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アースクライシス2019⑪~護れ!ツンデレヒーロー!

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #ダストブロンクス

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「ムカつく! この街はあたしの街よ、あたしが喝采を受けるためのステージなのよ。それをあんたたちみたいな汚物が好き勝手に!」

 尖った言葉を投げつけながら、少女は紅蓮の炎を放つ。
 黄金のような波打つ髪、サファイアの瞳、真珠のような肌の、人形のような可憐さを備えた少女。
 そして同時に、苛烈な戦闘能力と、ちょっとだけ……ヤバい雰囲気を漂わせた少女。

 キューティ・アリスと名乗る彼女を、しかし人々はこう呼ぶ、――ダーティ・アリスと。

 彼女は紛れもなくヒーローであり、街を護るために戦う英雄だ。……ただ、悪党を倒すためには手段を択ばず外道で卑劣、事件解決と引き換えに大騒動が必ず付きまとう。傲岸不遜なダークヒーローであるが、しかし……同時にどこか憎めない愛嬌もあるアリスを、人々は困り顔で見ながらも、同時に温かく見つめていた。

 だが、そのアリスが今、歯を食いしばりながら己の不利を認めざるを得ない状況に追い込まれていた。

「どうしてそんなに怒っているの? みんなが優しくなれば、世界はきっと素敵になるのに」

 不思議そうに首を傾げながらアリスの火炎を軽々と弾き返すその敵は、にっこりと微笑みを浮かべる。
「……くっ」
 アリスはその微笑みの前に、己の闘志がかき消されていくことをまじまじと感じ取る。
 ――そう、その恐るべきオブリビオン、テンダーネス・ガールの武器こそは、『優しさ』に他ならない!
 彼女の柔らかな微笑は、相手の敵愾心や闘争心を容易く消滅させてしまうのだ。
 暴威なる正義と優しさの悪魔。皮肉な取り合わせの対決といえた。しかし。
 アリスは息を荒げながら膝をつく。
 ダークヒーローと優しい魔人との戦いは、決着がつこうとしている……。

「……っていう予知が見えたの!」
 ぷかりぷかりとシャボン玉を漂わせながら、ユメカ・ドリーミィは猟兵たちに訴えた。
「えっと、状況を説明するね。ダストブロンクスの地下で、現地のヒーロー、ダー……こほん、キューティ・アリスが『巨大汚水槽』を発見したの」
 その汚水槽はスカムキングが設置したもので、これに付属する爆弾を爆破させることによりダストブロンクスを汚染し、人の住めない土地に変えてしまおうという目論見だったという。
「アリスちゃんのお陰で、汚水槽の場所と爆弾の解除方法はわかったんだけど、それを守護してる番人のオブリビオンがいたの。そいつは強くて、アリスちゃんだけじゃ返り討ちに遭っちゃう。みんな、どうかアリスちゃんを護って、そのオブリビオンをやっつけて!」
 爆弾の解除自体はアリスがその方法を熟知しており、猟兵たちが手を貸す必要はない。
 逆に言えば、アリスが倒されてしまえば爆弾を解除できるものはいなくなるのだ。
 猟兵たちは、アリスを護ることを重視しつつ、さらにオブリビオンも倒さねばならないことになる。
 ユメカは一呼吸置くと、記憶を愛おしむような表情で猟兵たちに訴えた。
「……アリスちゃんは、昔悪い子だったんだけど、今はみんなのために命を懸けてる。その気持ち、無駄にしたくないの。お願いね、みんな」


天樹
 こんにちは、天樹です。
 このシナリオは『アースクライシス2019』の戦争シナリオで、一章で決着し、戦争に影響を与える特別なシナリオとなります。

 ヒーロー「アリス」を護りながらオブリビオンを倒していただけるとプレイングボーナスが発生します。
 敵オブリビオン「テンダーネス・ガール」は優しさを武器とする恐るべき相手です。戦闘自体も手強いでしょう。
 なお、「アリス」に関しては、以前他のシナリオにも登場しているNPCですが、そちらをご存じなくとも全く問題ありません。
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第1章 ボス戦 『テンダーネス・ガール』

POW   :    約束して、もう誰も傷つけないって…
【光球】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    私たち仲良くなれると思わない?
技能名「【優しさ】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    私はあなたにこれ以上罪を犯させない!
自身からレベルm半径内の無機物を【無数の光球】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナナシ・ナナイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 アリスの視界がおぼろげに霞み、滲む。
 テンダーネス・ガールの『優しさ』はアリスの闘志を奪い、その意識を朦朧とさせていた。
 がくりと膝が落ち、頭がふらついて行く。
「このままお休みなさいな。目覚めた時にはあなたもオブリビオン。私のお友達になっているわ」
 テンダーネス・ガールの声さえも遠い木霊のように、もはやアリスの意識には届かなくなりつつある。
「くっ……」
 アリスは最後の力で掌に炎を灯す。ブレイズフレイムの炎。しかしそれはもはやほんの僅かな火勢でしかなく、敵を撃ち滅ぼすには到底及ばない。
 ……ああ、だが。
 アリスは紛れもない、ヒーローであったのだ。
 その小さく燃える火を、アリスは自分自身の柔肌に思いきり押し付けたのだから!
「ぐううううっ!」
 美しい肌を炎が無残に焦がす、しかし、その痛みこそが、アリスの意識を覚醒させた!
 近寄ってくるテンダーネス・ガールから大きく飛びのいて、アリスは距離を取る、その瞳に再び燃え上がった闘志の光を煌めかせて。
「かわいそうに、自分自身をいじめるなんて、優しくないわ」
「悪いわね、あたしは自分自身い負けるのが一番嫌いなの!」
 仕方ない、という仕草で首を振ったテンダーネス・ガールの杖が輝き、そこに灯った『優しさ』の光がアリスを捕らえた。
 ――いや。捕らえようと、した。
 けれど、その光は届かない。
 そこには、希望に選ばれし者たち、未来のために過去を撃ち砕く者たちが立ちはだかっていたのだから。
 アリスはその背中を見て、小さく苦笑する。

「……まったく、どこにでも出てくるのね、……猟兵たちは」
アリソン・リンドベルイ
【WIZ 侵略繁茂する葛蔓】
世界があと少しだけ優しかったら、誰もが少しだけ優しければ―――きっと、みんな幸せに笑える。それは否定しないし、素晴らしい考えだと思うわ? けれど…!
【オーラ防御、呪詛耐性、狂気耐性、かばう】で、アリスさんの前に出るわ。…ええ、ええ。もし、押しつける優しさで誰かが傷つくなら、善意と笑顔で誰かが死ぬのなら…そんな『優しさ』は願い下げなんだから…っ! 『侵略繁茂する葛蔓、生命力吸収』で葛蔓を展開。敵を縛って足を引っ張って、アリスさんに近づけないように。今日の私は悪い娘ですから…っ! …ええ、ええ。貴女の怒りには、激情の奥底には…きっと尊くて可憐な想いがあるって信じるわ。


トリテレイア・ゼロナイン
貴女が約束を守ったのです
私が誓いを護らずして何が騎士と名乗れましょうか!
私の全機能、いえ、全霊を掛けてお守りし助太刀します

光球からアリスを●武器受け●盾受けで●かばいます

ルールは誰かを傷つけないでしたね

確かに簡単で尊いルール……願いです
格納銃器が展開しただけで破損する程の
ですが、時には刃をもって己が願いを叶えなければならないことを私も、そして彼女も十分理解しています
時に哀しく、時に罪深くとも、殺戮ではなく、護る為の戦いを否定させはしません!

