#サクラミラージュ
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
●サクラミラージュ
700年以上の歴史を持つ帝都。
幻朧桜が咲き誇るその街で、今、とある作家の書籍が大流行していた。
深淵・万魔殿(アビス・パンデモニウム)著、『静まれ我が右腕よ』『封印されし魔眼』『エタアナル・フォオス・ブリザアド』などの一連の著作である。
これらの作品は従来の文学の常識を打ち壊した。人々の心の中に眠る『14歳の少年の心』を呼び覚ますものであると、一般大衆のみならず文学界からも注目を集めることになったのである。
「深淵先生、次の原稿はまだでしょうか!? すでに入稿の締め切りが過ぎているのです!」
「先生、うちの出版社の連載分もお願いしますよ!」
「フハハハ! 案ずるでない! 我が右腕の封印を解けば原稿の一つや二つ、一晩で書き上げてみせよう!」
帝都のカフェーで出版社の担当編集たちと席を囲むのは、丸メガネをかけた和服姿の青年だ。突如高笑いを上げた彼こそが、件の作家、深淵・万魔殿(アビス・パンデモニウム)であった。
万魔殿は細身の身体に纏った漆黒の外套を颯爽と翻しながら席を立つと、担当編集たちに背を向けてカフェーを出ていく。
「ククク、明日、出版社まで原稿を届けるので、期待して待っているがいい! アカシックレコオドを見通す我が魔眼には、すでにエンディングが見えている! ファーッハッハッハ!」
――そして翌日。深淵・万魔殿は出版社に姿を見せなかった。
「逃げたな、深淵先生!」
「総力を挙げて、何としても見つけ出せ!」
出版社一同、血眼になって深淵・万魔殿を探し始めたのだった。
●中二病作家を追え!
「みんな、大変よ!」
グリモアベースで猟兵たちに声をかけたのは、二重人格のグリモア猟兵、天樹・咲耶(中二病の二重人格・f20341)――その裏人格である中二病のサクヤである。
サクヤの切羽詰まった声に、猟兵たちは足を止め――。
「このままじゃ、深淵・万魔殿先生の『エタアナル・フォオス・ブリザアド』の続きが読めなくなってしまうわ! せっかく長い詠唱を終えて、ようやく技が発動するシーンなのに!」
猟兵たちはサクヤの言葉を聞かなかったことにして、その場を去ろうとする。
その、ちょっと待ってもらえると嬉しいです。
「あ、えっと、本題に入るわね。今、サクラミラージュの帝都で流行している深淵・万魔殿先生の本なのだけど。実は実際に書いているのは深淵・万魔殿先生ではなく、オブリビオン――影朧の作家みたいなの。いわゆるゴーストライターというやつね」
深淵・万魔殿は、どこかに影朧を匿っているという。その見返りとして作家の影朧は万魔殿に作品を提供しているということらしい。
「もともと、万魔殿先生は『右腕の封印』とか『邪眼』とか『帝都転覆の陰謀』などといった、とっても面白い題材で文章を書く作家なの。けど、何故か世間は万魔殿先生を認めてこなかったのよね」
理由がさっぱり分からないという顔でサクヤが首をかしげる。
まあ、サクヤも中二病の同類なのでご理解いただきたい。
「それが、一年前から急に世間の注目を浴びるようになって、やっと正当に評価されるようになったというわけ」
その頃に万魔殿が影朧と接触し、本が読者の精神に影響を与えるようになったのだろう。
このまま影朧を放置しては、帝都の全住人が中二病に罹患しかねない。その地獄絵図を想像し、事態の収拾を心に誓う猟兵たちだった。
「あ、このゴーストライターの影朧だけど、可能なら救済して――転生させてあげてほしいの」
この影朧は説得して倒すことで、転生させることが可能だ。できれば転生させてあげてほしい。
「影朧の居場所は万魔殿先生しか知らないわ。そこで、まずは万魔殿先生に接触して、説得するなり仲良くなるなりして、影朧の居場所を教えてもらう必要があるわね」
出版社の調査によると、万魔殿は現在、帝都中をランダムに移動しているらしい。ほとぼりが冷めるまで出版社の手のものから逃げ切るつもりのようだ。
まずは万魔殿の居場所を推理して待ち構えたり、罠を張っておびき寄せたり、情報収集をして居場所を掴む必要がある。
万魔殿と接触したら、影朧の危険性を訴えて説得するなり、親密になって信頼関係を結ぶことで、影朧の居場所を聞き出すことができるだろう。万魔殿に手荒な真似をして影朧の居場所を吐かせることも可能だが、影朧の救済が目的である以上、あまり推奨できない方法となる。
「あ、万魔殿先生と仲良くなるには、先生と趣味の合う話をするといいと思うわ」
サクヤは、にっこりと笑いながら万魔殿の作品集を差し出してきた。
つまり、中二病っぽい言動をすることで、万魔殿の警戒を解くことができるらしい。
中二病作品について熱く語っても良いし、中二病の性格になりきっても良いし、ユーベルコヲドで中二病演出をするのも良いだろう。
「万魔殿先生を説得したり仲良くなったりして影朧の居場所を聞き出せれば、自ずと次の行き先が明らかになるはずよ。それでは、みんな、気をつけて行ってきてね」
そう言うとサクヤは左目の封印を解いて、サクラミラージュへ続くゲートを開いたのだった。
高天原御雷
オープニングをご覧いただきましてどうもありがとうございます。高天原御雷です。
本シナリオは、影朧を匿う一般人を説得し、影朧を転生させることが目的の人情系シナリオです。――訂正。中二病とか連呼してますので、コメディシナリオになりそうな気がします。
以下、シナリオ詳細です。
●目的
影朧を匿っている深淵・万魔殿(アビス・パンデモニウム)を説得し、影朧の居場所を聞き出す。
そして影朧を説得しながら撃破し転生させる。(なお、普通に撃破しても構いません)
●一章:日常
〆切から逃げ出した作家、深淵・万魔殿を探して、説得してください。
万魔殿は帝都中を逃げ回っています。(警戒しているので影朧の元には近づきません)
まずは、待ち伏せ、おびき寄せ、情報収集などで万魔殿を探し出して接触しましょう。プレイングで具体的にどういう場所で行動するか(路面電車、デパート、繁華街など)を記述いただくと、サクラミラージュっぽい描写ができると思います。
そして、影朧について説得するか、もしくは中二病的な言動で仲良くなるかして、影朧の居場所を聞き出してください。(章クリアで説得完了となります)
●二章:冒険
万魔殿から聞き出した影朧の居場所に向かうことになります。
中二病的トラップが待ち受けていますが、詳細は断章で説明いたします。
●三章:ボス戦
万魔殿が匿っていた影朧との戦いです。
説得したり、中二病っぽい戦い方をして倒すことで、影朧を転生させることが出来ます。
こちらも詳細は断章で説明いたします。
●深淵・万魔殿(アビス・パンデモニウム)について
深淵・万魔殿はペンネーム。本名は中山二郎。24歳の若手の作家。昔から中二病で、中二病系の小説を書いていたが、全く売れず。しかし一年前から突然著作が大ヒットを連発。今や売れっ子の作家となっている。
●その他
途中参加や特定の章のみの参加も大歓迎です。
それでは、皆様のプレイングを楽しみにしていますので、よろしくお願いいたします。
第1章 日常
『〆切から逃げた文豪』
|
POW : 「君の作品を待つフアンはどうするのかね!」 熱血に説得する。
SPD : 「待ちたまゑ!」 一直線に追いかけて捕まえようとする。
WIZ : 「簡單な事だよ我が友よ……」罠を張ったり、痕跡から潜伏場所を突き止める。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
緑川・小夜
[WIZ]
作家先生も追われているとわかっているのだから、人の目がないところ…路地裏辺りで待ち伏せしようかしら?
着いたら黒豹のシローを召喚。シローをスライム状の姿に変化させて、自分に纏わせる。黒い全身タイツを来たような姿になるわ。さらに、パピヨンマスクを装着。隠れて待ち伏せるわね。
先生が来たら【演技】開始
ウフフ、貴方が深淵・万魔殿ね。私はこの帝都を裏から支配する「結社」の一人、ダークパピヨンよ。今日は貴方のお友達を我が結社の一員に誘う為に来たの
お友達はどこにいるのかしら?
場所を教えてもらえたら、先生にありがとうね、と言ってその場所に向かうわよ
勿論向かう間に着替えなおすわ
[アドリブ連携歓迎です]
●『結社』のダークパピヨン
大通りには路面電車が走り、大勢の人でごったがえす世界一の大都市、帝都。700年の歴史を感じさせる煉瓦造りの街並みの中、ひっそりと佇む少女がいた。
黒髪の前髪を上品に揃えて黒い蝶の髪飾りを付けた、緑川・小夜(蝶であり蜘蛛であり・f23337)である。小夜はサクラミラージュで活動する盗賊、黒蝶の四代目にして、その技術や思想をすべて受け継いでいる。そのため、10歳に満たない少女とは思えない大人びた妖艶さを醸し出していた。
幻朧桜の花びら舞い散る中、金色の蝶の文様をあしらった上等な着物をひるがえし、小夜は人目のつかない路地裏へと姿を消していった。その路地は地元住民しか知らない抜け道なのであるが、黒蝶としての知識を持つ小夜にとっては広大な帝都も自分の庭同然。〆切から逃げる作家が通りそうな場所を推測して待ち伏せするのは朝飯前だ。
しばらくして。小夜の推測通り、その路地に身を滑り込ませる一人の人物が現れた。
漆黒の外套に身を包み、丸メガネをかけた和服姿の男性は、路地の影に身を潜め、大通りの様子を伺う。
「深淵先生はどこに行った!?」
「まだ遠くには行っていないはずだ、探せっ!」
追手が駆け去っていくのを確認し、男――深淵・万魔殿(アビス・パンデモニウム)は大きく安堵の息をつき、小声で高笑いをする。
「フハハハ! 我が未来視の力をもってすれば、追手を撒くことなど容易いことっ!」
未来視があれば、そもそも追われるようなことにはならないような気がするが。
だが、その万魔殿に路地の奥から声がかけられた。
「ウフフ、貴方が深淵・万魔殿ね」
声の主は、小夜である。
だが、小夜は先程の着物姿ではなく、その全身を黒い全身タイツで覆っていた。さらにその顔にはパピヨンマスクを装着している。
「むっ、我が未来視の魔眼でも捉えられぬとは、貴様、何者だっ!?」
「私はこの帝都を裏から支配する『結社』の一人、ダークパピヨンよ」
『結社』という言葉を聞き、万魔殿が驚きの表情を浮かべる。
「『結社』か。帝都の軍部要人や豪商たちも数多く在籍しているという、あの――!」
「……そ、そう。その『結社』よ。話が早くて助かるわ」
小夜が適当に言っただけの言葉に万魔殿は勝手に納得する。万魔殿にとって『結社』の存在は当たり前のもののようだ。
「で、その『結社』がこの俺に接触してきたということは、俺を『結社』の一員にするためか。確かに我が魔眼や封印されし左手の力が喉から手が出るほど欲しいのは理解できる。だが、この俺の力は強大すぎる。この力を世界を支配するのに使うわけには――」
「あ、安心して。結社の一員に誘いたいのは、貴方のお友達よ。――お友達がどこにいるか、教えてもらえるかしら?」
友達という言葉に、万魔殿がビクリと反応した。
「なにっ!? 我が同志を勧誘する――だと!? 同志の存在を見抜いたのは、さすがは『結社』の情報網と言っておこう。だが、彼女は『結社』には絶対に協力しない。彼女の目的を果たさせてやると誓った以上、俺は『結社』を敵に回しても戦い抜いてみせる!」
万魔殿は外套をひるがえして大通りへと駆け出していき――。
「ちょっと待って――」
それを追おうとした小夜は、自分が全身黒タイツにパピヨンマスクという格好であることを思い出し、慌てて着替え直してから大通りへと向かったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
大総・統
深淵を探してないけど帝都で一番高い所(凌雲閣)へやって来た大総・統は、こんな場所だからこそ捗るものがあると読書に勤しみます
フハハハ! 我が名は、世界征服を企む秘密結社オリュンポスが大総統!!
