アースクライシス2019⑭〜過去の創世を阻止するために
●首魁と化した「クライング・ジェネシス」を撃破せよ!
「理解し、共感しようとしたことすら恨むのか……」
どうしようもなく手を付けられないな、と額を右手の指で押さえながら呆れた口調で呟くグリモア猟兵館野・敬輔の姿を見て、次々と猟兵達が集まってくる。
「ああ、皆来てくれたか。ようやくヒーローズアースのオブリビオン・フォーミュラ【クライング・ジェネシス】の尻尾を掴んだんだが、撃破を頼みたい。いけるか?」
指を額から離し、猟兵等に一礼しながら頼む敬輔に、それぞれの想いを胸に頷く猟兵達。その場に広がるのは、高揚感。
――ついに首魁に手を届かせる時が来たのだ。
逸る猟兵たちを抑えながら、敬輔は概要を説明する。
「現在、クライング・ジェネシスは【骸の海発射装置】の準備を行いつつ、僕ら猟兵を待ち構えている」
発射装置のチャージが完了し、発射されるのは【12月1日夕方頃】。
それまでに世界各地に出現したクライング・ジェネシスを撃破し、完全に葬り去らねば、待ち受けているのはヒーローズアースの【カタストロフ】。
――それだけは、断固阻止せねばならない。
「皆には名古屋城に急行してほしい。クライング・ジェネシスはそこで僕ら猟兵を待ち構えている」
広さの問題で実際の戦場はすぐ北の名城公園となるが、クライング・ジェネシスにとっては、名古屋城も名城公園も己の活躍を引き立てるための舞台装置に過ぎないため、破壊されることはないと考えていい。
なお、出現時に現地にいた観光客は現地のヒーローたちが必死に避難させているが、大切な『証人』の数を減らしたくないためか、やはり積極的に狙うこともない。安心して戦闘に専念してほしい。
「敵の首魁だけあって強敵だ。必ず先制攻撃してくる上、使用するユーベルコードはどれも【過去の具現化】を象徴していると言える。これをうまくしのがない限り、手を届かせるのは難しいかもしれないな」
とにかく、放たれた過去に食われるな。そう敬輔は強く警告した。
「オブリビオン・フォーミュラと化す前のクライング・ジェネシスは、無能力者……ユーベルコードが使えなかったらしい」
嘘とハッタリのみでヒーローとヴィランを殺しまくり、その都度身体部位の一部を移植してユーベルコードを得ようとした無能力者。それがかつてのクライング・ジェネシス。しかし、移植の副作用であっさりと死に至ったのだそうだ。
「そこまでしてユーベルコードを得ようとした理由が気になる人もいるだろうけど、今はそれを突き止めている余裕はない。もう……時間が残されていないんだ」
カタストロフまであと6日。それまでにクライング・ジェネシスを滅ぼせなかった場合、ヒーローズアースは骸の海に沈む。事態は急を要しているのだ。
「ヒーローズアースを守るための戦いもこれが最後だ。早急に撃破を頼んだぞ!」
敬輔は檄を飛ばすと同時に丸盾のグリモアを展開し、転送ゲートを開いて猟兵等を誘う。
――首魁との決着をつけ、ヒーローズアースを救うために。
●ヒーローズアース・名古屋城
名古屋城のすぐそば、名城公園に転送された猟兵等を出迎えたのは、クライング・ジェネシス。
「ギャーッハッハッハッ! わざわざ死ににやって来たかよ猟兵のクズども!」
胸部の【骸の海発射装置】をここぞとばかりに見せつけながら、クライング・ジェネシスは猟兵等を威圧する。
「さあ、カタストロフはもうすぐだぜ。ギャーッハッハッハッ!」
クライング・ジェネシスの嫌味な笑いとともに、自己顕示欲と世界への恨みに凝り固まったオブリビオン・フォーミュラとの決戦の火ぶたが切って落とされた。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
ついにクライング・ジェネシスとの決戦です。
ただし、カタストロフまであと【6日】(2019/11/25時点)に迫っております!
皆様には、名古屋城で待ち受けるクライング・ジェネシスの早急な撃破をお願いします。
……と言いつつスケジュールの都合で執筆開始は少しだけ先になりますが。
ラスボス戦につき、判定は厳しく参ります。
それ相応の戦術を練った上でのご参加をお願い致します。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「アースクライシス2019」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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状況は全てオープニングの通り。
今回は冒頭への追記はありません。
補足となりますが、名古屋城及び名城公園の破壊防止対策、観光客への被害を防ぐための対策は一切不要です。首魁撃破に全力を注いでください。
●本シナリオにおける「プレイングボーナス」
【敵のユーベルコードへの対処法を編みだす】とプレイングボーナスが与えられます。
クライング・ジェネシスは『必ず先制攻撃してくる』ので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります。
●プレイング受付期間
11月26日(火) 8:31 ~ 11月27日(水) 8:29
※受付期間前送信は例外なく不採用。
※リプレイ執筆は「11月27日以降」となる見込みです。
●【重要】プレイングの採用について
本シナリオはラスボス戦につき、北瀬の時間が許す限りで採用する方向で考えております。ただし突発的な本業超多忙状態に陥った場合、必要成功数+α程度の採用にとどまる可能性もございます。
やむを得ず採用者を絞ることになった場合、上記受付期間内に送信いただき、かつ判定が成功以上になった方の中からランダムで選ばせていただきます。予めご了承の上、参加いただくようお願い致します。
なお、本シナリオは【必ずおひとりで参加をお願い致します】。
合わせ・連携プレイングは採用できません。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『クライング・ジェネシス』
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POW : 俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!
