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名状しがたき感興

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「? ! @いr」
 そのモノは、神になろうとした人の果て。
「lhiきう r 8-1、ぢ5う」
 無数の貌から、感興の言葉が放たれる。
 ヒトはもう、食らい飽きた。
 ヒトはもう、戦い飽きた。
 ならば、その先へと――それよりも強かな存在へと。
 
 それは、だれだ?

「いえーがー」

 支離滅裂に、それで以て整合性のない言語しか発していなかった貌たちが一斉に言葉を揃えた。
 猟兵。イエーガー。『超える者』。

 彼らと戦いたい。
 彼らを倒したい。
 彼らを殺したい。
 彼らを喰らいたい。

 『それ』が願ったことが叶わなかったことなど、一度たりともない。
 己が理不尽めいた破壊で、ヒトを平伏させ、滅ぼしてきた。

 だからこそ。

 猟兵を殺すべく、今までと変わりなく――いつも通りに、動き出す。
 『下ごしらえ』した怪物を携えて。


「む、村にヤベー怪物が攻め込んでいるみたいなんデスよ!」
 毒島・林檎(蠱毒の魔女・f22258)が慌てるように口走って、映像をモニターに映し出す。
 そこには、森林に囲まれた小さな森を踏み荒らす、巨大な怪物の姿があった。
 行先は、その小さな村。捻りもなく只々真っ直ぐに、咆哮をあげながら迫っている。
「かつて森を守護していた聖獣が変質した怪物らしいんデスけど……、ちょっときなくさいところがあるッスよ」
 そもそも、その森林にそのような怪物が出没したという前例はない。
 言い伝えもなければおとぎ話もない。
 忘れ去られていただけ、という可能性もあるが――帯びている邪気が不自然に色濃く、人為的なものを感じるそうだ。
「おそらく、いや間違いなく、あれをけしかけた存在がいるッスよ」
 かの怪物と対峙し、倒した後に何かが起きることは間違いないだろう。
「幸い、すでに村人たちは避難できているッス! 人命救助の必要はないんで、思う存分ボコしちゃってくださいッス!」
 とはいえ、あの怪物を放置すると何れは村人たちに被害が出てしまうだろう。村自体も滅ぼされてしまいかねない。
 そうなる前に、倒す必要がある。
 それに、アレをけしかけた何者かも介入してくる可能性が高い。
 なおのこと、猟兵たちの力がいるだろう。

「それじゃあ、宜しくお願いするッスよ!」
 毒島は言葉を締めると、猟兵たちを転送させていくのであった。


こてぽん
 お読み頂きありがとうございます。こてぽんです。
 村が怪物に踏み荒らされる前に、どうか救いの手を。

●戦場について
 鬱蒼とした森林での戦いとなります。
 木々が入り組んでいますが、それを薙ぎ倒すように怪物が行進しているので自然と開けた戦場になっていくことでしょう。
 なお、戦闘の余波などで、村に被害が及ぶことはありません。

 それでは、皆さんのプレイングを心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『高き森の怪物』

POW   :    圧倒的な膂力
単純で重い【剛腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    原始の魔眼
【視線】が命中した対象に対し、高威力高命中の【石化の呪い】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    聖域の守護者
【燃え盛る青き瞳】に覚醒して【かつての力を取り戻した聖獣】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アウル・トールフォレストです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ダビング・レコーズ
実行犯の目論見が何であれ目標の速やかな排除が不可欠である状況に違いはありません
戦闘行動を開始します

【POW・全歓迎】

空間戦闘機形態、ソリッドステートで出撃
目標へ空対地攻撃を開始します
敵の格闘攻撃が辛うじて届かない高度と相対距離を維持しつつSS・WMを発動
荷電粒子速射砲(攻撃回数)で牽制の制圧射撃を行いながら攻撃を誘発させます
これにより周辺の木々を薙ぎ倒させ射線を確保
成功次第収束荷電粒子砲(攻撃力)に切替
重火力兵装で致命打を与えます
樹木を破壊しながら進攻可能なほど大型の目標ならば攻撃を直撃させる事自体は難しくないでしょう


宮落・ライア
ははっ!
おーっしその猪突猛進さにはちょーっとそそられるぞー?
まっすぐ。真正面から。叩き潰して。踏み潰したくなるじゃないか。

【自己証明】で自己強化。
呪縛を引いた場合【止まる事なかれ】で破棄及び強化。

ああ、叩き潰してやる。叩き潰してみせる。
相手がどれほど強大であろうとなんだろうと……絶対に。

相手が突っ込んできたらタイミングを見極めて【グラウンドクラッシャー】
を直接叩きつける。
相手が攻撃してこようとしてるのなら関係ないとばかりに
それ後と叩き潰す気で振り下ろす。

ああ、どれほどの物でもどれほどの事でも越えてみせる。


ハロ・シエラ
巨大な相手は不得意なのですが、そうとばかりも言ってはいられません。
村の存亡の危機にこんな事を思うのもいけない事なのですが、戦ってみる事で掴める物もあるでしょう。

大きい相手はまず私に斬れそうな所から攻めます。
特に足を斬ってしまえれば移動を止める事も出来るでしょう。
相手の動きを【見切り】攻撃を回避しながら足元へ潜りこみ、ユーベルコードで斬りつけます。
とは言え足首などを最初から一気に切り落とす事は難しいかも知れません。
足の指など末端から【部位破壊】し、速度を落とす事を狙いましょう。
地を砕くほどの拳の一撃は厄介ですが【ジャンプ】などで回避し、逆に手を斬り付けてやろうと思います。



 咆哮をあげ、一心不乱に奔走し続ける『樹人』。
 その一歩が大地を陥没させ、揺さぶる。その声が空気を震わせ、草花を吹き飛ばす。
 そして、その巨体が樹木に触れれば、木々たちが薙ぎ倒されていく。
「戦闘行動を開始します」
 不意に、樹人によぎるように――『影』が差した。雲などの自然現象とは違う、『人為的』な現象。
 その不自然さに樹人は足を止めた。そして、その鬱蒼とした顔面をもたげ、天を見上げれば――。
『プラズマガンポッド、アクティブ』
 無数の光が樹人の全身を打ち付けた。
 白き大翼を広げる”戦闘機”――ダビング・レコーズ(RS01・f12341)から放たれた、荷電粒子速射砲である。ひとつひとつは小さな光弾だが、その数は大雨が如く。
「オ、オ、オ――」
 樹人は苦し気な声色を口から漏らした。全身から立ち昇る白煙を振り払うように、その剛腕を振り回す。
 だが、制空権を握っている上に『ソリッドステート』であるレコーズには当たらない。
 その剛腕がよぎるころには、レコーズが残した軌跡を揺らめかせるのみで。レコーズは再び周囲を旋回しながら射線を合わせ――通り抜けざまに速射砲を撃ち放った。
 それは周囲の木々ごと破壊する――いうなれば『絨毯爆撃』に近いそれである。
 巨人の攻撃も相重なって、周囲の木々が木片へと変化していく――。
「おーっし、その猪突猛進さにはちょーっとそそられるぞー?」
 宮落・ライア(ノゾム者・f05053)が木々の間をすり抜けるように駆ける。目指すは眼前で暴れている樹人、その脳天だ。
 視界の先でレコーズの弾幕を浴び続け、がむしゃらに両腕を振り回し続ける巨人。前述の通り、空中を高速飛行するレコーズには掠りすらしない鈍重な攻撃だが、その余波は周囲の地形を破壊する。当然、それは地上を駆けるライアにも影響があるわけだが――。
「まっすぐ。真正面から。叩き潰して。踏み潰したくなるじゃないか」
 岩片が、木片が、はたまた樹木そのものが飛び散り、ライアごと薙ぎ倒さんと迫る。だが、それをみて尚――彼女は止まらない。
「ああ、叩き潰してやる。叩き潰してみせる」
 その想いが、彼女の『自己証明』となる。揺るぎない決意は力となり、糧となる。
 それ故に、得物である『骨肉の剣』――その無骨な刃が振るわれれば――雪崩れ込む瓦礫どもは二分され、ライアへ道を譲る。
「相手がどれほど強大であろうとなんだろうと……絶対に」
 転がり迫る岩石の上に飛び乗り、そのまま大きく飛翔した。彼女の身体を留めるように、穢れた呪鎖が『理』となって巻き付くも――それすら引きちぎっていく。
「……!」
 樹人はライアの存在に気が付いたようで、その双眸を向ける。自身の顔面めがけて跳躍する少女を轢き潰さんと――足を大きく前へと踏み出し、突進。
 だが、ライアは回避行動すらとらずに、その剣を大きく振り上げて――。

 激突。
 景色が歪んだ後に――かの巨体が、よろめいた。

 勢いを殺された樹人がたたらを踏んでいると、己が足元に衝撃が迸った。
 それは爆発のそれでも、鈍器のそれでもない。
 『凶刃』のそれである。
 樹人が視線を足許へ向けると――。

 剣光が瞬いた。
 次の瞬間には、己が足指を切断するハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)の姿が、そこに在って。
(巨大な相手は不得意なのですが、そうとばかりも言ってはいられません)
 彼女の得物は『レイピア』である。技量を必要とする代わり、対人では驚異的な殺傷能力を持つ武器である。だが、それはあくまでも『殺す』ことに優れているのであって、『破壊』することには優れていない。それ故に、今回のような敵が相手だと『不得意』だと感じたのかもしれない。
 だが、それならそれで『やりよう』はある。
「――!」
 認識できないほどの絶叫をあげながら、その剛腕を振り下ろす樹人。それはまるで、痛みに癇癪を起こす子供のようでもあった。
 巨拳が大地にめり込む。だが、そこに土石以外の感触はない。陥没した周囲にも、彼女の気配はない。
 半瞬遅れて、振り下ろされた拳に『穴』が開く。
「さすがに遅いですね」
 みれば、周囲を跳びまわり、舞い踊るようにレイピアを振るうシエラの姿が。樹人の目には、煌く剣閃のそれが星々のように瞬いているようにしか見えないだろう。
 一、五、十――それは樹人からしたら小さな傷とて、重なれば看過できないものへとなっていく。
 ぽろり、ぽろり――と、樹人の拳が崩れ落ちていく。
 点が当たらぬのであれば、面で。もう一方の拳を開き、その掌でシエラを潰さんと振り下ろそうとする。
 だが、樹人の背後で轟音が響き渡った。その巨体が大きく震え、ぐらつく。振るわれた掌も軌道がズレて、明後日の方向へ叩きつけられていく。
「よそ見とは、いい度胸じゃないか」
 ライアが振るった骨剣が、樹人の背中に突き立っていた。そのまま抉り取るように刃が引き抜かれ、樹人の背中から樹液のような鮮血が舞い散る。
「オオ――」
 樹人は悲鳴を上げながら、振り返りざまに腕を振るう。だが、少女はそれ『すら』空中で受け止める。
 轟音と共に、かち合う剛腕と骨刃。だが、巨大な腕が僅かに揺れ――弾き返された。
「ああ、どれほどの物でもどれほどの事でも越えてみせる」
 そのまま得物を振りかぶり、天すら昇る勢いで大跳躍。落下の勢いに身を任せたまま――。
 脳天から『それ』が叩きつけられた。
 その衝撃が、周囲の木々を薙ぎ倒し――より一層、戦場を開けたものへとしていく。
 その中心で、脳天に突き立つ刃を引き抜くライアの姿と、片膝をつく樹人の姿が在って。
「その足、貰いうけます」
 足指が千切り取られたほうの――樹人の片足に、無数の剣閃が煌く。シエラが振るうレイピアが、一層強かに斬り抜かれ――片足が『舞い飛んだ』。
 全身の均衡を失ってか、両腕をついて四つん這いになる樹人。
 傷口を塞ぐように生え伸びる巨大な根。それが徐々に新しい足を形どっていくが、それだけの『時間』があれば十分。

 二人が飛び退いた後に、『それ』が宣告される。

『コンバージェンス・プラズマキャノン、アクティブ』

 射線は、拓かれた。
 真っ直ぐ、一直線に――収束荷電粒子砲、その砲口を向けるレコーズ。
 煌いた粒子が熱を帯び、砲身をあたためていく――。
 赤とも白ともとれぬ、混ざり合った色彩が渦を描き、宙を照らした。
 その『照準』が、天を見上げる樹人の顔面を捉えた瞬間――。

 [Fire]
 
 巨人の全身が、光に飲み込まれた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

セシリア・サヴェージ
何か裏があったとしても、今は目の前の敵に集中しましょう。
この怪物が村で暴れれば被害は甚大……ここで必ず食い止めます!

攻撃には攻撃回数を重視したUC【暗黒剣技】を使用します。
この怪物相手に正面からやり合うのは危険でしょう。
剛腕の一撃を避けて【カウンター】を浴びせたり、敵の横を【ダッシュ】でで通り抜けざまに攻撃、【ジャンプ】して頭部へ攻撃を行う等々……
敵を翻弄するような攻撃を中心に戦闘を行います。
剛腕の一撃は【見切り】で回避を試み、どうしても避けきれない場合のみ【武器受け】で防御します。


イリーツァ・ウーツェ
ニンゲンに被害が出るならば捨て置けん
約定を結んだ 故に守る
私は其れだけで身を張れる

竜の前で剛腕を謳うか
良かろう
全霊の怪力を以て、怪物の拳を迎え撃つ
腕を投げ出す様に大きく振るい、
当たる瞬間にのみ力を籠め、UCを使う
斯うすると只殴るより威力が出る

聖獣如きが不遜な事だ
心身粉砕して呉れよう
地に伏せろ



「何か裏があったとしても、今は目の前の敵に集中しましょう」
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)、そのひと。
 狂奔する樹人を眼前に、昏き闇を揺蕩わせる。
 その闇は己が心身をも蝕む、諸刃の剣。
 一切の光を通さない昏色が樹人の蒼い双眸に映し出された。
「この怪物が村で暴れれば被害は甚大……ここで必ず食い止めます!」
 暗黒をはらんだ魔剣を鞘から引き抜けば、奔走していた樹人の足を止めるほどの『闇』が周囲の空気を包み込んで。
「お、オ――」
 蔦と葉で覆い隠された大口が開かれて、その暮明に慄く。天を衝くほどの『暗黒』に、その巨体が思わずたじろいだ。
 だが、樹人とて『聖獣』と呼ばれた存在。それで身を引くほどの木っ端ではない。
 そのまま巨大な拳を構え、セシリアを殴りつけんと勢いよく振るい下ろした。
「現世に縋る者よ……我が暗黒剣でお前を在るべき場所へ還そう」
 岩塊が如き巨拳を前に、セシリアの構える『暗黒剣』が昏く輝く。
 それがひときわ大きく煌いた瞬間――そこに拳が叩き落とされた。
 
 だが、拳が穿ったのは、某の大地と、僅かな『暗黒』の残滓のみで。

 刹那、地面に埋没した拳に闇色の軌跡が迸った。
「――!」
 舞い飛ぶ己が木片に、樹人は目を見開く。
 腕部に刻まれていく無数の裂傷。その軌跡に沿うように――セシリアの姿がブレて映る。
 樹人は、周囲一帯を抉り取るように剛腕を薙いだ。目で捉えきれないセシリアに苛立っているようでもあって。
 だが、そこには抉り取られた大地しか残らず、振るった腕の内側――その脇をすり抜けるようにセシリアの暗黒剣が過る。
 ひび割れるような音と共に樹人の脇腹に亀裂が刻まれた。
「オオオオオ!」
 樹人は怯むのかと思いきや、咆哮。
 そのまま両拳を絡み合わせ――スレッジ―ハンマーが如き其れを、天高く振り上げる。
「……まずいですね」
 樹人の背中に回り込んだセシリアが思わず呟く。
 あの攻撃は、広域を破壊するほどのもの。
 自分も、避けられる位置にはいない。
 ならば、と、セシリアが剣を前面に構える。刃の『暗黒』が彼女の前面を覆い、幾多にも重なって『盾』のように展開。
 遅延した時の中で、ゆっくりと振り下ろされる両拳。
 来たるであろう衝撃に備えてか、柄を握る手に力が籠った。

