邪教徒の陰謀 ~踏み荒らされる純潔の花々~
#UDCアース
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UDCアース世界。極東の島国、日本。
その国に幾つかある大都市の近郊に、とある女学園が存在する。
在校生には名家の子女を多く抱え、文武両道かつ品行方正をモットーとするこの学園は、近年では随分と珍しくなった『お嬢様学園』として近隣住人にも知られ、親しみと憧れを持って愛される学園だ。
そんな『お嬢様学園』が、年に一日だけ外に向けて門を開く行事が存在する。
そのイベントの名は、『学園祭』。進学希望者向けの見学会も兼ねた行事であり、その日の学園は例年多くの人で賑わう事となるイベントである。
そんな『学園祭』の日が、今年もまたやってきた。
在校生に教職員、卒業生に近隣住人、見学に来た進学希望者と、今年もまた多くの人が学園での一時を過ごしていた。
例年通りであれば。このまま賑やかに日は過ぎて、多くの人々の笑顔と共に思い出の一ページとなる。
……ただそれだけのイベントの、はずだったのだ。
──パンッ! パパパンッ!!
楽しげで賑やかな喧騒に包まれた、学園の正門付近。
陽性の活気が溢れたそんな場所に、突如として炸裂音が響いた。静まる喧騒。直後響いたのは、女生徒の甲高い悲鳴。
絹を裂くかのようなその悲鳴に人々の視線が集まれば……そこにいたのは顔を隠し人々に銃を向ける男達と、倒れ伏し赤い物を流す警備員の姿。
一瞬、その場に居合わせた人々は事態を理解出来無かった。だが男達の銃が更に音を放ち、今度は数人の来場者が崩れ落ちれば、何が起きたのか理解は広がる。
そう、理解してしまったのだ。
──ワァァァァァァアアアアア!?
悲鳴を挙げ、逃げ惑う人々。混乱が混乱を呼び、追い撃つように広がった銃声が更なる悲鳴と血を生み出していく。
阿鼻叫喚、と言った景色が展開される正門前。この惨劇を生み出した男達のリーダー格と思われる男が、声を挙げた。
『賽ハ投げラれた……』
変声機を使っているのだろうか、機械音のような印象の声だ。装備している銃も相まって、この凶行は入念な準備を重ねての物であると推測されるだろう。
しかし何故、彼らはこの様な凶行に走ったのであろうか。
『こノ学園ニ集う者ノ尽くヲ、我らガ神ヘの供物トすル!』
その答えは、リーダー格の男の宣言によって明かされた。
──古来より、邪なるモノを喚び出す儀式に欠かせないモノが幾つかある。その代表格として挙げられるモノは……『清らかな乙女の血』だ。
この学園は、文武両道・品行方正な名家の子女が多く属する学園だ。つまり、彼らの求める『血』もまた、存在しているという事なのだ。
その事実が。楽しかった行事を惨劇へと変えてしまったのだ。
『行ケ、同志達よ!』
男の声に駆け出す、覆面姿の男達。四方八方に広がった男達の目的とする所は、言うまでも無いだろう。
そんな同志達の姿を横目に、リーダー格の男と他数人の男達は別行動を取るのだった。
●
「……お集まり頂き、ありがとうございます」
グリモアベースに集う猟兵達を迎え入れたのは、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)だった。
艷やかな銀糸の長髪、嫋やかな微笑を絶やさぬ彼女であるが……今日の彼女の表情は、堅く巌しい。
「今回皆さんに赴いて頂く世界は、UDCアース世界、日本国。そのとある地方都市近郊に存在する、女学園です」
その女学園は近年では随分と珍しくなった名家良家の子女が多く通う名門女学園であり、近隣では名を知られた『お嬢様学園』なのだという。
文武両道・品行方正をモットーに、格式の高さもあって近隣に通う女学生の憧れの的であるらしいのだが……
「今その学園は……とある武装集団により、占拠されています」
女学園の門が年に一度大きく開かれる学園祭のその日。来校した一般客に紛れた武装集団が蜂起を起こしたのだ、とヴィクトリアは語る。
現在現場の学園は地元警察を指揮下に置いた人類防衛組織「UDC(アンダーグラウンド・ディフェンス・コープ)」の構成員が包囲し、一触即発の状態であるらしい。
……UDCの構成員が現場にいる。その事実だけで、この事件がただのテロ事件などではないことが猟兵達には理解出来るだろう。
「はい。この事件は、邪教復活を狙う邪教徒の集団が引き起こした物。皆さんには、犯人の狙いを阻止する為に動いて頂く事になります」
ヴィクトリアのその言葉に、猟兵達の視線が細く、鋭いものとなる。猟兵からの先の説明を促す声が上がり、頷きを返したヴィクトリアが説明を続ける。
「先に説明した通り、既に学園は邪教徒により制圧されています。ですが……」
既に周辺は包囲され、その監視に少なくない構成員を貼り付けている為、学園内部に向けた邪教徒集団側の警戒は緩みがある、とヴィクトリアは語る。
その緩みを突き、学園を解放し、邪教徒の陰謀を挫く為の策が、明かされる。
「これから皆さんを、学園敷地内に直接転送します。到着後は邪教徒制圧下の学園を解放する為に、それぞれ動いて頂く形になります」
猟兵達の最初の任務は、建物内に籠もる邪教徒の兵士を排除、人質となっている一般人達の解放となる。
女学園は『校舎』、『特殊教室棟』、『管理棟』、『体育館』などの建物で構成されている。
他にも正門前の広場や駐車場、運動場などもあるが……狙撃などを警戒しているのか。武装勢力の面々の多くは建物内に潜んでいる。その側には当然、人質となっている来場者や女学生もいるはずだ。
邪教徒の籠もる場所にどのように忍び込むか、そして人質となっている一般人を傷つけず、どのようにして邪教徒の兵士を排除するか。その辺りのことを考えると良いだろう。
「今回の任務の最優先すべき案件は、一般人の保護です。ですが……」
可能ならば、この凶行を引き起こした邪教徒もこの場で確実に仕留めたい所である。特にこの集団のリーダー格の男は、なんとしても捕らえねばならぬ相手である。
もし、この男が今回逃げ延びてしまえば。今回と同様の事件を引き起こすであろう事は、想像に難くないからだ。
「ですので、敵のリーダーに関する情報収集も並行して行う必要があります」
現状、居所が明らかになっていない相手である。だが包囲下にある学園から逃げ出せたとは思えない。
適切な情報を集めれば、自ずとその居場所は明らかになるはずだ。そうしてその居場所が明らかになれば……後は、追い詰めるのみとなるだろう。
「……人質の救出。そして敵リーダーの捕縛。難しい案件となると思います。ですが、皆さんのお力があればきっとこの非道の行いも止められるはずです」
皆さんのお力を、お貸し下さい。
そう告げて深々と丁寧な礼をしたヴィクトリアは、転送の準備に移るのだった。
月城祐一
11月も後半になってグッと気温も落ちました。
どうも、月城祐一です。秋は何処に行ったんだ……?(困惑)
ヒーローズアースでの戦争は佳境に入りつつありますが、通常依頼です。
乙女の純潔を踏み躙り、邪神復活という暴挙を狙う邪教徒達を討ち倒して頂く依頼です。
以下、補足となります。
第一章は冒険フラグメント。
学園内各所に転送された皆さんには、まず学園の各建物に潜む兵士を排除、人質の救出を行って頂きます。
各建物は一般的な学校に存在する建物とお考え下さい。それらの各所に人質は監禁され、監視の兵士が付いています。
兵士達は銃火器で武装しており、発砲されると流れ弾が人質に行く可能性があります。
また通信手段などもあるらしく、下手な行動を取れば惨劇が繰り返される可能性が高まります。
最悪の事態を防ぐ為、皆さんの機転が試されます。
『リーダー格の男』の情報収集と合わせて、フラグメントの内容は気にせず色々考えてみると良いでしょう。
第二章、第三章に付いては現時点でお知らせ出来る情報はありません。
状況が進展した際に情報開示を行いますので、ご了承下さい。
純潔の花々に迫る、邪教徒の陰謀。その悪意を挫けるのは、猟兵のみ。
皆さんの熱いプレイング、お待ちしております!
第1章 冒険
『教団の計画を阻止しろ』
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POW : 設置された爆発物を取り除く
SPD : 教団に潜入して計画書を入手
WIZ : 教団関係者に接触
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
グリモア猟兵の導きを受け校内各所への転移を終えた猟兵達がまず見た物。
それは、地を、床を、壁を。紅く染め上げる液体と……地に伏したまま動かぬ、物言わぬ躯の数々であった。
恐らくは、邪教徒の兵士達による襲撃、その犠牲となってしまった一般人達なのだろう。その暴虐の爪痕に猟兵達が抱く感情は、一体どの様な物であろうか。
しかし、今は。犠牲者達を弔う余裕は、存在しない。まだ学園内は邪教徒に占拠され、この学園の学生を始めとした多くの人質達が監禁されているからだ。
……まずは、邪教徒を排し、人質達を救わねばならない。その上で、敵のリーダー格の男の情報も探らなければならない。
犠牲となった人々へ僅かな瞬間の黙祷を捧げ、それぞれの成すべき事を果たす為。猟兵達は、動き始めるのだった。
四王天・燦
女の子が大好きだ。
幸せになって欲しいのに…何で殺されなきゃいけねーんだ。
目くらい閉じてやりてえが、監視カメラを危惧して今は辛抱
監視を封じたいので先ずは管理棟を目指す。
闇に紛れ、気配があれば符術『百鬼夜行』で影と化して這い進む。
忍び足で警備室に入るぜ
戦闘は暗殺と先制攻撃重視。
百鬼夜行を駆使し、兵士に何が起きているのか理解される前に仕留めに掛かる
四王稲荷符を投擲で貼り付け、精神攻撃・気絶攻撃・呪詛で、衰弱死か精神崩壊での昏睡を与えるぜ(女子に死を見せない)
複数敵の時は乱れ撃ちでばら撒いて範囲攻撃。
体を盾にして一般人は庇うよ
兵士の所持品や監視カメラで頭目の手掛りを探った後、棟内の一般人解放に向かうぜ
藤堂・遼子
占拠されたお嬢様学園ね
こういう名門は母校(母校でも可)を思い出すわね、誘拐監禁の所為でマトモに卒業出来なかったけど
可能なら転移前に、無理なら転移後に此処の制服を手に入れて着替えて生徒に偽装したいわね。それも無理ならそれでも構わないけど
最速の人質解放を目指すなら校舎なんでしょうけど、此処は管理棟ね
こういう名門校なら監視カメラやら防犯設備があるはず、少なくとも監視カメラを押さえないことには下手に行動出来ないわ
当然、敵も此処を重視してるけど義手内蔵のショックワイヤーで無力化するわ
制服を入手出来てたら以前の口調で生徒を装って油断を誘うのもいいわね
監視カメラ等を見張ってた奴らを捕縛したら尋問開始ね
●
事件の発生から、どれほどの時が経ったのだろうか。太陽が西の空に傾き始める時間となっていたが、学園の敷地内は今もなお火薬と血の香りが漂っていた。
そんな学園の建物の影に紛れるように……いや、己の体を影と化すユーベルコードを用いて一体化するかのようにして、歩みを進める猟兵が一人。
(……畜生、女の子には幸せになって欲しいのに、何で殺されなきゃいけねーんだ……ッ!)
四王天・燦(月夜の翼・f04448)の胸中に宿るのは、強い無念の想いだった。
彼女がこの地に降り立ったその時、最初に視たのは一人の女子生徒の遺体だった。
逃げ惑う最中を背中から撃たれたのだろう。俯せになって事切れていた女子生徒の瞳がは、恐怖と絶望の色に染まっていた。
百合の気のある燦である。少女のその苦しそうな表情を放っておくのは忍びなく、せめて瞳だけでも閉じてやりたいと思っていたのだが……寸での所で監視カメラの存在に気が付き、奥歯を噛み締めその場を後にしたのがつい先程の事であった。
(……監視カメラか。厄介だな)
先程の苦い想いを思い返して、渋面を浮かべる燦。
名門女学園というだけあって、学園内の要所要所には監視カメラが設置されていた。そのカメラ達は普段は学生達の生活を護る為に活かされる存在であるのだが……今は包囲網に対する警戒を強める邪教徒達が、学園内部を監視する為の強力な手札と化してしまっていた。
その監視の目を封じる事が出来れば、猟兵達の活動にも大きく貢献出来るはずなのだが……
(……警備室は、管理棟だったな……うん?)
まずは監視カメラを封じるべしと動き出そうとしたその時。視界の先に動く影があることに、燦は気付いた。
(今のは……よし!)
その人影の動きに、何かを確信したかのように一つ頷くと。燦は建物の影を渡るかのように、先行する人影を追っていく……
●
(……懐かしい空気、ね。母校を思い出すわ)
首尾よく管理棟に忍び込んだ人影……藤堂・遼子(狂気を狩る者・f09822)の胸に去来したのは、懐かしさであった。
遼子の生まれは政治家の一族である。それはつまり名家・良家の生まれであり、彼女のかつて通っていた母校もまた、この学園と同じ様な『名門お嬢様学園』として知られる学園であった。
だからだろうか。この学園の端々から感じる空気は、かつて彼女の在籍していた学園と非常に似通っていて……彼女の心に郷愁に近い感情を、呼び起こしていたのだ。
(……ま、私は拉致監禁の所為でマトモに卒業出来なかったけど)
遼子が猟兵として目覚めたのは、邪神の狂信者による拉致監禁事件が切欠なのだという。
邪教信徒の慰み者とされた、かつての自分。今まさに、邪教信徒の欲望を向けられているこの学園と生徒達。
……偶然の一致かもしれない。だが遼子としては今回の一件は他人事には思えなかったのだろう。彼女の瞳は強い決意の光を宿していた。
とは言え。
(人質を解放する為にも……まずは、カメラや防犯設備を抑えないと)
……こういう名門校であるならば、監視カメラや防犯設備は当然備えられているだろうと、遼子は自身の経験から気がついていた。
グリモア猟兵の言葉によれば、敵の構成員の多くは外の包囲網を警戒する為にそちらに貼り付いているはずだ。当然、学園内部に向ける人の目も相応に少なくなっているはずだ。
だが、その穴は監視カメラや防犯設備で簡単に埋められるモノでしかないのだ。
(……少なくとも監視カメラを抑えないことには下手に行動出来ないわね)
逆を言えば、カメラと設備を抑えれば多少は強引な行動も可能となり得るという事である。
(警備室は、玄関脇ね。服も適度に乱れさせて……)
周囲の様子を伺いつつ、身に纏う衣服(更衣室から拝借してきた、この学園の制服だ)を適当に乱れさせる遼子。
……警備室を狙う燦と遼子。二人の考えはまさに慧眼と言って良いだろう。だが、当然敵も警備室の重要性は理解しているはずである。
果たして猟兵達は、その目論見を果たす事が出来るだろうか?
●
一人の女子生徒が、周囲の様子を伺いながら進む。この学園の制服である青を基調とした古風なデザインのセーラー服は埃に汚れ、破けていた。この非常事態の最中、なんとかここまで逃げ延び続けていたのであろう。
女子生徒の前には、『警備室』と書かれた扉。どうやら此処に逃げ込んで追手をやり過ごそうとしたのだろう。
──バンッ!
だが、目の前の扉が音も激しく開かれれば、その表情は驚きの色から一瞬で絶望へと変じた。
何故なら……
『ヘヘヘ。悪いな、お嬢さん』
そこに居たのは、この学園を襲ったテロリストの仲間。銃をこちらに突き付けてながらの表情は覆面に隠れて見えないが、きっと下卑た笑みを浮かべている事だろう。
「い、いやっ! 来ないでください……!」
腰が抜けたのだろうか。その場でへたり込んでしまう女子生徒の口から溢れるのは、弱々しい否定の言葉。
そんな少女の態度に加虐心を刺激されたか、男の手が少女に伸びる。掴まえて、部屋の中に引きずり込んで……少しくらい楽しんでも良いだろう、と。男の瞳に、情欲の輝きが宿る。
あと30cm、20cm……震える少女の肩にその手が触れようとした、その時だった。
「……油断大敵よ!」
『何っ、ぐあっ!?』
閃光の如く少女の腕が振るわれれば、たちまちの内に男の体に一本の糸が纏わり付く。次の瞬間、糸から強烈な電撃が伝わって、男の体を襲ったのだ。
目の前の獲物を貪る事に意識が傾き、警戒心の薄れていた男である。完全に不意を突かれた一撃に、抵抗も出来ずに無力化されて地を這う事となった。
(まずは、一人……!)
「おい、どうした……ッ!?」
崩れ落ちた男が動けぬ様を確認しつつ視線を上げた少女……遼子の視界に、室内にいたもうひとりの男の姿が飛び込んできた。だが遼子の視線は、男では無く、室内に蹲る一人の女子生徒の方へ向いていた。
女子生徒の纏う衣服は激しく破かれボロ布と化し、全身には激しい暴行の痕があった。恐らくは、言葉にするのも憚られる様な行為を受けたのであろう。
遼子の脳裏に、かつて自身が受けた陵辱の記憶が過る。
「この──ッ!」
「──腐れ外道がぁッ!!」
怒りのままに遼子が動くよりも早く、男に飛び掛かる黒い影。その影は瞬く間に人の形を作り出し……
「オラァッ!」
「ガッ!?」
その拳を、男の顔面に叩き込んだ。強烈なその一撃は男の頭を強く揺さぶり、発砲する間も無くその意識を見事に一瞬で刈り取る事に成功した。
激しい怒りのせいか、今も肩で息をする乱入者。その姿を見れば、猟兵である遼子ならば気がつくだろう。
「……成程、ご同業ね」
「フー……あぁ、悪いな。獲物を横取りしたみたいになっちまった」
呼吸を整える妖狐の女……燦の出で立ちを見れば、共にこの任務に挑みに来た猟兵である事を。その狙いは自身と同じく、『警備室』にあるのだろうと言うことも。
燦の謝罪の言葉に、『気にしていない』という様に首を振る遼子。ここで雑談を交わす余裕は無い。
「同じ目的なら話は早いわ。私はこいつらを尋問するから……」
「アタシが連中の情報を抜き出しつつ、カメラを止める、か。オーケー、早速動こう」
倒れた男達を縛り上げつつの遼子の声に頷きを返し、燦は警備室の中へ脚を踏み入れるのだった。
……こうして、二人は狙い通りに警備室を奪い返す事に成功し、囚われていた女子生徒の救出も達成した。
敵のリーダー格に関する情報はかなり厳重に統制されているのか得ることは叶わなかったが……だが監視網を無力化した事は、今後動く猟兵達の大きな助けとなるはずだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
備傘・剱
こりゃまた、殺しも殺したりって奴、か?
毎度の事だが、理解できんな
校内を隠密行動で動いて、比較的、人質も敵も少なそうな所を探そう
哨戒している奴で、邪魔な奴は綺麗に暗殺して身ぐるみ剥いで死体は隠す
で、変装だな
そして、体育館にこっそり潜入したら、敵の数と装備を確認して、まず、サイコキネシスで動きを封じてから少し離れた所にいる的以外は誘導弾で首から上を吹っ飛ばす
万が一の場合は、オーラ防御で女生徒を守る
生き残ってる奴は念動力で動きを封じてから気絶させて無力化
後は、打ち漏らしがいないかと、女生徒の無事を確認だな
生き残った一人は身ぐるみ剥いで、ちょいと恐怖を与えてみるか
…主犯格の居場所を吐いたら、殺すが、な
ミニステリアリス・グレイグース
今の惨状は一般人には相当な恐怖の筈
あまりてこずりたくはないですね
転移先は『体育館』周辺
あれは人を大量収容できて監視もしやすい施設ですから
まず[目立たない]様に身を隠し
体育館周辺や屋内にナノマシン群を展開
人質の状況、敵の状況、会話等から敵リーダーについて[情報収集]
然る後に探知した敵全員をナノマシンで感染
生体電流を乱して彼らを一斉に気絶させ
【侵し束ねる灰塵の徒】で彼らを傀儡にします
当面は体育館で欺瞞工作を行わせましょう
脅威排除後は屋内で人質を護衛し、状況次第では避難を
体育館のテロ犯は無力化した事
まだ外は危険なので待機という事を[コミュ力]を駆使して伝達
……少しは彼らへの気休めになればいいのですが
●
体育館。集会や式典などの際に全生徒を収容出来る広大な空間を持つその設備は、今は生徒や来場者達が監禁される最も巨大な収容所となっていた。
突如として起きた、凄惨な事件。平和の中に生きてきた一般人にとって、今日の出来事が心に刻む傷はどれ程の深さとなるだろうか。
(一般人には、相当な恐怖の記憶として残る筈)
ミニステリアリス・グレイグース(星に連なる灰塵の徒・f06111)の胸中に宿る想いは、この事件に巻き込まれた人々への同情と、何としてでも救わねばならないという使命感だった。
刻まれた心の傷は、ふとした拍子に蘇って再び人を傷つける物。その傷を出来る限り浅く留める為には……迅速な事件の解決が、不可欠だ。
(……あまり、梃子摺りたくは無いですね)
その為の仕込みを、ミニステリアリスは入念に行っていた。体育館側の植え込みに姿を隠し、自身の力の宿るナノマシンを周囲に展開、浸透させて……機を伺っていたのだ。
(……あれ?)
時折体育館から聞こえる女性の啜り泣きと男達の罵声に逸る気持ちを必死に抑え込みつつ……どれくらいの時間が過ぎただろうか。
もう少しで時が満ちる、というタイミングでミニステリアリスはふとした違和感に気付いた。
体育館からでは、無い。もっと広い範囲の……そう、学園全体を薄く覆う様な、妬みと憎しみがゴチャ混ぜになったかのような、狂気染みた気配。
(この感覚、どこかで……いえ、まずは目の前に集中しなくては)
気になる事ではある。だが、まずは囚われた一般人達を救出せねば話にならない。
不快な感覚をグッと飲み込むように。ミニステリアリスはナノマシンの操作に意識を集中するのだった。
●
(……数が多い、な)
体育館の内部をチラリと眺め、備傘・剱(絶路・f01759)は冷静に現場の状況を確認していた。
現在、学園内で最も人が集められている場所である体育館。人質の数も、それを監視する兵士の数も、相応に多い。
……ザッと視た所、人質の数は100に届かぬ程度か。対する兵士の側は、監視の兵と、外を警戒する兵を合わせれば……20程度。
(だが、目に見えぬ所にも何人かいるようだ)
体育館前方にある舞台の奥や、後方にある倉庫など、そちらの方にも人がいる気配もある。
……一人で相手をするのならば、ただの武装したテロリスト程度どうとでもなる。だが、一般人の人質の事も考えれば、軽率な動きは出来ない。
(何か、もう一手。連中の隙を作る事が出来れば……む?)
策を練り直すべきか、と内心で唸り声を上げたその時。剱の感覚が、『何か』を感じ取る。
それは、この場に漂う狂気と反する物。人々を救いたいと願う、清廉な感情の流れであり……生命の埒外足る存在の振るう、超常の力の余波だ。
(……成程。ではもう少し、待たせてもらおう)
不運な兵士から身包み剥いだ衣服と覆面に身を包みながら、剱は動くべき時をその場で待つ。
●
人質の収容所と化した体育館に集められたのはこの学園の生徒のみならず、生き残った来場者も多く集められていた。年齢層も様々だ。
その中でも最も年の若い、幼い少女が泣いていた。目の前で父母を失ったのだろう、両親を呼びながら嗚咽する少女を、近くに居た女子生徒が慰めるように抱きしめていたが……
『おい! うるせぇぞガキが! さっさと黙らせろ!』
その嗚咽が、監視の癇に障ったのだろうか。これ見よがしに銃を振り翳し、監視の男が吠える。
「やっ、やめてください! こんな小さな娘に、そんな乱暴な……!」
『あぁん? 口答え出来る立場だとでも思ってんのか!?』
勇気を振り絞った女子生徒の抗議の声。だがそれは男の苛立ちを一層強くする物でしかない。
振り上げられた銃。その銃床が女子生徒と幼い少女を傷つけようと振り下ろされようとした、その瞬間……!
