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尊みに溢れてしんどすぎる

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #グラッジ弾

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#サクラミラージュ
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#幻朧戦線
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#グラッジ弾


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●妄想戦線
「ああ悔しいわ。誰も、何もわかってない。分かろうともしない」
「仕方がないじゃない青梅。人の数だけ『それ』が存在する故に……悲しいわね」
「竹芝。青海の嘆きは私達皆の嘆き、私にも分かるわ……青海の苦しみが」
 抱えきれない嘆きを零すように、やや乱暴に置いた珈琲カップから褐色が零れる。
 カップを弄んでいた女学生が目を見開く。
「ぬるま湯につかり切ったこの帝都、否、世界に必要なのは絶対的萌えシチュの確立! 全世界が共通に! 永久に! 絶対的に萌えに燃えられる完璧なる舞台をつくりだしましょう!」
 少女達が頷き合う。
「我らサアクル幻朧戦線がたどり着いた、最高にして絶対の萌シチュ──戦火の混乱の中にこそ最高に萌え有り。はあ……尊い」
「ほのぼの、悲恋、ロマンス。全てのベースに戦下シチュあればそれよし!」
「永きに渡る平和がいきなり破滅! 世がいくら乱れども苦境の中に新たな愛が咲き誇るとか……やっぱめっちゃ良い……さあ。これが炸裂すれば」
 座席の横に置かれていた『それ』に全員が目を向ける。
「「「めっちゃ燃えるし、めっちゃ萌える!」」」
 三人がお揃いでつけているのだろうか黒い鉄の首輪が鈍く光った。

 彼女達の物騒な発言。
 周囲の人々は一瞬振り返るが再び同席した者たちとのおしゃべりに興じる。
 ここはカフェー巨台場。
 大正文化が花開く中人々が自由に、各々の思い──妄想を自由に語れる解放の場。

●グリモアベース
「こうして自分達の萌えシチュの極みともいえる『戦火に包まれる帝都』を実際に作り出さんと彼女達は動き出すのじゃ……」
 氷長・霰(角型宝石人形、なわけないのじゃ角娘じゃ・f13150)は複雑な面持ちで口を開く。
「動機はひとまず置いておく。彼女達が己が願いを叶える手段として選んだ代物。それが実にまずい物での」
 サクラミラージュの世。帝都による世界の統一により安定するまでには大きな戦争が幾度も起きている。戦争はあらゆる科学を歪ませながら発展させ、ある兵器を創り出した。
「グラッジ弾──影朧兵器と呼ばれる兵装の一つ。人の心の『恨み』を収縮したその弾丸が人に当たれば『恨み』を浴び、周囲に影朧を呼び寄せる存在と化す」
 かつて医療施設の破壊を目的に作られたそれは、危険性から帝都による世界統一後全てが回収・破壊された。
「……はずであった。しかしそのグラッジ弾を彼女達は持っておる。サアクルといっていたが……」
 幻朧戦線と名乗っていたのを考えるとテロ組織の可能性もある。
「彼女達は一般人であることは間違いないのじゃ。『戦火シチュ』から最高の萌えが産まれると思っているだけの……普通の女学生で、あるぞ。うん、多分フツウ」

 彼女達は抑えきれない萌えパッション抱いた人々──彼らの間では同士とお互いに呼び合う者が集うカフェーに集まっている所まで予知ができたと言うと霰は唸る。
「これはわらわの考えじゃが恐らくカフェーで不用意な行動をすれば彼女達は逃げてしまうじゃろう。そこで!」
 グリモアベース中に本が何冊も浮かび上がる。
 と、同時にそれぞれのペエジが捲られ始めると同時に猟兵達の周りをぐるぐると回り始めた(100パーセント健全な内容で構成されています)。

 皆がカフェで萌えるシチュトークをする!店員や客が乗ってくれるかもしれない!
 幻朧戦線達は動揺し、決行場所をばらすかもしれない!
「名付けて『僕の私の考えた萌えシチュ暴露作戦』これは多分、絶対に効く、はずじゃ!」

 本達が光り出しゲートを作り出し始める。
「わらわは『自分の瞳と同じ色のアクセサリーをそっとつけてもらうシチュ』がめっちゃ好きじゃ~!」
 君の瞳に恋してるという感じで。

●カフェー巨台場
「書生かける舞台の花形俳優。親友の為に脚本を書いていく内に……俺はお前と一緒の舞台に……と深夜の稽古場で」
「……いいですわ。しかし、その、逆に書生が実は眼鏡外したらどんな女性より美しかった。これはいかがでして?」
「……解釈違いは介錯もの、でしてよ?」

「舞台は女学校女学校。寄宿舎でずっと一緒だった病弱なクラスメイトが、保険医のお兄さんに恋しているのを知ってしまった。そして彼女の苦悩が始まる」
「俺も混ぜてくれよのパターンじゃなければいいぞ。その道を進めるなら地獄を見ることになるであろう、な」
 議論は過熱する。


硅孔雀
 ギャグシナリオです。
 ギャグシナリオです。
 ギャグシナリオです。

●概要・目的
 幻朧戦線を名乗る少女たちが帝都にてグラッジ弾なる兵器を持ち込みテロ活動を行おうとしています。防いでください。
 テロ活動が不発に終わった場合も彼女達との戦闘が発生する可能性があります。
 その際は討伐。

●構成
 第1章:日常『帝都のカフェーの優雅な日常』。
 舞台は帝都はカフェー巨台場。
 異文化交流の結果萌えが激しく渦巻いています。
 パーラーメイドさんが西洋料理に愛情たっぷりのソースをハートマークで書いてくれたりそういう雰囲気の明るいお店です。客達は皆萌え談義に花を咲かせています。
 グラッジ弾を持ち込んだサァクル『幻朧戦線』の面々もここでは一般の萌えを語る客として過ごしています。
 第1章では【PCさん達が思う萌えシチュエーション】を語っていただくと周囲からの賛辞の声が上がり、店の皆のテンションが上がっていきます。
 テンションが最高潮に達した時、ここでは戦火萌えなんて言い出せないと逃げ出していく集団が幻朧戦線です。
 例:「俺は幼女キャラが自分の背丈より高い武器を振り回し戦うのが萌え!」
  →客「幼女withデカい得物! うおー銃でも刀でも行けるぜ!! 流石(以下略)」

 勿論食事を楽しんだり、ボーイやメイドさんとして働いてもOKです。
 カフェー巨台場での一日を自由な発想でお過ごしください。

 第2章:冒険『???』。
 舞台は変わりますが、カフェーでの一幕となります。第1章が萌え発表の場なら、ここは『実践の場』というに相応しいところでしょう。
 第3章:集団戦『???』。テロが未遂に終わっても登場します。

●その他
 全体的に軽いノリ。
 注意事項といたしまして【版権ネタ】【過度なエロ】に抵触するプレイングは採用される可能性が低いです。
 全ての章につきまして断章を追加後、プレイング受付の案内を致します。
 タイミングにつきましてはお手数ですがMSページ等でご確認していただけますと幸いです。
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第1章 日常 『帝都のカフェーの優雅な日常』

POW   :    ミルクやカステラでばっちり栄養補給!

SPD   :    臨時のボーイやメイドとしてちゃっかり臨時収入!

WIZ   :    最新の雑誌や噂話からきっちり情報収集!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【第一幕:カフェー巨大場より】
 西洋諸国に赴いて店長が直接買い付けたという椅子をメイド(パーラーメイド達それぞれの設定がある)が運ぶ。
 とある町の外れにある、とある貴族の為に作られた赴きあるクラシカルな洋館──というコンセプトに沿うようにクラシカルな装飾が施された暖炉に火をくべるには、春真っ盛りな今は暑すぎる。
 ステンドグラス風の窓と春の花々の絵が瑞々しいボウルやコップを丁寧に拭くメイド(イマジナリー双子の姉がコンプレックス)が穏やかな雰囲気の男性に声をかけた。
「店長ー今日は少し暑くなりそうですし、夏向けのアイスもお店に出しちゃいます?」
「うん、それはいいね。お客様──否、お嬢様と旦那様達が手を汚して戦利品に何かあるといけない」
 今日はおしぼりをもう一つ運ぶようにと各メイド達に伝え、店長(夜明けの珈琲もいいが午後に君と飲む珈琲が一番だよと笑う)は自慢の珈琲の味を確かめる。
『戦利品を読みふける』や『同士の語らい』がより豊かになるようにと豆から厳選された珈琲は温かい。
 店内で自由に作業をしたいという要望に答えて設置したブランド品の色筆【琥飛究】の試し書き紙を交換していたメイド(ガーターベルトに得物を挟んでいるメイドになりたくて店長に頼み込んだ)がメニュー表を確認する。
 定番になったパフェー、手を汚さないサンドウィッチにメイド達が目の前でソースケチャップをかけるオムライス。
 店長ご自慢の珈琲を始めとして温かい甘酒、冷たいソーダに添えるさくらんぼの準備も万全。
「姐さん、わ……僕が手伝いますよ」
「いいっていいって! 男の子は今日も力仕事があるんだから今のうちに休んでおきな」
 サァビスチケットを仕分けできるように改良した軍服をアレンジした戦場帰り(設定)のメイドの跡を跡取りとして男性らしく振る舞っているが実は女性らしい所も見せたいという執事の女性(設定)が追いかける。
 ここはカフェー巨台場。
 全ての人々が持っている萌えを表現し、互いに認めあう空間。

「お帰りなさいませ、同士のお嬢様!
 ……はい! お嬢様にお薦めされた舞台、見に行きました! お嬢様の仰られた幼馴染がいつの間にか自分より身長が伸びて逞しくなっていたシチュ、最高でした!」
アイン・ツヴァイ
(………何だ此処は)
なんて思っても決して口にはしないが。
とりあえずはチケットを出して…そうだな
「サンドイッチと自慢の珈琲を」
…食事をしているのを良い事に、他人事の様に無視して居たが、絡まれたなら仕方ない…。
「『異能を持つ者が、自分の異能(ちから)を周囲に認められる』…此れに尽きる。」
他者と異なる、常ならざる能力を持つ者が、その力を認められ、仲間へと至る…。
「その裏に、何れ程の艱難辛苦があったのやら…」
それは想像するに難くはない…が…
(燃えだか萌えはするだろうが…俺自身の経歴を語ってどうする…!)
盛り上がる周囲を横目に、溜め息を吐いて、やらかした事を後悔しておくか…



