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君の願いを

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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 べちゃり、べちゃりと薄暗い部屋に陰湿な音が響く。
 音がする方向を見やれば、蠢く影のような異形の姿。
 その異形が何かを咀嚼する様子を――女は見ていた。
 いや、女が見ていたのはそこに居合わせたのであればだれもが目を引くであろうその凄惨な現場では無い。
 その咀嚼する異形を何も言わず見つめる、異形の直ぐ傍に立つ男の姿だ。

 ゆっくりと、しかししっかりと薄暗い部屋の床を何かが濡らす。
 温かい水たまりが、薄暗い空間を染めるように広がっていく。
 だが女はそんなことを気にせず、唯々男に熱い視線を送る。
 無表情で無機質な、冷たい男の表情を。


「女の妄執ってのは、面倒なもんだね」
 そう呟くのは眼帯のグリモア猟兵――中御門・千歳(死際の悪魔召喚師・f12285)だ。
 千歳によれば事件が起こるのはサクラミラージュのとある温泉宿。
 そこで客が行方不明になるという事件が予知されたということだ。
「事件の犯人は当然影朧……だけどね、その影朧に協力しているみたいなのさ、その宿の若女将がね」
 理由は一目惚れか昔の想い人に似ていたのか。
 理由は定かでは無いが、一つ確かなのは既に若女将が狂っているということ。
 当然放置をすることは出来ず、しかる後に官憲に突き出すことになるだろう。

「皆にはね、事件に巻き込まれるように、まずは露天風呂を楽しんで欲しいのさね」
 予知によれば事件に合うのは露天風呂を楽しんで身体を清めた者だけ。
 事件解決の為にあえて被害に合う為にも、猟兵たちはまずは露天風呂を楽しむ必要があるのだ。
「風呂の間は安全だからね、気にせず楽しんでくれていいんだよ……ただし上がった後、皆には気張ってもらうことになるよ」
 風呂を楽しんだ後に猟兵たちを襲うのは、幻覚を見せる怪しいお香。
 そのお香により見てしまうのは、自分に都合の良い、欲望を満たすものだ。
 事件の被害者たちはそのお香により意識が朦朧としているところを攫われ、影朧の被害にあってしまうことが予知されたのだ。
「幻覚に負けずに耐えていれば、意識を失っていると思ってやって来た若女将とはち合うはずさね。その若女将を押さえちまえば、朦朧だって黙っていないはずさだよ」
 幻覚に耐えさえすれば、一般人である若女将の確保は容易。
 そうして現れた朦朧を倒せば、無事事件は解決だ。

「幻覚だなんだと面倒だけどね、気を付けて行っておいでよ」
 そう猟兵たちの安全を願いながら、老女は皆を送り出した。


きみはる
●ご挨拶
 お世話になります、きみはるです。
 衝動に負けて依頼を出させて頂きました。
 宜しければ、ご検討をお願い致します。

●依頼について
 流れはざっくり下記の通りです。
 一章:夜の露店風呂を楽しむ(安全です。尚、男女は分かれております)
 二章:幻覚に負けない(幻覚の内容は、自分の欲望に関するものです)
 三章:ボス戦(説得有無はおまかせ)

●プレイングについて
 一章はOP公開から順次プレイングを募集開始させて頂き、別途様子を見ながら締め日をMSページ等でご連絡させて頂きます。
 二章以降のプレイング募集は、その都度ご連絡させて頂きます。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『夜櫻温泉郷』

POW   :    熱い湯でも関係ない。じっくりと、入って温まろう

SPD   :    効率のいい入り方で、じっくりと疲れをとろう。

WIZ   :    人目を気にせず、のんびりと入ろう。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

逢坂・理彦
サクラミラージュの依頼だね。行ったサクラミラージュの依頼はそれほどでもなかったけれど今回の依頼は血生臭い感じ、かな?

(首の傷を隠すために手拭いを巻いてます)
夜の露天風呂かぁ、この世界のことだから夜桜を見ながらって感じになるのかな?
花見酒と洒落込みたいところだけど後に依頼が控えてるからね。
いい湯だね〜♪
のんびりしつつも露天風呂からあがったら幻覚が待ってるようだし気合入れておかないとね。

アドリブ絡み歓迎。




(前回はそれほどでもなかったけれど今回の依頼は血生臭い感じ、かな?)
 今回の事件はどうなるものかと、逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は思案する。
 手拭いを普段巻いている襟巻きのように首に巻きながら、湯船を形成する為に積み上がっている岩へゆったりとしなだれかかる理彦。
 その細身ながら引き締められた裸体にまとわりつく雫が、露天風呂へと射し込む月明かりを細やかに反射させていた。

「いい湯だね〜♪」
 己が身を包む暖かい温もりの気持ちよさに思わずため息をついてしまう。
 エンパイアが平和になって久しく堪能していなかった露天風呂に、理彦はとろけるようなだらしのない笑顔を浮かべた。
(花見酒と洒落込みたいところだけど……さすがに後に依頼が控えてるからね)
 どこに行っても桜が咲き誇るというこの世界独特の光景。
 肌寒いこの時期でも楽しめる夜桜に、思わず熱燗が欲しくなってしまう。
 反射的に口内に滲み出る唾液で喉を鳴らすがこの後を考えるとそうもいかないと、己が心を律し頭を振るうのだ。

(露天風呂からあがったら幻覚が待ってるようだし、気合入れておかないとね)
 先ずは心行くまで温泉を楽しんでいる理彦だが、一度湯から上がったのであれば、幻覚への対応の為に気を引き締めなければならない。
 故に酒などもっての他なのだが、目の前の情景が――身を包む温もりが、彼を堕落へと誘わんとしているのだ。
(あぁ……でも、本当に勿体無い)
 後ろ髪を引かれる思いに揺れ動きながら無心を取り戻すべく、理彦はその瞳を閉じ、まったりと湯の心地を楽しむのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

紗我楽・万鬼
嗚呼此処が謂われた温泉宿ですね
温泉で体スッキリリフレッシュ!
おまけに程よい幻覚に影朧とのホラーアトラクション迄在るって噺じゃあないですか
いやぁ面白そうですね!

てなわけで、あれ御犬様は入れます??UDCはNGです?
何方にせよあっしは入りますよ遠慮はしませんよ!
露天風呂なんてンヶ月ぶりですかね最高ですね!
さっぱり洗って入りましょうや
嗚呼ー此の熱さ堪りませんねー
温泉効果云々結構好く血行良くなりそうですねー
月夜酒したいんですけど冷酒無いんですー?

風呂上がりは珈琲牛乳行きたいですけどねぇ
もう次のおもてなしが来そうです?
それじゃま、終わったらもう一度入るために気張りますかね
ね、御犬様
影に潜んでいて下さいね




「嗚呼此処が謂われた温泉宿ですね、温泉で体スッキリリフレッシュ! おまけに程よい幻覚に影朧とのホラーアトラクション迄在るって噺じゃあないですか、いやぁ面白そうですね!」
 露天風呂を前にして、紗我楽・万鬼(楽園乃鬼・f18596)は矢継ぎ早に捲し立てる。
 月の光が写し出す、夜桜と露天風呂のコラボレーション。
 その幻想的な光景はへらへらと笑い世の中全てを斜めに受け流す万鬼をもってしても、心の揺らぎを感じるほどに刺さるものであった。

「てなわけで、あれ御犬様は入れます??UDCはNGです?何方にせよあっしは入りますよ、遠慮はしませんよ!」
 ペットは不味かろうがUDCは如何なものか?
 新たに呼び出せば汚くは無かろうが、見た人の目には不快に映るかもしれない。
 そうした悩みも思い浮かべるのは数瞬の間。
 猟兵以外の人影がいないことを確認すれば、まぁ良いかと直ぐにはるか記憶の彼方へと追いやってしまう。

