アースクライシス2019⑭〜他力傾奪の過去を討て
「猟兵さーん! ヒーローズアース、戦争行きっす! クライング・ジェネシスが見つかったっす!」
グリモアベースに威勢のいい声が響く。集まった猟兵たちに香神乃・饗は説明を始める。
「連日の戦闘お疲れ様っす、ついにオブリビオン・フォーミュラ『クライング・ジェネシス』を引きずりだすことに成功したっす。
クライング・ジェネシスは、先制攻撃をしてくるっす。ボスの定番っすね、でも定番だからこそ油断ならないっす」
先制攻撃ができるほど、圧倒的に猟兵より強いということだ。
クライング・ジェネシスはもともと無能力者だったが、ヒーローからユーベルコードを奪い自身の体に移植しまくったのだ。
これも全て、自己顕示欲を満たすためだったのかもしれない。――全ての頂点になりたい。そう、ただの目立ちたがり屋で終われば良かった。
移植の副作用で死んだ後、よりにもよって、『骸の海発射装置』というユーベルコードを身につけてしまったのだ。実力が伴ってしまったのだ。
「クライング・ジェネシスは『骸の海発射装置』を使って、過去を操る能力を持っているっす」
能力を書き出した紙を両手に持ち猟兵たちに示す。
●POW
全身を胸からオブリビオンを繰り出し続ける状態に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
●SPD
骸の海発射装置を用いた過去の具現化により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、相手と同じ姿と能力の幻影で攻撃する。
●WIZ
骸の海発射装置から放つ過去が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形を丸ごと『漆黒の虚無』に変え、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
「この攻撃に対抗する方法を具体的に考えてほしいっす。
ユーベルコードでも、技能でもいいっす。どう使って戦うのかを考えてから突撃してほしいっす」
戦場は城の屋上――屋根の上だ。戦いの邪魔になるものはない。城全体に金箔を張り巡らせてある、贅の限りを尽くして作られた豪華絢爛な建物だ。
ヒーローズアースにある和風建築は、そこにあるだけで存在感あふれる。派手な建物と言って良いだろう。そこで戦うことにより、自己顕示欲を満たそうとしているのかもしれない。
「クライング・ジェネシスの全ては奪って手に入れた過去の強さ、過去の最強の力でしかないっす。日々、新しい力を練り上げてる猟兵さんたちには、かなわないっす!
真のヒーローの力を見せ付けてほしいっす、頼んだっす!」
ぱんと掌を打ち鳴らせば、正義の象徴の『赤』が咲く。梅が導く先は、和風建築の城の屋根――。
ごは
ごはです。アースクライシス2019、勝ちましょう!
シリアスシナリオの予定ですが、ギャグなども入れられそうなら差し込みます。全ては皆さまのプレイング次第です!
このシナリオ戦争シナリオのため1章のみになります。真の姿には戻れません。ユーベルコードの効果に含まれていても使えませんのでご注意ください。
以下の条件を満たせばプレイングボーナスがあります。
『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』
ユーベルコード、技能、どちらも対策として使えます。
ユーベルコード名を書くだけ、技能を羅列するだけではなく、具体的な使い方を明記してください。
プレイングはシナリオが公開されたらすぐに受付します。
プレイング受付状況は、このページもしくはマスターページにてお知らせします。
シナリオ完結を優先します。大成功の4人のみの描写になります。
時間が許せば同内容で2本目を運営します。お気持ち変わりが無ければ次にまわして頂けると幸いです。(遅筆のため1本のみになる可能性は高いです)
第1章 ボス戦
『クライング・ジェネシス』
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POW : 俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!
全身を【胸からオブリビオンを繰り出し続ける状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 貴様らの過去は貴様らを許さねェ!
【骸の海発射装置を用いた『過去』の具現化】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【相手と同じ姿と能力の幻影】で攻撃する。
WIZ : チャージ中でも少しは使えるんだぜェ!
【骸の海発射装置から放つ『過去』】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を丸ごと『漆黒の虚無』に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:yuga
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
【11/25 21時45分 プレイング受付を終了しました】
以降に頂いたプレイングは、受付せずに返却させていただきます。
フィーナ・ステラガーデン
どんな大物が出てくるかと思ったら
何あんた?とんだ小物じゃない!びっくりしたわ!
さぞあんたは人からもらったもので最強してたんでしょーね!
で!過去に縛り付けられてる癖に今もすごいって思われたいのかしら?
死んじゃった腹いせに今と未来を壊したいのかしら?
少しは成長しなさいよバカ!!
あんたの独りよがりで世界巻き込まれて、こっちはうんざりしてんのよ!!
私の幻影っていっても
私はいつまでも炎魔法ばっかりよ!
【火炎耐性】をもって甘んじて受けて
UCでその炎と周りの熱源や
もし仲間猟兵がエネルギー的な攻撃をしていれば
その残滓も杖で絡め取って、まとめて【全力魔法】でぶつけるわ!!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
「ギャーッハッハッハッ! 良い眺めだぜぇ!!
地球のクズども、カタストロフはもうすぐだぜ!!」
黄金に輝く城の屋根の上、鯱を足蹴に有頂天で高笑いするクライング・ジェネシス。
「どんな大物が出てくるかと思ったら
何あんた? とんだ小物じゃない! びっくりしたわ!」
その背に正義の声が突き刺さる。屋根に降りたち、ビシリと指をさし言い放つフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)の声だ。
「お嬢さま」
そのフィーナの更に後ろから声がかかる。そこには、身の回りの世話をしてくれているメイド姿の召使い霊がひょっこりと顔を出していた。
「わ、びっくりした。どうしたの、召使い」
不意をつかれて、びくっと肩を震わせ振り返るフィーナ。いつの間についてきていたの?
