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薔薇の導きに少女は消える

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 お母さんが病気になった。
 大丈夫だから安心して。ってお母さんは言ってたけど、何かしてあげたかった。
 だから、お母さんが昔に見つけて、凄くキレイだった、って話してくれた、バラっていう花を探しに出かけたの。
 でも、村の人に聞いても「この村じゃ、花なんて育たないんだ」って。
 それで困っていたら、優しそうなおじさんが、バラが生えてる場所を教えてくれたんだ。
 村からちょっと離れている場所だから怖かったけど、お母さんのためだから、私、頑張ったよ。
 けど、おじさんに言われた場所についても、バラはなかなか見つからなくって。
 変なキノコがいっぱい生えてる中、一生懸命探して、探して、探して……。

 あれ?

 なんで、からだがうごかないんだろう。


「みんな、いつもお疲れ様っ! 今回はダークセイヴァー世界で事件だよっ!」
 エスペラ・アルベール(元気爆発笑顔の少女・f00095)は集まった猟兵達に笑顔で労いの言葉をかけ、すぐにその表情を引き締める。
 その瞳には、彼女にしては珍しく嫌悪の色が覗いていた。
「一人の女の子が、ある男……男の姿をしたオブリビオンに導かれるまま、廃城に行ってしまったんだ」
 その城はオブリビオンの住処。住み着いているキノコ型のオブリビオンによる毒を受ければ、少女はすぐに身動きが取れなくなってしまうだろう。
「そうして動けなくなった女の子を、城の主であるオブリビオンが『玩具部屋』に攫っていっちゃうみたい」
 その部屋に連れ去られた子が、その後どうなるかはわからない。
 一つだけ確かのは、少女にとって幸せな未来にはならないということ。
「みんなにはまず、この女の子が毒にやられる前に救出してほしい」
 少女がいるのは城の庭だが、生け垣で作られた迷路のようになっており、中に入った者を惑わしてくる。
 生け垣の中に潜んだオブリビオンが毒の胞子を撒き散らし、彷徨う侵入者をじわじわと弱らせていく、という仕組みのようだ。
「毒と言っても、そこまで強い毒ではないみたいだね。猟兵のみんななら、そんなに気にしなくても大丈夫そうっ」
 とはいえ、少女にとっては害にしかならないので、オブリビオンは見つけ次第退治しておくといいだろう、単体でなら猟兵の相手にはならないとのことだ。
 無事に少女を救出できたら、城の中にいるオブリビオン達が本格的に猟兵を駆除しようと出てくるはずだ。
「そっからは遠慮はいらないっ! 全力でぶっ飛ばしちゃって!」
 勢いよく腕を振り上げたエスペラは、そこで何かを思い出したようで、慌てて付け加える。
「城の庭に、薔薇自体は少しだけどちゃんとあるみたいなんだ。もし見つけたら、一輪だけでも、女の子に渡してあげると喜んでくれると思うよっ」


芳乃桜花
 知らないおじさんの言うことを聞いてはいけません。芳乃桜花です。
 今回は垣根の迷路で女の子を捜索して救出、その後出てくるオブリビオンの集団とバトル! 更に城の主であるオブリビオンとバトル! という流れになっています。

 迷路に潜むオブリビオンと、二章で出るオブリビオンは同じ相手ですが、二章では大量に現れるため、毒もしっかり効きますのでご注意ください。
 薔薇については見つけなくても特に問題はありません。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
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第1章 冒険 『薔薇の檻』

POW   :    気合とパワーで追跡する

SPD   :    スピード重視で追跡する

WIZ   :    賢く効率的に追跡する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鈴鳴・藜
親思いのいい子なんだな。
変な輩に連れていかれて、お母さんを泣かせたら本末転倒だろう。
まずはその女の子を見つけ出さないとな。

▼SPD重視
まずはこの迷路から見つけるのか…。
『狼影』お前も手伝ってくれ。
他の猟兵とは違う気配を感じたら教えてくれ。

探すのは一般人だ。
気配を消す、なんて芸当はできねぇだろうし。
それで見つけることができればいいんだが。
俺の『第六感』も少しは当てにしてみるか。

もしも見つけることができれば狼なんて怖い対象だろう。
救出対象者を目視できる距離まできたら俺の影に戻っててもらうか。

頼むから、無事でいてくれよ。


シル・ウィンディア
お母さん想いの女の子の為にも、絶対に救ってみせるよ!

