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アースクライシス2019⑮〜黒き弾速

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #ダークポイント

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 天を衝くかの如き高層の建物群が、長い影を灰色の地面に落としている。
 その市街地の中で立ち尽くし、苦渋を浮かべる者達がいた。
 それは数多のヒーロー。
 この街の片隅で発見されたある存在に対し、攻勢を仕掛けようとしていたが──それが望み通りに行かなかったのだ。
 一人のヒーローへ、遥か彼方から弾丸が飛んできて足を貫く。
 他のヒーロー達もまた、その存在から放たれた凶弾に穿たれ血潮を散らしていた。
 そう、その敵へは──ろくに近づくことすら出来ない。
 無限の射程を持った攻撃を可能とするその存在は、ただのヒーローが相手するには、余りに強大すぎたのだ。
「称賛:己の発見。
 事実:戦力的優位=己>ヒーロー」
 ずっと向こうの、ビルの屋上から──その存在は静かに云う。
 しかし無貌の視線には誇らしげな感情も、油断に値する心情も、一切なかった。
「警戒:侵略生命体──猟兵(イェーガー)」
 やってくるであろうその敵に対し、黒き存在──ダークポイントは銃口を彼方に向ける。

「お集まり頂き有難うございます。本日はヒーローズアースにて勃発した大規模な戦いの一端を担う作戦となります」
 グリモアベース。
 千堂・レオン(ダンピールの竜騎士・f10428)は猟兵達へと説明を始めていた。
 ヒーローズアースの地上とは別の場所に存在する、いくつもの知られざる文明。そこにオブリビオンが出現することから始まったこの闘争は、各地で尚継続中だ。
 その中で戦功が重なった事により──ヒーロー達がジェネシス・エイトのダークポイントを見つけ出すことができたという。
「ダークポイントはマンハッタン島の高層ビル街の片隅、あらゆる存在から死角となる「不可視の領域」に潜んでいたようです」
 場所が分かれば討伐も可能。
 ただその戦闘力は圧倒的で、ヒーロー達では太刀打ちできないという。
「そこで、猟兵の皆様の出番です」
 マンハッタンに赴きダークポイントの討伐をお願いいたします、とレオンは言った。

「ダークポイントがいるのは、高層ビル群の一角です」
 数十階という高さを持つ建物が無数に並ぶ市街だ。
 ダークポイントはここを縦横無尽に駆け巡りながら、こちらを迎撃してくるだろう。
「こちらはまず、ある程度の遠方からダークポイントへ接近を目指します」
 ただ、それも簡単ではない。
「ダークポイントは無限の射程距離による攻撃能力を持っています。これにより確実に先制攻撃を行ってくるのです」
 こちらが攻撃を仕掛けるには、これに対処する必要があるといった。
 ダークポイントの能力は三つ。
 一つはダーク・フレイム。
「これは視線で捉えた相手を燃やす力です。タイムラグは殆どないと言っていい強力な能力でしょう」
 一つはダーク・リボルバーズ。
「無数のリボルバーを浮遊させて纏い、全方位に攻撃する能力です。この弾丸は物質透過の特性を持つため、遮蔽で簡単に防ぐことは出来ないでしょう」
 一つはダーク・アポトーシス。
「銃口を向けた相手に自殺衝動を抱かせます。つまり自身による攻撃を受けさせられる──ということです」
 どれも直撃を受ければ軽傷では済まぬものばかりだ。対処法を練った上で作戦に当たってください、と言った。
「先制攻撃だけでなく、無音かつ高速の機動力を有する強敵です。是非、全霊を以て戦いに赴いて頂ければと思います」
 この敵を倒すことで、世界の平和に近づくことができるだろう。
「そのために──戦場へ、参りましょう」
 言って、レオンはグリモアを輝かせた。


崎田航輝
 このシナリオは、アースクライシス2019の戦争シナリオです。
 1フラグメントで完結します。

●現場状況
 マンハッタン島のビル街。
 高層の建物が多く立ち並んでいます。

●リプレイ
 敵は一体、ボスで相手は『ダークポイント』です。
 このシナリオでは、敵の先制攻撃へ対処法を編みだすことで、有利になります。先制攻撃は能力に応じたユーベルコードとなります。
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第1章 ボス戦 『ダークポイント』

POW   :    ダーク・フレイム
【ダークポイントの視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【漆黒の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ダーク・リボルバーズ
自身に【浮遊する無数のリボルバー】をまとい、高速移動と【全方位・超連射・物質透過・弾丸】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ダーク・アポトーシス
【銃口】を向けた対象に、【突然の自殺衝動から始まる自分への攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

楼・静鳳
アドリブ・連携歓迎
※感情というものがよくわからない数歳ヤドリガミ
視線と戦う、か
難儀だが全力を尽くそう

敵の動体視力を越える高速かつ変則的な移動法で好機に繋げる
防具は余り意味がない為
準備可能なら速度重視の軽装で挑む
【怪力】【空中浮遊】【吹き飛ばし】心得を用い空中も足場に、
現時点から弾丸の様に己を吹き飛ばすという事を繰り返し
敵の炎の発火地点を伝手に敵との距離・居場所を探る
この方法は恐らく己の着地時が最も危険な為
其処に【残像】残し迅速に本体を吹き飛ばし続ける

敵の居場所が予測出来れば同じ方法で俺を弾丸と化し其処へ吹き飛ばす
――行くよ
【覚悟】肚に据えユーベルコード用い【捨て身の一撃】で【鎧砕き】【串刺し】



 天を仰げば、晴れ空が蒼々と世界を照らす。
 摩天楼を見下ろせば、底に行くほど影が濃くなる暗色の世界が見えた。
 空は光、大地は闇。
 その戦場に交差するのは、対照的な明と暗の眺望だ。
 けれどその中に──ふわり。
 光彩でも真闇でもない、夜明けを待つ澄空のような、昏くも艷やかな髪色が秋風に搖れる。
 楼・静鳳(紫炎花燈・f18502)。空気の中を滑るよう、そっと地面に降り立って紅の視線を巡らせていた。
 人工的であれど、美しくもある眺め。
 けれど──そのずっと向こうには、確かに“何か”がいる感覚が膚にぴりりと伝わってきている。
 正確な位置は判らない。だがほんの少しでも動けば、その敵の眼が自分を捉えるだろうと判った。
「視線と戦う、か」
 その感覚は、この戦場に立ったことで一層実感できた。
 敵は紛う事なき強敵だろう。
 ──けれど。
「難儀だが、全力を尽くそう」
 言って足元に力を込める静鳳には、恐怖の感情は垣間見えない。どころか、自らが傷つくことへの躊躇いさえも。
 それはただ護るべきものを護ろうとする、未だ何にも染まらぬ透明な意志。
 だから今は迷いもなく、地を蹴って空へ踊っていた。
 既に何処かから視線が注がれているという感触はある。
 けれど静鳳の身を焔が焼かないのは──敵の動体視力を上回る程の速度で翔けているからだ。
 ただ真っ直ぐに飛ぶだけでなく、空中を蹴って曲がり、建物の陰へと滑り込み。さらに体を返して逆方向へ加速しながら、風を掴まえて優美に旋回する。
 尾のように靡く髪が、色の残滓で軌跡を描いていく。
 決して一点に留まらず、変則的な動きを続けることで視線に捉えさせない、高速の回避行動にして舞踊の如き鮮麗な身のこなし。
 それでいて速度が落ちないのは、怪力を以て風を叩くことで常に弾丸のように己を吹き飛ばしているからだった。
 中継点として建物の最上に着地すると、その一瞬だけは疾さが落ちる。
 即ち、敵の視線による発火が巻き起こるが──それでも静鳳はその場に残像だけを置き、既に自身を高空へと飛ばしていた。
「距離は……近いね」
 そして敵の視線が通った方向から、その居場所を既に割り出していた。
 相貌は静やかなれど、手がかりを決して見逃さない。美しくも敵を囚えて離さぬ、鋭き剣のように。
「──行くよ」
 直後には、己を弾丸としてそこへ吹き飛ばして。
 風を幾重にも突き破る程の勢いで、黒き躰を持つ敵──ダークポイントへと迫っていた。
「警戒:想定凌駕=視線回避」
 ダークポイントはその速度を目の当たりにいして、僅かな驚きにも似た色を見せる。それでも直後には銃口を正面へ向けてきた、が。
「させないよ」
 静鳳が剣を突き出す方が疾い。
 それは紅玉煌めくあかがねの剣。
 弾速の如き疾さを得たその刃は一閃、敵の銃弾が弾倉から銃口に届くよりも先に、その腹部を刺し貫いて。ダークポイントへの苛烈な初撃を与えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

石守・舞花
出ましたね、ダークポイント
いしがみさんがお相手します

巫覡載霊の舞使用
敵のUCより早く発動できれば神霊体になって自傷ダメージを軽減しますし、間に合わなければ【激痛耐性】で耐えます
「大丈夫です、まだ動けます」
けっこうなダメージを受けても、死んでなきゃ戦えるくらいの勢いで這ってでも戦います
痛くない、痛くないですから

多少の被弾は神霊体の効果で無視して、弾ごと切るように衝撃波で薙ぎ払います
ちょこまかと逃げるようなら、足元を狙って【部位破壊】で多少でも機動力を奪います
もし外れても、足場を壊して不安定にする効果くらいはあるでしょう
直接斬れるチャンスがあれば、受けた傷のぶんを取り返すように【生命力吸収】します



 ビルの窓が空を反射して鮮やかな蒼を映している。
 その中に映り込む陽光もまた輝いて、際限がない程に眩い。
 地面から見る景色は明るくて──故にこそ、建物の上に立つ漆黒の人影は目立って見えた。
「出ましたね、ダークポイント」
 石守・舞花(神石の巫女・f17791)は薙刀を握りながら、その姿を見上げている。
 影よりも暗い膚を持つ、不可思議なる存在。無数の建物が立ち並ぶ景色の中でも決して見紛うことはなかった。
「思考:汝=人間。人間<ヒーロー。
 推測:圧倒的強者=汝>ヒーロー。
 考察:汝=人間を超えた人間」
 と、その黒き敵、ダークポイントから機械的な声が響く。
 此方を見下ろして、想定以上の力が舞花にあると一瞬で見て取っていたのだろう。
 とはいえ、そこには恐怖の感情などは垣間見えないが──それは舞花にしても同じ。
 敵の言葉にも姿にもぼんやりとした表情を変えず、ただ戦いの姿勢を取る。
 相手が如何な認識をこちらに持っていようと、やることは変わらないから。
「いしがみさんがお相手します」
 ゆらりと、下げた髪を揺らすと一歩踏み出していた。
 が、まず先手を取ったのはダークポイント。此方に攻撃をさせまいと、素早く銃口を向けて視界をぐにゃりと歪ませてくる。
 それは舞花の精神に宿った、抗いがたい自殺衝動だった。
 防ごうとして、防げるものではない。僅かに残る理性も飲み込まれ、舞花は自分の握る刃で自身に狙いを定めていた。
「──」
 最早それが突き刺さるのは逃れられない──が。
 一瞬早く、舞花を包む光が聖なる煌きを帯びる。先んじて、自身の体を神霊体へと変身させつつあったのだ。
 直後には自身の腹部に深々と刃が突き立つが、超常的な力に満ちたその体が、刃を拒むように傷を浅く留めさせていた。
 それでも流血が地面を赤に染め、高熱のような感覚が奔る、けれど。
「大丈夫です、まだ動けます」
 舞花は正気を取り戻して、ふわりと浮いていた。
 決して無視できるほどの苦痛ではない。それでも死んでなければ戦えるのだと。
「──痛くない、痛くないですから」
 空を舞い始めるその表情は、変わらなかった──仮に、心の内がそうでないとしても。
 ダークポイントは先制攻撃の効果が薄かったと見たか、銃弾で直接の攻撃を試みようとしている。
 が、それには舞花が先んじた。焔を宿した薙刀を大きく燃え盛らせると一閃。衝撃波を乗せて高速の炎撃を繰り出している。
 ダークポイントは銃を向けるのを止め、それを避けるようにビルからビルへと移動していた。
 機動性で此方の上を行くつもりだろう。だが、舞花にはそれも予想済みだ。
「逃さないですよ」
 ダークポイントが一つのビルへと移動し終えるのを見ると、そのタイミングで炎を連射。それがダークポイントの足元を激しく灼いて、動きを縫い止めた。
 その一瞬が、好機。
 舞花は風の壁を突破するような速度で上昇し、一呼吸の内に肉迫している。
「受けた傷の分を、取り返させてもらいますね」
 声音は静かに、攻撃は苛烈に。勢いのまま薙刀を刺して生命力を吸収。
「これも、受け取ってもらいますよ」
 ついでとばかり、鋭い魔切り包丁も手に握り一撃。ダークポイントへ突き立てて、その黒色の膚を破っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アポリオン・アビス
【判定・SPD】

リボルバー……UCであるから残弾数は無限かもしれん
弾切れはあてにしないでおこう

【対策】
鉛玉に対して食欲を高めて自動発動型UC【Glatney Hazzard】に弾丸を喰わせつつ
俺は『戦闘知識・野生の勘・スナイパー・範囲攻撃』で酸を発射して自身に当たりそうな弾丸を迎撃