(………何だ、此処は)
 アイン・ツヴァイ(失いし者・f26129)の緑の瞳が僅かに戸惑いの色を帯びる。
 カフェー巨台場──萌えと燃えがぶつかり合う空間を照らす淡い照明と温かい珈琲の香り。
 心に浮かんだ言の葉は決して口にせずに、辺りをアインは見渡す。
「お帰りなさいませ、旦那様!」
「……!」
 サクラミラージュ、大正浪漫が花開くカフェーの店員、メイドが笑顔でアインを席に案内した。
(とりあえず……)
「注文を頼む」
 アインがサァビスチケットを取り出し「サンドイッチと自慢の珈琲を」と静かに呟けばメイドはお辞儀をし店の奥に消えていった。 

「超弩級の旦那様、開いたお皿お下げしても……」
「……ああ。……ん?」
 サンドウィッチと珈琲を先程運んできたメイドの持つトレイの上には硝子ボウル。
「……アイスは」
「は!『甘いものを食べる男性は無差別優勝』が私のモットーでして……! ど、どうでしょうか!?」
 サァビスチケットをお持ちになっているのであれば、とメイドの目が光る。
「そ、そうだ……ここはカフェー巨台場。超弩級の戦力をお持ちの方の、萌えを、知りたいです……!」
「な、」
 超弩級、という単語にアインの近くの席にいた客が視線を向ける。「影朧の騒動をたちまち解決なさっている方だ」「絶体絶命のピンチに駆け付けてくれる英雄様最高」……彼らの、メイドの目は、輝く。
(これは……)
 サンドウィッチの皿は空、珈琲もお代わりを頼む程減ってはいない。
(食事をしているのを良い事に、他人事の様に無視して居たが、絡まれたなら仕方がない……)
 珈琲を一口。
 アインはゆっくり息を吐き、口を開いた。

「異能を持つ者が、自分の異能(ちから)を周囲に認められる』……此れに尽きる」

 いのう。ちから。みとめられる。
 誰かがアインの放った言葉を繰り返す。
「他者と異なる、常ならざる能力を持つ者が、その力を認められ、仲間へと至る……その裏に、何れ程の艱難辛苦があったのやら……」
 誰かが頼んだ珈琲の湯気を追うように、アインの緑色の瞳が揺れる。
「だ、旦那様……」「だ、だんなぁ……」
 メイドも、客も、震え──アインが反応を窺うより先に上がる歓声。
「一人で抱え込んでいた苦労が報われる! 圧倒的ハッピーエンドへの幕が上がったぁ!」
「もしかしたら悪事を……と無実の罪まで背負っていたかもしれないけど、全てのベクトルがプラスに変換される! 圧倒的ヒロイック、スーパーヒロイック!」
「……旦那様! この、勝利のアイスクリンを!」
 サァビスチケットをお持ちである方、即ち猟兵、超弩級の戦力を持ったアイン。
 力──己が手にした異能のそれを認められ、周囲から受け入れられる──正に誰もが幸せになる。アインの放った言葉が夢を与えた。
「……あ、ああ」
 置かれたアイスクリンを前に、溜息を吐く。
(これは……やらかしてしまった)
 盛り上がる周囲の熱とは相対的に、アイスクリンはひんやりと、しかしほの甘い。
(燃えだか萌えはするだろうが……俺自身の経歴を語ってどうする……!)

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミフェット・マザーグース
わぁ……オシャレですてきなお店だ!
ぱふぇーください!
ち、ちけっと? ちけっと……あった!

WIZ判定
本のお話、知りたいな。この世界の本は未体験だもん

好きなしちゅ?
えっとね……こういう、ステキなお店
こんあお店で美味しい飲み物、甘いぱふぇーを食べる、しちゅえーしょん?

悪いものに追いかけられて、ずっと隠れて一人きりで生きてきて
美味しいものなんて食べたことなくて
本の中で美味しいものの話を見て、どんなものかなって想像してたけど
はじめて食べたのは、思ったものよりずっと美味しくて、びっくり!……とか

それに、はじめて本の話ができる人にあえて、すごく嬉しくなったり、ね!
おすすめの本、教えて欲しいな



「わぁ……オシャレですてきなお店だ!」
 金の瞳をキラキラと輝かせながらミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)はカフェー巨大場を見渡す。
 女給もといメイドが笑顔で話しかける。
「お帰りなさいませ、お嬢様。お食事の用意は出来ております」
「ぱふぇーください!」
 ミフェットがはつらつとした声を上げる。
「はい、かしこまりました。チケットはお持ちでしょうか……?」
「ちけっと?」
 そうだとミフェットはサァビスチケットを探し。
「ちけっと、ちけっと……あった!」
 チケットを丁寧に受け取った店員にミフェットは更に思い出した言葉を付け足す。
「あの、この世界の本はありますか?」
「本ですか? あ、雑誌か新聞……」
「この世界の本は未体験なの。素敵な本が、読めたらいいなあ」
「……かしこまりました!」
 尊い……と呟きながら、メイドは駆け出した。

 絵本、帝都の女性ファッションが乗せられた写真本、剣劇銃声飛び交う漫画本。
「……うん! 素敵」
 本に描かれる色鮮やかな楽しい世界。
「お嬢様、『初恋の頬の苺パフェー』でございます」
「わあ……!」
 赤く輝く苺を乗せたパフェーにミフェットは目を輝かせ。
「と。本が汚れないように……」
「ああお嬢様! 私が片づけますので……はあ可愛い子に本。萌え重ね……!」
「……ん?」
 欲望を抑えきれなかったメイドの呟きにミフェットが首をかしげた。
 カフェー巨大場。
 萌えと燃えがぶつかり合う場だと店員が早口に説明し──金の瞳を細め、ミフェットは口を開いた。
「好きなしちゅ? のお話! えっとね……」

「こういう、ステキなお店、こんなお店で美味しい飲み物、甘いぱふぇーを食べる、しちゅえーしょん?」

 誰かが珈琲カップを置く音が響く。
「悪いものに追いかけられて、ずっと隠れて一人きりで生きてきて。美味しいものなんて食べたことなくて」
(──え……!)
「本の中で美味しいものの話を見て、どんなものかなって想像してたけど」
(──せにしてあげたい……!)
「はじめて食べたのは、思ったものよりずっと美味しくて、びっくり!」
 店の彼方此方から、立ち上がる男性、女性、紳士に淑女。
 誰もかれもが吠える。
「「絶対に幸せにさせてあげたいシチュエーションだー!!」」
 苺のパフェーを前に、先程まで楽しそうに本を読んでいた少女が口にする甘いお菓子とその先の幸せ。
 圧倒的、といっていい幸せオーラが春風の様に流れ込む。
「……さ、最高。我が給仕人生最高の日……!」
「あ、あの」
 ミフェットに苺パフェーを運んだメイド(小刻みに震えている)の様子を、ミフェットは心配そうに窺う。
「だ、大丈夫です! ちょっと幸せを頂いてしまいまして……」
 よかったとミフェットは胸をなでおろし、笑顔を浮かべ。
「それに、はじめて本の話ができる人にあえて、すごく嬉しくなったり、ね! 
 ──おすすめの本、教えて欲しいな」
「……く、くっっっそ幸せえええええ!!!」
 メイドが声を上げ、ミフェットは再度驚く。

 カフェー巨大場に吹き込む幸せ色の萌え風は止まらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アスワド・ウォールナッツ
WIZ/白衣の褐色エルフ医師

ときめきは万病に効きますから、医者として彼女達の情熱には好感を持ちますが……脅威となれば見過ごせませんね。

私は「同士」に扮し、共感を引き出すために一芝居打つ事に致します。自前の渦巻き眼鏡を装着して、さあ、参りましょう。

注文は薬草茶を。歌劇団の情報誌を開き、新作公演のあらすじを読むやいなや萌ゆる心を吐露します。

「素晴らしい……」
「身分違いの悲恋、死をもって結ばれる二人……ああ、なんと美しい事でしょう……!」

あらかじめ眼鏡の裏に仕込んでおいた薄荷軟膏の刺激を切っ掛けに涙を流し、そのままむせび泣く芝居を続けます。【誘惑】で周囲の涙も誘えば、場の熱量も一気に上がるのでは。



(ときめきは万病に効きますから)
 アスワド・ウォールナッツ(褐色のエルフ医師・f27107)は黄金の瞳で店内を見渡す。
(医者として彼女達の情熱には好感を持ちますが……脅威となれば見過ごせませんね)
 店内の女性、淑女が紳士かける白衣萌えと囁くのをエルフ特有の長耳は聞き漏らさない。
「あ、あの、旦那様……」
 知的なオーラに引き寄せられたと後に語るメイドはアスワドの元へと注文を取りに。
「そうですね、薬草茶があればお願いします」
「はぅ、敬語、敬語だよ……承知いたしました」
 サァビスチケットを受け取り、メイドは下がろうとし──ああ、と声をかけたアスワドに振り返る。
「すみません、舞台……歌劇の情報誌などあれば是非」
 メイドが薬草茶と共に渡したのは帝都で行われる公演を取りまとめた情報誌。
「ありがとうございます。さて、次の舞台は……」
 アスワドがゆっくりと歌劇団の情報誌を開く。
 雑誌の巻頭に大きく載せられた新作公演の特集──ぱらり、ぱらり。
「素晴らしい……」
 ぽつり、と声が漏れる。
「ああ、これだ、こうでないと……」
 はらりはらり──流れ落ちる涙の雫。
「身分違いの悲恋、死をもって結ばれる二人……ああ、なんと美しい事でしょう……!」
「「……あら?」」
 アスワドの近くの席、女学生らしき集団の視線が一度に突き刺さる。
(……来ましたね)
 冷静に周囲の状況を判断しながらも、アスワドの涙──悲恋にむせび泣く姿はそのままだった。

