アースクライシス2019⑲〜赤色の季節
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「搬入作業は順調のヨウですねえ」
赤く燃える瞳を揺らめかせて、白の人影が鷹揚に頷いた。
見上げる視線の先には、緑。緑。緑。一面の緑。
それは木々であり、草花であった。ある区画には温帯の、またある区画には乾燥帯の、熱帯の、亜寒帯の。多種多様の環境を再現した大自然の縮図。遠く離れた気候の生命が、薄板一枚隔てた隣に広がる、人工の箱庭。
搬入との言葉通り、これらは全て外部から持ち込まれたものだ。それだけならば珍しい事ではない。しかし、ここが宇宙で、この広大な植物園が宇宙船の一画だとしたら、俄かには信じ難い事だろう。それ程の距離であり、それ程の物量である。
「オロロロロ」
ああ、全く順調だ。この分ならば、十分なものを持ち帰る事ができるだろう。
頭蓋を震わせて、道化が笑う。肉の兜を持たぬ、山羊か悪魔かの頭骨が如き風貌から、口角の変化を読み取る事は難しいが、それはきっと確かに笑っていて。
その奇怪な響きは、同時に良からぬものを感じさせた。
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「ジェネシス・エイトの一人、ジェスターの居場所が先ごろ新たに発見されまして。皆様には、その討伐をお願い致したく」
クローンでなく本物の方です。グリモア猟兵のカルパ・メルカは、そう言ってグリモアベースに浮かぶ景色を示した。既に見えていただろうが、そこに映し出されていたものは馴染み深いヒーローズアースの大地ではない。その遥か上にあるもの。宇宙だ。
「今回向かう先は、ラグランジュポイントと呼ばれる文明が存在する宇宙船群。その中にある『島』の一つ、ですね。徒歩で行くにはちょっと遠い距離なので、転移して乗り込みましょう、という定番の進行になります」
アースクライシスの動静を追っていないと分からない単語が当然のように出てきたので少しばかり補足しておくが、かの戦争に関するお仕事であり。大雑把に言うと、敵集団の中でも特に強い奴を見付けたから、皆でブッ潰しに行きましょう、と。そういう話だ。
「件の『島』ですが、どうやら輸送船に改造してあるようでして。地球上から運び出したもの、獣や鳥、魚といった動物であったり、草木や鉱石であったり、天然のものに限らず機械だとか、細工だとか、とにかく沢山のものが区分けして積まれてるみたいです」
どこへ運び出すつもりなのか、それは確かでないが。十分な広さを備える積載領域は、戦闘行動を執るにあたり不都合がない、という点は確かである。積み荷が全くない状況と比べれば多少は手狭であるが、移動スペースは確保されているし、あちらにとって有利に働くステージという訳でもない。
「なので、地形情報にはそんなに意識を割く必要はなさそうな感じですね。その代わりと言うか何と言うか、ジェスターそのものがとても強いので、そちらを思いっきり意識する必要はありそうですが」
既に確認されている四人がそうであるように、この道化もまた類稀な武力を誇る強敵である。同僚たちや、あるいは過去の戦争において見られた、いわゆる幹部連中に並ぶ脅威として認識すべき手合い。より具体的に表現するならば、こちらに先んじて行動するだけの力量を持つ、【確実に先制攻撃してくる】類の手合いだ。
「力押しも、小技も、嫌がらせも、全部が全部高いレベルで纏まっているので。ユーベルコードに頼らず、いかに防ぎ、いかに反撃の為の余力を残すか、というところを対策しておかないと厳しい相手ですね。その辺りを踏まえて、上手い具合に動いて頂ければ、と。そんな形で、お願いできます?」
言うは易し、行うは難し。全く厄介な戦いだ。しかしここで逃せば、その厄介な難敵が野に放たれる結果となる。この戦争を生き延びたとして、その先何を行うつもりなのかは分かっていないが、どうせ大した事はしないと楽観視できるものではない。可能ならば、この場で叩いておくべきで。
猟兵にはそれができると、そう信じている。
井深ロド
月日の流れが早く感じます。井深と申します。
執筆の流れも負けずに頑張ります。お付き合い下さい。
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(ジェスターは必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
第1章 ボス戦
『ジェスター』
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POW : 力押しもたまには悪くないデスね
