思い出の味を探せ
●それは思い出の中に
「おい、爺さん。一人じゃ無理だって!」
「ええいっ、うるさい! やってみないと分からんじゃろうが!」
普段であれば賑やかな夜の酒場で、1人の老人とそれを引き留めようとする幾人もの若者の姿がある。その他の客はいったい何事かと驚いた様子で、口論になりつつある様子を遠巻きに眺めている。
「最近は平原も洞窟も、厄介なモンスターが出てきてるのは爺さんも知ってるだろ? そんなとこに爺さんだけで行くなんて、自殺しに行くようなもんだ!」
「じゃあ何か? お前らのうち誰かでも一緒に来てくれると?」
老人の言葉に若者たちは顔を見合わせる。その表情は引きつっており、若者達が同行してなんとかなるものではないことを如実に示していた。
「それは……俺らも命は惜しいし……」
「ふんっ。口だけのやつらめ……」
情けない、と呟きながら老人は背負っていた荷物袋の中から、大きな包みを取り出しテーブルの上に乗せる。そして包みを解いたその中には――。
「久しぶりに手に入った、ホウロク鳥じゃ。下準備はしてあるからまだしばらくは大丈夫じゃろうが……早急に調理してしまわんとならん」
それは大きな鳥丸ごとを、首を落として血抜きと羽抜きを済ませたものであった。
実に丸まるとしており、食いでのありそうな肉であるが、この肉の調理には問題があった。
「ホウロク鳥は毒を持っておる。それは特殊な毒でな……平原で手に入るヤドリギ草を中に詰め、洞窟で手に入るエンジ苔を絞った汁を表面に塗りながら焼くことで中和できる」
「そうすりゃ柔らかく芳醇な香りを持つ、最高の肉として食うことが出来る……だっけか。爺さんに何度も聞かされて覚えちまったよ」
若者の1人が苦笑まじりの呟きに、老人は頷きを一度返す。
「ああ。わしが若い頃は、何かの祝い事などの時に食べることが出来る特別な肉――わしが冒険者として、初めての依頼をこなしたときに先輩からご馳走になった思い出の品じゃよ」
懐かしむように老人がもごもごと口を動かす。かつて一度だけ味わった美味を、記憶の彼方から呼び起こすように。
「わしももう冒険者としては引退じゃ。ならばそう、ホウロク鳥に始まりホウロク鳥に終わる……わしの冒険者としての引退を祝うのに、これ以上のものはないじゃろう」
「爺さん……」
頑なに決意を固めた老人は、再度肉を包み込み荷物袋へと入れる。そしてそのまま酒場を足早に出て行ってしまう。
止めることが出来ないと悟った若者達は、その背を見送ることしか出来なかった。
●思い出す味
「はぁ~……昨日は久しぶりに紅しょうが入り稲荷寿司にありつけました……あのお店今日もやってますかね」
うっとりとだらしない表情で何かを思い出している様子の水縹・狐韻(妖狐の迷者・f06340)を、集まった猟兵達が怪訝な表情で見つめる。するとようやく人が既に集まっていたことに気づいたのか、狐韻は慌てた様子でワザとらしい咳をして取り繕う。
「こ、こほんっ。こほんっ。皆さん集まってくださってありがとうございます! 今回皆さんに行ってもらいたい場所は、アックス&ウィザーズのとある町近くにある平原と、洞窟です」
今回の事件の顛末はこうだ。
冒険者の中でもベテランで『爺さん』と呼ばれ慕われていた人物が、引退祝いとして駆け出しの頃食べた料理を食べたいと考えたらしい。
幸いにもそのメインとなるホウロク鳥は手に入ったのだが、その調理にかかせない材料が2つ、少々手に入りづらい事態になっていたらしい。
「必要な材料は、平原に生えているヤドリギ草……他の植物に寄生して成長する草と、洞窟で手に入るエンジ苔の2つですね。ただ両方とも採取地の近くをモンスターが縄張りにしてしまったみたいで……」
おかげで最近は流通もほとんどしていないらしい。元々用途の限られているものらしく、わざわざ取りに行く者も居なかったらしい。
「このままだとお爺さんが1人で採りに行っちゃいます」
だからそれよりも早くに先回りして材料を集め、酒場にいる老人に渡しに行こうということらしい。
「今から行けば、きっと間に合うはずです。材料さえ手に入れば、お爺さんも危ない場所に行く必要なんてありませんし」
そう言って狐韻はグリモアを取り出しながら、猟兵達を見渡す。
「それじゃあ、ババッと敵を倒して、ビュビュッと材料を集めて、お爺さんの引退をお祝いしちゃいましょう! 行きますよー! おー!」
原人
どうも、原人です。
今回皆様に行っていただくのは、戦闘と料理の材料の採取となっております。
戦闘をする人と採取をする人で力を合わせてくださいね。
まず第1章は平原を舞台に、ゴブリンの縄張りに存在するヤドリギ草を探していただきます。
また第2章は洞窟となります。
そして第3章では、材料を持って行くことで老人の引退パーティとなります。
材料を集めてきた功労者の猟兵達は、きっと歓迎してもらえます。
ホウロク鳥の丸焼きは、ターキーみたいなものを想像してもらえれば。
では、頑張ってください。
第1章 集団戦
『ゴブリン』
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POW : ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アルト・カントリック
「思い出の味……か」
“お爺さん”にとっては大切なのかもしれないが、食べれずに死んでしまったら、意味は無いだろう。
でも、命がけでも食べたい物……僕には無いけど、それだけお爺さんにとって大切なのは伝わってくる。
だったら、僕は手伝いたい!少しでも力になりたい!
そう意気込み、『ゴブリン』に見つからないよう、慎重に近づきます。不意打ち・先制攻撃・誘き寄せをしたい人が居たらその人を優先させます。
戦闘になる前に「【詠唱】」を唱えて、ユーベルコード「竜こそは我が友」を使用します。
なるべく、採取地から遠ざけるように戦闘を繰り広げたいです。
採取に関しては、人手が足りなかったら戦闘の後に手伝おうと思っています。
最上・空
【WIZ】
美幼女参上です!
困っているご老人を助けるのも、美幼女の務めなのです!
採取地の近くに居座られると、戦闘に巻き込まれ草が被害にあいそうなので、空自身を囮にし、出来るだけ敵を採取地から誘き寄せてから
【ウィザ-ド・ミサイル】を「高速詠唱」して連射で頭数を減らしてみます!
