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アースクライシス2019⑦~笑わぬ道化の遊び事~

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #ダストブロンクス

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 「肥溜めの王」スカムキングによるニューヨークでの動乱は防がれた。
 このまま敵の勢いを削ぐべく、スカムキングの本拠地へと攻め込む事になったの、だが。
「肥溜めの王の名は伊達じゃないと言うか、まぁ決してついでの観光なんてのを楽しめる場所ではなくてね」
 そんなつもりがないことは百も承知だが、と言い添えつつ、エンティ・シェア(欠片・f00526)は説明を続ける。
 曰く、本拠地たるダストブロンクスの上層にはスカムキングの配下が配置されており、彼らはある特殊な状況下でダメージを回復する特徴を持つというのだ。
「それがまぁ、汚れた下水を浴びること、でね。それを可能にするためか、戦場になる場所はあちこちから汚染水が噴き出してくるんだよね」
 つまり汚染水を浴びる度に無尽蔵に回復する敵との対峙となるわけだ。
 これを突破するためには、敵の回復を妨げるのが最も効果的となるだろう。
「敵は汚染水の吹き出す箇所を予測して、そこに移動とするようだよ。単純にそれを妨害するだけでも問題はないだろう」
 突き飛ばして引き離したり、敵を挑発して回復よりもこちらへの攻撃を優先させたり。
 場所が一見するだけならば普通の市街地であり、噴き出すのが下水である以上、出てくる場所はマンホールや排水管であると予想される。ならば汚染水の噴出そのものを防いでしまってもいい。
 やりようは色々あるだろうが、とにかく大事なことだからよく覚えておいてねと告げて、説明は敵の情報へとうつる。
 今回対峙するのは『ノーラフス』と呼ばれる知能的狂人。
 手品と言って両手から高圧電流を放ちこちらの動きを封じてきたり、玩具の銃から毒ガスを噴出させたりと言った攻撃に加え、周囲の気絶者や死体をピエロのようなメイクの姿に変えて操ったりもする。
「自分が殺して歩いた死体をその辺に放置しているようでね。操られた者は気配を殺したりといった芸当はできないようだが、突然の不意打ちには注意をした方がいいかもね」
 そんなところかな。メモを見直し頷いて、エンティは猟兵達へと向き直る。
「君達の体に直接的な影響はないだろうけど、汚水を浴びるのは気持ちいいものじゃないからね、どうか気をつけて」
 送り出す先がそんな場所で済まないねと眉を下げて、それでも行ってくれるのならと、道をひらくのであった。


里音
 女子型の敵を選択することに躊躇いを覚えました。ありがとうノーラフスさん。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「アースクライシス2019」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 OPで出ているような手段の他、思いつくまま汚染水での回復を阻止してみて下さい。プレイングにボーナスが付与されます。
 なお、わざと敵を回復させるようなプレイングは失敗判定となるため、採用致しかねます。

 敵が死体を操作するユーベルコードを使用してきた場合、死体が汚染水を浴びても回復しませんのでご安心下さい。

 今回はほぼ先着順となる予定です。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『ノーラフス』

POW   :    手品だぜ。ジャジャーン!
【両掌】から【高圧電流】を放ち、【感電】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    俺様が、あー……テキトーに調合した特別性さ
レベル分の1秒で【玩具の銃から毒ガス】を発射できる。
WIZ   :    いい顔してるだろ? 死んでるんだぜ、たぶんな
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【ピエロメイクの狂人】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠化野・右京です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アイシス・リデル
わたしは慣れてる、けどそうだよね
普通の人はこんなところいや、だよね
……敵はいやじゃない、のかな?

汚染水が流れてくる方に向かって、進んでいく、ね
流れてるのも全部、【犠牲者】の力で、わたしの中に取り込んで
敵が使えないように、きれいな水にお【掃除】しちゃうから
わたしには【毒耐性】があるから大丈夫、だよ

バラックスクラップで戦って、敵が逃げるつもりなら
スチームドローンに掴まって、飛んで追いかける、よ
汚水だけじゃなくて、毒ガスも、【毒耐性】があるわたしには効かないから
玩具の銃を向けられてもそのまま攻撃しちゃう、ね




