アースクライシス2019⑮〜摩天楼の射手
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「皆の活躍で戦況は順調、フォーティナイナーズに負けず劣らずの活躍を聞いている」
ありがとう、と無表情で語るアシニクス・レーヴァ(剪定者・f21769)。常と変わらぬ鉄仮面だが、心持ち穏やかな表情だ。アシニクスは手元に浮かべたダリアの花――グリモアを輝かせ、静かに猟兵たちへおもむろに口を開いた。
「ニューヨーク州、マンハッタン島の高層ビル街。その片隅にあらゆる存在から死角となる『不可視の領域』が発見された。そこに居たのは『ジェネシス・エイト』の一人、ダークポイント」
ヒーローもヴィランも殺す正体不明、謎の存在。それがダークポイントというオブリビオンだ。
無音かつ高速で滑るように動き、無限の射程距離でターゲットを狙撃する。正しく狙撃手に相応しい能力を存分にもった、蹂躙滅殺の射手。
さてどうする、など猟兵たちには愚問だった。彼の居所を捉えたのなら、倒す以外の選択肢があるだろうか。
「居場所を突き止められたダークポイントは、マンハッタンの高層ビル街を縦横無尽に駆け巡りながら先制攻撃を仕掛けてくる。潜伏先に選んだからには地の利を得るのは相手――そこで、どう対処するかが重要になる」
天からの目を持つ彼に奇襲は無意味。敵の猛攻をどう対処し、その身に攻撃を叩き込むのか。
「よく考えて欲しい。強敵だからこそ、無策に飛び込むのは無謀だということ」
戦場へと門を開くのは、無闇に痛みを生むためでは無い。彼女が未来を願うから、だからこそ。
「この先の戦場へ、私は誰かを生かすために送り出す。――死なないで、生きてここに還ってきて欲しい」
命を摘み取るその手は、いつも誰かの為に祈り続けている。そしてその行いは己のためでは無く、誰かの為に。
「勝って、帰ってくる皆を、ここで待っている」
――勝利を。そう祈るアシニクスの手からこぼれ落ちた花がゲートを開く。
「その為に、ダークポイントの命を摘んで。猟兵(イェーガー)」
水平彼方
初めまして、もしくは再びでしょうか。水平彼方です。数あるシナリオの中から目に留めていただき、ありがとうございます。
9本目はヒーローズアース! アースクライシスの一幕、ダークポイント戦をお届けします。
第一章/ボス戦『ダークポイント』
●負傷について
当シナリオでは成功・失敗に関わらずキャラクターの負傷描写を取り扱います。
●対ダークポイント
ダークポイントは猟兵に対して必ずユーベルコードで先制攻撃を行います。『敵のユーベルコードへの対処法を編みだし』行動することによって有利に立ち回ることが出来ます。
●シナリオ運用について
送信前にご確認をお願いします。
プレイング受付期間につきましてはマスターページおよびTwitterにて告知致します。
告知以前に頂いたプレイングはお返しさせて頂きます。
戦争シナリオのため、成功と速度重視で進めて参ります。全てのプレイングにお応えできない場合もございますので、ご了承下さい。
それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております。
第1章 ボス戦
『ダークポイント』
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POW : ダーク・フレイム
【ダークポイントの視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【漆黒の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : ダーク・リボルバーズ
自身に【浮遊する無数のリボルバー】をまとい、高速移動と【全方位・超連射・物質透過・弾丸】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : ダーク・アポトーシス
【銃口】を向けた対象に、【突然の自殺衝動から始まる自分への攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:カス
