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きっとそれは、優しい神様の物語

#UDCアース

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#UDCアース


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●???
 それはおよそ怪物といって差し支えないのない存在であった。
 皮膚からは生物を殺し、物体を崩す酸の霧を撒き散らし。岩のような体はどこが頭でどこが四肢なのかすら判別できない。それでいて全身には黄色く燃える無数の瞳がへばりつき、暗闇の中で爛々と輝いている。
 見るものの正気を削り取るようなおぞましい外見をした怪物は、されど鈴のような美しい声で何かを語り始めた。
「雪は溶け、花は咲いて、実を結んだ後雪が降った。明朝はとうに過ぎている、友よ、君は何をしているのだろうか。次の雪が降るとき、君の笑顔が見れるだろうか」
 それは詩だった。古い友の帰りを待つ、人間の言葉で紡がれた怪物の詩。怪物は動くこともせず、ただ呼び出された場所で美しい詩を紡ぎ続ける。
 その周囲で、不気味な触手が蠢いていることなど知らずに……。

●グリモアベース
「できれば、穏便に終わらせられるのが一番なんだけど……」
 何か考え込んでいた様子のアンノット・リアルハート(忘国虚肯のお姫さま・f00851)は猟兵達の気配に気づくとハッと我に帰った様子で、予知した事件を語り始める。
「UDCアースで邪神復活の儀式が行われてるって情報を手に入れたの。貴方達には儀式を阻止し、邪神を追い返してほしいんだけど……」
 そこまで言うとアンノットは少しの間、何か迷っているように視線を泳がせたが、やがておずおずと古びた資料を取り出した。
「呼び出そうとしている神は鑼犠御・螺愚喇。人間との交流記録が残ってて、それを読む限り悪い人ではなさそうなの」
 記録によれば鑼犠御・螺愚喇は人の言葉を理解し、聞いたものの傷を癒す不思議な詩を持つ、どちらかと言えば善良な類の存在だという。これだけならば躍起になって討伐するべき対象ではないのだが……。
「……鑼犠御・螺愚喇の召喚に引き摺られて、よくないものが儀式場のある街に呼び出されてるの。もしかすると本命はこっちで、彼の召喚はそのための呼び水なのかも」
 だとすれば、人に友好的で簡単に御することのできる邪神というのは恰好の獲物だ。何せ自分達は一切の危険を犯さずに望むものを呼び出し続けることができるのだから。
「心苦しいけど、世界を危険に曝すわけにはいきません。貴方達には鑼犠御・螺愚喇の送還……いや、討伐を依頼します」
 そう言いながらアンノットは一枚の地図を広げた。それは儀式場となった東京郊外の街の地図であり、表面には無数の赤いピンが刺されている。
「予知だと儀式場の正確な位地はわからなかったから、そこは現場で探してほしいの。ただ注意してほしいのがこの赤いピンを刺してる場所よ」
 地図全体にところ狭しと広がる赤いピン、妙に目を引く目印の正体を、アンノットはゆっくりと口にした。
「これは鑼犠御・螺愚喇の召喚に引き摺られて現れた怪物の出現位地よ。これら全てと正面から戦えば、十中八九物量の差で敗北するわ」
 現地組織との協力により住民は既に避難しているので、民間人を巻き込む心配はない。しかしこれだけの数となると敵を避けることも、身を隠すことも難しいだろう。
「敵の数は多いけど、移動速度はそれほどでもないわ。そこで今回は機動力で振り切る電撃戦でいきます」
 作戦は簡単だ、敵に追い付かれないように逃げ回りながら儀式場を見つける、ただそれだけ。役割は大きく分けて三つ考えられる。
 一つ目は圧倒的な機動力で敵を振り切りながら儀式場を探す。しかし敵は数が多いため生半可な速度ではすぐに囲まれてしまうだろう、最低でも車かバイクに匹敵する加速力が必要だ。
 二つ目は攻撃や罠の設置で敵の追跡を妨害する。戦闘は可能な限り避けなければならないが、逃げ回るだけではいずれ包囲される。包囲網を壊すための攻撃は必ず必要となるだろう。
 三つ目は街の様子を観察し、知識的な面から儀式場の場所を予測する。儀式の完遂が目的である以上儀式場にはなんらかの防衛装置、あるいは霊的な特徴が存在するはずだ。それを見つけられれば探索はずっと楽になるだろう。
「怪物達は鑼犠御・螺愚喇の存在に引き寄せられてるだけだから、彼を討伐すれば一緒に消滅するはずよ。だから儀式場の発見を最優先にして」
 作戦を言い終えるとアンノットは少しだけ沈んだ瞳で、猟兵達を見つめた。
「鑼犠御・螺愚喇は人間が好きなの、だから……できるだけ苦しくしないであげて。私達ができるのは、多分それくらいだから」


マウス富士山
●オープニングを見ていただきありがとうございます。今回マスターを努めさせていただきます、マウス富士山と申します。
 UDCアース世界にて怪物に囲まれた街でのカーチェイス、そして何やら善良に思える邪神との出会いを楽しんでいってください。
 今回のシナリオの最終目標は「鑼犠御・螺愚喇の討伐」、その前段階として「怪物を振り切り儀式場を見つけ出す」必要があります。民間人の避難は完了しているため、周囲の目を気にせず猟兵としての実力を思う存分発揮してください。

 皆様のプレイングを心からお待ちしております。
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第1章 冒険 『チェイサーズ・ドリフト』

POW   :    攻撃や進路妨害で相手を邪魔する。

SPD   :    加速や機動力で追い抜きをかける。

WIZ   :    知識や装置などで最適解を見つけだず

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

六代目・松座衛門
【戦闘用人形「暁闇」】に【多節棍「双爪丸」】を装備させ、地図から怪物の出現位置に偏りがないか確認。

「電撃戦かぁ。なら身軽なほうがいいな!」

自身の仮初の肉体を解除しつつ、【錬成カミヤドリ】にて複製した自身の器物「十字形の人形の操作板」と共に、【暁闇】の各部へ糸を繋げ、無人の操り人形となって行動を開始。

。○(この状態だとしゃべれないから、連携には注意しよう)

行動の指針としては、怪物の出現が集中していたら、その場所から引き離すため、怪物からの攻撃を【フェイント】で躱し、【鬼猟流「疾風」】で反撃しつつ引きつける。他の猟兵への攻撃も【武器受け】で【かばう】!

