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血塗られた活動写真(作者 平岡祐樹
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 実らず悲劇に終わる恋。または、悲しいほどに届かぬ相手を思い慕う恋。
 その切なくも美しい繊細な模様は、幸せな模様に負けず劣らず人気があり、古来より描いた物語や曲が多い。
「そんな悲恋物の映画が近々クランクインするそうで。……あちらの言い方だと映画じゃなくて『活動写真』でしたか」
 ルウ・アイゼルネ(マイペースな仲介役・f11945)は原稿のデータが入ったタブレットをいじりながら猟兵達に話しかけた。
「帝都の街で、敵対する任侠の下っ端である男と跡取りである女が運命の出会いを果たしてしまい、両勢力の動向に振り回される、みたいな内容だそうです」
 UDCアースやヒーローズアースでも聞いたことがあるような内容だが、別の世界から来た者が持ち込んできたわけではない。どのような世界でも似たような物語を思い浮かべる者はいるのだろう。
 それだけ「苦難の多い恋愛」という物語は人々を魅了するのだ。
「で、この活動写真には任侠と任侠の争いのシーンが入るそうで」
 争いのシーンでは殺陣あり銃撃戦ありの派手なアクションが予定されている。ここにとある問題が確認された。
「このシーンで使われる武器が全て本物で、スタントマンや防具、合成技術の類は全く用意されていないそうです。まともに受けたら普通の人間は間違いなく死にます」
 ちなみにこのシーンの描写は、観た人々を飲み込ませるにはリアルな描写に拘らなくてはならない、と脚本家がゴリ押ししたらしい。
 常人ならば一笑に付してボツにしただろう。しかし監督もスタッフもスポンサーもなぜかその企画を通してしまった。
「調べた結果、どうやら脚本家が影朧で、何らかのユーベルコードを使って彼らを洗脳し、この企画を通させたようなのです」
 だが撮影の現場に当の脚本家の姿はない。演出の発動タイミングは監督らに一任しているからだというが、正味人が死にさえすればどのような形で終わろうと構わない、ということだろう。
「スタッフは洗脳によって人が死んでも粛々と撮影を続けるようです。つまり、死んでいるように見せかけられば完全にマークが外れるということです」
 撮影が終わったことを知らされればどこにいるか分からない脚本家も姿を現すだろう。そこを死んだふりをしていた猟兵達が一斉に起き上がって叩く……というのが猟兵側の真のシナリオである。当然この事実を相手側に悟らせてはならない。
「ちなみにこの活動写真が撮られることは当然まだ公にはなっておらず、この情報をリークした時点ではまだ主演以外の配役は決まっていませんでした。なので事前にこちらで皆様を斡旋しておきました」
 猟兵達が演じるのは主人公のカップルの身の回りにいる使用人や友人……総じて裏社会の住人達である。
 なおここで配るために事前に受け取っておいた台本を見聞したところ、「○○退場」という記述が多く見られた。
 この「退場」が「この世からの退場」という意味だとは台本を読んだ限りで看破することは極めて難しいだろう。
「最初に恋愛のシーンを撮って、それが終わってから抗争のシーンを撮るようです。抗争を先に撮ってしまって恋愛のシーンに出てくるはずの登場人物を死なせたくないんですかね? 矛盾しているようにも感じますが、くれぐれもこれは内密にお願いいたします」
 なおスタッフもあくまでも操られているだけで、この演出に心の底から賛同しているわけではない。なので彼らがうっかり巻き込まれないように立ち回る必要もあるだろう。
「それでは皆様を撮影現場にお送りいたします。くれぐれも『いのちだいじに』でお願いしますね!」





第3章 ボス戦 『若くしてこの世を去った文人』

POW ●草案『帝都の内乱と男女の悲恋を描いた架空戦記』
戦闘用の、自身と同じ強さの【刀と銃を持ち【先制攻撃】に優れた青年将校】と【【誘惑】と【優しさ】を振り撒く遊女】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD ●短編集『付喪神奇譚』
自身からレベルm半径内の無機物を【『錬成カミヤドリ』が使える即席ヤドリガミ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ ●未完『暴走シベリア特急殺人事件』
レベル×5本の【暴走】属性の【ブレーキを破壊された蒸気機関車】を放つ。
👑11 🔵🔵🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は雛月・朔です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