UCと自身への●ハッキングでダメージを無理矢理無視し戦闘
タイミングを●見切りアリスと同時攻撃を仕掛けます

とても…強くなりましたね…キューティ・アリス…



 雄々しく凛々しく純白のシールドが聳え立ち、そして、オブリビオンの偽りの輝きをも消し去るような神々しきオーラの光が、白い盾を覆って煌めく。
 その重層的な守りの力に、テンダーネス・ガールの攻撃は虚しく雲散霧消した。

 ――それこそは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の巨体が構える、何物をも寄せ付けぬ盾、そしてアリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)の小さな体が放つ、荘厳なるオーラの防御壁。

「『大丈夫ですか?』などとは問いません。それは真なる強きものに対していう言葉ではないでしょうから」
 トリテレイアは大きく逞しい背中を向けたまま、静かに言葉を紡ぐ。
 ……共に戦う同志へ向けた言葉を。
「……はあ」
 わざとらしく大きなため息をついて、アリスは不機嫌そうに返す。
「……どうせ、あなたは来るんじゃないかと思ってたわよ、出しゃばりでおせっかい焼きの騎士さま」
 くすりと可憐な笑みを零しながら、アリソンは二人の会話を聞く。深くは尋ねない、けれどきっとこの二人の間には、友とは呼べず、敵でもなく、けれど心のどこかが触れあったことがあるような、そんな一瞬があったのだろうと思いながら。
「つまり、こういうことですね、『アリスさんはトリテレイアさんを待っていた』」
「誰がっ……!?」
 ムキになってアリスが否定する姿を、アリソンは含み笑いを浮かべながら眺め、そして。
 鋭く表情を改め、敵に向き直る。
「世界があと少しだけ優しかったら、誰もが少しだけ優しければ――きっと、みんな幸せに笑える。それは否定しないし、素晴らしい考えだと思うわ? けれど……!」
 まっすぐに見据えた先にはテンダーネス・ガール。『優しさ』を振りかざす悪魔。
 その敵の浮かべた微笑を、アリソンは斬る、鮮烈なる抗いの意思で!

「……ええ、ええ。もし、押しつける優しさで誰かが傷つくなら、善意と笑顔で誰かが死ぬのなら……そんな『優しさ』は願い下げなんだから……っ!!」

 言葉と同時、滴るような濃緑の雨が降り注ぐ。――いや、それは豪雨にあらず、葛!
 無数の葛蔓が虚空を裂いてテンダーネス・ガールに襲い掛かる! 
 葛は緑の砂漠と言われる生命の極限環境さえも形成する。それこそがアリソンの能力、『侵略繁茂する葛蔓(エイリアンプラント・バイオニックインベンション)』!
「植物は優しく愛でるものよ?」
 しかしテンダーネス・ガールも動じない。杖を一閃したと見えた次の瞬間、輝きの流星が宙空を埋め尽くす。
 唸り猛り狂う葛の大群と、これを迎え撃つ光球の激流が両者の中間で激しくぶつかり合い、火花を散らす。その勢力は拮抗……いや、僅かにアリソンが不利か。その小さな体が微かに後退し始める。
 だが、アリソンの表情に焦りはなく、曇りもない。己が一人ではないと知っているのだから。共に戦うものがいると、わかっているのだから。
「ええ、ええ。貴女の怒りには、激情の奥底には……きっと尊くて可憐な想いがあるって信じるわ。……そう、今よっ、アリスさん!」
 アリソンの声が響くと同時――おお、無数の葛が紅蓮の炎を発して燃え上がったではないか!
 そう、アリスのユーベルコードはブレイズフレイム、炎を操る力。
 その炎がアリソンの葛を伝い、轟焔となって燃え盛ったのだ。
 今や葛の威力に炎が加わり、荒れ狂う火炎の曝流となってテンダーネス・ガールの光球を圧倒する。
「……っ!」
 テンダーネス・ガールの顔から初めて余裕が消えた。彼女はたまらずに大きく身を翻して逃れようとする。
 
 が、そこへ驀進する巨大な影。それこそは、アリスを腕に抱えて護りながら滑走するトリテレイア!
 なぜこの至近距離に至るまで、オブリビオンはトリテレイアの姿を確認できなかったのか。それは、アリスの振るうもう一つのユーベルコード――クリスタライズの効力だった。
 一瞬透明化したトリテレイアとアリスは、紅蓮の炎の間隙を縫って敵に肉薄したのだ。
 だがまだテンダーネス・ガールの力が衰えたわけではない。振るった杖から撃ち出された光球がトリテレイアを直撃した。
 電流に撃たれたように、一瞬機械騎士の巨体が震える。
 テンダーネス・ガールの攻撃は、ルールの宣告。すなわち――
「約束して、もう誰も傷つけないって……」
 柔らかな声で、オビリビオンは唱える。その『約束』を破ったものには天罰を。優しさを無碍にするものには酷なる報いを。
 ……だが。
 おお、止まらない! トリテレイアのスラスターが減速することなどあり得ない。
 テンダーネス・ガールの攻撃が効いていないというのか? いや、そんなことはない。現に、トリテレイアの総身からはショートを思わせる火花が散り、その視界にはノイズが走る。
「無茶なことして!」
 悲鳴のような声を上げるアリスに、しかしトリテレイアは優しいセンサーライトを向けた。
「貴女が約束を守ったのです、私が誓いを護らずして何が騎士と名乗れましょうか! 私の全機能、……いえ、全霊を掛けてお守りし、助太刀します!」
 そしてそのセンサーライトは、もう一人の少女、優しい悪魔にも向かう、冷厳なる輝きを持って。
「誰も傷つけない。その約束は、確かに簡単で尊いルール……願いです」
 トリテレイアのボイスにも音割れが混じる、だがその口調に迷いも躊躇いもない。
「ですが、時には刃をもって己が願いを叶えなければならないことを私は十分理解しています――そして、彼女もね」
 作動不良を起こし開かない己の装甲を強引にパージし、マシンキャノンを展開しつつ、トリテレイアは静かに、しかしきっぱりと宣する。
「……時に哀しく、時に罪深くとも、殺戮ではなく、護る為の戦いを否定させはしません!」
「相変わらずの気取り屋ね、でも。……ふん、たまにはかっこいいじゃない」
 微かに笑んだアリスが放つブレイズフレイムと共に、トリテレイアのマシンキャノンが轟音を響かせた。
「くあああああっ!!」
 銃撃と火炎の連携の前に、たまらずテンダーネス・ガールは闇の中へと後退していく。
 その姿を眺めながら、トリテレイアは腕の中のアリスにそっと語り掛けた。

「とても……強くなりましたね…キューティ・アリス……」

 首元まで赤くなったアリスは、それに答えず、ただそっぽを向いただけだった。
 くすくすと、アリソンが漏らす優しい笑い声が、二人を包んでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

闇之雲・夜太狼
ライアーヒーロー「クライウルフ」参上!
俺が来たからにはお遊びはここからだよ!

アリスは手段を選ばない?
わあ!なんだか話が合いそうだね!
こっちは任せて、安心して爆弾を解除しててよ

さてテンダーネス、優しさが武器だとか
じゃあその優しさに甘えさせてもらって、まずは会話しよ?と【コミュ力】発揮
まさか手ぶらの相手に攻撃なんてしないよね?(両手を見せて【言いくるめ】)

本当は俺も、争いなんて大嫌いなんだ
だからね、こうやってお話できる相手には積極的に話かけて……
罠にハメることにしてるんだ
と、会話途中でUC発動!