うむ、素晴らしい!
この場所こそ、我が覇道をはじめるには相応しい場所と言っても過言ではないな!
おっと、日記を落とした
落とした日記?は、大総統の妄想録が綴られた物
混沌・創世(ケイオス・ジェネシス)著
『グランドフォース・ディスティニー』
仲良くなったら、以前注目していた作家について語る
近頃の深淵先生の作品は、見るに堪えない!
まるで別人が書いたような出来だ!
かつて存在した深淵(アビス)よりいずる物は其処にはなかった。
鷹司・かれん
桐江くん(f22316)とペアで
人格:花音
「それではデパァトにいってみようか?」
万魔殿先生の特設コーナーがあるからね
〆切から逃げてても作家先生だ
自分の本やグッズの売れ行きは気になろうものさ
「そこに趣味の合いそうな若い娘がいれば、なおさらね?」
変装と演出も兼ねて、包帯で片眼を隠して
現場にて「くっ…僕の封じられた右目が疼く…感じるぞ、この本から大いなる力を…」などと大袈裟に演じてみよう(※演出お任せ!)
「きっと会えると思っていた。僕たちの出会いは、前世より導かれし魂の結びつきだとも」
作家先生に邂逅したら、中二会話で話合わせ
影朧の事聞きだすとしようか
「僕の魔眼は全てを見抜く…隠しても無駄だとも」
光満・桐江
かれんさん(f22762)の助手として行動
作家さんを捜索中、デパートの一角に
「中二病フェア」が開催されていているのを見て
人が多い所にやって来るかが不安ですが、ここの品を利用すれば
あるいは…?
と、かれんさんと相談しつつ
ここの品を利用しておびき出す作戦で行くことにします
となれば…「こんな事もあろうかと」!
そこに売られていた物々しい装丁の「黒歴史ノオト」を手に
筆跡から怪しく闇(のようなエフェクト?)が溢れる魔科学製のペン
「秘されし闇を記すモノ(ダークサイド・メッセンジャー)」で
今ここに闇が集う…!されどそれを恐れることなかれ…!
と書いていきます
作家さんが出て来たら、かれんさんとの会話を記していきます
●集う中二病たち
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む秘密結社オリュンポスが大総統!!」
帝都で一番高い12階建ての赤煉瓦造りの眺望塔の展望台で、大総・統(秘密結社オリュンポス大総統・f16446)が高笑いを上げる。
統の右目を隠す眼帯『カリプトラ・マティユ』と、左手に巻かれた包帯『血布封帯』から、彼が深淵・万魔殿の同類であることは間違いない。
「うむ、関東平野を見渡せるとは素晴らしい眺めだ! この場所こそ我が覇道を始めるに相応しい場所と言っても過言ではないな!」
軍服のような服の上に羽織った外套『グランドダークネスクローク』を展望台の風にたなびかせつつ、統は周囲の一般人の目も気にせず大声で言い放つ。
「さて、ここでゆっくり読書でも嗜むとしようか」
そう言って、懐からごそごそと万魔殿の著作を取り出した統は、ハッとした表情を浮かべた。
「我が日記が――無いっ!?」
一方その頃、鷹司・かれん(メイド探偵が見ています・f22762)と光満・桐江(生徒会の魔女・f22316)はデパートに来ていた。
かれんは華族の令嬢にして女給や探偵を営む才女であり、3人の人格をもつ多重人格者だ。メイド服を着た銀髪少女の瞳には、鋭い理性の光が宿っている。今は探偵の人格、花音が表に出ているのである。
デパートに来ようと言い出したのは、帝都で探偵をしている花音であった。
「デパァトの本売り場には、万魔殿先生の特設コーナーがあるからね。〆切から逃げてても作家先生だ。自分の本やグッズの売れ行きは気になろうものさ」
犯罪者の心理を解き明かすように花音はプロファイリングを披露する。
「なるほど、本当に『中二病フェア』が開催されてますね」
デパートの本売り場の特設コーナーを見て、かれんの助手として行動している桐江が納得の声を上げた。
桐江はセーラー服の上から白衣を着た個性的な格好で大きなカバンを持ってかれんに付き従っている。元々、桐江は生徒会長補佐の役割を与えられたバーチャルキャラクターである。こうしてかれんの助手をする姿が活き活きとして見えるのも不思議ではなかった。
「人が多いところに万魔殿先生がやってくるかは不安ですが、ここの品を利用すればあるいは……?」
「ふむ、桐江くん、何か思いついたようだね」
桐江は、かれんに向かってこくりと頷く。
【こんな事もあろうかと】で取り出したのは、桐江が研究している魔科学の結晶。怪しい闇のオーラに包まれたペンであった。
「こんな事もあろうかと、とっておきの品を作っておいたのです。この『秘されし闇を記すモノ(ダークサイド・メッセンジャー)』で中二的なことを書くことにより、中二力の高い相手を引き寄せることができるのです。あとは、ちょうどいいノートがあればいいのですが……。こう、まるで黒歴史が綴られたような物々しい装丁の……」
「そのようなもの、そうそう簡単には――」
周囲を見回したかれんの金色の瞳が、デパートの床に落ちている、まるで黒歴史が綴られたような物々しい装丁の一冊のノートに吸い寄せられた。
「……ありましたね」
「……あったな」
二人は、床に落ちていたノートを手に取った。
その表紙には、混沌・創世(ケイオス・ジェネシス)著『グランドフォース・ディスティニー』と書かれていた。
かれんと桐江は、恐る恐るノートを開く。――そこには世界征服やオリュンポスプロジェクト、グランドフォース、蓬莱計画などといった単語がびっしりと細かい文字で綴られていた。
ノートの内容を一瞥しパタンと閉じたかれんは、ノートの持ち主のプロファイリングをおこなう。
「これは恐らく、万魔殿先生と同じ系統の人物の持ち物だね。その中二力は、万魔殿先生と同等――いや、下手をするとそれ以上かもしれないね」
「それだけの品でしたら、『秘されし闇を記すモノ』も最大限の力を発揮できるはずです。ここはノートの1ページだけお借りしましょうっ!」
桐江は、『グランドフォース・ディスティニー』の空白ページに『秘されし闇を記すモノ』で文字を記していく。
『今ここに闇が集う……! されどそれを恐れることなかれ……!』
それは、ノートに凝縮された中二エナジーを触媒とし、周辺にいる中二力の高い人物を引き寄せる大規模魔術を発動させる。
そして、ノートから漆黒の光が溢れた――。
「フハハハ! 見つけたぞ、我が日記! さあ、それを返してもらおうか!」
デパートの本売り場に響き渡ったのは、統の高笑いだ。そう、まず現れたのは『グランドフォース・ディスティニー』の著者である混沌・創世(ケイオス・ジェネシス)こと、大総・統であった。
「どうやら、ノートの持ち主が先に現れたようだね。僕が時間を稼ぐので、桐江くんは作家先生が現れるまで儀式を続けてくれたまえ」
「はいっ、かれんさん、お気をつけてっ!」
ラスボスに挑むかれんを送り出すかのような声音で、桐江が悲壮な声をかけた。
かれんは、あらかじめ右目に巻いていた包帯を押さえながら演技を始める。
「くっ……僕の封じられた右目が疼く……感じるぞ、この本から大いなる力を……」
「ほう、お前も私と同じく邪気眼を持つものか。だが、そのような包帯程度で押さえられる邪気眼など、我が右目の力には及ばぬな。我が右目は、この専用の封印眼帯『カリプトラ・マティユ』でなければ抑えられないのだからな!」
統は右目のカッコいいデザインの眼帯型ゴーグル『カリプトラ・マティユ』を指し示す。――なお『カリプトラ・マティユ』は、ただの眼帯型ゴーグルである。効果はよく見えることだ。
「――くっ、しまった。僕としたことが不覚。まさか封印専用ゴーグルを用意してくる手練がいようとは……」
かれんは、がっくりとその場に膝を着きそうになる。
中二病同士の戦いとは、いかに相手よりもソレっぽいアイテムを用意するかが重要だ。その点では、全身中二病装備の統に勝てるものは、この場にはいなかった。
――否。
「ククク、笑止! その魔眼が最強だと? 眼帯による封印をせねば魔眼の制御もできぬようでは、アカシックレコオドを見通す魔眼を常時発動可能な俺の敵ではないな!」
突如、割って入ってきた声の主は、和服の上から漆黒の外套を羽織った丸メガネの青年。深淵・万魔殿(アビス・パンデモニウム)だ。
桐江の魔科学アイテムに引き寄せられ、このデパートに現れたのである。
こうして、万魔殿、統、かれんによる、中二病対決が幕を開けるのだった。
「我が放つ冥府の裁きは今放たれた!! 冥王鏖殺黒琉天破!!」
「我が右腕に封じられし邪竜よ、今こそ解き放たれよ! 邪竜獄炎咆!!」
「僕の魔眼は全てを見抜く……そのような攻撃は無駄だとも!!」
「お客さん、迷惑なんで、そういうのは外でやってくれませんか?」
「あっ、すみません、すみません」
店員に向かって謝る桐江に引きずられ、一行は場所を移すこととなった。
――そしてデパート内の喫茶店。
「いやあ、なんだ君たち、俺のファンならそう言ってくれればいいのに」
かれん、桐江、統は万魔殿と一緒にテーブルでコーヒーを飲んでいた。
まず、万魔殿に切り出したのはかれんだ。
「きっと会えると思っていた。僕たちの出会いは、前世より導かれし魂の結びつきだとも」
「ああ、我が瞳が見通すアカシックレコオドにも、我らの邂逅は運命だと記されている」
万魔殿も、かれんの言葉に大仰にうなずいている。
こうして万魔殿の信頼を得てから、かれんは本題へと切り込んでいく。
「ところで万魔殿先生、ゴオストライタアの執筆は順調かね?」
「なっ、何を根拠にそんな出鱈目をっ!?」
