アースクライシス2019⑬~スライム型宇宙人を救え!
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「ついにラグランジュポイントに乗り込む事に成功したようじゃ、それでおぬしたちに頼みたい事がある」
ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)はそう切り出すと、状況を最初から説明した。
「ビームハイウェイの空中戦で制空権を奪う事に成功しての、ラグランジュポイントにたどり着いたのじゃが……」
ラグランジュポイントにあったのは、幾つもの宇宙船がぶつかってできた沢山の「島」だった。その宇宙船の島ではオブリビオンによって支配が敷かれており、宇宙人達が強制労働に従事させられているのだという。
「おぬしらに頼みたいのは、スライム型宇宙人が強制動労させられている宇宙船の開放じゃ」
スライム型宇宙人は、ベルトコンベアで流れてくるケースに自分の一部を詰め続けるという強制労働を強いられている。まさに、己を削る重労働だ――しかし、スライム型宇宙人には対した戦闘能力はない。オブリビオンに搾取される一方だった。
「この宇宙船を管理しておるのは、デュランダル騎士という連中じゃ。騎士の風上にも置けぬがな」
漆黒の鎧に身を包んだ騎士達は、スライム型宇宙人達が手を抜かないか常に3人単位での見回りを行なっている。加えてこの宇宙船には三本の巨大ベルトコンベアがあり、常に多くのスライム型宇宙人達が労働させられているのだ。
「連中の一体一体は、さほど強くはない。じゃが、数が厄介での。3人一組を心がけて動いておるから、一人で襲撃をかける時はかなり注意が必要じゃろう」
奇襲なり、相手の虚をつく攻撃が重要という事だ。手こずれば、他の組も援軍にやってきかねない、素早い処理も重要だろう。
「ラグランジュポイントの住民も数は多い。きっかけさえ与えれば、数で押し切って船の支配を奪ってくれるじゃろう。そのきっかけこそがおぬし達じゃ」
そして、鼓舞の方法にはもう一つある。スライム型宇宙人の誇りとも言える『スライム物質X』だ。ガングランは、軽金属ケースに詰められた虹色のスライム物質が描かれた絵を見せながら言った。
「何でもこの『スライム物質X』は、何でもツルツルと滑らかにする、どんな物質の加刷係数をゼロに近づける、というものらしい」
このスライム型宇宙人の誇りである『スライム物質X』を使って敵を翻弄するところを見せれば、士気も上がるだろう。どう使うかは、猟兵のアイデア次第だ。
「では、よろしく頼むぞ。わしとしてもおぬしらがこれをどう使うか、楽しみにしておる」
波多野志郎
ぷるぷる、あ、スライムではありません、波多野志郎です。
今回はラグランジュポイントで強制労働させられているスライム型宇宙人を助け、決起を促していただきます。
今回の「プレイングボーナス」は「島に眠る「宇宙人の謎兵器」を使う」というものです。スライム物質Xは何でもツルツルにする一品、皆様の装備の方が効果は高いですが、アイデア次第でスライム型宇宙人たちのやる気に火が点く事でしょう。
それでは、皆様の素敵なアイデアをお待ちしております!
第1章 集団戦
『デュランダル騎士』
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POW : デストロイブレイド
単純で重い【量産型魔剣デュランダル】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ケイオスランサー
【魔槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【仲間のデュランダル騎士との怒濤の連携攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 不滅の刃
【量産型魔剣から放たれる光】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
イラスト:弐壱百
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
パーヴォ・シニネン
ふむふむ、謎兵器!
ちょっとわくわくしてるネ相棒?
うん我輩も!(ぴょんぴょんはねる宿主
住民の危機を救いに我輩達参上!
さて戦闘だが、やはり謎兵器を使ってこそ!
物陰に潜み騎士達の背後をとりつつ
この物質Xを地面に撒き散らすよー
使い方はなんとなくわかるから不思議ダヨネ
勿論、我輩達は転ばぬようにUCの波浪が足元を守っているヨ
【早業、世界知識】
おぉーよく滑る滑る
滑っている所をナイフとフォークでざくざくっとね!
大勢を一気に倒せるから効率がイイネー
【鎧無視攻撃、薙ぎ払い】
住民の諸君、君達の誇りによって彼らは大打撃だ!