「嗚呼ー此の熱さ堪りませんねー、温泉効果云々結構好く血行良くなりそうですねー」
 自らが御犬様と呼ぶ千破夜と共に軽く身体を流したならば、ゆっくりと湯船へと身を沈ませる。
 そもそも露天風呂自体が数か月ぶりであることに加え、未だかつて見たことが無いほどの満開の桜の下での露天風呂。
 たまらず零れるため息は、風呂を知る者であれば誰しもが共感出来るものではなかろうか。

「風呂上がりは珈琲牛乳行きたいですけどねぇ……もう次のおもてなしが来そうです?それじゃま、終わったらもう一度入るために気張りますかね」
 風呂上がりに一杯と行きたいと思いつつ、まずは事件の解決をと立ち上がる。
 ふと見やれば、いつも険しい顔ばかりを此方に向ける相棒が、何とも幸せそうな表情を浮かべているではないか。

「ね、御犬様……影に潜んでいて下さいね……ねぇって、痛ぁ!」
 至福の時間を邪魔された相棒が、すこぶる機嫌が悪かったとか何とか。

成功 🔵​🔵​🔴​

寧宮・澪
やー、寒くなってきましたしー……いいですねー……。
幻覚こようとなんのそのー……もうこれは、たっぷり楽しみますよー……。

髪はまとめておきましてー……体も洗ってー……いざ、お湯の中にゆっくり、とぽーん……うーん、気持ちいー……。
夜桜に、夜空にー……気持ちいーお湯ー……。
持ち込んだ、マグで水分補給しつつー……手足伸ばして、長風呂堪能ー。
やー、広い温泉って、なんてすてきなんでしょか……気持ちいいですねー……。
じんわり染みる熱さに逆上せそうになったら、湯船の縁に上がって、涼んでー……また入ってー……。
ゆったりー……眠たくなりますねー……すやぁ……。

アドリブや、絡みなど歓迎ー……おまかせですよー。




「やー、寒くなってきましたしー……いいですねー……」
 月明かりに照らされる中、寧宮・澪(澪標・f04690)はゆっくりとその身を湯舟へと沈める。
 髪と頭をしっかりと洗った後に露天風呂へと入った澪。
 湯の中へとつけぬよう纏めた髪からぽたぽたと落ちる雫が、温まった肌に空気の冷たさを思い出させる。
「ん……うーん、気持ちいー……幻覚こようとなんのそのー……もうこれは、たっぷり楽しみますよー……」
 露天風呂から出た後に事件解決へと挑まねばならないことは承知済。
 それはそれとして今を楽しまねば勿体ないのだ。

「夜桜に、夜空にー……気持ちいーお湯ー……」
 幸せそうに瞑られた瞳を開ければ、そこに映るのは満開の桜。
 月明かりを受けて煌く桜の花びらが宙を舞い、ゆっくりと水面を揺蕩う。
 そうした幻想的な光景と心地よく身を包む温もりが、何とも幸せな気持ちが心を満たしていくのだ。
「やー、広い温泉って、なんてすてきなんでしょか……気持ちいいですねー……」
 普段中々楽しむことの出来ない広々とした露天風呂。
 心ゆくまで満喫せねばと、持ち込んだマグカップで水分補給をしている澪。
 それでも身体の芯から温める湯により逆上せそうになったのならば、湯船の縁でまったりつ涼む。
 そうして出たり入ったりと繰り返す彼女は、長期戦の構えで心ゆくまで堪能するのであった。

「ゆったりー……眠たくなりますねー……」
 心の底から安らげば、自ずと身体は眠りへと誘われる。
 ゆらりゆらりと意識の狭間を歩く澪。
 依頼があるのだと、意識をしっかりせねばと思うがものの、次はいつ楽しめるかも分からない夜桜と露天風呂が、彼女から出るという選択肢を奪ってゆく。

「すやぁ……」
 ついに意識を手放した彼女は、それはそれは幸せそうな顔であったとか。

成功 🔵​🔵​🔴​

紬雁・紅葉
まぁ温泉!?しかも夜桜湯!
これはもう征かなくては♪

熱めの…湯の方が…
掛け湯をして汚れを洗い流し
ゆっくり温泉に入ると、湯に触れた肌に羅刹紋が顕わに

ふぅ…☆
湯の中で落ち着くと湯気ならぬ雲が湧き出る

…月に叢雲花に風…か…

美しいものは美しいまま
されどこの世は流れて変わる
はじまり、おわる
それはさだめ

なればせめて、定めし確かな終わりを
それこそが"剣神"の巫女の定めなれば

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※




「まぁ温泉!? しかも夜桜湯!」
 紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)は素直にその胸中の感動を言葉にする。
 グリモアベースにおける説明の時点で既に楽しみではあったものの、いざその周囲全てを桜に包まれた露天風呂という圧巻の光景を前にしては、あえて口をつぐむという方が野暮というものだろう。
「熱めの……湯の方が……」
 掛け湯により身を清め、いざ露天風呂へと身を進める。
 幾つかに仕切られた湯船を眺め、一つ一つ温度を確認していく紅葉。
 彼女の好みである熱めの湯を見つけると、ゆっくりと身体を沈めていった。

「ふぅ……☆」
 苦手な者では耐えられないほどの熱めの湯。
 その温度が快適とでも言うように、紅葉は気持ち良さそうに目を細める。
 湯につけられた部位からじわじわとその珠のような白い肌が朱へと染まって行く。
 明確に色が変わった艶肌に浮かぶのは、彼女が己が生を縛られることの原因でもある羅刹紋。
 その紋章から目を外すように、紅葉は首元までその肢体を湯に沈める。
 身を包む熱さだけを感じるように目を閉じ、そのまま体を揺蕩わせる。
 ゆっくりとその両の眼を開けば、立ち上る湯気がまるで分厚い雲のように視界を覆いつくしていた。

「月に叢雲花に風、か……」
 思わず零れたその言葉の意味は、この後の戦いを指し示しているのか……はたまた彼女の歩みの全てか。
 その両方かもしれないものの、それは余人には計り知れないものだ。
「美しいものは美しいまま、されどこの世は流れて変わる。はじまり、おわる……それはさだめ。なればせめて、定めし確かな終わりを……それこそが"剣神"の巫女の定めなれば」

 それは、本人にすら計り知れていないのかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
風呂に浸かりながらも、この後の仕事が頭を過る
女の妄執か…若女将は一体何を思って影朧に与しているのやら
操られているだけなのか、やはり自発的に協力しているのか…

…いや、考えるのは後にするか
風呂の間は安全だと聞いている。今はこの露天風呂を楽しもうと思い直し、思考を切り替える
余計な事を考えていてはせっかくの良い湯が台無しだからな

思い切り足を伸ばして広い風呂をじっくり堪能する
ここまで広い風呂に入る機会もあまりない事だし、どうせならゆっくり入っていく事にする

故郷にはこんな風呂は無かったから最初は驚いたが、今ではこれを気に入ってすらいる
随分と他所の世界にも馴染んだものだと、湯を楽しみながら思う

※アドリブ歓迎




(女の妄執か……若女将は一体何を思って影朧に与しているのやら)
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)はその両肘を縁に立てることで己が身体を支えると、夜空を見上げながら思案する。
 彼が想いを馳せるのはこの事件の黒幕である影朧に協力しているという、宿の若女将。
 信頼関係や義を重んじるシキの価値観の中では、己がこれまで長い間かけて積み上げた全てを台無しにするような犯罪行為に手を染めるという若女将の行動が、小指の先ほども理解が出来ないでいた。
(操られているだけなのか、やはり自発的に協力しているのか……)
 影朧が操っている……という可能性も捨てきれないものの、予知の内容からはその可能性は低いと言わざるを得ないであろう。
 決してシキには関係の無い狂人の凶行。
 しかしながらその思考に共感の余地を探してしまうのは、一重に彼の優しさと生真面目さ故のものであろう。

