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夢想戦線~ヒーローの為の条件

#UDCアース #【Q】 #アサイラム

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●侵食する『ヒーロー』
 閉ざされた病室の中で、ヤイバは自問自答の様に繰り返す。
 いや、『ヒーロー』という役に囚われたままの彼は、果たして『ヤイバ』なのか。

 ヒーローはわるものをやっつけなきゃいけないのに
 ヒーローはわるものなんかじゃないのに

「――ヒーローってなんだっけ」

 その呟きと共に病棟の中の世界が『上書き』される。
 それは彼が作り描いた『街並み』のような迷宮。
 病院の面影は閉じ込められた人々にしか、分からない。

 思い悩む少年の象徴たる街に――
 世界を壊そうと願う『冬』は、少しづつ、近寄っていた。

●『わるもの』をやっつける事だけがヒーローなのか
「最初は、ただの『ヒーローごっこ』だったらしい」
 2枚の写真のうちの片方を抜き取りながら、
 霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)は猟兵達に告げる。
「けれど、子供ってのは純粋で、そのうちの『2人』は特に純粋だった。
 そいつらの中で『ごっこ』の役はいつしか『本物』になって――」
 クロト曰く、『2人』は『役』に呑まれた、のだという。
「結果、2人は暴行事件寸前まで至った。
 年齢と精神的な状況を鑑みて、それぞれ別の病棟に隔離される事になったんだが――」

 クロトは猟兵達に真っ直ぐ向き直る。
「……『2人』共、『アリス』に覚醒しようとしてるのさ。救出してきて欲しい」
 ちら、と他方で説明をしている工兵の男を見遣った後に、クロトは説明を始める。

「俺の案内するのは『ヒーロー』をやってた奴――『ヤイバ』の方だ。
 今、ヤイバの隔離されてた病棟の内部は【ガラスのラビリンス】にも似た、
 ユーベルコードの作用で、ヒーローズアースのような街並みに書き換わっている」
 実際は病室などの配置自体まで変わっては居ないのだが、
 迷宮化することによって実質的に『そうなって』いるのだという。

「だが……事態は深刻だ。既に病棟にはヤイバの心を抉じ開けようと、
 とある組織が、欲望を肯定して『解放』させる人形を大量に放っててな――」
 目を数瞬伏せて、彼は告げる。
 欲望を解き放たれた患者や医療従事者による騒ぎが活発化していると。
「そりゃあ気に入らない患者とか、上司とか居るだろうよ。
 巻き込まれた連中はそうやって『悪者』を殺す事を肯定されてる」
 そんな連中を正気に戻したり、人形を破壊したりしながら、
 ヤイバがアリスラビリンスに転送される前に『救出』して欲しい、というのだ。

「必要なのは――きっと『ヒーローの在り方』だ。
 間違った道を示すことじゃあない。……こないだの戦争で体現しただろ?」
 クロトが猟兵達を呼んだのは他でもない。
 ヒーローの先達としても、『正しい道』を言えることを期待しているからだ。

 資料の片隅に踊る『冬寂』の文字を見て、
 どこかで聞いたような感覚を覚えながらも――クロトは転送準備を始める。
「きっと、純粋だからこそ必要な毒も有るんだと思う。
 間違いを溺れる前に正してやることも――俺らの役割なんじゃないかな、きっと」


逢坂灰斗
 悪を制するのがヒーロー、悪を罰するのもヒーロー。だけど……
 逢坂灰斗です。

 今回は、とある病院の新病棟で『アリス適合者』に覚醒しようとしている、
 『ヤイバ』少年の救出に向かって頂きます。

【MSより】
・このシナリオはブラツMSとの『合わせシナリオ』となっております。
 内容上、両方参加していただいても構いませんので、宜しくお願いします。

・第1章:
 集団戦です。強欲の傀儡『烏人形』によって、
 新病棟の医療従事者や患者、あるいは共に迷宮に囚われた一般人などが、
 『悪を害する』という『欲望』を肯定される事により、暴走しています。
 彼らは人形を撃破すれば正気に戻りますが、
 この人形は『憎悪』を好んで奪う為、事前に対策をした方が良いかも知れません。
・第2章:
 ボス戦です。病棟の迷宮を突き進んだ先に――人形をばら撒いた男が居ます。
・第3章:
 素早く『病棟に展開された迷宮』を踏破して頂きます。
 必要なのは『ヒーローとしての在り方』を示すことです。
 綺麗事ばかりでは、ひょっとしたら務まらないかも知れません。

・サポートプレイングは『余力があった場合』採用させて頂きます。
 もし、お気に召しましたら通常参加して頂けますと、幸いです。
・なお、チームや団体で参加される方は迷子防止の為、
 【一緒に参加される相手】か【一緒に参加するグループ名】を必ずご記述ください。

 では、お目に止まりましたら、宜しくお願いします
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第1章 集団戦 『強欲の傀儡『烏人形』』

POW   :    欲しがることの、何が悪いの?
対象への質問と共に、【自身の黒い翼】から【強欲なカラス】を召喚する。満足な答えを得るまで、強欲なカラスは対象を【貪欲な嘴】で攻撃する。
SPD   :    足りないわ。
戦闘中に食べた【自分が奪ったもの】の量と質に応じて【足りない、もっと欲しいという狂気が増し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    あなたも我慢しなくていいのに。
【欲望を肯定し、暴走させる呪詛】を籠めた【鋭い鉤爪】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【欲望を抑え込む理性】のみを攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 その街には、怒号と悲鳴。あるいは『反抗』の言葉で溢れ返っていた。
 だがここは、正確には街ではない――
 街というテクスチャを『被せられた』新棟は、
 『悪を害する』という、自らの信ずる『正義』が暴走していて。

 職員に対して、あまり良い態度を取っていると言えなかった一人の老人は、
 今や看護師の一人に首を締められかけ、必死に抵抗しているが――
 ……その言葉の応酬は余りにも『正義』とは程遠く。
 罵詈雑言に塗れたそれは、ただの『憎悪』の衝突ではないか、とすら。

 病棟であった街並みの中を、奇妙な人形達は徘徊する――
「我慢しなくて いいのよ」
「ほら 貴方の思う悪は直ぐそこにいるでしょう」
「恨みなさい 殺しなさい」
「『正義』を 欲しなさい」
白峰・歌音
敵UCには、受けても<悪を憎み潰すのではなく、理解して正そうとする【優しさ】がいるんだという信念>で耐えようとし、人々の行動を止めようと動きつつUCで人形だけを狙い倒していく。

オレがやりたい事は、悪い奴から酷い事をされるのを守りたい、防ぎたい。
『それなら悪い奴をみんな殺してしまえば防げる』
――いや、違う!望まず悪に走らされてる人は倒すべき人じゃない!その人たちは酷い事を『されてる』人なんだ!
思い出せないけれど、オレはそういった人を何人も見ていたような気がする。だからー
「無くした記憶が叫んでる!オレが討つべき悪は、今暴れている人じゃなくて、そそのかしているお前達だってな!!」

アドリブ・共闘OK



●追想の叫ぶ声
 病棟の中には――人達の圧し殺していた『憎悪』で溢れかえっていた。
 そこには、優しさなど無い。『受け止めよう』という慈悲すらもない。

 白峰・歌音(彷徨う渡り鳥のカノン・f23843)は街並みの中を進んでいくが、
 溢れかえる肯定の『声』は、彼女の信念すら揺さぶるように染み渡ってくる。
 その証左が、周囲の人々の諍いだというのだから――
 彼女も止まってやれる道理など無いのだが。

(オレがやりたい事は、悪い奴から酷い事をされるのを守りたい、防ぎたい)
 それは、昔から『そうだった』気がする。
 いつからかは――思い出せない。けれど、そう考えたのは前からだった。

 だが――強欲の人形は囁く。爪を振り翳して『肯定』する。
『――それなら、悪い奴をみんな殺してしまえば良いのよ』
『殺しなさい 悪い奴が皆居なくなれば 防げるのだから』

 刹那、駆け回るような記憶の断片が、叫ぶように彼女に警鐘を鳴らす。
(――いや、違う! 望まず悪に走らされてる人は『倒すべき』人じゃない!
 その人たちは……酷い事を『されてる』人なんだ!)
 思い出せないけれど。遠い彼方の理不尽な闇の世界の記憶のようだけど。
 それでも歌音は、そういった人達を何度も見てきた『気がする』から。

「無くした記憶が叫んでる! オレが討つべき悪は――」
 氷輪が、叫びに応えるように、集い、咲く。
「今暴れている人じゃなくて、そそのかしているお前達だってな!!」
 今は街並みに変わった病棟(せかい)の中を、彼女はひたすらに駆け抜ける。
 全ては――肯定という『悪意』に晒された人々を、救う為に。

