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悪徳の影に潜む禁忌

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 とある小さな藩の城下町。長屋の井戸端で洗い物をしながら、女性たちが噂話に花を咲かせていた。

「聞いたかい?川端の道場の噂!」
「聞いた聞いた。最近門下生が調子に乗ってるってみーんな言ってるよぉ……藩主の御姫様に手を出そうとして一人とっつかまったんだってぇ?」
「流石に姫様だったら剣術道場ひとつ取り潰しでしょ!実際はお付の侍女だったみたいだけど、それでも乱暴よねぇ……でもこれ噂でしか聞かないのおかしくないかい?」
「そうよねぇ。瓦版も出ないし、お咎めがあったって話も無い……わいろ握らせてるって噂よぉ」
「おお、こわいこわい。別の道場も酷いんだって?」
「ええ、やな噂を聞かないのは、最近改名した刻命道場ぐらいのもんだよ」

 彼女たちが話題にしているのは、ここ最近よい噂の無い剣術道場関連であった。しかし、実の所彼女たちは噂に踊らされているだけで、大半の剣術道場は濡れ衣を着せられているだけである。

「刻命道場はいいわよねぇ。新しく入った先生の一人がものすごい美丈夫だし……弓術指南らしくて、たまーにしか来ないみたいだけど」
「あらぁ、そうなの?変な噂があるうえ米俵みたいな師範しかいないとこから、刻命道場にうちの息子の通い先変えようかしらねえ」
「道場の名前変わったのもその先生が来てからだね。ただ、こう、通わせるのに他より高いお金がいるのよ」
「この貧乏長屋住まいじゃあちょっと……剣術自体は将来の就職のためにも習わせたいんだけどねぇ」

 刻命道場。一般人たちは黒い噂の尽きない道場から、刻命道場に息子を移そうかと考えるようになってしまっている。母親たちのそばで手伝ったり子守りをするような子供も、その噂をどうしても耳にする。
 この藩の剣術道場は刻命道場の一強となる流れを進みつつあった。

●グリモアベース
「サムライエンパイアでのオブリビオンの暗躍を止めていただくのに、協力していただけないでしょうか?」

 猟兵達にそのように声を掛けたのは、クリスタリアンのグリモア猟兵であるネオン・エルバイトだった。

「皆さんにはとある藩で暗躍するオブリビオンを倒していただきたいのです。どうやらそのオブリビオンは藩の城下町にある剣術道場を乗っ取っているようで……まずはその道場、刻命道場を潰すことからになりますね」

 いきなりの道場取り潰しとはまた物騒だが、事態はそうでもしないと収まらないところに来ている。
 剣術道場の不正の噂が広がる今、その噂に基づいた沙汰が無い事が民衆の藩への不信感を煽っているのだ。実際には大半の剣術道場が無実なため当たり前の事なのだが、耳に入り易く馴染みやすい噂と、形式的且つ必要な事のみを伝える藩の掲示では前者の方が強いのも世の常だ。
 そして、その藩への不信感が人々の善性を揺らがせている。日常の端々で口喧嘩が起こるようなことも増えてきているのだ。今はまだ刃傷沙汰に至っていないが、いつ往来で切り合いや殴り合いが起こるようになるかわからない。

「……実は、急いで解決しなければいけない理由というのもありまして。僕が暗躍を予知で見てからその藩の事を調べたら、近日城下町のすぐ外にある川沿いで大きな喧嘩祭りがあるようなのです。詳細はその時に皆さん知ると思うので割愛しますが、民衆の不満がある状況で、公にぶつかり合う事を許された行事が行われたら、どのようにエスカレートするかわかりません。
 祭りの中止の方向に動くと、それはそれでフラストレーション解消の術が失われて藩への不満をため込むことになりオブリビオンの思うつぼです。黒幕である刻命道場を『こいつらが悪かったんだぞ』とわかるように潰して、ヘイトと不満を前もって解消させる事が、民衆を守りつつオブリビオンの暗躍を潰す最も良い手段なのです」

 とはいえ、道場とともに素直にオブリビオンが倒されてくれるとも考えづらい。なので、初手で相手の目論見を潰して、その後も大きな沙汰が起きないように藩を守る事で焦ったオブリビオンをおびき寄せて倒す事が猟兵達の仕事となる。

「刻命道場の潰し方は問いません。力でも清廉さでも他の道場より良い場所と噂されていますので、それらが仮初であると示せばなんだっていいのです。たとえば道場破りや、噂を流していた証拠を得るなどの正攻法以外でも……やっていない事件の噂を流しても、やってきたことが返ってきただけですからね」

 つまるところ、治安回復につながるのであれば、後は猟兵の発想次第。また、ネオンが藩の方へと話をすでに通しているので藩士達は猟兵の行動に協力的である。藩の人員が必要であればその手を借りるのも一つの術であろう。

「わかる事、お伝えできることはこのぐらいですね。それでは皆さん、どうかオブリビオンの暗躍の阻止をお願いいたします」


碧依
 碧依と申します。よろしくお願いします。
 今回はオブリビオンを引っ張り出すための冒険が続くシナリオとなっています。まずは藩の治安を回復するため、悪徳道場を滅ぼしましょう。
 基本的に、猟兵の行動が成功すれば何とかなりますのでお好きな感じにやってくれると嬉しいです。
 皆さんの参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『ペンは剣よりも強し』

POW   :    道場破りとして看板を奪い去る

SPD   :    道場関係者のスキャンダルをすっぱ抜く

WIZ   :    根も葉もない悪評を流布する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

佑・盾
「探偵さんみたいだねー。ふふふ、悪事を暴いちゃうぞー」

五感を共有させた【BurstBinder/code:CHASER】を使って関係者を追跡させたり、【ストーカーハンド】で【情報収集】して何かわるーいことしてないか調べるぞー!

事実を掴んだら「ねーねー聞いて聞いてー」と井戸端会議中のおばちゃん達に声を掛け、何も分かっていない子供のような雰囲気で「〇〇で刻命道場の人が〇〇してたけど、あれってなんなのかなー?」という感じで伝えておくねー。
噂好きの奥様方は小さな話題からあることないこと付けてってくれるはずー


狗飼・マリア
ただ奪うだけでは盗人にとられただけですまされそうなので、赤っ恥をかかせつつ、盗もうと思いますわ。

題して【メイド小僧~サムライエンパイア不捕物帖~】です。

まずわたくしは誰かがすでに道場にカチコミをかけている方がいようがいまいが、

「メイド小僧ですわ!当たると痛いですわよ!」

と、ほっかむりをして看板を高らかに掲げて門下生の注意を引きつつ街中へメイドダッシュいたします。
追いかけっこの始まりですわ。

「神様が許してもこのメイド小僧は許しませんことよ」

屋根づたいに走ったり、わざと追い詰められても看板で峰打ちしたり、門下生たちの情けない姿を街中にアピールさせ、
一方のわたくしは華麗に逃げおおせて見せましょう!



昼時の城下町を歩くのは佑・盾だ。盾は相棒たるアームドフォート、BurstBinder(バーストバインダー)とともに大通りを行くが、猟兵としての特性もあり注目を受けていなかった。しかし、猟兵同士であれば話は別である。盾の、いうなれば異国的な装いに気づき声を掛けた者がいた。

「あなたも猟兵でしょうか?」
「あれ?キミは?」
「わたくしは怪傑メイド小僧……いえ、いまはまだ、メイドのマリアですわ」
「ボクは盾だよ!たすく、じゅん!マリアちゃんも道場いくの?」

 ぽろっと妙なことを口走った狗飼・マリアに疑問を持たず、盾は元気に自己紹介を返して聞きたいことを聞く。マリアは盾の言葉に頷く。

「やっぱり?ボクもだよ!ボクは情報収集するんだよ!ふふふ、探偵さんみたいでカッコいいでしょ!」
「あら、だったら丁度良いかもしれませんわ。わたくしが先に行きますから、起こる騒ぎの間にいろいろスッパ抜いてくださいませんか?」

 マリアの提案に、盾は何だか楽しそうな空気を嗅ぎ取り笑顔で頷いた。
 刻命道場につくと、盾は物陰に身を隠し、マリアはほっかむりで顔を隠した。やたらと派手な色合いのそれは、隠れるためというよりも最早目立つための装飾のようだ。

