アースクライシス2019⑫~鋼神と武具の神殿
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「ヒーローズアースの戦争で、センターオブジアースへの道が開かれたようでな」
ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)はそう前置きした上で、解説を続けた。
「パンゲア大空洞で発見した「鍵の石版」の力によって、センターオブジアースにたどり着けるようになったのじゃが――」
センターオブジアースは、巨大な世界樹に果実のように「神の神殿」が連なった空間である。その「神の神殿」の力が、世界を守ってきたのだ。
「じゃが、「神の神殿」の一部が、オブリビオンに奪われたのじゃ。これにより、「オブリビオン神殿」となって敵に巨大なエネルギーを与えておる」
世界を守る力を悪用されている状態だ。そのため、「オブリビオン神殿」を破壊し、「神の神殿」に戻す事でセンターオブジアースを救う必要があるのだ。
「とはいえ、現在の「オブリビオン神殿」はオブリビオンに守護されておる。パワーの供給源を絶たん限り、まともに戦って勝てる相手ではない」
問題の「オブリビオン神殿」とは、そこにあった「神の神殿」を破壊して、その上に造られている。だからこそ、「オブリビオン神殿」を破壊する事により「神の神殿」が復活する。オブリビオンへのパワーの供給もそれで途絶えるのだ。
「破壊する手段は二つじゃ。ひとつは神殿のような巨大建造物を破壊するのに相応しいユーベルコードで、戦いながら神殿を破壊する事となる」
これは、挑む猟兵によって方法が異なるだろう。そして、もう一つ破壊する方法がある。
「もう一つは、『破壊された神殿に祀られていた神の力を呼び起こすような戦い方』で戦闘を行なう事じゃ。これにより、「神の神殿」の力が蘇る事で「オブリビオン神殿」が崩壊するという」
ガングランはそこまで語り終えると、改めて続けた。
「今、「オブリビオン神殿」を守っておるのは、鋼神ウルカヌスのクローンじゃ。元々そこには武具を司る神殿があったのじゃ」
武具、いわば戦うための道具へ祝福を与える武具の神を祀っていたのだ。この武具の神の力を呼び起こすような戦い方――武具への想いを込めて戦えば、「神の神殿」の力も蘇る。
「どちらの方法を選んだとしても良いじゃろう、おぬしらに任せるぞ」
波多野志郎
神殿での戦いになりますよ、どうも波多野志郎です。
今回は「オブリビオン神殿」を破壊するため、そこを守護するウルカヌスのクローンに戦いを挑んでいただきます。
今回の「プレイングボーナス」は「敵のパワー供給源を断つ」ことです。いかにオブリビオン神殿を破壊するか、神の力に訴えかけるか、皆様のアイデアをお待ちいたします。
それでは、神殿の舞台でお待ちいたしております。
第1章 ボス戦
『鋼神ウルカヌスのクローン』
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POW : 超鋼神オーバードウルカヌス
【金属を集めてさらに巨大な姿】に変形し、自身の【感情】を代償に、自身の【金属を操る力】を強化する。
SPD : 巨大剣ウルカヌス
【叫びと共に全身の装甲を解除する】事で【星をも切り裂く巨大剣ウルカヌス】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 鋼神領域
自身からレベルm半径内の無機物を【高い戦闘力を持つ鋼の巨人】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:あなQ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鈴木・志乃
UC発動
この鎖、父神の遺品なの
人と人、人と物を繋ぐ為の代物なんだ
あたしに譲ったせいで死んだけどね、お父さん
祈願成就の神子、志乃
武具の神に助太刀致す
オーラ防御展開
敵の動きをよく見て見切り、スライディングの要領で回避
敵の足が上がった瞬間を見計らい早業なぎ払いの足払い攻撃
鎖の先に鎧砕き出来る魔改造ピコハン引っ提げて間接狙ってぶん回す
この鎖は全てを繋ぐもの
人でも物でも力を一つにする、言わば連繋の為の武器
何が何でも勝利に繋げて見せる
貴方(神)の希望にもね!