薔薇の迷路かー
綺麗だけど、まずは、女の子優先で動かないとね

薔薇が育っているなら、地面は土のはずだから
足跡を見つけて、それを追跡していくね

女の子の足跡だから、小さくて特徴もあるだろうしね
だから、それを手がかりに追跡をしていくよ

あとは、通り道に花とか茎が折れ曲がったりしていたら
それも目印にして、さらに追跡を行うよ

焦る気持ちは抑えて
慎重に、でも、早く見つけてあげる為
早足で追いかけるね

通りがかりに、薔薇の花を一輪だけ手折るね
あとで、女の子にあげたいしね


フィン・スターニス
母親を心配する子を弄ぶ、
その様な事は、許せません。
何としても阻止しないとです。
その為にも、出来るだけ早く
救助をしないとです。

追跡は、少女の通った痕跡(足跡等)を探し、跡を辿ります。
第一災禍・赤の灼熱を予め使用し、
火球を周囲に展開します。
暗ければ、照明の代わりにもします。

追跡中、見落しが無い様に注意して周囲を確認。
その際に、隠れたキノコを見つければ、
倒しておきましょう。

少女を見つけた場合、
出来るだけ早く毒の影響の無い
迷路の外へ連れていきます。
その時には、垣根を壊してショートカットする事も、
選択肢に入れます。


ルーナ・ユーディコット
POW 気合とパワーで追跡する

迷路は苦手だから、力技
攻撃力を重視して【トリニティ・エンハンス】を使っておきたい。
火の魔力は出来るだけ抑えて、薔薇を燃やさないように……できるかな
迷路で邪魔になった生垣は壊したいし、
目についたオブリビオンは手早く倒しておきたい。
通路では足跡や落とし物、女の子の痕跡を探しながら【追跡】をする。
痕跡そのものは……目を凝らし、耳を澄ませて根気よく探す。
優先はあくまで女の子の安全だから、オブリビオンの深追いはしない。
痕跡優先。
女の子を見つけたら……他の猟兵の合流を待つ




「封印解除。赤色の魔力を糧とし、第一の災い、此処に発現せよ!」
 複数の炎が、闇に覆われた世界に光を与える。
「痕跡はありそうですか?」
「ちょっとまってね、えーと……うん、足跡見つけた!」
 生け垣の迷路の入り口で、シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)とフィン・スターニス(七彩龍の巫女・f00208)は少女の痕跡を探していた。
 廃城に光源は残されていなかったが、フィンが発現させた球状の炎によって、暗闇に隠れていた地面の痕跡は照らし出されている。
 足跡の大きさから考えて、少女の物に間違いない。二人は頷き合うと、その痕跡を追って足を進める。
(お母さん想いの女の子の為にも、絶対に救ってみせるよ!)
(母親を心配する子を弄ぶ、その様な事は、許せません)
 母を想う少女の身を気遣い、そんな子を狙う相手に怒りを感じ。
 早く見つけなくてはと焦る気持ちと、だからこそ慎重に、見落としのないようにしなくてはならないと冷静に抑える気持ち。
 二つの心の間で、その足は自然と早まり、早足で迷路を進んでいく。
 と、そんな二人の視界の端で、生け垣から伸びる枝がほんの僅かながら、不自然な動きを見せた。
「フィンさん!」
「はい!」
 その枝の奥を、シルが光の刃で一閃。
 切り飛ばされ、垣根の外に出てきたキノコ型のオブリビオン目掛け、フィンが火球を放ち焼き尽くす。
 敵が完全に消滅したのを確認し、その場で数度、呼吸を整えて異常が無いことを確認する。
「聞いてた通り、一体だけなら大した相手じゃないね」
「そのようです。ですが……」
 猟兵にはなんら問題のない敵であっても、ただの少女にとっては恐るべき驚異となりかねない。
 それに、少女の足跡が残る道の側にこの敵が居たということは、既に少女の身体を毒が蝕みつつあるということだ。
 一秒でも早く少女を見つけなくては、二人はそんな思いを抱きながら足を進め。
「「う」」
 目の前に広がる『石畳』に呻き声を上げた。
(足跡は……あるには、ありますが)
 地面に落ちた草木を踏んだ跡は残っている。しかしながら、そこまでの土に残っていた跡と比べると、その見つけやすさにはあまりにも差があった。

「よし、こっからは俺たちの出番だな」
 動きを鈍らせる二人に代わり、鈴鳴・藜(宵暁・f00576)が前に出る。
 その横でルーナ・ユーディコット(Basilico・f01373)も口数少なく、しかし気合は十分な様子で迷路の先を見つめていた。
「『狼影』、お前も手伝ってくれ」
 藜の影から、全長2mを超える狼が現れ、その側に立って辺りの気配を探り出す。
 彼の相棒でもある狼影、その人間には持ちえない感覚で、早速何かを感じ取ったか、猟兵達を先導するように走り出した。
(親思いのいい子なんだ。変な輩に連れていかれて、お母さんを泣かせたら本末転倒だろう)
 必ず少女を助け出す、その思いを胸に、藜は先を行く相棒を追いかけていく。
 同じく狼影を追いながら、ルーナは周囲へ目を配る。
 迷路は苦手と自覚する彼女にとって、先導してくれる相手がいるならば、それに越したことはない。その分、自らは少女の痕跡を探すことに専念できる。
 シルとフィンの手伝いもあり、狼影が分かれ道で悩みだした時は、その痕跡から進路を予測して示すことができた。
 順調に迷路を進んでいく一向だったが、途中でその足を止めることとなる。
「行き止まり……道を間違えちゃった?」
「狼影は確かにこの先の方から気配を感じてる。多分、どっかに回り道ができる場所があると思うんだが」
 迷路の厄介な所だ。気配を感じ取れても、そのまま一直線に向かうことはまずできない。
 猟兵達が、少女の道のりを探り直す他ないかと考えるところで、ルーナは一人、道を塞ぐ生け垣の前へと出る。
「何をする気です?」
「任せて」
 フィンの問いに、短く答え。
 ルーナは手にした魔法剣を、生け垣へと叩きつける。
 オブリビオンの手が入った垣根だ、いかに猟兵といえども、そう簡単に壊せるものではない。
 されど、ルーナは自らの身体を三属性の魔力によって強化し、強引に剣を振り抜いた。
 結果、生け垣の一部が壊れ、先へと進めるだけの道が作られる。
「あっ」
 力技による解決に苦笑しながら垣根を越えようとし、その直前にシルは生け垣の中に何かを見つけ、手を伸ばした。
「薔薇、生け垣の奥に……普通に探しても見つからないはずですね」
「うん、後で、ちゃんと渡してあげないとね」
 一輪の薔薇を手にし、一向は少女の追跡を続行する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