「お嬢さま、冷え込みが厳しゅうございます。毛糸のぱんつをご用意いたしました」
びろーんと広げて見せるのは、愛らしい手編みの毛糸のぱんつだ。
「ありがとう、これくらいの寒さは大丈夫だわ」
相槌をうち、帰っていいわと軽く手を振る。
「お嬢さま、屋根の上は風が強うございます。見せぱんのご準備はお済みでしょうか? 普通のみせぱん、金のみせぱん、めいじょうし……」
「スカートの中は描写されないお約束なの! それに最後! 何を履かせる気なの!? いいから! もう、出てこなくていいわ!」
言葉をさえぎり、しっしと手を振り追い払う。相手していたらきりがない、どうしてこんなに活気付いてるの!? とりあえず命じられたとおり、大人しくなる召使いたち。
「ギャーッハッハッハッ! なんだそれコメディか、面白えクズだ、いいぞいいぞもっとやれ!」
「違うわ! 良いから聞きなさい!
さぞあんたは人からもらったもので最強してたんでしょーね!
で! 過去に縛り付けられてる癖に今もすごいって思われたいのかしら?
あんたの独りよがりで世界中が巻き込まれて、こっちはうんざりしてんのよ!! 観念なさい!」
「では、いかにお嬢さまがうんざりなさったのか、映像でご説明しましょう」
召使い霊が、タブレット端末で戦いのダイジェスト映像を流し始めた。いつの間に録画していたのか、聞いてはいけない。
「そうよ! 汚泥のくっさいやつのところに突撃させられたり、ふっとばされてお星様になったり、怪獣にもなったわ! 何がさいきょうの姿よ! 失礼極まりないわ! あと巨乳! そう、巨乳死すべし慈悲はないわ!」
「「「「「「ああ……」」」」」」
その場に居合わせた全てのものが哀れみの眼差しをおくる。クライング・ジェネシスまでもだ。目線はもちろんフィーナの胸に向けられている。
「そんな目で見ないで!!」
目線に耐えかね胸を両手で覆い激昂するフィーネ。
「ギャーッハッハッハッ! なかなか良いぞ面白いクズ! もっとやれ! 俺を楽しませろ!!!」
「っ、なによ! 楽しませに来たんじゃないのよ!
アンタはなんで戦うのよ? 死んじゃった腹いせに今と未来を壊したいのかしら? そうはさせないわ!」
「なんで戦うのかって?
分ってるじゃねーか、死んでも晴れねぇ、貴様らに対する恨み! 俺の恨みを晴らすために未来を壊してやるんだぜぇ!
やる気だっていうのか? いいぜぇ、お前の過去を呼んでやる、カタストロフが起きるまでせいぜい遊んでな!! ギャーッハッハッハッ!!」
巨体の胸に埋め込まれた骸の海発射装置がぐおんと唸り、中から《何か》が姿を現す。相手と同じ姿、能力の幻影を呼びだす、『過去』の具現化する力を発動させたのだ。
二人目の《フィーナ・ステラガーデン》がそこに現れる。
「さあ、キャットファイトの開幕だぜぇ! レディーーファイッ!!」
「なお、ぱんつはお嬢さまとおなじで、じ……」
「きゃああああ! なにすんのよ!!」
どこから沸いたのだろうか、召使いが分身のスカートをめくっている。絶妙な角度でめくっているので、召使いにしか中身は見えない。とはいえ、めくられたほうは大事件だ。顔を真っ赤に染め、あわててスカートをおさえる2人目。
「なんで私のぱんつをしってるの? やめなさい、言わなくていいわ! 私のぱんつが全世界に知れ渡るじゃないの! ワールドワイドぱんつにしないで!」
1人目も顔を真っ赤にして突っ込む。そう、うっかり言われようものなら、自分のぱんつが全世界に知れ渡ってしまうのだ。
2人目のスカートをそっとおろし、どこぞへ消える召使い。後には、肩で息をする真っ赤な顔のフィーナたちが残された。目線が交わる。
「お互い苦労するわね」
「そうね」
「仕切りなおしよ。気を取り直していくわよ!」
「そ、そうね! いくわ!」
間合いをはかりなおし、愛用の花のような装飾を施した杖を構える。もう邪魔は入らない。
「「私はいつまでも炎魔法ばっかりよ!」」
同じ言葉を口にして、同時に炎の宝石をとりつけ、同じ呼吸で灼熱の炎を放つ。
炎が交錯する。互いの炎が命中し、その身を轟々と焼く。
「知っているかしら?」
燃え盛る炎のなか、涼しげな顔で立ち上がるフィーナ。たいがいの炎には耐えられる、おそらくそれは分身も同じだろう。
「今、このとき、どれだけの猟兵たちが戦いを繰り広げているのか。過去のアンタにはわからないわね?」
杖を何かを絡め取るようにひゅんと振れば、赤い宝石が一層赤く燃えあがる。共に戦うものたちの熱を吸い取り、ばちばちと爆ぜるような音をあげる。
「《今》の私はわかるわ! その全ての力を我が物にできるの。皆、私に力を貸して! ――これでも、食らってなさいよおおおお!!」
杖を分身に向ける。全ての魔力が爆発し、赤の濁流が巻き起こり分身に迫る。瞬く間に分身を飲み込み、声をあげる間もなく焼き尽くし、さらに後ろに控えるクライング・ジェネシスにも襲い掛かった。
「まさか、その炎!! ここまで届くというのか!? そんな馬鹿な、ジョークにしては笑えねぇ!!