誘導に引っ掛からなかったら、そのまま飛来物の餌食に
誘導に引っ掛かれば【クイックドロウ】したMAGで攻撃!


リカルド・マスケラス
純粋に助けたいけど、おちゃらけたいお年頃

「ちーっす!パワーアップアイテムのデリバリーいかがっすかー?」
軽い調子でアリスの所へ現れる狐のお面
「お困りっすかお嬢さん。自分をかぶるだけで、猟兵並みのパワーが得られるっすよー。今ならダメージもこっち持ちっす」
疑うようなら【コミュ力】交え
「んじゃ、ビジネスライクに。そっちは現状打破の力が欲しい、こっちはミッション解決の手段が欲しい。Win-Winっすよね?」

装着してもらえれば、彼女の炎攻撃を【属性攻撃】【2回攻撃】で強化、ダメージはコートの効果で【かばう】
「優しさを振り切ってあげるのも、ある意味優しさっすよ」
あとはアリスを待ってる皆の想いでUC籠めた攻撃



「ライアーヒーロー「クライウルフ」参上! 俺が来たからにはお遊びはここからだよ!」

「ここからなの!? ここまでだ! じゃないの!?」
闇之雲・夜太狼(クライウルフ・f07230)のキメ台詞に思わず突っ込んだアリス。そんな彼女を、夜太狼は面白そうに眺める。
「や、どんなことでも気ままに楽しく面白いのが一番じゃない? 世界を護るのもさ、楽しくやろうよ!」

「おっと、気が合いそうっすね~。そうそう、楽しいのが一番っすよね!」

 ふわりと浮かびながら現れた狐面が、ケラケラと笑い声を響かせながら夜太狼の言葉に賛同した。ちょこっとチャラいお助けヒーロー、その名はリカルド・マスケラス(f12160)。
「ま、まあ……うん。そうね。気持ちはわかるわ」
 なんか納得するアリス。実際、彼女自身、自分の楽しみを優先させるタイプのヒーローである。割と揃ってはいけない系の三人が揃ってしまったかもしれない。

「ってことで、パワーアップアイテムのデリバリーはいかがっすか~? 具体的には、自分をかぶるだけで、猟兵並みのパワーが得られるっすよー。今ならダメージもこっち持ちっす」
 場が温まったと見たところですかさずリカルドはアリスに交渉を持ちかけた。だが。
「それは嫌」
 ……にべもなくその提案は跳ね除けられてしまった。
「ええ~、なんでっすか? 自分、疑わしいっすか?」
「あのね」
 ぷかぷかと浮かびまわる狐面を睨むように、アリスは腰に手を添える。
「あたしが何のためにヒーローなんてやってるかって言えば、あたし自身が目立つためなのよ、そんなお面をかぶったら、あたしの可愛い顔が見えなくなるじゃない!」
「ああ、それなら大丈夫っすよ」
 そういうことか、とリカルドは内心安堵し、二の矢を放つ。
「自分を頭の横っかわに被ってっすね、アリスさんの顔が見えるようにしても全然問題ないんす。これなら目立てるっすよ?」
「それでも嫌」
 ……アリスは意外に手強い敵だった。むむ、とリカルドは詳しい理由を問う。その答えは。
「だって、可愛くないし」
「がーんっす!」
 ――割と致命的だった。
「あなたみたいなオリエントな雰囲気って、ジャパンとかチャイナとかの服装には似合うのかもしれないけど、あたしの格好にはそういうの似合わないと思う」
「い、いや、それはものの考えようっすよ? ほら、そういうミスマッチがかえって魅力を盛り上げるみたいなこともあると思うっす。今はボーダーレスの時代っすよ」
 必死である。無理もないが。しかしそれだけでも通じにくいと考え、リカルドはさらなる見解を示す。
「それに、アメリカンらしくビジネスライクに考えてみるのもいいっす。そっちは現状打破の力が欲しい、こっちはミッション解決の手段が欲しい。Win-Winっすよね?」
 むー、とアリスは考え込み、やがて仕方ないといったふうに小さな肩をすくめた。
「……まあ、いいわ。でも、あなたを付ける角度とかはあたしに任せてもらうから」
「はは……何ともタフなお嬢さんっす」
 リカルドは苦笑に見える雰囲気を漂わせながら、アリスの手中に収まった。

 リカルドとアリスが激しく交渉戦を戦わせている間、無論テンダーネス・ガールがそれを黙って見ていたわけではない。
 こちらはこちらで神経戦を戦わせていたのである、夜太狼を相手に。
「そっか、優しさは大事だよね、うんうん、わかるよー」
 気安い雰囲気を漂わせつつ、夜太狼はゆっくりテンダーネス・ガールに近づいて行く。両手を上げ、掌を見せ、何も害意はないかのように示しながら。
「まあ、まずはお話しよ? 優しい君は、まさか手ぶらのものに攻撃なんかしないって信じてるし」
「お話? そうね、それならあなたもオブリビオンになりましょう。世界中のみんながオブリビオンになれば、みんながお友達よ?」
 テンダーネス・ガールは虚ろな笑顔を可憐な顔に不気味に張り付かせる。
 内心でぞっとする思いに囚われながら、夜太狼はにこにこと笑顔で返す。微笑みの中に刃を隠す、これもまた綱渡りの戦いの一つ。そしてそれは、夜太狼の最も得意とする分野に他ならない。
「なーるほど、みんなお友達ってのはいいね。そうすれば確かに争いはなくなる、そう、俺も本当は争いなんて大嫌いでさ……」
「ええ、誰もがお互いのことを思い合うのが一番なのよ」
 一歩、一歩、神経をすり減らすような緊張をおくびにも出さず、人懐こい少年の姿を演じながら、夜太狼は近づいて行く。
 間合いまで、あとわずか。
 テンダーネス・ガールはまだ攻撃はしかけてこない、けれど、いつでもその杖は振るわれ、能力が使われるだろうということを夜太狼は全身で感じ取っていた。
(いいねえ、こういう緊張感がなければ悪戯もつまらないってものさ)
 不敵にそのスリルさえ堪能しながら、夜太狼は勝負に打って出る。
 それは、ほんの小さな一言。
 表情、仕草、声の調子、雰囲気、己の感情さえも己が支配せよ。――「あれ、なんだがちょっと変?」。その程度の些細なさざ波を起こすために、夜太狼は全身の神経を注ぎ込む!
「『ところでさ、あれはなんだろうね?』」
「……え……?」
 微かに、テンダーネス・ガールは視線を外した。ほんの微かに。
 彼女は決して心から夜太狼を信じ込んだわけではなかっただろう、しかしそれでも、夜太狼の交渉術のすべては、その小さな状況を作り出すためにあり、それを実現させるためにあったのだ。
 夜太狼の能力、その条件は死角に創った空間の亀裂から飛来するものを告げること。
 敵がその告知を疑えばそのまま飛来物が直撃し、信じて誘導されれば大きな隙ができる。

