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まほろばのユメ

#ダークセイヴァー #同族殺し

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#ダークセイヴァー
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#同族殺し


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●キョウエン
 まっかな花が狂い咲いている。
 まっしろな女は、狂ったように涙を零し。
 まっくろな男は、狂う素振りもないまま哂っている。
 ――誰も、彼も、居ない場所で。


 「ダークセイヴァーのとある村に急いでほしいの」
 開口一番、この招集を掛けたグリモア猟兵――亀甲・桐葉(往瑠璃揚羽・f18587)が、ささめく人波を切り裂くように告げる。

 彼女の見た悪夢のような予知は、もうとっくに手遅れになった村だったと云う。

 通りみち全てを塞ぎ蠢く大きな紅花。
 その村に放たれた炎の中を踊り狂う、白い女に操られた白い幽霊。
 何もかもが眼中に無いまま、炎など物ともせず村中を壊して回る黒いな影。

 極めて俗な言い方をするならば、『地獄』であっただろう。
 それでも、終わった悲劇ならばまだ良かったのだ。此処で締めくくられる惨劇ならば、急ぐ必要もなかった。けれど、血塗れた舞台は閉幕を知らない。

 「何故だか知らないけれど、其処にいるオブリビオン同士で争い続けて――放っておけば、周りの村も炎の海に沈む。これ以上、いたましい苦しみを拡げたくないんだ」

 眉根を寄せて吐き出した桐葉は、おねがい、と己が知りうることを丁寧に伝えていく。予知の後にデータベースを漁って手に入れた、『いきた』情報だ。


 ――同族殺し。
 それが此度の敵、オブリビオンにすら忌み嫌われる存在の名だ。
 自身の目的のためならば同じオブリビオンをも殺し、屠り、喰らう。目的もないまま、狂ったように殺しを続ける者もいるらしい。理由は判明しておらず、ただ分かることといえば『オブリビオンが殺し合う』ことがある、というだけ。巻き込まれる領民は堪ったものではない。
 これ以上放置すれば多くが巻き込まれるだけではなく、それに便乗したものを含めて、周囲一帯が大混乱に陥るだろう。


「予知したオブリビオンは皆とても強大だけど、村人がみんな死んでしまってからも啀み合ってくれたおかげで、決して斃せないわけじゃない。今しかないの。……私がみんなを送り届けられるのは村近くの街道までで、そこから先はきっと、沢山の邪魔が入る。それでも、後顧の憂いを全部断って――どうか、ひとつの悪夢に幕を下ろして」

 おねがい。
 痛切な声でそう零した桐葉は、指先に留まる蝶のグリモアを羽搏かせる。星空のような鱗粉を残して、猟兵たちは常夜の世界へと跳んでいった。


軒星
 おはようございます、こんにちは、こんばんは。
 初めましての方は初めまして。マスターの軒星です。
 伍度執りました筆は、ギミック増し増しでお届けする疑似高難易度シナリオです。

●シナリオ概要
 既に滅んでしまった村で、戦いを続けるオブリビオンたちを鎮圧することが目的です。
 このままでは近隣の村々をも戦火に巻き込まれて犠牲になる恐れがある為どちらかが斃れるのを待ってはいられない、切迫した状況を想定しています。
 戦闘描写をゴリゴリ入れていく予定ですが、プレイングは心情オンリーでも可能です。
 以上ご了承いただける方のみ、ご参加ください。

●敵概要
 第壱章:集団戦 / 目標:『死花』ネクロ・ロマンス
 第弐章:ボス戦 / 目標:裏切りの聖女
 第惨章:ボス戦 / 目標:『享楽の匣舟』ノア
 それぞれ、猟兵には開始時点で判明している敵能力を説明し終えている想定です。
 厳しい戦闘が予想されますので、事前の準備を万全にしていて良いものとします。

★注意
 特殊な戦闘状況を前提としています。
 敵は、プレイング送信時に指定したユーベルコードの能力値に対応したコードを使用します。
 対象コードもしくは章ギミックに対応していないプレイングは原則として【苦戦】判定でお届けする予定です。
 わざと苦戦したい場合などは、下記記号を冒頭に入れて頂けますとさいわいです(成功以上の判定で負傷描写をお届けします)。

★特殊な追加要素
 苦戦/負傷描写『可』の場合は『☆』を、苦戦/負傷描写『希望』の場合は『★』を、それぞれ冒頭にお願いします。その他マスターページ記載の記号と併用して頂いてもかまいません。
 章ごとに負傷を治してから進行することは無く、持ち越し前提のシナリオです(ユーベルコードによる回復は可能)。
 基本的には帰投時に手当を致しますので、後遺症等を勝手に描写することはありません。


-!お願い!―――
 異質なシナリオをお届けする都合上などで、今回【再送が前提】となります。
 一度頂いたプレイングは大切に保管し、執筆目途が経った段階で、グリモア猟兵である亀甲・桐葉からお手紙を送らせて頂きます。
 お気持ちにお変わりなければ、その段階で再送して頂けますとさいわいです。
 (代わりにはなりませんが、原則として全採用の予定です)
―――――――――

 以上、長々と失礼致しました。どうぞ此度も宜しくお願い致します。
 それでは、宵居のままに。
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第1章 集団戦 『『死花』ネクロ・ロマンス』