 頭を振るえば、水面に浮かぶ桜の花びらが優しく月明かりに照らされているのが目に入る。
 そうしてゆっくりと視線を回せば、露天風呂の周りをぐるりと囲む満開の桜が風に騒めき、何とも幻想的な景色を作り出しているでは無いか。
「いや、考えるのは後にするか……余計な事を考えていてはせっかくの良い湯が台無しだからな」
 悩むが故に水中でかいていた胡坐を伸ばし、全身で広々とした露天風呂を満喫するシキ。
 ここまで広い風呂に入る機会すら稀であり、さらにはこうした露天風呂と夜桜という貴重な光景もセットであるならば、楽しまないのはこの上無い損失であると言えよう。

「あ~……」
 余計な思考を取り払いその身を包む温もりに意識を向ければ、心をほぐされ零れるのは溜息。
 故郷には無かったこうした風呂という文化。
 最初は驚いたものの、今ではすっかり気に入っている自分がいる。
 そしてシキ本人にも意外だったのは、こうして様々な世界に順応してきている自分が、嫌では無いということだ。

「随分と他所の世界にも馴染んだものだな」

成功 🔵​🔵​🔴​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

夏に着たラッシュガードとサーフパンツを着用し温泉へ向かう…も
宵が戸惑う様を見れば足を止めよう
宵どうかしたのか…と
お前が物を忘れるとは珍しいな

そう声を投げつつ逡巡するも己のラッシュガードを脱ぎ宵へ
俺の痕は腰故見え辛いからな
それに上体とはいえ露出した身を俺以外が見ると思うとその、何だ…。と、とにかく着ていろ
己のラッシュガードを着用した宵を見れば浮き立つような、何処か落ち着かぬ心持ちになり足早に温泉に向かおうと思う

温泉では心地良さげに肩まで浸かりつつついぞ満足げな声が漏れてしまうやもしれん
矢張り風呂は良いな…と
…?宵、どうかしたのか?未だ入ったばかりだろう?もう少々ゆっくりせんか?


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

同じく夏に着たサーフパンツと……
と、そこで手を止め
背中の傷痕を隠すための上衣を忘れてきたことに気づきどうしたものかと首を捻れば
ザッフィーロ君からラッシュガードを掛けられ目を瞬かせ
……ありがとうございます、と有り難く身につけて
彼の心遣いが染み入りつつ、不意に挙動不審になる様子に笑って温泉に入りましょうかと声を

湯船に浸かりつつ解れる心地よさに伸び伸びとしながらも
ふと周りの目が気になりだしたなら落ち着かなげにきょろきょろと

……いえ、なんでもありません、が……
声をかけられたなら向き直りつつも
そうですね、いいお湯ですから楽しまなければ勿体ない
せっかくきみと一緒ですしね




「宵、どうかしたのか?……」
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)と逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)は露天風呂へと向かうべく着替えていた。
 出身世界の文化から全裸で露天風呂に向かうことに抵抗のある彼らが穿いていたのは夏に使っていたサーフパンツ。
 さらに上着にとラッシュガードを羽織ろうとしていたザッフィーロは、相方の宵が何かを探すようにごそごそと荷物をあさっている姿が目に入った。
「お前が物を忘れるとは珍しいな」
 返事が返る前に上着を忘れたのだと察したザッフィーロは、己が羽織るつもりであるラッシュガードを、そっと目の前の背中を覆い隠すようにかけてやった。

「……ありがとうございます」
 単純に肌を見せる以上に、宵は己が背中の傷を他人に見せることを忌避していた。
 故に何も言わずに察してくれたザッフィーロの心遣いが素直に嬉しく、そして言わずとも自分の考えていたことが察されていたことが妙にこっぱずかしく感じる宵。
 頬をやや赤らめながらも手早く羽織ると、上目遣いで礼を言う。
「俺の痕は腰故見え辛いからな……それに上体とはいえ露出した身を俺以外が見ると思うとその、何だ……と、とにかく着ていろ」
 最初は何でもないかのように返事をしていたザッフィーロであったが、己がラッシュガードを羽織った宵を見れば何ともこそばゆく、心が騒めくのを感じていた。
 思わずこぼれ出た本音を咄嗟に誤魔化すと、ザッフィーロは早足で露天風呂へと向かう。
 そんな挙動不審な様子にくすりと笑うと、宵はザフィーロ後を追うのであった。


「あぁ……矢張り風呂は良いな」
 その鍛え上げられた肉体を肩まで沈め、ザッフィーロは何とも気持ちよさそうな溜息をつく。
 ふと見上げればそこには満開の桜が月明りに照らされ煌く。
 その幻想的な光景に心を奪われれば、風に騒めく桜の木からひらりと一枚の花びらが風に乗って飛ばされているのが目に入る。
 ひらひらと宙を舞う花びらを視線で終えば、ふわりと宵の黒髪へと舞い降りるのが目についた。
 温まり湯気立つ指先でそっと取り払えば、こちらの動きに気付いた宵と視線が合うのであった。

 先ほどまで伸び伸びと露天風呂を堪能していた宵。
 突然の気配に驚き振り向きながらも、ザッフィーロのその指先についた花びらを見て事態を理解する。
 素直にお礼を言うべく口を開こうとしたものの、ついつい二人の空間を作り出してしまっているのでは無いかと、ふと他者の視線を探しそわそわと所在無さ気に身じろぎする。
「宵、どうかしたのか?……未だ入ったばかりだろう?もう少々ゆっくりせんか?」
 思わず腰を浮かせる宵を引き留めたのは、そっと手を引くザッフィーロ。
「いえ、なんでもありません、が……」
 自身の気持ちを言葉にすべきか、誤魔化すべきか。
 どうにも居心地の悪さを感じた宵が逡巡していると、真っすぐにこちらを見つめるザッフィーロと視線が絡む。
 目の前の彼が自身と同じような居心地の悪さを感じているかは分からない。
 しかしその純粋な視線を……堂々とした態度を見ていると、唯々己が気にしすぎなのだと、不思議とそう思うことが出来た。

「そうですね、いいお湯ですから楽しまなければ勿体ない……せっかくきみと一緒ですしね」
 そう甘い言葉を囁けば、今度はザッフィーロがそわそわと身じろぎをする番であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鶴澤・白雪
アドリブ歓迎

露天風呂、いいわね

この後でまた動くことになるんだろうけどその前に癒されても罰は当たらないはずよ

あたしの身体はカルサイトだから温泉に入る前に割れないように対策だけしておくわ

最近寒くなったから温泉、身に染みるわね
湯船に浸かると一息をついて身体を伸ばす

鉱石の身体でも疲れが取れる感覚が分かるから温泉って偉大だわ
本当ならこのまま客室取って寝てしまいたいくらいよ

…なんて、言ってられないのは分かってるから今だけはゆっくりさせてもらうわ

敵が来るのは露天風呂から出たら、だったかしら?
……出たくないわね

お風呂に入ってる時に襲ってこない空気を読んでくれる敵で助かったけど
気合い入れないと出られなさそうだわ




(露天風呂って、いいわね)
 鶴澤・白雪(棘晶インフェルノ・f09233)は立ち上る湯気に包まれた露天風呂を見下し、一人言葉を零す。
 カルサイトのクリスタニアンたる白雪は己が肢体が割れぬよう細心の注意を払いながら、ゆっくりとその身を湯舟に沈める。
 高い熱伝導率を誇る彼女の身体は露天風呂の温もりをすぐさま全身に伝えながらも、決してその珠のような白い肌は色を変えることは無い。
 ゆっくりと、ゆっくりと体勢を整えた白雪が、その広々とした露天風呂を満喫するかのように四肢を存分に伸ばせば、ほっと小さく息を吐く。
(最近寒くなったから、温泉が猶更身に染みるわね)
 眼を瞑れば、既に身体の芯まで温まっていることをじんわりと内から感じる。
 ゆっくりと湯船から上げたその指先を見つめれば、澄み切った空気との温度差により湯気が立ち上がった。
 何だかそんな小さなことが面白くてくすりと笑えば、身体どころか心まで温められているかのようではないか。