全身を【胸からオブリビオンを繰り出し続ける状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 貴様らの過去は貴様らを許さねェ!
【骸の海発射装置を用いた『過去』の具現化】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【相手と同じ姿と能力の幻影】で攻撃する。
WIZ : チャージ中でも少しは使えるんだぜェ!
【骸の海発射装置から放つ『過去』】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を丸ごと『漆黒の虚無』に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:yuga
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
熊猫丸・アカハナ
お城の屋根におる金の鯱って、火事になったら火を消してくれるんやろ。
ま、災いの炎は消しても、わしら猟兵の正義の炎は消さへんけどな!
CGが先に放ってくる『過去』は蔦でドーム状のバリアを張って防御、さらに召喚されてくるオブリビオン群も蔦で薙ぎ払ってCG本体にも攻撃や!
見たか!目立ちたがりのオブリビオン・フォーミュラめ!
はっきりとは証明できへんけど、正義は必ず勝つもんやで!!
※アドリブ、連携OK
●正義の炎はエゴイズムで消せるのか
「お城の屋根におる金の鯱って、火事になったら火を消してくれるんやろ」
名古屋城の屋根に鎮座する一対の金の鯱が見下ろす名城公園に降り立ったのは、熊猫丸・アカハナ(花咲かコメディアン・f23154)。
「ま、災いの炎は消しても、わしら猟兵の正義の炎は消さへんけどな!」
「ギャーッハッハッハ! オレの炎がそんなちゃちいつくりものに消せるわけねえよ! てめえら猟兵にもな!」
強烈なエゴを晒し、観光名所も猟兵も見下すクライング・ジェネシスの真正面に立つアカハナだったが、先に動いたのはクライング・ジェネシスだった。
「死にな! 正義面してノコノコと死にに来やがったバカが!」
クライング・ジェネシスは胸部の骸の海発射装置を起動し、砲身をアカハナに向け、何かを発射。
「チャージ中でも少しは使えるんだぜェ? 喰らいな!」
発射されたのは漆黒の『過去』。それはタールのように重く粘つく弾丸となり、蔦地獄を展開しようとしていたアカハナを蔦ごと撃ち抜こうとする。
(「ウソやろ!? 蔦がまにあわへん!」)
アカハナは急いで蔦を展開するが、急造の蔦はタールのように重く粘つく『過去』にあっさりと吹き飛ばされ散り散りに。そのまま『過去』は驚き動けなかったアカハナに纏わりつき、その動きを封じた。
クライング・ジェネシスは、そして名だたる有力敵は、【猟兵がユーベルコードを使うより先に、ユーベルコードを発動できる】。これこそが『先制攻撃』の恐ろしさだ。防ぐためには己の技量と技能を駆使し、防ぐための策を練る必要があるが、アカハナは蔦地獄頼みでそれ以外の策を持っていなかった。これでは避けることもかなわない。
(「な、なんやこの悪意の塊は……クライング・ジェネシスの過去かいな!?」)
アカハナを捕らえ動きを鈍らせる『過去』から流れ込む感情は……クライング・ジェネシスの悪意そのもの。
――それは、力なき己を認めなかった社会への憎悪。
――そして、己の憎悪で世界を滅ぼそうとするエゴイズム。
あまりにも強烈な憎悪に晒され、アカハナは恐怖にガタガタと震えながらも叫ぶ。
「はっきりとは証明できへんけど、正義は必ず勝つもんやで!!」
「ギャーハッハッハ! 震えながら言っても説得力はねェ!!」
再度骸の海発射装置から発射された『過去』を、アカハナはかろうじて蔦のドームで止めたのち、クライング・ジェネシスを巨大な蔦で翻弄しながら逃げるしかできなかった。
己に理解を示そうとした正義すら恨む、クライング・ジェネシス。
かの首魁との戦いは、まだ始まったばかり。
苦戦
🔵🔴🔴
天星・暁音
過去過去と五月蠅いね
性格も面倒くさい奴…
まあ、恨みだけでここまで出来たのならある意味凄いかもね…
とはいえ俺は他者を恨むだけの君を肯定などしないけど…
共苦は君のその恨みや感じてきた負を俺に教えてくれるけど、だからなんだと笑い飛ばしてあげる
恨みに沈みに堕ちた者、俺ができるのは精々君の齎す過去を受け止めて笑って、そして永遠の闇へと放逐するくらいだ…
どんな過去が押し寄せようと、俺にとって今大事なのは何よりも未来なのだから俺の歩みを止める過去に興味何か微塵もないんだよ
哀れなる彷徨い人、貴方を永遠の闇へと放逐します!
