アースクライシス2019⑮〜地下駐車場の攻防
音もなく、仄かな光に照らされて、その影は存在する。
静寂に満ちた地下駐車場。
黒い貌。緑に光る紋様だけがそこに在る。
「肯定:地上へ移動=大量殺戮開始」
地を踏む足は無音のまま。滑るように移動を開始する。
ロングコートを翻し地上を目指す彼の耳に、複数の足音が反響する。
「推論:猟兵到着」
両手に銃を掲げ持つ。
「変更:殺戮優先。猟兵>一般人」
●地下駐車場の決戦
「さっそく集まって貰ったが時間がない。さっさと説明するぜ。ヒーローがダークポイントを見つけ出す瞬間を予知した。すぐに現地に向かって欲しい」
ジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)は転送用のグリモアを呼び出しながら端的に説明する。
激化するヒーローズアースの戦争も、ついに幹部級の敵を引きずり出すまでに至った。
敵の名はダークポイント。スカムキングの命令のみを聞く、謎に包まれた存在だ。無限の射程を持つ銃を所持し狙撃を得意としている。
「そんな厄介な敵だが、今回ヤツが出現するのは地下駐車場。地上よりもずっと被害を少なく抑えられるはずだ。ここにダークポイントを封じ込めて片をつけて欲しい。攻撃に回る猟兵、防御に回る猟兵のバランスが重要になるぜ」
地上への出口は2か所。
スロープになった車両出口と、ショッピングモールへ続くエレベーターホールだ。
「ああ、そうだ。ヒーローの機転で民間人の避難は済んでいるぜ。残っている車両は駐車スペースの5割ってとこだ。こいつについては好きに利用してくれて構わねえ。人命が優先だ。……お前たちも気をつけろよ。命あっての物種だからな」
氷水 晶
正体不明の謎の存在、ダークポイントとの決戦をお届けします。
敵は文句なしの強敵。防御なくして封じれらず、攻撃なくして討ち果たせない状況です。攻撃以外の技術も十分役に立つ状況となるでしょう。
●ダークポイント
無音かつ高速で滑るように移動します。浮遊はしていません。
無限の射程距離を持ち、必ず先制攻撃してきます。
この先制攻撃への対処法によっては、プレイングボーナスが得られます。上手くしのいで、反撃へとつなげてみて下さい。
行動方針によっては、先制攻撃対応した上で地下駐車場から出さない行動もボーナス対象となります。
●地下駐車場
ショッピングモールの地下にある広大な駐車場が戦場となります。
地下1Fのみ。天井の高さは5m。駆け付ける行動が必要なくらいの面積があります。薄暗い上に柱や車両で遮蔽物も多い場所です。駐車スペースは5割ほど埋まっています。敵が暴れまわれば破壊必須の為、車両を利用する行動をとって頂いて構いません。
現代日本にある地下・立体駐車場にある設備は存在するものとして下さい。
出入口は2か所。スロープになった外への車両出口と、ショッピングモールへのエレベーターホールです。2つの出口は地下駐車場の反対側に位置します。
●プレイング締め切りについて
マスターページとTwitterにて確定次第お知らせします。
〆切り1日前にはお知らせするようにしていますので、焦らずにプレイングを送っていただけましたら幸いです。
第1章 ボス戦
『ダークポイント』
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POW : ダーク・フレイム
【ダークポイントの視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【漆黒の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : ダーク・リボルバーズ
自身に【浮遊する無数のリボルバー】をまとい、高速移動と【全方位・超連射・物質透過・弾丸】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : ダーク・アポトーシス
【銃口】を向けた対象に、【突然の自殺衝動から始まる自分への攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:カス
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
高い天井の暗がりに、銃声が反響する。
誰の邪魔も入らない。
ここにいるのは敵と敵同士。
攻と守。ただ強き側を決するのみ。
チェリカ・ロンド
間合いさえ詰められれば……!
駐車場につくと同時に車を【怪力】で蹴り上げて、視線の盾にする。
目を向けられた車が炎上爆発したら、その爆炎に隠れて【超聖者】に覚醒!