撃ち漏らし・食い残しの弾丸を足場に『ジャンプ・ダッシュ』で一気に加速して接近

【攻撃】
ある程度近づいたら『盾受け』で被弾覚悟で『怪力』を使い飛び蹴り
組み付いて補食

【心情】
お前にとってこれは戦闘なんだろうが、俺にとってはただの食事だ
とっとと俺の血肉になれ

油断せず確実に手段を奪い、餌にする

敵意も害意もなく、あるのは食欲のみ



 足元の地面に穿たれた銃弾が、薄い煙を上げる。
 馬の面の頭を僅かに下げて、アポリオン・アビス(貪喰王・f21964)はそれを見下ろしていた。
「何処からでも飛んでくるってのは本当みてぇだな」
 マンハッタン島、ビル群の只中。
 静寂の市街には未だ敵影すら見えないが、敵の銃弾だけは距離を問わず飛んでくる。降り立ったその瞬間から、総ての場所が敵にとっては射程内というわけだった。
 アポリオンはそれを実感しながら、仰ぐ。
 弾道でおおよその敵の位置は判った。ただ、同時に接近が容易でないこともまた、肌に感じている。
「弾切れもあてにできないかもな」
 物質透過の弾幕。鉄壁の壁。
 自身の前に立ちはだかるものの強大さを理解しながら──しかしそれでも、アポリオンは飛蝗の脚を止めることなく進み始めていた。
 何故なら鉄壁の壁だろうが弾幕だろうか、迫ってくるならその全てが──食糧だから。
 ──GuGeGAAAAAAAAAAAAA!!
 咆吼にも似た声を上げ、アポリオンは鉛弾へ対しての食欲を自ら増大させる。すると眼前の空間が大きく撓み、大蝗が召喚されていた。
 Glatney Hazzard。
 アポリオンの胃と繋がり、あらゆるものを喰らう習性を持つそれは、飛び出すと同時に迫りくる弾丸を喰らい始めていた。
 彼方の敵──ダークポイントは弾丸が効いていないのだと思ったことだろう。さらなる連射を重ね、弾を雨と降らせてくる。
 けれどそれは此方にとっては恵みの雨でしかない。
 アポリオンの胃に入ったものは暴走を抑える封印のため、即時にカロリーに変わりに消費される。故にどれだけ弾雨が注ごうが、その胃は常に空も同然。食欲に限りなどなかった。
 避けられぬ弾丸は、アポリオンが酸を発射して自ら迎撃。傷一つ負うことなく、その視界に敵影を収めていく。
 そして数発の食い残しが宙に在る間に、それを足場にして跳躍。
 加速しながら蛇蜻蛉の翼で風を切り、大きく空に飛び出して──ビル上のダークポイントへ肉迫していった。
「狙撃:全弾発射→眼前標的」
 姿を晒したことを愚かとでも思ったろうか。ダークポイントは複数の銃口を向けてくる、が、アポリオンはそれも覚悟済み。
 多少の被弾はものともせずに、勢いのまま飛び蹴りをかますと、そのまま組み付いた。
「お前にとってこれは戦闘なんだろうが、俺にとってはただの食事だ」
 ──とっとと俺の血肉になれ。
 牙を立て、捕食。鈍い音が黒色の躰を破り、アポリオンの胃へ落としていく。
 敵意も害意もなく、あるのは食欲のみ。故にこそ純粋な鋭さが、ダークポイントの命を深く削いでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
昔のえらい人が言ったらしい「当たらなければどうということはない」と。
たぶんそれは視線も一緒なのだ。

ならばわたしのやることはただ翔けるのみ。
存在感のある残像をばらまきながらひたすらダッシュ。名付けて必殺変態分身!で、相手の視線を残像にひきつける。一応火炎耐性も積んでいくけど使う機会なければいいなあ。

で、初撃をはずせばあとは真っ向勝負。先制の全力攻撃。

ダークポイントとやら!このわたしがいる限り!
きみのたくらみは全てくだーく!!

ダークだけに、くだーく。

こういう普通なら崩れなそうな相手だからこそ、逆に平常心を砕いてみたいのだ。
で、相手の冷静さを崩したら刀の二刀流で、立ち合いは強くあたってあとは流れで。



 降り立ったそこは、既に戦場の香りがした。
 静謐の網を縦横に張り詰めさせたような空気の中、仄かに漂う火薬の匂い。
 硝子張りの建物が景色を乱反射させて、視界すら容易に塞がない開放地。それはいつ、何時敵の攻撃が降り掛かってきてもおかしくない死地だ。
「なるほど。反射越しに飛んでくる可能性もあるというわけだ」
 前後左右、そして上方の全てが危険地帯であることを、大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)はぐるりと見回して実感する。
 確かに、ヒーローが圧倒されるわけである。それは紛れもなき、猟兵をして苦闘する相手に違いないのだから。
「しかし」
 と、麗刃はずん、と歩を踏み出していた。
「昔のえらい人が言ったらしい──「当たらなければどうということはない」と」
 たぶんそれは視線も一緒なのだ、と。
「ならばやることは、ただ翔けるのみ」
 瞬間、麗刃は地を蹴って高速で疾駆し始めている。
 この時点で既に、何処から視線が飛んできても不思議ではない状況。けれど惑わず、麗刃は灰色を蹴って速度を上げていく。
 何故なら決して、無策というわけではない。
 麗刃は一歩進むたび、微かに角度を変えるたび、都度そこへ自身の残像をばら撒いて残していた。
「名付けて必殺変態分身!」
 文字通り麗刃そのものの見目をしたその残像は、時に自身の存在をアピールしたり、時に謎のポーズを取ってみたり──限りがないほどの数で、麗刃の本体を隠してゆく。
 と、そこで挑発的な素振りをしている残像の一体が強烈な炎に見舞われて消滅した。
 連続して、同一直線状にある残像が消えてゆく。
「居場所は判ったのだ」
 麗刃は編んだ髪を風に揺らしながら、視線を奔らせていた。
 残像が消えた場所を辿っていけば、そこが敵の視線の起点──即ち敵の居場所。素早くそれを見取った麗刃は、低い建物の屋上にその存在、ダークポイントを発見している。
 ただ、敵の視線も徐々に弧を描き、麗刃の本体へと近づきつつあった。
 けれど初撃を避けた時点で優位はこちらのもの。一瞬後には、跳躍した麗刃が至近にまで迫っていた。
 ここまでくれば、後は真っ向から勝負するのみ。
「撃退:正面突破=戦略的愚行──」
「ダークポイントとやら!」
 と、ダークポイントが銃口を向けてこようとするその至近へ踏み込んで、麗刃は二刀を抜き放ち構える。
 そして真正面から言い放った。
「このわたしがいる限り! きみのたくらみは全てくだーく!!」
 ダークだけに、くだーく。
 くだーく、くだーく、くだーく……。
 ビル群によく反響する声音が何故か、一瞬時空を停止させる。
 ──ネタキャラとしての矜持(ソレデモワタシハギャグヤネタガヤリタイ)。
 容易に崩れなさそうな相手だからこそ、その平常心を砕く意義がある。
 シリアスな空気を切り裂いて吹き飛ばして、ゴミ箱に叩きつけるようなその言葉は、確かにダークポイントの思考回路をかき乱した。
「停止:思考中∴理解困難。
 考察:だーく=ダーク←韻を重ねる=滑稽な効果……」
「いや、そこは冷静に考えるところではないのだ」
 とにかく敵の動きが止まったのは事実。
 麗刃はゼロ距離に迫ると同時に連撃。
 奔らせた斬閃で後退させると、さらに踏み込んで廻転斬撃を見舞い、その腹部と胸部を深々と切り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マックス・アーキボルト
※アドリブ連携大歓迎

とうとう現れた、クローンでない本人自身……!
何者だろうと、好きにはさせない!

ダークポイントへと接近、銃弾を出来るだけ〈見切り、ダッシュ〉で回避すると共に、【W・D・S】を出来る限り早く展開する!
展開までのかなりの被弾は〈激痛耐性〉でとことん耐え抜いて進む!
ビルからの移動には〈ジャンプ、クライミング〉で登っていくよ!

展開したら敵の銃弾を、空間を歪曲させてダークポイント自身に放つ!
更に〈火炎耐性〉で熱暴走に耐えつつ魔力を限界まで使用、銃弾の半分を〈援護射撃〉としてクロスファイア!楽に回避はさせないよ!
他に共闘できる仲間がいる場合は〈救助活動〉として目の前まで移動しよう!


ボアネル・ゼブダイ
アドリブ連携OK

無限の射程に障害物を無視する銃弾、さらには自害を促す銃口…流石は幹部クラス…と言ったところか
どれもが厄介な攻撃だ

敵がこちらに視線を向けると同時にカウンターでシルバーカトラリーセットから無数のフォークとナイフを投擲
敵の注意と視線をそちらに引いたらUCの前段階として召喚した黒犬達に氷の吐息で壁を張らせ、そちらに漆黒の炎を肩代わりさせる
その氷壁を隠れ蓑にしたら周りのビル群をダッシュとジャンプで素早く飛び回り一気に敵に接近
そのまま墓守の黒犬に変身して攻撃を加える
視線がこちらに向いた場合は待機させている黒犬達に一斉に攻撃させる

余所見をしている場合ではないぞ
敵は私だけではないのだからな



 爽風の吹くビル街は整然としていて、空まで晴れ渡る。
 仰げば陽光が建物を縁取って、世界を輝かせているようだった。
 故にこそ、その黒色の影は何より目につく。その姿が立っているそこだけが光を失ったようで、遥かな遠方からでも確かに存在感を感じた。
「とうとう現れた、クローンでない本人自身……!」
 ビルの屋上に着地したマックス・アーキボルト(ブラスハート・マクスウェル・f10252)は、碧の瞳でその姿を見据えている。
 ダークポイント。
 その敵は音もなく佇みながら、無数の銃を浮かべて鉄壁の護りを抱いていた。
「無限の射程に障害物を無視する銃弾、さらには自害を促す銃口……か」
 こつ、と。
 星天を映す水面のような髪をさらりと風に流し、降り立ったボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)もそのシルエットを仰いでいる。
 戦いの間合いとは言えない程の距離にありながら、目にするだけで喉元に刃を突きつけられているような感覚を覚えていた。
 攻撃の全てが厄介であり、強力であることも判っている。
「流石は幹部クラス……と言ったところか」
「うん、でも」
 と、マックスはぐっと自身の拳を握っていた。
「何者だろうと、好きにはさせない!」
 何よりあの敵がこの世界の破壊を齎すものであれば、と。
 マックスは踏み出して疾駆しながら、自身の周囲の空間に陽炎にも似た魔力を生み出し始めていた。
 ──空間接続ガジェット改「W・D・S」(ワーム・ドライヴ・スフィア)。
 空間の歪曲を可能にする魔力フィールドは、周囲の景色を早くも歪め始めている。
 その完全展開には多少の時間を要するが──それでもマックスは進む。
 既に銃弾が此方を狙い始め、足元や腕を掠めている。けれど多少の痛みなら耐えてみせるのだと、ビルからビルへ跳んで距離を詰め始めていた。
「──その通りだな。如何な強敵でも、それが敵である以上、やることは一つだ」
 と、同時にボアネルもまた奔り始めている。
 動けば当然、敵に此方の存在を知らせることになる。
 自然、その視線も此方に注がれることになるが──ボアネルは一瞬早く、シルバーカトラリーセットからフォークとナイフを取り出していた。
 無数のそれを投擲すると、陽光の反射と金属音が視覚と聴覚を強烈に誘引する。狙いは功を奏し、一瞬後に燃えたのはボアネルではなくそのフォークだった。
 その間にボアネルは黒き影を足元に招来し、暗色の魔法円を形成。その中から黒犬達を召喚していた。
「創造せよ、零下の吐息に依る蒼の壁を──」
 命に応じて吼えた黒犬は、氷の吐息を広域に撒き、視界を広範囲に塞ぐほどの氷壁を作り上げていく。
 ダークポイントが漸くボアネルの存在に意識を向けても、既にボアネルは壁の内。氷壁の全てを隠れ蓑にするように前進を始めていた。
「警戒:未知の能力=猟兵の勝機。
 考察:現状驚異→二個体……」
 声を零しながら、ダークポイントは視線を奔らせる。そこには微かに惑いの色もあったろう。
 それでも直後には、姿を見せているマックスを優先に排除しようとした。
 が、その頃にはマックスはW・D・Sを展開済み。
「もう、当たらないよ」
 放たれる無数の弾丸を、注ぐ陽光すら屈折させてしまう歪曲空間に飲み込んで、軌道変更。速度を落とさぬままダークポイントへと撃ち返していた。
 何者をも貫く弾丸は、ダークポイント自身すら例外ではない。黒色の体を穿った銃弾は確かにその命の一端を削り取っていく。
「──」
 ダークポイントは滑るように後退し、一時間合いを取った。その速度は素早く、一瞬で彼方まで過ぎ去ろうとする、が。
 その横合いへ丁度、氷壁から抜け出たボアネルが接近している。
「逃しはしない」
 ──我が爪牙よ、断罪の双剣と成れ。
 ──我が瞳よ、昏き冥道を照らす燈火と成れ。
 ──我が肉体よ、生者に仇なす骸を還す墓守と成れ……!
 隣のビルから飛び移ったボアネルは、勢いを殺さぬままに自身の体を変容。墓守の黒犬(チャーチ・グリム)へと成り獰猛に襲いかかっていた。
 ダークポイントは一歩下がり避けようとする、が、黒犬と化したボアネルはその速度にすら軽く追いつく。
 そのまま敵の体を押さえ、鋭い爪で一撃、腹部を貫いた。
 よろけるダークポイントは、容易にその場から退くこともできない。ならばと苦渋の選択に、弾丸をばら撒いて至近から反撃を目論んでくる。
 が、その弾丸がボアネルに触れることはなかった。
「やらせないよ」
 響く声は、マックス。
 フィールドの力を利用しボアネルの元へワープ。そのままボアネルの体を歪曲空間で包み込み弾丸から逃れさせていた。
 その弾丸は、無論敵自身へ撃ち返す。
 数十の弾に襲われるダークポイントへ──機を合わせたボアネルも突進。苛烈な斬撃を見舞い、その体を吹き飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
無限の射程に全方位への超連射……羨ましくもありますね。
ですが、付け入る隙はあります。

