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ヨモツ団地

#UDCアース

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#UDCアース


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 空は分厚い雲に覆われ、辺りは日中とは思えぬほど暗く、重たい空気が漂う寂れた団地を一層と昏く見せる。

「ひっ、だれっ、だれか、誰か助けて……!」

 団地の一棟を少年が走る。その足をもつれさせ、転びそうになりながらも必死に。
 助けを求める声は、しかし恐怖にひきつり、かすれて声にならない。
 少年の進む先、下りの階段が見えた。階段を目指し、走りながら後ろを振り返る。
 少年のはるか後方には、赤いランドセルを背負い、黄色い帽子をかぶった異形の少女が一人。ゆっくりと、だが確実に少年に近づいてくる。
 階段を駆け下りながら少年は後悔する。冬休み最後の思い出に、肝試しなんてするんじゃなかったっと。
 階段を下りきり、後ろを振り返る。少女の姿はまだ見えない。だが、足音は徐々に近づいてきている。
 次の階段は今いる位置の反対側。再び廊下を走らなければなならない。すぐに駆け出すが、疲労と恐怖から足がもつれ転んでしまう。
 立ち上がり、再び走ろうとするが、転んだ際に足をひねったのか激痛が走り、走れない。
 しかし、足音は近づいてくる。
 少年の視界の端に、廊下に備え付けられた掃除用のロッカーが映る。痛む足を引きずり、必死にロッカーへと進む。少女はまだ見えない。
 ロッカーの中へ身を滑り込ませ、息を潜める。
 足音が徐々に近づいてくる。階段を下りきった。近づいてくる。ロッカーの前。

 足音が、止まった。

「―――――!」

 叫びそうになる口を必死に抑え、耐える。
 足音が再び動き出した。徐々に離れていく。それでも必死に声を押し殺し、息を潜める。

 どれほどそうしていたであろう。1時間か、半日か、それともまだ1分もたっていないのか。もはや時間の感覚も失い、ただただ恐怖に耐え続けていた。

 ふと、声が聞こえた。自分の名前を呼ぶ、男の声が。
 確かな足音が声とともに近づいてくる。
「おーい、拓海くーん。友達が外で待ってるよー!」
(助かった。みんなが大人を連れてきてくれたんだ!)

 安堵したのか、少年――拓海は脱力する。足は未だに痛み、体に力が入らずロッカーから出られないため、声を上げる。

「ここだよ!ロッカーの中だよ!」
「ああ、そこにいるのか。すぐに行くからね!」

 足音が近づき、ロッカーの前で止まった。
「もう、大丈夫だよ。さぁ、みんなのところへいこうか」
 ロッカーの扉が開き、微かな光が差し込む。微かな揺らめく赤い光が。
 拓海の目の前にいたのは、頭部が以上に膨らみ、異形と化した男と、もはや原型を留めぬくらいに損壊された友人たちの亡骸だった。

「―――――ッ!」

 ここはヨモツ団地。20年前に一人の子供が行方不明となってから、不可解な現象が多発し、もはや誰も住んでいない廃団地。
 少年の声は、だれにも届かない……。


「以上が、俺が予知で見た内容だ」
 集まってきた猟兵達にロートス・モントリヒト(忘却の復讐者・f01701)は自分が見た予知の内容を告げる。
「この団地はオブリビオンと化した教団員の一人が、儀式を行うための拠点として潜伏している。そこへ町の噂をもとに、肝試しと称して数名の少年たちが向かっている。このままでは予知通りの結果になるが、幸いなことに、今から行けば少年たちが団地へ入る前に、少年たちと接触できるだろう。手段は問わん。まずはこの少年たちを追い払え。結果、それがこの子たちを守ることにつながる。追い払った後は、件の団地へ向かえ」
 そう言って、ロートスは団地の地図を取り出す。地図には団地の中央にある一棟に赤く丸印がつけられている。どうやら、そこにオブリビオンがいるらしい。
「5階建てだが、1フロア10戸と、建物自体はそれなりに大きい。この棟のどこにいるかまでは分からんが、被害が出る前にこれらを排除しろ。一切の容赦なく、完膚なきまでに」
 その瞳に憎悪の炎を滾らせ、ロートスは静かにそう告げた。

「ん?噂話の内容?」
 猟兵達が出発の準備を進める中、猟兵の一人の質問に、ロートスは顎に手を当て記憶をたどる。
「確か、どこからか子供のすすり泣く声が聞こえる。だれもいないはずの廊下で足音が聞こえる。雨も降っていないのに廊下が濡れている、とかだったか。20年前の失踪事件から流れる噂話で、今回の一件とは関わりはないだろうが、まぁ、知らぬよりはいいか。では、あとは任せる」


Chariot
 時季外れですが、ちょこっとホラー風味なテイストのシナリオです。
 大丈夫!全然怖くないよ!
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第1章 冒険 『少年達は探検する』

POW   :    叱る、脅す、力づくで止める

SPD   :    先回りし障害物を設置する等で妨害する

WIZ   :    説得する、誤情報を与え他の場所に誘導する

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御手洗・花子
団地の前、おそらく少年達が通るであろう道で泣き真似をしている。
「うぇ~ん…ひっく、ひっく」
「う~ん、違うなぁ…ってあれ、君達だれ?、今は撮影中だから入っちゃダメだよ?」
こちらに気がついた、或いは無視して団地に入ろうとした少年達をそう呼び止める、と同時に待機させておいた撮影スタッフ(UDC職員)も団地の中から出てくる。

『カバーストーリー:怪談は全部撮影の所為だった』作戦発動。

すすり泣く子供は撮影シーン、足音は単にスタッフの物、濡れている?、撮影の演出で水使ってるから…と怪談の噂の正体を捏造し少年達に伝える。

既に何かを見てて信じきれない様子だったら記憶処理も行う、これがUDC組織のやり方じゃ


ロバート・ブレイズ
「少年達の肝試し。成程。簡単な事柄だ。本物よりも偽物の方が『強烈』ならば問題皆無」
冒涜爺が詠うのは地獄への誘いだ。勿論、偽物だがな。
「愛すべき彼等に齎されたのは夢のような温もりだ。母親に抱かれる感覚は永劫の如くたまらない。触れた掌は大いなるもので地獄は其処に存在する」
詩を暗唱して『巨大な泥の化け物』を創造する。偽物だが少年達が本物だと思い込み逃げたのならば最善。
万が一見破られたら『恐怖を与える』で演出しよう。これは本物だ。逃れなければ地獄が嗤う。さあ。魔王が来るよ。
泥のような化け物が子供のような啜り泣きを垂れ流すだろう。私の仕込んだ『もの』だがな!


ロカジ・ミナイ
完膚なきまでに。
その一言で僕は動く。
分かり易い、気持ちがいい、迷いがない、の三拍子が揃ってるからね。
オバケに会った時に慌てなくてすむでしょ。

僕だったら、どんなやつに追っ払われるか。
そりゃあ肝試しより怖い思いしたらだよ。
目の前に突きつけられる圧倒的な「力」。
身に起こる事が確かな「未知の恐怖」。

そう考える僕は、
ヤンキー座りでタバコをふかし、
やって来た少年達を渾身のメンチとタンカで迎える事にする。
顔が怖く見えるサングラスも忘れずにね。夜だけど。
吸い殻はこっそり拾って灰皿にね。


琶咲・真琴
探検ですか……いいですねー
じゃなくてっ!
大変なことになるなら
止めないといけませんね

いつものメイド姿から
普通の男の子の格好に変える
わざと転んだりして
怪しまれない程度に服を汚したり
擦り傷を作って置く

団地から出てきた風に装って
少年グループさんたちに接触

口調も素に戻す

「あれ、にーちゃんたちもこの先の団地で肝試し?
やめておいた方がいいぜ
オレも気になって
さっき行ってきたんだけど
床が抜けて高いところから落ちかけたりして
あちこちボロボロで危なかったし

おかげで服も汚れて怪我しちまった


あー気晴らしに
○○(子供に人気のゲーム名)でもやろうかな
よかったら
にーちゃんたちも一緒にやらない?


アドリブ歓迎


三枝・にひろ
SPDを駆使して先廻りして立ち入り禁止の看板でも置いてみようかな
あとは自転車でも置いてみよう
「誰か先に来てる」アピールだ
肝試しに来たんだろう? 人がいる廃墟じゃ趣旨が変わっちゃうぜ

それでも来る気でいるなら姿を現して追い払うよ
「ぼくが先に来たんだ、今日はぼくの場所なんだからお前ら帰れよー。明日なら使わせてやるよ」
肝試しに来たのに偉そうな年上がきてるって時点で大分やる気なくしてくれるんじゃないかなっと

それにしても不思議が多い廃団地か
これは、個人的にも調査のしがいがありそうだ…どこからUDCで、どこからお化けだ?
ああ全部暴きたい!確保して収容して調査したい!