成功 🔵​🔵​🔴​

宇冠・龍
由(f01211)と参加
道行く一般人の救助活動と足止めを重視して、他の方が素早く奥へ進めるようにサポートしましょう

欲深いことは決して悪ではありません
何かを願うことは罪ではありません
そういう意味では、私はオブリビオンとは同じ意見でしょうか

ただ、他者の願いを悪用し土足で踏みにじる行為はいけません
欲も心も本人が健やかに育むもの
手助けならともかく、暴走させる行為は看過しかねます

【竜吟虎嘯】で植物霊を召喚
そちらが理性を攻撃する呪詛ならば、こちらは呪詛そのものを絡め取り拘束するモノ
病院内では回避行動も限られます
呪詛に比例した植物の成長速度には追いつけない

一般人も人形からも、助長した余分な欲を吸い取ります


宇冠・由
お母様(f00173)と参加
私は欲しいもの成りたいものが沢山ありますので、欲望についてはノーコメントです

ただ、なんとなくですけど……ヒーローは自称ではなく、他者から呼ばれてこその存在な気がします
悪い存在をやっつけるからではなく、助けた人からの「有難う」がその人をヒーローという存在たらしめる
だからこそ、殺しを正当化させるだけの正義はヒーローとは言えませんわっ

皆様を人殺しにさせないためにも頑張りましょう
地獄の炎の身体で敵をおびき寄せ、他の方への攻撃をかばいます
【熾天使の群れ】を放ち人形たちのみを攻撃
私の願いは守ること、それのみ
燃え尽きることない願いを込めた私の炎を堪能してくださいませ



●暴走する欲は正義足り得るのか
「……いけません、『欲』に歯止めが効かなくなっているようですね」
 病棟の中に足を踏み入れた宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)は、
 街(めいきゅう)の中に蔓延る悪感情の渦を見遣りながらも、歩みを進める。

 今や病棟の中は『憎悪』が溢れかえっていて。
 自身の定義する『悪』を害する為に暴走する『正義』が、
 まるで自らを互いに正当化するように、紛争へ導いていくような――
(――けれど、これはヒーローと言えるのでしょうか?)
 宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)の思考に過る物こそ、
 この『正義』への違和感。そして、ヒーローという存在の認識を再確認する物で。

 あくまでヒーローとは『他者』から授けられるものであり。
(……悪い存在をやっつけるからではなく、
 助けた人からの「有難う」がその人をヒーローという存在たらしめる)
 街の中に響く声は『欲』を加速させるように、扇動していく。
 これは――『正義』と言えるのか? これこそ『悪』なのではないか?

「他者の願いを悪用し土足で踏みにじる行為はいけません。
 欲も心も本人が健やかに育むもの――」
 龍の言の葉に応えるように、植物霊は喚起される。
 『呪い』を苗床とし、恐るべき勢いで育まれる植物の蔦は――
 人々をすり抜け、辿り着くのは扇動者たる人形達の下。
「……手助けならともかく、暴走させる行為は看過しかねます」

 ぎちりぎちりと抵抗を続ければ続ける程に、
 植物は強く、健やかに『成長』してゆくのだが――
『――足りない、まだ、足りないの 憎悪が 足りないの』
 此処まで暴走させておいて、まだこの人形達の欲は留まることを知らない。
 あまりに強欲過ぎる人形の群れに、母娘は顔を見合わせる。
 これでは救助を行おうにも感染源が『止まらなすぎる』。
「……これはもっと集めなければ、際限なく暴走させてきますわ」
「仕方有りません……由、お願いできるかしら」

 優雅なカーテシーと共に――獄炎の身体持つ『少女』は煌々と燃え上がる。
 あまりにも目を引くそれは、人々すらも誘き寄せるが、
 狙いはそれに釣られてやってくる『人形』達を絡め取ること。

『ああ、もっと欲しい、欲しいの 貴方の 貴方達の憎悪が――』
「いいえ、私の願いは憎悪よりも清く――真っ直ぐなものですわ」
 母の紡ぐ蔦霊の戒めが次々に現れる人形達を捉えれば、
 ふわりと焔のスカートは揺れて、不死鳥の群れを生み出す。
「私の願いは――守ること、それのみ」

『あ あ たり ない もっと あつ たり な』
 不死鳥の抱擁に抱かれて焼け落ちていく人形を一瞥もせず、
 燃え盛り続ける願いの焔の主は、輝き続ける。
「――燃え尽きることない願いを込めた私の炎。堪能してくださいませ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
数が多い、手が足りないのは厄介だね
……仕方ないか。一人でも多く助ける為だ、手段は選ばないよ

UC【堕聖の偶像】を発動して夢魔に変身、センサー代わりに展開した《念動力+情報収集》の力場と《第六感》を合わせて特に人の多いルートを進行。
《歌唱+存在感+誘惑+おびき寄せ》の歌声で更に人を集めつつ、視界に入った端から権能による《催眠術+ハッキング》で無力化していこう

たぶん人形も寄って来るだろうから幻術と《残像》で攪乱して《早業+怪力》を乗せた《騙し討ち+暗殺+先制攻撃》で片っ端から仕留めるよ
巻き込まれた人たちの《救助活動》に伴う消耗を回復する為にも攻撃には《生命力吸収》も合わせてスタミナを回復しておこう



●誘う蠱惑の果てに
 病棟の中は見回せば、怒号と肯定が満たされている。
 人形を阻止せねば被害者は際限なく増えていくし、
 被害者を助けようにも、人形の強欲を片手間で止めるのは簡単ではない。
「数が多い、手が足りない――厄介だね」
 カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)が、
 そう断じるのも無理はない話で、だからと言って『不可能』という訳ではない。
 ――手段を選ばなければ、という前提が彼女の場合付くのだが。

 ……艷やかな声が響き渡る。
 その声はどす黒い感情の中に呑まれし人々すらも、『誘引』する。
 嫋やかな歩みは彼女という存在を、この騒乱の街の中で引き立たせて行く――
 そんな彼女の姿は、夢魔といっても差し支えない程に『蠱惑的』で。
 ……本人曰く『カッコ恥ずかしい』ので、記憶消去か滅殺物なのだが。
 まるで誘蛾燈に引き寄せられるかのように、人々は表へと出てくる。
 その端から端まで、彼女が視界に収めた者から順に。
 人は眠り、肉体のシャットダウンという罠へ落ちていく。

「さて、此処までは順調だけれど……」
 人々を無力化出来ても、肝心の人形が来なければ話にはならないが……
 その心配性は全く以て無い。何故なら相手は『欲深い』。

『ああ 足りないわ 足りないの』
『こんなに沢山あるのに 足りな――』
「――足りないまま、『壊れて』くれないかな」
 引き寄せられた『人形』は夢魔の操る驚異的な『速度』の前に、
 傍目から見れば勝手に倒れていくようにも見えるが――
 これこそが夢魔の紡ぐ幻惑に他ならない。
 暫くすればそこに立っているのはカタリナたった一人。

「……誰も記憶の端に残して無ければ良いんだけどね」
 そんな不安にも似た事を口走りながら、眠った人々を介抱していく。
 後に、人々は『不思議な夢を見た』と揃って口々に語ったと言う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……チッ。
「欲望」だけ暴走したら、奪った端から「憎悪」が増えるじゃねぇか。
よくもまぁ考えたもんだよ。
だからアンタらの策、もう少し教えてもらうよ。
想定している計画の「穴」までね……!
別に人形どもに「弱点」を教えてもらおうとは思ってないさ。
そこかしこに散らばる、歪んだ「正義」と「制圧欲求」から、
【弱点特攻作成】を介する形で、
殺傷力の低い、『マヒ攻撃』の特性を持った神経ガスのボンベを
作成して周囲に撒き散らす。
そうして患者や看護師が無力化すれば、
残った「憎悪」の持ち主のアタシ達に矛先が向くだろ。
だが「街中」ならね。電線伝いで電撃の『属性攻撃』が、
アンタ達を焼き尽くすよ!