光の【オーラ防御】を纏って爆炎の中を直進、ダークポイントとの間合いを詰める。
とはいえ、まだ届かないでしょうね。全速力で肉薄しても、きっと見られるわ。
でもね、こっちだって半端な覚悟で戦ってんじゃないのよ!
視線が当たって燃えても、【激痛耐性】で我慢、光のオーラを【衝撃波】に変えて、黒い炎を消し飛ばす!
敵の目の前まで迫ったら、殴って蹴ってしながら聖なる光を【力溜め】、からの【全力魔法】の【零距離チェリカ砲】!
アンタの闇は、私の光で否定するッ!
●灼熱黒炎
たとえ予知が無かったとしても、このぞっとするような気配になら気づいたろうか。
冬の気配に彩られたショウウィンドウのかたわらに、地下駐車場はひっそりと口を開けている。
薄闇から吹き上げる冷たい風が、両側で結った紫の髪を揺らした。
普段の天真爛漫な様子とは打って変わって真剣な表情で、チェリカ・ロンド(聖なる光のバーゲンセール・f05395)はスロープを下っていく。
傾斜の終点が見えるなり、チェリカは即座に灰色の地面を蹴った。
目指すは一番近くのあの車。
駆けだして2歩3歩。左半身が熱を持つ。どこかに『奴』が潜んでいる。
「(間合いさえ詰められれば……!)」
ツインテールの先が黒煙を上げて燻った。引き返すような思考はない。皮膚を撫でる灼熱感もいとわずに一身に前を目指す。
赤いスポーツセダンの塗装がどろりと蕩けた。
車の影に飛び込むなり、チェリカは横から車のボディを力任せに蹴り上げた。回転しながら吹き飛んだ鋼鉄の塊が、漆黒の炎に包まれる。
衝撃波に爆発音、炎の熱。爆ぜた車が床に激突し地下駐車場を振動させる。
「失敗:目標物の座標特定」
チェリカの姿を見失い、ダークポイントは燃える車体の左右に視線を巡らせた。
業火の裏の無機質な声。それが聞こえたわけではないけれど。
「――こっちだって半端な覚悟で戦ってんじゃないのよ!!!」
漆黒とオレンジ。2色混じった炎の壁を白金のオーラが切り裂く。燃え盛る真ん中を乗り越えて、自分の間合いへと飛び込む。
「再定義:敵外見変更」
ブロンドに転じた髪が炎の熱になびく。『超聖者』と化し緑に燃えるチェリカの瞳が、ダークポイントの姿を捉える。
視線のありかも定まらぬ、黒い貌がこちらを向いた。体を包まんとする黒炎を、白金の衝撃波で消し飛ばす。
「アンタの闇は私の光で否定するッッッ!!!」
両掌から溢れだす聖なる光を目の前の闇に叩きつける。
閃光に焼かれた駐車場が元の色を取り戻した時、闇はいずこかへと去っていた。
成功
🔵🔵🔴
大豪傑・麗刃
昔のえらい人は言ったそうな。
当たらなければどうということはない、と。
まずは相手の初撃をがんばって回避する。
そのためにフェイントを絡めたダッシュで存在感を持つ残像をばらまき、相手の視線をわたし本人から外す。これぞ秘技!変態分身!車の陰から陰へと移動することでさらに視線をそらす効果アップのはず。
で隙を見て相手に接近、必殺の一撃をくらわす。
ダークポイントとやら!
きみのたくらみはこのわたしがすべてくだーく!!