 だが、そのときである。

「ニンゲンに被害が出るならば捨て置けん」
 その言葉と共に、『なにか』が砕け散る。
 半瞬遅れて、ぐらりと傾く樹人の巨体。
 セシリアが視線を下に向ければ――。

 圧し折れた大樹の片足。

「約定を結んだ 故に守る」
 ――私は其れだけで身を張れる。
 イリーツァ・ウーツェ(黒鎧竜・f14324)が、そこにいた。
 折れ曲がった巨木には、彼の拳が『突き刺さっている』。
 片足の均衡を失い、バランス感覚を失ったためか――そのスレッジハンマーは明後日の方向に振るわれた。それも、先程の勢いが微塵も感じられないほどに『非力』で。
 それでも流石に大質量のそれであったためか――見当違いの方向に落ちた両拳は地面を波打ち、捲り上がらせる程で。
 だが、想定されていた攻撃が弱体化したおかげでか、セシリアも衝撃をしっかりと受け流して着地している。
「グ、ゴ、ゴ」
 折れた片足に草木が茂り、修復されていく。それを樹人は肩越しに一瞥しながら、振り返りざまにイリーツァめがけて拳を振るった。
 身体を捻った状態から放たれた一撃だ。先刻のそれよりも、勢いも威力も別格だろう。
 およそ拳闘のそれとは思えないような重低音を鳴り響かせながら、空気を切り裂き、イリーツァに迫る。
「竜の前で剛腕を謳うか」
 だが、イリーツァは避ける素振りすらみせず、身体を引き絞るように震脚する。
 大きく振りかぶって、掌を握り――拳を構えた。
「良かろう」
 彼の目と鼻の先に迫りくる超質量の剛拳。
 それにぶつけるように――竜の拳が『投げ出される』ように放たれた。
 大きさも質量も違う両者の拳が、激突――。
「近付いたな、私に」
 時が、世界が、その一瞬だけ――止まった。
 それは何方かの能力というわけではない。
 あまりの威力に、空間が『歪んだ』のだ。
 その『間』をおいて、一面の木々が薙ぎ倒される。
「……?」
 樹人は、理解ができなかった。
 その『獣』の知性では、状況を飲み込めなかった。

 どうして、自分の腕が存在しないのか。
 
 徐々に引き戻されていく意識。
 だが、現実の非情さを再認識するころには、すでに某の眼前にセシリアが飛び掛かっていて。
「――隙ありです!」
 両の手によって振るわれた刃が、その刃が鬱蒼とした顔面を引き裂く。
 飛び散った『闇』が目を潰し、視界を塞いだ。
 突如の出来事に驚いてか、片手で顔面を覆いながら巨体が仰け反る。
 だが、その翳した掌にすら――深淵たる暗闇が、振るわれた刃を通して裂傷を作り出していく。
 裂傷は亀裂となり、亀裂は崩落の兆しとなる。
 ぼろり、ぼろり、と落ちていく巨大な指。真っ暗な視界の中で樹人がうろたえるも――もう遅い。

「聖獣如きが不遜な事だ」
 昏き世界の中で、『竜』の嘶きが響いた。
 『なにか』が顔面に叩き込まれ、めり込んだ。
 不思議なくらいにあっけなく、足が浮き、身体が浮く。
「心身粉砕して呉れよう」
 半ばまで突き刺さった『なにか』が、螺旋を描く。
 この形は、この感触は間違いない。

 拳だ。

 だが、そう気付いたころには、既に己の身体は――吹き飛ばされかけていて。
 ゆっくりと流れゆく時の狭間で、『黒鎧竜イリーツァ』は告げた。

「地に伏せろ」

 ぷつりと糸が切れたように、その秒針が刻まれる。
 某の巨体が、大地を転げ回るように――吹き飛んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鷲生・嵯泉
鎧坂(f14037)同道
嘗ての聖性もこうなっては唯の害獣
まあ、獣でも人型でも敵ならば大差は無かろう

すまんな、では少しばかり其の背に厄介に為ろう
大丈夫だ、昔は鞍無しの馬によく乗った。何とでもなるだろうさ
流石にあの図体では此の速度には付いて来れまい
……では露払いと行こう、刃に手を滑らせ妖威現界を使用
其の侭上空、肩の辺りで飛び降りる
――其の腕、貰い受ける
怪力に鎧砕きをも乗せた一刀を以って斬り飛ばしてくれる

成る程、流石は「意志の竜」
雷の王が伴侶の牙、大した迫力だ

森を荒らされた怒りならば、まだ納得も出来よう
だが唆されて民に害為すものと化したのならば余りに愚昧
此れ以上愚かさを積み上げる前に、此処で潰えろ


鎧坂・灯理
鷲生殿(f05845)と
害獣退治ですよ、鷲生殿
獣というより巨人といった風体ですが
まあ殺すに変わりは無い

起動、【月華竜変化】
さ、鷲生殿。背中へどうぞ。残念ながら鞍はないので、羽毛でも掴んでおいて下さい。
抜けませんからご安心を。痛くもかゆくもありませんしね。
さて、号砲一発。軽く吠えて脳震盪でも起こしてやるか。この咆哮は敵にしか効かん。
そのまま空を飛び空中戦。遅いよ、のろま。
頭部を狙って飛びかかり――鷲生殿は途中下竜。はは、お見事!
私はそのまま巨大化し、奴の頭をかみ砕いてやろう。

巨人だか聖獣だか知らんが、図に乗るな
竜と人間の敵ではないわ
ましてや鷲生嵯泉、「意志の剣」だ
竜に沿う者の覚悟を身に刻め!



「ゥゴ、ゴ……」
 全身に迸る無数の傷を覆い隠すように、根が絡まっていく。
 失った片腕も、目も、触手のようにうねる植物たちが代替となり、獣が再び這い上がる。
「嘗ての聖性もこうなっては唯の害獣」
 鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は呟く。
 不気味な再生方法もそうだが、なにより、『ここまでやられて』なお留まらぬ狂暴性に対して、そう思ったのかもしれない。
 その執念は、殺意は、到底『聖なるもの」の其れとはかけ離れたものだ。
「そうですね、あれは間違いなく害獣のそれです」
 鷲生の傍に立つ鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)が、彼の言葉に同調する。
「まあ、獣というより巨人といった風体ですが」
 天を仰ぐ灯理の先には、立ち上がり此方を見下ろす樹人の怪物が。
 二足歩行の大型生物といえば、巨人といったほうが自然だろう。まぁ、どちらにせよ――灯理が付け加えるように口を開けば。
「殺すに変わりは無い」
 絶対零度の声色が、殺意となる。それはかの巨人の意識を引き付けるには十二分の意思力が在って。
 その通りだな、と鷲生が応えれば、腰に携えた刀の鞘に手が置かれた。
「敵ならば大差はなかろう」
 獣だろうと人型だろうと――。
 二人の体勢を臨戦のそれだと認識した樹人が、しゃがれた咆哮をあげながら愚直に拳を振るう。
 まとめてひき潰さんと、某の一撃が迫るが――。
「起動、【月華竜変化】」
 ”月に吠えろ”。
 巨人の意識が雑ざり合う。まるで銅鑼を間近で叩かれたかのような衝撃が頭蓋に響き渡り、全身の力が抜けていく。
 揺れる視界の中、辛うじて見下ろした先には――『銀の翼』がこちらに向かってきていて。
「――!」
 焦点が定まらぬまま、がむしゃらに両腕を薙ぎ、それを叩き落とさんとする。
 だが、その存在――銀竜と化した灯理には掠りすらしない。大きく旋回しながら空中を飛び回り、振るわれる剛腕をすり抜けるように躱していく。
「遅いよ、のろま」
 空を縦横無尽に飛び回る、白銀の意思――月華竜。
 背中に鷲生を乗せているにも関わらず、三次元的な動きを見せつけている。一方の鷲生本人も、鞍のようなものがないにも関わらず――振り落とされる気配が微塵も見られない。
「鞍無しの馬に乗っていたころを思い出す」
 圧倒的なバランス感覚といったところか。百戦錬磨の『重み』が、そこにあった。
 昔を懐かしむようなことを口走りながら、その隻眼は巨人を真上から見下ろしていて。
「上をとりました。あとは――」
 灯理の言葉に頷いた鷲生が――刃に手を滑らせながら飛び降りる。
「任せよ」
 煌く凶刃が、赤く、紅く――柄から刃先を伝うように。
 その暁が彼を染め、世界の色をも染め上げていく。

 それは妖威の赤月。
 それは天魔の華。
 鬼ノ神、顕現せん――。

「――其の腕、貰い受ける」
 
 某は、鬼神の言霊。
 紅に瞬いた刀身が、漆黒に還る。
 刹那――鷲生を挟みこむように両掌が振るわれた。
 だが、そこには何者もいない。
 掌を空けても、虚しく空気が零れるのみ。

 ――黒い糸が、真っ直ぐ、一直線に。
 それが、肩口に伸びていた。
 巨人は不思議そうに、それを摘まもうとする。
 だが、その糸は、その肩を”貫いて”――足許まで伸びていた。
 
 これは、糸ではない。

 そう気付いたときには、既に――。

「はは、お見事!」
 灯理が、吹き飛ばされた巨人の腕に驚いてか――目を見開いた。
 その糸は、刃がよぎった『軌跡』。鷲生の極限まで研ぎ澄まされた一刀が、空間の理を『誤認』させたのだ。
 巨大な剛腕が空中を舞い飛び、半ばで四散。遅れてやってきた衝撃波に樹人は大きく仰け反り、たたらを踏む。
「ならば私も――」
 体勢を立て直そうとする樹人めがけて、真っ直ぐ飛翔する灯理――その銀竜。
 某の大顎が開かれて――。
「噛み砕く」
 閉口。緑一色の頭蓋が飲み込まれ、それを支える付け根に亀裂が迸った。
 軋む音を響かせながら、灯理を振り落とさんと暴れまわる樹人。
 だが、彼女の身体は揺れ動くどころかビクともしない。
「巨人だか聖獣だか知らんが、図に乗るな」
 それは絶対強者たる『竜』の言葉。
 ぶちぶち、と、根が千切れていく。
「竜と人間の敵ではないわ」
 残された片腕が、灯理の翼を掴まんと伸びていく。
 だが、それも道半ばで『切り口』を残して消滅。
 舞い落ちていく木片の最奥に、某の鬼神が刃を振るっていて。
「ましてや鷲生嵯泉、『意思の剣』だ」
 切り口から根が生え伸び、腕を再構成しようと尽力するも、
 斬る。
 斬る。
 斬る。
 斬る。
 問答無用に、斬り刻む。
 鷲生の身体より何倍も大きな草木たちが、抵抗虚しく断ち切られていく。
 それこそがまさに、

 『意思の剣』。

 それは何者にも折られない”絶対の一刀”であると知れ。

 やがて、某の『芯』が圧し折れ、抵抗強かであった巨人の首が勢いよく――。

「竜に沿う者の覚悟を身に刻め!」

 引きちぎられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
この世界はきな臭いことが多いな

敵へは顕理輝光で対処
攻撃へは『絶理』『刻真』で異なる時間に自身を起き影響を回避
全行動は『刻真』で無限加速し隙を作らず
攻撃分含め必要な魔力は『超克』で“外”より汲み上げる

絢爛で目標を完全に覆うよう周辺の空間を支配
起点は目標の目の前の空気中の粒子
時の原理で空間内の目標を「変質」する前へ復元
こうなるに至った経緯など聞けそうなら聞いておく

聞けない、或いは全て聞いたら更に空間を操作
時の原理と自戒の原理で、聖獣としての力を目標自身へ向けそれにより自滅させる


アリソン・リンドベルイ
【WIZ 侵略繁茂する葛蔓】
ーーーええ、ええ。歳経る大樹の化身の貴方に問います…なにゆえ、このように荒ぶるのですか。これが、貴方の誠の真意ですか、それとも…!
『奉仕、礼儀作法』で、刺激しないように問いかけます。…理由もなく、森が怒るとは考えにくいですから…あるいは、尋常ならざる事情があるのでしょうか。
返答の有無に関わらず、森の化身が村に出ていこうとするのならば…止めます。 僭越ながら…ええ、ええ。ここから先は、人の住処。森とは理の異なる空間です。ユーベルコードを展開し、『生命力吸収、範囲攻撃、拠点防御』で、森の外に出ないように、引き止めます。蔓を絡めて、動きを鈍らせますね?


リーヴァルディ・カーライル
…ん。誰の仕業か知らないけど、酷な事をする…。
森を傷付けるのは本意では無いでしょうに…。

“血の翼”を広げ空中戦を行いつつ“写し身の呪詛”を発動
無数の存在感のある残像を囮に敵の殺気から攻撃を見切り、
初見の相手の戦闘知識を蓄える

…なるほど、大凡の能力は推し量れたわ。

第六感が好機を捉えたら、
吸血鬼化した自身の生命力を吸収してUCを二重発動(2回攻撃)
大鎌に闇属性の“過去を世界の外側に排出する力”を溜め、
巨大な“闇の結晶”刃を形成し突撃

怪力任せに大鎌をなぎ払い結晶刃を砕いた後、
解放した闇のオーラで防御を無視して傷口を抉る闇属性攻撃を行う

…これ以上、森を破壊させはしない。
骸の海に還りなさい、堕ちた聖獣。



 木偶の防め。
 冷たい鋼のような声色が、首を無くした樹人――その内に眠った『聖獣』に届く。
 蒼く冷え切った錬気が、かの巨体を包み込み、倒れかけた肉体を押しとどめた。
 枯れかけ、傷つき、その意識を失いかけても尚――倒れない。
 『あれ』こそが最後の意思、その一点。
 散り行くまで暴れ、目的を達しようとする『獣』の成れの果て。
「―――ええ、ええ。歳経る大樹の化身の貴方に問います……。なにゆえ、このように荒ぶるのですか。これが、貴方の誠の真意ですか、それとも……!」
 その言葉に、燃え盛る蒼瞳が揺れ動き――アリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)を捉える。
 無理矢理再生したためか、継ぎ接ぎの頭蓋が痛々しい。だが、その奥に燃ゆる『蒼天』は、確かな殺意と業魔を宿しながらアリソンを見つめている。
「……」
 生え伸びた、枯れかけの両腕がゆっくりと振り上げられ――落とされた。
 狙いは、眼下のアリソン、そのひと。その攻撃には、一切の躊躇はない。

 刹那、青の光がアリソンの前に『出現』。
 それは淡青を宿す――アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)。
 かざした片手が、超質量であるはずの剛腕を抑えていて。
 軽々しい、どころか――まるで『そこにあってそこにない』ような『虚無』を感じさせる。
「この世界はきな臭いことが多いな」
 ゆっくりと手を前に。すると、その悠然とした行動からは考えられないほどに勢いよく――剛腕が弾き返され、聖獣がたたらを踏んだ。
「……ん。誰の仕業か知らないけど、酷な事をする……」
 『あれ』には既に、意識が存在しない――そう悟るは、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。
 本意ではないはずなのに、無理矢理動かされているような――。それが傀儡のようにも見えてか、彼女の胸を痛める。
「……問いかけは、難しいようですね」
 アリソンは目を伏せる。彼女は草花を愛するが故に、この戦いは不本意たるもので、悲しき事件だ。
 だが、そうであるならば、人を穢す存在であるのであれば。
「僭越ながら……ええ、ええ。ここから先は、人の住処。森とは理の異なる空間です」
 前へ踏み出そうとする巨人の下半身に、『蔦』が生え伸びた。
 絡まり合う植物たち。それは聖獣の力を発露させた其れすらも、動くに能わないほどに強固。

 それこそが、アリソンの権能――その、ユーベルコード。
 ”侵略繁茂する葛蔓”。

 徐々に引きちぎられていく蔦たち。だが、それを補い合うように別種の蔦が覆い被さって――かの巨体を引き留め続ける。
 何重にも絡まり合った蔦は、時に鋼縄のそれよりも遥かに強靭なものとなる。
 そして、それに合わせるようにリーヴァルディが飛び立った。
 血の翼を携えた彼女を視認した聖獣が、縛られていない両腕を振るって叩き落とさんとする。
 だが、その剛腕が過った先には、彼女が残した『残像』が在るのみで。
「……?」
 聖獣が辺りを見渡す。視界の先に、リーヴァルディ――その残像。
 四方八方を取り囲んだ呪詛めいた気配に、獣は吠える。癇癪を起したかのように、周囲一帯を薙いだ。
 だが、その何れにも――手応えがない。
「……なるほど、大凡の能力は推し量れたわ」
 薙ぎ払った、そのさらに奥――その空間に、『闇色』の結晶が突き立つ。
 その傍に揺らめくは残像ではない。リーヴァルディ『本人』だ。
 彼女は、その全身よりも遥かに大きなそれ、その『大鎌』を携えて――勢いよく突撃。
「……オ、オ」
 その結晶の尋常ならざる気配に、聖獣はたじろぐ。
 アレを止めなければ――その一心で、両腕を翳すも――。
「ええ、ええ。これ以上は……」
 暴れさせるわけにはいかない――と、アリソンの蔦が巨人の両腕を縛り上げていく。
 地面から生え伸びた無数の蔦が、剛腕を引き留め続ける――。
「オ、ア、ァ――!」
 ならば、と、巨人の全身に蒼い焔が溢れ出す。
 それは『聖獣』としての本来の力。
 絡まった蔦ごと焼き払わんと、身を強張らせた。
 だが。