●罠には罠を
 暴走する感情の中で『憎悪』というのが、一番『性質』が悪い。
 なにせ次々に伝播し、留まることを知らずに『膨れ上がっていく』のだ。

「『欲望』だけ暴走したら、奪った端から『憎悪』が増えるじゃねぇか――」
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)も、
 思わず舌打ちするようなその惨状こそが、『人形』達の狙いではあるが――
 ……これを呼び起こした者の真相は、まだ見えない。
 だからこそ、問わねばならぬ。この『策』を。
 ――『策』故に生じる、致命的な『穴』まで。

 ただ、『人形』にそこまでの能力があるとは言い難い。
 どうせ問いかけても、あの強欲は『欲』を優先するであろう。故に。
 それを問うのは、『正義』と『制圧欲』に塗れた人々からでいい。
 そういった物を目敏く知り得るのは、彼女が異能者であるというのが大きい。
 彼女が人々に『感応』すれば、自然とその『弱さ』は露呈する。
 あとはその弱さに相応しい劇物を『垂れ流して』やるだけ。

 街並みへ出た人々は、次々に昏倒していく。
 散布された神経毒は、その生命は奪うことは無いものの――
 非常に効果的に、人の動きを『止める』という事に特化して突き刺さる。
「――此処まで止めないと、『憎悪』が収まらない、なんてねぇ……」
 漸く訪れた一瞬の静寂は、本当に一瞬でしかなく。
 直様『餌』を求める人形達の声が響き渡るが――それが彼女の一番の、狙い。

(テクスチャが『街』ってのは凄い助かるよ……何せ『電気』で溢れてる)
 本来の病院も、危険なくらいに電気で溢れているのだが、
 人命を優先するのだから『どうなっても』お咎めは無いだろう。

 ばちりばちりと、街に紫電の『網』は奔る。
 そうとも知らず、強欲な人形共は自ら焼かれにやって来る。
 人形には仲間に『罠』を伝える程の『知恵』が存在し得ないのだから……。
「……策も『暴走』させる前提だと、簡単に崩れる、ってね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

死之宮・謡
アドリブ歓迎

いやぁ…私の場違い感ヤバいねぇ…何でこんなところに来たんだろ…(自分できたくせに、と言うのは禁句)
唯まぁ…この私に言わせるのなら…

……他者に干渉されるような脆弱な意思の持ち主じゃあ
本質的には善にも悪にもなれやしないさ…

だから、私は私の想うままに殺戮を謳歌しよう
今更貴様らが如何のこうの言うまでも無く私は欲望を抑え込んだりしないんだよ


さて、イレリアを「怪力」で振るって「なぎ払い」ながら

来い【七血人】…貴様らも好きに暴れると良い…
ははははは…多分、迷宮探索の為に後でまた呼ぶから(ボソッと)



●『憎悪』では止められぬ
「いやぁ……私の場違い感ヤバいねぇ……何でこんなところに来たんだろ……」
 自分で言う辺り、本人も自覚済みなのであろうが、
 死之宮・謡(宵闇彼岸染・f13193)は英雄と言うよりは――魔王である。
 罵詈雑言のオーケストラなど、彼女の生の内を鑑みれば、
 『聞き飽きた』のにも等しい程に慣れた事象だろう。

『止まらなくていいの 歯止めなど要らないわ』
『さぁ 憎みましょう 欲しましょう せイ――ぎッ』
「……今更そう『諭されて』も、意味がないんだよ、私には」
 人形に場当たり的にも等しい『殺意』を当てれば、
 脆い欲の人形はパラパラと砕けて残骸へと変じる。

「……他者に干渉されるような脆弱な意思の持ち主じゃあ
 本質的には善にも悪にもなれやしないさ……」
 それこそ、彼女の見てきた『普遍的』な人々の特徴であり。
 あくまで此処に『呑まれた』人々に、そういった素質の持ち主は存在し得ないと、
 彼女は断じるように――彼女は彼女の『欲』に興じる。
 間違って彼女に『欲』を求めてしまった人形が、一瞬にして砕け散るように。

「ああ、お前達も暫くは『好き』にやるといい――
 既に親切な誰かが『根回し』をしているようだ。存分に『壊して』やれ」
 その声に応じた7つの影が散開すれば、
 解放の『声』は次から次へとその息の根を止めていくだろう。
 『憎悪』だけでは、『殺戮』という蹂躙は止められぬのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

草野・千秋
冬が、死の季節が歩み寄ってきている
ヒーローごっこをしてヒーローの『役』に飲まれてしまうだなんて恐ろしい
僕だってヒーローとしての独善に飲まれてしまわないか不安なんです

憎しみは何も生み出しはしない……
といえば偽善っぽくなりますでしょうか
でも僕は実際宿敵を、家族の仇を憎む事によって
得られたのは仇討ちの仲間だけでした
憎しみを抱えていくのは苦しいです
憎しみの後に残ったものはズタズタに荒れた心
それを癒してくれるのは共に戦った仲間の絆
ヒーローは一人では立って戦えないのです

UCで攻撃し動きを一時的に封じたあと
2回攻撃、範囲攻撃、一斉発射、スナイパーで攻撃を叩き込む
仲間への攻撃はかばう
第六感と戦闘知識でかわす



●原初の『憎悪(どうき)』
 始まりは、ただの『復讐』であった。
 それが、草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)の最初で。
 『憎悪』のみにて立ち続けるには、彼はあまりにも普通過ぎた。
 現に、彼の『復讐』の終わった果てに残ったのは、
 冬が訪れたように、荒れた原野のような世界であって。

 憎しみは何も生み出しはしない――
 とは言うが、彼に取っては『代用』する事も出来ない事実である。
 立ち上がる為に、立ち続ける為に得たものが、『憎悪』で。
 それに伴って得たのが『憎悪』に『共感』する『仇討ち』の仲間。

 ……果たして、それは仲間なのだろうか。
 都合のいい存在を得ただけなのでは無いか?

 病棟の中にあっても、その揺さぶるような声と、
 自らの本性を引き摺り出そうとするような爪撃が、彼を問おうとする。
「……それでも、ヒーローはひとりでは立って歩けないのです」
 その事実も、彼は『良く知っている』。
 何せ、そうでなければ――彼は此処には居ない。

 口許から紡がれるのは、全てを置いてでも自由を欲するような歌。
 旋律に添えられるのは、歌に不釣り合いな程に真っ直ぐで精密な拳の一撃。
 ただ、この欲の深い人形共は、動きを止めようとも、
 ……『欲しがる』事を止めはしない。
 感動などしない。何処までも『欲深く』て、何処までも求めるのだから。

『――あはははは 足りないわ 足りないわ! 呑まれる程の憎悪が!!』
『私は欲しいの 未だに 貴方の『底』にある 美しいソレが!!』

 あの言葉が、煽動の為のものなのか、事実なのかは――分からない。
 けれども、縋って立って、此処までまたヒーローとして戻ってきている。

「……僕だって、ヒーローとしての独善に飲まれてしまわないか不安なんです」
 ――冬は、もう『すぐそこ』にいる。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳴宮・匡
“ヒーロー”なんて柄ではないし、他人の生き死にに興味はないけど
別に、見捨てる理由もないしな

一般人は可能な限り武器を使わずに無力化するよ
訓練されてもいない相手の攻撃に易々と当たるほど腑抜けてはない
回避主体にして、当身などで気絶・虚脱させる
矛先がこっちへ向くとも限らないから
一般人同士が争い合うようなら“得物だけ”を狙撃して無力化

敵が姿を見せたら即座にそちらを狙撃
元を断つのが一番早いからな
一般人を盾にされない射線を選んで、一射で確実に落としていく

生憎と他人を憎むなんて機微は持ち合わせてないんだ
お前らにくれてやるものは何一つ――ああいや
“死”だけならくれてやるよ
……ま、嫌だって言っても押し付けるけどな



●静寂の海の先
 病棟であった『街』で起きている騒乱は、収束しつつあった。
 その中でも、とても『静か』に収束を迎えつつ有る一帯がある。

 人々が諍うのであれば、武器は『はたき落とされる』。
 そうでなくとも、何者かに意識を『刈り取られる』ようにして、
 争いの起きる前に、突然に倒れ伏していくのである。

 人形がその争乱が生み出す『憎悪』に惹かれて顔を出すのならば――
 その直後には、頭部が一発の弾丸によって、『砕け散って』いた。

(『ヒーロー』なんて柄ではないし、他人の生き死にに興味はないけど)
 要らぬ音を立てる事なく、静かに『制圧』を終えたのを見届けた、
 その影は立ち上がり――漸く姿を見せる。
「……別に、見捨てる理由もないしな」
 その『影』こそが、鳴宮・匡(凪の海・f01612)であった。

 この『鳴宮・匡』という男には、未だ人間的なエッセンスは欠けている。
 生来より戦地にその身を浸していた青年には、『憎悪』という機敏は乏しく。
 何せ――『凪の海』とすら呼ばれる程に、彼は『動くことはない』。

「お前らにくれてやるものは何一つ――
 ああいや、“死”だけならくれてやるよ」
 乾いた銃声だけが、『行き過ぎた欲』すらも、その1つで断ち切っていく。
 彼の道行きには『最小限』の被害しかなく、『最高』の戦果しか転がっていない。
「……ま、嫌だって言っても押し付けるけどな」

 その最中でも、彼の傭兵としての勘が、行く道を迷いなく選んでいく。
(――正解を知っている訳じゃ、ないけれど)
 進めば進むほどに、あった筈の喧騒が、恐ろしい程に『遠ざかっていく』。
(……『此処を通らなければ』解決しないってのは、俺にも分かるさ)
 その、先には。

 ……奇妙な静寂が、街を、病棟を支配していた。
 猟兵達が人形を破壊し、人々を救った事に依って起きた事ではない。
 純然と、純然と。
 ……何も生きていないように、静かだった。

 ――その冬は、良く知っている物に、似ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『冬寂の刃『リッパー』』

