アースクライシス2019⑭〜アンブロークン・ワールド
●最終決戦
「皆、お疲れ様だニャア」
グリモアベースの会議室。明滅するスクリーンを背景に、ピコピコと尻尾を振ってバースト・エラー(世界の不具合・f21451)が挨拶した。
「お久しぶりだニャ。今回の作戦目的も至ってシンプル、オブリビオン・フォーミュラの討伐だニャ」
スクリーンに映るモンスターの幕の内弁当みたいなのが敵だニャ。その名も『クライング・ジェネシス』――骸の海を発生させる非常に迷惑な存在だニャ、とエラーは続ける。
「例によって絶対に先制攻撃してくるニャ。詳細は各自、ちゃんと対策を立てる様に」
クライング・ジェネシスは無数のオブリビオンを生み出したり、対峙する相手の過去そのものを呼び出して戦いを挑んで来る。逆に出てくる過去が読み切れれば、それ自体が対策となるだろう。
「それに、ここで負ければ戦争は終わらない。カタストロフ――世界の危機だニャ」
戦争終結のタイムリミットである12/1迄にクライング・ジェネシスを倒し切らなければ、これまでの積み重ねの全てが水泡に帰す。奴自身が内蔵した『骸の海発射装置』で、大量の骸の海を世界に流し込み、全てを過去で塗り潰すのだという。故に、絶対に負ける訳にはいかない。クスリと笑ってエラーが続ける。これを言うのも在り来たりだニャアとか何とか。
「オーダーは勿論、戦って勝て、生きて戻れ。以上だニャ」
その在り来たりの通り――世界を救えばいい。
我らが帰還すべきは、ありふれた日常なのだ。
「それじゃ、グッドラックだニャ」
磯臭いグリモアのゲートが開かれて、まるで合体しそうな異様な建物が目に映る。その名は東京ビッグサイト、かつて侵略者を迎え撃った、古の砲台陣地が決戦の場だ。
ブラツ
ブラツです。このシナリオは1フラグメントで完結し、
「アースクライシス2019」の戦況に影響を及ぼす、
特殊な戦争シナリオとなります。
本シナリオは最終ボス『クライング・ジェネシス』討伐シナリオです。
非常に強敵の為、ユーベルコード対策は慎重に行ってください。
戦場は東京ビッグサイトを含む日本国東京、港区台場周辺です。
色んなランドマークがありますが、大勢に影響はありません。
●プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
クライング・ジェネシスは必ず先制攻撃してくるので、
如何にそれを凌いで反撃するかの作戦が重要になります。
対策が成功しなければ、高い確率で苦しい戦いとなるでしょう。
●今回の注意事項
誠に申し訳ございませんが、
プレイングは11/26(火)8:31より募集します。
それ以前に頂いたプレイングは恐らく流します。
合わせプレイングは必ず識別子を記載して下さい。
作業は11/27(水)早朝より行う予定ですが、
本戦争終結に間に合わせる様作業致しますので、
全てのプレイングを採用出来ない場合があります。
恐れ入りますが、ご了解頂ければ幸いです。
それでは、よろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『クライング・ジェネシス』
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POW : 俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!
全身を【胸からオブリビオンを繰り出し続ける状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 貴様らの過去は貴様らを許さねェ!
【骸の海発射装置を用いた『過去』の具現化】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【相手と同じ姿と能力の幻影】で攻撃する。
WIZ : チャージ中でも少しは使えるんだぜェ!
【骸の海発射装置から放つ『過去』】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を丸ごと『漆黒の虚無』に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:yuga
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●お台場暴君王
『ギャーッハッハッハッ!』
荒れ狂う嵐の中をクライング・ジェネシスの威容が進む。東京湾中に響く喧しい狂笑と共に、その巨大な姿を一歩、一歩と沿岸部に近づけて。
『ハッ! いつの間にかデケェロボット像なんか建てやがって。相変わらず不細工な放送局まで残ってらぁ!』
その歩みが局所的な大波を起こし、付近の船舶が大きく揺さぶられる。
しかしそれだけ……生命を奪うつもりは無いらしい。むしろ己が威を示す為にあえて残すかの様に。
『聞こえるかヒーローども、そろそろ橋を封鎖しときな。どうなっても知らねえぞ! ギャーッハッハッハッ!』
『対G案件対策本部より報告、もうじきJ各員の転送が開始される予定』
『今度は米国だけだとたかを括っていたが、まさかこうなろうとはな』
対ジェネシス案件仮設前線指揮所、テントの中で迷彩姿の中年が愚痴る。だがまあ、いい。来るなら来い。
『沿岸部の都民の避難は完了、万一の場合は東雲、辰巳ラインへ追い込みます』
『全く、小金持ち共め……分かった。始めろ』
承知しました、と若い男が去る。
巨大生物との遭遇戦は慣れたものだ。この地を決戦の場に選んだ事を後悔させてやる。この海は怪獣達の墓場なのだからな……それに今回は、耐えるだけじゃない。
『頼むぞイェーガー、世界を守ってくれ』
チリチリと燐光が視界を覆い……そして、決戦が始まる。
フィーナ・ステラガーデン
・敵UC対策
私の過去の幻影ってことは火の魔法ばっかり使うってことね!
【火炎耐性】を持ちつつ
私は【属性攻撃】で出来るかぎり
飛行速度がゆっくりした火球を適当に何発か放ちながら
東京ビッグサイト横の海に潜るとするわ!
自分の弱点くらい嫌ってほどわかってるわ!
海の中で息を止めながらUCを発動
適当に放った火球や何か燃やした後ならその炎を
巨大な炎の蝙蝠を作り出し幻影とクライング・ジェネシスを焼き払うわ!
後はひっそり海から這い出て
燃えてるクライング・ジェネシスを【全力魔法】による業火で一気に畳み掛けるわ!
吸血鬼に海潜らせてんじゃないわよ!!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
セゲル・スヴェアボルグ
どれだけ、オブリビオンを出そうとも、所詮はそれは過去の遺物に過ぎん。
それに、そのほとんどはここまで来る戦いの中で「見た」ものだ。
そのほとんどは近距離で遠距離のものは少なかった。
その上、宙を舞えるものも少ない。
故に一度飛ぶとしよう。
少ない遠距離攻撃のために盾を構えつつな。
無論、そういうたぐいの奴は先に潰していく。
向こうがこちらに攻撃が届かなければ、奴自身が動かざるえ終えない。
動いてしまえば無敵の効果は得られん。
その隙に攻撃を叩き込むとしよう。
ついでに周りのオブリビオンも流せれば僥倖だな。
間髪入れずに叩き込むぞ。
●嵐の勇者
東京湾に現れた巨影が活動を開始する。その場で立ち止まり無数のオブリビオン――かつて猟兵達に幾度も破れ去った者達が、再び現世に受肉して、ありとあらゆるモノを過去に塗り潰さんと暴れ狂うのだ。
「だが――どれだけ、オブリビオンを出そうとも、所詮それは過去の遺物に過ぎん」
白銀の甲冑に身を包んだ蒼き竜の戦士が呟く。セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)は雨曝しの中、目元のゴーグルを拭って対峙した威容を備に観察した。
「そうよね! 幾ら追加で出てこようと、まとめて焼き尽くすだけなのよ!」
傍らで小柄な魔女が息巻いて。フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は手にした杖に魔力の明かりを灯し、ふわりと宙を舞った。ただ数が多いだけなら幾らでもやりようがある。
「――ほとんどはここまで来る戦いの中で『見た』ものだ。遠間で戦えるモノは少ない。飛べるモノもな」
そしてニヤリとセゲルが口元を歪ませる。戦術プランはいたってシンプル、当てられなければどうという事も、恐れる事も無い。
「じゃあ行くわよ! こっちは飛べるし、遠くから狙い撃てるんだから!」
飛翔――魔女が、竜が飛ぶ。次第に強まる嵐の中、戦いは始まった。
『オラオラオラオラ! とっとと出てこい! 全部、全部俺様が過去で塗りつぶしてやるからよオッ!』
ジェネシスの胸元が鈍く輝き、産み落とされるオブリビオン――ざぶん、ざぶんと浅瀬に降りる大量のザウルスマン達。頭だけ出してふらふらと岸辺へ向かう姿は亡者の軍団の如し。しかし望みは果たされない。亡者は亡者の国へと帰還すべきなのだ。
「生憎通行止めよ、他を当りなさい!」
嵐を突き破り火球の雨が海面を揺らす。立ち込めた水蒸気が視界を覆い、頭だけ飛び出したザウルスマンの群れの尽くを、水風船の様に爆ぜさせた。
「これだけではあるまい……だが、何を出しても同じだ」
冷静に、セゲルの放った銃弾はザウルスマンを骸の海へと帰還させる。盾から覗いた銃口は破滅を齎すものに容赦はしない。
『来たかよ猟兵! 華々しくオレの為に、死ねェッ!』
それでも、ジェネシスの産み落とすオブリビオンの数は一向に変わらず、むしろセゲル達の戦術に合わせて更なる脅威を産み落とした。続いて現れるはスーツの集団。
『こいつらの恨みは人一倍だぜェ! 搾取し続ける金持ちへの恨みって奴は俺だってよぅく分かるからな! それに、この辺りはそういう奴らの溜まり場だ!』
こんな奴に共感されても何も嬉しくない。だが脅威は脅威だ、アタッシュケース型の機関銃を携えたサラリーマンの集団は、見事な統率で誰かが足場になり、誰かが銃架となって、空より迫る猟兵達を迎え撃つ。
「歪められた自意識か――いや、そんな事を言ってる場合ではない、か」
それでもセゲルは臆する事無く、立ち塞がったサラリーマン達を魔法銃で制圧していく。数も質も全く問題にならない。荒れる波間にふわりと浮かんで、ショック弾を立て続けに放てば、そのまま海に飲まれて藻屑と化す。巧みな連携も熟練の経験の前には最早通じず、呆れた様にセゲルは挑発を繰り返した。
「どうした短足、ちっとも届いていないぞ」
「こんなもので! 私を止める事は! 出来ない!」
嵐を避ける保護膜を張って、縦横無尽に戦場を飛び回るフィーナ。放たれた火球が迫り来るオブリビオンの群れを押しとどめれば、そのまま徐々にジェネシスの喉元に近付いて――そして、ゆらりと空間が歪んだ。
「……来たわね」
歪んだ空間の先、現在と過去、如何なる分岐が齎した奇跡か、悪夢か。
『……アンタが私の敵って訳?』
その通りよ。自信満々に胸を張るフィーナ。
『だったら、当然!』
倒すまでよ! 間髪入れずに特大の火球がフィーナを襲う。やっぱりそうだ。火の魔法ばっかり使うのは分かり切っていた。
「そんなんじゃ全然……足りないわ!」
意を決し、フィーナはその身を眼下の海中へと落とす。火炎魔法なら、こうしてしまえばどうという事は無い。
『成程……でもね!』
売られた喧嘩は買うのよ! 呼び出された影――フィーナの過去も同じく後を追い海へと飛び込む。己自身が相手故の奇策、外れる訳が無いのだ。
(っと……来たわね……!)
しかし水中で炎の魔法は殆ど使えない。今回はアレも呼べない。声も出ない。ならば、プランBがある。
(……深さはそこそこ、私の身長なら間違いなく届かない!)
同じ考えなら、奴は絶対に飛び込んでくる。その瞬間――僅かな隙を狙う。ゴボゴボと泡を立てて迫る己の影を睨みつけて、目立たない様手元に隠したロープを抜く。
(……来た! そこよっ!)
鬼の形相で腕を伸ばす己の影、その手をするりと躱し、奴の両足をロープで縛りあげた。魔力を籠めて強化した耐性込みのロープだ。それを地形を利用した即席の罠にして、奴を縛り付ける。僅かな時間でもいい、先に浮上さえしてしまえば、ジェネシスまであと僅かの距離なのだから!
(悪いわね、私の方がお姉さんなのよ)
生きた分賢くなったのよ、などと思考する。それにこうもなれば、私が続けてやる事など決まっている。
『この野郎、いい加減しつこいんだよ雑魚共がァッ!』
猛り狂うジェネシスを他所に淡々とサラリーマンを沈めるセゲル。動かなければほぼ無敵、だが動いてしまえば――それに、動かざるを得なければどうなる?