POW   :    パイル・ソーン
【既に苗床となったヒトの手による鷲掴み】が命中した対象に対し、高威力高命中の【背から突き出す血を啜る棘を備えた茨の杭】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    フラバタミィ・ニードル
【体を振い止血阻害毒を含んだ大量の茨棘】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    バイオ・ビュート
レベル×5本の【木属性及び毒】属性の【血を啜る棘と止血阻害毒を備えた細い茨の鞭】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 きらめく鱗粉にいざなわれ、猟兵たちはダークセイヴァーの地でその目を開くことだろう。少し離れた街道の真中から村を注視すれば一面の――赤。紅。緋。ざわめき揺れるそれは、近づけば近づくほどに大きく見える。
 これが夏の向日葵畑であれば、ただ綺麗な花々であれば、どれほど良かったか。その茎へと絡めとられ、操り人形のように擡げられる肢体は、人間のものだった。中には、この地に根付くさまざまな種族の姿もある。だらんと垂れた狼の耳が、欠け落ち役目も果たさぬ鋭い牙が、羽を毟られた鳥のような翼が――傷を作り、血の気を失くし、なおも良いように扱われる、青白い皮膚が。すべてが、この惨状を物語っていた。

 ずるり、と。凄惨の限りを尽くしたはずのあかい花が、厭な音を立てて君たちを『見た』。
 途端に根茎は姿を変え、刃と化した鉄色が、猟兵に向かって襲い来る。

 この村の本来の住人を、こんな形で放ってはおけないという猟兵も居るだろう。これから強大な力を持ったオブリビオンふたりと同時に相対するというのに、討ち洩らしては後に響くと合理を採る猟兵も居るだろう。何を考えたとしても、思うところがあったとしても、もう命を救うことは叶わぬ者たちだ。

     イェーガー
 さあ――猟 兵ならば。
 その手で未来を、切り拓け。
!CAUTION!
▼特殊状態:苗床
 人型の肢体は最早抜け殻。彼らをどれだけ穿とうが切り刻もうが、本体である死花が再生し続けるため敵性反応が減ることはありません。
 プレイングボーナスの対象:『『死花』ネクロ・ロマンス』の本体を狙って攻撃する。
 苦戦判定、負傷描写の対象:わざと『『死花』ネクロ・ロマンス』の本体を避けて攻撃する。
 マスターコメントにある『☆』『★』記号や描写のあるプレイングの場合、上記を無視して負傷描写を設ける可能性があります。
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※トミーウォーカーからのお知らせ
 ここからはトミーウォーカーの「猫目みなも」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
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ヴォルフガング・エアレーザー

なんという惨いことを……許さん、許さんぞオブリビオン共!
助けられなくて、すまない。
犠牲者たちの無念を晴らすため、必ずや貴奴らを悉く駆逐してくれよう。

……! あの背中から棘が……!
だが、それでいい。傷口から【ブレイズフレイム】の炎を逆流させ、杭そして『死花』の本体へと延焼させて焼き尽くす。
激痛と狂気に耐える覚悟は出来ている。苗床にされた人々の苦痛と恐怖は、こんなものではなかったはずだ。
怒髪天を突く怒りは、燃え盛る炎となって、全力で敵を焼き滅ぼすだろう。(属性攻撃+全力魔法)

死花本体と共に、いずれ苗床の遺体も焼け落ちるだろう。
これ以上の悲劇を繰り返さぬように。
どうか、安らかに眠ってくれ……。


アリエル・ポラリス

今日の私はしょんぼりさんなのよ。
炎って、明るくて暖かくて優しいのよ。
……私はそう思ってるの。
なのに、此処の炎はこの人達の故郷を飲み込んじゃったって聞いたわ。
死んじゃったのに、あの人たちには静かに眠る土も無いって聞いたわ。
あんまりだわ、可哀想だわ。

──だから、取り戻すのよ。
とおせんぼするお花を越えて、オブリビオンをやっつけて、この人達の故郷を取り戻すの!
燃え上がりなさい、プロープル! 掴まってる暇なんて無いの、お空から一気に焼き払う!
そう、村人さん達をすり抜けて、お花にだけ炎を届けるの!
村を焼く意地悪な炎しか使えない人たちに、本当の炎を見せてあげるわ!!