『っ、あ、ガっ!?』
突然呻き声を上げて、崩れ落ちる男。いや、崩れ落ちたのは男だけではない。他の監視を担当していた者、外の警戒を担当していた者、その全てが糸の切れた人形の様にその場に崩れ落ちていくではないか。
唯一その場に立っているのは、兵士達に紛れて潜伏していた剱のみ。念動力を活かして周囲の様子を伺うが……目に見えぬ所に居た敵もまた、意識を手放し昏倒しているらしい。
「これは、一体……?」
「……どうやら、上手くいったみたいですね」
覆面を外しながら周囲の様子を伺う剱の声に答えたのは、少女の声だった。その声の主は、体育館の外で仕込みを続けていたミニステリアリスだ。
ミニステリアリスが、自身の操るナノマシンを体育館全域に散布していたのは既に記した通りだ。その目的は、犯人たちの生体電流をナノマシンにより乱し、無力化すること。
その狙いは果たして、想定通りの結果を得ることが出来た。この場にいた犯人達は一人残らず昏倒し、無力化されたのだ。
……そうとは知らぬ人質達は、唐突に崩れ落ちた男達の姿や突然姿を見せたミニステリアリスの姿に、何が起きたのか分からぬとざわめくが……
「この場にいるテロ犯は、無力化しました。ですが外はまだ危険ですので、もう少しだけこの場での待機をお願いします」
コホン、と咳払いをしつつ語りかけるミニステリアリスの柔らかな声に、混乱は少しずつ収まっていく。
……兵士達の側に居た剱の事は、潜入捜査をしていた仲間であると説明する事も忘れない。
「見事な手際だな。それで、コイツらはどうする?」
「ナノマシンで傀儡にします。何人かは欺瞞工作を行わせますが……基本的には倉庫に放り込んでおきましょうか」
未だ張り詰めた緊張感を切らさぬ剱の言葉に、淡々と応えるミニステリアリス。瞳を閉じて念じれば、犯人達の体に宿るナノマシンが活性化してミニステリアリスの意に従う傀儡と化す。
……勿論、そのまま行動させれば人質達の不安を煽る事になる。
「判った。では、俺が連中を倉庫に放り込んで……ついでに、少し尋問もしておこう」
「お願いします。私はこのまま、人質の皆さんを護衛しますので……」
その事を理解しているからこそ、剱は自ら犯人達を連行する役を買って出る。
人質達に不審がられぬ程度に念動力を駆使し、剱は周囲の男達を倉庫に集め……
「……さて、知っている事を。洗い浚い話して貰うぞ」
扉を閉めた、その瞬間。自意識を失い傀儡となった男達への、尋問を始めるのだった。
……かくして、人質達が最も多く集められていた『体育館』は邪教徒の魔の手から開放された。この場に囚われていた多くの一般人達の命は、護られたのだ。
だが、反面。この場にいた男達の持っていた情報は芳しい物では無かった。主犯格の男の情報を持つ物は一人もおらず、唯一有益そうな情報は『この場に集められた人質は、供物としての価値が低い者達』であったということだ。
……つまり、『供物としての価値が高い者達』が集められた場所が、他の場所にあると言う事だ。その場所を突き止める事が出来れば、情勢は猟兵達の優位に大きく傾く事だろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
葉隠・翠
【心情】なんと卑劣な…!!このような行い…断じて許さぬ!!
【作戦】拙者は教室に潜入。教室前に見張りなどがいれば【忍び足】で近づき【気絶攻撃】を行うでござる!(オブリビオンではない可能性もあるため殺しはしないでござる)そして教室に潜入し、分身の術を使用。「分身1号、2号、3号、4号!行くでござる!」敵の持っている銃を手裏剣の【投擲】で落としそのまま分身達による【気絶攻撃】で無力化するでござる!銃で攻撃してくれば人質のいないところを移動し【見切り】、人質に当たりそうなら【武器受け】で防ぐでござる!
敵を無力化したら敵の通信機器を【破壊工作】で壊しておくでござるよ!
ノノ・トワール
ここの人たちが何をしたってゆうのよ…ちょっと痛い目に会うだけで済むと思わないことね!
目標
1.人質の確保
2.敵の排除(3人ほど捕縛)
3.敵からの情報収集
行動
フェリクスの【情報収集】で窓などから敵と人質の位置を確認後て他猟兵に伝達。
手分けをし同時奇襲を提案。
敵に奇襲を仕掛け【高速詠唱】で素早く人質の周りに溶岩壁を出し安全確保優先し戦闘。
捕縛した敵に業炎の書の【恐怖を与える】による尋問。
戦闘
攻撃・【属性攻撃(炎)】と【全力魔法】、【範囲攻撃】で数人を残し火炎魔法で燃やしきる。
防御・【属性攻撃(炎)】と【咄嗟の攻撃】で溶岩壁を使い銃撃を防ぐ。
UC『溶炎獣召喚』は突入と同時に発動し襲わせる。
●
(なんと卑劣な……! この様な行い、断じて許さぬ!!)
葉隠・翠(緑影・f22215)は、『緑影』を名乗る義に篤い少女忍者である。
そんな彼女にとって、今回の敵となる邪教徒の集団は……力なき人々を一方的に嬲る、許されざる悪であると感じられた。
悪を討ち、人々を護る。翠の金の瞳は、決意に燃えていた。
そんな翠が潜入したのは、校舎棟。普段はこの学園に通う生徒達が集まり、日々の授業を受ける神聖な学び舎である。だが事件が起きてからの現在、学び舎は……生徒達を囲う、檻と化していた。
男達の下卑た笑い声、嬌声とも悲鳴ともつかぬ少女の叫び声、啜り泣きが廊下を反響して響くこの空間は……悪徳を煮詰めた様な異界のようだ。
そんな場所を、翠は行く。まるで最初から行くべき場所を決めているかのように、その歩みに一切の迷いは無い。
それというのも……
(ノノどのが仰っていた教室は、確か……)
翠は他の猟兵からの情報提供を受け、この場所へと挑んでいたからだ。
情報提供者の名は、ノノ・トワール(爆炎少女・f23591)。炎を扱う猟兵であるノノは、相棒である火の鳥フェリクスを使い情報収集に当たっていたのだ。
……当初、監視の目に妨害されて情報収集は難航していた。だが警備室と監視カメラを猟兵が奪還して以後は、先程までの苦労が嘘の様に情報を得る事が可能になっていた。
そうして得られた情報を精査した結果……警戒が比較的薄く、人質がそこそこに多く集められた場所への襲撃を、二人で行おうという事になったのだ。
(……情報通り、ここまで敵の巡回もなし。流石はノノどのでござる)
気配、足音を殺し、翠は歩みを進めていく。僅かな物陰を有効に使いながらの隠形は、流石は忍者と素直に思えるほど堂に入った物だった。
(……むっ!)
そうして影の様に一階の廊下を進む翠が、その場に足を止めて身を隠す。金の瞳が見つめる先にいたのは……覆面姿の、一人の男。
男の背には扉があり、その上の方には『1-B』と書かれたルームプレートも見える。あの教室こそが、目的の場所だ。
……男は、恐らく見張りだろう。ならばこの場は迂回すべきだろうか?
(否! ここは、仕掛けるべきでござる!)
だが、翠が選んだのは正面突破だ。一歩、二歩、音もなく助走を付けて駆け出せば……見張りとの距離は瞬く間にゼロとなる!
『……っ!?』
見張りの男が感じたのは、吹き抜けた一迅の風。その緑風が駆け抜ければ……男はその場に音もなくへたり込む。今の一瞬で、翠は男の意識を断ってみせたのだ。
(……まぁ、オブリビオンではない可能性もあるし。殺しはしないでござるよ)
抵抗も出来ずに意識を失った男の力量を考えれば、彼はきっと邪神に感化されただけの一般人なのであろう。
ならば殺しはせずに……現地組織の法の裁きに任せるべきだと翠は考える。敵であるからと見境なく殺すのは、相手と同じ土俵に立ってしまう事になる。義を尊ぶ翠としては、その道は断じて選びたくない道であった。
……ともあれ、見張りは首尾よく無力化出来た。ならば、この後は……
「──分身の術! でござる!」
言葉に応えるかのように、翠の周囲に湧き立つ煙。その煙が晴れれば……そこに居たのは、翠と全く同じ姿をした少女が、3人。
「さぁ、分身1号、2号、3号、4号! 行くでござる!」
翠の掛け声に「おお!」と答えた分身達が、閉じられた扉を景気よく蹴り破って教室へ飛び込んでいく。当然、翠自身もだ。
……なお、分身は3体のはずだが4号までいるのは……ツッコミどころ、という奴なのだろうか?
『なっ!? 何者だっ!?』
教室内に居た男は二人。その内の一人、教卓に腰掛けていた男が突然の乱入者に驚きの声を上げつつ銃を向けて発砲する。
迫りくる弾丸。その弾道は偶然とは言え翠の額をしっかりと捉えていた。哀れ、正義の忍者少女は凶弾に斃れてしまうのか!?
「甘い! でござる!」
『なにぃっ!?』
無論、そんな事は起こり得ない。翠は男の向けた銃口から即座に弾道を見切ると、逆手に持ったクナイを一閃。見事に銃弾を弾き返す!
弾かれた銃弾の軌道は、人質への流れ弾とならないコースを計算した物である。一瞬でここまでを計算しつくした翠の反射神経と思考能力は、流石と褒め称えられるべきであろう。
「てりゃあっ!」
『ぐぁ……ッ!』
そのまま一足で距離を詰めて男の側頭部をクナイの柄で殴れば、見張り役の男同様に一瞬で意識を断つ事に成功する。
しかし、忘れてはいないだろうか。この場に男は、もうひとりいることを!
『こんの、忍者気取りのアマァが!』
激高する男。拳銃を構える逆の手で羽交い締めにしているのは……人質の女子生徒だ!
『動くんじゃねぇぞ! 下手な事をしたら、このガキの頭をふっ飛ばしてやる!!』
男の瞳は狂気に彩られ、完全に正気を逸している事が伺い知れた。下手な事をすれば、彼は宣言通りに人質の頭を撃ち抜くだろう。
……止む無く、翠は両手を頭上に掲げる。分身達も、また然りだ。その様子に、覆面に隠れた男の口が禍々しく歪んだのを、見えずとも翠は感じとり……同時に、『自分達』の作戦の成功もまた、確信していたのだ。
──バリィィィィンッ!!
「とりゃあああああ!!」
『!?』
男が勝利を確信した、その瞬間。窓ガラスを突き破り……いや、焼き破って突入してきた小さな影。男は咄嗟に飛び込んできた影に向けて銃を向け、銃弾を放つ。
飛来する銃弾。膨大な運動エネルギーを秘めた死を呼ぶ弾丸が小さな影、翠の突入と合わせて屋外側から奇襲を掛けたノノに迫る。
だが。
「そんなモノ、当たらないわよ!!」
飛来する弾丸がノノの体を穿つ事は、無かった。命中するその直前で、何者かに阻まれたかのように燃え上がり、蒸発したのだ。
……ノノは炎を操る猟兵だ。ノノは突入と同時に溶岩で出来た動物を召喚し、その熱で窓ガラスを溶かし、突入を果たしたのだ。
窓ガラスを一瞬で焼き切ったノノの熱は、自身の身を護る盾ともなる。彼女の体に迫った弾丸を蒸発したモノの正体も、ノノの熱と、使役する溶炎獣による物だったのだ。
『な、なんなんだテメェら!? ……そ、そうだ! こっちには、人質が……!』
旋風の如く同僚を無力化した忍者少女と、弾丸を焼き払った少女。常識では図り得ぬ力を見せた二人に対して、残る男は完全に及び腰だ。
だがその時、男は自身の片腕で今も羽交い締めにしている人質の女子生徒の存在を思い出す。その事実をアピールしようと声を挙げようとするが……
「拙者達の事を!」「忘れて貰っては!」「困る!」「で、ござる!」
僅かでも隙があれば、この程度の男を制する事など翠と分身達にとっては容易い事。教室内を再び緑色の旋風が吹き荒れれば、男の意識はあっさり断たれる事となる。当然、人質も無事だ。
「……ふぅ」
男達の無力化を確認し、一つ深呼吸をする翠。それに合わせて分身達の姿がドロンと消える。
「流石、忍者ね。頼りになるわ」
「いやいやっ! ここまで上手く立ち回れたのも、ノノどのの情報あってこそでござるよっ」
そんな翠の活躍に称賛の声をかけたノノを、今度は翠が褒めそやす。
確かに、この奇襲劇の主役となったのは翠である。だがノノの情報収集が無ければ、翠は校舎内の行動で多少手間取る事になったかもしれない。余計な戦闘が起きていたかも知れないし……人質に犠牲が生じていたかもしれないのだ。
鮮やかな奇襲の成功と無傷での人質の解放は、二人の行動が噛み合ったからこそ生まれた結果なのだ。
「……さて。人質になってた皆には、体育館に一旦避難してもらうとして……」
人質達を解放し、体育館へと護送する翠を見送って。一人残ったノノは、逆に拘束されて床に転がる3人の邪教徒を睨みつける。
平和な日々を過ごしていたこの学園の生徒達。そんな彼女達や偶然この場に居合わせただけの市民達への、一方的な暴力。悪逆非道な様々な行い。
それらに対してノノが抱いた思いは……純粋な、怒り。悪を許せぬと燃える、正義の意思だった。
「洗い浚い、情報を喋ってもらうんだから。ちょっと痛い目に遭うだけで済むと思わないことね!」
胸に燃える熱き思いを一層燃え上がらせながら、ノノは男達を尋問する。
……結果として、リーダー格の男に直接繋がる情報はなかった。だが、『通信はリーダーからの一方通行』であるという事実を掴む事に成功する事になる。
この情報が、今後にどう活かされるか……今はまだ、分からない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
伊美砂・アクアノート
【WIZ 水毒香・迷光死水】
…あァ、面倒くさい。学校がテロリストに襲撃されて銃乱射とか、発想が中二病の男子かよってカンジである。妄想ならまだしも、リアルにやるとかマジでヒくわー。
【第六感、鍵開け、聞き耳、視力、情報収集、忍び足、ロープワーク】で、潜入調査をしていこう。一応、【変装、演技、誘惑、コミュ力】で教師に扮して、仮に見つかっても大事にならないように振る舞い、隙を見て【早業、毒使い、毒耐性、だまし討ち】、毒香水による無力化を図るよ。…こういうのが本職でゴザルからな。通信器具は破壊、殺しはせずに情報収集を優先……するけど、時間が無いからね。苦しい思いをしたくなかったら、素直になって頂戴ね?
●
特殊教室棟。各教科の実習室が集められた場所である。
そんな場所に、周囲を警戒し、忍び足で進む人の影。スーツをピシッと着こなしており、女子生徒でない事は明白だ。
……この学園の、教師なのだろうか。いいや、違う。この姿は変装であり……彼女の正体は、猟兵だ。
(……あァ、面倒くさい)
伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)が今回の事件を引き起こした邪教徒達に抱いた印象は……『どうしようもなく、救えない連中』という、実に冷めた物だった。
中二病、という言葉がある。思春期の少年少女が年頃にありがちな自己愛や空想、嗜好などが肥大化した者を指すネットスラングであるが……中二病患者が良く空想する妄想の代表例に、『もし自身が通う学校が、テロリストの襲撃を受けたら』、というものがある。大抵の場合、主人公である自分がなんやかんやで大活躍して事件を解決に導くのだが……まぁそれは置いておいて。
(今回の件を計画した連中、発想が中二病の男子かよ)
伊美砂が呆れているのは、そんな口に出すのも恥ずかしい妄想を本当に実行に移した連中の、発想力の無さにある。
ただ邪神を召喚するだけなら、もっと色々やりようはあっただろう。なのにこんな事件をリアルにやらかしてくれるとは。
(……マジでヒくわー)
伊美砂、渾身のドン引きである。連中に下した『どうしようもなく、救えない連中』という評価は、オブラートに包んだ表現であるのかもしれない。
とは言え、ヒいてばかりもいられない。猟兵としてこの場に赴いた以上、やるべきことはやらねばと。伊美砂は地道な潜入捜査に汗を流していたのだが……調査の結果は、あまり芳しい物ではなかった。
……ならば、今度は……
『……ん? おいっ! そこの女!』
響く誰何の声に、伊美砂の脚が止まる。両手を挙げながら振り返れば、そこに居たのは『どうしようもなく、救えない連中』の一人だ。伊美砂にしっかりと銃を向けるその様子を見るに、どうやら一味の中でもそれなりに使える側の人間であるらしい。
『その格好……教師か?』
「そ、そうです! あの、生徒達は……」
伊美砂の装いを一瞥した男の言葉に、答える伊美砂。恐怖と緊張に苛まれているかのように、その声は僅かに震えていた。
当然、その怯えは擬態である。だが伊美砂の裏の肩書で得た経験と、伊美砂自身の持つ透き通る様な白い肌が、その怯えに説得力を与えて……
『教え子が気になるなら、大人しくしてるこった。さて……』
見事、男の警戒をほんの僅かに緩める事に成功する。一瞬だが、男の視線が伊美砂から外れた。
その一瞬があれば、猟兵ならば問題はない!
『──ッ!? ゴホッ!』
両手を挙げていたはずの伊美砂の手には、いつの間にか小さな香水瓶が握られていた。男が視線を外したその一瞬で、懐から取り出したのだ。
そのまま男の顔に目掛けてシュッと一つ吹き掛ければ……漂う香りは、清涼感のあるアクア系の香り。
だが、それはただの香水などではない。
『っう、ぐ……な、なんだ……!?』
「……良い香りだろう?」
グラリと揺れる、男の体。膝に力が入らずにへたり込む男の手から銃と、今まさに取り出そうとした通信端末が転がり落ちる。
……『通信はリーダーからの一方通行』であるという。この男は、今まさに通信端末を取り出し、何をしようとしていた?
伝え聞いた情報を思い出しながら、伊美砂は冷静に、冷徹に。男に告げる。
「ボクが使うのは、エアロゾル系の毒でね? ……あぁ、時間が無いから単刀直入に聞くでござるよ」
お前が、リーダーか? 淡々とした、しかし虚偽は許さぬという圧の籠められたその言葉。
だが、その質問に対する答えは。
『ち、ちが、う……』
体が麻痺し始めたのだろうか、呂律の回らぬ否定の言葉であった。
『それ、は、タダの地図端末だ』
男が言うには、彼は『生贄の護送担当』であったらしい。学園内数カ所の人質の収容場所から有力候補をリーダー格の指示した場所へ連れ出すのが、務めだったのだという。
……この端末は、学園が来場者向けに貸し出していた物をそのまま使用していたのだ、と男は語る。
「……チッ、空振りか。では、最後に一つ。キミはどこに、生贄を連れて行ったんだ?」
『せい、と、会、し、つ……たの、む、解毒剤、を……』
苦悶の表情を浮かべる男の求めの声に、伊美砂がどう反応を返したのか。それはこの場で語る事では無いだろう。
ともあれ、また一つ情報は集められた。この事件を引き起こした主犯格の男へと至る道がまた一歩、拓かれたのだ。
成功
🔵🔵🔴
鬼柳・雄
※アドリブ絡み歓迎
女を食いモンにしようたぁ大したクソ野郎どもだ、絶対潰す。
物陰に潜み適当な邪教徒に【影の追跡者】を付けて内部の様子と邪教徒同士の会話・行動ルートを中心に「情報収集」。
ある程度把握したら、人目に付きにくい所で背格好の似た邪教徒をサプレッサー付きの銃(アサルトウェポン)でこっそり仕留めてロッカーなどに隠し、装備と覆面を奪って邪教徒に成りすまします。
話しかけられた時は先ほど聞いていた会話を基に「コミュ力」で不審がられないように誤魔化し、学校内で人質救出のチャンスを伺います。
「とりあえず目つきの悪さで邪教徒どもには成りすましやすいか?女どもにゃ怖がられるだろうけど必ず助けてやんねーと」
シホ・エーデルワイス
アドリブ&味方と連携歓迎
学園の生徒に<変装>しわざと捕まる
予め仲間に私の意図を伝えておく
髪に目印用の花を挿し
胸元をはだけて聖痕を見せて説明
【覚聖】と<覚悟、礼儀作法、コミュ力で清らかな乙女を演技>し
私に何をしてもいいから他の人の命は助けてと願う
この時が来るのを覚悟していました
私の身を捧げます
だから皆を解放して
最初の供物に選ばれる事で他の人質が危険に晒され難くするのが狙い
あとリーダーが儀式場にいたら仲間の案内にもなるかも?
連行中に要所で花弁をこっそり落として目印を残す
命の危険があれば【贖罪】
断られて他の人質と一緒に監禁されたら
仲間の突入を待ち
<コミュ力、優しさ、手をつなぐ>で人質を【救園】に保護
●
管理棟、生徒会室前。その扉の前に、一組の男女が辿り着く。
男は覆面を纏い、少女の一歩後ろで銃を突き付けているが……恐怖など感じていないと言うかのように、少女は凛と前を向いて歩いていた。
その姿は、まさに万人が理想とする『騎士』の様に高潔であり、同時に『美しき姫』の如く、嫋やかでもあった。
『来たか。女は中へ入っていろ』
扉の前には見張りの男がいたが、扉を開いて指図したきり何も口にしない。問答をする意思は無い、という事なのだろう。
……少女は一つ頷いて、扉の先へと歩みを進める。そうして少女が部屋へ踏み込めば、そのまま扉は閉ざされる。
だが扉が閉ざされる、その直前。少女は一瞬振り返り、その視線で何事かを託すのだった。
●
(ここまではなんとか、って所だな……)
少女を連行した男、鬼柳・雄(チンピラサマナー・f22507)が、胸の内で小さく息を零す。
雄が少女をここまで連れてこれたのは、まさに偶然だった。
ひと目に付きにくい場所で自身と背格好の似た邪教徒を狙い、装備と覆面を奪い取ろうと考えていた雄。そんな彼の前に現れたのが少女であり、彼女を元々連行していた邪教徒だったのだ。
……邪教徒を仕留め少女を救ったは良いものの、話してみれば彼女も猟兵。わざと捕まりリーダーの下へと迫ろうと言う彼女の計画を聞き、雄は自ら協力を申し出て……今に至る、という訳だ。
『……それにしても、随分と遅かったな』
「あ? あぁ、ちょっと、な?」
その時、唐突に掛けられた見張りの声に思わずと言ったように言葉を返す雄。
そんな雄の態度を、バツが悪い思いをしていると受け取ったのか。
『大方、さっきの女と『遊んで』いたんだろうが。役割は果たしてくれよ?』
「あ、あぁ……悪かったよ」
嗜める様な男の言葉だが、雄としてはそれを素直に受け止める気にはなれるはずも無い。
この学園を襲った邪教徒達は、極悪非道の外道達。雄の言葉を借りるならば、『女を食いモンにしようとする大したクソ野郎ども』である。
そんな奴らに仕事はしっかりやれと諭され、あまつさえ先程の少女と『遊んで』いたと思われるなどとは……
──テメェらと一緒にするんじゃねぇよ、クソが!
