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レディ・オーシャンを追え!~雪の海

#サムライエンパイア #【Q】 #レディ・オーシャン

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#【Q】
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#レディ・オーシャン


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●雪月夜
 サムライエンパイアの山間の小さな村。
 雲の合間に、青白い月がぽかりと浮いている。
 白々と降り積もる雪が、音すらも飲み込むような夜の事。
 銀に照り返る、ぴかぴかとした魚が月へと影を落とし。
 くすくすと響く、小さな笑い声。
 ふかふかの雪道に足跡を一つ生んだ女は、コートすら引っ掛けて居らず。
 この雪月夜には不釣り合いなほど、豊満な身体を強調するようなボディスーツに身を包んでいた。
「エンパイアのみなさん、こんにちは〜☆」
 長くしなやかな指先で鉄の魚の頭を撫でた彼女は、白雪の下でも遠く響く声音で言葉を紡ぎ。
「わたしのなまえはレディ・オーシャン☆ と〜ってもわるいかみさまなんですよ〜☆」
 間延びした言葉は、場違いなほどに朗らかで。
 何事かと窓より顔を出した村人が、空に浮かぶまあるいものを見て眼を丸くする。
 それは、月では無い。
 それは、本来ならば空に浮かぶはずも無いもの。
 それは、――。
「そんなわけで、いまみんなのまうえにあるのは『オーシャンボール』☆ いまからここを『海にする』ので、がまんしてくださいねん☆」
 艶っぽく微笑んだ彼女は、柔らかな髪を掻き上げて。
 巨大な『海の塊』を、雪の積もる地へと叩き落とした。

●海の生まれるところ
「センセ、センセ、大変っス~」
 てけてけと駆けてきた小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)が、コンと足を止めて。
「先の戦争を生き延びたジェネシス・エイト――『レディ・オーシャン』がエンパイアに現れたっス!」
 細い細い瞳を眇めると、猟兵へと予知を語りだした。
「レディ・オーシャンは『オーシャンボール』とか言う巨大な海水の球で村を沈め、周囲をすべて押し流そうとしているみたいっス」
 彼女が現れた時点で、一瞬で空中へと出現するオーシャンボールの落下は阻止する事はできない。
 だからこそ住人たちの避難、建物の保護等が必要だと、いすゞは猟兵と瞳を合わせ。
「そういう訳で、センセ達にはすばやーく、レディ・オーシャンと配下オブリビオンを倒して貰いたいっスよォ!」
 でもでもセンセ達なら、もう、ボカーンっスよねェ、なんて。
 拳を硬く握って、空中にフックを放つフリをしたいすゞは少しだけ笑った。
「レディ・オーシャンが現れるのは深夜っス! センセ達はお昼から村へと訪れて、村人達の避難や雪遊び等を交えつつ敵を待ち受けて欲しいっス~!」
 オブリビオン・フォーミュラたる第六天魔王を下したとは言え、江戸幕府の天下自在符は有効である。
 村人達の避難だけであれば、そう難しい事では無いであろう。
「でも、できるだけ住人や建物だけでは無く畑の保護等もお願いしたいっスよォ。……塩害を受けた農地は、今後の村人達の生活も脅かしてしまうっスから……」
 準備を終えれば存分に雪遊びしてきて良いっスし、頼んだっスよォ、と。
 首を傾いだいすゞは、ぽっくり下駄をコーンと響かせて。
 ぴかりと手のひらの中で、グリモアを輝かせた。


絲上ゆいこ
 サムライエンパイアと聞いて居ても立っても居れず!
 こんにちは、絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
 頑張ってレディ・オーシャンの企みを挫きに行きましょう!

●一章『雪遊び』
 山間の雪の積もった小さな村で、住人の避難準備や、畑・建物の保護を行いつつ。
 準備を終えたら、時間まで雪遊びをしましょう!
 レディ・オーシャンがあらわれるのは深夜です。
 温泉もあるようですし、かまくらの下で食べるご飯も素敵かもしれませんね。
 やりたい事があれば、フラグメントを気にせず色々書いてみて下さい。

●二、三章
 戦闘です。
 水中戦となるので、準備をしてくるのも良いでしょう。

●迷子防止のおまじない
 ・冒頭に「お相手のキャラクター名(または愛称)とID」または「共通のグループ名」の明記をお願いします。
 ・グループ名等は文字数が苦しい場合、無理に括弧で囲わなくても大丈夫ですよ!

●その他
 ・プレイングが白紙、迷惑行為、指定が一方通行、同行者のID(共通のグループ名)が書かれていない場合は描写できない場合があります。

 それでは皆さんの素敵なプレイング、お待ちしております!
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第1章 日常 『雪遊び』

POW   :    かまくらや雪だるまを作る

SPD   :    雪合戦をする

WIZ   :    露天風呂に入って、雪景色を眺める

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

天御鏡・百々
エンパイア・ウォーにて信長を討ち果たし、この世界にも真なる泰平が訪れたかと思えば……ままならぬものだな
さて、この地を海に変えられてしまえば、民達に被害は避けられぬ
迅速に避難を進めようか

天下自在符を見せた上で
この後起こる内容を説明して住民へ避難を促そう(救助活動20)
「信じられぬかもしれぬが、夜にこの地は海に沈む。疾く避難するのだ」

避難の手伝いでは『神は万物に宿る』を使うとしようか
家財等を運び出すならば、その家財自体を付喪神とし
自分で歩いて貰えば楽になるだろう

合間に雪だるまを作って
それを付喪神として建物や畑の保護を手伝わせるのもよさそうだな

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ連携歓迎


薬師神・悟郎
復興が始まっているとはいえ、此処にもまだ戦争の傷痕が残っているはず
懸命に生きようとする人々をこれ以上傷つけさせたくはない

楽しそうに遊ぶ子供達の姿が見えれば
「…腹一杯食わせてやりたいよな」
子供は苦手だが、嫌いではない
空腹の辛さはよく分かるし、あの子達にそんな思いはさせたくないと積極的に畑仕事を手伝う、怪力

地形の利用、世界知識で畑の保護もしくは畑仕事に使えそうな便利な道具を思い付けばUCで作成し使用
作成しても使えなければ地道に手伝う、怪力、念動力

丁寧に、だが避難誘導させることも考えると早業で終わらせるべきだな
全てが終わった頃に村人達から信頼を得られれば、避難への協力をお願いしよう


喜羽・紗羅
異世界から喧嘩売りに来るってか。上等だよ
でも、どうやって来たんだろうね?

ふらりと、紗羅が二人に分かれる

私はそれとなく避難の手伝いをするよ!
子供と一緒に雪合戦とかかまくらとか、不安にさせないようにね
あまり大人の手を煩わせない様に――って引っ張らないで!
仲良くなればお話も聞いて貰えると思うし
他に同じ考えの人と一緒に行動するわ

俺はざっと戦場を見渡して畑の建物や保護だな
まあ一杯……やれないんだったな
とは言え先ずは、詳しい奴の指示を聞くか
海水を畑に流させない為の簡単な堰でも作ったり
建物だったら補強したり海水を防ぐ幕でも張ったりよ
天下自在符……あんまこういうのは使いたか無ぇが
行商から資材を譲って貰ったりな


灰枝・祇園
海水で村を押し流すって……さすが長らく死んでらした古い方は考えることが違いますね。
いま生きている方々を、いま生きていない者が殺すのはおかしいですよ。
そこを間違えるような輩に「かみさま」を名乗って欲しくはないですねえ。

さて、生きる方々のお手伝いをしましょうか。
皆様まだ寿命も残っていらっしゃるようですし。私も精一杯お手伝いします!
避難勧告は他の方にお任せして、重たい荷物をお運びしましょう。
生者の方に触れるとあまり良くない影響が出てしまうので、そちらには手を貸せないかと……申し訳ないです。
その代わり、力と体力には自信がありますから。
中身入りのタンスでも解体した家でも土嚢でもお運びしますよ!


菱川・彌三八
何もこねェに寒い時に水ぶちまけなくともな…
否、そういう話じゃねぇんだがよ

避難ち云っても先がねェとナ
ここいらで数日凌げるような場所ァ見繕っておくとして
離れ難ェ者も居るだらうが、ちいとばかしの辛抱だぜ
全く、莫迦げた話もあるもんだ

逃げの支度だが、力仕事なら任しちくんな
畑にゃとんと疎いんだが…どうすんで、藁でも敷いときゃ善いのかい?
玄人の知恵でも借りて、後ァぼちぼちやるヨ

したが日暮れまで、雪遊びァ子どもに任せら
寒ぃなァ苦手だヨ
この先考えるとどうにも遊びは気乗りしねェが、折角だ
湯治くれぇならエエだろう
燗が付きゃあ言うこたねェが、暖けェもんでも食ってぬくゝゝさしちもらうぜ
マ、人手が要る時にゃ呼んでくんな


アンコ・パッフェルベル
なんてめんどくさい事しやがるですあのジェネ八…。
畑は多分手の回らない猟兵も多いと思うです。
わたしはそっちやりましょーか。

前もって住人達にやることを説明っ。
それから赤光刃を抜き"設計図"を空に描く。
変則的ですけど…これも保護です!
呼び出すのは農地を素材としたゴーレム。出来るだけでかいのがいいです。
こいつに避難の際お年寄りや子供を乗っけて、避難先でユベコ解除。
農地自体を避難の人手としつつ移動出来れば他猟兵の手間も減る。
戦闘後元に戻すのも楽ちんです。

そんな予定を立て、後は…遊ぶです!
ご飯に舌鼓を打ち、後は温泉でゆっくりと…やや。
畑ゴーレムが子どもたちと遊んでるです。感慨深いものがあるですね。
ふふふ。



●雪空の下で
 ちらりほらりと雪が舞い、所々厚ぼったい雲がぷっかり浮かんではいるが概ね快晴の空。
 しかし。山間部に吹く寒風は、きんと五臓を締め付けるほど冷たいものだ。
「先の戦で蘇りし第六天魔王――織田信長を討ち果たした事を知る者も多いとは思う」
 集まった村人達の前で声をあげた天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)の、手のひらに収まった符。
 それこそ猟兵達の働きは江戸幕府のお墨付きたる証、徳川の紋所の刻まれた天下自在符である。
「しかし。真なる泰平が訪れたかと言えば、否。――魑魅魍魎はとんと鳴りを潜めたとは言え、未だ跋扈しておる」
 これは、オブリビオン・フォーミュラである織田信長が居なくなった時点で新たなオブリビオンは出現しなくなり、魑魅魍魎達による被害も徐々に収まってゆくだろうと思われていた矢先の出来事。
 泰平の見えた先の、ままならぬ話。
「信じられぬかもしれぬが、夜になればこの地は海に沈む」
 ――ジェネシス・エイト『レディ・オーシャン』がこの村を海に沈めると言う予知が現れた為に、猟兵達は集まって来ていた。
「我も尽力をしよう。皆、疾く避難をするのだ」
 黒髪を揺らした百々が幼き印象とは相反した雰囲気で告げた言葉に、ざわめきたつ村人達。
「何も、こねェに寒い時に水ぶちまけなくともなぁ」
 そこに菱川・彌三八(彌栄・f12195)は、遠くどっかりとすわりこんでいる雪山から村の端っこまで視線を投げてから、否そういう話じゃねぇんだがよ、なんて言葉を重ねて。
「全く、莫迦げた話もあるもんだが……、来るモンは仕方あるめェよ」
 そうして、やれと袷羽織を正してから、村人の一人の背をぽんと叩いた。
「おめぇ達にしても、随分と適わねェ話よなあ。どうにも離れ難ェ者も居るだらうが、ちいとばかしの辛抱を頼むぜ」
 吐息を零した彌三八が肩を竦め、薄く八重歯を見せて笑うと。
「あァ、そうかい。その紋所もどうやらまがい物じゃァねぇようでえ。……わァったよ」
 彌三八のいなせな物言いに少しばかり力みの取れた村人も、息を零して小さく首を振った。
「しかし、避難たってェよ……。夜までたァ言うが、水が来るなら行き先は高台となるだろう? どうにも動きづらい爺様、婆様も居るもんでね、どこまで動けたモンか……」
「ふふふ。それに関しては、お任せあれです!」
 村人の心配を薙ぎ払う様に、明るく朗々と響く声音。
 その両手に握られた、大きなケーキナイフとサーバーで光を照り返し。大きなツインテールを靡かせ、メガネもぴかっと輝かせたのは、アンコ・パッフェルベル(想い溢れるストライダー・f00516)であった。
 まるで魔法、否。コレこそ魔法なのであろう。
 アンコが刃を駆けさせた形に瞬く赤光。しゅるしゅると跳ねる線が、『設計図』を空に描き出し。
 その『設計図』が跳ねたかと思えば、アンコの腕の動きに合わせて一瞬で地へと吸い込まれる。
 ――変則的ですけれど、コレも保護です!
 蠢き出した、畑の土。
 大根の刺さった土地が盛り上がり、春菊が風にはらはらと揺れた。
 集った人々に影が落ち、村人達はどよめく。
 ――アンコに呼び出されたものは、それこそ異能の力で皆を救いに来た事を示すかのように、優しくお辞儀を一つ。
「さあ、皆さん! 歩くのが大変な方々はこいつに乗っていくですよ!」
 片腕を伸ばして、アンコがぴかぴか笑顔で促した先。
 ……それは農地を素材とした、巨大なゴーレムであった。
 アンコちゃんは賢いので、農地自体を避難する道具として使用し。
 そして同時も農地を保護できるという、一石二鳥のプランと打ち出したいう訳なのだ。
 アンコちゃんは賢い。
「他には、大きな家財を運びだしたいと言う者がいれば、我に声をかけて貰えるだろうか?」
 言葉を紡いだ百々が神鏡を傾けると、子どもたちが作ったのであろう雪だるまが映り込み。
 ぴかりと太陽光を浴びて鏡が瞬いた瞬間。
 ぴょんぴょんと雪だるまが跳ねて、動き出した。
 たとえどれほど重い家財であろうが、自らに歩いて貰えば楽に避難ができるであろう。
 ――それは百々の神通力を分け与えられた無機物が、この場に限る付喪神と化した姿であった。
「えーーっ、なにそれ、すっげェ!」
「うごくの? なんで? すごーい!」
 不思議なゴーレムに、付喪神。
 摩訶不思議な出来事に呆気に取られた大人たちを背に、一番に食いついたのは村の子どもたちであった。
「そうでしょう、そうでしょう。乗ってみても良いですよ」
「えーーっ、乗る! でもぜってェおれのが足はっえェからなー、あとで駆け比べもする!」
 ぴょんぴょんと跳ねる少年に、アンコがこっくり頷いて答えれば。
「これは汝らが作った雪だるまであったか?」
 百々は駆けてきた少女に首を傾ぎ。
「うんそうだよー! えー、すごい、すごい、動くようになったんだぁ!」
「ならば、共に更に作ろうぞ。その者達に、村を護る手伝いをしてもらいたいのだ」
「ぜったいつくる!」
 自分の作る雪だるまも護る力になれるのか、と。百々の言葉に少女は瞳を輝かせて何度も頷き。
「へェ、すごいもんだねェ」
「へあ!?」
 呆気に取られたままの大人の背を、とんと小突いた彌三八がからりと笑った。
「おうおう、力仕事なら俺にも任しちくんな。しかし俺ァ、畑にゃとんと疎いもんでね、ちょいと知恵を貸しとくれよ。畑の土はそっくり持っていけるようだが、残った部分にも養生は必要なのかい?」
「あ、ああ。しかし海の水に浸かるとなるとなァ」
 はっと我に返った様子で村人は瞬きを一つ、二つ。
 そこに猟兵の一人より、氷で保護ができるかもしれないと声が上がり。
「氷の幕を張ってくれるっつぅならば、移動しきれねェ畑や野菜にゃ、敷き藁でもしようかね」
「あぁ、任せとくれ」
 こっくりと頷いた彌三八は、村人に促されて納屋へと向かい行く。
 合わせて楽しげに駆け、雪だるまを作ったり、家財の運び出しを手伝う子ども達。
 その姿に薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)は、フードを目深に引いて金瞳を眇めた。
 悟郎は、子どもが苦手だ。
 すぐに泣くし、すぐに笑う。
 それはどう接すれば良いのか、全く理解ができないもの。……しかし、決して嫌いにはなれないものでもあった。
 ――復興が始まったとは言え、未だ戦禍の爪痕はこの村にも残っているはずだ。
 その上、畑が駄目になってしまったりすれば。
 自給自足で賄われていそうなこの村で、村人達が生きて行く事は困難となるだろう。
 悟郎の脳裏に過るのは、過去『失敗』した後の事。
 空腹で過ごす事は、辛い。
 住む場所を失う事も、辛いものだ。
「腹いっぱい、食わせてやりたいよな」
 ぽつりと溢れる言葉は、紛れもなく彼の本心。
 懸命と生きようとする人々を、これ以上傷つけさせたくない。
 あの子達に、あの苦しみを味あわせたくは無いという気持ちだ。
 悟郎は、顔を上げ。
「……俺も手伝うよ、そっちの藁を運べば良いのか?」
「ン。そうだ、ちいと量は多いが気張っとくれ」
 藁を抱えた彌三八は、悟郎の問いにこっくりと頷き。
「そうか……、なら――」
 瞳を閉じた悟郎が手を差し出せば、空気が蠢いた。
 現実が歪み、虚構が形どられ。現れたるは実物を模した『幻術』。
「これで一気に運べるかな」
 偽物とは言え、実際に使うことのできる大八車であった。
「どれどれ、なかゝゝ良いモン作りやがるじゃぁねェか」
「そう? ありがとう」
「おォ、ちょうど良かった。これも乗せていってくれよ」
 そこに声を掛けたのは大量の土嚢袋の詰まった木箱を抱えた、喜羽・紗羅(伐折羅の鬼・f17665)の姿。
「土嚢やら幕やらも必要だと思ってな。……あんま天下自在符なんざ使いたか無ぇが、行商にちっと分けてきて貰ったんだ」
 紅のスカートを揺らす少女にしては、随分と荒い口調ではあるが――、それもその筈。
 この紗羅は紗羅にあって紗羅にあらず。
 その中身はオルタナティブ・ダブルで顕現した、無頼漢のご先祖『鬼婆娑羅』なのだから。
 そう。
 主人格たる、紗羅の現状と言えば……。
「うむ、上手なものだな」
「でしょー、コツがあるんだよー、まずはねえ」
 百々と少女が和やかに雪だるまを作る横。
「もーっ、引っ張らないでっ! 脱げちゃうじゃないの!」
 紗羅は、服を引っ張りながらわあわあとよじ登ってくる少年を引き剥がし。地へと下ろし――。
「うひひ、隙あり~」
「つっ、冷たぁっ!?」
 その瞬間。
 紗羅の背に向かって、別の少年が投げた雪玉がぱしゃりと弾けた。
「や、やったわねーっ!」
 笑いながら、ワッと逃げ出した子ども達に向かって。紗羅がゆるい雪玉を作って、投げつけると。
「やっちゃえ、ごうれむ!」
 歩いてきた畑ゴーレムが、その上にのった子どもの命令に従って雪を掬いあげて紗羅の頭上にとさとさと零した。
「きゃ、きゃーーっ!?」
 柔らかな雪に埋まる紗羅。
 子どもたちが、蜘蛛の子を散らすように駆けながら楽しそうにからからと笑う。
 今。
 紗羅はそれとなく避難の手伝いをしつつ。
 仲良くなりすぎた子ども達に、遊ばれていた。
「……ふふふ、畑ゴーレム達が子ども達と遊んでるですね」
 そんな遊ばれる紗羅を遠目に眺めて、感慨深そうに呟くアンコの足取りは寒空の下でも軽い。
 なんたって。
 避難の準備や養生を終えれば、村の温泉を借りる約束ができたのだから。
 それに食事だって用意をしてくれると、村人たちは言っていた。
 めんどくさい事をしやがるあの痴女めいた服のジェネ八の事も一瞬だけ忘れて、夜が来るまではゆっくりしたって良いだろう。
 ふふふ、とアンコはもう一度笑う。
「おっ、いいねェ。湯を貸してくれるって?」
「ああ、そうだな。……仕事前だけれど、畑仕事はどうにも汚れるし。助かるな」
 温泉は好きだ。
 顔を上げた悟郎が、彌三八の言葉にこくりと頷いて。
「マ、それに燗でも付きゃあ言うこたねェがな。暖けェもんでも食ってぬくゝゝさしちもらうかァ」
「ん」
 2人の会話に土嚢を抱えた鬼婆娑羅が、にんまりと瞳を細め。
「オッ、男同士裸の付き合いたァ、良いじゃねえか! ようし俺も……」
「ア、アンタは男と一緒にお風呂に入っちゃ駄目ーーッッ!」
 鬼婆娑羅の言葉が耳に入り、ひっつく子どもの山を抱えながら吠えた紗羅(本体)。
 なんたって鬼婆娑羅の中身が男だろうが、その姿は15歳の乙女。
 紗羅の姿なのだから。
 勝手に裸で親睦を深められても困ってしまうものだ。
 そんな人々を遠目に見やり。
「良いですね、生きる方々は実に生き生きしてらっしゃいます」
 眉を落としたまま穏やかな笑みを浮かべた灰枝・祇園(シナセガミ・f22953)は、タンスを抱えて山道を歩んでいた。
 祇園は『死』を齎す神だ。
 祇園は『死』を齎す神ではあるが、生きている物が大好きだ。
 ――だからこそ。
 死を齎す神である自らが、死を迎えねばならぬ方々ならまだしも。
 寿命がまだまだ残っている生きる方々に触れると、あまり良くない影響が出てしまう、と。
 彼は人々より離れて、一人重い荷物の運び出しを行っていた。
「……しかし、長らく死んでいらした古い方は考えることが違いますね」
 ――なんたって。遠く海から離れた山間の村を、海水で押し流そうだなんて。
 冷たい風にゆらゆらと揺れる葉を見やり、ぽつりと呟く祇園。
 家財置き場と化した大きな雪洞の中にひょいとタンスを置くと、黒い黒い瞳を一度閉じて、開いた。
 見下す村に感じる、たくさんの命の営み。
 ああ、ああ。素晴らしい。
 生きているなんて、なんとも良い事じゃあ有りませんか。
 ――いま生きている方々を、いま生きていない者が殺す事はおかしい事だ。
 過去が現在を殺す事は理から外れた行為だと、神として祇園は確信している。
「そこを間違えるような輩に、――『かみさま』を名乗って欲しくはないものですねえ」
 現在を過去に奪わせる訳には、いかぬと。
 祇園は雪風に靡く髪をかき上げると、柔らかく笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薄荷・千夜子
オリヴィア(f04296)さんと

やっとサムライエンパイアに平和が訪れたのです
レディ・オーシャンの好きにはさせません

私も雪国出身というわけではないですが、こんな感じで雪ウサギを作るんですよ!と可愛らしい雪ウサギを作り方を教えながら
おぉ、オリヴィアさん上達がはや……え、そんなリアル志向まで!?
驚いたりしつつもサイズ感や表情もさまざまな雪ウサギをたくさん作りましょう

作った雪ウサギたちは村のあちこちに設置
狛犬ならぬ狛ウサギです!
ウサギたちを触媒に【破魔】と【オーラ防御】で魔術を編み込み、オリヴィアさんの氷の魔力を補強するかのように結界のように張り巡らせます
少しでも被害が少なくなるよう【祈り】も込めて


オリヴィア・ローゼンタール
千夜子さん(f17474)とご一緒に

レディ・オーシャン、世界を渡る力を持っていたとは……
仔細は不明ですが、とにかく被害を抑えなければ

白い着物の姿(氷属性特化)に変身
千夜子さんや村の方々と一緒に雪ウサギを作って遊びます
千夜子さんの作るさまを観察して【学習力】を発揮し、小さくてデフォルメされた可愛いのや、技術の粋を凝らしたリアルなものなど色々なバリエーションを!
こういった創作はしたことがなかったですが……なかなか面白いですねっ

それらを畑の隅や家の前などに狛犬のように設置
氷の魔力を沁み込ませておき、【トリニティ・エンハンス】【オーラ防御】の基点に
避難誘導は他の方々にお任せして、家や畑の防護を重点的に



 白い着物に身を包んだオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)と、薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)は二人並んでしゃがみ込み。
 ぎゅっぎゅと手のひらで雪を押し固め、半円状に。
 拾ってきた、真っ赤な南天の実をひとつ、ふたつ。
 細長い葉を飾れば――。
 ぱっと笑みに唇を綻ばせた千夜子が、小さな雪ウサギを掲げた。
「オリヴィアさん! こんな感じで雪ウサギを作るんですよ!」
「成程、……こんな感じでしょうか?」
 こっくり頷いたオリヴィアも、千夜子に倣って雪を押し固め。
 きゅっきゅと雪ウサギの元を形成し始める。
「おぉ、流石オリヴィアさん。上達がはや……」
 その手際は、なかなか手早く素晴らしいものに見え。
 千夜子は雪国出身という訳でも無いが。
 雪ウサギを伝えた者として、オリヴィアが上達するとなんだか誇らしい。
「ややっ!?」
 しかし。
 そんなオリヴィアの手元を良く見た千夜子は、へんな音を漏らして思わず言葉を失ってしまった。
 それは半円状――では無い。
 しっかりとした腿に、ぴょんと跳ねる小さな尾。
 南天の実もただ埋め込むだけでは無く、まぶたをしっかりと形成されている。
 木の枝で細かく彫り込みをいれて仕上げられたソレは、まるで雪の中に隠れるウサギのようにも見えて。
 笹の葉の耳だけがそのウサギが本当は雪だと主張しているような、リアルな雪ウサギであったのだから。
 それとは打って変わって。
 デフォルメの利いた、小さくてかわいいふこふこしたシマエナガめいたフォルムの雪ウサギ達も、気がつけば沢山立ち並んでいる。
「いや、いや、いや、一気に上達しすぎでしょうっ!? えっ、なんですかそのリアル志向の雪ウサギっ!?」
 目を丸くした千夜子が驚いた声を上げると、オリヴィアがくすくすと上品に笑い。
「こういった創作はしたことがなかったですが……、なかなか面白いですねっ」
「創作自体、初めてだったのですか……っ?」
 更に驚きの色を翠瞳に揺らした千夜子は瞬きを重ねて、ぷるぷる顔を左右に振った。
「ま、負けていられませんねっ。ようし、私も頑張っちゃいますよ!」
「はい、沢山作りましょう!」
 気がつけば。
「おねーちゃん、雪だるまもつくっていいー?」
「はい、良いですよー」
 村の子ども達もいつの間にか混ざって並んで、二人は雪ウサギを大量生産中。
 しかし、二人はただ遊んでいるだけでは無い。
 完成したウサギにオリヴィアが手のひらを翳すと、雪に含まれた氷の魔力が雪うさぎに馴染み、編み込まれ。
 祈るように千夜子が破魔の加護を宿せば、雪うさぎに宿されたオリヴィアの力を高めるかのよう。
「ふふふ、狛犬ならぬ狛ウサギです!」
 仕上げに優しくウサギをすくい上げた千夜子は、ウサギを子ども達の手のひらへと乗せてあげ。
「さあ、皆さんのお家の前や、村の大切な建物の前に並べて来て頂けますか?」
「まっかせろやい!」
「はーいっ」
 明るく返事をする子ども達は、戦いの前であっても無邪気に楽しげな声。
 魔術を施した雪ウサギを託されれば、子ども達は勢いよく村中へと駆けて行く。
 そう。
 雪ウサギ達を要として魔術結界を張るべく、二人は雪うさぎを量産していたのであった。
 ほう、と息を零したオリヴィアは、満月色の瞳を憂いに揺らし。
「……これで少しでも被害が抑えられれば良いのですけれど……」
「――きっと大丈夫ですよっ!」
 そんな彼女に向かって、ぐぐっと拳を握った千夜子は力強く応じる。
「やっとサムライエンパイアに平和が訪れたのですから。……レディ・オーシャンの好きになんてさせてたまるものですかっ!」
「そうですね。……ええ、頑張りましょう!」
「おーっ!」
 拳をそのまま上げた千夜子に、オリヴィアはくすくすと笑って。
 レディ・オーシャンが世界を渡る力を持っていた理由は分からぬが、先ずはこの場の危機を退けるべく。
 雪ウサギをすくい上げた二人は、子ども達の背を追う。
 少しでも、被害が減らす事ができるように。
 ――祈りを籠めて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

