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アースクライシス2019⑲～心無き人形達

作者：ゆうきつかさ

●ヒーローズアース
　ヒーロー達はラグランジュポイントの『島』のひとつが、巨大輸送船に改造され、様々な物品が運び込まれている事実を掴んだ。
　この巨大輸送船はジェスターの本拠地で、船内には地球上の様々な動物や植物や、鉱物などの自然物品、文明の成果としての書物、機械などが、種類ごとに分別されて、運び込まれていた。

●ジェスター
「オロロロロ、ヤハリ人形はイイですネ。コウシテ、眺めているだけデ、心が癒えマス」
　ジェスターは人形区域に集められた人形達を見つめ、幸せそうに喉を鳴らした。
　人形区域に集められたのは、リアルな人形達。
　どれも本物と見紛うほどリアルなため、まるで本物の人間が並んでいるように見えた。
「特に、コの子達ハ最高傑作！　逆らう事がナイ分、本物よりも素晴らしい！」
　その中には猟兵達を模したモノもあり、ジェスターがその出来栄えにニンマリとしていた。

●ガジルからの依頼
「ジェスターを倒して欲しいんだよ！」
　ガジル・コリアンダー（キマイラのスカイダンサー・f00907）が祈るような表情を浮かべ、今回の依頼を説明し始めた。
　今回の目的は、ジェスターの撃破。
　現在、ジェスターは人形区域にいるらしく、沢山の人形たちに囲まれ、悦に浸っているようだ。
　ただし、ジェスターは必ず先制攻撃を仕掛けてくるため、何らかの対処法を考えておかねば子供達を助けだす事は困難。
　そう言った事も踏まえた上で、ジェスターを倒して欲しいという事だった。