接近された場合、「属性攻撃3」&「衝撃波1」で雷を飛ばし
敵が痺れないか試してみますよ。
ちなみに、多勢に無勢そうですし。空は、か弱い薄幸な美幼女なので
敵を倒す事より採取地から引き離す事を優先して
他の方々が動き易いようにしておきますよ-
「さぁさぁ、ゴブリンさん達、空はココですよ-」
「誘き寄せにも疲れたので、一気に反撃ですよ!」
ギルバート・グレイウルフ
冒険者の引退祝い、なぁ。俺もまだまだ現役のつもりだが、いつかそういった瞬間が来るのかね……いけねぇ、湿っぽくなっちまったか。
さてと、まずはヤドリギ草とやらの採取だったか。
周りにゴブリンどもがわんさかいるみてぇだし、おじさんは味方のサポートに徹しますかね。
【戦闘知識】を利用して、ゴブリンたちの縄張りがありそうなあたりを偵察しておいてっと。
おぉー、うじゃうじゃいるいる。んでもって、あれがヤドリギ草かね。
やつらの布陣の甘いところは……あのあたりか。
んじゃ、ここにはもう用はないし【逃げ足】の速さには自信があるんだ。すたこらさっさ、っと。
この情報を味方に伝えて、おじさんは高みの見物としゃれこみますか。
「はぁ……俺もいつかは引退することになんのかね……」
丈の長い草に身を伏せながら、ギルバート・グレイウルフはそっとため息をつく。
青々とした草の香りを嗅ぎながら考えることは、冒険者としての寿命――いつかはやってくるであろう、引退の瞬間のことである。
生涯現役、とは意気込みとしてはいい言葉ではあるが、実際問題として歳を取れば続けるための障害が出てくることだろう。その時自分はどうしているのか――。
「やめだやめだ。こんなこと考えてても仕方ねぇ」
気持ちを切り替える様に首を軽く振り、そっと前方を見据える。草の隙間から見えるのは緑色の醜悪な魔物……ゴブリンの群れである。
「うじゃうじゃ居やがるなぁ……んで、肝心の草っつーのは、と」
這いながら位置を変え、ギルバートはゴブリン達の縄張りを偵察していく。そして体中に青臭い草の匂いがうつった頃、満足したのか後方の仲間の待つ方へと下がっていく。
「うーっし、ただいま。しっかり見てきたぜ」
「お疲れ様。どうだった? ゴブリンの様子は」
「山ほど……っつーのは大げさか。結構数が居たぜ。こっちにはまだ気づいてなかったがな」
ギルバートから漂う草の香りに、すんと鼻を少し鳴らしたアルト・カントリックであったが、ギルバートの服のあちこちに草の汁が付いていることに気づき、どのように偵察してきたのかを悟る。
「それじゃあ早速情報をもとにゴブリン退治だけど――」
「誘導なら、この美少女! 空にお任せなのですよ!」
目の前でピースサインを決め、バチコーンと擬音でもなりそうなほど華麗にウィンクを決めてみせた最上・空が、真っ先に名乗りを上げる。
「空はか弱い薄幸の美少女なので、倒すなんてとてもとても……ですので、囮として引き付けるのにまわろうかと」
「……ゴブリン達のたむろしている場所にヤドリギ草もあったからな。か弱いかはともかく、引き離しておいた方がいいのは確かだ」
若いパワーに押され頬を引きつらせているギルバートが同意を示し、アルトもまた同様に首を縦に振り同意する。
「それなら僕はそのサポートをしようか。お爺さんに材料を届けるためにも、確実に成功させたいからね」
少しでも時間が惜しい、とばかりに空とアルトは連れだってゴブリン達の縄張りへと近づいていく。
その道すがらにはギルバートが偵察の時に通ったのであろう倒れた草の道が出来ており、迷うことなくゴブリン達へと近づくことが出来た。
「それじゃ行きますよー……さぁさぁ! ゴブリンさん達、空はココですよー!」
何かの詠唱を始めたアルトを尻目に、空がゴブリン達の前へと躍り出る!
そして大声で自分の姿をアピールしながら、ゴブリン達を誘導するように駆けていく。
ゴブリン達は突然近くに現れた闖入者の姿に驚きつつも、各々粗末な武器を手に空を追いかけ始める。多くのゴブリン達が自分についてきていることを確認した空は、にまりと悪戯が成功したような笑みを浮かべ、引き離しきらない程度に走る速度を上げていく。
「おっと、残っていられるわけにはいかないんだ。悪いけど……君達にも来てもらうよ」
縄張りを守るためだろう、一部残っていたゴブリン達をアルトが――いや、アルトの召喚したドラゴンが襲う!
全身を赤い鱗に包まれたドラゴンは、やや小型ではあるもののその背にアルトを乗せ、残っていたゴブリン達を鋭い爪で切り裂きながら空の逃げた方へと飛び去る。
急にドラゴンに襲われたゴブリン達は、蜂の巣をつつかれたかのような騒ぎを起こしながら、残った面々を総動員して撃退をすべく飛び去って行った後を追うのだった。
「ぜぇ……ぜぇ……そ、そろそろ誘き寄せにも疲れたので、一気に反撃ですよ!」
息を切らせながら反転した空が、追ってきていたゴブリン達に向けて炎の矢を放つ。それを契機に後方で控えていた猟兵達がゴブリン達へと向かっていく。
「おっと、もう始まったか。悪いけど急いでくれるかい。後ろのゴブリン達も、もう逃げはしないだろうからね」
自身を乗せるドラゴンの鱗を撫で、アルトは急いで戦線に加わるべく速度を上げるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
須辿・臨
じーさん、ホントは若い奴らに冒険してもらいたいんじゃないっすかねー。
まあ、命が惜しいのも事実。
適材適所、オレも手伝うっす。
ホウロク鳥の味も気になるんで!
探索系は得意な奴に任せて、ゴブリンとの戦闘を。
とにかく無力化を目指して斬りこむっす。
声をあげて誘導、目潰し。
弱っている奴は一気にとどめを狙いに。
泥臭く戦うのは得意なんで……オレ自身が死なない程度に、っすけど。
逃げてく奴は……追わずに、逃げない奴を中心に。
あんたらに恨みはないけど、悪いがこっから退いてもらうぜ。
誰かと共闘できるなら、協力するっすよ。
浜栗・あさみ
いやいやいや
年寄りが無理するとか笑えねーから
あたしたちがとってきてやっから黙ってお茶のんでろっつーの(意外とじじばばっこのあさみちゃん)
難しいことはわかんねーけど
なんか草をとってくればいいんしょ?
おっけー!
・・・・・・・・・
???
何の草っていってたっけ??
なんかよくわかんねーけどそのへんの草適当にぽいぽいしとけばいいっしょ??(ぽいぽいぽぽーい)
沙羅音・姫陽
思い出の味がまた食べたいって思い、叶えてあげたいよね?
僕も母の手料理また食べたいなー、なんてね。
終わったら狐韻クンに紅しょうが入りの稲荷寿司教えてもらおうかなー
さあて、最初はゴブリンの縄張りに存在するヤドリギ草だったね
ゴブリンをなんとかすることから始めようか
ゴブリンって筋肉質で美しくないよねぇ、ふふ
使用するユーベルコードは「魅了妖炎」
10個の桃色の狐火を放ってゴブリンたちを燃やしていくよ
命中して燃えたら魅了されることだろう、同士討ちするように頼んだらそうなってくれると嬉しいな、そうでなくても炎で燃えてかなりダメージになるだろう
あっ、周りの草原に燃え移ってヤドリギ草を燃やさないように気を付けるよ
街風・杏花
うふ、うふふ! ひとまず担当は戦闘
珍しい料理も、ええ、ええ、気になりますけれど、やはり私の本分は戦ですから!
……とはいえゴブリン。ゴブリン相手では……強敵というにはいささか不足。ふぅ、昂ぶりませんね……
おいでませ、狼さん。――おあがりなさい
※巻き起こった白い炎の中から飛び出した巨大な狼にまたがり、そのまま戦わせ
うふ、うふふ、ダッシュ勝負、構いませんとも
けれど、ええ――私を忘れていたら、上から首を撥ねてしまいますからね?