 ぱちぱちと。ぱちぱちと音を立て、あかあかと炎が燃えている。けれどそれは、人々に安らぎをもたらす恵みの火ではない。全てを飲み込み、焼き払い、灰へと変える暴力の残り火だ。不吉に焦げ臭い廃村に、猟兵達は各々足を踏み入れる。その足音は、重い。
「炎って、明るくて暖かくて優しいのよ。……私はそう思ってるの」
 悲しげに尻尾を下げて、アリエル・ポラリス(焼きついた想いの名は・f20265)は微かに呟く。未だ燃え続けるこの炎は、村の全てを飲み込み、人々の故郷を食い尽くしてしまったという。死して眠る土すら奪われた村人達を思うように遠くを見やった彼女の隣に、もうひとつ、足音が並んだ。ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)だ。
「なんという惨いことを……」
 その声に滲んだのは、焼け付くような怒り。滅びてなお踏み荒らされ続ける村の光景は、酸鼻を極めるものだった。背から鮮やかな赤色の花を生やした物言わぬ死体たちが、よろめきながらずるりずるりと歩み寄って来る。その彼らに――理不尽に殺され、植物型オブリビオンの『畑』にして『足』とされた村人たちに心中で深く詫びつつ、ヴォルフガングは己の得物を握り締めた。
 どちらからともなく視線を交わし、共に地獄の炎を宿したふたりの人狼は、蠢く死花の群れへと飛び込んでいく。まるで新たな獲物がやって来たことを喜ぶかのように蔓を振り立て、死体の喉と口を使って、ネクロ・ロマンスは咆哮を上げた。
「彼らの声で叫ぶな……死者をそれ以上冒涜するな!」
 血を吐くように叫び、ヴォルフガングは鉄塊剣を叩き付ける。鞭のように振るわれた鉄色の蔓と、無骨な重い刃とがぶつかり合い、せめぎ合う――そう思った刹那、死体の背を突き破って伸びた新たな蔓が、騎士の左腕へと襲い掛かった。
 咄嗟の事に反応が遅れ、見る間に紅に染まっていく二の腕の痛みに、けれどヴォルフガングは怯まない。怯むわけにはいかない。――彼らは、オブリビオンに殺された人々の恐怖と苦痛は、こんなものの比ではない。
「それでいい」
 低く、微かに呟く。瞬間、切り裂かれたばかりのその傷口から、待ちわびたように地獄の炎が噴き出した。剣を持つのとは逆の手で敵の蔓をしかと掴めば、それを導火線にして、蒼白い地獄は瞬く間に死花の本体へと至る。彼の怒りを映したかのように激しく燃える炎が照らし出す戦場を、アリエルもまた懸命に駆けていた。
「取り戻すのよ。とおせんぼするお花を越えて、オブリビオンをやっつけて、この人達の故郷を取り戻すの!」
 小石をかわし、瓦礫を飛び越え、高く高く跳び上がりながら叫ぶ。死者は戻らない。けれど彼らの安寧を取り戻すことはできる。そう信じて、少女は己の炎に呼びかける。
「燃え上がりなさい、プロープル!」
 朱が、花開くように燃え上がる。放たれた業火はどこまでも温かな色合いの尾を引いて、ネクロ・ロマンス達の頭上へ降り注ぐ。まるで意志持つかのように花と蔓だけを焼き滅ぼし、その下の死体は決して傷つけないようその火に命じながら、アリエルは崩れた民家の屋根の上に着地して。
「村を焼く意地悪な炎しか使えない人たちに、本当の炎を見せてあげるわ!!」
「……ああ」
 頷き、ヴォルフガングも再び剣を死花へと向ける。これ以上の悲劇を決して繰り返させはしない、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

華倉・朱里(サポート)
 桜の精のサウンドソルジャー×闇医者の女の子です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 時々「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

あまり感情は大げさには表さないクールで物静かな感じの少女で
慌てる事は少なく、また仕事は淡々とこなしていくタイプです。
花や動物などの自然が好きです。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「……厭な咲き方をしたものね」
 見る者が見れば分かる程度に眉根を寄せて、華倉・朱里(桜の精のサウンドソルジャー・f25828)は首を横に振る。転移によって降り立ったその場からでも分かるほどに燃えていた村は、踏み入ってみれば一層地獄の様相で彼女の前に口を開けていた。半ば倒れ掛かるようにして襲い掛かってきたネクロ・ロマンスの腕をかわせば、至近距離で真紅の花弁が揺れる。あまりに美しいその赤は、けれど疑いようもなくその下にある死で培われたものだ。
 微かに息をつき、朱里は愛用のギターを医療ノコギリに持ち替える。死体の腕に絡みついていた蔓が茨の鞭へと変形し、振るい抜かれる軌道を冷静に見切って、彼女はすいとノコギリの刃を引いた。――ただのひと振りで切断には至らない。けれどそれは想定のうちだ。重要なのは、大きな流血をもたらすであろうその一撃を絡め取ったこと。そして。
「……」
 ひと思いに、力任せに、両手で握ったノコギリを今一度強く引く。ぶつりと音を立てて、細い茨が引きちぎられた。それに引かれて大きく体勢を崩した死体の背にあるもの――つまりはネクロ・ロマンスの株本に、朱里は躊躇なく素手で掴みかかった。
 死花の棘が柔らかな肌を傷つけ、流れ出した血を吸い上げようと蔓がうごめく。けれど表情ひとつ動かさず、朱里はそこへノコギリを添えて。
「切除するわ。それで終わり」
 そうしてまた、ひとつの花が灰にまみれた地へ落とされた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。彼らはただ、今を必死に生きていただけ。
…それなのに、どうしてこんな辱しめを受けなければならない?
どうして、こんな無惨な姿を晒さなければならない…。

