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アースクライシス2019⑫～周廻戦・水上速攻隊

作者：みかろっと

「さあさあ、皆神殿に行く準備は出来ているかな？」
　にやにや笑いでネルウェザ・イェルドットがグリモアを浮かべる。彼女が猟兵に呼びかけているのはほかでもない。センターオブジアースに連なる神殿をオブリビオンからガンガン取り戻す作戦を依頼する為である。
「何度も繰り返すが、今回も神殿を取り戻せる戦力さえ集まったら私は次の作戦に移るよ。と言うわけで皆、ガンガン行っちゃおうねぇ！！」

　ネルウェザはホワイドボードを青いペンでががーっと塗り潰す。それはどうやら水溜まりのようで、彼女によれば今まさに猟兵を転送しようとしている場所とのことだった。
「向かってもらうのは水の上……泉の神の神殿だね。ほら、よくあるだろ？　物を落としたら金やら銀やらになって返ってくるやつ」
　若干童話を歪めて覚えていることに突っ込むのはナシとして、ネルウェザはホワイトボードの水たまりに更に人影を付け足した。
「泉の神さんはそれはそれは綺麗な女の子。ってことで全然戦闘力は無いから、猟兵の皆の力だけでオブリビオン神殿を破壊してしまって欲しい」
　そしてネルウェザはグリモアに光を纏わせ、作戦に参加する猟兵の転送を開始した。
「これは世界を救うには小さな一歩。でも絶対に必要な一歩だ。皆、宜しく頼んだよ」

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　猟兵が目を開ければ、そこは大きな大きな石造りの神殿。泉の神のものと言うには全く水分の無い、さらっとした石材だらけの建物だった。
　しかしよく見れば、その建物の隙間にちょろちょろと小さな水流が覗いている。やはりこれは泉の神の神殿を壊し、その上に無理やり作った神殿なのだろう。
　猟兵が神殿へと足を運ぶ中、そっと物陰からびくびくと身を震わせる女性の姿が垣間見えた気がした。

第1章 ボス戦 『『克銘ノ三・刃雷』アルマ・ニッテカン』

POW   :    翔鎌『ブライトウェル』：裂鎌『フロリダ・スター』 レベル分の1秒で【指から飛ぶ雷刃】か【高威力の斬撃を放つ己】を発射できる。 SPD   :    迅鎌『ブルークロップ』 【腕刃】での【乱れ斬りや超出力での一刀両断】による素早い一撃を放つ。また、【雷の道を作り、動作速度を格段に引き上げる】等で身軽になれば、更に加速する。 WIZ   :    荒鎌『アーリーブルー』 自身の身体部位ひとつを【分裂も可能な、遠近自在の雷電爪】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。 イラスト：すねいる 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「……折角の泉が台無しだな」
　そう言ってオブリビオン神殿に足を踏み入れる猟兵、セゲル・スヴェアボルグ。彼は神殿で警戒しながら佇んでいるオブリビオン『アルマ・ニッテカン』の位置を確認すると、距離を保ったままゆっくり移動していく。
「さぁ、その場から動くなよ？」
　セゲルは静かに口を開く。アルマが何をする気だと目を細める中、神殿中央とアルマ、そしてセゲルが直線上に並び――突如、大きな咆哮が神殿中に響いた。

「ッ！？」
　セゲルの元から飛び出すユーベルコード『抉リ響ム大喊』の水流。アルマが咄嗟に指を真っ直ぐに向け雷刃を放つが、それは瞬時に水に吸われるようにして消えてしまう。
「きゅ、吸収能力……！？　なら、数で圧すまで！！」
　アルマは指先を水流へ向けて連続した斬撃を放つ。止まれ、神殿は壊させない、そう必死に何度も何度も雷刃を放つ。
「その程度で俺の水流が止められるとは思わん方がいいぞ」
　セゲルの放った水流、その内に内包された槍が雷刃を引き込んで突き進む。水と電撃を纏った槍はアルマに直撃すると、そのまま神殿の中央へと体を押し飛ばした。
「くそ……ッ！！」
　アルマは立ち上がりセゲルへと飛び出そうとする。しかしその暇すら与えず、セゲルは次々に吠えて水流を叩き込んでいく。
　水流の中ひらりひらりと身を捻ってアルマはセゲルに接近するが、セゲルはそれを待ち構えていたように槍を思い切り真っ直ぐに突き出した。

　――神殿は水浸し。もしこの場が石の神や炎の神のものであれば天罰が下っていたかもしれない。しかしここは元々泉の神の神殿。青い竜の背を見つめていた『泉の神』はきらきらとした目で笑みを浮かべ、小さくぐっと親指を立てていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　神殿の下から流れる水――おそらく元あった泉の神の神殿にあった湧き水か何かだろう。それを上から潰すように敷かれた石材を見て、亜儀流野・珠は思わず目を丸くした。
「無理矢理すぎるだろう！　……更に乱暴な破壊で解決することになるが……」
　珠のその言葉に、隠れていた泉の神が『えっ』と小さく声を漏らして顔を上げる。だが珠はすっと木槌『砕』を取り出して、思い切り神殿へ駆け出しながら泉の神にぱんと手を合わせた。
「後片付けは手伝うから、我慢してくれ泉の神よ！」
　泉の神があわわと口を押さえる中、珠は砕を振るって神殿の床をズゴン！　と思い切り叩き壊す。勿論それに気づいたオブリビオン『アルマ・ニッテカン』はすぐさま珠へと接近し、彼女を止めようと腕に装着されていた刃を光らせた。
「壊させるかぁッ！！」
　だが斬撃が放たれる前に、珠の砕はぶぉんと空気を鳴らしてアルマを真横から殴りつける。
「ぐぶぉっ！？」
　めきょりとアルマの身体がおかしな方向に歪むと、そのまま敵の身もろとも砕が神殿の柱へと振り抜かれた。
「破壊が終わるまで大人しく見ているがいい！」
　珠は容赦なく砕を振り回しながら神殿の中へと突き進んでいくと、ユーベルコードを発動しながら丈夫そうな柱へと一気に近づいた。
「吹き飛べ！」
　珠が砕を大きく後ろへ振りかぶると、砕は突如ぐんと巨大な姿に変化する。
　アルマがやめろと叫ぶのも意に介さず、珠は巨大化した砕を振り回す。一際大きな衝撃音が辺りの空気を震わせ、そして神殿自体もぐらぐらと大きく振動し始めた。