あ、採取の人手が足りなければ
大して美味しそうな敵でもないですね……とか愚痴りつつそちらに回っても
見ての通りメイドですから、食材の扱いには慣れております
まとめて狼の背に積みましょう
幻武・極
おじいさんの思い出の味はボク達が再現するよ。
まずはヤドリギ草だね。
ゴブリンが大勢いるここに生えているんだね。
ゴブリンに踏み荒らされないように速攻でゴブリンを退治するよ。
トリニティ・エンハンスで攻撃力を強化し一気に攻め立てるよ。
「ほらっ、こっちっすよ!」
声を張り上げながら須辿・臨が刀を振るう。弧を描いた白刃はゴブリンの両の眼を浅く切りつけ、ゴブリンは耳障りな声をあげながら地面に転がる。
「ああもうっ、流石にちょっと数多くないっすか――うおっ!?」
飛びのいた一瞬後を、錆びつき欠けた刃が通り過ぎる。臨は頬を流れる汗を拭いながら、正眼に構えた刃に力を込める。
「あっぶな……オレこんなところで死ぬつもりないっすよ。ホウロク鳥の味もまだ確かめてないっすのに」
「ほら、無駄口叩いてると危ないよ!」
臨に近づいてきていたゴブリンを蹴り飛ばし、幻武・極が横に並ぶ。渦を巻く様に炎、水、風の3つの魔力を身に纏った極は、近づいてくるゴブリンに向けて拳を突き出したりして牽制をしながら、ゴブリンを迎撃することに専念していた。
「ふぅ……。噂には聞いていたけれど、ゴブリンって筋肉質で美しくないよねぇ。そうは思わないかい?」
「正直そんなこと考えてる余裕がねーっす!」
ため息を漏らしながら憂いの表情を見せている沙羅音・姫陽に、臨が顔も向けずゴブリンとつばぜり合いを繰り広げながら叫ぶ。時折複数のゴブリンにたかられそうになっている所を、極と共に押し返したりしながら。
そんなある意味では優雅ではない現状に苦笑の笑みを浮かべた姫陽であったが、何かを思いついたように笑みを深める。
そしてまるで剣舞でも披露するかのように、斬りつけるためではなく刃を振るい始め――するとその体の周囲から、蛇が這うかのように桃色の炎が舞いゴブリン達へと向かっていく!
身体を絡めとるかのように纏わりつく炎に、ゴブリンが汚らしい悲鳴を上げる。すると炎に焼かれたゴブリン達の一部が、虚ろな目をしながら近くにいた同胞たちを攻撃し始めたではないか!
「あれは……どうなってるっすか?」
同士討ちを始めたことで混乱しているゴブリンを、臨は冷静に切り裂いていく。しかし疑問は口から零れ落ち、それに応えるように姫陽はくすりと笑みをこぼす。
「上手くいくかはちょっと賭けだったんだけど。ちょっと魅了出来ないかな……ってね」
「……えげつねぇっす」
笑みから放たれた言葉の意味に、臨は身体を震わせる。
敵を誘惑し操ったという事実もすごいとは思う。だがそれ以上に。
要するにあのゴブリン達はユーベルコードの力を借りているとはいえ、姫陽の色香に惑わされああなったということで――。
(「お、男の色香には惑いたくねぇっす」)
「どうしたの? 今がチャンスなのに、そんな変な顔して」
どうして臨が身体を震わせているのか理解していない極は、不思議そうに首を傾げながらゴブリン達を殴りつけていく。まだまだ10歳の少女には、少し難しい世界なのかもしれなかった。
「ほらっ、まだまだゴブリンはいるんだよ! 気合入れて一気に退治するよ!」
「わ、わかってるっすよ」
ある意味で無邪気な極の姿にため息を漏らしながら、臨は気合を入れなおす。多少数を減らしているとはいえ、油断をすれば怪我をするのは確かだ。心を落ち着けながら、降しやすいと感じた相手を優先して狙っていく。
「ふふっ、みんな頑張ってるね。僕ももっと頑張らないと」
「……とはいえ、少々。ええ、少々……これでは昂りませんね」
はぁ、と不満げに呟く街風・杏花の足元には、既に数体のゴブリンが切り伏せられていた。しかし杏花は自身の力量に比べての歯ごたえの無さに飽きた、とでもいうかのように刃についた血をふるい落とし納刀する。
「仕方ありません。次はかけっこといたしましょうか。さぁ、さぁ、おいでませ狼さん――おあがりなさい」
胸元で手を合わせ楽しげに笑う杏花の前に、一瞬白い炎が巻き起こる。その勢いに飛びのいたゴブリン達は、その直後炎から飛び出した巨躯に食いちぎられる。
突然の惨状を目の当たりにしたゴブリン達の前に、それはいた。
――狼だ。
茶の毛色をした、杏花の倍はあるであろう狼が、逃げ遅れたゴブリンを咥えながら辺りを睥睨していた。
「さぁさぁ、勝負といたしましょう。ダッシュ勝負、追いつかれたら負けですよ。ええ、けれど。ええ――私を忘れていたら」
撥ねてしまいますからね、と笑みをこぼし、杏花は刀を手に狼にまたがる。ゴブリン達は強烈な死の香りを纏った巨獣に逃げまどい始めるのだった。
そして猟兵達がゴブリン達の相手をしている中、1人こそこそとゴブリンの居なくなった縄張りを探し回っている少女が居た。
「はー……草とってくるだけでいいから、らくしょーっ! って思ったんだけど」
首を傾げながら、これか? それともこれか? と辺りを見渡しているのは浜栗・あさみであった。
ゴブリン達はすべて誘導されて別の場所で戦闘中のため危険はないのだが、あさみはこれ以上ない危機に陥っていた。
「…………そもそも何の草っていってたっけ?」
あっれー、なんだったかなー? と能天気に呟きながら、手当たり次第にその辺に生えている草を抜き始める。
「よっ! ほっ! よーっし、なんかノッてきたっしょ!」
「あら、あら、あさみさん。それはただの雑草ですよ?」
「……おっ?」
突如かけられた声にあさみが振り返ると、そこには先ほどまで戦場に居たであろう杏花の姿があった。
「あっれ、なんか楽しそうにゴブリンの方行ってた子じゃん。どしたの?」
「ええ、その……数が多いのはよかったのですけど――歯ごたえがなくって」
困ったようにため息を漏らす杏花。よく見れば服の所々にどす黒い血がついているのだが、あさみは全く気にする様子もなく笑い飛ばす。
「そっかそっか。そんじゃしょうがないね」
「ところで、ヤドリギ草は集まりましたか?」
「ん? んーなんかよくわかんねーけど、その辺の適当にぽいぽいしとけばいいっしょ?」
あさみの指さす方向には、色んな雑草がごちゃ混ぜになったものが山積みにされていた。よーく見てみれば、確かにヤドリギ草も混ざってはいるのだが、より分けが大変そうである。
「まとめて持っていけばいいでしょう」
深く考えることなく杏花はそう結論付ける。どうせ運ぶのは自分ではなく召喚する狼だ。
「よーっし、おっけー! これで粗方おわりっしょ!」
終わりーっ! と、あさみがいい笑顔で宣言する。
周囲を見渡せば、ヤドリギ草も含めそれらしき草はすべて抜き取られていた。
――後でゴブリン退治を終えた仲間達にこっぴどく叱られ、より分け作業をしなければならないことに、あさみは欠片も気づかない。
こうして無事――無事? にヤドリギ草の採取に成功した猟兵達は、次の材料を求めて洞窟へと向かうことになったのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
第2章 ボス戦
『呪飾獣カツィカ』
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POW : 呪獣の一撃
単純で重い【呪詛を纏った爪 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 呪飾解放
自身に【金山羊の呪詛 】をまとい、高速移動と【呪いの咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : カツィカ・カタラ
【両掌 】から【呪詛】を放ち、【呪縛】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ナミル・タグイール」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
平原での戦いを終え、猟兵達は今度はエンジ苔のあるという洞窟へとやってきていた。
暗くじめじめとした洞窟は足元はぬかるみ、更に横には数人しか並ぶことのできないような狭い場所となっていた。
中には危険なモンスターがいるという話も聞いている猟兵達は、静かに中へと進んでいく――。
街風・杏花
うふ、うふふ! ようやっと歯ごたえがありそうな敵ですわね!