(鉱石の身体でも疲れが取れる感覚が分かるから温泉って偉大だわ……本当ならこのまま客室取って寝てしまいたいくらいよ)
 クリスタニアンたる彼女が感じる感覚と他の種族の皆が感じる温泉の感覚。
 果たしてそれが同じか否かは誰にも確認は出来ないものの、少なくとも自分は今癒され、疲れがとれていると感じている。
 その偉大さに感動しながらも、それでもより良いものを求めてしまうのは生物の性。
 このまま客室に転がり込み泥濘に沈むかのように意識を手放せれば、なんと幸せなのだろうか……などと、ついつい想いを馳せてしまうのは仕方が無いことであろう。

「敵が来るのは露天風呂から出たら、だったかしら?」
 そんな現実逃避は捨て置いて、任務へと意識を戻すべくあえて思考を口にする白雪。
 そうした言葉に続くように、気合いを入れなおすかのようにその身を寒空の下へと帰す……ことは出来ないでいた。

「……出たくないわね」
 彼女が心の葛藤に打ち勝つべく、気合を溜め切るにはもう一時の時間が必要であったとか。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『幻影ガス灯通り』

POW   :    誘惑にも負けずに直進む。

SPD   :    現れた幻影に理性的に分析、突破。

WIZ   :    幻影に対抗する術式を用いて突破。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちは名残惜し気に露天風呂を後にする。
 もう少し楽しみたいという気持ちは一緒。
 しかしそうも言っていられないと、着替え終わるころにはその表情は強く引き締められていた。

 脱衣所を後にした猟兵たちは、廊下に焚かれた何かを感じとる。
 僅かに視認される煙と鼻腔をくすぐるかすかな甘い香り。
 猟兵たちは、これこそが予知されていた幻覚を見せる香なのだと理解した。
 幻覚を避けるべく極端な動きを見せれば、異変を感じさせてしまうかもしれない。
 逃げることは出来ない……必要なのは、耐えることだ。

 意識が朦朧とする猟兵たちが見るのは、己が欲望に関わる幻覚。
 果たして彼らは、無事意識を取り戻すことが出来るのか。
 はたまた、甘い罠に吸い込まれるようにそのまま意識を手放してしまうのか。

 今、猟兵たちは自ら虎穴へと足を踏み入れていた。
逢坂・理彦
さて、お仕事の時間だね。
頑張るとしようか。
あぁ、甘い匂いがするね。これが幻覚の原因かな…軽く鼻と口を覆って…後は【毒耐性】も意識しておこうか。効くかどうかは分からないし気持ちの問題だけどね。

あーうん、こう言う幻覚かぁ…確かに欲望だけど…うん。
(恋人の艶っぽい姿に目を奪われるもこれは幻覚だし恋人の性格ではあり得ないだろうと必死に意識の外に追いやる)

はぁ、そんなに欲求不満とかじゃないはずなんだけどなぁ…こんなの見ちゃうと帰ってからが微妙に気まずいよねー…

アドリブ歓迎。




(さて、お仕事の時間だね……頑張るとしようか)
 その時がついに来たかと、逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は身構える。
 先ほどまでの温泉で見せていただらしの無い表情は見る影も無く、その表情は凛々しく引き締められられていた。
「甘い匂いがするね……」
 仕込まれた罠に気付いたのでは無く、あくまで違和感を感じた程度といった演技をする理彦。
 まるでその微かな匂いが受け付けないかのように、軽く鼻と口を覆う。
 あとは心を強く持つのみだ。

(あーうん、こう言う幻覚かぁ……確かに欲望だけど……うん)
 最初に見た瞬間は、はっと息を止めた。
 確かに自分の欲望に直結すると、自分の心を的確に抉る映像。
 必死に目を逸らそうとしようとも、己が瞳は食い入るように見つめてしまう。
 腰まで届かんという色あせた灰色の髪。
 筋張ったうなじに、色白の肌。
 しかしその若者には出せない――年長者故かどこか色気を纏っている肢体。
 その映像は、まさしく理彦にとって“大切な人”

(いや、そもそも幻覚だし……これはさすがに、ありえないよ)
 思わず目を奪われたその光景。
 しかしその光景は己が恋人の性格を考えれば、あり得ないものだと理解出来る。
 大切であるが故に、幻覚にすら現れてしまう。
 しかし大切であるが故に、それが決して現実では無いのだと理解できるのだ。

「はぁ、そんなに欲求不満とかじゃないはずなんだけどなぁ……こんなの見ちゃうと帰ってからが微妙に気まずいよねー……」
 と言いながらもチラチラと見つめてしまう理彦。
 現実では無いと理解出来ていることと、目を逸らせるかどうかはまた別の問題であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鶴澤・白雪
……露天風呂、出たくなかったけど気持ちを切り替えるわ

もう惑わす香が満ちてるのね
毒耐性があるからどれだけ効くか分からないけど人並みに意識が朦朧としたフリはしておくわ

見えたのは身代わりになって死んだ妹が生きている光景
元気に笑って、傍に駆け寄ってきて、もう一度お姉ちゃんと呼んでくれる
大好きな人達と一緒に笑って、姉妹仲良く生きていける

とても素敵な幻
えぇ、望んでたわよ
そんな未来だったらどれだけいいだろうって

だけど悪いわね、こんな甘い罠にかかるほど落ちぶれちゃいないのよ
あの子が命がけで紡いでくれた未来が現実
だからあたしはそこで生きる

脳天撃ち抜くような真似はしないけど不快だわ
若女将となら、さっさと来なさいよ




(……露天風呂、出たくなかったけど気持ちを切り替えるわ)
 鶴澤・白雪(棘晶インフェルノ・f09233)は後ろ髪を引かれる想いを断ち切ると、前へと歩を進める。
 鼻腔をつく甘い香りが、既に用意されていたのであろう人を惑わす香の存在を伝えてくる。
 自身の耐性故に毒は効き辛いはずだが、それを気づかれる訳にはいかない。
 意識が朦朧とした演技をしながらそっと瞳を閉じると、ぼんやりと瞼の裏に映るものがあった。

「これ、は……」
 ぼんやりと映ったのは、白雪の人生の中で最もウェイトを占める存在――彼女の妹、自身の身代わりとなって死んだはずの……最愛の妹の映像だ。
 元気に笑い、傍へと駆け寄ってくる少女。
 サイレント映画のように彼女の口元が動くが、音が聞こえてこない。
 しかし白雪には理解が出来た……何度も見てきた、口の動きの意味を。
 彼女を、“お姉ちゃん”と呼ぶ、妹の笑顔を。
「とても素敵な幻……えぇ、望んでたわよ、そんな未来だったらどれだけいいだろうって……」
 大好きな人たちと笑う、妹の笑顔。
 何度も望んだ、取り戻したかった過去。
 これが現実なら……本当に訪れる未来なら、どんなに良かったことか。

「だけど悪いわね、こんな甘い罠にかかるほど落ちぶれちゃいないのよ……あの子が命がけで紡いでくれた未来が現実、だからあたしはそこで生きる」
 大切だからこそ、腸が煮えくり返るほどの怒りが白雪の中で荒れ狂う。
 最愛の妹が、大切な家族が否定された……汚された気がして。

「脳天撃ち抜くような真似はしないけど不快だわ……若女将とやら、さっさと来なさいよ」
 その開かれた瞳は、熱き怒りに燃えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紗我楽・万鬼
まぁ臭いますね!
宿のお楽しみ其の弐でしたっけ?
欲望ねぇ、さて何でしょね

嗚呼ーそうですよねぇ
見よ此の大喝采!壮大な光景!
あっしの騙りを聞こうと集まり群がる民衆多々!
さぁ寄ってらっしゃい、聞いてらっしゃい!
噺屋万鬼は此処ですよ!

