アースクライシス2019⑲〜イッツ・ジ・エンド
●風船はいらない
『オロロロロ、大分集まりましたネェ』
道化師風の化け物が、スクリーンに映し出される映像を見て嘆息する。
『マァ、ここの戦いはもうじき終わるでしょうシ』
これだけ収集出来れば十分、自分の役目は終わったも同然だ。
『長居は無用デスね。今の内にさっさと逃げだしマショウか!』
狂った様な笑い声を上げて、赤い双眸が闇に揺らめく。
「皆、ここまでお疲れ様」
グレイス・リリィ(レッドウイング・f21749)はグリモアベースに集った猟兵達へ頭を下げると、そのまま作戦の説明に移った。もう残された時間は少ない。だからこそ必要最小限に、伝えるべき事だけを伝える為に。
「残る敵は幹部級ばかり、私が予知で見たのはこれよ」
背後のスクリーンに映し出されたのはラグランジュポイントの宇宙船――『島』と呼ばれる巨大なそれは、本来は異星人の住居として使われている筈だった。続いて映された姿は気味の悪い道化師の様な怪人。ジェスターの名で知られる敵の大幹部だ。
「このジェスターはラグランジュポイントに潜んでいてね、その『島』の一つを大型輸送船に改造して、何か色々運び込んでいるらしいわ」
時が来ればそれらを纏めて外宇宙へ運び込むのが目的らしい。一体何を何の為に――猟兵の質問に対し、リリィは淡々と答えた。
「このジェスターが運んでいるのは映画のフィルム――どうしてそんなモノを集めているのかは分からないけれど、兎に角奴を止めてもらえるかしら」
それらは何れも貴重な文化遺産だ。傍若無人な悪魔に無料でくれてやる道理は無い。それにもう一つ、ジェスターを倒さなければならない理由もあった。
「戦場は巨大なスクリーンがある開けた場所よ。本来は劇場船だったみたいね。それに人質もいるのよ……」
人質、収集した映画媒体を管理する為に地上より攫われた無関係な人々だ。人質は劇場船にバラバラに隔離されており、探す事は困難だ。よってジェスターを倒した後にゆっくりと解放すればいい。更にグレイスは集った猟兵達に注意事項を告げる。
「気を付けて、このピエロめいた化け物は生命を何とも思っちゃいない」
場合によっては人質を戦闘に繰り出す恐れもあるという事だ。そうなれば、何も考えないと人質の命は容易く危険に晒される。下手に宇宙船を破壊すれば、空気の無い空間に放り出される恐れもあるからだ。
「戦う時は充分注意して。それじゃ、ヨロシクね」
そう言いグレイスはグリモアを開く。残された時間は僅か――決死の戦いが始まる。
ブラツ
ブラツです。このシナリオは1フラグメントで完結し、
「アースクライシス2019」の戦況に影響を及ぼす、
特殊な戦争シナリオとなります。
本シナリオは敵の大幹部、ジェネシス・エイト『ジェスター』討伐シナリオです。
非常に強敵の為、ユーベルコード対策は慎重に行ってください。
戦場はそこかしこにスクリーンが立ち並ぶ野外映画館風の広場です。
色んな映画がスクリーンに映し出されるでしょうが、戦闘に影響はありません。
●プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
ジェスターは必ず先制攻撃してくるので、
いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります。
対策が成功しなければ、高い確率で苦しい戦いとなるでしょう。
●今回の注意事項
誠に申し訳ございませんが、早期の決着を目指す為、
頂いたプレイングを全て採用する事は難しいかもしれません。
オープニングが公開されましたら受付開始ですが、
頂いたプレイングをこちらのタイミングで、
書けるモノから順次作業に取り掛かろうと思います。
その際、判定上有利な物を優先して扱わせて貰います。
合わせプレイングは最大4名まで対応いたします。
作業は不規則に行うため締切は不確定ですが、
シナリオ自体は本戦争終結までには終わらせます。
恐れ入りますが、ご了解頂ければ幸いです。
それでは、よろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『ジェスター』
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POW : 力押しもたまには悪くないデスね
単純で重い【魔法金属製のメイス】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 古い馴染みの仲デシて
レベル分の1秒で【意志持つ魔剣『レギオスブレイド』の群れ】を発射できる。
WIZ : 別に見捨てても良いデスよ
戦闘力のない【名も知らぬ一般人の人質】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【呪詛により人質が傷つき、悲鳴や苦痛の声】によって武器や防具がパワーアップする。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヒルデガルト・アオスライセン
陰惨な戦争には慣れています、残忍な輩にも
手早く、落ち着いて対処しましょう
威力・速度・突発行動をイーコアで常時情報収集
テリトリーモジュールからぶよぶよした弾力あるオーラを発生させ、衝撃を吸収
メイスの打撃を点でなく面で受ける様にして破壊力軽減
壁や地面に押し付けられる際は、トンネル掘りで地形に空間を作って圧迫被害を軽減
閉所に追い込まれぬよう空中戦で接近機会を制限
属性攻撃&破魔で大剣に雷光を付与、射出
接触した金属メイスには雷を乗せて全行動の妨害
力を抜いて剛を制す柔の動きで盾捌き。踊り、撫で付けるようにカウンター
動作を把握した後、大振りにUCを合わせます
メイスを掴んで、ジェスターに捨て身の一撃
●騎士なる者
薄暗い広場のそこかしこに大小様々なスクリーンが軒を連ねる。中空にも幾つかのホログラムディスプレイが浮かび上がり、それぞれに雑多な映像が流れていた。
「これが戦争でなければ楽しい余暇、といった所でしょうが……」
銀髪の壮麗な騎士といった出で立ち――天使を模した純白を身に纏うヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)は、まるでスクリーンから飛び出してきた姫騎士さながらに広場を見渡す。
「ですが、ここは戦場。万に一つも気を抜いては」
『オロロロロロ……』
来ましたね――風が唸る様な奇声、悪辣な道化師の跳ね回る足音、ズシン、ズシンとその威が徐々に距離を詰めてヒルデガルトに迫る。