徒梅木・とわ
【サイロ】
よりによってここ(エンパイア)か……
選んだのか偶然かは知らないが、後悔させて――
こら。口が悪いぞヴィクティム

さあて、とわは避難の準備だ
若い衆はさておき爺様婆様方は堪えるだろう
不安を煽るのも好ましくない、必要な事を必要な速度でやろうか

さてご老体たち、ゆっくり風呂にでも浸かりましょうか
雪の夜ともなれば冷えます。うんと冷えます
どうかたっぷりと身体を温めて、そうして避難に備えてください

身体を解しておけば避難の足取りも軽くなろうさ
その間に避難予定地にかまくらを作っておこう
……しかしこれ、中々重労働だね

おやおや、お姫様扱いはしないんじゃあなかったのかい?
まあ、くふふ、別に手伝いを拒む気はないがね


ヴィクティム・ウィンターミュート
【サイロ】

あんのアバズレ…
だがこれはチャンスでもある。今ここでこいつを仕留めれば…禍根は断てる
何より…従業員殿が随分とやる気を出してるみてーだからな
ここでさよなら、沈んで貰おう

とわ、人の非難は任せるぞ
お前なら出来るって、完全にそれ前提で動く
もうお姫様扱いしてアレコレやらねーよ、頼んだぜ

さて、畑を海水から護るなら…触れないようにすりゃいい
セット、『Alcatraz』
障壁展開、配置変更
大量の壁でドームを作るようにして、畑を覆う
余裕があれば住居も覆ってしまおう。海水の流入を防げるように、徹底的に隙間を塞ぎ、多重化で強度も確保だ

よし、これでいい
おいとわ、かまくらか?
肉体労働は流石にキツイだろ、手伝うぜ



 ぴんと立てられた、白に淡い桃色抱く狐耳。
 ふかふかとした大きな尾が、少しだけ神経質に揺れる。
「よりによって、ここを選ぶとはね……」
 サムライ・エンパイアは、徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)にとって実家も存在する生来の世界だ。
 その様な世界で好き勝手に暴れられて、勿論心地が良い訳も無く。
「まったく。選んだのか偶然かは知らないが、後悔させて――」
「あんのアバズレ……」
「……こら、口が悪いぞ」
 そこに言葉を重ねたヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)を、とわは軽く窘める。
 アースクライシスは、無事終戦を迎えた。
 しかしヒーローたちの決死の捜索も及ばず、手の届く事の無かった『脅威』達も居たのだ。
 そのうちの一人。
 ジェネシス・エイト――『レディ・オーシャン』こそ、今回の敵であると知らされたのだから。
 元よりお綺麗な口でも無い上に、先の戦争でもあちこち飛び回ったヴィクティムとしては雑言の一つも漏れようものだ。
「ま、これはチャンスでもあるよな。――今ここで仕留めれば、禍根も断てるってもんだろ?」
 肩をやれやれと上げたとわは、まあるい眼鏡の奥で桃色に長い睫毛の影を落として。
「そうだね。とわもこの世界を害させるつもりは、さらさら無いさ」
「ああ」
 ――何より。
 従業員殿が、随分とやる気を出してるみてーだからなぁ。
 彼女の瞳奥に揺れる色を、横目で見やったヴィクティムは頷く。
 先の戦争の後より、ヴィクティムは心の何処かで無意識に行っていたとわへの『お姫様』扱いを止めた。
 彼女は、自らの意思で戦う事ができる。
 彼女は、自らの意思で選ぶ事ができる。
 余裕綽々で笑って見せるだけの、――『非力なお姫様』なんかで無い事はひどくひどく思い知らされた。
 彼女もまた自らと同じく『戦う者』なのだと、思い知らされたのだ。
 だからこそヴィクティムは、もう彼女の為にアレコレとお膳立てしたりしない。
「とわ、避難は任せる」
 背を任せる一人の『戦う者』として、彼女に委ねると。
「くふふ、任せてくれたまえよ」
 雇い主殿の信頼に応えるように応えたとわは、ひょいと彼に背を向け。
「さてと、俺はっと――」
 その背を見送る事も無く。
 Set、DefenseProgram――。
 手早く左腕のサイバーデッキを操作したヴィクティムは、プログラムの展開を始めた。
 Run、Alcatraz。
 難攻不落たるプログラム。
 コールを行い大きく腕を振るえば、一瞬で畑へと障壁が幾枚も展開される。
 ――畑を海水から護りたいと言うのならば、簡単な話である。
 直接、海水が畑に触れないようにすれば良い。
 大量に生まれた障壁は、ドームの如く重なり畑を覆い。
 ついでにその横に立つ住居も覆ってしまう。
「よし、こんなモンかな……?」
 一区間を覆ってしまえばヴィクティムは、ぐっと伸びを一つ。
 一仕事が終えれば少しばかり気になるのは、従業員の働きぶりであろう。
 ……お姫様扱いはしないが、雇い主として気を配る事はできるものなのだから。

「……うーん。しかし、これは……」
 雪を前にとわは、まあまあ疲れた様子でぽつり。
「……中々重労働だね」
 数十分前までの彼女は、あんなに自信満々の笑みであったと言うのに――。
 ――……。
『さてさて、ご老体たち』
 避難と聞いて急く村人の老人達の前で、とわはどこか自信ありげな笑みを湛え。
『ゆっくり風呂にでも浸かって、たっぷりと身体を温めてから出発しましょう。ここの温泉は、効能も素晴らしいとお聞きしていますからね』
 猟兵達が用意してくれた移動方法は豊富だ。
 雪の夜は、うんと冷えるもの。
 どうせ避難が必要なのは夜なのだから、昼から急かすように避難をさせて良い事は一つも無いもので。
 不安を煽る事も好ましくないと判断した彼女は、温泉へと村人達を誘い。
 その後。ココ、避難予定地の山にて現在も雪洞を作りつづけていた。
 ぺたぺた、ぎゅっぎゅ。
 繰り返し、繰り返し。
 雪を集めて、水を掛けて、スコップで押し固める。
 ぺたぺた、ぎゅっぎゅ。
 どう考えても寒いはずの気温だと言うのに、とわの額には薄っすらと汗が滲む。
 細く息を吐いて、また少し休憩。
 とわはスコップを握り続けた手をいたわるようにぎゅっと握って、開いて。
「ん。よし、もう一息……」
「おい、とわ」
 そうして。
 スコップを再び握ろうとしたとわの横に、スコップがもう一本にゅっと生えた。
「……おやおや、お姫様扱いはしないんじゃあなかったのかい?」
「勿論」
 落ちた影に顔を上げたとわは柔らかく瞳を細めて、スコップを手に笑うヴィクティムを見上げた。
「でも肉体労働は流石にキツイだろ? 手伝うぜ」
 彼の申し出に、花が咲くように笑ったとわはスコップを再びぎゅっと握りしめて。
 ぺん、と雪をひとつ叩き。
「まあ、くふふ、別に手伝いを拒む気はないがね」
「オーキードーキー。任せておけ」
 二人並んで、作業を再会するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

中御門・千歳
シュデラ(f13408)と

まったく、わざわざ世界を渡ってくるなんて、忙しいやつだよ
言いたい小言は腐るほどあるけどねぇ、ともあれ少しでも被害を減らさなきゃいけないねぇ

下手なカバーじゃ、大量の海水に流されちまうだろうしねぇ……
シュデラが作り出した氷を加工して、海水を防ぐ為のドームでも作ろうかねぇ
ん、あたしかい?
あたしが力仕事をするわけないじゃないかい
削るのはもちろん式神召喚・具足で召喚した侘助と錆丸の仕事だよ

準備をしてりゃあ、村のクソガキどもが集まって来るかもしれないねぇ
こら、侘助に悪戯するんじゃないよ!
雪玉で応戦しても、さすがにこの年じゃ勝てないねぇ

シュデラ!笑ってないで手伝いな!


シュデラ・テノーフォン
千歳婆さん【f12285】同行

アイツら世界渡れたんだ
ま何処に居ようが狩るだけだけど
それで何だっけ、海落とすの?凄いなァ
感心してる場合じゃないか

婆さんと村へ、挨拶して俺達の方針を説明しよう
俺達は村の建物や田畑の保護を行いたいんだ
村人と話し合って優先度の高い場所からやってくよ

下手に海水が入ると塩害とか怖いからね
できる限り海水に触れさせない方法って事で
精霊銃に氷の精霊弾を装填
保護する場所を厚い氷のドームで覆って海水を防ぐよ
UCで銃を複製して効率上げようか
えっ婆さんは指示だけ?…って子供と遊んでる
いいなァ俺も終わったら遊びたいけども
時間の許す限り保護に徹するよ

良いじゃないか婆さん、沢山遊んで貰いなよー



 村人達に保護すべき畑の優先度を尋ねた所、土を休めている田んぼを優先して欲しいとの返事が幾つも返ってきた。
 主食たる米を作る田んぼが駄目になってしまえば、この場所で生きて行く事は困難となるだろうから、それは本当に切実な話なのであろう。
「それじゃあ、始めようかねぇ」
 中御門・千歳(死際の悪魔召喚師・f12285)の声掛けに。
「うん。じゃあ行くよ」
 頷いたシュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)が、白い拳銃へ装填するのは氷の精霊の力が籠められた透明な弾。
 重ねてシュデラが力を巡らせれば、冷えた空気がゆうらり揺れて。
 一瞬で空中に、50を超える数の繊細な硝子細工の施された白い拳銃が生み出される。
「でも、ここに海が落ちてくるんだよね?」
 凄いなァ、なんて。
 感心している場合で無い事を理解していても、少しばかり感心したような声をシュデラが漏らしてしまうのも仕方が無い事だ。
「そうだよ。わざわざ世界を渡って悪さをしようなんて、忙しいやつだねぇ」
 言いたい小言は腐るほどあるさね、なんて。
 歳がうんざりと肩を上げ、周りを見渡せば。
 見渡す限りの田んぼに、山。
 こんなに広い空間を、一瞬で海水で埋め尽くしてしまうというのだから。
 その水量の暴力には感心するやら、呆れるやら。
 しかし感心してばかりも居られない。
 畑に塩水が染み込んでしまえば、その土地で作物を作ることは難しくなってしまうものだ。
 だからこそできるだけ万全に対策はしておきたいと、千歳は瞳を眇め。
「下手な薄さじゃ、大量の海水に流ちまいそうだねぇ」
「じゃあ、厚めにしておこうか」
 千歳の言葉に。シュデラは兵隊のように立ち並んだ拳銃達に、号令をかけるよう。
 手にした拳銃より弾を放てば、宙に浮く銃達が重ねて銃声を響かせた。
 放たれた力は、見る間に田んぼの上へと分厚い氷を生み出し――。
「ほうれ、お出で。侘助、錆丸!」
 重ねて千歳が召喚札を放てば、しゃれこうべの鎧武者と鋼の大百足がぞろりと地へと降り立った。
「さ、アンタ達! その氷を加工してドームにするんだよ!」
 ぴしっと指差す千歳の命令に、式は一気に飛び出して。
「え、婆さんは何するの?」
「ん? あたしかい? そりゃ、ここで見守っているさ」
「えぇ……、指示だけって事?」
「あたしが力仕事をするわけないじゃないかい」
 シュデラが瞬き重ねればからから笑った千歳の横で、侘助がかき氷よろしく氷を整えはじめ。
 そこに気がつけば。
「なあなあばあちゃん、この百足でっけぇなあ!」
「おっきい! 乗って良い? 乗っていいよね?」
「このしゃべこうべ、賢いなぁー」
 派手な立ち回りにいつの間にか集まってきていた村の子ども達が、侘助をぺたぺた撫でるわ、錆丸に跨がろうとするわの、大わらわ。
「こォらっ、クソガキども! 悪戯するんじゃないよ!」
 侘助を撫でまわす子どもへと向かって、千歳が雪玉を投げつけ追っ払おうとすると。
「うわっ、ばあちゃんが怒った!」
「逃げるなー! 数でおせー!」
 子ども達も負けじと雪玉を投げて、応戦する。
 鋭く地を這った錆丸がその身体で雪玉を受け止め、千歳も更に子どもたちに雪玉を投げ返し――。
 一気ににぎやかになった田んぼの周り。
「いいなァ……、俺も遊びたいなー」
 子どもと雪玉を投げ合う千歳に、シュデラはふっと笑みを浮かべて。
「こういう事はあたしは見学側なんだがねぇ。ほら、シュデラ! 笑ってないで手伝いな!」
「はは、良いじゃないか婆さん。沢山遊んで貰ってきなよー」
 どうにも年には勝てぬと。
 雪玉で応戦しながら発破を掛ける千歳に、氷を生み出しながらシュデラが応じた、……その瞬間。
「――ぷあっ!?」
 シュデラの顔面へと弾けた、雪玉一つ。
「白いにいちゃんは反撃をしてこないみたいだぞ、せめろーっ!」
「えっ、何かやってくれてるんじゃないの!?」
「やれー!」
 子どもたちはわあわあと駆け回り、雪玉の集中砲火を食らうシュデラ。
 黙々と氷を整える侘助に、錆丸に守られながら雪玉を投げる千歳。
 それは戦の前だと言うのに、どこか平和な光景。
 きっと、――猟兵達はそんな日常を護るべく戦うのであろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
冬の厳しい寒さの中、此処が海にされてしまっては
人の彼等はこの地で生きられないでしょうね……

村人の避難は倫太郎殿に、私は畑の保護に向かいます
とは言え、此処が海になれば畑の被害は免れません
しかし少しでも対策をして損は無いかと
畑を囲うように柵を設置します

作業を終えて倫太郎殿と合流
やれるだけの事はしました
あとは戦いを待つのみ

倫太郎殿、如何されましたか?
あぁ、雪兎を作っているのですね
私の居た土地もこのように雪が積もる土地でした
貴方のように子供達が作っていました
……時が来るまで、私も作って待っていましょう

完成した雪兎を彼が作ったものと並べる
海に浸かれば彼等も消える
必ず守りましょう、倫太郎殿


篝・倫太郎
【華禱】
陽が暮れて気温が下がる前に避難完了させときてぇな

つー訳で、避難して欲しい旨を伝えて避難の手伝い
雪ン中の移動ってな、ただでさえ体力奪われるから
必要そうなら年寄りや子供の移動に手を貸して

んー?明日の朝には終わってっから、ちょっとだけ我慢してな?

そんな話もして、避難の手伝い終えたら村に戻る

ん、夜彦もお疲れさんな?
雪だるまもいいけど、これどうよ?
ぎゅぎゅっと雪の形を整えて固めただけのそれに
南天の実で瞳、葉で耳……の雪ウサギ(不格好)

大きさも色々作ろうぜ

作ってく内にコツも掴んで
手が悴む頃には随分とマシな雪ウサギ作って見せて
また作ろうぜ、夜彦

夜彦が作った綺麗な雪ウサギの横に自作のを添えて
そう笑って


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

海水か…
否。お前が居てくれれば大丈夫だ

村では村人達に状況の説明をし避難してくれる様伝えよう
敵が来る迄寒い外に居て貰う事になる故心苦しいが…と
…これだけ雪があるならば鎌倉を作れば良いのだろうかとそう宵へ声音を

その後は安全な場所に住民と共に移動
『怪力』を使い雪を集め固めた後中を掘り宵と共に住民達用の鎌倉を作って行こう
寒い場所は苦手だがお前とならばそれすらも楽しく思えるのは何故だろうな

鎌倉を作り終えた後は建物や畑の保護の手伝いへ
屋根をつけシートで覆い被害が抑えられる様準備をしよう

時折悴む手に息を吹きかければ宵へお前も冷えては居らんかと手を差し出そう
少しでも温められればよいのだが、な


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

大丈夫ですよ、たとえ海の中だろうと雪の中だろうと
暗闇の中だろうときみを導いて見せましょう

住民の方々には「コミュ力」「礼儀作法」を駆使して状況説明と避難の旨説得を
ザッフィーロ君とともに「地形の利用」で選んだ降る水の玉の衝撃が少なそうな場所にかまくらを作りましょう
ふふ、きみと大きな何かを作るってわくわくしますね

完成したならば住民の方を誘導しつつ、建物や田畑の保護を
板やシートや藁などを使って海水ができるだけしみこまないようにしたく
冷えた手を閉じ開き温めているところに
伸ばされた手に手を重ねたなら、指を絡めましょう
ふふ、ありがとうございます
こうしていれば心まで温かいですよ



 青空にぽつぽつと浮かぶ厚ぼったい雲より、薄ら零れ落ちる薄い雪。
 太陽が出ているとは言え、山の上は冷える。
 ――海水は、空より降り落ちてくる。
 そして水は重力に引かれるがままに、低い場所に溜まるものだ。
 山間に存在する村より避難を行うのならば、より高い場所へ、と。
 この山上に位置する広場が、避難所として猟兵達によって選ばれたのであった。
 瞳を眇めた篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は他の猟兵達が作成中の雪洞や、生み出されたゴーレムと家財の付喪神が闊歩する広場をぐるりと見渡し。
「うっし。この調子なら、陽が暮れる前に避難も完了できそうだな」
 確認するように呟いて、吐息零せば色は白。
 そのまま倫太郎が踵を返そうとした、その瞬間。
 彼の服裾を引く、小さな手のひら。
 倫太郎がそちらへかんばせを向ければ、綿入れ半纏を羽織った少年が見上げていた。
「なあなあ、にいちゃん。ひなん? って、いつまでいれば良いんだ?」
「んー? 明日の朝には終わってっからさ。ちょーっとだけ我慢してな?」
 ぽん、と倫太郎が少年の頭に手のひらを乗せてやると、少年はこっくり頷き。
「そうかぁ……、山は寒いから、にいちゃんも身体冷やさないようにしろよー」
「はは、ありがとな。あ……、前見て走れよー!」
「だいじょーぶだってー!」
 手を大きく振りながら友達の元へと駆け出した少年に、倫太郎も手を振り返し。
 ぐっと伸びを一つ。
「さってと。もう一仕事、ってな」
 萌葱色を揺らした倫太郎は、踵を返して。
 村へと向かって、本日何度目かの下山を始め――。

 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が雪の深さ等を調べ、このあたりならば十分な雪の深さであろうと選出した地点。
 雪をぎゅうと硬めるザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)の腕は、重機のように力強い。
「ふむ、こんなものだろうか?」
 ショベルを手にしたまま、ザッフィーロは硬めた雪の上で首を傾ぎ。
「ええ、十分でしょう」
 同じくショベルを手にした宵が、雪の具合を確かめるように雪肌を撫ぜてから同意を示した。
 ――皆が避難している、山の上の広場。
 避難の為にユーベルコードで少しばかり除雪をしたとは言え、山の中に積もる雪は深い。
 敵が来るまで、外で過ごして貰う事は心苦しい事だ。
 その上。
 夜になれば、更に雪が降ることも予知に出ていた。
 だからこそ二人は村人やその家財を雪風より護るべく、地形を利用した雪洞を掘り進める事にしたのであった。
 ザッフィーロに固められた雪は、本当に固く。こんなに寒い山中だと言うのに、雪を掘り進める二人の額にはじんわり汗が滲むほど。
 それでも二人はブロック状に雪を切り掘っては、内部を広げる形で雪を外へと投げ出し。
「ふふ、こんな時ですけれど。――きみと大きな何かを作るのは、なんだかわくわくしますね」 
 掘り進めるのも一苦労であるが、宵はふと言葉を漏らして唇を笑みに上げ。
「――ああ。寒い場所は苦手だが、お前とならばそれすらも楽しく思えるのは何故だろうな」
 銀の視線を交わしたザッフィーロも小さく肩を下げてから、柔らかに笑みに唇を宿した。
 雪に吸い込まれるショベルがざくりとどこか心地よい音を立てては、雪のブロックを外へと放り出し。
「ふふ、……僕も同じ気持ちだからかも、しれませんね。――ああ、そちらの端は一段下げて掘っておきましょうか。冷気は下に籠もるものですから、一段低い溝があればその分床が暖かく成る筈です」
「成程、任された」
 地形を最大限に利用すべく言葉を重ねる宵に、ザッフィーロは持ち前の怪力で応じ。
「……しかし、海水か……」
 しかし先のことを考えれば、思わず零れた気鬱げな吐息。
 少し動きを止めたザッフィーロは差し込んだショベルの持ち手に掌を添えたまま、小さく首を振った。
 この後に戦う敵は、周りを海にしてしまうと予知に聞いたもので。
 寒い場所も、海も苦手なザッフィーロの気持ちは推して知るべし、といった所だろう。
「――大丈夫ですよ」
 そんな彼の掌に、そっと添えられた冷えた指先。
 ザッフィーロが振り向けば、宵が瞳を細めて。
「たとえ海の中だろうと、雪の中だろうと、暗闇の中だろうと。――僕はきみを導いて見せましょう」
「……ああ、お前が居てくれれば大丈夫だな」
 愛おしき大切な者の言葉に勇気付けられれば、ザッフィーロはクッと笑みに喉を鳴らし。
「随分と冷えてしまったものだな」
 少しでも温められるように、と。
 重ねられた掌を、ザッフィーロは引き寄せるように掌で包みこんだ。
「ええ、……でも」
 ほつりと言葉を零して応じる宵。
 自らの指先を包む褐色の掌へとそろりと貝のように指を絡めて、彼はかんばせを小さく傾ける。
「――こうしていれば心まで温かいですよ」
「……ああ、全くだな」
 雪洞が完成した後も、やることはまだまだ山積み。
 視線交わして笑いあった二人はもう一度きゅうと掌を握りしめてから、作業を再開するのであった。

 水は横へと広がり流れるもの。
 一気にこの一体が海水に沈んでしまえば意味はなさぬかも知れぬが、場所が良く水位が浅ければ役立つかもしれぬと。
 少しでも畑へと流れ込む海水を食い止めるべく、他の猟兵達が藁を敷いてから氷や障壁によるドームを張った畑を、更に囲む形でぐるりと柵を設置した月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は、細く息を吐いて。
 ――願わくは、人々がこの地に住み続けられるように。
「おーい、夜彦。そっちは終わったみたいだな」
 瞳を夜彦が閉じた瞬間、その背に掛けられた耳馴染んだ声音に振り向けば。
「ん、お疲れさん」
「はい、やれるだけの事はしました。倫太郎殿もお疲れ様です」
 そこには、瞳を細めて笑う倫太郎の姿。
 眦を柔く落とした夜彦は、その視線をそのまま倫太郎の掌へと下げて――。
「そちらは……」
「ん。なかなか良いだろ、どーよ?」
「雪兎ですか」
 どややっと笑った倫太郎の掌の上に乗っているのは、南天の実に葉の耳。
 すこしばかり歪な形ではあるが、立派な雪ウサギであった。
「――私の居た土地もこのように雪が積もる土地でしたから、貴方のように子供達が作っていたのを思い出しますね」
 懐古に翠を揺らした夜彦に、倫太郎は首を傾ぎ。
「ん、じゃあ作り方は知ってるな?」
「……ええ。それでは時が来るまで、私も作って待っていましょうか」
「おー、大きさも色々作ろうぜ!」
 くすくす笑って応じた夜彦もしゃがんだ倫太郎に合わせてしゃがみ、二人並んで雪の形を整えだす。
 夜彦の生み出す形の整った雪ウサギの横に寄り添う、すこうし歪んだ倫太郎の雪ウサギ。
 沢山作れば、手もかじかむ。
 沢山作れば、少しは形もこなれてくるもので。
 雪ウサギの群れができる頃には、冷え切った掌。
「また作ろうぜ、夜彦」
「……ええ、必ず」
 指先を温めるように掌交わした二人は、こっくりと頷いて。
 雪遊びができる、平和な村を護るべく。
 この平和な土地を海に沈める蛮行を許す訳にはいかぬと、夜彦は心に誓う。
 ――必ず、守りましょう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

この世界は先日平穏を取り戻したばかりだと言うのに…許すわけにはいきません!
今一度わたしたち勇者の出番ですよ、ナイくんっ!

避難誘導や建物の保護などはささっと終えて…うふふふ
ナイくんに雪玉えーいっ!(投げる)

また今年も冬がやってきましたよー!
故郷で雪は見慣れてますが、学園にきてからはすっかりご無沙汰
ナイくんもお仕事終わりました?じゃあ雪で遊びましょうっ!

せっせと転がして【怪力】で作っていたのは大きな堅い雪玉
しっかり固めて頑丈に!
わ、ナイくんの雪玉が乗って雪だるまさんになりました!
持ってきた林檎を目の位置に嵌めればナイくんみたい…弟くん?
うふふ、海水の後も残るといいですね!


ナイ・デス
ソラ(f05892)と

どうやってこの世界に……気になる、ですが
まずは被害を防ぐ為に……ふーむ

私は避難誘導、ソラに任せ
他の猟兵の工夫で、完璧に被害防ぐことができればいい、ですが
被害が少しでたら、その時に『生まれながらの光』で畑など、癒せるように
地縛鎖を大地と電脳ゴーグルに繋げ情報収集
状態、記録します
雑草だらけなど、癒し過ぎないように、細かい調整できるよう、記録が大事

……記録、終わりわぷっ!?
雪玉、直撃です……
ソラ、避難誘導はおわった、ですか。遊ぶのです?
まだ時間はある、ですし……そうですね。楽しみましょう、か
反撃に、大きな雪玉を……
投げず、雪だるまの頭に
……私より大きい、ですね
残る、でしょうか?