紫・藍
藍ちゃんくんですよー?
皆様のおかげでかなり近づけてるとは思いますがー!
本来ありえない道を切り開いた分、少女の道筋とは間違いなく別ルート!
しばらくは痕跡がない、或いは痕跡がないと思ってもその先に痕跡があるやもでっすしー!
痕跡を追うつもりが少女の道行きに逆行していたというのも怖いのっでー!
一度ショートカットした以上は、狼影さんの指し示す方向に進むが手かと思うのっです!

痕跡という点では近づいてきた以上、少女も毒や疲労でかなり参ってる辺りでしょしー、生け垣にもたれながら進んだりしてないでしょかー?
生け垣の凹み具合や荒れ具合及びその向きも要チェックなのでっすよー!

見つけたら薔薇をお見せして避難ですよー!




「ではでは、ここで藍ちゃんくんの考えを言うとですねー!」
 ハイテンションに言葉を紡いだのは、紫・藍(覇戒へと至れ、愚か姫・f01052)。
 ここまでの道のりは順調、されども、垣根を破壊してのショートカットをしたため、この先少女の道すじを辿るのは難しい。
「なのでーっ! 一度ショートカットした以上は、狼影さんの指し示す方向に進むが手かと思うのっです!」
 ズビャーン、とでも効果音が付きそうなテンションで、狼影を示す。
 そのノリに少したじろいでいるようにも見える狼は、主にちらりと目線を送り、しばらく辺りの様子を伺ってから、迷路の奥へと真っ直ぐに進みだした。
「はーいご協力感謝でっす! それでは皆さんいっきましょー!」
 そのまま狼影の後を追い、周囲の生け垣に、何かがぶつかったかのような跡が確認できた頃。
「おや、目標発見でっすねー!」
 生け垣にもたれかかるように座り込む、少女の姿を発見した。
 猟兵達が即座に動き、周囲に潜んでいるオブリビオンを撃破、少女は辛そうにしているが、命に別状が無いであろうことを確認する。
「……だ、れ?」
「藍ちゃんくんは藍ちゃんくんでーっす! ここは危ないので、村に帰りましょう!」
「でも、バラが」
「大丈夫、もう見つけてあるよ」
 道中見つけた薔薇を渡され、少女の表情がほっとしたものに変わる。

 少女を抱え、急ぎ迷路の入り口まで戻ったところで、猟兵達は足を止めた。
 廃城から聞こえる、無数のカサカサという足音。その主を撃退するために。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ファンガス』

POW   :    胞子散布
予め【胞子を周囲に撒き散らす】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    闘虫禍争
自身の身長の2倍の【虫型の魔獣(形状は毎回変わります)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    毒の胞子
【口や茸の傘】から【胞子】を放ち、【毒】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 カサカサ、カサカサ。
 生け垣に潜んでいた、キノコ型オブリビオン、ファンガス。
 自ら動くことができない彼らは、侵入者を撃退するためにある方法を用いる。
 巨大な虫型の魔獣を呼び出し、それに寄生するという手段を。
 何十、何百、あるいはそれ以上か。
 無数の虫型魔獣が飛び出し、猟兵達へと襲いかかった。

 少女を近くの茂みへ隠れさせ、猟兵達はそれぞれの武器を振るう。
紫・藍
綺麗な薔薇にはトゲがあると言いますが。
トゲも含めて高貴なのが薔薇でしてー!
キノコが横から殴り込んで来るのは風情がないですよー?

藍ちゃんくんは「スカイステッパー」ですよー!
迷路内なので天井や壁にごっつんは痛いですからねー。
上へ高くではなく前へ横へ時に斜め下へ、自らを弾丸として射出するように押し出すのです!
ぶつかるのなら天井や生垣ではなく上空の虫たちへ!
味方に激突しないよう気を付けて!
虫キノコを凪ぎ払い、味方の盾になり頑張るのです!
着地狩り怖いので、着地時や墜落時はその勢いのまま「スライディング」で回避や位置取りしたいとこでっすねー!
ひゃっははー☆
あ、胞子を吸わないようお口チャックですか、残念!