この勢いで共に戦おう!
騎士の名を捨てた者達など、君達の敵ではないとも!
【鼓舞、コミュ力】
ヒルデガルト・アオスライセン
(髪に塗ってズバーっといったら楽しそうですが、後が怖いですわね…)
しかし好奇心には勝てません、どうなっても知りませんよ!!
ケイオスランサーの槍を敢えて止め
怒涛の連携攻撃を髪で全て滑らせて受け流しカッコ付けましょう、そうしましょう
いえ、すごい怖いんですけど。正直どの過去の遭遇より怖いのですけど
オーラ防御で髪と首に浸透、攻撃兼防御
光の屈折操作で敵達の視覚と距離間を曖昧に
剣と靴のスラスターで緊急回避
銀靴で宙を舞い、髪を振り回して円の軌道で斬り付けます
髪を武器に巻き付け、絡ませてどこかに吹き飛ばし
隙を見てUCで大跳躍から頭を叩き付ける様に、髪を打ち付けます
…えぇ、冷や冷やしたのでもう二度とやりませんわ
月凪・ハルマ
ふんふん成程、詳細は分かった
それじゃ早速、いってみよ
◆SPD
【迷彩】で姿を隠し、【忍び足】で気付かれない様に敵に接近
ある程度近づいたら【目立たない】様、周囲の地面に
『スライム物質X』(以下『X』)を撒いておく
撒いた場所はしっかり覚えておこう
自分で踏んだら洒落にならん
そうしたら迷彩を解除
わざと敵に自分を発見させ、Xを撒いた場所まで誘導する
後はXを踏んだ敵が、体勢を崩すなり転ぶなりしたところに
手裏剣をばら撒いて攻撃する(【投擲】【範囲攻撃】)
ついでになるべく急所も狙う(【暗殺】)
Xに引っかからなかったり、倒しきれなかった場合は
攻撃を【見切り】躱しつつ、魔導蒸気式旋棍の打撃と
【錬成カミヤドリ】で迎撃
メンカル・プルモーサ
ふむ、摩擦係数を0に近づける謎兵器ね……
これは私の【支え能わぬ絆の手】に似てる感じだな……
スライム星人達に教えるかのような口調で解説風にお送りするよ…
まず、摩擦係数を0にする、となればまっさきに思いつくのは(敵の足元に物質Xをべちょ)床を滑らせて転倒させる事だね…予め撒いておくのも効果的……(転んでスライムまみれになってよく滑る敵を敵集団にシュート)
次に敵の握ってる武器に掛けるのも効果的…手からすっぽ抜けるのもあるし
摩擦はものを固定する力だから…武器や鎧の分解も狙えるよ……(武具を失った相手に【縋り弾ける幽か影】)
やり方次第では壁や床も崩せるから注意してね…
蜂起始めたらUCでフォローに回ろう…
ウィーリィ・チゥシャン
いや今回のは強制労働ってレベルじゃないだろ!?
身体の一部削ってるんだから立派な傷害だ!
