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煤かぶりの殺人鬼

#サムライエンパイア #戦後

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#戦後


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●灰降る夜に
 村が黒く染まっていた。この村に生きている村人は一人もいなくなる。なぜならば、外には肺を蝕む煤が降り、家屋に避難しても彼女がやってくる。
「ど、どうかこの子たちだけは!?」
 必死に子供二人を庇う母親。その前に立つのは桜色の羽織を着た女剣士。彼女の目に写る恐怖する親子が歪む。女剣士の口角があがり、目も弧を描く。
「いいですよ。えぇ、もちろんです」
 母親が安堵した瞬間。持っていた刀が母親の頬を掠める。グシュっと肉を突き刺す音が耳元で聞こえた母親は表情が固まった。目線だけが剣先へとゆっくりと向いていくと、そこには息子の頭が赤い液体を垂らしながら焦点が合わない目を天井へと向けている。絶叫する母親と妹。次の瞬間、声が途切れる。母親の頭が宙を舞い、ドサっと囲炉裏に落ちる。
「いや……いやああああああああ!?」
 少女の叫びはしばらく続く。快楽を求める殺人鬼によって。

●ブリーフィングルームにて
 サムライエンパイアで起きる悲劇を感じた上泉・信久(一振一生・f14443)は皆へ願い出る。
「煤に……灰になる村がある。まだ助けることは可能だ」
 事前に到着ができる、つまり救うことができる。信久は具体的な話を始める。

 村に着いたら、数日後に開かれる村の催しで使う俳句や川柳の募集をしているらしい。村人と交流をしながら夜は出歩かないように注意するといいだろう。一人一句以上読んでも構わぬよ。
 夕焼けが山に消えていく辺りで空から煤が降り始める。元凶となる妖怪が数体いるため、全て排除してもらいたい。猟兵とはいえ、吸い込まない工夫は必要だろう。村人に見られないなら使いやすい物を使ってくれていいぞ。
 さて、問題は最後の女剣士だ。生前は心優しい武人だったそうだ。オブリビオンになってしまった際に、魂も歪められてしまったのかもしれん。煤が降る中、桜色の羽織を着ているため、見つけるのは容易だろう。剣技もさることながら、鬼を召喚できるとな。力技だけで押し切るのは難しいだろう。

 村の広場とはいえ、家屋も近い。広範囲の技や村人を不安にさせてしまいかねない大仰な技などは控えるといいだろう。守る人々は俺たちのように頑丈ではないのだから。どうやら次の日は雨模様のようだ。血で流れる煤ではなく、雨で流れる煤となることを祈っている。


保坂咲蘭
 閲覧いただきありがとうございます。
 ある村で起きる快楽殺人を止めに行きます。

 第一章:村人との交流。俳句か川柳を読んで村人と交流してください。どんな句でも構わないので読んでみましょう。
 第二章:煤妖怪との集団戦。煤対策をしつつ、排除してください。強くはないです。
 第三章:女剣士とのボス戦。素早い剣技、鬼の召喚など手強い相手となります。強敵です!

 心情や行動理念がわかりやすいとリプレイが描きやすいと思います。
 短章参加も歓迎しております。
 描写やプレイングについてはマスターページを参照してください。
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第1章 日常 『ここで一句』

POW   :    とにかく思いついた案を沢山出し、いい感じに組み合わせて詠む

SPD   :    己の感覚をフル活用し、オリジナリティある俳句を生み出す

WIZ   :    意味深な言葉遣いで味わい深い一句を詠む

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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鶴来・桐葉
【心情】侍の事件とあっちゃあ黙ってられねぇと思って来たが…まあ、たまには頭の体操も悪くねえか。

【心情】【コミュ力】で村人と交流。そして「夜は物騒な事件のにおいがするぜ。身を守るためにも外には出ねえ方がいい。」と村人達に警告。
「気をつけろ 身近なところに 落とし穴」ってな!と警告な感じの俳句を詠む



 事件とあっては黙っていられない剣豪が一人。普段はぼんやりしている鶴来・桐葉(サイキック剣豪・f02011)は村までやってきた。
「確かこの村だって話だな」
 見渡すかぎり平穏な村。稲刈りも終わったこの時期は畑仕事に精を出す人々が多い。そんな村にも祭りがある。それもあってか宿には近隣の村人も来ているようだ。