突然の指摘に万魔殿が狼狽するが、かれんは指摘の手を緩めない。右手の人差指を立てて冷静に指摘する。
「証拠は二つ。一つは〆切を過ぎているというのに、貴方が全く焦っていないこと。それどころか、逆に時間を稼ぐかのように出版社の人間の目にわざと触れるように動いているね」
続いて、かれんは二本目の指を立てる。
「二つ目が、万魔殿先生のその指だ。あれだけ大量の本を短期間で執筆しているなら、その指にはペンだこが出来ていて然るべきだ。だけど貴方の指は――綺麗すぎる」
慌てて両手の指を隠す万魔殿だが、その行動が、かれんの推理が的中していることを明白に物語っていた。
「言ったでしょう? 僕の魔眼は全てを見抜く……とね」
がくりと項垂れた万魔殿に、統も言葉を放つ。
「近頃の深淵先生の作品は、見るに堪えない! まるで別人が書いたような出来だ! かつて存在した深淵(アビス)よりいずる物が全く感じられないな!」
統が懐から取り出したのは、展望台で読もうとしていた万魔殿の著作。――万魔殿のデビュー作だった。
「私が一番好きなのは、荒削りだが情熱に溢れていたこの本だな!」
「それは――俺がまだ彼女に出会う前の俺の作品――!?」
かれんに論破され、統の言葉に心を打たれた万魔殿は、ぽつり、ぽつりと事情を語っていった。
万魔殿が語る言葉は、桐江によって記録され、他の猟兵たちにも情報共有されるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
(件の小説をパラパラと)――ぅゎぁ(いかにも中二病な内容に、正直嫌悪感を感じている)。
とりあえずUCでブーストしたうえで、【情報収集】でもしておきますか(ノートPCを開き――「あっ、そういえばこの世界、文明レベルが大正時代で止まっちゃってましたね」とか気づいたり)。
まずは出版社に立ち寄って、中山先生(あえて本名で言う)についてのあれこれや、立ち寄りそうな場所などについて聞いておきましょう。で、目星をつけたカフェーで待ち構えて、それっぽい恰好の人が現れたところで捕まえに行きましょうか。
※アドリブ・連携大歓迎です。
●ゲーム
「ここが出版社、ですね」
シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)は、深淵・万魔殿(アビス・パンデモニウム)――本名、中山二郎の本を出版している出版社の一つにやってきていた。
銀髪をツインテールにしてリボンで結んだシャルロッテは、リボンと同色のドレスに白のフリル付きエプロンを身に着け、首からヘッドホンを下げている。手に持っているのはバトルゲーマーにして電脳魔術士たるシャルロッテの仕事道具ともいえるゲーミングノートPCだ。凄腕ゲーマーとして活動するときの頼れる相棒である。
出版社に10歳の少女がいるのは不自然かもしれないが、いま、出版社は万魔殿を探すために、蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。誰もシャルロッテの存在に気を払っている余裕はなかった。
「深淵・万魔殿、ですか。ふざけたペンネームですけど、一体、どんな本を書いてるのでしょう」
シャルロッテは、出版社に置いてある深淵・万魔殿の著書の見本をパラパラとめくってみた。
「――ぅゎぁ」
その中二病全開な内容は、普通の感性の持ち主には理解できないものだった。
――これがブームになってしまっている現状は、影朧の力が相当大きく社会に影響していることを示している。この事件には意外と猶予時間は残されていないのだ。
「とりあえず、情報収集が必要ですね」
シャルロッテは【Hacker's Sense】を発動して、はたと気付く。【Hacker's Sense】はノートPCを使った情報収集を効率化するものだ。
「そういえばこの世界、文明レベルが大正時代で止まっちゃってましたね……」
シャルロッテの呟きの通り、この世界にはインターネットが存在しない。これではノートPCによる情報収集はできないということになる。
だが、諦めるのはまだ早い。【Hacker's Sense】は、情報の収集と暗号関連の能力を強化するものだ。
「おい、万魔殿先生の目撃情報はどうなった!?」
「銀座のカフェー、浅草の浅草寺、東京駅――その後は分かりません!」
出版社内に錯綜する情報。それは電子の海を介したものではないが、情報には違いがない。
「皆さん、中山先生の情報を全部わたしに伝えてください」
シャルロッテ――突如現れた10歳の少女の言葉に出版社の人たちは怪訝な表情をする。
だが、シャルロッテは自信に溢れた表情で人々を見回した。
「わたしに情報を伝えてくれれば、このゲーム、絶対に負けません」
そう、これは出版社の人々を混乱させるために、わざと目撃情報を流している中山二郎との情報戦という名のゲームだ。ゲームであればシャルロッテが負ける道理はない。
「銀座に浅草、東京――」
シャルロッテはノートPCに次々と目撃情報を入力していく。
そしてさらにハッキングと暗号技術を利用し、相手の狙いを読み解いていき――。
無慈悲な瞳に、一つの解を映し出した。
「ぼくからは逃げられない。次の出現地点は――新宿のカフェーだ!」
こうして新宿のカフェーに向かった出版社の人々によって、深淵・万魔殿が捕まったという報告を受けるシャルロッテだった。
――そして、捕らえられた万魔殿から、全ての真実が明らかにされたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『屋敷の秘された部屋へ』
|
POW : 壁や扉などの怪しい場所を片っ端から調べる
SPD : 家具や調度品に変わった所が無いか注意深く調べる
WIZ : 机や蔵書、生活の痕跡より推測して調べる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
深淵・万魔殿から語られた事件の真相は、猟兵たちの間で共有された。
事件のきっかけは一年前に遡る。
一年前。売れない作家であった万魔殿は、一人の作家の影朧の女性に出会った。
万魔殿と作家の影朧の間に取り交わされたのは、一つの契約。
万魔殿は影朧を匿い、影朧は転生できるまで作品を書き続けること。一定数の作品を書けば、影朧は転生できる――はずだった。
問題が起こったのは、一ヶ月ほど前。――影朧がスランプに陥って作品が書けなくなったのだ。これでは影朧は転生することができない。焦りはさらに筆を鈍らせ、ますますスランプが悪化するという悪循環に陥った。
これにより影朧の能力が暴走。影朧を匿っていた屋敷には数々の罠が設置され、万魔殿すらも近づけなくなってしまったのだ。
この事件を解決するために必要なのは、屋敷の罠を突破して影朧の元に辿り着くことと、影朧のスランプを解消することだ。
影朧は作品のネタが尽きてスランプになったため、作品のネタになりそうな派手な攻撃をすることでスランプから脱却させることができるだろう。
――そのためにも、猟兵たちはまず屋敷の罠を突破する必要がある。
●二章について
二章の目的は、影朧の能力が暴走して生じた中二病的トラップを突破して影朧の元に辿り着くことです。
屋敷には、ありとあらゆる中二病的トラップがありますので、プレイングにどのような中二病的トラップに襲われるかと、それをどう突破するかを書いていただければと思います。
トラップ内容お任せなどでもOKです。
シャルロッテ・ヴェイロン
(室内の様子を見て)うっわ、何ですかこのケオスは。相当拗らせちゃってますね、ここのオブリビオンは。
(ここでいきなりキャラ変化)
――っ、現れたか、冥府の底に引きずり込まんとする暗黒の軍勢が!(なんか影のようなものが部屋のあちこちからにじみ出てる)
だが甘いわ!その程度で我が電子の眷属(エレクトロレギオン)の進撃を阻むことはできんわ!!(と、全砲射撃を繰り出してたり)
(片付いたところで我に返り)
Σはっ!私としたことが、場の空気に呑まれてしまいましたか。
とりあえず(この場の被害は見なかったことにして)まじめに調査しましょう、えぇ。
※アドリブ・連携・エロイベント巻き込まれ大歓迎です。
緑川・小夜
[WIZ]
中二病的トラップ…中二病的トラップ!?
ま、まあいいわ。要は屋敷の罠を掻い潜って目標にたどり着く…盗賊の得意分野ですもの
屋敷の中を走っていくと、突然目の前に銃を女学生に突き付けた男が現れる
男の話を聞くと、彼はある崇高な目的の為にこの学校(?)を占拠したテロリストであり、この女学生はその人質である、と
そして女学生は何故かわたくしを同じ学校の生徒として認識して助けを求めている…
何がなんだかわからない…
と、とにかく助けておきましょう。【ダッシュ】【見切り】【残像】で一気に男に近づいて、【盗み攻撃】で銃を奪い、男にナイフをお見舞いして制圧。
女学生を救出完了よ
[アドリブ連携歓迎です]
●
帝都郊外にある古い洋館。そこが大作家、深淵・万魔殿(アビス・パンデモニウム)の仕事場にして、影朧を匿っている場所だ。本来であれば、影朧は洋館でおとなしく中二病な本を執筆しまくっている――はずだった。
だが、スランプに陥って本が書けなくなった影朧は、その体内の中二力を発散させることができない。いまや洋館は、影朧から溢れ出した禍々しいばかりの中二力のオーラによって覆われていた。いまにも中二力が具現化して侵入者に襲いかからんとしているのである。
この危険な屋敷に飛び込んでいけるのは、超弩級戦力である猟兵たちしかいないのだ!
