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金欲の怪物

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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「グ……ムムムムム、これはまずい……!! こんな大量の品、どうやって売り捌けばいいんだ……!!」
 アックス&ウィザーズのとある港街、その片隅にある巨大な商館、『ダーラン商館』の主ダーランは途方に暮れていた。商館の地下保管庫に収められた、大量の工芸品の山を前にして。
「金ピカな派手な壺に、どこの芸術家が描いたかも分からん絵画……それにこれは何だ? ブレスレットか? くっついてる宝石っぽい物は本当に宝石なんだろうな? 全く……こんな怪しげな品、ウチの商館には並べられんぞ。ハァ……」
 色々と愚痴を言っているものの、そもそもの発端はダーラン自身にあった。つい一週間前。ダーランは酒場で知り合った若い旅商人に上手い事のせられ、大量の工芸品を言い値で買い取ってしまったのだ。
「あの時は酔っ払ってたからなぁ……まあ仕方ない。港街のバザールにでも店を出して、少しずつ売っていくしか……」
 と、その時。ダーランは地上で何かが破られる様なそんな物音を確かに聞いた。
 急いで階段を駆け上がったダーランが目にした物は、先程の工芸品に勝るとも劣らない金ピカな装飾品を身に纏い、黄金の頭蓋を被った奇妙な魔物であった。
「カッカッカッカッカ……カーッカッカッカ!! ご機嫌麗しゅう、皆々様方!! おっと、貴様が此処の主か? 悪いがこの商館はたった今からこの俺様、呪飾獣カツィカ様のモノだ!! 分かったらさっさと出ていきな!! 金目の物を置いてなぁ!!」
「な、何をやっている傭兵共!! さっさとこいつをつまみ出せ!!」
 ダーランが怒号を飛ばすと、商館の各所を警備していた雇われの兵たちが一斉に姿を表し、呪飾獣カツィカと名乗る怪物に襲いかかった――!!
「オイオイオイ、怖いじゃないか、そんな物騒な武器を持って襲ってくるだなんて……本当に心底恐ろしくて、ついついこっちも手が出ちまいそうだ……!! カッカッカッカッカ!!」
 下品な笑い声と共にカツィカが両腕を大きく掲げると、その両掌から放たれた禍々しい黒き呪詛が、傭兵たちを纏めて包み込み、その動きを一瞬にして封じた!!
「カッカッカッカッカ!! ……おい、これで分かったか? テメェらの安い命なんざに興味は無ぇんだ。さっさと出ていかねぇと、俺の可愛い子供達が、てめぇら全員なぶり殺しちまうぜ?」
 カツィカがドスを利かせた声で呼びかけると、その背後からヒョコヒョコと仔竜の群れが姿を表した。
「オジサン、オジサン、アソンデイイ? アソンデイイ?」
 仔竜達は無邪気な様子で縛られた傭兵達の元へ雷を纏った超高速移動で駆け寄ると、その口を大きく開き、中から荒々しい雷のブレスが――。


「よう、お前ら。集まったみたいだな。早速だが仕事の依頼だ……アックス&ウィザーズ世界のとある商館を、金欲に塗れたバケモンと仔竜達が襲撃した」
 グリモア猟兵である人間のクレリック、フィリス・クロードは集められた猟兵達を前に説明を始める。
「襲われたのは、ダーラン商館ってとこだ。突如として現れたバケモン……呪飾獣カツィカと名乗る怪物と、奴が率いる仔竜達は、商館を警備していた傭兵達の多くを殺害。商館の主、ダーランを含む数人は何とか逃げ延びる事が出来たが、商館は未だ奴らに占領されている」
 今回の目的は商館に居座り続けている呪飾獣カツィカと仔竜達を倒し、商館を取り戻す事である。
「場所がハッキリしてる分、やる事は単純だが……どうやらダーランは自身の商館を取り戻す為、それなりの数の冒険者達を雇ったみてぇだ」
 とは言え、金目の物は全て商館に置いてきてしまった。後払いの成功報酬でも構わないという一部の冒険者が、商館奪還作戦に協力してくれるのだという。
「今回集まった冒険者達の力量は、明らかに猟兵に劣る。が、全くの役立たずと断じる程弱くもねぇ。というか実際の所今回の敵はかなり強い。戦える人手はいくらあっても困る事は無いだろうぜ」
 そういう事なので、現場にテレポートした猟兵達は、商館の真ん前に集合している冒険者達と共に、カツィカ率いる一団に攻撃を仕掛ける事となる。
「まぁ、まず戦う事になんのは仔竜……『戯れる仔竜』だろう。純粋で無邪気……そう言えば聞こえは良いが、要は善悪の区別が付かねぇ性質の悪い人殺しだ。武器を手に攻撃を仕掛けても、奴らはそれを唯の『遊び』だと思って、元気に攻撃を仕返してくるだろうよ」
 呪飾獣カツィカに関して判明している情報はそう多くないが、どうやら呪詛の様な物を扱い攻撃してくるのだという。
「さ、アタシからの説明はこんな所……おっと、そうだ忘れてた。奴らバケモノ一団を倒した後だが……どうやらダーランは大量の不可解な工芸品を仕入れちまって随分困ってるらしい……人助けは猟兵の華だろ? 上手い事奴に協力して、工芸品を売りさばいてきな……法と倫理に準じる範囲でな。さあ、仕事の時間だ!! 怪我すんじゃねぇぞ!!」


Ric
 Ricです。仔竜と金ピカの怪物をぶっ飛ばした後、怪しげな工芸品を市場で売りさばいてきてくださいませ。
 以下、補足です。

●章構成
 1章集団戦(戯れる仔竜)、2章ボス戦(呪飾獣カツィカ)、3章日常(アックスウィザード商店開店)となっております。

●冒険者
 ダーランが雇った冒険者達。20人程。戦闘力は高く無いが、やる気はある。

●工芸品
 ダーランが買い取ってしまった大量の怪しげな工芸品。怪しげだが一応値段分の価値はあるらしい。
 その種類は多岐に渡り、ありそうな品物は大体あると思われる。
 金運やら仕事運やら色々な運が上がりそうな金ピカの壺や、前衛的にも程がある新進気鋭の芸術家が描いた絵画、ゴテゴテの宝石が取り付けられたブレスレットやネックレス等の装飾品が代表的な品物。
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第1章 集団戦 『戯れる仔竜』

POW   :    じゃれつく
【爪 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    未熟なブレス
自身に【環境に適応した「属性」 】をまとい、高速移動と【その属性を纏わせた速いブレス】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    可能性の竜
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

迎・青
うう、あうあう!
ちっちゃいドラゴンかわいいけど、遊ぶのも楽しいけど、いじわると乱暴はだめだよぅ!

周囲の猟兵と協力して動く
冒険者たちには一応、無理をしないように言う
(子供に言われたくない!とか怒られたらどうしよう、と怯えつつ)

他の猟兵や冒険者達の負傷や消耗の状態に気を配り
【生まれながらの光】を使用した治療をメインに動く
回復不要時・撃破可能な個体がいる等で攻撃が必要な時は、持っている杖から光を発する(【属性攻撃】)


アリア・ヴェルフォード
小さい竜は可愛いと思いますが無邪気過ぎるのも困りものですね!
人を殺すことを遊びと捉え、それに楽しみを覚えてしまったなら倒す他ありません!