 村役場の近くに立て看板があり、話に聞いていた句のことが書いてある。村人たちが頭を右に左に傾けながら考えている姿は、夜のことを考えると緊張感を持ってしまう。
「お侍のおにいさんもやっていかんか?」
 齢70ほどの老父が桐葉に簡を差し出す。簡を受け取った桐葉は村人と同じように頭を傾けながら考え出す。
「うーんうーん……」
 自由でいいといわれると余計に悩んでしまう。今考えていることは句のことだが、脳裏に潜む女剣士や煤のことが引っかかってしまう。守りたい人々のことを思い、川柳を読むことにした。
「俺の句はこれだ!」

「気をつけろ 身近なところに 落とし穴」
 老父も受け取ると真っすぐだが、しっかりと意識をするというよい句だ、侍だからこその句だと褒めてくれた。その後も老父と交流を深めていった。
「そうそう、夜は物騒な事件のにおいがするぜ。身を守るためにも外には出ねえ方がいい」
 忠告を受けた老父は夜は寒いし、若い者にも言うておくといって受け入れてくれた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鬼桐・相馬
煤に灰、そして鬼か。
俺も、悪意に呑まれたら彼女のようになってしまうのだろうか。

【WIZ行動】
黒歌鳥を呼び出し、後に備えて戦闘がしやすい場所・妖怪が好みそうな侵入口を空から調査させる。

村人には妖怪について「情報収集」で話を聞こう。こちらを知って貰える機会でもあるしな。
意外と子供が重要な事を知っていたりする、ただ俺は怖がられることがあるから遊びたそうな子供に聞いてみよう。肩車位ならしてやれるが、何故子供は角に触りたがるんだ……操縦するつもりなのか?

さて、俳句。自信ないが……こんな状況だから、少しでも明日を迎えることに喜びを感じられるようなものにしたいな。

「明ける宵 火入れが残すは 芽吹きの地」



 女剣士の話を聞いてから鬼桐・相馬(羅刹の黒騎士・f23529)は自分もそうなってしまうのかと考えてしまっている。すべての猟兵が思うことなのかもしれないが、相馬は殺戮衝動を自覚しているからこそ余計に気になるのだろう。

「準備は念入りにするべきだな」
 黒歌鳥を呼び出して村の全体を把握できるように調査に飛ばす。今後の戦いを考えれば周辺を把握するのは必要なことだ。
 村人に妖怪について尋ねてまわるが、これといった情報は手に入らなかった。妖とは闇に潜み、気づかぬうちに襲い掛かってくるもの。今回も女剣士が連れてきた煤を降らせる妖怪というだけだ。村人に促され、簡を手に取ることとなる。
「自信はないが、少しでも明日を生きる喜びや生きがいを表現できていたら……」
 少し考えてさらさらと

「明ける宵 火入れが残すは 芽吹きの地」
 村人は豊作を願ってくれる良き旅人だと優しく微笑んでくる。少し小恥ずかしい気持ちになりながらも、護る強い意志が芽吹く相馬だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

橘・尊
【POW】

とりあえず戦いの前に村の中を探索してみようか

村の流れに逆らわず川柳? 俳句?とやらを通りすがりの村人をつかまえ聞いてみる

ふむふむ、心情? 思いのままでいい? 字数が決まってる?

こ、こんな感じでいいのかな?

強くなる 背を護る その為に

いやいや、もうこれ以上は無理だからっ

(アドリブアレンジ大歓迎です)


荒谷・つかさ
【荒谷姉妹】

……ついに見つけたわ。ご先祖様。
あの戦争で一度斃した後、とんと姿を消していたけれど。
また現れる、と貴女は言った。
それはつまり……因果が結びついていたのは、私ではないということ。
……因果を断つためには、心配でもひかるにやらせるしかない。
であれば、私は。私のすべきことは。
……何があっても、私は姉としてひかるを護る。

で、俳句……だっけ?
困ったわね、そういう方向の学は無いんだけれど。

熱燗と 囲炉裏で囲う 牡丹鍋

……温かい鍋とお酒、最高の組み合わせだと思うんだけど。
今夜は煤が降るし、早めに家の中でゆっくりしているのがいいわ。
私達が居る限り、村の皆さんに害は及ぼさせないから。


荒谷・ひかる
【荒谷姉妹】

わたしの7歳の誕生日に、わたしを狙って村を襲った悪い鬼……
あれは、ご先祖様の召喚した鬼だったんだね。
ご先祖さまとわたしの間に、どういう因果があるのかはわかんないけど……
実際に会ってみれば、わかるのかな?
……お姉ちゃん、怖い顔してる。
大丈夫だよっ。精霊さん達も力を貸してくれるから。ねっ?