「――陰惨な戦争には慣れています、残忍な輩にも」
スラリと大剣を抜いて身構える。足音の間隔が狭まって、不意にスクリーンを照らす映写に巨大な影が差す。
『オオオロロロロロロッ!』
「――手早く、落ち着いて対処しましょう」
イーコア起動、全周警戒。フィールドアクティブ、耐衝撃モジュール展開。そして、空より迫る影がヒルデガルトの全身を覆って。
『ロロロロッ!』
「返すッ!」
瞬間、空気が爆ぜる。暴威が瀟洒な装甲を掠めて抉り、きらきらとした破片が飛び散って。それでも振り下ろされた魔法のメイスが直撃する刹那、かろうじで読み切った軌道を避ける様に、展開した防御フィールドを犠牲にして、ヒルデガルトは爆心地よりその身を離した。
「何という……一撃で第五層まで破砕したと……!」
目の前には巨大なクレーターが。背後のスクリーンに映った騎士物語然とした映像が乱れ、鎧を纏った屈強な騎士が倒れ込む様が大写しのまま画面が止まる。あと少し、立ち回るのが遅れたら自分もああなっていたというのか。
『オロロロロ! 躱しましたカ! いいですネエ仕上がってますネエ!』
早口でまくし立てる様に道化師が跳ね回る。再び振り被ったメイスがギラリと鈍い光を放ち、容赦なくヒルデガルトの立ち位置に迫り来る。
「……着弾予想地点、被害想定、パターン算出、そこですわね」
ガチャリと大剣を脇構えに。刃を忍ばせ道化を待ち受ける。次は当ててみせる――どちらにせよ、逃げ回るのは目的ではない。
『オーホッホッホウ! 観念しましたカ? しましたネ!』
突風が――道化の特攻が暴風を纏って直上より飛来。だが、そんな分かり易い動きならば……。
「ええ、ですが、凌いで見せましょう……」
ヒルデガルトはその場で円を描く様にくるりと回る/振り下ろされるメイス。直撃が地面を粉々に砕いて/剥き出しの鉄骨が足元よりその顔を覗かせる。しかし。
「凌ぐと言ったはずです――ジェスター!」
インパクトの直前、自ら立つ足場をあえて割り、円形の大穴を空ける様に足元を崩したヒルデガルト。衝撃が足場を粉々に砕いてダメージを逃し、宙に浮いた僅かな時間に体勢を持ち直せば、そのまま振り切ったメイスの柄を握り、今度はヒルデガルトがそれを強引に振り回す。
「さあ、勝負です!」
『オロ!?』
発動した超常は如何なる強烈な威力すら放り返す。刹那の間隙、握りしめたメイスの柄を思い切り振り上げて、中空でブンと振りまわせば、攻撃後の崩れた体勢のままジェスターは彼方のスクリーンへ思い切り放り投げられて――その後を加速したヒルデガルトが空を舞い追い駆ける。
「畏れよ、我が雷光を!」
『オロロロロロ!?!?!?』
光を放つヒルデガルトの刃がジェスターに迫る。逃れようの無い必殺の一撃。刀身が伸びる様に放たれた破魔の雷光はそのまま、吸い込まれる様にジェスターの全身へと届いて、その身を鮮烈に焼き焦がした。
『……イケませんねぇ、このままデハ』
ヒュンと道化が舞台より姿を消して――止まったスクリーンが再び動き出す。騎士が立ち上がり眼前の敵へ槍を掲げ立ち向かうシーンに。そうだ、私だって何度でも立ってやろう。
「逃げましたか、それでも」
直撃を与えた。ダメージは相当の筈だ――むしろ僅かに防御反応が間に合わなければ、壊れたスクリーンのままだったかもしれないのは私の方だ。
紫電を纏う大剣を振って、辺りを見渡す。どうやら完全に逃げられたらしい。
先ず初戦はヒルデガルトの圧勝と言って差し支えないだろう。
明滅するスクリーンは、続く戦場を映し出していた。
大成功
🔵🔵🔵
大豪傑・麗刃
まずは先制攻撃を回避。
相手の攻撃は近接超威力。ならば。
逃げる!
ユーベルコードが使えるようになるまでダッシュ!フェイントや存在感のある残像も絡めてとにかく直撃を回避。
でユーベルコード使用可能になったら
チェストーくんとやら!
ずいぶんと映画を集めたものなのだ!
しかし映画はいずれ終幕を迎えるもの!
そう、きみの栄華も。
ほら見るのだジャイアントくん。
きみというムービーを終わらせにきた、
チェストーと叫びながらビームーを撃ちまくるジャイアント
が。
自分でやっといてなんだけど無理やりすぎるわこれ。
(いーや自然じゃっ)
てかこれくらいやんないと勝てる気ががが。
あとは敵のメイスの直撃に警戒しつつ薩人(?)巨人を応援
●狂戦士
大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は憤っていた。シリアス過多の現状に、このままでは酸欠になってしまうと。
「チェストーくーん!」
スキップしながら色取り取りのスクリーンの周りを駆け回る麗刃。
「チェーストーくーん!」
駆け回るコメディアンの映像をバックに、喜劇俳優の如く軽やかな足取りで。
「チェーストー!」
『ジェースター!』
そして奇声と共に空から落ちてきたのは女の子じゃなくて変な道化師。ドカンと地面をそのまま抉る様に、歪な巨体が凶悪なメイスを手にしてそのまま落下する。裂けた足場がバラバラと崩れて、大穴から歪んだ鉄骨がにょっきりと顔を出した。
「わわ、危ないではないか何だねチミは!?」
『オロロロ! 呼ばレタのは貴方でしょうニ!』
達人の勘が、卓越した身体能力が奇跡的に直撃を避けた。当たらないからどうという事は無かったのだ!
「しかし随分と映画を集めたものなのだ!」
『ヘケッ!』
感心した風にジェスターに漏らす麗刃。コメディだけじゃない、戦争モノ、恋愛モノ、料理モノ、一体全体何が目的でこんな事をしたんだろうか。まあいいや。それよりも!
「――違うのだ、チェストーくんはそんな可愛らしい声は出さない筈なのだ」
『オロロロロ! 酷い言われようナノダ!』
そうなのだ。対峙した相手は凶暴なマッドピエロ。それが何だ、とっとこ空から落ちてきて危うく命を落としかける所だったのだ! 許さんと麗刃の瞳が真っ赤に燃える。
「――しかし映画はいずれ終幕を迎えるもの!」
『オロ?』
ゆらりと、超常が影を――形を成して麗刃の前に壮健な姿を現す。
「そう、きみの栄華も」
身の丈3mはあろうものか、屈強かつ巨大な戦人が徐々に鮮明な像を結んで。
「ほら見るのだジャイアントくん――きみというムービーを終わらせにきた」
ジャイアント――いやどこから東洋の巨人が。流石にそれは……。
「……自分でやっといてなんだけど無理やりすぎるわ」
『みたいですネェ!』
アポォと実体化した武士はそれでも、手にした白刃を担ぐように構えてジェスターと対峙する。それこそチェスト――薩摩隼人の魂が形となった御姿だ!
