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鱗無き者の、冬と敵への挑戦

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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「とりあえず、お疲れさンだな」
 別の世界での戦争を終えて、ひとまず情勢もひと段落。グリモア猟兵の我妻・惇は集まった者たちに労いの言葉を掛ける。しかしもちろん、呼ぶからには用事はそれだけではない。グリモアベースでグリモア猟兵が猟兵を集める理由と言えば――。
「寒ィ時期だし、鍋でもどォだい」
 そう、鍋である。

「まァ、半分冗談だ、ちゃンとお仕事だよ」
 否、普通に考えて鍋ではない。当然予知に基づいた事件の情報開示が目的である。
「世界はアックス&ウィザーズ、山間の町…村…? いや町だな」
 規模としてはそう悩む程度の集落。もちろん街路や山道の整備などが行き届いているわけでもなく、食料や日用品の調達や販売のための輸送においても相応の苦労を強いられる、ある程度不自由な場所である。
「この時期のこの町の風習でな、広場で鍋をやるンだと。でけェ鍋で煮込ンで、町の衆みンなで腹いッぱい食ッてだな」
 健康を祈願したり親睦を深めたりと、住人たちにとってなくてはならない年中行事、なのだが。
「その材料が、山道でオブリビオンに襲われて谷底に落ちたンだと」
 どうやら付近のリザードマンの集団に捕捉されてしまったらしく、山賊まがいの襲撃を受け、仕入れてきた大量の食材を失ってしまったのだ。幸い人的被害は出ることはなかったが、人々の消沈した様子たるや、生きる希望を失ったかのような落ち込みようである。再び調達に走ろうにも、いつどこで襲撃者と鉢合わせるか、それより何より、いつそれらが能動的に町へと襲い掛かってくるか。

「どォもトカゲ連中、最近になッて活発化したらしくてなァ。行動範囲を拡げた都合でかち合ッちまッたンだろォなァ。狩る側にしてみりゃ出てきてくれて有り難ェ話だけどな。ンなわけで、猟兵のお仕事ッてワケだ」
 もちろん彼が言うような、ただのトカゲを相手にするわけではない。先述の通り敵はリザードマンの集団である。曲刀と盾で武装した、信仰と統率のあるひとつの部族である。決して油断して掛かれる相手ではないのだろう。そして逆に、相手は人類を自らより劣った種族であると侮る傾向があり、逆手に取ることも出来るかもしれない。

「ッと、ヤツらのカミサマみてェなもン、大抵は竜なンだよな」
 惇が補足を加えることには、彼らには信奉する対象があり、それは彼らの上位種なのであろうか、姿かたちに類似点のある竜らしい。もちろん力には歴然たる差があるが、だからこそ崇めるのだろう。
「活発化したのも何か関係あンのかもなァ。連中、隠し玉のひとつくらいブッ込ンで来るかもしれねェぞ」
 明言はできないが、竜が出るかもしれない。グリモア猟兵はそう言っている。予兆もあるのなら用心に越したことはないだろう。
「まァ、羽があろォとデカかろォと、所詮はトカゲだ、やッてやれねェこともねェだろ。そォいうワケだから、気張ッて頼まァ」

 転送する直前で、言い忘れたことに気付いたらしい。
「終わッたら鍋はやるぞ。食材はねェから調達もこッちで手伝うことになるだろォな。持ち込ンでも良いが、町からは代金出ねェし遠慮せず食うだろォから…まァ、余裕ある範囲で、程々にな?」


相良飛蔓
 お世話になっております、相良飛蔓です。今回もお読みいただきありがとうございます。

 今回は2度目のアックス&ウィザーズで、竜退治です。えぇ、オープニングで不確定っぽく言ってますが出ます。

 第1章の集団戦は、山道での索敵や遭遇からプレイングをどうぞ。隠密とか奇襲とか、その辺工夫あれば優位に接敵できますし、なくても通常どおりに集団戦になります。

 第2章はボス戦になります。詳細は移行時に。

 第3章は鍋です。食材集めから食べたり飲んだり遊んだり、寒空の下でのお祭り騒ぎ的なニュアンスです。(よっぽどアクシデントがなければ多分)鍋のおかわりは自由となりますのでお気軽にどうぞ。例によってお呼びいただければグリモア猟兵も参加します。どいつでもお気軽にお呼びください。

 それでは、ご検討の程よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『リザードマン』

POW   :    シールドバッシュ
【手にした盾で攻撃を受け流して】から【生まれた隙に、盾による殴り付け攻撃】を放ち、【衝撃でふらつかせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    曲剣一閃
【変幻自在に振るわれる曲刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    テイルスイング
【太く逞しい尻尾による薙ぎ払い攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:イガラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャルロット・クリスティア
寒くなってくるから冬越えの準備に忙しいんですかね、彼らも。
……などと言う冗談は置いておくとして。

知恵もあり、統率の取れた相手です。
荷馬車とて、無警戒で襲撃を受けたわけではないでしょうから……そうなると、地の利は相応に活かしてくるでしょう。
……ま、そう言うことなら、少々リスクはありますが……釣り出しますか。

少女一人が山道を歩いていたら、絶好のカモと思うことでしょう。
そして襲うならば、包囲して逃げ場を潰してくる。
こちらは単騎、流れ弾の心配はない。

エーテル圧縮、組成変換。全方位展開。迎撃させて頂きます。

ハリネズミを食べようとしたらそりゃ刺されるってもんです。目利きを見誤りましたね。



●鴨鍋
「寒くなってくるから冬越えの準備に忙しいんですかね、彼らも」
 岩壁沿いの山道を歩きながら小柄な少女、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)がひとりごちる。活発化したリザードマンたちの動き、その後ろに潜む脅威の可能性。そもそもオブリビオンに越冬の心配など、おそらくは必要ないだろうことも、今いる場所がいかに危険であるのかも、当然彼女は分かっている。
 案の定その進路を塞ぎ、退路を断ち。隘路を切り取るようにして、リザードマンたちは現れた。一般に爬虫類の表情は分かりにくいと言われるが、なまじ人型をしているために、それはありありと見て取れた。嗜虐の色、軽侮の色、愉悦の色。大きなぎょろりとした目は厭らしく細められ、シャルロットを見据える。品定めでもするように――否、そもそも下劣を前提として、その欠点を嘲笑わんとするように。そう、たった一人で危険な山路にある少女は、絶好の『カモ』であった。

 そう、彼女が目論んだ通り、絶好のカモとなったのだ。しかし背負うは葱などではなく、猛悪なる火筒。そもそも美味しい獲物などではなく、猟兵すなわち『狩る側』である。そして単騎駆けの彼女には、流れ弾を当てる心配などもなく。
「エーテル圧縮、組成変換」
 シャルロットの詠唱に伴い、周囲の空気が不自然に動く。見る間に彼女の周囲には、魔力を凝縮した無数のマギテック・ショットガンが現れた。その手に構えた銃と合わせて、実に63挺。それは火を噴く防壁となりて、少女と敵との間に立ち塞がった。
「全方位展開…」
 見た目に惑わされなければ、侮ることをしなければ、もっと早くにかかっていれば。いや、一矢報いることくらいはできたろうが、きっとその程度であったろう。
「迎撃させて頂きます!」
 もはやいずれが窮鳥であるかは歴然である。とはいえ懐に入ることもできようはずもなく、吹雪の如き霰弾により、見る間に次々蜂の巣となる。尤も仮に懐に入ろうとも、見逃す猟師ではないのだが…
「ハリネズミを食べようとしたらそりゃ刺されるってもんです。目利きを見誤りましたね」
 果たして蜥蜴が敗れたは、鴨であるのか鼠であるか。そんな事を考えたかは分からない。散々に刺し貫かれた亡骸を霧と散らして、数瞬の銃声の大合唱を風に溶かして、少女の周囲はすぐに静穏を取り戻した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

タマコ・ヴェストドルフ
ごはん(オブリビオン)の臭いがします
ごはんが近くにあります
ごはんが近くにあると
おなかが空きます
黒い鎖を出してごはんを探します
鎖について行けばごはんがあるでしょう
ごはんを見つけたら
鎖でしっぽ、足、腰に巻きつかせて
腕や首を黒い剣で刎ねて
黒い剣を急所に突き立てて
ごはん(生命力)を食べ(吸収し)ます
まわりは鎖に相手をさせて
つかまえたごはんの首すじに噛みつきます
味見はほどほどに
鎖がまたつかまえたら
四肢や首を刎ねて
剣を突き立てます
攻撃で骨がおれたり
血が出たら
ごはん(生命力)を
クリフォトに回して
体が動いて
ごはんを食べられるように
回復させます
十本の剣を使い切ってしまったら
回収したり爪や歯でごはんを食べます


ヴィリヤ・カヤラ
お鍋楽しみだから頑張っちゃうよ!
荷物が谷底に落ちたっていってたし、
戦う所も似たような山道なら気を付けないとね。

戦場を見下ろせて敵から隠れられそうな
木の上や岩に隠れつつ月輪で影を地面に広げて敵を待つね。
敵が来たら【ジャッジメント・クルセイド】で注意を集めた隙に、
出来るだけ多人数を巻きこめる範囲で
地面に広げた月輪で足元から襲ってみるよ。
ネットで大きいサメが下から人を襲うってシーンを見たから、
参考にしてみたけど上手くいくと良いな……影の顎って感じかな。
影の内側は全面をサメの歯みたいにして数を減らせるように頑張るよ。
この時は仲間がいたら絶対に巻き込まないように気を付けるね。

アレンジ・絡み歓迎


黒玻璃・ミコ
※スライム形態

◆心情
ふーむ、冬を前に久方振りにA&W世界に来てみれば
竜種とその眷属の気配がひしひしと感じますよ

◆行動
群れを相手に馬鹿正直に挑むのも無駄な労力ですよね
先ずは【世界知識】により思い出した現地付近の
樹々や岩陰などの【地形の利用】して風下から徐々に近付きましょう
上手くポジションを取れたら
今度は【念動力】と言う名の【黒竜の遊戯】で風向きを
大きく変化させ【毒使い】で精製した凶悪な麻痺毒を散布しましょう

身動きが取れなくなったら
丸ごと【生命力吸収】しず美味しく頂いてしまいましょう
迂闊にも近付いてくるような個体には
【怪力】込めた触手による【カウンター】です

◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK



●鮟鱇鍋
「お鍋楽しみだから頑張っちゃうよ!」
 ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)はこの後のことを考えてモチベーションとしているようだ。寒い時期の鍋は確かにわくわくするものである。
「ふーむ、冬を前に久方振りに来てみれば…竜種とその眷属の気配がひしひしと感じますよ」
「ごはんの臭いがします」
 一方の黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)とタマコ・ヴェストドルフ(Raubtier・f15219)は、どちらもその欲を隠そうとしない。あるいは蒐集あるいは征服、いずれにしても意欲はヴィリヤと同様に高いが、その着地点は彼女よりも前の時点――今より始まるであろう戦闘に向いている。
三者三様なれど、動機そのものはいずれも同じく『食べる』こと。

「ごはんが近くにあります」
 依然鼻をくすぐられながら、タマコは一心に前方へ。ミコの選んだ風下にあっては、食欲を誘う獲物の匂いはいやがおうにも届けられる。それを求める黒い鎖は猟兵たちを導くように、少女の影より道の先へと伸びていく。
いよいよ匂いが濃くなって来れば、ヴィリヤが先へと飛び上がる。崖上の木へと手掛かりを付け、跳び上がってはするする登り。
 ちらちら見える遠方のリザードマンたちの姿は、標的となる人間を、もしくはその集落を探しているのだろうか。ひとまずは眼下近くに見える最寄りの蜥蜴どもが自分たちの標的であるし、向こうは向こうで他の猟兵が対応してくれることだろう。とにかく事を急がなければ、誰かさんの空腹が我慢できなくなってしまう。

 頭上より襲った光の矢にて、一体の羽根飾りが俄かに焼かれ。慌てて盾を上へと向けて、それを追っては頭上を見あげ。視界に女を捉えると、怒りをこめて吠え立てる。遥かに上にある猟兵に、剣も盾も届くまいが――
「所詮は鱗無き者の浅知恵よ!」
 群れの一体が地面を蹴って、仲間の掲げた盾に乗る。それを踏み切りそれを跳ね上げ、一気に高くに跳び上がり、宙で回ってその尻尾を叩きつけた。打たれたヴィリヤは落とされて、一転窮地に立たされた。どこかの彼らの仲間と同じく、囲んだ蜥蜴は侮り笑う。

「群れを相手に馬鹿正直に挑むのも無駄な労力ですよね」
 別の猟兵に注目が集まる間に、ブラックタールのミコは半液状の身体を影に潜ませながら、こちらもするするとリザードマンに近づいていた。言葉の通り正対するを避けながら、自身の望むベストポジションに陣取ると。
『いあいあはすたあ……拘束制御術式解放。黒き混沌より目覚めなさい、第玖の竜よ!』
 展開されたユーベルコードは乱暴なまでの力技でその場の風向きを大きく変えた。危うしと見て駆け出すものの、足が縺れて次々転げる。猟兵が戯れの如くに吹かせた風は、塵芥などを運ぶものではない。精製された麻痺毒を乗せ、今風下にある者たちを倒していった。毒に倒れる敵に囲まれていたヴィリヤは…まあすぐに命に関わる毒ではない。
「では、頂きます」
 まともに毒を吸い込んで、意識はあれども動けぬリザードマンへと、黒いスライムは近寄って行く。その身体を包み込むと、溶かすように、消し去るように、あっという間に呑み込んでしまう。竜の眷属と見れば、彼女にとっては喰らうべき糧に過ぎないのであろう。動けぬ者は自身の番に怯え、辛うじて動けるものはミコの隙を突こうと力を振り絞って立ち上がり
「ごはん」
 すぐさま命名を受け、黒い鎖に囚われる。先導したのに獲物を次々減らされて、我慢しろというのは酷な話だろう。たとえ言われたところで、すでにタマコの食欲は抑えられるものではない。拘束されたリザードマンへと駆け付けると、一切の躊躇なく首を刎ね、さらに刃を突き立てる。黒剣より我が身に流れ込む生命力にその身を震わせて味わい、また次の獲物へ。十本の剣を使い捨てるように次々と突き立て、手があけば爪を立て、噛み付いて直接にオブリビオンの血肉を味わい。
 少なくはないリザードマンたちは二人の少女の食事によって、次々に数を減らしていく。されどどちらの食欲も、いや増すばかりで衰えることはなく、もはや彼らの目に嘲りも侮りもなく、さりとて戦士への敬意もなく。あるはただ一つ、被食者の目に宿る恐怖…あるいは、憐みを乞う小さな信仰心か。