POW   :    お前に凍える静寂を
【攻撃される前に5回攻撃し、出血させた後に】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    終わり無き冬の刃
自身の【握る刃物】が輝く間、【100本以上の刃物を用いた超高速連続攻撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    全員殺せば静かになる
【猛毒を塗った無数の刃物の投擲】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はヴィクティム・ウィンターミュートです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●冬の刃は凍れる牙のように
「ああ、妙に騒がしく無くなって来てると思ったら――
 『お利口』な連中が嗅ぎつけて来やがったのか」
 顔の半分焼け爛れた『冬』は言う。

 足許には、冬を前にして倒れ伏した『不幸』な犠牲者だけが、
 真新しい血痕という証左のみを残して死に絶えている。

「俺は必要な話をしに来てやっただけだ。
 本当の敵は何なのかを、ハッキリと、
 まだ事実を知らない坊主に突きつけてやるのさ」
 そうすれば――
 そこまで言いかけて、『冬』はギリ、と何かを思い返すように唇を噛んで。

「『あいつ』のように、俺達を、『壊したり』はしねぇからな」
宇冠・龍
由(f01211)と連携

「本当の敵、というのがどなたかは知りませんが、少なくとも足元の方は無関係だったはず。貴方の正義は無意味に死を振りまくことなのですかっ」
下手に動かれると逃げた患者の方々にも被害が届くかもしれません。足が悪い方もいたでしょうし
それに足元の方を供養したいので。医療の場で殺害とは言語道断
こちらに引きつけ、これ以上一般人に被害が及ばないよう挑発しましょう

【魚質竜文】で不可視の霊を召喚
憎悪に憎悪を連鎖させても別の惨劇が繰り返される。けれど貴方によって増幅暴走された行き場のない憎悪くらいは責任をもってください

出血覚悟でナイフを握り拘束
先の戦闘で吸収した憎悪を霊に乗せて相手にぶつけます


宇冠・由
お母様(f00173)と連携

私は全身燃えるブレイズキャリバー
冬を象徴する相手なら、私の存在は無視できないはずです
ブレイズキャリバーの炎は再生可能。得意の空中戦で翻弄しながら相手の攻撃を炎の身体で防御し戦います

お母様が相手を引きつけている間に、まず相手の足元にいます犠牲者の方を冷たい戦場から運び出します
母を傷つける者は誰であろうと許しません
すぐに戦線復帰して、リッパーの攻撃を身を挺してかばい、二振りの火炎剣で応戦

斬られて身体から漏れた炎も、剣から刃こぼれした炎も私の一部
空中で新たな炎の弾に変化させて相手を追跡し燃焼させます
ここは病院内ですから、火力は抑え目で足止め程度に



●『冬』は齎される
「本当の敵、というのがどなたかは知りませんが――」
 宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)は広がっていた惨禍の主に、
 真っ直ぐに眼差しを向ける。状況だけならば、彼はただの人殺しだ。
「少なくとも足元の方は無関係だった筈。
 貴方の正義は無意味に死を振りまくことなのですかっ!!」
「――いいや、違うな。こいつらは『向かってきた』だけだ。
 向かってきた奴を殺さなければ自分が死ぬだろ?」
 『冬』は歩いてくる。
 犠牲者には一瞥もくれることはない。何せ、自分に害を与えないから。
 生き残る為に殺す必要があったから『殺した』だけで。

 その姿は犠牲者を救おうと、その身を宙に翻した、
 宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)の行いを無視するかのようで。
 自分に害を与えなければ、そこに転がっている存在を助けるのも、
 好きにやってくれ、とばかりに、冷たく眼差しが突き刺さる。
 暖かな焔そのものである由と反して、どこまでも、どこまでも――
 その男が居る世界は、『冬』で止まっていて。

「死を振り撒くだけならこんなに回りくどい事は要らねぇさ。
 俺があの坊主に言いたいのは――」
 ――お前を此処にぶちこんだ、世界そのものが、本当の敵だ。

 ギリ、と口を噛みながらも、相対する彼女が纏うのは、巻き込まれた者達の無念。
 避難を終えている以上、この男が言うことが正しいのであれば、
 不必要に奥深くに進まなければ、被害が増えることは無いのだろう。
 現に、彼が斬り殺したであろう死体は、その場の者だけに留まっている。
 けれども、彼女がそれ以上に許せなかったことは、
 医療という場で、『死』が齎されたことだ。

 不可視の霊が溢れかえるよりも先に交錯するのは、振り翳される刃で。
「……憎悪に憎悪を連鎖させても別の惨劇が繰り返される。
 けれど、貴方が『暴走』させた行き場のない憎悪くらいは……!」
 決死の形相で刃を受け止める龍に、『リッパー』は言う。
「じゃあ、俺の憎悪は誰が責任を取ってくれるっていうんだ?」

 焼け爛れた顔の向こう側で、煉獄のように燃え盛っているのは憎悪そのもので。
 既に、彼の憎悪そのものに『行き場』が無く、
 どこまでも、どこまでも――これが収まることは無いのだと。

 血を流しながらも対峙する母の姿を見て、由は血相を変えて駆け寄ってくる。
 振り翳されようとしているのは確かな二撃目。
 このまま相対させ続ければ、保たぬのは自身の母の方なのは明確だ。
「――これ以上、傷つけさせませんわ!!」
 割り込ませるように、焔の肢体を滑り込ませれば、
 焼け付くような焔は『冬』の得物に纏わり付くように、離れない。

 舌打ちをしたかのようにして、更なる奥へと『冬』は去っていく。
「此処で犠牲になった方々は避難させておきましたわ、ですが――」
 その背を追うように猟兵達が続いていくのを見遣った母娘は、
 『冬』の中にあった意志を確かに感じ取っていた。
「……あの方は『殺し』に来た訳では無いのでしょう。
 目的は――恐らく、『煽動』です。社会を『壊す』為の」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

カタリナ・エスペランサ
気絶させて無力化する事だって出来ただろうにね
その人たちを手に掛けた時点で手遅れさ。今を生きる人にキミを関わらせはしないよ、オブリビオン

使うUCは【架空神権】。黒風で空間を蝕み《ハッキング》、力学法則を改変する事で敵の刃がアタシに届かないようにするよ
その上で敵の動きは《第六感+戦闘知識+学習力》で《見切り》、改変した法則も適宜更新して戦いを有利にしていこう

空間支配のアドバンテージを得た上で《早業+怪力》を発揮、ダガーと体術を組み合わせて《空中戦》。
戦いの中で敵を《吹き飛ばし》遠ざけながら、犠牲になった人たちの方にも黒風を展開しようか
死後間もないなら、まだ時間の巻き戻しで蘇生させられるかもしれない



●『冬』に黒風は吹く
「――この人達は助からない、か」
 時間を巻き戻しても『死』は覆ることはなく。
 カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は、
 安全な場所へ逃された犠牲者達の遺骸を、綺麗な状態に『戻した』が、
 彼らは蘇ることはなかった。損傷は巻き戻っても、命までは巻き戻らない。

「けれども……仇ぐらいは、とってやれる、かもね」
 遠くに見えるのは煌々と燃え盛る目印の焔。
 あの距離ならば、彼女にとっては容易く『届く』だろう。
 まるで駆け出すかのように一気に距離を詰めた彼女の肢体は、
 次の瞬間には、『リッパー』の眼前にあった。

「――気絶させて無力化する事だって出来ただろうにね」
「……冬に、そんな生温い事でも期待していたのか?」
 黒き風が神速の刃が重ねられるのを拒否するように、
 次々に受け流していくが、あくまでそれは一旦に過ぎない。

「まぁ、期待はしていたかもね。一片ぐらいは、ひとかけらぐらいはね。
 けれど――あの人達を手に掛けた時点で手遅れさ。
 今を生きる人にキミを関わらせはしないよ、オブリビオン」
 風が齎すのは業風。威力を削ぎ、『押し返す』が為の力。

 彼女が人気のない所へ、ない所へと押し込んでいくのは、
 これ以上彼を不用意に『襲わせない』為でもあるだろう。
 彼を襲わせたら――『害』を為すから、殺されてしまう。

 戦場は更に迷宮の奥へと進んでいく。
 人気は完全に猟兵達と『リッパー』以外には存在しないだろう。
 だが――急がねばならない。
 互いに目的は、この『最奥』なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

草野・千秋
ああ、なんて痛そうな顔の傷
あなたが人形をばらまいたのですか
本当の敵の存在について教えて下さればいいのです
ヤイバさんは所謂アサイラムなのでしょう?