【SPD】選択。アドリブ、連携歓迎


木目・一葉
人間が好きか
本当にそういう邪神か、それとも結果的にそう見えるだけか
詩を聞いてみたくはあるが
「叶わぬだろうな」
聞き入って何かあったら大変だ

【WIZ】知識や装置で最適解を見つけだす

機動戦開始前に高い建物へ登って街を見渡し、地図の敵出現位置と見比べ、複数の包囲されにくい箇所の建物と怪しいモノがないか確認

機動戦開始後は、包囲されにくい箇所の建物の上へと移動し、そこが包囲されるまでに見える敵集団の様子と位置及び街の様子の変化を、逐次仲間へ伝える
また敵側に、念の為儀式の防衛装置の様子を見に行こうと集団から離れる者がいたら、影の追跡者を使う
それでもし防衛装置などを発見したら仲間へと連絡する
その行動を繰り返す


才堂・紅葉
・SPD指定
「何とも言えない話ねぇ」
軽く息を吐く。
要はその起点になってる邪神を迅速に処理すればよい話だ。
この類の話は相手に感情移入すると碌な事にならない。
出来るだけ事務的に処理したいものだ。
やる前から少し気が重い。

・業務手順は街の地図を読み込んで【情報収集】。【地形を利用】し榴弾を用いた【破壊工作】で敵進路に制限をかける。【礼儀作法】として事前に他猟兵とは打ち合わせるわ。
現場では段取り通りに赤印を潰す。味方が危ういなら【援護射撃】、上着を脱いでのナイフ突撃【零距離射撃】【吹き飛ばし】【手をつなぐ】【怪力】【逃げ足】等で撤退援護。
移動は基本バイク。他猟兵の足があるなら便乗したいわね。
※連携歓迎



●魔都侵入
「人間が好きか……」
 電波塔の上から街を見下ろしながら、木目・一葉(生真面目すぎる平凡な戦士・f04853)は独りごちに呟いた。それが確かだとすれば話をしてみたい思いはあるし、傷を癒す詩というのにも興味はあるが……
「叶わぬだろうな」
 UDCには未知の部分が多すぎる、人間に友好的というのもどこまで真実なのか。
「ほんと、何とも言えない話ねぇ」
 一葉の言葉を聞いていたのか、才堂・紅葉(お嬢・f08859)が同意するように答える。件の邪神が本当に人間に友好的だとしても、儀式の起点にされている以上処理しなければ滅びるのは世界の方だ。わかってはいても、少しだけ気が重い。
「……まあ、ほら、まずは儀式場を見つけないとな!難しく考えるのはそれからでいいだろう!」
 考え込む二人の背中を押すように、六代目・松座衛門(とある人形操術の亡霊・f02931)が明るい口調で語りかける。どのみち鑼犠御・螺愚喇の出会うには街に溢れる怪物の大群を抜けなければならない。今の段階で下手に思考を割くのは危険だ。
 どこか迷いを残しながらも、紅葉はバイクのエンジンをかける。猟兵用の装備ではなく現地で拝借した市販品だが、足としては充分だろう。
 街の観察をしていた一葉から地図を受け取ると、二人の猟兵は魔の都となった街へと飛び込んだ。

 召喚された怪物――不気味に蠢く触手の塊――は、我が物顔で街を練り歩き、路地裏はおろか表通りにも溢れかえっていた。街の住民がまるごと怪物と入れ替わってしまったような異常の光景の中で、突如怪物達の頭上で爆発が起きた。
 爆発は建物を破壊し、降り注ぐ瓦礫が怪物達を押し潰す。朦々と立ち込める土煙を切り裂きながら、一台のバイクが怪物の群れの中を駆け抜けた。
「ポイントE7破壊完了、次!」
 バイクに登場した紅葉が上空に向けて空砲を上げると、それを確認した一葉は素早く街の様子を確認する。予知で判明した出現位地を潰され、瓦礫で分断された怪物達の動き方は二つ。
 一つはあてもなくその場を徘徊する、もう一つはどこか目的地があるように一直線にどこかへ移動する。その内一葉は移動を開始した怪物達を追跡した。移動した怪物が別の怪物達と合流し、その場で徘徊を開始したのを確認すると、一葉は妖刀をかかげ太陽の光で信号を送る。
 地上をバイクで駆けながらその信号を受け取った紅葉は榴弾を装填すると、迷うことなく指定された建物へ撃ち込んだ。
 再びの爆発と倒壊、それによる怪物の撃破分断を確認した紅葉は再び空砲を構えるが、その前に怪物の群れが壁のように立ちはだかる。
「松座衛門さん!」
 紅葉の掛け声と共に、バイクから一台の人形が飛び出した。それは松座衛門の本体とその分身が操る戦闘用人形【暁闇】、それは怪物の群れに飛び込むと手にした多節棍【双爪丸】を振り回し次々と怪物を切り裂いていく。
 無数の糸で操られる暁闇には関節や移動範囲など人間にある制限は存在しない。360度動くその腕は人形を取り囲もうとする怪物に一切の接近を許さず、さながら台風の目のように自身の周囲に安全地帯を作り出していた。
 暁闇に敵が集中したことによってできた隙間を紅葉が潜り抜けたことを確認すると、松座衛門は手近な建物に素早く暁闇を滑り込ませる。それを追って怪物達が一斉に建物の中に流れ込み、狭い空間に密集してしまったことで怪物同士の触手が絡まり身動きがとれなくなる。
(やっぱり身軽にして正解だったな)
 錬成カミヤドリの念力で半ば引きずるように動かされている暁闇は並の猟兵よりも素早く動くことができる、早々追い付かれることはないだろう。
 可能な限り多くの敵を引き連れながら、松座衛門は紅葉とは逆の方向へ駆け出していく。今の自分の役割は少しでも多くの敵を仲間達から引き離すことだ。
 敵の分断と破壊工作、これを繰り返し群れから離れた行動をする怪物を見つけるのが三人の作戦だ。
 そしてついに街を俯瞰し、指揮に徹していた一葉が混乱した怪物達の中で群れに交ざらずどこかへ向かう個体を見つけ出した。
「あれだ、追え!」
 素早く影の追跡者を放ち、怪物を追わせると妖刀による光の信号で猟兵達に怪しげな個体の発見を伝える。
 後は奴が目的地に着くまで時間を稼ぎつつ、他の猟兵と合流するだけだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

リック・シックハント
【心情】
……優しい神様なら、できれば傷つけたくないな。
召喚方法があるなら、きっと送還方法もあるはずだよね

【行動】
怪物の出現位置には敵の痕跡があるはず。
直接現場に向かって調査をしよう。

【ライオンライド】を【騎乗】でギリギリまで加速しながら現場をまわって、
【動物と話す】で現場周辺に残っている動物に、見慣れないことや、怪しい行動をしていた人が居なかったか質問してまわるよ。
もし共通の情報があったら、【血霧の獣】でその存在の痕跡を【追跡】させよう。
そこに儀式場か、そのヒントがあるはず!