「煌めけ」

 暗転する世界。
 静寂の彼方。
 時の回廊。
 遡る秒針。

 モノクロの空間に、『止まった』聖獣の目の前に――アルトリウスが出現する。
 青を宿した右手を聖獣の額に翳せば、彼方の『過去』が映し出されて――。

 其処には、煮凝った蛆が蠢いていた。
 其処には、人々の手足が刻まれていた。
 其処には、人々の無念が込められていた。
 其処には、人々の怨念が込められていた。

 其処には、御伽噺を血で穢す、『無貌』がいた。

「なるほど――」
 眼前の獣は、『森』が願い、生み出された希望の結晶。
 自然を守護する聖なる存在。
 だが、その語り継がれるべき頁が、その『肉体』が、那由多の怨念で反転してしまった。
 それは偶然が起こした事象ではない。

 何者かの手による、人為的なものだ。

 過去の最果てに瞬いた、『無数の貌』が――総ての元凶だろう。

 アルトリウスが瞑目し、身を翻す。
 聖獣に背中を向けたまま――指を鳴らした。

「ガ……!? ア、ア、ア……」
 暗転した世界が、再び『音』を取り戻す。
 巨人の全身に燃え盛る、蒼き炎。
 自身の力が反旗を翻したことに驚いてか、聖獣が困惑するような声をあげる。
 だが、その喉も一瞬で焼け焦げ――煤けた息が空気を汚すのみで。
 そして、アルトリウスの姿はどこにもいない。
 いる必要がないのだ。
 何故ならば――尽くを『達した』のだから。

「……これ以上、森を破壊させはしない」

 リーヴァルディが携える結晶の大刃が横薙ぎに振るわれ――聖獣の脇腹に突き刺さった。
 刹那、大きな亀裂と共に結晶が『四散』。
 空気に溢れかえるは、莫大な『闇』、その気配。
 それは、景色を保持できないほどに溢れかえり、やがて――。

「骸の海に還りなさい、堕ちた聖獣」

 獣の全身ごと、『塗りつぶした』。

 その先にも、後にも、総ては闇の彼方へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『その地に縛り付けられた亡霊』

POW   :    頭に鳴り響く止まない悲鳴
対象の攻撃を軽減する【霞のような身体が、呪いそのもの】に変身しつつ、【壁や床から突如現れ、取り憑くこと】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    呪われた言葉と過去
【呪詛のような呟き声を聞き入ってしまった】【対象に、亡霊自らが体験した凄惨な過去を】【幻覚にて体験させる精神攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    繰り返される怨嗟
自身が戦闘で瀕死になると【姿が消え、再び同じ亡霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:善知鳥アスカ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「おかーさん」
「いたい、たすけて」
「かみさま、どうしてこんな――」
 闇の彼方から、『こえ』が溢れかえる。
 それは上から、左から――はたまた右から下まで。
 四方八方から響き渡る、無念の声。

「いきている、ずるい」
「わたしたちは、ころされた」
「ゆるさない」
「ゆるさない」
「ゆるさない」
「ゆるさない」
「ゆるさない」

「ゆるさない」

「かみさまに、あなたたちを、ささげる」
「そうすれば、すくわれる」
「きっと」
「きっと」

「きっと」

 猟兵たちを取り囲むは、数多の怨霊たち。
 それは、かの獣に宿った『怨念』そのもの。
 行き場をなくした無念が凶器となって、襲い掛かる――!
イリーツァ・ウーツェ
恨むだの憎いだの、ずるいだの許さんだの
如何でも良い。邪魔だ、退け
でなくば亡べ

“竜宮”に魔力を纏わせ、片端から薙ぎ払う
触れた端からUCで消し去ってやる
私の膂力ならば金属杖を片手で振り回すも
杖の軌道を力技で変えるも容易い事
如何なる方向にも対応しよう
憑依したならば、魔力を纏わせた手で己に触れて消す
騒音程度で私を縛れると思うな

殴り甲斐も無ければ喰いでも無い
只、只、鬱陶しく、邪魔な敵だな


ハロ・シエラ
その気持ちは分かります。
ですが、だからと言ってあなた達の神への捧げ物になるつもりはありません。
誰かを殺さなければ救ってくれない様な神様なんて、信じられませんからね。

さて、相手は亡霊。
【破魔】の力を剣に乗せて斬るとしましょう。
突然どこかから現れたりもするのでしょうし、そう言う場合は【第六感】で察知して【咄嗟の一撃】を加えるとします。
防御に関しては【オーラ防御】が有効な気もしますね、何となく。
一気に倒しきれなかった場合はパワーアップして復活すると言うのは厄介ですが、それがユーベルコードの産物である以上は私のユーベルコードで断てない現象では無いはず。
その怨嗟、私が断ち斬ります!


宮落・ライア
真の姿の解放:透き通る大剣を持つ姿

【星剣の担い手の継嗣】で破魔・属性攻撃・呪詛耐性習得

ん?ふぅん。
真の姿になり地面に大剣を突き刺す。
そこから星の光が溢れるようにして周囲に舞い散り溢れドーム上に広がる。
【星の加護】発動で怨霊だろうが亡霊だろうが関係無しに遠のかせ駆逐。

煩い邪魔。

ボクは墓の中の死者と弔われる者には優しいけれど、
そこからわざわざ出てきた者に優しくないよ。
優しくされたいなら遺体の場所に案内して静かにお墓の下にいるかどうかして。



共鳴する怨嗟の怒声。
 砂を噛むような、耳障りな悲鳴。
 纏まりのない無念は、後悔と嘆息を混じえて怨念となり、怨霊となる。
 ある者は地面を這いずり、ある者は宙を浮き、ある者は今にも崩れそうな足取りで歩む。
 その手は、声は、双眸は、嫉妬と憤怒をはらみながら――二人の猟兵へと伸ばされていく。
 だが、その白んだ手は――よぎった『何か』によって、霞のように掻き消えていった。
「いたい、いたい――」
 片手を失った怨霊が、砂のように融けて地面に染み込んでいく。
 その眼前には、腰を深く落として杖を両手に振り切ったイリーツァ・ウーツェ(黒鎧竜・f14324)の姿があった。
 霧散した怨霊を踏み越えるように、数人の霊が雪崩れ込む。
 黒鎧竜の最奥に輝く、宝石のような魂。
 それが欲しい。
 たまらなく欲しい。
 恨みつらみの声色を発しながら、各々が迫るも――。
「恨むだの憎いだの、ずるいだの許さんだの――」
 胸倉にもたれかかるように近付いた薄灰色の霊。だがその頭蓋に、杖が突き出されれば――。
「如何でも良い」
 抵抗なく頭が『吹き飛ぶ』。衝撃波に巻き取られるように身体を消し飛ばした個体など見向きもせず、杖を一閃。間髪入れずに己が足元へと石突を繰り出した。
「邪魔だ、退け」
 舞い上がる靄、くぐもった悲鳴。
 本来であれば実体を持たないはずのそれらには、物理攻撃に対しては強い筈なのだが――。
「あ、あつい、あつい……」
 這いずっていた霊の背中に、某の石突が突き立っている。
 戦杖に張り巡らされた、魔術導線。無数の紋様たるそれらが発光し、霊の身体を焼き焦がしているようで。
 これこそが、竜たる彼が扱う干渉魔術――『無帰滅失』、その権能。
 瞬く間に溶け落ちた霊。イリーツァは某から杖を引き抜き、周囲一帯に振り回した。
 廻る戦杖。
 烈風招来。
 包囲されているという戦況的不利をモノともしない、怒涛の連撃。
 怨霊は数こそ多いが、どれだけ重なっても一切の抵抗なく薙がれて消えていく。
「それにしても」
 押し寄せる霊どもが、一向に衰えを見せない。
「只、只、鬱陶しく、邪魔な敵だな」
 キリがないな――と、イリーツァは目を細める。無論、押し負けるなどとは微塵も思っていない。
 どうしたものか、と、得物たる杖を振り回しながら思惑に耽っているところで――不意に、天を仰いだ。
「……星?」
 そういえば、日も落ちて夜更けになったというのに、妙に明るい。
 暗黒を照らす煌きが、普段の星空からは考えられないほどに満ちている。
 
 ひとつの星が、ひときわ大きく瞬いたかと思えば――怨霊が雑ざり合った瘴気の一角に『柱』が立った。
 つんざくような轟音と共に、純白の光柱が怨霊の群れに穴を開ける。
「ア、ア、ア――!」
 その余波のみで周囲の怨霊が消し飛ぶ。消え損なった存在が、顔を両手で塞ぎながら地面に倒れ、苦悶の悲鳴をあげていた。
 その光が、やがて一振りの刃に収束し――それを持つ宮落・ライア(ノゾム者・f05053)の姿が、そこにいた。
「どうして、こんな――」
 ひどいことをするのか、という言葉は最後まで紡がれることはなかった。ライアが、その透き通るような大剣を片手で振るえば、その衝撃波のみで怨霊の上半身が文字通り『消し飛ぶ』。
「ゆるさない」
「ぜったいに、ころしてやる」
「ころす、ころす――」
 イリーツァに迫っていた怨霊も、ライアに意識をもっていかれたようで。その大半が彼女に雪崩れ込んでいく。
 四方八方から、無尽蔵に沸き立つ怨念が、土砂崩れのように迫っていく――。鈍色の瘴気が、その手足が一斉に伸ばされ、彼女の身体を掴まんとした。
「ん? ふぅん」
 だが、ライアは、『まるで今その存在に気が付いた』かのような反応と共に周囲を一瞥し――その剣を、地面に勢いよく突き刺した。
 宝石箱をひっくり返したかのような、星々の煌きが空間に弾け飛ぶ。
 それだけでは収まらない。景色に点々と瞬いた光星が、銀河のように溢れかえる。その小宇宙がドームのように周囲一帯へと広がっていき――。
「煩い邪魔」
 光が満ちた。
 目を奪われるような真白が怨嗟の声を奪い、瘴気を晴らし、霊どもを『在るべき場所』へと還していく。
 一介の亡霊ごときが、『希望の象徴』である星光を浴びて無事でいられるものか――。
 ライアの周囲一帯に溢れかえっていた怨霊が、尽く塵芥と化す。
「そ、そん、な――」
「優しくされたいなら遺体の場所に案内して静かにお墓の下にいるかどうかして」
 首から下を奪われた霊が嘆きの声色を零すも、ライアの言葉によって一蹴。絶望の表情を浮かべたまま、塵となって消えていった。
「……攻勢が緩んできたな」
 彼女が戦っている間も、怨念の濁流をひたすら払い続けていたイリーツァ。そんな彼が手応えの変化を悟ってか、言葉を零した。
 『無帰滅失』と『星の加護』を以てしても、未だに怨念の底がみえない。だが、それでも相応の数を減らすことに成功したようで――敵の勢いが衰えはじめていた。
 ――突如、別方面からにじり寄っていた敵陣が、一閃と共に斬り捨てられる。
「ようやく合流できました!」
 ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)である。手に持つ『リトルフォックス』の鋼刃が妖炎に揺らめいている。
 妖狐の炎だ。それに己が霊力を合わせ――『破魔』の業炎を作り出しているのだ。現に、横薙ぎに払われた怨霊どもに某が引火しており、その霊体を灰に変えつつある。
「いざ、参ります!」
 火達磨になった霊を斬り払い、奥から雪崩れ込んでくる怨念と対峙した。
 四方から無造作に伸ばされる、怨嗟の手。だがそれに簡単に掴まれるほど彼女は『甘くない』。
 それぞれの僅かな『時間差』を一瞥し、瞬時に剣を突き出す。
 ひとつ、ふたつ、みっつ。
 剣閃により、迫る手が尽く払われていく。突き穿たれた怨霊は尽くが火炙りにされ、景色に溶け込み『還っていく』。
 『技』の極致が、そこにあった。
 突き出された刃は、必要最小限に。即座の防御体勢からの反撃。
 そして、時には大胆に振り回し、払う。
 那由多の物量により、包囲網に揉まれているはず。それなのに、その中心で剣を振るう彼女には一点たりとも触れられていない。
 ”死の舞踊”。
 極限まで磨かれた剣技は、ときに戦闘であることを忘れさせるほどに『美しい』。
「あ、ぎ……ッ!?」
 はじめて彼女の背中に触れかけた怨霊が、その全身に纏われた燐光によって慌ててその手を退ける。
「その手の対策もしっかりしておりますゆえ――」
 振り返り様に払われた一閃によって、怨霊の首が千切れ落ちる。
 だが、このときはじめて――敵が一撃で還らなかった。
「――!」
 耳障りな雑音と共に、首無しの霊が渦を巻く。どす黒い瘴気を巻き取りながら、ひとつのかたちを作り上げんと――『人型』のそれが作り上げられていく。
 だが――。

 その中心に――剣が突き入れられた。
 むせ返るような黒色が噴き出し、景色を汚す。それでも、シエラの動きは止まらない。
「その技、その力全て……断ち斬ります!」

 ”ラム・イット・ダウン”。
 それは、『現象』を断ち斬る一閃。

 ひゅん――と、風を切るように突き刺した剣を振り払えば――渦の最奥から、千切れた『鎖』が飛び出して。
 耳を塞ぎたくなるような、ざらついた絶叫が響き渡った。
 グチャグチャに入り乱れた瘴気が汚泥となり、空中で躍動し、膨らみ、沸騰していく。
 本来行うべきだった『コード』を裁断されてしまった。つまり、実行するはずの力が行き場を失う。
 外界へ溢れかえるほどの無数の怨念が、その目的を見失ったらどうなってしまうのか。

 答えは極めてシンプルだ。

「塵に還りなさい」

 無数の怨念を取り込んだ塊は、白みを帯びながらゆっくりと天へ昇っていき――。

 花火のように、爆散した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。救われる、ね。
何処の神かは知らないけど死者を弄んだ罪は重い。
必ず、報いを与えてあげるわ。

心の傷口を抉るような敵の精神攻撃の類を、
誓いの言葉を口にして気合いを込める事により、
精神の存在感を増幅して呪詛耐性を強化する事で耐える

…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を。

…無駄よ。この誓いがある限り、私が止まる事はない。

第六感が捉えた敵の目立たない奇襲を暗視して見切り、
呪力を溜めた大鎌をなぎ払うカウンターで迎撃した後、
心の中で祈りを捧げ自身の生命力を吸収してUCを発動
亡霊の呪詛を浄化し精霊化して昇天を促す

…この誓いは貴方達も例外では無い。
もう苦しむ必要は無い。眠りなさい、安らかに…。


セシリア・サヴェージ
これほどの数の亡霊が樹人に取り憑いていたとは……その怨みの強さ、無念の思いは理解しました。
しかし、私たちはここで止まるわけにはいかないのです。

どうやらただ暗黒剣で攻撃しただけでは、呪いそのものと化した亡霊には効果が薄いようですね。
ならばUC【闇の戦士】を発動し、彼らを消滅しうる力を得るまで防御に専念します。

彼らの攻撃は【第六感】で察知し回避します。
仮に取り憑かれそうになっても【呪詛耐性】で抵抗できるはずです。
そうして十分【時間稼ぎ】ができたならば、攻勢に転じて反撃します。



