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ブルーミング・ブルー

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●花咲く場所
 アックス&ウィザーズの辺境に咲く花の、話をしよう。
 太陽が昇っている間しか咲かない、晴空が綻んだかのような青い花弁の花。名をサフィーリという。サフィーリはごく限られた地方にしか咲いていない上に、環境の変化にすこぶる弱い。そのため他の地域に種を持ち運んで栽培しようとしても碌に育ちはしないのだとか。
 しかしその脆弱さと美しさ故に、その花は珍重された。染料として用いれば百年経っても色褪せないために奇跡の花とも呼ばれた。
 染料として用いるのであれば閉じた状態でも問題はないが、もし開いている間に出逢うことが出来たなら、その年の幸福は約束されるのだという。そんな言い伝えを信じる者も嘲笑う者もいるが、サフィーリが齎す透き通る青は誰の心も惹きつけてやまなかった。
 子供に読み聞かせる御伽噺のような話。その信憑性の是非はこの際問題ではない。
 問題なのは、ここ最近その花を求めて旅立った者が、誰一人として帰ってこないことであった。
 特に流通の中心を担っていたキャラバンが忽然と姿を消したことから、サフィーリの交易はほぼ閉ざされたも同然となった。
 噂話だけが密やかに紡がれる。
 ――サフィーリを摘み過ぎたら、花の龍に食べられてしまうよ。

●めざめの花弁
「花畑を住処にしたドラゴンか。まったく、ファンタジーってあるんだな。俺が言えた義理じゃないけど」
 鴇沢・哉太(ルルミナ・f02480)は肩を竦めた。世界を跨げば常識が常識でなくなることも当然にあるのだから、その真偽を問いただすことに意味はない。
「……ともあれ、俺の予知はこうだ。サフィーリが群生している一帯にドラゴンが出た。どうやら縄張りとして確保してしまったらしくて、サフィーリを摘もうとする連中をそのドラゴンが全部排除した。だから誰も帰ってこない」
 サフィーリの青はアックス&ウィザーズの上流階級の間で人気を博している。採取する者がいなくなったとて、その市場はそう簡単に縮小しないだろう。サフィーリを探し求めて旅立つ者がドラゴンの次の餌食になることは想像に容易い。
 そもそもそのドラゴンがその群生地でずっと大人しくしているとも限らない。人里に下りて来られでもしたら目も当てられない。
「というわけで、先に手を打とう。そのドラゴンが住まうサフィーリの群生地を探し出し、ドラゴンを倒す。それが今回の仕事だ」
 哉太が広げた地図はアックス&ウィザーズの一地方だ。
 大都市から離れたその一点を指差して哉太は続ける。
「問題はそのサフィーリの群生地までの道程を知ってる奴が誰一人としていなくなってしまった、ってことだ。まず群生地がどこにあるかを調査する、そこまでの道程を踏破する、ドラゴンを退治する。その三つの過程が必要になってくる」
 指先がとんとん、と示したのはとある草原。
 サフィーリの染料で商売をしていたキャラバンはこの草原での目撃情報を最後に消息が途絶えているという。
「ここは何故かサフィーリに限らず花らしい花がまったく咲かなくなってしまったらしい。理由はわからないが、そのドラゴンの影響じゃないかと俺は睨んでる。花の養分を吸い取ってエネルギーにしてるとか、まあそんなところだろう」
 冬とはいえ温暖な気候の地域だ。ささやかな花は咲いていてしかるべきなのに、花らしい花が一切咲いていないのは明らかに不自然だ。
 まずは草原を基点として、サフィーリの群生地を探す必要がある。情報が必要なら近くに小さな村があるから、聞き込みをすることも可能だろう。勿論直接的な情報はないだろうが、何かしらのヒントくらいはあるかもしれない。
 自分の足を頼って探すのもいい。やり方はそれこそ千差万別だ。地道な調査で得られるものもあるだろう。
 どこかに必ず、何かしらの力が作用している場所があるはずだ。そこさえ見つかれば、きっとサフィーリの群生地への足掛かりとなる。
「龍退治は英雄譚の基本だろ、猟兵の力の見せ所だ。それにサフィーリの染料を使った布は大層綺麗だって聞く。そのためにも力を貸してもらえると嬉しいね」
 哉太は淡く笑みを刻む。
 美しい青が龍によって損なわれたままにならないよう、願いを籠めながら。


中川沙智
 中川です。
 花とドラゴンってだけでファンタジーのかおりがしますね。

●シナリオ構成について
 第1章:サフィーリの群生地を探す(冒険)
 第2章:サフィーリの群生地を踏破する(冒険)
 第3章:ドラゴンを倒す(ボス戦)
 以上の流れになっています。
 第1章は答え合わせゲームにならないよう、中川のほうでも明確な答えを設定していません。ですのでプレイングを適宜判定して、その結果に応じて情報を出していきます。「調べたけれど何もなかった!」みたいな空振りにはしませんのでご安心ください。
 特に第2章までは出来るだけこまめにリプレイにしたい気持ちですが、タイミング・キャパシティの関係で力及ばずプレイングをお返しすることがあったらごめんなさい。あらかじめご了承頂ければ幸いです。
 POW/SPD/WIZの行動・判定例には特にこだわらなくて大丈夫です。ご自由にどうぞ。

●同行者について
 ご一緒する参加者様がいる場合、必ず「プレイング冒頭」に【相手のお名前】と【相手のID】を明記してくださいますようお願いします。
 大勢でご参加の場合は【グループ名】で大丈夫ですので、「プレイング冒頭」にはっきり記載してください。

 では、皆様のご参加を心からお待ちしております。
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第1章 冒険 『変異した地形の調査』

POW   :    力業で活路を開く

SPD   :    地形の影響を受けにくいルートで移動する

WIZ   :    魔法やテクノロジーで一時的に地形の影響を沈静化させる

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

海月・びいどろ
WIZ

物語めいた青の花、
ドラゴンも欲しくなってしまったのかな…?

太陽の昇っている間しか咲かないなら
おひさまの光がたくさん当たるところにあるんじゃないかな…。
電脳世界から呼び出した情報で、この辺りの地図や地形が分かれば
計算して割り出して、陽の当たりそうな場所を重点的に探してみるよ。
だけど自分の足で探してみるのも冒険みたいで
『楽しい』を感じられる、かも。

…ボク、緑のある世界、『すき』なのかな。
惹かれる気が、するの。

地図など情報がこの世界になければ
海月型のドローンをふわふわ、ゆらゆら飛ばして撮影。
辺りを把握するのも大事、だよね。
景色も、持って帰れたら…
他に探索してるヒトがいたら、情報共有も。


シュシュ・シュエット
サフィーリからとってもいい香りがして、ドラゴンさんも思わずお昼寝しちゃったのでしょうか……?
キャラバンの皆さんも心配ですし、がんばってサフィーリを探しましょうっ。

お花らしいお花がまったく咲かなくなってしまったのなら、
きっと小鳥さんや蝶々さん、ミツバチさんもお花の蜜を吸えなくてお困りのはずですっ。
わたしは草原にて*動物さんへ呼びかけるように*歌唱し、
もしお会いできたら「何か不思議なところ・いつもより不気味なところ」を見かけなかったか、お尋ねしてみますっ。

キャラバンの皆さんも遠方からいらっしゃったのなら、お近くの村を拠点に活動されると思います。
村を中心にした方角だけでも分かるといいのですが……っ。


アルフェニア・ベルメル
奇跡の花…そんな風に呼ばれてる花なら、ちょっと見てみたいですね

村での聞き込みは…話すのが苦手な私には難しいですね…
でも、私は私で頑張らないと

えっと、ドラゴンが現れてから起こった変化を追えば良いのかな…?
この土地に居る精霊たちは、ドラゴンが来る前から此処に居たはずですから、きっと何か知っているはずです

一緒に居るサリア、リーン、メルルだけでなく、『自然と共に在る者』を使用して呼んだ精霊たちにもお願いして、情報を集めます
サリアは情報収集とコミュ力がありそういうことも得意ですし、メルルも花の精霊なので直接何かを感じ取れるかもしれません
ドラゴンの居る辺りから逃げてきた精霊に出会えれば、一番良いのですが…


エスチーカ・アムグラド
サフィーリのお花……ほぁ~、珍しいお花なんですね!
チーカも見てみたいです!

えとえと、まずはサフィーリのお花の咲く場所を探さないとで
お花がまったく咲いていないのがドラゴンさんの影響らしくて
でもでも、ドラゴンさんの棲み付いてしまった場所がサフィーリのお花の咲く場所の筈で

……わかりました!チーカにはよくわからないことが!

チーカはあちこち飛んで、まだお花が咲いている所がないか探します!
咲いている所を沢山調べれば、他は咲いていない所ということですよね!多分!
それでそれで、咲いていない場所が丸かったりしたらその中心に何かないかなって!
ドラゴンさんと関係ありそうな場所、なさそうな場所をはっきりさせたいです!