『……示現流は二の太刀要らず』
『ナンデ!?』
瞬間、武士が奇声と共に戦場を駆け抜けた。
「チェストォォォォォッ!」
疾き事風の如し、攻める事烈火の如し。暴風を纏って振り下ろされる一の太刀は最早目で追える生半な速さではない。卓越した技量と屈強な肉体のハーモニーが、荒ぶる道化師を下さんと神に代わりて刃を放つ!
『オロロロロロ! 少シも話ガ通じませんネエ!』
その一刀をメイスで受けて――衝撃がジェスターを彼方へ弾き飛ばした。
「さあ行くのだジャイアント薩人!」
指を差し号令する麗刃。背後のスクリーンでは合戦模様が映し出されて。勇壮なBGMと共に大立ち回りが始まった。
『オロロロ! これはイケません!』
しかしジェスターもタダではやられない。振り下ろしのスピードでは絶対に勝てない。ならば別の手段で――などと考える暇など、無い!
『チェストォォォォォッ!』
『オロロロ! 映画よりオソロシイ!』
一体武士とは何なのだ。薩人とは何なのだ。
『コウなれば――』
意を決したジェスター。そうなのだ、この空間では勝ち目がない。破れかぶれの一撃か、武士と対峙してメイスを中段に構えるジェスター。振り下ろしで勝てぬのならば、間合いを制する他にあの戦闘マシンに対抗する手段など無い。
『チェストォォォォォッ!』
『ジェスタァァァァァッ!』
瞬間、鉄球と切っ先がぶつかり凄まじい火花が散る。その威力は地形を揺るがし、崩れた足場に武士が一瞬、膝をつく。そして。
『コレこそが、我が逃走経路デス!』
恐るべき力に吹き飛ばされたジェスターがそのまま遥か彼方へ。最初からこれが狙い、正面切って戦うには分が悪い相手ならば、取れる手段は限られる!
「おのれチェストーくん! 武士は!?」
『モッコス』
消えた。
「ああ……いい感じに打ち込みしたから、もう満足かい!」
まあ、それでも。大分削っただろう。体力。
無傷のまま麗刃はこの戦場を制した。
運命は彼に味方したのだ。へけっ。
大成功
🔵🔵🔵
早乙女・翼
単純で重いってことは本当にただ力任せに殴ってくるってことさね。
ならば奴が得物振り上げる動作だけは絶対見逃すものか。
メイス先と長柄の掴む位置より着撃地点を予測。振り下ろすその瞬間を見切った上で横に飛び回避。
多少羽が削られても痛みには耐えよう。
道化なんだし炎の芸なんかどう?
腕より炎鎖を放ち、奴の腕や得物絡め取れれば僥倖。
火の輪くぐりじゃなくて悪かったな。
ただの道化じゃねぇよなお前。
まるで悪魔か何かのようだ。
ならば主の名において骸の海に戻って頂こう。
魔剣喚び、鎖を引き戻しながら全力で斬りかかる。
どこで映画興行するつもりだったかは知らないけど、お前の戦争(サーカス)の出番は此処で打切りにしてやるさよ。
●爆炎の翼
『オロロロロ……全く、酷い目に遭いましたネエ』
残骸と化したセットめいた空間より這い出るジェスター。先の戦いで突き飛ばされた先は倉庫だった。
『でもマア、これだけやり過ごセバ、後は時間のモンダイ……』
周りには雑多なパネルや家具といった、まるで映画に使う大道具小道具が乱雑に放られていて、傍目からすればゴミ捨て場の様。それらはまるで、映画という閉じ込められた世界から溢れた、骸の様なモノ。
「どこで映画興行するつもりだったかは知らないけど――」
不意に男の声が。荒々しくも涼やかなその声色が、閉じた空間に反響する。
「お前の戦争(サーカス)の出番は此処で打切りにしてやるさよ」
『ハァ、しつこいですネェ……。いい加減にシてくれませんかネェ』
真紅の長髪が揺れる。早乙女・翼(彼岸の柘榴・f15830)はジェスターの戦跡を追って、逃げ場のないここへと遂に追い詰めたのだ。だが奴は先んじて攻撃してくるだろう。故に返す刃が必ず届くここへ奴が逃れたのは、正に幸運だった。
(――単純で重いってことは本当にただ力任せに殴ってくるってことさね)
奴の得物は鈍重なメイス。持ち手の位置さえ分かれば、長さから凡その直撃地点は分かるんだ。ならば、奴が得物振り上げる動作だけは絶対見逃すものか。
『強がった所デ、これヲ避けられるとデモ――!』
羽根の一枚や二枚、くれてやる。やり口は分かっているんだ――細身の片刃剣をスラリと抜いて、正面の異形と対峙する翼。
『オロロロ! オロロロロロッ!!!!』
瞬間、獣の様な唸り声を上げてジェスターが飛び掛かる。爬虫類の様な双眸から炎の様な瞳がぎょろりと覗いて、その視線の先を――翼の肩口を思い切り振り被ったメイスが襲う。そして。
『――オロロッ! 口ほどニモ……無イッ』
爆ぜた衝撃が翼の足元をガラガラと崩して、全身を伝った暴力的な威力が翼の膝を折る。直撃は避けた……しかし、ジェスターの一撃は余りにも強大だった。幾ら直撃地点を避けたとはいえ、威力の過半をもろに受けてしまったのだ。こうなれば、ただではいられない。
崩れ落ちる瓦礫と共に落ちる翼。その様子を満足げに眺めたジェスターは、それでも僅かな異変に気付く。音がしない。落着したならば身体がぶち当たる太鼓を叩いた様な音が、振動が、ここまで届く筈だ。
『オロ?』
訝しみながら開けた大穴を覗き込むジェスター。瞬間、その目に入った血塗られた縛鎖が己の首へと絡みつく。そして。
「ハァ……ハァ……」
飛べなければ即死だったかもしれない。崩れた足場に飲み込まれて、そのまま奈落へ落ちていただろう。だが翼はその名の如き、一対の白き翼を羽ばたかせ、己を赤く染めながらも起死回生の一手を打ったのだ。
『ヤりますネェ……デモ、その身体デ戦えますカ?』
力任せの一撃を全身に受けて既にボロボロの翼は、それでも手にした縛鎖を強く握り、逃しはしないと強い意志を露にする。
「――ただの道化じゃねぇよな、お前」
ヤバい、言葉を吐く度に血が飛び散って――出血だけで意識が飛びそうだ。でも。
「まるで悪魔か何かのようだ」
『……だとしたラ?』
奴の意識を引き付けろ。これが本命、そう思わせろ。鎖を握る手に力が篭る。一瞬でいい、一瞬だけ奴の動きを止められれば――!