「……ん。救われる、ね。」
 魂の救済。心の救済。人の救済。
 なにかを捧げることで報われると信じて疑わない想いが、『死んでしまった』という相反する現実との乖離に耐えられず、怨恨を抱えた存在へと変質した。
 口々に発する恨みつらみがリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の耳に届けば、顔を顰めさせるには十二分すぎる『業』をはらんでいて。
「何処の神かは知らないけど死者を弄んだ罪は重い」
 生者であれば、歪んだ信仰を正せたかもしれない。だが、既に彼らは死んでしまっている。それが故に残留思念という『過去』、すなわち既成事実のみが残ってしまっている。そうなってしまっては絶対に修正することなどできない。
 偶然か意図的かは定かではないが――そこにあるのは紛れもない『悪意』、それに近しい何かであろう。
「必ず、報いを与えてあげるわ」
 性質の悪い『深淵』に、彼らを操る何者かに、必ずや報いを――リーヴァルディは言葉に怒気をはらみながら、得物である大鎌を構えた。
「これほどの数の亡霊が樹人に取り憑いていたとは……」
 リーヴァルディに同行し、暗黒の刀身を宿す剣――『ダークスレイヤー』を構えるは、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)、そのひと。
 常人であれば両手で持つのも難しいであろう特大剣。それを片手で軽々と持ちながら――その切っ先を亡者の群れへと向けた。
「その怨みの強さ、無念の思いは理解しました」
 だが、その言葉に反するように――その刃から放出されるは闇色に揺蕩う焔のような光。
 漆黒をはらんだ紫焔が轟々と燃え盛り、某の剛刃に纏わりつく。
「しかし、私たちはここで止まるわけにはいかないのです」
 足を止めては、救えるものも救えない。誰かを護れずして『騎士』を名乗れようものか。
 否だ。
 『暗黒騎士』としての矜持が、彼女の闇色を蔚然たるものへと昇華させていく。
 闇を纏いながら、その想いは光り輝いている。
 その決意が、彼女の強さであり――騎士としての彼女を構成しているのだ。
 闇に冒された者たちに、一条の光を。
 暗黒を己が身に浸蝕させながらも、セシリアは柄を握る手を強めた。
 臨戦態勢である。
「ああ、それは闇」
「わたしたちのヒカリ」
「安らぎを与えてくださる」
 ぽつり、ぽつりと、喪った者たちから言葉が零れ落ちる。それを皮切りに、一人二人と足取りを、前に。
 それらが僅かな時間差を以て同じように――それが重なり、雪崩るように敵群の猛進が始まった。
「よこせ、よこせ」
「われらのものだ」
「なぜ、おまえたちがもっている」
「ゆるさない」
「ゆるさない」
 おどろおどろしい殺意が、怨念となり、それが怨霊を形どる。
 幾多にも重ねられた傷を抱えた諸手が伸ばされていく――。
「……人類に今一度の反映を」
 リーヴァルディが前に飛び出し、大鎌を横薙ぎに振るった。聞けば頭蓋を揺さぶられそうになる某の言葉を消し飛ばすような一撃。
 現に、怨嗟の言葉が僅かにくぐもった。
「そして、この世界に救済を」
 ひどく寂れたセカイ。人々は領主の圧政に怯え、家畜同然の扱いを受けている――悲劇の世界。
 無数の嘆きを聞き届けながら、得物を振るう手を一切止めることはない。切り裂かれていく怨霊を押し退けるように、後続の怨念が手を伸ばしてくる。
 だが、返す刃でそれすら引き裂く。
 亡者の言葉は、重なれば猟兵とて只では済まない。それほどの力を抱えているはずなのに――彼女は止まらない。
 何故なら。
「……無駄よ。この誓いがある限り、私は止まる事はない」
 脳裏に過る、凄惨な過去。
 それはリーヴァルディが経験したものではない。
 彼女の目の前で薙ぎ払われていく亡者たちが、己が身を以て経験したものだ。
 手を、足を、目を、はらわたを――。
 言葉にするにも憚れる、血肉滴る禍々しい過去。
 だが、それを見ても、聞き届けても、それを『受け止めた』上でも尚――彼女の大鎌は一切の淀みを見せず。
 それこそが、リーヴァルディの『誓い』。
 一本柱に突き立った某は、並大抵のことでは決して折れることのない――『希望のヒカリ』。
 セシリアとはまた別種の『闇色』、それを武器とし操りながら、その想いは眩しいくらいに光輝いていて。
「まぶしい」
「ずるいよ」
「どうして、どうして……」
「なぜとまらない」
「どうして淀まない」
 怨嗟の声色が、リーヴァルディに集中する。セシリアを襲っていた個体も、それに引き寄せられるように――大鎌を振るう彼女へ集まっていく。
「引き付け、誠に感謝します……!」
 亡者どもに悟られないように、セシリアが小さく言葉を零す。
 もっとも、怨念に染まった亡霊どもは半ば知性のない獣のようなもの。
 仮にリーヴァルディの行動の真意を悟られたとしても、それを塗りつぶす衝動が抑えきれずに、同じような結果になっていただろう。
 セシリアに這い寄る鈍色の殺意も疎らになったところで――彼女に内包する闇が一気に強まっていく。
「やはり、思っていた通りですね……」
 彼女が練り上げる暗黒色に触れた亡者どもは、怯えこそするものの昇天には至らない。効果が無いわけではないが、薄い。
 だが、自身の能力を的確に把握していたセシリアに、焦燥の顔色は微塵も見えない。
 伸ばされた手を大剣で弾きながら、一定の距離を保つ。
 その『闇』が、彼らに到達するほどのモノへと至るまで――時間を稼ぐ。 
 それこそが彼女の目的。
 だからこそ、リーヴァルディの行動は非常にありがたいのだ。
「一片たりとも触れさせはしない!」
 深層たる闇が表面に重なり合う度に、暗黒色の波動が周囲に散る。
 それらが亡者の足取りを止め、彼女に近付かせない防護壁と化す。
 執念か偶然か、それを抜けて切迫する個体もいたが――。
「そうはさせん!」
 身の丈ほどもある巨大な剣を勢いよく振るえば、轟々たる衝撃と共に亡霊が吹き飛んでいく。
 実体を持たないが故に、手応えこそ薄いが――彼らは重さを持たない存在である。今回ばかりは、その膂力が最高の盾となって機能していた。
「世界を光に満たすまで――私は止まるわけにはいかない!」
 大剣を天に翳す。星々煌く夜空から、闇の帳が舞い降りた。
 それが昏き螺旋を描きながら、ひとつの柱となりて。
 彼女に打ち付けられた暗夜の漆黒が重なり合い、混ざり合う――。
 到達した――彼らを討ち滅ぼせるほどのモノへと。
 手始めにと言わんばかりに近場の亡霊へ大剣を振るえば、闇色の刃が空気を伝って『飛翔』。
 かまいたちが如き某が敵陣に着弾した瞬間、轟音と共に空間が捻じ曲がる。
 中心に黒点を描いた大渦が、亡霊の理ごと吸収し、消失させていく。
「それは夜」
「それは闇」
「でも、わたしたちのモノとは違う」
「なぜ――」
 口々に言葉を紡ぐ亡霊が、瞬く間に数を減らしていく。
 向けられた刃が夜を映し出し、それに呑まれるように姿が掻き消えていった。
「……道は、拓けたわ」
 セシリアの怒涛の反撃に、リーヴァルディは咄嗟に大鎌を一周させ――敵陣を遠ざける。
 案の定、踏み越えてくる亡霊の数が『減っていた』。
 好機。リーヴァルディが天高く、大鎌を突き出せば――。
 刃に映し出される三日月が重なりて。
「……限定解放」
 三日月が、紅に染まる。
 それは血の色。煉獄の色。
 だが、願うは煉獄の顕現ではない。

 これは、傷付いた魂に捧げる鎮魂の歌。

 我が命、その断片を糧とし――願わん。
 
 それは、精霊の唄。
 盲目たる彼らに正しき道を示す、レクイエム。
 亡霊どもの動きがぴたりと止まった。
 訪れしは静寂。
 数えきれないほどの怨念が蛍光を帯びて、天へ昇っていく。
 
 天を衝く、セシリアの闇夜。その暗夜と混じり合い――まるでそれは星空のようで。
 明けの明星が、仄かに瞬いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
今一度眠るが良い

敵へは顕理輝光で対処
常時身に纏う故、準備不要
攻撃へは『絶理』『刻真』で異なる時間に自身を起き影響を回避
攻撃分含め必要な魔力は『超克』で“外”より汲み上げ、全行動を『刻真』で無限加速し隙を作らず

天楼で捕獲
対象は召喚されたもの含む戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
『解放』を通じ全力で魔力を込め強度と自壊速度を最大化
既に終わったものならば、速やかに

出口は自身に設定
迷宮を直に破壊できそうもない以上目指すしかあるまい
辿り着く個体があれば『討滅』の死の原理を打撃で撃ち込み始末


ダビング・レコーズ
言動から推察するならば敵は死の間際に強い怨恨を抱いていたようです
或いは神とやらに精神操作を施術されているのか
いずれにせよ現状では対話の余地がある相手では無いようです
聴覚センサー遮断
戦闘開始

【SPD・全歓迎】

敵は集団とは言え、この後に控えているであろう戦闘を鑑みるならば弾薬の消耗は抑えるべきでしょうか
ウォーマシン形態に変形
近接戦闘を主体とした戦術を採ります
スヴェルの打突で突き飛ばし突入口を作り、ルナティクスで薙ぎ払いながら前進
敵群へ浸透し敢えて全周囲を完全包囲された状況に陥ります
そして友軍への退避勧告の後にプラズマバーストを発動、殲滅します



「今一度眠るが良い」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)が纏う淡青の蛍火が気まぐれに怨霊に触れれば、たちどころに『消滅』する。
 彼は、只そこに立っているだけ。悠然と立ち尽くす青の光に、不躾な諸手が伸ばされる。
 だが、アルトリウスが宿すは『絶理』、そして『刻真』の原理。
 そこに『いて、いない』。シュレディンガー方程式が如きものを抱えた彼に、一介の怨霊ごときが触れられるわけもない。
 手が彼の身体を突き抜けるが、手応えはない。蜃気楼のように揺らめいて掻き消えたアルトリウスの全身。その跡には淡青の燐光を残すのみで。
 群がった亡霊どもが光を浴びて弾け飛ぶように掻き消えていく。だが、まだまだ彼らの数は少なくない。
 気配を悟ってか、怨霊が一斉にあらぬ方向を向けば、アルトリウスがそこにいて。
「青のひかり」
「世界の外」
「捧げものとして、これほどのモノは」
「あるだろうか」
「否、ない」
 埒外たる権能に魅入られてか、亡霊どもの動きも言葉と共に早まっていく。
 もつれた足は、獣のように鋭く。ぼやけた双眸が、深淵を宿す黒点となりて。
「こうなってしまっては、獣と大差ないな」
 アルトリウスが手を払えば、蒼白の光線が景色を薙ぐ。
 音もなく、光を残すのみで――それが過った先には消滅した怨霊の残滓しか残らない。
 だが、それをも踏み越えていく新手の亡者。
 それほどまでに、彼らの想いは強いのか。
 それほどまでに、根付いた怨念は強いのか。
 アルトリウスの双眸が、僅かに細められた。
 だが、その時である――。
「システム、戦闘モード[War Machine]に移行します」
 生々しい怨嗟の声をかき消すような、無機質な声色が響き渡った。
 半瞬遅れて、敵陣を駆け抜ける白銀の巨体。
 霞を残して踏みつぶされる数多の怨霊たち。
 火花を散らしながら駆け抜けた銀鋼を翻し、振り向くはダビング・レコーズ(RS01・f12341)。
 左腕に装着された大盾は、正に青天の霹靂。
「突破口を作ります」
 最奥が見えないほどの敵群へ顔を向けたレコーズが、身体を前に大きく踏み出し――駆ける。
 かの巨体を止めようと、恨みがましい呪いの言葉が投げかけられるも――。
「聴覚センサー遮断」
 そもそも聞かなければ良い――と、己が聴覚の一切を遮断する。
 人間であれば聴覚を失うのはリスクが伴うが、ウォーマシンであるレコーズにとっては別種のセンサーを使えばいいだけのこと。
 戦闘には何ら支障をきたさない。
「PB8ルナティクス、スタンバイ」
 自身の大盾、『LLS8スヴェル』を前面に構えながら瘴気の中心へと奔走していく。同時に、死角である左右や背後を補うかのように、払われるは荷電粒子の月光。
 そもそも、怨念や恨みなどは、特に今回の場合はヒトに対して有効なのであって、淡々と目的を遂行する『マシン』であるレコーズに通じるわけもない。
 勿論、幾多にも重なった怨念が直撃しようものなら、『バグ』となって彼を浸蝕するかもしれないが――そもそもそういった油断をしないので、そうなることはないだろう。
「敵陣の中心地点まで、あと121m」
 月色の厚刃が薄紙のように軽々しく振るわれていく。その度に、その軽快さからは考えられないほどの膂力が烈風を呼び、空間を歪ませる。
 その一振りで、数多の霊が払われていく。分厚い装甲すら容易に裁断する強靭な刃だ。おまけに荷電粒子によるものなので――直撃した個体は原子レベルで分解されるだろう。現に真っ二つに切り裂かれた亡霊どもは跡形もなく消え去っている。
「敵陣の中心地点まで、あと50m」
 『スヴェル』の大盾が重なり合う敵を押し退け、吹き飛ばす。自重と合わさり質量兵器と化した某の白銀は、ほとんどの無質量である怨霊どもがどれだけ重なったところで『暖簾に腕押し』だ。
「目標地点へ到達」
 レコーズがそう宣言すると、全身に纏うは緑を交えた荷電粒子の燐光。
 赤を逸して白となり、白すら逸して緑すら帯びた某の光量が、瞬く間に強まっていく――。
「友軍へ通達、退避を推奨します」
 レコーズの言葉に呼応するように、別方角で亡霊と対峙していたアルトリウスが音もなく姿を眩ます。
 『絶理』の原理を用いた『異次元転移』だ。
「EMフィールド反転、リアクター出力強制開放」
 つんざくような駆動音が、彼の全身に響き渡り――。
「殲滅します」
 刹那、訪れるは緑白の爆光。
 その光は只の閃光などではない。
 荷電粒子爆発、すなわち『プラズマバースト』だ。
 大概の物質は炭すら残さず分解され消滅する崩滅の光。
 周囲の地面が抉り取られ、クレーターが出来上がる。
 その中心地点に立つは、全身から白煙を揺蕩わせるレコーズの巨体。
 周囲一帯の亡霊がまるごと『消失』した。
「そのヒカリは」
「しらない」
「わたしたちが、いなくなるほどの」
「光であって、ヒカリではない」
「わからない」
 余波で薙ぎ倒された亡霊たちが、起き上がり様に困惑の言葉を零す。
 超未来の技術を結集した某の兵器は、怨霊たちの理解を遥かに超えたものであった。
 そして、不意に霊どもが天を仰げば、もうひとつの『超然』とした存在――アルトリウスが宙に立っていて。
「惑え」
 アルトリウスの言霊が紡がれれば、青の光が空気を揺蕩う。
 不意に、亡霊たちが周囲を見回せば――。

 純白の迷宮。

「う、ああ……」
「からだが、こわれ――」
「たすけ、たす、け……」
 途端に、全身を掻きむしりながら姿を明滅させる怨霊たち。
 鈍色の全身が、白く染まっていき――やがて景色と同化し、消えていく。
 アルトリウスは、それを無言で只々見つめている。
 壁に触れようとした個体も、吸い込まれるように姿を眩ます。
 壁を浸蝕しようとした個体も、同じように。
 ならば、と、出口であるアルトリウスを目指す亡者の群れ。
 だが、その世界に揺蕩う『自壊の論理』、その淡青が亡霊たちを瞬く間に消滅させていく。
「嘗ての仲間すら踏みにじるか」
 折り重なるようにして、アルトリウスへ手を伸ばす亡者ども。そのおぞましい執念に、彼は僅かだけ顔を顰めた。
「これ以上の穢れは目に余る」
 目と鼻の先まで迫った亡者の手を、青の燐光を纏った片手で払った。
 亡者に乗り移った光が一瞬で全身に伝播し、それが『崩壊』を呼ぶ。
 その原理は単一個体に収まらない。折り重なった下へ、下へ――青が広がり染まる。
「疾く眠れ」
 その淡光は、亡霊たちを消滅させていく『討滅』をはらみながら――その原理を含んでいるとは思えないほどに、穏やかであった。
 
 唄が聞こえる。
 嗚呼、これは子守歌。
 わたしたちを救う、美しい唄。
 グズグズに崩れ落ちた腕を、半ば白骨化した腕を、天の果てに浮かぶアルトリウスへと伸ばされていく。
 それはまるで、新たな神を、新たな救済を求めるかのような渇望をはらんでいて。
「全能の救済などありはしない」
 アルトリウスは無慈悲にそう告げるも、どこかその言葉は棘が抜けていて。
「今は只、静寂に果てるといい――」
 その先へ、求めていたものがもしかしたらあるかもしれない。
 言外に、そういった意味を含ませながら――『青』を強めた。

 純白のセカイが、揺蕩う腐臭を消し飛ばしていく――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鎧坂・灯理
鷲生殿(f05845)と

ごちゃごちゃと喧しい
そうやって他者を引きずり落とす事ばかり考えているから、こうして都合良く使われるのだ馬鹿者共が
「ゆるさない」だと?何様のつもりだ
私が生きることに私以外の許しがいるものか!