オルハ・オランシュ
【WIZ】

君達、ちょっと待って
もしかして例の噂を確かめに来たの?
残念だったねー
噂はあくまでも噂に過ぎなかったみたい

あ、私はこういう者です
(オランシュ探偵事務所 所長
という肩書きをつけた、嘘の名刺を見せて)
ここってけっこう広いでしょ?
この団地を取り壊して新しくマンションを建てたいみたいでね、
あるクライアントから噂の真偽を調査されて来たんだ
足音は聞こえないし廊下も濡れてない、お化けも退屈しちゃいそうな場所だったよ
私も拍子抜けしちゃった!

もし肝試しがしたいならA町の廃駅の方が怖い思いができるかもしれないよ?

……なんてね、あの廃駅は大通りからも近いしちっとも怖くないと思うけど
信じてくれるかな


言葉・彩色
『コクリは怪談は得意かい?』
「別段、苦手ではありませんね」
『であれば、今回は怪談を語ろうか』

彩色口調でPOW判定
「やぁ、少年君たち。肝試しかい? ついでに怪談なんてどうかな?」
くすくすと笑いながら
聞いた予知の内容を怪談風に語って脅そうかな
「ではでは、御耳と御目々を同時に拝借。今宵を彩るは怪談夜話。子供がいなくなる廃団地の御話」

語るも見せるも不可思議な色
[恐怖を与える]込み
臨場感たっぷりで、怪談を語って見せようか

「━━斯くして、拓海少年もまた『みんなのところ』へ行ってしまいました……。━━これにて、おしまい」

充分肝は冷えただろう?


夢飼・太郎
☆団地旅団で参加
松本が作成した警官服で変装し追い払う
とにかく威圧し建物から遠ざけたい
「君達ここで何をしている!怪しい場所に近付くなと言われているだろう!」
「見回りしていて正解だったな。生活指導の先生にしっかりお話ししてもらわねば……どこの学校だ?ん?」
地毛が赤いから黒髪のカツラもついでに組織から借りておく
失敗しても次の作戦が有るので慌てず避難誘導に徹する
「な、なんだアレは!火の玉!?おい!早く逃げなさい!あっちだ!」

子供達を引き離せたら分担して記憶消去銃を使用
幻聴はひたすら我慢


松本・るり遥
【四六九九】
まずは子供らを追い払う……駅前の交番にいたお巡りさんを怪しまれないようにじっと見て、レプリカクラフトで警官服を生成、夢飼・太郎に着て貰う。サイズ合ってる?

一芝居。
「あ……うおお!あれは!あれは何ですかお巡りさん!!なんか火の玉浮いてますよ!ああっあっちからは変な音が……ひっ」
「ここの団地やべえよ!!!」
「逃げるぞ子供ら!ついてこい!」

離れたところで、ボールペン型記憶消去銃の先で、全員の頭をノックノック。お前らは怖い思いしないでいいんだよ。

終わったよ、そっちはどうだ。と、LINEを仲間に飛ばして。
ああ、脅かす側だとホラーも怖くなくて気楽だなあ。こっからはそうもいかないかなあ……。


笹鳴・硝子
【四六九九】

少年たち排除…もとい避難作戦ですね
警察(偽)に言われても、火の玉見ても去らないようであれば、サモニング・ガイストで召喚した戦霊(日本古代蝦夷の戦士)におどろおどろしく登場してもらいますね
ある意味本物ですから子供には怖いんじゃないですか…世の中、怖い思いをしないと解らないこともあるってことで


あの子ら絶対素直に帰らないと思いますよ
だってあの年頃の好奇心半端なくなかったですか
正面で追い払われたら裏に回るくらいのことはしそうですよね
……ほんとしそうですね
団地の見取り図とペンデュラムを使って、少年たちが留まっていないかダウジング(追跡・失せもの探し)で確認
残っている時は、追い戦霊しますね


エト・ルカス
【四六九九】
なんかみんなで相当おばけで驚かしてるんで、演出重視で。
僕もリザレクト・オブリビオンでおばけ召喚……もとい死霊騎士召喚しときます。あ、うちの死霊騎士まんま死神っぽいんで……結構おばけの自信あります。
こういうホラーって……見えそうで見えない演出とかも重要じゃないですか?
子供たちが団地に近づいてきた段階で、さりげなく不審な音とか立てたり……視界のギリギリを横切って違和感を覚えさせるとか……そういう感じでこう……だんだん雰囲気盛り上げていきたいですね。
たぶん、こういう恐怖体験が人を強くするとか、そういうアレだと思うんで……手は抜かないですよ。
……ちょっと楽しくなってきたとかではないです。


三岐・未夜
【四六九九】
同じ団地のご縁だし、やってみよっか。
まず子供追い払わないとね。脅かしてビビらせるために、狐火で幾つかの火の玉を演出するよ。寂しい黄昏色の炎は風もないのに揺らめいて、ふわりふわり、不安定に不気味に飛ぶ。
不安を覚えてくれれば、るり遥と太郎がうまく煽ってくれるでしょ。硝子やエトの駄目押しもあるし、行ける行ける。

好奇心とか反抗心で戻って来るとか余計なことされても困るし、最終的にはるり遥と太郎が記憶消してくれるはず。
僕のいりこは今回おやすみ。火の玉担当だからね。
……これ、ちょっと肝試しみたいで楽しいね。設営側だけど。

日常は日常のままが幸せだよ。 わざわざ怖い思いなんてしに来ないでも、さ。


詩蒲・リクロウ
【四六九九】えぇ、ガチホラーな物件ですか……。
あまり乗り気はしないですけど、オブリビオンなら倒さないとですね…。

では、自分は、他の人の演出に頼って、物陰からそぉっと覗き込んで脅かして見ようと思います。シャーマンズゴーストって人とだいぶ違いますし、背丈もあるので、結構初対面で怖がられるんですよね…あはは。
でも、演出と相まってそこそこ迫力は出ると思います。

あと、出来るなら、自分も逃げ出したいです、はい。口には出しませんけど……。




 空を覆う分厚い雲のせいで、日中だというのに、辺りは薄暗い。前日に雨が降ったのか、地面は濡れ、湿った空気の冷たさが肌を刺す。
 水溜まりを跳ねさせる音と共に、三枝・にひろ(creatio ex nihilo・f10706)が駆けてくる。
(どこからUDCで、どこからお化けだ?ああ全部暴きたい!確保して収容して調査したい!)
 探索者としての性分か、空想好き故か、あるいはその両方か。この街で以前から流れる廃団地の噂に彼女は胸を弾ませる。
「っと、この辺で良さそうかな」
 団地へ至る道に辿り着いたにひろは、持参した看板を設置する。看板には『関係者以外立ち入り禁止』の文字。
 看板の設置を終えたところで遠くから話し声が近づいてきた。にひろは急いで物陰に隠れ、様子を伺う。
 やって来たのは小学校高学年くらいの5人組。
 先頭にはリーダー格と思われる少年。その後ろに取り巻きと思われる4人が続く。彼ら以外の人影は見当たらない。
 リーダー格の少年と取り巻きの内3人は肝試しに乗り気な様子だが、残る1人はあまり乗り気ではないようだ。不安げな表情を浮かべつつも、4人についていく。
 そして少年たちが看板の前で足を止めた。
「立ち入り禁止ってなってるけど、どうする拓海?」
 取り巻きの一人が先頭の少年ーー拓海に話しかける。
「大丈夫、大丈夫。こんなの誰も気にせず入ってるって!」
「でも前に、立ち入り禁止の場所に入って捕まったってニュースでやってたぜ」
 今まで乗り気だった取り巻きたちは、看板を見て不安になったのか、先へ進む事を躊躇う。
「ねぇ、帰った方がいいよ」
 そして乗り気でなかった少年もそれに続くがーー、
「なんだよ、まだ団地にすら入ってないのにビビってるの?」
「いや、そうじゃないけどさ……」
「だったら行こうぜ」
 しかし拓海に気にした様子はなく、看板を無視し、先へ進む。そして取り巻きたちも、顔を見合わせ、それに続く。
(あとは後続の人に任せた方が良さそうかな)
 下手に姿を現すより、後続に任せた方が支障がないと判断し、にひろはその場をあとにする。


 道の真ん中で泣いている少女がいた。
 黒い髪に色白の肌、少年達と同じぐらいの背格好。場所が場所なだけに、恐怖で足が止まる。
「うぇ~ん…ひっく、ひっく。う~ん、違うなぁ…ってあれ、君達だれ?、今は撮影中だから入っちゃダメだよ?」
 少年たちが足を止めたことを確認し、少女ーー御手洗・花子(人間のUDCエージェント・f10495)は泣き真似をやめ、少年たちを咎める。
 その言葉に合わせ、撮影スタッフに扮したUDC職員が姿を表す。
 幽霊ではなく、生きた人間だったことに、少年たちは安堵する。
 しかし、撮影の邪魔をしてしまったことに対し、先ほどとは別種の恐怖が芽生える。
「ご、ごめんなさい!俺達、この先の団地で肝試しするつもりで、でも撮影やってるなんて知らなくて……」
 しどろもどになりながらも謝罪する少年たちに、花子は笑いながら、撮影の演出等が怪談の噂の正体であると、捏造した情報を伝える。
 だが、
「ねぇ、おねえちゃん。何で嘘つくの?」
「え?」
 ずっと不安げな表情を浮かべていた少年が、無表情に花子をじっと見つめて問いただす。
 少年の言葉を継ぐように、拓海が口を開く。
「いや、あの噂、俺達が生まれる前からあるから、撮影の演出かじゃあり得ないんだけど……」
 そう、あの噂は失踪事件が起きてから流れ始めたものであり、ここ最近流れ始めたものではない。
「じゃあ、俺たち行きますね。撮影の邪魔してすいませんでした」
 拓海たちは一礼し、来た道を戻る。
 花子を問いただした少年だけは未だに花子を見つめていたが、すぐに拓海たちを追いかけていった。