「ならば主の名において、骸の海に戻って頂こう――か!」
超常発現――浄化の炎が鎖を伝ってジェスターの首筋を焼き焦がす! 必勝の紅蓮の炎は渦を巻いて、更に道化の全身を焼き尽くさんと燃え盛る。
「道化らしく炎の芸なんてどうだ?」
『オロ!? オロロ……』
そして剣の切先をジェスターへ向ければ、瓦礫に隠した魔剣が背後より飛来。正面からは翼――前後からの挟み撃ちで、ギラついた仮面を叩き割らんと一気に詰めた。
「火の輪くぐりじゃなくて悪かったな――!」
『オロオロロ……やりますネェ。その目、怖いですネェ』
直撃――だった筈。ガランと手にした剣を落とし、立ち塞がる異形を睨む翼。浅かった。何より自身のダメージが重すぎたのだ。仮面に届いた切先がそれを割る事は適わず、ジェスターは燃える鎖を振り解き、再び振るったメイスで翼を吹き飛ばす。
「待て、お前……ッ!」
オロロ……遠吠えの様な異形の奇声が遠のいていく。
だが、着実にダメージは与えた。攻撃だって届いたのだ。
奴は決して、倒せない相手じゃない。
成功
🔵🔵🔴
河津・跳太郎
・先制対策
重い一撃は引き付けてから飛び上がって回避
「カブキの番傘」を開くことで地形を破壊した衝撃波に乗り
上空へ敢えて吹き飛ばされてダメージの軽減を図る
・行動
上空から位置エネルギーを利用して逆落としの斬撃を仕掛ける
「電光丸」を伸縮機能で限界以上に引き伸ばして
相手の頭上に振り落とす
刀はこの一撃で使用不能になるので捨てる
二度目以降の攻撃も「ホバリングサーフボード」「ミフネの編み笠」
を同様に使い捨てにしながら相手にぶつけ素手になるまで抗う
最期に追い詰められた感の自分に近付いてきた所へ
本命の頭突きをお見舞いする
刀折れ、矢が尽きるとも諦めはしないであります!
ド根性こそが吾輩のヒーロー魂でありますからな!
●刺客
スクリーンに映された盲目の剣士が、耳をそばだてて周囲の様子を伺う。
「かの様な者ですら……力の差があろうとも」
その男を囲う様に悪漢共が間を詰めて――一閃。舞う様に抜き放たれた仕込み杖の白刃が、飛び掛かった悪漢を音も無く切り伏せた。
「うむ……地形と特性、それと度胸」
尋常ならざる剣技の冴えに感嘆した河津・跳太郎(🐸負けるなピョン太ここにあり・f18965)はそのまま、番傘をばさりと広げ場を後にした。此度の敵は見紛う事無き格上、であれば相応の心を以って対峙せねば――瞬間、突風が跳太郎を襲う。
『オロロロロッ! 小さきモノよ!』
「何をッ!」
暴威を纏った猛獣が頭上より飛来する。同じだ。引きつけて、寸での所で躱して――。
『オ・ソ・イィィィィッ』
されど猛獣は――ジェスターの一撃は大地を揺るがす。衝撃がビリビリと跳太郎を襲い、烈風が自慢の一張羅を台無しにして、跳太郎は彼方へと吹き飛ばされた。
(流石、超一流の刺客でござるな!)
手にした番傘をくいと上げて、綿毛の様に風に乗ってふわりと着地。しかし全身に刻まれた種々の傷跡が、かなりのダメージを想起させる。
『オロロロ! まだ生きてマスか。しぶといですネェ』
「左様……。此度の戦、我輩もタダでは済まぬのは承知の上」
この一撃で折角の傘も台無しになった。杖代わりにした番傘を投げ捨てて、ぬらりと模造刀を抜く跳太郎。
『オロロロ! ソンな玩具でドウしようと!』
「いいや、玩具に非ず。この一刀は――」
かちゃりと、八相に構えた白刃が薄明かりに煌いて。
「悪を成敗する剣であります!」
『だったらヤッて……見せろヨォォォォ!!!!』
再びジェスターが跳躍。渾身の一撃を見舞わさんと大きく振り被って。一度目で凡その威力と間合いは測ったのだ。恐れるものか……編み笠の隙間からその威容を眺めて、跳太郎も疾駆する。
『オロロロロロッ!!!!』
「勝負であります……化物ッ」
跳躍した両者が空中で重なって、しかしジェスターが一手早い。再び振り下ろされた暴威はまたも跳太郎を大地へ叩きつけんと痛打を見舞う。だが同じ事を、何度もやられる跳太郎ではない。
「ああ。また修理が……」
強烈な一撃をその身で受けて――されど背負ったホバリング・サーフボードがその威を僅かにかき消す。ふわりと不自然に浮かんだまま、跳太郎はその腕を伸ばした。
『オロ!?』
否、伸びたのは模造刀――電工の名を冠した業物はその刀身を自在に伸縮する。予想外のギミックがジェスターの顔面を傷つけて、先の戦いで亀裂の入った仮面がミシミシと音を立て割れていく。
「やった、であります……」
しかし、ジェスターの力任せも超常の一撃。直撃はそのまま跳太郎を地面へと叩きつけた。痛い。先程の剣士の様に華麗とは、中々いかんですなぁ……。
『こノ、小物がァァァァァッ』
侮った相手より喰らわされた不意の攻撃がジェスターを激怒させる。次は無い、確実に仕留めんと殺意を滾らせて、空中より巨体が跳太郎を押し潰さんと迫り来る。
『潰れロォォォォッ!』
「……否、でありますよ」
瞬間、編み笠ごと潰されかけた跳太郎が残る力を振り絞って跳ね上がる。狙いはたった一つ、大振りになって曝け出した奴の土手っ腹に、風穴を開けてやる!