相手の齎す過去が過去の家族による迫害の記憶だろう世界の過去だろうと受け止めて笑って見せます
●恨みを痛みに替えてでも受け止めて
「過去過去とうるさいね……性格も面倒くさい奴……」
天星・暁音(貫く想い・f02508)は、恨みだけでここまでできたのならある意味凄いかもね……と感心したような呆れたような口調で呟きつつ、クライング・ジェネシスの前に立つ。
「とはいえ、俺は他者を恨むだけの君を肯定しないけど」
「てめぇらクズに認められる気はねェ! 消えな!!」
暁音を嘲るように胸から撃ち出されたタール状の『過去』を、暁音はあえて避けずに受ける。
粘つく『過去』は暁音の上半身の動きを封じ、そして彼に……過去を見せた。
――暁音がまず見るのは、この地の過去の記憶。
第二次世界大戦終盤、ヒーローとヴィランの戦いの余波で、周囲一帯ごと焼け落ちる名古屋城。
――次に見るのは、暁音自身の過去の記憶。
家族と異なる色の瞳と髪を持つ故、家族から迫害され、幽閉された過去。
――最後に見るのは、まだ人であった頃のクライング・ジェネシスの記憶。
腐った社会に怒りを覚え、しかしヒーローでもヴィランでもないために何もできず、恨みつらみを抱えていた記憶。
共苦の痛みは、暁音が見た過去の記憶の傷とともにクライング・ジェネシスの計り知れない恨みを受け止め、痛みに変換して暁音にその恨みの深さを伝える。
オブリビオンの首魁と成り果てる程の恨みが変換された痛みは、痛みを受けなお笑っていられるほどの強靭な心の持ち主である暁音ですら、一瞬でも気を抜けば無限の責め苦で意識を失ってしまいそうなほど強烈。
――だが、暁音の顔から笑顔が消えることは、ない。
過去は知った。だから何? と暁音は笑い飛ばす。
――それは嘲りでも挑発でもなく、無関心ゆえの笑い。
「どんな過去が押し寄せようと、俺にとって今大事なのは何よりも未来なんだ」
歩みを止める過去への興味は微塵もない。暁音にとって大切なのは、大切な人と歩む未来なのだから。
暁音は足元に視線を落とし、小声で呪文を詠唱する。
「恨みに沈み堕ちた哀れなる彷徨い人、あなたを永遠の闇へと放逐します!」
暁音が足で描いた魔法陣が呪文の完成と共に優しい光を放ち、名城公園全域を光の波で包み込み、聖域を形成した。
――それは味方には癒しを齎し、敵には動きを封じる光の鎖を齎す波。
「ちいッ! 小賢しいことをするガキが!」
聖域の各所から動きを拘束しようと飛び交う光の鎖を腕で必死に払いながら、クライング・ジェネシスは再度骸の海発射装置を稼働、聖域を塗りつぶすように『過去』を撃ち出す。
しかし、聖域は『過去』すら浄化するかのように優しい光を放ち続けていた。
苦戦
🔵🔴🔴
皆城・白露
(アドリブ歓迎です)
…力が欲しかった、か。
オレにはわからないな。わかる気もないが
オレと同じ姿、同じ力…それで怯むと思ったか?
(自分の過去、仲間を「喰った」ばかりの頃の憔悴した姿
胸糞悪いばかりだが、躊躇わず叩き潰せるだけマシか)
【群狼の記録】使用で自己強化
(狼の幻影に「喰われる」ように出血。【激痛耐性】で耐える)
同じ力を後出しできるのなら、かえって好都合だ
相手の強化度合いを見極めて、それより強化を上乗せする
傷が増えようが血反吐を吐こうが構わない
この場だけ動ければ、あいつを叩き潰せればそれでいい
…さあ、行こうか
攻撃は左右一対の黒剣(禍々しい爪状に変化)で
【カウンター】【捨て身の一撃】を駆使し行う
●「あいつ」を叩き潰し、過去を越えろ
クライング・ジェネシスのどこまでも怨嗟に満ちた声を聞きながら、皆城・白露(モノクローム・f00355)は足元の石を軽く蹴りつけながら呟く。
「……力がほしかった、か」
白露には力を欲する気持ちはわからないし、わかる気もない。
故にどこまでも冷めた目を湛えたまま、クライング・ジェネシスの前に姿を晒した。
「性懲りもなくよく次々と現れるなァ! 猟兵のクズどもが!!」
他の猟兵が仕掛けたと思しき光の鎖を漆黒の『過去』で迎撃しつつ、髪も衣装も白で統一されている白露の姿を認めたクライング・ジェネシスは、苛立ち露わに白露を睨む。
「貴様は貴様の過去に喰われちまいなァ!」
骸の海発生装置から漆黒のタールのような『過去』が一滴地面に落ち、白露と瓜二つの姿へと変化した。
現れた白露の幻影――『白露』と白露が大きく異なるのは、両者の纏う衣服。
そして、白の髪と衣服に不自然に付着する、赤い液体。
(「ちっ、胸糞悪い姿を見せやがる」)
内心舌打ちする白露が今、目にしているのは、仲間を「喰った」ばかりの頃の、憔悴した姿。
ただし、瞳に宿る光は……憔悴とは裏腹に行き場のない憎悪。
――過去の自分は、こんな目をしていただろうか?