実弾を放つ以上、全方位へ超連射をしたところで遠方に届くには時間がかかる上、弾幕の密度も低くなる。ならば十分に動体『視力』で『見切り』回避できます。

回避したらビルを『ジャンプ』して敵の弾丸を避けつつ接近しながら、ビルの谷間に『目立たない』ようドローン「ペレグリーネ」を放します。

物質透過の弾丸であればドローンも透過し、通常の弾丸ならビルに阻まれて当たらない、ビルの谷間を縫っていけば敵に接近できるでしょう。

ペレグリーネが接近したら機銃による『援護射撃』、できた隙を『スナイパー』の技術による【凍風一陣】で撃ち抜きます。



 ぴりりと、風に交じる僅かな刺激。
 肌の痺れにも似た、予感めいたほんの少しの感触。
 ──敵の射程に入っている、と。
 その本能的な理解が齎す感覚を、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)はビルの上に降りた瞬間から感じ取っていた。
「無限の射程、ですか」
 未だ遠方に居る敵の、その手中に自分が在るような息苦しさ。
 それは紛れもなく、その敵がいつでも自分を撃てる状態にあるからにほかならないのだろう。
 セルマは無数のビル群を眺めながら、瞳を細める。
 曰く、敵──ダークポイントは射程を問わぬばかりでなく、全方位への超連射能力をも有しているらしい。
「……その点は、羨ましくもありますね」
 同じ射撃武器を扱うものとして、それがどれだけ戦場において有利なことかは判る。
 だからこそ容易には近づけない──けれど。
 同じ射撃武器を持つからこそまた、冷静でもいられる。
(敵の技は紛れもなく強力。ですが……付け入る隙はあります)
 セルマは零温の瞳で見据えながら、小さな呼吸を一つして。それから地を蹴って走り出していた。
 こうして一歩でも近づけば無論、敵は射撃を敢行する。
 ダークポイントが居るのは遥か前方のビル上だが──既にその銃口からは無数の弾丸が放たれていた。
 浮遊するリボルバーによる、球形の弾幕。自身を囲うように射撃を繰り返すことで、何人をも寄せ付けぬ護りを構築しているのだ。
 ただ、セルマは足を止めない。
 何故なら弾幕は文字通りの鉄壁ではない。距離があればあるほど此方へ届くのに時間がかかる上、その密度は低くなるのだ。
 十分な距離があれば、セルマの動体視力で見切るのに問題はないレベル。セルマは左右に蛇行しながらビルを移っていくことで、紙一重で弾を避けながら着実に前進していた。
 勿論、それにも限界があることは知っている。
 だから──奔りながらドローン「ペレグリーネ」を宙へと放っていた。
 軌道はビルの谷間の目立たぬ位置。物質透過の弾丸はそもそも当たらないのだから、通常の弾丸さえ遮蔽で回避できれば、撃ち落とされることなく敵に接近することができるという策だった。
 そのままダークポイントの近くに到達したペレグリーネは機銃で射撃。不意打ちを喰らわす形で無数の弾丸を降り注がせていた。
「──」
 ダークポイントは体を穿つ衝撃によろめいて、はっと視線を向ける。
 直後には狙いを定め直し、ペレグリーネを撃ち落とそうとしてくるが──その僅かな間隙にセルマが跳躍。ダークポイントを射程に収める位置に着地していた。
 ダークポイントが気づいて視線を戻した時には、もう遅い。
「この一瞬を、逃しはしません」
 セルマはマスケット銃──フィンブルヴェトを向けると、そこへ込めた弾丸に鋭い氷気を注いでいた。
 凍風一陣(イテカゼイチジン)。
 刹那、放たれた一弾は氷晶の尾を宙へ描きながら、重力加速度による弾道の変化までもを計算済みでダークポイントの胸部に吸い込まれてゆく。
 違わず命中した衝撃は、絶対零度の冷気を全身に広げ──溢れ出る滂沱の血潮までもを凍りつかせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バル・マスケレード
先制攻撃による自殺衝動……実に厄介だが、策はある。

二人で一人なのが、俺達の最大の武器。
己に致命傷を見舞う前に、宿主に仮面である俺を傷つけさせ。
宿主の方が呑まれそうなら、
俺が無理矢理に宿主の体を動かし肉体を傷つけるる。
お互いを痛みで正気に引き戻す荒技。
【激痛耐性】で多少の痛みは食いしばる。

敵から見りゃ自殺衝動に従って自傷してるだけに見えるハズ。
その虚を突いての【だまし討ち】……
銃口向けてる奴さんが動き出す前に、宿主に、俺を【投擲】させる。
肉体を乗っ取る数秒の隙がありゃ
宿主が【スナイパー】技術で敵の脳天に【クイックドロウ】を見舞うに十分。

よう、ヴィラン野郎。
己を死に追いやる感覚、テメエも味わえよ。



 宙まで伸びるような鉄筋の塔。
 それが無数に立ち並ぶ街は、ビル風を強く吹き付けさせていた。
 フードが靡いて断続的な音を響かせる中、バル・マスケレード(エンドブリンガー・f10010)は建物の屋上へと降り立っていた。
「ジェネシス・エイト、ダークポイント……か」
 数え切れぬ程のビルを経た先にいるその姿を認めて、呟く。
 ここからでは小さな点のようにしか見えないが、それでも無貌の不気味さは伝わってくる。その能力に、ヒーローが太刀打ちできなかったということもまた。
 ──曰く、銃口を向けられるだけで抗いがたい自殺衝動に襲われる。
 ──曰く、それは自身の意志の力では容易に覆せぬという。
 武器を突きつけられたら、それで最後。
 自分を射抜くのは自身の凶弾だ。
「……厄介だが」
 と、呟きながら、それでもバルには策がないわけではなかった。
 無論、それは無傷で簡単に突破できるという生易しい理想論ではない。相手が強敵である以上、見合ったリスクが生まれるのは当然だ。
 けれどこれなら、突破できる。
 それはバルがバルで在ればこそ。
「それじゃあ──行くか」
 瞬間、足に力を込めて疾駆。ビルからビルへ素早く飛び移りながら、高速でダークポイントの近くにまで迫っていった。
 当然、そうなればダークポイントはバルへと銃口を向けてくる。
 その時点で、もう敵の能力は発動していた──けれど。
 ──二人で一人なのが、俺達の最大の武器なんだよ。
 自身を自殺衝動が襲っているのは、紛れもない事実だった。
 だが今の“バル”は仮面たる己と宿主である体の二つの存在で成っている。銃口が一つである以上、二つを捉えたとしても僅かなラグが生まれるのだ。
 故に、敵の能力による攻撃が発生する前に──宿主が刃を握り、仮面の一端を傷つける。
 それによって正気を保ったバルは、次に呑まれそうになっている宿主を無理やり動かして──その膚に刃を突き立てた。
 二つの存在が、互いを痛みで正気に引き戻す荒業。
 意識が離散しないよう、無理矢理に互いが互いを抱き寄せるように。それはきっと、文字通りに己が身を預ける信頼がなければ出来ぬこと。
「……ッハ」
 苦痛の吐息が溢れるが、それでもバルは自身を最後まで保っていた。
 ダークポイントから見れば、自身の能力が適正に効果を発揮したと見えたことだろう。確かにバルは己を傷つけていたのだから。
 だが、真逆。
 それは攻撃などではなく、どこまでも互いを護るための行為だった。
 機械的に動く無貌の戦士には、それを理解できない。
 だから、バルはその一瞬の虚を突いて──宿主に自身を投擲させていた。
「よう、ヴィラン野郎」
「──」
 ダークポイントが反応できないでいるその瞬間に、バルは肉体を乗っ取り無理矢理に制御。ダークポイント自身の脳天に銃口を突きつけさせる。
「己を死に追いやる感覚、テメエも味わえよ」
 瞬間、迷いなく引き金を引いていた。
 死の舞踏を、共に(エゴイスティック・マスカレード)。
 自分自身の銃弾に貫かれたダークポイントは、無論、一切の防御をすることも出来ず。深い衝撃と負傷を刻まれて、高いビルから地へと堕ちていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

闇之雲・夜太狼
SPD
ライアーヒーロー「クライウルフ」参上!
俺が来たからにはお遊びはここからだよ!

名乗りもそこそこに銃口と視線から隠れる為、
近くにある車なんかの遮蔽物に飛び込むよ(【逃げ足】)
遮蔽物の陰で身を伏せつつ、当たっちゃっても【激痛耐性】で堪える
っていうか物質透過は欲張り過ぎだよ!
だけどそれが弱みにもなるんだから

【念動力】で隠れた俺ごと遮蔽物と、周囲の散乱物を【空中浮遊】させ
それらを固めてDP目掛けて投げつけるように落とす!
物質透過は欲張りすぎだよ これは撃ち落とせないでしょ?

俺の即席質量弾がぶつかればそれでよし
躱されても埃が舞って俺を見失うはず
そしたら選択UCで死角からMAGをぶっ放すよ!



 紫がかった黒髪を吹き付ける風に揺らし、道に舞い降りる影が一人。
 狼少年──闇之雲・夜太狼(クライウルフ・f07230)。くるんと宙で廻って着地すると、外套を靡かせながら仁王立ちしていた。
「ライアーヒーロー「クライウルフ」参上! 俺が来たからにはお遊びはここからだよ!」
 見据えるのは遥か前方にある黒の人型、ダークポイント。
 猟兵の攻勢によって一時地上に落ちたことで、さほど遠くない距離、地続きの場所にその姿を確認することが出来ている。
 とはいえ──夜太狼は名乗りもそこそこに横っ飛びに跳躍。直後に飛んできた弾丸からぎりぎりで逸れて、車の陰に転がり込んでいた。
「っと、危ない危ない」
 此方の姿を確認したら、敵がすぐに攻撃に移ってくるのは予想できていたこと。だから一先ず姿を晒さず、敵の視界から外れるように移動を始めた。
 ただ、ダークポイントの弾丸は物質を透過する。
 単純に物陰に潜んだだけでは攻撃を躱すには至らず、夜太狼は今も至近に飛んでくる弾に体を掠められていた。
 ぴしっ、ぴしっ、と。
 車をすり抜け、壁を通り抜けて来る弾丸の雨に足先や手元を被弾させられ、夜太狼は一箇所に留まってもいられない。
「っていうか物質透過は欲張り過ぎだよ!」
 これでは遮蔽に隠れることが視界を塞ぐことにしかならない。だが敵は全方位に射撃が可能であるから、その効果もまた薄い。
 流石に生半可な敵ではないと実感する──けれど。
「物質を透過する……それが弱みにもなるんだよ」
 一瞬後、夜太狼は念動力を発揮。自身を含め、車や立て看板、戦いで崩れた瓦礫──その全てを空中に浮遊させていた。
 地面に無数の影がかかって、道路が昏くなる。
 ダークポイントはそれに一瞬遅れて気づき、宙を仰いでいた。
「捜索:標的→未発見……」
 声を零しながら視線を巡らすも、遮蔽に隠れた夜太狼を捉えられない。
 そうして敵が僅かに惑っている一瞬に、夜太狼は浮いたものを固めて巨大な質量弾を作り上げていた。
「これは撃ち落とせないでしょ?」
 夜太狼の言葉に、ダークポイントはようやくその居場所を知る。
 だが夜太狼を撃とうと思えば、物質透過の弾を使わざるを得ない。そうなれば──質量弾を退けられない。
 夜太狼はそのまま、敵が対抗策を練る暇も与えず塊を投擲。強烈な重量を直撃させていった。
 塵が舞う中、ダークポイントは衝撃に耐えきれずに一度倒れている。それでもすぐに起き上がって銃を向け直す、が。
「いないいなーい……なんてね」
 夜太狼の声が響くのは全くの死角からだった。
 CODE:PR(コード・ピーカブーレイド)。一瞬にしてダークポイントの背後側へとテレポートしていた夜太狼は既に武器を構えている。
 サイキックエナジーで操るワイヤー銃。至近からそれを撃つと、猛烈な威力で放たれた手型のパーツがダークポイントを穿ち、貫いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
無限射程に物質透過って響きやばくね?
最早俺の逃げ場ナッシーン
じゃあ喰らうしかないじゃん
仕方ねェから喰らうわ