第1章 ボス戦 『ジェスター』

POW   :    力押しもたまには悪くないデスね 単純で重い【魔法金属製のメイス】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。 SPD   :    古い馴染みの仲デシて レベル分の1秒で【意志持つ魔剣『レギオスブレイド』の群れ】を発射できる。 WIZ   :    別に見捨てても良いデスよ 戦闘力のない【名も知らぬ一般人の人質】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【呪詛により人質が傷つき、悲鳴や苦痛の声】によって武器や防具がパワーアップする。 イラスト：シャル 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●人形区域
「お人形がいっぱいだー、ミルケンたちのもあるかな？」
　ミルケン・ピーチ（魔法少女ミルケンピーチ・f15261）は仲間達と共に、沢山の人形が保管された人形区域にやってきた。
　人形区域には本物と見紛うほど出来のいい人形達が並んでおり、虚ろな表情を浮かべて、こちらを見つめているような感じであった。
「オロロロロ、ひょっとして、この素晴らしさが分かるのデスカ？　そうでショウ、そうでショウ。コレこそ人類の宝……ある意味、遺産のようなモノデス」
　それに気づいたジェスターが上機嫌な様子で、物陰から姿をあらわした。
「まあ、人形の良さ自体は賛成では有りますが……」
　夢ヶ枝・るこる（豊饒の使徒・夢・f10980）がFBS（正式名称：フローティングブレイドシステム）を四肢に嵌めて飛行をしつつ、複雑な気持ちになった。
　確かに、どれも出来が良いものの、それは作り物としての素晴らしさ。
　だが、何処かに心を置き忘れたような表情を浮かべているため、手放しで褒める事が出来ないモノだった。
「オヤオヤ、何か不満デスカ？　もしかして、コノ素晴らしさが分からナイ訳ではアリまセンよね？　ほら、見てください。コウやって叩いても、まったく逆らう事がナイ。この素晴ラシサが分かりませんか？」
　ジェスターが近くにあった猟兵人形の頭を乱暴に叩き、るこるの同意を得ようとした。
「……『逆らう事が無い』。そんな理由で、そばに置かれるのは寂しいですね」
　そんな中、桜雨・カイ（人形を操る人形・f05712）が、ジェスターに対して憐みの表情を浮かべた。
「それは単なる思い込みデス。ダレも寂しくアリまセンから！　ソンナ気持ちにさせるような人形は、コウです！」
　ジェスターが先程の猟兵人形を掴み上げ、見せしめとばかりに首をへし折った。
　それがジェスターにとっては当たり前のことらしく、よく見れば所々傷ついた猟兵人形もあった。
「どの人形にも、作者や所有者がいる、大切な存在、でしょう。ヤドリガミとして、許せませんね。持ち主のところへ、持ち帰らせて、もらいます！」
　それを目の当たりにしてナイ・デス（本体不明のヤドリガミ・f05727）が、人形達を守るようにして陣取った。
「オヤオヤ、ソレはドウ言う意味デスカ！」
　途端にジェスターが殺気立ち、ナイをジロリと睨みつけた。
「聞こえなかったか。良い人形達だから、返してもらうぞ！」
　六代目・松座衛門（とある人形操術の亡霊・f02931）が、ジェスターを睨み返してキッパリと言い放った。
「ホオ……面白い事を言いマスね。一体、ドウやって？　ヤレるものなら、やってみてクダさい」
　ジェスターが小馬鹿にした様子で、猟兵達を挑発した。
　おそらく、室内にある人形を持ち運ぶ事など、絶対に出来ないと思い込んでいるのだろう。
「ならば、ここで助けます」
　すぐさま、シホ・エーデルワイス（捧げるもの・f03442）が【救園】救いが必要な人の迷い家（キュウエン・スクイガヒツヨウナヒトノマヨヒガ）を発動させ、十字架のペンダントで人形を触れ、ユーベルコード製の部屋に吸い込んだ。
「ヤレヤレ、何も分かっていませんネ。アナタ方は、モット順重でナクては……。ソレでは、コウしまショウ。無駄に抵抗はやめてクダサイ。サモナイト、この子のクビをポッキリと折りマスよ？」
　そう言ってジェスターが男の子を召喚すると、猟兵達に警告するようにして呟いた。
　一方、男の子は訳も分からず、大声で泣き叫び、半ばパニックに陥っている様子であった。
「静かにしてクダサイ。そうシナイと、首をポッキリとヘシ折っちゃイマスよ？」
　ジェスターが男の子の首根っこを掴み上げ、その耳元で囁いた。
　その途端、男の子が大粒の涙を浮かべ、必死に両手で自分の口を塞いだ。
　しかし、身体の呪詛が男の子の恐怖に反応して鈍く光るたび、身体に激痛が走っているらしく、涙が止まらなくなっていた。
「猟兵の人形を見て悦に浸ったり、人質取ったりってバカじゃねぇーの？」
　カーバンクル・スカルン（クリスタリアンのスクラップビルダー？・f12355）が嫌悪感をあらわにしながら、生暖かい視線をジェスターに送った。
「……とは言え、何とかして、あの子を助ける必要がありそうですね」