「遅いぞジェネシス、貴様の無敵もその程度か」
淡々と目標を撃ち続ける巨竜はふと、海面に浮かぶ赤い筋に気が付いた。来たか――ではそろそろ、とジェネシスの方へと向き直り、仕上げの準備に取り掛かる。
『トカゲ風情が偉そうに――ッ!?』
不意にジェネシスの足元が爆ぜた。そして海面より赤黒い爆炎の超常が蝙蝠の姿を成して、ジェネシスの巨体を舐めるように飛び上がった。
『あの小さい奴は、テメェ自身を沈めたってのか!?』
「その通りよ! あと今小さいって言ったわね!」
絶対に許さない! 灼熱の蝙蝠の後にフィーナが続き、あからさまにジェネシスへの敵意を剥き出しにする。
『ギャハハハ! だがどうした、そんな花火で最強の俺は――!』
ぐらりと、再び足元が揺れた。僅かに膝を曲げて崩れる体勢を立て直そうとするジェネシス――つまり、その瞬間にほぼ無敵の超常は解けたのだ。
「やってくれたわね私。流石私だわ!」
フィーナの影は溺死という恐るべき現実から逃れる為に、持てる魔力を振り絞って海底の地形をメチャクチャにしたに違いない。私ならそーする。
「お前さん、膝をついたな」
その隙、間髪入れずに叩き込むぞ。巨竜が吼える。嵐が更に勢いを増して、叩きつけてきた豪雨がセゲルの目の前で集束する。
「さぁ、その場から動くなよ?」
一喝――槍の様に鋭い鉄砲水が、ジェネシス目掛けて放たれる。この超常が必勝の策、暴力的な瀑布が水平にジェネシスを吹き飛ばし、その巨体を彼方へ沈めたのだ。
「――やったかしら?」
「いいや、まだだろう」
セゲルが空を見やる。薄暗い空は変わらず――それでも、雨は晴れた。
幾ら最強で無敵を誇ろうと、こうして崩し落とす事が出来たのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
メイスン・ドットハック
【WIZ】
古の砲台の前で凱歌でも上げようということかのー
残念じゃけどあげるのは鎮魂歌じゃけーのー
骸の海発射装置に対して、空間【ハッキング】を仕掛け、その射出角度・動作などを【情報収集】し、着弾地点を予測
そのデータの元に【第六感・視力】も駆使して全力回避
虚無の漆黒も警戒して触れないように、電脳魔術でヘリ型ドローンを創造し、一時的に浮遊して退避するなど対策する
先制後、UC「倫敦は霧に包まれて」を発動させ、紫霧型AIを展開
自身は電脳魔術ミサイルで牽制すると共に、パープルミストは鎧の間から内部に侵入させ、十分なリソースを獲得できたら電脳爆弾を鎧内に創造させて一斉起爆させる
アドリブ絡みOK
ミハエラ・ジェシンスカ
では水際作戦と行こう
敵はPOWの使用時に足を止める
海上にいるうちに使わせる事で上陸を遅らせ海岸線で迎え撃つ
初手から隠し腕を展開
フォースレーダーで【情報収集】
上陸してくるオブリビオンどもの動きを把握
攻撃を【見切り】【武器受け】で捌き【カウンター】で反撃
数は【2回攻撃】で対処
捌き切れない場合は【念動力】で弾き
飛行する敵にはドローンを向かわせる
そうしてこちらが一介の剣士に過ぎないと
遠間から数ですり潰せる程度の相手であると信じ込ませ【だまし討ち】
【対艦魔剣】起動
ここならば周囲を巻き込む心配もない
避けるか防ぐか
無敵と驕って受けるか
いずれにせよこの一太刀でヤツに「決して最強などではない」事を刻み付けてやる
●宇宙の戦士
「古の砲台の前で、凱歌でも上げようということかのー」
彼方へ飛ばされ大波を巻き起こすクライング・ジェネシスの巨体を見据え、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)がぼそりと呟く。
「まあ、残念じゃけどあげるのは鎮魂歌じゃけーのー」
自身は電脳魔術で構築した4ローターの大型ドローンの上に乗り、空中より戦況を観察していた。確かに強大な力を秘めた敵だ。しかし既に猟兵の一撃は通っている。
「そういう事だ。過去は過去に、やる事は変わらんよ」
目の前で再び立ち上がるジェネシス――では水際作戦と行こう。ニタリと口元を歪ませたミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)が四振りの赤黒い光剣を抜き放ち、フォースレーダーを走らせた。メイスンによってばら撒かれたドローンの上に乗り、続々と溢れ出るオブリビオンに狙いを定めて。
『グオオオッ! 雑魚共が妙な真似しやがって――!』
咆哮と共に放たれるは、翼を生やした無数の小悪魔めいたオブリビオン。その群が黒雲の様に空を覆って――次々に海面へと落下する。
「五月蠅い木偶の坊だ」
『アァン!?』
浮かび上がるドローンを足場に、巨体を軋ませて強引な空中戦を敢行するミハエラが、閃光を纏って飛び回る。剣閃が纏わりつく小悪魔を一体、また一体と斬り伏せて行けば、周囲を飛び回るセイバードローンが止めの追撃を。空間戦闘は我等の十八番――その程度で止められるものかとジェネシスを挑発しながら。
「しかし、小さい」
今まで彼等が戦ってきた敵――その名を銀河中に轟かせた帝国の宇宙戦艦、巨大生物、そして未来への道に立ちはだかった尋常ならざる生命体。
「まあ、そうじゃのー」
無限に等しい彼奴等の大群との戦闘も既に経験済みだ。故にこの程度のモノが幾ら群れを成そうと、恐れに至るには到底、程遠い。
『馬鹿に、しやがってェェェェッ!』
激昂するジェネシスがその巨体を揺らして前進――高波が岸辺を襲うが、空を飛ぶ猟兵には届かない。しかしそのまま掲げた腕より、虚無の弾丸を空へと放つ。忌わしき過去を封じ込めた、悪魔の弾丸を。
「虚無かのー。まあ、どうにでもなるけーのー」
開戦から今迄状況を観察し続けたメイスンにしてみれば、ジェネシスの行動パターン、砲撃軌道、想定される被害は既に把握済みだ。ジェネシスそのものでは無く、ジェネシスの挙動を――周囲の空間をハッキングして把握した、虚無が放たれる軌道を避ければいい。
「その程度なら、触れなければいいだけの事だ」
続々と海面を抉る虚無の弾丸。データリンクして状況を把握、艦隊戦の砲火を潜り抜けての作戦を、過去に幾らこなしたなど覚えていない。
「そういう事じゃのー」
故に、ここまでは自分達のペースで戦える事は既に分かり切っていた。やる事は変わらない。問題はこの先、現状の更なる凌駕をジェネシスが選んだ時――だがそこまで迫れば、勝利まであと僅か。
「――どうした、もう終わりか?」
『――出てこいテメェら!』
痺れを切らし、己の胸元より新たなオブリビオンを、無数の飛行物体を出現させる。あの様な小物では相手にならない。ならばそれ以上を出せばいい。俺は骸の海から無尽蔵のオブリビオンを生成出来るのだ。現にこうして今ですら、新たな過去が生成され続けているのだから。
「大盤振る舞いじゃのー。じゃが」
奇妙な軌道で猟兵に迫る飛行物体。それはエリア51を襲ったプルトン人の超兵器――米軍基地を一夜にして制圧せしめた尋常ならざる兵器群に、されど二人は臆する事無く対峙する。
「我等にそれは悪手だと……そんな事も知らないのか?」
瞬間、プルトンUFOの群が続々と落下する。慌てて脱出したプルトン人が浮かぶUFOを足場に、何が起こったのか分からない風に周囲をキョロキョロと見渡した。
『! 何故だ、何故俺の言う事を聞かない!?』
UFOの落下は止まらない。今までこんな事はなかった、何故こうも上手くいかないのだ。米軍基地を蹂躙した時は、こんな事は……。
「聞かないんじゃない……」
米軍基地を襲った時とのたった一つの差異。それは、あの時は猟兵がいなかった。
「聞けないんじゃけーのー。さて」
ぷかぷかと浮かぶUFOがまるでジェネシスへの道を作る様に整然と並んで――マシンの制御系は全てメイスンが乗っ取った。放たれた超常が、紫煙の様なナノマシンの霧が一帯を覆い尽くし、触れたマシン全てを自在に操るのだ。最早飛ぶ事も沈む事もままならない。
そしてUFOの上で狼狽えるプルトン人は、ミハエラがすれ違い様に四振りの光剣で続々と捌いていく。後に残るのは血塗られた道。それはこれまでも、これからも己が築く戦の轍。
「侮ったな、ジェネシス」
『ぬかせ雑魚がァッ! 所詮は露払いしか出来ねえ人形の分際でッ!』
ミハエラを迎え撃たんと、続々と吐き出すのは戦闘員。名も無き集団が津波の様にミハエラへ一斉に飛び掛かって――そして。
「露払い――そうだな」
ふと口元が歪んで。剥き出しの牙の様な歯がギラリと、威圧的な風貌を晒す。
「貴様如き、払ってみせよう」
瞬間、四振りの光剣が一振りの大太刀に――集束した赤黒い光はバチバチと紫電を纏って、全長三キロを超える巨大な光の刃を成す。
『馬鹿な、そんな――!』
「馬鹿は貴様だ」
天をも貫く勢いで伸びた光剣がジェネシスの肩口へ、ゆっくりと振り下ろされる。だが骸の海と一体化したジェネシスは微動だにせず、ミハエラの超常の一撃を受けたまま平然と己の健在を誇示した。
『ギャハハハ! 残念だったなぁ三下ァ! その程度じゃ俺様の身体は、傷一つ付かねえぜ!』
「だったらこれはどうかのー?」
不意にメイスンの声が響く。超常は一つでは無い。場に満たされたメイスンの霧は既にジェネシスの鎧の内側へ――ここまでの時間は全てミハエラが稼いでくれた。後は牙を突き立てるだけ。
「ほんじゃージェネシス」
ぶち回すけーのー。コールと共に超常の霧が暴力的なエネルギーを開放する。電脳魔術で構築された爆弾が一斉に、ジェネシスの鎧の中で爆ぜたのだ。
『グ……グギギ……!』
「ついでだ、これも味わえ」
バッサリと、ミハエラの袈裟切りがジェネシスの胸元に巨大な傷跡を刻み込む。起爆により揺らされた身体が、ほぼ無敵の超常を解除せしめたのだ。こうなればもう、ミハエラの超常を防ぐ手立てはない。
大きな音を立てて倒れ込むジェネシス。大波を立てながらその巨体を海中に沈め、姿を消す。戦いはまだ終わっていない。この地を襲った怪物達は何度破れようとも、繰り返しこの海を割って現れたのだ。今も同じ――メイスンの走査から逃れ、ミハエラの追撃から逃れ、ジェネシスは一時戦場から逃れただけである。
しかしこれで証明された。彼奴は攻撃が通じない相手などでは無い。
続ければ何れ、骸の海へ還せるだろう――その確信を証明するのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鵜飼・章
過去がどうかした
すぐ忘れちゃうからどうでもいいよ
僕嫌いなんだ
人の過去をほじくり返す人
そうでなくてもきみすごくかっこ悪いね…
かっこ悪いところしかない
がっかりだよ
どんな感情も向ける気になれない
事前に過去出現したオブリビオンのデータを頭に入れて
出現する敵への対策を練り【早業/見切り】と【激痛耐性】で初手回避を狙う
UC【確証バイアス】を発動したら
カブトムシに【騎乗】しボス共々【範囲攻撃】
無敵のカブトムシレーザーで焼き払う
解る?
「ほぼ無敵」じゃ「無敵」に勝てないんだ
ご覧
かっこいいカブトムシがかっこ悪いきみを倒すよ
動かず震えて見ているといい
【恐怖を与える/精神攻撃/言いくるめ】で敵の心を折れさせ攻撃を通す
荒谷・つかさ
……残念な奴。
借り物の力でいきがるの、そんなに楽しいのかしら。
オブリビオンを召喚する、結構じゃない。
なら私は召喚されたそいつらを「グラップル・怪力・投擲」で捕まえて団子にして、その穴の中に投げ返してあげるわ。
コード発動可能になり次第【超★筋肉黙示録】を発動。
「借り物のほぼ無敵な力より、鍛練の末に獲得し進化し続ける私の筋肉の方が絶対無敵」と自己暗示(セルフ言いくるめ)
無敵同士の衝突は千日手?拮抗?
いいえ、「無敵の力を信じ、使いこなした方が勝つ」に決まってるでしょう?
