくなったように見えるだろう。もちろん傷つけてはいないし痛みもない。
「ナンダ、コレハ?!」
「これが私の力よ。さあ、道をお開けなさい!」
抵抗する間もなく無力化されていくプルトン人達の動揺をよそに、シャルロットはあくまでも自信に満ちた立ち回りで敵を圧倒する。
電脳精霊術で召喚された精霊たちが戦場を飛び交い、現実ハッキングが空間をも歪める。CGとしか思えないほどの派手な演出を繰り広げられるのも猟兵の強みだろう。
圧倒的な力を見せつけたシャルロットは、悠々とUFO格納庫に向かうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ヘスティア・イクテュス
UFO潜入ね…うん…(UFO技術目当てに略奪のため潜入しまくった記憶を思い出し)
プルトン人、人類の敵…この星、いいえ!宇宙の平和を守るためヘスティア・イクテュス、必ずUFOを奪取し彼らの野望を阻んで見せるわ!(記憶を封印しつつ)
あの時は光学迷彩を駆使したけど、見栄え的に封印
アベルを使ってカメラや基地内データを【ハッキング】
入手した地図や彼らの移動経路データを元に潜入ね
…見つかった!?
見つかったからにはミサイル発射!と言いながらスモークミサイルを
視界を遮り、ミスティルテインで射撃(ビームはCG表現でお願いします)
危なかったわ…騒がしくなってきたしここは…ティターニアで格納庫まで一気に!
メンカル・プルモーサ
映画撮影…ね。面白そう…
取り合えず…エリア51の時の行動を思い返すと…潜入してハッキングしてUFOを奪う×沢山……
ふむ…潜入とかアクションシーンは多そうだからハッキングでの他の人の援護が主かな…?
プルトン星人側にも凄腕のハッカーがいて(映画らしい外連味たっぷりの)電脳戦でバチバチやり合う…と言うのは良いかも…
…基地内へ潜入しないとハッキングが出来ないとして…
…敵地でのハッキングだから電脳戦で無防備な場面で敵に見つかり掛ける…とかできそう…
…これに加えて早く掌握しないと仲間がピンチ…とかで演出を狙えるかな…
…あ、それと【我が身転ずる電子の精】で直接データとかいじれるから…その辺も何か使えるかも…
「映画撮影……ね。面白そう……」
オファーを受けたメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、先の戦争当時のエリア51での自分の行動を思い返してみる。
要約すればその手口とは「潜入してハッキングしてUFOを奪う×沢山」。電脳魔術士である彼女にはこれが最適解だったのだが、映画的にはワンパターンな気もする。
「ふむ……潜入とかアクションシーンは多そうだからハッキングでの他の人の援護が主かな……?」
身体を張る仲間をサポートする裏方も、映画の良し悪しを左右する重要な配役だ。
他にもいくつか思い浮かんだアイデアを纏めると、メンカルは監督や脚本家にそれを提案しに向かう。
「UFO潜入ね……うん……」
一方、先の戦争を題材にした映画ができると聞いてヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)が思い出したのは当時の記憶。
プルトン人のUFO技術目当てにエリア51に潜入しまくり強奪しまくったあの日々。
鹵獲したUFOから新装備「S.F.O」も開発できたし、海賊的には間違いなく充実した日々だったのだが――その動機がヒロイックだったかと言われると、その。
「プルトン人、人類の敵……この星、いいえ! 宇宙の平和を守るためヘスティア・イクテュス、必ずUFOを奪取し彼らの野望を阻んで見せるわ!」
よって自らの記憶を華麗に封印したヘスティアは、わざとらし――もとい勇気と正義感に満ちあふれた意気込みをカメラの前で語り、撮影に臨むのであった。
(あの時は光学迷彩を駆使したけど、見栄え的に封印ね)
撮影用のカメラにしっかり自分の姿が見えるように立ちながら、ヘスティアは【サポートAI端末 ティンク・アベル】と潜入プランを練る。彼女のサポートに回るのは、ハンドヘルドコンピュータ【マルチヴァク】を操作するメンカルだ。
「基地内のデータとカメラから、内部地図と敵の移動経路を予測しました」
「……だけどこれ以上のハッキングは、基地に直接潜入しないと難しい……」
アベルとメンカルの二重ハッキングによって、瞬く間に明らかになる敵地の概要。
敢えてここで全てのハッキングを完了させなかったのは、そのほうが映画的な見せ場を作りやすいというメンカルからの提案である。
「いいわ、行きましょう。物理的な障害はわたしが排除する」
「……ん、わかった……電子的な障害は私に任せて……」
それぞれの役割を決めて、ヘスティアとメンカルは密やかにエリア51に忍び込む。
目指すは基地の電子系統を司るコンピュータールーム。集めた情報をもとに敵との遭遇は最小限にして、巡回の網目をすり抜けるように進む。慎重に、かつ迅速に。
「到着よ。ここがコンピュータールームね」
「……10分……いえ、5分頂戴……」
ビームライフル「ミスティルテイン」を構えたヘスティアがクリアリングを行い、安全が確認できたところで即座にメンカルがコンピュータへハッキングを開始する。
ここからならエリア51の中枢システムに干渉できる。最重要施設であるUFO格納庫までのルート確保や障害の排除も、一気に達成できるはずだ。
だが――メンカルがシステムに触れた瞬間、モニターが赤く染まり、けたたましいアラームがコンピュータールームに響き渡る。
「……見つかった!?」
バタバタと近付いてくる大勢の足音に気付き、緊張の度合いを強めるヘスティア。
対するメンカルは悔しげな表情を――元が無表情なので演技しても分かりづらいが――浮かべながら、巧妙に仕掛けられたトラップに遅まきながら気付く。
「……プルトン星人側にも凄腕のハッカーがいるみたい……」
『ヒヤッハァ! 活キノ良イエモノガ食イツイタゼェ!』
その瞬間モニターに映し出されたのは、他とは異なるサイケな格好をしたプルトン人。当初の脚本にはなかったものの、メンカルの提案によって急遽作られた、言わばライバルキャラクターである。
「コノ基地ノめいんしすてむハ俺様ガ掌握シテイル! 生キテココカラ出タケレバ、俺様トノげーむニ勝ツコトダナァ!」
「面白い……受けて立つ……」
エリア51の主導権を賭けた、メンカルとプルトン人のバチバチの電脳戦が始まる。
カタカタカタッ、ターンッ! とキーボードの音を響かせたり、モニター上を無数のポップアップや数値が飛び交ったりと、映画らしい外連味をきかせた演出が彼女たちの戦いを盛り上げる。
「電脳空間は私の庭……正面対決なら絶対に負けない……」
『ナカナカヤルナァ! ダガ、ココガ俺様ノ腹ノ中ダッテコトヲ忘レルナヨ!』
電脳戦に意識を没入させている間、現実のメンカルの身体は敵地で無防備となる。
そこに敵のハッカーが差し向けたドローンやロボットが殺到し、一斉攻撃を仕掛けた。
「やらせないわよ!」
あわや絶体絶命のシチュエーションでメンカルを救ったのは、ヘスティア。
彼女がミスティルテインのトリガーを引くと、ビームの閃光が――実際に撃つと危険なので、撮影後にCGで表現される予定だが――敵を貫き、機能停止させる。
ハッキングが完了するまでここは必ず死守する。不退転の決意が少女を強くする。
「見つかったからにはミサイル発射!」
そう言いながらヘスティアは背中のジェットパック「ティターニア」からスモークミサイルを発射し、コンピュータールームに煙幕を張る。これではお互いに視界が遮られることになるが、彼女には心強い電脳の従者がついている。
「アベル、状況把握。指示、お願いするわ」
『かしこまりました、お嬢様。センサー感度最大、敵の位置情報を送ります』
サポートAIの指示のもとで、ヘスティアの射撃は煙幕の向こうにいる敵を正確に撃ち抜く。その鮮やかな戦いぶりはまさに戦乙女を連想させるものであった。
――とはいえ、彼我の兵力差は歴然。このまま戦ってもいずれ押し切られる。
早くシステムを掌握しなければ仲間がピンチに陥る――この状況でメンカルはついに「奥の手」の使用を決意する。
「我が体よ、変われ、集え。我は掌握、我は電霊。魔女が望むは電網手繰る陽陰」
【我が身転ずる電子の精】を発動した魔女の右手が、光り輝く粒子の集合体に変換される。それは一切の道具を必要とせずにデータや信号への直接干渉を可能とする、電脳世界における「魔法の手」だ。
「……これで終わり……」
『ナッ、何ダッ?! コノ俺ガ一方的ニ……コンナノ有リ得ネェ……!!』
粒子の手で基地のコンピュータに触れたメンカルは、正規のプロセスを省略してシステムを改竄し、プルトン人ハッカーからの干渉を遮断する。
一瞬でシステムから閉め出された敵が愕然とするのも無理はない。そのままメンカルは全システムを掌握すると、敵対するドローンやロボットの機能を停止させる。
「動きが止まった……! トドメよ!」
あとは木偶の坊と成り果てた敵を一体ずつ、ヘスティアが確実に仕留めるのみ。
こうしてコンピュータールームの攻防は、猟兵達の完全勝利で幕を下ろしたのだった。
「危なかったわ……騒がしくなってきたしここは……」
ほっと胸を撫で下ろしながら、ヘスティアはティターニアの羽を広げる。
基地のシステムを掌握してもまだ油断はできない。騒ぎを聞きつけたプルトン人の警備兵が集まってくる前に、このままUFO格納庫まで直行するのだ。
「さあ、一気に行くわ!」
「……進路クリア、問題なし……」
勢いよく飛んでいくヘスティアの後に、飛行式箒に乗ったメンカルが続く。
ピンチからの華麗な逆転を演出しきったふたりの演技は、まさに迫真であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
●SPD
そういえば、49ers入りの要因ってコレだよね?
【潜入!】
キネマを盛り上げる為に!今回使った超機械を総動員!
①基地内の監視カメラにハッキング&完全ガイドをサイバーアイに入れて、潜入開始!
②途中で発見されかけるも、ステルスクロスを起動して隠密続行。
③天井から奇襲して、ゆうふお格納庫の前のプルトン人(役者さん)を気絶させる(演技)。
それから、電子錠を解除する為にハッキングするけど、増援に発見されるけど、最後の時間稼ぎに乱入してきた紅路夢と合体!
派手に大立ち周りして、増援をちぎっては投げながら(演技)、ハッキングに失敗した扉を強硬手段でレーザーで溶断して格納庫へ突撃!
こんな感じで行こう!
「そういえば、49ers入りの要因ってコレだよね?」
撮影に参加するヒーローズ・フォーティナイナーズの一人、国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)は、先の戦争での戦歴をふと振り返る。
実に9度にも渡ってエリア51への潜入を繰り返し、ついには『拾玖年度版! エリヤ伍拾壱完全案内盤!』なるものまで開発していた彼女。こと本作戦においては猟兵の中でも指折りに熟知していると言って過言ではないだろう。
「実際に作戦に参加された猟兵のご意見を聞けるのは、とても参考になります!」
「そうかな? えへへ、じゃあぼくもキネマを盛り上げる為に頑張っちゃうよ!」
作品のリアリティ向上に余念のない制作陣に、諸手を挙げて歓迎された鈴鹿。
その期待に応えるべく、彼女は実際の作戦に使った超機械を総動員して撮影に挑む。
「忘れ物はないね! よし行こう!」
光線銃に機関銃、電子戦用の操作卓など、様々な状況に対応するための装備を整えて、鈴鹿はエリア51に潜入する。基地内に仕掛けられたカメラは既にハッキング済みであり、完全案内盤のガイドデータもサイバーアイに移してあるため、格納庫までのルートは完全に策定済みだ。
「まさかこんな所を通ってくるなんて、敵も思ってないよね」
超機械のひとつ『これで君も、怪奇! 隙間人間! セツト!』で一時的に隙間人間になった彼女は常人には入れないような狭いスペースにするりと滑り込み、警備の死角を突いてUFO格納庫に向かう。
「ン? 今、向コウノ隅ッコデ何カ動イタヨウナ……」
(あ、まずい。でもこんなこともあろうかとっ)
途中、カンのいい巡回に発見されかかったものの、慌てず騒がず『ステルスクロス』を起動。光学迷彩によって完全に敵の視界から姿を消し、じっと息を潜める。
「気ノ所為カ……」
しばらく探しても何も見つけられなかったプルトン人が遠ざかるのを待ってから、鈴鹿は今度は天井裏に続く通気ダクトに潜り込むと、隠密行動を続行する。
サイバーアイの完全ガイドによれば、目的地はもうすぐそこのはずだ。
(あそこがゆうふお格納庫だね)
ついに基地の最深部に到達した鈴鹿は物々しい雰囲気を放つ扉の前に警備のプルトン人が立っているのを見つけると、天井から飛び降りるなり怪電波光線銃『アムネシヤライザア』のトリガーを引く。
「何ダ―――ッ?!」
奇襲を受けたプルトン人の身体を非殺傷性のショックパルサーが貫き、脳波を揺さぶられた彼はたちまち意識を失う。もちろん今回のそれは演技であり、着ぐるみの中の役者に害はない。
「しばらく眠っててね」
気絶させた警備をよそに鈴鹿は扉に近付くと、仕掛けられた電子錠を解除するためにハッキングを開始する。流石に最重要施設なだけはあり、彼女の『超科学技術電気操作卓』を以ってしても解除には時間がかかりそうだ。
「侵入者ダ!」
「捕マエロ!」
しかしそこに折悪しく、異変に気付いた巡回の兵士達が増援にやってきてしまう。
鈴鹿はやむなくハッキングを中断すると操作卓のキーを叩き、待機させていた最後の切り札を召還する。
「おいで紅路夢! 合体だ!」
ドォンッ!! と基地の壁を突き破って乱入してきたのは、外装にミラージュカスタムを施された赤銅のフロヲトバイ「紅路夢」。自らのテクノロジヰの粋を詰め込んだ愛機に乗り込んだ鈴鹿は、文字通りの人機一体となってド派手に暴れ始めた。
「邪魔をするなら痛い目を見てもらうよ!」
「グワーーーッ!?」
「ギャーーーッ!!」
やってくる敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げ。もちろん手加減しているが、バイクと合体した少女が宇宙人相手に大立ち回りを演じるのはなかなかインパクトのある映像である。それに合わせてやられる演技をするプルトン人の演技も見事なもの。
しかし幾ら敵をやっつけても、騒ぎを聞きつけた新たな増援がすぐにやってくる。このままでは埒が明かないと判断した鈴鹿は、強硬手段として一丁の光線砲を構えた。
「ハッキングができないなら、これでどうだ!」
発射された高出力のレーザーが閉ざされたままの格納庫に命中し、分厚い特殊合金の扉を高熱によって溶断する。赤熱する断面の向こう側に、暗く広大な空間が覗く。
「突撃!」
鈴鹿はすかさず紅路夢のエンジンをフルスロットルに入れて、しつこい警備を跳ね飛ばしながら扉をこじ開け、格納庫内に突入するのだった――。
「こんな感じでどうかな!」
「バッチリです!」
撮影を終えてひと汗ぬぐった鈴鹿を迎えたのは、監督の笑顔とサムズアップ。
その他の潜入シーンの撮影もおおむね撮り終わり、スタジオ内は場面転換の準備で慌ただしくなっている。
「次のシーンもその調子で、どうかよろしくお願いします!」
トラブルもなく行程が進む中、本作の撮影はひとつの山場を迎えようとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ジャスティストルーパー』
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POW : フォールン・ジャスティス
全身を【機械部分から放出されるエネルギー】で覆い、自身の【戦闘を通じて収集した敵のデータ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : イミテーション・ラッシュ
【ジャスティス・ワンが得意とした拳の連打】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : マシン・ヴェンジャンス
全身を【機械装甲】で覆い、自身が敵から受けた【物理的な損傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:もりさわともひろ
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『イェーガー・ザ・ムービー!』の撮影は、現在のところ順調に進んでいる。
エリア51に潜入した猟兵達のシーンは無事に撮り終わり、次はいよいよ本作の山場のひとつとなるシーンの撮影となる。
ついにUFO格納庫に辿り着いた猟兵達。暗闇に包まれた空間に明かりが灯る。
そこに待ち受けていたのは、運び込まれた大量のUFO――だけでは無かった。
機械部品を露出させたロボットの兵士が何十人も、既に戦闘態勢を取っている。
「ククク、待ッテイタゾいぇーがー! 儂ノ研究成果ヲ披露スル時ヲ!」
兵士達の後ろにいるのは、白衣を着たマッドサイエンティスト風のプルトン人。
彼がこのエリア51の責任者であり、ロボット兵の開発者という設定らしい。
「コレゾ我ガ最高傑作じゃすてぃすとるーぱー! 一体一体ガアノ『ジャスティス・ワン』ト理論上同等ノぽてんしゃるヲ持ツ、究極ニシテ最強ノ兵器ナノダ!」
ジャスティス・ワン――それは前大戦「ジャスティス・ウォー」の最強ヒーロー。
知られざる文明と地球との行き来を遮ることで人知れず世界を守護してきた英雄であり、オブリビオンの首魁クライング・ジェネシスの宿敵でもある。
それをコピーした量産兵器とあれば、分かりやすい敵役としてうってつけだろう。
もちろん扮しているのは人間の役者だが、衣装や特殊メイクによる再現度は本物と見紛うほどのものである。
「ココガ貴様ラノ最期ダ! サア行ケ、じゃすてぃすとるーぱー!」
マッドなプルトン人の号令一下、機械仕掛けの兵団は進撃を開始する。
もちろん、この映画の主役である猟兵達に求められているものは勝利。
邪悪なオブリビオンが作ったまがい物に、真のヒーローが負けるはずがない――この逆境を跳ね除け、猟兵の気高き魂(スピリット)をスクリーンに示すのだ。
レイ・アイオライト
次はジャスティストルーパーとの戦闘……って、再現度高くない?ヒーローズアースの技術ってすごいのね……。
面白そうだし、あたしも特殊メイク……っていうか変身?しましょうか。
【転身万化】で本物の力と寸分違わないジャスティス・ワンに変身するわよ。
さてと……同等のポテンシャルを持つのよね。行くわよ、プルトン人。その最高傑作がこの拳で爆散しないと良いけどね?