そんな訳で、宇宙人達を解放するために騎士どもに戦いを挑む。
敢えて単身で三人に戦いを挑み、攻撃を誘う。
一人目が襲い掛かってきたらその軌道を【見切り】、スライム物質Xを塗った鉄鍋で【盾受け】する事でその攻撃を滑らせて同士討ちを誘う。
同士討ちを警戒して騎士どもの連携が乱れたところへすかさず【飢龍炎牙】で三人同時にダメージを与え、そして炎の【属性攻撃】を付与した大包丁の【鎧無視攻撃】で鎧の隙間を突いてトドメを刺す。
「お前達が虐げてきたスライムの怖さ、思い知ったか!」
エル・クーゴー
●POW
躯体番号L-95、ラグランジュポイントに現着
オーダー_スライム型宇宙人達の決起煽動
作戦行動を開始します
【空中戦】用バーニアによる飛翔と共、敵性の前へエントリーします
【ファイアワークス・ドライブ(攻撃回数重視)】、ターゲット・ロックオン――ファイア
【2回攻撃】仕様二門一対・L95式機関砲による【範囲攻撃】、及び友軍の挙動に対する【援護射撃】を敢行します
機関部に支障が出る迄、敢えてクールタイムを挟まず断続的に射撃
故障発生次第、武装の機関部へスライム物質Xを投入
摩擦係数の超低減による動作効率の向上を見た武装を堂々運用、攻勢を再開
当機なりの運用で、スライム物質Xの有用性を宇宙人諸氏へ提示します
土斬・戎兵衛
さあ、宇宙に侍のファンを作ろうじゃーないか
本差し・分渡の鞘にスライム物質Xを流し込む
これにより抜刀時の摩擦係数を落として鞘走りを最速化、全てを置き去る居合斬りを披露しよう
切れ味を落とさないために振りの速さで刃についたスライムを払い、残す虹の軌道を住民の反抗を煽る旗代わりとする
【忍び足】で近づき、【早業】居合でまず一人落としたい
三位一体を斬り崩そう
次いで、敵を船の端や継ぎ目に誘導、魔剣で地形を抉れば自分ごと宇宙に落ちる立ち位置に誘い、重撃を封じる
魔槍はUCで【見切り】
突くか? 振るか? 突きなら横に避ければ良いだけ故、楽でありがたいが
あっ、ところでこの物質X、ちょっと持って帰って良いでござるか?
日向・史奈
…なるほど。こんな武器を使っていいのなら、とても戦いやすくなるのでは…?
スライム物質X、使わない手はありませんね
私の戦い方を見て、宇宙人の皆さんが蜂起する気になってくれればしめたものです
スライム物質Xを使うのは敵がいる足場と私の杖です
疲弊しているはずですから、回復する技を使った敵から倒していきましょうかね
疲弊している敵が私に近づこうとしてきた瞬間にスライム物質Xを使って相手を転ばせます
あえて接近戦に持ち込んで、魔剣で攻撃しようとしてきたらスライム物質Xを使った杖で剣を受けて敵を転ばせます
無防備になったところで、私の魔法を使って倒せればと
マリス・ステラ
「主よ、憐れみたまえ」
『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯り、全身に輝きを纏う
【神に愛されし者】を使用
「賽は投げられた」
マッハ5に達する高速で翔ける私は箒星
物質Xを自身に使い体当たり攻撃
音速からの摩擦係数ゼロが騎士達を弾き飛ばす様はビリヤードの如く
「私は路を見つけるか、さもなくば路を創るでしょう」
スライム達にも物質Xを使用
工場内を共に弾けましょう
「灰は灰に、塵は塵に」
弓で『援護射撃』放つ矢は流星の如く
響く弦音は『破魔』の力を宿して敵の動きを鈍らせる
「あなた達に魂の救済を」
『封印を解く』と聚楽第の白い翼がぎこちなく広がり輝きを束ねる
星の『属性攻撃』は質量を伴う巨大な光弾
「光あれ」
世界が白に染まる
●ブラックコンベア
ガタコンガタコン、と二十四時間三百六十五日稼働可能なベルトコンベアが、回転し続ける。そのコンベアの両脇に並ぶのは、色とりどりのスライム型宇宙人達だ。
『…………』
会話が出来ない訳ではない。ただ無言でコンベアに流れる空の瓶を取っては自分の一部を詰め、封をする。そして、次の瓶をの繰り返し――単純作業の地獄の三丁目が、まさにここだった。
「いや今回のは強制労働ってレベルじゃないだろ!? 身体の一部削ってるんだから立派な傷害だ!」
その痛ましい光景に、ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は宇宙船の物陰で憤る。今にも飛び出しそうだが、ここで始めてしまえば他の仲間の動きにも支障が出る――だからこそ心を落ち着け、ウィーリィは状況確認に務めていた。
「ふんふん成程、詳細は分かった。それじゃ早速、いってみよ」
その想いがわかるからこそ、月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)は行動を起こす事を提案する。仲間達が、うなずきを返した。
「躯体番号L-95、ラグランジュポイントに現着。オーダー_スライム型宇宙人達の決起煽動――作戦行動を開始します」