雑兵共を蹴散らし、本体に真っ向から拳を叩きつけにいくわよ。
ご自慢の嘘とハッタリでなら。
私は手も足も出ずやられたかもしれなかったわね。
●ドリーム・シフト
クライング・ジェネシスが海に沈んで僅か後、その傲岸不遜な姿は再び曝け出された。幾何かの肉体的ダメージも骸の海の力か、目立った外傷はとうに消えていた。
『どいつもこいつも……俺様の事をバカにしやがってェェェェッ!』
二度と同じ過ちは起こさない。今度は東京ビッグサイトの目の前に、ズシンと大地を揺らして立ち上がる。己が威を示す為ににじり寄る恐怖を――等と小賢しい事はもうしない。この歪な建物ごと、全てを薙ぎ払ってくれよう。
『蹂躙して飲み込め! ギャーッハッハッハッ! 何だ、やっぱり圧倒的じゃないか! 俺様が最強で、無敵だッ!』
だが、心に負った傷は消えない。己の力を誇示し続けなければ容易く折れてしまいそうな、偽りの無敵は再び大量のオブリビオンをその胸より呼び起こして。
「……残念な奴」
ボトボトと呼び落とされる大量のダーティーポリスが、壁にぶち当たった様に突如静止する。早さが自慢の彼らがその勢いを止める――その先には一つの影が。
「借り物の力でいきがるの、そんなに楽しいのかしら」
荒谷・つかさ(『風剣』と『炎拳』の羅刹巫女・f02032)が溢れるダーティーポリスを片手で止めて、そのまま弾き返したのだ。衝撃を纏ったその暴威はさながら小型の台風の如し。幾ら迫ろうとつかさが両腕を振るうだけで、貧弱なオブリビオンはその見えない壁を突破出来ない。
『ほざけ! テメェも過去に蹂躙されて、飲み込まれろッ!』
ダーティーポリスで駄目ならば、もっと強力な奴を――呼び出されたのは五体にヒーローを宿した最強の一角。その複製も既に骸の海へ取り込まれていたのだ。
「――余り、優秀な部下を安売りするものじゃあないわよ」
より強い敵を出す――上等じゃない。群れを成すスーパープルトンが一斉につかさへ襲い掛かった時、ゆらりと現れた漆黒がその波を弾き返した。
「……誰?」
「過去、過去って……」
ため息交じりに、面倒臭そうに、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は普段通りの装いで決戦の地に現れた。彼が何を――いいや、違う。
「過去がどうかした。すぐ忘れちゃうからどうでもいいよ」
彼ではない。彼の相棒が、超常が――空間に響く羽音を辿れば、目の前には巨大なカブトムシ。
「僕嫌いなんだ、人の過去をほじくり返す人」
雄々しく反り立った頭角には弾かれたスーパープルトンの残滓が。風と共に現れた真夏の友人は、章に同意を示す様に頭を振った。
『カッコつけてんじゃねえよ! 青瓢箪が粋がるんじゃねえッ!』
「そういうきみ、すごくかっこ悪いね……」
只管悪態をつく章――なんて事はない、事前に今まで出現したオブリビオンのデータは頭に入れてある。大声で幾ら怒鳴られようとも、全く驚くには値しない。
「というか、かっこ悪いところしかない」
がっかりだよ。クライング・ジェネシスには何一つオリジナルが無いのだ。あるのは借り物の過去と、継ぎ接ぎの暴力装置だけ。それも全て、他人から奪った物だ。
「ガッカリ……そうね、ええ――本当に」
その歪んだ精神を露にした歪な肉体に、彼も彼女も呆れかえった。ひどい醜さだ。悪趣味な前衛芸術なんてモノじゃない。スカムキングよりある意味酷いわ、造形も成り立ちも。滔々と罵詈雑言は続けられる。
『黙れ、黙れェェェェッ!』
続々と罵りを受けて徹底的に辱められたジェネシスの憤りは、更に狂暴なオブリビオンを現世へと呼び戻す。地に落ちたるはしなやかな身のこなし――複製された戦神アシュラが徒党を組んで、二人の下へ続々と現れたのだ。。
『俺様は、無敵だ……テメェ等が幾ら束になろうと、絶対に敵わないんだよ』
「だから、そういうのは聞き飽きたんだ」
カブトムシに跨った章が、空中より地面を焼き払うレーザーを触覚から放って。
「そうよ。それにお前のは無敵じゃない」
超常が、つかさのたゆまぬ信仰と努力が生み出した筋肉の奇跡が、荒ぶる戦神の尽くを蹂躙する。
「――ほぼ無敵よ。訂正……って意味、分かるかしら?」
六刀を無残にも叩き割り、拳がアシュラの顔面を鋭く抉る。得物などいらぬ、威力は先方が備えている。その勢いを使えば良いだけの事。
『アアアアアアアッ!!!!!!』
兜の下には憤怒を越えた激情が迸るか、己を愚弄する世界への怨嗟をぶちまけたジェネシスはそれでも――と有象無象のオブリビオンの大群を生み出し続ける。
『絶ッ対に許さねえ……泣いたり笑ったり出来なくしてやるよ!』
「はぁ――むしろ、どんな感情も向ける気になれないんだ」
カブトムシに騎乗した章が再び、面倒そうに口を開く。
「……解る?」
無表情に、無感情に、淡々とした口調で。心を殺したわけでも、悟った訳でも無い。そもそも無いものをどうにも出来ない。そんな事よりも。
「『ほぼ無敵』じゃ『無敵』に勝てないんだ」
こんな事も分からぬ痴れ者が相手とは――世界の命運をこんな奴と賭けあうなんて、考えるだけで時間を返して貰いたくなる。全く酷い寄せ集めだ。
「その通りよ。借り物のほぼ無敵な力より――」
カブトムシの下でつかさが宣う。無敵の筋肉が群がる有象無象を押し固め、まるで巨大なミンチボールの様な物体が形成されていたのだ。
「鍛練の末に獲得し、進化し続ける私の筋肉の方が絶対無敵」
神をも恐れぬ所業、黙示録の終末すら不敵に乗り越えるだろう――この筋肉で。
「無敵同士の衝突は千日手? 拮抗? 馬鹿を言わないで」
ブンと振るった剛腕が巨大な肉塊をジェネシスの方へと投げ返す。烈風を纏った超重はそもそもジェネシスより出ずるモノ。入口に戻されただけで、こんなものは攻撃ではない。筋肉的強制返品(クーリング・オフ)を行ったまでの事。
「お前の様な紛い物に、私達が負けるわけが無い」
『ゆ、夢見てんじゃねえぞ、ド雑魚どもがァァァァッ!』
「はあ――これには、なにを言っても無駄みたいだ」
そうみたい、と頷くつかさ。ならば二人がやる事はただ一つ。
「それじゃあ、かっこいいカブトムシがかっこ悪いきみを倒すよ」
ブンと飛翔していたカブトムシが、つっかえたオブリビオンを飲み込めずに立ち往生するジェネシスの足元へ。ギラリと勇壮な頭角が、重たげな足元へバリバリと強引に割り込む。
「動かず震えて見ているといい」
だって動けないんでしょ、臆病者。瞬間、反り返ったカブトムシの巨体がジェネシスを空中へ高々と放り投げた。自重の二十倍の重量を牽引出来るカブトムシの筋力も、このサイズとなれば最早超常。ただ大きいだけの虚ろな骸など、無敵のカブトムシにとっては物の数では無い。
「だったら私は――」
天高く舞い上がったジェネシスを見据え、つかさは大きく膝を曲げた。
「今日は上から、攻めるわよッ!」
跳躍――無敵の筋肉が爆発的な勢いを生み出して、鬼は天を駆けた。
「ご自慢の嘘とハッタリでなら――」
狙うは吹き飛んだジェネシスの後頭部。くるくると暴風を纏って回転する巨体に狙いを定めて、全能の必殺兵器が高々と掲げられた。
「私は手も足も出ず、やられたかもしれなかったわね」
それは海に係留されていた丸太――但し尋常ならざる神造兵器と言っても差し支えない。樹齢数万年、長さ十数メートル、総重量数十トンを誇る地球の至宝は、悠久の時を越えてその威を現世に示すのだ。
「これが本当の、過去からの贈り物よ……存分に喰らいなさい!」
一閃、烈風と共に放たれた丸太がジェネシスの頭部を強打する。轟音と共に打ち付けられた巨木の痛打はそのままジェネシスを地上へと吹き飛ばし――付近の駅ロータリーにその巨体を打ち付けた。
「その丸太の方が、よっぽど興味深い」
「あげないわよ。それよりも」
奴はまだ生きてる。その浅ましいプライドも偽りの無敵も全て、へし折ってやった。けれど……。
「あれは虚ろな過去だ。何者も越えられなかった、残骸だ」
墓標の様に高々と聳え立つ丸太を望んで章が呟く。その下に沈む巨悪など、さして興味が無い風に。
「今はそれを乗り越えて出来た。だったら」
いかに恨みを湛えようと、全て消えた過去なのだ。ならば。
「――恐れる事は無い、か」
歩みを止めた者が、先へ進む者に追いつく事など、出来はしないのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
草野・千秋
この台場にはデートをする人や
薄い本を売る人の夢が詰まっています
そんな人々の幸せを踏みにじるなんて許せない
カタストロフなんてさせません
戦いに勇気で挑む
敵UCを封じようと歌の女神を呼び出す
ほぼ無敵は無敵ではない
骸の海発射装置と言いますが
僕にも辛い過去はあれど、僕は現在に生きる身!
第六感、戦闘知識で動きや攻撃を予測、己の直感を信じ
180秒の間にたたき込める攻撃は全て叩き込む
怪力、2回攻撃、部位破壊、グラップルで
肉弾戦に挑み叩きつけてやる
敵が勢いづけて来るのなら早業で武器を抜きカウンター
反撃が難しいなら激痛耐性、盾受け
敵の動きが激しいなら
胸の穴に向かってスナイパー、武器改造で氷の属性攻撃で固める
セシリア・サヴェージ
私の過去が私を許さない、ですか。
過去の私は暗黒を受け入れた私を恨んでいるのでしょうか……。
過去の私の攻撃は【武器受け】で防ぎます。
私自身が自分の挙動の癖や思考を一番把握していますから、遅れを取ることはないはずです。
しかし、それはあちらも同じこと……ならば私自身を超えてみせましょう!
UC【闇の氾濫】で限界を超えた力を引き出します。代償は大きいですが【気合い】で耐えます。
世界の命運がかかった戦いなのです。これしきのことで私は止まりません!
【怪力】【鎧砕き】で過去の私をその鎧ごと粉砕し、返す刀でクライング・ジェネシスも攻撃します。
世界をここで終わらせはしません。必ず護ってみせましょう!