否、と首を振る白露。これは恨みつらみの過去の影響を受けて作り出された幻影だ。
(「幻影だとわかっている以上、躊躇わず叩き潰せるだけマシか」)
――ならば、全力で叩き潰すのみだ。
白露の戦意を感じ取ったか、『白露』はふたふりの爪を両の手に持つと、白と黒、そして灰の三体の狼の幻影を呼び、肩を、腕を食らわせる。
「オレと同じ姿、同じ力……それで怯むと思ったか?」
ふたふりの爪を手にした目の前の幻影を見ても、白露は怯むことはない。『白露』と同じように、白と黒、そして灰の狼の幻影を呼び出し、己を――喰らわせる。
白露と『白露』、両者に宿る力に比例し、幻影に喰われた箇所から血が滴る。
だが白露は『白露』の強化度合いを見極め、それを上回る身体強化を施すべく、さらなる流血をも厭わず狼に強く、多く噛ませる。口端からも血が地面に滴り落ちるが、構わない。
(「傷が増えようが血反吐を吐こうが、この場だけ動ければいい」)
――目の前の『白露』を叩き潰せるまで持てば、それでいい。
双方の狼の幻影が消える。
「……さあ、行こうか」
どちらが合図を出したかはわからない。
だが、その声を合図に、白露と『白露』は弾かれるように飛び出した。
『白露』がふたふりの爪で白露を斬り刻もうと爪を振り下ろした瞬間。
白露の手にする禍々しい爪状の黒剣が、『白露』の爪に合わせるように下から斬り上げられた。
――それは、二合で全てを決めんとす、捨て身の一撃。
白露の右手の理不尽への復讐を叫ぶ爪――「RIGHT/for revenge」が、歪な憎悪に歪められた『白露』のふたふりの爪を空高く弾き飛ばし。
さらに左手の怒りを叫ぶ嘆きの爪――「LEFT /for lament」は、過去の憔悴と理不尽な憎悪を瞳に宿した『白露』の胴を深く切り裂いていた。
斬り裂かれた幻影は、あるべき場所へと戻りゆくために、消える。
「猟兵のクズが……おとなしく食われちまばよかったのになァ!!」
「…………。」
幻影を破られ喚くクライング・ジェネシスを見つめる白露の双眸は、どこまでも冷めていた。
成功
🔵🔵🔴
白斑・物九郎
●SPD
●対先制
・魔鍵を【怪力】で刺突/殴打に取り回し(気絶攻撃+なぎ払い+串刺し)、幻影に真っ向対抗する
【野生の勘】で先読みを掛けて――未来を悟って、防御ないし攻撃を適宜配置する
そいつが俺めの狩りの作法
過去の自身が相手だァ?
恐るるに足りませんわな
あの幻影の存在軸はどうしたって『過去』
そんな手合いが未来を覗き込もうとすんのと、今現在この瞬間を生きる俺めが未来を覗き込もうとすんのと、どっちがより遠くの未来を悟れるか
幻影に先んじるこの一手がその答えですわ!!