俺の「策」はただひとつ
俺自身を信じる事だけ
全身全霊かけて致命傷だけは回避
俺には【激痛耐性】がある
死なない限り動きは鈍らねェ

UCでの対策が間に合うなら
【九死殺戮刃】で増やしたナイフで弾丸を斬って被害を抑える
透過がどこまで作用すっかわかんねェが
俺自身には当たるんだからこっちの攻撃も多少は通用する筈だ

続くヤツの為にもあの機動力は削ぎてェな
頭より先に脚を潰す
狙いすましたナイフ投擲
追いつけたら残る攻撃回数を全て奴に叩き込む
忘れてた
どっかのタイミングで寿命の代わりに自分を攻撃する
その上での残り回数だ



「おォっと」
 細く編んだ髪の毛先を波打たせ、靴音を鳴らして脚を止める。
 するとその足元の地面が小さく弾け、弾丸の摩擦による煙が立ち昇った。
 ヘェ、と。
 ピアスで飾った眉を仄かに動かして、感心にも似た声音を零すのはジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)。
 不揃いの紅翼でビルの一角に降り立った、その直後から彼方より銃弾が飛来してきていたのだ。
 拳銃の間合いとは到底言えない距離から、既に始まっている敵の先制攻撃。
 情報に聞いた通り射程に限りはないらしく──弾道を辿ってみれば、前方にある高層ビルをすり抜けて来ていることが判る。
 無限射程に、物質透過。
「これやばくね? 最早俺の逃げ場ナッシーン」
 現在進行系で目に見えている弾幕を前に、ジャスパーは軽く言ってみせた。
 けれどそれは足を止める理由になるわけではなく。
「じゃあ喰らうしかないじゃん」
 仕方ねェから喰らうわ、と。
 足元や腕を掠め、灼けるような感覚を齎す銃弾に対し、躊躇うでもなく。真っ直ぐに前進を始めながらその渦中に入り込んでいた。
 無数に飛来してくる衝撃の嵐を、全て避ける方法などは無い。
 ならばジャスパーの策は元より一つだった。
 ──俺自身を信じることだけ。
 致命傷だけを逃れることに集中し、回避を行う。無論殆どの弾丸には命中してしまうが、受けなければ倒れることはない。
 そして死なない限り動きは鈍らない。
 何故ならば──。
「際限なく弾が降ってくるなんて──楽しくて堪らねェからなァ」
 白い肌を弾速が引き裂いて、鮮血の化粧で染める。
 褒美は鋭く焦げ付くような痛み。その一つ一つが、ジャスパーの顔を曇らせるでもなく、俄な高揚を運んでいた。
 命を貫くでもなく、ただそこに鮮烈な痛みだけが残るなら──苦痛というより、狙撃というより、差し詰め歩む程に口付けを受けているようなもの。
 一歩進む度に血飛沫が地面に溢れるが、それも愉しさの足跡。最後にたどり着けるなら、それは愉しんだかどうかの違いでしか無い。
 敵──ダークポイントの姿がはっきり見えるようになると、向こうも射撃を激しくして此方を近づかせまいとしてくる。
 けれどその頃にはジャスパーも手元のナイフを増殖させ、弾丸に対処する準備を完了させていた。
 敵の銃が一丁でないなら、此方の刃も増やすだけ。雨と注ぐ弾へ無数の剣閃を奔らせて、その大半を斬り落としていた。
 そのまま前進すれば、もう敵の目の前。ジャスパーはダークポイントに対して刃を振り翳している。
「よォ。中々、愉しませてもらったぜ」
「観察:汝の言葉→偽り=皆無。
 思考:戦闘行動=単純殲滅。
 疑問:交戦←悦楽=必要性?」
 ジャスパーの嗤い顔を見つめたダークポイントは、銃口を向けながらも声を零す。
 それは感情を介さない声音で、しかし本音から言っているようにも聞こえて──ジャスパーはそれに尚、笑みを見せた。
「血まみれで笑ってンのが可笑しいか?」
 ──あんたも俺みたいになったら愉しいぜ?
 腕元を弾丸で穿たれながら、それでも返す言葉にはたっぷりと喜色を含めて。
 試してみるか、とでも言うように。
 瞬間、投擲した刃でダークポイントの足を突き刺す。
 ダークポイントの体勢が傾ぐと、ジャスパーはそのまま肉迫。増殖させたナイフを全て振るい、滂沱の衝撃で足を潰し、血潮を散らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白斑・物九郎
●POW



無限射程だァ?
こちとら三千世界を跨いで通る嵐の行軍っスよ


●対先制
・ビル群をパルクール(ダッシュ+ジャンプ+クライミング)で機動
・「敵先制の照準/敵の移動/黒炎によるこちらの機動の阻害企図」を【野生の勘】で見越し、直視されぬよう、視線照準に対し常に遮蔽を盾にする位置取りを(地形の利用)

・回避が危うい際は、フォースオーラ・モザイク状の空間を敵方角に対し扇状に展開(投擲+なぎ払い)
・風景を乱すモザイク(迷彩+アート)を散布、敵からの視認を遮る


●反撃
・【ワイルドドライブ】発動
・モザイクの視覚攪乱をより広範かつ強烈に展開、己のみならず敵POW対象の味方のカバーも実施しつつ、魔鍵での【串刺し】狙い



 かろん、かろり。
 鉄筋とアスファルトで出来た森は、不思議な音響を持っている。乾いた音がいつまでも減衰せずに、硝子と金属の間で反響し続けているようだ。
 そんな下駄の音を鳴らして給水塔の陰に隠れると──その一瞬後に、今まで立っていた足元が焔に灼けていた。
「ほー、見たものを燃やす、っスか」
 屋上の一部が焦げ付いて煙を上げるのを、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は見つめている。
 戦場へ降り立つと同時に、ずっと前方に居る黒き敵──ダークポイントに僅か一瞬見られただけでの出来事だ。
 その驚異も威力も、最早は想像するまでもなかった。
 と、未だ足音の残響が聞こえる中、そこに不思議な響きの声音が交じった。
「事実:視認速度>弾速>ほぼ全ての攻撃。
 加味:無限射程。
 結論:有効=汎ゆる攻撃目標」
 それは機械的な声によるダークポイントの言葉。感情を介しない単語の羅列ではあるが、そこには戦力的優位を誇るような色も垣間見える。
 故にこそ、物九郎の眉が仄かに動いた。
「──無限射程だァ?」
 遮蔽のずっと向こうに言ってみせるように。
「こちとら三千世界を跨いで通る嵐の行軍っスよ」
 無限遠だろうが、眼前の敵だろうが。敵と決めたらそれを“狩る”のは此方の専売特許に他ならないと。
 それを体現するよう、直後には物九郎は陰より疾駆し、跳躍。
 屋上の縁を蹴り──僅かな無重力時間の後、ぐるりと転がるように前方のビルへ飛び移っていた。
 ダークポイントは当然、表に現れた物九郎をしかと視線で捉えようとする。
 が、物九郎は留まらない。
 方向を斜めに変えて敵の目線から逸れると、一段低い建物の屋上へまたジャンプ。着地と同時に体勢を低くして壁を遮蔽に使っていた。
 直後には敵の視線が追いついて、その壁も燃え上がるが──疾走を続ける物九郎は非常階段の柵を蹴って、隣の建物の看板へ。小さな足場として飛び石のように利用し、また別のビルの屋上へと跳び上がっていく。
 高速ながら、決して闇雲ではない。
 灰色の森でも尚鈍らぬ野生の勘を、研ぎ澄ませて。敵の視線の動きを予測し、黒炎を如何に使うかを見越し、その全てを回避していた。
 それでも敵へ近づけば近づくほど、どうしても視線を受ける危険性は高まっていく。
 その内に逃げられない、と直感する時が来ると──物九郎はモザイク状の空間を顕現。敵の方角に対し扇状に展開することで自身の姿を歪め、隠していた。
 こうして短い時間だけでも、敵の目から逃れれば──距離を詰めるには十分。
 大きく跳躍して躍り出た物九郎は、周囲へ分厚いモザイクを広げ、敵の視界の殆どを覆い尽くす。
 ──ワイルドドライブ。
 己ばかりか味方をも護って余りあるほど、広範に拡大したモザイクは景色をかき混ぜ明滅させていた。
 如何なるものへも視線が届かなくなり、ダークポイントが惑ったその一瞬。物九郎が丁度眼前に着地している。
「受けてみなさいや」
 これがワイルドハントの一撃だと。
 物九郎が握るのはモザイクから取り出した魔鍵。膂力と速度、狩猟の意志。すべてを乗せた刺突は鋭く重く、ダークポイントの胸部を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鎧坂・灯理
【双竜】
綺麗なものは脆いことが多いよな
とはいえ、例外もある。そうだろ?

さて、どうもウロボロスの敵
私はしがない探偵でしかないが、つがいの敵は私の敵
戦う理由は充分だろう

お任せあれ、私のヒーロー
起動【日華舞陽】 61m×61個の小太陽達があなたの道を灼き拓く
超高熱のプラズマ球だ 物質ではないから透過は出来まい
鉛玉の雨などすべて溶かして蒸発させてやる

この太陽は私の激情
私の思いが私たちを灼くことはない
炎を突き破って現れるのは、ヒーローのお約束だろう?

補佐は任せろ 念動力で弾をそらし腕をねじ曲げ、銃を弾詰まりさせてやる
我らの明日のために死ね、ダークポイント


ヘンリエッタ・モリアーティ
【双竜】
綺麗よね、マンハッタン
――綺麗なものってどこもかしこも壊しやすいから、嫌ね

どうも、ダークポイント
「ダークヒーロー・ウロボロス」とそのつがいです
どうぞよろしくお願いしますね
先手は「譲ってあげる」
任せたわよ、灯理。道を切り拓いて頂戴
はは!私のつがいの炎は苛烈よ

弾と炎のぶつかり合いに折り見て
あえて永縁刀「紫衣紗」を手に【狼谷の戦乙女】で斬りかかります
炎だって空気だって一刀両断ですとも。欲しいのは虚。その一瞬

何方を攻撃するか迷った(解析した)のなら「もう遅い」
愛しいひとの前でかっこ悪いことは見せられないわ
つがいの援護を受けながら詰め寄り
黒い体に突き立ててやる
お前に明日は要らない
――絶えて死ね