では何から騙りましょ
金を生む鳥を手にした女が飼育に夢中で他全てを失う噺?
其れ共とっくに朽ちた異形を愛する妄執のラブ・ストーリー?
どんな出鱈目でも騙りますよ!

でもねぇ
今此の時こそ出鱈目だってあっしが一番良く理解してるんですよ
騙り鬼に視覚の騙りなんてお笑い物
精々あっしの騙りを聞きやしない現実の女が来る迄は付き合いましょうか
女将が来たら扇で香を晴らし拘束確保で良いですかね御犬様?




「まぁ臭いますね! 宿のお楽しみ其の弐でしたっけ?」
 紗我楽・万鬼(楽園乃鬼・f18596)は歪んでいく視界を受けてすら、楽しそうに嗤う。
 彼にとっては戦闘すら、ピンチですら、娯楽の一つなのであろう。
「嗚呼ーそうですよねぇ、見よ此の大喝采! 壮大な光景! あっしの騙りを聞こうと集まり群がる民衆多々! さぁ寄ってらっしゃい、聞いてらっしゃい! 噺屋万鬼は此処ですよ!」
 万鬼の視界に映るのは、自身を囲う大量の観衆。
 まるで彼の一挙手一投足に反応するかのように、人々は沸く。
 ふと見下ろせば、彼が座っていたのはまるで落語の高座のように、周囲よりも一段高く据えられた台。
 その高座にゆっくりと腰を下ろした彼は、波のように蠢く――沸き立つ観衆へとその手中の扇子を向けた。

「では何から騙りましょ、金を生む鳥を手にした女が飼育に夢中で他全てを失う噺?
其れ共とっくに朽ちた異形を愛する妄執のラブ・ストーリー?どんな出鱈目でも騙りますよ!」
 しかし彼は落語家、噺家では無い。
 彼が名乗るのは噺屋。
 万鬼が語るは出鱈目――落語のように筋書も無ければ、落ちも無い。
 しかしその語りは妙に人を惹きつけ、楽しませるのだ。
「でもねぇ……今此の時こそ出鱈目だってあっしが一番良く理解してるんですよ、騙り鬼に視覚の騙りなんてお笑い物……精々あっしの騙りを聞きやしない現実の女が来る迄は付き合いましょうか」
 彼は語り、惹きつけ、欺く側。
 そんな噺屋が騙られるなど、あってはいけないのだ。

 未だ幻覚を見ていると演技をするべく、俯いた様子の噺屋。
 その見開かれた瞳は、紅く輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

とても良い湯だったな、宵
今度又ゆっくりと来たい物だと上機嫌に宵へ声音を投げつつも、香の香りを捉えれば思わずくらりと視界が揺れる
香で迷う意識の中感じる欲は相手に対するもの
決して在り得ぬと思いながらも、宵の以前の所有者らしき者に嬉しそうに駆け寄り己を置いて行く宵と
宵を追わんとする己の腕を抱き引き止める赤毛の女性…前所有者の幻影を見れば思わず揺れ惑う様に意識が遠のきかけるも
指輪から暖かな光が漏れ破魔の力が働けば意識を繋ぎ瞳を開けよう
…開いた瞳の先に宵の姿を見れば、安堵の吐息を漏らしつつ笑みを零してしまうやもしれん
…本当に嫌な幻影を見た…が…。…宵、お前は大丈夫か…?


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

ええ、そうですね
とてもいいお湯で、快適な時間を過ごせました……と
ふと漂った香に思わず足を止めて
手に嵌めた揃いの指輪と懐の守り刀の存在を確かめるように視線を動かすも
ぐらりと足元から崩れる感覚に陥り

見るのは姿絵で目にした彼の宿敵
その女と仲睦まじそうに話してはこちらに目を向け
冷たい視線を投げて背を向け立ち去ろうとする彼

嗚呼、僕は彼のあの目だけはどうしても恐ろしいのだ
けれども違う、僕の「彼」は違う

関節が白くなるほどに守り刀を握り魔を破れたならザッフィーロ君に近寄り様子をみましょう
……僕は、心配ありません きみがここにいてくれて、本当によかった




「とても良い湯だったな、宵」
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は傍らに立つ逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)へと声をかける。
 風呂上りの二人の額には残された熱により汗がじわりと浮かんでいた。
「ええ、そうですね……とてもいいお湯で、快適な時間を過ごせました」
 宵もまたザッフィーロの問い掛けに答えながらも、その長い髪を冷ますように靡かせる。
 さり気無く指を絡ませながら歩く二人。
 時を楽しむようにゆっくりと歩を進める二人は違和感を感じ取り足を止める。
 二人が感じ取ったのは微かに甘い香の存在。
 意識を保つために強く互いの拳を握り込むのは、互いの存在を支えにする為。
 そうして縋るように耐える二人は、視界が歪んでいくのを感じ取る。


(これ、は……)
 ザッフィーロは歪む視界の中で最愛の人の気配を探す。
 ふと見つけた大切な人――宵は、にこやかに誰か微笑みかけているでは無いか。
 咄嗟に近づこうとするものの、いくら歩を進めようと近づくことが出来ない。
 そうしている間に宵は、見知らぬ人間――彼のヤドリガミとして成る前の所有者だろうか――へと笑顔で駆け寄っていく姿が目に入る。
(ま、待て!)
 思わず伸ばす手を、誰かが掴む。
 咄嗟に振り解こうと振り向けば、その見知った顔にザッフィーロは動きを止めた。
 冷や汗が止めどなく流れ、心が締め付けられる。
 己が手を引いた赤毛の女性――それはザッフィーロの器物としての前所有者。
 脳は激しく警鐘を鳴らす。
 逃げろと、早く宵を追えと。
 しかし身体が竦むように動かすことが出来ない。

(温かい……)
 かき乱される心を鎮めるように……ふと、暖かな気配を感じる。
 温もりを探して視線を逸らせば、己が指先から漏れる光に目が眩む。
 その光が――大切な人の存在が、己が意識を現実へと引き戻す。
 その手の温もりが……確かに“彼”の存在を教えてくれるのだ。


(ち、違う……)
 ぐらりと力が抜けるかのように崩れ落ちかかった宵は、咄嗟に腕を突き出し倒れ込むのを防ぐ。
 ぼんやりと視界が定まらぬその眼を必死に動かし無意識のうちに探すのは……己が心の拠り所である“大切な人”
 必死に探した先に居た彼は……見知らぬ女と共に立っているでは無いか。
 赤毛の、気の強そうな女。
 決して見覚えは無いものの、その特徴が己が記憶の何かと一致する――それは最愛の人……ザッフィーロの器物としての前所有者か。
 まるで普段自身に向けられるような、穏やかな……優しい笑みを浮かべるザッフィーロ。
 その表情が他者へと向けられているという映像に、宵は己が心がひき裂かれそうな痛みを訴えているのを感じていた。
 とっさにすがろうと手を伸ばすも、決してその手は握られることは無い。
 こちらへと投げかけられる“彼”の瞳が……ひどくつまらない“モノ”を見るように冷え切っていることが、耐えられないほどの苦痛を与える。