今度は苔集めはお任せして、存分に、ええ、存分に切り結ぶとしましょう!
ああ、ああ、けれど――困りましたね。
そんな大振りな一撃で、洞窟を壊されては困ります。
そんなことをされたら、苔を集める邪魔ですし――何より、戦えなくなるじゃありませんか!
ですので、ええ、片端から受け止めますね? 身体で。
少ぉしばかり、痛いかもしれませんけれど。うふふ、大丈夫。
吹き飛ばされようと、血反吐を吐こうと――これももっともっと、楽しむためと思えば、ほら――嗚呼、どんどん力が湧いてきますわね!?
※真の姿
翼と髪が黒く染まり、黒狼の耳と尻尾が生え、白炎を纏う
※狼は外で待機
アルト・カントリック
「場所も敵もなかなか厄介だな……」
囮としてサポートしたいと事前に相談します。
味方から出来る限り離れて、ユーベルコード【戦場の霧】を使い、無害の濃霧を纏って自由自在に操り敵を引きつけます。足場には気をつけますが……
高速移動や咆哮で霧が散らされるかもしれませんが、時には敵の視界を塞いだり、有害なガスに変化させて襲わせます。
ユーベルコードの扱いが難しいので、味方と連携したいです。
ミコトメモリ・メイクメモリア
ふふん、こういうときこそボクの出番というものさ。派手な服装(ドレスだし)で堂々と乗り込み言葉も通じるか怪しい魔物相手に優雅にスカートを摘んで「ごきげんよう。キミには恨みもなにもないけれど、素敵なお祝いのために必要なものがあるんだ。ちゃっちゃと譲り渡してくれたまえ!」と宣言し【おびき寄せ】、上手く連れたらひょいひょい逃げ回って、距離を詰められたらユーベルコード発動、仲間の攻撃の射線上に転移させてしまおう。
「さて、苔を集めればいいのだっけ? ドレスが汚れそうだなあ……おっと、キミの相手はもう、ボクじゃあないのだ」
ちっちっちっと指をふって……あとは他の猟兵達、任せたよ!!!!!
「視界も悪いし、足場もそんなに良くはない……厄介だな」
足裏に感じるぬかるみを確かめるように、アルトは何度か地面を踏みしめる。湿りを帯びた地面は所々泥混じりになっており、決して戦うのに良いコンディションであるとは言えないだろう。
少し考えるように腕を組むと、仲間の猟兵達に提案をする。
「今回僕は囮として動こうと思う」
「おや、それじゃあボクはお役御免かな? これでも囮とかは得意なんだけど」
暗い洞窟にそぐわぬ豪奢なドレスを着たミコトメモリ・メイクメモリアが、フリルを蓄えたスカートを軽くつまんで慎重に歩きながらアルトの言葉に反応する。
「そう……いや、無理に僕一人で囮をする必要はないか。折角だし手伝ってくれるかい」
「ふふん、そうこなくちゃ。折角仲間が居るんだ、協力し合うのも醍醐味というやつだろう?」
自信満々に胸を張るミコトメモリに微笑を返し、アルトは自分ができる策を打ち明け連携を確認していく。
どれだけの時間洞窟を進んだだろう。
洞窟の中は日が差し込まない環境ではあったが、小さく光を放つ鉱石や植物で視界が完全に見えなくなるということはなく、それでいて奥まで見通すことのできるほどの光量はない。
だがそんな場所であっても、気をつけていれば脅威というのは存外事前にわかるものではある。
『アァアアァ……ァアアァァ……アァァ……』
最初は小さな風の音のようなものであった。
洞窟の中を通る風が、まるで獣のような鳴き声を奏でているかのような。
しかし猟兵達は知っている。
この洞窟には風の悪戯ではなく、実際にその獣が居るのだということを。
岩陰に身を隠しながら洞窟の奥へと目を凝らす――そこに奴がいる。
何らかの動物の骨らしきものを頭にかぶり、身体の毛皮には奇怪な刺青のような模様が至る所にはしっている。時折呻き声のような声を漏らしながら、かぎ爪の生えた手で近くにある苔――まさに猟兵達の目的としているエンジ苔をむしり取り、口に押し込む様に貪っている。
「ごきげんよう――おいおい、その苔を無駄に消費するのはやめてくれるかな? それがないと素敵なお祝いが台無しになってしまうんだ。ちゃっちゃと譲り渡してくれたまえ!」
仲間達に控えているよう後ろ手に合図を出し、ミコトメモリが声を張りながら前に出る。
慇懃さと優雅さを感じさせる仕草でスカートを摘まみ、小首を傾げながら笑顔で言い放った言葉は、獣を挑発するには十分だったのだろう。手にしていた苔を投げ捨て、一直線にミコトメモリへと距離を詰める!
「おっとと――せっかちな奴は嫌われるものだよ。キミみたいに……ねっ!」
獣の両拳から放たれる呪詛から逃げ回りながら、ミコトメモリは小さな宝石のような欠片を取り出す。そしてその欠片越しに獣の姿を捉えた瞬間――獣がミコトメモリの眼前からかき消える!
『アァァァァァ?』
突如居なくなった獲物の姿に、獣は困惑するように周囲を見渡す。見れば先ほどまで近くに居たはずのミコトメモリが、随分と遠くにいるではないか。
不思議そうに首をひねりながらも、改めて襲うべく地面を蹴ろうとした獣の身体を、突如包み込むように濃霧が発生する。
「悪いね。キミの相手はもう、ボクじゃあないのだ」
「そういうこと。……視界を奪われた気分はどうかな?」
竜の腕を模したかのような右腕を慎重に手繰り、濃霧――正確には濃霧の姿をしたドラゴン――へとアルトは指示を送る。
『ィアァアァァ!』
「気にいってもらえているようだね。あはは、まるで駄々をこねている子供じゃないか」
闇雲に爪を振るう獣の姿に、アルトは小さく笑い声を漏らす。
動きを阻害すべく纏わりつく様に、時に濃度をあげ視界を阻む様に、霧のドラゴンはアルトの意のままに獣の妨害に徹する。
『ァァアアァ……? アァ……アァァァ……!』
ドラゴンを振り払うべく獣は耳障りな咆哮をあげ、身体中を壁に打ち付けることすら厭わずでたらめに動き回る。アルトはそれに合わせるようにドラゴンへと指示を出していく。
最初は余裕を持っていたアルトも、少し眉間に皺を寄せ困ったように愚痴をこぼす。
「まずいな。動きが早くてこのままじゃ動きを追いきれない」
「うふ、うふふ……! でしたら、動けなくすればいいのでしょう?」
霧を振り切り走り回る獣の前に、ふらりと金の髪が躍る。
ピンクのメイド服を着た小柄な少女が、手にしていた刀の鞘を盾のように突き出しながら、暴走する獣を正面から受け止める!