●愛の戦士たち
地に伏せた巨悪は倒れながらも、続々と恐るべきオブリビオンを呼び出し続けていた。撒き散らされる腐臭、この世の悪を煮詰めて解き放ったかのような惨状――スカムキングの複製がジェネシスを中心に、駅を、ビルを、普く人々の営みを破壊せんと徒党を組んで。
「ただでさえ最悪な敵、だというのに――」
草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)は迫るスカムキングを続々と斬り伏せながら、伏せたまま黙々とオブリビオンを呼び出すジェネシスの下へ駆ける。
「更に最悪を、災厄を呼び起こすなんて……許せるものか!」
斬った敵が傷口から多量の汚物を撒き散らし、鼻に突く激臭が更に広まっていく。潮風の香りが汚され、街路樹は腐り落ち、アスファルトがボコボコと溶岩めいた灼熱を帯びて溶解する。正に地獄、この世の終わり想起させる情景。
「この台場にはデートをする人や――」
それでも纏った白銀の装甲が眩く輝いて、千秋の激情を体現するかの様に戦場を駆け回る。蒼銀の剣の一閃が立ち塞がるスカムキングを切り裂いて、その中より出ずるアシュリーを愛銃がハチの巣にする。こんな歪んだ愛などでは無い。この地をそんな輩に汚させるわけにはいかない。何故ならば。
「薄い本を売る人の夢が詰まっています!」
「薄い、本……?」
千秋の傍らにて黒き大剣を振り回すセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、突然の宣言に面食らう。何なのだ、魔導書か何かかそれは。
「人が人たる所以、未来と――希望と」
胸が熱くなる欲望も秘めて。そんな人々の愛と希望が紡がれる場所。
「そういう、想像と創造のここは、聖地!」
『だったらよォ……整地してやるぜ、何もかも』
くぐもった声が――墓標の様に突き立てられた丸太を遠くへ放り投げ、ジェネシスが再び立ち上がったのだ。止めどなくオブリビオンを吐きながら、諸悪の根源は無表情の兜の奥で、断罪戦士に睨みを付けた。
「いいや――ここでカタストロフなんてさせません!」
次の、その次の世代の為に、伝えなければならない事がある。残すものがある。
「人々の幸せを踏みにじるなんて、このダムナーティオーが許せない!」
それにこの時期に“ここ”でカタストロフとは――命知らずもいい所だ。ならば歴戦の命知らずの力を見せてくれようと、千秋は声高らかに聖歌を紡いだ。
「……同じく、世界をここで終わらせはしません。必ず護ってみせましょう!」
『……余り舐めるなよ、三下ァ』
ニタリと、ジェネシスが嗤った気がした。その一言から、先程までの無遠慮な能無しじゃあない、ある種の凄みが醸し出される。
『……思い出しちまったんだよ。過去って奴をな』
『こうやって地べたを惨めに這い蹲ってな……あの頃の俺が、今の俺を見たら』
あの頃、力無く嘘とハッタリだけでヒーローを殺しまくっていた頃の俺。手段なんか選ばない、負け筋なんか認めない。ただ只管に勝利だけを追い求め、力だけを手にしてきたあの頃の俺ならば……。
『絶対に許すわけが無い。そんな事をな、思い出しちまったんだ』
ぐらりと空間が歪む。右手の骸の海発射装置から現れたるは、清涼な女騎士の姿。
『お前も味わえ』
それはセシリアの過去。今の力を手にする前の、清廉潔白だった騎士の姿。
「私の過去も、私を許さない――ですか」
スラリと抜かれた白刃の切先がセシリアの喉元を指し示す。分かっている、アレはオブリビオン――私自身だとしても、倒さなければならない相手。
「過去の私は、今の私を恨んでいるのでしょうか……」
暗黒を受け入れた、この私を。大剣を霞の構えに、纏った暗黒で己が身を守る様に切先を過去の私へと向ける。それでも。
「――いずれ分かります。戦いは、綺麗事だけじゃないって事が」
瞬間、女騎士がセシリア目掛けて間を詰める。恐るべき速さ――だが。
「正面からの諸手突き、そこからの斬り落とし――そして」
荒っぽいタックルで体勢を崩してからの横一文字、と言った所か。成程、かつての私はこう見られていたのか。
「ならば、答えはこうです」
大剣が出頭を挫く。しかし勢いは崩せない――瞬時に切っ先を喉元から手元に向ける女騎士、セシリアは大剣の刀身を即座に蹴り上げてその攻撃を弾き返す。よろめいた女騎士を勢いづけた反動で追い打ち、大剣の切先が女騎士の手首目掛けて伸びる――その衝撃に剣を落とす女騎士。この間、僅か二秒。
「あなたの事は、私が一番知っています」
ガチャリと、大剣の切先を女騎士の喉元に突きつけるセシリア。
「何度やっても同じ――同じ、なのです」
ああ、これが過去と未来。昔と今の違い――なのですね。
観念した様に目を閉じる女騎士。そう、私ですもの。
私だったらきっと、そうするでしょう。
『どうした坊主、お歌が上手ですネェとでも言われたいのか?』
「お前に歌が分かるとも、思えないがなッ!」
仕込みは終わった。女神の加護は――超常の女神は未だ姿を現さない。まだ足りないのだ、奴から引き出すべきはそんな言葉じゃない。
撃ち、払い、蹴り、抜ける――徐々に戦線を押し上げて、しかし増えてゆくスカムキングの群に対して足止めを喰らう千秋。ほぼ無敵という無尽蔵のオブリビオン召喚能力――狙うとすればそこだろう。
「僕にも辛い過去はあれど、僕は現在に生きる身!」
不意に大きな、澄んだ声が戦場に響き渡る。
「骸の海発射装置と言いますが――それらは紛れもなく過ぎた事のリフレイン」
それは千秋からジェネシスへの呼び掛け――問うていると言ってもいい。何故ならば千秋の超常は、その本質は。
「果たして無敵と言えるのか……そんなものが」
敵に疑念を僅かでも抱かせる事。それだけで戦況をがらりと変える、それだけの威力がある。現にジェネシスは既に、この戦いで幾度も破られているのだから。
「変わる事の無い過去だけで、変わり続ける未来を超える事が!」
瞬間、産み落とされたスカムキングの群が、夥しい腐り果てた塊の数々がその姿を消す。ぐらりと、ジェネシスの状態が僅かに揺れて――。
『――三下ァ、何をした』
「これが、女神の祝福だ」
180秒間の奇跡、この瞬間の為に耐えてきた。汚辱に塗れようと、己が生を否定されようと、ただ一撃を喰らわせる為に。そして。
「終わりだジェネシス、この身に代えても……」
漆黒が爆ぜる。セシリアが鮮血を撒き散らし、されど衰える事の無い威力は弾丸の様に、ジェネシスの喉元へと最大の一撃を抜き放った。
「――今ならばッ!」
それに合わせて白銀が跳ぶ。手にした龍殺しの大斧に凍てつく凍気を馴染ませて、肥大化した氷柱が死神の鎌の様に、長大な刃を形作る。
『フッ……フハハハハ!!!!!!』
一閃――交差した漆黒と白銀はそれぞれの超常を以て、最大の一撃をジェネシスの首と胴体へ――バラリと崩れ落ちた五体。しかし振り返った彼らが目の当たりにした者は、更なる超常の発露だった。
『……時間切れだ、あばよ』
崩れ落ちた五体が再びジェネシスの下へ――手応えはあった。確実に絶命させた。だが目の前の巨影は未だ健在。ジェネシスはそのまま地響きを上げて、再びビッグサイトの方へと跳び去った。
「そうか、骸の海発射装置――」
誰かから奪ったらしいそれは、悍ましい過去を呼び起こす禁断の兵器。ならばつい先頃まで健在だった己の過去を、発動制限後に再び動かせば、元に戻る事が出来る。
「だったら、答えは出ていますね」
血を拭い大剣を納めたセシリアが言う。これまでも同じ局面はあった。
何度倒しても立ち上がるオブリビオンを征する、たった一つの方法。
「ええ、奴が何度でも再起するというならば」
戻れなくなるまで、倒し続けるだけだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
薄荷・千夜子
クロウ(f04599)さんと
ふふ、同じ戦場で顔を合わせるとは
もちろんです。強敵であろうとも共に参りましょう
【早業】で『花奏絵巻』をするりと開き【破魔】【オーラ防御】を込めた花嵐を展開
『鷹羽炎扇』で彼の進む翼に、追い風となるよう風も巻き起こします
自身もその風に乗って【吹き飛ばし】ながら【見切り】で回避を
未来へ進む道、切り開き駆け抜けましょう
貴方と共にあるならこんなに心強いことはありません
赤き花炎はグラジオラス
互いの武運を祈り、勝利へ導く剣の花
操花術式:破討卍凛ーーその虚無、全て燃やし尽くしてみせましょう!
【全力魔法】【範囲攻撃】【属性攻撃】で【破魔】の力を宿した花炎の渦で虚無を覆いながら追撃を
杜鬼・クロウ
千夜子◆f17474
アドリブ◎
依頼前に千夜子に願掛けして貰い掴んだ花弁を懐に
…イイ面構えだ
息抜きが効いてるな(千夜子の前髪軽くくしゃり
油断すンなよ
あんなナリでも強敵には変わりねェ
テメェが信じている最強(かこ)に縋る限り
俺には絶対勝てねェよ
常に上へ上へと最強(いま)を往く俺達には
敵の先制は敢えて玄夜叉で武器受け
その上で今の最大出力でカウンター
過去より遥かに強大で重い一撃を敵へ見舞う
【煉獄の魂呼び】使用
霆で援護し遠距離攻撃
戦場に咲き乱れる花の美しさ
見劣りしないもう一つの華
彩風が切り拓く機会を逃しはしない
虚無消去後は一気に接近
禍鬼は棍棒や蠍の尾で敵を薙ぐ
俺は風利用し跳ぶ
剣に炎宿し敵の心の臓狙い二連撃
●花鳥風月
「……イイ面構えだ。息抜きが効いてるな」
東京ビッグサイトの巨大な構造物の下、居合わせた二人の猟兵が肩を並べる。杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)の頭を軽く撫でて、その仕草に千夜子ははにかんだ。
「まさか、同じ戦場で顔を合わせるとは」
でも、貴方と共にあるならば――こんなに心強いことはありません。そんな思いを心に秘めてクロウを見上げる千夜子。
「油断すンなよ。あんなナリでも強敵には変わりねェ」
だがマァ、千夜子と一緒なら――懐には彼女が祈りを込めた花弁が。その祈りが二人を引き合わせたのだろうか、運命の粋な計らいに口元を綻ばせる。
「もちろんです。強敵であろうとも共に参りましょう!」
瞬間、ズシンと轟音と共に大地が揺れる。その揺れは徐々に強まって――そして。
『何だよ、もう居たのか……ってか止め止め、ここはデートスポットじゃねえ』
戦場だ。クライング・ジェネシスは再びビッグサイトへ帰還した。巨悪は今一度世界を蹂躙する為に、始まりの地へ戻ってきたのだ。
「御託は要りません、クライング・ジェネシス!」
するりと、千夜子が花奏絵巻を抜いて――辺り一面に鮮やかな花弁を舞い散らす。
「未来へ進む道、切り開き駆け抜けましょう!」
『地獄への一本道なら舗装済みだぜ――お嬢ちゃん!』
その色取り取りを塗り潰してやる。漆黒が両腕より放たれて――躱すより僅かに早く、千代子の足元がその虚無に捕らわれた。
「過去――これは、私の!」
漆黒の大穴より現れたのは煤けた金属筒。異世界の戦闘機械――デストロイ・ウォーマシンの戦闘端末が、巨大な砲塔を千代子に向けて鈍く煌いた。
「焦るな、今じゃ無エ――こんなモノ!」
クロウが僅かに慄く千夜子の手を引いて、もう片方の手で魔剣を振るう。既に切り抜けた過去、そんなモノを恐れる必要は無いと発破をかけながら。
「テメェが信じている最強(かこ)に縋る限り、俺には絶対勝てねェよ」
一刀両断――爆発が連鎖して、虚無を抱えて沈む砲塔。しかし続々と、周囲の虚無から大小様々な砲が顔を覗かせて、飛び回る二人を始末せんと殺意を露にした。それらを続々、まるでもぐら叩きの様に切り伏せるクロウ。
「常に上へ上へと最強(いま)を往く俺達には!」
『そんなモノ、逆さにしちまえば下り坂よ!』
不意にクロウの頭上から多数の太刀が降り注ぐ。合わせて十二振り――色取り取りの魔力を帯びた、超常の太刀の群。間違いない、毘沙門天の業物だ。しかし。
「落ちるかっての、そンな過去……」
刀だけだ、本人じゃない。呼び起された現象如きに恐れをなすものかと、クロウは握る魔剣に力を込める。刀身に刻まれたルーンが仄かに明かりを灯し――そして。
「とうの昔に、乗り越えたッ!」
一閃。群がる十二振りを絡め取り、打ち落とし、再び虚無の穴へと弾き返す。そこかしこに出口入口を作れば、こうもなろう。
『ギャハハハッ! 躱すか、今のを!』
「当然です。同じ攻撃が二度も通用する程――私達は!」
いつの間にか、クロウの手を離れた千夜子がジェネシスの眼前に。鷹羽炎扇――両手に広げた扇をばさりと、風の加護が二人を加速させていたのだ。先を取られようとそれを上回る速度があれば、追撃を躱すのは容易い。
「甘くないッ!」
勝利の祈りを込めた朱い花弁が風に乗って、ジェネシスに纏わりつく様に舞い広がる。まるで巨大な悪魔を鎮めるかの様に。
『生憎花見って気分じゃあ……無えんだよッ!』
兜の奥、くぐもった怒声が放つは再びの虚無の連弾。漆黒が続々と空間を侵して――だが先程までとは違う。私達はジェネシスとの距離を既に――詰め切った!