　その事に危機感を覚えたシホが、ジェスターに気づかれないように移動しつつ、覚悟を決めた様子で変装をすると、周囲の人形と似た姿になって、目立たないように身を隠した。
「……オヤ？　先程の女性がイナイ。マサカこの状況で逃げたのデスカ？　だったら、コレはイリまセンネ」
　ジェスターが人質を取っても役に立たないと判断し、男の子を乱暴に放り投げた。
「わざわざ、自分から人質を手放すなんて、バカか？　バカなのか？」
　カーバンクルが軽く毒づきながら、迅雷一喝（デス・ロール・スタン）を仕掛け、ワニの牙から高圧電流を放つ事で、ジェスターを感電させて動きを封じた。
　その間にシホが忍び足で男の子に迫り、破魔の祈りで呪詛を解除すると、【救園】救いが必要な人の迷い家（キュウエン・スクイガヒツヨウナヒトノマヨヒガ）に吸い込んだ。
「グギギ……小賢しいマネを……！」
　ジェスターが殺気立った様子で、八つ当たり気味に猟兵人形を破壊した。
「さあ、人形劇は終わりです」
　すぐさま、シホが聖銃のマシンピストルを起動し、ジェスターに精霊徹甲弾を撃ち込んだ。
「痺れた体で、どれだけ対応できるかな！」
　それに合わせて、カーバンクルが超巨大金槌とかたりなの車輪で、ジェスターをボコボコにした。
「グギィ、グギギギギィ！　許しマセんよ、アナタ達だけハ！」
　続け様に攻撃を喰らった事で、ジェスターがフラつきながら、魔法金属製のメイスを振り上げて襲い掛かってきた。
「そんな事はさせませんよぉ！」
　それに気づいた、るこるがFRS（正式名称：フローティングレイシステム）でジェスターの足元を撃ち、FSS（正式名称：フローティングシールドシステム）で猟兵人形を弾くと、盾代わりにして一気に間合いを詰めていった。
「無駄デス、無駄、無駄！　こんなモノ盾代ワリにもなりマセん！」
　それでも、ジェスターはまったく気にしていない様子で、メイスをブンブンと振り回し、まわりにあった猟兵人形を壊していった。
「そうでしょうね。あなたには心がないんですから！」
　その間にナイが一気に距離を縮め、第六感でジェスターの攻撃を見切ると、わずかに体を逸らし、黒剣で庇い受けるようにして掲げ、メイスの攻撃を防いだ。
　その衝撃で左半身がグシャリと音を立てたものの、死には至らぬ傷であると判断し、ジェスターにカウンターを食らわせた。
「確かに、地形を壊すくらいの攻撃だもんね、人形なんて粉々になっちゃうよ！　別に見捨てても良いデスよ、なんちゃってー！」
　それに合わせて、ミルケンがミルケンインパクトを仕掛け、ヒップアタックで傍にあった猟兵人形を吹き飛ばし、ジェスターに目潰しを喰らわせた。
「ウグ……、め、目がァァァァァァァ！」
　ジェスターがパニックに陥った様子で、メイスをブンブンと振り回した。
「何処を見ているのですか？　私はこっちですよ！」
　ナイがジェスターの死角に回り込み、勇者理論（ユウシャリロン）を発動させ、勇気と気合と根性を入れる事で自らを強化し、黒剣で串刺しにすると、そのまま生命力を吸い取った。
「それじゃ、行きますよぉ」
　続いて、るこるも豊乳女神の加護・耀衣舞（チチガミサマノカゴ・カガヤクコロモノマイ）を発動させ、拘束の突撃でジェスターを吹っ飛ばして壁にめり込ませた。
「まだまだ行っくよお～」
　その間に、ミルケンが一気に詰め寄ってグラップルでジェスターを掴み、そのまま怪力で床に叩きつけ、ミルケンインパクトを炸裂させた。
「こ、こうナッタら……」
　ジェスターが床にめり込みながら、意志持つ魔剣『レギオスブレイド』の群れを発射した。
「ならば、こちらも数で応戦です」
　それと同時に、カイが錬成カミヤドリを使い、自らの本体（器物）を複数複製して、念力ですべてバラバラに操作し、レギオスブレイドを撃ち落とした。
「まさか、こんなモノで足止め出来ると思っていたのか？　だったら、随分と甘い考えだな」
　続いて、松座衛門が鬼猟流 裏芸 「人形騙し」（キリョウリュウ・ウラゲイ・ニンギョウダマシ）で強化された早業で、操作糸「領」を周囲の人形達に可能な限り放ち、ロープワークと操縦を駆使して操り、四方に走らせつつ武器受けで、レギオスブレイドの攻撃を防いだ。
「ば、馬鹿ナッ！　そんなハズでは……」
　ジェスターが信じられない様子で、猟兵達を睨みつけた。
　だが、度重なる攻撃によって、ダメージが蓄積しているため、思うように体が動かないようだった。
「そもそも、本当に大事にされた人形は、言う事なんて聞きませんよ。……人形だって、人に大切にされた分　人に応えたいんです」
　次の瞬間、カイが残った錬成体で一気に攻撃を仕掛け、ジェスターの身体を貫いた。
「……終わりだ。覚悟しろ『ジェスター』！」
　それに合わせて、松座衛門がすべての人形を突進させ、続け様に攻撃を仕掛けていった。
「ウグ……ガハッ！」
　そのため、ジェスターは抵抗する事さえ出来ず、もがき苦しみながら血溜まりの中で息絶えた。
　そして、猟兵達は人形区域で勝利を収め、次の戦場に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年11月30日