 何処かで汚染水が噴き出たのだろうか。周囲に充満する、決して良い匂いなどではないそれも、アイシス・リデル(下水の国の・f00300)にとっては嗅ぎ慣れたもの。
 けれど普通の人があまり好むものではないということも、よく、分かっている。
「……敵はいやじゃない、のかな?」
 素朴な疑問に首を傾げつつ、アイシスは敵と対峙する。
 ブラックタールとは言え少女の姿を見つけて、敵――ノーラフスは観察するような視線を向けてきた。
 女子供が苦しむ姿は定番で愉快なものだ、と。小さく呟いたのを聞きながら、スクラップを組み合わせた異物を振りかざしたアイシスは、真っ直ぐにノーラフスへと肉薄した。
「おっと、物騒だな」
 武器に付着した赤黒い色は、さて、何がこびりついたものだろう。
 作り笑顔の笑みを深めながら、ノーラフスはすかさず玩具の銃を取り出した。
「まぁ、これでも浴びて落ち着きな」
 避けたって良いぜ、と軽口を叩きながら引き金を引けば、毒を含んだガスが溢れ出す。
 その一連の動作を、アイシスはしっかりと捉えていたけれど、息を止めたり、顔を覆ったりなどの措置は取らないまま、ただ武器だけを構えて突撃する。
「うん、そういうの、わたしには効かないから」
 アイシスは汚水のタールである。そして聖者である。
 なにより、毒には強靭な耐性を持っている。
 毒ガスの中を突っ切っても、顔色一つ変えずににこりと微笑むアイシスに、ノーラフスは面食らったように目を剥いて。舌打ちと共に、踵を返した。
 だが、遅い。とうに間合いに入っていたアイシスは、武器を振りかざし、痛烈な打撃を与える。
「あなたの方が背が高いから、逃げられたら追いつけないかなぁ」
「っは、そりゃいいな、逃げて癒やして、仕切り直しだ」
 こぢんまりとしたアイシスに下から見上げられながら、体面を取り繕うでもなく言ったノーラフスは、ちらと周囲を見やる。
 カタカタと揺れるマンホールの下から、汚染水が噴き出るのを見つけると、ダメージを回復すべく一目散に駆けていった。
 だが。
「わたしはいくら汚れても、大丈夫だから。きっと、わたしはそのためにここにいるんだよ、ね」
 微笑んだアイシスがそっとそちらへ進み出れば、汚染水は瞬く間にアイシスへと取り込まれていく。
 そうして、ドロリとした汚泥がぐるりと彼女の中で一巡りした後、さらさらと綺麗な水になって流れ出ていった。
 代償としての毒がほんの一瞬ちくりとした苦しみを与えたような気がしたけれど、すぐに収まる。
 ここに他の猟兵がいれば、回復出来てもっと良かったのだけれど、と胸中だけで呟いて、呆気にとられているノーラフスを再び見つめる。
「この水じゃ、回復できないよね」
 一歩踏み出したアイシスに対して、ノーラフスは反射的に、じりと一歩後ずさる。
 それはきっと、浄化された水は、聖者の加護を含んでキラキラと煌めいてさえ見えて。
 その中に佇んだ汚泥の少女が、一層異質に見えたせいだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アマルガム・デルタ
「げすいも ぴえろも たべちゃえばいい」
「ぼくは にがさない よ?」

下水の噴出口に張り付いてUCを発動し原子レベルに分解して吸収し、体を膨張させていきます。
複数個所下水噴出孔があるなら敵より先に底を目指して膨張した体を流し込んで吸収していきます。

電流によるダメージは膨張速度でカバー、毒ガスは分解吸収、死体も分解吸収、気絶者は吸収せずに取り込んで安全な場所に流し込みます。
相手に食いついたら技能:怪力を使用して逃げれないようにがっちり掴んで食べていきます。

