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桜ノ匣庭~紅葉灯籠

#サクラミラージュ #桜ノ匣庭

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#サクラミラージュ
#桜ノ匣庭


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 この世界は年中、桜色で溢れているけれど。
 夜の闇に浮かび上がる鮮烈なその秋の彩は、燃える様な紅。
 そんな紅しか彩が存在しない紅葉のトンネルを潜り抜けるのは、快適な夜汽車。
 終着駅に辿り着けば、眼前に伸びる、紅葉と桜の絨毯が敷き詰められた長い石段。
 石段の両脇に照る数多の行灯がそれぞれのいろを、より一層燃え上がらせて。
 紅葉と桜のトンネルを潜り、紅葉と桜の絨毯を踏みしめ、長い石段を上り切れば。
 楽しみなのは、疲れを癒すような足湯や限定の甘味が堪能できる茶屋。
 それに、何よりも――眼下に広がる、紅葉と桜が織り成した山の絶景。

 そして頂上にある社に数多揺らめくのは、願いの灯火。
 その灯火に、今宵もこの社を訪れた未亡人は、祈りを馳せる。
 愛読書の短編集『桜ノ匣庭』に収録された、『紅葉行灯』の小説の通りに。
 今は物言わぬあの人もきっと……自分と今度こそ添い遂げてくれる事を、願いながら。

●紅葉行灯の夜
「秋も深まり、紅葉も見頃になってきたな」
 筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)はそう雅やかに微笑んでから。
 集まってくれて感謝すると、猟兵の皆に頭を下げ、視えた予知を語り始める。
「丁度、紅葉が見頃の神社に、影朧とその存在を匿っている人物の予知を視た。今はまだ何事も起こっていないが、影朧は不安定な存在だ。今後危害が加わる可能性もある。よって皆にはそうなる前に、対処にあたって欲しい」
 予知で視えた影朧を匿っている人物、それは澄子という若き未亡人だという。
 この日の夜、澄子は夜汽車に乗って、ある場所へと赴く。
 それは、彼女が足繁く通っているという、長い石段がある神社。
「この神社へと、澄子は夜汽車に乗って赴くことが分かっている。彼女に怪しまれぬよう、話を聞き出すべく声を掛けたり、その様子を窺ってみたりするのも有効かと。そしてこの夜汽車が走る風景は、桜が年中咲き誇るサクラミラージュの世界では珍しく、今の時期、紅葉の紅一色になるのだという。なので、この夜汽車は人気の観光名物で、展望列車のようになっているそうだ。紅葉の期間中、ライトアップされた紅葉のトンネルを展望列車の車窓から鑑賞できるらしい。紅葉のトンネルを通過する際には列車の車内灯は消え、走行もゆっくりとなり、幻想的な紅のいろを存分に楽しめるという。また、美味な秋の味覚が沢山の『秋の幕の内弁当』などの販売もあるようであるし、飲食物の持参も可能のようだ。折角なので、紅に染まった紅葉の風景を車窓から眺めつつ、美味しい秋の味覚を楽しむのもいいだろう」
 目的の神社まで赴くために澄子が使うのは、紅葉のトンネルを潜り走る、展望夜汽車。
 澄子の様子を窺いつつも、紅葉の景色や秋の味覚を楽しむのも良いだろう。

 そして夜汽車が終着駅に到着すれば、眼前に伸びるのは、長い長い神社の石段。
 今の時期、その長い石段の両脇には、仄かに行灯が並び灯っていて。
 色づいた真っ赤な紅葉と年中咲き誇る幻朧桜が織り成すトンネルの彩りを、より美しく浮かび上がらせているという。
 そして、長い長い石段を上るのは一苦労だが。
 上り切った先には、その疲れも吹き飛ぶほど、色々なものが待っているという。
 まずは、真っ赤な紅葉と朧に咲く桜のいろが一望できる、山の絶景。
 そんな景色を眺めながら、足湯に浸かれるのだという。
 また、神社の境内には茶屋もあるので、お茶や甘味ををいただきつつ、一休みするのも良いだろう。この茶屋には定番の和菓子の他に、期間限定で、紅葉ののった栗抹茶大福と桜クリーム大福の大福セットがあるのだという。
 広い境内にはベンチなどもあるので、座って絶景を眺めつつ、物思いに耽ったり、同行者や情報収集も兼ねて他の参拝者との会話などを試みても良いし。
 境内には沢山の人懐っこい猫もいるので、紅葉舞う境内で暫し戯れるのも良いだろう。
 また、この神社で人気の、四季を閉じ込めたようなガラスドームの御守りを購入するのも良いかもしれない。
「折角なので探索のついでに、そんな燃える様な紅に色づく秋の夜長を楽しむのも良いかと思う」
 清史郎はそう笑んだ後、表情を引き締め、改めてこう続ける。
「それでこの神社だが、石段を上った先の社に、願いを込めた蝋燭を灯し捧げることができる社があるという。影朧を匿っている澄子は、この社に足繁く願掛けに通っているらしい。しかもこの社の周辺には幻朧桜は咲いておらず、今の時期は紅葉のいろのみに染まるようだ」
 燃える様な紅葉に染まる、願掛けの社。
 その社に幻想的に揺らめく数多の炎に込められたのは、人々の願い。
 澄子も、この社に何かを願っているらしいが……それはきっと、あまり良くないことではないかと、清史郎は言う。

「というのも、澄子が匿っている影朧……それは人ではなく、犬の様な影であるのが視えた。そして澄子が影朧を匿っている理由、それは或る小説に影響されてのことだという」
 その小説は、櫻居・四狼というサクラミラージュの人気作家が書いた、或る短編小説。
 櫻居・四狼は、サクラミラージュに彗星の如き現れた作家で。
 作品の独特な世界観は勿論、整ったその容姿も相まり、たちまち人気作家となって。
 そして急に姿を消したというミステリアスさが、今でも熱烈な信者の心を掴んで離さないのだというが。
 澄子も、彼の小説のファンであるようだ。
「櫻居・四狼の代表作である短編集『桜ノ匣庭』に収録されている、『紅葉行灯』という短編小説がその該当小説なのだが。簡単なあらすじは、心中に失敗し一人生き残ってしまった男が、紅のいろをした神社『紅の社』に幾度も願いを馳せ、その願いが通じ、大蛇の姿と化した妻の怨霊に命を奪われる……というものだが。澄子は熱狂的に支持している作家が書いた短編小説の内容と自分の境遇を、どうやら重ねてしまっているようだ」
 澄子は、事業に失敗した夫と心中をし、自分だけ生き残ってしまった過去があるのだという。
 そんな時に、大好きな小説の『紅の社』にそっくりなこの神社を見つけ、さらにそこでこの犬の影朧と遭遇したようだ。
 小説の中で妻の怨霊が姿を変えたのは大蛇であったが、澄子の夫の干支が戌であったため、犬の影朧を夫の魂の化身だと思い込んでしまい、彼女は何処かにこの犬の影朧を匿っているのだという。
「勿論、この犬の影朧は、澄子の夫の怨霊などではない。物言わぬこの犬の影も、影朧となった理由があるのかもしれないが。今は澄子に危害を加えていなくても、今後はどうか分からない。しかし影朧は不安定な存在故に、やり方次第では転生も可能だ。この犬の影朧に関しても、神社の人や参拝者に訊いてみれば、何かわかるかもしれない。神社を探索し、影朧を見つけ出して、対処してほしい」
 清史郎はそう言った後、掌に桜を咲かせながら、青混じる赤の瞳を細めて。
「影朧の対処は勿論だが。よければ、今の季節にしか見る事のできない紅の景色も楽しんできてくれ」
 満開桜のグリモアが、猟兵達を秋の彩りに染まる世界へと導く。


志稲愛海
 志稲愛海です。
 よろしくお願いします!

 ※ご連絡※ 第1章のプレイングは、11/30(日)朝8:31より受付開始します。
 それ以前に送信のものは流れる可能性があります。

 今回のシナリオの時間帯は夜、内容は以下となっております。

 第1章:夜汽車に揺られて(日常)
 第2章:桜舞う幻朧神社(冒険)
 第3章:その場から動かない影(ボス戦)

 第1章は、紅葉のトンネルを行く夜汽車の旅をお楽しみいただける日常を。
 第2章は、神社の紅葉を眺めつつ足湯や茶屋や願掛け等を楽しみながら探索を。
 第3章は、心情寄りのボス戦です。
 POW/SPD/WIZは参考程度に遊んでいただいてOKです!

 第1章では、紅葉トンネル抜ける夜汽車で、景色を観たりお弁当食べたりできます。
 澄子も同じ列車に乗っていますが、同乗していれば何らかの情報は入りますので。
 ライトアップされた紅葉を眺めながらの展望夜汽車のひとときを、ご自由楽しんでいただいて構いません。

 第2章では、紅葉のトンネルを潜り、両脇に行灯燈る長い長い石段を上って神社へ。
 願掛けの炎を社に捧げたり、足湯や茶屋で一服等を楽しんだりできる内容です。
 茶屋では定番の和菓子やお茶、そして秋限定の栗抹茶大福が食べられます。
 持参したものをベンチで摘まんだり、神社の猫と紅葉の景色の中戯れたりも。

 公序良俗に反する事、他の人への迷惑行為、未成年の飲酒は厳禁です。
 第2章第3章の詳細は、前章の結果を受け、追加OPを記載します。
 締切等はMS個別ページやTwitterでお知らせします。

●お願い
 同行者がいる場合は【相手の名前(呼称可)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入お願いします。
 ご記入ない場合、相手と離れてしまうかもしれませんのでお忘れなく。

 グループ参加の人数制限はありません、お一人様~何人ででもどうぞ!
 ですが複数人の場合は失効日の関係上、同行者と送信タイミングが離れすぎていたり、ご指定の同行者が参加していない場合は返金となる可能性もあります。

 可能な限り皆様書かせていただきたく思っています。
 どうぞお気軽にご参加ください!
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第1章 日常 『夜汽車に揺られて』

POW   :    食堂車で過ごす

SPD   :    座席車で過ごす

WIZ   :    展望車で過ごす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※ご連絡※
 マスターコメントに記載の曜日を誤って表記してしまいました。
 正しい受付開始は、11/30(土)朝8:31からです。よろしくお願いいたします。
ジャスパー・ドゥルジー
【狼鬼】
「どうって?」
相槌打ちながら景色を楽しむ
紅葉を見るのは初めてだ
俺が住んでいた国(アリラビ)にゃ無かったからな
ザザの国には紅葉ってあった?
すげえ鮮やかな色だし、葉っぱの形もつくりものみてえだ

澄子に声を掛けようと思ったらレオンの奴に先越されてたらしい
ちゃっかりしてるぜ
苦笑しながらも何気なさを装い席を立つ

俺らこの辺に観光にくるのはじめてなんスよ
お姉さん、ひとりだし旅慣れてそうだ
どっかお勧めってありますかね?

「犬」はいるかな
いたらそれとなく褒めたりして出会った切欠を探る

「死人にゃそれこそ興味がねえよ」
口では言うものの
――魅了された者を死に誘う芸術
四狼とかいうヤツの方が
影朧より余程怪奇じみてるぜ


ザザ・クライスト
【狼鬼】

「"また"匣庭絡みとはなァ、因縁を感じるぜ」

車内は禁煙か、仕方ねェな
足元には猟犬レオンハルトが静かにしている
動物の持ち込みが予想外に厳しいのは参ったぜ
"紅葉行灯"を読み耽ることしばし、

「ジャスパー、オマエさんはどう思う?」

問うオレ様を見つめる視線はレオンの奴だ
ゆるく尻尾を振り上機嫌な様子

「澄子は美人だった? さっきいないと思ったらオマエなァ……」

"犬"が関係してるならと連れてきたが間違いだっカモしれねェ

「メシにしようぜ。駅弁あるンだろ」

舌鼓を打ちながら、

「さっきの話な、櫻居・四狼のコトた」

彗星のように現れて突如として消えた
あるいは"彼も"影朧に惹かれたか
真実は闇の、イヤ、櫻の下かもな



 降り立った世界はいつも、一面桜色に染まっているはずなのに。
 今、眼前の景色を侵食するそのいろは、眩暈がするほどひたすらの紅。
 そんな流れゆく紅の夜景の鑑賞もそこそこに。
「"また"匣庭絡みとはなァ、因縁を感じるぜ」
 ザザ・クライスト(人狼騎士第六席・f07677)はそう呟くも。
 その様子は、どこか手持無沙汰な様子だ。
 そう、今いるのは展望夜汽車の中……車内は禁煙である。
 そして、仕方ねェな、と行先を探していたザザの手がくしゃりと撫でたのは、足元で静かにしている猟犬の頭。
「動物の持ち込みが予想外に厳しいのは参ったぜ」
 展望夜汽車に乗るまでも、実は一苦労あり。
 猟兵に支給されている「サアビスチケット」を見せて、何とか連れてきたレオンハルト共々乗車できたのであるが。
 ジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)は、よかったなあレオン、と大人しくしているレオンハルトを見た後。
「それこそ煙草吸ったらあんたの方が追い出されるんじゃねえの?」
 手持無沙汰な同行者の様子にニヤニヤと笑んでは、彼の言葉に相槌を打つ。
 そして再び展望夜汽車の大きな車窓へと視線を遣れば――紫とピンクが混ざる瞳に灯る、炎の様な彩り。
「紅葉を見るのは初めてだ。俺が住んでいた国にゃ無かったからな」
 炎は身近なもののはずなのに、今眼前に燃え上がる炎の如きこのいろは、ジャスパーにとってとても新鮮で。
「ザザの国には紅葉ってあった?」
 彼が居た世界、アリスラビリンスには無かった景色。
 流れゆく風景を興味深そうに、何気に赤の尻尾をぴょこりと見つめていたジャスパーだが。
 ――すげえ鮮やかな色だし、葉っぱの形もつくりものみてえだ。
 夜の闇に燃える紅葉をひらりと躍らせた不思議な色が綯い混じる瞳を細める。
 けれど、すっかり車窓の外の景色に夢中なジャスパーとは少し違って。
 ザザの視線は、煙草のかわりに手を伸ばした一冊の小説に落とされていた。
 それは、以前も読んだことがある、櫻居・四狼著の短編小説集『桜ノ匣庭』。
 その中でも、今回の依頼に関連しているという『紅葉行灯』の小説を暫し読み耽っていたザザは、ふと顔を上げて。
「ジャスパー、オマエさんはどう思う?」
 そう、訊ねてみれば。
 炎の様な紅葉を映していた両の目が、ザザの方へと向くけれど。
「どうって?」
 耳に響く彼の声を後目に、もうひとつ自分を見つめている視線に気付いたザザは足元を見遣った後。
 今度は、ゆるりと尻尾を振っている上機嫌なレオンへと、こう訊ねる。
「澄子は美人だった? さっきいないと思ったらオマエなァ……」
 ……"犬"が関係してるならと連れてきたが間違いだっカモしれねェ。
 タッタッと主人の足元から離れ、若き未亡人の元へと向かったレオンハルトを追いながら、ザザはひとつ溜息を。
「レオンの奴、ちゃっかりしてるぜ」
 レオンハルトが尻尾を振る若き未亡人――澄子に声を掛けようと思っていたジャスパーも、先を越されて苦笑しつつ。
 何気なさを装い、席を立って、彼女の元へと。
「この子、貴方達のワンちゃんですか?」
 澄子はレオンハルトを撫でてあげながらも、そうふたりを見上げて。
「俺らこの辺に観光にくるのはじめてなんスよ。お姉さん、ひとりだし旅慣れてそうだ。どっかお勧めってありますかね?」
 すかさずそう訊いたジャスパーに、迷うことなく答える。
「やっぱり、終着駅を降りてすぐの神社ね。貴方達も行くんでしょう? 石段の上の足湯は、とても気持ちいいわ」
 けれどその後、どこか陰りのある表情で、澄子は続ける。
 あとは――願いの炎を灯す、紅の社、かしら、と。
 私もそこに参るのと、垣間見える影をを誤魔化すように笑んでから。
 澄子はレオンハルトに、じゃあね、と手を振る。
 そんな彼女の周囲に「犬」はいるかと、見回してみるけれど。この夜汽車には乗ってはいないようだ。
 そして怪しまれない程度に彼女と会話を交わした後、もうひとつのお楽しみを。
「メシにしようぜ。駅弁あるンだろ」
 ザザがジャスパーに手渡し広げるのは、『秋の幕の内弁当』。
 タコさんウインナーや星型ポテトこそ入ってはいないが、美味な秋の味覚がぎっしり詰まった大人の弁当だ。
 そんな幕の内弁当に舌鼓を打ちながら、ザザは改めて、真っ先にミートボールを頬張るジャスパーへと話を振ってみる。
「さっきの話な、櫻居・四狼のコトだ」
 櫻居・四狼――以前ふたりが関わった事件も、彼の作家の小説が関与していた。
 彗星のように現れて突如として消えたそのミステリアスな存在は、小説の独特な世界観と相まって信者が多いのだというけれど。
(「あるいは"彼も"影朧に惹かれたか」)
 ザザはレオンハルトにもお裾分けしてあげながらも、この世界では珍しい紅の景色に目を遣り、ふと呟く。
 ――真実は闇の、イヤ、櫻の下かもな……って。
 そんな思考を巡らせるザザをちらりと見てから。
「死人にゃそれこそ興味がねえよ」
 はむりとミートボールを味わいながらも、そう口では言うジャスパーだけれど。
 ――魅了された者を死に誘う芸術。
(「四狼とかいうヤツの方が、影朧より余程怪奇じみてるぜ」)
 ザザの視線や思考を追うように、もう一度。
 秋の夜に燃える炎の如き紅のいろを、その瞳に灯した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・還
アメーラ(f02594)と二人きりでこういう風に旅行すんのは初だよねぇ。ふふ、嬉しいなぁ
アメーラの前だとホント、俺は尻尾振るのを抑えるのが出来ねえや

列車内の展望席に二人で座って、回ってきた売り子から弁当を買って紅葉を眺めながら楽しもう。あ、お酒あるよアメーラ、飲む?俺はお酒あんまり強くないし、少しだけアメーラの頂戴。酔っ払っちゃったらこの後も楽しめないしね

いやぁ、しかし絶景かな。梅雨に璃瑠とアジサイ祭りに行ったんだけどさ、そういうのもアメーラと今度行きたいと思ってんだ。今まで見てきた景色をアメーラにも見せたい、一緒に見たい…って最近よく思うよ

仕事(戦い)前にアメーラ充填できるの良いわぁ、幸せ。


アメーラ・ソロモン
アドリブ大歓迎
還(f02594)と二人きりでの初旅行…顔が緩んで仕方ないや
ふふ、グリモアでの移動とは全然違って心踊るものだねぇ

秋の味覚に舌鼓をうちながら夜紅葉を眺める…なんて贅沢なんだろうね
あ、珈琲は魔法瓶で持参したよ!還好みの私特製珈琲、やっぱり外せないだろう?
私はちびちび日本酒をいただこうかな。還も一口どうだい?

知識ばかりで頭でっかちだった私の世界を広げてくれるのはいつだって還だ。今も、これからも、私は君と一緒にたくさんの時間を過ごしたい
いつもなら書に記すのに夢中になるものだけど…今はこの景色と、還との時間を堪能したいかな、なんて
還と指を絡めてぎゅっと握る。ふふふ、最高に幸せだなぁ…私たち



 眼前に広がるのは、共に楽しく過ごした海の青とはまた全く違った、燃える様な紅のいろ。
「アメーラと二人きりでこういう風に旅行すんのは初だよねぇ。ふふ、嬉しいなぁ」
 巡ってきた秋も一緒に――それだけで、つい笑みが顔に宿ってしまうし。
 ましてや、彼女を前にして、尻尾を振るのを抑えることなんて出来やしない。
 そんな、終夜・還(終の狼・f02594)を見つめるアメーラ・ソロモン(数多の魂を宿す者・f03728)も勿論、彼と同じで。
「ふふ、グリモアでの移動とは全然違って心踊るものだねぇ」
 夜の闇に燃え上がる秋の景色を彼と一緒に眺め、夜汽車の旅を存分に楽しみながらも。
(「還と二人きりでの初旅行……顔が緩んで仕方ないや」)
 紅葉の様に仄かに色づいた頬へと、そっと掌を当てる。
 ふたりが並んで座るのは、列車内の展望席。
 大きな車窓に流れゆく、燃える様な紅の景色をふたり占めして。
 ふと還が呼び止めたのは、回ってきた売り子。
 勿論、二人分購入するのは、『秋の幕の内弁当』。
 ぱかりとわくわく開けてみれば……そこにも、美味しそうな秋の彩りが。
「秋の味覚に舌鼓をうちながら夜紅葉を眺める……なんて贅沢なんだろうね」
 けれど、いつものこれも、アメーラは忘れていません。
「あ、珈琲は魔法瓶で持参したよ! 還好みの私特製珈琲、やっぱり外せないだろう?」
 美味しいお弁当に、好みの特選珈琲。そして何より、隣にいる大切な人。
 確かにどれも、還にとって外せません。
 そんなアメーラ特製珈琲を味わいながらも、ふと還が見つけたのは。
「あ、お酒あるよアメーラ、飲む?」
 これまた汽車の旅行の楽しみでもある、美味しそうな地酒各種が。
「私はちびちび日本酒をいただこうかな。還も一口どうだい?」
「俺はお酒あんまり強くないし、少しだけアメーラの頂戴」
 ……酔っ払っちゃったらこの後も楽しめないしね、と。
 還はアメーラご所望の日本酒を、ひとり分だけ追加で購入してから。
 ほんの少しだけ、お裾分けして貰う。
 そんなちょっぴりお酒が入ってふわふわ、ますます気分も良くなって。
「いやぁ、しかし絶景かな。梅雨に璃瑠とアジサイ祭りに行ったんだけどさ、そういうのもアメーラと今度行きたいと思ってんだ」
 還は、秋の夜を染め上げる見事な紅のいろを改めて眺める。
 眼前に広がり流れてゆくのは、季節の彩り。
 それは、いつでも見られるわけではない、特別ないろだから。
「今まで見てきた景色をアメーラにも見せたい、一緒に見たい……って最近よく思うよ」
 特別な人と共有したい、って……そう、還は思うし。
(「知識ばかりで頭でっかちだった私の世界を広げてくれるのはいつだって還だ」)
 本から得るものも、とても多いけれど。
 それ以上に、知識だけの世界から、こうやって手を引いて連れ出してくれて。
 もっともっと自分の世界を広げてくれたのは、彼だから。
「今も、これからも、私は君と一緒にたくさんの時間を過ごしたい」
 いつもならば、書に記すことに夢中になるものだけれど。
 ――……今はこの景色と、還との時間を堪能したいかな、なんて。
 絡め合い、ぎゅっと握り合った指と掌から伝わる彼の温もりに、アメーラは紅葉踊る金の瞳をそっと細めて。
「ふふふ、最高に幸せだなぁ……私たち」
「仕事前にアメーラ充填できるの良いわぁ、幸せ」
 還も、すぐ隣で絶景を一緒に堪能する彼女を見つめながら、しみじみと呟く。
 初めての二人きりの夜汽車の旅――それはまるで、目の前の景色みたいに染まってゆく。
 ふたりだけの、特別な幸せのいろに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
【有ちゃん/f00133】

汽車なんて初めて乗るよ
しかし浮き足立つっていうよりも
どっぷり浸かりたくなるような雰囲気だねぇ

展望車に陣取って
飲むかい?
缶ビールを2本、懐から出し
有ちゃんに1本
夜に綺麗な景色を楽しむんなら、コレがなきゃ始まんないでしょ
ちょっと温いかもしんないけど勘弁してよ

軽く乾杯したら車窓に目をやる
件の未亡人について考える
死んだいい人を他の何かに重ねて愛おしむ…ねぇ
分からなくもないけど、僕は本物じゃなきゃ収まらないな
代わりは代わりだもの
あくまで代わりでいいってんなら別だけどさ
君もそう思う?ふふ

…クク、夜のせいか紅葉のせいか
どうも湿っぽくなっていけないや


今の話、本人に聞かれてたりして


芥辺・有
【ロカジ/f04128】

電車はいくらか乗ったことあるけど
ふうん。こういうもんなのか、汽車って
展望車の中をぐるりと軽く見渡して

差し出された缶ビールに手を伸ばす
ん、貰うよ。折角だし
飲めたら文句は言わないさ
乾杯したら缶を開けて一口
車窓から見えるライトアップされた景色に目をやる
余計に真っ赤だね。……火事みたい

汽車のどこかに未亡人とやらがいるんだろうけど
感傷的なことにゃ興味ないし
目的地に着くまでは適当に温い酒でも味わってよう

例の女、化身なんて、……生まれかわりとか信じてんのかね
匿う理由だの、願いなんぞしらないけど
死んだ奴は、死んだ奴だろうに
自分が知ってる、死ぬ前のそいつが戻るべくもない



 この世界では珍しい、燃える様な紅の風景。
「汽車なんて初めて乗るよ。しかし浮き足立つっていうよりも、どっぷり浸かりたくなるような雰囲気だねぇ」
 初めての夜記者に興味津々、心躍りながらも。
 でも今は静かに眼前の景色を眺めたいと思う、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)。
 そして、夜の漆黒に紅落ちるそのいろはどこか、目の前のけだるげな彼女のものに似ている気もする。
 そんな彼の声に、ぐるりと軽く周囲を見回して。
「ふうん。こういうもんなのか、汽車って」
 ……電車はいくらか乗ったことあるけど、と。
 展望車の中を一通り眺めてみる、芥辺・有(ストレイキャット・f00133)。
 そんな有と、大きな窓の展望車に陣取って。
「飲むかい?」
 ロカジがふと懐から取り出したのは、2本の缶ビール。
「夜に綺麗な景色を楽しむんなら、コレがなきゃ始まんないでしょ」
「ん、貰うよ。折角だし」
 そう伸ばされた色白の手に、缶ビールのお裾分けを手渡しつつも。
「ちょっと温いかもしんないけど勘弁してよ」
「飲めたら文句は言わないさ」
 かつん、と缶と缶を合わせて――乾杯を。
 それから、ぷしゅりとプルトップを開けてひとくち飲めば。
 ぬるいビール特有の苦みを感じるけれど、でもそれも、こんな夜には悪くはない。
 がたごと進む夜汽車の車窓を流れてゆく紅。
 アルコールを摂取しながら、有は金の瞳にも、そんな燃える様ないろを映して。
 ふと車窓の照明が落ち、ライトアップされてより浮かび上がる車窓の外の風景を眺め、呟く。
「余計に真っ赤だね。……火事みたい」
 そんな、火事の様な真っ赤な色に染まる車内にいるのは、ロカジや有たち猟兵だけではない。
 ロカジは夜の闇に踊る車窓の景色を眺めながら、ふと考える。
 影朧を匿っているという、未亡人について。
 その未亡人――澄子も、この汽車のどこかに乗っているのだというが。
(「感傷的なことにゃ興味ないし」)
 ……目的地に着くまでは適当に温い酒でも味わってよう。
 有はそう、もうひとくちビールを口に運ぶけれど。
「死んだいい人を他の何かに重ねて愛おしむ……ねぇ。分からなくもないけど、僕は本物じゃなきゃ収まらないな」
 ――代わりは代わりだもの。あくまで代わりでいいってんなら別だけどさ。
 聞こえたそんなロカジの声に、黒髪を揺らし小さく首を傾けてから。
「例の女、化身なんて、……生まれかわりとか信じてんのかね」
 相変わらず興味はなさそうではありつつも、有はこう続けるのだった。
「匿う理由だの、願いなんぞしらないけど。死んだ奴は、死んだ奴だろうに」
 ――自分が知ってる、死ぬ前のそいつが戻るべくもない。
 そう返ってきた彼女の言葉に、ロカジは青の瞳を細めて。
「君もそう思う? ふふ」
 再び、ひたすら紅に染まっている秋の色を眺めながら、ぐびりとぬるいビールを口にしつつ。
「……クク、夜のせいか紅葉のせいか。どうも湿っぽくなっていけないや」
 言葉とは裏腹に、そうどこか楽し気に笑んでから。
 ちらりと振り返り、続けるのだった。
 ――あ。今の話、本人に聞かれてたりして……って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

草野・千秋
サクラミラージュの世界にも
紅葉の世界は広がっていたのですね
700年も続いた大正でもやはりここは日本です
しかも夜汽車もあるだんてロマンチックですね

今しか見られない儚い景色
秋の終わり、もうすぐ来る冬は死の季節
この紅葉はそれを感じさせます
展望列車をメインの位置にしつつ
澄子さんの様子を窺いつつも
色々見て回り情報収集します
足繁く通っているという神社に願掛けですか
澄子さんはこの社に何を願っているのでしょうか
……あまり明るくないことなのでしょうか
心中して一人生き残るだなんて
あまりに悲しいですよ、胸が潰れる思いです、僕も

紅葉に見とれつつも心は揺らぐ
この枯葉も死に向かっているのだと思いながら



 降り立ったこの世界は、年中桜が咲いているから。
 何だか、眼前に燃える紅だけの景色はとても不思議な気がして。
「サクラミラージュの世界にも、紅葉の世界は広がっていたのですね」
 それと同時に、700年も続いた大正でもやはりここは日本です、と。
 そう改めて認識する、草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)。
 桜の風景も、今目の前に広がっている紅葉の風景も、美しい日本の四季のいろを帯びているけれど。
「しかも夜汽車もあるだなんてロマンチックですね」
 今、その景色を草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)が眺めているのは、紅の世界を走り抜ける展望夜汽車の中。
 眼前に広がるのは、今しか見られない儚い景色。
 ……そして。
(「秋の終わり、もうすぐ来る冬は死の季節。この紅葉はそれを感じさせます」)
 こんなにも秋の紅葉が鮮やかに燃えるようないろをしているのは、その所為かもしれない。
 そんなことを考えつつ、千秋のペリドットの瞳がそっと捉えたのは、ひとりの女性の姿。
 展望列車をメインの位置に、俯き加減で座っている澄子の様子を窺い、周囲も色々と見て回って。
 景色を楽しみながらも、情報収集も抜かりなく行ないつつ千秋は思う。
(「足繁く通っているという神社に願掛けですか。澄子さんはこの社に何を願っているのでしょうか」)
 ……あまり明るくないことなのでしょうか、と。
 見つめる視線の先の澄子の表情から、そうどうしても考えてしまう。
 それは彼女の表情もだけど、聞いた彼女の生い立ちから感じるのかもしれない。
(「心中して一人生き残るだなんて。あまりに悲しいですよ、胸が潰れる思いです、僕も」)
 燃える様に景色を支配する、鮮烈な紅のいろ。
 けれども、そんな紅葉に見とれつつも、千秋の心は揺らいでしまうのだ。
 この枯葉も死に向かっているのだと――そう、思いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
綾くん(f01194)と

列車の旅は生まれてより初めてのこと
そわりそわりと尾が躍るのも仕方ない
視線を感じ、笑いかけ
綾くん、楽しいの!

夜風は寒いがちょっとくらい窓あけるのもよかろうよ
そうじゃね、桜のイメージも強いが紅葉は秋の色じゃから今はよう見る
わしはどの季節も楽しいから好きじゃな、選べん
綾くんは春か。じゃあ春に、どっかまた遊びにいこ

弁当もよいな。わしは秋の幕の内にしよ
いろいろはいっとる~
じゃあ遠慮なく一口もらお
綾くんも好きなの選んでええよ、しかし一個しかないカキフライ以外じゃよ
ここは譲れん

と、腹を満たしたらやりたいことがあるんじゃ
綾くん、付き合ってくれるじゃろ――列車探検
では初めに、先頭車へいざ


浮世・綾華
嵐吾さん(f05366)と

内心わくわくしつつ嵐吾さんはと様子を伺う
揺れる尻尾にくすり
そうですネ

この世界って桜が印象深かったケド
すげー、紅葉もこんなきれーなんだ
嵐吾さん、好きな季節ってありマス?
…楽しい。確かに、嵐吾さんと一緒だと何処でも楽しいしなと考えつつ

俺は季節っつか
花が好きだから、春…とか?
やった、花見しましょ

折角だし、弁当もなんか貰ってきましょーか
選んだのは紅葉のちらし寿司
おー、見事な紅葉
あ、嵐吾さんのもうまそー
良けりゃ一口ドーゾ

ふは、大丈夫。取りませんよ
えっとじゃあ(ふたつあるし)卵焼き、いただきまぁす

意外と子供っぽい彼に笑って
はーい、お付き合いしまーす
俺、運転してるとこ気になる



 ガタンゴトンと、この世界には珍しい紅一色の景色を走る夜汽車。
 そんな列車の旅は、ただでさえ心躍るというのに。
 それが生まれて初めてのものであれば……終夜・嵐吾(灰青・f05366)の灰青の尻尾が、そわりそわりと踊るのも仕方のないこと。
 内心わくわくしつつも、嵐吾の様子を窺っていた浮世・綾華(千日紅・f01194)は、揺れるそんなふわふわの尻尾に気が付いて。
 思わず紅葉のいろのような瞳を細め、くすりと笑み零す。
 そして視線を感じたのか、嵐吾がふと振り返れば。
「綾くん、楽しいの!」
「そうですネ」
 ぱちりと目が合い笑いかけ、そして楽し気に笑み返し合う。
「夜風は寒いがちょっとくらい窓あけるのもよかろうよ」
「この世界って桜が印象深かったケド。すげー、紅葉もこんなきれーなんだ」
 少しだけ開けた窓から、ひやりとした夜風が吹き抜けて。
 ひとひら、ふたひら、車内に舞い降るのは、迷い込んできた紅葉たち。
「そうじゃね、桜のイメージも強いが紅葉は秋の色じゃから今はよう見る」
 そんな小さな炎の如き秋のいろを、嵐吾は広げた掌の上に乗せて。
 まるでその手に炎を灯しているかのような彼に、綾華は訊ねてみる。
「嵐吾さん、好きな季節ってありマス?」
 嵐吾はその問いに、ぴこりと耳を揺らしながら首を傾けて。
「わしはどの季節も楽しいから好きじゃな、選べん」
 うーん、と考えつつも返ってきたその言葉に、綾華は納得する。
 ――楽しい。確かに、嵐吾さんと一緒だと何処でも楽しいしな……って。
 そして、綾華の好きな季節はというと。
「俺は季節っつか、花が好きだから、春……とか?」
「綾くんは春か。じゃあ春に、どっかまた遊びにいこ」
「やった、花見しましょ」
 咲き誇る花々も綺麗だし――それにやっぱり、一緒だときっと楽しいだろうから。
 そんな春もまた、待ち遠しい。
 それに、季節の景色も勿論なのだけど。
「折角だし、弁当もなんか貰ってきましょーか」
「弁当もよいな。わしは秋の幕の内にしよ」
 美味しい秋の味覚も、ばっちり楽しみます。
 嵐吾は秋の幕の内弁当を、綾華は紅葉のちらし寿司を、ぱかりとそれぞれ開けてみれば。
「いろいろはいっとる~」
「おー、見事な紅葉」
 いっぱいぎゅうっと詰まった、美味しそうな秋の彩りが。
「あ、嵐吾さんのもうまそー。良けりゃ一口ドーゾ」
「じゃあ遠慮なく一口もらお」
 お言葉に甘え、綾華のちらし寿司を一口分掬って、ぱくりとお裾分けして貰った後。
 綾くんも好きなの選んでええよと、嵐吾も幕の内弁当を差し出すけれども。
「しかし一個しかないカキフライ以外じゃよ」
 ――ここは譲れん。
 何気に大事に残していたカキフライだけは、1個しかないので、ちょっとあげられません!
 そんな嵐吾の声に、綾華は一瞬、瞳をぱちくりとさせた後。
「ふは、大丈夫。取りませんよ。えっとじゃあ卵焼き、いただきまぁす」
 卵焼きならふたつあるので、大丈夫!
「ん、卵焼き、出汁がきいたオトナの味で美味しー」
「次はどれ行くか……迷うの。やはりカキフライは最後じゃろ!」
 カキフライでトリを飾った幕の内弁当も、お裾分けして貰った卵焼きも、紅葉のちらし寿司も。
 全部美味しくいただいた、その後は。
「腹を満たしたらやりたいことがあるんじゃ」
 ……綾くん、付き合ってくれるじゃろ――列車探検。
 そんな意外と子供っぽい嵐吾のお誘いに、頷きつつも笑って。
「はーい、お付き合いしまーす」
「では初めに、先頭車へいざ」
「俺、運転してるとこ気になる」
 秋の紅に染められた、夜汽車の探検に出発!
 やっぱり、楽しくてわくわくする――そんな秋のひとときを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋翠・華乃音
マリス・ステラ(f03202)と共に


瞳が見つめていたのは車窓の向こう、紅葉に染まる世界。
隣に座る彼女に声を掛けられ、その意識を紅葉の世界から星の彼女へ移した。

"瞳"とは、この身に発現している異能のこと。
事象視と呼ばれるそれは認識可能な全てを"視る"
それでもきっと、幾億を優に超える星の中からたった一つを見付けるなんて出来はしない。

繋がれた手。
彼女の暖かさが冷たい手にゆっくりと伝播する。

「だったら、俺が君を――」
きっと護るから、安心して。

そう、言いたかったけれど、
言葉が最後まで紡がれる事は無かった。

人倫も道徳も歯牙にも掛けないうつくしい化物。
人殺しすら厭わないそんな化物に、誰かを護る資格など――


マリス・ステラ
緋翠(f03169)の側に

「話しておくことがあります」

夜汽車に揺られながら話を切り出す

「私の守護星ミラは変光星と呼ばれています」

その明るさが変化する星のことです
天文学では等級として表すそれは極大時で2等級
北極星ポラリスと同等です

「しかし……」

私は祈りを捧げる
灯る光は儚げで余りに弱々しい

「極小時は10等級、あなたの"瞳"でも視えないでしょう」

それは私の"力"に関係します
たとえば月の満ち欠けが左右するようなもの

「群れで現れるオブリビオン、その一体でも、今の私の手には余るでしょう」

緋翠と手を繋ぐ
彼のひんやりとした"ぬくもり"を感じながら、その肩に頭を預ける

「少しだけ……」

夜汽車はまるで揺り籠のように



 見つめる先に流れゆく世界は、燃え上がる様な紅一色。
 夜の闇に浮かぶそのいろが、静謐たる瑠璃の瞳にも灯り、舞い踊っていたけれど。
「話しておくことがあります」
 緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)の意識を紅葉の世界から引き戻したのは、星の転がる魅力的な声。
 燃える様な紅葉から、華乃音が隣に座る星の彼女へと視線を映せば。
 夜汽車に揺られながら、マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は、こう話を切り出す。
「私の守護星ミラは変光星と呼ばれています」
 変光星――それは読んで字の如く、その明るさが変化する星のこと。
 天文学で等級として表せば、それは極大時で2等級の輝きを誇り、それは現在天頂に在る北極星ポラリスと同等であるという。
「しかし……」
 そうスッと星宿る瞳を閉じ、両の手を重ね合わせて。
 マリスがいつもの如く、祈りを捧げるけれど――その灯る光は、儚げで余りに弱々しい。
「極小時は10等級、あなたの"瞳"でも視えないでしょう」
 "瞳"、それは華乃音の身に発現している異能。
 認識可能な全てを"視る"ことのできる、事象視と呼ばれるもの。
 でも、それをもってしてもきっと……満天に数多存在する、幾億を優に超える星の輝きの中から。
 たった一つを見付けるなんて――出来はしない。
 そんな緋翠の手を取って繋げば、まるで秋の夜風の様にひんやりとした感触。
 けれどその感触はすぐに、じわりと染み渡る"ぬくもり"に変わって。
 その温かさを感じながら、そっとマリスはその肩に、頭を預ける。
 変光星である守護星ミラ――その輝きに影響を及ぼすもの、それが何かは言わずもがな。
「それは私の"力"に関係します」
 ……たとえば月の満ち欠けが左右するようなもの、なのだという。
 だから先程の様に、弱々しい光しか発することができない、その時は。
「群れで現れるオブリビオン、その一体でも、今の私の手には余るでしょう」
 そう告げたマリスが握る手から、ゆっくりと伝わる温かさ。
 繋いだ当初は、その手の温度は違っていたけれど。
 じわり染みるようなその温もりは混ざり合い、いつしかひとつになる。
 そんな感覚を覚えながら、抱くその想いを紡がんとする華乃音。
「だったら、俺が君を――」
 ……きっと護るから、安心して。
 そう、言いたかったけれど。でも……その言の葉が最後まで紡がれる事は、無くて。
(「人倫も道徳も歯牙にも掛けないうつくしい化物。人殺しすら厭わないそんな化物に、誰かを護る資格など――」)
 ひとつになった手と手の温もりと、肩から感じる彼女の体温。
 それを護る資格なんて……口にすることなんて、華乃音にはできなかったけれど。
「少しだけ……」
 そっと頭を預けたまま、マリスから零れ落ちるのは星の声。
 その輝きは不安定かもしれないけれど……今、此処に在ることは確かだから。
 まるで揺り籠のように――ガタンゴトンと揺れながら、ふたりを乗せた夜汽車は紅に燃える世界を走り抜ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
せっかくだから女学生姿(今のBU)で他の人に交じって夜汽車に乗ってみるわね。
鞄もって本でも読みながら、それとなく澄子さんのそばの席を確保。

紅葉のトンネルを通る時は本から視線をあげて紅の世界を満喫させてもらうわね。
「綺麗…ね」
と呟いてはっと周囲に聞かれていないか少しあたふた。
そういうの私のキャラじゃないから。

もちろんお仕事も忘れないわよ。
澄子さんの様子…特に独り言とかを聞き逃さない。
物想う人はね、思わず言葉にしてしまうことがあるのよ。



 紅葉のトンネルを潜って走る、展望夜汽車。
 そんな風情溢れた旅の雰囲気にぴったりな、女学生の姿が。
 いや、折角だからと女学生の格好で夜記者に乗り込んだのは、ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)。
 ヴィオレッタはきょろりと車内を色の違った両の瞳で見回してから。
 すとんと席に座り、持っていた鞄から一冊の本を取り出して視線を落とす。
 勿論選んだのは、ただ空いていた席ではなく……それとなく確保したのは、澄子の傍の席。
 そして彼女の様子をさり気なく窺いながら、暫し読書に耽るも。
 ヴィオレッタはふと、読んでいた本から視線を上げる。
 同時に、車内の照明が落ち、車窓に燃える紅がより一層鮮やかに浮かび上がれば。
「綺麗……ね」
 ライトアップされた紅の世界を満喫するように眺めていた彼女の口から、思わずそう言の葉が零れ落ちる。
 けれどすぐに、ハッとした表情を宿して。
 周囲に聞かれていないか、少しあたふたしながらも、そっときょろきょろ。
 ……そういうの私のキャラじゃないから、と。
 でも、この夜記者に乗り込んだ目的は、猟兵としての仕事を成す為だから。
(「もちろんお仕事も忘れないわよ」)
 鮮烈な紅の世界に視線を向けている彼女へと、意識を集中させれば。
「私も……早く、早く……そっちに連れて行って……」
 ぽつりと耳に聞こえる、澄子のか細い声。
 それは、ヴィオレッタの思った通り。
(「物想う人はね、思わず言葉にしてしまうことがあるのよ」)
 特に、こんなに心揺さぶられる景色を眼前にしたら――尚更のこと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
一面の櫻も、紅葉も。
異なる、けれどいずれも優劣など無き、優美な紅。
只でさえひとの心を、魂を絡め取ってしまいそうな彩ですのに。

仕事、かつ一人。何とも味気無いのは置きまして!
澄子と同車両、2〜3席程離れた、反対側に座し。
窓に映る様子を視、誰かとの会話に耳を峙て、
匿う宛、心への取っ掛かり等を探りつつ。

窓の外を満たす紅葉。
いつか、潜む様に構えた居も、
この季節の山は燃える様で、水は括り染められて…
それに『好き』と言った、誰かの声。
…すっかり忘却の彼方だった、瑣末な記憶。
何で今更?

…しかしまた『桜ノ匣庭』ですか。
かの作者殿も、まるで紅の様。
随分と、悲劇に拘られ…
ひとの心を搦め取る事に長けていらっしゃる様だ



 この世界をいつも彩っているのは、ひらりと朧に舞う桜のいろのはずなのだけれど。
 今、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)の眼前に広がるのは、燃える様な秋の紅。
 けれどそんな一面の櫻も、紅葉も。
(「異なる、けれどいずれも優劣など無き、優美な紅。只でさえひとの心を、魂を絡め取ってしまいそうな彩ですのに」)
 ――仕事、かつ一人。何とも味気無いのは置きまして!
 紅葉の景色を走り抜ける展望夜汽車の中、そんなことをつい思いつつ、思わずひとつ息をつくけれど。
 そっと車内を窺った後、いくつか車両を眺め移動したクロトがようやく落ち着いたのは……澄子から2、3席程離れた反対側の席。
 この位置からであれば、自然に且つ明確に彼女の様子が窺えるから。
 そしてさり気なく紅が流れる車窓に映った彼女の表情へと目向け、誰かと交わす会話があれば耳を峙てるクロト。
 その顔に浮かぶいろは、どこか陰のあるもののような気がして。
 恐らく猟兵だろうと思われる人たちに話しかけられるたびに、どこかそわそわ気まずそうで。
 でも、答えられる範囲で受け答えはしている澄子。
 彼女の言の葉や様子から、影朧を匿う宛、心への取っ掛かり等を探るクロトは。
 ぽつりと呟かれた彼女の、こんな独り言を拾う。
「櫻居先生の小説では、男が願掛けした100日目に願いが叶ったけれど……私は……紅の社に隠れているあの人は、一体いつになったら……?」
 紅に染まる秋の彩りの中、そんな澄子の憂いを帯びた響きを宿す声を耳にしながらも。
 不意にクロトの脳裏に蘇るのは……すっかり忘却の彼方だった、瑣末な記憶。
(「窓の外を満たす紅葉。いつか、潜む様に構えた居も、この季節の山は燃える様で、水は括り染められて……」)
 ――それに『好き』と言った、誰かの声。
「……何で今更?」
 自分でも何故今になって思い出したのか、分からないけれど。
 気を取り直し、今回の依頼の予知を改めて思い返してみれば。
「……しかしまた『桜ノ匣庭』ですか」
 その短編集の名は、以前も聞いたもの。
 そしてそれを執筆した、ミステリアスな人気作家。
 事件に関わっている彼の作品は、どこか儚げで刹那的で――そして。
(「かの作者殿も、まるで紅の様。随分と、悲劇に拘られ……」)
 紅の悲劇に、彩られている。
 そう……まるで、眼前に燃える紅葉のいろの様に。
 そんな得体の知れぬ、けれども影響力が大きな作品を次々と残した……櫻居・四狼という作家に、クロトは思う。
 ――ひとの心を搦め取る事に長けていらっしゃる様だ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マレーク・グランシャール
【神竜】篝(f20484)と

櫻居・四狼……覚えているぞ
いつぞや俺と篝が心中を演じた事件の切欠となった小説がそいつの作だ
今度は心中の死に損ないと来たか……
まるで記憶を失った俺のようだ

だからだろうか
篝を膝に乗せるのはいつものことだが、今夜は特に離したくない気分だ
一緒に夜汽車に揺られながら窓の景色を眺め、腹が減ったら持参した握り飯を食うぞ
仲良く大きいのを半分こだな
「はい、あーん」されたら握り飯を食べ、篝にも同じように「はい、あーん」だ
デザートにミカンも持って来たからこれも剝いて食べようか

篝と一緒だといつでも楽しく心が弾む
これから影朧討伐に行くというのに
神社に着いてしまうのが勿体ないくらいだ


照宮・篝
【神竜】まる(f09171)と

しろう…櫻居……ああ!
あの、まると入水した時の、小説の
今回も彼絡みの事件なのか…奇遇な

ともあれ、せっかくの夜汽車だ
まるの膝に乗せられながら、持ってきたおにぎりを共に食べるぞ
まる、口を開けて。あーん…
ふふふっ、美味しいか?
次は私にも欲しいっ
蜜柑も綺麗に剥いてやるぞ
ほら、口を開けて

まる、まる
どうした、そんなに強く抱いて
まるに強く抱き締められるのは、好きだけれど…

列車の音を聞きながら、まるに身を預けて、その心音に答えよう
…私は、まると共にいる
いつまでも、どこまでも
まるの心の、一番深くまで。私が照らして、温めるから。
…愛、している、からな



 燃えるような紅のトンネルを潜り走り抜ける、展望夜汽車。
 その車内で、小さき炎の如き紅葉の彩りを、見つめる紫色の瞳にも降らせながら。
 マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は、聞いた予知の内容を思い出していた。
 予知に聞いた名は、影朧を匿っているという未亡人・澄子と――そして、もうひとり。
「櫻居・四狼……覚えているぞ」
 そう、サクラミラージュの人気作家であるという男のもの。
 その名をマレークが耳にしたのは、今回の依頼が初めてではない。
(「いつぞや俺と篝が心中を演じた事件の切欠となった小説がそいつの作だ」)
 それはほんの1か月程前の出来事、まだ記憶にも新しい。
 その作家の小説の内容を模倣した信者と影朧の事件、そして演じた心中劇。
 けれどまた、彼の作家の作品が、影朧事件と関わっているのだという。
 それは、櫻居・四狼著『桜ノ匣庭』に収録された、『紅葉行灯』という題名の短編小説。
(「今度は心中の死に損ないと来たか……」)
 ――まるで記憶を失った俺のようだ。
 マレークがそう、心に思ったその時。
「まる、まる。どうした、そんなに強く抱いて」
 ……まるに強く抱き締められるのは、好きだけれど、と。
 聞こえるのは、膝の上できょとりと自分を見つめる照宮・篝(水鏡写しの泉照・f20484)の声。
 まるで記憶を失った自分のようだと、そう思ったからだろうか。
 篝を今の様に膝に乗せる事はいつものことだけれど。
 ――今夜は特に離したくない気分だ。
 そう思えば……自然と、篝を抱きしめる腕に力がこもってしまう。
 そんなマレークの腕に抱かれながら、首を傾けていた篝であるが。
 ふと、記憶を手繰り寄せ、舞い降る紅葉でより鮮やかな赤の彩りを帯びた瞳を数度瞬かせる。
「しろう……櫻居……ああ! あの、まると入水した時の、小説の」
 ……今回も彼絡みの事件なのか……奇遇な、と。
 けれどその謎に本格的に迫るのは、神社に到着してから。
(「ともあれ、せっかくの夜汽車だ」)
 そう、篝が取り出したのは――持参したおにぎり。
 同じ夜汽車内にいるという澄子のことも気にかけておきつつも。
 目的地までのひとときを楽しむべく、夜汽車に揺られ紅葉の景色を楽しみながら、腹拵えを。
 でも、持参したおにぎりはちょっぴり、ひとりで食べるには大きいから。
「まる、口を開けて。あーん……」
 仲良くふたりで、半分こ。
 膝の上の篝からあーんされたおにぎりを、ぱくりとマレークは食べた後。
「ふふふっ、美味しいか? 次は私にも欲しいっ」
 そう笑む篝にも同じように、「はい、あーん」を。
 そしておにぎりを仲良く半分ずつ、あーんし合いこして食べてから。
「蜜柑も綺麗に剥いてやるぞ。ほら、口を開けて」
 デザートに持ってきた蜜柑もやっぱり……はい、あーん。
 そんな、一層甘いデザートを味わいつつも、マレークは思う。
(「篝と一緒だといつでも楽しく心が弾む」)
 ……これから影朧討伐に行くというのに、神社に着いてしまうのが勿体ないくらいだ、と。
 それは勿論、篝も同じ。
 この世界には珍しいいろに染まった、紅溢れるトンネルを行く列車の音を聞きながら。
 そっとマレークへとその身を預け、篝は、力強く脈打つその心音に答える。
 ――私は、まると共にいる。いつまでも、どこまでも。
「まるの心の、一番深くまで。私が照らして、温めるから」
 そして彼の心音と体温を全身で感じながら、燃える様な紅の世界で、想いを紡ぐ。
 ……愛、している、からな――って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴夜・鶯
【Lux】
ルーと誘と一緒

夜汽車に乗車するのは今回で2回目
乗車券も帝都発行のサアビスチケットもちゃんと持ったし
うん、大丈夫

目的地までは小旅行&歓迎会♪
仲間と一緒って気分が向上しないわけないじゃん

チケットで交換してきた飲み物を片手に二人の居る席に合流
お待たせ貰って来たよ?もぉ~ふたりとも硬いよ気楽に楽しも

朗らかに乾杯しながら流れる夜景に目を向け
聞こえる歌声に苦笑を浮かべ
合わせて口遊みながら
軽くタップを踏み邪魔にならない程度にリズムを刻みます

楽しいなぁ~やっぱみんなと時間を共有するのはホント楽しい
誘も一緒に歌おう♪

澄子さんを見つけたら、朗らかに声を掛けようかな?