(嗚呼、僕は彼のあの目だけはどうしても恐ろしいのだ……)
 その冷えた瞳が、何事にも代えがたいほどに心をかき乱す。
 彼にその瞳を向けられることが、宵にとって何よりも恐ろしいもの。
(けれども違う、僕の“彼”は違う)
 その映像に心が引き裂かれそうになろうとも……それと同時に、それはあり得ないのだという言葉が心に響く。
 その信頼感こそが尊く……何事にも代えがたいものだ。
 ゆっくりと光が差し込むように、意識が明瞭になっていく。
 これは違うと、心から強く否定する度に。


 真っ白になるほどに力強く……己が守り刀を握るその手を見下ろし、宵はほっと呼吸を再開する。
 運動したわけでも無いにも関わらず荒ぶる呼吸が、己が心を締め付けていた圧迫感の強さを物語る。
 ふと感じ取るもう片手の温もりを思い出しそちらを見やれば、そこには顔を真っ青に変化あせた愛しき人の素顔。
「本当に嫌な幻影を見た、が……宵、お前は大丈夫か?」
 その病的に青い顔色を感じさせないように、ほっと息を吐き出しながら優しい微笑を浮かべるザッフィーロ。
 そうした笑顔を見ると、宵は己が呼吸を忘れていたという事実を思い出す。
 小刻みに洗い息を吐き出すと、安心したように宵は笑みを浮かべる。
 その声が僅かに震えている事実に、自身でも驚きながら。
「僕は、心配ありません……きみがここにいてくれて、本当によかった」

 二人のヤドリガミはそっと寄り添う。
 己が半身の存在を、しかと感じながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
眠ってしまいそうに心地が良い
ぼんやりとした人影がこちらに手を差し伸べて、このままずっとここに居てもいいのだと囁いている
その声と手に誘われ歩み寄りかけて…本当にそれでいいのかと、踏みとどまる

誰かに許されて確かな居場所を得る事、それは確かに俺にとっては欲望と言えるものだろう
昔、仲間の裏切りを受けて住処を追われて、長い時間一人きりで放浪生活を送っていたからだろうか…

…それでも、今立ち止まるわけにはいかない
仕事を途中で投げ出したりはできない、それにこの銃…シロガネの前の持ち主との約束も果たしていない
まだ、やるべき事がある

幻覚から目を逸らして耐え、人の気配を探る
若女将を『おびき寄せ』この場で押さえる為に




(眠ってしまいそうに心地が良い……)
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)はその定まらぬ視界で辺りを見回す。
 五感の反応は鈍く、まるで穏やかな水面を揺蕩っているような感覚が全身を覆う。
 ふと視界の端に、何やら黒い人影が映ったことに気付く。
 ぼんやりとした視界ながらも、手を差し伸べているのが分かった。
 人狼故に香による幻覚が強くかかっているのだろうか。
 こちらへおいでと、このままずっとここに居ていいのだと……幻聴すら聞こえ始める。
 それはとても魅力的で……心の奥底へ深く、深く刺さる言葉。
 そして同時に、彼の心を掻きむしるように傷つける言葉だ。

(昔、仲間の裏切りを受けて住処を追われて、長い時間一人きりで放浪生活を送っていたからだろうか……誰かに許されて確かな居場所を得る事、それは確かに俺にとっては欲望と言えるものだろう)
 過去の経験が、シキに安住の地を……受け入れてくれる人々を、己が居場所を渇望させる。
 それでも尚、それは決して逃げの理由には成らない。
 たとえ目の前に、欲して止まないものがあっても。

「……それでも、今立ち止まるわけにはいかない」
 仕事を途中で投げ出すことは出来ないと、意識が闇の中に引きずり込まれそうな感覚に抗う。
 がちり、と噛みしめた奥歯から鈍い音が響く。
 ゆっくりと口内に広がる血の味が、意識を明確にさせる。
 その手に握るのは愛用のハンドガン――シロガネ。
 その存在こそが……前の持ち主との約束こそが、彼の心を奮い立たせるのだ。

「まだ、やるべき事がある」
 シキは探る、捉えるべき獲物の気配を。
 その瞳は、まさしく心は猛りながらも冷静な狩人のものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『模倣と言われた噺家『桂馬亭・詠松』』

POW   :    真似る事だけしか、能がないと言われていたのでね
対象のユーベルコードに対し【正確に全く同じユーベルコード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
SPD   :    どうしたら、よかったのだろう。
対象への質問と共に、【自身の著作】から【情念の獣】を召喚する。満足な答えを得るまで、情念の獣は対象を【貪り喰らう牙】で攻撃する。
WIZ   :    一席、付き合ってくれないか
【歌】を披露した指定の全対象に【この歌を聴き続けていたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。

イラスト:冴時

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は落浜・語です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「ちょっと、離しなさい!」
 意識を取り戻した猟兵たちへと押さえ込められた若女将が姦しく騒ぐ。
 未だ本調子を取り戻していない猟兵たちであったが、一般人である彼女を取り押さえるのは、言葉の通り赤子の腕を捻るよりも簡単なことだ。
 窓を開け香を散らす。
 敵を迎え撃つべく準備を整える猟兵たちの耳へと、ぎしり、ぎしりと誰かが歩いてくる音が響いてきた。
「おや、これはまた面倒なことになっていますね……」
 ふと現れたのは、着物に身を包んだ痩せぎすの男。
 その傍らには黒き獣が唸り声をあげている……しかし猟兵たちは、それよりも男の冷たい視線に――何とも言えない威圧感に、反射的に身構えていた。
 猟兵たちは直観的に理解した――彼こそが、件の影朧なのだと。

「あんたっ!」
 助けを求めるように、熱い視線を投げかける若女将に対し……男はひどく詰まらないものを見るような冷めた視線を投げかける。
 全てに絶望したかのような、何もかもが面倒だといった雰囲気の男。
 その気だるげな、緩慢とした態度を見せながらも、男は言葉を紡ぐ。
「そんなのでも、返してもらいますよ……あたしが生きる為には、必要なんでね……そう、出来るだけ何もせずに、過ごす為には……」

 会話は終わったとばかりに、黒き獣の唸り声が一際大きくなる。
 今、最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
逢坂・理彦
影朧は出来るだけ説得といきたいけれど相手がそれを望むかも重要だよね。
彼ははたして転生を望んでくれるかな?
けれどまた影朧として復活するという事はずっと今の状態に捕われ続けると言うことだけれど…。

この世界だと桜が常に咲いているけれど季節的には紅葉だろう。
UC【狐火・紅葉緋毛氈】

真に言いたいことがあるなら話は聞くけどただの時間稼ぎなら結構だ。
これ以上の犠牲を増やすわけには行かないからね。

(何かあったら紅葉の上から【だまし討ち】する機会を狙いつつ)

アドリブ連携歓迎。




(影朧は出来るだけ説得といきたいけれど……相手がそれを望むかも重要だよね)
 逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は敵である影朧の男と相対しながら、愛用の薙刀――墨染桜をその手に構える。
 出来ることであれば影朧は説得をし、輪廻転生を果たして欲しいと思う。
 しかしそれには……そもそも目の前のこの男が、それを望んでくれるか否かが重要だ。
 いくら言葉を重ねようとも……影朧として今の状態に捕われ続けることに対し、そこに一切の迷いも無いのであれば、その努力は実を結ぶことは無いだろう。
(彼ははたして転生を望んでくれるかな?)
 静かに対峙する二人は、言葉を交わさない。
 互いの心情を探るようにしっとりと絡み合う視線が、言葉以上に意見を交わす。
 理彦が感じ取ったのは、怠惰と諦念。
 そこに正の感情は無く、唯々無力感が渦巻いていた。