そりゃあ僕だって気に入らない人だっている
だけど気に入らないからって
いちいち消すとかそういうのは違うでしょう
気に入らない人を消していった端から憎しみは増えキリがない
仮に殺すとしても
全員殺していたらキリがないです
いつか全人類殺すという考えに至るのでは?
消す以外にも相手から過ちを学び取り
生きていく道はある
それが人間としての生き方でしょう

UCで防御力強化
敵攻撃は盾受け、激痛耐性で耐え
本当の敵の情報に至るまで倒さない
怪力、2回攻撃、グラップルでも攻撃



●『冬』の慟哭
「そりゃあ僕だって気に入らない人だっている――だけど、
 気に入らないからって、いちいち消すとかそういうのは違うでしょう!?」
 拳と刃が交錯し、金属音を奏で合う。
 草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)の言葉が、
 甲高い悲鳴のようなソレと混じり合う中でも、叫びの様に響き渡る。

「ああ、違うだろうな。けれど、時期にそうなるのさ。
 お前だって『そうしたい』と思ったことが何度かある筈だ」
 その感情は正しいのだと、冷たい『冬』は語り続ける。
 だが、その語る世界は『統率』もなく、暖かさも喪われた冬の原野に等しい。

 片端から人を消せば、次の『憎しみ』へと人は移っていくであろうことは、
 何より千秋自身が身を以て知っていることではある。
 そのままでは、『冬』の憎悪が、世界を壊し尽くす程に『殺す』だろう。
 だからこそ、このような『過ち』を止めるのが自身に課せられた物ならば。
「消す以外にも相手から過ちを学び取り、生きていく道はある――
 それが人間としての生き方でしょう?」

「そりゃあ、そうだろうな。だがソレは綺麗事だろ?」
 鋼の拳よりも前に、刃は否定するかのように突き刺さる。
「最初から『間違った』方法で管理されて――」
 走る痛みよりも、やけに響いて聞こえたのは慟哭のような言葉で。
「『間違い』だと断じた方法で『壊された』俺達に、
 『社会(せかい)』の間違いをどうやって正せと言うのか、教えてくれよ」

「――『壊す』のがその方法だとは、絶対に思いませんよ、僕は」
 初撃が躱されたのであれば、直様に二打目を重ねる他無い。
「『壊さず』に『変える』事は――出来ないんですか!」
 予想の上を一瞬だけでも取れるのならば、それこそ『全力』を。
 どれほど望まぬ方法で手に入れた力と言えども、
 今の自分でなければ掴み得なかった一瞬で、確実な一打が『冬』を打ち砕く。

 だが――吹き飛びながらも、踏みとどまった男の顔には、
 ただただ、憎しみの色のみが揺らぐ。
「お前に――お前には分かるかよ」
 その眼差しの示す所は、深く昏く。
 憎念の焔は恐ろしい程に、過酷な『冬』の中で育ちきっていて。
「最初から、社会に『認められて』育った人間である、お前にはよ」

成功 🔵​🔵​🔴​

死之宮・謡
アドリブ歓迎

さぁさぁ此れが首魁か?なんだか妙なことを言っているようだけど…如何でも良いから死んでくれよ…
惨たらしく惨めに死んでくれ!(普段より残虐な半暴走状態)


【緋染めの天使】発動
飛翔し、破滅の「呪詛」と致死の猛毒(毒使い)を籠めた血の槍を「怪力」で「なぎ払い」
翼から血の刃を飛ばして、死傷者が流した血を濁流の如く操って攻撃
可能ならば相手の体内の血を操って内側から惨殺
無理ならば館内中から血を集めて圧殺

まだまだ足りないな!もっと、もっとだ!



●『冬』に血染めの雨ぞ降れば
 言葉は、主義主張が違えば届くことはない。
 猟兵達の『正義』としての言葉が、『冬』を動かすことが無いのと同じ様に。
 圧倒的な『蹂躙者』には、『冬』の言葉など、届くことなど有りはせず。

 死之宮・謡(宵闇彼岸染・f13193)の表情は、
 数多流された血に狂うかのような、恭悦にさえ満ちていた。
「――如何でも良いから死んでくれよ……惨たらしく惨めに死んでくれ!」
 彼女は意に介さぬ。眼前に居る男がどのような思想を持とうとも、
 血に沈ませれば構わぬというのだから、『冬』の中でも残酷に生き続ける。

 毒刃の驟雨が降れども、冬の中で醜く足掻く生き物を見下すかのように、
 彼女の眼差しは獲物を蹂躙するかのような態度を変えることは無い。
 病棟で流された血の数こそが、彼女の礎となるのならば――
 眼前の男は、彼女に利を『与えすぎた』のだ。

 血槍が毒刃を弾き落とし、全てを圧倒的な滅びで喪わせたのに飽き足らず、
 代わりに血刃が『リッパー』の身体に到達するのならば、
 まるで楔が『生える』かのように、彼の身体からも血刃は突き出る。

「――まだまだ足りないな!もっと、もっとだ!」
 その蹂躙の中でも、男は揺るぐ事はなく。
 寧ろ、何かを思い返すように――憎悪を沸き立たせていたのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

白峰・歌音
お前の話が必要かどうかは分からないけれど……命を奪って平然としている、そんな奴が語る言葉を聞いていい方向に向くなんて思えないぜ!
「無くした記憶が叫んでる!他人の痛みを軽んじるお前に道理を語らせちゃいけないと!」

UCを発動させたら、接近して連撃を打ち込む格闘戦に持ち込むぜ。
何度か攻撃を受けるだろうけど【勇気】と【覚悟】でひるまず隙を探り、敵の隙を見いだしたら【手をつなぐ】して躱せないように掴み、【カウンター】で渾身の一撃を打ち込んでやるぜ!
「痛みの重さを…思い知りやがれぇぇぇぇっ!」

アドリブ・共闘OK



●『冬』に座す記憶の縁で
 白峰・歌音(彷徨う渡り鳥のカノン・f23843)の記憶が明滅する。
 世界の在り方に抑圧されていた。
 世界を壊せばその『間違い』は正されると正面の彼は言うのだけれど。
 記憶はそれを『正しい』とは一片たりとも語らない。

 眼前の『冬』の話は、この先に居るであろう少年に果たして必要なのだろうか。
 だが、そうとは思えない。
 初めて彼を『捉えた』時に見た足許の惨禍を、
 それを一瞥もくれずに平然と立ち続けていた彼の姿を、
 『必要』な存在として認めるには、あまりにも『違う』。

 記憶の縁から、慟哭のように響き渡るその『声』が、歌音を突き動かす。
 身体は自然と前へ。
 形を成さんとばかりに溢れ出す『意志(おもい)』が、
 彼女の口許からも溢れ出す。歩みを止める理由など、無い。
「――無くした記憶が叫んでる!
 他人の痛みを軽んじるお前に道理を語らせちゃいけないと!」

「痛みなら何度も知ったさ――
 けれども、日の当たる場所で生きている連中は、『知らなすぎる』」
 刃は翻り、何度も凍てつくように突き刺さる。
「その他人が『悪』なら痛みを軽んじても良いと言うなら――
 『正義』の面をしている、お前も『変わらない』さ。俺達とな」

 至近距離で刃を受け続ける身に、その『痛み』は堪える筈だろうに、
 彼女は怯む事は無い。ただ真っ直ぐに――向き合い続ける。
「なら、お前も『知ってる』だろ。……どれだけ『痛み』が重いのを」
 ついに捉えられた腕を離さぬとばかりに、左手は、強く握られる。
 控える右の拳は――その想いを貫かんとばかりに吠えただろう。
「痛みの重さを…思い知りやがれぇぇぇぇっ!」

 ――再び、『リッパー』の身体に、重き拳が穿たれた。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

ヒーロー、正義の味方、か。
知ってるか?
正義ってのは、「正しき義」と書くんだぜ。
……アンタが抱く「義」は、どうだ?
社会を憎み、壊そうとする「義」は、
社会への「不義」じゃないのかい?
そいつを糺すのがヒーローってもんさ。

アンタ、『冬』に取り込まれ過ぎだよ。
全てが止まりそうな中、次の『春』を目指す季節。
アンタが言う「あいつ」は、『春』を目指した。
アンタは『冬』に立ち止まった。
きっと、それだけの話さ。
どんだけ素早く動こうが、その魂は。
アタシが縛る前から、妄執で雁字搦めだろ。
【時縛る糸】で動きを止めて、電撃で『援護射撃』。

言葉を交わせても、想いがすれ違うってのも悲しいもんだね。



●凍ったままの『冬』
 正義というのは『義』を正すと書くもので。
 言葉の端々から読み取れる断片から、『冬』の深くを見ようとばかりに、
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は語りかける。

「社会を憎み、壊そうとする『義』は、社会への『不義』じゃないのかい?」
 眼前の男に、恐らく社会に対する『義』などは無いのだろう。
 それほどまでに恨む事情があって歪んでしまったとしか、
 現状では読み取ることは出来ないのだが――
 それを正してやるのが、ヒーローの『役割』なのだから。

「アンタ、『冬』に取り込まれ過ぎだよ」
 『冬』は全てが止まりそうな中、次の『春』を目指す季節。
 凍れるような痛みの果てにはきっとそれが有る筈なのに、
 眼前の男は、『春』に辿り着くことすら許されていないような顔をしている。
「アンタが言う「あいつ」は、『春』を目指した。
 アンタは『冬』に立ち止まった。きっと、それだけの話さ」

「ああ、それならとても『聞こえのいい』話だな!」
 まるで自嘲のような表情の向こうには、
 怨敵を未だに視界に捉え続けているような『憎悪』だけが揺らめいていた。
「――『あいつ』は、封じていた間違いを勝手に行って、
 俺達の積み上げてきた全てを『壊して』、
 俺達を『冬』に置き去りにしていったのさ」

 彼女も、彼の事情を深くは知らない故に、すれ違う事だろう。
 言葉を交わしても、『過去』と成り果てた彼を支配している要素が、
 そうなり得る程の一瞬の『妄執』や『憎悪』ならば、
「――どんだけ素早く動こうが、その魂は。
 アタシが縛る前から、妄執で雁字搦めだろ」

 一瞬の静止は、最早気の遠くなるような長さの様にも感じるだろう。
 それほどまでにその『一瞬』こそが致命的で。
 彼女にとってはその『一瞬』こそが好機であった。

 『冬』をのたうつように紫電が這い回る。
 その姿を見た彼女に過るのは――
 想いがすれ違い続ける『悲しみ』にも似た物だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳴宮・匡
――よく知った気配だな
嫌ってほどに覚えがある

なあ、お前
“ウィンターミュート”を知ってるか?