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
【プレイング受付期間】
11/15 8:31から 23:59まで】
シキ・ジルモント
◎
◆SPD
狙いを絞らせない為、動き続ける事を念頭に置いて行動
多少の負傷は『覚悟』の上で『ダッシュ』で敵に接近する
致命的な一撃を受けないよう、敵の位置と周囲の銃を常に目で『追跡』し、彼我の位置から弾丸の軌道を『見切り』回避を試みる
逃げ場がなければ改良型フック付きワイヤーをビルに引っ掛けて巻き取り、大きく跳躍する事で緊急回避(『地形の利用』)
こちらの射程に入る直前まで近付いたらユーベルコードを発動、一気に接近
今まで温存したのは急激に速度を上げる事で敵の狙いと目測を僅かでも狂わす為
その僅かな誤差を隙として反撃に転じたい
射程に入ったら即座に銃で攻撃
無数の銃の隙間を突いて本体を狙撃する(『スナイパー』)
●
ビルの合間を抜け、大通りを横切りながらシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)はマンハッタンの街を駆けていた。
シキの遥か前方には人型の黒いシルエット、顔らしき部分には緑色に輝く文様が不気味に浮かび上がっていた。
「発見:猟兵=敵。
肯定:戦闘開始=蹂躙滅殺」
敵――ダークポイントは浮遊する無数のリボルバーを自身の周囲に展開し、空から、あるいは壁を抜けて。ありとあらゆる方角からシキを追い詰めていた。
頬を、肩を、腿を。掠めた弾丸は痛みとなってシキの精神を苛んだ。元より全て避けきるつもりなど毛頭無い。
ただ敵を倒すために。己の牙が届く距離目がけてシキは走った。
常に敵の位置と銃を視認し、弾道を予想して回避する。
――来る。
素早く身を翻し曲がり角へ飛び込むと、先ほどまで立っていた場所へと弾丸が降り注ぐ。安堵したのもつかの間、前方は行き止まりだった。
ここで立ち止まるわけには行かない。行き止まりを改良型フック付きワイヤーを非常階段の手すりに掛け、巻き取る力を利用して一気に跳躍する。飛び上がった勢いを利用して、低いビルの屋上へと降り立とうとした。
「無謀:空中での行動=無防備」
「があっ!」
一定の軌道を描くその一瞬を狙撃手は逃さない。とっさに体を捻り回避を試みるが、銃弾はシキの肩を貫いた。
しかしシキは止まらない。
今の跳躍によって、ダークポイントの距離は十分に縮まった。抑えつけている獣性を解放し、肉体のリミッターを解除する。
青い瞳が妖しく光ると同時、僅かに動きの止まったシキを一斉掃射が襲う。
鉛の雨がシキの体に無数の穴を開けた――かのように思われた。
残ったのは僅かに漂う砂埃のみ。
「推測:敵消失=高速での移動」
ダークポイントは周囲に目を向けると、すぐさまシキを視界に捕えた。迫り来る敵へとリボルバーを次々と発砲する。
しかし爆発的に増大し加速し続けるシキに、その速さはあまりにも遅すぎた。
リボルバーを構えるのが遅い。
狙いを定め発砲するまでが遅い。
遅い、遅い、遅い! 何もかも、全てが。無数に浮かぶ銃をうち尽くして尚、遅すぎる攻撃がシキを捉えられるはずが無い。
僅か一瞬、ダークポイントの予測をシキのスピードが上回る。
そしてそれは致命的な隙となった。
シキは【ハンドガン・シロガネ】を構えると、すぐさま全弾をうち尽くす。
それらは浮遊する無数の銃を掻い潜り、ダークポイントの体を撃ち抜いたのだった。
成功
🔵🔵🔴
エドガー・ブライトマン
ダークポイント君。……なるほど、話を聞くに相当な射手らしい
しかし善も、悪すらも持たないのであれば
それはもはや災害と同じだろうね
私の武器はこのレイピアだけだ
可能な限り接近してから戦いたいな
聞こえてくる銃声なんかを《追跡》しながら、彼の居場所の目星をつける
そしていずれ私に銃口が向けられるはずさ
初撃は甘んじて受けるさ
《激痛耐性》で持ちこたえる
自殺衝動みたいな《狂気》や《呪詛》の類にも強い方でね
ああ、左腕は庇ってやりたいな
その代わり、飛んできた攻撃が来た方向を確実に捉える
その方向を指さして
――“Sの御諚”
キミが動けなくなるのは長くて数秒だろうけど、十分さ
《早業》で《捨て身の一撃》
さっきのお返しさ!