 何事にも記録は大切だ。
 他の猟兵達が様々な方法で地を護ろうとしている事は、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)も理解をしている。
 しかし、もし。
 もしその方法で上手く行かなかった時の対策を考えておく、――リスクヘッジは大切な事だ。
 音も無く揺れる大地に繋がった鎖、電脳ゴーグルを操作しながらナイはまあるい瞳を揺らし。
「状態、記録します」
 現在の大地の状態を記録しておく事で、被害がでた際もユーベルコードで適切に地を癒せるかもしれないと。
 畑、田んぼ、水路の具合。
 細かく場所毎の記録を繰り返し――。
「……記録、終わっ、わっぷ!?」
 ナイが大地との接続を切り、記録を終えようとした瞬間。
 その顔面に、雪玉が叩き込まれたのであった。
「ゆきだま、ちょくげきでひゅ……」
 口に入ってしまった雪をぺふと吐き出した、ナイの視線の先。
「ソラ。避難誘導はおわった、ですか?」
 軸足で地を綺麗に蹴り上げた、フォロースルーも優雅な美しいフォーム。
 勇者たるソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は、雪玉を投げるフォームも素晴らしいのだ。
 避難誘導の手伝いに行っていた彼女は、ぴかぴか笑顔で首を傾げて。
「はいっ、ナイくんもお仕事終わりましたかっ?」
「そうですね。今、終わりました」
 そのままぱたぱたと駆けてきたソラスティベルに、何事もなかったかのように頷くナイ。
 ソラスティベルは楽しげに掌を顔の前で合わせて笑い。
「うふふ、では雪遊びをしましょうっ!」
「遊ぶの、です?」
「久々の雪ですからねっ!」
 ソラスティベルの故郷は北の大地。
 雪は見慣れているものではあるが、アルダワ魔法学園へと入学してからは随分と見る機会の減ったものでもあった。
 太陽のように鮮やかな髪を跳ねさせて、ソラスティベルは久々の雪をさらりと掌で遊ばせて。
「なるほど。……まだ時間はある、ですし……そうですね。楽しみましょう、か。……それは、そうと、それは……?」
 赤い瞳をナイはぱちくり。
 ソラスティベルが転がして来たのは、本当に巨大な雪玉だったのだから。
「うふふ、よく聞いてくれました! これはわたし特製の雪玉です!」
「……ふむふむ。あの、もしかして……、投げる、つもりですか?」
「むむむ。ここまで大きくすると少し勿体ないですが、どうしましょうか?」
「そう、ですね……」
 ソラスティベルの返事に少しだけ考えた様子のナイは、新しい雪玉を作るところころと転がしだし――。
 何を始めたのかと、見守るソラスティベル。
「よい、しょ」
 そうしてナイは、新しく作った雪玉を抱えて少し背伸び。
 雪玉が上下に二つ、重ねられ。
「あ! じゃあこうやって林檎を嵌めれば……」
 意図を完全に理解したソラスティベルが、鞄より取り出した真っ赤な林檎を二つ埋め込めば――。
「立派な雪だるまさんになりましたっ!」
 まあるい赤い瞳の大きな大きな雪だるまの完成だ。
 落ちていた枯れ枝を、腕代わりにナイは雪だるまに刺してやり。
「……私より大きい、ですね」
「赤い瞳ですし、ちょっとナイくんみたいですね。……弟くん?」
「大きさ的には、兄かもしれません、にゃ」
 頬の形をぺちぺちと整えるナイに、ソラスティベルは竜の羽根を畳んでくすくすと笑い。
「うふふ、兄弟が海水が降ってきた後も残ってくれるといいですね!」
「残る、でしょうか?」
「それこそわたしたち勇者の出番ですよ、ナイくんっ!」
「……にゃるほどー?」
 首を傾げた相棒達は、互いに顔を見合わせる。
 ――それは戦いの前の、平和なひととき。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(f01757)と

あはは、流石。元気だなぁ
雪、ヴァーリャちゃん型になってる
なんて笑いつつしっかり厚着して

ドームすげえ
俺は――ん~。これでなんかでっかな
とUCを使えば畑を覆う大きな金網が

お。これなら多少氷が薄くても頑丈にできっかも?

後はヴァーリャちゃんに任せ
濡れたらやばそうなもん、運ぶの手伝うよ
と村人達に声をかけてせっせと荷物運び
あはは、少年。力持ちだな?

ん、ヴァーリャちゃんもおつかれ
おおー、すげ。ふたり入れる?
入っちゃおうとのそのそ
かまくらの中ってあったかいよなぁ
外、凍えそうだったと彼女の方に寄り添って
んー。こっちの方があったかいでしょ
ふふ、ヴァーリャちゃん、溶けちゃいそーだネ


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
綾華(f01194)と

ヒャッホー!
柔らかい雪にボフンとダイブ
きもちー!
…って、遊んでる場合じゃなかったな!?

俺は建物や畑の保護に
まずは『トリニティ・エンハンス』で魔力を強化して
建物や畑を分厚い氷のドームで包んでいく
そうすれば辺りが海になっても濡れない筈だ!
でも、強化したとはいえ、何軒も作ってくのは流石に疲れるな…!
おお、綾華すごい!
これで楽になったかも!

ふへ〜…やっと終わった
綾華もお疲れ様だぞ!

俺は最後の一仕事!
先程の作業を応用して
2人ゆったりできる大きさのかまくらを
じゃーん!いいだろう?

大丈夫、全然入れるぞ!
でもそっと寄り添われれば
身体全体が途端に熱くなる
む、むしろ今は綾華のお陰で暑いのだ…


雅楽代・真珠
【エレル】
僕はエンパイアの国宝だからね
如月とロカジが控えおろうってするよ
僕という威光にひれ伏す事を許そう
村人達は避難するように
作物はびにぃるで包んで…後はヨシュカとロカジが何とかするよ

雪国生まれなら雪うさぎも作って
うんと可愛くね
力仕事をする如月を眺め
ある程度完成したら一足先にかまくらに入って二人を待つよ

熱燗と温かい甘酒を皐月が準備
ヨシュカ、此方へおいで
火鉢が温かいよ
二人ともご苦労さま
今日は甘酒にしよう
酒は美味しいけど苦いからね
ぷくーっと膨らむ火鉢の餅
破裂、するの?

色んな味付けの材料を用意させたよ
僕は朴葉味噌で頂くよ
糖尿病妖狐…(儚い)(如月が黙祷)
ずんだ、何か解った?
答え合わせをしようか


ロカジ・ミナイ
【エレル】

ひかえおろう!こちらにおわしましまられますは国宝様だぞ、国宝様!
どーんと天下自在符を掲げて二番目の家来を演じる
ホレホレ、良い子だから避難をおしよ
蘇生の薬は村人全員分持ってきちゃいないんだ
そんで家々に筋交いをして補強
ヨシュカ、これやって
最悪、潰れなきゃ何とかなるよね、お天道さんで乾かせば

いやぁ、久しぶりだなぁ、かまくら作りなんて!
僕は雪国の出だから作り方なら任せといて
ヨシュカ、それやって
べっぴんの雪うさぎも付けて
…おや、真珠がいない

労働の後の熱燗はたまらねぇな!うめぇうめぇ
餅の食べ頃はそりゃあギリギリよ、破裂するギリギリ
僕は餅より高く餡子を盛ってきなこをぶっかけて食べるよ
ほぼ砂糖


ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレル】

お二人が控えおろうしているので、わたしは旗を振り振り避難誘導
はあい、皆さまこちらへどうぞ。押さない駆けない死なない…でしたっけ?

これやって、の言葉にしたがって。トンテンカンと補強作業
畑は…雪で覆って表面を氷状にしたら水が浸入しないかな?
お次はかまくら。はい、承りました。切り分けた雪を積んでいきましょう
なんだか沢山働いた気がします??あ、赤い実兎につけます!(ぴょんぴょん)

雅楽代さまいた!お寒くないですか?
!お餅焼いてる✨

ほかほか甘酒を賜って。あんまい。お酒ってそんなに美味しいのですか?
こちらにお餅をディップすると。わあ、色々ありますね!
ズンダ?緑色をしている…!それにします(好奇心)



 村の子ども達が何やら集まっている、その中心。
「何だ何だ、あの変な眉毛? 何をたべたらそんな形になんでェ……?」
「よくわからないけれど、なにやらすごく偉そうな輩だなー」
「きれい……、目にじゅうじがある……、片目隠すのかっこいいなぁ……」
 やれこやつらは何者かと、ヒソヒソ話。
「やいやいやい、ひかえおろう! こちらにおわしましまられますは国宝様だぞ、国宝様!」
 その真中で天下自在符を振りかざし、前髪を残して流した黒髪の先は鮮やかな紅紫色。
 びよんびよんの『何だあの変な眉毛』のロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は本日、ニの子分。
 片膝をついて恭しく、背におわしますお方を腕で示す。
「何だい、お前たち」
 示された先。
 一の子分たる、黒髪の男を模した絡繰人形の如月に、横抱きされた『国宝様』。――雅楽代・真珠(水中花・f12752)は子どもたちを薄紅色の瞳で見下ろして。
「……僕という威光にひれ伏す事を許してあげるから、早く避難をしなよ」
真珠色に光を照り返す尾鰭で空をひとつ薙ぐ。
「あ! それ将軍様の紋所でェ! 見たことあっぞ!」
「えー、偉い人!? 偉い人!? きれいなひとはやっぱ偉いの!?」
「片目を隠すのって、やっぱり秘められた力を封じてたりするのかなぁ……」
 天下自在符の出現に、平伏するどころかひそひそから、わあわあに進化してしまう子ども達の囀り。
「はあい、皆さまこちらへどうぞ、避難の基本は『おかし』と言いまして」
 その前へとずずいと出た右目を黒の眼帯で覆った機械人形、ヨシュカ・グナイゼナウ(一つ星・f10678)が引率手旗を、はたはたと。
「ええと。押さない、駆けない、死なないです。……でしたっけ?」
「ホーレホレ、良い子だから避難をおしよ。良い子にしてりゃァ、飴玉位なら奢ってやるさ」
 こっくりヨシュカが首を傾ぐ横。
 ロカジがさっさと避難先、……山手へと向かって歩みだした。
 ――なんたって。
 蘇生の薬を村人全員分持ってくるわけにゃァ、いかないだろう。
 押さない、駆けない、そして何より。
 人間、死なない事が一番だ。
「飴!? おかしってそういう事でィ?」
「死なないようにしよーっと」
「髪の色をあんなに鮮やかに染められたらかっこいいよなぁ……」
 何やかんやで。ロカジとヨシュカを先頭に、避難誘導される子ども達。
 真珠を抱いた如月も、子ども達が逸れぬように歩調を合わせてその背を追う。

「ヒャッホーっ!」
 ゴーグルの端より跳ねた毛を、風にぴょいっと靡かせて。
 分厚く降り積もった雪へと飛び込んだヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)の身体を、雪肌は柔らかく受け止める。
「きーもちーっ」
 まだ誰も踏み入れていない雪へと飛び込む事は、さくさくが全身に伝わってとても心地が良い。
 ごろんと寝返り、うつ伏せから仰向けに。
 空を見上げたヴァーリャに、掛かる影。
「あはは、流石。元気だなぁ」
 厚手の上着をしっかり着込んだ浮世・綾華(千日紅・f01194)は笑って、寝転んだヴァーリャへと手を伸ばし。
「見て。雪、ヴァーリャちゃん型になってる」
 差し出された手をおずおずと握り返して、立ち上がったヴァーリャが示されたままに振り返ると。
 彼の言葉通り。雪の上に残った、ヴァーリャの裏と表の形。
「ふふ、なんだか面白いネ」
「うむっ! ……って遊んでる場合じゃなかったな!?」
 雪に浮かれていた頭の中から、本来の目的を思い出し。
 ぴゃっと跳ねたヴァーリャに、綾華は瞳を細めて彼女を見やり。
「そーネ。じゃあとりあえず、やることやってから遊ぼっか」
「うむ、了解だぞ!」
 明るい返事を返したヴァーリャは、早速水の魔力を漲らせて。
 ひゅうるりと吹く木枯らしよりも、ずっとずっとつめたい冷気をその身に這わせた。
 ふうっと力を籠めれば魔力によって生み出された真水が、ヴァーリャの魔力が篭もった吐息に一瞬で凍りつく。
 そうして完成したのは、建物を包み護る分厚い氷のドームであった。
「おー。すげえな、ヴァーリャちゃん」
 見上げた綾華は瞬きを重ね。
「ふふ、ありがとうだぞ! でも、何軒も作ってくのは流石に疲れそうだなあ……!」
「うーん、そーだよね」
 ヴァーリャが肩を下げる様には、綾華も感心してばかりは居られない。
 俺は――、と。
 少しだけ空を見上げて、地を見下ろし。
「……ん~。これでなんか、でっかなぁ」
 そうして綾華は、掌の中に召喚された『あらゆる困難を打開する鍵』を空中に差し込む様に。
 ――開け。
 カチリ、と。何かが開く感覚が指先に伝われば、その先より勢いよく金網が飛び出した。
 一気に広がった金網は、畑を覆い尽くし――。
「お。これなら、多少氷が薄くても頑丈にできっかも?」
 綾華の言葉に頷いたヴァーリャが、もう一度魔力を駆けさせると。
 立派な氷の仕上がりに反して、先程よりも随分と魔力の消費は少ない手応えだ。
「おお、本当だな! これで楽になったかも! 綾華すごい!」
「ん、お役に立てて何より」
 ヴァーリャの言葉に、にっと笑んで応じた綾華。
 そうして視線を動かせば、大きな荷物を抱えて歩く少年とその母親らしき姿に、朱の視線を止めて。
「それじゃ俺は向こうを手伝ってくるから、ヴァーリャちゃんこっちは頼めるかな?」
「勿論なのだ!」
 ぐっと拳を突き上げたヴァーリャに、綾華は眦を下げて踵を返し。
「やあ、少年。力持ちだな? 少し運ぶの、手伝わせてよ」
 なんて、少年へと手を差し出した。

「ま、最悪潰れなきゃァ、何とかなるもんさ。後はお天道さんが乾かしてくれるだろう?」
「はい! 畑もだいたい氷がかかりましたし、うまく行くと良いですね」
 家々に筋交いの補強をして回っていたロカジは、工具箱を片手に。
 後ろを付いてくる木材が、よたよた、ゆらゆら。
 何かとコキつかわれたヨシュカは、余ってしまった自分より大きな木材を抱えて。あんまり前はみえていない。
 そんなこんなで、避難所となっている広場まで歩む道。
「おや、お前たち。そちらは終わったの?」
 広場の入り口で火鉢の近くで切り株に腰掛けた真珠は、よたよたと揺れながら向こうから歩いてくる木材に目を止めて。
 その奥では如月がせっせと雪を積んでいる。
「はい、頑張りました!」
「やぁ、かまくら作りかい? 良いねェ、僕は雪国の出だから作り方なら任せといてよ……イテッ!?」
 見えていないけれど懸命に真珠の声に応えたヨシュカに、ロカジが言葉を重ねて。
 ヨシュカがえいやっと木材を置くと、ロカジの頭に直撃していた。首を傾いだヨシュカには、見えて無いけれど。
「そう、お疲れ様。……ふうん、それなら雪うさぎも作って。うんと可愛い子をね」
 見えていたけれど真珠は肩を竦めただけ。
「おう、おう。あい分かった」
 ロカジは頭を撫でながら、こっくり頷き。
「……じゃあまず、そうだな。ヨシュカ、そっちのシャベルで雪をブロック状に切ってくれるかい?」
「はい! 承りました!」
 ヨシュカは言われるがままに、如月と並んで雪を切って、重ねて。
「そう、それを重ねて積んで水をかけて」
「はい、承りました!」
 ヨシュカは言われるがままに、雪のブロックを重ねて、水をかけて硬めて。
「上手いじゃないの。その調子で積んで行けるかい?」
「はい、勿論!」
 ヨシュカは言われるがままに、如月と並んでかまくらの壁を広げて――。
「ああ、ヨシュカ、べっぴんの雪うさぎも作っておくれ」
「はい、承りました」
 あれ、おかしいな。なんだか不思議と、沢山働いている気がします??
 そう、そのとおり。
 今日ずっと君は、家屋の補強時からこんな感じで良いように使われていたのですよ。
 ヨシュカがやっとの事で違和感に気がついて、クエスチョンマークで頭をいっぱいにしている頃。
 ちょいちょいと雪を固めていたロカジが、ふと顔を上げて。
「……と、おや? そう言えば、真珠がいないねぇ」
「わあ、何処に行かれたのでしょうか?」
 南天の実で雪ウサギに瞳をつけおえたヨシュカは、雪ウサギを両手ですくい上げて立ち上がり。
「此方だよ、ヨシュカ」
 そこに響く、鈴を転がすような声。
「雅楽代さま、いた!」
 声が導く先は、完成間近のかまくらの中。
 そこには如月が火鉢で調理をする横で、既に我が物顔でくつろぐ真珠の姿があった。
「ご苦労さま。疲れたでしょう? 此方においで、火鉢が温かいよ」
 雪ウサギを真珠の横に置いて腰掛けたヨシュカは、金色の瞳を大きく見開いて。
「わあ、中は寒くないのですね」
「オッ、気がきくねぇ。燗を用意してくれたのかい?」
 続いてかまくらの中を覗き込んだロカジが目ざとく、如月の前で湯気を立てる鍋の中の徳利に視線を止めた。
「うん、ご褒美の熱燗に甘酒だよ、それにお餅も用意させたよ」
 長い睫毛を揺らして瞳を細めた真珠は、自らの分の甘酒を啜り。
「へへへ、そりゃあ、ありがたいご褒美だね。遠慮無く、頂くとしようか」
 スッと前に出た如月が、ロカジにはお猪口と、ヨシュカへはほかほかの甘酒が入った湯呑を手渡した。
 飲み物よりふかふかと立ち上る湯気は、冷えた身体を優しく包み――。
「あー、うめぇ、うめぇ! 労働の後の熱燗はたまらねぇなあ!」
「お酒って、そんなに美味しいのですか?」
 ウキウキのロカジが、手酌でかぱかぱ熱燗を啜る横。
 甘くて温かい甘酒にほっこりしていたヨシュカは、不思議そうに目をぱちくり。
「酒は美味しいけど苦いからね。お前にはまだ早いかもしれないね」
 真珠の答えに、小さく頷いたヨシュカはあんまーい甘酒を啜る。
 これは苦くなくて、あまくておいしい。
「なるほど。お酒は苦いのですね……、あ! お餅がぷくーっと膨れています!」
 そうしてヨシュカの興味は、お酒から火鉢の上の餅へさっと移り変わり。
「おっ、食べ頃だねぇ」
 ぷっくり膨らんだ餅を如月が皿に取れば、朴葉味噌をかけた餅を真珠の前へと。
 たくさんの味付けが奥には用意されており、ロカジの心はもう決まっていた様子。
 ぴっと指を立てると――。
「僕は餅より高く餡子を盛って、きなこをぶっかけておくれ。そう、そう。もっと高く行けるだろう? 遠慮をするんじゃないよ」
「糖尿病妖狐……」
 言われるがままにほぼ砂糖の皿を作った如月は、黙祷をしながらロカジへと餅――否、砂糖をの山を手渡して。
 真珠がもうすぐ死ぬ生き物を見る目で、ロカジを見た。
「わあ、……鮮やかな緑色ですね!」
 そんな横で、ヨシュカはひとつの餡に目を止めて。
「それはずんだ餡だよ」
「ズンダ? ズンダって何でしょうか……? でも、折角なのでそれにします!」
 真珠が餅を食べながら応えると、ヨシュカの好奇心はもう止まらない。
 たっぷり鮮やかな翠を餅に落として、ひとくち齧れば。
 あまくて、しょっぱくて、荒く潰されたマメの味が爽やかに口の中に広がる。
「うん、うん。何か解った? 答え合わせをしようか」
「そうですね、これは――」
 ヨシュカは、瞳を細めて――。

「ふへ〜…やっと終わったあ……」
「ん、ヴァーリャちゃん、おつかれ」
 避難所になっている広場へと戻ってきたヴァーリャ、ぐぐーっと大きく伸びを一つ。
 綾華の横に腰掛けると、ぱっと笑って。
「へへへ、綾華もお疲れ様だぞ! あ、そうだ!」
 そうして何かを思いついた様子で、ぱっと立ち上がったヴァーリャは、最後の一仕事。
 ふうっと吐息に魔力に乗せて――。
「じゃーん!いいだろう?」
 彼女の魔力によって生まれたのは、二人がゆったりと入れるサイズのかまくらであった。
「おおー、すげ。……これ、ふたり入れる?」
「うむ、勿論! 全然入れるぞ!」
 促すように先にかまくらの中へと入ったヴァーリャが座り込むと。
「かまくらの中ってあったかいよなぁ」
 続いて中へと入ってきた綾華が外は凍えそうだった、なんて。
 ヴァーリャの横へと、ぴたりと寄り添い座る。
「……!」
 紫の瞳をまんまるに見開くヴァーリャ。 
「んー。こっちの方があったかいでしょ」
 悪戯げに眦を下げた綾華がくすくす笑うと、ヴァーリャは視線を少し反らして。
 ――いいや、そんなものでは全く隠せていないのだけれど。
「む、むしろ今は綾華のお陰で暑いのだ……」
 肩に、頬に、腕に。
 当たる彼の身体が、とてもとても、大きくて、眩しくて。
 ヴァーリャは耳まで熟した林檎のように染まっていない事を、祈る事しかしかない。
「ふふ、ヴァーリャちゃん、溶けちゃいそーだネ」
 反らされた視線を捕まえるように、綾華はヴァーリャの耳に囁いた。
 そんな事を言われてしまえば、ヴァーリャはますます頬を赤くするばかりで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
どうやってこっちに渡ってきたんだろ。
まあともかく、存分に戦う為に避難を先にね。
後はゆっくり待つとしよう。

他の猟兵と手分けしつつ住人に事情説明し天下自在符で避難して貰う。
夜までに避難できれば大丈夫、焦らないでとも加えつつ俺達が絶対倒すから、と安心させるように。
畑は覆いをかけて直接塩水かかるの防ぐ…後で魔法で塩回収できるかな?

一通り避難終わったらかまくら作り。
雪合戦も楽しいけどもなんとなーく今日の気分はこっち。
入れるサイズのを作るにはちょっと時間かかりそうだけど夜までには何とか?
温泉入って温もって、温かい汁物頂きながらのんびりと敵の襲来を待とう。
…冬の夜は静かでいいね、本当。

※アドリブ絡み等お任せ


花剣・耀子
来ると判っているなら、備えましょう。

……んん。どれくらい海にされるのかしらね。
畑の前に防波堤みたいなものが作れれば良いのだけれど。
超常的な手段では守れないけれど、物理的なお力添えなら任せて頂戴。
水浸しになったら困るものの退避も忘れずに。
刻限まではてきぱき働くとするわ。

雪遊びという柄でもないのだけれど。
……、ないのだけれど。

避難経路の見回りがてら、ちいさな雪玉を転がしながら村をうろうろ。
ぐるっとまわって、最終的におおきな雪だるまがひとつ。

……そこに雪があったのだもの。
ほらあの、……威嚇、威嚇よ。圧をかけるの。
ひとりだけじゃさみしいわね。お供もつけましょう。
ゆきうさぎもすきよ。

よい仕事をしたわ。



「夜までに避難できれば大丈夫だから、そんなに焦らないで大丈夫だよ」
 手押し車に家財を乗せて道急ぐ村人に、丁寧に畑へと覆いをかけるヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は声を掛けて。
「それに、俺達が絶対倒すからね。何も壊させる予定は無いけれど……水に浸からせたくないものがまだあるなら、俺に声をかけてよ。運ぶのを手伝うからさ」
「おォ、ありがとうなあんちゃん、後でまた頼むわァ」
 手を大きく振って応じた村人は、幾分落ち着いた足取りで山手へと向かい行く。
 覆い材を手にしたヴィクトルは、その背に掌をひらひら。
 そうして空を見上げると、一度休憩大きく深呼吸。
 ――もし海水に全て浸ってまったとしても、魔法で塩を回収したりできないだろうか?
 なんて、雪を拾ってきゅっと握り。
 ……ああ、あとでかまくらを作って、中で酒を飲むのも楽しそうだなあ。なんて。
 段々とずれて行く思考。
 でもこれ楽しそうだし、温泉も入ってから絶対やりたい。熱燗でやりたい。
 間に合うかなあ。……間に合わせるか。
「よし」
 なんて、ヴィクトルは少しばかり急いで作業を再開するのであった。

 ……海に成る、というのならば。
 予知されている範囲でなんとか水を食い止める事で他の畑への被害を減らす事はできないだろうかと。
「……んん、どの位水位が上がるのかしらね」
 うず高く土嚢を積み上げる花剣・耀子(Tempest・f12822)が、その高さの設定に悩んでいると――。
「ねえちゃーん、タンスを出すのに難儀しとるんじゃ、手伝ってくれんかのおー」
「ええ、少し待っていてもらえるかしら? すぐ向かうわ」
 村人に声をかけられ、耀子はそちらへと踵を返す。
 ――他の猟兵達が行っているような、氷やゴーレムを作り出せる訳では無い彼女が頼れるものは、その腕ひとつ。
 家財の運び出しに呼び出されれば、運び出しに彼方へ出向き。
 土嚢が足りぬと言われれば、土を詰めに此方に出向く。
 テキパキ働く彼女は、正に働き者。
 ――……けれど。
 別段これは、雪遊びという訳でも無かった。
 大体のしごとが終わって、避難経路の見回り、村人が取り残されていないかを確認しに行っているだけの事であったのだ。
 戯れに転がしだした雪玉は、大雪をぐんぐん飲み込んで巨大化し。
 村を一周する頃には、大きな大きな雪玉と化していただけなのであった。
「……そこに雪があったから、仕方ないわよね」
 蒼を眇めて誰に言い訳するでも無く呟いた耀子は、知らず識らずのうちにもう一つ出来上がっていた雪玉を大きな雪玉の上に重ね。
 拾った木炭で目を。
 たまたま落ちていた布でマフラーを。
 雪の重みでたまたま折れた枝を、腕として。
「……威嚇、威嚇よ。圧をかけるの。畑は案山子に守られる物、雪だるまが村を守る事もあるかもしれないわ」
 何かに言い訳をしながら、村外れに彼女はしゃがみ込み。
「……圧をかけるのに、ひとりだけじゃさみしいわね。お供もつけておいてあげましょう」
 立ち並ぶ雪うさぎに、耳と目をつけ終えれば。
 なんとなく竜めいた角をはやしたり、小さなコには羽根をつけてあげたり。こちらは小さな眼鏡。
 何となく8羽のウサギを増やしてあげると、すっと耀子は立ち上がり。
「……よい仕事をしたわ」
 そうして彼女は村を守る力強い味方の誕生にこっくり頷いて、瞳を細めた。

 猪汁をすすった後に零れる息は白い、白い。
 ほっこり温泉であたたまった身体の白い部分は、ほんのり紅に染まっている気がする。
 湯冷めしないようにたっぷり着込みはしたが、この後戦いと成ればまた冷える事も分かっている。
 ヴィクトルはお手製のかまくらの中で、夜色に飲み込まれだした陽に瞳を眇め。
「――冬の夜は、静かで良いね。本当」
 皆避難所に避難してしまった後であるから、余計静かなものだ。
 白々と降り落ちる雪の量は、昼間に比べて徐々に増えて来ている事がわかる。
「……敵なんて、来なければ良いのにねえ」
 呟き。
 肩を竦めたヴィクトルは、大きな指先で箸を動かして具を口へと放り込む。
 きんと冷え切った空気。
 ――音を飲み込むように。
 雪は人の居なくなってしまった村へと、静かに静かに降り注ぐ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『骨抜き妖怪『衣蛸』』

POW   :    随分と凝ってるタコ~。俺たちのようにほぐすタコ!
【タコの保護色能力で全身を迷彩して接近し】【筋肉の塊である8本の触手で相手を捕まえ、】【マッサージで弱らせてからの絞めつけ攻撃】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    カッピングもやってますタコ~。血流良くなるタコ!
【タコの保護色能力で全身を迷彩して接近し】【非常に強力な吸盤で相手を捕まえて、】【カッピングで生気を吸い取り弱らせる攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    運動不足じゃないかタコ~?ヨガは身体に良いタコ!
【再生能力を活かして非常にしぶとく接近して】から【筋肉の塊の触手と強力吸盤で相手へ捕縛攻撃】を放ち、【操り人形のように強制的にヨガをさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:まめのきなこ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●山に満ちる海
 夜の帳は、すっかりと落ち。
 分厚い雪雲の間より、青白い月がぽかりと覗いていた。
「エンパイアのみなさん、こんにちは〜☆」
 その静寂を割くが如く、響いた間延びした声。
「……あらあらぁ? もしかして、エンパイアで無いみなさんもいらっしゃるようですねん?」
 ま☆ どうでもいいですけれどね☆
 瞬間。
 猟兵達が彼女を見つける間も無く、一瞬で空を覆った海の塊が地上へと叩き落とされた。
 建物も、畑に覆われた氷も、猟兵達も。
 全てを飲み込み押し流さんと、水流が生まれ波がさざめき。
 地へと『海』が、満ち満ちる。
 その海を我が物顔で悠々と泳ぐ、幾つもの影。
 それはレディ・オーシャンが口説き落とした、海の魑魅魍魎。
 タコ達は八本の足で水を裂いて、その足を鋭く猟兵へと伸ばし――!
ナイ・デス
ソラ(f05892)と

きました、か
レディオーシャンさん……の前に、妖怪退治、ですね
ソラ、一気に倒そうと、思います。私の傍に、いてください

では……加減は難しい、ので。加減なしで、いきます

海水がくる【覚悟】もしていたので
【念動力】で【吹き飛ばし】……は無理でも、水の勢い弱める【オーラ防御】で流されず
宇宙服で呼吸はできて

【第六感】でたこの気配感じ
【範囲攻撃】『生命力吸収光』を放って、海中を照らし
迷彩でみえなくても、関係なく
筋肉の鎧なども【鎧無視攻撃】光は関係なく、触れたたこから【生命力吸収】加減無し、消滅させます

ソラ【かばい】庇われていますが
もし捕縛されても
【激痛耐性】仮初の肉体、壊れても平気、です


ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

この世界に来てまだ日も浅いはずですが…もう配下を揃えていましたか!
分かりました、ナイくんは吸収に集中を
護衛は任せてください!