【全力魔法】で透明化した鎖を【罠使い】【念動力】で捕縛罠化、【高速詠唱】の【衝撃波】誘きだしたところを捕らえ、【破壊工作】用の爆弾を大量投入しぶっ壊す
泉・火華流
話を聞いた…呟き
レガリアス・エアシューズは愛用
ナイトメア・シザーズは拾ったときから不思議と手に馴染んでた
GadgetShark様は武器や道具じゃなくて信頼出来る相棒
そうね…私の持ち物は便利な武器や道具じゃなくて…信頼出来る仲間や友達みたいなものね
行動
指定UC使用…装備は機銃&翼下ミサイル
神殿破壊を担当
アンタは私が相手をするわ
(シャーク様の邪魔はさせない)
レガリアス・エアシューズに【ダッシュ・逃げ足】でヒット&ウェイ・回避重視の戦闘
【ジャンプ】からの【踏みつけ】による降下式の飛び蹴りや【スライディング】での転倒を狙う
グラビティ・アンカーチェーンで【ロープワーク】で縛り上げ、神殿破壊の時間稼ぎ
フィーナ・ステラガーデン
んー!武具とかよくわかんないわね!
ってわけで徹底した破壊よ!破壊!爆破すればいいんじゃないかしら!
なんか相手すっごいごついし私自身は
【ダッシュ、ジャンプ】を使って距離をあけながら戦うわよ!
敵UCででっかくなるなら相手に神殿を壊させるように誘導もしたいわね!
【属性攻撃】で火球を飛ばして挑発しつつ逃げ回るわ!
感情も失ってるなら簡単な誘導でひっかかりそうだもの!
柱を盾にするとか良いんじゃないかしら!
UCで敵ごと神殿を!もしくは神殿を破壊して瓦礫に埋めてもいいわ!
チャンスがあれば【全力魔法】UCで一気に消し飛ばすわ!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
メンカル・プルモーサ
…武具…ふーむ、愛用の杖とローブぐらいだな…
…でも考えてみれば猟兵になってからずっとこれだし相棒と言ってもいいのかも知れないな…とはいえ、神殿壊す方に走るけど…
…さて、相手はウルカノスのクローン…無機物を巨人に変えてくる上に神殿からパワーを貰ってる、となると…
…まあ、まともに相手はしてられないか…箒に乗って攻撃を回避しつつ神殿の方へと移動するよ…
…見失わせず…近寄らせずの位置を保って神殿の中央部へと移動して…
…重奏強化術式【エコー】の全力魔法で転移ゲートを維持しての【起動:海神咆吼】……そのまま主砲を連射してウルカヌスを巻き込みつつ神殿を壊すよ…
ルパート・ブラックスミス
神の神殿の力を借りる。
ただ踏みにじられるだけでは武具の神も浮かばれんだろう。
武具への想い。ならばこのブラックスミス家に継がれし黒騎士の鎧こそを示そう。
己は一度死に、魂はこの鎧に灯りヤドリガミとなった。
肉体も記憶も国すらも喪い、されど未だ朽ちぬ魂と鎧は、猟兵となりて既に二度の戦乱を戦い抜き、此度は救世の為にこの地に立った!
敵の一撃を【見切り】回避と【カウンター】、UC【命を虚ろにせし亡撃】を乗せた短剣【投擲】。
行動を封じたところを【怪力】込めた鎧の鉄拳を叩き込む!
鋼神よ刮目せよ。神殿よ照覧あれ。
ブラックスミスの黒騎士鎧、ここにあり!
【アドリブ歓迎】
ソラスティベル・グラスラン
ふふふ、武具の神さまですかっ
復活すればさぞ心強いでしょう、祝福を是非いただきたいです!
【盾受け・オーラ防御】で守りを固め、
【怪力】を籠めた【範囲攻撃】の大斧でクローンごと神殿を砕き戦います
折れず砕けず悪を断つ、頼もしき相棒たる武器が齎す安心と【勇気】!
侵略者たる偽りの神よ、参ります!
この地の本当の神よ、『勇者』の戦いをご覧あれ!
斧、槌、盾、鎧
故郷に伝わる伝承、四竜の化身
お父様も、お爺様も、これらを手に民を守りぬいてきました
そして竜族の長に受け継がれてきた武具は、今この手に!
誇りと共に、世界を越え無辜の民を守るために!!
鎧を、鋼を、神ごと歪んだ神殿を破壊する【鎧砕き】の雷
汝の名は―――!
ロク・ザイオン
(尊き御旨に森番を任ぜられた時から傍にあり
永く、共に病を灼き断って来た烙印刀。
或る里を救った礼に、ひとびとに仕立てて貰った"閃煌"。
どちらも己にとってはかけがえのないものだ。
武器を握る手は、人間の証なのだから)
――ああァアアア!!!!
