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アースクライシス2019⑬~スペースマルタ攻防戦

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #ラグランジュポイント

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●宇宙の神秘
 ラグランジュポイント。
 宇宙空間の中で色々と安定するポイント、である。
 細かい説明をすると、天体力学における重力の釣り合いがどーのこーのと言う話になるのだが、その辺は置いておくとして。
 大事な事は、ヒーローズアースの宇宙におけるラグランジュポイントには、島がいっぱい浮かんでいるという事。
 だが、その島は今、オブリビオンによって支配されているという事だ。

 轟々と炉の中で炎が燃える。
 ラグランジュポイントにある島は、幾つもの宇宙船がぶつかってできたものだ。その宇宙船の残骸なのだろう。火力発電のような施設がフル稼働し続けていた。
 そのエネルギーは、全てがオブリビオンの活動――クローン装置やUFOの製造・開発・運用その他諸々に回されている。
 炎が燃えるには、燃料がいる。
『ほら。キリキリ燃やしなさい』
 炉の前で、巨大なゾンビを従えた女性が指示を出していた。
 そして、炉に次々と、木材が焚べられる。
 ゾンビの監視下で木材を焚べているのは――そっちも木材だった。
 丸太の集合体にしか見えない宇宙人だ。
 彼らこそが、元々この島に住んでいる宇宙人。スペースマルタニアンである。
『配下にゾンビしかいないのに、火力発電どうにかしろって言われた時は地底に戻ってやろうかしらと思ったけど、木材の扱いに長けた宇宙人なんているのね』
『ヴァー』
 呪法骸操士ネウィの呟きに、後ろのゾンビが呻きながら頷いた。

●宇宙で丸太VSゾンビ!
「早速本題だ。またちょっと宇宙に行ってもらうよ。と言っても今回は、もうUFOには乗らない。直接、宇宙の島に送るから」
 グリモアベースに集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は目的地を大雑把に伝えた。
 エリア51から伸びるビームハイウェイの空中戦。
 そこを猟兵達が制した事で、戦線はラグランジュポイントへと伸びた。
「そこには沢山の「島」が浮かんでいるんだけど、オブリビオンに支配されててね」
 島を解放するのが、今回の目的。
「だけど、ただ戦って倒せばいいって話じゃあない」
 島には元々住んでいる宇宙人がいる。今は、オブリビオンに支配されて、強制労働をさせられている状況だ。
「彼らには戦闘能力はほとんどない」
 猟兵が島に乗り込んで、戦いを始めても、隠れて見守るくらいしか出来ない。
 ――そう思っている。
「宇宙人達自身に、戦闘能力はなくてもね? 武器が作れないわけじゃない。むしろ、武器ならあるんだよ」
 そして、数は多い。すんごい多い。
 だからこそ、オブリビオン達も労働力としているのだ。
「もしも宇宙人達が一斉蜂起すれば、数で圧倒出来るのさ。だから、彼らがその気になれるように、島にある宇宙人の武器を使ってみてほしい」
 自分達が使えるものでも戦える――それを、見せてやればいいのだ。

 ――ところで、肝心の武器になるものとは?
「丸太」
 猟兵からの問いに、ルシルは涼しい顔で返す。
「正確には、丸太に偽装した武器。これから行ってもらう島に住んでる宇宙人ってのが――丸太人間って感じの宇宙人でさ。その名もスーパーマルタニアン」
 木材の加工技術及び、木材以外のものでも木材に偽装する技術に長けてるらしい。
「丸太と見せかけたガトリングガンとか、丸太と見せかけたパイルバンカーとか、丸太と見せかけた自転車とか、色々あるみたいだよ」
 何だそれ。
「まあ、そこまで強い兵器はない。本当なら、皆が普段通りの武器やユーベルコード使って戦った方が絶対に早いレベルだ」
 それでも――蜂起を促すなら、彼らの丸太偽装武器を使う必要がある。
「あ、島を支配してるオブリビオンだけど、呪法骸操士ネウィ。及び、その配下のデッドボディバタリオン――つまりゾンビだね」
 つまり丸太っぽい何かを拾って、ゾンビ蹴散らして来いと?
「そう言う事」
 また涼しい顔で返すと、ルシルは転移の準備をはじめた。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 宇宙! 丸太! ゾンビ!

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「アースクライシス2019」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 ⑬ラグランジュポイントです。

 舞台は、宇宙空間にある島です。
 幾つもの宇宙船がぶつかってできた島です。
 そこには、全身が木で出来てる丸太人間、みたいな宇宙人が住んでました。
 (木人、でググるといいと思うよ)
 今はオブリビオンに占領されて、強制労働で火力発電させられてます。
 額に汗……はかかないかな。かかないかも。
 今回もプレイングボーナスがあります。

 島に眠る「宇宙人の謎兵器」を使う。

 このシナリオでの謎兵器は『丸太偽装兵器』です。
 当のスペースマルタニアン達が、丸太偽装してそのまま放ったらかしてる状態なので、好きな丸太偽装兵器を拾って使って下さい。
 丸太偽装兵器自体は、猟兵が持つ武器より強いことはありません。
 ですが、上手く使って戦うと、スペースマルタニアンの一斉蜂起に繋がります。

●プレイング採用人数について
 11/21(木)、1日で無理なく書ける分だけ採用、とさせて頂きます。
 何人参加中でも送って頂いて構いませんが、人数によっては問題なくてもお返しする方が出てしまうかと思われます。
 なお、先着順にはしませんので、そんなに焦って送らなくても大丈夫です。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 集団戦 『呪法骸操士ネウィとデッドボディバタリオン』

POW   :    ネクロマンサーズ・カウンターアタック
全身を【呪詛の瘴気】で覆い、自身が敵から受けた【ゾンビ軍団の損害】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    デッド・ストリーム・アタック
【巨人型ゾンビ兵の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他のゾンビ兵達】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ   :    サクリファイス・エスケープ
【雑兵ゾンビを捨て駒にして】対象の攻撃を予想し、回避する。

イラスト:つばき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィーナ・ステラガーデン
ええっと
武器じゃないわよねこれ!?
兵器とかおこがましいにも程があるわよ!?
皆ー!丸太を持ったかーじゃないわよ!持てるわけないでしょばかあ!
ってこれ武器になるの!?技術の使い方がとんでもない方向に突き進んでるわね丸太宇宙人!