ナイくんの服に『絵』に変身して張り付きます!
ふふ、これでどう見てもそういう絵のついた服にしか見えませんっ

ナイくんの吸収を突き抜けてきた蛸さんには、わたしの手だけを戻して…
にゅっと服から飛び出す手、握られた大斧で蛸さんを真っ二つ!
わたしが居る限りナイくんに死角はありませんよぉ!

【オーラ防御】をナイくんを守るように展開
【かばい】守る為に【盾受け】で盾を突き出し、
【怪力】を以て触手を引き千切る
ナイくんは傷を気にせず無茶ばかり…わたしが必ず守らなければ!



「きました、か」
 雪夜に海水が降り落ちる。
 確かな質量を持った水は、注がれた等という甘い物では無く。
 叩き込まれた水は、濁流と化して地を強く打ち据えて暴れ狂う。
 積もり積もった雪を、すっかり飲み込んでしまった海。
 それは宇宙服を纏っていなければ、触れれば凍える程冷たいものであっただろう。
 光を放ち加護と成し、ソラスティベルを背で護る形で大きく腕を払うナイ。
 何とか水流を少しばかり押し止めれば、流れに飲み込まれぬ様に。
 地に足で齧りつき、自らを錨石として。
「この世界に来てまだ日も浅いはずですが……、もう配下を揃えていましたか!」
 ナイの背後でソラスティベルが、水中に蠢く気配を確かに捉えると瞳を眇めて呟いた。
「ソラ、一気に倒そうと、思います。――……私の傍に、いてください」
 長い白髪を水流に靡かせたナイが、振り向くことも無く言葉を紡げば。
「分かりました、ナイくん! 攻撃中の護衛は任せてください!」
 それだけで作戦を理解してしまったソラスティベルは、相棒の言葉に大きく頷き。
 彼の背へとそっと手を触れた、その瞬間。
 ソラスティベルの身体は蕩けるように、ナイへと吸い込まれてしまった。
 ――否。
 自らの身体を『絵』と化したソラスティベルは、まるで服の模様の様にナイの服へとぺったりと張りついたのであった。
 刹那、迫る気配。
 ナイが水中を蹴り上げると、水流が掻き混ぜられて水泡を生む。
 昏い夜にその身体の色を染めて隠れていようとも、明確な敵意は隠されてはいない。
「させませんっ!」
 跳ねたナイの服の中で、絵が這うように移動し。
 服から飛び出した腕が握る蒼空色の巨大斧が、迫る衣蛸の足をすぱんと跳ね飛ばした。
「うふふ、残念でした! わたしが居る限り、ナイくんに死角はありませんよぉ!」
 再びにゅっと服に全身を戻すと、笑うソラスティベル。
 大きな赤い瞳でナイは真っ直ぐに前を見据えて、その身体を煌と輝かせた。
 昏い夜を照らすその光は、聖者たる光。――ナイの『生まれながらの光』だ。
「この力の加減は難しい、ので。――加減なしで、いきます」
 しかしその性質は人々を癒やす聖なる光と違い、『それがそこに在る為の力を吸収する光』であった。
 衣蛸達がその光に照らされて、怯んだ瞬間。
 大きく水中を蹴り掻いたナイは、愚直なまでに一直線に衣蛸へと迫り――。
「えーいっ!」
 反射的に光を纏ったナイを押し止めようと、衣蛸の足がナイを絡め取り。
 合わせてソラスティベルの腕がにゅっと服より飛び出し、衣蛸の足をぐいっと押し千切ろうとした瞬間。
 ナイがぎゅっとその足を握りしめると、跳ねきしんだタコの足。
 早回しで草が枯れるように、みるみるうちにその大きな足は萎んでしまう。
 それはナイによって生命力が喰らわれてしまった、生物の末路だ。
 水の中だと言うのに干物のようになってしまった足が、本体を侵食する前に。
 衣蛸は自ら足を斬り落として、間合いを取ろうとするが……。
「させない、って言いましたよねっ」
 服より伸びたソラスティベルの腕より、横薙ぎに放たれたシールドバッシュにその脳天を貫かれ。
 重ねてナイの光が、タコの身を灼き尽くす。
 しおしおのぱーになってしまったタコを尻目に、ナイは水中をぽーんと跳ねて。
 ソラスティベルは、服の上で肩を竦めた。
 何たってナイは怪我をする事も気にしないで敵に迫るような、無茶な戦い方をすぐにしてしまうのだから。
 ――ヤドリガミの身体がいくら仮初の物で、傷ついても平気だとしても。
 痛いものは痛いのだ。それなのに、……彼は。
 ふるる、とソラスティベルは左右に首を降り。
 ――……もう。
 ナイくんは、わたしが守らなければいけませんね! なんて。
「ソラ、……次は、沢山、きます」
「はいっ、任せてください!」
 相棒の言葉に、明るく彼女は応じるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
千夜子さん(f17474)とご一緒に

氷の結界は上手く機能しているようですね……
ならば憂いはありません、敵を叩きましょう!

姿は白い着物のまま
【トリニティ・エンハンス】で聖水の加護を身に纏う
【念動力】で水流を操作することで常に追い風を受けているような状態に
魚のように……とはいきませんが、これで不自由はしないでしょう

迷彩が剥がされたところへ海水を凍らせて氷柱を作って弾幕のようにして放つ(属性攻撃)
傷口を作ることで千夜子さんの毒が回りやすくする

絡み付かれたら全身から冷気を噴出させて吸盤を凍りつかせて脱出
冷気の魔力を集中させた拳打を叩き込む
凍てつき――砕けろっ!


薄荷・千夜子
オリヴィア(f04296)さんと

えぇ、後はここで仕留めるのみ!
海中の中というのは厄介ですが…
UCを発動し自身を蓮の花のオーラで包み水対策を
タコさんは好き勝手動かさせませんよ!!
【早業】で『獣尾綜絡』を放ちタコ足を縛り上げていきます
糸には【罠使い】【毒使い】で毒を染み込ませてじわじわと行動を阻害していきますね
こちらに近寄らせないように
あまり動かない方がいいですよ?糸もキリキリ食い込みますから
その保護色も面倒ですね…縛り上げつつ胸元から『花奏絵巻』を取り出して絵巻の端を咥えて一気に展開
百花繚乱の花嵐を起こして迷彩をかき消すように
オリヴィアさんには視線で合図
どーんとやっちゃってください!!



 どうどうと流れる濁流の中にあって。
 猟兵達が村を護るべく張り巡らせた氷は、何とか耐えてくれている様子だ。
 ――氷の結界は、上手く機能しているようですね。
 聖水の加護を自らに纏わせたオリヴィアは、激しい水流に対して念を流し込む事で流れを緩め。
 はらはらと着物の袖を靡かせながら、千夜子と視線を交わすオリヴィア。
 真っ直ぐに彼女の金の視線に応じた、千夜子を覆い護る気は蓮の花めいて。
 水中に在って言葉を自由に交わせずとも、二人の心は同じ。
 例え水の中でも、二人であれば。
 ――後は結界が壊れてしまう前に、敵を仕留めるのみだ。
 蓮の花弁をはらと散らしながら水を蹴った千夜子は水の中に獣尾綜絡を放ち、糸を張り巡らせ。
 千夜子の姿を認めるやいなや鋭く泳いできた衣蛸が、びよんと跳ね返されたかと思えば蜘蛛糸に絡めとられた虫の如く。
 タコが滅茶苦茶に足を振り回して逃れようとするが、動けば動くほど糸は食い込むばかり。
 更に千夜子が糸を引き絞れば、その弾力と軟性に優れた身体でも逃れぬ程に強く糸が食い込んだ。
 ――その上。
 糸に染み込んだ毒は、暴れる身体を痺れ蝕む。
 暴れるタコの動きを、健気に海中で立つ木へと巻きつけ委ねて。
 背後より現れたタコへと向かって、更に糸を放ち捕らえる千夜子。
 しかし。
 元より水中の生物であるタコは、泳ぐ事ならば普段より水中で生活している猟兵達よりも上手だ。
 土に、岩に、氷に擬態したその皮膚。
 見えているタコは捕らえられるが、見えぬタコはするりと二人の後ろへと水中をすり抜けて――。
 しかし。
 猟兵である彼女達は、戦う事ならばタコよりもずっと上手であった。
 迫る、吸盤の立ち並んだ足。
 オリヴィアと千夜子は気配だけで、その擬態により見えぬ一撃を左右に避け飛び。
 勢いそのまま。大きく地を蹴って一瞬バックステップを踏んだオリヴィアは流れる身体に対する水流を操作して、一瞬で逆に踏み込み返し。
 凍てつき――砕けろッ!
 そのまま水中とは思えぬ、鋭き回し蹴りを叩き込む!
 蹴り上げられた足先に篭められた氷の魔力によって吸盤が一瞬で凍りつき、タコは一瞬怯むが更に別の足を大きく広げ。
 同時に横手に跳んでいた千夜子が、くるりと全身をつかって水中一回転。
 天地逆転した視界のまま。胸元より絵巻を引き抜いて端を唇で咥えると、一気に絵巻を大きく広げた。
 はら、はら。
 水の中に舞う花弁。
 絵巻より膨れ上がった絵はそのまま、百花繚乱たる花々と化して水中に美しく咲き誇る。
 ――その花弁が大きく足を広げたタコの身体へと纏わり付いたかと思えば。
 擬態して隠れていた、タコの身体をありありと視界に顕し。
 ごぼ、ごぼ。
 美しく花びらに装飾されて隠れられなくなった事を悟った瞬間、タコはスミを吐き出して。
 愚直とも言える一直線で、水中を猟兵達に向かって駆け出した。
 ちらりと千夜子が顔を上げて、オリヴィアと交わす視線。
 千夜子のその視線の意味を、オリヴィアはよくよく理解している。
 一直線にタコが向かってくる先へと、腕を突き出したオリヴィアは魔力を膨れ上がらせ――。
 他のタコ達を相手取り、花弁を舞わせて糸を引き絞りながら千夜子は大きく頷いた。
 ――さあさ、どーんとやっちゃってください!!
 ――貫け!
 頷き返したオリヴィアが真一文字に腕を薙ぎ払い。
 弾けた魔力によって、一瞬で氷結した海水が氷柱を形取り。
 ――鼻先へと迫った衣蛸へと、殺到する!
 鋭い氷の矢はタコの身体を、頭を、足を貫き。
 その勢いのまま地へと叩き込み、繋ぎ止める。
 そしてタコがその動きを止めると、――オリヴィアと千夜子は同時に逆方向の敵へと向かいながら、すれ違いざまにハイタッチ。
 しかし、敵はまだまだ沢山、沢山。
 二人は更に向かい来る衣蛸達へと、真っ直ぐに顔を向けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月舘・夜彦
【華禱】
タコですね
海の生物だから、でしょうか

真の姿を開放
普段の姿は持ち主の想い人の姿
本来のヤドリガミとしての姿へ変える

移動は技能の水泳
まずは迂闊に動き回らず、倫太郎殿に囮になって貰い
此方は接近してくる敵の対処をします

タコの迷彩は視力と第六感で僅かな違和感や変化を察知
筋肉質の触手は捕まらないよう見切りと衝撃波にて弾き
カウンターで武器落としと鎧無視にて切断していきます

倫太郎殿が多くの敵を惹き付け、彼の合図により迎え花
――舞いて咲くは、現世
彼の元へと瞬時に移動して仕掛けます
集まった敵を早業の鎧無視・2回攻撃併せなぎ払いにて一掃
……倫太郎殿、怪我はありませんね?


篝・倫太郎
【華禱】
タコ、タコかぁ……
ま、油断せずにやってやろーじゃん?

水中の移動と戦闘は水泳で機動力確保

拘束術使用
連動させたHoldaとLoreleiを起動させ
潮流の動きや熱源センサーで敵の居場所を補足
併せて野生の勘と第六感も駆使して特定

射程内の特定した敵に鎖での先制攻撃と拘束
同時に華焔刀でなぎ払いの範囲攻撃
攻撃には常に衝撃波と鎧砕き攻撃乗せてく

触手の届くか届かないか、ギリギリのラインまで接近
敵の意識をこちらに惹き付けるよう行動

充分、敵の意識を惹き付けたら夜彦に合図
移動してきた夜彦の死角フォローしつつ
フェイントも織り交ぜて攻撃

敵の攻撃はオーラ防御で防いでカウンター

拘束から逃れた敵に対しては再度拘束術使用



 どうどうと波打つ海に流されぬように。
 倫太郎を片腕で抱きとめた夜彦は、氷に覆われた大樹のてっぺんへとしがみつき。
 海と化してしまった水面に、長い竜胆色の髪を水流に靡かせる。
 ――竜胆色。
 そう。
 夜彦は今、常の藍の髪色とは違い。
 瞳も、髪も竜胆色と化している。
 ヤドリガミとして顕現する直前の『主の想い人』と似つかぬその色は、彼が真の姿を顕している事を意味していた。
「――うわ、タコかな、アレ」
 流し込まれる初動さえ耐えれば、少しだけ落ち着く水の流れ。
 瞳を細めて底を見やった倫太郎が呟き、こっくりと頷く夜彦。
「タコですね。……海の生物だから、でしょうか?」
 たまたま海にいたタコが巻き込まれて連れてこられた訳では無さそうなのは、その巨大さとぐんぐんと此方に向かってくる敵意で直に理解ができてしまう。
 あー、タコだねえ。
 肩を竦めた倫太郎は、鼻を小さく鳴らして。
「ま、油断せずにやってやろーじゃん?」
 冷たき水の中では、少しだけ離れがたくもある夜彦の腕より離れ。
 ぱしゃりと水を掻いて泳ぎだしながら、バイザーを下ろして電脳ゴーグルを装着すると、にいと倫太郎は笑う。
「ええ。そうですね」
 彼へと柔く笑み返す夜彦の表情の印象は、姿が常とは違えど普段と変わらぬもの。
「うっし、じゃ、やってやろうぜ!」
 言うが早いか。
 倫太郎が大きく息を吸って水中へと潜ってしまえば、ゴーグルの中に展開される幾つもの情報。
 潮の流れ。
 向かい来る敵の数。
 向かい来る敵の位置。
 あえて大きく波打たせてこちらに気を引くように。
 雪を全て飲み込んだ海の温度は凍えるほど冷たいが、そんな事で倫太郎の戦意が失われる訳も無く。
 ゴーグルの視界に捉えられた衣蛸が尤も多く向かい来る方面へと向かって、薙刀を保持する手とは逆手で大きく腕を振って、不可視の鎖で迫りくるタコを捉える。
 凍りついた樹を蹴って更に奥へと、素潜りをする倫太郎はぽこぽこと水泡を零しながら。
 鎖に捉えきれなかったタコへと向かって、薙刀を大きく振り払って衝撃波を生む。
 ――できるだけ、タコ共がこっちに向くようにな、っと。
 足に捉えられぬギリギリの範囲を、樹を蹴り上げ枝で方向を変えることでなんとか保持し――。
 大量に自らへと群がるタコを見やれば、頃合いかと倫太郎は水面に向かってぐんと水を蹴った。
 ぷあ、と大きな息継ぎ。
「――夜彦!」
「はい」
 ――舞いて咲くは、現世。
 竜胆の花弁を舞わせて、一瞬で倫太郎の真横に現れたのはあえて姿を隠していた夜彦の姿であった。
 突如増えた敵に面食らった様子の、引き寄せられたタコ達の鼻先へと向かって――。
 銀の月を宿す刃が、真一文字に薙ぎ払われる!
「……倫太郎殿、怪我はありませんね?」
「ああ、夜彦が来てくれたからな」
「それは……何よりですね」
 くっと笑った倫太郎と、柔く眦下げた夜彦は水中で背中合わせ。
 目の前の敵を倒せど、敵はまだ多く水中に存在する。
「さ、次にいこうぜ」
「はい、倫太郎殿」
 萌黄色と、竜胆色。
 大きく息を吸い込んだ二人は、水を掻き――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天御鏡・百々
聞いてはいたが、本当にこの地が海となるとはな
凄まじき力だ
なればこそ、企みは阻止せねばなるまい

さて、海水は好かぬが……これでよいか
(オーラ防御で本体の神鏡が濡れて錆びないように完全ガード)

相手は蛸の物の怪、近づかれるのは避けるべきか
しからば、『天鏡破魔光』による遠距離攻撃で戦おう
水中戦と言っても、近づかれる前に遠間から攻撃すれば
泳ぐ必要も無く戦えるであろう

魑魅魍魎の類いであれば
光に乗せた破魔85の力は有効に働くはずだ
目も狙って目潰し5をしてやれば
そうそう近づかれることもなかろう

●神鏡のヤドリガミ
●神鏡の水濡れ厳禁
●アドリブ、連携歓迎


灰枝・祇園
ええと……近寄らないで頂けますか?
確かに私は血色が悪いですが……死神が血色悪いのは皆様にそうあれと望まれた結果ですので。
というわけで伸ばしてきた足を切り落とします。
とんとんとね。

水中なのが災いしましたね。
私は呼吸しませんし、迷彩しても体があるところには水が押しのけられた空間が出来るでしょう。
UCを発動して身体能力を上げ、向上した視力と聴力で見切って斬り殺します。
はーい、動かないで下さいねー。お刺身にして差し上げますから。
並んでくださるともっとありがたいのですが。



 群がる巨大なタコ達。
 どれほど保護色で擬態していようとも、その敵意はありありと感じられる。
「……ええと……、近寄らないで頂けますか?」
 水中で人間は、タコほどの機動力を持ち合わせない筈だ。
 ――しかし、彼は神であった。
 海に長い黒曜色の髪を漂わせる祇園は、少し困ったようないつも笑顔のまま。
 赤く輝く大鉈を真一文字に凪げば、巨大なタコの足が刈られて水底へとゆっくりと落ちてゆく。
 タコは死体を食べるというものだが……。
「確かに私は血色が悪いですが……死神が血色悪いのは皆様にそうあれと望まれた結果ですので……」
 後、息もしてないですけれど。
 別段、死体と言う訳では無いのですよね。
 祇園は首を傾ぎ。
「――悪しき者よ、我が破魔の力によりて滅び去るがいい!」
 そこにぴかりと瞬いたのは、光であった。
 それは百々の神鏡より放たれた、群がる魑魅魍魎――衣蛸を浄化し、灼き尽くさんと眩く輝く破魔の光だ。
 衣蛸達を盾に。
 スッと光より避けた祇園が、光に怯んだ衣蛸の懐へと潜り込むとその首を切り裂き。
 返す手で、その横で光に灼かれ藻掻く衣蛸の息の根を刈り取る。
「おや、ありがとうございます。どうにも綺麗に並んでくれないので、少し困っていたのですよね」
「いいや、惹きつけてくれていて、此方こそ助かった」
 本体が錆びてしまう事は避けたいもので。纏う神気により完全に水をシャットダウンした百々が、小さく頭を振って応じ。
 瞳を揺らして遠く見やるは、海にすっかり沈んでしまった村だ。
「――しかし、聞いてはいたが、本当にこの地が海となるとはな」
 正に凄まじき力だ、と。
 そのままレディ・オーシャンを探すかのように、ぐるりと回りを見渡した百々。
「そうですねー。この海水が満たされた事で、地中や木々に潜み今を生きていた生き物達が、どれだけ死んでしまった事でしょうか……」
 寿命が残っている生き物達が死んでしまうだなんて。
 ああ、なんと哀しい出来事だろうか!
 ふるふると首を振った祇園は、くっと涙を堪えるように一度顔を抑えると。
 向かい来たタコの首をさくっと切って、斬って、撥ねる動きには一切迷いが無い。
「オブリビオンは生き物で無いので、一切心が傷まなくて良いのですけれどね」
「ああ、何にせよ。――なればこそ、企みは阻止せねばなるまい」
 此方へとタコが向かい来る前に、遠方より光を放ち迎撃する百々は細く細く息を吐いて。
 彼女の光は、攻撃手段である。
 しかし、遠くから現れる敵からすれば目印にもなっているようであった。
 それに気がついていた祇園は、靡く髪を一度掻き上げて。
「その光のおかげで、向こうからどんどん寄ってきてくれているみたいですねー」
「ううむ、そのようだな……」
 都合が良いような、悪いような。
 複雑な表情の百々。
 倒したタコの頭を蹴って勢いをつけて。向かい来たタコの足を払うように斬った祇園は、常の笑顔を未だ崩す事無く。
「並んでいらして下さる事は良い事ですよ、お刺身にして差し上げやすいですしね」
 あとは動かないでくれるとありがたいのですが、なんて。
 躯の海へと敵を叩き返しながら、祇園は瞳を細め。
「確かに。そうだな、疾く魑魅魍魎共を蹴散らすには都合が良いものだな」
 なんとなく納得した百々も、誘蛾灯ならぬ誘蛸灯と化した光を遠く放つのであった。
 ――全ては、悪しき「かみ」の企みを挫くがために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シュデラ・テノーフォン
千歳婆さん【f12285】同行

あァ落ちてきた婆さん宜しく
綺麗な鱗一枚貰ったら怒られるかな?
は置いといて

うん見事に海が退いたね壮観だ
おかげでヤりやすいよ有難う
再生する前に狩れば問題ないかな
…マッサージには興味あるけどさ
君達獲物だもんね、仕方ないね

海から出てくる動きやら、野生の勘も働かせてタコの動向確認
迎え撃って銃撃するけど…再生も面倒だし、また氷の精霊弾セットしよう
冷凍タコの氷漬けにしたら海に沈んでも動けないだろうし
兎に角近付く前にかたを付けようか
どうしても来る時の防御と婆さんをかばう時は指輪の盾を使うよ

さっき雪合戦中途半端だったからなァ
子達に返さなかった分を、氷玉でこっそりタコにぶつけようかな


中御門・千歳
シュデラ(f13408)と

水中戦とくりゃ、この子の出番だね
式神召喚・水龍を使用して、蛟の睡蓮を召喚するよ
まったく、この子は女だからって気難しくていけないよ
ほら、睡蓮!あとでその鱗綺麗にしてやるから仕事しな!

睡蓮の力であたしとシュデラの周りの水を退かして、地面に立って戦えるようにするよ
こうして水の無い場所を作ってやりゃぁ、迷彩色だろうがなんだろうが、空気との境目の水の動きでやって来たことが分かるからねぇ

シュデラ!右から来てるよ!