『キサ、マ……!』
「刀折れ、矢が尽きるとも諦めはしないであります――」
不意に鈍い音が場に響く。跳太郎の超常が、本命の頭突きがジェスターに直撃したのだ。この瞬間の為に全てを犠牲にして、放った一撃は値千金。吹き飛ばされてのた打ち回るジェスターを見やり、跳太郎がゆっくりと立ち上がる。
「……ド根性こそが、吾輩のヒーロー魂でありますからな……!」
そしてゆっくりと、その場に倒れ伏せた。
双方痛み分け――しかし、ド根性は超常を乗り越えたのだ、間違いなく。
成功
🔵🔵🔴
雷田・龍子
POW
●対策
「飛びますよ」
人派ドラゴニアンの龍子は、ジェスターの物理攻撃が届かない空中に待機。
●戦闘
「最近覚えた技を披露しましょう。ブレイク・ダーク・サンダー!」
相棒の「ドラゴネット」からの援護射撃を受けつつ、ユーベルコード「暗黒閃雷破(ブレイク・ダーク・サンダー)」でジェスターへの攻撃を試みる。
「痺れましたか?」
荒谷・つかさ
両手に大槌と大斧を装備し、真っ向から適度なダッシュで接近
当然、メイスの射程に入ったら振り下ろして来るわよね
私はそのタイミングとメイスの軌道を見切り、直撃前に武器を捨てつつ残像の残る速度で更に踏み込むわ
メイスの弱点、それは有効範囲はあくまで先端の鉄球であること
故に密着まで踏み込めば、そこは死角よ
まあ、私ごとお前自身にメイスをぶちかます分には知らないけど、その時は逃げるわ
重たい武器はあくまで速度を落とすための重石、急な高速化による騙し討ちの布石
密着まで踏み込んだならば【螺旋鬼神拳】発動
その躯をぶち抜いてあげるわ
たまにしかやらないような付け焼き刃の力押しで、私を止めようだなんて。
甘く見られたものね。
ワン・シャウレン
映画のう
何考えとるかは分からんが碌な事に使わぬのは確実
それはわしとしても見過ごせぬよ
さて、格上の相手じゃな
半端なカウンターやハナから接近ありきの技では競り負けるのが目に見えよう
とはいえこちらの得意は接近戦
間合いまで潜り込み、逃がさぬが勝機
持てる技能を駆使し、挑むとしよう
自身の最速で水霊駆動を全力起動
水流は纏うのみでなく格闘の延長や飛び道具にも使用
纏う障壁も守る範囲を広げていては追いつかぬ
矮躯を活かし矢のように移動し、受ける面積を最小限にすると共に最低限の迎撃・防御で魔剣を抜きにかかる
出来れば間合いをより詰める為に守りを減らす分を牽制にも回したい
間合いを詰めたら水霊駆動での格闘戦で仕留めに行く
●戦乙女の騎行
雷田・龍子(人派ドラゴニアンの全力お姉さん・f14251)は空中を飛びながらジェスターを探し回る。敵の攻撃は大振りのメイス。ならば間合いを外す事でどうとでもなろう。二の太刀を浴びせれば勝機は十分――背後のスクリーンが勇壮なクラシックを奏でて、漆黒のマシンが編隊を組んで空を飛ぶ姿が映し出された。
「そもそも、届かなければどうという事は無いのです」
恐るべき威力である事は先程から聞こえる炸裂音で嫌というほど体感している。だからこそ万全の策を――そう考えていた矢先、空が割れた。
『オロロロロッ!!!!』
否、割れたのはスクリーン。炸裂する機関砲の轟音と共に現れたのはジェスター。スクリーンの足場から飛翔して、龍子の脇腹を砕かんと真横に跳んで来たのだ。
「――高度を稼がれたッ!? しかし!」
咄嗟に大剣を盾の様に構えて、衝撃を相殺せんと対峙する。例え喰らってもこれだけ距離があれば――だが、ジェスターの超常は尋常の威力では無かった。
『イケませんネェ。それだけデハ!』
烈風が龍子の肌を撫でる様に裂く。直撃は躱した、それでもその威力の全てを減衰出来たとは言い難い。
「! このままではッ!」
ガツンと強烈な振動が龍子の手元を襲う。少しでも油断したら諸手ごと千切れそうだ。耳元に響いた金属同士がぶつかり合う爆音が、予断を許さぬ状況を否応にも想起させる。
『堕・ち・ロォォォォッ!!!!』
瞬間、爆ぜた勢いが龍子を遠くへと吹き飛ばして――羽ばたかせた巨大な両翼がかろうじで己が身を支えるも、待ち受けていた別のスクリーンへ五体を投げ打たせる。
「……流石だな、ジェネシス・エイト」
口元を流れる血を拭い、瓦礫を払って立ち上がる龍子。目の前にはゴム毬の様に跳ねながら近づくジェスターの姿が。
「……だが、まだ終わっちゃいない」
「その通りじゃ」
不意に涼やかな声が――ワン・シャウレン(潰夢遺夢・f00710)が金髪をなびかせて、ふわりと戦場へ舞い降りたのだ。
「映画のう。何考えとるかは分からんが」
明滅する光が破れたスクリーンに注がれて、男女が淡々と言い合いを続ける音声が――どうやら恋愛映画の類である事を分からせた。
「――碌な事に使わぬのは確実。それはわしとしても見過ごせぬよ」
『心外ですネェ。私は滅びゆく文化ヲ伝える為ダケに、これらヲ運ぶダケですヨ』
からりと哄笑を上げながら近寄るジェスター。その背後には邪な気配を放つ魔剣の群れが。
「訂正せよ。世界は滅ばんよ」
『オロロロ……?』
途端、水流が二人を覆う。ワンの超常――精霊の加護が水流の壁を眼前に展開して、二人を守らんとその勢いを徐々に増していった。
「滅ぶのはお主じゃ」
『冗談ハ苦手な様ですネェ、お人形サァン!』
そしてジェスターの魔剣が迫る。風を纏った暴力の群れが続々と、水流の壁にぶち当たっては押し流されて――されど双方、その勢いは些かも衰えず、戦況は膠着状態となった。
『中々、やりますネェ。デスが』
こうイウのはドウでしょウ? 再びメイスを振りかざすジェスター。手数が足りなければ、自ら赴けばいい。それにこの一撃は地形をも破砕する超常の一手――グラリと鎌首をもたげたジェスターがその暴威を振り下ろさんとした時に、もう一つの影が戦場に舞い降りた。
「祭の場所は、ここね?」
『オロロロ、今回ハ千客万来――』
「能書きはいいわ。来なさいよ」
大槌と大斧を携えて、ジェスターの背後より重武装の出で立ちで現れた荒谷・つかさ(『風剣』と『炎拳』の羅刹巫女・f02032)が、歩く度に超重量で足場が軋んだ音を立てる。
「たまにしかやらないような付け焼き刃の力押しで、私達を止めようだなんて」