単純で重い【魔法金属製のメイス】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 古い馴染みの仲デシて
レベル分の1秒で【意志持つ魔剣『レギオスブレイド』の群れ】を発射できる。
WIZ : 別に見捨てても良いデスよ
戦闘力のない【名も知らぬ一般人の人質】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【呪詛により人質が傷つき、悲鳴や苦痛の声】によって武器や防具がパワーアップする。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラモート・レーパー
「こうするっきゃないよね」
UC対策
逃げて!隠れる!僕のユーベルコードが発動するところを見られるわけにはいかないからね。
相手の嗜虐心を煽るように逃げ回り剣供を部屋中に散開させるように狙う。
敵が僕を見失ったところでUC【万人の理想像】【夜の領域】で自分の姿と存在をレギオスブレイドに書き換える。
レギオスブレイド供に紛れて自分を探すように巡回し、ジェスターに近づいたタイミングで刺す。
軍人なんて柄じゃないだろうから整列とかしないだろうし、数も多いから一本増えても気付かないはず
緑の領域へと門が開き、猟兵達は戦場に降り立つ。
「ヨウコソいらっしゃいマシタ! ‥‥オヤ?」
芝居がかった身振りでそれを出迎える『島』の主。その目に映ったのは、脱兎の如く、反転して走り出す小さな姿。
「オヤ。オヤオヤオヤ」
凡そ襲撃者が取り得る行動の中では、予想の外に近い選択だった筈だが、はたしてこの道化は面食らっただろうか。その硬質の貌から窺い知る事は敵わない。
ただどちらにせよ、それへの反応は即時に行われた。瞬く間に、否、瞬きの更に何分の一かの間に、現出する歓待の用意。
「一体どこへ行こうというのデス?」
そしてそれは、文字通りの瞬く間が過ぎた頃には、既にその場から消えていた。
天井にまで達する巨大なケースの陰へと滑り込んだその背後で、娘の髪が数本置き去りにされた。鶴髪を裂いて駆け抜けたその飛翔体は、剣。剣だ。飛ぶ為の形ではないだろうに、弓矢や銃弾にも遜色ない速度で、更には猟犬の如き嗅覚をも持って、兇器の群体が宙を奔る。
「こうするっきゃないよね」
季節外れに咲き誇る春の花を跳び越えて、大樹の陰から棚の陰へと乗り継いで、息つく間もなく襲い来る何度目かの猛追をやり過ごすと、ラモート・レーパーは小さく呟いた。
彼女の取った手は、ひたすらに逃れて、隠れる、それに尽きる。能力の秘匿という理由を差し引いても、接近は困難に思えた。蒐集品を傷付けぬよう経路を制限しているだろうにも関わらず、大きく距離を取って尚、その攻撃は苛烈に過ぎる。剣戟の嵐を掻い潜り、喉元へと至る道筋など、そう見つかるものではない。
「カクレンボですか? それも良いデスねえ」
対する道化は、人間であれば汗一つかかずに、と形容されるだろう余裕の態度。
レギオスブレイドは意志を持つ魔剣であるが、その行動の全てを魔剣の意志が決定している訳ではない。あくまでもジェスターの攻撃手段。運用には遣い手の意志が介在する。
そして、その手腕は老練とも呼ぶべきものだった。ただ過激な遊びに興じているようでいて、その傍では不意打ちに備えた刃の一群が目を光らせている。それらも時に近付き、時に離れ、滑らかに攻撃集団と入れ替わる連携は行動パターンを掴ませない。
幼子の身で突破できるものではなく。余裕は当然だった。
「これはこれは、イヤハヤ何とも」
そして、彼女は既に幼子ではなく、それは既に人の身ですらなかった。
ズブリ、と。不快な感触が両者に伝わり、道化の腹部から異物が生える。
それは、魔剣。曰く、古い馴染みであった筈の。
「いかなる手品デショウか?」
いつの間に。驚きつつも、未だ態度を崩さぬその後背で、黒刃は更に奥へと滑る。その猛威は存分に味わった。故に、ラモートが扱いを誤る事はない。
返答は力を以て。黒鉄へと変じた猟犬の牙が、静かにその傷口を拡げていく。
大成功
🔵🔵🔵
大豪傑・麗刃
強烈な攻撃なので直接くらいたくないし、ギリギリでかわすのも怖い。余裕で回避したい。
存在感を持った残像をばらまきながらのフェイントを絡めたダッシュ!これで疑似的な分身の術を行い、わたし本体から敵の目をそらす。
でユーベルコード勝負になったら。
敵は道化、ネタ勝負はむこうの領域かもしれないが、わたしも一個の変態として負けるわけにはいかん(無駄な義務感)
ここは新技を使うのだ。
マンチェスターくんとやら!
こんな所に植物が大量にあるとは驚きなのだ!
まさにショックなブツではないか!
