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護るべきモノのない守護者

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●最奥を護る者
 地下迷宮「アルダワ」…生徒達の喧噪も届かない迷宮の一角。がらんどうの迷宮主の間に揺らぐような切り替わるような違和感が走り…いつの間にかそこには十数体の魔導ゴーレムが鎮座していた。そしてその中の一体、一際大きい個体へと火がともる。魔導蒸気機関が動く低い音を響かせながら動き出したそれは、周囲の魔導ゴーレムを起動するとともに何もないどこにも通じない最奥のそこを護るかのように歩きはじめる。

●生徒達の災難
 グリモアベースに訪れたあなた達を茲乃摘・七曜(魔術人形の騙り部・f00724)が口元を綻ばせながら出迎える。
「招集に応じてくださってありがとう。この度も赴いてもらいたいのは、アルダワ魔法学園となります」
 そう声を掛け魔法学園の地下迷宮での災魔の活性化や、迷宮成立のあらましを集まった猟兵達に説明し今回の予知で見えたことを語り始める。
「地下迷宮「アルダワ」にて新たに強力な災魔が発生してしまいました。そして、その影響で迷宮の構造が変化してしまい探索中の生徒さん達が巻き込まれています」
 そう言いながら彼女が取り出した迷宮の地図には碁盤の目状に部屋が並び隣接した部屋同士が繋がった整然とした迷宮の様子が描かれている。その地図を差し、壁や床の作りは石でそれぞれの部屋の部屋は数組の魔法学園の生徒たちのパーティーが入っても大丈夫な程度には広くて、通路は横並びに二人は移動できますが三人だと少し窮屈かもしれませんと注意書きを書き込んでゆく。

「整然とした様子からも分かるかもしれませんが、どちらかといえば迷宮に慣れていない生徒さん達が潜るような練習用の難易度が低い迷宮になります。ただ、顕れた災魔の影響で通路の位置が大幅に変わってしまったようです」
 そう言って説明に使っていた地図の部屋同士をつなぐ通路に幾つも「×」を書き込み、代わりに別の場所に新たな通路を書き込んでゆく。書き込まれた通路は別の部屋に繋がるものや繋がらずに行き止まりになるもの等、規則性はなく整然としていた迷宮が雑然とした迷宮らしい迷宮へと変化してゆく。幸いなことに変化があったのは通路のみで部屋の位置は変わっていないようなので元々の地図もある程度役に立つかとは思いますが、私の予知で見えたのは一部にすぎませんので油断はできません、と迷宮の入り口部分に追記を行った地図を猟兵達に手渡す。

 地図を配り終えた、猟兵達の瞳を見て七曜が願いを伝える。
「なので、皆さんにお願いしたいことは生徒さんの救助となります。体力や腕力に自信があれば、手当たり次第に探し回って頂いたり、洞窟の壁を壊して探索経路を増やしてもらったり。足の速さや器用さに自信があれば、技巧を凝らし、地図を作って効率よく状況を把握して頂いたり、生徒さんを安全に連れ帰れる道を確認してもらったり。知識や経験に自信のある方でしたら、感覚を研ぎ澄まし知恵を絞って迷宮の状況を推理して頂いたり、迷宮で迷っている生徒さんのケアの準備をしたりして取り残された彼らを助けて欲しいのです。ただ、生徒さんが中に残った状態なので行動の際には周囲に気を付けてくださいね?巻き込んだり怖がらせてしまうと困りますから…」

「それと、発生した災魔に関しては現状、表層部分には侵攻してこないと思われますので心配していただかなくて大丈夫です」
 災魔の種類や居場所などに関しては学生達の救助を行っている際に魔法学園の教師陣が並行して調査を行う予定なので続報を待って欲しいと告げる。

●猟兵達の護るべきモノ
「迷宮に到着しましたら魔法学園の教師陣には話は通っていますので、必要なものがあれば受け取って探索を開始してください。あと、心配はいらないと思いますが二次遭難には気を付けてください。改めまして皆さん、魔法学園の生徒さん達のことをよろしくお願い致しますね」
 状況を説明し終わった七曜が、深く頭を下げ転送の準備を進めてゆく。


カタリツヅル
 初めてお会いする方も、再びご覧になっていただけた方もよろしくお願いいたします。カタリツヅルと申します。ご縁ありましたら、皆さんの活躍を描かせていただければと思っております。

 舞台はアルダワ魔法学園となります。地下迷宮の変化により遭難してしまった生徒たちを救い、災魔…オブリビオンの群れを排除し、異変の元凶を倒していただくことが趣旨となります。

 最初の冒険に関しましては、不運にも深部に放り出された二人の生徒の救出とそれに伴う迷宮の踏破が主軸となります。彼らに負傷はありませんが精神的に疲労している状態です。また、そのほかにも生徒はおりますが、最深部にいる生徒ほど危機的な状況ではありませんので、ある程度の補佐があれば自力で戻れるでしょう。それでは、アルダワ魔法学園の平穏の為にもよろしくお願いいたします。

●連絡事項
 複数人での参加の際、プレイングの文字数圧縮のため使用ください。詳細はマスターページにも記載しております。また、迷宮内での各猟兵間の連絡等、各種行動に不都合はないものと致します。
(【タグ名:人数:タグ以外のキャラクターとの協力有無】)
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第1章 冒険 『探せ、地下迷宮!』

POW   :    体力の続く限り、手当たり次第に探し回る等

SPD   :    技巧を凝らし、地図を作って効率よく探す等

WIZ   :    感覚を研ぎ澄ませ、知恵を絞って推理する等

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

四軒屋・綴
改変絡み歓迎

リビングダンジョンと言った所か……生憎と食われてやる予定はないッ!

経験も知恵もないがやることは一つッ!【POW:体力の続く次第手当たり次第】だッ!

まずはユーベルコードを使用しし攻撃力重視の蒸気機関車系ヒーローに変身ッ!続いて【ダッシュ】でレスキュー開始ッ!ブーストダッシュだッ!

捜索にはゴーグルの『電脳世界展開能力』を使用ッ!もらったマップの画像を出しつつ【ハッキング】の応用と【メカニック】で『新しく出てきた壁』の『構造上の弱点』を見つけて【怪力】と上昇した攻撃力で殴り壊すッ!一声掛けてからなッ!

「離れてくれッ!壁を壊すッ!」

「歩けるか?おおよそもとの通りに歩けば帰れる筈だ。」


アマータ・プリムス
「迷子の捜索ですか。当機の得意分野ですね」
迷宮に潜る前に【世界知識】を使い教師陣にこの迷宮の概要について【情報収集】。

「なるほど本当に迷路の様ですね」

極力【目立たない】ように迷宮を進みながらシンフォニアとしての耳の良さを利用して反響する音を頼りに構造を把握し集めた情報と統合して【学習力】を使いながら迷宮の地図を作成。他の猟兵の方が出した音も聞き漏らさず位置を把握しておきます。助けを求める声があればそちらへ急ぎます。

鍵のかかった隠し扉などがあれば【鍵開け】で解錠を試みます。
「これもメイドの嗜みです」

※アドリブ、他の方との連携は歓迎です。



●迷宮への挑戦
 地下迷宮の入口に訪れた猟兵達が生徒の救助に向かうために準備を進める。状況確認を魔法学園の教師達に行い連絡手段や必要なものを受取り、それぞれのできることを提示し合い、遭難した生徒達を無事に連れ戻せるように相談を重ねてゆく。

●探索準備
 魔法学園の教師達から聞いた話と自身の知識からの予測を纏め、持参した蒸気式の小気味のいい音をさせる携帯秘書装置へと書き込んでいたアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)が、救助に必要な情報を纏め終え共に迷宮に潜る仲間へと声を掛ける。
「お待たせしました。迷子の捜索ならば、当機の得意分野です」
「頼りになるッ!リビングダンジョンと言った所だがッ!生憎と生徒を食わせてやる予定はないなッ!」
 赤光を湛えた己自身であるゴーグルを迷宮に向け、イヤーチムニーから蒸煙を昇らせていた四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)が、ハイテンションな声で気合を入れるように応じ、二人はともに迷宮へと足を進めてゆく。

●ヒーローとメイドの救出劇
 迷宮に入りまず行動を起こしたのは綴。悠然と歩を進め入口の部屋の中央に立った綴が打ち合わせた拳を胸元で交差させ声高に迷宮の壁を震わせるように叫ぶ。
「来たれマイボディッ!蒸騎構築ッ!ジョウキングッ!!」
 具現化するは蒸気を纏い黒煙を吐き出す鋼鉄。動輪が揺らぐように出現し、連結棒が組み合わさりその脚を装甲のように覆い鈍色に輝く。重ねられた両腕には強固な排障器が生み出され紅緋に染まり。胸部は煙室扉を模した装甲板が、肩には除煙板が鋭く組み合わされ、熱と蒸気を吐き出す蒸煙機関がその背中に出現する。そして、迷宮を震わす高音と共に赤光が前方を照らし出す。
 時を同じくして蒸煙が奏でる変身を背に、実際に迷宮が変化していることを確認していたアマータが、なるほど本当に迷路の様ですねと零しながら耳を澄まし助けるべき生徒が発する音を迷宮の中から拾い集める。本来であれば迷宮の壁に遮られるか細いそれを神秘の根源を揺らす歌い手たるアマータが捕え、事前に準備した情報と組み合わせ救助の為に必要な経路の算出と、破壊すべき壁の向こうに生徒がいないことを改めて確かめ蒸煙を滾らせた綴へと声を掛ける。
「綴様。この先にある部屋まで壁を壊して道を繋いでいただいてもよろしいでしょうか?」
「了解だッ!離れてくれッ!突貫するッ!」
 アマータから伝えられた目的地までの経路を電脳世界に展開しゴーグルから溢れる赤光で現実世界にも映しだした綴の蒸煙機関が猛る。そうして、身を沈め重心を落としより地面を咬んだ動輪へと暴力的なまでの力が伝播され綴…ジョウキングが壁へと向けて突き進み、排障器と壁がぶつかる轟音が響き渡りジョウキングを留め得なかった壁が粉砕され残骸となって零れ落ちる。
 既に見えなくなった綴の後姿を見送ったアマータが七つ道具を入れた道具袋から風を纏った愛用の箒を取り出し、遭難した生徒達が通りやすいように新たにできた通路の瓦礫の掃除と簡易の補修を行ってゆく。
「これもメイドの嗜みです」
 問題ない程度に片付いた通路をみてそう呟いたアマータは道が安全であることを伝えるため、名刺と共に出口方向を示した張り紙を張りつけ先行した綴を追いかけた。

●中層域の生徒達
 蒸煙のヒーローが幾度も壁を破壊し、アンティークドールのメイドが道を整えてしばし、迷宮の中ほどまで踏破したところで彼らが遭難した生徒達がいる部屋まで辿り着く。そこにいたのは比較的疲労の少なそうな三人組の魔法学園の生徒達。彼らは転校生ならではな出現の仕方に驚きつつも、しっかりした声で猟兵へと感謝の言葉を伝える。

●誇るべき成果
 その思いの外元気な様子に綴が己が切り開いた道を差し、疲労を感じさせない声色で生徒へと声を掛ける。
「歩けるか?俺が来た通りに歩けば帰れる筈だッ!」
「お持ちの地図を見せていただけますか?」
 その様子に箒を携えたアマータが合流し生徒達の持つ地図へ通ってきた通路を書き込み背中を押すように見送る。二人の先にはまだ迷宮が広がっているが迷宮に安全な道を作り後続の猟兵達へと伝える情報を纏め確かな一歩を刻んだ。

【蒸煙トンネル開通、救助状況及び迷宮地図更新】

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルバ・ファルチェ
(絡み、アドリブ歓迎)

救助すべき人が居るなら頑張らなきゃね。

事前に【情報収集】して、巻き込まれたであろう生徒達の特徴を聞いておくよ。

あとは、難しいだろうけど狼の嗅覚で【追跡】を試みる。
【救助活動】【失せ物探し】の要領で探せないかな?
あとは【第六感】と、無事であって欲しい【祈り】が天に届くよう願うだけだね。

迷宮にネズミとか動物が居れば【動物と話す】で話を聞いてみるのもいいかも。
直接生徒達を見てなくても、どんな風に道が繋がってるかとか、道の先に何があるかとか、そんな事がわかるかもしれないしね。

生徒達を見つける事が出来たらユーベルコードを使うよ。
怪我はなくても、何となく安心出来るかなぁって思うから。


ナノ・クロムウェル
厄介なことになりましたね…。
幸い私には依頼で地下迷宮「アルダワ」に何度か潜った経験はあります。
その時の冒険の記憶を活かし、救助にあたりましょう。
迷宮らしい迷宮へと変化していくのならこういった手法も効果があるかと思います。
迷宮は人を迷わす…全く規則が無いなんて事は無いはずです。
迷うように作られるはずですからね。
「サイバーアイ」で迷宮の様子を分析しながら慎重に進みましょう。