他に現場をまわって調査をする人がいるなら協力したいな。
一人よりみんなで調査する方が、きっと分かることも多いから。


ミアス・ティンダロス
心境
少々興奮気味でやる気満々かな
「人間に友好的な邪神さん、ですか?」
「やっぱり、UDC達と共存する可能性がありますよね!」
「それでも……いや、だからこそ、そのを悪用することを見逃せないのです。」
「っよし!ささっとこの事件を片付けよう!」

【姿の見えないゼリー生物】を召喚し、敵の痕跡を探します。
【追跡】と【忍び足】を併用して、儀式場を特定しようとします。


ゾシエ・バシュカ
仕方ないです。傍迷惑なのでお帰り願いましょう。
(けっこうドライな感情です)

儀式場の在処を探します。
怪物たちは鑼犠御・螺愚喇に引き寄せられているとのことなので、きっと全体的には邪神の居場所=儀式場を目指して動いているはずなので、地図や実際の怪物の行動から怪しい場所にあたりをつけます。他の人がもっと鋭いことを言うなら乗っかります。
『使い魔の召喚』は最後の詰めに。
目星をつけたあたりでたくさん小鳥の霊を召喚して、飛んでいく方についていきます。戦闘でユーベルコードが使われているとそちらにも飛んでいくはずなので、たくさん。正直言ってめちゃくちゃ疲れます。



●邪神のもとへ
「人間に友好的な邪神さん……やっぱり、UDC達と共存する可能性がありますよね!」
「そうだね。優しい神様なら、できれば傷つけたくないな。召喚方法があるなら、きっと送還方法もあるはずだよね」
「ええ、傍迷惑なのでお帰り願いましょう」
 街を疾走する黄金の獅子。それを操るリック・シックハント(巡る旅人・f00522)は、同乗するやや興奮気味のミアス・ティンダロス(夢を見る仔犬・f00675)の言葉を優しく肯定する。
 そんな二人の話にはあまり興味の無さそうな様子で、同じく獅子に同乗しているゾシエ・バシュカ(蛇の魔女・f07825)は街の地図と周囲の怪物の群れを交互に観察する。
 怪物達は基本的に群れを成して徘徊し、自分達とは別の種族が近づくと攻撃を仕掛けるという単純な動きをしている。しかし時として奴らは群れから離れてどこかへ向かう時がある。多くの場合は別の群れに合流しているだけだが、もしそれ以外の目的で群れから離れる個体がいれば、それは自分達を引き寄せる鑼犠御・螺愚喇の居場所、つまりは儀式場に向かっているはずだ。
「っよし!ささっとこの事件を片付けよう!共存の希望があるからこそ、邪神さんを悪用することを見逃せないのです!」
 気合いを入れ直すミアスだが、獅子が急にブレーキをかけ危うく振り落とされそうになる。敵に囲まれたのかと一瞬身構えるミアスだったが、獅子の目の前には怪物の代わりに一羽の烏が羽を休めていた。
「……なるほど、ありがとう。気をつけてね」
 リックがそう言うと同時に烏は一度だけカァと鳴くと、そのまま飛び立っていった。怪物に追い付かれる前に獅子が再び走り出すと同時に、リックがゾシエの地図に新たなピンを刺していく。
「ここが怪物が現れる前、急に人の出入りが多くなったらしいんだ。儀式場の可能性は高いと思う」
 動物会話、一部の猟兵が使える特殊な技能だ。新たに追加されたピンと出現位置を比べると……なるほど、僅かばかりではあるがピンの周辺は怪物が集まっているように見える。
 他の猟兵達の作戦のおかげで敵の動く流れも見えている。それらの情報も合わせ儀式場の確率が高い建物に目星を付けると、ゾシエは静かにユーベルコードを発動する。
「来て、教えて」
 【使い魔の召喚】、超自然的な異変を感知するレーダー能力を持った小動物の霊を召喚するユーベルコード。今回呼び出したのは複数の小鳥の霊、彼らは怪物達に捕まらないよう空へ飛び立つと、目星を付けた建物へ一斉に飛んでいく。後は小鳥達の反応を待つのみ……そう思った瞬間、疾走する獅子の横を何かが通り抜けた。
 影の追跡者、狙った対象を追い続けるユーベルコード。それと同時に特異個体発見したという猟兵からの信号が届いた。
「空白(きよ)く、優しく、慎ましく――追いかけなさい、不可視の吸血鬼さん!」
 その影に最も素早く対応したのはミアスだった。【鋭霊召喚・星から訪れたもの】を発動すると、特異個体を追跡する影の追跡者を標的に姿の見えないゼリー生物を放った。
 それは影の追跡者と同じ分類のユーベルコード。視界を共有したミアスはすぐさま地図上に生物の進んだ経路を書き出すと、リックはそれに従って黄金の獅子を走らせた。
「ゾシエさんの小鳥も一匹、同じ方向に向かって飛んでいます。もしかしたら大当たりかもしれません」
 視線の先にあるのは古びた廃ビル。元々マンションになる予定が途中で取り止めとなり、未完成のまま放置されているものだ。
 あの中に鑼犠御・螺愚喇、人と共存できるUDCが居る。期待で高鳴る胸を押さえながら、ミアス達は怪物の溢れる街を駆け抜けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『パープルテンタクルズ』

POW   :    押し寄せる狂気の触手
【触手群】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太い触手による刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    束縛する恍惚の触手
【身体部位に絡みつく触手】【脱力をもたらす触手】【恍惚を与える触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    増殖する触手の嬰児
レベル×5体の、小型の戦闘用【触手塊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●廃ビル
 猟兵達がついた廃ビルは、既に怪物達の巣となっていた。圧倒的な数の触手の怪物、しかし猟兵達が追いかけた怪物は確かにこの建物の中に入っていった。
 さすがにこの群れを強引にかき分けて中に入ることは難しそうだ、攻勢に転じるならば今だろう。背後からも怪物の群れは迫ってきている、後戻りは許されない。
 それぞれの獲物を手に取り、猟兵達は怪物の群れへと飛び込んだ。
才堂・紅葉
「うわ。あいつかぁ……」
触手を前に思わず口について出た。
昔手酷い目に合わされ、嫌な思い出があるのだ。