『地形の利用・空中戦・追跡・残像』で接敵、敵データ収集って言ってもすでに解析済みでしょ?ジャスティス・ワンの口調とかも全部真似るから、いい戦いになりそうじゃない?
「ゆくぞ、我が影よ!」的な感じでね。
極近接で拳の連撃を食らわせるわ!(手加減)
フレミア・レイブラッド
確か、過去に本物と戦った事あったわね。
それにしても、よくできてるわね…メイクだけでこんなに再現できるなんて…(感心)
本格的な戦闘シーンなら、なるべく映画映えする方が良いわよね…そうだ、良いモノがあるわ♪
【ブラッディ・フォール】で「とある"悪党"の流儀」の「ミス・ワルプルギス」の服装へ変化。
【キリング・クレセント】【流星魔弾】【紅い夜の吸血鬼】の各UCを映画映えするように(役者に当らない様に)次々使用して蹴散らす感じでいくわ
確か、ワルプルギスってこの世界だと伝説の怪盗なのよね?知名度もあるし、わたしの能力の一端を示すのに丁度良さそうじゃないかしらね♪
「おねぇさま、がんばってなのー」(雪花待機中)
「次はジャスティストルーパーとの戦闘……って、再現度高くない?」
「確か、過去に本物と戦った事あったわね。それにしても、よくできてるわね……」
特殊メイクで敵に扮した役者たちの姿を見て、レイとフレミアは感心したように呟く。近くから見てもスーツのデザインや機械パーツの精巧さまで細かく再現されており、実物のオブリビオンを知る者からしても見事という他ない。
「ヒーローズアースの技術ってすごいのね……」
「メイクだけでこんなに再現できるなんて……」
ヒーローとヴィランの戦いが、この世界の技術を高めた一面もあるかもしれない。
それにしても、この映画のために惜しみのない予算と最新技術と実力派スタッフを投じる、イェーガームービー社の本気のほどが窺えた。
「本格的な戦闘シーンなら、なるべく映画映えする方が良いわよね……そうだ、良いモノがあるわ♪」
カメラが回り始めるとフレミアはなにかを思いついた様子で、微笑みながら【ブラッディ・フォール】を発動する。キラキラと光る星と月のエフェクトに包まれた直後、彼女の姿は魔女や怪盗を思わせる黒い衣装に変わっていた。
「確か、ワルプルギスってこの世界だと伝説の怪盗なのよね?」
それは以前この世界で戦ったヴィラン『ミス・ワルプルギス』の姿を模したもの。
生前は悪徳企業や犯罪組織のみをターゲットとし、誰も傷つけることなくお宝を盗み出すというスタイルから、犯罪者の時代において大きく名を馳せた女怪盗だ。
「知名度もあるし、わたしの能力の一端を示すのに丁度良さそうじゃないかしらね♪」
「なるほど。面白そうだし、あたしも特殊メイク……っていうか変身? しましょうか」
敵役のメイクとフレミアの変身から着想を得て、レイも【影ノ傷跡・纏:転身万化】を発動。背中の傷跡からあふれ出す濃密な影が、鎧となって彼女の身体を包みながら変形し、ヒーローコスチュームを纏った逞しい偉丈夫に変貌させる。
「私の名はジャスティス・ワン……この世界は、私達ヒーローが守る!」
声音から口調まで完全に再現されたそれは、まさにヒーローズアースの人間ならば誰もが知る伝説のヒーローそのもの。ジャスティストルーパーのコピー元であるその姿は、こうして対峙してみれば歪んだ鏡写しのようであった。
「ナンダト……何ダ、ソノ姿ハッ!?」
伝説のヒーローとヴィランが並び立つその光景を前にして、敵も動揺を隠せない。
過去の英雄達の力をその身に宿して戦うスタイルは、過去の亡霊であるオブリビオンの存在と好対照となり、猟兵のヒロイックさをより引き立てる演出となった。
「おねぇさま、がんばってなのー」
撮影中のセットの外側では水筒とタオルを持って待機中の雪花が、主人達の勇姿を固唾を呑んで見守りながら、可愛らしい声援を送っていた。
「さてと……同等のポテンシャルを持つのよね。行くわよ、プルトン人。その最高傑作がこの拳で爆散しないと良いけどね?」
影の鎧の隙間から本来の口調でそう宣言したレイは、以降は完全にジャスティス・ワンその人になりきって、背中のマントをたなびかせながら空に浮かぶ。
「ゆくぞ、我が影よ!」
「華麗に蹴散らしてあげるわ♪」
勇ましく飛んでいくジャスティス・ワンに合わせて、ミス・ワルプルギスに扮したフレミアは【紅い夜の吸血鬼】を発動。夜闇色のドレスを纏い、鮮血色のエネルギーの尾を引きながら、踊るように宙を舞う。
「クッ……所詮ハ時代遅レノひーろートゔぃらん。儂ノ最高傑作ガ負ケルモノカ!」
「【フォールン・ジャスティス】起動」
「【マシン・ヴェンジャンス】起動」
焦りを滲ませるプルトン人とは対照的に、ジャスティストルーパーは無機質な声でユーベルコードを起動。そのボディは鈍色の機械装甲で覆われ、全身から凄まじいエネルギーが放出される――この機構はまあ、流石に再現できなかったのでGCだが。
そのスペックは理論上はオリジナルのジャスティス・ワンにも相当するらしいが、言うまでもなくそんなものに猟兵達が怖気づくはずも、遅れを取るわけもない。
「私のデータはすでに全て収集済みだろう。つまり真っ向勝負ということだ」
ジャスティスモードのレイは小細工なしで敵陣のド真ん中へと飛び込むと、燃えるような緑色のオーラの輝きを拳に乗せて、目にも留まらぬ猛ラッシュを放つ。
残像が生じるほどの猛烈なスピードと怒涛の攻めは、その気迫も相まってまるで彼(彼女)が何人にも分身したように錯覚するほど。対するトルーパーも【イミテーション・ラッシュ】で対抗し、拳と拳のぶつかり合う効果音がスタジオに鳴り響く。
「ジャスティス・ワンの能力を再現した当機に、貴方が勝利する事は不可能」
「過去の私ならそうかもしれん。だが、ヒーローは常に進化し続ける!」
極近接で繰り広げられる拳の応酬は、次第にレイのほうが相手を押し返し始める。
ありえない、と言うように目を見開くジャスティストルーパー。彼我の性能が同等である以上、決着はつかないはずなのに――。
「停滞した過去と、未来に向かって進歩する者の違い。それが私の勝因だ!」
オブリビオンの機械に再現できなかったのは、猟兵の気高き魂と、世界を守る志。
堂々たる宣言と共に、正義のラッシュがジャスティストルーパーを吹き飛ばす――手加減しているとはいえ、なかなかにド派手なぶっ飛びようであった。
「生前の彼女は人を傷つけない流儀だったそうだけど、貴方達は別よ」
怪盗姿のフレミアもまた、カメラアングルを意識した華麗な空中機動でスタジオを飛び回りながら、ジャスティストルーパーの大群に立ち向かう。
『あなたの命、頂戴します』と書かれた予告状がトルーパーの装甲に突き刺さると、その直後にキラキラと輝く【流星魔弾】が豪雨のように降り注いだ。
「―――!!」
無数の星型の光弾に撃ち抜かれ、バタバタと倒れていくジャスティストルーパー。
もちろん役者に当たらないようコントロールしているが、カメラからは実際に命中しているように見える、気合いの入ったやられ演技である。
「最高傑作と言うから少しは期待したのだけれど、こんなものかしら?」
フレミアは余裕のある演技を崩すことなく、降り注ぐ流星に紛れて敵陣に急接近。
その手に浮かべた三日月型の光の刃――【キリング・クレセント】を振るって、並み居る敵を次々に薙ぎ払っていく。
「損傷甚大。戦闘続行、不能――」
「目標の戦闘能力、想定以上――」
月光の煌めきがスタジオに弧を描くたびに、鮮血のようなオイルを散らしてジャスティストルーパーが倒れ伏す。寸止めとはいえ迫力のある殺陣を披露するフレミアの勇姿を、幾つものカメラが様々なアングルからしっかりと捉えていた。
「まだまだいくわよ♪」
「覚悟しろ、オブリビオン!」
映像としての見栄えを意識しながら、迫力のある戦いを披露するふたりの猟兵。
時にアドリブも加えて、熱気の籠もった撮影はさらにヒートアップしていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
あんな感じで良かったのかな、先程の演技についてラン達や蝶子さんと話ながら感想聞いたり、演技について確認…。
集団戦闘という事で、黒桜を構えて【unlimited】を展開…。
呪力解放と共に【unlimited】を一斉斉射…というところでストップ…。
一応、当てない様にコントロールはしてるけど、やっぱり実際に呪力の解放や魔剣の斉射は放たない方が良いかな…?
役者さん危ないし…。
「フレー!」
「フレー!」
「ご主人!」
後は黒桜で切り払ったり、妖刀で斬り捨てたりして敵兵士達を倒していくフリをしていくよ…。
そういえば、CGとか演出担当さん、大変そうだね…。一人一人に合わせて演出入れないといけないなんて…。
「あんな感じで良かったのかな……」
「悪くなかったわよ、ちゃんと声も出てたし」
「ご主人、かっこよかった!」
次の撮影が始まるまでの合間に、璃奈は先程の演技について仲間と話し合っていた。
主人の晴れ姿を熱心に見ていたラン達からの反応は上々。蝶子も役者としての目線から感想とアドバイスを述べる。
「次は集団戦のシーンだけど、ここは思いきり外連味を効かせていきましょう。激しく動き回るけど、焦ってバタついた動きにならないよう気をつけてね」
「うん……なら、こんな感じでどうかな……」
出番がくるギリギリまで、蝶子やメイド達と演技の確認をする璃奈。
最初は乗り気ではなかった彼女だが、その横顔はとても真剣だった。
「呪われし剣達……わたしに、力を……」
そして自分のシーンが始まると、璃奈は呪槍・黒桜を構えながら魔力を練り上げる。
陽炎のように立ち上る魔力から生成されるのは、鋭い輝きを放つ無数の刀剣。
いずれも美しさすら感じるほどに研ぎ澄まされ、そして背筋を震わすほどの剣呑な力を秘めた、魔剣の巫女が祀る妖刀や魔剣の数々だ。
「コ……コノ力は一体……!?」
科学とは異なる領域の力である【unlimited curse blades】を目の当たりにしたプルトン人は、目玉がこぼれ落ちそうなほど見開きながら驚愕の表情を浮かべる。
空中に展開された夥しい数の刀剣が、一斉にジャスティストルーパーの大群に切っ先を向ける――その光景は幻想的であり、璃奈の力を映像として見せつけるのにも効果的な演出であった。
「この世界を、あなたたちの好きにはさせない……」
静かな力強さを感じさせる言葉と共に、璃奈は呪槍をぶおんと大きく一閃する。
その瞬間、黒い桜の花弁のような呪力が穂先から吹き荒れ、滞空していた魔剣が一斉斉射される――という寸前のところで攻撃をストップ。
『一応、当てない様にコントロールはしてるけど、やっぱり実際に呪力の解放や魔剣の斉射は放たない方が良いかな……? 役者さん危ないし……』
『そうですね。万が一のことも考えて、ここは後からCGで演出を付けましょう』
実際に映画として完成した暁には、ここは呪力と魔剣が敵の大群を一掃するシーンとなるだろう。ジャスティストルーパーの役者たちは映像の完成形をイメージしながら、何もないところでバタバタと倒れたり吹っ飛んだりしていく。
「こんな人形に、わたし達は止められないよ……」
迫真のやられ演技にすこし感心しつつ、それに応えるため璃奈は敵陣に吶喊する。
一斉射で足並みの乱れたジャスティストルーパーを呪槍で切り払ったかと思えば、すぐさま得物を妖刀に持ち替え、巧みな太刀捌きで襲ってくる敵を斬り伏せる。
「フレー!」
「フレー!」
「ご主人!」
メイド達は引き続き、セットの外側から全力で主人を応援している。
璃奈がひとり敵を倒すたびに、彼女達の口からは大きな歓声が上がった。
「【マシン・ヴェンジャンス】起動――」
ジャスティストルーパー達は損傷した部位を機械装甲で補修しながらなおも向かってくるが、魔剣の巫女の剣技は魂なき機械の兵士などに遅れは取らない。舞うような鮮やかな動きを魅せつけながら(あくまでフリだが)敵を斬り伏せる璃奈であった。
「お疲れ様です! いい演技でした!」
「ありがとう……」
シーンの撮影が終わると、璃奈は監督からの労いを受けつつ皆のところに戻る。
辺りを眺めると、演出家やCG担当スタッフらがたった今撮った映像を確認してどのアングルを採用するか、どんな演出をそこに加えていくか相談しているのが見えた。
「そういえば、CGとか演出担当さん、大変そうだね……。一人一人に合わせて演出入れないといけないなんて……」
「確かに大変ですけど、やり甲斐はありますよ。皆さんの演技をより一層引き立てる仕事が出来るんですから」
彼らだけでなく、大道具や小道具、カメラや照明の担当など、様々なスタッフがこの映画撮影のために集まり、それぞれのベストを尽くして仕事を果たしている。
沢山の人々がひとつの事に賭ける燃えるような熱意を、璃奈は今、肌で感じていた。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・シフファート
量産兵器、ね。
それが生体兵器なら「有機物」だけど、機械部分である以上「無機物」と言うことになるわよね?