生徒さん達を見つけたら技能「医術」で応急手当を行いましょう。
大きなダメージを負っている人がいたらユーベルコード「命の炎」で癒し救助しましょう



●迷宮中層域への道
 先に迷宮を探索した猟兵達が残した道を歩きながら、新たに救助へと向かう猟兵達が奥へと進んでいく。幾人かの魔法学園の生徒達とすれ違い、その無事を喜びながらも仲間の残した情報を元に進むべき場所に向け迷宮を歩いてゆく。

●現状確認
 未踏区域まで辿り着き足を止めたアルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)が、麗銀の後ろ髪を尻尾のように柔らかく跳ねさせながら振り向き、救助すべき人が居るなら頑張らなきゃね、ともふもふ毛玉のような愛らしい見た目の相棒…コルノを足元に感じつつ仲間へ声を掛ける。
「残念ながら動物はいなかったけど…すれ違った生徒くん達も協力してくれたし、情報収集はうまく行ったよ」
「助かります。私は地下迷宮「アルダワ」に何度か潜った経験がありますので、探索でお役に立ちましょう」
 視界に入る迷宮の壁や通路を高度演算装置で解析し状況確認を行っていたナノ・クロムウェル(翠炎のメタルサバイバー・f02631)が、想像よりも迷宮の変化が大きいことに警戒しつつ、厄介なことになっていますね、と僅かに思いながらも、不安を振り払うように冷静な声を返す。そんな二人を拒絶するかのように災魔に侵された迷宮は変わらず昏い空気を漂わせていた。

●希望と悪夢の知恵比べ
 逸る気持ちは抑え、魔法学園の教師達から確認した未帰還の生徒達の探索予定経路と、すれ違った生徒達が通ってきた道や直接聞けた情報を手元の地図に書き込み、取り残されているであろう生徒の位置を予測し、進むべき方向を考えていたアルバが困ったように呟く。
「もうちょっと、どんな風に道が繋がってるかとか、道の先に何があるかとか、そんな事がわかるとよかったんだけど…」
「いえ、とても参考になります。迷宮が生徒さん達を迷わせるように変化していったのなら…こういうのはどうでしょう?」
 丁寧に情報がまとめられたその地図に、ナノが踏破された部分を参考にし奥に入り込みやすく出口に向かいにくい構造を考え、あくまで予測ですが…全く規則が無いなんて事は無いはずです、と災魔に侵された迷宮を攻略した経験を活かし予測図を書き込んでゆく。
 その様子にそれじゃ、救助活動をしにくいような構造にもなってるかもね、とアルバが身に着けた技能を元に意見を出し、探索の指針が定まったと感じたナノが胸元の翠水晶へ軽く手を当てそれではいきましょう、と護るべき生徒達へ向け足を進めだす。

●迷宮探索
 紫蒼の盾騎士が迷宮に残る微かな痕跡をその嗅覚を活かし追跡し、小さな翼をはためかせ立派な角を煌かせた槍龍が爪を用いて迷宮に帰還の為の印を刻みつけ、共にゆく翠炎の少女が踏破され姿を見せ始めた迷宮の状況から進むべき先を修正してゆく。そして、深度を増し複雑になった迷宮に幾度か阻まれつつも祈りが通じたのか魔法学園の生徒達の元へと辿り着く。

●未来を運んで
 捜索していた音に怯えていたのか身構えるように立っていた生徒達にまず駆け寄ったのはナノ。
「救助にきました。皆さん、怪我など負っていませんか?」
 そう心配そうな色を翠の瞳に湛えつつ、自身の知識と経験を活用し、生徒達の装備や服の破損状況を細かに確認し、出血を伴う傷はもとより打撲や骨折などの目立たない負傷なども生徒達と丁寧に話をしながら確認をしてゆく。
 その最中に入ってきたのとは違う通路に災魔の気配などがないか念のためにコルノと共に見てまわり、辿り着いた部屋の安全を確認し終えたアルバがウィンクしながらあえて軽薄に生徒達に声を掛ける。
「やぁ、ここから出たら一緒にカフェにでも行かないかい?そっちの彼も一緒で構わないよ」
 その言葉に生徒達が驚き、困惑し、暗い気分を薄れさせた様子を感じ取ったアルバが更に気取らせず疲労を癒しつつもナノへと帰還の提案をする。
「よかった、みんなノリ気みたいだね。ナノちゃん、道案内をお願いしてもいいかい?」
「分かりました。それでは出来る限り早く帰れるようにしますね」
 負傷はなかったとはいえ彼らを自力で帰還させることを不安に感じでいたナノが、コルノと共に殿を努めるように後ろに回ったアルバへ感謝の視線を向け、生徒達の負担をかけないようにゆっくりとした足取りで辿ってきた道を引き返すように出口に向かい歩き出す。

【迷宮地図更新、救助状況良好】

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

菅生・雅久
【駆:2】
新旧地図比べ

元ルートを覚えてる程に混乱するだろうな
パニック状態に成る前に助けに行こう

後部席のキセへ
しっかり掴まれナビ役も頼んだ
未到達部屋を目指し最短路探し走る

振り落さぬよう緩やかなアクセルワークで始動するが
コーナリングの安定にキセとの一体感を知る
もっと加速して平気だな
進行上に人が居る事を用心し更に急ぐ

居場所が判ればキセの指示に従い突入準備
回転速度上げ待避確認の合図で一気にクラッチミート
豪快なエンジン音共に壁を突き破る

大丈夫か?様子確認

複数人なら重篤からロープで背負い往復
キセすぐ戻るその子を頼む
1名なら背負い+キセを前に乗せ帰る

自力帰還可なら道を教え
次の待つ子へ

行こう一人でも多く救うぞ


糸原・キセ
【駆:2】

入口で新しい地図を貰う
随分進んだな凄い

途中寄れそうな未踏部屋を確認しつ
出来るだけ奥に
シンプルに続く道の構築を目指す

雅久に乗せて貰い
広い背中で地図を作成
走る雅久は楽しそうだし…幸せだ
早く学生達も安心させたいな

部屋に着いたら
奥の部屋に続きそうな道を選び進む
次の部屋に届きそうに無かったら
引返し別の道を
距離の感覚は雅久に頼る

この壁の向こうが部屋か

鎧砕きで
壁左上に穴開け声をかける

誰かいるか?壁を破壊する
退避願う!

穴から右に薙ぎ払い
左右も縦に切付け崩壊範囲を限定
雅久頼んだ!

歩み寄り
もう大丈夫、よく頑張ったな
地図見せ道を教え
道中は保証する落ち着いて戻ってくれ(微笑み肩叩き

雅久の後ろに飛乗る
さあ奥へ



●迷宮の入口
 生徒達を伴った猟兵達が探索を終え魔法学園に帰還する。それをあらたに転送されてきていた猟兵達が出迎える。新たに判明した迷宮の情報や生徒達の状況を共有し、救助のため猟兵達は再び迷宮へと挑む。

●迷宮を駆ける
 暗がりに響き渡るのは機械の纏う機関音。虚空すら疾走する愛機のタイヤが床を噛む音と動力機関の重低音をその身に感じながら、菅生・雅久(人間のブレイズキャリバー・f09544)が出発前に確認した迷宮の変化を脳裏に思い浮かべ、後部座席に座る糸原・キセ(祈りの戦巫女・f10149)へと振り向くことなく前を見据え声を掛ける。
「ああも変化すると元ルートを覚えてる程に混乱するだろうな。パニック状態に成る前に助けに行こう。ナビ役は頼んだぞ、キセ」
 流れる迷宮の景色の中、危なげなく疾走する雅久の背中をタンデムシートに背を預けながら見ていたキセが手元の地図と実際の迷宮の違いを身体に覚えこませながら、依頼とは別にこうして出掛けるのも悪くないな、という気持ちを一先ず押し込め、風切音に負けないように了承を伝える。
「任せておけ。早く学生達も安心させたいしな。もう少し進むと入り組んだ場所になるからそこまではこのままで頼む」
 大半の生徒達が帰還した中、それでも帰ってこれていないのはどういう状況かを想像しつつ、向かうべき未到達の部屋を選定し経路を脳裏に描いてゆく。
 しばしの後、迷宮の床から返る振動が変化したことを感じたキセが地図を懐にしまい、バイクから振り落とされないように雅久に身を預け掴まり、しっかりと力を籠めつつも運転の邪魔にならないかたちで身体を固定し、この先の状況を伝える。
「ここからは道が複雑だ。聞き逃さないように注意してくれよ、雅久」
「分かった。俺もだいぶ迷宮に慣れてきたし、もっと加速して平気か?」
 地図を読むキセに配慮し振り落さぬよう緩やかなアクセルワークで運転していた雅久が言葉を返し、バイクの機関音が回転数を上げ鋭くなってゆく。速度を上げたバイクを背中越しに伝わる誘導に従い操る雅久が感じるのは一体感。少し前にキセが感じていたような心地よさを同じく押し込めて迷宮の奥深くへとバイクを駆る。

●迷宮疾走
 迷宮に獄炎の剣士が駆る愛機の機関音が響き、その車輪が踏破した場所を未知から既知へと塗りつぶしてゆく。共に進む戦巫女は部屋を超えるたびに、道を折り返し新たな場所へと向かうたびに、地図を補完しながらそれを支えてゆく。そして、組み変わった迷宮の全貌が見えるころになって二人がそれに気が付く。

●繋がらない部屋
 迷宮の奥深く角に当たる部屋の手前の一室。雅久のバイクから預けていた墨色の薙刀を取り外し、体をほぐすように軽く振るいながらキセが歩み寄った壁を目の前に、これまでの猟兵達が纏め二人で通った道を書き記した地図を見つめ確信をもった声で雅久へと告げる。
「この壁の向こうに部屋があるはずだ。だけど、何処にも繋がる道がない」
 その言葉と共に銀の名残を感じさせる墨色の軌跡が描かれ壁の一部が砕かれ剥離する。
「なるほど。流石に元々通路だけあって分厚いか。任せろ」
 それを見た雅久が愛機を前輪を覆うように超合金ブレードを備えた攻撃的な様相へと変形させ突破すべき壁へと向きを変える。巻き込む可能性があるのは不安だが…という声を迸る機関音に溶かし爆発的な回転数そのままにギアを繋がれたタイヤが迷宮の床を焦がし、捕え、壁へと向けて弾かれるように突き進む。

●最後の生徒達
 迷宮に轟音が響き渡り分厚い壁をものともせず、雅久が愛機と共に突き抜ける。その雅久にキセが安否を問う声を上げれば、無事を伝える声と共に生徒を頼むと、言葉が返る。その声に応え飛び込んだ部屋の中で寄り添う生徒達を発見したキセが安心させるように視線を合わせながら声を掛ける。
「もう大丈夫、よく頑張ったな」
 その言葉に疲労した様子で頷くだけの生徒達の現状を理解したキセが雅久へバイクで連れ帰るように依頼する。
「辛かっただろうが、後は俺達に任せておけ」
 キセに手伝ってもらい生徒をその身に背負い固定した雅久が、負担をかけないように滑らかにバイクを操り来た道を辿り迷宮の出口に向けて進み、残ったキセがもう少しの辛抱だ、と共に居る生徒を安心させようと微笑みかける。

●救助完了
 二度の往復で生徒達を迷宮の外に連れ出した猟兵が自身の相棒を伴い迷宮から脱出し魔法学園の教師達に出迎えられる。迷宮に潜っていた生徒達全員の確認が取れたと告げる声は救助の成功を告げるとともに元凶の災魔へ挑む準備が進んでいることを示していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ラビリンスセンチネル』

POW   :    アクセルブースト
【脚部に内蔵した推進器で急接近し】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    マジックバーレッジ
【腕部に内蔵された魔術機関】から【多量の魔力の弾丸】を放ち、【弾幕を張ること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    コアスーサイド
【魔力炉を自壊させ暴走した魔力】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●迷宮の番兵
 救助された生徒達の搬送を終えた魔法学園の教師が感謝の言葉と共に変化した迷宮の先にいるであろう災魔の情報を纏め猟兵達の元へと訪れる。

 この先で待ち構えているであろう災魔は魔法学園でも使われる量産型の魔導ゴーレムです。本来ならセンチネルと呼ばれているのですが…災魔として蘇ったこの状況ではラビリンスセンチネルというべきかもしれませんね、と伝えるとともに災魔として強化はされていると思いますが基本的な性能も聞いてくださいと話を進める。

 一般的な魔導ゴーレムは性能的な問題から単独で運用されることは少なく2~3体程度の集団で一定の範囲を巡回するように警備させます。主な攻撃方法は脚部のブースターを使った急接近からの体当たりや打撃による近接攻撃、腕部に仕込まれた魔術機関による射撃攻撃、魔力炉を暴走させることによる自爆になります。射撃攻撃は命中精度がいまいちなので、どちらかといえば弾幕を張るように援護の為に使用し…自爆も積極的に使うわけではなく突破されそうな場合や魔導ゴーレム自体が破壊されそうな場合に使ってくるでしょう。あと、残念ながら魔導ゴーレムの素体は魔導ゴーレムの動力に親和性があるので射撃や自爆による同士討ちは起こりません。
 