●青空の下
 本日快晴。
 日差しはあたたかさを齎すのに、吹き抜ける風はやはり冷たい。冬真っ只中でありながら積雪はない。地形も特記するほど奇異なものは見受けられない。ならばコツコツと調査を積み重ねていくほかないだろう。
 いち早く草原に姿を現した面々が、顔を見合わせる。
「物語めいた青の花、ドラゴンも欲しくなってしまったのかな……?」
 海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)はドラゴンに思い馳せながら首傾げ。サフィーリがどんな花なのかわからないけれど、龍も心を寄せるほどにきれいなのかもしれない。シュシュ・シュエット(ガラスの靴・f02357)が頬を綻ばせ、ころころと笑みを転がす。
「そうだったら心和みますね。あるいはサフィーリからとってもいい香りがして、ドラゴンさんも思わずお昼寝しちゃったのでしょうか……?」
 その光景を思い浮かべたらますます笑みが深くなる。お気に入りのお昼寝スポットになったというだけであれば見過ごすことも出来ようが、そうはいかないのが現状でもあって。シュシュはちょっぴり困ったように笑う。その様子を見ていたアルフェニア・ベルメル(森の泉に揺蕩う小花・f07056)もやや眉を下げる。花の中に佇むドラゴンなんて幻想的な風景、物語の挿絵のように眺められたらきっと素敵なのに。
「奇跡の花……そんな風に呼ばれてる花なら、ちょっと見てみたいですね」
「ほぁ~、珍しいお花なんですね! チーカも見てみたいです!」
 興味をちらり浮かべて、アルフェニアは顎を引く。同意したエスチーカ・アムグラド(Espada lilia・f00890)は破顔した。世代を超えて愛される青、その源泉となるサフィーリの花。それは決して踏み躙られていいはずのものではない。
 故に四人は柔らかな表情にも確かな決意を湛えていた。
「キャラバンの皆さんも心配ですし、がんばってサフィーリを探しましょうっ」
 シュシュの声にびいどろもアルフェニアもエスチーカも頷く。意気込む四人だが、さてどこから探すべきか。
 まずは情報収集が肝要だろう。びいどろが海月型のドローンを、アルフェニアが精霊たちを送り出した。
「チーカはあちこち飛んで、まだお花が咲いている所がないか探します! 逆説的に考えれば、咲いていないところにドラゴンはいるはずですから!」
 萌黄の翅をひらり翻し、エスチーカが調査のため飛び立った。残された三人が視線を合わせ、広げたのは地図だった。
 予知の時に使用されていた地図と同じものを入手することが出来たから、村との位置関係や周囲の地形は把握することが叶う。川と山に挟まれた地域だ。海は遠い。村以外に大きな集落は見受けられない。馬車が通る街道だけがかろうじて整備されていて、それを除けば人の手が入ったものはほとんど存在しないようだった。草原の一帯には特にこれといった特徴はないようだ。
 びいどろは周囲に視線を走らせる。サフィーリが太陽の昇っている間しか咲かないのなら。
「その花って、おひさまの光がたくさん当たるところにあるんじゃないかな……」
「その可能性はありますね……咲けない場所に好んで自生するとは思えませんし」
 アルフェニアも同意を示した。であれば、この付近で日照率の高い地域を割り出すべきだろう。
 細い指先操って、びいどろが電脳世界から呼び出した情報画面を操作する。ここ最近の気候データを分析したところ、基本的にこの草原近辺は天候にも恵まれやすい地域らしい。しかし川辺と山地、どちらがより晴天になりやすいかといえば――。
「山のほう? 意外、山の天気は変わりやすいっていうのにね」
 三人三様の吃驚。シュシュは遠くそびえる山の峰に視線を向ける。
「お花らしいお花がまったく咲かなくなってしまったのなら、きっと小鳥さんや蝶々さん、ミツバチさんもお花の蜜を吸えなくてお困りのはずですっ」
 ならば。
 シュシュは大きく息を吸った。踵を下ろせばしゃらしゃらと鳴る。そして紡がれるのは歌。この草原にいる動物たちに語り掛けるような旋律が響き渡る。その音色に惹かれるように舞い降りた小鳥がシュシュの肩に降り立った。
 何か不思議なところや、いつもより不気味なところはなかったか。そう尋ねてみる。
 すると小鳥が囀った。最近は花の蜜が採れなくて大変だと評判だ。特にこの草原はほとんど実りもないものだから、遠くへ移り住んだ生き物も多いらしい。
 最近は人間の姿もほとんど見かけなくなったという。予知で聞いた内容と一致する。このあたりはサフィーリくらいしか名産のようなものもないから、交易で成り立っていた地域だ。その小鳥は少なくとも草原の近辺でどうにか食いつないでいたらしく、ここ一帯では特に不思議な場所はなかったという。他の蝶や蜜蜂も同じような証言だった。
「ということは、草原から離れて調べを進めたほうがいいということでしょうか」
 このまま草原を探していてもサフィーリの手掛かりが得られる可能性は低そうだ。ならば場所を変えたほうが賢明だろうか。
 ちょうどその時、空気に光が弾けた。精霊の気配だ。
「うん、うん。そうなのね。サリア、リーン、メルル、他のみんなもありがとう」
 ひらり舞い戻った精霊の報告を聞き、アルフェニアは眉を顰めた。口許に手を添え、思案顔。
「えっと、ドラゴンが現れてから起こった変化を追えば良いのかなって、思ったんですけれど……」
 人は少なくとも精霊は多く在るだろう。この土地に居る精霊たちはドラゴンが来る前から此処に居たはずだから、きっと何か知っているはず。
 そう踏んだアルフェニアの元に精霊が齎した情報は、曰く。
「花が咲かなくなったのは、一気にではないらしいです。山側から円を描くように徐々に広がっていったとか」
「そうなんですか?」
 シュシュが問うたのは周りの動物たちだ。動物たちも首肯したということは、精霊たちの証言に裏付けが取れたということ。
 そこにエスチーカが舞い戻った。他の猟兵たちを一瞥しながら告げた。
「今の話は本当ですね。川沿いのほうには少しだけ小さな花が咲いていました。村のほうにも僅かですが。それがこの草原に至るまでに、全然なくなっていくんです」
「じゃあやっぱり、山のほうが怪しいですね」
 シュシュの言葉に否を唱える者はいなかった。見解の一致。
 しかし現段階ではあくまで山側が怪しいとしか言いようがないのも事実だった。もう少し踏み込んで考えたほうがいいかもしれない。山といっても範囲が広い。さて、どう探すとするか。
 他の猟兵が来ているかもしれないから情報共有をしよう。そう意見したのはびいどろだった。大地を踏みしめれば、生きているという感覚が胸の奥を浸す。
 こうして自分の足で歩いてみるのも、きっと悪くない。
「冒険みたいで、『楽しい』を感じられる」
 びいどろの胸裏にどきどきとわくわくが閃いた。冬とはいえあたたかい地方だからだろうか。緑がさざめく。草が風になびいて揺れる。
「……ボク、緑のある世界、『すき』なのかな。惹かれる気が、するの」
「自然に心惹かれる気持ち、わかります」
 アルフェニアが微笑みを浮かべる。自然に身を置く精霊と心を通わせるアルフェニアにとって、自然もまた近しいものであった。
「自然、自然か……」
 そこでエスチーカの脳裏に疑問の種。腕を組んで首を捻った。
「お花がまったく咲いていないのがドラゴンさんの影響らしくて。でもでも、ドラゴンさんの棲み付いてしまった場所がサフィーリのお花の咲く場所の筈で」
 ならば何故、ドラゴンは『サフィーリの花が咲いている』場所をわざわざ住処にしたのか。花が咲いていないのはドラゴンのせい、しかしサフィーリの花が枯れているとか種が根絶されそうだとか、そういう話はグリモア猟兵はしていなかったはずだ。
 何かが引っかかる。引っかかるのに、思考を編み上げるにはまだ情報が不足している。
 しばらくうんうん唸り続けて、意を決したように顔を上げる。
「……わかりました! チーカにはよくわからないことが!」
 ともあれ今集められる情報は集めきっただろう。さて、ではその上でどのように調査を進めるべきか。
 太陽の位置はまだ高い。
 選び得る道だって、まだたくさん存在している。
 故に猟兵たちは前を向き続けていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

フィーア・ストリッツ
フィーアです。青い花ですか。良いですね。青は好きな色です
戦闘用サイボーグですが、情緒は豊かと自負しています
青い花を是非見てみたいので、微力を尽くすとします

……ところで私、戦闘用なので探査活動は苦手なのですが

まぁ、ドラゴンなぞが居るなら巨体で目立つでしょう
花の精気を吸っているなら、そいつの周囲では植物が枯れている可能性が高いです
ここまで分かれば、その条件に合致する地帯を発見するまであるきまわれば良いのです
私は高性能サイボーグなので疲れなど知りません。素晴らしいですね
効率化のため、同様の方針の仲間が居たら地図を共有し、大雑把でも分担地域を決めましょう
人海戦術は立派な戦術ですから


鷲生・嵯泉
……得意を言うなら障害なぞ粉砕する方だが
後を考えればそうもゆくまい

先ずは近場の村にて少しばかり情報収集をしておくとするか
礼を失さぬ程度の気遣いは忘れず
以前に比べて風の様子に変わった所はないか
聞き慣れない音がする様になった場所は無いか等、僅かなものでもいい
人が気付く所にまで及んでいる変化なら
勘頼りでもそれらの痕跡を辿る事位は出来るだろう

後は手に入った情報があれば其れと
花の減っている方向を重ね比べて道を辿る
出来るだけ道そのものには手を加えず
通るに邪魔な障害物があれば、それらを排除するのみに止める
流石に一般人が通れなくなる様な有様には出来ん

花を追う、か
どうにも似合わん話だが……これも為すべき一環か


オルハ・オランシュ
山から円を描くように。だったかな
共有してもらった情報は大きな手掛かりだね

あれっ
サフィーリの花は今も咲いている?それっておかしくない?
どういうことなの……
とにかく山を探索してみるしかないね
他の猟兵と協力できるなら、なるべく手分けして視野を広げよう

私はこの羽で飛行もしながら山の様子を見てみるね
本当にサフィーリ以外に咲いている花は一輪もないのか
景色の異なるエリアがないか
特に、青色が少しでも見当たらないか
【野生の勘】にも頼りながら注意深く!