なんちゃって。
そしたら敵に大量のショックを与えるマンチェスター由来の植物が出てくる……で、いいのかな。新技なので正直手さぐりなのだ。
道化、宇宙船、植物園、そして闘諍。これらが一つの線で結ばれた要素だとは凡慮には及ぶまいが、しかしそれは正しく現実の光景であった。そして今そこに加えられた武骨で歪な球体もまた、現実のものである。
棒の突き刺さったその玉は、端的に言えばメイスの一種であったが、棍棒の類型として一言で片付けるには聊か巨大であり、しかし道化はその重量を感じさせる事なく、まるでビニールボールでも持つかのような気軽さでそれを振るった。勢いに相応しい衝撃が響き渡り、植物保管庫の通路にクレーターが穿たれる。考えたくもない話だが、こんなものがもし人体に当たったならば複雑骨折どころでは済まなかっただろうし、実際のところ直撃を喰らった大豪傑・麗刃は当然のように潰れて散った。
「フム、外れデシタか」
否、それだけは現実の光景ではなかった。凄惨な殺人現場にはただ、塵と消えた幻影の残り香が漂うのみ。
大豪傑・麗刃のクローン、もとい残像の消失を見届けて、相対的に存在感を抑えていた本体の麗ちゃんは正直引いた。ギリギリで躱すのは怖いと思っていたが、余裕で避けても割と怖い。あんなのを当てる気なのか向こうは。やめてくださいしんでしまいます。
さて、ともあれ回避は成功である。今度はこちらの番だ。かの殺戮道化師の目を自分に向けるのは中々にぞっとしない話だが、盛大にばら撒いた残像を向こうは順々に減らしていく構えと見た。疑似分身術に掛かる手間からすると先に息切れするのはこちらであり、このまま敵の目を欺き続けたところで結末は決まっている。お茶の間に流せないモザイク映像にされる前に、攻勢へと転じねば。
「マンチェスターくんとやら!」
「はいはい、何デショウカ?」
意を決して呼ばわると、思いの外、普通の言葉が返った。道化とは人々を笑わせるのが仕事だと聞いたが、誰がマンチェスターやねん、みたいなノリツッコミは来ないらしい。ほほう、この様子ならネタ勝負はわたしの勝ちだな。そう内心でガッツポーズを決める。ちょっと調子が出てきた。この勢いで畳み掛けるべし。
「こんな所に植物が大量にあるとは驚きなのだ! まさにショックなブツではないか!」
「‥‥」
言葉は返らず、沈黙が世界を支配した。
「‥‥なんちゃって」
誤魔化しの言葉が暫しの静寂を破った。別にいたたまれない空気に屈したとかそういう訳ではない。断じてない。ただ、笑うべきか否か決めかねていたジェスターがそろそろ再起動しそうな気配があったから、どうにかして今少しこの場を保たせる必要があった。
先の冗句により、マンチェスター由来っぽい何か凄い植物的なヤツが呼び出される予定なのだが、何しろ本邦初公開の新技である。どんな感じで出てくるのかよく分からない。何故にそんな技をこの大事な局面で使ったのかも余人にはよく分からなかったが、そこはそれ、彼は変態であり、変態とは常に勝負師であり、挑戦者であるから仕方がない。
そして。再びの静寂が終わろうかという時、それは姿を現した。
それは確かに多大なるショックを与えるものであり、それは確かに植物であり、それは確かにマンチェスター‥‥は特に関係なかった。よくよく考えるとマンチェスター部分はあんまり駄洒落に掛かってなかった。
さておき、それは怪物であった。鮮やかな花を頭頂に戴き、伸びる蔦からは牙が覗く。どこぞの特撮映画で見覚えがあるようなないような、そんな感じのアレだ。言語遊戯とは通用する地域が限定されるものであるから、その辺の情報が参照されたのかもしれない。違うかもしれない。まあ重要なのは敵に通用するか否かである。他は些事だ。忘れよう。
「■■■■■!!」
「オロロロロ。いやはや、コレハコレハ」
静寂を引き裂いて、埒外の具現たるそれが吼えた。愉快そうに道化が笑う。
床板が震えて、触手が風を切りながら獲物へと群がったのが開戦の合図。仔細な描写が憚られる感じの、怪獣大決戦が今、始まる。
成功
🔵🔵🔴
九条・救助
ああ。見捨てるよ。
俺は『ウェンカムイ』。あまねく命を滅ぼす悪神の血族。
お前を殺す。それだけだ。
……ブラフが通用する相手ならいいんだけどね。
だが、狙いは別だ。
この腕に巻きつけた【贄の印】は、他人の呪いを肩代わりして死んだ聖人の遺物だ。呪詛を受ける贄の印だ。
喋っている間にその力を示す。即ち、呪詛によって傷つく対象を……俺に移し替える。
全ての傷は俺が受ける。
【神格共鳴】!