ダークだけに、くだーく。
わたしの精神攻撃で相手が激怒して冷静さを失う、あきれて油断する、呆然として脱力する等で普段の力が出せなくなったところで刀の二刀流で立ち合いは強く当たってあとは流れで。
●静寂破砕
いったいどこで聞いたのかと、問いかける無粋は止めておこう。
「昔のえらい人は言ったそうな。当たらなければどうということはない、と。だからまずは、相手の初撃をがんばって回避する」
我武者羅に頑張るわけではもちろんない。
大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は爆発の振動を足裏に聞き、ダッシュで音の元へと急ぎ走った。車両が密に並んだ箇所を選んでは、ジグザグに間を駆け抜ける。
「肯定:焼夷可能」
和洋折衷。和服とも現代服ともつかぬその姿を、ダークポイントは目に捉える。
確実に当たると思われた漆黒の炎は狙いを外し、奥のトラックを炎上させた。
「失敗:標的座標不明」
「これぞ秘技! 変態分身!」
駆ける前から後ろから、フェイントを交えて麗刃の姿が分裂する。残像で本当の位置を悟らせぬまま接近する。
「ダークポイントとやら! きみのたくらみは――」
この瞬間のために入念に練り込んだ。渾身のユーベルコードを唱える。
「このわたしがすべてくだーーく! ダークだけに、くだーく!!!」
ただでさえ静かな地下駐車場に得体のしれぬ静寂が訪れる。
冷たい地下の風が2人の間を吹き抜ける。
黒い貌にもしも表情があったのなら、それはきっと真顔だったろう。
「疑問:理解不能。要求:詳細説明」
「(……つまり)」
――ギャグと分かってないから詳しく説明しろと?
まずい。麗刃の背中を冷や汗が伝う。
思ったより滅茶苦茶真面目だ。今までにギャグなんか聞いたことないパターンだ。『なんちゃって、あーっはっは』などと今更濁させない空気だコレ。ギャグに解説を頼むとは拷問か!?
……いやまて、ある意味では困惑を与えているのか? きっとそうに違いない。
思考は刹那、己が矜持はただ信じて貫くのみ。
「くだぁぁーーーーーく!!!」
渾身の力で振るわれた麗刃の2刀流。交差する銃が刃を受け止める。
分身して引きさがる背を追い銃口が向けられる。トリガーが引かれる。
「不可:自動式拳銃破損の疑い」
ダークポイントは壊れた銃を投げ捨てた。
車両の裏。麗刃はその戦果を知ることもなく。
成功
🔵🔵🔴
アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎
無理のない範囲で、戦闘前に氷のUCを使用して出口を塞いでおきます。
敵は強大。傷つかずに済むとは思っていません。『覚悟』を持って挑みます。
車両や柱等の遮蔽物を利用し、近づけるだけ接近しましょう。
自殺衝動を利用した攻撃には『呪詛耐性』や『狂気耐性』で可能な限り抵抗します。少しでも傷が浅くなるように。
攻撃を受けた後は重力に逆らわず倒れましょう。車両の陰になっていれば尚良しです。
私を軽んじて欲しい。弱兵だと油断すれば油断した分、計画通りです。
敵が私から意識を離した瞬間がこちらの勝機です。
最低限、腕だけが動けばいい。『激痛耐性』で体を動かし、散華を放ちます。『捨て身の一撃』です。
●氷華繚乱
猟兵全員の到着を確認し、アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は、今しがた下ってきた道を振り返る。
『散れ氷華――』
冷気が床から這い上がる。結晶化した水蒸気が仄かな明かりに煌めいた。幾重にも重ねあわさった氷の華が入口を氷の硝子で封じていく。
黒炎でもすぐには溶けず、銃弾では砕けない。氷に十分な厚みを持たせてから手を離す。
出口はたしか、もう1箇所。
「(そちらは仲間に任せましょうか)」
想定よりも敵の動きはずっと早い。
それでもとうに覚悟は決まっている。
「(元より、傷つかずに済むとは思っていません)」