「かの劇団の新作、素晴らしかったですわ」
 アスワドに声をかけた女学生からハンカチが差し出された。
「お心遣いありがとうございます……ええ、大丈夫、です」
 そっと自分のハンカチを取り出し、目頭を押さえる。
 渦巻き眼鏡が外れないよう絶秒に、そして、涙が。
(出続けるように、と……!)
 自前で用意した眼鏡の裏に仕込んでおいた薄荷軟膏の刺激で最初の涙が零れた。
 一度流れたそれを止めないようアスワドの芝居は続く。
「やはり、美しい愛には悲恋、心が張り裂けそうな……う、うう……!」
 アスワドの声、仕草に、涙に惹かれるように女学生達はひたすらに頷く。
「そうです。悲恋が一番!」「ああ同士がいらっしゃるとは!」「これは、是非……成功させないと……貴方を同士として、お話いたします」
 楽しそうに女学生達が立ち上がった。カフェー巨大場の彼方此方から盛り上がりの声が上がる。
「ここは盛り上がりすぎています。私達の『お披露目』には、別の会場がよろしいでしょう」
 アスワドの机に、小さな紙が置かれた。
「これは……?」
 どこかの店の名刺のようだ、と涙を拭いながらアスワドは紙を手に取る。

「ええ、実践的仮装喫茶。萌えを形にし、表現する、格闘場」
 行くわよ青海、と女学生の一人がもう一人に声をかける。
「……お待ちしております」
 彼女達が、去っていく。
「これは……上手く、いったようですね」
 薬草茶に口を付け、アスワドは去っていく女学生らしき集団が人混みに紛れるまで目で追う。
 お揃いの黒い鉄の首輪が鈍く春の日差しの下で光っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『怪しげなカフェー』

POW   :    従業員や常連客を締め上げて情報を吐かせる

SPD   :    屋根裏やバックヤアドに忍び込み、こっそり情報を集める

WIZ   :    カフェーの従業員として潜入し、情報を集める

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【第二幕:そのカフェーに名はなく】
 帝都にある最新のエレベーターが、動き出す。
 鳥かごを思わせる蛇腹式の内扉を昇降操作を行う店員──欧羅巴から取り寄せたスーツを纏う男が恭しく開ける。
 がら、がら。
 無言で乗り込む数人の客が引くのはカート。鞄付きで頑丈だ。
「ふふ、この日の為に徹夜で頑張ったの」
「青梅は学校でも成績が優でしたものね」
「……竹芝、私達の萌えはついに、ここで完成する」
 少女達がお揃いでつけている黒い首輪が、エレベーターに備え付けのランプに照らし出される。
 誰かがそっと白い冊子を取り出し──中身を開く。
【帝都の悲劇:消失と硝煙の愛物語台本】とだけ表紙に書いてあった。

 エレベーターが開き、深々と頭を下げ客を送り出す店員は微動だにしない。
 少女達が足を踏み入れた喫茶店の地下、ダンスホールから溢れる音と光の洪水。
「──あら、少女軍団が来ましたわ!」
「おお。おお。今日もまた凝った衣装でやってくれるのかねえ!」
 ダンスホールの隅に椅子と机を並べていた男女(年上の外国人教師と病気がちな女生徒設定)が声を上げた。
「ええ、この日の為に皆徹夜で揃えてきました、わ!」
 ばっとカートが開け放たれ、中から零れるのは帝都でよく見かける軍服──によく似ている一式。
 数人の客(英吉利メイド風の一団)が歓声を上げ少女達を取り囲む。
「ばあちゃる装置も調子がいいみたいで、お嬢様が好きな火の演出も今日は素敵になりそうね!」
 目を輝かせながら、客は少女達が着替えに行くのを見守っていた。

 そのカフェーには名が無い。しかし着替えのための設備はある。
 化粧道具も最新式が揃い、男女も勿論別。
 元劇団員だったという店員達が揃えた小道具から家具一式、大道具もメンテナンスは完璧に。
 帝都か外国か、どこの技術かは分からないが、それら立体物に映像を張り合わせるばあちゃる装置も準備万端。
 自らが好むシチュエーションを完全に再現できるというそのカフェーに、今日も客は集まる。

「……なんか、あの子達の持ってたカートからチクタク音がしなかった?」

※第二部の舞台はとある喫茶店の地下スペース、巨大なコスプレ会場。サァクル『幻朧戦線』のメンバーもコスプレをし寸劇を行います。
 彼女達はカートの中のグラッジ弾をクライマックスと共に作動させるつもりです。
 同じようにコスプレをし各々が己の萌えを『実践』し、上手く観客を引き付けることが出来ればテロは未遂に終わるかも知れません。
 自由な発想でテロ活動を未然に防ぎましょう。
アイン・ツヴァイ
…一番向かない依頼を受けてしまったのか…
「だが…やるしかあるまい… 」
シチュエーションは…忌々しいが、俺の経歴を元に『世界を破滅させる程の脅威に対抗する為の特殊部隊』として…
俺はその部隊の長に据えられたが、認められていない隊長役でいいな。
「…部下役等で数人欲しい所だな…」
一瞬、失ってしまった部下達が頭を過るが、今は仕事中だ。頭を振って思考を切り替える。
話はシンプルに…『脅威との戦いの中で負傷した部下(役)を庇うために、俺は今まで隠していた異能(●念動力)を明かして守りきり、認められる』…と言う流れで良いだろう。
問題なく●演技出来るとは思うが…念の為に指定UCも使っておくか…
「…疲れた…」



 アイン・ツヴァイ(失いし者・f26129)はダンスホール内を見渡す。
(……一番向かない依頼を受けてしまったのか……)
 薄暗いホールの中響くのは笑い声。
「だが……やるしかあるまい……」
 サァクル『幻朧戦線』のメンバーも潜む中注意を引くための行動。
(忌々しいが……ア)
 アインは『貸衣装・その他受付』と札が置かれたブースへと歩く。
「ごきげんよう同志! 衣装から足りない人、全てを集めたければここに書いてくれたまえ!」
「ああ」
 ひげを蓄えた紳士風の男性が取り出したノートに目を落とす。必須と書かれた項目の中に『貴方が表現したい事』がある事にアインは再度息を吐く。
(シチュエーションか……忌々しいが、俺の経歴を元に)
 『世界を破滅させる程の脅威に対抗する為の特殊部隊』と文字を書き続ける。ふと周囲がざわついていることに気が付いた。
「あの」
「おふぁっ!? わ、我々は色素薄い系男性同好会なだけでして……」
「頼みがある。部下役等で数人欲しい所」
「わ、我々をエキストラご使命ですか!」
 騒めく人々の瞳が一斉に輝いた、ようにアインには見えた。
「特殊部隊ですか。アイン様はどのような役を……」
 アインの緑色の瞳がほんの僅か揺らめく。
(……彼らの、向ける瞳)
 一瞬、過去が蘇る。失ってしまった部下達の顔、向けられる煌めき。
(……今は、仕事中だ)
 頭を振り銀髪が揺れる──思考を切り替えるスイッチをアインは入れ、協力者を見渡した。
 
 メインステージが赤く染まる。瓦礫の山(大道具)と燻る煙(プロジェクションマッピングで再現)が広がる。
 崩壊寸前の帝都を歩む一部隊、その先頭に立つ男の白い軍服は焦げ、血が滲む。
「状況は」
「見て分からないんスか?」
 隊長さんと部下が嗤う。
 上官のお前など認めない。複数の視線が隊長のアインに突き刺さる。
 世界を破滅させる脅威は解き放たれ、対抗の為に結成された特殊部隊は焦土を進む。
『……部隊の長に据えられたが、俺を認める者は』
 アインは部下から目を反らす。逃げているつもりはない。
「……彼は、怪我をしているのか」
 足に包帯を巻いた男の元にアインは駆け寄る。冷たい視線を向けられるが肩を貸す。
「さあ、いこう。ここも危険だ」
 負傷した隊員が口を開こうとしたその時。
「て、敵襲! 敵襲だ!!」
 炸裂音、瓦礫の崩れる音、空(ホールの天井)が黒く染まる。
 隊員が小さな声で負傷した俺を置いて行ってくれと呟いた。
「……させない!」
 観客が息を吞む。
(……今、だ!)
 刹那の時間を悠々とアインは駆け抜ける。
 ユーベルコヲド:分岐時間の射線(ツヴァイク・ツァイト・レイ)は己の精神力をより賭ければ賭ける程アインに絶対の成功を与える。
 土煙がたちこめ、晴れていき──隊員を背負ったアインが、舞台の中央に立っていた。
「……あ、あの、隊長」
「守れた」
「え?」
 どこか演技とは思えないアインの声色に協力者は戸惑いを隠せず。
「今まで、この力を恐れていた。誰かを、守れるなんて、な」
 そう言葉を漏らしたアインの口の端が僅かに上がる。
 隊長、お怪我は、と負傷した隊員が声を震わせ、やがて部下達が集まってくる。
 アインの周りに集まった彼らは、もう、敵意を向けることはなかった。

「はあめっちゃ尊い! ハッピーエンド頂きました!!」
 寸劇が終わったフロアの熱気はまだ冷めない。

「……疲れた……」
 汗を拭ったアインは、そういえばまだ軍服を着ていた事に漸く気が付く。
 ダンスホールに異能の才を持つ銀髪軍人が現れし時絶対的ハピエンをもたらす。
 なる都市伝説が今まさに生まれようとしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