……お姉ちゃんてば、俳句まで食い意地はってるー。
わたしは……そうだなぁ。

茅葺の 黒煤灌ぐ 冬の雨

夜はきっと煙いし冷えるから、早めに灯を消して休むといいんだよ。
大丈夫、朝にはぜんぶ、綺麗に流れてるからっ。
(姉と共に村人へ天下自在符をちらと見せ、暗に危ないから籠っているようにと伝える)



 ゆらりと村を訪れた橘・尊(浮雲・f13751)は探索をしていた。広いわけではないが、田畑が多いこの村は見晴らしはいい。戦うならば困ることはないだろう。
「のどかでいい村だな」
 そういえばと祭りについて思い出す。近くにいた村人に尋ねると役場の方で募集していると教えてもらえる。

 尊が役場に到着するとすでに他の猟兵が来ていたのもあって、珍しがっている子供たちが多くいた。
「おねえちゃんたちは、しまいなの? にてないね!」
 見たままに言葉にする子供は悪意がない分、周囲の大人たちは苦笑いを浮かべる。そこに居たのは漆黒の髪を束ねた女羅刹と銀髪の髪を三つ編みにした女羅刹だ。
「えーっ! お姉ちゃんとそんなに似てない?」
 子供たちに尋ねている荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)は不服だと主張するように頬を膨らませる。まだ幼さがあるためか、その姿さえも可愛らしく見えてしまう。
「私は普段から鍛えているし、ひかるは運動苦手だからね」
 冷静に表情を崩さない荒谷・つかさ(『風剣』と『炎拳』の羅刹巫女・f02032)が少し違った言葉でフォローするが、火に油を注ぐこととなる。膨れ上がったひかるの頬は栗鼠のようで、子供たちはひかると戯れていた。

 視線に築いたつかさは尊に一礼する。雰囲気から同じ猟兵なのだと感じ取ったのだ。尊も釣られて軽く頭を垂れる。
「えっと、はいく? せんりゅうっていうのはここに来たらいいんだったかな?」
 つかさに近づいて確認する尊。
「そうよ。あなたも読みに来たの? 私はそういう方面に詳しいわけではないのよ」
 簡単な決まり事を教えてもらいつつ、尊は何とか一句作り上げる。ふと、つかさのひかるを見る目が気になるが、猟兵にも色んな事情があるものだと詮索はしなかった。

 今回のオブリビオンは荒谷姉妹の先祖にあたる存在。話を聞いた際はまた現れるという言葉が気にかかっていたが、事実また相対することとなる。因果を断つためにもひかるが倒すべきなのだと。本当にそれで大丈夫かはわからないが、考え込んでしまったつかさは視線に我に返る。
「大丈夫だよっ。精霊さん達も力を貸してくれるから。ねっ?」
 気づけばひかるが手を掴んで微笑みを投げかけてくる。悩んでいても仕方がない。今はやるべきことをやるだけなのだと。

「強くなる 背を護る その為に」
 役場に出した尊の句はお婆様方に好評だったようで、質問攻めにあってしまう。こんな話も平和だからできるのだと、苦笑いしつつも対応する尊だった。

「熱燗と 囲炉裏で囲う 牡丹鍋」
 豪快に笑う村人がまっすぐでわかりやすいと嬉しそうにしていた。若いのに酒の良さがわかるなんて珍しいと誘われるが、つかさは丁寧に断っていた。
「ごめんなさい。今夜は早めに家でゆっくりしているのがいいわ」
 断られても豪快に笑う村人は、美人に言われたら仕方がないと了承していった。

「茅葺の 黒煤灌ぐ 冬の雨」
 子供たちになんで俳句が読めるのかと驚かれながらも年配からは感心される。ひかるはできる子なのだと言いながらも、子供たちに忠告する。
「今夜は冷えるから早めに寝たほうがいい夢が見れるんだよ」
 目覚めない未来ではなく、目覚める未来を届けるため。何より自分たちの先祖が起こすであろう惨劇を止めるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ススワタリ』

POW   :    まっくろくろすけの通り道
【対象が煤だらけになる集団無差別体当たり 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    かつての住処
【ススワタリがかつて住んでいた巨大な屋敷 】の霊を召喚する。これは【扉から射出した大量のミニススワタリ達】や【窓から射出した巨大ススワタリ】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    煤だらけ
【対象に煤が付くフンワリあたっく 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を煤で黒く塗りつぶし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:灰色月夜

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 夜の帳が降りてくる。猟兵たちの忠告通りに家々に帰り、寝静まる村がそこに佇んでいた。雪でも降りそうな寒い夜だが、降ってきたのは厄災となる煤。灰色の空が村へと侵略してくる。

 その煤が塊となり、蠢き始める。妖怪「ススワタリ」だ。決して強い相手とは言えないが油断は禁物だ。微かに注がれる月明かりと手持ちの明かりだけが猟兵たちの姿を彩っていた。
鶴来・桐葉
【心情】まっくろくろs…いや、あれよりでけえな…なにしても女剣士の前哨戦だ!