ヴン、とエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)はL95式電脳ゴーグルに光を走らせる。
ここにスライム型宇宙人を開放するための戦いが、幕を開けた。
●鼓舞せよ、誇り
「ふむふむ、謎兵器! ちょっとわくわくしてるネ、相棒? うん我輩も!」
パーヴォ・シニネン(波偲沫・f14183)――海洋生物を模したマスクが跳ねる。軽金属ケースに詰められた虹色のスライム物質を手に、パーヴォは弾んだ声で言う。
「さて戦闘だが、やはり謎兵器を使ってこそ!」
パーヴォは物陰から『スライム物質X』を廊下に流した。この不思議な物質は水のように広がり、粘液のように薄い膜をプルプルと保っていた。
「使い方はなんとなくわかるから不思議ダヨネ」
そうやって仕掛け終わると、三人一組のデュランダル騎士達がやって来た。その視線は鋭く、サボっているスライムがいないか観察している。少しでも手が遅れれば、容赦なく騎士の手で毟られ詰められる――まさに、悪行だ。
だが、デュランダル騎士達は気づかない。まさか、廊下に『スライム物質X』が撒かれているなど――。
『ッ!?』
まさに、絵に描いたようにツルリと先頭の騎士が滑った。宙に浮かぶ甲冑姿、そこへパーヴォが飛び込んだ。
「住民の危機を救いに我輩達参上!」
merenkäynti(メレンカユンティ)で飛ぶパーヴォの姿に騎士達が身構えるが、そうやって力を込めても足は踏ん張れない。スケートの初心者のようにガクガクと崩れ落ちて立ち上がれない騎士に、パーヴォが笑った。
「おぉーよく滑る滑る」
振るうのは巨大なナイフとフォーク、hyvää!だ。パーヴォの薙ぎ払うナイフに、デュランダル騎士達が吹き飛ばされた。反撃しようと槍を手に取る騎士に、しかし、足場が定まらない状況ではパーヴォの速度に追いつくはずもない。繰り出すフォークの一撃に貫かれ、動かなくなった。
その光景に、スライム達は手を止める。視線――目がどこかわからない――が自分に向けられたのに気付いて、パーヴォはナイフとフォークを振り上げて叫んだ。
「住民の諸君、君達の誇りによって彼らは大打撃だ! この勢いで共に戦おう! 騎士の名を捨てた者達など、君達の敵ではないとも!」
●好奇心が乙女をそそのかす
コンベアの一部で、ぷよんぷよんと喝采が上がっていた。それに仲間が動き出したのだと知って、ヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)は小さなため息をこぼした。
(「髪に塗ってズバーっといったら楽しそうですが、後が怖いですわね……」)
手にあるのは『スライム物質X』だ。どうなるのだろうという好奇心、その誘惑にヒルデガルドは勝てなかった、勝てなかったのだ。
「どうなっても知りませんよ!!」
その時、騒ぎを聞きつけたデュランダル騎士達が駆けてきていた。先頭のデュランダル騎士が、魔槍を構えヒルデガルドへと突き出した。ヒルデガルドは、それに横回転で応じた。
きらめく銀髪が、横に広がる。それは遠心力で生み出された『円』を描くと、魔槍の連続突きをことどとく滑らせていく! 首筋に、頬の横に、鋭い刺突の風を受ける。モーメントグリーヴのスラスターで微調整しながら、ヒルデガルドは息を呑む。
「すごい怖いんですけど。正直どの過去の遭遇より怖いのですけど」
髪の毛で滑らせる、正直、ここまで上手く行くと思わなかった。とはいえ、運の要素が多すぎる。当たりどころが悪ければ、槍の切っ先が自分に向きかけないのだから――それでもやり遂げたヒルデガルドは、体勢を崩した騎士を機構剣リジェクションバスターで斬り伏せた。
その勢いのまま、モーメントグリーヴのスラスターで上空へ。跳躍の加護(サドン・リープ)によって得た跳躍力で空中前転、後ろの二人の騎士を銀髪を叩きつけた。
そのまま、優雅につま先から着地。ぷよぷよとスライム達の歓声を受けながら、ヒルデガルドは心の底から言い捨てた。
「……えぇ、冷や冷やしたのでもう二度とやりませんわ」
好奇心にそう何度も負けるものではない、ヒルデガルドは教訓としてこの戦闘方法は封印しておこうと心に決めた。
●静かに潜んで蹂躙せよ
迷彩によって身を隠しながら、ハルマは三人一組のデュランダル騎士達に忍び寄る。自分達以外の持ち場で騒動が起き始めた事に気付いたのだろう、デュランダル騎士達はすぐに駆け出した。
(「撒いた場所はしっかり覚えておこう。自分で踏んだら洒落にならん」)
撒き終えた『スライム物質X』のケースをしまい、ハルマは敢えて姿を現した。唐突に現れたハルマに、騎士達は前へ二人後ろに一人という陣形で突っ込んでくる。
『――!』
だが、前の二人がツルリと足を取られて前倒しに倒れた。そのままスーっとハルマの元へ――ハルマは、忍者手裏剣を投擲した。鎧の隙間、そこへ精確に投げつけられた複数の手裏剣が騎士達に突き刺さる!