「咲き乱れるは破魔の鈴。集い穿つは神をも屠る百花繚乱、万を一に!」
「杜鬼クロウの名を以て命ずる。拓かれし黄泉の門から顕現せよ!」
祝詞が、呪いが紡がれる。宙を舞う二人の超常が煌々と光を灯して、迫る漆黒に抗う様に、徐々に空間を色彩が埋めていく。
「操花術式:破討卍凛――その虚無、全て燃やし尽くしてみせましょう!」
「贖罪の呪器……混淆解放(リベルタ・オムニス)──血肉となりて我に応えろ!」
ぼう、と。舞い散る花弁が一斉に燃え上がる。千夜子の超常、朱き清浄なる焔の花弁はその中心を焼き焦がしつつ、周囲の虚無の尽くを真紅で埋め尽くした。
ぐん、と異形がクロウの背後に姿を現す。過去たる長身痩躯の禍鬼も今やクロウの超常の一部、雷鳴を背負い赤錆びた棍を担いでジェネシスへと飛び掛かった。
「赤き花炎はグラジオラス、勝利へ導く剣の花――」
ひらひらと舞う花弁は燃え尽きる事無く、浮かんだままジェネシスの視界を遮る様に、あるいは開いた虚無の大穴を塞ぐ様に、極彩色を撒き散らして空間を彩る。
『虚無を埋め尽くすか、やれるモンならナァ!』
「盲か手前。所詮はゴロツキ、風雅も解せぬ三下風情か」
戦場に咲き乱れる花の美しさ――戦でなければ天上の絶景と見紛う程。そう思う心など無いのだろう。そして見劣りしないもう一つの華、彩風が切り拓く機会をクロウは逃しはしない。
『どっちが三下――消えただとッ!? あの鬼は!?』
花弁は熱を帯び、僅かに空間を歪ませる。言葉を残してふわりと、クロウはその姿を舞い散る花弁と共に消したのだ。そして視線を外した直後――ジェネシスの頭上には雷を纏った禍鬼が。
『随分と鬼って奴ァ高い所が好きみてぇだな!』
振り下ろされた棍棒をかろうじで受け止める。僅かに痺れようがこの程度――矢張り所詮は三下の玩具だと、嘲るように哄笑を上げて。その隙を、振り上げた腕の下に回り込んだ千夜子が、超常の花炎の渦で追撃を掛ける。
『火を噴く奴ァ毎度毎度ちょろちょろと……』
即座に虚無をばら撒いて――変動した気圧がそれを吸い込む様にぱっくりと大穴を開けた。甘い、それでは全然足りてない。だからこそ三つ目も予想出来る。
『そして、サムライ紛いはこそこそと――!』
背中にぞわりと悪寒が走る。空いている手を大きく振り回して、その殺意の源に剛腕をぶつけて……ひらりと花弁が崩れ落ちた。
『!?』
「やっぱ盲だぜ、お前」
刹那に響く声、狙いは敵の心の臓。舞い散る炎を刀身に宿し、煌くルーンがその勢いを更に増し――風に紛れたクロウがゆらりと姿を現して、必殺の連撃が、ジェネシスの胸部を抉る様に貫いた。
『それが……狙いか……だが』
ジェネシスの胸部、骸の海発生装置の側方に亀裂が――その奥から焼き焦がした肉の臭いが、咽る様な蒸気を伴い辺りに満ちる。
『惜しい、惜しい所だったぜ。なあ』
直撃だ、奴の心臓を間違い無く貫いた。確実に一度殺した……なのに。
『さァて、あと何回殺してくれるんだ?』
ジェネシスはけろりとした声色で二人を見やる。その手が胸元を軽く払い、咄嗟に飛び退くクロウ。ふと見れば先程付けた傷も、既に――無くなっていた。骸の海に俺様は未だ満ちている。幾らでも、何度でも蘇ってやるさ。哄笑と共に虚無が、周囲を再び漆黒に包み込む。
「クロウさん!」
ふわりと、一際広がった花弁の嵐が二人を包み込む。
「ああ、確かに喰らわせた。間違いない――奴は死んだ!」
だが現実は、未だ健在のクライング・ジェネシスが夥しいほどの過去を引き連れ世界の蹂躙を続けている。
「あれはフォーミュラ……だから、一度じゃ」
一度では死なない。還る事も無い。故に――ここは退くのだ。
一矢は確実に報いた。蓄積した死は、必ず奴の消滅を起こす。
花弁が風に舞いはらはらと散った時、二人の姿はここに無かった。
奴は無尽蔵だとしてもこちらは消耗する。だからこそ、この思いを後に託して。
『……だから、花見って気分じゃねえんだよ』
俺が見たいのは、世界がガラガラと音を立てて崩れ落ちる瞬間だ。
それまでは何度でも立ち上がる。この魂が空になるまで――戦ってやる。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヘンリエッタ・モリアーティ
【竜と凪】
――匡。人を救うには困難がつきものだわ
でも、可能性が「ゼロ」じゃない
簡単に壊れるような私じゃないけど――殺さないでよ
頼りにしてる
こんにちは、可哀想な人
お前を悪人だとは呼んでやらない、黒幕にしては騒がしすぎる
いつだって黒幕というのは、静かであるべきだ
匡の一撃が決まらないと勝利はない
私はせいいっぱい永遠刀「紫衣紗」で彼を守る盾になる
さあ、匡――こいつを穿て!お前なら、撃てるッ!!
負傷していい
生命が危機に瀕していい
私が「死ぬ」という結末を
――ひっくり返せ、【因果の滝壷】!
沈黙を愛するこそ、悪らしい。海で後悔しろ、こんなに報われる時間を知らなかったことに
――生命が止まる音が、だいすきだ
鳴宮・匡
【竜と凪】
――そうだな
ただ殺すより、守るほうが、救うほうがずっと難しい
でも、決めたんだ
この力を、殺すためだけのもので終わらせないって
だから、死なせない
ちゃんと守るし――あいつも倒す
行こうぜ
オブリビオンの群を射撃で牽制・排除
首魁へと射線を通せる場所・タイミングを探る
前で引き付けてくれている分、必ずどこかに隙はできるはず
それを見逃さず、敵の間を縫うように影の魔弾を放つ
……外さないよ
誰かの信頼に、応えられない自分ではいたくない
無敵? ――そうだな、さっきまでは
でも、今崩れた
さ、攻守交代だ
彼女は“死なない”、そう信じてるから
その道を切り開くのに全力を注ぐ
騒がしい口を閉じる時間だ
骸に戻って、海へ還りな
●生命の音を鳴らして
「――匡。人を救うには困難がつきものだわ」
「――そうだな」
吹き荒ぶ風が二人を、ヘンリエッタ・モリアーティ(Uroboros・f07026)と鳴宮・匡(凪の海・f01612)を冷たく撫でる。国際展示場駅周辺、立体的に張り巡らされた通路の上で、二人は静かに待ち望んでいた。
「ただ殺すより、守るほうが、救うほうがずっと難しい」
パチリと突撃銃のセーフティを外して、遠雷の様な轟音に耳をそばだてる匡。間違いない、奴はこちらへ近付いて来ている。
「でも、決めたんだ」
ズシン、ズシンと重い歩みがビルの窓ガラスを揺らす。だが匡の心の内は、いつになく静かだった。
「この力を、殺すためだけのもので終わらせないって」
戦場の鼓動が幾ら迫ろうと、静寂の様に波一つ立ちはしない。思考も明瞭――やるべき事も成すべき思いも胸の内に。最早、迷いはない。
「だから、死なせない」
「でも、可能性が『ゼロ』じゃない」
突然、らしくない事を――それは恐れか、それとも信頼か。試されるような物言いに苦笑する匡。大丈夫、そんな事を言っても。
「ちゃんと守るし――あいつも倒す」
仕事は果たす、これまで通りに。
「簡単に壊れるような私じゃないけど――殺さないでよ」
口元を歪ませて、ウロボロスが立ち上がる。びゅうと強風が二人の間を通り抜け――奴は近い。お喋りはここまでだ。
「行こうぜ」
「頼りにしてる」
ゆっくりと音の方に身体を向けて――竜と凪は戦場へ舞い降りた。
「ダーク……ポイント」
先ず視界に入ったのは道路を埋め尽くす黒の群れ。雑多な火器をそれぞれが手にして、淡々と前進を続ける姿は、正に地獄の軍勢そのものだった。
「――それだけ」
複製とはいえ、幾度となく下してきた相手とはいえ強敵である事に変わりは無い。これ程までの戦力を投じてきたという事は、恐らく奴は。
「追い詰めたという事でしょう」
面倒そうに溜息を吐くヘンリエッタ。まあいい、やる事は変わらない。
「――仕掛けるか」
匡が呟く。射線をふさぐ障害物も点在している。空間の上下を使えば立体的な戦闘も可能だ。網に捕らえるならば、それなりに適した状況だ。
「そうね。そうしましょう」
ふわりとヘンリエッタが立体通路から飛び降りる。黒の群れの更に奥、黒幕たる巨体に向けて言葉を放ち、ざらりと己の得物を手に取った。
「こんにちは、可哀想な人。いいえ――人だった何か、かしら」
『……だったら何だ、テメェ』
通りすがりのダークヒーロー……そこまで言って、ヘンリエッタは名乗りを止めた。
「止めだ。このままお前を悪人だとは呼んでやらない、黒幕にしては騒がしすぎる」
いつだって黒幕というのは、静かであるべきだ。大声でがなり立てて、醜悪な巨体をこれ見よがしに衆目に晒して、挙句の果てには意地汚く借り物の力で世界をどうにかしようというこいつが、黒幕であっていい訳が無い。
『黒幕……ギャハハハッ! 言うなあ嬢ちゃん、正義のヒーロー気取りが』
相変わらず己の心を揺さぶろうと……だがそんな口撃、存分に味わった。故に。
『だったら今日が最終回だ。ここで打ち切りだよ、テメェらの活躍はッ!』
暴れ狂ってこの物語を終わらせる、純粋な暴力装置として。その場で立ち止まったジェネシスはそのまま、続々とダークポイントを呼び出しながら進撃を再開した。
「分かり易い木偶だ事……」
いいだろう。全部相手になってやる。永縁刀と黒槍を左右に持って、背後からは頼れる相棒――蜘蛛と幻獣のUDCがぬらりと姿を現す。
「早まるなよ、こっちもいるんだ」
ザザ、と無線に匡の声が。分かっているわ、信じてるから。
「――正面から直接援護射撃を開始する」
救う事の方が難しい――確かに。ならばこの仕事は容易い筈だ。短機関銃で武装したダークポイントが横隊で前進、ヘンリエッタを射程に捕らえるまであと僅か。
「――失くさないさ」
乾いた銃声が一人のダークポイントを穿つ。崩れた陣形を埋める様に、不意打ちを喰らった黒の群れはそのまま狙いを匡へ向けて……その僅かな隙で良い。
「最強の刺客が、堕ちたものね」
瞬間、疾駆したヘンリエッタの突撃が先陣を崩す。続いて幻獣が右翼を、蜘蛛が左翼を食い破り、整然とした戦列はたったの一撃で混沌の坩堝と化した。
「どうした、撃たないのか?」
無言で長銃を構えるダークポイントの顔面を黒槍が貫き、側方より迫る者は舞う様に振るわれた永縁刀がバターの様にその身体をずぶりと断ち切る。
「――前方30m、ゴールまであと僅か」
突撃銃の斉射がヘンリエッタへの奇襲を阻止して、荒れ狂う化物は只管に暴れ回る。蜘蛛は糸に塗れたダークポイントをぐるぐると振り回し、幻獣は怯んだ者へ片っ端から喰らいつく。血に塗れた自らを刻印で奮い立たせ、前へ、前へと。押し寄せる過去という津波を潰しながら、両手の業物を竜巻の様に振るって、ヘンリエッタの前進は止まらない。
『それがどうしたヒーロー。まだまだ……溢れ出てくるゼェッ!』
「怯えて竦んだか小物め、その程度で」
竜の進軍を止められると思うな。宙に鮮血が弧を描き――虚空に牙が顕現する。
『何だと――テメェ、自分の身体を』
「言っておくが、手負いのワトソンは――凶暴だ」
獣の唸り声の様な重い響きが戦場を覆って。この戦場の主はジェネシスなどではない、私こそ血と漆黒を纏った『犯罪王』。そもそもの悪の格が違うのだ。
「さあ、匡――!」
『させるかよ、その前に!』
黒の津波を押し退けたヘンリエッタはジェネシスの喉元へ。尋常ならざる三頭を引き連れて、ウロボロスの双眸は遂に巨悪と対峙した。今ならば、私目掛けて開かれた『骸の海発射装置(しかし趣味の悪い名だ)』は、匡への注意を外したままだ。ここまで来て、まだ気付かないという――矢張り、こいつは黒幕に相応しくない。
(……外さないよ)
射線を通せる位置とタイミングは確保した。こちらに向けての抵抗は殆ど無い。後は照準に敵を納めて、トリガーを引くだけだ。
――獲りますよ! 戦禍を断ちます!
――さぁ、俺が信じる無双の強者、ここに在りってな。
――では、いつも通り勝つとしよう。
「――こいつを穿て! お前なら、撃てるッ!!」
(誰かの信頼に、応えられない自分ではいたくない)
故に――いつも通り。
乾いた銃声が響く。何の変哲も無い、必中の一撃が。
『ふざけた真似を。俺様の無敵の身体に、そんなものが……!』
不意に打たれた一発の銃弾がジェネシスの胸元に食い込む。だが、たかが小銃弾の一撃。そんなもので、無限に蘇る纏った鋼が食い破られる訳が無い。鬱陶しい一打を加えた遠くの猟兵――匡を見やり、お返しと言わんばかりに新たなダークポイントを放とうとした時、異変が起きた。
「無敵? ――そうだな、さっきまでは」
でも、今崩れた。『骸の海発射装置』は先程から全く動かない。音一つ立てず、壊れた洗濯機の様に、巨大な大穴だけをぽっかりと開いて。
『テメェ……何しやがったァァァァァッ!?!?!?』
さ、攻守交代だ。彼女は“死なない”――そう信じてるから。俺はその道を切り開くのに、全力を注ぐ。雑魚掃除はこちらで賄おう。後は血塗れの竜に全てを託す。再びレシーバーを頬に寄せ、群がる黒い群れを弾く仕事を直ちに再開すべきだ。
「終わりだ、ジェネシス。騒がしい口を閉じる時間だ」
骸に戻って、海へ還りな。
負傷していい。
生命が危機に瀕していい。
そんな他愛の無い事、何度繰り返してきた事か。
暗黒の宇宙空間で、花弁舞う偽りの楽園で、血風渦巻く侍の国で。
そうやって、何度も、何度も――繰り返し、覆してきたのだ。
私が『死ぬ』という結末を。
「――ひっくり返せ、因果の滝壷!」
竜が吼える。その背より漆黒の翼が――否、魂を喰らう異形の群れが、まざまざとその姿を現した。ヘンリエッタの血を啜り、更に暴れ狂うその異形は触手の形を成して、立ちすくむ愚かな巨悪に惜別の一撃を喰らわせる。
「海で後悔しろ、こんなに報われる時間を知らなかったことに」
最早、言葉すら無い。そうだ、沈黙を愛するこそ――悪らしい。
もぞり、もぞりと魂を喰らう音が響く。吸血生物の様に鎧の隙間からその中身を喰らい尽くして、そして巨体が地響きと共に大地へと落ちた。
そして、音が消える。
ああ、やっぱり。
私は生命が止まる音が、だいすきだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
佐伯・晶
やっと元凶のお出ましか
世界の為にも絶対勝たなきゃね
予め自分と同じ攻撃がくるとわかれば対策できるね
ガトリングの攻撃は神気で弾の時間を停め防御
僕なりのオーラ防御だよ
技能的にも防御>射撃攻撃だし
覚悟してれば停めれると思うな
状態異常も使い魔やワイヤーの時を停めて防ぐよ
邪神の涙を使われても氷結耐性もあるし
元々自分ごと攻撃するものだから何とかなるかな
体が凍って死なず、魔力で凍ったまま体を動かせる
神様の体だからできる芸当だけどね
必ず先制という事は相手は知らずに使うから
範囲内敵味方無差別だから自滅するかもね
味方を巻き込まないよう転送順は気を付けるよ
攻撃を凌げたら邪神の涙と射撃で攻撃
凍って動きが鈍った隙をつくよ
サトー・コゴロー
アドリブ・連携大歓迎(SPD判定)
▼心情
ようやくこの戦争も決戦の時がキタカ。
再生怪人は敗れルのがお約束ってコトを教えてヤル。
▼方針
市街地なので、敵の死角に隠れて周りの情報収集
自分の過去なら、同じく死角から攻撃してくるはずなので、罠を仕掛ける
ucを発動して敵に攻撃
▼行動
敵から(目立たない)よう周りの(情報収集)
自分が隠れそうな場所に(時間稼ぎ)の(
罠)を設置する
敵の注意を引く(演技)で敵のuc発動させて罠に掛ける
《夜鷹の化身》を発動して人形と共に攻撃する
「残念ダケド俺の取り柄はかくれんぼくらいダ!」
クーナ・セラフィン
実に小物っぽいね。
力だけは人一倍、それに反比例しているかのような品性。
こんなのに世界を滅ぼされちゃたまったものじゃない。
きっちりここで滅ぼさないと。
…許さない?ふざけた事を。
にしても本当に同じ姿だ。比較的最近だね?