今回の業務手順は、建物の構造を頭脳担当な猟兵達から【礼儀作法】で【情報収集】。
作戦は【太い触手】をUCの重力場に捉えて地面に叩きつける事。他の細かいのも絡んでるから、それなりの数は一緒に落ちるでしょ。
【触手群】の攻撃を誘い、わざと食らって【太い触手】を誘導。こいつを見切って、零距離で封印を解いたリボルバーからUCを叩き込むわ。
乙女の危機なので協力者がいてくれると有り難いわね。切実に。
空いている時間は【触手塊】を射撃で潰すわね。
・アドリブ推奨、連携歓迎


木目・一葉
「ヒィッ……」
目にした触手の気持ち悪さに小さな叫びが漏れる
「あ、あの触手どもを排除して、進む!」

基本的には味方と常に連携をとり、離れすぎないように戦闘を心がける
ポジションは中衛だ
特に大型の触手の怪物が前衛の仲間に向かって触手を伸ばしてきたら、即座にそれを妖剣解放の衝撃波で切り落とす
また複数の触手が一塊に集まったり、小型の触手塊を召喚したときは、すぐさま前衛にでると同時に、斧でグラウンドクラッシャーを放つ
この地形破壊で、残った触手どもも動きにくくなるだろう
無論、これを使うときは進行方向の障害になったり、仲間の邪魔にならないように注意する
建物内に、邪神のことを記載した本があれば手に入れておきたい



「ほら、こっちこっち!」
 怪物達の前に降り立った紅葉はすかさずアサルトライフルの銃口を群れに向け、引き金を引いた。放たれた弾丸は次々と怪獣を撃ち抜いていくが、さすがに一度全滅させることはできない。撃ち漏らした数匹の怪物が一斉に触手を伸ばし、彼女に反撃を仕掛ける。
 一匹目の触手を身を屈めて躱し、二匹目はライフルで迎撃、しかし三匹目の触手がライフルを絡めとり動きに隙ができたところで、四匹目の触手がついに紅葉の身体を捉えた。
「嘘っ!?」
 焦ったような声に反応してか、最初の二匹の触手も紅葉の身体を捉え、ジリジリと距離を詰めてくる。その塊の中から一際太い触手が鎌首をもたげるように現れ、紅葉に狙いを定めるのを見て……彼女はニヤリと笑う。
 刹那、一陣の風が戦場に吹き。彼女の身体に絡み付いた触手を切り払った。

少し時間は戻って、戦闘が始まる前。
「うわ。あいつかぁ……」
 廃ビルに群がる触手達を見て、紅葉は思わず悪態をつく。以前同じような相手に手酷い目に合わされ、嫌な思い出があるのだ。
「……乙女同士、ここは協力と行きましょう?」
 先程も協力した一葉に紅葉がそっと声をかけるが、彼女の方はそれどころではなかった。
「ヒィッ……」
 無数の蠢く触手の塊、そのあまりの不気味さに一葉の口から小さな悲鳴が漏れる。しかしここで立ち止まっていては挟み撃ちだ、戦術的にも精神的にもそれだけは避けたい。
「……大丈夫?」
「だ、大丈夫だ!あ、あの触手どもを排除して、進む!」
 声は震えているが、腰は引けていない、武器もしっかり握っている。……それだけ確認できれば、背中を預けるには充分だろう。紅葉は自分のリボルバーを見せると、一葉に作戦を告げた。

 妖剣解放を発動し、衝撃波で触手を切り落とした一葉は獲物を斧に持ち替え、怪物達と紅葉の間に割って入る。しかし既に太い触手は突きの姿勢に入っている、このままでは二人まとめて串刺しにされるのみだが……
「コード:ハイペリア承認。高重力場限定展開ランク1、実行!」
 リボルバーの封印を解いた紅葉はその詠唱弾頭を、一葉の持つ斧に撃ち込んだ。
 一葉の両腕に高重力の負荷がかかる。その重さに押し潰される前に、一葉も自らのユーベルコードを斧に重ねた。
「グラウンド、クラッシャー!」
 叫びと共に地面に叩きつけられた刃は、その技名の通り大地を砕いた。
 突如として出現したクレーターに呑み込まれ、四匹はおろか多くの怪物が奈落の底へと落ちていく。そして瓦礫の雪崩は怪物達を押し潰し、空に大きな煙の柱を上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ゾシエ・バシュカ
悪気がなくたって優しく見えたって、相手はオブリビオン。たぶん気まぐれなんじゃないんですか。
…と思って、邪神に同情的な仲間を少しばかり奇異の目で見てしまいます。ダークセイヴァー出身なので。
そんな考えの人もいるんだと心に留めつつ、とりあえず今は目の前の気持ち悪い怪物に対処しないと。

廃ビル内の敵を攻撃します。後続が追いついてくる前に道を開きましょう。
使い魔を飛ばして牽制しつつ、地形を利用してヒットアンドアウェイ。
『邪視』で敵に隙を作り、黒剣と影から伸びる剣で倒していきます。
『邪視』でなにが起きるかはわたしにもわからないので臨機応変に。飛んできた流れ弾が敵に当たるくらいなら簡単なのですが。


リック・シックハント
【行動】
【リザレクト・オブリビオン】を使用して、可能なら他の猟兵にも指揮をしながら戦闘の補佐をするよ。
基本は【戦闘知識】を元に敵の行動を予測して常に【先制攻撃】が取れるような立ち回りを指示。
攻撃時は【鎧無視攻撃】の経験から【野生の勘】で攻撃の通りやすい部分を見抜いて周囲に伝えるよ。
他の猟兵がピンチの時は召喚体に庇ってもらおう。

【心情】
これだけいるなら手数を増やした方がいいよね。ボクは攻撃に参加できなくなるけど、その分も全力でサポートするよ!