●
手には“運命”の名を冠した愛用のレイピア一本のみ。それがエドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)の、たったひとつの武器だった。
それでもマンハッタンの街を抜け、ダークポイントに接近しなければならない。危険だと承知の上だが、それしか方法が無い。
エドガーは耳を澄ませると、銃声を拾い集める。そして音の大きさ、方角から大凡だが彼の居場所に目星を付けた。
「……あっちだな」
エドガーは再度聞こえた銃声を頼りに、街の中を移動した。
念のため遮蔽物になりそうなものの影に隠れながら、銃声のする方角へ進んでいく。
その時、前方にきらりと光を反射する「何か」を見つけた。
「何だろう」
不思議に思いながらも、エドガーはその方角を警戒しつつ道路を駆け足で横断した。
次の瞬間、エドガーの思考を衝動が塗りつぶす。
この体は忌まわしい。己の人生を投げ出したい。
この意志、命に、意味など無い。なら、斬り捨てるべきは己なのだと脳髄の奥で誰かが喚き立てている。
喉を切れ、心臓を貫け。四肢を断ち、腸を晒し。そして、死を。
この命の終わりを、死を成せ。
途方も無い奈落を覗き込んだエドガーの思考が、止まる。身を任せてしまえば楽になれるようなそんな気すらした。
しかし、エドガーが握ったレイピアは真っ直ぐにダークポイントへと向けられる。
すかさず銃声。鮮血を撒きながら後方へと突き飛ばされるように倒れたエドガーの表情は、撃たれた激痛を与えられて尚笑っていた。
「……ああ、良かった。右腕を撃ってくれて助かったよ」
この身を独占する愛しの薔薇が傷つかなくて良かった。己を蝕むのはこの花だけでいい。――この花だけがいい。
「ダークポイント君」
エドガーは静かに語りかけたが、返答は無い。
「……なるほど、話を聞くに相当な射手らしい」
やれやれと首を横に振るエドガーに、ダークポイントの持つ銃口があがっていく。
「しかし善も、悪すらも持たないのであれば。それはもはや災害と同じだろうね」
容赦なく飛来する弾丸を躱し、乾いた笑みを浮かべるエドガーが狙撃手の立つ方角を見定める。
「これは威令だ」
血に濡れた指先が黒影を指し示す。瞳から溢れた威光が畏怖の念を抱かせ、僅かに動きを封じた。
彼ならば留めておけるのは長くて数秒だろう。だが、それで十分だった。
滴る赤ごとレイピアを握りしめエドガーは走る。瞬く間に彼我の距離が縮まり、黒と白が交錯する。
「さっきのお返しさ!」
傷ついた腕を砕く勢いで、ダークポイントを斬り捨てる。
悲鳴は無い。ただ肉を断つ確かな感触が何よりの手応えだった。エドガーの一撃がその身に傷を負わせたのだ。
体を苛む痛みと高揚感に酔いしれながら、エドガーは左腕に宿る愛しのReadyへと恭しく口付けた。
成功
🔵🔵🔴
四王天・燦
◎
「アタシの米国債が暴落…鬱だ死のう」
切腹。
刺さる痛みと狂気耐性で自害を食い止める
巧遅より拙速を尊び、医術の符を貼るだけの応急処置。
激痛耐性で耐え、銃口と射線が通る=視界内と考え索敵。
流血しながら真威解放・神鳴で飛翔追撃
(失血で倒れるまで…だいたい〇分!)
