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アースクライシス2019⑨~ナイトメア・ハイウェイ

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「UFO発進、まだまだいけますよー! 宇宙までの道はこちらですー!」

 シーカー・ワンダーはトラメガを片手に、パタパタと手を振った。

 エリア51でのミッションの結果、ラグランジュポイントまでの道が拓かれた。
 奪取した一人用UFOに乗り、米軍が「ビームハイウェイ」という光線照射で作った道を登っていけば、プルトン人たちの長『スーパープルトン』の居城まで辿り着くことができる。
 しかし、その行く手は巨大化オブリビオンした遮っている。決戦の前に、道を塞ぐ巨大化オブリビオンを倒さねばならないというわけだ。

「こっちの道には、ジェスターのクローンが陣取ってます。本来本人ほどの力はないですが、巨大化によって物凄いパワーとスタミナが跳ね上がっているようなんです」

 ジェスターのクローンは体高20m近くに巨大化しており、空中を浮遊している。単純な質量による攻撃力はもちろん、持ち前のユーベルコードもより効果的かつ強力なものになっているようだ。巨大化により増加した血液を惜しみなく代償にした、宙を駆けるクリムゾンハウンドや広範囲に広がる影から呼び出した『完全なる夜』など、クローンとは言え侮れない攻撃力を持つ。油断すれば撃墜されるのは必至の、手ごわい相手だ。

 しかし、弱点として巨大化したために小回りが効かず、『華麗な空中戦』を決めれば有利に戦う事が出来るだろう。
 また、飛翔系の能力を持っている場合は、UFOを使わず自力で飛行しても構わない。

「ともかく、ここが登竜門です! 気合い入れていきましょうー!」


鹿崎シーカー
 ドーモ、鹿崎シーカーです。空飛ぶ巨大敵はロマン。

●第一章『ジェスターのクローン』(ボス戦)
 ラグランジュポイントに現れた、謎めいた言動を繰り出す殺戮道化師です。何かを「持ち帰る」事を目的としているようですが、真意は分かりません。
 今回のシナリオにおいては体長が20mにまで巨大化しており、合わせてユーベルコードもパワーアップされています。ただし、小回りが利かないので華麗な空中戦を決めると有利に戦えます。

 アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。

(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
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第1章 ボス戦 『ジェスターのクローン』

POW   :    クリムゾンハウンド
自身の【流した血液】を代償に、【血の猟犬の群れ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【生命力を奪い取る牙や爪】で戦う。
SPD   :    ジェスターズバルーン
自身の肉体を【ゴム毬のような跳躍力を持つ状態】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    デモニックエクリプス
【己の影】から、【あらゆるものを飲み込む影】の術を操る悪魔「【完全なる夜(デモン)】」を召喚する。ただし命令に従わせるには、強さに応じた交渉が必要。

イラスト:シャル

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マリス・ステラ
「主よ、憐れみたまえ」

UFOのコクピットでインスタント焼きそば(名前は察して下さい)を平らげると『祈り』を捧げた

星辰の片目に光が灯り、機体が光を纏う
コクピット内はソースの匂いが危険

【風の通り道】を使用

「レディ、失礼ながら匂う」
「かやくー!」
「私は屋台シリーズのほうが好みですわ」

妖精達が好き勝手に言いながら、"星の大戦"のテーマ曲を奏で始める

ビームで『援護射撃』それは流星の如く

現れた猟犬全てにミサイルを『一斉発射』

「灰は灰に、塵は塵に」

チャンスに妖精達が、

「ヘーイ、要塞砲発射用意!」
「充填率120%!」
「エヴァブラック発射ですわ!」

星の『属性攻撃』の巨大な光弾を放つ

「フォースと共にあらんことを」


土斬・戎兵衛
『拙者・おたく・彼/彼女・名前+くん/ちゃん/さん』

「持ち帰る」ってーなら目的は俺ちゃんも同じよ
俺ちゃんが欲しいのは現地産の金目の物だけどね

サーフィン乗りでUFOの上に
櫂をもって剣とした宮本武蔵の反転、二本の刀を櫂の代わりに宙天に漕ぎ出そうか
綱渡りの棒のように両手で持った刀で重心を守りながら、UFOでぐいぐいと空中を駆け抜ける
駆け抜けざまに【早業】で敵を斬り伏せよう

UCも使用
宇宙じゃ時刻も分からぬけれど、闇色黒色あれば良し
そしてここには『完全なる夜』がある
デモンに寄り添うように飛び、敵影に交じり、影ごと斬り裂こう
悪魔の恐怖がなんのもの【狂気耐性】
人を最も殺してきたのは獣でも魔でもなく人でござる


ミハエラ・ジェシンスカ
私に良い考えがある
UFOの総数には余裕があるんだろう?
ならばその物量を有効活用させて貰うとしよう

【変形進化】を使用
UFOから変形進化させたヒヨッ子ウォーマシンどもに編隊を組ませ、空中戦を展開する
コールサインは「スポーン」で良いだろう
無論私自身も【念動力】で飛行しつつ参戦