 そして今、「死角に創った空間の亀裂」から飛来したものは――
「ブレイズフレイム!」
「さらにダメージどんっす!」
 リカルドを装着したアリスの放った火炎撃に他ならない!
「っ!!?」
 リカルドの力で大きく威力を増した紅蓮の炎は渦を巻いて大気を焦がし、テンダーネス・ガールに襲い掛かる。
 大きく体勢を崩し、危うくこれを避けようとしたテンダーネス・ガールの体に、夜太狼のクイックドロウによる弾丸の洗礼が叩きこまれた。
 さらに追撃――
「優しさを振り切ってあげるのも、ある意味優しさっすよ――。『正義代行(ジャスティス・スマッシュ)』っ!!」
 そこに籠められていたのは、アリスを待っている人びとの想い。
 重ねた想いの数だけ強くなれる、たとえ力なき人の想いであっても。
 それこそが、ヒーローの証。
 悲鳴を上げて傷を負った体を引きずりつつ撤退していくテンダーネス・ガールに、リカルドは、夜太狼は、そしてアリスは。
 見事に示して見せたのだ、偽りの優しさを撃ち砕く心の強さを。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

白石・明日香
よし、ブッ倒す!
アリスと敵との間に割って入ってアリスに敵の攻撃がいかないように戦闘を行う。
徹底的に挑発して相手の気をこちらに向けるとするか。
おい、チビ!さっきから弱い奴いたぶって楽しいのか?ああ?
それで優しいとは笑わせる!
相手の挙動はつぶさに観察。光球を出す兆候が見えたら
残像で攪乱しながらダッシュで接近、光球の軌道を見切って躱し
一気に間合いを詰めて怪力、2回攻撃、属性攻撃(炎)、鎧無視攻撃で叩き切る!
ツンデレ娘は好みでな・・・・


亜儀流野・珠
そいつの言葉に惑わされるな、アリスよ!
この地を汚し、人々の命を奪おうという者が優しさを説くな!
この娘の方がずっと優しい心を持っているぞ!命を懸けてここまで来て、逃げもせず最後まで戦おうとする!優しきヒーローではないか!
……と、話してる暇は無いか。敵は俺達が引き受けた!アリスはその隙に爆弾解除を頼む!

位置取りはアリスの前に。
薙刀「狐の爪」を持ちあまり動かず守る様に戦うぞ!

相手が近付いて来たなら薙刀で【薙ぎ払い】遠ざけ、距離があるなら「焔弾」を撃ち込み攻撃だ!

相手の攻撃は薙刀で叩き落とす、もしくは「焔弾」の爆破で散らす!
捌き切れん分はこの身に受けてでも止めよう。
善意を踏み躙らせはしないぞ、悪意よ!



「おい、チビ! さっきから弱い奴いたぶって楽しいのか? ああ? それで優しいとは笑わせる!」

 白石・明日香(十字卿の末裔・f00254)の凛然とした声が戦場に響く。白銀の髪の奥から煌めく黄金の瞳がテンダーネス・ガールを威圧する。
「誰が弱いですって……?」
 ……もっとも、明日香の言葉に最初に反発したのは、テンダーネス・ガールではなくアリスの方だったが。
「はは、すまん、そういう意味じゃない。だが、怒る気力があるならまだ大丈夫そうだな」
 明日香はそんなアリスの姿を頼もしそうに見やり、快活に笑う。その声に、傍らの亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)もうなずいた。

「そう、まぎれもなく、お前の在り方は強さだ、アリスよ。猟兵ならぬものの、それゆえの強さ。俺はその不屈の意思に敬意を表するぞ」

「……今度は褒めすぎ」
 くすっと笑うアリスを後ろに庇うように立ちながら、珠と共に、明日香ももう一度敵に向き直る。二人の銀髪少女がその美しい髪を風になびかせた。
「いや、過度な称揚ではないさ、ヒーロー。だから!」
「おお、ならばこそ!」
 二人の猟兵は呼応し、膨れ上がった気迫が爆発するかのように、一気に敵めがけて踏み込む!
「ブッ倒す!」
「善意を踏み躙らせはしないぞ、悪意よ!」
 事前に打ち合わせがあったわけではない、けれどあたかもその心を以て心を伝えあったかのように、弾丸のように奔った二人の挙動は対応した。
 明日香は暴風のように前に出て敵に対峙しようとし、珠は後衛となってアリスを庇いつつ戦況を見定めんとする。
 ……しかし。

「なぜあなたたちはそんなにも怒っているの……? ともに手を取り合う優しい世界を、あなたたちは何故拒むの……? そんなに争いが楽しいの……?」

 二人を迎え討ったのは、ただの声。テンダーネス・ガールの不思議そうな声。
 それは決して揶揄でも皮肉でもなく、駆け引きでもなく。
 ――ゆえに、それは真なる恐ろしさを持つ。手練手管ではなく、嘘偽りのない真心に聞こえてしまうほどに。本当に世界を優しさで包みたいと考えているのではないかと感じてしまうほどに。
「ちぃっ……!」
「くっ……」
 明日香と珠は強く舌打ちし、歯を噛みながら頭を振って、何とか誘惑から逃れようとする。
 テンダーネス・ガールの柔らかなささやきは、明日香や珠ほどの練達の猟兵でさえも、その意思を危うく挫かれそうになるほどの危険な魅力を備えていた。ましてや、猟兵ではないアリスにとっては……。
「う、ううっ……」
 呻き、爆弾の元へ走り出そうとしていたアリスの膝が震える。奮い立てたはずの戦意がまた萎えていきそうに……。

「そいつの言葉に惑わされるな、アリスよ!」

 響き渡った叱咤が、しかしアリスの脚を再び大地に立たしめた!
 それは珠の声、人に救われ、人を愛する妖狐の声。

「この地を汚し、人々の命を奪おうという者が説く優しさなどに、惑わされるな! 真の優しさはお前の中にこそある! 命を懸けてここまで来て、逃げもせず最後まで戦おうとするお前の中にな!」

 小さな苦笑がアリスの唇に浮かぶ。くすぐったがっているような、……少しだけ照れているような笑みが。
「……だから、ほめ過ぎだってば。あたしはそんなんじゃないわ。あたしが戦う理由は、ただ目立ちたいだけよ」
「ふふ。それだけのために、人は命など賭けられんとは思うが」
 明日香が振り返りもせぬまま、しかし包み込むように声を掛ける。
「だが、それでもいいだろう。そこまで張る虚勢も、貫き通せばそれはそれで見事。……ふふ、お前のような子は好みでな」
「な、何言いだすの!?」
 ドキッとした表情で赤くなるアリスを、今度はちらりと顧みて、明日香は微笑む。これで、敵の呪詛の影響は完全に消えたとみていいだろう。

「……では、今度はこちらの番だ」
「だな!」
 明日香と珠は一気に間合いを詰め、テンダーネス・ガールに襲い掛かった!
 虚空を切り裂いて明日香の剣が風を巻き、その頭上に叩きこまれる。命中すれば鎧さえ両断するほどの一閃が。
しかし、あたかも春のそよ風のように――テンダーネス・ガールはひらりと身をかわす。鋼を絶つほどの一撃であっても、宙を舞う薄衣は斬り裂けないように。
「優しさは見つめることから生まれるの。あなたの太刀筋も、私は十分に見つめているわ」
 テンダーネス・ガールの言葉に、しかし珠が追いすがる。
「ならば、これなら! ――貫き通せ!『焔弾(ホムラダマ)』っ!!」
 撃ち出した火炎弾が轟と燃え盛ってテンダーネス・ガールを強襲した。敵を逃さぬその火炎弾は、宙空に逃れようとするテンダーネス・ガールを追尾し、打ちすえる!
「ああっ!」
 バランスを大きく崩し、よろめくオブリビオン。そのわずかな隙を、十字卿の末裔が見逃すことなどあり得ようか。