捉えたら滅茶苦茶な軌道で飛び銃口で狙わせない。
強化神鳴で建造物を削る…目潰しと見せかけ狙いは居場所を伝える騒音
追い付いたら眼前で突如低空飛行に切り替え部位破壊:足。
オーラ防御で防ぎ、職人気質な強敵に奇妙な敬意さえ感じ…笑いながら斬り刻む
失血で動けなくなったら急所を守り仲間待ち。
ここぞで魂が肉体の限界を凌駕できれば…アークウィンド投擲を見舞うぜ
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戦場に降り立った四王天・燦(月夜の翼・f04448)が向けられた銃口を見たのが数秒前。
「アタシの米国債が暴落……鬱だ死のう」
躊躇いなく腹に刃を突き立て、痛みにうめき声を上げたのが、今。
「(ハハッ、大暴落よりも怖いものが目の前に居るっていうのに)」
なあ。ここで死ぬとは、四王天・燦(アタシ)はいささか情けなさ過ぎやしないか。
腹を突いた刃で服を切り裂くと、傷口を顕わにさせた。傷口自体は綺麗に避けていたのだが、流血が激しい。
「(失血で倒れるまで……だいたい九分!)」
そしてその時間は、何もしなければと云う前提あっての数字だった。
時間が惜しい、今は巧遅より拙速を尊ぶ状況だ。素早く医術の符を傷口に貼るだけの応急処置を施すと、残る痛みは只管耐えるのみ。
銃口と車線が通った。なら、燦はいまダークポイントの視界内に存在する。
「御狐・燦が願い奉る。今ここに雷神の力を顕さん。神鳴――真威解放!」
破けた服は戦巫女の装束へ、紫電を帯びた天女の羽衣によって燦は宙へとふわり舞い上がる。
滑るように空へ昇った所で、数発の銃撃が燦目がけて飛来する。
「見いつけた」
摩天楼の影に立ち燦へと銃口を向ける黒い人影。燦は敵目がけて、稲妻のように変則的な起動で飛ぶ。時速三〇〇キロメートルで摩天楼をひた進む燦の傷口から流れ落ちた血は、滴になるより早く空中に四散した。
もうその銃口の先に燦を捉える事は無い。
ダークポイントの立つビルディングに到達すると強化した【神鳴】でコンクリートを砕く。轟音と共に砂塵が舞い上がり、四発の弾丸が突き抜けていった。
「そこかあっ!」
音の発生源こそが、敵の居場所。燦の狙いは始めからこの瞬間にあった。
「攻撃:至近=軌道を修正、弾幕展開」
急降下からの超低空飛行で接近する燦を無数の牽制弾が襲う。最早避けもせず、紫電のオーラで防ぎながら懐へと飛び込む。
「ああ、その職人気質は嫌いじゃない。奇妙な敬意さえ感じるぜ」
そんな相手と戦えるのなら満足この上ない、極上の時間だ。
「まずはその逃げ足の速い足を貰うぜ!」
すかさず回避するダークポイントを追い【神鳴】の刃が迫る。幾重にも放たれた閃きを認識する頃には、ダークポイントの片足は無残に切り刻まれていた。
「へ、へへ……。見たか、アタシの力」
血を流しすぎた燦の意識が、緩やかに薄らいでいく。あれ程軽かった体も今は鉛になってしまったかのように重い。
「アタシがやれるのは、ここまでだ。後は頼むぜ、皆」
後事を仲間へと託し、燦は近づく足音に耳を澄ませた。
成功
🔵🔵🔴
ニコ・ベルクシュタイン
自殺衝動、か
敵は果たして俺が「死ぬ」という事をどのように捉えているか次第だな
見た目に騙されてくれれば良し、此の「本体」の事を見抜かれたならば
…良し、念の為プチプチという緩衝材で懐中時計を念入りに包み
少々嵩張るが懐に仕込もう
発作的に本体を地面に叩き付けようとも、此れならば安全だ
何、肉体への損傷自体は「激痛耐性」で幾らでも耐えてやる
反撃は【時計の針は逆さに回る】を発動
箒による高速飛行から強化した杖を振りかぶり強襲
銃撃で狙われるならば箒から飛び降りて
「スライディング」で足元に潜り込み
勢いに任せて脛の辺りを「部位破壊」で強打しようか
悪く思うな、俺は良くも悪くも「器物」でな
自殺とはおよそ遠い存在なのだよ
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「自殺衝動、か」
それは人が自らの命を絶つ衝動的な感情の奔流だという。
「敵は果たして俺が「死ぬ」という事をどのように捉えているか次第だな」
今は人の形を取っているニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)だが、ヤドリガミである彼の本来の姿は身につけた懐中時計そのものだ。
人の見た目に騙されてくれれば良し、此の「本体」の事を見抜かれたならば、その時は。
「……良し、念の為プチプチという緩衝材で念入りに包み。ふむ、少々かさばるが問題ないだろう」