(罅割れた声で鬨を上げろ
魂を燃やせ
この熱が、おれの心だ)
(「烙禍」で壁を、床を脆い炭に変え神殿を崩しながら戦う。
重い鋼の巨人が現れても、床も壁も崩れ行く中では動きにくいだろう。
【地形を利用】し【ダッシュ、ジャンプ】で駆け抜け
灼熱する刃で鋼の神の【鎧を砕く】)
安喰・八束
初めはどんな銃だったかね。
何せ方々の世界で綻ぶ度に繕うもんだから
元の儘の箇所を探すのが難しい。
妙な直し方すると暫くヘソ曲げてなあ。ご機嫌取るのが大変でいけねえ。
それでも、その内お互い上手い折り合い方が解ってくるもんだ。
ただの銃じゃねえ。
己の手足の様とも、ちっと違う。
伊達に古女房は名乗ってねえのさ。
鉄砲玉と神殿の壁じゃあ分が悪いってんなら
神頼みするしかねえな。
さあ、晴れ舞台だぜ"古女房"。
武具の神よ、然ればこの九連一射の絶技を御照覧あれ。
「狼殺し・九連」
奴が鎧を解いた裂帛の隙に、全弾くれてやる。(スナイパー、鎧無視攻撃)
号砲が届いたなら更に射撃を重ねよう。
後で手入れするから、今は堪えてくれよ。
シェルミィ・ルオ
ワタシは剣や槍は持っていないアルが・・・
功夫を重ねたこの拳は武器と同じ!
拳も剣も、大事なのはそれに込めた想いと、重ね続けた研磨アル。
ならばワタシの功夫を武器の神様に見せつけて、神殿の力を呼び覚ますアルね!
相手の方が間合いは遥かに長いから、攻撃を【見切り】ながら近づくアルね。密接すればこっちのものアル。
羅伝臂招・散岩捶で【吹き飛ばし】てやるアルね!
んん…吹き飛ばしたクローンの硬い鎧が何だか神殿の重要そうな柱に当たって…
もしかしたら単に衝撃でオブリビオン神殿を壊してしまったかもしれないアル。
と、とにかくパワー供給さえ絶てばこっちのものアル!
動きが鈍くなった所に【怪力】の【鎧無視攻撃】でとどめアル!
マリス・ステラ
「主よ、憐れみたまえ」
『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯り、全身に輝きを纏う
「灰は灰に、塵は塵に」
オブリビオンは骸の海に還します
弓で『援護射撃』放つ矢は流星の如く
味方を『かばう』
ダメージに輝きが星屑のように散る
負傷者に【不思議な星】
緊急時は複数同時に使用
「たとえ壊したとしても、無かったことにはできません」
私は"神"に呼びかける
武具は祈りと願いによって生まれる
それは灯火、それは輝き
人間だけが"神"をもつ
"ひと"の心の内にあなたがいます
「勇者達に祝福を。より速く、より高く、より強く」
『封印を解く』と聚楽第の白い翼がぎこちなく広がり"力"を束ねる
指先が瞬くと全ての味方に『破魔』の加護を与える
●神々の神殿
センターオブジアース、それは世界を守るために存在する世界樹とも言うべき存在だ。果実のように実るのは、神々の神殿――しかし、今この世界樹はオブリビオンという致死の病に蝕まれていた。
「――来たか」
漆黒の神殿へ訪れた者の気配を察知し、鋼神ウルカヌスクローンは玉座から立ち上がった。その巨体、その威圧は、まさに巨大な鋼を思わせる圧力がある。神と呼ぶのにふさわしい、威風堂々たる姿だった。
「厄介なものだ」
ウルカヌスクローンは、小さく呟く。覚悟はしていた、そのはずだった。オブリビオンと互する程の戦闘能力を誇る者達、猟兵に武具の神が反応しないはずがない、と。
「だが、構わぬ」
ウルカヌスクローンはガシャン、と鎧を鳴らしマントをひるがえす。オブリビオン神殿から力を引き出すと、その両手を広げた。
ミシリ――! と神殿の壁が、軋みを上げる。そこから生えたのは巨大な腕だ、壁から生えた腕はそのまま全身を這い出させ、高い戦闘力を持つ鋼の巨人へと変えた。
「殴り飛ばせ」
神殿へと猟兵達が踏み入ったその瞬間を狙って、ウルカヌスクローンの命に従った鋼の巨人がその豪腕を振るった。