「何か、良いたそうだね?」
 影朧の男の言葉と共に、黒き獣は牙を剥く。
 迎え撃つように理彦が放つは力強く燃え上がる狐火――狐火・紅葉緋毛氈。
 咄嗟に飛び去った獣の足元を燃え上がらせたかと思えば、そこに広がるのは毛氈のような鮮烈な赤。
 弾けた炎は紅葉へと姿を変え、地面を紅に染め上げたではないか。
「話したいのは……そちらじゃないのかい?」
 己が手中の長柄をくるりと回せば、今まさに牙を突き立てんと飛び掛かった獣を叩き落とす。
 だけど……と言葉を続けながら一歩、二歩と彼が足を踏み込む度に、宙には紅葉がひらひらと舞う。
 纏わりつく獣を往なしながらも、その両眼は注意深く目の前の男を睨みつけていた。

「真に言いたいことがあるなら話は聞くけど、ただの時間稼ぎなら結構だ……これ以上の犠牲を増やすわけには行かないからね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鶴澤・白雪
出来るだけ何もせずに過ごす、ねぇ?
充分被害出しておいてどの口が言ってるのかしら

出逢って早々申し訳ないけどそこの若女将に見せられた幻が胸糞悪くてイライラしてるのよ

最初から全力でお相手させてもらうわ
全力魔法と高速詠唱を合わせたUCを発動する
ノイズの渦中で歌えるなら歌ってごらんなさい

UCを使ったら身体をオーラ防御で守って棘槍に紛れながら近づくわ
必要なら両手の銃で制圧射撃を交えて

影朧か黒い獣か、邪魔な方をガンブレードで串刺してから零距離射撃で引鉄を引く
第六感で攻撃を察知したら反対の手に持ってる精霊銃を構えて焔の属性攻撃で応戦するわ

ガンブレードってなかなか凄いでしょ?
その面倒臭そうな顔、崩してあげるわ




「出来るだけ何もせずに過ごす、ねぇ?」
 鶴澤・白雪(棘晶インフェルノ・f09233)は冷然とした顔立ちに反し、その内心は烈火のごとく怒りが燃えたぎっていた。
「充分被害出しておいてどの口が言ってるのかしら……出逢って早々申し訳ないけどそこの若女将に見せられた幻が胸糞悪くてイライラしてるのよ」
 彼女の怒りの源は先ほどの香により見せられた幻覚。
 それによってかき乱されたのは、白雪にとって最も触れられたくは無かった彼女の根底に沈んでいた幸せだった頃の記憶。
 復讐心の源泉でもあった大切な家族の記憶を弄ばれた彼女は、その鋭い瞳をさらに細め、苛立たしげに表情を歪めていた。

「このノイズの渦中で歌えるなら歌ってごらんなさい!」
 影朧の男が口を開こうとしたその瞬間に白雪が放つのは、視界を覆いつくすほどの尖晶石の棘槍。
 彼女の聖痕から生じた槍の雨は、互いに空気を震わせながら降り注ぐ。
 ハウリングする不協和音に顔をしかめ、男は避けるように後ろに飛びのく。
 しかし白雪が真に狙っていたのは……常にこちらの隙を狙い身構えていた黒き獣だ。
「しっ!」
 その手に握るは黒きガンブレード――Fadeless Impulse。
 光を照り返し赤く煌くその刀身を、白雪は手負いの獣へと突き立てる。
 苦悶の唸り声をかき消すように連続して空気を叩く轟音と共に、黒き獣は鈍い音を響かせながら地に伏した。

「ガンブレードってなかなか凄いでしょ?……これでその面倒臭そうな顔、崩してあげるわ」
 刀身に纏わりついた何かを振るい落とすと、白雪は視線を男へと向けた。
 その能面のような面を崩して見せると、挑発的に笑いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

歌、ですか
美しくよどみなく非常に心地いい歌声ですが……
混沌とした情念を感じるのは、やはり彼が影朧だからでしょうか
ザッフィーロ君の歌というのも、いつか聞いてみたいですねと思いつつ影朧に向き直りましょう

彼女がいなければ存在を保てぬ貴殿も、そのような暮らしは長くは続かぬとお分かりでいらしたはず
もう一度人前に出られるようになりたいと思いませんか?
僕たちはそれをかなえるお手伝いが、できます
噺家としてもう一度、人々にすばらしい語りを披露してみたいとは思いませんか

「全力魔法」「高速詠唱」「属性攻撃」を重ねた
【天航アストロゲーション】で狙い撃ちを行いましょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

歌謡いか…
人の身から紡がれる芸術は美しく嫌いではないが宵を危険に晒して迄聞きほれる真似は出来ぬと『呪詛耐性』にて振り払わんと試みる
それに何もせず過ごす事を優先する生きる屍の様なお前の歌は俺には効かん
…宵の歌ならば聞き惚れてしまうやもしれんがと、隣に立つ相手へ視線と向けるも同じく己を見遣る相手を見れば笑みを浮かべつつ一度頷こう
…大丈夫だ。俺は術から逃れている故に
歌を振り払えたならば影から滲み出た罪穢れ…【穢れの影】を敵へ向け動きを止め宵の攻撃に繋げようと試みよう
無気力さの原因は解らぬが…此処で死んだ様に在り続けても意味がなかろう
新しい生を生きる方がお前の為にもなると思うのだがな




「一席、付き合ってくれないか」
 傍らに連れた黒き獣を討たれたにもかかわらず、影朧の男はその硬く固められた能面を歪めることなく、言葉を重ねる。
 その手の扇で手を叩きながら披露するは噺家として紡ぐ歌。
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)とザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)はその聞く者の心を揺さぶるその歌に相対していた。

「歌、ですか……」
 その耳に届く美しくよどみない歌声に耳を澄ませながら、宵はゆっくりと身構える。
 誰もが聞き惚れるであろ歌声の中に、宵はどこかどす黒く蠢く情念を感じていた。
 果たしてそれは影朧故か。
 そんな思いが頭をよぎるものの……そんな声に集中するのは、相手の思う壺なのだ。
(ザッフィーロ君の歌というのも、いつか聞いてみたいですね)
 意識を逸らすべく視線を這わすは、傍らに立つ己が恋人。
 そんな彼の歌を聞けたらなどと、そんな取り留めも無い思考へと意識を紛らわせるのだ。
「あぁ、歌謡い……だな」
 そんな宵の思考を知ってか知らずか、ザッフィーロもまた言葉を返す。
 元来人間の文化への興味が強く、人の身から紡がれる芸術もまた好むザッフィーロであったが、それが敵の策略であるならば話は別。
 傍らに立つ宵を危険にさらして迄聞き惚れることは出来ないと、その強い精神力により意識を捕らわれること無く跳ね除ける。
(宵の歌ならば聞き惚れてしまうやもしれんが……)
 図らず似たような思考へと陥るのは二人の付き合いの長さ故か、それとも愛の深さ故か。
 そっと逸らした視線が絡みつくと、安心しろとばかりに小さく笑う。

「……大丈夫だ。俺は術から逃れている故に」
 互いの意識が捕らわれていないことを確認するように頷いた二人は、再び眼前の男へと意識を向ける。
 最初に動き出すのはザッフィーロ――いつだって宵の為に動き、敵の動きを防ぐのは彼の役割だ。
「赦しを求めぬ者には何も出来ぬ……生きる限り纏わり積もる人の子の穢れを今返そう」
 術を紡ぐザッフィーロの足元から、蠢く影のようなものが溢れだす。
 それは彼が身に溜めた赦しを与えてきた人々の罪と穢れ――穢れの影。
 地を這うように広がる“それ”は、歌い続ける男の足元に絡むと全身を縛り上げた。
 その身に起きた変化に驚き、男は歌を止める――続き敵へと追撃するのは……言葉を紡ぐのは、宵の役目だ。
「彼女がいなければ存在を保てぬ貴殿も、そのような暮らしは長くは続かぬとお分かりでいらしたはず……もう一度人前に出られるようになりたいと思いませんか?」
 二人が己が歌に聞き惚れていないことに気付いた男は、初めてその能面のような表情に変化を見せた。
「僕たちはそれをかなえるお手伝いが、できます……噺家としてもう一度、人々にすばらしい語りを披露してみたいとは思いませんか?」
 宵が紡ぐのは、転生への誘い。
 そして転生へと導く為に放つ、流星の一撃だ。

 宵がその手に握る星煌く杖を振るえば、雲を斬り裂き流星が飛来する。
 渡り廊下ごと粉砕するその大質量の一撃は、憎々し気に二人を睨む男を飲み込んだ。
 爆音と共に大地が震え、土煙が辺りを覆いつくす。

 辺りを、静寂が包み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紗我楽・万鬼
嗚呼真逆の本場もんじゃあないですか!
ほらあっし家ではなく噺屋でしょ
出すもん出鱈目ですからね!