 それと、救助を行って頂いた先の迷宮に関しまして…申し訳ないのですが構造は不明です。でも、こちらから踏み込み探索していれば、魔導ゴーレム達の警戒網にかかり迎撃に向かってくるでしょうから戦うだけならば相手を探す必要はなく、それなりに駆動音もしますので不意打ちを受ける心配もあまりないと思います。ただ…不意打ちや奇襲をかける場合は何人かで協力し見つからないように探索してもらうことになると思いますので相談したうえで十分に注意をしてくださいね?と話を終え、頭を下げた教師が魔法学園へと戻ってゆく。
アマータ・プリムス
「相手が多勢なら当機の得意分野です」
自分から警戒網に検知される。【学習力】でゴーレム達の動きを学習し最適な行動をとります
集まってきたゴーレム達にトランクを【武器改造】で機関銃に変形させ【範囲攻撃】で薙ぎ払います
その後、鋼糸を使い【フェイント】を織り交ぜながら【敵を盾にする】も使いゴーレム達を翻弄します。戦闘音を聞きつけた他の猟兵が合流しているなら戦いやすいようにゴーレム達を誘導してサポート。自身はトランクを固定砲台に変形させ攻撃も続ける。

一度見たUCに対してはこちらのUCを使い反撃します

※アドリブ、連携歓迎です


ワズラ・ウルスラグナ
出遅れたが、その分暴れさせて貰おうか。
後顧の憂いが無い今の方が仕事が出来そうだしな。

探索は不得手だ。走り回って魔導ゴーレムを見つけ次第殴り掛かろう。
攻撃にはブレイズフレイムを用いる。効くなら何でも良いが、地獄の炎は使いたい。
もし奇襲等を行う者が居れば囮役が居た方が楽だろう。それに炎で幾らか目眩ましなれば良い。
地獄の焔なら仲間の邪魔になりそうな時に直ぐ消せるしな。

俺が単身突っ込む事になるならそれはそれで善い。
片っ端から一体ずつ確実に破壊し、数の不利を潰しつつ暴れよう。
探索の邪魔にならんよう、周囲を荒らすのは程々にな。


アルバ・ファルチェ
なかなか面倒な相手だね…。
でも、相手がなんであれ僕がやることは1つだよ。

庇うべき仲間がいるならその盾として援護するのみ。

【戦闘知識】を踏まえて【情報収集】を。
弱点…までは分からないだろうけど、どんな動きを見せたらどんな攻撃が来るか…そんなヒントくらいは分からないかな?

まぁわからなかったら仕方ない、戦闘中に自分の目で見てみるかな。

基本的に【かばう】【おびき寄せ】で攻撃を僕に集中させるけど、囲まれたりしないように注意。

【盾/武器受け】【オーラ防御】【見切り】でダメージは抑える。

余裕があれば【カウンター】で【鎧砕き】【武器落とし】辺りも狙いたいけど、防御優先だね。
僕の前では誰も傷つかせないよ。


ナノ・クロムウェル
さて、ここからは…魔導ゴーレム達もいると言うことなので…体力と気力で進み、敵を倒していきましょう。
「翠炎剣」で敵を切ります。
駆動音を「内蔵式集音機」で遠くから聞き取り腕に取り付けた籠手型の「ガジェット」からの翠炎の放射で早急に対応します。
「七つの万能薬」を服用し「激痛耐性」を得て強引に攻めましょう。
囲まれたのなら「なぎ払い」で纏めて攻撃です。
いざとなればユーベルコード「翠炎悪魔」で全て殲滅させます。
数が多いなら力と防御で長い間迷宮で戦い続けることで数を減らして見せましょう。


四軒屋・綴
《アドリブ改変絡み歓迎》

ふむ……ラビリンスセンチネル、か。

守護者に刃を向けるのは些か申し訳ないが……せめて過去に囚われぬよう真っ向からぶつかってやろうッ!

主な行動は味方と足並みを揃えつつ武装の【一斉発射】による【援護射撃】……奇遇にもセンチネル達と同じだが…俺には頼もしい味方がいるッ!味方の行動を支援すると共に味方が被弾しそうなら【ダッシュ】で駆け込んで【オーラ防御】で【かばう】ッ!ブーストダッシュだッ!

装甲も厚く遠近に隙のない守護者だが…あの構造、あの炎がコアだとすれば上からの刺突には弱いか……?ユーベルコードで足止めして飛びかかり直接攻撃を狙うぞッ!デスフロム落下致命ッ!



●災魔の護る迷宮
 生徒達が助け出され静かさを湛える迷宮の奥へと続く一室。深部への通路が見つかったそこに迷宮へ挑む前の顔合わせをかねて猟兵達が集まる。

●攻勢開始
 魔法学園の教師達に魔導ゴーレムの戦闘駆動に関して聞き込んだことを思い出しながら…なかなか面倒な相手だね、と気を引き締めていたアルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)が、特徴的な衣装の女性にもしかしたらと声を掛ける。
「たぶん、アマータちゃんだよね?入れ違いだったんだけど…地図と情報、助かったよ」
「…?なるほど。皆様のサポートが当機の役目ですから、お役に立てたのであればよかったです」
 寸刻、桃花色の瞳を困惑に染めながら状況を理解したアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)が、ヴィクトリアンメイド服のエプロンに両手を揃え、背筋の伸びた綺麗なお辞儀で応じ、その様子に迷宮の闇よりも深く黒い超重の鎧を、幾多の古傷を刻んだ龍鱗の巨躯へと纏ったワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)が、
「救助はお疲れ様だ。出遅れたが、その分暴れさせて貰おう」
 獰猛な龍の咢からそう零し…後顧の憂いが無い今の方が己には向いているだろうと戦いの気配へと笑みを深める。そこへ自身の耳に内蔵された高性能の集音機で、迷宮内の災魔達の駆動音を探っていたナノ・クロムウェル(翠炎のメタルサバイバー・f02631)が聞き取った現状を報告し、
「近くに駆動音は感じられません。内部では別れて戦うことになると思われます」
「助かるッ!…彼らがせめて過去に囚われぬよう真っ向からぶつかってやろうッ!」
 迷宮を守護しようとしているラビリンスセンチネルに僅かな申し訳なさを感じていた四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)が、それを感じさせない歯切れのいい言葉で応じる。そうして、お互いの事を確認し合った猟兵達が足をそろえ災魔の待つ迷宮へと潜って行く。

●分岐路
 集団の先頭を駆けるのは黒鎧の戦獄龍と紫蒼の盾騎士。盾騎士の相棒たる槍龍がすぐ後ろに続き、アンティークドールのメイドと翠炎の少女がそれを視野にいれつつ追従し、殿を務めるように蒸煙のヒーローが最後尾から追いかける。その猟兵達の前に先ずあらわれたのは、侵入者を拒むような迷宮の分かれ道。戦獄龍がそのまま直進することを腕の動きで示し、それを見た盾騎士とメイドが声を掛け合い右の道を選び、翠炎の少女と蒸煙のヒーローが左の道へと身を進め、お互いの無事を祈る言葉を残し猟兵達が為すべきことの為に迷宮を駆けてゆく。

●生は闘争
 特徴的な獣脚でより前傾姿勢に、迷宮の床を削る勢いで駆けていたワズラの瞳がついに動力光を纏った魔導ゴーレム達を捉える。共闘だろうと単騎突撃だろうと…戦うことはすべて善い、その戦意に触発されたように刻まれた古傷が熱を持ち黒焔が溢れだす。そのワズラを認識した災魔達が両腕の魔術機関から魔力弾をばら撒き、弾幕を盾に推進器に火を灯らせた災魔達が強襲するように飛び出す。逃げ場のない押し留めるような弾幕に対しワズラが選んだのは単純にして明快な正面突破。
 駆ける勢いそのままに撓めた脚で床を蹴り砕き、まさに獣のような勢いで弾幕を突き抜け、その影から己に襲い掛かろうとしていた災魔の胸部を闘志の黒焔を纏った一撃で砕き、回り込もうとした災魔は強靭な尾を使い床へと叩き伏せる。仲間が破壊される様子を隊伍を崩さず眺めていた災魔達が再び魔術機関に魔力を湛え、推進器へと火を灯らせた様子を見たワズラが、撃ち抜かれ血を流す傷を感じながら猛り始めた戦獄と共に咆哮をあげる。
「さあ、俺と殺し合え!」

●騎士の誇りとメイドの矜持
 迷宮に二人…否、二人と一匹の走る音が響き、前方に青白い光が見えてくる。魔導ゴーレム達の動力光を確認したアマータが携えた銀色のトランクを開き、多連装の銃身を持つ魔導蒸気機械へと慣れた手つきで変形させ、
「相手が多勢なら当機の得意分野です。サポートはお任せください」
 仲間と別れてからは並んで走っていたアルバとその相棒のコルノに声を掛けるとともに歯車が噛み合い、蒸気が鳴り響き、大量の銃弾が災魔達を薙ぎ払うようにばら撒かれる。その弾幕を追うように接近したアルバが翼と十字の意匠を施された白銀の盾を構え、銃弾に撃ち抜かれ態勢を崩しつつもアマータへ標的を定めようとした災魔達の前に立ちふさがる。
「盾の騎士の血にかけて、僕の前では誰も傷つかせないよ」
 籠められたのは誇り、庇うべき仲間を背に自身の在り様を刻む想いの言葉が、相手がなんであろうと決して後ろに抜けさせないという気概が、アルバ自身を奮い立たせ、災魔達には先に倒さない限りアマータに届かないという認識を植え付ける。そうして、行動を誘導された災魔達がアルバを突破しようと魔力弾の弾幕を作り出し、推進器で加速した質量任せの重い攻撃を仕掛けてくる。迎え撃つアルバの白銀の盾が災魔とぶつかり合い鋭い音が響き、コルノの爪と角がアルバへと振りぬかれる災魔の攻撃を逸らし援護する。
「ありがとね、コルノ。油断はできないけど、これなら問題ないかな」
 囲まれないよう油断なく災魔達の動きを捉えながら、猛攻を捌き続けるアルバの横を榴弾が通り過ぎる。災魔の魔導炉を撃ち抜いたそれは内部を焼き尽くし災魔を残骸へと変える。砲撃の主はアマータ。魔導蒸気機械を組み替え作り出したのは猟兵でも携行は不可能であろう重厚な砲身を備えた榴弾を撃ちだす固定砲台。それが後方から戦闘を見定め、災魔達の動きを的確に予測し始めたアマータにより操られる。
「これもメイドの嗜みです」
 足りないものを望まれるものを抜かりなく、道案内であろうと災魔掃除であろうとも完璧にこなすメイドの矜持が過去の悪夢を駆逐してゆく。

●ヒーローの矜持
 別の暗がりを駆ける二人の足音が響く。その合間を縫うように魔導ゴーレム達に警戒していたナノが駆動音を捕らえたのは必然。動力光は見えずとも聞こえるそれに戦闘が近いことを感じたナノが、専用のピルケースから特別に調合した薬を取り出し、飲み下す。
「さて、ここからは…体力と気力で突破します。死地の先でしか生きられないならば、全てを倒して進んで見せましょう」
「了解したッ!だが、俺達は共に戦う仲間だろうッ!死地があるというならば俺が先に飛び込もうッ!なぜならば、ヒーローだからなッ!」
 雰囲気の変わった少女に感じるものがあったのか、綴が複雑な色を感じさせつつも、教えられ自身に刻まれたヒーローの在り方そのままに声をあげ、迷宮を蹴る足にさらに力を籠め、横を走る少女を追い抜き、やがて接触する災魔達から自身の身体で隠し、かばうように疾走を続ける。ナノはその様子を見つつ、嚥下した薬が溶けていく感覚と共に先ほど零した覚悟の言葉を握りしめ、籠手型の魔導蒸気機械へ翠炎を灯し綴の背中にもうすぐ、と伝える。そう、お互いが共に探り合っているのならばその接触は必然。誰よりも早く迷いなく動いたのは綴。背後に少女をかばうが故に足は止められないが指を突き出し、腕を構え叫ぶのはヒーローたる矜持。
「勇蒸連結ッ!ジョウキングッ!!来いッ!在・倍・列・車ッ!」
 顕れた自身の似姿が語尾につけるジョキ!という言葉を聞きつつ、共に災魔達の魔術機関からばら撒かれる魔力弾をその身に受け、続けざまに推進器で加速した災魔達の体当たりをもくらい前進を止められる。
 ポーズをとり名乗りをあげ反撃を受けるその矜持を貫く意味はあるのであろうか?…是、曲がらぬ矜持が繋いだものが確かにある。
 目の前の光景に零れたのは驚愕か心配か、だがそれでも止まることのなかったナノが、魔力弾をばら撒いた姿で隙を晒す災魔達の側面へと躍り出る。放たれるのは翠炎。籠手に繋がれたそれが鞭のようにしなり、動きを止めたままの災魔達を斬り裂き骸の海へと押し戻す。なおもナノを見失ったままの災魔達に対し、抜き放たれた翠炎剣が狙うのは綴へと体当たりを仕掛けていた災魔。薙ぎ払われた翠閃が過去の悪夢を断ち切り綴を開放する。