●武具への想い
踏み入ったその時、迫る圧力に鈴木・志乃(ブラック・f12101)は即座に身を沈め床を滑った。
頭上を通り過ぎていく鋼の塊、その風を感じながら志乃は光の鎖へと手を伸ばした。
(「この鎖、父神の遺品なの。人と人、人と物を繋ぐ為の代物なんだ……あたしに譲ったせいで死んだけどね、お父さん」)
武具の神へと囁くように胸中で呟き、志乃は跳ね上がる。そして、鎖の先に魔改造ピコピコハンマーを引っ提げて鋼の巨人の足へと薙ぎ払った。
「祈願成就の神子、志乃。武具の神に助太刀致す」
ズン、と足を光の鎖に取られ鋼の巨人がたたらを踏む。巨体の勢いが削がれたそこへジャ! とレガリアシューズを鳴らして泉・火華流(人間のガジェッティア・f11305)が跳んだ。
「レガリアス・エアシューズは愛用。ナイトメア・シザーズは拾ったときから不思議と手に馴染んでた。GadgetShark様は武器や道具じゃなくて信頼出来る相棒――」
火華流は、改めて思う。自分の戦いに、常に傍らにあった物達に。
「そうね……私の持ち物は便利な武器や道具じゃなくて……信頼出来る仲間や友達みたいなものね――装備換装後、次元格納庫よりカタパルトでスクランブルお願いね♪ シャーク様」
火華流の背後で空間が歪み、飛び立ったのはシャークペイントが良く似合う戦闘機型ガジェットだ。ガガガガガガガガガガガガガガガ! と機首に備え付けられた機銃が着弾、鋼の巨人が煩わしげに腕を振るった。
「――ああァアアア!!!!」
罅割れた声で鬨を上げながら、その拳を烙印刀で受け止めたのはロク・ザイオン(未明の灯・f01377)だ。ミシリ、と刀を握る腕が悲鳴を上げる。圧倒的な質量差が生む当然の結果だ。しかし、ロクは構わない。
(「尊き御旨に森番を任ぜられた時から傍にあり、永く、共に病を灼き断って来た烙印刀」)
即座に、ロクはもう一本の剣鉈を引き抜いた。
(「或る里を救った礼に、ひとびとに仕立てて貰った"閃煌"。どちらも己にとってはかけがえのないものだ。武器を握る手は、人間の証なのだから」)
ガギン! と烙印刀と閃煌が✕の字に振り下ろされる。足りないものを補うのは、魂の熱だ。
(「罅割れた声で鬨を上げろ。魂を燃やせ、この熱が、おれの心だ」)
「――ああァアアア!!!!」
ガギン! と鋼の巨人が、拳を砕かれる! そのまま体勢を崩すものの、そのよろけた体勢を利用して鋼の巨人は後ろ回し蹴りで反撃した。
その蹴りを受け止めたのは、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)だ。黒翼のバックラー、モナークでその蹴りを受け止めると敢えて踏ん張らず、そのまま後ろに下がった。
「今です!」
「はい!」
受け止め、大きく蹴りの軌道を逸した。一本足となった不安定な鋼の巨人に志乃はすかさず光の鎖を引いた。
次の瞬間、鋼の巨人が宙を舞う。壁を足場に高く跳んだシェルミィ・ルオ(カンフー・ガール・f23460)は、気功を纏った拳を鋼の巨人へと振りかぶった。
「ワタシは剣や槍は持っていないアルが……功夫を重ねたこの拳は武器と同じ!」
ドォ! と床を砕きながらシェルミィの羅伝臂招・散岩捶に殴り飛ばされた鋼の巨人がバウンドする。神殿を揺るがすその振動の中、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)がフィーナの杖の切っ先を突きつけ、叫んだ。
「消し飛べえええええええええ!!」
放たれた火球の一撃が、鋼の巨体を飲み込み、粉砕した。巻き起こる爆風、それを真っ向から受けてウルカヌスクローンは口の端を歪める――笑ったのだ。
「なるほど、神に挑む資格はありそうだ――」