「撮影やってるんだったら帰ったほうがよくない?」
「帰ったほうがいいよ」
「でも、あの人たちなんか怪しくない?撮影ってのも嘘かもしれないし……」
 来た道を戻ってきた拓海たちだったが、分かれ道に差し掛かったところで、花子たちへの不信感や、怪しい人たちがいるという不安感から、肝試しを続行するかを話し合っていた。
「とりあえず、別の道から行ってみよう。団地で本当に撮影をやってるんだったら帰ればいいし」
 拓海のその言葉に、不安は拭えないまでも取り巻きたちは同意する。ただ一人を除いて。
 そして拓海たちは帰路ではなく、団地へ至る別の道を進み始める。
「待ってよぉ~」
 一人同意しなかった少年は、不安な表情を浮かべ暫し立ち止まっていたが、すぐに拓海たちを追って駆けていった。


「な、なあ、拓海、ちょっとヤバくない?」
 取り巻きの一人が怯えるのも無理はない。道の先に、見るからに風体の悪い男がいるのだ。
 特徴的な髪形にサングラス、だらしない服装にヤンキー座りでタバコをふかすその姿は、どう見ても、ヤクザやそれに類する人種だろう。
 そして、ヤクザ風の男――ロカジ・ミナイ(きまってない・f04128)とサングラス越しに目があった。
 タバコを足元に捨て、ロカジが拓海たちに近づく。
 拓海たちは普段目にしない人種と遭遇した恐怖から後ずさる。
 自分だったらどんな奴に追い払われるか。それを考えたときにロカジの頭に浮かんだのは、目の前に突きつけられる圧倒的な「力」と、身に起こる事が確かな「未知の恐怖」だった。
 それ故に――、
「おう、坊主ども、俺になんか文句でもあんのか!?」
 普段は比較的丁寧な口調のロカジだが、拓海たちを脅すために、その風体に似合った口調で接する。
「な、ないです!ないです!でも、あの、ここ撮影やってるんじゃ……」
「んなもん知らねえよ!俺は今機嫌が悪いんだ。ボコられたくなかったらとっとと失せろ!」
 拓海が必死に声を絞り出すも、それを遮るようにロカジが指を鳴らしながら言葉をかぶせる。
 その言葉に拓海たちは慌てて来た道を引き返す。
 子供たちの姿が見えなくなったのを確認し、ロカジは先程捨てたタバコを回収し、携帯灰皿へ入れる。
「ちょっと強めに脅かしたけど、どうだろうな。帰ってくれればいいが、でもあれくらいの子供は好奇心強いからな。油断はできないか」

 ロカジの予感は的中することになる。
 後ろを振り返り、ロカジが追いかけてきてないことを確認した拓海たちは息を切らせながら立ち止まる。
「やっぱ、ヤバいってここ。肝試しどころじゃねえよ!」
「確かになんかヤバいけどさ、でも、もうちょっとだけ行ってみようぜ」
「またさっきみたいな人に会ったらどうするんだよ!」
「その時は大人しく帰るよ。ほら、あっちから行けば遠回りだけど、さっきの人には合わないで行けるし」
 拓海と取り巻きたち暫し言い合いを続けたが、冬休みの最終日にここまで来たのに途中で引き返すのはやはり気が引けたのか、あるいは好奇心のほうが勝ったのか、恐怖と不安を抱えつつも、拓海たちは団地をめざし、再び歩き出した。


 再びロカジと遭遇しないよう、迂回路を進む拓海たちだったが、その道中、団地側から歩いてくる少年を見つけた。
 年の頃は小学校低学年といったところか。良く見れば服はあちこち汚れ、擦り傷だらけだった。
「あれ、にーちゃんたちもこの先の団地で肝試し?」
 団地側から歩いてきた少年、琶咲・真琴(今は幼き力の継承者・f08611)は、さも今団地から戻ってきたていを装い、拓海たちと接触を試みる。
「やめておいた方がいいぜ。オレも気になってさっき行ってきたんだけど、床が抜けて高いところから落ちかけたりして、おかげで服も汚れて怪我しちまった」
 無論嘘である。普段着ているメイド服から普通の男子服に着替えた彼は、拓海たちが来る前にわざと転び、服を汚したり、擦り傷を作っておいたのだ。
「お前一人できたのか?」
「うん、そうだよ」
 スゲーと、驚く拓海たち。
「俺たちも負けてられなねえな!」
 どうやら自分たちより年下の少年が1人で団地へ行ったことに対抗心を燃やしてしまったようだ。
 だが、彼の行動は無駄ではない。
「あ、いたいた。やっぱり見間違いじゃなかったみたいだね」
 何故なら、真琴のさらに後方からやって来た、オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)の言葉を裏付ける布石となるからだ。
 オルハは真琴の怪我の状態を確認し、拓海たちに目を向ける。
「君たちも例の噂を確かめに来たの?残念だったねー
。この子が幽霊じゃなかったから、噂は噂に過ぎなかったみたい。あ、私はこういう者です」
 オルハを訝しむ拓海たちに、彼女は『オランシュ探偵事務所 所長』と書かれた名刺を差し出した。
 そこに書かれていた内容に拓海たちは驚き、彼女の顔と名刺を交互に見る。
「この団地を取り壊して新しくマンションを建てたいみたいでね、あるクライアントから噂の真偽を調査されて来たんだ」
 そして、噂されているようなことは何もなく、老朽化が進んでいるため立ち入るのは危険だと続けた。
「この子も怪我してるし、君たちも危ないから帰った方がいいよ」
「でも、あともう少しで団地だし、外側だけでも見て帰りたい」
 そう漏らす拓海に取り巻きたちも同意する。
「どうなっても知らないよ?」
 オルハの言葉に一瞬不安な表情を浮かべるも、「すぐ帰るから」と拓海たちは先へと進んだ。
 だが、その選択を彼らはすぐに後悔することになる。


『コクリは怪談は得意かい?』
「別段、苦手ではありませんね」
『であれば、今回は怪談を語ろうか』

 日が暮れだしたのか、あたりは徐々に光を失い、暗くなりつつあった。
 そして、団地まであと少しというところで、拓海たちはキツネの面を被った言葉・彩色(妖シキ言ノ葉・f06309)と出会った。
 どのような容姿だろうと、違和感を持たれないのが猟兵の能力だが、彩色の持つ雰囲気からか、拓海たちは身をこわばらせる。
「やぁ、少年君たち。肝試しかい? ついでに怪談なんてどうかな?」
 くすくすと笑いながら彩色は拓海たちに近づく。
 拓海たちは、動けない。
「ではでは、御耳と御目々を同時に拝借。今宵を彩るは怪談夜話。子供がいなくなる廃団地の御話」
 そして彼女は語り始める。予知で知った内容を怪談風にして。
 時に無感情に、時に抑揚をつけて、拓海たちの周りをゆっくりと回りながら。
 その語り口から拓海たちの恐怖心は徐々に高まっていく。
 そして、彼らの背後に回った時、物語は終わりを告げた。
「━━斯くして、拓海少年もまた『みんなのところ』へ行ってしまいました……。━━これにて、おしまい」
「な、なんで俺の名前しってるの!?」
 すぐさま振り返る拓海。
 しかしそこには、誰もいなかった。
「な、んで……」
「さっきまで居たよな!?」
「なにもないんじゃなかったのかよ!」
 先程聞いた怪談のせいもあり、彼らの恐怖心は限界寸前まで高まっていた。
「君達ここで何をしている!」
 そして突然響いた声に、取り巻きの一人が腰をのうかした。
 拓海たちは声のした方を恐る恐る確認する。
 そこにいたの警官服を着た夢飼・太郎(扉やかく言うな・f00906)と補導されたていの松本・るり遥(不正解問答・f00727)だった。
 太郎が着ている警官服はるり遥がレプリカクラフトで作ったもののため、どこか作りが荒く見える。
 しかし、拓海たちがそれに気がついた様子はない。
 彼らは先程の彩色のような怪しげな存在ではなく、警察官という存在が現れたことによる安心感が強く、そこまで細かいことに気を回せる状態ではなかった。
「見回りしていて正解だったな。生活指導の先生にしっかりお話ししてもらわねば……どこの学校だ?ん?」
 子供達を追い払うため、厳しい口調で警官を演じる太郎。
「えっと……」
 ばつの悪そうな表情で顔を背ける拓海。
 ここまで来れば、追い払うには十分だろう。だが、彼らは念には念を入れ、最後の詰めにはいる。
 周囲に隠れ潜む仲間への合図をかね、るり遥が仕掛けた。
「あ……うおお!あれは!あれは何ですかお巡りさん!!」
 やや大袈裟にも思える演技だが、安堵しきった少年たちを驚かせ緊張させるには十分だった。
 るり遥が指差す方を拓海たちは見やる。
 そこには薄闇のなか漂う火の玉があった。