見映えよく構えながら詠唱を開始し、UCを発動する。
「ユーベルコード・起動」
「無垢であると謳う世界全ての無機(ハウリング・エーテルブリング・アルケミスト)」
機械部分を電気属性に変換。稲妻が瞬いた瞬間に周囲のプルトン人を雷撃で倒す。
万一に備えて壁や床も冷気属性に変換して凍結攻撃を行う。
「原初の荘厳によって、砕かれなさい!!」
そう堂々と〆に決め台詞を発するわ。
シーンが終わったら裏方に回るわ。
ちなみに、UCを解除したら変換したエーテルは機械部分に戻るから次のシーン撮影でも手間がかからないわよ。
「量産兵器、ね。それが生体兵器なら『有機物』だけど、機械部分である以上『無機物』と言うことになるわよね?」
押し寄せる兵士の大群に立ち向かうシーン。シャルロットはエレメンタルロッドを見栄えよく構えながら、自信たっぷりな様子で敵と対峙する。その唇から紡がれる呪文は、現実に干渉し属性の力を行使する電脳精霊術の詠唱だ。
「無垢なる基礎よ、汝は原初の荘厳。その無色は万華の如き色彩となり、万の元素を流出する――ユーベルコード・起動」
スタジオに満ちるまばゆい輝き。それは美しく、鮮やかで、全ての色が混ざりあった純白にも虹色にも見える、エーテルの光。
「無垢であると謳う世界全ての無機(ハウリング・エーテルブリング・アルケミスト)」
詠唱の完成と同時にシャルロットは、敵の金属部品を電気エネルギーに変換した。
稲妻が瞬いた瞬間、機械兵士の付近にいたプルトン人が雷撃を浴びて倒れる。
「未知の攻撃を確認。損傷・大――」
「ギェェッ?!」
ごっそりとパーツを失ったジャスティストルーパーはぐらりとバランスを崩し。
迸る雷光に打たれたプルトン人は、甲高い悲鳴を上げて格納庫をのたうち回る。
「ここはもうアンタのホームじゃないわ。私の力を舐めないでよね」
この格納庫にはエーテルに変換可能な無機物がそこら中にある。シャルロットが杖を振れば、まるで絵筆で色を塗り替えるようにスタジオの光景は一変する。
雷撃に倒れ伏したオブリビオンを襲ったのは凍てつくような冷気。格納庫の壁や床の素材を変換した凍結攻撃が、またたく間に彼らの全身を氷の檻に閉じ込めた。
動きを封じられた敵軍へと、シャルロットは堂々と〆に決め台詞を放つ。
「原初の荘厳によって、砕かれなさい!!」
再び起こった雷鳴と雷撃の嵐が、凍りついた敵兵をことごとく打ち砕く。
元素の力が吹き荒れた後には、動いている者は誰ひとりとしていなかった。
「OKです! お疲れ様でした!」
「ええ、お疲れ様。今のシーンちゃんと撮れてたかしら?」
自分のシーンを終えてセットを下りたシャルロットは、すぐにカメラを確認する。電脳魔術を活かした彼女の演出技術は、映像のクオリティを大幅に引き上げていた。
役者としてだけでなく裏方としても立ち回る彼女は、CGの演出やSEの設定など、主にエンジニア方面で八面六臂の活躍を見せつける。ただでさえ仕事の多いCG・演出班から大いに感謝されたのは言うまでもない。
「ちなみに、ユーベルコードを解除したら変換したエーテルは機械部分に戻るから次のシーン撮影でも手間がかからないわよ」
「ああ、それは助かりました。予備のスーツにも限りがあるので……」
機械部品を剥ぎ取られたトルーパーの衣装が元通りになるのを見て、ほっと胸を撫で下ろしたのは衣装担当のスタッフ。猟兵達も手加減しているとはいえ派手な戦闘シーンだとどうしても破損は起こるので、こちらも補修に一苦労なのだ。
「映画撮影っていうのも大変ね」
スタッフ一同の奮闘ぶりを眺めながら、シャルロットは電脳ゴーグルを被り、自らも裏方作業の手伝いに励むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ビードット・ワイワイ
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり
性能のみを追求したか、できし物は紛い物
力のみで勝てるのならば、誰も彼もが不敗なり
要なりしは何を成したか。それ分からぬ汝は愚者か?
ここが汝の破滅なり
汝らが数で攻めるのならば我も我らへと変じよう
増えるは己、行うは蹂躙、成されるは破滅
3969の我により一切の障害を轢き潰さん
天井に我らを向かわせよう地下を我らで掘り進もう
左右を我らで囲い込もう前後を我らが引きつけよう
どこに目を向けるもよし、どこに攻撃するもよし
最期に見るは我らである
矮小なりし雑兵なんぞで真なる破滅を齎せる物か
何も成せなんだ異星の者よ。全てを諦め頭を垂れ
断罪されしその瞬間まで短き生を楽しむが良い
「儂ノじゃすてぃすとるーぱーガ苦戦シテイルダト? ソンナ馬鹿ナ――」
「見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり」
「――ナッ?! 何ダ貴様ハッ!」
思わぬ戦況に狼狽するプルトン人に、淡々とした声で語りかけたのはビードット。
人を模していても人でないと分かる、無機質に輝く双眸が、目の前にいる機械人形とマッドサイエンティストの終わりを見ていた。
「性能のみを追求したか、できし物は紛い物。力のみで勝てるのならば、誰も彼もが不敗なり」
どれだけオリジナルにスペックを近付けようと、ここにいるのはただの木偶人形。
本物のジャスティス・ワンがなぜ最強ヒーローとなり得たのか。その根拠となる決定的なものが彼らには欠けていて、プルトン人はそれを理解すらしていない。
「要なりしは何を成したか。それ分からぬ汝は愚者か? ここが汝の破滅なり」
破滅を齎す招来者は宣言する。まがい物の破滅をもたらす者を破滅させるために。
真なる破滅がこの世界に齎されるまで、ハッピーエンドを実現させるために。
「訳ノ分カラン事ヲ……! モウ良イ、ヤッテシマエ!」
癇癪を起こしたように地団駄を踏みながら、プルトン人は機械兵士をけしかける。
押し寄せる敵の大群。だがそれを前にしてもビードットは鋼鉄のごとく動じない。
「汝らが数で攻めるのならば我も我らへと変じよう」
増えるは己、行うは蹂躙、成されるは破滅。彼が起動したのは【実行仮想破滅・一人ぼっちの軍勢】。己を複製することにより生まれる一人だけの軍勢。
ビードットの機体から20cm大の複製体が次々に生成され、それはほんの数秒のうちに4000機近い膨大な数の軍勢となって、一斉に戦闘態勢を取る。
「何……ダト……?! 何ナノダコレハ……!!」
「3969の我により一切の障害を轢き潰さん」
驚愕するプルトン人の前で、軍勢と化したビードットは冷徹なる進撃を開始した。
あるものは天井から敵陣の頭上を取り、あるものは地下を掘り進み足元を狙う。
前後から押し寄せるものが注意を引きつけ、左右から回り込んだものが囲い込む。
「どこに目を向けるもよし、どこに攻撃するもよし。最期に見るは我らである」
あまりに数が多すぎて、格納庫の床や壁が何色だったかも分からなくなる有様。
無数のビードットが戦場を余すところ埋め尽くす光景は、まさに絶望であった。
「【イミテーション・ラッシュ】発動」
それでも恐怖を感じることのないジャスティストルーパーは、鋼鉄の拳を振るって破滅の軍勢を迎え撃つ。オリジナルの技を再現した凄まじい拳打の連撃は、小型ビードットを次々に打ち砕いていく。
――だが、それが何十機、何百機のビードットを倒そうとも意味はない。何千機という圧倒的な物量による攻勢は、彼らが押し止められるキャパシティを超えていた。
「矮小なりし雑兵なんぞで真なる破滅を齎せる物か」
冷徹に、かつ容赦なく、一切の障害を轢き潰すように敵陣を蹂躙するビードット。
その惨劇を見ていたプルトン人の表情は、いつしか真っ青になっていた。
「何も成せなんだ異星の者よ。全てを諦め頭を垂れ、断罪されしその瞬間まで短き生を楽しむが良い」
破滅の使者の足音が迫る。もはや貴様に逃げ場はないと眼前に示しながら。
これが撮影だということを思わず忘れそうになるほど、その演技は迫真であった。
大成功
🔵🔵🔵
ヘスティア・イクテュス
例え能力が同じであっても心が伴わなければ、恐るるに足らず!
世界を救うため、ラグランジェポイントへ向かうためにも
そのUFO、海賊SkyFish団船長、ヘスティア・イクテュスが頂くわ!(ビームセイバーを突きつけ)
とはいえ、流石この世界最強のヒーローの身体能力…
数も多いし距離をとって撃つ暇がないわね…(ティターニアで攻撃を回避、ギリギリ距離を保ちながら)
ならば、アベルでトルーパーの動きを【情報収集】
…アベル、まだなの!?
少しずつ追い詰められ、ギリギリで解析完了
ティターニアをフルブースト!拳を掻い潜って接近!
ビームセイバー(玩具)で首を!
動きは【見切った】わ!後は反撃の時間よ!
「例え能力が同じであっても心が伴わなければ、恐るるに足らず!」
機械仕掛けのコピー兵士を前にして、ヘスティアは堂々と見栄を張る。
カメラアングルを意識して低空に浮かび、凛とした声をスタジオに響かせて。
「世界を救うため、ラグランジェポイントへ向かうためにもそのUFO、海賊SkyFish団船長、ヘスティア・イクテュスが頂くわ!」
ビシッとビームセイバーを突きつけるその姿は、さながら蒼き髪の戦乙女。
その威風にまるで恐れをなしたかのように、兵士たちがじりっと一歩後ずさった。
「クッ、何ヲシテイル! サッサト奴ラヲ始末センカ!」
ぎりぎりと歯噛みするプルトン人の叱咤により、機械兵士の軍勢は一斉に動きだす。
ガシン、ガシン、と足音を響かせて接近しながら、オリジナルのジャスティス・ワンも得意としたという、猛烈な拳打のラッシュをヘスティアに浴びせかける。
「機械とはいえ、流石この世界最強のヒーローの身体能力……数も多いし距離をとって撃つ暇がないわね……」
たちまちのうちに半包囲された少女は、ティターニアの推進と機動力で攻撃を回避しながらも反撃に転じることができない。殴られないようギリギリの距離を保つのが精一杯――主役の活躍には時にはピンチの演出も必要だ。
「……アベル、まだなの!?」
『解析完了まで残り30秒。それまで凌いで下さい、お嬢様』
焦りを滲ませたヘスティアの叫びに、サポートAIの音声が冷静に応える。
現在アベルはジャスティストルーパーの動きを全力で解析中だ。最強ヒーローの技を再現したものとはいえ、機械のモーションには必ずパターンがある。それを解き明かすことが出来れば反撃の糸口は見える。
「急いでよね……!」
AIを急かしながら、敵の猛攻を蝶のように紙一重で躱し続けるヘスティア。
しかし包囲の網はじわじわと狭まり、彼女は少しずつ追い詰められていく。
あわやこれまでか、と思われたまさにその時――。
「敵兵の攻撃パターンを解析しました」
「待ちくたびれたわよ、アベル!」
望んでいた合図が来た瞬間、ヘスティアはティターニアをフルブースト。これまでとは見違えるほどの鋭い機動で鋼の拳を掻い潜ると、一気に懐まで飛び込んだ。
一度把握してしまえば機械兵士の攻撃はワンパターンで、回避されても中止できないため隙も大きい。白光を放つビームセイバーの一閃が、無防備なジャスティストルーパーの首を刎ね飛ばした。
「動きは見切ったわ! 後は反撃の時間よ!」
蝶のように舞い、蜂のように刺す。完全に敵の攻撃パターンを把握したヘスティアは、ブースターを噴かしながら巧みな【近接格闘術】で敵集団を圧倒する。
もはやジャスティストルーパーがどれだけ拳を振るおうと、彼女には掠りもしない。ひらりと躱されたかと思えば、返しの一太刀で一瞬のうちに斬り捨てられる。
「損傷、甚大。戦闘続行、不可能……」
バチバチと火花を散らしながら、バタバタと倒れ伏していく機械仕掛けの兵士達。
もちろん撮影用に使っているビームセイバーは光るだけの玩具で、首を刎ねたように見えたのもCG合成である。
軽やかに空を翔けながら大軍相手に無双するヘスティアの勇姿を、カメラはしっかりと捉えていた。
大成功
🔵🔵🔵
黒城・魅夜
【範囲攻撃】で役者さんたちに向け鎖を乱れ撃ちます。【見切り】と【スナイパー】によって、ギリギリの距離を攻撃しましょう。
事前に十分に打ち合わせをしておけば撮影事故はないでしょう。
……アドリブの動きはしないでくださいね?
死にますから。
ですが、鎖の中でたった一本、『鋼は魂に口づける』は肉体を傷つけずに魂を攻撃するもの。
もちろん今は魂を攻撃などしませんが、つまりこの鎖は「本当に」相手の肉体を撃ち抜くわけです。
さぞ迫力ある画面が撮れるでしょう。
……ふふ、これはスタッフさんだけにお話し、役者さんには内緒にしておきましょう。その驚愕の表情は、きっと素晴らしい演技だと絶賛されると思いますよ。
「それでは、これから私がこの鎖をあなた達に向かって乱れ撃ちますから、それに合わせて倒れる演技をしてください。当てないようギリギリの距離を攻撃しますから」
次の撮影が始まる前に、魅夜は共演する役者達とシーンの打ち合わせをしていた。
臨場感を高めるために本物の武器を使って演技する予定なので、万が一にも撮影事故がないようにするためだ。
「……アドリブの動きはしないでくださいね? 死にますから」
「わ、わかりましたっ」
穏やかだがどこか凄みのある微笑みを見せられて、敵役の役者達は神妙な表情でこくこくと頷く。彼らも猟兵の力はここまでの撮影でよく見せつけられているので、事故にあわないよう必死である。
「悪夢を引き裂き希望をつなぐ、この鎖は砕けません」
そしていざ撮影が始まれば、魅夜は鈎つき鎖の「呪いと絆」を手にして悠然と決めゼリフを放つ。多勢の敵を相手にしてもまったく臆することのない佇まいは、彼女の強者としての印象を高めるのに十分な演技だった。
「ソンナ細イ鎖デ、儂ノじゃすてぃすとるーぱーヲ止メラレルモノカ!」
行ケ! とプルトン人が号令すると、機械仕掛けの兵士達が一斉に攻め寄せる。
一糸乱れぬ行軍で、ズシンズシンと規則正しい足音を響かせて。こちらも台本にあった通りの動きだ。
「力の差が分からないのなら、その肉体と魂に刻みつけてあげましょう」
迫りくる大軍が間合いに入った瞬間、携えていた幾つもの鎖を魅夜が乱れ撃つ。
事前に打ち合わせした通り、鞭や蛇のようにうねる鍵つき鎖はジャスティストルーパーに突き刺さるスレスレの位置を掠めていく――その筈だった。
「―――?!」
敵の役者達は絶妙な距離で逸れていく鎖の中に、たった一本だけ違うものがあることに気付く。まずい――と彼らが避けようとする間もなく、それは「本当に」標的の身体をずぶり、と貫いた。
「か、は……ッ!!?」
演出でもCG合成でもない。本物の鎖に撃ち抜かれてばたりと倒れ伏す役者達。
こうした事故を起こさない為の打ち合わせだった筈なのに、どうして。彼らの困惑と驚愕と絶望は如何ほどのものだっただろうか。
――ところが、鎖に貫かれた筈なのに、彼らの身体からは一滴の血も流れていない。ショックのあまり錯覚していたが、痛みもまったく感じない。
「驚きましたか?」
当惑する役者達の元に魅夜がやって来て、刺さっている鎖をひょいと引き抜く。
やはり、傷は残っていない。それもそのはず、彼女が役者達に刺したのは「鋼は魂に口づける」――肉体を傷つけずに魂を攻撃するための特別な鎖だったのだ。
――要するにこれは、魅夜が仕掛けた役者達へのドッキリだったのだ。
最初に「死にますよ」と自分の鎖の危険性をアピールしたうえで、非殺傷性の鎖で相手を撃ち抜く。さぞかし迫力のある画面が撮れるだろうと計算してのことだ。
もちろん撮影スタッフのほうにはこの件は説明し、了承済みである。内緒にされていた役者達はまんまと引っかかった上で、演技抜きの最高の反応を見せてくれた。
「……ふふ、その驚愕の表情は、きっと素晴らしい演技だと絶賛されると思いますよ」
「心臓が止まるかと思いましたよ……こんなのはこれっきりでお願いしますね」
楽しそうにクスクスと笑う魅夜に、役者達はしてやられたと苦笑を返す。
とはいえ本気で怒るような者がいないのは、やはり彼らが役者だからだろう。
いい画を作るためにはこうした不意打ちも往々にしてあるのが、映像の世界であった。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
よくもまぁこれだけ数をそろえたものだ
中身も相応に歯応えのある相手ならいいんだがな?