やりますよ、鷲生殿
掃除の時間です

起動――【火ノ鳥】
悪霊に攻撃可能な思念波を念動力として周囲に放つ
波状攻撃で何度もだ
『炎駒』にも纏わせ、近いものは抜刀して切断
遠いものは弾丸に込めて撃ち殺す

生者の足を引くというなら、当然その手を踏み躙られる覚悟もあるのだろう
来いよ腑抜け共。私たちが相手だ

吸血鬼よりも面倒な物が出るかも知れませんね
まあ、やることは変わらない
――そうでしょう?


鷲生・嵯泉
鎧坂(f14037)同道
生憎とお前達に赦して貰わねばならん覚えは無い
其の境遇、憐れではあるが……既に只の害意の塊でしかない

ああ、しがみ付く妄執ごと、総て断ち切ってくれよう

剣の柄に符を巻き破魔の力を通す
呪い其の物ならば効果は有ろう
――終葬烈実、加減はせんぞ
戦闘知識と第六感に因る先読みにて攻撃を躱し
怪力乗せたカウンターにて一気に叩き斬る
……しかしお前達も犠牲者には違いない
せめての手向けだ、一太刀で終わらせてやろう

他者を贄に逃れようとした処で叶う筈があるまい
来い、本来在るべき場所へ送ってやろう

「かみにささげる」、か
後ろに潜むものを指しているならば
又鬱陶しい代物が現れるやもしれんな
……ああ、其の通りだ



「わたしたちが、いなくなる」
「それはいやだ」
「いやだ」
「いやだ」
「いや――」
「ごちゃごちゃと喧しい」
 亡霊どもの嘆きが、捩じ切られた頭蓋を残して断ち消える。
 地面に転がり落ちた首無しのそれらが塵芥となって空気と混じり、消滅していく。
 纏わりつかんとする屍手を払うは鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)、そのひと。
「そうやって他者を引きずり落とす事ばかり考えているから、こうして都合良く使われるのだ馬鹿者共が」
 彼女が手を翳せば、不自然に硬直する亡霊たち。霞みがかった身体を、その根源を掴むは彼女の『念動力』。不退転の『意思』。
「”ゆるさない”だと? 何様のつもりだ」
 その声色が強まる。それに呼応するように、亡霊どもの身体が強張り、軋んでいく――。
「私が生きることに私以外の許しがいるものか!」
 灯理が手を握りこめば、複数の亡者が潰れ落ちた。
 這いずり回る諸手も、宙から伸ばされる諸手も、もつれさせる足取りで迫る諸手も、その尽くが――不死鳥の羽ばたきが如き『念動』の衝撃によって吹き飛ばされていく。
 意思の怪物たる彼女は、己の道をひたすらなまでに往く――亡者たる彼らとは対照的な存在。
 彼女は、意思の有り様を何よりも重視する。そこに発生する善悪などには微塵も興味がない。
 つまるところ、彼女の眼前に溢れかえる亡霊の嘆きには欠片ほどの同情も湧かないのだ。
 むしろ、いるかいないかも分からない神様を妄信する彼らに対して、怒っているのかもしれない。

 不意に、黒を宿す刀身が過ったかと思えば――怨霊の首が跳ね飛ぶ。
「生憎とお前達に赦して貰わねばならん覚えは無い」
 某の柄には無数の符が折り重なり、貼られている。
 それを握る鷲生・嵯泉(烈志・f05845)が灯理と背中合わせに立ち、自分らを包囲する亡者どもと対峙する。
「其の境遇、憐れではあるが……既に只の害意の塊でしかない」
 積み上げられた業は、他者を傷つける凶器にしかならない。
 それが生者によってもたらされたものであるならば矯正の余地はあるが、死者が振りかざしてくるのだから性質が悪い。
 故に斬る。故に滅ぼす。
 『烈志』を宿す彼の刀は、微塵も震えることはないだろう。
 『意思の剣』たる一閃は、数多の怪物、その尽くを屠ってきた。
 亡霊が放つ怨嗟の声ごときで刃こぼれなど起こすものか。
「やりますよ、鷲生殿。掃除の時間です」
 灯理が声かければ、鷲生も肩越しに一瞥して頷く。
「ああ、しがみ付く妄執ごと、総て断ち切ってくれよう」
 鷲生は一歩前に踏み出して、大きく腰を落とし、得物を構え――黒一色の切っ先を敵陣へと向ける。
 灯理も、彼の背中を補うかのように反対側に目をやる。
 鷲生と違って、彼女は目立った構えなどは見せない。だが、彼女の周囲に纏う『気配』は、念動の権能を交えて並々ならぬものをはらんでいて。
 そして何より、その片手に握られた――『炎駒』、その長緋傘が閉じられたまま闇夜に朱を滲ませていた。
 鷲生が大地を大きく蹴り出し、姿が掻き消える。
 それとほぼ同じタイミングで、灯理が宙に浮かんで飛翔する。
 
 亡者どもの、最期の足掻きが――そして、二人による――殲滅が始まった。

「起動――【火ノ鳥】」
 轟々とした焔が、灯理を中心に満ちる。
 一見すると業火のそれだが、炎ではない。
 灯理の念動力、感情、意思、それが練り上げられたものだ。
「汚泥のようだな」
 それは眼前に雪崩れ込む怨念に対してかけられた言葉。
 ならば、と、灯理は片手を翳した。
 世界が、空間が、大きく躍動する――。
「燃やし尽くす」
 景色が、朱色の波動によって波打つ。放射された波動は勢いよく敵陣に叩きつけられた。
「アガ、ガ……」
「あつい、あつ……」
「もえる、やける、とける……」
 怨霊が瞬く間に溶け落ち、吹き飛ばされ、煮凝った鈍色の塊となって地面に落ちる。
 その強すぎる意思により、己が形を維持できなくなったのだ。確固たる信念や意識、心の強さは――ときに恨みすら融解するほどの『熱量』をはらむ。
「そら、燃えろ、融けろ」
 その弱すぎる心こそが、悪意に冒される原因となったのだろう。
 ならば、後悔する暇もなく一心に融かされよ。それこそが、貴様らの行く末として相応しいものだ。
 灯理の片手から、次々に猛火たる波動が放たれ続ける。扇状に広がっていくそれは、絶え間なく敵を押し返しては焼き焦がし、熱から逃れた個体をも弾き飛ばしていく。
 その波を抜けるようにして、這いずるように近付いてくる亡者もいたが――。
「こういうこともできる」
 傘から引き抜かれた刀によって一閃。炎熱を纏った刃が亡霊を一瞬の間に裁断し、地面のシミすら残さない。
 身を翻して刃を納刀し、傘の先端を背後に向ければ、亡者の口腔に突き刺さる。
「隙あり、とでも思ったか? 愚鈍め」
 かちり、乾いた音が響き渡った。
 刹那に放たれる、猛火を帯びた弾丸。
 炎弾が亡者の霞みがかった頭蓋を消し飛ばし、伝播した焔が一瞬で首無しの全身を焼き焦がす。
「見世物ではないぞ」
 遠方で揺らめく亡霊たちにも、立て続けに傘を突き出して弾丸を撃ち放っていく。
 ぶっきらぼうに放たれた某の銃撃は、その動きからは想像もつかないほどに的確。一撃も外すことなく亡霊たちの額を撃ち抜いていった。
「逃がさんよ」
 絶え間なく宙を飛翔する弾丸。まるで生物のように軌道を曲げ、各々へ着弾していく。
 たたらを踏む亡霊の群、そして、その奥で――剣閃が瞬いた。
 半瞬遅れて、切り刻まれた亡霊の残滓が宙を舞う。
 黒刀がひとつ振るわれるたびに、数体の敵が纏めて吹き飛んでいく。
「――終葬烈実、加減はせんぞ」
 鷲生による――剣刃無双――その極致が、幕を開ける。
 黒影を残すのみで敵陣の中心を駆け抜けていく『黒の一刀』。
 その剣筋は一切の抵抗なく亡霊たちに刻まれていき、例外なく斬り捨てられていく。
 彼を縛る鎖など、どこにもない。
 此処にいる亡者ごときでは、彼の動きを止めることは一瞬たりとも出来ないだろう。
「……しかしお前達も犠牲者には違いない」
 袈裟に斬られて地に伏せる亡者を一瞥しながら、群がる屍手を斬り払う。
 刃に躊躇の色は無いが、声色は僅かに穏やかなものになって。
「せめての手向けだ、一太刀で終わらせてやろう」
 突き出された刃は例外なく心の臓を捉える。
 薙いだ刃は例外なく首筋を払う。
 振り下ろした刃は、例外なく身体を引き裂き、滅ぼす。
 あらゆる総ての一刀に、残留した怨念が存在しない。
 鷲生が駆け抜けた背後には、何者も残らない。
 その所作ひとつひとつが、荒々しさと流麗さを兼ね備えている。
 怒涛めいた彼の立ち回りは、まさに『鬼神』と呼ぶに相応しいだろう。
「わたしたちの、ねがいが――」
 亡霊の一体が、思わずそんな言葉を零す。
 鷲生はそれに言葉で返すことはない。代わりに振るわれる、漆黒の一刀。
 唯一無二の剣閃が、亡霊の言葉を喪わせて――塵となり揺らめいていく。
「他者を贄に逃れようとした処で叶う筈があるまい」
 想いとは、願いとは、己の手で切り拓いていくものだ。
 この一刀がそうであったように――自身の刃を磨くことで、立ち塞がる壁を斬ることができる。夢とは、希望とは、往々にしてその先にあるものだ。
 その壁を、他者の力に縋って――ましてや、贄を用いて突破しようなどと――。

 笑止千万。

 敵陣の背後から、大周りするように群を抉り取り――灯理の許へと再び合流する。
「来い、本来在るべき場所へ送ってやろう」
 ゆっくりと、腰を深く落として――鞘に刀を滑り込ませていく。
 鋭く細められた隻眼を見た灯理は、悟ったかのように宙を大きく飛翔し、天高く昇っていく。

 『夜の帳』が舞い降りる。
 ならば、私も――。

 その連携に、言葉などいらない。
 阿吽の呼吸。
 洗練された連携は、ときに奇跡をも呼ぶ。
 無論、二人の攻撃に――奇跡も偶然もありはしない。
 あるのは、唯一たる『必然』のみ。

「生者の足を引くというなら、当然その手を踏み躙られる覚悟もあるのだろう」
 極限まで練り上げられた『意思』の塊が、彼女が翳した掌に作り上げられていく。
 常人では見ることすら能わない、不退転の宝石。
 仮に念動力の類に明るく、それを視認できたとしても――ひたすらなまでに広がる純白しか見えないだろう。
 最果てに至った権能、それこそが、その結集体の本質であるが故に。
 鋼よりもダイヤモンドよりも硬い、確固たる意思。それが一条の魔弾となって――天から振り下ろされる。
「来いよ腑抜け共。私たちが相手だ」
 これに耐えられるのであればだが。
 鷲生も、灯理の攻撃に合わせるように――全神経を帯刀した得物に集中させる。
 残る亡者たちが尋常ならざる気配を察してか、その尽くが鷲生めがけて狂奔する。
 それに合わせるように、柄を握る手が僅かに霞み、隻眼が見開かれれば――。

 その一閃が、暗夜を宿す。

 空気に触れた漆黒の剛刃が、遅延する世界の中で――降り注ぐ白夜に触れた。
 螺旋を描きながら、両者の一撃が融合し――。

 月下美刃。
 黒白の満月が、総てを薙いだ。


「――『かみにささげる』、か。後ろに潜むものを指しているならば、又鬱陶しい代物が現れるやもしれんな」
 鯉口が鳴る。帯刀した鷲生が、降り立った灯理に振り返った。
「吸血鬼よりも面倒な物が出るかも知れませんね」
 灯理が彼の言葉に頷き、天を仰ぐ。
 雲ひとつなかった星空が、陰りを見せ始めている。
「まあ、やることは変わらない」
 口角が吊り上がり、不敵な笑みを見せる。
 これまで通り何も変わらない。
「――そうでしょう?」
 それを聞いた鷲生が、僅かに瞑目した後に口を開いた。

「……ああ、其の通りだ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『亜神』

POW   :    ライフレス・スクィーズ
【触れたものから生命力を吸い取る触手】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    ソウルレス・バーン
【肩口の無数の顔から大爆発】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    フェイスレス・マイン
自身からレベルm半径内の無機物を【触れると大爆発を起こすデッサン人形】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:まつもとけーた

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠白神・杏華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「三半規管を黒曜の棺桶につめた死相の奥歯が噛み合わさり世界が歪む夜空は美しい剣が槍が弓が引き絞る昼間が夜を呼ぶ、よばない」
 名状しがたい、とはまさにこの事だろう。
 見るもおぞましい『無数の顔』を宿す蝸牛のような某が、陰った空を引き裂き、現れる。
「お前たちの力が欲しい欲しくない欲しいケーキは美味しい美味しくない肉を食み食みはみはらみ」
 そのモノの言葉に、深い意味などないだろう。
 あるのは、唯一の願い。欲望。
「いえーがー、ほろぼす」
 神として崇められるためには、異能たる猟兵を滅ぼさなくては。
 そうすれば、信仰が満ちる。
 そうすれば、欲深い人の果てとは呼ばれず、はじめて本物の神として認めてもらえる。
 きっと、そのはずなんだ。
 
 もう、『常人』では殺し足りないのだ。
 喰い足りないのだ。
 滅ぼし足りないのだ――。

 だからこそ、猟兵たるお前たちを狙ったのだ。

「私は、神だ」
 無数の口々から、一斉に言葉が放たれた。
 その声色は、男であり女であり少年であり少女であり、翁であり老婆でもあった。
 濁りきった力の奔流が、周囲に満ち始める――。
 
 強欲たる存在は、強欲たる願いをはらんで、猟兵と対峙する――。
ダビング・レコーズ
神ですか
当機は貴方をオブリビオンと認識しています
よって撃滅します

【アドリブ連携歓迎】

近接攻撃による直接打を与えます
照射モードのセントルイスで触手を薙ぎ払い接近時のリスクを軽減
ある程度まで触手本数を減少させ次第ソリッドステートに変形し急速接近
その間の触手攻撃は軌道を予測し空中機動と運動性(ダンス)で隙間を縫うようにして回避
困難ならばEMフィールドで防御
接触直前でウォーマシンに再度変形
接近するまでに得られた加速を相乗させたスヴェルの打突で体勢を崩します
更にフルブーストで押し込み行動を抑制
本体部にルナティクスを突き刺し月光奔流破を発動
内部に留保する澱みごと目標を破壊し尽します