まあそういうことならそうねえ。
分担作業といきましょ!
涼音を呼び出して丸太(木刀)を持たせるわ!
もともと丸太でも刀の形してれば上手く扱えるんじゃないかしら!
どうなってどんな形の木刀かよくわかんないけど!
私は出てくるゾンビどもを【属性魔法】で焼却に動くとするわ!
涼音は本体ね!丸太の力を見せてやるのよ!木刀だけど!!

(アレンジアドリブ連携大歓迎!)


パウル・ブラフマン
どもー!エイリアンツアーズでっす☆
アッ
第一スペースマルタニアンさん発見~お話いいですか?
【コミュ力】全開で話し掛けつつ
皆に火を使った作業させるとかダメっしょ!
一緒にゾンビマストダイしよっ♪
やり方は超簡単!オレがお手本やるから見ててね☆

Glanzの両サイドに丸太ミサイルを装着。
オレ自身も右肩に丸太を担いでレッツ前線!
まずはよーく狙って…投げまーす☆
【スナイパー】よろしく巨人型ゾンビの頭を狙い投擲。
合わせて丸太ミサイルを発射し
ダメ押しのKrakeを展開させて四砲同時の【一斉発射】ァ!!

これぞ丸太の真の力!
スペースマルタニアンと猟兵に栄光あれ!
拳を突き上げゾンビ!マストダイ!!

※絡み&アドリブ歓迎!


クロト・ラトキエ
丸太は持ったな!
…とか、誰かが確認してません?

さておき。
暗器使いたる者、何でも武器に…はしますけど。
大サイズは流石の初物。
何なら丸太と見せかけた鉄柱などもあるのでは?

瘴気…
強化されても当たらなければオッケーですね?
先に殺れば問題無し!
配下は視線や腕脚の運び等で攻撃動作を見切り、察知して回避を。
中でもネウィの挙動には注意。
強化後、痛打に転じる気配あらば、丸太(武器)にて受け流しを試みます。
UCの炎の魔力にて攻撃力も強化。
殴打は勿論、折られても切られても先が尖れば刺突にだって使えます。
取っ替え引っ替え千切っては投げ(敵も丸太も)…
丸太、無敵では?

星の方々が、蜂起の希望抱いてくだされば上々なのですが


七乃音・七七七
マルタニさんの ふしぎなマルタ
一つ借りるよ 「弓矢」の丸太

ひとまず少し 敵に向かって 試し撃ちする
ほんとに撃てる すごいね丸太

攻撃【見切り】 相手と距離を 取りつつ射撃
ゾンビは避けて 術士を狙う
ゾンビを盾に されても狙う

甘く見ていた マルタの人の
武器に攻められ どういう気分?
裏を掻かれて 油断していた
ネウィと言う子 貴女の負けよ

語った言葉 七の音たち
全て一矢に 籠めて構える
「七呼踏拍」
盾のゾンビも 裏のネウィも 貫き通せ

マルタニさんの マルタの武器が 一矢報いた
できれば皆が 続く矢になり 助けて欲しい
私頑張る 皆も頑張れ


宮落・ライア
つまりこれは………丸太は持ったか!!
ふむ、基本的にボクは武器依存じゃないから問題ないな?
おっしゃパイルバンカーもってこーい!

で、相手は突進。そして協力となれば、やれば貫通してぶち抜けるな?
【自己証明】で自己強化。
そして相手の突進に真っ向勝負で相手の腹にパイルバンカーぶち込んで
ぶっとばす!
【怪力・鎧砕き・捨て身の一撃・カウンター】

さぁさぁさぁ!蹴散らそう!


ナギ・ヌドゥー
ふむ、丸太に偽装した兵器ですか。
ではこの一見普通の丸太に見える木材も実は……
いやコレ普通の丸太ですけど!?
でもこの丸太で勝って見せればスペースマルタニアンの士気が上がるかもしれない!

【ドーピング】により身体能力向上
UC「闇舞鋼装」展開
丸太一体型強化武装の姿に変身
このUCは全ての武器を強化する、この丸太も例外ではない!
【先制攻撃】低空飛行で突進、破城槌となり敵を貫く。
そのまま上空に飛び
【殺気・呪詛・呪殺弾・制圧射撃】の空襲爆撃で雑兵ゾンビ共を蹴散らす
【空中戦】そして急降下特攻、残存ゾンビごと、呪法骸操士を穿つ!【部位破壊・2回攻撃】
丸太の恐ろしさを宇宙中に伝えよう【恐怖を与える】


セゲル・スヴェアボルグ
丸太は持ったか!とでも言えばいいのか?

それならそれなりに人数が必要だな。
というわけで、兵は皆、今回は各々丸太を持って戦うように。
種類はチェーンソーあたりのを主体に。別に一本でなくてもいいぞ。
俺も持てるだけ持っていこう。

基本的に、丸太を変形させるのは二撃目。
相手にこれは丸太であると思わせることが肝要だな。
スケープゴートです避けられるなら、無駄に手の内を見せる必要もあるまい。

その間に俺は持ってきた丸太を組み合わせて砲台を作る。
兵たちに少しずつ標的を一箇所に集めるように攻撃させる。
タイミングを見計らって、兵たちを消してズドンといこう。
そこそこの数の丸太で組んだからな。威力もそれなりにあるはずだ。


七瀬・麗治
戦いの気配を感じ、闇の人格ロードが出現する。
「今度の戦場は宇宙か。素晴らしい」
「ふん。雑魚ばかり、数だけは多い」
地面に魔方陣を描き、【暗黒騎士団】を召喚する。
「今日は貴様等に特別武器を支給してやろう!」
黒づくめの騎士たちに渡されたのは、丸太ソードと丸太ランス。
「さあ皆の者、丸太は持ったな!? うまく丸太を使いこなした者には恩賞を与える!」
ロード自身も丸太武器を持ち、サイボーグホースに跨がって出撃。騎士団は隊列を組ませ、〈騎乗〉〈ランスチャージ〉による突撃をし掛け、ゾンビをことごとく〈吹き飛ばし〉。その隙に〈怪力〉を駆使して丸太を操り、呪法士を狙って馬上から力任せに叩きつける!