ウルカスヌクローンは、抜け目なく視線を周囲に走らせる。そこにいたのは、箒に乗って飛んでいたメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)だ。
(「……油断は、しない……かな……」)
メンカルは理解していた。今の鋼の巨人は、自分達の力を計るための序の口だと。その証拠に、今の鋼の巨人との交戦中にウルカヌスクローンは一切手を出さなかった。あるいは、隙さえ見せればまた違ったろうが――そんなつもりは、一切なかった。
「武具への想い。ならばこのブラックスミス家に継がれし黒騎士の鎧こそを示そう。己は一度死に、魂はこの鎧に灯りヤドリガミとなった。肉体も記憶も国すらも喪い、されど未だ朽ちぬ魂と鎧は、猟兵となりて既に二度の戦乱を戦い抜き、此度は救世の為にこの地に立った!」
「ほう、それで?」
ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)が一歩踏み出し、ウルカヌスクローンへと言い放った。
「ただ踏みにじられるだけでは武具の神も浮かばれんだろう」
「ふん――」
ウルカヌスクローンは鼻で笑い、指を鳴らした。激しい攻防で損傷した漆黒の神殿はすぐに回復し――再び、床から新たな鋼の巨人が立ち上がる。
「やれるものなら、やってみろ。今度は私も加わろう」
ウルカヌスクローンと鋼の巨人を見上げ、安喰・八束(銃声は遠く・f18885)は手の中の猟銃を見た。
(「初めはどんな銃だったかね。何せ方々の世界で綻ぶ度に繕うもんだから、元の儘の箇所を探すのが難しい。妙な直し方すると暫くヘソ曲げてなあ。ご機嫌取るのが大変でいけねえ。それでも、その内お互い上手い折り合い方が解ってくるもんだ」)
八束が笑みをこぼす。自嘲とも言うべき、しかし、悪くはないという想いの滲んだ笑みだ。
「ただの銃じゃねえ。己の手足の様とも、ちっと違う。伊達に古女房は名乗ってねえのさ」
ああ、と言葉にして自覚する。その自覚を飲み込み、八束は古女房をいつものように構えた。
「主よ、憐れみたまえ」
マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)が祈りを捧げると、星辰の片目に光が灯り全身を輝きが覆った。大型の弓矢、星屑を引き絞り、マリスは続けて唱えた。
「灰は灰に、塵は塵に」
マリスが放った流星がごとき矢を合図に、猟兵達とウルカヌスクローンは同時に駆け出した。
●神を名乗るモノ
戦いは、壮絶を極めた。果敢に挑む猟兵を、ウルカヌスクローンはオブリビオン神殿から受ける膨大なエネルギーを頼りに、力で圧してくる。これは決して、侮りではない。この方が確実であると理解しているからだ。
そして、それは正しい。ウルカヌスクローンの無尽蔵な力を前に、猟兵は徐々に追いやられる事になるのだから。
この神殿がある限り、ウルカヌスクローンに敗北はない。それは、挑んだ全員が知っていた事だ。
「鉄砲玉と神殿の壁じゃあ分が悪いってんなら、神頼みするしかねえな。さあ、晴れ舞台だぜ、"古女房"」
だから、八束は待っていた。その一瞬の間隙、穿つべき瞬間を。
「たとえ壊したとしても、無かったことにはできません」
マリスが呼びかけるのは、オブリビオン神殿に封じられた武具の神殿に、だ。
「武具は祈りと願いによって生まれる。それは灯火、それは輝き。人間だけが"神"をもつ。"ひと"の心の内にあなたがいます――勇者達に祝福を。より速く、より高く、より強く」
マリスが封印を解いた瞬間、聚楽第の白い翼がぎこちなく広がり"力"を束ねる――その指先が瞬くと全ての味方に『破魔』の加護を与えていった。
「勇気――そう、勇気です!」
目を輝かせ、ソラスティベルが駆けた。蒼空色の巨大斧を手に、ソラスティベルが床へ叩きつけその衝撃でウルカヌスクローンと鋼の巨人を打つ!