 るり遥の合図を聞いた三岐・未夜(かさぶた・f00134)は玄火を使い、黄昏のような寂しい色の火の玉を放つ。
 火の玉はふわりふわりと、不安定に、そして不気味に飛ぶ。
(不安を覚えてくれればいいけど、るり遥と太郎がうまく煽ってくれるでしょ。あ……。これ、ちょっと肝試しみたいで楽しいね。設営側だけど)
 そして、未夜の火の玉に照らされるように立つ大柄な影があった。詩蒲・リクロウ(見習い戦士・f02986)だ。
(ガチホラーな物件ですか……。あまり乗り気はしないですけど)
 彼は出来るなら逃げ出したい気持ちで一杯だったが、口には出さず、未夜の演出に頼り、拓海たちから見える位置に佇む。
 常であれば、リクロウの姿は違和感を与える事はないが、先程聞いた怪談や太郎達の煽りの影響か、リクロウの姿は拓海たちの目には非常に不気味に映る。
 そして、恐怖が限界に達したのか、拓海たちは悲鳴を上げて走り去っていく。腰を抜かした少年は太郎たちが担ぎ、一緒に走る。
「あれ?」
 リクロウと未夜はそこでふと違和感を覚える。
 何かがおかしい。そう思いつつも、その正体が掴めず、拓海たちが走り去った方を見つめるのだった。


 薄暗くなった道を拓海たちは走る。早くここから立ち去らなければと。
 しかし、先程から視界の端を何かがちらつく。
 そして、徐々にその姿がはっきりと見えてきた。
 それは死神のようにも見えるし、大昔の戦士にも見える。
 急いでいるはずなのに、恐怖から景色の進みが遅く感じる。
 さっきの場所から離れているはずなのに、音が姿が追ってくる。
 目に大粒の涙を浮かべ、声にならない声をあげそれでも前へと、もと来た道へと走る。

 その様子を物影から見守る2つの人影があった。
 笹鳴・硝子(帰り花・f01239)とエト・ルカス(mirrors・f05965)である。
 彼女らはそれぞれサモニング・ガイストやリザレクト・オブリビオンで霊を召喚し、入れ替わり立ち替わりで拓海たちを追わせていたのだ。
 ある意味、本物の霊である。その効果は、拓海たちの様子からも伺える。
「あの様子なら戻ってくる心配はなさそうですね」
「そうですね」
 硝子の言葉にエトは返事を返すが、違和感を感じ、拓海たちを注視。その人数を確認する。
「あれ、報告だとあの子達って『5人』でしたよね?」


 どれだけ走っただろう。気がつけば追ってきていた音も霊のような姿もすでにない。
 だが、まだ安心できない。息を切らせながらもただ走る。
 もう少しで、最初に看板を見つけた場所にたどり着く。そこまでたどり着ければ、人気の多い大通りはすぐそこだ。

「愛すべき彼等に齎されたのは夢のような温もりだ。母親に抱かれる感覚は永劫の如くたまらない。触れた掌は大いなるもので地獄は其処に存在する」

 うまく聞き取れなかったが、微かに、老人の声が聞こえた気がした。
 その瞬間、目の前に巨大な化け物のようなものが現れた。
 ロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)の冒涜爺の悪知恵によるものだ。
「少年達の肝試し。成程。簡単な事柄だ。本物よりも偽物の方が『強烈』ならば問題皆無」
 彼は拓海たちから見えない位置に潜み、そう呟く。
 突然現れた化け物に拓海たちの足が恐怖で止まりかける。
 すかさず、警官に扮した太郎が促し、拓海たちを誘導して一気に駆け抜ける。
 それを見届け、ロバートはその場を後にしようとしたが、他の猟兵たちからの連絡でその足を止め、拓海たちが来た道を急ぎ辿り始める。


 拓海たちは最初に見た看板のところまで戻ってきていた。
 息も絶え絶えで、これ以上走る事は難しそうだ。
 だが、幸いなことに、霊も化け物も追ってくる気配がない。
「ここまで来ればもう安心だろう」
 太郎のその言葉に安堵し、拓海たちはその場に座り込む。
 太郎とるり遥も一息つこうとしたその時、仲間からのメッセージが届く。

『一人、どこにも居ない』

 その内容に慌てて人数を確認する。
 一人、二人、三人、四人。
 確かに一人いない。
「おい、あと一人はどうした?」
 太郎達の言葉に拓海は青ざめた顔でこう返した。

「俺たち、『4人』で来たんだけど……」
 その言葉に太郎たちは唖然とする。
 ではあの時いた少年はいったい誰だったのだろうか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ゆかりちゃん』

POW   :    「ただいま」「おかあさん、おとうさん」
戦闘用の、自身と同じ強さの【母親の様な物体 】と【父親の様な物体】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    「どうしてそんなへんなかおでわたしをみるの?」
【炎上し始める捜索願いからの飛び火 】が命中した対象を燃やす。放たれた【無慈悲な】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    「ひどいよ、ひどいよ、ひどいよ」
【嗚咽を零した後、劈く様な叫声 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 子供達の記憶を消し、送り返した猟兵たちは件の中央棟へと足を踏み入れた。
 長い間放置されていたのだろう。内部はいたるところが朽ちており、ボロボロだった。
 出入り口を入ってすぐ、掲示板がある。
 もはや色褪せボロボロとなっているため詳細は確認できないが、どうやら情報提供を募るポスターのようだ。
 恐らく、20年前の失踪事件に関するものだろう。

 ぴちゃ。

 水の音が聞こえた気がして床を見ると、雨も降っていないのに濡れていた。
 そしてその水跡は昇り階段の方へと続いている。
 意を決し、階段を昇る。
 水跡は廊下を通って、反対側にある昇り階段へと続いていた。
 まるで猟兵たちを誘うかのように。
 廊下を中程まで進んだところで、前後の扉が軋みつつ開いた。
 そして、異形の頭を持つ、少女達が現れた。
ロカジ・ミナイ
おん?やぁ、嬢ちゃん、迷子かい?……ああ、そうか、そうか。

ちっさい体で挟み撃ちなんて知ってんの?
デッカい頭は飾りじゃあないみたいだね。
賢すぎるガキは救い甲斐がなくてつまらないんだよなぁ。

……さっきのポスターが頭を過ぎるけど、
忘れろ忘れろ関係ない、これはただの……ただの?
ああ、ただの敵、猟兵の敵だ。
敵敵敵、ぜんぜんオバケじゃねーし!

その証拠に僕の魔法の火が当たるでしょ?ホラね!オバケじゃない!
……えっ、オバケに魔法って効くんだっけ……どうだっけ……。
……。

パンチだって当たるし!ほらほら蹴ったりとかしちゃうし!
掴んで投げたりとかも出来ちゃうしねぇぇぇぇぇ
こえぇぇぇよぉぉぉぉおうちかえりたぁぁぁあい



「ひどいよ、ひどいよ、ひどいよ」
 異形の少女、『ゆかりちゃん』が嗚咽をこぼしながらゆっくりと迫ってくる。
「ちっさい体で挟み撃ちなんて知ってんの?デッカい頭は飾りじゃあないみたいだね」
 その動きに警戒しつつ、ロカジは自身の周囲に狐火を展開する。
 ゆかりちゃんの動きを注視していたからだろうか。先程見た捜索願いが彼の頭を過る。
(忘れろ忘れろ関係ない、これはただの……ただの?ああ、ただの敵、猟兵の敵だ)
 自分に言い聞かせるように、頭をよぎった考えを振り払うかにように、彼は頭を振る。
 ゆかりちゃんの動きが止まった。
 そして、微かだが、息を吸い込むような音を彼は聞き逃さなかった。
 瞬間、彼は弾かれたように展開していた狐火を放つ。
「あつい、あつい、あついよぅ!」
 狐火は寸分違わず叫び声を挙げようとしたゆかりちゃんを的確に捕らえ、燃え上がらせる。
(敵敵敵、ぜんぜんオバケじゃねーし!その証拠に僕の魔法の火が当たるでしょ?ホラね!オバケじゃない!)
 決して表には出さないが、自らを納得させるように、手近なゆかりちゃんに拳や蹴りを放つ。
(パンチだって当たるし!ほらほら蹴ったりとかしちゃうし!)
 ゆかりちゃんの一人が倒れるが、しかし、新たな個体が別の扉から現れる。
(こえぇぇぇよぉぉぉぉおうちかえりたぁぁぁあい!)
 心の叫びが虚しく彼の中で響く。
 彼の恐怖はまだ始まったばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​