●
洋館の廊下を緑川・小夜(蝶であり蜘蛛であり・f23337)が駆けていた。蝶をモチーフにした髪飾りで留めた長い黒髪と、金色の蝶をあしらった深緑の着物をはためかせながら、小夜は物音一つ立てずに屋敷内を走破していく。盗賊『黒蝶』の名を継ぐ少女にとっては、音も立てずに建物の中を動き回ることなど造作も無いことだ。例えどんなトラップがあろうとも、歴代の『黒蝶』の技術を継承した彼女に恐れるものなどない――ないはずだったのだが。
「中二病的トラップ……中二病的トラップ!?」
洋館内に渦巻く中二力から生み出される中二病的トラップは、さすがの『黒蝶』とて初めての体験である。
館の中でも一際、中二力が高い部屋の前で、小夜は一度足を止めた。
小夜は、美しく輝く金色の瞳で室内――応接間だろうか――を見渡しながら、深呼吸をして思考を整理する。
仕掛けられているのが中二病的トラップだとしても、盗賊『黒蝶』としてやることは変わらない。屋敷に仕掛けられたトラップを掻い潜り、隠されたお宝に辿り着くこと。それが自分の果たすべき仕事だ。
小夜は呼吸を整えると、先代から受け継いだ黒い蝶の刺青に意識を集中させる。一つ大きく頷いた小夜の表情からは、完全に迷いは消えていた。それは完全に『黒蝶』の顔であった。
そして、小夜が足音も立てずに応接間へと一歩踏み入れた瞬間。突如として部屋の空気がどんよりと重くなったような錯覚に陥り、小夜は『黒蝶』としての勘を頼りにとっさに身体を動かした。
大きく後方へと飛び退った小夜の眼前、応接間の中心に、いつの間にか目出し帽を被った軍服姿の男が姿を現していた。男は左腕で女学生を抱え込み、右手に持った銃を少女に突きつけていた。
「そ、そこのお方、助けてください!」
「え、ええと……」
銃を突きつけられた女学生から助けを求められた小夜。『黒蝶』の経験と勘をもってしても理解不能な状況に困惑の表情を浮かべざるを得なかった。
「うっわ、何ですかこのケオスは。相当拗らせちゃってますね、ここのオブリビオンは」
シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)が応接間に入るなり発した一言がこれである。シャルロッテは、エンタテイメント企業の社長令嬢だ。だがその一方、凄腕ゲーマーというもう一つの顔も持つ。
そんな彼女の目の前に展開されているのが、軍服姿の銃を持った男と、銃を突きつけられた女学生。そして女学生から助けを求められて困惑している猟兵の小夜という構図だった。
ゲームで様々な状況を経験してきているシャルロッテをもってしても、この状況には頭痛を感じるレベルだった。とりあえずシナリオライターを呼んでこいと叫びたい気分である。
困惑する小夜とシャルロッテを前にして、目出し帽の男が何かを叫び始めた。
「我こそは、帝都に真の平和をもたらす秘密結社の一員! 我らの要求を帝都の軍部に突きつけるため、この学校を占拠した! この女学生の命が惜しくば我らの要求を聞き入れよ!」
「そこのお二方、同じ学校の生徒として、どうか助けてくださいまし!」
銃を突きつけられた女学生が、小夜とシャルロッテの方に必死に助けを求めている。
「ああ言ってるけど、あの娘、お知り合い?」
「いえ、わたくしは存じ上げません……。そもそも、ここは学校ではないですし」
シャルロッテの問いに、小夜が首をふるふると横に振る。
「なるほど。なら、あれも影朧が作った『ゲーム』ってわけね。――あの人質の娘を助けるの、お願いできる?」
「はい。相手の懐から盗み出すことは得意ですので――」
シャルロッテと小夜は頷き合うと、同時に行動に移った。
小夜が地を蹴った瞬間、その姿が残像を残して消える。
「なっ!?」
目出し帽の男の目の前に一瞬で接近した小夜は、男の銃を思い切り蹴り上げる。
とっさに銃の引き金を引いていた男だが、その銃弾は天井を穿つだけだ。
その隙に小夜は、女学生を掴んでいる男の左手にナイフの一撃を食らわせた。拘束が緩んだところで小夜は女学生を奪い、その身体を抱えて地を蹴った。小夜は蝶のように優雅に舞いシャルロッテの元にひらりと着地する。
「人質の救出、これでいいかしら?」
「ええ、ナイスプレーね。あとはわたしに任せて。――FPSなら得意なの」
人質の救出がトリガーとなったのか、小夜とシャルロッテの前に、無数の黒い影が立ち上り、銃で武装した目出し帽の男たちが何十人と現れる。
それを見たシャルロッテはキャラが変わったかのようにゆらりと目出し帽の軍団に向き直る。
シャルロッテは左手に乗せたゲーミングPCのキーボードに右手を疾走らせた。それは『AliceCV』の異名を持つ凄腕ゲーマーとしてのキー捌きにして、その技を電脳魔術の域にまで高めたもの。
常人には見切れないほどの速度でキーを叩く音は、まるでテクノサウンドの音のように空間に広がっていき、現実空間を電脳によって侵食していく。
「現れたか、冥府の底に引きずり込まんとする暗黒の軍勢が! だが甘いわ! その程度で我が電子の眷属の進撃を阻むことはできんわ!!」
突如としてキャラが変わったようになったシャルロッテは、電子の眷属(エレクトロレギオン)を無数に召喚する。
電脳空間から実体化した電子の眷属は、その手に持った銃をターゲットである覆面の男たちに向けた。
「ファイア!!」
シャルロッテの合図とともに、眷属たちの銃が一斉に火を吹く。その銃弾は最初に出現した目出し帽の男の他に、後から出てきた目出し帽軍団、そしてソファや壁の裏に隠れている目出し帽たちも障害物ごと撃ち抜いていく。
「ふふふ、FPSならどこに伏兵がいるかもお見通しだ!」
電子の眷属たちが銃弾を撃ち尽くし、あたりに静寂が戻る。
そして、キャラがかわったシャルロッテに小夜がおずおずと声をかけた。
「え、えーと……」
「はっ! 私としたことが、場の空気に呑まれてしまいましたか。とりあえず、まじめに調査しましょう、えぇ」
シャルロッテは電子の眷属たちを電脳空間に送還し、屋敷の調査に戻ろうと先に進もうとする。
「あの、その前に、この穴だらけの応接間はどうすればいいのでしょう……」
小夜の指摘に、シャルロッテは全力で部屋の被害から目を逸らすのだった。
――なお、人質の女学生は、いつの間にか消えていたという。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リンネ・プラネッタ
中ニ病ねえ......。ま、常識人の僕には関係ないかな!
人捜しや失せもの探し、影朧退治ならこのシスター探偵リンネに任せたまえ!
1時間ほど主にお祈りして、推理力をアップさせてから屋敷に向かおう。真打ちは遅れて登場するものさ!
「人の世が続く限り、影朧もまた絶えぬが世の定め。帝都に謎がある限り、この僕が、全て暴いて見せよう!シスター探偵リンネ!見参!」
屋敷の窓をぶち破ってダイナミックに侵入、魔法少女っぽい決めポーズ!
(服装はいつも通りのシスター服、変身、というか着替えは自宅で済ませた)
屋敷のトラップは信仰心の剣(フォースソード)で壁とか床とかコンコンして探そう。
慎重に進んで行くよ。
※罠はお任せ
●シスターVS邪教団
中二力渦巻く屋敷を前にして、ザッと大地を踏みしめる少女が居た。
シスター服に身を包んだリンネ・プラネッタ(ロザリオの名探偵・f22933)は亜麻色の長髪をさっとかき上げると、宝石のような青い瞳を屋敷に向け吠える。
「真打ちは遅れて登場するものさ! 人捜しや失せもの探し、影朧退治ならこのシスター探偵リンネに任せたまえ!」
リンネは、三度の食事よりも謎と猟奇事件が好きなシスターだ。見た目は楚々とした修道女だが、事件に出会うとハイテンションな本性を現すのである。
なお、そんなリンネが何故、万魔殿の追跡に現れなかったかと言うと、【信仰の顕現(メイ・ザ・ゴッド・ビー・ウィズ・ユー)】で神に祈っていたからに他ならない。リンネが『世界がスリルとショックとサスペンスに満ちた楽しいものでありますように』と祈った時間に応じて、彼女の推理力がアップするのだ。
というわけで準備万端のリンネが自信に溢れた笑みを見せ屋敷の敷地内へと入っていく。
「中二病ねえ……。ま、常識人の僕には関係ないかな!」
神に祈る前に、自宅で魔法少女アニメの全話一気鑑賞をしていたリンネは、根拠もなく言い切ったのだった。
屋敷のリビング。そこにはトンガリ帽子をスッポリと首元まで被ったような、怪しい覆面の一団がいた。全員、白いローブに身を包み、いかにも邪教の信徒といった様相である。
そして、彼らが熱心に祈りを捧げる先には、一体の像が立っていた。
「おお、我らが神、サタン・クロース万歳!」
「サタン・クロース万歳!」
邪教の信者たちが称えるのは、ふさふさの髭を蓄え白いタキシードを着た男性の像だ。像には赤いサンタクロースの服が着せられており、柔和な笑みを浮かべていた。
像の前には邪教徒たちが用意したのか、鶏肉を揚げたものが供えられている。
「ククク、深き水底より発見されし我らが邪神の像よ、今こそ目覚め、我らの野望を成就せよ!」
ちなみに、深き水底とは、道頓堀の底のことらしい。
そんな、いかにも怪しげな団体が怪しげな儀式をおこなっているリビングに、シスター服姿の少女が窓をぶち破ってダイナミック突入してきた。両手で頭部をかばいながら窓ガラスを割った少女は、そのままぐるんと床で一回転。すたっと立ち上がると、右手をびしりと突きつけ、大声で叫ぶ。
「人の世が続く限り、影朧もまた絶えぬが世の定め。帝都に謎がある限り、この僕が、全て暴いて見せよう! シスター探偵リンネ! 見参!」
「くっ、我らの儀式を邪魔する気か!」
突然の乱入者に邪教徒たちが身構える。だが、リンネの動きは速かった。
「邪教徒の怪しい儀式は許すわけにはいかないね!」
その手に抜いた信仰心の剣を構えると、リンネは敵陣を素早く駆け抜けながら邪教徒たちを斬り裂いていく。斬り裂かれた邪教徒たちは悲鳴を上げながら黒い霧のような中二力に還っていった。邪教徒たちの中二力を、リンネの信仰心という名の中二力が遥かに上回っていたのである。
「僕は暴力は振るわない主義なんだけど、残念だったね。二つだけ例外があるんだ。それがオブリビオンと――異教徒さ」
なお、リンネの言う異教徒とは、彼女の神を信じない者のことであり、邪教徒に限らず幅広い対象を含んでいるのであるが、まあ、今回は邪教徒相手だったから良いことにしよう。
「よし、ここは解放だね。次に向かおう」
こうして、信仰心の剣で床をコンコンと叩きつつ、慎重に先に進むリンネであった。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
狭い隙間に入り込む能力で粒子間の隙間に入って地中を進んでたら謎の空間に飛ばされました。これはあれか仙人だか陰陽師だかのバトルであるなんちゃら陣的なトラップか。
とりま、過去視読心術遠隔視の複合的な透視の超能力で……まてよ?無意識とはいえこれ影朧が作ったならここでの行動は影朧の無意識化に伝わる?なら、特に必要ないけど中二的な演出しましょ。
精神の具象化で第三の瞳を開いて床に手をついて幾何学的な光の紋様が地面を伝っていく感じで。
「我が第三の瞳は過去も未来も人の想いさえもあまねくを見透す。攻略法を透視せよアストラルプロジェクションリーリング」
なんかそれっぽい名称つければ中二的よね。陣の抜け方透視してGO
●小悪魔少女VS結界陣
小悪魔のような表情を浮かべた少女、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)は、特殊な方法で屋敷への侵入を試みていた。
アリスは【不可思議星辰界(ワンダーアストラルワールド)】によって肉体をアストラル化して、地下水道から屋敷内に入ろうとしていたのだ。アストラル体であれば、地面や壁といった障害物を気にせずに進むことができる。相手も地中に罠を張ることはないだろうという目論みだ。
だが、地中を進むアリスのアストラル体に何かが干渉し、次の瞬間、アリスは異空間に囚われていた。
「あー、しまったわねー。普通だったらこんなところにトラップなんか仕掛けないと思っていたけど、相手は中二病だったわね。こういう見えないところにこそ凝ったトラップを配置するということね。これはあれね、仙人とか陰陽師とかがバトルで使うなんちゃら陣的なトラップね」
アリスを捕らえた異空間は奇門遁甲が奥義、石兵八陣。アストラル体で飛翔するアリスだが、どこまで行っても出口には辿り着かない。どうやら空間がループしているため、アストラル体でも抜け出すことができないようだ。
「ふむ、それなら透視の超能力で……」
脱出路を透視しようとしたアリスだが、そこで、はたと何かに気付いたように動きを止めた。
「このトラップが影朧から溢れた中二力が作ったなら、ここでの行動は影朧の無意識に伝わる? となると、中二病的な演出が効果あるかもしれないわね」
実際に伝わるかどうかはわからないが、やってみる価値はありそうだった。
アリスはアストラル体の額に第三の瞳を開く。――アストラル体の見た目が変わるだけなので、ただの演出だが。
そして、空間に光の線が走り、幾何学的な文様を浮かび上がらせていく。その文様は、なんかこう、特に意味はないのだが、すごく中ニ病っぽい文様だった。
アリスは目を閉じると、適当に考えたそれっぽい呪文を唱えていく。
「我が第三の瞳は過去も未来も人の想いさえもあまねくを見透す。攻略法を透視せよ。アストラルプロジェクションリーリング!」
アリスがその呪文を唱えた瞬間。
アリスを捕らえていた奇門遁甲の奥義、石兵八陣が音を立てて瓦解していき、アリスのアストラル体が正常空間に復帰した。
どうやら、結界を作っていた中二力を、アリスの呪文の中二力が上回ったため、結界が自己崩壊を起こしたようだ。
「まあ、無事に突破できたなら良しとしましょ」
再び、地中を進んだアリスは、やがて屋敷の地下室の一室へと到達したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鷹司・かれん
引き続き桐江くんと
人格も花音のまま
屋敷の罠か
この僕の灰色の…否、漆黒の脳細胞《ダークネス・ブレイン》にかかればどうという事はない
全て解き明かしてみせよう
…って、桐江くん、ずいぶんと扇情的な格好になっているね?