と挑発しつつダッシュで敵陣に突っ込み、グラップルによる演武を行う
ムーンサルト・キックやローリング・ソバットと言った派手な足技を駆使して、さらに相手のイミテーション・ラッシュを見切りで全て捌いてカウンターなども行おう
派手な動きになれば相手への寸止めも行いやすくなるからな
フッ、数だけは多いようだな
ならば…行け!オーヴァル・レイ!
頃合いを見てUCを発動
とはいっても使うのは精巧なプロップだ
LEDで発光させつつ念動力で動きまわせばそれらしく見えるだろう
ビーム線は後で編集してもらおうか
怪我だけには気を付けよう
「よくもまぁこれだけ数をそろえたものだ。中身も相応に歯応えのある相手ならいいんだがな?」
押し寄せる敵の大軍に対し、余裕のある態度を演じながら迎え撃ったのはキリカ。
数では圧倒的に優位な相手にも怯むことなく挑発をかまし、真っ向からダッシュで敵陣に突っ込んでいく背中は、まさしくヒーローのそれである。
「【イミテーション・ラッシュ】起動」
対するジャスティストルーパーは、オリジナルから模倣した拳の連撃を繰り出す。
だが、いかに強力であろうとも所詮はプログラムをなぞるだけのワンパターン戦法。しっかりと動きを観察すれば見切ることは不可能ではない。
「格闘術の練習相手には丁度良さそうだ」
キリカはすっと首を傾げて拳を避けると、間髪入れずにカウンターを叩き込む。
映画としての見栄えも意識して、ムーンサルト・キックやローリング・ソバットなどの派手な足技を主体とした彼女の演武は、惚れ惚れするほどに華麗だった。
(派手な動きになれば相手への寸止めも行いやすくなるからな)
共演者への配慮も忘れず、相手にヒットする瞬間でピタリと蹴り足を寸止めする。
これも戦場傭兵として鍛えられた身体能力があればこその芸当。プロのスタントマンも顔負けのアクションである。
「グヌヌヌヌ……オノレッ! イイ気ニナルナヨッ!」
ばったばったと蹴り倒されていく(実際は寸止めだが)配下達を見て歯噛みするのはプルトン人。怒り心頭の様子で地団駄を踏みながら新手を繰り出してくる。
すでに個の性能では猟兵には太刀打ちできないことが露呈したジャスティストルーパーだが、その真の脅威は量産性。倒しても倒しても次々と増援が現れる。
「フッ、数だけは多いようだな。ならば……行け! オーヴァル・レイ!」
周囲にいた敵をあらかた蹴散らしたキリカは、不敵な笑みを口元に浮かべながら【オーヴァル・ミストラル】を発動。随伴する卵型の浮遊砲台が数十機にも複製され、現れた増援に向かって一斉に粒子ビーム線を照射する。
「―――!!!」
蒼い閃光の暴風雨に呑み込まれ、驚愕の表情と共に葬り去られるジャスティストルーパー――というのはCGによる編集後の映像。実際にはなにも発射されていない所で役者がキリカの動きやセリフに合わせて、やられる演技をしている。
本来なら一機でもアームズフォート級の破壊力を誇るオーヴァル・レイだが、流石に威力が強すぎて撮影には使いづらい。よって今回使っているのは撮影用の精巧なプロップ。LEDで青く発光させながらキリカ自身の念動力で動きまわらせている。
(怪我だけには気を付けよう)
無事故のまま撮影を終わらせるために、彼女は細心の注意と配慮を払う。
これは現実の戦争ではなく、人々に楽しんでもらうための娯楽なのだから。
「行け、逃がすな」
キリカは敢えて自らは微動だにしないまま、無数の浮遊砲台を操り敵を追撃する。
本体に代わって縦横無尽に戦場を飛び回るオーヴァル・レイ(プロップ)がLEDをチカッと光らせると、それを合図にしてジャスティストルーパーがバタリと倒れる。
強者としての貫禄を示すキリカも、迫真のやられっぷりを見せる敵役の演技も見事なもの。演者達の熱演によって、アクションシーンの臨場感はさらに高まってゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ヨナルデ・パズトーリ
台詞案
随分と見縊られた物よの
妾が斯様な偽物に負けるものか!
妾はヨナルデパズトーリ!
嘗てテスカトリポカとも呼ばれし夜の神よ!
疾く滅びよ下郎!
演者を怪我させない様武器の模倣品を事前に作成
『威厳』を込めた『演技』で『歌唱』風にUC発動時の詠唱を『高速詠唱』
威力は込めず見た目だけ威力がある様に見せかけた氷の『属性攻撃』魔法の
『範囲攻撃』で『目潰し』
『存在感』を持たせた『残像』を数体囮に出しつつ自身の『存在感』は攻撃の
タイミング迄薄れさせ『目立たない』様にし敵に近づいたタイミングで『気絶
攻撃』の『薙ぎ払い』や闇の『全力魔法』風の『属性攻撃』魔法の『範囲攻撃』を
放つ等して目立つ様な感じに戦う『演技』をする
「随分と見縊られた物よの。妾が斯様な偽物に負けるものか!」
立ちはだかる機械人形に対する憤慨の意も込めて、ヨナルデは身の丈を上回るほどの巨大な黒曜石の大斧をぶおん、と振りかざす。
演者を傷つけないようにと、持っているそれは事前に作成した模倣品だが、その見た目のインパクトから来る存在感と、神としての威厳に満ちた演技は、可憐な童女姿である彼女を一回りも二回りも大きく見せていた。
「我ジャガーにして煙吐く鏡、テスカトリポカにしてケツァルペトラトルたる者」
歌うような名乗りと共に一歩踏み出せば、心なき機械兵士すら畏怖するかの如く一歩下がる。それは彼我の圧倒的な力の差を、存在の"格"を示すような対比。
ユーベルコードの詠唱に伴って、ヨナルデの全身は黒曜石の鎧で覆われていく。
「民と共に在った嘗ての妾の猛き力、目に焼き付けるが良い!」
【第一之太陽再臨】――血骨の翼を広げ、密林の戦闘神がオブリビオンを猛襲する。
接近に先駆けて放たれたのは、嵐のように降り注ぐ氷の礫。実際には威力を込めていない見た目だけのものだが、演出と目潰しとしての効果は十分。
ダイヤモンドダストが兵士達の視界を遮った直後、ヨナルデの姿は幾人にも分身し、足並みの乱れた敵陣に勢いよく襲い掛かった。
「何ダ、コノ非科学的ナ現象ハ……?!」
困惑するプルトン人の指揮下にて、ジャスティストルーパー達も動揺している。
【マシン・ヴェンジャンス】で全身を固めながら敵を迎え撃つものの、その拳が捉えたヨナルデの分身はすべて残像。神気によって存在感を持たせた囮に過ぎない。
本物のヨナルデは狩猟時の肉食獣のように息を潜め、誰にも気付かれることなく敵に近付くと、黒曜石の大斧を勢いよく振り抜いた。
「吹き飛ぶが良い!」
「ガ―――!!」
木の葉のように吹っ飛んでいくジャスティストルーパー。手加減はしているのでケガ人はいないだろうが、ひょっとすると気絶した者くらいはいるかもしれない。
小柄な娘が大斧を振り回して巨躯の機械兵士を薙ぎ払う。構図としても見栄えよく、非常に目立つカットになった。
「ワ、儂ノ最高傑作ガコウモアッサリ……一体何ナノダ貴様ハッ!」
「妾はヨナルデパズトーリ! 嘗てテスカトリポカとも呼ばれし夜の神よ!」
ヨナルデはもう一度朗々たる名乗りを上げると、大斧を杖のようにさっと振るう。
すると巻き起こるのは闇と風の魔法。神としての権能を示す夜の嵐がスタジオに吹き荒れ、豪々と唸りを上げて敵を吹き飛ばす。
「疾く滅びよ下郎!」
嵐の中心にて大斧を振り回すヨナルデの勇姿は、まさに荒ぶる戦神そのもの。
プルトン人の浅知恵と邪心が生み出した機械人形など、その猛威の前にはなんの意味も成さないのであった。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…最近の特殊メイクの技術は凄いなぁ…さて、役者だから手加減の必要があるね…
…それなら【面影映す虚構の宴】で私のUCを再現するとしようか…これなら傷つくことはないからね…
五感を騙すからその辺は予め役者さんに伝えておこう…
…で『理論上』同等のポテンシャル、ね…データを取ってそのまま再現しただけなら…
その理論は破綻するよ…なぜなら…そのトルーパーには「守らねばならない世界」も「ヒーローとしての矜恃」も無い…
…ただ「ジャスティス・ワンの力を得ただけの戦闘員」でしかないから…
…そんなもの私達の敵ではない…
…と大見得を切って、障壁で攻撃を受け止めて幻覚で作った派手なエフェクトの攻撃で纏めて薙ぎ払おう…
「……最近の特殊メイクの技術は凄いなぁ……さて、役者だから手加減の必要があるね……」
本物と見紛うばかりの驚きの再現度を誇るジャスティストルーパーをしげしげと眺めながら、メンカルは次のシーンの演出を考える。敵役に怪我をさせないように配慮しつつ、映像としての見栄えの良さを保つにはどうすればいいか。
「……それなら【面影映す虚構の宴】で私のユーベルコードを再現するとしようか……これなら傷つくことはないからね……」
「それも、プルモーサさんの魔法ですか?」
首をかしげる共演者達に、メンカルはそれがどういった能力か予め説明しておく。
【面影映す虚構の宴】は術者の記憶を元にした幻影を作りだすユーベルコードだ。その再現度は極めて精巧で、視覚に限らず五感すべてを騙すことができる。
「軽い痛みとかを感じたりするかもしれないけど、全部幻覚だから……」
「なら心配いりませんね。遠慮なくかかってきてください!」
どんな派手な攻撃も受けてみせると爽やかなスマイルで応じる共演者達。外見がジャスティストルーパーなので違和感があるが、中の人はみんな普通にいい人だった。
「クソッ、猟兵風情ガ……! 儂ノ最高傑作ハマダ負ケテオランゾ!」
「全出力リミッターを解除。【イミテーション・ラッシュ】発動準備」
そしていざ始まる撮影本番。カメラが回り始めた瞬間、役者たちは完全な悪役と無機質な機械になりきって、本気としか思えないような敵意を向けてくる。
「マダ、コイツラハ本気ヲ出シテイナイ……アノじゃすてぃす・わんト同等ノぽてんしゃるサエ発揮デキレバ、貴様ラナド……」
「『理論上』同等のポテンシャル、ね……データを取ってそのまま再現しただけなら……その理論は破綻するよ……」
対するメンカルはいつもと変わらぬ無表情で敵意を受け流しながら、いち研究者として、猟兵として、マッドなプルトン人の誤りを淡々と指摘した。
「何ダト!? 儂ノ理論ハ完璧ダ! ドコガ破綻シテイルト言ウノダ!」
「……なぜなら……そのトルーパーには『守らねばならない世界』も『ヒーローとしての矜恃』も無い……ただ『ジャスティス・ワンの力を得ただけの戦闘員』でしかないから……」
激高するプルトン人に向かって、メンカルはさらに畳み掛けるように告げる。
ジャスティス・ワンが最強であった所以――それは数値化可能なスペックのみに拠るものではなく、強大な力を支える誇りと使命があったから。どんなに忠実にデータを再現しても、邪悪なオブリビオンに作られた機械にヒーローの"魂"は宿らない。
「……そんなもの私達の敵ではない……」
そう言い切ったメンカルは大見得を切って、愛用の魔杖シルバームーンを掲げる。
すると光り輝く大きな魔法陣が現れ、彼女を守護する魔力障壁が展開された。
「儂ノとるーぱーガ、破綻シテイル……? ソンナ事ガアルモノカッ!!」
怒り狂うプルトン人の指揮のもと、機械の兵士達が一斉にメンカルに襲い掛かる。
だが、オリジナルの技をコピーした岩をも砕く鉄拳の猛ラッシュも、魔女の障壁にヒビひとつ入れることができない。両者の実力の差は歴然であった。
「世の理よ、騒げ、暴れろ。汝は天変、汝は動地。魔女が望むは安寧破る元素の乱」
再び杖を掲げたメンカルが唱えた呪文は【精霊の騒乱】。
幻影によって作られた吹き荒ぶ風、燃え猛る火、渦を巻く水、轟き唸る土のエフェクトが、巨大な属性と天変地異の大嵐となってジャスティストルーパーを薙ぎ払う。
「―――!!!」
予め聞かされていなければ実物としか思えない臨場感。敵軍は驚愕の表情を浮かべながら吹き飛ばされ、その跡には誰一人残ってはいなかった。
大成功
🔵🔵🔵
郁芽・瑞莉
実際にこの場面になったらを演じてみましょう!
最強ヒーローであるジャスティス・ワン、
彼と同様な力があるという事で苦戦を強いられますよ。
私自身は神霊体に変身。急所は残像や迷彩で位置を惑わし、
ダッシュやジャンプ、スライディングで避けるもダメージは負って。
苦し紛れの苦無や薙刀の一撃は相手の攻撃を更に苛烈に。
「このままいけば倒せる……、なんて思っているのなら大きな間違いですよ!」
そう、こちらも伊達や酔狂で攻撃を受けている訳ではありません!
ここでオーラ防御を応用して光と衝撃波を放出してパワーアップを演出。
ドーピングで動きを変えて相手をランスチャージや、
早業の2回攻撃など繰り出して相手を倒していきますよ!