スポーン隊にはツーマンセルの連携を維持させつつ
ウォーマシンとしての各機の自意識に任せて戦闘を行わせる
フォースレーダーによる【情報収集】で戦況を把握して共有
敵の動きを【見切り】攻撃や影に呑まれないよう
スポーン隊が【2回攻撃】を繰り返し
私自身もドローンでそれを支援
そうして敵の注意を逸らしたところへ私が【捨て身の一撃】を叩き込んでやる


鈴木・志乃
これ以上戦争長引かせてたまるかってんだ
ただでさえ有力敵が残りまくってんだぞ
……行きますか

☆飛行
UC発動【オーラ防御】展開
【全力魔法】や【破壊工作】爆弾の【衝撃波】で加速と咄嗟の回避をこなすよ
小回りきかすのには【念動力】を併用
【第六感】で敵の攻撃を【見切り】すんでで回避しまくります
いざって時は光の鎖で【早業武器受け】

☆攻撃
飛び回りながらあちこち【鎧砕き】出来る魔改造ピコハンでぶっ叩くわけですが、血が流されるとジリ貧っぽいのでここは毒を使います
【高速詠唱】で針を召喚、鈴蘭を活けた水(猛毒)を塗って【念動力】でぶっ刺して回ります
図体でかいから効くのに時間かかると思いますが、そこは回数でカバー


ギージスレーヴ・メーベルナッハ
アドリブ連携歓迎
一人称:余
二人称:貴殿(味方)貴様(敵)
三人称:彼奴
呼び方:名前呼び捨て

これ程の大物、殲滅のし甲斐があるというものよ!

ヤークト・ドラッヘに【騎乗】し【空中浮遊】【空中戦】にて飛行。
以てこの戦における機動力とする。

ヤークト・ドラッヘの火器(【誘導弾】【制圧射撃】)を敵の顔辺り目掛け放ち、以て視界を阻害。
その隙に至近距離まで接近、敵の死角を取るよう機動。

接近後は機甲武装・殲滅火砲を発動、攻撃回数重視でガトリング砲を召喚し集中射撃。
流血が猟犬と変ずるならば、それも巻き込む形で攻撃。
思わぬ方向よりの反撃を回避する為、攻撃は可能な限り同一箇所へ集中。


ツムギ・オーギュスト
(アドリブ・連携歓迎)
『一人称:あたしorツムギちゃん・二人称、三人称:下の名前にちゃん付け』

でーっ…かい!けど空中戦はスカイダンサーの華!
ツムギちゃんの見せ場、キメてやりまっしょい!

UFOの上に乗ったらターゲットになるように上に下に左へ右へ…ちょこまか動く動く!
体をぐーんと伸ばしたり戻したりしてきたら<見切り>からの【スカイステッパー】!ジャンプして回避だ!そう簡単に捕まらないよ!

UFOの足場があるならジャンプ回数リセットしつつ飛べるからね!大胆に動いてジェスターちゃんが自分で絡まっちゃうようにしちゃおう!
動けなくなったところを[ル・ソレイユ]でキック!サッカーボールのように飛んでっちゃえ!


ユェン・ウェイ
アドリブ連携歓迎
『ボク・君・あの人、あの子・名前呼び捨て』

元々不気味な敵だけど、あのサイズになると夢にも出そうだよ……
しっかり退治していこう

途中まではUFOに乗って、敵が近づいてきたらUCで跳んでいくよ
空中では出来るだけ止まらずに飛び回れるように
仲間のUFOを足場として使わせてもらえるならそうするね

相手が変身したらまずは体当たりみたいな攻撃に気を付けよう
UCや【ジャンプ】で対応して、【野生の勘】も働かせつつ頑張るね
攻撃を避け続けたり、相手を惑わすように動いていけばきっと攻撃のチャンスも来るはず
そしたらドラゴンランスで【串刺し】にしちゃおう!
弾力性があっても突き刺しなら効くんじゃないかな?


火土金水・明
魔法の箒に跨って【空中戦】の技能を使用します。
「クローンとはいえ、こちらも本気を出して戦わないと危ないですね。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【先制攻撃】で【高速詠唱】し【破魔】を付けた【属性攻撃】の【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『ジェスターのクローン』が何処に移動しても巻き込めるようにして【2回攻撃】をします。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「さあ、オブリビオンは『骸の海』へ帰りなさい。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