【作戦】仲間と協力。敵の攻撃は【見切り】と【残像】で回避だ!一応攻撃するとき以外は着物の袖で口元をふさぐぜ!「煤はおとなしく掃除されやがれ!!!」と刀を攻撃範囲を広くするように強化したサイコソードの【二回攻撃】で一掃だ!


橘・尊
今夜は月明かりが弱いな…では仲間達が動きやすいよう辺りを照らす炎と攻撃を兼ねよう

【POW】

仲間達の邪魔にならないようにまずは辺りを照らす【狐火】を配置
ついで攻撃に転じる【狐火】を放つ。【狐火】から逃れた敵には霊符とルーンソードで対応

敵の攻撃には【野生の勘】【第六感】で体当たりを交わしながら反撃できるものならする

人に迷惑をかけるようなら
容赦はしない

(アレンジ共闘大歓迎です)



 村が少しずつ灰色に変わりつつある中、村の西側ではぼんやりと灯りがいくつか見える。それは浮遊する炎で、周囲を照らす灯りとなっている。橘・尊(浮雲・f13751)が展開した狐火だが、できるだけ広く、できるだけ邪魔にならないように配置していた。
「煤が降るせいで月明かりが弱いな……準備をしておいて正解だったな」
 尊の隣にはもう一つの影。仲間と協力しようと鶴来・桐葉(サイキック剣豪・f02011)は自分が落とし穴に落ちないように。
「いやー灯りがあるのは助かるぜ」

 煤に塗れぬよう菅笠を被っている二人。雰囲気も相まって絵になることだろう。そんな二人の目の前に黒い塊が数体現れる。この降り注ぐ煤の原因でもある妖怪ススワタリだ。周囲を煤だらけにしながら、二人に襲い掛かる。
「まさに、飛んで火にいる冬の煤って感じだな」
 逃げさないように狐火を操作し、尊はススワタリを包囲する。ススワタリの煤が周囲に無差別でまき散らされる。しかし、狐火や菅笠、羽織で防いだ二人は、攻勢に転じる。

「煤はおとなしく掃除されやがれ!」
 刀を長く変化させ、横一閃。さらに切り返しで一閃。動きが鈍った相手を捉えるのは容易で、桐葉の刀で二体撃破する。そんなに強くない相手ではないが、こうも綺麗に決まると気持ちがいいものだ。刀を払うが、煤は取りづらく、思わず苦笑いが漏れてしまう桐葉だった。

「迷惑となるお前たちに容赦はしない」
 狐火で逃げ道を塞ぎながら、ススワタリを追い詰める。煤は狐火で防ぎながら、ジリジリと燃やしていく。ススワタリたちは消し炭となって、霧散していく。狐火に照らされている尊の横顔は少し憂いを帯びていた。それは安堵からなのか、心なき敵に対する想いなのか。

 煤塗れになりながらも二人が向かった先は月明かりが降り注ぐ。地面は煤が積もっているが、後に降る雨によって流されるはずだ。煤を払いながら見上げた西の空には、巨大な雨雲が見えてきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
【荒谷姉妹+α】

煤対策に口元を布で覆いつつ……。
適当な家屋の屋根に陣取って、戦場を俯瞰。
高所の地の利を活かして、先手を取って行きたいですね。

お二人とも、張り切るのは良いですが……過度の熱意はそれはそれで危なっかしいですね……っと!
(荒谷姉妹の視角をフォローするように援護射撃一撃)
お二人が気付いたら敬礼でも飛ばしておきましょう。
元より私はスナイパー。私がいることさえ伝われば援護の意図としては十分です。

さて、あまり周囲に被害は出したくないですからね。
敵個体からある程度の距離を取るのは前提として、一発ずつ確実に、無駄弾を出さずに駆除していきたいものです。


荒谷・つかさ
【荒谷姉妹+α】

お前達はお呼びじゃないんだけれど……まあいいわ。
準備運動代わりに駆除してあげる。

煤対策に手ぬぐいをマスク状に口元に巻いておく

向こうから体当たりしに来てくれるなら好都合
風迅刀を納刀し【荒谷流抜刀術・神薙の刃】発動
飛び回る煤塊の動きを見切り、間合いが遠いなら剣圧の刃を、近いなら刀を直当て
どちらにも刀の特性で風の属性攻撃が乗るので、煤の塊に直撃すれば弾けて散るはず
一応剣圧を飛ばす際は射線上に民家等が無い事を確認する

ひかる狙いの煤塊に脇を抜かれた時、援護射撃を受けて射線の先を確認
シャルロットの敬礼に軽く手を振って応じ、以降は彼女の援護の存在を意識して戦闘継続


荒谷・ひかる
【荒谷姉妹+α】

露払いならぬ煤払い、だねっ。
それじゃあ精霊さんたち、一緒に頑張ろうっ!