ルーナ・ユーディコット
やっと暴れられる。
「先陣、切るね」
あまり器用なことが出来ないから、今回は先陣を切りたい。
【人狼咆哮】の効果範囲に味方が入らない程度まで敵に近づく
そして全力で【人狼咆哮】をする。
あらん限りの咆哮で……撃ち落とせるだけ、撃ち落とす
多少の怪我は厭わない。私が勢いを作るつもりでやる

ただこの戦闘が最後じゃないから、間に合うならそのあと防御を重視した【トリニティ・エンハンス】で応戦しながら味方に合流……かな。

私の真の姿は人間。髪は黒く瞳が赤かった……人狼になる前の私。
きっと心は戻らない、寿命も延びない。戦いが終われば人狼に戻るけれど。
それでも「私は人間」




「先陣、切るね」
 やっと暴れられる。そんな思いを秘めながら、ルーナは他の猟兵に先立ち、ファンガスの群れの前へと飛び出した。
 様々な種類の虫型魔獣が、自らを獲物と定め飛びかかってくるのを見ながら、少女は自らの身体が変質していくのを感じ取る。
 白かった髪が黒く。
 金の瞳が赤く。
 それは、人狼となる以前の、人間だった頃の彼女の姿。
 真の姿となれども、彼女の失った心は戻らない。人狼としての短い寿命から逃れられるわけでもない。
 この戦闘が終われば、また人狼へと戻ってしまう。ほんの一時のまやかし。
 それでも。
「私は、人間」
 小さく、それでいて強く言葉にすると。直後、その口から激しい咆哮が放たれる。
 あらん限りの力で、全てを吹き飛ばさんとする勢いで放たれたそれは、荒れ狂う嵐となって、飛びかかろうとしていた魔獣達を、寄生していたファンガスごと吹き飛ばした。
 それでも咆哮は止まらない。魔獣達の反撃によりその身が傷つこうとも、向かい来る敵を、できる限り撃ち落としてやるという気迫で攻撃を続ける。
 その勢いが、流石に衰えてきたところで。
「エントリーっ!」
 ルーナに代わり、藍が群れの中へと飛び込んだ。
 彼の履いたレガリアスシューズが大気を圧縮し、力を蓄える。その力を解き放つと同時にユーベルコードの力で空中を蹴り、前へ横へ時に斜め下へ、縦横無尽に自らを弾丸として射出し、ファンガスと魔獣達を薙ぎ払っていく。
 先程のルーナが不動の嵐だとすれば、藍は雷。
 空中を、地上を、一切止まること無く動き続け、魔獣達を寄せ付けない。
「綺麗な薔薇にはトゲがあると言いますが。トゲも含めて高貴なのが薔薇でしてー! キノコが横から殴り込んで来るのは風情がないですよー?」
 ハイテンションなのはそのままに、されども若干の怒りを込めて。
 その速度を一切緩ませず、次々と敵の数を減らしていき。
「ひゃっははー☆ っとと!」
 周囲のファンガス達が毒の胞子を撒き散らし始めたのを見て、慌てて口を閉じ、ルーナの援護を受けながらその場を離れる。
(お口チャックですか、残念!)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィン・スターニス
少女は救助できましたし、
あとは、このキノコ達と倒して、
今回の事件を引き起こした者を
何とかするだけですね。

相手が数で来るなら、
こちらは質量で押し潰しましょう。
第七災禍・紫の崩壊を使い、
後方で固まっている場所に巨岩を落とし、
敵後方集団を撹乱します。

接近してきたキノコへは、
第六感や、見切りを駆使し、カウンターで迎撃。
薙刀でのなぎ払いで牽制します。

毒に対しては、耐性があるとはいえ、
数も多いので、胞子を吸わない様に、
念の為に口元は布で覆っておきます。




(あとは、このキノコ達と倒して、今回の事件を引き起こした者を何とかするだけですね)
 視界を遮らない特製の眼帯に隠された瞳を、少女が隠れた茂みへ向けつつ。
 フィンは、未だ波のように押し寄せるファンガス達へと刃を向ける。
 数任せに押し寄せるつもりの相手に対し、彼女が選んだ手札は、これだ。
「封印解除。紫色の魔力を糧とし、第七の災い、此処に発現せよ!」
 その詠唱と共に、上空に巨大な隕石が呼び出され、ファンガス達へと落下していく。
 膨大な質量による圧殺。
 単純なれど、だからこそ防ぎようがない必殺の一撃。
 特にファンガス達には、このような純粋な力による攻撃に対する防御手段が殆どない。
 結果、落下した隕石、加えてその衝撃によって群れの半数以上が消し飛び、その残骸が辺りに撒き散らされては消えていく。
 それらには意識を向けずに、胞子を吸わぬようにと、マスク代わりにつけていた布の結びを確かめながら、残る群れへと目を向け。
「……っ」
 死角から飛びかかってきた魔獣を、手にした薙刀で薙ぎ払い、迎撃する。
 彼女の研ぎ澄まされた第六感は、そう簡単に不意を打たせない。
(事件の黒幕、早く出てきてもらいます)
 向けられる眼帯越しの視線に、ファンガス達は怯えを見せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
キノコ相手なら、なんとか…
なんとか…
なん…

む、むしがいるぅーーっ!!

