アースクライシス2019⑬~砕けぬ盾
ビームハイウェイでの戦いに勝利したを猟兵達はラグランジュポイントへ到達する。
ラグランジュポイントには多数の宇宙船が衝突し重なり合った事で生まれた『島』がそこかしこに浮かんでいる。
しかし、これらの『島』は現在オブリビオン達に占拠されている。
猟兵達がこれらオブリビオン軍団を撃破していけば、その活躍に勇気付けられた住民達は自らの足で立ち上がり、オブリビオンを『島』から一掃する事も出来るだろう。
彼等の誇りを取り戻し、共にオブリビオンを撃滅せよ。
●――砕けぬ盾、挫けぬ心。
「やーやー皆さん、お疲れ様ですー♪」
今日も元気良くみっこみっこと歩いてきたのは望月・鼎だ。
いつものホワイトボードを携えながら、今回の作戦の概要を説明する。
「今回皆さんに行って貰うのは頑丈な肉体を持つ心優しい木人型宇宙人達の居る島です! 嘗てはそのタフネスと度胸、そして彼等に伝わる、所謂『謎兵器』を手に勇敢に戦った種族だとか何とか! まぁ詳しくは知らないんですけど」
そう言って鼎はホワイトボードにキュキュっと人型の樹木を描いて行く。
どこかコミカルな風貌のキャラが出来上がるが、当人曰く割とクリソツらしい。
「頑丈な身体の所為か彼等はオブリビオンの監視の下、島の機能を改造して作られた工場で働かされている様です。オブリビオンはアメリカの技術で強化されたスタンガンと、ゴムみたいに伸び縮みする身体での攻撃を得意としている様ですね」
今度は木人の隣に腕を鞭の様に伸ばしてビシビシ叩いているオブリビオンの絵が追加される。
「戦闘力はそこまで高くは無さそうですし、此処は木人の皆さんを鼓舞する意味で『謎兵器』を使ってみてください! その『謎兵器』と言うのが此方です!」
鼎はホワイトボードに大きな紙を貼り付ける。
手描きの絵が載っているが、それはゲームの攻略本の挿絵になっていそうな立派な盾の絵だった。
握り手は人間成人男性の握り拳より少し大きく、盾表面はガラスの様に透き通り、盾の中心には何かを取り付ける様な留め具らしきものが付いている。
「彼等に伝わる『謎兵器』は、ズヴァリ【盾】なのです! どうやらこの盾、握り手以外の部分は普段展開されていない様です。ですが使い手が『誰かを護ると言う強い意志』を持った時、輝きと共にシールドが展開されると言う機能が付いているのです!! かっこいいですねぇ……♪」
意志の力が形を成すギミックにうっとりする鼎。
一昔前のロボットアニメを思い返しているらしい。
「意志の強さによっては盾の中心に輝く刃を形成する事も出来るとか。この盾を用いてオブリビオンを倒す事が出来れば、木人の皆さんも心に輝きを取り戻す事でしょう! 一人一人の力は劣るかもしれませんが、団結の力でオブリビオンを一掃する事も出来る筈です! と言う訳で是非この『謎兵器』をご活用くださいなー♪」
一ノ瀬崇
鍋が美味しい季節ですねぇ。
こんばんは、一ノ瀬崇です。
今回はラグランジュポイントでの戦いですね。
剣も良いですが盾も素晴らしいものです。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『アーミーメン』
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POW : アーミースタンバトン
【伸縮する警棒型スタンガン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : ラバーミューテーション
自身の身体部位ひとつを【伸縮自在のゴム】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : プロトデバイス
自身の装備武器に【アメリカ陸軍が開発した試作強化装置】を搭載し、破壊力を増加する。
イラスト:赤信号
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アルフレッド・モトロ
へえ、有事に展開するタイプの盾か!
俺のプロトステガみたいなもんか?
この盾…展開シーン絶対かっこいいやつじゃん…!
何かを護る意思か…!
俺が猟兵になった理由がまさに「誰かを守るため」だ!
さあ!…えっと…謎兵器!!
俺と一緒にヒーローズアースを護ろうぜ!