にしてもお前さん男前ですねぇモテそうですね
所で愛情ってのは海より深く深淵より尚恐ろしいんですってね
執念とは紙一重、ただ力に成りたいなんてお綺麗な建前
あんたを愛してるお前が欲しい
一方的な執着が『枷』と成る
影から湧き出た数多の手がお前さんを捕えてしまうでしょうね
私だけを視てと視界も奪う
嗚呼ー愛されてますねぇ
身動きできない位に

てな訳で騙り生んだ『手』で獣ごと影朧拘束攻撃しやしょうか
喧しいんで口も塞いで…え?真似?
あっし女将さんに愛されてませんから無理ですね!
世の中ね、騙ったもん勝ちですよ
御機嫌ようと槍で一突き




「嗚呼真逆の本場もんじゃあないですか!」
 巻き上がる土煙の中を、紗我楽・万鬼(楽園乃鬼・f18596)は愉しそうに進む。
 常人であれば真っすぐ進むだけでも苦労しそうな足場と視界の悪さをものともせず、彼は吸い寄せられるように影朧の元へと辿り着く。
 負傷により身体をよろめかせた男は、訝し気に万鬼を睨む。
「……同業、かい?」
 その服装やその手に握る扇、そして何より姦しく喋り続けるその様相から同業かと問い掛けられた万鬼。
 しかしその問いに対し彼は、嬉しそうに、それはそれは愉しそうに訂正をするのであった。

「いえいえ、ほらあっし家ではなく噺屋でしょ!? 出すもんぜーんぶ、出鱈目ですからね!」
 万鬼の言葉が理解が出来ないとばかりに、額に皺を寄せる男。
 しかし万鬼はそんな男の様子など知りもしないとばかりに、言葉を紡ぐ。
「にしてもお前さん男前ですねぇモテそうですねぇ、所で愛情ってのは海より深く深淵より尚恐ろしいんですってね?執念とは紙一重、ただ力に成りたいなんてお綺麗な建前……あんたを愛してるお前が欲しい、なーんて言っちまって」
 流れ落ちる滝のように、万鬼は次々と言葉を続ける。
 そんな彼の様子が、出鱈目の語り口が酷く気に入らないとばかりに、男は段々と不機嫌さを募らせれば、ついには止めろと声を荒上げ苛立ちを顕わにする。

「一方的な執着が『枷』と成る、とくりゃ……ほらほら、影から湧き出た数多の手がお前さんを捕えてしまうでしょうね。私だけを視てと視界も奪う、嗚呼ー愛されてますねぇ……身動きできない位に」
 万鬼が言葉を紡げば、その足元から黒き異形が顔を出す。
 それは奇しくも男と同じ異能。
 語れば言葉は形どり、怪異と化して力を振るうのだ。
「世の中ね、騙ったもん勝ちですよ」
 真似た異形を生み出そうとするも、男はその動きを黒き異形に封じられる。
 憎々し気にこちらを睨む男へと万鬼は愉悦の表情を向ける。

「御機嫌よう」
 月夜で刃がきらりと光れば、長柄はするりと男へと滑り込む。
 小さく、男の苦悶の声が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
◆SPD
どうしたらよかったのか、だと?
…少なくとも他の人間を巻き込んだのは間違いだ

真の姿を解放(月光に似た淡い光を纏う。犬歯が牙のように尖り、夜の狼のように瞳が輝く)
更にユーベルコードを発動。情念の獣は攻撃を増大した反応速度で『見切り』、『カウンター』の射撃で牽制

影朧は転生の為、行き詰っている現状の打破を考えるよう『言いくるめ』を試みる
ある人の受け売りだが…何もせず過ごすだけでは存在はしていても生きているとは言い難い
あんたが本当に生きる為に必要なのは、現状を脱する気概だと思うがな
望めば生まれ変わる事すらできる。ここは、そういう世界だろう?

若女将は乱入警戒、阻止する
…できれば、傷付けず確保したい




「私は……どうしたら、よかったのだろう」
 咳き込む度にその床を紅に濡らしながら、男はゆっくりと立ち上がる。
 息絶え絶えといった様相の男は、小さく、ゆっくりと独白するかのように言葉を溢す。
 その追い詰められた状態で自ずと溢れた言葉こそ、まごうことなき彼の本音なのであろう。
「どうしたらよかったのか、だと?」
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は冷静に、油断せずに男に相対する。
 彼にとって目の前の男や若女将は正道を外れた犯罪者。
 何を今更と心に小さく燻るものを感じながらも、外れた者を正道へと引き戻すのも、世界を守る猟兵としての仕事なのだと心を引き締める。
「……少なくとも、他の人間を巻き込んだのは間違いだ」
 故に目の前の男は討たねばならない。
 そうしなければ、影朧は道を正すことなど出来ないのだから。

 雲の隙間から降り注ぐ月明かりを受け、シキの全身を淡い光を包む。
 牙は見るからに鋭く姿を変え、その瞳は月明かり以上に煌々と光り輝いていた。
 逆立つ銀毛が身を包む光を細やかに反射させ、荒い息が白い煙をあげる。
 その姿こそ、人狼であるシキの真の姿。
 彼が忌み嫌う、獣の力だ。

「知ったような口をっ!」
 苛立つ男の瞳もまた煌々と光輝く。
 他者の異能を模倣する男の異能の力だ。
 両者の動きは常人では目視すら難しい領域に達していた。
 巻き起こる土煙が、へし折られる桜の樹が、弾け飛ぶ建物の残骸が戦闘の激しさを物語る。
 幾度となく重ねられた戦闘音の後に、一際大きい轟音と共に壁へと叩きつけられたのは……敗者は、影朧の男だ。
 既に力を失い元の姿を取り戻したその男の様相は、見る者に彼の終わりが近いのだと感じさせる。

「ある人の受け売りだが……」
 こつり、こつりとブーツの音を響かせながら、シキは男へと歩み寄る。
 戦闘に巻き込まれない位置で仲間の猟兵に取り押さえられている若女将を意識的に視界から外すと、男へと引導を渡す為にその銃口を額へと向けた。
「何もせず過ごすだけでは存在はしていても生きているとは言い難い。あんたが本当に生きる為に必要なのは、現状を脱する気概だと思うがな……望めば生まれ変わる事すらできる。ここは、そういう世界だろう?」
 その言葉は、果たして彼の心に届いたのだろうか。
 血を吐き出すと共に小さく笑った男は、ぽつりと最後に言葉を残す。

「若い、な……」
 乾いた銃声が響いた後、辺りは無数の花びらで覆われた。
 月夜に照らされ、舞い踊りながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月01日
宿敵 『模倣と言われた噺家『桂馬亭・詠松』』 を撃破!


挿絵イラスト