●攻勢続行
 蒸煙のヒーローが自身の似姿と共に災魔を防ぎ、薬で痛みを散らした翠炎の少女の巨剣が断ち切る。盾騎士が槍龍と共に押し留めた災魔を、メイドが操る魔導蒸気機械の重砲が撃ち抜く。戦獄龍が黒焔と血潮を纏い災魔を打ち倒し。その、しばしの後。

●闘争は生
 ワズラの黒焔を纏い孕んだ拳が突進してきた魔導ゴーレムの拳と打ち合わされ、破砕音と共に燃え移った戦獄が災魔を焼き尽くす。それを見届け、己自身の傷が焼き塞がる感覚と共に周囲を見渡したワズラの目に映るのは、数体まで減り動力光を白熱する白青色へと変えた災魔の姿。高威力の自爆、事前の説明を脳裏に呼び起こし災魔が命を懸けるなら己もそうするまで、と迷いなく黒焔を爆ぜ迸らせ迎え撃つ。最初に弾けたのは白。猛る黒を飲み込むように押し込むように迷宮を染め上げ…真っ白に染まった迷宮を消えぬ黒が再び照らし出す。
「まぁ、俺が壊したわけではないしな」
 災魔が消え、高温で焼かれた匂いと罅割れた龍鱗という姿からは想像のつかないどこか満足げな声を零したワズラが、惨状を横目に迷宮の奥へと歩を進める。

●龍槍の騎士と人形遣い
 コルノの援護により勢いを失った魔導ゴーレムの体当たりを白銀の盾を操りアルバが危なげなく迎え撃ち、その攻防の隙間を縫うようにアマータの榴弾が撃ち込まれ、攻撃を仕掛けようとしていた災魔をまた一体破壊する。危なげない連携により災魔達の攻撃を凌ぎ、着実に数を減らしている二人と一匹がその変化に気が付いたのは同時。絶えず攻撃を仕掛けてきていた災魔達の数が減り、青白い動力光が異常な駆動音と共に白色へと近づいてゆく。距離を取り自爆の準備を進める災魔達に、榴弾の攻撃では自爆を誘発するだけと予測したアマータが提案を口にする。
「アルバ様…ラビリンスセンチネルを三体ほど行動不能にできないでしょうか?」
「分かった。時間もなさそうだし、やってみるよ」
 そう言って迷いなく飛び出したアルバの手には本来の姿に戻ったドラゴンランス『コルノ』。災魔達と戦い押し留め続けたアルバとコルノが狙うのは白熱する魔導炉の中心。魔導炉が暴走しているためか動きの鈍い災魔達の隙をつくように振るわれた『コルノ』が描くのは三条の銀閃。戦闘経験を活かし鎧を食い破るように魔導炉に到達した穂先が魔力を散らし災魔達を物言わぬ人形へと変える。
 その物言わぬ人形に、アマータの振るう鋼糸…人形遣いの糸が絡みつく。意思のない抜け殻がアマータの思い描く通りに動き、後続の災魔達へと取り付き壁となり、迷宮を白光が染め上げる。災魔の骸が過去に溶け傀儡の糸が解けるのを感じ、戻った視界に広がるのは焼け焦げた迷宮。
「アルバ様、守っていただきありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとね。怪我もないようで安心したよ」
 当面の危機は排除したと判断した二人が言葉を交わし災魔のいなくなった通路を奥へと進んでいく。

●翠炎の願い
 綴がその身に纏う蒸気機関車の意匠を輝かせた鎧を激戦に曇らせながら、災魔達から放たれる魔力弾の弾幕に対抗するように己の似姿と共に石炭型高熱弾を撃ち返してゆく。共に戦うナノの盾となることを優先しながらも災魔達の弱点を探るように戦い続けた綴が目につけたのは魔導炉が収められた災魔の胸部。
(装甲も厚く遠近に隙はないが…あの構造ならば上からの刺突には弱いか……?)
 そう狙いを定めた綴の行動は迅速。ナノの護衛に残す己の似姿を決め、残りを災魔の足止めと己を打ち上げる発射台に割り振り迷いなく行動に移る。
「デスフロム落下致命ッ!」
 自由落下で威力を増した飛び蹴りが、災魔を貫き破砕する。その横で残りの似姿に援護されていたナノの翠炎を纏った巨剣が魔導ゴーレムを断ち切り、隙をつくように突進してきた災魔を翠炎を猛らせた籠手で防ぎ鈍い音が響き渡る。身体に響く激痛を全身に回った薬で殺したナノが感じるのは危機感。痛みとは別の生きる想いに呼びかけるようなそれに従い気が付いたのは、受け止めた災魔から感じる異常な熱。
気が付けば周囲に残るのは数えるほどに減った災魔達の姿。状況が瞬時に組み合わさり呟かれるのは命への希求。
「私の目的は私自身の生存…誰の時間を捧げようとそれは変わりません」
「構わないッ!やりたまえッ!動かなければいいのだろうッ!?」
 周囲に集めた似姿と共に名乗り上げた時のポーズを決める。そのナノの想いを肯定した綴の言葉を皮切りに巨剣を覆い、籠手に猛っていた翠炎がナノの胸元の翠水晶へと吸い込まれ、無骨な籠手を成していた魔導蒸気機械が少女の全身を侵食するように覆い黒鉄の陰りが獰猛な悪魔の形を組み上げる。その刹那、至近の災魔が白光と共に爆発し、悪魔の胸元から燃え上がった翠炎が白光すらも焼き尽くし迷宮を染め上げる。

●迷宮主の間へ続く最奥
 紫蒼の盾騎士と槍龍が部屋の安全を確かめてしばし、アンティークドールのメイドが別れた仲間の心配をし別の通路へと歩を進めるべきか思案している中、激戦の名残そのままに黒鎧の戦獄龍が現れ、程なくして正気を取り戻した翠炎の少女が確かな足取りで、最後に負傷しながらもハイテンションなままの蒸煙のヒーローが合流する。各々が災魔達を殲滅してきたであろうことを肌で感じ目的が達成されたことが言葉なく共有される。そんな中、黒鎧の戦獄龍が無事で何よりと声を掛ければ、紫蒼の盾騎士が君がそれを言うのかい?と呆れた声を返し、それを横目にアンティークドールのメイドが怪我の心配をし、翠炎の少女が問題ありませんと声を返し、蒸煙のヒーローも同じように問題ないッ!と声を上げる。
 そう、迷宮の中を彷徨っていた過去の悪夢は確かに猟兵達に払拭され残るのは最奥にて鎮座する元凶の災魔のみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『トレジャリーガード』

POW   :    ロケットパンチ
【剛腕】を向けた対象に、【飛翔する剛拳】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    コアブラスター
【胸部からの放つ熱線】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    マジックバーレッジ
【自動追尾する多量の魔力の弾丸】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【絶え間ない弾幕】で攻撃する。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●宝物庫の番人
 ラビリンスセンチネルが撃破され安全が確保された迷宮を通じ、魔法学園の教師が再びの感謝の言葉と共に迷宮主の間にいるであろう災魔の情報を纏め猟兵達の元へと訪れる。

 この先にいるのはトレジャリーガード。蒸気機関文明と魔導文明の技術の粋を集めて作られた最高級の魔導ゴーレムが災魔として蘇ったものとなります。通常のものでも別格の性能を誇るものですが、災魔としてさらに強化はされていると思われますので十分に注意をお願いします。それと、従来の性能もお伝えするので戦いの参考にしてください、と話を進める。

 主な攻撃方法の一つ目は推進器が仕込まれた剛拳を飛ばし遠距離から殴ってくるロケットパンチ。決して飛ばしっぱなしではなく連結されたケーブルにより瞬時に引き戻されます。それと、連結用のケーブルは狙われるだろうという予測から非常に強固に作られているらしいので猟兵の皆さんでも簡単には切断は用意ではないと思います。
 二つ目は、胸部の魔導炉から余剰エネルギーを使用した熱線攻撃です。熱線とは言いますが極度に高温になったそれは物理的な切断能力すら有するものですので熱と斬撃双方に警戒をお願いします。
 三つ目は、ラビリンスセンチネルと戦われた方は想像しやすいかと思いますが多量の魔力弾による飽和攻撃です。ラビリンスセンチネルは個々の魔力弾を操ることが出来ずばら撒くだけでしたがトレジャリーガードは過剰ともいえる演算能力で魔力弾を個別に操り自在に動かすことができます。
 災魔となり強化されたトレジャリーガードですがその根幹を支えるのは強力な魔導炉から生み出されるエネルギーとそれを操る演算能力になります。魔導炉は胸部で強固に守られていますが、演算能力の起点に関してはどこにあるかは申し訳ありませんが情報が出てきませんでした。それでも、猟兵の皆さんならこの災魔を倒せると信じております。
 
 それと、迷宮主として蘇ったせいか、今のところは迷宮主の間から出て来れないようです。なので、戦闘の区切りや限界が訪れたら一度退避していただえれば追撃はありません。ただ、迷宮主の間の外から攻撃を仕掛けるのは危険と思われます。根幹はあくまで災魔ですので何が切っ掛けで自由に動き出すか不明な点が多いのです。…長くなりましたが以上となります、と話を終え、頭を下げた教師が魔法学園へと戻ってゆく。
アマータ・プリムス
「一番奥と言うことは長かった迷宮探索もこれで最後、サクッと終わらせてしまいましょう」
生憎と当機は単体相手の戦闘は得意ではないので皆様のサポートにまわりましょう
極力【目立たない】ように動きトランクを【武器改造】でその場に合った重火器に変形させて【フェイント】と様々な【属性攻撃】を弾丸に込め攻撃します
他の皆様の行動パターンも【学習力】で把握して最適なサポートを行います

ロケットパンチはできることなら鋼糸を使って軌道を逸らします。
熱線は撃つ前に体勢を崩させます
弾幕はこちらも弾幕で対応

誰かか当機がピンチになったらトランクから人形のネロを取りだしUCを発動させて救助優先で動きます

※アドリブ、連携歓迎です


ナノ・クロムウェル
真の姿を開放し戦います。
…この迷宮で多くの学生達が巻き込まれました。
貴方には貴方なりの役割があったのでしょう。
作られた故に与えられたものです。
…ですが、今の貴方は多くの学生達を危険にさらす災魔です。
私が貴方の役目を終わりに導きます。

私は「翠炎剣」を使い戦いましょう。
「蒸気式飛行ユニット」で上昇からの急下降により威力を増した剣撃でその装甲を「鎧砕き」で壊して見せます。
敵の大技をうまく「見切り」、ユーベルコード「煉獄の強襲」を発動します。「翠の水晶」の力で感情の「封印を解く」
(発動中は口調変化)
ナノは悲しいよ
君は役目を果たし続けようとしたんだね…
もういいんだよ、ナノの炎が君を包んで…終わらせるね


四軒屋・綴
《アドリブ改変絡み歓迎》

なるほど、オブリビオン化したことにより一種の制約が……
いや、後にしよう、流石『ラスボス』ッ!、難敵だッ!

装甲で固めパワーと手数で押してくる……か、なるほど『守護者』に対する『守護神』だッ!

ともあれメインの戦法は【一斉発射】による【援護射撃】…だが力負けしそうだな、味方への攻撃を【かばう】と同時にダッシュで踏み込み【怪力】で殴り付けるッ!【吹き飛ばし】で体勢を崩したいところだが…。

活路があるとすれば武装が一種一ヶ所、先手を取れば流れを引き寄せられるか…ユーベルコードを使用、遠距離系に関しては『銃口を塞ぐ』、ワイヤーパンチには『軌道を反らす』ように叩き込むッ!


アルバ・ファルチェ
命中率が高かろうが、盾や武器で受けてしまえばダメージは最小限に抑えられるよね?

【かばう】【見切り】【第六感】【盾/武器受け】【オーラ防御】…使える技能の全てで皆の盾になるよ。

けど、守ってるだけじゃ埒が明かないかもしれない。
そんな時は【カウンター】で【鎧砕き】【武器落とし】を試みる。
大きなダメージを与えられるほど攻撃は得手とはしないけど、援護くらいは出来るよね。

コルノは相変わらず【援護射撃】のような【串刺し】【槍投げ】要領の体当たりを。

…帰ったらブラッシングしてあげるから、もうちょっと頑張ってね?