能力も確かに同じ、軽業で戦い隙を突く…本当に皮肉。
ならば徹底的にそれで応対しようか。
槍を躱しつつ私だったらどうするかを推測し、劣勢に見せかけつつクライング・ジェネシス本体の近くに誘導。
一直線に並び本体の視界を幻影が塞いだ瞬間UC発動、幻影とその向こうの本体の顔面狙い一気に連続攻撃。
過去だからこそ戦法はある程度読める。それを利用して奇襲しかけるのが私の対処法かな。
※アドリブ絡み等お任せ
●果て無き渇望
異変は突然起こった。国際展示場駅前での激戦から30分も経たぬ間に、再びクライング・ジェネシスが立ち上がったのだ。倒したとはいえその姿が消えぬまま、予断を許さぬ状況であったのは確かだが、事態は思わぬ方向へ進んでいく。
『ヴァアアアァァァァァッ!!!!!!』
再び動き始めたジェネシスはまるで泣き叫ぶかの様にその場で咆哮を繰り返し、その場から一歩も動かない。先程まで溢れていた『骸の海発射装置』からのオブリビオンの来襲も、虚無を孕んだ漆黒の乱射も無く、只管に叫び続けた。
「――ようやくこの戦争も決戦の時がキタカ。トイウのに」
ゆりかもめのレール上に陣取ったサトー・コゴロー(強化人間の人形遣い・f23719)は予想外の展開に面食らう。確かジェネシスは意思疎通くらいは出来る相手だった筈。それが何故……?
「当ノ首魁がコノ有様デは」
最早打ち崩すのも時間の問題か。とは言え全ての能力を失っているのか、ここからでは見当がつかない。
「何にせよ、実に小物っぽいね」
その横にふわりと優雅なケットシーが。クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は愛槍を担いで、目の前で狂ったように叫び続けるジェネシスを見据える。
「力だけは人一倍、それに反比例しているかのような品性――今の様にね」
大層な力を持ってはいるが、それの扱い方がまるでなっちゃあいない。そんな小物としか、クーナの目には映ってないのだ。嘗て戦った強敵達と比べても、その差は歴然としか言いようがない。故に。
「――こんなのに世界を滅ぼされちゃたまったものじゃないわ」
「その通りです」
もう一人、巨大なガトリング法を肩に掛けて、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)がふらりと現れた。それでも世界を滅ぼしうるのならば、最善を以て倒すしかないだろうと。
「世界の為にも絶対勝たなきゃね、この元凶を討ち滅ぼして」
ヒーローズアースに平和を取り戻す。ただその為に彼女(彼)は世界を駆け巡って、数々の激戦を制してきたのだ。
「――再生怪人は敗れルのがお約束ってコトを、教えてヤル」
そしてコゴローが一歩前に出れば――猟兵に気付いたか、咆哮を繰り返すジェネシスの片腕より三つの影が呼び起こされる。それはどれも、ここにいる三人とよく似通っていた。
「事前の情報通りね。あれは私達の『過去』よ」
クライング・ジェネシスの攻撃パターンは主に三つ。有象無象のオブリビオンの大群を呼び起こす事、対峙した相手の過去そのものをぶつける事。そして。
「……許さない? ふざけた事を」
ふと、クーナが己と同じ姿をした影の口元を覗けば、何やら声を揃えて本物たる我等を許さないと宣っているらしい。上等だ。既に過ぎ去った過去では、より未来を生きる我々に敵わぬ事を、身体で教えてやろう。
「まあ、予め自分と同じ攻撃がくるとわかれば対策できるね」
「ソウいう事ダ。各自散開シテ――自分ヲ相手取る」
迂闊に混ざって戦えば敵の戦力も強化しかねない。ここは各々が各々の相手を――大丈夫、自分を信じてと晶が皆を励まして。
「にしても本当に同じ姿だ。比較的最近だね?」
「一体、骸の海トハどうナっているのデショウ」
その姿形を見やり、別の疑問が浮かぶクーナとコゴロー。だが今は、悠長な事などやっていられないのだ。
「――それじゃあ分かれて。後で合流しましょう」
そして三つの影が分かたれて、最終ラウンドが始まった。
(兎に角、最初は攻撃を凌ぎ切ればいい)
晶は手にしたガトリング砲を前に突き出して、己の幻影の来襲に備える。
(属性対策も、先制対策も――だけど)
相手が何時の時点の自分であるか。それだけが不安の種だった。そしてその答えは、存外早く齎される事になる。
『――許せるものか、お前を』
甲高い炸裂音が晶を襲う。ふわりと金髪を揺らして、ゴシック調のドレスを纏った自分自身と同じ姿――晶の影が無造作にガトリング砲を放ちながら、徐々に間合いを詰めてきたのだ。
「何よ、許せないって――私なんでしょう、あなた」
反論するや否や、返ってきたのは鉛玉。最早口を利くつもりも無いらしい。だったら……猫被りはもう止めだ。
「――上等じゃない」
所詮は紛い物。容赦する必要など無かったのだ。
「これを喰らって、耐えられるかしら!」
反撃を――冷気を纏った必殺の超常が、晶のガトリング砲より轟音と共に放たれた。
ここは市街地だ。自分だったらどうするか――先ずは情報収集だ。物陰よりふらりと様子を伺っては、安全な進路を確認するコゴロー。相手も恐らく、同じ様に自分を追い詰めに来ているだろう。だったら、如何に先回りしてこちらから攻撃を仕掛けるか。目立たない様ひっそりと、物陰から辺りを伺っては進行と停止を繰り返すコゴロー。焦る事は無い……気を付けるならば、どこかで自分が自分の影とばったり、出くわさないか。
「……マア、念の為ダ」
安全を確保した交差点に即席のワイヤートラップを仕掛ける。もし同じ道を通れば、少しでも相手に傷を負わす事が出来る。その相手が過去の自分という事に苦笑して――それでも、負ける訳にはいかないと仕込みを始めた瞬間だった。
カチリ、と何かを踏み付けた様な音が。特に怪しげな個所は無い――いや、違う。
既に仕掛けられていたのだ、目立たない罠を。
「成程……トいう事は、敵の進路ハ」
それにも動じず、冷静に状況を分析するコゴロー。ついでだ、この罠すら利用してやろうと、仮面の下に悪戯っぽい笑みを湛えて。
「……で、逃げも隠れもせずに現れたと」
『そうよ、クーナ・セラフィン』
対峙した己の影は憮然とした態度で、槍を構えて相対する。
「ならば徹底的に応対しようか――容赦する必要など、無いでしょう?」
対するクーナも一歩も引かず、愛用の銀槍を下段に構えて闘志を露わに。
「でも一つだけ……許さないって、何?」
ある筈も無い和解など求めない。だが一つだけ浮かんだ疑問……彼彼女らは、何を許さないというのだ、という事。
『許さない……当然だろう。ほんの僅か前まで、私もここにいたんだ』
「え……?」
僅か前、だって。だったら、目の前の自分は正しく――。
『だからキミを倒して、私は私になるんだ』
正しく自分そのものではないか。切り取られ分岐した時間、それが何処かは分からない。だがそれならば納得出来る。どうして私が……私だってそう、考えるだろう。
「そうなの――でもね」
でも、だからこそ。許せないのは、必ず勝たねばならないのは私達だ。
「私は私よ。キミじゃない」
何故なら――ほんの少しだけ、目の前の自身の影を憐れむ様に、クーナは続ける。
「キミは私の過去、只の幻影だから」
「もう何度戦ったか……分からないな!」
容赦の無い弾幕が己の現身を――晶の影を襲う。冷気を纏った超常の弾丸だ。当たれば凍り付いて、身動きも取れなくなる筈。だが。
『それはこっちのセリフだ。同じ事ばかり、いい加減学習しないとでも思ったか!』
反撃の超常が晶の肌を掠める。氷結耐性はある、だからそこまで効く訳が無い。だからこそ強気で攻められるのだ――という事は。
『お前を倒せば僕が僕だ。この戦い、負ける訳には――!』
成程、そういう事か。目の前の自身の影はほんの僅か前の自分自身。装備も戦術も同じ、だったら勝負の明暗を分けるのはただ一つ……!
「負ける訳には――何だと言うんだ!」
ガトリング砲を投げ捨てて、晶はワイヤーガンを放った。絡みついた鋼鉄の縄がガラガラと相手のガトリングガンを無力化する。
『な……一体、何を』
「どうして、お前らが勝てないか――教えてやるよ」
冥途の土産だ。神気を纏って晶が飛び掛かる。使用不能になったガトリング砲を諦めて、同じく晶の影も神気を纏って――だが、遅い。
「お前は決められた事しか出来ないからだ、僕が考えた戦術通りの事しか」
故に、こうした臨機応変の対応は即座に出来ない。それだけで十分だ。自身の影の懐に滑り込む晶。神気が相手の耐性を突き破って――そして。
「だけど……ごめん」
晶の頬を涙が伝う。放たれた絶対零度は、瞬間的に目の前の影を絶命せしめた。
不意に爆音が交差点を襲う。仕掛けた罠が起動したのだろう。だが油断は禁物――安全を確保して、そろり、そろりと現場の方へ。
『矢張り、掛かっタか……クク』
これで俺が俺だ。飛び上がりたくなる様な歓喜が、胸の奥よりこみ上げる。コゴローの影の目の前には、嘴のような黒いマスクと黒衣が転がって――つまり、本物のコゴローは今の爆発で命を落としたという事。
『念ノ為だ、死体ヲ確認して――』
その喜びを押し殺し、コゴローの影は交差点へと向かう。近付けば尚更の実感が込み上げて――ああ、良かった。生き延びる事が出来たのだ。もうあの時の様にナニカサレテ、借金に怯え続ける事も無い。
「イイや、借金はマダ残ってイルぞ」
何――影が周囲を見渡す。馬鹿な、確かに死んだ筈。目の前の死体は微動だにしていないし、あの爆発を喰らったならば、少なくとも無事ではない!