氷矢で牽制しながら飛翔し、最大速度で突っ込みクトネシリカでの打撃戦を挑む
だが一筋縄ではいくまい。呪詛にて傷は俺にも返る。時間はかけられない
傷口からハウルブラッドを生成。これでとどめを刺す!
この傷が、この痛みが、この血が俺の武器だッ!
「怖いデスねぇ。そのヨウなお顔をされては」
真夏の炎天の下のように、青々と茂る木々の列。見事なものデショウ、と嘯く主人は、しかし同意を得られず、ならばと話題を変えた。よりヒーロー向けの話題に。
「こういった表情の方がお勧めですが、如何デショウ」
「ひっ‥‥!?」
赤々と燃える視線の先には、身を竦める一人の少年。居合わせた猟兵もまた少年と定義される年齢であったが、それよりも更に一段、いや二段は年若く。何よりも、戦地を渡り歩く彼らとは正反対の、平穏に身を置く正真正銘の一般人。
無論、少年がただの観客である筈はない。ジェスターは彼を舞台の上へと連れ込んだ。即ち、人質として。あるいは生贄として。パフォーマーとして。舞台装置として。
「見捨てても構いマセンよ?」
悪辣なる道化は平然と、普段と変わらぬ様子で語り。
「ああ。見捨てるよ」
ヒーロー、九条・救助も冷徹なる仮面を崩さぬまま、変わらぬ様子で応じた。
彼の名はウェンカムイ。アイヌ語に曰く、悪しき神。人喰いを覚えた獣の名。あまねく命を滅ぼす、荒ぶる神の血族。
「お前を殺す。それだけだ」
冷気の矢が風を切り、掠めた枝木に氷の華が咲いた。狂う環境を整えんと空調が叫び、しかしそれを捩じ伏せるように、更なる寒気が場を満たす。
そしてその中心には、凍て付く翼を広げた悪神の姿。牽制の飛礫を追い抜こうかという勢いで疾駆するその威容は、正しく神の名に違わぬもので、その強烈なる一撃は、過たず道化の顔面へと叩き込まれた。
「コレハコレハ、お優しい!」
己が身に刻まれたダメージへ、あるいは彼の身に刻まれたダメージへと、道化は感嘆の拍手を送る。そう、彼の身に。無辜の民へと突き立てられる筈の呪詛の牙は、ヒーローの肌を抉り、裂いた。九条の腕で赤黒い布が揺れる。あらゆる呪いを一身に引き受ける、贄たるものの証が。
ブラフが通じたのか、それとも知っていて見逃したのか。ともあれ一手、策を封じた。遠巻きに見守る少年を横目で見遣る。呪詛で嬲る為の生贄を、それ以外で擦り減らす事は本意でなかったのか、どうやら打撃戦を挑む限り巻き添えの心配は必要ない。
氷の杖が唸りを上げた。槍か氷柱かと見紛わんばかりの穂先が、罅割れた骨頭へと更に一筋の傷を増やして、返る呪詛が同じだけヒーローを蝕む。時間は掛けられない。苦悶の声による能力強化こそ潰したが、呪詛による被害がなくなる訳ではない。何より、補助がなくては満足に戦えぬような愚物が、原初の神や恐怖の王らと同列に語られる筈もない。
「オロロロロ!」
敵は既に、十全に怪物なのだ。ただの腕が絶対零度の猛撃を跳ね除けて、ウェンカムイの総身に詛呪が爪を立てる。
道化が笑う。少年が叫んだ。
「この傷が」
曰く、英雄とは、平和の為の贄である。
では、贄とは何か。何の為の供物だろうか。無意味に消費されるだけのものなら、誰も好んで捧げはすまい。ただ相手を満足させるだけではなく、脅威を鎮めてこその、贄。
「この痛みが」
贄の印をはためかせて、悪神が笑った。何も道化だけの十八番ではない。正義の味方もまた、笑うものだ。民衆を勇気付ける為に。少年が見ている。傷は多く、深いが、まだ、できる事があった。
「この血こそが」
俺の、武器だ。傷付いた喉の代わりに、心が叫んだ。その身を赤く染めて尚、雪と氷の悪神の凍気は止まる事を知らず、迸る鮮血を刃へと変える。
流れた血が、応報を訴えた。真紅の剣が奔り、道化を同じ赤に染める。
成功
🔵🔵🔴
日向・史奈
何をするつもりなのかは分かりませんが…罪のない人を傷つけて、盾にして何とも思わないようなあなたのことは、何としてでもここで倒してみせます
剣を大量に発射してくることへの対策ですか…
それなら、分身を召喚して数人がかりで巨大な水流の壁を作って少しでも当たらないようにしましょう。
壁を作るには範囲攻撃を使ってみましょう
いくら数が多くとも、当たらなければチャンスはあるはずです…!