【POW】
【属性攻撃】による【範囲攻撃】や【衝撃波】、『クロスカリバー』で複数の竜を巻き込みながら戦いましょう!

倒しきらなくても弱らせさえすれば冒険者の人達でもなんとかできると思いますからね
1体1体仕留めていくのではなくより多くの竜に傷をつけることを意識しましょうか
冒険者の皆さんには弱った仔竜に止めを指す役目に回ってもらいましょう

回避手段は無邪気であれば禄に考えずに目に見える物を攻撃する…と思いますし【残像】で誘導しつつ回避しましょうか


花邨・八千代
オーケーオーケー、遊ぼうぜチビ共
笑っても泣いても最後まで付き合ってもらおうじゃねぇか
俺と遊ぶのはちっとばかしが折れるぞ?

◆戦闘
掌を切り裂いて【ブラッド・ガイスト】を始動
南天を巨大な鋸に転じて仔竜共を切り払うぞ
不意打ちの攻撃は「第六感」で可能な限り避けつつ「怪力」で得物をぶん回しながら「2回攻撃」で出来るだけ多く敵を巻き込むぜ
「傷口をえぐる」で追いこみを掛けながら敵が逃げねェよう注意しつつ倒していきてぇな

「恫喝」で挑発しつつ全力で暴れ回るぜ
文字通り死ぬほど楽しませてやるよ、おチビちゃん共
パパのとこに帰りたくなくなるくらいにな




 身を切り裂く様に空気が冷え込んだ、とある日の朝。
 商館を取り戻すべくダーランが雇った20人程の冒険者達と、猟兵達が商館前に集まっていた。
 屈強な男たちが立ち並ぶ中、一際ちんまい身体を持つ少年がいた。ヤドリガミのウィザード、迎・青だ。
「うう、えっと、そのぅ……あ、あんまり無理しないでください……ね? け、ケガを治すのは一応、得意分野というか、なんというか……えと、そんな感じですけど……」
「お、おう……?」
 厳つい顔面の傭兵達にオドオドと投げかける青。『生意気なガキだなこんちくしょうべらんめぇ』等と怒鳴られるのではないかとかなり心配していた青だったが、それは杞憂に終わった様だ。

「よし、そろそろ時間だな……突入するぞ!!」
 そして、ついにその時がやって来た。1人の傭兵の号令によって冒険者、そして猟兵達は一気に商館の正面扉まで接近すると、景気よく扉を吹き飛ばし館内に突入した。
「ワ、ビックリシタ!!」
「オキャクサン? オキャクサン? オキャクサンダァ!!」
「オキャクサンガキタラ、イッショニアソンデアゲナサイッテオジサンガイッテタ!!」
 突入するや否や、戯れる仔竜達はピョコピョコと跳ねながら一斉に猟兵達の方を向いた。どうやら心底歓迎されている様だ。
「「「アソボウ、アソボウ、アソボウヨ!!」」」

 仔竜達は猟兵達の返答を待とうともせず、各々が好き勝手に攻撃を始めた。ある者は凄まじい雷のブレスを、ある者は思いつきで放った氷の竜巻を。純真無垢かつ凶悪精強な攻撃が、凄まじい速度で冒険者達にダメージを与えていく。
「うう、あうあう!! ちっちゃいドラゴンかわいいけど、遊ぶのも楽しいけど、いじわると乱暴はだめだよぅ!」
 だが、やられっぱなしという訳にもいかない。青は仔竜達の攻撃を受けた冒険者達に向け聖なる光を放つと、彼らが受けた傷を瞬く間に癒していく。
「おぉ、こいつはスゲエな……やるじゃねぇか、坊主」
「う、うん……どういたしまして……」
「よぉし、こっから反撃だ!! 一匹ずつ潰せェ!!」
 複数人を回復した事による疲労を受けながらも、青はどうにかぎこちない笑みを返した。そして傷が癒やされた冒険者達が一斉に武器を構え反撃し、仔竜達に次々と攻撃を仕掛けていく。
「イタイッ!! ウー、コッチカラモオカエシダ!!」
「……っ!! さ、させないよぅ!!」
 僅かな所で仕留め損ねた一匹の仔竜がその口を大きく開いた。しかし青が放った赤い光が、間一髪の所で仔竜を消滅させたのだった。
「あ、危ない所だったぁ……!!」
 青は冷や汗を拭うと、苦戦を強いられている他の冒険者の元に援護へ向かう。

「小さい竜は可愛いと思いますが、無邪気すぎるのも困りものですね! 人を殺すことを遊びと捉え、それに楽しみを覚えてしまったのなら倒す他ありません!!」
 人間の剣豪、アリア・ヴェルフォードは、所構わず仔竜を前に気合を入れると、一気果敢に仔竜の群れに飛び込んだ。
「オネエチャン、アソボ!! アソボ!!」
 するとアリアの接近に気づいた仔竜達が、その鋭い爪を振り上げ次々と攻撃を仕掛けていく!!
「速い……!! ですがそんな練度も殺気も伴わない攻撃に、易々と当たるわけにはいきません!!」
 アリアは神経を集中させ、必要最低限な動作で爪を回避する。
 残像を伴うアリアの動きに釣られた仔竜達がめげずに爪を振るい続けるが、ギリギリの所で当たらない。それどころか攻撃を続けている内に、むしろアリアの方が仔竜の動きを完全に見切ってしまった様だ。
「それで終わりですか? でしたら、次は私の番です!!」
 反撃に出る余裕すら生まれたアリアは、飛びかかってきた仔竜の首元を掴み上げると、一気に床へ叩きつけた。そしてそこから放たれた灼熱の衝撃波が、アリアを取り囲む仔竜達を纏めて吹き飛ばす!!
 キャーキャーと鳴きながら宙を舞う仔竜達。アリアは床に叩きつけた仔竜を放り投げると、両手に嵌めた白と黒の手袋を外した。
 するとその2つの手袋――アイテムボックスと鞘の役目を兼ねる手袋から、聖剣と邪聖剣。2本の刀が飛び出した。アリアはそれらを掴み取ると、周囲の仔竜に目をやった。
「リアクター臨界突破! 聖光と暗黒の波動で素粒子に還れ! 『クロス・カリバー!!』」
 そして放たれた、白と黒の苛烈な斬撃の嵐。それは仔竜達の身体を纏めて斬り裂き、その内の数体を仕留めた。
「十分傷は与えました……トドメは任せましたよ」
 アリアはそう呟くと次の標的を探す為に駆け出し、残る仔竜達は冒険者達の攻撃に呑まれ消滅したのだった。