音もなく暗がりの駐車場を影が滑る。見切った銃弾が、音を立てて床に跳ねる。アリウムの体を追いかけた弾痕が、壁に曲線を描き出す。
「推論:氷壁=己への行動阻害。肯定:優先排除対象」
柱に飛び込んだアリウムは、車両伝いに距離を詰める。こちらの射程は58m。可能な限り中心へと巻き込む為、一歩でも余分に前に進んでおきたい。
ライトトラックの影に差し掛かった時、突然心に魔が差した。
「くっ……」
車両と車両の間から銃口が覗いている。
意に反し刺突剣を抜いたアリウムの右手が、自身の喉の表皮を浅く裂く。
狂気耐性に呪詛耐性。正気を手放す寸前で、切っ先を逸らそうと抵抗する。自分を自分で壊そうとする狂気に抗って、柄を持つ手がいびつに震えた。
オフロードタイヤの影に赤い血が散った。
ダークポイントは照準を合わせたまま車の裏に回る。左の頬を血に染めて、猟兵がひとり倒れている。その傷が首ではなく肩なのだと、悟った時には猟兵の手にある刺突剣がほどけた。氷の花弁は鋭利に尖り、吹雪となって突き刺さる。
無限の射程と技量からして遠距離射撃は相手が上。
ならば隙をつくしかないと、割り切ったアリウムの捨て身の一撃。
「……それにしても、耐性の維持に力を使い過ぎましたね」
仲間のユーベルコードが周囲の地形を変えた隙に、アリウムは重い体を引きずって車両の奥に身を潜めた。
このまま氷の壁を張りながら、敵を逃さぬ盾となるべく。
大成功
🔵🔵🔵
フィランサ・ロセウス
車両出口側から
自殺強制なんて趣味の悪いUCね
でも銃口を向けられても、何かに遮られていれば効果はないはずよ
幸いここは地下駐車場、沢山ある車を遮蔽物にしながら近づきましょう
その時適当な車のドアやトランクを拝借して即席の盾に
銃弾には無力でも、UCが防げれば構わないわ
上手く凌げたら、今度はこっちの番ね!
UCで周りを私の迷宮に変えて、
逃げられないようにしてからじっくり壊してあげる♥️
もしUCを食らってしまった場合は愛の力(狂気耐性と呪詛耐性)で自殺衝動を抑える
最悪急所を外せればいいわ
そのまま事切れたフリをして、相手の注意が完全に逸れた瞬間にUC発動!
逃げ道を塞ぐと同時に後ろからザクリよ♥️(だまし討ち)
●愛情一途
地下駐車場は広大で、敵の居場所すらわからない。
スロープを降りて車両の影をしばらく歩けば、元来た方から音がした。
「一途な想いってすれ違っちゃうのが玉に瑕よね♥」
フィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)はくるりとスカートを広げて踵を返す。今にもステップでも踏みそうに踵が地面を打ち鳴らす。ピンクの髪にピンクのスカート。華奢な少女が不気味な地下駐車場を歩く。
フィランサは傍目にも、この状況を心の底から楽しんでいた。
ダークポイントはいわゆる強敵。簡単には壊れない、フィランサのココロを刺激し得る敵。
ココロが揺れるものは好きなもの。好きなものには惜しみなく愛を。愛は奪うもの。
「自殺強制なんて、技の趣味は悪いけれどね」
唐突にフィランサはセダンのドアを開け放った。
向けられた銃口をドアを盾にしてやり過ごす。実弾がセダンのドアに数発食い込んだ。
「さあ、さあ、さあ! 楽しい楽しいゲームを始めましょう?」
少女の声が響き渡れば、周囲の光景が様変わりした。
灰色の地面から鉄格子が生えだすと、駐車場の一部を迷路に変える。奥と手前の格子が重なり合い、出口のありかを隠している。
対してダークポイントが取ったのは総当たり。
移動速度の速さを武器に、迷路を隅々まで走破する。行き止まりから引き返し、通った道には痕跡を残し。
ようやく鉄格子の切れ目に行き当たり、ダークポイントは真っ直ぐ出口に向かう。
「ただでは逃がさないわ♥」
迷路の格子を透過して、フィランサのナイフがダークポイントの左腕に突き立った。
振りほどき発砲する。
血の跡を残して、格子の向こうに少女の姿は消え失せた。
フィランサは、傷ついた左腕を愛おしそうに撫でる。
「愛情の反対は無関心だって言うわよね」