アドリブ大歓迎です。


祝・誘
【Lux】
ルーチェと鶯と共に

夜汽車で紅葉狩りが歓迎会、凄く贅沢よね
此方こそ、ホールに足を運ぶ事を許可してくれて有難う
ルーチェ、鶯。どうぞ宜しくね
鶯から飲み物を受け取って、乾杯

三人で紅葉を眺める
……本当、光に照らされて、いつもとは違う雰囲気で綺麗ね

紅葉を眺めていると、聴こえてくる甘い音色。口遊む心地良い旋律につい聴き入る

ふふ。ミニコンサート、素敵だったわ
素敵な歌声で聴き入っちゃった
……あら、私も?
歌は上手じゃないけれど、折角だもの
一緒に楽しむわ
誰かと歌うのは初めてだけれど
こんなにも心動くものなのね

澄子さんに声を掛けるのは二人に任せて
私はその様子を窺おうかしら
気になる挙動もあるかもしれないから


ルーチェ・ムート
【Lux】鶯と誘と共に。アドリブ⚪︎

歓迎会兼紅葉狩り!

2人がボクのホールに来てくれて本当に嬉しい!ありがとう。これからよろしくね。うぐ、誘。

飲み物を受け取って乾杯。
幸せで頰が緩んじゃう。

ライトアップされた紅葉が素敵だね。

楽しくてつい月陽恋詠を口遊む。
甘く蕩ける歌声には2人への感謝、親愛の情を。UCでなくただの歌として。

あはは、ミニコンサートになっちゃったかな。
誘も一緒に歌おう?軽く手を引けたら。

上手さは関係ないよ。伝えたい気持ちが、共有したい気持ちがあるなら。それだけでいいんだ。

――ああ、とても楽しい。

澄子さんも聴きに来てくれたなら朧月夜を誘惑込めて歌うよ。

さあ、キミのヒミツを教えてくれる?



 いつもは桜の花弁が舞う、サクラミラージュの駅も。
 この季節だけは、燃える様に真っ赤な紅葉がひらりひらりと舞い踊る。
 そんな秋色に染まった景色の中で。
「うん、大丈夫」
 こくりとしっかり頷くのは、鳴夜・鶯(ナキムシ歌姫・f23950)。
 その手に握られているのは……乗車券と、そして帝都発行のサアビスチケット。
 鶯がこの世界の夜汽車に乗るのは、これで2回目。
 初めて乗った時は請求された金額にビックリ、サアビスチケットを慌てて探したけど。
 乗車券もサアビスチケットも、ちゃんと持ったし。
 ――気分が向上しないわけないじゃん。
 そう、何よりも……今回の夜汽車の旅は、仲間と一緒の小旅行&歓迎会!
 はしゃぎすぎてチケットを落とさないように気を付けながらも、いざ車内へ。
 そして外の景色がより楽しめる、展望車のふかふかソファに一緒に座って。
「ボクのホールに来てくれて本当に嬉しい! ありがとう。これからよろしくね。うぐ、誘」
 ルーチェ・ムート(吸血人魚姫・f10134)は、Lux―光―のコンサートホールに来てくれたふたりを、改めて太陽のような笑顔で歓迎して。
「夜汽車で紅葉狩りが歓迎会、凄く贅沢よね。此方こそ、ホールに足を運ぶ事を許可してくれて有難う」
 ……ルーチェ、鶯。どうぞ宜しくね。
 祝・誘(福音・f23614)もそう、黒い瞳を細め笑み返せば。
「もぉ~ふたりとも硬いよ、気楽に楽しも」
 ルーチェと誘を交互に見遣り、サアビスチケットで交換してきた飲み物を、ふたりに手渡す鶯。
 そして、みんなの手に飲み物が行き渡れば――乾杯!
 楽しい歓迎会のはじまりです!
 幸せで頰が緩んじゃう……ルーチェはふたりとカチリ、飲み物を合わせながら笑んで。
「ライトアップされた紅葉が素敵だね」
 ふと車窓にその瞳を向ければ、燃える様な紅葉の赤と、より彩が重なる。
「……本当、光に照らされて、いつもとは違う雰囲気で綺麗ね」
「すごいなぁ~ホント真っ赤だね♪」
 誘と鶯も暫し、一緒に流れる夜景を眺めていたけれど。
 ふいに耳に聞こえてきたのは、月陽恋詠の旋律……甘く蕩ける歌声。
 楽しくなってつい口遊みはじめたルーチェがその唄に込めるのは――2人への感謝、親愛の情。
 そんな、聞こえる歌声に合わせ口遊みながら、鶯は軽くタップを踏んで。邪魔にならない程度にリズムを刻めば。
「あはは、ミニコンサートになっちゃったかな」
「ふふ。ミニコンサート、素敵だったわ。素敵な歌声で聴き入っちゃった」
 今宵の歓迎会のミニコンサートは、紅のトンネルを走り抜ける夜汽車がステージ。
 紅葉を眺めながら、つい甘い音色と心地良い旋律に聴き入ってしまった誘だけれども。
 まだまだ――楽しいコンサートはこれから。
 ルーチェは軽く手を引く様に、太陽のような笑顔を誘へと向けて。
「誘も一緒に歌おう?」
「楽しいなぁ~やっぱみんなと時間を共有するのはホント楽しい。誘も一緒に歌おう♪」
「……あら、私も?」
 ルーチェだけでなく、さらに続いた鶯の声にも、誘はぱちくりと瞳を瞬かせるけれど。
「歌は上手じゃないけれど、折角だもの。一緒に楽しむわ」
「上手さは関係ないよ。伝えたい気持ちが、共有したい気持ちがあるなら。それだけでいいんだ」
 今度は3人で一緒に。
 旋律を口遊んで重ね、タップを踏んで。秋の景色と小旅行の思い出に音色を添えれば。
(「誰かと歌うのは初めてだけれど、こんなにも心動くものなのね」)
 もっともっと、たくさん心満たされるひとときになって。
 ――ああ、とても楽しい。
 幸せいっぱい、お互い見合わせた顔に、笑顔が咲き乱れる。
 そして鶯は、自分たちの歌に聞き入っている様子の彼女――澄子へと、朗らかに声を掛ける。
「折角だし、お姉さんも一緒に歌おう♪」
「あ……素敵な歌ね。でも私は、聴いているだけで嬉しいから。ありがとう」
 声を掛けられ少し驚いた表情を浮かべつつも、鶯へとそう澄子は、どこか陰りのある笑みを返して。
 自分たちの歌に再び耳を傾けるその様子を、そっと窺う誘。
 そして……ルーチェの蕩けた魅惑の声が歌い上げるのは、朧月夜。
 ――僕は宵紅 求める瑠璃は儚く遠く 欲しいなら、奪ってみせて。
 紅に燃える秋の夜に響くそれは、聴く者を虜にする、魔物の如き甘い歌声。
 刹那、不意に澄子の口から零れ落ちる。
「……早く、会いたい……もうすぐ貴方のところに……紅の社に、会いに行きますから……」
 彼女の胸の中に秘められた、心の声が。
 ルーチェが、甘い歌声に誘惑のいろを乗せて。うっとり酔いしれる澄子へと、こう紡いだから。
 ――さあ、キミのヒミツを教えてくれる? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉瀬・煙之助
理彦くん(f01492)と
夜の汽車…僕は初めてだから少しドキドキするなぁ…
乗り物自体が早くて苦手だからね
でも理彦くんと一緒に見る夜の紅葉はきっと綺麗だろうね
でも、ちょっと怖いから『手をつないで』くれると助かるかも…

お弁当……、えっと…
(言い淀みながらおずおずと包みを出して)
汽車の旅だって言ってたから作ってきたんだけど
だめかな…?
重箱に稲荷寿司と理彦くんの好きなおかずを詰め込んで
みたんだけど…
喜んで食べてもらえたら嬉しいな…

※アドリブOK


逢坂・理彦
煙ちゃんと(f10765)
煙ちゃん。汽車からは紅葉が見れるそうだよ。
サクラミラージュは桜!って印象が強かったけどやっぱりサクラミラージュでも珍しいみたい。
さて、問題は汽車だよね…UDCの乗り物にはなかなか慣れることができないでいるからサクラミラージュの汽車は大丈夫だといいんだけど。
俺自体こんなかかりだけど怖かったり不安だったら【手をつない】でね。
というか繋いでくれたら俺が嬉しいなって。

お弁当も売ってるんだね〜「秋の幕の内弁当」だって買って食べてみる?
えっ?お弁当作ってきてくれたの?もちろんそっちを食べるよ!
お弁当を食べながら紅葉を見るっていうのもなんだかお花見みたいで楽しそうだ♪



 紅葉のいろに染まった賑やかな駅のホームで、夜汽車を待つ沢山の人たち。
 その一部は、自分たちと同じ猟兵であるのだろうけれど。
「サクラミラージュは桜! って印象が強かったけど、やっぱり珍しいみたい」
 この盛況ぶりを見るだけでも、これから乗り込む展望夜汽車が人気だということが窺える。
 そして、ぐるり周囲を見回した逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は、紅のトンネルを行く汽車が駅へと入ってきたのを見つけて。
「煙ちゃん。汽車からは紅葉が見れるそうだよ」
 そう、すぐ隣の吉瀬・煙之助(煙管忍者・f10765)に声を掛けるけれども。
「夜の汽車……僕は初めてだから少しドキドキするなぁ……」
 どこかそわそわ、落ち着かない様子。
 乗り物自体が早くて苦手な煙之助にとって、夜の汽車は緊張してしまうし。
(「さて、問題は汽車だよね……UDCの乗り物にはなかなか慣れることができないでいるからサクラミラージュの汽車は大丈夫だといいんだけど」)
 理彦もそう、胸の内でちょっぴり心配に思うけれど。
「でも理彦くんと一緒に見る夜の紅葉はきっと綺麗だろうね」
 そうも煙之助は思うから……そっと、こんなお願いを。
「ちょっと怖いから、手をつないでくれると助かるかも……」
 そして勿論、返ってくる言葉は。
「俺自体こんなかかりだけど、怖かったり不安だったら手をつないでね」
 ……というか繋いでくれたら俺が嬉しいなって、と。
 握る手は勿論、尻尾をもふもふして落ち着いてもらうのも、ありかもしれない。
 そんなことを思いながら、やはり汽車に乗り込む直前、そろりと取られたその手を握り返して。
 紅葉の景色がより見やすい、展望車のふたり席に並んで座ってみる。
 それからガタンと車体が揺れ、いざ、夜に燃える紅葉のトンネルへと走り出す夜汽車。
 慣れない揺れに、最初は煙之助もちょっぴりビックリしたけれど。
 この夜汽車は、紅葉の景色を楽しむための展望列車。
 風景をじっくり眺められるように、普通の汽車よりも随分遅い速度で進むから、ホッと一安心。
 そして、ゆっくりと紅葉に染められた秋の夜汽車の旅を楽しんでいたふたりだけど。
「お弁当も売ってるんだね〜「秋の幕の内弁当」だって買って食べてみる?」
 通りかかった売り子が勧める、美味しそうな「秋の幕の内弁当」を見て、ふとそう訊ねた理彦に。 
「お弁当……、えっと……」
 言い淀みながらも、おずおずと煙之助が差し出すのは――。
「汽車の旅だって言ってたから作ってきたんだけど、だめかな……?」
 くるり包まれた、手作りのお弁当。
 名物であるという「秋の幕の内弁当」も、確かに豪華で美味しそうではあったけれど。
「重箱に稲荷寿司と理彦くんの好きなおかずを詰め込んでみたんだけど……」
「えっ? お弁当作ってきてくれたの? もちろんそっちを食べるよ!」
 迷う事なく理彦が選ぶのは勿論、大好物いっぱいの、煙之助の手作り弁当。
 そんな大好きなものばかりの弁当に耳をぴこりとさせる理彦を見つめながら。
(「喜んで食べてもらえたら嬉しいな……」)
 そう、ドキドキと様子を窺う煙之助だけど。
 稲荷寿司をはむりとひとくち頬張れば――美味しい、って、ふにゃり笑顔が綻んで。
「お弁当を食べながら紅葉を見るっていうのもなんだかお花見みたいで楽しそうだ♪」
「うん、夜の汽車ももうこわくないし……理彦くんと一緒に綺麗な紅葉が見れて、嬉しいなぁ……」
 もう一度握り合った手から伝わる温もりに、安心感を覚えながら。
 煙之助は、ふたりで観る紅の景色を映した緑色の瞳を、そっと細めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
倫太郎殿、子供達と一緒に車窓から景色を眺めながら食事をします
食事は秋の幕の内弁当と燻製等の摘まめるものを少し
お弁当は陸彦と一緒に分けて頂きましょう

サクラミラージュも秋となれば紅葉の紅に染まるのですね
陸彦や灯里は姿を持ってから間もないので、この景色しか知らないと思いますが
冬は雪に覆われ白く、春は花が咲く桜色に、夏は木々の緑へと変わります
これから少しずつ一緒に見て行きましょうね

少し勉強をした後にお弁当を頂きましょう
陸彦、何か食べたいものはありますか?
灯里の好みもまだ分かっておりませんから
気になるものを与えて知っていかなくてはなりませんね
倫太郎殿、燻製は如何ですか?胡椒が効いて美味しいです


篝・陸彦
【華禱】
夜彦達と汽車に乗って移動するぞ
駅で弁当っていうのを買ったんだ!
食べるのは汽車に乗ってかららしい
早く食べたいな

靴を脱いで、座る所に膝を付いて外の景色を見る
赤いけど燃えてる訳じゃないのか?紅葉?
夜彦、また色が変わったりするのか?ふーん……すごいんだな
灯里も見た事ないらしい、一緒に見られるといいな!

食事は倫太郎に言われた通り、ちゃんと座って!
うーん……その黄色い丸っぽいやつ、そう玉子焼き
あと魚と、肉!野菜煮たのは…………ちょっとだけ
肉は結構好きだぞ!あの丸くて焼いた柔らかいやつ好きだ
貰った弁当を食べていると、夜彦が倫太郎に向けたものに興味を示し
くんせい!くんせい、おれも食べたい!


篝・倫太郎
【華禱】
ライトアップされた紅葉を眺めながら
弁当と夜汽車の旅を楽しむ

秋の幕の内弁当
秋の味覚が盛り沢山……
皆で分けて食べような?

ほら、飯食う時はちゃんと座れって……
子供達は夜の外出が好奇心と冒険心を擽るのか
そわそわして落ち着きないンだけど……
夜彦、あんたも……にこにこ上機嫌で
楽しみで仕方ないです、って顔すんなってば

なんだかんだ言いながら
楽しくて仕方ないのは俺も同じなんだけど
俺まで一緒になったら収集付かなくなるし

子供達に四季を教える様子に
この人もこんな風に知識を分け与えられたんだろうか?
なんて感慨に耽ってたら燻製を差し出されるから
遠慮なく受け取って

ん、美味い……
そう笑う

つか、お前らには辛いと思うぞ?


月舘・灯里
【華禱】
よるのおでかけはわくわくするのです
にいさまもとうさまもにこにこなのです

かあさ……(ふるふる)
りんたろも、うれしそうなの
あかりもうれしいのです

とうさまのおはなしはちゃんとききます
わくわくがたくさんやってくるのですか?

また、とうさまやにいさま
かあさ……(ぷるぷる)りんたろといっしょに
おでかけしてみたいです

いっしょに、たくさんみるです(こくこく)

おべんとうは、どれもすこしずつ、たべます
にいさまはおにく、すきなのです?
おやさいはあかりがいただきます、なのですよ
おやさいもちゃんとたべないと
おおきくなれないってきいたですよ
なのであかりはちゃんとたべます(きりっ)

おいしいのです?
(両親の手元じーっ)



 降り立った世界にいつも広がっているのは一面の桜色のはずで。
 楽しいお出掛けは、ふたり手を繋いで並んで歩くことが多かったけれど。
 今宵は、そんな普段のものとはちょっぴり違う事だらけ。
 迎え入れてくれた景色は桜のものではなく、真っ赤に染まった秋の彩り。
 そして、何よりも。
 ――駅で弁当っていうのを買ったんだ!
 そうわくわく瞳輝かせている篝・陸彦(百夜ノ鯉・f24055)の隣で。
 きょろりと緑色の瞳を周囲に巡らせる、月舘・灯里(つきあかり・f24054)。
 そんな二人も一緒である、いつもよりも賑やかな夜のお出掛け。
 駅で買った美味しそうな弁当を食べるが楽しみな陸彦だけど、でも、まだ汽車に乗ってからだと。
 月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)に教えて貰ったから、もう少しだけ我慢。
 そして夜彦と陸彦のやり取りを聞きつつ、灯里は二人の顔を見上げて。
「よるのおでかけはわくわくするのです。にいさまもとうさまもにこにこなのです」
 それからふと、自分たちを見守っている篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)にも目を向ける。
「かあさ……りんたろも、うれしそうなの」
 ちょっと一部分、ふるふると首を振って言い直したりもしつつも。
 でも、みんなにこにこだから。
「あかりもうれしいのです」
 灯里も勿論、わくわく楽しくて、にこにこです。
 そして皆で汽車に乗り込めば……秋の紅を潜り抜ける、夜汽車の旅のはじまり。
 美しい景色を見ながら美味しいものをと、弁当や摘まめるものの調達も万端。
 汽車が走り出せば、車窓を流れる秋の紅。
 買った秋の幕の内弁当も、とても美味しそうで。
「秋の味覚が盛り沢山……皆で分けて食べような?」
 皆で仲良く、分け合って食べる予定だけど。
「サクラミラージュも秋となれば紅葉の紅に染まるのですね」
 そう車窓の外の景色に視線を向けつつも、弁当を食べるその前に、夜彦は子供たちに教えてあげる。
 まだ姿を持って間もないふたりに、眼前に染まった秋の事を……移り巡る四季のことを。
 逸る好奇心のまま、でもきちんと靴を脱いでから。
「赤いけど燃えてる訳じゃないのか? 紅葉?」
 座席に膝を付き、真っ赤な外の景色を見つめ言った陸彦に、夜彦は優しいいろを宿した瞳を細め頷く。
「陸彦や灯里は姿を持ってから間もないので、この景色しか知らないと思いますが。冬は雪に覆われ白く、春は花が咲く桜色に、夏は木々の緑へと変わります」
「夜彦、また色が変わったりするのか? ふーん……すごいんだな」
「わくわくがたくさんやってくるのですか?」
 皆で過ごしている今、この秋のお出掛けはとっても楽しいから……見つめているこの色が変わる度に、わくわくも沢山来るのではと。
 こてんと首を傾けつつも訊ねた灯里にも、夜彦はこくりと頷いて。
「また、とうさまやにいさま、かあさ……りんたろといっしょにおでかけしてみたいです」
 ぷるぷるとまた言い直したりしつつ、灯里がにこにこと笑めば。
「灯里も見た事ないんだな、一緒に見られるといいな!」
「いっしょに、たくさんみるです」
 ふたり顔を見合わせて、こくこく。
 そんなふたりのこくこくに、夜彦も加わって。
「これから少しずつ一緒に見て行きましょうね」
 秋が過ぎても、冬、春、夏……順に巡って来る四季を、一緒に見て行きたいと。
 そして、見たことがないいろを沢山見せてあげたいと――夜彦は、そう思う。
 それからお勉強が終われば……お待ちかねの、美味しい物タイム!
「ほら、飯食う時はちゃんと座れって……」
 きゃっきゃとはしゃぐ子供たちに、倫太郎はそう声を掛けつつも。
(「子供達は夜の外出が好奇心と冒険心を擽るのか。そわそわして落ち着きないンだけど……」)
 いつもよりも何だか気持ちが昂っている様子を窺いながら、購入した弁当をぱかりと開いて。
 わくわくしている瞳の輝きはそのままだけど、ちゃんと言われた通りちょこんと座る陸彦と灯里。
 そんなふたりの目線に屈んで、お利口さんに出来た事を褒めてあげてから。
 倫太郎がふと視線を向けるのは、夜彦の表情。
「夜彦、あんたも……にこにこ上機嫌で、楽しみで仕方ないです、って顔すんなってば」
 美味しそうな秋の味覚に、楽しい時間、わくわくするのは子どもたちだけではありません。
 だって、そう言いつつも……倫太郎も同じく今、楽しくて仕方ないのだから。
 けれど、やはり大人ですから。
(「俺まで一緒になったら収集付かなくなるし」)
 はしゃぐこの気持ちは、心の中だけで。
 そして美味しそうな秋の彩りを一通り見回して。
「陸彦、何か食べたいものはありますか?」
 そう訊ねつつも、夜彦は真剣に思案する。
(「灯里の好みもまだ分かっておりませんから、気になるものを与えて知っていかなくてはなりませんね」)
 陸彦はそんな夜彦の声に、きょろきょろ目移りしつつも。
「うーん……その黄色い丸っぽいやつ、そう玉子焼き」
 まずは、定番の玉子焼き! それに勿論。
「あと魚と、肉! 野菜煮たのは…………ちょっとだけ」
 魚と、あと肉も欠かせません! が……野菜は何だか少し、遠慮気味?
 そんな兄の言葉に、灯里はぱちくりと瞳を瞬かせて。
「にいさまはおにく、すきなのです?」
「肉は結構好きだぞ! あの丸くて焼いた柔らかいやつ好きだ」
「おやさいはあかりがいただきます、なのですよ。おやさいもちゃんとたべないと、おおきくなれないってきいたですよ」
 ……なのであかりはちゃんとたべます、と。お利口さんに、きりっ。
 夜彦は一通り、そんなふたりのやりとりを聞いてから。
「丸くて焼いた柔らかい肉……陸彦、ハンバーグはありませんが、ミートボールならありますね。野菜も頑張って食べましょうか。灯里は野菜と、肉や魚も一緒にバランス良く頂くと身体にも良いです」
 そうひとつひとつ教えてあげながら、ふたりが気になったものをそれぞれ取り分けてあげて。
 倫太郎は、子どもたちに四季を教えていた様子も思い返しながら、夜彦を見つめ思う。
(「この人もこんな風に知識を分け与えられたんだろうか?」)
 子どもたちと同じ、ヤドリガミである彼も……同じ様に色々と教えて貰って、今があるのだろうかと。
 感慨深くそんなことを考えていれば。
「倫太郎殿、燻製は如何ですか? 胡椒が効いて美味しいです」
 差し出されたのは、胡椒が良く効いているという燻製。
 それを遠慮なく受け取り、はむりと口にして。
「ん、美味い……」
 思わず零れた笑みとその言葉に、好奇心旺盛な子供たちが反応しないわけがありません。
「くんせい! くんせい、おれも食べたい!」
「おいしいのです?」
 おれも! と声を上げる陸彦と、燻製握る両親の手元じーっと見つめる灯里。
 そんなふたりに、倫太郎は琥珀色の瞳を細めて。
「つか、お前らには辛いと思うぞ?」
 ……これはもう少し大きくなってからだな、と。
 視線が合った夜彦と笑みあいながら、そう子どもたちに言って聞かせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鶴澤・白雪
千織(f02428)と

此処で桜じゃなくて紅葉を見るのって新鮮な気分ね
千織は森がお家って言ってたから珍しくもないかしら?
そっか、明るい森だと動物たちも驚いてしまうものね

あたしは本物の紅葉した木々を見るのは今年が初めてなのよ
凄いわね、自然の葉がこんなに赤くなるとは思わなかったわ

本で読んだけど秋になったら色が変わる葉って紅葉だけじゃないんでしょ?
千織の住んでる森も今は色とりどりになってるのかしら?

ごめんなさい、質問ばかりね
ちょっとはしゃいでしまったわ

宇宙船の中じゃ知れない事ばかりだから知りたいことが多くて
千織の住んでる場所も興味あるのよ、よかったら教えてちょうだい

いつか千織の森に行ってみたいものだわ


橙樹・千織
白雪さん(f09233)と

桜の花のイメージが強いですものねぇ
ふふ、確かにうちの森でも紅葉はしていますが、ライトアップはしていないのでこの景色は新鮮ですねぇ
車窓からの景色を眺めてほわりと微笑み

あら、そうなのですか?
では存分に紅葉の景色をを楽しみましょう

そうですねぇ
桜に銀杏、山法師、他にも沢山ありますねぇ
紅や橙、黄色…
春とは少し違った色鮮やかな景色になっていますよ
自分が守護する森を思い浮かべてぽつぽつと

ふふ、知らないことを知るのはわくわくしますものねぇ
森の話で良ければぜひに
お茶とお菓子を用意して、森について語りましょう
まだ見ぬ世界に瞳を輝かせている彼女をいつか案内できることを夢見て



 この世界に降り立つのは初めてではないけれど。
 でも、眼前に広がっているのは、サクラミラージュの世界で観る初めての景色。
「此処で桜じゃなくて紅葉を見るのって新鮮な気分ね」
 展望夜汽車の大きな車窓に流れる紅のいろを眺めながら、そう言った鶴澤・白雪(棘晶インフェルノ・f09233)の声に。
 こくりと頷く、橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)。
「桜の花のイメージが強いですものねぇ」
 年中桜の花が咲き誇っているこの世界を染め上げる、桜のものではない色。
 そんな燃える様な紅葉の風景は、サクラミラージュでは珍しいものだろうけれど。
「千織は森がお家って言ってたから珍しくもないかしら?」
 そうちらりと、レッドスピネルの瞳に自分の姿を映す白雪に。
 ほわりと笑み、車窓からの景色を眺めながら答える千織。
「ふふ、確かにうちの森でも紅葉はしていますが、ライトアップはしていないのでこの景色は新鮮ですねぇ」
 そう言った刹那……ふっと、車内の照明が落ちて。
 速度を落としてゆっくりと、夜の闇に浮かぶ紅の景色の中を進む夜汽車。
 そんな鮮烈で、でも美しい秋のいろへと再び視線を巡らせながら。
「そっか、明るい森だと動物たちも驚いてしまうものね」
 納得するように射干玉の髪を揺らし、こくりとひとつ頷いた後。
 酸漿の如きそのいろを、より深い紅へと染める紅葉を瞳の中にも降らせつつ、白雪は紡ぐ。
「あたしは本物の紅葉した木々を見るのは今年が初めてなのよ」
 ――凄いわね、自然の葉がこんなに赤くなるとは思わなかったわ、って。
 そんな彼女の言葉に、意外そうにきょとりとしてから。
「あら、そうなのですか? では存分に紅葉の景色を楽しみましょう」
 いつも通りのふわほわな笑みを宿し、ツシマヤマネコの耳をぴこりとさせつつも。
 一緒に並んで、暫し紅葉の風景を堪能する千織。
 いつだって桜が咲き誇る世界すら真っ赤に染め上げる、秋の彩。
 けれどその四季の紅は、何も紅葉だけのものではない事を白雪は知っているけれど。
「本で読んだけど秋になったら色が変わる葉って紅葉だけじゃないんでしょ? 千織の住んでる森も今は色とりどりになってるのかしら?」
 実際に見たことがない白雪は、再びそう千織に訊ねて。
 小さく首を傾けつつ、千織が自分の知っている秋のいろを思い返してみれば。
「そうですねぇ。桜に銀杏、山法師、他にも沢山ありますねぇ。紅や橙、黄色……春とは少し違った色鮮やかな景色になっていますよ」
 ぽつぽつと紡ぎながらも蘇るそのいろは、自分が守護する森の彩り。
 そしてひとつずつ丁寧に答えてくれる千織に、白雪はもう一度目を向けつつ苦笑する。
「ごめんなさい、質問ばかりね。ちょっとはしゃいでしまったわ」
 ――宇宙船の中じゃ知れない事ばかりだから知りたいことが多くて、と。
「ふふ、知らないことを知るのはわくわくしますものねぇ」
 そう詫びる白雪に、ほわりと笑んで返してから。
「千織の住んでる場所も興味あるのよ、よかったら教えてちょうだい」
「森の話で良ければぜひに。お茶とお菓子を用意して、森について語りましょう」
 まるで車窓に流れる紅葉のような紅き瞳を見つめ、頷く千織。
 そんな彼女の住んでいる森の話も、これまで知らなかったことも、沢山いっぱい聞きたいし。
 それに……何よりも。
「いつか千織の森に行ってみたいものだわ」
 この目で、いろんな世界に溢れる様々ないろを……千織の守護する森を彩るいろを、見てみたい。
 紅葉の如き白雪の紅の瞳に燃え上がるのは、知らなかった事を知りたいという想い。
 そんな、まだ見ぬ世界に瞳を輝かせている彼女と共に、浮かび上がる秋の景色を千織は改めて眺める。
 ――自分の住む森に、いつか彼女を案内できることを夢見て。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティーシャ・アノーヴン
風花(f13801)さんを肩に乗せて。
【POW】

汽車は見たことはありましたが、乗るのは初めてです。
こんな大きなものが動くなんて、凄いですわね。
風花さん風花さん、こちらの席に座りましょう。窓際です。
秋の幕の内弁当と言う食べ物も買ってきましたよ。一緒に食べましょう。
あ、お肉の類は風花さんにお任せしますね。ごめんなさい。
でも色々ありますので、少しずつ食べてくださいな。
今日はどんな光景を見られるのか、楽しみですね、風花さん。

まあまあ!これが紅葉のトンネルですか。
色付く樹木は故郷にもありましたが、
こうして見ている環境が変わるとなんだかとても新鮮ですわね。
綺麗ですわ。自然のお化粧と言うのは本当に素敵です。


七霞・風花
ティーシャ(f02332)の肩へ(食事の際は降りますよ)

しかしティーシャさんは本当に森から出ていなかったのですね。
スムーズに改札をくぐると、ふわりとその肩へ座ります。
景色の良い窓際に座り、一緒にお弁当を覗き込みます。
色とりどりの鮮やかさ。まさに色彩。

なんだかお肉だけもらうの、申し訳ないですが……

ティーシャさんは肉類を食べないのでWin-Winではあります。

…………そのお野菜、一口いただいていいです?

バランスは気になっちゃいますよね。

わぁ……紅葉。
いくつか見た事はありますが、これは見事です。
そして、同時に思います。

はしゃぐ貴女の千変万化も、とても綺麗ですよ。

小さく聞こえないように、くすりと笑う。



 年中咲いているという桜ではなく、紅葉の紅に染まった駅へとやってきて。
 支給された乗車券を手に、スムーズに改札を潜った七霞・風花(小さきモノ・f13801)が、ふわり落ち着いた場所。
 そこは、ティーシャ・アノーヴン(シルバーティアラ・f02332)の肩の上。
 そんな、自分の肩にちょこんと座った風花と共に、ホームへと入ってきた夜汽車へと視線を向けて。
「汽車は見たことはありましたが、乗るのは初めてです」
 ……こんな大きなものが動くなんて、凄いですわね、と。
 紫の色を帯びた両の目をぱちくりとさせるティーシャの言葉に、今度は風花が瞳を瞬かせる番。
「ティーシャさんは本当に森から出ていなかったのですね」
 それから、見るものどれも物珍しくて、視線を巡らせながらも。
「風花さん風花さん、こちらの席に座りましょう。窓際です」
 夜汽車にいざ乗り込んだティーシャが確保したのは、紅葉鑑賞に最適な展望車の窓際の席。
 そして大きな車窓に流れる景色を眺めながら、もうひとつの秋の彩りを広げる。
「秋の幕の内弁当と言う食べ物も買ってきましたよ。一緒に食べましょう」
 汽車は初めて乗るから、不慣れではあるけれど。
 でもお世話焼きなティーシャらしく、耳に聞いていた「秋の幕の内弁当」も既にばっちり調達済み。
 風花は彼女の肩の上からひらり、景色の良い窓際の席に座って。
 ひょこりと、ティーシャと並んで一緒に、ぱかっと蓋を開けた弁当を覗き込んでみれば。
「色とりどりの鮮やかさ。まさに色彩」
 ここにもまた、溢れんばかりの美味しそうな秋の彩りが。
 そして仲良くふたりで、分け合いっこ。
「あ、お肉の類は風花さんにお任せしますね。ごめんなさい」
「なんだかお肉だけもらうの、申し訳ないですが……」
 ティーシャは肉類を食べないから、双方にとって都合が良い、いわゆるWin-Winというものであるのだけれど。
 肉ばかり貰うのも、何だか悪い気がするし。
「でも色々ありますので、少しずつ食べてくださいな」
「…………そのお野菜、一口いただいていいです?」
 バランスもやっぱり気になっちゃう風花は、お花型に切り抜かれた秋の野菜も少しだけ、お言葉に甘えて分けて貰う。
 そんな美味しい食事に舌鼓を打ちながら。
「今日はどんな光景を見られるのか、楽しみですね、風花さん」
 秋風に金の髪を揺らし、そうティーシャが呟いた、その時だった。
 ふいに、ふっと車内の灯りが落とされて。
「まあまあ! これが紅葉のトンネルですか」
 走る夜汽車が差し掛かるのは、より真っ赤に燃え上がる紅のトンネル。
 ライトアップされた紅葉が、まるで小さな炎の群れのように、夜の闇に浮かび上がって。
「わぁ……紅葉。いくつか見た事はありますが、これは見事です」
 風花も溢れんばかりの秋の彩に、感嘆の声を漏らした後。
 ちらりと、流れゆく紅の風景を眺める隣の彼女の横顔を、その青の瞳に映して。
「色付く樹木は故郷にもありましたが、こうして見ている環境が変わるとなんだかとても新鮮ですわね」
 ――綺麗ですわ。自然のお化粧と言うのは本当に素敵です。
 そう言ったティーシャに、くすりと笑んで。
 彼女には聞こえないように小さく、風花は紅に染まる世界の中でそっと、こう紡ぐ。
 ――はしゃぐ貴女の千変万化も、とても綺麗ですよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【狼兎】

初めての夜汽車にワクワク
すごーい、綺麗…
桜もいいけど、鮮やかな紅色も好きだなぁ

紫崎君と同じ色…なんて
少しだけ思ったのは内緒

柔らかな微笑でじっと景色を眺めつつ
紫崎君の言葉にはチラリと視線だけ向け

んー、食べさせてー
決まってるでしょ
僕まだこの前の事許してないからね(つーん)

以前の依頼でキスされた事
…戦争で、別に想い人がいる事も知っちゃったし
本当に怒る気持ちは欠片もないけど
これくらいの仕返し…許されるよね?

次そっち
あーん…んー、美味しいー♪
あ、ちょっと僕のお弁当勝手に食べないでよ

合間に澄子さんの様子に【聞き耳】を立てつつ

ふぇっ……ば、ばか!なにすんのもう!
うぅー、やっぱりまだ許さないー!(恥)


紫崎・宗田
【狼兎】

チビのはしゃぎ様に
確かに汽車は初めてか…などと考えつつ

…弁当、冷めるぞ
なんで俺が食わせにゃならねぇんだよ

適当な味覚を一口チビの口へ
拗ねた様子に溜め息

あのキスは一種のアピールだ
戦争時もコイツ自身の事を言ったつもりだったが
何をどう解釈すれば他に好きな人がいる事になるのか
自分が対象なわけないというネガティブも一因だろうが

まぁ…もう気持ちは把握したし逃がすつもりもねぇから
勝手に勝負を仕掛けることにした
期限までにコイツが自分で気付けるかどうか
ヒントを与えても気付けないなら…その時は意地悪してやろうと

チビの指示通りに餌付けしつつ自分も好きに食べ
別にいいだろ
ほれ…口元、米付いてたぜ?(ぺろり/にやり



 秋の夜を焦がすかの様に色づいた、紅葉のいろ。
「すごーい、綺麗……桜もいいけど、鮮やかな紅色も好きだなぁ」
 ガタンゴトンと揺れる車内で、車窓の外を見つめる琥珀にもその紅を灯しながら。
 初めての夜汽車にワクワク心躍らせつつ、そっと一瞬だけ、隣へと視線を移す栗花落・澪(泡沫の花・f03165)。
 燃える炎の如き紅葉の彩り、それはまるで――。
(「紫崎君と同じ色……」)
 ……なんて、少しだけ思ったのは、内緒。
(「確かに汽車は初めてか……」)
 紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)は、澪のはしゃぎ様にそう考えつつも。
「……弁当、冷めるぞ」
 事前に調達しておいた『秋の幕の内弁当』を差し出さんとするけれど。
 当の澪は柔らかな微笑みで、再びじっと流れゆく景色を眺めていて。
 聞こえた宗田の言葉に向けるのは、チラリと視線だけ。
 そして、こう彼へと口を開く。
「んー、食べさせてー」
「なんで俺が食わせにゃならねぇんだよ」
 そう返ってきた言葉に、つーんとしつつ澪も続ける。
「決まってるでしょ。僕まだこの前の事許してないからね」
 そんな澪の態度は、そう、拗ねている。
 宗田は拗ねた様子に溜め息をつきながらも。
 適当に摘まんだ秋の味覚を一口、どこか尖り気味な澪の口へと。
 それをはむりと食べつつ、澪はふと思い返す。
 ――以前の依頼でキスをされた事。
(「……戦争で、別に想い人がいる事も知っちゃったし、本当に怒る気持ちは欠片もないけど」)
 ……これくらいの仕返し……許されるよね? って。
 影朧を誘き出すための、心中の演技ではあったのだけれど。
 ベッドに押し倒されて、毒を口移しで飲まされた。
 けれど、先の戦争で、宗田の口から聞いた事実。
『つい傍で護ってやりたくなる』
 そんな存在がいる、と。
 いや、彼にだって好きな人がいたって、おかしくない。
 それに予感はしてた……してたけれど、ちょっと残念、って思ってしまった。
 ――チビで無駄に真面目で素直じゃなくて、極めつけ、鈍い。
 つい傍で護ってやりたくなる、そんな宗田の言う存在が誰のことかなんて、澪は思いもしないまま。
 そんなまだ拗ねた様子でもぐもぐと差し出した味覚を食べる澪に、もう一度溜息をつく宗田。
(「あのキスは一種のアピールだ。戦争時もコイツ自身の事を言ったつもりだったが、何をどう解釈すれば他に好きな人がいる事になるのか」)
 ……チビで無駄に真面目で素直じゃないヤツなんて、ひとりしかいないだろ、と。
 けれど、澪のことをよく知っているからこそ、宗田には分かってもいるのだ。
(「自分が対象なわけないというネガティブも一因だろうが」)
 とはいえ、もう気持ちは把握したから……逃がすつもりもないし。
 勝手に勝負を仕掛けることにしたのだ。
(「期限までにコイツが自分で気付けるかどうか」)
 ヒントを与えても気付けないなら……その時は意地悪してやろう、と。
「次そっち、その栗が食べたいー」
 澪の示通りに、ひょいっと栗を摘まんで、あーんと餌付けしながらも。
「あーん……んー、美味しいー♪ あ、ちょっと僕のお弁当勝手に食べないでよ」
「別にいいだろ」
 自分も好きに味覚を口へと運んでいた宗田は、同じ車両に乗っている澄子の様子に聞き耳を立てている澪をふと見遣ってから。
「ほれ……口元、米付いてたぜ?」
 ぺろりと――それを舌で掬い取ってあげれば。
「ふぇっ……ば、ばか! なにすんのもう!」
 瞳を見開き声を上げたその反応に、宗田はにやり意地悪な笑みを。
 そして、車窓を流れる紅葉のいろに、負けないくらいに。
 恥ずかしさで顔を真っ赤に染めながら、澪は続けるのだった。
 ――うぅー、やっぱりまだ許さないー! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

東雲・円月
【比翼月】

夜の汽車、なるほど確かに風情ですね
汽車なのに風情と言うのはいささか違和感がありますが……
人工物と自然物の調和、とでも言いましょうか。風情です
あ、別に風情って言いたいだけとかじゃないからな、咲夜

先ずは腹拵えからどうだ?
咲夜のお弁当も好きだけど、今回はこの秋の幕の内を食べてみないか?
咲夜のお弁当は後で食べよう。どうかな?
好きなものは後に取っておく、そういうことだよ、咲夜

紅葉トンネルか、なんだかどこかにもこういうのがあったな
でもこちらはこちらでこれもまた綺麗だね
咲夜は紅葉、好きかい?
食べ終えたら隣においで。ほら、手を重ねて見よう
紅葉みたいに、重なるとより赤くなる。本当に面白いな、咲夜は


東雲・咲夜
【比翼月】

桜と紅葉が並んどる聞いてえらい楽しみ
交わる事のあらへん季節が溶合う景色は
きっと想像しとる以上に美しいんやろな

…えっくん
覚えたての言葉を使いたい子供みたい、よ?

そんなこと言わはって
朝につまみ食いしとったから
中身が気にならへんだけやないの?
そういうことにしといてあげまひょ…ふふ
せやけどうちも、実は駅弁が好きやから、ええのやけど

昼間の紅葉は見慣れとったけど
夜に遮りあらへん中進むんは新鮮や
仄暗い中、眩さと鮮烈に色付く情景
あの彼岸のいろとはまたちごて何処か儚げ

ええ、好きよ
色も容も綺麗でずっと見ていたい
重なる手が紅くなるんは
えっくんの手が温かくて
うちよりずっと大きくて
…男のひと、なんやなって



 春になれば桜が咲いて、それが散れば来たる夏。
 そして今、眼前に広がっている景色の様な、一面紅のいろに染まり変わる秋。
 春と秋の彩りが混ざることは、これまで知っている世界ではなかなかなかったけれど。
(「桜と紅葉が並んどる聞いてえらい楽しみ」)
 東雲・咲夜(詠沫の桜巫女・f00865)は瑞々しい藍眸に、炎の如き紅葉のいろを灯しながらも心躍らせる。
 ……交わる事のあらへん季節が溶合う景色は、きっと想像しとる以上に美しいんやろな、って。
「夜の汽車、なるほど確かに風情ですね」
 そんな紅の世界と、すぐ隣にいる咲夜を見つめながら言ったのは、東雲・円月(桜花銀月・f00841)。
 そう、夜に浮かぶ紅の世界を走り抜ける夜汽車はまさに、風情。
 そしてさらに円月は続ける。
「汽車なのに風情と言うのはいささか違和感がありますが……人工物と自然物の調和、とでも言いましょうか。風情です」
 人工物と自然物の調和、確かにそれもまた、風情であるけれど。
「あ、別に風情って言いたいだけとかじゃないからな、咲夜」
「……えっくん。覚えたての言葉を使いたい子供みたい、よ?」
 流れる紅のいろを背景に、そう自分へと視線を移し言った咲夜の姿もまた、風情……?
 そんな沢山の風情が溢れる中、気を取り直して。
「先ずは腹拵えからどうだ?」
 円月が取り出すのは、調達しておいた二人分の駅弁。
「咲夜のお弁当も好きだけど、今回はこの秋の幕の内を食べてみないか? 咲夜のお弁当は後で食べよう。どうかな?」
 そんな彼の提案に、咲夜は甘香る桜銀糸の美髪を揺らしながら首を傾けるけれど。
「そんなこと言わはって、朝につまみ食いしとったから、中身が気にならへんだけやないの?」
「好きなものは後に取っておく、そういうことだよ、咲夜」
「そういうことにしといてあげまひょ……ふふ」
 笑み零し、受け取った秋の幕の内弁当をぱかりと開けてみれば。
 そこにも……ぎゅっと詰まった、秋の彩りと美味しそうな風情が。
 それに、あんな風に円月には返したけれど。
(「せやけどうちも、実は駅弁が好きやから、ええのやけど」)
 夜汽車で味わう美味しい駅弁、それもまた、旅の醍醐味だから。
 そして先にはむりと円月が駅弁を平らげたその時、ふっと夜汽車の照明が落ちれば。
 より浮かび上がるのは、光に照らされ鮮烈さを増した秋の紅。
「紅葉トンネルか、なんだかどこかにもこういうのがあったな」
 ……でもこちらはこちらでこれもまた綺麗だね、と。
 見慣れた故郷の風景と眼前の景色を重ねつつも言った円月に、咲夜もこくり頷いて。
「昼間の紅葉は見慣れとったけど、夜に遮りあらへん中進むんは新鮮や」
 見慣れている紅なのだけれど、でもまた馴染みの景色とは違った眼前のいろに、秋を映した瞳を細める。
 そして、仄暗い中、眩さと鮮烈に色付くその情景は、また。
(「あの彼岸のいろとはちごて何処か儚げ」)
 同じ紅でも、違ういろ。
 車窓に流れる、そんな燃えるような秋の夜の風景を眺める咲夜に、円月は訊ねる。
「咲夜は紅葉、好きかい?」
「ええ、好きよ。色も容も綺麗でずっと見ていたい」
 そして、ぱくりと駅弁を食べ終わって手を合わせた姿を見つめ、こう紡ぐ。
「食べ終えたら隣においで。ほら、手を重ねて見よう」
 刹那、そっと掌と掌が重なれば。
 それは、紅葉のように仄かに染まって。
 じわりと伝わり、そしてひとつになる熱を感じながら、咲夜は思う。
 温かくて、そしてずっと自分よりも大きな掌の彼はやっぱり……男のひと、なんやなって。
 そんな咲夜にくすりと笑みながら、その耳元で、円月は囁く。
「紅葉みたいに、重なるとより赤くなる」
 ――本当に面白いな、咲夜は、って。
 言の葉落とす声で擽るその耳まで、紅葉させる様に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

清川・シャル
f08018カイムと同行

私、この世界の桜をまだ見た事無くって。
桜も大好きだけど、紅葉も大好き。
両方見れるって最高ですよね
勿論猟兵のお仕事も忘れないですよ?