煤対策に手ぬぐいをマスク状に口元に巻いておく

煤は小さな粒子だから、湿度が高ければそんなに舞えないし、雨には叩き落されて流れてくはず
ということで【水の精霊さん】発動
周辺の河川や上空の雨雲から水分を調達し、一日早い雨を降らせるんだよ
ちょっとした雨くらいの勢いなら、民家も平気だよね

おっきな塊は精霊銃の高圧水弾で迎撃するね
でも、数が多くて捌き切れないんだよ……!?
(聞き覚えのある銃声と的確な援護射撃を受け振り向く)
シャルおねーちゃんっ!ありがとーっ!
(手を振り返し、以後は援護の射線を意識した位置取りをする)



 西の空が晴れる一方。村の東にある家屋の屋根。シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)が煤で息がしづらくならないよう布で覆い、周囲に注意を払う。同じように手ぬぐいで口元に巻いた荒谷・つかさ(『風剣』と『炎拳』の羅刹巫女・f02032)と荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)が地で周囲を警戒する。

 援護するつもりで屋根の上にいたシャルロットは失念していた。煤は降っているということは、煤を出している本体は上にいた。シャルロットの近くにススワタリが現れ、シャルロットを煤だらけにしてくる。屋根から緊急避難しながら、何とかダメージを軽微にしたが、綺麗な金髪は煤だらけになってしまった。
「最悪です……もう来てます!」
 荒谷姉妹に警告を飛ばす。三人の周囲にはすでに数体のススワタリが降り立っていた。

「お前たちはお呼びじゃないんだけど……」
 本命はまだ見えない。この煤も村にとっては有害な存在だ。つかさは風迅刀の柄に手をかける。
「露払いならぬ煤払い、だねっ」
 ひかるのそばに水の精霊が現れ、ススワタリに向かって鉄砲水を噴射させる。水分を含んだススワタリは動きが鈍くなり、黒い雪だるまのようになった。その雪だるまが縦に一刀両断される。泥煤がだらりと地面へ垂れていく。

「準備運動にもならないかもしれないね」
 刀に突いた煤を払いながら残りのススワタリを一瞥する。そのうちの一体が銃声とともに霧散していく。
「張り切るのは良いですが……」
 と言いながら他の小さなススワタリを撃ちぬいていく。油断さえなければ後れを取ることはない。冷静に戦場を把握しながら、シャルロットが的確に援護射撃を行う。
「シャルおねーちゃんっ! ありがとーっ!」
 精霊銃でススワタリに鉄砲水を撃ち込みながら、シャルロットの方に感謝を述べるひかる。

 ススワタリが減ってきたのもあり、煤の降りが緩やかになってきた。あと少し、この煤を終わらせるためにもうひと頑張りだ。
「我、神をも薙ぐ刃也……」
 風迅刀を納刀された状態で構える。姿勢は低く、狙うは前方のススワタリ。距離は離れているが問題ない。つかさにとってはこの距離は刃が届く距離だ。その場で居合一閃。検圧の刃がススワタリを切り裂いていく。真っ二つにされたススワタリは力なくただの煤へと変わっていく。

 周囲にいたススワタリを一掃した三人。警戒は怠らなかったが、ふと煤が止んでいることに気がつく。空中に飛散している煤はあるものの、月が見えたことでススワタリを倒し切ったのだと確信する。村は暗く煤塗れではあるが、被害はない。西に見える雨雲がそのまま流れてくるならば、煤も流れてくれるはずだ。

「まだ終わりじゃないのです」
 気を引き締めるかのようにシャルロットが告げる。言葉通り、目的は煤対策だけではない。むしろ本命は次。この村で彼女は目立つに違いないと探し始める。桜色は灰色の中で映えてしまうから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『一耀の羅刹『アラヤ』』