ったく、再生能力まであるなんて面倒な敵だね……
睡蓮!やっちまいな!
この子は食いしん坊でねぇ、さすがに胃の中で溶かされりゃ、再生なんて出来ないだろうさ



 分厚い水越しの月が、ゆらゆら揺れて。
 美しき鱗がぴかぴかと輝き並ぶ、水龍に落ちる月光。
 それがとても、シュデラには綺麗に見えて。
 あの鱗を一枚貰ったら、この子は怒るだろうか、なんて。
 空を見上げて、白い翼を畳んで、開く。
 瞬間。
 ――空に満ちた海が、落ちて来た。
「さあ睡蓮、仕事の時間だよ」
 千歳に喚び出された水龍、――蛟の睡蓮は、空の海を見上げてちりと舌を見せて。
 その瞳が訴えかけるように、千歳を真っ直ぐに見つめる。
「……分かったよ」
 まったく、この子は女だからって気難しくていけないよ、なんて。
 やれやれと肩を竦めた千歳が、落ちてきた空――水の塊を指差して。
「あとでその鱗、綺麗にしてやるからね。さあ、睡蓮、ちゃっちゃと仕事しな!」
 鎌首を擡げ千歳のその『交渉』に応じた睡蓮は、天に吠えるように大きく口を開き。
 空間を、水を、轟かせるその力。
「うん、お見事。壮観だね」
 ぱちりと一度掌を鳴らしたシュデラの称賛の言葉通り。
 空より落ちてきた海水による濁流の中にあって。二人と一匹の立つその場所は、ぽっかりと地を表わしたまま。
 水を割るように生み出された空間。
 それは水を操る能力を持つ蛟、睡蓮が作り出した戦うための舞台であった。
「――シュデラ! 右から来てるよ!」
 どれほど水中で擬態能力に優れていようとも、そいつを地に引きずり出してやればこの通り。
 見えているよ。
 掌の中で一度大型拳銃を握り直したシュデラが、水中より飛び出してきた衣蛸の頭に直接銃口を押し付けて、氷の精霊の加護を宿した弾を叩き込む。
「冷凍タコの一丁上がり、なんてね」
 そのまま乱暴に凍りついたタコを蹴り上げて、海へと還すシュデラ。
「婆さん、おかげで随分ヤりやすいよ。有難う」
 振り向きざまに、千歳に礼一つ。
 氷漬けにしてしまえば、海に返したところで沈んで動けないだろう。
「あぁ、その分シュデラもしっかり働いとくれよ」
 いつもの調子でからっと笑って答えた千歳は、敵を睨めつけて。
 仲間が氷漬けにされた事にも怯むこと無く、次々とタコは猟兵達に狙いを定めている。
 刹那。
 勢いよく鋭く伸ばされた大きな足を、上体を落として身を屈め避けた千歳はバックステップを踏み。
「睡蓮、やっちまいな!」
 そうして急制動をかけると、その影より飛び出したのは睡蓮だ。
 なおも千歳を付け狙うタコ足へと喰らいつく、蛟の細く鋭い牙。
 牙を押しこんだまま、首を大きく振るえばぶづ、と鈍い音を立てて足が千切れ。
 足をちぎられた衣蛸は、水の中にひゅるりとその身を引っ込めて。
 千切れてしまった足を振り上げたかと思えば、次の瞬間には少しばかり短くなったとは言え、タコ足が再生していた。
「……ったく、再生能力まであるなんて面倒な敵さね……!」
「できるだけ、近づかれる前に片を付けたいね」
 再度、突っ込んでくるタコ。
 シュデラは千歳と敵の間に割り入る形でステップを踏み。
 左腕を振り翳すと、指輪より硝子細工のような防御壁がキンと涼やかな音を立てて生まれた。
 そうして横薙ぐ形で盾を叩き込むと、タコ足をカチ上げて弾き返し。
 飛び退き様に足元の雪を握ったシュデラは、タコの目へと向かって投げつけて雪の目潰し一つ。
「さっきの雪合戦は、中途半端だったからなァ」
 怯んだタコ。密やかに唇の端を笑みに擡げたシュデラは、銃を構え直し。
「この玉は子ども向けじゃないからね、すっごく痛いよ」
 氷の弾を、タコへと炸裂させた!
 ガードに上げた足ごと粉砕され、その身を凍らせる衣蛸。
 そこに尾をひきながら横から飛び出してきた蛟が、氷ごとタコの頭を砕き食らいつき。
「……さすがに胃の中で溶かされりゃ、再生なんてできないだろう?」
 瞳を細めた千歳は、首を傾いでニッと笑った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

徒梅木・とわ
【サイロ】

泳げない事と水中で戦えない事は、そのまま同じじゃあない
筈だ
これから実証しようじゃあないか、それをさ
……おや。くふふ、手助けされるのがとわとは限るまい?

司水霊符で海中に水流を作るよ
蛸たちが泳いで進もうとする分だけ押し戻し、一つ所に封じてやろう
そしてとわたちには望む方へと押し進める水流を
くふふ、身を任せるだけで水中を自由自在に動ける状態で封じてやるって寸法さ
これなら幾らでもやりたいようにできるだろう。後は任せたよ、ヴィクティム

そういやあ蛸は雨水や淡水、真水が嫌いだったか
オブリビオン相手にどれ程真っ当な理が通用するかというところだけれど、実際に目にするいい機会かもしれないねえ?


ヴィクティム・ウィンターミュート
【サイロ】

お前…泳げたっけ?ん、そういうことならお前に任せる
ま、何かあれば俺がフォローはしてやる
…あくまでフォローな。最終的にはお前がどうにかしろ

さぁーて、始めよう
とわが水流を作ったのを確認したら、俺も仕込みにかかる
『Gale Wind Move』
なーに、ちょいとニューロンを刺激してやるだけ
見える、感じ取れる、そしてどうすればいいか思考できる
考えるのは得意だろ?クリアな思考で攻撃を読み切ってみな
後はお前の水流で捌きゃいいさ

そうとも、たとえ迷彩で姿を消してもだ
視覚以外の全てで、お前の動きは見える
水流の僅かな変化、音──そして行動予測
今正に、攻撃しようってことはお見通し
悪いね──【カウンター】だよ



「お前、……泳げたっけ?」
「泳げない事と水中で戦えない事は、そのまま同じじゃあない」
 ――筈だ。
 ヴィクティムの問いに、とわはちょっとばかり最後に言葉を付け足したが、常の表情。
 つまり泳げないという事なのだけれども。
「これから実証しようじゃあないか、それをさ」
「ん、……そういうことならお前に任せる」
 従業員殿が大丈夫だと言うのならば、大丈夫なのだろうと。
 ヴィクティムは小さく頭を振ってから、彼女と視線を交わし。
「ま、何かあれば俺がフォローはしてやる。……あくまでフォローな」
「……おや。くふふ、手助けされるのがとわとは限るまい?」
 大きな狐の耳をぴん、とヴィクティムに向けたとわは妖艶に笑んで応じた。
「楽しみにしてる。――さぁーて、始めようか」
 そうして彼が呟いた、刹那。
 空より、昏い海が落ちて来た。
 雪を、空を、村を。
 全てを飲み込み、水塊は濁流と化し。
「さあて早速、手助けしようじゃないか」
 落ちてきた空に対して霊符を構えたとわは、ぷかりと水の塊を生み出して。
 海水を進む、とわのあやつる水。
 水の中で水が動けば、それが水流と成る。
 ――それはつまり水を操る彼女自身が、海中に水流を生む『主』と成ると言うことだ
 ぷかりと水面に浮いたとわは、(下手に力を籠めると溺れてしまう等の可能性があるの)力はできるだけ抜きながらも、水流を操れるように指先に力を篭め。
 スイーと自らの生み出した水流に流され行く。
「くふふ、これで身を任せるだけで水中を自由自在に動けるという訳さ。……これなら幾らでもやりたいようにできるだろう?」
「そうだな、ならおまけだ。少し目を潰ってくれるか?」
 そんな彼女の横へと、水を掻いて泳ぎ。
 近づいたヴィクティムは、彼女の額へ、指先をとんと一本添えて。
 ――Order、Gale WInd Move。
 これは、そう。
 少しばかり、ニューロンを刺激してやるだけだ。
「――いいか? 見える、感じ取れる、そしてどうすればいいか思考できるだろう?」
 目をつぶったとわは、こくと小さく頷いて。
「ふうん、……そうか。分かるよ」
「考えるのは得意だろ? クリアな思考で攻撃を読み切ってみな」
 とわが――従業員が、共に戦う者が、戦いやすいように。
「後はお前の水流で捌けるだろう?」
 瞳を開いたとわが、少しだけ顔を上げてヴィクティムを見やる。
「……くふふ、随分とおまけしてくれるじゃあないか」
「ハッ、有能な上司だからな。勝つためだ、最終的にはお前がどうにかしろ」
 そう。
 これは上司として、共に戦う者としての少しばかりフォローだ。
 ――感じるだろう、水流の中に蠢く気配を。
「はいはい。では早速、どうにかしよう」
 ヴィクテムの強化を受けたとわは、瞳に姿は見えずとも、此方へと向かい来る気配をしっかりと感じる事ができるようになっていた。
 ぐっと掌を握りしめると、水流を操作してその動きを押し留めて――。
「ああ、それで良い!」
 水流の変化を感じて、水を思い切り蹴り上げるヴィクテム。
 攻撃のタイミングを狂わされた衣蛸の動きを、完全に読んだ彼は足を避けて懐へと潜り込み。
 それは水中にあって、疾風の如く。
 腕と胴の間。――目と目の間に刃を正確に突きこんだ。
「タコは雨水や淡水、真水が苦手だと言うけれど。流石にすぐ弱ってくれたりはしないようだね」
 ぷかぷか流れて行きながら、とわは霊符を口元に当てて。
 オブリビオンが、本来の生物の理をどれほど倣っているかは分からぬけれど。
 ――しかし水流で押し込める事で、随分と向こうの動きも、こちらの動きも制御が行える事は確かなようだ。
 ぴくり、と獣の耳をとわは立てて。
「おや。ヴィクティム、次が来たようだ」
「だな。次もフォロー任せたぜ」
 一度水面に顔を出したヴィクティムも、息継ぎ一つ。
「勿論、任せてくれたまえよ」
 くふふ、と。とわは笑って頷いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雅楽代・真珠
【エレル】
ああロカジ、助けてあげる
乙女宝から泡沫のオーラ防御を出して
ロカジの顔を覆って空気を確保
雪うさぎも泡で包んで保護し、皐月に預けておくよ
ヨシュカの手を引いて泳いであげる
水は僕の遊び場だ

蛸焼き用に足をお土産にしたいな
かまくらで炙ってもいい
蛸ブツもいいね
山葵醤油で食べたいな
ロカジに切り落としてもらおう
泡をあげたし、頑張ってもらわないと

お前たちは、そう、口説き落とされたの
それなら、気が変わって僕の為に働いてくれてもいいよね?
蛸達へ『波の聲』を歌おう
良い子は褒めてあげる
悪い子は蛸焼きの具
さあお前たち
悪い蛸を縛り上げて

ロカジの蛇もヨシュカも働き者でえらいよ
如月に切った蛸足を回収しておいてもらおう


ロカジ・ミナイ
【エレル】

溺れない便利仕様のヨシュカを指を咥えて見ていたら
えー!すごい何コレ!ほんとだねまるで宇宙だね
…真珠がくれた泡にちょいとテンションがあがっちまった
失敬失敬
ちゃんと仕事するよ
ツマミのタコ焼きのために、カッコ良くね

泳ぐのは得意だけど海洋生物が相手じゃ狐には分が悪い
出ておいでオロチたち、仕事の時間だよ
僕を乗っけてタコを追っ掛けるの
それだけよ
餌はいつものに加えてサビ抜きのタコワサでどう?
タコはつまみ食いしてもいいよ

八つ脚には一個届かない七つ頭の一つに乗って
真珠とヨシュカが動きを止めてくれた個体から妖刀でザクザク刻んでいく
ヨシュカのは痛そうだし
真珠の声にウットリするタコの面はそのまんまタコ面だ


ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレル】
海が!落ちてきた!
人形ですから?肺とかはないので溺れはしませんが
!雅楽代さま、御手を…?ありがとうございます!
ロカジさまは大丈夫でしょうか…泡が宇宙服のヘルメットみたい!

良く見える硝子の目玉は蛸達の迷彩も【見切り】近づくものは【早業】で払いのけ。あっちいけ!
そうしていると大蛸対大蛇の異種格闘戦(?)が!
なんかこう…ロカジさまニンジャみたいですね!あ、蛸食べてる

水中に響くは透明な子守唄
雅楽代さまの唄声に魅了され、茫洋としているタコ達に
握って頂いていた御手をそっと離し
自慢の【視力】で蛸達を捉えて、水底に両手をついて【針霜】を展開
ひとつ残らず串焼…【串刺し】にして差し上げます



 空を飲み込んで落ちてきた昏い海は、どうどうと。
 水に沈んだ村は、月明かりに照らされてどこか神秘的に佇む。
 地上に生まれた濁流に弄ばれるヨシュカは、くるくると回りながら空を地を水の中から見ていた。
 ヨシュカはミレナリィドールだ。
 だからこそ、溺れる事は無いが――。
 その視界の端で。月明かりを浴びた甘い真珠色の鰭が、ぴかりと瞬いた。
「!」
 正に、水を得た魚とはこの事。
 水に戯む和服の袖、美しく水に遊ぶ薄絹の如き尾鰭。
 真っ直ぐにヨシュカへと向かって泳いできた真珠は、ヨシュカの手を掴んでくうるりと一回転。
「雅楽代さま、ありがとうございます!」
「水場は僕の遊び場だからね」
「……それにしても、ロカジさまは大丈夫でしょうか……?」
「ああ」
 思い出したかのように、真珠が頷き。濁流に弄ばれて、ぷくぷくぐるぐるしているロカジを見やった。
 ロカジは妖狐であるからして。
 まだ溺れちゃァいないけれど、そりゃあ。
 泳ぐのが上手だとしても、激しい濁流の中に放っておけば溺れるのだ。
「ロカジ、助けてあげる」
 桃色の瞳に、甘く睫毛の影を落として真珠は祈る。
 びいどろの美しき貝に、加護の祈りを籠めて。
 ぷっくりと膨れ上がった泡沫は、ロカジの顔を覆い――。
「……えー! すごい! 何コレ!?」
「わあ、宇宙服のヘルメットみたいですね!」
 ヨシュカの言葉通り。
 子供向けの宇宙飛行士のイラストで良く見られるような、透明なヘルメット状。
 ロカジの頭を覆った泡は、加護によって彼の呼吸を護っている。
「ほんとだねェ。こりゃァ、まるで宇宙服みたいだ」
 大人気無くテンションが上がってしまったロカジは、泡に指を入れたり抜いたり。
 だってこんなの、全国のキッズの憧れの姿でしかないだろう?
 しかたないよ。
 真珠は瞳を眇めて言葉を紡ぎ。
「僕は優秀な金魚だから、ヨシュカに作ってもらった雪うさぎも、ちゃんと保護して皐月に預けておいたからね。――後はそう、……お土産が欲しいかな」
 そうして。
 こちらに向かってぐんぐんと距離を詰めてきている魑魅魍魎の気配に、ちらりと目配せをした。
「はい! ありがとうございます。わかりました、雅楽代さまのためにお土産を、……おみやげ?」
 硝子玉の瞳は、水中でもようく見える。
 鋼糸の先を歯で引きながら元気に宣言したヨシュカは、途中で首を傾げて。
「うん、蛸焼き用に足をね。……かまくらで炙ってもいいし、蛸ブツもいいね」
 とれたてのタコ足の刺し身なんて、きっと甘くて歯ごたえも最高であろう。
 少しだけ山葵醤油につけて――。
 生のタコ足を使ったたこ焼きも、出汁がよく出て本当に美味しいものだ。
「へへぇ、解ったよ。ちゃんと仕事をしよう。――ツマミのタコ焼きのためにもね!」
 真珠のおいしい提案に、カッチョイ表情を取り戻したロカジは空色の瞳で真っ直ぐに敵を見据えて。
 さあさあ、かわいいかわいいオロチ達。
 出ておいで、仕事の時間だよ。
 ――今日のご飯は、いつものに加えてさび抜きのタコワサなんてどうだい。
 タコはつまみ食いしても良いからさ。
「僕を乗っけて、タコを追っ掛けてくれるかい?」
 八本の首に頭が七つ。八つ脚には、一個届かない七つ頭。
 巨大な蛇の頭に跨ったロカジが、柔く撫でてやればつるりとした鱗の感触。
「えい、あっちいけ!」
 ヨシュカは真珠へと矢の如くカッ飛んできたタコの気配に、手をそっと離すと鋼糸をぴんと張って横薙ぎに。
 瞳を細めた真珠は、群がるタコ達に小さく鼻を鳴らした。
「ふうん。お前達は、あの「かみさま」に口説きおとされたの?」
 そんなに浅い仲ならば。
 気が変わって、僕のために働きたくなる事もあるかもしれないね。
 口を開けば、響き渡る調べ。
 人魚の歌声は心を乱し迷わし、あまやかにあまやかに。
 幸せにおなり、愛しい愛しい子達よ。
 澄みきった透明な音。
 それは海に深く深く響き渡る、魅了の歌。
「……ねえ、良い子は褒めてあげる。悪い子は蛸焼きの具にするよ」
 ねえ、お前たち。悪いタコを、縛り上げてよ。
 数匹のタコ達は、真珠の願いに海を旋回し。
「はい! お任せください!」
 魅了されたタコだけでなく、ヨシュカもぴしっと良いお返事。
 ぐるんと水を蹴って。
 水底へと両手を突けば、地より伸びた鋼糸が天を衝き。
 衣蛸の足を貫き、引き止める。
 足止めされたタコに襲いかかるのは、真珠に魅了されたタコである。
 タコ対タコ。
 絡み合うタコへと、巨大な蛇が海を裂くように駆け抜けて。
 がぶりとその胴体を喰らう、オロチの牙。
 お次の演目は、大タコ対大蛇の異種格闘戦だ。
「ロカジさま……、それは……、なんかこう。ニンジャみたいですね!」
 コミックでみた、クチヨセのジュツで動物を呼び出したニンジャのよう。
 目を丸くしたヨシュカは、格好良いなあとまんまるな瞳をぴかぴか。
 そうして彼は水底を蹴って。一回転しながら、再び両手を突いて更に鋼糸を伸ばし。
「あ、蛸食べてる」
 尾をゆうらり揺らした真珠は、瞳をぱちくり。
「だめだよロカジ、ちゃんと足は残しておいて」
「はぁい、はい!」
 襲い来るタコの足を、蛇の上で身を屈めて避けたロカジはお返事二つ。
 食べる所は残しておかないと、注文の多い人魚に怒られてしまうからねえ。
 すらりと抜いた妖刀で、その足を真っ二つ。
 瞬間。
 断面よりぶるんと生え伸びたタコの足。
「……うわあ、こいつ足が再生するじゃないか。食い放題ってやつかい?」
「いいですね、串焼きの準備もしておきます!」
 鋼糸を振るうヨシュカの言葉に、ロカジはにししと笑い。
「そりゃあ、食い出があるね」
「うん、ロカジの蛇も、ヨシュカも働き者でえらいね。褒めてあげる」
 なんて、真珠がいつもの調子で言葉を重ねた。
 まだまだ敵は向かい来るけれど。
 タコのからあげ分だと思えば、悪くは無いだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

鷲生・嵯泉
勝手な事を抜かした挙句に此の暴挙……巫山戯るな
此れから冬を迎える地に於いて
海水に晒さる等、後への影響は深刻な事になろう
必ず此の責は取らせてくれる。逃がしはせん

流石に完全な水中戦には心得が乏しい
こうも動き難いならば、出来るだけ最小限の動きで対処するしかないな
姿を隠した所で気配と水の流れ迄は隠せまい
戦闘知識と第六感にて位置を測り、見切り躱して近寄せない
衝撃波となぎ払いの遠距離牽制にて隙を作り
怪力乗せた破群領域にて一気に潰してくれよう
……近寄るな、触れる事も赦さん。不快だ

此れから穏やかに、平和な時を迎える筈の此の世界
お前なんぞの欲望の為に壊される事を見逃せる筈も無い
必ずや骸の海へ叩き返してくれる


菱川・彌三八
あの女ァどこ行きやがった
差し詰めこん蛸共は時間稼ぎち云うところか
なれば、もたついてる場合じゃあねェな

技になりゃあ墨も丹も溶けねェらしい
四つの筆で描く千鳥の四群
此度はひと塊として、鰮の如く水を走らせる
息は此奴で水を割って成そう

素早くうねる千鳥の群れ、擬態をさせねェのもあるが
足の動きを見切って、壁を作っちやる
触れば麻痺、潰せば直に衝撃波
水ン中は陸より重たく響くだろうよ

さて、吉祥文が水でも浮かぶかァ見物だな
力が沸くなら拳に乗せて、地面か空かへ、思い切りぶん殴っての吹き飛ばし
ちいと無理があるならそのまま、千鳥の群れが食らいつくすまで

この馬鹿げた海の塊にゃあ、とっととご退場願おうゼ



 空より降り落ちてきた海の中。
 水面に顔を出した、二人の男。
「勝手な事を抜かした挙句に此の暴挙。――巫山戯るな」
 左瞳覆う眼帯、冷えた赤い瞳で落ちた海を見やった鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は低い声音で悪態を零し。
「……チィ、あの女ァどこ行きやがった?」
 舌打ち一つ。
 声の響いた方を睨めつけど、彌三八には元凶の姿は見受けられず。
 ――向かい来る魑魅魍魎共は、差し詰め時間稼ぎという所だろう。
「気配を隠す気も無い、雑魚共が集まってきているようだな」
「こりゃもたついてる場合じゃあねェな」
 機嫌の悪さを隠す事も無く、冷たく言い放った嵯泉。
 小さく頷いた彌三八は、筆を4つばかり取り出して。
「此れから冬を迎える地に於いて、地を海水に晒さる等、後への影響は深刻な事になろう。――必ず此の責は取らせてくれる」
 姿こそ擬態によって見えぬタコ共ではあるが、ありありと向けられる敵意はその場所を嵯泉に伝えているようなものだ。
 嵯泉は黒塗りの鞘より抜き放った刃を構え。
 しかしここは、海の中。
 水中から向かい来る敵が迫りくれば、避けづらい事は事実であろう。
 眇めた瞳。
「――……近寄るな。触れる事も赦さん。不快だ」
 水中戦。
 普段と身体の動きこそ勝手が違うとは言え。手にした得物は慣れたモノだ。
 嵯泉が刃を一文字に薙ぎ払えば、ぼっと水が音を立てて爆ぜた。
 ばちばちと降り落ちる水雫。
 生まれた衝撃波は、向かい来るタコ共を怯ませる。
「あゝ、兄サン。すこうしばかり失礼するゼ」
 水中だと言うのに、不思議と墨も丹も溶ける事は無く。
 彌三八がさらりと描き上げた千鳥は、四群。
 墨で描かれた鳥たちは、まるで生きているかのように生き生きと。
 そのまま千鳥の群れは群れるイワシのように、一塊になって水を割り駆ける。
 そうして一直線に、衝撃に怯んだタコの群れへと殺到し――!
 重ねて嵯泉が刀を大きく振り上げれば、ぞろりと崩れた刃。
 その刃は鞭のごとく伸びて、撓って――。
「この馬鹿げた海の塊にゃあ、とっととご退場願おうゼ」
「お前達に用は無い、さっさと頭を出して貰うか――」
 タコを切り裂く刃に、海中に刻まれた千鳥の模様。
 腹の奥から力が湧き上がる感覚は、千鳥の加護が二人に効いているのであろう。
「斃れるが良い」
「行くぜ」
 ごぼ、と。
 水を蹴って深く潜った彌三八が、衝撃纏う拳をタコに叩き込むと。
 返す手で鞭の刃を撓らせた嵯泉が、タコ共が近づく前に足を切り刻む。
 ――この世界はこれから穏やかに、平和な時を迎える筈の世界であったのだ。
 オブリビオンの欲望の為に壊される事を見逃せる筈も無い。
「……必ずや、骸の海へ叩き返してくれよう」
 次の気配を探りながら。
 水面に顔をだした嵯泉は、刀を構えながらぽつりと呟き。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

喜羽・紗羅
来やがったなって――タコぉ?
水中でこいつは厄介だ……だけどな!

外套の酸素ボンベを起動し酸素マスクを咥えて
水泳技能と身体能力を生かして水中戦だ!
アームドオリーブに水中用ペイント弾を装填し
姿の見えてるタコ目掛けて射撃開始

どうだい、色付けちまえば迷彩なんて意味無ぇだろう?
頭の中身もふにゃふにゃみてぇだな、三下ッ!
罵りコミュ二ケーションでタコ共を怒らせて
こっちへ攻撃してくる様に仕向ける。さあ来いよ!
水中の地形を利用して上下左右に動き回り
一つ目の攻撃を鞘で受けて、返す刃で剣刃一閃
終いだ、一匹ずつ真っ二つにしてやんよ

(このタコの足……食べられるかな、ねぇ)
んな事言ってる場合か、この次の敵は尋常じゃねえぞ!


アンコ・パッフェルベル
またこいつら(衣蛸)ですか!
手鏡をぽちぽちして宇宙道士服(メット付き)に早着替え。
浮遊装甲は水中スクーターに変化させて背中に付けるです。

以前は真面目にマッサージされてびっくりしたですけど、
今回は違うっぽい…ええい寄るな寄るなです!
鉄棒ぬらぬら展開はお呼びじゃないです!
ユベコでさっさと左慈さんを降ろしましょう。

捕縛されるアンコちゃん!
…が!沢山のお魚や温州蜜柑になって散ってゆく!
いつの間にやらあっちにもアンコちゃん!こっちにもアンコちゃん!
かわいいですね?そうですこれが左慈さんの術です。
わちゃわちゃ戦場に入り乱れ猟兵達のデコイ役となりましょー。
合間に時空弦で攻撃です。水中では音が良く通るですー♪



 ――た、タコぉ?
 酸素マスクを咥えた紗羅――現在の人格は鬼婆娑羅であるが。短機関銃と擲弾銃を仕込んだスクールバッグを手に、眉を寄せた。
 水中でタコを相手どるという事は、なかなか骨が折れそうな戦いになりそうだ。
 タコに骨は無いのにね。
「またこいつらですか!?」
 ヘルメットのついた宇宙道士服を纏ったアンコは、浮遊装甲をシースクーターに変え背負い。
 他所でも相手取った事のある、ふざけた相手に瞳を細めた。
 以前はマッサージを真面目にしてくれたものだが、敵に魅了されて使役されている今はそんな気は無いらしい。
 真っ直ぐに向かい来るタコの擬態を見破るが為。
 紗羅は水中用のペイント弾を片っ端からぶっ放し。
 ――どうだい、色付けちまえば迷彩なんて意味無ぇだろう?
 凍りついた木々や建物を蹴って、伸ばされるタコ足を泳いで避けて。
 敵を引き寄せて、引き寄せて、さらに勢いをつけて。
 さあさ、こっちに来いよ、ふにゃふにゃ三下野郎共!
 好戦的に笑んだ紗羅は、敵を睨めつけた。
 たくさんの泡が生まれ、弾けて消える。
「ええい、寄るな寄るなです! 鉄棒ぬらぬらな展開は及びじゃないですよ!」
 泡を生んで水中を駆けるシースクーター。
 人以上の速度で泳げる有利さで、タコ足を振り切りながらアンコが、わあわあ吠える、吠える。
 そうして両手を合わせて、腕をぐっと伸ばして。
 ――出ませい!
 瞬間。
 アンコはタコ足に捕らえられてしまう。
 慌てた表情を浮かべたアンコは、藻掻き。
 もがけば藻掻くほど吸盤が白い肌にひたりと吸い付き、吸い上げられた朱い跡を残して身体を縛り上げる。
 けぽ、と苦しげに身を捩ったアンコを逃さぬように、タコは徐々に力を強め――。
 刹那。
 その身体が真っ二つに折れ、ぽろぽろと温州みかんがこぼれ落ちた。
 しっかりと腕に抱いた筈のアンコが失われた感触に、タコは周りをキョロキョロ見回して。
 見つけた、と再び足を伸ばして握りしめれば、そのアンコも青い煙となって溶け消えて。
 よくよく見渡せば、むこうにも、あちらにも、こちらにも。
 アンコ、アンコ。アンコ。
 アンコちゃんだらけだ!
 ふふふ、かわいいですね、かわいいでしょう?
 ――これこそ。
 今回憑依していただいた左慈さんの術なのです!
 ろん、と時空弦を響かせて。
 本体のアンコは、タコを翻弄しながら音に載せた粒子で攻撃を重ね――。
 タコ以上に増えたアンコの姿。
 その合間を縫って泳ぎ駆けた紗羅は、キョロキョロとするタコの背を蹴り上げた。
 ――おいおい。あんまり余所見してると、大切なものを無くしちまうぜ。
 与えられた衝撃に振り向きざまに、タコは足を横薙ぎ振るい。
 鞘でその一撃を受けた紗羅は、吸盤にぴったりと吸い上げられた鞘より刃を抜いた。
 ――終いだ。
 一匹ずつ真っ二つにしてやんよ。
 そうして鋭く腕を振り上げると、振り向いたタコの眉間へと刃を真っ直ぐに叩き込む!
 そのまま胴の方向へと刃を引き上げれば、紗羅はタコを逆風に切り上げ。
 真っ二つにタコを斬り裂き――。
 そこへ脳裏に響く、もうひとりの自分の言葉。
『……ねえ、このタコの足、食べられるかな? ねえ?』
『んな事言ってる場合か! ――この次の敵は尋常じゃねえンだぞ!』
『でも気になるでしょ?』
『いや、まぁなあ』
 なんて。
 当の主人格、紗羅の方は結構呑気していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクトル・サリヴァン
冬の夜長にこんばんは、派手にやってくれたものだねー。
海水な戦場は得意で好きだけども、畑がこんな風にされたとあっては少しね。
他所の世界に迷惑かけるアレはともかく、まずはその眷属っぽく来た蛸妖怪達を倒さないとね。

『海』中なので移動は基本水泳、上下左右自由自在に泳ぎ回ろう。
空シャチも召喚して海中泳がせて妖怪達を齧ったり尾びれではたいたり海の王者って感じでガンガン暴れて貰う。
普段の住処は空に移ってるけど海中も出来ない訳じゃないしねー。
普段より少うし動きが鈍いけども(水の抵抗)シャチのスペックはそれを補って余りある程?
エコーで位置探りつつがぶがぶ妖怪達に好きにさせる前に大暴れ、だ。

※アドリブ絡み等お任せ



 降り落ちてきた海の中でも、その力強い泳ぎは健在である。
 泳ぐ事はけして嫌いでは無い。
 どちらかと言えば、得意であるしとても好きな方だ。
 それでも、どれだけ海が好きだとしても。
 ――山間の村を沈めて、暴れる敵の事を見過ごして良い理由には一つもなりやしない。
 ざぶんとその大きな体をヴィクトルが跳ねさせると、水しぶきが舞った。
「やあ、こんばんは。派手にやってくれたものだねー」
 魑魅魍魎。
 在るべきでない海の中を、我が物顔で泳いでいたタコへと素早く近づいたヴィクトルは、常のゆるい挨拶を口に。
 そうして水中で動きを止めたヴィクトルの背を追い越し、投げつけられた刃物のように鋭く水中を切って飛び出す、何十匹もの影。
「他の世界から来た奴に、口説き落とされるのは好きにすればいいけれどさ? ソレで皆の迷惑になるならば、さくっと倒れてくれるかな」
 それは、海を飲み込み駆けるシャチの群れ。
 普段は空中を泳ぐシャチ達は、従来のすみかであった筈の海を悠々と。
 大口を開けて、鋭い牙を見せて衣蛸へと飛びかかり。
 ヴィクトルの喚び出した63匹もの海の王者達は、蹂躙するかのようにそのタコの肉を引きちぎる。
「どの世界であっても、好きにはさせないよ」
 シャチ達が衣蛸を食らい付くしてしまえば、指揮をするかのように腕を大きく振るったヴィクトル。
 水の中を悠々と泳ぐシャチの群れに衣蛸の捜索を委ね、サーチ・アンド・デストロイ。
 ――それがたとえ空の上であっても、海の中であっても。
 オブリビオン達が暴れると言うのであれば、その野望を打ち砕くだけだ。
 とぷん、と。
 再び音を立てて水中へと潜ったヴィクトルは、シャチを率いて海の先へ、先へ。

成功 🔵​🔵​🔴​

逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

……うねうね、ぐにぐにと……!
僕は軟体動物は苦手なんですよ……!