　瓦礫まみれの神殿で、珠の狙いはふとここを作り上げたオブリビオン、アルマへと移る。
　アルマは良い度胸だと言わんばかりに怒りの滲んだ笑みを浮かべ、腕の刃をビィンと光らせ珠へと突撃していった。あんな大きな槌でこの速さには敵うまい――そう油断したアルマは、次の光景に理解が追い付かない。
　珠の槌、砕は突如ぶうんとアルマの真上に移動し、そのまま真下へ振り抜かれる。こんな小柄な身体のどこから、と疑うような怪力で、珠は砕を途轍もない速さで操っていった。
「さあトドメだ――吹き飛べ！」
　砕は再び巨大化し、目を丸くするばかりのアルマへと思い切り直撃する。そのまま床に叩き付けられアルマが気絶すれば、珠はふうと息をついて周囲の瓦礫へと目を向けた。
「……後片付け手伝うって言ったしな。よし、やるか！」

　泉の神がおそるおそる珠に近づき、気絶するアルマを見てあわわと引き返す。球はそれを追って泉の神に声を掛け、せっせと神殿に散らばる瓦礫を一か所に纏めて元の神殿の姿を取り戻そうとしていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　アルマがやっと立ち上がると、神殿は既に半壊状態。わなわなと怒りに震えてそれを見渡す彼女の元へ、二人の猟兵が純粋な神殿の破壊を目的としながら現れたのであった。
「……これ以上神殿を壊すなら――許しはしない！！」
　ギュンと四肢から青い刃を飛び出させるアルマ。彼女に対峙するアララギ・イチイは小さく身構えつつも、微かに笑みを浮かべていた。
　アルマが飛び出し、脚を大きく振って斬撃を繰り出す。
　キン、と瞬時に響く衝撃音。アララギはシールドシステムで防ぎ、次なる腕の斬撃、続くもう方腕の斬撃も的確に跳ね返していく。何度も攻撃を防がれアルマがだんだんと苛立つ中、アララギは突如ばさりと背の翼を広げて飛び上がった。
「――何ッ！？」
　アルマは目を丸くする。アララギを追って飛び出そうとした彼女の視界には、もう一つ上空へと飛び出していく影が映ったのだ。
「この世界も……そこに住まう人々も……私が護るんだ！」
　緑色に輝く体を日の光に煌めかせるのは、ウィルヘルム・スマラクトヴァルト。彼はユーベルコード『ハイパー・ガーディアン・モード』を発動し、神殿の上空へと飛翔していた。
　突如ウィルヘルムはぐんと急降下を始める。途轍もない速度で向かう先には、まだ傷の浅い神殿の柱がそびえ立っていた。
「チィッ！！」
　アルマはウィルヘルムの方へと駆け出す。しかし自身の出せる最高速度で飛翔するウィルヘルムには追い付かず、アルマの目の前で柱が一つ粉砕された。
　ウィルヘルムは再び上空へと飛び上がると、別の柱へ向かって同じ急降下を繰り返す。音速をも超える速度で次々に地へ降り注ぐ姿は緑の流星の如く――神殿の柱を、壁を、床を抉っていった。

　アルマがそれに気を取られる一方、上空で神殿を見下ろすアララギがユーベルコードを発動する。
「針山地獄、この場合は杭山地獄かしらぁ？　まぁ、どうせ串刺しだし関係無いわよねぇ」
　ふっとアララギが放ったのは、一本一本が恐ろしい程の重量を誇る杭『爆撃・神の杖』。三百をゆうに超えるまさに地獄のようなその雨が、アルマとその周囲へ降り注いだ。
　ウィルヘルムが突如遥か上空へと退避したのを見て、アルマは異変に気づき目を丸くする。一斉に発射された杭を避けようと地を蹴るが、杭は神殿の一部へ触れた瞬間重く激しい衝撃で周囲を巻き込んだ。
「ひっ……！？」
　ズガガガ！　と杭は次々にアルマの周囲――この威力では直撃にも等しいが――へと叩き込まれ、穴だらけの神殿にトドメを刺していく。

　杭の猛攻の中、アルマは何とか負傷しながらも逃げ出す。しかし、その先ではウィルヘルムが緑の斧槍をしっかりと構えていた。
　ウィルヘルムは斧槍を持つ手に力を込め、一気に急降下していく。アルマはなす術もなくぐさりと背を貫かれ、気を失ってその場に倒れ込んだ。

　そしてアララギは、これでもまだ面白みが無いと頤に指を添えすっと複数の武器を取り出す。
　ガシャガシャと組み合わせられていく武器。彼女の改造によって大型砲を構築したそれは、地で煙を吐くアルマへと一直線に狙いを定めて熱を込めた。
「ちょっとしたサービスよぉ」
　アララギは大型砲から大口径のビームを放つ。ドォンと爆撃を叩き込めば、オブリビオンはおろか、最早粉々になっていたオブリビオン神殿ごと一気に消し潰してしまうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年11月20日 宿敵 『『克銘ノ三・刃雷』アルマ・ニッテカン』 を撃破！