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アースクライシス2019⑪~ガールズバディと往く解放戦

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #ダストブロンクス

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「ついにダストブロンクス・アッパーを制圧したことで、ダストブロンクスの住人がオブリビオンに対して立ち上がってくれた。我々の戦いが、人々の希望に繋がっていると実感するな……」
 感慨深げに猟兵達へとそう伝えた仙堂・十来は、次の任務の説明へと入る。
「しかし、ダストブロンクスにはスカムキングが巨大汚水槽と爆弾を設置し、反抗があればそれを爆破させると住民を脅していたそうだ。今回、住民の蜂起に繋がったのは、その爆弾の解除方法をダストブロンクスのヒーロー達が手に入れたからなのだが……」
 無論、その巨大汚水槽を防衛しているのはオブリビオン。
 ヒーロー達では敵わずに、爆弾を解除する間もなく倒されてしまうことになる。
「なので、猟兵の皆にはヒーロー達と協力し、この防衛についているオブリビオンを倒してもらいたい。特に皆に行ってもらう巨大汚水槽を担当しているのは、人体の強化改造に長けたオブリビオンでもある……ヒーローがもし倒されたなら、その地点でそのヒーローを手駒としてくる可能性すらある」
 なんともえげつない話である。
 ちなみに爆弾の方はオブリビオンに任されてはいるものの、戦闘中に爆破してくるようなことはない。断末魔代わりに起動されたとしても、爆発する前に解除できるようヒーロー達が手順を覚えているのでその点は気にせず戦ってもらって平気だ、と十来は付け加えた。

「今回同行してもらうヒーロー達には、既に合流地点を伝えて待機してもらっている。人間の2人組で、どちらも十代半ばの女性だな。同タイプのヒーローコスチュームを着用しているが、短めのスカートにネイルチップ型のバトルガントレットを装備しているのが『ランチタイム』で」
「ネイルチップ……?」
「まぁ、うん、機構は本人に聞いてくれ。膝丈のスカートにビームキャノンとしての機能も持つ眼鏡を掛けているのが『ミッドナイト』と名乗って活動している、戦闘よりはどちらかというと情報収集や一般人のサポートなどに長けたタイプのヒーローだ」
 2人とも攻撃手段もあるし、とりあえずオブリビオンに一撃で殺されるほどではないが、猟兵達よりはだいぶ弱いし、無論2人だけで今回のオブリビオンに立ち向かったらさっくり殺されて改造されるしかない程度だ。が、地下深くの戦場で明かりをつけるとか、回復や軽い強化を飛ばすとか、小技っぽい支援が割と得意なのでいい感じにサポートしてくれることだろう。

「というわけで早速だが、待ってもらっている側でもあるしすぐに向かうとしよう。どうかダストブロンクス、そしてヒーローズアース解放のために、よろしく頼む」
 猟兵達に一礼すると、普段より少しばかり急ぎ気味に十来は転移の準備へとかかるのだった。


炉端侠庵
 こんにちは、炉端侠庵です。
 ダストブロンクスも最下層、住民のいる領域までやってきました。
 今回は現地ヒーローと協力しての作戦、何卒よろしくお願いいたします。

●ヒーローについて
 ランチタイム:ギャルっぽい少女ヒーロー。特技は明かりとか回復とか。キャピ元気。
 ミッドナイト:学級委員長っぽい少女ヒーロー。特技は簡単な強化と威力は低いが壁や床に反射するレーザー。クーデレ気味。
 名前はどちらもヒーローネーム。構うと反応が返ってくるかもしれません。
 あと必要な支援がありましたらプレイングにてお申し付け下さい!