それぞれが得た情報はどんどん共有していこう
まだ謎ばかりだけど、サフィーリに近付けてるのはきっと間違いないよね


杠葉・はつね
サフィーリ……聞いたことない花……
すごく綺麗なのかしら

情報収集は、まずは聞き込みね
近くの村で聞き込みをするわ
小さな子どももどこかで聞いていたりするかもしれないから、目があった人を中心に

もし?サフィーリという花をご存知ないかしら。探しているの

サフィーリを知らないというのであれば、せめてもとお花が生えていないかを聞いてみるわ

えと、では、お花が咲いているところは知らないかしら。ちょっとしたお花でもいいの

何かが見つかれば、いいのだけど



●空の続き
 情報を共有し合った猟兵たちは顔を見合わせる。
 山の方向を目指せばいいのはわかった。しかし連なる山脈を見れば、手あたり次第に踏破しようとすることの無謀さも思い知る。人海戦術は立派な戦術、しかし効率化を図ったほうがいいのは間違いない。
フィーア・ストリッツ(サキエルの眼差し・f05578)は頬を撫でる風に顔を上げる。雲一つない透き通る青空。きっと、サフィーリもこんな色をしているのだろう。
 戦闘用サイボーグではあるが情緒は豊かな自負がある。だから声は弾んだ。
「青い花ですか。良いですね。青は好きな色です」
「サフィーリ……聞いたことない花なの……綺麗なのかしら。ううん、きっとすごく綺麗ね」
 杠葉・はつね(ミレナリィドールの戦巫女・f04009)は柔らかく微笑みを灯した。その様子を眺めていた鷲生・嵯泉(烈志・f05845)が柘榴の双眸を細める。
「……得意を言うなら障害なぞ粉砕する方だが、後を考えればそうもゆくまい。先に村でも話を聞いておこう」
 方角を絞るためのヒントがあるかもしれない。そう告げる嵯泉にオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)も頷く。四人の猟兵は草原近くの集落へと足を運んだ。
 小さな村だ。遊牧民のようなものなのかもしれない。はしゃぐ子供たちの世話をする女性の二人組にはつねは尋ねた。
「もし? サフィーリという花をご存知ないかしら。探しているの」
「旅の人ですか。ええ、サフィーリを求めてこの辺に来る人は多いですしね」
 快く応対してくれた。おだやかな物腰ではつねは続ける。
「最近、サフィーリが求めにくくなったと聞いて」
「そうですね……いつも立ち寄ってくれたキャラバンも、しばらく顔を見せてくれてないんです」
 色々と話を聞くことに成功する。あくまでこの村は貿易の中間地点のようなものであり、村人が直接サフィーリを採取するわけではないらしい。だからこそ誰もサフィーリの群生地を知らないなんて事態になっているのだ。
 だが山までの道程を案内する森番がいるらしく、紹介してもらえることになった。村の片隅、小さな小屋に住む老人を訪ね、嵯泉が礼を欠かさぬよう心掛けて声を紡いだ。
「失礼は承知だが、何か変化が見られたものはないだろうか」
 例えば以前に比べて風の様子に変わった所はないか、聞き慣れない音がする様になった場所はないか。
「うーん……風の向きが変わった気もするが、何故かはわからないな。そもそもサフィーリを求めてくる旅人がいなくなってしまってね。ただ、動物たちがこぞって山裾に下りてきてはいるから、山頂近くに何か異変があったのかもしれないな」
 森番は久々の客人に声を明るくして語ってくれた。オルハが神妙に眉根を寄せた。思い出したのは先に情報収集してくれた猟兵たちの言葉。種類は違えど重なる要素がある。
「山から円を描くように。だったかな……動物が特に騒がしくなっているのはどこだかわかる?」
「ああ。特に崖が多くて急な山道に繋がるあたりだ。実際に山中まで踏み入ったわけじゃないが、途中までなら案内しようか」
 願ったり叶ったりだ。四人は迷いを挟まず頷いた。キャラバンが山に入ったなら、何らかの道が残っているに違いない。少しでも痕跡がわかれば辿ることが出来る可能性は増すだろう。
 早速村を後にして山へ続く森へと分け入る。碌に手入れもされていない森の様子に嵯泉は嘆息する。これは森番に頼らなければまともに山へと近づくことも出来なかったに違いない。
「……ところで私、戦闘用なので探査活動は苦手なのですが」
 そんな呟きを零すフィーアの足は迷いない。探索は苦手でも目的のある行動は割と出来る。フィーアの先導で獣道を辿りながら、キャラバンが踏み固めただろう線をなぞるように歩く。
 そうして山道の端まで辿り着いた。見上げる。崖の角度も急でなかなかに険しい道だ。これは腹を括って進む必要がありそうだ。花どころか緑も少なくなっているように思える。
「俺が案内出来るのはここまでだ。幸運を祈るよ」
「ありがとう。どうぞ帰り道もお気をつけて」
 踵を返す森番に、はつねがたおやかに礼を述べた。オルハが周囲を見渡し、意を決して羽を広げる。
「飛行して、先に山の様子を見てみるね」
「お願いします」
 フィーアに送り出され、オルハは高く舞い上がった。飛ぶに支障がないくらいに木々の姿も減っている。つまりそれだけ、エネルギーが他所に回っているという証左だろう。
 しばらく経ってオルハが戻って来た。嵯泉が短く問うた。
「どうだった」
「想定通りだよ。途中のそこかしこで人が火を熾した形跡がある。もっとも、結構前のだけれどね。きっとキャラバンが休憩したりしてたんじゃないかな」
 この先、人が立ち入り採取する必要がある別の植物等があるのなら、村人や森番はその存在を示唆しただろう。そうでないというのなら――目的のものが、そこにはあるはず。
 野生の勘も活かしつつ探った成果はあったようだ。ならば次の目標は明確だ。
 この山道を踏破する。その末にきっと、サフィーリの群生地がある。
 そこまで思い至ったなら猟兵たちに迷いはなかった。
「私は高性能サイボーグなので疲れなど知りません。素晴らしいですね」
 不遜にも言ってのけるフィーアの言葉は、この先も道を切り拓いていくという決意の証。
「まだ謎ばかりだけど、サフィーリに近付けてるのはきっと間違いないよね」
「ああ。花を追う、か。どうにも似合わん話だが……これも為すべき一環か」
 オルハの囁きに嵯泉が首肯する。
 はつねの薄荷緑の髪が、冬の風に吹かれて靡いていく。その風の向こうに青い花が咲いている。今はそう信じて、進もう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『天に一つの青』

POW   :    崖を登り、花を入手する。

SPD   :    青を使った新しい作品を考える。

WIZ   :    落下防止、魔物避けなど採集中の危険を遠ざける。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●困難の果て
 山に踏み入った猟兵たちは息を呑むことになる。
 先程まで緑が生い茂る森にいたのが嘘のように、険しい山道が続いていたからだ。
 キャラバンが通ったためだろう、全く人が通れぬほど踏み固められていないわけではないが決して楽な道程ではない。
 視線を上にやると、あまり道幅も広いとは言えぬ路が続いている。当然の事ながら落下防止用のロープなんてものもない。
 一人で突出して踏破を目指すのもいいが、可能であれば命綱を結び合うとか、より安全な道を探して進むとか、連携があれば尚進みやすいかもしれない。
 間違っても崖から落ちて真っ逆さまなんてことにならないようにしなければ。
 サフィーリの花に思いを馳せ、ドラゴンにどう相対するかも考えるのもいいけれど。
 命あっての物種、なんて昔からよく聞く話なのだから。
海月・びいどろ
他の猟兵たちが情報をくれたみたい
…ありがとう、助かったよ
いっしょに同じところに行くなら
出来れば協力できたら良いな
山に入るに必要な登山用のロープや靴
さっき調べた情報の中に安全な経路がないか
情報収集してから行くよ

硝子海月のジェリーを喚び出して
ふわふわ、ゆらゆら
周りの見回りをしてもらおうかな
キミには迷彩を纏わせて
もし危ない敵が現れたら
見つからないように教えてね

ここで大きな戦闘になったら
みんなも落ちてしまうから、慎重に
落ちそうになったら手を貸してくれる?

サフィーリの咲くところに何があるんだろう
もしかすると、ドラゴンも青い花見られてないのかな
…じゃあ、そこにはもっと
ひみつがあったりするの、かも?


シュシュ・シュエット
キャラバンの皆さんは、この険しい山道を登られたのですよねっ。す、すごいです……っ!

ここは【縁の下の力持ち】のネズミさんたちのお力をお借りし、足元の安全確認をしながら先導してもらいましょう。
ひととネズミの重さは違うので、そこも気をつけて。
わたし自身は*野生の勘による*地形の利用……安全を見極めつつ、ゆっくり登ります……っ。
体力的に遅れてしまうかもしれませんが、その代わりとして他の猟兵の皆さんをサポートできれば……と思います。

あっ、サフィーリをスカーフの染物にして、村の子どもたちへプレゼントするのはどうでしょうかっ。
まだ風も冷たいですし、遠くへいっても青く見つけやすく、お母さんもきっと安心ですっ!