無意識に選んだのだろうが、プチプチの色はピンク色を選んでいた。緩衝材として、お宅に届けられる際にはとても有効である。隙間無く、かつ適量に緩衝材を詰めることが鉄則だ。
はたして、戦闘でどこまで有効なのだろうか。
ニコは自身の妙案に満足し、銃弾の降り注ぐ摩天楼の中を進んでいった。
街中での索敵の途中幾度か銃弾とユーベルコードによる自殺衝動に襲われた。しかし銃弾数発くらいならば耐えられるし、衝動に任せて本体をビルの壁に叩きつけたが問題は無かった。
そう言った意味では、緩衝材は大変有効な手段だったといえよう。
「後でプチプチに感謝せねばなるまい。さて、先ほどからの攻撃から推察するに、潜伏場所はあの辺りか」
目星を付けた場所へと飛行して近づけば、影よりも尚暗い闇が走り去るのが見えた。
「逃がさん! 百年の時を経て今此処に甦れ、我が力の根源よ!」
逆巻く時計の針が時を巻き戻すかのように、普段身に纏う黒から、赤い魔法使いの姿へと移り変わる。手にした箒に跨がると高速で飛行し、ダークポイントとの距離を一気に詰める。
接近に気づかないはずも無く、寸分違わぬ正確さで急所を狙うダークポイント。
「残念ながら、そこは俺の急所では無い」
箒から飛び降り、足下に滑り込んだニコは強化した【Bloom Star】で脛を力任せに強打した。元より傷を負った部位目がけた攻撃に、骨が折れる鈍い音が響き渡った。
「悪く思うな、俺は良くも悪くも「器物」でな。自殺とはおよそ遠い存在なのだよ」
そう言ってダークポイントを見下ろすニコの手には、ピンク色のプチプチに包まれた懐中時計が握られていた。
成功
🔵🔵🔴
セシリア・サヴェージ
【ダーク・アポトーシス】による自殺衝動及び自傷行為は【狂気耐性】【呪詛耐性】である程度抑制できるはず。傷自体も【激痛耐性】で痛みを無視して行動します。
その上でUC【血の代償】を発動すれば、負傷の度合いに応じて戦闘力が上昇することでしょう。
自殺衝動も負の感情の一種とすれば、これもまた戦闘力増強につながる筈です。
対策とは少し違うかもしれませんが状況を利用させてもらいましょう。
ビル群を縦横無尽に駆ける敵など普段の私なら追いつけそうもありませんが、強化状態になった今ならばあるいは……。
【空中戦】【追跡】を駆使して追い詰め、暗黒剣を叩き込んでみせましょう。
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薄暗い闇の底へと押しとどめていた感情が、堰を切るように表層へと溢れ出す。
どろりとした感情にセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は静かに、吟味するように神経の手を這わす。
気がつけば慰めに浅く肌を裂いていたようだ。そんな衝動があったのかと、興味深く観察し――それはまた後にすることにした。
セシリアが今立っているのは戦場だ、いつ如何なる状況で銃弾が飛んでくるかも分からない死地に居る。
「これほどであれば、別段と気にすることもありませんね」
騎士にとって多少の傷はよくある事から、日常茶飯事の範囲だろう。悠々とメインストリートを歩く彼女の足下で、弾丸がアスファルトを抉りとった。
衝動も、苦痛も。この衝動すらも、セシリアの糧となるのだから。
銃口が向けられる度、銃弾が肌を傷つける度、セシリアを包む暗黒のオーラはその濃度を増していく。
「護るためならば、この程度の痛み……!」
敵を屠るための糧として、食らってしまいましょう。
暗黒を操る騎士は力強くアスファルトを蹴ると、今までとは桁違いのスピードで街を駆け抜ける。壁を蹴り、せり出した窓枠を蹴り、この身を傷つけた存在へと近づいていく。
「見つけましたよ」
向けられた銃口を避けもせず、衝動すら飲み込んで全身を巡る力の代償へと変質させていく。
「貴方へ我が剣を向ける理由はただひとつ」
並ならぬ膂力で飛び上がると、勢いの儘暗黒剣ダークスレイヤーを振り抜く。
「人々を傷つける、ただそれだけで十分だ」
ダークポイントの脇を抜け、すり抜け様に刀身が銃もろとも吹き飛ばす。それはセシリアの力と意思が、ダークポイントを上回った証左でもあった。
成功
🔵🔵🔴
霧島・クロト
蓋を空けたら滅茶苦茶不気味なヤツじゃねぇか……
こいつが幹部連中の一番手ってのもぞっとしねぇが……
先制からいきなり弾幕大乱射の可能性まである、と。
【残像】【フェイント】……
避けれなかったら【オーラ防御】で少しでも削りはする、が。
――死ぬ気で、振り切るしか、ねぇ!!