「タノシイネ! タノシイネ! モットアソボウ! アソボウ!!」
 同胞達が次々と倒されていても尚、仔竜達は無邪気で、心からこの戦いを楽しんでいた。羅刹のグールドライバー、花邨・八千代は、そんな仔竜達に呆れ混じりの冷めた視線を向けていた。
「オーケーオーケー、遊ぼうぜチビ共……笑っても泣いても最後まで付き合ってもらおうじゃねぇか」
 そう言い放つと八千代はニヤリと笑みを浮かべ、自らの掌を躊躇なく切り裂く。流れ出す鮮血が八千代が手にした印籠、南天を赤く染めた。
 すると印籠に描かれた南天紋が鈍い光を放ち、巨大な鋸へと転じた。
「だが……俺と遊ぶのはちっとばかし骨が折れるぞ?」
 そして八千代は駆け出した。新しい遊び相手に仔竜達は喜び勇んで八千代に飛びかかった。死角から放たれる爪やブレスを、八千代は視線を向けるまでもなく避けると、力任せに鋸を振るい数体の仔竜を斬りつけた。
「ほら、これで満足か? おっと、その顔はまだ足りてねぇって顔だな……だったら、もう一発くれてやるよ!!」
 床を踏みしめ、更に八千代は鋸をぶん回す。的確に傷口を捉えた斬撃は、仔竜達に凄まじい激痛を与えた。
「ギ、ギィィイイイ……!!」
 流石の仔竜達も八千代の猛攻に怯む様に後ずさるが、ここで躊躇する八千代ではない。すかさず仔竜達との距離を詰めると、再び笑みを……それはそれは酷薄な笑みを浮かべた。
「おいおい、逃げんじゃねェよ……最後までっつったろ? 文字通り死ぬほど楽しませてやるよ、おチビちゃん共……!!」
 そして、更に一撃、もう一撃と、八千代は本能のまま暴れまわり、仔竜の群れを跡形もなくl消し飛ばした。
「パパのとこに帰りたくなくなるくらいにな…………もう聞こえてねェか」
 八千代はフンと鼻を鳴らすと、次なる得物を探し再び駆け出すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

清水寺・大牙
「商売ならいざ知らす、強奪、それもオブリビオン絡みなら無視はできない…か」

【目的】
無論オブリビオンの撃破だ

【動機】
オブリビオン絡みとあっては無視も出来んし…相手は金払いも良さそうだ
猟兵とは言え先立つものは重要だからな

【行動】
「POW」で対抗
あいにくと正面から切り結ぶしか能がないのでな
少しでもダメージを与えつつ、立ちふさがり仲間の攻撃の隙を作る事で勝利に近づけたい




「商売ならいざ知らず、強奪、それもオブリビオン絡みなら無視はできない……か」
 サイボーグの剣豪、清水寺・大牙は楽しげかつ激しく暴れまわる仔竜の群れを見据えながら、静かに呟いた。
「それに……今回の相手は金払いも良さそうだ。猟兵とは言え先立つものは重要だからな」
 淡々と言い、機械的な動作で刀を抜いた大牙。誰かを斬る依頼を引き受け、そして斬るべき相手が目の前に居るのであれば、後はただ斬るのみである。
「オニイサン、オニイサン! アソボ! アソボ!!」
 大牙に目を付けた一匹の仔竜が、雷を纏った突進で大牙の眼前に迫る。そして口を開くと、間髪入れず雷のブレスを解き放った。
「…………」
 対する大牙は、仔竜の強襲に眉1つ動かす身を逸らしてブレスを回避。そのまま軽妙な動作で刀で斬り上げると、両断された仔竜の身体が塵と化して消えた。
「こんなものか。あいにくと俺は正面から切り結ぶしか能がないが……それでも報酬分の仕事は果たせそうだ」
 刀を振り下ろし、刀身に纏わりついた塵を払った大牙。次の標的を探そうとする必要も無く、再び仔竜が大牙の元へ突進してきた。先程より若干数は多いが。
「タノシイネ! タノシイネ!!」
「そうでもない」
 楽しげに振り下ろされるいくつもの仔竜の剛爪。大牙は刀を振るい爪の一撃を器用に弾きながら、静かに好機を待つ。
「……今だ」
 汗1つかかず攻撃を避け続ける大牙に、仔竜達は思わずムキになり、段々と攻撃が雑になっていた。そして生まれた一瞬の隙に、大牙は自身を取り囲む仔竜達に鋭い斬撃を放った。正確に急所を捉えた一撃は仔竜達の息の根を止め、床には更に塵が降り積もる。
「そろそろ敵大将が出てきても良い頃合いだがな……まあ良い」
 大牙は慣れた動作で刀を振るうと、未だひしめく仔竜達に更なる攻撃を加えていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヒビキ・イーンヴァル
怪しげな工芸品……まあ深くは突っ込まんでおこうか
とりあえず仔竜どもを蹴散らそう
商館の目の前っつーことは、あまり派手に暴れると
建物にも被害がいくか?
少々気を付けて行動しよう

とりあえずウィザード・ミサイルで仔竜を攻撃していく
『二回攻撃』を狙いたいところ
ぶちかますのは傭兵たちが戦っているところかな
ま、援護射撃ってヤツだ
仔竜どもの注意をこっちに逸らしてやろう
んで、引き付けつつ攻撃続行
傭兵さんたちも頼りにしてんぜー
あまり無理されても困るが

仔竜からの攻撃は、『第六感』で避ける



「怪しげな工芸品……まあ深くは突っ込まんでおこうか。とりあえずは仔竜どもを蹴散らそう」
 人間のマジックナイト、ヒビキ・イーンヴァルは『天蒼の魔杖』を構え、仔竜共が飛び交う商館内を見渡した。
「全く派手に暴れてやがるな……多少の被害は止むj無しって所だが、さっさと終わらせてこれ以上被害が出ないようにしねーとな」
 一切の遠慮も分別も無く暴れまわる仔竜達であったが、戦闘開始時に比べればその数を大きく減らしていた。しかしその一方で、強力な力を持たない冒険者達もかなり疲弊し、傷を負ったものも少なくない。
「さて、俺もそろそろ本腰入れないとな……」
 そう呟き、ヒビキは手にした魔杖に己の魔力を籠めていく。そして杖を勢いよく振り上がると、ヒビキの頭上に数十本の炎の矢が出現した。
「援護射撃といくか」
 そして杖を軽く振り下ろすと、炎の矢は苦戦を強いられている冒険者と相対している仔竜に次々と突き刺さり、その身体を焼き焦がしていく。
「ギギィィイイ……!!」
 すると、矢を受けた仔竜の一体が、鳴き声を上げながらヒビキの頭上を目掛け魔力の塊を放出した。
「…………嫌な予感しかしないな」
 それを見たヒビキは、直感的に脅威を察知。考えるよりも速く身体が後ろへ退がると、先程までヒビキが立っていた地点に雷の豪雨が降り注いだ。
「残念だったな、ハズレだ……ところで、俺ばかりにかまってていいのか?」
 ヒビキが言い放った次の瞬間、仔竜達の背後に突撃した冒険者達が、次々と武器を仔竜に叩きつけた。それを確認したヒビキが更に杖を振るうと、弱った仔竜達に再び炎の矢の束が放たれ、次々と消滅していくのだった。
「ナイス連携だ。頼りにしてんぜー、傭兵さんたち……あまり無理されても困るがな」
 仔竜達の数も残り僅か。ヒビキは残りの仔竜を掃討すべく、再び杖に魔力を籠めていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
…加減を知らずに殺めてしまうとは
猫が鼠にじゃれつくようなものなのかもしれんが…このままにはしておけんな