「なるほど、次はこういった場面なのですね。では実際にこの場面になったらを演じてみましょう!」
次のシーンの説明と台本を受け取った瑞莉は、実際の戦いでこのような状況に陥ったとき、自分ならどのように行動するかを頭の中でシミュレートしてみる。
最強ヒーローであるジャスティス・ワン、彼と同様な力があるというなら苦戦を強いられるだろう。そこからどう逆転し、勝利に繋げるか――しっかりとしたイメージを固めた上で、彼女は撮影に臨む。
「巫覡なるこの身に神祇を宿し、禍を薙ぎ清めましょう!」
迫るジャスティストルーパーの大軍の前で、瑞莉は【巫覡載霊 薙ノ舞】を発動。
白の和装を纏った神霊体へと変身し、生物的な印象のある黒き薙刀へと変貌した「禍ノ生七祇」を構える。
「【マシン・ヴェンジャンス】起動」
対する敵は全身を禍々しい機械装甲で覆った上で、猛烈なラッシュを繰り出す。
オリジナルにも匹敵する身体能力と攻撃のキレ。しかも敵方は圧倒的に多勢とあっては、その全てを凌ぎ切ることは難しい。
「くっ……!」
映画らしい激しいダッシュやジャンプ、スライディングで拳撃を避ける瑞莉。
霊力による残像や迷彩で狙いを惑わし、特に急所への直撃だけは徹底して避ける。
それでも戦いが続くにつれて、彼女の身体には徐々にダメージが蓄積されていく。
苦し紛れに放った苦無や薙刀の一撃は装甲に破損を与えるも、それは逆に敵の攻撃をより苛烈にする結果となってしまう。
「ククク、防戦一方ノヨウダナ!」
後方から戦況を眺めているプルトン人の、勝ち誇ったような笑い声が耳障りだ。
しかし事実、このまま戦局を覆せなければ、遠からず瑞莉は力尽きるだろう――。
「このままいけば倒せる……、なんて思っているのなら大きな間違いですよ!」
「ナンダト……ッ!!?」
その時、瑞莉の身体から眩い閃光が放たれ、衝撃波が周囲の兵士達を吹き飛ばす。
オーラ防御を応用したパワーアップ演出だが、勿論これはただの虚仮威しではない。
「こちらも伊達や酔狂で攻撃を受けていた訳ではありません!」
神霊体となった瑞莉には、受けた攻撃を自らの力に変える能力が備わっている。
敵の攻撃を耐えに耐えて蓄えられた力は、それまでに受けたダメージを補って余りある。そう、ここからが彼女の反撃のターンだ。
「参ります!」
瑞莉は禍ノ生七祇を力強く構え、オーラを放出しながら勢いよく敵陣に突っ込む。
溢れんばかりの力でドーピングされたその突撃は、これまで苦戦していたジャスティストルーパーをボウリングのピンのように撥ね飛ばした。
「何ダコレハ……サッキトハマルデ動キガ違ウ!!」
愕然とするプルトン人の目の前で、次々と薙ぎ倒される機械仕掛けの兵士達。
目にも留まらぬ瑞莉の薙刀捌きは、敵に防御する間も与えず装甲を断ち、心臓部を貫く。舞い踊るかのように激しくも流麗なその戦いぶりは、まさに無双。
――苦戦からの逆転と圧倒は、視聴者にカタルシスを与える王道である。
そのコツをよく掴んだ瑞莉のシーンは、非常に完成度の高いものとなった。
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
⚫︎SPD
映画の中盤!撮影よろしくお願いしまーす!
敵になったヒーロー、そういえばスーパープルトン戦の時の事、あれをアレンジしてみようかな!
【造られた英雄】
(全編演技で!)
合体した紅路夢とジャスティス・トルーパー(JT)と戦いは、相手の再現率の高さに苦戦!ジャスティス・ワンの力の再現は伊達ではなかった!
絶体絶命のピンチに、突然語りかける謎の存在、ぼくの中の眠るもう一つの魂、ハイカラさんの魂が解放されて、真の力、ハイカラさんに覚醒。
ハイカラさんの力は世界の再構築の光(UC)、生身の状態でJTを受けとめ、そして再構築、紛い物ではなく本当のヒーローの魂を宿した者として。
「映画の中盤! 撮影よろしくお願いしまーす!」
自分のシーンが始まる前に、共演者やスタッフ達に元気な声で挨拶する鈴鹿。
映画の撮影は共同作業。仲間とのコミュニケーションを取るのは大事である。
「敵になったヒーロー、そういえばスーパープルトン戦の時の事、あれをアレンジしてみようかな!」
「ほほう、詳しく聞かせて貰ってもいいですか、国栖ヶ谷さん」
ふと思いついたアイデアに監督や脚本家も乗ってきて、シーンの相談が始まる。
今回の撮影ではこのように、猟兵からの提案やアドリブが積極的に取り入れられていた。
そして始まった撮影は、紅路夢とジャスティストルーパーの激闘で幕を開けた。
鋼と鋼がぶつかりあう音が戦場に響き、合体中の鈴鹿の頬にはつうと汗が伝う。
「まさかここまで再現率が高いなんて……!」
伝説のヒーロー、ジャスティス・ワンの力の再現は伊達ではなかった。唸る鋼のボディ、繰り出される鉄拳の猛ラッシュ、そして圧倒的な物量――徐々に押し込まれていく鈴鹿の耳に、勝ち誇ったようなプルトン人の高笑いが聞こえてくる。
「クーックックック! 見タカ、儂ノ最高傑作ノ力ヲ!」
「悔しい……こんなヤツに!」
猟兵として、そして一人の発明家として、悪のオブリビオンが作り出した兵器などに負けるわけにはいかない。しかしそんな想いとは裏腹に、現実は無情なまでに彼女を追い詰め、紅路夢の機体からは損傷大を示すアラートが鳴る――。
――気がつけば鈴鹿はボロボロの紅路夢と共に、機械兵士の大軍に包囲されていた。
まさに絶体絶命。もはやこれまでかと彼女がぎゅっと目を瞑った、その時――。
『諦めたらダメだよ』
「……っ? だれ?」
突然語りかけてきたその声(CV:鈴鹿)は、彼女自身の胸の奥から聞こえてくる。
それは鈴鹿の中に眠るもう一つの魂、ハイカラさんの魂の呼びかけであった。
『まだぼくたちには力が残っている。オブリビヲンにはない力が』
「力……それは……」
『呼んで、その力の名前を。いつだって明るく道を照らしてくれる、その力の名は――』
「未来への、夢と希望!!」
その瞬間、目も眩むほどの光に包まれて、紅路夢の中から鈴鹿が立ち上がる。
馬鹿め、生身でのこのこと――そう言わんばかりに目前にいた兵士が拳を振るう。
だが鈴鹿は拳を片手でぱしりと受け止めると、にっこり微笑みかけながらその兵士を自らの後光で包みこむ。
「ようこそ! これがぼくの理想郷、夢見た世界さ!」
真の力、ハイカラさんに覚醒した鈴鹿のユーベルコード【新世界ユウトピア】。
暖かく、優しく、力強い――希望に満ちたハイカラさん後光領域の中で兵士達が垣間見るのは、花咲き乱れ、うららかなる陽光と、文明の薫りが戦ぐ理想郷。
彼女の想いに包まれたジャスティストルーパーは、理想に合わせて再構築されていく。心無い紛い物の兵士ではなく、本当のヒーローの魂を宿した者として。
「何ダッ?! 何ガ起コッテイルッ?!」
あまりにも眩しすぎるハイカラさんの輝きから、思わず目を背けるプルトン人。
やがて後光が収まったとき、そこに立っていたジャスティストルーパー達は、外見こそ大きな差異はないものの、中身は完全に別物と言うべき存在になっていた。
「行こう、みんな!」
「「おおっ!!」」
鈴鹿の高らかな号令に応じて、力強い鬨の声を上げた男たちは、今だ魂を持たぬ同胞と戦い始める。それはプルトン人からすれば予想だにしない造反劇であった。
「馬鹿ナ……コンナ事ガ在ル筈ガナイ!!」
「あなたの技術じゃ、ヒーローの魂だけは再現できなかったみたいだね!」
スペックが同等であれば、魂なき機械に魂ある者が負けるはずもない。
正義のトルーパーと悪のトルーパーの激突は、理想に燃える正義に軍配が上がる。
完全に攻守の逆転した戦場で、鈴鹿は後光を放ちながら得意げに笑うのだった。
「シインタイトルは【造られた英雄】で!」
「OKです! お疲れ様でした!」
撮影を終えてスタジオに戻ってきた鈴鹿を、スタッフの拍手が再び出迎える。
映画製作は順調に進み、いよいよ最後のクライマックスの撮影に入ろうとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『正体不明』』
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POW : 悪夢は再び起こる、我は終焉の代行者
対象への質問と共に、【サムライエンパイアの世界の記憶】から【戦争を引き起こした幹部格オブリビオン】を召喚する。満足な答えを得るまで、戦争を引き起こした幹部格オブリビオンは対象を【各々が持っていたユーベルコード】で攻撃する。
SPD : 惨劇は再び起こる、我は終焉の代行者
対象への質問と共に、【ヒーローズアースの世界の記憶】から【戦争を引き起こした幹部格オブリビオン】を召喚する。満足な答えを得るまで、戦争を引き起こした幹部格オブリビオンは対象を【各々が持っていたユーベルコード】で攻撃する。
WIZ : 支配は再び起こる、我は終焉の代行者
対象への質問と共に、【スペースシップワールドの世界の記憶】から【戦争を引き起こした幹部格オブリビオン】を召喚する。満足な答えを得るまで、戦争を引き起こした幹部格オブリビオンは対象を【各々が持っていたユーベルコード】で攻撃する。
イラスト:善治郎
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アレク・アドレーヌ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
映画の撮影は順調に進み、いよいよ終盤となるクライマックスの撮影が始まる。
序盤での潜入、中盤での激闘を経たこのシーンの冒頭は次のようなものだ――。
「馬鹿ナ……全滅ダト! アリエン!!」
猟兵達の活躍によって、一機残らず撃退されたジャスティストルーパー。
現実を受け入れられずにわなわなと震えるマッドなプルトン人は、格納庫の隅に追い詰められ、いよいよ進退窮まる。
「コ、コウナレバ最後ノ手段……エリア51ノ自爆ボタンヲ……!!」
「――汝の役目はここまでだ。ご苦労」
「ピギョェッ!?」
ポケットから物騒なドクロマークのボタンを出した彼を制したのは、一人の美女。
一体、どこから現れたのか――歴戦の猟兵達ですらまったく気配を感じられなかったその女は、軽く腕を一振りしただけでプルトン人を消し去った。
「こんなにも早くここが猟兵に制圧されるなんて"予定"には無かったこと……"計画"を遂行するため、まさかこの我が呼び出されるとは」
なにやら意味深なセリフを重ねながら、正体不明の女は猟兵達と対峙する。
メタなことを言えば、彼女はこの映画のラスボス。実際のアースクライシス2019では序盤にあたるこの戦いに、作品としての「オチ」をつけるための要員である。
「我は終焉の代行者。全ての世界にいずれ来る終焉、その先触れなり」
可愛らしい衣装とのギャップに満ちた、凄みのある威圧的な振る舞い。
演じる女優もさすがにこの大役に抜擢されただけはあり、迫真の演技である。
「汝らがどれだけ戦おうとも悪夢は、惨劇は、支配は再び起こる。終焉の定めから世界は逃れられぬ。猟兵よ、汝らはそれでも抗い続けるのか?」
厳かな問いかけと共に、彼女の背後から現れるのはオブリビオンの群れ。
その中には、撮影スタッフが猟兵から聞いた話を元に再現された異世界のオブリビオンもいる――よく見るとちょっと本物とは違うところも多いのはご愛嬌だ。
この戦いが、本作の最大の山場となるクライマックスの決戦。敵は終焉の代行者を名乗る正体不明のオブリビオンと、各世界から召喚された強敵たちだ。
たとえこの戦争に勝利しても、いずれまたオブリビオンは現れ、世界は滅びに向かうのではないか? 猟兵とヒーロー達の戦いに終わりはあるのか?
――この問いかけに対して、猟兵達はどんな答えを出し、人々にどんな希望を示すのか。それこそが本作の伝えたい「猟兵達の気高き魂(スピリット)」である。
「無茶振りかもしれませんが、皆さんなら最高の演技を見せてくれると信じています。どうか最後までよろしくお願いします!」
監督をはじめ、スタッフにキャスト一同もこの撮影に向けて気合いは十分。
かくして『イェーガー・ザ・ムービー!』のクライマックスは猟兵達に託された。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
登場する敵はクライング・ジェネシス
使用UCはSPD準拠
フン、私達に戦いの是非を問うか…
ならばこの鉄火でその問いに答えてやろう
現れた幻影を全武装を駆使した制圧射撃で止めたら一気に詰め寄ってナガクニ(模造刀)での格闘戦を行う
ジェネシスにも攻撃して銃と短刀を駆使した派手な殺陣を演じる
歩みを止めた「過去」が「現在」に敵うわけがあるまい?
場が温まったらUCを発動
必殺の一撃で幻影ごとジェネシスを撃ち抜き、正体不明にも攻撃
と言った流れで動く
どんなに深く長い夜でも日はまた昇るように、人々の希望は決して潰えることはない
だから、お前達がどれだけ過去から這い出ようとも何度でも打ち倒す
それが私の答えだ
「フン、私達に戦いの是非を問うか……ならばこの鉄火でその問いに答えてやろう」
口元には不敵な笑みを、言葉には力強い魂を乗せて、クライマックスシーンの撮影に臨んだのはキリカ。その手に携えた重火器は、静かに標的へと照準を合わせる。
対する自称『終焉の代行者』が喚び出したのは、今やこの世界の人間ならば誰もが知る存在となったオブリビオン――『クライング・ジェネシス』の現身であった。
「これこそ世界の終焉の象徴。さあ、汝らはいかにして抗う?」
正体不明な女の不敵な演技と共に、ジェネシスの胸の穴からキリカと寸分違わない幻影が現れる。彼奴の代名詞とも言える『骸の海発射装置』の力の一端だ。
惑わされはすまいとトリガーを引くキリカ。VDz-C24神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"、強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"の二丁によるフルオート射撃に、浮遊砲台オーヴァル・レイの粒子ビーム砲撃も加えた一斉射が唸りを上げる。
「ここが最後なら、出し惜しみはなしだ」
全武装を駆使した大火力による制圧射撃。(CGで再現された)圧倒的な弾幕によってジェネシスとキリカの幻影は釘付けにされ、前に出ることができない。
「歩みを止めた『過去』が『現在』に敵うわけがあるまい?」
残弾が尽きるタイミングを見計らって、キリカは黒革拵えの短刀「ナガクニ」――の模造刀を鞘から抜き放つと、自信に満ちた表情のまま一気に標的へ詰め寄る。
銃撃に足止めされていた過去の幻影もまったく同じ銃と短刀を構え、オリジナルを迎え撃つ。繰り広げられるのは銃声が轟き剣戟の火花が散る、壮烈な格闘戦だ。
相手方のモーションは事前にキリカ自身が振り付けを行い、本番はそれに合わせる形で動いている。銃と短刀という外連味のきいた派手な殺陣は、スクリーン上の熱量をぐんぐんと高めていく。
「どんなに深く長い夜でも日はまた昇るように、人々の希望は決して潰えることはない」
鏡合わせの激闘を繰り広げながら、キリカの視線はその奥にいる女に向けられる。
その鋭き眼光に宿るは希望。闇を打ち払い夜明けを導く、揺るぎない意志の光。
たとえヒーローが戦いに斃れることがあっても、その光は、希望は誰かに受け継がれ、失われることはない――彼女はそれを知っている。
「だから、お前達がどれだけ過去から這い出ようとも何度でも打ち倒す」
踏み込みは深く鋭く。放たれた斬撃の重さに幻影の身体が泳ぎ、体勢が崩れる。
その隙を見逃さず、美しき戦場傭兵は決意の言葉と共に銃口を向ける。
「それが私の答えだ……Adieu」
【ル・デルニエ・ベーゼ】――「最後の口付け」の名を冠された必殺の一撃。
放たれた一発の銃弾は狙い過たずに、幻影、クライング・ジェネシス、そして正体不明のオブリビオンを同じ射線上に捉え――縫い合わせるように纏めて撃ち抜いた。
「―――!!!」
胸のド真ん中に風穴を開けられて消えていく、偽キリカとジェネシスのホログラフ。
そして後方にいた女も肩からぽたぽたと血糊を零し、驚愕の表情を浮かべている。
キリカの気高き魂から放たれた言葉と銃弾が、終焉の代行者を揺るがしたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・アイオライト
まったく、くだらない質問ね。
猟兵は抗うのが得意な存在なのよ。
終焉の定め、上等じゃない。幾らでも繰り返すなら、幾らでもその全てを叩き潰す。当たり前のことを聞くんじゃないわよ、馬鹿馬鹿しい。
……演技忘れてたわ。
さて、召喚される幹部は【崩天斬禍】で『範囲攻撃・暗殺』、一応視認できるぐらいには速度を落として抜刀しましょう。……また監督からリテイクくらいそうだし。
後は『残像』で接近、魔刀でトドメの一撃ね。
悪夢ってのはね、最終的には覚めるものなのよ。
アンタの問いはその前提があるからこそ無駄な問答。さっさと骸の海に還りなさい!