いつものプロトステガの代わりに謎兵器を使うぞ!
敵が攻撃してくるのを【力を溜め】ながら待ち、
盾を使って【怪力】と【気合い】で受け止める!
そして…UCの炎も纏わせて【カウンター】で攻撃!
囲まれると厄介だからな、少しずつ相手にしたい!
敵が増えてきたら盾を構えて【ダッシュ】で突進!
【薙ぎ払って】【吹き飛ばし】て散らすぜ!
(連携アドリブ歓迎です)
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(連携/アドリブ可)
「あまりやったことないけど、やってみる価値はあるわね」
■作戦
弟と島の人々を護る強い意志で盾を展開。盾ごとぶつかりながらアーミーメンを倒す
■行動
「絶対に護って見せるわよ」
弟と島の人々を護る強い意志を込めて盾を握りしめる
アーミーメンの攻撃は[盾受け]しつつ[高速詠唱]で【アイギスの盾】を
盾と同調させ展開。プロトデバイスで強化された攻撃もシャットアウト
「制圧戦の要領で考えればいいのかも」
思いたったら[ダッシュ]で距離を詰めて[ランスチャージ]で盾ごとぶつかっていく
その刹那、[高速詠唱]で【アイオロスの刃】を盾の輝く刃と同調させオブリビオンを切断する
宮落・ライア
ふっ。オーケーやってやろうじゃないか!
守りきる覚悟はあるかって?もちろんさ!
ボクはノゾム者。何もかもを守ってみせる。
握り手をもってこう唱えるのさ『イグニッション!』
(カッコいいというだけの理由で意味はない)
木人とオブリビオンの間に立って【覚悟】と【気合い】で盾起動!
【ラプラスの魔眼】でラバーミューテーションを予測し
盾で殴って弾き返す。
【怪力】と【薙ぎ払い】じゃ。
え、守るじゃなくて攻めてる?
ほら攻勢防御とか、攻撃は最大の防御とかいうじゃん?
それにまぁ……後手に回るのって性に合わないからさ!
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(連携アドリブ可)
「盾って防御のイメージだよね」
攻撃にも使えるんだ。せっかくだからやってみるよ!
【行動】()内は技能
「ボクだって負けてないよ」
島のみんなを守るんだって強く意思を込めて【盾】を持つよ
そのままジリジリと前進しながらアーミーメンとの距離を詰めるんだ
プロトデバイスの強化攻撃はグアルディアン・サトゥルノと【盾】の効果で防ぐよ
間合いが詰まったら(全力魔法)でディオス・デル・ビエント
【盾】の攻撃を強化して、そのまま盾で攻撃だ(シールドバッシュ)
「えいえい、とりゃー」
(怪力)で【盾】を自在に操ってアーミーメンをボコボコにするよ
「みんな、団結すれば絶対勝てるよ!」
ガルディエ・ワールレイド
「我こそは黒竜の騎士、ガルディエ・ワールレイド! 猟兵の使命と騎士の誓いに懸けて、この世界と人々を守り抜いて見せよう。かかってきな、オブリビオン共!」
【存在証明】を防御重視で使用。同時に高らかに自分の意思を宣言し、堂々と戦闘開始(プレ冒頭の台詞)
武装は魔剣レギアと謎兵器のシールド。《怪力/2回攻撃》を活かし、時にはシールドを用いた打撃も使う。
戦いながら木人への鼓舞も行う。
「お前達の魂を借りるぜ! その輝きをよく見ておきな!」
また木人へ攻撃が行きそうな状況では最優先で《かばう》
【アーミースタンバトン】対策
盾と《電撃耐性》を合わせて弾く。
「この盾をっ、その程度で破れると思うなっ!」
ラグランジュポイントに広がる島の一つ。
木人型宇宙人を奴隷として働かせている区画で、今日もオブリビオンは手にした警棒型スタンガンを振るい悪逆非道を尽くしている。
歩みが遅い、列を乱した、予定より遅れている。