 半ば沈んだ夕焼けが、空の橙色を吸い寄せていく。
 水平線から橙、青、紺、黒へと移るコントラスト。地上から、星がぽつぽつ輝き始める夜の帳を突き刺す、横に大きく広がった閃光のハイウェイ。虚空を斜めに突っ切る強いライトが、山羊の頭蓋骨じみた巨大な頭部を照らし出す!
 首回りや前腕部を銀の装甲で覆い、赤と白のストライプピエロ装束を着込んだ巨躯の異形―――オブリビオン・ジェスターのクローンは、眼窩から真紅の炎じみた光をほとばしらせて大口を開いた。
「オロロロロロロロロロロ!」
 ジェスターが右手に備えたロッドを真横に振り回す! 隕石じみたヘッドが万里の長城の如き赤い光の壁を張った。余波たる暴風に吹かれ、動きを乱して進軍を止めるフライングディスクUFO大編隊! 編隊中央、ダークレッドのオーラをまとったミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)は、左腕で顔を庇いつつ声を張る!
「スポーア1から10まで後退! スポーア11から30、上から回り込め!」
 フライングディスクたちがスリット状の目を明滅させつつ、ミハエラと一緒に引き下がった。次の瞬間、彼女たちの遥か上空を複数の流星じみた光が突き抜け、ジェスターの頭上へと迫る。
 20台のフライングディスク型UFO『スポーン』に加えて空飛ぶ箒、天翔けるエアロバイクが一台、スポーンとは別のアダムスキー型UFOが一台! スポーンの一台に片膝立ちしたユェン・ウェイ(M.Y.W・f00349)は、ミハエラと後退しつつ銃撃するスポーンたちと、ビームを鬱陶しげに払いのけるジェスターを見下ろして身震いした。
「うへえ。元々不気味な敵だけど、あのサイズになると夢にも出そうだよ……」
 風に乗った呟きに、同じくスポーンに乗った鈴木・志乃(ブラック・f12101)が厳しい顔で視線を落とした。他方、武器庫めいた大型バイクを駆るギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)は呵々と笑う。
「ふはっ、怖気づいたか? ユェン! これ程の大物、むしろ殲滅のし甲斐があるというものよ!」
「これ以上戦争を長引かせてたまるかってんだ。ただでさえ有力敵が残りまくってんだぞ……」
 まなじりを鋭くする志乃。身構える仲間たちをアダムスキー型UFOの丸窓から覗き、紳士服のリスが王子姿のオウム、淑女のドレスを着こなしたモモンガに視線をくれた。
「さて、いよいよ本格的な交戦と言った雰囲気だな。二人とも、楽器を取りたまえ。……ところで」
 リスが背後を振り返り、オウムとモモンガもつられてそちらの方を見やる。円形のUFO内装は質素で、夜空を模した天井から星型の飾りが吊るされている以外は丸テーブルと椅子がひとつ置かれているのみ。そのテーブルにつき、カップ焼きそばをすするマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)に、リスの紳士は苦言を呈する。
「レディ、失礼ながら匂う。既にフロントラインだというのに、いつまでディナーを続ける気かな?」
 鍔広のハットを目深に伏せた言葉を、マリスはスルー。オウムがバサバサと羽ばたき、モモンガは空気の匂いを嗅いだ。
「かやくー!」
「あら、そちらを食べておられるのね。私は屋台シリーズのほうが好みですわ」
「二人とも、今は真面目な話の最中なのだが」
 呑気な二匹の発言に、リスがげんなりと肩を落とす。一方のマリスはカラになった四角いカップをテーブルに置くと、隣の箱型機械のスイッチを押した。
 ZANKZANKZANK……鳴り出す砂嵐めいたノイズに構わず、呼びかける。
「始めますか? いつでもどうぞ」
 空の下方、ジェスターはロッドを右から左へフルスイング! BLOWWWWWWWW! ミハエラ率いるスポーンUFO部隊が後退がてら乱射してくるビームを風圧だけで薙ぎ払い、溜め息混じりに愚痴をこぼした。
「オロロロロロ……なぁぁぁんでワタクシがこのテのシゴトをさせられるんデスカねぇぇぇぇ……。こういうザツヨウは、下っ端共にやらせればイイものを」
 ジェスターの顎が跳ね上がり、夜空を仰ぐ。いくつも瞬く光はすべて、ジェスターの頭上を取った猟兵たちとUFOを元に作った即席ウォーマシン『スポーン』の群れ! 両の眼窩に炎じみたオーラを明滅させつつ、ジェスターは幅跳びめいて虚空で屈んだ。
「言うにコトカいて、ワタクシの役目がハエ叩きとは!」
 ジェスターの足裏が赤光を放ち、BOOOOOOOM! スペースシャトルじみて垂直飛翔し、ロッドを下段に振りかぶる。星々の如き光にしか見えなかった猟兵編隊のディティールが加速度的に拡大されていく!