甘く見られたものね。見下すような視線で挑発――今はこちらへ注意を向ければ、龍子とワンへの追撃は避けられる。そのままこちらへ来れば僥倖――だからこそ、あえて武威を張りジェスターの前へわざとらしく姿を現して。
『オロロ……舐められたモノです、ネェッ!』
間髪入れず動いたジェスター。姿勢はそのまま、標的をつかさに替えて。正に狙い通り、ここからが本番だ。
「お前なんかを舐める趣味は無いわ……よッ!」
矢張り振り下ろしてきた。だが想像以上の速さ――故に。
「この距離でそれを使えるかしら!」
『使うとモ!』
烈風を纏って振り下ろされた超常はつかさの姿を消し飛ばし――否、それは残像。消えた虚像の更に手前、つかさは僅かな隙に間合いを詰めていたのだ。しかし密着したつかさの肩がメイスの柄に大きく叩れて、落雷の様な痛みを受ける――それでも直撃じゃない。最大の破壊力を誇るメイスの先端、禍々しい鉄球は空振って大地に大穴を空けたままだ。
『オロ……?』
「流石、幹部ね……でも!」
大仰な武器は囮だ。両の手からそれらを離して、腰溜めに低く構えるつかさ。ダメージが全身を走るが――気にしてなどいられない。
「その躯を、ぶち抜いてあげるわ!」
パァンと空気が爆ぜた音。音速を越えた必殺の超常が、つかさの拳が抉る様にジェスターの腹部を強襲する。そこは既に、傷ついたジェスターの泣き所。
『オロロロッ! 痛ェッ!』
音を引き連れ吹き飛ばされたジェスターはそのまま、龍子とワンが控える方へ。コントロールを失った邪剣がガラガラと音を立てて地に落ちると共に、ワンの水流がとぐろを巻いてジェスターへと襲い掛かる。
「届いたのう、道化」
「私からもプレゼントです。最近覚えたんですよ」
バチバチと紫電が、竜の様に蠢く水流に被さって。正に意志持つ嵐の如き、水と雷の超常がジェスターの頭上から降り注いだ。
「――痺れましたか?」
『…………』
「言ったじゃろう、滅ぶのはお主じゃと」
『…………』
三人の超常に晒された道化は骸と化したか、黙して語らない。
『……やりますネェ、お嬢サン!』
不意にバチンと大きな音が。奴は無事だ――手にしたメイスを再び振り上げ、そのまま自身の足元に大穴を開けて、道化は更に下層へ逃亡したのだ。
「逃げたわね……でも」
手応えはあった。追い詰めたと言っていい。五体が無事ならば追撃したい所だが。
「一旦、体勢を立て直すべきじゃ」
メイスの痛打を、直撃は避けたとはいえ受けてしまった二人を見やりワンが呟く。
焦る事は無い。放たれた猟兵はまだいるのだから。
事態は終局へと傾きつつあった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ナギ・ヌドゥー
カタストロフが近付いている
こんな時に何処へ行く道化師?
【ドーピング】により極限まで反応速度向上
敵UCに合わせ【早業・誘導弾・制圧射撃】の弾幕を張り魔剣の群れを撃ち落とす
撃ち落としきれなかった剣は【オーラ防御】でダメージ軽減
この魔剣に意志があるなら【恫喝・精神攻撃】が通用するのか?
『こんなピエロに使役されて何の得がある!捨て石にされてるだけだぞ!』
オレのサイコパームは精神力を光線と化す兵器、この殺戮衝動を受け切れるか!
【殺気・呪詛・呪殺弾・制圧射撃】の弾幕で行動を制限
弾幕から逃げようとする動きを【第六感・野生の勘】で【見切り】UC発動し斬り込む
【2回攻撃】が9倍化、十八連斬撃!【早業・部位破壊】
鈴木・志乃
私の前で誰かを傷つけるな!!!
可能な限りの【早業】で【高速詠唱】を行い、『人質の意志と自分の意志と強制連繋』(【精神攻撃】【ハッキング】【手をつなぐ】)
人質を【呪詛】から【かばう】ように立ち回る
当然ただじゃー済まないだろうな、体がどんどんボロボロになるかも。でもそれも覚悟の上だよ
【祈り】【呪詛耐性】で何とかレジストする……出来なくて苦悶する……フリ(【演技】)
実際にはUC発動
あのなあ、私色々あって今呪詛が一番嫌いなんだよ。正直クラなんちゃらよりお前の方が全力討伐対象だわ
その呪詛は全て私の力にさせてもらう
敵の動きをよく見て【見切り】油断した所を【全力魔法】の【2回攻撃】で【なぎ払い】攻撃
ガーネット・グレイローズ
なかなか大胆な犯行じゃないか、なあ? そこの映画泥棒。
【WIZ/初撃】
人質作戦か、卑劣な。だがこちらが冷静さを欠けば相手の思うつぼだ。奴の目的は人質の殺害ではなく、悲鳴と苦痛の声でパワーアップすること。ならば……
まずは〈念動力〉で刀を投擲し、ジェスターの注意を逸らす。そして隙をついて【仮初めの死】を発動。漆黒の棺を召喚し、半径61メートル以内のすべての人質を対象にして棺に収容。強制的に眠りにつかせれば混乱も起きないし、負傷も回復するはずだ。ジェスターは当然棺を破壊しようとするだろうから、ブレイドウイングによる〈武器受け〉でガード。お返しにブラッドエーテルの〈生命力吸収〉の波動を撃ち込んでやる。
●死闘
『イケません、このままでハ折角ノ映画が全テ……』
跳ねる様に下層を駆けるジェスター。ここには何もない。目に入るのは曲がりくねった配管や薄汚れた照明のみ。ここは宇宙船の作業用通路、先程までの華やかなスクリーン群とは打って変わって、何の変哲もない機械に囲まれた殺風景な空間だ。
「カタストロフが近付いている。こんな時に何処へ行く、道化師?」
おや、とジェスターが面を上げれば――目の前には猟兵、ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)の姿が。
『そんなモノ、私ニハ関係ありマセンので――ネェ!』
強襲――魔剣の群が何時の間にかナギの四方を囲い、その自由と生命を奪わんと飛来する。配管の隙間、物陰から十重二十重に――無尽蔵の邪な刃はギラリと殺意を煌かせて、獲物を屠らんと地獄めいた牙を向けるのだ。
「クッ……遠隔操作か」
『イイエ。実ハ、古い馴染みの仲デシて』
空を裂く刃をかろうじで躱すナギ。余り広さは無い分手数も限られるが、回避し続ける事も同じく難しい。しかし古い馴染みの仲と言った――確か『意志持つ魔剣』だった筈。ならば。