…あのオブリビオン達が何故、戦っているのかなんて、どうでも良い。

…待っていて。今、その不本意な姿から解放してあげる。
…それが私が貴方達にできる、せめてもの手向けよ。

殺気や気合いを消して存在感を薄め闇に紛れ、
今までの戦闘知識と第六感から敵の死角を見切り、
暗視した場所に転移する早業で先制攻撃のUCを発動

遺体を操る茨を生命力を吸収する呪力を溜めた大鎌で怪力任せになぎ払い、
本体に大鎌を乱れ撃ち傷口を抉る2回攻撃を行い、
次の死角に向けUCで転移する



 燃え盛る火に焼かれ、花がしおれていく。振るわれる刃に断たれ、蔓が地に重なる。猟兵達の活躍によって、ネクロ・ロマンスは着実にその数を減らしていた。残り少なくなった赤い花の揺らめきを見据えて、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は静かに片手を握った。
「……待っていて。今、その不本意な姿から解放してあげる」
 ただその時を生きていただけの人々が、なぜこんな辱めを受けねばならないのか。ただ必死に生きていただけの彼らが、なぜこんな無残な姿を晒さねばならないのか。理不尽をもたらした当人であるオブリビオン達が戦う理由など、どうでもよかった。今、猟兵として死者たちに贈れる手向けは――この踏みにじられた死からの解放だ。
 戦場の剣戟と喧騒に紛れて、誰にも気付かれぬよう少女は駆ける。死者の背後に忍び寄り、振るい抜いた大鎌の一閃が、巨花が根を張る肉だけを鮮やかに切り分けて。
 大きく身震いした死花が、八方へ鋭い棘を吐き散らす。まともに浴びれば全身からとめどなく血を流すことになるであろう毒を含んだ棘の雨を、リーヴァルディは僅か一瞬先んじて発動させたユーベルコードの力で掻い潜っていた。大きく移動すると同時に射程圏内に捉えた別の死花の根元にも、リーヴァルディは迷いなく大鎌の刃を叩き付ける。既に手傷を負っていたその敵の背に、黒き刃は深々と吸い込まれ、忌むべき花を根元からずるりと抉り出した。苗床から掘り出されてなおしぶとくのたうつ花を大鎌の石突でひと突きして今度こそ沈黙させ、少女はくるりと振り返った。
 ぱちぱちと、あかあかと炎が燃えている。そこにもはや、鮮やかな赤色を咲かせた死者の影はない。皆、猟兵の手で永遠の眠りへ返されたのだ。
 けれどリーヴァルディは構えを解くことはしない。その瞳に映るのは、朽ちた紅花を絨毯のように踏みしめて泣き笑うまっしろな女と、彼女を憐れむように薄く笑って腕を広げるまっくろな男だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『裏切りの聖女』

POW   :    あの日、我が身は煉獄に灼かれ
戦場全体に、【炎に包まれた古城】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    世界に救いなど在りはしない
自身の【過去】を代償に、【猟兵同士】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【ユーベルコード】で戦う。
WIZ   :    あぁ、愛しき我が子よ
自身が【憐憫】を感じると、レベル×1体の【無垢なる子供たち】が召喚される。無垢なる子供たちは憐憫を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ギド・スプートニクです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 死ね、死ね、死ね、と女は短い呪詛を繰り返す。
 歌え、歌え、歌え、と男は女の呪詛に口の端を上げる。
 彼らこそが、この地で諍い、村を炎に沈めたオブリビオンなのだろう。
 先に動いたのは、女の方だった。血濡れた右手で剣を抜き、嗤う男へ斬りかかる。男は僅かに身を反らし、致命傷だけを避けて、再び口の端に薄い笑みを浮かべる。
 どちらがどちらにどのような因縁を抱えていたのか、それは予知の外側だ。だが、確かなのは――どちらも等しく、猟兵と世界にとっては討つべき敵だということだ。
ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と

あの男は……過去の忌まわしい事件の……!
でも今は、もう一人の女の方を相手どらなくては
然る後に必ずや、あの男を倒します

彼女が何者かはわかりませんが、人々を殺め村を滅ぼしたのは事実
その上無垢な子供たちを盾に取るなんて、なんて卑怯な!

祈りと優しさ、勇気と覚悟を込め【聖霊来たり給え】と歌う
この子達があの女の呪縛から解き放たれ、無事あるべき場所に帰れますように
そして炎の迷宮に閉じ込めらたヴォルフたちが無事に我を取り戻し、共に立ち向かえますように
わたくしはこの歌声で、希望を導く道標となりましょう

猟兵同士を戦わせる手口も、あの男と似ている……
人の絆を引き裂く所業、許しはしませんわ


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と

斯様な犠牲を生み出した元凶、決して許してはおけぬ

俺の周囲を取り囲む壁、炎に包まれる古城……あの女はこの力で村を、人々を焼き焦がしたのか
灼熱地獄は火炎耐性で耐え、力溜めと怪力を込めた鎧砕きの一撃を何度も城壁に叩き込み粉砕、道を切り開く
目指すはただひとつ、ヘルガの歌声
迷っている暇はない
彼女の歌を道標に、愚直なまでに剣を振るい、必ず生きて帰ると誓って

裏切りの聖女も、あの男も
人の絆を引き裂き命を踏み躙る所業、容赦せぬ
無事帰りついたなら、破魔の炎を剣に纏わせ炎属性の全力魔法を込めて攻撃
再び煉獄の炎に焼かれ、悉く滅却せよ!