笹鳴・硝子
【四六九九】
「えーと、こういうのなんて言うんでしたっけ…そう、インフレ。『ゆかりちゃん』がインフレ起こしてますね、これ」
どれだけの人数の『ゆかりちゃん』がいても、例え全員を一つに纏める術があったとしても、本当のゆかりちゃんではない
『ゆかりちゃん』は、本人を知らない大勢に認識されたうつろな『ゆかりちゃん』でしかない――そんな気がした

「進むも戻るもさせない気ですね。進みますけど。みゃー(三岐・未夜)、弾幕頼みます。――来たれ磐具公。押し通る」
隕鉄刀を依り代にサモニング・ガイスト 精霊銃での攻撃も、持てる技能も使えるものは使って前に進む
進まなければ、意味がないだろう


三岐・未夜
【四六九九】
……硝子が「ゆかりちゃん」ゲシュタルト崩壊させてる……。
あー……まあいいや、ほらほら、眠らせてあげるよゆかりちゃん。魔は祓われなきゃね。

「はいよ、任された。炎よ炎、祓えや祓え!」

呪文なんて適当だよ、僕の意志が伝われば何でもいい。
火の破魔矢で弾幕を張って、そこに催眠術と誘惑とおびき寄せと時間稼ぎを。
硝子が前に出るなら、僕が守らなきゃ。……ていうかさ。硝子もたろもるり遥も無茶しがちだし、後衛ったって見守ってるだけじゃ済まないよ。ほんと、年下に心配させないでよね、もー。
まあ、今回は他の団地のみんなもいるし、きっと大丈夫。

消えたひとりがどうしても気になるから、第六感を働かせて周囲を警戒。


夢飼・太郎
☆団地
☆真の姿
全身に黒い瘴気を纏う
他は普段通り

本官の出番だな
おいコラ君達!いま殲滅してやるからな!

☆戦闘
他の同行者と同じ方向を攻撃
UCを発動して前衛に立つ
破魔矢直撃を避け横から参入
アックスで叩き割りつつ敵を盾に破魔矢を防いだり
わざと敵を引き止め射らせたり
有るものを使って戦う
「オレは別に無茶してない。錯覚だ錯覚」
影の追跡者も同様の方針
見えない分細かく動き回らせたい
技能は適宜見合ったものを活用

後ろからの敵にも留意
三岐の位置が危ういと感じたらすぐ呼びかける
「未夜うしろうしろ!」
……今のちょっとドリフっぽかったな



「えーと、こういうのなんて言うんでしたっけ…そう、インフレ。『ゆかりちゃん』がインフレ起こしてますね、これ」
 今居るフロアだけでなく、他のフロアからも集まってきたのか、その数を増していくゆかりちゃんを眺め、硝子はそう呟く。
「進むも戻るもさせない気ですね。進みますけど。みゃー、弾幕頼みます」
「はいよ、任された。炎よ炎、祓えや祓え!」
 硝子の呼び掛けに、みゃーこと未夜が応える。
 彼の周りにすぐさま炎の破魔矢が展開する。その数、合計100本。
「――来たれ磐具公。押し通る」
 破魔矢の展開に合わせ、硝子は隕鉄刀を依り代に古の戦士の霊たる磐具公を召喚しつつ、精霊銃を構える。
「本官の出番だな。おいコラ君達!いま殲滅してやるからな!」
 そして二人の前には、真の姿を解放し、全身に黒い瘴気を纏った太郎が立つ。
 狙うは3人の前方に展開するゆかりちゃん達。
 攻撃動作に入ったゆかりちゃんに未夜の破魔矢が飛ぶ。
 その破魔矢の隙間を縫うように、硝子の召喚した磐具公と太郎が駆ける。
 破魔矢がゆかりちゃんに直撃し、怯んだ隙を磐具公と太郎が手にした獲物で切り伏せる。そして二人が討ち漏らした個体を硝子が精霊銃で撃ち抜く。
 同じ旅団に属しているからか、3人の連携は実に見事だった。
 次々と現れるゆかりちゃん達を倒し、確実にその数を減らしていく。
「未夜うしろうしろ!」
 突然、太郎が後方にいる未夜に注意を促す。
 彼が密かに放っていた影の追跡者が未夜の背後に忍び寄るゆかりちゃんを知覚したからだ。
 未夜は咄嗟に、後方に向けて破魔矢を放つ。
 しかし、破魔矢はゆかりちゃんに直撃するも、その攻撃を止めることは出来なかった。
「ーーーーーーー!」
 劈く様な叫声が廊下に響き、衝撃波となって無差別に襲いかかる。
 手近なゆかりちゃんを盾にした太郎を除き、その場にいた全員が手傷を負う。
 しかし、叫声が挙がる寸前で破魔矢の一撃を受けたからか、その威力は十全に発揮されず、軽傷の域に止まる。
 叫声を挙げたゆかりちゃんは磐具公に袈裟斬りに斬り伏せられ消滅。
 磐具公はそのまま未夜に近づく別のゆかりちゃんに斬りかかる。
 その間に、未夜の援護を受けた硝子と太郎は前に出て、前方の敵を屠る。
「硝子もたろもるり遥も無茶しがちだし、後衛ったって見守ってるだけじゃ済まないよ。ほんと、年下に心配させないでよね、もー」
 未だ軽傷とはいえ、ゆかりちゃんの反撃を受けつつも前へと進む二人に対し、未夜は小言を言う。
「オレは別に無茶してない。錯覚だ錯覚」
「この程度は無茶ではありません」
 二人の反論はほぼ同時。
 そんな二人をじと目で見る未夜。
 そんなやり取りをしつつ、彼らは消耗した前方の敵を優先して倒すことで、徐々にではあるが、確実に前へと進んでいく。
 彼らの連携により、ゆかりちゃんはその数をさらに減らし、気が付けば増援は既に止まり、残るゆかりちゃんは極僅かとなった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

オルハ・オランシュ
真相はわからないけど
20年前に失踪事件が起きたことは事実なんだよね
そしてきっと、未解決のままなんだ

……っ!
何?この水……噂は本当だったの?
せっかく会えたばっかりだけど、ごめんね
君達はおやすみの時間だよ

火炎耐性もないし、炎に当たるのはまずいかも
【見切り】で対処できたらいいな
物理攻撃には【武器受け】で!

攻められてばっかりじゃいられないよね
攻撃を終えた子が体勢を整える前に
【カウンター】でフィロ・ガスタ、
大きくなぎ払って【範囲攻撃】にしていこう
他の子も巻き添えにできたら尚いいかなって

他の猟兵とも力を合わせよう
攻撃のタイミングを合わせたり
攻撃範囲を分けて効率よく攻めたり
できることは何でもやるよ


琶咲・真琴
……お姉さん、もしかして
あのお兄さんたちと一緒に居たのですか?
お友達に紛れて
この団地に来てもらうつもりだったのですか

「どんなに寂しくても
苦しくても
それを理由に他の人を自分と同じような目に遭わせるのは絶対違うのです


戦闘
familia pupaの光線と烈槍葵牙に楼炎白風を纏わせて先制攻撃
フェイントも織り交ぜて衝撃波も載せたなぎ払い攻撃も行う

両親の物体が出てきたら
範囲攻撃で積極的に攻撃
ゆかりちゃんはスナイパーで確実にダメージを与える


第六感で攻撃を予測し
武器受けやオーラ防御・残像で回避・防御を試みる


「もうこれ以上、ここで悲劇は起こさせないのです
行きますよ
お祖父ちゃん、お祖母ちゃん!


アドリブ歓迎



(何?この水……噂は本当だったの?)
 ほんの一瞬、濡れた廊下に視線を向けたオルハはすぐにゆかりちゃんへと視線を戻す。
 ゆかりちゃんの顔である捜索願いが燃え始め、炎が舞う。
「せっかく会えたばっかりだけど、ごめんね。君達はおやすみの時間だよ」
 舞い上がる炎の軌跡を見切り、オルハは攻撃を放った個体に肉薄。手にした三叉槍ーウェイカトリアイナを素早く振るい、複数のゆかりちゃんを薙ぎ払った。
 しかし、攻撃を免れた個体が召喚した両親のような物体の攻撃がオルハに迫る。
 オルハも攻撃を放った直後のため、回避や防御が間に合わない。
 だが、直撃すると思われた攻撃がオルハに届くことはなかった。
 真琴が放った白い炎の風を纏った薙刀による一撃が両親のような物体を召喚した個体を切り裂いたことで両親のような物体が消滅したからだ。
「……お姉さん、もしかして、あのお兄さんたちと一緒に居たのですか?お友達に紛れてこの団地に来てもらうつもりだったのですか」
 返答はないと思われた真琴の問いに、意外にもゆかりちゃん達は答える。
「あの子だ」
「あの子だね」
「あの子はいつも邪魔ばかり」
「でもあの子は誰にも気付いてもらえない」
「私たちと同じ。誰にも見つけてもらえない」
「あの子は高くて暗い、深い底」
 どういう意味か、真琴は再び問おうとするが、帰ってきたのは沈黙と攻撃だけだった。
 話の信憑性は分からない。しかし、これ以上得るものはないと判断し、猟兵たちは応戦する。
 オルハと真琴は互いに庇いあい、攻撃を重ねることでゆかりちゃん達を次々と倒していく。
 そして、最後の一体を二人の槍と薙刀が貫く。
 ゆかりちゃんは崩れ落ち、やがて跡形もなく消滅した。
 猟兵達は周囲を警戒しつつ、水跡を追ってさらに上の階へと進む。
 やがて屋上へと至るドアの前にたどり着いた。
 扉越しでも伝わってくる禍々しい気配。邪神がこの扉の先に居ることは確実だ。
 猟兵達は意を決し、屋上へと足を踏み入れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『膨らむ頭の人間』