罠を警戒して進んでいくけれど
桐江くんの見えてはいけない部分が見えそうになり、それを気にしていたら罠を発動させてしまった
なんということ…これが僕に封じられた不幸を呼ぶ力《フォース》だとでもいうのかっ
僕を庇った桐江くんが、さらに恥ずかしいことになってしまい
そしてそれを助けて上着をかけてあげるのだけど、弾みでついつい手が柔らかい所へ
「おっと、すまない…すごい声が出たね?」
※トラップ内容はお任せ
光満・桐江
鷹司・かれんさん(f22762)の助手として一緒に行動
※罠はお任せします
中二病な罠の数々…どんなものがいつ来るか分かりませんから
素早く対応するために「力を得るには代償を」で…
漆黒のマントの下は素肌に直接ベルトを不規則に巻いた
色んな意味であぶない服装に!?
罠を警戒しながら進む中
かれんさんが罠にかかりそうに!
焦りながらもすかさず飛んでいき、かれんさんを庇います!
代わりに罠に引っかかった私は
動けなくされた上に、服装もピンチに!?
何とかかれんさんに助けてもらいますが
その際に肌に直接触れられちゃう事もあり
場所によってはいけない声が出ちゃうかも!?
で、でもかれんさんがあぶない目に合わなくて良かったですっ
●探偵と助手VS触手
「屋敷の罠か……」
洋館に足を踏み入れ、鷹司・かれん(メイド探偵が見ています・f22762)は慎重に廊下を進む。多重人格のかれんは、今もまだ万魔殿探しの時と同じ探偵少女の花音の人格のままだ。屋敷の廊下を歩くかれんから足音一つ聞こえないのは、探偵として隠密行動に長けた花音ゆえか、それともメイドとしての無駄のない所作を極めた花恋ゆえか、はたまた武術を修めた花凛ゆえか――いや、そのすべてが、かれんの身のこなしを生み出しているのだろう。
「どんな罠が待ち受けていようとも、この僕の灰色の……否、漆黒の脳細胞《ダークネス・ブレイン》にかかればどうということはない。全て解き明かしてみせよう」
そう呟きながら、ふふふ、とかれんは自信ありげに笑みを浮かべた。
かれんの呟きを聞いて、助手としてついてきている光満・桐江(生徒会の魔女・f22316)が不安げに声をかける。
「あの、かれんさん……。なんだか、この屋敷の空気に毒されてませんか?」
「そんなことはないさ。ただ、影朧が潜む罠満載の屋敷への潜入捜査。この状況に胸を踊らせない探偵がいようものか」
――明らかに、この屋敷の空気に毒されているかれんだった。
「中二病な罠の数々……どんなものがいつ来るか分かりませんし、かれんさんもこの調子ですから、ここは何が来てもすぐに対応できるようにしましょう」
桐江は【力を得るには代償を】を発動する。この能力は変身を行なうことで『混沌杖ケイアスエレイソン』の威力を引き上げ、さらに飛翔能力まで得られるという便利なものだ。
桐江の全身が光に包まれたかと思うと、身につけた白衣とセーラー服がポリゴンの破片となって分解される。桐江の身体のラインがあらわになるが、光を放つ素肌を見透すことはかなわない。
「桐江くんのこの身体……。花恋なら、また落ち込むところだね」
光に包まれた桐江のスタイルを見て花音が呟いた。桐江は意外とスタイルが良い。服の上からでは分からないが、こうして脱ぐとスタイルの良さは一目瞭然だ。
「あ、あんまり、じっと見ないでください……」
頬を赤らめた桐江の全身にポリゴンの破片が装着されていく。一から再構成されたポリゴンが桐江の身体を包み込み――桐江の全身から発せられていた光が消え去り変身が完了する。
桐江は漆黒のマントをバサリと翻す。大きく舞い上がったマントの下から覗くのは、桐江の素肌の上に巻かれた黒革のベルト。それも、胸や腰といった大事な場所だけを隠しつつ、あとは不規則に身体に巻きつけられただけのものだ。黒革ベルトの隙間からは桐江の白く滑らかな肌が覗き、胸元や太ももなどは大胆に露出していた。大変危ない格好である。
【力を得るには代償を】の欠点。それは、変身する格好が制御できないことだ。――さらに、何故か毎回サービスシーン向けの服装になるのである。
「ふ、ふえええっ!?」
「……桐江くん、ずいぶんと扇情的な格好になっているね?」
真っ赤になって身体を隠す桐江。かれんはそれを見て苦笑するしかないのであった。
変身によって恥ずかしい格好になってしまった桐江だが、飛行能力を得られたのは大きかった。地上を進むかれんと、天井すれすれを飛行する桐江とで、協力して罠を警戒しながら屋敷の中を進んでいく。
「それにしても、こうして見上げるのは、少し目の毒だね……」
頭上を見上げたかれんは、飛んでいる桐江を見上げる形になり、危うく彼女の腰に巻きつけられただけの黒革のベルトの奥を覗き込んでしまいそうになる。
「……どうしました、かれんさん?」
見上げられていることに気付いていない桐江が純真な表情で首を傾げてきた。その格好も相まって、桐江の表情の破壊力は抜群だ。
「桐江くん、少し待ち給え。ああ、僕は探偵だ。どんな時でも冷静であるように自分を律することができる。よし、落ち着くとしよう」
かれんは、深呼吸をしながら、よろめくように壁に手を着いて――カチッという音と共にドクロマークのついたボタンを押し込んでしまった。
「かれんさん、それ、罠のスイッチじゃーっ!?」
「しまった、僕としたことが――これが僕に封じられた不幸を呼ぶ力《フォース》だとでもいうのかっ!?」
突如として、かれんの周囲の壁が中二力によって生物のような材質に変化した。肉壁のようになった壁面の表面から浮き上がってくるのは無数の触手。それらが一斉に罠を起動させたかれんに向かって伸びてくる。
かれんは咄嗟に飛び退こうとするものの、足首が肉壁と化した床にめり込んでいて回避もままならない。迫りくる触手に囚われるのを覚悟し、かれんが目を瞑ったその時。
「かれんさんっ!」
飛行してきた桐江が、勢いよくかれんを突き飛ばした。靴が脱げてしまったが、かれんはなんとか肉壁ゾーンからの脱出に成功する。
「助かったよ、桐江くん……桐江くんっ!?」
「きゃ、きゃああっ!」
かれんを突き飛ばして罠から脱出させたはいいが、その代償として桐江が触手によって絡め取られていた。壁や床から伸びた無数の触手が、桐江の手足や身体に絡みつき、その身体を空中に磔にしているのだった。黒革ベルトを巻いただけの桐江の白い肌の上を、触手がうじゅり、と這い回る。
「いやぁ、放してくださいっ!」
必死に暴れる桐江だが、触手による拘束はその程度では緩まない。むしろ触手は桐江の細い両手と両足を強く引っ張り、少女を大の字に固定する。さらに胸に巻き付いた触手が桐江の豊かな胸を強調するかのように締め上げてくる。
「混沌杖さえあれば……」
武器を探す桐江だが、混沌杖ケイアスエレイソンは肉壁と化した床に沈んでいた。どのみち触手に磔にされた時点で、桐江が杖を拾うことは叶わない。
そして、さらに桐江を絶望の淵に叩き落とす音が聞こえてくる。じゅう、という何かが溶ける音と共に、桐江が身につけた黒革ベルトから白い煙が上がったのである。
「こ、これは……溶解液、ですかっ!?」
桐江が視線を落とすと、身体に巻き付いた触手の表面から粘液のようなものが分泌され、それと接触している部分の黒革ベルトから煙が上がっているのだった。背に羽織った薄手のマントは、溶解液によって徐々に穴だらけになっていく。厚い素材でできている黒革ベルトも少しづつ溶けていき、至るところで今にも千切れてしまいかねない状態だ。
そして、ついに桐江の胸に巻かれた黒革ベルトがブチッという音とともに千切れ――。
「おっと、僕の助手にそれ以上手を出さないでもらおうか」
かれんの掌に握られた拳銃『メイドの掃除用具』が火を吹き、桐江を拘束している触手たちを撃ち抜いていく。
「キミたちは《帝都のスイーパー》である僕が掃除をしてあげよう――得物がコルト・パイソンでないのはご容赦願おうか」
――かれんの中二力に満ちた銃撃により、実体化した触手は肉壁もろとも霧散した。
身体を磔にしていた触手が消え去ったことで、桐江の身体が落下を始めるが――それをかれんが両手で抱きとめた。
「おっと、桐江くん、大丈夫かい? 危ないところを助けてくれてありがとう」
「い、いえっ、かれんさんが危ない目にあわなくてよかったですっ」
かれんが桐江をお姫様抱っこする形で微笑み合い――かれんの指に、ぷに、という柔らかいマシュマロのような感触が伝わってきた。
「ふむ――この掌に吸い付くような感触。これは僕の推理によると――」
「ひゃ、ひゃあああんっ、かれんさん、どこ触ってるんですかぁっ」
胸を直接揉まれた桐江の悲鳴が、屋敷に響き渡るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『魔縁ノ作家』
|
POW : 〆切の無間地獄
非戦闘行為に没頭している間、自身の【敵の周辺空間が時間・空間・距離の概念】が【存在しない無間の闇に覆われ、あらゆる内部】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD : ジャッジメント・ザ・デマゴギー
自身の【書籍、又は自身への誹謗中傷】を代償に、【誹謗中傷を行った一般人を召喚、一般人】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【敵に有効な肉体に変質・改造し続ける事】で戦う。
WIZ : イェーガー・レポート~楽しい読書感想文~
対象への質問と共に、【400字詰原稿用紙を渡した後、自身の書籍】から【影の怪物】を召喚する。満足な答えを得るまで、影の怪物は対象を【永久的に追跡、完全無敵の身体を駆使する事】で攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
――魔縁ノ作家、ペンネームは閻魔(デビル)。
それが深淵・万魔殿(アビス・パンデモニウム)が出会い、匿っていた影朧である。
一定数の本を書くこと。それが、彼女が転生するために必要な条件だった。
万魔殿と出会った当初は、執筆ペースは順調だった。しかし、執筆を続けるうちに、彼女はスランプに陥ってしまった。
いま、少女の姿をした影朧作家、閻魔は、身体から中二力を放出しながらも、その存在を維持できないほどの窮地に陥っていた。
「嗚呼、書けない、書けないのっ! 〆切が――年末の〆切が目の前なのにっ!」
紙にペンを走らせては、それを丸めて放り投げる閻魔。このまま〆切を過ぎたら、骸の海に還ってしまいそうな勢いである。
「そう、刺激、刺激が足りないのよ! 目の前で誰かが派手な演出をしてくれればインスピレヱションが湧いてくるはずだわ!」
猟兵たちが作品のネタになりそうな派手な攻撃で戦ってあげると、閻魔のインスピレーションが刺激され筆が進むらしい。そうして本を書き上げれば、閻魔は無事に転生を果たすことができるだろう。
――まあ、閻魔のことなど気にせずに、無理やり倒してしまっても構わないが、できれば転生させてあげてほしい。
リンネ・プラネッタ
「君が、悔い改めるまで、殴るのをやめない!」
おのれ、一般人を盾にするとは卑怯な!だが、僕の秘めた真の力の前には、そんな小細工など無力さ!主よ、しばし目をおつむり下さい!今から着替えます!
マジカル・リンカーネーション!(魔法少女衣装に着替える)
マジカルシスター・リンネ見参!
破魔の力を込めた拳で一般人も影朧もまとめて殴る!