 陽光の角度が僅かに変わる程に景色が煌めいていた。
 硝子に蒼空の彩と差し込む煌きが乱反射し、拡散した光がまた別の建物にはじけてきらきらと輝く。
 眼下では折り重なった影が地面を昏く染め、暗色の風景を作り出していて。
 静寂に無数の摩天楼が佇むばかりのそこは、眩さと昏さの同居する世界だった。
「綺麗よね、マンハッタン」
 金装飾の黒いマントをはためかせ、ビルの一端に降り立ったヘンリエッタ・モリアーティ(Uroboros・f07026)は、光と影のコントラストを目に映す。
 けれど、と。
 ほんの少し瞳を細めるのは、その景色全体がまるで硝子細工のようにも見えるから。
「──綺麗なものってどこもかしこも壊しやすいから、嫌ね」
「そうだな。確かに綺麗なものは脆いことが多いよな」
 その隣にひらりと降りて頷くのは、鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)。吹き上がる爽風に黒髪をやわく靡かせながら、つい、と視線を動かした。
「とはいえ、例外もある。そうだろ?」
「ええ。きっと、そう」
 ヘンリエッタが応えたそのときだけは、二人の視線は互いを向いて。
 それから一瞬の後には、同時に地を蹴り短い空中散歩。二人で一段下の建物上に着地すると、その前方に黒のシルエットを捉えていた。
「どうも、ダークポイント」
 見据えるヘンリエッタは静かに、けれどその内奥に、触れると灼けるような温度を携えて──恭しく言葉をかける。
「「ダークヒーロー・ウロボロス」とそのつがいです。どうぞよろしくお願いしますね」
「……」
 いくつものビルを経て、こちらの姿を見据えたダークポイントは──ヘンリエッタと灯理を短い時間観察しているようだった。
 或いは、二人に何か底知れぬ驚異の萌芽を感じたか。
 けれど感情を表には出さず、すぐに無数の銃を浮遊させ始めている。
「前提:ヒーロー=敵対存在。
 目標:猟兵=撃滅対象。
 結論:ヒーロー∧猟兵=殺戮対象」
「ああ、そうだろうな。ウロボロスの敵」
 と、こつりと一歩前に出たのは灯理。
「ならば戦う理由には十分だ。私はしがない探偵でしかないが──つがいの敵は私の敵なのだから」
 目の前の無貌がヘンリエッタの敵であるというなら、自分もこの力を注ごう、と。
 その言葉に、ダークポイントは銃口を向けて射撃を敢行し始める。
 けれど二人は惑わない。
「先手は「譲ってあげる」」
 ヘンリエッタは視線を横に流し、隣へ向いていた。
「任せたわよ、灯理。道を切り拓いて頂戴」
「お任せあれ、私のヒーロー」
 応えた灯理は、飛んでくる無数の弾丸に対して逃げも隠れもせず。衣装の術式を瞬間で奔らせて、眩いほどの熱光球を生み出していた。
 それは超高熱のプラズマ球。一つや二つではなく、実に六十一に及ぶ数が小太陽の如き光を帯びて撃ち出されていた。
 ──技術:日華舞陽(ダンス・オブ・ヤタガラス)。
 白と赤の入り交じる炎熱が燃え盛り、狂い踊る。
 面前にまで迫っていた弾丸は焔を上げて焼け落ち、その全てが二人に届く前に消え去っていた。
 敵が弾丸を連射してきても、灯理は同じだけ光球を輝かせて弾幕を蒸発させていく。
「はは! 私のつがいの炎は苛烈よ」
 響くのは悲鳴でも悲嘆でも苦渋でもなく、焔に照らされたヘンリエッタの賛嘆。
 眩しいものを見上げるように、そして見惚れるように。改めてその力を間近に見て、微かに誇らしげでもあった。
「思考:光球と弾速の差異=未確定。
 考察:連射継続による勝算→不確定……」
 ダークポイントは声を零しながら、それでも押し切られる事を防ごうと、一層射撃に注力する他ない。
 けれどその全てを灯理は退けてみせる。
「この太陽は私の激情。私の思いが私たちを灼くことはない」
 だから決して、突破はされない。
 虚勢でも推測でもなく。確かな確信として、灯理は眉一つ動かさず、凶弾を光の中に飲み込んでいった。
「何よりも──炎を突き破って現れるのは、ヒーローのお約束だろう?」
 と、灯理の声が敵の耳朶を打った頃には。
 ダークポイントは小太陽の群の中から黒き姿が飛び込んでくるのを見た。
 それこそ、ビルを飛び越えて来ていたヘンリエッタ。黒の刃──永縁刀「紫衣紗」を手に握り、踏み込んできていた。
 ──狼谷の戦乙女(ウールヴダリル・ヴァルキュリヤ)。
 流れて飛んでくる弾があれば刃先で逸らし。
 散ってくる火の粉があれば剣圧で振り払い。
 時間にして一呼吸にも満たない間に、ダークポイントの近接の間合いにまで迫っている。
 欲しいのは虚。その一瞬。
 故にこそ、敵が何方を攻撃するかと思考したのなら「もう遅い」。ヘンリエッタは刃を握った腕を引き絞りながら一気に至近に踏み寄っていた。
 ダークポイントはそれでも、全方位攻撃を可能にするその能力の為に、狙いを定めずともヘンリエッタを撃つことは可能だった。
 けれどヘンリエッタは下がらず懐へ。
 愛しいひとの前でかっこ悪いところなんて見せられないから。そして何より、その人を信頼しているから。
 その瞬間、後方の灯理が念動力を発揮し、微かにでもヘンリエッタに迫っている弾を逸らす。同時に敵の腕を捻じ曲げ、ヘンリエッタを狙う銃には弾詰まりを起こさせた。
「我らの明日のために死ね、ダークポイント」
「ええ。お前に明日は要らない」
 直後には、ヘンリエッタが刃を振るって黒い体に突き立てている。
「──絶えて死ね」
 発露された忿怒が、その膂力に乗って凄まじいまでの衝撃を生む。踏みとどまることすら出来ないダークポイントは、ビルから下方の闇へと落ちていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
ったく、どっからでも攻撃届くとかズルくなぁい?

さて、燃やすのは視線で捉えた対象だったわね
なら、常に視界の通る方角、瞬間を意識し注意しながらビルの合間を走るわ
どこから攻撃したってその瞬間の殺意は隠せるモンじゃないデショ
炎の軌道予測し見切り、オーラ防御展開
激痛耐性で痛みを凌ぎ第六感併せ殺意の出所を探るヨ
受けた傷から【黒涌】生み殺意に向け命中重視でけしかけ
すぐさま2回攻撃で先の影狐のあと追わせ自身も続く
あのコ達はオレの血肉、見失いやしない
幾度か攻防繰り返し獲物の居所掴もうじゃナイ

手が届く程近付いたら拳で傷口をえぐって
敵の体内に攻撃力重視で影狐を生み喰らわせ生命力吸収
受けた分位、補充させてちょうだいな



 太陽が中天を向くと、摩天楼の陰にある道々にも眩い光が降りる。
 その中できらりと耀く紫雲色の姿が一人。
 コノハ・ライゼ(空々・f03130)。薄氷の瞳に、淡い紫の彩に染めた髪を揺らがせて──きょろりと周囲を見回していた。
「今のところは大丈夫だけど……」
 でも、すぐに逃げ場もなくなりそう、と。
 呟くのは、敵影がはっきりと確認できていない今の時点ですでに、鋭い敵意にも似たものを肌に感じているからだ。
 無数のビルに阻まれて、未だ攻撃は飛んできていない。しかしそれがすぐに襲ってくるのだと、予見するには十分な気配があった。
「燃やすのは視線で捉えた対象だったわね」
 言いながら、しかしコノハの美貌に焦りの色はない。
 敵は己の能力に自身を持っているかも知れない。警戒をしているとは言いながらも、自身がやられるつもりはない筈だろう。
 だがコノハもまた“餌場”であり“狩場”としてここへやってきたつもり。
 元より、負ける前提で降りてきてはいないから。麗しい相貌の奥に、仄かに鋭いものを内在させて──その場から疾駆し始めていた。
 道を駆けると、程なく肌を刺す敵意が殺意に変わりゆくのが判る。
 コノハはビルの合間を縫うように駆け抜けながらその手がかかりを探った。
 今の段階でこれだけ気配が感じられるなら、攻撃の瞬間の殺意こそ簡単に隠せるものではないだろうから。
(って、来たみたいね)
 その感覚が次の瞬間、一層強くなる。
 そしてコノハが留まらぬように速度を上げた、その直後。すぐ背後の地面が大きく燃え上がった。
 敵──ダークポイントの視線による発火攻撃。
 直撃自体は免れたものの、その焔は燃え上がってコノハへと延焼してくる。
 ただ、コノハはそれを予測済み。十分にタイミングと軌道を見切った上で、高空の朝日の如き澄んだオーラで自身を守って受け止めた。
 肌の灼ける痛みが奔るが、それは耐性で凌ぎ切る。
 後は、判明した敵の視線の動きと殺意の出所から敵の方向を知るだけ。
 それはおそらく、遠方の道の先だった。
「ったく、どっからでも攻撃届くとかズルくなぁい?」
 呟きながら、それでも受けた傷を利用する。
 ゆらりと陽炎が揺蕩って、傷からその血肉を代償にして影が出現していた。
 影狐──黒涌(コクヨウ)。
 素早く奔り出したそれは、殺意の方向へと走り出して敵に肉迫することに成功、そのまま爪撃を繰り出していた。
 ダークポイントは僅かにたたらを踏みながら、また後退して迎撃を始めるが──その間隙にコノハが距離を詰めてきている。
 幾度かその攻防を繰り返せば──コノハがダークポイントを間近に捉えるのはすぐのことだった。
「驚嘆:視線攻撃←作戦突破……」
「まだまだこれからだからね」
 声を零す黒き姿に、コノハは深く踏み込んで。拳で一撃、傷口を抉って、その体内に影狐を生み出していた。
「受けた分位、補充させてちょうだいな」
 阻害されることない場所から敵を襲う影狐は、生命力を存分に吸収。コノハの傷を綺麗に治してしまうほど、その血肉を喰らっていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋翠・華乃音
マリス・ステラ(f03202)と共に


「確かに強い。だが、全力を尽くして届かない相手ではない」

自身の存在の気配を完全に断つ。
彼女が星の輝きならば、その光の影こそ自らの領域。

「異能を使う。……防御は任せた」

この戦法が最も作戦成功率が高い。
――だから少しだけ、耐えていてくれ。

先制攻撃を凌げば反撃開始。
UC(異能)を使用して知覚する世界を拡げる。

無音だろうとこの異能は気配すら『視覚』として捉える。
見えなくても、視えるのだから。
燃やす為の視線が通るという事は、こちらの射線も通るという事。

「"狙撃手"を甘く見ない方が良い」

超音速の銃弾すら認識する事が可能なのだから、彼の高速機動を追えない道理は無い。


マリス・ステラ
緋翠(f03169)と参加

「主よ、憐れみたまえ」

『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
全身から放つ光の『存在感』で敵を『おびき寄せ』る

「緋翠は私の後ろに」

『オーラ防御』の星の輝きを球形状の膜のように広げる
穿たれると同時に、

【神の存在証明】で防御

「戦いを始めましょう、緋翠」

弓で『援護射撃』放つ矢は流星の如く
響く弦音は『破魔』の力を宿して敵の動きを鈍らせる

「あなたに星の加護を」

指先が瞬けば『封印を解く』ように、緋翠の潜在能力を引き出し『破魔』の力を宿らせる

緋翠は『かばう』

「あなたは私が守ります」

【神の存在証明】で適宜対応

攻撃を受けるたび、輝きが星屑のように散り、星が煌めいて光線の『カウンター』



 降り立つ灰色の景色には、静謐の空気が流れていた。
 時折針のようにこちらの膚を突いて止まないのは敵の殺意だろうか。姿は見えずともその脅威を十全に感じられる。
 それでいて、猟兵達から一度大きく間合いを取っているのだろうか、その姿がどこにあるのかが全く判らなかった。
「でも、此方が隙を見せれば一瞬で視線と炎が飛んでくるのだろうな」
 銀月のような髪を揺らして、降り立った緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は瑠璃色の視線を巡らせる。
 言葉は、違わぬ実感。
 敵は退避行動をとっていながら、同時に虎視眈々と此方を狙っている。それが肌に、心に感じられて微かにだけ瞳を細めていた。
「確かに強い。だが、全力を尽くして届かない相手ではない」
 と、その言葉もまた確かな確信。
 決して蛮勇ではなく、過信ではなく。どこまでも冷静で怜悧な思考が分析の結果弾き出したまでのこと。
 何より、華乃音は一人ではないのだから。
「──ええ」
 と、星を詰めた鈴を小さく鳴らしたような、清らかな声音が肯定を返す。
 マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)。月光に照らされた星空の如き、美しき髪を僅かに波打たせて──。
「主よ、憐れみたまえ」
 『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る。その光に呼応するように、体にも薄っすらとした煌きを刷いていてた。
 故に華乃音は静かに戦力的優位を感じる。これなら負けることはありえない、と。
 徐々に煌きを増すマリスに、華乃音はちらりと目線を向けて歩み出す。
 彼女が星の輝きならば、その光の影こそ自らの領域だから、と。
 一瞬後に自身の存在の気配を完全に断ち、余人にはおよそそこに何かがいるとすら感じられない程に存在感をなくす。
「異能を使う。……防御は任せた」
 この戦法は決してリスク無しには行えない。
 だが最も作戦成功率が高い。だから少しだけ、耐えていてくれ、と。
「判りました。緋翠は私の後ろに」
 マリスはそっと頷いてそれを受け入れていた。
 そうして自身の纏う光を球形状の膜のように広げて、まるで文字通りの星になってしまったかのような光量を帯びていく。
 華乃音とは逆に、その存在感を強める形。これなら否が応でも、敵は此方に気づかざるを得ないだろうと。
 事実、静謐の世界に瞬く美しい星を、黒き姿──ダークポイントは見逃さなかった。
 しじまの中に微かな違和感が交じったかと思うと、マリスは星の光が急速に熱せられるのを感じる。
 直後、その焔が球形の全体を包むほどに滾り、火花を散らしていく。
 おそらく此方を視認しただけで発現したであろう、発火能力。
 余りに強力で、ともすれば焼き払われ兼ねない威力──だが、マリスは美貌を崩さず静かな表情を保っていた。
 それは神の存在証明(コギト・エルゴ・スム)によって無敵の防御力を得たが故。眩い程の煌きを以て、敵の攻撃を完全に防ぎきってみせたのだ。
 なればここからが好機。
「戦いを始めましょう、緋翠」
「──ああ」
 華乃音はほんの僅かにだけ集中力を高め、五感と脳の演算機能を劇的に向上させることで、自身が知覚する世界を爆発的に広げていた。
 ──異理の血統(アルター・リネージュ)。
 それは気配すら視覚として捉える異能。
 見えなくても、視えるのだから。敵が視線を通してきた、その直線がまるで空間に描かれたようにはっきりと見て取ることが出来る。
 そして視線が通るということは、こちらの射線も通るという事。
 遠方に小さく、しかし確かに敵の姿を見た華乃音は、狙撃銃の照準を合わせ、既に発砲していた。
 敵の視線を丁度逆走する形で飛んだ弾丸は、違わず命中。
 ダークポイントはそれに驚いたことだろう。微かによろめきながら、それでもすぐに素早く移動を始めようとする。
 だが超音速の銃弾すら認識出来る華乃音が、敵の高速機動を追えない道理はない。敵が速度を出そうと遮蔽に隠れようと、気配が見えている以上、逃すことはあり得なかった。
「"狙撃手"を甘く見ない方が良い」
 静かに、そして確実に華乃音は射撃を重ねていく。
 ダークポイントも単純な回避は不可能と悟ったか、距離を置いたまま、視線に銃撃も加えて反撃に出ようとしてくる。
 けれどマリスがそれを許すはずもなく。
 弓で放つ矢を流星の如く奔らせて、敵の銃を穿って落としていた。
 同時に、響く弦音は『破魔』の力で敵の動きを鈍らせる。それによってさらなる好機が生まれれば──。
「あなたに星の加護を」
 マリスの指先が瞬くと、潜在能力を引き出すようにして緋翠にも魔を砕く力を与えた。
「ありがとう」
 小さく言った華乃音は、高められた力、敵に生まれた隙、その全てを活かすように射撃。ダークポイントの脳天を穿ち、黒色の血煙を溢れさせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
相手が先制攻撃を仕掛けてくるのならば
下手に躱して被弾を避けるよりもその場で凌ぐ方が私達には合っているでししょう
一筋縄ではいかないでしょうけど、それを越えた時こそ好機