そしてノア……次(次章)は貴様の番だ



「あの男は……!」
 黒衣の男の姿を目にするなり、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は息を呑んだ。覚えのあるその姿にひとつの過去を思い起こしつつ、けれど今優先して討つべきは彼ではないとヘルガは思考を切り替える。白衣の女へ向けて駆け出そうとしたその刹那、誰を狙って放ったものか、女がたおやかな指先で呪詛を紡いだ。血濡れた指が描いた陣はたちまち炎の色に輝き始め、戦場全体を燃え盛る古城のかたちをした迷宮に塗り替える。まるで、猟兵風情に己と男の戦いを邪魔させはせぬと言うように。
「……あの女はこの力で村を、人々を焼き焦がしたのか」
 何枚もの石壁を隔てた向こうで、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)は奇しくもヘルガと似たようなことを呟いていた。人々を殺め村を滅ぼしたオブリビオンの力の一端が、これなのかと。
 しばしの沈黙を挟んで、ヴォルフガングは鉄塊剣を抜く。激しく燃える炎の音の向こう側に、確かに彼は愛しい歌声を聞き取っていた。その方向を最短距離で目指すべく、己の膂力の全てを込めて無骨な刀身を石壁へと打ち付ける――が、ユーベルコードで編まれた迷宮は多少の攻撃では傷付きもしない。それでも何度も、何度も同じ一点へと剣を振るい続ければ、やがて耐えかねたようにひびが走り、厚い壁が砕けて崩れ落ちる。汗を拭いもせずに石壁だった瓦礫を踏み越えて、狼の騎士は一心に走った。
(「彼女が何者かはわかりませんが、人々を殺め村を滅ぼしたのは事実。その上無垢な子供たちを利用するなんて……!」)
 ヘルガの抱いた優しさは、そのままオブリビオンへの激しい怒りに変わる。必ずこのオブリビオン達を討ち、子供達をあるべき場所へ還してやりたい。そして――。
 祈りを込めて、聖女は歌う。その旋律と同じリズムで、ひとつの足音が近付いて来る。顔を上げたヘルガの空色の瞳が、ぱっと希望の色に輝いた。
「ヴォルフ!」
「……心配をかけた」
「いいえ、いいえ! さあ、ここからは共に参りましょう……!」
 詫びるヴォルフガングに首を振り、ヘルガはまっすぐにひとつの方向を指で示す。それは、彼女が最後に黒い男と白い女を見た方だった。頷いたヴォルフガングが、石壁に剣を叩き付ける。恐らくあの男女は、迷宮内をそうあちこちと動き回ってはいまい。ならば、共に迷宮を切り抜け、命を踏み躙る悪行を断ち切りに行こう。
 誓いを込めた一撃が、そして迷宮の壁をまたひとつ打ち砕いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リジューム・レコーズ
オブリビオン同士で争っている今がチャンスです
手間は取らせません
目標を速やかに排除します

【WIZ・アドリブ連携歓迎】

増援を呼んだ?子供?
心理に揺さ振りを掛ける戦術ですか
見え透いた手ですね
そんな事、むしろ敵意が増すだけなんですよッ!
ですが包囲されると厄介ですね
ブーストダッシュと空中機動で振り切りましょう
回避行動を取りながらアグニバーナーをセット
放出する火炎の全てを合体強化して帯状に形成
そして広域攻撃で召喚された子供達を聖女諸共焼き尽くします
慌てて逃げ回っても遅いですよ
この火炎は私の意のままに制御出来ますからね


アリエル・ポラリス
これは……聖者様なのかしら?
うちの村にも聖者様はいるわ、村の人の為にいっぱい頑張ってるの!
いよいよ持って捨て置けないわ……!
炎の名誉のため、色んな聖者様の名誉のため!
覚悟しなさい、意地悪聖者様!

迷路を突破しないといけないわ!
地獄の炎を使う身として、炎に対してはある程度耐性があるけど……この迷宮、硬そうねぇ。むりやり壊して進むのは無理そうだわ。

でも!
今はあの男の人と戦ってるはず……血を流している筈なのよ!
血の匂いをくんくん嗅いで、その先に行けばオブリビオンが居るはず!

どんどん進んでたどり着いたら、私の炎をお披露目よ!
──大丈夫、痛くないし、何も怖くないんだから!



「この迷路、硬そうねえ。私じゃむりやり壊して進むのは無理そうだわ」
 炎の熱には耐えられるけれど、自身の腕ではこれを叩き壊すのは難しそうだ。或いは頑張ればできなくもないのかも知れないけれど――実際、通ってきた道の途中には打ち壊された壁の残骸も散らばっていた――でも、自分なら、とアリエル・ポラリス(焼きついた想いの名は・f20265)は鼻を鳴らす。
「……こっちね!」
 狼の鋭い嗅覚でオブリビオンの流す血の匂いを嗅ぎ取り、彼女はまっすぐ走り出す。炎を飛び越え瓦礫を踏み越え、走って走って――そうしてアリエルが目にしたのは、黒い男の背中と白い女の憤怒の形相だった。いち早く猟兵の到達に気付いた女が、涙に濡れた顔を一層憎々しげに歪めて。
「……もう来たと言うの」
「ええ、私が来たわ!」
 こんな意地悪をする人が、聖者であってたまるものか。こんな炎を操る人を、放っておいてなるものか。両手の上に炎を燈し、アリエルは堂々と言い返す。何がおかしいのか、男が愉快そうに肩を揺らすのが見えた。一方女は、泣き腫らしたように血走った目でアリエルを睨みつける。
「邪魔をするな……邪魔は、させないッ!」
「……こちらの台詞です」
 再び迷宮を組み上げようと女が指先を上げたその時、鋭い発射音が古城に響いた。荷電粒子スマートガンを手にしたリジューム・レコーズ(RS02・f23631)が、雪のような白髪を揺らしてそのまま広間に歩み入る。聖者らしからぬ憎悪の形相で、けれど女は撃たれた腕を庇いもせずに虚空をかき抱く。
「……嗚呼」
 それに続く言葉は、炎の弾ける音に紛れて聞き取れない。ただ、誰かに呼びかけていたような――そうアリエルが感じた時には、女の足元には数十では足りないほどの子供達が現れていた。一様に簡素な衣服に身を包み、状況も分からぬと言わんばかりの様子で近寄って幼子の姿に、リジュームは冷徹に言い放つ。
「見え透いた手ですね」
 ユーベルコードで呼び出した、無垢なかたちの増援。恐らくは、猟兵相手であればより効果的な揺さぶりにもなり得ると踏んでのことだろう。だが、と白き騎士は先に断じた言葉とは一転、焼き払うような声音で吼え立てる。
「そんな事――むしろ敵意が増すだけなんですよッ!」
 鎧装のブースターを全開にし、異様な膂力で縋り付いて来ようとする子供達を振り切って、リジュームは裏切りの聖女にフレイムランチャーを向ける。
「アグニバーナーセットアップ! 燃え尽きて!」
「合わせるわ! 私の炎もお披露目よ!」
 そうして挟み撃つようにして放たれた蒼と朱との炎の奔流が、聖女と下僕の身を呑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