「全て悉く――切り捨てる!」

 裂帛の気勢が轟くところ、今度こそ間違いなく――テンダーネス・ガールの胸から高々と血潮が舞い上がる。華のように、胡蝶のように。
「ああああっ!!」
 悲鳴を上げて、テンダーネス・ガールは退いて行く。

 その後ろ姿を見ながら、アリスはぽつりとつぶやいた。
「あいつは歪み切ってはいるけど、でも。あたしとあいつの差は、ほんとはとても小さいのかもしれないわね」
「だが、そのわずかな差は、同時に決して越えられない差だ」
「ああ、そしてそう思える限り、お前は大丈夫だよ、アリス」
 明日香と珠の言葉に、アリスはまたくすぐったそうにそっぽを向く。
「……だから。褒めすぎだってば」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

パルピ・ペルポル
こういうつっぱった態度は一種の防衛本能でもあるらしいけれど。
まぁなんだかんだで爆弾解除に立ち上がったってことはちゃんとヒーローなのよね。
本人に言ったら怒られそうだから言わないけど。

こっそり念動力で雨紡ぎの風糸を蜘蛛の巣状に張り巡らせておいて、敵の行動を阻兼盾として使用するわ。
アリスの近くには特に念入りにね。アリスには爆弾解除に専念してもらいたいわ。
光球が飛んできたら糸で受け止めるから。

しかし優しさね…。本当の悪党ほど優しい顔で近づいてくるものだと思ってるからねぇ。多分優しさの定義が違うと思うし、優しさって押し付けるものじゃないと思うといいつつ偶然の不運なる遭遇を発動するわ。
この偶然も罪かしら?


パトリシア・パープル
※他猟兵との連携歓迎

アリスと合流後、UC発動させてスカンク兵を召喚
5体1組で合体させてレベルアップ
装備はライオットシールドを選択ね
スカンク兵達にはアリスを盾で守ってもらって、その間にアリスには爆弾解除に集中してもらうわ
わたしは「リッキー・ジョー」と一緒にテンダーネス・ガールへ向かうわね
【優しさ】で懐柔してくるなら、お友達になってあげるわよ……ただし、スカンク流でね

それじゃ、お近づきの印にリッキーから、友情の印をプレゼントよ(スカンクガス大放出!
あら、知らなかったの?スカンクって、互いのガスで愛情表現するのよ(「時限式スカンクガス爆弾」をプレゼント
折角だし、「禁断の香りの香水」もかけてあげるわね



(まぁ、なんだかんだで爆弾解除に立ち上がったってことはちゃんとヒーローなのよね)

 小さな体を宙に舞わせ、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は面白そうな眼でアリスを眺める。
「……なによ、何か言いたいことでも?」
 その視線に気づいたアリスは、爆弾の元へ向かっていた足を止めて、パルピをぐいと睨みつけた。
「ううん、なーんにも、ふふふ」
 パルピはくすくすと笑ってしらばくれる。アリスの、そんな不機嫌そうな顔さえ、何処か愛嬌があるなあと感じつつ。
(こういうつっぱった態度は一種の防衛本能でもあるらしいけれど、ふふ。そこまで言ったらさすがに怒られそう)
 フェアリーゆえの小さな体ではあるが、パルピは22歳。いわばお姉さん的な視線で、アリスのそんな仕草はむしろ可愛らしいものとさえ見えていた。

「さてと、こっちは準備完了よ。ね。リッキー?」

 一方で、パトリシア・パープル(スカンクガール・f03038)が声を掛ける。そのかたわらで、彼女の「相棒」が自信ありげに頷いた。
 二人は他の猟兵たちが一時的にとはいえテンダーネス・ガールを退けた後にアリスと合流し、準備を急いで整えていたのだ。爆弾解除と、そして――間違いなく再来する、テンダーネス・ガールを迎撃するための準備を。
 パトリシアの足元には艶々した毛並みの兵たちが整然と並ぶ。……スカンク兵。これこそパトリシアの友であり同志、そして精兵である。中でも、パトリシアがリッキーと呼んだ一頭……リッキー・ジョーは人間並みの知能を持つ。
「……ちっちゃな妖精とスカンクの群れに守ってもらうヒーローってのも、なんていうかなー……」
 複雑な表情を浮かべるアリスに、パトリシアはウインクを送って見せた。
「あら、この子たちは優秀だし、頼りになるのよ。ちゃんとあなたをガードしてくれるわ、大丈夫!」:
「あと、もちろんわたしも!」
 顔を見合わせて自信ありげに笑い合うパトリシアとパルピ。しかし、次の瞬間、二人の表情がさっと緊張に引き締まった。

「……来たわね」

 そう、ふわりふわりと。春の風のような柔らかな雰囲気を引き連れて。
 テンダーネス・ガールが再び現れたのだ。
 しかし、その可憐な外見からはぽたぽたと血筋が滴り落ちている。
 これまでに幾多の猟兵と戦い続けたテンダーネス・ガールの体には、オブリビオンとはいえ無視できないほどの傷が幾つも刻まれているのだ。
 それにもかかわらず、彼女は逃走を選択しない。
「それほどまでにスカムキングに忠誠を誓っているのかしら、それとも……」
 眉をひそめたパルピの言葉を、パトリシアが髪をかきあげながら引き取る。
「それとも、――本気なのか、ね。彼女の言う、……優しい世界を作るという目的が」 
 それはある意味ぞっとするような執念ではある。けれど、だからと言って引きさがる選択肢もまた、猟兵たちにはあり得ない。

「さあ、私と一緒に行きましょう?」

 テンダーネス・ガールの柔らかい声が風に乗り、猟兵とアリスたちはそれだけで自分たちの闘志がかき消され始めることを感じる。 
「……いいわ、お友達になりに来たっていうのなら!」
 だがパトリシアは頭を振って気力を奮い立たせ、リッキー・ジョーを連れて猛然と敵めがけて走り出す。
「その気持ちに応えてあげる――ただし、スカンク流でね! リッキー!」
 パトリシアの指示に応じ、リッキーがひょいと尾を上げる。
 それこそ恐るべき――スカンクガス!
 侮ることはできない、スカンクの放つ凄まじい匂いの成分、ブチルメルカプタン(C4H9SH)は、場合により、吐き気、失明、急性貧血によるショック死などを引き起こす場合さえあるのだから。
 ……もっとも、厳密に言えば、スカンクはガスではなくその分泌液を相手に吹きつける。無論直接浴びずとも相当の刺激臭が周囲に振り撒かれるのだが、直撃を回避すれば最悪の事態を免れることはできる。
 さすがに顔をしかめつつ、テンダーネス・ガールは宙に舞い上がり、リッキーの分泌液を回避した。
「それは……優しくないわ」
「これはリッキーの愛情表現よ、それとも、自分の選んだ優しさしか認めないというの? それはただの傲慢ね!」
 スカンクの分泌液の容量は一度では失われない、数回分の連射が可能だ。
 虚空に舞うテンダーネス・ガールをめがけ、リッキーは続けざまに分泌液を射出する。命中はしない、しかしその度に猛烈な刺激臭が周囲を覆い、オブリビオンの動きは制限されていく。超高濃度の刺激臭の真ん中へ突っ込んでいくなどは、いかにオブリビオンといえども容易く行える行動ではない。
「それなら……!」
 テンダーネス・ガールは杖を振り上げ、無数の光球を空間に浮遊させる。この光球で刺激臭の満ちた空間をなぎ払おうというのだ。
 ……だが。
 その振り上げた手が、途中で止まる。