先制攻撃は早業の抜刀術『八重辻』
先制であっても、そこから少しでも行動を早めるのが先決
第六感にて視線を察知、武器落としとなぎ払いにて方向を逸らす
被弾は激痛耐性にて耐え、倫太郎殿と協力して凌ぎます

攻撃を凌げた事を確認しましたらダッシュして接近しカウンター
此方が仕掛けると見せかけて倫太郎殿の拘束術で相手を鈍らせ
その隙に早業の2回攻撃にて仕掛けます

銃を扱う相手ならば、此方の得意分野である接近戦に持ち込めば此方のもの
あとは攻めるのみ


篝・倫太郎
【華禱】
先制攻撃にはオーラ防御でダメージ軽減して対応
喰らったダメージは火炎耐性と激痛耐性で対処
夜彦への攻撃は野生の勘や第六感も使用して
確実に庇って俺が身代わりに

重要なのは……夜彦がノーダメージかどうか、ってコトだ

拘束術使用
射程内なのを確認したら鎖で攻撃
同時に俺も華焔刀でなぎ払い
拘束術も俺の攻撃も衝撃波と生命力吸収を常時乗せてく
盾が先に落ちちゃ目も当てらンねぇだろ?

初撃以降の攻撃は見切りや残像も用いて回避
攻撃も単調になんねぇようにフェイント織り交ぜてく

精々、夜彦の一撃が通る隙を作ってやるさ
一瞬でいい
その一瞬を作り出せれば、勝ち筋は見える

こいつの相手するより
エンパイアウォーの信長戦のがキツかったぜ



 陽光が反射する建物群は、流れる雲で光量が変化して常に明滅しているようだ。
 影が訪れ、光が注いで。
 時に眩く時に暗い。
 まるで風すら明度を変えているようなその景色を──宵色の溶けた髪を揺らしながら、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は見据えていた。
「敵の姿は今の所──視認出来ませんね」
 ビルだけが立ち並ぶ光景に、敵影は無い。
 敵──ダークポイントも猟兵の力を身を以て知って警戒心を高めたか、容易に姿を現す気配がない。
 だが、その分いつ先制を取られるか、常に危険があるとも言えた。
「何にせよ、気は抜けないな」
 夜彦の隣に舞い降りた篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)も頷いて、四方に気を張っている。
 こがねの瞳は未だ何者も捉えない。それでもつぶさに周囲を観察することだけは怠らずに。
 その後も短い時間、二人には何も訪れなかった。
 それは闇雲に動くことも出来ない、ともすれば焦れた数瞬だったろう。
 ──が、二人は決してそこに焦りも惑いの感情もない。
 相手が先制攻撃を仕掛けてくるつもりだと判っているのならば、下手に躱そうと足掻くより、その場で凌ぐ方が自分達には合っている。
 それを二人共が、互いに理解しているからだ。
 夜彦と倫太郎はその確認に、ほんの一瞬だけ視線を合わせた。
 もう何戦、共に戦ったろう。苦境も、特殊な状況下での戦いも、最早初めてじゃない。相手が強敵だというのもまた例に外れない。
 無論、ダークポイントも間違いなく強者。
(一筋縄では、いかないことでしょう)
 夜彦にはそれが判る。
 けれどそれを越えたときこそ好機なのだとも、また経験から判っていた。
 故に、無音の景色に僅かな違和感が交じったところで──二人はそれが敵の仕業だと理解。一瞬で対処に移っている。
 まずは最も気配が強まった方向を、野生の勘で感じとった倫太郎が地を蹴って一歩前進。夜彦を背に護る形で翠に耀くオーラを纏い防御態勢を作った。
 次の瞬間、全身が燃え上がる感覚が訪れる。遠方よりダークポイントの視線による攻撃が飛んできたのだ。
 倫太郎はその威力を軽減させ、耐え抜く。オーラだけでは完全に相殺は出来ないが、それでも痛みに耐え抜いて踏みとどまっていた。
 身が灼ける感覚があろうとなかろうと、立ってさえいればいい。
(重要なのは……夜彦がノーダメージかどうか、ってコトだ)
 狙い通り、最初に飛んできた視線は最後まで倫太郎が受け切る。
 するとダークポイントも倫太郎を避けようとしてか、距離を詰めながらも弧状に移動し、側面から夜彦の方を狙おうとした。
 が、その頃には夜彦が抜刀の体勢を取っている。
 ──視線すらも、返そう。
 刹那、敵が此方を視認すると同時、夜彦は刃を滑らせ高速の抜刀術『八重辻』。
 濃密な気配と視線によって生まれる熱量、その全ての方向を刃で逸らし、焔を遠くへ薙ぎ払っていた。
「分析:……即時解析=困難」
 ダークポイントは小さく声を零している。視線、そして焔を払う剣撃に微かな驚愕も覚えていたのだろう。
 それでも動きを止めず、此方の護りの薄い方向を探ろうとする、が。
 初撃を防ぎ終わった直後から、既に夜彦と倫太郎は反撃に出ている。
 真っ直ぐに疾駆して距離を詰めることで、敵に後方を取らせない。同時に夜彦は再び刃を構えて、攻撃の暇も与えなかった。
 けれど夜彦のそれは、見せかけただけに過ぎない。敵が夜彦に気を取られている間に、初手を放つのは倫太郎。
 術の力で作り上げた、不可視の鎖による拘束術。ダークポイントの足元を縛り付け、まずはその高速機動を封じ込めていく。
「警戒:不可視の攻撃←分析中──」
 動きを失ったダークポイントは、自身を襲った攻撃が見えず僅かに惑っていた。
 その隙に、夜彦が連撃。黒き躰に銀の斬閃を刻みつけ、そのまま廻転斬撃を重ねて傷を深めさせていく。
 攻撃を受けながらも、ダークポイントが視線を返そうとしてくれば──その前に倫太郎が肉迫。華焔刀に生命力吸収の力を乗せて、掬い上げるように衝撃波を放っていた。
 暴風に煽られるように、視線を空に向けられるダークポイント。
 ただ、倒れ込みながらもすぐ前方の地面を燃やして、その延焼で反撃しようとしてくる。
 漆黒に燃え盛る死の焔。
 けれど倫太郎は今度は身を灼かせず、残像だけを置いて回避。全ての炎を防いで、自身は敵の後ろ側に回っていた。
 そのまま薙刀を振り上げれば、ダークポイントは這うように起き上がってそこから逃れようと前進するしか無い。
 けれどそれこそが倫太郎の狙い。
「俺から逃げても、無駄だぜ」
 何故ならそこに待っているのが、夜彦なのだから。
 元より夜彦の攻撃が通る一瞬が作れれば、勝ち筋は見えると思っていた。
 それこそ、ほんの一瞬でいい。夜彦ならば、それで十分なのだから。
「夜彦、やってくれよ」
「ええ──全霊の一刀を」
 刹那、夜彦は視線より、弾速より、何より疾い居合を放つ。
 その刃は風にも音にも気づかれぬ速度で奔り、ただ純粋な鋭さを以てダークポイントの躰を深く切り裂いた。
「お前より、エンパイアウォーの信長のがキツかったぜ」
 そこへ攻撃を重ねる倫太郎の声が、静かに響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィオレッタ・アネリ
こんなところに隠れてたんだ…
ヒーローさんたちの活躍、ぜったい無駄にしないからね!

あらかじめ花精クローリスとゼフィールに行動を指示

先制攻撃を受けたら、花精の精神攻撃に心を明け渡し、行動を支配してもらって自傷を食い止める
そのまま銃口煌めく方向へゼフィールの衝撃波で反撃

ふうっ…これ、教えてもらってなかったら危なかったかも!
花精の催眠術で自殺衝動を打ち消したら反撃するよ

《花映》
クローリスを飛ばして敵を追跡
敵の心を読み取って、蔦を駆使した移動や風に乗る跳躍で一気に接近
第六感と心読みで攻撃のタイミングを図って、樹精の蔦絡みのカウンターで縛り上げる

最後は風精の属性攻撃で竜巻を起こし、ビルの上から吹き飛ばし!



 それは建造物が立ち並ぶ、他のどの場所とも大きく変わらない風景だった。
「こんなところに隠れてたんだ……」
 ヒーロー達が見つけたという、「不可視の領域」。それが隠れていたのがこの場所──マンハッタンはビル街の一角。
 そこにジェネシス・エイトの一人が潜んでいたという事実に、フィオレッタ・アネリ(春の雛鳥・f18638)は今も仄かな驚きを隠せない。
 それは勿論、猟兵の戦功が重なったからでもあるけれど。
「ヒーローさんたちの活躍、ぜったい無駄にしないからね!」
 声音に力を込めて、ビルの間の空中を滑り降りていく。
 敵の気配はその先に感じられていた。
 無論、どこから出てくるか、いつこちらに攻撃を仕掛けてくるかは判らない。ただ、だからこそフィオレッタもそれに対処はしていたけれど──と。
 地面に降りたところで唐突に意識が明滅し、ふらつく。
 思考と体の自由が奪われるような感覚。
 フィオレッタはすぐに気づいた。これこそが敵──ダークポイントの攻撃であると。
 放っておけば、意識は自身を傷つける方向へ向かうだろう。それは尋常の手段では対処法のない、強制自傷とでも言うべき能力だった、けれど。
 フィオレッタの動きが、すぐに止まる。
 その周りをふわりと飛ぶのは、花精クローリス。予めフィオレッタの指示で、必要となったらその行動を支配するように言われていた。
 明け渡された心から、フィオレッタの体を動かす花精は──そのまま自傷を食い止め、催眠術で自殺衝動を打ち消して精神を元に戻していく。
 その間に羽ばたくのは風竜ゼフィール。
 こちらもフィオレッタに指示を受け、反撃する手筈。
 確かに遠くに銃口が見えたのを確認すると、衝撃波を発射。刃風の如き斬撃を与えてその銃を両断していった。
 その頃には、フィオレッタはすっかり正気になっている。
「ふうっ……これ、教えてもらってなかったら危なかったかも!」
 そのまま、空を宿した瞳で敵の方へ向くと──ここから反撃開始。
「さあ、クローリス──」
 まずクローリスを飛ばして敵を追跡させると、敵の心を読み取っていく。同時に樹精の力も借りて蔦を伸ばし、ビルの間を素早く移動し始めた。
 ダークポイントも間合いを取ろうと、ビルの屋上に上がって建物から建物へと跳躍していく。
 けれど心を読むことで、フィオレッタにはその進路が筒抜けだ。風に乗って大きく跳躍することで先回りすると──蔦を伸ばしてダークポイントを縛り上げていた。
「つかまえたよ!」
「思考:退避失敗=理由不明……」
 呟く声は、何故先回りされたのかが理解できなかったがためだろう。相手の心を操っても、自身の心が覗かれるとは思っていなかったかもしれない。
 ならばそれは、見えた勝負だった。
 フィオレッタは風精に竜巻を起こさせ、ダークポイントを巻き込んでいく。強烈な風圧に抗えず、ダークポイントはビルから吹き飛ばされて地へ落下していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
挑ませていただきますよ、ジェネシス・エイト!

ダンボール等軽く大きな、持ち運べる物体を持参
ビルなどの物影を駆使し、
【ダッシュ】で動きながら近づきます
ダークポイントの視界に入らないように注意
【野生の勘】が危機を教えてくれると尚いいのですが

視界に入りそうな時は
持参した物を【なぎ払い】【衝撃波】で巻き上げ
体を隠した上で全力で寄るッ!
隠しきれず、若干漆黒の炎を受けるかもしれませんが、
【オーラ防御】【火炎耐性】、何より【覚悟】で
凌いでみせる!

そして近づいたなら【怪力】で捕まえ、けして離さず
【グラップル】での肉弾戦を軸に、【鎧砕き】の重い打撃を
打ち込んでいき、止めには《トランスクラッシュ》で
体を浴びせます!