鷲生・嵯泉
予想よりも骨の折れそうな状況だが……
引き返すという選択をする訳にもいかん

先ずは道と周囲の状態を確認
転がっている岩が多い等で不安定そうな場所は避ける
通れる場所は体格にモノを言わせても構わんだろうが
傾斜が危険な場合は縛紅の変形機構を使い鞭状にし
ロープワークで投げ縄状にして
手掛かりになりそうな岩に掛けつつ、少しずつ上がるとするか
後続があれば、歩き易くなる様に上がる際に足場を均しながら登る
必要と有れば手を貸す位はしよう

この苦労の果てに手に入れていたのであろう事を思えば
その青の貴重さも、咲いた花の姿が幸福を約束するという言い伝えも
納得が行くというものかもしれんな


アルフェニア・ベルメル
やっぱり山でしたか
他の情報を調べてくれた皆さんにも感謝しないと

んー…森のままなら、私としては動きやすいし、情報も集めやすかったのですが…
仕方ありませんね、気をつけて進みましょう

今回も『自然と共に在る者』で精霊たちに協力をお願いします
特に風の精霊を中心に来て貰いました
危険な道で遮るものも無いので、急な風などは危ないですから
周囲を調べて貰い、強い風が吹く前に知らせてくれたり、風そのものを弱めて貰います
サリアたちの情報収集も継続です
まだこの地に残っている精霊に出会れば、ドラゴン自体の情報も入りそうですし

……この状況でも、サフィーリの花は残っている…のでしょうか?
少し心配になってきますね



 サフィーリ摘みこそしないものの、崖に住む山羊等を狩りに赴く村人はそれなりにいたらしい。先に立ち寄った村で、山登りに必要な道具を準備しておくことが出来たのは僥倖と言えよう。
 装備を整えて、いざ往かん山の果て。
 しかしこうして直面するとやはり気圧される。シュシュ・シュエットは目を瞠った。
「キャラバンの皆さんは、この険しい山道を登られたのですよねっ。す、すごいです……っ!」
「やっぱりサフィーリの手掛かりがあるのは山でしたか……」
 僅かに躊躇を挟んでしまうくらいには険しく、少なくともピクニック気分では踏破出来そうにない道程だった。アルフェニア・ベルメルの落とした吐息は冬の風に紛れない。森がそのまま続くような山であればアルフェニアも動きやすいし、情報も集めやすかったのだけれど。それでも目の前の光景に怯むことなく背筋を伸ばす。
「仕方ありませんね、気をつけて進みましょう」
「そうだね。出来れば互いに協力できたら良いな」
 海月・びいどろは登山用のブーツで地面を踏みしめながら呟いた。手にはロープもある。一人で進むのが困難な道でも、協力し合えば脅威を軽減することだって出来るはずだ。びいどろの提案で再度情報を精査して共有しておく。抜かりはない。
「予想よりも骨の折れそうな状況だが……引き返すという選択をする訳にもいかん」
 鷲生・嵯泉が山を仰ぎ見るその眼差しに弱さはない。強い決意を湛え、猟兵たちは頷き合った。間違っても足を滑らせないよう慎重に、しかし臆さずに歩を進める。
 それにしても、曲がりくねった歩きにくい道だ。勾配も決してなだらかではない。
 シュシュが呼び出したネズミたちが先を行く。かぼちゃの馬車はないけれど、ネズミたちは注意深く様子を窺いながら猟兵たちを先導してくれた。それに追従するようにふわり浮かんだのはびいどろが呼び出した硝子海月のジェリーだ。迷彩を纏わせ、見回りを言いつける。
「もし危ない敵が現れたら、見つからないように教えてね」
 ジェリーは首肯するようにゆらり揺らめいた。冬の陽光を弾きながら進む。この山地は決して道が整備されているところではないから、行き止まりかどうかを確かめるだけでもネズミたちやジェリーに先行してもらうメリットは大きい。
 キャラバンが通れるだけの道幅はありそうだが、この坂道では馬は難しかろう。恐らくキャラバンも徒歩で登っていたに違いない。シュシュは安全を確かめてから恐る恐る足を前に出す。
 そして明らかに道ではなく、崖を登らなければ進めない箇所に到達した。
「ここは少し危ないな……俺が先に行く」
 嵯泉が進み出た。大きな体躯を活かして、岩に手をかけながら一段飛ばしで傾斜を越えていく。上に到着した先、道が続いていることを確認してからゆっくりと降りて来た。闇色纏う刃を変形し縄としてもいいが、そうするよりもまず足場を確保するのが先決だと判断したからだ。
 足場を均し、背の低い者でも上りやすくしたところで、再び嵯泉が先に往く。後続が登ってこれるように預かったロープを下ろした。
「急な風が吹くかもしれません。どうかお気を付けて」
 アルフェニアが風の精霊に呼び掛けたおかげで、本来周囲を吹き抜けていたであろう風はほとんど止んでいる。登る最中に風に煽られたりすれば目も当てられない。誰かが手を差し伸べ、誰かがその手を掴み、一人ずつ崖を越えていく。
「!」
 足場とした石が揺れ、一瞬シュシュの身体がぐらついた。肝が冷える。しかしその背をびいどろのジェリーが支える。
「あ、ありがとうございます……!」
 油断はなくとも、何が起こるかわからないのが自然というものだ。登り終えたシュシュがはにかめば、びいどろもジュリーも嬉しそうな趣になる。
 猟兵たちが協力体制を敷いたのがよかったのだろう。その場にいた者すべてが登り切った。
 そうなればほっと一息。一度休憩を挟もうと言い出したのは誰だっただろう。どのみち険しい道をずっと緊張しながら進むのは無謀というものだ。肝心のところで集中力を切らさないためにも、近くにあったキャラバンのキャンプ跡に腰を落ち着ける。
 水筒の水を喉に落としながら、誰ともなくサフィーリへと思いを馳せた。山間からは青空はあまり見えないけれど、その澄んだ色は地上にいる時より濃く鮮やかに感じられる。
「サフィーリの咲くところに何があるんだろう。もしかすると、ドラゴンも青い花見られてないのかな」
 何気なしにびいどろが呟いたら、アルフェニアが眉根を寄せた。
「そもそもの前提条件の話ですが……この状況でも、サフィーリの花は残っている…のでしょうか? 少し心配になってきますね」
 予知を伝えてきたグリモア猟兵は何も言及していなかったが、実際サフィーリの花の現状は誰も知らないのだ。もしかしたらドラゴンがエネルギーをすべて吸い取ってしまっているかもしれない。その場合はドラゴンを倒せばゆくゆくはまた花を咲かせるかもしれないけれど。
「……じゃあ、そこにはもっと、ひみつがあったりするの、かも?」
「そうかもしれないな」
 びいどろの囁きに嵯泉が口の端を上げる。今考えることはあくまで推定に過ぎないけれど、叶うならサフィーリが綺麗に咲くところを見てみたい。そんな願いが猟兵たちの間で伝染していく。
 奇跡の青と呼ばれる花。それは容易く手に入らないからこそ、そう言われるようになったのかもしれない。
「この苦労の果てに手に入れていたのであろう事を思えば、その青の貴重さも、咲いた花の姿が幸福を約束するという言い伝えも。納得が行くというものかもしれんな」
「そうですね。だからこそ珍重されたのでしょう」
 アルフェニアは水色の双眸を細めた。幸福が咲いていればいい。今も、これからも。
 水筒を仕舞いながら、ふとシュシュが閃いたように声を上げる。
「あっ、サフィーリをスカーフの染物にして、村の子どもたちへプレゼントするのはどうでしょうかっ」
 村の人々は簡素で質素な暮らしをしていた。サフィーリは大都市に運ばれるのだろう、村の人々はその美しさの恩恵にあずかっていないようにシュシュは思う。
「まだ風も冷たいですし、遠くへいっても青く見つけやすく、お母さんもきっと安心ですっ!」
「いいかも」
 びいどろがはにかむように笑った。きっと村にもさいわいが訪れる。そんな予感が光のように胸に差し込んだから。
「もうひといき、頑張りましょうね」
 アルフェニアが己の背を押すように告げたなら、ちょうど精霊たちが偵察から戻って来た。報告を受け情報を整理し、再び猟兵たちは歩き出す。
 もう暫く山登りは続く。
 サフィーリが咲くところに行くまで、膝を折るわけにはいかないのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

フィーア・ストリッツ
フィーアは考えます
全員ブースターを装備し空を飛べばよいのでは?
え?着地の際に花が散るからNG?
それではしょうが無いですね

「崖をよじ登って進みます。論理的に最短経路だと判断します」
(カエルのようなポーズで崖に張り付く16才の乙女)
もちろんフィーアは力押ししか脳のないお馬鹿さんではありませんので
先行したところでロープを張り、後続の為にサポートをする気遣いも可能です
そういう分担なら、頑丈なフィーアがこの役目には最適でしょう
その他、力仕事や危険なミッションが有ればフィーアにご用命下さい
(アドリブ絡み歓迎)

無事に花畑にたどり着けたら、電池が切れたように動きを止め
ただ花を静かに見つめ続ける


杠葉・はつね
道が険しいのね……
難しいかもしれないけれど、安全な道を探すわ
このあとドラゴンと相対するのなら、無駄な怪我は負いたくないもの

多少土が柔らかいところでも抜け道があるか探してみるわ
途中で人とあったらなるべく情報共有したいわね
私からも見てきた情報を教えるわ
通れそうな道があったら、少し先を見て崖から落ちないように向かうわね
通ってきた木にはテープを巻いておきましょう

帰りのこともあるもの


エスチーカ・アムグラド
険しい山道ですか……
ひゅーんと飛んでいきたい所ですが、風もびゅうびゅう吹いているでしょうか?
【空中戦】の要領で何とかなったりするといいのですが……

でもでもっ!例え飛んで進むのが難しくても何かあった時の心配は飛べる種族の方が少ないはず!
チーカは少し先を行って使う道が安全かどうか皆さんにお知らせします!旅の導き手とも呼ばれるフェアリーですから!険しい道でも【勇気】は手放さないように登っていきますよ!