♢NG scene
「ブラボー! いやぁ、良い死の香りだ!」
 血だらけになった舞台に上がり、脚本家はステップを踏むように回る。
「第三者の介入によって勘違いを起こし、ボタンのかけ違いに気づかないまま、状況証拠が揃ってしまったが故に事態が悪化して大惨事! いやー、惨い惨い、惨すぎる!」
 この後、二つの組が互いに潰し合い、疲弊した所で第三の組が漁夫の利でまとめて潰した所で真理亜は解放される。
 何もかもを失った真理亜は絶望し、都郎の墓の前で自らの首を掻き切って死ぬ。
「第三の組が襲うのも、真理亜との縁談をことごとく潰されたから! いやー、身分知らずの恋を無理矢理押し通そうとした故の悲劇! 恋って本当に怖い!」
 自らの身を抱きしめ、震える脚本家の一人語りは続こうとしたが、自分がいることで撮影が中断していることに気付いた所で一旦収まった。
「……んん、ごほん。では次は都郎君の死体の上に花を散らすカットだったね。さぁーて、都郎君の死体は、どこに行った?」
 しかし都郎の死体はどこにも無い。当然だ、彼は本来別の俳優のみが使うはずの隠し通路から外へと脱出してしまったのだから。
「どういう、ことだ?」
 脚本が成立しなかったことにより、洗脳していたスタッフの脳内に不一致が発生し、動かなくなってしまう。
 このままでは自分の初脚本作品がポシャってしまうと、焦ったように館中に転がる死体を漁る脚本家は、後ろから何かが近づいて来るのを話しかけられる時まで気付けなかった。
回々・九流々々(サポート)
『僕だってやれば出来ます。はい』
 愉快な仲間のプリンセス×UDCメカニック、6歳の女です。
 普段の口調は「コーヒーカップ(僕、~様、です、ます、でしょう、ですか?)」、酔った時は「くるくる(僕、~様、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


「ああ、もう、くそっ……本当にどこに転がっているんだ……」
 苛つく脚本家は血だらけ傷だらけになったセットの中を歩く。
 そして大広間に達した時に、本来ならここにはないはずのそれがなぜか置いてあった。
「……ここは都郎の家だぞ、なんでこれがここにある?」
 それは真理亜の家のメイドの大虐殺を撮った時に使った巨大なティーカップ。片付け途中だとしてもこんな場所に運んできて良い物では無い。
「ちっ、ここのスタッフは大道具の片付けさえ出来ないのか全く……」
 悪態をつきながら脚本家はカップを蹴ろうとする。しかしその足はカップの中から伸びた触手に絡めとられた。
「僕はセットではありません。れっきとした出演者ですよ?」
 声がした方を向けば、そこにはパステルカラーの可愛い服に身を包んだ回々・九流々々(くるくるくるるく・f21693)が階段の手すりに腰かけて足を振っていた。
「ヤドリガミ……!?」
「え、違いますよ? よく間違えられますけどね、はい」
 笑顔の回々が右手を鳴らすと、触手は脚本家をカップの中に引き摺り込んだ。
『怪異が起こる時間、僕等はきっと溌溂なのです』
 そしてティーカップは楽しげな音楽を流しつつ最初はゆっくりと回転を始め、徐々に速度を上げていく。
 陶器の壁に押し付けられた脚本家の三半規管はめちゃくちゃに振り回され、絶叫と共に昼に食べた品が辺りに巻き散らかされた。
 そこへ警笛が鳴り響く。
 するとセットの壁を突き破って蒸気機関車が突っ込んできて、脚本家ごとティーカップをひっくり返した。
「うぇっ、ゲホゲホ……」
 衝撃と引き換えに拘束と重力と回転から解放された脚本家は転がりながら、口の中に残る吐瀉物の感覚と体を襲う痛みに悶え苦しむ。
 一方、目の前で横転した蒸気機関車を横目に回々はひらりとその場に舞い降り、バランスを崩してヨタヨタとよろける。
 しかし脚本家のようにその場で倒れることはなく、両の足をしっかりと揃えてカーテシーを行った。
「お遊びいただきありがとうございました。このお遊戯の風呂敷は『ちゃんと』畳んでくださいね」
成功 🔵🔵🔴