「すー……はー……たのもおおおおおおおーーーーーー!!!!!」

 人狼咆哮ギリギリの大声をあげるマリア。驚いて出てきた門下生達に対して、自己の存在をアピールする。

「わたくしは怪傑メイド小僧!看板、いただいていきますわ!当たると痛いですわよ!」
「……冥土小僧?何者だ!?」
「うわ、看板引きちぎってったぞ?!」

 にわかに騒がしくなる刻命道場。看板を奪われて焦った門下生がマリアの後を追いかけて行った。派手なほっかむりと挑発を兼ねた声掛け、そして一対多の追いかけっことなればさすがに人目に付く。そう、マリアの目的は、看板をただ奪うのではなく、奪われた看板を取り戻せぬ刻命道場の情けなさの宣伝である。
 一方、盾はこの隙にと情報調査用ドローンを道場内に忍ばせていた。

「後をつけた方が良い人とか、そういうのわかればいいんだけど」

 情報の録画ではなくリアルタイム送信にしてあるため、盾にも道場内の様子がある程度把握できた。道場の内部も、表で起こった出来事のせいで慌ただしかったのだが……数名、妙に冷静に淡々と鍛錬している者が居た。まるでプログラムされたようなその動きに違和感を盾が覚えたその時、その違和感のあるもののうちの一人がスっとその場を離れたのだ。ドローンの動きでは追い付けそうにない、静かで早いその動きに盾はもう一つの手を使うことにした。

「……よおし、悪事を暴いちゃうぞー!ばすとばいーんだー!あのひとをおっかけて!」

 BurstBinderから、ステルス機能付きのロボットハンドが召喚される。盾本人は道場内が落ち着いてきたために忍ばせたドローンを回収し、その一方で五感を共有するロボットハンドでの怪しい人物の追跡を行った。

 時が経ち、夕刻。
 城下町は刻命道場の話でもちきりであった。

「聞いたか?刻命道場こっぴどくやられたってよ」
「ハッハッハ!自分のとこだけお高くとまってたからなぁ!イヤがってるやつもいたんだろうな!」
「強いって言われてたけどなぁ。泥棒も捕まえきれないのか。なんて言ったっけか?冥土小僧?」
「『お上が許しても冥土小僧は許さない』だったか?ちょっと違った気もするが、口上述べながら屋根から屋根をうつったり看板でケガさせずに気絶させたりそりゃあ凄い大立ち回りだったらしいぞ」

 仕事終わりの男達は、まるで舞台に出てくるような大立ち回りのメイド小僧関連の話がお好みだったようだ。刻命道場の看板そのものは予備でもあったかのように夕刻には再度取り付けられていたが、一度奪われたことは民衆の誰もが知る出来事となっていた。
 一方、夕飯の煮炊きをしている女性たちの間では別のうわさが流れていた。

「泥棒の話の方は刻命道場は被害者だけどねえ……あっちの話ってどうなんだい?」
「別の道場の壁に刻命道場の人が矢を射ってたってやつだろ?」
「道場同士の嫌がらせ合戦みたいな話も前々からあったけど、もしかしたら……ねぇ?気になってやられたって言う道場にいったら、刻命道場と別の道場の矢が刺さってたんだよ。あの山側の方のとこのって山鳥の羽使ってて特徴的だろ?」
「その噂流したのが、刻命道場へのいやがらせじゃないのかい?」
「それが、とても素直そうな子供が出所なのよぉ。あたしが向こうの長屋の井戸端会議に混ざってたら、きょとんとした感じで『あれってなんなのかなー?』って聞いてきてねぇ」

 こちらのうわさを流したのは盾の仕事だ。彼女は追跡の先で嫌がらせの現場を見つけ、早速噂の種としてばらまいたのだ。
 城下町は刻命道場の話でもちきりであった。しかし、それは今までの評価をぐっと引き下げる、刻命道場転落の先駆けとしての話であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルパート・ブラックスミス
先の猟兵たちの活動を一部利用させてもらおう。

『刻命道場に告ぐ。怪傑メイド小僧より貴殿らの看板を預かった。返して欲しくば指定の場にて当方との決闘を受けるべし。受けるのは一人、他の門下生は立ち会うこと。もし立ち会わぬ者あれば決闘を見届けもせぬ臆病者を抱えたその武名、地に堕ちるものと思え』

以上の内容の立札を白昼堂々道場前に突き立て、指定の場で待つ。
さすがに真剣は抜けない、木刀を用意しておく。

これで黒幕の出方を窺う。手下を決闘者に出すのか、または立会人か。
無視して例の嫌がらせを行うなら一度疑念を覚えた人々の目にとまるだろう。

後はこれで人々の鬱憤が少しでも晴れればいいが。
【共闘・アドリブは歓迎】



刻命道場看板強奪事件の翌朝、朝が早い職人や仕事人たちが集まり何ごとかを囁き合っている。その原因は、道場の門前に立てられた挑戦的な内容の立札であった。

『刻命道場に告ぐ。怪傑メイド小僧より貴殿らの看板を預かった。
 返して欲しくば指定の場にて当方との決闘を受けるべし。』

 これ以降も続く挑発的な文言の最後に『本日、河原に中天に日が上る頃に来られたし』と書かれている。
 やがて人々は散ったが、指定された真昼間にはすでに城下町にその立札の存在は老若男女問わず知れ渡っていた。

 正午頃、指定された場所を見に来る見物人がちらほらと出てきたのを、立札を立てた男がちらりと見やった。

「……うむ。見物人の数としては上々だろう」

 真黒の鎧に身を纏ったルパート・ブラックスミスは、河原の砂利に突き刺した刻命道場の看板と並び堂々とした風体でそこに立っていた。殺める事が無いように用意した木刀を手に、真冬とはいえ日差しを感じる中、ただただまっすぐに決闘人を待った。
 しかし、日が傾きだしても刻命道場の者は現れない。唐突に表れた者にしてやられた腑抜けという汚名を雪げる機会であるというのに、だ。
 念のためもう少し待とうとしたルパートのもとに、年若い少年が駆け寄ってきた。どういうわけか目をはらした少年の様子を怪訝に思い、そちらに正面から向き直る。

「……刻命道場は、無視すると」
「貴殿が言付を託されたのか?」

 その少年は刻命道場の者とわかる物を身に着けていない。怪訝そうに首をかしげるルパートに、少年は自身がこの件に納得できずに辞めてきた者の一人だと語った。信用していいか迷ったルパートだったが、見物の一人が少年が刻命道場に改名する前から通っていたのだと証言した事で納得することとした。
 
「以前は……以前は違ったんです。あいつが来てから、先生も道場もおかしくなった……」
「……その話、良ければ藩士に語ってくれないか?今、藩の役人は見下されているが、その原因となった噂の大半は根も葉もないものであると自分は考えている……本物の悪徳があれば、彼らは動くはずだ」
「……はい」
「送ろう。ただ見送ることで何かあっては自分も目覚めが悪い」

 そういって、ルパートは木刀を看板に叩きつけ、看板を粉砕した。決闘が行われなかった事による見物人の消化不良を解消するための、ただ一撃のパフォーマンス。しかし、重たそうな身体からの軽く、それでいて激しい一撃に『あの男であればきっと門下生全員を相手にしても勝てたであろう』と見物人たちが感じ取るには十分であった。

 こうして、透かしをくらった形ではあるが刻命道場への決闘申し入れ騒ぎは、挑戦者の剛腕を知らしめて幕を閉じた。
 無論、刻命道場が門下生に見切りをつけられるような腑抜けた対応を取った事も。さらには元門下生は刻命道場の怪しい所を知るという事も。すべてが集まっていた野次馬から城下町にとんとんと広まっていったのだった

成功 🔵​🔵​🔴​

最上・空
美幼女参上です!
任せて下さい!根も葉も無い噂を流すのは得意ですので!

空は、刻命道場に新しく入った美丈夫の先生は実は男色家で
生徒達を毒蛾にかけている上に生徒達の弱みを握り
強引に高いお金を貢がせ従わせていると悪評を流しますよ!