水中戦は「水泳」技能で対応しつつ
息継ぎと潜水のバランスを常に気を付けて息切れにならないようにしましょう

敵に対しては【コード・モルゲンロート】で召喚を行いけしかけつつ
「全力魔法」「範囲攻撃」「マヒ攻撃」の付与を狙って
ザッフィーロ君のバックアップも行いましょう

攻撃を受けそうになったならば「第六感」「野生の勘」で「見切り」に努め
回避または「オーラ防御」で「カウンター」を行い
「衝撃波」で「吹き飛ばし」ます

僕の目の前から軟体動物などすべていなくなればよいのです……!


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

酸素ボンベを背負い準備をしよう…と!
デビルフィッシュ…!斯様に大きな者が居る、だと…!?
宵、あの八本の手は厄介そうだからな。下がっていろ

戦闘時は宵を『かば』い前に出て行動
ソードブレイカーを手に厄介な足に斬りつけんと試みながらも
酸素ボンベを取られ締め付けられた場合は大きく口を開き足に噛みつき『生命力吸収』を試み怯ませた後【鍛錬の賜物】にて足を掴み海底…否、地面に叩きつけんと試みよう
宵の援護を受ければ助かったと、そう視線を向けた後、再び足を切り落とさんとすべく『暗殺』『早業』を乗せつつ剣を振るおう
…デビルフィッシュも食うと美味いと識ったのでな
倒し『料理』してやる故…覚悟しておけ…!



「あれは、デビルフィッシュ…!?」
 酸素ボンベを背負ったザッフィーロが、波間にその姿を現したタコの姿に思わず言葉を漏らす。
「――斯様に大きな者が居る、だと……!?」
 レディ・オーシャンに口説き落とされたのであろう。
 元よりこの世界に存在していた、過去の成れの果て。
 巨大なタコの群れ――衣蛸達は作り出されたばかりの海の中で、動く者を喰らい制圧せんと大きな軟体の足を大きく振り上げて。
「……ッ!」
 ぞわ、と肌が粟立つような心地悪さ。
 それは寒中水泳を行わされているせいで無く――。
 宵はあのような、うにうにぐねぐねしたもの――、軟体生物が苦手なのだ。
「宵、あの八本の手は厄介そうだからな。下がっていろ」
 ぎざぎざとした刃を持つ短剣を手に。眉根を寄せた宵を庇うような形で、ザッフィーロは前へと出て。
 海の中にあって巨体は、縦横無尽に泳ぎ回る。
 その姿を海の色に紛れさせながら、伸びる筋肉の塊たる足は靭やかに撓り。
 ザッフィーロが足を受け止めるように短剣を逆袈裟に斬り上げれば、その巨大な足と刃が噛み合わされる。
 海の中で振るう刃は、思ったよりも威力が出ない。
 ザッフィーロが更に深く切りつけんと力を籠めようとするが――。
 何よりも、単純に腕の数だ。
 一本を食い止められたとしても、まだタコには7本の足がある。
 ずるりと巨大な足がザッフィーロを絡め取り。
 柔らかにへり付く吸盤が、その身を吸い上げるように。
「……!」
 ぐ、と骨の軋む音が聞こえた気がした。
 内臓が押し上げられる居心地の悪さ。
 ザッフィーロはレギュレーターを一度吐き出し。
 刃をタコの腕に差し込むと同時に歯を立てるとその身へと食らいつき。
 怯んだタコが足を緩めた隙に、その腕より抜け出した。
 ザッフィーロが開放された、その時。
 宵は瞳の紫を眇めてたまま魔力に星をちかちかと瞬かせる。
 願いに似た強い気持ちは、魔力を練り上げ形と成し。
 そうして喚び出されたのは、タコの天敵とも言われる細長い魚――巨大なウツボであった。
 ――僕の目の前から軟体動物なんて、全ていなくなればよいのです……!
 放たれた矢のようにウツボが、ザッフィーロが逃れたばかりのタコへと飛び込み、食らいつく。
 一瞬宵と視線交わしたザッフィーロは、助かった、と瞳の色で語り。
 そうして水中での力の使い方にも、少し慣れた様子でタコ足を一本斬り飛ばした。
 重ねて。
 逃げようと身体を悶えさせたタコをザッフィーロはひっつかむと、海底――否。村の道へと、タコの身を叩きつける!
 ――デビルフィッシュも食うと美味いと、識ったのでな。
 ごちそうしてやれ、と宵と視線交わしたザッフィーロ。
 その視線に応じて。
 真っ直ぐにタコを見やった……、あ、いや、ちょっとやっぱり視線を少しだけ反らしてる。
 がんばって宵さん。
 いやはや、ともかく。
 喚び出したウツボに、ごちそうを与えるべく。
 宵は魔力を爆ぜさせて、魔法生命体たるウツボをタコへと食らいつかせる!
 ぐて、とそのタコが力を失い倒れた、刹那。
 鋭く地を蹴ったザッフィーロは宵の方へと一気に距離を詰めて――。
 隠されていた気配が一気に開放されて、慌てて宵が振り向く。
 それは保護色で隠れ迫っていた、もう一体のタコの足。
「……っっっ!」
 ぞわっと背に走り抜けた居心地の悪さ。
 思わず魔力を一気に放って、宵は敵を弾き飛ばし。
 駆けつけたザッフィーロは飛んでくるタコの勢いを利用して、その眉間へと刃を突き貫く!
「……」
 うにうに、ぐねぐね。
 ……軟体動物なんて、……軟体動物なんていなくなればよいのです……!!!
 動かなくなった敵に視線落とした宵は、ぷるぷると左右に首を振った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ
綾華(f01194)と

ごぼぼ…!
ここは俺の氷で…!

綾華に手を差し伸べて
その手を握ったら、すぐにトリニティ・エンハンスで状態異常能力を強化
足元に氷の柱を作り
そのまま、水中から出れる高さまでどんどん凍らせて氷の柱を伸ばしていき
身体を押し上げる形で水中を脱出!
水面を凍らせて足場を作り、そこに着地

綾華、いけるか?

手を繋いだまま綾華の後追い鳥籠を踏み台にしてジャンプ
綾華ナイス!
タイミングを見計らい
氷の属性攻撃でタコを海水ごとカチコチに凍らせてやる
綾華、今だ!

すっかりずぶ濡れになっちゃったな…
綾華、平気か?
ずっと握ってた手に気付いて
うぉっ!?ご、ごめんな!と慌てて離そうと
ええ…!ま、まあ安心できるしな…?


浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(f01757)と

夏に遊んだとはいえ水はまだ少し慣れない
落ち着こうと上に上がろうとするところで
伸ばされる小さくも頼もしい手を取る

少し身震いしてから
ん、行ける。ちゃっちゃかやっちゃお

水中戦なんてやなこった
絡繰ル指で複製した鳥籠を浮遊・密集させ足場にし空中を楽々移動

見えなくなっても、残った鳥籠で壁を作れば
攻撃の衝撃で居場所くらい割れる

ああ、そんなとこにいたのか
教えてくれてありがとーな?

勿論。ヴァーリャちゃんが氷なら俺は炎だ

属性・範囲攻撃を使って扇で解凍からの
――焼きだこになっちまえ

だいじょぶだいじょぶ
ありがとネ――って
はなさないでいーじゃん
もうちょっとだけ、このまま握っててよ



 空より落ちた海は、どうどうと激しい波を生み。
 彼と逸れぬように、彼が溺れぬように。
 水中でぐるんと回転したヴァーリャは、綾華に手を差し伸ばした。
 その小さく頼もしい指先を綾華は、指先を貝のようにしっかりと絡め握り。
 ――夏に少し遊んだとは言え、まだ彼にとって水は慣れぬ場所。
 ましてやレジャーでは無い、このような濁流の中であれば更にだ。
 ごぼ、ぼぼ……!
 ヴァーリャが魔力を籠めている事が、掌越しに伝わる。
 そう、ヴァーリャとしても泳ぎはそこまで得意なものではない。
 せいぜい物につかまってバタ足がせいぜいだ。
 だからこそ。
 ――ここは、俺の氷で。
 雪を飲み込んで、きんと冷えた海が更に冷えた気がした。
 いいや、実際冷えていた。
 ぱきん、ぴきん、と何かが割れるような音が響き――。
「っっ、ぷはっ!」
 ヴァーリャの作り出した、海を凍らせ伸ばし作り上げた氷の柱の上へと。
 二人は押し出される形で、海の上へとその身を逃していた。
「綾華、いけるか?」
 ぱたぱたとこぼれ落ちる雫。
 更に水面を凍らせて、足場を少しばかり広げながらヴァーリャは首を傾ぎ。
 その掌を握ったまま。
 ふる、と一度首を小さく振った綾華は。
「ん、行ける。ありがと、ヴァーリャちゃん。ちゃっちゃかやっちゃお」
 そうして、常の表情で飄々と笑ってみせた。
 指先を遊ぶように奔らせれば、幾つもの鉄でできた鳥籠が宙へと浮き上がり。
 水中戦なんてやなこった。
 ――敵のフィールドでわざわざ戦ってあげるギリも無い。
「じゃ、行こっか」
 二人は手をつないだまま、密集する鳥籠を足場に。
 ぽーんと跳ねて、蹴って。
 海上へとその身を曝け出した。
 何やら巨大な氷柱があると、集まりだしたタコ達が蠢くかすかな気配を感じる。
 瞬間。
 水面に敵がいると気がついたのであろう。
 見えぬ足が水面を切り裂くが、密集した鳥籠を跳ねさせて揺らすだけ。
「ああ、そんなとこにいたのか。――教えてくれてありがとーな?」
「綾華ナイス! うむっ、凍らせてやるのだ!」
 再び魔力を渦巻かせたヴァーリャが、揺れた鳥籠の下へと冷たい魔力を叩き込むと。水面ごとタコ足を凍りつかせ、その動きを食い止め――。
「綾華、今だ!」
「ん、おっけおっけ」
 彼女が氷ならば、綾華は炎だと。
 綾華より立ち上った魔力が、業火と化す。
 ――焼きだこになっちまえ!
 鍵揺れる黄金の扇を広げると綾華は大きく風を舞い上げ、大きく膨らんだ炎の玉を叩き込んだ。
 冷えて、灼かれて。
 もうもうと海の蒸発した湯気を立ち上らせながら、動きを止めたタコがぷかり、と水面に浮き上がる。
 立ち上がる湯気もすぐに月夜の風にさらわれて、溶け消え行き。
 とりあえず向かい来る敵を倒した事に、ほうとヴァーリャは吐息を零す。
「すっかりずぶ濡れになっちゃったな……、綾華、平気か?」
「だいじょぶだいじょぶ、心配ありがとネ」
 二人立ち尽くす、鳥籠の上。
 周りは海。
 空には月。
 遠くに見えるは、山の影。
 そうして。
 はた、とヴァーリャは気がついてしまう。
 この冷える風の中で、掌だけが温かい事に。
 びくっと肩を跳ねたヴァーリャは、やっと気がついてしまったのだ。
 そう。
 はじめから、さいごまで。ずっと彼の掌を握っていた事に。
「って、うぉっ!? ご、ごごごめんなっ!?」
 ぴゃっと髪を跳ねて手を離そうと、ヴァーリャが指を開いた瞬間。
「んーん、はなさないでいーじゃん」
 逃してあげない。
 きゅっと引き寄せるように、引き止められた掌。
 引き止める掌。
「もうちょっとだけ、このまま握っててよ」
 穏やかに言葉紡いだ綾華は、瞳細めて。
「え、ん……ええ……っ、う、うむ……ま、まあ安心できるしな…?」
 ぽそ、ぽそ、と小さく言い訳のように、逆の拳を口元に寄せて言葉重ねるヴァーリャ。
 ああ。夜で良かった、なんて思ってしまう。
 こんなに頬があたたかいなんて、きっと、――耳まで赤くなってしまっているだろうから。
 そんな彼女の様子に、綾華はいかにもおかしげに笑う。
 なんたって。
 握った掌が、こんなに冷たい夜の中でも温かいものだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『レディ・オーシャン』

POW   :    ディープシー・ストーム
【激しく渦巻く冷たい海水の奔流】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    「邪魔が入らないようにしちゃいますね〜☆」
非戦闘行為に没頭している間、自身の【周囲を舞う膨大な海水】が【防壁を形成し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    ウォータージャベリン
レベル×5本の【海】属性の【当たったものを海水に変える水槍】を放つ。

イラスト:hina

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●オーシャンボール
 広がった海。
 しかしこれはまだ、『オーシャンボール』の中だ。
 揺らめく柔らかな髪を海に靡かせて、鰭めいた装飾がふわふわ揺れる。
「そうですね☆ これもおうちに持ち帰りましょう〜☆」
 海底――否。
 海に沈んだ村の真ん中で、レディ・オーシャンは地へと陣を描いていた。
 それは、猟兵達から見れば。
 ――この儀式を止めなければ良くない事が起こるだろうと直感させるような力を、揺らめかせながら。
天御鏡・百々
何をしているか解らぬが、貴殿の思い通りにはさせぬ!
その妖しげな儀式は我ら猟兵が止めて見せようぞ!

引き続き本体の神鏡はオーラ防御で海水に触れぬようにガード

他のジェネシス・エイトは先制攻撃をしてきたが
レディ・オーシャンはそういうこともないようだな
余裕を見せているのか、はたまたただの油断か……
とはいえ、この海中では戦いづらいな

なれば、自分自身と戦って貰うとするか
「鏡の中より出ずる者」を使用し
レディ・オーシャンの鏡像を呼び出して戦わせる
これなら海水を操る力も相殺出来よう

そして我は神鏡より放つ光による目潰し5で敵を妨害だ

●神鏡のヤドリガミ
●神鏡の水濡れ厳禁、神鏡へのダメージ描写NG
●アドリブ、連携歓迎


アンコ・パッフェルベル
ウェットスーツめいた服をフリルや魚な装飾で飾り、
ウェーブがかった長髪も含め青系統で統一。
成程海を統べる者の名に相応しい優美さ溢れる装いです。
ベネチアンマスクで神秘的な印象を加えているのも良いでしょう。
センスは認めるです。ですが。
これ見よがしに胸元をガバっと開けてる所だけは気に入らないです!!

赤光刃でシジルを描く。呼び出すのはソロモン72柱、フォカロル。
水流を作ってもらい、儀式に没頭してるであろう防壁内の彼女を押し流すです。壁を作っても周囲一帯は海中…得意フィールドが仇になったですね!
そして体勢を崩しユベコを維持出来なくなった敵に、
周囲の水で吸収付与した黎明剣での属性攻撃!
えーと…水竜斬りです!



 冷たい海を切り裂いて、駆けるシースクーター。
 ――猟兵は群れで戦う生き物ですから。
 それはアンコの口癖。
 途中で声を掛けられた百々はアンコに手を引かれ、ぐんぐんと海底へと進んでいた。
 その先に見える女の姿。
 ――それこそ、今回の騒動の主。わる~いかみさまのレディ・オーシャンだ。
 ……彼女が何を企んでいるかは、解らない。
 しかし。――思い通りにはさせぬ!
 その妖しげな儀式は我ら、猟兵が止めて見せようぞ!
 ぐっと喉を鳴らした百々はアンコより手を離して。
 神鏡を掲げれば、その鏡の中にしっかりとレディー・オーシャンの姿を映し出した。
 百々と離れ巨大なケーキナイフとサーバーを構えたアンコは、その切っ先で水中に印章を刻む。
「あらあら、猟兵さんたち。こんなところまで、ごくろうさまですね~☆」
 レディー・オーシャンは他の幹部達と違って、先制攻撃をする素振りは見えない。
 それが余裕にせよ、油断にせよ。
 隙は、隙だ。
 猟兵達の警戒に反して、のんびりと小首を傾げたレディ・オーシャンはふわふわと髪を靡かせ。
「でも、邪魔をされるとこまっちゃうので、すこし邪魔をしないでくださいね~☆」
 彼女が意識を儀式へと戻した瞬間。
 取り巻く海水が全てを拒絶するかのように、小さく揺れた。
 ……ソレが彼女へと攻撃を通さぬ力と成った事を、猟兵達は確信する。
 その上で、アンコは口を開いた。
「ウェットスーツめいた服をフリルや魚な装飾で飾り、ウェーブがかった長髪も含め青系統で統一――、成程。海を統べる者の名に相応しい優美さ溢れる装いですね」
 海中に描き出した、赤く輝くシジルにナイフを当てて。
 アンコはレディ・オーシャンを真っ直ぐに見つめ、更に言葉を紡ぐ。
「ベネチアンマスクで神秘的な印象を加えているのも良いでしょう、センスは認めるです」
 アンコはシジルの真ん中を剣で貫き、赤紫の瞳を細めて。
 ですが、と言葉を次いだ。
「――これ見よがしに胸元をガバっと開けてる所だけは気に入らないです!!」
 お洒落好きの冒険家としての、ファッションチェック。
 シジルを切り裂き喚び出したのは、鷲獅子の翼を持った悪魔だ。
 風と海を支配するというその悪魔は――、人々を溺死させ、軍艦を転覆させる力を持つと言う!
「さあ、あいぼー! 彼女の周りに水流を作って、彼女を押し流すです!」
 海底からどう、と音を立てて水が暴れ出す。
 重ねて。
 神鏡より顕れた『鏡像』のレディ・オーシャンが、海流に巻き込まれたレディ・オーシャンへとさらに海水の奔流を叩き込み。
「あらあら~☆」
 防壁があるとは言え、中に満ちているのは海水だ。
 ぐるぐると掻き混ぜられる水流に、体勢を崩したレディ・オーシャン。
 防壁が緩んだ感覚と同時に、アンコは自在鞭を剣へと切り替えて。
 スラスターより水流を吐き出し、勢いをつけた彼女は地を蹴って水中を駆ける。
「う~ん☆ かみさまの邪魔をしてはいけないと、きいたことはありませんか~?」
 自らの周りを泳ぐ鉄の魚を盾に掲げたレディ・オーシャンは、むーっと頬を膨らせて。
「ひゃっ☆」
 ぴかりと輝いた百々の鏡の光に、思わず目を細めた。
 ――猟兵は群れで戦う生き物です!
 百々の作り出した、隙を逃す事は無い。
 スラスターより逆噴射。
 勢いを殺して剣の軌道を切り替えしたアンコは、鉄の魚の合間を縫って。
「えーと……水竜斬りです!」
 敵へと、斬りかかった!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月舘・夜彦
【華禱】
儀式は進行しているようですが未遂
まだ間に合うのですから、必ずや阻止しましょう
往きますよ、倫太郎殿

引き続き水泳の技能を活用
奔流はユーベルコードをぶつけて相殺
水流を視力と見切りにて確認、倫太郎殿にも共有

奔流に向けて早業の火華咲鬼剣舞
此方は水中でさえ消える事の無い破魔の炎にて対抗しましょう
2回攻撃で1回目に衝撃波を加えたなぎ払いにて水流を斬り裂き
2回目にカウンターでレディ・オーシャン自身を焼き払う
奔流による攻撃は激痛・氷結耐性にて耐える

敵の攻撃で無くとも、冬の水は肌を刺すような痛みがあるものです
風邪を引かぬよう、彼女には早く退場をして頂きましょうか……?


篝・倫太郎
【華禱】
儀式なんぞ成功させて堪るかよ……
往こうぜ、夜彦
ぜってぇに阻止しなきゃな

戦闘は引き続き水泳の技能も駆使して対応
こちらも引き続きで連動させたHoldaとLoreleiで
奔流の目を読んで攻撃の通り易いポイントを算出
夜彦と可能な限り情報共有して攻撃に利用

弐式使用
放った神霊で拘束と攻撃
同時に俺自身も華焔刀で先制攻撃
フェイント混ぜつつ2回攻撃
攻撃は全て鎧無視攻撃と衝撃波を乗せてく

神霊には描いてる陣を崩させるなどして
儀式妨害も可能ならさせとく
少しでも儀式の邪魔が出来れば僥倖ってな

敵の攻撃はオーラ防御で防いでカウンター
防ぎ切れないダメージと冷たい海水は激痛耐性で耐える

流石に痛み感じるレベルで冷てぇや



 海底に蠢く嫌な『予感』。
 積もった雪を食らった海水は、身を切るような冷たさ。
 海底付近まで行う素潜りは猟兵が幾ら生命体の埒外にあるものであったとしても、普段よりも随分と動きを鈍らせる。
 それでも、二人は視線を交わして頷きあい。
 ――往きますよ、倫太郎殿!
 ああ。往こうぜ、夜彦。
 水中で言葉交わす事敵わずとも、彼らの気持ちは一つ。
 ――あの怪しげな儀式の阻止である。
 バイザーごしにレディ・オーシャンを睨めつけた倫太郎が、破魔の力を籠めて振り下ろす。
 鋭く吐き出された呼気と共に、気泡が弾け。
 神霊がレディ・オーシャンへと向かって駆ける!
「もう☆ どんどんくるんですね~☆」
 肩を竦めたレディ・オーシャンが軽く右腕を引けば、生み出されるのは激しく渦巻く奔流だ。
 水流に飲み込まれぬように水を掻いた夜彦は刃を鋭く駆けさせ、水中にあって煌々と燃え盛る炎を撃ち放ち。
 ――倫太郎の電脳ゴーグルがチカチカと瞬いて、奔流を分析、解析。
 流れは読めた。
 しかし夜彦の破魔の炎では相殺は難しいようだ。
 そう結論が見えた瞬間、考えるよりも先に倫太郎は駆けていた。
 奔流迫る夜彦の腕を引っ掴むと、思い切りブン投げ。
「……っ!」
 身を裂く水流に飲み込まれた倫太郎は、華焔刀を地へと思い切り差し込んで。
 しかし。
 抵抗虚しく、錐揉み回転する身体を食い止める事はできず、倫太郎は強かに海底へと叩きつけられる。
 ごぼごぼと気泡が溢れさせ、くの字に身体を折った倫太郎がぷかりと浮かぶ。
「ッッ!」
 その姿を見やりながらも。投げられた先で地底を蹴ってバランスを取り直した、夜彦はぐっと奥歯を噛み。
 素早く銀の刃を真一文字に奔らせ、返す手で衝撃波を爆ぜさせる。
「もうっ☆」
 その衝撃波を遮らんと、レディ・オーシャンは肩を竦めてから、腕を上げて水を掻き混ぜ。
「あ、らっ?」
 刹那。
 何かが彼女の足を引っ掴んで、そのバランスを崩させた。
 ――終わったと思ってんじゃねぇぞ。
 それは酸素を失い顔を青くする倫太郎の喚び出した、神霊達であった。
 文字通り足を引っ張られたレディ・オーシャンへと、夜彦の放った衝撃波が真っ直ぐに叩き込まれ。
 力を振り絞って、水を掻いて踏み込み、重心を落とす。
 ――風邪を引かぬうちに、早く退場を願いましょうか!
 夜彦と倫太郎は、同時に海底を蹴り飛び出し。
 流れるように敵へと肉薄した薙刀と刃が、同時にレディ・オーシャンを交わし貫き――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

喜羽・紗羅
触れたら海水になるってか……どんな化け物だよ
今回は最初から全力だ
巫覡載霊――全身に異形の鎧を発現し
太刀と鞘を合体させた薙刀を手にいざ勝負!

外套の酸素ボンベを咥えて泳ぎ回避に専念
衝撃波で水槍を避けながら敵の動きをスマホで捉え続ける
目的は偽装バッグの誘導弾だ

悟られない様話して気を逸らせる
なあ姉ちゃん、美味そうなアンコウだな
この季節はやっぱり鍋だよ……知らねえのか?
アンコウってのは吊るして斬るんだよ――こんな風に!

完全にロックをしたら偽装バッグを遠隔起動
水中誘導弾を全弾発射して一気に畳みかける
この不意打ちに敵が対処している隙をつき
衝撃波で一気に推進、懐手前に入り込んで
装甲すら貫く一突きで崩してやる!