声を大にして叫び、暴れたい気持ちをグッと堪える雄。
その鬱憤を晴らす時は……すぐそこに迫っていた。
●
一方、生徒会室の扉の内側である。
踏み込んだ少女、シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)が視たものは、部屋の中央、床に座らされた数人の少女と、彼女達を見張る様に立つ男達の姿だった。
少女達はシホの入室にも気付かず、俯いたままだ。今日の事件がよほど堪えたのか、疲労困憊な様子を隠すことも出来ずにいるらしい。
『来たか。お前が最後だ、そこに座れ』
男達の一人が、シホへと呼び掛ける。平坦なその声に従う様に、シホは歩みを進めて……
その脚で、シホに声を掛けた男の眼前まで歩み出る。
『……む?』
僅かに目を見開く男。側にいた部下らしき男がシホを取り押さえようとするように動くが、それを手で制し興味深げな視線をシホへと向ける。
その視線の色は、シホを値踏みするかのように粘っこい。生理的な嫌悪感を抱いてしまうが。
「……皆さんを、解放して下さい」
……この場にいる人々を助けたい、という純粋なその思いが。シホの体を突き動かすのだ。
「私には、何をしても構いません。私の身を、捧げます。ですから……」
他の人たちの命は、助けて欲しい。覚悟を秘めたシホの嘆願が、部屋に響く。
その声を聞けば、多くの人は頷いてしまうだろう。それほどまでに、シホの覚悟は強く、存在感は膨れ上がるばかりなのだ。
だが……
『それをして、俺達に何の利益になる?』
今、この場に於いては。上位の立場にいるのは、邪教徒の側である。シホはあくまで乞い願う立場であり、その願いを聞き届けるかどうかの選択権は、男達の側にあるのだ。
もし、男達を迷わせるだけの何かを。シホが見せる事が、出来るのならば……
「……利益なら、あります」
そう言うと、シホは着ていた制服をたくし上げる。露わになるのは白く繊細な質感の肌。細くくびれた腰に、母性の象徴を包む下着。
『ほぅ……?』
だが、男の目を引いたのはシホの女性的な魅力では無い。彼の目線の先には……シホの胸の中央に淡く輝く、聖痕の光だ。
「こんな日が来るのを、覚悟していました。私の体はきっと貴方達の役に立つのでしょう? だから……」
三度繰り返された、その嘆願。目を引きつけるような存在感は一層強まり、最早その場にいる男達はシホから目を離す事が出来ずにいた。
『ククク……ハッハハハ!!』
……交渉相手の男が、哄笑するまでは。
『コイツぁ傑作だ! こんな逸材が隠れてるとはなぁ! 俺達のリーダーの審美眼は大したもんだ!』
笑い続ける男。どうやらこの口ぶりから、この男は猟兵達が求めるリーダー格の男では無いらしいが……組織内ではそれなりに高位に立つ男ではあるらしい。
『……ふぅー。話の腰を折って悪かったな。嬢ちゃん、アンタは確かに、有益そうだ』
「ッ! それなら!」
ひとしきり笑った男が息を整え、シホと向き合う。その口ぶりに手応えを得て、シホの表情が輝く。
『だが、答えは、ノー、だ』
しかし、男の答えは非情な拒絶であった。
「そんな!? どうして……!」
『何故かって? そりゃあ、なぁ……』
理由を求めるシホ。その必死な様子に、男は一つ肩を竦めると。
『本命はついさっき、リーダーの所へ出荷しちまったのさ。だから嬢ちゃんのお願いは、無意味だってことさ』
その言葉を聞けば、シホの意識が一瞬遠くなる。だが、諦めるにはまだ早いと。歯を食いしばり、なんとかその場に意識を繋ぐ。
男は、本命は『ついさっき』連れ出されたと言った。つまり本命となる生贄の少女は、ここを出てそう時間は経っていないという事である。
……つまり、まだ儀式は始まっていない。邪神降臨を防ぐ猶予は、まだ残されているという事だ!
「……もう、いいです。わかりました」
『? 何が判ったっていうんだ、嬢ちゃん』
俯き告げるシホの言葉に、今度は男が首を傾げる番だ。聞こえた疑問の言葉に……
「もう、この場所に用がないという事です! 雄さん!!」
示す態度は、交渉決裂を告げる言葉。外へ向けて合図を送れば……
──バキィッ!!
「無事か、シホ!?」
扉を蹴破り現れたのは、廊下で待機していた雄であった。
蹴破られた扉の外をよくよく見れば、そこには見張り役の男が気を失い伸びていた。どうやら声が聞こえた次の瞬間に男を一撃で昏倒させて、扉を蹴破ったらしい。
『何者だ! おい、人質を……!? いないだと!?』
そしてシホもまた、雄の乱入に乗じて行動を起こす。部屋の中央で茫然自失となっていた少女たちを、ユーベルコードを用いた異空間に収容、保護する為に動いたのだ。
繰り返すが、少女たちは茫然自失、無抵抗な状態であった。故に収容は実にスムーズに済み、この僅かな時間で保護することに成功したのだ。
『チッ。だが相手は二人だけだろう! お前ら、一斉に掛かれ!』
「ハッ! 数だけで攻めようなんざ……甘ぇんだよ、クソ野郎どもが!」
一気に押し寄せる邪教徒達に対して、先程感じた屈辱、鬱憤を晴らすかの様に一蹴する雄。その勢いのまま、この場の取りまとめ役の男も一瞬で無力化に成功する。
……生徒会室の解放には、成功した。だが敵のリーダーへ至る糸は、ここで一旦途切れてしまう。
だがこの学園に派遣された猟兵は、まだ多い。ここまで紡いだ縁を糧に、彼らがきっと道を拓く事だろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
久遠・翔
アドリブ絡み歓迎
碌でもない事を…早く片づけないと
気が進まないが女学園の制服を着て、女生徒に成りすます
UCを使い周囲の情報を集めつつ脱出経路なども探しながら逃げ遅れた女生徒として捕まり校舎の中の人質に紛れる
人質の女生徒にこっそり助けに来た猟兵ですと告げ無自覚の交渉術と無自覚の魅了のコンボで安心させる
ある程度情報が集まったら目立たない・マヒ攻撃・気絶攻撃・毒使いでスカートの中に隠していた苦無で敵を無効化
武器を取り上げ縛り猿轡を噛ました後、事前に影の追跡者の召喚で調べておいた逃走ルートで人質を逃がします
可能であれば他の教室の子も助けて移動します
安全な場所まで逃がしたらUDCに保護してもらいます
ルメリー・マレフィカールム
保護優先、兵士は排除、リーダーも探す……ん、分かった。
私は校舎の教室に行く。
隠れて会話を聞いて様子を確認。入り口の見張りと交代するタイミングで突入する。
突入に合わせて『ジャケット』を放り投げて囮にする。上に投げれば、撃たれても流れ弾は行きにくい、はず。
『死者の瞳』で兵士の場所と装備、人質の中に兵士が潜んでないか観察。動き出す前に【銀閃】で通信機器と喉を狙って倒す。1人だけは、手足を狙う。
残した兵士に質問。
リーダーは、どこ? 何をしようとしているの?
【アドリブ・協力歓迎】
●
校舎棟、二階。その教室の一つに、女子生徒達が押し込められていた。
人数は両の手で数えられる程度。その表情は確かに疲労の色が浮かんではいるが……生徒会室で猟兵達が救助した者達と比べれば、いくらか明るいものだった。
それというのも……
(まったく、本当に碌でもない事を……!)
逃げ遅れた女子生徒に扮した猟兵、久遠・翔(性別迷子・f00042)が、人質達と共にいたからだ。
翔は転移後の最初にした事は、更衣室に忍び込み制服を拝借する事だった。首尾よく制服を確保した後は、ユーベルコードを用いて相手側の人員配置等を探りつつ、こうして人質の中に潜り込んでいたのだ。
……当初、人質の女子生徒達は全く知らない人物が同じ制服を着ている事を不審がっていたが、翔の交渉術と魅了術によって不審感は取り除かれていた。それどころか一部の生徒は翔の事を何やら熱い視線で視ているような気すらして、翔としては少々困ってしまうくらいであった。
(なお、女学園の制服を着るという事に翔は心理的な抵抗があったようだが……そこはまぁ、任務の為と我慢しているとか)
『……なぁ、まだなのか?』
『あぁ、まだらしいな』
そんなこんなで、校舎棟のニ階の教室に押し込められてから数時間。
そろそろ動くべきか、と機を伺っていた翔の前で、人質達を見張る二人の男が何やらやり取りを始めたのは、時刻は既に教室に設置された時計の針が上下を指した頃であった。
スカートの裾に伸ばしかけた手を静かに戻し、様子を伺う翔の前で男達の会話は続く。
『予定は、もうすぐなんだろ? そうしたら俺らが『味見』をする余裕も無くなっちまうだろうし……』
『……それも、そうだなぁ』
覆面に隠れて、男達の表情は分からない。だが翔には男達の口元が下卑た形を作っている事が。瞳に劣情の熱が宿り始めている事が、理解できていた。
(……冗談じゃない!)
このまま手を拱いていては、男達の劣情がこの場にいる女性に対して向けられる事は確実だ。そしてその対象には、認めたく無いが自分もいる事も明白だろう。
ならば、すぐに動くべきか? いや、連中の意識がこちらに向いた状態で動いてしまうのは不味い。下手に抵抗すれば、人質達に被害が及びかねない……!
『……よっしゃ、楽しもうぜ。表のヤツも呼んでやろう』
『そうだな。おーい!』
男達は最早見張りを放棄し、完全に自分たちを嬲る方向へ意識が向いている。廊下で歩哨に立つ男も呼び寄せて、まさに事態は待ったなしといった状態だ。
(……危険だけど。動くしか……!?)
やはり、ここで動くしか無い。悲壮な覚悟を固めて今まさに動こうとした翔の、動きが止まる。
扉を開けて、廊下から入ってきた歩哨の男の姿を見たから……では、無い。その男がそのまま、膝から崩れ落ちて倒れ込んだのを見たからだ。
重力に従い、ドサリと崩れ落ちた男の体。その背後から現れたのは、一人の少女だ。
極端に白い肌に、銀の髪。そこに映える赤い瞳は、男達には禍々しく見えていた。
『なんだ!?』
『おい、ガキ! 何をした!』
男達の声に答える事無く、少女は一歩室内へと歩みを進める。男達が構える拳銃の筒先が自分に向いているのを確認すると……
──バサッ!
と、衣擦れの音も高く、ジャケットを天井に向けて放り投げる!
仲間の一人をやられ、極度の緊張状態に陥っていた男達は、少女から視線を外すまいと意識していた。
だがその意識が強すぎたのか。少女のジャケットを放り投げる仕草に反応してしまい、視線と銃口を天井へと向けてしまう。
有り体に言えば。二人は少女の動きに、見事に『釣られて』しまったのだ。
そうして一瞬でも注意が逸れてしまえば。
『ガッ!?』
『ぐぅッ!?』
少女の放つナイフが、片方の男の喉を貫きその生命を吸い、もう片方の男は手足を貫かれて苦悶の声を挙げる事になる。
……少女による、一方的な制圧劇。一般人には刺激の強いその光景に、翔は人質の女子生徒達に『見ちゃいけない』と伝える事しか出来なかった。
●
「助かったっす。……えぇ、と」
「ルメリー。ルメリー・マレフィカールム」
「……ルメリーさん。本当に、ありがとう。」
制圧劇の痕を簡単にではあるが片付けて、翔は少女……ルメリー・マレフィカールム(黄泉歩き・f23530)へと礼を告げた。
実際、あのままでは相当不利な状態で男達とやり合う事になったのは間違いない。
ルメリーの襲撃により最悪一歩手前の未来を潰すことが出来たのだから、礼をいくら言っても足りないくらいだった。
「人質が無事で良かった。……情報は、目新しい物は無かったけれど」
翔の礼の言葉にほんの僅かに表情を和らげるルメリー。だが手足を穿ち捕縛した男から大した情報を得られなかった事を思い出し、その表情はまた硬質な物へと逆戻りだ。
無表情で無愛想な口調が目立つルメリーだが、僅かではあるが喜びも不満も確かに表情に表す所を見ると……実際は年相応に幼く、そして素直な少女であるのかもしれない。
「まぁ、情報が得られなかったのは仕方ないっす。ともあれ、これでここの娘達を脱出させられるっすけど……?」
そんなルメリーを微笑ましく思いながら、翔は今後の動きについて考えを巡らせる。
聞けば現在、猟兵によって奪還された体育館に開放された人質が集まっているらしい。
校外への脱出はまだ危険が伴うと見られる為の一時的な措置なのだろうが……ならば、こちらもその措置に乗らせてもらうのが妥当な所だろう。
ならば、早速ルートを考えないと、と。思考を纏める為にふと窓の外に視界を向ければ。
「……人影? 校舎に向かって?」
眼下に見える渡り廊下を渡ってくる数人の人影が、翔の目に入るだろう。
……覆面をした男達は、邪教徒のメンバーだろう。それは良い。肝心なのは彼らの輪の中央にいる一人の女子生徒だ。
長く艷やかな黒髪、健康的でありながら白い肌、切れ長の目浮かぶ知性の色。何より制服の上からでも判る整ったプロポーション。
「……あれ、会長です」
「会長って、生徒会長っすか?」
いつの間にやら翔の隣に立っていた一人の女子生徒が、翔の見つめる相手の正体を示す。
彼女はこの学園の生徒会長。実家は旧財閥の流れを汲む名門であり、遡ればこの国の象徴に近しい血も混じる程の家系なのだとか。
それ程の家に生まれれば傲慢になりそうなものだが……彼女自身はその辺りの生まれをひけらかす事は無く、この学園のモットーである文武両道品行方正な振る舞いを体現する大和撫子として、学生達のみならず教職員からも多大な支持を集める学生であるらしい。
「でも、どうして会長が。それに、周りの人達は……?」
ざわつく学生達。翔の脳裏にも、あの一行を放っておくと大変な事になりそうな……そんな悪寒染みた感覚が滲む。
その感覚を抱いたのはルメリーも同じであったらしく、翔の制服の袖を引くルメリーの瞳は『救出するべき』と訴えていた。
……だが。
「……いや。まずはこの場にいる皆を助ける方が先決っす」
二兎を追うものは、とも言う。欲を欠いては、今この場で助けられた命を再び危険に晒す事になりかねない。
後ろ髪を引かれる様な思いはあるが……翔はまず、この場にいる者達の命を優先することを宣言し、ルメリーもその選択に頷きを返し良しとする。
……やがて人影が校舎に入り、人の気配が上階へ消えるのを確認すると。翔とルメリーは女子生徒達を連れその場を脱出。見事、体育館に合流を果たすのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
楠木・美羅
@WIZ 【太陽の家】で参加台詞アドリヴ歓迎
な、なんて酷い…こんなの許される事じゃないです…っ
リーダーの情報も気になりますが人質の救出を優先しませんと
彼らが通信手段を持ってるなら正面突破はいけませんね
人質を守りやすい位置…
こ、怖いですけど逃げ遅れた来場者を装って人質になるフリをします
私服でも大丈夫そうですね
人質を背にできれば守りやすいですよね。
少し怯えた様子で見張り役の人にリーダーの人が何をしたいのか聞いてみます…っていうか実際怖いんですけどね!?
弱弱しい怯えた少女と油断してわたしの魔法の範囲に入ってくれれば
纏めて雷属性の魔法で意識を刈り取りに行ってみます…っ
成功すれば通信機器も押収です
ミフェット・マザーグース
火薬のにおい、血のにおい
もう死んじゃった人は、もう助けられない
でも、まだ間に合う人だって
【太陽の家】で参加するね
【WIZ】
ミラとクロエと一緒に行動!
ミフェットは「クライミング」で天井に登ってUC「粘液の肉体」で液状になるよ
二人が動くのに合わせて天井を「追跡」ついていく!
二人が他の人質のところへ連れて行かれたら、天井のスキマから見下ろして、見張りと通信装置、人質の位置をしっかりチェックするね
二人がボスの情報を聞きだすか、危なくなったら「怪力」で天井を破って落下!
触手を伸ばして通信装置を「盗み」、人質の子たちを「盾受け」で守るよ!
ぶじ助けたら人質の人たちを励まして、今みんなが頑張ってると伝えるね
クロエ・アスティン
【太陽の家】で参加
「ま、待つであります!じ、自分が代わりになるであります!」
美羅様と一緒に人質に紛れて邪教徒たちから人質を解放する隙を探るであります。
怯えたフリをして美羅様に抱き着いているでありますが、
「へへ、一人くらいいいだろ?」とか言って邪教徒の一人がぶかぶかの制服を着た女の子に手を出そうとしたところに
思わず制止の声を張り上げてしまいます!
男達の視線に昔を思い出して本当に怖くなってしまいますが、「勇気」を出して囮役を務めるであります。
その間に、太陽の家の仲間達が人質の安全を確保してくれたら反撃であります!
【ジャッジメント・クルセイド】で容赦なくやっつけてしまいます!
※アドリブ/連携も大歓迎
秋月・信子
【太陽の家】
『信子…ちょっと、信子!聞いてる?』
あ…はい、姉さん
大丈夫…です
フラッシュバックする記憶、嫌悪感と懐かしさが感じる血の臭い
乱れる呼吸を私は整い直す
『…変な気は起こさないでよ。そうなったら、私があんたを撃ってでも止めるからね』
…あの時、もしあの時、猟兵として目覚めていたら
頭に何度も繰り返すそれを私の影が払ってくれる
私達は【目立たない】ように潜入し、サプレッサーを取り付けたサブマシンガンでお互いをカバーし合う
装填されているのは非殺傷性の麻酔弾
UDCに引き渡し、彼らを法の裁きに受けさせる為に
捕まえた戦闘員を姉さんがリボルバーを突きつけて【情報収集】、その情報を元に【救助活動】を行います
●
特殊教室棟、二階。そのもっとも奥まった場所に、この学園の音楽授業を一手に引き受ける『音楽室』がある。
椅子や机も少なく、通常の教室よりも広大な空間だ。立地条件も相まって、人質を留め置く場所として好条件の場所であった。
だが、邪教徒の兵士達がこの場所を収容場所に選んだ理由は、他にもあった。
それは、音楽室のみが持つ、他の教室には無い特殊性。『防音性』の高さにある。
……室内でどれだけ声を上げようと、外へ音が漏れづらいその環境は……男達の下卑た欲望を晴らす場所としても、恰好の場所であったのだ。
(な、なんて酷い……こんなの、許される事じゃないです……っ!)
音楽室へ脚を踏み入れた楠木・美羅(人間の聖者・f11798)が見たものは、純粋な彼女の心を激しく刻みそうな凄惨な物だった。
一体、この場所で何が行われているのか。それは……
「いやっ、やぁ……いやぁっ!!」
『ハハハ! 嫌がるガキってのも中々悪かねぇなぁ!』
純潔の花々を、薄汚い欲望で汚す外道の行いであった。
……人質を側で護り、救助する為。【太陽の家】の面々が選んだ手段は、自ら偽装人質となるという手段であった。
学園祭に訪れた来場者を装った少女達は、首尾よく邪教徒達に捕まると、そのままこの音楽室へと連れ込まれ……その光景を、まざまざと見せつけられてしまったのだ。
「っぅ、う……!」
その光景を見て、秋月・信子(魔弾の射手・f00732)の脳裏を過るのは……かつての体験。
『かつて体験した記憶』がフラッシュバックする。懐かしき学び舎、漂う硝煙と血の香り、男達の下卑た欲望の発露……体を焦がすような強烈な嫌悪感に、知らず湧く吐き気を何とか堪える。
──……子! ちょっと、信子! 聞いてる?
(……はい、姉さん。大丈夫、です……)
己の内から響く『姉』の声に答える思念は、弱々しい。
もし、あの時。猟兵として、目覚めていたのなら。繰り返されるその思考は、意味の無い繰り言だ。
だが、それでも。『今』なら……この男達を撃ち、少女達を救えるのでは……
──信子ッ!!
響く『姉』の声に、信子はハッと我を取り戻す。
──……変な気は起こさないでよ。そうなったら……
私が、あんたを撃ってでも止めるから。『姉』のその言葉を聞けば、信子の頭に蔓延る不穏な雲は少しずつ晴れていく。
口は悪くとも、常に自分を気遣ってくれる『姉』。彼女の声があれば……信子は『その時』を、ジッと耐えて待つ。
(火薬のにおい、血のにおい……)
信子と同じように、ジッと待つ者はもうひとり。仲間たちの様子を見守る少女の名は、ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)。
……だが、ミフェットの姿は見当たらない。だがこの場所には確かにいる。一体どういうことだろうか?
(あんまりこうなってるとこは、ヒトに見られたくないな……)
その答えは、ミフェットの体の特性にある。
ミフェットは液体の体を人の形とする、ブラックタールの猟兵だ。今彼女は、自身の体を粘性の液体と変えて天井に張り付く事で、この場に潜伏していたのだ。
(もう死んじゃった人は、もう助けられない……)
この場に転移を終えて、ミフェットは多くの血、生命の死の痕跡を目の当たりにしていた。
邪教徒の魔の手により、儚くもその生命を散らされた多くの人々。彼ら、彼女らの命は、もう助けられない。
だが、それでも……この場には、まだ多くの人々がいる。生きているのだ。
だから……
(まだ、間に合う人のために……!)
人々の未来を、護るために。ミフェットの決意は強く燃えている。
……太陽に集う少女達は、それぞれに必死に前を向く。だが、一方。凄惨な光景、少女達の心を汚す薄汚い空気に心を折られかけている者もいた。
「ぅ、ぅうぅ……!」
怯えたように美羅の背に縋り付く小柄な少女の名は、クロエ・アスティン(ハーフドワーフのロリ神官戦士・f19295)。
当初、クロエは怯えたフリをするつもりであった。だが目の前で繰り広げられる惨劇は、クロエのかつて経験したトラウマと非常に似通っており……その心を、強く苛んでしまっていたのだ。
こんな場所には、居たくない。嫌らしい男達の視線を注がれれば、その思いは一層強くなってしまう。
だが、それでも。クロエがここから逃げ出さないのは、共に戦う仲間たちがいるからこそ。仲間たちと、クロエが信奉する戦女神に恥じぬ為にも……クロエはなけなしの勇気を振り絞り、この場所に立つ。
そしてその勇気が発揮される時が、遂に来た。
「っ! ま、待つでありますっ!!」
震える声を張り上げたクロエの視線の先にいたのは、今まさに一人の少女へとその手を伸ばそうとした男の姿。
少女の体は、震えていた。制服はぶかぶかで、体つきは繊細かつ華奢。他の生徒達と比べても一回り小さい体つきであった。
……そんな少女が、あんな陵辱を受けてしまったら。少女の体が、壊れてしまいかねない。
「じ、自分が! 代わりになるであります!」
だからこそ、クロエは叫ぶ。自分が彼女の代わりになると、震える声で。
そんな勇気を振り絞った叫びが通じたか、はたまたクロエの体つきの方が男の趣味に合致していたのか……
『へへへ……なんだ、お嬢ちゃんが代わりに相手をしてくれんのか?』
一歩、また一歩と近づいてくる男。クロエの叫びが呼び水となったのか、周りの男達も美羅と信子、クロエの三人を囲む様に歩みを進める。
『俺ぁ、こっちの茶髪ちゃんな!』
『なら、俺は黒髪の女だ。澄ました顔をヒーヒー言わせてやるぜ!』
ギャハハハ、と。下卑た笑い声が音楽室に響く。周囲は完全に囲まれた状態で、美羅も、信子も、クロエも、最早逃げ場はない状態。
このまま、男達の手に掛かってしまうのか……
「……今です!」
いや、そんな未来は訪れない。
男達の手が、肩に掛かるその直前。美羅はキッと眦をあげると短く叫ぶ。その声を合図にするかのように、美羅の周囲に力が満ちて……
『うぉぁっ!?』
囲んでいた男達が、弾かれる様にその場に転倒する。急いで立ち上がろうとするが……僅かだが体が麻痺し、上手く手足を動かせない。
「──姉さん!」
『任せなさい!』
更に動き出すのは、信子だ。己の内に眠る鏡の存在である『姉』の影を具現化すると、着用するセーラー服の内側から取り出したのはサプレッサー付きのサブマシンガン。
愛用のその銃器を藻掻く男達へ躊躇なく向ければ……
──タタタタタッ!
小気味良いタイプ音の様な警戒な音を立てて、銃弾がバラ撒かれる。
装填していた弾丸は、非殺傷所為の麻酔弾だ。
男達は外道の存在であるが……彼らは、人間だ。ならば無力化し、この世界の法に基づいた裁きを受けさせねばならぬと考えたのだ。
その考えを慈悲と見るか、甘いと見るかは人それぞれであろう。
『なっ……チッ! おい、あのガキどもを黙らせろ!』
反撃に映った少女達の姿に、生徒を嬲っていたこの場の取りまとめ役が声をあげた。その声に従いおっとり刀で男達が銃器を構えて、凶弾を放つ。
狙いもロクにつけられていない、雑なその射撃は……【太陽の家】の面々のみならず、人質となった生徒達をも巻き込むかのようなそれである。
このままでは、多くの生徒達に犠牲が出てしまう。そう思われた、次の瞬間。
「危ないっ!」
頭上から、ボトリと垂れ落ちた大きな雫。その雫は瞬く間に人の形を形成する。
(ミラも、マコも、クロエも。他の猟兵の皆も、頑張ってる! ミフェットだって……!)