旨く行けば新しく通おうとしている人達も
男色家疑惑を掛けられますので、入るのを留める効果もあるかもですよ?
それにこう言う下世話な噂の方が、市井では好まれそうですしね-

「知ってます? あの道場の新しい先生が男色家らしいですよ?」
「何故たまにしか来ないのか、何故他より高いお金が必要なのか考えた事がありますか?」
「先の決闘に来なかったのも、肉欲に溺れていたのが原因らしいですよ?」



「元門下生が藩士のとこに連れられてったというけど、ねぇ?」
「これまで何も出てこなかったのにおかしくない?」

 ひそひそと声を潜める噂話の場。昼時の事も既に人々の口端にあがってきているのだが、女性たちは年代問わず微妙に刻命道場寄りであった。理由としては弓術指南の美丈夫の存在がある。顔の良さは一定の力になり得る。だがそれ故に美幼女を自認する最上・空は、自身の顔と子供であるという年齢的アドバンテージを全力で利用することにした。美丈夫を上回るには、美幼女をぶつけるのだ。

「奥さま方、お姉さま方!門下生を責めるのは酷ですよ!」
「あら?あんたは?」
「くう、というのです♪そうそう、門下生が口をつぐむ理由なのですが……知ってます? その新しい先生って、男色家らしいですよ?……剣術師範さんが道場の名前を変えるぐらい入れ込んでる、とか」

 空の発言に、その場の空気に何らかの衝撃が走る。言い出した人物が美男を貶める必要を感じない見目であることもあり、空の言葉は疑われることも無くただただ衝撃として女たちの間を駆ける。
 空はその衝撃がある程度浸透するまで時間を置き、明るく楽しげな声とは裏腹に、内容を聞くものに染み入れるよう話を続ける。

「たまにしか来ないだなんて、おかしくないです?しかも、改名してから通うためのお金まであがったんでしょう?いったい、どんな理由なんでしょうね?」

 初手の衝撃から導かれる答えは、殆ど決まったようなものだった。下世話な話ではあるが、このようなものは広まりやすい。いつの世もゴシップネタというのは強いのだ。

「皆様も、心当たりがおありでは?……昼間に決闘に行かなかったのも、そういうことなのかもしれないですよ?」
「……そういえば、道場の看板は変えたけど設備新しくなったとか聞いたことある?」
「あ!通ってる男の子たち、そういえば道着や木刀は前からかわってないわ!」
「あそこの道場主、そういう趣味だったのね……そういえば門下生も体つきの良い子ばかりとってたような」

 あっという間に集められる事実の切れ端。あっという間に広がっていく妄想。油を注ぎこんでは着火してゆく空の話術により、これまで猟兵達が入れていた大きなヒビから刻命道場の印象はガラガラと崩れ落ちてゆく。

「けれど、この話ってたぶん表には出ないとおもうんです。だって、元とはいえ、門下生さんも仲間や師範の痴態なんて、口にできないでしょう?疑問に思わず通っている人もいるってことは、知らずに通う門下生さんもまだいるかもしれないじゃないですか?なおさら、言えないと思いません?」

 元門下生の話が明確に広まったとしても、噂が疑いづらくなるようにトドメを刺して行くのも忘れない。
 女性たち自身から「こんなことが」「あんなことが」とほおっておいても疑いの要素が出てくるようになったのを見計らい、空はそっとその場を去った。

 刻命道場にとどめを刺すには、あと一押し。

大成功 🔵​🔵​🔵​


「えー、瓦版だよー!瓦版!城下の噂がぁ~、これ一枚!はい、まいど!」

 耳の早い人々の手によりつくられた瓦版。娯楽要素の強いガセも多いところのものではあるが、今回ばかりは飛ぶように売れている。

「あの道場の最新の噂まで!はじまりとここまでをぎゅーっと詰めた一枚だよ!へい、まいどぉ!」

 猟兵達の活動結果をまとめたようなその瓦版を、人々は面白半分に、あるいは自身の身に降りかかっている脅威として読み込んでゆく。

『看板を持ち去った怪盗とのおいかけっこに惨敗!』
『看板を賭けた呼び出しの無視!それを伝えに来た門下生が何やら悪事を知っている!?』
『城下に燻る道場不審の一端、嫌がらせ合戦の真相とは?』
『門下生から授業料を不当にまきあげている?事実は目下確認中!』

 事実も下世話も詰めた瓦版が飛び交う城下町。
 猟兵達がもう少し動きを積み重ねれば奉行所が刻命道場に手を出せるところまできている事を、人々の動きが大いに物語っていた。
ルパート・ブラックスミス
先の決闘で使った河原で志願者に稽古・手合わせを行う青空道場を開く。
あの時の元門下生は勿論、誰であろうと区別なく相手する。
ただし道場の道着や証はひとまず置いてもらおう。一人の武人として来るがいい。
道場の名を笠に着なければ顔も出せん輩はお引き取り願う。

狙いとしては人々に道場の名から独立した、「剣術家」の公明正大な姿を見せたい。
噂にあるような者ばかりではない、実直に武を志す者たちはいるのだと。

自分は騎士、そして武人。
同じ武道で己を磨く者の名誉を貶めるだけで去りたくはないのだ。

それに敵はおそらくこちらの活動に対応できない。
これで間接的に刻命道場の弱体化は加速し、藩も多少無茶な捜査ができるかもしれん。



 河原に、緩やかに人だかりができている。何ごとかと尋ねる人に、ある者がこう答えた。

「藩士のとこに門下生連れてった人がいただろ?その人が青空道場やるらしいぞ」

 先の出来事もあり話題性は十分なそれを目にしようと、野次馬が集まったのだという。
 さて、河原に立っているのは噂とたがわずルパートの姿であった。その周囲に、彼と手合せしたい、或いは彼に稽古をつけてもらいたいという青少年がずらりとならぶ。現状わずかではあるが、中年や壮年、幼子もまじっているようだ。誰しもが道場がわかる物を身につけていないのは、身分を問わず一人の武人として来ている事を証明するためらしい。
 町人たちを尻目に、ルパートはまだ心得の無い者達に素振りの手ほどきを行っていた。

「貴殿らの将来的に持つ武器は、自分の使っているこのような剣とは違うだろう。しかし、どの武器や、仕事道具でも、必要な事がある」

 ルパートは不定形の内部を感じさせないしっかりとした立ち姿から、構え、そして風切り音がなる大きな素振りを一つ行った。

「動作を大切にする事だ。達人の目に留まらない動きではなく、それを構成する基礎を真似て、学びとり、自身のものとすべきだ」

 彼は口下手ながらに、今出来る限りの言葉として表す。実際、聞く者によっては少々難しい話だったが、彼の一連の動きも相俟っておおよそを心の内に宿したようだ。
 素振りの監修を一通り終えてからは、心得のある者たちとの手合せがはじまる。木刀に持ち替えたうえで、力を加減しながらでも圧倒してゆくルパート。それにただ圧倒されるのではなく、一度負けても並びなおしては立ち向かう挑戦者。
 夕暮れ時まで続いた手合せと、合間にはさまれる稽古。その様子を楽しみながらも見ていた人々から、内にあった武を志す人々への猜疑の念はどこかへ消えていた。

 青空道場の解散後、ルパートは藩士に呼び止められた。天下自在符を持つことは、元門下生を連れて行った時に藩士に把握されている。その関係だろう。
 藩士がいうには、今日ルパートが人々をひきつけていてくれた事も相俟って、刻命道場の調査が早々に終わったのだという。

「ずいぶんと早いが、何か見つかったのか?」
「実は……」

 ルパートは藩士の言葉を聞きながら、内部の炎を揺らがせる。
 刻命道場の閉鎖が確定する事実と……猟兵達にのみ知らせることを許された悪事の予定。それは、オブリビオンの卑劣さを示すに十分なものだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『喧嘩祭りで勝ち上がれ!』

POW   :    圧倒的なパワーを見せつけて参加者の戦意を削ぐ

SPD   :    素早い動きで参加者を圧倒し棄権へ持ち込む

WIZ   :    他参加者同士で戦わせるなど、策をめぐらせる

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「えぇ~~~号外ぃぃ~~~!!号外だよーーーー!!」

 刻命道場の閉鎖をネタにした瓦版が出回る中、人々は少々腑に落ちない表情をしていた。立ち入りによって、道場の中から他道場への嫌がらせの証拠が出てきたのまでは良かった。
 しかし、実行犯となった門下生の大半は記憶が混濁し「新しい師範に暴力を振るわれ気絶していた」としか証言しない。
 さらには、道場主がすでに死亡し、それどころか冬場で腐敗が進まなかったとはいえひと月は前に死んでいたはずだと医者がいうのだ。死んでいるはずの時期にも声は聞いただの、型はみせてくれただの言う門下生もいる。おそらくは傍についていたという弓術師範が、浄瑠璃のように操っていたのだろうが……それも恐ろしい話である。
 最も恐ろしいのは、その中心である弓術師範は雲隠れして、つかまらなかったという事だろう。

「しかしまあ、祭りの前になんとかなってよかったよなあ。黒幕がわかっただけでもよかったよ」
「そうだな。灯籠祭にあの空気持ち込んでたらどうなっていたか。たしかに奉納戦で怪我はいつもでるけど、死者がでたらしゃれになんねえもんな」