 それでは戦争も後半戦、よろしくお願いします!
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第1章 ボス戦 『エンジェルドクター・パッフィー』

POW   :    ノーアナスタティックオペレーション
【敵の急所を狙ったメスと打撃のコンボ 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    超絶執刀アスクレピオス
【人智を超越したメス捌き 】による素早い一撃を放つ。また、【投薬による肉体強化】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    緊急再生処置
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【再生怪人】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はベロニカ・ゴールデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

星群・ヒカル
「ふふふ、両手に花とはこのことか!……おっと、鼻の下伸ばしてる場合じゃないな」
「おれは確かに猟兵だが、おめーらの助けがなきゃここでは何も出来ない。信頼しているぞ、2人とも!」
『コミュ力』で2人と仲良くなって出発だ

宇宙バイク『銀翼号』に2人も乗せて敵へ突撃
振り落とされないよう『ロープワーク』で超宇宙牽引ワイヤーを使って繋いでおこう

敵の攻撃は『視力・第六感』で動作を見切って回避だ
スピードはミッドナイトに強化してもらい、視野はランチタイムに確保してもらうぞ
敵との間に障害物がなくなったところで『超宇宙・強襲流星撃』を発動するぞッ!
「これが絆ってやつだ、死人を改造する奴なんかにはわからないだろうなッ!」


フィーナ・ステラガーデン
ん!ヒーローが2人一緒に戦ってくれるなら一緒に連携して戦うわ!
私は【属性攻撃】で火球を打って牽制。なるべく注意を引きつけるわ!
ランチタイムには灯をなるべく多く作ってもらってぷかぷか浮かせれるなら多く浮かせてもらえるように指示するわ!
ミッドナイトには壁を反射するレーザーを打つように指示するわ!
レーザーが当たって気がそれたらそこから本命の攻撃開始よ!
ランチタイムに灯りを一斉に動かすように言って私はUCを思い切り投げるわ!
ただの灯りで当たっても別に何てことないと思うけど
私のUCの目眩しになることが目的よ!

うまくいけばハイタッチくらいはしたいわね!
ふふん!どんなもんよ!
(アレンジアドリブ大歓迎!)


鈴木・志乃
随分かわいい名前だけど、二人は仲良し?なの?
いいねいいね、私も親友と(リアル)一心同体なんだ

……委員長、それスカート中身見えない?大丈夫?

【オーラ防御】展開
開幕UC【目潰し】
敵行動を【第六感】で【見切り】光の鎖で足払いの【なぎ払い】攻撃
上がったスピードで動き回り敵を翻弄
【早業】【念動力】で鎖を操り縛り上げ、地面に叩きつけます(【全力魔法】【衝撃波】)


☆護衛対策
なんかあったら飛んでくけど
バリア張っといてもらうのは当然として、【高速詠唱】で見えない捕縛罠設置しときます(【罠使い】)
捕まったら一緒に一斉攻撃してね、二人とも
私は【鎧砕き】出来る魔改造ピコハンで【2回攻撃】するから


レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
猫の手でも借りたいかにゃ?爆弾解除その為の障害排除だね。
僕は子猫に変身し【バッドラックキャット】を発動していくよ。髭感知で動きを見切り、呪いのオーラ防御で盾や剣と同等に強化された肉球や爪でメスを捌いていくにゃ。このUCの真価は「運勢操作:不幸」。オーラに触れた敵を不幸に、敵にとっての不幸な出来事で反撃するよ。肉体強化の投薬を違う薬と間違えたりランチタイムやミッドナイトの一撃が不幸にも致命的な一撃(クリティカル)になったりとその結果は神のみぞ知るだねぇ(不幸効果:おまかせ)2人にも活躍の場をだと投薬ミスがたまたま2人の存在が弱点的な体質にでもなるのかにゃ?。


鎧坂・灯理
要はヒーローが倒されず、落ち着いて仕事にかかれればいいのだろ
ならば私は防御に徹しよう

起動、【千視卍甲】
対象は私を含めた猟兵とヒーロー。
使用している間は一切攻撃出来ないが、相手の攻撃も一切通らない
猟兵は私一人ではないだろうし、攻撃はそちらに任せよう
彼女らを完全防御する
他猟兵にも攻撃が通らなくなるわけだし借りにはなるまい

そら、急いで解除してくれよ
世界が終わりかけてるんだ
貴様らの仕事が世界を救う一歩だ


村崎・ゆかり
ダストブロンクス最下層か。戦争も決着が近づいてきたわね。それじゃ、この領域もサクッと解放しちゃいましょう。
『ランチタイム』と『ミッドナイト』はよろしく。道案内お願いね。

この品の無いオブリビオンがスカムキングの趣味なの? そうだとしたら感性を疑うし、そうでないならこんなのでも戦線に投入しなきゃいけないほど敵戦力は逼迫していることになる。
いずれにしろ、勝利は近いわ!