「まったく、くだらない質問ね。猟兵は抗うのが得意な存在なのよ」
カメラが回るセットの上に立ちながら、レイは吐き捨てるようにそう言い切った。
ぶっきらぼうとも取れる口ぶりは、揺るぎない決心の裏返しでもあり。今更問われるまでもなく、彼女の答えはとうに決まりきっている。
「終焉の定め、上等じゃない。幾らでも繰り返すなら、幾らでもその全てを叩き潰す。当たり前のことを聞くんじゃないわよ、馬鹿馬鹿しい」
それこそが猟兵の生業でありレイの生き様。闇に紛れし暗殺者の刃に毀れなし。
隙のない構えで魔刀の鞘に手を添えた、その眼光から発せられるのは本気の殺気。
(……演技忘れてたわ)
思わず素のままで振る舞っていたのに気付き、レイはすぅっと殺気を引っ込める。
やってしまったかとカメラのほうをちらりと見るが、監督からは「このまま続けて」のサイン。彼女の演技ではない本心からの言葉は、結果としていいアドリブになったようだ。
「―――ならば証明してもらおうか。汝の言葉が真であることを」
相対する『終焉の代行者』の役者も、すぐにアドリブでセリフを合わせてくる。
召喚されるのはホログラフで再現された、ジェネシス・エイトの幹部オブリビオン達だ。
「惨劇は再び起きる。汝にこの全てを打ち倒す術はあるか?」
ダークポイント、スーパープルトン、戦神アシュラ、鋼神ウルカヌス――現実の戦いでも強敵であった者達が、それぞれのユーベルコードを構えながら襲ってくる。
対するレイが取った構えは、腰を低く落とした居合の体勢。鯉口を切った魔刀・篠突ク雨の鞘内から、キラリと白刃の輝きが顕れる。
(一応視認できるぐらいには速度を落としましょう。……また監督からリテイクくらいそうだし)
潜入シーンの一件を繰り返さないよう、今度は手加減することを忘れない。
裏を返せば、その技は加減しなければ常人には――否、人を超えし者達にすら視認さえ覚束ない、光を超える神速の斬撃。
「視える全てを両断する閃きの一刀……喰らいなさい」
【光尽ノ型・崩天斬禍】――その斬撃に、距離という概念は存在しない。
鞘走る刃は閃光となってレイの前方全てを薙ぎ払い、押し寄せるオブリビオンの幻影を刹那のうちに斬り捨てる。それはさながら闇を払う光の乱舞のように。
バラバラになって消えていくホログラフの向こうでは、正体不明のオブリビオンが目を丸くして驚いている。たぶん、半分くらいは役者の素だ。
「悪夢ってのはね、最終的には覚めるものなのよ」
標的から驚愕から覚める間を与えず、レイは抜き放った魔刀を手に接近する。
戦場に残像を描きながら告げる言葉は力強く、凛とした響きで聞き手の胸を打つ。
どんな悪夢が立ちはだかろうとも夜明けは訪れる、彼女はそれを知っている。
「アンタの問いはその前提があるからこそ無駄な問答。さっさと骸の海に還りなさい!」
裂帛の気合と共に振り下ろされた魔刀の一撃が、『終焉の代行者』を斬り伏せる。
演出の血飛沫が舞い散る中、そのカットは思わず惹きつけられるほど壮麗であった。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…ん、んー…私が戦うのは…『本気を試すため』だからね…
私は何処まで出来るのか、何処まで行けるのか…
可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であると確認できるまでやってみるのが一番…
…誰かを助けるのも、惨劇を防ぐのも、それは全て試した結果だから…
…終わらなかったらどうするか、と言われても挑戦し続けるだけだし…だからこそ…
「倒すことは可能である」と証明された相手をだしても無駄だよ…
…と、【面影映す虚構の宴】によるUCの再現で派手に攻撃をするよ…
…それに、一生掛けても戦いが終わってないなら…その時は誰かが私の研究を引き継いでいるだろうから心配もしていないかな…
「……ん、んー……私が戦うのは……『本気を試すため』だからね……」
正体不明のオブリビオンの問いに、メンカルはいつもと変わらぬ調子で答える。
ぼんやりとして眠たげな表情と口調。しかしその瞳の奥には、探求という名の光が輝いている。
「私は何処まで出来るのか、何処まで行けるのか……可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であると確認できるまでやってみるのが一番……」
彼女はまだ、それを確認し終えていない。自らの可能性を、広がる未知の地平を。
見知らぬ誰かから終焉を告げられた程度のことでは、魔女の探求は終わらない。
「しょせん人の子の限界は知れている。永遠と繰り返される惨劇には抗えぬ」
「……誰かを助けるのも、惨劇を防ぐのも、それは全て試した結果だから……」
さらに放たれる『終焉の代行者』の問いにも、メンカルは淀みなく答える。
まだ全てを試し終えていないうちから、放棄するなど愚の骨頂だと。
「それが終わりのない、答えのない探求だとしてもか?」
「……終わらなかったらどうするか、と言われても挑戦し続けるだけだし……だからこそ……『倒すことは可能である』と証明された相手をだしても無駄だよ……」
代行者が召喚するオブリビオンの群れ。実際の戦争でも見覚えのある幹部達を前にして、魔女はくるりと銀月の杖を振るう。何度骸の海から蘇ってきたとしても、その都度同じように倒せばいいだけのことだ。
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
戦場を彩るは【面影映す虚構の宴】によって再現されたユーベルコードの幻影。
唱えるは【空より降りたる静謐の魔剣】。出現と同時に一斉に射出された数百本の氷の魔剣が、サーカスのような軌道を描きながら標的に降り注ぐ。
「グオォぉぉ……ッ!?」
蒼き剣に貫かれた箇所から、ピシピシと凍りついていくオブリビオンの集団。
またたく間に氷の帳に閉じ込められた彼らに、メンカルはさらなる詠唱を紡ぐ。
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
空中に描かれた大きな魔法陣。そこから放たれたのは【尽きる事なき暴食の大火】。
如何なる存在をも燃料として焼き尽くす純白の炎が、一塊の巨大な火球となって、動けない敵を呑み込んだ。
「―――!!!」
言葉にならない断末魔を上げて、蒸発していくオブリビオンの群れ。
実際はホログラフによる演出だが、派手なメンカルの攻撃魔法と相まって、視覚的な演出効果は抜群である。
「……それに、一生掛けても戦いが終わってないなら……その時は誰かが私の研究を引き継いでいるだろうから心配もしていないかな……」
幻影を燃え散らせた白炎がふっと消えていく向こう側で、メンカルは静かに呟く。
誰かの想いや願いを受け継いでいくのもまた、個では計り知れない人間の力。それを知るからこそ彼女は決して恐れることなく戦いに挑むことができる。
「く……」
どんな脅威を突きつけても魔女の表情は崩れない――絶望を見せつけるはずの『終焉の代行者』の方が、次第に焦りを覚え始めていた。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・シフファート
「決まっているわ。それでも今目の前で失われていこうとする希望と命を諦める理由にはなり得ないわ」
そう、例え絶望的な未来が確定しているならそれを白紙にすれば良いだけの話。
ましてや来てもいないのに未来に絶望して「今」を放り出す理由とは決してなり得ない。
知っているのだ--覚えていなくとも、始めて不条理の国に巻き込まれたときに、手を差し伸べてくれた『誰か』がいたことを。
どれだけ全体から見たら無価値に等しくとも、あくまで「等しい」だけ。
個として見たら確かに価値があると教えてくれた。
故に--
「私はきっと、いいえ。絶対に諦めない。不条理を覆すことを!」
UC起動。戦闘を開始する。
「決まっているわ。それでも今目の前で失われていこうとする希望と命を諦める理由にはなり得ないわ」
迷いもなく揺るぎない、凛として力強い振る舞いでシャルロットはそう答えた。
この戦いに終わりはない――正体不明のオブリビオンが告げることが仮に事実だったとしても、彼女の決意は変わらない。ここで諦めてしまったら、それこそ未来には絶望しか無いのだから。
「そう、例え絶望的な未来が確定しているならそれを白紙にすれば良いだけの話」
どんなに理不尽な悪夢も惨劇も支配も、覆すだけの力と意志が自分達にはある。
来てもいないのに未来に絶望して「今」を放り出す理由とは決してなり得ない。
シャルロットは知っている――覚えていなくとも、始めて不条理の国に巻き込まれたときに、手を差し伸べてくれた『誰か』がいたことを。
「汝らの抵抗はしょせん刹那の揺らぎ。大海の中に浮かんださざ波に過ぎない」
「どれだけ全体から見たら無価値に等しくとも、あくまで『等しい』だけ。個として見たら確かに価値があるのよ」
それが『誰か』が教えてくれた大切なこと。忘れてはいけない魂のよすが。
世界と比べればどんなにちっぽけな存在でも、『個』の存在意義は失われない。
故に――。
「私はきっと、いいえ。絶対に諦めない。不条理を覆すことを!」
自分が手を差し伸べられたように、今度は自分が『誰か』の未来を守る番だ。
決意を込めた宣言と共に、シャルロットのユーベルコードが起動する。
【無垢であると謳う世界全ての無機】――変換された物質がエーテルの嵐となって戦場に吹き荒れ、火に、風に、水に、土に、万彩の属性に変換されていく。
「これは――!」
"現実"が侵蝕されていく目の前の光景に、『終焉の代行者』も驚きを隠せない。
召喚されたオブリビオン達も、膨大なエーテルの力の高まりに動揺を見せる。
「さあ――原初の荘厳によって、砕かれなさい!」
決めゼリフを口にして戦闘を開始したシャルロットが放つは、多彩なる属性魔術の乱舞。
指揮杖のように振るわれるエレメンタルロッドの動きに合わせて精霊が舞い、同時展開された電脳空間がバトルシーンを美しくも壮大に演出する。
その強大な魔力と、何よりも気高き魂の力に打ちのめされて、オブリビオンの集団は次々と消し飛ばされていく。その光景はまさに絶望が"希望"に変わる瞬間だった。
――彼女の名はシャルロット・シフファート。
原初の荘厳にて不条理を砕く、電脳と精霊を司るアリスだ。
大成功
🔵🔵🔵
ヨナルデ・パズトーリ
又戦は起こるか
確かに平和を侵す者は再び現れるかもしれぬ
今得た平和も奪われるやもしれん
じゃが、だからこそ守り抜く為に戦うのよ!
猟兵だけでない
ヒーローやヴィラン!皆で掴み取った平和をな!
嘗てのアステカの様に滅ぼさせん!
幹部コルテス指定
『威厳』を出す『演技』をし『歌唱』風『高速詠唱』
UC発動
地震と山彦を司るジャガーの神テペヨロトルの力を腕をジャガーへ変え
引き出し地震の『属性攻撃』魔法で騎馬突撃を阻害
其の侭腕を黒曜石のナイフへ変え石と冷気の神イツラコリウキの力を引き出し
コルテス本体に氷の『属性攻撃』魔法
そして自身の真の姿テスカトリポカの姿に変え黒曜石の斧の『怪力』の一撃をボスに叩き込む!