POW   :    異形なる影の降臨
自身が戦闘で瀕死になると【おぞましい輪郭の影】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    慈悲深き邪神の御使い
いま戦っている対象に有効な【邪神の落とし子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    侵食する狂気の炎
対象の攻撃を軽減する【邪なる炎をまとった異形】に変身しつつ、【教典から放つ炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 屋上は凄惨な光景だった。
 いたるところに腐敗の進んだ遺体が転がっており、床には血を使って描かれたであろう巨大な魔方陣があった。
 そして奥には魔方陣の起点となっている高架水槽とその前に佇む、異形の頭を持つ男。
「不完全な状態でこの俺を召喚した『この男』は許しがたいが、この場を選んだことは誉めてやらないとな。この澱み具合、正に儀式を行うに相応しい!何より、なにもしなくても贄が勝手にやって来る。もう少し、もう少しだ。さぁ、俺が完全体になるための最後の贄となれ!」
ロバート・ブレイズ
「少々遅くなったが冒涜の時間だ」
足が遅くなったのは年を取った結果だろう
不完全な召喚だが其処に間に合ったのは良かった
闇堕ち(ダークネス・ロクロクロク)発動
誰よりも先に接近し、周囲の確認
猟兵に「離れろ」と叫んだ後
殺気を纏って無差別攻撃を始めよう
鎧砕きと同時に恐怖を与え、邪神の存在を根源から破壊する
対象が怯んだ隙に急接近
巨大な鉄塊剣で頭部をぶん殴ろう
「さあ。貴様の脳漿を晒せ。地獄からのお迎えだ」
嘲笑うは無貌。黒の仮面
情報収集で弱点を見抜き、強烈な拳を叩き込む

苦戦するならば逃げに徹する
猟兵たちの居る場所へ誘き寄せるのだ



 教団員が触手を蠢かしながら駆ける。
 身構える猟兵。しかし、一人の老爺が突出し、教団員目掛け疾走する。
「離れろ!」
 その後を追おうとした猟兵に老爺―ロバートは警告を発する。
 その言葉に危険を感じ、他の猟兵たちは足を止めた。
 ロバートの頭部が徐々に黒いモノで覆われ始めたと同時、彼の周囲に異様な静けさが訪れた。まるで、嵐の前の静けさのように。
 そして、彼の頭部が完全に覆われ、無貌の仮面と化す。
「鏖殺だ」
 ロバートがその言葉を発した瞬間、彼の内側から尋常ではない殺気が爆発した。
「面白い、やってみろ!」
 教団員は蠢く触手を鞭のようにしならせロバートを迎え撃つ。
 対するロバートは、手にした巨大な鉄塊剣で周囲を無差別に切り刻む。
 攻撃の応酬が始まり、両者の体に無数の傷を刻む。
「くっ!」
 だが、負った傷はロバートの方が多く、不利を悟った彼は前方に大きく斬撃を放つと同時、バックステップで距離を取る。
(やはりそこか……)
 先ほどの攻撃の応酬の最中、他の部位への攻撃は一顧にしなかった教団員が、その膨れ上がった頭部への攻撃だけは確実に防いでいたのを彼は見逃さなかった。
 苦戦こそしたものの、その対価として得られたものは非常に大きかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ロカジ・ミナイ
散々叫んで、沢山の涙が流れて、なのに、
悲しいだけの幻影がずっとここにある。消えぬ慟哭、嗚咽の連鎖。
自分じゃない何かが自分として泣きながら
未来を摘んで膨らんでいく。ああ、なんて、
悲しい。――恐ろしい未来だ。

怖くて怖くて、正気でいるのがやっとだよ。
水槽を壊せばおっかない魔法陣は消えるだろうか。

恐怖に駆られた獣は牙を剥くんだ。狐の僕にとってこれはどうしようもなくてね。
不完全なまま、さようなら。

意味深なポスターは剥がして帰る。
……過去をなかった事にする行為に見えるかい?まぁまぁ、
ここが静かな場所になるならそれでいいじゃない。



 子供達を追い払い、ゆかりちゃんとの戦いを経て、今この場に至ったロカジの心には恐怖が渦巻き、正気を保つのもやっとだった。
 しかし、恐怖で身がすくみ、動けないかと言えば、答えは否である。むしろその逆、恐怖に駆られたからこそ、獣たる彼は牙を剥く。
「不完全なまま、さようなら」
 彼は仕込簪を手に教団員に接近する。
「そんなもんで一体どうするんだ?」
 教団員がその触手で迎え撃つが、その悉くを寸でのところで回避し、さらに肉薄する。
 手にした簪を振り上げる。狙うは肥大した頭部。それを察知した教団員が全力で防ごうと、線ではなく、面での攻撃に切り替える。
 触手がロカジの体に直撃し、彼を吹き飛ばす。その瞬間、彼の手から簪が離れた。
 攻撃を受けて落としたのではなく、投擲という形で手放したのだ。
 簪は教団員の後方、魔方陣の起点となっている高架水槽へ飛来する。
(水槽を壊せばおっかない魔法陣は消えるだろうか)
 彼の本当の狙いは、高架水槽の破壊。頭部を狙ったのは、こちらの意図を悟らせないためのフェイントだった。
 教団員が気付くも、最早間に合わない。簪は高架水槽の下部へ当たり、当たった箇所を起点に深い亀裂を刻む。
 水槽に貯められた大量の水が勢いよく吹き出す。
「貴様ァ!」
 怒りに駆られた教団員が触手を振るも、ロカジを捉えることは出来なかった。
 水の勢いが徐々に収まる。吹き出した水に洗い流されたのか、魔方陣の一部が消え、水槽の亀裂からは人骨のようなものが覗いて見えた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

クラーラ・レイネシア
俺は馬鹿だから難しい事はわからない!
わからないから考えない!
そんな俺にもわかる事がある!
お前が弱きを踏み躙る圧政者だと言う事だ!
何故なら俺は反逆者だからだ!

やる事はシンプル。真っすぐ行ってぶちのめす
だって俺はそれしか知らない、それしかできない
気合いを入れる、力を溜める
一気に相手の距離を詰める
相手も攻撃してくるだろうけど、激痛耐性で火炎耐性で痛みなんて捨ててしまえ
距離を詰めたらあとは殴るだけ
そう二回ぶん殴るだけ!
自慢の怪力と目にも止まらぬ早業でその拳を相手に突き刺すのだ
左、流れるように渾身の右を
それを二回攻撃でもう一回再現する
あとは繰り返すだけ、馬鹿だからこそ圧政者を前に引いては駄目だと信じて



「俺は馬鹿だから難しい事はわからない!」
 床に広がった水を跳ね上げ、クラーラ・レイネシア(殴って叩いてはいお仕舞い・f11610)が駆ける。
「そんな俺にもわかる事がある!お前が弱きを踏み躙る圧政者だと言う事だ!」
 愚直なまでに真っ直ぐと突き進む彼女に、教団員の触手が襲いかかり、その体を打つ。しかし、彼女は止まらない。痛みを無視してなおも接近する。
「何故だ、何故止まらない!」
 クラーラの気迫に押され教団員が後ずさる。しかし、彼女が自分の間合いに至る方が早かった。素早い左のジャブが教団員の顎を捉える。
「ガハッ!?」
 彼女の怪力ゆえか、ジャブであるにも関わらず、その一撃は重く、教団員はたたらを踏む。そして、すぐさま、渾身の右ストレートが叩き込まれる。
 吹き飛ぶ教団員。しかし、彼女の攻撃はまだ終わらない。吹き飛ぶ教団員に再度肉薄し、怒濤のラッシュを叩き込む。
「これでラスト!」
 最後の右ストレートが叩き込まれ、肥大した頭がさらに膨れ上がった教団員は力なく地に伏した。
 さらに追撃を仕掛けようとしたクラーラだったが、教団員から立ち込める異様な気配にその足を止める。見れば教団員から黒い影が溢れ出していた。
『この体はもうダメだな。まあ、いい。この体とお前達を贄とすれば、まだどうとでもなる』
 精神に直接響く声と共に、影が徐々に形をなし、名状しがたい、おぞましい異形が姿を現した。

成功 🔵​🔵​🔴​

三岐・未夜
【四六九九】
……骨。あれだ。
あれ全部破棄しなきゃ。多分。

【第六感】に従って、水槽と骨を全て焼却処分することにするよ。
だって、なんか、……アレは残しておいちゃいけないものの気がする。
火矢に【属性攻撃】で強化、【操縦】【誘導弾】【範囲攻撃】で水槽をぶっ壊すよ。濡れてたって関係ないよ、これだけの火矢を消せると思わないでよね。
【破魔】と【祈り】を込めて、骨を火葬するよ。
魔方陣もついでに消えちゃえばいいと思うけど、優先は骨かな。
20×5の火矢を、何度だって繰り返す。燃えてなくなるまで。