「――っと!」
最後に残っていたデュランダル騎士は、仲間を足場にすると魔槍を繰り出した。踏み潰された騎士達は、それが止めとなるが構わない。鋭い切っ先を、ハルマは魔導蒸気式旋棍によって弾いていく。
ギギギギギギギギギギギギギン! と両者の間で火花が散る。もはや、足場にされた騎士の鎧は原型を保っていない――それを見て、ハルマが言い捨てた。
「それが騎士のやる事か!」
ヒュオン! と錬成カミヤドリで複製した宝珠の群れが、縦横無尽の軌道で動き、デュランダル騎士を打ちのめしていく。吹き飛ばされながらもなおも立ち上がろうとするデュランダル騎士へ、ハルマは跳んだ。
「終わりだ!」
ヒュン! と回転させた魔導蒸気式旋棍を、騎士の頭上へ叩き込む! その一撃に耐えきれず、デュランダル騎士は崩れ落ちた。
●メンカル先生の1ポイントレッスン
デュランダル騎士達が、次々と駆逐されていく――その情報は、瞬く間に地獄の三丁目に伝わっていく。
「ふむ、摩擦係数を0に近づける謎兵器ね……これは私の支え能わぬ絆の手に似てる感じだな……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は視線を手元の『スライム物質X』から、更に下へ向ける。そこには色とりどりのスライム達が、ぷるぷると震えていた。
「まず、摩擦係数を0にする、となればまっさきに思いつくのは――」
振り返らず、メンカルは『スライム物質X』を背後に放つ。駆け寄ろうとしていたデュランダル騎士達が足を取られ、メンカルとスライム達の目の前を滑って行った。
「……床を滑らせて転倒させる事だね……予め撒いておくのも効果的……」
壁にぶつかって止まった騎士達が立ち上がろうと頑張るそこへ、メンカルは情け容赦なく『スライム物質X』を追加する。投げ込まれたそれに、騎士達は床にのたうち回るしかできない。
「次に敵の握ってる武器に掛けるのも効果的……手からすっぽ抜けるのもあるし、摩擦はものを固定する力だから……武器や鎧の分解も狙えるよ……」
そして巻き起こる爆発、メンカルの縋り弾ける幽か影(ステルス・ボム)による爆破に騎士達はあえなく敗れていった。
『スゴイ、アンナコトデキタンダ』
「……あれ、何に使ってたの……?」
『ノム』
「……飲む、の?」
スライム達は、『スライム物質X』を飲んでいく。すると、体は鮮やかな色へと変わり、テカテカと光る体となった。
『スベスベ、ピカピカ、カタイノハイタクナイノ』
「……体を一時的に……『スライム物質X』に、できるの……?」
実際の話、この『スライム物質X』を敵に奪われたからこそ彼らは捕まったのだ。攻撃能力はゼロでも、防御力だけは抜群――それがこのスライム型宇宙人だった。
こうして、スベスベピカピカとなったスライム達をフォローすべく、メンカルも彼らと共に移動を開始した。
●戦いと料理は熱く
状況が確認出来るまで、スライム達を一箇所に集めて拘束すべき――騎士達は、すぐにそこへ思い至った。これは実際に、正しい選択だ。閉じ込められてしまえば、彼らに逃げ出す術はない。この状況でも冷静な判断が下せるあたり、騎士達も優秀ではあった。
しかし、それを猟兵達が許すはずもない。強引に引きずられるスライム達を守るべく、一つの人影がそこへ降り立った。
「そこまでだ!」
ウィーリィの声に、デュランダル騎士達は魔槍を構える。上下左右、素早く散った騎士達はウィーリィへと攻撃を繰り出した。
「――ッ」
だが、いかなる事か。ウィーリィの鉄鍋が、魔槍をたやすく受け流したのだ。その軌道を見切り、計算して――騎士の魔槍を、他の騎士へと向けさせたのだ。
「喰らい尽くせ、炎の顎!」
連携が崩れたそこへ、ウィーリィが身を低く踏み入った。三昧真火刀、ルーンの刻まれた大包丁に、飢龍炎牙(グリード・ブレイズ)をまとわせて振るう!