基本は【ジャッジメント・クルセイド】を遠距離から放ち攻撃
じゃれつく攻撃は受けてしまったらダメージが大きそうだからな
『二回攻撃』『高速詠唱』『全力魔法』『スナイパー』等持てる技能を使いながら体力を減らせれば幸いだ
ブレスと魔法は…多少『オーラ防御』『電撃耐性』『火炎耐性』『氷結耐性』がある故、なるべくは避けたいが避けられぬ時は食らっても攻撃優先で行く
囲まれた場合はメイスにて『なぎ払い』一旦距離を取りながら攻撃を続けよう
…亡くなった傭兵達の為にも少しでも数を減らす事が出来る様、努力したいと思う



「……加減を知らずに殺めてしまうとは。猫が鼠にじゃれつくようなものなのかもしれんが……このままにはしておけんな」
 ヤドリガミの聖者、ザッフィーロ・アドラツィオーネは荒れに荒れた商館内部に足を踏み入れ、周囲を見渡す。既に仔竜の多くが倒されたが、冒険者達もその半数近くが戦闘不能、あるいは撤退に追い込まれている。
「新たな死者は出ていないようだが……手早く終わらせて貰おう」
 そう呟き、ザッフィーロは指先を前方に向ける。次の瞬間、虚空から放たれた聖なる光条が、遠方ではしゃぎまわる仔竜の群れに降り注ぐ。
「ギィィイイイ……!!」
 光を喰らった仔竜の群れが、狙いを冒険者達からザッフィーロに変え、雷を纏いザッフィールの眼前に突撃。口を大きく開き一斉にブレスを放たんとする。
「避けるのは間に合わないな。ならば受けるしかない」
 ザッフィーロは片手に持っていた魔導書から魔力を引き出すと、素早く詠唱を行った。するとザッフィーロの全身を淡いオーラの防御壁が覆う。
「ガァァアアアアア!!」
 次の瞬間、仔竜達のブレスがザッフィーロに降り掛かった。だが、防御壁によって大きく威力を削がれたブレスを、ザッフィーロは難なく受けきった。
「危ない所だ……さて、あまり近づかれるのは困る。少し離れて貰おうか」
 そしてザッフィーロは自身を取り囲む仔竜達に向け大きくメイスを振るった。するとメイスの柄に仕込まれた鎖が大きく伸び、仔竜達をまとめて打つ。
「これで終わりだ」
 仔竜達の身体が吹き飛び、大きく怯んだ直後、ザッフィーロは再び指先を仔竜達に向ける。再び降り注いだ聖なる光が、残る仔竜達を全て消し去ったのだった。
「これで、正真正銘全滅させたな……さて。呪飾獣とやらは何処に居るのだろうか」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『呪飾獣カツィカ』

POW   :    呪獣の一撃
単純で重い【呪詛を纏った爪 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    呪飾解放
自身に【金山羊の呪詛 】をまとい、高速移動と【呪いの咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    カツィカ・カタラ
【両掌 】から【呪詛】を放ち、【呪縛】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナミル・タグイールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ハァ……随分と騒がしいから、余程迷惑な客が来たとは思っていたが……やってくれるじゃねぇか。なぁ?」
 仔竜達が全滅して程なくした頃。ついに今回の事件の首謀者、呪飾獣カツィカが地下から姿を表した。そして苛立ちを隠そうともせず、猟兵と冒険者達を睨みつける。
「ケッ、全く役立たずのガキ共が……うるさいだけじゃなく厄介払いにもならねぇとは……まあいい。テメェら覚悟は出来てんだろうなぁ? この俺様の館を襲って来たんだ……最大限の苦しみを与えて、全身バラバラに引き裂いてやるよ……!!」
 そう言って、カツィカは鋭い爪を持つ両手を大きく広げた。するとその全身を、何処からか湧き上がってきたどす黒い呪詛が覆い尽くした。
 汚い欲望と呪詛に塗れた獣。下劣な存在には違いないが、強力な力を持っている事にも違いは無い。
「さぁ、血祭りの時間だ……!!」
迎・青
(※連携・アドリブ歓迎です)

あうあう、コワくない、コワくない…!
イジワルだめぇ、お店、ちゃんとおじさんにかえしてよぅ!
(臆病なタチではあるが、懸命に恐怖を振り払う)

後方でびくびくおろおろしつつも状況を観察
他の猟兵・冒険者の負傷や消耗に気を配り
【生まれながらの光】による負傷者の治療をメインに動く
回復不要時・攻撃の必要が生じた時、仲間に危機が迫った時は
持っている杖から光の【属性攻撃】を放つ




「死に晒せェェェエ!!」
 カツィカは全身に金山羊の呪詛を纏い、雄叫びを上げた。呪いを纏ったその咆哮は、それを聞いた全ての者の心をじわじわと侵食してゆく。
「あうあう、コワくない、コワくない……!」
 迎・青は震える手足を必死に抑えながら、しっかりと杖を握りしめる。
 目の前に居るのは、人の命を奪うことに躊躇など無い怪物。恐ろしくないといえば嘘になる。だがそれ以上に、やらねばならない事があるのだ。
「猟兵のみんなは今の所大丈夫、だよね……だけど冒険者のみんなは、結構、あぶないかも……」
 怯えながらも状況を観察する青。自分はやはり他者の治療、援護に回るべきかという考えに至ったその時、カツィカが再び動き出す。
「取るに足らねぇ雑兵共が!! 頭が高いんだよ!!」
 鋭い眼光と共に両手を突き出すカツィカ。両掌から放たれた呪詛が冒険者達の動きを封じたかと思うと、凄まじい速度で冒険者達に接近する!!
「ま、間に合って……!!」
 カツィカが動き出したのとほぼ同時に、青は聖なる力を宿した杖を大きく突き出した。すると杖の先から淡い癒しの光の奔流がが冒険者達の全身を包み込み、それに重なるかの様に放たれたカツィカの呪いの咆哮が冒険者達を襲う。
「う、あうあう!! からだが、痛い……。だけど……!!」
 光を通じて、カツィカの呪詛の力が青を蝕んでいく。だが青は手を止める事無く更に癒しの力を強め、冒険者達の命を留めていく。
「グ、ウォォオォオオオ!! ……アァ、クソが!! 何してやがるんだこのクソガキが!!」
 ついにカツィカの咆哮が途切れ、カツィカはその禍々しい殺気を青に向けた。
「い、イジワルだめぇ、お店、ちゃんとおじさんにかえしてよぅ!!」
「……アァ!? 生意気言ってんじゃねぇぞガキ!! てめぇのせいで雑魚共を殺し損ね……グオッ!!」
 そして今にも青に襲いかからんとしたその時、呪詛の拘束から解放された冒険者達の矢や剣閃がカツィカに突き刺さる。
「今だ、坊主!!」
「う、うん!!」
 冒険者達の攻撃にカツィカの意識が一瞬逸れた。そしてその一瞬の隙に、青は杖から灼熱の赤き光を放ち、カツィカの全身を焼き焦がした。
「チッ……!! 何処までもイラつく野郎共だ……!!」
「ぜ、ぜったい、誰も死なせたりしないよう……!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​