 迫りくる巨大な悪魔ピエロを真下に、スポーンにサーファー乗りした土斬・戎兵衛("刃筋"の十・f12308)と箒にまたがった火土金水・明(人間のウィザード・f01561)が眼光を鋭くして言った。
「おーっと、バレちゃったかぁ。なら、仕方ない。やりましょうかね」
「クローンとはいえ、こちらも本気を出して戦わないと危ないですね。……参ります」
 次の瞬間、編隊を組んでいたUFOと猟兵たちが機首をジェスターに向け、流星群じみた急降下を開始! ジェスターがロッドの先にクリムゾンレッドのオーラを燃やすと同時、上空に残った明は七色に輝く杖を掲げた。杖の先端から青白い光の波紋が空を走る!
「我、求めるは、冷たき力」
 明が杖でジェスターを指し示した直後、左右に彼の上体を覆うサイズの魔法陣が二つ出現! 挟まれたジェスターが首を傾げてそちらを見ると共に、明は鋭く杖を打ち振る!
「顕現せよ。コキュートス・ブリザード!」
 魔法陣が発光し、剣山めいて氷の矢を一斉放出! 攻撃態勢を解いたジェスターは体を丸め、両腕を立てて氷矢を防御する。SINKSINKSINKSINK! 甲高い音を上げて凍てつき始める道化の両腕!
「オロロロロロ……ハラダたしい、ウットウしい。イケないハムシはぁー…………っ!」
 ジェスターは空中でコマの如く回転! 明の魔法陣を打ち砕き、さらに上体をねじってロッドを振りかぶるジェスター! 隕石型のヘッドに真紅のオーラが集中・凝集して燃え上がる! そしてそれを―――振り抜く!
「こうデスッ!」
 BLOWWWWWWWWWWW! 空を斜めに突き上げる真紅の暴風がスポーンたちを吹き飛ばす!
 スポーン以外の猟兵たちが速度を落として三々五々に散り、赤の暴風域を脱出する中、スポーンの一台に乗った戎兵衛は両手の剣でバランスを取りつつ駆け抜けていく。その真後ろにはスリップストリームで追随する志乃とスポーア!
「後がつっかえてる。手早く片付けよう。……行きますか」
「心得た。さてさて、魔剣破り承る……手合いは道化でござるがな」
 前傾姿勢を取り、真横に広げた両腕を後ろに下げる戎兵衛! 彼の橙色の瞳は、吹きつける赤い風の奥でロッドを引き絞るジェスターを捉えていた。ジェスターが大口を開け、おどろおどろしい哄笑を放つ!
「オロロロロロロ! まず二匹ィッ!」
 空を切る巨大なロッドが、戎兵衛と志乃を正面から潰しにかかる! 戎兵衛は即座に身を沈め、志乃がスポーンごと聖なる光を身にまとう。二機のUFOは上下に分かれてロッドを回避! 殴打を掻い潜った戎兵衛のスポーンは錐揉み回転しながらロッドを握る左腕へ肉迫!
「シャッ!」
 戎兵衛は一回転し、二刀をそろえてジェスターの手首を斬り裂いた! 疾駆するスポーンに連れられ刃が走る。二条の剣閃は肘の裏側にまで達し―――斬り抜いた! SLAAASH!
「ヌゥーッ!?」
 噴出する鮮血! 戎兵衛を乗せたスポーンは高度を上げてジェスターの肩口から背後へ突破。ジェスターがそれを目で追う寸前、戎兵衛に続いて飛翔した志乃が大量の針を片手に扇めいて広げた。水に濡れた大量の小針を、ジェスターの傷口に振りかぶる!
「よっ!」
 THROW! 直線に伸びた二本の傷にダニじみて飛び込んでいく針々。ジェスターは戎兵衛を見逃し、着られた腕を引っ込めた。
「カトンボが! ズに乗り過ぎデスよッ!」
 逆の手で爪を振るうジェスター! 志乃は両手を下方にかざし、光のショックウェーブを放って急上昇回避! その彼女の後方にて噴き上がる真紅の光柱根元で、ミハエラは四つ束ねたビームソードを振り上げる!
「本来は戦艦を相手取るための手だが……貴様の巨体を裂くには適任だろう! 対艦魔剣!」
 雷鳴じみた震動音を発する巨大ビームソードが、ジェスターの脳天めがけて振り下ろされた! ジェスターは左手のロッドを右手に放り、二本筋の傷から血を勢いよく噴出させる。左腕前腕部に血を渦巻かせ、巨大光剣を鉄拳迎撃! SMAAAAAASH! 刃を支えるミハエラの四本腕が激しく軋んだ。
「む……」
「オロロロロ! たかだか戦艦と同程度とは、ナミダが出る評価デスねぇ!」
 真紅の光柱を押し返すジェスター! 直後、彼の頭上から超高速で垂直落下する人影あり! 頭を下にしたツムギ・オーギュスト(dance légèrement・f19463)は、ジェスターを見下ろす。
「でーっ……かい! けど空中戦はスカイダンサーの華! ツムギちゃんの見せ場、見せてやりまっしょい! てぇぇぇぇぇいっ!」
 前方回転したツムギは足を下にして風を切る! その急速接近に気づき、顔をわずかに上げるジェスターの眉間に超高高度からの墜落ストンプを見舞った! THOOOOOOOOOM! 放射状にインパクト拡散!