一人称は「ぼく」と「わたし」でごちゃまぜでしゃべる言葉は全部ひらがなです。

絡み、アドリブOKです。




 おなかがすいた。
 おなかがすいた。
 たべていいものが そこにある。
 アマルガム・デルタ(バイオモンスターのダークヒーロー・f16424)は不定形の己の身体をずるりと這わせ、ノーラフスへと歩み寄っていく。
「げすいも ぴえろも たべちゃえばいい」
 殺意とも敵意とも違う、それは獲物を狙いすます本能的な性質。
 ピエロメイクの存在も、辺りから噴き出る汚染水も、アマルガムにとっては一様に、たべものであった。
 その存在を嫌悪するでもなく、恐れるでもなく、ノーラフスは両手にばちりと電流を奔らせる。
「手品だぜ」
 楽しんでいけよ、と作り笑いを浮かべて、アマルガムへ放たれるのは高圧電流。
 びりり、と痺れるにとどまらず、全身を焼くような痛みがアマルガムを襲うはずだった。
 はずだったの、だけれど。
 おなかすいた たべる
 ふえる
 おなかすく たべる ふえる
 おなかすく おなかすいた
「いっぱいたべる」
 ぐじゅり、と。アマルガムの足元に当たる位置で、汚染水だったものが溢れる音がした。
 けれど、噴出するはずだったそれは、空腹を繰り返し訴えるアマルガムへ、見る見る内に吸収されていく。
 それに伴い、不定形の身体がぼこりと音を立て、膨張するように大きくなっていくではないか。
 電流を放っても、焼け焦げるそばからぼこぼこと体積が増していく体。
 大きくなったそれを、ずるり、また引きずって、アマルガムはノーラフスへとしなだれ掛かる。
「ぼくは にがさない よ?」
 いただきます。
 食べる前のご挨拶は、ちゃんと出来るのだ。
 触れた身体をガッチリと掴んで、大きな体にしては慎ましやかなお口を開けて、かぶり付く。
 ちゃんと のこさず あたまから。
 ……の、つもりだったのに。
「食われて、たまるかよ!」
 掴みかかられた部位を、噛みつかれた腕を、切り離して捨て去って。
 間一髪、間一髪だ。ノーラフスは自らを喰らい尽くそうとする敵から逃れ、逃げ出した。
 回復さえすればどうとでもなる。そんな焦りや恐れを湛えたその顔には、愉悦を楽しむ余裕は、消え始めていた。
「――おいしい」
 残った部位をもぐもぐと平らげて、アマルガムはその背を追う。
 だって ぼくは。
 にがさないって いったでしょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
下水を頭から被っても洗車場に暫く待機していれば問題ありません
ダストブロンクスを突破しHEの人々を守れるならば幾らでも浴びましょう

此方を腐食毒の類のUCで足止めし
下水の豊富な場所に移動し地の利を得るつもりのようですね

●怪力で大盾を●なぎ払い大きな風を起こして毒ガスを彼方に返し●目潰ししつつ、熱源センサーで等で●情報収集
位置を●見切った相手の足元に格納銃器による●スナイパー射撃で薬剤をばら撒き転倒させます
その脚にワイヤーアンカーを射出し●ロープワークで絡めて引き寄せ拳銃を剣で叩き落とし(●武器落とし)●怪力での●シールドバッシュを叩き込みます

長居はしたくないので汚い戦いぶりなのは失礼させて頂きます




 逃げた先で汚染水を浴びれれば。そうすれば回復する。
 そんな目論見と共に、血の滴る身体を引きずってきたというのに。
「回復などはさせませんよ」
 新手だ。大きな盾を構えたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の姿をみとめ、ノーラフスは大きく舌打ちをして、玩具の銃を突きつけた。
「そこをどいてもらおうか!」
「そう言うわけには参りません」
 その銃が毒ガスを放つものだということを、トリテレイアは知っている。
 こちらの足を止め、下水の豊富な場所に移動し地の利を得るつもりなのだろう。
 だが、そのような策を成立させるわけには行かない。例え己が汚水を浴びることになろうとも、仲間が与えてくれた傷を回復させはしない。
「ダストブロンクスを突破しヒーローズアースの人々を守れるならば幾らでも浴びましょう」
「そう言う割には、随分とでかい盾をお持ちのようだな!」
 構えた大盾は機械として人より大きく作られているトリテレイアの身の丈にも迫るサイズ。それだけでノーラフスにとっては壁のようなものだろう。
 壁の後ろで粋がるだけかと煽るような言葉は、右から左。言わせておけばいいとばかりに聞き流す。
 そう、構えて防ぐだけが盾の使いみちではないとばかりに、トリテレイアは毒ガスが放たれた瞬間を狙い、その盾を大きく薙ぎ払った。
「ぐあっ!?」
 突風にも似た強風が起こる。風はガスを吹き戻し、ノーラフスへと浴びせ返した。
 己の放った特別性の毒は、もしかしたら彼自身にはさほど通用しないのかも知れない。だが、一瞬の目くらましには十分だった。
「御伽噺の魔法の薬ほどではありませんが、色々と応用が効くんですよ」
 ぜひとも体感してもらいましょう、とノーラフスの足元へ向けて放たれたのは、特殊な薬品を封入した弾丸。
 ユーベルコード製のそれは、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らすもので。
 毒ガスを払いのけるように腕をふるい、一歩引いたノーラフスは、その瞬間、足元の薬品に足を取られ、無様にひっくり返った。
 その隙に、放たれたワイヤーアンカーが足を絡め取り、大盾を薙ぎ払いに使えるほどの怪力でぐいと引き寄せる。
 抵抗しようにも、掴める地面は既に摩擦抵抗の消失したつるつるのすべすべ。
 あっという間に引き寄せられながら、せめてと振り向きざまに銃を構えるが、引き金を引くより早く、叩き落される。
「長居はしたくないので汚い戦いぶりなのは失礼させて頂きます」
 騎士道を思えば正々堂々と戦うことが望ましいのかも知れないけれど。
 大義をなすためには、己が卑怯とそしられる程度、些末なこと。
 壁のような大盾を構え、勢いをつけてトリテレイアは突進する。
 攻撃を防ぎ、風を起こすことも出来る盾という存在は、時には武器でさえあるのだと知らしめるように。
 ひゅ、とノーラフスが息を呑んだ瞬間、その体は大盾に弾かれ、戦場を跳ねるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