 知らず後退る者、辛くも這い逃げる者、仲間を負いて救わんとする者。動けるリザードマンは退路を求めているらしい。誰かが食べられている間だけは、この二人から離れられる。もしかしたら逃げることも。
「こんな感じかな」
 結論としては、逃げることはできなかった。ばくんと音を立て、手負いのリザードマンたちの姿が、地面より現れた巨大な黒い半球の中に消えた。正確にはもう少しいびつな形状をしていたのだが、何しろ一瞬のことであり、その姿を正確に捉えたのは、恐らくは形作ったヴィリヤ自身だけである。麻痺毒の影響を受けるより先に、改めて上へと退避した彼女が、自らの中に潜むUDC・月輪を地面へ展開するには充分な時間があった。捕食者から逃れた隙に捕食されるとは、彼らにとってさぞ笑えないことだろう。さらにそれが、インターネットで見られた巨大鮫――B級映画のワンシーンであろうか――を参考にした攻撃であったなどとあっては、笑えないやら笑うしかないやら、である。ともあれ影が消えたときには一体のリザードマンもこの場に残らず、その血液に伴う生命力だけがヴィリヤに獲得され遂せた。余すことなく一滴残さず、彼らの血肉は彼女らへ。

 ちなみに、全体量に対して取り分が予想外に少なく、充分に満たされないまま戦闘が終わってしまったタマコとミコ、しばらく樹上のヴィリヤを物言わずじっと見つめていたし、ヴィリヤの方でも知ってか知らずかしばらく目を逸らしていた。鍋であれば、誰がどれだけ食べたかなんて、そうそう覚えているものでもないのだろうが…

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

角守・隆豊
ドラゴンが出てくるかはともかく、リザードマンとやらの戦士とやり合えるというわけだな。
「いいだろう。リザードマンとの戦いのついでに食材も探してこよう」
食材が谷底に落ちたっていうのが事実なら無事かどうかも怪しいものだが、俺にとっては二の次でしかないしな。

さて、初めて戦う種族だがどれほどのものか。とりあえず全力でいって困ることはないだろう。
【妖剣解放】を行い、高速移動で相手の曲刀を躱しながら斬撃を与えていこう。時より僅かに離れた間合いから衝撃波を飛ばし、攻撃パターンを増やして対処しづらくなるように攻めるぞ。
こちらも躱し切れないものがあるだろうから、それは【武器受け】で凌ぐとしよう。

アドリブ歓迎


ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
後ろ盾でもできて調子に乗ったかねえ。
身の程を忘れて動いても、待ってるのは破滅だけだろうに。
ま、なんにせよ叩いて潰すとしようか。

さて、山を歩くってのはまあ得意だし何か小手先を仕掛ける必要も無いか。
目で見て耳で聞いて、勘を頼りに歩くだけで敵を探すのに不自由はしないだろうし。

敵を見つけたら、【鋭敏感覚】を使って戦おうか。
剣が変幻自在でも、見えていれば避けることは出来るしね。
剣を避けた隙をついて、斧でぶっ叩けば倒せるかな。

数が集まってくるようなら、力任せに斧でなぎ払えばいいか。
剣が届くより前に、衝撃波で吹き飛ばせば攻撃は届かないだろうし。

まあ、恐れも侮りもせずいつも通りやるだけだね。


ルムル・ベリアクス
【WIZ】
人々の悲しみが見えるようです……皆の喜ぶ顔と……あと美味しい鍋を!取り戻しましょう!
リザードマン達がどんな民であれ、オブリビオンである今は倒す理由がある。こちらにも誇りがあるのですよ。
山道の傍に隠れ、リザードマン達が来たら奇襲します。
UCでカードに赤熱する炎の曲刀を装備し、敵に【投擲】して攻撃。
敵前に躍り出て返り血も気にせず斬り払いながら攻撃します。
テイルスイング相手なら懐に潜り込んで避けつつ斬り落とせれば良いですね。
こちらはただの剣ではありませんよ。
炎を纏った剣の恐怖は相手を怯ませるでしょう。
ハハ……剣技というものも良いものですね。



●つみれ鍋
 こちらはつい先程、別の猟兵が見かけたリザードマンの一団の近く。
「後ろ盾でもできて調子に乗ったかねえ」
 溜め息まじりに気だるげに、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)。のんびりとした喋り方は、今より敵と相見え、命のやり取りをしようとは想像しにくい調子で、聞く者の欠伸でも誘いそうなものである。ただし、受け手がダウナーに引き寄せられそうなコンディションであれば。
「ドラゴンが出てくるかはともかく、リザードマンとやらの戦士とやり合えるというわけだな」
 熱闘の予感に血を滾らせる角守・隆豊(闘争こそ存在意義・f24117)と
「人々の悲しみが見えるようです……皆の喜ぶ顔と……あと美味しい鍋を!取り戻しましょう!」
 弱きを守る使命感に燃えるルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)にはさしたる影響を与えないようだ。彼女自身もそんな雰囲気に燃えるほど感化されるタイプではない。というかマイペースな方である。身の程を忘れて動いても、待っているのは破滅だけだろうに…と、やる気満々の二人を横目に見ては、オブリビオンへの僅かな憐憫を抱いたりもする。もちろんそれにも流されはしないし、結局やることは変わりはしない。
「ま、なんにせよ叩いて潰すとしようか」
 シンプルに、オブリビオンを倒すだけだ。なお、どうやら食材の奪還まで真剣に考えているのはルムルだけであるようだ。
(食材が谷底に落ちたっていうのが事実なら無事かどうかも怪しいものだが、俺にとっては二の次でしかないしな)
 というのが隆豊の本音であるが、わざわざ改めて言うことでもない。倒してから探せば良いことだろう。

 そうして特に隠れも隠しもせず、隆豊とペトニアロトゥシカの二人がリザードマンたちの眼前へと現れる。片側が崖とあれば、別段見通しが悪いわけでもない。もちろん岩壁の裏に回り込んでなどは見えないが、見聞きした物だけでも充分索敵には事足りる程度である。
「鱗無き者がわざわざ自分から出向いてくるとは…」
 爬虫類の目は、挑発的な事を言いながら次第に向きを変えていき、視点の中心を『二人の猟兵』から『角守・隆豊』へと移していった。彼らの自然を装った首の動きは、どう見ても不自然な均一性であった。それを追うように、ペトニアロトゥシカの色の違う双眸も隣の猟兵を見やる。恐らく…彼女の身体に見える、空色の鱗は無関係ではないのだろう。
 注目を浴びた隆豊は、周囲に流れる若干の気まずさなどものともせずに、佩いた得物を抜き放ち、口の端を吊り上げ不敵に笑ってオブリビオンへと啖呵を切った。
「いいだろう!どれほどのものか見せてもらうぞ!」
 それを合図とするように、我先にとリザードマンたちが襲い掛かる。狙いはほとんどが羅刹の男のようであるが――もちろん猟兵には、遠慮してやる義理はない。軽い掛け声とともに、もう一人の猟兵が巨大な斧を振り下ろして一体の頭を叩き潰した。別に鱗があったって味方ではない。鱗以外にも、見た通り巨大な猩々の腕もある。
 そしてこちらでも、遠慮のない攻撃。
『甦りし悪魔よ、その牙で地獄を顕現させよ!』
 先行する二人に注目していた敵へと、隠れたルムルが準備万端整えて、次々とカードを投げつける。それは獄炎を纏い刃となりて、蜥蜴の群れを驚かす。
「おのれ、卑怯な真似を」
 力に劣る人々を傷つけ、僅かでも愉しむことは卑怯ではないのか。思う所はあるけれど、倫理も矜持も種族が違えばまったく別のものとなり、論じたとてもきっと答えは出ないだろう。そしてそれ以前に
「リザードマン達がどんな民であれ、オブリビオンである今は倒す理由がある。こちらにも誇りがあるのですよ」
 信じて為すべきを為すのなら、羞じることなどあるものか。刀と変じたカードのひとつを己がその手に携えて、燃える炎を見せつけながら、尋常なれと構えて見せる。
「こちらはただの剣ではありませんよ!」

 それぞれの見せ場を尻目に、妖刀の怨念を解放しその身に纏わせた隆豊も、やや浮足立った敵の中へと躍り込んだ。言葉の通りの目にも留まらぬ素早さでもって、敵の間を縫いながら、自在の曲刀を躱しながら、次々と刃を見舞っていく。いかに頑健な羅刹の肉体を持つとはいえ、鱗はおろか防具すら身に付けぬ彼にとっては、躱す一刀一撃こそが、致命のそれになりかねない。それでも一切臆することなく群れの中へと飛び込み行くは、勇猛なるか無謀であるか。
「やるじゃないか、鱗無き者」
 前者と捉えたらしい。一体のリザードマンのその言葉に、侮蔑の色は滲まなかった。言葉は変わらずもそこに称賛が含まれ、であるからこそ油断のない攻勢を予告するものであった。おそらく戦慣れしているであろう数体が猟兵を囲み、必殺を期する。間合いを詰めさせないうちに隆豊が斬撃による衝撃波を放つが、巧みな盾捌きによってそれを身体へと届かせず。その隙を突いて別の蜥蜴が斬撃を与え、辛くも受ければ次の敵。攻撃の間を与えず、それでも繰り出されれば盾で防ぎ、相互補完し合う多対一でのコンビネーションは、羅刹の妖剣士を確実に追い詰めた。
 そんなオブリビオンたちの背後の隙を突き崩し、炎の刃が駆け付ける。攻撃を受けた一体はその身を焼かれながら仰向けに倒れた。投擲と斬撃、二度に亘ってただの剣でないことを証明したそれは、敵を警戒させるに充分だった。態勢を整えた隆豊に背を預けながら、ルムルはいくらか高揚している。
「ハハ……剣技というものも良いものですね」
 それを聞いた男も、一瞬の後に短く、大きく笑った。

 向こうは大丈夫そうなので、ペトニアロトゥシカは自身の周囲に集中することにした。実際集まっている敵の数は、今は彼女の周りも凄い。連携は大したことはないが、それゆえ不規則に剣が襲う。速いや巧いだけでは、とても避けられはしなさそうだ。
「見えていれば避けることは出来るしね」
 もちろん彼女にはそれだけでないからこそ、なんとかなっているのだが。自らの持てるESPとしての感覚をユーベルコードによってさらに高め、予知に近いような水準まで昇華したそれは、数が多いだけの刃など容易く避けてのける。そうして隙だらけになったリザードマン達は、次々と――否、まとめてその斧で叩き潰されていった。
 振り下ろし、薙ぎ払い、暴風のように吹き荒れるスイングはみるみる敵を減らしていった。そうして斬り飛ばされた一体の半身がルムルと隆豊の元に落ちる頃には、隆豊の手にて最後の首も飛び、全ての敵が霧消するところであった。
 相手がそういうオブリビオンでなければ、ここら一帯は今頃さぞ惨憺たる有様であったことだろう。そんなことはさておいて、猟兵たちは続く相手の捜索を再開する。ちょっと疲れたこととだいぶオブリビオンが減ったこと以外は現状維持の、まだまだ変わらずお仕事中なのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アンネリーゼ・ディンドルフ
◎WIZ
アンネリーゼは今日も美味しいオブリビオン料理を求め依頼を受ける。

「噂ではリザードマンは竜を信奉していて、その竜を討伐したら竜鍋をいただけるらしいですね~」
山道を索敵しつつ、アンネリーゼは竜鍋に思いを馳せる。

「お鍋♪お鍋♪……リザードマンの集団を発見。あれですね?」
リザードマンの集団を発見した。
アンネリーゼは上空を伺うと徐にアイテム【蒸気機関式掃除機】に乗って上空を飛ぶ。

「空から奇襲と行きましょう。誘撃の矢」

ユーベルコード「Pursuit Arrows(パースート・アロー)」を発動。レベル×5本の氷属性の矢を放ち、リザードマン達の討伐を試みる。


木元・祭莉
かんさつにっきのみんなとは別動隊だぞっと。
山や谷は得意だよ!(野生児)

姿勢を低く、風下から静かに。
音を立てないよう、足元に注意。
五感全部と野生の勘で、敵の居場所を感じながら、群れに接近。

近くまで来たら。
無力な子供が紛れ込んできたフりするね!
泣きながら駆けてって、リザちゃん見つけて、びっくりして立ち止まり。
ヤバいって顔で、背中を見せて踵返して逃げ出そう。

なんだなんだって向こうの注意がこっちに向いたら。
疾走発動して、ものすっごい勢いで飛行モードへ!