そんな理由でオブリビオンはスタンガンを木人に向ける。
毎日毎日、同じ様な光景が繰り返される中で彼等は奴隷として働かされていた。
此処は工場から出荷された素材等を港に向けて発送させる為の集配所のような場所。
元々は穏やかな公園だったのだが、オブリビオンの支配が始まってからは中継拠点の様な扱いをされている。
木人達は重い荷物を持たされ、休む事も許されぬまま作業に従事させられていた。
何かの素材を運んでいる木人の列から、まだ年若い一人がはみ出る。
「あぁっ」
如何やら段差に躓き抱えていた荷物をばら撒いてしまった様だ。
「貴様、何をしている! さっさと荷物を運べ!!」
それを見咎め、スタンガンを叩き付けようとするオブリビオン。
木人は身を屈め迫り来る痛みを堪えようとする。
が、届いたのは痛みではなくオブリビオンの驚愕の声だった。
「なっ!?」
「ヒーロー登場、ってな」
スタンガンの一撃を止めたのはアルフレッド・モトロ。
彼の手元で輝いているのは使い慣れたビームシールドの『プロトステガ』では無く、この島に伝わる謎兵器である【盾】だった。
暴虐の雨を弾き飛ばす傘の様に展開された輝きが、紫電を宿した端子を空中で食い止めている。
此処に来る途中、彼等猟兵達は地理の把握を兼ねて島の様子を探っていた。
この【盾】はその際に見付けたものだ。
棚の側面、引き出しの中、街灯のパネル内、通路の上面。
至る所に備え付けられており、何時如何なる時も【盾】を手に駆け付ける事が出来る様に配備されていた。
過去、オブリビオンに支配されてしまう前に彼等木人型宇宙人が使っていた名残だろう。
「その装備は……バカな、そんな骨董品が我々の攻撃を凌げる筈は……!!」
距離を取り驚愕を滲ませた様子で口を開くオブリビオン。
彼のみならず、周りの木人達が驚いているのには理由が有る。
時折、自身に与えられる苦痛に耐え切れずに【盾】を展開してしまう木人が居る。
だがその防護は容易く破られ、その度に更なる苦痛を味わう事となる。
痛ましい同胞の姿を見せ付けられ、他の木人達も抗う気力を奪われ諦観を抱きながら日々を過ごしていた。
言わばこれまでの【盾】は彼等木人にとって敗北の象徴だったのだ。
それが如何した事だろう。
容易く破られ続けていた筈の【盾】は、オブリビオンの攻撃を耐え抜く所か弾き返したではないか。
「いや、あれは何かの間違い……偶然に過ぎない! 猟兵が手にしようと、そんな玩具が役に立つものか!!」
再度振るわれるオブリビオンのスタンガン。
ゴムの様に右腕を伸縮させ近場に居た木人を苛立ち紛れに打ち払う。
だが、その攻撃も再び受け止められる。
「イグニッション!」
澄んだ声が響き、燃え上がる太陽の如き煌きがスタンガンを止める。
木人とオブリビオンの間に降り立った宮落・ライアが【盾】を展開していた。
「一度ならず二度までも……!?」
バイザーゴーグルの下で目を見開くオブリビオン。
動揺を隠せない彼へ、ライアは自信満々に胸を張った。
「ボクはノゾム者。何もかもを守ってみせる」
この盾と共にね、と握り手を頭上に掲げてみせる。
突如現れた猟兵達。
その手には自分達木人型宇宙人に伝わる【盾】が握られている。
長らく無力と敗北の証であった筈のそれが、何故か今は眩く思える。
「あれが、盾としての機能を……」
「一体何故……?」
「本当に、あれが?」
荷物を運ぶ足を止めて遠巻きに様子を窺う木人達。
そんな彼等の元へ、別の列を監督していた他のオブリビオンが迫る。
「何をしているッ! さっさと持ち場に戻れ!!」
届く怒号に身を竦める木人達。
働かない奴隷共に痛みをくれてやろうとオブリビオンがスタンガンを振り上げる。