もし疲れてしまったり怪我をしてしまった人が居たら、その人を【鼓舞】できるようチーカが励まします!
皆さんで力を合わせればきっと目的の場所に辿り着けます!きっと、大丈夫!


オルハ・オランシュ
この山道、気を抜いたら大変なことになりそうだね
猟兵同士で協力したいな
大丈夫、なんとかなるよ

間違っても落ちることのないように地形をよく見よう
あっ!そっちはやめておいて!
確かに足場は広いけど脆そうだから
【野生の勘】でそう思えたんだ
一見険しく見えてもこっちの方が意外と安全だと思うよ
私も疲れちゃってキツくなってきたんだけどね……
一緒に頑張ろう
なるべく【目立たない】ように動いて魔物の目から逃れたいな
状況次第では一旦動きを止めて音を立てないでやり過ごそう

サフィーリまできっとあと少し
奇跡の花が咲いてるところを見られたらもうそれだけで幸せだけど
帰ってこなかったキャラバンの人達を思うと……
ごめん、なんでもないよ




「フィーアは考えます。全員ブースターを装備し空を飛べばよいのでは?」
 間が落ちた。
 フィーア・ストリッツの大真面目な発言にツッコミが追いつかない。遠くでカラスがカァと鳴いた。
「ええと……そういうものを使うと、サフィーリが咲いている場所に着地したら、花が傷んでしまうのではないかしら」
「それではしょうが無いですね」
 杠葉・はつねが控えめに進言すれば、フィーアも引き下がる。それで納得するんだ、とオルハ・オランシュが渇いた笑いを零す。
 続く山道は厳しい。気を抜いたらきっと足元をすくわれる。
 オルハは仲間の猟兵たちへ視線を向ける。口癖は自分に言い聞かせるように。
「猟兵同士で協力したいな。大丈夫、なんとかなるよ」
「ええ、協力し合ったらきっと大丈夫です!」
 エスチーカ・アムグラドは溌溂とした笑顔を咲かせた。ひらり前方に舞い出たなら突風に煽られそうになる。敢えて風に乗ってくるり反転、すぐに安定を取り戻す。
 山間故に時折風が吹きすさぶこともあり、飛んで進むのが難しい時もあろう。それでも何かあった時の心配は飛べる種族の方が少ないはず。
 だからエスチーカの顔に憂いは宿らない。明るくも清々しい面差しで言う。
「チーカは少し先を行って使う道が安全かどうか皆さんにお知らせします! 旅の導き手とも呼ばれるフェアリーですから!」
「もし何かあったらすぐに戻ってきてね」
 はつねの心配をしっかり受け止めたエスチーカが飛んだ。周囲を見渡しながら偵察する。
 エスチーカは臆さない。フェアリーは旅の導き手とも呼ばれる存在だから。前を見据え続ける。勇気はいつだってこの胸にある。だから往くのだ。
 そして幾らか時間が経った頃。桃色の髪翻したフェアリーが仲間たちの元へ戻って来た。フィーアが短く問う。
「いかがでしたか」
「向こうは崖になって道そのものが終わってました。傾斜はきついですが、こちら側の道のほうがよさそうです。ただ」
「ただ?」
 怪訝そうな顔のオルハに、エスチーカは見てもらったほうが早いですと神妙に告げた。山道を進んでいく。
 すると辿り着いた先は、こちらもまたひとつの崖であった。ただでこぼこと岩が出っ張っているため、足をかけて登ればどうにか、というところ。それなりに足場は確保出来そうだが、素直に歩くだけじゃ乗り越えられない。
「わかりました」
 明瞭な声だった。フィーアは進み出て岩に手をかける。
「崖をよじ登って進みます。論理的に最短経路だと判断します。もっと言うと先行したところでロープを張りますのでそちらを使って登ってください。きっとキャラバンの方々もそうして進んだはずです」
 フィーアは力押ししか脳のないお馬鹿さんではありませんので。
 そう告げるフィーアの横顔は潔さに満ちている。はつねが一瞬空気を食んだ後、緩やかな微笑みを掲げた。
「では、お願い。気を付けて」
 オルハとエスチーカも承諾する。その信頼を背に負って、フィーアは岩面にへばりついた。まるでカエルが壁にひっつくような有様だった。しかしそれでいて器用に登り始める。年頃の乙女(16歳)としては正直なかなか女子力に欠ける様相ではあるけれど、見た目を繕う必要は感じなかった。だって、進まなければいけないのだ。何も躊躇することなんてない。
 そんな心意気が天に通じたのかもしれない。フィーアは絶壁を登り切ることに成功する。そしてちょうどいい具合にロープを結べる岩も見つける。手早く固定したなら崖下にロープを下ろした。それを使いながら他の猟兵たちも登り始めた。岩肌を蹴るようにして、しかし確かに踏みしめながら、進む。
 険しい道を進んできて、中には挫けそうになった者もいたけれど。
「皆さんで力を合わせれば目的の場所に辿り着けます! きっと、大丈夫!」
 エスチーカの鼓舞は仲間の背を確かに支えていただろう。それぞれがきつく前を見据え、決して諦めずに。その思いがロープのように編まれて、命綱のようにしっかり繋がれるのだ。
 どうにか全員が登り終えたなら誰ともなく安堵の息がまろび出る。
 しかし一難去ってまた一難。
 道が分かれている。片方が大きな岩が重なるように佇んでいて、入り組んでいる。はたまたもう片方が断崖絶壁の縁だ。岩がごろごろしているほうは一見道が見いだせない。では崖っぷちのほうを進むべきかとフィーアが歩を進めようとした瞬間だった。
「あっ! そっちはやめておいて! 確かに足場は広いけど脆そうだから」
 胸に萌す何かに急かされるようにオルハが声を張った。フィーアが咄嗟に足を止めてくれたから、オルハは続けた。
「一見険しく見えてもこっちの方が意外と安全だと思うよ」
 それは勘でしかない。ないけれど、奇妙なほどに腑に落ちる確信がある。故にオルハは曰くの『こっち』を指差した。
しばし沈黙が落ちる。巨岩群とも言うべきその方角を見て、フィーアはあっさり頷いた。そこには共に山越えをする仲間への確かな信頼が横たわっていた。それを、誰もが尊重したいと感じていた。だから次の動きに迷いはない。
「頑丈なフィーアはどの道でもお役に立てます。了解です。では岩側から行きましょう」
「私も疲れちゃってキツくなってきたんだけどね……一緒に頑張ろう」
「そうね、頑張りましょう。出来るだけ安全な道を行くに越したことはないわ。このあとドラゴンと相対するのなら、無駄な怪我は負いたくないもの」
 はつねの懸念はもっともだった。サフィーリを探しに行くのは勿論だが、この山を制覇したならばドラゴンとの戦いが待ち受けている。余裕を残すほど楽な道程ではないが、負傷も疲労も少ないほうがいいに決まっている。
 ここにもテープを飾っておこう。岩は勿論、ごく少ない目印となる木など、今までも分岐点となりそうな箇所には目立つようにはつねがテープを結うなどして固定しておいたのだ。
「帰りのこともあるもの」
 そう、帰りも無事に帰りつかなければならない。山を踏破しただけでは、ドラゴンを倒すだけでは意味がない。その向こうを見渡すようなはつねの瞳は、誰より先を見通していたのかもしれない。帰るまでが、冒険だ。
 自分たちの背よりも大きい岩の間をすり抜けるように慎重に進む。時折道が塞がっているところもあったから、そこは根気よく進むしかなかった。
 エスチーカに先行してもらうにも、飛行にだって体力を使うのだ。ドラゴンとの戦いが控えている以上あまり無理は強いられない。だから要事に備えてもらいたいと猟兵の誰かが言った。エスチーカは笑顔で快諾してくれる。
 そんな時だ。
 ふと、はつねの足が止まった。
 眼前の岩をこんこん、と手の甲で叩く。
「どうかした?」
 オルハの問いに、はつねは暫しの間を置いた後に告げた。
「……キャラバンは慎重な性分だったのかしら。ここ、他の岩とは少し違うわ。隠し通路というには大雑把だけれど」
 今猟兵たちの立っている角度から見れば、死角の影となって見えないところ。しかし少し角度を変えて見てみれば――細い細い道の輪郭が姿を現す。
 はつねがそっと身を滑らせたなら、足元の感触が違うと知れる。多少土が柔らかいところではあるが、それはすなわち花、サフィールの群生地に近いということではないか。
 そんな閃きを共有した猟兵たちは身を屈めて隠し通路へ踏み入った。視界がかなり悪いが岩の隙間から光が零れ落ちるからどうにか歩ける。
 念のためエスチーカが奥を先に見に行ってくれたところ、かんばせを輝かせて戻って来た。
 つまり、目的地はもうすぐ。
 そう思えば誰の足取りも軽くなる。そんな折、オルハは少し、少しだけ。表情に苦いものを滲ませた。明るい気持ちばかりとは、いかない。
「サフィーリまできっとあと少し、奇跡の花が咲いてるところを見られたらもうそれだけで幸せだけど」
 悲痛な響きだった。岩にその声は反響しない。けれど冬の空気も馴染まない。ありのままの姿で、猟兵たちへと届く。
「帰ってこなかったキャラバンの人達を思うと……、……、…ごめん、なんでもないよ」
 かぶりを振った。今は何も言えないし、言ったからって何も変わらない。
 今は進もう。
 冬の冴えた青空は少ししか見えない。歩き続けたら洞窟の入口めいたものが見えてきた。ここまで来て引き返すのも違うから、そのまま先へと続く。
 果たしてその洞窟はトンネルのようなものだったのだろう。抜けたら、一気に視界が開けた。
「――――…………」
 誰かが、言葉を失った。
 そこには天上の蒼が咲いていた。
 フィーアが立ち尽くしていた。電池が切れたように動きを止め、ただ花を静かに見つめ続ける。ずっと、視線を注ぎ続けた。
 青い世界に包まれるような心地だったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『息吹の竜『グラスアボラス』』