他のみんなが戦い始めたら、盾に当たられないよう注意。
間近を翳め飛んだり、頭上を飛びながら如意な棒で衝撃波を放ったり。
ウザウザしく、牽制に徹しまっす♪



●串鍋
「噂ではリザードマンは竜を信奉していて、その竜を討伐したら竜鍋をいただけるらしいですね~」
 アンネリーゼ・ディンドルフ(オブリビオン料理研究所の団長・f15093)の聞いたらしい噂は、今回の事件とは少しだけ違う様相を呈しているようにも思える。人々は竜鍋を作ろうとも食べようとも振舞おうともしていないので、討伐したところで食べることとは繋がらないのだ。いやしかし、オブリビオン料理の研究を行う人間であれば、自分で調理して食べる、ということであろうか。そうなら、可食部位が多い竜の出現を祈るしかない。
 そばを行く木元・祭莉(オオカネコミミレッドメイド・f16554)も、食欲旺盛な少年である。竜鍋を想像してはわくわくするような素振りを見せている。何にせよ食べるのは事件を解決してからになるだろう。そのためにはまず、敵を探し出さなくては。風上に向かって鼻を動かし耳を動かし、少年は熱心に索敵を行う。

 程なくその敵は見つかった。野生に近い少年にしてみれば、山道など庭のようなものである。
「お鍋♪お鍋♪……リザードマンの集団を発見。あれですね?」
 敵への接近を伝えられてからは小声で歌っていたアンネリーゼも、岩陰よりリザードマンを目視してはそれを切り上げ、表情をいくらか鋭いものへと変えた。顔を見合わせ頷き合うと、彼女はそのアイテムに跨って空へと静かに飛び上がって行った。敵に視認されぬよう、やや迂回する形で飛んでいくそれを、少年はしばらく見送っていた。
「おー…」
 口を大きく開けたまま、憧憬の眼差しで。その、空飛ぶ掃除機を。

 とはいえ、ずっと眺めていても意味はない。祭莉は祭莉で自らの役目をこなす必要がある。少年は心の準備を整えると、岩陰よりその身を敵前へ現した。
「うあーん」
 泣きながら駆けてきた少年に、蜥蜴たちは幾らか戸惑っていた。少年は鉢合わせに驚いて立ち止まり、慌てて踵を返す。当然敵も追い縋ろうと動き出した。まさかそれが猟兵の罠であろうとは、見破れたものはいなかったようだ。それだけ上手な演技であったのだが――泣いたり驚いたりの演技が迫真たる理由は、男の子の名誉のために割愛する。
 嗜虐心に駆られて祭莉の方に向かったリザードマンたちの姿を見とめると、上空にあるアンネリーゼはユーベルコードを展開する。すでに真上にあろうとも、そちらに注意を向けるものは居ない。
「空から奇襲と行きましょう。誘撃の矢」
 無防備な蜥蜴たちの頭上より、氷の雨が降り注ぐ。雨より鋭く雹より重く、殺意を以て対象を追うそれは、数体の敵に無数に刺さり、針山のようにして絶命させた。リザードマンの戦士たちは頭上の敵に遅まきに気付き、防備と固めようと盾を掲げて構えてやる。

「おいらだって!」
 囮役の祭莉も、御存知の通り猟兵である。空を仰いだリザードマンには彼の笑うは見えまいが、燃える白炎に包まれたそれは、見れば危険と察したろう。気付かれぬまま、知られぬままに、少年は疾走を開始する。
 アンネリーゼの放つ矢の第2陣は、頭上に掲げられた盾によって大部分が防がれる。しかしそのうち数体は、横合いからの突然の衝撃により盾を逸らされ、迫るその矢をまともに受けた。見れば少年が不敵に笑い、彼らの誇りに弓を曳く。
「へへ~ん♪」
 怒りに任せた数体が、盾を構えて突進するも、まともに当てるは叶わずに、いくらかかすめて通り過ぎ。そうして群れから外れたものは、誘導弾の良い的である。祭莉もいくらかふらつきつつも、上手に直撃を避け続け。そうしてしばらく二人の猟兵が上と下とで振り回し、いつしか蜥蜴は大いに減って、最後は丁寧に狙いを定め、打撃と射撃に討ち取った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『黒皇竜ディオバルス』

POW   :    黒皇竜の一撃
単純で重い【自身の爪や尻尾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    インフェルノ
【口から放つ「地獄の炎」】が命中した対象を燃やす。放たれた【紅蓮の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    カタストロフィ・ノヴァ
【極大規模の球形の大爆発】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:ハギワラ キョウヘイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はノエル・スカーレットです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 山中より、咆哮。
 地を揺らすような響きでもって、それは存在を知らしめる。方角は分かるし、猟兵たちが戦ったどこから向かっても遠くはなく、難所でもない。町よりはちょうど反対側にそれは居るらしく、対峙するより先に人々が攻撃されると言うことはないだろう。
 その後ろに、人々の暮らしがある。その前には、斃すべき脅威がある。相手にとって不足なし、英雄譚にはもってこい。ついでに言えば、話のタネに、酒のサカナにもってこいである。鍋の準備の一環として、これまた不足はないだろう。
黒玻璃・ミコ
※スライム形態

◆心情
未知なる竜種かと思えば黒皇竜ディオバルスでしたか
既知とは言えもう一度味わうのも悪くありませんね

◆行動
巨躯から繰り出される地形をも変える一撃……確かに脅威です
とは言え爪や尻尾によるものならば、四肢から独立して動く事はあり得ず
リーチ外からの【念動力】による四肢と尻尾の数を上回った黒剣による
竜鱗の隙間を狙った【串刺し】を捌ききれますか?
ましてや其れが【毒使い】による神経毒がたっぷり塗られていた
【鎧無視攻撃】ならば万全を期すことなど不可能でしょう

以上を以て【黒竜の邪智】の証明とします
黒皇竜、再び【生命力吸収】しながら頂きましょう

◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK


角守・隆豊
うーむ。故郷の若手では腕が立つ方だと思っていたが、まだまだ未熟であったようだ。世界は広いな!異世界なのだから当然か。

おお!?これは……咆哮か?
「はははっ。まさか本当にドラゴンと戦えるとはな!」
未熟さを知った手前、不安はあるが先程の戦いの経験を生かすチャンスでもある。
幸いにも俺より強い猟兵が居るのだ。彼らと共に戦えば勝ち筋もあるだろう。

俺は遠距離攻撃を持っていないから、少ない攻撃の機会をを生かすために出し惜しみは無しだ。
狙いは翼か尻尾だろうな。どちらかに【鬼刃付与】で強化した全力の一撃を加え、切断ないし使用不能にしたいところだ。
場合によっては、傷薬を使って【救助活動】に回るとしよう。

アドリブ歓迎


シャルロット・クリスティア
黒皇竜……単純なパワーだけで言えば相当なものです。
真正面から力比べは愚策ですね……。

幸い、山の中です。木々や起伏、遮蔽には事欠かないうえに、敵の攻撃は大規模な破壊を伴う。
身を隠すには事欠かないですね。
相手の射程外でクロークを使って潜みつつ、相手の意識外から長距離狙撃をかけましょう。
狙うは爪や口腔、眼球等。いくら鱗が強固でも、露出している部位には多少なりダメージが通る筈です。
狙うのは難しいですが、狙撃には自信がありますからね。
ただ、仮に当たらなくとも、前衛から注意をずらすくらいは出来ます。
的を絞らせないように、一発ごとに射撃位置を変えつつ行きましょう。


ヴィリヤ・カヤラ
お鍋の前に少し食べ過ぎたから消費しないとね。
あ、ちゃんと村も守らないとね!

火の攻撃が得意そうなのかな?
大きいから物理攻撃も当たると恐そうだけど。

攻撃よりは仲間の攻撃するチャンスを作れたら良いかな。
炎系の攻撃は『高速詠唱』と『属性攻撃』で制御した【四精儀】の
氷の津波で壁を作ってみるね。
インフェルノは口を開けるか、息を吸い込む動作が入るかな?
カタストロフィ・ノヴァは球形だから、
氷の津波でドーム型っぽい壁が作れたら少しは防げるかな?
攻撃前に攻撃で当てるのもありかもしれないけど。

負傷が激しい場合は自他問わず
【輝光】で回復するね。
お鍋を食べる前に退場は勿体ないしね。

アレンジ・絡み歓迎


ルムル・ベリアクス
【WIZ】
予想はしていましたが、本当に竜と戦うことになるなんて……。
竜殺しの栄光にはさほど興味はありませんが、放っておく理由はありませんね。
相手の攻撃を避けるのはわたしには難しそうなので、対抗するためにUCで超強化体に変身します。
口からの熱光線で爆風を打ち消しつつ敵に攻撃します。
必要に応じて味方を【かばう】で助けます。この体を傷つけるのは難しいですよ?
攻撃が止んだらUCの力で生やした悪魔の翼で接近し、鉤爪と牙で一気に攻撃します。飛ばれると厄介ですからね。
こう見えて意外と肉体派なんですよ?わたし。(悪魔の力あってのものですけどね。)
かぶりついて味を確かめておくのも良いかもしれませんね。


アンネリーゼ・ディンドルフ
◎SPD
「お鍋発見!……元い、ドラゴン発見!」

スマホでオブリビオン情報を探る
「ふむふむ、オブリビオン情報アプリ【オブリビオン大辞典】によるとこの竜は『黒皇竜ディオバルス』ですね」

真の姿を解放。
ユーベルコード「Over Drive(オーバードライブ)」を発動する。
「当たらなければどうという事は無いのDeath!」

黒皇竜の攻撃を【見切り】で回避しつつ背後に回り背中に【クライミング】【騎乗】、【たけのこドリル】を装備して直接攻撃を試みる。

「竜の鱗はこのドリルで天元突破Death!」


タマコ・ヴェストドルフ
でっかいごはんです
食べごたえがありそうです
でもあのしっぽは注意ですね
たぶん骨がおれて
体の中がぐちゃぐちゃになって
きっと再生が間に合いません
強化された真の姿の
力をいかして
しっぽの直撃だけはさけます
つめは頭をまもれば
心臓がやぶけても
トカゲの生命力で
体をつなげるでしょう
うろこが固そうで
黒いの(剣)をさすのは
たいへんそうですが
できるだけやわらかいところを
ねらってつきさしていきます
十本させたら
つめですね
またゆびが木みたいになってますね
この状態でごはんを食べると
頭で花がさいて
じゃまなのですが……
食べたごはん(生命力)は
ごはんを食べるために
体をなおして
ごはんを食べつづけます
食べごたえのあるでっかいごはんです


ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
爪牙尻尾に口から炎、分かりやすく竜だねえ。
どう見ても仲良くお喋りできそうには見えないし、
まあ、何とかしてみようか。

口から吐く炎は斧でなぎ払えばある程度吹き飛ばせるし、
あたしは炎に耐性があるからいいんだけど。

空を飛んで上から火を吹いて辺り一面火の海にされても困るし、
空を飛んだら【飛天襲爪】で蹴り飛ばして、地面に叩き落とそうか。

これから鍋の準備もあるし、
鍋の具になる気が無いならさっさと骸の海に帰ってもらおうか。


木元・杏
【かんさつにっき】

少し遅れたけど、よかった、お鍋はまだ無事…
村はまだ無事(言い直して、よし、と頷き)
大物(見上げ)
少し筋張ってるかもだけど、シリンが料理慣れてるから安心
張り切って倒す

【Shall we Dance?】
うさみみメイドさん、皆の間を縫って踊り、鼓舞して回って?
片手に土鍋、片手におたま
これから始まるお鍋の時間を思い、楽しい気持ちになるように

炎は氷の精霊さんがいるから怖くない
それに速度が落ちれば軌道も読み易い
黒皇龍の首の動きや口の方向を観察し軌道を読み
氷で防ぎきれない炎は巨大出刃包丁を象る灯る陽光のオーラで防御
そのままダッシュし地を蹴りジャンプ
出刃包丁でお腹から掻っ捌く

お鍋食べたい


ジン・ロシュモフ
●ほう、黒竜が相手とはやりがいがあるな。オラは正面からブチ当たるしかできないけど、だからこそ突破口もある!

●地形ごと破壊してくる一撃。それを受け止めてこそ英雄ってなもんだろ!
「力溜め」て「オーラ防御」全開。「覚悟」をもって「怪力」で受け止めてやる!
多少のダメージは想定内。受け止めた後は「手をつなぐ」ことで密着して二撃目を防ぎ、そこから【リフト】で投げまくってやろう。
黒竜、さっきお前が壊した地面が今度はお前を壊すための凶器になる。
覚悟して受け身を取りまくるんだな。
それに……お肉は叩いて柔らかくしておけば、鍋やる時においしさ倍増するってもんだ!


ガーネット・グレイローズ
【かんさつにっき】
あれがドラゴンか。なるほど確かに巨大だ。だが、未踏宙域の宇宙怪獣ほどではないかな。竜の肉、スタミナがつきそうだ。

シリンが炎を凍らせてくれるので、私は攻撃に専念しよう。エーテルの力で〈空中浮遊〉、【念動武闘法】で鋼糸を複製。それらを〈念動力〉で操り、オールレンジから糸を絡めて素早く斬りつける。体が大きい分死角が多くて助かるよ。糸鋸のようにワイヤーを高速震動させ、まずは翼の骨を狙って羽を削ぎ切る〈鎧無視攻撃〉だ。
飛行能力を低下させたら、次は目を狙うぞ。攻撃は小太刀や杏とタイミングを合わせて。どんなに強力な生物でも、眼は共通の弱点だ。高火力でも、当たらなければ意味はないからな。


シリン・カービン
【かんさつにっき】

…町はまだ無事。
間に合ったようですね。
さあ、大物狩りです。

【ピクシー・シューター・ギガント】を発動。
召喚された精霊猟銃には氷の精霊を宿らせ、
ディオバルスが放つ炎を狙い次々凍らせて無力化します。
合い間には緑の結晶体を狙撃。恐らく魔力を蓄積しているのでしょう。

ディオバルスが動きが鈍ったら一度下がります。
「羽根妖精よ、私に集え」
ギガントの真の力、複製猟銃が合体した精霊砲が姿を現します。
氷の上位精霊弾を装填しディオバルスに発射!
「いくら強大であっても、あなたは私の獲物」

「さて、と」
倒したディオバルスを前に精霊猟刀をスラリと抜いて解体にかかります。
大丈夫、以前食べたことがありますから。


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

でっかいねー!
竜のお肉、美味しいのかな?
なるほど、宇宙怪獣よりは美味しそうな気がする
シリンは食べた事あるの!?流石だー!