「こんなピエロに使役されて何の得がある!捨て石にされてるだけだぞ!」
『オロロロロ! ソンな仲デハありませんヨ!』
意志があるならばその精神を揺さぶれば――しかしナギの呼び掛けにも黙して語らず、殺意のみを剥き出しにして迫る魔剣達。言葉は通じない、残るは実力行使のみ。
「だったら……オレのサイコパームは精神力を光線と化す兵器」
カキンと金属の擦れた音が響く。いつの間にかナギの右掌に巨大なレンズ状の物体が――それこそ、己に仕込んだ必殺の刃。全身を振るわせる加速器の甲高い音が耳に届けば、後は心の引き金を引くだけ。
「この殺戮衝動を受け切れるか!」
発された閃光が、呪いを込めた紫と黒の光条が群がる魔剣を制する様に振るわれる。その勢いに一つ、また一つと地に落とされながらも、角度を変えて光線を受け流した魔剣が再びナギの下へ。
「……そうかい、よく分かった」
ニヤリと口元を歪ませて再び掌に力を込める。奴の殺意は本物だ。だったら根こそぎ焼き払ってくれよう。どっちの衝動が上か――見せつけてやるよ。
「そうやって……私の前で誰かを傷つけるな!!!」
叫び声がジェスターの背後より――鈴木・志乃(ブラック・f12101)が丸腰で、されど闘志をその目に滾らせ現れた。
『オロロ……不思議ナ事を言いますネェ』
戦場ニ来テそんな世迷言ヲ。哄笑を上げるジェスターを睨みながら、志乃は一歩一歩、間合いを詰める。
「何度でも言ってやるよ。あんたみたいなのは――一番嫌いなんだ!」
人を傷つけ、心を踏み躙る。紡いできた歴史を訳もなく略奪し、大一番で逃れようとする浅ましい心根を。そして。
『ホウ……でハ、こうイウのはドウでしょウ?』
バサリと腕を振るえば、いつの間にかその懐には何処から呼び出した罪無き人が。矢張り、こういう事の為に――怯えた表情の一般人はジェスターの腕に掛かり、僅かでも力を入れられようものならば文字通り刹那に落命しかねない状況だった。
「やっぱりね、あんたは最悪だ」
『お褒メに預カリ光栄ですナァ』
そしてジェスターの赤い瞳が妖しく歪む。途端に人質が苦悶の表情を浮かべ――涙を流して助命を懇願する。助けて、と。
『……オロ?』
「…………」
その様子を訝しんだのは他でもないジェスターだった。何故だ、何故喋れるのだ……いや、呪詛は確実に生命を蝕んでいる筈だ。手応えはある、こんな吹けば飛ぶような生命では耐えられぬほどの呪詛が。ふと志乃を見やるジェスター。さっきまでとは違う、怒りを滲ませながらも何かを堪える様な表情。そういう事か。
『ソウか、貴女ハ人質ノ代わり二!』
再び笑い狂うジェスター。簡単なトリックだった。呪いは発動した。だが対象が勝手に還られていたのだ――目の前の小娘に!
『呪イだけ己ガ身に移シタ! オロロロ! コレだから人間ハ!』
憐憫か、それとも怒りか。どちらでもいい。そういう馬鹿らしい身勝手さこそが、人が人たる所以。それ故に自ら滅びを招くのだ! 貴重なサンプルなのだ!
『愉快! 非常ニ愉快デス!』
「私は不愉快だがな、映画泥棒」
不意に冷涼な声が――同時に人質がジェスターの手を離れ、姿を消した。念動か――コレを予測していたのだろうか。
「なかなか大胆な犯行じゃないか。で、どうする?」
カツンと足音を響かせて、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)が闇の中より姿を現す。その背後には漆黒の棺が――超常の棺桶の中に、奪った人質を隠したつもりなのだろうカ。
『人質ガ……! 貴女の仕業デスね!?』
「だとしたら――どうだと言うんだ!」
己が背後より流体金属の翼を広げて、ガーネットが疾駆した。力の大半を他の猟兵へ向けている今が好機、メイスを振るう暇すら与えない――懐へ飛び込んだガーネットの奇襲は、しかし咄嗟に二振りの魔剣を手にしたジェスターに防がれる。
『オロロ――ユーベルコードが無クとも、コレくらいハ!』
「その油断が命取りだ、道化野郎」
油断――ナギを制していた魔剣を二振り、自らの手元へ呼んだ。その綻びが突破口となる。闇色の光条がその綻びを押し広げて、拓かれた道を駆け抜けたナギ。
「自ら手数を減らして、凌ぎ切れると思うなよッ!」
狙うはジェスターただ一人。僅かな隙さえあればいい。こちらの手数は充分だ――目にもの見せてくれよう。
「そんな玩具で、私の翼を断ち斬れるかッ!」
鋼の翼は囮――展開した両翼を受け止めて、がら空きになった胴体へガーネットの掌打が炸裂する。ただの掌打ではない。生命を喰らうサイキック、ダンピールの吸精波動が傷ついたジェスターの腹部から強引にそのエナジーを吸い取って。
「ふらついてるぜ道化師よ――そんなんで満足な演技が出来るの、かッ!」
ナギの双眸が真紅に輝く。瞬間、手にした『歪な怨刃』が鈍く光を放ち――ジェスターを背中から突く、斬る、裂く、断つ――ある時は撫でる様に、ある時は引き千切る様に、緩急をつけた縦横無尽な剣戟は十八連。地獄めいた超常の絶技が、ジェスターの背中に満開の血桜を鮮やかに咲かす。
『イイ加減……しつコイのデスよ、アナタ達!』
正面から、背後から、有無を言わさぬ猟兵の強襲に怒気を露にするジェスター。おどける道化の姿など最早どこにも無い。それでも、傷つきながら足元のメイスを無理矢理拾い、纏わりつく猟兵を吹き飛ばさんと駒の様にその場で回る。しかし。
『オロ……?』
全体重を乗せた暴風の様な一撃は即座に止められた。まるで壁に思い切り打ち付けているような感覚――違う、受け止められたのだ。壁の様に聳え立ち、鋼の様に強靭な意志の下。
「正直クラなんちゃらより、お前の方がよっぽど全力討伐対象だわ」
片手でメイスを受け止めたのは志乃。己が身に受けた呪詛に苦悶するという、一世一代の芝居を打って。たった一つ、偽りの中に人を蝕む呪いを許さぬという真実を秘めて。舞台は整った――己の中で開幕のベル(鼓動)が鳴る。
「さあ呪えよ」
『オ……ロ……?』
受けた呪いは全て、何もかも、志乃の力へと転化された。それが超常――呪いは祈り、祈りは呪い。思いを力に、その重みを拳に乗せて。
『まさか!』
「爆ぜろ」