『アァァ! アァァァァアアアァァァ!!!』
「くす、くすくす。ふふ、ふふふ。とぉっても、痛いですけど――」
大柄で勢いのついた獣を受け止めるには、杏花1人の力では十分ではなかった。
弾き飛ばされるように壁に打ち付けられ、更に追い打ちのように獣に押しつぶされようとしながらも、杏花の顔から笑みが消えることはない。
いや。消えるどころか笑みは一段、また一段と深まっていく。
「もっと……もっともっと、楽しみましょう? 叩きつけられようと、吹き飛ばされようと、血反吐を吐こうと――嗚呼、嗚呼っ!!! どんどん力が湧いてきますわね!!?」
張り付いた笑みはやがて哄笑へと変わり、杏花の金糸のような髪が周囲の闇を吸い込む様に黒く、黒く変わっていく。
血に飢えた狼のような耳と尻尾を生やし、その華奢な身体を白炎が這いまわる。
――ミシリ、と確かな音が鳴る。
それは壁に押し付けられた杏花の骨が軋む音ではない。
力負けしていたはずの杏花が、一歩、また一歩と獣を押し返す地を蹴る音だ!
「さぁ、さぁさぁ! 楽しみはまだ、始まったばかりではないですか!」
『グ、アアアアアアァァ!?』
獣の背が、杏花が叩きつけられた壁の逆側へと触れる。
杏花は不出来な力比べのダンスパートナーに向けて忠告する。
「少ぉしばかり、痛いかもしれませんよ?」
ただただ楽し気に笑う杏花の声をBGMに、獣の身体は岩壁の中へと叩きこまれるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
沙羅音・姫陽
ゴブリンは美しくなかったけど、場所が開けた草原だからよかったものの、いやぁ、洞窟の中というのはどうもシチュエーションからして美しくないよねぇ。
もっとも、ここにある苔が必要なんだ、危険なモンスターもザックリ退治して行こうか
使うユーベルコードは「天雷狐刃」
見ての通り、呪術用の道具なのか所々に金の装飾がある。となれば、僕の出番だ
これでも雷の狐なんでね
刀の刃の白雷を纏わせ、敵を斬る
目的は両断よりもその雷による副次効果だ
技能【属性攻撃】で雷を強化し、【マヒ攻撃】で敵の全身を痺れさせていく
ふふっ、呪術用の装飾が仇となるんじゃないかな?
敵を麻痺させている間に仲間の皆に攻撃やエンジ苔の回収をしてもらおう
幻武・極
次はエンジ苔を求めて洞窟探索だね。
危険なモンスターとの闘いも楽しみだけど、油断して帰って来れなくなるのも困るから、慎重に行こうか。
へえ、あれは呪術だね。
模倣武術で真似してみるかな
岩の砕ける音と、獣の叫びが洞窟に木霊する。
痛みのままに暴れまわる獣の腕から逃れるように杏花が飛びのくと、獣はただただ出鱈目にその両拳に乗せた呪詛を振るう。
それに明確な狙いはなく、自らに近づく外敵から身を守ろうとする防衛本能であったのだろう。
子供が駄々をこねるかのように振り回される拳を、駆け寄った極が受け止める。
呪詛に侵されていく自らの両碗を興味深げに眺めていた極は、鋭い気合の叫びと共にいとも容易く呪いを弾き飛ばしてしまう。
『アアァァ?』
「うん、こんなものかな」
呪詛を防がれてしまったことを不思議そうに見つめている獣を蹴り飛ばし、距離が開いた隙に極は鍵型のメモリを懐から取り出す。
そして腰に提げていたゲームデバイスに差し込むと、極の両腕が怪しげな光に包まれる。それはよく見てみれば、先ほどから獣の両拳に宿っていた呪いの力に酷似しており、何度か具合を確かめるように手を握ったり開いたりしていた極は不敵に笑いながら構えを取るのだった。
「自分の呪詛に侵される気持ち、教えてあげるよ!」
『アアアァァァ!』
「なかなか無茶をするねぇ」
呪腕と化した両腕をふるい獣との殴り合いを演じ始める極から一歩引き、姫陽は自身の持つ白刃に力を注ぎ込む。
白刃の上を姫陽の指が滑り、通った後を紫電が走る。
やがてその刃すべてに白雷が宿ったことを確認した姫陽は、静かに刃を構える。
狙うは極と獣が離れた瞬間。
殴り合う極と獣はどちらも自らの拳を武器にしているため、それは一瞬のことになる。
だからこそ……その一瞬を逃さぬよう、姫陽は自らの心を制御し力を練り上げる。
「はあああぁぁぁっ!」
「――今だっ!」
極が獣の胸倉を殴りつけた瞬間、1人と1体の間にわずかな距離が出来る。
姫陽の足がぬかるむ地面を強く蹴り、ピンクの髪を靡かせながら獣の懐へと潜り込む。そしてそのまま身体ごとぶつかる様に、獣の肩へと白刃を突き刺す!
『アアァァアアアァァァァ!!!?』
突き刺さった刃から火花が飛び散り、傷口から焼け焦げたような悪臭が周囲に広がる。
素早く刃を抜き去り距離を取った姫陽とは対照的に、獣は全身を痙攣させてその動きを鈍らせる。
全身に回った雷の力が、獣の意思に反して自由を奪っていったのだ。
「はぁ……やっぱり美しくないね。あがくにしても、もう少し、ね」
頭部にかぶった骨の奥から睨みつける獣を眺めながら、姫陽はそっとため息をつく様に漏らしたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ギルバート・グレイウルフ
ゴブリン共を蹴散らして、ヤドリギ草を手に入れられたのはいいんだが……すんすん、うえぇ……草くせぇ……。
次は洞窟の中だったか……色々と気を付けねぇとな。
この暗さに足元の悪さだと、万が一にも奇襲を受けかねねぇし。
ユーベルコード【忍び寄る死の気配】
を使って、備えるとしますか。
こういう暗所での戦いも、いくつか経験してきてるしな。
って考えてるうちに、やっこさんが登場のようだ!
てめぇら、一か所に固まってるとやられるぞ!!
味方に声を掛けつつ、全力で回避。
Glock Customで牽制射撃をしつつ、隙を伺うとしますか。
敵が味方の攻撃でひるんだ瞬間、一刀斬撃。せっかくだし、足の腱あたりでも狙ってみますか?
須辿・臨
このままガンガン行くっすよー。
ちょっとゴブリン戦で全力尽くした気がするっすけど、この苦労の分、ホウロク鳥の丸焼きが美味しくなるってもんっす。
暗いとこは戦闘中以外も気をつけないと。ぬかるんでるし、転倒注意っすね。
今回も戦闘をメインに。エンジ苔の採取は任せたっす!