オーラ防御を展開し
竜を観察情報収集
口からの炎に注意だね
動きを見切り炎を避けつつ
竜の巨体に糸雨のワイヤーを絡ませジャンプ
巨体を駆け登っての空中戦を挑む

シリンとガーネットのお陰で炎も羽も何とかなりそうだし
残る問題はこの堅い鱗かな
鱗と鱗の間に刀を差し入れて
鎧砕き攻撃で次々に鱗を剥ぎ取っていくよ
少しは捌き易くなったかな?

いよいよお肉の解体だね
杏やシリンが前に出るなら前衛交代
刀を和弓に持ち替えて援護射撃
白雨の矢に皆の願いと祈りを込めて
『おいしくなあれ!』

※アドリブ歓迎


木元・祭莉
あ、みんな来てるやー(こそこそ)

ドラゴンかー。
食べてみたいけど、あんま美味しそうじゃないなあー。
……煮込めばいける? うーん。(ちょっと悩む)

まあ、兄ちゃん姉ちゃん強そうだし。
おいらはのんびりやるかー♪

爪と尻尾に注意って。惇兄ちゃん言ってた!
勘で間一髪避け、破壊された地形を利用して。

逆方向に回り込んで。
死角に潜んで、隙を見てふわりと見えない絆で縛っていくよー。

弱ってきたら真の姿を発動し、視界内の隅っこでふわふわ陽動。
尻尾で打ち払われたら、衝撃は受け止め、反動で空中に舞う。

味方が集中攻撃しているときに。
虻みたいに振る舞って、気を逸らせ続けるよー。

ゴメンね、おいらお腹空いてきたから。
早く倒れてね!



●下ごしらえ
「おお!?これは……咆哮か?」
 空気のみならず地をも揺るがす大音声に、隆豊が驚いたような声を上げる。そこにあるのは怯えではなく、薄く笑みすらも浮かべていた。
「はははっ。まさか本当にドラゴンと戦えるとはな!」
 故郷の若者の中にあって腕利きの自負があった青年であるが、先の戦闘における辛勝は自らの未熟を思い知らせた。なれば当然不安はあれども、同時に反省を生かすチャンスでもある。幸いにも今は共に立ち向かう仲間がいる。勝てない相手ではないだろう。
「予想はしていましたが、本当に竜と戦うことになるなんて……」
 対してルムルの言葉には、不安の方が先に立つようにも思える。彼は積極的に戦闘を好むわけではなく、竜殺しなどにも興味はない。ただ人々に降りかかる火の粉の盾になることを望んでいる。それであれば強敵にたじろぐのも無理からぬことではあろうか。
「放っておく理由はありませんね」
 敵するのであれば、万難を排する覚悟はある。人の敵なら、彼の敵だ。
「爪牙尻尾に口から炎、分かりやすく竜だねえ。どう見ても仲良くお喋りできそうには見えないし」
 そうして彼らとペトニアロトゥシカの3人が駆け付けると、黒皇竜ディオバルスは立ち上がって周囲を睥睨し、こちらにすぐに気付いたようだ。普通の人であれば本能的な恐怖によって動く事もままならないか、良くてもすぐさま踵を返しすたこらさっさと逃げ出すことだろう。使命があって、力があって、初めて踏みとどまり、立ち向かえるというものであろう。あるいは――心が特別、鈍感であるか。いずれにしても彼女は特に、気にせず振舞えるタイプのようだ。
「まあ、何とかしてみようか」
引き続き、やることをやるだけである。

 敵の姿を目視できる距離とはいえ、それは攻撃が可能ということではない。何しろ図体が大きいため、遠くからでも見えるのだ。妖刀を構えるものの、隆豊には遠距離を攻撃する手段がない。一方相手には、多様な攻撃手段が用意されている。そのひとつを行使するため、竜は大きく口を開き、猟兵たちへと狙いを定め、容赦なく炎を噴きかけた。
「あたしは炎に耐性があるからいいんだけど」
 ペトニアロトゥシカの特異な身体は火にも強い。恐らくはその熱源に巻かれた所で大きな被害は受けないだろう。そしてこれまた特殊な肺腑においては数日間の無呼吸活動すらも実現するため、燃焼による酸素の欠乏も何のそのである。しかし周囲の猟兵のほとんどはそうも行かない。炎が広く延焼すれば、その分行動の自由は奪われ、連携や回避にも影響が出るだろう。
 合理的な思考の元に彼女が大きく斧を振るえば、吐かれたそれは吹き散らされて、小さな火の手を蒔くだけとなった。同時に近くの猟兵たちも守られる形となり、準備を整える時間を作られた。
「悪魔よ、今こそこの肉体に融合せよ!」
 続けざまに放たれたブレスに対し、ルムルが悪魔の力でもって姿を変じ、我が身を進ませ遮ってのける。
「この身体を傷つけるのは難しいですよ?」
 彼の言う通り、頑強なその身体には小さな焦げ跡が見えるばかりで、大した傷は見受けられない。きっとダメージはほとんどないだろう。
「……さて、わたし『達』を止められますか?」
 再度息を吸う隙を突くと、有翼の悪魔は地を蹴って、竜へと向かって一直線に進撃する。その姿には敗走や失敗に対する一切の懸念は見受けられない。赤い眼の鷹が翔ける。
 同様に、刀に付与した勾玉に妖気を満たした隆豊も駆ける。高くに飛ばれれば埒も開かず、攻撃の機会はきっと少ないだろう。だからこそ彼は、その機会を最大限生かすために出し惜しみは無しで、全力の妖気をその刃に籠める。
「全ての力を以て相手をしよう!」
 悪くしても、強い仲間たちがいる。だからといってもちろんやられるつもりはない。やるなら当然、斬り伏せよう。

●つまみ食い
「未知なる竜種かと思えば黒皇竜ディオバルスでしたか」
 巨体を見上げながら、ミコは些か残念そうである。彼女は蒐集欲によって竜種を食べることを目的の一つとしていた。となれば、コレクタブルアイテムとして見るなら今回の竜はハズレであると言える。そしてこれはそういったアイテムと違って保存と鑑賞とで二つ三つと必要な類のものでもない。
「既知とは言えもう一度味わうのも悪くありませんね」
 とはいえ対峙したからには仕方がない。放っておいて他に任せるというわけにもいかないだろうし。悪竜も恐らくは、まともに生きていた時も含めてこんな妥協をされた経験はないだろう。
「お鍋発見!……もとい、ドラゴン発見!」
「でっかいごはんです。食べごたえがありそうです」
 アンネリーゼとタマコは、今ほど妥協された竜を視認するなり嬉しそうにする。一方は慌てたように漏れる食欲を取り繕うが、もう一方ではまったく隠す様子がない。タマコの目的は一貫して食べることである。戦うことも食べること、食べることも食べること。先ほど思う存分に食べられなかった分は、こちらで発散することになろう。
「お鍋の前に少し食べ過ぎたから消費しないとね」
 さらに近くで聞こえた食欲の声に、アンネリーゼが同志を求めるように振り返ると、そこに立つヴィリヤの姿を見つける。ふと見て目が合えば
「あ、ちゃんと村も守らないとね!」
 こちらもまた、食欲を取り繕うように言葉を継いだ。日常習慣としているわけでもないけれど、他の生者からのエネルギー摂取が身近であるダンピールにとっても、食事と戦いは切り離せないものであるのだろう。少し笑いながら、アンネリーゼは食材の鑑識を始めた。
「ふむふむ、オブリビオン情報アプリ【オブリビオン大辞典】によるとこの竜は『黒皇竜ディオバルス』ですね」
 スマートフォン端末を使用してデータベースと眼前の竜との同定を図り、ほどなく結論が出た。ミコにとってこの戦闘が『復習』であるなら、アンネリーゼには今が『予習』であろうか。探究の鬼たちは色々と余念がないと見える。

 そんな捕食者たちは一様に、その巨躯が繰り出すひとつひとつの攻撃の致命性への懸念を持っていた。どうして避けるか、どうして防ぐか。その弱点の模索、追究は必須命題であると言えよう。いの一番に結論を出し、迅速に行動に出たのはアンネリーゼである。その容貌は先程までといくらか違って見える。特筆すべきは首を継いだような赤い傷痕――のようなものと、爛々たる赤い瞳。その笑む顔には、狂気すら見て取れた。
「当たらなければどうという事は無いのDeath!」
 その言葉と、それをかき消すように大きなお腹の音を置き去りにするように、彼女は猛烈なスピードで、敵に向かって跳び出した。
「確かに脅威です。とは言え爪や尻尾によるものならば、四肢から独立して動く事はあり得ません」
 ミコが他の猟兵を指揮するように、その考察を口にする。実際浮遊するものではない身体の各器官は、筋肉の伸縮や一定の予備動作を以て振るわれている。大きいがために遠目であればそれは見て取りやすいものである。それを受けたタマコは、いち早く敵へと距離を詰めることにした。横薙ぎに振るわれた尻尾をしゃがんで躱し、叩き潰すように頭上より襲う爪も横跳びに躱す。地形を変える程の攻撃は地を揺らし、風を起こし、少女の足取りを危うくさせて、かすめ、傷つけ、血を滲ませた。しかし彼女は意に介さずに、間合いの内へと歩み行く。
 血まみれのタマコを癒そうと、敵の懐へと出ようとしたヴィリヤは、再生する少女の姿に気付く。漆黒の旋風をまとってなお、遠くからそうと見て取れるほど、リザードマンより喰らった生命力による自己修復は迅速なものであった。前線に何ら問題が無いことを認識すると、ヴィリヤも力を戦闘に割くこととする。
 そうして見上げた邪竜の身には、緑に輝く石の角。それらは徐々に光を増して、備えているのは明白である。今ほど自らが行使しようとした癒しのユーベルコードによく似た挙動。即ちそれは、蓄えたエネルギーを発散せんとする合図。
「この地を構成するモノよ、その力の一端を示せ!」
 瞬間に、迅速に、彼女は四精儀を展開した。津波としての出現から若干のタイムラグの後に固定された氷壁は、竜の足元より前面を庇うように展開した。その直後、その身体の中心より凄まじいエネルギーの爆発が発生した。間一髪のタイミングで展開された魔法の壁は頭までを覆うには至らなかったが、アンネリーゼはルムルがその頑強な身体で上手に防ぎ、被害は防ぎきれたようだ。
「こう見えて意外と肉体派なんですよ?わたし」
 衝撃のほとんどは竜の背面へ逃がされ、しかしそれでも氷壁は瓦解し、その力の猛烈なるを知らしめる。それでも彼自身の言う通り、少なくとも軽口を叩ける程度には大丈夫そうだ。それを見れば改めて、ヴィリヤは安堵に胸を撫でおろした。

「リーチ外からの念動力による四肢と尻尾の数を上回った黒剣による竜鱗の隙間を狙った串刺しを捌ききれますか?」
 ミコの考察は次の段階へ。言の通りに念動力によって操られ飛翔する、地獄の階層の名を冠する剣たちは、次々と隙間を縫うように突き刺さる。地獄の炎を吐くオブリビオンへ、罪科への清算を求めるように次々と痛みを課していく。生きて地上へと戻った観測者のように、それを目にして生かして帰すつもりは、もちろんミコにはない。そのための証明、そのための刺突。
 加えて足元のタマコの方でも、同様に十本の黒剣を突き刺していく。こちらも柔らかい所を狙って刺すので、自然と黒竜剣とその刺突位置を同じくしていく。鱗を剥がすため二つの棒をこじ入れるように、甲殻を縫って近しい部位へ。それ自体が調理の一環であるかのように、的確に傷を深く、抉っていく。数本は歯牙にもかけなかった邪竜は途中から明らかに警戒し、攻撃を避けようとしたが、それは既に手遅れではあった。
「ましてや其れが、神経毒がたっぷり塗られたものならば、万全を期すことなど不可能でしょう」
 重い身体での鈍い動き。もはや防ぐは能わずに、二脚で身体を支えることすら難しく、両手を地に付き倒れ伏さんとし。
「以上を以て、黒竜の邪智の証明とします」
 証明終了の宣言と共に、竜の周囲より無数の竜の残骸が地より涌き出て邪竜へ縋る。生きたその身を羨むように。あるいは、生きてはおらぬはずのその身を恨むように。

 拘束された敵のそばにてタマコが自らの指を見て、煩わしげに眉を寄せる。その指は瑞々しくも節張って、樹木の枝のようであり。ただしそれも数瞬のこと、眼前にはもっと楽しいものがある。
「食べごたえがありそうです」
 確認するようにもう一度。柔らかそうな部位を探して噛み付くと、満身の力をこめて噛み千切る。生命力を取り込めば、頭より美しい花が咲いた。それは自身の瞳の色にも髪の色にも似た桜の花。指の変化も樹木への変容である。力を放出すればするほどにその身は植物の様相を呈していく。それを防ぐためにも、彼女は食べる。自らを維持するために、また自らが自らであるために、彼女は、敵を、食べる。食べて癒し、食べる。食べるために食べる。
「ごはん」
 そしてまた、そしてまだ、食べる。