とはいえ、先にちょっと楽しむくらいいいですよね?
カイムと一緒にお弁当買います。
わあ、お弁当そんなに食べるの?
シャルは1個ですよ。食べ切れるかな……
牡蠣弁当とかあります?贅沢かな?
あ、お茶欲しいです。あったかいやつ。

席に着けば、ではいただきます、と丁寧に両手を合わせます
ゆっくりマイペースに食べながら、景色に感動して手が止まってしまったり
いいなぁ……2人で見るのが楽しみだったの
綺麗だね。美味しいね。
あ、カイムのほっぺにご飯粒ついてますよ


カイム・クローバー
f01440シャルと行動

桜舞うこの世界が紅一色に染まるトンネルなんて言われちゃ、来ない訳に行かないだろ?
この世界に初めて来た時、年中咲き誇る桜に目を奪われたモンだが、今回も楽しい風景が見えそうだぜ。

『秋の幕の内弁当』ってのは何処に売ってるんだ?汽車内で販売してくれるのか…そうじゃないなら乗り込む前に買えば良いのか?
とりあえず三個買うぜ。種類が何種類かあるなら、栗と鮭は鉄板。後は店員のオススメを一つ。あ、茶も一つ頼む。シャルは?飲むか?
夜汽車が動き出したら一個目の弁当を食い始める。贅沢。絶対、美味い!
とはいえ、流石に紅葉の景色の美しさには目を奪われるぜ。言葉も出ねぇ。ホントに…スゲェわ(感動)



 降り立った世界をいつだって染めているのは、年中咲き誇る桜の彩りのはずだけれど。
 今の時期だけ、それは特別な紅へと変わって。
 これから乗車する展望夜汽車が走り抜けるのは、夜の闇に燃え上がる紅葉が作り出した紅のトンネル。
 年中桜咲くこの世界の人々にとって、きっとそんな秋の彩りはとても珍しく、興味深いものだろうけれど。
 ――桜舞うこの世界が紅一色に染まるトンネルなんて言われちゃ、来ない訳に行かないだろ?
 それは、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)も同じ。
「この世界に初めて来た時、年中咲き誇る桜に目を奪われたモンだが、今回も楽しい風景が見えそうだぜ」
 初めて降り立った時、咲き誇る幻朧桜は圧巻だったけれど。
 今からこの世界で楽しむのは、またそれとは全く違った彩りだろう。
 どんな風景が今から観られるのかと、そう楽しみに駅の改札を潜り抜けたカイムと並んで。
「私、この世界の桜をまだ見た事無くって。桜も大好きだけど、紅葉も大好き」
 ……両方見れるって最高ですよね、と。
 別の世界では春の季節に綻ぶそのいろを、まだこの世界では清川・シャル(無銘・f01440)は見たことがないから。
 春と秋、普段は交わることのない季節の彩りを同時に見られることに、わくわくと心躍らせる。
 いえ、勿論、猟兵のお仕事も忘れないですよ? 忘れていませんけれど。
「とはいえ、先にちょっと楽しむくらいいいですよね?」
 そうきょろりと巡らせるシャルの青眼が探すのは、夜汽車の欠かせないもの。
 それは――。
「『秋の幕の内弁当』ってのは何処に売ってるんだ? 汽車内で販売してくれるのか……そうじゃないなら乗り込む前に買えば良いのか?」
 そう、美味しい駅弁!
 カイムがそう首を捻りつつ口にすれば、それを耳にした駅員が教えてくれる。
 ホームにも売り場があるし、汽車の中でも買えるのだと。
 乗るべき夜汽車がホームに到着したのを見て、とりあえず中に乗り込んでから。
 景色が一等見えるペアシートに並んで座ったふたりは、丁度通りかかった売り子へと声を掛けて。
「とりあえず三個買うぜ。種類が何種類かあるのか。栗と鮭は鉄板、後はオススメを一つ」
 栗と鮭、そして売り子おすすめの、紅葉のかたちの具材いっぱいな秋のちらし寿司。
「わあ、お弁当そんなに食べるの?」
 お目当ての弁当を3つ買い込んで抱えるカイムに、シャルは瞳をぱちくりさせつつも。
「シャルは1個ですよ。食べ切れるかな……」
 そうそっと、色々な秋の弁当並ぶワゴンを見つめてから。
「牡蠣弁当とかあります? 贅沢かな?」
 ありますよと手渡されたお目当ての牡蠣弁当にほくほくしながらも、そう首を傾けるけれど。
 ちょっぴり贅沢しても、大丈夫。
 猟兵に支給された『サアビスチケット』を提示すれば無問題です!
 そんな美味しそうな弁当に加えて、もうひとつ。
「あ、茶も一つ。シャルは? 飲むか?」
「あ、お茶欲しいです。あったかいやつ」
 紅葉が色づく今の秋風は、ひやりと冷たいから。あたたかいお茶も一緒に。
 そして夜汽車がゆっくりと動き出せば、ではいただきます、と。
 シャルは丁寧に両手を合わせて。
 カイムも、一個目の栗の弁当をぱかりと開けてみれば。
「贅沢。絶対、美味い!」
 目の前にも、贅沢で絶対に美味しいに決まっている秋の彩りが。
 けれど、3つの弁当も勿論だけど。
 やはりカイムが目を奪われる秋は……シャルと並んで観る、紅葉が織り成す景色。
 シャルも、はむりとゆっくりマイペースに、ぷりぷりの牡蠣を摘まんで口に運び、舌鼓をうちながらも。
 眼前に広がる、燃える様な紅葉のいろに、感動して思わず手が止まってしまう。
 そして漏れるのは、感嘆の言葉の溜息。
「いいなぁ……2人で見るのが楽しみだったの」
 この季節にしか見られない、特別ないろ。
 そんな秋の景色を、こうやってふたり並んで、一緒に観たかったし。
「言葉も出ねぇ。ホントに……スゲェわ」
 自分と同じ様に感動しつつも、2つ目の弁当を開けたカイムに。
 白金の髪を揺らし、こくこく頷きながらも。
「綺麗だね。美味しいね」
 シャルは嬉しそうに言った後、ふと笑みを零して。
「あ、カイムのほっぺにご飯粒ついてますよ」
 鮮やかな紅葉の紅に色づいた青の瞳を細めて、伸ばしたその手を、彼の頬へと伸ばす。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
犬の影朧、か…
ん、くろ丸も、気になる?
(語りかけた相棒は、空の薫りを読んでいる

所でくろ丸、聞いた…?
『期間限定:栗抹茶大福と桜クリーム大福の大福セット』…
スイーツ好き、更にもちもち愛好家として、絶対に逃せない
…逃さない

大福に釣られたとはいえ、夜汽車も紅葉も心惹かれる
くろ丸のと二人分、弁当を買って
件の女性を遠目に眺められる席へ
表情、目線、持ち物…さりげなく確認する

…汽車の揺れる音は、良いね
何だか温かい…安心する音
圧倒的な紅は…眩しくて、瑞々しくて、でも綺麗で…何だか胸が苦しい
紅って、こんな色だったね

…あ
(くろ丸が嬉しげに、鼻先に落ちた紅の葉にじゃれている
そっと取ってやり…その鼻を擽ったりして遊ぶ



 年中桜が咲き誇る世界を、今の季節だけ支配する紅。
 そんな彩りたちが作り出した紅葉のトンネルをゆくという、展望夜汽車に乗り込んで。
「犬の影朧、か……ん、くろ丸も、気になる?」
 青和・イチ(藍色夜灯・f05526)が語りかけるのは、紅に燃える空の薫りを読んでいる相棒。
 目的は、何処かに匿われているという影朧の事件を解決すること。
 勿論、そんな予知された犬の影朧とやらは、気になるけれど。
「所でくろ丸、聞いた……?」
 顔筋はやはり仕事をしないとはいえ、もうひとつ、イチが気になっているもの。
 それは、スイーツ好き、更にもちもち愛好家としては、絶対に逃せない存在――。
「……『期間限定:栗抹茶大福と桜クリーム大福の大福セット』」
 顔は恐いけれど中身は懐こい女子だから、きっとくろ丸も気になったに違いない魅惑のスイーツ!
 ……逃さない。
 表情こそ変わらないが、そう眼鏡の奥の藍色の瞳に期待の色を宿しながらも。
 ふと大きな車窓へと視線を巡らせれば――眼前に広がる、燃える様な景色。
 大福に釣られたとはいえ、夜汽車にも紅葉にも、やはり心惹かれてしまう。
 そしてくろ丸のと二人分、弁当を買った後。
 車内をぐるりと見回してから、イチは選んだ席に座る。
 影朧を匿っていると予知された女性・澄子を、遠めから眺められる席に。
 その表情や目線、持ち物……得られる情報を逃さぬよう、さりげなく確認しながらも。
「……汽車の揺れる音は、良いね」
 ――何だか温かい……安心する音。
 心地良い揺れとともに優しく耳に響くそんな音に、そっとイチは瞳を細めてから。
 改めて、車窓に流れてゆくいろへと目を移す。
(「圧倒的な紅は……眩しくて、瑞々しくて、でも綺麗で……何だか胸が苦しい」)
 夜の空を焦がすように燃え上がり、眼前の世界を侵食するのは、鮮烈で刹那的ないろ。
「紅って、こんな色だったね」
 そうふと、言葉を紡いだ……その時。
「……あ」
 ひやりと吹き抜ける秋風に運ばれて。
 ひらり迷い込んできたのは、小さな紅のひとひら。
 くるり舞い、鼻先に落ちた紅の葉にじゃれているくろ丸は嬉しげで。
 手を伸ばしたイチは、それをそっと取ってやってから、ふりふりと振って遊んであげる。
 その鼻をこしょこしょと、紅のいろで擽る様に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
随分、希有な事もある物だ
夜汽車に揺れ、頁辿るは『紅葉行灯』の編
はじめて、その本を読み耽った記憶は
未だ真新しく、複雑な情が浮かびゆく

僕も『友人』を執筆し続ける身だけれども、
先生は『心中』の題目が御好きなのかな
そうして、物語に耽る読者もまた
其れに、惹かれてしまうもの、なのかな
――死は別離としか、成り得ないのに

子供の頃に聞いた慰めのように
死して、ふたつが星となるとしても
見上げる夜空の星は散らばって
添う子は何処にも居ない、のに

夢見て遺され更にと追うは、
余りにも哀れだと、本を閉じる
縋る想いを知らぬ故の勝手であれ
ふたりを繋ぐは死でなく、
想いであれば良いと僕は願おう

――互いに良い旅と、なりますように



 桜の彩りに満ちているはずの世界に燃え上がる、刹那の紅。
 それは今まさに頁辿る、『紅葉行灯』のものと同じいろ。
「……随分、希有な事もある物だ」
 ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)の口からふと零れる、そんな言の葉。
 夜汽車に揺られ手に取っているこの本を開くのは、これがはじめてではなく。
 最初にこの物語を読み耽った記憶は未だ真新しく――そして浮かびゆくのは、複雑な情。
(「僕も『友人』を執筆し続ける身だけれども、先生は『心中』の題目が御好きなのかな」)
 いや、この物語を綴った作家だけではない。
 紡がれた独特な彼の世界に耽り、それを夢中で辿る読者もまた。
(「其れに、惹かれてしまうもの、なのかな」)
 そしてふるりと、ライラックは小さく首を横に振る。
 ――死は別離としか、成り得ないのに、と。
 それは例え、幼き頃に聞いた慰めのように……死して、ふたつが星となるとしても。
(「見上げる夜空の星は散らばって、添う子は何処にも居ない、のに」)
 ぱたりと、ライラックは『桜ノ匣庭』と題されたその本を閉じる。
 ……夢見て遺され更にと追うは、余りにも哀れだと。
 そして、車窓に流れゆく燃える炎の如き彩を眺めながら願い綴る。
(「縋る想いを知らぬ故の勝手であれ……ふたりを繋ぐは死でなく、想いであれば良いと」)
 ……同じ夜汽車に揺られている貴女は今、誰を想い何を考えているのか。
 紅の世界の中、これから綴られんとする物語の重要な登場人物へと、そう紫の視線を一瞬向けて。
 メモ紙揺れる帽子のつばをそっと少しだけ上げて、ライラックは件の彼女へと、そっと言の葉を贈る。
 ――互いに良い旅と、なりますように……って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
あらすじは清史郎殿から聞きましたけど、短編小説ということですし移動中に読んでみようかな。もしかしたら、影朧を匿っている場所に繋がることもあるかもしれないし。
車内灯が消えて、トンネルを通過する時は紅葉を楽しんで。
人気の観光スポットと言われるのも納得の一面の紅に思わずため息をこぼし。

紅一色に染まる景色を眺めながら、澄子殿の願いを考える。
愛する人に先立たれるのは辛いもの。
生き残ってしまった罪悪感、もう会えない寂しさ…。
まして、心中をしようとして自分だけ生き残ってしまったのなら尚更。
『紅葉行灯』のファンでその内容と自分の境遇を重ねているのなら澄子殿の願いは…。



 ゆっくりと夜汽車が発車したことは、覚えている。
 けれど……視線を落としたその物語の世界に、耽ってしまった。
 そのあらすじは事前に聞いていたけれど、短編小説だというので読んでみようかと。
(「もしかしたら、影朧を匿っている場所に繋がることもあるかもしれないし」)
 そう、吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は『桜ノ匣庭』と題された本を開いて。
 今回の事件に関係しているという小説『紅葉行灯』の頁をめくってみたのだが。
 いつのまにか、その筆力と独特の世界に、引き込まれてしまった。
 そんな狐珀を現実の世界へと引き戻したのは、ふいに落ちた車内の照明。
 照明と共に速度を落とした夜汽車が走り抜けるのは、紅葉が織り成す紅のトンネル。
 狐珀は本を閉じ、暫し見事に色づいた秋の景色を楽しんで。
 ――人気の観光スポットと言われるのも納得、と。
 眼前に広がる一面の紅のいろに、思わず感嘆の溜め息を零す。
 そして秋の風景を眺めながら、ふと……同じ夜汽車に乗っている、澄子という未亡人について考えを巡らせてみる。
 澄子がわざわざ足しげく神社に通い、馳せるその願い。
(「愛する人に先立たれるのは辛いもの。生き残ってしまった罪悪感、もう会えない寂しさ……まして、心中をしようとして自分だけ生き残ってしまったのなら尚更」)
 愛する人とふたり、彼女がその時選んだのは――共に死ぬことであった。
 けれど、ひとり生き残ってしまった現実の残酷さ。
 狐珀はぎゅっと、閉じた本をその腕に抱きながらも。
(「『紅葉行灯』のファンでその内容と自分の境遇を重ねているのなら澄子殿の願いは……」)
 ついさっき辿ったばかりの物語を思い返しつつ。
 少し離れた席に座っている澄子へと、複雑ないろに染まった視線をそっと向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大路・千尋
爺ちゃん(f22646)と初めての汽車の旅
ずっと引きこもってて最近爺ちゃんに引っ張りだされたからこうやって出かけるのも久しぶりだぜ!
母さんたちと出かけた時に負けないくらい楽しみたい

とりあえず腹がすいては戦は出来ぬ、だな
爺ちゃん、お弁当食おうぜー!

どんなお弁当だろうな
最近、食事が楽しみになってきたんだ
やっぱり誰かと食べると美味しいし、手の込んだものは嬉しいよな
引きこもってた頃は忘れてたけどさ…

食べながら、着いた時どこ行くかも決めなきゃな
爺ちゃんもオレも甘いもの好きだしそこらへんは外せねぇよなぁ
…あと、母さんたちの写真が入った古びた写真立てを飾るものがあるところ行けたら…まぁ、あったらだがな!


深榊・楓
●POW
千尋君(f22633)と一緒に、夜汽車の旅を楽しむつもりじゃよ。
遠方への旅。それも、誰かと共に行く事は初めての経験じゃから、とても新鮮に感じるのう。
鮮やかな紅葉の道を潜り抜けて行くとは、中々雅なもの。今回の旅が、お互いの良き思い出とならん事を。

さて。車両は幾つか分かれておる様じゃが…美味しいお弁当を食べながら、ゆっくり過ごしたい所じゃのう
千尋君も、それで大丈夫かえ?

食事が用意されたら、早速頂くとしよう
窓から見える紅葉を眺めながら食べる弁当も、中々乙なもの。
到着した後は何処に行こうか迷うのう…。
儂はやはり、和菓子を求めて茶屋に行きたい所じゃが…千尋君は何処に行きたいか希望はあるのかの?



 久しぶりのお出掛けを彩るのは、真っ赤に燃え上がる炎の様な紅葉。
(「ずっと引きこもってて最近爺ちゃんに引っ張りだされたからこうやって出かけるのも久しぶりだぜ!」)
 見た目やその仕草は、どこか王子さまみたいだけれど。
 大路・千尋(未熟な王子・f22633)も年相応の少年、初めての汽車の旅に心躍らせ、周囲に視線を巡らせながらも思う。
 ……母さんたちと出かけた時に負けないくらい楽しみたい、って。
 それは、千尋の隣にいる深榊・楓(譚食み・f22646)にとっても同じ。
 夜汽車に揺られゆく、遠方への旅。
 それも誰かと共に行く事は、楓にとっても初めての経験……だから、とても新鮮に感じるし。
(「鮮やかな紅葉の道を潜り抜けて行くとは、中々雅なもの」)
 秋のいろに満ちる中を走る夜汽車からの景色は、風情溢れるものであるだろう。
 そしてまだ今は生意気盛りではあるけれど、子どもらしい表情を宿す隣の千尋をふと見つめ、思う。
 ――今回の旅が、お互いの良き思い出とならん事を、と。
 それから、ホームに到着した列車内へとふたり並んで足を運んで。
「さて。車両は幾つか分かれておる様じゃが……美味しいお弁当を食べながら、ゆっくり過ごしたい所じゃのう」
 ……千尋君も、それで大丈夫かえ? と。
 展望車のふたり席へと腰を下ろしながら訊ねた楓に。
 真っ先に楽しみたいと、千尋が声を上げたのは。
「とりあえず腹がすいては戦は出来ぬ、だな」
 ――爺ちゃん、お弁当食おうぜー!
 そう、列車の旅にはやはり欠かせない、美味しい駅弁!
 通りかかった売り子から、おすすめだという『秋の幕の内弁当』を二人分購入して。
「早速頂くとしようかのう」
「どんなお弁当だろうな」
 それぞれ蓋を開けてみれば――そこにも、いっぱい詰まった、美味しそうな秋が。
 大きく取られた展望車の窓に流れゆく、夜に浮かび上がる紅のいろ。
「窓から見える紅葉を眺めながら食べる弁当も、中々乙なもの」
 ただでさえ、秋は美味しいものが沢山だというのに。
 目でも舌でも、贅沢に秋を堪能しつつ、弁柄の瞳を細める楓。
 千尋も、紅葉型にくり抜かれた人参を摘みながら、こくこくと頷いて。
「最近、食事が楽しみになってきたんだ。やっぱり誰かと食べると美味しいし、手の込んだものは嬉しいよな」
 引きこもってた頃は忘れてたけどさ……って、そう呟きを零す。
 刹那、ふっと車内の照明が落ち、紅のトンネルに差し掛かった夜汽車は走る速度を落とす。
 そんな列車に揺られ、車窓の外の景色を共に楽しみながら。
 こうやってふたり並んで味わう秋は……やはり格別。
 そして光に照らされた紅の風景と美味しい味覚を堪能しつつも。
 ふと始めるのは、作戦会議。
「着いた時どこ行くかも決めなきゃな」
「到着した後は何処に行こうか迷うのう……」
 夜汽車でゆく終着駅、そしてそこにあるという神社は、色々と楽しめるものがあると聞いたが。
「儂はやはり、和菓子を求めて茶屋に行きたい所じゃが……千尋君は何処に行きたいか希望はあるのかの?」
「爺ちゃんもオレも甘いもの好きだしそこらへんは外せねぇよなぁ」
 甘い物好きなふたりの意見もばっちり一致、茶屋の和菓子は外せません!
 それから、爺ちゃんこれ紅葉だぜ! と。
 形に抜かれた人参を、ひょいっとひとつ摘みながら。
「……あと、母さんたちの写真が入った古びた写真立てを飾るものがあるところ行けたら……まぁ、あったらだがな!」
 千尋は摘まんだそのひとひらを、はむりと口へと運んだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リシェア・リン
栴くん(f00276)、オクちゃん(f10977)と

この世界にも紅葉ってあるのね、びっくり…!
真っ赤に色付いた世界も素敵よね、わくわくしちゃう

私も珈琲にしようかな、お砂糖とミルクたっぷりで!
いつも紅茶ばかりだと、この香りは癖になりそう

…あ、あれは…噂に聞くエキベンね…!
うう、でもお茶屋さんで食べるのも…。
…どっちも、は駄目かな…(尻尾をへなっと)

席に座ったら、窓の外に目をやりながら尻尾ぱたぱた

わ…凄い…!
一面の赤い世界に、思わず息をのんで

…そうね、私達は楽しんじゃってるけど
澄子さんはどんな気持ちでこの景色を見てたのかな

…やだもう!駄目ね、しんみりしちゃって
到着してからも、楽しみが一杯なんだから


生浦・栴
うさすずの(f10977)と、双髻の(f00073)と

途中の販売で温かい飲み物は仕入れよう
お勧めを聞きたいところだが、大正といえば矢張り珈琲か。俺はブラックで

ところで二人共、あれは良いのか?
視線で弁当を示せばそれぞれらしい反応で自然頬が緩む
境内に茶屋もあると聞くが、別腹扱いになりそうだな

展望車の座席の造りに感心しながら手頃な席へと
速度が落ちればそろそろだろうか

トンネルに入れば暫し魅入って言葉も少なく
しかしまあ、何だな
純粋に楽しめる余力があればまたと無い景勝だが
追い詰められた者ならば血のような色に酔うて悪夢の一つも見そうだな

まあ二人は心配要らぬな
灯りも戻ったか
駅に着く前に弁当は食べきってしまおう


日隠・オク
リシェアさん(f00073)、栴さん(f00276)と

紅葉を見るのは楽しみです

秋の、幕の内、弁当
(名前の響きにときめいている

どっちも、食べましょう(熱い視線を送る

お弁当を買って展望車へ
流れていく景色には目を離せません
でもお弁当にも目を離せません……
秋というと、栗とか
色とりどりの、お弁当をつつきます、おいしい……

スピードが落ちたら紅葉のトンネル
赤い赤い色には目を奪われます
私は座っているのに、景色がどんどん変わっていく、いろんな紅葉がみえますね
普段見ない光景だから、余計に小説に重ねてしまうのかもしれません
本当にきれいな景色です……



 いつもならば、踏みしめ行くこの世界の道は、桜の彩りで敷き詰められているのだけれど。
 この秋の時期だけは特別……一面燃える様な、紅のいろへと変わる。
「この世界にも紅葉ってあるのね、びっくり……!」
 きょろり巡らせる澄んだ紫水晶に、小さな炎の如き紅を映しながら。
 リシェア・リン(薫衣草・f00073)はそんな驚きと同時に、心躍らせる。
「真っ赤に色付いた世界も素敵よね、わくわくしちゃう」
 そんなリシェアの言葉に、藍色の髪をこくこくと揺らしながら頷く、日隠・オク(カラカラと音が鳴る・f10977)。
「紅葉を見るのは楽しみです」
 そう顔を見合わせ、秋のお出掛けにウキウキとしているふたりと並んで歩きながら。
 生浦・栴(calling・f00276)が見つけたのは、駅の売店。
 秋の夜は、やはり吹く風もどこかひんやりと冷たいから。
 仕入れておくのは、ほっと心も体も温まるような、あたたかい飲み物。
 売店の店員にお勧めを聞きたいところだけれど。
「大正といえば矢張り珈琲か」
 俺はブラックで、と注文した栴に続いて。
「私も珈琲にしようかな、お砂糖とミルクたっぷりで!」
「じゃあ私も……お砂糖とミルクたっぷりの、カフェオレにしてみます」
 ふたりも栴と同じ珈琲を。
 でも同じ珈琲でも、ミルクと砂糖いっぱいの甘い珈琲に。
 売店員から受け取れば、掌にじわりと伝わる温もりと、ふわり漂う深みのある香り。
「いつも紅茶ばかりだと、この香りは癖になりそう」
「すごく、良い香りです……」
 そう瞳細めるリシェアとオクに。
「ところで二人共、あれは良いのか?」
 ふと栴は声を掛けつつも、視線を売店に並ぶあるものへ。
 その紫の瞳が示すもの――それは。
「……あ、あれは……噂に聞くエキベンね……!」
「秋の、幕の内、弁当」
 そう、秋の味覚がぎっしりと詰まった駅弁『秋の幕の内弁当』。
 瞳を見開きキラキラと輝かせ、名前の響きにときめきを感じているふたりの姿をみれば。
 それぞれらしい反応で、栴の頬も自然と緩んでしまう。
 けれど、ハッと何かに気付いたリシェアは、尻尾をへなっとさせながらも呟く。
「うう、でもお茶屋さんで食べるのも……」
 夜汽車で向かう目的地の神社には、甘味などを楽しめる茶屋もあると聞いている。
 秋の味覚いっぱいの駅弁も、茶屋で食べる甘味も、どっちも捨てがたいところだけれど。
「……どっちも、は駄目かな……」
 やはり、どちらかなんて選べません……!
 そしてリシェアの声を聞いた、オクも勿論。
「どっちも、食べましょう」
 大きく頷いて、熱い視線を!
 そんなふたりのやり取りを聞いて、栴は3人分の『秋の幕の内弁当』を追加で注文する。
「境内に茶屋もあると聞くが、別腹扱いになりそうだな」
 茶屋の甘味は食後のデザート。デザートは別腹ですから!
 そして購入した駅弁を抱え、ホームに入ってきた夜汽車へといざ乗車して。
 見慣れた普通の列車とは違った、大きな窓の方へと向いた展望車の座席の造りに感心しながら、ふたりと共に皆で十分座れる広めの席へと座った栴は。
 ゆっくりと動き出した夜汽車の旅を堪能するべく、窓の外の景色に目を向ける。
 その色は、燃える様ないろをした紅葉が織り成す、秋の彩り。
「わ……凄い……!」
 リシェアも尻尾ぱたぱた、思わず声を上げて。
 オクも、流れていく景色から目が離せない……のだけれど。
 でも目を離せない秋は、美しい景色だけではなく。
「秋というと、栗とか……」
 美味しそうな秋の味覚いっぱいの駅弁にも、目が釘付けに。
 そして色とりどりの弁当をつつきながら零れるのは、勿論。
「おいしい……」
 ぱあっと咲かせた笑顔と、感嘆の言の葉。
 そんな秋の美味しさが詰まった駅弁を暫し堪能していれば。
 ふっと落ちる、車内の照明と走る夜汽車の速度。
 刹那、眼前に広がるのは――息を飲むほどの、鮮烈な紅の世界。
 一面の紅に、暫し魅入って言葉も思わず出なくなるけれど。
 しかしまあ、何だな……と、ふと口を開いたのは栴。
「純粋に楽しめる余力があればまたと無い景勝だが、追い詰められた者ならば血のような色に酔うて悪夢の一つも見そうだな」
 ただひたすらに、赤い赤いその色。
「私は座っているのに、景色がどんどん変わっていく、いろんな紅葉がみえますね。普段見ない光景だから、余計に小説に重ねてしまうのかもしれません」
 燃える様な紅は、見る人に様々な思いを起こさせる。
 今の自分たちのように楽しめる者もいれば……血の如き悪夢の様だと思う者もいるかもしれないし。
 その余りの美しさは何処か非日常的だから、筆力のある小説の情景と現実を重ねてしまっても、無理はないかもしれない。
「……そうね、私達は楽しんじゃってるけど、澄子さんはどんな気持ちでこの景色を見てたのかな」
 リシェアはふたりの言葉にそう、同じ夜汽車に乗車しているという澄子のことを思い紡ぐけれど。
「……やだもう! 駄目ね、しんみりしちゃって。到着してからも、楽しみが一杯なんだから」
「そうですね。それに、本当にきれいな景色です……」
 感傷に浸るのはほどほどに、やはり楽しむのが一番。
「まあ二人は心配要らぬな」
 栴は、弁当も景色も目一杯堪能する、リシェアとオクを映した瞳を細めた後。
 灯りも戻ったか、と。再び照明が灯った車内を一通り見回してから、ふたりを促す。
 燃える様な紅のトンネルを潜り抜け、秋の夜を走る夜汽車が向かう先。
 ……駅に着く前に弁当は食べきってしまおう、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
WIZ
アドリブOK

あの桜の介添人の著者の作品でまた心中が関わってんのな。
それだけ人を引き付けるのは凄いとは思うけど、なんでか厄介ごとの種になってるのは気のせいか。
次は白とか青かね?
しかし願掛けに汽車をつかって通うなんてなんて羨ましい。(いくらサアビスチケットあってもそれは出来ない性格故に)
…まぁ今は紅葉と夜汽車を楽しむか。どこまでも桜が咲いてる世界だと思ってたから、ちょっと意外かな。
幻朧桜以外は普通に四季があるんだろうか。彼岸花咲く廃神社もあったんだしあるんだろうな。
食事して景色見逃すのももったいない気がするから温かい飲み物だけ買って、あとは話は聞き逃さないよう気を付けて。



 ガタンゴトンと、夜汽車に揺られ進み行くのは、紅のいろに染まった道。
 この世界を染める彩りは、桜によるものだという印象が強いけれど。
 眼前に広がる燃える様な紅は、深まる秋のこの時期だけの、特別ないろ。
 そんな紅葉のトンネルを走り抜ける夜汽車の車内で。
 黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)はふと、思考を巡らせる。
(「あの桜の介添人の著者の作品でまた心中が関わってんのな」)
 今回予知された事件に関わっているという、一篇の小説。
 それを綴った作家の物語が影朧の事件に関わっているという事案は、これがはじめてではない。
(「それだけ人を引き付けるのは凄いとは思うけど、なんでか厄介ごとの種になってるのは気のせいか」)
 ……次は白とか青かね? なんて思いながらも。
 今のところ作家本人ではなく、事件を引き起こしているのは、前回も今回も、彼の読者であるのだが。
 その作家自体にも胡散臭さを感じずには、流石にいられない。
 それから瑞樹は、青い瞳に映るひとりの女性の様子を探りつつも思う。
(「しかし願掛けに汽車をつかって通うなんてなんて羨ましい」)
 瑞樹自身、いくらサアビスチケットがあっても、どうもそれは出来ない性格だから。
 けれど、ふと展望車の大きな車窓へと目を向けて。
「……まぁ今は紅葉と夜汽車を楽しむか」
 この世界は、どこまでも桜が咲いてると思ってたから、ちょっと意外かな、と。
 燃え上がる様な紅のいろに染まった景色を暫し眺める。
(「幻朧桜以外は普通に四季があるんだろうか。彼岸花咲く廃神社もあったんだしあるんだろうな」)
 まだ訪れて間もないこの世界、未知な部分も沢山あるけれど。
 瑞樹は通りかかった売り子から、温かい飲み物だけを購入する。
 ――食事して景色見逃すのももったいない気がするから、と。
 そしてひやりとした秋風を感じ、飲み物で暖を取りながら、さり気なく耳を聳てる。
 紅燃える世界の中……澄子が零す言の葉を、聞き逃さないようにと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水標・悠里
窓の外から眺めるばかりで満足していましたが、夜汽車と車窓からの風景はまた別格ですね
紅葉を照らすのは月明かりだけだと思っていましたが、照らし出すという方法もあるのですね
ここは是非展望車で見てみましょう

適当に空いている場所を探して落ち着きましょう

鉄道の規則的な音と振動、浮かび上がる紅葉の赤
写真機があれば簡単にこの景色を写し取ることができるのに
この時ばかりは不器用な自分が悔やまれます

紅葉の次は雪景色
雪解けが来れば次は花の盛り。過ぎれば青葉が生い茂る

どの季節も、天気も、楽しめそうな気すらしてきました
昔は想像だにしなかった、まだ知らない世界が沢山あるのですね

このまま夜更かしでもしてみましょうか



 この世界をいつも染めるいろは、桜の彩りが織り成すもの。
 けれど、眼前に広がる景色を今支配するのは、燃えるような紅。
 水標・悠里(魂喰らいの鬼・f18274)にとってそのいろは、窓の外から眺めるばかりで満足していたものなのだけれど。
(「夜汽車と車窓からの風景はまた別格ですね」)
 紅葉を照らすのは月明かりだけだと思っていたけれど。
 より美しく燃え上がらせるかのように、照らし出される彩りというのは珍しくて。
 ……ここは是非展望車で見てみましょう。
 そうきょろりと青の瞳を車内に巡らせ、空いている席へと腰を落ち着ける。
 ガタンゴトンと規則的に揺れる音や振動を感じながら、車窓へと目を向ければ。
 秋の夜に鮮烈に浮かび上がる、紅葉の赤が。
 それは、できればこの旅が終わっても残しておきたいような彩だけれど。
(「写真機があれば簡単にこの景色を写し取ることができるのに」)
 ……この時ばかりは不器用な自分が悔やまれます、と。
 そういう機械を駆使するのがどうも不得手な悠里は、そう思ってしまうけれど。
 写真で残せないのならばと……見つめる青の瞳に、ひらりと舞わせる。
 秋の夜に沢山灯る、小さき炎の様な紅葉たちを。
 そして、悠里は知っているから。
 ――紅葉の次は雪景色。雪解けが来れば次は花の盛り。過ぎれば青葉が生い茂る。
 瞳に焼き付けているこのいろが、今だけのものであることを。
 けれど、その刹那は儚くもあり……同時に、楽しくもあるもの。
(「どの季節も、天気も、楽しめそうな気すらしてきました」)
 それは、昔は想像だにしなかった気持ち。
「まだ知らない世界が沢山あるのですね」
 悠里は、燃え上がる様なそのいろの刹那にどこか己を重ねながらも。
 知らないことを知るという楽しみに、そっと紅葉灯る瞳を細める。
 ――このまま夜更かしでもしてみましょうか、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【花守】
(愁える未亡人、ってのはソレこそ小説なんかじゃよく目にするが、いざ目の当たりにすると何とも言えない気持ちになるな――なんて軽く物思いに耽りつつ。
車窓の景色を楽しむ傍ら、時折そこに映り込む婦人の様子も密かに伺ったり、件の小説に目を通したり――していれば案の定良い匂いが漂い始め)
…お前はホントどこまで行っても食欲の秋だな!
いや、ウン、いーよ、好きにしてて(遠い目)
っておかずの横取りはやめろー!
ソレよかホラ、外、外!
速度落ちてきてるし今は展望楽しむ時間!
まて、おすわり!
…いや今のは言葉の綾!

紅葉の路と、心地好く揺れる夜汽車
異界の秋も趣深くて良いモンだな
…またコッチは白一色でアレだケド!


千家・菊里
【花守】
(件のご婦人に近い席でのんびりと。
車窓を楽しんだり窓越しにご婦人の様子も見たりしつつ――最近物思いが多い腐れ縁には何も触れず、読書を尻目にのほほんと秋の幕の内弁当を広げて手を合わせ)
ふふふ、頂きます
おやお邪魔しました?
でも腹拵えは重要ですし、何より折角の秋の味覚を楽しまないなんて勿体無いですからねぇ
あ、この紅葉の天婦羅美味しいですよ
(好きに、と言われたのでさらりと伊織のおかずも狙い)
ああ、これが噂の――本当に見事な展望で
ところで今の発言は、良い子にしてればくれるという事で良いですか?

紅葉の風情も味覚も、やはりまた一味違って好いものですねぇ
この一面の紅の前では白等霞むというものですよ



 読者に大きな影響を与える様な、この世界の人気作家も小説に採用する生い立ち。
(「愁える未亡人、ってのはソレこそ小説なんかじゃよく目にするが、いざ目の当たりにすると何とも言えない気持ちになるな」)
 物語の中では、珍しくはないそんな設定も。
 実際にその境遇にある者を見れば、小説ではさらりと読めたものが、途端に複雑な気持ちになってしまう。
 そう軽く物思いに耽りつつも、車窓の景色を楽しむ傍ら。
 呉羽・伊織(翳・f03578)は、燃える様な秋のいろ灯る瞳を、密かに車内にも巡らせて。
 何処か憂いを帯びた未亡人の姿を窺い、ぱらりと手にした本を開いて、『紅葉行灯』と題された件の小説に目を通したりしてみる。
 けれど……やはり、案の定。
 漂い始めるのは、美味しそうな良い匂い……!?
 そして目の前には、購入していた『秋の幕の内弁当』の蓋をちゃっかり開いて手を合わせる、千家・菊里(隠逸花・f02716)の姿が。
 いえ、車窓に流れる紅のいろを楽しんだり、窓越しに澄子の様子を見たりもきちんと一応していますが。
 最近物思いが多い腐れ縁には何も触れず、読書を尻目に――ふふふ、頂きます、と。
 菊里が目一杯満喫する気満々なのは、やはり食……秋の味覚です!
 そんな、のほほんと『秋の幕の内弁当』を広げ手を合わせ笑む、いつもの様子に。
「……お前はホントどこまで行っても食欲の秋だな!」
「おやお邪魔しました?」
 思わず伊織は、これまたいつも通りツッコミを入れるけれど。そんな声にもきょとんと首を傾げてみせつつ、続ける菊里。
「でも腹拵えは重要ですし、何より折角の秋の味覚を楽しまないなんて勿体無いですからねぇ」
「いや、ウン、いーよ、好きにしてて」
 通常運行すぎるそんな様子に、伊織もようやく弁当を広げながら、遠い目に。
 けれど、刹那ふと伸びるのは……菊里の手。
「あ、この紅葉の天婦羅美味しいですよ」
「っておかずの横取りはやめろー!」
 ……好きに、と言われたので、と。
 さらりと本当に好きに、紅葉の天婦羅を狙ってきた菊里から、何とかおかずを死守しつつも。
「ソレよかホラ、外、外! 速度落ちてきてるし今は展望楽しむ時間!」
 ――まて、おすわり!
 伊織は自分の弁当の危機を回避するべく、その食い気を少しでも逸らさんと試みるも。
 菊里はちらり、紅葉に染まる車窓の景色に目を遣った後。
「ああ、これが噂の――本当に見事な展望で」
 ――ところで今の発言は、良い子にしてればくれるという事で良いですか? と。
 やはりまだ、おかずの横取りは諦めていない模様……!?
「……いや今のは言葉の綾!」
 そんな菊里の言葉に、ふるふると横に首を振りながらも。
 伊織は気を取り直し、ふと落ちた照明と速度の夜汽車がゆく、紅のトンネルのいろへと目を向ける。
「紅葉の路と、心地好く揺れる夜汽車。異界の秋も趣深くて良いモンだな」
「紅葉の風情も味覚も、やはりまた一味違って好いものですねぇ」
 はむりと秋の味覚を幸せそうに口に運びながらも、菊里も眺める流れゆく秋のいろ。
 その彩りは、燃えるような紅葉の赤一色。
 そして、それを共に鑑賞する顔ぶれは、これまたいつも通り。
「……またコッチは白一色でアレだケド!」
 紅葉の様な美しい赤の存在は、残念ながら今回もありませんけれど。
 そんな伊織の相変わらずな言葉に、紅葉のカタチに抜かれた人参を摘まみながら。
「この一面の紅の前では白等霞むというものですよ」
 しっかり味の染みたそのひとひらを、菊里はぱくりと口にする。
 まるで小さな炎の如く秋の夜に舞う、今だけの特別ないろ。
 紅に燃えるトンネルを、夜汽車は潜り走り抜ける。
 けれど、秋の景色も、勿論美味しい秋の味覚も――終着駅に着くまでの時間、まだ存分に楽しめるから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『桜舞う幻朧神社』

POW   :    くまなく神社の中を歩いてみる

SPD   :    事前に調べておいた神社の情報を元に探索してみる

WIZ   :    社の周辺を探索してみる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※お知らせ※
 本日【12/7(土)】中に、追加情報を記載したOPを掲載しますので。
 プレイング受付は、その断章追加後から開始いたします。
 送信締切等のお知らせは、MS個別ページ等でご確認ください。


●紅葉行灯
 ちょっぴり長いはずの夜汽車の旅も、気付けばあっという間。
 紅のトンネルを走り抜け、辿り着いた終着駅に降り立てば。
 眼前に伸びるのは――両脇に行灯燈った、長い長い、神社まで続く石段。
 それを上るのは、少し大変かもしれないけれど。
 ゆっくり一歩ずつ進んでいけば……見えてくるのは、天に近い立派な本殿。
 そんな社へと向かう人々を導き歓迎する、そのトンネルのいろは、紅葉と桜の彩り。
 他の世界では滅多に共存することのない、秋と春のいろが綯い混じって。
 じゃれ合うように葉や花弁が舞い踊っては、積もってゆく。

 そして、石段を頑張って上り切れば。
 眼下に広がるのは、美しくそして少し不思議ないろをした絶景が。
 同時に、石段を上った達成感と共に、ちょっとだけ足に感じる疲労感。
 でも神社へと参拝を済ませた後、そんな疲れを癒してくれるのは、ほっこりあたたかい足湯。
 秋の夜風はもう随分と、ひやりとした冷たさを帯びてきているから。
 気持ち良い足湯に浸かりながら、紅葉と桜の景色を見下ろすのも良いだろう。

 休憩も兼ねて、茶屋で一服するのもまた、楽しみのひとつ。
 この世界でしか見られない、紅と桜色の景色を眺めながら。
 いただけるのは、一通り取り揃えられてある定番の和菓子や飲み物は勿論。
 注目は、この季節限定の甘味――『栗抹茶と桜クリームの大福セット』。
 紅葉ののった栗抹茶大福は、秋の季節を。
 桜クリーム大福は、この世界に咲き誇る幻朧桜を思わせる。
 夜汽車で弁当を食べて軽く済ませたい場合は、常設の露店も数軒並んでいるので。
 コロッケやメンチカツ、串団子やたい焼きやタコ焼き、ソフトクリームなどの定番のものや飲み物を、おなか具合に合わせて食べ歩きしたり、各所にあるベンチに座って軽く摘むのも良いだろう。

 また、社務所で御守りを買い求めたり、規模は小さいが土産屋もあるので、思い出に何か和小物を探してみるのもいいかもしれない。
 特にこの神社で人気なのは、四季を閉じ込めたようなガラスドームの御守り。
 その澄んだ球体の中に、様々な四季が閉じ込めてあるという。
 手作りの御守りの為、ひとつひとつ、閉じ込められているモチーフは違っていて。
 桜や紅葉などの定番の季節の花や植物をはじめ、冬を思わせる雪の結晶や夏の海を思わせる貝殻など、きっと根気強く探せば、自分だけの好みの御守りが見つかるだろう。

 そして――石段を上ってすぐの、立派な本殿は勿論だけれど。
 紅と桜の絨毯が敷かれた、その奥へと密かに続く道を行けば。
 それまでふたつだったいろが、紅一色へとかわって。
 その奥に佇むのは――通称『紅の社』。
 いつの間にか紅葉のいろしかなくなっている景色に佇むその社に灯るのは、数多の願いの炎。
 蝋燭に願いを込め、その社へと捧げれば、それは叶うと言われていて。
 澄子の目的のひとつは、この社への願掛けのようだ。

 見かけた澄子へと声を掛けるも良し、そっと探って泳がせるのもひとつの手。
 だが誰かの目や気配があると彼女が思えば、なかなか行動に移さないかもしれない。
 そんな彼女が匿っているのは、犬の様な物言わぬ動かぬ影だという。
 勿論、その犬は、澄子が思い込んでいる彼女の夫などでない。
 けれど、この神社の何処かに澄子が匿っているという犬の影朧は、何故この神社に留まっているのか。
 心中に失敗し生き延びてしまった未亡人のものとはまた違った、別の物語が何かあるかもしれないし。
 神社にいる人に聞いてみれば、影朧に対する有益な情報が得られるかもしれない。

 人々を魅了して止まない『紅葉行灯』燈る石段を、さぁいざ上ろう。
 そうすれば――この世界独特の、美しくて不思議ないろをした秋のひとときが、はじまるから。
終夜・還
アメーラ(f03728)が石段を魔法で浮いて進もうとするのには苦笑
エスコートする為に手を差し出して、ねぇ、俺と歩こう?って誘おうかな
ゆっくり行こう、二人ならなんだって楽しいから

登りきったらアメーラを頑張ったねって労って、足湯に誘おうかな
🍦が目に入ったから空いてるのを見計らってササッと二人分購入。アメーラに差し出して隣で一緒に食べよう

(アメーラが)美味しい物と足湯で体力回復したらいよいよお仕事へ
俺は死霊術士らしく境内で人ならざるものに聞いてみよう
人には他の猟兵が聞いて回るだろうしね

俺が主に集めるのは影朧の情報
こっちは人に接触して聞くより澄子に怪しまれなくて済むかなって

澄子はアメーラに任せた


アメーラ・ソロモン
ふわっと浮いて楽をしようとするも還(f02594)に手を差し出されたので喜々として手を取る
一緒に歩くならこんなの苦でもないよ!

体力のない私を還が気遣って足湯に連れてきてくれた
ああ足湯が効く…体力回復がてら還とのんびりしよう
足湯を堪能しながら冷たいものって最高だねぇ

さて、回復したらお仕事しないとね。還とは別に私は澄子殿に話を聞こう
ふふ、任されたとも!
普通の参拝者を装いつつ【情報収集・コミュ力】で話を聞く感じで

澄子殿が見てないときに参拝もしておきたいかな。還と一緒に参拝しよう
共に願うのは“このままずっと一緒に…”
共に白髪の夫婦になるまで添い遂げる気だからね
流石に澄子殿には見られないようにしておこう



 紅の世界を走り抜け、夜汽車が辿り着いた終着駅。
 駅を出れば、眼前に伸びるのは……一筋縄ではいかなそうな、長い長い石段。
 けれど、これを上り切らなければ始まらない。
 終夜・還(終の狼・f02594)とアメーラ・ソロモン(数多の魂を宿す者・f03728)は、紅葉と桜が織り成す、この世界のこの時期だけの彩に染まった石段を、ふたり並んで上り始める。
 特に、体力のないアメーラにとっては、この長い石段は少し辛いかもしれない……なんて、その顔をみれば。
 石段を前にしても、何故か涼し気な余裕の表情。
 それもそのはず……その足元見れば、魔法でふわりふわりと、宙に浮いていたから。
 そんな楽をしようとしていたアメーラだけど、宙に浮くのをやめて、自分の足で石段を上り始めた理由は――目の前に差し出された、大きな掌。
 魔法で浮いて進もうとしていた彼女に苦笑しつつも、アメーラをエスコートするべく、その手を伸ばし誘う還。
 ――ねぇ、俺と歩こう? って。
 勿論、喜々としてその手を取って。
 まるで、紅葉と桜が仲良く混ざり合っている眼前の石段の彩の様に。
 繋いだふたりの手の温もりが、互いに溶け合う様にひとつになるのを感じながら……アメーラは還と共にその足で、石段を一歩ずつ上り始める。
 まだまだ、見上げる先は長いけれども。
「一緒に歩くならこんなの苦でもないよ!」
「ゆっくり行こう、二人ならなんだって楽しいから」
 手を繋ぎ、並んで一緒に歩けば――苦などころか、楽しくて幸せに違いないから。
 そして行灯燈る石段をふたりで上り切れば、共有する達成感と。
「アメーラ、頑張ったね。あ、足湯あるよ、少し休もう」
 やっぱり足に感じる、疲労感。
 アメーラの頭をいつの間にか飾っている、紅葉と桜のふたひらを、そっと優しく取ってあげながら。
 還が誘うのは、失った彼女の体力も回復できそうな、ひと休みできる足湯。
「ああ足湯が効く……」
 そうのんびり、温かい足湯にほっこり浸かっている彼女の目の前に。
 還が差し出したのは、ササッと抜かりなく二人分購入していた、冷たくて甘いソフトクリーム。
「頑張ったご褒美、なんてね。一緒に食べよう」
「足湯を堪能しながら冷たいものって最高のご褒美だねぇ」
 仲良く隣同士、一緒に堪能するのは、温かい足湯とソフトクリームの、気持ち良くて美味しいひととき。
 最高に幸せだなぁ――石段を上るのは大変だったけれど、やっぱりアメーラの口から自然と出るのは、そんな言葉。
 グリモアも魔法も便利だし、本は沢山の知識を得られるものだけれど。
 こうやっていっぱい、色んなことを一緒に体験し、感じあえる事……それは最高に幸せな事だと、彼に教えて貰ったし。
 これからも、沢山の時間を一緒に過ごしたいって……そう思うから。
 そして体力が回復すれば、此処へやって来た目的を。
「澄子はアメーラに任せた」
「ふふ、任されたとも!」
 二手に分かれ、まずは情報収集から。
 物思いに耽りつつ境内を歩いていた澄子を見つけ、声を掛けてみるアメーラ。
「ここには初めて訪れたけど、紅葉と桜は見事だし、立派なお社だねぇ」
「私は何度も来ているけれど……それでも、いつ見ても綺麗」
 話しかけられ少し驚いた反応をした澄子だが、そう小さく笑んで返して。
「お姉さんは来慣れているなら、知っているかな? 紅の社っていう、願掛けのお社があると聞いたのだけれど」
 続いたアメーラのそんな言葉に、微かに表情を変えながらも澄子はこう答える。
「……確かに、奥社に社はあるけれど……小さくて、本殿みたいに立派ではないわ」
 あまり足を向けて欲しくない――そんな響きを含んだ声で。
 一方、還が話を聞いているのは……人ならざるもの。
 そして死霊術士らしくそれらに訊ねる事は、影朧の情報。
(「人には他の猟兵が聞いて回るだろうしね。こっちは人に接触して聞くより澄子に怪しまれなくて済むかなって」)
 何か『犬の影』について気になること、知っていることはないかと訊けば……返る内容は、大体一貫していて。
『あれは、この神社に語られている伝承の通り――主のかわりに人々の願いを聞きながら、主を待ち続けてるからな』
「……語られている伝承?」
 人ならざるものの言う伝承の詳細は、彼等に聞いただけではわからなかったが。
 それは澄子の好きな小説『紅葉行灯』のことではなさそうだ。また別に、影朧に関連する物語がありそうである。
 それから互いに情報収集した後、再びふたりは落ち合って。
 澄子に見られていないことを確認し、並んで参拝を済ませる。
 そして、共に願うのは――“このままずっと一緒に……”。
 アメーラは、すぐ隣にいる愛しい人へとふと視線を向けながら。
 そっと彼の姿映す金の瞳を細め、心に想う。
 ――共に白髪の夫婦になるまで添い遂げる気だからね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザザ・クライスト
【狼鬼】

「ナルホド"紅の社"か」

その景観は燃えるような赤に感嘆

浸ってても仕方ねェ、まずは一本
境内は禁煙か、世知辛いぜ……
猟犬レオンハルトに"犬"の匂いを【追跡】させる
が、境内内のご婦人方に尻尾を振る始末
クソ、役に立たねェ

「未亡人の命が懸かってンだぜ、なァジャスパー?」

見れば大福やら何やら買い食いの真っ最中
どいつもこいつも観光じゃないンだぜ?

「ナニひとりで楽しンでやがる、オレ様にも寄越しやがれ」

ベンチの一角に腰を下ろして要求
オマエさんはくっついてる葉っぱがあるだろ
にしても美味そォに喰う野郎だ

「澄子は死にたがりじゃねェよ」

アーンと餌付けする
むしろ逆、だから匿ってンだろう
"二人で"幸せになりたい、か


ジャスパー・ドゥルジー
【狼鬼】
景観を仰いではおもむろにスマホを構え
燃えるようなこの景色を見せてあげたい
俺が育った国に住むひとに
きっとこんな景色は知らねえだろう

情景を切り取る表情はほんの少し切なさが宿っていたかもな
悟らせないよう飄然と振る舞う
呑気に買い食いでもしてたらザザの目も誤魔化せるかね?

言ったろ、死にたがりに興味はねえ
ついでに救えるならそれに越したこともねえけど

何で俺が葉っぱだけなんだ
ちゃんとあんたの分も買ってきたぜ
…は?何それ
俺も手に大福持ってるんだけど?
言いつつも「あーん」には条件反射的に食らいつく
悪魔は三大欲求には逆らえないのさ

堪能しつつも社の方角や彼女を常に目に留めておく
興味はねえよ、と再度嘯いて



 夜汽車の車窓から観た紅のいろは、秋の夜空を燃やしながら、目の前を美しく流れていったけれど。
 今の自分たちは、そんないろに満ちた風景と、ひとつになっている。
 そして秋色の空を仰いでは、本人仕様のケースに入ったスマートフォンをおもむろに構えるジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)は。
 シャッターをぱしゃぱしゃと何度も切りながらも、ふと思う。
 ――燃えるようなこの景色を見せてあげたい。
(「俺が育った国に住むひとに……きっとこんな景色は知らねえだろう」)
 駅を出て上ってきた石段には、この世界に年中咲き誇る幻朧桜のいろも混ざっていたけれど。
「ナルホド"紅の社"か」
 ふたりの眼前に広がるその景観は、燃えるような紅の彩り。
 ジャスパーと共にまずは願掛けの奥社へと足を運んだザザ・クライスト(人狼騎士第六席・f07677)は、そう感嘆の声を漏らすけれど。
 浸ってても仕方ねェと、まずは一本――手にしたものの。
「境内は禁煙か、世知辛いぜ……」
 生憎、此処は禁煙。喫煙所もどうやらあるようだが、この近くには見当たらず、仕方なく手にした煙草とジッポを仕舞って。
 早速、猟兵としてやるべきことを成すべく、猟犬レオンハルトに"犬"の匂いを追跡させるザザ。
 探すべき影朧は、犬のような姿をしているようであるから。
 そして、タタタッと何かを感じ取ったのか、駆け出した猟犬の後を追えば――。
「クソ、役に立たねェ」
 境内にいるご婦人方にふりふりと尻尾を振っている、レオンハルトの姿が。
 そんな、相変わらずやはり女性にだけ愛想良く振舞っている様に、溜息をつきながらも。
「未亡人の命が懸かってンだぜ、なァジャスパー?」
 そう、カシャリと再びシャッターを切ったジャスパーへと、周囲のいろと似た瞳を向けるけれど。
「言ったろ、死にたがりに興味はねえ」
 返ってきたのは、そうあっさりとした言の葉。
 けれど、ちょっぴりゆるかわな顔をした狛犬さんへとシャッタを切りながらも、ジャスパーは続ける。
 ……ついでに救えるならそれに越したこともねえけど、って。
 それから自分仕様のスマホ片手に、次にジャスパーが向かった先は、美味しそうな甘味が売っている店。
 大福やら何やら、買い食いを満喫しているその姿に、ザザはもう一度溜息をついて。
「どいつもこいつも観光じゃないンだぜ?」
 聞こえたそんな声に、いいじゃねェか、といつも通り、ジャスパーはニヤニヤ笑んでみせる。
 情景を切り取る表情はほんの少し切なさが宿っていたかもな……なんて、そう思ったから。
(「呑気に買い食いでもしてたらザザの目も誤魔化せるかね?」)
 悟らせないよう飄然と振る舞いつつ、ふとそう、バイカラーの瞳を細めてみる。
 そんなジャスパーの心の内を、知ってか知らずか。
「ナニひとりで楽しンでやがる、オレ様にも寄越しやがれ」
 ベンチの一角に腰を下ろし、そう要求するザザ。
「オマエさんはくっついてる葉っぱがあるだろ」
「何で俺が葉っぱだけなんだ」
 まるで炎が懐いたかのように、黒髪にくっついていた紅のひとひらを、その手に取ってから。
 ……ちゃんとあんたの分も買ってきたぜ、と。
 ストンと隣に座り、ザザにも大福を差し出すジャスパー。
 そして、はむりと何気に嬉しそうに甘い物を頬張る、どうやらお子様舌らしき彼の姿を見て。
「にしても美味そォに喰う野郎だ」
 煙草のかわりにひとくち、大福を口に運ぶザザ。
 そして、受け取った大福のひとつを、ふとジャスパーの口元へと持っていけば。
「澄子は死にたがりじゃねェよ」
 アーンと、餌付けを。
 そんな、不意打ちの様なアーンに、紫とピンク混ざる瞳をぱちくりとさせるジャスパーだけれど。
「……は? 何それ。俺も手に大福持ってるんだけど?」
 アーンされれば、条件反射的にぱくりと食らいつく……悪魔は三大欲求には逆らえないのさ、って笑って。
 そして餌付けをしながら、ザザは続ける。
 ジャスパーは澄子のことを、死にたがりだと言ったけれど。
「むしろ逆、だから匿ってンだろう」
 "二人で"幸せになりたい、か――って。
 そして紅に染まる景色も、美味しい甘い物も、存分に堪能しつつも。
 ……興味はねえよ、なんて、そう再度嘯きながら。
 ジャスパーの神秘的ないろを帯びるその瞳は、社の方角や彼女を常に映していた。
 救えるのならば――ついで救ってやっても、いいから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
嵐吾さん(f05366)と

景色を眺めつつ石段を登る途中
じゃんけんしながら登る子供にぶつかりそうに
――悪い。大丈夫か?