狙われたのは年老いた木人。
偶々近くに居たと言うだけで暴力の対象となった彼に迫る無慈悲な電撃。
「させるか!!」
今度はスタンガンが受け止められるだけでなく、オブリビオンの身体までもが弾き飛ばされていく。
「うおぉっ!?」
「どうした!」
突如宙を舞う同僚の姿に混乱するオブリビオン。
彼等が見たのは、漆黒の甲冑『魔鎧シャルディス』を纏った大柄の騎士。
騎士は展開させた【盾】を構えながら、高らかに宣言する。
「我こそは黒竜の騎士、ガルディエ・ワールレイド! 猟兵の使命と騎士の誓いに懸けて、この世界と人々を守り抜いて見せよう。かかってきな、オブリビオン共!」
堂々たるその威容に思わず気圧されるオブリビオン達。
三対二。
形勢は此方に不利と悟ったオブリビオン達は即座に腕を回して手近な場所に居る木人を人質に取ろうとする。
「させないわ」
「卑怯者めー」
伸びる腕を打ち払ったのは、二人の姉弟。
フィオリナ・ソルレスティアとフォルセティ・ソルレスティアだ。
二人共、その手に【盾】を展開させている。
想定していなかった猟兵の出現に、オブリビオン達は驚愕を深める。
「猟兵が五人だと……!」
「あんな玩具で……クソッ、舐めやがって!!」
ガルディエに弾き飛ばされた方のオブリビオンは一早く立ち直り、伸びる腕とスタンガンで攻撃を仕掛けてきた。
それを防ぐのはアルフレッドだ。
木人を庇う様に前に出た彼の動きにオブリビオンはほくそ笑む。
狙いは【盾】の側面を潜り抜けての一撃。
最初は驚いたが所詮目晦ましの子供騙しだ。
あんな小さな盾で変幻自在のこの攻撃を防ぎ切れるものかよ、と嘲りを抱く。
しかし、その考えは一蹴される。
伸び行く腕の軌道を読み切ったアルフレッドはニヤリと笑って意志を束ねる。
「何かを護る意思か……!」
聴こえて来た言葉に木人達は目を見開く。
護ると言う強い意志。
それは【盾】を扱う時の心構えとして伝わってきた言葉だ。
何故猟兵の彼等が、と言う疑問と共に心の奥底から何かが浮かび上がってくる。
まだ言葉としての形を持たない、けれど確かな熱を持つ何か。
思考が沈みそうになった彼等の耳朶を、アルフレッドの声が打つ。
「俺が猟兵になった理由がまさに『誰かを守るため』だ!」
瞬間、視界に光が広がっていく。
胴を覆う程度の大きさだった【盾】がその身を広げ、大盾として展開する。
「なんっ……!?」
思惑は外れ、展開した【盾】に攻撃を弾かれるオブリビオン。
バランスを崩したその隙を狙って、ライアが真っ直ぐに懐へ飛び込んで行く。
「ふっ。オーケーやってやろうじゃないか!」
彼女も【盾】を展開したままで意志を束ねていく。
輝きを増したそれは強固な武器となる。
勢いのままに、ライアは装備した【盾】ごと右腕を振り抜いた。
「がっ」
鈍い衝突音と共にオブリビオンが口から呼気を漏らす。
腹部へと吸い込まれた一撃が肺を押し潰し、その身体を僅かに浮き上がらせている。
「守りきる覚悟はあるかって? もちろんさ!」
ライアは更に一歩踏み込みオブリビオンの左脚の爪先を踏み付ける。
痛みに硬直した所へ勢いを乗せた左肘を叩き込み、身体を沈ませる様に叩き付けた。
受身も取れずに背中から地面へと落ちるオブリビオン。
走る衝撃に思わず状態を起こしてしまう。
そこを狙って、再度シールドバッシュを見舞う。
「ぐあっ!?」
ゴムマリの様に弾き飛ばされていくオブリビオン。
「うわあっ!」
「さ、下がるんだ! 彼等の邪魔になってはいけない!」
飛んできたオブリビオンに驚き、コンテナの裏や施設の中へと逃げていく木人達。
蜘蛛の子を散らす様に、と言う表現が似合う程の早さだ。
もう一方のオブリビオンはと言うと、フィオリナとフォルセティの姉弟に追い詰められていた。