闇之雲・夜太狼
ライアーヒーロー「クライウルフ」参上!
俺が来たからにはお遊びはここからだよ!

さーて、俺にぴったりの丸太兵器はっと
ん?こ、これは……
丸太に偽装した上で更に分割された強化外木格パーツ……!?

1人乗り用のマルタボディを核にして!
マルタアーム!マルタレッグ!
そしてマルタヘッド!
これらを【念動力】で【空中浮遊】させて、俺が着るように合体だ!

巨人ゾンビも何のその、パンチやキックで応戦だ!
UCでMAGとガオウ丸を増やして、いくぞ必殺!
ガトリングパンチ!(複製MAGで【乱れ撃ち】)
そしてトドメだ!
唸れ!ウルフブレス・ビーム!(複製ガオウ丸を一点集中、光【属性攻撃】の光線)



●だって丸太は杖より重い
 ラグランジュポイント、スペースマルタ島。
 見上げた空は、当然だが宇宙の星空であった。
「今度の戦場は宇宙か。素晴らしい」
 地上からでは決して見えないであろう数の星が瞬く空を七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)が見上げている。
 とは言え、既に麗治であって麗治でない。戦いの予感に闇人格が表に出ていて、星空から視線を落とすと、足元の丸太を退けて、地面に何かを書き込みはじめた。
 そう。
 頭上には宇宙。
 だが前を見れば、見渡す限りの丸太、丸太、丸太。
「ええっと……」
 ずらり丸太づくしの光景を、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は呆然と見回して――そして丸太しか見えなくて。
「丸太は持ったか!! だな!」
 丸太よりどりみどりな状況に、宮落・ライア(ノゾム者・f05053)が思わずそう声を上げる。
「誰かが言うと思いました」
「丸太を持ったかーじゃないわよ! 持てるわけないでしょばかあ!」
 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)がそう言って笑う一方で、今しがた転移してきた蒼い光に向かって、フィーナは全力で叫んでいた。
「そっか。丸太運ぶの大変だよね。オレ運ぶよー?」
 フィーナの様子に、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)が、傍らの『Glanz』を示して全員に提案する。
 確かに、丸太を運ぶという問題がある。
 そして荷物運びは、パウルが生業とする旅行会社の範疇であろう。
「うーん、でも……自分がこれで戦う想像が出来ないわ!」
 フィーナは魔術を得意とする。POW246あったりするが、それでも持てないと思うもんはあるものだろう。
 何しろ――丸太である。
 太いのやら細いのやら長いのやらと、どれも立派な丸太である。ぱっと見で一番細いのでも、余裕でフィーナの腕より太い丸太ばかりだ。
「これほど大サイズの得物は、初物ですね」
 傭兵として幾つもの戦場から生還してきたクロトをして、驚かせる代物である。
 しかも、ただの丸太ではない。
「うおお! なんか生えたー! おもしろーい!」
 闇之雲・夜太狼(クライウルフ・f07230)が抱えた丸太からは、指のようなものがガシャンと生えていた。
『ふしぎなマルタ 変わるよマルタ』
 七乃音・七七七(七言詠い・f14816)が触れた丸太は、その半ばからニョッキリと湾曲した枝のようなものが出ていた。
「こりゃ何だ? ただの丸太にしか見えんが――うぉっ」
 セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)が丸太を怪訝そうに触れていると、その先端から光が空に向かって飛び出した。
 どれもこれも、丸太にあるまじき現象である。
「なら、この一見普通の丸太に見える木材も実は……」
 ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)も、手近な丸太に目をつけて、それをペタペタ叩いてみたり、こすってみたり色々やって――やって――やって……?
「いやコレ普通の丸太みたいですけど!?」
 何も起きなくて、ナギが愕然と声をあげる。
 まあ、そう言う事もあるかも知れない。もしかしたら、使い方が判っていないだけかも知れないが。
「ですが、普通の丸太で戦って見せればスペースマルタニアンの士気が、より上がるかもしれないですね」
 せっかくだからと、ナギはその丸太をそのまま使うことにした。

●丸太ってなんだっけ
「おっしゃ! 丸太パイルバンカーどこだー!」
 ライアは目当ての丸太を探し、丸太野中を駆け回る。
 大剣と刀と言う二刀流を使うライアであるが、別に武器に依存しているわけではないので、スタイルを変えることに拘りはない。
 英雄武器を選ばず、と言ったところか。

「今日は貴様等に特別武器を支給してやろう!」
 召喚で現れた黒甲冑に身を包んだ騎士型のUDC達にに、麗治が告げる。
 特別武器? どこ? 丸太しかないよ?
「此処の丸太は武器だ!」
 そんな感じでキョロキョロと見回す黒騎士達に、麗治は足元の丸太を拾い上げ、それが武器に変わるのを見せつける。
「丸太ソードか丸太ランスを探してこい!」
 そんな指示にも麗治――ロードの闘争心で召喚された騎士型UDC達は、思い思いに丸太を拾っては、それが剣か槍に変わるのを確かめて回り始めた。

「まあ、いつまでも悩んでても仕方ないわね」
 他の猟兵達が次々と自分が使いやすそうな丸太偽装兵器を見つけ出すのを見て、フィーナも決意を固める。
「分担作業といきましょ! 涼音!」