 町人たちの話に、旅人が疑問を挟む。一体それはなんなのか?と。

「奉納戦か?灯籠祭っていう祭りの一部でな、小さな和紙の灯籠を頭の上にくくりつけるんだ。そいつをのせたまんま川下から妨害ありの競争して、川の横を上って行くように山の中腹にある神社に最初にたどり着けたやつの灯籠を奉納するんだよ。それ以外の灯籠は、去年までの厄といっしょに川に流すんだ」
「灯籠が途中で壊されたり、疲れてもうやめだって時も頭からおろして、川に流すんだ。数年に一回は一つも奉納できない年もあったりするな。ま、子供や酒飲みの楽しみは奉納戦の翌日からだ。初日に奉納と神事をやってな、翌日からずらーっと川沿いに縁日の屋台が並ぶんだよ!」

 わいわいと祭りについて話す町民と、頷きながら聞く旅人。そのような、かろうじて平和を取り戻しかけている城下の様子に対し、猟兵達には新たな使命が発生していた。
 調査によってわかったことで、猟兵達にのみ伝えられた事実がある。弓術師範……オブリビオンは、灯籠祭の奉納戦で行動を起こすつもりだった。
 オブリビオンの矢には、意思を失った肉体を操る効果がある。死んでいたはずの道場主や、気絶させられた門下生がこうどうしていたのはそのためだ。
 祭りの中で配下とした者たちを暴れさせ、大きな暴動につなげる。そうして、増えた気絶した者や死者に矢を使い、配下を雪だるま式に増やして一気に城に攻め込むつもりだったのた。
 まだオブリビオンが遠くへ行っていない可能性がある以上、猟兵達が奉納戦に混ざって最後まで見守る……勝利することが、人々を守ることにつながる。また、そこで平和に終えさせてしまえば、苛立ったオブリビオンが現れる可能性も高いだろう。
 藩士は猟兵達に頭を下げる。神社や祭りの関係者には根回しを行うため、どうかあなた方の力で祭りを平和的に終らせてほしい、と。
 かくして、猟兵達は祭りに於いて勝ちあがるという新たな使命を得たのであった。

 数日後。
 祭りの当日、城下町近くの川にて。
 数十名ほどの血気盛んな男女に紛れ、猟兵達が競争開始の合図を待っていた。
狗飼・マリア
ムムム、ルバート様がなかなかのご活躍をしていたのでこれはメイド的にメイド挽回(名誉挽回?)しなくては……

というわけで妨害しますわ。
「アッ!鳥だ!ムササビだ!(裏声)」
「違いますわ、メイド小僧です。うー、Wahhoi!!」

まずはメイド大砲をもちいてその風圧と音で灯篭を消すなり戦意をそぐなりします。弾はもちろん私です。

そして着地先で参加者と併走しながらメイドキネシスを用いて、とりあえず参加者の皆様方の衣類をめくります。

「メイド小僧参上!とりあえずやる気を頂戴しますわ!」

「ホップ、ステップ、メイドのシーフ!」

隙あらば屈強な男性陣の肩に乗っては飛びを繰り替えします。
スカートを覗いたら容赦はしませんが。



 晴れ渡る寒空。今か今かと身を揺らす人々。やがて、合図役の巫女が鈴をつけた祭具を高らかに掲げた。

「これより、灯籠奉納競争を開始いたします。よーい……はじめ!」

 ジャララン!と、派手に音を立てながら振り下ろされる祭具。それを開始の合図として、人々は待っていましたとばかりに川上に向かって走り始めた……のだが、狗飼・マリアはどういうわけか開始の合図の後になっても焦ることなくゆっくりとほっかむりをまきだした。

「先行した猟兵の皆様は……まあ大丈夫でしょう。きっと」

 基本的に己の肉体や能力で競うはずの競争だが、マリアには天下自在符なしでも乗り物を持ち込む秘策があった。

「わたくしの能力で呼び出すのですから、ノーカンですわ!さあ、御覧に入れましょう!」

 メイド力を発揮すれば、その場に現れたのは大砲である。そう、大砲である。さらには当然であるかのように大砲の中に入ってゆくマリア。

「いきますわよ!ふぁいあ!!」

 掛け声をあげた瞬間、轟音を立てて撃ち出される。人狼大砲として強烈なスピードを得たマリアは、激しい風を纏いながらマリアは戦闘集団に接近する。

「――アッ!あれはなんだ?!鳥だ!いや、ムササビだ!!」

 高い裏声ながらはっきりした声量。うっかりと、数名がそちらに視線を向ける。

「違いますわ、メイド小僧です!うー、Wahhoi!!」

 くるりと空中で華麗に姿勢を正し、先頭集団の中へ降り立つマリア。うっかりと着地シーンを見てしまった数名の心が、わけのわからなさにへし折れかける。

「メイド小僧、参上!皆様のやる気を頂戴しますわ!」
「なっ?!冥土小僧?!」
「そのとおりですわ!くらえっ!」

 続けて、メイド力を物質的パワーとして運用するユーベルコード、メイドキネシスを発動!見えない力の透明な腕を複数従えることができるようになったマリアが行ったのは、着物めくり!あるいはふんどしで駆ける屈強な男性のふんどしの前垂れめくり!
 メイド小僧が駆ければ着物がめくれる!メイド小僧が駆ければふんどしもめくれる!
 このような場で先頭に躍り出るような人々は、普段は色々めくれる程度で恥ずかしがったりはしないのだが……しかし、メイド小僧が不可視の力をあやつっているのだという因果を理解させられ、勝てる見込みがないと次々に膝をついていった。

「あらら、もう少し色々するつもりでしたが、刺激が強すぎましたわね?」

 先頭集団だったはずの10名弱を相次いで脱落させ、メイド小僧ことマリアはぺろりと茶目っ気を表すように舌を出して見せた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハーバニー・キーテセラ
お祭りに横槍を入れて邪魔をするというのはぁ、本来なら無粋というもの~
ですがぁ、今回ばかりはそうも言っていられませんねぇ

擬獣召喚にて兎さん&猫さんを召喚しますよぉ
頭の灯籠を狙ってもらったりぃ、足元にじゃれついて足止めしてもらいましょ~
私自身も、跳んで、走って、跳ねて、灯籠をスナイピング
(【ダッシュ】、【ジャンプ】、【スナイパー】)
ふふふ~。皆さん、ここで失格ですぅ
逃げられると思ってはいけませんよぉ?
兎の健脚を侮ってはいけません~
そしてなによりぃ、兎が常に狩られる側だとは思わないことですよぉ?

あ、ついでにぃ、オブリビオンの配下とかいないかもぉ、探っておきましょうね~
無粋者は発見次第に成敗ですぅ


佑・盾
オブリビオンの目論見通りにさせない為とはいえ、こういうお祭りはテンション上がるねー?
よーし頑張って優勝……ってそういう作戦じゃないよね。
とりあえず平和的に、ね?

SPDで判定。
あえて【挑発】して他の参加者に自分を狙うように仕向けるよー
【BB/RocketBooster】のロケット噴射による加速を使って【ダッシュ】【ジャンプ】【スライディング】と【見切り】を駆使してヒョイヒョイと動き回って翻弄。参加者たちを疲れさせて棄権してもらうよ。【BurstBinder/code:BOOSTER】での複数回ジャンプも使えばまず捕まらないだろうしね。


ルパート・ブラックスミス
一気に先頭に躍り出た…というか飛んで行ったのは例のメイド小僧か。
ならばこちらは全体の中間、特に走者が塊になっている中に混じって走ろう。

道場の件では出しゃばり過ぎた。剣士たち以外にも特に血気を持て余してる輩が自分に目をつけているはず。
それらの妨害を誘い、「怪力」任せに跳ね除ける。なんなら怪我させない程度に引き摺ってみせてもいい。
もしあまりに無茶をしてくる手合いがいるようなら早々にその灯籠を破壊させてもらおう。
敵としてもこういう輩が手駒として狙い目だろう。手の内は見えているのだ、警戒していきたい。

【共闘・アドリブ歓迎】



 佑・盾は上空を見上げて、先頭に向けて吹っ飛んで行った何かを見送ってから自身も行動を開始した。

「えーっと、今は……よっし、周囲の猟兵さんとはばらけてるっぽいね!」

 周囲に猟兵の気配がないかどうかを確認してから、盾は敢えて人々が固まっている中に入り込む。その場の人々が新たに入り込んできた少女に目が向いたのを見計らい、盾は自身の頭の灯籠をちょいちょいと指差しながら挑発した。

「これ狙わないの?なんか、気弱な人が多いんだねー?」

 先頭集団から少し離れた、中段前方辺りの面々。現在の先頭集団が精神的に悲惨な目にあって全滅していっていると知らない彼らは、とにかく前に追いつくことを念頭に置いていた。しかし、少女にこのように挑発されて黙っていられるような我慢強い人ばかりでもない。かっとなった一人が盾を狙いだしたことで、周囲もその流れに流されだした。

「へへっ、そうこなくっちゃ!」

 狙いが頭上である以上、彼女の頭に向けて伸びるいくつもの手。盾は装備による移動補助のロケット噴射も繰りつつ、相手の動きを見切っては身をかわしてゆく。やがて、しびれをきらしたのか複数の手が一気に迫り来ると、身を屈めて人々の足元をすり抜けるように前方へと低く跳び見事それを避けきった!