木常野・都月
俺は…その、コスプレとか、萌えとか、よく分からないんだ…。

困ったな…。

でも、確か以前受けた任務で、影朧に萌えられた?事があったんだ。

あの時の再現ができれば、いいんだよな。

あの時と同じ…まずは、真の姿になろう。

えっと、舞台に上がるのに、理由が必要なのか。
ん〜妖狐のダンスとかじゃダメか?
音楽?適当に流してもらって…。

月の精霊様チィの助力で、[範囲攻撃、催眠術]を会場に散布したい。

皆、何に萌えるかは、人それぞれ。らしい。

皆、自分好みの、イケメンを想像すればいいんだ。
自分好みのイケメンがダンスする幻覚を見てくれればいいかな。

調子に乗って、光と水の精霊様に集まってもらって、幻想的な風景も演出したい。



 猟兵の登場によりより一層活気づいた地下フロア。
「暗い……けど、明るい」
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の狐耳に入ってくる賑やかな音、人々の笑い声。
「しかし……俺は……その」
(コスプレとか、萌えとか、よく分からないんだ……)
『困ったな……』
 ぴょこん。狐耳が揺れる。薄暗い空間の中で揺れる獣耳に一部の紳士淑女の視線が向けられる。
(……そういえば。確か以前受けた任務)
 木常野の脳裏に浮かぶ光景。
「影朧に萌えられた? 事があったんだ……あの時の再現が出来れば、いいんだよな」
 うんうんと頷くと、木常野の周囲の空気が僅かに渦巻く。
 ぽふんという音と共に真の姿──狐の尻尾、そして長く緩やかな黒髪が木常野から生えた。
「よし。これであの時と同じ真の姿になれた」
 木常野が舞台に上がろうときょろきょろと辺りを見回し、そして一際歓声の上がる方へと歩んでいく。

「えっと、舞台に上がるのに理由が」
「は、はい。一芸見せて頂けるのであれば……あれば!」
「ん~……妖狐のダンスとかじゃダメか?」(ふわっ)
「はひっ! ふさふさ! もふしっぽ! 踊りですね! 音楽はどのジャンルで」
「音楽? 適当に流してもらって……」
「分かりました! 最高のメンバーをご用意いたします!」

 さて、舞台の上に黒狐が立っていた。
 黒狐の耳、尻尾が揺れる。その姿に誰もが釘付けになる。
 あるものは狐の神秘を。あるものは狐の化身だとその黒が舞う度に涙を流す。
「チィ。月の精霊様。力を貸してもらうよ」
 チィ!と明るいジャズダンスと眩い照明に興奮した精霊が尻尾を揃えるようにぴんと立てる。
 狐の羽衣がふわりと揺れ、音と光の海を漂うかのようにゆらゆらと。
(皆、何に萌えるかは、人それぞれ。らしい)
 チィ!と月の精霊の子がもう一鳴きし、黒狐──木常野の舞に力を与える。
「皆、自分好みの、イケメンを想像すればいいんだ。
 自分好みのイケメンがダンスする幻覚を見てくれればいいかな」
 周囲を酔わせるダンスが見せるのはイケメンの舞。
 イケメンが光り輝き、イケメンが水の中を踊る。
「……はあ、光と水。めっちゃ自然感じる恵みのイケメン……」
「マイナスイケメンイオン……イケメン日光浴……」
 人工の照明と造花に囲まれていたはずの舞台の上に草木が生い茂る光景が広がっていた。
(……あ。これは、少し)
 踊りながら木常野は周囲を見回した。
 呼びかけ、集まって貰った光と水の精霊が映し出した光景。演出としてはささやかなものだと考えていたが。
(──少し、テンションが上がってしまったかな)

 後日、田舎の新鮮な空気とイケメンを吸いたいという男女が増えたという。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミフェット・マザーグース
◎お芝居で、みんなの注目集めるのがお仕事、むむむむ~
ものがたり、もえ、あんまり分かんない……
あ、でも、みんなが喜んでるお芝居の、まねっこをすればいいんだ!

『脅威に襲われてる戦場の兵士』で
『隠れて慕っていた先輩に守られちゃった部下』の気持ちで……

UC【むかしむかしあるところに】
♪あなたはいつも一人きり 恐れられるからって、一歩はなれて
好かれなくていいって、近づくとすぐに逃げてしまう

誰より皆を気にかけてるって いつかはみんな分かってくれる
そうごまかして、届けそこねた言葉は 戦火の轟音にかき消えて

皆を守って炎に消えた、あなたの姿を探してる

(爆発の中から生きて戻ってきた先輩に抱きつくエンド)



 金の瞳が見つめるのは色とりどりのドレス。
(お芝居で、みんなの注目集めるのがお仕事、)
 黒い髪がふわりと揺れ、金の瞳の持ち主である少女は首をかしげる。
「むむむむ~……」
 ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)は、少し困っていた。
「ものがたり、もえ、あんまり分かんない……」
 あの子、もしかして迷子なのかしら?と誰かが囁く。
「あ、でも!」
 ミフェットは顔を上げ何かをひらめいたかのように声を上げた。
「みんなが喜んでるお芝居の、まねっこをすればいいんだ!」
 きらきらと輝く金の瞳が今迄見て来たのはここを楽しむ人々の姿、笑い声、楽しいお芝居の数々。
(うん。ミフェットが出来るお芝居……それは)
 こほん。
 地下スペースの丁度中央、ミフェットは立っていた。
 小さく咳払いをし、準備はできた。
 瞳を閉じ、思い浮かべるのは──。

♪あなたはいつも一人きり 恐れられるからって、一歩はなれて
 好かれなくていいって、近づくとすぐに逃げてしまう

 ミフェットの口から紡ぎ出される言葉は旋律を抱き歌として響く。
 がやがやと喧騒に包まれていたその声の中、ミフェットの歌は紡がれる。

「あ、あの子の歌……」

♪誰より皆を気にかけてるって いつかはみんな分かってくれる
 そうごまかして、届けそこねた言葉は 戦火の轟音にかき消えて

 煌びやかな軍服を着ていた男性陣、自らの萌えを表現し終え談笑していた彼らの足が止まる。
「おい。おい……ここ、ステージじゃないよな?」
「女の子が一人……って、なんだ、焦げ臭い?」
 周囲の人間も顔を見合わせ、そして異変に気が付く。
 スペースに立っていたはずが、瓦礫が足に当たる。地下のはずなのに日の光は差し込み、茜色に染まった空を照らす。
 何かが焼け、崩れる音と匂い。
「戦場……?」

(ここは、戦場。脅威に襲われている戦場。そこには1人の兵士)
(戦火の轟音。守ってくれたあの人。先輩)
 歌声に合わせ、熱を帯びた風が吹く。
(突然のことから守ってくれたのは、隠れた慕っていた先輩。そう、守られちゃった、部下の気持ち)

 ミフェットの即興で作った物語仕立ての歌、それはユーベルコヲド:むかしむかしあるところに(ワンス・アポン・ア・タイム)となり人々の心に突き刺さる。
 皆が皆、心を刺激され、ずっと聞いていたいとミフェットに視線を向けていた。

 戦火の中響く音色は悲しげに。全てを壊しつくす炎と閃光。

♪皆を守って炎に消えた、あなたの姿を探してる

 ぱっと地下フロアが照らされる。まるで爆発が起きたかのような閃光の中──少女は駆け出す。
「……そう! 探していた!」
 ぽふ。
 ミフェットに抱き着かれた男性が驚愕する。
「……爆発が起きて、炎がいくら絶望を生んでも……心に火をつけてくれた先輩は、消えない」
「……生還、エンド?」
 爆発の中、生きて戻ってきた先輩がそこに立っている。
 圧倒的なハッピー生還エンド。地下フロア内で歓喜が爆発した。

成功 🔵​🔵​🔴​

キング・ノーライフ
芝居か、たまにはそういう余興もいいだろう。
要は役に想像や解釈の余地とかがあれいいのだろ?

という訳で【狸塚の呼び鈴】と【鼬川の指輪】で狸塚と鼬川を召喚、
設定は「我が従者狸塚を伴い店を出ると何者かに雇われたユーベルコヲド使い鼬川に襲われる。それを我が返り討ちにする。その上で鼬川が良い扱いを受けてないのを服装や目つきを見て察し、止める狸塚を無視して「面白い」と屋敷に連れて行く」という話だ。

鼬川の【風刃】で作った風の剣を【豪奢なタルワール】で弾いたり、【ダンス】のような演武【パフォーマンス】を見せ客を【誘惑】しようか。

ん、鼬川はこの役が不満か?
元々我らの出会い等近い物ではあったではないかと笑う。



 キング・ノーライフ(不死なる物の神・f18503)がステージを見つめる。 
「芝居か、」
(たまにはそういう余興もいいだろう──要は役に想像や解釈の余地とかがあれいいのだろ?)
 一団が恭しく礼をして、舞台が終わる。
「次に舞台に立ちたい」
 控えていたスタッフの前に立ったキングが告げる。サポートの方は要るかと恐る恐るスタッフが尋ね。
「従者が必要か。それなら呼ぼう」
 薄暗いステージの脇。暗がりに二つの影が伸びた。