え。俺らも混じっていーの?
嵐吾さん――ふふ、混じっちゃいましょうか

よっしゃ
ち・よ・こ・れ・い・と!
――って、嵐吾さん…嵐吾さんがみえねえ

(まさかここまで弱いとは)
やっと登りきった嵐吾さんにおつデスと声をかけて苦笑
足湯?いいですネ、いきましょー

ここからの景色もかなりいーですネ
めちゃくちゃ癒される感じする
なんか効能とかあんのかなぁ
あ、さっき買った和菓子、食べましょうよ
桜と栗抹茶を半分こずつ
っと、わ~伸びる伸びる…!
一層伸ばしちゃダメじゃないデス?
とは言わずに委ねて、えーい 


終夜・嵐吾
綾くん(f01194)と

長い階段じゃの
楽しそうな子供たちの姿に眼を細め
ん? なんか遊びかの?
なるほど…ぐーちょきぱー…ふふん、わしが一番にあがらせてもらおうかの!

…………あや君が遠い…
くっ!な、なぜわしはちょきをださんかったのか…!
(広げた手を見つめふるふるわなわな)
…小さき子に後出しで負けてもらってなどわしの矜持がいやしかしでもこれはありがたく、ぱ・い・な・っ・ぷ・る!

やっとついた…
楽しかったんじゃが疲れたの
お、あそこに足湯がある
綾くん参ろう!

良い眺めじゃのー!
そして程良い湯加減~
和菓子? 食べる食べる
めっちゃのびとる…綾くんその片方をわしに渡すんじゃ!
二人で伸ばせば一層のびる!



 秋色に染まった紅のトンネルの冒険を、臨場感溢れる夜汽車の先頭車両で堪能した後。
 終着駅の改札を出て見上げた視線の先に伸びるのは、紅葉と桜に彩られた石段。
 そして、長い階段じゃの、と呟きを落としながらも。
 終夜・嵐吾(灰青・f05366)が細めた琥珀色の眼に映るのは、楽しそうな子供たちの姿。
 眼前の石段を上るのは、見るからに骨が折れそうだけれど。
 目の前の子どもたちは、きゃっきゃとはしゃいで、とても楽しそう。
 浮世・綾華(千日紅・f01194)は嵐吾と共に石段を上りながら、紅と桜色が織り成す美しい景色を暫し眺めていたが。
「――悪い。大丈夫か?」
 じゃんけんをしながら登る子たちにぶつかりそうになって、そう紅の瞳を彼らに向ければ。
 ねー、一緒にやんない? なんて、思わぬお誘いの言葉が。
「え。俺らも混じっていーの?」
 そんな思いがけない声に、瞳をぱちくりとさせるけれど。
 すぐに楽し気に目を細め、今度は嵐吾へと、綾華は視線を向けて言った。
「嵐吾さん――ふふ、混じっちゃいましょうか」
「ん? なんか遊びかの?」
 嵐吾はそうきょとり、首を微かに傾けるけれど。粗方、その遊び方を聞けば。
「なるほど……ぐーちょきぱー……ふふん、わしが一番にあがらせてもらおうかの!」
 自信満々に、灰青の尻尾もゆうらり。
 そして満を持して――いざ、尋常に勝負!
 子ども相手でも、手は抜くつもりはありません。
「よっしゃ、ち・よ・こ・れ・い・と!」
 なかなか手ごわい子どもたちと接戦を繰り広げる綾華は、ここぞという勝負所での勝ちに、思わず小さくガッツポーズして。
 お先、と軽快に石段を上るけれど。
 一層近づいたゴールに背を向け、くるりと、振り返ってみれば――。
「――って、嵐吾さん……嵐吾さんがみえねえ」
 紅葉と桜に敷き詰められた風景にみえるのは、少し下の段にいる子どもたちの姿だけ……!?
 いや、よーく目を凝らせば、ずっとずっと下。
 紅と桜色の景色の中、何とか辛うじて確認できる、灰青のいろ。
「…………あや君が遠い……」
 そう、首が痛くなるほど遥か上を見上げながら、嵐吾はぺしょりと一瞬耳を寝かせるけれど。
「くっ! な、なぜわしはちょきをださんかったのか……!」
 パーに広げた己の手を見つめ、ふるふるわなわな。
 ちょきを出そうかどうか迷ったんじゃよ、なんて言うけれど……誰にもその声は聞こえない。遠すぎて。
 けれど、これ以上負けたら、いよいよ皆が何を出したのかさえ見えなくなりそうで。
 気合を入れ、満を持して出した嵐吾の次の一手は――うっかり、またパー。
 けれど、他の皆が出したその手は、全員グーだったから。
「……小さき子に後出しで負けてもらってなどわしの矜持がいやしかしでもこれはありがたく、ぱ・い・な・っ・ぷ・る!」
 空気を読んだ皆の厚意に甘えて、ぱ・い・な・っ・ぷ・る!
 ――そして。
「やっとついた……楽しかったんじゃが疲れたの」
「……嵐吾さん、おつデス」
 やっと登りきった嵐吾にそう声を掛けつつ、苦笑する綾華。
 ――まさかここまで弱いとは、と。
 それから、一緒に遊んだ子どもたちと手を振ってわかれてから。
 石段の大敗も何のその、けろりと忘れたように、ぴこりと耳を嬉々と動かして。
「お、あそこに足湯があるの。綾くん参ろう!」
「足湯? いいですネ、いきましょー」
 いこいこ! と向かうは、眼下の絶景が臨める足湯。
 その湯船にちゃぽんと足を浸せば、はぁっと漏れる溜め息。
「良い眺めじゃのー! そして程良い湯加減~」
「ここからの景色もかなりいーですネ。めちゃくちゃ癒される感じする……」
 なんか効能とかあんのかなぁ、と綾華は首を傾けるけれど。
「あ、さっき買った和菓子、食べましょうよ」
 ふと思い出し、取り出したのは、買っておいた栗抹茶と桜クリームの大福。
「和菓子? 食べる食べる」
 こくりと頷いた嵐吾と、それぞれ半分こ……しようと、思ったのだけれど。
「っと、わ~伸びる伸びる……!」
「めっちゃのびとる……綾くんその片方をわしに渡すんじゃ!」
 半分こどころか、びよーんとめっちゃ伸びる大福!
 ぱちくりとその様に瞳瞬かせ、助太刀に入らんとする嵐吾だけれど。
 ……一層伸ばしちゃダメじゃないデス?
 そうちょっぴり思ったけれど、差し出されたその手に、半分委ねて。
 えーい、と今度は二人がかりで引けば――やっぱり、より一層のびちゃっています!?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブOK

桜と紅葉。綺麗だけど、なんだか切ないな。どちらも俺の中では散って次の季節に移るものだからだろうか。
でもってなんだかやっぱりサクラミラージュは季節感が妙な感じになる。

足湯もいいけど軽く食べたいし、とり合えずたこ焼き食うか。前よりも人並みには食欲が戻った事だし、こういう出店のたこ焼きってなぜかうまいよな。(ただ味が濃い目なものに偏ってるのが多少困るが)
そういやこの神社の謂れってなんだっけ?ガラスドームのお守りと紅葉の社と関係あるのか?
謂れの看板みたいなのあったら探してみよう、これ食べ終わったら。もしかしたら影朧の犬のような姿に、多少関係があるかもしれない。



 本来ならば、交わることのないふたつの季節。
 秋と春の彩りが混ざり合う眼前の景色は、確かに美しいものなのだけれど。
(「桜と紅葉。綺麗だけど、なんだか切ないな」)
 黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は秋の夜空に踊る紅やピンクのいろを見上げ、そして思う。
 ……切なく感じるのは、きっと。
(「どちらも俺の中では散って次の季節に移るものだからだろうか」)
 春に桜が咲き誇り、散れば来たる夏、真っ赤に色づく秋、そして枯れ葉が散ってやってくる冬。
 四季とは、そうやって巡っては移ろいゆくものであるという印象が、やはりあるからか。
(「でもってなんだかやっぱりサクラミラージュは季節感が妙な感じになる」)
 春が過ぎれば散るはずの桜が年中咲いているこの世界の風景には、季節的に違和感を覚えてしまう。
 けれど、物珍しく、この世界でしか見られない綺麗な景色であることには違いない。
 石段を上った先、神社の境内できょろりと視線を巡らせてみれば。
 目に入ったのは、人で賑わう足湯や美味しそうな匂いを漂わせ並ぶ店。
 そんな中、瑞樹が足を向けたのは。
「足湯もいいけど軽く食べたいし、とり合えずたこ焼き食うか」
 くるくると手際良く店頭で、たこ焼きを焼いている店。
(「前よりも人並みには食欲が戻った事だし、こういう出店のたこ焼きってなぜかうまいよな」)
 香ばしいソースは食欲をそそるし、出店で買ったものというのは不思議と美味しく感じるけれど。
 ……ただ味が濃い目なものに偏ってるのが多少困るが、なんて、ちょっぴり苦笑する。
 そんな焼き立てのたこ焼きをはふはふと頬張りながら、ふと瑞樹は首を傾ける。
(「そういやこの神社の謂れってなんだっけ? ガラスドームのお守りと紅葉の社と関係あるのか?」)
 桜色に染まっているこの世界で、鮮烈な紅が風景を支配する珍しい季節と場所。
 そして、比較的大きなこの神社の謂れ。
(「謂れの看板みたいなのあったら探してみよう、これ食べ終わったら」)
 瑞樹はそう、まだ熱々なたこ焼きをくるり弄びながら、周囲に目を向けてみつつも思う。
 ――もしかしたら影朧の犬のような姿に、多少関係があるかもしれない、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
まず社務所でお守り欲しいわね。
紅い紅葉のお守りを買うわ。
私の本体は青いけど、コントラストになっていいんじゃないかしら?
ついでに社務所の人に、この神社に関するいわれとか、犬にかかわる因縁話とかないか、それとなく聞いてみましょう。

あとはこっそり『紅の社』に登って様子をうかがうわ。
ユーベルコード【インヴィジブル・イグジスト】で透明化して気づかれないように。

「青の私が紅に溶け込むのもどうかとは思うけど・・・ね」

周囲に影の犬はもういるのかしら???



 眼前を染めるふたつのいろ、それは鮮烈な紅と朧げで柔らかな桜色。
 そんな、本来ならば春と秋を思わせる彩りを見つめるのは、藍と紫を帯びた宝珠。
 ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は景色を眺め、境内を歩きながら。
 まず向かうのは、神社の社務所。
 お目当ては、ガラスドームに四季が閉じ込められているという、お守り。
 春夏秋冬、季節ごとの様々なモチーフのものが並ぶけれど。
 ヴィオレッタが手にしたのは――紅い紅葉のお守り。
(「私の本体は青いけど、コントラストになっていいんじゃないかしら?」)
 藍と紫の青に近い色味の瞳が、澄んだ球体に閉じ込められた紅葉のいろを映して。
 購入するついでに、社務所の巫女へと話を聞いてみることに。
「初めてこの神社には来たのだけど。この神社に関するいわれとか、犬にかかわる因縁話とかないかしら」
「いわれというか、伝承になるのですが……身を挺して災いから人々を護った人物を奉っている、と。それに……」
 社務所の巫女は記憶を辿るかの様に、こう続けたのだった。
「その人物は犬を携えていて……主人が亡き後も、その犬はずっと、この神社で主を待ち続けたといわれています」
 ようこそお参りくださいました、と紅葉のお守りを手渡す巫女へと、ありがとう、と言葉を返して。
 ヴィオレッタが次に密かに足を運ぶのは――『紅の社』。
 そして『インヴィジブル・イグジスト』を展開し姿を消して、そっと社の上から様子を窺ってみる。
「青の私が紅に溶け込むのもどうかとは思うけど……ね」
 桜のいろはいつの間にか消え、鮮烈な紅のいろのみに囲まれた願いの社。
 その燃える様な風景を見つめる藍と紫の宝珠の瞳で、注意深くヴィオレッタは周囲を探ってみる。
 ――周囲に影の犬はもういるのかしら?? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋翠・華乃音
マリス・ステラ(f03202)と共に


神に祈るなんて今まで一度もすることが無かった。
それは誰かに自分の命運を委ねる"無様"なことだと思っていたし、そもそも神は即ち敵であったから。

――だったら願いはどうなのだろう。

連れられた足湯に浸りながら、そんな纏まらない思考を巡らす。
頬に付いた花びらをそっと取って湯に浮かべた。

"美しい"と言われるのは、正直なところ微妙な気分で。
その"うつくしさ"は人を外れた化物としてのうつくしさだと思うから。

「……幸せになって欲しい」

誰かの幸福が自分の願い。
隣に居る彼女の星を見つめてそう呟いた。

思えばいつだって願いを託される側だった。
みんな、俺を置いて先にいってしまうから。


マリス・ステラ
緋翠(f03169)の側に

「主よ、憐れみたまえ」

澄子の隣に並び『祈り』を捧げる
彼女と私はどれほどそうしていただろう

「幸いを、祈っていました」

"あなた達"の幸いを
言えずに憂いの眼差しを向ける
会釈して緋翠の元へ
指を絡めるように手を繋ぐ

向かうは足湯です
沁みるようなぬくもりに微笑みを向ける

「観てください、緋翠。美しい眺めです」

ひらりと舞う花びらと葉に手を伸ばす

「あなたもです。緋翠は美しい」

化物の美しさ
蝶の儚さ
"ひと"の苦しみとぬくもり
全部があなたなんです

そっと彼の頬に触れる

「緋翠の頬が桜色です」

花びらを付けた彼にアルカイックスマイル

ふと夜を覗く
全てを包み、吸い込むようないろ
深淵を覗く時、深淵もまた──



 この世界一面に満ちるのは、桜の彩りのはずなのに。
 祈り捧げる彼女たちを包み込むそのいろは、燃え上がるような紅。
「主よ、憐れみたまえ」
 澄子の隣に並び、そう祈り捧げるのは、マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)。
 そして星の転がるような声が響いた後、訪れた静寂の中で……ただふたり並んでずっと、祈りを捧げ続ける。
 何を想い、何を願っていたのか――澄子とともに、どれほどそうしていただろうか。
 示し合わせたわけではなかったが、同時に顔を上げた彼女へと、マリスは告げる。
「幸いを、祈っていました」
 ――"あなた達"の幸いを。
 けれど、それは言えずに……向けるのはただ、憂いの眼差しだけ。
 そして会釈し、願いの炎灯る『紅の社』を後にするマリス。
 その足が向かう先は、待っていた緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)の元。
 それからふたり、指を絡めるように手を繋いで。
 マリスがその手を引き向かうのは、紅葉と桜の絶景を見下ろしながらひと休みできる足湯。
 華乃音は、連れられた足湯にそっと浸り、瑠璃の瞳に紅葉と桜を舞わせつつも。
(「神に祈るなんて今まで一度もすることが無かった」)
 ふと思い返すは、『紅の社』で祈り捧げるマリスや澄子の姿。
 彼女たちの様に神に祈ることなんて、自分にはなかった。
(「それは誰かに自分の命運を委ねる"無様"なことだと思っていたし、そもそも神は即ち敵であったから」)
 けれど、華乃音の心に生じたのは、こんな疑問。
 ――だったら願いはどうなのだろう。
 じわりと足から伝わる温もりを感じながら、華乃音はそう、纏まらない思考を巡らせる。
 そんな彼の隣で、沁みるようなぬくもりに微笑んで。
 星の如き輝き宿した青の瞳を、マリスは物思いに耽るその横顔へと向けた。
「観てください、緋翠。美しい眺めです」
 そしてひらり、舞い落ちてきた桜と紅葉のふたひらに、手を伸ばして。
「あなたもです。緋翠は美しい」
 桜と紅葉混ざる風景と共に映したその姿に、瞳を細めた。
 けれど――華乃音にとって、"美しい"と言われるのは、正直なところ微妙な気分を抱いてしまう。
(「その"うつくしさ"は人を外れた化物としてのうつくしさだと思うから」)
 でも、彼が心に描いたそんな想いを見透かすように。
 マリスは、伸ばした手の行く先をふと変えて。
「化物の美しさ、蝶の儚さ、"ひと"の苦しみとぬくもり……全部があなたなんです」
 そっと、彼の頬に触れる。
 それからひとひらを纏う華乃音へと向ける、アルカイックスマイル。
「緋翠の頬が桜色です」
 そんな、頬に付いた花びらをそっと取って。
 ゆらり、湯へと浮かべた華乃音の口から零れ落ちる言の葉。
「……幸せになって欲しい」
 ――誰かの幸福が自分の願い。
 隣に居る彼女の星を見つめそう呟きながらも、華乃音は思う。
(「思えばいつだって願いを託される側だった」)
 ……みんな、俺を置いて先にいってしまうから。
 まるで、今眼前でこんなに燃え上がっているというのに……気付けば散りゆく、儚いこの紅のいろのように。
 そしてマリスがふと覗く夜――それは全てを包み、吸い込むようないろで。
 じわりと静かに満ちていくそのいろを見つめ、星を宿す瞳をそっと細める。
 ……そんな深淵を覗く時、深淵もまた──と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
陸彦も灯里も石段を上り切るとは良く頑張りましたね
茶屋で美味しい物が待っていますよ

皆で甘味等を頂きます
限定の甘味もあるとの事、楽しみですね
勿論私も楽しみにしておりました

大人子供に限らず、何かをやり遂げた時に食べる物は格別美味しいものです
さあ、倫太郎殿も早く行きましょう

私は限定の栗抹茶と桜クリームの大福セット
やはり限定の物を頂きましょう
栗抹茶は甘過ぎず、桜クリームは綺麗な色をしています
陸彦は豆大福だけでなく、タコ焼きもですか
男の子は食べ盛りなのですね
ですが、食べ過ぎては夕ご飯が食べられなくなってしまいますので
おかわりせずに我慢しましょうね?


月舘・灯里
【華禱】
いしだん、とてもたいへんだったのです
でもでも、にいさまもあかりもじぶんでがんばったのですよ?

かあさ……(ふるり)りんたろととうさま
ふたりだけならもっとはやくのぼれたのです
でも、にいさまとあかりががんばるのをまってくれたのです

のぼったら、ごほうびなのです?
あまいもの……!(控えめにわくそわぁ)

とうさまもにいさまも
やっぱりうれしそうでたのしそうなのです
かあ……りんたろも
やっぱりうれしそうなのです

げんていはとくべつ……
おこさまらんちとおなじなのです?

みんなでいっしょにたべるです
にいさま、おくちにくりーむがついてるですよ
(はんかちでふきふき)

はわ……あかりもなのです?
(ふきふきされてあうあう)


篝・倫太郎
【華禱】
頑張ったもんな?
ご褒美に甘いの食べような?

時折休んだりはしたけど
自力で石段を登り切った子供達と
茶屋で限定甘味を皆で味わう

限定は特別
お子様ランチと似たようなもんだな

相変わらず、わくわくそわそわしてる子供達と夜彦に笑って
いや、うん……疲労回復には甘いもん良いけどな?

子供達と一緒だと父親なんだか子供なんだか
判んなくなる夜彦はなんなの?可愛過ぎないか?
なんて思いながらも言わないけど!けど!

ほら、ちゃんと座れって……
列車の時と同じようにちゃんと座らせて
栗抹茶と桜クリームの大福セットを一人一つ

ん、零すなよ?

分かり易い陸彦は兎も角、灯里も上機嫌なのか
いい笑顔だ……なんて思いながら
自分もしっかり堪能!


篝・陸彦
【華禱】
ふぅ、ふぅ……や、やっと上ったぞー!
倫太郎、夜彦、灯里!やったぞ!
沢山褒めてくれよなっ
灯里も偉いぞ!

かんみ?なんか頑張ったら食べられるのか?
行こうっ、かんみ行こう!

限定のお子様ランチなのか?違う?
皆と一緒もいいけど、おれはこれ食べたい!
豆とクリーム入ってる大福、あとこれも買ってくれ!
さっきからすごい良い匂いがするんだ
タコ焼きって言うみたいだぞ

買って貰ったら皆で食べるぞ
最初は大福!頑張ったから、美味いんだな!
ん、口にクリーム?そういう灯里も付いてるぞ
おれが拭いてやる(ハンカチを受け取って拭き返す)
よーし、これを食べたらタコ焼きだ!



 大人の足でさえ、上るのにそれなりに労力を要するのに。
 それが子どもの足であったら、もっと大変であっただろう。
「ふぅ、ふぅ……や、やっと上ったぞー!」
 けれど息を切らしながらも、長い長い石段を制覇した篝・陸彦(百夜ノ鯉・f24055)は、くるりと振り返って。
「倫太郎、夜彦、灯里! やったぞ! 沢山褒めてくれよなっ」
「いしだん、とてもたいへんだったのです。でもでも、にいさまもあかりもじぶんでがんばったのですよ?」
「うん、灯里もおれも偉いぞ!」
 同じく、自らの足で頑張って石段を上り切った月舘・灯里(つきあかり・f24054)と、無邪気な笑顔を咲かせて。
 その様子を微笑まし気に眺めつつも、確り子どもたちを褒めてあげる月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)。
「陸彦も灯里も石段を上り切るとは良く頑張りましたね」
 そんな夜彦の声に、兄と一緒に、えへへと笑みながらも。
 灯里は、夜彦と篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)のふたりの顔を、そっと交互に見つつも思う。
(「かあさ……りんたろととうさま、ふたりだけならもっとはやくのぼれたのです」)
 けれど、倫太郎も夜彦も、自分たちに合わせて、並んで紅葉と桜の石段を上ってくれた。
 それが何故なのか、灯里はちゃんと知っている。
 ……にいさまとあかりががんばるのをまってくれたのです、って。
 つい、倫太郎のことをかあさまと言ってしまいそうになるたびに、ふるりと首は振るけれど。
 そんな、かあさ……倫太郎も、時折休んだりはしたけれど、ちゃんと自力で石段を登り切った子どもたちの姿を映した琥珀色の瞳を細めて。
「頑張ったもんな? ご褒美に甘いの食べような?」
「のぼったら、ごほうびなのです?」
「茶屋で美味しい物が待っていますよ」
 頑張ったご褒美に、皆で向かうのは、限定甘味が味わえる茶屋へ。
「限定の甘味もあるとの事、楽しみですね」
「かんみ? なんか頑張ったら食べられるのか?」
 そんな夜彦の言葉に、ふと首を傾ける陸彦だけれど。
「あまいもの……!」
「行こうっ、かんみ行こう!」
 控えめにわくそわぁっと瞳を輝かせる灯里の隣で、無邪気にはしゃぐ陸彦。
 そんな子どもたちも、なのだけれど。
「勿論私も楽しみにしておりました。大人子供に限らず、何かをやり遂げた時に食べる物は格別美味しいものです」
 ――さあ、倫太郎殿も早く行きましょう。
 わくわくそわそわしている子どもたちと同じ様に、逸る様子の夜彦に、倫太郎は笑って。
「いや、うん……疲労回復には甘いもん良いけどな?」
 子どもたちに、転ぶなよ、と声を掛けつつも。
 夜彦と並んで、紅と桜色の風景の中、歩き始める。
 そんなふたりを、灯里はふと振り返って。
(「とうさまもにいさまも、やっぱりうれしそうでたのしそうなのです。かあ……りんたろも、やっぱりうれしそうなのです」)
 眼前で手招きする兄に追いつかんと、転ばないように気を付けつつも、その歩調をてくてく頑張って早める。
 そして茶屋に辿り着き、席に案内されれば……御品書と睨めっこ。
「私は限定の栗抹茶と桜クリームの大福セット、やはり限定の物を頂きましょう」
 そう決めた夜彦に、きょとりと首を傾ける灯里。
「げんていはとくべつ……おこさまらんちとおなじなのです?」
「限定のお子様ランチなのか? 違う?」
 首を傾げている灯里につられ、ぱちくりと瞳を瞬かせる陸彦。
 そんなふたりに、こくりと頷きながら。
「限定は特別。お子様ランチと似たようなもんだな」
 ほら、ちゃんと座れって……と。
 はしゃぐ子どもたちを、ちゃんと座らせてから。
 栗抹茶と桜クリームの大福セットを一人一つ……注文しようとした倫太郎だけれど。
「皆と一緒もいいけど、おれはこれ食べたい!」
 そうびしっと陸彦が指さしたのは。
「豆とクリーム入ってる大福、あとこれも買ってくれ!」
 豆大福……と、もうひとつ。
「さっきからすごい良い匂いがするんだ。タコ焼きって言うみたいだぞ」
「陸彦は豆大福だけでなく、タコ焼きもですか」
 男の子は食べ盛りなのですね、と夜彦は緑色の瞳を優しく細めるけれど。
「ですが、食べ過ぎては夕ご飯が食べられなくなってしまいますので、おかわりせずに我慢しましょうね?」
 夕食のために腹八分目だと言ってきかせつつ、限定の大福セットと豆大福とタコ焼きを頼んで。
 運ばれてくれば……嬉しくて美味しい、ご褒美の休憩タイム。 
「最初は大福! 頑張ったから、美味いんだな!」
「みんなでいっしょにたべるです」
「ん、零すなよ?」
 倫太郎はそうふたりに言いつつも、ふと琥珀色の瞳に映す。
「栗抹茶は甘過ぎず、桜クリームは綺麗な色をしています」
 その視線の先にある……子どもたちと同じ様に瞳を輝かせつつ大福をいただいている、夜彦の姿を。
(「子どもたちと一緒だと父親なんだか子供なんだか、判んなくなる夜彦はなんなの?」)
 ……可愛過ぎないか?
 なんて、じっと見つめ思うけれど。
(「でも、言わないけど! けど!」)
 口には出しません、ええ!
 そんな楽しく美味しくほのぼのとした雰囲気の中で。
 灯里はじーっと眼前の兄の姿を見た後、ふいにその手をうんしょっと伸ばして。
「にいさま、おくちにくりーむがついてるですよ」
 宵闇色をした猫さんの柄のハンカチでふきふきしてあげるけれど。
「ん、口にクリーム? そういう灯里も付いてるぞ」
 ……おれが拭いてやる、と、逆に手渡したハンカチでふきふきされ返れて。
「はわ……あかりもなのです?」
 父と同じ色をした瞳を瞬かせ、あうあう。
 そしてお互いに、お互いのほっぺを確認し合った後。
「よーし、これを食べたらタコ焼きだ!」
 わくわく元気に言った陸彦の頬に、今度はソースがつく予感……?
 そんなひとときに、倫太郎は改めて瞳を細める。
(「分かり易い陸彦は兎も角、灯里も上機嫌なのか」)
 紅葉と桜の風景に戯れるのは、黒檀の鯉に実る鬼灯、そして唯一無二の愛しき竜胆。
 それはまるで、巡るはずの季節が一度に楽しめるような、そんな贅沢な時間な気がして。
 ぐるりと皆の顔を見回しながら、倫太郎は改めて思うのだった。
 ――いい笑顔だ……って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マレーク・グランシャール
【神竜】篝(f20484)と

情報収集がてら茶店に入り、栗抹茶と桜クリームの大福セットを注文
篝を膝に乗せ仲良く半分こして食べるが、俺は栗抹茶の方が好みだな
上に乗る子どもの掌のような赤い紅葉が可愛いじゃないか
社に向かう途中の道でたくさん紅葉の葉を拾い集めて子ども達への土産にしようか

もちろん情報収集も怠らない
茶店の者ならば社へ向かう澄子の姿も見ているはず
何か気になる様子がなかったか、犬を連れていなかったか尋ねよう

もし茶店の前を澄子が通ったら追跡開始だ
忍び足と迷彩で隠密行動を心がけるが……

俺が死ぬときは篝も一緒と決めているが、もし篝を残したならば澄子のように俺に似た影朧を匿ったりするのだろうか


照宮・篝
【神竜】まる(f09171)と

まずは茶店で、この時期だけ、という甘味を貰おう
頼むのは一皿だ、まると半分こするぞ
こんな所でまで膝に抱かなくとも…まるは甘えん坊だな、よしよし(なでなで)
私は桜クリームの方も好きだけれど…栗抹茶の紅葉が可愛いのは、その通りだ!
せっかく、桜と紅葉が一緒に楽しめる場所なのだから
子供達には、両方…桜の花弁と紅葉を持ち帰れたらいいな

花弁と葉を探しながら、情報収集もやるぞ
猫が多い、という話だから
猫に聞いてみようか(動物と話す)
もしもし。君の縄張りで、犬(影朧)の声を聞いたことはあるかな?
よくいる犬でなく、ちょっと変わった感じの犬だと思う
よければ教えてくれないか



 見事なまでに染まった紅のトンネルを潜りながら、神社に着いてしまうのが勿体ないくらいだと、あの時はそう思ったけれど。
 燈る行灯に浮かび上がる紅葉と桜が織り成す景色の中、石段を上り切れば。
 そこにもまた、色々な楽しみが。
 勿論、此処に赴いた目的も決して忘れてなどいない。
 マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)と照宮・篝(水鏡写しの泉照・f20484)が情報収集がてら足を向けたのは、神社の茶屋。
「まずは茶店で、この時期だけ、という甘味を貰おう」
 篝が選んだのは、やっぱり外せない、期間限定の栗抹茶と桜クリームの大福セット。
 けれど、頼むのは一皿で十分。マレークと半分こして食べることに。
 ……それにしても。
 篝が座っているその場所は、夜汽車の時と同じ、マレークの膝の上。
 いや、彼の膝に乗るのはいつものことだから。
「こんな所でまで膝に抱かなくとも……まるは甘えん坊だな、よしよし」
 篝はそう、マレークの頭をなでなでしてあげて。
 運ばれてきた大福を、仲良く半分こ。
 栗抹茶と桜クリームの違った味を、順にそれぞれ食べ比べてみれば。
「俺は栗抹茶の方が好みだな。上に乗る子どもの掌のような赤い紅葉が可愛いじゃないか」
「私は桜クリームの方も好きだけれど……栗抹茶の紅葉が可愛いのは、その通りだ!」
 どちらも美味だけれど、目がいくのは、今の季節を思わせる幼子の掌の様に愛らしい赤い紅葉。
 けれど、せっかく、桜と紅葉が一緒に楽しめる場所なのだから、と。
「子供達には、両方……桜の花弁と紅葉を持ち帰れたらいいな」
「社に向かう途中の道でたくさん紅葉の葉を拾い集めて子ども達への土産にしようか」
 桜のひとひらも、色づいた紅葉も、どちらも子供達への手土産に。
 そして甘いひとときをふたり楽しみながらも、情報収集も怠りはしない。
(「茶店の者ならば社へ向かう澄子の姿も見ているはず」)
 茶のおかわりを注ぎに来た茶屋の店員に、マレークはさり気なく訊ねてみる。
「よくこの神社を訪れる、若き未亡人の女性がいると聞いたが。今日は見かけただろうか?」
「若き未亡人……あぁ、澄子さんのことかな。今日も見かけた気はするねェ」
「その澄子という女性だが、何か気になる様子はなかったか? あと、犬を連れていなかったか」
「気になること……今日は忙しいからねェ、そんな余裕もなくて。でも、犬は見かけなかったなぁ」
 今の季節は、桜と紅葉が入り混じる珍しい風景が観られることもあり、客の入りも多いようだが。
 今日は特に猟兵達もこの茶屋を訪れており、より一層忙しそうである。
 けれど、澄子のことを店員が知っている事から、彼女が頻繁にこの神社に通っているのが窺える。
 それから茶屋を出て、子供達へと持ち帰る桜と紅葉を追いかけ、探しながら。
 篝はふと、その場にしゃがみこむ。
 その視線の先には――境内で寛ぐ。沢山の猫たち。
「もしもし。君の縄張りで、犬の声を聞いたことはあるかな?」
 動物と話す技能で、訊ねてみれば。
『犬? 沢山お散歩に来てるよぉ』
「よくいる犬でなく、ちょっと変わった感じの犬だと思う」
 よければ教えてくれないか、そう付け加えた篝の言葉に、うーんと猫たちは暫し考えて。
『変わった犬……あの、ずっと待ってる犬のことかな』
『ああ、あの犬さん。上手にかくれんぼしてるから、なかなか見つからないんじゃない?』
 それから猫たちが口々に言う場所は……『紅の社』。
 色々教えてくれた猫たちに、ありがとう、と篝が礼を言ったのと同時に。
 マレークは紫の瞳をふと細め、篝と顔を見合わせ合い、ひとつ頷く。
 巡らせた視線の先に……澄子の姿を、見つけたから。
 そして追跡開始、忍び足と迷彩の技能を駆使し、隠密行動を心がけながらも。
 紅葉や桜と戯れるように金の髪を躍らせる篝の姿を、一瞬だけ見た後。
 心中を試み、ひとり生き延びてしまったという澄子の姿を改めて目で追いつつも、マレークは思うのだった。
(「俺が死ぬときは篝も一緒と決めているが」)
 ――もし篝を残したならば、澄子のように俺に似た影朧を匿ったりするのだろうか……と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
【有ちゃん/f00133】

うへぇ、疲れた!階段長すぎでしょ
有ちゃん大丈夫?生きてる?
アハハ、ギリギリじゃん!頑張ったねぇ

疲れた足腰を癒すため
真っ先にする事っていったら、座って煙草を吸える場所を探す事
ついでに茶のひとつも出してくれる場所なら良いけどさ
贅沢は言わないよ
…酒でも良いけど

しかしここの景色は最高だねぇ
赤とピンクよ、赤とピンク!実にいい色じゃないか

大抵、こういう場所には煙草好きのおっさんがいたりするでしょ
そういうおっさんはベッピンさんがいると口が軽くなるでしょ
休憩の片手間に探りだけ入れとくよ
僕は働き者だからね

ああ…犬ね
ほら、犬科の獣ってのは懐くと居着くものだからさ
ニシシ


芥辺・有
【ロカジ/f04128】

階段を登りきった後に、息を整えるように長い息を吐いて
…………生きてる
こんな登らされるとはね。……体力不足にはきつい

座れる場所があったならすとんと座って
煙草片手に一息つきたいところ
ま、茶があるなら助かるんだけどね
吸えるだけでも助かることにゃ変わりない

……はしゃぐ元気があって何より
確かにこの世界じゃなきゃ見られないような景色だ、物珍しいね
地面も木立も赤とピンクばっかりってのは

おっさんとロカジが話すのを尻目に
紅の社だったか、そちらのある方へ目線を向けたりする
話を小耳に挟みつつ、働き者に会話は任せて
影朧の……、犬だっけ
そんなんでも神社なんぞに居着く理由があるんだかね



 真っ赤な車窓に流れる景色を肴に、程良く酒も入って。
 夜汽車の旅を終え、到着した終着駅を降りてすぐ……待っていたもの。
 それは、火事の様に燃える紅葉とこの世界では見慣れた幻朧桜が作り上げる、幻想的な風景と。
 紅と桜色が敷き詰められた、長い長い石段。
 けれど、これを上らなければ、目的の神社には辿り着かないから。
「うへぇ、疲れた! 階段長すぎでしょ」
 頑張って石段を上り切ったロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は、ひやり吹く秋風の冷たさを感じながらも、そう天を仰いだ後。
 隣で長い息を吐いた芥辺・有(ストレイキャット・f00133)へと、声を掛ける。
「有ちゃん大丈夫? 生きてる?」
「…………生きてる」
 そんな、何とかぽつりと辛うじて返ってきた声に、ロカジは笑って。
「アハハ、ギリギリじゃん! 頑張ったねぇ」
「こんな登らされるとはね。……体力不足にはきつい」
 息を整えるようにもう一度、有は溜め息混じりの長い息を吐いた。
 振り返れば、よくもまぁ上ったなという程の、高台からの絶景が広がっている。
 けれど……そんな景色を楽しむよりもまずふたりが探すのは、一服できる場所。
 境内は禁煙であったが、喫煙可能な休憩所を見つけて。
 疲れた足腰を癒すべく、すとんと座り、煙草片手に一息。
 このご時世、吸えるだけでも有難いけれど、気を利かせた神社の人が茶を持ってきてくれて。
 贅沢は言わないよ、と遠慮なくいただきながらも、ロカジは呟く……酒でも良いけど、って。
 もう懐に入れていた缶ビールは、夜汽車で飲んで品切れだったから。
 アルコールがあれば、ちょっとした花見気分が味わえたかもしれないけれど。
「しかしここの景色は最高だねぇ、赤とピンクよ、赤とピンク! 実にいい色じゃないか」
 休憩所からも見下ろせる絶景に、はしゃぐように言ったロカジに。
「……はしゃぐ元気があって何より」
 ちらりとけだるげな視線を向け、煙を吐きながらも、改めて有は息をつくけれど。
 彼の視線を追うように金の瞳を巡らせれば。
「確かにこの世界じゃなきゃ見られないような景色だ、物珍しいね」
 ……地面も木立も赤とピンクばっかりってのは、って。
 春と秋が混ざり合った様な、赤とピンク踊る不思議ないろをした風景を暫し見つめる。
 そしてこの場に来たのは、煙草を吸うことが目的ではあるのだけれど。
「大抵、こういう場所には煙草好きのおっさんがいたりするでしょ。そういうおっさんはベッピンさんがいると口が軽くなるでしょ」
 そうロカジが言うやいなや――喫煙所へと入ってくるのは、一服せんとやってきたおっさん。
 ロカジは隣のベッピンさんに、ほらねと言わんばかりにパチリと片目を閉じた後。
 僕は働き者だからね……そうおっさんに聞こえない小声で囁いた後。
「お兄さんは、地元の人かな? 僕たち初めて来たんだけど、紅の社って知ってる?」
 休憩の片手間に探りだけ入れておかんと、おっさんに話しかけてみる。
 そんな、おっさんとロカジが話すのを尻目に。
 有が目線を向けてみるのは、紅の社があると聞いた方向。
 ロカジの作戦通り、ベッピンさんがいるからか、聞けば知っていることならば答えてくれるおっさんの話を小耳に挟みつつ。
 働き者に会話は任せ、有はまだ足に残る疲労を感じながらも、煙草を燻らせた。
 そして、おっさんが去っていった後。
 吸い終わった煙草を灰皿に押し付けながら、こうふと口にする。
「影朧の……、犬だっけ。そんなんでも神社なんぞに居着く理由があるんだかね」
 予知された不穏な存在は、犬のような影朧だという。
 そして物言わぬそれは、じっと匿われている場所から動かないらしいが。
「ああ……犬ね」
 ロカジは有の落とした呟きに、ニシシと笑んで返す。
 ――ほら、犬科の獣ってのは懐くと居着くものだからさ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

草野・千秋
彼氏のライアンさんと
f02049

普通の人間なら長い石段を登るのは一苦労かもですが
僕達サイボーグならなんのその
わぁ、流石元軍人のライアンさんだけありますね

(登りきって、ふう、と息をつき)
わぁ、すごい絶景と紅葉
見て下さいライアンさん!
燃えるような赤い色(はしゃぎ)
足湯ありますね、浸かりましょう
なんのその、なんて言いましたが
僕達みたいに鋼鉄の足を持ってても
温まりたい時はあるんです
(足湯してる間ぴったり寄り添って)(ハグ)
もうだいぶ寒くなってきて空気が澄んできましたね?

あとご当地スイーツありますね
お土産も欲しいです!
あれもこれもと目移りしてしまってキリがないですね!
ガラスドームの御守りは是非ともペアで


ライアン・ウィルソン
千秋ちゃん(f01504)とおデートよ
そもそもあたしちゃん傭兵だしこの程度は余裕なんだけどそれを口に出すほど空気読めてないわけじゃないわよ。えらいわね?褒めなさい
そしてはしゃぐワンコ・・・もとい千秋ちゃんと足湯したり色々ね。温まりたいならハグでもしたら良いじゃない抱けおらこのやろうこないからこっちからハグするわよ

甘いものとお土産は帰るだけ買って食べるだけ食べるわよ。猟兵っていいわよね
あ、お守りのペアは必須ね



 長い長い石段に敷き詰められた、色づいた紅葉と桜の花弁。
 石段の両脇に燈った行灯が、夜空に踊るそんな紅やピンクのいろをより浮かび上がらせて。
 仄かに照る紅葉と桜の絨毯敷かれた石段を、訪れた人々がそれぞれの歩調で上がっていく。
 目指す神社は遥か天に近い場所、石段の下から見上げれば、首が痛くなるほどであったけれど。
 ライアン・ウィルソン(美少女美少年傭兵・f02049)と一緒に、仲良く並んで石段を上り切った草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)は、ふう、とひとつ息をついただけで。その表情に、それほど疲労しているような様子はない。
 それもそのはず。
「普通の人間なら長い石段を登るのは一苦労かもですが、僕達サイボーグならなんのその」
 そう、ふたりは猟兵であり、サイボーグ。だから、このくらいの石段を上ることは、へっちゃらです。
 けれど、ちゃんと心得てもいます。
「そもそもあたしちゃん傭兵だしこの程度は余裕なんだけど、それを口に出すほど空気読めてないわけじゃないわよ」
 ふーふー息を切らして上っている周囲の人々の空気は確りと読んで、敢えて野暮な事は口にしないし。
 でもやっぱり、傭兵であるライアンにとっては、長い石段も余裕だから。
 ――えらいわね? 褒めなさい。
 そう、金の瞳を細めれば。
「わぁ、流石元軍人のライアンさんだけありますね」
 ぱちぱち手を叩いて素直に褒める千秋に、ま、当然よね、と笑み返す。
 そんなふたりの眼下に広がるのは――美しいも実と桜の綯い混じるいろ。
「わぁ、すごい絶景と紅葉。見て下さいライアンさん! 燃えるような赤い色」
 そうはしゃぐ千秋の姿は、まるでワンコのようで。
 はしゃぐワンコ……もとい、千秋と共にライアンが向かうのは。
「足湯ありますね、浸かりましょう」
「いいわね、いきましょ」
 石段の疲れを癒すべく、訪れた人々が寛いでいる足湯。
 いや、他の人達に比べれば、疲れているわけではないのだけれど。
「なんのその、なんて言いましたが、僕達みたいに鋼鉄の足を持ってても、温まりたい時はあるんです」
 ぴったりふたり並んで寄り添って、ほっかり温まって癒されたい気分なのです。
 そんな千秋の言葉に、ライアンはくすりと笑って。
「温まりたいならハグでもしたら良いじゃない」
 ――抱けおらこのやろうこないからこっちからハグするわよ。
 すぐ隣に座っている彼女な彼に、ぎゅぎゅっとハグを。
 そう仲良くハグし合って、互いの温もりを半分こし合いながら、千秋はふと天を仰いで。
「もうだいぶ寒くなってきて空気が澄んできましたね?」
 ひやりとした秋風と秋の夜の空気を感じ、そうペリドットの瞳を細めるけれど。
 でも今は、平気……ほかほか気持ち良い足湯と、何よりも、ライアンの温もりがあるから。
 そんな足湯で十分あたたまった後。
「ご当地スイーツがありますね、お土産も欲しいです! あれもこれもと目移りしてしまってキリがないですね!」
「甘いものとお土産は買えるだけ買って食べるだけ食べるわよ」
 猟兵っていいわよね、と支給されている「サアビスチケット」をひらひらさせながら。
 早速、大食いでもあるライアンは、甘いものを片っ端から買っては食べて。
 甘い物を十分満喫した後、やって来た社務所でふたり、ガラスドームの御守りへと目を向ける。
 だって――やっぱり、ふたり分購入するならば。
「お守りのペアは必須ね」
「ガラスドームの御守りは是非ともペアで」
 そして、ふたりが選んだのは……一緒に楽しんだ紅葉の景色が閉じ込められた、恋人同士お揃いの秋。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【狼兎】

紅葉と桜が同時に見れるって不思議だよねぇ
本当なら季節が違うもの
冬の桜だってあるし可能性はあるだろうけど

え…い、いやいや、どちらかといえば僕オレンジだし
確かに服はピンク多いけど…

(ただでさえ紅葉に紫崎君重ねちゃってるのに…
いつも鋭いのになんで鈍いんだばか…)

無理な運動は出来ないので途中まで階段頑張ってから翼で浮遊
参拝はルールを守ってしっかりと
絶景を楽しみつつ…さっき意地悪しちゃったし食べ歩き

僕は充分なのでたい焼きを食べつつ紫崎君の完食を待つよ
あ、猫ちゃん居たら【指定UC】で完全な兎に変化
紫崎君の周りで一緒に遊ぶのも楽しいかも!

兎の【聞き耳】なら澄子さんの声も聞き取りやすいかもだしね?


紫崎・宗田
【狼兎】

自分の足で階段を上がりつつ
チビが俺を好きっつーことはどうせこの紅葉にも俺の色重ねてるんだろうし

桜ねぇ…お前の色だな

意図的にそうさらりと呟いてやる
ま、意識させてぇだけの意地悪なんだが

どっちもお前の色でいいだろ
それよか、お前危ねぇと思ったら無理せず飛べよ?