という風に演技
「又戦は起こるか。確かに平和を侵す者は再び現れるかもしれぬ、今得た平和も奪われるやもしれん」
じゃが――と黒曜石の斧を担ぎ上げながら、古き神ヨナルデパズトーリは告げる。
代行者を名乗るオブリビオンと、彼女が喚び出した忌々しい敵を見据えて。
「だからこそ守り抜く為に戦うのよ! 猟兵だけでない、ヒーローやヴィラン! 皆で掴み取った平和をな!」
この世界の『今』を生きる、全ての人々の力と意志によって守られてきた平和。
猟兵は、ヨナルデはその最先鋒を駆ける矛として、終焉を齎すものに戦いを挑む。
「嘗てのアステカの様に滅ぼさせん!」
神としての威厳を示す堂々たる演技と、ずしんと力強く胸に響く宣言。
そして、歌うような朗々たる詠唱と共に、ヨナルデの姿が変化していく。
その威風と異変に脅威を覚えたか、終焉の代行者は先手を打って配下をけしかける。
「行け! 貴様の力で、この地に再び悪夢と惨劇と支配を!」
召喚されたオブリビオン――侵略渡来人『コルテス』は、隷属させし乗騎ケツァルコアトルに跨り古典的騎馬突撃を敢行する。あくまで撮影用に再現されたものとはいえ、その迫力はなかなかのものだ。
――だが、重装騎士を思わせるその突撃は、突然の大地の揺れに阻害される。
足元から突き上げられるような、立っていることさえままならぬほどの地震。
それを引き起こしたのは【源神回帰】を果たし、腕をジャガーのそれに変えたヨナルデの力だ。
「此れでも妾は其れなりに古き神での。幾多の名と側面、其の一部を見せてやろうぞ」
地震と山彦を司るジャガーの神テペヨロトル。その名は「山の心臓」を意味する。
かつてメキシコの地にて多大なる崇敬と畏怖を集めたヨナルデは、自己の化身あるいは同一視される神格の権能を、自在に行使することができるのだ。
「お主の顔ももう見飽きた。早々に去ぬがよい!」
突撃を阻止したヨナルデはそのまま腕を黒曜石のナイフに変え、敵に襲い掛かる。
鋭く尖ったその刃から引き出されるのは、石と冷気の神イツラコリウキの力。
夜明け前のような凍てつく空気を纏った黒刃が狙うのは、騎乗するコルテス本体。
「が……ッ!?」
反応する間もなくナイフに喉笛を貫かれた侵略渡来人は、瞬時に物言わぬ氷像と化し、粉々に砕け散る。隷属せるケツァルコアトルもまた、同時に消えていった。
「く……古き神が、終焉に抗うか……!」
「妾だけではないぞ。皆が守るこの世界、容易く滅ぼせると思うな!」
コルテスを仕留め、そのまま終焉の代行者に迫るヨナルデの姿が再び変わっていく。
それは彼女の真の姿――アステカに君臨せし偉大なる『煙吐く鏡』テスカトリポカ。
往時の力の一端を再びその身に宿した大神は、渾身の力で黒曜石の斧を叩きつける。
「妾の力、その目に焼き付けるが良い!」
轟音を立てて大地に突き刺ささる大斧。一拍を開けて代行者から血飛沫が上がる。
もちろん演技なので実際には的を外しているが、そのインパクトは絶大である。
かつて彼女がいかに畏れ崇められたかをまざまざと示す勇姿は、現代の銀幕にて再び人々の前に知らしめられたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ビードット・ワイワイ
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり
終焉しか知らぬ汝の思考、袋小路の行き止まり
意思あるならば滅び方は選べよう。全ての道が
絶たれようと、歩む限りは先は有る。己の考え
多数に押し付け、正しいように言を紡ぐな
産まず育まず導かぬ、汝にそれは分からぬか
人はいずれ必ず滅びる。しかしてそれは今で非ず
全ての意味を無意味と断ずる、ここが汝の破滅なり
これより戦場は盤上へと変わる
先に進めば彼方の場所へ、後に戻れば我の前
盤上遊戯は決して終わらず、互いに互いを攻撃せよ
放ちし誘導弾は汝の目前、零距離でくらいて意識を飛ばせ
悪戯児は混沌を楽しむ、抜ける術を探して移動せよ
止まらぬならば道はあり。己が信ずる道進め
先に居るは我である
「見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。終焉しか知らぬ汝の思考、袋小路の行き止まり」
終焉の代行者を名乗りしものに、終わりを告げるは破滅の招来者ビードット。
淡々と、かつ超然とした口ぶりで、彼はブレることなく演技(?)を続ける。
「意思あるならば滅び方は選べよう。全ての道が絶たれようと、歩む限りは先は有る。己の考え多数に押し付け、正しいように言を紡ぐな」
「汝らの選択は無意味である。歩みの先に待つのは終焉、唯一無二の確定事象。それこそが普遍の真理である、諦観と共に受け容れよ」
正体不明のオブリビオンもまた、主張を曲げることなく朗々と言葉を紡ぐ。
両者の言は平行線。ならば信念を貫き通すものは、力を以って示す他になし。
「産まず育まず導かぬ、汝にそれは分からぬか」
ビードットが発動するのは【実行仮想破滅・この街は僕らの遊戯場】。
これより戦場は盤上へと変わり、縦63×横63のマス目で舞台は区切られる。
何を、と訝しむ間もなく、代行者の姿はその場から消え、別のマスに転送された。
「――!」
そこに居たのは自らが召喚したオブリビオン。ビードットを攻撃せんとしていたその幹部もまた別のマスから転送された模様で、不慮の遭遇は同士討ちを引き起こす。
「ぐぁ……ッ!? なんだ、これは……!!」
「盤上遊戯は決して終わらず、互いに互いを攻撃せよ」
今のビードットは盤面に立つ任意の存在を、任意のマスへ移動させる悪戯児。
敵が先に進もうとすれば彼方に飛ばし、後に戻ろうとすれば己の前に引き寄せ。
目前にて放たれるは誘導弾、無防備を晒したままゼロ距離で喰らったオブリビオンはたちまち意識を飛ばす。
「ぐが……ッ!!」
位置取りという戦いにおいて最も重要な要素のひとつを掌握するビードット。
逃さないし逃げられない。もはや敵は彼の手のひらの上で踊る駒に過ぎない。
「人はいずれ必ず滅びる。しかしてそれは今で非ず。全ての意味を無意味と断ずる、ここが汝の破滅なり」
「おのれ……この程度で我を封じたつもりか。手緩いぞ猟兵……!」
冷徹な宣告を下すビードットの盤面から脱するため、終焉の代行者は抜け道を探る。
マスの転移に法則性を見つけて攻略の糸口を掴もうと――だがそれも混沌を楽しむ悪戯児の思惑の内。
「止まらぬならば道はあり。己が信ずる道進め。先に居るは我である」
代行者が正解だと信じて導き出したルートは、破滅の招来者の前に通じていた。
万全の体制で待ち構えていたウォーマシンの誘導弾が、至近距離で浴びせられる。
「ぐあぁぁぁぁっ?!」
悲鳴を上げて吹き飛んでいく代行者。
彼女が破滅を迎える時は、もうすぐそこに迫っている。
大成功
🔵🔵🔵
黒城・魅夜
私はすべてのフォーミュラとその幹部たちに打ち勝ってきました。
……たった一人、あなたを除いてね、白騎士。
ふふ、お芝居ですけどね。
とはいえ、因縁の相手との再戦、映画としては盛り上がりそうですね。
完璧な未来予測射撃、故にどこを狙って攻撃を仕掛けてくるかが私にもわかるということです。
狙いが分かっているなら、対応も可能。
自ら鎖を撃ち砕き、その無数の破片をもってレーザーを乱反射させ、直撃を避けるということさえもね。
瞬時に再生した鎖を使ってUCを発動、白騎士、そして「代行者」の存在ごと喰らいましょう。
いずれエンドロールが流れると分かっていても人は映画を見るものです。
物語の中の命の煌めきを感じるためにね。
「私はすべてのフォーミュラとその幹部たちに打ち勝ってきました。……たった一人、あなたを除いてね、白騎士」
決戦の舞台に立った魅夜の視線の先にいるのは、白き装甲のウォーマシン。
銀河帝国との戦争の折、皇帝の右腕として立ちはだかった『白騎士ディアブロ』は、終焉の代行者の力によって今このヒーローズアースにて再臨を果たした。
その強大な戦闘力と『未来操作』のユーベルコードによって苦戦を強いられた相手との再びの対峙とあって、魅夜の表情も自然と厳しいものとなる。
(ふふ、お芝居ですけどね。とはいえ、因縁の相手との再戦、映画としては盛り上がりそうですね)
敵との関係性をアピールすることで視聴者の関心を引きつけ、場を盛り上げる。
定番のストーリーではあるが、ゆえに外れのない演出を魅夜は分かっている。
外見上はほぼ完璧に再現された白騎士は、巨大なレーザーキャノンを構え、対象の未来位置に放たれる必中の一撃――【収束する運命の白光】の発射体勢に入った。
「完璧な未来予測射撃、故にどこを狙って攻撃を仕掛けてくるかが私にもわかるということです」
あれから幾度の戦いを経て成長した魅夜の動きは、かつてとはレベルが違う。
敵の未来予測を予測したうえで弾道を推察。狙いが分かっているなら、対応も可能。
ディアブロの大砲が閃光を放つのと同時、魅夜の手の中で「呪いと絆」が砕け散る。
「――!!」
白光は確かに未来の魅夜を貫く筈だった。だがその射線上に砕けた鎖の無数の破片が割り込んだことで、レーザーは乱反射され、あらぬ方向に飛び散っていく。
「リベンジを果たさせて貰いましょう」
未来予知のさらに一手先を行き、必殺必中のレーザーの直撃を避けた魅夜。
ジャマーの役割を果たした鎖は、彼女の手の中で瞬時に再生を果たす。
そして発動するは【篠突く雨のごとく罪と罰は降りつのる】。対象の存在そのものを喰らう恐るべき縛鎖の群れが、白騎士と終焉の代行者目掛けて一斉に放たれた。
「馬鹿な……終焉の未来をもたらすこの力を前にしても、汝は恐れぬのか……?」
「いずれエンドロールが流れると分かっていても人は映画を見るものです。物語の中の命の煌めきを感じるためにね」
そこに悲劇の結末が待っていようとも、その過程で得た感動は決して失われない。
ゆえに魅夜も立ち止まることはない。魔性なる力をもその手に収め、暗黒の過去から希望の未来へと進む――その勇姿を、カメラの前にしっかりと見せつけて。
「最果て知れぬ悪夢の深淵から滴り落ちたのは私? あなた? ……それとも?」
降りつのる鎖が白騎士を、そして「代行者」を縛り、貫き、喰らっていく。
銀河帝国戦のリベンジは果たされ、悪魔の未来はここに再び打ち破られた。
大成功
🔵🔵🔵
郁芽・瑞莉
この展開は今後実際にありそうな気もしなくも無いですが。
ですが、過去からの侵略はこれから幾らでもあるでしょう。
為ればこそ。私達の輝き、魅せましょう!
記憶から出てきた銀河皇帝は支配は再び起きると、
発見し難いという黒い船を召喚。
(この辺りは符を使って幻影として再現を申し出る)
それを紙一重で避けながら叫ぶ。
「そうはなりません。希望の先駆けとなる私達がいる限り」
相手の反論と反撃に沈んだかに見えても、
膝を震わせながら立ち上がり再び吶喊。
「力の有無ではありません!希望を持ち、皆の力を合わせれば終焉も終わりにすることが出来る。明日という未来を得る事が出来るのです!」
そうして最高の薙刀の一撃を喰らわせますよ!
「この展開は今後実際にありそうな気もしなくも無いですが。ですが、過去からの侵略はこれから幾らでもあるでしょう」
それが、受け取ったクライマックスの台本を読み解いた瑞莉の感想だった。
この映画はあくまでフィクションだが、猟兵として実際のオブリビオンの脅威を知る彼女は、これが決して絵空事とまでは言えないのを分かっている。
「為ればこそ。私達の輝き、魅せましょう!」
幾度絶望の闇が襲ってこようとも、決して負けることのない気高き魂をここに。
ヒーローズアースの人々に希望を示すため、瑞莉は気合も十分に撮影に挑む。
「帝国は不滅であり、そして帝国とは我である。支配は再び起こるだろう」
撮影開始と共にそう厳かに告げたのは、召喚されし『銀河皇帝』リスアット・スターゲイザー。もちろん本物ではないが、衣装の再現度から演技まで迫真のものだ。
かつてスペースシップワールドをオブリビオン・フォーミュラの手により顕れたのは、知られざる『黒き槍の船』――この演出は、瑞莉の符術による幻影の再現だ。
「そうはなりません。希望の先駆けとなる私達がいる限り」
死角から襲ってくる宇宙船の突撃を、瑞莉は紙一重で躱しながら皇帝に叫び返す。
自分たちが戦い続ける限り、オブリビオンによる絶望の支配など阻止してみせると。
「我の力は帝国の『過去』そのもの。貴様達の矮小な力で、終焉をどう止める?」
しかし、銀河皇帝の冷徹な反論と共に、もう一隻の槍が背後から襲い掛かる。
皇帝の力によって自在に外宇宙からワープアウトする黒き槍の船は非常に発見が困難であり、瑞莉の研ぎ澄まされた直感を以ってしても回避は間に合わなかった。
「く……っ!!」
凄まじい轟音と衝撃がスタジオに響き、もうもうと上がる煙の中に瑞莉が消える。
観客がいれば思わずはっと息を呑むような窮地。仕留めたかと判断した銀河皇帝は、すっと踵を返して次なる敵を見定めようとする――。
――だが。
「力の有無ではありません……!」
煙の中から立ち上がったのは、槍船の直撃を受けたはずの瑞莉。全身に痛ましいほどの傷を負い、膝を震わせながらも、その瞳に宿る闘志は今だ失われてはいない。
残された力で禍ノ生七祇をぐっと構えた彼女は、驚く銀河皇帝に吶喊しながら、絶望を告げる相手の言葉に真っ向からの反論を叫ぶ。
「希望を持ち、皆の力を合わせれば終焉も終わりにすることが出来る。明日という未来を得る事が出来るのです!」
自分は一人で戦っているのではない。多くの猟兵とヒーロー、そして人々の希望を繋ぐためにここに立っている。それが孤独な支配者たる銀河皇帝との決定的な差だ。
「明日を願う皆の希望――この一撃に込めます!」
【転身再演 神霊閃】。真の姿へと変身した瑞莉が放つのは、自らの心技体すべてを賭けた最高の一撃。見惚れるほどに鮮やかな薙刀の一閃が、銀河皇帝を断つ。
「これが……希望の力……またしても、我は敗れるのか……」
血飛沫を散らしながらばたりと倒れ伏した皇帝は、幻のように解けて消えていく。
また一人、強力な配下を失った終焉の代行者。戦いの終わりは着実に近付いている。
大成功
🔵🔵🔵
ヘスティア・イクテュス
わたしは海賊よ、なら…お宝(世界の平和)を求めて進み続ける
そして、それを得る道が難しければ燃えるのが海賊よ!
それに、わたし達が倒れたとしても
わたし達の戦いを見て憧れ、同じようにお宝(世界平和)のために立ち上がる人たちが必ずいる…わたしがお父様のようになりたいと思ったようにね?
それじゃあ、平和の為にまずは貴方の命を頂きましょうか!終焉の代行者さん!