 ――チリン

 小さく鈴の音鳴らして、フィーナの隣に黒髪の和服の少女が現れた。
 涼音。
 ここではない世界で、かつて妖刀に魅入られた女剣士である。今はもう、その腰に妖刀はなく、こうしてフィーナの喚びかけに答える霊となっている。
『……真逆薪割りでもさせるつもりですか?』
 開口一番、周りに丸太ばかりと言う状況に、涼音はフィーナにそう問うていた。
「違うわ! この中の好きな丸太を使って戦って頂戴!」
『帰っていいですか?』
 端的なフィーナの説明に、涼音がくるりと背中を向ける。
「違ーう! そうじゃなくて――」
 流石に少し慌てて、フィーナは涼音に事情を伝えた。
 かくかくしかじか、ここは宇宙で丸太に見えるものは全て武器だと。
「ほら、これなんかどう? 刀になりそうじゃない?」
『……』
 フィーナが進める丸太を、涼音は胡乱な目をしながらも、とりあえず持ってみる。
 ガションガシャンギュルンギュイーン!
 なんか伸びたり変形したり萎んだりしながら、丸太だったものが形を変ながら2m近い長さの白刃となって、涼音の手に収まった。
『これは……斬馬の大太刀ですか?』
 自身の背丈よりも長い丸太刀を涼音が一振りすれば、ヒュッと風が切れる音がなる。
(「本当に丸太が刀になると思わなかったわ。技術の使い方が、とんでもない方向に突き進んでるわね丸太宇宙人!?」)
 丸太に刀の柄が生えるくらいだったらどうしようとか思っていたフィーナは、謎の丸太変形を目の当たりにして、思わず胸中で呟いていた。

 丸太偽装兵器物色――終了。

●ファーストコンタクト
 スペースマルタ島、火力発電施設前。
『ほら、休んでんじゃないよ! 休まず薪を焚べ続けな――?』
 そこでは呪法骸操士ネウィの指示で、マルタニアン達がゾンビに急き立てられ、只今絶賛強制労働中であった。
 ドドドドドドッ!
『ん? 何の音?』
 そこに、遠くから響く低音が聞こえて来る。
 次第に大きくなる白銀の光点。
「どもー! エイリアンツアーズでっす☆」
 白銀の無骨なフォルムに蒼い光線を纏った宇宙バイク『Glanz』のハンドルを握って、パウルが陽気な声を上げた。
 『Glanz』の装いは、いつもとだいぶ違う。その両脇に丸太が括りつけられていて、後ろにも丸太の束を引きずってきているのだ。
「アッ。第一スペースマルタニアンさん発見~」
 丸太を避けて『Glanz』から降りたパウルは、その左目を輝かせ「お話いいですか?」と笑顔でスペースマルタニアンに近寄っていく。
「スペースマルタニアンさん、この星って丸太だらけだね?」
『丸太にするのは得意なんです』
「なっるほどぉ」
 丸太人間と言う見た目を気にしないパウルのフレンドリーさとコミュ力で、マルタニアン達も警戒心を抱かず、宇宙人インタビューなノリが続く。
 だが、呪法骸操士ネウィがそれを許す筈もなかった。
『何やってるの!』
 細い怒号と、メギョッと何か硬いものが砕ける音が響く。
『手が止まってるわよ! ゾンビに砕かれたくなかったら、キリキリ働きなさい!』
 先の音は、巨大なゾンビが鉄球の拳で地面を砕いた音だ。
「ウッドなボディの皆に火を使った作業させるとかダメっしょ!」
『ゾンビだって火に弱いのよ!』
 ゾンビの恐怖でマルタニアンを働かせようとする呪法骸操士は、パウルの言葉に悪びれもせずに言い返す。
 だが――それを聞いたパウルは、ニヤリと笑みを浮かべた。
「マルタニアンの皆さん、聞きまして? ゾンビも弱点はある! 一緒にゾンビマストダイしよっ♪」
 呪法骸操士が『しまった』という顔になるのを横目でちらりと確かめながら、パウルはマルタニアン達に呼びかける。
『どうやって……』
『我々は戦ったことなんか』
 だが、当のマルタニアン達は困った様子で首を傾げるばかり。
『巨人型ゾンビ兵、やってしまいなさい!』
「やり方は超簡単! オレがお手本やるから見ててね☆」
 呪法骸操士が巨大なゾンビをけしかけるが、パウルは慌てず騒がず、蒼いタコの触手も出して、『Glanz』で運んで来た丸太の1つを担ぎ上げ――。
「まずはよーく狙って……投げまーす☆」
 そして、笑顔でぶん投げた。
 だが、丸太である。そんなに遠くに飛ぶ筈が――ゴォオォォッ!
 パウルが投げた丸太の切断面から、突如炎が吹き出して、勢い良く飛び出した。迫りつつあった巨大なゾンビの頭をぶち抜いて。
「続けて――ぽちっとな、と」
 パウルが『Glanz』の横に括り付けておいた丸太のコブに偽装されたボタンを押すと、丸太の中から放たれたミサイルが後ろのゾンビを吹っ飛ばす。

 ――あれって、丸太ロケット?
 ――丸太ミニロケットもあるよ。失敗作だと思ってたのに。

「さらにダメ押しいっくよ――!」
 マルタニアン達がひそひそ囁く声を背中に聞きながら、パウルは蒼いタコの触手に固定砲台『Krake』を、その銃口に丸太ミサイルをセットする。
『巨人型ゾンビ兵! アイツを叩き潰しなさい』
「遅せーよ!」
 呪法骸操士が、2体目の巨大なゾンビをけしかけようとするが、パウルがミサイルを一斉掃射する方が早かった。
 着弾した4つの丸太ミサイルが、巨大なゾンビの手足を砕いて撃ち倒す。
『へぇやるじゃない』
 だが、巨大なゾンビを立て続けに倒されても、呪法骸操士は落ち着いていた。
 何故か。
『でも、丸太、飛んで行っちゃったわねぇ?』
 パウルがミサイル代わりに使った丸太が、使い切りだと見抜いたからだ。
『これ以上、ゾンビを止められるかしら? ゾンビ達。マルタニアンを適当に捕まえてやりなさい! 人質よ!』
 打ち止めとみた呪法骸操士は、ゾンビにマルタニアン捕獲の指示を飛ばす。
(「ま、『Krake』はリロードすれば撃てるんだけどね……」)
「そろそろ出番じゃない?」
 別に打ち止めでもなかったが、パウルはそう呼びかける。
「よし! そうはさせないよ!」
 答える夜太狼の声は、丸太の束の中から聞こえた。