 その日の喫茶店。
 眼鏡を掛けた青年が扉を開ける。
「──暑いな」
「はい旦那様。今日は初夏の天気そのままだとラジオで流れていました」
 年下系狸耳眼鏡男子、キングが召喚した狸塚・泰人が笑う。
 王と従者は喫茶店から出ようとしていた。
「……待て」
 喫茶店の裏口。薄暗い路地裏から声が聞こえ。次に、刃が煌めく。
「──な! 旦那様!」
 咄嗟にキングを庇うよう狸塚は前に出る。その動作よりも早く、王は動く。
「暗闇からつけたのか。何者だ?」
 宝石や銀の細工が施された片手持ちの曲刀『豪奢なタルワール』がすらりと抜かれ、神々しい煌めきが路地裏を照らす。
「……誰がっ、教えるかっ!」
「ほう。ダンスを所望か、なら──鼬川、我が許す。切り刻めっ!」
「!」
 舞台の上に風が吹く。キングのユーベルコヲド:風刃(ウインドブレード)で作り出される風が剣のように裏路地の男──召喚されたもう一人の従者鼬川・瞬太が目を見開く。
「どうして、名前を……ってふざけるな!」
 相手に情けを見せ、慈悲すら感じさせるキングを前に鼬川は叫ぶ。
「影の刺客程度に我が怯えると思っていたか?」
 風の剣を構えた鼬川へと曲刀を振りかざす。間合いを図り飛び込む足さばきはまるで舞踏会のステップ。
 キングが一歩踏み込み、風を薙ぎ払う。
(……ほう。我に合わせられるか。ならば、)
 舞台の上で王と従者は踊り、惹きつけられた観客達の熱い視線を狸塚は感じていた。
(流石御主人様……凄いっす!)
 キィン。
 弧を描いて舞台の中央に刃が突き立てられる。
 そして、曲刀の先が鼬川の喉先にすっと置かれる。
「舞踏会は終わりだな」
「……ちっ!」
 鼬川の瞳を覗き込むようにキングは顔を寄せ、見守っていた狸塚が慌てて駆け寄る。
「旦那様!」
「……殺せ。この路地裏が」
 自分にはぴったりな死に場所だと鼬川がの瞳が伏せられる。
「旦那様、警察に引きわ」「ここが、死に場所か?」
 キングの言葉、その声色はどこか楽し気だ
「そのぎらつく眼の光を誰が鈍らせたか──力も審美眼も持たぬ下劣な存在であるのは分かる。輝く輝石の原石をこうも穢せるとは。嘆かわしい事だ」
「──っ」
「面白い。その曇った眼、奥底に眠るそれはまだ磨ける。ここで潰れるのは惜しい。屋敷にまだ人は要るか」
 突きつけていた曲刀が下ろされた。屋敷という言葉に反応するのは狸塚。
「旦那様! まさかこの狼藉者を……? こ、こいつは旦那様の命を狙ったのです!」
 二人の間に飛び出した勢いでずれた眼鏡を掛けなおすのも忘れながら狸塚が叫ぶ。近くの警官を呼び止めようとする手をキングは掴み、下ろした。
「なに、我の物になる者はいくらいても足りない」
「旦那様!」
「な、お前、何考えているんだ!?」
 狸塚と鼬川、二人を見やりながらキングはスーツについた埃を払い、振り返った。
「さて。我の者になったのであればその服も、汚れた体も、その魂も全て洗うこととなる。我の傍にあるべき魂の美しさに気が付かない不届き者が来る前に、屋敷へ戻るぞ」
 暗転。

 拍手喝采の中、役者が舞台から降りる。
「ん。鼬川はこの役が不満だったか?」
「……」
「元々我らの出会い等近い物ではあったではないか」
 なあ、と笑うキングのその微笑に益々拍手は鳴り響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

平平・晴
今日の人格【腐晴】

禁断の恋ってエモいと思いませんか
身分の違いも性別も乗り越えた先の真の愛

役者のお手伝いを頼めるなら
私の推しカプに何となく似ている超絶美形のあの彼とこの彼に

わわわ私なぞが主役をするのは恐れ多いが過ぎるので!
モブ女で結構ですむしろモブさせて下さい何なら屋敷の壁役でもいいです

舞台はとある華族の屋敷
私は両目隠れのカツラと限界ナチュラルメイクで【目立たない】モブメイド
彼らは華族の御曹司と使用人

同性同士という葛藤と苦悩の中の秘密の恋
家同士が勝手に決めた許嫁の存在など
立ちはだかる障害が多いほど燃え上がり渦巻くクソデカ感情

たまたま目撃して「あっ…(察し)」ってやったり
恋路を応援してます



「俺達」「二人がこんなに目立って」
「「いいのかい?」」
「ひゃわわっ……!」
 美男子×2のスタッフに声をかけた平平・晴(一般人・f27247)の背が壁に触れる。
(超絶美形のあの彼とこの彼……あのこの……このあの……)
 今日の平平の人格は掛け算属性を嗜む【腐晴】。
(私の推しカプを再現していただける超絶美形の人が二人、二人も……!)
 自分から声をかけ、尊い光が差し込みその眩しさに心が焼かれる。
 嬉しい痛みを感じながら腐晴は顔を上げる。
「わわわ私なぞが主役をするのは恐れ多いが過ぎるので!
 モブ女で結構ですむしろモブさせて下さい何なら屋敷の壁役でもいいです……!」
「分かりました。主役の女性を引き立てるのも務めですが、オーダーに従うのも仕事」
「素敵なシチュエーションを教えていただきましてありがとうございます。二人で精一杯頑張らせていただきます」
 壁ドン未遂×2からぱっと態度を変え、王子様の様に振る舞う美男子×2、その演技幅は申し分ない。
 黒い瞳に期待の炎が宿り、自らが書き込んだシチュエーションに相応しい装いをするため腐晴は化粧室へと消えていった。

 邸宅の薔薇園が月の光に照らされていた。
 風に揺れる赤い薔薇。香しい匂いを零すそれは、触れる他者を棘で拒む。
「坊ちゃま」
「……」
 あ、と使用人は湿った己の手に気が付く。
「申し訳ございません。旦那様」
「……すまないね」
「今日も薔薇園の花々が美しく咲いています。ですから悲しい顔は」
「していたかい?」
「……すみません。奥様もきっとお喜びになるでしょう」
「まだ、奥様ではないよ。彼女は此処を気に入ってくれるかな。僕みたいな末席の人間の手慰みの庭を」
 落ちた薔薇の花弁をそっと拾い上げる御曹司。気が付けば赤い薔薇ばかり植えていたと彼が笑う。
「伯爵家の方です。美しい花々を知っていらっしゃいます」
「……僕は、この花を、棘があって痛いのにと笑ってくれた君に……もっと見せたいのに……」
 不意に風が強くなる。御曹司の言葉は風に消え──。
「ご主人様ー! どこにいらっしゃいますかー! あっ……」
 両目隠れのカツラの下、ナチュラルメイクで完璧なモブメイドと化した腐晴が薔薇園に駆け付ける。
「か、風も強くなってきました。そ、その、戻りましょう」

(はー……!!)
(禁断の恋! 身分の違いも性別も乗り越えた先の真の愛!)
(立ちはだかる障害が多いほど燃え上がり渦巻くクソデカ感情!!!!)
 壁であり空気であるモブメイドこと腐晴は己の欲望の火を。
(恋路を応援するに、決まってる!)
 ユーベルコヲド:同担歓迎(ドウタンカンゲイ)が会場にいた人々を包み込む。
 推しのプレゼンテーションとして最高のクソデカ感情が詰まった劇。釘付けとなる人々の瞳が燃えあがる。
 葛藤と苦悩の中芽生えた秘密の恋を照らす灯りとして、クソデカ感情ファイヤーと昇華させフロアを沸かせた。
 推しぬい、缶バッジ、コースター、うちわとうちわ収納用推しバッグ。
 そして概念コスメの文化誕生の切欠になったと後の世では語られている。

成功 🔵​🔵​🔴​

樋口・杜宇子
こういうのは如何でしょうか。

私が演じるのは、幼き日に双子の妹を攫い、残る一家を殺した外道への奪還と復讐を誓った女性将校。
事件さえ無ければスタアも夢でなかった美少女は、今や「女である前に刃」の辣腕軍人。
彼女は同僚(ばあちゃる装置による一人称が俺の女性)と惹かれ合っていくのですが、
ある些細な誤解が不和を呼び、
不和は戦火の中で燃え上がり、
ついに二人は刃を交わしますの。
「答えろッ! 貴様はどうしてッ……!」
涙混じりの剣戟は相討ちに終わり、二人は肉体から解き放たれて初めて結ばれる、というお話。

以上が私のユーベルコード
「カップリング・エヴァンジェリスト」ですわ!



 樋口・杜宇子(「尊さ」という正義の味方・f27941)が演じるのは女性将校。
 花を愛で、子を抱きしめるその手に握られるのは銀の光放つ刃。
「あの顔、立ち姿、勿体ない……」「おいおい聞こえるぞ……」
 男達は顔を伏せ、媚へつらう笑みを浮かべ、それでも冷ややかな視線を彼女──スタァ顔負けの美貌を練ぶり回すように穢す。
「……」
 軍人達のいない、中庭。
 咲いている野花を樋口の緑色の瞳がそっと捉え、次の時にはペンダントのロケットへと向けられる。
(お姉さまならきっとスタァになれるわ!)
(……何言ってるの。同じ顔なら貴方もでしょ?)
 写真の中の「彼女」は幼い時の自分そっくり。仲良しの双子の妹を、家族を、未来を引き裂いたのは──。
「立ち止まってる暇はない。外道を屠るまでは。この身は女である前に刃」
 妹を攫い、一家を襲った外道を殺すためにこの手は刃を選んだ。
 ぎりぎりとこぶしを握り、樋口の口から復讐の言葉が漏れる。
 周囲の空気が凍り付こうとしていたその時
「おいおい、俺が昼寝したいってのに物騒な上司がいたもんだ」
 凛々しい女性の声が呆れたように響き渡った時が初めだった。

 不器用な交流は、それでも確実に二人を結び付けあっていった。
 同僚が自分を遠巻きに見る中、彼女だけは何を馬鹿なことをと簡単に壁を乗り越えて。
 笑っている顔が綺麗だと、お互いに自然に思えるようになっていた。
 しかし、彼女には言えなかった、自分の中に眠る復讐の火は些細な事で燻り、火種は戦火の中で燃え上がる。

「答えろッ! 貴様はどうしてッ……!」
 ばあちゃる装置に映し出される真っ赤に染まる戦場、彼女の黒い影に刃のそれが伸びる。
 樋口が掲げる刃、影の刃が何度も何度も交差する。
「……答えろッ!!」
 もはや言葉にした所で、二人の行く末は崩れ落ちた瓦礫が物語っている。
 お互いの剣が、お互いの胸を貫き──赤い跡が道を作るかのように広がる。
「……あいしてくれて、ありがとう」
「は、はは、なあ、俺達……一緒、だよな?」
 レッドカーペットを歩み進める二人の行く末は、肉体を捨て去った今、輝いていた。

「こういうのは如何でしょうか。この尊さ!」
 樋口のユーベルコヲド:カップリング・エヴァンジェリストが発動する。
 観客達が目にし、耳に聞き、ばあちゃる装置を用いたリアルなパフォーマンスで体験したカップリングの尊さ。
「悲劇かもしれないけど」
「だけど、幸せの形は人それぞれ!」
「尊い……悲劇だとしてもハッピーに向かうその意思……!!!」
 人々の瞳が輝き、沸き立つ。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜


うーん、心を打つ演技ねぇ。
アタシはそういうの余り思いつかないし、
アタシ自身の思い出に残ってるシーンでも再現してみるかな?
そう、行方知れずになった親友を探すために、
猟兵になったあの時……。
誰に聞いても要領を得られず、走り回った先に出会ったのが……
あの正体不明の妖精?と不思議なステッキだった。

って、アレ?
ちょっと待て、そこで対面するの宇宙カブだろ?
なんで脚本が書き換わってるんだよ!?
やっぱテメェかこの珍獣が!
しれっと人の過去を捏造してるんじゃねぇ!
しかももうステージが始まってるし、
この展開は変身しないとダメな奴だろ!?