POW   :    荒谷流剣術・外法『九耀鏖殺刃』
自身の【敵の命】が輝く間、【斬擊一回】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    荒谷流抜刀術『神薙の太刀』
【心眼】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【居合いにより発生する風の刃】で攻撃する。
WIZ   :    外法召喚・怨魂鬼
自身の【これまでに喰らってきた犠牲者の魂】を代償に、【召喚した配下の鬼達】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【本体と連携し、自身の犠牲も厭わない】で戦う。

イラスト:えんご

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は荒谷・ひかるです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 村中を警戒していた猟兵たちは、村の南にある広場で合流することとなる。それは灰色の村に浮き上がる自分たち以外の色。
 桜色の羽織、堂々とした足取り、かつて武人として切磋琢磨していた女剣士『アラヤ』だ。一耀の羅刹とされた武人はもうそこにはいない。

「……まあ、煤に塗れるのも気持ちがいいものではないが」
 ゆらりと抜いた刀は白く、静かな狂気が猟兵たちへと向けられる。
「殺せる人数が増えるのはいいことよ!」
 アラヤの周囲に広がる闇から黒い靄がかった鬼たちが出現する。村を救うためにも彼女を倒すしか選択肢は存在しない。
橘・尊
女剣士か…手強そうだ

【WIZ】

周りの仲間達の動向に気をつけながら、背後から援護と攻撃を行う
敵の攻撃には【霊符】を飛ばし足止め。間髪入れず【蒼焔華】を放つ
それでも攻撃をしてくる敵にはルーンソードで【2回攻撃】【武器落とし】【属性攻撃】【第六感】【野生の勘】で対応
火と水で防御

貴方程の剣士がなぜ…

戦ってみれば分かる強さ
天に召される時は
穏やかに逝って欲しい


(アドリブ共闘大歓迎です)


鶴来・桐葉
【心情】おうおう、予想以上の別嬪さんだな。でもな…侍としてはてめえみたいな殺人狂な侍はほっとけねぇんだよ!

【作戦】敵の斬撃や風の刃、鬼の攻撃は【見切り】、【残像】、【怪力】、【武器受け】で対処するぜ!こっちはサイコソードで刀をでかくして広範囲攻撃できるようにしてアラヤを鬼ごと【二回攻撃】の斬撃で斬り倒すぜ!!無実の人たちを斬るような奴は許さねえ!絶対にな!(親友を奪ったあのクソアマのように…!)



 煤だらけの村。雨雲が近づいてきているのか、雷鳴が聞こえてくる。灰色の世界に桜色が凛と咲く。村に近づくその華の前に立ちはだかる人影が二つ。
「おっと、ここ先には行かせないぜ。別嬪さん」
 黒の羽織の鶴来・桐葉(サイキック剣豪・f02011)だ。侍として目の前の敵は斬るべき相手。軽口のように言ってはいるが、警戒心は高まっていた。
「この人が件の女剣士か……手強そうだ」
 藍染の術衣を纏った橘・尊(浮雲・f13751)が傍らに立ち、眉を顰める。自分は接近戦が得意ではないのもあり、援護に努めようと霊符を握る。

「藪から棒に失礼ね。私は……『まだ』殺していないじゃないの!」
 アラヤが納刀したかと思えば、居合による風の刃を飛ばしてくる。サイコソードを変化させ受け流す桐葉。その一撃は重く、少し押し戻されるが、すぐに構えなおす。
「うおっと! こんなの連発されたら溜まったもんじゃないな!」
 アラヤと鬼たちを包むように蒼い花びらが舞い落ちてくる。それはただの花びらにあらず。よく見れば蒼い炎が象ったもの。尊が発動した蒼焔華だ。複数の花びらで鬼に襲い掛かると蒼い炎で包み込んでいく。アラヤに振りかかろうとしている花びらに鬼が壁となり、アラヤには届かない。
「数を減らすしかなさそうだ」
 防衛も兼ねた蒼焔華は継続し、ルーンソードを構える尊。

 鬼の攻撃をいなしながら倒す。鬼は思ったほど強くはないが、手を焼く相手な上にアラヤまでいる。なかなか攻勢に出れない状態だった。
「さっき威勢はどこにいったの?」
 鬼の背後から風の刃を放つアラヤ。鬼を切り裂きながら襲いくる攻撃に対応ができていなかった。
「こうなったら全力でぶった切ってやる!」
 桐葉がサイコソードを巨大な刀へと変えていく。斬馬刀にも匹敵するそれを怪力とあわせた脇構え。やることは単純だ。鬼もアラヤも全力で斬る。桐葉が放つ一撃で鬼たちを斬り、続けざまにアラヤに刀を振りぬく。回転するように放たれた二発目をアラヤはオーラを込めた鞘で受け、その勢いに身体を持っていかれ吹き飛ばされる。
「でたらめな!?」
 鬼の数はかなり減らせた。アラヤに届かせるにはまだ力が足りない。力技だけでは厳しいと感じる一戦となったのかもしれない。ただ、それでも戦況を変えたのは確かだ。尊は疲労した桐葉を蒼い花びらで守りながら距離をとる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シャルロット・クリスティア
【荒谷姉妹+α】