雫の正体は、天井にずっと貼り付いていたミフェットだ。そのままミフェットは髪の部分だけをにゅーっと引き伸ばし、柔らかな壁を形成。銃弾をその壁で、受け止める!
歯を食いしばるミフェット。痛い。痛い、が……皆の命を護る為なら!
「こんなの……効かないもん!」
受け止めた弾丸を弾き返せば、今度は男達が凶弾に襲われる番だ。
こちらの側とは違い、男達に受け止めてくれる壁は存在しない。男達は次々と凶弾に貫かれ、苦悶の声を漏らしながらその場に倒れ伏す。
その光景に、取りまとめ役の男は完全に混乱してしまったようで。腰を抜かしてその場に転倒してしまい、動けない様子であった。
『な、なんなんだ、お前ら……タダのメスガキじゃねぇな!?』
さっきまで見下していたはずの存在が、牙を剥いたその事実が信じられなかったのであろう。男の疑問の声は、まるで信じられない物を見るかのように上ずっていた。
そんな男の声に……
「悪人に名乗る名などない、でありますが……自分達は、人々の今と未来を護る者。猟兵、であります!」
クロエは男へ指先を向けると、言葉と共に光を撃ち放ち……男の意思を、完全に刈り取るのだった。
●
音楽室は、開放された。人質となっていた生徒達は開放された安堵感で啜り泣くか、信じられないというようにぼんやりと虚空を見るばかりであった。
そんな少女達を、クロエとミフェットが励まして回る中……美羅と信子が、状況を確認する。
「怖かったですけど、ここは何とか解放出来ましたね……」
「えぇ。でも、相手の主犯に関する情報は……」
無力化され拘束された男達を、信子の『姉』が尋問しているが……どうやら結果は芳しいものではないようだ。
(リーダーの男は、学園内のどこかからか一方的に指示を下しているのは間違いない。でも、一体何処へ……)
学園内に監禁されていた人質の多くは助け出す事が出来た。だが、敵の主犯格の男の居場所に関する情報が足りない。
一度はその糸を掴んだはずが、スルスルと抜け出され……現状では、行き詰まった状態なのだ。
この状況を打開し、敵の主犯格へと至る為には、一体どうすれば……
──……ザ……ザザ……
「!? ま、信子さんっ! 通信機が!」
思考の迷路へと信子が落ちようとした、その時だった。美羅が押さえた通信機から、突如として音声が再生され始めたのだ。
……通信機は、受信専用。指示を出すのはリーダーのみ……ならば、この通信の先には……!
──同志達ニ告ぐ。儀式の準備ハ整っタ。こレより此の地で最も月に近い場所にテ、儀式を行う。
変声機を使っているのだろうか、機械音声染みた特徴的な声で、通信機の先にいる男は告げる。
「月に、近い場所……? 信子さん、それって……」
「……校舎の、屋上。多分、そこだと思う」
──聞こエし者は、集ウガ良い。今よリ此の地は、楽園ト化す──
そう告げて、通信は途絶えた。恐らく今の通信を聞き、生き残っている邪教徒の兵士達は校舎に集まろうとするだろう。治安部隊と睨み合いを続けている者達もまた、校舎に集うかもしれない。
……彼らが校舎に集結すれば、儀式の妨害は難しくなる。ならば……
「時間が無い……! 美羅ちゃん、私達も動こう?」
「はいっ!」
クロエとミフェットに声を掛けに行く美羅の姿を横目に収めつつ、信子は窓辺に脚を進め外を見る。
空には最早陽光は無く、光を落とす月が空に輝いていた。その月の光は、猟兵の助けとなるのか、はたまた邪神の加護となるのか。
……純潔の花々を巡る戦いは、新たな段階へと突入するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第2章 集団戦
『堕落した女子学生』
|
POW : あは、この子は凄いのよ?
自身の【理性と知性】を代償に、【体内に潜む触手】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【淫毒滴る触手】で戦う。
SPD : ほら、この価値観は素敵でしょう?
【キス】が命中した対象を爆破し、更に互いを【淫欲に染まった思考と、性的快感の共有】で繋ぐ。
WIZ : ねぇ、私とイイコトしましょう?
【抱擁】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:えんご
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
──同志達ニ告ぐ。儀式の準備ハ整っタ。こレより此の地で最も月に近い場所にテ、儀式を行う。
──聞こエし者は、集ウガ良い。今よリ此の地は、楽園ト化す──
通信機から聞こえる、リーダー格の男の言葉。
その宣言を受けて邪教徒の兵士達が一斉に向かうのは……猟兵の予想通り、『校舎棟』であった。
刻一刻と迫る、兵士たちの足音。それに先んじて、猟兵達は『校舎棟』へと突入する。
一階、二階を足早に駆け抜けて、三階に到達すれば……
『あはっ、すごぉい……』
『こんなのっ、もどれな……あぁぁあああ!』
『うふっ、うふふ……!』
そこに居たのは、幾人もの年若い女達。
彼女達が纏う衣服は、この学園の制服だ。だがその制服は皆ズタズタに引き裂かれで、肌の大部分が露出されており……至る所に傷と、陵辱の痕が刻まれていた。
逃げ遅れた、人質なのだろうか。助けなければ、と猟兵がその脚を進めようとするが……
『なぁに、助けにきてくれたの?』
『でも、もう助けなんてどうでもいいんです……だって、こんなっ、あっ……』
『ねぇ、貴方達も……』
彼女達の様子は、はっきり言って異常だ。見れば目は完全に淫蕩の色に染まり、正気を保てていない事は明らかだ。
……この異常事態に、陵辱の果てに心を折られ。その上で、邪神の魔の手に染まってしまったのだろうか?
『貴女達も、一緒に堕ちましょうよぉぉぉ!』
迫る、女子生徒達。屋上へ続く階段へ進む為には……彼女達の壁を突破しなければならぬようだ。
猟兵達は武器を構え、迫りくる『堕落した女子学生』の群れに挑むのだった。
====================
●第ニ章、補足
第ニ章は、集団戦。相手は『堕落した女子学生』となります。
第ニ章の成功条件は、『校舎屋上への到達』です。
校舎三階に到達した猟兵は、長い直線通路を突き進み屋上への階段を目指す事になります。
その行軍を妨害する『堕落した女子学生』達を突破するのが、皆さんの目的となります。
本文の通り、『堕落した女子学生』達はこの学園の学生であり、事件の被害者でもあります。
彼女達は強いショックで心を折られ、その結果として邪神の狂気に魅入られてしまった存在となります。
彼女達に対する扱いのスタンスをどうするか。猟兵達の機転が試されます。
また、校舎周辺には邪教徒の兵士の残存勢力が集結しつつあります。
彼らもまた、儀式上となる屋上へと進もうと行動しています。彼らに対する対応も、必要となるかもしれません。
今まさに始まろうとする、邪神降臨の儀式。猟兵達は儀式を阻止することが出来るのか。
皆様の熱いプレイングを、お待ちしております。
====================
備傘・剱
…折れた心と絶望で、邪神を呼び寄せた、か
何とか、元に戻したい所だが…、ここまで堕ちたら、そういう甘い考えは命取りになりかねない
それに…、どうやら、リーダー格の目的は、この状況、みたいだしな
ならば、青龍撃、発動
できれば、水弾と、爪を非殺傷にして、気絶攻撃を試みる
大本を断てば、元に戻るはずだからな
それでなくても、吹き飛ばして、無力化を狙えば…
だが、それも叶わないというのなら、もはや、戻れぬというのなら、せめて、幸せな気分でいる今、素早く命を断ってやるのもまた、慈悲なのかもしれない
なんにしても、この事件の主犯格には、それ相応の落とし前を着けてもらわなきゃな
覚悟してやがれ
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
鬼柳・雄
※アドリブ絡み歓迎
UCを使用して変身。
触手から毒が滴ってるなら、その毒を凍らせて動きにくくする。毒に触れた場合は「気合」「狂気耐性」などで堪える。そして「怪力」で犠牲者の体内に潜む触手を引きずり出して燃やして砕く。一体化してるならそのまま引きちぎる。
本人は「気絶攻撃」で無力化。UC等でなんとかできる人がいるなら任せますが、いないようなら腹をくくります。
この姿の時は周りに顔が見えなくて良かったぜ。今の俺の顔は誰も見ない方が良い……!
「弄ぶだけじゃなく、こんな事までやらせやがって。悪りぃ、間に合わなくて。幾らでも恨め」
●
教室棟、三階。長く一直線の廊下に、少女達が蠢く。
少女達の瞳は皆、淫蕩の色に染まっていた。事件のショックと激しい陵辱の果てに心を折られ、その末に邪神の力に魅入られてしまったのだろう。
……彼女達が堕ちる、その時に。この場には恐らく、『絶望』という感情が渦巻いていたはずだ。
(その『絶望』で、邪神を呼び寄せた、か)
清らかな少女達。平和な日々を過ごす少女達を襲う理不尽、その果ての絶望。それは恐らく、邪神に対する恰好の呼び水となったのだろう。
その結果が、目の前の堕ちた女子学生達であるのならば……剱のその推測は、間違いではないはずだ。
(学生達は、被害者だ。ならば何とか、元に戻したい所だが……)
聞けば、猟兵達が人質を開放して回っていたあの最中、まだ生贄の本命は主犯格の男の下には届いていなかったらしい。
通信機越しの男の言葉も加味すれば、今までの騒動はあくまで下準備。本命である邪神降臨儀式は、これから執り行われるはず。
儀式を封じ、学生達を蝕む狂気の根本を断つことが出来れば。少女達を邪神の力から解き放つ事は、可能なはずだ。
「とは言え、だ……!」
一人の少女が剱の下へ駆け寄ってくる。
その表情はまるで恋い焦がれる想い人と漸く出会えたというかのように熱に浮き、唇は艶めかしい光に輝いていたが……剱は軽やかな体捌きで少女の体を受け流し、転倒させる。
『なんで避けるんですかぁ……』
『お兄さんも、一緒にぃ……』
更にジリジリと迫る少女達。恥じらいを失い快楽に呑まれたその姿を見れば。
「……ここまで堕ちていると、甘い考えは命取りになりかねんな」
「全くだ、な!」
自身に迫る少女の抱擁を躱しつつ、雄も剱の言葉に同調する。
被害者である彼女達は、可能な限り救いたい。だがその救助にかまけて邪神降臨の阻止に失敗してしまえば、より多くの被害が出てしまう事になりかねない。
ならば、ここは……覚悟を、決めよう。
「行くぞ、シア!」
愛用のスマホ型ダイモンデバイスを構え呼びかければ、現れ出るのはキマイラに似た特徴の黒髪の少女。
操る炎と氷の力を刃として振るうその者の名は、悪魔マルコシアス。『悪魔召喚士』である雄が契約した、勇猛果敢な大悪魔である。
だが、今回は。個としての彼女の力には、頼らない。
「……変身!」
雄の言葉に応じるように彼の腰に巻かれたベルトが輝けば、マルコシアスの体も輝きの中に消え、雄の体を纏う戦闘用のスーツへとその姿を変えていく。
その姿はまさに、大悪魔の強大な力と絶対の勝利への意思の具現化した姿だ。
『アハっ……ウフフ!!』
そんな雄の姿を、只人が見れば怯むだろう。威圧され、怖気づく。それほどの威容を、今の雄の姿は感じさせていた。
だが邪神の狂気に魅入られた少女達は、止まらない。あまつさえその体に植え付けられた触手を蠢かせ……雄を縛り上げようと動かすのだ。
禍々しく、悍ましい、肉の色の触手が雄に迫る。その先端から滲み出る液体は……少女達を狂わせる、淫欲の毒であろうか?
もし、一般人がその毒に触れれば。たちまちの内に気が狂うだろう。少女達の様に思考を淫蕩の色に染め上げられてしまうはずだ。
だが。
「……ナメるんじゃねぇよ!」
雄は、只人ではない。『生命の埒外』と称される力を振るう、猟兵だ。
迫る触手に向けて、悪魔の力籠もる片腕を振るう雄。その腕に籠められたのは、万物を凍らせる氷の力だ。迫る触手は次々とその肉を凍りつかせ、滲む淫毒もまた氷に封じられていく。
そしてそのまま、凍りついた触手を握り締めれば……
「オラァッ!!」
気合一声。力任せに触手を引きずり出す!
『ッァァァァァアアア!?』
触手を引き抜かれた少女は、甲高い悲鳴を上げてその場に崩れ落ちる。
ピクリ、ピクリと動く四肢。小さく聞こえる呻き声は……やがて静まり、その動きを止めた。
「……悪りぃ、間に合わなくて。幾らでも、恨め」
その手の触手を燃やして砕きつつ、残る少女達へ向き直る雄。だが雄のその言葉を受けても、少女達は淫蕩な笑みを浮かべるばかりだ。
……恐らく目の前の少女達は、邪神の精神汚染が最も深刻な者なのだろう。ここまで酷く汚染されてしまっては、開放され、日常生活に戻れたとしても……
「せめて、幸せな気分でいる今……」
素早く命を断ってやるのも、慈悲であるのかもしれない、と。剱の周囲の空気が渦巻く。渦巻く空気は水分を集め、凝縮し……剱の腕に、巨大な爪と牙を纏わせる。
「……天よ、祝え! 青龍、ここに降臨せり!」
その爪と牙から放たれる圧は、尋常の物ではない。剱自身の覇気と合わせれば……その存在感はまさに、伝承に謳われる青龍のそれだ。
「踊り奏でよ、爪牙、嵐の如く!」
そうして振るわれる爪牙。放たれるのは凝縮された空気の刃と、高圧の水弾。
少女達はその刃と水弾を無防備に受け止め……纏う触手が千切れ、爆ぜ飛び。少女達の体を、衣服を、引き裂いていく。
……やがてその場にいた少女達は皆、倒れ伏す事になるのだった。
『……ぁ、ぃが……とぅ』
……今際の際に、正気を取り戻せたのだろうか。倒れ伏す少女の口から溢れた感謝の言葉が、剱と雄の二人の耳に届く。
その言葉を聞けば──二人の胸に湧き立つのは、主犯格の男への激烈な敵意だ。
「女達を弄ぶだけじゃなく、こんな事までさせやがって……ッ!」
「……相応の落とし前を、着けてもらわなきゃな」
怒りに燃える二人の猟兵。
後に続く者達の道を切り開く様に突き進む二人の戦意は、邪神の狂気を焼き尽くすかのように強く燃え滾るのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
葉隠・翠
【心情】むむ…被害者のおなご達までこのような事に…拙者たちは屋上まで行かねばならぬが…被害者である彼女達を殺すわけにはいかぬでござる!
…加えて兵士も相手にせねばならぬとは…
【作戦】やはりここも分身の術でござる!分身達と共に敵のハグやキス、触手の攻撃は【見切り】と【残像】で回避し、再び【気絶攻撃】を繰り出し生徒たちを無力化するでござる!しっかしさっきはあまりに動揺していたせいか存在しない4号まで言ってしまったでござる…
兵士達と遭遇したら生徒達を人質にされぬように気をつけ同じように攻撃は【見切り】、そして【気絶攻撃】でござる!【絡み・アドリブOK】
ルメリー・マレフィカールム
あれは……ここの学生?
出来るだけ、傷つけないようにしなくちゃ。
廊下を進む前に、階段付近に罠を仕掛ける。
【レプリカクラフト】で作った、透明な糸にかかると矢が飛ぶ機構。引っ掛からなくても、兵士が来るのを遅らせるくらいはできる、と思う。
仕掛け終わったら廊下を進む。
走りながら『死者の瞳』で女子学生たちの動きを観察。攻撃を予想して避ける。
回避と一緒に懐に潜り込んで反撃。『軍用ナイフ』の柄で鳩尾を叩いて、気絶だけで済むようにする。
【アドリブ・協力歓迎】
伊美砂・アクアノート
【SPD オルタナティブ・ダブル】
ーーーむぅ。ここまで徹底してるとは、ちょっと予想外。あるいは悪徳の栄え、もしくはバビロン。神聖視と冒涜は紙一重? …悪いけど、わたしは殺してあげるほど優しくないの。だから…ごめんね? 【見切り、早業、戦闘知識、救助活動】で、一人ずつ動きを止めるのを試みます。鎖で縛って、薄く毒香水を纏った身体で、ぎゅって抱くので眠ると良いわ。
……分身した俺様は、邪教徒兵士の集結妨害を担当しよう。きゃはは、ヤったらヤラれる。仕方無ぇよな?【地形の利用、投擲、援護射撃、スナイパー】 手榴弾を放り投げて、ピストルとショットガンで撃ちまくるぜ。さあ抵抗してみせろよ兵士諸君、笑ってみせろ
●
怒りを滾らせ突き進む猟兵達。彼らが拓く道を進もうと、後続の者が歩みを進めようとするが……
『ウフフ……』
『ねぇ、貴女達も、一緒にぃ……』
閉じられていた教室の扉が開け放たれ、姿を見せたのは新たな学生達だ。
その瞳は先の少女達の様に淫欲に塗れ、服も肌も、激しい暴行の痕が浮かんでいた。
「むむっ!? 被害者のおなご達まで、このような事に……!」
「──むぅ、ここまで徹底してるとは。ちょっと予想外」
その姿を見れば、翠と伊美砂の瞳に迷いの色が浮かぶ。
猟兵達は、この廊下を駆け抜けて屋上へと行かねばならない。その障害となるものは排除しなければならないが……一般人であり被害者である彼女達をその手に掛けるのは、気が引ける所である。
そして迷いの要素は、もう一つ。
「……下からも、来てる」
階下から響く足音と男の怒号を、ルメリーは聞いた。そこから導き出された事実を告げる言葉は淡々とした物であったが、その内には確かに迷いの色が籠められていた。
……主犯格の男の通信を受け、邪教徒の兵士達は校舎棟に詰めかけている。その正確な数は定かではないが、今まで猟兵達が排除した兵士達と同数程度は集まっていそうであった。
「この状況で、兵士達の相手もでござるか。厄介でござるな……」
兵士達は、邪神に感化された一般人だ。普通にやりあえば、猟兵達に万に一つの負けも無いだろう。
だが、それでも。目の前の堕ちた女学生達の相手をしながら……更に先の事を言えば、屋上に出た後に兵士達の介入を許してしまえば、面倒な事になってしまうのは言うまでもない。
で、あれば。
「……ここで、少しでも足止めをするべきでござろう」
「だな。俺様の準備は出来てるぜ」
「私も、簡単な罠くらいなら」
翠と伊美砂、ルメリーの三人がほんの僅かに身を寄せ合い、それぞれの手札を確認し……それぞれに、動き出す。
三人の足止め策は、果たしてどのような結果を生み出すのだろうか。
●
『オラァ、さっさと進め!』
階段部分は兵士達でごった返していた。
主犯格の男が用意したという『楽園』。学園外周で外の警戒に当たっていた彼らに訪れたお楽しみの時が、漸くやってきたからだ。
これから起きる事を思い、男達の瞳に劣情の熱が浮かぶ。
……その時だった。
──カツン……カツ、カツン……
『あ? なん……』
上階から何かが転がり落ちてくる様な音が響く。その音に気付いた集団の戦闘の男が顔を上げた、その瞬間。
──ズドンッ!!
激しい炸裂音と肌を切り裂く熱さと痛みを感じ、男の意識は消失した。
『いてぇ……!?』
『な、なんだ!? 何が……!』
男達の苦悶の声が響く階段。何が起きたのかと状況を把握しようと別の男が額から流れる血を拭いつつ顔を上げれば……
『きゃははっ! ヤッたらヤラれる。仕方ねぇよな!』
そこにいたのは、一人の女。輝く白髪に乳白色の肌、豊満な体をピシリとしたスーツで包む、女教師風の女だ。
女の顔立ちは、やや幼く見える。だが今、その表情は……両手に構えた拳銃と散弾銃の如く、男達へと禍々しい牙を剥いていた。
『オラオラオラァッ!』
雄叫びと共に銃弾を放つ女教師の正体は、伊美砂の分身だ。彼女は階段上に位置取り、登ってくる兵士達を撃ち下ろす事で敵の行動を妨害しているのだ。
『さぁ抵抗してみせろ! 笑ってみせろよ、兵士諸君! ……っとぉ!』
地の利を活かしつつ一方的に敵を撃つ伊美砂。だが敵も情勢を理解すれば、積み重なった同志の躯を踏み越えつつ反撃に出る。
階段を銃火が飛び交い、交戦が続くが……敵の数と弾丸の余裕の分、不利になるのは伊美砂の方だ。
少しずつ弱まっていく、伊美砂から放たれる銃火の勢い。その事実に手応えを得たか、下層から男が吠える。
『抵抗してるのは一人だけだ! 一気に押し込……ぐえっ!?』
だが直後、指示を出した男の声が潰れて消えた。
意識を失い崩れ落ちる男。周囲にいた者達が振り返れば……
『忍者『緑影』!』『見参!』『でござる!』
そこにいたのは、クナイを構えた3人の忍者少女達。翠の分身1号、2号、3号だ。
伊美砂の分身が3階から敵を撃ち下ろす最中、翠の分身は3階の教室から2階へと忍び込んでいた。
そのまま敵の意識が偏るのを待って……教室を飛び出し、奇襲を仕掛けたのだ。
『拙者達がいる限り!』『ここから先は!』『進ませぬ、でござる!』
言葉と共に、旋風の如く駆け回る分身達。3階の伊美砂の分身も銃弾の装填を終えたのか、激しい銃火の雨を再開する。
翠と伊美砂の分身が暴れまわり、敵の動きを妨害し続ける。やがて分身達は追い詰められてその姿を消す事となるが……その働きは、貴重な時間を猟兵達に齎す事になるのだった。
●
分身達による牽制と時間稼ぎが進む中、本体である猟兵達は進む。
そんな猟兵達を妨害しようと、女子生徒が抱き着きに掛かるが……
「甘い……」
「で、ござるっ!」
まるで未来を見るかの様に冷静に敵の動きを見極めるルメリーと、忍びとしての軽やかな体術が自慢の翠を捕まえる事など、出来ようはずがない。
抱擁は躱されその腕と唇が虚空を行けば……無防備な女子生徒の鳩尾をクナイと軍用ナイフの柄が打ち据えて、その意識を刈り取っていく。
「……どうやら、この娘達の汚染の度合いはそこまで重くないようだね」
身に纏う毒香水が香る体で女子生徒を抱きしめながら、伊美砂が気付く。
三人の前に現れた女子生徒は、瞳こそ淫蕩の色に染まってはいたが……邪神の如き狂気の色も、触手の勢いも、弱々しい物だった。
……毒香水の効力で容易く気を失った事も考えると。やはりこの少女達の汚染の具合は、先行する猟兵達が相手をした者達より軽いように思えた。
「で、あれば! 一人でも多く、助けねば!」
伊美砂のその気付きを聞けば、翠の戦意は高まるばかり。
「出来るだけ、傷つけないようにしなくちゃ……?」
その隣に立つルメリーの瞳にも、小さな輝きが浮かび……ふと何かに気がついたように、その視線が後方へ向く。
「罠が、起動したみたい」
視線の先にあるのは、彼女達が先程までいた階段だ。今もまだ分身達が奮闘する戦闘音が響いているが……そんな中で、ルメリーは自らが設置したが起動したのを察知したのだ。
ルメリーが仕掛けた罠は、糸に掛かると矢が飛ぶ仕掛け罠だ。その罠が起動したという事は、分身達の足止めはそろそろ限界に近づいているという事でもある。
「……急がなきゃいけないね」
ポツリと呟くルメリーに、翠と伊美砂も頷きを返し……押し寄せる女子生徒達を無力化し、屋上への道を突き進むのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
四王天・燦
女の子は大好きだが今回は駄目だ。
殺された娘を忘れての淫蕩は魂が穢れるぜ
抱擁は逃げ足で身を引いて回避。
寿命を削らさせたくない。
「殺された友達が泣くぜ」
「助けて欲しいって願ってよ。叶える手助けをさせろ!」
正気を喚起。
また四王稲荷符を貼り付け、狂気の浸食を破魔で防いでみるぜ
銃を構える兵士に先制攻撃でアークウィンド投擲。
急所をブチ抜く
時間が圧せばフォックスファイア・弐式で女学生と兵士どもを眠らせる。
火災に一応注意
女学生は教室に移す。目を覚ます娘には接吻で僅かに生命力吸収、精気を吸って気絶攻撃。
(澱んだ甘さだ…不味いな)
兵士は生死に興味なく窓から投げ捨て。
UDC組織が回収するだろ
鬼の形相で屋上に進むぜ
シホ・エーデルワイス
アドリブ&味方と連携歓迎
惨状を目にし
依頼『罪は冷たく静かに降りしきる』で思い出した
悪魔に憑かれ殺めた人々と重なって見える
…あの時の私は独りで救う力も無く
ただ殺める事しかできませんでした
でも今は…
絶対に助けます!