「盾って防御のイメージだよね。でも使い方次第では攻撃にも使えるんだ。せっかくだからやってみるよ!」
「盾を使っての攻撃、か。あまりやったことないけど、やってみる価値はあるわね」
姉弟だけあって、コンビネーションは抜群だ。
フィオリナが先んじて突撃しオブリビオンの攻撃ごと弾いてバランスを崩し、フォルセティがその隙を突いて攻撃を仕掛ける。
ユーベルコード【ディオス・デル・ビエント】で強化を施された【盾】による殴打の一撃はオブリビオンの身体にじわじわとダメージを蓄積させている。
相手も上手いものでインパクトの瞬間に身体をゴム状に伸ばして衝撃を逃がしている。
だが、積もり積もっていくダメージは誤魔化せない。
如何にか攻勢に出ようと仕掛けてはいるが、生半可な攻撃はフィオリナに防がれる。
時折鋭い一撃を見舞う事もあるが、その時は必ずガルディエが入れ替わる様に前に出て鉄壁の防御を遺憾無く発揮していく。
「この盾をっ、その程度で破れると思うなっ!」
裂帛の気合と共に打ち払われ上体が大きく揺らぐ。
即座にフィオリナが前に出て、フォルセティが追撃を叩き込む。
巧い連携に反撃の糸口を掴めないまま消耗していくオブリビオン。
そんな彼等の戦いを、物陰から木人達が見守っている。
「五分以上、いや、オブリビオンを着実に追い込んでいるぞ」
「あんな【盾】で……」
「いや、昔はあのような輝きを持っていたんだろう。私達がオブリビオンに、不条理に抗う意志を捨ててしまっただけで、あの【盾】はずっと輝き続けていたんだ」
「誰かを護る、強い意志、か……」
遠巻きに眺めているだけだった木人達。
彼等の心に、形容し難い熱が生まれ始めていた。
良く解らない、しかし決して不快では無いその思い。
「お前達の魂を借りるぜ! その輝きをよく見ておきな!」
鋭く響くガルディエの声。
自分達へと向けられたその声にハッとした様子で目を見開く木人達。
「これでも一応、騎士を名乗ってんだ。簡単には退けねぇな」
先程よりも強く、意志を束ねていく。
護る。
ただそれだけを思い、前へ。
金色の輝きが広がって行き彼の持つ【盾】の中心に、光の刃が生まれる。
「おぉ……!」
「あれは、まさか……」
「護る者の証……!!」
木人達は輝きの中に生まれた光の刃に瞠目する。
彼等の扱う【盾】には、強き心を持つ者だけが扱う事の出来る刃についての伝承が遺されていた。
オブリビオンに支配され誇りを失い世代を重ねた彼等にとっては御伽噺の様なもの。
しかし、それは夢物語ではなかった。
輝く刃を構え、ガルディエが【盾】を振るう。
「ぬぐっ!!」
咄嗟に腕を引き戻そうとするが間に合わず、オブリビオンの左腕は光の刃に切り落とされた。
その光景にどよめく木人達。
だが彼等の驚きはまだ続く。
「ボクだって負けてないよ」
フォルセティが【盾】の中心に光の刃を形成してみせる。
「絶対に護って見せるわよ」
フィオリナも一拍遅れて、より強い輝きと共に【盾】から刃を伸ばしていく。
島の皆を護ると強く意志を込めた弟。
弟と島の人々を護ると強く意志を込めた姉。
ほんの僅か、フィオリナの方の刃が大きいのは姉としての慈愛によるものだろうか。
「くそがっ、猟兵如きにやらせるか!!」
左手を失ったとは言えまだまだ動きの衰えないオブリビオンは右腕に持ち替えたスタンガンを叩き付けるように伸ばしてくる。
先に反応したのはフィオリナ。
「そんな攻撃当たらないわよ。防げ、アイギスの盾よ!」
構えた【盾】に自身のユーベルコード【アイギスの盾】を重ね合わせる。
より強固になったそれは、最早オブリビオンの攻撃等受け付けない。
軽く弾いた所で伸びた刃を巧みに這わせ、右腕も切断する。