先制攻撃をやり過ごせたら反撃に転じます
分身と共に全力魔法で炎の竜巻を一斉に放ちます
猟兵達が幾度か刃を交わすも、未だジェスターの真意は見えない。お喋りとも呼ぶべきその言動はしかし、つまらないやり取りに費やされるばかり。一体何故この戦争に乗ったのか、これらの蒐集品は何の為に集めたのか、分からない事ばかりだ。
しかし、分かっている事が一つある。ヒーローの少年により呪いの縛りから解放された人質を安全圏まで運び、日向・史奈は静かに告げた。
「罪のない人を傷つけて、盾にして何とも思わないようなあなたのことは」
「心外ですねぇ。とてもとても、心苦しく思ってオリマスよ?」
言葉を遮り、道化が笑った。本心ではあるまい。その表情は変わらず読み取れないが、しかし、半人前の少女でも明確に嘘だと察せられる程には軽薄な声色。容姿や物腰を理由に彼女を軽んじている様子ではない。いかに睨め付けようと、いかに相手が禍々しい異形であろうと、この態度は変わらないだろう。どうやらこれはそういう手合いだ。
「何としてでも、ここで倒してみせます」
絶対に、討たねばならない。確信を深めた娘から、太陽の如き光が溢れ出た。
それは大自然、あるいは宇宙の根源と呼ばれる力。魔なるものと表現される不可思議な力の奔流は、科学の箱庭を混沌の檻へと作り替えた。天井で待機するスプリンクラーとは比較にならない、滝の如き水流の防壁が一つ、二つと姿を現す。いかに術の範囲を拡げたとて完全防備には至らないが、遣い手自体を増員してしまえば話は別だ。埒外の力が自己の幻像を実体とし、四方を塞ぐ水の砦が瞬く間に完成した。
レギオスブレイドは恐るべき魔剣だが、あくまでも刀剣である。変幻自在に飛び回ろうと、その質量がある限り水圧の顎から逃れる事はできない。いかに数が多くとも、いや、数が多ければ猶更に水の牙の餌食が増えるだけだ。そして少数の攻撃であれば、回避の、反撃のチャンスはある。
――では、多数ならば。
少女の繊手を不愉快な感触が撫でた。何が、と考えるまでもない。魔剣だ。それは既にそこにいた。水の砦、あるいは牢獄の中を小さく周回する兇刃が一、二、三。それ以上を数える余力はなかった。いつの間に、と。これもまた考えるまでもない。城壁が破られた形式はなく、ならば潜り込む機は一度だけ。瞬く間の築城では、どうやら遅い。
威嚇するように刃の羽をぶつけ合い、鉄の鳥が啼いた。
金の瞳へ映り込んでいた水色が散ると、代わりとばかりに鮮やかな血色が滑り込んだ。
対策を誤ったのか。いや、今考えるべきはそれではない。答えが然りであれ否であれ、やるべき事は決まっている。何としてでも、そう言ったのだ。新米、不測の事態、そんなものは言い訳にもならない。半人前であろうとも日向・史奈はヒーローである。
叡智の杖に、血よりも赤い暴力的な光が灯る。一つ、また一つ。数は力だ。自身がそうしたように、道化の古い馴染みがそうであったように。だから今回も彼女はそうしたし、よく似た誰かも同じ考えで応えた。
そして。
「いやはや。流石デスネ、全く!」
炎が、爆ぜた。火災旋風が怨敵を包み、その頭上で散水機が弾けて飛ぶ。
はたして反撃は成ったのか。聞こえた言葉は本心なのか、それとも皮肉なのか。そんな思考が頭を過り。答えに至る直前、疲弊により少女の意識は刈り取られた。
苦戦
🔵🔴🔴
シャオ・フィルナート
過去の経験で身に付けた【激痛耐性】と
★氷の翼で身を包むことによる防衛
翼の隙間から★氷麗ノ剣で放出する水の【属性攻撃】での攻撃相殺狙い
出来れば、本人にも水、被せたいね…
俺の翼は…周囲に水さえあれば、何度でも再生出来る…
防ぎきれない攻撃はいっそ無視
凌いだら【暗殺】技術を活かした素早さと
★死星眼の【催眠術、生命力吸収】で敵の機動力低下+自己回復を狙い
【先制攻撃、早業】の斬撃
俺が操るのは…水だけじゃないよ…
翼から氷の弾丸を【一斉発射】し攻撃+放出した水を凍結
足場を滑りやすく+本人も凍結して隙を作り【指定UC】
武器を対の★罪咎の剣にすれば、武器ごとの攻撃回数が9倍…
寿命はどうでもいい…
手数で、倒す…