「掴まえたわよ」

 その姿を見ながら、くすっと笑うパルピが飛翔していた。
 そう、テンダーネス・ガールの動きを止めたのは、パルピがひそかに張り巡らせていた風糸に他ならない!
 もがく敵を、パルピは冷ややかに見据える。
 小さく可憐なフェアリーは、けれど、人の悪意を知らぬほど無垢でもない。
 ましてや本当の悪党ほど優しい顔で近づいてくるものだと、彼女は知っているから。

「あなたとは多分優しさの定義が違うと思うし、優しさって押し付けるものじゃないとも思うのよ。ごめんね」

 淡々と言い放ったパルピの言葉と同時、彼女のユーベルコードが発動する。
 それこそは「偶然の不運なる遭遇(ナニガクルカハソノトキシダイ)」――!
 何処からか現れた超高速で移動する物体を命中させる能力。
 そして、今テンダーネス・ガールに命中したものは……

「「時限式スカンクガス爆弾」あーんど「禁断の香りの香水」、プレゼント・フォー・ユーよ!」

 パトリシアの用意していたスカンクガスを満載したアイテムだった。
「……っ!!!」
 今度こそまともに強烈な香気の直撃を受けたテンダーネス・ガールは、さすがにひとたまりもない。
 喘ぎ悶え、のたうちながら地上へ堕ちていく。
「やったぁ! ね、やったわ!」
 ピョンピョン跳ねながらアリスをハグしに向かったパトリシアを、けれど。
「いや、やったけど! でも、ちょっと近づかないでってば!」
「待ってよ、アリス!」
 アリスは必死になって逃げまどい、それをパトリシアが追いかける。
 けらけら笑うパルピの前で、その追いかけっこはしばらく続いたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィランサ・ロセウス
あら、可愛らしいヒーローさん
ここは任せて、爆弾はよろしくね!

アリスちゃんへの挨拶もそこそこに、テンダーネス・ガールににこやかに近づいて握手を求める

こんにちは、素敵なあなた!
私、あなたの事がすごく“好き”になっちゃった……思わず壊(あい)しちゃう位に❤

油断した所を[だまし討ち]のUCを放って拘束!
もし失敗してもワイヤーフックによる[地形を利用]した縦横無尽の移動で執拗に[追跡]、
[目潰し]や[毒使い]、あらゆる手を使ってアリスちゃんに気を取られてる暇なんて与えないわ!

これは私なりの愛情表現……いわば優しさなんだから、
ちゃんと受け止めてくれなきゃ嫌よ?
(もはや呪いの域の優しさは[呪詛耐性]で防ぐ)


佐伯・晶
孤軍奮闘してるヒーローか
爆弾の事もあるけど皆と協力して護るよ

一人で戦うのも良いけど
偶には協力して戦うのも悪くないよ

心配しなくても主役を奪ったりしないさ
援護するから爆弾よろしくね

女神降臨を使った後は
ダーティ…じゃなかった
キューティ・アリスの近くで護衛

飛んでくる光球はガトリングガンの範囲攻撃で相殺
抜けてくるのがあれば神気で光球の時間を停め防御
これは僕なりのオーラ防御だよ

基本的にはアリスへの攻撃を捌くけれど
他の人が護衛に回って余裕が出来たら
ガトリングガンで射撃して攻撃

タイミングを見計らって
コンクリートから創った使い魔の石化で
行動を妨害しようか
攻撃を邪魔してもいいし
他の人が攻撃する隙を作っても良いかな



 フィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)はアリスと奇妙な一致点を有していた。
 かつてはヴィラン、今は戦う目的を悪党狩りに変えたダークヒーロー。
 護るものと護られるものという立場の違いこそあるものの――フィランサと同じく、アリス自身、その過去を有していたからである。
 深く言葉を交わしたり、自己紹介などしたわけでもない。けれどフィランサもアリスもお互いに、相互が相互の写し鏡であることを直感的に悟っていた。
(ふうん、ふふ。あの子も私と同じなのね。ちょっとは面白そうだけど、でも、今は)
 フィランサはくすりと浮かべた笑みをちらとアリスに送る。アリスはそれに対し、不機嫌そうに鼻を鳴らし、そっぽを向く。
 それだけで二人の挨拶は済んだ。過去の要素を同じくする二人の少女の。

(今は……ふふ。あっちの子の方が「好き」だわ!)

 フィランサの視線は、まっすぐ前方に向けられる。傷つきよろめきながら、なおもアリスを倒し、汚水槽を守護するという目的を諦めないオブリビオン――テンダーネス・ガールへと。

「どうかした?」
 そんな二人の様子に、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)が不思議そうな視線を向けた。
「いえ、……何でもないわ」
 含みのありそうな顔で、しかし首を振るアリスの姿に、晶はそれ以上追及しない。
 誰しも過去はあり、そしてそれは時に重く己を蝕みもすることを、晶自身も知っている。
(……で、だ。これもまた、僕自身の過去から追いかけてくる力ってやつだけど)
 総身を満たす羞恥心に思わず頬が赤くなる。だが、我慢我慢、と己を鼓舞し、晶はユーベルコードを展開した。
 アリスが思わず目を見開く。その眼前で、晶の姿が漆黒に輝く闇に包まれ、次の瞬間、妖艶にして可憐なドレス姿に変じていたのだから。
 照れくさそうに裾を翻した晶にアリスが言った言葉は
「……ズルい! あたしより目立つ!」
「……えええ……そういう反応?」
 苦笑しながら晶は手を振って見せる、
「心配しなくても主役は君。それを奪ったりしないさ。これはあくまで君を護るための力なんだから」
「むー……黒いドレスか……それもいいわね……今度新しいコスチュームにしようかしら」
「……はは」
 ドレスアップした布地を手に取ったり間近で眺めたりして観察に余念がないアリスを、晶はとにかくせかして爆弾解除へ向かわせるのだった。

「こんにちは、素敵なあなた!」
 その一方。
 テンダーネス・ガールに向かったフィランサは、陶然とした視線を彼女に向けていた。
 そこに敵意も害意もないことを、精神攻撃を操るテンダーネス・ガールには感じ取ることができる。故に、まだ攻撃を仕掛けてはこなかった。彼女の真意は、『優しい世界』なのだから。
「お友達になってくれる……?」
「ええ、私、あなたの事がすごく“好き”になっちゃった……」
 フィランサはにっこりと笑みを浮かべる。とろりと蕩けるような笑み。美しい大輪の花から滴り落ちる蜜のような笑み――けれど。
「――思わず壊(あい)しちゃう位に❤」
 ――ああ、その花は、地獄の深淵で鮮血を糧に咲き誇る毒花に他ならない!
 剣呑な雰囲気にテンダーネス・ガールはとっさに身をよじる、その彼女をめがけて拘束ロープが、手枷が、猿轡が飛ぶ!
 危うくそれを杖で叩き落としたテンダーネス・ガールに、けれど体勢を立て直す隙など与えはしない。ワイヤーフックを撃ち出したフィランサの高速立体機動が、翼を使い舞い上がろうとしたテンダーネス・ガールを追い詰める。
 恐るべきは、フィランサ。その行動は、真実――「好き」ゆえのもの。
 彼女にとって、『好き』と『壊す』は完全なイコールで結ばれているのだ。
 テンダーネス・ガールの『優しさ』が、歪んではいても、そこに詐術や欺瞞が含まれているわけではないのと同じように。
 オブリビオンがテンダーネス・ガールと呼ばれるのなら、フィランサはダークネス・ガールとでも呼ぶべきか。
「これは私なりの愛情表現……いわば優しさなんだから、ちゃんと受け止めてくれなきゃ嫌よ?」
 くすくす、とほくそ笑みを浮かべたままでフィランサは踊る。
「それなら、私の優しさも――あなたにあげる。さあ、本当のお友達になりましょう」
 しかし、オブリビオンもまた恐るべき存在。にっこりと浮かべた無垢な微笑みと誘惑の言葉は、フィランサの呪詛耐性をもじわじわと侵食して効果を発揮し出していく……。