●反撃
・【開門】発動
・半径3,481mテレポートでジェネシスからの視認を切りつつ接近、骸の海発射装置の砲口目掛け魔鍵を叩き込む(捨て身の一撃)
●過去に存在する者は未来を悟れるか
続けてクライング・ジェネシスの前に身を晒した白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)にも漆黒のタールが忍び寄り、目の前で物九郎の『過去』を具現化すべくヒトガタを取り始めていた。
「果たして貴様がこれに耐えられるかァ! ギャーハッハッハ!」
高みの見物を決め込むクライング・ジェネシスの手前に、過去を具現化した幻影がその身を晒した。
現れた過去の幻影――『物九郎』は、物九郎と瓜二つ。
ただし、その髪は白。得物は魔鍵を操る物九郎と異なり、拳のみのようだ。
しかし、物九郎は『物九郎』を見ても欠片も揺さぶられない。
「過去の自身が相手だァ? 恐るるに足りませんわな」
目先の相手への恐怖が無きことを諳んじるように、嘯くように告げ。
「俺めには過去の記憶がないっす。……本当の過去の幻影かもわからないっすよ」
記憶の不在を告げる声は、軽やかで、晴れやかなそれだ。
「だから、恐るるに足らないっすよ」
過去は己の相手にならず、恐れる必要もない。物九郎は軽やかに断言する。
『俺めはてめぇの過去の似姿だ!』
否定された怒りに身を任せるかのように、拳を下から突き上げるようにふるう『物九郎』。
「もしその通りだとしても、幻影の存在軸は、どうしたって『過去』っす」
魔鍵で拳を受け止め、払いのける物九郎。
「そんな手合いが未来を覗き込もうとすんのと、今現在この瞬間を生きる俺めが未来を覗き込もうとすんのと、どっちがより多くの未来を悟れるか」
研ぎ澄まされた野生の勘が『物九郎』の右の拳の軌道を察知し、首をわずかに左に傾けて紙一重で回避。流れるように魔鍵を逆袈裟に振り上げ、『物九郎』の胴を強打しよろめかせた。
「幻影に先んじるこの一手が、その答えですわ!!」
物九郎は『物九郎』が態勢を立て直す前に魔鍵を大上段から振りかぶり、そのまま脳天に叩きつける。
『てめぇ……!!』
頭を潰された『物九郎』は、そのまま消滅した。
感傷に浸ることはせず、クライング・ジェネシスが物九郎の『過去』の消滅に気づかぬうちに、物九郎は現在地とクライング・ジェネシスの『骸の海発射装置の砲口のすぐ手前』を繋ぐ門を形成し、潜った。
「貴様ァ……それで不意を討ったと思うな!?」
一瞬にして砲口の前に身を晒した物九郎を見て、クライング・ジェネシスは再度『過去』を形成しようとするが、それよりも物九郎の魔鍵が振るわれる方が早い。
「未来を悟り、先へ進むのは過去の恨みで生きるお前さんじゃないっす!」
物九郎は己の全力を持って魔鍵――「心を抉る鍵」を砲身に叩きつける。それは非物質化したかのように砲身をすり抜け、クライング・ジェネシスの抱える計り知れぬ恨みの一部を叩き潰していた。
「ギャアアアアアア!! 猟兵め、新世代め……この世界のクズめえええええええ!!」
己が存在意義を抉られた上に叩きのめされ、クライング・ジェネシスは怒りの咆哮を上げていた。
成功
🔵🔵🔴
佐倉・理仁
『第六感(霊感)』《死んだもの(過去)》を使ってんのはテメェだけじゃねーんだよ。外道の術なんざ、どこの世界にも転がってる……バカ笑いしてられたのは、俺らに見つかる前までだったんだぜ?
デカい口きいてみたが、骸の海砲は恐い!
出来るだけ距離を取りつつ〈骸の香〉『呪詛、オーラ防御』で射線を捻じ曲げ直撃を避ける。完全に防げりゃいいが、軽く見るつもりはねぇよ。
【暴虐の屍骨龍】
奴を囲うようににゾンビの群れを召喚。全方位同時には撃てねえだろ。コイツらで足止めしつつ気を引き、その隙に頭上へ屍骨龍を呼び出してやる。数多の命を捻り潰した怪物さ、事実としてあった〈過去〉の怖さは、テメェもよーく知ってるだろ?
●過去から来たりし暴虐龍よ、エゴイストを蹂躙せよ
心を抉られ、若干戦意を喪失しつつあるクライング・ジェネシスの前に姿を現したのは、佐倉・理仁(死霊使い・f14517)。
霊感でクライング・ジェネシスが過去に囚われ、そして利用していることを察した理仁は、ただつまらなそうにつぶやく。
「死んだもの……過去を使ってんのはテメェだけじゃねーんだよ」
死者に仮初の命を吹き込み使役する術。
死者に魔力を注ぎ込み、傀儡として操る術。
そして、己が一部を分け与えた者を吸血鬼として蘇らせる術。
……死者を、過去を使役する外道の術は、どこの世界にも転がっているものだ。
「テメェがバカ笑いしてられたのは、俺らに見つかる前までだったんだぜ?」
「ギャーハッハッハ! 俺は死者には興味ねえ!」
胸の砲口を理仁に向け、嫌味なバカ笑いで威圧するクライング・ジェネシスを見て、理仁の表情が軽く引き攣る。
(「……デカイ口きいてはみたが、あの骸の海発射装置は怖い!」)
それでも理仁は足の震えを必死に隠しつつ距離を取り、骸の香を取り出し、来るべき一撃に備えた。
「貴様が使う過去ごと消し飛びなァ!!」
クライング・ジェネシスの胸の骸の海発射装置から漆黒のタール状の『過去』が打ち出され、理仁を包み過去に捕らえようとする。
しかし理仁は触れるものを腐らせ捩じ伏せる骸の香を焚く。その煙は現在(いま)を塗りつぶそうとする『過去』に纏わりつき、侵食し、過去を過去たらしめんとするが、元の恨みつらみが計り知れぬせいか、完全には侵食しきれない。
(「完全に防げりゃいいが、軽く見るつもりはねぇよ」)
理仁は香の呪詛を『過去』の弾の片側にだけ集中させて腐らせ、軌道を無理やり捻じ曲げて逸らす。彼の背後で地面に着弾した『過去』は、そのまま地面を過去に侵食し、黒く染め上げていた。
クライング・ジェネシスが、過去に染まった地面を利用すべく移動する。だが、それを遮るように、理仁が召喚した無数のゾンビの群れが現れた。
「死者が俺の邪魔をするんじゃねえよ!」
クライング・ジェネシスは両の腕を我武者羅に振り回し、ゾンビを薙ぎ払う。薙ぎ払われたゾンビはすぐに消滅するが、その穴を埋めるかのようにすぐさま他のゾンビが壁となり遮る。
「その骸の発射装置、全方位同時には撃てねえだろ?」
砲身は胸に固定されているため、簡単には向きは変えられない。ゆえに骸の海発生装置でゾンビを一掃するのは困難。そう見切って大量のゾンビを用いた理仁の口端に、わずかに笑みが浮かぶ。
(「それに、ゾンビは足止めかつ気を引くためのオマケにすぎねぇ」)
――本命は……頭上!!