 悪気がなくたって、優しく見えたって、相手はオブリビオン。友好的なその態度がただの気まぐれじゃないと、誰が言い切れるだろうか。
 そんなことを考えていたゾシエだったが、廃ビルに潜む怪物達を見てすぐに思考を切り替える。先はどうあれ、今は目の前の怪物を対処しなければ。
「これだけいるなら手数を増やした方がいいよね、サポートは任せて」
 ゾシエが群れの中に降りる準備をすると、リザレクト・オブリビオンにより召喚した死霊を従えたリックがその隣に立つ。獣のような風貌とは裏腹に優しい瞳をした彼は、思えばオブリビオンに同情を示すような言動をしていた。
 ゾシエの居た世界ではオブリビオンは明確な悪であり、他の世界でも基本的にそれは変わらないだろう。
 しかし、そんなオブリビオンに歩み寄ろうとする者もいる。そんな奇妙な事実を心に留めつつ、ゾシエは触手の群れを睨んだ。
「視られていますよ。わたしの、瞳に」
 呟くような詠唱と同時にビルの中を徘徊していた怪物達が一斉に外へ飛び出した。そのまま猟兵達に襲い掛かるのかと思いきや、その場でのたうち回るばかりで攻撃してくる様子はない。
 よく見れば触手の一部が煙を上げて焼け爛れている。ビルの中で廃液でも浴びたのだろうか、だとすれば随分不幸なことだ。そんな不運な偶然を引き寄せるのがゾシエのユーベルコード邪視(イーヴルアイ)の能力。
 それにより隙を見せた怪物達にリックはすかさず蛇竜を放った。一瞬のうちに群れの中心まで潜り込んだ蛇竜は、目についた獲物をその牙で次々と触手を噛み砕いては呑み込んでいく。
 塊というのは本来噛み砕きにくいものだが、この怪物には攻撃にも使える太い触手が生えている。それを中心に周囲の触手を束ねるようにして噛み付けば、牙を滑らせず噛み千切る事が可能だ。
 同時に飛び込んだ騎士も盾を構えながら手にした剣怪物を斬り倒していく、スピードこそ蛇竜に劣るが騎士の役目とはただ敵を倒すのみではない。どうにか体勢を建て直し、反撃してきた怪物の触手を盾で防ぐと、その下から何かが飛び出した。
 それは影から伸びる無数の剣。その刃が触手を切り刻むと、剣は騎士の影……ではなく、騎士の影に紛れたゾシエの影に吸い込まれるように収まる。
 盾に身を隠しながら、時として身を乗り出して戦うヒットアンドウェイ。騎士の役割はゾシエの身を守りながら、彼女の攻撃を援護することだ。
 一体一体を確実に潰す堅実な戦い方をとりながら、二人と二体は確実にビルへと接近していく。その奥に居るであろう邪神は本当に善良なのか、直接接触すれば真実は明らかになるだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

佐田・忌猿
その意思の在り処に関わらず邪神なのだろう。
人に仇なす以上、そう定義しなければ対処出来ない。浮き世の理なれば、それを責める事は出来ない。
だが退去を求めるなら礼がいる。少なくともこちらを想う神なれば。
まぁ、己は神より零落した身分なのだが。

方針は皆の活躍で触手が分散したのを見やり、降魔化身法で化身。
火車の力で全身に焔を纏い、その場で跳躍して縦回転。床を蹴って回転を加速させながら、増強した身体能力で文字通りの火車となり、触手供を焼き潰しながら奥の通路まで疾走し、後続の道を作ろう。
「化身忍法 紅蓮忌車!!」

アドリブ歓迎



 廃棄された高層建築物を見上げながら、佐田・忌猿(鬼面忍者・f10152)は静かに考える。
 邪なる神と名付けられたそれが人に仇なすのならば、相応の対処をしなければならない。しかし、もしそれが人を想う神であり、人の声に応じてくれるようであれば……また違う道があるかもしれない。
 まあそんなことを考える自分は神より零落した身なのだがと、忌猿は少しだけ自嘲すると怪物達の方へと向いた。仲間達の活躍によって奴らはかなり分散している、攻めるなら今が好機。
 印を結び精神を研ぎ澄ました忌猿はその身に三つの魔を降ろす、降魔化身法。身体能力の超強化の代償に魂を蝕む呪縛の苦しみに胸を押さえながらも、鬼面の忍びは怪物達へと跳んだ。
 吹き出した焔が全身を覆い、跳躍の勢いで発生した回転は渦を作る。歩んだ後を灰にしながら地面を駆けるその姿は文字通り火車そのものだ。
「道を開け触手共!化身忍法 紅蓮忌車ぁ!!」
 雄叫びと共に突撃した火車は進路上の怪物を全て薙ぎ倒し、残る炎で侵入を阻む壁を作る。建築物の中へと続く通路へと侵入に成功した忌猿の背後には、猟兵が進むための炎の道が築かれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『鑼犠御・螺愚喇』

POW   :    友、死にたまふことなかれ
【友を想う詩 】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD   :    怪物失格
自身の【友の帰る場所を守る 】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ   :    永遠の怪
【皮膚 】から【酸の霧】を放ち、【欠損】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●廃ビル 儀式場
 それは社だった。
 芸術品にも見える透明の社。硝子のような素材で作られたその中心に、その神はいた。岩にも樹木にも見える身体に、全身に付いた黄色く燃える瞳のような発光体、足元には焼け爛れ動かなくなった触手の怪物が複数倒れている。
 鑼犠御・螺愚喇は置物のように動かない、全身の発光体で睨むように猟兵達を見つめている。
佐田・忌猿
・POW指定
待ってるんだべなぁ。
良い出会いが有ったんだべなぁ。
響き渡る歌に対し、傷が癒えて行くのを感じる。
教えの形は違えども、その社の在り方が祈りである事は分かった。
自身もかっては奉られていた身だ。
だが、それでもここで滅さねばならぬ。
「遠き異邦の御方よ、佐田大神が使い忌猿。推して参る」

・方針はシンプル。初手でダッシュから壁を蹴って大きく跳躍し、焔を纏っててからのUC。相手に叩き込みつつ、地形破壊効果で社を崩して挑発をかける。後は正面で格闘と武器受けし、味方への攻撃をかばっていくべ。
 言い訳することは何もない。倒す以外の手を持たぬ以上、一刻でも早く終らせるまでだべ。
 アドリブや連携は歓迎するべ。


才堂・紅葉
・POW指定
全くもって度し難い。
腹が立ってくる。
澄んだ歌声を聞いて、痛みが引いていくのを感じて苦い息を吐く。
これから殺す相手に己は共感しているのだろう。
度し難い話だ。
戦場では相手を理解した奴から死ぬ。
教わった通りである。
まったく度し難い。

・業務手順は小細工なし。牽制射撃で情報収集し、礼儀作法で連携依頼。
 援護射撃を継続し様子を見る。
 ジャケットを被るようにして身を庇い、隙を見てあの体を蹴りつけて跳躍し、真上から封印解除の重力弾を狙うわ。しかし銃なのに有効射程30cmってゴミだと思うの!