ぎゃあああ! あじいよお!! あっじいいいいいい!!!!」
業火に包まれ、転げまわるクライング・ジェネシス。
もの言わぬ躯となり、足元に転がる分身を足蹴にし、燃え盛る炎に向け冷たく言い放った。
「少しは成長しなさいよバカ!!」
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
……あたしねー、大好きな人がいるの
可能な限りの【早業】で【オーラ防御】と【高速詠唱】の簡易バリアと治癒
そしてUC発動
あたしの惚気を聞けーっ!!
恋人は凄く優しくて格好良くて頭も良くて紳士なの
さっとお茶を淹れてくれて、悩んでると話も聞いてくれて、この前倒れた時はお粥作ってくれたんだよ
凄く美味しかった!
(【第六感】で動きを【見切り】光の鎖を【ロープワーク】の要領で操り攻撃を受けたり回避したりする)
戦闘も格好いいんだよ
特に騙し手が得意でね、手捌きも鮮やかで【高速詠唱】で見えない罠を張ったりするの(【罠使い】)
で、爆破する(【破壊工作】爆弾+【全力魔法】で【なぎ払い】)
幻影と貴方じゃ恋は分からないでしょ
「地球のクズのくせに俺を燃やしやがった!! この恨み! ああ、クソッ地獄に堕ちな!!」
ごろごろと転がり、業火をかろうじて消し終えたクライング・ジェネシス。口からぼふんと煙を吐き出しながら、愚痴をこぼす。全身は炭のように黒く染まり、ぶすぶすと焦げる音をあげている。
「……あたしねー、大好きな人がいるの」
唐突に語り始める鈴木・志乃(ブラック・f12101)。しかもなんの脈絡もなく恋バナを切り出したのだ。
「はぁ、大好きな人? なんだそりゃ。
時間稼ぎでもする気か? 無駄無駄ァ! とっとと地獄に堕ちな! 今すぐ墜ちな!!」
再び、巨体の胸に埋め込まれた骸の海発射装置が唸りをあげ二人目の《鈴木・志乃》を繰り出してきた。相手と同じ姿、能力の『過去』の幻影だ。
「来たね、《過去》の私。
男子禁制! この盛り上がりにはついてこれないよ! あたしの惚気を聞けーっ!!」
魔改造しまくったマイク《魂の呼び声》で高らかに宣言し力場を解き放つ志乃。ここは志乃の恋愛フィールドだ。恋バナを楽しめない者はのろのろののろまになる、理が施されたのだ。すぐさま、身を守るためにオーラも展開した、敵襲の衝撃への備えは万全だ。
「私は男子じゃない、でも恋なんて……私は愛してない! 愛せない!」
言葉を跳ね除けるように右手を振り払う分身。ああ、そういうのだったか。懐かしむように見つめる志乃。
過去の私は自分の中に棲む生命の埒外の力が赦せなくて。猟兵の全てを忌み嫌っていた。でも、『ある猟兵』が私に染みついていたモノに気付かせてくれた。ぽっかり空いた心の穴を埋めるよう我武者羅に生きる私を。それから、私は変わった、惑う時期もあったけど。
「恋人は凄く優しくて格好良くて頭も良くて紳士なの」
とめどなく想いをつむぎ続ける志乃。
「そんなの聞きたくないわ」
言葉をさえぎるよう、駆け込みドロップキックを叩き込もうとする分身。志乃の定番の連撃だ。だが、分身は速度制限を受けているため、隙だらけだ。見切るにたやすい、身を翻し易々と避ける志乃。
「さっとお茶を淹れてくれて、悩んでると話も聞いてくれて、この前倒れた時はお粥作ってくれたんだよ。凄く美味しかった!」
すぐさま折り返し、再びドロップキックを繰り出す分身。
淡く光る鎖を鯱に引っ掛け、手繰り寄せる勢いをのせて加速し迎え撃つよう蹴り飛ばす志乃。互いの足が交錯する。
吹き飛ばされたのは分身だ。自力だけで蹴り飛ばした分軽くなったのだ。蹴りを食らって倒れこむ分身。そこに爆弾を投げつける。光の鎖を使い跳ね飛ばし避ける分身。
「ついこの間も会いにきてくれたんだ。
牡牛座流星群が流れ落ちる、ロマンティックな夜に」
志乃の惚気は止まらない。体制を建て直し、再び地を這うように低い蹴りを放ってくる分身に爆弾を投げつける。蹴るのをやめ、右に左に跳び避ける。爆弾がきれるのをまっているのだろう。
「戦いはもう嫌だ。ここのところ立て続けに戦っている。もう限界で擦り切れそうな、私の心を見抜いたみたいに。バカンスを邪魔されて、作戦に使う爆弾の費用負担も限界で、心も体も財布もくたくたになった私に会いに来てくれた。
美味しいローズティをご馳走してくれた。まだケーキは焼けていなかったのだけど」