呪飾獣カツィカには安易に掴まらないように動き回って戦うっす。
掴まったとして、倒れるまでは諦めず。
目潰し、残像、だまし討ち。持てる手は全部使うっす。
仕留めるのは他の誰かに任せるとして、俺はサイキックブラストで動きを止めることを狙うっすよ。
そういや、あんまり暴れられて、洞窟崩壊したら困るっすね……。
「うーわぁ……まだやる気満々って感じっすか」
『アァァァァ! アアアァァァ!』
動きが鈍くなったにもかかわらず、猟兵達への敵意を隠そうともせず獣は近づく臨に向けて牙を剥き威嚇する。
「つっても、もうそれだけ弱ってりゃ出来ることなんて少ないっすよ。観念して――」
「おい、臨! 後ろに飛べ!!!」
「!? ――うおっ、あっぶねぇ!
一瞬前まで臨が立っていた場所がはじけ飛ぶ。
砂埃を巻き上げ立つのは、己自身に金山羊の呪詛をかけた獣だ。
金に輝いていた毛皮が元のくすんだ色に戻る。
油断をしていたわけではなかった。
だが臨がさらなる攻撃を加えようとした瞬間、ギルバートの背筋を嫌な『予感』が走り抜けた――その警告に従ったことで、臨はおそらく獣の狙っていたであろう渾身の一撃を避けることが出来たのだ。
「助かったっすよ。あれはぶつかってたらヤバかったっす」
「なーに、お前がしっかり俺のいう通りに動いてくれたからな」
冷や汗を拭いながら、臨は自らの刀を一度納刀する。たとえ弱っていても……いや、弱っているからこそ、獣に止めを刺すまで気を抜けないことを再認しながら。
「動かれてヤバいってんなら、動けなくしちまえばいいっすよね」
全力を出した影響か動きを止めている獣に素早く近づき、臨は獣の肩に刀の代わりに両の掌を叩きこむ!
『アアアアアァァァァ!!!』
臨の掌が獣に触れた瞬間、獣の肩から耳障りな破裂音と共に再度の焦げた匂いが拡散する。
偶然か、狙ったものか、臨本人しかわからぬことではあったが――臨がしたのは自らの手の平から直接高圧の電流を流し込むことであった。それは先ほど姫陽が行ったことと同じであり、その攻撃箇所すらも全く同じであった。
「うわっ、血が付いたっす。離れた場所からやりゃ良かったっすね」
「贅沢言うなっての。おかげで動きをとめてんだからよ……っと!」
『!!?』
棒立ちになった獣の背後に素早く回り込み、ギルバートは二度刀を振るう。それは獣の足の腱を断ち切り――それによって獣は立ち上がることすらできなくなり地面に倒れ伏す。
無様に地を這いながらもがく獣であったが、手負いにさらに移動手段すらも奪われ……出来ることは少なかった。
「さぁて、後はしっかりと……最後まで止めを刺さねぇとな」
「っしゃ。んじゃサポートは任せて欲しいっす」
同行していた仲間達が、獣に最後の止めを刺すべく集まり始める。逃げることすらかなわぬ獣には、ただただ自らの死期を待つことしか出来なかった。
猟兵達の攻撃を受けやがて動くこともかなわなくなり、獣は物言わぬ躯となり果てる。
こうして無事に獣を退治することに成功した猟兵達は、お互いの健闘をたたえながら洞窟の入口へと引き換えしていくのだった。
――で、エンジ苔の採取は?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『打ち上げはいつもの酒場で』
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POW : 度数の高いものをぐいっと。数より質で差をつけろ
SPD : アルコールが回れば関係ない!アルコールはアルコールで誤魔化せる
WIZ : 自分の分を隣の席の者にこっそり押し付ける
👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
街風・杏花
あら、あら、あら!
うふふ、皆様仕方ありませんね、戦いが愉しいからって、大事な苔を忘れるなんて。
ええ、ええ、きちんと帰りに取って参りましょう。
縁の下は従者の役割ですもの。いっぱい暴れて気分が良いですし、ね
食べるのも楽しみですけれど、良ければ「調理」や配膳もお手伝いしましょう。
いえいえ、どうぞお気になさらず。ここまで来たら、レシピもお屋敷に持って帰りたいですし。こう見えて私、勤勉なメイドなのです
ああ、狐韻さん、この間ぶりに、一緒にどうです?
あらあら、お料理は苦手なのでしたっけ。けれどほら、働かざる者食うべからず。花嫁修行と思って、ね?
味見だって出来ますわよ?
あーん、してあげますから。なんて、うふふ
アルト・カントリック
あ……、多分ちゃんと引き返してエンジ苔を取りに行ったはずだよ。多分。
とりあえず、お爺さんの生存と願いが叶ったことを喜んで、楽しもうかな。
でも、僕はまだ未成年だから……お酒は……。
とか言っても“飲んでも良いんじゃないの”って言ってくる人は居るよね。
せっかくだから、手品としてユーベルコード【竜こそは我が友】で竜を召喚して、僕の竜と酔っ払い達で飲み比べなんて、どうかな?
酔っ払いなら多分、理性・常識その他諸々吹っ飛んでるよね?
(勿論、水縹・狐韻さんも皆さんと一緒に食べますよね!おまかせしますー)
ルーシア・アルネイル
……エンジ苔、忘れてる。
後ろから見ててよかった。
……別に戦うの、さぼってたわけじゃないし。
仕事してたし。 ……これ取ってたの。
……はぁ、服が汚れちゃった。
あたしお酒なんて飲めないから。 当然。
用は済んだし帰る。
……って言いたいけれど。 エリシアに変わる。
別な人格がいるってこういう時に便利。
ええ、ええ、わたくしも当然お酒は飲めないですの!
でもでも、給仕とお酌くらいはお手伝いできますのよ?
おじい様も、頑張ってきた皆様も、どうか楽しいひと時を過ごしてほしいですの!
……あ……もし有りましたら、わたくしもジュースくらい頂けますの?
えへへ、どうせなら、乾杯っ! くらい、みなさんとやってみたいですの!