●着火
 続けてミコも近く寄り、竜の生命力を吸い上げる。しかし、巨大な躯体を殺しきるには毒も捕食も小さきに過ぎたようで、拘束のユーベルコードの効果時間を過ぎると、邪竜はそれを振り払い、咆哮しつつ立ち上がる。無理やり力を振り絞り、威勢を再び身に集め、傲然たるその姿はしかし、少女たちの前には無力であったようだ。怯える様子もなく齧り、溶かす。
 そして二人だけではなく、ほとんどの猟兵に対してそれは脅かすに足らないものであったらしい。駆けつけたシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は、狩猟対象の姿を見とめると、むしろ胸を撫でおろした。。
「…町はまだ無事。間に合ったようですね」
「少し遅れたけど、よかった、お鍋はまだ無事…」
 木元・杏(たれあん・f16565)も同様に、胸を撫でおろすが、シリンからの視線が少し冷たい。
「村はまだ無事」
 しっかりと頷いて確認しなおした。和らいだ表情の同行者と共に敵の姿を見上げると
「さあ、大物狩りです」
「張り切って倒す」
 続くガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)と鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)もそれを見上げ、感嘆の声を漏らす。それはしかしやはり、脅威を感じたものではない。たとえば、遊園地の絶叫マシンの頂点を見上げた時のような、そんな声色。
「でっかいねー!」
「なるほど確かに巨大だ。だが、未踏宙域の宇宙怪獣ほどではないかな」
「竜のお肉、美味しいのかな」
「少し筋張ってるかもだけど」
「スタミナはつきそうだ」
 と、食べることへの興味を尽きさせない二人を加えて、鍋への興味を漏れ出させた杏の方が多数派となってしまったらしい。視線を受けてシリンは軽い溜め息をついて言う。
「大丈夫、以前食べたことがありますから」
 その言葉に三人は目を輝かせると、俄然やる気を盛り上がらせて、闘争心を奮い立たせた。もしかしたら、奮い立ったのは食欲かもしれないが。
 そしてその後ろで、こそこそと動いた小さな影には、四人とも注意を向けはしなかったようだ。

 そんな眼前のかしましさが気に障ったのか、竜は口を開いて息を吸い込む。そうして吐き出された火炎に対して、無数の小さな光弾が向かう。放ったのはシリン、氷の精霊を宿した猟銃による射撃である。中空に浮遊する多数の猟銃のそれぞれから射出された弾丸が、炎の大部分を防いでのけた。
 零れて向かう炎の礫は、杏がそれに立ちはだかる。実体のない光の刃・灯る陽光を大きな刃とし、その火が着地するより先に、斬って防いで吹き散らす。その刃の形状がいつもと違って出刃包丁のそれであるのは、きっと食欲によるものではないだろう。
「お鍋食べたい」
 …多分きっと違う。ともあれそうしてできた隙に、ガーネットと小太刀は敵のすぐそばへと近付いていく。ガーネットは空へ飛び、ユーベルコードによって複製した鋼糸を念動力で操ると、全方向から黒竜を追い詰める。
「体が大きい分死角が多くて助かるよ」
 理解できるかどうかも定かではない皮肉をぶつけながらも、表情は変えずに淡々と攻撃を続ける。そうして狙うは翼の切除。刃を細かく震動させて、より切れ味を鋭くし、斬ることのみに注力したる。これはきっと、戦闘ではなく調理なのだろう。
 小太刀は地を駆け、その巨体へと苦無を投げる。伸びた鋼糸を絡ませて、それを頼りに飛びついて、一気に駆け上がった。
「残る問題はこの堅い鱗かな」
 言葉の通り、その足元にはびっしりと重厚な鱗が敷き詰められている。大きな鱗であると言えども、その身体自体が非常に大きく、その枚数はとても数えきれるものではない。戦闘において、こうも鎧っていては攻撃も通りにくかろう。小太刀は携えた刀を構え、足元の鱗へ突き立てた。といっても鱗自体にではなく、鱗と鱗の境目である。隙間に刃をねじ込んで、てこの原理で引き剥がす。強力な接合であるために苦心はするものの、やってやれないことはないようだ。もちろん、自身に注意が向いていては、すぐに撃退されてしまうだろうが…
 そうならないのには、ひとつの外的要因がある。竜の足元で戦う他の猟兵たちの尽力ももちろんあるが、それとは別に、潜んでいた猟兵の存在もある。
「食べてみたいけど、あんま美味しそうじゃないなあー……煮込めばいける? うーん」
 そんなことを隠れながら呟いていたりもしたのだが、他の猟兵には届いていないようであった。ひとしきり観察すると、少年は音もなく跳び出した。竜の死角に回り込み、舞扇を振るって爆発を生む。敵が振り返った時には、当然そこに彼の姿はない。そのまま小爆発を繰り返し、煩わして気を惹き続ける。そしてこの少年のユーベルコードのもうひとつの効果、物理的な効果を及ぼす見えない絆が、竜と彼との間に結ばれる。そうして幾重にも繋がった線は、跳び、駆け回ることで巨体にぐるぐると巻き付いていく。
「まあ、兄ちゃん姉ちゃん強そうだし。おいらはのんびりやるかー♪」
 順調に敵を拘束し、祭莉はこの後の鍋を思う。言う通りにのんびりとしたものである。しかしそれでも、友達のピンチに動かずにはいられなかったのかもしれない。
どうも、その友達からも隠れているような気もするが――

●投下
「少しは捌き易くなったかな?」
 それなりに広範囲の鱗を剥がした小太刀であったが、それでも見渡せば小さなものである。背面に弱点をひとつ、増やせたとは言えるかもしれないが、しかし言葉を聞くに戦闘のための鱗取りでは『やはり』なかったのかもしれない。そうして一息ついた時、ディオバルスは大きく咆えた。立ち上がり、振りほどき、傷を作りながらもガーネットの鋼糸や祭莉の見えない拘束を引き剥がす。煩わしさよりむしろ、その脅威性への認識を改めたようである。猟兵たちは振り払われ、弾き飛ばされ、飛行能力の剥奪も半ばに断念させられる形となった。
 竜は、急ぎ空へと飛びあがる。焦りか怒りか大きく風を荒れさせながら、猟兵たちへと口を開く。それは言葉を交わすためでも、ましてや命乞いのためなどでもないだろう。熾火のような赤が、その内側を染めていく。
「させませんよ!」
 高速で飛びかかったルムルが、その頸部へと鉤爪を立てる。噛み付いて牙を立て、獣のような乱撃を繰り出す。それらは深くに食い込んで、痛みも被害もないはずはないのだが、それでも竜の構える火は大きくなっていく。皇の名を持つ竜の、意地によるものであるのかもしれない。歯噛みしながらその猟兵は、敵の眼前へと立ちはだかった。こちらも口を大きく開けて、同様に強烈なエネルギーを吐き出してやる。竜の炎としばらく相殺しあったそれは、しかしその後ルムル共々呑み込まれ、止めばその後ルムルの身体が宙より落下するが見えた。

 地獄の炎に蓋をしきるのは、どうやら容易ではないらしい。そんな落胆はお構いなしに次弾の準備と開いた竜の口の中へと、超長距離の狙撃が行われた。
「真正面から力比べは愚策ですね……」
 そう考えたシャルロットは、祭莉よりさらに入念に潜んでいた。当たり前だが逃げるためとか保身のためとかではなく、確実に大きな被害を効率的に与えるためのそれである。遮蔽物には事欠かかない山の中である上に、そのユーベルコードである隠れ身の外套は、隠密に特化されたものである。姿を消した上での長距離射撃、捉えることも躱すことも、容易ではないだろう。事実相手の口腔内からは、炎のそれではない赤色が飛び散っている。
 回避と同様、命中させることも決して容易ではない。それでもシャルロットには、それを成功させるだけの自信があった。成果を見届けると彼女は立ち上がり、速やかに注意深く、その場を後にする。居場所を気取られぬよう、次の射撃ポイントへと急ぐために。

 しかし怯みはするものの、一撃で攻撃を止めるには能わない。まだ、発射を遅らせただけである。
「羽根妖精よ、私に集え」
 それにはもちろん意味がある。準備が必要な攻撃が間に合うことは、とても大きな意義である。シリンの猟銃たちが次々と集約され、ひとつの巨大な砲へと姿を変えていく。これがこのユーベルコード、ピクシー・シューター・ギガントの真の効果である。大きな敵には大きな弾丸を。当然ながら乱暴な帰結は、ここに実現を見せる。
「いくら強大であっても、あなたは私の獲物」
 引き金を引けば、猛烈な反動と共に恐るべき大きさの魔力弾頭が射出された。それは竜の胸にて爆裂し、力を蓄えるその緑の石のひとつを、粉々に砕いてしまった。
 それでもしつこくしぶとくエネルギーを溜め続けるディオバルスへと、更なる弾丸が射出される。否、それは弾丸ではなく。
「これから鍋の準備もあるし」
 それは地を蹴った猟兵である。自身の超常の能力によって強化した脚力で以て跳躍し、一瞬にして竜のすぐそばへと飛び込んだペトニアロトゥシカ。竜はそれなりに高くに飛んでいるのだが、構わず距離を詰めるだけの脚力はいかばかりであろうか。もしもそれを蹴りになど使おうものなら…
「鍋の具になる気がないならさっさと骸の海に帰ってもらおうか」
 その勢いのまま容赦なく、彼女は竜の顎を蹴り上げた。大口を開けてエネルギーを溜めていたその頤は、がつんと硬い音を立ててかち上げられた。そしてその勢いで、竜の身体はもう少し上に飛んで――

●煮込み
 そのまま自由落下でうつ伏せに地面に叩きつけられた竜は、それでも気丈に立ち上がる。その間にヴィリヤはルムルに駆け寄り、宝石の光をその身に翳す。見る間に癒える傷に青年は少し申し訳なさそうにするが、ヴィリヤは首を振って応じた。
「お鍋を食べる前に退場は勿体ないしね」
 どうやらもう一息である。ここまで来たら皆で楽しく食べたいというものだろう。

 その発言に明瞭な同意を示す杏。いつもと同じく表情は控えめなのだが、もはやどこかうきうきして見える。その意志を代弁するかのように、相棒のうさみみメイドさんがくるくると踊りながら駆け出した。右手におたま、左手に土鍋を持って、皆の間を縫うようにくるくると。食事を楽しみにする猟兵にとっては、その目的の再確認となるこの姿は良い鼓舞となるだろう。陽気な姿にルムルも少し、緊張を和らげた。
 竜にとっては面白くない。自らが動くにも苦心する中、楽しげに踊るその姿、忌々しいにも程がある。忌むほど自由を奪われるとて、憎悪を殺すは難しい。そんな悩みはどこ吹く風と、猟兵たちの攻撃は続く。というより、畳みかけるチャンスを無碍にするなど、有り得る選択ではないだろう。
「竜の鱗はこのドリルで天元突破Death!」
 もしかしたら最も竜食を楽しみにしているかもしれないアンネリーゼが、その背後より襲い掛かる。飛び乗るが先か、それともその手のたけのこドリルが背を突くが先か。どちらとも分からないが、その悪辣なる兵器は激しい回転を始め、身の毛もよだつような音を立てながら鱗を抉り前進を始めた。貫通性の攻撃はここまでなかったこともあり、不意を突かれた黒竜は悲鳴のような咆哮をあげた。
 続けざまに正面より、隆豊が気合の声を伴って駆けてくる。飛ばれる間は届かないが、地にある今なら絶好機。その機を逃さぬためにこそ、一撃に全てをこめ、出し惜しみなしの全力を。
「おおおおおおお!」
 竜に劣らぬ咆哮に満身の気合を込めながら、竜の翼の根元を叩く。その一刀は傷ついた竜の翼を骨ごと断ち落とし、さらなる苦悶の声を上げさせた。どうだとばかりの清々しい表情で、隆豊は笑う。飛べなくなったなら攻撃のチャンスは増える。彼にとってはここからが忙しくなるところである。構え直して駆け出した。

 もはや周囲の誰であっても煩わしい。竜は癇癪を起こすように、身近の猟兵を打ち払おうと暴れ立てた。攻撃に使わぬ頭すらも振り回し、狙いを定めさせまいとする。シリンのものであるかシャルロットのものであるか、それらの弾丸のいくつかを、そうして実際に跳ねのけた。
「ほう、黒竜が相手とはやりがいがあるな。オラは正面からブチ当たるしかできないけど、だからこそ突破口もある!」
 おもむろにディオバルスの眼前へと立ったジン・ロシュモフ(心優しき花畑の巨人・f18884)は、見上げる巨体ににっと笑った。ジンの身体も2メートルをゆうに超える大柄であるが、それでも竜とはくらべるべくもない。加えて上半身裸で防具のひとつもなく、躱す構えも見られない。無謀に過ぎるその姿に、竜の爪は無情に襲い掛かろうとする。
「地形ごと破壊してくる一撃。それを受け止めてこそ英雄ってなもんだろ!」
 英雄というよりプロレスラーの覚悟である。それもそのはず、バイオモンスターたる彼のモチーフは伝説の巨人プロレスラー。相手の攻撃を避けるなどという選択肢はありえない。そう、少女が愚策としたそれを、男は全力で採用したのである。
「むっ…」
 叩きつけられたそれを、ジンはしっかりと受け止めた。覚悟を決めて、力を溜めて、オーラの防御を全開で。指一本でも彼の手首には匹敵する太さであろうそれを、である。もちろんノーダメージとは行かず、いくらか苦悶の表情を浮かべているが、動く事に支障はない。もう一度、ジンは笑った。次はこっちの番である。竜はその手を引こうとするが、がっちり掴まれて動く気配もない。
「さっきお前が壊した地面が今度はお前を壊すための凶器になる。覚悟して受け身を取りまくるんだな」
 その言葉は、今からすることを予告していた。竜の理解は定かではないし、聞いたところで理解は及ばなかっただろう。小さき人が、竜を投げる?まさか、そんなはずは。
「どっこいせー!」
 気合の掛け声をひとつ。ディオバルスの身体は実際に持ち上げられていた。ジンの頭の上に掲げられた竜は、明らかに驚きの声を上げていた。脚を振ったり翼を動かしたり、それでもロックは外れない。猟兵はそのまま体を逸らし、敵の身体を頭から地面に叩きつけた。もはや受け身がどうこうではない。竜は首が長いので仕方がないだろう。
「もうひとーつ!」
 その手を離さずもう一つ。次は上手に背中から投げ落とす。それでも竜は受け身を取れず大ダメージを受けているが。容赦のない攻撃は、竜によって破壊された地形を続けざまに叩き、起伏を均しているようでもあった。
「お肉は叩いて柔らかくしておけば、鍋やる時においしさ倍増するってもんだ!」
 鍋の準備は、下ごしらえはとうに始まっていた。