何とか、冷静になろうとしつつ
攻撃を仕掛けるけど…
えーん、虫、やだよぉ~

二刀流に構えた光刃剣で【二回攻撃】【薙ぎ払い】を使って
キノコを斬りつけながら
ヒット&アウェイで行動
敵を、半径20m以内に誘導する様に動き回るね
動く時は、【空中戦】も利用して
三次元機動を行いますっ!

敵が射程範囲内にまとまったら、【高速詠唱】【全力魔法】の
ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストでまとめて薙ぎ払いますっ!

む、むしは、むしは、ここからいなくなれーーーっ!!(涙目)




 猟兵とファンガス達の戦いが続く中、武器を構えた状態で動かない者が一人いた。
「あ、相手はキノコだって……」
 シルだ。その視線は、虫型の魔獣を視界に入れないよう、必死に逸らされている。
 虫が大の苦手な彼女にとって、この群れは悪夢としか言い表せられない。
 それでも、彼女の心が、少女を守らなければという強い思いが、目の前の魔獣達を倒す使命へと、足を向けさせる。
 そう覚悟を決めたシルの足元へ、潰された魔獣の残骸が飛来し。
 あ、目があった。
「―――む」
 両手に携えられた光刃剣の輝きが、強くなる。
「むしがいるぅーーっ!!」
 悲鳴を上げ、それでも敵陣に切り込むのは猟兵としての意地か。
 その動きは素早く、宙を飛ぶように動いては斬りつけ、次の瞬間には退いている、速度を活かした攻撃にファンガス達は完全に翻弄され、なんとか捉えようと追いすがる。
 そして、それは冷静になるようにと自分に必死に言い聞かせながら戦っていた、シルの狙い通り。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ―――」
 大きく飛び退り、シルを追って一箇所に固まっていたファンガス達へと狙いをつけて、詠唱を始める。
 ただ、誤算だったのが一つ。
「ひ―――」
 一箇所に固まり蠢く虫は、単体で見るより遥かに気持ち悪い。
「む、むしは、むしは、ここからいなくなれーーーっ!!」
 涙目になりながら放たれた魔力砲によって、ファンガスの群れは大きく数を減らすこととなった。

成功 🔵​🔵​🔴​

燈夜・偽葉
女の子は救出できたみたいですね。
良かったです。

それなら、次は…キノコの伐採、じゃなかったです、討伐ですね!

まずは黄昏の太刀(サムライブレイド)を用いて、近接で応戦します。
しばらくそうやって、敵を出来るだけ引き付けておきます。
そうして敵の多くが射程内(324m)に入ったら、先制攻撃・なぎ払い・範囲攻撃込みの「剣よ、空を分かちて」で纏めて処理です!
2回攻撃で追撃もしてあげます。
斬撃の檻…捉えました。そして、終わりです。
今夜はきのこ鍋です。…でも、ファンガスって食べれなさそうです…。

敵の攻撃は見切り・フェイント・残像を駆使して回避しますね。


四季乃・瑠璃
胞子散布や毒の胞子は【範囲攻撃】【2回攻撃】接触式ジェノサイドボム(以下ボム)の爆風で攻撃と共に吹き散らかして無効化。
闘虫禍争の虫は出現と同時に【クイックドロウ】【2回攻撃】【鎧無効化】K100の銃撃で素早く甲殻の隙間に銃撃撃ち込んで怯ませ、そのまま接触式ボムで寄生したキノコ事爆殺するよ♪

敵が単体で敵わないと見て数で攻めて来たら、ニヤッと【高速詠唱】【全力魔法】のエレメンタル・ファンタジア!「劫火」の「竜巻」で敵も庭も全て焼き尽くしてあげるよ♪
二度と使えない様にね♪

「動けないキノコなんて絶好の的だねぇ♪瑠璃、全部殺しちゃって良いよね♪」
「ロリコン男の庭ごと潰しちゃおう。遠慮はいらないよ、緋瑪」




「女の子の救出はできたみたいですし、それなら次は、キノコの伐採、じゃなかった、討伐ですね!」
 燈夜・偽葉(黄昏は偽らない・f01006)は恐れることなく、ファンガスの群れへと接近し、複数携えた太刀の内、一刀を振るう。
 その黄昏色の刀身が、魔獣ごとファンガスを断ち切れば、驚異を感じた周囲のファンガスが、毒の胞子を撒き散らした。
 毒が撒き散らされる中、されど偽葉は逃げようとはしない。背後から来る、別の猟兵の気配を感じ取ったからである。
「動けないキノコなんて絶好の的だねぇ♪ 瑠璃、全部殺しちゃって良いよね♪」
「ロリコン男の庭ごと潰しちゃおう。遠慮はいらないよ、緋瑪」
 四季乃・瑠璃(瑠璃色の殺人姫・f09675)、そして、そのもう一人の人格、緋瑪が放った爆弾が、偽葉のみを避けて爆発、その周囲の胞子を吹き散らし無効化させる。
 飛びかかってきた魔獣には、素早く抜いた自動拳銃で、その甲殻の隙間を正確に撃ち抜き。魔獣が怯み、寄生していたファンガスが次の行動に移るよりも早く、放たれた爆弾がその存在をこの世界から吹き飛ばす。
 視線を移せば、魔獣の攻撃を回避しながら応戦している偽葉の周りへ、数で潰そうとするつもりか、ファンガス達が集まってきていた。
 包囲される直前に偽葉が離脱し、太刀を鞘へと収めて構えるのを確認し、緋瑪はニヤッと笑みを浮かべ、それに合わせようと詠唱を始める。
「逃がしませんよ!」
「燃え尽きろーっ♪」
 偽葉の抜刀と同時に放たれた斬撃が、無数の刃となりて、縦横無尽に広範囲の魔獣を空間ごと切り裂く。
 奇跡的にそれの刃から逃れることのできたファンガス達は、しかし、その幸運を感じる間もなく、緋瑪の生み出した劫火の竜巻によって、迷路ごと焼き尽くされていった。
 斬撃の嵐と劫火の竜巻が収まり、猟兵達は周囲へ目を配るが、残されているのはファンガスや魔獣の死骸のみ。この場に現れた敵は、全て殲滅できたことを確認する。