「ウガッ……!」
「んんんんんん……!」
 呻くジェスターの眉間に、ツムギはさらに蹴り足を押し込む。そして反動を利用して垂直にジャンプ! ジェスターがのけ反り、血を渦巻かせる拳が下がった!
「ミハエラちゃん、やっちゃえ―――っ!」
「感謝する」
 ミハエラのバイザー奥で赤い眼光が瞬いた。無骨な四本の機械腕を駆動させ、後退しかけたジェスターの巨拳を下げていく! だが瞳を明滅させて復帰したジェスターは右手の甲を額に添え、ヒステリックに喚き散らす!
「コバエがッ! ワタクシの顔にッ! オノレエエエエエエ!」
 両目のオーラを激しく湧かせ、ミハエルの剣を殴り返す! そのまま左腕で虚空を引き裂くように薙ぐと、消えずに残った血の軌跡が無数の粒子を形成し、対空ガトリングめいて空に広範囲射撃を繰り出す! 無限じみた血の弾幕は飛翔する最中にねじれて膨らみ、先端を上下に開いて猟犬の姿に変化した。無数の血で出来た猟犬たちは、紅蓮の風域を避けて散った猟兵たちに噛みかかる!
『GRRRRRRR!』
『WONNNNNNNG!』
 飢えたうなり声と遠吠えの重奏! ギージスレーヴはアクセルペダルをキックし、エンジン音を猛らせながらクリムゾンハウンズへ距離を詰めていく。隣には上部をフタめいて開いたUFOと、そこから飛び立ったマリス!
「これはまた、イナゴの如き犬の群れよな! まとめて散らす! マリス、貴殿にも手伝ってもらうぞ!」
「主よ、憐れみたまえ」
 両手を組んだマリスの片目が光り輝く。同時に、UFO内に残された三匹の小動物が各々抱えたバイオリン、トロンボーン、ハープを手繰り始めた。空に響く壮大なオーケストラ! マリスの背後上空に黄金色の光が満ちる!
「灰は灰に、塵は塵に。血と傷には洗礼を」
 神々しい光芒に照らされたマリスが逆光の影となる! 一方、ギージスレーヴは右のバイクハンドルに埋め込まれたボタンのひとつをPUSHした。大型バイクの左右と後部に積載されたコンテナが展開し、大型の機銃とミサイルポッドを迫り出させる! ギージスレーヴの義眼が襲い来る猟犬たちを右から左へ睥睨し、まとめてロックオンカーソルに捉えた。
「兵装展開、オートロックに設定! 一匹残らず消し飛ばしてくれよう! Feuer!」
「主よ。哀れな子らを導きたまえ」
 ギージスレーヴとマリスが言い放った直後、バイクに積まれた重火器が火を噴いた! 一拍遅れ、空から無数の光線と光弾が豪雨の如く撃ち下ろされる。大量の弾幕がクリムゾンハウンドを片っ端から襲撃し、球状の爆炎が空中を横切った!
 BBBBBBBBBBOOOOOOOOM! 目を焼く爆発の光。爆発音が血の猟犬たちの断末魔を押し潰す中、ユェンはスポーンに乗ったまま爆撃を突っ切って急降下していく! 周囲を埋め尽くす爆発の密度が薄まるのを見計らい、UFO上部を踏み潰して跳躍! その時!
「オロロロロロロロ! そのテイドで我が猟犬たちを乗り越えられると? ウヌボレですネェ!」
 ジェスターが鮮血渦巻く左腕を突き上げ、全方位に血の雫を大量に乱射! 空を切って猟犬に変ずるそれらを目の当たりにし、ユェンは頬を強張らせる。ジェスターまでの距離は約50メートル! 猟犬たちは全方位に散っているとは言え数え切れぬ物量!
「厄介だな……。けどっ!」
 前転し何も無い虚空に着地したユェンに、いち早く十匹近い猟犬たちが噛みかかる! ユェンは即座に垂直跳躍! 真横に蹴りをかまして直角に曲がり、さらに大気を蹴って斜め上に飛ぶ。猟犬たちは急カーブを描きながら彼を追跡。周囲の猟犬たちがその列に加わっていく中、ユェンは顔を上げて声を張った。
「まだまだ!」
 両足を縮め、後ろ脚で空を蹴り加速! ジェット機めいて血の猟犬たちを引き離し、真っ直ぐジェスターの喉笛へ肉迫していく。ジェスターは右手のロッドを横薙ぎに振るってユェンを横合いから撃ち落としにかかる! が、そのヘッドに天空から落下したツムギが跳び膝蹴りを叩き込んだ!
「おおーっと、そうは行かないよっ!」
 ツムギはその場でバク宙を決め、再度のキックでロッドのを蹴飛ばす! 軌道を袈裟掛けに強制変更された殴打がユェンの真下を突破した。ユェンはもう一度後ろ脚で宙を蹴ってターボをかける! 打ち振った右袖口から橙色の槍が出現!
「ありがとうツムギ! 決めるっ……!」
「ウヌヌヌヌヌ!」
 ジェスターは呻きながら左手の甲を掲げた。ユェンは両手で槍を構えて高速接近し、ジェスターの裏拳を貫通! そのまま喉笛を穿ちにかかる!
「もらったっ!」
「フンッ!」