砕け散る鋼の巨人、ウルカブスクローンも鎧を軋ませた瞬間、ウルカヌスクローンは鎧を脱ぎ捨てた。
「ならば、この一撃で切り伏せるのみ! オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
雄叫びと共に自らの体を星をも切り裂く、巨大剣ウルカヌスへと変身させる。高速で放たれる、目にも留まらぬ斬撃――しかし、目で追う必要などこの時を待ち受けていた八束には必要なかった。
「武具の神よ、然ればこの九連一射の絶技を御照覧あれ――狼殺し・九連」
八束の瞳が輝き、九つの銃弾が巨大剣ウルカヌスの切っ先を捉えた。まさに、妙技――そして、刹那に懸ける猟師の面目躍如だった。
「ぐ!?」
巨大剣ウルカヌスの軌道が、大きくずれる。そこに待ち受けていたのは、シェルミィだ。
「密接すればこっちのものアル!」
「後で手入れするから、今は堪えてくれよ」
放たれる羅伝臂招・散岩捶が、巨大剣ウルカヌスを殴打。八束も機を逃さぬために、古女房で追撃する。ガギン! と巨大剣ウルカブスが、神殿の巨大な柱に突き刺さる――その直後、神殿が揺れた。
「この地の本当の神よ、『勇者』の戦いをご覧あれ! 斧、槌、盾、鎧。故郷に伝わる伝承、四竜の化身。お父様も、お爺様も、これらを手に民を守りぬいてきました。そして竜族の長に受け継がれてきた武具は、今この手に! 誇りと共に、世界を越え無辜の民を守るために!!」
そこに、ソラスティベルが続く。
「鎧を、鋼を、神ごと歪んだ神殿を破壊する【鎧砕き】の雷。汝の名は―――!」
「舐めるなァ!!」
ソラスティベルの蒼雷を纏う大斧を、巨大剣ウルカヌスが受け止める! ギリギリギリ、と鍔迫り合いするそこへ、フィーナとメンカルが杖をかざした。
「一気に消し飛ばすわ!」
「座標リンク完了。魔女が望むは世界繋げる猫の道……主砲、一斉射!」
フィーナの圧縮セシ焔ノ解放(バクレツマホウテキナヤツ)の爆炎と、メンカルのワープゲートから飛空戦艦ワンダレイの主砲が、同時に放たれた。狙いは甘くていい――神殿ごと破壊するのが、目的なのだから。
ゴォ!! と漆黒の神殿が揺れる。崩れ始める神殿を、ウルカヌスクローンは否定した。
「まだだ! まだ、この程度認めぬ!!」
ウルカヌスクローンが、鎧をまとった姿に戻って叫ぶ。否定する、否定する、否定する――武具の神殿が、この者達を認めるという結果を。だからこそ、感情を代償に巨大化し、巨大な剣を生み出し振るった。
だが、もう勢いは止まらない。止まらないのだ。
「鋼神よ刮目せよ。神殿よ照覧あれ。ブラックスミスの黒騎士鎧、ここにあり!」
ルパートはウルカヌスクローンの斬撃をかくぐり、鋼の剣に打撃を入れる。そして、命を虚ろにせし亡撃(バイタルヴェイカントバイオレンス)を込めた短剣を投擲した。突き刺さる短剣に、ウルカヌスクローンの巨体が動きを止める。巨大剣に飛び乗ったロパートは、そのまま剣を駆け上がり、ウルカヌスクローンの顎を拳の一撃で撃ち抜いた。
「ぐ、が――!!」
「この鎖は全てを繋ぐもの。人でも物でも力を一つにする、言わば連繋の為の武器。何が何でも勝利に繋げて見せる。貴方(神)の希望にもね!」
そこへ、全力魔法で透明化した鎖で志乃がウルカヌスクローンの巨体を縛り上げる。その鎖を引きちぎろうとするウルカヌスクローンに、火華流もグラビティ・アンカーチェーンを放ち、更に拘束していった。
「シャーク様!!」
火華流の言葉に答え、シャーク様が翼下ミサイルを撃ち込み、志乃も持ち込んでいたすべての爆薬を爆発させた。オブリビオン神殿が崩れ、ウルカヌスクローンごと瓦礫で飲み込んだ……そう思った、その時だ。
「は、はは……!」
ソラスティベルが笑みをこぼす。斧や槌、盾、鎧が淡い鋼色の光を放ち、瓦礫の落下から守ってくれたからだ。猟兵達が持つ武具もまた同じく輝き、瓦礫は触れた先から霧となって消滅していく。
「……ああ、そうなんだ……」
メンカルがシルバームーンや飛行式箒【リントブルム】、スノウ・クラッシュが淡い鋼色の輝きを放つのを見て、小さくこぼす。
確かに、あったのだ。武具との絆は、猟兵ならば、誰でも――。
「――認めん!!」
漆黒の瓦礫から起き上がり、ウルカヌスクローンが叫ぶ。漆黒の神殿はそこには既になく、鋼色の神殿に戻っている事実を、ウルカヌスクローンは否定しようとして――その熱い呟きを、頭上に聞いた。
「燃え、落ちろ」
鋼色をまとう烙印刀と閃煌を、ロクが振るう。烙禍(ラッカ)によって刻まれた刻印が、ウルカヌスクローンの鎧ごとその肉体さえも燃やし尽くしていった。
あまりにも、皮肉な光景だ。鋼神ウルカヌスのクローンは、鋼色の輝きを取り戻した神殿の中で、もはや神ではないと否定されるようにかき消えていったのだから……。
大成功
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