左腿の聖痕が輝いて、放たれた超常の拳が高々と掲げられる。炸裂音と共に思い切り顎を撃ち抜かれたジェスターはそのまま、派手な音を立てて天井を突き破り、元居た上層へ送り返されたのだ。
「……飛ばし過ぎたか」
呪詛が解けた――奴は何処か。僅かに痛む拳を振って、棺の方へ向き直る志乃。
「大丈夫、寝ているだけだ」
ガーネットの超常は安全に人質を保護する為の物。これが無ければ、最後の一撃を繋げられなかったかもしれない。
「前も後ろもズタボロだ。じきに終わるだろうよ」
ニヤリと歯を見せるナギ。あの綻びがあったから、必殺の十八連撃を入れられたのだ。まともに戦う力など、残っている筈も無い。
「そうだね、それじゃあ」
三人は天上を見やる。あるべきエンディングを心に望んで。
大成功
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黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
基本右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
俺自身はいつも通り【存在感】を消し【目立たない】ように移動し【マヒ攻撃】を乗せた【暗殺】の攻撃をする。
一方でUC水月で影を召喚。あえて人型を取らせず周辺の影という【闇に紛れ】【存在感】を消し【目立たない】ようにジェスターに近づき召喚された人質の救出を狙う。
その為に小芝居ではなく本来の俺の戦い方をする。
無事救出できれば手鏡を渡しておく。気休めかもしれんが一応【呪詛耐性】が付いてる。
相手の攻撃は【第六感】で感知【見切り】で回避。しきれない時は黒鵺で【武器受け】し【カウンター】を叩き込む。
回避しきれず喰らいそうな時は【オーラ防御】【激痛耐性】でしのぐ。
●終焉を
スクリーンの明滅が醜悪な造形に光を浴びせる。伸びたシルエットが蜥蜴の様な、悪魔めいたその輪郭を強調して、のそり、のそりと血を滴らせながら歩む姿を、これ見よがしに見せつける。
『アア……鬱陶シイ……』
背部に無数の裂傷、首に重度の火傷、腹部を始め諸々の骨格が粉砕骨折。動いているだけでも奇跡という他無い。しかし。
『ソウですネェ……コんな時ダからこソ』
呂律が回らない。だからこそこの超常が活きるのだ。ガタガタと震える腕を掲げれば、もう片方の腕の中には何者でもない誰かが――捕まえた人質が姿を現す。
『サァ泣キなさい、叫ビなさい、その恐怖ガ私を――』
「そこまでにしておけよ、ジェスター」
不意に一陣の風が、ジェスターが手にした人質がいつの間にか姿を消して。辺りには闇しかない。私の母なる、大いなる漆黒だけが――その中を動く影が人質を、呪いの源を奪い去ッタ!
『何者デス!?』
汚泥の様なねっとりした叫びが周囲を震わせる。誰もいない――否、僅かにきらりと何かが光った。
「俺か? 俺は――」
小さな手鏡を持った青年が一人、震える人質にそれを持たせて道化師と対峙する。
『誰が願いの為に、断ち切れぬ人の為に断つ』
黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は、闇色の短刀は目の前の悪魔へ静かに告げた。
『――悪夢を、終焉(おわ)らせる者だ』
●砕く者
『オロロロロ! そんナ貧相ナ得物で私二挑モウと?』
見るからに細い体格、刃渡りも短い短刀如きで渡り合おうと――がらりと巨大なメイスを振り上げ、ジェスターは哄笑を上げる。
『詰メを誤ッタな、猟兵ッ!』
それでは届かない! 僅かな力を振り絞り瑞樹へと飛び掛かったジェスターは足元の青年を叩き潰さんと全力を込める。最早超常は使えない。それでもここさえ乗り切れば、逃げる事さえ出来れば私ノ勝ちナノだ!
「貧相か――だったら試すか?」
静かに表情一つ変える事なく、瑞樹は短刀をだらりと下ろし――そして凄まじき勢いで落ちて来たジェスターの猛襲を、尋常ならざる異様な動きで回避した。
「ここに溢れる終焉を、どうするつもりだったかは知らんが――」
膝と腰を曲げ全身を反って、片方の爪先に全体重を掛けてくるりと回る。まるでダンサーの様な軽やかな身のこなし。そのまま落ちるジェスターの背後に回り、血塗れの背中を再び滅多刺しにした。
「悲惨なエンディングはもう、いらないんだよ」
振り返らんとメイスを振り回すジェスター。その回転を避け、脇腹にかました直蹴りの反動で飛びのく瑞樹。一つ一つ着実にダメージを重ねて、ジェスターの威力を削いでいく。
『オロッ!?』
ぐらりと体勢を崩すジェスター。しかし呼び出した魔剣を手に取り、再び瑞樹を追撃――不意を狙ってその剣を投げ飛ばす。しかし。
「誰が一振りだと言ったか?」
カラン、と乾いた音を立てて地に落ちた魔剣。いつの間にか瑞樹の手には、もう一振りの刃――古めかしい刀があった。刀が魔剣を打ち落とし、ジェスターは再びメイスを握り締める。最早この鈍重な武器しかない……それでも、目の前の小物を屠るには十分ダ!
『グギギ……ダがもう、遅イ!』
跳ねた道化師は再び空より瑞樹を狙って、超重量を落下させる。
『コの世界は終焉ヲ迎エル!』
幾ラお前達ガ抗オウと、ソの定メからハ逃れラレない! 禍々しい意志が悍ましい双眸より溢れて――しかし。
「それは今すぐじゃあない。それに」
瑞樹はその一撃を受け止めた。これまで通りに、己が漆黒はそんなモノで折れる様な、柔じゃあない。
「それを決めるのは――俺達だ」
返す刀がジェスターの首筋を狙って――白刃が煌き、焼け焦げて脆くなった道化師の首は、ボロボロの仮面ごとガランと地面に転がる。その五体を再び、闇に還して。
「お前達のエンディングなんか、いるものかよ」
血振りを済ませ刃を納めた瑞樹。背後のスクリーンにはスタッフロールが流れて――映画はいつの間にか終わっていたらしい。
「後は、クライング・ジェネシス……」
この世界に望まれぬエンディングを齎さんとする存在。
それを倒すだけだ――これまで通り、いつも通りに。
大成功
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