●扉の広間
 迷宮主の間に続くアルダワ魔法学園の紋章が刻まれた大扉の前に、挑むべき迷宮主の情報確認や戦いに関する情報共有を行うために猟兵達が集まる。

●辿り着いた場所
 扉の広間に響き渡る声が一つ。四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)が先ほどの戦いでは走りながら決めたポーズを構え、高らかに叫ぶのはヒーローの名乗り。名乗りと共に蒸気機関車の意匠を持つ鎧が具現化し、両腕には蒸気機関車を思わせる装蒸甲化が背部から飛び出し装着される。
「勇蒸連結ッ!ジョウキングッ!!…見知った顔で心強いッ!難敵だが、よろしく頼むッ!」
「…あ、あぁ。こちらこそ、よろしくお願いするよ。お互い誰かの為に在る生き方をしてるみたいだしね」
 その声と変身に驚きつつもアルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)が、服の上から胸元に忍ばせてある蒼硝子のロザリオを軽く押さえながら声を返し、足元で動きを止めたままのコルノに気が付き、安心させるようにしゃがんで頭を撫でる。同じく扉の前に佇み無表情ながら、陰影の綾か物憂げにも見えるナノ・クロムウェル(翠炎のメタルサバイバー・f02631)が、迷宮主の間に向けて猟兵として為すべきことを噛みしめるように口にする。
「無事にすみましたが、多くの学生達が巻き込まれました。過去がどうあれ…学生達を危険にさらす、災魔は討伐しなければなりません」
「はい、ナノ様。ここが一番奥と言うことは長かった迷宮探索もこれで最後、サクッと終わらせてしまいましょう」
 言葉の影には言及せず、携えた銀色のトランクを軽く持ちあげたアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)が、殊更に明るく単体相手の戦闘は得意ではないので皆様のサポートをさせて頂きます、と雰囲気を変えるように応じ幾度も共闘し背中を預け合った猟兵達が、覚悟と共に迷宮主の間に踏み込む。

●最奥を護るもの
 迷宮主の間で待ち構えるトレジャリーガードへと先陣を切るのはアルバと綴。綴の脳裏に魔法学園の教師から受けた、災魔化したが故の制約への興味が一瞬湧きあがり…頭を軽く振りそれを追い出す。分厚い装甲と高い出力、更には手数で押してくる相手。ならば、自由に行動させるのは危険と災魔を視界に捉えた刹那に両腕を揃え突き出し、高らかな汽笛の音と叫ばれた声を合図にそれが発車してゆく。
「くらえッ!炉・勁・列・車ッ!」
 それに応じるのは災魔の剛腕。綴の両腕を覆っていたジョークアームズが煙突から煙を噴き出し、動輪が空を捉え、見えない線路を辿り目標へと猛進すると同時に、剛拳が推進器の光をたなびかせ交錯するように綴へと迫る。先に到達したのは剛拳。鋼鉄の拳だけでも想像のつかない重量と飛翔による威力を秘めた剛撃が、遮るように割り込んだ翼と十字の意匠が施された白銀の盾に衝突し、
「盾の騎士の血にかけて、皆を護ってみせるよ」
 アルバの言葉をかき消す程にどこまでも重い金属音が響き渡る。最短距離を奔るが故に高い命中力を誇る剛撃を剛腕の向きから軌跡を読み取り、あえて正面から受け止めたアルバが、護るものを背中に負うからこその力強さでその身に走る衝撃に耐え、剛拳を押し留める。
「さっきの魔導ゴーレムとは比べ物にならないくらい重いね」
「アルバさん、すまないなッ!流石、守護神といったところかッ!助かったッ!」
 感謝の言葉を述べつつも綴が操る二両のジョークアームズは、動輪の音を響かせながら災魔の脚部へと衝突し激しい音と衝撃を撒き散らす。その威力に体勢が崩れた災魔の隙を逃さぬように、綴の背後から蒸気式飛行装置に翠炎を滾らせたナノが飛び出しその身を空に躍らせ、剛拳を押し留めるアルバを援護しようと足元からコルノが小さな翼をはためかせ加速し迷宮を翔ける。
 高く翔け上げるのは翠の軌跡。仲間たちが災魔の攻撃を受け止め、姿勢を崩したその隙を活かし天井近くまで飛びあがり…一瞬の静止。翠炎が消え、推進力が重力に捕らわれ留まるその一瞬。抜き放たれた翠炎剣ともにナノの身体が反転し、再び翼に翠炎を灯し災魔へと急降下する。それに対し災魔の動きを支える演算能力が、無数の魔力弾を操り弾幕の盾を成し迎え撃つ。
「私が貴方の役目を終わりに導きます」
 弾幕の盾を砕く音を纏い、その身から赤を零し突破したナノが、災魔に向けて翠炎を纏った巨剣を振るう。ラビリンスセンチネルならば両断したであろう一撃は災魔の胸部に傷を刻みつつも弾かれ、応戦するように胸部へと白光が収束する。高熱の白光が右目から翠炎を零し、その身を彩る赤を黒鉄と蒸気の機械へ変えつつあるナノに放たれる刹那。
 アマータが操る魔導蒸気機関が奏でる独特の音。歯車と蒸気が組み上げる駆動音が響き、砲弾が撃ちだされ災魔へと衝撃を伝える。それは攻防の最中、災魔の意識を縫うように移動しトランクを…自身を超える全長をもつ強力な重火器へと変形させたアマータの災魔の不意をつく一撃。砲撃に身体を揺さぶられた災魔に突き上げるようなコルノの体当たりが続き、狙いが逸れた熱線が空気を焼き虚空へと溶ける。戦場を見渡せる位置取りを行い、仲間達と災魔の動きを注視していたアマータが援護射撃と共に矜持を語る。
「皆様のサポートは、当機にお任せください。どこに居ようともそれが当機の役目ですから」
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
 それに真の姿…全身に機械を纏い右目へと翠を灯し、零した炎を巨剣に纏わせたナノが感謝の言葉で応じる。自身にも災魔の意識が向けられ始めたことを感じたアマータはお気になさらず、と返しながらも災魔の意識を散らすように移動を開始し、最適な援護の為に重砲を動きやすいサイズの多銃身砲へと組み換えてゆく。


●激戦
 宝物庫の番人が操る魔力弾を撃ち抜くようにアンティークドールのメイドが属性弾をばら撒き。応じるように向けられた剛腕へと蒸煙のヒーローが怪力で振るう拳を叩き込み、狙いの逸れた剛拳をを紫蒼の盾騎士が白銀の盾で逸らし受け流す。魔力弾の守りを減らし体勢を崩した番人へと翠炎の少女と槍龍が挟み込むように巨剣と角で襲い掛かり、熱線を翠剣が逸らし少女が気を引きつける合間に、角の一撃が宝物庫の番人へと新たな傷を刻む。

●支え合う
 猟兵達側に天秤が揺れることが多い戦いでありつつも油断できない流れの中で、もふもふな毛皮をくすませながらも自慢の角で奮戦するコルノにアルバが感謝を伝える。
「…帰ったらブラッシングしてあげるから、もうちょっと頑張ってね?僕も頑張るからさ」
 コルノがしっかりとした鳴き声で答え…奇しくもその瞬間に、再び仲間へと剛腕が向けられる。その動きから軌跡を予測し遮るように割り込んだアルバが飛翔する剛拳を受け流すように盾を操り…押される勢いそのままに体を回す。描かれるのは銀閃。幾度も受け止め、受け流し覚えこませた感覚を頼りに、剛拳の勢いを利用し抜き放ち振りぬかれた片手半剣が、目の前を通り過ぎようとする推進器の一つを砕き、暴走した剛拳に引き摺られトレジャリーガードが姿勢を崩す。
「攻撃は得手とはしてないけど、何度もみればこれくらいは出来るさ」
 そこへ小さな翼で飛翔したコルノが、その身を槍に角を穂先にと本質を垣間見せる体当たりを仕掛け、畳みかけるようなアマータの多銃身砲からの銃撃が降り注ぎ、災魔の周りにある魔力弾を撃ち抜く。
「お見事です、アルバ様。ならば、当機は魔力弾に対応いたしましょう」
 その銃撃に重ねるように、綴が再び両腕に装着したジョークアームズから石炭型高熱弾がばら撒かれ、魔力弾へとぶつかりさらに災魔の護りを減らし、好機と見定めた綴が多関節増加推進機から蒸気を吐き出しナノへと道を切り開くと宣言する。
「何か思うところがあるのだろうッ!ならばそれを叶えるものヒーローの役目だッ!守護神の攻撃は任せたまえッ!」
 災魔が残すのは胸部からの熱線。ならば、己の身で発射口を…射線を塞げば仲間を庇いチャンスを得られると、隠れることない愚直なその姿が纏うのは蒸煙。対する災魔が撃ちだすのは予想通りの熱線。突き進む綴の蒸煙が赤熱し吹き散らされ、白光が綴を焼き…突き出し重ねた白手の抵抗を貫くことなく四散する。
「さぁッ!遠慮は不要だッ!いきたまえッ!」
 仲間達の切り開いた道をナノが翔ける。膝をついた綴の、乗れッ!言われたその肩を踏み台に宙に身を躍らせ…再び蒸気式飛行機械に翠炎が灯る。緑の瞳に映るのは護るべきモノのない守護者。その姿に翠水晶から黒炎が巻き上がり、右目から涙のように翠炎が零れ落ちる。
「ナノは悲しいよ…君は役目を果たし続けようとしたんだね…もういいんだよ、ナノの炎が君を包んで…終わらせるね」
 飛翔の勢いがのった黒炎と翠炎を纏った巨剣の打突が災魔の胸部に深く突き刺さり、黒と翠が織りなす猛火が心のような複雑な色合いを成し燃え上がる。黒翠の炎に撒かれ膝をつくように災魔が姿勢を崩し。だが、それでも燃えつくされぬ在りし日の悪夢が残された片腕でナノを排除しようとその腕を伸ばし――

 僅かばかり…黒翠の炎が燃え上がる少し前に時間は遡る。綴の愚直な叫びを耳に、アマータがその手に持つ多銃身砲を銀色のトランクへと戻し、再び開けられたそこから南瓜頭の案山子人形がゆらりと浮かび上がる。
「皆様の退路を確保します。準備しなさい」
 おいおい…説明もなしにいきなりかヨォ、とばかりの表情で裂けた口からケタケタと笑うネロへとアマータから…否、ネロからアマータへと人形遣いの糸が伸び…幕が上がる

 ――伸ばされた腕を掻い潜り、アマータがナノを災魔から引き離し、綴へと引き渡す。そうして、そのまま災魔と相対するように立ちふさがり。
「充分な戦果を成したと思いますので、撤退しましょう。ご心配なく、当機も人形、故にこういったこともできるのです」

●激戦の終わり
 迷宮主の間を劇場にした人形劇が宝物庫の番人を押し留め、浮き上がり零れた感情と共に黒翠を収め、常の様子に戻った翠炎の少女が一度、目を閉じ踵を返し、後ろを心配しつつも蒸煙のヒーローが負傷した身体を感じさせない足取りで少女に続き、護るために前線に立ち続けた紫蒼の盾騎士とその援護をし続けた槍龍がお互いの無事を確認し合う。仲間たちの脱出したことを確認した南瓜頭の案山子人形が操り糸の限界を伝え、アンティークドールの踵が返され迷宮主の間に宝物庫の番人のみが取り残される。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​


●護るべきモノのない守護者
 侵入者の消えた迷宮主の間で宝物庫の番人が自己解析を行う。腕部…右腕攻撃用推進器、一部破損。命中精度低下。脚部…魔術機関正常。熱暴走の可能性無。胸部…熱線発射装置、エネルギー伝達経路一部損傷。出力低下。前面装甲4層貫通、1層熔解。魔力炉…長期戦闘行動により一部加熱。稼働率正常。……総合戦力評価…低下。近日中の代替機体の派遣を要請。
 嘗ての姿をなぞるそれは迷宮主の間へと溶けて消えた。
リリト・オリジシン
遅参の段となったが、まあ、許せ
……と言っても、汝は気にも留めぬだろうが、何、様式美というものだ
では、戦いを始めようぞ

怪力で持って血染めの流星を振るい、その頑丈そうな鎧を砕いてやろう
足らぬと言うのであれば、血統覚醒にて足らぬを埋めるのみ
様子見などとは言わぬ。正面切っての殴り合いぞ
付き合ってもらおうか
痛みに怯む覚悟など持ち合わせてはおらんのでな
血染めの流星を振るって、振るって、振るいぬこう
装甲に傷があるなら、その部分を重点的に攻め抜き、傷口をえぐるように広げてやろうか

かくあれかしと生み出された汝に罪はない
が、しかしだ
護るべきモノもなく守護者を名乗るは不憫というものだろうよ
その名と共に砕け散るが良い



●扉の広間
 アルダワ魔法学園の紋章が刻まれた大扉の前で、戦いを終えた猟兵達と新たに転送されてきた猟兵が顔を合わせる。状況を知らされた猟兵が、労いの言葉を後に迷宮主の間へと足を進める。