 ジェスターは憎々し気に鼻を鳴らし、思い切り背中を逸らせてユェンの槍撃を回避! 表情を歪めたユェンは斜め上に跳躍して離脱。彼女とすれ違った戎兵衛が右手の剣を振り上げた。
「その角度、まさしく重畳。一太刀で斬り落としてくれよう」
 戎兵衛を乗せたスポーンが流星じみて身を反らしたジェスターの喉笛に突撃! 対するジェスターは限界以上に背中を折り曲げ、両足を投石器じみて跳ね上げる! 戎兵衛の頭上から円弧を描いて降り注ぐ爪先!
 スポーンは即座に状況判断し、機体を傾けて離脱。間一髪で蹴り下ろしを避けるも、巨大なキックの余波に煽られて激しく揺らいだ。戎兵衛は両手の剣を横に伸ばし、綱渡りじみてバランスを保持! 一方のジェスターは上下反転した体勢でブレイクダンスめいた高速回転! 彼の体が絞り雑巾の如く捩じれゆく!
「オロロロロロロ! 良いことを考えマシタ。ハムシはハムシらしく、風に吹き飛ばされるというのはいかがデショウ!?」
 ジェスターはゴムじみた弾力を持つ体のねじれを解放! 高速で両足を逆回転させる彼を中心に暴風域が生み出され、猟兵たちやスポーン隊を吹き飛ばす! 箒の先を上げて体勢を制御しながら、明は猛回転するジェスターを見下ろした。
「疑似的な竜巻ですか。しかし、ご存知ないようですね。台風には常に、目があることを」
 トンガリ帽子を押さえていた手を離して杖を掲げる。なおも回り続けるジェスターの真上に開く巨大な魔法陣が雷光を表面に走らせた!
「受けよ、天からの贈り物!」
 明が杖を振り下ろすと同時、魔法陣が巨大な落雷を放った! KRA-TOOOOOOOOM! 眩い電光がサカサマのジェスターに直撃! ゴムじみた弾性を持とうが肉は肉! 感電!
「アババババババババババババーッ!?」
 ジェスターの回転が止まり、雷に打たれた巨体がガクガクと痙攣。刹那、明の横合いから風に乗ったクリムゾンハウンドの群れが疾駆する。大口を開けた先頭の個体が明の喉笛に噛みつき、すり抜けた。霞の如く掻き消える明! 瞠目する猟犬の背中を横目で見下ろし、空中の明が呟く。
「残念、それは残像です。皆さん、今のうちに!」
 FLASH! 明の魔法陣よりさらに高所の天空が光輝く! 雲間から差し込む黄金色の光芒の下、オーケストラを奏でるUFOの上でマリスは緩やかに両腕を開いた。
「獣たちよ、散りなさい」
 星型の瞳が瞬いた瞬間、空から光の雨が降り注いだ! それらはジェスターの起こした竜巻に乗り、宙を駆け回る無数の猟犬たちをまとめて貫き血煙として消し飛ばして行く。大きく円弧を描くようにバイクを走らせるギージスレーヴは前のめりになりながら大笑!
「フハハハハハハハ! 壮大な光景よな! なればこそ、余もこの戦場にふさわしき余興を乗せねば!」
 左ハンドルに設置されたプラスチックカバーを跳ね上げ、守られていたボタンをPUSH! 次の瞬間、ギージスレーヴのバイク後方で空間が巨大な波紋を五つ出現。それぞれの波紋の中心から迫り出したのは、戦艦じみたサイズのガトリングガン!
「兵装転送、接続完了。過剰火力の殲滅兵装、塵芥と化すまで味わうが良い!」
 五束の銃口が波紋ごと真横を向き、なおも感電するジェスターの顔面に狙いを定める! 高速回転するバレルから放たれる巨大弾幕! BRRRRRRRRRRRRRR! 弾丸を受けたジェスターの頭部が爆煙に包まれた。微かに漏れ出す呻き声!
「ヌゥオオオオオオオオオ! まだ、まだッ……!」
 顔面に弾幕を浴びつつも、ジェスターは両手を握り込んで全身を膨張させ稲妻を弾く! そのままうなじを支点に回転、足払いじみた蹴りを繰り出してギージスレーヴを蹴り飛ばした! さらに上下反転からロッド持つ腕を雑巾じみて捩じり上げ、解放しながらロッドを投擲! 狙いは明だ!
「……!」
 表情を険しくした明は回避不可能と判断! 代わりに横倒しにした杖を突き出し、魔法陣をバリアめいて開いた。オーラを渦巻かせた魔法陣に、CRAAAAASH! 正面衝突したロッドが激烈な衝撃を周囲にまき散らす! ガラス細工じみてひび割れる魔法陣!
「くっ……!」
 押し戻されかける両腕を強いて突き出し、拮抗する明。直後、跳躍したジェスターは押し止められるロッドの柄尻に片足をかけて二段ジャンプ! 真上のマリスを狙って片手を下段に引き絞った。
「フカイなものデスネぇ、オロロロロロ……。小さきモノに見下ろされるというのは!」
 ジェスターが急速に肉迫するのを見、UFO内部のオウムが混乱! 楽器を放りだして羽ばたきながらその場で回り始める。
「キターッ!? キターッ!」
「落ち着け。奏で続けるのだ!」
 紳士のリスが一喝しつつ演奏続行! 彼の目に映るのは空を昇ってくるジェスターの周囲を螺旋状に旋回するふたつの影。ユェンとツムギが空中ジャンプを繰り返しながらジェスターに追随していく。