突如頭上から吹き付けられた強烈な死の気配に、クライング・ジェネシスは思わず天を仰ぐ。
「な、なんだこいつはよぉ!!」
ゾンビを囮に時間を稼ぎ、その間に理仁が頭上に召喚した暴虐の屍骨龍が、クライング・ジェネシスを踏み潰すように降り立ち、両足の鋭い骨と爪でクライング・ジェネシスの動きを封じた。
「事実としてあった『過去』の怖さは、テメェもよーく知ってるだろ?」
「糞が、糞がああああああ!!」
濃密な死の化身、ドラゴンゾンビにうつ伏せに倒された踏み躙られたクライング・ジェネシスは、骸の海発射装置を使うこともできず、ただ死の、過去の暴風が止むのを待つしかできなかった。
成功
🔵🔵🔴
樫倉・巽
生きるも死ぬもない
そこに戦いがあるだけだ
信長の城ではないのか
世界が違う為か
是非にあらず
あの男ならそう言うのか
クライングジェネシス
お前は俺にとっては強い敵
それだけだ
死合う
名乗りを上げ
ゆらりと前に出る
「ヒーローではないが相手になろう」
同じ姿だが相手は過去
額に傷が出来る前よりも
夢見がちな子供であった頃よりも
今に近いとは言え
過去は過去だ
俺の技、俺の思考、俺の体を持って斬りかかってくる事に変わりない
俺が弛まぬ研鑽を続けているなら
俺のこの世界を救う覚悟を持って
斬り捨てる
いつもと変わらぬ
自分の敵は自分
癖も全て知っている
一振りで決める
納刀し過去を斬る
その一振りに命を賭けて
我が身を省みず
己が心を貫き
刀を振る
●是非にあらず、死合うのみ
樫倉・巽(雪下の志・f04347)は名城公園の横にそびえ立つ名古屋城を目にし、エンパイアウォーで相対した第六天魔王に想いを馳せるも、すぐに思い直す。
(「かの城は信長の城ではないのか」)
どの世界でもこの城は織田の城ではなく徳川の城。信長の面影は微塵もない。
もし、あの男が今のこの城を見たなら、「是非にあらず」とでもいうのだろうか。
――否、得体の知れぬ過去の遺物に利用されることは望むまい。
生きるも死ぬもなく、ただ戦いの中に生きる巽にとって、この戦いも数ある「戦い」のひとつにすぎないのか。
(「クライング・ジェネシス。お前は俺にとっては強い敵だ」)
それだけの理由で、オブリビオン・フォーミュラと死合う男。それが樫倉・巽。
「ギャーハッハッハ! 今度はトカゲかよ!」
ゆらりと前に出て姿をさらした巽を一目見るなり爆笑するクライング・ジェネシスだが、巽は動じず、正々堂々と名乗りを上げる。
「樫倉・巽、ヒーローではないが相手になろう」
「貴様の相手は俺じゃねえよ! 貴様も貴様の過去に喰われて地面に這いつくばるがいいさ! ギャーッハッハッハ!」
嫌味な笑いと共に巽の目の前に現れたのは、巽と同じ荷姿、同じ着物を着た幻影――『巽』。ただし、額の傷はない。
(「夢見がちだった子供であった頃よりも今に近いとはいえ、過去は過去だ」)
巽と寸分たがわぬ技、思考、そして体を持つであろう幻影であっても、巽の心は微塵も揺らがなかった。
揺らがない根拠のひとつは、巽の瞳に宿りし意志の違い。
巽に宿るのは、たゆまぬ研鑽を続け、さらなる高みを目指す意志。
一方、『巽』に宿る瞳の意志は……召喚主の影響を色濃く受けた憎悪だ。
それを除けば、『巽』の立ち居振る舞いは、巽自身が知るそれとほぼ同じ。太刀筋も癖も呼吸も間合いも、おそらくすべて同じだろう。
――ならば、自分を相手にするのと相違ないのではないか?