避けてる最中から【高速詠唱】で【指定UC】。
速度と反応を上げて、食らいつくしかねぇし、
【属性攻撃】【マヒ攻撃】【呪殺弾】【鎧無視攻撃】の
氷の魔弾を【フェイント】掛けながら当てて速度を削ってく。
決めれそうなら魔弾を【全力魔法】で【2回攻撃】。
「世界が掛かってんだ、狙撃手ひとりに止まってやる余裕はねーよ!!」
※アドリブ連携可
西条・霧華
「私達は一人きりで戦っているわけではありませんから…。」
この一戦は世界を護る為のもの…
守護者の【覚悟】を以て立ち向かいます
先制攻撃対策として、『無名・後の先』で誘った敵の視線を【見切り】、【残像】を纏って回避
避け切れなくとも【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止めます
そのまま私に視線をくぎ付けにする事で、他の仲間の行動をサポートします
その上で、自分への視線を感じない間は纏う【残像】で敵を乱しつつ【ダッシュ】で【追跡】
私から視線を完全に外せない様に仕向けます
攻撃可能な距離まで詰められれば【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて【カウンター】
…まるで命懸けの「だるまさんが転んだ」ですね
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摩天楼、マンハッタン。不可視の領域で猟兵たちを待ち構えるのは「ジェネシス・エイト」が一人、ダークポイント。
黒に覆われた人型のシルエット、顔らしき部分には鮮やかな緑が幾何学模様を描いている。
ヒーローとヴィラン、分け隔て無く殺す狙撃手の真意を知るものは誰も居ない――。
「蓋を空けたら滅茶苦茶不気味なヤツじゃねぇか……。こいつが幹部連中の一番手ってのもぞっとしねぇが……」
銃声を聞きつけた霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)は音の発生源である屋上へと駆け上がる。
その先で待ち構えていたダークポイントの周囲に浮遊していたのは無数のリボルバー。
「発見:攻撃=全弾発射」
無機質な声と共に一斉にリボルバーから弾丸が放たれる。クロトはフェイントと残像を織り交ぜ狙いを背けるが、圧倒的な数を捌ききることは出来ない。
【氷戒の帳】から展開した力場で幾らか勢いを削ぐが、それでもまともに捌いていては攻撃することが出来ない。
「北天に座す、貪狼の疾さで――死ぬ気で、振り切るしか、ねぇ!!」
氷の波動を身に纏い高速戦闘に適した魔術強化へと受け、爆発的にスピードと反応速度を上昇させる。この力で攻撃を回避し、氷の魔弾を弾丸自体に当て勢いを相殺させていく。【極天の導:貪狼】が瞬く間に演算を終え、予想される起動を光るラインで描く。
その数は、クロトの視界を覆い尽くす程に膨大だった。万事休すか。クロトはそれでも戦い続けるために魔弾を放とうとした。その時。
「私達は一人きりで戦っているわけではありませんから……」