「ツムギ!」
「オッケー、ユェンちゃんっ! ほら、こっちを見ろ―――っ!」
 ツムギがジェスターの横面めがけて跳躍! 片目めがけて特攻してくる彼女を、ジェスターは片手を払って迎え撃つ。無事な方の手の甲がツムギを叩き落とす寸前、彼女の足元にスポーンが割り込んだ! ツムギは扁平なUFOの上部を蹴っ飛ばして再度ジャンプ! 裏拳を受けたスポーンが爆散!
「ユェンちゃん、援護よろしく!」
「ん……!」
 空中抱え込み前転を決めるツムギ。他方、ユェンは足元に来た別のスポーンを蹴ってジェスターのうなじへと跳んだ! 槍を引き絞り、脊椎に突き刺す! 直後、彼女の周囲の皮膚が間欠泉めいて血を吹き、血の猟犬を現出させた。ユェンは全方位からの噛みつきをジャンプで回避!
「マリス! お願いっ!」
 ユェンの声を合図に、マリスは光で出来た弓矢を真下に引いた。狙うはジェスターの眉間!
「輝きを」
 SHOOOOOT! 撃ち出された閃光の矢を、ジェスターは左手指でつまみ潰す。それと同時にその場で回転、伸長した腕が斜め下方へ離脱するユェンと上空のマリスへつかみかかった! ツムギは水平に飛翔し、マリスを狙う腕の半ばにキック! くの字に折れ曲がる伸長腕!
「どっち見てるの? 相手はこのツムギちゃんだよ!」
「ホントウに……ウットウしいデスネぇ!」
 空中で折れ曲がった勢いのまま、巨大な手の平がUターンしてツムギを襲う! 腕の皮膚を蹴って駆け出すツムギの真後ろに、ミハエラのスポーン二機が割り込んだ。スリット状のマシンアイから手の平へ向けてレーザーを照射! しかし止まらぬ! 一方、つかまれかけるユェンの前に志乃が割り込んだ。
「そこまで。客に手を出すのは禁止じゃないかな、ピエロさん!」
 突き出された志乃の右手が光輝き、彼女の目前を何本もの光の鎖が縦横無尽に交叉した。即席のネットがジェスターの手の平をガード! 志乃は即座に左手を閃かせて濡れた針を投げる! 鎖の網目を抜けて手の平に命中、しかしさほどのダメージは無し。ジェスターは鎖ネットを握って引っ張る!
「ヌェェェェェイッ!」
 長く伸びた鎖が振り抜かれ、空中のマリスを投げ網じみて絡めとらんとす! 志乃は右手指を鳴らし、鎖ネットを粒子化させて消滅させた。スポーンを挟んで屈み込む志乃の裏側、ユェンが着けた両足を折り曲げて力を溜めた。
「蹴っ飛ばすよ!」
「任せた」
 SMAAASH! ユェンのドロップキックにより射出されたスポーンは、志乃を乗せてロケットじみて急上昇! 志乃は両手を背後に向け、閃光をまたたく衝撃波を撃ち出して速度を上乗せ。肩から背中を通って脇腹へ走るツムギと、それを追うジェスターの伸長腕を前にしてピコピコハンマーを担ぐようにして構える!
「うなじか……。血がドバドバ出るのは懸念点ではあるけど、まぁ首を落とすのが早いかな」
 鋭い視線でジェスターの首筋に穿たれた傷を睨み、呟く志乃。彼女より高高度ではジェスターが片手で飛び回るUFOとマリスに爪撃を浴びせかけ、脇腹から腹を横切るツムギをもう片方の手で追い回す! 穴の開いた手から飛び散る血が大量の猟犬を生成し、マリスの逃げ場へ回り込む!
「立ち去りなさい」
 マリスが飛行しながら光の矢をマシンガンじみて射出! 撃ち出された数々の光弾が行く手を塞ぐハウンドドッグを片っ端から叩き落とす。だが背後から駆け寄った一匹がマリスの肩に食らいついた!
「っ!」
 体勢を崩しかけるマリス! ジェスターがそこへ爪撃を振り下ろした刹那、マリスに牙を突き立てた猟犬の横腹に飛来したライトセイバーが突き刺さった。光剣は柄尻からダークレッドのオーラを噴出し、猟犬ごとマリスを凶爪の範囲から引きずり出す! 同色のオーラを身にまとって飛ぶミハエラが、二本目のライトセイバーを手放した。自立浮遊する光の剣!
「スポーン隊、援護しろ。セイバードローンは猟犬狩りだ。撃ち漏らすな」
 命令通信を受けたスポーンたちがジェスターの頭を土星の環めいて囲み込み、旋回しながらマシンアイからレーザーを乱射! 全方位から絶えず撃ち出されるレーザーを、ジェスターは首を振って弾きかえす!
「ええいッ! ジャマな!」
 マリスを狙っていた腕を引き戻し、ジェスターは旋回するスポーンたちを振り払う! 直後、ミハエラの投げた三本目、四本目の光剣がチャクラムじみて高速回転しながら飛翔! 大きく空にアーチを描いてジェスターの両目へ切っ先を向けて直行した。炎めいて燃える眼窩に光の刃が突っ込み、爆発を引き起こした!
「グアアアアアアアアア!」