菱川・彌三八
何処に何を持って行くのか
一度追わにゃあ元を断てねェ気もするが…払う犠牲がでかすぎらぁ
マ、何度も潰せば善いだけってンなら話ァ早ぇがよ
さァ、お前ェはあと何回死ぬ?

沸き立つ程の熱の属性を籠めて、一線に二波乗せる
大波よ 水の奔流にぶつかり、喰らい、女ごと飲み込め
足りねば描く、幾度も重ねる、それだけサ
時に守り、空気の谷を作りもするが、それよりゃあぶつける方がエエだろう
力にゃより強い熱を、狙いは広がる大波で、数にゃこちらも数で当たる

波にゃ麻痺も付与、其処に縫い留めたら
煮る如く波で下っからかち上げる

感慨がある訳でもねェが、どうにもこいつァ気に入らねェ
何度も出てこれねェように、恐怖を刻んで往きやがれよ


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

酸素ボンベの残量は未だあるが海中という場所は落ち着かぬからな
早く倒し儀式を止めねばならんな…と。…宵、お前大丈夫か?
そう軟体生物にダメージを受けていた宵を心配そうに労わりつつ敵の元へ向かおう

敵の姿を捉えれば間合いを詰め『怪力』を乗せたメイスを敵に叩きこまんと試みる―も
奔流にレギュレーターが口から離れ酸素残量が減ってしまえば酸素ボンベを捨て【変形ショタリガミ】にて回避と素早さに特化した形態を取ろうと思う
的が小さければ当たり難かろう?
『見切り』『早業』『第六感』で避け宵へ向かう攻撃は『盾受け』にて軌道を逸らさんと試みつつ宵の攻撃を助けようと思う
囮は任せろ。その隙に攻撃は頼むぞ、宵


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

やれやれ、すさまじい敵でした……
これから対峙する敵も別の意味ですさまじいのですが

ザッフィーロ君の言葉には、大丈夫ですと頷いて見せて
引きずっていられません、僕たちは巨悪と戦うのですから

「水泳」で水中行動に対処しつつ
ザッフィーロ君が囮を担ってくれるなら、見事ぶち当てて見せましょう

「高速詠唱」「2回攻撃」「鎧無視攻撃」「マヒ攻撃」「全力魔法」をもって
【コード・モルゲンロート】にて召喚した魔法生物を敵にけしかけましょう

攻撃されそうになったならば「第六感」「野生の勘」で「見切り」に努め
「オーラ防御」で防ぎつつ
「カウンター」で「衝撃波」による「吹き飛ばし」を行います



「宵、お前大丈夫か?」
「……ええ、すさまじい敵ではありましたが」
 宵の頬へ張りつく黒壇色の髪を、人差し指ですくい上げたザッフィーロの問い。
 小さく頷いた宵は、細く細く息を吐いて。
 ザッフィーロの銀の瞳を見上げると、大丈夫ですと言葉を紡いだ。
「――引きずっていられません、僕たちは巨悪と戦うのですから」
 肩を竦めて、くっと喉を鳴らして笑ったザッフィーロは眦を緩めて。
「……ああ、そうだな。お前がそう言うのならば、往くしかあるまい」
「ええ、往きましょう」
 もう一度宵が頷けば、ザッフィーロはレギュレーターを口に。
 とぷん。
 二人は再び海へと潜り込む。
「え~いっ☆」
 外套に忍ばせたエアタンクを背に、スマートフォンを片手でひっつかんだまま。
 かっ飛んできた水槍を、紙一重で樹を蹴り避けた鬼婆娑羅――紗羅の目前で。
 水中の緩やかな動きの中、靡いたリボンが槍に貫かれ先が解け消えた。
 げ、と眉を寄せた紗羅はレギュレーターのマウスピースをきりと噛む。
 ――あの攻撃に触れたら海水になるってか……? 全くどんな化け物だよ。
 レディ・オーシャンなんてふざけた名前を名乗っているだけあって、水の中でもケロっと歩き回るわ、喋るわ。――かみさまってェのは、そういうモンなのかもしれねえけれど。
 よっ!
 ぐん、と全身の筋肉を撓らせて。
 紗羅は続けてかっ飛ばされて来る水槍を、上半分が水に溶けてしまった樹の幹を蹴って勢いをつけて避ける、避ける。
「うろちょろしないでくださいねん☆」
 レディ・オーシャンが再び槍を構えた、その刹那。
「……ッ!」
 民家の壁を蹴って勢いをつけたザッフィーロの大きく振りかぶった鉄球が、レディ・オーシャンの脇腹へと迫り!
 生み出された水流は濁流と化して、その流れ自体が彼女を護る奔流と成る。
 咄嗟に水槍の魔力を解いて、ザッフィーロに向かって横薙ぎに水流を叩き込んだレディ・オーシャンは大きくバックステップを踏んだ。
 避けきれぬ距離から、直接叩き込まれた水の流れに押し流され。
 錐揉み回転しながら幾度も身体を打ち付けられたザッフィーロより、エアタンクが跳ね跳んだ。
 取りに往くには、敵が近すぎる。
 ――ならば。
 腹を括り、これ以上流れに飲み込まれぬようにと海底を蹴ったザッフィーロは、くっと力を自らの中に漲らせる。
 的を小さくすれば、もっと当たり難かろう?
 そうして姿を少年へと変えたザッフィーロは、身軽にメイスを構え直し。
 レディ・オーシャンが少年へと意識を向けた瞬間に、刃のように幾匹もの魚影が彼女へと殺到する。
 ――彼が囮を担ってくれるというのならば、僕は攻撃を担いましょう。
 それは宵の喚び出した魔法生命体の魚の群れだ。
「もうっ、邪魔なひとたちですね☆」
 宵が再び腕を掲げれば、魚影達は星の魔力を爆ぜさせて螺旋を描き。
 レディ・オーシャンの生み出した奔流と魚影が、ぶつかり合い。
 猟兵達の入り乱れる戦いの場へと泳ぎ着いた彌三八は、やれやれと肩を竦めて状況を把握する。
 そして、すうと筆を差し構えて瞳を眇め。
 ……女が何処に何を持って行くのか、一度追わにゃあ元を断てねェ気もするが。
 そのために村を一つ呉れてやるには、払う犠牲がでかすぎらぁ。
 水中に引いた一線に、二波ほど乗せてやろう。
 一瞬で沸き立たせる程の熱が、膨れ上がり。
 冷えた水と熱された水が互いにぶつかり合って、生まれた大波が魚群ごと奔流を飲み込む。
 彌三八は重ねて筆を奔らせ、描く、描く、描く。
 女を飲み込むに足りなければ、重ねれば良い。
 ぶつければ良い。
 掻き混ぜられた世界に、空気の谷がぷかと生まれ。
 酸素の補給方法を失った者、持たぬ者達がその間に息を吸う。
「……なァ、姉ちゃん。冬の寒い季節はやっぱり鍋だよなァ」
 空気の谷間で。
 マウスピースを吐き出した紗羅は、レディ・オーシャンに向かって言葉を紡ぐ。
「……何のおはなしですか☆」
 生み出された波をあしらい、襲い来る魚群を槍で貫き。
 小さな少年と化したザッフィーロの一撃をぽーんと跳んで避けたレディ・オーシャンは、掛けられた言葉に反射的に返事を重ね。
「アンコウ鍋は知らねェのか? アンコウってのは吊るして斬るんだよ――こんな風に!」
 撮影を続けていたスマホを操作すると、偽装バックより一斉に水中誘導弾が撃ち放たれ。
 同時にさざめいた波が、ざぶんと再び猟兵達を飲み込む。
「きゃあっ☆」
 弾が爆ぜるが好機と。
 宵が横薙ぎに腕を振るえば、激しく魚群が殺到し。
 仕上げと真一文字に筆を奔らせた彌三八が、瞳を細めた。
 ――感慨がある訳でもねェが、どうにもこいつァ気に入らねェモンでね。
 何度も出てこれねェように、恐怖を刻んで往きやがれよ!
 一気に筆をぴいっと払った、瞬間。
 ――さァ、お前ェはあと何回死ぬ?
 彌三八の瞳が、問いかけるように開かれれば。
 煮えるように熱く燃える水が海底より吹き上がり、レディ・オーシャンをカチ上げた!
 吹き飛ぶ敵を追って、異形の鎧に身を包んだ紗羅と、小さなザッフィーロが壁を蹴って一気に敵へと肉薄すると。
 その手に握った得物。
 巨大な薙刀を。
 鎖が伸び切ったメイスを。
 二人は交わす形で大きく振り抜いて、――叩きつけた!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
千夜子さん(f17474)とご一緒に

海中にあってなお燃え盛る黄金の炎に包まれ、白き翼の姿に変身
悪しき神を称するならば……善き神の信徒として、貴様を撃滅する!

【オーラ防御】を身に纏い、周囲の海水を押し退けて(環境耐性)、レディ・オーシャンへ飛翔(空中戦)
超高熱により水槍を蒸発させ、千夜子さんの力を借りて突き進む
花弁が……助かります! 行ってきます!

【属性攻撃】【全力魔法】で聖槍に聖なる力を集中・圧縮し、【赫怒の聖煌剣】を形成
全霊を以って振り下ろし、陣も敵も海も、まとめて斬り裂く
悪しき神による呪いの海――我が聖煌剣で叩き斬る!


薄荷・千夜子
オリヴィア(f04296)さんと

生まれ育ったこの世界、新たな脅威必ずや阻止してみせます
【オーラ防御】【環境耐性】で水中対策
私の役目はオリヴィアさんの進む道を切り開くこと
『花奏絵巻』が具現化させた花弁に【破魔】の力を纏わせオリヴィエさんを守るように【迷彩】代わりに
こちらに放ってくる水槍にも【早業】で花弁を当てて攻撃が当たる前に海水へ
そして海水はUCで【破魔】の力とともに百花繚乱の花畑へと
真白き信徒が駆けるは浄化の花道
邪魔などさせません……!!
『操花術具:藤巡華簪』も【投擲】し、藤の枝花でレディ・オーシャンの行動も阻害するように【ロープワーク】で縛り上げ
それぞれのできることを全力で!



 水中に舞う花々が、水流に流され白々と月明かりに照り映えて。
 放たれた槍へと花弁を放つ事で、花弁を水と成して槍を食い止める。
 ――生まれ育ったこの世界に生まれた、新たな脅威。
 必ず、阻止をしてみせます!
 千夜子の放つ花弁が槍に溶け消えたと思えば、ぱっと海に咲いた花火のように。
 花弁が海を埋め尽くさんばかりに、水に揺れる花畑を生む。
 随分と敵にも疲労が見える。
 それでも飄々と笑うレディ・オーシャンは、水槍を幾百本も生み出し。
「わあ、まぶしいですねん☆」
 頬に掌を当てて、逆の掌を仰いだ。
 瞬間、水槍が猟兵達に殺到する!
 その只中で大きな白い翼が、水を切るように。
 進む先に水を『燃やした』白き気泡を残し駆ける、聖女の姿。
 水中にあってなお燃え盛る黄金の炎を宿したオリヴィアは、千夜子の生んだ花道を割り裂いて、先へ、先へ!
「貴様が悪しき神を称するならば……、善き神の信徒として――貴様を撃滅する!」
 身体を巡るオーラで海水を押しのけて、槍を構えたオリヴィアは水槍よりその身を花弁に庇われながら。
 一直線にレディ・オーシャンへと向かい、駆け翔び往く。
 ――そう。
 真白な信徒が駆けるは、浄化の花道。
 邪魔などさせて、たまるものですか!
 海を埋め尽くす花弁が、水槍を飲み込み。
 水槍が花弁を海と還すその合間を縫って、千夜子は海底に沈んだ木々を蹴り上げると勢いを生み。
 一直線に跳躍した千夜子が、藤花の簪を海底へと差し込んだ。
「ひゃんっ?」
 その一瞬。
 びくり、とレディ・オーシャンが、足を止める。
 足首に絡みついた違和感。
 それは千夜子の投げ込んだ簪が、藤の枝花を萌え伸ばして彼女に絡みついたもの。
 そんな枝位、千切ってしまえば一緒の事だ。
 しかし、生まれた隙は本物。
「――助かります、ありがとうございますっ」
 燃える黄金の炎を聖槍に宿したオリヴィアは、千夜子の方を見ることも無く礼を口に。
「はいっ、お願いしますっ!」
 重ねて花嵐を舞わせて、水槍をかき消した千夜子がコクリと頷けば。
 オリヴィアは大きく槍を掲げて。
「……ええ! 悪しき神による呪いの海――、我が聖煌剣で叩き斬るッッ!」
 夜の中で、輝くその姿は太陽を背負っているかのように。
 全身全霊。
 聖なる加護を宿した炎が大きく燃えあがり。
 レディ・オーシャンの向かって、陣も、海も、そして敵も。
 まとめて全て叩き斬る必殺たる一撃が炸裂した!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

中御門・千歳
シュデラ(f13408)と

面倒なタコを倒して、ようやく黒幕のお出ましだねぇ

当然睡蓮は召喚したまま戦うよ
何だい?不満そうじゃないかい
分かった分かった、後で何か食べさせて……あぁ?タコで腹いっぱいだって?
そしたら……そうだ、シュデラにでも睡蓮の鱗の掃除をさせてやるよ
全く、面食いな子だよあんたは……

さてさて、気を取り直して挑むよ
前衛は睡蓮、後衛はシュデラさね
敵の攻撃はどれも水によるもの
睡蓮の水を操る力は、封じ切ることは出来ないだろうけどさ……妨害くらいは出来るだろうさ
睡蓮!ヤツから水を奪うんだよ!

さぁーて嬢ちゃん、随分とオイタをしてくれたねぇ
お仕置きの時間だよ!


シュデラ・テノーフォン
千歳婆さん【f12285】同行

アレが噂のレディだね
まァ獲物だから狩らないと…え?彼女の鱗を??
うん、彼女が俺で良いならOKだよ

それで相変わらず海攻めか
じゃ後衛から睡蓮ちゃんの妨害+指輪の盾で防御厚めに
けど向こうも防御厚いよね…婆さん
こじ開けるの手伝ってくれるかい?
海水攻撃に防戦一方、と見せかけて奔流は盾でせき止め
睡蓮ちゃんが開けた空間を氷の壁でさり気なく維持
獲物への海の壁をなるべく薄くさせるんだ
ついでに複製銃を少しずつ移動させ敵の射程圏内へ持ってく
水槍は当たる前に凍らせて粉砕

頃合いを見て仕掛けようか
婆さん睡蓮ちゃん大暴れさせちゃって
目立って貰う間に潜ませた銃で一斉射撃
氷の槍で貫いて差し上げるよ



「きゃあ~☆ 酷いですねん☆」
 腐っても神という所であろうか。
 強かにその身を光に割かれてなお、レディ・オーシャンは生きていた。
 動いていた。
 水を裂き、地底を這う水龍と共に。
 歩み来た千歳は、額にかかった白髪を掻き上げて。
「おやおや、あれが黒幕かねぇ」
「うん、アレが噂のレディだね」
「ヒッヒ! 良いじゃないか、睡蓮! あと一仕事――……」
 千歳の呼びかけに、つーんと顔をそむけた睡蓮。
「……何だい? 不満そうじゃないかい。ああ、分かった分かった、後で何か食べさせて……あぁ?」
 声なき声で鳴いた睡蓮に、千歳は片目を眇めて。
「タコで腹いっぱいだって?」
「……え。婆さん大丈夫?」
 少しだけ二人を窺うように、シュデラは獣の耳をぴぴぴと揺らし。
 顎に指を当てた千歳は、瞳を開いて真っ直ぐに睡蓮を見やった。
「そうだねぇ、……そうだ。そっちのキマイラに鱗の掃除をさせてやるというのはどうだい?」
「……うん?」
 硝子細工装飾の拳銃を幾つも複製しながら、シュデラは瞳をぱちくり。
 刹那。
 水槍の流れ槍が此方に跳ねてきて、掌の中で銃を切り替えしたシュデラは氷弾を叩き込み。
 睡蓮が大口を一度開けると、水を操り礫と化した槍より二人を護る水の盾を作り出す。
「ヒィーッヒッヒッヒ、交渉は成立したみたいだねぇ。……全く、面食いな子だよあんたは」
「あァ、うん。彼女が俺で良いならOKだよ」
 式神を呼ぶのも大変だな、なんて。
 前へと出た睡蓮の後をシュデラは駆け追いながら、彼女の作り出す水の無い空間を維持すべく氷弾を幾度も打ち込んで。
「もう、あんまり邪魔しないでほしいですよ~☆ すこーし、かえるのにひつようなかけらがほしいだけですよ~☆」
 かき消されてしまった陣を再び描き出すレディ・オーシャンの周りに、彼女を護る水流が蠢きだす。
 シュデラの氷で維持する空間は――敵が生み出すあの海の壁を少しでも薄くできるように。少しでもあの障壁が失われるようにと、おまじないのようなものだ。
「――睡蓮! ヤツから水を奪うんだよ!」
 鋭く号を飛ばした千歳に呼応した睡蓮が、その水流を食い止めようと力を籠めれば。
 流れる力が拮抗しようとするかのように、じわじわと撓む水。
「それ、集中してなければ維持できないんでしょ?」
 たわんだ、という事は。
 既に没頭ができていなく成っているという事だ。
 シュデラが小さく首を傾げば、千歳が攻め時と顎をしゃくりあげ。
「――さぁーて嬢ちゃん、随分とオイタをしてくれたねぇ」
 一気に地を蹴って、間合いを詰める二人は口端を笑みに擡げて。
 千歳が指を差し出すと同時に、地を這った蛟が一度身を低くしてから。
 シュデラの侍らせた拳銃の群れは、ふわりと浮き上がり――。
 水龍が跳ねとんで敵へと喰らいつくと同時に、氷の弾が幾発も解き放たれ。
 そうして弾が駆ける先は凍り、氷の槍と化してレディ・オーシャンへと殺到した!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(f01757)と

嗚呼、結局水中で戦わなきゃいけねーわけネ…
まぁ、しょうがないか

炎は水中じゃ通用しねーし
やっぱ使えんのはこれしかなさそーだな

敵の動きを止めるのは彼女に任せて
攻撃を任されるなら殺傷力の高い黒鍵刀を複製
俺がうまく動けなくても問題ない
ヴァーリャちゃんが作ってくれた氷の中
より精密に操ることに集中

敵の攻撃を彼女が凍結しできた隙を縫うように相手へと向かわせる刃
万が一防御に阻まれても一点を狙い続ければ通る攻撃もあるだろう

でも、みえた
言葉に頷いて
最後くらいは敵の懐に飛び込もうか
水の流れは読めている
流れの勢いにのって
ひとつ、向ける切っ先で思い切りその身を抉ろう


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
綾華(f01194)と

敵は水の底か…
うむ、しょうがない…
綾華、また水の中に入るぞ!

俺と綾華を、丸いカプセルのような厚い氷の膜で覆い
息を合わせて移動して水中にドボン!

水中での移動は、俺の吹雪の噴射による推進力で
相手は徹底して水の攻撃
なら俺の氷で食い止めてやる!
だから綾華、その隙に全力で攻撃してくれ!

『血統覚醒』で凍結力を大幅に強化し
迫り来る渦の一部を凍らせ、食い止める
使おうとしてくる水をすかさず【先制攻撃】で凍結し、妨害を

水の中じゃ無敵だと思ってるかもしれないが
俺からすれば甘いと言わざるを得ないな!

周囲の水をどんどん凍らせて、敵の範囲を狭めていき
綾華、トドメ頼む!
全力で敵を食い止めてみせる!


ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレル】
いや!持って帰るなんて駄目です!確かに大きいスノーボールみたいですけれど。ダメですダメ

む、確かに美人ですが、雅楽代さまの方がお美しいではないですか
それに国宝であらせられ…ジャンルが、違う??(わからない)
雅楽代さまはかわいい(学習)

先程蛸を貫いた【鋼糸】を固定し足場にするように
時間は深夜、其処彼処に出来た【闇に紛れる】様にして接近
雅楽代さまの幻覚に、さらにダメ押しで海中に【惑雨】を拡散させて

そして満を持しての…!ロカジビーム(水中ver)!!(大興奮)
海中の雷も、こう趣があって良いですね
なんだか此方もビリビリするような?ショートしたら回収お願いしま

あ、この貝殻トゲトゲです(復活)


雅楽代・真珠
【エレル】
持って帰る?
それは僕が許さない
この国の物はこの国の物
駄目だよ

ヨシュカは良い子だね
分別というものを心得ている
まあ僕は綺麗よりも可愛いなのだけれど

水を操って、二人の機動力に
飛んでくる槍にも水の塊をぶつけて相殺を狙う
相殺できずとも水泡のオーラ防御でお前たちを護ってあげようね
大丈夫だよ、ロカジ
僕という国宝がついているんだ
お前は気にせず前だけを見て機を図っておいで

海を知るお前のことも気になるよ
れでぃおぉしゃん
お前には『泡沫の恋』をあげようね
僕の国の者たちを沈めようとしたんだ
お前はもっと、もっと存分に、苦しんで
心に、爪を立てよう
僕という疵を刻んであげる

如月がヨシュカを回収
綺麗な貝は見つけられた?


ロカジ・ミナイ
【エレル】

持って帰るとか聞こえた気がするけど…何を?村?
何言ってんだあのねーちゃん

別嬪さんお手製の海に還るってのも趣があるけど
今日はほら、土産があるから帰らないと…
どっかを槍に掠って海水になったら
肝が縮み上がってたぶん気が変わる
僕はチョロいからさ

ここに来てからずっと考えてたのよ…水中用ロカジビームについて
すごい溜めてすごい気合を入れれば
目標までまっしぐらに飛んでくはずだ
真珠とヨシュカのサポートに合わせて
いいタイミングで僕は渾身のロカジビームをお見舞いする
ビリビリ痺れるの好き?海っ子には結構効くと思うんだけどな
あっ、ヨシュカゴメンネ🥴

土産はタコのぶつ切りと
陣を消すついでに綺麗な貝殻とか拾ってく


花剣・耀子
おまえのおうちは、躯の海の底よ。
渡すものなんてなにひとつないわ。

まずは、あの壁を片付けるとしましょう。
トリガーを引いて、機械剣のエンジンを全開に。
大きく剣を振うわ。
此処は風が通らない、けれど。
ちょっと手ごたえが違うだけだもの。水も大気も、そう大差はないわよ。
巻き取って、渦巻かせて、この場から引きはがすように。

斬り続ければいつかは終わる。
おまえに至る道がひとすじでも出来れば、充分よ。
鋼糸を射出して通り道を作りましょう。
即座に巻き取って、レディ・オーシャンの傍まで踏み込むわ。