参拝のルールなんざ知らねぇからチビに聞きつつ
参拝を済ませたら甘くないかつ腹に溜まりそうなもの
(肉物メイン)を適当に買い
…なるべく澄子の傍を陣取って食うか
バレねぇよう物陰に潜む形で
チビは兎状態だし、俺が大声出さなきゃ大丈夫だろ

…もふもふが二匹…
思わず兎になったチビを猫と交互に撫で
…ち、力加減間違えたら潰しそうで怖ェなこれ…(ドギマギ



 紅のトンネルを走り抜け、夜汽車から降り立ったその眼前に広がるいろ。
 それは、行灯燈る長い長い石段に降り積もった、紅とピンクの彩。
 春に咲き誇る桜と、秋に色づく紅葉……それは本来、混ざる事のない四季だけれど。
「紅葉と桜が同時に見れるって不思議だよねぇ、本当なら季節が違うもの。冬の桜だってあるし可能性はあるだろうけど」
 確かに別の世界でも、紅葉と桜が一緒に見られる場所はあるにはあるだろうが。
 眼前の石段を染めるのは、今この時期にしか見られない秋の紅と、年中いつだってこの世界で咲き誇っている幻朧桜。
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はふと琥珀色の瞳に、燃える炎の様な秋の紅を舞わせた。
 そして、自分の足で石段を上がりながら、そんな隣にある澪の横顔をちらりと眺めつつ。
 紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)は、思う。
(「チビが俺を好きっつーことはどうせこの紅葉にも俺の色重ねてるんだろうし」)
 一歩ずつ踏みしめる色は、澪がきっと自分と重ねているだろう紅葉と、ピンク色をした桜の花弁だから。
「桜ねぇ……お前の色だな」
 そう意図的に、さらりと呟く宗田。
 それは――意識させたいだけの、ただの意地悪。
 けれどその呟きに、ぱちくりと瞳を瞬かせ、反応を示す澪。
「え……い、いやいや、どちらかといえば僕オレンジだし。確かに服はピンク多いけど……」
 目の前にじゃれ合うように踊る、紅の紅葉とピンクの桜。
 そして炎の如き紅を見つめていた澪はやはり、宗田の思った通り。
(「ただでさえ紅葉に紫崎君重ねちゃってるのに……いつも鋭いのになんで鈍いんだばか……」)
 並んで歩く彼と、重ね合わせていたから。
 そんな澪の仄かに染まった桜色の頬を見つめ、分かりやすいその反応を確認してから。
「どっちもお前の色でいいだろ。それよか、お前危ねぇと思ったら無理せず飛べよ?」
 無理な運動は出来ない澪に、そう宗田は声を掛けておく。
 澪は決して無理はせず、けれども途中までは頑張って自分の足で石段を上った後、それからは彼の言う通り翼で浮遊して進んで。
 ふたり並んで上り切り、石段の頂上にある神社へまずは挨拶を。
 参拝のルールを知らない宗田も、澪に教えてもらいながら、きっちりと参拝を済ませる。
 そして、さっき意地悪しちゃったし、と。絶景を楽しみつつも澪は呟いて、次はいざ食べ歩き!
 とはいえ、夜汽車で弁当も食べたし。おなかの具合は十分な澪は、買ったたい焼きをもぐもぐ食べながらも。
「甘くないかつ腹に溜まりそうなものでも食うか」
 そう、肉物メインに適当に色々と購入しては頬張る宗田が、それらを完食するのを待つ。
 そして、コロッケをはむりと口にしながら……さり気なく宗田が位置取るのは、澄子の傍。
 それから足元をふと見れば、一匹の猫が。
 そんな猫さんと戯れるのは……桜色の兎さん?
 いえ、その小さな垂れ耳兎さんは、ユーベルコードで姿を変えた澪。
 その大きくて長い耳で、澄子の声を拾えるよう意識しながらも。
(「紫崎君の周りで一緒に遊ぶのも楽しいかも!」)
 宗田の足元で猫さんと仲良く、もふもふと戯れはじめる。
「……もふもふが二匹……」
 戦利品を食べ終わった宗田はそう呟きながら、そっと大きなその手を伸ばして。
 思わず兎になった澪を、猫と交互にもふもふと撫でてあげる。
(「……ち、力加減間違えたら潰しそうで怖ェなこれ……」)
 気持ち良さそうに瞳を細める澪と猫を潰さないよう優しく、ドギマギしながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

東雲・円月
咲夜は少し疲れてしまったようだから、今回の探索は俺ひとりで行いましょう。
足湯に浸かって少し休めば疲労も取れるでしょう。……心配ではあるけど。

ともあれ……さて、どうしたものかな。
取り敢えず歩き回りましょうか。
……お守りか、桜のお守りを買っていこうかな。咲夜に。
月のお守りなんて、流石にないよね。仕方ないか。

流石にうろうろしていても埒があかないか。
当の澄子さんの様子でも探りましょうか。
見つからないように。幸い、隠れられそうなところはたくさんあるし。
俺は夜目も利く、暗がりからなら。

匿っているとなると、やはり人目に付かないところでしょうか。
神社で人目に付かないところ……。
少し、周囲を探ってみましょうか。



 どこまでも紅が続く紅葉のトンネルは美しく、夜汽車の旅はとても楽しかったけれど。
 ちょっぴり遠出の長旅に加え、神社まで続く長い長い石段はやはり大変だったから。
(「足湯に浸かって少し休めば疲労も取れるでしょう」)
 ……心配ではあるけど、と。ちょっぴり後ろ髪引かれてしまうけれど。
 少し疲れてしまった様子の咲夜を足湯で休ませてから。
 ひとり、神社の探索へと向かう東雲・円月(桜花銀月・f00841)。
(「ともあれ……さて、どうしたものかな。取り敢えず歩き回りましょうか」)
 そうぐるりと藍の視線を、紅と桜色降る景色へと巡らせ、暫し歩いてみれば。
 ふと目に留まったのは、神社の社務所。
「……お守りか、桜のお守りを買っていこうかな。咲夜に」
 この神社で人気のガラスドームのお守りのことを思い出し、立ち寄ってみる円月。
 そんな彼が探すモチーフは。
(「月のお守りなんて、流石にないよね。仕方ないか」)
 月が閉じ込められたガラスドーム。
 兎に月、芒に月……そういう月ならばあるけれど、何となくピンとこずに。
 予定通り桜のお守りを買わんと、春のモチーフが集められた一角に目を遣れば。
 瞳に飛び込んできたお守りのひとつに目を留め、迷わずにそれを手に取る。
 ――円描く満月に桜舞う、ガラスドームのお守りを。
 それから、暫く境内を歩いてみるも。
(「流石にうろうろしていても埒があかないか。当の澄子さんの様子でも探りましょうか」)
 ……見つからないように、と。
 そして澄子を探せば、すぐにその姿を確認できて。
(「幸い、隠れられそうなところはたくさんあるし。俺は夜目も利く、暗がりからなら」)
 澄子の動向を彼女に気取られぬよう、円月はそっと窺ってみる。
 普通に本殿で手を合わせた後、境内を歩く澄子。
 その様子に、今のところ不審な様子はないが。
 少し周囲を窺うように視線を巡らせた後……彼女が足を向けたのは、奥社である『紅の社』へと続く道。
(「匿っているとなると、やはり人目に付かないところでしょうか」)
 ――神社で人目に付かないところ……。
 澄子を引き続き密かに追いながらも、円月は、いつの間にか紅のいろだけになった景色へと再び視線を巡らせる。
 ……少し、周囲を探ってみましょうか、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティーシャ・アノーヴン
風花(f13801)さんを肩に乗せて。

そうですわね。当てもなく歩くのも良いですが・・・。
私は神社の方に話を聞いてみようかと。
犬や、それに似通う動物の話、伝説の類を聞けるかも知れません。
伝承や逸話、そういったところから何かヒントもあるやも。

どういった方に聞くと良いのでしょう。
神社の方、と言うのが良く解りませんわね。風花さんは解りますか?
お話を聞くのですし、礼儀作法をきちんとしましょう。
ええっと、お話を聞くにはお賽銭がいるのでしょうか。
申し訳ございません。何分、外の世界の者で、少々勝手が解らず・・・。

・・・あと、風花さん、私はソフトクリームを食べたいです。
お話を聞いた後、買って食べませんか?


七霞・風花
ティーシャ(f02332)の肩で

では神社の方へご一緒させていただきましょうか
歴史あるところには、それだけ情報が積み重なっているものです
あまり古い物ですと……掘り起こす必要がありますけれどね

神社の方であれば、言い伝えなどありそうですね
あちらの建物へ…………ぁ、お賽銭はなくていいです、礼儀は大事だと思いますが
ええ、お賽銭はお話を伺った後に、お参りに使いましょう
しかし本当に、私もそこそこ世間知らずですが、ティーシャさんは筋金入りですね

あ、ソフトクリームですか
私もちょっと何か食べたいです、一口くださいね
そして私、ちょっとガラスドームほしいかも
好きなんですよね、こういう雑貨を集めて、並べて、眺めるの……



 秋の色彩を眺め楽しんだ、夜汽車の旅。
 そして辿り着いた終着駅を出れば、秋の夜空に伸びる長い長い石段。
 行灯燈り、紅葉と桜で敷き詰められたそんな石段を上り切って。
「では神社の方へご一緒させていただきましょうか」
 七霞・風花(小さきモノ・f13801)が向かうのは、紅と桜色に彩られた神社。
「そうですわね。当てもなく歩くのも良いですが……」
 興味深く紫の視線を周囲に巡らせながら、ティーシャ・アノーヴン(シルバーティアラ・f02332)も頷いて。
「歴史あるところには、それだけ情報が積み重なっているものです。あまり古い物ですと……掘り起こす必要がありますけれどね」
「私は神社の方に話を聞いてみようかと。犬や、それに似通う動物の話、伝説の類を聞けるかも知れません」
 伝承や逸話、そういったところから何かヒントもあるやも、と考えるけれど。
「どういった方に聞くと良いのでしょう」
「神社の方であれば、言い伝えなどありそうですね」
「神社の方、と言うのが良く解りませんわね。風花さんは解りますか?」
 風花の言葉に、ふと金色の髪を微かに揺らしながら首を傾けるティーシャ。
 そんな様子に風花は白い髪を秋空に靡かせ、翅を揺らしながら。
「あちらの建物へ……」
 神社の人がいるだろう社務所の方へと、向かおうとするけれど。
「お話を聞くのですし、礼儀作法をきちんとしましょう。ええっと、お話を聞くにはお賽銭がいるのでしょうか」
「ぁ、お賽銭はなくていいです、礼儀は大事だと思いますが」
 ……ええ、お賽銭はお話を伺った後に、お参りに使いましょう、と。
 さらに首を捻ったティーシャへと、そう教えてあげてから。
「しかし本当に、私もそこそこ世間知らずですが、ティーシャさんは筋金入りですね」
 礼儀正しくてお淑やかだけれど、改めてとことん世間知らずであると。
 これまで森から出ていなかったと言っていたティーシャを見つめ、そう口にする風花。
「申し訳ございません。何分、外の世界の者で、少々勝手が解らず……」
 けれど、勝手は色々分からないけれど……でも、だからこそ。
「……あと、風花さん、私はソフトクリームを食べたいです」
 ……お話を聞いた後、買って食べませんか? と。
 見つけたソフトクリームに、ティーシャは興味津々、目を向ける。
 気になるものがあると周りが見えなくなることがあるほど旺盛な彼女の好奇心は、世間知らず故に、より擽られるのかもしれない。
「あ、ソフトクリームですか。私もちょっと何か食べたいです、一口くださいね」
 風花は、何気にわくわくしている様子のティーシャに、こくりと頷いて。
 同じく、気になっているものを口にする。
「そして私、ちょっとガラスドームほしいかも」
 丁度、向かう社務所に売られているという、四季を閉じ込めたガラスドームのお守り。
 まずは話を聞くついでにガラスドームを購入するべく、ふたりは紅葉と桜の景色の中を進んで。
「犬、ですか。この神社には、犬の伝承があるんですよ」
 社務所の巫女にまずは訊ねてみれば、返ってきたのは、犬に纏わるこの神社の謂れ。
「この神社は、身を挺して災いから人々を護った人物を奉っているのですが。その人物の傍らにはいつも犬がいて……主人が亡き後もずっとその犬は、この神社で主を待ち続けたといわれています」
 そんな『犬』についての話を聞いた後、礼儀正しく丁寧に巫女に礼を言ってから。
「好きなんですよね、こういう雑貨を集めて、並べて、眺めるの……」
「綺麗ですわね。故郷の森を思わせるものや、見たことがないものも沢山ありますね」
 早速どれにしようかと、ガラスドームを選び始めた風花に頷きつつ。
 ……これは何のモチーフでしょうか? と。
 知らないものを見つけては、再び首を傾げるティーシャ。
 そして、閉じ込められたひとつひとつ違う四季のいろに、楽しく目移りするけれど……この後は、美味しいソフトクリームも待っています。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鶴澤・白雪
千織(f02428)と

紅の社に願掛けにいくわ
名前だけあって本当に真っ赤ね
あたしの紅とは違う色で埋め尽くされてる

願掛けには蝋燭に願いを込めて捧げればいいのね
本来ならこの社の炎を灯すんだろうけどあたしは自分の蒼焔で火をつけるわ
この蒼はあの2人の色だからそうだと思うわ

千織は何をお願いするのか決めてるの?
あたしは自分を魂の写し身だって言い張るお馬鹿達が大した怪我もせず幸せになってくれるように、かしら

でも本人達には内緒にしておいてくれる?
また他人のことばっかりって呆れられるだろうから

ありがと、千織もとても優しい願いね
大切になったらそう願いたくもなるわよね
ふふ、あたしが変わり者なんじゃなさそうで安心したわ


橙樹・千織
白雪さん(f09233)と

紅の社へ願掛けに行きましょう
あらあら、素敵なお社
紅もとても美しくて…つい見入ってしまいますねぇ

ええ、そのようですねぇ
白雪さんの蒼は優しい蒼色ですね
ほわりと微笑みながら蝋燭にそっと火を灯しましょう

そうですねぇ、どうしましょうかねぇ…
白雪さんは決まっているのですか?
紅葉を見上げて考えるけれど、願いとはこういうものだったかしら?と首を傾げ
彼女へと質問を返してみる

それはそれは…大切な願いごとですねぇ
ふふふ、もちろん
私達の秘密です

彼女の願いを聞き、これで良いのだと決めた願いごと
目の前の優しい彼女を含め、この手で護りたいとそう思った大切な人達が、幸せに満ちた日々を送れますように



 燃える様な紅のトンネルを夜汽車で走り抜けて。
 石段を上りやって来た神社を彩るのは、紅と混ざる幻朧桜のいろ。
 けれど、二色が織り成していた彩りが、再び紅一色のみに変わる。
「あらあら、素敵なお社。紅もとても美しくて……つい見入ってしまいますねぇ」
 橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)は訪れた願掛けの社――『紅の社』を前に、感嘆の溜め息をつきながら紡いで。
「名前だけあって本当に真っ赤ね」
 ……あたしの紅とは違う色で埋め尽くされてる。
 鶴澤・白雪(棘晶インフェルノ・f09233)もそう、千織の隣で、自分のものとは違った紅を見上げれば。
 己の酸漿の如きレッドスピネルのいろと眼前のいろを、重ね合わせる。
 そして『紅の社』に数多揺れる炎を捧げた人達と同じように、ふたりも願掛けを。
「願掛けには蝋燭に願いを込めて捧げればいいのね」
「ええ、そのようですねぇ」
 自分の問いにそうこくりと頷き、備え付けてある蝋燭を見つけ手渡してくれた千織へと。
 白雪は蒼き焔を宿しながら、こう、続けるのだった。
「本来ならこの社の炎を灯すんだろうけどあたしは自分の蒼焔で火をつけるわ」
 ――この蒼はあの2人の色だからそうだと思うわ、って。
 そんな、紅の世界に揺らめく蒼の焔を見つめて。
「白雪さんの蒼は優しい蒼色ですね」
 橙の瞳にその優しいいろを映し、ほわりと微笑みながら、蝋燭にそっと火を灯す千織。
 そんな千織へと視線を向け、白雪は訊ねてみる。
「千織は何をお願いするのか決めてるの?」
「そうですねぇ、どうしましょうかねぇ……」
 ふとそう呟き、紅葉を見上げて考えるけれど……願いとはこういうものだったかしら? と首を傾げてから。
 隣に在る彼女へと、千織は質問を返してみる――白雪さんは決まっているのですか? って。
 そして逆に訊ねられたそんな声に、紅い瞳にも蒼焔灯しながら答える白雪。
「あたしは自分を魂の写し身だって言い張るお馬鹿達が大した怪我もせず幸せになってくれるように、かしら」
「それはそれは……大切な願いごとですねぇ」
「でも本人達には内緒にしておいてくれる? また他人のことばっかりって呆れられるだろうから」
 そう、ちらりと視線を向ける彼女に、千織は再び頷く。
「ふふふ、もちろん」
 ――私達の秘密です、って。
 そして、彼女の願いを聞いて……これで良いのだと。
 千織の決めた願いごと、それは。
 ――目の前の優しい彼女を含め、この手で護りたいとそう思った大切な人達が、幸せに満ちた日々を送れますように。
「ありがと、千織もとても優しい願いね」
 ……大切になったらそう願いたくもなるわよね。
 白雪はそう瞳を細めてから、社へと願いの炎を捧げて。
 いつも柔らかで優しいいろの微笑み纏う千織へと、笑み返す。
 ――ふふ、あたしが変わり者なんじゃなさそうで安心したわ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水標・悠里
息が切れる、足がずっしりと重たい
けれどそんな疲労が消し飛ぶような、春と秋が混ざり合った景色が何よりも美しい

ため息ばかり吐いていられません
コロッケ、メンチカツ
そしてお目当ての『栗抹茶と桜クリームの大福セット』を頂くのです!
こうしてあちこち世界を巡って、色んな景色を見て
美しいものや美味しいものに触れられるのは猟兵の特権かも知れませんね

後を引く抹茶と桜の清々しい風味と、濃厚なクリームの滑らかな舌触り
どれも美味しいですが季節を彩る菓子は口の中まで染めるよう

ここに来てから随分とはしゃいでしまいましたが
勿論目的は違えませんとも
偶にはどこにでもいる人間らしく振る舞ってみたいのです
それももうすぐ終わりですね



 夜汽車に揺られ辿り着いた終着駅へと降り立てば、迎えてくれたのは紅葉と桜の彩りと。
 秋の夜空へと延びる……長い長い石段。
 目指す神社は行灯燈る石段を上り切った先、首が痛くなるほど遥か遠くに見えるけれど。
 一段ずつ、神社へ向けて石段を上っていく水標・悠里(魂喰らいの鬼・f18274)。
 そして、ようやく長かった石段の終焉が間近に迫った頃。
 ――息が切れる、足がずっしりと重たい。
 肩で息をしながらも、疲労感で鉛の様に重くなった足を引き摺るように、何とか最後の一段を上り切る。
 それから、はあっとひとつ長い息をついた後。
 ふと顔をあげてみれば……そこには、疲労も消し飛ぶような紅葉と桜のいろ。
 何よりも美しい、春と秋が混ざり合った景色が。
 吹き抜ける秋風は、ひやりとした冷たさを帯びているけれど。
 悠里の漆黒の髪を優しく揺らし、高台から臨む夜空に紅とピンクの彩りを躍らせる。
 それに……ため息ばかり吐いてはいられない。
 そうきょろりと青の視線を巡らせる悠里が探すもの、それは――。
(「コロッケ、メンチカツ。そしてお目当ての『栗抹茶と桜クリームの大福セット』を頂くのです!」)
 良い匂いを漂わせている、美味しい食べ物やスイーツ!
 閉鎖された世界で生きてきた彼にとって、初めて見るもの食べるもの、その全てが旺盛な好奇心を擽って。
(「こうしてあちこち世界を巡って、色んな景色を見て。美しいものや美味しいものに触れられるのは猟兵の特権かも知れませんね」)
 先程とは違った軽い足取りで、茶屋へと入れば。
 注文するのは勿論――季節限定の、栗抹茶と桜クリームの大福セット。
 程なく運ばれてきたそれを、順に少しずつ味わってみて。
(「後を引く抹茶と桜の清々しい風味と、濃厚なクリームの滑らかな舌触り……どれも美味しいですが、季節を彩る菓子は口の中まで染めるよう」)
 窓の外を染める風景だけでなく、口の中にまで広がる季節の彩りと味。
 そしてほんわり、温かいお茶をいただきながら、暫し季節の甘味と景色を楽しんで。
 茶屋を出た後、ほくほく揚げたてのコロッケとメンチカツを、はふはふといただきながら。
(「ここに来てから随分とはしゃいでしまいましたが、勿論目的は違えませんとも」)
 小さな炎のように燃える紅と朧の如き桜を舞わせた青の瞳を、そっと細める。
 ――偶にはどこにでもいる人間らしく振る舞ってみたいのです、と。
 そして、はむりともうひとくち、コロッケを口に運びながらも思うのだった。
 ……それももうすぐ終わりですね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
長い石段を登るとそこは絶景であった。
…なんちゃって。

信心など縁遠い己には、本殿で手を合わせるなんて聊かハードルが高くて。
装備一式数十kg(など人には明かしませんが)、
歩くだけでも体力作りな自分への労いに、
茶屋でゆったり一服して、景色と人を眺めても許される筈!
時に目を閉じ、人々の話に耳澄ます。
足繁く通う諸兄、愛いもの好きの乙女、生き物と戯れたい子供…
キーワードは、動物。
そして、傷つき虐げられた者。

影朧の居場所は、紅の社。
後は――
様々な声の内から、纏わる何か情報を拾えればと。

…しっかし。
彼女にとって、この世は苦界か。
生きるのが苦痛じゃ仕方無い
――とは思えど。
僕は、悲劇よりめでたしの方が好みなんでね



 到着した終着駅に降り立てば、夜汽車から眺めた紅に加わった、もうひとつの彩り。
 紅葉と桜花弁が混ざっては降り積もり、神社へと続く道のりが、燈る行灯に照る。
 そんな春と秋が混ざったような天然の絨毯を一歩ずつ進んで。
 くるりと振り返ったクロト・ラトキエ(TTX・f00472)の眼下に広がっていたのは、秋の夜に舞い踊る、紅葉と桜が織り成す美しくも不思議な風景。
 そして、クロトはその様を見つめ思う。
 ――長い石段を登るとそこは絶景であった。
(「……なんちゃって」)
 クロトはふっと青い瞳を細め、くすりと笑んでみせるも。
 改めて巡らせた視線に入って来たのは、神社を参拝する人々の姿。
 ……信心など縁遠い己には、本殿で手を合わせるなんて聊かハードルが高くて、と。
 そう、社へと足を運ぶのに躊躇いを覚えてしまうクロトが、向かった先は――。
(「装備一式数十kg、歩くだけでも体力作りな自分への労いに、茶屋でゆったり一服して、景色と人を眺めても許される筈!」)
 一見するとそうは気取られないし、人に明かしたりなどはしないけれど。
 何気に重装備であるクロトにとって、長い長い石段を上ることは、何気に結構大変だったから。
 甘いものや温かいお茶をいただきながら、ほっと暫しひと休みしても、全く構わないに違いない。
 いや、勿論、ただほっこりまったりするだけではない。
 ふと一息ついた後、クロトはそっと瞳を閉じて。
 ――足繁く通う諸兄、愛いもの好きの乙女、生き物と戯れたい子供……キーワードは、動物。
 そして……傷つき虐げられた者。
 人々の話に耳澄ましながらも、様々な声の中から必要な情報を拾っていく。
 紅葉と桜舞う神社と願掛けの社、予知された影と若き未亡人……それに纏わる何かを、掴むために。
 それからクロトはおもむろに瞳を開き、そして聞いた話から確信する。
(「影朧の居場所は、紅の社。後は――」)
 その時……ふと目に入ってきたのは、澄子の姿。
 窓の外の風景を歩くその様は、どこか哀愁を背負っているようで。
(「……しっかし。彼女にとって、この世は苦界か」)
 ……生きるのが苦痛じゃ仕方無い、とは思えど。
 クロトは彼女の姿を青の視線で追いながら、その背中にそっと呟く。
 ――僕は、悲劇よりめでたしの方が好みなんでね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

吉瀬・煙之助
理彦くん(f01492)と
わぁ…灯籠の明かりがとっても幻想的だね
照らされた赤と桃色が綺麗…
依頼の事は忘れないようにしないとだけど
少しだけならまだ楽しんでいてもいいかな…?

神社に来たらやっぱりお参りだけど
社務所で売っている御守が気になっちゃうよね…
理彦くんは気になるモチーフはあるかな?
僕は……桜や紅葉も綺麗だけれど
やっぱり牡丹の花かな…
理彦くんとは雨も大事な思い出だから
そっちのモチーフも捨てがたいんだけどね
でも牡丹は理彦くんの花だからね

白梅…僕、可憐って歳じゃないよっ…?
(思わず照れて真っ赤になる)
でもうん…そう言ってくれるのは嬉しいな…

※アドリブOK


逢坂・理彦
煙ちゃんと(f10765)
ここが例の神社かー。
やっぱり神社にくると背筋がシャキッとするよ。
桜の絨毯に紅葉の絨毯。両方が見れるのってやっぱり不思議だね。
うん、依頼だけど。でも、もう少しだけ楽しもうか。

社務所のお守りはガラスドーム。硝子の球体。
俺も紅葉も桜も好きだよ。
そうだね、雨は二人の思い出だ。
ふふ、煙ちゃんの俺のイメージは牡丹?
俺の煙ちゃんのイメージは白梅かな。
白くて可憐で好きなんだ。どうかな?
可憐、だよ?俺にとってはそうだから。



 ちょっぴりドキドキした夜汽車の旅は、燃えるような紅のトンネルの中を走り抜けてきたけれど。
 夜空へと伸びる石段を上れば、迎え入れてくれるいろは紅だけでなく、桜の色の加わって。
 舞い上がり降り積もるふたつの彩りが、仄かな灯火に照っては浮かび上がる。
 そんな秋の夜、行灯の光に導かれる様に歩きながら。
「わぁ……灯籠の明かりがとっても幻想的だね」
 照らされた赤と桃色が綺麗……と。
 吉瀬・煙之助(煙管忍者・f10765)がぐるり巡らせた翡翠のいろにも、舞い降っては燈るふたつの彩り。
「ここが例の神社かー。やっぱり神社にくると背筋がシャキッとするよ」
 吹く秋風が、紅葉や桜花弁と共に纏う襟巻をひらりと揺らして。
 感じるのは、頬を撫でるひやりとした心地。
 煙之助と並んで歩く逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は、どこか凛とした空気纏う立派な神社の本殿を見上げた後。
「桜の絨毯に紅葉の絨毯。両方が見れるのってやっぱり不思議だね」
 掌をそっと開けば、じゃれ合うように仲良く降ってきたのは、小さき炎の如き紅葉と可憐な桜のひとひら。
 そんな春と秋を思わせるような、本来ならばあまり交わることのないふたつのいろを見つめ、瞳細めながらも。
「依頼の事は忘れないようにしないとだけど、少しだけならまだ楽しんでいてもいいかな……?」
「うん、依頼だけど。でも、もう少しだけ楽しもうか」
 勿論、此処に足を運んだ目的を忘れたりはしないけれど。
 この珍しくも美しい風景を、ふたりでもう少しだけ楽しんでも、きっといいはず。
 紅葉と桜が一度に観られる名所なだけあり、神聖な空気感の中でも、いくつも並ぶ店々や訪れた人たちの声で楽し気で。
 立派な本殿に参拝する人たちが列を成しているのが見える。
 煙之助はきょろりと周囲を見回して、それからある場所へと目を留める。
「神社に来たらやっぱりお参りだけど、社務所で売っている御守が気になっちゃうよね……」
 それは、神社の社務所。
 早速ふたり、向かってみれば。
 社務所に並ぶ手作りのお守りは、ガラスドーム――四季を閉じ込めた硝子の球体。
 眼前に並ぶ沢山の季節に、色々目移りしてしまいそうだけれど。
「理彦くんは気になるモチーフはあるかな? 僕は……桜や紅葉も綺麗だけれど」
 ――やっぱり牡丹の花かな……。
 そうそっと煙之助が摘まんだお守りの中に咲くのは、隣にいる理彦を思わせる赤い花。
「俺も紅葉も桜も好きだよ。ふふ、煙ちゃんの俺のイメージは牡丹?」
 そんな硝子の中の牡丹を見つめながら笑う理彦に。
「理彦くんとは雨も大事な思い出だから、そっちのモチーフも捨てがたいんだけどね」
 ……でも牡丹は理彦くんの花だからね、って。
 煙之助は愛し気に、舞い降る紅葉とはまた違った赤のいろを緑色の瞳に映した。
 そんな煙之助の言葉に、こくりと頷いてから。
「そうだね、雨は二人の思い出だ」
 理彦は並ぶお守りをきょろきょろ見つめ、ふと微かに耳をぴこりとさせて。
 そっと、見つけたお守りをひとつ、大事そうに手に取って紡ぐ。
「俺の煙ちゃんのイメージは白梅かな。白くて可憐で好きなんだ」
 ……どうかな?
 そう小さくこてんと首を傾けて、掌の上の白梅の様な隣の彼へと視線を向けてみれば。
「白梅……僕、可憐って歳じゃないよっ……?」
 ぱちくりと大きく瞳瞬かせ、ふるふると首を振る煙之助。
 けれど、本人はそう謙遜してもやっぱり。
「可憐、だよ? 俺にとってはそうだから」
 その姿は、冬の終わりを告げる様に綺麗に咲く、その花みたいだから。
 煙之助は、牡丹の様に笑み咲かせる理彦と彼の掌にある白梅を交互に見た後。
「でもうん……そう言ってくれるのは嬉しいな……」
 まるで眼前の紅葉の様に――思わず照れて、顔を真っ赤に色付かせる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
石段を上ってまずは神様にご挨拶を。
挨拶を済まして上ってきた方へ振り返り景色を楽しみながら次の行動を思案。
澄子殿はおそらく『紅の社』で願をかけているだろうから今から追いかければ間に合いそうですが…。
匿っている影朧の存在も気になります。
転生に導くなら少しでも情報が欲しいところ。


ずっとここにいるということは、この場所に思い入れがあるということ。生前よくここに来ていたなら覚えている人もいるはず。
社務所に話を聞きに行ってみようかな。
ガラスドームの御守りにも興味がありますし。
今日見た桜と紅葉のドームがあれば買っていこうかな。



 夜汽車を降りて、ふと秋の夜空を仰げば。
 そこには、舞い踊る紅葉と桜花弁、そして長い長い石段。
 紅と桜色で敷き詰められた天然の彩りの中、天に近い位置に座する神社へと、一歩ずつ足を勧めて。
 仄かに照る行灯に導かれるように辿り着いた先、上り切ったところにいたのは二匹の狛犬。
 そんな狛犬さんにもぺこりと挨拶をしてから、吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)がまず向かうのは、神社の本殿。
 きっちり作法に倣い、丁寧に手を合わせ、参拝を済ませてから。
 上がってきた石段の方へとふと振り返れば……そこには、紅葉と幻朧桜が織り成す、美しくも不思議ないろの景色。
 そんな春と秋が混ざり合ったような、この世界ならではの彩りを堪能しながらも、次の行動を思案する狐珀。
(「澄子殿はおそらく『紅の社』で願をかけているだろうから、今から追いかければ間に合いそうですが……」)
 願掛けをしにこの神社を訪れている澄子のことは、勿論なのだけれど。
(「匿っている影朧の存在も気になります」)
 ……転生に導くなら少しでも情報が欲しいところ――と。
 影朧はオブリビオンであるが、不安定な存在。故に、転生させることも不可能ではない。
 けれど、肝心の影朧についてのことを知っておかなければ、説得はできないから。
 狐珀は、藍色の視線をぐるりと一度周囲に巡らせた後。
「社務所に話を聞きに行ってみようかな」
 そう呟き、紅と桜色の景色の中、再び歩き出す。
 気になっている犬のような影朧は、この神社にずっと物言わず在るようだが。
(「ずっとここにいるということは、この場所に思い入れがあるということ。生前よくここに来ていたなら覚えている人もいるはず」)
 社務所にいるこの神社の人であれば、何か見たり聞いたり、知っているかもしれない。
 それに、話を聞いて情報収集することも、勿論なのだけれど。
「ガラスドームの御守りにも興味がありますし……」
 この神社の名物であるという、色々な四季を閉じ込めたお守りも、見てみたいから。
 それからふと狐珀は、仲良く舞い降ってきた紅葉と桜花弁を、広げた掌で掬い取って。
 ふたつのいろを映した、秋の夜空の如き澄んだ藍の瞳を、そっと細める。
 ――今日見た桜と紅葉のドームがあれば買っていこうかな、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
気を緩める心算は無くとも
僕まで心沈めるばかりでは、
彼女の手を引くも出来まいし
『犬』の子は人の情に聡いからね

それに、季節限定の甘味と聞いては
茶屋へと向かう足は――止まるまい

紅と桜の景を楽しみながらと
口にする大福には、矢張り、綻ぶ
桜クリームは初めて口にしたけれど、
独特な味と仄かな甘みが癖になりそうだ

栗抹茶をを確と味わい終えたなら、
戯れに飾る紅葉を手遊びつつも本題へ
店主であれば、影朧の御話は御存知?
犬のような子を見たと、噂を聞いてね
……ずうっと、此処に居るんだろう?
忠犬として、誰かを待っているのかな

問えば、答へ静かに耳傾けて
序で聞くのは、好奇心

因みに『紅葉行灯』は読んだかい?
櫻居先生も、此処に来た?



 眼前には、紅だけでなく桜の彩りまで加わって。
 燈る行灯が、よりその美しさを際立たせているというのに。
 夜汽車を降りて見かけた、今回の物語の重要人物である彼女――澄子の表情は何処か浮かず。
 景色などまるで見えてないかのように、足早に神社へと向かい始める。
 そんな彼女の心を今支配しているもの、それは楽しい夜汽車の旅路でも、美しい紅葉でも桜でもないだろう。
 決して、気を緩めるつもりはないけれど。
(「僕まで心沈めるばかりでは、彼女の手を引くも出来まいし」)
 ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は、さり気なく彼女の姿を追う紫丁香花の瞳をそっと細める。
 ――『犬』の子は人の情に聡いからね、と。
 そして舞い踊る紅葉と桜花弁の中、境内を歩くその足が止まることなく向かう先。
 それは……期間限定の甘味という、決して抗い難い魅惑的な響き。
 季節ならではの大福がいただける茶屋に腰を落ち着け、紅と桜の景を楽しみながら。
 ライラックは、早速運ばれてきた栗抹茶と桜クリームのふたつの大福を見比べて。
 まずは、この世界に常に咲く幻朧桜の如き色どりの甘味を、ぱくりと口にしてみれば。
(「桜クリームは初めて口にしたけれど、独特な味と仄かな甘みが癖になりそうだ」)
 口の中に広がるのは、訪れる春の様に柔らかに咲く甘さ。
 そして秋を思わせる栗抹茶も勿論、美味しくいただいた後。
 その手には、戯れに飾る紅葉ひとつ。それをくるりと手遊びつつも、本題へ。
「影朧の御話は御存知? 犬のような子を見たと、噂を聞いてね」
 茶のお代わりを勧めに来た店主へと、そう訊ねてみれば。
「犬? あぁ、この神社の伝承にある犬のことかい?」
「……ずうっと、此処に居るんだろう? 忠犬として、誰かを待っているのかな」
「影朧だとかそういう事は私にはよくわからないし、私は見たことはないけれど……まだ、待っているのかもしれないねェ」
 そして店主が話してくれたのは、この神社に纏わる伝承。
 災いから身を挺し人々を護ったという、この神社に祭られている人物。そして常にその傍らにあり、主人亡き後もずっとこの神社に在り続け、その言いつけを護り主人を待ち続けたという犬の逸話。
 そんな店主の話に、ライラックは静かに耳を傾けた後。
「因みに『紅葉行灯』は読んだかい?」
 ――櫻居先生も、此処に来た?
 序でにふと訊ねてみたのは、好奇心から。
 瞬間、その人物の名を聞いた店主の表情が、ぱっと変わる。
「櫻居先生! ああ、随分前だけど、いらしたよ。別嬪さん何人も侍らせた、気さくでいい男だったねェ。そんな色男が、あんな繊細な作品を書くなんて……あ、この神社の願掛けの社『紅の社』も、先生の『紅葉行灯』の社に似てるから、そう言われるようになったんだよ」
 ほら、サインも貰ったんだ! と店主が指すのは、どこぞのアイドルかのような、ちゃらい印象の字で書かれたサイン色紙。
 そんな、描く世界観とは全く印象の違う作家の人物像に、ライラックは一瞬だけ瞳を瞬かせるけれど。
 行灯に燈る紅葉と朧に咲く桜を見つめ、今度は、謎多き作家の足取りを追うように思い巡らせる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーチェ・ムート
【Lux】
アドリブ⚪︎

汽車なんて初めて!楽しかったー!また乗ろうね!
駅に居たノエルを発見!

ノエルー!

飛び付いちゃう
キミもLuxの一員
嬉しいな
歓迎会はまだまだこれから

迷子にならないよう誘の手を握って石段を

なんて素敵な景色なんだろう
キミ達と一緒に見ている今この瞬間が愛おしい

食べる食べる!
わ!美味しい!
みんなで食べたから美味しさも倍増だね

あ、お守りだって!
お揃いで買いたいな
えへへ、また一つ思い出が増えたね!

白百合が入ったお守りを買ったら
神社の人に感謝の祈りを込めて歌うよ
影朧について知ってる事を教えて
彼女は紅の社に何を隠してるの?
誘惑潜ませ情報収集
――早く会いたいと零した彼女の声が胸に切なく残っている


鳴夜・鶯
チーム【Lux】アドリブ◎
常に状況把握が出来る環境構築の為
夜汽車内で他の同業者(猟兵)に「コミュ力」で声を掛け
「情報収集」と、UB『小鳥遊』を使った上空からの澄子さんの追跡、
状況が動いた際の伝達役を買って出ます。

「願掛けの社」の近くに『逢魔が辻』の入口がありそうだけど
現状ではまだまだ情報が足らないなぁ…

「小鳥遊」から得た情報を整理しつつ内心色々考えながら
長い石段を上がりやっと着いた頂上から
紅葉と桜が織りなす絶景を4人で眺めます

疲れが吹き飛ぶくらいすっごいね♪
ほらあそこ限定の甘味があるんだって!!みんなで食べよう!!

限定メニューに舌鼓を打った後
お守りを一緒に選んで、一番気に入った物を購入します♪


祝・誘
【Lux】
アドリブ◯

ふふ、皆で乗ったから尚の事楽しかったわね
そうね、また乗りましょう
汽車から降りて紅と桜交じる景色を瞳に映し

其の中で一等映える、金糸の少女を見つけて
ノエル、お待たせしたわ
歓迎会も更に賑やかになるわね

さあ、行きましょうか
逸れそうだというルーチェに
手を差し出し握って

皆と長い石段を昇って頂上に着けば
華やかな景色広がり
美しさに目を細める

そんな素敵な甘味があるの?
それは是非食べないと
鶯の教えてくれた甘味処へ皆で
ほんと、とても美味しいわ

お揃いの御守り良いわね
買いましょう
ガラスドームというのね、綺麗
牡丹の花があればそれを

土産屋や神社の社務所の方に影朧のことを聞き込み
あなたは何か知っている?


ノエル・マレット
【Lux】アドリブ◎

駅で皆を待つ。空いた時間で『紅葉行灯』に目を通した。
……自分だけ生き残ってしまった贖罪の意識からなのか。最愛の人に命を奪われたいという哀しい願いは、彼にとって救いだったのでしょうか。

名前を呼ばれる。ああ、彼女達だ。私の素敵な友人たち。
うん、事件の事を忘れるわけではないが今は楽しもう。

一緒に石段を上ります。この長さも皆さんと上るのなら心地いい。
上がりきれば絶景。やはり皆で見られてよかった。

そうですね。お茶屋さんで休憩しましょうか。
ではその限定の甘味とお茶をいただきます。

記念に御守りをお揃いで。ネリネの花はありますか?

それと歌を聴いた方たちに影朧について質問してみましょうか。



 秋は行楽のシーズンだというけれど、夜はもう随分と風も冷たく感じる様になってきて。
 頬を擽るひやりとした秋風が、はらり散る紅葉と朧に舞う幻朧桜の花弁たちを、何処かへと攫ってゆく。
 そんな紅と桜色に染まる駅のホームで、視線を落としているノエル・マレット(誰かの騎士・f20094)の青き瞳が辿るのは、哀しくも美しい物語。
 夜汽車が駅に到着するまでの待ち時間のお供は、一冊の小説……櫻居・四狼著『桜ノ匣庭』の中の一篇『紅葉行灯』。
 愛する者と心中し損ね、ひとり残された男が『紅の社』に馳せ続けた願いと、彼が辿った末路が描かれた小説であるが。
(「……自分だけ生き残ってしまった贖罪の意識からなのか。最愛の人に命を奪われたいという哀しい願いは、彼にとって救いだったのでしょうか」)
 そう、一通り読み終え、ふっとひとつ息をついたノエルであったが。
 刹那、その顔を上げれば――定刻通りホームへと入ってきたのは、沢山の人を乗せた展望夜汽車。
「汽車なんて初めて! 楽しかったー! また乗ろうね!」
 少々長旅であったはずなのに、初めての夜汽車で過ごした時間は、あっという間。
 ルーチェ・ムート(吸血人魚姫・f10134)は太陽の様な笑顔をぱあっと宿し、楽しかった時間に微笑んで。
「ふふ、皆で乗ったから尚の事楽しかったわね」
 ……そうね、また乗りましょう、と。
 祝・誘(福音・f23614)は忘れ物がないかもう一度確認してから、夜汽車を降りる。
 より一層楽しかったのはきっと……その時間を一緒に共有できる皆がいたから。
 鳴夜・鶯(ナキムシ歌姫・f23950)もふたりと過ごした時間に笑んで頷きつつも、確りと大切な『サアビスチケット』と『乗車券』を握りしめながら。
「ボク達は澄子さんの様子を探っていたんだけど、引き続き上空からの澄子さんの追跡をしてみようと思う。何かあったら伝達役を引き受けるよ!」
 同じ夜汽車に乗っていた猟兵と情報を交換し合い、状況が動いた際の伝達役を買って出て。
 ――ボクに協力してくれるかな?
 そうホームに降り立つと同時に放つは、小鳥型の透明な式神。
 展開した『小鳥遊』が追跡する対象は勿論、足早に神社へと向かった澄子である。
 紅葉と桜花弁に紛れるかのように彼女を追った式神たちを、鶯は秋の夜空へと送り出す。
 そして改めて3人で、紅と桜交じる景色を瞳に映せば。
 紅葉と桜が織り成す彩りの中、より一等美しく映える、流れるような金糸。
 秋風に金の髪を靡かせ待っていた少女の姿を見つけたルーチェは、ホームをタタッと駆けだして。
「ノエルー!」
 名前を呼ばれたノエルは、声のした方向に視線を向けてから。
(「ああ、彼女達だ」)
 青の瞳をそっと細める――私の素敵な友人たち、と。
 そんなノエルに、思わず飛び付きながらも。ルーチェは、より一層その笑顔を咲かせる。
 ――キミもLuxの一員、嬉しいな、って。
「ノエル、お待たせしたわ。歓迎会も更に賑やかになるわね」
 誘も、自分たちを待っていた金糸の少女にそう微笑んで。
 今度は4人で、紅と桜舞う駅の改札を出る。
 確かに、予知された事件の解決が目的であるのだけれど。
 でも折角だからと、Luxの小旅行&歓迎会を兼ねた旅に。
 そして……歓迎会は、まだまだこれからだから。
「さあ、行きましょうか」
「うん、事件の事を忘れるわけではないが今は楽しもう」
 合流したノエルも一緒に、改札を出てすぐ伸びる長い長い石段を皆で上り始める。
 紅と桜色敷き詰められた石段は、見上げれば、まだまだ先は流そうだし。
 珍しい紅葉と桜の景色を愛でに訪れている人も多いから。
 逸れそうだと言ったルーチェに、そっと誘が差し出すのは、掌。
 迷子にならないようにと、包み込む様にぎゅっと手を握り合って繋いで、温もりも分け合って。
「なんて素敵な景色なんだろう……」
 歌う様に澄んだ声で、ルーチェはそう、感嘆の呟きを落としながらも心に思う。
 眼前の景色は、きっとひとりで見てもきっと綺麗なんだろうけれど。
 でも――キミ達と一緒に見ている今この瞬間が愛おしい、と。
 そんな、大変だけど楽しく、行灯燈る石段を上りながら。
(「『願掛けの社』の近くに『逢魔が辻』の入口がありそうだけど、現状ではまだまだ情報が足らないなぁ……」)
 鶯は放った『小鳥遊』から得た情報を整理しつつも、内心色々と考えを巡らせる。
 式神たちから伝わる澄子の様子は、今のところ何ら怪しい動きはないというが……きっと赴くであろう『願掛けの社』で、彼女がどう動くか。
 引き続き追跡を続けながらも、鶯は、もう目前に迫った石段のゴールへと視線を上げて。
(「この長さも皆さんと上るのなら心地いい」)
 ノエルも残り僅かとなった石段を一歩一歩踏みしめ、皆と並んで進んでいけば。
 辿り着いた頂上で4人を待っていたのは、紅葉と桜のいろが混ざり舞う、まさに絶景。
 眼下に臨む華やかで美しい景色に目を細め、そして同時に感じるのは。
 ――やはり皆で見られてよかった。
 皆で一緒に上り切ったという、達成感。
「疲れが吹き飛ぶくらいすっごいね♪」
 鶯は4人で見下ろす一面の彩りに、感激したように声を上げた後。
 ふと、くるりと神社の境内へと視線を移せば――。
「ほらあそこ限定の甘味があるんだって!! みんなで食べよう!!」
 見つけたのは、境内にある茶屋。
 その茶屋には今の時期、限定の大福セットがいただけるらしい。
 そして鶯の提案に、勿論3人も。
「そんな素敵な甘味があるの? それは是非食べないと」
「限定の甘味! 食べる食べる!」
「そうですね。お茶屋さんで休憩しましょうか」
 大きく頷いて、大賛成!
「ではその限定の甘味とお茶をいただきます」
 早速、茶屋で紅葉と桜の景色を楽しみながら、運ばれてきた栗抹茶と桜クリームの大福セットを堪能すれば。
「わ! 美味しい! みんなで食べたから美味しさも倍増だね」
「ほんと、とても美味しいわ」
 女子会……もとい歓迎会には、甘味がつきもの。
 栗抹茶と桜クリーム、どっちの方が好きだったかなど沢山お喋りしながら、皆で楽しくひと休み。
 けれど、楽しむのは甘味だけではありません。
「限定の甘味、美味しかったね♪」
「うん、美味しかったー! ……あ、お守りだって! お揃いで買いたいな」
「記念に御守りをお揃いで買いましょうか」
「お揃いの御守り良いわね。買いましょう」
 社務所へと足を向け、この神社で人気だというお守りへと、皆並んで視線を巡らせてみる。
「ガラスドームというのね、綺麗」
 硝子の球体にぎゅっと閉じ込められた、四季を思わせる様々なモチーフ。
 そして誘がふと手に取ったのは――牡丹の花が咲いたガラスドーム。
 名物なだけあって、色々なモチーフのものが沢山あるから。
「ネリネの花はありますか?」
 ノエルがそう訊ねれば、巫女さんも一緒に探してくれて。
 程なく見つかったのは、ダイヤモンドの如くキラキラと輝く花びらが美しい、ご所望の花のお守り。
 鶯も、一番気に入った物を購入したいと、色々と見てみるけれど。
 何となく親近感を抱いてしまう様な、桜とウグイスが閉じ込められた春を思わせるお守りを発見。
 ルーチェも、白百合が入ったお守りを買って。
「えへへ、また一つ思い出が増えたね!」
 そうLuxの皆お揃いでお守りを購入した後、歌の贈り物を――神社の人に感謝の祈りを込めて。
 同時に……魔物の如き甘い歌声で聴く者を虜にし、そして、誘惑潜ませ訊ねてみる。
「影朧について知ってる事を教えて」
 ――彼女は紅の社に何を隠してるの? って。
「あなたは何か知っている?」
「影朧のことで、何か知っていることはありますか?」
 誘とノエルも、ルーチェの歌声にうっとりしている社務所の人に、そう声を掛けてみれば。
「影朧……のことは、詳しくはわかりませんが……奥社の『紅の社』で、犬の影を見たことがあります」
 それと同時に、鶯が『小鳥遊』からの情報を告げる。
「その『紅の社』の方に、澄子さんは今向かってるみたいだよ」
 犬の様な影朧と、願掛けができる奥社『紅の社』。
 ルーチェは『朧月夜』を美しく蠱惑的に歌いあげながらも、夜汽車で聞いた澄子の言葉を思い返していた。
 ――早く会いたい、と。
 胸に切なく残っている、零れ落ちた彼女の声を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

深榊・楓
引き続き、千尋君(f22633)と共に社周辺を廻るとしようかの
到着するまでに相談は終えていたから、ばっちり回れそうじゃな
早速、美味しい甘味を食べに行くぞい。

神社へ辿る前、先ずは階段を昇る必要がある訳じゃが…
なぁに、年寄りの身ではあるが、まだまだ体力は有り余っておるよ
然し…どうにもゆっくりになってしまうのは、何故じゃろうか…?

汽車の窓からも見えたが、こう間近に紅と桜が交じる光景が見られるとはのう
…おや、千尋君は以前話していた写真立ての飾りを探しているんじゃな
良ければ儂も、共に探してあげよう
紅葉や桜を飾るには…確かに朽ち行く心配がある
押花の様な加工を施せば、希望はあるかもしれぬが…どうじゃろうか?


大路・千尋
汽車の中で爺ちゃん(f22646)と相談したしばっちりだぜ!和菓子食べに行くぞー!

うわぁ、すっげぇ階段……よし、久々に体動かすか…引きこもってて体力落ちてないか心配だが大丈夫だろう、爺ちゃんは大丈夫かな?
上には和菓子が待ってるし頑張ろうな

和菓子も楽しみだが周りの景色もほんとすげぇな…
紅色と桃色…これ持って帰って母さんたちの写真たての飾りに…
いや、自然のものはすぐに枯れちまうし無理か…ちぇっ、残念…
こんだけ綺麗だともういない家族にも見せたかったんだけどな…
なんかいいの見つかったらちゃんと持ち帰ってやんねぇとな!
…ちゃんとお願いすれば爺ちゃんも探してくれるかな?ワガママ、いってみようかなぁ…



 紅葉一色の景色を走り抜けてきた夜汽車の終着駅。
 ホームに降り立てば、ひらり秋の夜に舞うのは紅のいろだけではなくて。
 この世界では馴染み深い、幻朧桜の彩りも加わる。
 そして混ざり合うふたつの彩りが、訪れる人々を歓迎するかのように美しい風景を織り成す。
 目指すは、色々と楽しそうなことが満載であるという神社。
 けれど深榊・楓(譚食み・f22646)と大路・千尋(未熟な王子・f22633)は、これからの行動を迷うことはない。
(「汽車の中で爺ちゃんと相談したしばっちりだぜ!」)
(「到着するまでに相談は終えていたから、ばっちり回れそうじゃな」)
 夜汽車の中でふたり、きちんと計画を練っているから。
 いや、楓も千尋も、気になるものは同じ。
「和菓子食べに行くぞー!」
「早速、美味しい甘味を食べに行くぞい」
 甘いもの好きなふたりにとって特に楽しみなのは、限定の甘味がいただけるという茶屋。
 でも――そんな甘味を味わう、その前にやること。
「うわぁ、すっげぇ階段……」
「神社へ辿る前、先ずは階段を昇る必要がある訳じゃが……」
 見れば首が痛くなるほど遥か天に近い場所に在る神社。茶屋も、そんな神社の境内にあるから。
 まずは、神社へと続く長い長い石段を上らなくてはいけません。
「よし、久々に体動かすか……」
 引きこもっていたから、体力落ちてないかがちょっぴり心配とはいえ。
 大丈夫だろうとこくり、千尋はひとつ頷くけれど。
 ふと、隣の楓へと視線を向ける――爺ちゃんは大丈夫かな? って。
 確かに、その様相は二十代程に見えるが、楓は95歳。
 眼前の石段は、体力のある若い人でも少しきつそうなほど、長く伸びているけれども。
「なぁに、年寄りの身ではあるが、まだまだ体力は有り余っておるよ」
「上には和菓子が待ってるし頑張ろうな」
 そう満を持して、石段を元気に上り始める楓と一緒に。
 千尋も限定の甘味目指して、紅葉と桜花弁が敷き詰められた石段へと足を向けるけれど。
(「然し……どうにもゆっくりになってしまうのは、何故じゃろうか……?」)
 気持ちは、このくらいタッタッと軽快に上れる気でいる楓だが……歩む速度は、何故かどうしてもマイペース。
 いえ、でも猟兵といえど、無理は禁物ですから……!
 体力に不安を感じていた千尋にとっても、安心のペースです。
 そして、何とか長い長い石段を上り切れば。
「和菓子も楽しみだが周りの景色もほんとすげぇな……」
「汽車の窓からも見えたが、こう間近に紅と桜が交じる光景が見られるとはのう」
 紅葉と桜が重なり合い作り出す風景は、まさに絶景で。
 上ってきた石段の両脇を照らす行灯がまた、そのいろを秋の夜空に浮かび上がらせている。
 そんな時――ふと、千尋が掌で捕まえたのは。
「紅色と桃色……これ持って帰って母さんたちの写真たての飾りに……」
 じゃれ合うように舞い降ってきた、迷子の紅葉と桜花弁がひとひらずつ。
 そう呟き、じっと手の中のいろを見つめる千尋へと、弁柄の瞳を向けて口にする。
「……おや、千尋君は以前話していた写真立ての飾りを探しているんじゃな」
 ――良ければ儂も、共に探してあげよう、と。
 けれど、掌にある紅葉と桜のいろは、永遠のものではないから。
「いや、自然のものはすぐに枯れちまうし無理か……ちぇっ、残念……」
「紅葉や桜を飾るには……確かに朽ち行く心配がある」
 こんだけ綺麗だと、もういない家族にも見せたかったんだけどな……と、ちょっぴり残念そうな千尋だけど。
 気を取り直し、ぐるりと境内に並ぶ店を見回してから。
「なんかいいの見つかったらちゃんと持ち帰ってやんねぇとな!」
 ちらりと、楓へと目を向けてみる千尋。
(「……ちゃんとお願いすれば爺ちゃんも探してくれるかな? ワガママ、いってみようかなぁ……」)
 でも……お願いしなくても、きっと大丈夫。
 甘味の店には、まずは勿論行くけれど。
「押花の様な加工を施せば、希望はあるかもしれぬが……どうじゃろうか?」
 楓もすでに一緒に、良い写真立ての飾りを探すべく視線を巡らせているから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
紅葉と桜の混じる様に、言葉を奪われて
(これは…初めて見る景色だ…
綺麗だけど…心がざわざわする…)
世界には、凄い物が沢山あるなあ…

…はっ

目的は大福だった
いや、影朧だけど


まず大福…と言いたいけど、きちんと参拝
犬関連の物が無いか、社内や御守りも見てみる
あ、ガラスの御守り…これ、紅葉と桜と夜汽車の、買おう

散歩しつつ神社の人からも『情報収集』
周囲の猫にも『動物と話す』で聞いてみる
くろ丸、脅かさないで仲良くね
…ていうか可愛い
(犬猫を撮影し始め


満を持して茶屋へ
限定大福セット、頂きます
くろ丸のは小さく切って

ん、栗抹茶、お茶の清々しさと栗の甘さが絶妙
桜の方は…薫りとクリームがまろやかでもちもち…
これは期待以上…



 春には桜が咲き、秋になれば紅葉が色づく。
 それは何度も四季が巡るたびに、目にしてきたいろのはずだけれど。
(「これは……初めて見る景色だ……綺麗だけど……心がざわざわする……」)
 ――世界には、凄い物が沢山あるなあ……と。
 紅葉と桜が混じるいろを前に、言葉を奪われてしまう青和・イチ(藍色夜灯・f05526)。
 そして、ひらり舞い踊る紅やピンクとじゃれ合っていたくろ丸に、足をてしてしとされて。
 幻の如き色をした世界から引き戻されたように、藍色の瞳をぱちくり瞬かせ、イチは呟く。
「……はっ。目的は大福だった」
 いえ、一番の目的は一応、影朧ですけれど。
 でも調査がてら、神社で過ごすひとときを楽しんでも、全く問題はないだろう。
 むしろ不自然に振舞って、澄子や他の一般人に怪しまれては元も子もない。
 ということで、まずは大福……と言いたいところだけど。
 きっちりと本殿へと参拝を済ませ、社務所へ。
 犬関連の物が無いか、社内や御守りへと視線を向けてみる。
 そして……ふと、目に飛び込んできたのは、並べられた沢山の四季。
 その中から見つけたひとつを、そっと手に取ってみれば。
「あ、ガラスの御守り……これ、紅葉と桜と夜汽車の、買おう」
 まるで、先程感嘆しつつも見たばかりの景色やこの旅路が、ぎゅっと閉じ込められているような。
 ガラスドームのお守りをひとつ、お買い上げ。
 他のお守りには、特に犬に纏わるものは見当たらなかったが……神社の謂れが書かれた看板に、この神社に奉られている人物の傍らには犬があった、という一文を見つけて。
 神社の人から、その犬に関する伝承を聞くことができたイチ。
 さらに、何処かに匿われているらしいという犬の行方を探すべく……訊ねてみる相手は、猫たち。
「くろ丸、脅かさないで仲良くね」
 懐こい女の子だけど、ちょっぴり顔は怖いから。
 そう言って聞かせた後、改めて訊いてみれば――口々に猫たちが言うのは、上手に『紅の社』にかくれんぼしている犬がいる、と。
 そして、話を聞かせてくれた猫さんたちにお礼を言いながらも。
「……ていうか可愛い」
 にゃんにゃんわんわん、すっかり仲良しになって戯れている犬猫を、ぱしゃりと撮影し始めるのだった。
 それから、十分情報も集まったことだしと――満を持して向かうのは、茶屋。
 勿論、待望の限定大福セットを頂きます!
 くろ丸の分の大福は、食べやすいように、小さく切ってあげて。
 はむりと、まずは秋を思わせる、栗抹茶から口に運んでみれば。
「ん、栗抹茶、お茶の清々しさと栗の甘さが絶妙」
 そしてもうひとつ、幻朧桜の如き薄ピンクの大福をぱくり。
「桜の方は……薫りとクリームがまろやかでもちもち……」
 秋と春が一度に訪れたかのような、そんなちょっぴり特別感のある絶品の甘味に。
 ――これは期待以上……。
 くろ丸と一緒にほわり、幸せそうな笑みを咲かせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日隠・オク
リシェアさん(f00073)、栴さん(f00276)と

とても長い階段ですね……
頑張ります……!
頑張りましょう……!
あと少しとなったら気持ち急いでとんとんかけあがりつつ

登り切ったら振り返って景色をみます
いい景色です!