ティターニアをフルドライブ!【空中戦】
アベル、以前の戦争のデータを読み込み!【見切り】
スペースシップワールドのオブリビオンのデータはしっかりと…
再び眠りにつきなさい銀河帝国!(ビームセイバー(玩具)を抜刀し)
「わたしは海賊よ、なら……お宝を求めて進み続ける。そして、それを得る道が難しければ燃えるのが海賊よ!」
びしり、と立ちはだかる敵に指を突きつけて、ヘスティアはそう力強く宣言する。
その胸に燃えるのは父から受け継いだ海賊としての誇りと正義感。彼女が求めるお宝とは、オブリビオンによって奪われた「世界の平和」に他ならない。どんなに障害が険しかろうと、それを諦めるなんて有り得ないことだ。
「汝の求める"宝"とは、その手に掴むには大きすぎるもの。いずれ道半ばで倒れるが定めなり」
対峙する終焉の代行者は冷たい声でヘスティアの意志を否定する。その背後から現れるのは、かつてスペースシップワールドを脅かした銀河帝国のオブリビオン達だ。
故郷である星の海を支配せんとした邪悪なる皇帝とその配下――忌むべき敵を前にして、ヘスティアは静かに闘志を燃え上がらせながらも、冷静さを失わない。
「わたし達が倒れたとしても、わたし達の戦いを見て憧れ、同じようにお宝のために立ち上がる人たちが必ずいる……わたしがお父様のようになりたいと思ったようにね?」
命尽きても想いと願いは受け継がれる。自分達の戦いは決して無駄にはならない。
だからこそ挫けることはなく、託されたバトンを握りしめて、全力で進み続ける。
そしていつの日か、きっと誰かが――世界平和という名の宝をその手に掴むのだ。
「それじゃあ、平和の為にまずは貴方の命を頂きましょうか! 終焉の代行者さん!」
気高き魂(スピリット)をここに示し、ヘスティアはティターニアをフルドライブ。
ジェットの閃光を翼のように広げながら、凄まじいスピードでスタジオを翔ける。
「アベル、以前の戦争のデータを読み込み!」
「すでに実行中です、お嬢様」
スペースシップワールドのオブリビオンのデータはしっかりと、端末のデータベースに保存済み。敵のユーベルコードもその攻略手段もすでに判明している。
一度は勝利を収めた敵だ。どれだけ強大だろうと、恐れる必要など微塵もない。
「再び眠りにつきなさい銀河帝国!」
撮影用のビームセイバー(玩具)を抜刀し、ヘスティアは勇ましく敵陣に飛び込む。
対するは白騎士ディアブロ――未来予測による的確な攻撃と回避は脅威なれど、あれから数々の戦いを潜り抜けたヘスティアの成長は、その予測をも上回る。
斬光一閃、敵のフォースセイバーをくぐり抜けるように振るわれた一撃は、白き巨体のウォーマシンを斬り伏せ、戦闘不能へと追いやる。
「反撃が来ます、3時の方向に回避を」
その直後に後方にいた銀河皇帝がフォース・インベイジョンを放つも、アベルの的確なサポートの元でティターニアを駆るヘスティアは、即座に敵の視界から消える。
敵対者の意志とユーベルコードを奪う銀河最強のサイキックエナジーも、射線に捉えられなければ意味はない。
「さぁ! 素敵なパーテイーを始めましょうか!」
縦横無尽に空を舞う少女がトドメに放つは【ミサイルパーティー】の全弾発射。
嵐のように降り注ぐマイクロミサイル群が、銀河帝国のオブリビオンと、終焉の代行者を襲い――凄まじい爆発と轟音が戦場を揺さぶる。
「―――ッ!!!?」
もちろん爆発のほうはCGと後付けによる演出で、役者のほうにケガはない。
スモークが晴れた後、帝国のオブリビオンはすべて消え失せ――傷ついた終焉の代行者が、がっくりと膝を突いていた。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
決まってる。そんな気に入らない運命なら何度だって戦い滅ぼすだけ。
わたしはそんな運命なんてモノに屈するのは嫌いなのよ。
【吸血姫の覚醒】を発動。
本気の力を少しだけ解放してあげるわ…流石にこの状態でのアクションとかは役者が危険過ぎるし、多分、カメラとか追いつけないからやらないけど。
超高速から魔力弾の連射、怪力を活かして魔槍で薙ぎ払い、吹き飛ばし、串刺しにと大暴れし、最後は【神槍グングニル】で一気に強敵達を消し飛ばす、といった感じで演技させて貰うわ♪
クライマックスだし、それこそ派手にやらせて貰うわ♪
…ヒトは諦めが悪い生き物なのよ。だから、諦めない限り戦うだけ
「おねぇさま、真面目な時はかっこいいのー」
「決まってる。そんな気に入らない運命なら何度だって戦い滅ぼすだけ。わたしはそんな運命なんてモノに屈するのは嫌いなのよ」
終焉の代行者の問いに対して、フレミアは自信に満ちた表情でそう言い切った。
彼女はいつだって揺るがない。立ちはだかる障害は打ち破り、気に入らないものに立ち向かい、決して膝を屈することはない。それが誇り高き吸血姫の生き様。
真紅の魔槍を構えたその身から、ゆらりと燃え上がるような魔力があふれ出す。
「本気の力を少しだけ解放してあげるわ……」
【吸血姫の覚醒】発動。受け継がれし真祖の魔力を解放したフレミアの肉体は17、8歳程の外見へ成長し、背中には4対の真紅の翼を生やした、威厳に満ちた姿となる。
(流石にこの状態でのアクションとかは役者が危険過ぎるし、多分、カメラとか追いつけないからやらないけど)
それでも、ただそこに立っているだけで見るものを惹き付ける、圧倒的なカリスマ性と存在感が今の彼女にはある。共演者たちも思わずはっと息を呑んだほどだ。
「運命に逆らうことは誰にもできない。汝もまた無限の過去に呑まれる定め」
唯一、役者根性で気迫に呑まれなかった終焉の代行者が、配下のオブリビオンを差し向ける。それは何れも、過去の戦争で猟兵を苦しめた幹部格の強敵ばかりだ。
しかし、覚醒したフレミアには微塵の動揺もなく、悠然と笑みさえ浮かべている。
「一度わたし達に敗れた相手に、今更遅れを取るとでも思ったのかしら?」
すっと伸ばした指先に合わせて放たれるのは無数の魔力弾。超高速で連射される弾幕のカーテンが、押し寄せるオブリビオンの大群に襲い掛かる。
真祖の魔力を込められたその威力に、幹部達の足が止まる。その間隙を見逃さずにフレミアは猛然と(カメラが追えるよう加減しつつ)接近し、魔槍を振るった。
「―――!!!」
高位の竜種にも匹敵する怪力から繰り出された一撃。その直撃を受けたオブリビオン達は、まるで藁人形のように高々と宙に吹き飛ばされる。
フレミアの猛攻はなおも止まらず、間合いに入った敵から手当り次第とばかりに薙ぎ払い、吹き飛ばし、刺し貫き、串刺しにと大暴れ。その光景はまさに無双状態。
(クライマックスだし、それこそ派手にやらせて貰うわ♪)
内心ではかなりノリノリで、しかし役者にケガをさせないようしっかり加減もしつつ、終盤のバトルシーンに相応しい劇的な大立ち回りを演じるフレミア。
その爽快な暴れっぷりに釣られるように、敵役のやられっぷりにも熱が籠もる。
「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……。消し飛びなさい……! 神槍グングニル!!」
最後のトドメは、魔槍に圧縮した魔力を放つ、真紅に輝く神槍の一撃。
敵陣のド真ん中に突き刺さった槍は、耳をつんざくような轟音と共に大爆発を起こし、居並ぶ強敵たちを一気に消し飛ばした。
「馬鹿な……!」
チリひとつ残さず全滅した配下を目の当たりにして、愕然とする終焉の代行者。
真紅の翼を広げ、高みよりその様を睥睨する吸血姫は静かに、重々しく告げる。
「……ヒトは諦めが悪い生き物なのよ。だから、諦めない限り戦うだけ」
どんな深い闇に覆われた世界でも、理不尽と不条理に満ちあふれた世界でも。
人は決して未来を諦めない。幾多の世界で戦ってきた彼女は、それを知っている。
「おねぇさま、真面目な時はかっこいいのー」
セットの外側から撮影を見守っていた雪花は、これまでの激しい立ち回りから一転、しっとりと静かな演技でシーンを締めくくる主の姿を、じぃっと見守っていた。
それって真面目じゃない時のわたしはどんなふうに見られてるのかしら――と、呟きを聞き取ったフレミアはそんなことを思うが、まあ気にしないでおく。
撮影もいよいよ大詰めに入り、クランクアップの時はもうすぐそこに迫っていた。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
引き続き、演技のアドバイスを蝶子さんに貰ったり、ラン達に感想を聞いたりしながら演技…。
【九尾化・魔剣の巫女媛】による封印を僅かな間だけ解放…。
九尾化の姿と軽く能力だけ見せて後は通常状態へ戻って演技…。
CGで姿だけ合成して貰うとかすれば良いかな…?
一応、各種魔剣を駆使して戦う感じで演技…。
強敵達に斬り込んでいき、硬い敵や巨大な敵にはバルムンク、素早い敵には凶太刀と神太刀、大群には黒桜、敵の攻撃に合わせてアンサラー等…。
敵のボスには自身の意思と共に【ultimate】の一撃で応えるよ…。
悲劇が繰り返されるなら、その度に何度でも戦うよ…。
わたしは一つでも多くの悲劇を止める為に戦う…。
「いよいよ最後の撮影ね。あなたの全てを出し切ってきなさい」
「ご主人!」
「ファイト!」
「応援してる!」
クライマックスに臨む璃奈の背中を押すのは、蝶子とラン達からのエール。
すっかりとスタジオにも馴染んだ彼女達は、引き続き璃奈の勇姿を見届ける様子だ。
「ありがとう、みんな……」
演技のアドバイスや感想も貰って準備万端の璃奈は、すうと小さく深呼吸してセットに上がる。ここまで来ればあとはもう、自分の全力をカメラに見せつけるだけだ。
「我らに仇成す全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
共演者が扮するオブリビオンの群れと対峙した璃奈は、一瞬だけ【九尾化・魔剣の巫女媛】を発動。湧き上がる呪力と展開される無数の魔剣、そして九尾の妖狐へと変身した自らの姿を見せつけて、すぐに通常状態に戻る。
莫大な呪力を常時纏ったこの姿が、悪影響を及ぼすのを懸念してのことだ。以降の撮影はあくまで変身中という体裁で演じ、姿はCGで合成して進められることになる。
「汝らがどれだけ足掻こうと、悲劇は繰り返される……何故諦めない……!」
不可解だ、と言わんばかりの不快げな表情を見せる、正体不明のオブリビオン。
彼女の苛立ちに呼応するように、かつて異世界に戦乱を巻き起こした幹部格オブリビオン達が、ユーベルコードを発動しながら一斉に襲い掛かってくる。
「悲劇が繰り返されるなら、その度に何度でも戦うよ……」
終焉の代行者の問いに璃奈は静かに答えると、魔剣を手にして強敵達に斬り込む。
最初に立ちはだかったのは白騎士ディアブロ。白色の装甲を纏った強固なるウォーマシンを相手に、振り下ろされたのは魔剣・バルムンクによる剛の一撃。
竜さえも屠るその刃は、騎士の巨躯を真っ二つに(これもCG合成だ)両断し。魔剣の巫女はすぐさま次の敵を見定めると、剣を持ち替えながらさらに踏み込んでいく。
「敵が何度復活しても、そのたびに倒してみせる……」
揺るがぬ決意に裏打ちされた力強い剣技。妖刀・九尾乃凶太刀と九尾乃神太刀による超高速の連撃は、三本の呪剣を振るう黒騎士アンヘルに捌く間も与えず斬り刻んだ。
相手に応じて幾つもの魔剣を駆使して戦う、魔剣の巫女としての戦闘スタイルを最大限発揮した演技。それは璃奈の戦いをより華麗に印象深くするものだ。
『間断なく新しい武器に交換しながら戦えば、より効果的だと思うわ』
蝶子からのアドバイスも参考にして、一度使った魔剣はすぐに持ち替え。魔狼フェンリルと骸骨巨人と共に襲い掛かってきたドクター・オロチを、呪槍・黒桜の一薙ぎと呪力の花吹雪でまとめて吹き飛ばす。
「こんな……こんなことがあるはずが……!」
狼狽える代行者をかばうように、召喚された銀河皇帝がサイキックエナジーを放つ。
璃奈はすかさず魔剣・アンサラーを抜き放ち、報復の魔力によって攻撃を反射。
自らの洗脳念波を我が身で浴びてしまった皇帝は、一瞬のうちに無力化された。
――これで残るは代行者ただ一人。ラスボスにふさわしい一撃で応えるため、魔剣の巫女は【ultimate one cars blade】を詠唱する。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……。その力を一つに束ね、我が敵に究極の終焉を齎せ……!」
璃奈の手に顕現するのは、無数の魔剣・妖刀を一つに集束した究極の一刀。
全てを無に帰し、終わりを齎す「終焉」の力、その極地にして集大成。
"終焉の代行者"など生ぬるい、これこそが真の終焉だと言わんばかりの。
「わたしは一つでも多くの悲劇を止める為に戦う……」
救える命があるなら助けたい。その為ならどんな悪夢も惨劇も終わらせてみせる。
力強い意思と共に振り下ろされる一撃は、慄く敵を真っ向から袈裟懸けに斬り伏せた。
「が―――ッ!!!!」
がくり、と膝を突き、力なく崩れ落ちる、正体不明のオブリビオン。
それはまさに、終焉を終焉させ、未来を切り拓く一太刀だった。
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
●POW
正体不明の敵かぁ。
次回に引っ張るような展開だね、よーし、ぼくにも構想はあるんだ!ピンチの時に駆けつけてくれる謎の存在って感じでね!
(演技)
【終焉の代行者】
「これを別腹にするのは厳しいかな……」
焦りの色を滲ませ、現れたのは、スカムキング、Sプルトン、Drアトランティス。
こっちは消耗した後、分が悪すぎる。
撃墜後、意識を失った後、紅路夢の最終機能が発動、(UCベース)の三体の謎の機械神たちがシルエット登場。
「我らトリムールティ」「我らは創造主を守護し」「そして創造主の敵を撃滅せん」
【撮影後】
お疲れ様でしたー!
あのロボットカッコ良かったです!……あれ?其方で用意したんじゃないの???
「正体不明の敵かぁ。次回に引っ張るような展開だね、よーし、ぼくにも構想はあるんだ!」
最終幕の台本を受け取った鈴鹿は、それを元にさっそく自分のアイデアを披露する。
王道、かつ盛り上げ方をよく分かっている彼女の構想は監督や演出家にとってもいい刺激になるようで、スタッフからの反応も好感触だ。
「ピンチの時に駆けつけてくれる謎の存在って感じでね!」
「ふむふむ、なるほど……いいですね!」
鈴鹿の構想を聞き届けた監督は笑顔で頷くと、さっそくスタッフに檄を飛ばす。
セット、メイク、カメラ、全てOK。いよいよ最後の撮影が始まる。
「これを別腹にするのは厳しいかな……」
回りだしたカメラの前で、最初に鈴鹿が見せたのは焦りの色が滲んだ表情。
彼女の前に現れたのは、スカムキング、スーパープルトン、ドクター・アトランティス。ヒーローズアースを混乱に陥れたジェネシス・エイトが、同時に三体。
「惨劇は再び起こる、我は終焉の代行者なり」
彼らを喚び出した正体不明のオブリビオンは、厳かなる口調で無慈悲に告げる。
対する鈴鹿は消耗した後で、「紅路夢」も損傷中。これまで様々な困難を乗り越えてきた彼女も、流石に分が悪すぎると言わざるを得なかった。
「諦めよ、汝の抵抗は無意味である」
「……いやだ!」
それでも鈴鹿は屈することのない眼差しで敵を睨みつけ、紅路夢と共に立ち向かう。
どんな窮地に立たされようと決して諦めない気高き魂。されど現実は無慈悲であり、果敢に突撃する彼女にジェネシス・エイトのユーベルコードが襲い掛かる。
「う……っ!!」
ただでさえ消耗した状態で三体からの同時攻撃を受けて、耐えきれるはずがない。
火花を散らして撃墜され、地上に落下していく紅路夢。その操縦席にしがみつきながら、鈴鹿はふっと意識を失った。
「ここが汝の終焉だ――」
墜落した鈴鹿にトドメを刺そうと、三体のオブリビオンがゆっくりと迫る。
だが、その時。破壊されたはずの紅路夢の動力がふいに再起動し、無機質な謎の声が響く。
『状況、創造者ノ生命活動ノ危機、当該機ハ此レヨリ、コヲド、デウスヱクスマキナ発動』
「――なに?」
それは紅路夢に隠されていた最終機能、【最重要秘匿機構デウスヱクスマキナ】。
カッと目も眩むばかりの輝きが放たれ、その中から三体の謎のシルエットが浮かび上がった。
「我らトリムールティ」「我らは創造主を守護し」「そして創造主の敵を撃滅せん」
守護・破壊と再生・創造を司る三柱の存在達は、気絶した鈴鹿を守るように立ちはだかる。その姿は荘厳かつ威容、まさしく機械仕掛けの神と呼ぶに相応しい。
「なんだ、こやつらは……このような存在は、我の"予定"にない……!」
突如現れた未知の相手に、今度はオブリビオン達が焦りを見せる番であった。
その動揺の隙を見逃すことなく、三柱の機械神は一斉に攻撃を開始する。
鋼鉄の拳がスカムキングを叩き潰し、巨大なブレードがスーパープルトンを両断。そして超高エネルギーの破壊光線が、ドクター・アトランティスを蒸発させる。
ジェネシス・エイトですら一蹴する超パワー。まさにそれは圧倒的な光景だった。
「馬鹿な……馬鹿な、馬鹿なッ! 終焉の運命に抗えるはずが……!」
配下を失い、追い詰められた終焉の代行者が、取り乱したように叫ぶ。
それは終焉すらも破壊する力。絶望から解き放たれた未来を創造する力。
創造主を害する最後の敵を排除せんと、三機械神の一斉攻撃が放たれる。
「―――ッ!!!」
鋼鉄と閃光によって打ちのめされ、吹き飛ばされていく終焉の代行者。
それを見届けた後、使命を達成した機械神のシルエットはすうっと消えていった。
「クランクアップ! 皆さん、お疲れ様でした!」
「お疲れ様でしたー!」
鈴鹿のシーンの終了と共に全撮影が完了し、スタジオは大きな拍手に包まれる。
この後はCGの合成やSEやBGMを設定したり、撮った映像を編集してつなぎ合わせたりと、まだ映画作りのための作業は残っているが、猟兵達役者の仕事は終了である。
「あのロボットカッコ良かったです!」
セットから降りた鈴鹿は、たった今のシーンについて興奮気味に感想を語る。
しかしそれを聞いた監督やスタッフは不思議そうな顔。あれは貴女が呼び出したものではないのか、と。
「……あれ? 其方で用意したんじゃないの???」
鈴鹿はてっきり、あれはスタッフ側が制作した大道具の一部だと思っていた。
紅路夢は鈴鹿が発明した超機械だが、その最重要秘匿機構は彼女でさえ知らない、未知の機構である。それが一体、何故このタイミングで稼働したかは不明だが――。
――ともあれ、それで撮影は万事上手くいったのだから、ここは万々歳だろう。
かくして、猟兵達の全面協力の元で制作された『イェーガー・ザ・ムービー! エリア51潜入作戦!』は、無事に完成までこぎつけることが出来た。
渋いスパイ・アクションあり、激しいバトルシーンあり。猟兵の気高き魂(スピリット)を詰め込まれたこの作品は、後にヒーローズアース全世界の劇場で公開された。
その評価は上々であり、この世界の人々の猟兵に対する信頼と好感度は、ますますアップすることになったのだった――。
大成功
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