「ぐわぁぁぁっ!!?」
痛みに仰け反りつつ距離を取ろうとするオブリビオン。
だが此処で逃す筈も無い。
「えいえい、とりゃー」
フォルセティが素早く突っ込み、オブリビオンの両膝を斬り付けていく。
機動力を奪われ片膝を付くオブリビオン。
背後へ回った姉弟と騎士は互いに視線を交わし、同時に駆け出す。
「切り裂け、刃よ……!」
「止めだよ!」
「護る者の証、その身で味わえ!」
正面と左右後方から迫る刃が同時にオブリビオンの身体を貫く。
「馬鹿な……」
小さく咳き込み、オブリビオンの体は灰となりさらさらと崩れ落ちていく。
積もった灰はやがて空気清浄機に吸い込まれ、その痕跡さえ消し去られてしまうだろう。
構えを解き、息を吐く三人。
その勝利を横目で見届けたアルフレッドとライアは残るオブリビオンへと意識を戻す。
手早く片付けても良かったが、今回の目的はオブリビオンの排除だけでは無く木人達に再び立ち上がる勇気を取り戻させる事。
彼等の武器であるこの【盾】を用いての圧倒的な勝利が、彼等の誇りを呼び戻す何よりのものであると二人は正しく認識していた。
「ええい、おちょくりやがってぇ!!」
そんな抑えた立ち回りに業を煮やしているのは相対するオブリビオンである。
明らかに自分を脅威と見ておらず、横目で一方の決着を見守りながら適当にあしらって来ると言う侮辱。
木人達を支配していた筈の自分がこうも見下されてなるものかと、オブリビオンは怒りを募らせていた。
とは言え、如何に憤怒に塗れてもその攻撃が届かねば意味は無い。
「そろそろボク達も本気で行こうか! 皆、見てて!」
ライアは隠れながら戦いを見ている木人達に笑い掛けて、右手の握り手を頭上に構える。
幼少の頃から口にしていた言葉。
ヒーローになりたい。
託されてきた想いを胸に、彼女は願う。
「ボクは英雄であることを、ヒーローであることを……」
護る。
護ってみせる。
強き想いは力となり、輝きを伴って形と成す。
「なにっ、お前もその妙な力を……!?」
輝く【盾】の中心から伸びる刃に、オブリビオンが声を上げる。
じっくり観察する余裕は無かったとは言え、もう一方の戦いは視界に入っていた。
いつまで経っても刃の形成を行わない事から若しやこいつらは使えないのではと一縷の望みを持ってはいたが、それも見事に裏切られる。
「俺もやるぜ!」
アルフレッドも畳み掛ける様に【盾】の刃を展開していく。
明朗快活をモットーとしている彼は物事を細かく考えないようにしている。
故に、その思いはシンプル。
誰かが不当に傷付けられているのなら、俺が護る。
「さあ! ……えっと……謎兵器!!」
自身の持つ【盾】へと語り掛ける。
多少締まらないのはご愛嬌だ。
「俺と一緒にヒーローズアースを護ろうぜ!」
その声に応える様に【盾】はその身を大きく広げ、中心に大きな刃を作り出した。
大海原を泳ぐ海鷂魚の如き雄大さを思わせる【盾】に満足そうな微笑みを浮かべて、アルフレッドはオブリビオンへと向き直る。
「待たせたな、オブリビオン」
「年貢の納め時ってやつだよ」
構える二人へ最大限の警戒を抱きつつ、オブリビオンは腰を落として突っ込む隙を窺う。
出来る事なら遠距離からじっくりと甚振ってやりたい所だが、装備に遠距離戦を仕掛けられるものは無い。
かと言って無闇に突っ込めばあの刃の餌食になる。
此処に至り漸くあの装備の認識を『玩具』から『装備』へと繰り上げたオブリビオン。
しかし、彼の失敗はその装備を攻撃にも使える防具だと認識していた事だ。
思考を飛ばしていたオブリビオンが気付いた時には【盾】の表面が既に眼前へと迫っていた。
「え?」
間の抜けた声が漏れる。