 戦場となったビル街には、熱気の残滓が渦巻いている。
 焔の跡、弾痕、散らばる瓦礫。目に見える全てがこれまでに起こった戦いの激しさを物語っているようだった。
「けれど、まだ気配は消えていませんね……!」
 道に降り立ったユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は、警戒と共に周囲を見回している。
 猟兵達によって既にその敵──ダークポイントはかなりの攻撃を受けているはずである。それこそ、尋常のオブリビオンであれば跡形も残らないほどに。
 だが、まだ張り詰めたような空気は消えてない。確かにその存在が、まだこの摩天楼のどこかに潜んでいるのだと判った。
 それがそれほどの強敵ということだろう。
 けれど──そうであればあるほど、ユーフィは燃えるのだ。
「ならばわたしも挑ませていただきますよ、ジェネシス・エイト!」
 そのまま気配の在り処を辿るように、疾駆を始める。
 無論、敵の視線に無防備に身を晒すことはしない。ユーフィは常にビルの陰に入り込むように進路を取り、敵の視界に入らないように注力していた。
 おそらくダークポイントは前方に居る。故に陰から陰へ、蛇行する軌道を描いて進むことで、隙を最小限に保っていた。
 尤も、前進して敵に近づけば近づくほど、その視界に入るリスクは高まる。
 だが──ユーフィはその危機も、野生の勘を働かせることでいち早く察知。一瞬後に、ダークポイントの視線が此方を捉えるだろうと予期していた。
「させません──!」
 決して速度は落とさず、前に進むと──ユーフィは敵の視界に入る直前で、手に大きなダンボールを握っている。
 それを薙ぎ払い、衝撃波で巻き上げることで前方向の空中へ。丁度自分が隠れる形で浮遊させ、その間隙に全力で接近を試みた。
 無論、敵の視線に当たったダンボールは炎に包まれて燃え尽きる。その残滓がユーフィにも降りかかり、膚を灼いた。
 けれどそれも予測していたユーフィは、オーラと耐性で受け切る。
 痛みを完全に無視することは出来なかったが──決して退かないという覚悟が足を止めさせなかった。
 故に一瞬後には、ユーフィは黒きその姿を目の前にしている。
 ダークポイントはとっさに下がろうとバックステップを試みる、だがユーフィがその胸元を掴み、怪力を以て決して離さなかった。
「逃しません!」
 ゼロ距離での肉弾戦こそ、ユーフィの本領。
 そのまま片腕でダークポイントを引き寄せると、勢いのままにもう片腕で打突。強烈な衝撃で肋を砕いてみせる。
「衝撃:ダメージ=大。必要→一時退避──」
 ダークポイントはよろけながら、尚間合いを取ろうとする。けれどその頃にはユーフィが高く跳んでいた。
「最後は、これですっ!」
 繰り出すのは、単純で重いボディアタック──トランスクラッシュ。
 速度と自重、膂力の全てを込めた一撃は、ダークポイントの命を大きく削り取り。衝撃で大きく突き飛ばして、地面に転がせてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春日・氷華
氷の異能を持つ寡黙な少女。
触れたものを凍らせる冷気と氷を操る。

【火炎耐性】火鼠の皮衣で全身を覆い、身を伏せる。
「……来た」
炎をガードしてあと、素早く白手袋を口で外したあと地面に手をつけて【絶対零度】の見えない冷気を周囲に放つ。
「……仇は討つ」
倒れているヒーローやヴィラン達を冷気で感じながら、彼女の怒りを表すように張り巡らした冷気が強烈な吹雪をビル街に生み出す。
「……あなたの攻撃は、もう届かない」
この吹雪の中では視線は届かない、弾丸が貫通しても周囲に水分がある限りあたしの体の傷は氷で覆われ再生される。
あたしの武器は全て氷と冷気、水分によるもの、つまり絶対に自傷できない。
「次に狩られるのはお前だ」



 燦めく陽光がアスファルトを熱し、鉄筋を加熱していた。
 暑い季節ではないというのに、灰色の密林は太陽の温度を十全に孕む。そんな只中では蜃気楼の如き陽炎が揺らめいて、真夏のようだった。
 と──その渦中へ汗一粒浮かべず、零下の温度を漂わす少女が降り立っている。
 春日・氷華(氷の女王・f22182)。
 直射日光にも相貌に変化を表さず、静かな呼吸で零すのは冬の吐息。
 そんな少女の頬に触れれば、熱せられていた空気も小さな氷晶となって消えていくばかりだった。
 そのどこまでも冷えた氷色の瞳で、氷華は周囲の気配を感じ取っている。
 ──ダークポイントはそう遠くない場所に居る、と。
 ただ、方向の判らぬ敵に対して無闇に攻めに出たりはしない。氷華は火鼠の皮衣で全身を覆った状態で身を伏せ、敢えて敵の攻撃が降り掛かってくるのを待つ。
 そうして数瞬、時間が経った後──。
「……来た」
 氷華は小さく呟き、視線が注がれるのをその身に感じた。
 敵の能力は焔。当然それを受けた氷華は燃え盛る炎に包まれるが──それを防ぐのが皮衣。火炎に耐性を持つその効果で熱を耐え切ると、氷華は同時に白手袋を口で外していた。
 触れたものを凍らせる力を持つ氷華は、直に肌を出すことで最大限の力を発揮する。その手を地面に付けることで、絶対零度の見えない冷気を周囲に放っていた。
 一帯に張り巡らされた冷気は、まるで氷華の一部であるかのように周囲の情報を伝えてくる。
 感じるのは、倒れているヒーローやヴィラン達。
 ダークポイントへ攻勢を仕掛けようとして、あえなく返り討ち遭った者達だ。
「……仇は討つ」
 そう、静かに声を響かせると。
 まるで氷華の怒りを表すかのように、冷気はビル街に強烈な吹雪を齎し始めた。
 真夏のようであった気候が、厳寒にすら訪れぬ氷雪を吹き荒らし──雪を舞い散らせ、氷片を風に踊らせ、視界を白く染め上げていく。
 その向こうに確かに敵が居るのを感じながら、氷華は立ち上がっていた。
「……あなたの攻撃は、もう届かない」
 視界の閉ざされた嵐の只中では、最早意図的に氷華を視ることは不可能。
 さりとて銃撃を仕掛けようとも、周囲に水分がある限り氷華の体の傷は氷で覆われ再生される。
 もし精神攻撃に訴えようとしても無駄だろう。氷華の武器は全て氷と冷気、水分によるもの。つまり絶対に自傷できない。
 即ちこの時点で敵の手は封じられたも同然だった。
「次に狩られるのはお前だ」
 氷の温度で氷華は事実を告げる。
 瞬間、飛び交うのは敵の弾丸などではなく、氷柱と氷塊。重量と鋭さを兼ねた透明の凶器が、暴風で剛速を得て降り注ぐ。
 鋭利な氷柱に貫かれ、強大な氷塊に薙ぎ払われて。ダークポイントは為す術もないままに吹雪の中へ吹き飛ばされていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧島・絶奈
◆心情
強敵との逢瀬程、心踊るものは有りません

◆行動
敵の先制攻撃対策として【オーラ防御】を展開

其と同時に「白燐発煙弾」による煙幕を展開
【目立たない】様に煙幕に紛れ接近
自身の視界は白燐の煙幕を透過出来る「赤外線カメラ」で確保

加えて『二つの三日月』を召喚し囮とします
二つの三日月自身も小型の二つの三日月を目隠しとして活用させる事で長期戦に対応

接近しつつ【罠使い】の技能を活かし【目立たない】様に「魔法で敵を識別し起爆するサーメートと指向性散弾」を複数設置
敵行動範囲を狭めていきます

攻撃可能な距離まで迫れば【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
狙いの甘さは【範囲攻撃】と【二回攻撃】で補います



 灰色の地面が穿たれ、鉄骨の破片が地面に凹凸を作る。
 風に塵が流れて、太陽から注ぐ光を僅かに遮ってゆく。
 戦いが継続するにつれて、街の様相も刻々と変わりつつあった。整然とした美しさは、闘争の激化によって当初より失われつつある。
 それは同時に、確かに敵の命を削りつつある証左でもあった。
 ──けれど。
「未だ、強靭な命の明滅を感じます」
 音もなく、道に降り立った霧島・絶奈(暗き獣・f20096)はそれを感じる。
 削がれて撃ち貫かれて、それでも絶えていない気配を。
 未だ虎視眈々と逆転の目を狙っているその黒き存在を、青白き存在感を持つ神性の聖女は確かに気配として知覚していた。
「ならば、良いでしょう」
 絶奈はその敵の生命力に苦渋でもなく悲嘆でもなく、嗜好にも似た殺意を抱いている。
 何故なら強敵との逢瀬程、心踊るものは無いのだから。
 そうして、敵の居場所が遠くないとその気配で察知すると──後は絶奈の動きに迷いは無かった。
 不可視のオーラで自己を覆い、防御を万全とすると──取り出すのは白燐発煙弾。
 投擲して爆発させると、飛散した白燐が燃焼。白い煙幕となって一瞬で周囲の視界を零にする。絶奈はその中へ紛れ込み、敵へ接近し始めた。
 こうすれば敵の視線は全く通らない。
 本来なら自身の視界も塞がれるが──絶奈は赤外線カメラで煙幕を透過していた。
 これが敢えて白燐を使った理由でもある。向こうが此方の姿を探している間に、絶奈は確実に距離を詰め、その敵──ダークポイントの姿を捉えていた。
 そのまま罠も設置して着々と戦いに備えてゆく。
 無論、時間が経てばその分、煙幕も風に流されて薄らいでいた。けれど、絶奈もいつまでも煙幕に頼るつもりはない。
 ダークポイントに発見される危険があると見れば──前方の宙を輝かせ、巨大なシルエットを象らせていた。
 ──其は宇宙開闢の理、無限の宇宙を抱擁する者。
 ──永遠の停滞にして久遠の静謐。
 ──死の根源にして宇宙新生の福音……。
 ──顕現せよ『二つの三日月』。
 刹那、その輝きは巨人となって地に降りている。
 仰ぐ程の姿に、ダークポイントは煙幕よりそちらに視線を引かれないではいられない。そうなれば巨人へと焔が襲いかかる形となるが──。
 直前、巨人から小型の二つの三日月が浮遊してその視界を塞ぐ。
 小さな三日月は無数に現れ、燃えても尚辺りを周遊し、ダークポイントへと踊りかかり容易に退けられはしなかった。
「思考:接近=一対多→不利……」
 二つの三日月の抵抗を受け、声を零すダークポイントは一度間合いを取ろうとする。
 けれどその頃にはもう、罠の渦中だった。
 瞬間、魔法によってダークポイントを敵だと識別し、発動されるのはサーメートと指向性散弾。強烈な熱量と共に弾が雨と注ぎその体を穿ってゆく。
 そこから逃げようと移動しても、その度に罠がダークポイントを襲う。
 弾丸と閃光、その嵐。
 望むと望まざると、ダークポイントは行動範囲を狭められて絶奈の近くに辿り着くしか無かった。
 その間合いに入れば、絶奈が攻撃するだけ。
 鋭い刃に風を巻き込んだ絶奈は、大振りに振るって多重の衝撃波を放ち、ダークポイントの全身を包み込む。
 そこに込められた魔力が神経を侵して蝕むと──絶奈はさらに連撃。
 煙幕の残滓を吹き飛ばしてしまう程の斬閃で、ダークポイントの胸部を深々と捌いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユリウス・リウィウス
過去の亡霊どもが、この世界の有り様をねじ曲げてやがるな。
『正義と悪の戦い』に割り込むとは、無粋極まる。そんな風情を知らぬ輩は、俺たちが排除してやろう。

襲い来る黒炎は、「見切り」バックラーでの「盾受け」で凌ぎきりたい。
頼りないが、ないよりましだ。
可能なら、周辺範囲一体を「恐怖を与える」死霊の霧で包んで視線を封じ、亡霊騎士団を喚起して囮に使いながら接近していく。
別方向からは悪魔ガミギンにも亡者を率いて接近させる。