紳士的な貫禄のある顔、お茶目な笑顔、逢瀬は短い間だったけど、ころころと変わる愛くるしい表情をたっぷり見せてくれた。
別れ際に、困ったような、少しだけ嬉しいような、絶妙な表情を浮かべていたさまを思い出す。でも、言いたいことははっきりと告げた。もう、後には退かない、退けないところまできている。
「嵐の向こう側ですが──おなじ星を見ていますと約束してくれたの。知ってる? 例え晴れていても、空には星が輝いてるの。今もきっと、彼も私と同じこの空を見てる」
見上げた空は涙で曇って、見えづらかったけど。
「過去の私は知らないでしょ、二人で見る星の輝きを」
「星はどこで見ても同じじゃないの。自然の中にいると癒されるわ」
最後の爆弾を投げつけ、光の鎖を鞭のようにしならせ打つと、それを鎖で払い落とてきた。鎖が使えないその隙に間合いをつめ蹴りつける。その足を受け止める分身、器は同じものなれど、奏でる音は異なるもの。一層深みを増した音を響き渡らせ志乃は謡う。愛の歌を。受け止められた足を軸に、身を翻しまわし蹴りを放つ志乃。分身の頭に強烈な足技が叩き込まれる。
「――っ」
吹き飛ばされ、地に這う分身。その身を見下ろし言葉を続ける。
「違うわ、それだけじゃないの。二人で見る星は違うの、あの人の輝きは違うの。
知ってる? あの人は相変わらず優しくて知的でそのくせお茶目でなんなんだもう。どれだけ私が救われたのか、わかってる? きっとわかっててやってるの。――あの人だから。星の輝きより綺麗な光、見たことある?」
「そんなのありえない、あるとすれば私自身、《光》くらいじゃないの」
首を横にふる分身と志乃。過去と今、互いの想いは交わらない。
願望を叶える器である己の体から発する光は極上のものだ。でもそうじゃない。あの人が発する光は、格別なの。過去の私は見えてなかった、否、目をつぶっていたのかもしれない。
「戦い方も格好いいんだよ。
特に騙し手が得意でね、手捌きも鮮やかで目にも見えない速さで術式を組み立てて、見えない罠を張ったりするの。見えない罠は私の心すら絡めとっていったのだけど」
志乃の顔には笑みが溢れていた。
──ヒーローズアース全体で惚気話が広がっても悪く思うなよ。
《す ご く い い え が お》で宣言してきたとおり、この戦いの全ての記録は全部貴方へ捧げるもの。でもこの恋は永遠に実らない。わかっていても、やめられない。私のこの心の全ては、たった一人に捧げてるから。
本当は結果を出したかった。1位になりたかった。これだけ戦えば、当然しっかり反動も食らう、それでも、私は止まらない。貴方の為に勝利を引っ提げてやる!! 歯を食いしばってここに降り立ってるのは伊達じゃない。これくらい、予知をするあの人の苦しみに比べれば。みんなの幸せが、天使の、私の幸せだ。あの人の幸せのために、この手を伸ばし続ける、ひたすらに。
刹那の間にあふれんばかりの想いが脳裏を駆け巡った。さぁ、仕上げの時間だ。
「で、爆破する。貴方と幻影――過去の私じゃ、恋は分からないでしょ」
「――っ、何? ああああああっ!!」
一気呵成に飛びのく志乃。爆破音が響き渡る。惚気話を展開している間に爆弾を撒き散らしていた。元より当てる気はなかった、ばら撒くのが本命だった、気づかれないように罠――《恋バナ》を展開していたのだ。光の鎖で迅速に起爆スイッチを押し一斉に爆破した。
全てをなぎ払うかの如く烈風が吹き荒れ、分身とクライング・ジェネシスを破壊し切り裂いていった。爆風の余波を受けながら、志乃は告げる。
――もう、惑うだけの私じゃないの。さよなら。
大成功
🔵🔵🔵
鳴北・誉人
ようよう御大のおでましか
POW
溢れる敵に対して俺自身オーラで防御
出た敵はUCの花吹雪で巻いて攻撃、行動阻害
花弁全部にオーラを纏わせて守りを固める
阻害できてる間に二回攻撃の連打活かしダッシュで間合い詰めて
溜めた力全部使って脇差で斬りかかる
一瞬でも時間もったいねえ
速さ意識して渾身の力でたたっ斬ってやる
動けねえンなら、硬かろォがちったあ斬れンだろ
出てくるオブリビオン…
だめだ、この世界で戦ったの、あのスズメしかしらねえ…!
スズメだったらコメ撒いただけでどうこうできんのに…!
たとえどんなのが来ても、殺気纏って恫喝して怯めば儲けもんか
あとは気合入れて、覚悟決めて、たとえ一刀でもヤツを斬ってやる
覚悟しろよ!