敵からの攻撃は【誘惑】と【催眠術】で霞ませて、
出来る限りの【時間稼ぎ】をしながら他の人たちの為に隙を作るよ。



(……骨。あれだ。あれ全部破棄しなきゃ。多分。なんか、……アレは残しておいちゃいけないものの気がする)
 己の勘を信じ、水槽と骨を全て焼き払わんと、未夜の周囲に破魔の力と祈りを込めた火矢が現れ、対する影の異形はその身に炎を纏う。両者は睨みあい、場の空気が張り詰める。
 炎を放ったのは同時。火矢と炎が交錯する。異形が放った炎は、幾本かの火矢を喰らいつつ、未夜に直撃する。しかし、火矢である程度相殺されたのか、傷は浅い。対し、未夜の放った火矢は異形の炎に喰われたものの、水槽周辺に着弾し、水槽と骨を跡形もなく焼き払った。
「酷ぇ、何て酷ぇことしやがる……!」
 その光景に異形が身を折り、その身を震わせながら叫ぶ。やがて、震えは徐々に大きくなり、突如、その身を仰け反らせ、嗤った。
「クハハハハハッ、酷ぇことするなあ!ここへ来る連中を健気にも追い返そうとし、これ以上犠牲がでないようにお前達をここまで案内したガキを焼き払うなんてなぁ!破魔の力を込めてたようだが、効果あったかなぁ?」
 けたたましい異形の嗤い声が響く。異形の言うとおり、効果があったのかは今は分からない。だが、少なくとも、この異形を倒さない限り、安らぐ時が訪れないのは確かだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

三岐・未夜
あの子のことだったなんて、知らない。でも、残しておいちゃいけない。葬送の火は送ってくれるものだから。
……僕には死者のことなんてわかんないから、そう信じるしかないじゃんね。
言い聞かす。繰り返す。心臓がうるさくて、こわい。間違った選択をした?でも、でも、……尚更。ひとりで必死に頑張った子なら、送ってあげなきゃ、嘘だろそんなの。
だから、祈る。
僕だって、未熟だけど玄狐なんだ。神使なんだ。
震えを無視して、唇を噛んで、精一杯祈る。どうか、安心して逝ってくれるように。

……あとは、お前を倒すだけ。
来い、儚火!

技能も力もありったけ詰め込んで、現れ出た異形に突っ込む。【属性攻撃】【破魔】で悪しきものを焼く炎を!



「ッ!」
(あの子のことだったなんて、知らない。でも、残しておいちゃいけない。葬送の火は送ってくれるものだから)
 異形の言葉に未夜の心臓が早鐘のように鼓動する。自分の行動は誤っていたのではないかと焦りと恐怖が彼の心に渦巻き、体が震える。
「いいねぇ、その顔。正に、後悔先に立たずってやつだ!」
 炎を纏った異形がケタケタと嗤う。
(でも、でも、……尚更。ひとりで必死に頑張った子なら、送ってあげなきゃ、嘘だろそんなの)
 心臓の音は未だにうるさい。だが、未熟といえど神使としての矜持がある。震えを無視し、唇を噛み、祈りを捧げる。あの子の魂が安心して逝ってくれるようにと。
「……あとは、お前を倒すだけ。来い、儚火!」
 決意を新たに放った言葉とともに現れたのは、儚火と呼ばれた尾の先だけが白い黒狐。未夜は儚火に騎乗すると、異形目掛けて疾走した。
「なんだ、もう立ち直るのか。つまんねえなッ!」
 異形を中心に無数の魔法陣が展開し、触手の塊のような落とし子が召喚される。
 落とし子は未夜達を捕えようと、その触手を伸ばす。
 対する未夜は儚火を巧みに操り、縦横無尽に駆け、触手から逃れながら、破魔の力を宿した炎で異形諸共、落とし子の群れを焼き祓う。
「ちっ、少しは動きが鈍るかと思ったがアテが外れたか」
 異形が悪態をつく。その身は未夜の炎で焼かれたものの、纏っていた炎に軽減され、傷は浅い。だが、表情こそ分かり難いものの、異形に焦りの色が見え始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

井艸・与
あんたが完全体になることはねえよ
なぜって、ここで倒されるんだからな

こっちの攻撃を軽減する炎とは厄介だな
だが、それによって自分の身を削っているなら利用しない手はない
【マヒ攻撃】で相手の動きを阻害しつつ、変身を解かせないように立ち回ろう
俺の銃は近距離でも遠距離でも対応できるから、臨機応変に距離を取りつつ動くぜ
相手の攻撃は、相手の動きをよく見てパターンを把握し、【見切り】する
攻撃の隙ができたらその機を逃さず、反撃にまわるぜ
影の追跡者の召喚で相手を必ず追跡して捉え、【毒使い】で毒を叩き込む
毒でじわじわと苦しんでもらおうか
この影の追跡からは誰も逃しやしないぜ


クラーラ・レイネシア
あの影は邪悪だな、いや体の方も邪悪だったけど
つまり一緒って事だな
今度はもっとシンプルにいくとするかな
仲間の猟兵が居たら出来るだけ連携するぞ(アドリブOk)

相手の攻撃は【勇気】を出して【オーラ防御】と【激痛耐性】と【火炎耐性】で耐えるぜ
避けるとか無理、潔く我慢する
狙うは本体じゃなくて影だな、こいつ倒せば終わりだろ
相手が攻撃した瞬間こそが好機、その時は相手も攻撃を優先しているだろうから
そこを狙って【怪力】を以て右手による反逆の拳を目にも止まらぬ【早業】でぶち込む
そして【力溜め】した左手による反逆の拳で【二回攻撃】を追撃としてぶち込むぜ
さっきの二連打とは重さが違うだろ?こっちが俺の本命だからな!



 一発の銃声が響いた。異形は咄嗟に避けるも放たれた弾丸はその肩に着弾する。
「貴様……!」
 異形が睨む先、そこには銃を構えた井艸・与(人間のUDCエージェント・f03832)がいた。
「あんたが完全体になることはねえよ。なぜって、ここで倒されるんだからな」
「ほざきやがれ!」
 異形の意識が与に向いた瞬間、クラーラが一気に距離を詰める。
(あの影は邪悪だな、いや体の方も邪悪だったけど。つまり一緒って事だな)
「そう何度も、ーーッ!?」
 異形が迎撃の触手を放とうとするが体が上手く動かない。
「さっきの銃撃か!」
 辛うじて動く触手を放つも、与が放つ弾丸に撃ち落とされ、銃撃を免れた触手も、クラーラが纏うオーラに弾かれる。
 そして、クラーラと異形の距離は密着に近い状態にまで詰められた。
 放たれるクラーラの右ストレート。渾身の力で放たれた反逆の拳は目に止まらぬ早さで異形に突き刺さる。
「糞がッ!」
 体の自由が回復した異形が再度、無数の触手による攻撃を放つ。しかし、その大部分はフェイク。本命はフェイクの影に隠した一撃。
 左の一撃を放とうとするクラーラは避けるすべもなく、触手の一撃を喰らう―――はずだった。
 再び響く銃声。与の放った銃弾が本命の触手を撃ち落とす。
「なんだと!?」
 驚愕する異形。弾かれた触手はクラーラはおろか、与からも見えない、死角からの一撃だったはず。
 異形は知るよしもない。自分のさらに後方、そこに潜む影の追跡者の存在を。そして、影の追跡者に死角からの一撃を知覚され、感覚を共有する与にその存在が露見していたことを。
 クラーラの左ストレートが今だ驚愕から抜けきれない異形に再度突き刺さる。
「ガハッ!」
「さっきの二連打とは重さが違うだろ?こっちが俺の本命だからな!」
 ニンマリと笑うクラーラ。
「だから言ったろ。あんたが完全体になることはねえよ。なぜって、ここで倒されるんだからな」
 油断なく銃を構え、再度宣言する与。
 未だ油断できぬ状況だが、形勢は徐々に猟兵達へと傾き始めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

言葉・彩色
「成る程…あの炎で攻撃を軽減しているみたいですね」
『であるならば、上から塗り潰してしまえばいいね。炎も邪神も…このふざけた現実も』
「そうですね…それでは」
『御耳と御目々を同時に拝借」
「今宵を彩るは妖シキ言ノ葉』
『「現実染める、黒狐面の怪異なり』」

【妖しき言の葉】使用
攻撃は当てずに舞台を変える
子供がいなくなる廃団地ではなく
「━━これよりこの場は『邪神を呑み込む廃団地』…キミの末路の物語」
この場その物を邪神討伐に特化させて自己強化

後は
邪なモノに[恐怖を与える][破魔]の[属性攻撃]及び[なぎ払い]
で攻撃

アドリブ・連携歓迎

敵を倒せたなら
「今宵を彩った物語『邪神を呑み込む廃団地』━━これにて、閉幕」


ノボディ・ジョンドゥ
「ハイホー♪ハイホー♪
子供を拐う魔法使い♪
怖くて悪い魔法使い♪
古くてうるさい魔法使い♪
もうすぐ消える魔法使い♪
ハイホー♪ハイホー♪
目には目を♪
歯には歯を♪
化け物には化け物を♪」

【盗賊退治の化け物の影】
を使って動きを止めるよ!
そしたら
御伽噺の引き金を林檎の手提げ篭に[武器改造]して
毒林檎飛ばすよ!
[毒使い][マヒ攻撃][気絶攻撃]の[範囲攻撃]で[一斉発射]!