「いよいよノってきたみたいだね!ばすとばいーんだー、とっておきを見せてあげちゃおっか?」

 盾の楽しげな声に、BurstBinderが返事をするかのように駆動音を鳴らした。
 彼女が曲芸めいた避け方で人々を消耗させる最中、中段後方でも猟兵による狙いの引きつけが行われていた。

「このっ!!」
「効かぬ!」

 怪力任せに頭を狙って振られた腕を止め、弾き返しているのはルパート・ブラックスミス。彼は先の道場妨害関連で特に目立っていたのもあり、血気盛んな連中は併走しつつも彼を狙っていた。とはいえ、それはルパートの計算通り。彼は敢えて少々遅めに走ることで、そういった血気盛んな連中をあぶり出し引きつけることに成功していたのだ。

「武器が無いならこっちのモン……うわぁ!!」
「フンっ!!」

 名を一気にあげたルパートを倒せば、と襲いかかってきた荒くれの頭上で激しい音が鳴る!灯籠がはじけ飛ぶかのように破壊されたのだ!
 オブリビオンの狙いとなるであろう気の荒い連中を早期に退場させることも、ルパートの狙いの一つ。しがみ付いたり灯籠を狙う、といった祭りの中で行われる行為ならばただふりほどくだけである。しかし、雑な投げ技を仕掛けてくる、首元を狙い手刀打ちを繰り出してくるなどの武闘家崩れ共には容赦しない!武を志す者の一人であるからこそ、使いどころを間違えた者には容赦がないのだ!
 武に関係しようとしまいと、強い者に惹かれる本能でもあるのだろうか?力を見せれば見せるほどルパートに仕掛けてくる男達に、彼は容赦なくその怪力を奮っていった。

 前方と後方でそれぞれの動きがはじまって半刻ほど。
 中間前方では、すでに盾によって疲弊させられた人々の大半が膝を折り、灯籠を川に逃がしている。盾の人間離れした動きに付いて行けない人だけではなく、空中に足場があるかのように空を跳ね回るという行動から、盾を天狗や現人神の一種とみて身を引く事にした者も少なからずいた。
 しかしあきらめが悪い人も同様に存在していた。今は体力を温存して、山道に入った時に一気に抜けば良いと考えた人々だ。盾に翻弄されないためにも、一旦ペースを落とし後方に下がってきている。ペースの落ちている人間を叩き落すほど後半の連中だって暇ではないはず……と思いながらも、彼等の後ろから次の一団が迫ってきて身構える。

「うわあああああああ!!??」
「なっ?なん……えっ?!」

 ペースをおとしていた人々がみたものは、川沿いを人を引きずって走る黒き男ルパート!と、それに追いすがる血気盛んな連中!
 さらには青年の横を通り過ぎた直後、ルパートは引きずっていた男を解放する。引きずられていたにもかかわらずケガらしいケガもなく転がり倒れる男!障害物と化した男につまづきかける者、多数!
 おののく人々を気にも留めず、屈強な男がルパートの鋼鉄の身体を引き留めようと腕をつかむ!が、腕を振り駆けるルパートの、その腕の動きに引きずられそのまま川沿いを投げ飛ばされるように転げて行く!
 前方からペースを落としてきた人々は、ルパートを囲む一団の異様さに同様に身をすくませながらも彼等と距離を開けることで無事それを見送った。
 男たちの姿が豆粒のようになっていき、誰かがほっとしたように息をつく。……その安堵は間違いだ。消耗しながらも戦意を維持する彼等も、オブリビオンの格好のエサ。オブリビオンの意図を崩すなら、このような者たちも脱落させ守らねばならないという事に気づいている猟兵も、当然存在する。
 それが、脱落者の確認のために並走する祭りの運営とともに、最後尾を走っていたハーバニー・キーテセラであった。彼女は仕掛ける前にと、少し間延びした声で彼らに声を投げる。

「私は最後尾なのですけれどぉ、皆さんまだ走り続けるつもりでしょうかぁ?私以上に消耗していて、辛そうですが~?」

 彼女の声に、ペースを落とし冷静になったからこそ降りる選択をする者も出てきた。

「そうね。このまま行くのもむずかしいわね……先に居る人達は本当にすごかったから、お嬢さんも無理しないのよ?」
「そうなんですねぇ。でも、そういわれるとその方たちを見物したくもありますのでぇ~」

 降りることに決めた体格のいい奥さんに笑顔で答えて、ハーバニーは呼びかけによって川に灯籠を流す決意をした人達に手をふった。
 それから数分後。後方にいた降りた人々が自分たちを見ていないことを確認した彼女は、走り続ける人々に向けて行動を開始した。

「本来なら無粋なことですがぁ、そうも言っていられませんので~。はぁ~い、出番ですよ~」

 彼女の声に、前方から下がってきていた一人の青年がちらとふりかえる。そこには今まで見てきたような、あるいはもっと現実離れした光景が展開されていた。
 額に見慣れない、統一された紋様が表記された兎の群れと猫一匹。その内の何匹かは幻覚のように重なり合い、額の紋様が変化する。

「兎が狩られる側だなんて、思っちゃダメですよぉ~?皆さん、ここで失格です~。行きますよぉ~?」

 ハーバニーの声に応じて、兎と猫が一気にスピードを上げる!
 幻を見たような心地の青年の足元を、ふわふわとした感覚がかすめてゆく!よろめく青年の頭上に向かって紋様を持つ猫がとてつもない跳躍を繰り出し、灯籠を引き裂いていった。
 狙うは残る参加者全員とばかりに、兎や猫に紛れてハーバニーも灯籠を壊してゆく。高い跳躍とスナイプ技術を活かし、狙い逸れることなく確実に灯籠を破壊!残った人たちを平らげるように次々と失格にしながら、ハーバニーはどんどんと前方に近づいて行った。
 やがて、通常の参加者ではなさそうな恰好の者たちに追いつくと、彼らもハーバニーに気づいたのか手を振った。

「あらぁ~?もしかして、お二方とも猟兵さんでしょうか~?」

 ハーバニーが問うと、ルパートと盾が頷く。

「先ほどから速度を上げているが、一般人はもういないようだ」
「座り込んでる人はいたよね!」

 大立ち回りを繰り広げた猟兵達の灯籠は無事なままだが、一般の参加者は全員棄権したり失格となったようだった。

「……ってことは……あとは頑張って優勝するだけってことだよね?!よーし、ばすとばいーんだー!れでぃー、ごー!!」

 前方に居るであろう猟兵においつき、抜き去ろうと猛加速する盾。
 参加者としての奉納の役目と、猟兵としての役目。その双方を果たすためにルパートとハーバニーも盾を追うように足を速めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『刻命』の阿頼耶識』

POW   :    私は今、『禁忌の果て』に至る
対象の攻撃を軽減する【半人半獣の戦闘形態】に変身しつつ、【蒼炎を纏った矢】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    『刻命』よ、力の一端を開放しなさい
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【仮初の命を与えた絶対服従の傀儡】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ   :    では…切り札といきましょう
自身が戦闘で瀕死になると【自身と全く同じ姿をした2体の分身】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はセリオン・アーヴニルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 灯籠祭りの発祥となった神社。奉納戦による競争の最終地点。弓術師範のオブリビオンこと、『刻命』の阿頼耶識は奉納戦の有様を見てそちらに先回りしていた。

「……対処されていたか。祭事も安寧も欺瞞欺瞞欺瞞……!!この薄汚れた平穏を乱せるならなんだってやると決めたのに……!!」

 せめて殺戮の数を一つでも多く。平和の礎を一つでも乱したい。そのような思考は先を読まれていた。
 本来であれば宮司や巫女が待機しているはずの神社には、猫の子一匹の気配もない。ここに来るまでに参道の石灯籠に灯は点され、祭りの気配自体はあった。しかしそれも、おそらくはここに自身を呼び込む罠であったのだろうと阿頼耶識は理解する。