●寄せ鍋
 立ち上がったのにまた倒されて、なおも立ち上がるが、どうにも動きは鈍くなる。顔をあげて周囲を見渡せば、遠方より届いた銃弾によってその光を奪われる。きっと次弾は死角より来るのだろう。捉えることはより難しくなる。煩わしい。残った片目には何やら白い獣が動き回り、これも煩わしい。気を取られていては無数の鋼糸が、白き矢が、光の刃がその目を襲う。
「食べごたえのあるでっかいごはんです」
 足元では我が身を喰らい続ける花とスライム。これもまた煩わしい。
「味を確かめておくのも良いかもしれませんね」
 やめろ、増えるな。
「ゴメンね、おいらお腹空いてきたから。早く倒れてね!」
 獣は弾んだ声で、竜の死を望む。望まれるのは初めてのことではないだろうが、まさかそれが食用であろうとは。自らが食われる側になろうとは。
 大斧が、妖刀が、ドリルが、そして手刀が。さまざまな刃がその身をなますに切り刻む。

「おいしくなあれ!」
 願いを込めて放たれた矢は、鱗を剥がされた竜の身体を射抜く。柔らかくなった肉に深く食い込み、それを最後に竜の身体をどうと倒した。『おいしいお肉が食べたい』という願いは、この戦場において思いの外に強く大きなものであったらしく、それから形作られた矢は無双の力となった。らしい。
「さて、と」
 シリンが猟刀をすらりと抜いて、竜の亡骸へと跪いた。以前食べたことのあるという彼女による解体は、言う通り見事なものである。パワフルな戦いを見せたジンに傷薬を見舞いながら話していた隆豊も、その刃の取り扱いに感嘆の声を上げてみせた。
 しかしシリンにはリアクションを返している暇はない。速やかに処置をして、できるだけ多くの肉を町へと送り届けねば。タマコの食欲に、食べ尽くされてしまう前に――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『お鍋の美味しい季節ですね』

POW   :    肉や魚を調達。新鮮なお肉やお魚、狩ったるどー!

SPD   :    野菜やキノコ等を調達。森や洞窟から、手早く収穫してきます。

WIZ   :    調味料や加工品を調達。村で家人や商人に交渉し、入手します。

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちの尽力により、それなりの量の肉は確保された。その肉の現存はもしかしたら、願いの矢の力によるところもあるのかもしれない。そうであれば、その肉が美味しいことは必然であろう。
ともあれ、調理しないと食べられない皆様にとっても美味しく竜肉をいただくチャンスが生まれたのだ。そのためにも鍋の準備を万端として、今回の祭りを――否、鍋パーティーを実現させねばならない。

 森に入って新規に食材を探しても良いし、絶望的ではあるが谷底の荷車から引き上げる試みをしても良い。この世界では珍しい食材やなんかを自腹で持ち込んでみても一向に構わない。
 ただし町の人は当然一般人である。変な物は命に関わるし、鍋への投入は断られるだろう。みんな楽しく、節度を持って、面白おかしく、食って、呑んで、騒ごうじゃないか。
ルムル・ベリアクス
炎に巻かれたときはどうなるかと…助けていただいて良かったです。
UDCアースに住むわたしには食材のつてがないのでもう一仕事。
UCで巨大な鷹の影の姿を持つ悪魔アクシピターを召喚、背に乗り千里眼を使って谷底の食料を探しに行きます。使える食材が有れば儲けもの。持参した布に包み持ち帰ります。
ついでに世界知識を授けてもらい、森で美味しいキノコやスパイスを探しましょう。
何ですかアクシピター、え、こき使いすぎですって?後で竜鍋と、「あれ」を捧げますからお許しを。そう、お酒!沢山箱買いしてきたビールを持ち込み振舞います。
鍋に舌鼓を打ちつつ皆さんのお話を聞いていると、楽しくて良い気分でつい酔いすぎてしまうかも…。


ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
さて、食料集めねえ。
肉はどうやら確保できたみたいだし、採るなら野菜の類かねえ。
とはいえ採り過ぎたら山の生き物が冬を越せないしなあ。

んー、ちょいと疲れるけど、戦いで荒らした森の修復も兼ねて、
【豊穣樹海】を使って食べ物を作り出そうか。
根菜とかとキノコの類、あとはスダチなんかの柑橘系も薬味になるかね。

食材が揃ったら適当に鍋に突っ込んでいけばいいか。
祭りの鍋に細かい手順だの作法だのなんて無粋なだけだし、
食って美味けりゃあそれでいいさ。

食べるのは好きだけど大食いが好きなわけじゃなし、
のんびり味わって食べるとしようか。


黒玻璃・ミコ
※美少女形態

◆心情
ふぅ、無事にリザードマンとディオバルスの討伐完了ですね
このまま帰還しても良いのですが折角ですのでもう少しお手伝いしましょうか?

◆行動
【POW】で判定です
ふーむ、そう言えば谷底に馬車が落ちていたのでしたっけ?
大半の物は駄目になってしまっているでしょうが
折角ですので回収してきましょう(軽いノリで谷底へダイブ)

私ならこう見えて【念動力】と【空中戦】の要領で
空ぐらい飛べますので大丈夫ですしね
【暗視】可能なお目々で谷底でも無事なものを回収出来るでしょう
粗方集めたら馬車に使っていた幌布などに包んで
【怪力】に任せて皆さんの所まで運びますよー

◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK


アンネリーゼ・ディンドルフ
【OCL】で参加
アドリブ改変連携大歓迎
◎WIZ
「食材調達は得意な方々に任せるとして、私は町へ交渉に行きましょう」

ユーベルコード「Absolute Negotiation(アブソリュート・ネゴシエーション)」を発動。
調味料や加工品の調達は勿論、町民を巻き込んでの大忘年会に向けて、諸々の準備について交渉する。

「折角ですから、町の皆さんもご一緒にどうですか?」


ジン・ロシュモフ
【OCL】

●行動方針:POW

●ふー、何とかドラゴン討伐&ドラゴン肉ゲット……と。後はこれ以外の具材確保をしないとな。
確か、谷底に落ちた馬車には食材が乗せてあったんだっけ。傷んでしまってるのも多いだろうけど無駄にはしたくないな。

●ということで、俺は【スーパージャスティス】を使って谷底に飛んで、馬車を探してみよう。
で、使えそうな食材を出来るだけ回収して……傷んだやつは地面に埋めておかないとな。

●鍋パは【OCL】の皆と盛大に飲んで食ったりするのはもちろん、他のテーブルにもお邪魔して親交を深めたり広げてたりしていこう。
なお、ドラゴン肉は初っ端にある程度確保しておくぞ。
さあ、祝勝会と忘年会の始まりだ!


角守・隆豊
ドラゴンと戦えたばかりか、その肉を食せる機会にも恵まれるとは。これは張り切って鍋の準備をせざるを得んな。

しかし、どうしたものか。一番分かりやすいのは例の荷車の回収だろうか。肉体労働には自信がある故、引き上げる手伝いくらいは出来るだろう。
後は準備の手伝いくらいしか思い浮かばんな。これだけの人数で鍋をやるのだから水は大量に必要だろう。それらを運んだりするとしよう。

実戦と鍛錬(準備)の後は飯だ!強い肉体を作るためには、飯は早ければ早いほどいいと聞く。ドラゴンの肉は競争相手も多いだろうし、積極的に狙っていくぞ。
そういえば酒はあるのか?この類の席で無いとは思えんし、あるならば是非頂きたい!

アドリブ歓迎


ヴィリヤ・カヤラ
お鍋だね!楽しみ!

少し材料を分けてもらえるなら、
カレー鍋を作ってみようかな。
大きい鍋でも良いけど、口に合わないと大変だしね。
お鍋に分けてもらった材料と持ってきた和風だしと
カレールウを加えてお手軽に作っちゃおう。
シメはパスタとチーズ入れてみようかな。
他にどんなお鍋が出来るのか楽しみ!

食事が始まったら……
惇さんには予知をありがとう!で、みんなにはお疲れさま!だね。
リザードマンもドラゴンも倒せて一安心だね、
こうしてみんなで楽しめるしね!

っと、惇さんはお酒飲むよね?
他にもお酒を飲む人がいるならお酒注ぐね。
私は弱めのお酒かジュース混ぜてカクテル風で。
お鍋を食べたのはまだ何回かだけど美味しいよね。


タマコ・ヴェストドルフ
【OCL】で参加

思えば今までオブリビオンを料理することを怠ってきました
目の前にごはんがあれば平らげていました
今回はアンネさん達といっしょです
料理をがんばってみましょう

まず町まであまったドラゴンのお肉を運びます
強化された真の姿の力なら
しっぽの先っぽくらい持ちあげられるでしょう

町まで運んだら燻製というものに挑戦してみます
お肉を木に釣り下げて
木材とかダンボールで即席の覆いをします
そしてこの状態の片腕を
スモークチップ用に必要なだけ斬り落とします
大丈夫です
たくさん食べたので生えます
あとは火をつけて煙を出してお肉を燻ります

うまくできるかはわかりませんが
できたらみなさんのところに持って行きます


木元・杏
【かんさつにっき】7人

大きなお鍋やおたまを用意して
町の子供達に話しかけ

お鍋するって大人達に教えてあげて?

子供達の言葉なら大人もきっと集まってくれる

龍肉の美味しい頂き方はシリンが知ってる
わたしもお手伝いして教わるね
お肉は、焼いてもおいしい
希少部位!や、焼く…
焼肉も用意

アキの戦利品…虹色のキノコ、食べられる?
まつりん何か残ってた?
ん、勇者…(人形受け取り
ここに伝わる勇者?
町の人に見せて聞いてみる

海莉、と、お野菜
ふふ、わーるどわいど♪

お鍋の味も確認しなきゃ
小太刀と一緒に味見
美味しい(こくり
…ん、も、もう少し食べないとわからない(もぐもぐ

皆揃ったら鍋パーティ
うさみみメイドさん達、町の人達にも振舞って?


南雲・海莉
【かんさつにっき】
みなさん、竜退治、お疲れさまです
(リュックや麻袋にいっぱいのアルダワ産お野菜を、どさっと地面に
持てるだけ持って転移してきた)
芋に人参にキノコもあるわよ

(他世界とは少し違う色合いの葉物野菜を手に)
大丈夫、味と栄養価は保証するわ
さっそく下拵えしていくわね
(ピーラーなどを構え)

みんな、お帰りなさい
お鍋に入れると良い出汁や香りになりそう
充実していくわねっ
(馬車からのお土産や香草を受け取り、
調理法を聞きながら補助に動いて)

竜なんて3年前の調理実習でダンジョン飯にして以来よ
こちらの竜も焼けると良い匂い
つまみ食いも程ほどにね

茶葉も持ってきてるの
お酒を飲めない全員に振舞うわよ(ガッツポーズ


木元・祭莉
【かんさつにっき】に合流ー。
海莉姉ちゃんも、鍋祭りにようこそ!

町の人に、龍退治の報告をして。
やっぱお祭りやるよー、って宣言するー!

谷に落っこちた荷車の食材、傷んでない分だけでも、引き揚げたいなあ。
お祭りだし、何か特別なモノ積んでないかな?
海産物な珍味とか♪

荷車の残骸から、使えそうなモノ探す。
これ……お土産かな?
お人形や木剣も、集めてバケツに詰めて。
風呂敷に包んで、背中に。

疾走発動!
まつりの白狼便でっす♪
高速飛行で往復。色々拾って帰るー。
ハイ、勇者人形だよ♪

鍋は、みんなで楽しく食べるモノ!
うまうまー♪(いろんな食材をパリパリバリバリ)
惇兄ちゃんも、楽しく食べてるー?
ん、よかった♪
いつもありがと!


ガーネット・グレイローズ
【かんさつにっき】

ドラゴン鍋…精がつくのは結構だが、やはり初見は
味と匂いがどうしても気になる。
なので私は薬味に使うハーブを探しに行こう。
鍋の味付けや美味しい食べ方は、地元の人に聞いてみようか。
以前UDCアースでイタリアンを食したんだが、
その時の記憶を思い出しながら似たものを探してみたい。
それと、口直しにしたいベリー系の果実などが採れたらいいんだが。
もちろん毒のあるものやまずいものを除けるように、<世界知識>を活用するぞ。

海莉は仕入れお疲れ様、アルダワ産の野菜ってどんな味だろう?
私は先日、ヒーローズアースで購入したクラフトビールを持ってきた。
呑めるのは…シリンと、惇か。二人とも、一緒にどうかな。


シリン・カービン
【かんさつにっき】

解体した竜肉は、クセのない一般用、
通好みのモツ、希少部位に分類。
それぞれ鍋の担当者に渡し、
竜肉調理のコツをレクチャーします。

ガーネット、アキ、採集場所は分かりましたか?
ん、このハーブは竜鍋の深みを増しますよ。
アキ、このキノコは食べられませんが、
よい薬になるので村に差し上げましょう。
アルダワの野菜は初見のものもありますが、
海莉の見立てなら期待できますね。
祭莉、お疲れ様です。

杏には希少中の希少部位、竜の尾肉を。
強靭かつしなやかに尾を動かす筋肉は
旨みの密度が違います。

つまみ食い中の杏と小太刀に一応釘刺し。
「ほどほどに、ですよ」

ビール… エールの様なものですか。
惇も一杯どうですか?