・アドリブや連携は歓迎です



「……盃今持たず、愛でる花もなし、歓待兀山の如く恥じ入るが、せめて詩にて接遇を見せん」
 詩を詠むような鑼犠御・螺愚喇の言葉に、忌猿と紅葉の体から痛みが消えていく。肉体的な傷だけではなく、降魔化身法で受けた呪いの痛みにまでも。
 遠い昔、まだ奉られる神であったころ、自分に神楽を見せてくれた者の記憶が忌猿の脳裏によぎる。紅葉もまた、かつて教わった言葉を思い出していた。
 戦場では、相手を理解したものから死ぬ。
 全くその通りだ。会話のできる相手に対して、どうして武器を向けられるのか。伸ばした手が、銃を掴む事ができずに宙を漂うと。
 「……遠き異邦の御方よ、佐田大神が使い忌猿。推して参る」
 焔を纏った忌猿が、跳躍と共に鑼犠御・螺愚喇の懐へ飛び込んだ。天之八街、鋭く突き出した膝が神の身体に突き刺さり、その衝撃が社を揺らす。それに反応してか、鑼犠御・螺愚喇の体から細長い枝のようなものが伸びる。
 その様子を見て我に帰った紅葉は反射的に銃を抜き、枝を落とすように引き金を引く。急激に伸びた枝は社全体を覆うように広がり、社に直撃する弾丸を防いだ。
 鑼犠御・螺愚喇からは抵抗を感じない、倒されることは了承済みなのだろうか。しかし社を覆う根は本体よりもはるかに堅く、それを守ろうとする確かな意思を感じる。
「あんた、良い出会いが有ったんだべなぁ……」
 思わず、忌猿の口から優しい言葉が漏れる。近くで見てわかった、この社は儀式のために作られたものではない、もっと昔、別の場所で、確かな祈りを込めて作られたものだ。
 ならば自分達にできることは、ただ一つ。
「……紅葉殿!」
「了解です!」
 忌猿が呼び掛けた時には既に紅葉は根の間を潜り抜け、社の中に潜り込んでいた。そして鑼犠御・螺愚喇に取り付いた忌猿の肩に足をかけると、土台の忌猿が彼女を乗せたまま大きく跳躍した。
 「高重力場限定展開、ランク1……実行!」
 絞り出すような叫びと共に、重力弾を放つ。有効射程30cm、使いにくい銃とは思っていたが、その短い射程を今日ほど恨んだことはない。
 すぐ目の前にある鑼犠御・螺愚喇の体が、高重力場により大きくひしゃげながら社ごと沈みこんだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ゾシエ・バシュカ
私自身、「お帰り願いましょう」と言ったのはは本心なので。
ですが、もし誰かが鑼犠御・螺愚喇と対話を試みるのであれば……時間稼ぎくらいなら、してあげましょう。

後ろからやってくるであろう触手の群れの残党を迎撃・足止めします。
黒剣に血をくれてやって『血啜り蛇の剣』に同調変形。三又の蛇腹剣状の攻撃回数重視型。
意のままに旋回する刃の鞭で寄せ付けず、多少の傷なら激痛耐性と生命力吸収で耐えます。
「私と踊ってもらいます。横やりは無粋ですからね」

誰も対話しないか失敗したら鑼犠御・螺愚喇の撃破に動く。
『血啜り蛇の剣』を攻撃力重視型に。見た目は黒剣のままで、命中すると敵の体内で増殖・枝分かれして手ひどい傷を与えます。


リック・シックハント
【心情】
どうして召喚に応じたのかわかれば、穏便に済む道のヒントにならないかな。
できることなら、みんなが幸せに終わりたいな。

【行動】
【怨嗟の宝珠】を使って交流を試みるよ。
普段は【リザレクト・オブリビオン】に指示を出すのに使う道具だけど、同じオブリビオンなら上手く使えば互いの心を繋げることができるかもしれない。戦いたくないボクの気持ちを伝えて、相手の気持ちを知ることができれば、この戦いを止められるはず。
自分自身もオブリビオンに近づくために【超過憑依】でオブリビオンの力を宿して、少しでも発動時間を延ばすために『紅い瞳を持つ無数の生物の影が自身の形に凝縮されて蠢いている』真の姿を解放するよ。


木目・一葉
その想う友とは一体誰だ、一体何なのか
「心優しいというのは本当か……
送還できる方法はないのか……」

まずは不用意に近づかなければ、酸の霧を受けることはない筈
ここが召喚された場所なら、召喚した時に用いた道具とその手順書もあるだろう
まずは影人の縫い針を使用し続けて相手のUCを封印しながら、送還のヒントを社と周辺から探し、また情報収集を駆使して送還方法を推測する
「おそらく友という存在、それが引っ張ってきたはずだ」
使用した道具に友と見立てさせた代用品があるかもしれない
同様に送還を試みる人がいたら協力する

・送還方法不明時
相手のUCを封印させたまま妖剣解放の衝撃波で攻撃する
「その想いは今後、利用させないよ」


六代目・松座衛門
「あんたにとっては大事な場所なんだろうけど、被害が見過ごせないんでな!倒させてもらう!」

大型ライフル「玲瓏」で【援護射撃】、【フェイント】を混ぜながら人形「暁闇」を敵へ接近させる。

「そこだ!【疾風】!」
十分に人形が敵に接近出来たら「玲瓏」を手放し、十指で人形の操作に集中。
敵の動きを鈍らせる、もしくは回復に専念させるため、敵の胴体(?)目掛けてUC【疾風】を発動。