それを気にも留めず、ライアは力いっぱい右腕を振り抜く。
「よいしょぉーっ!!」
「がぺっ!」
珍妙な声を上げながらオブリビオンが後方へと吹き飛ぶ。
顔面を強打され視界が歪んでいるらしく、地面に倒れ込んだ後頻りに顔の前を腕で払っている。
だがそこには何も無い。
「おいおい、俺はこっちだぜ?」
声が飛ぶのは背後。
回り込んだアルフレッドが掬い上げる様に一撃を見舞う。
今度は前へと弾き飛ばされ無様に転がっていくオブリビオン。
「すごい……」
「あんなに容易く……!」
物陰から見ている木人達も、猟兵の圧倒的な力に惹かれ始めている。
そんな彼等へ声を掛ける。
「出来る筈だぜ、お前達にも」
「え?」
「この謎兵器はお前達の種族に伝わる武器なんだろ? お前達は持っている筈なんだ。誰かを護ろうとする力を、他人を想い遣り共に歩もうとする意志を。だからこそ、この謎兵器は今もお前達と共に有る」
「私達に、力が……」
アルフレッドの言葉に、自身の掌へと視線を落とす木人達。
今までは何も護れないと感じていた。
だが、この手で何かを護れるのだろうか。
「力は十分。後は踏み出すだけだよ!」
ライアが力強く頷く。
苦し紛れに放ってきたオブリビオンのスタンガンをフルスイングで叩き返し、がら空きになった胴体へパワーバッシュを叩き込む。
もんどり打って倒れた所へ、アッパーを見舞う。
とても【盾】とは思えぬ殴打の連撃に、オブリビオンは為す術も無い。
「あなた達の祖先はさ、嘗てこの謎兵器を手に名を馳せた勇敢な一族だったらしいよ? そんな人達の血を引いてるんならさ」
追撃の手を止め、ライアはニカっと笑みを浮かべる。
「やってみない? 世界の護り手ってやつをさ」
誰かの為に。
その想いを胸に力を振るい立ち上がる者を、人は英雄と呼ぶ。
ヒーローズアースに住む人々の希望を護る星と成る道。
猟兵達の戦いを通じて、彼等はその道へと一歩を踏み出す。
「……私達は強者では無い」
「オブリビオンに比肩する力も知恵も無い」
「だが」
木人達は手を伸ばす。
棚の側面、引き出しの中、街灯のパネル内、通路の上面。
それは至る所に――――手を伸ばせば届く場所に、有った。
「だが、私達は今、勇気を得た」
「大層な理念は無い」
「ただ、護る」
「家族を、友人を、隣人を」
「そして、世界を」
彼等の手の内に有る、握り手。
眩い輝きと共に【盾】が生まれる。
「な、なんだこの騒ぎは!?」
そこへやってきたのは別のエリアを監督していたオブリビオン。
此処での騒ぎを聞き付け駆け付けた様だ。
「ええい、さっさと作業に戻れ!」
いつもの様に腕を伸ばし、鞭の様にしならせてスタンガンを叩き付ける。
が、その攻撃は弾かれた。
他でもない、木人達の構えた【盾】によって。
「な……なんだとっ!?」
今までに無い彼等の反抗に驚きを隠せないオブリビオン。
「はっはっは! 良い面構えになったじゃねぇの!」
「よっし、皆でオブリビオンを蹴散らすぞー!!」
『おぉーっ!!』
アルフレッドとライア、二人の声に続いた地響きのような掛け声が、島へと響き渡り空気を振るわせる。
異様な雰囲気に気圧されたオブリビオンの元へと、木人達が【盾】を構えて殺到する。
一人一人の力は劣るものの、数の差で圧して行く。
徐々に押し込まれ、やがてオブリビオンは【盾】の海に飲み込まれて消えた。
支配され続けていた木人達の蜂起。
猟兵達の活躍を見た彼等の胸に宿った熱が、魂を燃え上がらせる原動力となる。
嘗て、銀河にその名を響かせた護り手の一族。
その名声が、今日此処から再び轟き始める。
大成功
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