……ええいままよ!フルシーンで変身してやらぁ!
そこ!うわキツとか言わない!



(うーん、心を打つ演技、ねぇ)
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が地下フロア──コスプレイヤー達の寸劇を眺めていた。
 人の数だけ萌があり、燃えている。
(アタシはそういうの余り思いつかないし、アタシ自身の思い出に残ってるシーンでも再現してみるかな?)
  生まれ故郷のUDCアースで起きた事件。目の前からいなくなってしまった友人を追い求めてきた日々。
(そう。アタシが猟兵になったあの時……)
 ふと気が付けば親友がいない。多くの人の間を駆けまわり。
(誰に聞いても返事は曖昧。要領を得られず、走り回って……)
 棒のような足を根性で引っ張り、そこにたどり着いた。
 出会ったのだ。
『そうだね! 多喜ちゃん!』
 正体不明の妖精と不思議なステッキ。彼?ら?がにこにこと笑い、自分にほほ笑む。うさんくさいなあと思ったけど……
「って、アレ? ちょっと待て、そこで対面するの宇宙カブだろ?」
『違うよ。脚本弄ってないよ』
「なんで脚本が書き換わってるんだよ!? ──やっぱテメェかこの珍獣が!」
 ここはサクラミラージュ、地下コスプレ広場。
 謎の妖精が1匹いてももふもふ愛好家の目が輝く程度には受け入れられる世界。
「しれっと人の過去を捏造してるんじゃねぇ!」
 数宮が喋る妖精を捕まえようと手を伸ばした瞬間。
「まぶしっ!」
 光と音が溢れだす。ピンクや黄色、花の香りに明るい音楽。
【次世代戦闘魔女子ショー。飛び入り参加大歓迎!】と司会の男性がまくしたてる。
「……魔法少女ってやつかい? ま、まさかこの状況!?」
 ステージはまだ始まったばかりで立つ魔法少女は少ない。彼女(彼もいます)達が連れているのは可愛らしい小動物、あるいは着ぐるみのお供。
「妖精さんだ!」「あのお姉さんも変身するのかな?」
 ひそひそがざわざわに変わっていくのを数宮は感じていた。
 期待に変わっていく観衆の目。──魔法少女に変身しないの?
『多喜ちゃん! ここは変身するしかないよ! さあ!』
 妖精さんがふわふわと飛び発破をかける。
「く、ステージは始まってるし……この展開は変身しないとダメな奴だろ!?」
『多喜ちゃん! サクラミラージュを守って!』
「……分かった! そのために来たんだからね! ええいままよ!」
 意識を集中させ、妖精さんとアイコンタクトをとる。空中に現れたステッキを手に取ると、数宮を中心に閃光が迸る。
「こうなったらフルシーンで変身してやらぁ!」
 ユーベルコヲド:荒唐無稽の体現者(シャインラジカル・ドレスアップ)が発動した。
 妖精さんの力が数宮に降り注ぐ。春の穏やかさを身に纏う。
 ピンクのフリルは何重でも重ね、リボンはぴんと形を崩さず。
「……そこ! うわキツとか言わない!」
 だん!
 仁王立ちでステージ中央に魔法少女数宮・多喜が舞い降りた。
「さあどこからでもかかってきな! アタシが相手してやらあ!!」

 数宮のマイクパフォーマンスはやけくそから生まれた産物であった。
 しかし、猟兵は奇跡を生み出す。魔法少女でなくてもそうでなくても。
「敵……?」
 歓喜に満ちた空間の一角。幻朧戦線のメンバーが、動き始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『同人娘』

POW   :    ア゛ッ…顔良゛!ん゛っ…(嗚咽)
非戦闘行為に没頭している間、自身の【敵でもあり、公式でもある猟兵の顔 】が【良すぎて、嗚咽。立ち止まったり、倒れ伏し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD   :    ――散ッ!(公式である猟兵に察知されたので逃走)
肉体の一部もしくは全部を【同人エッセイ漫画とかでよくある小動物 】に変異させ、同人エッセイ漫画とかでよくある小動物 の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
WIZ   :    同人娘達…? ええ、あっちに駆けて行きましたよ。
【オタク趣味を微塵も感じさせない擬態】を披露した指定の全対象に【「こいつ逆に怪しいな…」という】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【第三幕:幻朧戦線その輝き】
「なによ、なによ、なんなのよ……!」
「戦乱こそが帝都を染めるべきなのに!」
 黒い鉄の首輪が舞台を照らすライトに当たって鈍く光っていた。
 猟兵達が己の萌えを見せ、それに魅せられた観客達は彼女達の鉄の黒より澱んだ瞳の色に違和感を覚え、騒めき立つ。
「私達の『悲劇シチュエーション』が負ける、ですって……?」
 観客の誰かが、猟兵が、皆が気が舞台の上に置かれたカートの不自然さに気が付いた──その時。
「幻朧戦線万歳! 戦乱万歳! 悲劇シチュ最高!」
 舞台の上の少女達──幻朧戦線のメンバーが叫ぶ。閃光と熱が炸裂する直前、観客達は悲鳴を上げながらも、避難と舞台の上の彼女達守ろうと動いた。
 ぼすん。
 何かが膨らみ、割れる音。緞帳が舞台の上へ降り注ぐ。

 幻朧戦線のテロ活動は未遂に終わった。
 しかし、最後の幕は上がったばかり。

『今日はコスOKイベか……推しキャラレイヤーさんきたらどうしよう……推しカプ同士だったら……』
『最後尾はこちらではありません! ぐるっと回って向こう側!』
『新刊駄目だった……でもこの無配最の高……』
 カートの中にはグラッジ弾だと気が付かれないよう薄い本が詰められていたという。
 グラッジ弾が炸裂し、薄い本が貫かれる。
 その悲しみに、影朧の群れは引き寄せられた。

※平坦な舞台の上での集団戦になります。
※幻朧戦線のメンバーはグラッジ弾の直撃を受け自爆しています。彼女達との戦闘は行えません。
キング・ノーライフ
真の姿解放して金属の翼と肩当を装着。
しかし自分達の性質を鑑み、戦闘に向かん影朧を集めるという想定はしてなかったのかという疑問はあるが…来てしまったものは仕方ない。出来るだけ傷つけず退場願うか。

従者達に客や自爆した者の【救助活動】を任せて同人娘の前に出る。おそらく相手はぶっ倒れるだろうが気にせず抱き留め、【王への供物】を頭をポンと軽く置くように叩いて発動。

「折角の美しい顔をよく見せておくれ」と【誘惑】、恋する乙女は美しくなるという夢物語を再現する事で我のペースに持ち込み意識を取り戻す事でUCを解除させる。

そこから「生まれ変わってもまた会おうな」と優しく転生を促す。
神だから割と気長に待てるでな。



 キング・ノーライフ(不死なる物の神・f18503)が真の姿を開放する。
 背に生える金属の翼、肩当を纏った姿を見た客達の視線があつまった。
(……さて、どうしたものか)
 幻朧戦線が望んでいたであろう戦火を招く災厄とは違う種の影朧が集まった今。
(戦闘に向かん影朧を集めるという想定はしてなかったのかという疑問はあるが……来てしまったものは仕方ない)
「出来るだけ、傷つけず退場願うか」
 王者たる声は凛として響き渡る。

 影朧、被害は最小限に抑えられたとはいえ破壊されたステージ周辺は慌ただしく人が行き来し怒声と悲鳴が飛び交っていた。
「従者達。この場で傷つく者が一人もでないよう──」
 キングの言葉に控えていた従者が救助活動を行う中、ステージ中央へと足を運ぶ。
「……!」
「ア゛ッ…顔良゛!ん゛っ…(嗚咽)」
 ばたん。ばたん。
 自身の敵でもあり、公式でもある猟兵の顔が良すぎて尊い。
 同人娘が目から脳に伝達した情報が、彼女達の神経を焼き切り──顔からステージへとダイブする瞬間。
「……大丈夫か」
 ステージに、キングが膝を付け。抱き留めている。
「折角の美しい顔をよく見せておくれ」

 私同人娘。容姿は……この姿になる前は、モテてたらいいなって位。
 でも今。私の目の前にはめっちゃ王族の方っていうか海外の王様オーラ漂う人がいてっていうか抱きしめられていて……!?
 こういうシチュエーションは美形同士がいいよ……ああ、でも漆黒×金の瞳最高……瞳の中の私もなんか綺麗に……。
「恋する乙女は美しくなるというのは本当だな。我への贄に相応しい姿になるがいい」
「……えっ!?」
 なんだか凄いオーラ……眩しい……尊い……ああ、体から力が抜ける。
「大丈夫だ。美しき乙女よ。汝が咲くのは次の世界」
「つ、次……? わ、私、生まれ変われるのかな?」
「ああ。生まれ変わってもまた会おうな」
 嗚呼、金色の光が。包まれる。私、顔の良い人に救われ──。

 キングのユーベルコヲド:王への供物(カミヘノクモツ)により同人娘の姿は麗しく変化し、散っていく。
「神だから割と気長に待てるでな」
 きらきら眩しく輝くその姿に、同人娘達が尊く導かれていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

平平・晴
演技尊かったです…有難や…ありがたや…
舞台を手伝って頂いたイケメンズに合掌

ひゃわっ!?影朧の群れがあんなに…!
うぅ…怖い、怖いけど
一般人の観客や役者さん達を巻き込む訳にはいきません…っ!
巻き込まれそうな位置にいる一般人はUC『無限回収』で一時避難して貰います
痛バの中は全年齢向けほのぼの健全オールキャラ仕様にしてありますので安心して下さい

一般人の安全を確保してから推しぬいを掲げUC発動
「攻撃して」「次はあっち」等と書かれた応援うちわで指揮と【鼓舞】

球や俵型にデフォルメされた戦闘用ぬい49体の【集団戦術】で
弾丸のように影朧の群れをやっつけて貰います

んん゛っ…私の推しは今日も強くて可愛くてつらい…!