攻撃後は、他の猟兵への攻撃を人形【武器受け】で【かばう】。

【SPD】選択。アドリブ、連携歓迎



「……さて」
「あんたにとっては大事な場所なんだろうけど、さすがに被害が見過ごせないんでな!」
 突撃した猟兵を見てゾシエと松座衛門も武器を構える、背後から怪物達が迫っている以上あまり時間をかけたくはないが……。
「少し待った!」
「ちょっと待って!」
 二つの声が、その動きを静止させた。
「神様なら召喚に応じないって選択肢もあるよね?わざわざ応じてくれたってことは何か理由があるんじゃないかな」
「それと、ここは儀式場だ。召喚に用いた道具を調べれば逆に送還させる方法も見つかるんじゃないのか?」
 リックと一葉の言葉に松座衛門が何を悠長なと言いかけた瞬間、ゾシエが踵を返した。
「じゃあ時間は稼ぐので、そっちは任せます」
 そう言ってゾシエは儀式場を飛び出し、外へと向かった。

 外に出たゾシエが見たのは、視界一面に広がる触手の海であった。まだ距離は遠いが、あの数と対峙すれば最後戦いにすらならずこちらは敗北するだろう。つまりリミットはあれが来るまで、優先すべきは這いよる怪物の残党の迎撃。
 まだ突入の際にできた焔の壁は残っている、防戦ならばこちらが有利だ。それを確認したゾシエは黒剣を手の平に当てると、勢いよく刃を引いた。
「引き裂け、『血啜り蛇』」
 手の平から溢れた鮮血を纏い、剣がその形を変える。多頭の蛇であるヒュドラを思わせる三又の剣、それをしっかりと握りしめるとゾシエは背後のビルを横目で見た。
「横槍は無粋ですからね」
 焔の壁を越え、接近してくる怪物達へ剣を振るう。その刀身はスイングと同時に鞭のようにしなると旋回しながら三体の怪物を葬り、それ以上の相手を同時に負傷させる。
「しばらく、私と踊ってもらいます」
 三又の蛇腹剣、血啜り蛇を構えた蛇の魔女は、儀式場へ続く通路を塞ぐように怪物達と相対した。

「影よ、仇なす業を縫いつけよ!」
 一葉の詠唱と共に影の追跡者が鑼犠御・螺愚喇の懐に潜り込むと、影の針を放出しその身動きを封じる。追跡者を通じて自らの生命が流れ出ていくのを感じながらも、彼女は気丈な笑顔でリックにサインを送った。
 本当はこんな拘束も必要ないとは思うが、これから行うのは前代未聞の試みだ。念には念を入れた方がいい。
 一葉のサインを受け取ったリックは大きく息を吸うと、ユーベルコードを発動した。
 超過憑依。オブリビオンの力を宿して身体を強化するこの技は、言い換えれば自らをオブリビオンに近づける技だ。全身から血を流し、負荷の激痛に襲われながらも、リックは意識を保ち手に持った宝珠を鑼犠御・螺愚喇の身体に当てた。
 本来はリザレクト・オブリビオンで召喚した死霊に指示を出すための道具だが、自らもオブリビオンとなっている今なら……!
「君がなんでここに来たか、教えてほしい」
 その言葉に答えるように、リックの頭に映像が流れ込む。
 人間の住処に迷い込んだ自分を匿ってくれた少年。彼は成長すると村の長となり、住む場所として社をくれた。しかし、遠くで戦が起こると村のためと言ってどこかへ去ってしまった。
「後、少し……!」
 負荷に耐え、記憶の先を見るために、リックは真の姿を解放する。身体は黒く染まり、無数の赤い瞳が全身に開く、よく見ればそれは様々な動物の影がリックの形により集まった集合体の姿であった。
 傷を強引に癒したリックは鑼犠御・螺愚喇の記憶の先を見る。
 感じたのは匂い。間違えるはずがない、彼の匂いだ。遠くからする友の痕跡に、自分はその手を伸ばし……

「そこまでだ!」
 リックの限界を見抜いた松座衛門が、その体を鑼犠御・螺愚喇から引き剥がす。元の姿に戻ったリックは、自分の見たものを話した。
「召喚に応じたということは、その匂いが彼を引っ張ってきたはずだが……そんなものあっただろうか?」
 彼が映像を見ている間儀式場を探っていた一葉だが、社以外に道具と言えるようなものは残されていなかった。
 悩む一葉の横を通り、暁闇を構えた松座衛門が立つ。
「……そこだ!【疾風】!」
 人形の中に納められた刃が、鑼犠御・螺愚喇の胴体に突き刺さる。それを見た一葉が声を上げるが、松座衛門は人形を操る指先に全神経を集中させる。胴体を切り開き、奥へと進む暁闇の刃が、何か硬質なものに触れた。
 その瞬間松座衛門は勢いよく糸を引き、刃に触れたものを引きずりだした。
 それは人の骨だった、あちこちに目に見える傷が残った古い骨。それを
見て、一葉すぐにその正体に気がついた。
「これが召喚の起点か、儀式を潰されないために召喚する神の中に隠した……」
「どこからか掘り出してきたんだろうな。そして引き寄せられた」
 召喚に起点となるものがあるとすれば、それを守るのに一番適しているのは召喚物の内側だ。そうしてしまえば、事実上弱点を一つ潰せるのだから。
 しかし鑼犠御・螺愚喇は友の亡骸に気づかない。不完全な召喚で認識がずれているのか、誤認を含めた儀式なのかはわからないが、真実が白日のもとに晒されても彼は来ない友を待ち続けている。
 召喚の起点である骸を破壊すれば、おそらく鑼犠御・螺愚喇を強制送還できるだろう、それで事態は解決するが。
「何か、できることはないのだろうか……」
 友を待ち、思い出を守ろうとする心優しい神の姿を見上げながら一葉はポツリと呟いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

木目・一葉
そうだ、出来ることはある
まだ間に合う
この邪神は、新しい友達を求めて周囲に害悪を振りまく、といったことはしていない
「たった一人の大切なトモダチを求めてるのなら……」
まだ真の意味で『邪神』ではない

真の姿を解放
「これから勝手なことをするけど、皆すまない」
これからやることは自己満足の行為だ
召喚の起点となった亡骸の影に触れ、UC【操り糸の影】を使用
これで躯を、意思を宿した実体のある影として操り、その邪神に対する想いだけ伝えさせる
「かの者に最後の想いを伝えて」
彼の想いが実際どのようなものか分からないし、どんな結果を招くかも分からない
だが、ただ躯を打ち砕くよりも、最後にお互いの想いを交わらせおきたい


神酒坂・恭二郎
大急ぎで駆け付けたが、大体の決着はついている。
詰めの一押しが…難しかろうな。
抵抗の動きはそこでいやが上にも強まろう。

「何事にも終わりはいる。ケジメもいる。因果な事だな」

小さく息を吐いて、瞑想。
ゆっくりと慎重に念動で操作し、屍の手を上げさせる。
まるで息を吹き込まれたように。

これで相手の反応を見る。
脈があるようなら、その【怪物失格】につけこんで【達人の智慧】でUCを封じよう。
地面に刀を突き立て、召喚するは魂呼の【守護明神】。
いかなる御霊が降りるかは知らないが、僅かな時間は誤魔化せるはずだ。
「やれやれ。地獄に行く理由が一つ増えたな…」
猟兵に声掛けする。
「三分だけ誤魔化す。その夢の間に終わらせろ!」


リック・シックハント
【心情】
体はボロボロで動くのもツラいけど、何も報われないまま彼を骸の海に還すなんて絶対にイヤだ。
友達の想いを彼に伝えてみせる!