吉備・狐珀
(手強い敵のはずなのに…何でしょう、この三下感…)
油断は禁物。ジェネシスの好きにはさせません。
UC【破邪顕正】を使用。
先制攻撃で繰り出されるオブリビオンの攻撃は遠隔攻撃なら属性攻撃や激痛に耐えるオーラを纏って凌ぎつつ、接近する敵に高速で唱えた破魔矢に霊力を込めて零距離から一斉に放つ。
オブリビオンと共に動けないジェネシスの足場を破魔矢で狙って崩し堀へ落として水の中に沈めます。
足場が崩れ水の中に沈めばUCを解かざるをえないでしょう。
UCを解いて攻撃が通るようになったら月代の雷で感電させ痺れさせたところに全力で破魔矢を一斉発射して攻撃します。
●吉備・狐珀
「かはっ、けほっごほっ!!!」
全身からぷすぷすと煙をあげ、膝をつき咳きこむクライング・ジェネシス。すでに業火に焼かれ真っ黒焦げであった体を更に黒く焦がしている、極彩色で着飾っていた衣装はぼろぼろになり見る影もない。脛や腕に施していた牙は折れ、膝に施していた髑髏などは剥がれ落ちてしまった。両肩に纏う鎧も、爆風で凸凹になっている。業火で燃やし強度を下げたた後、すぐに爆破したのが効いたのだろう。炎と爆破が相乗効果で威力を高めたのだ。
「ようよう御大のおでましか」
次に立ちはだかるのは鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)。待ちくたびれたと言わんばかりに告げ、挑発するようにひと睨みした。
「なんだまだ居たのかよ地球のクズども! 次から次へと沸いて来やがる。クソ面倒だ。お前ら、まとめて相手してやれ!」
猟兵の姿を認めたクライング・ジェネシスは、胸に埋め込んだ骸の海発射装置から無数のオブリビオンを繰り出し始めた。生けるオブリビオン発生装置といっても過言ではない。
「この力を使っている間はどんな攻撃も効かねー! 全く動けねーけど、お前らクズどもの力など痛くも痒くもねー! ギャーッハッハッハッ!」
「だめだ、この世界で戦ったの、あのスズメしかしらねえ……! スズメだったらコメ撒いただけでどうこうできんのに……! なっ!?」
先制攻撃に身構える誉人。攻め来る敵の予想がつかず身を硬くしたが、信じられない風景に、目を見開いた。骸の海発射装置から、次々とちゅんちゅんさまが飛び出してきたのだ。
「ちゅん」
ぴょこん!
「ちゅんちゅん」
ぴょこぴょこん!
「ちゅちゅちゅん」
ぴょこぴょこぴょこん!
「「「「「ちゅん!」」」」」
ぴょこん! ぴょこん! ぴょこん! ぴょこん! ぴょこ……、
「はァ!? スズメチャン!!!」
丸っこい、もふもふもこもこの山を目の前にし雄たけびをあげ崩れ落ちる誉人、その隣で息をのむ者がいた。
「ちゅんちゅんさま、ふわふわ……かわいい……」
吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)だ。本日もお稲荷様の加護を受けた桔梗の青を貴重とした、気品のある清楚な装束に身を包んでいる。
「先日は駆けつけ損ねてしまったんです、気づいた時には出発していて、でも……まさかこんな……」
ありえないという風に首を横に振る。油断は禁物と気を引き締めて臨んだのだが、これは何の冗談だろう。屋根の上に広がるのは果てなきもふもふ、愛らしいふわふわの山だ。
「お米がすきなんですよね、じゃあこれ食べますか?」
ほわあっと、はにかみ笑いを浮かべる狐珀。さっきまでの緊張はどこ吹く風だ。おやつにとっておいたあられを取り出し、座って掌にのせる。
「「「ちゅん!!」」」
大好きなお米を見つけ、目を輝かせるちゅんちゅんさま。ぴょこぴょこんと狐珀の膝の上にのっかって、つんつんちゅんちゅん、あられをつつき始めます。
「いいなァ、俺も何か……」
ポケットをまさぐる誉人。ひっくり返しても何も出てこない、相棒が差し入れにと持たせてくれたお菓子は全て食べつくしてしまっていた。
「よければどうぞ」
あられの袋を差し出す狐珀。
「いいのか! ありがとなァ」
ぱああっと顔を輝かせ、袋に手を突っ込み一掴みする誉人。どっかり座り込み、あられの粒を掴んで差しだす。
「「ちゅちゅちゅちゅん!」」
つんつん、つつつんつん。群がってあられをついばむちゅんちゅんさまたち。あっこれおいしい、おいしい!と確かめるように時々首を捻りながらつんつんちゅんちゅん。
あられをつまんでいる指先に嘴があたり、こそばゆくて背筋がぞわぞわする。
「はア、スズメチャンかァいい! かァいい!!」
あられをのせた手を膝の上に移動させると、
「「「「「ちゅ、ちゅちゅちゅん!」」」」」
ぴょこぴょこ跳ね、膝に登ってくるちゅんちゅんさま。
あられをカリッコリッとかみ砕き、ちゅちゅん! と鳴きながら丸い目を一層丸くする。再びあられをちょんちょん、嘴でカリッコリッ! おーいしーと言わんばかりにご機嫌にくるっくるっと首を回す。
頭をそっと撫でてやると、ぴょこぴょこはねて、頭をこすりつけてくる。そっともふっと抱きしめ顔をうずめる。腕いっぱい広がる小動物がうごめくもふもふ感覚、顔に当たるふわふわ羽毛。嬉しさで緩みきったこの顔は誰にもみせられない。
もう片方の手にも、あられをのせて差し出す狐珀。ぴょこんとその掌の上にのっかるちゅんちゅんさま。