ヒーローをその気にするにはこれくらいでいいでしょ。実際のところ、言うほど相手をなめてないわ。

近接タイプの相手ね。巫覡載霊の舞で敵の素早い攻撃に対応する。
得物のリーチを活かして、「なぎ払い」からの「衝撃波」を帯びた「破魔」の「串刺し」。


アルトリウス・セレスタイト
吹き飛ばす訳にいかんのが面倒ではあるが、まあ問題はない

現地では状況を『天光』で逃さず把握し警戒
目標を確認次第即座に魔眼・封絶で拘束
行動と能力発露を封じる魔眼ゆえ、捕らえればユーベルコードも霧散する
何をしていてもその結果は消え去るだろう
全力の魔力を『解放』で乗せ拘束力を最大化

拘束中も瞳に魔力を溜め魔眼の力を『再帰』で循環させ保持
拘束を逃れた瞬間再度拘束し逃さない
魔眼の「準備」も『刻真』での固有時加速に高即詠唱の応用を合わせ最速化し機を与えない

安全を確立したら『討滅』の死の原理を打撃に乗せて撃ち込み討伐を図る

※アドリブ歓迎



 オブリビオンの支配下に息を潜め静まり返っていたダストブロンクスは、ようやく息を吹き返したようにさざめき、ざわめき始めている。
 未だこの場所の住民達の営みは、人質に取られたままだ。それでもオブリビオンの支配を打破し、この地下都市を護るべく立ち上がったヒーロー達の行動は偉業とすら言える勇気ある行いであって。
 そしてその勇気はもちろん、猟兵達の奮戦がもたらしたものなのだ――。

 軽快なバイクの音にきっちりと黒髪をポニーテールにした少女が振り返り、少し遅れて大雑把に纏めた赤髪の少女がスマートフォンから顔を上げると勢いよく手を振った。
「あっ猟兵さんっしょー! こっちこっち、来てくれてありがとー!」
「ランチタイム、声が大きすぎます。……すみません、私がミッドナイト、そして彼女がランチタイム。今回ご協力させていただくヒーローです、よろしくお願いします」
 対照的な反応だが、どちらも猟兵達を見る瞳は輝いている。だってまさにダストブロンクスの、それどころかヒーローズアースのために戦ってくれているヒーローの中のヒーロー、それが猟兵達への印象だ。
「ふふふ、両手に花とはこのことか!」
 そして全然タイプの違う2人のヒーローガールズに、星群・ヒカルがでれぇ、としかけた顔を慌てて引き締めた。
「おっと、鼻の下伸ばしてる場合じゃないな。おれは確かに猟兵だが、おめーらの助けがなきゃここでは何も出来ない。信頼しているぞ、2人とも!」
「まずは道案内、お願いね。『ランチタイム』と『ミッドナイト』ね、よろしく」
 ヒカルに続けて村崎・ゆかりが目を細めて頷けば、ランチタイムが任せて、と結構ボリュームのある胸を叩き、ミッドナイトがこくりと決意を込めた目で頷く。
 合流地点から巨大汚水槽までは遠くはないが、善は急げとばかりにヒカルの宇宙バイク『銀翼号』にヒーロー2人は同乗することにし、超宇宙牽引ワイヤーを命綱にと準備している間に鈴木・志乃が声をかける。
「ところで随分かわいい名前だけど二人は仲良し? なの?」
 ぱぁ、と顔を輝かせるランチタイムと、対照的にちらっと彼女に視線だけ走らせるミッドナイト。
「もち超仲良し! 超マブダチだしねーミッドナイト!」
「まぁ、私がいないとランチタイムは暴走しますから」
「誰が暴走ってー!」
 あ、これ仲いいな。うん。
 超ほっこりした志乃である。
「いいねいいね、私も親友と一心同体なんだ」
「おー! いーじゃんいーじゃん! エモいじゃん!」
「ええ、背を預けられる朋友の存在はヒーロー活動においても重要です」
 ――実際は背中を預ける、どころか肉体ごと全委託してることも割とあるのだが。
 亡くなった親友が志乃の身体を共有している、まさにリアル一心同体。
「よし、出発するぜ!」
 準備を終えた銀翼号のちょうどミッドナイトの腕の中に、ひょいっと子猫が飛び乗った。
「え、その、今から戦いに……」
「猫の手でも借りたいかにゃ?」
「!!!」
「喋ったー!?」
 満足気ににゃぁと鳴き声を上げるレフティ・リトルキャット。無論彼も立派な猟兵である。先祖代々続く呪いによって子猫の姿になってしまうが、あまりに続いているのでそろそろ猫の姿に由来する力の方が多いし強いかもしれない。
「っと、新しいワイヤー付けてる暇はねえ、しっかり猫ちゃんも捕まえといてくれよな!」
 ヒカルが声をかけて早速アクセルを踏む。猟兵達ならば並走できるいい感じのスピードでひらりとなびく少女達の長い髪とスカート。
「……それスカート中身見えない?大丈夫?」
 思わず志乃がツッコミを入れた瞬間、ミッドナイトが片手でばしっとスカートの裾を押さえた。
「だいじょーぶだいじょーぶ! どーせ中は見せパンだもんね」
「ランチタイムは羞恥心というものを学んで下さい」
 戦い前とはいえやたらと和やかに、けれど余分な緊張を上手く解して――猟兵達とヒーロー達は、巨大貯水槽で待ち構える敵と対峙したのであった。