POW   :    フラワリングブレス
【吐き出された息吹 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【咲き乱れるフラワーカッター】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ガーデン・オブ・ゲンティアナ
自身の装備武器を無数の【竜胆 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    フラワーフィールド
【吐き出された息吹 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を花畑で埋め】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイツ・ディンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夢の在処
 地面を覆い尽くす青色は見渡す限りの一面を埋めるように広がっている。屋根はなかった。中庭の広場のような場所に到着したのだと理解する。青空の下、可憐な花弁が揺れる。大人のひざ丈くらいの高さで花が咲いている。また揺れる。その姿は陳腐な言葉で言うならば、とても綺麗だった。
 誰もが優しい彩のサフィーリへ、只管に見入っていた。
 芳しくも柔らかい香り、鮮やかで瑞々しい青色。どのすべてが幻想的だ。
 そうやってずっと花を愛でていられたら幸せだったのかもしれない。
 けれど――そんな簡単にハッピーエンドには辿り着かないって、小さい頃に本で読んだような気もした。
「……あそこ、青じゃない」
 ある猟兵が指差したのは、花畑の真中あたり。花に包まれて寝息を立てているそれは、猟兵たちの気配を察知したのだろうか。伸びをするように翼を広げた。些か迫力に欠ける容貌であれ、龍に変わりはない。絶大なる魔力を持つモンスター。
「っ、あれがドラゴン」
 誰かの口から驚嘆と動揺が転がり落ちたのも無理はない。その様は、少なくともドラゴンのせいでサフィーリに害が及んでいるようには見えなかったからだ。
 ドラゴンが眠っていた場所も、周辺も、この広場全体を見ても、サフィーリが揺り籠のようにドラゴンを受け止めているようにすら見える。一見、穏やかなほどに。
 当惑する猟兵たちの思考にちり、と静電気のような痺れが伝わる。
「ドラゴンが、脳に直接呼びかけてきてる……?」
 猟兵の一人が口にした言葉は実際、真実であった。

 ――帰れ。サフィーリには指一本触れさせない。

 猟兵は息を詰まらせた。そして、幾人かは狼狽する。
「でも、サフィーリの色を待ち望んでいる人がたくさんいるんです」
 勇気を振り絞って告げた猟兵への回答は、端的であった。

 ――お前たちはサフィーリを摘み過ぎた。だから許さない。
 ――ここで、ぼくが守るんだ。
 ――ずっとサフィーリが綺麗に咲いていられるように、守るんだ。

 もしここで。
 猟兵の誰かが「だからキャラバンを壊滅させたのか」と聞けば「そうだ」と答えるだろう。
 他の誰かが「他の地域の花をはじめとした植物を枯らせたのはお前か」と聞けば「そうだ。サフィーリが元気になってくれるには花のエネルギーが一番いい」と答えるだろう。
 そう。
 ドラゴンは、サフィーリを乱獲するキャラバンからサフィーリを守ろうとしただけだったのだ。
 しかしこのドラゴンはオブリビオンだ。倒さねばならない。キャラバンのやり方が褒められたものでなかったかもしれないが、それで命を奪っていい理由にはならない。そこを、きちんと認識して戦いに臨む必要がある。
 サフィーリの花畑、ここで戦うことも出来る。しかしそのままではサフィーリを踏み荒らすことにもなりかねない。それはドラゴンも望んではいないだろう。
 冷静に視線を巡らせたなら、花畑のより奥まった向こう側に、崖にせり出した高台を望むことが叶うはず。ドラゴンを挑発するなり誘うなりして、高台まで引っ張り出してから本格的に相対しよう。

 その刃は誰のために。
 戦いを終えた時、あなたはどんな花を心に抱えているだろうか。
フィーア・ストリッツ
己の好む花を守る為に人を狩った竜も、己の収入の為に花を狩った人も
程度としては完全に同等です
成程、意見は平行線にしかなりませんね。議論すら無意味でしょう
オブリビオンが改心とかしても――ええ、気持ち悪いですし
「これからお前を狩りますが。花を守りたいなら花畑から退避することをお勧めします」
「どこに居ようとフィーアはお前をブチ殺しますが」(発砲)

武器で射撃を仕掛けつつ必殺の機会を伺います
警戒すべきブレスは口の向きにしか撃てない
ならば竜の周囲で旋回戦をしかけて回避確率を上げましょう
何より、フィーアが狙われている限り仲間は安全です
「フィーアは騎士ですので。それに見合う働きをする必要があると判断します」


エスチーカ・アムグラド
サフィーリのお花のために……
このお花には優しいドラゴンさんなのかもしれないけど……
でも、やっぱり人の命を奪ってしまったあなたは戦わないと……!

ドラゴンさんにお話しして高台に【おびき寄せ】ます
あなたの守るサフィーリのお花が散ってしまわないように。

どうしてもお話を聞いてくれなかったら、一定の距離を保ちながら【一閃】で攻撃して【おびき寄せ】るしかないでしょうか……
高台での戦いが始まってもお花畑に被害が出ないように位置取って注意を引きながら戦います!

沢山の人が求めるお花、ドラゴンさんが守ったお花
……もしかしたらいつか無くなってしまうのかもしれないけれど、だからこそちゃんと見て、目に焼き付けて帰らないと




 一歩先へ。
 最初に踏み出したのは誰だっただろう。わからないし、そんなことは些末事であるかもしれない。
 ただ言えるのは、前に進まなければ何も生まないということだ。
「サフィーリのお花のために……このお花には優しいドラゴンさんなのかもしれないけど……」
 エスチーカ・アムグラドの明るい表情に陰りが差す。グラスアボラスの気持ちがまったく理解出来ないわけではないから、簡単に否を突きつけるようなことはしたくない。善悪の判断で片づけられるほど世の中はきっと、綺麗じゃない。
 けれど。
「でも、やっぱり人の命を奪ってしまったあなたとは戦わないと……!」
 決然と顔を上げる。どんな理由があろうとも、キャラバンや他の採取者の命を奪ったのは紛れもない事実。
 エスチーカの意志を掬い、フィーア・ストリッツは真直ぐ龍へと視線を向ける。揺るがぬ朱の眼差しの靭さは、磨かれた紅玉にも似ていた。
「己の好む花を守る為に人を狩った竜も、己の収入の為に花を狩った人も、程度としては完全に同等です」
 故にドラゴンを見過ごすなどという選択肢は、少なくともフィーアには存在しなかった。
 ――お前たちに何がわかる。ぼくの邪魔はさせない。
 再び龍は意識を飛ばしてきた。軽く双眸を眇めて、フィーアは吐き捨てるように言う。
「成程、意見は平行線にしかなりませんね。議論すら無意味でしょう」
 なれば以後は言葉にて語るに能わず。
 力を、示そう。
「これからお前を狩りますが。花を守りたいなら花畑から退避することをお勧めします」
 それは宣言であり宣告だ。ドラゴンがその巨体を動かそうとする前に、馳せる。
 横っ面を叩くような角度で叩き込まれたのは光線銃だ。光が迸る。それは龍の顎に到達した瞬間に氷結し、瞬く間にその一閃を氷柱と化す。
 ドラゴンが短く哭いた。その眼に敵意を湛え猟兵たちを睨むが、フィーアはまったく臆さない。
「どこに居ようとフィーアはお前をブチ殺しますが」
 続けざまに両腕から掃射するのはマシンガンだ。降る鉛。その容赦のなさは彼女の本気を如実に語るだろう。
 張り詰める空気から一本の糸を手繰るようにエスチーカは問う。
「……場所を変えない? あなたの守るサフィーリのお花が散ってしまわないように」
 言いながらその小さく細い手が指したのは高台。まるで今このためにあるお誂えの舞台のようだ。
「行こう」
 決定事項を伝えるような響きだった。エスチーカがひらり舞い、高台へと先行するべく飛翔する。ドラゴンもフィーアの威圧とエスチーカの誘導に従い、春の花に似た彩の翼を広げる。他の猟兵たちもひとまず高台へと駆けていく。
 高台へと到着して、周囲に視線を巡らせたエスチーカは僅かに唇を噛んだ。
 まるで周囲で咲き誇るサフィーリがこの戦いを見届けているみたいだ。
 冬の風は青い花を揺らせど散らしはしないから、大丈夫。ここで手折らせはしない。
「――行きます!! 私たちが相手です!」
 高らかに言い放ったのは、注意を惹いて少しでもサフィーリへの損害を減らしたいという想い故だ。
 アムグラドの剣はどこにだって届く。その気概こそが鋭さの源だ。妖剣を真直ぐに振り下ろせば、その太刀筋が空間を超えた。一気にドラゴンの鼻先を斬撃が削ぎ落とす。
 ドラゴンが反射の如くに吐息を漏らせば、それが瞬く間に竜胆の花弁に変わる。
 サフィーリとは似て非なる青色の花吹雪が猛然と猟兵たちを斬り刻む。
 高台には遮蔽物がない。故に戦場にいた猟兵が次々と攻撃に巻き込まれる。その事実を確と認識したフィーアは低い姿勢で一気にドラゴンに肉薄した。
 警戒すべきブレスは口の向きにしか撃てない。
 であれば、竜の周囲で旋回戦を仕掛けて回避確率を上げればいい。何より自分が狙われていれば仲間に攻撃が向く可能性は低くなる。
 ドラゴンの懐に滑り込んだフィーアはその顎下めがけて再びマシンガンを撃ちつけた。
「フィーアは騎士ですので。それに見合う働きをする必要があると判断します」
 退かない。
 その意思をこそ矛として立つ。
 その心意気を正確に拾ったエスチーカも毅然と前を見据えた。沢山の人が求める花、ドラゴンが守ろうとする花。サフィーリが視界の隅で揺れる。
 もしかしたらいつか無くなってしまうのかもしれない。しれないけれど、だからこそちゃんと見て、目に焼き付けて帰ろうと、決めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杠葉・はつね
そう、あなたは守っているのね
わたしとは、逆ね
だからといって、引き下がれないわ
サフィーリはきれいだけど、他の花もきれいなのだもの