 崇めよ。畏れよ。
 わたしが、わたしこそが――人々を導く存在。
 境界線も曖昧な、真っ黒な口から言霊が漏れ出していく。
 只ひたすらなまでに、己を崇拝せよ――と。
「神ですか」
 ダビング・レコーズ(RS01・f12341)が、天を見上げていた。
 そこに浮かぶ歪極の蝸牛を、己が視界――その照準の中心に捉えていて。
「当機は貴方をオブリビオンと認識しています」
 その姿に類似する神は、レコーズの『記録』には載っていない。
 近似する伝承の類も存在しない。
 噂話、都市伝説――ありとあらゆるデータベースに、かの蝸牛は存在しない。
 それ故に、投げかけるは否定の言葉。
「よって撃滅します」
 白銀の右腕部に装備された大型の銃火器、”PSG6セントルイス”の黒々としたマズルを天上へ突きつける。
 天から静かに舞い降りる、自称神様こと『亜神』。澱みの双眸が、一斉にレコーズへ向けられたかと思えば――幾多にも枝分かれした触腕が、さざめき蠢いた。
「不信なる者を裁く裁き鯖か劣等変化穢土連鎖」
 ノイズ混じりの喚き声が口々から発せられ、蠢いた触腕が幾本にも千切れ――無数の髪が如く分裂する。
 いのちを奪い去る黒髪、その触手が、空間を覆いつくすようにレコーズへと殺到。
 天を覆う『死』の香り。その芳醇さに、常人であれば膝を折って許しを乞うだろう。だが――。
「セントルイス、スタンバイ」
 彼、ダビング・レコーズは『猟兵』である。
 臆することなく、そのトリガーに指を置き――。
「発射」
 巨大なマズルから閃光が迸る。半瞬遅れて解き放たれるは荷電粒子の拡散光。
 光が闇を払うように――己が眼前まで雪崩れこんできた澱み色の触手たちが焼け焦げ、吹き飛び、千切れ落ちていく。
「熱せせせせせせせせせ」
 黒ずんだ凝りとなって力なく砕けていく触手を圧し潰すように、新たに生え伸びた触手がばら撒かれていく。
 耳障りな言語もどきのようなものを発した亜神が、虚空に染まった双眸を明滅させながら触手の再生を促す。全身が波打ち、震えるたびに――新生した触手が生え伸び、粘液のようなものを宙に舞う。
 一本一本は大した耐久力ではないが、いかんせん数が多い。そして規模がやたらと大きい。
 技術などによる洗練された其れとは真逆の性質を持つ、理不尽で乱暴な攻撃。
 拡散する荷電粒子のおかげで、未だにレコーズに切迫する触手は存在しないが――いかんせんキリがない。
 だが、あれは再生に特化した能力ではないので、おそらく再生しているようにみせかけた『次弾発射』だ。
 となると必ず弾切れ、すなわち勢いが衰える場面があるはず――。レコーズは己が演算領域で『推測』し、『結論』付ける。
 そこに、恐れも心配もない。只々、オーダーに従って目標達成のために動くのみ。
 淡々とセントルイスの剛砲を撃ち続け、荷電粒子の照射で天を焦がしていく。
 そして、レコーズの推測通りといったところか。赤に燃え盛る景色の奥で、滲む漆黒に僅かな『鈍り』が。
「ソリッドステート、スタンバイ」
 セントルイスの赤熱したマズルを引っ込め、勢いよく空へ跳躍したレコーズ。その白銀の巨体が、火花と共に『変形』していく。足が、手が、頭が――実行されたプログラムに従って、格納と変形を繰り返し――。
「急速接近を開始します」
 白き剛翼が、空中に一条の光を残して飛翔。
 流星が如き、異様な速度。天高くから見下ろす亜神の中枢めがけて、急速に接近していく。
「図が高い高い高い低い低くない我は神神神神」
 支離滅裂な『神の言葉』に、僅かな焦燥がみられる。
 先刻のものとは勢いも凶暴性も増した『触手』のそれらが、濁りの全身から撃ち出されていく。
 もはや隙間の『す』の字すらみられない、黒の奔流が白銀を纏う戦闘機へと迫る――。
「回避行動を開始します」
 絶望的な光景を前にしても、レコーズの言葉に揺らぎはない。
 触手が過ったことによる僅かな掠り、それによる外部装甲の小さな歪曲および擦り傷――それらが少しずつレコーズに重なっていくが――その突撃は陰りをみせなかった。
 その翼が、その全身が、廻る廻る。彼の身体をすり抜けるように突き抜けていく触手たち。
 ソリッドステートの白銀は、淀んだ触手たちに覆いつくされながらも――その中心地点で回避運動を続けていった。
 一撃も当たらない。一撃も直撃しない。
 瞬く間に至近距離まで切迫された亜神が、思わず小首を傾げる。
「理解不能理解不能理解不能理解可能不能可能不能」
 接触直前にウォーマシン形態へと変形したレコーズ。そんな彼を眼前に、澱みの神は状況を飲み込みきれていないようで。
「実行:打突」
 突き出された銀の大盾。ソリッドステートの突進を乗せた某の一撃は、夜天を歪ませるほどの衝撃をもたらす。
 ぐしゃり。
 生々しい、果実が潰れるような音と共に――亜神の巨体が吹き飛び、空中を舞った。
「連続実行:フルブースト」
 プラズマの爆光がレコーズの巨体を後押しし、吹き飛んだ亜神へ追いすがる。
 そのまま押しこむように大盾を前面へ――。
 神と信じて疑わない、ヒトの果てが――全身を『く』の字に曲げながら、成すすべもなく全身を押し上げられていく。
「ルナティクス・バーストドライブ」
 『月の光』が、濁りの巨躯に差し込まれる。
 その光は、深淵の最奥に達しても尚止まらない。
 おどろおどろしい絶叫が、無数の貌から発せられる。

 一切の光を通さない『最果て』、その最奥から――『突き入れられた』光が躍動した。

「縮退荷電粒子解放」

 音すら置き去りにする、純白の世界。それが、そこに在った。
 あらゆる『破滅』を呼ぶ、超エネルギーの中心には――苦悶する鈍色の塊が蠢いている。
 その一撃を以てしても葬り去れないほどに、某の『闇』が抱えているものは大きい。
 だが、その『存在核』を摩耗させるには十二分すぎる威力であって。

 削れ落ちた『神の身体』が地面に落ち、黒染みを作っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セシリア・サヴェージ
その姿に至るまでにどれほどの命を犠牲にしてきたのか。
神を騙る者よ、報いを受ける時だ。

UC【闇の解放】を発動。私の全ての力を以って屠ろう。

私たちの力が欲しいと言っていたか。触手で生命力を奪う行為もその一環なのだろうか。
……いいだろう。その攻撃敢えて受けよう。
覚悟無き者に暗黒に染まった生命力が流れ込んだらどうなるか……その身を以って味わえ!
【呪詛・精神攻撃・恐怖を与える】

最後は【力溜め】【怪力】による全霊を込めた一撃を叩き込む。
お前は神などではない。ただの醜い化け物だ。


イリーツァ・ウーツェ
言いたい事は終わりか?
では死ね

UCを発動し、邪魔な触手をむしる
太い物を掴んで本体を引き寄せ、“竜宮”で殴る
大きな目に似た物が見える
其の殻の中、何かありそうだな
リボルバーを突き入れ、連射して破壊する
上はともかく下は貝に似ている
喰えるかも知れん
中身を引きずり出してみるか

貴様が何を考えようが、言おうが
私には如何でも良い事
死ね。只当たり前に。



 満ち満ちる月の灯が、暗雲に閉ざされる。
 其れは神を称するモノの逆上。
 其れは神の骨肉にされた人々の無念。
 そして――。
「その姿に至るまでにどれほどの命を犠牲にしてきたのか」
 紫苑と極黒を織り交ぜた『闇』がはらむ――。
「神を騙る者よ、報いを受ける時だ」
 ――『怒り』であった。
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)の眼が、赤光の憤怒に染まる。
 秩序を遵守する騎士道精神――それを持つ彼女にとって、眼前の『かみさま』とやらは信仰すべき対象ではない。
 我欲を振り回し、罪なき人を弄ぶ混沌の主に鉄槌を。
 セシリアは天を仰ぎ、漆黒の刃先を『神』へと向ける。
 それは亜神の『不信』を抱かせるには十分なものだ。
「伏せよふせよ某の怒り赤赤収めよ矛を剣を盾を――」
 黒蘭に蠢く亜神の全身は、さながら混ざり合ったスープのようで。
 黒煙の幕が宙を穢して大地へと降りていく。
 某は一切の破壊を宿さない、単純なる『害意』の顕現。
 空気に揺蕩う煙は、這いずり回る黒蟲のようで。
「言いたい事は終わりか?」
 不意に鳴り渡る声。
 刹那、周囲一帯の煙が、ある一点を中心に引き裂かれて霧散する。
 神のこころを、言葉を、その尽くを引きちぎるような――『竜』の声色。
 イリーツァ・ウーツェ(黒鎧竜・f14324)が、そこにいた。
「では死ね」
 彼の両手に握られた金属杖――『竜宮』が月明かりも薄らいだ深淵の中枢で煌めいた。
 過ぎり振り回される其れは、周囲の穢れを千切り落として明晰な世界を広げていく。
 決して歪むことの無いはずの戦杖が、ひとつ振るわれる度に『曲がって』見える。
 それこそが、黒鎧竜がはらむ膂力――それによる軽度の空間歪曲だ。
 二人の臨戦態勢を悟ってか、汚濁に塗れた亜神の全身から大小様々な触手が吐き出されていく。
 まるで拡散弾のそれを彷彿とさせる波状攻撃。
 明らかに亜神の体積に見合わない大質量が二人を飲み込まんと夜天に雪崩る。
「暗黒よ……この命を捧げよう」
 暗黒騎士は、己が深淵に祈りを捧げる。
 その瞬間に、セシリアの胸部、その奥に揺らめく焔――『ひとの魂』が大きくたなびいた。
 風に煽られた炎のように、魂魄が黒に燃え盛る。莫大な熱量は彼女の内に――それが力となり、糧となる。
「私に全てを護る力を!」
 宙の最奥、永劫たる漆黒。
 それを全身に纏った彼女は――凡庸な『眼』では見ることすら能わない。
 一切の光を赦さない暗黒の化身。
 轟々と燃ゆる黒炎が人型を形どっている。
 最果てに至った彼女の暗黒は、陽光も夜闇も唯一の漆黒へと染め上げていくことだろう。
「クロへといたるモノ」
 神から発せられる、幼子の声色。
 その見た目からは想像もつかない、不気味な程に美しい音色であった。
 それと相反するように、触手の濁流が穢れを宿しながらセシリアに殺到していく。
「……いいだろう」
 その攻撃、敢えて受けよう。
 彼女の闇に突き刺さる、幾本もの触手たち。
 どくり、どくり、と、生々しく胎動する腐肉の触腕。
 それらが彼女の暗黒を吸い上げていく――。
「――黒、闇、無、黒黒黒く、え、あ」
 ぶるりと、触手が震え上がった。
 神がうわ言のような呟きを残しながら、突き刺していた触手を千切り取り――空中に揺蕩う。
 時折見せる苦悶の蠢き。ひとつ蠢くごとに、神の身体に浸透した『黒』の奔流が『上書き』をもたらす。

 覚悟無き者に暗黒に染まった生命力が流れ込んだらどうなるか。

「……その身を以って味わえ!」
 暗黒に染まった全身に滲ませる鮮血。それをはらみながらも尚、セシリアは膝を折らない。
 無数の刺傷が黒に塗り替えられ、塞がっていく――。
「滅、滅亡正解為るべし迅速に疾く疾く疾く――」
 身体を幾重にも歪ませながら、神が放つは触手――某の再演。
 先刻のものよりも遥かに鋭く、物量が多い。
 流石にこれを食らったらタダではすまないか。
 セシリアはそう悟ってか、自身が持つ特大剣を前面に構え、防御の体勢に移らんとする――。
 ところが、触手らが目と鼻の先まで迫った――その瞬間であった。
「邪魔な触手だな」
 我先にと飛び出した大きな触手が、横から伸ばされた『竜』の片手によって、無造作に掴まれる。
 半瞬遅れて、セシリアの前に飛び出すようにして現れるはイリーツァであった。
「高みの見物とは随分と舐められたものだ」
 ならば、堕ちろ。
 天を仰ぐ黒鎧竜の双眸が、鋭く尖る。
 刹那、触手を掴んでいた片手を後ろへ――『引っ張る』。
 繋がれた先には当然、宙に浮かぶ亜神がいる訳で。物理法則に従うように、無常に引っ張られて高度を下げていく。
「神を引き摺り降ろす。不信不信不信不信不信」
 神の言霊に従うように、周囲の触手が一斉にイリーツァへ殺到する。
 だが、聞こえるは繊維が引きちぎれる音。舞い飛ぶは腐臭の汚泥。
 竜の片腕が振るわれる度に、触手たちが千切られていく。
 その一振りは、人の身を形成しながら『竜』の膂力を宿すものだ。
 時に『竜宮』を薙ぎ、一帯の触手たちを鬱陶しげに払っていく。まるで竜尾が如き剛撃に、物量猛々しい魑魅魍魎が無惨に散っていく。
 神であろうが、超えた存在であろうが、破壊できるものであれば関係はない。
 淡々と、対象を殲滅するのみ。
「ようやくか」
 イリーツァの眼前に落ちる巨大な蝸牛。
 落下した瞬間に大地が揺れ動く。亀裂が迸るほどに、その質量は重厚なようだ。
 一切の躊躇なく振るわれるは金属杖の一撃。
 触手を掴んでいた片手を即座に両手に持ち替え、己が自重を混じえた脳天からの攻撃だ。
 一瞬の間と共に――亜神が地面と接吻を果たす。
 ひしゃげた顔は幾許か。直撃した箇所は原型すら留めていない。
 神が言葉を発する前に――無慈悲に突きつけられるはリボルバーのマズル。
 間髪入れずに引き金が引かれ、廻るシリンダー。
 マズルが蝸牛の中心地点――その眼に半ばまで突き刺さってる。
 弾丸が何処へ向かうのか、想像にかたくないだろう。
 くぐもった悲鳴を押さえつけるように、イリーツァが体液滴る銃傷に片手を突き入れた。
「貴様が何を考えようが、言おうが、私には如何でも良い事」
 現に、イリーツァは『食えるかもしれない』という思考にすら至っている。
 この世は弱肉強食。眼前の『亜神』とて、竜からすれば弱者に過ぎないのだ。
 そうこうしている内に、その『中身』が、引きずり出されていく――。
 ヘドロのような腐肉が飛び出してきた。
 見るに堪えない汚泥の某に、イリーツァは僅かに目を細めた。
「死ね。只当たり前に」
 食えぬのであれば、滅ぼすまで。
 イリーツァが腕を引き抜き、それを握りこみ――拳に。それが勢いよく振りかぶられ、大きく振り抜かれた。
 竜の殴打が汚濁に染まった某の腹部にめり込む。竜たる者の殴打に耐えかねてか――その巨体が浮き、宙へ吹き飛んでいく。
 そして、空中に晒された無防備な神を捉えるは――暗黒に染まった『騎士』の双眸。
「お前は神などではない」
 それは、セシリアが言い放った言葉。
 イリーツァの傍を駆け抜け、天へと飛び立つ暗黒の化身。
 暗き焔を轟々と、それを己が得物へと集め――翼のように。
「ただの醜い化け物だ」
 大上段から振り抜かれた、闇色の刃。
 靄に塗れた空が引き裂かれる。
 暗き夜を宿す剣閃は、混沌に塗れた穢れすらも――切り裂く。 
 神に刻まれた裂傷には、夜を照らす星空が瞬いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鷲生・嵯泉
鎧坂(f14037)同道
意味不明な事をほざくモノは少なく無いが……
全く、此れは先の輩とは別の意味で鬱陶しい
我々には神なぞ不要……だろう?