強行突破で屋上への先行を目指す味方がいれば援護し
私は殿と救助を兼ねて残る
女学生を<誘惑でおびき寄せ>
彼女達がUCで寿命を削る前に
<先制攻撃で【終癒】に破魔の祈りと
邪神の影響を解呪し気絶する催眠術を込めて範囲攻撃>
これなら彼女達を殺めず体内の触手だけを倒せるはず
邪教徒も同様に制圧
抱擁されそうなら<第六感と聞き耳で見切り残像>を残して回避
救助したら【救園】へ保護
1章の人質とは別の部屋に分ける
●
『うふふっ、どうして避けるんですかぁ……』
『一緒に気持ちよく、なりましょうよぉ』
「そうしたい気持ちは山々だけど、なっ!」
迫る女子生徒達の抱擁を何とか躱す。身を引く様な動きを多用して誘導したのは……先程まで生徒達がいた、教室の中だ。
猟兵達が屋上へ突き進む中、燦は女子生徒の救出を優先して動いていた。見目麗しい美少女達との追いかけっこ、普段の燦ならばだらしなく表情も崩れてしまうだろう。
(だが、今回ばっかりは駄目だ)
淫蕩に狂う少女達。それだけなら良い。邪神の影響でというのもまぁ、良いだろう。
だが、殺された学友を忘れての行いだというのなら……魂が穢れてしまうし、何より殺された者達が浮かばれない。
「良いのかい、このままで! 殺された友達が泣くぜ?」
燦の脳裏に過るのは、この学園に転移した直後に見た女子生徒の躯だ。
恐怖と絶望に打ち拉がれた、あの少女の瞳。あの娘が淫蕩に耽けようとする眼の前の学生達を見れば、どう思うだろうか?
……命を散らした者達へ顔向けできない行為だけはして欲しくない。真摯にそう願うからこそ、燦の言葉は重く、鋭い。
だが。
『ふふ……きゃははっ!』
邪神の力に魅入られて、その意識を歪められた少女達には、届かない。両の腕を真っ直ぐ伸ばし、頬を染めた少女が迫る。
「このっ……助けて欲しいって願ってよ! 叶える手助けをさせろぉ!」
その腕を既の所で躱しつつ、届かぬ思いに苦しい叫びを上げながら、燦は踊る。
少女達に貼り付け続けた符の残量は、残りわずかとなっていた。
(……まるで、あの時の人々のよう)
そんな燦と同じ様に、シホもまた生徒達を救うべく教室内に生徒を誘き寄せた一人であった。
淡い輝きを放ち続ける胸の聖痕。衣服に隠れて見えぬはずのその輝きに惹かれる様に迫る女子生徒達。
正気を失い、狂気に狂い、淫蕩の色に瞳を染めた彼女達の姿に似た者達を、シホは知っている。
(……あの時の私は、独りで救う力も無く。ただ、殺めることしか出来ませんでした)
まだ、猟兵として目覚める前。ただのヒトとして生きていた、過去の自分。
悪魔の瘴気を浴びた人々を、被害の拡大を防ぐ為にと。尽く殺めた、苦い想い出。
あの時、自分は……全てを独りで背負い、そして心折れ。その果てに、生命の終わりを迎えたのだ。
(でも、今は……今、ならば……!)
世界に拾われ、超常の存在となった、今ならば。
人々を救い、侵食する過去より現在と未来を共に護らんとする。共に戦う仲間たちがいる、今ならば!
「……絶対に、助けます!」
強い決意に眦を決して、シホは迫りくる少女達へと視線を向ける。
淫蕩に瞳を輝かせる少女達。だがそれ以上にシホが強く感じたのは……その背で揺らぐ、邪神の狂気だ。
彼女達の意思を歪ませ、操る者が邪神の狂気であるのならば……
「怨嗟に苦しむものに、安息を。死してなお彷徨うものに、道標を……」
邪なる者を討ち祓う、破魔の力は通じるはずだ!
「……旅立つ魂に、救いあれ!」
祈りと共に放たれた白く、優しく、暖かな光が教室を満たしていく。
その光は、命ある者には何ら害を齎さぬ者。苦痛や負の感情を和らげる、癒やしの光だ。
『ヒッ!? ッァァァァアアアア!!?』
だがそんな光は、邪神の意思に染まる者には身を灼くような痛みと化す。
少女達の体を覆う邪気が、その内側に潜む禍々しい存在が灼けていく感覚に、少女達が口々に苦悶の声をあげていく。
そして……
『ァァァ……ぅ、っ……』
……やがて光が収まれば、教室内にいた少女達は次々に地に崩れ伏す。
少女達の表情は、悪夢を越えた後の様に穏やかに凪いでいた。暴行の痕は残っているが、邪神の支配から抜け出せた事は確かだろう。
だが。
『ギッ、ァ……!』
一人だけ、精神の汚染が他の者より一段進んでしまっていたのか。聖なる光を耐え抜いた者が、一人いた。
整った顔立ちのその少女の表情は、まるで般若面の如く歪んでいた。
邪神の力を祓った、聖なる力の使い手。シホの存在を、明確な敵であると認識したのだろう。
強い敵意を剥き出しに、少女の体が動き出す。シホは……先程の光に力の大部分を持っていかれたか、肩で息を整えている。
このままでは、シホは少女の抱擁を避けきる事は出来ないだろう。だが、この場には。もうひとり、猟兵がいるのだ。
「おっと、女の子がそんな顔しちゃいけないぜ、っと!」
その動きを止める様に、割り込んだのは燦だった。
その掌に浮かぶは、一つの狐火。暖かな安息のぬくもりを宿す炎を……
「癒やしと安らぎを、もたらさん──!」
迫る少女の胴へ、燦は静かに押し込んだ。
……狐火の名は、【フォックスファイア・弐式】。対象を眠らせ、またその傷を癒やすという燦の異能である。
その暖かな炎に体を焼かれれば。傷も、邪気も、炎に焼かれ、癒やされていく。既に満身創痍であった少女が、その炎の力に抗う術など、ありはしない。
だが、念には念を入れて……
「んっ──」
崩れ落ちかけた少女を抱き止め、その少女の唇を自らの唇で塞ぐ燦。
……邪神に呑まれた少女の唇は、それ自体が他者を蝕むユーベルコードであった。だが邪神の力を大きく減じた今ならば、危険性は少ないはず。
接吻を通じ、燦の体に流れ込むのは少女の精気。生命力を吸って、少女を軽い昏睡状態へと陥らせるのだ。
「──っは。澱んだ甘さだ。不味いな……」
くたり、と力を失った少女の体を優しく寝かせる燦。
……燦が感じたのは、邪神の力の残滓であろうモノだった。憎しみ、妬み、狂気……様々な負の感情が綯い交ぜとなったその甘さは、燦の好みとは相容れぬ物だ。
この味を例えるのならば……破壊衝動、と言った所であろうか?
「……すいません。助かりました」
「いや。こっちこそ大助かりさ」
その苦味ばかり後味は、シホの礼を受ければサッと消える。
……今回、結果として生徒達を解放した決め手はシホの光であった。だが燦の行動が無意味であったという訳では、断じて無い。
燦が数人を引きつけた結果、シホは光を放つ為の覚悟をしっかりと固める事が出来たのだ。それに最後の最後で少女を救えたのは、燦がいてこそである。
二人がそれぞれ補い合ったからこそ、この場にいる少女達を救うことが出来たのだ。
「とりあえず、これでこの場の娘達は保護出来そうかな?」
「そうですね。余り余裕もありませんし、急ぎましょう」
階段付近で足止めをしていた猟兵の分身達は、もうそろそろ限界を迎えそうだと二人は感じていた。
シホの言う通り、時間に余裕は無い。ユーベルコードで作られた異空間へと生徒達を収容するシホを、燦も手助けし……二人はこの場に兵士が踏み込む前に、女子生徒の保護に成功するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミニステリアリス・グレイグース
正直、私の安い言葉では貴女達の絶望に寄り添うことはできないでしょう
でも貴女達の事を「もう手遅れだ」とは思いません
……今はただ、行動で示します
まずはナノマシン群を周辺に展開
探査能力で徹底的に死角を潰し、敵方の動向を[見切り]ながら戦います
同時に【万能錬成カミヤドリ】で電磁ネットを模造
触手だけは鋼糸で牽制しつつ、とにかく物量で女性徒達を捕縛
電撃で彼女らを無力化しながら屋上へ進んでいきます
女性徒の無力化優先、兵士連中は……ネットが余りそうなら同様の処理で
……聞こえてないかもですし後で忘れてしまうでしょうが
私を含め悲劇に抗う方達が、いつだってどこかで戦っています
願わくはそれだけは、ちゃんと伝えたかった
●
女子生徒たちが見て、そしてその身に降り掛かった、様々な惨劇。
明日も続いていくのだと信じていた平和な世界を壊された彼女達が感じた絶望は、いかほどだろうか。
(正直、私の安い言葉では彼女達の絶望に寄り添うことは出来ないでしょう……)
ミニステリアリスは、事件の当事者ではない。彼女達の家族でも無いし、友人でも無い。あくまでも事件に介入した、部外者である。
だからミニステリアリスがどれほど女子生徒達に同情し、寄り添おうと願っても……真の意味で理解する事は、出来ないだろう。
……だが、それでも。
(……貴女達の事を、「もう手遅れだ」とは、思いません)
せめて、この悲劇から。彼女達の命は、未来だけは、守りたい。
「……今はただ、行動で示します」
決意を確かめる様に口から零して、ミニステリアリスが廊下を進む。
既に数人の猟兵が突破した為か、倒れ伏したままの者以外に人影は無いが……
『──あはっ。ねぇ、一緒に……!』
不意に教室の扉が開けば、飛び出してくる一人の女生徒。
生徒の背には、一本の触手が伸びていた。触手は揺らぎ……ミニステリアリスを絡め取らんと、迫る!
「……それは、見えています」
だがその一撃は、ミニステリアリスには届かない。そう来る未来が見えていたかのように、生徒に視線を向ける事無く振るわれた鋼糸が触手を阻む。
『あははっ、失敗してるぅ!』
阻まれた女子生徒。その失敗を笑う声が、ミニステリアリスの背後から響いた。
別の扉から忍び足で出てきたのだろう。足音も無く迫ったもう一人の女子生徒が、ミニステリアリスの肩にその手を掛けて……
『っぅ!? な、なに? 網っ?』
その指が触れる、その瞬間。突然頭上から降り注いだ網に、背後から迫る少女と触手の少女はその動きを絡め取られる事になる。
「残念ですが、それも見えていますよ」
その網は、ミニステリアリスが錬成した物だ。
ナノマシンの申し子であるミニステリアリスは、既にこの廊下中にナノマシン郡を散布済みだった。
散布されたナノマシン達はミニステリアリスの目となり死角を潰し、彼女を狙う脅威を見逃さない。のみならず、散布されたナノマシンは操り主であるミニステリアリスの意思を受ければ様々な物体へと錬成される。
『で、でも! こんな網、簡単に抜け出して……!』
「そうですね。それが普通の網ならば。ですけれど……」
それはタダの網では、ありませんので。ミニステリアリスが、そう呟いた瞬間。
『『ッぃ、キャァァァァァッ!?』』
体の自由を奪う電流が、網を伝って少女達の体に走る!
電流が走った時間は、ほんの僅か。だがそれだけ少女達は膝から崩れ落ち、立ち上がる事もままならない。
無力化されたと良いだろう。
「……聞こえていないかもですし、後で忘れてしまうでしょうが……」
崩れ落ち、痙攣を繰り返す少女達の姿を見下ろしながら。
「私を含め、悲劇に抗う方が。いつだってどこかで、戦っているんです」
ミニステリアリスが言葉を紡ぐ。
過去から押し寄せ、今と未来を脅かす存在。彼らが撒き散らす絶望の悲劇に怯えるのは、いつだって力のない人々だ。
そんな悲劇を食い止める為、ミニステリアリスは、猟兵は、戦っているのだ。
「だから、どうか。未来に絶望だけは、しないでください」
その事だけは、どうしても伝えたくて。
ミニステリアリスは小さく、己の願いを言い残すのだった。
成功
🔵🔵🔴
久遠・翔
アドリブ絡み歓迎
純潔死守
儀式の準備で連れていかれた生徒会長…嫌な予感が
早く助けないと…って、うわぁ!?(半裸の女生徒見て赤面・顔逸らし)
ここの生徒達っすか…?だとすれば、助けない…って、うわぁ!?(無自覚の魅了術の影響で数人に群がられる)
ちょっ、待っ…んんぅー!?(キスされ体弄られ捕縛され)
一通り弄られ意識も何度か飛ばされますが、纏めて抱きしめ優しく大丈夫と言います(UCも自動的に発動)
貴方達の絶望も悲しみも…全部受け止めてあげるっす。だから落ち着くっすよ?(手はそっと相手の頭を撫でる)
無効化できればUC小さな庭園世界に保護して屋上に向かいます
まだ、助けるべき人がそこにいるはずと全力でダッシュ
藤堂・遼子
アドリブ歓迎、NGなし
これは、この短時間で堕ちる子達が出るなんて
いえ、無理もないかもしれないわね
私だって半月ちょっとで一度完全にぶっ壊された訳だし
でも、まだ彼女達は取り返しが付くはず
出来るだけ傷付けず、義手のショックワイヤーで気絶させようとするけど隙を突かれてキスされて思考と快楽を共有されて、制服も着てるし仲間にされそうになるわ
かつての経験もあってエロ方面には弱いし、思わず上がってきた兵士達を誘惑しちゃうわ。ま、まぁ足止めになって結果オーライかしら?
そのまま堕とされそうになるけど最後の抵抗で【落とし子誕生】よ
彼女達も出産感覚を共有するけど勘弁ね。それで産まれた眷属に女子学生と兵士を拘束させるわ
●
猟兵達をも堕落させんとする女子生徒達、後ろから迫り来る兵士達。
邪神降臨儀式への障害となるその二つを、猟兵達は順調に乗り越えて進んでいく。
だが、全てが順調と言う訳ではない。引きずり込まんとする手に脚を取られた者もいたのだ。
(あの時見えた人影、生徒会長。そしてこのタイミングでの、儀式の開始……!)
あの時胸中を過ぎた『嫌な予感』が的中してしまった事に、翔の心は逸る。
あの時助ける事が出来ていれば。そう考える事に意味がない事は判っている。それにあの時、自身にそんな余裕が無かった事も判っていた。
だが、それでも。その姿を見た者の一人として……
「早く助けないと……って、うわぁ!?」
逸る気持ちのまま進もうとした翔。その視界に飛び込んできたのは……衣服を引き裂かれ、肌の多くを露出した少女達の姿だった。
その経歴のせいか、同性である女性に対する免疫が無い翔である。少女達のその姿はあまりにも刺激が強すぎて、翔としては顔を赤らめ視線を反らす事しか出来ない。
だが、チラチラとその姿を見れば……彼女達の纏う衣服は、今自身が纏う制服である事が翔には判るだろう。
(こっ、ここの生徒っすか……?)
だとすれば、一人でも多く救わねばならぬ、と。視線を泳がせながらも何とか前を見て、一歩脚を前に進める翔。
……翔の失敗を挙げるとするならば。この時点で相手の様子をしっかりと見極める事が出来なかったという、その一点に尽きるだろう。
「って、うわぁっ!?」
翔が少女達へ一歩その脚を進めた、その瞬間。女子生徒達の瞳が怪しく輝くと……数人が一斉に翔へと飛び掛かり、拘束してしまう。
「なっ、ちょっ、待っ……んんぅー!?」
抗議の声を上げようとする翔。だがその口は少女の唇によって塞がれた。
柔らかな唇、暖かな体温を感じ蕩けそうになる翔の意識。だがそこに不可思議な力を感じて、何とか藻掻き脱出を図る。
『……あら、可愛いけど強情ね? でも、『この子』の力があれば……』
翔の腹に馬乗りする少女の背から、そそり立つ何か。それは肉色の鞭の様な姿をして、その先端を淫らに濡らしていた。
その光景を見て、翔の顔に浮かんだのは……未知への恐怖であった。
「くぅ、ぁっ! んんんっ!?」
女子生徒達に揉みくちゃにされる翔と同じ様に、遼子もまた少女達に囲まれていた。既に遼子の感覚は少女達の感じる快楽に侵食されつつあり、その思考にも靄が掛かり始めていた。
(これ、は……この短期間で、堕ちる娘が出ても、無理は無いわね……っ)
僅かに残る冷静さを維持するように、遼子は現状を把握する。
文武両道品行方正な日々を過ごしてきた女子生徒達。そんな彼女達に突如として降り注いだ、人外のモノと言える程の強烈な快楽。
かつての遼子とて、半月で壊されたのだ。少女達がこうなってしまうのも、無理はないだろう。
(でも、まだ彼女達は……取り返しがつく、はずっ……)
彼女達がこうして邪神に染められてから、どれ程の時間が経っているのか。正確な所は、分からない。それでも、長くても数時間。短ければ数十分程度であるはずだ。
……もう戻れない者も、いるだろう。だが大部分は、まだ戻れるはずなのだ。
もっと、その為には。この騒動の根源である所の邪神を叩かねばならないだろうが……!
「ッ!? ~~~っぅ!?!?」
そこまで思考を纏めかけた所で、遼子の体を鋭い衝撃が奔る。少女達の責め苦に、かつて体に染み付いた感覚が反応してしまったのだ。
(これ、ちょっと……マズい、かも……)
はー、はー、と荒く息を吐きながら、遼子は思う。
……遼子の聴覚は、遂に妨害を突破した男達の先駆けの靴音を捉えていたのだ。
その足音は、既に数度意識をトバされていた翔の耳にも聞こえていた。
このまま、彼女達のなすがままにしていては……男達が、ここまで辿り着いてしまう。そうなってしまえば、自分と、共にいる猟兵が無事でいられる保証は、無い。
「っはー……はー……」
『あら? やっと自分から求める気になってくれた?』
その危機感が、無意識の内に翔の体を動かした。両の腕を広げ、自身の腹の上に今も座る少女の体を、抱きしめたのだ。
「だい、じょうぶ……」
『えっ?』
「大丈夫、だから。貴方達の絶望も、悲しみも。全部、受け止めてあげるっす。だから……」
落ち着くっすよ、と。少女を抱きしめていた腕は、いつの間にやらその頭を撫でていた。
翔のその行動は、理性とは掛け離れた物だ。理性も体力も、何もかも激しく消耗させられた状態で発した、本能に近い行動であった。
だが、だからこそ。
『な、何よ、そんな……こんな、こんなの……ぅっ、ぁっ……あぁぁぁぁぁああああ!!??』
その心根に近い、ありたっけの想いは。少女の心を歪めた邪神の邪気を討ち祓い、清らかな心を取り戻す特効薬となる。
……泣き崩れる少女。その姿に動揺する、翔を取り囲む少女達を……翔は、纏めて柔らかく抱きしめるのだった。
「あっ、あぁっ! くぅっ、んん!?」
一方、遼子はと言うと。翔同様に消耗していたが、その反応は大きく違うものだった。
かつて体験した陵辱、人格を作り変えるかのようなソレの影響か、遼子の快楽に対する耐性は低い。
そのせいか。少女達の責め苦の前に、遼子の意識は流され始めていた。
もし、ここに。男達が現れれば。遼子は自ら、男達を誘惑してしまったかもしれない。猟兵としての務めを忘れ、少女達の如く淫蕩に耽る様を晒す事になっていたかもしれない。
……そんな時だった。
──……ぅっ、ぁっ……あぁぁぁぁぁああああ!!??
廊下に響く、少女の悲鳴。胸に宿る絶望を洗い流すかのような号泣が、遼子の意識を繋ぎ止めた。
──もう一度、狂信者どもの慰み者になる? 絶対に、お断りよ!
割れそうな程に奥歯を噛み締め、ボヤケた意識を取り戻す遼子。
体力は、随分奪われた。この状況から身体能力で逆転を狙うのは、不可能だろう。
……ならば、手は一つのみ。
「あ、あんっ……いあ、いあ!」
声を振り絞り、遼子が叫ぶ。その声に反応するように、少女達に引き裂かれた制服の内側に隠されていた魔導書が、怪しい輝きを放つではないか。
「いあ! いあ! ぐぅっ!」
その魔導書は、外法が記された魔導書。異界の神の眷属を擬似的に遼子に宿す、禁忌の術が記された物。
……この周辺には、邪神が喰む悪意も、絶望も、欲望も、全てが揃う。ならば、その外法は……成る。
「あ、ああぁぁああああぁぁぁ!」
体の内が裂けるような感覚に、悲痛な悲鳴をあげる遼子。その悲鳴を産声代わりに、邪神の落し子の魔力体が現れる。
「っはー、はーっ……! 行って! 兵士達を、取り押さえて……!」
乱れる息を何とか整えながら、落し子へと指示を飛ばす遼子。その指示に従い進む落し子の周囲には、少女達が倒れ伏していた。
少女達は未体験の痛みを前に、皆気絶していた。遼子と感覚を共有していたのが仇となったのだろう。その様子を見ればそう簡単に立ち上がる事は出来ぬだろう事は、簡単に見て取れた。
……遠くから、男達の悲鳴が聞こえてくる。遼子は何とか危機を乗り越えた事を察し、小さく息を零すのだった。
圧倒的な窮地に陥った、翔と遼子。二人は何とかその危機を切り抜けると、倒れた少女達を回収して目的の屋上へと進む。
だが、二人がその身に纏う衣服は最早ボロ布と化し、全身も激しい消耗からくる疲労感に苛まれている。
この後に続く事件の山場を、彼女達はどう立ち回るのだろうか……?
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
秋月・信子
・POW【太陽の家】
…間に合わなかった
目の前に現れたのは『穢された』生徒達の姿
また、記憶がフラッシュバックする
記憶に残る、同級生たちの成れ果てを
けど…姉さんの言葉を思い出す
—あんたを撃ってでも止めるから
…ええ、私も、止めてみせます
この…惨劇を
【覚悟】と【勇気】で私の中の闇、過去と向き合うように引き金を引く力を戻しハンドガンを構えます
そして【破魔】の力を宿す瞳で視るのは…彼女達の身体に巣食った触手のコア
それの場所さえ分かれば後は引き金を引くだけ
【浄化の魔弾】…体を傷つけず、中に巣食う悪しき者のみを撃ち抜き、彼女達を救ってみせます
邪教徒の兵士はその心を撃ち抜き、全てが終わるまで暫く放心して貰います
楠木・美羅
@POW 【太陽の家】で参加します
儀式、楽園、絶対ろくでもない事に決まってます…!
何としても阻止しませんと。こんなの絶対おかしいんですよ
女生徒たちの様子に困惑しますけど…何とか助けませんと
触手は女生徒が操ってる感じもしそうですし眠ってもらいます
皆と連携を取りながら立ち回ります。何とか動きを止めれば
UC【トリニティエンハンス】を使い、”状態異常力”を重視します!
「ごめんなさい、きっと助けます。だから今は眠っていてくださいっ」
広範囲に眠りの香りを風に乗せて女生徒達、後方から迫る兵士へも向けて広げます
無事に済んだら屋上へと駆け抜けますよ
「こんな事絶対終わらせます。もう怖がってられません…!」
ミフェット・マザーグース
オオカミの群れに囲まれた子羊は
自分もオオカミの仲間になれば大丈夫だと思いこんで
羊の群れまでオオカミを案内するけれど、子羊もさいごは・・・
【太陽の家】のみんなと一緒だよ
屋上に行くのが最優先!
マコが魔弾でやっつけてくれるならどんどん進もう!