猟兵達が酒場についたとき、丁度大きな荷物袋を持った老人がすれ違うように出て行こうとするところであった。
「あー、すまない。お爺さんがホウロク鳥を持ってるって人かな?」
足早に去っていこうとする老人を、アルトが人懐っこい笑みを浮かべながら呼び止める。
「ん……? 確かにわしはホウロク鳥を持っておるが」
「ああ、それならよかった。だったらこれが――」
少し警戒するような様子を見せる老人であったが、アルトが荷物から取り出したものを見て目の色を変える。
「そ、それはヤドリギ草! お主らどこでそれを」
「少し騒ぎを聞いてね。急いで採ってきたんだよ。あとエンジ苔が……エンジ苔が――」
荷物を漁るがなかなか出てこない。
嗚呼、何故だ。
途中まで忘れていたものの、確かに引き返して採ってきたはずなのに。
「エンジ苔が、どうしたんじゃ? そっちもあるんじゃろう?」
「……みんな、エンジ苔忘れてる」
慌てて各々荷物を漁る猟兵達の背後から、どこか不機嫌そうな声が聞こえる。振り向いた一同の前には、所々何かの植物の汁で服が汚れてしまっているルーシア・アルネイルが立っていた。
そしてその手には小さな革袋が握られており。
「おおっ。その濃い紅色に、どこか甘味すら感じさせる香り……それはまさしくエンジ苔!」
「……後ろから見てて、よかった。……はぁ。服が苔の汁で汚れちゃった」
ルーシアから渡されたエンジ苔に、老人は顔をほころばせる。詳しい事情は分からないものの、この集団の者達は自分のために採ってきてくれたことが分かったからだ。
「あら、あら、あら! 皆様戦いばかりに集中して仕方ありませんね。私はちゃんと、ちゃんとこの通り採ってきていますわよ」
「――あったあった! ふぅ、これだけあれば足りるんじゃないかな」
戦闘中暴れるだけ暴れた後、実は採取をしていたらしい杏花と、引き返して採取していた苔を荷物の中から見つけたアルトの分も合わせると、調理をするには十分な量がある様に見える。
他にも何人かの猟兵達が、戦いのどさくさに採取していたエンジ苔を老人へと渡していく。
老人は嬉しそうな顔のまま、手招きで猟兵達を酒場へと誘う。
「せっかく持ってきてくれたんじゃ……どうじゃ、一緒に楽しんでいってくれんか。今日はわしの引退パーティじゃ!」
老人の申し出に猟兵達は断る理由もなく、招かれるがまま酒場の中へと足を踏み入れるのだった。
――そして少しの時間が過ぎる。
「「「乾杯っ!」」」
もはや何度目かもわからぬ乾杯の声が、酒場に響き渡る。
手に葡萄ジュースの杯を手にしたルーシアは、苔を採って来た時とは別人のように明るく、差し出された杯に自らの杯を打ち付ける。
「うふふ、こういった催しはとても楽しくて好きですの。――あら、おじい様いい飲みっぷり。さぁさ、お酌をさせていただきますわね」
「ああ、すまんね。おっとと、と」
それもそのはず。ルーシアは現在自らの内に存在するもう1人の人格、エリシアへと交代しており、社交的なエリシアはすっかりと酒場にいた人々と打ち解けているのだった。
「ルーシア様……いえ、いえ。エリシア様と呼ぶべきでしょうか。エリシア様こそ、そういった仕事は私にお任せください。配膳は従者の役割ですもの。そして――」
エリシアの手から酒瓶を取り上げるようにして受け取り、老人とエリシアの杯へとそれぞれ酒とジュースを注いでいく。そしてそれを終えた後、後ろに運んできていた台から、今回のもう1つの『主役』を取り出す。
「これがホウロク鳥の丸焼きですわ」
大きな皿の上に乗せられていた蓋を取り去った瞬間、芳醇な香りが辺り一面に広がる。
濃い小麦色にしっかりと焼かれたホウロク鳥の中には、ぎっしりと野菜やヤドリギ草が詰め込まれているのが見える。
それはホウロク鳥の周りにソースのようにしっかりと塗り込まれたエンジ苔の汁とホウロク鳥の肉汁をしっかりと吸い、甘辛い味わいへと変化していることだろう。
そして焼き蒸された野菜とヤドリギ草の旨味を内側から吸収したホウロク鳥の肉は、切り分ける杏花のナイフに抵抗すら見せぬほど柔らかく、次々に皿へと分けられていく。
「おぉ……これじゃ。これがホウロク鳥……あぁ、懐かしい……」
差し出された皿の上の肉を一度嗅ぎ、一息に頬張った老人が感無量といった様子で涙を流す。
その様子を見ながら、他の者達も取り分けられたホウロク鳥に手を伸ばしていく。
「どうです、狐韻さん。ご自分で手伝ったお料理はおいしいでしょう?」
「うぅ……美味しいですけど、いっぱい失敗しちゃいました……」
手にベタベタと手当の痕を張り付けた狐韻が、ホウロク鳥を噛みしめながら情けなく耳をぺたんと垂れさせる。
杏花に付き添われ中の野菜を切っていた狐韻であったが、どうやら随分とやらかしたようである。
「あらあら、でも一足先に他のお料理の『味見』も出来て、楽しそうだったではないですか」
「しーっ! しーっ! それは秘密ですよ!」
「あはは。随分と姿を見ないなと思ったら、狐韻も一緒に料理をしていたんだね」
「はい……大変でした。あっ、私のお肉!」
狐韻の皿から肉の端切れをひょいと掴み、口に放り込みながらアルトが笑う。そしてもう片方の手には酒の杯が握られており――。
「アルトさん、お代わりだそうですのよ」
「おっと、もうか……なかなかやるね」
杯を手で弄びながら向かう先には、顔を真っ赤にした酔っ払いと、アルトの呼び出したドラゴンの姿があった。
アルトはドラゴンの口に酒を流し込むと、それを見た酔っ払いは無念そうにテーブルに突っ伏す。
「勝てるわけ、ねぇだろぉ……」
「はい、これでアルトさんの勝ちですわ!」
はしゃいだエリシアの宣言に、飲み比べ勝負に賭けていた酒場の連中の歓声と悲鳴の入り混じった声が響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
沙羅音・姫陽
探索お疲れ様って感じだよね
おじいさんの引退パーティーだけど、やー、僕飲めないからねー、未成年だし
ソフトドリンクでもあればいただける?ジュースのことなんだけど
【WIZ】で判定
流石に未成年に勧めてこないと思うけど世界が違えば常識もちがいそうだもんね、万が一持って来られたらそっと隣の席の成人の人に押し付けよう
何食わぬ顔してればきっとばれないはずだ
いやー、楽しそうで何より
あっ所でね、多分皆気付いてないと思うから、こそっと回収して来たエンジ苔使ってね
調理する人達にこっそり渡しておくから
これ使わないとホウロク鳥食べられないからね、戦った意味無いからね
須辿・臨
よっしゃ、酒だ、ごちそうだ、ホウロク鳥だ……っと、その前にお疲れっす!
いやー、それにしてもうっかり苔を忘れるところだったとは。
何のための死闘、って話っすよねーあははは。
そうそう、じーさんもお疲れさんっすよ。
俺は是非冒険話聴きたいっすねぇ。
旅先で知恵を得る、これも一族の修行の一貫なんすよ。
できれば美味しいもんの話が聞けると一番なんすけど……ん、それは知恵じゃ無いって?
やー、疲れた身体に酒が沁みるっす……。
俺にとっても……ホウロク鳥は猟兵としてのスタートってことで、忘れられない味になりそうっすね。
ギルバート・グレイウルフ
ついつい戦闘に夢中になっちまって、苔の回収し忘れてたな。
帰り際に思い出して、ちょちょいと手持ちの袋に入れておいてっと。
【SPD】
さぁ、ビュビュッと集めた材料を使って、爺さんの引退を派手に祝ってやろうぜ!
ホウロク鳥ももちろん味わうが、祝いの席といったら酒だ酒!
ちびちび飲んでるやつがいたら、爺さんに申し訳なくねぇのか!なんて絡み酒でもしてみっか。
爺さんにも色々話を聞きてぇな、これまでの苦労とか逆に大活躍とかをさ。
ベテランの知恵をちょいとでも拝借できれば儲けものだぜ。
後はもう飲んで飲みまくる!ははっ、いろんな奴に絡んでみるとすっか。
……散々飲んだら、気持ちよくぐーすか寝ちまいそうだけどな!