化野・那由他
ここまで酷いことをしたのです、容赦する必要はありませんね。
貴女達の物語にここで終止符を打つことと致しましょう。

ヤドリガミの本体である奇書を開き、
【妖奇譚『蛟』】で召喚した蛟に[騎乗]します。
水の[属性攻撃][範囲攻撃]を主体に攻撃を。
子供たちは……一応、水流を水鉄砲のようにして弾き飛ばしましょう。
もし可能なら水流の余波で周りの炎も消すよう蛟を操ります。

貴女の過去がどうであろうが村の方々には関係のないこと。
怨恨であろうが瞋恚であろうが、心の炎は、その身を焦がして滅びを呼ぶのが定め。せめて一思いに……。

蛟に命じ、その大顎で 『裏切りの聖女』 に喰らいつかせます。



 ユーベルコードの炎が晴れた時、女はそれでも立っていた。聖者然とした白衣は黒く煤け、滑らかだった白い肌もひどく焼けただれていたが、なおもその目に憎悪の色を青白く燃やして、女は涙を流し続けたまま唇を開いた。
「許さない……許しはしない……!」
「貴女の過去がどうであろうが、村の方々には関係のないことですよ」
 再び現れた子供達を一瞥し、白い女に視線を戻して、化野・那由他(書物のヤドリガミ・f01201)は首を横に振る。何よりここまでの仕打ちを人々に下したオブリビオン相手に、容赦してやる理由などどこにもない。白魚のような指が空白の多い頁を爪繰り、そうして那由他は『物語』を紡ぎ出す。
「此度は水神の御話を」
 清涼な水音が、燃え盛る迷宮の空気を打った。しなやかに身をくねらせて顕現した蛟霊の背に跨り、那由他はひらりと宙に舞い上がる。短く命じる声に応じて蛟の放った水流が、城を焼く炎を飲み、立ち塞がる子供を吹き飛ばし、女を守る全ての壁を情け容赦なく剥ぎ取っていく。
「怨恨であろうが瞋恚であろうが、心の炎は、その身を焦がして滅びを呼ぶのが定め」
 なればこそ、せめてひと思いに。黒々と燃え跡の残る絨毯の上にひとり立ち尽くす女の頭上まで蛟を飛ばし、那由他は指先でその強靭な顎に命じる。
 ――そして、竜の如き蛟の牙が、女のオブリビオンとしての生を頭から噛み砕いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『享楽の匣舟』ノア』

POW   :    歌え!私の歌姫《エスメラルダ》よ!
【記憶に干渉し消去・破壊する洗脳の呪詛】を籠めた【鞭】【傀儡奴隷:漆黒の人魚が歌う「忘歌」】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【最も失いたくない存在、想い、技能の記憶】のみを攻撃する。
SPD   :    Grand Guignol!
戦闘用の、自身と同じ強さの【対象自身の分身や大切な存在、親しい者達】と【殺しあいを強要させる『見世物劇場』】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ   :    今宵の演目は……
対象への質問と共に、【自制心を破壊し、欲望と願望を狂化する喝采】から【欲望や願望を実現する「幸福な楽園」の舞台】を召喚する。満足な答えを得るまで、欲望や願望を実現する「幸福な楽園」の舞台は対象を【幸福の破壊で軽減される、自我と肉体の崩壊】で攻撃する。
👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリル・ルリです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と

わたくしの一生消えぬ心の傷
かつて水葬の街カナン・ルーで二人を襲った忌まわしき事件

歪んだ夢、ヴォルフの幻との偽りの幸福に囚われ、じわじわと死に至る恐怖
卑劣な罠を仕組んだこの男は、遠くでそれを見て嘲笑っていた

何より二人の愛を愚弄したことが
わたくしにヴォルフを裏切る罪を犯させたことが許せない

この男を倒さねば、わたくしは先に進めない
決着をつけましょう
覚悟は決めました
二度と悪夢に惑わされはしないと

呪詛と狂気に耐え
破魔の祈り込め
歌うは【怒りの日】
どんな綺麗ごとで飾り立てようと
ノア、貴方の罪は決して誤魔化せはしない

これは神罰です
貴方が踏み躙り弄んできた人々の無念、思い知りなさい


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と

ノア!嘗て俺たち夫婦から互いに関する記憶を奪い、妻の心を壊した怨敵
狂気に満ちた舞台上で数多の人々を殺めた罪
愛を愚弄し命を踏み躙る悪しき性根
【怒れる狼王】は貴様を決して許さない

傷ついた仲間達
貴様に殺され無残な姿にされた村人達
悍ましき享楽の果てに命奪われたカナン・ルーの演者達
そして何より最愛の妻ヘルガの
苦痛、恐怖、怨嗟、絶望
全てをこの剣に込め貴様に叩きつけてやる

覚悟を決め、敵の攻撃は野生の勘、狂気耐性、ダッシュで見切り回避
俺達の大切な記憶は二度と奪わせぬ

鎧砕き&鎧無視&2回攻撃で恐怖を与え蹂躙
四肢臓物を裂き骨を砕いて尚足りぬ憤怒を!