「くすぐったい、スズメもかわいいですね」
懸命にあられをつつく背に頬ずりをしてみる。草の香り、稲穂の香り暖かい香りが、ふわっと鼻腔をくすぐる。たっぷりと陽の光を浴びてお昼寝していたのかもしれない。頬ずりされたちゅんちゅんさまは、くすぐったくて、ころんと手から転がり落ち、膝の上でくつろいでいた同胞たちの山にもふっと飛び込む。
「「「ちゅ!? ちゅちゅちゅちゅん!!!」」」
転がり落ちてきた同胞に驚き、ぴょんぴょん飛び跳ねるちゅんちゅんさまたち。膝の上で大騒ぎ。
「びっくりさせちゃいましたね、ごめんなさい」
お詫びに両手にあられをのせて、目の前におろしてあげると、
「「「ちゅん! ちゅ、ちゅちゅん!!!」」」
あられをみつけてぴょこんと跳ね、再び仲良く並んであられをつつき始めるちゅんちゅんさまたち。「なかよしこよし、いいこですね」手でふわっと頭を撫でると、ちゅんと短い鳴き声の後、頭を手にこすりつけてくる。順番にふわふわなでなで。
「せめて倒した後の羽毛を持ち帰れませんでしょうか。ちゅんちゅんさまのぬいぐるみ、きっとかわいです」
かの白い鳥、まっしろピヨすけのように。そう、ぬいぐるみなら遠慮はいらない、幾ら愛でても世界に影響を及ぼすことはない。
「出来るかもしんねぇなァ、きっとかアいいぜ」
俺も1匹ほしいという言葉は飲み込んだ、流石にそれを口にするのは憚られた。
ふわりとはにかみ、同意を示す狐珀。全てが終わったら羽毛を集めよう。でも、隣にいた人は大丈夫だろうか。見れば鳥の山がある。少し目を放した隙にちゅんちゅんさまに埋め尽くされ、姿がまったく見えなくなっていた。ちゃんと返事も返ってくるし、嬉しそうな声をしているから、もふもふ天国状態だと思っておこう、そうしようと言い聞かせ、目をそらす。
「どうだ、参ったか。ずっともふもふしてるがいいぜ! 俺はその間にカタストロフを始めてやるぜ! ギャーッハッハッハッ!」
下卑たる笑いに、現実に引き戻される2人。もふもふ天国に浸り続けるわけにはいかないのだ。
「こんなに可愛いのに倒さないといけないんですね……名残惜しいですが」
「そうだなァ、カタストロフを起こさせるわけにはならねエ」
からっぽの袋をしまい、凛と顔をひきしめる狐珀。鳥の山からにょきっと顔を出す誉人。十分に、もふもふふわふわは堪能した。まとわりつくちゅんちゅんさまをふるい落とし、眼光鋭く睨み付ける。今までのゆるさはなりを潜め触れば斬れる刃物のような気配が漂う。
どんなに愛らしいものが相手でも骨抜きにされる2人ではない。可愛いものは好きだが、2人にはもっと好きなものがある、守りたい大事なものがある。
骸の海発射装置からちゅんちゅんさまが生み出し続けられている。いまや屋根のうえは、ちゅんちゅんさまで足の踏み場もない。クライング・ジェネシスに近づこうにも一歩も踏み込めない。
「ちゅんちゅんさまをなんとかできませんか」
「スズメチャンを、か?なんとか、なんとかかかア……いいぜェ、引き受けてやらア」
柄頭を指でコツコツ叩きながら思案した後、群れを、その先にいるクライング・ジェネシスを藍に輝く鋭い双眸で睨み付け告げる。
「行くぞ、舞い狂え」
太刀を抜き放つ、否、抜き放たれたのは太刀ではなかった。白銀の刀身は抜き放ち際に花弁に姿をかえ、花嵐を巻き起こし吹き荒れた。
「ちゅちゅん!?」
「ちゅちゅ、ちゅーん!」
まどろんでいたちゅんちゅんさまが空に舞う。花吹雪に揉まれ天高く吹き飛ばされていく。活路を開く希望をのせた白い嵐が吹き荒れる。
「余所見してンじゃねぇぜ、スズメチャン!」
「ちゅん!」
脇差の鯉口をきり駆ける誉人。まだ道を塞ぐちゅんちゅんさまを、脇差を抜き放ちざまにふっとばす。
「ちゅん!」
「大人しく退いてろスズメチャン!」
返す刀でさらにもう1体吹き飛ばし、身を翻し周りをまとめて吹き飛ばす。
「ちゅちゅん!」
「もうあられはねエ、かわりにこれでも食ってろ!」
その背に突撃してくるちゅんちゅんさまを花弁が包み込む、一枚、一枚、全ての花弁に誉人のオーラを纏わせてある、全ての花弁が誉人の盾だ、嘴の一撃すら通さない。茶色のもふもふたちを彼方におし流していく。
「ちゅん!」
「斬っても斬ってもキリがねエ! でも斬ってりゃいつかは消えンだろ!」
新たに生み出されたちゅんちゅんさまを斬って、斬って、斬りまくる。一瞬でも時間もったいねえ、速さ意識して渾身の力でたたっ斬ってやる。
みるみるうちにちゅんちゅんさまを吹き飛ばしつくし、動けないクライング・ジェネシスのまん前に迫る。
「お前がどれだけ硬かろォがちったあ斬れンだろ」
「斬れるわけねぇだろうが、俺は無敵だぜ、ギャーッハッハッ――ハァっ!?」
嘲笑うクライング・ジェネシスの足場に矢が刺さる。支えを失いぐらりと巨体が傾く。
「霊の祓――っ」
ふーっと息を吐く狐珀。ずっと機会を伺っていたのだ。誉人が気をひき視界を塞いだ隙につけこみ、足場を打ち抜いた。
「何をするんだクズめ! こら、そこのクズもこっち来んな!!」
「来んなと言われて素直にそうするわけねえだろォが!」
肉薄していた誉人の刃が斬り放つ。胴に仄青い剣筋が走り、はらりと白い花弁が散る。
「あひゃあああ!! やめてくれ、落ちるうううう!!!」