茶屋です
やはりせっかくなので……季節限定の、栗抹茶と桜クリームの大福セットを……。
お茶と一緒に頼みたいです
大福口に含み嬉しそう

お店ではそういえばここら辺で犬とか見ませんでしたか?
と聞いてみます


リシェア・リン
栴くん(f00276)、オクちゃん(f10977)と

噂には聞いてたけど、凄い階段…!
これも甘味の為、甘味の為…あれ?(目的が頭から抜けていて)

あと一段…(登りきって)…到着…!
凄い…!桜と紅葉、本当なら混じり合わない筈なのに
ちょっと大変だったけど、それだけの価値はあるわ…!

この景色はきっと美味しいエッセンスになるはず
私はこの栗抹茶と桜クリームの大福セットを…あら(オクちゃんを見る)
ふふっ、期間限定って聞くとやっぱり食べたくなっちゃうよね
シェアもいいかなって思ったけど…栴くん、食べてみる?(くすくす)

澄子さんは神社に行ったみたい…。
私は猟兵以外のお客さんに聞いてみようかな
当初の目的も忘れずに、ね


生浦・栴
うさすずの(f10977)と、双髻の(f00073)と

行灯の足元は流石に暗いな
階段は念のためと二人の後ろをついて行く
随分と長い階段だが大丈夫か?

到着後振り返れば
季節混じりの景色はまるで異界に通じる道すがら
空恐ろしくもある光景だがな
まあ道を塞ぐのも後続に悪い
境内に入ろうか

階段で運動になったろうかと笑いながら茶屋へ
量もある上、甘そうだな(視線が逸れる
俺は抹茶に和三盆糖の干菓子を
…まあ、折角の好意なので一口分だけ切り分けて貰うか
代わりに干菓子を一粒、相手の皿へと

店の者にそれとなく尋ねよう
人ならざるモノが迷い込みそうな雰囲気に溢れているが
何か逸話や噂はあるのだろうか
あるいは最近、何か変わった事は?と



 紅のトンネルを走り抜けてきた夜汽車を降りて、駅の改札から出てすぐ。
 天へと伸びるように続くのは、紅葉と桜に彩られた、長い長い石段。
 目的の神社は、この石段を上り切った先。
「とても長い階段ですね……」
「噂には聞いてたけど、凄い階段……!」
 並んで石段を上がりながら、そう視線を遥か上へと向けるのは、日隠・オク(カラカラと音が鳴る・f10977)とリシェア・リン(薫衣草・f00073)。
 そして念のためと、そんなふたりの後ろをついて行く生浦・栴(calling・f00276)であるが。
 彼の視線は彼女たちとは逆に、下へと向けられて。
「行灯の足元は流石に暗いな。随分と長い階段だが大丈夫か?」
 石段の両脇から照る行灯の燈火は紅葉や桜を照らし、美しくもあるけれど……長い長い石段を上るには少々不安かもしれない。
 けれど、後戻りはできないし。
「これも甘味の為、甘味の為……あれ?」
 目的は、茶屋でいただける限定の甘味……?
 いや、それも確かに大事ですが、一応依頼で此処に訪れています……!
 つい、頭からすっぽりと本来の目的が抜けてしまっていたリシェアは、ぱちくりと澄んだ紫水晶の瞳を瞬かせつつ、首をこてりと傾げる。
 そして夜の景色の中……足を踏み外さない様に皆で一緒に、行灯と月の光を頼りに一歩一歩着実に石段を上がって。
「あと少しです……頑張ります……! 頑張りましょう……!」
 そう、思わず気持ち急ぐように、オクはラストスパート!
 軽快にとんとんと石段をかけあがるその背中を追って。
「あと一段……到着……!」
 リシェアも頑張って、頂上に到着!
 ふうっと一息ついてから、改めて眼前のいろを見つめてみれば。 
「凄い……! 桜と紅葉、本当なら混じり合わない筈なのに」
 ――ちょっと大変だったけど、それだけの価値はあるわ……!
 思わず声を上げてしまうほどの絶景が待っていて。
 長い長い石段は、確かにちょっぴり足に疲労感を覚えてはいるけれど。
 でも、だからこそ……達成感と共に、頑張ったご褒美のような。
 本来はそれぞれ春と秋を思わせる、なかなか混ざることのない彩りを見つめて。
「いい景色です!」
 オクもくるりと振り返って、景色を眺めてみる。
 そしてふたりの後に到着した栴も、同じ様に振り返れば。
「空恐ろしくもある光景だがな」
 美しいけれど、それ故にか――季節混じりの景色はまるで異界に通じる道すがら。
 小さな炎の如く燃える紅と、朧に咲く幻朧桜……そのふたつが作り出す、怖いくらいの絶景を映した紫の瞳を、栴は細める。
「まあ道を塞ぐのも後続に悪い、境内に入ろうか」
 それから3人が向かうのは、今回の目的地……のひとつである、茶屋。
「階段で運動になったろうか」
「この景色はきっと美味しいエッセンスになるはず」
 窓の外も、眼下に紅と桜色が楽しめる絶景。
 上がってきた石段を眺め、笑いながら言った栴の隣で、リシェアはぐっと期待を込めて。
 逸る様に席に着き、ぱらりとメニューを捲ってから。
「やはりせっかくなので……季節限定の、栗抹茶と桜クリームの大福セットを……」
「私はこの栗抹茶と桜クリームの大福セットを……あら」
 オクと同時に口にしたのは、同じメニュー。
「ふふっ、期間限定って聞くとやっぱり食べたくなっちゃうよね」
「お茶と一緒に頼みたいです」
 こくりと頷き合っては、顔を見合わせて笑みあうふたり。
 けれど、そんなオクとリシェアとは、逆に。
「……量もある上、甘そうだな」
 そう思わず、目を逸らしてしまう栴だけれど。
「俺は抹茶に和三盆糖の干菓子を」
「シェアもいいかなって思ったけど……栴くん、食べてみる?」
 甘い大福をぱくりと口に含み嬉しそうなオクを見てから、くすくすと笑うリシェアの言葉にひとつ頷く。
「……まあ折角だ、一口分だけ切り分けて貰うか」
 そして干菓子を一粒、お返しに。
 そんな美味しくてほんわか楽しい休憩のひとときを楽しみながらも。
「そういえばここら辺で犬とか見ませんでしたか?」
 茶のお代わりを勧めに来た茶屋の店員にそう訊ねてみるオク。
「犬? 犬なら散歩してるのはよく見かけるけれど」
「人ならざるモノが迷い込みそうな雰囲気に溢れているが、何か逸話や噂はあるのだろうか。あるいは最近、何か変わった事は?」
 オクの問いに付け加えるように、栴が続ければ。
「ああ、犬の逸話ならあるよ。この神社は、人々を災いから身を挺して護ったという人物を奉っているけれど、その人は犬と共に在ったようでね。主人亡き後も、その犬はこの神社で主人を待ち続けた、って言われているね」
 そう、この神社の伝承について、語ってくれる店員。
 そんな話を耳にしながら、リシェアはふと窓の外へと視線を巡らせて。
(「澄子さんは神社に行ったみたい……」)
 見かけた澄子の姿を、紫水晶の瞳に映した後。
 茶屋を訪れている猟兵以外の人たちへと、この神社や犬について、訊ねてみる。
 ――当初の目的も忘れずに、ね……って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
刻(f06028)と

花が散る紅の景色を辿る
石段はまるで終わりが無く
ともすれば楽園の果てのよう

見惚れたのも束の間
くん、と鼻腔擽る大好きな甘味の匂い
…茶屋がある…
当然いいよね?と立ち寄るは当たり前な顔で刻を見る
抹茶食べれそうなら大福セットにしようぜ。俺桜クリーム食べたいし
半分こしても良いけど
お前が甘味お気に召したならまた茶屋巡りにでも付き合って貰おうなんて魂胆

匂いに釣られたか黒猫が此方をじっと見ている
指先で招けば見掛けによらず懐っこく舐めるから
腹減ってんの?おまえ
擽ったい、と頬が緩む

不意に髪を撫でられる感覚
驚いて少し飛び退き
……ちょっとお兄さん
お触り禁止。
撫でるならこの子たち、でしょ?
って猫ぱんち


飛白・刻
千鶴(f00683)と

桜と紅葉の饗宴は石段さえ
景色が為と思わせる程

千鶴ならおそらく茶屋へ…言うまでなく
いつもなれば呆れる所

…栗抹茶。抹茶はありか
甘味食べ知らぬ者に湧いた興味
栗抹茶は半分やるが
桜クリームは未知だ、一欠でいい
遠慮と挑戦
秋が誘うてきたとは言い訳に
その味がお気に召すが先か

気が付けば、鳴き声がひとつふたつと近付いて
白猫が擦り寄る足元は少し擽ったく

ふと横を見やれば、そちらにも猫の誘い
なんとなく猫と似ているなと
くしゃり千鶴の頭を撫でてみる
…いや、こういう感覚だったのかと
いつかのそれを思い出していれば

おそらくは平仮名のそれが飛んできた
やんわりと避けては
これは気難しい猫だ気をつけろと白猫に告げ口



 天の社へと続く石段を染めるそのいろは、まさに紅葉と桜の饗宴。
 そしてそのふたつの彩りを、両脇に照る行灯がより浮かび上がらせて。
 朧の如く桜が散る紅の景色を辿りながら、宵鍔・千鶴(nyx・f00683)はふと進む道行きを見上げる。
 ――石段はまるで終わりが無く、ともすれば楽園の果てのよう、と。
 そんな紅葉と桜のいろに導かれ、石段を上り切った先で。
 飛白・刻(if・f06028)は、ふと隣の千鶴を見て真っ先に思う。
(「千鶴ならおそらく茶屋へ……」)
 刹那、景色に見惚れていたはずのその紫の瞳が、ぐるりと周囲を巡って。
「……茶屋がある……」
 刻がやはり言うまでなく。
 くん、と鼻腔擽る大好きな甘味の匂いに、確りと反応を示す千鶴。
 そして、当然いいよね? と、当り前の顔で向けられた視線に、いつもであれば呆れるところなのだけれども。
「……栗抹茶。抹茶はありか」
 眼前の幻の如き景色の所為か、単に気が向いただけか。
 甘味というものを食べ知らぬ刻にふと咲いたのは、興味。
 勿論、そんな彼の呟きを千鶴が聞き逃しているわけはなく。
「抹茶食べれそうなら大福セットにしようぜ。俺桜クリーム食べたいし」
 ……半分こしても良いけど、って。
 早速、嬉々として購入してきた栗抹茶大福を、はい、と手渡す。
 そんな手の内にある栗抹茶を藍色の瞳でまじまじと見つめながらも。
「栗抹茶は半分やるが、桜クリームは未知だ、一欠でいい」
 遠慮と挑戦――秋が誘うてきた、なんて落とした呟きを言い訳に。
 ……お前が甘味お気に召したならまた茶屋巡りにでも付き合って貰おうなんて魂胆、と。
 そう、千鶴が見つめる中、大福を口へと運んでみれば――ふわり広がる甘さに、ぱちくりと瞳瞬かせて。
 さらにそっと、もうひとくち。
 そんな挑戦に、満更では全くなさそうな様子の刻は、足元に擽ったい白いふわもこの気配を感じて。
 気が付けば、にゃーんと近付いてきた鳴き声が、ひとつふたつ。
 そして、はむりと桜クリームの大福を美味しそうに頬張る千鶴をじっと見つめる瞳。
 その視線の主は、匂いに釣られた黒猫。
「腹減ってんの? おまえ」
 ちょいちょいと指先で招けば、予想に反して、とことことやってきて。
 ぺろりと懐っこく舐めるから、つい頬が緩んでしまう……擽ったい、って。
 刻は、横で黒猫とじゃれ合うその様子を眺めつつ、首を小さく傾ける――なんとなく猫と似ているな、と。
 そしてふいに伸ばした掌で、くしゃり、千鶴の頭を撫でてみれば。
 いつかのあの時は、白は白でも、猫ではなく兎であった、なんてことも一緒に思い返す。
 ……いや、こういう感覚だったのかと。
 けれど、まるで猫の様に。
 不意に髪を撫でられたその感覚に、驚いて少し飛び退きつつも。
「……ちょっとお兄さん。お触り禁止」
 ――撫でるならこの子たち、でしょ?
 そう、うにゃっと千鶴が繰り出すのは、猫ぱんち。
 飛んできたそれを、刻はやんわりと避けてから。
 ひょいっと白猫を抱えて、告げ口を――これは気難しい猫だ気をつけろ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千家・菊里
【花守】
車窓からの紅一色も見事でしたけど、紅と桜の錦というのもまた一段と趣がありますねぇ
ふふふ
これは食後の甘味も進むというもの
(長い石段も何のその、足取り軽く買ってきた大福セット――に加えて温かい甘酒や串団子もたんまり抱えてベンチにかけ、ほくほく頂きますたいむ再び!)

いやだやぁ、佳景あっての美食――勿論両方楽しんでますし、ちゃんとお仕事もしてますよ
(聞き耳を密かにぴこり、周囲の人の話を探ったり動物と話し情報収集等しつつ)
おや猫さん
そうですねぇ、この男もまぁ不審ですよねぇ(よしよしもふもふ)
まぁ今暫くはゆるりとこの色に浸りましょう
(随分と変わった腐れ縁を横目に、やはり変わらずのんびりと)


呉羽・伊織
【花守】
(階段を登りきり一息、次いで天地彩る二色を改めて見渡し感嘆の息溢し)
桜の色が混じると一層神秘的に見えてくるな
嗚呼周囲はこんなキレイなのに、オレの近辺はホント何でこうも白――ってまたお前は隙あらば食い気に走って!
(追いかけ序でに自分も大福セットを頂き、やれやれと腰下ろして手を合わせ)

――美味しい
コレは確かに美味しいケドさー!
お前ちゃんと他も見てる?
(神社の謂れや噂を囁く人がいないか探ったり、見かけた猫に話しかけたりして情報収集も進め)
あ、そこの桜と紅葉が似合う猫チャン、ちょっとオレとお話――まって違う不審者じゃないから!(ぺしられつつも犬の件尋ね)
思うトコはあれど――まぁ、そーだな、今は



 楽しくも美味しいひとときを堪能しながら、夜汽車に揺られて。
 燃える炎の如き紅だけの景色を走り抜け、辿り着いた終着駅。
 けれど眼前を染めるそのいろは、秋の紅だけではなく。
 紅葉の彩りに加わったのは、この世界に年中咲き誇る幻朧桜のいろ。
 それはまるで、交わることのない春と秋が一度に訪れたようで。
「桜の色が混じると一層神秘的に見えてくるな」
 ふたつの彩りに染められた、長い長い石段を上り切って一息。
 そして踏みしめてきた足元だけでなく、天まで彩るそれらを改めて見渡した呉羽・伊織(翳・f03578)は、思わず感嘆の息を溢すけれど。
「車窓からの紅一色も見事でしたけど、紅と桜の錦というのもまた一段と趣がありますねぇ」
 長い石段も何のその、ふふふ、と笑む千家・菊里(隠逸花・f02716)へとちらりと目を遣れば。
「これは食後の甘味も進むというもの」
「嗚呼周囲はこんなキレイなのに、オレの近辺はホント何でこうも白――ってまたお前は隙あらば食い気に走って!」
 今回も、例に違わず自分たちは白一色。
 しかもちゃっかり足取り軽く、万能な美味しそうな物センサーは今日も絶好調。
 限定の大福セットは勿論、温かい甘酒や串団子などの戦利品をたんまり抱えて。
 ほくほく、頂きますたいむと洒落込まんとする菊里に、そう突っ込まずにはいられない伊織。
 けれど、もう慣れっこでもあるから。
 追いかけついでに自分の大福セットも購入し、やれやれと腰下ろして手を合わせてから。
 はむりと幸せそうな顔で既に戦利品をいただいている菊里を横目に、ひとくち大福を口にしてみれば。
「――美味しい」
 思わずそう口から漏れる呟き。
 そんな言葉に、そうでしょう? と得意気に菊里が向けた視線にハッと気付いて。
「コレは確かに美味しいケドさー! お前ちゃんと他も見てる?」
 美味しい物を味わうのは勿論、神社の謂れや噂を囁く声を拾うように探り、情報収集も進めている伊織はもう一度息をつくも。
「いやだなぁ、佳景あっての美食――勿論両方楽しんでますし、ちゃんとお仕事もしてますよ」
 大量に抱えていたはずの戦利品を、綺麗にぺろりと平らげつつ。
 いつの間にか、ご馳走様たいむとなっている菊里は、聞き耳を密かにぴこり。
 抜かりなく、此方も情報収集には余念がありません。美味しい物をいただきながら。
 そしてふと伊織は、ひょいっと屈んで。
 神社の境内で寛いでいる猫たちからも、話を……聞こうと、したけれど。
「あ、そこの桜と紅葉が似合う猫チャン、ちょっとオレとお話――まって違う不審者じゃないから!」
 うにゃっ! とぺしられて、振られてしまう。
 けれど、不審な犬を知らないかと、めげずに訊ねてみれば。  
 警戒したような視線は変わらぬも、ずっと神社に居る犬なら『紅の社』でかくれんぼしていると……そう教えてくれて。
 アリガトー! と手を伸ばせば、うにゃっと再び、猫ぱんちが。
 そんな相変わらずな様子を目にしつつ、ふりふりもふもふ尻尾を揺らしながら。
「おや猫さん。そうですねぇ、この男もまぁ不審ですよねぇ」
 尻尾にじゃれつかんと集まる猫たちにモテモテな菊里は、伊織を警戒する桜と紅葉が似合う猫チャンを、よしよしもふもふしてあげて。
 いや、ウン、その尻尾狡くナイ? と菊里へと視線を向けつつも。
「まぁ今暫くはゆるりとこの色に浸りましょう」
 思うところはあれど、伊織はその声に返す――まぁ、そーだな、今は、と。
 そして、舞い踊りじゃれ合うふたつの彩を見つめる、随分と変わった腐れ縁を横目に。
 ふりふりもふもふ、やはり変わらずのんびりと、存分に菊里は猫たちと戯れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

清川・シャル
f08018カイムと同行

この景色を見るのもいいけど、やっぱり形に残したいじゃないですか。
Nyanon SS-86を袖から出してポジション取りとかカイムに手伝ってもらって。
たまにこっそり彼を撮ったりして。
こうやって景色を切り取るのがすごく好き
あとでカイムにも写真送るね

ねぇ、シャル御守り欲しいなぁ。
御守りのあとは願掛け……
御願いは……ふふ、内緒ー!
なんて言いながらカメラ構えて紅の社も撮影を。
景色に混じってこっそり澄子さん撮ってみたり
ファインダーから覗いたら何か別のことが見えるかもしれない
聞き込みは基本カイムにお任せしつつ、コミュ力と情報収集でお手伝いもしますよ


カイム・クローバー
f01440シャルと行動

絶景ってやつだな。夜汽車で見た一面の紅葉も確かに凄かったが、良いトコ取りしてるこの景色も早々見られるモンじゃない。

移ろい過ぎゆく季節はいずれ、必ず春を呼ぶ。だから、幻想の如き美しさに溺れてみるのも悪くねぇよな。
景色を堪能しながら『紅の社』へ。春が減っていって秋が残る。季節は変わりゆくモノ。
見掛けた澄子に声を掛ける事はしないが、チラと視線を入れておく。神社の人に軽く情報収集なんかしておくか。
『桜ノ匣庭』って小説の『紅葉行灯』って短編に聞き覚えは?それによく似てる場所なんだ。
物語は悲劇的らしいが、細部までは読んでいなくてよ…大蛇に襲われた場所ってのは何処だったろうか…?



 美味な秋の味覚を堪能しながら眺めた、夜汽車の車窓を真っ赤に染める紅葉のいろ。
 この桜が年中咲く世界で、紅一色である彩りは珍しく、見ごたえもあったけれど。
 終着駅に降り立てば、紅葉と幻朧桜が混ざり合い、ふたつのいろが天へと伸びる石段を染めていた。
 そんな、両脇に行灯燈る、紅葉と桜の絨毯敷かれた石段を上り切って。
 ――絶景ってやつだな。
 上ってきたそのいろを振り返れば、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)の口から自然と漏れる言の葉。
「夜汽車で見た一面の紅葉も確かに凄かったが、良いトコ取りしてるこの景色も早々見られるモンじゃない」
「この景色を見るのもいいけど、やっぱり形に残したいじゃないですか。手伝ってくれます?」
 清川・シャル(無銘・f01440)は、刹那のはずの彩りを、いつだって観られる形にしておきたいと。
 袖からおもむろに取り出すは、愛用の一眼レフカメラ『Nyanon SS-86』。
 眼前の綺麗ないろを、想い出用にも、ついでにSNSにアップする用にも、とびきり映えるよう撮っておきたいし。
 それに、何よりも。
「こうやって景色を切り取るのがすごく好き」
 ……あとでカイムにも写真送るね、って。
 早速、カシャリとシャッターを切りながら、絶景映す蒼の瞳をそっと細めた。
 たまに、ファインダーから覗くその紅と桜色の世界に、彼の姿も写しながら。
 そんなピンクと紅が混ざり合う神社の境内を、写真を撮りつつ歩いて。
 ふたりが向かうのは――立派な本殿のそのまた奥にあるという、願掛けの社。
 人々が願い馳せるべく行くその道を、ふとカイムは歩きながらも思う。
(「移ろい過ぎゆく季節はいずれ、必ず春を呼ぶ。だから、幻想の如き美しさに溺れてみるのも悪くねぇよな」)
 そう、存分に眼前の景色を堪能しながら向かうは――通称『紅の社』。
 先程まであれほど咲き誇っていた桜のいろは、願掛けの社へと近づくにつれ、再び秋の紅に浸食されて。
 ――春が減っていって秋が残る。季節は変わりゆくモノ。
 まるでその様は、巡りゆく四季のよう。
 そんな、燃える様な秋の彩りを見つめるカイムに、シャルは視線を向けて。
「ねぇ、シャル御守り欲しいなぁ」
 願掛けのその前に……四季を閉じ込めたようだという、ガラスドームのお守りを買いに。
 そして、色々なモチーフのものが並ぶお守りをよく吟味してから。
 えへへと嬉しそうに笑むシャルの掌の上にも、形に残る小さな景色が。
 そんなお守りも買って、いざ、願いの蝋燭に炎灯し願掛けを……するのだけれど。
「御願いは……ふふ、内緒ー!」
 何をお願いしたかは、シャルと神様だけの秘密。
 それから、景色も願掛けも楽しんではいるけれど……やるべきことも、忘れてはいない。
「『桜ノ匣庭』って小説の『紅葉行灯』って短編に聞き覚えは? ここは、それによく似てる場所なんだ」
「よくご存じですね。この願いの社が『紅の社』って言われるようになったのは、櫻居先生のその小説が元なんです。似ているって、話題になって」
「櫻居先生の小説って、人気なんですね」
「ええ、それはとても! 先生の熱狂的なファンも多いですしね」
 カイムとシャルの問いに、願掛けの社の周囲を掃除していた神社の人は、そう言って。
「『紅葉行灯』の物語は悲劇的らしいが、細部までは読んでいなくてよ……大蛇に襲われた場所ってのは何処だったろうか……?」
「あぁ、それは……」
 ――此処です、『紅の社』の前ですよ、と。
 そう、神社の人は、炎に包まれ燃える様な紅に染まった社を見上げる。
 それから不意に、カイムとシャルは同時に顔を上げ、視線を合わせる。
 眼前の『紅の社』へと丁度やってきたのは――澄子であったから。
 けれど、見掛けた澄子に声を掛ける事はせず、チラと視線を入れておくだけにするカイム。
 そしてシャルは、再び『Nyanon SS-86』を構え、ぱしゃりとシャッターを切る。
 紅に燃える願掛けの社の景色と……そっと、何かを願う澄子の姿を。
 ――ファインダーから覗いたら何か別のことが見えるかもしれない、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『その場から動かない影』

POW   :    僕は待ち続ける
全身を【敵対的な行動を完全に防ぐ拒絶状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    忘れ果てても待ち続ける
【身体をあらゆる敵対行動を拒絶する影】に変形し、自身の【知性と感情】を代償に、自身の【防御能力】を強化する。
WIZ   :    あなただけを待ち続ける
非戦闘行為に没頭している間、自身の【影】が【記憶に残っている何かを模倣し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。

イラスト:狛蜜ザキ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はペイン・フィンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※お知らせ※
 第3章プレイング送信の受付は、【12/16(月)朝8:31】より開始いたします。
 それ以前に送信された分は流れてしまう可能性が高いのでご注意ください。
 追加情報を記載したOPを12/15中に掲載いたします。
 送信締切等のお知らせは、MS個別ページ等でご確認ください。


●或る『犬』と『作家』のおはなし
「今日は良く、伝承の『犬』について聞かれる日ですね」
 社務所に話を聞きに訪れる沢山の猟兵たちの様子に、そう神社の神主は首を傾けつつも。
 皆の調査の甲斐あって――では、その伝承の内容を軽く私からお話ししましょうか、と。
 神主は、集まった猟兵たちに語り始める。
「遥か昔、この地に最凶の災厄が降り注いだと言われていますが……その際、この神社に奉られている人物が命を懸けて人々を脅かす存在を打ち破り、討ち祓ったと。そして、その英雄の傍らには、相棒である『犬』が在ったと言われています」
 それから神主は、紅葉と桜が入り混じる天を一度仰いでから。
 こう、続けるのだった。
「当神社は桜咲く世界に在るにしては珍しく、この季節は燃える様に紅葉が色づきますよね。それも、紅葉の紅が、災厄を近づけさせないための聖なる炎の様な役割を成すから……などと伝えられていて。そんな炎の如き紅に囲まれている願掛けの社……通称『紅の社』は、特に神聖だと謂れています。とはいえ、元は『願掛けの社』とだけ言われておりましたが……著名な作家である櫻居・四狼先生の『紅葉行灯』の小説に出てくる社が、当神社の『願掛けの社』に似ていると評判になり、それ以降、通称『紅の社』と言われるようになったのですが。その櫻居先生も、かなり昔に一度、当神社のことを聞き訪れてくださったことがありましたが……作品の繊細さとは良い意味でギャップのある、色男で気さくで大胆な自由人、という印象の方でしたね」
 あ、少し横道に逸れましたね……と神主は言った後。
 再び、『犬』についての伝承の続きを語るのだった。
「そして主亡き後、残された『犬』ですが……主が最期の戦いに赴く前に、相棒である犬にこう告げたと言われています。人々の願いの炎を一緒に守り通そう……と。その言葉の影響か、主が召された後も、毎日のようにその『犬』は主の帰りを待ち続け、『願掛けの社』を守るように奥社を訪れていたと言われていますが……その『犬』の命もいつぞや果てたのか、ある日境に姿をみなくなったと。けれどその魂は今も、主を待ちながら、願掛けの社に燈る炎を護っているのかもしれませんね」

●或る『未亡人』と『紅葉行灯』のおはなし
 ――澄子、愛している……だから一緒に死んでくれるか。
 そう貴方は言ったけれど。
 ごめんなさい、私……死に損なって、生き延びてしまいました。
 その後何度も、貴方の後を追おうとしたけれど……怖くて、貴方に会えなかったらと不安で、できませんでした。
 けれど、そんな意気地のない私を、貴方は迎えにきてくれたのよね?
 ふたりで一緒に夢中になって幾度も読んだ、櫻居先生の『桜ノ匣庭』の一冊。
 その中で貴方が一番好きだった、『紅葉行灯』の小説の舞台かと思ってしまう様な、この神社の『紅の社』。
 その『紅の社』で、あの『犬』を見た時……ああ、貴方が迎えにきてくれたのだと。
 けれど、やはり貴方は櫻居先生の小説が大好きだし。
 意気地のない私が本当に貴方と添い遂げる覚悟があるのか、知りたいのも分かっているの。
 だから私も、『紅葉行灯』で主人公の男がしたように――『紅の社』で、願いを馳せるわ。
 今度こそ貴方と添い遂げたい、貴方と一緒にいたい。
 だから……貴方に、殺されたい、と。

●『影朧』と『猟兵』のおはなし
 願掛けの社が、紅のいろに染まる時期も……もうすぐ終わってしまうから。
 灯す炎に願いを込め、祈りを馳せる未亡人の姿は、どこか焦っているようにもみえて。
 そして彼女は、少しだけ違和感を覚える。
 いくら紅葉のシーズンだとしても、今日は『紅の社』の周囲にいる人の姿が多い気がする、と。
 でも、人の目が合ったら……匿っているあの人に、会えない。
 澄子は周囲の様子をそっと窺いながらも、意味もなく人が捌けるのを待つように『紅の社』の周囲を彷徨い歩いていたけれど。
「!! ダメ……ッ」
 集めた情報や予知を思い返すと……明らかに、影朧がいるのは『紅の社』だと。
 そう探索する猟兵たちが、『紅の社』の裏手へと回った瞬間。
 澄子は大きく瞳を見開き、咄嗟に声を上げてしまう。
 何故なら、『紅の社』の裏側……そこには、隠し扉があって。
 中には――あの人がいるのだから。
「!」
 そして突然声を上げた澄子の姿に、猟兵たちもハッと顔を上げて。
 同時に、確信する……『影朧』はやはりこの『紅の社』にいる、と。
 それからよく目を凝らし、社の裏手にある隠し扉を見つけ、開いてみれば……。
「! 影朧……!」
『…………』
 そこに在ったのは、影朧――犬の姿をした、その場から動かない影。
「あなた! 私は炎に願っていたように、貴方とどうしても添い遂げたいの……だから、逃げて!!」
 周囲には幸い、一般人の姿は澄子以外にはない。
 行灯燈る社の周辺は、十分な広さと明るさはある。影朧が逃げる素振りなど見せても、対処できるだろう。
 けれど犬の如きその影は、澄子の発した『願い』の声に、ぴくりと少しだけ反応を示して。
 社の外へとおもむろに出ると、主との約束を守るかのように、猟兵たちへと敵意の様な気を放つ。
 勿論、この犬のような影朧は、澄子の大切な人の化身などではない。
 それは全て、櫻居・四狼の小説に影響された、澄子のただの思い込みだ。
 だが、『犬』はいつも聞いて見ていただろう。澄子が足繁くこの場に通い、掛け続けた願いの炎を。
 そして影朧に成り果てた今も、ずっと守り続けようとしているのだ。
 主からの言いつけ……『人々の願いの炎を一緒に守り通そう』という、その言葉を。
吉瀬・煙之助
理彦くん(f01492)と
残された辛さは…僕にも分かるよ
僕の持ち主は僕を置いて逝ってしまったから…
確かに連れて行って欲しいと思ったことはあるけれど
それでも、理彦くんと会えたから
生きててよかったと思っているよ

理彦くんが居なくなったら…うん、すごく寂しいと思う
でも…だからこそ
理彦くんの代わりは誰もいない
本当にその子が貴方の旦那さんだと言えるのかな
大切な人だっていうなら
なおさら、見間違ってしまってはいけないよ…

守り続けようとする姿は素敵だと思う…
でも、君ももう休んでいいんだよ…
影朧を火縄銃で【呪殺弾】【スナイパー】で攻撃する


逢坂・理彦
煙ちゃんと(f10765)
一緒に死にそびれた辛さが分からないとはいわないけれど。
その犬は君の旦那さんでは無いんだ。
その子はその子で別の約束を果たそうとそこにいる。
きっと君が詣でた日々よりも長い長い時間を。
大切な人のいない世界はきっと辛いだろう。
俺は…いつか置いていく側になってしまうから…。
(置いて行きたく無い、誰かに取られたく無い…けれど)
けれど…煙ちゃんに一緒に死んでしまおうなんてさ…俺の傲慢でしか無いから。

生きて。旦那さんとの優しい思い出と一緒にいつかその日がくるまで。

君もワンコも少しだけ心安らかな時を…UC【誘い桜】



 はらりと数多舞い降る小さな炎の如きいろが、静かに眼前の風景をより紅に侵食していく。
 けれど、圧倒的なこの紅のいろでさえ、今だけの刹那的なもの。
 その儚さが永遠であればいいと、そう願うことは多々あれど……しかし、いつまでも引き摺ってしまうと、それはどうしても歪なものになってしまう。
 眼前の、願いの炎を護る犬が影朧となったことも、死に損なった未亡人がその犬を己の大切な人だと思い込んで匿ってしまったことも。
「! あなた……どうして、逃げてくれないの……?」
 澄子は、『紅の社』を護るかの様にその場から動く気配のない犬の様子を愕然と見つめ、呟きを落とす。
 そんな彼女へと声を掛けるのは、吉瀬・煙之助(煙管忍者・f10765)。
「残された辛さは……僕にも分かるよ。僕の持ち主は僕を置いて逝ってしまったから……」
 置いて逝かれた者の気持ち。それは煙之助には、よく分かる。
 連れて行って欲しい――澄子と同じように、そう思ったことだって、確かにあった。
 けれども煙之助は今、この場に在る。逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)の傍に。
 主に置いて逝かれ、連れてって欲しいと、過去思ったけれど。
「それでも、理彦くんと会えたから。生きててよかったと思っているよ」
 その時にもしも連れて逝って貰っていたら……理彦とは、出会えなかったのだから。
「一緒に死にそびれた辛さが分からないとはいわないけれど。その犬は君の旦那さんでは無いんだ」
 理彦も煙之助に続き、澄子へと言葉を投げる。
 辛くて現実から目を背けたい、何かに縋りたい……好きな小説の影響もあって、澄子にとって、それがこの犬の影朧であるのだろうけれど。
 理彦の言う通り、その犬は彼女の夫などでは決してなく。
「その子はその子で別の約束を果たそうとそこにいる。きっと君が詣でた日々よりも長い長い時間を」
 影朧となってまで、約束を果たそうと此処に在る存在なのだ。
 ずっとずっと……澄子が願いを馳せた時間よりも、遥かに長い時の中で。
 理彦にも、気持ちは分かるのだ。
「大切な人のいない世界はきっと辛いだろう。俺は……いつか置いていく側になってしまうから……」
 置いて逝ってしまう者の気持ち。
 幸せになるのが怖かった。けれど今、煙之助と一緒に居る……ただそれだけで、幸せな気持ちになれる自分がいる。
 だからこそ、大切な人と離れる時がいつか来る……そう思うだけで胸が締め付けられるから。
(「置いて行きたく無い、誰かに取られたく無い……けれど」)
「けれど……煙ちゃんに一緒に死んでしまおうなんてさ……俺の傲慢でしか無いから」
「理彦くんが居なくなったら……うん、すごく寂しいと思う」
 こくりと頷き、煙之助は、理彦を見つめる緑色の瞳を細めるけれど。
 ――でも……だからこそ、理彦くんの代わりは誰もいない。
 そう、はっきりと紡ぐ。
 いつかの別れは寂しいけれど、でも隣にいる理彦の代わりなんて、いやしないから。
 だからこそ、煙之助は彼女にも気付いて欲しいのだ。
「本当にその子が貴方の旦那さんだと言えるのかな」
 ――大切な人だっていうなら、なおさら、見間違ってしまってはいけないよ……って。
 辛くて死にたい、そう思うことだってあるだろうし。
 いつか来る別れは、思うだけで寂しいけれど。
「生きて。旦那さんとの優しい思い出と一緒にいつかその日がくるまで」
 一緒にずっといたいと思う程の相手との思い出はきっと、沢山あるだろうから。
 煙之助と今ひとつずつそれを重ねている、自分と同じように。
「…………」
 澄子はそう言葉を掛ける二人へと視線を巡らせた後、その瞳を『犬』へと向けている。
 その表情に宿るいろは……戸惑いと、迷い。
 そしてふいに、燃える紅と漆黒の影を映す彼女の瞳に舞い降るのは――桜の花吹雪。
「君もワンコも少しだけ心安らかな時を……」
 ――おやすみ。
 そう紡ぐ理彦の声と同時に咲き誇り、優しく花弁を躍らせる誘い桜。
 澄子にも――あなただけを待ち続けると、全てを遮断しようとする影朧の上にも、はらりと。
 そして煙之助も、一見古ぼけた、けれど霊力宿す優れものの火縄銃を構え、集中する。
「守り続けようとする姿は素敵だと思う……でも、君ももう休んでいいんだよ……」
 刹那、狙い放たれた呪殺弾が、あらゆるものを拒絶する影へと向けて撃ち出される。
 休んでいい……その言の葉と共に、還るべき場所へとその魂を導くように。
 忠義を貫いた『犬』が、己が望まぬことをしてしまう――その前に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザザ・クライスト
【狼鬼】

「オマエも少しは見習えよ」

レオンにボヤくが、奴は完全スルーで澄子に寄り添う構え

「フラウには旦那に見えているのか。そんな相手がいる幸せか」

ジャスパーはどうしてる?
腹ァ搔っ捌く場面じゃないぜ
『犬』に向き直る

「"此処"にいても迎えは来ない」

煙草に火を点ける
それが現実だ
主人の命を守るオマエは立派だ、どこかの犬も見習って欲しィくらいだぜ

「最後に願いを叶えてくれねェか。"だから"後は任せとけ」

願いは託すモンさ
オマエからオレ、ジャスパーもそォさ
他の奴らだっている
主人が待ってるだろ?

「アリーヴェデルチ」

それは再会を意味する別れの言葉
転生したオマエと澄子が添い遂げる
それで任務完了だ
幸せになってこい


ジャスパー・ドゥルジー
【狼鬼】
「殺されたい、だなんて殊勝な事で」
同情?憐憫?まさか
俺の最愛の殺人鬼は俺の命になんざ見向きもしなかった
「羨ましいね」
思わず呟いた言葉の意図はザザにも伝わらねえだろ
嫉妬さ

腕に歯を立て【ジャバウォックの詩】
腹は捌かねえが自分を喰らう
何だよその眼は
仕方ねえだろ、こういう力だ

「説得」はザザに任せ
俺は奴の「拒絶状態」の上から殴りかかる
攻撃は通らずとも澄子の目には俺はどう映る?
愛しい人を手にかけようとした悪魔だ
憎いだろう?
それは時に強い原動力になる
悪魔を憎んでいる限り
後追いなんざ考える余裕はねえだろ

拒絶状態に綻びが生じたら攻撃中断
苦戦する演技なんかも交えつつ
俺は最後まで二人を引き裂く悪魔に徹するさ



 この『犬』は一体どのくらいの間、眼前の『紅の社』を……灯る数多の願いの炎を、護ってきたのだろうか。
 そんなこと、知る由もないけれど。
 ちらりと、ザザ・クライスト(人狼騎士第六席・f07677)は己の愛犬へと目を向けて。
「オマエも少しは見習えよ」
 優秀な狩猟犬……であるはずの、レオンハルトへと思わずボヤく。
 けれど当の愛犬は、主の言葉も完全スルーでどこ吹く風。
 ワウッと愛想良く尻尾をフリフリ、澄子に寄り添う構えだ。
 いえ、一般人である彼女は、ちゃんと確り守らなければいけませんから!
 澄子が美人で若い未亡人だから……だなんて、多分きっとそうだからなのだけれど。
 とりあえず、傍にいる気満々のレオンハルトに、彼女の身は任せて。
「フラウには旦那に見えているのか。そんな相手がいる幸せか」
 ザザは澄子へとそう言葉を投げながら、眼前の『犬』へと視線を移した。
 現実から目を背け、代わりの何かに縋りたいほど、離れたくないと思う存在。
 離れるくらいならば……その手で殺されたいとまで、思う相手。
「殺されたい、だなんて殊勝な事で」
 は、と笑うと同時に、ジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)は、そっと首を横に振る。
 一緒に死んでくれと、そう言われるだけでなく。
 死に損なった彼女は、相手の化身だと思い込んでいる存在に、自分を殺してくれとまで願っている。
 傍からみれば、歪んで狂っている彼女の思慕の情。
 そして、そんな澄子を映すジャスパーの瞳に入り混じるのは、そのいろだけでなく……死に損ね置いて逝かれた未亡人を見て生じるもの。
 ――同情? 憐憫? まさか。
 もう一度、ふるり首を振る。だって――。
(「俺の最愛の殺人鬼は俺の命になんざ見向きもしなかった」)
「羨ましいね」
 思わず落とした言葉の意図は、隣にいるザザにだって、きっと伝わらないだろう。
 けれどジャスパー自身は、分かっているそれを否定しない。
 ――嫉妬さ、って。
 そしてザザは、そんなジャスパーの様子を見遣って。
「腹ァ搔っ捌く場面じゃないぜ」
 そう言葉を投げたのも束の間……紅の世界に飛沫くのは、より深く鮮やかな赤。
 刹那、己の腕に歯を立て喰らうジャスパーを燃やし染めるいろが、赤から黒へと変わってゆく。
 そんな自分へと目を向け、やれやれと言わんばかりのザザに、ジャスパーは視線を返して。
「何だよその眼は。仕方ねえだろ、こういう力だ」
 ――イカれてる? 上等だ。
 いつもの様にそう笑いながら、ピンクと紫混ざる瞳を細める。
 この感覚は、やはりイイと……痛みを感じれば感じるほど、その快楽にだけ、溺れさせてくれるから。
 そしてザザは今度は、ジャスパーから『犬』へと向き直って。
「"此処"にいても迎えは来ない」
 煙草に火を点け、紅の世界に燻らせる。
 ――それが現実だ、と。
「主人の命を守るオマエは立派だ、どこかの犬も見習って欲しィくらいだぜ」
 ブンブン相変わらず澄子に尻尾を振っている、愛犬をちらりと見ながらも。
『…………』
 相変わらず物言わず動かぬ影朧へと、ザザは言葉を投げ続ける。
「最後に願いを叶えてくれねェか。"だから"後は任せとけ」
 人々の想いを、沢山灯されてきたその炎を、護り続けてきた存在へと紡ぐ。
 だって、願いとは、そういうものだから。
「願いは託すモンさ。オマエからオレ、ジャスパーもそォさ。他の奴らだっている」
 託し託され、護られていく。
 だから今まで託されてきたのならば、次は託す番だと。
 ――主人が待ってるだろ? って。
 そして今まで動きをみせなかった『犬』が、ぴくりと微かに反応を示して。
『……!』
 あらゆるものを遮断する、動かぬ拒絶状態と化す。
 けれど全く構わずに、その上から殴りかかるジャスパー。
「!! いやっ、やめて!」
 レオンハルトに遮られ、近寄れこそしないが、そう悲痛の声を上げる澄子。
 そんな彼女へと視線を向け嗤いながらも、ジャスパーは『犬』を殴り続ける。
 ――澄子の目には俺はどう映る?
 殴り続けるその拳が通らないことなんて、分かっていても。
 そして澄子から発せられた言葉に薄く笑む。
「悪魔……!!」
 耳に届いたのは、言われ飽きた言葉。
 ――憎いだろう? そうさ、俺は愛しい人を手にかけようとしている悪魔だ。
 ……それでいい、それがいい。
 ジャスパーは嗤いながらひたすら『犬』を殴り続け、そして思う。
 ――悪魔を憎んでいる限り、後追いなんざ考える余裕はねえだろ、って。
「くっ、かてェ犬だな」
 拒絶状態に綻びが生じたのを感じ、振るっていた拳をようやく止めるジャスパー。
 これでいい、これがいい―ー俺は最後まで二人を引き裂く悪魔に徹するさ、って。
 そして変わりに『犬』へと向けられるのは、ザザの銃口と、再会を意味する別れの言葉。
「アリーヴェデルチ」
(「転生したオマエと澄子が添い遂げる、それで任務完了だ」)
 ――幸せになってこい。
 そう、素直ではない捻くれた、けれどそれが「らしい」……隣の誰かの思いを、共に乗せて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
「人々の願いの炎を一緒に守り通そう、ね」
「確かに言葉はその通りでしょうけど、その奥に込められた想いに気づいていないのかしら?」

犬の動きを冷静に見て、逃げられないように立ち回りつつ【平和を作るモノ】でクイックドロウ+2回攻撃。
動きが鈍くなったらユーベルコード【ジャッジメント・クルセイド】

「人が願いをかけるのは、幸せになるためよ。不幸になるためじゃないわ」

全てが終わったら澄子さんに声をかけましょう。
「貴女の大切な人は、貴女に一緒にいてほしいだけだったのかしら?
 それとも幸せになってほしかったのかしら?」



 年中、散ることなく桜咲き続けるサクラミラージュの世界で。
 この季節だけ、ただひたすらの紅に染まった『紅の社』。
 その社をさらに彩るのは、人々が掛けた願いの炎。
 そして主人の言いつけを守り、それを護り続けているという『犬』。
 ……影朧という不安定な過去の存在に、成り果ててまで。
「人々の願いの炎を一緒に守り通そう、ね」
 ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は、話に聞いたこの神社の伝承を思い返し、ぽつりと口にするけれど。
 藍と紫、その彩の違うふたつの宝珠で、犬の動きを冷静に見ながら。
 逃げられないよう立ち回りつつ、つやの消された黒色をした長い銃身の回転式拳銃を構える。
「確かに言葉はその通りでしょうけど、その奥に込められた想いに気づいていないのかしら?」
 ヴィオレッタは、いやというほどに、よく知っているから。
 人が願うということが、どういうことなのかを。
「人が願いをかけるのは、幸せになるためよ。不幸になるためじゃないわ」
 彼女自身が、数多の願いを掛けられ続けた――所有者に不幸な最期をもたらすとされた、希望の宝珠だから。
 この社に灯された願いの炎だって、そうだろう。
 不幸になるためなんかではなく、幸せになるために灯したものだろうから。
 だからヴィオレッタは、犬自身がその炎を脅かすような、望まぬ存在へと堕ちるその前に。
 『平和を作るモノ』の銃口を犬へと向け、素早く引き金を引いて。
 連射された弾丸を、全てを遮断せんとする生前の記憶を象る影へと撃ち込む。
 そして刹那向けるは、光を纏う指先。
 紅に燃える風景に、天から眩い光が降り注いで。
「……きゃっ!」
 全てが終わったらと、そう思っていたけれど。
 その眩さに思わず声を上げた澄子へと、ヴィオレッタはこう言葉を掛けるのだった。
「貴女の大切な人は、貴女に一緒にいてほしいだけだったのかしら? それとも幸せになってほしかったのかしら?」
 『紅の社』へと足繁く通う彼女が灯し続けた、願いの灯火。
 それも決して、例外などではないはず――不幸になるためではなく、幸せになるためのものだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

照宮・篝
【神竜】まる(f09171)と

人の願いを守ろうとして、残り続ける影朧と
その影朧に、先立った伴侶を重ねる妻と…
まると心中した時を思い出す
あれで、一人残されたら、気が触れてしまうかもしれない
…私が彼女のように、力ない女であれば