水音が響いた。大きく、小さく。鋭く、鈍く。高く、低く。不規則に、連続して。打ち付けるように、擦り付けるように。
無論、ただの雨垂れではない。いかに空が気分屋だとて、一処でこれだけの表情を同時に見せる事はそうそうなく、何よりここは雨雲よりも遥かに高い天上の世界であり、故にそれは雫などではない。それは剣の群れ。曇天ではなく、道化から零れ落ちた刃の雨。
「面倒‥‥」
翼の傘を掲げて、悉くを射殺さんと荒ぶる驟雨の下を少年は歩む。飛礫が皮膜を叩き、水晶の如き透明が白く濁ったのを見咎めて、シャオ・フィルナートは僅かに目を細めた。
全く煩わしい。薄ら氷の守りが見目より堅牢と知れば、一点集中の連撃で突破を図り。羽に沿わせて受け流せば、露出する肌へと狙いを移す。両翼を組み替えて進路を阻めば、道化は隙間の位置の変化に合わせて氷剣の射線から身を躱した。
そう、煩わしい。ひたすらに面倒であり、しかしその考えは、痛いでも、手強いでも、恐ろしいでもなかった。少年はともすれば不機嫌とも取られる能面のような顔を崩さず、しかし戦況はその印象程に悪くはない。防護膜に罅が入ったが、瑣細な事だ。誰が暴れた結果かは知らないが、破損した消防設備から水流が漏れ出ている。それを掻き集めれば、風切羽はすぐさま元の輝きを取り戻した。周囲に水さえあれば、氷翼の覆いは無限に再生できる。水の供給は無限ではないが、宇宙である事を思えば望外に潤沢。空気中の水蒸気のみが利用可能な全てであれば、距離を詰める前に使い切っていた事だろう。
状況は順調に推移していた。一方的に攻め立てられているようでいて、しかしその何れもが決定打には届いておらず、そして既に反撃は始まっている。
「オロロ、ロ?」
死の星が黄金に瞬いて、凍て付く弾丸が風を切る。押しているかに見えたジェスターの身が、傾いだ。
此はイカナル妖術でしょうか、そう口にして、答えに至る前に道化は思考の中断を余儀なくされた。中性的な少年、あるいは少女が眼前に迫っていたからだ。
その動きは静かで、穏やかで、しかし速い。自在に空を舞うヒーローのものとも、獲物に跳び掛かる獣のものとも、速度を競うアスリートのものとも違う。もっと冷たく淡々とした殺しの歩法が、道化の足を封じる冷氷の床を、スケーターのように難なく進み。
「俺が操るのは‥‥水だけじゃないよ‥‥」
一歩を歩むと、その倍の銀光が閃いた。水でないもの、罪科の名を冠する双刃が奔る。捻じ曲がった頭角の先端が、玉飾りごと欠けて落ちた。もう一歩。三色の衣装から、胸を彩る赤と黒とが削ぎ落とされる。一歩。更に一歩。手数で倒す、その言葉の通り、剣嵐は徐々に速力を増して。
「オロロロロ!」
そして。シャオの身が、揺らいだ。
足場の変化も触れなければ意味はなく、己の意志で宙を舞う魔剣は、攻めへと転じる際に生じた翼の隙間を見逃さない。
少年の失敗は、自身の怪我に無頓着であり過ぎた事。痛苦への耐性は被害の無効と同じものではなく、生命力の回復は損傷の再生と同じものではなく、何よりも、ジェスターは凡百のヴィランと同じものではなかった。ジェスター、そしてジェネシス・エイトとは、クライング・ジェネシスに次ぐ最上位の八人。適切な戦術、十全の用意、磨き抜いた力と技、全て揃えただけで勝利が確定する程に、生ぬるい相手ではない。
夜闇の色の装束が、内から溢れるもので赤黒く染まった。道化が笑う。
しかし。
「どうでもいい‥‥」
道化の失敗は、少年が尚その姿勢を貫いた事。寿命すら歩みを緩める理由にはならず、ならば多少の、否、多々の傷でも何の障害にもなりはしない。身体機能が落ちたならば、それを補えるまで余力を絞り出すだけの事。
少年の肌は病的な程に白さを増して、しかし、その手足は今日一番の動きで応えた。
風向きは変わり、刃の雨が道化へと降り注ぐ。
苦戦
🔵🔴🔴
ソラスティベル・グラスラン
ここでは植物を集めているのですか……
本当に、統一感なく色んなものを集めているようですね
文化、生物、娯楽、何がしたいのか全くわかりませんが
きっと善きことではないのでしょう!【鼓舞】
【盾受け・オーラ防御】で守りを固め、
大振りを【見切り】、激突の瞬間に合わせ【怪力】をぶつける
あとは【気合】で補います!