やれやれ、視界を優先したもののトントンって所でしたね。
ま、過ぎたことを言っても仕方ありませんか……と。

何やら複雑な事情がおありのようで。
いえ、今は何も仰らずとも結構。手伝いますよ!

遠間まで届く居合、確かに厄介ですが、所詮は剣術の延長、線の攻撃です。
鞘の位置、角度……構えから太刀筋を【見切る】ことなど、私の【視力】なら容易い。
機関銃は機動性の低下がデメリットになる、ここはエストックでの接近戦と洒落込みましょう。
つかささんが真っ向から行くなら、私は挟み込むような死角狙いで立ちまわります。
割り込み失礼しますが、目的優先ということで。
ここでお二人に何かあっては、元も子もないですからね。


荒谷・ひかる
【荒谷姉妹+α】

……そっか。
こうして対面して、ようやく理解したんだよ。
貴女は『私』……『私』が『わたし』に生まれ変わる時に零れ落ちた、魂の断片。
足りない所を躯の海が補った、歪んだ『私』。
だからあの日、幼かった『わたし』の魂と心臓を喰らい、一つになろうとしたんだね。

【本気の光の精霊さん】発動
杖が変化した光の花弁で、鬼の群れのみを灼き尽くす
お姉ちゃんがアラヤの動きを止めた、若しくは勝利してトドメのみとなったら
お姉ちゃんから借りた短刀「黄昏」で、アラヤの心臓を貫く

……もう、躯の海には還さないんだよ。
元通りに……一つになろう。
(消えゆくアラヤの身体を抱き留め、重なり一つになる)
……おかえり、『私』。


荒谷・つかさ
【荒谷姉妹+α】

それじゃ、ご先祖様はひかるの前世ってこと?
……通りで、私と因果が繋がってない訳だわ。

何度蘇ってもその度に屠ると、前に戦った貴女と約束したの。
それも、今日でおしまいよ。

荒谷流、当代正統後継者。
荒谷つかさ――いざ、参る!

【荒谷流剣術・真伝『零』】発動
土の属性を宿した「大悪魔斬【暁】」を構え、正面から斬り合う
九耀の魔剣は手数は多いが一撃当たりの威力は並
故に土の頑健さを宿した刀で丁寧に受け止めていく

シャルロットの割り込みで隙を見せたら勝負
全身全霊の力を込めた突きを胴狙いで放つ
どれだけ守りが固くても、隙間さえあれば私の剣はそこに刺さる
前の貴女の剣を受けて編み出した……私の荒谷流剣術よ



 ススワタリとの戦いを終え、準備を整えてから辿り着いた。
「視界を求めすぎるのもスナイパーの性でしたね」
 空から降る相手に対して高所を選んでしまったことを振り返りつつも次の目標を見据えるシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)。遠目に見てもわかるわかる桜色の羽織が見える。ともに行動している荒谷・つかさ(『風剣』と『炎拳』の羅刹巫女・f02032)を横目で見て感じた。いつもと同じような表情のようで溢れているオーラが事情があるのは察しているが、詮索するのは今は些事だと切り替える。

「あれが……あれ?」
 荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)は何か言い知れぬ感覚。目の前にいるオブリビオンに既視感がある。自分と似て非なる存在。理解はしたが言葉にするのが難しい。因果を本当に止めるのであれば自分が行うべきなのだと。
「ひかる?」
「あれは私。私の歪んだ魂の欠片」
 後継者である自分ではなく、ひかるとの因果なのだとわかると合点がいく。自分が倒しても躯の海へと帰って行った。自分じゃないならばと考えていたが、実際にそうだと確信すると心の靄が少し晴れた気がする。