凜とした声の主がひらりとクロトとダークポイントの間に降り立った。西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)は向けられた視線を見切り、纏った残像で炎をあらかた受け止めた。避けきれなかった残滓を自らの蒼い炎で防ぐと【籠釣瓶妙法村正】の柄に手をかけて体勢をおとす。
言葉も無い一瞬の交錯で、二人は互いの意思を読み取った。
霧華はダークポイントへ一定の距離を詰めると、敵の注意を一身に引きつけた。比類無き力を持った相手の攻撃を封じなければ、こちらも満足に動けない。
ならば、時間を作れば良いのだ。
隙を見て攻撃を交えながら、ダークポイントと併走する霧華。切り結び離れては、漆黒に燃え上がる炎を視線ごと見切る。
「……まるで命懸けの『だるまさんが転んだ』ですね」
視線が外れればクロトの射線へと割って入り、再び奪う。その間にクロトが纏う凍てつく魔力が密度を増していく。
「敵数:二体=剣士と射手」
捕捉:剣士=攻撃対象と認識」
「私のお相手をご希望ですか」
ならば、と霧華は愛刀を鞘へと収める。
「来るなら来なさい。私はもう、逃げも隠れもしない」
泰然自若の構えで、呼吸を整え瞳を閉じる。無音無明の世界で霧華が見るのは、ただひとつ。
漆黒の炎が霧華の体を包み込む瞬間、クロトへと標的を変え走るダークポイントの体に神速の一刀を叩き込む。胴を裂いた【籠釣瓶妙法村正】の刀身が、視線を向ける前に頭部へと迫る。それを無理矢理体勢を捻り跳躍することで回避するダークポイント。
僅かなタイミングでリボルバーの引き金を引いたダークポイントの弾丸が飛ぶ。
「世界が掛かってんだ、狙撃手ひとりに止まってやる余裕はねーよ!!」
貪狼の咆哮と共に、被弾したデバイスが砕け散る。クリアーな視界の先に捉えたのは、不気味なる射撃手の体。
クロトの周囲を六花が咲き誇る。それらを集め、収束させた連星を狙撃手の頭上へと堕とす。
「お前が、止まりやがれ!!」
凍てつく魔弾が黒い体を押しつぶした。
「被弾:己=敵の攻撃。
損傷:行動に障害、発生=戦闘行動、に問、題無sし」
ノイズが走る声、傾いだ体い鈍る動き。それらは二人の攻撃が確かな傷を負わせたことを物語っていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鳴宮・匡
◆ニル(f01811)と
……最近はダークヒーローも流行ってるだろ
大体、それ言ったら俺だって悪の大量殺人犯みたいなもんだ
こっちもオーケーだ、ナビは任せろ
頼りにしてるからな
竜化したニルの背に乗っていくよ
振り落とされないよう体を伏せておき
目視でダークポイントの位置を特定
こっちに視線を向けてるなら、こっちからも見えてるだろ
周囲地形・彼我の距離と高度差を把握し
最適なルートを逐次ニルに伝えながら
相手の機動力を削ぐように足を狙った狙撃を
こちらへ向いた視線を逸らすために顔を狙うのもありか
相手へ追いつけるような状況になったら合図
ニルのつけた爪傷に重ねるように全弾を叩き込む
【終幕の雨】、ひとつ残らず食らっていけよ
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
匡/f01612と
見た目からすると、私は正義のヒーローに倒される竜って感じだけど
世界を守るためにも頑張るか
いつでも行けるぜ、匡
舌噛むなよ!