ああ、答えなくていいぜ
いま“視た”お前の反応だけで十分だ

じゃ、やろうか

四桁に届く刃物の全てがこちらを狙うわけじゃない
牽制や目晦ましも含まれるだろう
撃ち落とすのは最小限
自分の命を脅かすものと射線を遮るものだけだ

問答は確認でもあるが
どちらかというと冷静さを奪うためだ
“殺す”と強く思わせれば、視野は狭くなる

……ところで
その刃物、“握って”なきゃならないんだろ

一射目で刃物を弾き飛ばし
包囲の薄くなった隙を突いて本命の狙撃
九倍速の曲芸を見せてくれたんだ
等速なんて目を瞑ってても当たる

冬の静寂にはまだ早い
終わりにしようぜ



●『冬寂』を知るもの達
「なあ、お前――『ウィンターミュート』を知ってるか?」
 よく知った気配故に、嫌でも間近で『付き合い続けた』気配故に、
 鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、答えを知っているかのように、問いかける。

 期待通り――と、言うべきだろうか。
 その言葉に、男は確信めいたように憎悪を膨らませる。
「ああ、答えなくていいぜ。今『視た』お前の反応だけで十分だ」
「ああ、それ以上囀らなくていい――
 今その言葉を、『知っている』というだけで、テメェは殺すに値する」
 今までよりも、明確に、猛吹雪が吹き荒れるような、
 怨嗟の感情の渦がこの場を支配し始めたのは、傍目でも分かるだろう。
 彼らは、お互いに『冬』の語る所の『あいつ』を知っている。
「「じゃ、やろうか」」

 その先は、曲芸に曲芸をぶつけるようなものとしか言えない。
 高速の刃のどれが『本命』で、どれが『囮』で、どれが『牽制』なのか。
 それを一瞬で見極める眼力など、通常の人間には存在し得ない。
 勿論、この鳴宮という青年は、通常の人間の来歴を持ち合わせていない。

(問答は確認でもあるが――どちらかというと冷静さを奪う為だ。
 『殺す』と強く思わせれば、視野は狭くなる)
 掌の上に乗せる事は、既に完了した。
 あとは、この男の暴力を『最小限』の労力で受け切ることが最大の課題。
 彼の――『冬』を近くにして凍ることのない、『凪の海』は、
 それを可能にしうるだけの力量を以て、刃を『必要数』だけ、撃ち落とす。
 最初から全てを避けられるだなんて、思っちゃ居ない。

 気が遠くなりそうな、地獄の一瞬が過ぎ去った後に、
 通常であれば来るのは『油断』であるだろう。
 それを――眼前の冬は狙っていた。
 許さぬ獲物を、確実に仕留めようとせんが為に。
「テメェの『眼』は厄介だが――お前自身は『遅い』な」
 そうギラつくような眼で笑った『リッパー』に、彼は平静と告げる。
「ああ、遅いって? ……もう撃ったぜ」
 弾は既に『置かれている』のだから。

 予め、九倍速を『視認』しているのならば、
 等速など彼にとっては欠伸が出るほどの遅さだろう。
 『冬』の刃が動く前に、残酷な二射が乾いた音を立てる。
 一発目は刃を握れぬようにする為に。もう一つは、『仕留める』為に。

「冬の静寂にはまだ早い。……終わりにしようぜ」
 その言葉と共に、『リッパー』の身体が、崩れ落ちていく。
「ああ、そうか。そうか――」
 その口許は、伝えろとばかりに、最後の言葉を紡ぐ。
「俺達は、俺達を置き去りにした、お前を『許さない』」

 そんな言葉を最後にして――
 この場にいた、■■■■は、『過去』として、消え失せて、居なくなった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 冒険 『ラビリンスを突破せよ』

POW   :    とにかく諦めずに総当たりで道を探す

SPD   :    素早くラビリンスを駆け抜け、救出対象を探す

WIZ   :    ラビリンスの法則性を見出し、最短経路を導く

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『冬』の先に、見つけ出すべきものは
 ――地獄のような『冬』は、掻き消えた。
 彼が『冬』の言葉に耳を貸す可能性は、万が一にも無いだろう。
 だが、猟兵達はそれでも急がねばならない。

 『アリス』と化せば、転送が終わってしまった時に待ち受けるのは、
 この病院の中よりも遥かに過酷な世界だというのは、
 猟兵達自身がよく『知っている』だろう。

 そうでなくても――
 ただ漠然と助けただけでは、彼もいつか『冬』に至る可能性は否定出来ない。
 彼は『迷っている』のだ。ヒーローの在り方を。
 呑まれすぎたが故に、その標を『求めて』居るのだ。

 街はまだ、続いている。
 ――ヒーローショーの結末は、まだ決まっちゃいないのだから。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

標を失った迷子、か。
アタシも探し迷い続ける身。
だからこそ言える事もあるよ。
道に迷ったのなら、一度来た道を戻ればいい。
この「街」は、彼の……ヤイバの、心象世界。
だからアタシは、呼びかける。
「公衆電話」からテレパスの思念波を込めてな。

よう、ヤイバ君。
君がなろうとした最初のヒーローは、どんな奴だった?
カッコよかったか?良かったな。
……で、そいつは「何の為に戦ってた?」
悪を倒す為?じゃあなぜ悪を倒すんだ?

標を見間違えるんじゃないよ。
ヒーローは、「悪を倒すために戦う」んじゃない。
「人々の平和を守り救う為に悪と戦う」もんさ。

大丈夫。君は一人じゃない。
皆が今、迎えに行くさ。



●戻ることも進むこと
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は、とある物を探すように、
 よく見るような、けれども違和の有る世界の中を進んでいく。
「標を失った迷子、か」
 街中を進んでいくに連れて、脳裏に過るのはそんな言葉。

 彼女とて、思い当たる節が無い訳ではない。
 迷いながら、探し抜いて、それでもまだ『真相』に辿り着いたとは言えない。
 だからこそ言える事もあるのは、彼女も同じような経験がある故。
 まるで思い立ったようにその道行きを引き返せば、
 さっき通った時には『見えなかった』物が、そこには存在する。

 公衆電話がそこに唐突に、『あったかのように』聳えているのだ。
 最近は街から探すのも難しくなりつつあるソレが、
 『存在』するという事実は、この『街』に置いては別の意味を持つ。
「――この『街』は、彼の……ヤイバの、心象世界」
 彼女は躊躇わずにコールをする。
 番号は分からない、けれど、何故か『これで通じる』気がした。

「――よう、ヤイバ君。
 君がなろうとした最初のヒーローは、どんな奴だった?」
 返答は、帰ってこない。けれど、『届いている』感覚があった。
 背景に座す大型ビジョンに、その世界を標榜するかのように、
 スーパーヒーローの映像が流れたのは、気の所為では無かったように思える。

「カッコよかったか? 良かったな。
 ……で、そいつは『何の為に戦ってた?』
 ……悪を倒す為? じゃあ何故悪を倒すんだ?」
 それこそが――根本的な問い。

 気に入らないから戦う訳ではない。
 いや、『いじめていた』のが気に入らなかったから『助けた』のかも知れない。
 けれど、どうしてだ。嘗て隣で遊んでいた彼との始まりは、
 そんな単純な、『ヒーロー』のような意気投合の筈だったのに。
 少なくとも、彼の安息を、護った筈なのに。

「標を見間違えるんじゃないよ。
 ヒーローは、「悪を倒すために戦う』んじゃない。
 『人々の平和を守り救う為に悪と戦う』もんさ」
 そう告げ終えた途端、奇妙なことに公衆電話が消失する。
 その代わりに彼女の後ろを通り過ぎていった、子供の『影』が一つ。

「――大丈夫。君は一人じゃない。皆が今、迎えに行くさ」
 確信したように、多喜はその背中を追って駆け出していく。
 それこそが――ヤイバの示した『道標』だと気付いて。

成功 🔵​🔵​🔴​

白峰・歌音
行動:迷宮を走って探しながら叫び説得する。

『迷う』事を恐れるな!
あいつの言った事持ち出すのは癪だけど、『知らなすぎる』から、この光景を見て『悪』がただ倒すだけじゃダメなんだって『知った』んだろ!だからヒーローが『悪』を倒すだけでいい事なんだろうかって『迷ってる』んだ!
ヒーローはみんな、ただ無心に『悪』を倒したんじゃなくて、時に倒すべきか救うべきかって『迷っている』はずだぜ。それを自分で答えを出して、時には間違ったり救えなかったりして心を傷つけられた時でも、それを受け止めさらに進んでいく、それがヒーローの道だって思う!最高のヒーローになりたいなら、その『迷い』から逃げるな!