別世界からご苦労様。
このせかいに明るくはないのでしょうけれど。
――古今東西、荒れて害成す神は、平らげられるのがお約束なのよ。



 びりびりと水面を震わせる程の力を感じるのは、この海の深い深い底から。
 肩を竦めた綾華の横で、むむむと水面を見やったヴァーリャは眉を寄せて。
「むー……、敵は海の底のようだな……」
「嗚呼、結局水中で戦わなきゃいけねーわけネ……?」
「うむ、しょうがないな……、綾華、また水の中に入るぞ!」
「ソーネ、しょうがないか……」
 生半可な炎では、水中で通用しないだろう。なら使えるのはコレしかなさそーだな、なんて。
 綾華は思考を巡らせてから、小さく頷き。その返事にヴァーリャは再び冷気を操ると、二人の周りへと氷を張りだし。
「うむっ! では行くのだ!」
「おっけ。じゃ、いこっか」
 そうして生み出したのは、二人をまるごと包む大きな氷のカプセルであった。
 ヴァーリャの声掛けに綾華が応じれば、二人は息を合わせて歩み球を転がして。
 大きな水音を響かせて、冷たい海へと沈み往く。
 ――一方。
 二人の向かう海の底。
 真珠は冷えた淡色の瞳を揺らして、レディ・オーシャンを見下ろしていた。
「なあに、お前。今、持って帰るって言った?」
「え、何を? 村を? 何言ってんだねーちゃん」
 泡のヘルメットを被ったままのロカジも、瞬きを重ねて首を傾げ。
「えっ、ダメですよ、村をお持ち帰りするなんて! 確かに大きいスノーボールみたいですけれど。ダメですよ! ダメ!」
 テイクアウトはやっていない。
 それを聞いたヨシュカが手で大きなバツを作って、村のお持ち帰りを却下する。
「そうよ。おまえのおうちは躯の海の底、おまえに渡すものなんてなにひとつないわ」
 ロカジと同じく。
 真珠に泡を分け与えてもらった耀子は、半月を描いて機械剣を構えて冴えた青い瞳を眇め。
「え~、かみさまのやるですから、大目にみてくださいねん☆」
 幾つもの疵を猟兵達に与えられながらも尚、花のように微笑み唇を綻ばせたレディ・オーシャンは、ノーモーションで生み出した水の槍を鋭く放った。
「……!」
 トリガーを引いて機械剣のエンジンを全開にした耀子は、大きくその刃を振るって。
 ――空気の無い水中で刃を振るう時には、いつものように風を斬る感覚は無い。
 けれど。
 水も、大気も、そう大差は無いもの。
 少し手応えが違うだけだ、と耀子は判断する。
 大きく振るえば、水だって風だって斬る事ができる筈だもの。
 しかし。出し惜しみをしていられる相手で無い事も、彼女は理解している。
 機械剣《クサナギ》、――全機能制限解除。
 手頃な壁を蹴り込んで、鋭くかっ飛んできた水槍へと向かって『巣』を吐き出せば――。
 その刹那、放たれた鋼糸が海水へ溶け消える。
「あら」
 ははあ。
 そう、これったら当たると水になる系の攻撃だったのね。
 機械剣で斬らなくてよかったーという気持ちは噯にも出さず、耀子は一人瞬きを二度、三度。
「――この国の物はこの国の物。大目に見ないし、許さないよ」
 放たれた槍に向かって大きな水の塊を生み出し、仲間たちの防御を担う真珠がきっぱりと言葉重ね。
「なんたって僕は、この国の国宝だもの」
 世界を護る必要がある。
「ああ、でもさ」
 へえへえと頷いたロカジは瞳を瞑って、顎に手を当てて。
「別嬪さんお手製の海に還るってのも趣がある気がするねぇ。なんたってあの胸だ、そりゃあ大きな、がぼむぐばぐふぇふへ」
 そこに真珠が庇い消しきれなかった水槍が迫り、さっと身を捩ったロカジは間一髪。
 直撃は避けたが頭部を護る水泡を叩き潰され、たっぷり海水を咀嚼する事となった。
 真珠が慌てる事も無く、ゆっくりとロカジへと泡を生んでやり――。
 再び水泡に包まれたロカジが、げほっ、げほっなんて咳を二度。
「まあ、どれだけ別嬪さんのお誘いでもね。今日はほら、土産もあるときた。あと天気も悪いし……、随分冷えてきたから急いで帰らないとね」
 そうして彼は、こっわぁって顔をした。
 こっわあ。
「はい! 急いで帰ってタコパーティです!」
「……そう、それは素敵ね」
 ヨシュカの言葉に、耀子はこくりと頷く。
 タコパーティ。
 これはお仕事だから、終えたらご相伴に預かるのも良いだろう。お仕事だもの。
「それに――ロカジさまの言う通り。確かにあの方は美人ですが、でも雅楽代さまの方がずっとお美しいではないですか!」
 なんて言葉紡ぎながら。
 ピッと両手で鋼糸を引き絞ったヨシュカは、地へと穿たれた糸を引き寄せて自らの体を素早く移動して水槍の勢いから逃れつつ。
「それに国宝であらせられるので、とてもすごいです!」
「そう。ヨシュカは良い子だね、実に分別というものを心得ている。……まあ、僕は綺麗と言うよりも、可愛いのだけれどね」
 それでも、はなまるをあげる。
 ヨシュカを護る泡は少しばかり多めにおまけ。
 真珠は言葉を重ねて、尾鰭で水を蹴った。
「ジャンル違い、って奴だねぇ」
 ロカジが頷いて瞳を細めると、ヨシュカは『???』と疑問符を沢山頭に詰め込んだ様子。
「綺麗より可愛い……? ううん、ジャンルが違う??」
「そう。僕は世界で一番可愛いでしょ?」
 そのまま糸を引いて移動するヨシュカと並行に泳いだ真珠が、真っ直ぐに彼と視線を合われば小さな子に言い聞かせるよう。
「成る程。雅楽代さまはかわいい!」
 ピポーン。
 『!!!』と学習完了したヨシュカは、そのまま暗い海へとすいと体を隠した。
 軽口を叩きながらも次々に放たれる水槍をすり抜ける真珠は、側転するように尾鰭を靡かせ。
 刹那。
 大きな氷が水上より、降り落ちて。
 吐き出される吹雪によって勢いをつけられたカプセルは、レディ・オーシャンへと一度体当たりをブチかます。
「綾華! 任せたぞ!」
「ん、任された」
 ――それは綾華とヴァーリャを乗せた、巨大な氷のカプセルだ!
「きゃっ☆ よそみうんてんですか~? あぶないですよん☆」
 強かに撥ねられたレディ・オーシャンが地を転がって、苦言を申し立て。
「いいや! 余所見をせずに当てたのだ!」
「そんなあ、危険な氷は割っちゃいましょう~☆」
 ヴァーリャの力強い返答に。敵は激しい水流を巻き起こして氷を弾き返さんと、その力を蠢かせる。
「ダーメ。それは困るかな」
 いつもの調子で飄々と言い放つ綾華が、氷玉の外へと生み出したのは鍵の刀だ。
 ――その数60を超える刃が、レディ・オーシャンへと向けられて。
「大体! お前は水の中じゃ無敵だと思ってるかもしれないが、俺からすれば甘いと言わざるを得ないな!」
 生まれようとする奔流に向かって全力で凍結の力を叩き込んだヴァーリャは――、その血の持つ力を覚醒させた証に、その瞳を紅く紅く瞬かせる。
 力と力がぶつかり合う。
 分厚い氷が生まれては、流れようとする力に割り壊され。
 その隙間を縫って駆けた、黒刃の軌道。
「そうだよ。お前は無敵なんかじゃあ、無い」
 氷に、刃に。
 眉を潜めて水流で何とか攻撃を捌くレディ・オーシャンへと、ひっそりと忍び寄り。
 ひっくり返った形で、上からひょっこり顔を覗かせた真珠。
「れでぃおぉしゃん、――お前は僕の国の者たちを沈めようとしたんだ」
 そうして、ひたりと視線交わしあわせ。
 ……頼まれたって、赦してあげない。
 薄紅色に人を惑わせる甘い光を揺らして。
 レディ・オーシャンの瞳の中で、真珠は甘く甘くいとけなく笑う。
 お前はもっと、もっと、存分に。苦しんで、悶て、藻掻いて。
 心に爪を立ててあげる、心を真綿で絞めてあげる。
 ――僕という疵を刻んであげるからね。
「……!」
 何が見えているのだろうか。
 目を大きく見開いたレディ・オーシャンは、びくりと跳ねたその身に緊張を走らせて一歩蹈鞴を踏み。
 腕を大きく振るうと、反射的に水槍をいくつも生み出した。
「甘い、と言ったのだ!」
「逃がすつもりはないケド?」
 ヴァーリャが生まれた水槍を氷と成して綾華が指先を真一文字に駆けさせれば、幾本もの黒鍵刀が更に追撃を重ね。
 そこへ闇に紛れて水底を這うように移動してきたヨシュカが、自らの設置した鋼糸を蹴って一気にレディ・オーシャンへと間合いを詰めた。
「お持ち帰りはダメですので、こちらでお召し上がりですね?」
 糸を引く指先の代わりに、歯で手袋を引いたヨシュカは金の瞳を敵へと真っ直ぐに向け。
 その掌に刻まれた十字の亀裂より、黄金色を靡かせる。
 それは既に真珠によって幻覚を見せられているであろうレディ・オーシャンに向かって、ダメ押しとばかりに放たれる幻覚と麻痺の力を持つ、ヨシュカの体を流れる液体だ。
 思わずレディ・オーシャンは、後ずさり。
「……僕はねえ、ここに来てからずっと考えてたのよ」
 随分と長い間沈黙を保っていたロカジが、ゆっくりと顔を上げて口を開いた。
 彼は溜めていた。
 溜めに、溜めに、溜めていたのだ。
 ヴァーリャの放つ氷は着実に敵の動きを狭め、それの隙間を縫う形で重ねられる鍵刀の剣戟。
 そこ重ねられた攻撃に、彼女が蹈鞴を踏んだとなれば。――放つならば、今だと。
「やっぱり別嬪さんを痺れさせるのは、僕だって話さ」
 ちょい、と。
 水中では使えもしない煙管をふかすように、息を吐き。
 真っ直ぐにレディ・オーシャンへと向けると、雷撃が駆け走った。
「ひゃんっ!」
 溜めに貯めた雷撃――、ロカジビームは音よりも早くレディ・オーシャンを貫き。
「ああっ!」
「あ」「ははあ」
 真珠と耀子が、成り行きを見守る時の声が響いた。
「それは、ロカジさまビー、びびびびびび」
 成り行き――そう。ついでに近くに居たヨシュカが大興奮しながら感電する成り行きだ。
 ショートしたら回収お願いしますね、なんて。心の中だけで考えては見るものの。
 ヨシュカの気持ちは今、きっと周りには伝わっていないだろう。
 しかし。
 斬り続ければ、いつかは終わるもの。
 攻め続ければ、いつか好機は見えるもの。
 水流を巻き上げるように切り裂いて、生まれた氷を蹴り上げて。
 勢いをつけた耀子は、鋭く貫いた鋼糸に一本の道を作り上げる。
 それは、か細いものだけれども。
 しゅるりと鋼糸を巻き取って水中を駆ける先は――確かに生まれた、好機の道だ。
「綾華、今だっ!」
 ――見えた!
 今ならばレディ・オーシャンは完全に足を止めている。
 ヴァーリャが鋭く声をかければ、既に綾華は動いていた。
 頷きと共に、指先をぎゅっと握りしめる綾華。
 その動きに合わせて、その切っ先が一斉にレディ・オーシャンへと向けられ――。
 狙うは、彼女の首一つ。
 より精密に、より集中を重ねて。
「俺らはさ、負けるわけにはいかねーんだわ」
「ええ、別世界からご苦労様。でも」
 ――お前、このせかいに明るくはないのね。
 機械剣を大きく振るう耀子に釘付けられたレディ・オーシャンが、防御を重ねようとした刹那。
 黒鍵刀が彼女へと殺到し。
「そういう訳で!」「あんた。――負けてくれる?」
 重なるヴァーリャと綾華の声音。
「――古今東西、荒れて害成す神は、平らげられるのがお約束なのよ」
 重ねて、耀子が袈裟斬りに機械剣を叩き込んだ。
「っ!」
 レディ・オーシャンは氷を裂いて、割って。
 生み出した海水の壁で攻撃を食い止めるが、全てを止める事は出来ない。
 腕を貫いた刃。
 抉られた肩口より、鮮血がごぼりと溢れて海を染めた。

 少し離れた場所。
 倒れてしまったヨシュカを回収した如月が、彼を抱き上げている。
「アッ、ヨシュカ。ゴメンネー」
 ロカジは後頭部に手を当てて、メンゴメンゴって顔を一応浮かべ。
「そういえばヨシュカ、……綺麗な貝は見つけられた?」
 如月の抱き上げた彼に向かって、真珠が首を傾ぐと。
「あ、この貝殻トゲトゲです! きれい!」
 ぴょーんと跳ねて、ヨシュカは復活した。
 良かった~。
 でもまだ戦いは終わってないからもう少しだけ集中してね~。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
お前なぞにくれて遣るものは何も無い
逃がしもせん、此処で終いだ
此の災いの責、必ずや贖わせてくれる

先ずはオーラ防御を応用し身の回りに空気の層を確保
――来い、騰蛇
蛇身のお前なら水中での行動も障りは無かろう
第六感と見切りにて水流の方向と隙間を見定め
其処を全速を以って騰蛇に抜けさせる
邪魔は衝撃波で威力の軽減をしてくれよう
多少の傷を受けようが激痛耐性で無視して前へ
……何をしようが無駄だ、此処で潰えろ
怪力を乗せた一撃にて、不穏な陣ごと蹂躙し叩き斬ってくれる

過去の残滓なぞに未来を明け渡す事等して堪るか
何処へ現れようが何を目論もうが、そんな事に構いはせん
護る為の此の刃を以って必ず阻んでくれよう


ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

……ナイくんも感じますか、あの陣から何か良くない気配を
急ぎましょう!わたしたちにあまり時間は残されてないようです!

大斧を地面に突き刺し支えに、【怪力】で荒れ狂う水の流れに耐え
【かばう】でナイくんを掴んで流されないようにー!
ナイくん!絶対に手を離してはいけませんよー!?

【見切り】で海の流れが弱い場所を探し、
【オーラ防御・気合】で進み安全確保

…ナイくん、あれを突破するには一人では難しい
わたしに『力』をください!

天を裂き空に暁を呼ぶ剣!
此度は海を割り、巨悪を討つ為に!
昂る【勇気】に応える剣、それが齎す飛翔力で一気に海上へ
すぐさま再突入!真上から海の女王を、その陣ごと断つ!


ナイ・デス
ソラ(f05892)と

みつけました、が
あの陣、は……?
良くないものなのは、確か、ですね。急ぎましょう……!

奔流くるの感じ【第六感】ソラを【かばう】ソラの手、怪力に掴まって
【覚悟、激痛耐性、念動力オーラ防御】で軽減、耐え
離さない、ですが。長くは……ソラ、あそこへ進めます、か!?
【見切り、情報収集、地形の利用】指示だし、安全確保

あれを、突破するには……はい
私達の、切り札、ですね

真の姿である光に一瞬。そして『ソラの剣』へと変身!
手にしたソラを、聖なる光で覆い
奔流を、海水を切り裂き【生命力吸収】消滅させ
ソラに振るわれるまま、海を割る【鎧無視範囲攻撃】
陣を破壊し『生まれながらの光』で村を、大地を癒します



 宇宙服を身に纏って冷たい海の底へと水を蹴り、氷の幾つも張られた海底へと辿り着けば。
 刻んだ陣を護るように。だらんと垂れ下がる腕とは逆の腕を真っ直ぐに伸ばした先に、鉄の魚を侍らせるレディ・オーシャンの姿が見えた。
「……あの陣、は……?」
 その地に描かれた陣の気配に、ナイは言葉を小さく拳を硬めて言葉を零す。
 ――良くない気配を感じているのは、わたしだけでは無いようですね。
 相棒の様子に、気圧されたかのように眉を寄せていたソラスティベルは彼の手を引いた。
「急ぎましょう!わたしたちにあまり時間は残されてないようです!」
 そうして彼女は水を蹴って、海底へと急ぎ往く。
 猟兵達の攻撃は、確実にレディ・オーシャンを追い詰めつつあった。
「んもう、みなさんかみさまをいじめると、大変ですよん☆」
 しかし疵を重ねようとも、彼女は未だ微笑を崩すこと無く。
 蠢く水を束ねた様子を見れば、戦意を失っている事も無い。
 訪れる新たな気配に唇に掌を当てて小首を傾げて見せれば、鉄の魚がぐるりと彼女の周りを回って。
「でもすこし頂きましたら、すぐにかえりますから☆」
 だから、――邪魔はしないでくださいねん☆
 レディ・オーシャンは振り向くことも無く、迫りくるソラスティベルとナイへと向かってその力を開放する。
 蠢く水は水流を生み。
 咄嗟に海に飲み込まれた納屋の壁を蹴り上げたソラスティベルが振り上げたのは、巨大な蒼空色の斧。
「ナイくん! 絶対に手を離してはいけませんよー!?」
 砂を巻き上げて地へと叩き込んだ斧を楔として、解き放たれた荒れ狂う奔流へと立ち向かわんと空色の瞳を真っ直ぐに向け。
「はい、……離さない、です……!」
 その腕を支点にソラスティベルを庇う形でひらりと体を回転させたナイが、その冷えた奔流を背で受け止める。
 きり、と奥歯を噛み締めて、ぎゅうとソラスティベルの掌を握りしめたまま。
 ナイの背へと降り注ぐ激しい濁流は、背を貫き腹の奥から凍ってしまいそうな鋭い痛みと勢い。
 決してこの手を離しはしない。しない、が。
 ――このままでは長くは持ちこたえられそうには無い事も事実であった。
 その、刹那。
「お前なぞにくれて遣るものは、何も無い」
 そう。
 過去の残滓へと未来を明け渡してやる義理など一つも無い。
 二人の上を滑るように駆けた、大きな影。
 それは激しい濁流の隙間をすり抜け切り裂いて水中を進む、巨大な炎を纏う有翼の蛇だ。
 有翼の蛇――召喚した騰蛇へと騎乗する嵯泉は、肌を裂く凍えるような水の刃に身を貫かれながらも、鋭く紅き隻眼を過去の残滓へと向けて。
 嵯泉の身は、人の為に在る身。
 人を護るが為ならば、幾ら傷ついても構いはしない。
「――帰して遣る心算も無い、お前は此処で終いだ」
 そしてこの刃は、人ならざるもの。
 人を害する者を裁く刃だ。
 鎌首を鋭く擡げて炎のような舌をちらと見せた騰蛇の上で、身を包むオーラをすらと抜いた刃へと纏わせて嵯泉は顔を上げた。
「ソラ、あちらへ進めます、か!?」
「はい、行きますっ!」
 蛇が通った道は、幾分か水流が和らいでいる。
 任せて下さいと満ち満ちた勇気とその鍛え上げられた力を信じて、ソラスティベルはナイの腕を引き。蛇の尾を追って、奔流の中を駆け出した。
 激しい水流を切り裂く力。
 この戦いに終止符を討つ、
「ナイくん! わたしに『力』をください!」
「……はい!」
 それは、二人の切り札。
 ――私は剣となります。
 ソラを守る、ソラの剣に。
 ナイの体がぴかりと光に溶けて、ソラスティベルの髪が白く揺らいだ。
 瞳に宿る色は、朱色に染まり。
 光を宿したソラスティベルの姿は、ナイの色を映したかのよう。
 そう。
 彼女の握る一振りに『光の剣』と化したナイは、聖なる光で夜闇を照らし出して。
「お前が何処に現れようが何を目論もうが、そんな事に構いはせん」
 レディ・オーシャンへと一気に距離を詰めた騰蛇の上で、身を低く刀を構えた嵯泉は上体の筋を、弓を引き絞るが如く撓らせて。
「何をしようが無駄だ、――此処で潰えろ」
 切り捨てるように言い放った言葉は、この刃で過去の残滓の目論見など、必ず阻んで見せるというたった一つの事実。
 この刃は今護るべきものを、護るが為の刃なのだから。
 嵯泉は腰を切って軸足に重心を乗せると地に刻まれた陣ごと踏みにじるべく、――捻り込むように刃を叩き込んだ!
 濁流を乗りこなし一気に距離を詰められ、叩き込まれる一撃にレディ・オーシャンは咄嗟に防壁を張るが。
 嵯泉の怪力によって海底……村の道ごと巻き上げられて、強かに体を打ち据えられながら跳ねたレディ・オーシャンは壁へと叩きつけられて。
「天を裂き空に暁を呼ぶ剣! 此度は海を割り、巨悪を討つ為に!」
 響いた声音は、白く輝く髪を水に靡かせるソラスティベル――勇者の声であった。
 そうして彼女が跳ねれば、生まれたのは一迅の風。
 信じる強き心は、強き力と成る。
 その踏み込みは、海を越え。
 その斬り込みは、海を断つ。
 海を割る程の凄まじき剣圧によって、オーシャンボールが一瞬真っ二つに割れたように見えた。
 そうして聖なる光を纏いし刃は、レディ・オーシャンへと振り落とされ――!
「……終いだ、此の災いの責、その身で贖わせてくれよう」
 刃をひたりとレディ・オーシャンの首筋へと突きつけて。
 嵯泉は朱い視線を、彼女に落とした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
よーやく本命のお出ましだね。
あっちの世界じゃ戦えなかったけれども、今回はきっちりこの平和な村から叩き返してあげるよ。

冷静に状況観察、ボール内の海水の奔流を見切り水泳活かして適度に水流に体任せたり弱い方に泳ぎつつ消耗を抑える。
可能なら高速詠唱からの水の魔法で海水の奔流の勢いを弱めたりし、攻撃を凌ぎ切る助けに。
もし誰かが溺れそうになったら救助も視野に。
そしてある程度凌いだら水の魔法で水の抵抗を抑えつつ銛を構え、水流斬り裂きレディ・オーシャンに銛を投擲。
命中したらUC発動、周囲の水をも利用し巨大な水のシャチを召喚して喰らいつかせる。
撃破後は魔法で畑の塩分除去できないか試すね。

※アドリブ絡み等お任せ



 レディ・オーシャンの首へと突きつけられたその切っ先が、首を真っ直ぐに撥ねるかと思われた、その瞬間。
 彼女の髪の中から伸び生えた鉄の魚が、刃を衝き上げ。
 掌を地に叩きつけたかと思うと、レディ・オーシャンは踵を綺麗にあわせて刃を蹴り上げて鞠のように、大きく跳ねて後退をした。
 着地と同時に血を吐き捨て、瞳の奥に敵意を揺らした彼女は大きく腕を振るい。
「レディをらんぼうにあつかうのは、紳士としてマナーいはんですよ~☆」
 その腕の動きに合わせて、真っ二つに割れていた海より海水が一気に流れ込み。
 暴れる海が、猟兵達を押し流さんと激しく渦巻く。
「うーん、レディらしい扱いをしてほしいなら、もっとレディらしく振る舞ってくれないとねー」
 そのような濁流の中でも、平然と波を掻き分けるシャチ――、ヴィクトルの姿。
 海が彼女のフィールドであるように、また彼のフィールドでもあった。
 一瞬で練り上げた魔力を纏わせた掌を振り上げて叩き込めば、水の動きを操る魔力を上書きし。
「――あっちの世界じゃ戦えなかったけれども、今回はきっちり叩き返してあげるよ」
 過去は過去へ。
 未来に向かうこの世界には、別の世界よりにじみ出た歪な過去は必要は無い。
 重ねて奔流の嵐を生み出そうとするレディ・オーシャンに向かって、瞳を細めるヴィクトル。
 その逞しい腕で銛を掲げ、――彼女が水へ魔力を注ぎ込んだ隙を狙って。
「――喰い千切れ!」
 勢いよく腕を振り抜くフォロースルーに、尾鰭がぐるりとその場で水を掻いて。
 生み出した刹那の加速の全てを乗せた銛は、真っ直ぐにレディ・オーシャンへと吸い込まれるように。
 直後、彼女が注ぎ込んだ魔力も全てを食らい付くし。
「!」
 大口を開いた形巨大な水のシャチが、レディ・オーシャンを飲み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

徒梅木・とわ
【サイロ】

なあにがお持ち帰りだ、このあま
くれてやる物なんて米の一粒たりとてないよ
……いや。いやいや。別にキミに感化された訳じゃあない
海女さんのあまだよ。れでぃでおおしゃんなんだろう?
他の意図なんてない。いいね?
分かったらさっさと手を動かしたまえ

大層な槍だ
触れれば致命、一撃必殺と言って過言じゃあない
けれど、そうか。水の槍、ね
同じ水に触れた時、そいつはどんな反応を起こすんだい?
――試してみようか

結界と槍、水同士で溶け合うなら御の字
海水に変質されるなら、物量で押し込むなら、とわも大盤振る舞いさ。どこまでも希釈してやる
水の扱いで後れを取っちゃあ徒梅木の名が廃るんだよ
【クイックドロウ、早業、乱れ撃ち】


ヴィクティム・ウィンターミュート
【サイロ】

…お前、実は結構キレてんだろ
まぁ、無理もねーか
生まれ故郷諸共、エンパイアを沈めに来てんだからな
やる気があるのは結構───なァ、とわ
あのアバズレ、『どこまで酷く殺していい?』


ヴォイドリンク、スタート
骸の海、浸食を確認

なぁアバズレ
これ、見覚えあるよな?クライング・ジェネシスから強奪したのさ
俺は今、周囲の無機物を『漆黒の虚無』に変換できる
──水は、無機物なんだぜ?

とわが生み出す水、テメェの海水
全てを虚無に作り変え、お前に殺到させる
お前の業も、命も、思想も、軌跡も、名誉も何もかも!
削り取って、お前という存在を消してやる

テメェの汚ねぇ海水より、とわの水の方が清らかだったな
格がちげーんだよ



 水で形どられたシャチの腹を裂いて飛び出したレディ・オーシャンは、もう早く泳ぐ力も失われているのであろう。
 鉄の魚へと手を添えたかと思えば、魚が泳ぐままにぐんと勢い良く猟兵達から距離を取ろうと、鰭のような装飾をひらりと揺らし。
「なぁアバズレ」
 彼女の逃げる先。
 水面で待ち構えていたヴィクティムが、行儀悪く足先で鉄の魚を蹴り上げると大きく肩を竦めた。
「これ、見覚えあるよな?」
 ――Void-Link Start。
 躯の海、侵食を開始。
「勿論、忘れたとは言わせねぇよ。お前らのオブリビオン・フォーミュラ――クライング・ジェネシスのユーベルコードだ」
「あらあら☆ ジェネシスさんなんて、なつかしいですね~☆」
 レディ・オーシャンは、蹴り上げられた鉄の魚を文字通り『魚雷』代わりに蹴り返して。
 一瞬で跳ね跳んで大きく間合いを取れば、魔力を膨れ上がらせ。
 ヴィクティムへと鉄の魚がぶつかる前に、水を跳ね飛ばして魚を受け止めたとわが大きく肩を竦めた。
 刹那、膨れ上がる奸悪たる魔力。
 敵が生み放った幾百の水槍は、二人へと向かって殺到し――。
「いやいや、全く。大層な槍だね」
 結界霊符を指の間に挟んだとわが、空を裂くように真一文字に符を走らせれば。
「そうか、そうか。その力は加護の力を纏った水にぶつかると、その水を海水と成すのか。……くふふ、面白いものだねえ」
 噴水のように湧き上がった水のカーテンが、海水と成って真水と混ざり。
 どぷんと波を沸き立たせた。
 守りはなんたって、とわのうちのお家芸。
「水の扱いで後れを取っちゃあ、徒梅木の名が廃るものでね。キミの力がそれほどで無くて助かったよ」
 少しばかりトゲの感じる口調。
 口元を覆って控えめに笑ったとわは、薄紅色に軽蔑に似た色を揺らしてレディ・オーシャンを睨めつけ。
「――なあにがお持ち帰りだ、このあま。キミにくれてやる物なんて、米の一粒たりとてないよ」
「……お前、実は結構キレてないか?」
 思わず口を挟むヴィクティム。
「……いや。いやいや。別にキミに感化された訳じゃあないさ。あま、……そう、海女さんのあまだよ。れでぃで、おおしゃんなんだろう?」
 首を左右に振ってとわは、それをゆるーく否定する。
 そりゃあ、レディでオーシャンならば海女に違いない。直訳だ。
 他の意図なんてない。いいね? なんて言うとわに、肩を上げたヴィクティムは唇に笑みを宿し。
「――ま、従業員殿がそう言うならば、そうなんだろうよ。やる気があるのは結構、結構」
 Connection successful。
 戦いの最中に在りながら軽口を叩くヴィクティムは、『無機物』より変換した『漆黒の虚無』をその背に膨れ上がらせる。
 ――無機物。
 幾本と叩き込まれる水槍を、ただの海水と変える水の加護。
 そう。
 この場にあふれる『水』も、『海水』も全ては無機物。
 無機物を変換して生まれる『漆黒の虚無』。
 つまりそれは、――水を孕んで何処までも膨れ上がる風船のようなものなのだろう。
「無駄だよ、お前が抵抗すればするほど、この『虚無』は膨れ上がる」
 青空の瞳に哀れみにも無慈悲さにも似た色を宿して、ヴィクティムはレディ・オーシャンを見やる。
 従業員殿の口が悪くなってしまう事も、仕方が無い事なのだろう。
 なんたってこの敵は、彼女の生まれ故郷諸共――エンパイアを沈めに来たのだから。
 だから。
 雇い主の口が悪くなってしまう事も、仕方が無い事なのだ。
「──なァ、とわ。あのアバズレ、『どこまで酷く殺していい?』」
「……雇い主殿の、御心のままに」
「オーキー・ドーキー」
 応じたヴィクティムは周りの水を全て、全て、虚無に変えて、漆黒をどこまでも膨れ上がらせる。
 ああ。お前の業も、命も、思想も、軌跡も、名誉も――何もかも。
「……削り取って、お前という存在を消してやるよ!」
 ヴィクティムが膨れ上がらせた虚無は、槍を生んで抵抗するレディ・オーシャンを押し潰すかのように叩き込まれ――。
 消える、削れる、食われる、居なくなる。
 そこに残るのは、なにもない、なにもない。
 真っ暗で真っ黒な、漆黒の虚無だけだ。
 刹那。
 ぱちんと弾けたオーシャンボール。
 霧のように溶け消えて、はじめからそこに何もなかったかのように海が失われた。
「わっ!?」
「うぉっと!?」
 水面に居たもの達は、地上へと落下する。
 そりゃあそうだ。
 もともとここには、海なんて無いのだから。
 空中でとわを抱きとめたヴィクティムは、自らをクッションに地上へと落下し――。
 とわが慌てて水の結界を放った事によって、ほんの気持ちだけ軟着陸に成功する。
「だ、大丈夫かい?」
 慌てた様子で飛び退くとわ。
 水の結界より溢れる清らかな水を被ったヴィクティムは、小さく首を振って。
 ああ、これは。
 あんな汚い海水よりも、この水は、ずっと、ずっと――。
「……ハン、格がちげーんだよ」
「……頭を強く打ったのかい? ヴィクティム?」
 瞬きを一つ。
 怪訝そうに眉を寄せたとわは、彼の顔を覗き込んで首を傾げた。

 ――それは白々と雪の降る、夜の事。
 雲の合間には、青白い月がぽかりと浮いて。
 少しだけ変わった事と言えば。
 サムライエンパイアの山間の小さな村では、その日に限っては雪かきの必要が失われた事。
 そして、もう一つ。
 猟兵達の活躍によって、この小さな村は救われたという事だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月26日


挿絵イラスト