●丸太合体
 ふわりふわりと、丸太の束が浮かび上がっていく。
 夜太狼が乗り込んでいるマルタボディ。
 マルタの片方の先端が開いて、指が現れたマルタアーム。同じく片側が開いて足底となったマルタレッグは、どちらも関節部分が生まれている。
 そして最後に、短く太いマルタヘッド。
 ガシャガシャンと変形したそれらは、夜太狼がずっと乗り込んでいたマルタボディを中心に組み合わさっていき――。
「ライアーヒーロー『クライウルフ』参上!」
 ズンッと地面を揺らし、降り立ったのは――声は夜太狼。だがその見た目は、何と言うか巨大なマルタニアン、という感じだった。

 ――あれってもしかして、頓挫したマルタロボのパーツ?
 ――ああ。丸太外骨格だけ出来たけど、動力が作れなかったやつか。

「失敗作だったのこれ? でも俺にはぴったりの丸太兵器だよ!」
 聞こえてきたマルタニアン達の声に、丸太のパーツの中から夜太狼が返す。
 作ったものの動力がなくて放置されていたそれらのパーツを、夜太狼が念動力で浮かべて、サイキックエナジーで操る『マジックアームガッチャー』を骨組み代わりに組み合わせて、中に乗り込んだ自分の手足の延長のように動かしているのだ。
 夜太狼は、マルタニアン達も持て余した丸太に新たな生命を吹き込んだのである。
「俺が来たからにはお遊びはここからだよ! 丸太パンチ!」
 丸太の拳がゾンビを押し潰し、マルタニアン達の逃げ道を作る。
『巨人型ゾンビ兵! あんなの、壊してやりなさい!』
「負けるもんか!」
 呪法骸操士がけしかけた巨人型ゾンビ兵と、夜太狼の丸太ロボがぶつかり合う。
 彼我のサイズはほぼ同じ。だが、巨人型ゾンビ兵の片方の拳は、ただの拳ではない。巨人型ゾンビ兵の鉄球のような拳が、丸太ロボの拳を打ち砕く。
『ふふん。やはり、私のゾンビ兵士は最こ――』
「ガトリング丸太パンチ!」
 呪法骸操士が勝ち誇った直後の油断を見逃さず、夜太狼は無事な腕の拳を、ワイヤー射出で撃ち出した。丸太ロボの拳が、連続で巨大ゾンビを叩いて後ずさらせる。
「さらに、必殺の――!」
 マルタボディの中で、夜太狼がパンッと手を叩く。
 【CODE:MP】で増やした狼頭型怪奇銃『ガオウ丸』を、夜太狼は外に出さず、敢えてマルタボディの中で1つに纏めた。
「唸れマルタ砲! ウルフブレス・ビーム!」
 夜太狼の声と共に、マルタボディの胸部がぱかっと開いて、光が放たれる。
 嘘つきを自称する夜太狼にとって、自らの攻撃を、さながらロボの内蔵兵器のように見せかけるのは、お手の物。
 60の『ガオウ丸』を集めた光の砲撃が、巨大ゾンビを撃ち抜いた。

「スペースマルタニアンと猟兵に栄光あれ! ゾンビ! マストダイ!!」
 それを見届けたパウルが、マルタニアンに向き直って拳を振り上げる。
「ゾンビ! マストダイ!」
『ゾンビ、マスト、ダイ!』
 夜太狼もマルタロボの拳を上げれば、マルタニアンの一部が拳を掲げた。上がった拳はまだ少なかったが、少しでも上がったのまた事実であった。
 ――もう一回、マルタロボ、作ってみるよ。
 ――ああ、俺も手伝うぜ。
 さらに、一部のマルタニアンに消えかけていたマルタロボの情熱が蘇ったそうな。

●炎と刃で開く道
 ――ゾンビだって、火に弱いのよ!

 パウルが聞き出した呪法骸操士の声に、フィーナの口元に笑みが浮かぶ。
 炎属性の魔術は、フィーナが得意とする所の1つ。
「丸太宇宙人が逃げる道を斬り開くわよ! 涼音!!」
『いいでしょう。屍人は涅槃へ返すべきです』
 ソンビ軍団を目掛け、フィーナは涼音と共に駆け出した。
「まずは派手に行くわよ。燃えなさい!」
 フィーナの杖から放たれた炎が、ゾンビの集団を飲み込んで燃やしていく。
「涼音!」
『っ!』
 フィーナの声を合図に、燃え上がるゾンビの上を涼音が飛び越えた。
『ちょっとゾンビを焼いたくらいで単騎駆? 無謀ね! ゾンビの盾ならいっぱいいるのよ。サクリファイス!』
 それに気づいた呪法骸操士が、雑兵ゾンビの集団を前に出す。
 涼音の着地を狙って、囲んでしまおうと言う腹か。
『甘いですね』
 淡々と告げた涼音が、空中で丸太の大太刀を振るう。
 刃の軌跡すら残さぬ神速の斬撃が、風を刃と変えて、涼音の着地点に迫っていたゾンビの群れを纏めて斬り飛ばした。
『ふっ!』
 崩れ落ちるゾンビを蹴倒し着地した涼音は、身を起こしながら返す刃を逆袈裟に斬り上げ、目前のゾンビ3体を纏めて斬り倒す。
「こっちよ! 逃げるならさっさとなさい!」
 斬り開かれたゾンビの間隙から逃げろと、フィーナが促し、そこにマルタニアン達が駆け寄っていく。

 ――あれ、昔作った宇宙マグロ解体包丁か?
 ――ゾンビも切れるんだぁ。

『中々どうして。いい切れ味ですよ、丸太の刀!』
 逃げるマルタニアン達の一部が、丸太から変化した大太刀でゾンビを端から斬り倒す涼音の姿を、何度も何度も振り返っていた。

●降り注ぐ丸太に注意
『逃さないでよ、ゾンビたち! 追いかけなさい!』
 逃げ出したマルタニアンを追えと、呪法骸操士が指示を飛ばす。
「そうはさせない」
 そこにナギが短く告げる声がしたかと思えば、何処からともなく猛スピードで飛んできた丸太が、ゾンビの一部を蹴散らした。
 そのまま、丸太は上昇していく。
『え…………なに…………あれ…………』
 その丸太を眼で追った呪法骸操士が、思わず言葉を失った。
 丸太から、ナギの顔が覗いていたからである。

 ――あんな丸太作ったっけ?
 ――丸太偽装飛行機……? 人間丸太ロケット……?