一々相手にするのも面倒だ
――来い、火烏
動きが止まらずとも構わん
其の羽を以って触れ、総て先回りで爆発させてしまえ
太陽が化身が、たかが成り損ない如きに止められるものか
障害物さえ無く成れば一気呵成に距離を詰め
怪力乗せた斬撃を叩き込む
……此れで終わると思うか?
怒りの鉄槌とはどんなものか、しかと其の身で味わえ

強欲であろうが神に成る事を目論もうが、其れ自体はどうでも構わん
だが他を犠牲に為そうという其の性根が赦し難い
成るならば己の意志のみで為ってみせろ――為せるものならな


鎧坂・灯理
鷲生殿(f05845)と
全くですよ。寝言は骸の海で言えという奴です
神など腹の足しにもなりません
ましてやこのような出来損ないなど……
誰の許可を得て視界に入っているのかという話です

起動、【魔火魅】
群れで現れ、駆け回れ犬共
この鎧坂の式神が火の熱さで負けるなよ 愚鈍なデッサン人形など灼き散らせ
陣を敷け あの痴れ者に教えてやれ ここは貴様の土地ではないとな
爆炎を突っ切るように意志の刃がひらめくならば
その背を借りて高く飛び、海さえ割る拳でとどめを刺そう

ひとつ教えてやろう
私は「神」ってやつが嫌いでね
我が前で神を名乗った、その時点で貴様の命運は尽きた
頭が高いぞ
身の丈ゼロにしてやろう――意志の鉄槌を受けるがいい



「意味不明な事をほざくモノは少なく無いが……」
 眼前に蠢く、『自称かみさま』――その煮凝りに目をやるは鷲生・嵯泉(烈志・f05845)。その表情が僅かに顰められて――。
「全く、此れは先の輩とは別の意味で鬱陶しい」
 静かに首を横に振る。某から滲み出る穢れた欲望、それが無造作に混ざり合ったモノに――生理的嫌悪感に近しいものを抱いたのかもしれない。
「我々には神なぞ不要……だろう?」
 ヒトとは、ヒトの手で事を成すべきだ。
 『かみさま』如きが伸ばしてくる手など、一心に斬り捨ててくれよう――。
 鷲生が言葉を待つように横を一瞥すれば、鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)がそこにいて。
「全くですよ。寝言は骸の海で言えという奴です」
 偽りの神もどきなどに、現世の揺り籠を渡しはしない。
「神など腹の足しにもなりません」
 ましてやこのような出来損ないなど――灯理が宿す温度が、灼熱を通り越して――零下の其れへと降りていく。
 その気配には、意思には、呆れと嘲りすら込められている。
「誰の許可を得て視界に入っているのかという話です」
 不規則に蠢き、廻る、目の前の肉塊を只々見つめる。
 嗚呼、私の視界を黒で穢す。
 嗚呼、私の意思を不躾に視る。
 すなわち、大罪である。万死に値する。
 灯理に『不快感』を抱かせた時点で、万物は塵へと還るだろう。
 それがたとえ神を称するオブリビオンであったとしても――。
「踊れや踊れロンドロンドワルツブリオッシュ――」
 意味不明な言葉の羅列を撒き散らしていく虚空の口腔。
 それに呼応するように、周囲の岩が、瓦礫が、倒木が、はたまた落ち葉まで――『ひとがた』の傀儡へと姿を変える。
 某の呪詛に呼応するように、老若男女の姿を模した人形たちがカタカタと震え、歩く。
 ひとつひとつの動きは早くない。だが、二人を取り囲めるほどには『数が多い』。
 有象無象の無機物、その尽くが変質したのだから無理もない。
 通常であれば其れだけで呑まれかねない『人海』のさざ波。おまけに触れれば爆発する。
 一見すると危機的状況に思えるが――二人の様子に焦燥の二文字は存在しない。
「一々相手にするのも面倒だ」
 鷲生が灯理の見ていない方向――すなわちその『半周』を一瞥し、懐から取り出すは無数の『符』。
 それを両手に、そして交差した後に――。
「――来い、火烏」
 横薙ぎに両手を払う。木の葉のように舞い散る符たち。
 間髪入れず片手を得物の柄へ――そして、それを抜き放った。
 轟く雷鳴。煌きが火花を呼び、熱量を詠ぶ。
 それが符に触れれば、灼熱が伝播し――炎となる。
 燃え盛る炎の揺らめきが、羽根を宿し、翼を宿し、嘴を宿す。
 彼らの名前は、言うなれば――『火の鳥』。
「仕事だ」
 人形の動きなど、止める必要『すら』ない。
 飛び立った数多の火鳥が空間に焔の残滓を残しつつ――疾く、人形の群に向かっていく。
 赤き線が人形の眼前を過った瞬間に、その灼熱が『ひと』を焦がし――誘爆させる。
 のっぺらぼうの白面が赤に揺らめき、膨張し弾け飛ぶ。抱えた熱が散り、その爆風が後ろの人形に触れれば『同じように』。
 連鎖爆発とはまさにこのことだろうか。
 景色を染め上げる那由多の爆発が、地平線を染め上げていくも――鷲生と灯理を傷つけるには如何せん距離がありすぎる。
 ――さて、一方の灯理も、彼が動いたのと殆ど同時に。
「起動、【魔火魅】」
 熱を帯びた意思が、脳裏で灼炎の太陽を描く。
 それに呼応するように、鷲生の飛ばした火鳥が落とした羽根を火種に――『猟犬』が業火の渦中を引き裂いて、飛び出した。
 焼け焦げた大地を駆けずり回り、焔の跡を刻んでいく。彼らは一匹ではない。十、二十、三十――熱源がある限り、無尽蔵に。
「駆け回れ犬共」
 各所で火の手が上がる。半瞬遅れて人形が粉々に爆散し、それが伝播していく。
「愚鈍なデッサン人形など灼き散らせ」
 喉元を噛み千切り、足に食らいつき、胴を穿つ猛火の犬歯。その度に人形の誘爆に巻き込まれるが――それすら、己が口腔に取り込んでいく。
 まるでそれは呼吸をするように、動物が酸素を吸い上げるように、爆風が呼気の肥しにされていく。
「あの痴れ者に教えてやれ ここは貴様の土地ではないとな」
 宙に蠢く『かみさま』を一瞥すれば、彼女の口角が不敵に吊り上がって。
 それと同時に、灯理の背後から一陣の風が。鷲生が爆風を切り裂きながら、前面へ。
 その剛刃が夜天に瞬けば、疎らになった爆発など容易に断ち割れる。
 縦横無尽に、眼前に迫ることごとくが斬裂。鷲生の眼前に迫った人形も――裁断機にかけられた紙屑が如く散り果てた。
 そして、その人形を切り裂いたのは『対応』をしたからではない。

 『利用』をするためである。

 一瞬の間を置いて、人形の肉片が膨張し爆発する。
 それを『追い抜いた』鷲生が、その衝撃を背中に乗せて――天を見下ろす『神』へと跳躍した。
 そして、その跳躍に合わせるように、剣客の背中を借りる灯理の姿が。
 
 『双』の意思が宙を飛翔し、『神』を引きずり降ろさんと切迫した。
 
「某の性根、誠に赦し難い」
 鷲生にとって、神に成る事自体はどうでも良い。
 だが、他を犠牲に為そうとすることこそが――罪深い。

 成るならば己の意志のみで為ってみせろ。
 ――為せるものならな。

「……?」
 『神』は、言葉を発せなかった。
 目の前の『せかい』が、縦にズレ落ちていく――。
 一瞬見えたあの『ひかり』は、あの『瞬き』は、何であったのだろう。
 その先は、その最奥は、一体――。

 だが、変わらず、言葉を発せなかった。
 伸ばされた手が、ズルリと落ちる。
 歪曲した世界が、ゆっくりと、崩れていく。
 『剣客』がわたしを見つめている。

 なぜだ?
 なぜだ?
 なぜだ?
 なぜ――。

「……此れで終わると思うか?」
 太陽が化身が、たかが成り損ない如きに止められるものか――。
 縦に二分された『神』を見下ろす『意思の刃』。告げるは、無慈悲なる宣告。
 刹那、彼の眼前を過るは――『絶海』の気配。
 『彼女』は、振りかぶった拳を引き絞りながら――堕ちる神へ『落ちていく』。

 つよく、つよく、強かに。
 もっとだ。もっと強く。
 私の怒りはこんなものではない。
 より重く、より高く、より深く、深く、深く――!

 拳に集められた不退転は、かつて裁ち割った『碧海』よりも――深みを帯びていた。
「ひとつ教えてやろう」
 世界が遅延する。その中で、『かわらず』かけられた言葉。
 ゆっくりと、ゆっくりと――静寂の時の中で、『こころ』が重ねられていく。
「私は『神』ってやつが嫌いでね」
 神が落ち行く先には、煉獄に至った魔犬たちが描いた熱核の陣――某の中枢が、大顎を開いて待っている。
「我が前で神を名乗った、その時点で貴様の命運は尽きた」
 留まった時間は、解放した瞬間に『修正』される。
 めいいっぱい引っ張ったバネはどうなる。めいいっぱい縮めたバネはどうなる。
 それらの結末と、同じだ。
 彼女が、己の意思が赦す総てを以て――この瞬間を『引き延ばしていく』。
「頭が高いぞ」
 脳裏に、僅かに焼け付く反応が。
 ――臨界か。
 それを悟った彼女が、振りかぶった拳を――放つ。
 論理を刻む秒針が微動する。
 揺れる世界、歪む空間、ひび割れる景色――。
 音すら、いや、光すら追い越す一撃が、異形の顔面を捉えた。

「身の丈ゼロにしてやろう――意志の鉄槌を受けるがいい」

 触れれば総てが『零』に還る、不退転の法則。
 神を称するモノ如きに覆せるわけもない。
 轟音すら許さず、裁ち割れた大地に沈み込んだ汚濁の肉体が――太陽の金色に到達。
 そして、追い打つように開けられた灼炎の大顎が閉じられ――。

 焼灼の紅に染まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
済まんが不信心だ

顕理輝光で対処
常時身に纏う故、準備不要
攻撃へは『絶理』『刻真』で異なる時間に自身を起き影響を回避
攻撃分含め必要な魔力は『超克』で“外”より汲み上げ、全行動を『刻真』で無限加速し隙を作らず

破天で掃討
『解放』を通じ全力で魔力を注ぎ、高速詠唱による魔弾生成を『再帰』で無限循環
数百の魔弾を束ねた巨大な魔弾で「瞬く間もなく」天を覆い尽くし、斉射
爆ぜる巨大な魔弾を途切れること無く生成・射出し絶え間なく叩き付ける

目標周囲を巻き込む範囲攻撃で回避の余地を与えず
攻撃の密度速度威力で反撃の機を与えず
無理に捩じ込んでも諸共に飲み込み押し切るのみ

飽和攻撃による火力と物量で全て圧殺する

※アドリブ歓迎


ハロ・シエラ
何を言っているのか分かりません……理解し合おうと思っている訳でもありませんが。

とにかく警戒すべきはあの触手。
多少であれば生命力を吸収されても仕方ないですが、触手の動きを【見切り】なるべく回避に努めます。
【破魔】の力を纏わせたレイピアによる【武器受け】が【カウンター】になるかも知れませんね。
その様に攻撃を掻い潜りながら【ダッシュ】で接近しレイピアによる【早業】の突きを見舞いましょう。
その一突きでは倒せないでしょうし、その隙に攻撃も来るでしょう。
なので【全力魔法】でユーベルコードを叩き込んで倒すなり怯んだ隙に離脱するなりします。
神になろうなど、思い上がりだと言う事を示して見せます。



 大地に穿たれた大穴の底、そこから這い出でる幾多もの触手。
 それらが、『果て』まで沈んだ濁りの異形を持ち上げる。
 地上に這いずるように滲み出た亜神の全身が、冥き瘴気を纏いながら頭を持ち上げ、待ち構える新手へと眼差しを向けた。
「何故なにゆえ信仰心存在せず共鳴する下卑たる嘲笑能わず我が力」
 一人でも取り込めれば、神へ至れるかもしれないというのに――その『ひとり』が近くて遠い。
 届かない『信仰』に困惑していると、新手が一人――青の異能者が口を開く。
「済まんが不信心だ」
 一切の表情をみせない――アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の言葉は、眼前の神、その全てを否定する。
 彼の身体に舞い飛ぶ淡青の瞬きは、埒外の原理を内包している。それは神などという存在では到底辿り着くことが出来ない領域だ。
 某の淡青が視界に入るや否や、喚き出す異貌の数々。
 それが欲しい。
 それを寄越せ。
 刺々しく禍々しい、我欲の極致。
 その異能、その輝きに魅入られた神が、濡れそぼった触腕を伸ばすも――。
「何を言っているのか分かりません……」
 空を突く細剣の煌めき。天に輝く一等星のように、鋭く輝くは一条の光。触腕が衝き穿たれ、撃ち込まれた衝撃に耐えかねて爆散する。
 困惑するような声色とは裏腹に、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)の剣捌きは彼方の絶技を宿している。
 それは人が至れる領域の最奥、その遥か先。
 人の身でありながら最果てへ辿り着いた剣技の練達。
 磨きあげられた剣閃は、未だ限界を知らぬ。
 そして、その光もまた――『神』にとっては眩しすぎるくらいのチカラを宿していて。
 かつてはヒトであったはずの『かみさま』は、いまや貪欲たる獣性しか残っていない。
 目の前にある『神がかった』二人を前に、抑えなど効くわけがない。
「寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ――」
 無数の触手が、天を穿たんとする程の勢いで飛び出す。宙に浮かんだ汚泥の塊を掲げるように其れらが連なり、絡まりあっていく――。
 ぐちゃり、と、濡れ汚れた引き金が引かれて――捻れた触手の大群が、天から振り注いだ。
「天をも覆い隠すか」
 強欲、傲慢の限りを尽くす攻撃に、アルトリウスの目が細められる。
 異様な規模の某は、さながら流星群が如き――那由多の質量をはらむ。
 だが、異能者は狼狽えるどころか、眉ひとつ動かさない。
 その解法は、極めて単純だ。
 天すら掌握するほどのものであれば、其れすら破壊する原理を刻んでしまえばいい。
 その原理こそが。
「破天」
 言霊は、その一言だけで良い。
 青に染った光星が、汚泥たる触手群の中心に輝いた。
 アルトリウスが天を仰ぎ、それに片手を翳す。
 その僅かな所作に込められた原理の数々は、凡庸なる者には計り知れないだろう。
 瞬いた星が、ひとつ、ふたつ――蒼き彗星が瞬く間に銀河が如き物量へと分裂していく。
 星々の光のみで、原理に導かれた触手たちが塵芥となって崩落。
 その蒼天を覆い尽くすなど、本物の神でも困難を極めるだろう。なぜなら、理外の異能を操る『外なる者』、それを冠する彼が――全力を以てして紡いでいるのだ。
 もはや、定理はおろか定義すら書き換えるほどのモノが刻まれている。
「斉射」
 翳していた片手が握りこまれれば、青の銀河が一つに集約される。
 総てを照らす巨星が、天を引き裂きながら――落下。
 其れは瞬く間に光速を超越。宙に浮かんだ神を、周囲の空間ごと巻き込んでいく。
 光に包まれながら、隕石と一体となって墜落していく亜神。
 だが、未だ抵抗する力は余っているようで。
 不意に、アルトリウスの背後に現れるは――のっぺらぼうの巨人。
 デッサン人形を模した某れが、重たい足取りで迫る。
 だが。
「させはしません」
 人形の関節部に光芒が瞬き、砕け散った。膝を折り、足を止める人形。
 アルトリウスの背後をカバーするように、シエラがレイピアを構えて立っていた。
 衝撃によって揮発した巨人が、膝を折ったまま大きく膨れ上がっていく。
 だが、膝をついた某の一瞬こそが、永劫とも呼べる『隙』だ。
「止まれ」
 背後を一瞥したアルトリウスが、そう告げる。
 刹那、莫大な熱量を帯びていた巨人が、臨界直前で硬直。ひとつ瞬けば、もうそこには人形など存在しない。
 間髪入れず、地面から立ち上る数多の触手たち。
 その鎌首を振り回し、『いのち』を吸い上げんとシエラに雪崩れていった。
「私に触れたくば」
 先行した一本の触手が横薙ぎに払われる。後に続いた二本目も、細剣に巻き上げられるように首を打ち上げられて。
「剣筋を読むべきです」
 もっとも、貴方にそれが出来れば、の話ですが。
 半ば獣に堕ちたヒトもどきが、人として最高の昇華を経た彼女に読み勝てるかと言えば――。

 100%、唯一絶対の否定。すなわち『No』である。

 触手の群れを引きつけるように前へと飛び出したシエラが、その剣を振るい続ける。
 軽快な足取り。不規則に揺らめく剣先。呼吸を読まれないように、動きは最小限に。加えて、攻撃の手癖を極限まで排除する。
 卓越した技量が、異形の理不尽を超越し続けていた。
 次々と舞い飛んでいく触手の肉片。千切れて消滅した触手は数知れず。
 そして、戦場を舞い踊るように疾走しながら、向かう先は――地に堕ちゆく神へ。
「圧殺だ」
 光に呑まれて高度を落としていく亜神にアルトリウスが再び片手を翳せば――その上から『もうひとつ』の光星が降り落ちて。
 その威力に耐えかねてか――堰を切るように、汚泥の巨体が大地に墜落した。
 弾け飛ぶ光の奔流。その中心で耳障りな絶叫をあげる醜悪な化け物。
 その瀑布に、シエラが飛び込んでいく。

 暗転。

 世界がそこだけ切り取られたかのような――永遠の青が、そこに広がっていた。
 蒼の世界に蠢く――爛れた煮凝り。
 地平の彼方まで続く絶海の孤島。
 取り残された『過去の汚泥』は、さざ波ひとつ起こさない静寂に怯えるように――震えた。
 それと対峙するは、ハロ・シエラ、そのひと。

「神になろうなど、思い上がりだと言う事を――」
 細剣を前面に構え、切っ先が『神もどき』へと向けられる。
 瞬きひとつ。彼女の身体が疾風を残して『消失』。
 純白の剣光が、穢れの中枢で――煌めいた。

「示してみせます」

 一閃。
 『ステラ』の爆光が、腐臭の塊を貫く。
 硝子玉が、弾け飛んだ。
 その瞬間、神の腐肉に包まれて胎動していた数多なる心臓――そのひとつが、鼓動を止める。
 半瞬遅れて、巻き起こるは灼熱の爆風。

 腐り落ちた神に、灼炎が舞い上がった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。亡霊達を唆せて聖獣を狂わせたのはお前ね。
…お前がどんな存在で、どんな目的があるにせよ、
お前が人々の平穏を乱すならば容赦はしない。
…骸の海に葬送してあげる。

今までの戦闘知識を元に敵の殺気を暗視して見切り、
多少の傷は気合いで耐え自身の生命力を吸収して癒し、
呪詛を纏う大鎌によるカウンターを試みる

第六感が好機を捉えたらUCを使用し【黒炎覚醒】を九重発動
圧縮した時間を焼却する黒炎をなぎ払い、
時間を停止させる時間属性攻撃を行う

…神を名乗るならば、この力にも抗ってみせなさい。

黒炎の力を溜めた大鎌を怪力任せに叩き付け、
黒炎のオーラで防御を無視して傷口を抉る2回攻撃を行う

…さぁ、報いを受けるが良い、亜神。


アリソン・リンドベルイ
【WIZ 禁樹・黄金の枝】
荒ぶる力を怖れ敬うのも、確かに人の営み。嘆き悲しみを祈りに変えて、幸いをこそ願うのが人の性ではありますね。…しかし、ええ、ええ。その幾千万の声無き声を無碍にする存在を、神と崇める訳にはいきません…!
『禁樹・黄金の枝、生命力吸収、覚悟、空中浮遊』 保身を考えず、上空から突撃。一撃入れることだけを考えて、飛翔します。 …この枝は、弑逆を象徴するヤドリギの枝。王権を簒奪し、神すら貫く禁樹です。……私たち、神様が思ってくださるよりも遥かに傲慢で、身勝手で、愚かしく必死に生きているんですよ? …ええ、ええ。神を僭称するのなら、矮小で脆弱な私たちを、もっと理解するべきでしたね…!