アドリブOK



●逃げないことも、ひとつの答え
 街中に突如現れた『人影』を追うようにして、猟兵達は駆けていく。
 白峰・歌音(彷徨う渡り鳥のカノン・f23843)が、
 一瞬その姿を見失いかけた時、そうすれば『届く』と感じたのは、
 影の進む道行きに、若干の『躊躇い』を感じ取った故かも知れない。

「――『迷う』事を恐れるな!」
 街中に、その叫びは木霊する。
 残響して響き渡る声が、彼女の本心から湧き出て、世界を『揺さぶる』。
「『知らなすぎた』から、
 『悪』がただ倒すだけじゃダメなんだって『知った』んだろ!」
 脳裏に過ぎったのは、戦った故に骸の海に堕ちて、変わり果てた者の言葉。
 知らなかったから、この光景の異様さがより鮮明に彼の中に突き刺さったのだ。

 だから、ただ倒すだけで良い事なのかと、ヤイバは迷い果てた。
 彼の護りたかった人は、どうしてか怪人という演目上で、
 その彼の風貌故にか、『炎の大幹部』のように『見えて』いて。
 恨みではなく、そうした『脚本』に従い過ぎて。
 けれど――『大幹部』も、本当は『救うべき』存在だったとしたら?
「――ヒーローはみんな、ただ無心に『悪』を倒したんじゃなくて、
 時に倒すべきか救うべきかって『迷っている』筈だぜ」

 思想が違うのならば、相容れないことこそ多いだろうが、
 それでも拳を握りしめること『だけ』が、正義のヒーローの仕事ではない。
「時には間違ったり救えなかったりして心を傷つけられた時でも、
 それを受け止めさらに進んでいく――」
 それが、ヒーローの道であり、仕事なのだから。

「最高のヒーローになりたいなら、その『迷い』から逃げるな!」
 そう告げた彼女を『待っていた』ように、『影』は再び現れる。
 視線が合うや否や駆け出したそれは――迷うことが無いように。
 力強く真っ直ぐに、奥へ奥へと駆け出していく。

「――今行くからさ、待っててくれよ。
 きっと、向こうの病棟のイサムも『待ってて』くれる筈だぜ」

成功 🔵​🔵​🔴​

鳴宮・匡
挫折や間違いのない生き方なんてできないさ
どんなに“正しく”生きようとしたって
こういう場面は必ず訪れる

でも、そこからどう這い上がるか
その先をどう生きていくかは
自分の意思で決められるものだ

といっても、別に難しい話じゃない
傷つけてしまったと思うなら、謝ればいい
自分のしたことが間違いだったと思うなら
次は同じことを繰り返さないようにすればいい
ただ、それだけのことだ

まだお前も、お前の友達も、生きてるんだろう
だったら、間に合うさ
取り返しのつかないことなんて、案外少ないんだぜ

間違えながらでも一歩一歩歩んでいけばいい
自分のしたことに向き合って、ちゃんと乗り越えようとするほうが
“ヒーロー”らしいんじゃないかな



●間違いの無い生き方という『難しさ』
「挫折や間違いのない生き方なんてできないさ。
 どんなに『正しく』生きようとしたって、こういう場面は必ず訪れる」

 鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、普通の人間の生き方としては、
 少し『外れた』人生を送っていた存在ではある。
 そんな彼が――街並みに語り掛けるように話し始めたのは、
 有る種、傭兵としての『勘』じみたような物もあったのかも知れない。
「でも、そこからどう這い上がるか。その先をどう生きていくかは――
 自分の意思で決められる物だ」

 その言葉を受けて、見えぬ街並みの空気が『揺らいだ』のは、
 彼の望んでいた『反応』であったのだろう。
 それをちらと見遣った彼は、表情を変えずに話を続ける。
「といっても、別に難しい話じゃない。
 傷つけてしまったと思うなら、謝ればいい」

 だが、繰り返さないというのは案外『簡単』ではない。
 それでも『難しい』話でないと称したのは、彼がそう理解しているからか。
 間違いを重ねて、先に進むのが、人間の『在り方』なのだと。

「……まだお前も、お前の友達も、生きてるんだろう」
 まだ、街の中の景色は変わらない。それでも、青年は語り続ける。
 連れ出すのは猟兵達の役割だろうが、『歩み出す』のは彼自身なのだから。
「だったら、間に合うさ。
 取り返しのつかないことなんて、案外少ないんだぜ」

「間違えながらでも一歩一歩歩んでいけばいい。
 自分のしたことに向き合って、ちゃんと乗り越えようとする方が――」
 ちらと、視界に映った『誰か』を見て、確信めいて呟く。
「『ヒーロー』らしいんじゃないかな」

 その言葉の時、青年は確かに『見た』のだった。
 胸の前に拳を握りしめるようにして立つ――幼い少年の姿を。

成功 🔵​🔵​🔴​

死之宮・謡
アドリブ歓迎

やれやれだね…ガキの一人や二人放っておいちゃダメなのかい?
まぁ、仕事だし仕方ないね!…正義の云々は得意じゃないんだけどね…?

(引き続き【緋染めの天使】状態)
流れた血を操って迷宮内を網羅して少年の元まで行き
やぁ少年…悪が来たぞ
正義を目指したらしいね…其処から既によく解らんが…まぁ今まで相手にしてきた連中から想うに
正義なんて、自分の信念を貫き通せば何だって良いのさ…
君に言うんだからもう一つ、他者に迷惑をかけるな…
其れだけで良いんじゃないか?



●悪とて貫く『矜持』と『信念』
「やれやれだね……ガキの一人や二人放っておいちゃダメなのかい?」
 とはいえ、仕事としてちゃんと割り切って、
 死之宮・謡(宵闇彼岸染・f13193)は迷宮にこびり付いた――『血』を辿る。
 『冬』が齎した惨禍こそ、迷宮に血を齎し、
 彼を奥へ奥へと『追い詰める』に至った事象故に。
 ひとりの『悪』が彼の場所に辿り着くのは、とても『容易かった』。

「やぁ少年――悪が来たぞ」
 少年の姿がぴくりと震えたのは、間違いなく『気の所為』では無かったろうが、
 それでも『逃げずに』向き合おうとしたのは、ヤイバの本来の性質故か。

「正義を目指したらしいね……私に取っては其処から既に良く解らんが……」
 謡は『悪』であるが故に、『正義』などとは縁遠く。
 最も近い在り方で語れるのならば、最も非道なやり方でしか『答え』られない。
 だからこそ、ヤイバが望むであろう『ヒーロー』ではない。

「まぁ、今まで相手にしてきた連中から想うに正義なんて、
 自分の信念を貫き通せば何だって良いのさ……」
 『悪』が滅ぼす『正義』はいつだって『折れる』ものなのだ。
 折れなかった正義こそが、後世に『正義』として名を刻み、『ヒーロー』となる。
 その結末が如何様であろうと、彼女はそれを幾度となく『見てきた』。

「君に言うんだからもう一つ、他者に迷惑をかけるな……
 其れだけで良いんじゃないか?」
 正義とは横暴だけでは成り立たないことも、彼女は良く『知っている』。
 『悪』という対局に座し続ける彼女だからこその言葉だろう。

 それだけ語った後、まるで興味も失せたかのように消え失せたその姿を――
 少年は、じっと最後まで見つめていた、という。

成功 🔵​🔵​🔴​

草野・千秋
勇気をもって語りかける

いけないヤイバさん!
これ以上進めば病院より過酷な狂気のお伽噺の国です

ヒーローとしての在り方ですか
正義そのものではなく正義に寄り添う者とも言えます
単に悪を倒すだけがヒーローではない
力を振りかざすだけなら
ヒーローじゃなくったってできます
そんな事は痛いほど僕にもわかる

ただこれだけは言える
目の前の子ども一人救えなくて何がヒーローですか
正義の形は色々あれど、悲しんでいる人がいれば
その痛みに寄り添うことが
出来る者こそヒーローだと思うのです
元はといえばヤイバさん、イサムさんを助けたかったんですよね
その気持ちこそが原点ですよ
綺麗事かもしれませんが