幻想展開、【怒りに燃えて蹲る者】
大きさは匡を背に乗せて飛べる程度
「ヒーローズアースを守る意志」を薪にして、全速力で飛び抜ける
多少の攻撃は覚悟で耐えきる
だが匡もいることだ、ダークポイントの視線が長い間こっちに向くのは避けたい
第六感と匡の知覚に頼って障害物を避けながら、視線を遮れるビルの合間をなるべくスピードを落とさず飛び回る
匡の知覚なら飛行中でも敵を見つけられるはず
合図を受けたらそちらに向かって全速飛行
懐に飛び込んで、この爪で思い切りなぎ払ってやろう
●
悪人の面構えとは、その性根を写したものか、はたまた本性を偽るために被る仮面のことを指すのだろうか。
かの狙撃手は面構えと云うよりも、凝縮したエゴだった。染まらぬ闇が普遍の自己を体現して歩いている。
「見た目からすると、私は正義のヒーローに倒される竜って感じだけど」
「……最近はダークヒーローも流行ってるだろ。大体、それ言ったら俺だって悪の大量殺人犯みたいなもんだ」
戦の前とは思えぬ気楽さで鳴宮・匡(凪の海・f01612)とニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)は並び立つ友との会話を楽しんでいた。
楽しむための時間があるこの世界を愛おしむように、ニルズヘッグの双眸が僅かに眇められた。
ああ、愛し楽しき世界。破壊するというのなら、この手で守ってみせようか。
「世界を守るためにも頑張るか」
守護の意思を薪にして、怒りは燃え上がる。膨れ上がった炎は竜の姿となり、ニルズヘッグの体を覆い尽くす。
「いつでも行けるぜ、匡」
「こっちもオーケーだ、ナビは任せろ」
匡を背に乗せ、ニルズヘッグは力強く両翼を羽ばたかせた。
「舌噛むなよ!」
「頼りにしてるからな」
全速力で摩天楼の合間を飛翔する竜に跨がり、振り落とされないように体を伏せた匡は潜む敵を目視で探る。
刹那、じりっと肌が焼け付くような感覚が左腕に走る。背を叩いて合図を送ると竜は紡錘状の軌跡を描き急上昇し、速度を緩め急旋回する。間一髪、背後で漆黒の炎が音を立てて燃え上がる。
「無事か?」
「この程度じゃかすり傷にもならないよ。気にするな」
「友を背に乗せておきながら、傷を負わせるとは私のプライド――いや、ただ単純にそれは嫌だと思うからな」
軌道上に次々と燃え上がる炎を見て、匡は先ほど視線を感じた方向を見た。ビルの高さ、角度。そして己の知覚を頼りに目を凝らす。
「居た」
背の高いビルの合間、影になった低い建物の屋上に彼は立っていた。
すかさず周囲の地形、距離、高低差を把握し、導き出した最適なルートを指示通り竜はスピードを落とさず飛行する。
縦横無尽に駆ける移動力を殺すため、足を狙って狙撃する。が、弾道を呼んだダークポイントも最小の動きで回避する。
「足をかばっている?」
不自然な動きにスコープを覗き込めば、彼の片足は幾重にも切り刻まれた後だった。
「匡、これなら追いつけるぞ」
彼我の距離は縮まり続けている、匡は距離と速度を計算し、接敵までのカウントダウンを開始する。
――五、四、三、二、一……。
零。
飛び降りる間際、匡がダークポイントの頭部を狙い撃つ。命中し視線が途切れた僅かな隙を突いて懐に飛び込んだニルズヘッグは、獰猛な爪を振りかざし思い切り薙ぎ払う。
「敵:排除=排除、排除」
壊れたように同じ言葉を繰り返す狙撃手。その視線が深手を負わせたニルズヘッグを見ると、巨躯を飲み込むように激しく燃え上がる。
「――――匡ッ!」
竜の咆哮が周囲のビルの硝子を砕き、雨のように降り注ぐ。更に炎を注ぎ足そうと視線を向けようとした瞬間、ダークポイントの視界は不意に空を仰いだ。
「目立たないとはいえ、ここまで忘れ去られるとはね」
仰向けに倒れたダークポイントの大腿を撃ち抜いた匡は、ニルズヘッグがえぐり取った胸腹部へと銃口を向ける。握る腕が炎に焼かれようと、銃口が震えることは無い。
顔の無い男へが発する炎ごと、凪いだ海は熱さすら感じることなく食らっていくように。ただ静かに、命もろとも底へと引きずり込む。
「じゃ、そろそろ終わりにしようぜ。――【終幕の雨】、ひとつ残らず食らっていけよ」
迷い無く引き金を絞り、装填した全弾をうち尽くす。
「把握:己=全損。かつ、ど、う、ふかの、う……」
その命の火が消えるように、頭部の文様の光が徐々に弱まっていく。
「命令:すいこう=不可、の、う」
そして、体全てが黒い闇へと変わった後。ダークポイントの体は、塵となって風に流れて消えていった。
大成功
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