※トミーウォーカーからのお知らせ
 ここからはトミーウォーカーの「真壁真人」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
クイン・クェンビー
未完・停滞・閉塞! 終わらぬ事件の気配を察知して!
誰より速く一番に、遠くの星からひとっ飛びに! 最強最速最優ヒーローのファースターが登場だよイェイイェーイ☆
てなわけで御託は無用・不要・不問でUC【スーパー・ジャスティス】発動だー!!
やい悪者! クインお前のことよく知らないけど、悪そうだからやっつけちゃうね☆
悪への対抗心をモリモリ燃やして真正面から突撃突進チャージでパンチパンチキックキックとどめに頭突きでどーん!!
倒せた!? 倒せてないね!! それなら2セット目いっちゃうかー☆



「アア……イラつく……イラつくぜぇぇッ!!」
 怒りに燃えるカツィカの爪が長く伸びた。穢れた爪に、巨大な呪詛が収束していく。
「俺様を怒らせたことを後悔しながら血袋になって飛び散れやダボがァァッ!!」
 目に見えるほどの強力な呪いの力に緊張する冒険者達を目掛け、カツィカは爪を振り下ろさんとする。
 だが、その瞬間に飛び込んできたのは黄金の光に包まれた影だった。
 爪を受け止めたその影に、カツィカは誰何の声を向ける。
「テメェ、何者だ!?」
「未完・停滞・閉塞! 終わらぬ事件の気配を察知して! 誰より速く一番に、遠くの星からひとっ飛びに! 最強最速最優ヒーローのファースターが登場だよイェイイェーイ☆」
 名乗りを上げたクイン・クェンビー(ファースター・f16715)は、カツィカの顔が怒りと困惑に歪むのを見た。
「ファースターだと……!? またフザけたやつが来やがったな」
「ふざけてるのは、そっちの方でしょ? 勝手に人の館を占拠しちゃうなんて……さっ!」
 力を籠めた足でカツィカを蹴り飛ばし、クインはビシッと指先をカツィカに突きつけた。
 クインとしても、このオブリビオンのことをよく知っているわけではないが、苦しめられている人がいる。何よりクインの後ろには、到底カツィカには対抗しえない冒険者達もいる。
 ヒーローが戦う理由としては充分だ。
「御託は無用、いっくよー!!」
 黄金のオーラを激しく噴き上がらせ、クインは床を蹴った。
 迎撃に繰り出されてくるカツィカの爪をかいくぐり、そのままカツィカの胸板へと体当たり。
 木窓の砕ける激しい音と共に、クインはカツィカごと商館の庭へと飛び出した。
「まだまだ、こんなもんじゃないよ!!」
 黄金の光を帯びた拳と蹴りの連打が、カツィカの体に立て続けに突き刺さり、空中へとかちあげる。
「く、なんだこいつァ……!?」
「どーん!!」
 とどめとばかり、振り下ろしの頭突きの一撃を受けたカツィカが、地面へと叩き付けられる。
 だが、クインはまだ油断してはいなかった。呪詛の力が、なおも強まり、カツィカの体を取り巻いていく。
「やってくれんじゃねぇか、ファースター!!」
「倒せてないかぁ。それなら2セット目いっちゃおうか!」
 もうもうと立ち込める土煙の中から立ち上がるカツィカの姿を認め、クインは不敵に笑って見せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

萬場・了
よう!邪魔するぜ!盛り上がってるかよ!
〈首のUDC〉が落ち着かねえから、感覚頼って来てみれば。
おうおう、金ぴかじゃらじゃら!俺のダチにもそういうの好きなヤツがいたっけな。
まあ、いいや。俺は金目のもんはあんまし区別はつかねえが、未知や恐怖……面白そうなものには目がねえんだ!

ふひひひっ、縛る攻撃かあ。イイねえイイじゃねえか!
ただ、うちの子(首のUDC)、腹空かせてんだ。もっと好物(呪詛)振る舞って欲しいねエ……!
ま、俺の動きを止めた所でこのカメラ……【強制記録媒体】は止まらねえけどなあ…ッ!
〈生命力吸収〉させてもらった分、お代替わりにテメエには〈恐怖を与える〉ぜ!!



「よう! 邪魔するぜ! 盛り上がってるかよ!!」
「……あァ?」
 商館の庭先に叩き出されたカツィカは、不意にかけられた声に顔を向けた。
 そちらにいるのは、手にしたビデオカメラ越しにカツィカを見る萬場・了(トラッカーズハイ・f00664)。その覗き込むカメラの向こうで、輝く獣の頭蓋骨に覆われたカツィカの顔が、怒気も露わに了を見返してくる。
「ンだァ、てめェ……?」
「通りすがりの映画撮影班ってとこで」
 怒りをどこ吹く風と受け流し、了はカメラにカツィカの姿を口笛を吹いて捉え続ける。
「金ぴかじゃらじゃら、派手だねぇ! 俺のダチにもそういうの好きなやつがいたっけな」
「舐めくさりやがって……。血反吐をまき散らして死にやがれ!!」
 どこか危険なものを感じたのか、カツィカは了にもその敵意を向けた。
 両掌に宿ったドス黒い呪詛が、悪意と共に撃ち出される。自分の体に巻き付いてくる呪詛の塊を、了はむしろ歓喜すら浮かべて受け入れた。
「ふひひひっ、縛る攻撃かあ。イイねえ、イイじゃねえか!!」
「な、なんだ、てめェ……?」
 先ほどと同じ言葉ながら、明らかに薄気味悪そうなカツィカ。了は、彼へと注文をつける。
「ただ、うちの子は腹空かせてんだ。もっと好物を振舞って欲しいねエ……!!」
「!?」
 カツィカも、異常に気付いたのだろう。
 恐怖を糧とする、ネックウォーマー型寄生UDC。その模様かのようにも見えた牙が蠢き、呪詛を喰らい、暗い喜びの感情を了に伝えて来る。
 そして、カツィカは『見た』。
 了のネックウォーマーの牙が巨大に膨れ上がり、カツィカの呪詛を喰らいつくす光景を──。
「うごあぁァァ!?」
「ヒヒッ、なあ、あんたにはどんなものが『見えて』るんだ?」
 手にした恐怖をもたらす『呪いのカメラ』で、幻影に囚われ、闇雲に呪詛を放つカツィカを撮影しながら、了は奇妙に歪んだ笑みを浮かべる。
 カツィカが他者に与えて来たような恐怖こそは、了とUDC達の獲物に他ならなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花邨・八千代
お、真打登場ってやつゥ?
いいぜいいぜ、ガキ共だけじゃちっと物足りなかったとこだ。
めいっぱい遊ぼうぜ、アンタが死ぬまでな。

◆戦闘
「恫喝」で回りの冒険者を煽るぜ。
臆病風に吹かれてねェやつは一緒に突っ込もうぜ!ってな。
【羅刹旋風】で武器を振り回しつつ、「怪力」任せに一気に距離を詰めてぶちかますぜ。
一発じゃ終わらせられねェな、「2回攻撃」で連続して叩き込むぞ。
攻撃は「第六感」で避けつつ、冒険者がやられそうなら「捨て身の一撃」だ。
無論タダじゃやられてやんねーぜ。