 マルタニアンすら困惑させたナギのその姿は、闇舞鋼装――ダークメタモルフォシスによるものだ。
 あらゆる武装を強化するその力で、ナギは丸太一体型強化武装に変身していた。自らを空飛ぶ丸太としたようなものである。ナギ自身は破城槌のようだと思っているが。
 そのために、普通の――少なくとも変形したりしなかった――丸太を選んだのだ。
「まだまだだ。空から降り注ぐ丸太の恐怖を味わうが良い」
 しかも、ナギは1つの丸太だけではなく、複数の丸太を束ねておいてから、闇舞鋼装を発動した。
 その中の数本を、空で分離させる。
 呪詛や呪殺を込められた丸太は、そのまま島の重力に引かれて落下し――真下にいたゾンビをぷちっと押しつぶした。
 丸太が降るたびに、潰れていくゾンビ。だが、その数はあまりにも多かった。
『よし。あいつ、丸太1本になったわよ。もう丸太は降ってこない筈。捨て駒で耐えたかいがあったわね。行きなさい、ゾンビたち!』
 呪法骸操士は、丸太爆撃とも言うべきナギのその攻撃が、撃てる数に限界があることを予測し、ひたすらゾンビを増やすことで耐えていたのだ。
「落とす丸太が尽きたら、それで終わりと思ったか」
 しかしだ。
 丸太に限りがあることは、一体化したナギ自身がよく判っている。だから当然、降らせる丸太が尽きた時の事も考えていた。
 ギュンッ! 真っ直ぐに地上へと、ナギが飛び出す。
 そう。最後の手段は、急降下突撃。
『え、ちょ』
「丸太の恐ろしさを宇宙中に伝える礎となるがいい!」
 数が減った分は、落下の勢いでつけた速度で補って。ゾンビをなぎ倒して突き進んだナギは、一体化した丸太が砕け散るほどの勢いで呪法骸操士に突っ込んだ。

●七の制約
『次から次へと何なのよ!? 丸太ってただの燃料じゃないの』
 丸太ミサイルに丸太ロボ。丸太の刀に、空飛ぶ丸太。
 続く丸太攻めに悲鳴じみた声を上げる呪法骸操士の目の前で、ゾンビが1体、何かに射たれて倒れた。
『矢? どこから……?』
 ドシュッ!
 呪法骸操士がゾンビを射抜いたのが矢だと気づいて視線をめぐらせれば、次の矢が飛んでくる。
 その先にあったのは――やっぱり丸太だった。七七七の長い黒髪が、丸太の向こうで風に揺れている。
「マルタニさんの ふしぎなマルタ 一つ借りたよ 『弓矢』の丸太」
 七七七が数多ある丸太偽装兵器の中から見つけ出したのは、丸太の弓矢だった。
 どのような文明であれ、最初の弓矢は大体木で作られているものだ。だが、これはそんなものではない。
「ほんとに撃てる すごいね丸太」
 ガシャーンと開いた丸太の側面からニョッキリ出てきた枝は、よくしなる弓。
 そこにピンと張られた弦に、七七七は丸太の中から取り出した矢を番える。
 弓に変形したのは丸太の一部のみ。残りは無駄かと思いきや、大量の矢の貯蔵庫になっているようだ。
 七七七の細腕で弓を引けている辺り、内部には弓を引き易い仕掛けもありそうだ。
「甘く見ていた マルタの人の 武器に攻められ どういう気分?」
 七音で区切る独特の口調で告げながら、七七七は第三、第四の矢を番えては、ゾンビに阻まれるのも構わずに、呪法骸操士に狙いを定めて放っていく。
「裏を掻かれて 油断していた ネウィと言う子 貴女の負けよ」
『変な言葉で喋る子供ね! まだ負けてないわよ!』
 五矢、六矢。
 七七七の放つ矢の全てが、呪法骸操士の雑兵ゾンビという肉盾に阻まれた。
 それでも放ち続けて、次が『七つ目』の矢だ。

 七七七にとって、7という数は大きな意味を持つ。

 魔力に刻み込まれた祝福であり呪い。
 呪法骸操士が変と言った七音で区切る喋りは、呪文代わり。
 服装や髪留めと言った装飾品すら、七に関連したもので固めている。
 ある種の制約、と言って良いかも知れない。何らかの制約を以て力の底上げを計ると言うのは、多くの魔術体系に於いても見られる形式だ。
「語った言葉 七の音たち 全て一矢に 籠めて構える」
 さらに七七七は、その全てを込める一矢を、七つ目の矢とした。

「七呼踏拍 一切解離」

 七音の言葉で編んだ魔力。そこに矢の数もかけ合わせて。
 七七七が放った七矢はこれまで壁になっていた雑兵ゾンビを安々と貫いて、呪法骸操士の肩に突き刺さった。

 ――あんな旧世代の狩猟用丸太でも戦えるんだね?
 ――狩猟も戦いってこと?