忠義の犬よ、君はもう十二分に、その役を果たしたのだ
君の主は、「一緒に」と、君に願ったのだろう
ならば…今は、主が君を、待っているのではないかな
影朧の君が此処に残り続け、いずれ災いとなる事を、主は望まないだろう
…おいで。君が私を拒んでも、私は君を拒まないよ
(【退魔水晶】を掲げ【慈愛灯明】)

私は、黄泉路を照らす女神だから
万にひとつも、愛するまるを独り逝かせる事はしないとも
絶対に、だ


マレーク・グランシャール
【神竜】篝(f20484)と

敵がテコでも動かないつもりなら、こちらもそのつもりで行く
篝が【慈愛灯明】で無敵の防御を解除したら、すかさず碧血竜槍を槍投げし、それを初撃として【流星蒼槍】を発動
召喚した双頭竜をけしかけながら、自身も残る二槍を携えランスチャージと雷撃で攻撃

しかし……
一人残された澄子の気持ちはよく分かる
身代わりを求め信じ込もうとするのも
それから親しんだ者亡き後も約束を果たさんとする影朧に対しても

憎むべきは件の小説家とその作品
櫻居・四狼、あいつには絶対何かあると俺の勘が告げている
清史郎なら何か知っているだろうか

ああ、篝よ、心配するな
俺はお前を残しはしない
澄子のような想いはさせないからな



 桜色に染まる世界の中に在って尚、燃えるような紅だけを纏う願いの社。
 散りゆく紅葉は小さき炎の様で、それは秋の季節にだけ燃え上がる刹那のいろ。
 そして照宮・篝(水鏡写しの泉照・f20484)が瞳に映すのは、それぞれの想いを抱き此処に在る、ふたつの存在。
(「人の願いを守ろうとして、残り続ける影朧と。その影朧に、先立った伴侶を重ねる妻と……まると心中した時を思い出す」)
 ――あれで、一人残されたら、気が触れてしまうかもしれない。
 あの時、マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)と共に享受した死は、演技ではあったのだけれど。
 もしも澄子の様に、自分だけ残されてしまったら。きっと、正気ではいられないだろう。
(「……私が彼女のように、力ない女であれば」)
 そして篝は今度は『犬』へと、その灯火を向ける。
「忠義の犬よ、君はもう十二分に、その役を果たしたのだ」
 それは、彷徨うひとつの魂に寄り添い導く標、泉照の焔。
 そして『犬』が長く長く護り続けてきた、主との約束。
「君の主は、「一緒に」と、君に願ったのだろう。ならば……今は、主が君を、待っているのではないかな」
 影朧と堕ちてしまった彼が此処に残り続ければ、いずれ災いとなるかもしれない。
 命を挺してまで人々を護った主も、そして『犬』自身も――それは望まぬだろうこと。
 だから、篝は照らすのだ。その正しい道行きを。
「……おいで。君が私を拒んでも、私は君を拒まないよ」
『……!』
 全く動かぬ……いや、拒絶状態にあって動けぬはずの犬の身体が、刹那ぴくりと反応を示す。
 紅の世界に掲げられるは、神力込められた輝き纏う水晶。
 そして慈愛と受容の篝火が目映い光となり、如何なる拒絶をも綻ばせる愛の御光となって注がれれば。
 ――敵がテコでも動かないつもりなら、こちらもそのつもりで行く。
 篝の『慈愛灯明』が発動し『犬』の拒絶状態を打ち消した瞬間、マレークが狙い定め投擲するは、碧玉を嵌めた優美な長槍。
 紅のいろにはしる蒼き流星の如き鋭撃が影へと見舞われ、さらに襲いかかり猛追撃するは、蒼き稲妻纏った碧眼の双頭竜。
 そんな双頭竜をけしかけながら、同時にマレーク自身も、嵐を呼ぶ荒ぶる雷帝と大山祇神の繁茂の力宿す二槍を携え、燃える世界に雷鳴を轟かせる。
 マレークは猟兵として影朧を討つべく、握る槍を振るい、紅の戦場を駆けながらも。
(「しかし……一人残された澄子の気持ちはよく分かる」)
 そうも、その心に思う――身代わりを求め信じ込もうとするのも、それから親しんだ者亡き後も約束を果たさんとする影朧に対しても。
 それからふと心に浮かぶ、もうひとつの存在。
(「憎むべきは件の小説家とその作品。櫻居・四狼、あいつには絶対何かあると俺の勘が告げている」)
 サクラミラージュの人気作家だという、謎多き人物――櫻居・四狼。
 彼の小説を機に起こった事件を追うたびに、その影響力は、ただ人気だというだけではない気がする。
(「清史郎なら何か知っているだろうか」)
 櫻居・四狼の予知を度々視るグリモア猟兵が咲かせる桜は、彼のことも、何か映し出しているかもしれない。
 そう一連の事件に携わる身として色々と思考を巡らせながらも、決して攻撃を繰り出す手は抜かぬマレークの姿を、篝は見守るように瞳に焼きつけながら。
 その大きな背中を照らし続け、そして紡ぐ。
「私は、黄泉路を照らす女神だから。万にひとつも、愛するまるを独り逝かせる事はしないとも」
 ――絶対に、だ……と。
 篝は泉照、澄子のように力なき女ではなく……彼のことを、その想いの灯火で照らすことができるから。
 そしてマレークも、双頭竜を伴い戦場を駆けながら。
 愛しさを宿した紫の瞳を細め、返す。
「ああ、篝よ、心配するな。俺はお前を残しはしない」
 ――澄子のような想いはさせないからな、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブOK

影朧に話しかける

君が本当に叶えたい?「誰」の願いを一番に叶えたい?
かつて使えた主人?それともその女性?それとも別に君自身に願いはあるのか?
俺は誰かの願いの為に存在することは否定しない。
でもそれは君自身が考えて願った末に出した結果であればだ。
誰かの願いを叶えるという自分の願いであれば。
ただ流されるように叶えようと守ろうとするなら、それは看過できない。

女性に、澄子、さんに言いたい事もあるけど、正直伝えていいものか悩む。
亡くした哀しみは分からなくはないけど、でもそれで殺してほしいって押し…いやなんでもない。
俺の言葉じゃなくて別の人の別の言葉できっとわかってくれるだろう。

UCは防御力強化。



 紅の舞い降る社の前に、物言わず佇む犬。
 その身から感じるのは、猟兵たちに対する敵意のような気。
 しかしそれは猟兵や他の者に危害を加えようというものではなく、炎に願いを掛け続けた澄子が発した、焦りや不安の色に反応してのものだろう。
 そう……犬は、ただただ、護りたいのだ。
 主との約束通り、人々が『紅の社』へと捧げた願いの炎を。
 刹那、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)が発動させるのは――『鳴神』。
 けれどその力が強化するのは防御力、犬へと刃を向けるためのものではない。
 瑞樹はいまだ動かぬ影朧……犬へと問いかける。
「君が本当に叶えたいのは? 「誰」の願いを一番に叶えたい?」
 ……かつて使えた主人? それともその女性?
 それとも――別に君自身に願いはあるのか? って。
 瑞樹は、誰かの願いの為に存在すること、それを否定はしない。
「でもそれは君自身が考えて願った末に出した結果であればだ」
 ……誰かの願いを叶えるという自分の願いであれば。
 けれども、もしもそうでないのならば。
「ただ流されるように叶えようと守ろうとするなら、それは看過できない」
 影朧になってまで、この紅の彩に染まる社を守り続ける行動。
 それはこの犬自身が今もなお望むものなのか、それとも、ただ囚われているだけなのか。
 いや、それを彼も望み、ただ此処に在り護り続けられるのならば構わない。
 けれど影朧のまま、約束に囚われているだけならば……いずれ、彼の主も、彼自身も望まぬ結果となってしまうだろう。
 だから決して、見過ごすわけにはいかない。
 この犬は、此処に囚われ続けてはいけない存在だから。
 それから瑞樹は、ふと青の瞳を巡らせて、澄子の姿を見遣る。
 彼女に言いたい事もあるけれど……正直伝えていいものか悩んでしまう。
(「亡くした哀しみは分からなくはないけど、でもそれで殺してほしいって押し……」)
 ……いやなんでもない、と。
 やはり澄子に対しては、口を噤むことにする瑞樹であった。
 ――俺の言葉じゃなくて別の人の別の言葉できっとわかってくれるだろう、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリス・ステラ
緋翠(f03169)の側に

「主よ、憐れみたまえ」

私は『祈り』を捧げる
星辰の瞳はかすかに光を灯すだけ

「緋翠……」

手を繋いだままの彼を見つめる
主人の願いを、人々の願いを守ろうとする影朧を見て、彼は何を思うのだろう

「影朧の"彼"は、あなたと少し似ています」

それが絆でも、"彼"は独りのままだから
そして澄子も──
魂を還しましょう、緋翠

「寂しそうだから。それが理由ではおかしいですか?」

私のためではなく
あなたのためではなく
私たちのために

彼と彼女もそうだったのではないでしょうか
私は祈ります
緋翠、あなたも祈ってくれませんか?
緋翠の答えに微笑んで首を振る
ありがとう、緋翠

【親愛なる世界へ】を使用

三人の幸せを祈ります


緋翠・華乃音
マリス・ステラ(f03202)と共に


……置いて往かれる者の気持ちはよく分かる。
俺もそうだったから。
誰も彼も、俺を置いて先へ往ってしまった。

"殺されたい"とは"赦されたい"とその本質はきっと同じ。

「――ああ、マリス。魂を還す事に異論はない」

それが蝶の役目なのだから。
誰に置いて往かれようと、誰とも共に歩む事が出来なくても、それが蝶の存在理由で意味なのだから。

赦しを与えよう。
君はもう休んで良いのだと。

祈って欲しいと言われれば内心で困惑する。
幸せとは何なのだろうか。
分からないものを祈る事は出来ない。

悲痛を押し隠すような声で、ただ一言「ごめん」と呟いた。
俺の分まで、きっと彼女が祈ってくれるだろう。



 小さき炎の如き紅葉が、降り積もった地面をより深い紅へと燃え上がらせていく。
 まるで、大切な人を想い囚われ続ける、彼女たちの思慕の様に。
 かたや追おうとする者、かたや待ち続けるモノ――その違いこそあれど。
(「……置いて往かれる者の気持ちはよく分かる。俺もそうだったから」)
 ――誰も彼も、俺を置いて先へ往ってしまった。
 瑠璃の視線を、『紅の社』を守り続ける『犬』と社に願いを馳せ続ける未亡人へと巡らせる。
 けれど、そうふと細められた緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)のその瞳に宿る感情は淡く、静謐に鎖されたまま。
 そして置いて往かれた未亡人が祈る姿を思い返しながらも、華乃音は思う。
(「"殺されたい"とは"赦されたい"とその本質はきっと同じ」)
 共に死のうとそう大切な人と交わし合ったのに、生き延びてしまった澄子。
 彼女は死にたいのではない、殺されて"赦されたい"のだ。
「主よ、憐れみたまえ」
 そう祈りを捧げるマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)であるけれど。
 星辰の瞳に灯る光は、数多輝く星々の中に在ればきっと見つけられないほど、微かで儚い。
「緋翠……」
 温もり混ざり合ったその手は、いまだ繋がれたまま。
 微かな光宿す星辰でマリスはすぐ隣に在る彼の横顔を見上げ、見つめながらも思う。
(「主人の願いを、人々の願いを守ろうとする影朧を見て、彼は何を思うのだろう」)
「影朧の"彼"は、あなたと少し似ています」
 置いて往かれるもの。独りで在り続けるもの。そんな在り方は、少し似ているのかもしれない。
(「それが絆でも、"彼"は独りのままだから」)
 ……そして澄子も――。
 マリスはそれからふと、『犬』を祈る様に見つめ続ける彼女へと視線を映す。
 隣で長い時間、共に並んで『紅の社』に祈っていた未亡人。
 けれど、眼前の『犬』がその願いを万が一叶えてしまうこと、それはあってはならないから。
 たとえ星辰の瞳に宿る瞳が微かであったとしても……やるべきことは、違えない。
「魂を還しましょう、緋翠」
 星の転がる音でそう紡いだ彼女に瑠璃の瞳を向けて。
 銀髪の髪揺らし、華乃音もこくりと頷く。
「――ああ、マリス。魂を還す事に異論はない」
 置いて往かれ、独りで在り続けたとしても……それが、蝶の役目なのだから。
(「誰に置いて往かれようと、誰とも共に歩む事が出来なくても、それが蝶の存在理由で意味なのだから」)
 だから華乃音は、眼前の忠義の犬にも与えるのだ。
 赦しを――君はもう休んで良いのだと。
 そしてその輝きは今、眩いものでは決してなく、朧げなものであっても。
 マリスは祈りを捧げ続ける。
「寂しそうだから。それが理由ではおかしいですか?」
 置いて往かれること。それはやはり、寂しいことだから。
 私のためではなく。
 あなたのためではなく。
 ――私たちのために。
(「彼と彼女もそうだったのではないでしょうか」)
 ……私は祈ります。
 そう紡いだマリスは、華乃音を見つめ、続ける。
「緋翠、あなたも祈ってくれませんか?」
 そんな言の葉に、微かに瑠璃の瞳を見開いた華乃音であったが。
 その心内で、困惑してしまう。
 ――幸せとは何なのだろうか。
 それがよく、華乃音には分からない。
 だから……分からないものを祈る事は、出来ない。
「ごめん」
 ただ一言。返した声に押し隠されるのは、悲痛のいろ。
 自分には、幸せを願い祈ることはできないけれど。
 でも――俺の分まで、きっと彼女が祈ってくれるだろうから、って。
 そんな緋翠の答えに、マリスは微笑んで、ふるりと首を振る。
「ありがとう、緋翠」
 そして、彼の分も。
 ――主はあなたたちと共に。
 マリスは、親愛なる世界へと祈りを捧げる。
 願い馳せる未亡人も待ち続ける犬も、そして魂を運ぶ蝶も――三人の幸せを願って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・還
一度失った身からしてこの女大嫌いだわ
つーか地雷

セレアともし心中して、失敗したら俺はちゃんと後を追っただろうね
アメーラ(f03728)とだってそう。
そうだろ?俺達ならそうするよなァ

…で、アンタ死ぬの怖いんでしょ?
一緒に逝けなかったことを悔やんでて、だからなに?
なんで今迄生きて来たの?なんで居もしない夫に頼ってるの?

所でこの社の伝承はちゃんと知ってる?この犬は願いに反応してるだけで其れは「殺しに来てくれた旦那」じゃないよ
ねェアンタの本当の願いは何?

犬は願いに反応してる
如何にかするなら澄子の願いを変えるしかないだろうね

ん?あれ?なんかアメーラもキレてない?…ま、そりゃそうか。俺達からしたら腹立つわな


アメーラ・ソロモン
還(f02594)と共に影朧と対峙
…いや、澄子殿と対峙、かな

澄子殿の気持ちがわからないわけじゃあないんだ
寧ろ同意してしまいそうなくらいさ
私も還を失ったら生きていける気がしないから
的確に…この喉を突き命を絶つだろうね
でも君の願いは“死”そのものじゃないだろう?

本当にただ死にたいのならかける言葉もないがね
君は心中し損なったことを許してもらいたいだけじゃないかい
結局ずるずるとここまで生きてしまったのだから
いっそのこと生き汚く永らえてみるのはどうかな?

…そうだねぇ、案外頭に来ていたようだ
生きたくないのか死にたくないのかはっきりせず、己の都合の良いようにしか物事を見ない、そんな姿勢がね

互いにアドリブ歓迎



 まるで、社に数多灯る願いの炎のように。
 小さな炎の如き紅葉がはらり、桜色の世界を紅のいろに染め上げていく。
 そんな紅纏った願掛けの社を護り佇むのは『犬』……影朧であるのだけれど。
(「……いや、澄子殿と対峙、かな」)
 アメーラ・ソロモン(数多の魂を宿す者・f03728)は金の瞳をふと、影朧である『犬』を見つめる未亡人へと移した。
 その表情に宿るいろは、不安や焦り、そして……迷いや戸惑い。
(「一度失った身からしてこの女大嫌いだわ」)
 ……つーか地雷、と。
 ざっと苛立つように黒髪をかき上げ、終夜・還(終の狼・f02594)は大きく息を吐く。
「セレアともし心中して、失敗したら俺はちゃんと後を追っただろうね。アメーラとだってそう」
 一緒に死ぬと、そう決めたのならば。
 たとえ死に損なったとしても、自分はその約束を最後まで果たすだろう。
 いや、それはきっと自分だけではない。
「そうだろ? 俺達ならそうするよなァ」
「的確に……この喉を突き命を絶つだろうね」
 迷わずにそう返すアメーラだってそうだ。
 大切な人と心中するも死に損ない、自分だけ生き延びてしまった澄子。
 アメーラは、彼女の気持ち全てを否定するつもりはない。
(「澄子殿の気持ちがわからないわけじゃあないんだ。寧ろ同意してしまいそうなくらいさ」)
 ――私も還を失ったら生きていける気がしないから。
 けれど、大切な人を失った気持ちは、分からないわけではないのだけれど。
「でも君の願いは“死”そのものじゃないだろう?」
 その証拠に、大切な人と死を共にすると決めたはずの彼女は、今も生きている。
 殺してくれと……そう願いの炎を灯し、社へと願うばかりで。
「……私は……」
 アメーラの問いに何も言えず俯くそんな澄子に、言葉を投げる還。
「……で、アンタ死ぬの怖いんでしょ? 一緒に逝けなかったことを悔やんでて、だからなに? なんで今迄生きて来たの? なんで居もしない夫に頼ってるの?」
「夫はそこにいるわ、私を迎えに来てくれたのよ!」
 大きく首を横に振り、そう言い返してきた澄子に、還はもう一度大きく息を吐いて。
 そして改めて、彼女に問う。
「所でこの社の伝承はちゃんと知ってる? この犬は願いに反応してるだけで其れは「殺しに来てくれた旦那」じゃないよ」
 ――ねェアンタの本当の願いは何? って。
「……私の、本当の願い……」
「本当にただ死にたいのならかける言葉もないがね」
 きっと……いや恐らく確実に、彼女が望んでいるのは『死』ではない。
 再び言葉を切った澄子を見つめ、アメーラは彼女の心内を代弁してあげる。
 ――君は心中し損なったことを許してもらいたいだけじゃないかい、って。
 一緒に死のうと約束し交わし合ったのに、自分だけ生き延びてしまった。
 けれど、後を追って自ら死ぬ勇気もない……そんな彼女の心が抱くのは、罪悪感。
 彼女は死にたいのではない、許してもらいたいのだ。
 ……だから。
「結局ずるずるとここまで生きてしまったのだから、いっそのこと生き汚く永らえてみるのはどうかな?」
 死にたいわけではないのならば、生きてみるのはどうかと、そうアメーラは提案する。
 そして今は、願いの炎を護るようにこの場に佇む『犬』だけれど。
(「犬は願いに反応してる。如何にかするなら澄子の願いを変えるしかないだろうね」)
 もう既に微かに、彼女の願いに反応を示している犬。
 そんな影朧が、今まで澄子がこの社に掛け続けてきた願いを叶えてしまうその前に。
「…………」
 再び何も言えなくなってしまった澄子の心で犇めき合うのは、大きな迷い。
 ……死にたいわけではない、でも許されたい。
 そんな煮え切らない様子が、明らかに目の前の澄子から見て取れる。
 それから還はふと、澄子から隣のアメーラへと視線を移して。
「ん? あれ? なんかアメーラもキレてない?」
 彼女に言って聞かせつつも、自分と同じような感情を澄子に抱いていそうなアメーラの表情を見て、そう口にして。
「……ま、そりゃそうか。俺達からしたら腹立つわな」
「……そうだねぇ、案外頭に来ていたようだ」
 還の姿を映した金の瞳をそっと細め、アメーラも返す。
 大切な人を失った気持ちは分からなくもないけれど、でもやはり、腹は立つのだ。
(「生きたくないのか死にたくないのかはっきりせず、己の都合の良いようにしか物事を見ない、そんな姿勢がね」)
 大切な人と誓い合った覚悟を貫き通せず、かといって、それに縛られてうだうだと生きている。
 自分たちならば――きっとそんなことはないだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
死した相手を尚待つ犬
独り生き延びた後悔、逝かせちまった亭主への罪悪
皮肉な巡りあわせだ

夜彦と主と、その想い人……みたいだな
なんて思ったりもするけど……

さしずめ、約束の証である花簪はこの燃えるような紅葉ってトコか

おっと、らしくねぇや
夜彦に呼ばれて小さく笑って
悪ぃ、大丈夫だ
いつも通り、往こうぜ

篝火で攻撃力強化
ほぼは絶対じゃねぇってな、今までも言ってんだけどな
詠唱と同時に華焔刀で先制攻撃
なぎ払って2回攻撃
攻撃には常に破魔と鎧無視攻撃を乗せてく
夜彦とタイミングを合わせる際には部位破壊を乗せて
夜彦の攻撃と同一ないし近接した部位を狙ってく

念の為、澄子が戦場に立ち入らないように立ち位置立ち回りは注意


月舘・夜彦
【華禱】
独り生きる
残されたという孤独は言葉にするには難しく
約束という言の葉は……今や呪いに近い

……思い出す
必ず戻ると約束され
私を髪に飾りながら戻りを待ち続けるあの御方の姿を
「あれ」も呪い、なのでしょうか

考えながら彼を見る
彼の様子、私と近い事を考えているのかもしれませんね

往きましょうか、倫太郎殿

攻撃を無効化させる術を持っているようですが無意味ではないはず
初手は倫太郎殿の攻撃に合わせてダッシュで接近
2回攻撃を基本とし、無敵状態には鎧砕き・鎧無視にて攻撃
刃が届かないなら早業の破魔の力を付与した抜刀術『断ち風』

違う
呪いでは無かった
約束は繋がりの証だった
悲しみが寄り添おうとも、命を放棄してはいけない



 燃える様ないろを散り際に降らせ、積もらせていく紅葉は、今だけの刹那的なもの。
 そんな真っ赤に色づいたこの景色の中に今在るのは、見送ったものたちの姿。
(「死した相手を尚待つ犬。独り生き延びた後悔、逝かせちまった亭主への罪悪。皮肉な巡りあわせだ」)
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、主との約束を守り続け佇む犬と、共に死に損ねた夫と今も尚添い遂げたいと願う未亡人をそっと交互に見遣った後。
 その琥珀を、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)へと向けて。
 二藍咲くその影に見た光景を思い返しながらも、その心に思う。
 ――夜彦と主と、その想い人……みたいだな、なんて。
 独り生きる……残された者。
 夜彦はその姿を、誰よりもすぐ傍でずっと見守ってきたから。
 だから、知っているのだ。
(「残されたという孤独は言葉にするには難しく。約束という言の葉は……今や呪いに近い」)
 いや、知っているだけではない。
 ……思い出す。
 今でも鮮明に、脳裏に蘇るのだ。
(「必ず戻ると約束され、私を髪に飾りながら戻りを待ち続けるあの御方の姿を」)
 ――「あれ」も呪い、なのでしょうか。
 待ち続けるその姿を見守り続けヤドリガミとなった自分と、影朧となった今も約束を守るべく待ち続ける犬。
 夜彦は緑色の瞳を細めながらも、その姿を見遣る。
 影朧になってさえ、呪いの様な約束に縛られているモノの姿を。
 そして倫太郎はそんな夜彦の横顔を、紅舞い降る風景の中、見つめる。
(「さしずめ、約束の証である花簪はこの燃えるような紅葉ってトコか」)
 けれど……おっと、らしくねぇや、って。
 気を取り直し、影朧へと視線を移すけれど。
 思考を巡らせながらも夜彦の視線が、今度はふと、彼へと向く。
(「彼の様子、私と近い事を考えているのかもしれませんね」)
 思い出した風景をあの時は見ていられなくて、逃げるようにその場を去ってしまったけれど。
「往きましょうか、倫太郎殿」
 銀の月と燃えるような紅を映す曇り無き刃の愛刀を構える夜彦。
 そんな、耳に届いた自分を呼ぶ声に、悪ぃ、大丈夫だ、と。
 倫太郎は、夜彦へと琥珀色の瞳を向けて返す。
「いつも通り、往こうぜ」
 そう、小さく笑って。
『…………』
 願いの炎が灯る『紅の社』を護る。
 眼前の影朧が成したい主との約束は、ただそれだけ。
 だから、『犬』は動かない。そう……まだ、今は。
 けれど影朧は不安定な存在、約束を違え、犬自身が望まぬ未来がいつか訪れてしまうかもしれないから。
 ――祓い、喰らい、砕く、カミの力。
 そう倫太郎が紡ぐと同時に、より力漲り握られた華焔刀が、散りゆく数多の紅を再び舞い上がらせて。
 その黒塗りの柄だけでなく美しい刃紋が映える刃にも、小さき紅の炎を映し出し燃え上がらせる。
 その場から動けぬかわりに、敵対的な行動を完全に防ぐ拒絶状態となっている犬。
 けれど、破魔や防御を破る力宿す攻撃を向けるその手は、決して緩めない。
「ほぼは絶対じゃねぇってな、今までも言ってんだけどな」
 先制の一薙ぎ目の後、刃を返してさらに鋭撃を重ねる倫太郎。
 そんな倫太郎に合わせ、戦場を駆け地を蹴り、犬へと接敵して。
 その防御を砕き無効化を狙い、彼とタイミングを合わせ刀を振るう夜彦。
 自分たちの攻撃をも拒絶する犬へと、ふたり連携を取り、部位を狙った攻撃を繰り返して。
 夜彦が刹那抜刀し、破魔の力込め風の如く放つは――蒼銀の刃が美しい霊刀。
 その身が刃を拒絶するというならば、生み出すこの『断ち風』で斬るのは、穢れや邪心。
『……!』
 瞬間、動けぬはずの犬が、ぴくりと微かに反応を示して。
 夜彦は藍の髪を紅の世界に靡かせ、呼吸の合った連携で倫太郎と共に刃を振るいながら、改めてその心に思う。
(「違う、呪いでは無かった。約束は繋がりの証だった」)
 共に在る大切な炎を煽る様に、そして待つ者を縛る鎖を断つように、風の如き斬撃を生み出しながら。
 ――悲しみが寄り添おうとも、命を放棄してはいけない、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

草野・千秋
旦那さんと心中をして失敗だなんて悲しいですよね
人生を永遠に過ごすと誓った人と
別れが来るだなんてなんてことでしょう
僕だってそんな日が来たらと思うとつらい

犬はいつだって人間の忠実な友です
勿論かの英雄さんにとっても
毎日のように主人の帰りを待ち続けただなんて泣けてきちゃいますね
UDCアースにもそんな忠犬の逸話はあります

でも、澄子さん、いけない、その犬は旦那さんに関与した存在ではない

ですから、影朧の犬さん、澄子さんを開放してあげて下さい
生き残った者は「生き残る」という宿命、義務があるのですから
生きてなお、幸せを追い求める権利があるのですから

UCで邪心を取り除こうと
敵攻撃は激痛耐性、盾受けで耐える



 今までどれだけの人が、この社に願いの炎を灯しにきたのか。
 そしてその数多揺れるその灯火のうちのひとつは――不安そうに『犬』を見つめる、澄子のもの。
 草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)は影朧の動向に注意を払いながらも。
 その橄欖石の如きいろの瞳を彼女へと向け、語り掛ける。
「旦那さんと心中をして失敗だなんて悲しいですよね。人生を永遠に過ごすと誓った人と別れが来るだなんてなんてことでしょう」
 ……僕だってそんな日が来たらと思うとつらい、と。
 千秋も心を痛める――澄子のように、大切な人との別れの時が来た時のことを思えば。
 そして主の言いつけを、ずっと守ってきた存在。
 主亡き後も、そしてその命が果てても……影朧になってまでも。
「犬はいつだって人間の忠実な友です。勿論かの英雄さんにとっても、毎日のように主人の帰りを待ち続けただなんて泣けてきちゃいますね」
 そんな忠犬の逸話は、千秋が食料品店を構えるUDCアースにもある。
 それほど、犬という生き物の忠義は厚いのだけれども。
 千秋は改めて澄子と向き合い、彼女の瞳を見つめ確りと諭すように紡ぐ。
「でも、澄子さん、いけない、その犬は旦那さんに関与した存在ではない」
 ふるりと首を振り、そう現実を告げる千秋。
 いや、何度も他の猟兵にも告げられ、彼女自身ももしかしたらわかっているのかもしれない。
「……いいえ、あの人よ。きっと……」
 か細く響くその声に滲むのは、現実を受け入れたくないという悲壮のいろ。
 けれど、そんな様子を見ているのもつらいから。
 今度は『犬』へと視線を移しながら。
「ですから、影朧の犬さん、澄子さんを開放してあげて下さい。生き残った者は「生き残る」という宿命、義務があるのですから」
 千秋は紅舞い降る世界に、切ない気持ちを籠めた歌声を響かせる。
 その身をあらゆる攻撃に対する拒絶状態へと変化させた犬へと。
 いや、犬を象った影そのものではなく、その邪心のみを取り除かんと、千秋は歌い上げる。
 ――生きてなお、幸せを追い求める権利があるのですから、って、そう思いを込めながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鶴澤・白雪
千織(f02428)と

お利口な忠犬ね
言葉だけ見たら素敵な言いつけだけど捉え方間違ってるわよ

恐ろしく防御硬そうなわんこだけど千織、いけそう?
一か八かの博打上等よ
手のかかる大人と悪餓鬼がいない時くらい好き勝手やりたいじゃない

他の猟兵との戦闘でユベコ使ってるだろうからまずは千織のサポートね
攻撃してくるなら両手に持った銃で援護射撃
攻撃を遮断する状態なら高速詠唱のユベコで壁を作って防御にあてる

千織の言う通りね
人々の願いを守るって願いであれ誰かを不幸にしていいって意味じゃないわ

常に銃弾には焔を込めて属性攻撃に

どれだけ貫通するかで防御の度合いを見極めて
緩んだタイミングで全力魔法のユベコを使って串刺しにするわ


橙樹・千織
白雪さん(f09233)と

言の葉とは捉え方で意味が変わります
あなたの主は本当にその意味で言の葉を発したのですか?

そうですねぇ
一か八かになりますがそれでも良ければ、いきますよ
ふふ、それはそれは
では、好き勝手しましょうか!

高速詠唱でユベコを発動、椿の焔と共に攻撃を開始

あなたの主は人々を護る為に尽くした
けれど、相棒であるあなたは今、主が護ろうとした人々を脅かす存在となっているのですよ!
焔を操作しながら、鎧砕きの要領でなぎ払う

それを今すぐ解きなさい
防御態勢に入るなら、橙に金の光が揺らぐ瞳を敵と合わせ、破魔・催眠術を含ませた言霊で解除を命じます
解除不可能な場合、呪詛で強化された防御力ダウンを試みます



 一体いつから、そうやってこの紅の世界に在るのだろうか。
『…………』
 守るべき『願い』を口にした澄子が警戒心に満ちた声を上げたからか、自分に得物を向けているからか、影朧という存在であるからか……それは分からないが。
 猟兵に対し、敵意の様な気を放つ『犬』。
 けれどそれでもその牙はいまだ剥かず、『紅の社』を護るべく、ひたすら守りを固めることに徹している。
 そんな、一見その姿だけをみれば、健気で従順にみえるのだけれども。
「お利口な忠犬ね。言葉だけ見たら素敵な言いつけだけど捉え方間違ってるわよ」
 鶴澤・白雪(棘晶インフェルノ・f09233)は、その在り方が歪んでいることを指摘して。
 橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)も『犬』へと問う。
「言の葉とは捉え方で意味が変わります。あなたの主は本当にその意味で言の葉を発したのですか?」
 ――人々の願いの炎を一緒に守り通そう。
 犬の主であった者が発したという、この言葉に込められた真の思い。
 この犬は言われた通り、一緒に願いの炎を守るために影朧となってまで主を待ち続けながら、人々の願いを護らんとしているのだろうが。
 いずれ……影朧という存在となってしまった以上、大きな綻びが生じて。
 そしてきっと、犬の主も、そして犬自身も、望んではいない結末を迎えてしまうだろう。
『…………』
 刹那、紅の世界に揺らめく犬の影。
 主在りし頃の記憶を模倣する影が、如何なるモノをも拒絶し遮断するべく成されるけれど。
「恐ろしく防御硬そうなわんこだけど千織、いけそう?」
 再び防御状態に入った犬を見遣った後、ちらりとレッドスピネルを向け言った白雪に。
 小さく首を傾けながらも、ふわりと笑み返す千織。
「そうですねぇ。一か八かになりますがそれでも良ければ、いきますよ」
 そして返ってきた言の葉に、白雪はふっと彼女を映した瞳を細めて。
「一か八かの博打上等よ」
 ――手のかかる大人と悪餓鬼がいない時くらい好き勝手やりたいじゃない。
 そう、両の手に握った黒き銃を白雪が構えれば。
「ふふ、それはそれは。では、好き勝手しましょうか!」
 ――ふわりと浮かびて、消えゆく椿。悪しきも共に消えゆかん。
 刹那紡がれた高速詠唱が咲かせるのは、舞い降る紅葉とはまた違った、燃ゆる椿の焔。
 そんな千織の咲かせる紅き花が、約束と言う言の葉に縛られた犬の身を、溶かし燃やせるようにと。
 白雪が生み出すは、紅と蒼の火花。2つの光が、猛る紅炎と清冽な蒼焔の棘となり、守りを成す壁となる。
「あなたの主は人々を護る為に尽くした。けれど、相棒であるあなたは今、主が護ろうとした人々を脅かす存在となっているのですよ!」
 ぽとり、その花が燃え落ちて散るように鮮烈に。
 咲かせた焔を操り、犬の守りを砕く力宿し薙いで、紡ぐ千織。
 白雪も握る銃に込めた尖晶石のいろに、より深い紅き焔を重ねて。
「千織の言う通りね。人々の願いを守るって願いであれ誰かを不幸にしていいって意味じゃないわ」
 歪な忠義は、誰も望まぬ不幸を招くから。
「それを今すぐ解きなさい」
 金の光揺らぐ橙の瞳を向け、破魔と催眠術を含ませた言霊を発し命じる千織。
 そして向けた攻撃の手応えから、犬の守りの堅さを見極めて。
『……!』
 外部からの攻撃を遮断する影が揺らいだ、その一瞬を見逃さずに。
 灼熱の椿が咲き誇り、猛る紅炎と清冽な蒼焔の棘が影朧を穿たんと、同時に紅の戦場に燃え盛る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
嵐吾さん(f05366)と

俺も。出来ることなら、そうしたいって思いマス
やってみますか、出来る限りのこと

確かにすごい
『紅葉行灯』ちょっと読んでみたいですネ
そうすりゃあの人の願いの意味、分かんのかな

泣いているのか
――もう主がいないから?
それとも、護る為にいたお前が
人を傷つける存在になり果てたから?

あんたらの愛は知らねえ
でも此処で出会っちまった以上
死なすわけにはいかねーし
あいつにもこれ以上傷つけさせるわけにはいかないから

彼女への攻撃を嵐吾さんが食い止める隙
彼女がこれ以上此方へ来れぬよう
操る鍵刀を地面に刺し並べ

すげ――綺麗だ、と言っている場合じゃない
自分も鳥籠に紅を落とし、白き花を吹雪かせようか


終夜・嵐吾
綾くん(f01194)と

最初はまっすぐ、あのわんころは炎を守っておったんじゃろうな
綾くんは、どうしたい?
かなうなら、あのわんころは――本来の主のもとに正しくおくって、やりたいの

人の心を揺さぶるような物語を手掛けた櫻居先生とやらは、恐ろしいの
話と同じようになぞらせてしまえるというのはよほど何かを、思わせる力があるんじゃろ
しかしあのおなごの願いを叶えてしまってはいかんとみえる
もしわんころが彼女に手を出そうとするなら邪魔をしよう

炎を守るものを、炎でおくってもええんじゃろうが
それより花の方が良かろうか
そういえば綾くんとはまた会うてなかったか
眼帯外し、花となるわしの相棒を紹介しよ
虚、その姿を見せておくれ



 主亡き後も、彼の傍らにいつも在ったその犬は、願掛けの社に毎日の如く姿をみせていたという。
 共にその願いの灯火を守るべく、二度と帰らぬ主を待ち続けながら。
 そして今も犬は待っているのだ。影朧という存在になった、今も尚。
「最初はまっすぐ、あのわんころは炎を守っておったんじゃろうな」
 ピンと高く上がった尾をみれば、警戒しているのだろう。
 今はまだ守りに徹している犬であるが……自分たちへと向けられている気は、どうみても真っ直ぐなものではない。
 終夜・嵐吾(灰青・f05366)はゆらり尻尾を揺らめかせながら、浮世・綾華(千日紅・f01194)に問う。
 ――綾くんは、どうしたい? と。
 いつもの様に、人に害を及ぼすことになりかねない存在を躯の海へと還すことは、難くはないだろう。
 けれども、歪んでしまったとはいえ、死してもなお忠義を尽くさんとする『犬』に、嵐吾はそうはしたくないと思う。 
「かなうなら、あのわんころは――本来の主のもとに正しくおくって、やりたいの」
「俺も。出来ることなら、そうしたいって思いマス」
 その思いは、綾華も同じ。
 ――還すのは躯の海ではなく、本来の主のもとに。
「やってみますか、出来る限りのこと」
 影朧は不安定な存在。
 だからこそ、導けるかもしれないのだ……転生という、正しい輪廻に。
 そんな眼前の『犬』の動きから決して注意は逸らさないが、ふと嵐吾は、友が語った予知を思い返す。
 今回の事件に、直接ではないが……大きな影響を及ぼしているという、ある人物の存在。
「人の心を揺さぶるような物語を手掛けた櫻居先生とやらは、恐ろしいの。話と同じようになぞらせてしまえるというのはよほど何かを、思わせる力があるんじゃろ」
 ちらりと琥珀の瞳で見遣った澄子が陶酔し、影朧を夫だと思い込ませた一篇の小説。
 そしてそれを執筆した、櫻居・四狼という謎多き作家のことを。
「確かにすごい。『紅葉行灯』ちょっと読んでみたいですネ」
 ――そうすりゃあの人の願いの意味、分かんのかな。
 綾華は、舞い散る小さな炎の如き紅を、その瞳にも降らせながら紡ぐけれど。
「しかしあのおなごの願いを叶えてしまってはいかんとみえる」
 澄子が願いの炎に馳せた想いは、嵐吾の言う通り、叶ってしまってはいけないもの。
 澄子にとっても、そして、眼前に佇む犬にとっても。
 紅の世界に揺らめく犬を象った漆黒の影。
 ……泣いているのか。
 綾華には、それが泣いているようにみえて。
「――もう主がいないから? それとも、護る為にいたお前が、人を傷つける存在になり果てたから?」
 返答などないと知りつつも、犬に敢えて問う。その涙の理由を。
 そして、もう泣かないでいいように。
「あんたらの愛は知らねえ。でも此処で出会っちまった以上、死なすわけにはいかねーし」
 ……あいつにもこれ以上傷つけさせるわけにはいかないから、と。
 今度は澄子へと、言の葉を投げて。
「……!?」
 影朧を自分の夫の化身だと思い込んでいる彼女が、これ以上此方へ来れぬよう――その道を閉ざす鍵刀を地に差し並べる。
 彼女が歩むべく正しい未来への道を切り開くために。
『……!』
 そして身を守るべくあらゆるものを拒絶する影が、犬の過去らしきモノを象るけれども。
「炎を守るものを、炎でおくってもええんじゃろうが」
 ……それより花の方が良かろうか。
 葬送るのならば、炎よりも花の方が、きっと手向けには似合いだろうから。
 ――頽れよ。
 眼帯を外し喚んだのは、右目の洞にて眠る怠惰なもの。
「そういえば綾くんとはまた会うてなかったか」
 ……わしの虚、その姿を見せておくれ、と。
 嘗て慈しんだ季節の花々を舞い降らせながら、嵐吾は綾華に紹介する。
 香り纏う華封から解き放った虚を――花となる相棒を。
 ……すげ――綺麗だ。
 綾華は紅の世界に舞い踊るいろに、そう感嘆の声を漏らすけれど。
 そうも言っている場合じゃないと、己から滴る紅を鳥籠に落とせば。
 刹那、白き花の彩りが加わって。巻き起こる数多の花弁たちが、涙する漆黒の影を包み込む。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
犬は健気だ
そういう生き物だ
主との絆が、強ければ強い程

くろ丸…お前も僕が死んだら、あの子みたいになるのかな

偉いね、ずっと約束守って
…もういいよ
役目には、終わりが来ていいんだ
君は命の限り頑張った…ご主人に、褒めて貰いに行っておいで
(くろ丸と近付き、危険がなければ撫でる

命の危険が無い限り攻撃はしない
穏やかに話し掛け、転生を願う


…澄子さん
その子は、貴女のご主人じゃない

添い遂げるって…方法はそれだけかな
生きても死んでも、お互いをずっと想うなら…添い遂げる事にならないかな
覚悟なら、その方がよっぽどだと思うけど

これからどうするかは、あなたが決める事だけど
誰かが作った死に方よりも、あなたの生き方を考えて欲しい



 それは、約束と言う名の鎖なのかもしれないけれど。
 影朧となってまで、紅に染まる社を護るべくこの場に在り続けているという『犬』。
 青和・イチ(藍色夜灯・f05526)は、よく知っている。
(「犬は健気だ。そういう生き物だ。主との絆が、強ければ強い程」)
 だって、自分も――同じ様にずっと、犬と共に在るのだから。
「くろ丸……お前も僕が死んだら、あの子みたいになるのかな」
 そう足元に視線を落とせば、目が合った瞬間ぱたぱた尻尾を振る、コワモテだが懐こい相棒犬の姿が。
 そして幼い頃からくろ丸と一緒だから、イチは知っているのだ。
「偉いね、ずっと約束守って」
 よしよしと褒めてあげれば、犬はすごく嬉しがるということを。
 いや、一番犬が喜ぶこと、それは。
「……もういいよ。役目には、終わりが来ていいんだ。君は命の限り頑張った……ご主人に、褒めて貰いに行っておいで」
 誰でもない、強い絆で結ばれた主に、褒めてもらうことだから。
 イチはくろ丸と共に、あらゆるものを拒絶する影と成り、身を守る『犬』へと近づいて。
 攻撃の意思がないことを確認し、主のかわりに、よしよしと撫でてあげる。
 相手は、今後人に危害を加えるかもしれない影朧だけれど。
 でも、命の危険が無い限り攻撃はしない、穏やかに話し掛け続ける……そう、イチは心に決めている。
 躯の海へと還すのではなく――転生の道へと歩んでもらいたいと、願うから。
 それからイチは、今度は視線を澄子へと向けて。
 彼女にも、声を掛ける。
「……澄子さん。その子は、貴女のご主人じゃない」
 彼女が目を逸らし続けている事実を、はっきりと言葉にして。
「でも……私は、彼と添い遂げたいの」
 俯きながらも、ぽつりと言った彼女に、イチは首を傾けつつも返す。
「添い遂げるって……方法はそれだけかな。生きても死んでも、お互いをずっと想うなら……添い遂げる事にならないかな」
 ――覚悟なら、その方がよっぽどだと思うけど、って。
 けれど澄子の人生は、彼女自身のものだから。
「これからどうするかは、あなたが決める事だけど」
 イチは彼女の意思を尊重しつつも、こう願いを込めて紡ぐ。
 ――誰かが作った死に方よりも、あなたの生き方を考えて欲しい、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【狼兎】

敢えて戦闘行動はせず【空中戦】で攻撃回避

ねぇ澄子さん…本当にあの犬を大切な人と決めつけていいの?