【行動】
残った力を全て振り絞って【先制攻撃】と【範囲攻撃】を組み合わせて【代弁せし癒炎】を神様と骨に放つよ。
召喚のせいか、神様自身のせいかはわからないけど、その心を癒して辛くても現実を認識させて、骨に込められた想いを神様に見せよう。

結果はどうあれ全てのことが終わったら、骨を本当の想いでの場所に戻してもらえるよう、現地組織の人に頼みたいな。



 ……まだだ、まだ間に合う。
 友を静かに待つ鑼犠御・螺愚喇を見て、一葉は決意を固める。この邪神は周囲に害悪を振り撒くことはしていない。
「たった一人の大切なトモダチを求めてるのなら……」
 それはまだ、真の意味で邪神ではないはずだ。
「そうだよ、ずっと待ってたんだ……何も報われないまま彼を骸の海に還すなんて、絶対にイヤだ!」
 ボロボロの身体を引きずりながら、リックもまた立ち上がる。神を返すための最後の欠片、それを埋めるために二人がユーベルコードを発動しようとした時だった。
 突如として社を覆っていた根がさらに分裂し、一葉とリックに目掛けて突き出される。深傷を追っているリックは勿論、不意を付かれた一葉も咄嗟に攻撃を躱すことができず……。

 横から振り下ろされた刃が、その攻撃を断ち切った。
「予想通り、最後の抵抗は激しいか」
 神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は小さく息を吐くと念動を使って屍の手を上げようとするが、その瞬間根の一つが伸び鞭のようにしなりながら恭二郎に振り下ろされる。
 咄嗟に念動を切って後ろに跳ぶと、根は一度地面を叩いたのみで追撃の気配はない。
「……なるほど、友の気配を感じるものへの干渉を嫌がるってわけか」
 まるで子供がお気に入りを玩具を他人に貸すのを嫌がるように、鑼犠御・螺愚喇の精神性は思ったよりも幼いものなのかもしれない。
「でも、何事にも終わりはいる。ケジメもいる。因果な事だな」
 待つ時間はもう終わり、もと居る場所へ帰る時だ。
 瞳を閉じ静かに意識を集中させた恭二郎は、地面に刀を突き立てると同時にカッと目を見開く。
「貴様の弱点。それは友の思い出を守ろうとするあまり、それを利用されると抵抗できなくなることだ!」
 その言葉と同時に、屍に御霊が降りる。友に干渉する気配を感じた鑼犠御・螺愚喇は気配のもとを排除しようとするが、それをすると友の思い出に手を上げる事実に気が付き動きが止まる。
 今ここに、弱点は証明された。
 守護明神が顕現すると同時に鑼犠御・螺愚喇の体が縮み、最初に遭遇して姿に戻る。
「三分だ、その間に終わらせろ!」

「……ごめん」
 恭二郎の言葉に、一葉謝罪の言葉を述べた。
「これから勝手なことをするけど、皆すまない」
 そういうと一葉は真の姿を解放し、骸に向かって影を伸ばした。
「僕のトモダチ、その心の影をかして……そして、かの者に最後の想いを伝えて」
 操り糸の影。死した者に対して使用し、その残留思念を持った影に変えるユーベルコード。
 しかし、さすがに長く時が経ちすぎているせいか影は揺らめき、定着しようとしない。背後からは戦闘音が聞こえ始める、残された時間は少ない。
「一言、一言だけでいいんだ……お願い……!」
 祈るような一葉の言葉に、猟兵が答えた。
「血よ、血よ、血よ、我が胸に生まれし我自身の血よ、悲劇を癒す炎となり、語られぬ想いをその身に映せ」
 リックの詠唱と共に、屍と鑼犠御・螺愚喇の身体に焔が灯る。それは身を焦がす攻撃の炎ではなく、傷を癒す暖かな癒しの炎。
 代弁せし癒炎。一葉のユーベルコードと同じ、人の想いを映し出すユーベルコード。
 炎と影が重なり、一つの実体が現れる。それは古めかしい格好をした一人の青年、彼は燃え上がる鑼犠御・螺愚喇の身体に触れると優しげな笑顔を浮かべた。
『待たせたな友よ、一緒に帰ろう』
 一瞬の静寂、その後に甲高い管楽器のような音が儀式場に響いた。それは鑼犠御・螺愚喇本来の声だ、人の真似ではなく心の底から想いを表現する神の声。

 それを聞き遂げると、青年は恭二郎の方へ視線を向けた。
「……やれやれ、地獄に行く理由が一つ増えたな」
 だが、やらなければならない。そうしなければ、儀式は終わらないのだから。この役割を果たすには、あの二人は優しすぎる。
 愛刀、銀河一文字を地面から抜いた恭二郎は二つの焔に近づくと、介錯するように上段に構えた刀を振り下ろした。

●エピローグ
 街から怪物が消えていく。
 地上から天へと昇る光の粒子は花弁のように舞い踊りながら、空の彼方へと飛んでいく。
 その光景を眺めながら、猟兵は神のことを思い出す。
 どうして彼は人とわかり会えたのか、どうした彼は神と友達になれたのか、きっとそれは理由を考えるだけ無駄な奇跡なのだろう。
 だから猟兵は歩みを止めない、次の奇跡に出会うために、世界を旅し続けるのだ。
 後日、現地組織の協力によって社と亡骸は本来の場所へと戻されると同時に、近くで新たな古文書が発見された。
 その内容を猟兵達は知らない。けれど、きっとそれは、優しい神様の物語。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月15日


挿絵イラスト