たまらず体制を崩し、まっさかさまに堀に落ちていく。
「(手強い敵のはずなのに……何でしょう、この三下感……)」
哀れな声をあげながら落下するクライング・ジェネシスを見つめ、思わずため息をつく狐珀。
「水の中に沈めば、解かざるをえないでしょう」
クライング・ジェネシスの技は無敵の防御力を誇る。最強のオブリビオン・フォーミュラと自称するだけあるのだ。ただ斬りつけたり、殴ったりするだけでは、一切傷を与えられない。如何にして《無敵》状態を解除させるかが鍵を握る。無敵であっても呼吸をとめるわけにはいかない、堀の水の中に沈み、たまらず無敵状態を解くクライング・ジェネシス。狐珀の作戦勝ちだ。
「ぶはっ!」
水面に顔を出すクライング・ジェネシス。だがその顔はたちまち驚愕に変わる。
「なっ」
「覚悟しろ、よォッ!」
顔面にぶわりと降りつもらんと迫る白い花弁の中から、藍嵐が吹き荒れた、誉人だ。クライング・ジェネシスが浮かび上がる瞬間を見計らい追撃をかけたのだ。屋上から飛び降り重力に身を任せ落下し、その勢いも加え両手に持った刀を巨体にぶっさす。花弁は寸前まで刃に戻さなかった、匂い立つ殺意を隠すために。
「ぎゃああああ!!! 痛ぇ! 痛ぇよおおおおおおお!」
ざばあと激しい音をたて、水柱がたつ。巨体の両肩に刀が深々と突き立った。
続いて誉人は、身を地に投げ出すよう飛び降り、
「さぁ、スズメチャンたちと一緒にィ、飛おんでろォ!」
飛び降りた反動も使って力任せに巨体を宙に投げ飛ばした。
「あなたの好きにはさせません。月代、今です」
この時を待ち構えていた。飛来する先には、月代が待ち構えていた。狐珀の頼もしいパートナー、月白色の東洋系の仔竜だ。たてがみにぱりぱりと雷を貯めている。
「キュウッ!!!」
雷が巨体を打ち据える。ばりっと短い音をたて、刹那眩い雷光が視界を焼く。
「ぎゃあ!」
巨体がびくんっと跳ねた後動きがとまる、全身から黒煙があがった雷に焼かれ焦げた匂いが漂う。
「月代、よくやりましたね。次は私の番です、一二三四五六七八九十」
一息に弓を引き絞り、
「布留部 由良由良止 布留部 霊の祓ッ!!」
放つ。放てば次、また次、次々と。矢継ぎ早にうち続けた。刺さる、刺さる、刺さる。頭に、腕に、胴に、破邪の力が宿った御神矢が巨体のいたるところに突き刺さる。感電して動きが止まり矢を避けられない今が好機だ。気力が続く限り、矢をうち続ける狐珀。
クライング・ジェネシスはありとあらゆるところに矢をはやし再び堀にむけ落下し始める。
「痛ぇ! 痛ぇ!! 地球のクズども何しやがる!! やめろおおおお!!!」
ぎらりと刃が鈍い光を放つ。迎え撃つように宙に飛んだ誉人が、落下してくる巨体をすれ違いざまに双剣でぶった斬った。あの重厚感のある巨体だ、さすがに真っ二つとはいかなかったが、確かな手ごたえを感じた。
「辞めンのはお前だ。そんなに王サマごっこがしてえンなら、玩具の玉座にでも座ってろ」
――着地する誉人の背で落下音。ざぶん、再び大きな水柱が立った。
大成功
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塩崎・曲人
アアン、オレの過去ぉ?
――ハッ!呼び出すんなら、もうちょいマシな手駒にするべきだったな!
「いいぜ、相手しやるよオレ!かかって来いやぁ!」
などと言って威勢よく挑みかかるが、実際狙うのは刺し違えてのカウンター狙いだ
突っ込んで目の前の相手殴るしか出来ねぇのがオレだからよ
実際敵になっても微妙に脅威じゃねぇ
死ぬほど痛ぇのを【覚悟】して【捨て身の一撃】カマすだけつもりでいりゃ、な
「目の前のことしか見えねぇそのアタマの悪さがテメェの敗因だ!死ねや!」
偽オレの攻撃をボディーで受け止めつつ、ジェネシス本体に思い切り手持ちの鉄パイプを投げつけるぜ
(そして中指立てながら吹っ飛ぶ)
【アドリブ歓迎】
堀から這い上がり、肩で息をしながら座り込むクライング・ジェネシス。
「げっほごっ……水飲んじまったじゃねーか! クズどもめ、クズのクセにクソッ……恨んでやるぜ!!」
派手な衣装は黒焦げでぼろぼろになり見る影もない、あらゆるところに矢が突き刺さり、両肩に刺し跡、胴に2対の斬り傷が刻まれている、満身創痍だ。
「いたいた、やっと見つけたぜ」
屋根から落ちたクライング・ジェネシスを探していたのは塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)だ。堀から這い上がってきたところを目ざとく見つけ、パイプを担ぐように持ち肩をトントン叩きながら、ゆらりゆらりと歩み寄る。
「地球のクズども、まだウロチョロしてやがったのか!」
猟兵を見つけ激昂し立ち上がるクライング・ジェネシス。
「どっちがクズだ。クズはお前のほうで、ここでぶっ飛ばされんのはテメェの方だろ!」
鉄パイプでビシッと指す曲人。
「ハア? 地球のクズのクセしてぎゃあぎゃあ煩ぇ、クズはクズらしく黙ってろ!」
怒りを露にしたクライング・ジェネシスは、巨体の胸に埋め込まれた骸の海発射装置を起動し、『過去』を喚ぶ。二人目の《塩崎・曲人》を喚び出す。装置には深い刀傷が刻まれていたが、まだ問題なく動くようだ。
「アアン、オレの過去ぉ?