初撃はなるべく避けるようにしたいわね
はじめに怪我をしたくないもの
攻撃よりも防御を優先に
初撃のあとは動きながら遠慮はしないわよ
体が大きいと、よく見えそうだわ
知っていて?光の矢はいたいのよ
……といってもわたしにあなたを裁くことなんてできないけど

終わったらドラゴンはお墓を
できれば、ドラゴンのお墓には守っていたサフィーリを傍に

きれいね。ほんとうに
大事に守られて、育てられて
悲しいほどに、きれいだわ


シュシュ・シュエット
……ドラゴンさんのお気持ち、ちょっとだけわかります。
わたしも大切な森のお友達を傷つけられたら、どんよりしちゃうと思いますから……。
それでも、花とともに暮らす動物さんたちの居場所すら奪うふるまいを、受け入れるわけにはいきませんっ。

【ライオンライド】を使い、サフィーリさんたちを傷つけないよう留意しながら駆け抜け、ドラゴンさんを高台へお誘いします。
その後は竜胆の花びらの射程を*学習力で*見切りつつ、ヒット&アウェイで戦います。
太陽光を黄金から反射させて、目くらましも狙えたらいいですねっ。
ライオンさん、もう少しだけわたしのわがままに付き合ってください……!

……高台からの眺め、きっときれいなのですよね。




 ドラゴンは果敢に立ち向かってくる。それほどまでにサフィーリを守りたいのだろう。
 その苛烈な意思が、気概が、肌をぴりりと刺すように伝わってくる。
「そう、あなたは守っているのね。わたしとは、逆ね」
 杠葉・はつねが噛みしめるように囁いた。祟り事の執行人形であるはつねは、滅ぼす側の存在だ。故にドラゴンの姿勢がいっそ眩しくも思える。自分とは違う、そんな当たり前の事実をまざまざと見せつけられた心地。
 けれど。
「だからといって、引き下がれないわ。サフィーリはきれいだけど、他の花もきれいなのだもの」
 太陽の光を受けて咲き誇るサフィーリは麗しい。
 けれど村に立ち寄った時に他の花が見られなかったことを、はつねは知っている。他の花だって花開くことは許されるはずだ。誰にも害されず、明日を望むことが出来るはずだ。
 薄荷緑の髪を風に流して、凛と向き直る。その様子を見て、シュシュ・シュエットはわだかまるような胸裏を飼い慣らす。
「……ドラゴンさんのお気持ち、ちょっとだけわかります」
 駆ける小鹿、囀る小鳥、朝露に濡れる若葉。森に生きるいとしいものたち。シュシュにとっては自然のすべてが大切な友達だ。それがもし損なわれたらと思えば、暗澹たる心地になることは想像に容易い。
 しかし顔を上げた。目を逸らさずに、前を見詰めた。
「それでも、花とともに暮らす動物さんたちの居場所すら奪うふるまいを、受け入れるわけにはいきませんっ」
 娘たちの決意は固い。それを噛み千切る勢いでドラゴンが咆哮した。
 吹きすさぶ息吹。しっかりその方向を見定めていたはつねが後方に飛び退いた。ブレスは地の上を空回るも、次の瞬間には眩いばかりの花畑を顕現させる。赤、橙、紫。華やぐ光景に息を呑んではいられない。この花畑の力はドラゴンの助けとなるだろう。ならば踏み入らせるわけにはいかない。
「お願いします……!」
 シュシュの願いに応えるように、一頭の黄金のライオンが姿を現す。優に2mを超すライオンに騎乗したシュシュは勢いつけてドラゴンに突貫していく。腹に衝突したなら、吹っ飛びこそしないものの龍は流石に身を揺るがせた。巨躯が硬直する時間が生まれる。
 生まれた隙を埋めるように、はつねは細く長い指先を手向ける。
「遠慮はしないわよ」
 確定事項を突きつけるような声音で告げた。
 体が大きいとよく見える。狙い澄ませるのにお誂え向きだ。
「知っていて? 光の矢はいたいのよ」
 とはいえ己にドラゴンを裁くことなんて出来ない。だからこれは断罪の光でありながらそうではない。ただ制するための、光だ。
 指先で収縮した光が弾けた。
 矢と成る。疾駆する。鋭い鏃は龍の頬骨を貫通する。続けざまにドラゴンを攻め立てるのはシュシュが招いたネズミたち。小さい姿だが集まれば力になる。ドラゴンの前脚を掬って転ばせた。窮鼠猫を、ではなく龍を噛む。
 龍の歯ぎしりの音が響く。再び戦場に竜胆が舞った。瞬く間に眼前の空気を埋め往くそれをシュシュは間一髪で避ける。細かい切り傷こそ生まれるが致命傷にはならない。
 ドラゴンの攻撃はどれもその力及ぼす範囲が広いものばかりだ。具体的な間合いが取りにくいため、ヒットアンドアウェイの戦法を取るのは些か難しいかもしれない。
 しかし徒に距離を縮めてばかりでは体力が持たない。間隔を取って冷静な視野を確保すると、高台からの光景に一瞬呼吸を止めた。
 高台は見晴らしがいい。冬の陽光の下で揺れるサフィーリは幻想的だ。
 ――無性に、胸が締め付けられる。
「大丈夫よ、いきましょう」
 シュシュの耳朶をはつねの声が揺らす。応えるように頷く。そう、大丈夫。半端なところで倒れたりしない。
 黄金のライオンに太陽の光が注げば、その反射で僅かにドラゴンの目を眩ませる。
「ライオンさん、もう少しだけわたしのわがままに付き合ってください……!」
 促すように背を撫でた。シュシュの眼差しに濁りなんて存在しない。
 そこに生まれた時間すら無駄にしない。そのために、猟兵たちはまた、戦場を駆け抜けていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

海月・びいどろ
戦ってくれている猟兵たちの合間を縫って
迷彩を纏い、フェイントを仕掛けるよ
海月人形たちを喚び出したなら
マヒ攻撃で動きを鈍く出来ないか試してみよう
サフィーリの方へ向かう攻撃があれば、かばうね
痛い、は、よく分からないけど
激痛耐性で素早く動けるように構えて

サフィーリがころされてしまうのを
キミは怒ったんだね
…でも、同じことを他のヒトにしてしまったら
その悲しみは、ずっと終わらないもの

あの青に惹かれただけの、やさしい子
骸の海は、あおいのかな
さいごの歌を、送る言葉を
さよなら、花守の竜

しっかりと見届けよう

サフィーリの花畑は、いつかは見つけ出されてしまうかもしれないけれど
今だけ、このままで
……すごく、きれいだね


鷲生・嵯泉
お前の想い其の物を否定する気は無い
……嘗て護れず喪った痛みを知るからこそ
その想いを蔑ろにはしたくないとすら思う処もある……が
他を排し、命を奪うものは見過ごせん
何よりオブリビオンを放置出来る筈も無い
私は、決して揺らがない

図れるならば他と連携を以って当たる
多少の傷など構わず攻撃優先の姿勢にて、怯む隙があれば前へ出る
烈戒怒涛を使用しての見切りとカウンターでの攻撃
攻撃は激痛耐性と武器受けで耐えるとしよう

サフィーリとお前では既に生きる理が違う
何れ失われるとしても、世界の循環に在ってこそ花は花足り得る
未来へと咲く花を過去へと沈むものには渡せん

私は戦う以外の護り様を知らん
……花の未来は心有る者に任せよう


オルハ・オランシュ
そうだね、サフィーリはとっても綺麗
君はこの花の命をたった一人で守ってきた立派な竜……
でも、そのために他の命を多く奪ったことは許されない
人はサフィーリのように同じようには育たないの
びっくりするほど個性がバラバラでね、一度散ったらその個性はもうどこにも咲かない
ただ、散るだけ

(なんて……
人命を奪ったことのある私には言う資格のない言葉かな)

【力溜め】で最大限に力を引き出しておくよ
攻撃されたら【見切り】を狙ってどうにか凌ぎたい
【早業】の【2回攻撃】でフィロ・ガスタで、他の猟平が与えた傷口を狙っていこう

せめてサフィーリの乱獲はやめさせるって、約束できたらいいな


フィーア・ストリッツ
私は竜を呼びます。私は竜を呼びます。
私は竜を殺します。私は竜を殺します。
「竜たるフィーアと、守護者たるアナタが。残るのはどちらか、今こそ試しましょう」

【氷雪竜砲】を用いてドラゴンに大打撃を与えることを狙います
飛ばす花弁も、花畑のフィールドも
纏めてフィーアのブレスで凍てつかせて見せましょう
「氷蒼の棺に沈んで眠れ、過ぎ去りし者」

戦闘後は、どうすることもなく
只花の青を目に焼き付けて帰りましょう
ええ、フィーアの記憶力は優秀です
「花をどうするかは、この世界の人が決めるべきでしょう。保護するのも、狩り尽すも、彼らの選択です」
フィーアは過去を狩るだけのモノです