「マルタニさんの マルタの武器が 一矢報いた できれば皆が 続く矢になり 助けて欲しい」
 囁きあうマルタニアン達に、七七七は背中を向けたまま七音の口調で告げる。
「私頑張る 皆も頑張れ」
 マルタニアンに向けたその言葉が嘘ではない証明に、七七七は新たな矢を番えた。

●英雄証明
『丸太の弓? でも、あれなら動けない筈――』
「こっちは任せて!」
 呪法骸操士が七七七にけしかけよう巨人型ゾンビ兵を動かすが、丸太を抱えたライアが駆け出していた。

 ――負けられない!
 自分よりも遥かに大きな巨大ゾンビに向かいながら、ライアは胸中で叫ぶ。
 ――死ぬことも止まることも認められない!
 ――私は託された!
 ――選ばれたんだから!
 己を鼓舞するその言葉は【自己証明】。
 違えられぬ期待と内なる祈りに、狂気に近い決意を持って応えんとするその意思は、ライアの身体に大きな負担を強いる諸刃の業。
 痛みにも構わず、ライアは巨大ゾンビの腹部を狙って、地を蹴って跳んだ。
「吹っ飛べ! マルタパイルバンカー!」
 ライアがピタリと押し当てた丸太の中から、丸太色の杭が飛び出し、巨大ゾンビの腹をぶち抜く。
 ――あれ、工事用丸太じゃないか?
 ――本当だ。あんなのでも武器になるのか。
 マルタニアン達の驚く声を聞きながら、ライアは次のゾンビ目掛けて駆け出した。

●丸太の兵法のお時間です
 猟兵達の戦いを見て、マルタニアン達の心は変わってきている。
 とは言え、まだ疑念が抜けていないようだ。
 外宇宙から来た強い人だから戦えているんじゃないか――? と。
 だが、猟兵だって数を力とする者もいる。
「では、先駆けは我が軍が務めさせて貰うぞ」
「いいだろう。あれだけいれば、食いそびれる心配もなさそうだ」
 鎧を着込んだ青い竜人セゲルと、ダークブルーの甲冑に身を包み軍馬に乗った麗治の後ろには、それぞれの軍勢がずらりと並んでいた。
 どちらも2人がユーベルコードで創り出した軍勢であり――そしてその全員が、何らかの丸太を持っていた。
 勿論、セゲルと麗治自身もである。セゲルなど、数本を束ねて担ぐようにして引きずって持ってきていた。

●青い竜人の軍と丸太
「よし。では――剛勇ナル手勢ヨ」
 重々しい口調に変えて、セゲルは己が軍を振り返る。
「此度は、民を鼓舞する戦い。各々丸太を持って戦うように」
 ――オォォォォォッ!
 セゲルの指示に、120人を超える竜人の中隊が咆哮を上げて、丸太を抱えて中央にいくにつれて奥に下がる、鶴翼と呼ばれる陣に似た隊列で進みだした。
「我が軍は簡単には打ち倒せんぞ?」
『数でゾンビ軍団に叶うと思ってるの? 行きなさい、雑兵ゾンビ』
 傷を負っても、呪法骸操士の骸を操る呪法の冴えはまだ健在。
 一方のセゲルの軍も、陣を一糸乱れず進む様から、その練度が伺える。
 うめき声以上の声を発せない雑兵ゾンビ達が、セゲルの竜人部隊とぶつかった。
『攻撃!』
 軍の指揮官が声を上げると、竜人達は一斉に手にした丸太をゾンビに叩きつけた。
『ん? それって普通の丸太なの? だったら、ゾンビの敵じゃない。骨が折れようがゾンビには関係ないんだから!』
 竜人達の持っているのが、ただの丸太だと思い込んだ呪法骸操士が、その口元にニマリとした笑みを浮かべる。
「――今だ」
 セゲルが発したのは、ただその一言。
 それだけで充分だ。王直属隊の残滓である、優秀な軍人達には。
 ギュゥッィィィィィィィンンンッ!!!
 突如、響き渡るモーターの音。
 そして竜人達の持っていた丸太から、回転刃がニョッキリと生えて、ゾンビたちを次々と切り刻んで、追い立てていく。

『なぁっ!?』
 ――あ、あれは丸太伐採用の丸太チェーンソーじゃないか!
 ――そうか。丸太を切れるなら、ゾンビだって切れるんだ!

 呪法骸操士の驚愕の声と、マルタニアン達の感嘆の声が同時に上がる。
 それを聞きながら――セゲルは丸太を束ねて何かを組み上げていた。
 束ねているのは全て、丸太型の砲台である。
「どうも一発使い切りみたいだからな」
 セゲルが最初に見つけたそれと同じ丸太は、一発撃ったきり沈黙した。使い切りなのか充填がいるのかは不明だが――どちらにせよ、この戦いでは一度しか使えない。
 ならば、その一発で最大の効果を発揮する状況を作るのが、軍の指揮官としての腕の見せ所。
 そしてセゲルが先に告げていた指示の通り、竜人の兵士達はゾンビを一塊に追い立てるように攻めている。
「よし――充分だ。我が軍よ。ご苦労だった」
 セゲルが告げれば、剛勇ナル手勢が忽然と消える。
『ヴァー?』
 敵を見失い困惑する雑兵ゾンビを、セゲルが束ねた丸太連砲とでも言うべき兵器から放たれた光が直撃し、蹴散らした。
「見よ、丸太の民よ! そこそこの数の丸太で組めば、威力もそれなりになるのだ!」
 セゲルが示してみせた光景に、マルタニアン達がどよめいていた。