貴方が本心から願うなら僕は引き止めないよ
その覚悟を尊重する
でも…後悔してからじゃ遅いから
よく考えて
彼の気持ちと…貴方の真意を
貴方が生き延びた事は本当に偶然だったのか

そして今度は犬に

君の主はとても素敵な人だったんだね
僕も共感するよ
皆の願いの炎を一緒に守ろう
但し…これからはあるべき存在として

怖がらせないよう鼻の前に手を翳し
首さえ無事なら噛まれるのも気にせず優しく撫で

ちゃんと正しい形で約束を守れるように…やりなおそうね
【優しい祈り】を乗せた【破魔の指定UC】で
犬の、そして澄子さんの心の闇を祓いたい


紫崎・宗田
【狼兎】

俺はチビが澄子と会話してる間
犬の引き止め・誘導役として【時間稼ぎ】の戦闘
ダメージがどこまで通るかは気にしてねぇ
2人にさえ近づかせなきゃいい

俺が相手だ、かかって来な

【鎧も砕く】程の【怪力】で振りまわす★破殲の物理攻撃で
チビと澄子を【庇い】ながら対処
犬が物理攻撃仕掛けて来るなら
【武器受け】から【なぎ払い】で敵を【吹き飛ばし】
その反動を利用し【ジャンプ+早業】で追撃する【2回攻撃のカウンター】

チビが澄子との会話を終えたのを見計らい【指定UC】で攻撃
こいつは敵対行動に当たるから防がれるんだろう
だがそれでいい
俺の目的は、足止めだからな

あとはチビの自由だ
最低限回復が可能で命の保証がある限りはな



 燃える様な紅葉が降り積もる、紅の社。
 桜の世界には珍しい色が支配する景色の中、立ち塞がるようにその場に在る『犬』。
 そして、その影の如き存在――影朧へとただただ視線を向ける澄子。
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は敢えて戦闘行動はせずに、攻撃されれば空へと回避できるようにだけしておきながら。
 まずは、澄子へと琥珀色の視線を向ける。彼女と、話がしたいから。
 そして紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)は影朧を見遣って。
「俺が相手だ、かかって来な」
 向けられるあらゆる攻撃から身を守る拒絶状態へと化した犬へと、鎧をも砕く程の怪力をもって漆黒の巨大斧を振り回す。
 赤き狼の紋様が入ったその刃に、舞い落ちる紅葉の如き炎を纏わせながら。
 巨大斧振るう宗田の狙いは、影朧を打ち倒すことではない。
 澪が澄子へと会話を試みている間の、犬の引き留め役……時間稼ぎが目的。
(「ダメージがどこまで通るかは気にしてねぇ」)
 ……2人にさえ近づかせなきゃいい、と。
 澪と澄子を庇えるよう位置取りながらも、拒絶状態にあるその上から破殲の一撃を振り下ろす。
 そんな犬を宗田が相手取っている間に。
「ねぇ澄子さん……本当にあの犬を大切な人と決めつけていいの?」
 彼女へと、そう問いを投げ、続ける。
「貴方が本心から願うなら僕は引き止めないよ、その覚悟を尊重する。でも……後悔してからじゃ遅いから、よく考えて」
「私は、ただ、あの人と……」
 現実と向かい合うのは辛い、と言わんばかりに、首をふるふる横に振る澄子。
 けれども、そんな彼女へと、澪は想いを伝え続ける。
「彼の気持ちと……貴方の真意を。貴方が生き延びた事は本当に偶然だったのか」
 死に損なったのではない、生き延びたのだ。
 それは澄子にとって辛いことかもしれないが。偶然ではなくこれが現実であり、彼女の運命であるのではないかと。
 そう澪は思い、それを言の葉として彼女へと伝える。
 そして澪と澄子の会話が途切れた、その一瞬を狙って。
『……!』
 犬へと目掛け宗田が繰り出したのは、破殲による単純で重い一撃。
 けれどその衝撃も、敵対行動に対し拒絶状態にある犬には通らないであろうことは、宗田にも分かっているけれど。
(「だがそれでいい。俺の目的は、足止めだからな」)
 隣に在る澪の視線が犬へと今度は向けられたのを見ながら、あくまで影朧の引き留め役に徹する。
(「あとはチビの自由だ。最低限回復が可能で命の保証がある限りはな」)
 澪がやりたいように、自由にできるようにと。
 そして犬にも、言の葉をかける澪。
「君の主はとても素敵な人だったんだね。僕も共感するよ」
 ――皆の願いの炎を一緒に守ろう、って。
 けれども、影朧となってしまったその身のままでは、きっと望まぬ未来になってしまうだろうから。
「但し……これからはあるべき存在として」
 紅の世界にとどまり縛られ続けた、そんな長い長い時間に、終止符をと。
 いまだ物言わず佇み、拒絶状態ではあるけれど。
 怖がらせないよう鼻の前に手を翳し、優しく撫でてあげながらも、澪は続ける。
 犬がもう、道を間違えないように。主の元へと、還れるように。
 ――ちゃんと正しい形で約束を守れるように……やりなおそうね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
片や待つ子、片や追う人
――成程、貴方達は似ているね
唯、言わせて頂くのなら
貴方は永く、待ち過ぎた
貴女は早く、追い過ぎた

敵対するならば、見切り、避けて
忠犬に捧ぐは刃で無くて、
賞賛や慰労では無くてはと想う
何せ貴方は、僕からは
泣いたようにも見えるから

僕は死を別離と見ている
けれど、此処が廻る世界なら
『再会』を成し得る世界ならば
待てども待てども此処へ来ない
貴方の主は、きっと、きっと
貴方を彼方で待っているに違いない

貴方は願いを守ろうとしている
けれど、貴方自身の願いはどうなる?
貴方の願いは『待つ』ことじゃない
『一緒に』とする事なのだろう
その願いを、叶えるべきだ
もう待たなくて良いんだ
 
逢いに行って、良いんだよ



 燃える様に舞い降る小さな炎の如き紅葉に彩られた『紅の社』。
 その光景はまるで、多くの人を魅了する小説の中の一幕みたいで。
 けれど、眼前に在る物語を紡ぐ人物は、読んだそれとは随分と違う。
 ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は、願いの炎を護り続ける『犬』と、自分だけ死に損なった未亡人を交互に見遣りながらも思う。
「片や待つ子、片や追う人――成程、貴方達は似ているね」
 約束を守り続け主を待つ犬と、先立たれた大切な人を追わんとする澄子。
 ライラックの言う通り、ふたりは似ているかもしれないけれど。
「唯、言わせて頂くのなら。貴方は永く、待ち過ぎた。貴女は早く、追い過ぎた」
 どれだけこの紅のいろを、この『犬』は見てきたのだろうか。
 影朧になってまで、長い間ずっと、忠義を貫いてきた犬と。
 若く、まだこれからやり直そうと思えばいくらでも立て直せそうなのに、殺されたいと願う未亡人。
『…………』
 ライラックは、物言わずただ護るべく、紅のいろから動かぬ犬を見て思う。
 ――忠犬に捧ぐは刃で無くて、賞賛や慰労では無くてはと。
(「何せ貴方は、僕からは、泣いたようにも見えるから」)
 その涙の意味が何なのかは、想像することしかできないけれど。
 でも、この『犬』は涙を流しているのだから。
 ライラックは、桜の世界に在るにもかかわらず、紅のいろに燃えるこの場所をぐるりと見遣って。
「僕は死を別離と見ている。けれど、此処が廻る世界なら、『再会』を成し得る世界ならば」
 ――待てども待てども此処へ来ない貴方の主は、きっと、きっと、貴方を彼方で待っているに違いない、と。
 そう、此処にいては会うことも叶わぬと、影朧に教えてあげる。現実というものを。
 そして彼が護り続けているという、炎に掛けられた数多の願い。
 この犬はこれまで、たくさんの人の願いを護ってきたのだろうけれども。
「貴方は願いを守ろうとしている。けれど、貴方自身の願いはどうなる?」
 肝心の、犬自身の願い。
 それが何なのかは、ライラックには分かっているから。
「貴方の願いは『待つ』ことじゃない。『一緒に』とする事なのだろう。その願いを、叶えるべきだ。もう待たなくて良いんだ」
 そう、主と一緒に、人々の願いを守ること。
 だから、今までもう十分護って来たから。
 ライラックは紫の瞳を細め、そして犬へと向けて紡ぐ。
 ――逢いに行って、良いんだよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
澄子が影朧を庇いに出たりせぬよう留意しつつ、声を。

添い遂げたいのでしょう?そうすれば良い。
共に死に損なった時点で、もう『連れ添う』事は叶わず、
生き延びてしまったなら、もう現世しか無いのだから。
忘れず、愛し、想い続けて、
死した先に幸いを祈り弔って、
心は最期まで、伴侶と共に。
…死ぬよりシンドい道かもしれませんが。

少なくとも、あれは影朧。
貴女の願いを守っても、叶える事は出来ません。

絡げ、引き、斬る…操る鋼糸へ、
UCにて攻撃力強化に用いる魔力は炎。
おくるなら、それが良い気がして。
社に掛ける炎とは違いますが…
悲劇と理不尽を止めたい、これも願いの形。
拒絶を緩められやしないかと。

――何とも、らしくないですが



 紅葉降り積もる『紅の社』。
 この願掛けの社へと足繁く通い、澄子が掛け続けた願い。
 それを、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は否定しない。
「添い遂げたいのでしょう? そうすれば良い」
「……でも、あの人は……」
 くるり振り返ったクロトの背後で、澄子はそれだけ紡ぐのがやっとで。
 ただただ、俯いてばかり。
 そんな彼女の表情に宿るいろは、迷いや不安や焦り。
 けれど、添い遂げればいいと……そう言ったクロトだけれど。
 共に死に損なった時点で、もう『連れ添う』という事は。
 生き延びてしまったのならば――もう、現世でしか叶わないことなのだから。
「忘れず、愛し、想い続けて、死した先に幸いを祈り弔って、心は最期まで、伴侶と共に」
 ……死ぬよりシンドい道かもしれませんが、と。
 クロトは彼女へと教えてあげる。
 遂げたいというその願いを叶える方法を。
 そして、このまま此処に通い詰めたところで、願いを叶えることなどできないから。
「少なくとも、あれは影朧。貴女の願いを守っても、叶える事は出来ません」
 クロトが紅燃ゆる世界に張り巡らせ、絡げ、引き、斬るのは――鋼の糸。
 そして展開しその糸を強化させるべく戦場に燃え上がらせるのは、炎の魔力。
「おくるなら、それが良い気がして。社に掛ける炎とは違いますが……」
 また違ったいろの炎を戦場へと灯しながら、クロトは燃やし放つ糸に、こんな思いを乗せる。
(「悲劇と理不尽を止めたい、これも願いの形。拒絶を緩められやしないかと」)
 それからふと、その柔和な表情に、小さく苦笑を浮かべるのだった。
 ――何とも、らしくないですが、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東雲・咲夜
【比翼月】
🌸双子の弟と合わせる感じでおまかせ

はんなり京言葉
普段は嫋やかな物腰にどことなく天真爛漫さが除く少女
八百万の神々の花嫁とされ、幽世と現世の狭間の管理を担う巫女
東妖の吸血鬼の血を継ぐ為、魔力・霊力が高い

基本は中衛
組む相手により攻撃と支援を使い分けるオールラウンダー型
歌唱と属性攻撃が得意
使用する属性に限りはありませんが
花や水、空の神霊の助力を得やすい体質
羽衣と巫女装束を媒体に飛翔も可能

争いを好まず物事は可能な限り穏便に解決しようと模索します
動物も植物も等しく命は大切

双子の弟に異様なまでの依存心を抱いています
己の全てを躊躇なく曝け出せる唯一の相手であり
同時に血の繋がりを超えた愛すべきひと


東雲・円月
【比翼月】

咲夜、もう大丈夫か?
見てごらん、あれが……いや、なんでもない

想い人と死ねなかった、か
解る、解りますよ
俺だって咲夜が死んだら後を追う
自分が死ぬときは咲夜を……なんて、今言っても仕方ありませんか
いいと思いますよ。自分の命なんですしね
大事な片割れと共に生きて共に死ぬ、それは俺の願いでもありますし

……まァ、それはさておいて
この影朧だけは何とかしておきましょうか
何故かと問われたら、猟兵ゆえにと答えましょう
お前もそろそろ主の元に行くべきです

咲夜、気を強く持って。共感しちゃうのは解るけど、しすぎないで
泣くのは後にしよう、あとでたくさん泣いたらいい
俺は……死ぬときは絶対に一緒だから、な



 人々の願いが込められた、願いの炎。
 そしてそれを護るべく、長い間この場に在り続けた『犬』。
 けれど、忠義を貫かんとするその存在は――今や影朧。
 そんな『犬』へと視線を向けているのは、大切な人と逝き損なった未亡人。
 大切な人の化身だと、縋る様にその影に思いを馳せている。
「咲夜、もう大丈夫か?」
 東雲・円月(桜花銀月・f00841)は紅葉燃ゆる中、藍色の瞳にその姿を映して。
 そう、すぐ隣に在る東雲・咲夜(詠沫の桜巫女・f00865)へと声を掛ける。
「さっきは少し疲れてしもたみたいやけど、うちは大丈夫」
 気遣ってくれるそんな優しさに、咲夜は甘く香る桜銀糸を揺らしながら藍眸の瞳を細めて頷いて。
 見てごらん、あれが……円月は彼女へと紡がんとするけれど。
 いや、なんでもない、と気を取り直してから。
 今度は澄子へと、言葉を紡ぐ。
「想い人と死ねなかった、か。解る、解りますよ。俺だって咲夜が死んだら後を追う」
 自分が死ぬときは咲夜を……なんて、そう思うけれど。
「今言っても仕方ありませんか。いいと思いますよ。自分の命なんですしね」
 円月は、夫の化身だと思い込んでいる存在に、殺してくれと、そう願いの炎へと願う澄子へと共感の意を示す。
 そう願う気持ちは、痛いほどよく分かるから。
 ――大事な片割れと共に生きて共に死ぬ、それは俺の願いでもありますし、と。
 それは、咲夜だって同じ。
「嗚呼、なんて……苦しい。どんなにか辛かったか……」
 愛するものと離ればなれになってしまうなんて、考えただけでも心が張り裂けそうで。
 死さえうちらを別てへん……そう常に想う咲夜にとっても、愛しい片翼を失っては生きていけないから。
「……まァ、それはさておいて。この影朧だけは何とかしておきましょうか」
 けれど、眼前に佇む『犬』は影朧。
 澄子の大切な人の化身ではなく、主からの言いつけをただひたすら守るべくそこに在る存在なのだから。
 そして今はただ願いの炎を守るだけの存在であるかもしれないけれど。
 いずれ、そうではなくなる時がやってくるだろう。
 だから、忠義の『犬』をこのままにしてはおけない。
 何故かと問われたら……円月は、こう答えるだろう。猟兵ゆえに、と。
 紅の世界にこのまま囚われ続けても。
 約束を交わした主にも、この犬自身にとっても、望まぬ結果になってしまうだろうし。
 それにもう十分、数多灯る人々の願いを護り続けてきたのだから。
「お前もそろそろ主の元に行くべきです」
「あんさんも、もう楽になってええんよ。苦しかったね……頑張ったね」
 円月の声に頷き、そして咲夜は忠義の犬へと紡ぐ。
 ――せやから……ね、往きましょう、と。
 それからふと思わず、張り裂けそうな想いで『犬』を見つめる澄子と自分を重ねてしまう。
「愛するひとを喪ってしもたら……うちかて耐えられへん」
 どんなにか苦痛やろか……そう、ぽつりと零れ落ちた声に。
 円月はそっと大きな掌で、涙が込み上げてきそうになる咲夜の頭を、くしゃりと撫でてあげてから。
「咲夜、気を強く持って。共感しちゃうのは解るけど、しすぎないで。泣くのは後にしよう、あとでたくさん泣いたらいい」
 そして安心させるように笑んで、互いの片耳で揺れる比翼月に、誓う様に紡ぐ。
 ――俺は……死ぬときは絶対に一緒だから、な……って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティーシャ・アノーヴン
風花(f13801)さんと共に。

心中。夫婦共に命を捨てること。
それを否定は致しません。
愛する者と共に逝くのは確かに幸せな終わり方でしょう。
ですが、それは叶わなかった。
貴方は生き延びた。それが自然の選択です。
この後のことは私は何も申しませんけれども。

私はその犬のような影朧を解き放とうと思います。
願いの炎は、きっともう消えることはありません。
これだけの人々が願うのだから。
ですから、貴方もご主人様の元へ。
・・・そして、新しい命の元へお行きなさいな。

私の記憶・・・好奇心旺盛で元気な少女。
貴方もまた、この数多くの世界のどこかで、
誰かとして生まれているのですか?
生前、外の世界を見たいと仰ってましたものね。


七霞・風花
ティーシャさん(f02332)と

私は独り身ですので
正直なところを申せば、貴方の気持ちを理解する事は出来ません
共に命を捨てる事も
後を追いたいと思う事も
理解出来ません……が、否定する事も出来ません

ただ、これは仕事です
その犬を……影朧を倒さなくてはいけないのです
解放してあげる、なんて言えません
貴方は貴方なりに、彼女の意を汲んでいる事でしょうから
――恨んでいただいてもけっこう
その願いの炎は、ここで消させていただきます

あまり後味のいいものではありませんでしたね
……ティーシャさんも、何やら思いつめているようで
そこまで思いを抱けるナニカというのは、少しばかり
羨ましいなぁ、なんて割と空っぽな自分に思うのです



 人々の願いを宿し、灯る炎の様に。
 紅の世界の中、死にたいと願う彼女の命の灯火も消えてなどいない。
 それが、現実。いくら彼女……澄子が目を背け、逃避したいと思っていても。
 ティーシャ・アノーヴン(シルバーティアラ・f02332)はそんな彼女へと、言葉を投げる。
「心中。夫婦共に命を捨てること。それを否定は致しません。愛する者と共に逝くのは確かに幸せな終わり方でしょう」
 ――ですが、それは叶わなかった。
 それが何を意味するのか。ティーシャはそれを彼女へと告げる。
「貴方は生き延びた。それが自然の選択です」
 きっと偶然ではない、自然の選択。運命は、夫とともに澄子を逝かせなかった。
 けれど、それからどうするのか。
「この後のことは私は何も申しませんけれども」
 それを、ティーシャは澄子に押し付けたりはしない。生きるも死ぬも、彼女の自由であるから。
 七霞・風花(小さきモノ・f13801)も、それは同じ。
 いや、分からない……と言った方が正しいのかもしれない。
「私は独り身ですので。正直なところを申せば、貴方の気持ちを理解する事は出来ません」
 ……共に命を捨てる事も。
 そして――後を追いたいと思う事も。
 けれども、だからこそ。
「理解出来ません……が、否定する事も出来ません」
 澄子が炎に馳せ続けたその願いを、風花は理解も否定も出来ない。
 だからふたりが今、成すべきこと――それは。
「ただ、これは仕事です。その犬を……影朧を倒さなくてはいけないのです」
「私はその犬のような影朧を解き放とうと思います」
 猟兵として、此処に在るべきではない影朧を、在るべき場所へと還すこと。
 ふたりは今度は、紅葉舞う景色の中、ただ立ち塞がり護り続ける犬へと視線を移して。
 それぞれの思いを、言の葉に紡ぐ。
「願いの炎は、きっともう消えることはありません。これだけの人々が願うのだから。ですから、貴方もご主人様の元へ」
 ……そして、新しい命の元へお行きなさいな、と。
 ティーシャは、影朧となってまでこの場を守り続けんとする犬へと、向けた紫の瞳をそっと細めて。
「解放してあげる、なんて言えません。貴方は貴方なりに、彼女の意を汲んでいる事でしょうから」
 何も言わぬこの犬もきっと、ずっと見て聞いてきたのだろうから。
 澄子が願う姿を、その願いの声を。
 けれど、それを叶えさせることは決してできないから。
 ――恨んでいただいてもけっこう、と。
 はっきりと風花は影朧へと告げる。
「その願いの炎は、ここで消させていただきます」
 影朧……いや、その犬が還るべき場所。新しい命へと歩む道。
 刹那、ティーシャの脳裏にふと浮かんだその姿は――好奇心旺盛で元気な少女。
(「貴方もまた、この数多くの世界のどこかで、誰かとして生まれているのですか?」)
 巡る命の輪廻の中、浮かぶ少女も誰かとなっているかもしれない。
 だって、生前彼女は言っていたから……外の世界を見たい、と。
(「あまり後味のいいものにはなりそうにありませんね」)
 風花は、あらゆるものを拒絶し守り固める眼前の影朧を見遣りながら、そう思いつつも。
 隣で『犬』を見つめるティーシャの姿を、そっと青の瞳に映す。
(「……ティーシャさんも、何やら思いつめているようで」)
 割と空っぽだと思っている自分にとって、そのどこか憂いを帯びる彼女の横顔を見ていると。
 ――そこまで思いを抱けるナニカというのは、少しばかり羨ましいなぁ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リシェア・リン
栴くん(f00276)、オクちゃん(f10977)と

…酷い旦那様だわ
本当に愛する人の事を想うなら、生きていて欲しいって
自分が居なくなっても、幸せになって欲しいって思うのに

(影朧に)貴方、私達の言葉は分かる?
澄子さんは貴方のご主人様じゃないのよ

今までずっと待ち続けて、彼女が別人というのは酷だと思うけど
さあ、紅葉ではなく桜の癒しを受けに行きましょう
…行けないのなら、私達が送ってあげなくてはね

栴くんありがとう、厄介な技も封じてしまえばこっちのもの
オクちゃん、合わせましょ!
…痛くはしないよう頑張るけど…ちょっと熱かったらごめんね

さあ、行ってらっしゃい
今度こそ大切なご主人様と、ずっと一緒に居られるように


生浦・栴
うさすずの(f10977)双髻の(f00073)と

守り人の影朧に問おう
主に、倖せに程遠い願いでも叶えてやれと教えられたのか?
主はそれを喜ぶ人物だったのか?

守りばかり固めるは不退転の決意であろうが
その為に犠牲にしている物が多すぎよう
最早それも気に掛からぬか

オーブに溜めた呪詛を練り上げUCで影でも縛りに掛かる
防御が落ちれは二人の攻撃も通り易かろう
雷属性の攻撃やオーラ防御で適宜サポートしよう

然ういえば其処の女
黄泉路の道連れを望む者が抱えているのは唯の執着だ
思うような美しいものではない

なに、道連れではなく連れ戻しを企てた者が居ってな
(人前で外さぬ手袋へ一瞬目を
諦めて貰うに此方も代償を払ったが後悔は無い


日隠・オク
リシェアさん(f00073)、栴さん(f00276)と

私はシーブズ・ギャンビットで斬り込みます
飛ばない獲物なら、仕留めるのに躊躇しない

栴さんの攻撃で防御を失ったところに畳み掛けます
はい、リシェアさん!
攻撃を合わせるように敵に向かう

影朧へ
もう十分です
ここの火はあなたが守らなくても大丈夫、いままで消えていなかったでしょう
あなたは主の言いつけを、充分守りました
もう大丈夫なんです

澄子さん
目を覚ましてください
勘違い、してます
この影朧はあなたの大切な人ではない、です



 桜の世界に在りながら、紅一色に染まっている願いの社。
 そして今この場に在るのは、社に願いを馳せ続けた未亡人と、この社を守り続けた『犬』。
 リシェア・リン(薫衣草・f00073)は紫水晶に、まず『犬』を見つめる澄子へと向け思う。
(「……酷い旦那様だわ。本当に愛する人の事を想うなら、生きていて欲しいって。自分が居なくなっても、幸せになって欲しいって思うのに」)
 一緒に死んでくれ、そう死を共に享受しようとしたふたりであったのに。
 共に死ぬよりも、澄子にとっては残酷すぎる現実であっただろう。
 リシェアは澄子の心を思い、ふるりと一番星瞬くような宵闇色の髪を揺らして首を横に振るけれど。
 今度は、主の約束を守り続ける『犬』へと声を掛ける。
「貴方、私達の言葉は分かる? 澄子さんは貴方のご主人様じゃないのよ。今までずっと待ち続けて、彼女が別人というのは酷だと思うけど……さあ、紅葉ではなく桜の癒しを受けに行きましょう」
 紅の世界に縛られた影朧。影朧を、このままにしておくわけにはないかない。
 けれど、この世界に朧に咲く桜が、きっと歩むべき来世へと導いてくれるから。
 だから――そのために。
「……行けないのなら、私達が送ってあげなくてはね」
 それが、リシェアの――この場に赴いた猟兵たちの、成すべき事だから。
『…………』
 声を投げても、いまだ物言わぬ影朧は何を思うのか。
「守り人の影朧に問おう」
 生浦・栴(calling・f00276)もそう、紅の景色に揺れる不安定な影に言の葉を投げる。
「主に、倖せに程遠い願いでも叶えてやれと教えられたのか? 主はそれを喜ぶ人物だったのか?」
 願いの炎を、確かに今までこの犬は守って来たのかもしれない。主の言いつけの通りに、忠義をもって。
 けれども……影朧となった今、護るべきものを違えてはいないか。
「守りばかり固めるは不退転の決意であろうが、その為に犠牲にしている物が多すぎよう」
 ……最早それも気に掛からぬか、と。
 一見、主との約束を守り続ける行為に見えるけれど、それは沢山の犠牲を生む歪んだものではないか。
 栴はそう、動かぬ『影』を見遣り問いながらも。
 その縛られた魂を解放するべく、紅い縛魔の呪で練った闇い水のオーブへと魔力を注ぐ。
 刹那、耳朶を打つのは、怨嗟とも水音ともつかぬ音。同時に、蔓状の荊棘と黒羽の吹雪、巻き上げる歯車が紅の戦場へと解き放たれれば。
 ただ何モノをも拒絶する影と成った影朧を縛らんと、唸りを上げる。
「栴くんありがとう、厄介な技も封じてしまえばこっちのもの。オクちゃん、合わせましょ!」
「はい、リシェアさん!」
 影朧はひたすら守りに徹し、攻撃してくる気配はみせないが。
 二人を援護するように『Curse's bondage』を展開し、雷撃や守りの気を纏う栴に後押しされて。
 リシェアとオクは視線を合わせ頷くと同時に、影朧へと、紅の世界に燃える狐火と握るナイフの刃を放つ。
『……!』
「……痛くはしないよう頑張るけど……ちょっと熱かったらごめんね」
(「飛ばない獲物なら、仕留めるのに躊躇しない」)
 猟兵として、影朧はこのままにしてはおけない。
 今はまだ、護りに徹している『犬』だけれど……影朧となってしまった今、きっといずれ、犬自身も望まぬような結末を迎えてしまうだろうから。
 だから、リシェアもオクも栴も、手を抜くことなどしない。
 3人で連携を取り合い、練り上げた魔力で縛り、鋭く素早き斬り込み、成した狐火たちで燃やさんとする。
 そして影朧に斬り込みながらも。
 オクがその緑色の瞳にふと映すのは――澄子の姿。
 その表情は不安げないろを宿し、攻撃を受ける『犬』へと真っ直ぐに向けられている。
 そんな彼女に、オクは声を掛ける。
「澄子さん、目を覚ましてください。勘違い、してます」
 現実から目を逸らさずに、受け止めて欲しいから。
 ――この影朧はあなたの大切な人ではない、です、と。
「然ういえば其処の女。黄泉路の道連れを望む者が抱えているのは唯の執着だ」
 栴もオクに続き、澄子へと紡ぐ。
 ――思うような美しいものではない、と。
 それからふと、人前では外さぬ手袋へと一瞬、紫の瞳を落としてから。
「なに、道連れではなく連れ戻しを企てた者が居ってな。諦めて貰うに此方も代償を払ったが後悔は無い」
 そう、眼前の未亡人と同じように、先に逝った者へと思い馳せた者のことを思い返す。
「……私は……」
 俯き、ぽつりと声を落とす澄子。その響きに宿るのは、迷いや戸惑い。
 彼女も、わかっているのかもしれない。目の前の犬は、自分の大切な人の化身ではないのだと。
 澄子も願い灯した、社に捧げられた炎。
 数多揺れる灯火に込められているものは、その炎の数だけある人々の願い。
 その炎は確かにこれまで、この犬が護ってきたものだけれど。
「もう十分です。ここの火はあなたが守らなくても大丈夫、いままで消えていなかったでしょう」
 ナイフを握り直しながらも、オクは犬へと紡ぐ。
「あなたは主の言いつけを、充分守りました」
 ――もう大丈夫なんです、って。
 だから、安心して還る場所へと、主の元へと旅立っても良いのだと。
 リシェアも紅葉燃ゆる景色の中、生み出した狐火で影朧を在るべき道へと導く。
「さあ、行ってらっしゃい」
 ――今度こそ大切なご主人様と、ずっと一緒に居られるように、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
やはり澄子殿の願いは愛する夫と添い遂げること。
化身と思い込んだ犬に殺されることだったんですね。
そして貴方は私達に敵意を向けるということは、澄子殿の願いを守るつもりですか?

貴方の主殿は人々の願いの炎を守るために最凶の災厄を打ち払った。
それは懸命に生きる人々の命を守ったということ。
ずっと傍にいた貴方ならわかるはず。
願いの炎の先にある命の炎を主殿は守っていらっしゃったんです。
全ての願いを守るのではなく、時には教え導いていたはずですよ。
UC「青蓮蛍雪」使用。
主殿と離れすぎて一番大切な主殿の願いを忘れてしまったようです。
もう一度思い出すために、主殿とまた願いの炎を守るために今は転生のために眠りましょう。



 何度も何度も、小説『紅葉行灯』の主人公のように。
 願いの炎を灯しに、『紅の社』へと通っているという澄子。
 聞いていた予知や、此処へと赴く途中に小説を読んでみた吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)には、彼女が何を願っていたのか、粗方予想はついていた。
「やはり澄子殿の願いは愛する夫と添い遂げること。化身と思い込んだ犬に殺されることだったんですね」
 小説の主人公が、願い続け果たせたこと。
 それは、心中では果たせなかった、伴侶の化身から与えられた死。
 澄子も同じ様に願っていたのだ。
 後を追う意気地もないから……でも、一緒に在りたいから。
 愛する人の化身に、自分も殺されたいと。
 狐珀は、攻撃の意思はないようだが、敵意のような気を漲らせる『犬』へと問う。
「そして貴方は私達に敵意を向けるということは、澄子殿の願いを守るつもりですか?」
 願いの炎を護るべく、有り続けているという『犬』。
 けれど、今影朧が護らんとしている願いは、澄子に死をもたらすもの。
 たとえそれを彼女が望んでいたとしても……それを叶えさせるわけにはいかないし。
 彼の主が望んだことでも、この犬自身も、望まぬことだろう。
「貴方の主殿は人々の願いの炎を守るために最凶の災厄を打ち払った。それは懸命に生きる人々の命を守ったということ。ずっと傍にいた貴方ならわかるはず」
 ――願いの炎の先にある命の炎を主殿は守っていらっしゃったんです。
 狐珀は、彼の隣に在った頃のことを思い出して欲しいから。
「全ての願いを守るのではなく、時には教え導いていたはずですよ」
 ――言の葉のもとに魂等出で候。
 紅に染まった世界に狐珀が灯すのは、冷気を含む青い狐火。
「主殿と離れすぎて一番大切な主殿の願いを忘れてしまったようです」
 ただ佇み、あらゆるものを拒絶する態勢を取る影朧を焦がすべく。
 生み出した青い狐火を、狐珀は紅葉と共に舞い踊らせる。
 ――もう一度思い出すために、主殿とまた願いの炎を守るために今は転生のために眠りましょう、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水標・悠里
澄子さんが後を追うのなら、それは自由になさってください
私には止める理由はありませんので邪魔はしません

二人とも、戻ってこない人を待ち続けていただけ
この世界では強すぎる未練が形になってしまうから
色んな思いが残りすぎてしまうのですね

所詮は夢、願望が現われたというだけ
炎と相対するのならば大水が宜しいでしょうか
楽も謡もない中で申し訳ありません
澄子さんはできる限り巻き込まないように注意します
この波に乗り、あるべき場所へと帰りなさい

よく人の一生は物語に例えられますから
忘れられないのなら、一度書いてみるのも良いかもしれませんね
物語の中で生き、多くの人の心に影となって残る
そんな死後も悪くないですね



 桜色に満ちている世界に在る、今だけの特別ないろ。
 そんな紅の彩り降り積もる願掛けの社に数多燃ゆるのは、人々の願いが込められた炎。
 澄子も同じ様に、願いを込めて炎を捧げていた。
 愛する夫の化身に、死に損ないの自分も殺してもらって。今度こそ、添い遂げたいと。
 けれど、水標・悠里(魂喰らいの鬼・f18274)は澄子の願いに関しては、口を出す気は全くない。
「澄子さんが後を追うのなら、それは自由になさってください。私には止める理由はありませんので邪魔はしません」
 死にそびれ、生き延びてしまった彼女の人生。
 澄子がどんな選択をしようとも構わないし、またそれにとやかく言う権利も自分にはないのだから。
 でも、影朧となってまで願いの炎を護る『犬』と。
 その『犬』を自分の夫と思い込んで、殺して欲しいと願う未亡人。
 その両方へと、ふと悠里は青い瞳を交互に向けて思う。
(「二人とも、戻ってこない人を待ち続けていただけ。この世界では強すぎる未練が形になってしまうから。色んな思いが残りすぎてしまうのですね」)
 ――所詮は夢、願望が現われたというだけ、って。
 そして眼前の影朧が、炎を護るべくあるのならば。
「炎と相対するのならば大水が宜しいでしょうか。楽も謡もない中で申し訳ありません」
 ――我が舞にて、神威を顕現させん。
 刹那、その姿は、死霊を閉じ込めた黒い蝶を従える鬼と変化して。
 ひらり黒蝶と共に呪扇を舞い躍らせ、荒波を喚ぶ。
 ――この波に乗り、あるべき場所へと帰りなさい。
 此処にこれ以上在ってはならぬモノへと、そう告げるように、大水を荒ぶらせながら。
 それから、黒蝶と紅葉と共に、秋のいろに染まる景色の中、舞いながらも。
 悠里はこんなことを、ふと思ってみるのだった。
(「よく人の一生は物語に例えられますから、忘れられないのなら、一度書いてみるのも良いかもしれませんね」)
 ……物語の中で生き、多くの人の心に影となって残る。
 ――そんな死後も悪くないですね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
【有ちゃん/f00133】

おお、一途な別嬪さんみーっけ!
いいねぇ、いい眺めよ、なかなかね

ええ?僕は…
猫より犬科の味方
遠くの女より身近な女の味方
そんなとこよ
だから、待ち惚けの犬っころが有ちゃんに牙を剥くなら
牙を引っこ抜いてマシュマロを詰めてやる

今際の際の言葉は呪いそのものだ
「ずっと…」なんて約束を果たしたところで誰も頭を撫でちゃくれねぇ

妖刀を撫で血を垂らし
放つは誘雷血

囚われて重たくなった頭を落としゃ
スッキリ目が覚めるんじゃないの
犬も、澄子さんも

殺してくれなんて可愛い願いを聞かない男は散々怨んでやんな
アンタの怨みを心地よく思ってるだろうよ

…つい熱くなってるが
こんな僕のことは内緒にしてよ、有ちゃん


芥辺・有
【ロカジ/f04128】

……ああ、いた。犬に、女
最後の一息か、くたびれる

そういや、ロカジって犬好きだったりするの
この犬とか、あの女とか。何かしてやりたいってなら好きにしてくれても構わないけど
……そうかい。溶けたら染みそうだな、それは

犬の方をちらと眺めて
いつまでも突っ立ってたって死んだもんは帰らないのに
お前の主人も、言うだけ言って死んでりゃ世話ないね
……ほんと、体のいい、呪いだ

なんて、犬が挑発に乗るかはわかんないけど
動かないなら削ぎ落とす
手にした杭をバラバラと花びらに変えては散らして
刀を振るう男を横目に

……ふうん
別に言いふらす趣味もないけど
どうせだ、口止め料に煙草でも用意してもらっても構わないよ



 桜色と混ざっていたはずのいろが、燃える様な紅だけになった世界。
 降り積もったそんな色を踏みしめながら、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は青の瞳をふと細める。
「おお、一途な別嬪さんみーっけ! いいねぇ、いい眺めよ、なかなかね」
 願いの社に佇む『犬』へと、祈りの様な悲壮の様な、そんな視線をひたすら向けつづける女。
 そんな憂いを帯びた表情は、若き未亡人の美しさに華をそえるのかも、しれない。
 逆に、けだるげな様子で、ふうっと息をつく芥辺・有(ストレイキャット・f00133)。
「……ああ、いた。犬に、女」
 ――最後の一息か、くたびれる、なんて零しながら。
 それから有は、舐めまわすように未亡人を嬉々と見ている隣のロカジへと訊ねてみる。
「そういや、ロカジって犬好きだったりするの。この犬とか、あの女とか。何かしてやりたいってなら好きにしてくれても構わないけど」
 そんな問いに、ぱちくりと瞳瞬かせて。
 今度は宿した笑みを有へと向けて、ロカジは答える。
「ええ? 僕は……猫より犬科の味方。遠くの女より身近な女の味方」
 ――そんなとこよ、と。
「だから、待ち惚けの犬っころが有ちゃんに牙を剥くなら、牙を引っこ抜いてマシュマロを詰めてやる」
「……そうかい。溶けたら染みそうだな、それは」
 甘いのを味わうどころではなさそうだ、なんて。
 牙を抜かれマシュマロを詰められるかもしれない『犬』の方へと、有は視線を巡らせてみて。
「いつまでも突っ立ってたって死んだもんは帰らないのに。お前の主人も、言うだけ言って死んでりゃ世話ないね」
 ……ほんと、体のいい、呪いだ、と。
 それは忠義と言えば、聞こえはいいのだけれども。
 約束と言う名の、いつまでも紅の世界に『犬』を縛っている呪い。
「今際の際の言葉は呪いそのものだ。「ずっと…」なんて約束を果たしたところで誰も頭を撫でちゃくれねぇ」
 犬は撫でられると嬉しいもんだろう、そうロカジは紡ぎながら。
 湿った抜き身を撫で、垂らした己の赤で、得物をより湿気らせた瞬間。
 封印解かれし刃が放つは誘雷血、纏う雷電の一撃。
「囚われて重たくなった頭を落としゃ、スッキリ目が覚めるんじゃないの。犬も、澄子さんも」
 そんな刀振るう姿を横目に、有が散らしていくのは、燃える紅葉とはまた違った赤。
「動かないなら削ぎ落とす」
 はらり舞う紅葉の中、ぽたりと夜を思わせる杭から滴り落とす。
 バラバラと黒から舞わせ散らせた、赤椿の花弁のいろを。
 そして様々な赤が踊り狂う戦場に、雷撃をはしらせながら。
「殺してくれなんて可愛い願いを聞かない男は散々怨んでやんな。アンタの怨みを心地よく思ってるだろうよ」
「…………」
 ただ不安と戸惑いの表情で『犬』を見つめることしかできない別嬪さんへと言葉を紡いだ後。
 ロカジは人差し指を口に当て、ケラリと笑う。
「……つい熱くなってるが。こんな僕のことは内緒にしてよ、有ちゃん」
 そんな彼に、……ふうん、と金の視線を向けて。
 もうひとりの別嬪さんは、あなたのまちの薬屋さんへと、ちゃっかりとこう返すのだった。
「別に言いふらす趣味もないけど」
 ――どうせだ、口止め料に煙草でも用意してもらっても構わないよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
共にいきたい、いきたかった
…独り残った側の心境は分からないでもない
でもこのまま会いに行くのはきっと駄目だ、澄子サン
(生、逝――俺もまぁ似たようなモンだから、其々の“主人”への想いは痛いぐらいに――そんな独り言は紡がず、静かに婦人と犬と社を見て)

そんで、わんこ
主の願い
人々の願い
それに寄り添い、応え続けんとするお前も立派だと思う
でも影朧のままじゃ、お前自身で炎を消す事にもなりかねない
…この社と炎は、お前の伝承に心寄せる人の手が、守り継いでくれるだろう
だからもう、お前は主人に会いにいっていい筈だ

あぁ、そうだ
俺は、お前にも彼女に違う道が開けるようにと願を掛けようか

――澄子サン
貴女の願は、変わらない?



 はらりと紅が降り積もる中、掛け続けた願い。
 きっと死に損なった、生き延びてしまった日からずっと、澄子は願い続けているのだろう。
「共にいきたい、いきたかった……独り残った側の心境は分からないでもない」
 呉羽・伊織(翳・f03578)には、澄子の……残された者の気持ちは、決して否定しない。
 けれど、彼女の馳せる願いに、今のこの状態に――頷くことは、決してできない。
「でもこのまま会いに行くのはきっと駄目だ、澄子サン」
(「生、逝――俺もまぁ似たようなモンだから、其々の“主人”への想いは痛いぐらいに――」)
 それは口にすることはない、心の中だけで紡ぐ独り言。
 そして伊織は、赤の視線を静かに巡らせる。
 未亡人と犬と、願掛けの社へと。
 それから瞳に映すのは、願掛けの社を……そこの灯る炎を護るように佇む『犬』。
 主の言いつけを、一体この犬は、どれくらい長い間、此処で護ってきたのだろうか。
 それこそ――影朧と化してしまうほどまでに。
 そんな今度はそんな犬へと、伊織は言葉を掛ける。
「そんで、わんこ。主の願い、人々の願い……それに寄り添い、応え続けんとするお前も立派だと思う」
 けれどそれは、いずれ歪んでしまうだろう。
 何故ならば、今の彼の姿は、此処に在ってはならないモノだから。
「でも影朧のままじゃ、お前自身で炎を消す事にもなりかねない。……この社と炎は、お前の伝承に心寄せる人の手が、守り継いでくれるだろう」
 ――だからもう、お前は主人に会いにいっていい筈だ、と。
 想いを託した主も、この犬も、望まぬ未来になってしまう前に。
 もう十分、願いの炎を護ってきたのだから。
 だから……最後に、もうひとつだけ。
「あぁ、そうだ。俺は、お前にも彼女に違う道が開けるようにと願を掛けようか」
 伊織は願いを守り続けんと在る犬へと、そう願をかけてから。
 若くて美しい、まだ死を選ぶには勿体ない未亡人へと、改めて問うのだった。
 死にたいと、殺されたいと……それは本当に、心からの彼女の願いなのか。
 ――澄子サン。貴女の願は、変わらない? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

清川・シャル
f08018カイムと第六感で連携

当事者になると何が本当かってもう些細な事かもしれません。なんてね。
でもこのままっていうのは、澄子さんもそこなワンコも救われない気がするんですよね
私なりにやってみましょう

UC発動の為の弱点ですが、先に動きを封じてしまえば防御耐性を取れないのでは?
これで行きましょう
上手く行けばダッシュで接近、腰から修羅櫻を抜刀
あんまりぐしゃってしたくないから刀での攻撃、居合斬りです
破魔を帯びた2回攻撃、なぎ払いと串刺しで恐怖を与える攻撃です

敵攻撃には見切り、残像、カウンターで対応
自分とカイムの防御に氷盾を展開

カイムも言ってますけど、本当の事見てみません?救いはそこにあると思うから


カイム・クローバー
f01440シャルと【第六感】で連携

…あの存在はアンタの想い人なんかじゃないぜ。今、それを見せてやる。

二丁銃を構えて【二回攻撃】しつつ、【クイックドロウ】。シャルの援護をしつつ、俺のもう一つの狙いは澄子に自身の想い人なんかじゃないと理解させる事。
その為にUCを使う事で相手のUCを誘発させる。…【知性と感情】の代償。見てみな。…アンタの旦那は…あんな姿の化け物だったか?
攻撃を拒絶する影に姿を変える。なら、光を照らしてやりゃ良い。紫雷の【属性攻撃】。通常より、多少出力を上げる。一瞬で消える事のないように再び、UC。
弾切れ前に【早業】でリロードするぜ。
お前も主の元に帰りな。……長い間、お疲れさんだ



 年中いつだって桜色に染まっているはずの世界の中。
 この場所を侵食しているのは、紅一色。
 燃える様に紅葉舞い散る中、願掛けの社を護るべく佇むその影が象るのは『犬』の姿。
 そしてその『犬』……影朧を、願う様に見つめている澄子。
「当事者になると何が本当かってもう些細な事かもしれません」
 ……なんてね、と。
 清川・シャル(無銘・f01440)は、『犬』と未亡人へと青の瞳を巡らせる。
 主の約束を『犬』が守っていることも、澄子が願いの炎に想いを馳せることも……今はまだ、何も起こっていないけれど。
「でもこのままっていうのは、澄子さんもそこなワンコも救われない気がするんですよね」
 犬が影朧という存在である限り、これから訪れる未来を予想することは、難くはないから。
 ――私なりにやってみましょう。
 そしてシャルが紡ぐのは、眼前の影朧が展開するという、敵対的な行動を完全に防ぐ拒絶状態となるユーベルコードの弱点。
「先に動きを封じてしまえば防御耐性を取れないのでは?」
 影朧が拒絶状態となるその前にその動きを封じてしまえば、守りを固めることもできないのでは、と。
 ――これで行きましょう。
 そうこくりと頷いた刹那、腰から抜刀するは、桜色の柄糸を巻いた本差と脇差の2本の刀『修羅櫻』。
 あんまりぐしゃってしたくないから……そんな気持ちから選択した得物を握り、素早く地を蹴って。
 先に動きを封じるべく、居合斬りを放つシャル。
『……!』
 瞬間、弱点を指摘し実証してみせたことで、紅き無数の有刺鉄線が影朧へと放たれて。
 同時に、構えた黒基調に金色のライン走る双魔銃の引き金を引く、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)。
 双頭の魔犬の魔具を巧みに操り、素早く連射するカイムの狙いはふたつ。
 修羅櫻の刃振り下ろし、紅の世界に桜吹雪舞わせるシャルの援護と。
 そして、澄子に影朧の姿を確りと見て貰うため。
「……あの存在はアンタの想い人なんかじゃないぜ。今、それを見せてやる」
 あの『犬』の影朧は彼女の想い人なんかじゃないと、そう理解させるために。
 ――It's Show Time! ド派手に行こうぜ!
 そう撃ち出された『オルトロス』が戦場に奏でるのは――『銃撃の協奏曲』。
 それは、影朧のユーベルコードを誘発するために撃ち出された、耳を劈く調べ。
『……ッ!』
 瞬間、『犬』で在ったはずの影が、ぐにゃりと変形する。
「……知性と感情の代償。見てみな。……アンタの旦那は……あんな姿の化け物だったか?」
 これまでも、他猟兵の攻撃により、同じ様な光景を何度か見てきたはずの澄子。
 縋りたい、信じたい――現実を見たくない、その思いがきっと事実を曖昧にしてきたのだろうけれど。
「カイムも言ってますけど、本当の事見てみません? 救いはそこにあると思うから」
 カイムとシャルによって、はっきりと見せつけられ、突き付けられた眼前の現実。
「えっ……あれは私の夫じゃなくて……ば、化け物……なの?」
 瞬間、悲鳴を上げ、その場にガクリと膝を折る澄子。
 目を背けていた現実を知り、願いを馳せていたモノが得体の知れない化け物だったということを、ついに彼女自身が自覚したのだ。
 たくさんの猟兵が掛けた声を耳にし、現実をその目で確りと見たことによって。
 そんな澄子が、ただ恐怖で気絶しただけなことを確認した後。
 シャルとカイムは、猟兵として成すべきことのために、再び得物を構える。
 ――攻撃を拒絶する影に姿を変える。なら、光を照らしてやりゃ良い。
 破魔を帯びた連撃を繰り出し、華奢な体躯に見合わぬ鬼力でなぎ払い、串刺しにせんと動くシャルと連携をはかりつつ。
 出力を上げ、カイムが戦場に走らせるは、光と共に轟く紫雷の銃撃。
 その光が、二人の耳元の揃いの蒼に輝きを纏わせると同時に、紅の世界に縛られた影を明るく照らし出す。
 そしてその輝きが消えないようにと、弾切れ前に早業でリロードし、再び紫雷轟かせる引き金を引いて。
 景色を支配していた紅のいろさえも凌駕する紫の雷光を数多戦場へと走らせながら、カイムは犬へと、労いと手向けの言葉を紡ぐ。
「お前も主の元に帰りな」
 ……長い間、お疲れさんだ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴夜・鶯
【Lux】アドリブ◯
―『人々の願いの炎を一緒に守り通そう』
キミは優しい影朧なんだね―

ボクは「猟兵」の前に、ヒトリの「桜の精」…
キミが望むならボクは役割に従って「転生」の道を示すよ

武装を解除して影朧に向かって歩を進めれば
黒いパーカーワンピースが解け、パーカーの中に纏めていた
鶯色の髪がふわりと舞い
美しい桜織衣を纏った巫女のような姿に変わります

キミは十分に務めを果たしました―
(「歌唱」と「催眠」を載せた柔らかい声色で)
まるで歌うように―

桜の花びらがひらりひらりと舞い落ち

おやすみなさい―
輪廻の先に―
キミの行き先に幸せがありますように―

傍まで近寄れば優しく抱きしめながら転生を願います


祝・誘
【Lux】アドリブ◯
敵意はあるけれど、こちらから攻撃する必要はなさそうだ
UCは万が一の時のみ、何もされなければ使わない

ずっと一人で。炎を護りながら、主を待ちつづけたのね。…きっと、寂しかったでしょう。
あなたの主は、残念だけれど、もう帰ってこない
けれど、あなたのこれまでを見守っていたはずよ

あなたが、このまま此処にいては
いつか、あなた自身が願いの炎を脅かす存在になってしまう可能性があるの

主との約束を果たすためにも
主との再会を果たすためにも
もう休んでも、大丈夫

あなたが守る炎に願う彼女も
大丈夫、だから
安らかに、おやすみ


ルーチェ・ムート
【Lux】アドリブ◎

頭に切なく響いた声が、キミの気持ちでしょう?澄子さん
キミも影朧も決して悪いものなんかじゃない
攻撃は一切しないよ

キミたちの直向きな想いに敬意を、愛を
最大限の優しさをもって、送ろう

これは願いの歌
どうか、届きますように

ボク達はキミ達を傷付けたりしない
願いの炎を消したりしない

―――聞いて。ボク達の想いを。

甘やかに、柔らかに、心(うた)を奏でる
仲間の願いを運ぶように
桜の精だけが持つ転生の力が、深く伝わるように
後押しの祈りを込めて歌おう

優しい影朧、澄子さんはボク達が願いの炎と共に守り続ける
約束するよ
だから安心して、キミはお還り
巡り廻って、その果てに
またいつか出会える事を願って


ノエル・マレット
【Lux】アドリブ◎

影朧に対して武装解除して優しさをもって寄り添うように呼びかけます。万が一戦闘になったらUCで対処。
きっと分かってくれるでしょう。だって、そんなに優しい影朧なんですから。

私は誰かの騎士。貴方と同じく人々を護るもの。
だからこそ、敬意を込めてこう言わせてください。
今まで、ありがとうございました。
人々の願いを守ってくれて、ありがとうございました。
きっと澄子さんの事が気がかりでしょうが後のことはおまかせください。
貴方に代わって私達猟兵が必ず守ります。

そして、これは私の『願い』
もうゆっくり休んで。ふたたび巡り合えますように。

さよなら、願いの守り手。



 ただ此処に在るいろは、燃える様な紅。
 はらりと舞い降る紅葉たちは、数多の人々が思いを馳せた願いの炎のようで。
 その只中に佇む『犬』は、猟兵たちの手で還らんとしている。
 そしてそれが躯の海なのか、来世なのか……まさに今、その岐路に立たされていた。
 願掛けの社を護るべく、ずっとこの場所に在り続けた犬。
 そんな犬が影朧となってまで、守りつづけている主との約束。
 ――『人々の願いの炎を一緒に守り通そう』。
 影朧はオブリビオン、この世界に在ってはならない過去の存在。
 けれども、鳴夜・鶯(ナキムシ歌姫・f23950)は琥珀色の瞳に映るその姿に語りかける。
 キミは優しい影朧なんだね――って。
 ノエル・マレット(誰かの騎士・f20094)も同じ。眼前の影朧に向けるのは、刃ではない。
 武装解除し『犬』に呼びかけんと試みる。優しさをもって、寄り添うように。
(「きっと分かってくれるでしょう。だって、そんなに優しい影朧なんですから」)
(「敵意はあるけれど、こちらから攻撃する必要はなさそうだ」)
 祝・誘(福音・f23614)は『犬』から向けられる敵意こそ感じるけれども。
 それは恐らく、澄子が発する願いの声に、不安や焦りが入り混じっているからかもしれない。
 こちらを攻撃するという意思は、今のところないようだ。
 だから、犬が何かしようとしない限り……自分たちも、それに応えようと誘も思う。
 そしてルーチェ・ムート(吸血人魚姫・f10134)は赤の視線を巡らせて、見つめる澄子の『声』を思い返す。
(「頭に切なく響いた声が、キミの気持ちでしょう? 澄子さん」)
 ――……早く、会いたい……もうすぐ貴方のところに……紅の社に、会いに行きますから……。
 澄子が朧月夜の歌に導かれ、零した心の内。
 残念ながら、眼前の犬は、澄子が想い馳せる彼女の伴侶などではないけれど。
 これまで澄子や犬を皆と一緒に見てきたルーチェには、分かるから。
 ――キミも影朧も決して悪いものなんかじゃない、って。
 思うところはそれぞれあれど、猟兵たちは彼の転生を願い、犬へと攻撃を重ねてきた。
 けれども、犬はいまだ、その場に佇むだけ。
 ひたすら『紅の社』を護ることだけを、主からの言いつけを、守るべく。
「ずっと一人で。炎を護りながら、主を待ちつづけたのね。……きっと、寂しかったでしょう」
 だからこそ、誘は犬に教えてあげる。
「あなたの主は、残念だけれど、もう帰ってこない。けれど、あなたのこれまでを見守っていたはずよ」
 事実と、これまでの忠義を肯定する気持ちと、近い未来訪れる悲劇を。
「あなたが、このまま此処にいては、いつか、あなた自身が願いの炎を脅かす存在になってしまう可能性があるの」
 今はまだ、願いの炎を護る存在でいられているけれど。
 影朧は不安定な存在。故に、主も、そして犬自身も望まぬ未来が訪れるかもしれない。
 けれど、不安定な存在だからこそ、導けるかもしれないのだ。転生という道に。
 そしてノエルは、眼前の犬へと真っ直ぐな青の瞳を向ける。
「私は誰かの騎士。貴方と同じく人々を護るもの。だからこそ、敬意を込めてこう言わせてください。今まで、ありがとうございました」
 ――人々の願いを守ってくれて、ありがとうございました、と。
 どれくらいの年月、そうやって護ってきたのか。主を待ちながらもずっと、人々の炎を絶やさぬようにと。
 背にあるすべてを護るものとして在るノエルにとって、自分と何処か似たものを感じると同時に、その忠義に敬意を示して。
 そして、影朧になってまでそれを貫かんとする彼に、こう言葉をかけるのだった。
「きっと澄子さんの事が気がかりでしょうが後のことはおまかせください。貴方に代わって私達猟兵が必ず守ります」
 もう十分なくらい、護ってくれたから。
 だから、ルーチェは最大限の優しさをもって、送ろうと思う。
 影朧となった犬にも、澄子にも。
(「キミたちの直向きな想いに敬意を、愛を」)
「ボク達はキミ達を傷付けたりしない。願いの炎を消したりしない」
 ――聞いて。ボク達の想いを。
 そして紅の世界に響く旋律は、願いの歌。
 太陽の如く煌めき、月の如く柔い、その歌声に込める――どうか、届きますように、って。
 その歌声を聞きながら、ふと影朧の眼前に舞い躍り出るのは、鶯。
 鶯は猟兵であるのだけれど。でもその前に――ヒトリの「桜の精」だから。
「キミが望むならボクは役割に従って「転生」の道を示すよ」
 刹那、シンガーとして世界を渡る際にいつも纏っている、黒のパーカーワンピースが解けて。
 紅の炎を従えるように、ふわりと舞う鶯色の髪。
 そこに在る鶯の姿は、影朧を躯の海へと還す猟兵ではなく――影朧を転生へと導く、美しい桜織衣を纏った巫女。
 そして桜の精の力で、皆の言の葉や歌で……影朧を、正しき輪廻へと導く。
 誘は忠義を尽くした犬へと、最後の言の葉を送る。
「もう休んでも、大丈夫。あなたが守る炎に願う彼女も、大丈夫、だから」
 ――主との約束を果たすためにも。
 ――主との再会を果たすためにも。
 安らかに、おやすみ……って。
 同じ『守護』するものとして、先程は敬意を払ったノエルも。
 そして、これは私の『願い』――そう、これまでずっと護り続けた犬に『願い』を紡ぐ。
「もうゆっくり休んで。ふたたび巡り合えますように」
 ――さよなら、願いの守り手、と。
 そんな皆の願いを運ぶように。桜の精だけが持つ転生の力が、深く伝わるように。
 後押しの祈りを込めて、ルーチェは甘やかに、柔らかに、心を……うたを、奏で続ける。
「優しい影朧、澄子さんはボク達が願いの炎と共に守り続ける。約束するよ」
 主との約束を、影朧になってまでこれまで守ってきたのだから。
 今度は、自分たちにその約束を託していいのだと。
「だから安心して、キミはお還り」
 そして――巡り廻って、その果てに。またいつか出会える事を、願って。
『……ァァアァ』
 これまで何も発しなかった犬が、歌に言の葉に願いに、反応を示す。
 響くその声は、泣いているのか、歌っているのか……それは、分からないけれど。
「キミは十分に務めを果たしました――」
 鶯は、歌う様な、眠りに導くような……そんな柔らかないろを宿した声で、犬へと紡ぐ。
 それままるで歌のように――ひらりひらり、舞い降り始める桜の花弁。
 そして桜織衣の巫女は、これまで忠義を守り続けた犬の傍まで歩み寄って。
 ぎゅっと、その身を優しく抱きしめてあげる。
 ……おやすみなさい――。
 ……輪廻の先に――。
「キミの行き先に幸せがありますように――」
 刹那、漆黒の影がはらり、涙を流すかのように無数の桜の花弁となって。
「……!」
 桜と紅葉が舞い遊ぶ空へと、溶けるように運ばれ、消えてゆく。
 そして、紅だけしかなかった世界に、桜咲く春がまた訪れる――転生という名の、春が。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月23日


挿絵イラスト