僕は影朧と異教徒以外には暴力は振るわない主義だが、信仰心があれば影朧なんかには操られないはずだから多分異教徒だろう!
我が心と行動に一切の迷い無し!全てが神の信徒としてふさわしい振る舞いさ!
※魔法少女衣装は別に真の姿ではありません。
シャルロッテ・ヴェイロン
(あまりの中二力の高まりを前にして、正直なところドン引きしている)
ぅゎ、確かにこれは、異常ってもんじゃないですね。
――まぁいっそ、「作者死亡につき、連載を終了させていただきます」てな感じのお詫び広告を掲載させてもいい感じですが(作家本人に対してそれは失礼である)。
まぁとりあえず、ロボット物のキャラを召喚してけしかけてみましょうか(その際、元になったゲームの設定を引き出して雰囲気を盛り上げてみる)。で、適度に内蔵兵器を【乱れ撃ち】や【一斉発射】させたりで蹴散らせてやりましょう。
※アドリブ・連携大歓迎です。
●凄腕ゲーマーと修道魔法少女
「ぅゎ、確かにこれは、異常ってもんじゃないですね」
ゲーム用ノートパソコンを片手に持ち、社長令嬢のシャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)は、影朧のあまりの取り乱しぶりにドン引きしていた。
見た目は大人しそうな文学少女風の影朧が、長く艷やかな黒髪を振り乱して悶え苦しんでいるのだ。それは誰が見てもドン引きする光景だろう。さらに影朧が苦しめば苦しむほど、その身体から漆黒のオーラ――中二力が立ち上ってくるのだ。
これはいっそ『作者死亡につき連載を終了させていただきます』とお詫び広告を掲載したり、『彼らの冒険はこれからだ』という締めの言葉で未完で終わらせてしまってもいいのでは――という考えがシャルロッテの頭によぎる。
だが、さすがにスランプに苦しむ影朧を放置するのも気が引ける。仕方なく、ため息をつきながら、シャルロッテは影朧、閻魔に向き合った。
「そうか、君が邪教徒たちの首魁だね。その禍々しいオーラ、そして閻魔(デビル)などという名前! 主に懺悔して悔い改めさせる必要があるみたいだね!」
ふわりと広がる亜麻色の髪をシスター服のベールから覗かせながら、リンネ・プラネッタ(ロザリオの名探偵・f22933)がビシリと閻魔を指差し、胸を張って堂々と告げる。その胸で光を反射するのはオブリビオンや異教徒を滅する力を持つ銀のロザリオだ。オブリビオンに対しては破魔の力を発揮し、異教徒――リンネの神を信仰しない者――に対しては破邪(物理)の力を発揮するスグレモノである。
今回、リンネが深淵・万魔殿と出会う機会がなかったのは幸いと言えよう。もし出会っていたら、即座に万魔殿は異教徒認定され破邪(物理)によって改心させられていたに違いない。
そんなシャルロッテとリンネの動向にも気付かないほど執筆に集中していた閻魔が、書き綴ったノートのページを破り捨てながら叫んだ。
「駄目だわ、こんなありきたりな展開では、読者が喜んでくれるはずがないもの!」
屑籠に投げ捨てられたページから漆黒の中二力オーラが滲み出し、空間に溶けていく。こうして屋敷の中二力密度が高まり、万魔殿すら近づけない魔窟と化してしまったのである。このままでは、中二力のオーラが帝都全体を包み込むという最悪の事態に発展しかねない。
「こ、こういう時はファンレタアを読んで心を落ち着かせましょう」
一旦筆を置いた閻魔が文机の抽斗から取り出したのは、何通かの手紙。
「万魔殿様は、わたくしがファンレタアを読もうとすると、お止めになるから――」
そこまで聞いたところで、シャルロッテとリンネに嫌な予感が走る。――彼女にあれを読ませてはならないと。
だが、止めに入るよりも早く、閻魔は手紙に目を通してしまった。
「えーと、なになに。『拝啓、深淵・万魔殿殿。貴殿の著作『静まれ我が右腕よ』を拝読いたしました』ですか。ふふ、わたくしが万魔殿様の名前で書いた本に対する感想ですね」
にこにこしながら手紙を読み進めていく閻魔。その表情が、次第に険しいものに変わっていった。
「『――というわけで、貴殿の著作には文学性が欠片も感じられない』ですって!? 貴方たちにわたくしの作品の良し悪しが分かるとでも!?」
――閻魔は勝手に手紙を読み、勝手に怒り狂っていた。
「あー、まぁ、あの本に対してなら、マトモな感性の持ち主なら、そう思うんじゃないですか? ――本のジャンルがどうこうじゃなくて、作者の実力として」
件の本に目を通したことのあるシャルロッテが、公平な視線で意見を述べる。
「ええ、やはり邪教徒の首魁の記した経典など世に受け入れられるわけがありません! すぐに焚書すべきかと!」
閻魔の本を異教徒の経典――ある意味正しいかも知れない――と決めつけたリンネも、シャルロッテの意見に同調した。
「わたくしの著作を認めない人間は許しませんわ!」
閻魔の身体から立ち上る漆黒のオーラが集まり形をとっていく。それは何人もの漆黒の人間の姿になると、シャルロッテとリンネの前に立ち塞がった。漆黒の影、それは閻魔の被害妄想が中二力で生み出した、彼女の本を批判する文学評論家たちの影である。
「さあ、わたくしの本を理解できない者同士、争い合いなさい!」
閻魔の指示と共に、文学評論家の影たちがペンを手にして立ち上がった。彼らの武器は言論。すなわちペンである。このペンで突き刺して攻撃してくるのだ。刺さればきっと痛いに違いない。
「はぁ、とりあえず、この世界に存在しないキャラクターを召喚して、インスピレーションとやらを刺激してあげましょうか」
シャルロッテはゲーミングノートPCに指を走らせる。その表情は、先程までのお嬢様然としていたものとは対照的に冷静沈着なものになっている。プレイヤーネーム『AliceCV』という凄腕ゲーマー。それがシャルロッテのもうひとつの顔だ。
「現れろ、ぼくの愛機!」
ノートPC上で起動したゲーム画面上でキャラクターを選択。エンターキーを押すと、ノートPCの画面からポリゴンの欠片が飛び出してシャルロッテの眼前で再構成されていく。それこそシャルロッテが【バトルキャラクターズ】でゲーム内から実体化させた人型戦闘ロボットだった。――ゲーム内設定では全高20メートルの設定なため、屋内に入れるようにサイズを人間サイズに縮めているが。
「この機体はゲームの中でも随一の火力を誇る殲滅型のロボット兵器。ただ、その圧倒的火力の代償として、機動力はないし、弾薬に被弾すると誘爆で即ゲームオーバーという玄人好みの機体なんだ」
シャルロッテの言葉通り、実体化したロボットの全身には多数のミサイルランチャーやレーザーガトリング、バズーカ砲などが搭載されているが、多くの装備を積んでいるため、鈍重そうな印象を与える。また、その弾薬は剥き出しですぐに誘爆しそうであった。
「自ら弱点を晒すとは、我ら文学評論家も舐められたものだ。弱点が分かれば、それを指摘することなど評論家として容易! その余裕、後悔するのだな!」
文学評論家の影たちはロボットに向かってペンを向けるとそれを一斉に投擲した。ロボットに向かって高速で飛翔するペン。その先端は標的に命中すると弱点を指摘し炎上させる効果を持っているのだ。
「『AliceCV』として相手をする以上、ぼくに負けはない。――さあ、ゲームを始めようか」
不敵に笑うシャルロッテの指がノートPCの上を滑る。
すると、その動きに応じ、ロボットのアクチュエーターが駆動。わずかに機体を揺らした。
――迫りくる無数のペンは、そのわずかな動きだけで全てが回避され、後方へと飛び去っていった。
「莫迦なっ、我らのペンによる指摘を全て躱しただとっ!?」
「1フレームを見切るぼくの目には、そんな飛び道具、止まっているも同然だ。コントローラーを使うまでもない」
この世界の人間の影である文学評論家たちは知る由もないが、シャルロッテは今の一瞬の機体操作をコントローラーではなくノートPCのキーボードでやってのけたのだ。その技術はまさに神業の領域に達していた。
一方、リンネにも文学評論家の影たちが迫っていた。
「神とは、全ての存在に等しく幸福を与えるものである! そして修道女とは神に仕える存在! よって修道女である汝は、我ら文学評論家を害することはできない!」
文学評論家たちは三段論法を用いてリンネの信仰心を突いてきていた。リンネが修道女である以上、文学評論家たちを傷つけられないと論破することにより、リンネの攻撃を封じようという策である。
「ああ、僕は影朧と異教徒以外には暴力は振るわない主義だ。確かに君たちが一般人であるなら、僕は危害を加えることはできない――」
信仰を持ち出されるとさすがのリンネも反論することができないのか、胸元の銀のロザリオをぎゅっと握りしめ顔を伏せる。それは神に祈りを捧げるかの如きポーズだった。
「――だけど、それは君たちが異教徒でなければの話さ」
顔を上げ、文学評論家たちを見つめたリンネの表情は、異教徒を討ち滅ぼす決意に満ちていた。
「ば、莫迦なことを言うな! 我々が異教徒などと何を根拠に――」
「主への信仰心があれば影朧なんかに操られないはず! だけど君たちは影朧の言いなりだ! よって異教徒に違いない!」
リンネ流三段論法によって、リンネは文学評論家たちの論理を打ち破り、異教徒認定をおこなった。異教徒が相手であれば、リンネに迷いなどありはしない。
「な、なんという強引な論理――!?」
「我が心と行動に一切の迷いなし! 全てが神の信徒としてふさわしい振る舞いさ!」
神への祈り――これから異教徒を殲滅することに対する懺悔を終えたリンネが、ロザリオを掲げて祈りの言葉を紡いだ。
「主よ、しばし目をお瞑り下さい。今から着替えます! マジカル・リンカーネーション!」
リンネの全身が光の粒子に包まれて全裸になる。
だがそれもわずか0.05秒の間だ。
一瞬の後には、【魔法少女探偵(マジカル・リンカーネーション)】によって修道服ベースの魔法少女ドレスに着替えたリンネがそこに立っていた。
「マジカルシスター・リンネ見参!」
破魔の力を宿し神々しい光を放つ魔法少女衣装のシスターがポーズを決めた。
「近くの相手は僕に任せたまえ!」
「ああ、ぼくは残った敵を殲滅しよう」
魔法少女の格好をしたリンネの言葉に、ロボットを操るシャルロッテが返す。
魔法少女衣装の裾をひるがえしながら文学評論家たちに接近したリンネは、その拳に破魔の力を集中させた。
「君が、悔い改めるまで、殴るのをやめないッ!」
「な、なにをするだぁー!」
光り輝く拳でリンネが文学評論家を殴ると、中二力によって生み出された評論家は浄化され消滅していく。
修道服風魔法少女によって文学評論家たちが次々と消滅させられていった。
「僕の秘めた真の力の前には、君たちの小細工など無力さ」
「だいたい、近くの相手は片付いたようだ」
シャルロッテはノートPCの画面上で、残った文学評論家たちをマルチロックオンしていく。
「全武装、一斉射!」
シャルロットが複雑な隠しコマンドを入力することで、ロボットはミサイルハッチをフルオープンする。
そしてロボットから一斉に発射されたミサイルはターゲットである文学評論家たちへと殺到し、爆発とともに中二力へと還していった。
「『AliceCV』を相手にしたことを後悔するのね」
八重歯を見せて不敵に笑うシャルロッテだった。
「機械仕掛けの巨人!? 魔法少女!? なんて斬新な題材かしら! これは筆が進むわっ!」
シャルロッテとリンネの戦いを見ていた閻魔は、瞳を輝かせると、猛然とノートに向かって筆を走らせはじめたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
緑川・小夜(f23337)ちゃんと怪盗コンビとして。ダークワプスと名乗る。
精神世界なので私のイメージがダイレクトに反映されるのを利用して小夜ちゃんの変身シーンを華麗に演出。
小夜ちゃんが蝶仙人なので私は蜂仙人に変身☆迷宮内の肉体は端末なのでその辺は自由。ワプスナイフ(冷却ガスで瞬間冷凍して粉砕する実在のナイフ)から発想を得た氷のレイピアも作成。
小夜ちゃんが鱗粉を撒いた所にレイピアを一閃、鱗粉を核に結晶化して鱗粉の効果を保ったまま瞬間冷凍するダイアモンドダストに、という感じの合体技を披露するわ。
魔法少女の変身と宝石の如く煌めく合体ロマン技、これが私達の回答よ、ご満足頂けたかしら?