●罪を負う前に
 膝までを覆う脚甲の装いでありつつも見事な意匠と緋玉を煌かせたヒールで、迷宮の床に足音を響かせながらリリト・オリジシン(夜陰の娘・f11035)が迷宮主の間へと足を進め、
「かくあれかしと生み出された汝に罪はない。故に、罪咎に穢れぬまま骸の海に還してやろうぞ」
 今を生きぬ汝では天国の門は潜らせてやれぬからなと、どこまでも尊大に、しかして役目には真摯な言葉が大扉の内側に消え、再び猟兵と災魔の戦いの幕が上がる

●戦いの始まり
 迷宮主の間を、数多の命と罪を吸い黒く輝く箒星をそなえた得物を手に進みトレジャリーガードと対峙したリリトが、胸部の装甲に傷を刻まれた戦いの跡を見やり、
「遅参の段となったが、まあ、許せ……と言っても、汝は気にも留めぬだろうが……」
 言葉の最中に響き渡るのはリリトを廻る流星と災魔の剛拳がぶつかり奏でる音。自身の言葉の通り、侵入者を排除するために迷わず行動を起こした災魔に応じ、クルリと踊るように振りぬいた血染めの流星の黒い軌跡が剛拳を逸らし、その音を置き去りに災魔へと駆け出す。
「製作者は様式美を理解しない無粋者とみえるぞ」
 苦笑交じりの言葉が零れ、魔力弾を浮かび上がらせ始めた災魔との距離が詰まり激戦の幕が上がる。

●激戦
 宝物庫の番人の放つ熱線に正面から相対する夜陰の娘が、その身から想像させない怪力で舞うように流星を操り、戦いの音が迷宮主の間を彩る。そうして、しばし後。

●血統の誇り
 リリトの操る流星の引く尾がトレジャリーガードの貫かれた跡の残る装甲を削り、降り注いだ魔力弾がリリトの身体を撃ち据える。お互いが引かず正面から全力でぶつかり合う、その最中。砕けた装甲が宙に舞う様子を見ながら、リリトがその身に残る傷と戦況を冷静に割り出しもう少し付き合ってもらおうかと、紡いだ言葉に溢れるのは赤。
「生み出された役割に忠実な汝にやはり罪はない。が、しかしだ…護るべきモノもなく守護者を名乗るは不憫というものだろうよ」
 輝くは赫光。激戦に零れた血潮よりも深い、夜陰に沈みゆく夕陽のごとき赤を瞳が纏う。その名と共に砕け散るが良いと、告げた言葉を追い抜くように振るわれるのは変わらぬ廻る血染めの流星。支えるのは始祖に戻る血統の誇り。リリトの未来を喰らう赫瞳が振るう暴威が守護者の胸部へと流星を落とし装甲を喰い破り、さらには守護者の腕や脚を流星の尾が傷つけてゆく。

●激戦の終わり
 迷宮主の間に宝物庫の番人の振るう剛拳と夜陰の娘が廻らす流星が火花を散らす。程なくして夜陰の娘の瞳が常の赤を取り戻し、戦果を見定めて踵が返され、再び迷宮主の間に宝物庫の番人のみが取り残される。

成功 🔵​🔵​🔴​


●空虚を護る守護者
 宝物庫の番人が再び自己解析を行う。腕部…右腕攻撃用推進器、一部破損。命中精度低下。脚部…魔術機関正常。一部装甲に損傷の蓄積。胸部…熱線発射装置、エネルギー伝達経路破損進行。出力低下。前面装甲、打撃による破断進行により警戒域突破。魔力炉…長期戦闘行動により加熱中。稼働率正常。……総合戦力評価…低下継続。近日中の代替機体の派遣を要請。
 変わることなく嘗てをなぞるそれは迷宮主の間へと溶けて消える。
ワズラ・ウルスラグナ
さあ、遅れはしたが待望の大物だ。
トレジャリーガード。期待通りの強敵の様だな。
油断無く、されど怯まず挑ませて貰おう。

先ずは戦支度だ。
熱線対策に武器改造・防具改造の技能と戦獄龍終極で獄焔を全身に取り込み纏う。
弾幕や物理的切断力は両翼と尾の盾受け・武器受けで防ぐ。
ロケットパンチが来たなら激痛耐性で耐え、決死の一撃とカウンターと怪力でその拳を引っ掴み、振り回す。頑丈なケーブルが付いているそうだからな、力比べと行こう。
それとも熱量勝負が好みか? それなら、熱線に対しブレイズフレイムで俺の獄焔を叩き付けよう。

何にしろ真向勝負。
宝物庫の番人との戦いこそ俺にとっては至宝の一時だ。
さあ、俺と殺し合え。



●扉の広間
 迷宮主の間に繋がる広間で戦いを終えた猟兵が、新たに転送されてきた猟兵を出迎える。状況確認をした猟兵が楽しそうに笑い、アルダワ魔法学園の紋章が刻まれた大扉へと足を進める。

●待望する強敵
 ワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)が硬質な音を響かせ大扉に向かうにつれ、古傷が黒焔を零し、武骨な剛腕と抜き放った巨剣が、強靭な獣脚が、長大な尻尾が、勇壮な龍翼が、獄焔に包まれ威容を増してゆく。
「我が身こそ我が武具なれば、我が戦獄此処に極まれり。遅れはしたが…俺も挑ませて貰おう」
 そうして、身の丈の倍近い巨剣を携えたワズラの三倍ほどの威容を誇る黒龍に大扉が立ちふさがる。ここでは狭かったか…と、龍の咢が唸り変わらぬ暴威を秘めたまま、巨躯が半分ほどに圧縮され迷宮主の間が戦獄龍を迎え入れる。

●望んだ邂逅
 獣脚が余すことなく力を伝搬し、剛爪が迷宮の床を削る音が響く。隠す事の無い足音にトレジャリーガードが撃ちだすのは無数の魔力弾。龍翼と靭尾が振るわれ、護りを抜けたものは獄焔を纏う龍躯で受けたワズラが災魔へと吼える。
「猛れ戦獄、開戦だ!さぁ、宝物庫の番人よ。俺と殺し合え!」
 新たに刻まれた癒えぬ傷口から血潮と戦意の業火を溢れさせ、災魔が罅割れた装甲に煌々とした白光を灯したのを見たワズラが纏うのは黒焔。
「俺とお前、喰らい焼き尽くすのがどちらか、勝負と行こうか!」
 獄焔が纏われた巨剣が構えられ、心底楽しそうな笑みがその顔に刻まれる。

●激戦
 放たれた白光を黒焔を纏う巨剣が迎え撃ち、斬り裂かれた白光が二条に別れ戦獄龍を灼き、白光を逆走した黒焔が宝物庫の番人にたどり着きその身を黒焔で包み戦端が開かれる。

●至宝の一時
 熱線と獄焔の熱気が迷宮主の間を満たし、幾度かの激突の後、獄焔を纏うワズラと災魔が距離を離し対峙する。熱線に晒され、災魔と打ち合い欠け溶けた巨剣を手甲のような獄焔へと変えその身に纏ったワズラへと、災魔が剛腕を向け放った剛拳が防がれることなく突き刺さる。
「さぁ、次は力比べと行こうか!」
 …否、身体で受け止められた剛拳が獄焔の手甲で締めあげられる。剛拳の推進器が出鱈目に暴れるのを怪力が押し留め、燃え移る獄焔が推進器を破壊し連結索を溶断しようと燃え上がった刹那、ワズラが衝撃共に吹き飛ばされ迷宮主の間の床を滑る。砕かれた右腕を見やり、強い衝撃に揺らされた頭を振るいながら、揺れるその視界に映ったのは引き戻される両の拳。災魔の隠し札…左の剛拳による強襲。それにワズラの笑みが深くなり戦獄がなおも猛るが龍翼を羽ばたかせ後退を行う。それは、戦闘狂としての戦い続ける為の冷静な判断。

●激戦の終わり
 宝物庫の番人が後退する戦獄龍へ魔力弾をばら撒き、折れた右腕をも使いながら防ぎ切った戦獄龍が迷宮主の間から消え、宝物庫の番人のみが三度取り残される。

成功 🔵​🔵​🔴​


●護るべきモノのない守護者
 宝物庫の番人が自己解析を行う音が空しく響く。腕部…右腕攻撃用推進器、全損。左腕攻撃用推進器解放。脚部…魔術機関過負荷により機能低下。一部装甲に損傷の蓄積。胸部…熱線発射装置、エネルギー伝達経路破損中。出力低下。前面装甲、警戒域突破。魔力炉…長期戦闘行動により加熱中。稼働率低下。…総合戦力評価…閾値下限突破。……魔力炉の制御回路解放。…総合戦力評価…閾値回復。緊急連絡、当機体の活動可能期間中の代替機体の派遣を要請。
糸原・キセ
【舞:2】
前任の肩を叩き引継ぐ

雅久の後ろに乗り

弾幕へは【破魔】の【子狐】
攻・守・援どの状況でも
必要箇所にあて的確に穴を
仲間の負傷を軽減する

損傷部は把握済み
雅久の衝突に合わせ
勢いのせ薙刀で【鎧砕き】
胸部熱線口を潰す

排熱など無粋だぞ?
孤独な守護者よ
今は共に熱く舞おうじゃないか

雅久まだいけるか?
【怪力】が二人
息を合わせ胸に集中攻撃
雅久が右向きに力を加えるなら
合わせて同じ向きに力を加えよう

回れ回れ
ステップは得意か?

懐では腕は使いづらく避け易い
弾幕は回転する自身で狙える方向が限られる

【子狐】傷口に入り込んでみるか?
もっと熱く成るだろう

【鎧砕き】に【薙払い】
戦い抜いた淋しき守護者に敬意を
この神楽を捧げよう


菅生・雅久
【舞:2】
多くが関ったトレジャリーガード手合わせ願おう
不明な道は壁破壊で短絡進み
自力脱出の生徒は様子確認
無事なら後少しで外と伝え安堵させる

キセに合せ弾幕を抜け
同時にトレジ半身をバイクで引掛け体制崩し
前者の爪痕を更に深くするよう【鎧砕き】
一人では倒せなくても1穴空けば堤防が崩れるが如く広がるだろう

それでもしつこく追尾してくる弾丸はバイクで引付け急ターンで壁へ当てる
何度も来るなら追尾の勢いのままターンしトレジへ返し当てる
自分の攻撃受ける気分はどうだ?

熱線】剛拳】は高速移動で避け意識を奪う
良いのかこちらばかり気に掛けて
キセが横から狙ってるぞ
俺が牽きキセが切り
キセが舞いオレがエキゾスト音で奏でるだろう



●扉の広間
 戦いを終えた猟兵が休憩する広間に、転送されてきた猟兵達が辿り着く。部屋の構造や依頼の状況を確認を終えた猟兵達が、迷宮主の待つ大扉へと足を進める。

●現状確認
 扉の広間に菅生・雅久(人間のブレイズキャリバー・f09544)が操る猛々しいエンジン音が響き渡る。表層の迷宮でも活躍した虚空をも翔ける機能を備えたバイクを、先行した猟兵達が持ち帰ったトレジャリーガードが待ち構える迷宮主の間の構造に合わせるように車体を変形させ、突入前の動作確認を行いながらアルダワ魔法学園の紋章が刻まれた大扉を見つめ、背後に座った信頼する糸原・キセ(祈りの戦巫女・f10149)へと声を掛ける。
「大扉の先が直接、目的の迷宮主の間に繋がっているそうだ、壁を壊したり道を調べたりする必要がないのはありがたいな」
「あぁ、魔法学園の生徒達も迷宮部分以降には入り込んでいないと確認もされているようだし、先に戦った皆も迷宮主の間には災魔以外は何もいなかったと保証してくれた」
 掛けられた雅久の言葉に、他の懸念事項もないと安心させるように聞き込んだ内容を語り掛け、災魔との戦いに備えバイクにまたがったまま薙刀を振るい、広間へと墨色の軌跡に銀を混ぜながら騎乗戦闘に身体を馴染ませ、使う式の準備を進めてゆく。
 それからわずか後…感覚はつかめた、式神の準備も問題ないと、キセから雅久へと準備の終わりが告げられ、アクセルが握りこまれ、後輪が迷宮の床を掴み、超合金のブレードが備えられた前輪が大扉に向けて進み、二人は連れ立ち迷宮主の間に突入し四度目となる戦いの幕が上がる。