その欺瞞、その悪辣
悉く打ち砕いてくれる!



 その男は、同族たるオブリビオンにすら忌み嫌われる『敵』だった。
 同族殺し。狂気に囚われ、人々はおろか他のオブリビオンすら手にかける、強大なオブリビオン。その同族殺しとして現れた黒い男は、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)の苦い記憶を呼び起こす相貌と力の主だった。
「……許さない」
 その怒りはひとつの村を踏みにじり、滅ぼしたオブリビオンの厚意に対するものか、それとも。
 どうあれ傍らの妻に同意の微かな頷きを見せて、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)は床を蹴った。一歩駆けるごとに湧き立つ怒りをそのまま咆哮に変え、騎士は地獄の業火にその身を包む。
「狼は忘れない。血族の誇りを、仲間の絆を。その想いを冒涜し踏みにじる者は、誰あろうと容赦はしない。地獄の炎に焼かれて消えろ!」
 ごうと唸りを上げて振るい抜かれた鉄塊剣を、男は軽く身体を反らして回避する。その口の端に醜悪な笑みを浮かべて、黒い男は手にした鞭で床を打った。
「歌え! 私の歌姫――」
「させません!」
 男の操る傀儡の歌声を遮るように、ヘルガもまた、声を張り上げる。その喉が歌うのは、終末に来る神罰のとき。男の悪意を許さぬその一心は、そのまま歌と変わって裁きの光を洗浄へ導き、邪心を抱くものをどこまでも追いかけて焼き滅ぼさんばかりに打ち据える。
「俺達の記憶は奪わせぬ」
 炎を纏う剣が、傀儡を薙ぎ払い、再び黒い男へと迫る。かち上げるような一撃が舞台衣装を思わせる黒衣を抉り、その下の肉を切り裂いた。
「それが君の望みかね」
 嗤う男を、ヴォルフガングはぎろりと睨み付ける。それだけが返答だと知ってか、黒い男は大仰に肩をすくめてみせた。彼が次の台詞を吐くより早く、その胴を蹴りつけた反動で飛び退り、ヴォルフガングは低い声で吐き捨てた。
「その欺瞞、その悪辣。もはや俺達に通じるものと思うな」
 男は答えない。ただ手にした鞭で空を切って、未だ演目は終わっておらぬとばかり、黒衣の男は再び構えを取ってみせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リジューム・レコーズ
貴方を倒して終わりにしてやる!
ターゲット確認、戦闘開始!

【SPD・アドリブ連携歓迎】

こいつ…!もう一機の私を呼び出した?
センサーで感知可能という事は幻影じゃないようですね
ですけどステータスが私のそれと一致しませんね
性能までは完全に模倣できていない?
装備が同じなら戦術も同じ…だったら性能面でアドバンテージを取れば!
全兵装にエクステンションコネクターを接続
パワー・ディフェンス・スピードを倍加させた状態で私の本領の高速戦闘で勝負を仕掛けます
多少強引にでも攻めて押し切りますよ
私の模倣体を撃破したら間髪入れず敵本体を叩きます
ヘレナの収束荷電粒子砲で、お前の身体を心と魂ごと撃ち貫いてやるッ!



「貴方を倒して終わりにしてやる!」
 女は既に斃れ、残る敵は同族殺したるこの男のみ。黒衣の男に照準を絞ったリジューム・レコーズ(RS02・f23631)の声が、戦場に高らかに響き渡った。その声を受け止めるように腕を広げ、黒い男はそのまま両手を打ち鳴らす。
「……!」
 慇懃な拍手に呼ばれて現れた『それ』の姿に、リジュームは思わず息を呑む。眼前にいたのは、彼女と全く同じ姿形をした白い騎士だった。
「センサーで感知可能という事は幻影じゃないようですね……ですけど、」
 冷静に迅速に、リジュームは敵のデータを分析にかける。見目こそ同じ、戦闘能力も彼女自身とほぼ遜色ない――だが。
(「性能までは完全に模倣できていない?」)
 ごく僅かながら、リジューム自身とは差異がある。自身と同じ装備を用いた、恐らくは同じ戦術を導き出してくるであろう敵――ならばその差異こそ突くべき隙だと判じて、リジュームはエクステンションコネクターを接続可能な全ての武装に繋いで。
「追従できるものならしてみなさいッ!」
 元より高速戦闘は彼女の本領。プラズマリアクターによって更に引き上げられた速度で光剣を振るえば、月光の如き尾を引いた十重二十重の斬撃は、模倣の騎士の守りをすり抜けその実体を深々と切り刻む。至近距離から放たれたスマートガンによる反撃が自身の防具を削り取り、その下の機体を傷付けても、リジュームは止まらない。止まってなどやらない。手にしたシールドのブースターを全開にし、加速を乗せて叩き付け、その一撃にたたらを踏んだ敵の喉元を、純白の騎士は情け容赦なく光剣で貫いた。灰のように崩れて消えていく『自身』の姿を見送りもせず、そのままリジュームは黒い男へ剣先を向ける。
「さあ、次は貴方の番ですよ。その身体、心と魂ごと撃ち貫いてやるッ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリエル・ポラリス
さあ行くわよ!
死んでしまった村人さんの為の!
オブリビオンを眠らせる為の!
私の炎に宿る熱い闘志を!