「……なんというか。怖いな、女の子は」
 その二人の凄絶な相克を遠距離で眺めながら、晶はぽつりとつぶやいた。手中の重厚なガトリングガンを構えながら。
「何よ、あなただって女の子でしょう?」
 その言葉を聞き逃さなかったアリスが不審そうに晶を見つめる。彼女の言葉に、晶は曖昧に笑いながら肩をすくめた。……今は確かに女性なのだけれど、などと面倒なことを言い始めると余計に事態がこんがらかりそうなので、とりあえず流しておく。
(ほんと、過去ってのは厄介だよ)
 嘆じながら、晶はトリガーを絞る。
 同時、凄まじい火花と連射音が鳴り響き、強烈な反動と共に、豪雨のような弾丸がテンダーネス・ガールをめがけて降り注いだ!
 ドレスアップによって威力を増大させられた銃弾の嵐は、フィランサとの激戦の渦中にあったテンダーネス・ガールにとって、回避する余裕などあるはずもない。
「があああああっ!?」
 硝煙の向こうで、暴風の中の木の葉のように、テンダーネス・ガールは吹き飛ばされていく。
「……一人で戦うのも良いけど、偶には協力して戦うのも悪くないよ」
 その光景を見ながら、晶は、これまで孤軍奮闘していたアリスに語り掛ける。
「そうかもね。……でも、あんまりその習慣が身についてなかったのよ、ヴィランというのは。……多分、彼女もね」
 アリスは、ゆっくりと戻ってくるフィランサを見つめながら、独り言のように呟いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘NG
グロNG
SPD

懐かしい顔ね。
身構えなくても取って食ったりしないわ。
外道で卑劣な人間の血なんて吐き気がする

さっさと爆弾解除に戻りなさい。
巻き込まれて死にたいの?

優しさに屈しそうなアリスに【呪詛】を込めた罵倒。
荒療治だけど、私に殺されかけた恐怖を蘇らせて正気に返す

人間なんかに優しくしないで。
私は人間とオブリビオンの混血。
それだけで人間達から迫害を受けてきたの

同情を誘い、優しさの矛先を私に。
元々オブリビオンに愛情を抱く私は優しくされるほど
この子を救いたいという【気合い】が漲る

私にも、貴女を救わせて?

UCでアリスの別人格だった彼女を召喚。
純白の翼に包まれながら
温もりと快楽を共有し【生命力吸収】



「あの時の……!?」

 アリスの可憐な顔が恐怖に歪む。そのサファイアの瞳に、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の美貌を映し出して。

「……懐かしい顔ね。身構えなくても取って食ったりしないわ。外道で卑劣な人間の血なんて吐き気がする」

 凍てつく冬の夜のような冷たく昏い言葉を投げかけて、ドゥルールはアリスを睥睨する。
 アリスにとっては、ドゥルールはかつて己の命を奪いかけた恐るべき相手だった。冷ややかな怒りと、悲しみに満ちた絶望の中に、その魂を刈り取られかけた相手だったのだ。
「さっさと爆弾解除に戻りなさい。巻き込まれて死にたいの?」
 吐き捨てるようなドゥルールの言葉に、アリスは身をすくませ、逃げるようにその場を走り去っていく。

 呪詛にも似たドゥルールの言葉。アリスはいつか、気が付く日が来るだろうか。それが、アリスの心を侵食しかけていたテンダーネス・ガールの『優しさ』を、『恐怖』によって消し去り、正気に戻すためのものでもあったことを……。

 アリスの足音を背中に聞きながら、ドゥルールはその目に哀しみを宿らせる。目の前の相手、テンダーネス・ガールを見つめる眼差しに。
「……人間なんかに優しくしないで」
 切々と訴えるような言葉がテンダーネス・ガールに向かう。
「なぜ? みんながみんなに優しくなれば、誰も悲しむことはなくなるのに」
「……それは無理よ。私の経験がそれを教えてくれる。……私は人間とオブリビオンの混血。それだけで人間達から迫害を受けてきたの」
 それはドゥルールの在り方を運命づけた痛み。それはドゥルールの生き方を呪縛した哀しみ。ドゥルールの愛を染め抜いた怒りだった。
「……いいえ、それだからこそ、あなたは知っているはずよ。優しさの意味を。これまでにほんの僅かでも優しさを味わったことがあるのなら、その素晴らしさを」
 空虚な理想だとドゥルールは思う。けれど。
 ――空虚な理想を真摯に謳い上げることができるこの少女は何と美しいのだろうか、とも。
「いたわしい、誰よりも繊細だからこそ傷だらけになってしまった、澄んだ硝子の魂を持つひと。私と、お友達になりましょう?」
 手を差し伸べてくるテンダーネス・ガールの言葉に、ドゥルールはふと目が熱くなる。
 世界を侵食し破壊するからこのオブリビオンの優しさは嘘だというのか。けれど。世界を壊してさえも、誰もに優しくありたいと思うその心は、……何よりも尊くはないのだろうか。

(嗚呼、こんなにも傷みに満ちた世界の中で――あなたは優しく在ろうと願ったのね。オブリビオンに成り果ててさえも)

 心の奥が震えていると感じながら、ドゥルールは彼女の手を取った。
「ありがとう。……私にも、貴女を救わせて?」
 ドゥルールは静かに想いを流す。黄金に波打つ髪、サファイアの瞳、真珠の肌、そして――純白の翼を持つ美女の姿を顕現させながら。

『……あの子のために、私が呼ばれるなんてね』

 翼持つ美女は少しだけ寂しげな笑みを浮かべながら、そっとドゥルールとテンダーネス・ガールを包み込む。

『でも。……ええ、これはきっと、幸せの感情……救われたという感情なのね。ありがとう、……ルル』

 それはかつての、アリスのもう一つの心。喪われたはずのアリスのもう一つの人格。決別し、消え去ったはずの……アリスの魂の欠片。
 美女の翼の中で、ドゥルールとテンダーネス・ガールは抱き締め合う。柔らかな肢体の奥に優しさを与えあいながら。震える肌の奥に温もりを伝えあいながら。
 流れ溢れて落ちる花の露が陽の光に煌めくように、清らかな光を煌めかせながら……。

成功 🔵​🔵​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
アレは誰だ!?鳥か!?ヒーローか!?勿論…拙者だよ!
デュフフフ…アリス氏エンジョイしてる?