ゴォ! と炎の龍が、虚空を舞った。ザザザン! と素早く騎士達の太ももを切り裂くと、ウィーリィは横殴りの軌道で鉄鍋を振るう。
その鉄鍋を槍で受け止めようとして、騎士は大きく体勢を崩す――ここで、ようやく騎士は気づく。その鉄鍋に塗られた『スライム物質X』に。
「お前達が虐げてきたスライムの怖さ、思い知ったか!」
戦いと料理は、手際が大事だ。ウィーリィの見事な包丁捌きが、騎士達を床へと倒れ伏せさせた。
●空を舞う者達
ゴォ! と空中戦用バーニアによって飛翔したエルが、コンベアの上を飛んでいく。二チームの騎士達が、その動きに反応した。
「ファイアワークス・ドライブ、ターゲット・ロックオン――ファイア」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ! とエルが構えた二門一対・L95式機関砲のマズルフラッシュが、コンベアを照らした。盛大な銃撃音と共に放たれた銃弾の雨が、騎士達の鎧に火花を散らした。
だふぁ、騎士達の連携を取って対処する。一人が盾となり、その背後に二人の騎士が続く――強引に突破しようとした、その時だ。
「主よ、憐れみたまえ」
祈りを捧げたマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は、星辰の片目に光が灯り、全身に輝きをまとう。そして、淀みのない動きで弓を構えた。
「灰は灰に、塵は塵に」
マリスの星屑による矢が、その名の通り流星群のように降り注ぐ! 強引に突破しようとした先頭の騎士達は、銃弾と矢に耐えきれず崩れ落ちた。
それでも、残りの騎士達は大きく跳んだ。量産型魔剣デュランダルを、振りかぶる。
「射撃続行」
だが、エルは構わない。本来ならクールタイムを挟むべき状況でも、構わず機関部に支障が出るまで射撃を続けた。ギギギギギギギギギギギギギン! と一体の騎士が縦断に穿たれ、吹き飛ばされた。L95式機関砲から異音を察知すると、エルは即座に武装の機関部へ『スライム物質X』を投入。摩擦係数をなくすことにより、動作効率の向上するのを確認した。
「賽は投げられた」
そして、空を駆けたマリスが自身に『スライム物質X』を使うと一気に体当りした。衝撃はない。ただ、ビリヤード球のように空中で騎士達を吹き飛ばすのみだ。
「あなた達に魂の救済を」
吹き飛ばされた騎士達へ、マリスは封印を解くと聚楽第の白い翼をぎこちなく広げていき――輝きを束ねる。
掲げた右手に生まれるのは、まさに星。星属性を帯びた質量を伴う巨大な光弾が――。
「光あれ」
マリスが振り下ろした右腕と共に、世界が白く染め上げられていく。その光の中で、騎士達は押し潰され、かき消えていった。
「共に立ち上がる事を提案」
『オー!』
降りたったエルの言葉に、スライム達はプルプルと震える。スライム達はマリスから受け取った『スライム物質X』を飲んでいった。
「工場内を共に弾けましょう」
まさに、怒涛――騎士達を蹴散らす群れとなったスライム達を、エルとマリスは飛び上がるとサポートするように共に進んだ。
●知名度を得るには地道な活動が必要です
タタン、とコンベアの上に降り立ったのは土斬・戎兵衛("刃筋"の十・f12308)だ。ぷるぷると震えるスライム達の意識が自分に向かっているのを感じながら戎兵衛は呟く。
「さあ、宇宙に侍のファンを作ろうじゃーないか」
戎兵衛は、本差し・分渡の鞘に『スライム物質X』を流し込む。その間に、デュランダル騎士達がこちらに向かってくるのを察知すると軽い足取りでコンベアから飛び降りた。
『ドコー?』