 一息つく猟兵達の耳に、一つの足音が届いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『子ども遣い『チャイルドマン』』

POW   :    理不尽な言いつけ
【攻撃】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    財産喰らい
自身の身体部位ひとつを【対象の親もしくは同じくらい信頼している人】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    操り人形
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【一時的に幼い頃の姿】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はステラ・リトルライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「これはこれは、人の城で随分と好き勝手にしてくれたようですね」
 猟兵達の背後から現れたのは、一人の男。チャイルドマン。
 少女をこの城へと導き、捉えようとしたこの事件の元凶。
 一見温和そうな見た目ながら、並び立つ猟兵を見るその瞳には、狂気の色しか存在しない。
 各々が武器を構える中、男はニタリと笑みを浮かべ、口を開く。
「仕方がありませんね、あの少女に代わり、貴方達を新しい玩具としてさしあげましょう!」
四季乃・瑠璃
本体:瑠璃、分身:緋瑪

「ロリコン男がよく言うよ!」(べーっと舌を出しながら)
「貴方に遊ばれるつもりはありません…私達の殺しの玩具になるのは貴方です」

財産喰らいを警戒して遠距離戦闘。
言いつけの為に何か投げつけたりしてくる際は接触式ボムかK100で撃ち落とし。

最初に閃光仕様で目晦まし、その隙に【ダブル】で分身。【マヒ攻撃】【毒使い】で麻痺毒を仕込んだ煙玉で更に視界を潰したところで、二人掛かりで前後から【範囲攻撃】【2回攻撃】接触式ボムを雨の様に投げつけて飽和攻撃。視界と動きを封じ、爆殺する。

無理矢理接近してきた際はK100と毒ダガーで迎撃。財産喰らいの頭部の口の中に爆弾放り込んで潰してあげるよ♪


紫・藍
好き放題はまだまだこれからですよー!
歌いますよー! 踊りますよー! パフォーマンスです!
皆様が気絶して操られないよう元気の出るお歌をー!
ここまで来れば思いは1つ、チャイルドマンをぶん殴りたい、でっしょうからねー!
その想いも載せちゃいまっすよー!
シルさんなんて特にでしょうし! ほらほらあいつが元凶ですよー?
ルーナさんの抱き続ける人間への祝福も、フィンさんの先程のダイナミックメテオへの称賛も混ぜまぜしましてー!
少女とお母様への応援歌もトッピングな即興歌なっのっでっすよー!

操り人形は何が来ますかねー。
少女は戦場外で万一に備え藍ちゃんくんエールもしてますが、茸虫の幼虫だとシルさんを慰めないとですねー。


ルーナ・ユーディコット
悪趣味なオブリビオンにかける言葉は無い
「その命、穿ち貫く」

【孤狼【彗星】】を発動させ戦う
高速移動に【ダッシュ】を合わせ距離を詰め、【捨て身の一撃】でオブリビオンを【串刺し】にする
そして【2回攻撃】で至近距離から【串刺し】の時の衝撃波を魔力放射を全力でたたきつける
命を燃やすことに躊躇いはない、元より長生きできないのなら今この時に全てを賭ける
皆続いて、私が猟兵の勝利を兆す流星になってみせる
傷は厭わない
恐くない訳じゃない
だから恐れる気持ちは咆哮で塗りつぶす……私は強い!

真の姿になって黒くなった髪はさっきより伸びた気がする
それに人間の姿なのに、人狼の姿より力が湧きたつなのはなんて皮肉なんだろう


フィン・スターニス
随分とこの世界で好き勝手に動きましたね。
ですが、その行いも今日限りです。

戦闘時は、弓での援護射撃を中心に行動します。
敵の攻撃は、第六感、見切りで回避優先。
可能なら、カウンターで矢を放ちます。

また、相手の行動に合わせて、
第六災禍・藍の苦痛を使い、
動きを妨害します。

人は玩具ではありません。
命を弄んだ報い、受けて頂きます。


燈夜・偽葉
可能ならシルさんと行動を共にします

確かに、他人の城で好き勝手するのはいけないことです
でもですね、子供をたぶらかして迷わせた挙げ句、捕らえて玩具にすることもいけないことなんですよ

ですから、あなたはここで倒します
私達も玩具にされる訳にはいきませんから
あと、シルさんの前に虫を出した代償は高くつきますよ!