 ――暗い。
 普段さほど照明が必要な場所ではないだけに、大変暗い。
「ランチタイム、明かりをなるべく多く作ってもらっていい? できれば浮かべられるだけ空中に浮かべてほしいんだけど」
「りょ! じゃあ適当に出してくよん」
 フィーナ・ステラガーデンの言葉に合わせてワイヤーを外し銀翼号から飛び降りつつ、ランチタイムがシンプルな光球を作り出して空中へと数個解き放つ。戦闘に問題ないほどの視界が確保され――、

「あぁん改造しがいのありそうな子達がいっぱい! どれから怪人にしてあげようか迷っちゃうぅ」
 明らかに危険な蛍光色の薬液が入った注射器と鋭く研がれたメスを手に、うきうきと舌舐めずりするオブリビオン『エンジェルドクター・パッフィー』が現れたのだった!

「吹き飛ばすわけにいかんのが面倒ではあるが、まあ問題はない」
 吹き飛ばせたら吹き飛ばしたいというような様子で、アルトリウス・セレスタイトがぼそりと呟く。いや多分このオブリビオンに対する好き嫌いというよりは戦闘効率の問題なのだろうけれど。アルトリウス自身、言葉にダブルミーニングを仕込む性格……というより『性質』ではない。
『淀め』
 というかそういう情緒は理解したとしても、自分のものとはせずにやるべきことをするタイプだった。
 具体的には既に青白色の照明と視覚器官を兼ねたとでも言うべき『天光』を浮かべ、ユーベルコード『魔眼・封絶』を起動してるくらい即座に片付けるタイプだった。
「えっちょっといやぁん! 私に麻酔はいらないわよぉ!!」
 速攻で動きを封じられるエンジェルドクター。何とかたゆんたゆんする程度には身体を動かして逃れようとするも、アルトリウスも魔眼の力をそう簡単に緩める気はない。全力での魔力行使において、猟兵の中でもおそらくトップクラスを誇る技量は伊達ではない。
 ところでそのたゆんたゆんするオブリビオンを、フィーナは思わずしげしげ観察していた。デカい。
 次に顔を見上げた。高い。
 そっと自分の身体を見下ろした。今日もいい見通しである。
 再び敵へと顔を上げ、フィーナはイイ笑顔で中指を立てた。
 無論、喧嘩の売り買いに特化したタイプの『イイ笑顔』。さらに言えば中指の先では炎属性の魔法、ファイアーボールと呼ばれるやつが凄まじい勢いで膨れ上がっている。
「要はヒーローが倒されず、落ち着いて仕事にかかれればいいのだろう――ならば」
 すっ、と最前列まで歩み出たのは、鎧坂・灯理であった。
 漆黒のポニーテールがゆらり、揺れる。今は片目の周辺を覆うのみに変形させてある防毒装面――ガスマスクが、彼女の表情を尚更熾烈では迫力あるものとしていた。
「起動、『千視卍甲』。私は防御に徹しよう、こちらは任せろ」
 それは、己が一切の戦闘行動を放棄し非戦闘行為に没頭している間、自らの指定したものに防壁を張って無敵とするユーベルコード。『もの』は場所であっても無機物でも、無論生命体でも構わない。無論、その指定は『味方全員』、自分を含めた猟兵達とヒーロー達だ。
 無論、1人で戦うには膠着状態を生み出すのが精一杯の技だ。だが、ここに集まったのは全員で9人。
 十分だ。
 そうにやりと笑って、灯理は堂々と腕を組み仁王立ちで泰然と構えてみせた。
「えっこれ針通らなくない? メスも? えー……」
 改造したいのにぃ、とぼやくオブリビオンを、ゆかりがびしりと指差して。