憎しみあいにも愛はあり、相手への強い気持ちさえあるならば殺し合いだって愛のうち。
それは破綻か狂気か。それとも愛の本質か。
「うーん、でもあと少し! ザクリ、って殺せたら良かったのにな♥」
成功
🔵🔵🔴
ニコ・ベルクシュタイン
どう足掻いても先手を取られるのはやむを得まい
地下駐車場、残された車両、使っても良いのならば
…随分と欲張りな攻撃なのだな、物質透過が特に厄介だ
敵と対峙したら「ダッシュ」で敢えて近付き
車両が多く駐まる箇所の柱に「地形の利用」で身を隠す
当然無視して攻撃して来るだろうが、遮蔽物と自身とに
「オーラ防御」を通して防御を試みよう
結果の如何に問わず次に取る行動は
精霊銃を発砲し手近な天井のスプリンクラーを破壊すること
簡易的な目眩ましにはなろう
余力があれば出口に通じる箇所も水煙で封鎖しておきたい
此方からの狙いも難しくなるが「スナイパー」と「誘導弾」の
併用による【疾走する炎の精霊】で弾丸を当てに行く
避けてくれるなよ
●水煙攻防
軽やかな鐘の音が、地下1階への到着を告げる。
滑らかに開いたドアの先は白い照明に照らされたエレベーターホール。ガラスのドアを1枚隔てた向こうが地下駐車場だ。
ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)は状況を見極めるなり駆け出した。ドアを押し開けエレベーターホールを飛び出す。
仄暗い駐車場から明るい場所にいる人影は、狙ってくれと言わんばかりに目立つ。案の定、駐車場の奥から銃声が響く。たったいま潜ったドアに銃弾が列をなして吸い込まれていく。だが、ガラスが砕ける音は聞こえない。
「(物質透過か)」
最も厄介な能力と認識していた敵の技。物質を無視して対象のみを貫く、凶悪性能の銃弾。
狙われていてなお冷静に、状況と情報を分析しつつ身を沈める。スライディングで柱の影へと滑り込み、地階を支える太い柱へ手をついた。手のひらを介してオーラ防御を流し込む。
ニコを追って動いた複数のリボルバーの銃口は、当たり前のように太い柱へ射線を集中させた。物質を透き通る筈の弾丸は、オーラ防御に押し返されてコンクリートの中に埋めこまれる。
安堵の息を吐く間も惜しんでニコは銃を抜く。
背中越しに防御のオーラを流し込みながら、天井を走る配管を素早く目で追った。
トリガーを引く。炎の精霊との契約に従って、弾は着弾するなり燃え上がる。
精霊銃『エレメンタル・ワン』で狙ったのはスプリンクラー。高熱と衝撃に晒されて、壊れた装置と配管から一気に水が噴き出した。
敵と自分を結ぶ射線に数発。出口のエレベーターホールを隠すように3発。
白く光を散乱する水のヴェールが、駐車場の一角を覆う。弾ける銃弾に沸騰した水が、一帯を水蒸気で真っ白に包み込む。
ニコも同じく銃使い。自分が厄介だと思う局面は、ダークポイントもまた同じ。
「此方からの狙いも難しくなるがな」
銀の髪から水を滴らせ、眼鏡の奥の赤い瞳を眇める。
再三の攻撃で敵のおおよその位置は分かっている。
「……避けてくれるなよ」
柱越しの銃撃は誘導弾。弾道を曲げて柱を回避する。
霧の中から突然現れた炎の弾丸は、ダークポイントの周囲を揺蕩うリボルバーに当たると周囲を巻き込み爆散した。
大成功
🔵🔵🔵
闇之雲・夜太狼
SPD
ライアーヒーロー「クライウルフ」参上!
俺が来たからにはお遊びはここからだよ!
と名乗りもそこそこに!
銃口と視線から隠れる為、【逃げ足】を活かして近くにある遮蔽物に飛び込んで即座に伏せるよ
被弾しても【激痛耐性】で堪えよう
景気良く撃ってくれちゃってまー、調子乗ってるよね!
俺はそういうのに一泡吹かせるのが大好きなんだ!
行くよ、俺たち(選択UC使用)
分身をフルに呼んで、遮蔽物の陰からわらわら飛び出させ攪乱させよう
真っ黒だけど、薄暗いから助かるよ
本体の俺は【念動力】で、隠れた自分ごと遮蔽物とあれば周囲の散乱物を【空中浮遊】させ
それらを分身は伏せさせDP目掛けて投げつけるように【投擲】!