女の子たちが多すぎて捕まりそうになったら、クロエと一緒に迎撃するよ
UC【バウンドボディ】
クロエがミフェットたちを庇ってくれてる間に、ミフェットが髪の毛を弾力のある触手にして「怪力」の「ロープワーク」で触手ごと縛って無力化するよ
触手を「見切り」してしっかり捕まえて、トドメはミラの魔法にお任せ!
かわいそうな子たちは眠らせちゃって、急いで屋上に向かうね
クロエ・アスティン
【太陽の家】で参加
襲い掛かってくる触手達から太陽の家の面々を守るために盾を構えて前に出るであります!
きっと仲間達がなんとかしてくれると信じて、戦槌や大盾で襲い掛かってくる触手を受け止めます!
多勢に無勢、触手に盾を弾き飛ばされてしまったら【無敵城塞】を使い、身体を張って皆様を「かばう」であります!
そんなへなちょこな打撃なんて自分には効かないでありますよ!
でも、こっちが動けないのをいいことに触手が、ス、スカートの中に入ってきたであります!!?
ひゃっ、あ、足に絡みついてきて、うぅぅ、気持ち悪いであります
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です。
●
後方から響く少女の悲痛な号泣、苦痛を耐えるような叫び声と、恐怖と混乱に陥る男達の怒号。
その全てを背に、【太陽の家】の少女達は足早にその歩みを進めていた。
(『儀式』、『楽園』……絶対、ろくでもない事に決まってます……!)
通信機越しに聞こえた男の声を、美羅は思い出す。
主犯の男が何をしようとしているのか。その正確な所は、分からない。だがそれでも……次々に現れる女子学生達の正気を失った様子を思えば、どう考えても世のため人のためという事では無いだろう。
絶対に阻止しなければ、と。美羅の瞳に、強い意思の炎が燃える。
「何としても阻止しませんと。こんなの絶対おかしいです……っ!」
「全くであります! 戦女神様もこんな事は絶対にお許しにならないでありますよ!」
美羅の声に同調するかのように答えたのはクロエだ。愛用の戦鎚と大盾は、既に数度触手の淫毒を受け止めており、表面を妖しく濡らしていた。
太陽に集う少女達は、既に数度女子学生達の妨害を受け、その全てを撃退していた。襲い来る触手をクロエが受け止めて足止めし、その隙きを突き美羅が眠りの香を載せた風を駆使して少女達を眠らせて来たのだ。
気心の知れた間柄である彼女達の連携は万全だ。故に今現在、大きな負傷も消耗も彼女達は負ってはいない。
だが、懸念する所があるとすれば……
(マコ?)
美羅とクロエの一歩後ろを行くミフェットの意識が、ほんの一瞬後ろへ行く。そこに居るのは、少女達の最後尾を預かる最年長である信子だ。
【太陽の家】を取り纏める猟兵、この地に少女達を送り込んだグリモア猟兵が母親代わりであるならば、信子は一家の長女役。妹分である少女達を見守る為に最後尾に立つのは、良くある事だ。
……それは良い。気になるのは……信子の纏う、雰囲気だ。
(……マコ、皆より怒ってる……)
信子が怒りを覚えているのは、判る。美羅も、クロエも、自分だって。今回の事件を引き起こした邪教徒達と主犯格の男には、強い怒りを抱いているのだから。
だが、それにしては。
(……でもなんだか、違う所を見てる、ような?)
ここに来て、ミフェットの目に映る信子は……集中していないような。いや、集中しすぎているような。そんな違和感を、ミフェットに抱かせてしまっていた。
そして、そんなミフェットが抱いた違和感は。まさに正鵠を射るものだった。
(……間に合わなかった)
校舎棟へ踏み込み、階段を駆け上がった信子達の前に現れたのは……『穢された』生徒達の姿。その姿を見た信子の脳裏に再び過るのは、かつて彼女が体験した記憶だ。
──信子がかつて通っていた学園も、この学園と同じ様な事件に遭っていた。文化祭(学園祭)の日に、武装勢力(邪教徒)の襲撃を受けたのだ。
楽しい一日が、一瞬にして惨劇に染まった、あの日。信子とその同級生たちにも男達の手は及び……逃げ延びた者も、毒牙に掛けられた者も、深い心の傷を負わされたのだ。
(……間に合わなかった……ッ!)
無残な姿を晒しながら、猟兵達の前に立つ邪神に魅入られた少女達の姿を見れば。
──男達に弄ばれる同級生たちの成れの果て。心の均衡を壊した親友の姿。そして初めてヒトを撃った、あの瞬間──
……信子の心に深く刻まれた心の傷が、痛み出すのだ。
(……止めなくちゃ。何としても……!)
ともすれば、怒りに任せて力を振るいそうになる自分を。内側から諌めてくれる『姉』の言葉を思い出す。
『姉』は言った。『変な気は起こすな』、と。そしてもし暴走すれば、『撃ってでも止める』とも言っていた。
かつてのことは、かつてのこと。今の信子は猟兵であり、務めを果たすためにここにいるのだという事を、『姉』は諭そうとしたのだろう。
それは、判っている。だがそれでも、脳裏に過る記憶は、晴れてはくれない。
……もし、信子が一人でこの場に挑んでいたら。彼女はきっと集中しきれずにこの場を乗り越える事に苦しんだことだろう。
だが、信子は一人ではない。頼りになる妹分達と共にこの事件に挑めた事は、信子にとって大きな幸運となっていた。
「! もう少しで屋上への階段に……わわっ、でありますっ!?」
そうこうしている内に、一行は屋上へ続く階段の前に辿り着く。盾を構えたクロエが扉に手を掛けたその瞬間だった。
『いかないで……一緒に、いてぇ……!』
物陰に潜んでいた一人の女子生徒が飛び出すと、クロエの体に縋り付いたのだ。
懐に踏み込まれてしまっては、クロエは自慢の戦鎚も盾も振るえない。このまま少女の淫毒に、クロエも冒されてしまうのか?
「申し訳ありませぬが、そのお願いは聞けないであります……っ!」
いや、そんな事は起こらない。少女の空気に中てられる、その直前。クロエはその場に脚を踏ん張り、鉄壁の守りの構えを取ったのだ。
全く動けぬという代償を払う代わりに、あらゆる攻撃を無力化するその構え。その姿はまさに、無敵の城塞の如く。
……だが、『動けない』というその弱点を。少女は的確に突いてきた。
「ひゃっ!? あ、脚に触手がっ!? す、スカートの中に入ってぇっ!?」
悲鳴をあげるクロエ。その言葉通り、動けぬ少女の触手はクロエの脚を弄り、その付け根へと迫ろうとしたのだ。
目に涙を浮かべるクロエ。ダメージは無いとは言え肌を蠢くその感触は……有り体に言って、『気持ち悪い』の一言である。
「くっ、クロエから、離れてっ!」
そんなクロエの危機一髪を救ったのは、ミフェットだった。
触手には触手を、と言うのだろうか。ミフェットの髪が弾力のある触手の形を取ると、その意志を受けて少女へと迫る。
そのまま少女と、その触手へ絡まると……
「ぅぅぅぅぅぅうううう!!」
自慢のパワーを活かして縛り上げると、クロエの体から強引に引き離す!
「ミラ!」
「はいっ!」
藻掻く女子生徒を逃すまいと意識を集中しつつ友の名を呼べば、答えた美羅はキッとその瞳に力を込める。
掌をかざし、その意識を集中する。高まる魔力、風を意識して方向性を与え……
「きっと助けます。だから今は、眠っていてくださいっ!」
凝縮された風が、放たれる。鮮烈な、それでいて柔らかな眠りを誘う風が少女を包み……僅かな抵抗の後、少女の意識は深い眠りの世界へと落ちていく。
そうして眠りに落ち、開放された少女の前に進み出るのは、信子だ。
信子の掌にあるのは、愛用の拳銃。消音器が嵌め込まれたその筒先を、信子は眠る少女の胸の中心にに向ける。
……籠められた銃弾は、信子の意思を力に変える魔弾だ。穢れを浄化し、体に巣食い蝕む悪しきモノのみを貫く、浄化の弾丸だ。その魔弾の力を引き出すかのように、信子の瞳が青く輝き……
──タンッ!
小さく軽い炸裂音を響かせて、魔弾が少女の体を穿つ。その瞬間、太陽に集う少女達の耳に聞こえたのは、この世ならざるモノの悲鳴であった。
その悲鳴は実際にこの場に響いたものではない。邪神の力の残滓による幻聴の様なモノであったが……それでも、その悲鳴の禍々しさを聞けば。少女達の胸に湧くのは、何としても儀式を防がねばと言う強い使命感だ。
「こんな事絶対終わらせます。もう怖がってられません……!」
改めて決意を口にする美羅に、ミフェットも、クロエも頷いて。三人は階段へと脚を踏み進める。信子もまた、三人と共に先へ進むが……
(止めてみせます。この、惨劇を……!)
その強い決意がまた過去の記憶を蘇らせて。信子の精神に刻まれた傷を、刺激していくのだ。
信子の中の闇。それを振り切る事は……容易なことでは、無さそうだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『黒装の破壊者』
|
POW : 砕け散れ
単純で重い【拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 贄となれ
自身の身体部位ひとつを【異形の大蛇】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 磔になれ
レベル×5本の【物理】属性の【邪神の肉で作った杭】を放つ。
イラスト:FMI
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「麻生・大地」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
立ち塞がる女子生徒たち。押し寄せる邪教の兵士達。その全てを突破し、抑え込み。猟兵達は、ついに屋上へと辿り着く。
扉を開けた猟兵達が最初に見たのは、屋上の中央に寝かされた女子生徒の姿。そしてその少女を中心に描かれた奇妙な魔法陣と……少女の側に膝立つ、一人の男の姿だった。
『何者……いヤ、お前達が、『猟兵』カ』
覆面を纏い、変声機越しの声の男の言葉を聞けば。猟兵達には判るだろう。
この男こそが、この事件を引き起こした主犯格なのだ、と。
『オ前達の事は、知っテいルぞ。『世界を守る』ナドといウ題目で、数多の邪神ヲ討った事も……』
何故、こんな事件を引き起こしたのか。猟兵が問えば、男はそれに答える事なく独語する。
男のその言葉、その態度は、余りにも超然とした物であり。その様子を見た猟兵達の胸に、『この男は今、仕留めねばならない』という漠然とした危機感が過る。
その感覚に従う様に動き出す猟兵達。だが、それは……ほんの僅かに、遅かったのだ。
『シかし、ソの大層な活躍もこレまでダ! 今日、この時! 完璧な力ヲ以て、邪神ハ降り立つ!』
叫ぶ男。その手に握られたのは一振りの大型ナイフ。
振り翳された銀色の輝きが月夜に煌めき、猟兵達が止める間も無く……その刃は、眠る女子生徒の胸の中心に、吸い込まれた。
『神よ! 世界ヲ崩す、大いなル神よ! この清らかナ生贄の血ヲ、命を糧ニ! 我ガ身に降りらレよ!』
少女の血が吹き上がる中、狂ったように……いや、実際に狂っているのだろう。哄笑する男の、周囲が歪む。
この事件が始まって以後、学園中に満ちていた嘆き、恐怖、悲哀、絶望、淫蕩に狂った者達の昏い喜びと、男自身が持っていた狂気。
その全てが混ざり、寄り合い、積み重なって……男の体を、包んでいく。
『あぁ、嗚呼! コノ力! 凝リ固マリ、淀ンダ秩序ヲ破壊スル、至高ノ存在! コレコソガ──』
この場に漂う全ての悪意を凝縮した漆黒の渦の中で、男の肉体が、魂が、変質していく。ヒトという存在から、彼が求めた存在へと変じ……そして、渦が弾けた。
弾けた渦は、悪意の突風となって屋上を吹き荒れる。その暴風の中、猟兵達は見た。
『──……』
そこにいたのは、もはや狂気に支配された男などでは無かった。
体を覆う漆黒の外装、激しくうねる肉は禍々しく。圧倒的な存在感を持つ狂気と破壊の化身が、そこにはいた。
……儀式は、成就してしまったのだ。
降臨した邪神が猟兵達の姿を認識すると、まずは一歩その脚をこちらへ進めた。その瞬間、猟兵達は己の魂を握られるかの様な圧迫感を感じるだろう。
……多くの犠牲。生贄の上に降臨したこの邪神は、並大抵の強さでは無いのは明白だ。
だがそれでも、このまま降臨した邪神を見過ごす訳にはいかない。
猟兵達は激戦の予感を感じながら、それぞれに邪神へと対するのだった。
====================
●第三章、補足
第三章は、ボス戦。相手は『黒装の破壊者』となります。
第三章の成功条件は、『黒装の破壊者』の撃破です。
儀式の成就により、主犯の男を取り込む形で降臨した邪神。
強力な力を持つその邪神を、この場で討ち倒す事が目的となります。
ボスである『黒装の破壊者』は、多くの生贄や儀式の成功、寄り集まった負の感情を活かし、戦闘力を大幅に強化して降臨しています。
先制攻撃能力こそ持ちませんが、その戦闘力は『完全なる邪神』に迫るレベルである、とお考え下さい。
戦闘力においては圧倒的強者である敵。そんな難敵に対してどう立ち向かうか、皆さんの機転が試されます。
戦場は、校舎棟の屋上です。障害物はなく、また程々の広さのため、戦闘で困る事は無いでしょう。
また二章での猟兵達の行動の結果、敵側に『兵士の増援』が現れる事はありません。
邪神との戦闘に集中出来ますのでご安心ください。
平和な学園を襲った悲劇は邪神の復活という結末に終わってしまうのか。
皆様の熱いプレイングを、お待ちしております。
====================
四王天・燦
『蘇生』で連携
屑の言に興味なし。
神鳴抜刀、逆手に四王稲荷符で接敵
「神通力を見せてやる」
真の姿を解放。
破魔の符を投げ、強化の要の負の力を祓いながらおびき寄せ。
シホの【犠聖】を援護。
トリッキーを念頭に大蛇を見切り、武器受けからカウンターで斬る
【犠聖】発動後、妖魔解放にてドSの女吸血鬼の魂を纏い、ドス黒い衝撃波で目くらまし。
シホと女学生を両肩に抱え庇いながら撤収―過重による速度低下は高速移動で補う
「目覚めたら駆け付けてよ」
必要なら女生徒に応急処理、シホにも医療の符を貼りまくって止血を施し戦線復帰。
高速移動とジャンプで強襲しブッ刺すぜ
女学生達に友達の記憶諸共痛苦を消すか相談。
辛いけど捨てて欲しくねえな
シホ・エーデルワイス
『蘇生』で連携
敵に興味無し
それより心肺停止後も脳はすぐに死なない
分の悪い賭けなのは承知の上
でも諦めたくない!
<目立たないとダッシュ>で女生徒に近づき【犠聖】を使用
これなら万一彼女と敵に呪術的な繋がりがあっても私に移る
瀕死は避けられないが
【贖罪】が自動発動する為
体を盾にする感じで彼女に覆い被さり<かばう>で眠る
燦さん
後はお願いします
戦後
女生徒達の凌辱等による傷や精神的外傷を【犠聖】で私へ移す
苦痛は必ず助ける<覚悟と気合いを入れ激痛耐性>で見せない
全員傷一つ残さず癒したら【贖罪】で眠り
心は自己<催眠術>で癒す
記憶を消去するかは女学生達一人一人に選ばせて欲しいと思う
痛みが人を強くする事もありますから
●
遂に降臨した邪神。圧倒的な存在感と狂気と絶望を振りまくその姿がまた一歩、猟兵達へと歩みを進める。
それぞれに身構え、戦意を高める猟兵達。だがそんな邪悪な存在を眼中に入れない者達がいた。
「──まだ! まだ、間に合います!」
一秒でも早く、生贄とされた少女……生徒会長の下へ、と。急く気持ちに脚が縺れそうになりながらも、シホが駆ける。
主犯格の男の凶刃を胸に受け、少女はその生命を落とした。この場にいた猟兵達の多くは、そう認識していた。
しかしヒトの体、生命というのは意外としぶといもの。心肺がその動きを止めても脳はすぐには死なないという事を、シホは知っていた。
今すぐ少女を保護し応急処置を施すことが出来れば、その生命を救えるかもしれないのだ。
(分の悪い賭けなのは、承知の上。でも……)
──諦めたくない!
シホを突き動かすのは純粋一途な『助けたい』という思い。ただそれだけだった。
(あぁ、そうさ。こんな所で、こんな形で……!)
シホのその思いと同調するかのように動く者は、もう一人。燦の瞳も、邪神の姿を映してはいなかった。
女の子には幸せになって欲しい、と思う燦だ。その感情は純粋なそれだけではないが……今、この場においては邪念など無い。
主犯格のあの男……いや、あの屑が引き起こしたこの理不尽な事件。少女達の輝かしい命を、こんな事件で終わらせたくはなかったのだ。
「……絶対に、助ける」
燦の纏う霊気が、その呟きに応えるかのように膨れ上がり、一つの形へと姿を変えていく。
……古来より、アヤカシとしての妖狐の格を示すものとして知られる物がある。
それは、尾だ。尾の数こそ、妖狐としての霊格を示す一つの基準となるものであるのだ。
圧縮、凝縮された燦の霊気が形作るのは、その尾だ。
腰の辺りに現れた尾の数は、五つ。その尾の輝きは燦の戦意の高さを受けるかのように輝いて、戦場を照らす。
「神通力を、見せてやるよ!」
構え、放ったのは残り僅かとなった愛用の符。全て撃ち尽くすように放たれた符は、戦場に満ちる負の感情を切り裂くような勢いで邪神へと迫る。
……もし、燦が常の状態であれば。符は邪神には通じなかったであろう。それどころかこの場に満ちた悪意によって、道半ばでその力を失っていただろう。
だが、今の燦は常の状態ではない。使命と決意にその魂を燃やし、力を高めた今の状態であるならば……その破魔の力は、邪神へと届く!
『──!?』
今まさに、地を縫うように駆けるシホを討とうと蠢く触手を大蛇に変えようとした邪神のその面を、符が襲う。
直接的なダメージは、気にする程ではない。だが不快な気の籠もるそれに気分を害したのか、邪神は符を剥がそうと藻掻きながら……体を捩らせ、大蛇の触手を鞭の様に撓らせる!
シホの体に迫る、悍ましい肉の鞭。シホの意識は倒れた少女に傾いており、回避は難しい。その一撃を……
「──いけ、シホッ!」
燦の声が響き、受け止めた。その手には抜き放たれた刃が輝いていた。
拮抗する邪神と燦の力。負の感情籠もる悍ましい肉の鞭と、全てを焼き尽くす稲妻の刃が鎬を削る。
そして生まれた僅かな隙間を突くように、シホの脚が一段ギアを上げて……少女の下へと、辿り着く。
(これは……!)
少女の肌に血の気はなく、脈も既に止まっていた。
だがそれより問題なのは……少女の『魂』を蝕む、呪い染みた負の情念だ。
恐らく、あの刃には何らかの呪術的な措置が成されていたのだろう。その呪いはまさに少女を『生贄』とするかのように、今もその肉と魂を蝕んでいる様に、シホには感じられた。
(これ程の『呪い』、解呪しようとすれば私の身も無事ではすまないでしょう)
だが、それでも。シホは止まらない。力なく冷たい少女の腕をとり、指を絡める様にその手を握る。
(私は祈る、私は払う、私は背負う……)
少女と意識を同調するかのように、瞳を閉じてシホは念じる。少女の傷を、蝕む呪いを、我が身に吸い上げるかのような力の流れを、イメージする。
その思いに従う様に、シホの胸の中心に輝く聖痕が一層輝けば……その白い肌は避け、皮膚の裏に虫が這いずるかのような不快感を、シホは感じるだろう。
……だが、まだ足りない。少女を救うには、あと一歩……!
「……主よ、この身を、捧げます……ッ!」
その言葉を口にした瞬間、少女の体から目には視えぬ『何か』が自らの内に入り込んだのを、シホは確かに感じ取った。
そして、それを認識した、次の瞬間。
「──ッ!!」
シホの口から、大量の血が零れ出る。吸い上げた少女の傷、そして邪神の呪いは……シホの体に、大きな傷を植え付けたのだ。
崩れ落ちるシホの体。だが意識を失うその瞬間、シホのその表情には笑顔が浮かぶ。
……シホは見たのだ。少女の体の傷が塞がっていることを。その胸が、僅かであるが動いた事を。
「燦、さん。あと、は……」
「あぁ、任せろ! ……リリース・ピュアリィハート!」
意識を失う間際のシホのその言葉に答えた燦の雰囲気が、変わる。清廉な破魔の力を塗り替えたのは、高貴なる闇夜の力。かつてその精気を食らった、女吸血鬼の魂の一部をその身に纏ったのだ。
身に纏うその力は、かつての敵のそれと同じ物。符を剥ぎ取り此方に向き直った邪神のその目に向けて。
「喰らえ!」
漆黒の衝撃波が、放たれる! その一撃は狙い違わず邪神の目を居抜くが……
(痛がってるだけかよ!? なんて硬さだ……!)
燦の言う通り、邪神には大きなダメージにはならず。だがその視界を一時的に奪う事には成功する。
……まぁ最も、最初から邪神を倒すつもりの一撃ではないのだからと、気にしない事にする。
「今のうちに……よしっ、いくぞ!」
邪神の視界が潰れ、生み出された時間。その間に燦はシホと少女を両肩に担ぐ。
そのまま一歩、二歩と助走を付けて……闇夜に向けて大きく跳躍。屋上から、飛び降りる!
(二人を助ける為にも。一旦撤収して、応急処置をしないと……!)
一命を取り留めたとは言え、生贄の少女の容態は重篤だ。シホもまた、その傷は重い。放っておけば二人の命に危機が訪れるのは明白だ。
そんな未来を避けるため、二人を担いで燦は駆ける。向かう先は校内へ突入を始めた、現地組織の下だ。
……恐らく、戦線復帰は間に合わないだろう。だが、二つの命を救うために。
(後は、任せた……!)
燦は共にこの場に挑んだ猟兵達に後事を託し、戦場を撤退するのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
伊美砂・アクアノート
【SPD 短刀法選・八天斬】
ああ、うん。すごいすごい、よく頑張って他人に迷惑をかけてくれたねーーー目標タイムは最短に設定しようか。何、アフターケアから事後処理まで、残業確定でゴザルので。
『援護射撃、スナイパー』でピストルとショットガンによる支援射撃、弾が尽きたら『投擲』で手榴弾とタロットカードを投げつける。…最終的に、手元の鉈一本で戦うぜ。きゃはは、速く疾く、もっと迅く! ボクの真の姿は、見た目は何も変わらないからね…ワタシは脳内の電気信号。頭蓋骨の中で最速を謳う、ただの神経細胞の発火、化学物質の情報伝達の結果だよーーさあ、アタシより速く動いてみせて? 【見切り、早業】で、己の最速を発揮しよう
備傘・剱
御大層な事を言ってるが、要は自分が望んだ世界じゃないからこんな事したって事か?
そんな事の為に、多くの命を散らしたって事か?