よォ、折角なら楽しんで金貰おうぜ冒険者諸君。
ただし死ぬなよ、他の奴等の取り分が増えるだけなんだしな。



「真打登場ってやつゥ? んじゃ、俺も遊んで来るとするか」
 一方、商館の中では、花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)がカツィカの後を追って商館の外へ向かおうとしていた。その背に、冒険者の一人が声をかける。
「い、行くのか、あんた?」
「ったり前だろ? ガキ共だけじゃちっと物足りなかったしな」
 薙刀を軽々と振り回しながら答える八千代に、冒険者達は目をみはる。
「あんたらこそ、どうすんだい?」
 言って、八千代は薙刀の柄で床を小突いた。
 カツィカの迫力に怖気づきかけていた冒険者達が、床に走る震えに動かされたように八千代を見る。種族も年齢もバラバラな冒険者達。各々に事情があるのだろうが、それは八千代の知ったことではない。だが、言えることはあった。
「ビビって震えてても金は貰えるだろうけどよ。折角なら楽しんで金貰おうぜ、冒険者諸君!」
 はっとしたように、冒険者達の表情が変わった。
 叱咤に応えてか、あるいは八千代の迫力に押されてか、臆病風に吹かれていた冒険者達は各々の武器を手に取る。
 八千代は冒険者達を率いて商館の外に飛び出した。
「ン……?」
 目に付いたのは、やたらに呪詛をまき散らしているカツィカの姿。どうやら他の猟兵が何かしたらしい、と即座に理解し、八千代は薙刀を振り回す手を止める。
「死ぬなよ、他の奴らの取り分が増えるだけなんだしな!」
 冒険者達にそう告げると、先陣を切って飛び出した。
 接近に反応し、カツィカが呪詛を帯びた爪を横薙ぎに振るう。だが、その寸前に八千代は薙刀を振るっていた。カツィカの指がねじ曲がり、痩躯が嵐に見舞われたかのように軽々と宙を舞う。
「グ、ギィィィィィッ!?」
「耳障りな声を出してんじゃないよ」
 吹き飛ばされながらも呪詛をまき散らそうとしたカツィカを、臆せず踏み込んだ八千代の二撃目が捉える。帯びる呪詛ごと切り裂いて、カツィカの体に深々と傷が刻まれた。
 冒険者達も続き、八千代をはじめ猟兵を援護する形で攻撃を繰り出していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イデアール・モラクス
アーハッハッハ!訳など知らぬ!意味など聞かぬ!
ただ我が前に貴様のようなオブリビオンがいた、ただそれで破壊するには充分な理由なのだよ!

・行動
UC【魔導覚醒】を『高速詠唱』で行使。
本気モードになり、魔導防壁を纏いながら空を縦横無尽に飛翔し、両手から次々と『全力魔法』の力で威力を増した『属性攻撃』魔法【風の刃、聖なる光線、闇の球体、炎弾、氷の槍、足元から隆起する石の棘】を無詠唱連射、圧倒的弾幕の『範囲攻撃』と成して飽和攻撃をかける。
「我が魔力に屈せよ!アーハッハッハ!」
敵を殲滅したら【吸血鬼の血(携帯用)】から『吸血』して血に満ちる『生命力を吸収』する事で失った寿命を取り戻す。

※アドリブ歓迎



「こいつァ、やってらんねぇな……宝物を置いてきちまったのは癪だが、一度逃げるか……?」
 形勢不利と見て逃走を図りはじめるカツィカだが、その前に立ちはだかったのはイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)だ。
「アーハッハッハ! 随分と好き勝手にやっているようだな、オブリビオン?」
 高笑いと共に現れたイデアールは、即座に呪文の詠唱を開始する。
 濃密な魔力に、カツィカが戦慄した気配に、イデアールの笑みが深まる。
「な、なんだァ、こいつは!?」
「訳など知らぬ! 意味など聞かぬ! ただ我が前に貴様のようなオブリビオンがいた、ただそれだけで、それだけで破壊するには充分な理由なのだよ!!」
 逃走など認めぬと言わんばかりに、イデアールはそう宣告した。
 その体が、魔力によって空中に浮かび上がる。
「さあ、私の本気を見せてやる。光栄に思えよ?」
「ちッ!!」
 苦し紛れにカツィカが放った呪詛を、一瞬のうちに展開された魔導防壁で防ぐと、イデアールは矢継ぎ早に魔法を放ち始める。
 もはや詠唱すらなく、高い威力を秘めた魔術が次々と発動していった。
 足元から隆起する石の棘がカツィカの足を止めると、風の刃が聖なる力を宿した光線が、球状をとった闇が、炎の弾丸が、氷の槍が、次々に襲い掛かる。
「我が魔力に屈せよ! アーハッハッハ!!」
 己の寿命の代償とした強大な魔力の行使。だが、その事実を恐れるどころか、むしろ己の行為に酔いしれるかのように、イデアールは高笑いをあげるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリ・ヴォルフ
アドリブ共闘大歓迎です

商館を奪い、あまつさえ仔竜をも利用するとは
ドラゴニアンとして許し難い
バラバラに引き裂く?できるものならやってみるといい!

【POW】
炎霆(槍)を炎から生みだし戦闘
攻撃を食らわないよう走り回り
『援護射撃』で火球を放ちながら牽制
『呪獣の一撃』が放たれたら躱すことに集中する
軌道が読めれば、造作もない事!
被弾したら『激痛耐性』で耐え次のアクションへ移る

攻撃後の隙を狙い
空から炎の剣を無数に呼び出し
【メギドフレイム】をぶつけて一斉攻撃
『属性攻撃』(炎)『範囲攻撃』で追い打ちをかける
傍若無人な外道め…その身をもって償うがいい!



 猟兵達によって、呪飾獣カツィカは確実に追い込まれていく。全身に帯びていた装飾は攻撃によって剥がれ落ち、しかし相反するように呪詛の力は高まっていく。
「畜生が、揃いも揃ってなんでこんな連中が……」
 沸々と滾る怒りが、カツィカの全身を強化する呪詛へと変化していくのをユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)は見た。だが、その怒りを、炎の槍を手にしたユーリは切って捨てる。
「随分と、勝手な物言いをするな」
「何だと?」
 商館を奪い、あまつさえ仔竜をも利用する。
 それはユーリにとって、許し難い行いであった。
 だが、カツィカもまた、その怒りを理解しがたいものなのだろう。
「俺様は強ぇ! 弱ェ連中ができるのは、手下になるか、食い物になるか、だ。当然だろうが!」
 だが、オブリビオンとなり果てた今の呪飾獣カツィカの精神は、人倫を踏み越えたところにある。言葉を交わすことこそ出来るとしても、その精神性は一匹の獣に他ならなかった。
(盗賊はモンスター……そういうことだろうな)
「テメェのはらわたをぶちまけて家畜の餌にしてやんよ!!」
「できるものならやってみるがいい!!」
 呪力を纏い、接近を図るカツィカに、ユーリは炎槍を振り払うと後退。同時に放たれた小火球が、カツィカの前進を食い止めんとする。
「しゃらくせエんだよッ!」
 カツィカは獣の如く四肢を用い、疾走した。迸る呪詛を伴って振り下ろされた爪が、ユーリに迫る。巨大なクレーターが生まれ、商館の壁にもひびが走った。
 だが、その衝撃を翼で受け、ユーリは造作もなく巧みにその被害を避けている。
「内に眠りし竜の焔よ。我が剣となりて、敵を穿ち、焼き尽くせ!」
 具現化した無数の焔の剣が、カツィカを包囲し、降り注いでいく。炎は商館や周囲を傷つけることなく、カツィカだけを炎上させていく。
「傍若無人な外道め……。その身をもって、己が行いを償うがいい!」
 ひときわ大きな爆炎が、なおも抵抗を続けようとしたカツィカの体を完全に焼き滅ぼすのを確認し、ユーリは背を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『アックスウィザード商店開店』