(「いつもと変わらぬ。自分の敵は自分だ」)
心の中で溜息一つ、手にする刀――砂塵渡りに視線を落とす、巽。
――過去の自分に打ち克つべく、一振りで決める。
砂塵渡りを納刀した巽は、『巽』が動く機会をじっと待つ。
研鑽を積む前の『巽』であれば、若干耐えかねるのが早いはず。
焦らされ耐えきれなくなった『巽』が先に動き、大上段に刀を振りかぶり、巽を唐竹割りにせんと振り下ろす。
だが、巽は振り下ろし始める瞬間を見切って一気に間合いに踏み込み、居合術の要領で一息に抜刀、横一文字に振り抜いた。
――一振りに賭けるは、己の命。
――我が身は決して省みず
――ただ、己が心を、意志貫くのみ!
横一文字にまっすぐ振られた巽の刀は、『巽』を上下に両断し、消滅に追い込んでいた。
「貴様……クズがどこまで俺をコケにすれば!!」
立て続けに過去を、己の存在意義を斬り捨てられ続けたクライング・ジェネシスは、胸の骸の海発生装置の出力が落ち始めていることに気づかない。
――過去と対峙する戦いは、終盤戦へ。
成功
🔵🔵🔴
ロバート・ブレイズ
「私――俺の過去は否定の連鎖。未知に裏切られ。未知に苛まれ。未知に殺されたに等しい『無意味』の羅列だ。好いか。怨むのは勝手だ。俺は貴様等を、己含めて『冒涜』する王だと理解せよ」
具現化された『過去』の己の『恐怖』に対して
狂気耐性で受け止める
積み重ねた過去の存在(俺)を最後の一片まで嘲笑ってやろう
そのような『既知』は滅ぶべきだ
そのような偽りの『未知』は死に絶えるべきだ
「未知は最初から『死んでいる』」
幻影を、自身を、存在を総て『否定』し
冒涜王を起動
不可視なる『普遍的無意識の領域』と同化し、対象の【魂】を。【恨み】を掻っ攫う
「貴様の如き人間風情は、早々に否定されるべきだ。我が身と同様に――クカカッ!」
●エゴイストすら恐怖に陥れる「冒涜」
――カツン、カツン。
紳士服に身を包み、足音鳴らしてクライング・ジェネシスの前に姿を見せたのは、ロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)。
見た目は品の良い老紳士に見える彼もまた、猟兵。
「本当に新世代……猟兵のクズどもは諦めが悪すぎるじゃねえか!」
過去を笑って受け止められ。
過去を斬り捨てられ。
過去ではなく「未来」への一筋の道を示され続け。
クライング・ジェネシスの苛立ちは頂点に達していた。
「ジジイ! 貴様の過去はたあっぷり楽しめそうだなあ?」
クライング・ジェネシスの骸の海発生装置の出力は、先ほど鍵で抉られたことでかなり落ちている。いずれ、装置ごと骸の海へと還されるだろうが、それでもまだ、目の前の老紳士の『過去』を幻影として映し出す程度の力は、残されていた。
骸の海発生装置からつつっ……と『過去』がしたたり落ちる。
それは老紳士を映し取り、寸分たがわぬ姿へと変化した。
目の前に現れた幻影は、若かりし頃のロバート。
頭部を覆うマスクはなく、瞳こそ憎悪に侵されてはいるが、それを除けば老紳士を若くした姿と相違ない。
「クックック……」
だが、幻影を見たロバートがマスクの奥から発した音は――くぐもった嗤い。
「私――俺の過去は否定の連鎖」
未知に裏切られ。
未知に苛まれ。
未知に殺されたに等しい『無意味』の羅列。
ロバートが嘲笑うは、積み重ねた過去の存在……すなわち自分自身。
「そのような『既知』は滅ぶべきだ」
――偽りの『未知』は死に絶えるべきだ
過去の恐怖という『既知』からの侵食を、ロバートは己の狂気で受け止めて。
積み重ねた過去の自分を、最後のひとかけらまで嘲笑い、否定する。
「怨むのは勝手だ。俺は貴様等を、己含めて『冒涜』する王だと理解せよ」
――未知は最初から『死んでいる』のだ。
目の前の過去の幻影を。
現在を生きるロバート自身を。
何よりも今を生きる存在を。
――総て否定し、冒涜しよう。
ロバートの身体が、不可視なる『普遍的無意識の領域』と同化する。
――それすなわち、理想を否定した「冒涜王」の姿。
「我こそが冒涜の王。我が肉体こそが精神世界――で在る。貴様等を此処に招待しよう。我が国の民と見做すのだ。光栄に思うが好い」
クライング・ジェネシスを包み込むように広がる『普遍的無意識の領域』は、恨みつらみで存在を主張する魂を見つけ、その全ての恨みを掻っ攫わんと蠢く。
「な、何なんだ……何なんだ貴様はァ!」
本能的な恐怖は感じるのか、クライング・ジェネシスがロバートから離れようと後ずさるも、恐怖という『既知』すら滅ぼさんとす『普遍的無意識の領域』が逃すはずもない。
「貴様の如き人間風情は、早々に否定されるべきだ。我が身と同様に」
――クカカッ!