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

いよいよお鍋だー!
料理はあんまり得意じゃないけど
鍋なら切って茹でればなんとか…
ならないの?下拵え大事?なんてこったい

シリンシェフの指示に合わせて杏と一緒にお手伝い
筋切り?下茹で?隠し包丁??何だか色々難しい
でも美味しいお鍋を食べる為、何とか頑張ってみるよ
ほら、惇兄も包丁持って!(有無を言わさず引き込む構え
合言葉はおいしくなあれ♪

いい香りがしてきた
ねえ杏、味見も大事なお仕事だよね
ちょこっとだけ…はう、美味しい!
も、もう一口?(どきどき
わあ、バレた!?(ほどほどにの声にぴょんと驚き

皆お疲れ様!
大人組はビール?楽しそうでいいな
そうだここは言っておかねば(ニヤリ
「ほどほどに、だよ?」


駒鳥・了
【かんさつにっき】
オレちゃんことアキ、鍋から参加!

お肉ーっ!は、十分あるみたいだから森になんか探しに行こ!
カービンせんせーにオススメの狩場を聞いたらGOだ!

赤いの黄色いの、結構カラフルだねえ
ねーグレちゃん、この虹色キノコめっちゃクリスマスっぽくない?
食べられなくても飾ればいーや!
あとは栗とー、柿っぽい果物?
あっこの蔓についてる実、むかごだっけ?
塩ゆで出来るから鍋にもイケるハズ!

ってコトでただいまー!
おおお、葉モノは採れなかったから南雲ちゃんの野菜ありがたーい!
鈍ちゃんと祭莉くんは相変わらずだねー
杏ちゃーん、飾り用の紅葉いる?

調理のお手伝い終わったらさー食べよ!
あったかおいしー!しあわせー!


シャルロット・クリスティア
SPD?

絶望的……とは言われていますが、やっぱりそう簡単に諦めきれるものでもないでしょう。
引き上げを敢行してみますか。

襲撃地点は聞けばわかるとして……ツールの楔やロープも利用しつつ、上手いこと崖の凹凸等の【地形を利用】して降りて行きましょう。
もっとも、全部持ち帰るのは到底無理でしょうから、荷物を減らすためにも無事な食材の目利きはしっかりと。

帰りは……そうですね。アンカーショットの先端を、食材をまとめた荷物に括りつけて、まず身一つで崖上まで帰還。
その後巻き取り機構で荷物を引き上げれば安全に行けそうですね。

二次災害は目も当てられないですから、慎重に。
最悪、間に合わなくても使いようはあるでしょう。



●音頭
 目覚めた竜の咆哮が、猟兵たちを招いたように、絶えたる竜の絶叫も、その動向を知らしめた。いの一番に駆け出した祭莉や杏が着いた時には、町では既に皆が忙しく動いていた。とりあえず、報告だ。
「やっぱお祭りやるよー!」
「お鍋、する」
住民たちは一斉に振り返り笑顔を見せて口々に、同意をしたり礼を言ったり訳の分からない奇声をあげたりと負けず劣らず元気に返す。どうやら、既に出来上がっているのが何人かいるようである。ともあれこちらの雰囲気は問題なさそうだ。猟兵たちもお祭りの準備をスタートさせよう。

「ドラゴンと戦えたばかりか、その肉を食せる機会にも恵まれるとは。これは張り切って鍋の準備をせざるを得んな」
 心なしか声が弾んでいるのは隆豊である。強敵と切り結び、これを打倒した興奮も冷めやらぬまま、今度は旨い食べ物までと来れば、それも無理からぬことだろう。
「しかし、どうしたものか」
既に皆が忙しそうに動き出しているし、町の中ではそれほど人手の不足は見受けられない。一番分かりやすい、手がかりのある作業と言えば――

 隆豊がそう考えて、荷車が落下したという崖の辺りに来てみれば、同じ考えらしい猟兵たちも数人集まって、谷底を覗いていた。
「このまま帰還しても良いのですが、折角ですのでもう少しお手伝いしましょうか」
「確か、谷底に落ちた馬車には食材が乗せてあったんだっけ」
「絶望的……とは言われていますが、やっぱりそう簡単に諦めきれるものでもないでしょう」
 姿に気付いたジンとシャルロットは振り向いた。そしてもう一人は、すでに足を踏み出しながら
「大半の物は駄目になってしまっているでしょうが、折角ですので回収してきましょう」
まるで玄関あけながら『コンビニ行くけど買って来るものある?』とでも言うような気軽さでそのまま飛び降りたのが、ミコだ。先ほどまでの戦闘中と違って今は五体を併せ持った人型を、もっと言えば美少女の姿を採っている。この姿では触れただけでは他のものを捕食しそうには比較的見えないし、落下して無事で済むようにも、見えにくい。そんな少女が今落ちた。
「闇翔ける鷹の悪魔よ、わたしに全てを見通す眼を授けたまえ!」
 ルムルが咄嗟にカードを掲げ、巨鳥の悪魔を召喚する。その背に乗ってすぐさま谷へ、ミコの姿を追うように。ジンも飛び込みユーベルコード、スーパー・ジャスティスを展開する。金色の巨体を加速させ、一目散に少女の元へ。
「私ならこう見えて、空ぐらい飛べますので」
 言いながらミコは、念動力で減速しながらゆっくりと着地姿勢に移行した。そんなことだろうとは思いつつも、ちょっと心臓に悪いものである。無事な姿を見届けて、ルムルの駆る鷹の悪魔アクシピターは速やかに中空で停止した。心なしか非難がましく、背に乗る契約者を見つめている。とはいえ影絵のようなそれの表情は、正確に窺い知ることはできそうもないが…
そしてジンは減速なしで地面に突っ込んだ。もちろん無傷であるし、若干穿たれた地面の中心できちんと着地姿勢である。

 ほどなく隆豊とシャルロットが岩壁伝いに谷底に降りると、それぞれに探索に取り掛かる所であった。少女の進路には楔やロープなどのツールの形跡が見られるが、もうひとり分の痕跡は見られないことから、恐らくは完全なフリークライミングで来たものと思われる。それはさておき、確かにそこは事前に聞いてきた通りの馬車の落下地点の直下ではあるが、その姿は見当たらない。加工された木材の、そう古くはない破片があるところを見ると、間違いではないはずだが…と、ほんの少しの思索のうちに、ルムルの方で見つけたらしい。壁伝いに少し逸れた場所、アクシピターの視線で示す、やや高い位置に鉤裂きだらけの幌布が引っかかっている。もう少し行けば車輪が、さらに行けば折れた板材が。その様子から、崖に接触し破損しながら、中身を撒き散らして落ちて行ったらしいことがうかがえる。
「傷んでしまってるのも多いだろうけど無駄にはしたくないな」
いくらか残念そうにするが、食べられるものがまったくないわけでもないだろうと、ジンは探索を継続することとした。
 暗視に長けたミコの目は、暗がりに転がり込んだ食材を捉え、小柄な体はより狭い所へも探索の手を届かせた。ルムルは悪魔の千里眼を借り、広範に亘って回収を行う。ついでに自生する茸や香草の類も採集していく。ちなみにUDCアースに住む彼には、この世界での食材となりうる植物は分からないので、こちらもアクシピターの知識を頼りにしたものだ。
「え、こき使いすぎですって?後で竜鍋と、『あれ』を捧げますからお許しを」
ご機嫌うかがいにひとつ頷く鷹に、すかさず更にと労働を課していくルムル、確かにこれで悪魔づかいが荒いようである。隆豊とジンの二人は特別なことはせず体力勝負。遠くても見つければダッシュで回収である。

 ひとしきり探して纏めてやれば、少なくはない食材が集まってきた。町ごとまかなうには決して多いとは言えないが、それでも五人で崖上まで運ぶにしても大した量である。集積されたそれらをシャルロットが慎重に丁寧に確認し、引き上げる食材を厳選する。やはり相当量が傷んでいるし、特に肉類なんかはほとんどが動物にやられている。
「傷んだやつは地面に埋めておかないとな」
 自然下にあってこれ以上生態系に影響を与えてもまずかろう。食べられそうにないものは別に纏め、ジンの掘る穴に埋めて処理する。並行して無事な食材を回収した幌布に包み、そこにシャルロットがアンカーショットの先端を括りつけると、皆は登攀を開始した。といっても二人と後から来るジンは飛ぶので、実際に崖を登るのは隆豊とシャルロットの二人のみだ。それでも彼は鍛錬がてらに、彼女は荷馬車を粉砕した地形を存分に利用し、遜色ない速度でがしがしと登って行った。
 登り終え、アンカーを巻き取って荷の引き上げも済ませた面々は、それを手分けして運び出そうという所で、町への報告を経てから崖上に飛んできた祭莉と対面することとなった。白炎をあげながら、文字通り超高速で火の玉よろしく飛んできたのだが、それでも出遅れてしまったらしいことに、少年は頭の上の耳を少し垂れさせるが、すぐに気持ちを切り替えると、両手を伸ばして笑顔で言う。
「まつりの白狼便でっす♪」
 なるほどこれならきっと早かろう。隆豊が背負った荷の一部を渡せば、祭莉は踵を返して今来た道を一目散に飛んで行った。そうして手の空いた青年は、腕を組んでもうひと思案。
「後は準備の手伝いくらいか。これだけの人数で鍋をやるのだから水は大量に必要だろう」
次の準備――という名の鍛錬科目に当たりを付けると、彼もまた、駆け出した。


「さて、食材集めねえ」
 少し遡って、ペトニアロトゥシカ。元気に崖に飛び込む猟兵たちを横目に見送ると、自身は山林の中へと足を踏み入れる。
「肉はどうやら確保できたみたいだし、採るなら野菜の類かねえ。とはいえ採り過ぎたら山の生き物が冬を越せないしなあ」
軽く唸りつつ首をひねり、木の根を跨ぎ土塊を踏み越え、通り過ぎる中には戦いの痛々しい爪痕がいくつも見られ。

「ねーグレちゃん、この虹色キノコめっちゃクリスマスっぽくない?」
 けらけらと笑いながら、駒鳥・了(I, said the Rook・f17343)こと『アキ』が採取したものを見せる。ちなみに名前の主である人格は永らく眠っており、この明るく賑やかな性格は人格固有のものである。呼びかけられたガーネットは言葉の内容に一度怪訝な顔をし、振り返って実物を確認して、もう一度怪訝な顔をした。周囲には赤かったり黄色かったりと警告色らしく色とりどりのキノコが生えている。熟練の知識がなくては食物か毒物かは難しいものだが――これは確かめるまでもなく不可食である。首を振るガーネットであるが
「食べられなくても飾ればいーや!」
アキは離す気はないらしい。それはそれとして楽しそうだ。
 そしてもう一方のガーネットの標的はというと
「ドラゴン鍋…精がつくのは結構だが、やはり初見は味と匂いがどうしても気になる」
なので彼女は、薬味に使うハーブを探している。採取された肉の量からして、おそらくは竜肉がメインの鍋となる。未知の食材となれば身構えるのも無理はないだろう。UDCアースで食べたイタリアンの味を思い出しながら、それらしい食材を求める。色とりどりのキノコの中に真っ白な可食のものもあったりして、それなりに狙いの収穫は見込めそうである。
「あとは栗とー、柿っぽい果物? あっこの蔓についてる実、むかごだっけ?」
 別世界における果実由来の植物たちの名を挙げながらアキが採取していく。世界知識での見立てでもほぼ同じもので、味にも期待はできるようだ。その他口直しのためのベリーなんかも採取して、終始賑やかな採集行は大荷物と共に町へと向かう。

「んー、ちょいと疲れるけど」
やや渋々ながらも、結局ペトニアロトゥシカはユーベルコードを使うことにした。地に付けた足の周りから小さく芽吹き、見る間に生長し、波紋のように増え、広がっていく。抉れた所からも植物が生え、土色に緑を湛えていく。そうして周囲は、元通りよりなお深い、樹海へと変貌していった。植生そのものは変わらない、ただただ生命力に溢れた森である。
 ペトニアロトゥシカはその中から、食べられそうな物を見繕っていく。自身から作り出したものなので、当然ながらその見極めもお手の物である。種々の根菜にキノコ類、薬味に使えるスダチなんかも。それらを充分にとってなお、森への還元は余りあるものであった。自分たちが騒がせた森へ、ささやかながらも詫びと礼を。