『たまに』の力押しでわたしを倒せると思いましたかっ
わたしはいつだって、全力全開で力押しですよ!
漲る【勇気】のままに受けきった瞬間、盾を滑らせ一気に懐へ【ダッシュ】
全ては世界を覆わんとする邪悪に大斧を叩きこむ為
前へ、只管に前へ
応えて、蒼空の伝令よ!雷齎す、蒼き竜よ――ッ!!
メテオラ・エルダーナ
見つけました、悪逆非道のオブリビオン!
その禍根、この戦いで一切断ちますっ!!
超速で襲い来る魔剣の群れ、捌き切らなきゃ勝機はありません!
【ダッシュ】【ジャンプ】【スライディング】、持てる身体能力と意識の全てを剣の回避に集中します!
後ろから刺されないよう、剣に囲まれないよう動きましょう!
それでも無理なら【オーラ防御】で軽減です!
…回避で手一杯と見れば、攻めに来るはず。
守りを緩めてトドメを狙いに来る時…「敵と私の間に何もない一瞬」が勝機です!!
【全力魔法】【範囲攻撃】『ライトニング・スパイク』!
衝撃波で剣を弾き、敵との距離を一気に詰めて魔法剣での一撃を仕掛けますっ!!
(アドリブ・連携歓迎です)
戦闘の余波によるものか、全面に蜘蛛の巣模様が刻まれたガラスケースの奥で、赤い花が咲いていた。生まれた世界の知識が当て嵌まるならば、見たところ北の大地で生育するものとはやや異なる、恐らくは温暖な土地のものだろう。
そういうものを持ち帰らんとするだけなら理解もできる、が、どうやらそうではない。知る限りでも、この戦場の外には水晶を集めた区画があり、コンピュータゲームを集めた区画がある。あらゆるカテゴリを網羅するにしては、重複に拘らないところがあり、時に一つの小区分に執着するきらいも見られた。あまりに雑多で、法則性を欠く。何がしたいのか全く分からない。ただ。
――きっと、善きことではないのでしょう。
ソラスティベル・グラスランは、そう結論付けた。ならば、やるべき事は一つだ。自らを奮い立たせて、勇者が往く。
その目的が善きものに非ずとも、それに連なる全てが悪しき影響を及ぼす訳ではない。少なくとも今この瞬間に限っては。
長刀が奔り、剪定された枝木が更に半ばまでその丈を縮める。ショーケースの外骨格がバターのように切り裂かれた。落下する天板は三連の短刀に撥ねられて、細切れとなって床へ散る。羽ばたく呪剣の何れもが必殺の威力を内に秘めて、しかし未だ秘されたまま、眼前の獲物を膾に刻み分ける機を逸し続けていた。敵は猫の如くしなやかに樹上を跳び、壁を蹴り、草むらを潜る。
その猫のような、実際に猫であり、より正確に表すならば猫と猫と猫のキマイラであるところのメテオラ・エルダーナは、追撃の気配を感じ取って次の木へと逃れた。どうやらこのフィールドは娘と相性が良いらしい。身に宿す猫の遺伝子は縦の動きに強く、何より生粋のキマイラフューチャー育ちには、飛んで跳ねるパフォーマンスは日常のもの。剣群は恐るべき速度と精度、加えて連携を以て襲い来たが、二又の尻尾が掴まる様子はない。今のところ、否、きっとこの先も。故に。
――来た。
痺れを切らしたのか、はたまた遊びに混ぜて貰いたいのか、何にしても期待した通り。ゆらりと、ジェスターが一歩を踏み出した。
一歩。そう、一歩だ。道化が踏み出したのは一歩だけ。
「おやおや、熱烈デスネ?」
しかし既に、優に十歩を越える彼我の距離が消えていた。超速を誇る殲火剣嶽の生ける兇器、その悉くを置き去りにする神速は正に稲妻の如く。護衛に控えさせていた一群は、伴う衝撃を浴びて遥か彼方に。
「悪逆非道のオブリビオン!」
吐息が鼻先に掛かろうかという距離から声が届いた。顔の位置がそこならば、手にした得物は当然それよりも近く。おやおや、と道化は今一度繰り返した。見れば、先の攻防で削られて白一色になった衣装の胸部に、また彩りが添えられている。光輝く剣の色が。
「その禍根、この戦いで一切断ちますっ!!」
猫又が叫んだ。応えるように光刃が荒ぶる。身体の内部から爆ぜる感覚。火と、光と、雷と、あらゆる魔力が疵口から噴き出し、猛り狂う。