「騙シテ悪いが、仕事ナンデな」
瞬間、何をされたのかコゴローの影は分からなかった。最後に聞こえたのは、指を弾く音いつの間にか、自分は命を落としていた。
「残念ダケド、俺の取り柄はかくれんぼくらいダからナ!」
本物のコゴローは、己が衣服を囮にして――ずっと付近のマンホールに隠れていたのだ。そして己の影が近づいた時、時間の流れを操って己の影を屠ったという訳だ。手にした絡繰り糸がギラリと煌いて――己の影の首を取ったのだ。
「流石私だわ。中々やるじゃない」
『当たり前だ――キミと私は、殆ど変わらない!』
銀光がぶつかり合って、火花が飛び散る。クーナとその影はお互いが超常を発し、最早目では追い切れぬ恐るべき速さの戦いに突入していた。
『だから――負ける道理も無ければ!』
「それは私も同じよ。それに――私の本当の敵は」
キミじゃあない。軽やかに舞う様に、小柄なケットシーは縦横無尽に飛び回って戦場を闊歩する。もうすぐだ、もうすぐ――。
『遅い!』
一閃――音よりも早い水平突きがクーナの喉元へと迫る。流石の私だ、僅かな隙も逃しはしない。
『逃げ回っても無駄だ。それにキミの戦法はある程度読める』
ジェネシスの方へ向かうつもりだろうが、そうはさせない。
『さあ、観念なさい』
間合いを詰めて石突きで足払いを――体勢を崩したクーナはそのまま、交差点のど真ん中で座り込んでしまう。
「そうね……だったら、最後に一つだけ」
槍を足元に置いて。これでもう抵抗は出来ない。だからせめて言いたい事がある。
『まあ、いいでしょう』
銀槍の穂先をクーナに突き付けて、今際の言葉を聞いてやらんと前に立つ。
「――ありがとう。それじゃ」
こほん、とクーナが咳払いをして続ける。これで、お仕舞いだ。
「ありがとう、ずっと私に付き合ってくれて」
え? 怪訝そうな表情を浮かべたクーナの影は、そのまま命を落とした。
背後には晶とコゴローが。晶のガトリング砲が、容赦なくその幻影を蜂の巣にせしめたのだった。
「――大丈夫?」
「ええ、まあ」
パンパンと誇りを払って再び立ち上がるクーナ。爆音も銃声もいつの間にか途絶えた。ならば自分が最後――時間を掛けて影を倒すよりはこの方が手っ取り早いと、彼らが現れる方に全てを賭けたのだった。
「ジャア行こうカ。モウ目の前ダよ」
倒すべき敵はクライング・ジェネシス――三人は視線の先の巨影に向けて、持てる力の全てを籠める。開幕の氷結弾と共に、音よりも早い黒い影が絡繰り人形を繰り出して飛び掛かる。そして勇壮なケットシーの騎士が、自慢の銀槍を掲げて立ち塞がる巨影に挑むのだ。そして。
『ヴァアアアァァァァァッ!!!!!!』
巨影が動く。まるで猟兵達から逃げ出す様に大地を揺らして。それだけ、猟兵達の攻撃は苛烈だったのだ。
「矢張り、あれは生きている――」
ならば他の攻撃手段も健在の可能性が高まった。
「ダッタラ、今すぐ追うカイ?」
「いや、いいわよ……」
三人はユーベルコードを使い過ぎた。今や尋常では無い疲労が三人を襲っていた。それ程までに強烈な堅さを誇る相手だった。
「そうね、まだ仲間はいるんだし」
余り気分のいい相手では無かった。出来れば二度目はごめんだと密かに思って。
そして戦いは、終焉へと向かっていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ウィノン・ニタドリ
灯くん(f00069)と
(技能【呪詛耐性・勇気・カウンター・鎧砕き】)
【具現化した過去】の自分は赤ん坊(推定1歳)
ああんあああん、と責めるみたいに呪うみたいに泣く
ごめんね、なんて言ってるのか解んない
「ちょっとだけ、何か解るかもって期待したんだけどなあ」
どんな生まれで何故捨てられたのか、気にならないと言ったら嘘だ
「ずっと『過去』のままでいるから辛いんだよ。ここまでおいで」
立派な『末っ子』になった私が、捕まえたげる
昔話の鴉みたいなクライング・ジェネシスさん、貴方もね
「いこう、灯くん」
息を吐きつつ瞑目
霞に構えた刀は、腕と境が無いような気がした
「一切諸共に串刺して喰ろうてくれよう」
皐月・灯
ウィノン(f00932)と
ギャーギャーうるせー野郎だな。
……だが、ヤツの力は本物だ。ウィノン、油断すんなよ。
オレは被ダメージを最低限に抑えて【カウンター】を狙う。
【見切り】で急所への直撃を避けつつ前進。
さらに《模倣ル幻石》……コイツで、ヤツの技を拝借しとくぜ。
……にしても、ウィノンのヤツ、全然動じてねーな。
たしか前もあいつ……いや、今は。
「てめーの御大層な能力も、ウィノンにゃ大して効かねーみてーだな」
奪った力を誇示するタイプ……なら、「力が通じねー」ってのはイラつくだろ。
煩いオレを仕留めに来た、その刹那が狙いだ。
「てめーがバラ撒いた過去だぜ、穴ボコ野郎」
【全力魔法】からのカウンターでブチ砕く!
●独り善がりの孤独
江東区有明、東京ビッグサイトを抜けて暴走したクライング・ジェネシスが現れたのは高層ビルや高級ホテルが林立するビジネス街だった。最早オブリビオンを呼び起こす事も叶わず、天を仰いで悲鳴を上げ続ける巨人はさも哀れさすら感じさせるが、その行動原理は破滅。同情出来る余地など無い。
「ギャーギャーうるせー野郎だな」
皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)がぶっきらぼうな口調で呟く。バス停の影に隠れて今は奴が通り過ぎるのを待つ――仕掛けるのは、まだ先でいい。地響きを上げながらビル街を闊歩する巨体は、そのまま進路上の尽くを踏み潰し、薙ぎ倒し、正に歩く災厄といった風情だった。
「……だが、ヤツの力は本物だ。ウィノン、油断すんなよ」
傍らでちょこんと椅子に腰かけているウィノン・ニタドリ(真贋モルダバイト・f00932)に声かけて、灯は己に刻んだ魔術回路を立ち上げた。仄かに空気の色が変わって、その様をウィノンはニコニコと眺める。
「……何だよ」
「やっぱり、ちょっと綺麗だなあって」
私にはそういうの、無いから。ぼそりと呟くウィノン。
「あのなあ……化粧じゃねえんだぞ、これは」
「知ってるよ。それとね」
来るよ。瞬間、漆黒が二人の視界を覆った。
――暗闇の先に見えたのは、タオルの様なものに包まれた赤ん坊。
赤ん坊はベンチの上に置かれていた。優しい色合いの照明がその子を照らして。
どうやらここはデパートの中。横では噴水がちょろちょろと水を噴き上げている。
――ああんあああん、ああんあああん。
何かを乞う様に、赤ん坊は泣き叫ぶ。
――ああんあああん、ああんあああん。
あるいは何かを、呪う様に。彼か彼女は、いつまでも、いつまでも。
(ごめんね、なんて言ってるのか解んない)
それはきっと、過去の自分。誰が何の為に私をここへ置いたのか。
(どんな生まれで何故捨てられたのか、気にならないと言ったら嘘だ)
――ああんあああん、ああんあああん。
赤ん坊は泣き止まない。私はここにいると、その存在を永遠に示し続けて。
「ちょっとだけ、何か解るかもって期待したんだけどなあ」
俯瞰でその姿を眺めるウィノン。
大丈夫だよ、あなたはきっと、幸せになるから。
だから泣かないで。そんなの、私まで辛くなっちゃうから。
「ずっと『過去』のままでいるから辛いんだよ。ここまでおいで」
立派な『末っ子』になった私が、捕まえたげる。
昔話の鴉みたいなクライング・ジェネシスさん、貴方もね。
瞬間、鮮やかな偽りは粉々に砕け散って――漆黒の帳が静かに開いた。
「――おまたせ」
「――おせーよ」
ウィノンの目の前には再び、色取り取りの世界が広がった。
「いこう、灯くん」
歪な過去から私を守る為に。いつか答えを見つける為に。
「ウィノン!」
漆黒が球体に――虚無の空間がウィノンを取り込んで、その姿を封じ込めた。
一瞬だった。確かに俺も音で気付いていた――だが。
「――馬鹿野郎」
上手くいかなかったらどうするつもりだ。展開した術式を全身に張り巡らせて、灯は巨影と対峙する。だが今ので大体、速度も威力も検討が付いた。
「だったら精々、時間を稼ぐか――!」
風の様に矢の様に、灯はアスファルトを駆け抜ける。どうせ同じ事しかしてこない。だったら躱し続けて、その懐まで……。
『ヴァアアアァァァァァッ!!!!!!』
突如、ジェネシスが雄叫びを上げる。びりびりと空気を揺さぶる爆音が鼓膜を震わせて、たったそれだけの事で、立ち並ぶ高層ビル群の窓ガラスが次々に割れていく。
「――オレは弁償しねーから、なあッ!」
灯が跳ぶ。バチバチと紫電を纏ったガントレットが光の尾を引いて、放たれた虚無がその跡を飲み込む様に消してしまう。
(闇属性とか無属性ともまた違う。何つーか)
何も無い。虚無だ。しかし触れれば過去が襲い掛かる筈――今の所、それは無い。
「だが、な――」
気が付けばアスファルトが真っ黒な穴だらけだ。外れた虚無はそのまま空間を抉って、周囲に地獄めいた様相を巻き起こしていたのだ。
「これでようやく、分かった――!」
刻まれた刻印が再び、淡い光を放つ。神経がスパークする様な痛みを伴って――強引なコピー&ペーストが処理系に負荷をかけるか。それでも!
「アザレア・プロトコル5番――《模倣ル幻石》!」
再びガントレットが眩い光を放った。その隙間から放電が落雷の様な轟音を放って、拳に宿るは超常の虚無。先にウィノンが身を挺して浴びた漆黒は、既に灯の手の内にあった。
「さあ撃って来いよ――実証実験だ!」
無造作にばら撒かれた虚無が一つ、吸い込まれるように灯の下へ――これならば、同じ存在ならば相殺出来る筈だ!
突き出した拳が漆黒を取り込んで、より強大な闇と化す。
「ハハッ――オレの方が強かった、ってか」
そして元居た場所の巨大な虚無の球体が、バリンと割れた。
「――おまたせ」
「――おせーよ」
でも、良かった。
「いこう、灯くん」
ああ。これで奴の攻撃が通じない事は、無事証明されたからな。
「てめーの御大層な能力も、ウィノンにゃ大して効かねーみてーだな」
そしてオレにも。怪我の功名だが――後は己に刻んだ回路が持ちさえすれば、この戦いは切り抜けられる。拳を前に突き出して突進する灯。その後には刀を抜いたウィノンの姿が。続々と振りまかれる虚無の漆黒。だが何も、恐れる事は無い。ターゲットは目前、ため込んだ虚無はもう破裂寸前だ――吐き出すならば、今。
「ウィノン!」
ふと、背後の少女に声を掛ける。返事は無い――既に彼女は己が身を刃と成して、迫る敵を切り伏せんとその機会を伺っていた。だが、聞こえてはいるだろう。
「道は作るぜ」
瞬間、灯が拳を大きく振り被って――その手に集めた漆黒の虚無を、ジェネシス目掛けて投げ放った。
『ヴァアアアァァァァァッ!!!!!!』
「うるせーな……てめーがバラ撒いた過去だぜ、穴ボコ野郎」
漆黒が行く手を遮る数多の虚無を飲み込んで、ジェネシスの足元に着弾。つまりそこは猟兵の領域だ。最早道を遮るモノは無くなった。刀をぐいと後ろに引いて、半身を前に乗り出すような構え――息を吐きつつ瞑目しながら、ウィノンは真っ直ぐにその道を駆け抜ける。気配は捉えた――そして、霞に構えた刀は、腕と境が無いような気がした。
「一切諸共に串刺して喰ろうてくれよう」
『ヴァアアアァァァァァッ!!!!!!』
だからもう、泣かないで。灯の放った漆黒の跡を踏み抜いて、ウィノンは大きく跳躍する。目の前にはジェネシスの、泣き叫ぶ無表情の兜が。
「――鎮め」
ぐいと腰を捻って、隙間に滑り込ませる様な神速の諸手突きを。霞の構えは間合いが狭い。しかし全身の力を籠めて、最大の一撃を発する事も出来る。それは戦場で磨かれた甲冑剣術ならではの、見事な技の冴えだった。
『ヴヴヴヴヴァアアアァァァァァッ!!!!!!』
がなり立てる様にジェネシスが叫ぶ。ウィノンの一撃はその兜を貫いて、遥か後方の後頭部まで貫通させた。しかし。
「――灯くん、おかしい」
「何、だよ」
うっすらと蒸気が上がるガントレット――虚無の最大負荷を何とか耐え抜いた灯は、全身を駆け巡る痛みを堪えて、ウィノンの不安に応じる。
「あれ、空っぽだった」
空っぽ――そうか。既に奴は何度も倒されている。骸の海から幾度となく再生出来ようと限度がある。つまり奴はもう、あと僅かで倒される。
「いくぞウィノン、止め、を……」
「――戻ろう、灯くん」
猛る灯を諫めて、ウィノンは後退の準備に取り掛かる。
これ以上戦っては灯が持たないかもしれないし、私だって次はどうなるか。
でも大丈夫だ、私達は一人じゃない。
孤独じゃないんだ、あのクライング・ジェネシスみたいに。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
霧島・クロト
まぁ、初動は――避けねェよ。
誰が好き好んでお前の『領土』を作らせるかってんだ。
【全力魔法】【属性攻撃】【オーラ防御】を
【高速詠唱】することで、素早く巨大氷壁を作り上げて相殺する。
その後【高速詠唱】から【指定UC】を構え。
相手の攻撃を【見切り】した上で、
【オーラ防御】【属性攻撃】の氷壁で
可能な限り相手の攻撃を受ける。
距離詰めるまでは【呪殺弾】、至近距離では【怪力】を併用した
【属性攻撃】【生命力吸収】【マヒ攻撃】の【2回攻撃】ラッシュで
押し込みながら制圧していく形で。
被弾するほど有利になるのはこっちだからな?