アリス氏と連携して戦いますぞ!美少女と肩を並べる機会は逃さない拙者だ
ついでにこの【流体金属】君を貸しておこう

【光球】にはガンガン当っていく所存!
可愛い子を傷つける訳無いじゃん!ただしprprする絶対にDA!!!
傷つけないんだから拒否してもダメでござるよォゲヒヒヒ!それに…約束させたんだからさ…そっちも拙者も傷つけないよなァ…!(言いくるめ)

拙者があれこれして留めているスキに流体金属を纏ったアリス氏が文字通り鉄拳で敵とまとめてぶっ飛ばして解決!
瀕死になったら【リスポーン】して帰って来るので安心して欲しい


ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
好かれてるヒーローをこんなとこで倒されるわけにはいかないよね
アリスとオブリビオンの間に全力で割り込むよ
アリスに合図を出したら協力してねって伝えて隠れてもらって、注意を私に向けるよう質問しようかな
「優しさを強調するわりには、やってる事が矛盾してないかい?今帰ってくれれば見逃すよ」って
まともな答えが返ってくるとは思わないので、返答が終わると同時に『ダッシュ』で接近。ナイフで切り払うよ
そのままブーツに魔力を込めて『ジャンプ』。空中に飛び出して引き付けたところでアリスに合図を出して攻撃してもらう
一瞬でもアリスに気を取られたら【ゼクス】で動きを封じて一気にナイフで仕留めるよ



「アレは誰だ!? 鳥か!? ヒーローか!? 勿論……拙者だよ!」
「きゃあああ! また出たの変質者!?」
「オウいきなりのクリティカルヒットが魂に痛いですぞ! 拙者繊細なんでござるよ!?」

 エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)の姿を見ていきなりアリスが悲鳴を上げても、あまり責められないというべきか。エドゥアルトとアリスが以前出会った戦場では、色々と常識の通用しないエドゥアルトに、アリスはさんざん翻弄されたのだから。
「せめて変質者じゃなくて変態って言ってほしいでござるよ!」
「……同じじゃん」
 傍らで淡々と突っ込んだルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)に、エドゥアルトはきっとなって向き直る。
「わかってないですなー、可憐な美少女にさー、『へんたい!!』って言ってもらえるって良くない? こう、すごく良くない?」
「わかんないよ。変態」
「……あんま良くないでござるな」
「……私にケンカ売ってる? 買うよ?」
 弓を射終えながら言ったルエリラに、エドゥアルトだったものが抗議する。
「せめて射る前に言って欲しかったですぞ……だがリスポーン!」
 えどぅあると は ふっかつ した!
 ……本格的な戦闘が始まる前にもう残機1消費したのはどうなのだろうという感じだが、まあ問題ないだろう。

「っていうか、あなたたち何しに来たのよ!」
 アリスの金切り声に、二人は振り返り、胸を張る。
「もちろん、美少女と肩を並べて戦うために!」
「ヒーローズアースの芋煮も守らないといけないし。……ということで」

 ルエリラはよろよろと近づいてくるテンダーネス・ガールを見据える。
 多くの激戦を潜り抜け、オブリビオンは既に瀕死と言っていい。それでも、テンダーネス・ガールは歩みを止めない。
 ちらと背後のアリスに目配せを送った後、ルエリラは口を開く。
「もうボロボロだね。今帰ってくれれば見逃すよ」
「優しいのね、素敵だわ。でも、身体の傷よりも……大切なものがあるの。優しくあること。みんな優しい世界にすることが……」
 テンダーネス・ガールの夢見るような口調にはよどみがなく、ためらいも躊躇もない。
 ――オブリビオンとの会話は成立しない。彼ら、彼女らは、終わった世界の亡骸からにじみ出た思い出を語っているだけだからだ。そこには合意を得ようとする建設的な意図はなく、理解を得ようとする発展的な意思もない。ただ、己の凝り固まった想念を「会話に似た」形で呟いているだけなのだと、ルエリラはやりきれない思いの中で、改めて実感する。
「優しさを強調するわりには、やってる事が矛盾してないかい? キミがやってることは世界に対して優しくないんだよ」
 応えようとテンダーネス・ガールが口を開きかけた瞬間、ルエリラは紺碧の流星のように疾駆した! 大地を縮めるかのような加速が音さえ置き去りにして、抜き放たれたナイフの刃が光芒を描く。
 テンダーネス・ガールの杖が刃を受け止めたと見るや、ルエリラは虚空に跳躍した。その驚くべき敏捷性、エルフのシーフたる面目躍如といったところか。
「今だよ!」
 ルエリラの声と同時、アリスの放ったブレイズフレイムがテンダーネス・ガールを襲う。
「っ!!」
 しかし恐るべきはテンダーネス・ガールの執念。完全に崩れた体勢でありながら、彼女は無数の光球を生み出すと、これを暴風の如く全周囲に撃ち出すことで攻防一体の一手としたのだ。
 ルエリラも回避に手いっぱいとなり、追撃に移れない。アリスの炎も光球に打ち消されて消滅し、あまつさえ、アリス自身に光球が向かう!

「おっとぉ! 美少女にせっかんしてもらう役得を見逃す拙者ではありませんぞー!」

 そこへ立ちはだかったのはエドゥアルト。……アリスを庇おうとしたのか、それとも単に美少女にいじめてほしかったのかは本人しかわからないが。
 しかしまったく避けようとすることなく、エドゥアルトは光球をその身で受け切った。
 『ルール』が発動する……「もう誰も傷つけない」。
 だが。

「可愛い子を傷つける訳無いじゃん! ただしprprする絶対にDA!!」

 体を傷つけなければいいんだ、心は知ったことかという恐るべき理論武装の下、エドゥアルトは両手をワキワキさせながらテンダーネス・ガールに近づいて行く。

「なんていうか、敵でもあれはちょっと可哀想かな……」

 頭を振るルエリラの前で、エドゥアルトはテンダーネス・ガールに襲いかか……もとい、優しくしようとし、心なしか引きつった顔の彼女が逃げ腰になっているという、何かが間違っているような光景が繰り広げられる。

「……どっちにしろ見てらんないから、もう、動きを止めるよ。ゼクス」

 半ば投げやりに言い捨てながら、ルエリラの光の矢が閃く。宙空を貫いた魔法の矢は、エドゥアルトとテンダーネス・ガール、二人諸共を貫いて、世界にその身を縫い止める。
 次の瞬間。
 煌めきを放つ炎の塊が一直線に動きの止まった二人めがけて走った。
 ――それは、アリス。
 エドゥアルトから託されていた流体金属を身に纏い、さら己の火炎を身に纏って――
 アリスはまっしぐらに、疾駆した。

 優しさ。それはきっと自分にはないものだ。それはきっと、誰かには必要なものだ。
 けれど、それでも。今ここに護るべきものがあるのなら――。
 アリスの祈りを込めた一撃は、炎の苛烈と金属の重爆をもって。
 テンダーネス・ガールの身を粉々に撃ち砕いていた。
 消え去る直前、彼女の目に宿った光は、それは。
 ……きっと、後に残るものへ希望を託す光だったのかもしれないと。
 アリスも、そしてルエリラも、感じていた。

 ――こうしてダストブロンクス・ダウン事件は解決した。
 爆弾を解除し、地上に帰還したアリスを、街の人々が拍手で迎える。
「あたしが! あたしが街を救ったわよ、みんな!」
 ボロボロの傷だらけになりながら、それでも胸を張るアリスを、猟兵たちは微苦笑を浮かべながら遠くで見守る。
 けれど、そんな彼らを振り返り、アリスは手招きしていた。ちょっとだけ恥ずかしそうに、頬を染めながら。
 そして改めて街の人々に向かい、猟兵たちの手を差し上げたのだ。

「……あと、まあ、なんていうか。ちょっとだけ手伝ってくれた人たちよ。みんな、一応……感謝してあげて」

 無数の笑顔と、歓声と、拍手。
 それが、猟兵たちとアリスが、護り抜いたものだった。
 
 そのころ、テンダーネス・ガールと一緒にぶっ飛ばされたエドゥアルトが復活していた。
「りすぽーん! ……あれ? 皆どこでござるかー?」
 地下に置いて行かれたままで。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年11月22日


挿絵イラスト