 片腕で両目を押さえてのけ反るジェスター! もう片方の腕は? 腹部を取り囲む形で展開された魔法陣から放たれた氷矢で凍らされ、腹巻まいて固定されている! 腰から跳んだツムギはその光景を後ろにニヤリと笑った! さらにうなじへと接近する志乃! ピコピコハンマーを振り回す!
「はぁッ!」
 SMASH! 殴打命中地点から亀裂が広がり、ジェスターの後頭部まで覆い尽くした! 火山噴火じみて噴き出す鮮血に、下方の明が杖で示す。飛び散る血飛沫の先に魔法陣が開き、大量の氷の矢を撃ち出して赤い氷山にしてのけた。明の瞳が光る!
「クリムゾンハウンドは使わせません。さあ、オブリビオンは『骸の海』へ帰りなさい」
「ヌウウウウウ! 次から次へと、コソクな……!」
 片腕を体に絡ませたまま凍らされ、首根を覆う氷山が頭の動きをも封じ込める。ジェスターは生えそろった牙の隙間から蒸気じみた呼気を噴き出した。
「アソビはオワリにしまショウか!」
 次の瞬間、ジェスターの足裏から霧の如き闇が噴出! 影は巨大なジェスターの足首を伝って這い登り、胸元から上を残して膨れ上がった。ジェスターよりもなお大型化した影の奥からルビーじみた二つ目が開かれる! 胸と頭部の前半分だけを闇から露出した状態で哄笑するジェスター!
「オロロロロロロロロロ! ヨルよ、舞台に幕を下ろすトキ! ワタクシの身とヒキカエに!」
 ジェスターを飲み込んだ夜が不明瞭な咆哮を放ち、全方位を暗黒一色で染め上げていく。虚空を蹴り、距離を取らんとするユェンとツムギが真っ先に飲み込まれ、それぞれ聖なる光とオーラをまとった志乃とミハエラが高速で後退するも空ごと呑まれた! ギージスレーヴが後方にミサイルとガトリングをばら撒きながら走らせつつ、迫りくる影を振り返る。
「話に聞く完全なる夜とやらか! ぬおおおおおおッ!」
 バイクコンテナから撃ち出されるマイクロミサイルや銃弾までもが闇に消え、触手の大群じみてざわめく影がバイクの後部に触れて乗り手ごと包み込んだ。
 全てが黒に塗りつぶされてゆく景色! それらを視界の端に捉えつつ、明は自分を包むように幾重もの魔法陣を張るが諸共に押し寄せる闇に呑まれて見えなくなった。空にも広がった闇は音楽を鳴らすUFOを、さらにはマリスを放つ光ごと食らう。全てが遠のく影の領域、その真ん中でジェスターは哄笑した。
「オロロロロロロロロ! オロロロロロロロロロロロロ! ムリョクを知るが良いデスネぇ、愚かなりし猟兵どもよ! 永劫のヤミに閉ざされ、ヨルの中で嘆きなサイ! オロロロロロロロロ! オロロロロロロロロロロロ!」
「否。墓穴を掘ったでござるな、道化師よ」
「……オロ?」
 SLASH! SLASH! 二度の風切り音が鳴り、闇に浮いた両目が割断された。異変に気づき真上を見上げるジェスターの前で、悪魔の目が破裂! どす黒い液体を撒き散らしながら破片が闇に消えていく。唖然とするジェスターの上空には丸く切り取られた夜空。その中央には刀を抜いた戎兵衛が浮く!
「バカな……!」
「この暗闇こそ拙者の剣の砥石でござる。完全なる夜……なるほど、闇そのものの悪鬼とはまた面妖な。しかして悪魔の恐怖がなんのもの」
 戎兵衛は闇を吸った剣を刀に収め、身を沈めて居合いの姿勢! 柄を握る手にも散った悪魔の闇が集い、激しく燃え上がった!
「斬り捨て、御免」
 SLASH! 闇が引き裂け、左右に消し飛ぶ! 幕が開くように元の光景が戻り、闇に飲まれた猟兵たちが漏れなく解放! 分かたれたジェスターの生首は目のオーラから千切れた火花を飛ばしつつうめく!
「バカな……バカなッ……!」
「これは驚きでござるな。その容体でまだ死なぬか。介錯は……」
 戎兵衛がチラリと夜空を一瞥。煌々と輝く空の下には、一際強い光を放ちながら変形するUFO! 中にはいち早く状況判断したマリスの小動物たちが、バタバタとコンソールの上を駆け回る!
「ヘーイ、要塞砲発射用意!」
「充填率120%! レディ!」
 リスの紳士が叫ぶと同時、我に返ったマリスが片目に光りを灯してUFOへ飛翔! 巨大な大砲と化したUFOの後ろに回り込んで手の平を当て、腕伝いに光を流す!
「主よ。かの者を愛したまえ」
 砲門から迸る聖なる光! 大砲の上に乗ったコックピットから見える景色を確認し、モモンガの淑女が身の丈ほどもある木槌を振り上げた。
「エヴァブラック発射ですわ!」
 ハンマーを黄と黒のストライプ模様に囲われたスイッチにSMASH! 直後、大砲が極光を噴き出した。朝日の如く空を照らす光線は真っ二つになったジェスターを照らし出し、影も残さず消し飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月19日


挿絵イラスト