デュナ・ヴァーシャ
確かにこの世界は陰鬱だが……道化の盛り上げは必要ないぞ。
やかましいその口、すぐに黙らせてやろう。

まず権能を発動し、入り組んだ地形を走り回りながら、奴の進む場所を確かめる。吹き出す汚染水に先回りし、その中に先んじて飛び込んでしまおう。

誰もいないと油断した道化が汚染水に近づいてきた所で、いきなり水の中から飛び出して打撃を加えよう。そら、道化が逆に驚かされる気分はどうだ?
相手が怯んでいる隙に、その両腕を羽交い締めにして両掌を上に向けさせる事で電流を封じ、脳天から地面に叩きつけるように投げ落とす。

我が肉体は神の肉体、いかなる穢れも寄せ付けぬ。このような汚濁もな……まあ、気分の良いものではないが。




 ニューヨークの地下に広がるダストブロンクスは、地上と比べて陰鬱な雰囲気がある。
 だが、と。デュナ・ヴァーシャ(極躰の女神・f16786)は路上に蹲る状態となっている姿を見る。
 この世界に、道化の盛り上げ役は必要ない。こと、狂気的で猟奇的な惨劇による興奮など。
 走り回ったダストブロンクスの随所から噴き出る汚染水の中に潜み、敵が回復を目論み油断した隙を……そう思っていたデュナだが、最早油断を付くまでもなさそうだ。
 とは言え、こちらも最後まで油断は禁物。這いつくばるようにして汚染水を目指してくるノーラフスをじっと見据え、その顔が安堵を湛えた瞬間、汚染水の中から飛び出した。
 ざぱり、と。汚染水の噴き出る中から現れたその姿は、隆々と逞しく、豊満で美しい。
 あまりにアンバランスな取り合わせに、面食らった顔をしたのも、一瞬。
 そしてその一瞬が、ノーラフスにとっての命取りだった。両手に――今は食われて一本になってしまった片手に――電流を奔らせるより早く、羽交い締めにされ、掌を上向かされた。
 ばちりと音を立てる電流は、狙い定まらず、中空で霧散するだけ。
 ぎりりと締め上げられる感覚に苦悶の声を上げるノーラフスに、デュナは問うように声をかける。
「道化が逆に驚かされる気分はどうだ?」
「ぐ、く……愉快なもんじゃないか!」
 強がりか、性分か。引きつった顔で笑って、ノーラフスは再び電流を生み出す。
 そんな彼に、そうか、と一つ呟いて、デュナは自身よりずっと華奢に見える彼の身体を、ふわりと浮かせた。
「やかましいその口、最早私が黙らせるまでもないか」
 走り回っている間に見た時よりも、口数も随分減っている。
 減らず口と言うやつであることには、代わりはないのだけれど。
「は、はは……そうかい、じゃあ厄介者は早々に退場させてもらうかな」
「退場先は骸の海だがな」
 浮かせた身体を、投げ落とす。脳天から、地面へと叩きつけるように。
 がっしりと掴まれた状態で、受け身を取ることさえも許されなかったその体は、ごきりと鈍い音を立てて。
 デュナが腕を解いた後も、動かない。
 ……いや、瞳をぎょろりと動かして、掠れる声を上げる唇で、か細くか細く、紡いでいた。
「俺の、代わりに……汚染水を、浴びた気分は、どうだった?」
 今際の際の意趣返し。
 ふん、と鼻を鳴らし、デュナは濡れたはずなのにさらさらと流れる髪を梳いてみせた。
「我が肉体は神の肉体、いかなる穢れも寄せ付けぬ。このような汚濁もな」
 胸を張って、強く言い切って。
 けれど、少しの間を開けて、一言、添えた。
「……まあ、気分の良いものではないが」
 そうか。
 一つ呟いたノーラフスは、愉快げに笑って、そうして、朽ち果てるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月11日


挿絵イラスト