●黒騎士の軍と丸太
『わ、私のゾンビが……』
 もうもうと立ち込める土煙の中、死屍累々と横たわる雑兵ゾンビ。
『で、でもいいわ。雑兵ゾンビは所詮、捨て駒。後でいくらでも補充できるもの』
 震える声を押し殺し、呪法骸操士は更に雑兵ゾンビを呼び出してみせる。
『次の砲撃が来るまで時間がある筈――潰してしまいなさい!』
 実際は次はないのだが、あっても時間がかかる。呪法骸操士のその予想は正しい。
 だが、そう予想されることを、猟兵達は予想していた。
「さあ皆の者、丸太は持ったな!?」
 故に麗治――その闇人格の『ロード』がその隙を埋めるこの機に、軍を動かす。
 黒尽くめの兵士達は、各々が手に、丸太の剣か丸太の槍を持っていた。
「うまく丸太を使いこなした者には恩賞を与える!」
 ロード自身も抱えていた丸太を掲げると、それはカシャンジャキンギュルルーンと形を変えて馬上槍に変形した。
「総員突撃。尽く叩き潰せ!」
 自らサイボーグ軍馬に跨り駆け出したロードの後に、51体の黒い騎兵が続く。
 先の竜人の軍に比べれば数は少ないが、騎兵である事と麗治/ロードが自ら先頭に立っているという違いで、こと突進力に限ればむしろ勝っていると言えた。
 セゲルとロード、共に軍を作る能力を持つも、その指揮官としてのタイプはまるで異なる。共通しているのは、自身と軍の適正をよく理解しているという事。
『あれは拙いわね――雑兵ゾンビ、固まりなさい!』
 その勢いを見た呪法骸操士が、ゾンビ達を集めて固めさせる。
 そこに、ドドドドッと蹄の音を響かせ、黒い騎兵が突っ込んで――吹っ飛ばされたゾンビが高々と宙を舞った。
「ほう。雑魚にしては、粘るではないか――だが、いつまで持つかな?」
 その向こうに見えたゾンビに、ロードが笑みを浮かべて馬上槍を突きつければ、騎兵の第二陣がそこに突進していく。
 ロードが組んでいた隊列は、衡軛と呼ばれるものに似ていた。
 縦列に並んだ騎兵が前から突撃し、勢いが落ちたら横に逸れ、そこに次の騎兵が突っ込んでいく。
 一方、ゾンビはただ集まっただけ。陣と呼べるほどではない。
『踏ん張り――違う、避けなさい!』
 呪法骸操士の指示も乱れる。
 所詮捨て駒と思っている指揮官と、軍を熟知した指揮官とでは違う。
「その程度か。将の器とは言えんな!」
 薄くなったゾンビの壁をサイボーグホースの突撃で強引にこじ開けたロードが、丸太の馬上槍を呪法骸操士に叩きつけた。

 ――あれも、旧式の昔の丸太兵器だよな。
 ――あんなものでも、集めれば戦えたのか。

 数で押して呪法骸操士に届いた様に、マルタニアン達はざわめき、一部のマルタニアン達は丸太を取りに走り出していた。

●一見武器じゃなければ、それは暗器です
『ここまで、ゾンビをやられるなんてね……でもね』
 多くのゾンビを失った呪法骸操士が、ゆらりと立ち上がる。
『呪法骸操士が、操るゾンビより弱いと思ったら、大間違いよ!』
 その身体を、影から立ち昇る呪詛の瘴気が覆っていく。
 ゾンビ軍団に受けた損害を、自らの力と変える呪法骸操士のネクロマンシーの1つ。
 ネクロマンサーズ・カウンターアタック。
「瘴気ですか……」
 そこに、クロトが飄々と近づいていた。他の猟兵達が持っていたものに比べると、幾らか細い丸太を引きずっているけれど。
『……アンタも猟兵だね』
 クロトの風貌は、一見すると黒衣の優男然としている。
 だが、散々打ちのめされた呪法骸操士は、丸太を持っているクロトに殺意の籠もった視線を向けた。
『その生命、吸い取ってあげる』
「それはごめんです」
 ゴギンッ!
 呪法骸操士が地を蹴って飛び出そうとしたそこに、クロトがさらりと告げてぶん回した丸太を容赦なく叩きつけた。
「瘴気も生命力吸収も、当たらなければいいんです」
『ちょっ』
 ゴギッ!
「つまりですね。先に殺れば問題無し!」
 ゴギッ!
 えげつない事を飄々と言いながら、クロトは容赦なく丸太を叩き込んでいく。
『なんで、そん、な、丸太に慣れて……丸太使い?』
「まさか。ただの何でも武器にする暗器使いですよ」
 クロトにとって、暗器使いとはそう言うものだ。
 だが、呪法骸操士もやられっぱなしではない。
『こ、のぉぉっ!』
「おっと」
 妙に重たい丸太を受け止め、押しのける。勢いに逆らわずに少し下がったクロトを追って、力任せの一撃を――ゴォンッ!
『は???』
 まるで鉄でも叩いたような音を立てて、クロトに丸太で受け流された呪法骸操士が目を丸くする。おかしいのは、クロトか、丸太か。

『あ、それって丸太型の鉄柱じゃないですか』

 そこに丸太を手に戻ってきたマルタニアンが、クロトの持つ丸太を見て声を上げる。
 おかしいのは丸太だった。
「ああ、やはりですか。手応えがどうにも鉄柱だったのですが」
 鉄柱を軽々と振り回せしていたクロトもだが、それはトリニティ・エンハンスの炎の魔力が彼の中で燃えて力と変わっていたからである。
「でも、使ってみると良いですね、丸太。先が折れたり切れたりしても刺突武器になりそうですし、使えなくなっても投げればいい」
 ぽいっと無造作にクロトが投げた鉄柱丸太が、呪法骸操士を押し倒す。
「丸太、無敵では? そう思いませんか、この島の方々」
『『その通り!!!』』
 クロトの声に答えたのは、丸太を持った丸太達。
『――は? え? ゾ、ゾンビたち! 出てこい!』
『このマルタ島は!』
『マルタニアンのものだ!』
 猟兵達の戦いに、ついにマルタニアン達が蜂起の意思を固め、立ち上がった。
『お前たちは、最初からこれを狙って――!』
 事此処に至って、呪法骸操士ネウィもようやく猟兵の目的に気づく。
「それがなにか?」
 歯ぎしりする呪法骸操士に、クロトは柔和な笑みを浮かべたまま短く告げた。
「戦いなんて、生き残ったら勝ちじゃないですか。死んだらそれまで。そんな事、屍人を使ってきたあなたもよく判っているでしょう?」
 判らせようと言うのでも、説き伏せようと言うのでもなく。
 ただそう言うものだろうと、クロトは飄々と、しかし冷たく告げる。
 それは、傭兵としてのクロトの論理。そうやって――生き抜いてきたのだ。

 こうして、スペースマルタ島に於いて、マルタニアンの蜂起は成った。
 マルタドリルやらマルタスタンガンやら、猟兵達がよく判らなかった丸太偽装兵器まで持ち出したマルタニアン達は、ゾンビ1体に数体掛かりで挑んで、駆逐していく。
 その刃が呪法骸操士に届くのも、時間の問題。
 そして、猟兵達が見守る中――スペースマルタ島に、勝利したマルタニアンの歓声がどっと上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月22日


挿絵イラスト