――ハッ! 呼び出すんなら、もうちょいマシな手駒にするべきだったな!」
げらりと笑う曲人。
姿を現したのは、オレンジの髪をロックに尖らせた特徴的な髪型で、灰色の鋭い瞳、にやついた口元、サメのような歯、細身だが引き締まった体躯を黒を貴重としたロックな服で包んでいる。無論、手には鉄パイプを握り、肩に担ぐようにしてトントン叩いている。どこからみても《オレ》自身でしかない。
「いいぜ、相手しやるよオレ! かかって来いやぁ! ま、実際敵になっても微妙に脅威じゃねぇ」
手始めに鉄パイプを振りあげ駆ける。分身も駆けだす。
「だってよ、見たヤツの動きなんか封じらんねぇ」
「ああできねぇ、見ただけで封じるなんてどうやんだ」
ガキン!鉄の衝突音が響く。力任せに振り下ろされた鉄パイプ同士がぶつかり合い火花が散る。姿も同じなら力も同じだ、拮抗し擦れ合う鉄がぎりぎりと鳴る。
「破壊魔術師なんか知らねぇし、ましてや体の中から出せるか」
「そうだ、んなもん出せるわけねぇだろ」
交差したパイプを押し倒し崩した隙に、首に向け一薙ぎ。
鉄の一閃を潜り抜け肉薄し、背側に抜け際に殴り返してくる。
「意思のある魔剣なんか知り合いにいるか?」
「居ねぇし、ヤドリガミや愉快な仲間じゃねぇんだろ」
鉄パイプを立て受ける、再びギインと鉄の音が鳴り響く。
「パワードスーツなんてどうやって喚ぶんだ、できねぇし」
「そんなの持ってるわけねぇだろ、どうやって造るんだ」
跳ねあげ胴を薙ぐ。軽く後方に跳びかわし、2人は間合いをはかりなおした。
「ハハア、自分で言ってて嫌になるぜ。この世界のどの幹部より脅威じゃねぇ」
交戦した幹部の特徴を一通り思い出してみた。嘲笑う曲人、嘲笑う分身、――気があうじゃねぇか。ああ、そうだな《オレ》。
「そう、突っ込んで目の前の相手殴るしか出来ねぇのがオレだからよォ!」
同時に踏み込み拳を突き出す。互いの拳が顔を直撃し減り込む、めきりと歯が折れる手ごたえが残る。多々良を踏んだが、なんとか踏み留まり、後方に逃れる。ぺっと口の中に残っていた物を吐き出し、眼前に立つものを睨む。まるで挑発するように笑みを浮かべて。
「とっととケリつけてやらあ、一発で沈めてやる」
「オイオイ、ケリつけられんのはどっちだ?」
刹那睨みあう2人。目線が交わり、バチリと火花が散った。
「目の前のことしか見えねぇそのアタマの悪さがテメェの敗因だ!」
「その減らず口、二度とたたけねぇようにしてやるぜ!」
揃って鉄パイプを振り上げて駆け加速する。全身をバネのようにしならせ、渾身の力をこめ振り下ろす《曲人》。
「死ねや!」
「去ねや!」
だが、その鉄パイプの一撃は分身に当たらず空を切る。それどころか、手からすっぽ抜けいずこかへ飛んでいく。
「がっ…はっ…………」
かわりに、分身の拳が曲人のボディにめりこんでいた。鉄パイプで殴るとみせかけ、曲人のがら空きの胴に下から突き上げるように拳を叩きこんだのだ。
ばきばきと音を立てているのは肋骨か、何本折れた? ああ、世界がまわる。やけにゆっくり浮かび上がるこの感覚、吹き飛ばされ体が宙に舞っているのがわかる。視界が徐々に狭まり、音が消え、色が消え、全てが闇に閉ざされる間際に、ぶん投げた鉄パイプがクライング・ジェネシスの頭を吹っ飛ば、す、のが見え、た気、が、し、た…………、……。
――狙い通りだぜ。あばよ! ヒーローズアースのクズ!
彼が再び意識を取り戻すのは病院のベッドの上だ、その身にユーベルコードが施され治療されていた。そして、見舞いにきた仲間たちから捨て身で放った鉄パイプがクライング・ジェネシスの頭を吹き飛ばし討ち倒した報せを聞くこととなる。
なお、救出されたときに彼は満足げに口角をあげ笑みながら中指を立てていたのだという。
大成功
🔵🔵🔵