●縦横無尽
 内燃機関の響かせる重低音を置き去りに、迷宮主の間を雅久とキセが駆け抜ける。その姿にトレジャリーガードが魔導炉の過剰稼働音を響かせつつ魔力弾を撃ちだし、疾走するバイクに左の剛腕を向け飛翔する剛拳を移動先を塞ぐように解き放つ。雅久が自身の進行方向に飛び迫る鋼鉄の拳を見据え、キセに強く掴まるように声を掛けながら更にアクセルを握りこみ、爆発的に回転数を上げた内燃機関の高らかに奏でる音が響きわたり、弾かれるように加速したバイクが抜き去るように剛拳を躱し、流れる迷宮主の間の風景を見ながら、バイクの後方から迫る災魔が操る魔力弾へと視線を移す。
「キセ、あの魔力弾どうにかできるか?」
「あぁ、任せておけ。少しこのまま引き付けておいてくれ」
 そう言って取り出されたのは式神の符。風に乗り奉じられるのは戦巫女の祝詞。高速で走るバイクの上でも変わらぬ朗々と読み上げられる祈りが迷宮の空気に溶けることなく形を成す。
「顕現せし火狐様。尾は千々にて小狐達よ。舞いて祓いて浄め給へ」
 祝詞に応じるように中空に火狐が顕れ、キセと並走するように迷宮主の間を翔けると、たなびく燃え盛る尻尾から零れ落ちた炎が子狐の形をとり、魔力弾に向かい翔けてゆく。火の粉がなす子狐が魔力弾を喰い破るようにかき消せば、魔力弾が子狐を貫き火の粉へと還す。その様子に流石、キセだと、零した雅久の操るバイクが迷宮の床を削る音と共にその向きを変え災魔へと正対するように進路を定める。災魔が再びその進路に周囲を巡らせていた魔力弾の一部を殺到させ、応じるように飛び出した火狐が子狐と共に作り出す道をキセが雅久へと指示し、その経路に迫りくる剛拳をキセの薙刀が僅かに逸らし、その隙間を雅久がバイクを操り突破してゆく。
「なるほど、個別に魔力弾を操られるのは厄介だ。でも、速度で翻弄するのは問題ない」
「あぁ、僕達なら十分に対応できる。ステップを踏ませて回らせてやろう」

●激戦
 獄炎の剣士の操るバイクが所狭しと迷宮主の間を駆け巡り、宝物庫の番人がその演算能力にて操る魔力弾が包囲を敷くように追いかけ、戦巫女の操る式神が魔力弾の包囲を喰い破り、宝物庫の番人へと負荷をかけてゆく。そうして、しばし後。

●式神顕現
 幾度かの交錯を経て魔力弾の隙間が広がったことを確認した雅久とキセが、トレジャリーガードへと攻勢を仕掛ける。交錯の際に詳しく損傷部を把握したキセが雅久へと言葉を伝え息を合わせ胸に集中攻撃を仕掛けようと災魔へと突撃する。
「雅久まだいけるか?右腕が飛ばせないならそちらの方が近づきやすいだろう」
「分かった。俺が気を引くから後は頼むぞ」
 再び奏でられるのは内燃機関の響かせる重低音。超合金のブレードが備えられた前輪を護るように、新たに呼び出された火狐と子狐の群れが魔力弾と喰い合いながら作る道を先導され向かう到達点には災魔。減速することなくバイクが災魔の右腕に衝突し、腕を外側に開くように守りがこじ開けられ、幾度も猟兵達に攻撃され深く傷ついた胸部装甲が露になる。そこへキセの薙刀が描く黒壇の軌跡が叩き込まれ、振りかぶられた左腕を、集まり出した魔力弾を、置き去りに雅久のバイクが駆け去り、追い打ちをかけるように再度呼び出した火狐が魔力弾の護りを破り装甲の傷跡を狙おうと奮戦する。

●激戦の終わり
 戦巫女の操る式神が再び魔力弾を押し留め、終始宝物庫の番人を翻弄した獄炎の剣士の操るバイクがその勢いそのままに迷宮主の間を脱出し、迷宮主の間に宝物庫の番人のみが取り残される。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​


●空虚な守護者
 …………。―――……。―――――。………………。
月守・ユエ
他の人と連携は積極的に
アドリブ歓迎

どこまでできるか分からないけど
頑張ってみようか

初手
狩猟女神ノ戦歌で一緒に戦う猟兵を鼓舞
「嘆きの大地に、戦場に降り立つ我らに、勝利の光を」
頭上月の幻影が輝き
歌に応じ猟兵達へ鼓舞の戦歌を送る

戦闘
オルタナティブ・ダブルで”月影”と人格を交代
「悪いけど、ぶっ壊れてもらうよ?
せっかく生まれた命だけど…
もうキミはココにはいられないんだって」
――災魔となってしまったからには
キミは壊れなくてはいけない

呪詛、殺気…敵を葬る事に特化したその力を感情を聲に織り込んで
【死刻曲】を歌い放つ
昏い月の輝き帯びた黒き刃を敵に打ち込む

戦いが終わったら
君の為に葬送曲を歌ってあげる
だから…

「沈め」


アルバ・ファルチェ
ユエちゃん(f05601)が協力してくれるって張り切ってたけど、一人で無茶してないと良いな。
と言う事で遅ればせながら僕も再戦。
(ユエちゃんだけじゃなく他の人との絡みやアドリブも歓迎)

護る事なき守護者…考えると哀れだよね。
僕も、守るべきモノがなければこうなってしまうのかな…。

…そんな感傷に浸ってるわけには行かないね。
僕だって守護者、護るべき仲間がいる以上怪我なんてさせないよ。

変わらず【おびき寄せ】【挑発】【かばう】で攻撃は僕に集中させ、【武器/盾受け】【オーラ防御】【見切り】でダメージを最小限に。
【見切った】攻撃に関しては【鎧砕き】【武器落とし】を試みるよ。

…もう、守るモノはない。
眠りにつきな?


護堂・結城
【狐の宿】で連携
久々の雪見九尾の援軍と行こうかね
役目を終えて眠ったのに起きちゃいけねぇよ

ま、俺はあくまで援軍だからな
やりたい事を手伝うだけさ

【POW】

氷牙を両手のガントレットに変形させて【雪見九尾の闘気の尾】を発動
属性は雷、自然現象は雨、雷雨の巨人を召喚
剛腕には雷の【属性攻撃+怪力】を載せた巨腕で対抗して
ナノのハッキングの【時間稼ぎ】

「悔いは残すな、長くもたねぇぞ」

なおも止まらなければ…止まれないのならば
巨人の拳から【生命力吸収】で稼働エネルギーを奪いつつ【怪力+捨て身の一撃+鎧無視攻撃+2回攻撃】だ

「殴り壊してでも止めてやるのは俺の仕事だ」

もうお前の役目は、終わってるんだからな


ナノ・クロムウェル
【狐の宿】で連携 …私の我侭に付き合ってくれてありがとう
リベンジマッチです
今度こそ…貴方の役割を終わらせます
大丈夫です
貴方の役目は私達、猟兵が引き継ぎますから

私の武器である「翠炎剣」「ガジェット」の二つを捧げ、「先導者たつ翠の歯車」を発動し、機械の爪の形の高熱を帯びたガジェットを右腕に召還します
「武器受け」を駆使しながら接近戦です
この爪は敵を切り裂くだけじゃなく…熱を吸収し、爪の出力を高めます
これで強行突破です
貴方に爪を穿てたら…「ハッキングコード」を使い「ハッキング」を行います
これで…貴方の操作権を奪い停止させます
完全じゃなくてもいい…わずかでも止まってください


シン・ドレッドノート
【狐の宿】で連携。
危険なゴーレムは排除して、迷宮の平穏を取り戻しましょう。

「ハンドレット・ガンズ…」
【乱舞する弾丸の嵐】でスカーレット・ブラスターと精霊石の銃を複製。複製した銃による[フェイント+2回攻撃+一斉発射+援護射撃]を行います。

「目標確認、乱れ撃ちます!」
スカーレット・ブラスターからはナノさんの狙っている部位を集中して狙撃、ゴーレムの装甲性能を低下させ、精霊石の銃からは雷属性の弾丸を発射。結城君の雷雨の巨人に合わせて雷の威力をアップさせます。

私が狙われた場合はビームシールドで受け流します。
「今のうちに、やってください!」
こちらに注意を引きつけたところで、味方に攻撃してもらいますね。


ワズラ・ウルスラグナ
折角だ。
最後まで戦わせてくれ。

一対一は楽しませて貰った。名残惜しいが、此処からは真っ当に戦おう。
先ずは腕を地獄化と武器改造で補強しておく。最悪左腕と武器と一体化してしまえば剣は振れるだろう。
敵をブレイズフレイムで燃やし、熱を溜める。魔力弾が誘爆すれば良いが、そうでなくとも普通の攻撃にはなるだろう。
後は援軍を呼んだならそれの対処だな。奥から現れたなら薙ぎ払い、後ろから来るなら扉を塞いでしまおう。

仲間が居るなら合わせて行動する。
策が有るなら乗っかろう。
もしもの時は周囲に離れて貰い、戦獄龍狂嵐を使う。
最後の力比べだ。両腕とその命、貰い受ける。



●扉の広間
 戦いを終えた猟兵達とすれ違い、広間で大扉を見つめる猟兵達の後追うように、転送されてきた猟兵達が現れる。そこへ広間の奥で休憩をしていた猟兵が合流し、それぞれが抱えるものは様々な色をしつつも、為すべきことは共にする猟兵達が広間に集ってゆく。

●それぞれの理由
 再びアルダワ魔法学園の紋章が刻まれた大扉を見上げるナノ・クロムウェル(翠炎のメタルサバイバー・f02631)が、翠水晶と同じ色を湛えた瞳に一度目の邂逅では成せなかったことを果たすと覚悟を籠めた頃、耳に内蔵された高性能な集音機が待ち人が来た事を捕らえ、振り返り大きく頭を下げる。
「シンさん、護堂さん。二人とも来てくれてありがとう」
 それに柔らかくしなやかな純白の霊糸で織られた白装束を身に纏うシン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)が、腰に携えた二丁の愛銃とその腕に嵌めた十字の星を重ねた腕輪の動作の軽く確認しながらいつものように涼やかに答え、
「お気になさらず、ナノさん。危険なゴーレムは排除して、迷宮の平穏を取り戻しましょう」
「頼まれたのならやりたい事を手伝うだけさ。まぁ、でも、俺達はあくまで援軍だからな?」
 目の前の少女は力無き者ではないだろうが、力を貸すことに否はないと羽衣から変じた戦装束に身を包んだ護堂・結城(雪見九尾・f00944)が、自身の肩に乗る変幻自在の武器にして相棒たる氷河を撫でながら、旅館の常連ともいえる少女の背を押すように笑いかける。
 その隣では、先の戦いでの負傷を心配されつつも最後まで戦うことを告げた、激戦で受けた龍躯の傷を赤黒く鳴動させるワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)が、砕かれた右腕を戦獄で包み込み、猛る焔腕となったそれの調子を確かめるように暴風龍の名を冠する強大な鉄塊剣を振るい猟兵として責務の果たすことを迷宮に響かせる。
「一対一は楽しませて貰った。此処からは真っ当に戦おう」
 そこから少し離れた大扉の目の前、象牙色のタートルネックのセーターに夜空を思わせるストールを巻いた月守・ユエ(月ノ歌葬曲・f05601)が、肩にかかる綺麗な漆黒の髪を揺らしながら、これ…どうやって作ったんだろう~?と迷宮主の間に続く大扉に刻まれた紋様に黄金色の瞳を向けて興味深げに観察した後、一息つき喉の調子を確かめるように声を整える。
「じゃぁ、どこまでできるか分からないけど…頑張ってみようか」
「ユエちゃん!よかった、間に合ったみたいだね。一人で無茶してないか心配したよ。でも、協力してくれるのはありがとね」
 僅かに息を切らしてアルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)が、相棒のコルノとその隣に並び、張り切って先に行ってしまっていないかという心配が杞憂に終わったことを喜びつつも、再び訪れた大扉の前に気を引き締めるように息を吐き出し、ドラゴンランス『コルノ』改めて携える。それぞれの準備が終わっていること確認すると、望みと為すべきことを共有した猟兵達が最後になるであろう戦いに向けて大扉をくぐる。