この落とし前、キッチリとつけさせてやる
オーラ防御全開、呪殺弾と衝撃波を弾幕に、誘導弾を背後から襲い掛からせて動きと視界を封じる
ダッシュで近づき、二回攻撃と鎧無視攻撃と、鎧砕きを合わせた打撃を食らわせる
相手に少しでも隙ができたら、黒魔弾を叩き込んでやる
お前も、お前の仲間も好き勝手放題やって、望んでそうなったのなら、それが蹂躙されるって事も覚えておけ
楽に死ねると思うな
…殺した命、堕とされて散らされた命、残されて悲しむ命、全部の命に死ぬまで詫び続けろ
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
●
闇夜を駆け抜ける一塊の影。その後姿を邪神が見つめ……ゆっくりと、残る猟兵達へと向き直った。
その体表に、目立った傷は見受けられず。静かに佇むその姿は、変わらぬ威圧感を猟兵達に感じさせる。
だが、その威圧感は……
「……御大層な事を言っていたが。要は『自分が望んだ世界』じゃないから、こんな事をしたって事か?」
剱の胸に宿る、怒り。その怒りを糧に燃え上がる戦意を萎縮させるような事は無かった。
……この学園に足を踏み入れてから。剱を始めとした猟兵達は、悲惨な様子を目の当たりにしてきた。多くの命が脅かされ、実際に散らされ……多くの少女達の尊厳が穢される様を、見てきたのだ。
それだけの惨事を引き起こした相手である。どれ程大層な目的があるのかと思えば……
「そんな事の為に、多くの命を散らしたって事か?」
理不尽で、身勝手この上ない理由で、この事件を引き起こしたと言うのだ。
その行動理念たるや、矮小極まりない物であり、いっそ見苦しいとすら思える物であった。
「……ああ、うん。すごいすごい。よく頑張って他人に迷惑を賭けてくれたね?」
その見苦しさ、矮小さには、伊美砂も乾いた声を送る他ない。その目は路傍の石を、いやそれ以下の無価値の物を見るかのように冷え切っていた。
その視線から察するに、伊美砂の男に対する評価は、『どうしようもなく、救えない連中』という初期のそれをブチ抜いたのだろう。無論、下回る方での意味だ。
「──目標タイムは最短に設定しようか」
溜息を零しながら呟いたその声色は、もはや男へ向ける色は欠片も無いものだった。
事件のアフターケア、事後処理……それらに比べれば、目の前の邪神、その中にいる男の価値など些事ですらある。
さっさと終わらせて、残業を片付けねばと。伊美砂の手に握られた拳銃と散弾銃が火を放つ。
「あぁ。この落とし前、キッチリとつけさせてやらないとな」
始まった銃撃戦に同調するように、剱の指が邪神へと向く。燃える闘志を反映するかのように手甲が淡い輝きを放ち……形成されるのは、オーラの弾丸だ。伊美砂の放つ弾丸と合わせるように撃ち出された弾幕は、まさに驟雨の如く邪神の体を打つ。
だが。
「──ちっ、豆鉄砲じゃ意味がねぇってか!」
銃を撃ち尽くした伊美砂の悔しげな声。その言葉通り、邪神の堅牢な体表には傷一つ無い。
……ただでさえ強力な邪神だ。それが儀式の完遂と今も戦場を覆う負の感情による強化を得ているのだ。拳銃弾程度では、まさに豆鉄砲なのだろう。
「だが、それならやりようはある」
その様子を見れば、剱は弾丸の軌道を変える。表が駄目なら裏からと言わんばかりに一部の弾丸の軌道を捻じ曲げて、邪神の背を突く様に襲い掛からせたのだ。
一方伊美砂はと言えば、鈍器と化した銃器をその場で放棄。取り出したのは切れ味鋭いタロットカードと、数発の手榴弾。ピンを引き抜きそれらを一斉に投じれば……
──ズズズンッ!!
同時に起爆する手榴弾。爆風に乗るタロットカードは不規則な軌道を描き、邪神の体を斬り付ける。更に剱のオーラの弾丸が邪神の背を撃ち抜くが……
(手応えは、無しか!)
相手に決定打を与えられていない事を、剱は理解していた。そして理解出来ていたからこそ、剱は動く。
(奴の周囲は爆煙で視界が悪い。接近して、ゼロ距離で撃ち込む!)
地を縫うような低姿勢で駆け出す剱。そんな彼と同じ様に、伊美砂も駆ける。
「きゃははっ! 速く、疾く! もっと迅く!!」
伊美砂は、最初から飛び道具でケリを着けられるなどとは思っていなかった。彼女の本命は……手元に残る、愛用のタクティカルマチェットにあったのだ。
今までの事は、その為の布石。飛び道具を撃ち尽くし、可能な限り身軽になる為の準備運動でしかないのだ。
(ボクの真の姿は、見た目は変わらない。ワタシは脳内の電気信号……!)
伊美砂と体を一つとする、彼女の脳内に宿る無数の人格達が伊美砂の頭で騒ぎ出す。
頭蓋骨の中で騒ぐ彼女達。脳から下された指示が化学物質の情報伝達により一瞬で四肢を動かすかのように、彼女達の思考は加速していく。
そしてのその思考の加速に比例するかのように……実際の伊美砂の躰も、加速するのだ。
「さあ、アタシより速く動いて──ッ!!」
更に一歩、加速した伊美砂。己の最速へと到達した、その瞬間。チリリと背筋が粟立つのを、伊美砂は知覚した。
その感覚に従い足を止め、鉈を振るった。その瞬間だった。
──ギギギィッ!!
鉈の刃が何か硬い物と擦れ合う、金属音が戦場に響く。爆煙の中から伸び来た、大蛇に姿を変えた邪神の触手が行き交ったのだ。
もし直感に従っていなかったら、伊美砂の体は大蛇に丸呑みとされていたかもしれない。伊美砂の頬を、一筋の冷たいものが流れていった。
「……まぁこうなっては、仕方がないね」
再突入を断念した伊美砂。だがそんな彼女の背を飛び越えて。
「後は、任せたよ」
「任された!」
もうひとりの猟兵……剱が、邪神へと迫る。飛び越えた勢いのまま、一気に距離を詰めて……その懐へと、潜り込む!
「漆黒の魔弾は、いかな物も退ける。罠も、敵も、死の運命さえも……!」
己の都合で好き勝手に振る舞い、罪もない人々を殺し、少女達を弄んだ外道達。その因の果てには、応じた報いがあって然るべきである。
暴力には、暴力を。死には、死を。
「楽に死ねると、思うな!」
右掌に練り上げたのは、漆黒の魔弾。燃え滾る怒りを凝縮したそれを、叩きつければ……!
『──!』
だが、その時。邪神の側も懐へ飛び込んだ剱に向けて、右の拳を振り下ろしていた。
凝縮された魔力と、悪意の拳がぶつかり……瞬間、剱の視界が白く弾けた。
「……っと! 大丈夫でゴザルか?」
「っ! な、なにが……?」
気づけば、剱は伊美砂に抱き止められていた。ハッキリとしない頭を振るい、意識を呼び覚ます。そうすれば、剱は今起きた事を理解するだろう。
……魔力と拳がぶつかりあった、あの瞬間。発生したのは、強烈な衝撃波だ。その余波を受け剱は弾き飛ばされ……一瞬意識を失ってしまっていたらしい。
「そうだ、ヤツは……!」
「あぁ、よく見ると良い」
そして己の状態を知れば、次は敵の状態だ。伊美砂に促され邪神へと視線を向ければ、そこには右の腕を失った邪神の姿が。
どうやら正面からの力のぶつかり合いは、僅かばかり剱が勝っていたようだが……次の瞬間、周囲の悪意が邪神により集まり、形を作り、邪神の腕を復元してしまう。
「……厄介だな」
「でも、アタシたちの力が通じない相手では無い事は判ったからね」
まずは良しとしようかと呟く伊美砂に、剱も一つ頷いて。二人は再び、敵へと向き直る。
この事件で失われ、また絶望に落とされた全ての命。その償いを与える為のこの戦い。戦いは更に、激しくなりそうであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
葉隠・翠
【心情】な、なんということ…襲撃犯によって邪神が復活してしまったでござるか…!?強敵の予感がするでござるが、被害に遭った者達の為にもこいつを倒しこの嫌な事件に幕を降ろすでござる!!
【作戦】仲間と協力。「拙者は忍者りょくきゃ…緑影!邪神よ。いざ勝負でござる!」と敵に攻撃させ、拳、杭、蛇による攻撃は【見切り】と【残像】、【武器受け】で対処し、攻撃後の隙を狙いいずな落とし改をお見舞いしてやるでござる!
仲間がピンチの時は手裏剣による【投擲】で敵の注意を惹き隙を作ってサポートするでござる!(絡み・アドリブOK)
鬼柳・雄
※アドリブ絡み歓迎
いつだって笑って終わるのが一番だ。でも助けられなかった女達はもう笑えない。
ヒーローのようにはいかない。俺にはただ終わらせる事しか出来ないのかもしれない。
ならせめてそれだけは果たしてみせる。
あそこにいるクソ野郎をぶちのめし、このクソったれな話は終わらせる。
相手の攻撃は「戦闘知識」「オーラ防御」各種耐性で回避・防御。広範囲攻撃は氷の壁を生み出して止めます。
UCによる攻撃は大きく飛んで躱しつつアサルトウェポンによる弾丸の雨で反撃。
そのまま上空に飛んで、炎と氷を纏わせた超スピードのキックをぶちかまします。
「絶対に許さねえ!犠牲にされた奴ら、そして俺達の怒りを思い知りやがれーーっ!!」
ルメリー・マレフィカールム
……間に合わなかった。とても、残念。
でも、これ以上はやらせない。ここで、止める。
たぶん、私の攻撃は有効打にならない。だから、他の人が動きやすいようにする。
【走馬灯視】で相手を観察。視線、重心、筋肉の動き。大蛇への変化も肉の盛り上がりから初動を読んで、攻撃軌道を避けるように動く。
避けながら注意も引く。常にナイフを投げて、私を意識させ続ける。必要なら、わざと隙を見せて攻撃を受ける。それで誰かのチャンスを作れるなら、そうする。
【アドリブ、協力歓迎】
●
吹き飛ばされた腕を復元し、邪神は何事も無かったかのように猟兵達へと向き直る。
だが、僅かに感じた違和感に。ルメリーの瞳が、僅かに細まった。
「ルメリーどの、どうかされましたか?」
「……なんだか、空気が少しだけ変わった、気がする……」
攻撃に動く機を伺っていた翠がその様子に気付き声を掛ければ、返ってきた答えはどこか曖昧な物だった。
翠の目には、邪神の体にも周囲の空気にも、見た所は変化は無いように見える。だがここまでの道中で、ルメリーの洞察力の程は証明済みだ。
そんな彼女が、こういうのだ。ならばきっと、なにがしかの変化はあるのだろう。
……ならば。今はそれを信じるのみ!
「拙者は忍者りょくきゃ……緑影!」
声を張り上げ、邪神の前へ歩み出る翠。無手にて構えを取って、敵の攻撃を受ける構えを見せる。
……名乗りを噛んでしまったが、それはまぁご愛嬌だろう。
「邪神よ、いざ……勝負でござる!」
翠のその言葉への返答は、無言のまま振るわれた肉の杭だった。少女達を蝕んでいたそれと同種の物なのであろうそれは、艶かしく、そしてそれ以上に禍々しい雰囲気を纏って翠に迫る。
だが、ただ一直線に迫るだけならば。躱す事など、造作も無いこと。
「この程度……むっ!?」
一つ、二つ、三つ。迫る肉の杭を自慢の体術で軽やかに躱す翠。だが次に迫ってきた物に、その表情が険しくなる。
「杭を、蛇に……くぅっ!?」
大蛇と化した杭。その軌道は直線だけでなく、どこか有機的な線を描く様になっていく。そうなれば回避軌道を探す事は難しくなり、少しずつ、少しずつ……翠は追い詰められていく。
……また一つ、回避出来た。だが既に体勢は大きく乱れ、次の回避運動は難しそうだ。そんな翠の下へ迫る、蛇の杭を……
「……見えた」
一条の銀閃が穿ち、地へと繋ぎ止める。
「っ! ルメリーどの、助かりました!」
「……ん」
翠の感謝の言葉に、小さく一つ頷くルメリー。予備のナイフを取り出して、更に一つの肉蛇を鮮やかな手並みで捌いて対処する。
……ルメリーは、自分の攻撃は敵に対する有効打にはならないだろうと、冷静に彼我の戦力を分析していた。
その分析は、恐らく正しい。だが、それは……任務を投げ出す理由にはならないのだ。
(……攻撃が通じないなら。他の人のサポートに専念すれば、良い)
ルメリーが選んだのは、他の猟兵のサポート役に徹する道だった。
その目の特殊性、洞察力の高さ、そしてユーベルコードの方向性。それらを組み合わせて、今のルメリーは未来を見るかのような動きで敵の攻撃を凌ぐのだ。
……しかし、しかしだ。未来を見るかの様な視点を得ているルメリーだからこそ、判ってしまう。
(……このままじゃ、先が無い)
翠とルメリー。二人の猟兵が束になっても、あの邪神には敵わない。それだけの強さを、邪神はその身に秘めている。そんな相手に持久戦となれば、待っているのは押し負ける結末だけだろう。
(……あと一人、攻める人がいれば)
状況は、変わるはず。
ルメリーはその未来を信じて、迫る大蛇をまた一体切り捨てる……
●
圧倒的強者に苦戦する二人の少女猟兵。
その姿に雄が抱いた感情は、憧憬に似た物だった。
(いつだって、笑って終わるのが一番だ。でも、助けられなかった女達は、もう……)
ヒーローという存在は、虐げられる人々の救世主だ。彼らの行く先にある物は、苦しみから解き放たれた笑顔であるものだ。
だが、現実は違う。
(俺は、ヒーローのようには出来ない。ただ『終わらせる』事しか、出来ないのかもしれない)
生命の埒外と謳われる猟兵達。世界に選ばれたその力をもってしても、全ての人々を救うことなど出来はしない。
しかし。だが、しかしだ。目の前の少女猟兵達は、戦っている。この事件を越えた先にあるかもしれない僅かな希望を探すかのように。
諦めずに藻掻き続けるその姿は、まさに『ヒーロー』そのものだ。
……自分は、あんな風には輝けないだろう。だがそれでも、やれる事はある。
戦うヒーローを手助けできる力は、この手にあるのだ。
(……せめて、この事件を。あそこにいるクソ野郎をぶちのめし、クソったれな話を終わらせる!)
雄の瞳に燃え上がるのは、決意の光。強い意思を感じさせるその瞳で見据えるのは、少女猟兵達を追い詰めつつある邪神の一柱。雄の言う所の『クソ野郎』である。、
再び構えるダイモンデバイス。契約する悪魔を再び顕現させて、その力を身に纏う。
「……変身!!」
再び纏う悪魔の力宿る戦闘服。黒を基調とした全身、胸と肩、腕を飾る装甲は白銀に輝き、その背の翼は氷と炎を象徴するかのような二色の色。頭部を覆うその面の形状。
……その姿は、キマイラに似た少女、大悪魔マルコシアスのその風貌をイメージさせる物だった。
「──いくぞ、シア!」
身に纏う相棒へ一つ声を掛け、その腕に悪魔の魔力を凝縮させる雄。
人魔一体と化したその力が、今まさに振るわれようとしていた。
●
度重なる肉蛇による攻撃を、翠とルメリーは良く凌いでいた。
だが……
(……次は、難しい)
ここまでは、何とか捌けていた。だが体力の消耗は大きく、その効率も落ちてきてしまっていた。
その事実をルメリーは冷静に理解していたのだが……打つ手が無いのも、また事実。
……いや、手はある。自らが囮となって、攻撃を引き付ければ……
「いけません! いけませんルメリーどのっ!」
ルメリーの中で固まりつつあったその考えと行動を食い止めたのは、翠の必死の声だった。
「ルメリーどのの行動でチャンスは生まれるかもしれません! しかし被害に遭った者達の為にも、これ以上の被害は……」
翠にも、今の状況が危険な状況であることは理解できていた。突破口を見出す事が難しい事もまた、判っていた。
そしてその状況を理解できていたからこそ、ルメリーの行動が勝機になりうる事もまた、理解出来ていたのだ。
だが、しかしだ。仲間を犠牲にしての勝利になど、何の価値があろうと言うのか?
「皆が生きて、あの邪神を討ってこそ! その時こそ、我らの勝利で幕を下ろしたと言えるのではござらぬでしょうか……!」
翠のその考えは、理想的だ。その通りに勝利を収められたのなら、どれだけ素晴らしい事だろう。
だが、現実はそうはいかない。自分たちは追い詰められつつあり、逆転の為の細い糸を手繰る為にはこうするより他は無いのだ。
……そのはず、なのだが。
「……」
どうしても、ルメリーは翠の言葉に反論する事が出来なかった。
……無愛想で、無表情で、端的な言葉遣いのルメリーだ。多くの人は、彼女を効率重視の人だと理解するだろうし、ルメリー自身も『必要であれば』とその様に動こうとした。
だが、そんなルメリーの内面は……年頃の純朴な子供の感性、そのものなのだ。
そんな感性を持つ少女に、仲間の無事を願う義に篤い少女のその声は……深く染み込んでいくのだ。
「……わかった。でも、これからどうすれば……」
「それは……ただ、粘るでござるよ!」
再び飛来した肉蛇を、翠のクナイと手裏剣が迎え撃つ。
あまりにも楽観的で、具体性の無い翠の言葉。ルメリーとしては首を捻るしかないのだが……
「粘っていれば、助けは必ず来るでござる。そう……」
ヒーローとは、そういう時に来るものなのだから。
翠がそう囁いた、その時だった。
「……風?」
ルメリーの背後から、一迅の風が吹き抜けた。肌を指すような冷たい風だが……不思議と、不快な感じの無い風だった。
その風は二人の側を抜けていき、最早何度目か分からぬ迫りくる肉蛇達に絡みついていくと……その肉を一瞬で凍てつかせ、氷の壁に封じていくではないか!
「これは、いったい……?」
「ふふっ。ルメリーどの、先程拙者が言ったではないですか」
ヒーローとは、そういう時に来るものだ、と。その言葉が、繰り返された。
呟きながらふっと頭上を見上げた翠に釣られる様に、ルメリーもまた視線を頭上へ移せば……そこにいたのは、黒に身を纏い青と橙の翼を羽撃かせる、一人の戦士の姿。
軽やかに、そして力強く空を駆けるその姿は……まさに『ヒーロー』、そのものだ。
「おぉぉぉぉぉッ!!!」
雄叫びをあげたヒーロー、雄が邪神へ迫る。
取った構えは、鋭い右の蹴りだ。空を駆ける速度、纏う悪魔の力、そして──
「てめぇは絶対に、許さねぇ!」
胸を焦がす、怒りの念を力に変えて。人魔一体と化して、渾身の蹴りを放ったのだ。
迫りくる、魔を断つ怒り。その一撃に、邪神は再び拳を握りしめて……振り上げる!
拳と脚、魔の力と悪意が、ぶつかり合う。先程別の猟兵との激突で生じた激しい閃光に負けず劣らずの衝撃波が、屋上へ広がる。
「ぐっ、くぅ……!」
激しいその衝撃。目を眩ませる力の発露に、歯を食いしばって雄は耐える。纏うスーツは少しずつ千切れ、その力は減じていく。
だが、それは相手の側も同じこと。ぶつかり合う拳が、腕が、拉げていくのを、雄は足先から感じる手応えで、理解していた。
故に。
「犠牲にされた奴ら、そして俺達の怒りを……思い知りやがれぇーッ!!」
渾身の力を籠めて、押し込んだ。その一撃を受ければ、邪神の腕とて耐えきれない。
拉げた腕は弾け飛び、その体は無様に屋上を転がっていく。設置されていたフェンスを破壊して吹き飛ばした所で……邪神の体は、その場に留まった。
……無論、それだけのぶつかりを演じた雄の側も、タダではすまない。
「ぐっ、つぅ……!」
激しい力のぶつけ合い。その反動を受けた雄の体もまた弾き飛ばされ……屋上の床を転がる事になる。
折れたのか、右の脚に力が入らない。全身も余す所なく擦り傷切り傷を負い、控えめに言って重傷だ。
「雄どの、ご無事でっ!?」
「あぁ、平気だ。ヤツは、どうなった……?」
膝を突きつつゆっくり立ち上がる雄に近寄り、肩を貸す翠。
その助けを借りつつ、雄の口を突いたのは……やはり、敵の状態を気にする言葉だった。
「……今、起き上がった。腕も再生して……?」
雄の疑問に答えたのは、ルメリーだ。邪神の様子をその目で確認し……そこで、最初の違和感の正体にルメリーが気付く。
「……腕が再生した瞬間、周りの空気が少しだけ軽くなった」
それは、常に相手を冷静に見続けていたルメリーだからこそ気付けた僅かな変化だった。
この戦場には、事件で満ちた犠牲者達の無念、絶望、悲しみ……負の感情が漂っていた。その感情は重苦しい空気と化して、猟兵達を圧迫していた。
だが、今。邪神が腕を再生した、その瞬間。戦場に満ちた重苦しい空気が、軽くなったのだ。
「……つまり、なんだ。この場の空気が重い限り、あの野郎は再生し続けるって事か?」
「と、言うより。アレが行動する為の燃料が、この空気なのかもしれない」
ルメリーのその推測は、あくまで推測だ。だが状況を考えれば、恐らくその推測は正しいはずだ。
「チッ、面倒だな……」
「ですが、アレにも限界があると知れたのは僥倖でござるよ!」
「ん。とりあえず、後は他の人達に任せよう」
もう少しやりあってその推測を確信に変えたい所ではある。だが三人は負傷と疲労で全力を発揮する事は困難だ。
……後は、仲間に託すべきだと判断したルメリーの言に、翠と雄も従って。三人はこの場から一時後退するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ミニステリアリス・グレイグース
(邪神の威圧感を前に思わず喉が引き攣り、目尻に涙が浮かぶ
そこで持ち堪えられたのは幸いだった
根本的な部分でこの『私』は、戦う敵だけは選んできた臆病者なのだから)
……っ
だからって尻尾巻ける訳ないじゃない、あんなこと言った手前!
そうだ、私は、行動で、示すと言った!
【堕ちた創星・心】を発動、ナノマシンの戦域展開
[第六感]に頼るほど集中して敵の動静を[見切り]
大蛇は、恐怖心に任せ[残像]の如く無数のナノマシンに霧散して回避
展開したナノマシン群から極まった[念動力][オーラ防御]を放ち
それらを邪神を包む様に、握り潰す様に収斂させ圧殺します
あ、あの言葉を嘘にしない為にも……絶対に挫けてなんかやりませんから!
●
戦場の重苦しさは減じつつあるものの、邪神自体から感じられる威圧感は未だ健在であった。
そんな威圧感、圧迫感を振りまく強大な存在を前にして……ミニステリアリスは、思わずその喉を引き攣らせていた。
(こわい……怖い……っ!)
かつて、ミニステリアリスは目の前の邪神と同種の力を持つ存在と対峙した事がある。あの時の敵は、ミニステリアリスを始めとした仲間達の活躍により儀式を阻害され、その力を大きく減じながらこの世界に顕現した存在だった。
だが、目の前のこの邪神は。儀式を経て、犠牲となった人々の負の感情、悪意を吸い上げ。その力を極限まで増して降り立った存在だ。
……正直、あの時とは格が違う。この敵とは戦ってはいけないと。ミニステリアリスの理性は、そう告げていた。
「……ひっ!?」
一歩、邪神の脚が前へ進んだ。その動きに合わせるように淀んだ空気が流れ、ミニステリアリスの体を押す。
礼儀正しく、大人びた少女であるミニステリアリス。だがその内面は、気弱で、年相応の幼さが残る少女であるのだ。
更に、一歩。邪神の脚が前へ進めば、感じる圧力に恐怖の感情が溢れ出る。漏れ出る悲鳴、浮かぶ涙。その場にへたり込み、声を上げて泣き出したくなってしまう。
だが、しかしだ。
──……今はただ、行動で示します。
女子学生達に宣言した、自身の言葉が胸に蘇る。
そうだ。自分たちは、人々の今と未来を守る者。過去より這い出る者達を討つ者、猟兵だ。
そんな自分が、こんな絶望に押されて尻込みをしてしまえば……自らの宣言を、違える事になってしまうではないか。
「……っ、そうよ。怖いからって、尻尾巻ける訳、ないじゃない……っ!」
怖気づく理性を叱咤するかのように、声をあげるミニステリアリス。脚の震えを止めるようにトンっと地を蹴り仁王立ち、頬を叩いて気を引き締める。
「私は、行動で、示すと言ったんだから!」
自棄になったかのようなその宣言と共に、繰り出されたのはミニステリアリスの手足にして武器であるナノマシン。
戦場に満ちる悪意を塗り潰すかの如く展開されたナノマシン達の支援を受ければ、ミニステリアリスの力は飛躍的に高まるのだ。
『……──ッ!!』
戦場に満ちようとするミニステリアリスの意思を不快な物と受け取ったのか。邪神は背に蠢く触手を振り回し、空間を薙ぐ。
良く見れば鞭の如く振り回されたその先端は大蛇の頭と変じていた。その蛇鞭が、禍々しい気を伴って。ミニステリアリスを打たんと迫り……少女の体を、薙いだ。
『……?』
怪訝そうな様子を見せる邪神。確かに今、あの少女を薙いだはずだが……どうやら今の一撃に手応えを得られなかった事が不思議な様子だ。
そんな邪神の疑問は、次の瞬間に晴らされた。
「──こっちよ!!」
響いた声は、邪神の背後から。声の主は、当然ミニステリアリスだ。
蛇鞭が薙ぎ払ったのは、ミニステリアリスの残像だ。鞭が彼女の身体を薙ごうとした、その瞬間。ミニステリアリスは自らの体を無数のナノマシンの如く霧散させ、その一撃を回避したのだ。
(う、上手くいった……!?)