「さぁさぁ、怖い御話はお仕舞いお仕舞い! 皆で歌おう! ハイホー♪ハイホー♪」

御伽噺は夢と希望の物語
いらない現実は見なければ良い
「だから邪神(あなた)もこんな現実忘れて眠ろう! ハイホー♪ハイホー♪」

…御伽噺ってね
ホントは凄く、怖いんだよ?



『御耳と御目々を同時に拝借』
「今宵を彩るは妖シキ言ノ葉」
『「現実染める、黒狐面の怪異なり」』
 戦場に、妖しくも滔々と語る女の声が響いた。声の主、黒い狐面の彩色はさらに言葉を紡ぐ。
「━━これよりこの場は『邪神を呑み込む廃団地』…キミの末路の物語」
 彩色のユーベルコードが発現し、戦場を彼女の語る物語の舞台へと塗り替える。

 そしてもう一人、御伽噺を語る少女がいた。
「ハイホー♪ハイホー♪目には目を♪歯には歯を♪化け物には化け物を♪」
 その手に持つ御伽噺を引き金を林檎の手提げ篭に改造して構えるのはノボディ・ジョンドゥ(ワンダーランドのエキストラ・f10782)。
 彼女の紡ぐ御伽噺により、ロバ、イヌ、ネコ、ニワトリといった動物の影が現れる。
 
 二つの物語が展開したことで、重苦しかった戦場の雰囲気が和らいだ。
 戦場が動き出す。
「さぁさぁ、怖い御話はお仕舞いお仕舞い! 皆で歌おう! ハイホー♪ハイホー♪」
 異形が炎を放とうとした瞬間、動物たちの影が一斉鳴き声を放ち、ノボディが無数の毒林檎を放ち、異形の動きを止める。
 その隙に、展開した物語により戦闘力を強化した彩色が駆けだし、手にした薙刀が破魔の属性を帯び、淡く輝く。
 一閃。薙ぎ払いの一撃が異形を切り裂く。
「せっかく頑張ったのに、残念だったなぁ」
 二人の攻撃を受けた異形が嗤う。傷が浅い。二人の攻撃は異形が纏う炎でその大部分を軽減されていた。
「それじゃあ、これはお返しだ」
 異形の拘束が解け、手にした経典に再び炎が灯る。
 放たれる炎が二人を襲う。彩色は回避を、ノボディは拘束を試みるも、異形の動きは止まることもなく、炎は二人に迫り、そしてその身を焼いた。
 二人が負った傷は、継戦可能ではある者の、決して浅くはなかった。
 しかし、炎を纏った異形の寿命は刻一刻と削られ、その表情には疲労の色が濃ゆくなってきていた。
 猟兵と異形、ここまで一進一退を繰り返してきたが、決着の時は近い。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

笹鳴・硝子
【WIZ】
自分の命を奪おうとする者から逃げる子供の気持ちが解るか、と
問うても無意味だろう事は解る
邪神や邪教徒にとってそれは愉悦を齎すだけのものだろう
蕨手刀子の刃先を異形に向ける
「制圧せよ――磐具公」
戦霊『磐具公』を召喚サモニング・ガイスト

磐具公が異形と戦っている間に
【目立たない】【迷彩】で異形の背後に

あの子があの異形から人を守っていたというのなら
「お前を倒してしまえば良いわけですね」
隙を狙って背後から頭部を狙い銃撃
異形の命が残っている分だけ、磐具公の攻撃と精霊銃の射撃を繰り返す

倒してしまえば、もう誰も犠牲にならない
倒してしまえば、あの子はもう自由だ
「骨はどのみち弔いで焼かれるのですから」



 硝子は手にした蕨手刀子の刃先を異形に向けて告げる。
「制圧せよ――磐具公」
 その言葉に呼応し、磐具公が姿を現す。
 磐具公が武器を構え、異形へと駆け、激しい近接戦を繰り広げる。その隙に、硝子は磐具公を目眩ましにして気配を隠し、異形の背後へと回る。
(あの子があの異形から人を守っていたというのなら)
「お前を倒してしまえば良いわけですね」
 硝子の手にする精霊銃が火を噴く。狙うは異形の頭部。弾丸は狙いを過たず、その後頭部へと着弾する。
「ガアアアアアアアアァァ!?」
 不意の一撃に異形が悶える。しかし、被弾した場所からすぐさま硝子の位置を割り出し、経典を構え炎を灯す。しかし、それを許す磐具公ではない。異形へ組み付き、その狙いを逸らす。
「クソがッ、邪魔ダァァァァァッ!」
 しかし、悪足搔きとばかりに、経典の炎が大きく燃え広がり、爆ぜた。
 爆炎は磐具公のみならず、距離をとっていた硝子の元まで届き、その身を焼いた。
 爆炎が晴れる。硝子の傷は深く、爆心地にいた磐具公の損傷も激しい。だが、まだ戦える。
 対する異形に目を向けると、そこにいたのは肩で息をする黒い影。先ほどの攻防で限界に達したのか、纏っていた炎が消えていた。
 猟兵達の限界も近い。敗北の可能性が頭をよぎるが、止めを刺すチャンスは今しかない。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ロバート・ブレイズ
「殺す。貴様は殺す。俺を此処まで怒らせた物体は久方振りだ。俺を此処まで冒涜した物体は久方振りだ。嬉しい。ああ。悦ばしい」
闇堕ち発動
弱点だと解った部位に集中攻撃
身を蝕む心臓模様と毒物を鎧砕きに用いて流動する虹色の拳で粉砕
真の姿は輪郭の曖昧な『もの』だ。自身が戦闘不能に陥るまで殺戮行為を止めないと誓おう。此れを潰すのは己なのだ
殺される恐怖を何度も与えよう。自身が冒涜、否定される恐怖を何度も与えよう。対象は未知ではない。既知だ。
「殺す覚悟は簡単に決められる。重要なのは対象からの戯れを如何に受け止めるのか。抱擁するのか。真に嘲笑うべきは自己だと理解するが好い。糞餓鬼が。何方にせよ。此れで『終い』だ」



「殺す。貴様は殺す。俺を此処まで怒らせた物体は久方振りだ。俺を此処まで冒涜した物体は久方振りだ。嬉しい。ああ。悦ばしい」
 先ほどとは比較にならぬほどの殺気を振りまき、ロバートは闇堕ちの発動と共に、真の姿を現す。
 『それ』は輪郭の曖昧な『もの』だった。己が身を蝕む心臓の模様を浮かべた流動する『もの』。

 ここに、終焉を齎す新たな異形が降誕する。

「なんだ、一体『何』なんだ貴様は!?」
 ロバートから溢れる異様な気配に異形は恐怖する。その身が竦み、後ずさるが真の姿の解放と、闇堕ちによって強化されたロバートに無情にも距離を詰められる。咄嗟に邪神の落とし子を召喚しようとするが間に合わない。
 ロバートの虹色に流動する拳が頭部に迫る。
 その瞬間、異形は理解する。今自分は狩る側ではなく、狩られる側にいるのだと。
 拳が頭部に直撃する。何かが砕けるような音と共に、その身を毒が侵す。
 ロバートは止まらない。殺される恐怖を、自身が冒涜、否定される恐怖を幾度となく与えるために、執拗なまでに弱点たる頭部へ拳を叩き込む。
 もはや虐殺といっていい光景だった。異形は辛うじて生きているが、もはや動けない。
「殺す覚悟は簡単に決められる。重要なのは対象からの戯れを如何に受け止めるのか。抱擁するのか。真に嘲笑うべきは自己だと理解するが好い。糞餓鬼が。何方にせよ。此れで『終い』だ」
 最後の一撃が叩き込まれ、異形の頭部を粉砕した。
 やがて、異形はその身を塵へと変え消失した。


 その後、猟兵の連絡を受けたUDC職員が残った遺体等の事後処理のために駆け付けた。身元の分かる遺体は、後日、何らかの形で遺族に引き渡されるのだろう。
 猟兵達は残務をUDC職員に任せ、団地を後にする。
 いつの間にか空は晴れ渡り、満天の星空が広がっていた。
 ふと、気配を感じ、後ろを振り返ると、団地の入り口に笑みを浮かべた小さな少年がいた。その表情に、猟兵達は安堵する。ある者は手を振り、またある者は別れを告げる。
 そして瞬きの刹那、そこにはもう、少年はいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月02日


挿絵イラスト