●護るべきモノのない守護者
 迷宮主の間に入った猟兵達に聞こえてきたのは異常な駆動音と破砕音。何らかの異常が既に起きているであろうと感じ取ったユエが、邂逅を待たず携えた月ノ記憶の名を冠するスタンドマイク型デバイスを起動し、その歌声を備え付けられたスピーカーから迷宮の中へと響かせ始める。歌い上げられるのは狩猟の女神に捧げられる前奏曲。戦場に立つ仲間たちを後押しし生還を願う戦歌。
「嘆きの大地に、戦場に降り立つ我らに、勝利の光を」
 月明りのように澄んだ柔らかな歌声が迷宮に反響し、仲間を見守り鼓舞する想いのままに、ユエの頭上へと幻影の満月が顕れる。満月からこぼれる月光に照らされるように先行し駆け出したのはアルバとワズラ。出迎えるのはただばら撒かれ迷宮主の間を砕き続ける、視界を埋め尽くすような無数の魔力弾。明らかな異常を前に、アルバが創り出した二十を超える己の持つ白銀の盾…翼と十字の意匠を刻まれた騎士の誇りが魔力弾を後ろに通さぬように護り、数多の衝突音を奏で、その横では大気を震わせる咆哮のような音と共に振るわれる獄炎を纏った鉄塊剣が魔力弾を薙ぎ払う、間に合わぬものは流血と共に噴出した獄焔が燃やし尽くしてゆき、
「僕だって守護者、護るべき仲間に怪我なんてさせられないよ。だから、僕の前では誰も傷つけさせたくないんだけど…」
「すまんな、許せ。俺の戦い方がこうであるということもあるが…こうなった理由は知らんが、そうも言えん状態のようだ」
 言葉を交わす僅かな間にも、魔力弾が弾ける音とその身に走る衝撃を白銀の盾越しに感じ、『コルノ』が盾の護りを抜けアルバに迫る魔力弾を打ち砕き、支えるように動いていることを握りしめた柄から理解する。状況を変えるため、後続の仲間のために、アルバが魔力弾を押し込むように進み、それに合わせるようにワズラも暴風龍を操り噴き出る黒焔と共に前進する。それは名残惜しくはあるが、存分に一人で宝物庫の番人と打ち合いを行った己は、今だ果たしていない同僚のその想いに合わせ役目を務めようという、戦闘行為すべてを肯定する戦闘狂の矜持。その戦意にさらに黒焔が猛り暴風龍の威容が増してゆく。
 そうして、魔力弾がアルバの白銀の盾とワズラの暴風龍に押し戻され、後続の猟兵達が歩みを進め、ユエの頭上から降り注ぐ幻影の月光に、迷宮の暗がりが照らしだされトレジャリーガードが姿を見せる。胸部の魔力炉を、脚部の魔術機関を、全身の装甲を赤熱させ暴れまわる姿はそれを初めて見る猟兵達にとっても異常。災魔の異常を見据えながら、盾となった二人の作った空間で動き出したのはシン。その両手に純白に金の縁取りの入った銃身の長い銃と純白に紅いラインの入った粒子砲を構え、防ぎ進んでいるとはいえばら撒かれ続ける魔力弾を放置出来ないと、紡がれるのは世界法則さえも覆す超常能力を呼び起こす言葉。
「ハンドレット・ガンズ…ターゲット、マルチロック…目標は魔力弾!乱れ撃ちます!」
 浮きあがった純白の銃群が翔ける空に金と紅の軌跡を描き、様々な射線で撃ちだすのは多量の銃弾と粒子の軌跡。絶えず放たれるそれが紫電を纏い、無数に放たれ無尽蔵に生み出される制御を失った魔力弾の弾幕を喰い破り、災魔へと続く道を切り開く。維持するための撃ち合いを続けながら、シンの声がナノと結城へと届く。
「ナノさん!結城くん!今のうちに、やってください!」
「準備はいいか相棒!我が身、闘気を纏いて、この敵意抑えること許さず」
「集いし歯車よ…我が武と炎を喰らい翠に輝くその姿…現出し先導せよ!」
 シンの言葉を聞き、機会をうかがっていたナノと結城が同時に行動を始める。災魔の姿を見て役目を終えて眠ったのに起きちゃいけねぇよと、普段自身が戦うオブリビオンとは別の印象を懐いた結城に呼ばれた氷牙が、結城の腕へと巻き付き澄んだ音を響かせながら腕を覆い、その名の如き怜悧な籠手をなし、それと同時に結城の目の前へ雷鳴と雷光を響かせる朧な人影が顕れ、人影の中心にある拳大の雷雲から四方に降る雨が打ちつける音と共にその輪郭が明確になり、その雷雨の巨人の腕へと結城が纏う氷牙の籠手が顕れる。その隣ではナノが暴走し暴れまわるばかりの災魔の様子に僅かに首をふるい、喚びだした歯車へと組み込まれてゆく。翠炎剣と魔導蒸気機械を覆うように喚び出された歯車が噛み合わさり、右目から猛るように翠炎が燃え上がり零れ落ち、右腕から全身覆うように侵食する歯車と機械が翠炎ともにナノを飲み込む。そして、翠炎に熱せられた右腕と一体化した機械の爪を揺らし、全身を機械化したナノが結城へと頷く。
「ナノ。悔いは残すな?だが、長くはもたねぇぞ」
「分かりました。今度こそ…大丈夫です」
 駆けだした雷雨の巨人の影にナノが続き、再びの邂逅が目指される。距離を詰ようとする雷雨の巨人に放たれるのは左腕からの飛翔する剛拳。それを帯電させた巨人の腕が迎え撃ち雷音と共に剛拳と巨腕がお互いに弾かれ合い、暴走する魔力炉の余剰エネルギーでばら撒かれた熱線をナノの機械爪が引き裂きつつ巨人の援護に回りゆっくりとだが確実に距離を縮めていく。

●激戦
 月灯が月影へと代り、仲間たちを鼓舞するように輝いていた月光が昏い光を宿し、別れの言葉が刃となり宝物庫の番人を狙い放たれる。
 紫蒼の盾騎士の構えた白銀と相棒たる龍槍が、戦獄龍の振るう獄炎を纏った暴風龍が、後ろで戦う仲間へ向かう魔力弾を防ぎとめ安全を確保し、真紅の奇術師の操る数十にものぼる純白の銃群から撃ちだされる弾丸が放たれ続ける魔力弾を打ち破り道を維持する。
 雪見九尾の援軍たる雷雨の巨人は宝物庫の番人の飛翔する剛拳を氷牙が為した籠手の似姿で捌きながら着実に進み、翠炎の少女が薙がれる熱線を激戦による流れ弾を機械爪で打ち払い雷雨の巨人の補佐をし、ついにその至近へと辿り着く。

●守護者だったモノ
 至近に辿り着いた雷雨の巨人と打ち合い、魔力弾をばら撒き続けるトレジャリーガードを結城が見つめ共に戦う猟兵達へと声を掛ける。
「……、俺が稼働エネルギーをどうにかする、後を頼まれてくれねぇか?アルバさんは皆の護りを頼んだぜ」
 これだけやってなおも止まらなければ…止まれないのならば、殴り壊してでも止めてやるのは俺の仕事だと、その意思を受けて雷雨の巨人が災魔へと突撃し組みつく。白銀の盾がナノをシンを…自身を含めたすべての猟兵の元に移動したのを見届けたその瞬間。広がるのは衝撃と雷鳴。暴走する魔導炉の莫大な熱量を吸収した雷雨の巨人の雨が水蒸気となり弾け、純粋たる雷撃となった巨人の残り香が災魔へと直撃し、あたりを白く染め上げ……魔導炉の稼働音をさせつつも膝をつき動きを止めた災魔が残される。
 災魔と猟兵達すべてを等しく震わせた衝撃から最初に立ち直ったのは、距離の離れていたユエとシン。目の前に翳された白銀の盾の影かその身を躍らせ、視界に収めるのは魔導炉の熱を失い、衝撃に動きを止めた災魔。状況を読み取った二人が迷わず為すべきことのために動き出しそれぞれの言葉が紡がれる。
「悪いけど、ぶっ壊れてもらうよ?せっかく生まれた命だけど…もうキミはココにはいられないんだって…だから、沈め」
「ナノさんの邪魔になりそうな魔力弾はここですべて排除します。ターゲット・ロック…目標を狙い撃ちます!」
 ――災魔となってしまったからにはキミは壊れなくてはいけないと、月影が想い。頭上の昏く輝きを陰らせた満月の月光を浴びながら歌い上げられるのは死刻曲。呪詛、殺気…敵を葬る事に特化した月の魔性へ感情をのせ、聲に織り込んで告げる別れの言葉と共に、どこまでも昏い黒を纏った音の刃が災魔へと向けて放たれる。それと同じくして、衝撃により複製した銃群が消し飛んでいることを理解したシンの手に握られるのは、スカーレット・ブラスターと精霊石の銃。今度は複製することなく両腕に構えた双銃に赤い光が灯り、純白の銃口が向く先は災魔の制御を離れ滞空したままの魔力弾の群れ。
 月影の放つ黒の音響刃が、これまで無数に魔力弾を生み出してきた両脚の魔術回路へ斬り込み、響き弾ける音と共に刻まれた傷跡がその機能を完全に破壊し、シンの構えた双銃から絶え間なく紅い光弾が発射され、未だに動きを見せない魔力弾を的確に撃ち抜き、災魔の護りを攻撃の手段を撃ち砕き仲間の為に戦いを進める。
 だが、魔力弾を撃ち抜かれ魔術回路を斬り裂かれた災魔が、新たに魔導炉から供給された熱量を持って再稼働する。先ほどまでの狂乱じみた暴走が嘘のように動き出した災魔が左腕を向けたのはアルバ。推進器が火を灯し飛翔する剛拳が…割り込んだワズラの龍躯に突き刺さり動きを止める。以前と違い一抱えもある剛拳の衝撃が胸部のどこかを傷つけたのか血の混じった声で、だが再戦を喜ぶように災魔に声が告げられる。
「さぁ、宝物庫の番人よ。最後の力比べだ。この左腕、貰い受ける!」
 獣脚の爪が床を割り掴み、焔腕と全身の古傷から黒焔を零し、振り払わんとする災魔と溶砕せんと猛るワズラの力比べが始まり、推進器の暴れる音と連結索の軋む音、迷宮の床が悲鳴を上げる音が響く。そのワズラと災魔の攻防の横をアルバが『コルノ』と共に駆け抜ける。
「護る事なき守護者…考えると哀れだよね。…でも、そんな感傷に浸ってるわけには行かないね」
 僕の前では誰も傷つけさせない、その想いを変えることはないと携える盾の重みを感じるアルバの目に映るのは振りかぶられた右腕。左腕の押し合いの為、姿勢は悪いが明確にナノに向けて振り下ろされようとするそれに身を割り込ませ相対し、初めての邂逅の時と同じように重い金属がぶつかり合う音が響き渡る。
 アルバが白銀の盾を持って受け止めた災魔の右拳へ『コルノ』が引き戻されないように穂先を突き立て動きを封じようと奮戦し、ワズラの戦獄を噴き出す両腕が軋みを上げつつ災魔の左拳を抱え込み、左拳の推進器が暴れまわるのに合わせ、血を零す口元に笑みが浮かばせる。
 かくして、再びの邂逅。衝撃の余韻から覚めたナノの目の前にはトレジャリーガードの姿。
「皆さん、私の我侭に付き合ってくれてありがとう…貴方の役割を終わらせます」
 構えられた機械爪に応じるように輝くのは災魔の胸に灯る僅かな白光。熱線の発射口を翠炎を纏った爪が貫き、白光を飲み込み深く装甲へと埋まって行く。穿たれた装甲と穿った翠炎爪…空虚な守護者っと繋がったナノが口に乗せるのは目の前の相手へと零れる願い。
「貴方の役目は私達、猟兵が引き継ぎますから」
 操作権を奪い停止させようと演算装置へアクセス可能な制御回路を求め、深く沈んでいくナノが触れたのは魔力炉。翠炎爪が突き刺さり災魔の根幹が崩れ出す感覚と共に、ハッキングで繋がったナノの意識が…悲しい終わりを厭い、停止を求める想いが幾度となく伝えられ、災魔の動きが止まる。災魔に変化を感じ取りアルバが見たのは過去へと溶けつつある災魔と胸部装甲に手を当てるように翠炎爪をうずめたナノ。
「…もう、守るモノはない。眠りにつきな?」
 その守護者に僅かに自身を重ね、かけた言葉と共に悪夢が夢のように覚め溶ける。

●??????
 管理者権限のない不正アクセスを検知。要請否認。否認。…否認。……否認。………承諾。……最新…音声…休眠指示……確認。……戦闘行動……終了。……防衛任務……終……。………待機…………

●激戦の終わり
 数多の破砕痕と激戦の余韻を漂わせた迷宮主の間に再び幻影の満月が浮かぶ。ユエの歌う過去へと消えた悪夢を月へと導く葬送曲が美しく反響し、柔らかな月光が降り注ぐ。その姿を瞳に映し自身の守るべきモノに想いを馳せたアルバが視線を満月へと移し目を閉じる。
 葬送曲が反響する中、月光に照らされたナノが宝物庫の番人が消えた場所へ右手を月光を掬うように差し出しながら見つめ、その様子にシンが心配するように駆け寄り異常がなさそうな事を見て取り安堵の混じった息を零し、そこへ肩に氷牙を載せた結城が合流したのを皮切りに、それぞれがお互いの無事を確認する。
 他の猟兵達がそれぞれの思いを抱える中、宝物庫の番人が護っていた迷宮主の間の深部へと刻まれた負傷をそのままに歩を進めたワズラが、目の前に現れた堅牢な壁を見て依頼の完了を感じ取る。

●守護者のいなくなった部屋
 あれからしばしの後、護るべきモノのない守護者と猟兵達が激戦を繰り広げた迷宮主の間に魔法学園の生徒が訪れる。部屋に置かれるのは魔法学園の教師が設置した到達を証明する証。そこに過去から蘇った厄災の魔はいない。守られた未来が紡ぐ日常がその一室を満たし、過去は過去として静かに流れ、未来の礎としてのみあるのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月27日


挿絵イラスト