POW   :    肉体を誇示した大道芸や声の呼びかけを駆使し、聴衆を集める

SPD   :    集まった聴衆達を会計の早さで次々とさばき回転率を上げる

WIZ   :    聴衆達にいかにこの商品が魅力的か話術を試みる

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「いやあ、君達みたいな凄腕が来てくれて助かった! ありがとう、本当に感謝する!!」
 商館の主であるダーランは、商館を占拠していた呪飾獣カツィカが倒されたという報告を受けてすっ飛んで来た。今回の功労者である猟兵たちに感謝の言葉と共に、報酬の入った小袋を手渡してくる。
 だが、ダーランの表情にどこか陰りがあるのを猟兵達は見抜いていた。

「え、何かまだ不安があるのかって? それが、バザールで商品を売るのを任せるはずだった部下が事件のショックで辞めてしまってね……」
 商館に無事に残った工芸品を売りさばき、今回の事件で受けた損失の補填にあてなければならない彼にとっては、それは痛手に違いない。

 何か運が上がりそうな気もする金ピカの壺。
 前衛的な、悪く言えば何を描いているのか分からない絵画の数々。
 それに大ぶりな宝石のついたネックレスやイヤリングなどの装飾品の数々。
 そういった品々を、バザールでなるべく高値で売りさばかなくてはならない。

「あの怪物達が荒らした商館をまた使えるようにしないといけないし、あの怪物達に殺された警備の遺族に見舞金も……」
 思わぬ損失に頭を悩ませているダーラン。
 商人としてどう評価すべきかは分からないが、悪い人間ではないらしい。数々の世界を渡り歩いて来た猟兵達の技や経験を活かし、バザールでの商売を手助けしてやるのも一興だろう。
ユーリ・ヴォルフ
アドリブ共闘大歓迎です

後は客寄せをして商品を売り捌けば良いのだな
工芸品は人によって価値が決まる嗜好品
多くの人の目に留まれば
きっといつかは相応の相手に引き取られていく事だろう

売人として清潔爽やかな服装に着替え
騎士的に営業用スマイルをし、桜の紅茶を配り目を引く
この街に訪れるのは初めてですか?
工芸品でも見ながら、休憩されては如何でしょう?

もてなしながら商品を説明し
興味を持って頂けたら価格交渉に移る
裏でダーランに相談し、可能な限り安くして売るよう進言
売れなければ価値はゼロです
少しでも対価を取り戻したいのでしょう…?

これも縁だ。困っている人を見過ごせない
その後も商館の修復も手伝い、ボランティアで働こう


リコリス・シュピーゲル
為そうとすることは評価して差し上げてもよいのかしらね
まぁ、これも依頼であることにかわりはありませんわ
こちらも努力することに致しましょう

この見た目ですもの
宝石やアクセサリーの中から一番マシなのを見繕って、それを着けて客引きと行きましょうか
『変装』『誘惑』『礼儀作法』で商品を目立たせた服装に着替え、しっかり品よく見えるように振る舞いましょう
使い方次第で十分魅力を放つ商品であることを身をもって証明致しますわ
…取り入るための技術に依るところが強いかもしれませんが、そこはノーコメントですわね

絡みアドリブ等大歓迎


迎・青
(他猟兵との絡み・アドリブ歓迎です)
あうあう、よかった…!
お店、ボクもてつだうよぅ。そこまで、おしごと!
(大量にあるという工芸品の中に、自分の「双子の姉」にあたる首飾りがないか探すという密かな目的をもっていた。
結局見当たらず、ダメ元だったとはいえ少しションボリ)

【WIZ】
【掃除】でお店と商品をキレイに、配置も見やすくする
知らない人とお話しするのはちょっとコワいけど、お客さんが何か気にしてたらがんばっておすすめするよ
「…ボク、この子(商品)とてもキレイだと、おもうよぅ!
この子も、いっしょにいきたいって!
…だいじにしてあげて、ね!」

(戦闘の疲れもあり、商品が減ってきた頃に店の隅で舟をこぎだす)


アンネリーゼ・ディンドルフ
「私はお会計のお手伝いをします。」
そう言いながらアンネリーゼは左腕を💪と出す。

【SPD】
UCを発動。分身と2人で【早業】スキルを駆使し、バイオニックアームをフル稼働で会計の回転率を上げる。

聴衆達が2人のアンネリーゼに見惚れてしまって、回転率が上がらない?


ジェラルド・マドック
…なんか個性的な品が多いね。
あ、いや好きな人はコアなファンになりそうで良いと思うよ、うん。

まぁ何にせよお客さんが足を止めてくれないことにはどうしようもないからね。そこは俺に任せてよ。
サウンドウェポンをフィドルに展開して、ケルト調の心が弾んでわくわくしてしまうような音楽を出店場所の近くで奏でよう。
UCで【ついこの店の前で足を止めてしまう】【商品についての説明が魅力的に聞こえる】ようにしちゃおうか。可能ならこういう商品が好きそうな人を【視力】【情報収集】で【見切り】余計に効果を強めたいね。


ローレンティア・クロロフィル
警備の遺族に見舞金をって悩んでいるのが、なんかちょっといい人だねって思ったから……手伝ってみようって思って。

まぁ、売り方としては大ぶりな宝石のついた装飾品を、主に美しい女性達、そして女性たちへのプレゼントにできる人達をメインターゲットにして売ろうと思うよ。
相手や女性を褒めつつ、貴女に相応しい美しい宝石を、という手法で。
宝石類は、高いからこそ売れるものもあるからね。

美しいドール(球体関節人形)に知力を高くした命を与え、的確な言葉と商品の選択や素早い事務能力を駆使可能にして手伝って貰うよ。
買っていただけそうな方の{見切り}判断も忘れないようにしてね。

※アドリブ、絡み歓迎



 バザールが開かれる日の早朝。ダーランの手伝いをすることに決めた猟兵達は、ダーランが出店の工芸品を運び込んだ一角に集まっていた。周辺の掃除を終えた迎・青は、ペコリと礼儀正しく、周りで同様に店を出している商人達に頭を下げる。
「あの、今日は、よろしくお願い、します!!」
「おう、がんばれよ坊主!」
 一緒に周辺の片づけをしてくれていた商人達が、快く応援の言葉を向けて来る。
「アンネリーゼさん、準備、できたよぅ!」
「はい、こちらもお会計の準備はできています」
 青の言葉を受けて、力こぶを作って見せるアンネリーゼ・ディンドルフ。
「ありがとうございます。それでは、お客様を迎えようか」
 客引きを担当するジェラルド・マドックが、頷いて応えた。