「……ん。亡霊達を唆せて聖獣を狂わせたのはお前ね」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、そう言い放った。
 彼女の視界に映るは、かつて人であった亡者――そして深奥に眠っていた聖獣を狂乱の底に叩き落とした悪逆非道の神。
 それが、鈍色に大地を穢しながら宙を浮き、大鎌を構える彼女を見下ろしている。数えきれないほどの貌が一斉に、無表情の虚空を纏わせながら。
「……お前がどんな存在で、どんな目的があるにせよ」
 リーヴァルディが携えるは紅月の大鎌、グリムリーパー。新月の黒を絡ませる某の三日月が、眼前の『神のようなもの』に向けられる。その闇が、その鮮血が、その魔力が――間欠泉のように、堰を切って爆発した。
 彼女の周囲に飛び出した赤黒の魔力が、有象無象の空間を某の色に滲ませては歪ませていく。
 それは、リーヴァルディの怒りを表しているようでもあり、目の前の敵を一片たりとも残さないという殺意を表しているようでもあった。
「お前が人々の平穏を乱すならば容赦はしない」
 秩序を乱す混沌、と言えばまだ聞こえは良いかもしれないが――かの『神』が人々にしてきたことは混沌のそれですらない――只の殺戮だ。
 単純明快に人々を脅かす、悪辣なる存在。
 リーヴァルディは当然それを把握しているわけで――たとえどんな綺麗事を言われようが、されようが、一切の躊躇なくトドメを刺せることだろう。
 眼前の神――否、『化け物』は、言葉にすらならないうわ言を喚き散らし――その両手を伸ばしながら、リーヴァルディめがけて飛び出した。
「……見るまでも、ないわね」
 戦闘の達人や感覚に鋭い獣が相手の場合は、ほんの僅かな殺気を見切らなくてはならない。そうしなければ、次の瞬間には己の首がはねられているかもしれないからだ。  
 だが、かの『かみさま』に――そういった駆け引きのようなものは存在しなかった。
 彼の肩口に無数に取り付いた貌――その果実が膨らむ。
 実に素直で分かりやすい攻撃。『爆発』のそれだろう。
 リーヴァルディは某の爆弾が膨張する手前、その莫大な熱量に目をしかめつつも。
「趣味が悪い攻撃ね」
 それが抱えた魔力反応を『眼』で捉えた彼女が、衝撃に備えるように得物を前面に構える。
 半瞬遅れて、音という音が置き去りにされる。
 三日月の刃に伝わる、人が受けるべきではない暴力の権化のような衝撃。それが握りしめる柄を通して響き渡り、彼女の身に打ち据えられる。
 大きく吹き飛ぶリーヴァルディの身体。勢いよく空を舞っているが、その表情は苦悶のそれではない。
 衝撃をいなすために、わざと吹き飛んだのだ。
 大概の物質は一瞬で焼け果てるであろう灼熱に包まれながらも、彼女の身体は炭にならない。ダンピールが権能である――『再生力』である。
 その活血が、彼女に付く火傷や裂傷をたちどころに癒していく。
 僅かな頭痛――削げ落ちた己が血の気配を脳裏で感じながらも、リーヴァルディは投げ出された身体に対して受身をとらんと身構えたが――。
 ふわり。
 背中に触れるは冷たく硬い土の感触ではなかった。
 何かが絡み合ったような柔らかい感触――それで以て、鼻をくすぐる深緑の香り。
「間に合いましたね……!」
 リーヴァルディが背中を見遣れば、クッションとなった、幾重にも絡み合った蔦の塊。
 そのさらに後ろで、両手に抱える木枝を構えるアリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)の姿が。
「……ありがとう、助かったわ」
 リーヴァルディは言葉数こそ少ないが、その表情が感謝の念を示していて。
 アリソンがその言葉に頷いた後に、視線を前方へやる。そして、視線の先にいる濁りの塊、『亜神』を見つめた瞬間に――彼女が纏う空気が変化した。
「荒ぶる力を怖れ敬うのも、確かに人の営み」
 その理不尽めいた破壊力で、一息の間に『人々の暮らし』を滅ぼしてきたのだろう。
 その力を振りかざして、人の膝を折らせたのだろう。
「嘆き悲しみを祈りに変えて、幸いをこそ願うのが人の性ではありますね」
 往々にして、力の強い神は、その『力』そのものを信奉されてきた。
 悲しみを、無念を、嘆きを――その神がかった権能で無理やり変えて欲しかったのかもしれない。
 そういう懇願が、信仰を呼ぶ。
「しかし、ええ、ええ」
 赤茶の髪が風に煽られ、ガーデニアの花が強かに揺れた。
「その幾千万の声無き声を無碍にする存在を、神と崇める訳にはいきません……!」
 そう、『神』とは、気まぐれながら人の声に応える存在。
 稀なる見返りがあるからこそ、信仰心が生まれる。
 決して、断じて、強欲を振りかざして人の願いを無碍にする存在が――神であってはならないのだ。
 アリソンの、その感情が――周囲の大地に草花を呼び、植物を呼ぶ、
 一方の亜神は、言葉を介することなく――無貌の人形を召喚する。
 地面から這い出でる白面の人形らが、二人に迫らんとした。
 だが、不自然に軋む感触。見遣れば――。
「ここは、すでに私の『庭』です」
 絡み合う蔦が、根が、人形らの動きを止める。
 その隙に、アリソンの身体が天へ飛翔していく。
 そして、彼女の全身に覆われるは――ヤドリギの金枝。
 原型すら見えぬほどに彼女の身体が覆い隠された。

「……生存競争を、しましょう」

 某の枝は、弑逆を象徴する。
 王権を簒奪し、神すら貫く禁樹。

 緩やかな、普段の雰囲気とは打って変わって――弾丸のように鋭く、突撃。
 行先は勿論、亜神へ。
 汚泥に塗れた鈍色の頭蓋が、おもむろに天を見やる。
「我見上げさせる図が高い失礼旋盤千万万死ニ」
 怒りの声色だ。自分よりも高い位置にいるアリソンに腹が立ったのだろう。
 子供のような幼い憤怒であったが、それすらアリソンにとっては『糧』にすることができる。
 その感情を、その殺気を、水のように吸い上げたヤドリギが大きく軋む。
「……私たち、神様が思ってくださるよりも遥かに傲慢で、身勝手で、愚かしく必死に生きているんですよ?」
 さらに、彼女の身体が鬱蒼と。
 速度も、亜音速の其れへと――。
「疾――」
 時既に遅し。痩せぎすな腹部に激突するはヤドリギの化身。
 瞬く間に、無数の枝木が神の身体に突き刺さり――『いのち』をポンプのように吸い上げていく。
「離理りりりりり」
 喚きながらアリソンを弾き飛ばす。繋がっていたヤドリギの一部が千切れるも、枯れずに其れらは自立する。
 ヤドリギは依然として、神を依代として侵蝕をはじめていた。
「……ええ、ええ。神を僭称するのなら、矮小で脆弱な私たちを、もっと理解するべきでしたね……!」
 活動限界と言わんばかりに、アリソンに纏っていたヤドリギのみが消えていく。
 そして、吹き飛ぶ彼女とすれ違うように――リーヴァルディが疾駆した。
 あとは任せて――と、紫色に揺蕩う一瞥が、言外に伝えているような気がして。
「……神を名乗るならば、この力にも抗ってみせなさい」
 その視線を、寄生した枝木を払わんと苦悶する神へと向けた。

 限定解放。
 代行者の羈束、最大展開開始――。

 紅色――すなわち、『血』の光輪が、リーヴァルディの後光となりて――。

 「起動せよ、血の光輪……!」 
 某の光が、煌めき輝く。 
 夜天の闇を引き裂く、紅月の妖光。
 刹那、リーヴァルディの身体が砂塵を残して『掻き消えた』。
 瞬きする間もなく、亜神に『三日月』が迫る――!

 神の、そのくり抜かれた双眸に――業火に揺らめく三日月が映し出された。
 その焔は、黒を宿す。
 眼前の吸血鬼、その左目が妖しく輝けば――紫苑の魔光は、瞳から聖痕へ。それが、放射状に広がっていく。
 聖痕に呼応するように、横薙ぎに舞い散る黒炎。それが空間に引火し――焼却。
 虫食いの穴から見えるは、色を失った世界。瞬く間に、時を刻む秒針に黒き炎が伝播し――。

 静止。

 ぴたりと、総ての存在がモノクロの静寂と化した。――リーヴァルディを除いて。
 宙に舞うは九重の黒炎。それが消えるまで、時は止まり続けるだろう。
 時空の檻に囚われ、動くことも意識することも叶わない亜神へ、告げる。 

 ――……さぁ、報いを受けるが良い、亜神。

 その言葉すら、彼には届かない。
 神を渇望する怪物は、神にもなれず、人にもなれなかった。
 故に、この時空に収まってしまっている。この器に収まってしまっている。このユーベルコードを突破することは、決して出来ないだろう。
 もしも、彼が人として、或いは神として――昇華できていれば、話は別だったかもしれないが。
 それを後悔するには、何もかもが遅すぎた。
 大上段から思い切り叩きつけられるは、焔を滲ませる巨大な三日月刃。
 大鎌が亜神の煮凝った全身を二分する。さらに、足元の蝸牛まで食い込んだ刃が、『突き刺さったまま』角度を変えていき――。
 返す刀で、無理やり刃が引き抜かれた。
 肉が削ぎ落ち、周囲一帯に『止まった』血潮が花開く――。

 かちり、と、その秒針が動き出せば、尽くは収束する。
 そこには、唯一絶対の『結果』しか残らない。

 聞くに堪えない、亜神の叫び声が夜闇に鳴り響いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

宮落・ライア
うーん……神?
まぁいいや。

真の姿:桜髪の大槍持ち
【雷帝たる槍術師の継嗣】で技能と発電・蓄電体質獲得

開幕で十分な距離を取り【霹靂神】を発動しチャージ開始

信仰が欲しいならこの世界でもっと有名な別のオブリビオンを狙った方が
手っ取り早いんじゃない?

5分間耐えられるかな。まぁ少し当たろうと【覚悟・激痛耐性・気合い】で耐え切る。

チャージが終われば槍の三刃の内側で高加速、高加圧、高充填
された高加速荷電粒子ビームをぶっ放す。
青白い光の奔流に飲まれろ。



「うーん……神?」
 宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は、一定の距離を保ちながら――遠方で蠢く亜神をみつめる。
 まるで汚泥の結集体のように地面に這いずる某は、もはや只の不快害虫のようにしか見えない。
「まぁいいや」
 ライアにとっては、半ばどうでもいいことなのだろう。
 倒せれば、神だろうが天使だろうが悪魔だろうが、なんでもいい。
 ところで、現在の彼女は、普段の白髪とは違う――桃色の髪、すなわち真の姿になっている。
 その姿は、雷帝たる槍術師の継嗣。
 幾つもの姿を持つ彼女の『真体』。その一人だ。
 巨大な槍先が月明かりに照らされれば、雷電を帯びて物々しく反射して。
 その大槍を片手で悠々と振りながら――構えた。
「チャージ開始――霹靂神」
 空間を取り囲むように伸びた槍の三刃――その中心が淡い雷電を帯び始める。
 五刻を刻めば、勝利が確定するだろう。
 近づく『死』の気配。それを悟った亜神が、己に生える貌たちを総動員し――爆撃を始めた。
 狙いは勿論ライアだが、その技自体の性質で狙いが定まらないせいか――周囲一帯の地形ごと乱雑に抉りとっていく。
 暴虐の限りを尽くした連続爆発が、神の身体を中心に起動し始めた。
「こりゃひどいな」
 木々すら圧し折れるほどの衝撃波に晒されながらも、ライアの顔は涼しいままだ。
 槍の蓄電はそのままに、断続的に叩きつけられる衝撃に合わせるように大槍を振るっていなす。
 その破壊力に、手が痺れる。腕が軋み、殺しきれない衝撃が鎌鼬となってライアの頬を切り裂いていく。
 だが彼女の迅雷は留まらず。
「止止まる止まれ止まら静寂静寂静止セヨ」
 爆発の間隔が、勢いが、一層強まる。
 それは隠しきれない焦燥を如実に表しているようで。
 彼方の巨岩が粉々に砕け散る。余波のみで数多の木々が薙ぎ倒され、直撃したモノの中には、消し炭すら残っていない個体すらある。
 だが、その渦中に晒されながらも――雷帝は尚も止まらない。
 蒼白たる稲妻が波打ち、渦を巻く。
 さながら其れは、蒼き龍のようだ。
 亜神は、もはや反動で自身の身体が焼け落ちはじめているにも関わらず、構わずに爆撃を続けていった。
 ライアの立つ地面は、もはや焼けるものすら残らない――煤けた炭と化している。
 だというのに、彼女は倒れない、怯まない、膝をつかない。
 傷だらけの身体を抱えながらも、その表情が歪むことはない。
 極温に晒されて景色が歪むも、それを突き抜けるように蒼電が高まっていく――。

「ひかり」

 神の貌がひとつ、幼子のそれが言葉を発した。
 醜い姿に相反して、何かを懇願しているような儚さを帯びた、鈴の声色。
 オブリビオン――すなわち過去の某である以上、運命を変えることはできない。
 だが、濁りきった眼が、青白い光を見つめれば――僅かに澄んで。
「飲まれろ」
 三刃の内側で無尽蔵に回転し出す、青色の雷エネルギー。
 けたたましい轟音から高音へ、やがて超音に至り――人が聞ける音域を容易く突破していく。
 幾重にも重ねられた荷電粒子が無限に廻り続け――臨界へ。

 視界を真白に染め上げるほどの雷光が、突き出された槍から解き放たれた。

 五刻を告げるは晩鐘の爆雷。
 その蒼白たる荷電粒子の奔流が眼前まで迫ったところで――言葉が紡がれたような気がして。

 ――ありがとう。

「ア、アア、アアア……」
 触手が、霞のように消え去る。
 頭が、崩れる砂城のように崩れていく。
 足が、腕が、やがて、その身体まで――。

 ライアが放った光の先には、抉り取られた地面が残るのみで。
 神も、人だったものも、腐肉も、何もかもが――跡形もなく消滅していた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年12月20日


挿絵イラスト