 町を舞台にする調達班の姿もあった。
「食材調達は得意な方々に任せるとして、私は町へ交渉に行きましょう」
 アンネリーゼは、家々を回って調味料や加工品を譲ってもらえるよう交渉をする。声を掛けて、扉が開けばこっちのものだ。
「さあ、交渉タイムです」
猟兵が小さく呟いて顔を上げると口から滑り出す『ア式交渉術』。絶対的な強度を誇るその話術を一般人に対して用いれば、もはや交渉ではなく洗脳の類となる。故に、その詳細については悪用を避けるために伏せておくのが賢明であろう。
 さて、交渉相手はお祭りの準備の中でも家にいる人たちである。そう乗り気でない住人もいるのかもしれない。それなら上手に乗せて巻き込んでしまえば、もっと盛り上げることができるのでは?
「折角ですから、ご一緒にどうですか?」
交渉術は食品だけでなく人員すらも融通してもらうために行使された。効果時間の制約はあれど、ご近所付き合いの手前もあろうし、参加させればこちらのものだ。悪しき――もといア式交渉術は、遺憾なくその猛威をふるう。
もしかしたら、この町史上最大規模の忘年会となるかもしれない。

「思えば今までオブリビオンを料理することを怠ってきました。目の前にごはんがあれば平らげていました」
 今までを振り返るタマコの手には、倒した竜の尾肉がある。彼女は後の料理の事を思い、食欲を抑えたのだ。その手の肉はつまり、少女の大きな一歩への、勲章であるとも言えまいか。
「今回はアンネさん達といっしょです。料理をがんばってみましょう」
 そんな決意と克己によって、シリンが切り分けることのできた肉の量はとても多いものとなり、運搬にあたっても多くの人手を必要とした。その辺は高速便の役目を終えた祭莉と、鍛錬の為にハードな往復を繰り返す隆豊が猛烈に活躍している。
「ってコトでただいまー!」
「みなさん、竜退治、お疲れさまです」
「海莉姉ちゃんも、鍋祭りにようこそ!」
 労いの言葉と大荷物を持って南雲・海莉(コーリングユウ・f00345)が町に現れた。帰路にて合流した調達班たちを迎え、先行して準備に駆けまわっていた仲間たちに迎えられる。彼ら彼女らの無事を確認すると、海莉は両手の大荷物を降ろし、更に背中の大荷物を降ろした。破れんばかりに膨れ上がった麻袋とリュックを開けると、そこから山のような野菜が現れる。
「芋に人参に、キノコもあるわよ」
次々取り出して見せる彼女の手に、やや奇抜な葉物野菜も現れる。アルダワ産の野菜である。迷宮内のものなら生態の差はあるだろうし、見慣れないのも頷ける。一瞬微妙な空気が流れるものの
「大丈夫、味と栄養価は保証するわ」
持ってきた本人が言うのだから、きっと間違いはないのだろう。こちらも大荷物を背負ったアキが目を輝かせる。
「おおお、葉モノは採れなかったから南雲ちゃんの野菜ありがたーい!」
 そして飽くまで賑やかに、彼女は調理場へと駆けて行く。


「ガーネット、アキ、採集場所は分かりましたか?」
「あ、カービンせんせー、オススメ狩場大当たりー!」
 調理場では、シリンが活き活きと、てきぱきと、指示を出しつつ手を動かしていた。元気に返ってきた返事に微笑み返し、成果の程を確認する。残念ながら食用とならないものも少なからず混ざってはいたが、使いようはあるらしい。
「このキノコは食べられませんが、よい薬になるので村に差し上げましょう」
そうした協議の結果、最終的に虹色キノコは――飾られた。薬効的にも不合格だったらしい。
解体した肉はクセのない一般用、通好みのモツ、希少部位に分ける。どの部位も住民たちにとっては希少だが、そこは議論には値すまい。各部の調理のコツを伝えながら、それぞれを割り振り任せていく。それ以外の食材についても把握し最善の調理を、と動く中で
「アルダワの野菜は初見のものもありますが、海莉の見立てなら期待できますね」
「ふふ、わーるどわいど♪」
 ひょっこりと現れたお手伝い中の杏に笑顔を返し、海莉も調理場へと乗り込んだ。
「さっそく下拵えしていくわね」

「鍋なら切って茹でればなんとか…え、ならないの?下拵え大事?なんてこったい」
 どうやら包丁は日本刀と勝手が違うようで、小太刀はあからさまに苦戦しているようだ。
「筋切り?下茹で?隠し包丁??」
 もはや呪文のように。教えるシリンもちょっとからかって遊んでるのではないかというくらい、彼女の持たないボキャブラリーが注ぎ込まれている。それでも美味しいお鍋を食べるため、喰らい付く根性は称賛に足る。
「ほら、惇兄も包丁持って!」
「俺ェ!?」
 そう言って有無を言わさず包丁を持たされる男。立ってる物はグリモア猟兵でも使う――本当に、良い根性だ。
「合言葉は『おいしくなあれ♪』」
「へェへェ、おいしくなァれ…ッとくらァ」
そして怒られた。ともかくそんなこんなで順調に調理は進んでいる。竜の肉とアルダワ産野菜以外は現地の人の領分であるし、地元のやり方もあるだろう。それぞれが分担し、猟兵と住民とで互いに助け合いながら、大量の食材との格闘は続いていく。
「アキの戦利品…虹色のキノコ、食べられる?」
たべられません。


 大鍋での豪快な料理とは別に、もう何品かの料理も作られているようだ。
「大きい鍋でも良いけど、口に合わないと大変だしね」
そういうヴィリヤが作るのはカレー鍋だ。ひと回り小さな鍋に材料の一部と持参の和風だし、そしてカレールウを加えて火にかける。町の人には馴染みはないが、鼻腔をくすぐる匂いに既に興味津々の者も少なくはないようだ。ひとまず、残る心配だけはする必要はないかもしれない。
「他にどんなお鍋が出来るのか楽しみ!」

 鍋でない料理も展開されている。木に吊るした竜の尾肉の周囲を、回収された荷馬車の廃材で覆って空気の流れを遮ってやる。持ち帰ってくれたジンの疑問に応え、タマコは目的を伝えた。
「燻製というものに挑戦してみます」
 言って少女は、戦闘で木になった片腕を躊躇なく切り落とした。幸いにも巨体に隠され人々の目に触れることはなかったが、それなりにショッキングな光景である。
「大丈夫です。たくさん食べたので生えます」
 要は、桜の樹のチップで肉を燻そうということであるらしい。確かに桜ではあるのだろうが、見様によっては人体でもある。このあまりに独創的な調理は、また試験的でもあった。
「うまくできるかはわかりませんが」
空腹を感じつつもじっと煙の様子をうかがう捕食者は、奪うではなく振舞うことを楽しみにしているように見えた。

「お鍋の味も確認しなきゃ」
「ねえ杏、味見も大事なお仕事だよね」
 調理の合間に様子をうかがう少女が二人。大鍋の影に隠れつつ、緊張した面持ちで。
「ちょこっとだけ…はう、美味しい!」
「美味しい…ん、も、もう少し食べないとわからない」
「ほどほどに、ですよ」
「わあ、バレた!?」
 そんな一幕も挟みつつ、それぞれの仕事は順調に進み、夕べにはすべての料理とすべての席が滞りなく設えられたのだった。


「うさみみメイドさん達、町の人達にも振舞って?」
杏の操るメイドさんたちが連携し、速やかな給仕を始める。会場に集まった全ての住民たちに大鍋の中身が配膳され、しかしなおかつ、大鍋はなみなみとそのスープを湛えている。
「さあ、祝勝会と忘年会の始まりだ!」
そして、ジンの声を合図とし、皆の食事が始まった。
 しかし問題は竜の肉。町人たちは初体験の者がほとんどであるし、テンション上がって歓声上げてはみたものの…
「どうよ」
「いやお前から行けよ」
などと美しくない方の譲り合いの精神があちらこちらで発揮されている。誰かが食べればそれで済む話ではあるが。
「竜なんて3年前の調理実習でダンジョン飯にして以来よ」
「うまうまー♪」
「あったかおいしー!しあわせー!」
 そんな中で食べ始めたとある食卓の猟兵たちは、とても幸せそうで。
「折角ですから、町の皆さんもご一緒にどうですか?」
食べる者たちの笑顔と、アンネリーゼのにっこり笑顔に人々も恐る恐る食べ始め――
「あ、美味しい」
「旨いな…」
いくらか懐疑的であったガーネットも、調理班の手腕に感服することとなったようだ。

そしてここからは、正真正銘の早い者勝ちとなった。
「実戦と鍛錬の後は飯だ!強い肉体を作るためには、飯は早ければ早いほどいいと聞く!」
空になった器を片手に、隆豊は鍋へと急ぐ。間隔の話であって速度の話ではないのだが、なんだか彼の場合はどちらにしても身にしてしまいそうな迫力がある。そしてその競争相手はもう一人の肉体派であるジンだ。
「確保だあ!」
一般人であれば押しのけるわけにも行くまいが、猟兵同士ならそんなに遠慮はいらないだろう。鍋の程近くで熱い攻防が行われる。酔漢たちはやんややんやと囃し立て、応援しつつ盛り上がる。奪い合った末に、その上でなお肉が残ることを確認してから隆豊がその声にハッとした。
「そういえば酒はあるのか?この類の席で無いとは思えんし、あるならば是非頂きたい!」
目を輝かせながら囃す酔漢の方を見れば、近くにはきっちりと樽で用意してあり、その充足ぶりを物語っている。彼らの方でも大きく手を振り猟兵を呼んでいる。もうこれは、ご相伴に与らないわけには行かないだろう。隆豊はすぐさま輪に馴染み、大きな声で笑っている。

 多くの肉を確保したジンは、仲間の待つ席へ戻っていた。アンネリーゼもタマコも、そして彼自身も、決して少食な方ではなく、持ち帰った量でも足りるかどうかは分からない。しかしその時はその時で良いのだろう。腹を満たすだけが目的ではないのだし、もっと言えば、二人の腹を満たすだけの食事の席など――まあそれは良かろう。とにかく、楽しく食べることだって大事なことである。
「うまくできました」
尾肉の燻製の方も首尾よく出来上がり、綺麗に戻った両手でもって器を掲げるタマコもどこか誇らしげだ。こんな立派な肴ならさぞ、美味しいお酒が飲めることだろう。と言っても16歳と18歳、あまりこのテーブルには関係ないだろうか…

「茶葉も持ってきてるの。お酒を飲めない全員に振舞うわよ」
 と、気合充分ガッツポーズで、海莉が飲み物を提案する。猟兵の中にも未成年は多く、住民の中にも下戸は居よう。お酒を飲む時には水分も採るのが健康的に重要で…とにかくこれは、とても素晴らしい、歓迎すべき提案である。多くの腕が、ガッツポーズに答えて掲げられた。
「鍋は、みんなで楽しく食べるモノ!」
美味しいお茶を受けながら、祭莉が会場をはしゃぎ回っては、猟兵に、住人に声を掛ける。野菜を運んで肉を運んで終始動き回った上で、なおも疲れを知らぬと見えて、まだまだ元気に楽しげだ。会場中で活力を振りまいてから戻ってくれば、猟兵たちが労い合って、一つ所に集まってきている。
「惇兄ちゃんも、楽しく食べてるー?」
「ン?おォ、お疲れさン」
 呼ばれた声に振り返ると、グリモア猟兵は器を掲げる。ただし皿や椀ではなく、杯である。どちらかと言えば楽しく飲んでいるようだ。
「私は先日、ヒーローズアースで購入したクラフトビールを持ってきた。呑めるのは…」
 ガーネットは一通り見回して、一緒にどうかと誘ってやる。視線はガーネットからシリンへ、シリンから惇へ。
「ビール… エールの様なものですか。惇も一杯どうですか?」
と、声を掛けられれば、呑まない選択肢はあってないようなもので、飲み干した杯はテーブルの上を押し滑らされた。

「そう、お酒!たくさん箱買いしてきたビールがですね」
 ルムルが思い出したように手を打って、缶のビールを取り出だす。それなりに出来上がったような、上気した愉快そうな表情。目の色ほどではないが、仮面の下に覗く顔はいくらか血色良くも見える。悪魔へ語った『あれ』というのも、どうやらこれの事らしい。やっとのことに待ちかねたアクシピターは呆れたようにビールを掠める。そんな様子にもやはり愉快そうなルムル。と、さらにもう一つ、真面目な青年には言うことがあった。
「炎に巻かれたときはどうなるかと…助けていただいて良かったです」
 ヴィリヤの方へ、感謝の言葉を投げかけた。突然振られて少し慌てて、彼女も咄嗟に手と首を振った。
「でも、リザードマンもドラゴンも倒せて一安心だね、こうしてみんなで楽しめるしね!」
 見れば用意したカレー鍋もほとんどの具材を失って、シメのパスタとチーズによって中身を大きく変えている。
「惇さんは予知をありがとう! で、みんなにはお疲れ様!」
 改めての挨拶に、笑顔を見せたり労いを返したり、あるいは表情を変えなかったり。食卓へ向かう姿勢もそれぞれである。無心に食べる者、互いに肩を組んで大きな声で笑い騒ぐ者、喧騒を遠目に見ながらのんびりと楽しむ者。それぞれで楽しみ方は様々であるが、大方の皆がそれなりに大きな達成感の中で、気持ちの良い食卓に就いていることだろう。

●たけなわ
 ただし、今日の気持ちの良い食卓は、必ずしも明日の気持ち良さを保証はしない。食べ過ぎれば胃はもたれるし、呑み過ぎれば二日酔いもあるだろう。
「惇さんはお酒飲むよね?」
 空にした杯を反射のように突き出しながら、視線はいくらか遠くを見ている。呑んでる間は楽しいものだ。だって明日の頭痛なんて、考えなんかしないから。
「大人組はビール?楽しそうでいいな」
 数人の大人はニヤリと笑う。未成年には分かるまい、これが大人の特権だ、と。しかし小太刀もニヤリと返す。そうだ、ここは言っておかねば、16歳でも知っている、それでも大人が繰り返す、愚かしきかな通過儀礼。

「ほどほどに、だよ?」
 忘年会シーズンですし、特に気を付けて、ね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月13日


挿絵イラスト