緑川・小夜
[WIZ]
アリスお姉様と怪盗コンビとしてダークパピヨンを名乗ります
ゴーストライターさん…貴女の悩み、盗んであげるわ。闇の怪盗であるわたくし達がね!
そうしてへその下に手を差し込み、UCを発動。お姉様のおかげでいつもより派手に仙人へと変身完了!
怪盗ダークパピヨン見参!
設定が一章と違う?設定なんてすぐに変わるものよ!
敵のUCで出てきた怪物に、鱗粉を大量に出して、ダークワプスに変身したお姉様との合体攻撃をお見舞いするわ!ゴーストライターには当てないように気をつけてね
この技に名前をつけるなら…ダイアモンドミラージュかしら
さあ、貴女の糧になったかしら?
[アドリブ歓迎です]
●怪盗コンビ現る!
「うふふ、捗る、捗るわ!」
ユーベルコードを使った猟兵のバトルを見たことによって、閻魔は猛然とノートに筆を走らせていく。鬼気迫る表情は、文学系少女の影朧とは思えない凄まじいものだった。
――これで無事に転生してくれるだろうか?
猟兵たちが固唾を飲んで見守る中――。
「駄目だわっ! この敵では派手な技を使う主人公たちの前で霞んでしまう! 魅力的な悪役あっての主人公たちの活躍だというのに!」
閻魔は再び長い黒髪を振り乱して筆を止める。
著作の敵キャラにダメ出しする前に、まずはこのシナリオのボスであるお前がシリアスになれという声が聞こえた気がしたが、きっと空耳だろう。
「そういうことなら!」
「ええ、私たちが適任ですわね、アリスお姉さま!」
ざっ、と地面を踏み鳴らして前に出たのは、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)と緑川・小夜(蝶であり蜘蛛であり・f23337)の二人の少女だ。
小悪魔的な妖しげな笑みを浮かべるゴスロリ服少女のアリス。
大人しく清楚そうな黒い長髪に和服を着て可憐に微笑む小夜。
完全に対照的な二人だが、その呼吸は驚くほどシンクロしていた。
「貴女方が、私のインスピレヱションを刺激してくれるというの? なら、この原稿用紙に私の求めるものを書いてごらんなさい!」
影朧の手から放たれたのは、400字詰めの原稿用紙の束だ。
さらに閻魔は、机の上から手に取った著作『静まれ我が肉体に封印されし地獄の獣よ』を開く。
閻魔の手によって開かれた書籍から影の怪物が飛び出し、アリスと小夜の前に立ちふさがった。
「ふうん、その怪物相手に私たちの力を見せつければ良いわけね」
「いきましょう、お姉さま!」
アリスと小夜が顔を見合わせると、強く頷き合う。それはまるで、長年共に戦ってきたかのような強い絆――あるいはそれ以上の関係性を感じさせた。
「小悪魔×和服少女の姉妹百合本……これだけでも一冊書けそうだわ!」
別方面の本のやる気を出してしまった閻魔だが、年末のお祭りで申し込んであるブースは全年齢対象だ。そっちの本を書いても出せないから転生には繋がらないのだ!
「それでは、わたしの真なる夜(デモン)の中にご招待よ」
【アリスの不可思議迷宮(ワンダーラビリンス)】の発動とともに、空間が変異していき真なる夜(デモン)に包まれる。そこはアリスの精神世界となっている迷路だ。この内部ではアリスのイメージが現実のものとなる。
「というわけで、蜂の仙人、怪盗ダークワスプ、参上よ☆」
空間内ではアストラル体となっているアリスは、その外見を自在に変化させることができる。氷のレイピアを片手にポーズを決めていた。
一方の小夜も変身をおこなう。
「蛹を破り蝶は舞う……」
蛹――それは蝶が羽化する前の準備期間。
そう、今の小夜はまさに蛹だった。いま、アリスのイメージを具現化するこの世界で、小夜は蛹から蝶に生まれ変わるのだ。
突如、小夜が着ている漆黒の着物が粉々に破れ、宙に舞った。舞い散る黒い布片の中、小夜の白い裸身があらわになる。そして布片が小夜の身体に纏い付き、衣装として再構築されていく。
それは、身体にピッチリと張り付くような漆黒の衣装だ。
そして最後に衣装の腰の部分に手を入れて、蝶を象った仮面を取り出し――。
「パピ! ヨン!!」
掛け声とともに仮面を装着して変身完了だ。
「蝶の仙人、怪盗ダークパピヨン見参!」
【自己改造術「羽化登仙・改」】により変身した小夜――いや、ダークパピヨンは、背中に生えた蝶の羽を震わせポーズを取った。
「わたしたちが帝都を騒がす悪の怪盗――」
「その名も――」
「アリスと小夜ちゃん!」「小夜とお姉さま!」
「「ゴーストライターさん……貴女の悩み、盗んであげるわ。闇の怪盗であるわたくし達がね!」」
「いい、いいわあ! その変身シーン! それに噛み合わない初々しい決め台詞! これは捗ってきたわよお!」
なんだか主も含めてテンションがおかしくなってるのを見て、影の獣が困惑していた。
だが、仕事熱心な影の獣は、当初の命令通り二人の怪盗を攻撃しようと襲いかかる。
「さあ、小夜ちゃん、敵は弱ってるわ! 必殺技で止めよ!」
「ええ、厳しい戦いでしたが、これで決めてみせますっ!」
「ああ、死闘の果ての必殺技! これこそ変身少女バトルものの王道よねぇ!」
え、まだ戦ってないのに、なんで自分、瀕死になったことにされてるの? と首をかしげる影の獣。
だが、ノリノリなアリスと小夜と閻魔は待ってはくれなかった。
「このダークパピヨンの鱗粉、受けてください!」
小夜の羽から触れたものを溶かす鱗粉が放たれ――。
「レイピアをお見舞いしてあげましょう!」
アリスの氷のレイピアが一閃。鱗粉を瞬間冷却し、それを氷の結晶に閉じ込めた。
「――いえ! あれは氷の結晶ではないわ!? 蝶!? 蝶の形をした結晶だというの!?」
「うけてみなさい! わたしと小夜ちゃんの必殺技――」
「わたくしとお姉さまの合体技――」
「ダイアモンドダスト!」「ダイアモンドミラージュ!」
放たれた冷気に閉じ込められた蝶の形の結晶となった鱗粉は闇の獣に襲いかかり、それを倒すことに成功したのだった。
「どう、ご満足いただけたかしら?」「さあ、あなたの糧になったかしら?」
「ええ、すっごくためになったわ! ありがとうっ!」
こうして、ものすっごい勢いで執筆を再開する閻魔だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鬼鼓・夜行
敵役が必要かの?
ならば、妾の百鬼夜行はいかがかな?
ふむ、確かに妖怪を題材にした百鬼夜行であるならばありきたりじゃのう、じゃが、猟兵となり異世界を渡れるようになった妾の……何?そっちの異世界の方が気になるじゃと?しかたないのぉ、まずはヒーローズアースと言うてじゃな、妾達猟兵と影朧達との戦争があったのじゃ。(かくかくしかじか)
と、いうわけでじゃな、例えばこのヒュドラ。いくらでも再生する九頭の頭に神さえ殺す猛毒の持ち主じゃ。ふむ、そんなのよりフォーミュラとその幹部が気になるじゃと?流石に制御できぬゆえ、ああ、わかったわかった。隔離空間能力持ち達に頑張ってもらおうかの。劣化しとるがそこは許されよ。
蒼汁之人・ごにゃーぽさん
バージェス生物群。古代地球のカンブリア期にカンブリア大爆発と呼ばれる多様な生物の原型が生まれた進化の奇跡。その中の葉養生物の一種オウァティオウェルミス・クリブラトゥスを屋敷の天井に届かんばかりのサイズでワンダフルライフ♪再現。知らない人が見たら邪神認定確実のコレなら中二魂を震わせられるでしょ?ダメ?
ならば戦慄の蒼汁で脳に栄養補給だ。自動給仕型万能栄養補給霊薬のこれならバッチリさ☆
なお、味は宇宙的狂気なものだが。慣れないように毎秒違う味で気絶や狂気に逃げることもできないよ☆どうだい?中二魂が刺激されるだろう?