ロバートの嗤いと共に、クライング・ジェネシスの全身が『普遍的無意識の領域』に覆われる。
直後、クライング・ジェネシスの存在の核ともいえる恨みを、『普遍的無意識の領域』が魂ごと掻っ攫った。
「ギャアアアアアアアアア!! 俺の、俺のおおおおおお……!!」
己の存在意義を奪われたクライング・ジェネシスの絶叫が、公園一帯に響いた。
成功
🔵🔵🔴
シル・ウィンディア
ついに出てきたね
理解されないので怒るのはわかるけど
理解されても怒るって、難儀な人だね…
対敵UC
【空中戦】で飛んで、【残像】を生み出して【フェイント】を駆使しての撹乱機動で飛び回るよ
当たらなければどうってことはないけど…
被弾時は【オーラ防御】と【盾受け】で防御するけど
なにより
過去は大切
それがあるから、明日があるっ!
過去にとらわれて見失うことなんてないからっ!
叫んで、気合を入れて敵の攻撃に対処するよ
気持ちで負けたりなんかするものかっ!
敵の攻撃が終われば…
腰部の精霊電磁砲で牽制を行いつつ
【高速詠唱】と【全力魔法】のUCを行使
過去から受け継がれたもの
そして、未来へ行くために…
わたしの全力受けてみてっ!
●過去から未来へ向かうため
「ついに出て来たね」
シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)の青の瞳に映るクライング・ジェネシスの姿は、根源たる何かをごっそりと奪われ、憔悴しているようにも見えた。
「理解されないので怒るのはわかるけど、理解されても怒るって難儀な人だね……」
シルの呟きが耳に入ったか、激情に駆られ嗤い出すのは……クライング・ジェネシス。
「ギャーッハッハッハ! てめえらは簡単に理解とか口にするがよ、理解して共感して何になりやがる!」
「!?」
「他人の感情を理解とか共感とかで分かったフリをしやがって、それこそクズどもの勝手なエゴだろうが!」
シルは言葉を失うが、一方でそれはクライング・ジェネシスの足掻きであることにも気が付いていた。
強烈なエゴを持って、澄んだ強い意志ある少女をねじ伏せようとする、クライング・ジェネシス。
それは他の猟兵に魂ごと掻っ攫われ、力の根源をほぼ失ったゆえの、最後の悪足掻き。
「猟兵のクズ……そこのガキをせめて道連れにしてやる!!」
骸の海発生装置が唸りをあげてシルに狙いを定め、タール状の『過去』を撃ち出し雁字搦めにしようとする。
「貴様も過去に取り込まれやがれ!」
「えいっ!!」
しかしシルはそれを察して空中に逃れ、逃れる。
「ちょこまかとうぜぇんだよ!!」
クライング・ジェネシスも『過去』を連射するが、シルは瞬間的に速度を上げて残像を生み出し、時にはフェイントも織り交ぜて撹乱しながら的を絞らせない。それでも何発も撃たれれば掠めもするが、盾で振り払いつつ気合を入れて抵抗する。
「過去は大切だけど、それがあるから明日があるっ!」
クライング・ジェネシスに向け、シルは未来を、明日の存在を叫ぶ。
「過去にとらわれて見失うことなんてないからっ!」
それは、未来を見据える少女の、確固たる意志。
やがて出力が大幅に低下したか、骸の海発射装置から『過去』が撃ちだされなくなる。それこそが、シルが狙っていた反撃の機会。
シルは腰につけた精霊電磁砲を散発的に撃ちながらクライング・ジェネシスの動きをけん制し、追い込む。
「クソがっ! なぜ言う事を聞かねえ!!」
クライング・ジェネシスが発射装置に気を取られている間に、シルは急いで魔力による砲撃を行うべく、呪文を唱えて魔力をチャージ。
「過去から受け継がれたもの、そして未来へ行くために……」
シルは両手を広げて濃密な魔力が籠められた魔方陣を展開し、クライング・ジェネシスを真正面に捕らえる。
「わたしの全力、受けてみてっ!」
――魔法陣から尾を引いて放たれるは、万色の魔力による砲撃。
自然を構成する四大元素――火・水・風・土の四属性が宿る270本もの魔力砲撃が立て続けにクライング・ジェネシスの身体を抉り、存在そのものを消滅させてゆく。
「覚えていろよクズども! 恨みつらみがある限り、俺は何度でも蘇ってやらあ!!」
存在意義を剥ぎ取られ、全身を魔力で撃ち抜かれたクライング・ジェネシスは、灰となり消滅した。
こうして、クライング・ジェネシスは名城公園にて討ち取られた。
他の観光地でも次々と討ち取られている以上、完全に討滅する日も……遠くはない。
大成功
🔵🔵🔵