「……ならば、あの連中で殺戮の数を上げようか。一人でもいい、この場で殺してケチの一つでも付けば、この許しがたい平穏に汚点を残せる」

 阿頼耶識がそう言って振り返ると、鳥居の向こうに猟兵達の姿が見えた。
 猟兵の事を認識するや否や、阿頼耶識は優男と言える顔立ちに薄気味の悪い笑みを張り付けて禁忌の弓矢『刻命』を構えた。
狗飼・マリア
さて、いよいよ大詰めといったところでしょうか。
ご丁寧に最終地点で待ち構えているとはだいぶ焦っているご様子。

まずは私が切り込んでいきますわ。弓で狙うならこちらは大砲をぶちこんでやりましょう。

私はメイド大砲の中に入り、オブリビオンめがけて撃ちだされます。
打ち出される瞬間【無敵城塞を発動】ほぼ無敵状態の体、つまり実質スゴイカタイ砲弾と化した私は相手めがけて撃ちだされます。
できれば急所を狙いたいところですが。

「そこのけそこのけ!!メイドがうー、Wahhoi!!!」

あとは皆様方が来るまで囮になりましょう。
ご心配なく、邪悪な相手を茶化すのは得意ですので。

「男漁りはこのメイド小僧が邪魔してやりますわ!」



 阿頼耶識の構える弓矢を見て、狗飼・マリアは不敵に笑む。彼女の余裕の塊のような人物像は、強力なオブリビオンである相手の前でも揺らがない。
 彼女から見て、敢えて猟兵の前に出てきた阿頼耶識の行動は焦りの体現。そのような相手に脅え怯む必然性は一片たりともありはしない。

「弓矢……遠距離主体ですか。ならば、わたくしもそちらの間合いに乗ってさしあげます!メイド小僧、一番槍をいただきですわ!」
「やってみればいい。やれるものなら」

 猟兵の攻撃の気配に、阿頼耶識は自身の中の禁忌を発動させる。瞬時に彼の身に纏われる毛皮。弓を引き絞るには向かないけだものの爪も伸びたというのに、蒼炎を纏った矢は落ちることなく収まっている。
 対するマリアが呼び出すのは、先ほども活用したメイド大砲。軽やかに、当然のように砲身に収まるマリア。

「さぁ!そこのけそこのけ!!メイドが――うー、Wahhoi!!!」

 謎の言葉とともに、轟音を立てて撃ち出されるマリアと、阿頼耶識の蒼炎の矢がぶつかる!が、マリアの身に一片の傷も無し!そのまま自身を砲弾としたマリアは、阿頼耶識の腹部にその頭部をめり込ませる!

「ガはっ?!」

 半人半獣の形態は、本来であれば攻撃を軽減する防御の型。しかし、その防御を突き抜けるかのような衝撃!阿頼耶識の足は踏ん張りきることができない!マリア諸共、地に仰向けに叩きつけられる!
 防御が効かなかった理由、それは更に強い防御との一騎打ちの形を強引に作られたからであった。そう、マリアは撃ち出される瞬間に超防御のユーベルコード、無敵城塞を発動させていたのだ!

「ふっ、男漁りはこのメイド小僧が邪魔してやりますわ!」

 マリアは続く猟兵の万全な攻撃のために時間を稼ごうと、挑発を織り交ぜつつ阿頼耶識を抑え込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルパート・ブラックスミス
「最後まで先手を譲ってしまったか。待たせたな、メイド小僧」
「そして、ようやく相まみえたぞ不届者が……!」

まずは接敵前に鎧内に格納している短剣を手首から出しそれを【投擲】。
ある程度こちらの意思で軌道を動かせる【誘導弾】だ、味方には当てん。

後は真っ向勝負だ。『真の姿:青く燃える鉛が関節部から溢れ出る姿』およびUC【黒風鎧装】解放。
炎を纏った矢を熱風と剣で【なぎ払い】ながら突撃。
攻撃を軽減しようが関係なし。味方と連携を意識しながら相手が息絶えるまで、この【怪力】にて大剣を振るい斬り続けるのみ。

「祭り最後の一仕事だ。ここで貴様という厄をこの町から流す」

【アドリブ・共闘大歓迎】



 拘束を振りほどこうと、獣の爪を突き立てる阿頼耶識。防御に任せ食い下がる猟兵。その構図が、阿頼耶識への攻撃という形で次の段階へと進んだ!

「ぐっ?!」

 毛皮に受け止められ深くは入らなかったが、それでもそれは阿頼耶識から猟兵が離れるに十分な余地を作った!仲間の猟兵を意思があるかのように避け、阿頼耶識のみを襲ったのは鋭い短剣!鉛、それも、青い炎をわずかにまとったそれが、ただの短剣であろうはずがない!
 阿頼耶識がそちらを見ると、長年存在していたことを感じさせる色合いの全身鎧……ルパート・ブラックスミスが、重い足音をさせて近づいてきていた。

「最後まで先手を譲ってしまったか。待たせたな、メイド小僧」

 静かに、彼は真の姿を解放する。鎧の関節部から、青い炎を纏った赤く流動する鉛がゴボゴボと溢れ、溶け出す。

「そして……ようやく相まみえたぞ、不届者が……!」

 ゴウと音を立て、纏う炎をより高く巻き上げんとする黒い旋風がルパートの身を覆った!
 オブリビオンもかくやという姿で突撃を仕掛けつつ、残る短剣を投擲!阿頼耶識も蒼炎を纏う矢でそれを迎撃しようとするが、誘導弾の性質を持つルパートの短剣は矢を避け阿頼耶識に手傷を負わせる!
 阿頼耶識の矢はといえば、ルパートから流れる鉛を受け形を変える大剣になぎ払われ、仮にその身に近づいても炎が混じりの熱風と化した黒い風により巻き上げられ、叩き落されている!

「祭り最後の一仕事だ。ここで貴様という厄をこの町から流す」

 正面から大剣を振り下ろすルパート。本来であれば相性が悪いはずの攻撃軽減、しかしそれでも受け止めるなら、彼の大剣の餌食である!
 毛皮で受け止めながらも、想定以上に重い衝撃を叩きつけられる阿頼耶識は混乱とともに叫ぶ。

「馬鹿な!何故!何故、力がありながら平穏という欺瞞を肯定する?!力を持つならば争い、全てを更地にすべきだろう!」

 阿頼耶識にもこのような思考に至った経緯はあるのだろう。だが、それでも彼が現在の平穏が如何になされているかを理解しない以上、猟兵もこの世界の人々も阿頼耶識の考えに理解を示す必要はない。
 それを示すためにも、ルパートは普段なら上げぬであろう大きな声とともに、大剣を振り下ろした!

「人々の守る平穏を欺瞞と取るのは、貴様だけだ!」

 怪力をあらん限り込めた一撃!ルパートの大剣が、守りの要となっていた阿頼耶識の半獣部位たる毛皮を大きく切り裂いた!

大成功 🔵​🔵​🔵​

佑・盾
ただ自分の為だけに誰かの幸せを奪おうとする。それは駄目だよ。
自己満足の為に誰かを犠牲にする事だけは許しちゃいけないんだ。
だから、これから君を“敵”として認識するよ!

【WIZ】で判定。
相手の攻撃を【BurstBinder】のロケットパンチで【武器受け】しながら、
「ごめんね?でも君はボクを怒らせた」と言いながらユーベルコード【生まれながらの炎】を使用して攻撃するよ。



 痛みに上がる咆哮。強引に猟兵の元を離脱した阿頼耶識は半人半獣の形態を解き、敢えてその身を地に伏した。それに呼応するように蒼炎が二つ浮かび、それぞれが阿頼耶識の姿へと変化する。

「早期に痛手を受けすぎましたか」
「こうも早く切り札をお見せすることになるとは思っていませんでした」

 分身となったことで本体の感じていた怒りや焦りが抜け落ちたのか、分身達の態度は飄々としている。

「あなた方にとって残念なお知らせをしなくてはなりません。この状態の私の方が、上手く戦えるんですよ」

 言いながら、分身の一体は本体を護衛し、もう一体は猟兵に向かう。猟兵に弓引く分身は、本来ならば実戦用ではなく儀式用と思われる装飾の弓から猟兵達の急所に向けた早撃ちを繰り出した。

「ばすとばいーんだー!ロケットパンチだよ!!」

 戦意を声量に変えたかのように声をあげ、佑・盾は相棒たるアームドフォート、BurstBinderでロケットパンチを繰り出す!甲高く鋭い金属音がいくつも上がり、矢を叩き落している事を猟兵達に告げる!