「あぁ……お前が、私の!!」
 全力で一直線にひかるへと突進してくるアラヤは狂気に満ちた笑みを溢れさせている。アラヤとひかるの間に割って入るつかさは刀を構える。
「荒谷流、当代正当後継者。荒谷つかさ……いざ」
 名乗りも関係なく、間合いに入ってくるアラヤに対応すべく、土の属性を宿した武器を構えるつかさは軽く振られた斬撃が九つに分かれて振りかかるように感じた。以前も受けたはずだが、それとはまた別。何とか受けきるもアラヤが抜けていく。
「ひかる!」
 振り返って追いかけるつかさ。ひかるにアラヤの刀が届く間合いに入る前に、アラヤが横に飛ぶ。アラヤがいたとひかるの前に銃撃の煤煙があがる。そのままけん制しながらひかるの傍へ駆け寄ったのはシャルロットだった。
「油断も隙もあったもんじゃありませんね」
 駆けつけようとしているつかさの方を確認すると複数の鬼が立ちふさがるように襲い掛かっていた。
「やらせない!」
 周囲に小さな光が舞い降りる。それは花びらのようにひらひらと鬼たちとアラヤの近くに落ちてくる。ひかるの合図とともに花びらが襲い掛かる。鬼たちはなす術なく霧散していく。アラヤは近くの鬼を引っ張り、盾にして被害を軽減していた。

 アラヤの剣戟をつかさとシャルロットで受けるが、決め手に欠ける。連携で切り崩していても見切られているのか、致命的なダメージにならない。アラヤの自在の剣術も予知して何とか回避するシャルロットも疲労が積み重なっていく。ひかるも援護するが、隙がうまれるたびにひかるを狙うため、全力で力を振るうのは難しかった。

 つかさがシャルロットとアイコンタクトしたかと思えば、距離をとる。
「スナイパーが接近戦ができないだなんて思ったらお門違いですよっと!」
 素早くけん制突きをこなすシャルロット。少しだけ間合いを取ったつかさは、息を整えていた。今からやるのは新しい技。目の前にいるオブリビオンと戦ってきた経験が、妹を守るための使命感が、荒谷流正当継承者としての誇りが、一つの技となった。剣先を敵に向ける牙突の構え。姿勢は低く、重心は前に。一気に踏み込みまるで飛ぶようにアラヤへと突っ込んだ行く。

 アラヤが何かを見たような気がする。それはつかさだが、それ以外の何か。刀を弾こうと九耀鏖殺刃をつかさの刀へ振り下ろそうとするが、視界が光に阻まれる。ひかるが操る光の花びらがアラヤの目の前に固まって、つかさを見えないようにした。一瞬の戸惑い、動きを止めたことによる硬直は次の行動を遅らせる。シャルロットが捨て身にも似た形で飛び込み、右腿を斬りつける。
「貴方の剣はすでに見ているし、私も前に戦った時の私じゃないわ」
 まさに刹那。アラヤの胸部につかさの刀が突き刺さり、そのまま突き刺したまま押していく。アラヤが太い樹を背に突き刺さるよう激突する。アラヤの腕から刀がずり落ち、煤だらけの地に静かに転がる。

「こんなの荒谷流ではない……私が私の魂を……刀を!」
 張り付けられたアラヤは抗うが、深く突き刺さった刀のせいでもがけども、手足を動かせる程度。
「お姉ちゃん」
 つかさの傍までやってきたひかるは多くは語らない。自分の役目をわかっている。この因果を終わらせる。自分を一つに。つかさは懐から母から受け継いだ大切な守り刀である『黄昏』をひかるに手渡す。短刀なのにそれは重く感じた。
 自分の片割れが姉や人々を苦しめていたこと。それを先ほどまで知らずにいたこと。再び躯の海に返せば同じことが繰り返される。
「来るな……お前を喰らうまで、私は……」
 アラヤの表情はどこか力がない、身体も力が入らない。
「ごめんね。今まで一人で……元通りに、一つになろう」
 短刀がゆっくりとアラヤの左胸に沈み込んでいく。抗う腕の力もなく、苦悶の声を漏らすアラヤは今までと違い、白い光に包まれながらひかるへと流れ込んでいく。
「おかえり、私」
 消える前の一瞬。アラヤが笑みをこぼしたように見えた。それが何を意味するかは本人しかわからないだろう。ぽつぽつと雨が降り始める。全てを流し、零とするのか。しかし、彼女はひかるの中にいて、ひかるは彼女だ。何かが変わったわけではない。しばらく立ったまま動かないひかるを後ろから抱きしめるつかさ。二人を遠目に心配そうに見ていたが、二人なら大丈夫だと信じてシャルロットはその場を離れる。

 煤は流れ、因果も流れ、すべてが終わった。終わりは虚しく訪れる。煤被りの殺人鬼は誰一人として殺せず、舞台から消えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年12月15日
宿敵 『一耀の羅刹『アラヤ』』 を撃破!


挿絵イラスト