「この品の無いオブリビオンがスカムキングの趣味なの? そうだとしたら感性を疑うし、そうでないならこんなのでも戦線に投入しなきゃいけないほど敵戦力は逼迫していることになる」
 す、と息を吸い、声を張り上げる。ヒーロー達にも、上手く行けば他のヒーローや住民達にも届けとばかり。
「いずれにしろ、勝利は近いわ!」
 かつての武士の名乗りと同じ。これは、鼓舞だ。
 勝利の機運はこちらにありとヒーロー達の心を奮わせ、その声が届いたダストブロンクスの住民をも勇気づける、その嚆矢だ。
「おーっ!」
 ランチタイムが目を輝かせて拳を挙げ、声こそ上げずともミッドナイトも胸の前の拳を強く握って頷く。自分達のみでは立ち向かえぬ敵を前に、けれど猟兵達と共にあれば負けるはずがないという信頼が、2人の心に怯えを呼ぶ隙すらも作らせない。
「にーっ」
 タン、といつの間にか地面に降りていたレフティが、前足で地面を軽く叩いた。
 ――私は不幸を運ぶ者、故に眠れよ幸運、錆びよ絆、凍れよ希望、もはやそなたの運は尽きたと知れ。嗚呼、全ては甘美なる蜜の為に――ユーベルコード『バッドラックキャット』、かつて猫という存在が、不幸を運ぶと信じられた迷信の具現と言うべき、そしてレフティ自身の先祖が持つ力を受け継ぎ呼び出したもの。
 ちなみにこのロング詠唱が鳴き声だと一言にまで集約される。猫ってすごい。
「よしミッドナイト、スピード強化を頼む!」
「あとはレーザーお願い、狙い方は任せるわ!」
「了解、どちらも過信できる性能ではないのでそこは意識してもらえると助かります」
 すっと右手を眼鏡に触れさせると、ミッドナイトはヒカルへとその手を伸ばす。猟兵達の使うユーベルコードほど大幅ではないが、確かに軽くなった身体にヒカルはニッと笑って「ありがとな!」とウィンクを飛ばす。
「よし! それじゃここからは一緒に連携よ!」
 フィーナが中指の先でひたすらサイズと温度を上げていた火球を解き放つ。それを追うように『巫覡載霊の舞』にて神霊体としての姿に変じたゆかりと、不幸を撒くオーラを己の防護に、そして爪の鋭さを増すようにと纏ったレフティが、さらに1人と1匹を抜かして銀翼号にまたがったヒカルが飛び出していく。
「あっやった動けた☆よーしそれじゃ」
「戦争なんてはよ終われええええええ!!」
「きゃああ目が! 目がー!」
 せっかくアルトリウスの魔眼から解放されたと思いきや、志乃の平和への願い――というより早く休みをよこせという念と共にぶっ放したユーベルコード『ホワイトアウト』の輝きに目を灼かれて叫ぶ。戦争開始からおよそ20日ともあって絶好調の戦闘力で、光の鎖を引っ掴んで己も光の思念体となった志乃がさらに彼らを追って飛び出していった。
 なおおそらく彼女の戦闘力増強、既にかなりのものではあるがあと数段階は伸びるポテンシャルを秘めていそうである。うん、早く勝って終わろうね戦争!
 その間にアルトリウスがさらに魔眼を再起動してるし――そもそもだ。
「そら、急いで片付けてくれよ、世界が終わりかけてるんだ」
 灯理が仁王立ちに専念している間は、思念と魔力の二重防壁が全員への攻撃を遮断しているのだ。
「あっメスが落ちちゃっきゃああああああ!!!」
 さらにガリガリとレフティが不幸のオーラを乗せて引っ掻いたことで、動きを封じられたエンジェルドクターがもがいた拍子に手からメスを滑り落とし、それが彼女の足の甲へと思いっきり突き刺さる。