弾には弾、だよ
●血塗反攻
「ライアーヒーロー『クライウルフ』参上! 俺が来たからにはお遊びはここからだよ!」
闇之雲・夜太狼(クライウルフ・f07230)は名乗りもそこそこに駆けだした。薄暗い駐車場のどこかから、何者かに狙われているような気がする。
逃げ足を生かして一番近くにある柱の裏に飛び込むなり即座に伏せた。全身を柱の影に隠し銃弾の当たる面積を少しでも小さくする。
「なっ……」
激痛に耐性が無かったら、行動不能にまで追い込まれていたかもしれない。目の前の柱から、突然銃弾が生えだした。物質を透過する弾丸が次々に夜太狼の背中に突き刺さる。
不幸中の幸いは、敵から夜太狼の体が見えているわけではなかったこと、遠距離からの攻撃で弾丸の角度が限定されたこと、既にリボルバー数丁が味方の手によって破壊されていたことだろうか。
僅かなリロード時間に念動力で隣の車まで移動する。
「景気良く撃っちゃってくれてまー……調子乗ってるよね」
血の味のする息を吐いて、夜太狼は口の中で呟いた。
権力に暴力を振りかざす、自身が弱者の側に回るとは夢にも思っていない者たち。
「……俺はそういうのに、一泡吹かせるのが大好きなんだ」
タイヤに寄りかかるようにして片手を挙げる。
黒い分身が50人、夜太狼の周りに現れた。流れる血に気づいたか気遣わしげな彼らに、青い顔でぎこちなく笑い返す。
「攪乱は任せたよ、俺たち」
四方八方から現れた人狼の少年を、ダークポイントは周囲に揺蕩うリボルバーで撃ち抜く。
分身たちは車両の隙間から飛び出すたびにその数を減らしていった。
狙い撃つのに問題は無いが、こう数が多いと弾の消耗が激しすぎる。
「変更:本体撃破」
先に進むのを阻止しようと横から飛びかかる分身の眉間に銃口を押し付ける。躊躇なく引き金を引き、走り出そうとするダークポイントの腕に痛みが走った。
散った分身のユーベルコードの残滓。紛れて念動力で放たれたコンクリートの刃。
腕に突き刺さったそれを引き抜いた。
辿りついた柱の影には既に誰の姿もなく、血の跡だけが残されていた。
苦戦
🔵🔴🔴
スカル・ソロモン
早撃ち勝負では分が悪いか。事前に駐車場でカーブミラーを手に入れておく。
車や柱の陰から陰へと移動してダークポイントに近づきつつ、銃口の前に身を晒す時は鏡で敵の姿を映して、銃口を向けられた対象を敵へとすり替えよう。
十分に距離を詰めたならおもむろに敵の前へと身を晒す。
何、もう十分だ。君の殺意は、もう見慣れた。
銃口を向けられても、ユーベルコードでそれを打ち消そう。
「私には、届かない」
カタチの無いモノは視えづらいんだが、数を撃ってくれたお陰でようやく捉えられた。君の殺意は磨き抜かれた刃のようでとても、魅入られる。
そうして敵のユーベルコードを打ち消しつつ敵の元へと走り、その勢いのまま拳を顔面に叩き込もう。
●鏡像幻惑
「早撃ち勝負では分が悪いか」
射程無視の遠距離攻撃。視界にさえ捉えれば、そこは全てがダークポイントの攻撃範囲。地下駐車場という場所のおかげでたまたま内部に被害が収まっているだけだ。
車や柱の陰に身を隠し、スカル・ソロモン(目覚める本能・f04239)は慎重に移動を始めた。長方形のカーブミラーを見つけると、ひとつ壁から拝借する。
ダークポイントは薄闇の中、猟兵を探して移動していた。
殺し切れていないのは想定外だが、戦闘不能にまで追い込んでおけば、後から止めを刺して回ってもいい。スカムキングの命令は遵守する。猟兵も民衆も邪魔だと言うならば、すべからく息の根を止めるだけだ。
猟兵らしき姿がまたひとり、車両の奥で動いた。接近しながら照準を額に合わせる。
「不可:攻撃失敗。敵=虚像」
車の影に縁を隠すように置かれていたのは鏡。日光もなく淡い光源の下、地面に垂直に立てられたそれはダークポイントに錯覚を起こさせるに十分だった。
「何、もう十分だ。君の殺意はもう見慣れた」
背中の声にダークポイントは振り向いた。
そこには髑髏を模したヒーローマスク。黒いロングコートに黒いロングブーツが、鏡像のように2人を向かい合わせる。