「演技尊かったです……有難や……ありがたや……」
「いえいえ」「猟兵様の頼みであれば」
 二人のイケメンズを前に平平・晴(一般人・f27247)は感謝の意を込めて合掌。
 尊い空間を引き裂く音、気配。
「ひゃわっ!? 影朧の群れがあんなに…!」
 漂う影朧の進行方向には。
(うぅ…怖い、怖いけど……一般人の観客や役者さん達を巻き込む訳にはいきません……っ!)
 駆け出す平平の後ろ姿を、イケメンズが尊いと拝んでいた。
「難しいとは思いますが……よろしくお願いします……!」

「お、おお!」
「大丈夫です! 全年齢向けほのぼの健全オールキャラ仕様の世界です!」
「お、おお?」
 同人娘達の導線上を正確に計算しながら痛バの中に展開された妄想世界へと平平は一般人を避難させていく。
『……?』
『公式……本尊様……?』
 悲しみ一色に染まっていた同人娘達が異変に気が付く。公式である猟兵が動いている。
 公式の目に直視された彼女達の行動──散ッ!
「な、ファンシーな動物達にっ!」
 やたらデフォルメされた犬ネコハムスター、何故か白い丸餅状の生物らしきもの。
(一般人の安全は確保できました……なら、次は!)
 小動物の群れを前に平平掲げるのはぬいぐるみ。
 否、ただのぬいぐるみではなく。
「私の推しは凄いんですよ……!」
 精神を集中しユーベルコヲド:受注生産(ジュチュウセイサン)発動した。
 球や俵型にデフォルメされた戦闘用ぬい49体、ここに誕生。
『え、ちょっと待って』
「推しぬいさん! 攻撃してください!」
 いつの間にか「攻撃」と蛍光色で大きく描かれたうちわを掲げる平平。応援うちわwith推しを応援する鼓舞、その指揮で推しぬいが動く。
『え、ちょっと待って、まじ無理』
「推しぬいさん! 一斉に右から薙ぎ払ったら……!」
 次はあっち!と叫ぶのと同時に「次はあっち」うちわがキラキラと輝く。
 集団で動く推しぬい49体、その動きは弾丸の如く。
「んん゛っ……私の推しは今日も強くて可愛くてつらい……!」
 推しを指揮、心の底から湧き出る尊さを声に出し応援うちわと声を使い全力で表現する平平の姿。
 推しが尊いと輝く貴方が尊い。
 イケメンズ始め一般市民の心も輝いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜


え、あれ?
もしかしてこのまま戦えって事!?
待てよ変身解除できねーじゃねぇか!?
やりゃいいんだろやりゃあ!

まずは観客たちを避難させないとヤバいだろうし、
なんとかして影朧を舞台に引き付けておかないと……ん?
おい、誰だ。
誰か今、この姿見て【うわキツって言ったよな?】
テメェ上等だ!オマエの歳がどうかは分からねぇけどなー、
学生気分に戻って貰おうじゃねぇか!

魔法の力を使って、舞台を一時的に学園の体育館裏に上書きする!
そうすりゃ学生時代の甘酸っぱい想い出とか
隠れて活動してた頃の懐かしい苦労とかを思い出して、
だいぶ動きも鈍るだろ。
その間に取り押さえて回るよ。

……アタシの歳は変わらないのかって?
ほっとけ!!!



 前回までのあらすじ。
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は魔法少女であり、魔法少女に相応しい恰好でサクラミラージュの世界に降り立った。

「え、あれ?」
「もしかしてこのまま戦えって事!?」
 いくら精神を集中させどフリルは揺れるのみ。
「待てよ変身解除できねーじゃねぇか!?」
 こうなったら。魔法少女らしく腹をくくるしかない。
「──やりゃいいんだろやりゃあ!」
 覚悟を決めた魔法少女の強さは無限大だと後の世に語られる。
 数宮の周囲には影朧が飛び交い、そして数人の観客が呆然と立ちすくんでいた。
(まずは観客たちを避難させないとヤバいだろうし、なんとかして影朧を舞台に引き付けておかないと)
『……キツ』
「……ん?」
『……うわキツ』
「おい、誰だ──誰か今、この姿見て『うわキツ』って言ったよな?」
(キツくないし…まだいけるし……)
(こうなったら……しとめるためにも……)
 甘酸っぱい記憶と鉄錆のようなにおい。コスプレに特化した施設でも完璧なそれの再現は難しいという。
 しかし、魔法少女は出来る。
 魔法少女であり、猟兵である数宮・多喜は出来る。
 ユーベルコヲド:うわキツって言ったよな?(ヒトハシンジツヲイワレルトオコル。
 魔法少女の光り輝く夢と希望が降り注ぎ──今この空間は、体育館裏と化す!
「テメェ上等だ! オマエの歳がどうかは分からねぇけどなー、学生気分に戻って貰おうじゃねぇか!」
『!』『!』『!』

『わ、私? 部活は見る専門で……うっでも部活モノあるあるネタを……』
『推しのイメージカラーがショッキングピンクだから……擬態できない……!』
 突然苦しみだす同人娘達。
「はは! 思った通りだねえ!」
 数宮は同人娘達の反応を予想していた。
(学生時代の甘酸っぱい想い出とか隠れて活動してた頃の懐かしい苦労とかを思い出したらだいぶ動きも鈍るだろ)
 魔法少女、体育館裏を駆けだす。
「あんたらをこのまま痛めつける気はないよ! 取り押さえるだけさ!」
 戦意を失った同人娘達を傷つけない。
 乙女の心抱きし魔法少女が魅せる奇跡。

「……アタシの歳は変わらないのかって?」
「ほっとけ!!!」

成功 🔵​🔵​🔴​

ミフェット・マザーグース
ええー、ええー、どうしよう
ミフェットひとりじゃ戦えないのに、影朧いっぱい出てきちゃった
救助活動のお手伝い? うぅん、猟兵なんだから、ちゃんとしなきゃ

◎アドリブOK
お店の人たちの避難が終わるまで、ミフェットも同人娘さんを足止めするよ

UC【むかしむかしあるところに】
舞台にぴょんと飛び乗って、ヒトの少ない奥にいって
「歌唱・楽器演奏」で即興でつくった物語を同人娘さんたちだけに届けるよ

♪べつのセカイのべつのくに
捨てられたものが集まるばしょに、いっぴきの猫がおりました
ある日、猫が見つけたものは、一冊のかわいい絵本!
絵本に描かれた少女にあこがれて
がんばって文字を読めるようになった猫は、絵本を読み終えると──



 影朧達が漂い、人々が逃げ惑う。混乱するフロア内をミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)の金の瞳が見渡す。
「ええー、ええー、どうしよう」
(ミフェットひとりじゃ戦えないのに、影朧いっぱい出てきちゃった)
 どうしようかと戸惑う。その間にも悲鳴は聞こえ──少女は立ち上がった。
(救助活動のお手伝い?)
 うぅん、猟兵なんだから。今の自分に出来ること。
「ちゃんとしなきゃ」
 黒い髪を靡かせミフェットは走り出した。

 同人娘達は未だに舞台の上を飛び交っていた。
『うう……』『もっと……萌えを……』
 爆発の影響で出来た瓦礫の上をぴょんぴょんと跳ね移動する猟兵。
(待っててね。お店の人たち。避難が終わるまで……ミフェットは足止めするよ)
 すたんと偶然にもスポットライトが照らされたその場所に、猟兵ミフェットが立つ。
(えっと、ヒトの少ない奥、奥……)
 舞台の上の同人娘達の注意を惹き、一般人達が逃げやすい環境を作る。
「……ふう。それじゃあ」
 くるりとミフェットは振り返り『観客』が同人娘さんたちだけだと確認し。
 ゆっくりと深呼吸し口を開いた。
「聴いてください。ミフェットの……」

♪べつのセカイのべつのくに
 捨てられたものが集まるばしょに、いっぴきの猫がおりました

♪ある日、猫が見つけたものは、一冊のかわいい絵本!
 絵本に描かれた少女にあこがれて
 がんばって文字を読めるようになった猫は、絵本を読み終えると──

 ユーベルコヲド:むかしむかしあるところに(ワンス・アポン・ア・タイム)。
 ミフェットが即興で作った物語仕立ての歌。猫が絵本に触れ、見つけた新しい世界。
 きらきら光る憧れは未知の不安を照らし出し。
 その先に待っている世界へ手を伸ばす──ように同人娘達が動きを止めていた。
「良かった。ミフェットの歌、同人娘さん達に届いているんだね」
 胸をなでおろし笑みを浮かべ、自分を追いかけていたスポットライトの眩しさに少し目を細めるミフェット。
 自分の歌を影朧が聞き続けていたいと思っているのなら。
(キラキラしてる……眩しいけど。もっと)
 ステージの奥から人々が去っていくのを確認し、ミフェットは再び歌い出す。
 舞台の上に、明るい未来は広がる。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイン・ツヴァイ
…どうすれば良い…?(内心大困惑)
サイボーグになって良かったかもしれんな…内心の動揺が如実に表情に出ていたぞ…

俺は戦闘しか出来n…そう言えば、軍服だと嫌でも目立つから、と別の衣装を借りた上に、髪型も首筋で纏めなおして、医者に変装していたんだった…!
「…詰んでるな、これ」(うっかり生前の素が出る)
…とりあえず、近付いてから考えるか…