 ねえその、うん。
 これ正直『完封』って言わない?

 まぁ無論だからといって猟兵達が手加減する理由は一切なかった。
 野球も戦闘も完封するだけでは勝てないのである。
 そう!
『討たなきゃ』勝てないんだから!
 というわけで光の鎖を思念でぶん回して絡め取った志乃が地面にエンジェルドクターを叩きつけ!
 再び魔眼の影響を逃れて立ち上がる前にミッドナイトが眼鏡をくいと上げて放ったレーザーがメスの刺さった場所に当たって悲鳴を上げるエンジェルドクター!
 にやと悪い猫な笑みを浮かべるレフティ!
「今よランチタイム!」
「おっけ~!」
 ランチタイムが光球を一斉にオブリビオンに向けてかっ飛ばし、もう一度目を灼かんとばかりにぶつかったところで!
「貫けええぇぇぇぇ!!」
 フィーナが炎の槍を思いっきり槍投げのモーションでぶん投げた!
 ユーベルコード『串刺ス一閃ノ槍』、炎の魔力で構成しながら自分の腕力でぶん投げるところがポイントだ!
「……よし逃げちゃお☆」
「させると思った?」
 あまりに勝ち目がないと察したエンジェルドクターの前に、ゆかりがすいっと回り込み――豪奢な輝き放つ薙刀で、早贄の如くその肉体を串刺しに貫く!
 そこに銀翼号搭載のガトリングガンの狙いをしかとつけて!
「これが絆ってやつだ、死人を改造する奴なんかにはわからないだろうなッ!」
「待って絆っていうよりむしろっ」
『黙れ』
 オブリビオンとしての生命を沈黙させるべくアルトリウスの魔眼が輝く。
「絆の勝利だあああああ!!!」
 ガトリングの引き金を、思いっきり引くヒカル!
 ユーベルコード『超宇宙・強襲流星撃』が火を噴いたのを最後に、エンジェルドクターは塵もメスも注射も残さず骸の海へと送り返されたのだった!!

「ふふん! どんなもんよ!」
「いえーい!」
「やりました。猟兵の皆さんのおかげです」
 フィーナが出した両手に、ぱしっとヒーローガールズがハイタッチ。そして2人は爆弾の解除へと駆け出していく。
「ああ、貴様らの仕事が、世界を救う一歩だ――」
 灯理がようやく仁王立ちを解いて、肩を回しつつ声をかける。かちり、と音がして引き出された爆弾に不発処理を施し、解放区となった場所に――戦いの音が止んだのに気付いたか、人影がそっと、続けざまに現れる。振り向いたゆかりは微笑みを浮かべると頷いて、そっと爆弾の処理を終えたばかりの少女達へと人々の視線を向けさせる。
 どこからか巻き起こり、やがて怒涛のように押し寄せた歓声、その中で猟兵達に肩を叩かれたり人々の真ん中に押し出されたりして、照れくさそうにするランチタイムとミッドナイト――オブリビオンの戦略に猟兵達が打った楔を、ヒーロー達が、そして無辜の人々が、広げていく。

 アースクライシス2019、最終決戦の時は、近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月21日


挿絵イラスト