強気なその声と裏腹に、ミニステリアリスは内心で大きな安堵の息を零す。
正直、今でも怖い。敵の振るう力は強大で、掠りでもしようものなら小柄なミニステリアリスの身体は簡単に吹き飛んでしまうだろう。
そんな圧倒的な力と、向かい合っているのだ。回避のタイミングも、紙一重の連続だ。恐怖を感じないわけが無い。
だが、その恐怖を無理やり押し込め、捻じ伏せて……
「これなるは、『夢』の成れ果て。かつて星を侵し、想いを紡ぎ束ねた力……!」
恐怖の象徴である、邪神。その存在ごと、念動力で圧し潰す!
(あ、あの言葉を、嘘にしない為にも……っ!)
激しい反発。圧迫される邪神とその悪意が、ミニステリアリスの力を押し返そうと抵抗を示す。
その力に負けぬ様にと、歯を食い縛る。ミニステリアリスの意思を受けたナノマシン達も、邪神を圧殺せんとその出力を上げていく。
「絶対にっ、絶対に、挫けてなんかやりませんから……あぁっ!?」
しかし、強化された邪神の力はミニステリアリスの想定の上を行っていた。限界を越えたナノマシンが次々と弾け、その力を失っていく。
やがて、全てのナノマシンがその機能を止めて、邪神がその枷から解き放たれる。
だが、その姿は……全身を大きく拉げ、大きなダメージを受けている事を猟兵達に知らしめるだろう。
(……だいぶ、力を削げたけれど。私は、これで……)
周囲の悪意を取り込み傷を癒やす邪神の姿を横目に見つつ、ミニステリアリスは最後の力を振り絞りその場を下がる。
恐怖と戦い続けたミニステリアリスの決意は、邪神の存在を圧し潰すには至らなかったが……その力を大きく削ぐ事に、成功したのだった。
成功
🔵🔵🔴
ミフェット・マザーグース
悪いことをするために、悪いことをする、すごくすごく悪いもの
やっつけないと、もっともっと悪いことをするから
誰かがやっつけないといけないよね
【太陽の家】のみんなと一緒に戦うよ
ミフェットは、みんなを歌で強くすることに集中するね!
他の猟兵さんともアドリブで連携するよ!
UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
「楽器演奏」に乗せて「歌唱」でみんなを「鼓舞」するよ
攻撃を受けても「激痛耐性」で耐えて!歌を続けるよ!
♪
だれかを踏みつけて だれかを苦しめて なにかを手に入れても
そのだれかを守るために だれかきっと立ち向かう
絶望しろと あきらめろと 繰り返しても
どんなにつよい力の前でも絶望しない ひとの心には炎があるから
楠木・美羅
・WIZ 【太陽の家】で参加します。アドリヴ歓迎
こんな事の為に…学校の皆さんを…
どんな強敵でも必ず倒すんです、せめてこれ以上の犠牲を出しません!
UC【生まれながらの光】で仲間の回復を最優先します
この邪神の破壊力は危険です、優先して引き受けるクロエちゃんの負担を
できる限り軽減しないと
それに防ぎきれない分だってミフェットちゃんは信子さんもわたしが癒します
女生徒は大丈夫そうであれば他の方にお任せしておきましょう
学校で犠牲になった方々もまだ助かる人たちが居るはず
邪神を討てればその後に怪我人を癒します
わたしにはこの惨劇を消す事はできません、でも
せめて助けられる命は助けたいんです
クロエ・アスティン
POWで判定
【太陽の家】で参加
生贄だった子は救出済みでありますか!
なら、残りはこの邪神を倒すのみであります!
仲間達の盾となるため、大盾を構えて前に飛び出ます。
「盾受け」や「かばう」でみんなのことを守るであります!
少しくらいの痛みは「激痛耐性」で我慢です!
ミフェット様や美羅様の援護もあるので、簡単に倒れたりしないでありますよ!
単純で重い拳の一撃に対してはこちらも真っ向勝負です!
戦槌を振りかぶり、【ほーむらんであります!】で全力で叩き返してやります!
自分が倒れたら仲間達が危険にさらされる……お前なんかとは「覚悟」が違うでありますよ!!
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です。
秋月・信子
・SPD&真の姿解放
【太陽の家】
あなたを…いえ、あなた「達」を許すことは出来ません
ROSETTA、私の真なる姿を映し出して
コード・ヴァイス!
投影されたホログラムを身に纏い、想像から創造へ具現化
変身完了と共に異形の大蛇の一撃を展開したリフターで飛翔して回避
追ってきた大蛇の首との【空中戦】は首が伸び切ったのを見計らい、最大展開した光の翼で口を顎から真っ二つ、そのまま急降下して長い胴体を限りなく本体まで斬り裂きます
そして【部位破壊】された断面に狙いを澄ませます
鎧を身に纏うのなら…ここからです
神造した魔銃から放たれる蒼き【破魔】の魔弾の力を有した閃光を剥き出しの肉から貫かせ、本体のコアを撃ち抜きます
●
度重なる猟兵達との交戦で、圧倒的であった邪神の存在感にも翳りが見え始めていた。
だが、その力はまだ残っているのだろう。邪神の歩みは、止まらない。
そんな邪悪の存在を討つべく、【太陽の家】の少女達が進み出る。
「こんな事の為に、学校の皆さんを……!」
理不尽で、利己的。そんな主犯格の男の言葉を聞けば、美羅の胸に湧くのは強い怒りだ。
明るく友好的な心優しい少女である美羅を怒らせた。その事だけでこの男の邪悪さが窺い知れるという物だろう。
「せめてこれ以上の犠牲を出さない為にも、どんな強敵でも必ず倒すんです!」
「その通りであります!」
その美羅の怒りが感染したかのように、クロエもまた怒りを顕わにする。普段は大人しいミフェットもまた、その瞳に戦意を燃え上がらせていた。
……今回の敵は、それだけ少女達の敵愾心を煽る敵なのだろう。だが彼女達以上に、戦意を滾らせる者がいる。
「……ROSETTA。私の真なる姿を映し出して。『コード・ヴァイス!』」
それは刻まれた過去の傷跡、心の闇と戦い続けた信子だった。
痛ましい過去の記憶、脳裏をよぎる幻影。その全てが敵の主犯格の男の身勝手さを受けて、怒りへと塗り替えられたのだろうか?
「あなたを……いえ、あなた「達」を、許すことは出来ません」
端末から映し出されたホログラムが、纏う衣服が光に解け、白い肌が露となる。光はたちまち信子の肢体に貼り付いて……白のインナースーツと青で纏められた機械甲冑へ、想像から創造へと、その姿を具現化していく。
構える武器は、大型のバスターランチャー。瞳を蒼く輝かせたその姿は、まさしく機械仕掛けの天使の如く。
「止めてみせます。あなた「達」を。そして、この惨劇を!」
力強いその宣言に、最早迷いの色は無い。リフターを展開し空高く舞い上がる信子を追うように、邪神の触手が大蛇と化して伸びていく。
……心中で信子の様子を案じていたミフェットも、迷いを振り切った様子の彼女を見れば。迷いなく集中して、己の為すべき事を為せるというものだ。
(……悪いことをするために、悪いことをする、すごくすごく、悪いもの)
ただただ世界の有り様が気に入らないからと、ただそれだけの自己中心的な理由でこれ程の騒ぎを引き起こした邪教徒の男。
その身勝手な行動の結果、多くの人が涙を流し、尊厳を穢され、そして命を失った。
その有り様は、悪以外の何者でもないはずだ。
(やっつけないと、もっともっと悪いことをするから……誰かが。ううん、ミフェット達が、やっつけないと……!)
今の世界を破壊する、そう宣言し、邪神の依代となったあの男。きっとその意識は最早消え失せ、邪神の衝動のままに動くだけであろう。
ならば、誰かが止めねばならない。その止める役を担うのは……自分たち、猟兵以外には存在しない。
──だれかを踏みつけて だれかを苦しめて なにかを手に入れても
──そのだれかを守るために だれかきっと立ち向かう
ミフェットの手に握られた愛用のテナーリュートが響き、その調べに乗せてミフェットの歌が戦場に満ちる。
その歌は、場に満ちた悪意を否定するもの。虐げられた者達を救う勇者の姿を謳うものだ。
響く歌声を聴けば、太陽に集う少女達の胸に沸き立つのは強い戦意だ。同時に感じるのは、悪意を清め、祓う。彼女達を見守る、暖かな意思だ。
──この力があれば、負けはしない!
少女達の意思が一つになり、それぞれの武器を構えて動き出す。
その姿に、邪神が取った行動は……鋭く悍ましい肉杭の弾幕だ。
その密度は、まるで叩きつける豪雨の如く。下手な回避など意味を成さぬというその濃密な射撃の雨を……
「美羅様も、ミフェット様も! お二人は自分が守る、であります!」
二人の前へ飛び出したクロエが、大盾を構えてその身で受ける!
その大盾は、小柄なクロエの全身を覆える程の大きな盾だ。吹き付ける杭の弾丸は何とか防ぐが……防げるのは、直接的な被弾だけ。
「ぐっ、くぅ……!」
盾越しに襲い掛かる衝撃を防ぐことまでは、出来なかった。
身体は揺らされ、手は痺れ……このままでは、そう長い時間を耐える事は出来ないだろう。
だが。
「簡単に倒れたりなんてぇ! しないでありますよぉっ!!」
自らに喝を入れるかのように、吠えるクロエ。
歯を食いしばるその姿、痛みを感じていない訳ではない。だがそんな痛みは、後ろの仲間たちを守るという名誉な大役を思えば……!
(我慢、我慢で、あります……!)
忍耐強く、クロエは耐える。
(クロエちゃんっ……負担を出来る限り軽減しないとっ!)
そんなクロエの背に護られている美羅が選んだのは、クロエのサポートだ。
白く柔らかなその手を組み、祈りを捧げれば……美羅の身体から暖かく柔らかな光が生じ、クロエと美羅を結ぶ。
「……っ、くぅ……!?」
瞬間、美羅の身体が感じたのは強い疲労感だ。その場に崩れ落ちそうになる程のその感覚は、クロエの身に積み重なる消耗だ。
美羅の放った光は、他者への治癒能力を持つ光である。だがそれを使用すればする程に、美羅自身のも疲労が蓄積していくのだ。
(でも、こんなもの……どうってこと、ないです!!)
生じる目眩、ふらつく足元。その全てを。
自分より小さな娘達が頑張っているのだ。ならば自分だってと……美羅は気合で抑え込む。
……クロエも、美羅も。お互いを信じているからこそ、踏ん張ることが出来ていた。
だがそれ以上に、二人の力を支えているのは……
──絶望しろと あきらめろと 繰り返しても
──どんなにつよい力の前でも絶望しない ひとの心には炎があるから
ミフェットの唄う、歌の力が大きかった。
弾き飛ばされそうな杭の驟雨も、膝を折りそうになる疲労も……ミフェットの歌の支えがあればこそ、耐えることが出来るのだ。
(……隙が、出来た!)
そうして年少の三人が邪神の猛攻を耐え凌げば、必然空を舞う信子への警戒は薄まっていく。その瞬間を、信子の目は見逃さない。
空を舞い踊り翻弄した触手の蛇。その胴が伸び切った所を見計らいつつ。
「──光の翼、最大出力!!」
信子の声に応えるように、展開されたリフターから膨れ上がる熱量。その熱で形成された翼を、邪神の蛇の顎に突っ込ませ……
「やぁぁぁぁぁああああああ!!!」
そのまま、蛇の胴を裂くように。胴に沿って急降下!
繋がる本体はその痛みにその視線を上空へ向ける。掌を向けて生み出された杭が撃ち放たれる、それより前に……既に構えたランチャーは、蒼き破魔の力に輝いていた。
「『主よ。悪意を祓う力を、此処に』!」
信子をこの地に送り込んだ、グリモア猟兵。彼女の口にする聖句と共に放たれたその閃光は、信子の破魔の力を更に一段高みへ乗せる。
その威力、飛来する悍ましい肉の杭を蒸発させ、邪神の装甲を焼き砕き、剥き出しとなった肉を焦がし、中枢に潜む核をも浄化する……
『──~~~~ッ!!!』
その、直前で。邪神はその存在の危機を感じたのか、信子の射線から転がり飛び出し回避する。
だが、その先には。
「──戦女神様。見ていてくださいであります……ッ!」
愛用の戦鎚を振りかざした、クロエの姿があった。
……信子の強襲を受け、邪神はクロエ達への杭の雨を止めてしまっていた。結果、防御に専念していたクロエは自由になり……こうして構えを取る事が出来たのだ。
その構えに宿るのは、クロエの強い覚悟だ。自らの身を顧みず、その上で倒れず。仲間達を守り続けるという、不撓不屈の精神だ。
そんなクロエに、邪神が迫る。拳を構えながらのその姿は、まるでクロエの覚悟を砕かんとするかのよう。
クロエの覚悟を下に見るようなその姿が……クロエの逆鱗に触れた!
「お前みたいな奴が……お前なんかとは、『覚悟』が違うでありますよッ!!」
繰り出される拳、振り下ろされた戦鎚。互いがぶつかりあい……砕けたのは、邪神の拳!
砕け、割れ、拉げ……邪神の右の拳は、クロエの戦鎚の前に完全に、完膚なきまでに破れたのだ。
だが、クロエの攻撃は終わらない!
「全力で……ほーむらん、であります!!!」
振り下ろした戦鎚の勢いそのままに、くるりとクロエの身体が一回転。その勢いと全身のバネを活かして……今度は戦鎚が、振り上げられる。
振り上げられた戦鎚は、邪神の胴のど真ん中を見事に捉えた。その勢いのまま、邪神の身体が宙を飛び、無様に床を転がった。
「これで終わった、でありますか……!?」
「いいえ、まだよ……っ!」
流石に体力の限界を迎えたのか、肩で息をするクロエの声に側に降り立った信子が答える。
信子の目は、再び起き上がる邪神の姿を捉えていた。
だが。
(……再生、しない?)
拉げた腕は再生せず、焼け焦げた装甲も、剥き出しの悍ましい肉も、受けた傷はそのままである。
……気付けば周囲に満ちていた悪意染みた空気が、かなり薄くなっている。
どうやら今までの戦いと戦場を焼く様な破魔の閃光でその空気は大分浄化されたらしい。
(あと一息、だけど……ッ!)
クロエの疲労は重く、控える美羅も、ミフェットも大きく肩で息をしている状態だ。
この状態で追撃は……守るべき仲間達の負担となりかねない。
(悔しいけど、後は仲間に任せるべき、か)
奥歯を噛み締めて、信子は三人を庇いながら後退する。
あと一歩、太陽に集う少女達の手は届かなかった。だが敵を追い詰めたその気概、その振る舞いは、讃えられるべきものであるはずだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
久遠・翔
アドリブ・絡み歓迎
ふざけるな
命を弄び刈り取る存在…万死に値する
真の姿を開放して純白のドレス姿に
倒れた生徒会長をUC使役獣召喚で回収した後治療するためにUC小さな日本庭園に保護
…あの時後回しにしなければという後悔の念
その結果…彼女の命を脅かせる事になった
俺は…俺が許せない
何より
テメェが一番許せねぇんだよ糞雑魚がぁ!!(真の姿のドレスが漆黒に染まりデザインが妖艶な物と変わる)
自身の呪いと淫紋。UC雷光一閃のオーラの影響でむせ返る程の魅了のオーラを放ち
消え去れ外道
雷光一閃を起動して雷撃を堕とし、その陰に隠れ隠密系技能フル稼働させた上で高速移動し一気に懐に飛び込み首を跳ねます
ただ、反動で自分も倒れます
●
屋上に満ちていた邪気は払われた。邪神の受けた傷も、最早癒える事は無い。
……邪神は最早、満身創痍。もうひと押し、あとひと押しで、その存在を消し去る事も叶うはずだ。
「……ふざけるな」
痛みに苦しむ邪神の前に、一人の猟兵が進み出た。纏う衣服はボロ布と化し、肩で息をする度に豊満な母性の象徴が豊かに揺れる。
……翔もまた、先程の少女達の妨害により満身創痍となっていた。気力体力を大きく失い、真っ直ぐ立つ事すらままならない程に消耗していた。
だが、しかし。それでも翔は、この場に立つ。疲労に震える膝を意地で支え、怒りに燃える瞳で邪神を睨む。
「お前は命を弄び、刈り取る存在だ……万死に、値する……ッ!」
刹那、翔の身体から力が溢れる。溢れ出た力は純白のドレスと化し、翔の身体を飾っていく。燃える怒りがその上限を振り切って、真の姿を開放するに至ったのだ。
(俺は……俺が、許せない!)
翔は、己自身が許せなかった。
あの時、教室でチラリと見えた生徒会長。あの場にいた生徒達を優先した事を間違いだとは思っていない。
だが、それでも。自身が選んだ行動の結果、彼女の命を脅かす結果を招いてしまったと、翔は自らの行動を悔いる。
もし、あの時。生徒会長の事を後回しとしなければ。もっと良い結果を、得られていたのではないか?
……『もしも』の考えが翔の頭を蝕んで。考えれば考えるほど、翔は自らへの怒りを募らせる。
(だが……そんな俺自身の事よりも。何より許せねぇのは……!)
更に一段、翔の身体から吹き出す何か。翔の抱く怒りが、敵意が可視化されたかのように、空気中へと満ちていく。
……その気配を知る者は、翔の身体から感じる気をこう呼ぶだろう。
「……テメェが一番、許せねぇんだよ! 糞雑魚がぁッ!!」
──『殺意』、と。
翔のその意思に反応するかのように、純白のドレスの色が変わる。
穢れなき白は、染まること無き黒へと色を変え。そのデザインも色に反さぬ清楚な物から、肌を多く露出する妖艶な物へと変じていく。
……そんな姿へと変わってしまえば、身体を蝕む『呪い』の力が活性化するのは明らかだ。下腹部に浮き出た紋が淡く輝けば、強い殺意に甘い香りが混じるだろう。
その香りを漂わせながら、翔の身体に纏われたのはバチリ、バチリと奔る雷光の力。肌を焼くようなその熱に、甘い香りは噎せ返る様な濃厚さとなっていく。
だが、そんな自身の変化を翔は気に留める事もない。今、彼の視線の中にあるのは……
「──一瞬で、決める」
絶望と恐怖を源とする、破壊の権化。ただそれだけなのだから。
雷光を纏い、翔が駆ける。その様は言葉通り、稲妻の如く。瞬きの間に距離を詰め、擦れ違う翔と邪神。
──ッ、トン。
まず響いたのは、積み木細工をズラすかのような小さな音。次いで響いたのは、何かが地に落ちた音だ。
響いたその音に、翔は自身の勝利を確信して、呟く。
「……消え去れ、外道」
……直後、身に纏うドレスが弾けて消える。そしてそのまま、翔の身体が崩れ落ちた。心身の限界を越え、気絶してしまったのだ。
そして同時に。邪神の身体もまた、崩れ落ち……塵へと還っていく。
……あの一瞬の交錯で。翔は邪神の首に稲妻を這わせた手刀を見舞っていた。その一撃が、見事に邪神の首を絶ち斬り……その首級を、地に落としたのだ。
邪神の反撃すら許さぬ、圧倒的な早業。この事件の原因を討ったその御業は、まさに神業と言えるだろう。
暴虐のままに動き、多くの人の運命を弄んだ邪神とその信奉者は、こうして討たれた。
事件は、解決を迎えたのだ……
大成功
🔵🔵🔵
シホ・エーデルワイス
アドリブ&味方との絡み歓迎
敵が倒され
私が引き受けた呪いも解呪されたら
帰る前にやりたい事
女生徒達の凌辱等による傷や精神的外傷を【犠聖】で私へ移す
苦痛は救いを求める人の助けになりたいという想いを原動力に
<覚悟と気合いを入れ激痛耐性と狂気耐性>で見せない
引き受けた傷は【贖罪】を使って眠ると消える
心は自己<催眠術>で癒す
なぜそこまで?
心身の傷跡をなるべく残さない事で
新たなUDC事件の火種となるのを防ぎたい
それに心身の傷跡が原因で対人恐怖症など
日常生活が困難になり
最悪命を絶つ事になったら…
私は誰の為に戦ったのか分からなくなる
敵を倒しただけじゃダメだと思う
助けるのなら徹底的に助けきる事で命を失わせたくない
●
降臨した邪神との激しい戦いは、猟兵達の勝利で幕を下ろした。
だが、しかし。事件現場の学園には、多くの人々が残っていた。
「……」
戦闘の最序盤、生贄とされた生徒会長をその身を呈して救ったシホもまた、邪神討伐後も学園に留まっていた。
彼女が今居る場所は、体育館。この事件の被害者となった学生達が一時収容され、現地組織の医療班による治療が行われている場所である。
そんな場所に、自らの傷を癒やし、呪いの解呪も終えたシホが脚を運んだ理由は、ただ一つ。
(少しでも、多くの人を助けたい……)
シホの行動原理の根幹にあるその想いが、シホの身体を突き動かしたのだ。
一人でも多く。女生徒達の心身に刻まれた傷を、哀しみを癒やしたい。その為ならば自らが傷つく事など、どうという事ではない。
……しかし、シホのその思いに。『なぜ、そこまで?』と。人々は当然、疑問を抱くだろう。
それに答えたシホの答えは、事件の被害者を想うと同時に……被害者たちの心身の傷跡をなるべく残さない事で、可能な限り新たなUDC事件の火種となるものを防ぎたいという、世界の行末を案じる物であった。
これ程の大規模な事件である。事件の痕跡が多くなれば、それだけ模倣犯が世を騒がす事に繋がりかねない。この世界の平穏の為にも、それは防がねばならないのだ。
……そこまで深く考えたシホの思いと覚悟を受ければ。現地組織の面々としても助力を要請するのに否は無い。実際、シホの力は有効なのは事実なのだから。
「まだ、抗えますか? 貴女は、どうしたいですか?」
「わたしは……わたし、はっ……」
優しく問いかけるシホの声に、被害にあった女生徒が嗚咽混じりの声で答える。
その返答を聞けば、シホは優しく少女を抱きしめて……
(……ッ、ぅ……!)
その傷を、自らの身体へと移していく。
……身体を蝕む痛み、不快感。だがシホはその二つを胸の内に押し込み耐えて、決して表には晒さない。
助けを求める人々は、まだ多くいる。そんな彼女達の前で表情を歪めては……被害者達に、不安を与えてしまう。
それは、避けたかったからだ。
(助けるのなら、徹底的に助けきらなくては……)
女生徒達は当然ながら皆、多感な年頃だ。故に身体に傷が残れば、その傷が原因で対人恐怖症となるかもしれない。
その結果、日常生活を送る事が困難となり、最悪自らの命を絶つような事にもなりかねない。
そうなってしまえば……
(私は、誰の為に戦ったのか、分からなくなる……)
この行動は、自己満足であるのかもしれない。
それにどれだけ身体を張って事件の痕跡を隠そうとしても。
現地組織による記憶と報道の操作が行われたとしても。
これだけの規模の事件だ、全てを隠し切る事など出来やしない事も判っている。
新たな火種は生み出されてしまうかもしれないし……そもそも、この事件を引き起こした連中に、後援者がいる可能性だって否定出来ないのだ。
だが、それでも。
「──次の人、どうぞ?」
シホは柔らかな微笑を浮かべて、救いを求める人の手を握る。
……救いを求める人の声がある限り。自己満足だと知っていても。シホのその手は、誰かを助ける為に差し伸べられ続けるはずだ。
──絶望と、悲哀と、淫蕩の果て。多くの人々の未来を捻じ曲げた、今回の事件。
その結末は、本来描かれるはずだった物よりも……僅かではあるが良い形となって、その幕を閉じるのだった。
大成功
🔵🔵🔵