「はー、アイツら派手にやってやがんな……」
手にしている杯を一気にあおり、ギルバートが飲み比べに興じていた一団を苦笑まじりに眺める。ちびちび飲むのは性に合わないものだが、あそこまで派手に飲み比べをするほどではない――だが、折角酒を飲むのだから、誰かに絡んでしまいたくもある。
「なんじゃ、1人で飲んでおるのか?」
「おっ。今夜の主役じゃねぇかよ。爺さんこそ飲んでんのか?」
「勿論よ! こんな日に飲まずして、何が冒険者じゃ」
ドン、と酒瓶をテーブルに乱雑に置いた老人に、ギルバートは挑戦するように笑みを浮かべる。それは老人の出してきたその酒が、かなりの度数をほこるものだと知っていたからだ。
「おいおい爺さん。年寄りの冷や水って知ってるか? 老骨に鞭打つもんじゃないぜ」
「なーに、こんなところでしけた酒を飲んでるやつには、これぐらいキツイのじゃないと効かんじゃろ?」
「言いやがったな、おい!」
売り言葉に買い言葉。2人は杯になみなみと酒を注ぐと、乱雑に杯を突き合わせる。ガツン、とぶつかる音が響くと共に、度数の高い酒を一気に飲み干していく。
「「ぶはぁ~~~~!!!」」
力任せにテーブルに杯を叩きつけ、酒精混じりの息を一気に吐き出す。度数の高さに目を白黒させ、お互いの様子に腹を抱えて笑いながら2人の対話は始まった。
「どうだ爺さん、色々やって来たんだろ? なんか話し聞かせてくれよ」
「ふふふっ。この酒を一気に飲み干した度量に敬意を示して、とっておきのやつを語ってやるとするかのう」
そして語られるのは、老人が若い頃に冒険者になってから今までの冒険の数々。他の仲間達が引退していく中、老年といえる頃合いまで冒険者を続けることが出来た1人の男の生き様だ。
「――でじゃ、そこでわしは」
「ぐおーー! ぐごごごご!」
語る老人の前から突如聞こえるいびき。見ればギルバートは赤ら顔でテーブルに突っ伏しており、老人は少し拗ねたように酒をまたあおる。
「なんじゃ、ここからがいい所じゃというに、気持ちよさそうに寝おって」
「そりゃあ、あれだけ飲めばしょうがないんじゃないかな?」
寝落ちてしまったギルバートに毛布を掛けてやりながら、姫陽が空いてる席へと座る。色々な席をまわってきたようで、手には料理の乗った皿とぶどうジュースの入った杯を持っている。
「なんじゃ、お前は飲まんのか?」
「あはは、やー、僕は未成年だからねー。飲んじゃダメなんだよ」
「そんな細かいこと言いっこなしじゃ。祝いの席じゃぞ祝いの」
強引に転がっていた空いた杯に酒を注ぎ、老人は姫陽に飲ませようと差し出してくる。しかし当の姫陽はといえば、老人の目が既に酔いで曇っていることを見抜いていた。
すぐさま受け取った杯と、最初に持っていたジュースの杯をすり替え、酒を飲んでいるような演技をして飲み干していく。
「ふぅ……なかなかきついね、これ」
「ほほう、なかなかいい飲みっぷりじゃわい。これは冒険者としても将来有望じゃな」
「お酒の飲みっぷりとそれって関係あるのかな……?」
酒飲みの戯言を苦笑まじりに聞き流しつつ、姫陽は酒の入った杯を隣のテーブルへとこっそりと置き、入れ替わりにまたジュースの入った杯をつかみ取る。
「そういえばホウロク鳥、さっき僕も頂いたけど美味しかったよ」
「おおっ。お主らのおかげでわしも食うことが出来たからな……感謝してもしきれんわい。ありがとうな」
柔らかな肉の食感を思い出す姫陽に、老人の頬が緩む。自分の思い出の品を誰かと共有できることが嬉しかったのかもしれない。
「僕はもうちょっと色々と食べてこようかな? おじいさんはあんまり飲みすぎて倒れないようにしなよ」
「なに、こういうのは倒れるぐらい飲まんとじゃろうが」
おそらくは数刻先の姿であろうギルバートが目の前に転がっているにもかかわらず、まったく自重する様子の見られぬ老人に、姫陽は流石この歳まで冒険者を続けていただけあると感心しながら立ち去るのだった。
「さてさて……とは言ったものの、流石にわしも飲み過ぎたかのう」
「あ、ここ空いてるっすか?」
「おう、座れ座れ」
先ほどまで姫陽が座っていた席に、臨が遠慮なく座る。手にはホウロク鳥の乗った皿が握られており、早速とばかりに臨は肉に手を伸ばす。
「いやー。肉が大人気でようやくありつけるっすよ。どんな味なのかすっごい気になってたんすよね」
「はは。何せなかなか手に入らない肉だからな。にしてもお主らここらじゃ見ん顔だが、流れのか?」
長年冒険者をやっていたからだろう、老人は猟兵達がここ付近で活動する冒険者でないことに気づいていた。
「んー……そんな感じっすかね?」
口の中に溢れる肉汁を酒で流し込んでいた臨は、あいまいに頷き話を合わせる。
そんな様子を眺めながら、老人は冷えた水を杯に注ぐ。そして軽く口に含み湿らせると、先ほどまでとは違った穏やかな口調で問いかける。
「……のう。お主、まだ冒険者としては駆け出しじゃろう」
「あー。やっぱわかるっすか?」
「なんとなく、のう。腕はたつみたいじゃが、身にまとった雰囲気みたいなもんじゃな」
皿に乗ったホウロク鳥の肉を弄ぶ臨を、老人の目はただただ優しく見つめる。それはまるで、かつて若かりし頃の自分自身を見るかのようでもあった。
「ホウロク鳥は、わしの思い出の味なんじゃ。かつて冒険者としてのわしが始まったとき、先輩の冒険者に食わせてもらった思い出の味じゃ」
臨の皿から一切れ肉をかすめ取り、老人は味わうように咀嚼する。今までの冒険者としての自分自身を終わらせるための味を、しっかりと刻み込む様に。
「これも何かの縁なのかもしれんな。駆け出しの冒険者に、こうやってホウロク鳥の肉を食わせてやれた」
「……なんだか、忘れられない味になりそうっすね」
臨もまた、ホウロク鳥の味を刻み込む様に噛みしめる。エンジ苔の甘味とヤドリギ草の旨味を吸った、ホウロク鳥の肉汁が噛んだ歯の隙間からじわりと溢れだす。
――きっとこの味は生涯忘れることはないだろう。
自分の新たなスタートを彩った、この瞬間と共に。
「じーさん、折角だし色々冒険話も聞かせて欲しいっすよ。旅先で知恵を得る修行の一環……ってことで」
「ははは! ええぞ、ええぞ! まだまだ時間はたっぷりあるからのう!」
周囲のテーブルから大きな笑い声が響く。また飲み比べでもしているようだ。
酒場からは暫く笑い声が絶えることはなかった。
1人の冒険者の、冒険の終わりを彩る様に。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