先制攻撃、なぎ払い、範囲攻撃、フェイント込みの「剣よ、空を分かちて」で攻撃します!
この剣閃、全て避けられますか!

敵の攻撃は見切り、残像、フェイントを駆使して回避、出来なくても武器受けで受け止めます
どれも厄介そうですから、当たるわけにはいきません


シル・ウィンディア
新しい玩具…
ひとを、人をなんだと思ってるのよっ!

それに、そのお人形遊びはここまで
あなたは、わたし達、猟兵がここで止めるからねっ!

光刃剣を二刀流に構えて、一気に接敵してから
【二回攻撃】【鎧砕き】【属性攻撃】で攻撃を仕掛けるね
攻撃後は、ヒット&アウェイですぐに下がり
回避は【見切り】と【第六感】で感知して回避重視
被弾する場合は【オーラ防御】と手に持った光刃剣を回転させて
防御するね

攻撃行動を行いつつ、敵とお城の正門が射程に入るように動いて
射程に入ったら、ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストで
一気に畳みかけます
その時は【高速詠唱】と【全力魔法】の全開で行きますっ!
あなたのお城ごと、吹っ飛んじゃえっ!!




「ロリコン男がよく言うよ!」
 チャイルドマンの言葉に真っ先に反応したのは緋瑪、べーっと舌を出し、容赦の無い罵倒をぶつけていく。
 しかし、そんな言葉に動じることなく、チャイルドマンは微笑みを返すと。
「誤解しているようですね、私はロリコンなどではありません。貴女ぐらいの子も十分許容範囲内です」
「いや、それ十分ロリコンだし! さっさとやっちゃおう、瑠璃!」
「貴方に遊ばれるつもりはありません……私達の殺しの玩具になるのは貴方です」
 緋瑪が呼びかけると同時に、人格が瑠璃へと代わり、二人の間に爆弾が生成された。
 攻撃目的にしては距離の開いた位置で炸裂したその正体は、閃光弾。光と音がチャイルドマンの視界を奪わんと襲いかかる。
 しかし、変態的嗜好だろうともオブリビオン。咄嗟に顔を庇って被害を最小限に留め、攻撃してくるであろう瑠璃へ視線を戻し。
「む!?」
 全く同じ姿の少女が二人、チャイルドマンの前後に立っていた。
 動揺しつつも、迎撃の体勢に入る男の肩へ、一本の矢が突き刺さり、その動きを妨害する。
「随分とこの世界で好き勝手に動きましたね。ですが、その行いも今日限りです」
 他の猟兵達の援護に回った、フィンの放った弓矢である。
 その瞳に秘められた力を解き放つタイミングを見計らいながら、矢を連射してその場に釘付けにしていく。
「人は玩具ではありません。命を弄んだ報い、受けて頂きます」
 動きを封じられたチャイルドマンへ、二人の少女、瑠璃と緋瑪は麻痺毒の込められた煙玉と、更にはありったけの爆弾を生成し、一気に爆殺せんと攻撃を開始した。
「好き放題はまだまだこれからですよー!」
 加えて藍が高らかな声で歌い上げ、その歌を聞いた猟兵達の力を強化していく。
「歌いますよー! 踊りますよー! ここまで来れば思いは1つ! 元気の出るお歌を聞いてー! ぶん殴っちゃってくださーい!」
 その元気に満ちた歌声を聞けば、いかなる者も気分を高揚させる。
 それは、未だ近くに隠れ潜んでいる少女にとっても同じこと。
 藍の歌には、猟兵達はもちろん、少女や、その母親へのエールの想いも込められていた。
(今この場での藍ちゃんくんにはー! こうして応援することしかできないわっけでっすがー!)
 いつの日か、少女やその家族が、陽の光を浴びて、幸せな暮らしを過ごせる事を願い。
「ええい、不愉快な歌ですね!」
 決して浅くはない傷を負いつつも、爆風の嵐から無理矢理に脱出を果たしたチャイルドマンが、藍へと迫る。
 その前に立ち塞がり、刃を持ってその動きを制したのは、シルと偽葉の二人。
「させないよ!」
「ほう、そんなに早く私の玩具になりたいですか!」
 正しく狂人として、自分に都合の良い思考から出た言葉に、シルはその表情を強い怒りに染める。
「玩具……ひとを、人をなんだと思ってるのよっ!」
 チャイルドマンの、形状を変化させようとしていた腕を跳ね上げ、その隙をついて偽葉が胴薙ぎの一撃を放つ。
 呻きながら下がる男へ、怒り冷めやらぬシルに代わり、偽葉が言葉を紡いだ。
「確かに、他人の城で好き勝手するのはいけないことです。でもですね、子供をたぶらかして迷わせた挙げ句、捕らえて玩具にすることもいけないことなんですよ」
 ですから、と、太刀を構え。
「あなたはここで倒します。私達も玩具にされる訳にはいきませんから」
 それまで自分が獲物にしてきた年頃の二人の少女、その視線に圧され、チャイルドマンは一歩後ろへと下がる。
 しかし、突然その表情を一変させたかと思えば、戦場に散らばっていた、虫型の魔獣達が起き上がり、男を守るように猟兵達へと飛びかかった。
 その姿は先程戦った時よりも小さく、力も弱まっているようだ。猟兵達は各々軽く撃退するが、偽葉と藍の二人は、まずい、と、シルへと視線を向ける。
 シルが虫を苦手とすることを先程の戦闘で知ったのか、それともただの偶然か、どちらにせよ、ここでシルが暴走してしまうことは、目の前の相手に決定的な隙を晒すこととなってしまう。
「シルさん、落ち着いて―――」
「そのお人形遊びは、ここまで」
 偽葉が声を上げようとしたと同時に、シルに飛びかかろうとした魔獣が斬り捨てられた。