●痛みに『寄り添う』事
 草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)の見たその姿は――
 幻影だったのかも知れないし。実像だったのかも知れない。
 けれど、迷宮を彷徨い、『ヤイバ』を探していた彼の視界に入ったのは、
 奥へ――奥へと、誰かに招かれるようにして駆け出していく姿で。

「――いけないヤイバさん!
 これ以上進めば病院より過酷な狂気のお伽噺の国です」
 奥底で、震えるような心から、絞り出した声が、その姿を静止させる。
 この先に待っているのが、記憶を失うことによる狂気の世界ならば、
 それはヤイバの『現実逃避』の報いとも言えるだろう。
 正義の在り方に懊悩したままに――事実から目を反らした事への。

(……ヒーローとしての在り方ですか)
 ただ、悪を倒すならば、『悪』そのものにだって出来るのだ。
 制裁も、処罰も、見方を変えれば『敵を倒す』事に他ならない。
 じゃあ、ヒーローは何を持って『ヒーロー』となるのか?
 ――ただ、これだけは『今』の彼にも言える。
(目の前の子ども一人救えなくて何がヒーローですか)
 ヒーローは、『正義』に寄り添う者だから。

 正義の形には様々な形が存在し得るし、それこそ『人の数』程ある。
 それが、思うに、『痛み』に寄り添う事であるのなら。
 それが出来ることが、ヒーローである証左なのだと、反芻するように。

「元はといえば……ヤイバさん、イサムさんを助けたかったんですよね」
 奇妙な熱病に侵された少年を、無垢なる迫害から救った時の『思い』。
 綺麗事かも知れないが、その気持ちこそが原点だと。
 千秋がそう告げた時、暫く、二人は見つめ合うようにしたままで。
 けれども。次に、その彼が『駆け出していった』先は、
 間違いなく奥でなくて、『外』へ向けられた一歩だったように思えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

カタリナ・エスペランサ
さて、大詰めだね
必要に応じて《救助活動》しつつヤイバを捜索しよう
この迷宮が彼の能力に由来するなら《ハッキング》で干渉して声を届ける事も出来るかもしれないね

ヒーローにとって大事なのは悪者を退治する事じゃないんだ
本当に重要なのはその悪者に苦しめられていた人たちを救う事。
もちろん、悪者が居なくなれば大抵は助かる人も大勢居るから認識が混ざっちゃうのも無理はないんだけどね
ヒーローが特別だとすれば結局、他の誰かには助けられなかった人を助けてみせるからさ

誰かを救ってくれるヒーローを必要としてる人はこの世界にもたくさん居るよ
何より……キミの助けを必要としている相手の心当たり、キミにはもうあるんじゃないかな?



●それは、誰かを『救う』為に
 カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は、
 『ヤイバ』を探す最中でも、巻き込まれた被害者達への『手』を止めなかった。
「――人形は撤退、あるいは破壊されたから、もう姿は見えないけれど……
 爪痕があまりにも酷すぎるね、病棟の人々ほぼ全員、となると」

 お世辞にも、横行した悪感情の爪痕は『快方』に向かっている、とは言い難く。
 そんな最中に、彼女はもうひとりの『助けるべき存在』の気配を感じ取った。
 彼女は、視線を合わせることはしないものの――
 救いの手を止めることは無く、そのまま『彼』に語り掛けるように、話し出す。

「ヒーローにとって大事なのは悪者を退治する事じゃないんだ」
 大事なのは、人を『救う』事。
 その過程で人を『救う』為に、明確な『悪』を滅ぼすことは、
 視覚的にも分かりやすい為につい混同しがちなのだろう。
 カタリナ自身、ヤイバがそう思うのも無理はないね、と苦笑するものの。

 けれど――それは『ヒーロー』でなくても『出来る』事では有るのだ。
 では、それが『ヒーロー』である所以なのは。
「それは、結局、他の誰かには助けられなかった人を助けてみせるからさ」

 他の誰かとは、誰でもなく。
 ヤイバにとっては。あの時、自分が動くまで誰も『助けること』の無かった――
 そう、そんな彼の姿が、脳裏に過ぎって。
 数瞬の躊躇いの後、こぼれた大粒の涙は『振り払われた』。

「何より――」
 その言葉を言い終わらない内に、ヤイバは再び駆けていった。
「……キミの助けを必要としている相手の心当たり、
 キミにはもうあるんじゃないかな?」
 その姿は、彼女も知る『もうひとり』の下へと明確に定め直された、
 『迷うことのない』一歩が見えたような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇冠・龍
由(f01211)と連携

人は人である限り悩みは尽きません
欲深さも決して癒えることなないのでしょう
でもそれは、生きているからこそ

私は娘と一緒に後方支援
子供を救ってあげたいですが、そこまで口が上手でもありませんし
この度引き起こされた死にも、そして消えたリッパーの行き場のない無限の憎悪にも弔ってあげたいので
他の猟兵の方々が少年たちの心を救ってくださると信じています

【祈りの聖火】で死者を弔い祈りながら、病院の壁に触れて祈りを伝播。建物内に満ちていた憎悪や混乱を緩和させます
(憎悪の責任はとれません。しかし、肩代わりくらいはできますよ。支えあうのが人ですから)
それが私なりの答え
ヒーローとしての在り方です


宇冠・由
お母様(f00173)と連携

私からはヒーローとしての在り方を示すことはできません
やはりヒーローとは己で完結するのではなく、他者から呼ばれてこその存在だと思いますの
人同士の思いやり、結びつきこそがヒーローとしての資格なのだと

ですから、私たち親子は裏方に回りますわ
他の猟兵の方々が、その結びつきをより強固にできるように、少年の心を救ってくださるように

冬が終わりを迎えれば、それはすなわち春の来訪です
ちょっとずるいかもしれませんけど、【智天使の抱擁】で春の一部分を前借しちゃいます
迷宮内や病院周囲をぐるっと一回り、戦闘で壊れた個所を修復し、一面の花畑を咲かせて病院内からその景色を見てもらいます



●そして、『冬』は終わって
 ヤイバが外へ向かい始めた頃、まだ人々のわだかまりは爪痕として残っていた。
 その最中、宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)は、
 そっと『街』の壁に触れるようにして、ひとつの祈りを捧げる。
(子供を救ってあげたいですが、そこまで口が上手でもありませんし――)

 『彼』は、行き場の無い生前の憎悪を抱えたままに、
 『誰か』へと、それを向け続けていた。それは『誰か』が滅ぼすまでは――
(……永遠に、彷徨い続けるのでしょうか。オブリビオンである以上)
 この度引き起こされた死にも、そして――
 消えた『彼』の行き場のない無限の憎悪にも。その祈りは捧げられる。

「憎悪の責任はとれません。しかし――
 肩代わりくらいはできますよ。支えあうのが人ですから」
 彼女の言葉は、もう、この場には居ない『彼』への解答でもあり、
 この街を生み出した、『彼』への解答でもあった。

 これこそが――死を悼み、死に寄り添う淑女の、答え。
 暖かな焔が祈りを『街』に伝播させていく。
 人々の安らいでいくようなその表情こそ、彼女の求めていたものだろう。

 一方で――ヤイバは、病院の『外』へ向かっていこうとしていた。
 騒ぎは既に沈静化を始めており、人々も、諍い合う事もなく。
 ただ、少年は真っ直ぐに、自分の意志に導かれるように。走っていた。

 ヒーローになりたかったんだ。イサムのことは、憎んでる訳じゃ無いんだ。
 本当になりたいのは、皆を助けるヒーローなんだ。
 だから、また、助けに行くんだ、って。
 その為に――また、会いに行かなきゃ。

 そんな様相になっているとは知らないだろうが、
 宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)は、一足早く病院の外側に居た。
(私からはヒーローとしての在り方を示すことはできません)
 ヒーローとは己で完結するのではなく、他者から呼ばれてこその存在だと。
 人同士の思いやり、結びつきこそが『ヒーロー』としての資格なのだと。
 彼女はそう思うからこそ、母と共に、全体的な事態の収束へと回ったのだ。

「冬が終わりを迎えれば、それはすなわち春の来訪です」
 ヤイバの冬は終わって――先に進むための春は、やってくる。
 彼女が病院の外に、『前借り』するように齎すのは――

 なんだか、騒がしい。
 外を見てみろと、病院の人達は言う。
 ヤイバが、一番近くの窓から、その景色を眺めると……
 そこにあったのは、光に溢れた、『春』の色。
 その光景に目を奪われると共に、『街』は、元の姿へと戻っていき、
 完全に、冬の爪痕は、消え去ったのだ。

 程なくして、ヤイバは病室に戻されたものの、
 入院した当初に比べれば、とても明るくなったとも、言っていた。
 本当のヒーローになるんだ、と頻りに言って病院の職員を困らせるものの、
 それは、間違いなく、誰かと向き合う為だったのだろう。

 そんな彼が、この騒動の最後に見たのは――
 花畑の中空に座す、焔の熾天使だった、という。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月22日


挿絵イラスト