「なぜ私を止めようとするのです?」
「私の理由など、知りもしないのに」

 言いながらも、分身は止まる気配を見せない。それどころか、本体側の分身も猟兵に向け牽制の矢を撒きだした。
 それらを一つとして仲間の元に届かせないように落とし続ける盾は、真面目な音を声色に含ませる。

「理由があっても、駄目だよ。自己満足の為に誰かの幸せを奪って、犠牲にする事だけは許しちゃいけないんだ」

 甲高い金属音が止む気配はない。このまま防戦に持ち込み猟兵の消耗を狙う阿頼耶識の分身にむけて、盾はつぶやくように声を出した。

「……ごめんね?でも君はボクを怒らせた」

 いつも笑顔で元気な盾の眼に宿っているのは、敵意。暗い敵意を抱くより先に行動に移すような少女が、阿頼耶識を敵として認識している!
 彼女は、引き金を引くように明確に怒りと敵意を阿頼耶識たちへと向けた。

「"爆炎を封じるもの"よ。今一度その戒めを解きて我が敵を灰燼に帰せ」

 零れ落ちるように盾の唇から言葉が発せられると同時に、敵意をその身に受けた分身が不意に発火した!
 盾を表すような朱い焔が、分身達と彼らの持つ『刻命』の蒼炎を呑もうと踊り狂う!

「なっ?!『刻命』の蒼炎ではない……っ?!」

 分身達は、矢を止め盾の生まれながらの炎に抗おうとする。
 それでも、超自然の発火能力で身を焼かれ、彼等の身体は一部が蒼炎に戻って立ち消えて行った。

成功 🔵​🔵​🔴​

狗飼・マリア
「らちがあきませんので、とっておきをご覧にいれましょう」

『真の姿:赤い目に頭以外にまとった黄金全身鎧にメイドエプロン』を解放。

そして再びメイド大砲に乗り込み、
刀と脇差をもってメイド力は2倍、
メイド大砲によって射出されメイド力は2倍、

そして「UC:人狼咆哮」により荒れ狂う刃の砲弾と化した私は10倍のメイド力により、
合計40倍のメイド力による剣技で相手を蹴散らします。


「奥義!メイドハリケーン!with大砲!!」

あとのことは考えず、
とにかく飛びますわ。



 ひとたび互いの攻撃が止まったことで、戦場は膠着状態に陥っていた。阿頼耶識の分身と猟兵、どちらが動こうにも、互いに牽制が入る。
 そんな中、猟兵の内数名は気づいていた。阿頼耶識本体の呼吸が、次第に通常レベルに落ち着いてきてるのだ。このまま回復に時間を使わせてしまいたくはないが、大きく仕掛けるには分身からの集中攻撃の憂き目を覚悟しなければならない……ならばと、マリアはこの先を考えない特攻に出ることにした。

「このままではらちがあきませんので、わたくしのとっておきをご覧に入れましょう。……みなさま、ご自身をしっかりと守っていてくださいませ」

 猟兵達に声を掛けた直後、マリアは自身の真の姿を解放する!
 黒く輝きを灯した瞳は赤く!メイド服は、朝日のような金色を放つ鎧に!それでも彼女はメイドなのだと主張するかのように居座るヘッドドレスとエプロン!

「小癪な」

 分身達は空に矢を幾本も放つ。マリアを狙うわけでも猟兵を狙うわけでもないそれは、空飛ぶ命を奪い手駒とした!正面から射れば止められるということが意識にあるのか、空からバラバラに狙いを定める操られし鳥たちが緩やかな狙いとなって猟兵達の元へと急降下する!

「メイド大砲、今回もたよりにしていますわ!……奥義!メイドハリケーン!with大砲!!」

 メイド大砲に乗り込み、そして射出される!この戦闘に於いては二度目の行動、分身とはいえ阿頼耶識も見切る用意があった……だが、当然マリアとて全て同じ行動をとるわけではない!

「ア゛オ゛ォオオオオォォォォォーーーーーーーーン!!!!」

 砲弾と化したまま、生物の臓腑を揺らす咆哮を放つ!人狼咆哮による攻撃は仮初の命を入れられただけの鳥たちでは耐えようはずもなく、さらに倒れ伏している本体にとっても当然のように体力的負荷を強いている!
 分身達は咆哮だけならば立ち続けられる戦闘力を有しているため、砲弾となったマリアを攻撃しようと構えたが、その半身をしたたかに斬りつけて行く刃!マリアは刀と脇差を抜き、刃傷振り撒く台風と化ていた!
 振り回される刃による鮮血!分身を切り裂きその傷跡から立ち上がる蒼炎!どれも目にすることなく、マリアは暴力……否、メイド力の化身となり戦場を突っ切るように吹っ飛んで行った。
 着地地点を定めぬ、高速で飛びながらの攻撃展開。彼女自身にも戦場の様子を把握できていない。しかし、マリアは神社を抜けた山中に着陸した時に一つ呟いた。

「……手ごたえはありましたわ。動物も逃げるでしょうし、手の一つぐらいは潰せたのでは?」

 マリアは自身の吹き飛んできた方を向く。その眼は、神社のそばの野生動物が散るように逃げていく様を捉えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルフローレ・カノン
遅れて申し訳ありませんが、
平穏を壊し殺戮を撒き散らそうとするオブリビオンを
退治するため、推参します。

私の得物は主にメイスですが
状況によって予備武器の剣も使います。

敵の攻撃は[見切り]でかわしたり
矢などは[武器受け][なぎ払い]で払い落とします。
耐えなければならない場合は[オーラ防御]【無敵城塞】で耐えます。
「ここは堪えてみせます!

攻撃に転じる際は[力溜め]の上で[2回攻撃]で叩いていきます。
また、[気絶攻撃]で敵の動きを止めていけば
他の人の支援にもなるでしょう。
もし防具があるなら[鎧砕き]で排除していきましょう。
「全力で行きますよ!」


ルパート・ブラックスミス
一度出しゃばってみせたのだ。最後までそうするとしよう。

既に開放した真の姿の背に燃える鉛が形成した青い翼を展開し飛翔。【空中戦】だ。
まずは周囲を旋回、熱風による【属性攻撃】と【誘導弾】【生命力吸収】を備えた短剣を【投擲】。
これで敵の動きを止める。弾かれても牽制にはなるだろう。敵の矢は【火炎耐性】で防ぐ。

その隙にUC【燃ゆる貴き血鉛】にて大剣に燃える鉛を限界まで纏わせ刀身を巨大化。
高高度から我が【怪力】すべてを込めて大剣を投擲、敵を【串刺し】にし青い炎に呑み込む。

乾坤一擲。これがこのルパート・ブラックスミスの全力だ。
さぁ力比べ、そして炎比べといこう……!

【共闘・アドリブ歓迎】



 動物たちの散る気配を、阿頼耶識の分身達も把握していた。本体の復帰まで時間を稼ぐことも難しい状況だと判断したのか、分身達は半人半獣の形に変化する。
 彼らは蒼炎を纏った矢をつがえ、放つ。寿命を代償とする半人半獣形態は決して防御だけの姿ではない。それでも尚、猟兵達の行動は的確であった。

「メルフローレ・カノン、推参します!」

 少女の声とともに、激しい金属音が鳴り響く!蒼炎を纏う矢をメイスで打ち、払い落としたのはメルフローレ・カノンである。彼女は前線に躍り出た勢いのままに重いメイスで矢を受け、その破片の軌道を見切り柔肌に一つのかすり傷すら残さぬように立ち回る!

「なりふり構ってはいられませんか」
「全く腹立たしい」

 分身の双方ともが、メルフローレに標的を定めた。いくら武器で受けるといえど同時に二か所を狙えばどちらかは通るのが道理とばかりに、少女の頭と胸部に蒼炎の矢が容赦なく放たれる!

「ここは、堪えてみせます!」

 無謀にも思える宣言とともに、真っ直ぐに敵を見据えるメルフローレ。蒼炎の矢2本は違わず、メルフローレの眉間と鳩尾を焦がす……が、彼女は耐えた!超防御のユーベルコード、無敵城塞を発動させたのだ!
 本体が最初に無敵城塞を見た時に超防御のユーベルコードだと看破できていなかったこともあり、解除を狙って分身達は再びメルフローレに攻撃を仕掛ける。猟兵であれど少女ならば顔を傷つけられるのを恐れるだろうと判断し、今度は2本の矢がメルフローレの両の眼を目指し飛来する!!