「そこの方々、大丈夫ですか!?」(●演技)
逆に怪しく思うなら余計に丁度良い。
怪しさ満載の連中を舞台の袖にでも誘導して●闇に紛れた 所で隙を突いて●零距離射撃&●鎧無視攻撃 で各個撃破だ。

生前っぽく振る舞うのに精神力を多大に消費するが…まぁ、必要な代償だからな…(溜息



 アイン・ツヴァイ(失いし者・f26129)は冷静に、顔色を変えず。
「……」
(どうすれば良い……?)
 内心大困惑していた。

 同人娘 嘆きながら 飛んでいる

「サイボーグになって良かったかもしれんな……」
 思わず口に出る言の葉。内心が明らかに動揺している。
(もしかしたら顔に出ていたかもしれない……)
 ふう、と息を吐き、周囲を見渡す。逃げ惑う人、うずくまる人。
 混乱しているフロアをゆっくりと歩みながら何ができるか考える。
「俺は戦闘しかできな……ん」
 そういえば、髪が邪魔だと首筋が見えるよう纏めなおした。
 何故か?アレを羽織る時に邪魔だったから。
 アレ?なぜ羽織った。目立つのが嫌だったから、軍服を脱いだ時に目に入った白いのに手が伸びたから。
「……なあ、伝説の名医様じゃないか?」「グットルッキングジャック……」
 髪を纏めたアインの衣装。白い衣がひらひらと。
 白衣の医者アイン、誕生していた。
「……詰んでるな、これ」
 うっかりとかつての自分の声が響く。医者コスプレの状態で何をするべきか。
「……とりあえず、近付いてから考えるか……」

 ステージ近く。グラッジ弾が炸裂した中心に近く影朧がふよふよと漂っている。
 混沌としたその場所に、つかつかと歩み声が響く。
「そこの方々、大丈夫ですか!?」
 慌てふためくアイン(医者の姿)の周りに同人娘が集まる。
『えっちょっとまってイケメン』『顔良すぎ……』
「皆さん、ここは危険です……手当しますのでこちらに!」
 同人娘を先導するアインの首筋に汗が一筋。
(やはり精神力を多大に消費するか……まぁ、必要な代償だからな)
 現在アインが発動しているユーベルコヲド:分岐時間の射線(ツヴァイク・ツァイト・レイ)は全ての行動の成功のために精神力を捧げる必要がある。
 医者であるように振る舞い、同人娘達は気が付かずステージの裾へと消えていく。
 かちゃり。
 アインの白衣の裾に隠された銃が抜かれる音にも気が付かれず。
「いい闇だ……さて、このまま各個撃破といこうか」
『!』『イ、イケメン医者暗殺者スタイル!?』
 隙をつき、零距離からの銃撃が容赦なく同人娘達を襲う。
 どこか恍惚とした顔で消えていく彼女達を無表情の医者オーラで圧倒しながらアインは確実に仕留める。
『はあ、イケメンに葬られる……(昇天』
「……はあ(溜息」 

成功 🔵​🔵​🔴​

木常野・都月


薄い本?大切なものが台無しになってしまったら、影朧に限らず、誰でも悲しむよな。

悪い影朧じゃないみたいだし、倒してしまうのは本意じゃない。
本当なら転生への説得したいけど、俺は説得が苦手なんだ。
すまない。

まず一般人には[オーラ防御]をかけたい。

最善の努力はしたい。
「転生して生きて推しを推しませんか?壊された本をあなたの手で作りませんか?」と説得するだけしてみよう。

転生希望者が居たら、後で桜の精霊様を読んで転生させて貰いたい。

説得出来なければ、戦うしかないな。

UC【精霊の矢】を氷の精霊様の助力で使用したい。

影朧の擬態は、俺は狐並みの嗅覚がある。
影朧の……人じゃない者の匂いで、擬態を見破りたい。



(……悪い影朧じゃないみたいだし、倒してしまうのは本意じゃない)
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が見つめる先で影朧は舞い、悲しんでいる。
 舞台の上はスポットライトが未だに輝き続け、ひらひらと紙吹雪の破片のような物が同じく浮かぶ。
「あれは……薄い本? の残骸か」
 薄い本とやらの中身はさておき、誰かの大切だった物が跡形もなく破壊されている。
(大切なものが台無しになってしまったら、影朧に限らず、誰でも悲しむよな)
 同人娘達の嘆きの声が、悲し気に聞こえる。
「本当なら転生への説得したいけど、俺は説得が苦手なんだ」
 人の流れとは反対に、影朧が集まる方へと木常野は歩み続ける。
「すまない」
 ぽつりと言葉を漏らす。小さなそれに、一斉に同人娘達が振り返った。

 同人娘達が集まる場所へと足を進める。
(……最善の努力はしたい)
 猟兵様、と声をかけ縋るような視線を送る一般人に精霊の加護を与えた木常野。
『新刊……私の……』『エアじゃないスケブ……』
「あの」
『!』『!』
 涙を流す同人娘達が、猟兵の気配に気が付いた。
「――散ッ!」
 一部の影朧が小動物へと姿を変え、獣の本能に従い逃げていく。
 しかし。
(影朧の擬態──俺の、この嗅覚で)
 足音を立てず、獣のそれで木常野が地面へ垂れ込んだ緞帳の上を駆ける。
 影朧の、同人娘の、人ならざる者の匂いは姿を変えてもオーラで分かる物。
『え』『ちょっとまって』
 逃げ惑う同人娘を次々に捕まえ。手の中で震える同人娘(ハムスターフォルム)を木常野はそっと撫でる。
「その、最善の努力はしたい」
 説得をする。俺は説得が苦手だけど……と一瞬考えるが、首を振り目を合わせた。
「転生して、生きて推しを推しませんか?」
『え、ちょっと待って……』
「壊された本をあなたの手で作りませんか?」
『……あっ。尊い』
 キツネ耳男子に私達導かれちゃう、と影朧が言う。その目は涙で濡れていたが──今は、泣いていない。
「俺からの呼びかけになるが、桜の精霊様を呼び出して転生への道を開く」
 だから、俺を信じてくれないか?と黒キツネ耳と尻尾が揺れたのであれば。
『『わ、わかりました……!』』
「……大丈夫、だろうか?」
 悲しい涙ではなく、赤い一筋の線が描かれる──鼻血であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

樋口・杜宇子
真の姿を解放致しますわ。
私の真の姿は、生前の――つまり、少女だった頃の姿。
即ち、同人娘の皆様の妹ですわ!

それなりに傷を負いながらも最愛の姉を探す私は、
ついにその姿を見つけ――って倒れ伏してる!?

「お姉ちゃん! しっかりしてよ!」
「私が絶対に、お姉ちゃんも皆も守るから!」
「こんなの悲劇シチュじゃないよ! 物語じゃないならただ悲しいだけだよ!」
「お姉ちゃんとお酒を飲みながら尊みを語り合いたいの! だから、置いてかないで!」

同人娘とのなんやかんやが終わったら避難誘導ですわ。
この時、鼻血を流していて、怪我に見えますが実態は幼き日の私と同人娘のカップリングが正義で尊かっただけですので心配は要りませんわ。



 樋口・杜宇子(「尊さ」という正義の味方・f27941)はデッドマンである。
「絶対に、全員を守りますわ」
 決意と共にユーベルコヲド:正義の誓いが発動する。
 己が定めた誓いは正義。その正義を纏うように樋口の真の姿が解放された。
 未だ混乱の続く地下フロアで、人々は猟兵がユーベルコヲドを解き放った事に気が付き、足を止める。
(私の真の姿は、生前の――つまり、少女だった頃の姿)
 風が吹き、どこからか飛んできた布が一瞬樋口を包み込み──真の姿を開放した今、払われる。
「即ち、同人娘の皆様の妹ですわ!」
 生者、樋口はそう宣言し。
 瓦礫の向こうへと足を進める。

 同人娘達は大分数を減らしていたが、未だ未練を抱えさ迷っている。
『……う、うう』
「お姉ちゃん! しっかりしてよ!」
『え……?』
 同人娘は、瓦礫の向こうから少女が近づいてくる光景を目にし……首をかしげる。
『ど、どなたで?』
「お姉ちゃん! 妹よ!」
 傷(それなり)を付けながらここまでやってきた樋口。
 最愛の姉を探していた彼女の瞳に涙が浮かぶ。
「私が絶対に、お姉ちゃんも皆も守るから!」
『う、うん……?』
 血のにじむ服を引き裂き、同人娘に巻きながらほほ笑む樋口はしかしどこか悲しそうに。
「こんなの悲劇シチュじゃないよ! 物語じゃないならただ悲しいだけだよ!」
『悲しい……悲しいの、駄目なの?』
「そうだよ! ただ悲しいだけなのは、解釈違い!」
『……それは、駄目だね』
 同人娘、影朧が樋口の手により担ぎ上げられる。漂っていた同人娘達も困惑していたが、樋口の様子とやり取りに耳を傾け、拳を握り始める。
『もしかして……きましたわ?』『塔、ですかね……』
「お姉ちゃんとお酒を飲みながら尊みを語り合いたいの! だから、置いてかないで!」
 尊い、と同人娘の一人が呟く。
「ええ、尊いですわ!」
 樋口が頷く。暗い地下フロアの中に光が差し込む。
 同人娘達が、転生への道を歩き始めた。

 影朧が消え、本格的な避難誘導が開始される。店員達が慌ただしく声を上げる中、樋口の傍にいた人間が声を上げる。
「あ、あの! 猟兵様! 顔にお怪我を……!」
 樋口はにっこりと笑う。大丈夫です、と店員を落ち着かせる。
「心配はいりませんわ──幼き日の私と同人娘のカップリングが正義で、尊かっただけですので」
 眩しい笑顔が輝き、その尊さに猟兵様尊いと店内で拝む人々の姿。皆、笑顔であった。

 尊さ。それは正義
 尊さ。それは永遠
 尊さ。それは──

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年07月20日


挿絵イラスト