返事の代わりに銃口が向けられる。正対する者に自殺衝動を引き起こさせる、ダークポイントのユーベルコード。後は精神を集中させて、目の前の猟兵が自分で自分を壊すさまを見届ければいい。
「私には、届かない」
確信をもって告げられた言葉が、衝動を霧散させる。
『魔王特権』。相手のユーベルコードを相殺して無力化する、ユーベルコード殺し。事前に相手の技を見ておけばその分成功率は高まる。
先刻ダークポイントが鏡に向けた銃口――条件を全て揃え、スカルは余裕を持って発せられる殺気を跳ね返す。
「君の殺意は磨き抜かれた刃のようでとても魅入られる」
賛辞ともつかぬ言葉とともに拳を握り、黒いロングコートが翻る。
反撃の銃弾が側頭骨を掠めて滑る。
弾丸を潜り抜け、スカルの怪力がダークポイントの体を殴り飛ばした。
大成功
🔵🔵🔵
形代・九十九
「…………すまない。車両(おまえ)たちを、使わせてもらう」
「おれたちは道具。巡り巡ってそれが主を護る結果に繋がるのなら、十把一絡げに散らされるよりは幾分マシな筈だ」
「……共に戦おう」
「ダークポイントよ。狩られる側の恐怖を、おまえにも教えてやる。おまえとて一方的な狩猟者ではなく、同時に獲物でもあるのだ」
「せいぜい、悪く思え」
念動力で強化した糸によるロープワークで、車両を寄せ集め視界を塞ぐ巨大な壁を作り(地形の利用、罠使い)相手の行動範囲を狭めつつ出口封鎖。
攻撃は氷属性攻撃で弾丸を氷結、減速させつつ激痛耐性で耐える。
【抜けば魂散る氷の刃】で、敵の足を凍結させ動きを阻害、味方への助けとする。
●星霜氷結
「おれたちは道具。巡り巡ってそれが主を護る結果に繋がるのなら、十把一絡げに散らされるよりは幾分マシな筈だ」
地下駐車場に置かれたままの車たちを前にして、形代・九十九(抜けば魂散る氷の刃・f18421)はコンクリートの床にあぐらをかいて静かに語りかけていた。
丁寧に磨かれたクーペがある。
作業道具が載る薄汚れたワゴンがある。
乾いた泥がフレームに跳ねたジープがある。
チャイルドシートがついた黒いミニバンがある。
自身も人形のヤドリガミ。静かに主を待つ車たちが、どうしても他人のようには思えなかった。そしてダークポイントを外に逃がせば、その主も無事では済まないかもしれない。
九十九は頭を下げる。
「……すまない。車両(おまえ)たちを、使わせてもらう。……おれと共に戦おう」
まだ魂も宿らぬ彼らに、せめてもの道理は通しておきたかった。
傀儡懸糸。車両を糸で引き寄せて駐車場の地形を変えていく。
敵が倍の速度で動くなら、倍の距離を走らせればいい。敵の射程が無限なら、視界を遮ってやればいい。車両を並び替えダークポイントが自由に動き回れる範囲を狭めていく。
壊れて水を吐くスプリンクラーは、誰かの戦闘の跡なのだろうか。どの道、この水は九十九の戦いにも利用できそうだ。
結った黒髪をじっとり濡らし、時折聞こえる爆発音に気を配りつつ車両を動かしてエレベーターホールの出口を塞ぐ。
ガラスの割れる音が響いた。真ん中に置いたジープのフロントガラスが割れている。
ただならぬ気配に九十九は気を引き締める。
ボンネットに起き上がったのは黒い貌。緑に光る紋章が、車の上に立つ九十九を振り仰いだ。浮遊するリボルバーのトリガーが引かれる。
ぎりぎり威力は殺せただろうか。銃弾に纏わる水蒸気を、いびつな形に凍てつかせる。増加した空気抵抗は弾速を緩め、弾のバランスを崩させる。
九十九の胸を狙った銃弾は、大きく逸れて左腕の義肢に刺さった。
「ダークポイントよ、狩られる側の恐怖を教えてやる」
九十九は妖刀『物欲し竿』を抜き放つ。
凍りついた時間の中で切っ先を地面につける。
「せいぜい、悪く思え」
九十九はダークポイントの脚を、溜まった水ごと凍結させた。
大成功
🔵🔵🔵
フロッシュ・フェローチェス
※アドリブOK
暗闇なのも合わさってるのか?ほんと不気味な奴だな。見失わないうちに、一発入れてアタシ達側へ勢いを傾けないと。
ただの連射ならダッシュで避けられるけど、あいつの弾丸は不味い。絶対に普通じゃない。
それでも防がないと……!