 虫は怖い。
 今だって、斬った感触がおぞましかったし、手が震え、気を抜いたら涙が零れそうだ。
 だが、それ以上に―――人の尊厳を踏み躙る、この敵が許せない。

「あなたは、わたし達、猟兵がここで止めるからねっ!」
「くそ……!」
 シルの気迫に呑まれ、チャイルドマンは猟兵達から背を向け、自らの城へと駆け出した。
「逃げる!?」
「違う、狙いは『玩具部屋』だよ!」
 瑠璃と緋瑪が声を上げる。
 チャイルドマンは「新しい玩具」と言っていた。
 ならば、彼の玩具部屋には「古い玩具」があるはずだ。魔獣などよりもずっと彼が扱いに慣れていて、猟兵達が心理的に攻撃しづらくなる、一石二鳥の玩具が。
 その事に気づき、シルは放とうとしていた魔力砲の詠唱を中断する。この位置からでは、城の一部も巻き込んでしまう。そこに玩具部屋があれば、罪の無い被害者の遺体をも傷つけてしまいかねない。
「この剣閃、全て避けられますか!」
「封印解除。藍色の魔力を糧とし、第六の災い、此処に発現せよ!」
 それに代わり、偽葉が空間ごと断ち切る斬撃を放ち、フィンは視線に乗せてチャイルドマンへと呪詛をかける。
 偽葉の斬撃を受けよろめくその身を、内側からもフィンの呪いが切り刻んでいくが、血を吐き、ふらつきながらもその足は止まらない。二人が小さく呻いた。
 部屋まで行ければ、まだ手はある。今まで集めてきた『玩具達』を使えば、まだ戦える。
 そんな希望を持って駆けるチャイルドマンの身体が、突如くの字に折れた。
「がはっ!?」
「ルーナさん!」
 チャイルドマンを遥かに超える速度で回り込み、その腹部に強烈な一撃を食らわせたのは、青い炎のような魔力を纏ったルーナである。
 その黒髪は先程よりも伸び、彼女は人としての姿を取り戻すほどに、人狼の力が増していくのを感じていた。
 そんな皮肉な自分の状態に一瞬目を細め、何も語ることはないと、ただ無言でチャイルドマンへと手にした槍を振り上げる。
「おのれぇぇぇぇ!!」
 男はその右手をルーナが最も信頼する者の顔へと変化させ、喰らいつかせようと放った。
 しかし、彼女はその顔が誰になったかすら視界に入れることなく、その手を刺し貫く。
「があああああ!!」
 悲鳴が上がる。だが、男の顔には笑みが浮かんでいた。
 右手を貫かれた際に、僅か、ほんの少しだけ、ルーナの腕に彼の攻撃が掠めていたのだ。
「『私を守りなさい』! この言葉を守らねば、貴女の身体も引き裂かれますよ!」
 告げられたルールに、追いついた猟兵達の動きが止まる。
 下手をすればチャイルドマンに逃げられ、ルーナと戦うハメにすらなりかねない。
 その硬直を破ったのは、ルーナ自身。
「断る」
「な……!?」
「その命、穿ち貫く」
 ルールを破った事により、ルーナの全身が傷つき、血が吹き出す。
 しかし、その程度で彼女は止まらない。
 命を燃やすことに躊躇いはない、元より長生きできないのなら、今この時に全てを賭ける。
 傷は厭わない。
 恐くない訳じゃない。
 だから、恐れる気持ちは咆哮で塗りつぶす。
「バカな、傷つくのが怖くないのですか―――!」
「私は、強い!」
 咆哮と共に放たれた槍は。
 チャイルドマンの命を、正確に奪い取っていた。


 少女は無事に、村へと送り届けられた。
 寝込んだままだった少女の母親は、帰って来た少女が持っていた薔薇を見て、目を丸くしてひっくり返るほどに驚いたとか。
 その後、少女から事情を聞いた母親は、「薔薇よりも、貴女が側にいてくれれば幸せだから」と、そっとその身体を抱きしめ。
 少女自身はよくわかっていないようで、首を捻るばかりであったが、それでも母親に抱かれ、嬉しそうに微笑む。

 仲睦まじい親子の絆を、一輪の薔薇だけが見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月10日


挿絵イラスト