 冬でさえ降り注ぐ光は穏やかだ。
 それが獅子のたてがみに反射し龍の動きを少しでも鈍らせれば、猟兵たちは隙を逃さずに奔走した。
 先に鷲生・嵯泉とフィーアが馳せる。フィーアが銃弾の波濤を浴びせれば、その狭間に嵯泉の剣閃が奔る。
 腹を裂かれたドラゴンが悲鳴を上げる。それを聞き届けた嵯泉が僅かに眉根を寄せた。
「お前の想い其の物を否定する気は無い」
 真摯な声だった。
 懐の灰塵を指先で辿る。嘗て大切なものを護れず喪った痛みを理解しているから、その想いを蔑ろにするつもりはなかったし、そうしたくもなかった。
 それでも。
「他を排し、命を奪うものは見過ごせん。何よりオブリビオンを放置出来る筈も無い」
 ――私は、決して揺らがない。
 それは己への誓いだったのかもしれない。更に一歩踏み込んで斬り込んだ。刃は鋭く、露をも払う。
 その太刀筋を見届けて海月・びいどろがドラゴンの側面に滑り込んだ。迷彩纏うびいどろは龍の視界に留まらない。後方からふわり送り出すのはふたごの海月。桃色ゼリーみたいな遊色浮かぶ子らは足をドラゴンの表皮に這わせる。そこから伝う痺れは龍の動きを絡め取るのに一役買うこととなる。事実、以降ドラゴンは大きく立ち回ることはなくなるのだ。花畑に降り立つことによる強化を防げたことは僥倖だろう。
 青い花を背に猟兵らと相対する龍に、びいどろはふと睫毛を伏せた。
「サフィーリがころされてしまうのを、キミは怒ったんだね」
 憂い、哀しみ、嘆き、どの感情も似ているのに的確ではない。
 そこに湛えられている趣は淡く、透き通るようだ。
「……でも、同じことを他のヒトにしてしまったら、その悲しみは、ずっと終わらないもの」
 かなしみの連鎖は、ここで途切れさせよう。
 きれいなままで、いさせてあげよう。
 びいどろの願いを確かに掬い取って、オルハ・オランシュは腕に力を蓄える。サフィーリはとっても綺麗だ。目の前で見たから、尚の事それを理解している。ただの見目以上に人も龍も惹きつけてやまない青いいろ。慮って、故に、声を手向けた。
「君はこの花の命をたった一人で守ってきた立派な竜……でも、そのために他の命を多く奪ったことは許されない」
 諭すように語り掛ける。三叉槍に思いを乗せるように、只管に、しんしんと。
「人はサフィーリのように同じようには育たないの。びっくりするほど個性がバラバラでね、一度散ったらその個性はもうどこにも咲かない」
 寒風に揺れるサフィーリとて、よくよく観察すれば一輪ずつ異なる彩やかたちを持っているだろう。それが更に顕著なのが人間だ。誰もが同質でも同様でもない。
 そして失われたものは二度と還らない。それは自然の摂理だった。
「咲かずに、ただ、散るだけ」
 なんとかなるよ、とはオルハの口癖だ。けれど、なんともならないものがあるということも、彼女は確かに理解していた。
 だから退かない。遅れはとらない。ふわり風がオルハの髪を舞い上げる。
 しかしドラゴンもやられっぱなしではなかった。突風のような息吹がオルハを襲う。途端、花弁の刃が猛然と刻みかかった。命中率の高いそれは見切りを心がけようとしたオルハの身をも逃さずに抉る。
「無事ですか」
 フィーアが短く問う。オルハは掌を突き出すようにして言葉を遮る。大丈夫。なんとかなるよ。胸裏で自分に言い聞かせる。
 人命を奪ったことのある自分には、ドラゴンを問いただす資格などないのかもしれない。
 だとしても――譲れないものがあった。
 顔を上げる。風が背を押す。目にも留まらぬ早業、とはこういうものを言うのかもしれない。一気に距離を詰めたオルハは三叉槍を捻りながら突き出した。
 反射で龍は首を逸らして回避するも、そのまま槍を叩きつけるように薙ぎ払う。
 二回攻撃、否、二段攻撃。先にフィーアが生んだ銃創への一撃は、更に肉を深く断つ。
 ドラゴンの叫びは痛切さを帯びる。それは身を断たれる痛みか、それとも花を守りたい心の痛みか。
 その判別は嵯泉にはつかなかったけれど、受け止めようと、思った。眼光は鋭い。
 再び竜胆の乱舞が猟兵たちへ繰り出される。青い世界は鈍い血の匂いを湛える。しかし嵯泉は剣精を身に纏わせながら、その機を慎重に見極めていく。
 反動。
 瞬間、嵯泉の姿が忽然と消えた。違う。龍の巨躯の死角となる、懐へと踏み込んでいる。
「サフィーリとお前では既に生きる理が違う」
 決然と告げる。道は違えたのだ。
 花は咲くものだが、実るものでもある。種を残して、次の世代へ続いていくものだ。
「何れ失われるとしても、世界の循環に在ってこそ花は花足り得る。未来へと咲く花を過去へと沈むものには渡せん」
 意志を籠めた刃が地摺りの如きに滑る。
 穿つ。
 斬撃でもあり打撃でもあるそれは、脇下から一気に振り上げられる。ドラゴンは一際高い声を上げた。猟兵たちの猛攻が削っていくドラゴンの命火を目の前にして、びいどろもそっと手を差し出すように伸べた。
「サフィーリの青に惹かれただけの、やさしい子。骸の海は、あおいのかな」
 捨てられた過去の集積体。それはどんな色なのだろう。常に未来へ進み続ける猟兵には知り得ないものなのかもしれない。
 海に還るきみへ、さいごの歌を、送る言葉を贈ろう。
「さよなら、花守の竜」
 それが合図。あおくあおく透き通る、ねむれぬ憂いに捧げる揺籃歌。
 びいどろの脣からやさしい旋律が染み入るように紡がれたなら、ドラゴンを襲うのは抗いがたい眠気だ。精神を蝕むそれは徐々にドラゴンの身を浸食していく。鳩尾を、深く、深く。
 その眼前にフィーアが降り立った。
 ――私は竜を呼びます。私は竜を呼びます。
 ――私は竜を殺します。私は竜を殺します。
「竜たるフィーアと、守護者たるアナタが。残るのはどちらか、今こそ試しましょう」
 言葉で何かを成せる段階は終わったのだ。だから、差し向ける眼差しは傲慢なほどに真直ぐだった。
 フィーアは大きく息を吸い込む。それはある種、龍のそれと近似値を取るもの。
 舞う花刃も、躍る竜胆も、高台を染める花畑も。
 すべて呑み込んで凍らせてしまおう。
 放たれたそれは猛吹雪にも似る。周囲だけでなく存在そのものを凍てつかせるそれは止まらない。花の翼も、緑の鱗も、すべて染め上げるように氷と成す。
 氷の吐息がドラゴンそのものを零下に閉じ込める。白銀の氷像のように。
 その様をびいどろは最後の最期まで目を逸らさずに見つめていた。しっかり見届けたいと、そう思ったから。
 フィーアが低く、告げる。
「氷蒼の棺に沈んで眠れ、過ぎ去りし者」
 言葉が終わるその瞬間、罅が入る。
 割れる。砕ける。粉々になって、何の破片も残さぬくらいに。

 静寂に浸る。
 氷雪は風が吹き流して行った。遺されたのは龍が額に戴いていた赤い石だ。これだけは熱を持ったかのように凍り付かず、その場に残されていた。
 それに視線を一度落とし、顔を上げたのは誰だったか。戦闘中は鑑賞する暇もなかったが、こうして改めて向き合うとやはりサフィーリは可憐であり、麗しい花であった。
 誰ともなく目に焼き付けるように、青を眺める。
「この景色を余さず見ていこう。そうしたい。……そう、思うんだ」
「ええ、フィーアの記憶力は優秀です」
 フィーアの言葉に少しだけ表情を緩めたオルハが周囲を見渡す。思い描くはこれからのこと。キャラバンはいなくなっても、この地が踏破されたと聞けば、また新しい商人たちが隊を組んで採取に訪れるだろうことは想像に容易い。びいどろは胸に押し寄せる何かを堪えるように、言う。
「サフィーリの花畑は、いつかは見つけ出されてしまうかもしれないけれど。今だけ、このままで」
「そうだね。せめてサフィーリの乱獲はやめさせるって、約束できたらいいな」
 オルハの囁きは高台を囲むサフィーリに紛れない。
 冬の澄んだ空気に、響く。嵯泉はやや躊躇を挟んで呟いた。
「私は戦う以外の護り様を知らん……花の未来は心有る者に任せよう」
「花をどうするかは、この世界の人が決めるべきでしょう。保護するのも、狩り尽すも、彼らの選択です」
 嵯泉は敢えて距離を取るように、どこか遠い眼差しでサフィーリを見遣っていた。その視線を追いかけるように眺めたフィーアが目を眇める。フィーアは過去を狩るだけのモノです、そう、事実だけをつけ足して。
 びいどろのひかる双眸がサフィーリを映し、細められる。
 青。咲く今も、染める明日も、鮮やかに色づくもの。
「……すごく、きれいだね」
 それは事実でもあり、願いでもあり、祈りでもあったのだろう。

 サフィーリに囲まれた高台にひとつの墓標が建てられたのが何時からか、誰も知らない。何を悼んだものなのかも、誰も知らない。
 後の世にもいのちを繋げ、咲き誇る青の花は大事に守られて、育てられて。
 悲しいほどに、美しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月27日


挿絵イラスト