先制攻撃は届かないけど――車のそばへなら僅かに遅れても、命中する前にたどり着けるはず。
蹴りと連動させて衝撃波を放ち、同時に2回攻撃の要領で銃弾を車へ撃つ。
またレガリアシューズの特性を活かし、蹴った態勢のまま少しでも遠ざかるんだ。
大爆発と衝撃波で……銃弾を、遅らせるために。
食らってもいい。
急所に当たらなければUC発動から――早業で接近し、痛烈な奴を撃ち込んで、吹き飛ばす!
●加速結集
フロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)には誰にも譲れぬ速さがある。
「(暗闇も合わさって不気味なやつだな……それにあの弾丸と速さ……)」
向こうの車道を駆け抜けた黒いロングコート。こちらには気づいていない様子だったが黒い貌に緑の燐光を放つ紋章がちらりと見えた。
きっとあれがダークポイント。フロッシュに迫る速さだった。
ただの連射ならばダッシュで避ける自信がある。だが、あの弾丸は絶対に普通じゃない。
大きな緑の右目で後姿が消えた薄闇を睨みつけ、後を追う。
背が見えた時、敵は既にリボルバーの銃口をフロッシュへと向けていた。
「(食らってもいい! 急所さえ避けられれば……!)」
フロッシュは更に加速する。持てるスピードを全て利き足に乗せ、道の真ん中に置かれたジープを蹴りと衝撃波で吹き飛ばす。反動がフロッシュの体を後ろに流す。
高速に慣れた動体視力が、目の前に現れた弾丸を捉えた。ジープの車体を透過して、数瞬前までフロッシュの居た位置を過ぎていく。 長い一瞬が過ぎ、ようやく壁に叩きつけられたジープがオレンジの爆炎に包まれる。
閃光が静まった時、フロッシュはただ道の真ん中に無防備に立ち尽くしていた。
ダークポイントは引き金を引く。
物質を透過する銃弾。超連射。通常の実弾。
どの攻撃も少女には届かない。
「疑問:理解不能。状況:回転式拳銃=残弾零」
リボルバーの銃口が火を吹く光景をフロッシュはただ見つめる。
弾倉を空にして黒い貌は、一瞬迷うような素振りを見せた。
――それもそうか。
戦いのさなかに敵がこんな動きをしたのなら、アタシでも警戒する。
偶然見つけた生き物らしさに、口の端に笑みを浮かべる。
静かな心でダークポイントと対峙する。
――浮遊するリボルバーはたったの2丁。武器は自動式拳銃1丁のみ。
――ロングコートは細かい刃物で切り裂かれたようにボロボロで。
――敵の足首から下は凍り付いている。
――左腕と右腕には深い刃物傷。
――胴は一部が焼け焦げて、体のどこかを庇っているフシもある。
味方がつけてきた傷跡。
あとはそこにフロッシュの一撃を加えるだけだ。
瞑想するように加速の術式で体を満たしながら、その瞬間を待つ。
「…………そこだ――!」
ダークポイントが自動式拳銃を構える。
緑の光跡を残してフロッシュの体が霞む。
体にかかる負担などは一切無視して、ただ一瞬の速さに全てを賭けた。
翠碧光廻。
フロッシュが蹴りの形のまま像を結びなおした時、黒い貌に光る緑の紋章が静かに消え失せた。
大成功
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