「オロロロロ!」
灼かれながらも道化が笑った。表情は相も変わらず無機質なまま、その意図を読み取る事は困難だったが、しかし続く言葉が、少なくともそれが諦めからは縁遠いものであると告げていた。
「たまには私も、力押しで参りマショウか」
道化は未だ、愉しみを放棄するつもりはなく、新たな得物をその手に掴んだ。
彼の元に現れたそれは鉄球、あるいは鉄塊とも呼ぶべきもの。魔術への理解が、それが魔法金属の装具だと少女へ伝えていたが、きっと問題はそこではなかった。ただ、巨大。それがただの鉄であれ、石であれ、恐らく結果に大差はあるまい。大雑把な塊はそれだけで既に兇悪で、人を殺すに余りある。
超加速は一瞬のみ。瞬後の隙を叩くべく、金属塊が持ち上がった。そして。
「たまの力押しが通じると思いましたかっ!」
碧色の衣をはためかせて、勇者が降り立つ。
叩き落とされた戦棍は、しかし肉塊を作る事なく。燃える道化の眼が、恐らくは驚きを以て瞬いた。攻撃を逸らした訳ではない。勢いが乗る前に止めた訳でもない。魔法金属の輝きがオーラの干渉を告げていたが、魔力の働きは僅かばかり。
抗ったもの、その正体は膂力。十二分に真価が発揮された会心の瞬間に、それは怪力を以て真っ向から受け止めた。
「わたしはいつだって」
暁色の長髪を揺らして、介入者、ソラスティベルが吼えた。その足元から四方へ亀裂が拡がって、床下に隠された配管が悲鳴を上げる。樹木へと送られる筈だった養分が噴水となって吐き出された。それ程の衝撃が全身を貫いて、しかし拮抗は崩れない。その痩身に一体どれだけの力を秘めているのか、高所の優位を譲って尚、黒竜の盾はハンマーを押し止め続けて。
「全力全開で!」
そして遂には、それを押し返し始めた。
継続は力だ。たまに、しか使わない相手に劣る程、勇者はやわな鍛え方をしていない。否。常にそうしている相手にさえ、彼女の意気は負けはしない。
「力押しですよ!」
気勢と共に鉄鎚が跳ね上がった。力比べが決着し、戦いは次の段階へ移行する。鎚鉾の瘤をバックラーで滑らせて、竜の仔は一歩を踏み込んだ。どうする気か。決まっている。力押しだ。邪悪を討つべく、物語に謳われる英雄のように、前へ。
「応えて、蒼空の伝令よ!」
空色の戦斧が、青白い輝きを宿した。
先に見せた並ならぬ力よりも、更に一歩常識の外にあるもの。埒外の暴威。巨大なる斧の内にも収まり切らない膨大なエネルギーが、雷光となって溢れ出る。
ジェネシス・エイトの実力を以てしても受け止められない怒涛。気圧されたか、道化の身が揺らぐ。否。
「マサカこれ程とは。全く、堪りませんね!」
その声には未だ聊かの翳りもない。たまの力押しで及ばないなら、普段通りのスタイルへと戻るだけだ。尋常ならざる力も、当たらなければ脅威にはなり得ない。着弾の瞬間、有効射程から半歩外へ。
しかし、勇者に動揺はない。何故なら、もう一つの雷が見えていたから。
「一切を断つと」
このフィールドはメテオラと相性が良かった。婉曲な表現はもはや必要ない。この木々が道化にとって何だったのかは不明のままだが、猫にとっては視線を阻む為の壁となり、刃を躱す為の盾となり、そして今、獲物へ喰らい付く為の足場となった。
「言った筈ですっ!」
マギの呪印が術師の五体へと力を満たした。跳躍は獣を流星へと変えて、超音速の急襲が道化を穿つ。落雷に等しい衝撃が、古傷を伝い背から腹へと貫いて抜ける。道化の身が傾ぐ。半歩前へ。
竜との距離、一尺。
「雷齎す、蒼き竜よ――ッ!!」
神鳴る竜が吼え、世界が震える。
「コレハ、これは」
道化は笑おうとして、しかし成らず。白の人影は炎の赤に染まり、じきに黒へと変じて散った。辛うじて機能した消火設備が稼働して、戦いの痕を洗い流していく。終幕だ。
赤い花が、手向けのように咲いていた。
大成功
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