ご対面したら、これまでの行状からの敵意で悪意の怨霊を開放し、それを振り払っている間に「生命力吸収」「精神攻撃」の虚空斬を放つ。

殺し屋なんてのはな、白日の下にさらされた時点で負けなんだよ。



 そこでは英雄が正しい正義を全うすることが出来ない。
 同時に、悪が悪たる所業を以て正義に対することすら出来ない。
 あるのは骸の海よりいでた残滓が作る、寂れた景色ばかりだった。
 焼け焦げた地面が煙を上げ、瓦礫が転がるビル街。
 その只中に着地したユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)は、景色を見回して静かなため息をついている。
「過去の亡霊どもが、この世界の有り様をねじ曲げてやがるな」
 感じるのは圧倒的な力。
 二元論すら許さない、世界を崩壊に招く暴力の気配。
 事実、未だビル群の中に潜むその敵は──ヒーローもヴィランも、そして猟兵も、敵対するものは捻じ伏せるつもりなのだろう。
「『正義と悪の戦い』に割り込むとは、無粋極まる」
 そんな風情を知らぬ輩は、俺たちが排除してやろう、と。
 ユリウスは言いながらバックラーを構え、前進する。
 この先にその敵──ダークポイントが居るであろうことは、判っていた。敵も無傷ではない現状、その気配を隠すことも出来ていないのだ。
 だから足取りに迷いはない。
 無論、敵の攻撃が苛烈であることもまた理解している。
 故に念には念を入れて──ユリウスは冷気を濁らせたかのような、冷たい霧を周囲に展開していた。
 それは虐殺された死者の怨念をはらんだ“死霊の霧”。触れるだけで命を蝕むそれは、敵を倒すには至らずとも、その濃度で視界を遮ることは出来るだろう。
 尤も、こちらが敵に近づくにつれてその意味は薄くなっていくだろうが──霧だけでなく、ユリウスはもっと直接的な囮も用意するつもりだった。
 ──死の顎に囚われ迷う怨念の塊どもよ。
 呼び掛けて召喚したのは亡霊騎士団──腐食した体を持つゾンビと、骸が歪な音を立てるスケルトンの軍。
 それを霧から離れず、さりとてこちらとは幾分ずれた方向から前進させる。それによってユリウス自身に狙いを向けさせない目的だ。
 その狙いが功を奏して──次の瞬間、敵の視線を受けて漆黒の焔を浴びたのはユリウスではなくゾンビの内の一体だった。
 その屍体が燃え尽きていくと、スケルトンや別のゾンビが次々に灼かれていく。
 攻撃をしつつ、その発生源を探っているのだろう。だがユリウスは簡単には悟らせるつもりはない。
「──魔界より来たれ、三十個軍団を率いる死霊の大侯爵ガミギンよ」
 暗色の光とともに喚ぶのは、悪魔。亡者を連れるその存在にまた別の方向から敵へ接近させることで、さらなる囮と陽動の効果を発揮させていった。
 ダークポイントは迫りくる悪魔に対しても攻撃せざるを得ない。
 故にその間にユリウスがダークポイントへ距離を詰めることもまた、容易。少しの後には、ユリウスはその対面に踏み込んでいた。
「発見:猟兵=召喚主=屍術師……」
「ああ、そのとおりだ」
 驚きにも似た敵の言葉に言ってみせると、ユリウスは間隙を作らず、敵愾心を抱いてその心を糧に悪意の怨霊を解放。ダークポイントにファントムを取り巻かせる。
 ダークポイントは非実在の存在へ一瞬惑った。
 すぐにそれを振り払おうとする、が、その隙があれば十分。
 ユリウスは懐へ入り込んで二振りの黒剣を抜き放っている。
「殺し屋なんてのはな、白日の下にさらされた時点で負けなんだよ」
 詰まりはこれも見えた勝負。
 刹那、繰り出された虚空斬はダークポイントの膚を切り裂き、命を削り取っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
アドリブ◎

エグい攻撃してくるじゃねェか
速さも射程も相手が上ならどう戦うか

戦いの中で俺の限界を超える

ひりつく空気と緊張感に武者震いし嗤う

人の器を得た俺が自ら死を?
逝けたらあの世でお嬢(初恋の人)に逢えるだなんて…馬鹿が
俺が剣(ちから)を手に入れたのは…
生きなきゃなンねェ理由がある
護りたい命がある
だからココにいる

強固な意志で心臓や頭への攻撃は回避
左肩や腕を剣で刺し痛みで現実へ引き戻す
外套脱ぎ出血を止めようと服で縛る

腕一本で済むなら安い、ぜ

敵の攻撃は剣で武器受け・カウンター
【聖獣の呼応】使用
敵の動き鈍らし射線の先の敵を追い近接戦闘に
未知の先へ
銃を持つ手や足を剣で薙ぐ
玄夜叉に紅焔宿して頭か心臓串刺し



 何処かから銃弾が飛ぶ音が聞こえる。
 それが弾けて残響を齎して、その内に消えていく。
 耳朶に残る戦いの音の欠片を意識しながら、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は灰色の景色の中に降り立っていた。
 目に見えるものはない。
 聞こえたのは誰かが敵を撃った音かも知れない、撃たれた音かも知れない。摩天楼の中で垣間見える情報は少なくて、ただ一つ判っているのは──。
「速さも射程も相手が上、か」
 二つの彩を抱く瞳を細める。
 勝機も、その方法も不確かな相手。今自分の近くに居るであろう存在が、それほどの強敵であるということだけだった。
 未だ敵影すら確認できていないのに、空気がひりついて緊張感が奔る。
 知らず武者震いしていて、クロウは嗤った。
「いいさ」
 この戦場を一歩でも踏んだなら、最早戦わずには終われない。
 だったら相手をするまでだ、と。クロウは俄に歩を踏み出して、戦いの渦中へ飛び込んでいこうとする。
 その直後のことだった。
 かちりと、小さな音が鳴って何かの違和感を覚えた。
 視線を上げると──小さな高台に立つ黒い影がいる。
 ──ダークポイント。
 見れば既に此方に銃口を向けていた。
「強制:汝の心←自殺衝動=抗えぬ力」
「──」
 その声が聞こえると同時。ようやくそこに敵がいると意識したその瞬間、クロウは視界がぐにゃりと歪む感覚に見舞われた。
 一瞬前まで見えていた敵影など、忘れてしまうような心の動き。
 自分の中に生まれてくる欲望と衝動。それは確かに、死を強く望む意志と言って良いものだった。
 クロウは黒魔剣──玄夜叉を強く握る自分を、何処かぼんやりと見つめている。
 体と、心の表層が勝手に動いて自死へ向かおうとしているのを、遠くから眺めるような感覚で。
(人の器を得た俺が自ら死を?)
 有り得ない、と思いながら、それでも確かに自分の手が自分を突き刺そうとしているのが判る。
 何故自分はこんなことをしているのかと、どうして自分がそれを望むのかと考えた。
 そして衝動に引っ張られる自分の心の端緒を見つける。
(逝けたらあの世でお嬢に逢える……だなんて)
 ああそうか。
 自分の心は、そんな事を考えて今、死に向かおうとしているのか、と。
 それを理解して、クロウはため息が溢れるような思いだった。
(……馬鹿が)
 自分のことだから、その心が在るのはきっと否定できない事実なのだろう。
 それでもクロウの心のもっと奥、芯の部分がそれを押し止める。
(俺が剣(ちから)を手に入れたのは……生きなきゃなンねェ理由があるからだろ)
 剣先を自分の命に向ける、もう一人の自分に対面して言葉をかけるように。
 クロウは強い意志を携えて思った。
「護りたい命がある。だからココにいる」
 ──ぼけっとしてるんじゃねェ、と。
 心臓を狙おうとした自分の剣を、クロウはぎりぎりのところで制動して左肩にずらす。
 瞬間、そこへ突き刺さった痛みがクロウの心全てを現実に引き戻した。
「……ッは」
 滂沱の血が流れ、一時腕の感覚がなくなる。だがクロウはすぐに服で縛り出血を止めて応急処置とした。
「腕一本で済むなら安い、ぜ」
 歯を食いしばって。前を向き疾駆を始めるクロウは、もう足を止めることはない。一気に敵に近づき刃を振り上げていた。
 ダークポイントは微かに驚いた様相を見せながら、それでも銃弾を放ち追撃しようとする。
 が、クロウはそれより疾く、霊力で作られた朱の鳥を召喚していた。
 ──聖獣の呼応(アケノトリ・コタエタリ)。
 羽ばたくそれは、破魔の力を宿す羽を放ち、その鋭さでダークポイントの持つ銃を両断する。
 次の一瞬には、もうクロウが迫っていた。
 無論、高速機動を持つ敵は接近戦でも強いだろう。が、滑るように後退する敵を逃さず、クロウは足を薙ぎ、その動きを遅らせた。
 敵は間違いなく強かった。
 けれど、戦いの中で自分の限界を超えれば勝てない相手じゃない。
「エグい攻撃してくれたじゃねェか。効いたぜ」
 それでも、乗り越えた。
 だからこの勝負は此方のものだ、と。
 クロウは玄夜叉に紅焔を宿し、ダークポイントの心臓を串刺しにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
…だーく、ぽいんと
その支配者面が気に食わぬな

建物の間を
<空中戦>の要領活かし翼で飛行
仕掛けるは、一面硝子張りの「びる」の傍
すれすれを飛び乍ら

こちらへ視線が向く一瞬に
尾あるいは剣で硝子窓を叩き割る
それらに掠め裂かれど、敢えて大きな破片は避けず
乱反射する鏡面に、一瞬未満でもいい
視線を惑わせ軽減できれば
<激痛耐性>と<火炎耐性>で耐え抜いてみせよう

…全てを身勝手に奪おうとするけだものが
貴様に撃ち抜けるものばかりではないぞ

耐え切れれば
炎と硝子を突き抜け、【封牙】用いて
苦痛までもひとたび捨てて
やみいろの懐へと一撃を見舞おう
届いたぞ、影

射撃ばかりでは手応えに欠けるだろう
偶には触れて――喰い千切られてみろ



 高くそびえる建物の間を、風が渦巻いている。
 複雑に入り組んだ街路に沿うように細まり、枝分かれし、折り曲がった気流は、吹き付けるような強さで空間を浚っていた。
 その中へ、翼を広げて舞い降りる一人の竜人が在る。
 星宿す片角を陽光に燦めかせ、七彩の瞳で街を見やる──ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)。遠方の黒い影を、早くも発見していた。
「……だーく、ぽいんと」
 そのオブリビオンを、ジャハルは微かに見つめる。
 ダークポイントは心臓を抑え、蹌踉めいていた。仲間の猟兵達の攻撃と意志が繋がった結果であろう、弱りかけているといって良い。
 けれど、その戦意は消えていないようだった。
「確認:挙動&行動=問題無し。
 遂行:猟兵の撃滅=一帯の制圧……」
 静寂に声を零しながら、垣間見えるのは未だ全てを蹂躙せんとする目的意識。この世界は我等のものと言って憚らぬような、猟兵への敵意。
「その支配者面が気に食わぬな」
 ジャハルはそれを目の当たりにして呟く。
 ならばやることは一つ。敵の撃滅──この街と空を護る、と。
 今の状況で、既にいつ敵の視線が此方に向いてもおかしくはない。故にジャハルは、入り組んだ空間を飛翔しながら──とある建物の傍へと接近していった。
 それが一面硝子張りとなっているビル。
 ジャハルはそのすれすれを飛びながら、常に敵の様子を窺い続ける。そうしてダークポイントが此方の気配を察知して、その視線を向けてきたところで──。
 その一瞬、ジャハルは鮮やかに体を翻す。
 鞭の如く振るうのは美しき鱗を抱く尾。風切り音を上げて衝撃を与えたその一閃は、硝子を粉々に叩き割って欠片の雨を宙に舞わせていた。
 光を千々に弾いて、眩く耀く刃達。
 剥き出しの鋭利さに、ジャハルはその膚を掠められ、裂かれ──それでいて敢えて大きな破片を避けることはしない。
 狙うのは乱反射する鏡面に、敵の視線をぶつけること。
 一瞬未満でも良い。
 視線を惑わせ、その威力を軽減できれば──。
 果たしてそれは、狙い通りに運んだ。
 否、完全な思惑通りとは言えなかったかも知れない。確かに敵の視線は逸れたが、周りに飛んだ視線が硝子を燃やし、その一端がジャハルの膚を灼いたのだから。
 だが、直撃ではない。
 気を失い斃れるほどではない。
 痛みにも熱さにも、耐え切ることが出来る──ならばそれで十分、ジャハルには僥倖。
「……全てを身勝手に奪おうとするけだものが」
 ──貴様に撃ち抜けるものばかりではないぞ。
 刹那、炎と硝子の雨を突き抜けてジャハルは飛翔。ダークポイントへと接近しながら、その手と足を竜の姿へと変貌させていた。
 ──封牙(フウガ)。
 半竜形態となるその力は、痛覚を代償に劇的な速度と膂力を得る。
 即ちそれだけ、人から外れる業。ひと羽ばたきしたジャハルは、次の瞬間にはダークポイントの眼前に迫っていた。
「届いたぞ、影」
「──!」
 黒きオブリビオンは、驚愕をその無貌に浮かべてとっさに対処ができない。その一瞬でジャハルは腕を振り翳す。
「射撃ばかりでは手応えに欠けるだろう。偶には触れて──喰い千切られてみろ」
 苦痛までもをひとたび捨てて。
 闇色の懐へと、速度のままに繰り出すのは腕を唸らせる爪撃。
 単純にして苛烈な一撃は、ダークポイントの体を両断するが如く引き裂いて、その命を散らせていく。
 人のかたちに戻ってふわりと降り立ったジャハルは、黒夜の髪が爽風に揺れるのを感じた。
 それは街から脅威が消えた感覚そのもの。
 未だ状況は予断を許さない。けれど確かに、斃すべき敵のその一つを討ったのは事実。
 だから今は、猟兵達と勝利を確認し、助けを求む者があれば赴いて──ジャハルはその街から立ち去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月19日


挿絵イラスト