忘れました!!!
ここは何処? 貴方だあれ?
ついでに私も誰かしら。よく分からないけどピンチだわ!
あ、歌は避けられないけど鞭は炎になってすり抜けます。私の身体すごい。

──いえ! 私は理解してしまったわ!
どこの誰かも分からない我が身、それでも確かな事!
こんなポカポカあったか炎が出てくるんだから、暖かい家庭のお嬢さんなのよきっと!
そうだと分かれば怖いものなんてないわ、貴方をやっつけて私はお家に帰るの!

炎の身体でいざ突進!
よく覚えてないけど、私が元気に帰ることがきっと『恩返し』なのよ!邪魔はさせないんだから!


リル・ルリ
笑う男は――座長、ノア様――とうさん
この破壊も君の一面なのだと理解している
君は吸血鬼
支配するもの
蹂躙するもの

けれど
僕にとっては…だいすきな

享楽のグランギニョール、その観客も血を死を悦ぶ同胞も嫌悪していたのも知っている

だからこそ

村の人達
舞台で僕らが殺した演者達
僕らの罪を贖う時

僕の楽園
満開の桜の下
とうさんとかあさんと愛する人達と過ごす世界
『お前は何も見ずともよい』君はそう言ったけど

真正面から見つめ
歌う「望春の歌」
全て桜と共に散らせる

胸の内、花の名は戀
あえかに咲いて結んだ
君のこころ

もう一度幕を下ろす
とうさんの匣舟は僕が継いだ
その意思も全て

かあさんの元へおかえり
歌い送るよ

君の探す
本当のあいは
そこにある



 男に命じられるまま、黒き人魚が歌声を上げる。その歌によって、アリエル・ポラリス(焼きついた想いの名は・f20265)の体が痛むことはない。ただ一度瞬いた彼女は、戦場には似つかわしくない寝起きじみた表情でぐるりと周囲を見渡した。――ここはどこで、目の前にいるのは誰だっただろう? ついでに私も誰だろう?
「よく分からないけどピンチだわ!」
 男の振るう鞭が自身に向いていると察した瞬間、理屈は分からないけれども自身の腕が炎に変わり、物理的な一打をすり抜けさせた。その現象に驚嘆しつつ、アリエルはどこかで理解していた。
「そう。そうなのね。──理解してしまったわ!」
 自身がどこの誰で、ここへ何をしに来たのかは忘れてしまったけれど――こんなに温かい炎が出てくるこの身なら、きっと暖かい家庭のお嬢さんに違いない。
 ならば、きっと大切で愛おしいその家へ必ず帰ろう。その為にはまず、目の前の意地悪そうな人をやっつけなければ!
 きゅっと握った拳から、ひらりと花弁にも似た炎が落ちる。それを起点に、アリエルの全身が赤く眩い炎へ変じていく。火矢のように一直線に、男へ向けて飛び出しながら、少女は力いっぱい叫ぶ。
「よく覚えてないけど、私が元気に帰ることがきっと『恩返し』なのよ! 邪魔はさせないんだから!」
 そうして狼を象る朱炎が、傀儡の人魚を飛び越えて、男の胸元を突き飛ばす。嗜虐的な笑みを浮かべていたその目元が、瞬間僅かに色合いを変えたように見えた。
「座長、ノア様――、――さん」
 地に転がったシルクハットを拾って立ち上がる男を前に、リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)はかすかに呟く。村の人々を、或いは人でもない誰かを、そしてこの場にいる猟兵の皆を傷付け、蹂躙しようとするその姿も、確かに彼の一面なのだと、リルとて理解している。けれど。
 炎から少女へとその姿形を戻したアリエルが、最後に零れた言葉の響きを拾って振り返り、首を傾げる。そこへ頷きを返すことはせず、ただ曖昧に淡く笑って、リルは己の胸元に指先を置いた。シルクハットの下で、血色の瞳がこちらをじっと見つめている。投げかけられた問いは、リルの想像していた通りのものだった。
 まほろばの喝采が周囲に響く。耳を塞ぐことはせず、むしろ周囲に展開された『幸福な舞台』に自ら立つようにして、彼はくちづけるように歌声を紡ぎ始めた。
 望春の歌が呼ぶのは、温かな恍惚を誘う桜吹雪。全てを覆い尽くし、埋め尽くさんばかりに舞い踊る花の中、なおも男の黒色はその中で奇妙な存在感を放っていた。
 ぱちり、火花が弾ける音がした。歌に対抗せんと口を開きかけた男に炎と変えた手を伸ばし、アリエルが力を込めた声音で告げる。
「ダメよ。ほら、聴いてあげて」
 掴んだ指先から、炎が男の肩を撫でる。黒衣のおもてを走るたび、朱金の花が咲いては揺れる。その揺らめきをもしかと己の目に焼き付けながら、リルは最後のフレーズに全ての想いを乗せて歌い上げる。――どうか、どうか。
 吐き切った息の最後のひとかけらが、一枚の花弁を舞い上げる。瞬間、伸ばした手の先も見えないほどの桜嵐がその場に吹き荒れて――花に抱かれるようにして、男は逝った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月10日
宿敵 『『享楽の匣舟』ノア』 を撃破!


挿絵イラスト