「可憐な少女の顔を狙うとは、やはり外道か」

 上空から、本体が苦汁をなめさせられた男の声とともに熱風が吹き荒れる!矢の軌道は逸らされ、メルフローレをかすりこそしたもののやはり傷一つ残さず地に突き刺さる!
 蒼炎で構成されたはずの分身が熱による痛みを感じ上空を見れば、青い炎を纏った鉛の翼を持つルパートがそこに居た。真の姿を解放し、その姿を自在に作れるからこその、通常であれば為し得ぬ空中戦である!

「メルフローレ殿!」
「はい!全力で行きますよ!」

 ルパートは上空より短剣を投擲する。熱風の中でも彼の意思を反映するかのように、短剣は分身達の行動を牽制!
 その隙を使い、超防御を解除し腕部に力を溜めながら駆けるメルフローレ。溜めた力を開放するかのように、駆ける勢いとともに彼女はメイスを振り上げる。
 それに対して、愚かにも自身の弓を盾にした分身!振り下ろされたメイスは、少女の体躯からは考えられないほど重く深い一撃となる!弓ごと鎧を砕く一撃となったそれで、分身の一方は意識を数秒刈り取られる!

「この……!!」
「させません!」

 破れかぶれに、矢を握り殴りかかるようにメルフローレを攻撃するもう片方の分身!メイスの重い動きでの対応を止め、メルフローレは両刃の剣でそれを迎撃する!
 剣の振り上げで一撃、そこからの振り下ろしでもう一撃!二度の攻撃を腕に受け、分身の右腕が蒼炎に還り宙へと消失!次いで片手でメイスによる突きを入れ、こちらの分身の意識も奪い取る!
 なんとか意識を取り戻した方が、腕を失った分身から弓を奪いメルフローレに近距離から矢を放つも、彼女は受ける事すらせずさっとその場から飛び退いた。追うように次の矢をつがえたが、そこにルパートの声が割って入った。

「上手く戦える、と言っていたが……戦場での振る舞いは得意ではなかったようだな」

 その言葉に、メルフローレに意識を向け過ぎていたことに気づく分身。
 そもそも阿頼耶識は戦場で名を馳せた男ではない。平凡な青年が、怨嗟にはしり禁忌を手にしただけなのだ。ルパートが指摘するように戦場での立ち回りが劣るのは、禁忌の暴虐的な力に驕った事もあるがそもそもその素養が無いのだ。そして、その指摘は分身といえど阿頼耶識にとって無視できるものではなかった。
 過去より現在を踏み荒らしに来たにもかかわらず、過去に根差す弱点を指摘されたことで血の通わぬその頭にカっと熱が回った。その熱のままに、上空に居るであろう流れる鉛の男に蒼炎の矢を向ける。だが。その矢を射る事は出来なかった。

「……なんだ、それは」
「我が血はもはや栄光なく、されど未だ闇に消えず……貴様ら外道を打ち払うための、このルパート・スミスの全力だ」

 いつの間にか止んでいた熱風に気づくべきであった。いつの間にか止まっていた短剣の投擲に気づくべきであった。宙に留まるルパートの手にあるのは、今にも零れんばかりの流れる鉛を辛うじて留める巨大な剣。刻命の蒼炎よりも明るい、青い炎を噴出する鉛の剣の切っ先が分身二体を貫ける位置で構えられていた。
 呆然とする分身に対し、状況を理解させるかのようにルパートは声をあげる。

「さぁ力比べ、そして炎比べといこう……!」
「させるかぁあああああ!!!!」

 発狂したような声とともに、分身が蒼炎の矢を放つ。ルパートも、矢を射る分身とその背後でようやく意識を取り戻した片腕の分身に向けて、自身の怪力の一切を余すことなく大剣に伝え投擲した!
 先に放たれた矢は、大剣より噴出する炎で殆どが焼け失せる。わずかにルパートに届いた蒼炎も、火炎に耐性のある彼の身には微風に等しい!
 一方、阿頼耶識の分身達は大剣で地に縫い留められ、その身は大剣の青い炎に呑まれてゆく。意思もつかのようなそれは、ルパートのユーベルコードによるものだ。彼の燃ゆる貴き血鉛が、大剣として分身達を串刺しにした時点で勝負はあった。
 阿頼耶識の姿を取っていた分身は崩れ、それを構成していた蒼炎はそれ以上の明るさを持つ青い炎に呑まれ、欠片も残らず消え失せた。

 青い炎に神社が飲みこまれてしまう前に、ルパートはそれを消しとめる。
 猟兵達は、境内に残る敵に目を向けた。あまりの熱に、表面に薄く硝子質を纏った境内の砂利。その上に横たわっていたはずの、ほんのわずかに息を残すだけとなった阿頼耶識がゆらりと身を起こした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 立ち上がった阿頼耶識は、刻命に矢をつがえ自身の真上に射った。弱弱しいその矢は宙で方向を変え、地に……いや、放った阿頼耶識の元に帰ってくる。
 一見、それはただの自殺行為だ。だが、少なくともこの場に居るこの男は、敵に討たれる前に自刃するというような潔さなど持ち合わせていない。

「……痛みに動けないのならば、それを感じなくなればよいだけの事だ……一つでも、一人でも――!!」

 呪うように言葉を吐きながら、阿頼耶識は矢を受け入れる。刻命の禁忌の力が発動し、阿頼耶識自身をただ戦うためだけの傀儡に仕立て上げた。
 阿頼耶識だったモノの、怒りも熱意も無いうつろな眼が猟兵達を捉える。 

 ――この戦いに、決着をつけるときが来た。
アリス・マジック
到着が遅れて申し訳ない。
だけど、……まだ仕事は残ってたみたいで良かった。まぁ、それがいいことかは分からないけれど。
それにしても、なんとも凄まじい執念だね。破滅願望もここまで極めたらちょっと感心するよ。余りお近づきになりたくない存在であることは間違いないけど。

それじゃあ、僕の手妻をご覧あれ!

〇WIZ
敵の移動を予測して、ウィザードミサイルを偏差射撃し迎撃します。
退き撃ちに徹し、付かず離れずの距離を維持しながら間断なく攻撃を続けます。
一応1日あるとは言え、時間制限付きの命。消極的な戦い方をするとは考えにくいので、常にカウンターを狙う形で対応します。



 刻命の力が溢れ、周囲に蒼の燐光が散る。抑えるべき阿頼耶識が完全に自我を手放したがために、蝋燭の最後の一瞬のごとく周囲を飲みこまんと荒れ狂いだしたのだ。
 傀儡と化した阿頼耶識が放つ刻命の禁忌で構成された矢を、別種の炎の魔力が打ち落とす。魔力の矢の出所となった少女、アリス・マジックが鳥居をくぐりながら声をあげた。

「到着が遅れて申し訳ない……が、まだ仕事は残っているみたいだね」

 アリスの言葉を耳に入れる事すらできなくなった阿頼耶識は、攻撃の出所であるという事だけでアリスに近づきながら次々矢を射る。

「キミの執念や破滅願望には感心しなくもないけれど……ボクとしてはあまりお近づきになりたくないかな」

 アリスは蒼炎の矢をウィザード・ミサイルで相殺しつつ、つかず離れずの距離を維持して刻命の力の切れ目とカウンターを入れる隙が一致するのを狙う。距離を置いての予測と観察を重ね、やがて彼女の瞳に阿頼耶識への攻撃の道筋がハッキリと映った。

「それじゃあ、お返ししようか。さあ、僕の手妻をご覧あれ!」

 アリスは攻撃の相殺から、阿頼耶識の移動に合わせた偏差射撃へとウィザード・ミサイルの運用を切り替える。敵からの攻撃は退き打ちに徹することで回避しつつ、手品のような鮮やかさで魔法の矢を阿頼耶識へと叩き込んでいった。

「これでお仕舞だよ」

 アリスがそう言って指を鳴らすと同時に、75本もの魔力の矢、その最後の一本が阿頼耶識を貫いた――それが、とどめだった。
 刻命の宿す禁忌の力が底を尽き、それによって動いていた阿頼耶識も糸を切った繰人形のように地に落ちる。そして、まるで汚れが拭い取られるかのように世界に拒絶され掻き消えていった。

 かくして、人心を脅かすオブリビオンの脅威は去った。奴の残した憂い事も、猟兵達の守った平穏と祭りが次第に拭い去ってくれるであろう。
 猟兵達は互いに顔を見合わせ、無事に持ち込めた灯籠を供える。そして、全てを終えた事を伝えるため境内を去っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月01日


挿絵イラスト