スライム達が見失う、それほどの忍び足で身をひそめると戎兵衛は物陰を疾走する。もちろん、わずかに遅れてやって来た騎士達も、戎兵衛の姿を補足できるはずもなく――。
――音もなく、一人の騎士が崩れ落ちた。背後からの不意打ち、戎兵衛の居合の一閃だ。
(「軽い!?」)
まったく、抵抗を感じなかった。まさに、神速の抜刀だ。本来なら刃も摩擦係数を失って切れないのだが、振り払う勢いは刃から『スライム物質X』を飛ばし、そこに虹の軌道を描いていた。
「――!!」
デュランダル騎士二人が、振り向きざまに量産型魔剣デュランダルを振るう。重い一撃、しかし、それは空を切り、床を砕くのみだ。
紙一重でかわしていた戎兵衛は、ニヤリと笑う。その笑みの意味に気付いた時には遅い、床が砕け散り、騎士の一人が空いた大穴に飲み込まれ宇宙空間へ投げ出されたのだ。
それを見て、最後の騎士は魔槍に得物を変える。即座に突きを繰り出してくる騎士へ、戎兵衛は言った。
「突きなら横に避ければ良いだけ故、楽でありがたい」
横へ踏み出してからの横一閃、再び生まれた円の虹にスライム達はやんややんやの大喝采となった。
『キレー』
『スゴイー』
「あっ、ところでこの物質X、ちょっと持って帰って良いでござるか?」
『イイヨー』
スライム達と歩きながら、戎兵衛は『スライム物質X』を懐にしまう。そして、コンベアの先へと向かった。
●虹色の炎
最初は小さく、段々と大きく反旗が翻されていく。既にコンベアでの作業は、七割が蜂起に至っていた。
しかし、だからこそデュランダル騎士達の抵抗は更に増している。
「……なるほど。こんな武器を使っていいのなら、とても戦いやすくなるのでは……?」
日向・史奈(ホワイトナイト・f21991)はコクリとうなずくと、迫ってくる騎士達へ振り返る。足元を警戒はしているのだろう、その動きから見て取れた。しかし、史奈にとっては『スライム物質X』はそれだけに留まらない。
叡智の杖を、史奈は振るう。それを騎士は魔槍で受け止め――つるり、と槍が明後日の方向へと滑らされるのを感じた。
「杖にも塗っておきました」
体勢が崩れたそこへ、史奈は騎士の足を刈るように杖を払う。そのまま床に叩きつけられた騎士は、床に撒かれた『スライム物質X』に塗れてしまった。
残り二人の騎士は、大きく後方へ跳んで間合いをあけようとする――だが、それを史奈は許さない。ゴルフスイングよろしく振るわれた叡智の杖が転がった騎士を打ち、床を滑らせて着地しようとした二人の騎士を転ばしたのだ。
「炎が、波が、太陽が……願いを聞き届けてくれたようですね。残念ですが、開戦のお時間です」
そして、は之業【白虹貫日】(ハノワザ・ハッコウカンジツ)によって炎の旋風を巻き起こす! その炎は『スライム物質X』を吸い込み、虹色の炎の渦となって立ち上がった。
『オオー!』
スライム達が、ぷよぷよと同じタイミングで左右に揺れた。人間で言うなら、拍手でしょうか? と史奈は微笑ましくその賛辞を受け取った。
「一緒に戦ってくださいますか?」
『ウンー』
『イコー』
テカテカと光りながら、スライム達の行進が始まる。それに合わせて歩を進め、史奈もコンベアの奥へと向かった。
――こうして、宇宙船は奪還されていく。攻撃力はないものの、数の暴力で抑え込むスライム達に抗う事はデュランダル騎士達でえできなかった。
『ジユウダー!』
『ダー!』
『アリガトー』
『アリガトー、イェーガー!』
スライム型宇宙人達の感謝の波が、この戦いの終わりの合図となった……。
大成功
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