●二人の悪魔
「うふふ、うふふふ、執筆が捗るわっ!」
閻魔はハイテンションになりつつ、高速で原稿用紙に筆を走らせていく。そして、机の上の飲み物を一口飲み――ゲホッ、と吐き出した。
「な、なによこれっ!?」
閻魔が口に含んだものは、宇宙狂気的な味のするドリンクだった。それも毎秒味が微妙に変化していき、味覚が味に慣れることを許さない。さりげなくこんな飲み物を机に置いておくなど、麦茶の瓶にめんつゆを入れておくのが可愛く見えるほどの悪魔の所業である。
「せっかく脳の栄養補給のために蒼汁(あじゅーる)を用意してあげたのに、吹き出すなんて酷いなぁ」
謎の液体を吹き出した閻魔に向かって、蒼汁之人・ごにゃーぽさん(偏在する混沌の媒介・f10447)が文句を言う。ごにゃーぽさんの本体はモノクル型のヒーローマスクだ。それを装着したフェアリーが依り代であり、そのフェアリーはハルキゲニア型ペットロボットに乗っているというカオスっぷりであった。
「まったく、騒がしいのう。そんなに創作意欲を掻き立てるものが欲しければ、妾の百鬼夜行はいかがかな?」
そこに現れたのは、鼓の形をした悪魔召喚装置に乗った少年、鬼鼓・夜行(淫豪百鬼・f23582)だ。両目を眼帯で隠し髪を長く伸ばした夜行の姿は、時に女性に見間違えられるほどだ。その夜行の正体は、執筆した作品の妖怪変化や怪異に変異する怪奇人間である。
夜行の作品、それは『淫魔百鬼夜行抄』という長編シリーズだ。しかし、売れない文豪の夜行のことを知っているのは、帝都広しといえども相当コアなファン程度のもので――。
「きゃーっ、もしかして、鬼鼓夜行先生ですかっ!? 私、先生の『淫魔百鬼夜行抄』のファンなんですっ! サインくださいっ!」
黄色い声をあげて夜行に色紙を差し出す閻魔。どうやらコアなファンがこんなところにいたようだ。
「おお、まさか妾のファンがおるとは……」
夜行は、まんざらでもない表情で色紙にサインを書いて、閻魔に手渡した。
閻魔は色紙を大事そうに受け取り、そそくさと神棚に祀りひとしきり拝むと、改めて夜行に向き直る。
「夜行先生、私の悩みを聞いてくださいませんか? 実は、ここのところ、筆が全然進まなくて……」
閻魔は冷静そうな文学少女の表情に戻ると、夜行に対して深刻な顔で相談を始めた。
「うむ、なるほどのう。要はアイディアが沸かなくなってスランプに陥っておるのじゃな。ならばここは猟兵となって異世界を渡れるようになった妾の経験を語るとしようかの」
「い、異世界ですかっ! 夜行先生のそのご経験、ぜひ聞かせていただけないでしょうかっ!」
夜行の言葉に閻魔は目を輝かせる。異世界の冒険譚。それは閻魔がスランプを抜け出すのには最適な話題であろう。閻魔は、夜行が語る異世界の話に引き込まれていく。
「という戦いが異世界であったのじゃよ」
「そのオブリビオンフォヲミュラとかいう存在、ぜひ見てみたいですっ!」
夜行の話を興味深く聞いていた閻魔が、きらっきらの瞳で夜行に嘆願する。
「うーむ、さすがの妾でも、あれらを召喚することはできんのう」
「話は聞かせてもらったよ! そういうことならボクにお任せだね♪」
話を聞いていたごにゃーぽさんが胸を張って会話に割り込んできた。
「ボクの【ワンダフルライフ♪】なら、実物を模した偽物を作り出せるのさ☆ これでもオブリビオンフォーミュラとは戦ってるからね。それを再現することくらい簡単さ♪」
「おお、本当ですか! それは、ぜひ見てみたいですっ!」
蒼汁の恨みも忘れ、閻魔はごにゃーぽさんにオブリビオンフォーミュラの姿を見せてほしいと頼み込んだ。
「よーし、任せて! ごにゃーぽ☆」
ごにゃーぽさんが【ワンダフルライフ♪】を発動させ――判定結果は苦戦となった。
「失敗しちゃった♪」
発動した【ワンダフルライフ♪】は、オブリビオンフォーミュラではなく、その最も得意とするもの――古代地球のカンブリア期にカンブリア大爆発と呼ばれる多様な生物の原型が生まれた進化の奇跡を再現する。葉養生物の一種オウァティオウェルミス・クリブラトゥスが屋敷の天井に届かん限りのサイズで召喚された。
まるで邪神のようなその姿を見た閻魔は――。
「なるほど! これがオブリビオンフォヲミュラ! なんと禍々しい姿をしているのでしょうか!」
すっかりそれがオブリビオンフォーミュラであると誤解し、インスピレーションを高めていく。
「なるほど、これなら書けそうですわっ!」
早速、机に向かう閻魔。
――果たして、この作品はどういう方向に向かうのか。それは誰にも分からなかった。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
鷹司・かれん
引き続き桐江君と
人格は花音
「目覚めよ、封印されし無限の闇《インフィニット・ダークネス》」
中二病っぽくポーズを決め
苦しみながら手袋を外し、黒い霧が溢れる…ような演出でオルタナティブダブル
「この闇…深淵の邪悪《アビス・イービル》は、僕にも制御できない…見境なく暴れてしまう…」
(俺はそういう扱いかよ?)(協力したまえ)
狂乱して銃を乱射し暴れる悪の化身(花凛)
…を桐江君の機械で僕と融合させる(分身解除)
「この闇は放てば暴れるだけですが…取り込めば私の力を高める触媒になるのです」
ここで人格も花恋に
静かな威圧感をもって戦いましょう
「ここからが本当のメイド探偵の力です」
(衣装に気付かず)
…こんな感じかしら?
光満・桐江
引き続き、鷹司・かれんさん(f22762)と
ここは閻魔さんが転生できるよう、
協力してネタになりそうな事をしていきましょうっ!
と、かれんさんがUCで分身したら
(事前に打ち合わせた通りですが)片方が暴れだしました!?
ここはもう1人のかれんさんと協力して止めないと!
こんな事もあろうかと、究極合体用アイテム
(本当の効果は、合体じゃなくて、中二病な服装に変えちゃう物)
「交差融合する光と闇(クロスオーバー・フェイト)」
の2つのうち1つをかれんさんに渡し
もう1つを暴れるもう1人のかれんさんに、混沌杖で撃ち込みます!
そして中二病な服装になったかれんさんを見て
ぶっつけ本番ですが、上手くいきました…!
と安堵します
●光と闇
「『筆舌に尽くしがたい形相のオブリビオンフォヲミュラ。その魔手が帝都に伸び――そのまま帝都は滅んだのだった』って、これでは悲劇ではないですかっ!」
自分で書き進めた原稿を閻魔はビリビリに破り捨てた。
どうやら、あまりにオブリビオンフォーミュラ(?)の印象が凶悪すぎたため、それを倒す展開を思いつけないようだ。
「こ、これは、なんとかオブリビオンフォヲミュラを倒せる主人公たちを考えなければ――」
再び頭を抱える閻魔だった。
その様子を見た鷹司・かれん(メイド探偵が見ています・f22762)が不敵に笑う。華族令嬢にして多重人格者のかれんだが、今は中二病気質の探偵娘、花音が主人格となっている。
「なるほど、今回の事件は犯人を捕まえても解決しないわけだね。ならば、僕と桐江君が一肌脱いで事件解決に協力するとしようか」
「はい、花音さん。サポートは私にお任せくださいっ」
今回、花音の助手として同行している光満・桐江(生徒会の魔女・f22316)が自信をもって頷く。桐江の手には、怪しげな金属光沢を放つ二つの腕輪が握られていた。
花音と桐江は閻魔の状況を聞き、予め作戦を練っていたのである。この作戦であれば、閻魔に最強主人公のインスピレーションを与えることができるだろう。
花音は、ざっ、とオブリビオンフォーミュラ――という設定の葉養生物――の前に立ちはだかる。そして怜悧な表情で厳かに言葉を紡いだ。
「目覚めよ、封印されし無限の闇《インフィニット・ダークネス》」
バッと右手を天に掲げたかと思うと、花音は苦しみながら手袋を外していく。震える手によって外される手袋。手袋によって隠されていた部分から、この世界を絶望に染め上げるかのような漆黒の霧が溢れ出す――という演出で花音は【オルタナティブ・ダブル】を発動した。
「この闇……深淵の邪悪《アビス・イービル》は、僕にも制御できない……見境なく暴れてしまう……」
花音の身体から溢れ出した闇は、人型をとって実体化していく。それは花音とそっくりの姿――実際はオルタナティブ・ダブルによって実体化した第三人格の花凛――となると、苦しげに呻いた。
「ぐぅうう……」(訳:って、俺はそういう扱いかよ!?)
「くっ、深淵の邪悪よ……! なんとしても制御してみせるさ……」(訳:花凛、協力したまえ)
なんとか花音によって制御された花凛は、呻き声を上げて暴走しながら、二丁の軽機関銃を乱射する。
オブリビオンフォーミュラ――という設定の葉養生物――に銃弾の雨が命中するも、その異形には効果があるようには見えなかった。
「そんなっ、花音さんが暴走させた力でも、オブリビオンフォーミュラには通用しないんですかっ!?」
暴走した花凛の攻撃が効かないのを見て、桐江が――打ち合わせ通りに――驚愕の声を上げる。
振り下ろされるオブリビオンフォーミュラの爪――実際にはちょっと動いただけ――をギリギリで回避する花音の花凛。その様子を見た桐江は、手に握った二つの腕輪に目を落とし、一瞬だけ逡巡する。
「こんなこともあろうかと用意した究極合体用アイテムですが、副作用が強いので、できれば花音さんには使ってもらいたくないのですが――!」
わざとらしく大声で言った桐江の言葉を聞きつけ、花音は決意を込めた瞳で桐江を見つめた。
「桐江君。僕はどうなっても構わない! ヤツを――オブリビオンフォーミュラを倒すために、それを貸してくれないか!」
「わかり……ました。この『交差融合する光と闇(クロスオーバー・フェイト)』を使ってくださいっ!」
桐江は白と黒の腕輪を花音に放り投げる。それは、光と闇の属性を融合させる究極の合体アイテム――という設定だ。
「ありがとう、桐江君。僕は必ずオブリビオンフォーミュラを倒し――帰ってきてみせよう!」
白と黒の腕輪を受け取った花音は、自分の腕に白い腕輪を。暴走する花凛の腕に黒い腕輪を装着した。
二つの腕輪が輝くと、花音と花凛の身体が融合して一つになった。――単純にオルタナティブ・ダブルを解除しただけだが。
「この闇は放てば暴れるだけですが……取り込めば私の力を高める触媒になるのです」
光と闇。両方の力を取り込み、人格も花音から花恋に切り替えた花恋は、静かに威圧感をもってオブリビオンフォーミュラに告げる。
「ここからが――本当のメイド探偵の力です」
――なお、桐江が魔科学で作り出したアイテム『交差融合する光と闇』の本当の効果は合体などではなく、着ている服を中二病な服装に変えてしまうというものだ。
キリッとオブリビオンフォーミュラに対峙する花恋は、自分の服装が過激なボンテージになっていることに、まだ気付いていなかった。
●エピローグ『猟兵奇譚』
「できた、できたわ!」
影朧、閻魔(デビル)の声が、書斎に響いた。
彼女の手には、猟兵たちからのインスピレーションによって完成した一冊の本。その名も『猟兵奇譚』が握られていた。
「これで、心置きなく現世を去れるわ。――万魔殿様にはお世話になったとお伝え下さい。私の作品を理解してくれてありがとう、と――」
そう言うと、穏やかな笑顔を浮かべた閻魔の姿は桜の花びらとなって宙に溶けていった。彼女が立っていた場所には、一冊の本、『猟兵奇譚』が残されているだけだった。
それほど遠くない未来、きっと彼女は転生して新たな生を受けることになるのだろう。
輪廻流転する過去の存在。それが、ここサクラミラージュにおける影朧というものなのだ。
――『猟兵奇譚』。
帝都に、オブリビオンフォヲミュラの影が迫っていた。その姿はまるで巨大な葉養生物のような異形。ソレは、帝都の街を破壊しながら進軍してくる。追い立てるように逃げ回る帝都の住人たち。
だがそこに、帝都を守るヒーロー、イェーガーが現れた。
巨大ロボットを操る少女にシスター魔法少女、怪盗二人組、それとメイド探偵。後方からは発明家風の少女がサポートについていた。
路面電車を踏み潰し、建物の間を進んでくるオブリビオンフォヲミュラに巨大ロボットが組み付いて動きを止める。その隙に変身する魔法少女と怪盗二人。宙を駆けるようにオブリビオンフォヲミュラに迫ると、それぞれの必殺技を放った。
大きなダメージを受けて膝をつくオブリビオンフォヲミュラ。
そこに発明家から力を借りたメイド探偵が闇の力を解放。光と闇を合わせた力で聖なる剣を造り出す。
巨大ロボット、魔法少女、怪盗二人組、メイド探偵が力を合わせた合体技を放ち――オブリビオンフォヲミュラを打ち倒したのだった。
――なお、深淵・万魔殿名義の最新刊として売り出された『猟兵奇譚』であるが、すでに影朧の影響がなくなった本は、さっぱり売れなかったという。
だが、深淵・万魔殿は今日も原稿用紙に向かっている。閻魔との思い出の残るあの屋敷で。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