「そろそろ、その煩い口を閉じな――
『他』を借りないと目立てない三下野郎」
※アドリブ連携可
アニー・ピュニシオン
【WIZ】
私達は貴方の宿敵でもヒーロー達でもないけれど、
代わりに猟兵達がお相手にならせてもらうわ!
【対策】
自転車で思いっきり、敵の方に向かって進み
第六感で攻撃が来るかもと判断したら、
無限に進化する光槍をアニーの姿が隠れる様にして、
敵に出来るだけ近い見当違いな感じに槍投げ。
それにUCを発動させて鎖を槍に繋げて一緒に飛ぶわね。
相手の近くに降りたら
UCの複数の鎖で骸の海発射装置をぐるぐる巻きにして、
使用禁止にさせてもらうよ!そんな危ないの、めっ!
……これほどまでに清々しい悪がいたのなら、
アニーだってヒーロー達と同じように貴方と友達になってみたい思うわね。
そしたらもっと怪人とも理解り会えると思うのよ。
陽向・理玖
おー
出るわ出るわ
でもどいつも見たことあんだよな
そんなのいくら出しても相手になんねーっての
龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波範囲攻撃で巻き散らし
どいつも倒したことある相手
暗殺用いグラップル
急所狙って一撃必殺
敵吹き飛ばして胸の装置狙い
胸に不要なもん詰め込んだら爆発しそうじゃね?
部位破壊で装置ぶっ壊す
効かないようであれば
出てくるオブリビオンを吹き飛ばしつつ目眩ましにし
ダッシュで間合い詰め足払いでジェネシス転ばせ
倒した奴胸詰める
ほぼ無敵っつったよな
てーことは無敵じゃねぇ部分を探せばいいってことだろ
拳の乱れ撃ち
効きそうなとこ見つけたらUC
そのまま埋まっちまいな
あんた一人で骸の海で溺れな
●そして忘れない
市街地の惨状は目を見張るものがあった。へしゃげた信号機、薙ぎ倒された街路樹、崩れ落ちた高層ビル。最早それは、人の手に余る所業だった。
「私達は貴方の宿敵でもヒーロー達でもないけれど」
爆炎が立ち込める彼方を見やり、アニー・ピュニシオン(小さな不思議の国・f20021)はその奥を蠢く巨影に呼びかける。ちょっと怖いけれど、そんな事を言ってる場合じゃない。それに、アレと対峙しなければならないのは、自分達だ。
「代わりに猟兵達がお相手にならせてもらうわ!」
ファンシーなシティサイクルに跨って、声高らかに宣言するアニー。その横で柔軟体操をする陽向・理玖(夏疾風・f22773)が、呆れた風に問う。
「って大丈夫か、そんなチャリで……」
大丈夫です! と鼻息を荒げるアニー。本人がそう言ってるんだからそうなのだろう。ならば自分は自分で、やるべき事をやるだけだ。
「まあいいや……って、出るわ出るわ」
巨影がもぞりと体をくねらせて――地を這う眷属、大量のオブリビオンを新たに解き放つ。ザウルスマン、戦闘員、サラリーマン――最早往時の勢いは無い。数だけは揃えられる骸の海の手勢を、一斉に解き放って。
「だが見たことある奴ばっかりだな。そんなの――」
ボキリ、と理玖が指を鳴らす。結構離れちゃいるが――走れば全然、届く距離だ!
「いくら出しても相手になんねーっての!」
変身ッ! 龍珠を弾いてドライバーが唸る。極彩色の光が己が身に降り注ぎ、龍を模した煌く装甲が武威を示す。
『ヴァアアアァァァァァッ!!!!!!』
その光に気付いたジェネシスが猛り来るって――あの光は、あの様な光は大体ヒーローの仕業だ。ジェネシスの本能に刻み込まれた憎悪が、再び空気を震わせる。
「うるせーな。ブッ壊れたスピーカーかよ」
振動が突風を巻き起こし、理玖とアニーの行く手を遮る様な向かい風となって吹き荒れた。だがそんな事で動じる様な猟兵では無い。
「先に行きます! レッツゴー!」
臆する事無く先陣を切ったアニー。時速60kmは出る筈だ。説明書に書いてある。そんな高速シティサイクルで、迫るオブリビオン共を避けながら突き進むアニー。その頭上に、今度は漆黒の球体が続々と降り注いだ。
「わっ! 危ない!」
虚無の弾丸、喰らえば過去が襲い来る――それらを奇跡的な操縦技術で躱しつつ、辺りを包んだ虚無が有象無象のオブリビオンを飲み込んで。
「危ないって! って……?」
その後を全速力で駆け抜ける理玖。その衝撃は立ち塞がるものを吹き飛ばし、虚無の大穴を躱しながら突き進む。ようやく追いついたアニーの横へ並んだ時、不思議な光景を目の当たりにした。
「そんな危ないの、めっ!」
アニーが叫ぶと共に、手にした光槍がめきめきと音を立てて巨大な光の柱と化した。その中に包み込まれる様に隠れるアニー。その光の柱――よく見れば先端には尖った穂先が。無限に進化する光の槍は、攻防一体の決戦兵器じみた巨槍と化したのだ。
「凄っげえな、お前……」
この娘、信長公が討ち取られた場にいたのは伊達では無い。更にその槍へじゃらりと、超常の縛鎖を括り付けて。
「それじゃ……飛びます!」
瞬間、巨槍をジェネシス目掛けて投げ放ったアニーは、自身の手首から伸びる光の鎖に掴まって、そのまま宙を舞いジェネシスの下へと一気に迫った。
「っと、見てる場合じゃねえな……」
気が付けばずらりと、有象無象のオブリビオンが理玖を囲んでいた。上等だ。拳に嵌めた龍掌を打ち鳴らし、群がる敵を一瞥――刹那の間隙を縫う様に五体が跳ねて、目の前のザウルスマンを彼方へと殴り飛ばした。無拍子の一撃、更に。
「遅いんだよ、ボンクラ共!」
勢いに身を任せてスライディング/転ばせた戦闘員の両足を掴みフルスイングして周囲のオブリビオンを吹き飛ばす。そのまま投げ離せば、避けようと体勢を崩したサラリーマンに必殺の飛び蹴りを。矢張り物の数では無い――あの娘はそういえば、どうなったか? ちらりとジェネシスの方を見れば、いつの間にか光の縛鎖が、遠目にもその巨体をぐるぐる巻きにして封じ込めてる姿が目に入った。
「縛り上げた、アレを!?」
正しく奇跡が続いたのだ。虚無の尽くを躱して、最早理性を無くした巨体をぐるりと回りこむ様に飛び、そのまま立て続けに光の縛鎖を放ち続けたのだ。己が生を代償にして。
「だがもう、動けねえな……だったら!」
アニーの超常が封じ込めたおかげで『骸の海発射装置』は次のオブリビオンを生み出せないでいた。群がる手勢の尽くは退治した。後はその首魁を――ジェネシスを打ち砕くだけ。その時、嗚咽を漏らすジェネシスの腹部から、ぼとんと奇妙な卵が産み落とされた。
「何だ、アレ……」
遂に装置が完全に壊れたのか――僅かに透過する卵の中には人型の影が。違う、こいつは――最後の力を振り絞って。
『ヴァアアアァァァァァッ!!!!!!』
再びジェネシスが雄叫びを上げる。その叫びと共に卵に亀裂が――中より現れたのは全身を青で包んだ災厄の担い手、レディ・オーシャンその人だった。
「こんな所で『海を統べる者』かよッ!」
その力は複製とはいえ尋常では無い。高々とその手を上げれば、辺りの水分を巻き込んで超常の大波が顕現した。この市街地で放たれれば、幾ら猟兵と言えど軽く押し流されてしまう――絶体絶命の窮地。悪魔の腕の如く大きく広がった波が理玖に迫り来る――そして。
「間に合ったかァ……やれやれだぜ」
声が聞こえて――ぱらりと氷が降り注ぎ、理玖の頬を撫でた。目の前の大波はその全てが氷の谷と化して、爆ぜる手前のギリギリの所でその威力を失ったのだ。
「こ、これ以上抑えるのは――!」
アニーが悲鳴を上げる。見ればジェネシスの片腕がその束縛を抜け出して、歪な巨腕を理玖がいる方へ向けていたのだ。
「来いよ。その前に……」
氷が割れる。その中より現れたのは、漆黒のサイボーグ。
「出番は仕舞いだ姉ちゃん、とっとと還れ」
割れた氷が意志を持ったかの様に宙を舞って、レディ・オーシャンが立つ場へと殺到する。それを防ごうと呼び起こされたリヴァイアサンも――瞬時に凍らされて。
「坊主、砕け」
「お、おう!」
瞬間、天高く跳び上がった理玖の多段蹴りが凍らされたリヴァイアサンを砕いて、その先に佇むレディ・オーシャン諸共氷の壁に叩きつけた。骸は骸に――不意の強襲に抗う事も叶わず、複製はその姿を消す。
「そろそろ、その煩い口を閉じな――」
『他』を借りないと目立てない三下野郎。ざり、と凍った足場を悠然と歩き、霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)はジェネシスを睨みつける。
「さぁ、不要な過去は凍結してポイだァ。おーけー?」
『ヴァアアアァァァァァッ!!!!!!』
「も、もう駄目です!」
振り上げられたジェネシスの拳から再び虚無が放たれる。アニーが封じられた分貯め込んだ超常の暴威が、漆黒の巨大な球体と化してクロトの頭上へと迫った。
「――言ったろう、来いよって」
避けねェよ。誰が好き好んでお前の『領土』を作らせるかってんだ。漆黒がクロトを飲み込んで、バチバチと荒ぶる轟音が立て続けに響き渡る。
「北天に座す、七天よ――」
されどクロトは何一つ慌てる事無く、迫る過去の群れを己が全身で受け止めて。
「――龍を捕らえ我が身に降ろせ!」
瞬間、雷光が虚無の球を襲った。その光は漆黒を突き破り、バリバリと割れたその中から――氷龍の化身と成ったクロトが魔術回路の冷たい光を解き放ち、半透明の氷めいた龍の装甲を纏い顕現する。
「うっわ寒ッ……てか、兄さんも龍?」
「もう12月になるからって……くしゅん!」
冷気が戦場を覆いつくす。痛みを力に変える呪いじみた超常だ。故に、過去と相対し続けた今のクロトには、尋常ならある力が秘められていた。
「それじゃあちっとばかし早いが――サンタさんからプレゼントだ!」
散々悪夢を見せびらかしてくれたからな――倍付けで返してやるよ! 氷龍が跳ねる。喰らった呪いを返さんと冷気を纏った呪殺弾を放ちながら、間合いを詰めて。
「畳みかける!」
「合わせるよ!」
クロトに続いてジェネシスへ向かった理玖が、その拳に力を籠めて。
すとんと地上に降りたアニーが、再び光の巨槍を構えて。
「震えて眠れ……そして」
「あんた一人で、骸の海で溺れちまいな」
投げ放たれた光の巨槍がジェネシスの胸に深々と刺さる。その上に降り立ったクロトと理玖が、全身全霊を籠めて――超常の必殺をその顔面に叩き込んだ。
振り被ったクロトの拳がジェネシスの兜を砕く。その奥には最早、何も無い。
腰溜めに放った理玖の拳がジェネシスの顎を砕く。手ごたえはあった、だが……。
「終わった、のか……?」
最早がらんどうの巨人だ。ジェネシスの概念のみが独り歩きして、忌まわしい過去と恐るべきカタストロフを実現する為だけに、現世を蠢く道具と化していたのだ。
その所業は悪そのものと言っていい。何の迷いも矜持も無く、只管それを成さんとする悪意のみが、クライング・ジェネシスの原動力だったのだから。
「……これほどまでに清々しい悪がいたのなら、アニーだってヒーロー達と同じように貴方と友達になってみたい思うわね」
「止めとけ嬢ちゃん。ありゃあ悪じゃねエ」
ジェネシスを憐れむアニーをクロトが制す。こういう手合いは別に、特別でも何でもないのだと。
「どうして? そしたらもっと怪人とも理解り会えると思うのに」
「只の災害だ、あンなの」
そして誰もがそうなる可能性を秘めている。だから必要なのは共感じゃアないんだ、と。
「確か、アイツ『このオレを理解し、共感しようとした恨み』って……」
理玖がぼそりと漏らす。だったらどうすれば、ヒーローはその時、どうすれば良かったんだ。
「若ェんだからよ……思い詰めンな。だが忘れンな」
今を生きて、そして忘れなければ……いつかその答えが見つかるかもしれねえゼ。
「ま、正義を説くのは俺の仕事じゃあねえしナ」
クロトの背後では音も無く、巨影が徐々に姿を消していった。
だからこそ俺達は、務めを果たさなければならない。
この世に生ある限り、その魂が朽ちる時まで。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