 開店してしばらく、バザールは賑わいを見せ始めていた。
 猟兵達がいる周辺は、同様の工芸品や服飾、アクセサリーを扱う店が軒を連ねている。
 そんな中でも、猟兵達の手伝う店には、多くの人が集まっていた。
「さあ、俺の曲を聴いていってくれ!」
 ジェラルドがフィドルで演奏しているのは、いわゆるケルト調の曲だ。耳慣れない感じの曲の物珍しさもあってか、興味を惹かれた人達が店の前で足を止めてくれる。
「お客さんが沢山来てくれないことには、どうしようもないからね」
 ダーランが仕入れてしまった工芸品には個性的な品物が多いが、好きな人はコアなファンになってくれるだろう。
 ジェラルドはこれと目をつけた人には、音楽の魅力を強く振り分け、工芸品をじっくりと見てもらうように促していく。

 そうして次第次第に、訪れる客の数は増えつつあった。
 集まって来たうち、女性客のお相手を務めているのは、こざっぱりとした清潔感のある服装に着替えたユーリだ。
「この街に訪れるのは初めてですか? 工芸品でも見ながら、休憩されては如何でしょう?」
 戦いの時とは打って変わって、穏やかなスマイルを浮かべた彼は、桜を使った紅茶を配り、休憩所を併設した店で女性客を集めていた。
 人気が高いのは、やはり女性の使う装身具を中心とした類だった。
『工芸品は人によって価値が決まる嗜好品』である。
 ユーリはそう考えていた。
 酔いに任せて大量に仕入れてしまったダーランのような例もあるにはあるが、多くの人の目に留まれば、きっと相応の相手に引き取られていくことだろう。
 ならば、とにかく今は耳目を集めるようにすることだ、という方針は、ジェラルドとも一致するものだ。

 そして、方針としてはもう一つ。
 ユーリはダーランに、自分の担当する品物について可能な限り安値で売るように進言していた。
「大事なのは利益よりも、当座を凌ぐだけの現金ですよ」
「……そうだなぁ。やむをえないか……」
 今を凌げば、後でまた稼ぐことはできる。
 というわけで、品によっては赤字覚悟の値段となっていた。
 安い品物はかなりお得感のある値段となっており、売れ行きも良い。
「ありがとうございました!」
 複数の工芸品を買ってくれた客に一礼するアンネリーゼ。その横ではダーランと一緒に、『もう一人のアンネリーゼ』が素早く帳簿に記録をつけている。
 引っ切り無しに客が訪れる中、アンネリーゼは分身すら作って客商売に当たっていた。
「冒険者には便利な魔法を使う人もいるんだねぇ……」
 ダーランも初めて見た時には驚いた様子だったが、今ではそれどころではない様子で仕事をしていた。
「実際、忙しいですからね……」
 思わずアンネリーゼの口からもそう言葉が漏れる。会計、応対、追加の品物の陳列。
 バザールでの商売でも、やらねばならないことは数多く存在しているのだ。
 働く2人のアンネリーゼの姿には、周囲の商人達からも感心するような視線が向けられていた。

 一方で、単に安売りをすれば良いというわけでない商品もある。
 店の目玉となりうるような、本当に高額な宝石を使った装身具だ。
(宝石類の中には、高いからこそ売れるというものもあるからね)
 そう思いながら、ローレンティア・クロロフィルは、貴族か何からしい、整った服装の女性の相手をしていた。
「貴女のような方には、それに相応しい美しい宝石が必要です。こちらのネックレスなどでしたら、パーティドレスなどを着ているときでも、貴女の魅力をより引き立たせてくれるでしょう」
 ローレンティアの近くでは、彼自らの作った球体関節人形が店員として働いており、それもまた訪れる人々に驚きをもって迎えられていた。
 時折、こちらの人形を譲ってくれという人もいるが、それは丁重にお断りしておく。
 何せ、既にこの人形はローレンティアのユーベルコードによって、既に生命が与えられた存在となっているのだ。
「まあ、ダーランも良い人みたいだしね……手伝う甲斐はあるというものさ」
 あまり慣れない接客業に若干の疲労を覚えつつも、ローレンティアは客たちの相手をしていく。

「こちらなど、奥様にいかがですか?」
 微笑を浮かべ、工芸品を用いた着こなしのモデルとなっているのは、客引きを行っているリコリス・シュピーゲルである。
 ダーランが仕入れていた宝石やアクセサリーの中から、見栄えのするものを選び出したリコリスは、それをつけて客の案内をしていた。
 リコリスは服装も身に着ける商品が映えるようなものに整えており、身に着けた工芸品は、ただ並べられているものよりも遥かに素晴らしいものであるかのように見える。
 とはいえ、リコリスには少しばかり気になっていることがあった。それは、
(男性の方が、なんだ多くいらっしゃるような……?)
 男性客達はリコリスの魅力的な笑顔にやられ、お高めの商品を買ってくれている。
 それが良いことではあるのだが……。
(……まあ、今は考えないことにしましょう)
 ノーコメント、と結論づけたリコリスは、全力で魅力を振りまき、工芸品を売っていく。

「……ボク、この子とってもキレイだと、おもうよぅ! この子も、いっしょにいきたいって!」
 ヤドリガミである青は、勇気を振り絞って客に装身具の一つを勧める。
 購入を迷っていた客は、青の勧めに工芸品をアンネリーゼの方へと持っていった。
「ありがとう、ございました!」
「がんばってね、かわいい店員さん」
 ぺこりと頭を下げる青に、優しそうな女性の客は、微笑で手を振って店を去っていく。
(今回の、工芸品の中に、お姉ちゃんはいなかった、けど……)
 こうして他の装飾品たちが、その魅力を認めてくれる相手に引き取られていくのは、青にとっても喜ばしいことに他ならない。

 そうして猟兵達がバザールが終わりを迎える頃には、商品はほぼ売り切れるに至っていた。
 戦いに続けての慣れぬ商売で疲れたのだろう、青は店の端でうとうとと船をこぎ出していた。
 アンネリーゼから、売上と集計結果を受け取ったダーランは、ほっとした表情を浮かべた。
「いや、本当に助かったよ。これだけ売れれば大丈夫だ」
「でも、これは残ってしまったね」
 ローレンティアが見上げるのは、工芸品の中でも難物の金ぴかの壺と前衛的な絵画。ジェラルドも思わず苦笑する。
「こればかりは、もっと適切な場で売り出さなければならないだろうね」
「まあ、皆に助けてもらったんだ。あとはなんとかするよ」
 ダーランはそう言うと、手伝ってくれた猟兵達に店員としての報酬を渡していった。
「壺なんて、実際運がつきそうじゃないか? 何せこれを持ってる間に、君たちみたいな凄い人達に助けてもらえたんだからね」
 そう言いおいて、ダーランは商館の片づけを手伝うというユーリと一緒に、荷をまとめると商館へ帰っていく。
 その背を見送り、リコリスはふと首を傾げた。
「あの壺がある間に、オブリビオンに狙われたのですが……。ダーランさんはそのことに気付いているのでしょうか?」
「まあ、これからは幸運をもたらしてくれるように祈りましょう……」
 そう返すアンネリーゼの言葉に、猟兵達は人の良い商人の幸運を願うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月12日


挿絵イラスト